衆議院

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第21号 令和3年4月15日(木曜日)

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令和三年四月十五日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十三号

  令和三年四月十五日

    午後一時開議

 第一 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案(内閣提出)

 第三 子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地方創生に関する特別委員長伊東良孝君。

    ―――――――――――――

 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊東良孝君登壇〕

伊東良孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、所要の措置を講ずるものであります。

 その主な内容は、

 第一に、農地法の特例として、農業委員会が一定の要件を満たす法人に対し、農地の取得を許可することができる現行の特例措置の期限を二年間延長すること、

 第二に、工場立地法等に基づく工場敷地の緑地面積率等について、市町村が周辺環境との調和の確保に配慮しつつ、条例で、工場立地法等により定められた準則に代えて適用すべき準則を定めることができること

等であります。

 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、翌六日坂本国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、十三日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。消費者問題に関する特別委員長永岡桂子君。

    ―――――――――――――

 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔永岡桂子君登壇〕

永岡桂子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、消費者問題に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進に関し取引デジタルプラットフォーム提供者の協力を確保し、もって消費者の利益を保護するため、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、内閣総理大臣が危険商品等の出品削除等を要請することができる制度や、消費者が販売業者等の情報の開示を請求できる制度を設けるなどの措置を講ずるものであります。

 本案は、去る四月五日本委員会に付託され、翌六日井上国務大臣から趣旨の説明を聴取し、九日に質疑に入り、同日参考人から意見を聴取し、十三日に質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対し、立憲民主党・無所属及び日本共産党の共同提案により、取引デジタルプラットフォーム提供者が講ずる措置について、努力義務規定を義務規定とすることなどを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について採決を行った結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第三、子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長木原誠二君。

    ―――――――――――――

 子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔木原誠二君登壇〕

木原誠二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、少子化対策を推進する一環として、増大する保育の需要等に対応するため、特定教育・保育施設に係る施設型給付費等の費用のうち満三歳未満児相当分について、事業主拠出金をもって充てることができる割合の上限を五分の一に変更するとともに、児童手当が支給されない者のうちその所得が一定の額未満のものに限り特例給付を支給することとする等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る一日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌二日坂本国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、七日から質疑に入りました。八日に参考人から意見を聴取し、翌九日質疑を終局いたしました。昨十四日に討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第四、地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長あべ俊子君。

    ―――――――――――――

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔あべ俊子君登壇〕

あべ俊子君 ただいま議題となりました地域的な包括的経済連携協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本協定は、昨年十一月十五日に署名されたもので、我が国、ASEAN十か国、オーストラリア、中国、韓国及びニュージーランドの十五か国の間で、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を拡大させるとともに、知的財産、電子商取引等の幅広い分野での枠組みを構築する等の経済上の連携のための法的枠組みについて定めるものであります。

 本件は、去る四月二日、本会議において趣旨の説明及び質疑が行われた後、外務委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、七日茂木外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。九日から質疑に入り、十四日には参考人から意見を聴取し、同日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本件は賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。環境大臣小泉進次郎君。

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) ただ今議題となりました地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成二十八年の法改正以降、パリ協定の締結、発効に加え、菅総理の所信表明演説における二〇五〇年カーボンニュートラル宣言など、地球温暖化対策を取り巻く環境は大きく変化し、地域や企業の脱炭素化の動きも加速しています。地域では、二〇五〇年までのCO2排出量実質ゼロを目指す地方自治体、ゼロカーボンシティーが急増し、人口規模で一億人を超えました。また、企業の脱炭素経営の取組も広がっています。自治体、企業を後押しし、共にカーボンニュートラルの実現を成し遂げるためにも、電力供給量の約二倍のポテンシャルがある再生可能エネルギーをフル活用することを大前提に政策を進めていくことが不可欠です。

 本法律案は、このような背景を踏まえ、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、政策の継続性、予見性を高め、脱炭素に向けた取組、投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図ろうとするものであります。

 次に、本法律案の内容の概要を主に三点御説明申し上げます。

 第一に、基本理念を新設し、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を明記します。

 カーボンニュートラルの実現は、これまで温室効果ガスの排出を増加させてきた産業革命以降の人類の歴史を抜本的に転換するものです。そこで、国民の理解や協力なくしてカーボンニュートラルの実現なしとの考えから、関係者を規定する条文の先頭に「国民」を位置づける、前例のない基本理念とします。

 第二に、地域に貢献する再生可能エネルギーの導入を加速させます。

 二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現のため再生可能エネルギーの利用が不可欠である一方、再生可能エネルギー事業に対する地域トラブルも見られるなど、地域における合意形成が課題となっています。こうした状況を改善し、政府の方針である再生可能エネルギーの主力電源化に向け、地域の取組を一層促進することが重要です。

 このため、地方公共団体実行計画において、再生可能エネルギーの利用促進を始めとした施策の実施目標を新設するとともに、地域の再生可能エネルギーを活用し、地域の脱炭素化や課題解決に貢献する事業の計画、認定制度を創設し、関係法律の手続のワンストップ化を可能とするなど、地域の円滑な合意形成による再生可能エネルギーの利用促進を図ります。

 第三に、企業の脱炭素経営やESG金融の推進に資するよう、企業の温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度のデジタル化、オープンデータ化を進めます。

 これにより、企業の脱炭素に向けた前向きな取組が評価されやすい環境の整備等の措置を講じます。

 以上が、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。福山守君。

    〔福山守君登壇〕

福山守君 自由民主党の福山守です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました地球温暖化対策推進法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 初めに、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向けた本法案の意義についてお伺いをいたします。

 我々は、今、気候変動をめぐる歴史的な転換点を迎えています。

 昨年十月には、菅総理のリーダーシップにより、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を目指すことが宣言されました。この挑戦は、経済社会の変革や産業構造の転換へとつながり、経済と環境の好循環を生み出すものです。こうした認識の下、企業や地方自治体などの様々な主体がその実現に向けた取組の推進にかじを切り始めています。

 さらに、昨年十一月には、両院において気候非常事態宣言を決議し、脱炭素社会の実現を急ぐべきとの認識をこの国会においても共通のものとしました。気候変動による我々の経済社会や国民生活への影響は深刻であり、国会としても、取組を加速化しなければならないとの決意をしたところであります。

 また、国際社会においても、気候変動問題をめぐる議論は加速しています。特に、本年は、十一月のCOP26に向けて、四月の米国主催の首脳気候サミットを始め、G7、G20など、重要な気候変動関連の国際会議が開催されると承知をしております。気候変動問題への国際的な機運が高まる中、環境先進国たる日本が国際社会の議論をリードしていけるよう、万全を期して取り組んでいくべきであります。

 こうした中で、本法案は、菅総理の二〇五〇年カーボンニュートラル宣言を法律に位置づけるとともに、地方自治体や企業といった脱炭素化に取り組む主体に対する環境整備を行うものであると承知をしています。

 そこで、本法案の意義も含め、大臣としての意気込みについて、環境大臣にお伺いをいたします。

 次に、地域の脱炭素化の促進についてお伺いをいたします。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、あらゆる主体が脱炭素化に取り組むことが重要です。こうした中、地方自治体では、二酸化炭素の排出実質ゼロを表明する自治体、いわゆるゼロカーボンシティーが、菅総理の宣言以降急増しており、三百五十自治体を超える勢いとなっています。

 こうした地方自治体による力強い動きを非常に頼もしく思う一方で、次の段階として、こうした地方自治体の取組について、その実効性を確保するための政策が急務であると考えています。

 今回の法案は、そうした環境整備のため、地方自治体による再生可能エネルギーの利用促進などの施策目標の策定や、地域に貢献する再生可能エネルギーを活用する事業の計画、認定制度を新設するものであり、地域の脱炭素化を更に促進していくことに期待をしています。

 また、本法案以外でも、政府において、国・地方脱炭素実現会議を開催し、特に地域の取組と密接に関わる、暮らし、社会分野を中心とした、二〇五〇年脱炭素社会実現に向けたロードマップを作成すると承知をしています。

 そこで、今後も増加していくと期待されるゼロカーボンシティーを含めた地域の脱炭素化の取組について、その実効性を向上させるための今後の施策の展開について、環境大臣にお伺いをいたします。

 次に、企業の脱炭素経営の支援についてお伺いをいたします。

 民間企業においても、気候変動問題を、経済制約と捉えるのではなく、ビジネスリスクや成長のチャンスと捉えるようなパラダイムシフトが起こっています。こうした中、世界的なESG金融の拡大も背景に、脱炭素を経営課題として取り組む脱炭素経営が急速に広がっています。

 特に、脱炭素経営に取り組む日本企業は増えており、例えば、気候変動に関する情報開示や目標設定である、事業に必要な電力を再生可能エネルギー一〇〇%で賄うRE一〇〇、パリ協定と整合した科学に基づく排出削減目標を設定するSBT、気候変動に関する情報開示を進めるTCFDに取り組んでいる企業数は、日本は世界トップレベルであり、こうした取組を更に拡大していくことが重要であります。

 さらに、サプライチェーン全体の脱炭素化に向けた動きも広がっており、グローバル企業が取引先の企業に対して、再生可能エネルギーの利用や削減目標の設定などの脱炭素経営を要請する例も見られます。

 こうした中で、大企業のみならず中小企業についても脱炭素経営に取り組む必要性が高まっており、中小企業も含めた民間企業に対する脱炭素経営の支援に一層取り組んでいく必要があります。

 そこで、今後、中小企業も含めた企業の脱炭素経営の促進にどう取り組むのか、環境大臣の御答弁を求めます。

 以上、御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) 福山守議員から、二〇五〇年までのカーボンニュートラルに向けた意気込みについてお尋ねがありました。

 昨年、衆参両院で気候非常事態宣言が決議されたように、現在、我々は気候危機に直面しており、世界では、パリ協定の下、脱炭素社会の実現に向けた急速な経済社会変革が進められています。

 脱炭素の大競争時代に突入した今、本法案は、菅総理の二〇五〇年カーボンニュートラル宣言を踏まえ、その実現を閣議決定にとどめず法律に位置づけることにより、政策の継続性と予見可能性を高め、地域や企業の脱炭素化の取組を促進する基盤を整備するものです。本法案により、再生可能エネルギーの導入拡大など、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向けたあらゆる取組を加速させていきたいと考えています。

 さらに、先月九日、菅総理から、気候変動担当大臣に任命されました。

 今後、COP26に向け、明日開催される日米首脳会談を始め、四月二十二日に開催されるアメリカ主催の気候サミット、G7、G20など、一連の外交日程において、政府としての対応方針の調整を担います。我が国が世界の脱炭素化に積極的に貢献し、国際社会の議論をリードすべく、環境大臣、気候変動担当大臣として全力を尽くしてまいります。

 地域の脱炭素化についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年までのCO2排出量実質ゼロを表明した自治体、いわゆるゼロカーボンシティーは、私が大臣に就任したときは僅か四自治体でしたが、今や三百六十自治体を超え、人口規模では約一億一千万人となり、我が国の人口の約九割に達しました。

 環境省としては、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算に、ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージを盛り込みました。地方自治体の計画策定や設備導入などの取組を支援していくことで、エネルギーの地産地消や災害に強い地域の構築を進めながら、地域における温室効果ガスの大幅削減を図ります。

 また、本法案は、新たに再エネ促進区域を創設します。地域における円滑な合意形成を図りつつ、地域に貢献する再エネ導入を促進するものです。この法案も活用しつつ、例えば、屋根置き型の太陽光発電を始めとしたエネルギーの地産地消、国や自治体における率先導入、最終処分場跡地やため池などの活用促進など、再エネの大量導入に向け、環境省としてもより一層取り組んでまいります。

 さらに、今後五年程度を集中期間として、脱炭素のモデルケースを各地に作り出しながら、次々と先行地域を広げていく脱炭素ドミノを実現してまいります。

 最後に、中小企業を含む企業の脱炭素経営の促進についてお尋ねがありました。

 日本の脱炭素経営については、TCFD賛同企業数が世界第一位、SBT認定企業数が世界第二位、RE一〇〇参加企業数が世界第二位となるなど、既に世界トップクラスの広がりを見せております。

 環境省としては、こうした脱炭素経営をより一層拡大させるべく、企業の気候変動を盛り込んだ経営戦略や排出削減計画の策定への支援を行うとともに、情報開示や削減行動を促すガイドブックの提供などを行っています。

 さらに、今回の改正案において、企業等からの温室効果ガス排出量の報告制度について、デジタル化を進め、今までは報告から公表まで二年かかっていたところを一年未満にします。これまで開示請求がなければ開示していなかった事業所ごとの排出量情報もオープンデータ化し、投資家、自治体、国民などにより使いやすくすることで、企業の自主的な脱炭素化の取組を更に促進する措置を盛り込んでいます。

 また、特に中小企業については、近年、サプライチェーン全体での脱炭素化が進む中で、再エネ一〇〇%でないとサプライチェーンから排除され、高い技術や商品力を持っていたとしてもビジネスチャンスを失ってしまう可能性すら出てきました。中小企業の移行支援は不可欠です。環境省としては、脱炭素経営の手法などをまとめた中小企業向けガイドブックの提供や、商工会議所との連携を進めているところです。

 さらに、本法案において、地域地球温暖化防止活動推進センターの事務として事業者向けの普及啓発、広報活動を明記し、地域の企業に対する支援体制を拡充する措置も盛り込んでいます。

 先月、環境省と金融庁で、持続可能な地域経済社会の活性化に向けた連携チームを発足させたところであり、引き続き、ESG金融を始め、金融サイドにおいても関係省庁と連携しつつ、中小企業を含めた企業の脱炭素化の取組の後押しや、脱炭素経営が評価される環境整備に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 源馬謙太郎君。

    〔源馬謙太郎君登壇〕

源馬謙太郎君 立憲民主党・無所属の源馬謙太郎です。

 ただいま議題となりました地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず初めに、一昨日、政府が決定した福島原発処理水の海洋放出に関連して、梶山経産大臣に伺います。

 原発処理水の海洋放出に対し、漁業者を始めとする地元住民の大きな不安の声が漏れ伝わってまいります。

 そこで、漁業者に風評被害が発生した際の具体的な補償策をお示しください。また、地元からの信用不安が著しい東京電力による海洋放出に対する住民の理解を得るための今後の具体的な方策もお示しください。

 気候変動は急激に深刻化しており、実際に被害を受けたとしても逃げるすべを持たない人々も多く、気候変動による難民、いわゆる気候難民は大変な困難に陥っています。

 国内も無関係ではありません。私の地元浜松市では、昨年、最高気温四十一・一度を記録し、埼玉県熊谷市と並び、日本の歴代最高気温となりました。

 ダイビングで海に潜っても、年々海の水温が上がっていることを実感します。例えば、静岡県の伊豆エリアの真冬の海水温は、かつては十一度ぐらいだったのが、今年は一番低くても十五度ほどでした。ダイバーにとっては、海水温が上がれば海に潜るには快適ですが、海の生物にとっては、一度の上昇は生死につながります。サンゴの白化、同じポイントで見かける生物の変化など、ダイバーが目にする海中の環境は確実に変化をしています。これらの変化は、やがて非常に大きな変化につながりかねません。

 昨年十一月には、この本会議場で、気候非常事態宣言決議が採択され、もはや地球温暖化問題は気候変動の域を超えて気候危機の状況に立ち至っているとの認識を世界と共有すること、そして、この危機を克服すべく、一日も早い脱炭素社会の実現に向けて、我が国の経済社会の再設計、取組の抜本的強化を行い、国際社会の名誉ある一員として、それにふさわしい取組を国を挙げて実践していくことを決意したところです。

 このような状況の中、菅総理が二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を掲げたことは心強いことですし、評価すべきと思いますが、G7諸国の中で実際上最も遅い宣言であり、本来温暖化対策をリードすべき我が国としては遅過ぎた感も否めません。そしてまた、その後発表されている対策は革新的技術ばかりに偏りが見られ、その他の面で具体性が乏しく、今こそ具体策をいかに打ち出せるかの最も大切なタイミングであるにもかかわらず、本当にこれで目標を達成できるのか、疑問です。

 こうした観点から、本改正案について質問を行っていきます。

 本改正案では、基本理念を新たに設け、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を明記するとともに、脱炭素社会実現の主体として、国民、国、地方公共団体、事業者、民間の団体等と、関係者を規定する条文の先頭に国民を位置づけています。

 地球温暖化対策の推進に当たっては、国民の理解や協力が不可欠であることは当然ですが、その責任を負うべき国家の責務よりも、まず国民を先頭に位置づけることに違和感を感じます。ともすれば、菅内閣は、地球規模の課題である地球温暖化対策すら、自助、共助、公助の考えに基づき、まず国民が取り組むべきものであると示しているようにも思えます。まずは国が、政府が先頭に立って積極的に取り組んでいくべきではないでしょうか。

 国民の協力と理解が必要なのは、ほかのどの政策も同じです。その必要性を示すのであれば、その旨をしっかりとこの理念において規定し、かつ国が果たすべき役割をまず初めに明記すべきであると考えますが、小泉環境大臣の見解を求めます。

 本改正案では、気候変動対策の長期的な方向性を基本理念として位置づけ、地方自治体や企業等の取組を促進して、二〇五〇年までの脱炭素社会の実現を牽引し、二〇三〇年に向けた取組を加速しようとしています。

 これらの目標達成に向け、地方自治体や民間企業の取組を促進していくことは重要なことです。しかし、小泉大臣の、国民の理解や協力なくしてカーボンニュートラルの実現なしという方針を具現化するには、具体的な取組の中身にもっと国民が参加できる開かれた議論の場が必要だと考えます。国民の関与を条文の先頭に書くよりも、実際に国民が参加する仕組みを設けることの方が、はるかに意味があることだと思います。

 例えば、欧州諸国などでは、近年、気候変動対策に関する無作為抽出型の市民会議である気候市民会議の導入が進んでいます。

 フランスでは、二〇一九年十月に、全国から抽せんで選ばれた百五十人の市民が参加する気候市民会議が政府の諮問機関である経済社会環境評議会の下に発足しました。この市民会議は、二〇三〇年までに温室効果ガスを一九九〇年比で四〇%削減するための具体的な政策提言をまとめるために開催されました。

 およそ九か月かけて、温室効果ガス削減に向けて、憲法改正から、交通、農業、貿易などを含む広範な論点を議論し、鉄道と競合する国内の航空路線の段階的な整理や低公害車を購入するための無利子ローンの導入など、約百五十項目の案が盛り込まれたと聞いています。なお、これらの提言のうちの約三分の一が反映された関連法案が、本年二月に示されています。

 我が国でも、昨年、札幌市で、気候市民会議さっぽろ二〇二〇が開催されましたが、こうした、市民が直接気候変動について議論し、政府に対し具体的に提言できる仕組みこそが、小泉大臣が求めている国民の積極的な関与を促すのではないでしょうか。

 若者を含むあらゆる世代の広範な声を尊重し、脱炭素社会への移行を適切に行っていくための市民参画の仕組みとして、気候変動対策を討議する会議をこの法律に位置づけることについて、大臣の見解を伺います。

 現行法には、政府の地球温暖化対策計画の策定や変更に当たって国会が関与する仕組みが盛り込まれておりません。国民の代表として国会が施策の在り方や妥当性をチェックする必要があるはずです。

 そのための具体策として、少なくとも計画案の閣議決定時や変更時に国会への報告を行う仕組みをこの法律で規定する必要があると考えますが、大臣の見解を伺います。

 二〇五〇年までのカーボンニュートラル実現に向け、取り組むべき施策の一丁目一番地は省エネです。政府からは革新的技術による効果ばかりが強調されますが、まずはエネルギー使用量を減らすことが何よりも重要であり、そうした努力の上で、イノベーションも含めた再エネの導入に取り組んでいくべきだと再認識すべきです。

 しかしながら、本改正案からはこの省エネの重要性が抜け落ちています。まずは省エネを徹底的に行っていくことを明記すべきであると考えますが、小泉環境大臣の見解を伺います。

 さらに、本改正案では、国の取組に関する中身が希薄です。国民よりも、民間企業よりも、地方自治体よりも、まずは国が率先して省エネ、再エネに徹底して取り組み、範を示す必要があります。企業や地方自治体に努力を求める前に、まずは国が実績を見せていかなければなりません。

 立憲民主党は、分散型エネルギー推進四法案を二〇一九年に提出しており、このうち、公共施設省エネ再エネ義務化法案において、国等の既存の建物について、各省庁が改修計画を策定し、二〇三〇年までに全ての建物で改修を終えることなどを示しています。

 このように、関連施設の省エネ、再エネの利用、改修を計画的に実施するなど、国の具体的な取組についてこの法律に位置づけるべきではないでしょうか。環境大臣の見解を伺います。

 地球環境の課題は気候変動だけではありません。生物多様性の保全も、将来世代の地球環境に影響を与える重要な問題であり、同時に取り組む必要があります。再生可能エネルギー施設を増やし、カーボンニュートラルを何としても達成しようという努力により、生物多様性を犠牲にするようなことがあってはなりません。

 本改正案では、各地域で促進区域を設定して、太陽光や風力発電施設など、立地を促進する取組が盛り込まれていますが、これらが生態系や生物多様性に与える影響を防ぐための積極的な規定は盛り込まれておりません。この地域は施設の建設を認めず、環境や生態系の保全を優先する保全区域の設定もできるようにすることも必要ではないでしょうか。小泉大臣の見解を伺います。

 明日には日米首脳会談が、そして二十二日、二十三日には米国主催の気候変動に関するサミットが開催される予定となっています。

 これまでの国際政治を見れば、各国は、二〇五〇年までのカーボンニュートラルという政策の波を捉えて、自国の産業に有利なルールを作ろうとする動きが当然生まれてくるだろうと思います。

 例えば、EUは炭素国境調整措置について検討を進めており、米国もこれに関心を示していると承知していますが、我が国の対応が後手に回り、国益を損ねるような事態を招くことがあってはなりません。

 産業分野における国際競争力を確保するためにも、脱炭素化に向けた議論において、日本が国際社会のルール作りに積極的に関与し、リーダーシップを発揮していくべきです。

 この点についての見解と、具体的にこれからますます加速するであろう国際社会における脱炭素化のルール作りの場において我が国としてどのようにリーダーシップを発揮していくつもりか、外務大臣の見解を伺います。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、本改正案のみならず、グリーン成長戦略など様々な施策が検討され、実施されようとしています。

 例えば、自動車関連では電気自動車や燃料電池車などの導入加速が期待されておりますが、こうした新たな形態への転換が急激であったり無理があったりすると、関連する業界、とりわけ、裾野の広い業界の中小企業への打撃や、そこで働いている方々の雇用にも多大な影響を与えることになります。産業に必要な電力の確保も重要です。

 脱炭素化への移行を確実に、そして国力を落とすことなく実現していくためには、こうした課題へも併せて目を向けていく必要があり、より多くの人が脱炭素社会を受け入れていくための多角的な手当てが大事になることは言うまでもありません。

 立憲民主党は、脱炭素社会の実現に向けて積極的に関与していくと同時に、働く人たちの雇用の公正な移行と、影響を受ける地方の振興に、全力で取り組むことをお約束して、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) 源馬謙太郎議員から、基本理念における国民の位置づけと国が果たすべき役割についてのお尋ねがありました。

 関係者の連携を規定するに当たっては、国を先頭に規定することが通例ですが、国民の理解や協力なくしてカーボンニュートラルの実現なしという思いから、この法案では国民を先頭に規定しています。

 一方、国民の理解を得るために、まず政府が先頭に立って地球温暖化対策に積極的に取り組むことが重要であることは言うまでもありません。

 現行法でも、国が果たすべき役割が責務として明記された上で、総理を本部長とする地球温暖化対策推進本部において、削減目標やその実現に向けた施策を含む地球温暖化対策計画の案を策定し、政府として閣議決定することとされています。また、まず隗より始めよの精神で、政府実行計画を策定し、LEDの導入や電動車の調達など、政府の事務事業における排出削減にも率先して取り組んでいるところです。

 今後とも、あらゆる施策を総動員して、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでまいります。

 気候変動対策を討議する会議についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向けては、国民の理解や協力を得ることが大前提です。こうした思いの下、本法案において基本理念を創設し、関係者の連携を規定するに当たって、国を先頭に規定することが通例であるところ、この法案では国民を先頭に規定しています。

 気候変動対策を進めていく上では、様々な関係者から成る中央環境審議会での議論やパブリックコメントなどを通じて、これまでも多様な主体の意見を反映させてきたところです。

 さらに、若者を含むあらゆる世代と対話し、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けた取組の裾野を広げるべく、昨年末、二〇五〇年カーボンニュートラル・全国フォーラムを開催したところです。会議では、若者、産業界、自治体などの出席者の方々から多様な宣言や提案をいただくなど、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けた機運醸成につながったものと考えています。

 引き続き、世代や分野を超えてあらゆる主体と対話を継続しつつ、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて尽力していきます。

 地球温暖化対策計画の策定や変更に当たっての国会報告の仕組みについてお尋ねがありました。

 地球温暖化対策の総合的、計画的な推進のための地球温暖化対策計画については、総理を本部長とする地球温暖化対策本部において、政府が責任を持ってその策定や実施の推進を担うべきものであると考えています。

 一方、地球温暖化対策計画に基づく施策の実施状況については、気候変動対策が長期的な取組であることを踏まえ、必要な施策の見直しも含め、今後も引き続き国会において御議論いただくことが重要であると考えております。

 省エネを徹底することの重要性や、国による省エネ、再エネの具体的取組についてお尋ねがありました。

 省エネは、再エネの最大限の活用と併せて重要であり、あらゆる分野で構造的に取り組むことが必要です。IEA、国際エネルギー機関によると、世界のカーボンニュートラルの達成時におけるCO2削減貢献量の約一五%をエネルギー効率向上が占めるなど、国際的にも更なる省エネの必要性が示されています。

 我が国においても、これまでにエネルギー消費効率を約四割改善してきたところですが、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、一層の省エネの徹底を図っていくことが必要と認識をしています。

 このため、まず隗より始めよの精神で、政府実行計画を策定し、政府の庁舎等における省エネや再エネ等による排出削減に率先して取り組んでいるところです。

 また、環境省では、二〇三〇年までに使用電力の全てを再エネで賄うことを目指し、昨年度は九施設で再エネ一〇〇%電力を調達するなど、再エネの調達に積極的に取り組んでいます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、今後、地球温暖化対策計画の見直しと歩調を合わせて政府実行計画も見直し、政府の事務事業における省エネや再エネに更に積極的に取り組んでまいります。

 最後に、保全区域の設定についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向け、地域の脱炭素化を推進するためには、電力供給量の約二倍のポテンシャルがある再生可能エネルギーの最大限の活用が重要です。その一方で、再エネ事業の地域との共生や地域における合意形成が課題となっています。

 このため、本法案では、地域における円滑な合意形成を図りつつ、再エネ促進区域において、地域に貢献する再エネを促進する仕組みを創設することにしています。

 地球温暖化対策推進法は地球温暖化対策の推進を目的とした法律であり、本法案により再エネの事業の実施を規制する区域を設けることは困難と考えますが、再エネ促進区域の設定に当たっては、自然環境の保全への配慮が必要と認識しています。

 二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向けて、経済産業省が進める再エネ政策と連携しつつ、今回の改正により、地域と共生する再エネの導入拡大を促してまいります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 源馬議員より、脱炭素化に向けた国際社会のルール作りにおける日本のリーダーシップについてお尋ねがありました。

 気候変動問題への対応は国際社会の喫緊の課題であり、日本は、二〇五〇年までのカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しています。

 明日は日米首脳会談、来週には米国が主催する気候変動サミットが控えるなど、現在、気候変動対策への国際的な機運が高まりを見せています。

 我が国として、気候変動分野でも、国際競争力の確保の観点も含め、先端技術分野の研究開発、日本が通商分野などで実績を積み重ねてきた国際的なルール策定などで、国際社会をリードしていきたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣梶山弘志君登壇〕

国務大臣(梶山弘志君) 源馬議員からの御質問にお答えをいたします。

 処理水の海洋放出についてお尋ねがありました。

 風評被害への賠償につきましては、被害が発生すれば、必要十分な賠償を実施すべきというのが政府の方針であります。

 具体的には、今回の基本方針に示したとおり、東京電力に対して、賠償期間、地域、業種を画一的に限定することなく対応することや、客観的な統計データの分析等により、立証の負担を被害者に一方的に寄せることのないよう対応することを指導するとともに、国としても、単に東京電力を指導するだけでなく、迅速かつ適切な賠償の実現に向けた、漁業者の皆様への賠償方針の周知や支援、東京電力への働きかけなどを行い、漁業者の皆様に寄り添ってまいります。

 次に、東京電力への信用が損なわれる中で、住民の理解を得るための対応としては、ALPS処理水の処分を東京電力任せにせず、実際の処分開始の前後において、原子力規制委員会による厳格な審査や、IAEAによる調査の実施、さらには、東京電力以外にも、環境省や県及び影響を受け得る事業者等による徹底的なモニタリングの実施などの取組を行い、適切な処分が行われるか、しっかりと監視をしてまいります。(拍手)

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議長(大島理森君) 江田康幸君。

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 公明党の江田康幸です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 近年、世界中で気候変動の影響が指摘されている極端な異常気象は、今後もより頻発化、激甚化する可能性が予測されています。それゆえ、こうした気候変動や地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出削減に取り組むことが世界共通の喫緊の課題となっています。

 そこで、公明党は、昨年一月の通常国会における衆参両院の代表質問を通じて、我が国は、脱炭素社会の構築に向けて、二〇五〇年を視野に、温室効果ガス、二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることを目指すべきであるということを政府に提案いたしました。

 また、昨年の菅政権の発足に伴い新たに交わした自公連立政権合意には、公明党が主導して、持続可能で強靱な脱炭素社会を構築する方針を反映するなど、気候変動対策を強力に進めることが盛り込まれました。

 こうした公明党の取組などにより、菅総理は、昨年十月、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言しました。

 本法案には、こうした基本理念が明確に反映されるとともに、国民、国、自治体、事業者、民間団体などの密接な連携の下に温暖化対策が進められることなども盛り込まれました。

 しかしながら、基本理念に対する国民の理解がなければ脱炭素社会は実現できないと言っても過言ではありません。普及啓発等を通じて国民の行動変容を促すことができるよう、温室効果ガスの排出削減に取り組む意義などを分かりやすく周知すべきです。

 二〇五〇年脱炭素社会の実現を本法案に明記した意義、狙いについて、小泉大臣の答弁を求めます。

 脱炭素社会の実現に向けては、産業界の技術革新など長期的な視点での対策とともに、既存の省エネや再エネ技術などを活用した対策を各地域で直ちに実行することが極めて重要です。

 本法案には、これら既存技術の導入を進めるため、中核市以上の温暖化対策に関する実行計画の中に、再エネ利用促進等の施策の実施目標を定めることが追加されます。これにより、人口や産業が集積する中核市や都道府県等の脱炭素化と再エネ主力化を強力に進めるべきです。

 他方、世界では、脱炭素社会の構築に向けて、百二十か国以上が二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言するとともに、先進国等では二〇三〇年の排出削減目標の引上げを進めています。

 現在、政府においては、二〇五〇年目標と整合的な二〇三〇年の排出削減目標の野心的な見直しを進めていますが、我が国は、二〇五〇年目標を具体化するため、現行の二六%削減目標を大幅に引き上げるべきです。

 都道府県等の脱炭素化や再エネ主力化に向けた取組及び二〇五〇年目標を実現する二〇三〇年排出削減目標の野心的な見直しに向けた決意を小泉大臣に伺います。

 温室効果ガス排出の約八五%をエネルギー起源のCO2が占めていることから、電力部門の脱炭素化が最重要課題です。その鍵を握るのは、再エネの最大限の導入です。

 再エネが優先的に送電線に接続できるような制度の見直しや、本法案の早期成立による周辺環境との調和、需給バランス調整のための蓄電池の大量導入、再エネ由来の水素製造などの取組を最大限進めることで、二〇三〇年の再エネの電源構成比率のより高い目標設定も可能であります。次期エネルギー基本計画の改定に向けた議論を進める中で、二〇三〇年の再エネ比率を大幅に引き上げるなど、再エネの主力電源化を早期に実現すべきです。

 また、イノベーションによる脱炭素社会を実現するため、政府は、昨年十二月、グリーン成長戦略を策定し、水素や浮体式洋上風力、カーボンリサイクル、蓄電池などの十四の重点分野ごとの実行計画の下、高い目標を掲げて強力に推進することにしています。脱炭素化に向けて鍵を握るそれぞれの分野で高い目標を設定し、二兆円の基金を活用して、予算、税制、規制改革、ESG金融など、あらゆる政策を総動員していくべきです。

 二〇三〇年再エネ比率目標の大幅な引上げとイノベーションによる脱炭素社会の実現について、梶山大臣の答弁を求めます。

 二〇五〇年までに二酸化炭素排出実質ゼロを表明した自治体は三百五十を超え、人口規模にすると一億人を突破しました。こうしたゼロカーボンシティーが全国各地で実現できるような仕組みの構築と支援が必要不可欠です。

 ゼロカーボンシティーの取組を加速するため、本法案では、地域の環境保全や課題解決に貢献する設備等を活用した地域脱炭素化促進事業の創設など、ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージが盛り込まれています。

 現在、コロナ禍で、地方自治体の財政は極めて厳しい状況です。感染の再拡大防止や社会経済活動の両立に取り組む中で、脱炭素社会実現に向けた投資などを行うには、政府からの支援が欠かせません。

 今後、ゼロカーボンシティーが更に拡大するよう、複数の自治体が連携して取り組む再エネ投資等も含め、地域の脱炭素化を進めるための基金の創設など、大胆な財政支援を講じるとともに、実際に地域脱炭素化促進事業に取り組もうとする事業者の計画策定も後押しすべきです。

 地域の脱炭素化を促進するための地方自治体や民間事業者への支援について、小泉大臣の答弁を求めます。

 消費ベースから見た温室効果ガスの排出量の約六割が、衣食住を中心としたライフスタイルに起因するものと言われています。国民一人一人のライフスタイルの転換が、カーボンニュートラルの実現に向けて必要不可欠です。

 そこで、国民のライフスタイルの転換や脱炭素化に貢献する商品を購入する等の消費行動を促すため、行動変容に取り組む国民に対するポイント還元制度、グリーンポイント制度を創設することを提案いたします。

 また、ライフスタイルの脱炭素化に向けて、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス、ZEHや断熱リフォーム、電気自動車等の導入支援といった家庭や事業所の脱炭素化への取組を更に加速化していくべきです。

 国民のライフスタイルの転換に向けた今後の施策の展開について、小泉大臣の答弁を求めます。

 現在、ESG金融の進展に伴い、気候変動に関する情報開示や目標設定など、脱炭素経営に取り組む企業が世界中で増加しています。例えば、イギリスでは、企業の気候変動に関するリスクや機会の情報開示を進めるTCFDの義務化の動きもあります。こうした中で、世界全体で総額三千兆円まで拡大しているESG関連の民間資金を脱炭素経営に挑戦する我が国の企業に取り込むことが重要であり、企業の脱炭素経営の取組を後押しする環境整備が必要です。

 本法案には、迅速に透明性の高い形で企業の排出量等の情報を見える化するための仕組みが盛り込まれましたが、排出量を報告する企業と、公表された情報を利用する投資家等の双方にとって利便性の高い開示システムを構築するなど、法改正がインセンティブとして働くような環境整備に取り組むべきです。

 脱炭素経営の促進に向けた環境整備について、小泉大臣の答弁を求めます。

 最後に一言申し上げます。

 地球温暖化問題は、気候変動の域を超えて、もはや気候危機の状況に至っています。この気候危機を克服すべく、一日も早い脱炭素社会の実現に向けて、我々国会議員が先頭に立って、温室効果ガスの排出削減などに貢献する行動を実践していくことが問われています。こうした模範となる行動を実践する中で、本法案に明記された基本理念が浸透し、国民への理解にもつながるものと確信いたします。

 これからも、我々公明党は、環境の党として長年温暖化対策をリードしてきた経験を基に、二〇五〇年までのカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた更なる施策の強化などに率先して取り組んでまいります。

 以上で、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) 江田康幸議員から、二〇五〇年脱炭素社会の実現を本法案に明記した意義や狙いについてお尋ねがありました。

 本法案では、菅総理の二〇五〇年カーボンニュートラル宣言を踏まえ、基本理念規定を創設し、二〇五〇年までの脱炭素社会の実現を明記しました。これは、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現を閣議決定にとどめず法律に位置づけることにより、政策の継続性と予見可能性を高め、地域や企業の脱炭素化の取組や投資の促進を図るものです。

 また、関係者の連携を規定するに当たって、国を先頭に規定することが通例であるところ、この法案では国民を先頭に規定しています。企業や自治体に脱炭素の取組を進めていただいている中、国民の皆様に脱炭素の必要性を御理解いただく努力を強化しなければなりません。改めて、国民の理解なくしてカーボンニュートラルなしという思いから、こうした規定としています。

 本法案により、再生可能エネルギーの導入拡大など、二〇五〇年までのカーボンニュートラルの実現に向けたあらゆる取組を加速させていきたいと考えています。

 都道府県等の脱炭素化や再エネ主力化に向けた取組と、我が国の二〇三〇年目標の野心的な見直しについてお尋ねがありました。

 脱炭素社会の実現のためには、地域における再エネの最大限の導入に取り組むことにより、エネルギーの地産地消や災害に強い地域づくりを進めながら、地域における温室効果ガス排出の大幅削減を実現していくことが重要です。

 このため、本法案には、地方公共団体実行計画に再エネ利用促進等の施策の実施目標を定める規定を追加しています。

 我が国における再エネポテンシャルは電力供給量の約二倍存在している一方、全国の自治体のうち九割がエネルギー代金収支が赤字であり、日本全体としては、化石燃料の輸入のために年間約十七兆円を海外に支払っています。今回の法案により、再エネの導入を進め、地域経済の活性化や災害に強い地域づくりに取り組んでいきます。

 二つ目にお尋ねの二〇三〇年目標の見直しに向けた決意について、ポイントは三つあります。一つ目は二〇五〇年カーボンニュートラルという長期目標との整合性、二つ目は世界の脱炭素化を前進させる国際性、三つ目は実効性です。

 菅総理は、先日、四月二十二日の気候変動サミット、六月のG7サミットなどの日程に合わせて世界が目標を明確にしてくるとの考えから、二〇五〇年カーボンニュートラルと整合的かつ意欲的な目標をできるだけ早く打ち出し、国際社会の議論をリードしていく必要があると発言されており、調整をする立場の私としても、できるだけ早く打ち出すことができるよう調整を進めているところです。

 地域の脱炭素化を促進するための地方自治体や民間事業者への支援についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年までのCO2排出量実質ゼロを表明した自治体、いわゆるゼロカーボンシティーは、私が大臣に就任したときは僅か四自治体でしたが、今や三百六十自治体を超え、人口規模では約一億一千万人となり、我が国の人口の約九割に達しました。

 環境省としては、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算に、ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージを盛り込みました。地方自治体の計画策定や設備導入などの取組を支援していくことで、エネルギーの地産地消や災害に強い地域の構築を進めながら、地域における温室効果ガスの大幅削減を図ります。

 また、昨年末から開催している国・地方脱炭素実現会議では、地域の取組と国民のライフスタイルに密接に関わる主要分野において地域脱炭素ロードマップを策定することとしており、その素案を今月中にお示しする予定です。

 ロードマップの策定とこれに関連する新規施策を立案するため、自治体、民間事業者、金融機関などへのヒアリングを重ねています。全国知事会ゼロカーボン社会構築推進プロジェクトチームやゼロカーボン市区町村協議会などとも意見交換をしており、地域の脱炭素実現に必要な支援について御意見をいただいているところです。

 今後、環境省としては、関係省庁と連携し、ロードマップを策定するとともに、地域脱炭素につながる支援策を実施してまいります。

 国民のライフスタイルの転換に向けた今後の施策の展開についてお尋ねがありました。

 製品、サービスのライフサイクルの温室効果ガス排出量を示すカーボンフットプリントで見ると、我が国の温室効果ガスの排出量の約六割は、住居や食事、移動などの家計での消費に起因するという分析もあります。

 環境省では、このようなライフスタイルの脱炭素化を図るため、例えば、住宅について、太陽光発電つきの高断熱住宅であるZEH、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス化の支援や断熱リフォームの後押し、食について、これまで食品ロスになってしまっていた飲食店での食べ残しの持ち帰りを新しいライフスタイルとして定着させていくための普及啓発、移動について、再エネ電力をセットにした電気自動車などの購入支援などを実施しているところです。

 また、公明党から御提案のあったポイント制度については、国・地方脱炭素実現会議の中で、一つの検討事項として、日常生活の様々な場面で前向きで主体的な意識変革や行動変容を後押しするために何ができるのか、検討を進めてまいります。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、様々な施策を通じて脱炭素型ライフスタイルへの転換を図ってまいります。

 最後に、脱炭素経営促進に向けた環境整備についてお尋ねがありました。

 日本の脱炭素経営については、TCFD賛同企業数が世界第一位、SBT認定企業数が世界第二位、RE一〇〇参加企業数が世界第二位となるなど、既に世界トップクラスの広がりを見せております。

 環境省としては、こうした脱炭素経営をより一層拡大させるべく、企業の気候変動を織り込んだ経営戦略や排出削減計画の策定への支援を行うとともに、情報開示や削減行動を促すガイドブックの提供などを行っています。また、経団連と定期的に意見交換を行うなど、経済団体との連携も進めているところです。

 加えて、今回の改正案において、企業等からの温室効果ガス排出量の報告制度について、デジタル化を進め、今までは報告から公表まで二年かかっていたところを一年未満にします。これまで開示請求がなければ開示していなかった事業所ごとの排出量情報もオープンデータ化し、投資家、自治体、国民などにより使いやすくすることで、企業の自主的な脱炭素化の取組を更に促進する措置を盛り込んでいます。

 あわせて、事業者からの報告と排出量情報の公表に当たり、報告者側と投資家など情報の利用者側の双方にとって利便性の高い電子システムの構築も進めていきます。

 先月、環境省と金融庁で、持続可能な地域経済社会の活性化に向けた連携チームを発足させたところであり、引き続き、ESG金融を始め、金融サイドにおいても関係省庁と連携しつつ、企業の脱炭素化の取組の後押しや、脱炭素経営が強化される環境整備に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣梶山弘志君登壇〕

国務大臣(梶山弘志君) 江田議員からの御質問にお答えをいたします。

 二〇三〇年再エネ目標の引上げとイノベーションによる脱炭素社会の実現についてお尋ねがありました。

 再エネは、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた鍵であり、国民負担を抑制しつつ、最大限導入していくことが政府の基本方針であります。

 御指摘の二〇三〇年再エネ比率については、意欲的なものとなるよう、立場を超えて様々な方々から御意見を伺いつつ、最終的には私が責任を持って結論を出してまいります。

 このため、委員御指摘の再エネ電源の接続ルールの見直しや、本法案に基づく地域と共生可能な形での再エネ適地の確保を含め、関係省庁が一丸となって取り組み、再エネの主力電源化を早急に達成してまいります。

 イノベーションによる脱炭素社会の実現につきましては、昨年十二月にグリーン成長戦略を策定しました。カーボンニュートラルに向けた企業の経営方針の転換などが始まっていますが、この流れを加速するためにも、グリーン成長戦略の内容の更なる具体化に努めてまいります。

 例えば、グリーンイノベーション基金については、検討が進展し、夏頃の事業開始を目指しています。また、住宅、建築物については、規制的措置を含む省エネ対策を強化するべく、国土交通省、環境省と合同で、ロードマップを策定するなどの取組を検討しております。

 こうした取組を通じて、引き続き、イノベーションに取り組む企業を全力で後押ししてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 美延映夫君。

    〔美延映夫君登壇〕

美延映夫君 日本維新の会・無所属の会の美延映夫でございます。

 私は、会派を代表して、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を質問いたします。(拍手)

 年々被害が大きくなる風水害の惨状を目の当たりにし、世界では気候変動への関心が高まってきております。自然災害が社会経済に与える影響は増大しており、地球温暖化への対策は喫緊の課題です。

 菅総理は、昨年十月、二〇五〇年カーボンニュートラルを宣言しました。環境省の中央環境審議会における議論が進むとともに、経済産業省には新たな研究会が設置され、議論が進んでいます。

 気候変動に関して言えば、これまで、日本は他の先進国と比べて関心が低い状況が続いておりました。その一方で、日本企業は、環境問題を解決するために必要な技術と、新しい技術を開発する能力を持っています。そして、日本が地球温暖化問題の解決に大きく貢献することが期待されています。さらには、日本の将来の成長産業を考える上においても、国策として環境問題重視にかじを切ることは重要です。

 日本が持つ環境関連技術を世界の環境問題解決に生かすために、政府はどのように方針を掲げ、どのように社会を牽引していくのでしょうか。お答えを願います。

 日本は、昨年三月、二〇一三年度比二六%削減という据え置いたままの温室効果ガス削減目標を気候変動枠組み条約事務局に提出いたしました。菅政権においては、方針転換を図るものと期待しております。

 今年の十一月開催予定のCOP26においては、どのレベルの削減目標を掲げることを検討されているのか、お答え願います。

 環境省が行った、令和元年度地方公共団体における地球温暖化対策の推進に関する法律施行状況調査によれば、人口一万人未満の市町村の約一九%において、地球温暖化を担当する部署が存在していないことが判明しました。

 カーボンニュートラルを進める上で、地方自治体の果たす役割は重要であり、地方公共団体実行計画を立案する上でも支援が必要と考えますが、地方への支援はどのように進めていくのでしょうか。お答え願います。

 地域脱炭素化促進事業計画の認定制度が設けられていますが、計画実施に当たっては、地域住民の参画だけではなく、地域の自然環境に詳しい専門家が参画しなければ、実効性を伴う計画を作ることができません。

 地域の自然環境に詳しい専門家を参画させる地方の体制づくりを国としてどのように進めていくのでしょうか。お答え願います。

 地球温暖化対策は、成長産業の育成という意味でも重要です。民間企業の方向性を転換させるためには、政府のかけ声だけで動くものではなく、排出量取引やクレジット制度を構築して、二酸化炭素排出について価値のシグナルを適切に設定することが必要です。消費者と民間企業に行動変容を起こさせることができなければ、政策は進みません。

 国民と民間企業の関心を向上させ、行動変容を起こさすためにどのような取組をするのか、お答え願います。

 我々維新の会は、国民の皆様の生活を守り、環境改善のため、引き続き努力をしてまいることをお約束いたしまして、質問を終了させていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) 美延映夫議員から、環境関連技術の社会実装についてお尋ねがありました。

 今や世界各国がカーボンニュートラルに向けて大競争時代に突入しており、我々の想像を上回るスピードで変化しています。二〇五〇年カーボンニュートラルに向けては、二〇三〇年までの十年が勝負という思いで、脱炭素への移行に向けて政策強化に取り組みます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルに向けた技術のイノベーションについては、昨年十二月に、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略が策定されています。

 戦略では、二〇五〇年カーボンニュートラルを目指す上で取組が不可欠な十四分野において実行計画が策定され、環境省においても、ライフスタイルや資源循環の分野での取組を位置づけているほか、再エネ由来水素やCCUSなどの早期社会実装に向けた取組も関係省庁と連携して進めていくこととしています。

 また、昨年十二月に公表されたインフラシステム海外戦略二〇二五では、二国間クレジット制度、JCMなどを活用し、優れた脱炭素技術などを途上国等に普及、展開することで、インフラ技術の海外展開を促進することとしています。

 一方で、二〇五〇年カーボンニュートラルに向けては、イノベーションのみに依存するのではなく、既存技術をフル活用し、足下からできることを直ちに実行する必要があります。今後五年程度を集中期間として、適用可能な技術を地域に実装し、先行モデルケースを生み出し、地域の脱炭素ドミノを起こしてまいります。

 政府としても、日本の優れた取組を後押ししながら、脱炭素に向けた動きを更に加速化させていきます。

 我が国の二〇三〇年削減目標についてお尋ねがありました。

 現在、中央環境審議会と産業構造審議会の合同会合において、二〇三〇年削減目標を含む地球温暖化対策計画の見直しについて議論を行っているところです。

 二〇三〇年削減目標検討に当たってのポイントは三つあります。一つ目は二〇五〇年カーボンニュートラルという長期目標との整合性、二つ目は世界の脱炭素化を前進させる国際性、三つ目は実効性です。

 菅総理は、先日、四月二十二日の気候変動サミット、六月のG7サミットなどの日程に合わせて世界が目標を明確にしてくるとの考えから、二〇五〇年カーボンニュートラルと整合的かつ意欲的な目標をできるだけ早く打ち出し、国際社会の議論をリードしていく必要があると発言されており、COP26を含む一連の国際会議に向けて調整する立場の私としても、できるだけ早く打ち出せるように調整を進めているところです。

 地方への支援の進め方についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けては、地方自治体の役割が非常に重要です。一方、とりわけ小規模な自治体においては、地球温暖化対策の推進に当たって、専門的な知見の獲得や体制の構築などに課題があると認識しており、環境省としても、自治体の取組をしっかりと後押ししてまいります。

 具体的には、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算に、ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージを盛り込みました。地方自治体の計画策定や設備導入などの取組を支援していくことで、エネルギーの地産地消や災害に強い地域の構築を進めながら、地域における温室効果ガスの大幅削減を図ります。

 また、国・地方脱炭素実現会議において、地域脱炭素ロードマップの検討を進めておりますが、全国知事会ゼロカーボン社会構築推進プロジェクトチームやゼロカーボン市区町村協議会との意見交換の中では、自治体への支援の必要性などに関する御意見をいただいているところです。

 小規模自治体を含めた地域の脱炭素化についてもしっかり議論を深め、今後五年程度を集中期間として、適用可能な最新技術を地域に実装し、脱炭素のモデルケースを各地に作り出しながら、次々と先行地域を広げていく脱炭素ドミノを実現してまいります。

 地域の自然環境の専門家も参画した地方の体制づくりについてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギー発電事業については、自然環境や生活環境への影響の懸念などに起因する地域トラブルが見られるなど、環境保全に適正に配慮し、地域における合意形成を図ることが課題となっています。

 このため、本法案に基づく制度を活用し、地方自治体が主導しつつ、民間事業者、金融機関、地域住民などに加え、地域の環境に詳しい専門家も含めた様々な主体の参画の下、合意形成が図られるよう、地域の体制づくりに取り組みます。

 また、令和二年度第三次補正予算及び令和三年度予算に盛り込んだ、ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージによって、地域における計画策定や合意形成の場づくりなどの取組を支援してまいります。

 さらに、国・地方脱炭素実現会議において、地域脱炭素ロードマップの検討を進めておりますが、様々な主体が積極的に参加する地域の実施体制の構築についても議論を深めてまいります。

 最後に、国民と民間企業の環境に対する関心の向上、行動変容に向けた取組についてお尋ねがありました。

 行動変容の一例としては、本法案と同じく、今国会に提出しているプラスチック資源循環法案において、環境配慮設計を施したプラスチック製品を国が認定することで、消費者、事業者共に環境に配慮した製品を選択しやすい環境を整備することとしております。また、電気自動車などと再エネの導入をセットにした支援を行っており、これは、電気自動車などや再エネの普及に対する国民の前向きな行動を後押しする施策です。

 さらに、環境省では、よりよい行動を後押しする行動経済学であるナッジなどの科学的知見を活用し、脱炭素につながる行動履歴を見える化して、地域で循環するインセンティブを付与するなど、日常生活の様々な場面での行動変容を後押しする手法の検討を行っています。

 加えて、炭素への価格づけを通じて脱炭素への行動変容を促し、CO2削減の努力が報われるようにする仕組みであるカーボンプライシングについても検討を行っているところです。

 経済産業省とも連携し、幅広いステークホルダーとしっかり対話しながら、国民の理解が得られるものとなるよう、検討してまいります。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、様々な施策を通じて、国民と民間企業の環境に対する意識の向上、行動変容の促進を図ってまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣   茂木 敏充君

       経済産業大臣 梶山 弘志君

       環境大臣   小泉進次郎君

       国務大臣   井上 信治君

       国務大臣   坂本 哲志君

 出席副大臣

       環境副大臣  笹川 博義君


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