衆議院

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第22号 令和3年4月16日(金曜日)

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令和三年四月十六日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  令和三年四月十六日

    午後一時開議

 第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、災害対策基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。災害対策特別委員長金子恭之君。

    ―――――――――――――

 災害対策基本法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔金子恭之君登壇〕

金子恭之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、災害対策特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、頻発する自然災害に対応して、災害対策の実施体制の強化及び円滑かつ迅速な避難の確保を図ろうとするもので、その主な内容は、

 防災担当大臣を本部長とする特定災害対策本部を設置することができること、

 非常災害対策本部の本部長を内閣総理大臣に変更すること、

 国の災害対策本部を災害が発生するおそれがある場合から設置することができること、

 避難行動要支援者に係る個別避難計画の策定を市町村長の努力義務とすること、

 市町村長の発令する避難勧告と避難指示を避難指示に一本化すること、

 災害が発生するおそれがある場合における広域避難に係る規定を整備すること

等であります。

 本案は、去る四月七日本委員会に付託され、翌八日に小此木防災担当大臣から趣旨の説明を聴取し、昨十五日に質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長石田祝稔君。

    ―――――――――――――

 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国民が行政手続において情報通信技術の便益を享受できる環境を整備するとともに、情報通信技術の効果的な活用により持続可能な行政運営を確立することが国及び地方公共団体の喫緊の課題であることに鑑み、地方公共団体情報システムの標準化を推進するために必要な事項を定めようとするものであります。

 本案は、去る四月六日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、十三日武田総務大臣から趣旨の説明を聴取し、昨十五日、質疑を行い、これを終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対し、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本維新の会・無所属の会及び国民民主党・無所属クラブの共同提案により、政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする規定を追加する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対して附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、様々な理由で送還を忌避する者が後を絶たず、迅速な送還の実施に支障が生じているのみならず、退去強制を受ける者の収容が長期化する要因ともなっています。こうした状況を改め、退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとすることは、適正な出入国在留管理を確保する上で喫緊の課題です。

 この法律案は、以上に述べた情勢に鑑み、所要の法整備を図るため、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正するものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、在留特別許可制度について、退去強制令書が発付されるまでの間に申請を行うことを可能とするとともに、在留特別許可を行うか否かの判断に際して考慮すべき事情を明示することとするものです。

 第二は、退去強制を受ける者のうち、退去強制令書の円滑な執行に協力しない国が送還先である者及び送還を積極的に妨害する行為を行ったことがある者に対し、一定の要件の下で自ら本邦から退去することを義務付ける命令制度を創設し、命令に違反した場合の罰則を整備することとするものです。

 第三は、難民認定手続中は法律上一律に送還が停止されるといういわゆる送還停止効に例外を設け、同手続中であっても、一定の場合には送還を可能とすることとするものです。

 第四は、退去強制令書の発付を受けた者の自発的な出国を促すため、素行等を考慮して相当と認められる者について、その申請により、速やかに自費出国をした場合には上陸拒否期間を短縮することができることとする制度を設けるものです。

 第五は、退去強制手続における収容に代わる選択肢として監理措置の制度を創設し、当該外国人の逃亡のおそれの程度等を考慮して相当な場合には、収容せずに監理人による生活状況の把握その他の監理に付する措置をとりながら手続を進めることとするものです。あわせて、仮放免は、健康上、人道上その他これらに準ずる理由により収容を一時的に解除する制度と改めるものです。

 第六は、入国者収容所等における被収容者の処遇について、金品の取扱い、保健衛生及び医療、外部交通等に関する事項を明確化するため、具体的な規定を整備するものです。

 このほか、難民に該当しないものの難民に準じて保護すべき者を補完的保護対象者として認定する手続を設け、これを適切に保護するための規定を整備すること、十六歳未満の外国人が所持する在留カード及び特別永住者証明書の有効期間を見直すことなど、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。屋良朝博君。

    〔屋良朝博君登壇〕

屋良朝博君 立憲民主党・無所属の屋良朝博です。

 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 その前に、一言申し上げます。

 私の地元沖縄の選挙区では、辺野古埋立てが進められております。一九九六年に日米両政府がアメリカ海兵隊普天間飛行場の返還を合意してから、今月十二日で二十五年、四半世紀が過ぎました。安倍政権が民意を無視して強行した工事は、軟弱地盤が見つかり、順調に進んでも今後十二年もかかります。

 政府は米軍部隊の本土移転を何度か検討しましたが、話が持ち上がると移設先が猛反発し、計画は頓挫します。

 二〇一二年に、海兵隊千五百人を沖縄から山口県岩国基地に移転する提案が米政府から日本側に打診されたとの報道に対して、岸信夫防衛大臣は、当時、岩国はある程度の負担を受け入れてきたが、もうリミットが近い、こういう話が出ること自体が問題だ、米側が正式な協議にのせようとしたら、政府には即座に断ってもらわないと困ると反発しました。

 その後も、オスプレイの飛行訓練の一部を佐賀空港へ移転するプランを安倍政権下の菅官房長官が進めようとしましたが、やはり地元の反発で断念しています。

 岸大臣に伺います。

 基地負担をなぜかたくなに拒否するのでしょうか。沖縄基地問題の本質は、NIMBY、ノット・イン・マイ・バックヤード、うちの裏庭はやめてくれという、負担を嫌がる無責任でひきょうな安保政策ではないでしょうか。無理な埋立てを強行するよりも、負担の分散を促すのが日米同盟の安定につながると考えますが、いかがでしょうか。

 ちなみに、一九五〇年代に、岐阜、山梨、静岡、大阪、奈良に分散配置されていた海兵隊を沖縄へ集約、移転させたのは、岸大臣のおじい様、岸信介総理大臣でした。

 昨日、二階俊博自民党幹事長が、東京五輪・パラリンピックについて、これ以上無理だということだったらすぱっとやめないといけない、オリンピックで感染を蔓延させると何のためのオリンピックか分からないと、政権首脳で初めて五輪中止も選択肢であるとの発言をされました。

 翻って、政府としては五輪中止は全く選択肢にないという認識でよろしいのか、五輪担当相として明確に御答弁いただきたいと思います。

 それでは、入管法一部改正について伺います。

 まず、本年三月に名古屋入管の収容施設に収容されていたスリランカ女性が亡くなられた事案について申し上げたいと思います。

 このスリランカ人女性は、昨年八月から名古屋入管施設に収容されていましたが、収容中に体調を崩し、二十キロ近くも体重を減らした上、お亡くなりになりました。

 被収容外国人を人間として扱い、必要なときにきちんと医療を受けさせることが何よりも大事であります。

 本件については、上川法務大臣が調査を指示し、今月九日には調査状況に関する中間報告がなされましたが、死因はいまだ明らかになっておりません。

 本件については、スリランカ駐在の日本大使がスリランカの外務大臣に面会した際にも外務大臣から言及がなされていたと伺っております。

 最終的な調査結果はいつ公表されるのか、上川法務大臣の見解を求めます。

 日本の入管法改正案に対して、国連難民高等弁務官事務所は、今月九日、重大な懸念があるとの見解を公表しました。

 国連人権理事会も、三月三十一日、入管改正法は国際人権法違反とする旨の共同書簡を日本政府に送りました。

 さらに、三月三十日に米国務省が発表した人権報告書の中で、日本の難民認定の低さの問題を指摘し、難民資格を与える法律はあるが、認定を拒む向きが強いと記述しております。また、二〇一九年に難民申請は一万三百七十五人で、認定を受けたのは僅か四十四人、国連難民高等弁務官事務所を始めNGOや市民グループは無期限収容に懸念を表明しているなど、難民申請を許可されず、入管施設に長期収容される外国人の問題を報告しております。

 こうした国際社会の指摘をどのように受け止めるのか、上川法務大臣の認識をお伺いいたします。

 東京入管の収容施設では、今年の二月から三月にかけて、新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、被収容者や職員を合わせて六十四人が感染したと伺っております。入管収容施設における医療体制は大変脆弱であり、被収容者からは悲痛な叫びが支援者の下に届いております。

 新型コロナウイルスに感染したスリランカ人男性は、発熱し、喉は痛く、食事ができない状態となったそうです。職員は、感染に効く薬はない、食事で免疫力をつけなさいとだけで、支援者らはおかゆの提供を求めましたけれども聞き入れられず、結局は隔離室で御飯にお湯をかけて食べたということです。二か月で十三キロ痩せてしまったそうです。

 収容所でコロナ禍に見舞われ、命の危険にさらされ続けている状況について、政府はどのようにお考えなのでしょうか。新型コロナウイルス感染症については、一刻も早く適切な医療へのアクセスが図られ、適宜治療を受けられるようにすべきだと考えますけれども、こうした方々に対する適切な処遇の在り方について、法務大臣の見解をお聞かせいただきます。

 我が国における難民認定率は諸外国と比較して極端に低いと指摘されており、二〇一八年には、国連人種差別撤廃委員会からも、難民認定率が非常に低いことについて懸念が示されております。直近の令和二年における難民認定率も一・三%と低く、人権後進国と言われても仕方のないレベルと言えるのではないでしょうか。

 今、ミャンマーではクーデター軍による民間人虐殺が深刻な国際問題となっております。二〇一九年のデータで、ミャンマー人に対する世界の難民認定数が一万三千三百九十六人、認定率九二%だったのに対し、日本は、七百八十八人の申請に、難民認定はゼロでした。

 米国務省の人権報告が指摘するように、そもそも、日本の制度は国際スタンダードで見れば難民の人権保護に問題があり、その改善が優先されるべきにもかかわらず、今回の入管改正法は刑事罰を導入するなど、より強制力を強めようとしております。

 我が国の難民認定に対する姿勢そのものについて、まずは見直すべきではないでしょうか。難民認定率が低いとの批判を正面から受け止めるべきでしょう。そして、日本の全件収容主義が自由権規約違反などとされる国連などの指摘に応え、難民認定制度の運用の在り方を見直す考えはあるのか、上川法務大臣にお伺いいたします。

 現行では、難民認定申請がされると、難民認定手続が終了されるまでの間、申請の理由や回数を問わずに、一律、送還が停止されます。この送還停止効は、難民認定手続の者が手続中に送還されることなく安心して審査が受けられるよう、法的地位の安定化を図るという趣旨に基づくものです。

 しかし、本法律案では、難民認定や補完的保護対象者認定の申請を複数回行っている者について、認定をすべき相当の理由がある資料を提出しない限り、三回目以降の申請においては送還停止効の対象外とすることとしています。

 しかし、過去には、入管当局に難民として認められなかった外国人が、裁判を起こし、一審敗訴しましたが、控訴審で逆転勝訴するケースもありました。日本に来て難民申請してからおよそ十年、ようやく難民としての地位を獲得した方もおられます。

 このように、申請回数によって一律に送還停止効の例外を設けること自体が国際法上の原則に違反すると国連人権理事会は指摘しております。認定を拒否されても裁判手続により難民認定をされる可能性があるにもかかわらず、その芽を摘んでしまい、本来は送還すべきでない者を誤って送還し、その者の生命や身体に危険を生じさせることにもなりかねません。

 三回目以降の申請について送還停止効の対象外とした理由について、上川法務大臣の見解を伺います。

 退去強制令書に基づく収容は、送還可能のときまで行うことができることとされており、期限の定めがないことから、送還を拒否する被収容者の長期収容につながりやすくなっています。

 長期収容を防止するためには、収容期間に上限を設定するとともに、収容を継続する際には司法による審査を行うことが効果的ではないかという指摘もありますが、本法律案では、収容期間に上限が設けられることも、収容を継続する際における司法審査についても規定されませんでした。その理由についてお伺いいたします。

 本法律案では、収容に代わる監理措置制度が新たに設けられ、被監理者である外国人は、監理人による監理の下、収容施設の外で生活ができるとされています。

 しかし、最近の報道によりますと、外国人支援に取り組む個人や団体の約九割が、監理措置制度に対して懸念を示しております。また、監理措置制度を評価できないとしている者も九割近くおり、収容から解かれた外国人の監視が民間に押しつけられる、監理人の担い手が見つからず、長期収容の解決にはなり得ないという声もあります。

 外国人支援に取り組む支援者は、監理措置制度における監理人の担い手として想定されておりますけれども、そうした支援者からの監理措置制度に対する否定的な声などをどのように受け止めているのでしょうか。監理人のなり手がいなければ監理措置制度は十分に機能しないおそれがありますが、上川法務大臣の見解を伺います。

 また、本法案の監理措置制度は、監理人となってくれる家族や支援者が存在することと上限三百万円の保証金を支払うことが前提となっています。この仕組みでは監理者の有無と資金力の有無に基づく差別的な制度だと、国連人権理事会は指摘しています。指摘について、上川法務大臣の見解を伺います。

 本法律案では、監理者の下から外国人が逃亡した場合には刑事罰が科せられることになっています。さらに、強制退去命令を受けた外国人が出国手続を進めない場合、新たに設けられる命令制度で刑事罰が科せられます。

 国連などからも改善の指摘を受けているにもかかわらず、難民認定が正しく行われているかどうか点検し、根本的な制度の見直しを優先するべきところ、刑事罰を含む強引な手法で問題解決を図るのであれば、抜本的な改善は望めないのではないでしょうか。支援者の活動を萎縮させるのではないかとの指摘もありますが、上川法務大臣の見解を伺います。

 立憲民主党は、立憲主義に基づき、国際人権規範にのっとった入管、難民政策を推進していくことをお約束し、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 屋良朝博議員にお答え申し上げます。

 まず、名古屋出入国在留管理局の被収容者の死亡事案に係る最終的な調査結果の公表時期についてお尋ねがありました。

 本事案における当局等の対応の適否などについては、死因について一定の結論を得た上で判断することが適切であると認識していますが、解剖を実施した解剖医による鑑定が継続中であり、現時点で死因の判明には至っていません。

 今後、司法解剖の結果を踏まえて、適切な時期に必要な改善策を含む最終調査報告を取りまとめる予定です。

 次に、国際社会からの指摘の受け止めについてお尋ねがありました。

 出入国在留管理行政上、送還忌避や長期収容の解消は重大な課題であるところ、本法律案は、現行の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとし、これらの課題に対応するためのものであり、外国人の人権にも十分に配慮した適正なものと考えています。

 国際社会からの指摘については真摯に受け止めつつ、懸念があるとされた部分については、我が国の法制度の在り方や出入国在留管理庁の考え方を十分に説明するとともに、示された指摘等も踏まえ、適切な運用の在り方を検討するなど、必要な対応を取ってまいります。

 次に、入管収容施設における新型コロナウイルス感染者に対する医療の提供等の処遇の在り方についてお尋ねがありました。

 入管収容施設は大切な命を預かる施設であり、特にコロナ禍の状況においては、被収容者に適切な医療上の措置を講ずることが行政としての重要な責務であると認識しています。

 御指摘の集団感染事案においては、保健所の指導を受けながら、被収容者の体調等を個別に注意深く把握し、その症状等に応じ、庁内診療室又は外部医療機関の医師による診療を行ったり、入院の措置を取るなどしました。

 三月四日以降、被収容者の新たな感染は発生していません。

 また、感染が判明した被収容者の方々は、多くが無症状又は軽症であり、いずれの方も既に再検査で陰性の判定となっています。

 コロナ禍において、引き続き、個々の被収容者の体調等を注意深く把握し、体調不良者については、庁内又は外部医療機関において、迅速に診療を行う対応を徹底してまいります。

 次に、難民認定制度の運用の在り方についてお尋ねがありました。

 平成二十六年の難民認定制度に関する専門部会から、難民該当性に関する判断の規範的要素を、可能な限り一般化、明確化することを追求するべきという提言を受けています。

 そこで、難民認定制度の透明性向上の観点から、現在、我が国及び諸外国でのこれまでの実務上の先例、UNHCR、国際連合難民高等弁務官事務所が発行する諸文書等を参考としつつ、難民該当性に関する規範的要素の明確化について検討しています。

 また、UNHCR等の協力を得て、難民認定申請者の出身国情報や難民調査の手法等に関する研修を実施し、難民調査官の調査能力の向上に努めているところです。

 さらに、本法律案では、難民条約上の五つの理由によらずとも迫害を受けるおそれがあり、かつそれ以外の難民の要件を全て満たすときは、難民に準じて補完的保護対象者と認定することとしています。

 次に、三回目以降の難民認定申請について送還停止効の例外とした理由についてお尋ねがありました。

 そもそも、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものです。

 既に二度、難民等の不認定処分が行政上確定した者は、二度にわたり難民等の該当性について判断され、その審査が十分に尽くされており、法的地位の安定を図る必要はないものと考えられます。

 もっとも、三回目以降の申請においても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合は、法的地位の安定を図る必要があるため、送還は停止することとしています。

 次に、収容期間の上限や収容に際して司法審査を設けていない理由についてお尋ねがありました。

 収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが大きい者を含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実施が不可能となります。

 そのため、収容期間の上限は設けず、収容の長期化の解消、防止については、収容に代わる選択肢としての監理措置の創設とともに、在留が認められない者の迅速な送還等により、図ることとしました。

 収容するか、監理措置に付すか、この判断については、対象者の収容等を執行する立場の者ではなく、上級の入国審査官である主任審査官において審査することとしています。

 また、その判断に不服があれば、行政訴訟を提起し、事後の司法審査を受けることができます。

 こうした事前事後の仕組みにより、収容の要否の判断について、十分に適正性が確保されており、これらとは別に司法審査を設ける必要はないと判断しました。

 次に、収容に代わる監理措置の運用上の課題についてお尋ねがありました。

 監理人にとって、生活状況を把握した上での届出義務が負担となる旨の支援者の声があることは承知しています。

 この点、監理措置に付された者による逃亡等の条件違反行為を未然に適切に防止するため、監理人は、外国人の生活状況を把握しつつ、指導監督するとともに、必要な事項を届け出なければならないとしています。

 もっとも、支援者等の懸念を解消し、多くの人に監理人を引き受けていただくことで、制度を円滑に機能させることは極めて重要であると考えています。

 そこで、制度の趣旨等を丁寧に説明し、御理解を得るよう努めるとともに、監理人にとって過度な負担とならないよう、届出の方法等についても引き続き検討してまいります。

 次に、監理人や監理措置の保証金についてお尋ねがありました。

 監理措置においては、対象者の逃亡等を防止するため、監理人による監理に付し、保証金を納付させることとしています。

 監理措置に付すべき外国人について、適切な監理人を確保できるよう、必要な取組を行ってまいります。

 また、保証金の額は、その者の資産等の様々な事情を勘案して必要な額を適切に定めることとしています。

 最後に、監理措置における逃亡の罪及び退去命令の罪についてお尋ねがありました。

 犯罪の成否については、捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えています。

 その上で、一般論として申し上げると、いずれの罪も、犯罪の主体が限定されていることに加え、処罰の対象となる行為は明確に規定されており、支援者等の通常の支援行為が処罰の対象となることは考え難いと思われます。

 また、監理措置における逃亡の罪については、監理措置に付された者に交付される監理措置決定通知書に条件の内容が記載されるため、いかなる行為が構成要件に該当するかが容易に分かる仕組みとなっています。

 したがって、支援者の活動を萎縮させるとの指摘は当たらないと考えています。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 屋良朝博議員にお答えをいたします。

 沖縄における基地負担の軽減についてお尋ねがありました。

 沖縄の基地負担の軽減は、政権の最重要課題の一つであり、負担を全国民で分かち合うということが必要との考えの下、普天間の空中給油機の岩国への移駐や、オスプレイの訓練移転等を行うとともに、北部訓練場の過半の返還といった取組も進めてきています。

 また、普天間飛行場の代替施設の辺野古への移設を着実に進めていくことで、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現していく考えです。

 今後とも、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣丸川珠代君登壇〕

国務大臣(丸川珠代君) 東京オリンピック・パラリンピックに関してお尋ねがございました。

 御指摘の収録番組での発言については、二階幹事長が、安全、安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはありませんというコメントを出されていると承知をしております。

 IOCのコーツ調整委員長は、東京オリンピック百日前に合わせたメッセージの中で、大会は必ず開催され、七月二十三日に開幕すると述べていると承知をしております。

 大会開催の最終的な決定は、主催者であるIOC、IPC、東京都、組織委員会が行うものであります。

 政府といたしましては、安全、安心な環境を確保することを最優先に、内外の感染状況等を注視しつつ、様々なスポーツ大会における感染対策の取組や、感染症専門家の知見も踏まえ、引き続き、東京都や組織委員会、IOCなどと緊密に連携して、準備を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 吉田宣弘君。

    〔吉田宣弘君登壇〕

吉田宣弘君 公明党の吉田宣弘です。

 私は、公明党、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 コロナ禍前の最近の統計データによると、日本に入国する新規外国人入国者は年間約三千百万人、中長期の在留者数は約二百九十万人、そのうち、在留期間経過後に所在不明又は不法就労となった不法残留者は約八万人とのことです。そして、摘発等で退去強制手続を経て帰国する者が年間約一万人いる一方、送還忌避者は約三千人にも上るとのことでございます。

 この数値にも見られますように、送還忌避者の増加や収容の長期化の問題は、我が国の出入国在留管理制度の根幹を脅かすものであり、その解決は喫緊の課題であります。

 そこで、昨年六月に、収容・送還に関する専門部会によって、退去強制手続において、庇護、在留を認めるべき者と送還すべき者を適切に判別、認定した上で、送還すべき者を迅速に送還し、長期収容を解消することを内容とした提言が取りまとめられました。

 公明党は、その提言の方向性を評価しつつ、人道主義の立場から保護されるべき者が適切に保護されるべきとして、さらに、支援団体や専門家の学者の方々とヒアリングを重ねてまいりました。

 そして、昨年九月に、当時の森まさこ法務大臣に、公明党難民政策PTとして、制度改正の検討に当たり、ノン・ルフールマンの原則、すなわち、生命や自由が脅かされかねない人々が、入国を拒まれ、あるいは、それらの場所に追放し、送還されることを禁止する国際法上の原則に貫かれるものでなければならないという観点から、申入れを行い、その内容が反映された改正案となったことを高く評価します。

 このような経緯を踏まえ、以下、質問いたします。

 まず、改正案では、退去強制手続を一層適切なものとするための措置が盛り込まれています。退去強制手続は、本邦に滞在する法的根拠が失われた外国人に対して行われる手続と承知しておりますが、その手続に関しては、個々人の事情が十分に配慮され、適切に考慮されなければなりません。

 そして、改正案では、退去強制令書の発付前に、本邦への在留を希望する外国人からの在留特別許可の申請を可能とする申請手続が新設されました。これまで、在留特別許可は退去強制手続の一環として行われてきたと承知しておりますが、これとは分離して在留特別許可の申請手続が創設された理由について、法務大臣の答弁を求めます。

 また、在留特別許可の判断については、申請者の状況をきめ細やかに把握する必要があると考えますが、改正案ではその判断をどのように行おうとしているかについても併せて答弁願います。

 次に、難民条約上の難民ではないけれども、難民に準じる外国人は適切に保護されなければなりません。諸外国と比べて難民認定率が低いと言われる我が国の状況の中で、改正案はどのように対応していこうとしているのか、法務大臣の答弁を求めます。

 また、国際社会の動向や国際人権法上の規範を踏まえて、諸外国における取組などを参考にして、保護の対象は明確にされるべきと考えますが、併せて答弁を求めます。

 次に、迅速な送還実施及び送還忌避者の長期収容問題の解決のためには、送還停止効に対して一定の例外を設けることが必要であると考えますが、ノン・ルフールマンの原則に反するおそれがあるとの懸念が示されています。

 送還停止効に例外を設ける場合でも、その対象は明確に定められ、慎重に判断されるべきと考えますが、法務大臣の答弁を求めます。

 次に、現在の退去強制制度には、被退去強制者に直接退去を義務づける規定や退去に応じない場合に制裁を科する規定が存在しません。そのため、自国民の受取を拒否する者や暴れるなどして送還を妨害する者の送還が事実上不可能となるなど、本人の意思に反して送還を強制できない問題が存在します。

 そこで、本改正案では、退去を義務づけるなどの命令制度が創設され、その実効性を担保するために罰則が設けられていることは妥当であると考えます。

 しかし、被退去強制者が本邦から退去することが困難な事情は様々であり、退去強制処分が訴訟で覆される例も見られることに鑑みると、その対象は適切に限定されるべきと考えますが、改正案はどのように対応しようとしているのかについて、法務大臣の答弁を求めます。

 また、罰則が設けられている場合、外国人を支援する者が共犯とされるおそれがあるなど、支援を萎縮させるとの懸念にも配慮すべきと考えますが、法務大臣の答弁を求めます。

 次に、改正案では、逃亡等を防止できる場合に、監理人による監理に付して社会内で起居させるという、収容に代わる監理措置の創設が盛り込まれました。被退去強制者が仮放免されない限り収容される現行制度に併せてこのような新たな措置が創設された理由について、法務大臣にお尋ねいたします。

 また、新たな収容代替措置の対象者については、社会内での生活を維持するため、働けるようにする要請があると考えますが、併せて答弁を求めます。

 次に、長期収容の解消及び適切な処置の実施のためには、外国人の実情に合わせて仮放免の在り方も見直されなければならないと考えます。

 では、改正案ではその在り方についてどのように見直しがなされているのかについて、法務大臣の答弁を求めます。

 また、罰則が設けられた場合、支援者が共犯とされるおそれがあるため、活動が萎縮するとの懸念が示されることについても、併せて答弁を求めます。

 次に、三十代のスリランカ人女性が名古屋出入国在留管理局で収容中の三月六日にお亡くなりになりました。

 お亡くなりになった女性に対しては衷心より深く御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族の皆様にはお悔やみを申し上げたいと存じます。

 このような不幸な事案は絶対に回避されなければなりません。そのためには、入管収容施設における常勤医師の確保や、治療拒否者に対して必要な医療上の措置を可能とするための体制整備など、積極的に推進すべきと考えますが、法務大臣の答弁を求めます。

 最後に、今年は、日本が難民条約に加入してから四十年の節目の年に当たります。また、十年前には、衆参両院本会議において、難民問題解決に向けた国会決議が行われました。一方、昨年、日本で難民認定を受けた方は四十七人にとどまり、国会決議がうたう、世界の難民問題の恒久的な解決に向け主導的な役割を担うための取組は、まだまだこれからであると考えます。

 そして、新型コロナウイルス感染症は、外国人の入国制限などによって、日本の国際化が進んでいた事実と併せて日本がいかに多くの外国人に頼っていたかについて気づかせるきっかけとなりました。

 同時に、既に日本で暮らしている外国人の多くが新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困窮しており、国籍や在留資格を問わず、誰一人取り残さない社会をつくることの重要性が、より一層明らかになりました。透明性の高い出入国管理行政、保護を必要とする人に寄り添うことのできる難民認定制度は、そのような社会づくりの基盤と言えます。

 誰一人取り残さない社会の形成に向けて、改正案を所管する法務大臣の決意をお尋ねし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 吉田宣弘議員にお答え申し上げます。

 まず、在留特別許可の申請手続についてお尋ねがありました。

 在留が認められない者の迅速な送還の前提として、退去強制手続において、在留を認めるべき者の適切、迅速な判別が必要です。

 そのためには、退去強制手続の対象者に対し、在留特別許可の判断に当たって考慮すべき事情をより明確に示した上で、当該事情について十分に主張等をし得る機会を手続として保障することがより適切と考えます。

 このような手続保障の充実という観点から、在留特別許可の申請手続を創設することとしました。

 次に、在留特別許可の判断基準についてお尋ねがありました。

 本法律案では、在留特別許可の判断に当たっての考慮事情を明示することとしました。

 これにより、在留特別許可の申請者が考慮事情を踏まえた的確な主張や資料の提出を行えるようになるとともに、これらを十分に踏まえた適切な判断が可能となると考えています。

 なお、考慮事情の具体的な考え方については、ガイドラインとして公表する予定です。

 次に、難民に準じる外国人の保護についてお尋ねがありました。

 現在も、難民条約上の難民とは認められない者であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる者については、在留特別許可等により本邦への在留を認めているところです。

 その上で、かねてより、難民以外の者で保護の対象とする者を明確にし、より安定した在留上の地位を与えるべきとの御意見もありました。

 そこで、本法律案において、難民条約上の難民には該当しないものの我が国として難民に準じて保護すべき者を補完的保護対象者と定義し、その認定をする制度を設けることとしました。

 次に、補完的保護対象者の対象の明確化についてお尋ねがありました。

 本法律案では、補完的保護対象者は、難民条約における難民の要件のうち、迫害の理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見であること以外の全ての要件を満たすものをいう旨を明文で定義しています。

 この定義を満たすときは補完的保護対象者と認定することとなり、法律により、その対象は明確になっています。

 次に、難民認定申請中の送還停止効の例外についてお尋ねがありました。

 本法律案において、送還停止効の例外となる者は、明文で、二回の難民認定申請が不認定処分で確定している三回目以降の難民認定申請者、我が国への在留を認めることが一般的に適切でない、無期又は三年以上の懲役又は禁錮に処せられた者、外国人テロリスト等及び暴力主義的破壊活動者としています。

 また、三回目以降の申請であっても、難民等として認定すべき相当の理由がある資料の提出があった場合には送還を停止することとしており、極めて慎重を期したものとなっています。

 次に、退去の命令制度の対象についてお尋ねがありました。

 退去の命令の対象者は、本邦から退去する意思がない旨を表明している場合で、送還先が退去強制令書の円滑な執行に協力しない国であること、偽計又は威力を用いて送還を妨害したことがあり、再び同様の行為に及ぶおそれがあることのいずれかにより送還が困難な者に限定されています。

 難民認定手続中であることにより送還が停止されたときなどには当該命令の効力は停止され、さらに、退去の命令の発出前に、あらかじめその者の意見を聞くこととしています。

 次に、退去の命令違反の罪についてお尋ねがありました。

 犯罪の成否については、捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えています。

 その上で、一般論として申し上げると、この罪は、先ほど申し上げたとおり、命令の対象者が限定されており、行為についても、故意に命令に違反して本邦から退去しないというものに限定されています。

 そのため、支援者等が通常の支援行為を行うことで処罰の対象となることは考え難いと思われます。

 次に、監理措置の創設理由についてお尋ねがありました。

 現行の入管法では、退去強制手続を取る場合、収容令書又は退去強制令書により収容することが原則とされています。

 本法律案では、社会内で生活しながら退去強制手続を進めることが相当である場合には、退去強制手続における収容に代わる選択肢として、相当期間にわたり収容せずに監理人による監理に付す措置を取りながら退去強制手続を進めるための手段として、監理措置を創設することとしました。

 これにより、被収容者数の減少とともに、長期収容の解消が大きく期待できると考えています。

 次に、監理措置に付された者の生計の維持や就労についてお尋ねがありました。

 退去強制令書の発付前に監理措置に付された者は、退去強制事由に該当する疑いはあるものの、我が国から退去させることがいまだ決定された者ではないため、生計の維持に必要な場合、許可を受けて、報酬を受ける活動を行うことを可能としました。

 他方、退去強制令書の発付を受けた者は、行政手続上、我が国から退去させることが決定された者ですので、そのような者である以上、就労を認めないこととしています。

 その上で、退去強制令書の発付の前後を問わず、監理措置に付された者が社会内で生活するに当たって、監理人と出入国在留管理庁が連携して適切に対応することとしています。

 次に、本法律案における仮放免の在り方についてお尋ねがありました。

 仮放免については、創設される監理措置との区分を明確化する観点から、健康上、人道上その他これに準ずる理由がある場合に収容を一時的に解除する措置と整理し、これを明記しました。

 さらに、仮放免を許可する場合には、その期間を設定し、保釈金は廃止することとしました。

 次に、仮放免中における逃亡の罪についてお尋ねがありました。

 犯罪の成否については、捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えています。

 その上で、一般論として申し上げると、犯罪の主体が限定されていることに加え、処罰の対象となる行為は明確に規定されており、支援者等の通常の支援行為が処罰の対象となることは考え難いと思われます。

 また、仮放免された者に交付される仮放免許可書に条件の内容が記載されるため、いかなる行為が構成要件に該当するかが容易に分かる仕組みとなっています。

 次に、入管収容施設における医療体制の整備等についてお尋ねがありました。

 被収容者の死亡事案等が生じないようにするためにも、被収容者に対する医療体制の一層の充実を図る必要があることは御指摘のとおりです。

 本法律案では、入管収容施設において常勤医師を継続的かつ安定的に確保するため、常勤医師の兼業の要件を緩和することとしています。

 あわせて、本法律案では、被収容者による拒食事案等に適切に対応するため、治療等を拒否する者に対しても、その者の心身に著しい障害が生じるおそれがある場合等は、必要な医療上の措置を取るものとする旨の規定を設けることとしています。

 これらの措置により、収容施設における医療を含む処遇の一層の充実を図ってまいります。

 最後に、今後の出入国在留管理行政に対する決意についてお尋ねがありました。

 法務省は、現在、誰一人取り残さない社会の実現という持続可能な開発目標の理念をも踏まえ、入管法に基づく外国人の受入れを推進するとともに、庇護すべき外国人は適切に保護しつつ、日本人と外国人が互いに尊重し、ルールを守りながら共生する社会の実現を目指す取組を進めています。

 今回の入管法改正により、在留を認めるべき外国人を社会の構成員として受け入れるとともに、ルールを守らず、最終的に在留が認められないと判断された外国人は退去させるということを一層確実に実現することが可能となり、これによって、日本人と外国人が安心して暮らせる共生社会の実現につながっていくものと考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、入管法等一部改正案について質問します。(拍手)

 政府は、外国人政策について、移民政策は取らないという建前を取りながら、実際には、経済界が求める安価な労働力、雇用の調整弁として外国人の受入れを拡大するという、極めて欺瞞的な姿勢を取り続けてきました。この下で、外国人の基本的人権を尊重した雇用、教育、社会保障などの総合的な支援制度は整備されず、不当な労働条件の押しつけなど、人権侵害が横行しています。

 入管法についても、退去強制手続について、制定以来、抜本的な改正は一度も行われず、在留資格を失った外国人を全て収容する全件収容主義の下、まともな医療すら受けられない長期収容が常態化し、死亡事件も相次いでいます。今年三月にも、名古屋入管で、三十代のスリランカ人女性が死亡する痛ましい事件が起きています。

 今求められているのは、この現状を根本的に改め、外国人の基本的人権の尊重と国際人権基準に基づいた入管制度に転換することです。

 ところが、本案は、退去強制手続全体において、入管庁の裁量拡大と厳罰化を進めるものです。これは、外国人の人権侵害を更に深刻化し、国際基準から逆行するものであり、断じて認めることはできません。

 本案は、長期収容など一定の要件を満たす外国人について、入管施設外での生活を認める監理措置制度を設けるとしています。

 政府は収容の代替措置と位置づけていますが、あくまでも入管庁が相当と認めるときにしか認められず、現行の仮放免や在留特別許可の極めて限定的な運用を見ても、長期収容の改善が進む保証はどこにもありません。

 また、監理人には、外国人への監督義務、政府への届出義務が課され、違反すれば罰則の対象となります。これは、支援団体や弁護人の立場とは到底両立し難いものです。

 今やるべきことは、日弁連などが繰り返し求めている、収容の要否などへの裁判所の関与、収容期間の上限設定など、抜本的な改革を行うことではありませんか。

 本案は、難民認定申請中は強制送還しないというルールを改悪し、三回目の申請以降は強制送還できるとしています。

 しかし、そもそも、日本の難民認定率が〇・四%と先進国の中でも極めて低いことこそ、複数申請の根本原因ではありませんか。

 二〇一一年から一八年に難民認定を受けた二百十二人のうち、約一割に当たる十九人が、三回目の申請中に訴訟で勝利して難民認定を受けています。この事実の重みをどう考えているのですか。

 本案は、難民に準じる外国人を補完的保護対象者と認定するとしていますが、その範囲も極めて限定的です。

 極端に狭い日本の難民の定義を国際水準に改める、独立した第三者機関が難民認定の審査をする、こうした抜本的な改革こそ求められているのではありませんか。

 本案が国外退去を拒んだ場合の罰則を設けていることは、極めて重大です。

 実際には、退去強制令書を受けた者のうち、九割を超える外国人が国外退去に応じています。残っているのは、家族がいる人や、母国で迫害を受けている人など、そもそも帰すべきではない人たちなのです。親の事情で在留資格がないまま日本で生まれ育った子供に対しても、退去強制令書が出されているのが現実です。こうした子供にも罰則を適用するのですか。

 また、非人道的な弾圧が続いているミャンマーやクルドなどから避難し、日本で難民申請している人たちもいます。本案は、本来保護されるべき外国人の強制送還を増加させるものですか。

 本案について、国連人権理事会特別報告者らは、今年三月、ノン・ルフールマン原則違反の懸念など、国際的な人権水準に達しておらず、再検討を強く求めるという共同書簡を日本政府に提出しています。この国連人権理事会の懸念に真摯に向き合うべきではありませんか。

 外国人との真の共生社会の実現に向けて、入管制度の根本的改革を強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 藤野保史議員にお答え申し上げます。

 まず、入管制度における外国人の基本的人権の尊重についてお尋ねがありました。

 出入国在留管理行政上、送還忌避や長期収容の解消は重大な課題であり、本法律案は、現行の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとし、これらの課題に対応するためのものです。

 本法律案は、外国人の人権にも十分に配慮した適正なものであると考えています。

 次に、監理措置制度の導入についてお尋ねがありました。

 監理措置に付するか否かの判断については、対象者の収容等を執行する立場の者ではなく、上級の入国審査官である主任審査官において審査することとしています。

 また、主任審査官は、監理措置決定をしないときは、当該外国人に書面でその理由を通知することとし、判断の透明性を高めています。

 さらに、監理措置に付されなかった場合に、その判断に不服があれば、行政訴訟を提起し、事後の司法審査を受けることも可能です。

 これらの仕組みにより、監理措置の適正な運用が担保され、長期収容の改善が進むものと考えます。

 次に、監理人の義務と支援団体等の立場との関係についてお尋ねがありました。

 監理措置に付された者による逃亡等の条件違反行為を未然に適切に防止するため、監理人は、外国人の生活状況を把握しつつ、指導監督するとともに、必要な事項を届け出なければならないとしています。

 支援団体や弁護士としての立場の重要性は認識していますが、監理措置制度を円滑に運用するため、こうした監理人の役割を十分に御理解いただいた上で監理人になっていただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。

 次に、収容の要否等への裁判所の関与や、収容期間の上限についてお尋ねがありました。

 収容するか、監理措置に付すかの判断については、対象者の収容等を執行する立場の者ではなく、上級の入国審査官である主任審査官において審査することとしています。

 その判断に不服があれば、行政訴訟を提起し、事後の司法審査を受けることができます。

 こうした事前事後の仕組みにより、収容の要否の判断について、十分に適正性が確保されており、これらとは別に裁判所の関与は必要はないと判断しました。

 また、収容期間に上限を設けた場合、その上限まで送還を忌避し続ければ、逃亡のおそれが大きい者も含め全員の収容を解かざるを得ず、確実、迅速な送還の実現が不可能となります。

 そのため、収容期間の上限は設けず、収容の長期化の解消、防止については、収容に代わる選択肢としての監理措置の創設とともに、在留が認められない者の迅速な送還等により、図ることとしました。

 次に、我が国の難民認定率についてお尋ねがありました。

 大量の難民、避難民を生じさせる国との地理的要因や難民申請がなされる状況などは各国それぞれ異なっており、難民認定数や認定率により単純に我が国と他国とを比較することは相当ではありません。

 我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を適切に認定しています。

 また、現行法上、難民認定申請中は一律に送還が停止されることから、送還忌避者の中には、送還の回避を目的として難民認定申請を繰り返す者が相当数存在します。

 このような状況は、在留管理、送還業務を適切に遂行する上で大きな障害となっていることから、本法律案により、送還停止効に一定の例外を設けることとしています。

 次に、難民不認定処分を受けた後、訴訟を経て認定される事案があることについてお尋ねがありました。

 本法律案では、二度の難民不認定処分又は補完的保護対象者の不認定処分を受け、いずれの処分についても行政上確定した者については、送還停止効の例外とすることとしています。

 議員御指摘の数値については、にわかに確認することができませんが、三回目以降の申請者であっても、難民又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合は、送還が停止されることとしています。

 次に、補完的保護対象者の範囲についてお尋ねがありました。

 本法律案では、補完的保護対象者は、難民条約における難民の要件のうち、迫害の理由が人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見であること以外の全ての要件を満たす者をいいます。

 このような定義とすることで、理由を限定することなく、帰国した場合に難民条約上の迫害を受けるおそれのある者は補完的保護対象者と認定され得ることとなり、対象範囲が限定的との御指摘は当たらないと考えます。

 補完的保護対象者と認定できない場合であっても、人道的な配慮を理由に在留を認めることが相当と判断される場合には、在留特別許可をすることなどにより、適切に保護することとなります。

 次に、難民の定義と難民認定の審査についてお尋ねがありました。

 我が国では、難民条約の定義に基づき、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民と認定すべき者を認定しています。

 難民認定の審査に関しては、難民不認定処分に対する不服申立て手続において、外部の有識者を審理員とする難民審査参与員制度を導入しています。

 また、UNHCR、国際連合難民高等弁務官事務所等の協力を得て、研修等を通じて難民調査官の専門性や調査能力の向上を図るなどしており、難民認定の判断における客観性、公平性、中立性を確保しています。

 次に、子供に対する退去命令の罰則の適用についてお尋ねがありました。

 犯罪の成否については、捜査機関において収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であると考えています。

 本法律案では、子供であっても在留特別許可を申請し、許可がされれば、適法に本邦に在留することができ、その判断に当たっては、日本で生まれ育ったという事情も適切に考慮されることとなります。

 また、退去の命令の対象者は限定されています。

 御指摘のような子供に対し、退去の命令が発出されることは基本的には想定されないと考えています。

 次に、保護すべき外国人についてお尋ねがありました。

 難民認定申請がなされた場合、申請者ごとにその申請内容を審査した上で、難民に該当するときには難民と認定し、難民とは認定できない場合であっても、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国への在留を許可しているところです。

 本法律案では、難民条約上の五つの理由によらずとも迫害を受けるおそれがあり、かつそれ以外の難民の要件を全て満たすときは、難民に準じて補完的保護対象者と認定することとしています。

 難民認定制度及び補完的保護対象者認定制度を適切に運用し、今後とも真に庇護を要する者を確実に保護してまいります。

 最後に、特別報告者らが共同書簡で示した懸念についてお尋ねがありました。

 出入国在留管理行政上、送還忌避や長期収容の解消は重要な課題であり、本法律案は、現行の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとし、これらの課題に対応するためのものです。

 本法律案は、外国人の人権にも十分に配慮した適正なもので、我が国が締結している人権諸条約に抵触するものではないと考えます。

 御指摘の共同書簡については、事前に説明をする機会をいただいていれば、法案の内容やその適正性について正確に理解いただけたものと考えております。

 今後、改正法案の内容やその適正性について、十分に理解していただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 国連人権理事会の特別報告者等からの書簡についてお尋ねがありました。

 我が国としては、国際人権諸条約の締結国として、条約が定める義務を誠実に履行しており、我が国の制度がそれに違反しているとは考えておりません。今国会に提出された入管法の改正案は、現行法の退去強制手続を一層適切かつ実効的なものにすることなどを目的とするものと認識をいたしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 山尾志桜里君。

    〔山尾志桜里君登壇〕

山尾志桜里君 国民民主党の山尾志桜里です。

 国民民主党・無所属会派を代表して、出入国管理及び難民認定法等改正案について質問します。(拍手)

 収容の長期化を解決すべきという目的には賛成です。ただ、その原因を、外国人による送還忌避に矮小化することには異議があります。

 入管側の難民認定消極主義、そして認定待ちなどの間の全件収容主義、こうした入管側の問題にも大いに起因していることを認めるべきです。

 したがって、第一に、認定すべき難民は認定する、第二に、収容判断と収容環境について人権状況を改善する、その上で、第三に、帰るべきなのに帰らない送還忌避の方には帰っていただく、こうした三つの方針に基づいた解決策が求められています。

 そこで、大臣に伺います。

 今回、法改正の中身を見ると、難民認定制度の運用を見直したり、収容に代わる監理措置を創設したり、不十分とはいえ、入管側の問題点も改善しようとはしています。でも、入管側に問題点があること自体をなかなか認めません。収容長期化の原因は外国人側の送還忌避だけですか、ほかにあるならそれは何ですか、ここは率直に説明すべきです。認識を伺います。

 日本に家族がいるなど国内の事情でとどまる場合は在留特別許可、本国での迫害のおそれなど国外の事情でとどまる場合は難民認定。

 在留特別許可について、これまで入管裁量のブラックボックスだったのが、今回、申請手続ができ、判断基準が明示され、不許可の場合は理由が告知されるようになることは評価します。

 他方、難民認定については、これまで、迫害の解釈が余りにも狭過ぎる上、着のみ着のままで逃げてきた当事者に客観的な証拠を要求するなど、問題が数々指摘されてきました。今回の運用の見直しにより迫害の解釈は適切に広がるのか、入管側の情報収集能力向上によって当事者側の過度な負担を減らせるのか、具体策をどう準備しているのか、伺います。

 また、人種や宗教など特定の理由による迫害から保護する場合は難民制度を使い、無差別攻撃による命の危険など、条約上の難民と認定し難い場合は補完的保護対象者とする、こうした制度区分が提案されていますが、その実効性を伺います。

 ウイグル、香港、ミャンマーなど人権弾圧国から日本に来ている外国の方々にとって、今回新設される制度や難民認定運用の見直しは送還の不安を解消するものとなっているのでしょうか。人権国家の法務大臣として、心ある答弁を求めます。

 今回、施設に収容せず、監理人の下で社会生活を営む制度の新設が提案されています。全件収容主義という基本方針の転換と捉えてよいのでしょうか。お答えください。

 また、この監理人については、罰則つきの厳しい監理責任を定める一方、報酬の定めがありません。引受手は確保できるのでしょうか。実際、なんみんフォーラムが弁護士や支援団体を対象にアンケートしたところ、六割の方が現に外国人を支援しているというこの母集団にもかかわらず、九割の方が現政府の提案では監理人になりたくてもなれないと答えています。

 大臣に伺います。

 罰則つきでは支援したくてもできないという声にどう応えますか。財政支援はあるのでしょうか。弁護士が監理人となった場合、違反行為の届出義務と守秘義務とが矛盾しませんか。答弁を求めます。

 入管側として改めるべきは改めた上で、送還忌避に該当する方には適切に帰国いただくことは国家として当然です。

 ただ、難民認定手続中であっても送還できるようにする、この制度変更には強い懸念を持ちます。本来保護すべき人を本国に帰してしまい、非人道的な結果をもたらすことはありませんか。

 申請三回目以上の方を送還可能とする提案について、三回目以上の申請でようやく難民認定され、救済された例が今まであるのかないのか、現在、三回目以上の申請者は何名いるのか、その方々は法改正を契機に送還されてしまうという事態があり得るのか、お答えください。

 私たち国民民主党は、他の野党の皆さんとともに、入管法改正案の対案を既に提出しています。難民認定の公正を保つための独立行政委員会を創設すること、全件収容主義を改めること、収容令状の発付は裁判所が行うものとすること。いずれも本質的な改正ですが、真摯に検討いただくべき提案だと思います。検討いただけますか。答弁を求めます。

 日本の出入国管理行政が国際社会から厳しい指摘を受けていることは事実です。どの国も国内に人権問題を抱えていますが、もっともな指摘には耳を傾け、内政の過程で健全に治癒できるか否かが国家の品格を左右します。この法改正の審議を通じて、日本は品格ある人権国家であることを示そうではありませんか。そのことを呼びかけて、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 山尾志桜里議員にお答え申し上げます。

 まず、長期収容の原因についてお尋ねがありました。

 現行法では、日本から退去すべきことが確定した外国人については、原則として、退去までの間、収容施設に収容することとされています。

 その上で、退去強制処分を受けた外国人が退去を拒み続け、かつ送還の妨げとなる事情がある場合に、収容が長期化する場合があるものと認識しています。

 また、現行の仮放免制度においては、対象外国人に対する指導助言を行う者が予定されていないため、仮放免できる者が限られます。

 こうした現状を踏まえ、本法律案において、監理人による監理に付することで逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり収容することなく社会内で生活させる措置として、監理措置制度を創設するものです。

 次に、難民認定制度の運用の見直しについてお尋ねがありました。

 難民の認定は、申請者が特定の人種、宗教、国籍等を理由に迫害を受けるおそれがあることについて、申請者ごとに判断しています。

 御指摘の、迫害の解釈を含め、難民該当性に関する規範的要素については、難民認定制度の透明性向上の観点から、現在、我が国及び諸外国でのこれまでの実務上の先例、UNHCR、国際連合難民高等弁務官事務所が発行する諸文書等を参考としつつ、その明確化を検討しています。

 また、UNHCR等の協力を得て、難民認定申請者の出身国情報や難民調査の手法等に関する研修を実施し、難民調査官の調査能力の向上に努めているところです。

 次に、補完的保護対象者の認定制度の創設や難民認定制度の運用の見直しの実効性についてのお尋ねがありました。

 現在も、難民条約上の難民とは認められない者であっても、本国情勢等を踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる者については、在留特別許可等により本邦への在留を認めているところです。

 また、本法律案では、難民条約上の五つの理由によらずとも迫害を受けるおそれがあり、かつそれ以外の難民の要件を全て満たすときは、難民に準じて補完的保護対象者と認定することとしています。

 本法律案や先ほど述べた運用の見直しにより、難民認定制度及び補完的保護対象者認定制度を適切に運用し、今後とも真に庇護を必要とする者を確実に保護してまいります。

 次に、収容と監理措置についてお尋ねがありました。

 監理措置は、収容に代わる選択肢として、当該外国人の逃亡のおそれの程度等を考慮して相当な場合には、監理人の監理に付する措置を取りながら、収容せずに退去強制手続を進めることとするものであり、個別の事案に応じてその決定を行うものです。

 そのため、法制度上、収容と監理措置のいずれかが原則という性質のものではありません。

 次に、監理人の届出についての罰則、監理人への財政支援、弁護士の守秘義務との関係についてお尋ねがありました。

 監理措置に付された者による逃亡等の条件違反行為を未然に適切に防止するため、監理人は、外国人の生活状況を把握しつつ、指導監督するとともに、必要な事項を届け出なければならないとしています。

 そして、そのような届出義務を担保するため、違反した場合は過料の制裁を科することとしたものであり、こうした届出義務の必要性を御理解いただけるよう、丁寧に説明を尽くしてまいります。

 監理人は、基本的には退去強制手続中の外国人の依頼を受けて就任するものであり、その依頼に基づく費用は当該外国人の側において負担すべきものであり、監理人に対する財政支援を行うことは適切ではないと考えています。

 弁護士が届出義務を履行した場合、弁護士の守秘義務に違反するかどうかは、個別の届出の内容等を踏まえて判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難です。

 もっとも、一般的に、弁護士の守秘義務は、当該秘密の主体の同意があれば解除されると考えています。

 次に、三回目以降の難民認定申請者を送還停止効の例外とすることについてお尋ねがありました。

 これまでに、三回目以降の申請に対し、難民認定手続で難民認定された事例は、確認可能な限り承知していません。

 また、令和二年に難民認定申請をした三千九百三十六人のうち、百七人が三回目以降の申請です。

 そもそも、送還停止効は、難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものです。

 既に二度、難民等の不認定処分が行政上確定した者は、二度にわたり難民等の該当性について判断され、その審査が十分に尽くされており、法的地位の安定を図る必要はないものと考えられます。

 もっとも、三回目以降の申請においても、難民等の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合は送還を停止することとしています。

 最後に、議員立法及び本法律案の修正についてお尋ねがありました。

 議員立法として提出されている法律案については、法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

 その上で、本法律案は、在留が認められない者を迅速に送還することとともに、在留を認めるべき外国人を適切に保護するため、在留特別許可の申請手続や補完的保護対象者の認定手続等を新たに設けること、収容されることなく退去強制手続を受けることを可能とする監理措置制度を創設すること、収容中の一層適正な処遇を実施すること等を内容としており、外国人の人権に十分に配慮した適正なものであると考えています。

 法務大臣としましては、こうした政府案に幅広く御理解をいただけるよう、今後の国会の御審議におきまして、丁寧に御説明を尽くしてまいりたいと存じます。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  武田 良太君

       法務大臣  上川 陽子君

       外務大臣  茂木 敏充君

       防衛大臣  岸  信夫君

       国務大臣  小此木八郎君

       国務大臣  丸川 珠代君

 出席副大臣

       法務副大臣 田所 嘉徳君


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