衆議院

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第18号 令和3年4月6日(火曜日)

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令和三年四月六日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十号

  令和三年四月六日

    午後一時開議

 第一 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)

 第二 デジタル庁設置法案(内閣提出)

 第三 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第四 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)

 第五 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)

 第六 自然公園法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)

 日程第二 デジタル庁設置法案(内閣提出)

 日程第三 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)

 日程第五 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)

 日程第六 自然公園法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)

 日程第二 デジタル庁設置法案(内閣提出)

 日程第三 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)

 日程第五 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、デジタル社会形成基本法案、日程第二、デジタル庁設置法案、日程第三、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、日程第四、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案、日程第五、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案、右五案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長木原誠二君。

    ―――――――――――――

 デジタル社会形成基本法案及び同報告書

 デジタル庁設置法案及び同報告書

 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案及び同報告書

 預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔木原誠二君登壇〕

木原誠二君 ただいま議題となりました各法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、デジタル社会形成基本法案は、デジタル社会の形成に関し、基本理念並びに国、地方公共団体及び事業者の責務等について定めるとともに、内閣にデジタル庁を設置する等の措置を講ずるものであります。

 次に、デジタル庁設置法案は、デジタル庁の設置、任務、所掌事務について定めるとともに、デジタル庁の組織等について定める等の措置を講ずるものであります。

 次に、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案は、民間事業者、行政機関及び独立行政法人等に係る個人情報保護制度を個人情報の保護に関する法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても改正後の個人情報の保護に関する法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化するほか、押印を求める手続についてその押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続について電磁的方法により行うことを可能とする等の措置を講ずるものであります。

 次に、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案は、預貯金者が、公的給付の支給等に係る金銭の授受に利用することができる一の預貯金口座の登録を受けることを可能とするとともに、行政機関等が公的給付の支給を実施しようとするときは、登録された預貯金口座に関する情報について個人番号を利用して管理することを可能とする等の措置を講ずるものであります。

 最後に、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案は、預貯金者が、預貯金口座への個人番号の付番を希望する旨を申し出ることを可能とするとともに、災害又は相続の際に、預貯金者又はその相続人が、既に付番された預貯金口座の所在情報を金融機関窓口で確認するサービスを可能とする等の措置を講ずるものであります。

 各法律案は、去る三月九日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌十日平井国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、十二日から質疑に入りました。十八日に参考人から意見を聴取するとともに、二十四日に総務委員会との連合審査会を開会し、さらに、三十一日には菅内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を重ね、四月二日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、デジタル社会形成基本法案に対し、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属及び公明党の共同提案による修正案、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会・無所属の会の共同提案による修正案並びに立憲民主党・無所属の提案による修正案が、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案に対し、立憲民主党・無所属の提案による修正案が、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案に対し、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案が、それぞれ提出され、各修正案の趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、各法律案及び各修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、まず、デジタル社会形成基本法案につきましては、立憲民主党・無所属の提案による修正案は賛成少数をもって否決され、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属及び公明党の共同提案による修正案、自由民主党・無所属の会、公明党及び日本維新の会・無所属の会の共同提案による修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、デジタル庁設置法案につきましては、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案につきましては、立憲民主党・無所属の提案による修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案につきましては、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 最後に、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案につきましては、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの共同提案による修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、五法律案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 五案につき討論の通告があります。順次これを許します。森山浩行君。

    〔森山浩行君登壇〕

森山浩行君 立憲民主党の森山浩行です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、デジタル関連五法案に関して、デジタル社会形成基本法案と整備法案、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法案に反対、デジタル庁設置法案、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録に関する法律案には賛成の討論を行います。(拍手)

 まず初めに、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになった皆様の御冥福をお祈りするとともに、感染された皆様にお見舞い申し上げ、日夜、命と暮らしを守るために、医療や福祉、公共交通や流通、電気、ガス、水道などのエッセンシャルワークの現場や、自治体、消防、警察、自衛隊など公務の現場、歯を食いしばって営業されている企業や商店などのあらゆる現場の皆さんの御努力に、敬意と感謝をささげます。

 新型コロナウイルス対策は与野党を超えてとの気持ちで、私も、党内で一貫して事務局を担い、多くの制度や予算を提案し、実現をしてきました。

 しかしながら、当初から、ワンボイスで発信すべきという我々の提案を受け入れないまま、政府からの発信はばらばらで、人によって言うことが違うこと、感染拡大のきっかけとなったことを否定できないGoToキャンペーンを強行した上、年末ぎりぎりの時期にストップをし、大量のキャンセルで経済にもダメージを与えたこと、まずは検査数を増やすべきという我々の提案を入れずに緊急事態宣言を早めに解除したと思えば、予想されたとおりに感染が拡大をし、私の地元大阪でも、大阪市だけ蔓延防止等重点措置を発動してしまっているということ、ワクチンの確保が遅れ、接種時期の目安が二転三転していること、この間の政府の対応は後手後手で、担当もばらばら、こんな政権には危機管理を任せるわけにはいかないという思いでいっぱいです。

 緊急度で言えば、圧倒的に、デジタル庁より危機管理庁や防災庁とも言えるのではないでしょうか。

 今では、日本はアジアで一番の感染者を抱える国となっています。ウィズコロナの名の下に、何度も経済を止めることで国民に大きなダメージを与えるのではなく、台湾やニュージーランドなど、日本と同じ島国で実績を上げているように、危機管理の権限を集中して、検査数を増やし、感染者をクラスターで追える数まで減らして対策をする、ゼロコロナ戦略に転換すべきです。

 さて、今回提出をされたデジタル関連法案の要綱等に四十五か所もの誤りがありましたが、問題なのは、およそ一月もの間、野党に報告がなかったことです。

 政府のデジタル化の中心的な官庁の一つである総務省で発覚した、総理の長男、菅正剛氏らによる国家公務員倫理法違反の接待、そして、それを隠蔽するための国会での虚偽答弁を繰り返したということ、これはNTTの接待問題や民放の外資規制問題に発展しており、行政がゆがめられたことの解明はまだ調査中ですが、余りにも遅い対応と言わざるを得ません。

 これらに共通するのは、モリ、カケ、桜、検察庁法、学術会議などと同じく、人事権を握られた官僚の皆さんが本来奉仕すべき公益よりも政権の意向に忖度せざるを得ない体制をつくり上げた、暗黒の九年間とも言うべき安倍、菅自公連立政権の情報隠蔽体質の負の側面と言わざるを得ません。

 論語にも、過ちては改むるにはばかることなかれとあります。行政は完璧であるべきという行政の無謬性にこだわる余り、なかったことにしようとして傷口を広げてしまっています。人間のやることに間違いがあることを潔く認め、速やかに公開し、対応すること。デジタル庁以前に、まずは政権の情報隠蔽体質を大いに反省、改善するとともに、足下のチェック体制の強化こそを緊急に実行すべきと求めます。

 私たち立憲民主党は、基本政策において、「個人情報を保護しつつ行政のデジタルトランスフォーメーションを推進します。」としており、行政のデジタル化に賛成ですが、あらゆる住民の利便性を高めるとともに、苦手な人も含めて誰も取り残さないこと、個人情報保護の対策を徹底すること、セキュリティーを確保すること、国民の監視に使用しないことなどを基本姿勢として進める必要があります。

 日本のデジタル化には多くの課題があります。

 社会や行政のデジタル化において、まずは、行政の情報は国民のものである、その一方で、個人情報は個人のものであるという基本中の基本を忘れないため、行政情報の徹底的な公開と自己情報コントロール権を制度化することです。

 委員会審議中に発覚した、LINEの個人情報が韓国から中国へ再委託されていた問題は、国民に大きな衝撃を与えています。今回、官民両方に対して調査権限を持つことになる個人情報保護委員会の立入調査までに二週間もかかったことも問題ですし、そもそも、個人情報の扱いへの国の介入権限の強い外国に委託や再委託で作業を出してしまうことの危機感を、これは民間の皆さんも含めて、持ってもらわなければなりません。

 また、平井大臣自身が、発注者の問題だと述べたコロナ対策での失態も含め、役所の仕事は、仕様書どおりに作るだけでいいが、民間の契約は、多くの人に使われて初めて料金が発生するなどといった基本的な発注形態の問題、日進月歩のデジタルの世界で中途半端な知識での発注、デジタル利権とも言われる高過ぎる料金設定の問題点など、長年失敗してきた政府のデジタル政策についての総括が必要です。

 誰もが使いやすいユーザーインターフェースや、台湾のマスク在庫アプリの成功例のような市民参加型のアプリ開発、海外企業への委託、再委託を含めたセキュリティーの問題、地方自治体の自主性を損なわないような制度設計も課題と言えます。

 今回、委員会の議論を通じて幾つかの修正があり、二十七項目の附帯決議も議決されました。

 以上を踏まえ、デジタル社会形成基本法案については、障害者への配慮に関し、身体的なものから障害の有無等の心身の状態へと広げる修正提案が受け入れられた点は評価しますが、地方公共団体の情報システムの共同化等を努力義務とすべきといった修正提案が受け入れられないことから、反対。

 デジタル庁設置法案については、幹部ポストの数が過剰といった懸念点はあるものの、デジタル利権の温床とならぬよう運用に十分注意することや、十年の見直しまでにこれまでのデジタル政策の遅れを取り戻すことを求めた上で、設置そのものには賛成。

 整備法案については、自己情報コントロール権の個人情報保護法の目的規定への明示、国や地方の行政機関が集めた個人情報の目的外利用を認める要件の限定化などの修正提案が受け入れられないことから、反対。

 公的給付の支給迅速化のための預貯金口座登録法案については、昨年の一人十万円給付の遅れの経験や、将来の給付つき税額控除制度の実現に向けた観点からも、賛成。

 預貯金口座にマイナンバーをひもづける法案については、預貯金者がどの金融機関に口座を持つかという情報を預金保険機構が一元的に知り得るなど、国民監視の不安を払拭できないことから、反対。

 立憲民主党は、社会や行政のデジタル化の推進に当たって、個人情報が十分に保護され、全ての国民にとって真に利便性が向上するものとなるよう、今後も努力を続ける決意を申し上げ、三法案に反対、二法案に賛成の討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 神田憲次君。

    〔神田憲次君登壇〕

神田憲次君 自由民主党の神田憲次です。

 私は、自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、ただいま議題となりました政府提出のデジタル改革関連五法案について、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 今回の新型コロナウイルス感染症の危機は、全世界に巨大なインパクトを与え、経済を直撃し、生活を抑圧し、人々の幸福感を損なわせました。さらに、超高齢化の進展、度重なり発生する甚大な自然災害等の多くの課題を抱える我が国の現状を鑑みると、社会は大きく変わらざるを得ない状況となっております。

 そのような状況にあって、デジタル技術は、我が国の強靱化、我が国経済の再起動だけではなく、社会における様々な課題解決、利便性の向上を可能とするものであり、社会全体のデジタル化は待ったなしと言えます。

 以上を踏まえ、賛成する理由を申し上げます。

 第一に、二〇〇一年に施行された、いわゆるIT基本法は、既に時代遅れになっております。

 今後、社会全体のデジタルトランスフォーメーションを推進するに当たっては、供給者目線ではなく、国民が安心してデジタル技術を活用し、利便性を実感できるというユーザー目線での改革を進めることが重要であり、目指すべき社会であるデジタル社会とその形成に関する新たな基本理念等を打ち立てることが不可欠ですが、デジタル社会形成基本法案及び修正案はそれらを規定するものになっております。

 第二に、デジタル社会の形成の推進においては、あらゆる取組をばらばらに、場当たり的に進めるのではなく、緊急時のような短期的なものであっても、中長期的な取組であっても、総合的、計画的に推進することが求められます。

 そのためには、既存の枠組みを超えた強力な司令塔機能を付与されたデジタル庁を早期に創設し、国、地方、民間のデジタル化を強力に推進していくことが不可欠です。

 第三に、デジタル社会において、データは二十一世紀の石油とも言われ、その利活用が我が国の産業競争力の発展や国民の利便性向上の鍵であるとともに、その適正な利用のためのルールの整備が不可欠であります。

 いわゆる二千個問題を解決するためには、個人情報保護の全国的な共通ルールを法律で規定するとともに、独立規制機関である個人情報保護委員会が、公的部門も含め、個人情報の取扱いを一元的に監視、監督する体制を確立する必要があります。

 なお、今般の個人情報保護法制の一元化は、個人情報保護のためのルールとその所管を一元化するものであり、個人情報の管理主体を一元化するものでは決してないことを改めて指摘しておきます。

 第四に、新型コロナウイルス感染症への対応の中で、行政手続のデジタル化の遅れが顕在化した上に、問題が起きたとき、省庁ごとに判断、行動してきたといった課題が提起されました。

 マイナンバーを活用した行政手続の効率化や、省庁横断的な問題を解決する仕組みについては、その実現が不可欠です。

 その際、公金給付の迅速化のための口座登録制度や、相続時や災害時においてのマイナンバーを活用した口座の所在確認の実現など、具体的に国民の利便性を高めていくことが必要です。

 我が国において、デジタル化を一気呵成に推進し、年齢、障害の有無、性別、国籍、経済的な理由等にかかわらず、全ての人が不安なくデジタル化の恩恵を享受でき、企業、行政、個人の間で安全かつ円滑にデータ流通を可能とすることで、生活の豊かさと非連続的な経済成長を実現するため、速やかに五法案を成立させることを議員各位にお願いを申し上げ、私の賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、デジタル関連五法案に反対の討論を行います。(拍手)

 本案は、行政が個人情報を集積し、企業等に開放して利活用しやすい仕組みにしようというものです。行政が特定の目的のために集めた個人情報をもうけの種として利用し、成長戦略、企業の利益につなげようとするものです。

 反対理由の第一は、プライバシー侵害の問題です。

 本案は、個人情報保護法制の一元化で、自治体の個人情報保護条例に縛りをかけ、都道府県、政令市にオープンデータ化を義務化し、オンライン結合の禁止は認めないとしています。保護の仕組みを切り捨て、個人情報保護を求める住民に応えた自治体の独自策を掘り崩すものです。

 また、政府のマイナポータルを入口に、更に個人情報を集積しようとしており、情報連携に歯止めがないことが浮き彫りとなりました。

 本案は、マイナポータル利用に必要なマイナンバーカードをスマホに搭載可能とするなど、利便性を強調していますが、健康保険証のマイナンバーカード利用を半年先送りしたことを見ても、個人情報漏えいの懸念は拭えません。

 デジタル庁が整備し、統括、監理する全国的なクラウドの仕組み、ガバメントクラウドも、システムの巨大化が更なる下請を生み出します。集積した情報は攻撃されやすく、一度漏れた情報は、取り返しがつきません。

 ガバメントクラウドへのデジタル庁からのアクセスについても、法的な根拠を示さず、設計は検討中だとして、全く不透明なものです。

 この間、個人情報保護法をデータ利活用法に改悪をしてきたがゆえに生じた問題が、LINE社の問題としてあらわになっています。個人情報は個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきであり、プライバシー権は憲法が保障する基本的人権です。今求められているのは、情報の自己コントロール権を保障する仕組みであります。

 第二に、地方自治の侵害の問題です。

 現行の自治体クラウドでも、カスタマイズ、仕様変更を認めないことが問題となっています。本案の情報システムの共同化、集約の推進によって、自治体は国が作る鋳型に収まる範囲の施策しか行えないことになりかねません。

 また、強力な権限を持つデジタル庁は、国の省庁にとどまらず、自治体、準公共部門に対しても、重点計画、整備方針の策定、予算配分や勧告権を使って口を挟むことができるようになります。監督権限を強化する個人情報保護委員会も、自治体の条例作りに口を挟めるようになっています。

 第三に、国民生活への影響についてです。

 本案では、個人の預貯金口座のマイナンバーひもづけなどを盛り込んでいます。元々、経団連などの要望のままに導入されたマイナンバー制度は、消費税増税を前提にしたもので、国民の所得、資産、社会保障給付を把握し、国民への徴収強化と社会保障費の削減を進めるためのものです。マイナンバー制度は廃止すべきです。

 行政のデジタル化を口実に、窓口の減少、紙の手続の廃止といった、対面サービスを後退させる事例が相次いでいます。迅速、簡便なデジタル手続を生かすとともに、住民の多面的な行政ニーズに応える対面サービス、相談業務を拡充し、住民の選択肢を増やしてこそ利便性の向上につながります。

 最後に、官民癒着の問題です。

 デジタル庁は、約五百人のうち百人以上を民間出身の非常勤職員としています。企業に籍を置いたまま給与補填を受けて働くことになり、特定企業に都合のよい政策の推進やルール作り、予算執行など、官民癒着が更に拡大するおそれがあります。官邸と財界などの意向をスピーディーにストレートに反映させる組織であるデジタル庁は、必要ありません。

 以上、討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 ただいま議題となりましたデジタル改革関連法案に賛成の立場から討論します。(拍手)

 日本維新の会は、結党以来、マイナンバーのフル活用を通じた、透明で公正公平な経済社会の構築を目指してきたところ、今般のデジタル改革関連法案は、遅きに失した面があるとはいえ、日本の経済社会をアップデートしていくには不可欠の法案です。党派を超えて、賛成する立場から、その成立に協力すべきことは明らかであります。

 そうした観点から、立憲民主党が提案した障害者に係る修正提案にも、我が党は積極的に賛成をいたしました。特に、このコロナ禍の中にあって、デジタル化の恩恵を障害の有無を超えて享受すべきことは当然であり、私自身、通所を前提としてきた就労支援事業を在宅でも利用できるよう制度整備すべきことを早くから訴え、今年度の障害福祉サービス等報酬改定に反映させることができました。この間の厚労省障害保健福祉部の真摯な対応に、心から敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

 ただし、当該修正案に賛同を求め、可決しておきながら、提出者である立憲民主党自身が、原案に反対し、障害者の方々も搭乗している船自体を転覆させようとしていることについては、信義にもとる行為であり、極めて遺憾であると申し上げておきたいと存じます。

 この障害者に係る規定は、政府・与党からすればミスに近いものだったと推測いたしますが、もう一つ、デジタル社会形成基本法案には、より本質的な問題が潜んでいました。

 それは、政府原案第九条における国及び地方公共団体の役割に関する規定が、「国民の利便性の向上並びに行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上」を挙げるにとどまり、あたかも合理化のみが国や地方公共団体のデジタル施策の中心であるかのような印象を与えるものとなっていたことであります。

 日本維新の会は、デジタル社会を形成するに当たって、国民の所得と資産を捕捉した上で、取るべきところから取り、手を差し伸べるべき方々にしっかり手を差し伸べる、そうした公正な給付と負担を確保することを三本目の柱として明記すべしと提案し、与党の皆様の御賛同を得て、自公維三会派共同で修正案を提出し、可決いただいた次第であります。

 本修正案に名を連ねてくださった自民、公明両党には感謝を申し上げますが、一連の審議の過程で、マイナンバーのフル活用に向けた政府・与党の覚悟の欠如について懸念を深めたことも事実であります。

 本日、日経が配信した「強制と任意のはざま 定まらぬ覚悟」との解説記事には、マイナンバーカードの低普及率や健康保険の情報収集の誤り等が続く背景として、「政府側にマイナンバーを使う覚悟ができていないという根本的な問題があり、利用者側にも誤解を含めてそんな政府を信用していないという事情がある」とする同志社大学の北寿郎教授のコメントが紹介されていました。

 まさに、維新以外の野党による自己情報コントロール権の侵害という批判を恐れる余り、マイナンバー等の運用プロセスに多くの任意を組み込むことで不要なヒューマンエラーを呼び込んでいる、そんな現状が鋭く指摘されていました。

 日本維新の会は、国民民主党と共同し、全ての預貯金口座へのマイナンバーひもづけを義務化する修正案を提出しましたが、与党も含めた多数に否決されてしまいました。こんな中途半端な取組では、今後ともヒューマンエラーと国民の不信との悪循環の中で、日本のデジタル社会の未来は暗いと指摘せざるを得ません。

 我が党は、これからも、強制と任意のはざまでどうしてもぶれがちになる自民党の姿勢を正しながら、令和にふさわしい新しい経済社会の形成に力を尽くしていくことをお誓いし、討論といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

議長(大島理森君) 岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 国民民主党・無所属クラブの岸本周平です。

 会派を代表して、政府提出、デジタル改革関連法案に関して、賛成の立場で討論をいたします。(拍手)

 二〇〇〇年にIT基本法ができて、電子政府がスタートしました。二〇一三年のマイナンバー法や内閣法の改正による政府CIOの設置、二〇一四年、サイバーセキュリティ基本法、二〇一六年、官民データ活用推進基本法、二〇一九年、デジタル手続法など、これまでネットワークや電子申請システムの整備などは一定程度進んでまいりました。

 一方で、昨年来の新型コロナウイルス感染症の拡大は、マイナンバーカードの普及率の低迷、オンラインによる給付金申請手続の不具合、自治体ごとのシステムの乱立や、教育、医療のデジタル化の遅れなど、我が国のデジタル化には多くの課題が残っていることを浮き彫りにしました。

 例えば、デジタル化を進める過程で、自治体ごとに個人情報保護ルールが異なることが地方のデジタル化を阻害していました。私たちは、このいわゆる二千個問題を長年解決することができないままでした。政府に設置したCIO制度についても、せっかくの強い権限にもかかわらず、その活用が十分に行われていません。

 このように、我が国は、世界のデジタル先進国から大きな差をつけられている状況でした。

 今般のデジタル庁の設置、デジタル社会形成基本法の制定、官民の個人情報保護ルールの一元化、預貯金口座へのマイナンバーの付番の促進などを含むデジタル改革関連法案は、内容的に必ずしも満足のいくものではありませんが、一歩前進が図られることは高く評価したいと思います。

 自然災害や感染症の流行などの不測の事態は、これを想定内のこととして、準備を怠らないようにすることが必要です。これからつくろうとするデジタル社会では、不測の事態があっても、安全、安心な暮らしの確保が可能になる道が開けます。その大前提として、デジタル社会を支える基盤であるマイナンバーカードの普及を進める必要があります。

 今回、国民の預貯金口座にマイナンバーの付番を推進する政府原案の方向性には賛成します。しかし、政府原案はあくまでも任意の付番になっています。行政の情報管理を効率化し、情報共有により給付と負担の適切な関係に資するマイナンバー制度の趣旨からするならば、本来、全ての預貯金口座にマイナンバーを付番するべきであります。

 そこで、私たち国民民主党は、金融機関に対して顧客からマイナンバーの提供を受ける義務を規定する修正案を提出しました。そして、金融機関がマイナンバーの提供を受けた場合には、預金保険機構を経由して、他の金融機関が管理する顧客の全ての預貯金口座にマイナンバーが付番される仕組みを提案いたしました。特に、個人情報保護のための規定も強化しています。

 今般のコロナウイルスによって生活が激変してしまった方のように、真に救うべき方に速やかに手を差し伸べ、その一方で、不正を許さない公平公正な社会保障制度や税制を実現していくことが不可欠であります。こうした理想の実現に向けて一つの基礎となるものが、全ての預貯金口座に対するマイナンバーの付番であります。

 残念ながら、委員会ではこの修正案は否決されましたが、将来に向けて先鞭をつけた提案であると自負しております。

 また、政府原案ではマイナンバーカードの情報をスマートフォンに搭載できるようになりますが、その場合でも政府はマイナンバーカードの発行自体は必要であるとの立場を崩しておりません。これではマイナンバーカードの発行に関する地方公共団体や住民の負担は軽減されません。委員会での政府の答弁は、全く不可解で、論理的なものではありませんでした。スマートフォンへの搭載が行われてもなおマイナンバーカードを発行しなければならない理由が全く理解できません。

 委員会での質疑を通じて、このほかにも対面原則や書類原則が残るなど、多くの次なる課題が明らかになりました。しかし、審議の過程で、与野党を超え、近い将来これらの残された課題に挑戦しようとする機運が盛り上がったことは、指摘しておきたいと思います。

 今回の法案でも積み残された課題については、一日も早く、更に一歩も二歩も前進させていく決意を表明して、私の賛成討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

 ただいまから十分後に採決いたしますので、しばらくお待ちください。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより、日程第一、デジタル社会形成基本法案、日程第二、デジタル庁設置法案、日程第三、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、日程第四、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案及び日程第五、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案の採決に入ります。

 まず、日程第一、第三及び第五の三案を一括して採決いたします。

 日程第一の委員長の報告は修正、日程第三及び第五の両案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり議決いたしました。

 次に、日程第二及び第四の両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 自然公園法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第六、自然公園法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長石原宏高君。

    ―――――――――――――

 自然公園法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石原宏高君登壇〕

石原宏高君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国立公園等を保護しつつ地域の主体的な取組による利用の増進を図るため、利用拠点の質の向上又は質の高い自然体験活動の促進のための協議会の設置及び計画の認定に係る制度の創設、利用のための規制の強化等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月十八日本委員会に付託され、翌十九日小泉環境大臣から趣旨の説明を聴取し、今月二日に質疑を行いました。同日、質疑を終局した後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣武田良太君。

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 国民が行政手続において情報通信技術の便益を享受できる環境を整備するとともに、情報通信技術の効果的な活用により持続可能な行政運営を確立することが国及び地方公共団体の喫緊の課題であることに鑑み、地方公共団体情報システムの標準化を推進するために必要な事項を定めるものです。

 まず、地方公共団体情報システムとは、地方公共団体が利用する情報システムであって、情報システムによる処理の内容が各地方公共団体において共通し、かつ、統一的な基準に適合する情報システムを利用して処理することが住民の利便性の向上及び地方公共団体の行政運営の効率化に寄与する事務として政令で定める事務の処理に係るものとしております。

 次に、政府は、地方公共団体情報システムの標準化の推進を図るため、地方公共団体情報システムの標準化の意義及び目標等を含む、基本方針を定めることとしております。

 また、内閣総理大臣、総務大臣及び標準化対象事務に係る法令又は事務を所管する大臣は、地方公共団体情報システムの標準化のため必要な基準を定め、地方公共団体情報システムは、この基準に適合するものでなければならないこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。松尾明弘君。

    〔松尾明弘君登壇〕

松尾明弘君 立憲民主党の松尾明弘です。

 会派を代表して、ただいま議題に上がっている地方公共団体情報システム標準化法につき質問をします。(拍手)

 まず、昨日、四月五日、株式会社フジ・メディア・ホールディングスが二〇一二年から一四年にかけて放送法で定める外資規制に違反していた可能性があることが発表されました。

 午前中の委員会で同僚議員が本事案について質問しましたが、総務省においては事実関係の把握が十分になされておりません。これだけ放送事業者の外資規制が話題になっており、国民の生活にも大きな影響が生じかねない中で、十分に実態把握がなされていないこと自体が、一連の総務省の不祥事と相まって、放送行政に対する国民の疑惑を招くものです。

 放送法上の外資規制は、有限の国民共有財産である電波を自国民が優先的に利用するためであるとともに、放送が日本国内の言論に与える影響が大きいことに鑑み、外国人が言論に与える影響を過度に生じさせないために設けられている、非常に重要なものです。

 放送行政がゆがめられていないか、事実関係を徹底的に究明し、速やかに国民の疑念を払拭されるよう、強く申し入れます。

 さて、本法案を審議するに当たって最も大切な視点は、憲法第九十二条で定められている地方自治の本旨を尊重することです。

 地方自治の本旨は、地方自治が住民の意思に基づいて行われるという住民自治と、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任の下でなされるという団体自治の二つの要素を含んでいるとされています。つまり、住民や地方自治体が、自分たちのことは自分たちで決められるということです。

 日本の社会がデジタル化によって大きく変わろうとしている今だからこそ、この地方自治の本旨をきちんと念頭に置いて、国と地方の在り方を考えなければなりません。

 そもそも、明治憲法と異なり、日本国憲法において地方自治制が定められたのは、地方の歴史的、伝統的制度を保障し、多様性のある社会を目指すべきという考えからです。地方の多様性が保障されることで、地方自治体による創意工夫と自立が促進され、真の地方自治を実現することができます。

 しかし、過去、日本国憲法制定以降、機関委任事務が増大していったことで、現場職員の裁量が徐々になくなっていき、地方自治が形骸化してしまったことがありました。そこで、一九九九年の地方自治法改正において、機関委任事務が廃止され、その多くが自治事務に組み替えられたことによって、地方自治が取り戻されたのです。私たちは、過去に学ばなければなりません。同じ轍を踏んではならないのです。

 地方公共団体のデジタル化を進める目的は、業務の効率化、コスト削減です。デジタル化を進めることで、職員の負担を減らし、より地方を元気にするようなことに時間を使えるようになることです。一方で、デジタル化によって地方自治業務の画一化が進められ、地方自治の本旨が損なわれることは、厳に慎まなければならないのです。

 そこで、総務大臣に質問です。

 デジタル社会へと大きくかじを切っている現政府においても、憲法第九十二条に定められている地方自治の本旨は尊重され、損なうことはないということでよろしいでしょうか。

 憲法上定められている地方自治の本旨に基づくと、おのずから国と地方公共団体の関係性も決まってきます。すなわち、国と地方公共団体とは、上下関係にあるのではなく、対等で、協力し合う関係です。どのような地方行政を行うかについては、国が一方的に決めるのではなく、地方公共団体が主体的に決定することができなければなりません。

 そうだとすると、自ら行う地方行政の遂行に際してどのような情報システムを導入して活用するかについても、地方公共団体が自己の判断に基づいて行わなければなりません。

 国と地方公共団体の関係が対等であるということは、地方公共団体の大小にかかわらず、当然に認められるものです。これは、人口が約百七十人の青ケ島村であっても、人口が約三百七十六万人の横浜市であっても変わるものではありません。そして、人口が二万倍も違うこの両地方公共団体では、行政ニーズ、予算、システム担当者のスキル、あらゆることが異なることは容易に想像できます。

 国は、地方公共団体が多様であるということを認識した上で様々な制度設計をし、地方公共団体の判断を最大限尊重しなければならないのです。

 地方公共団体の情報システムを標準化する場面においても、特定のシステムを導入することを国が義務づけるべきではありません。国は、あくまでも標準化のための仕様策定をするにとどまり、各地方公共団体が、それぞれの行政ニーズや財政事情に応じて、必要なときに必要十分なシステムを構築できる制度とするべきです。

 そこで、総務大臣に質問です。

 本法律案によって、国が地方公共団体に対して、地方の行政ニーズや財政事情を考慮することなく、標準化されたシステムの導入を強制することは想定されるのでしょうか。お答えください。

 各地方公共団体では、きめ細やかな行政サービスを提供し、住民の利便性を向上させるために日々創意工夫を凝らしています。その結果、本法案で標準化の対象になるとされている十七業務についても、各地方公共団体独自で、子ども手当の追加給付などを行っている事例が見られます。

 このような独自の政策を実現しているのが、独自のシステムです。ですから、システムを独自に開発できないなどということがあると、地方自治が害される結果になりかねません。標準化の目的を害さない限り、各地方公共団体が標準化システム以外のシステムを追加で開発することは最大限保障されるべきです。

 今後想定される地方公共団体独自の施策には、例えば、個人情報保護のための施策があります。

 個人情報保護法制は、当初、各地方公共団体において個人情報保護条例が制定され、後追いの形で個人情報保護法が制定されたという経緯があります。特に、本法案でシステムが標準化される業務は、住民基本台帳、住民税、障害者福祉、子ども・子育て支援など、機微に触れる個人情報に直結するものです。

 今回のデジタル改革関連法案によって個人情報保護が後退し、条例で特に保護する必要があると考える地方公共団体があることは容易に想定されます。その場合は、標準化システムに加え、個人情報が保護されるための更なる追加開発がなされることになります。

 そこで、総務大臣に質問です。

 地方公共団体が、標準化システム以外のシステムを開発し、住民に対する行政サービスの向上や権利の保持に努めることは、地方自治の本旨、地方活性化の観点から最大限認められるべきと考えていますが、いかがでしょうか。それとも、政府としては、効率性のために、独自システムの開発はなるべく抑制的とし、地方公共団体の独自性、独創性、多様性を制約することもいとわないという考えなのでしょうか。お答えください。

 地方公共団体による行政サービスの提供に用いるシステムを設計する際には、現場の声を最大限取り入れることが必須であることは言うまでもありません。

 デジタルトランスフォーメーションを実現するために、自治体業務の徹底的な見直しを行った上で、業務の標準化を行い、その標準業務に合わせたシステムへと移行することになりますが、いずれも簡単な作業ではなく、非常に難易度が高いものであると考えなければなりません。

 特に、五年以内という年限に縛られて拙速に業務プロセス標準を策定し、それが現場の実情と乖離していれば、現場の業務は大混乱に陥ってしまいます。

 そうだとすると、標準化システムの仕様を検討するに際しては、国や地方公共団体の首長だけでなく、実際に現場でシステム標準化対象事務に従事している職員の意見を最大限反映させるべきであり、首長の意向を忖度することなくフラットな意見を集約する制度が必要であると考えますが、総務大臣の見解をお聞かせください。

 今後、日本のデジタル化を進めていくためには、国や地方公共団体が委託して構築するシステムについては、オープンソース化を原則とするべきです。

 地方公共団体が用いるシステムは、その導入のための原資は税金であって、いわば公共財産であります。行政システムがオープンソース化されていれば、どのようなシステムが用いられているのか、費用対効果を十分に有しているのかどうか、誰でも検証することができます。

 また、システムがオープンソース化してブラックボックス化が回避されていることによって、特定のシステム開発企業に対してのみ業務委託が集中し、開発企業を変更することができない、いわゆるベンダーロックに陥ることを防ぐことができます。

 開発企業の変更が可能となれば、開発企業間で競争が促進され、結果的にシステム開発費を縮減することが可能になります。また、日本のIT企業の裾野を広げることにもつながります。

 オープンソース化にはセキュリティーリスクを指摘する声もありますが、むしろ、ブラックボックスであるよりもオープンとした方がセキュリティーを脅かす不具合を見つけやすいのです。アメリカでは、フェデラルソースコードポリシーを定めており、ソースコードの一部についてはオープンソース化しなければならないことになっています。セキュリティーの問題は、オープンにするコードを選択することで回避することは十分に可能です。

 先ほども述べたとおり、今回の地方公共団体システム標準化は、標準化と多様性保持を両立させるという非常に難易度が高いものです。そう考えると、標準システムをオープン化することで、実際に業務を利用している地方公共団体のシステム担当者や外部のエンジニアがチェックし提案することを可能にすることで、より多様で効率的なシステムを開発することができるはずです。

 最近では、東京都の新型コロナウイルス対策サイトのソースが公開されていて、これに対して台湾のIT大臣であるオードリー・タン氏がコメントを寄せたことも話題となりました。このように、オープンソース化することで、日本だけでなく世界中から知恵を集約することができるようになります。

 この行政システムのオープンソース化は、今後の日本のデジタル化を進めるに当たって非常に重要な方針であり、システム標準化を検討するこのタイミングでこそ行うべきと考えますが、デジタル改革担当大臣の見解を聞かせてください。

 本法案が目指している、地方公共団体のシステムを共通化し、住民サービスの安定向上と地方公共団体の業務の円滑、効率化を図るという目的自体は賛成できるものです。

 しかし、地方公共団体のシステムに限らず、今後日本がデジタル化を確実に進めるに当たっては、公正性、透明性、多様性といった観点が非常に重要となります。また、個人情報保護を始めとする個人の権利が十分に守られていることを担保することが、国民の理解を得られ、デジタル化が推進されるためには不可欠です。

 地方自治の本旨を始めとする公正性や多様性を保障するための理念に十分留意し、民主的でオープンな議論による透明なプロセスを通じたデジタル化を進めていくことを改めて申し入れ、私からの質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 松尾議員からの御質問にお答えをいたします。

 まず、デジタル社会における地方自治の本旨の尊重について御質問をいただきました。

 地方行政のデジタル化は、デジタル技術を活用して業務効率化が図られることにより、地方公共団体の職員が、住民への直接的なサービス提供や地域の実情を踏まえた企画立案業務など、職員でなければできない業務に注力できる環境を整え、地方の自主性、自立性を高めることにつながるものであり、地方自治の本旨を尊重しながら進めていくものであります。

 次に、標準化されたシステムの導入について御質問をいただきました。

 標準化の取組においては、標準化対象業務について、国が定める標準化基準に適合したシステムの利用を義務づけるものではありますが、各ベンダーが開発、提供し、地方公共団体がそれらのうちから自ら標準準拠システムを選定し、利用することを予定していることから、特定のシステムの導入を強制することは想定しておりません。

 なお、国としては、地方公共団体が標準化に向けて着実に取組を進めることができるよう、適切な助言、財政支援に努めてまいります。

 次に、独自システムの開発の是非について御質問をいただきました。

 標準化法案においては、標準化対象事務について、情報システムによる処理の内容が各地方公共団体において共通し、かつ、統一的な基準に適合する情報システムを利用して処理することが住民の利便性の向上及び地方公共団体の行政運営の効率化に寄与する事務と想定をいたしております。

 このように、標準化対象事務は地方公共団体の創意工夫の余地が小さい事務であり、それ以外の独自性を発揮すべき事務については標準化の対象としておらず、地方公共団体において、地域の実情を踏まえた独自の取組を行うためのシステム開発は、引き続き実施可能であると考えております。

 最後に、標準システムの仕様への現場の職員の意見の反映について御質問をいただきました。

 標準化法案では、地方公共団体情報システムの標準化基準を定めようとするときは、あらかじめ、地方公共団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない旨を規定しております。

 現在、各府省において進められている標準仕様の検討においても、地方公共団体の職員やシステム事業者を検討会の構成員とするほか、広く全国の地方公共団体や事業者への意見照会を行うなどしており、標準化の取組においては、こうした関係者の参画が必要であると考えております。

 今後も、引き続き、関係府省とも連携し、様々な場を活用しながら、地方公共団体の御意見を丁寧にお伺いし、標準化、共通化の取組を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) 政府のシステムのオープンソース化についてのお尋ねがありました。

 一般的に、情報システムをオープンソース化することは、システムの開発、改善を迅速かつ効率的にできるというメリットがあると承知しています。

 一方で、オープンソース化されたシステムは、セキュリティー面に不安があることに加え、オープンソースの開発に参加した者に不具合対応の責任がないため、緊急時に迅速なサポートが受けられない可能性があるといった指摘もされており、可用性、機密性、完全性が求められる基幹業務等のシステムにオープンソースを適用することには慎重な検討が必要だと考えております。

 このようなことから、業務の内容や情報システムの性質、取り扱う情報などを勘案しながら、オープンソース化も含め、適切な手法を選択することが重要だと考えております。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  武田 良太君

       環境大臣  小泉進次郎君

       国務大臣  平井 卓也君

 出席副大臣

       総務副大臣 熊田 裕通君


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