衆議院

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第26号 令和3年5月11日(火曜日)

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令和三年五月十一日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十八号

  令和三年五月十一日

    午後一時開議

 第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第二 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 第四 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 第五 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件

 第六 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(第百九十六回国会、逢沢一郎君外五名提出)

 第七 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件

 日程第六 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(第百九十六回国会、逢沢一郎君外五名提出)

 日程第七 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第百六十四番、北海道第二区選出議員、松木けんこう君。

    〔松木けんこう君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第一 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地方創生に関する特別委員長伊東良孝君。

    ―――――――――――――

 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊東良孝君登壇〕

伊東良孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地域の自主性及び自立性を高めるための改革を総合的に推進するため、地方公共団体等の提案等を踏まえ、地方公共団体に対する義務づけを緩和する等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月十九日本委員会に付託され、翌二十日坂本国務大臣から趣旨の説明を聴取し、二十七日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第二、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第三、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第四、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件、右四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長あべ俊子君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とセルビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジョージアとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とジョージアとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 日本国における経済協力開発機構の特権及び免除に関する日本国政府と経済協力開発機構との間の協定の規定の適用範囲に関する交換公文を改正する交換公文の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔あべ俊子君登壇〕

あべ俊子君 ただいま議題となりました四件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 日・セルビア租税条約は、令和二年七月二十一日に、日・ジョージア租税条約は、令和三年一月二十九日に、それぞれ署名されたもので、いずれも、我が国と相手国との間で、二重課税の除去並びに脱税及び租税回避行為の防止を目的として、課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び著作権等の使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 日・ジョージア投資協定は、令和三年一月二十九日に署名されたもので、我が国とジョージアとの間で、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資財産に対する内国民待遇及び最恵国待遇の供与等投資に関する法的枠組みについて定めるものであります。

 日・OECD特権・免除に関する改正交換公文は、令和三年二月十二日に書簡の交換が行われたもので、現行の交換公文を改正し、我が国がOECD及びその職員等に対して新たに与える特権及び免除等について定めるものであります。

 以上四件は、去る四月二十二日外務委員会に付託され、翌二十三日茂木外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。同月二十八日に質疑を行い、質疑終局後、まず、日・セルビア租税条約、日・ジョージア租税条約及び日・ジョージア投資協定について、討論の後、順次採決を行いましたところ、三件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決し、次に、日・OECD特権・免除に関する改正交換公文について採決を行いましたところ、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二ないし第四の三件を一括して採決いたします。

 三件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第五につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第六 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(第百九十六回国会、逢沢一郎君外五名提出)

議長(大島理森君) 日程第六、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 憲法審査会会長の報告を求めます。憲法審査会会長細田博之君。

    ―――――――――――――

 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔細田博之君登壇〕

細田博之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、憲法審査会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国民投票の投票人の投票しやすい環境を整えるため、投票人名簿等の縦覧制度の廃止及び閲覧制度の創設、在外選挙人名簿への登録の移転の制度の創設に伴う在外投票人名簿への登録についての規定の整備、共通投票所制度の創設、期日前投票制度の見直し、洋上投票の対象の拡大、繰延べ投票の期日の告示の期限の見直し、投票所に入ることができる子供の範囲の拡大等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、第百九十六回国会に提出され、平成三十年七月二日に本審査会に付託され、同月五日提出者から趣旨の説明を聴取した後、継続審査に付され、その後、さきの第二百三回国会の令和二年十一月二十六日及び十二月三日に質疑を行いました。

 今国会では、去る四月十五日趣旨の説明の聴取を省略した後、同日、二十二日及び五月六日質疑を行いました。

 質疑終局後、本案に対し、立憲民主党・無所属より、国は、この法律の施行後三年を目途に、投票人の投票に係る環境を整備するための事項並びに国民投票の公平及び公正を確保するための事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする規定を附則に追加する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案について内閣の意見を聴取した後、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の憲法審査会会長の報告は修正であります。本案を憲法審査会会長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は憲法審査会会長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第七 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第七、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長とかしきなおみ君。

    ―――――――――――――

 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔とかしきなおみ君登壇〕

とかしきなおみ君 ただいま議題となりました全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、全世代対応型の社会保障制度を構築するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、後期高齢者医療の窓口負担割合について、現役並み所得者以外の被保険者であって、一定の所得以上であるものは、二割とすること、

 第二に、健康保険の傷病手当金について、支給期間の通算化を行うこと、

 第三に、育児休業等を取得している者の健康保険等の保険料について、月内に二週間以上の育児休業等を取得した場合にも、その月の保険料を免除すること、

 第四に、国民健康保険の保険料について、未就学児に係る被保険者均等割額を減額し、その減額相当額を公費で負担すること

等であります。

 本案は、去る四月八日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、翌九日田村厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、十四日から質疑に入り、二十日には参考人から意見を聴取したほか、二十三日には菅内閣総理大臣に対する質疑を行い、五月七日質疑を終局いたしました。次いで、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣小此木八郎君。

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) ただいま議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案につきまして、趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、近年、我が国を取り巻く安全保障をめぐる環境が不確実性を増している状況に鑑み、我が国の安全保障等に寄与することを目的として、防衛関係施設、海上保安庁の施設等の周辺並びに国境離島及びその周辺の有人離島の区域内にある土地等の利用状況を調査するとともに、当該土地等がこれらの機能を阻害する行為の用に供されることを防止するための措置について定めるものであります。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、政府は、重要施設の施設機能及び国境離島等の離島機能を阻害する土地等の利用の防止に関する基本的な方針を定めることとしております。

 第二に、内閣総理大臣は、重要施設の敷地の周囲おおむね一千メートルの区域内及び国境離島等の区域内の区域で、その区域内にある土地等が当該重要施設又は当該国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要があるものを、注視区域として指定することができることとし、注視区域内にある土地等の利用の状況についての調査を行うこととしております。

 第三に、内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用者が当該土地等を重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認めるときに、当該利用者に対し、当該土地等を当該行為の用に供しないこと等を勧告するとともに、正当な理由がなくその勧告に係る措置をとらなかったときは、当該措置をとるべきことを命令することができることとしております。

 第四に、内閣総理大臣は、注視区域に係る重要施設又は国境離島等について、その機能が特に重要であり、又はその機能を阻害することが容易であって、他の重要施設又は国境離島等による代替が困難である場合には、当該注視区域を、特別注視区域として指定することができることとし、特別注視区域内にある一定面積以上の土地等について、所有権等の移転等をする契約を締結する場合には、原則として、その当事者があらかじめ内閣総理大臣に届け出なければならないこととしております。

 第五に、内閣府に、土地等利用状況審議会を設置することとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して一年三月を超えない範囲内で政令で定める日としております。

 以上が、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案の趣旨でございます。

 よろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中谷真一君。

    〔中谷真一君登壇〕

中谷真一君 自由民主党・無所属の会、中谷真一です。

 ただいま議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 対馬にある海上自衛隊施設周辺に隣接する土地が、韓国資本に買われ、韓国人観光客のためのリゾートホテルとなり、日本人が衝撃を受けてから十三年が経過しています。

 さらに、その後も、航空自衛隊千歳基地を見渡せる土地や、滝川市、倶知安町でも陸上自衛隊駐屯地に近い林や隣接地を中国企業が買収しています。また、安全保障上懸念がある土地取得において、一体誰が取得しているのか、また、何の目的で取得されたのかが分からないケースについて多数報告されています。

 これに対し、地域住民からは不安の声が上げられており、それを受けた地方議会では、政府に先んじて条例の制定がなされたり、政府への意見書が提出されるに至っております。

 また、諸外国でも同様の問題が起きており、国際情勢の緊迫化も手伝って、安全保障の観点から、土地の所有、利用をめぐる投資管理を強化する動きが見られます。

 我が国周辺も、米中摩擦の激化、香港、南シナ海に見られる中国の力による現状変更などにより、安全保障環境もこれまでとは全く違うフェーズに入っております。しかし、いまだに我が国においては、さきに述べたような意見書が提出されているものの、大きな実害が起きていないため、立法には早いのではないかという論調もあります。

 そこで考えていただきたいのは、相手の重要施設への妨害行為として考えられるものに、監視網の構築、電波妨害、施設へのライフライン供給の阻害、坑道の掘削等による施設への侵入等があります。もし私が相手ならば、この種の準備行為は意図を悟られないように静かに行います。なぜなら、事前に悟られてしまえば対処されてしまうからであります。

 他の分野と違い、安全保障においては、国民の生命身体を脅かす実害があってからでは遅いのです。

 私は、十年間、陸上自衛官として奉職いたしました。その経験の中で、安全保障における政治の重要性を強く認識し、今ここに立っております。この問題は、その重要性から、初当選直後から関わってまいりました。政治が行動しなければ、国の独立、主権、国民の命、暮らしを守り抜くことはできません。そして、今が、国民の負託に応え、行動すべきときと考えます。

 よって、まずは土地の取得の実態を国が的確に把握するとともに、相手の意図や行動が分かれば確実に対処できる制度的枠組みを予防的に構築しておくことが必要です。また、このことは相手に対しての抑止力にもなります。

 この点、菅総理も、この政権で成果を上げるようにしっかりと取り組むとの御決意を表明され、小此木大臣の強いリーダーシップの下、本法案をおまとめいただいたことに対し、大変心強く思います。

 我が国の安全保障をめぐる内外情勢が激しさを増している中、外国資本による土地の取得について、国民の不安が高まり、それを背景に、地方自治体から政府に対し、適切な対処を求める意見書が提出されています。

 まず、この法案の取りまとめに当たられた大臣の基本認識を伺います。

 先ほど述べた重要施設に対する妨害行為を意図するのは、外国人であるとは限りません。本法案に基づく措置は内外無差別の取扱いとすべきと考えますが、大臣の御所見を伺います。

 本法案で特に注目されるのが、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為に対処することです。ただ、何が重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為であるかが具体化されていなければ、幾ら調査を行っても、問題がないということになり、本法案は骨抜きになってしまいます。

 重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為とは何か、その具体化を図るべきと考えますが、大臣の御所見を伺います。

 次に、本法案の対象区域についてお尋ねいたします。

 地方自治体からの提言には、水源地や農地、リゾート地を対象としたものもありますが、本法案の対象区域は、重要施設の周辺や国境離島とされております。

 実際の区域指定は法定の手続に沿って行われるものと承知をしておりますが、具体的にどのような区域を想定し、法案の制度設計をされたのか、特に重要性が高いと思われる防衛関係施設の周辺と国境離島に関し、大臣の御所見を伺います。

 本法案では、土地の利用状況の調査をするとともに、特に重きを置く重要施設周辺や国境離島を特別注視区域とし、土地の所有権の移転に当たり、事前届出を課すとしております。

 しかし、これらの措置に対し、状況を隠すためダミーを用いることも想定され、単に公簿情報を見ただけでは、土地の所有、利用状況を明らかにすることが困難な場合もあります。この点を踏まえ、どのように実効性を担保するのかについて、大臣の御見解を伺います。

 最後に、我が党においても、安全保障と土地法制に関する特命委員会提言にも明記し、菅総理にも手渡しさせていただきましたが、安全保障上の懸念を伴う土地については、諸外国の例も踏まえ、過度な私権制限にならないように留意しつつも、必要な範囲で土地の取得自体を管理、制限できる仕組みを設けることが必要と考えます。

 本法案においては、土地の取引そのものの規制を設けず、調査及び利用規制にとどめた理由について、大臣の御見解をお伺いし、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 中谷議員から、六問御質問をいただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、政府の問題意識に関して、担当大臣としての所見について御質問いただきました。

 我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地を買収していることは、安全保障の観点から、長年問題視されてきた課題です。

 例えば、北海道千歳市の航空自衛隊千歳基地、長崎県対馬市の海上自衛隊対馬防備隊の周辺では、外国資本による土地の取得について、地域住民の不安が広がり、国会や地方議会で議論が行われてきました。

 全国各地の地方公共団体からは、安全保障の観点から土地の管理を求める意見書も提出されています。

 こうした状況を踏まえ、政府は、令和二年七月の骨太方針二〇二〇において、安全保障等の観点から、関係府省による情報収集など土地所有の状況把握に努め、土地利用、管理等の在り方について検討し、所要の措置を講ずる方針を閣議決定しました。

 我が国の安全保障をめぐる内外情勢は、近年、厳しさを増しています。多くの国民の不安に対応し、安全保障を確保するためには、土地の管理を含め、万全の対策を講ずる必要があると考えます。

 一方、国が、安全保障の確保という大義の下、土地に関する私権を過度に制限するのではないかという不安も指摘されていると承知しています。

 こうした中、昨年開催した国土利用の実態把握等に関する有識者会議からは、国民の権利との関係に十分留意しつつ新しい立法措置による実効的な枠組みを整備することについて提言をいただきました。

 政府としては、この提言を踏まえ、先ほど申し述べた二つの不安、この不安と向き合った上で、今般御審議いただく本法案を取りまとめました。

 具体的には、安全保障の観点から重要な防衛関係施設等の周辺や国境離島等の土地等の利用実態を調査し、必要に応じて利用を規制する、一方、私権制限への懸念が指摘される、土地等の取得、所有に対する幅広い規制にまでは踏み込まないという、安全保障と自由な経済活動の両立を図る枠組みとしたところであります。

 政府としては、早期の成立に向け、全力で取り組んでまいります。

 次に、内外無差別の取扱いについて御質問いただきました。

 安全保障の観点からリスクのある、防衛関係施設等の重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為については、その主体が外国人、外国法人であるか又は日本人、日本法人であるかにかかわらず、適切に対処することが必要です。

 このため、本法案では、中谷議員御指摘のとおり、内外無差別の枠組みとしております。

 すなわち、安全保障の観点からリスクのある土地建物については、それらの利用者が外国人、外国法人である場合に限定せず、利用の実態を調査し、必要に応じて利用規制を行うこととしています。

 なお、有識者会議の提言においても、我が国の法律に基づいて設立された会社であっても、実質的な所有者や支配者が日本人でないケースもあり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適切でないとされたところであります。

 次に、重要施設等の機能を阻害する行為について御質問いただきました。

 機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されます。

 このため、想定する行為の類型を網羅的にお示しすることは困難ですが、例えば、重要施設に関しては重要施設の機能に支障を来す構造物の設置など、国境離島等に関しては領海基線の根拠となる低潮線に影響を及ぼすおそれがあるその近傍の土地の形質変更などが、それぞれ、御指摘のあった機能阻害行為に該当し得るものと考えています。

 こうした機能阻害行為については、本法案施行後に閣議決定する基本方針において、想定される行為類型を例示することとしています。

 次に、防衛関係施設の周辺、国境離島の対象区域について御質問いただきました。

 まず、本法案に基づく調査や利用規制等の対象となる区域の指定の手続についてお答えします。

 御指摘のあった防衛関係施設の周辺や国境離島については、法律の要件や基本方針の内容に照らして、個々の区域を評価します。そして、新たに設置する土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、指定の要否、範囲等をそれぞれ判断することとなります。

 したがって、現時点において、本法案の対象区域は決定しておりません。その前提で、本法案の検討に当たり、対象区域として想定した防衛関係施設の周辺、国境離島の考え方についてお答えします。

 防衛関係施設に関しては、機能を阻害される用に供されることを特に防止する必要があるとの要件に該当し得る、部隊等の活動拠点となる施設、部隊等の機能支援を行う施設、装備品の研究開発等を行う施設、我が国の防衛に直接関連する研究を行う施設といった施設の周辺が、注視区域として指定の検討対象になるものと考えています。

 また、機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、他の重要施設による機能の代替が困難であるものとの要件に該当し得る、指揮中枢機能及び司令部機能を有する施設、警戒監視、情報機能を有する施設、防空機能を有する施設、離島に所在する施設といった施設の周辺が、特別注視区域として指定の検討対象になるものと考えています。

 なお、在日米軍施設・区域については、自衛隊施設の周辺区域の指定の考え方等を踏まえ、管理者である米軍との間で詳細を確認した上で、区域指定を検討する必要があると考えています。

 次に、国境離島における区域指定の考え方についてお答えいたします。

 領海基線を有する離島である国境離島に加え、有人国境離島法に基づく有人国境離島地域を構成する離島である有人国境離島地域離島において、それぞれ区域指定を行うこととしています。

 我が国が現に保全管理をしている国境離島のうち、無人であって、民有地が所在する島については、区域指定する必要性、緊急性が高いものと考えています。

 一方、有人国境離島地域離島のうち、領海基線を有する島では、領海基線近傍の範囲等が区域指定の検討対象になるものと考えています。また、領海基線を有しない島では、領海警備等の活動拠点となる港湾施設及び行政機関の施設等の周辺が区域指定の検討対象になるものと考えています。

 いずれにせよ、具体的な区域の指定については、国会での御審議も踏まえ、法定する手続に沿って適切に進めてまいります。

 次に、土地の所有及び利用状況を明らかにするための調査の実効性について御質問いただきました。

 本法案に基づく調査では、不動産登記簿等の公簿の収集による氏名、住所、国籍など、土地等の利用者等の把握だけでなく、現地・現況調査や報告徴収を通じた土地等の利用実態の把握、特別注視区域における事前届出制度を通じた土地等の買手の利用目的の把握なども行うこととしています。

 加えて、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や、地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みも今後検討いたします。

 このように、関係省庁の協力を得ながら、きめ細かい情報収集を行うことによって、できる限り具体的な実態把握に努め、調査の実効性を高めてまいります。

 最後に、取引規制を設けず、調査及び利用規制による対応とした理由について御質問いただきました。

 取引規制とは、一般に、土地等の取引を事前に審査し、安全保障の観点からリスクがあると認められる取引を規制する枠組みであると承知しています。

 こうした取引規制について、有識者会議の提言では、あらかじめ規制の基準や要件を明確に定めることが困難であり、慎重に検討すべきこととされたところであります。

 政府としては、この提言を踏まえ、本法案では取引規制は導入しないことといたしました。

 他方、本法案には、安全保障の観点からリスクのある土地等の利用行為に対する中止の勧告、命令のほか、国が土地の買取りの申出を行う等の措置を盛り込んでおり、全体として、制度の実効性を担保してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 篠原豪君。

    〔篠原豪君登壇〕

篠原豪君 立憲民主党の篠原豪です。

 会派を代表し、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず、国民にとって最大の関心事である新型コロナワクチンの接種について、総務省新型コロナワクチン接種地方支援本部長である武田総務大臣にお伺いいたします。

 昨日の予算委員会で、菅総理は、六十五歳以上の高齢者のワクチンの接種の終了見込み時期について、約千七百市町村のうち約千市町村から七月末までに接種終了との回答を得ました、その旨の答弁をされました。では、その約千市町村の六十五歳以上の人口は全国六十五歳以上人口三千六百万人の何%に当たりますか。お伺いいたします。

 また、七月末までに、希望する六十五歳以上の高齢者全員に計二回のワクチン接種をするという目標を達成させる責任を担う大臣は、武田総務大臣なのか、田村厚労大臣なのか、河野ワクチン担当大臣なのか、それともひとえに菅総理大臣なのか、明確に御答弁ください。

 さて、本題に入ります。

 近年のグローバル化した世界において、伝統的な安全保障に加え、経済安全保障の重要性が指摘されています。昨秋に結成された我々立憲民主党は、野党第一党として、次期総選挙において政権交代後の政策を担うため、外交・安全保障・主権調査会を立ち上げ、経済安全保障を含む幅広い政策について積極的な党内議論を行っています。

 その意味で、重要施設周辺や国境離島などにおける土地の利用についても、国会において十分議論をし、安全保障上の懸念を払拭する法律案を得ることは、極めて重要だと考えています。

 ただし、本法案は、平常時の土地取引行為や私権設定に大きな影響を及ぼすため、法の目的や手段の合理性、政府による十分な説明と国民の理解が不可欠であると考えます。こうした立場から、政府案の問題点を指摘してまいります。

 第一の問題は、本法律案の目的や手段が立法事実に基づいて合理的なものになっているのかという点です。

 二〇二〇年の十二月二十四日、国土利用の実態把握等に関する有識者会議が発表した提言には、法制定に至る経緯を次のように述べています。

  国境離島や防衛施設周辺等における土地の所有・利用を巡っては、かねてから、安全保障上の懸念が示されてきた。経済合理性を見出し難い、外国資本による広大な土地の取得が発生する中、地域住民を始め、国民の間に不安や懸念が広がっている。例えば、長崎県対馬市では海上自衛隊対馬防備隊の周辺土地が、また、北海道千歳市では航空自衛隊千歳基地の周辺土地が、それぞれ外国資本に取得され、地域住民の不安や懸念を背景に、市議会において、様々な議論が行われている。

と述べています。

 そして、その後に、

  安全保障は、国民の安全・安心及び自由な経済活動の基盤である。実際に問題が発生してからの対応では手遅れになる。

としており、現段階では安全保障上の問題の発生は確認をされていないことも示唆しています。

 そこで、確認ですが、二〇一〇年の外国人土地法に関連した政府答弁書で、外国人等による自衛隊施設の周辺の買収が部隊等の運営に支障を及ぼしているとは認識していないと述べられています。しかし、今回、この法律案を出したということは、二〇一〇年以降、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島などで、安全保障上のリスクとなるような土地取引が行われたと認識しているかどうか、お答えください。

 仮に、実際に問題が発生してからの対応では手遅れになるとの問題意識だけで立案されたのであれば、土地買収への地域住民の不安や懸念を立法事実として提言に述べているわけですから、阻害行為の調査に入る要件として、地元自治体からの要請を加えるべきではないでしょうか。この点についてもお伺いいたします。

 また、提言で言及されている長崎県対馬や北海道千歳市の事例ですが、政府は、これらを経済合理性を見出し難い外国資本による広大な土地の取得に該当するとお考えでしょうか。経済合理性の欠如が、具体的にどのように我が国の安全保障上のリスクとなり得るのでしょうか。この点についてもお伺いいたします。

 その上で、経済合理性欠如の事例に相当しないのであれば、この提言で取り上げた意味がどこにあるのかについても確認をさせていただきます。

 次に、第二の問題です。

 第二の問題は、土地の利用の規制対象が、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為と規定されている点です。

 我が国には、既に、幾つかの、地域を指定して土地の利用規制を行っている法律が存在します。例えば、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法で規制対象とされる行為は、一、建築物その他の工作物の新築、改築又は増築、二、宅地の造成、土地の開墾その他の土地の形質の変更、三、木竹の伐採、四、土石の類の採取、五、建築物その他の工作物の色彩の変更、六、屋外広告物の表示又は掲出とされています。つまり、各行為は外形的に規定されているので、どのような行為が具体的に規制対象に該当するのか、規制する側とされる側で見解が異なる余地はありません。

 ところが、今回の法案では、規制対象となるべき行為を、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為と述べているだけです。その意味は、安全保障上のリスクとなる行為ですので、規制する側がそのように判断しても、指摘された側がそうした判断に同意しない可能性は大いにあると思います。こうした事態が起こった場合、どのように対処されるつもりなのか、お伺いをさせていただきます。

 こうした問題が起こるのは、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為とした規定に十分な予見可能性がないからではないかと考えています。これでは、我が国が法治国家であるときちんと主張できるのかどうか。政府は法的予見性の重要性についてどのように考えているのでしょうか。お考えを伺います。

 法的予見性を確保するには、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為の内容を法律に具体的に書き込む以外にはないのでしょうか。

 そこで、現時点で重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為として想定される具体的な行為としては、一つに、施設の運営に支障を来す構築物の設置、二つ目に、電波妨害、施設への侵入の準備行為、三つ目に、低潮線近傍土地等への形質の変更が挙げられています。ですので、せめてこれだけでも法律に明示をし、それ以外は政令に委ねる旨を規定するよう要求したいと考えますが、政府として受け入れていただける考えがあるかどうか、お伺いをいたします。

 さらに、国会の関与なく、行政府の専断で指定が行われる事例は、重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為だけにとどまりません。注視区域、特別注視区域を指定する場合にも、距離範囲を一キロ以内で、政府の裁量で判断することになっています。

 判断基準を、理由も含めて法律の中で明確にすべきではないかと考えます。なぜ国会の関与を排除するのか、その理由もお伺いいたします。

 国会の関与を排除した結果は明らかです。

 本法律案では、特定重要施設として、司令部機能や警戒監視機能を有する自衛隊の駐屯地や基地等を想定していますが、三月二十九日付の産経新聞社説「主張」には次のように報じられています。

 問題は、司令部機能を持つ自衛隊施設などの周辺や無人の国境離島を特別注視区域に指定して一定面積以上の売買に事前の届出を義務づける規定が、大幅に骨抜きされた点にある。法案取りまとめの過程で政府・自民党が公明党に譲歩をし、特別注視区域の対象から市街地を排除できるようにしてしまった。自民、公明両党は、同法施行時には、東京・市谷の防衛省を含む市街地や、海上保安庁の施設、原発などの重要インフラを特別注視区域に指定しないことを確認したとのことです。

 同様の言及は四月三日の朝日新聞にも社説でありますが、政府はこうした報道で指摘された事実関係についてどのように弁明をされるのか、お伺いいたします。

 次に、第三の問題についてです。本法律案では、政府が安全保障上重要な土地や建物の所有、利用状況を正確に把握するため、土地等の利用状況の調査が定められていることです。

 まず、個人情報の取扱方法について法律案に何の規定も設けていないことは、根本的な欠陥だと考えます。政府はこの指摘にどう応えるか、お伺いいたします。

 調査の最大の懸念は、国の様々な機関が持っている情報を一元管理することです。

 申請や届出などによる国への個人情報の提供は、各々別個の目的を持った法律に基づいて行われています。つまり、そうして提供された個人情報は、法律に明示された目的のために使われるのであって、他に流用することは、本人の同意がない限り許されません。本人の同意なく住民基本台帳や固定資産課税台帳を見られるのは、犯罪捜査などの目的がある場合に限られます。

 ところが、今回の情報収集の目的は安全保障上のリスク対象であるか否かの判断材料にすることにあり、場合によって懲役刑に付される可能性もあるわけです。これは、明らかに目的外使用に当たるのではないでしょうか。政府の見解を求めます。

 さらに、問題は、調査が際限なく広がるおそれがあることです。

 なぜなら、不動産登記簿や固定資産税の課税台帳など、国が管理する様々な一般情報、あるいは国籍や外形的な利用実態が分かっても、公開情報をベースとしている限り、特定の土地や建物の利用実態が我が国の安全保障に問題となるような不適切な利用行為に該当すると断定できるとは到底考えられないからです。

 法案は、第七条、その他政令で定める情報の収集、さらには、第八条、土地等利用状況調査のためなお必要があると認められるときは、当該土地利用に関し報告又は資料の提出を求めることができるとしていますが、これらの手続に国会のチェックは及ばず、政府のさじ加減一つでいかようにもなります。

 そこで、調査が個人の経歴や思想、信条、家族、友人関係にまで及ぶことを想定しているのか。また、想定している場合には、政府の濫用を防止する明確な歯止めがどこにあるのかをお伺いいたします。

 また、本法律案の所管は内閣府となっていますが、内閣府は沖縄総合事務局以外の地方支分部局を持たないので、内閣府の職員のみで調査を行うことは到底できません。となれば、基地周辺の調査は、事実上、自衛隊員が行うものと思われます。

 他方、これまでの歴史的経緯から、基地周辺には反対運動を行っている方々や施設等があり、特に、沖縄ではそうした住民運動も盛んです。

 こうした人々の個人情報を自衛隊が収集することは、地元の民意を封殺することにつながり、極めて問題が大きいというふうに考えます。こうした事態に政府はどのように対応していこうと考えていらっしゃるのかもお伺いいたします。これは、小此木大臣、岸防衛大臣、お二方にお伺いします。

 なお、農地や水源地等について、それを管理する法律はあるにせよ、安全保障上のリスクになる可能性はゼロではなく、それへの対処は従前の法律では不可能と考えます。政府はこうした点をどのように考慮したのかも御説明願います。

 安全保障、特に経済安全保障は、国民のふだんの行為を問題とし、それを規制しようとするものであります。

 その意味で、立法は極めて慎重かつ丁寧に行う必要がありますので、党派に関係なく、以上の問題点を真摯に受け止めていただき、よりよい法律となりますようしっかりと議論をしていただきますことを強くお願いさせていただき、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 篠原議員より、十四問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、二〇一〇年以降における、安全保障上のリスクとなるような土地取引の有無について御質問いただきました。

 御指摘のような事例が過去にあったか否かについては、安全保障上のリスクを回避する観点から、お答えすることは適当でないと考えます。

 その上で、例えば、二〇一四年頃に、北海道千歳市の航空自衛隊千歳基地の周辺における外国資本による土地の取得について、地域住民の不安が広がり、国会や地方議会で議論が行われてきたと承知しています。

 また、二〇一〇年以降においても、全国各地の地方公共団体からは、安全保障の観点から土地の管理を求める意見書も提出されています。

 本法案については、このような国民の不安に対応するために、昨年開催した有識者会議の提言を踏まえ、取りまとめたものであります。

 次に、調査に関する地元自治体からの要請について御質問いただきました。

 本法案は、安全保障の確保等の観点から、重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為を防止することを目的とするものであり、国の責任において判断し、執行すべきものと考えています。

 このため、地元自治体からの要請を調査開始の要件とはしていません。

 他方、地域社会の実情を把握している地方公共団体の協力を得つつ本法案を執行していくことが重要であることから、区域指定を行う前に、指定区域の所在する地方公共団体との意見交換を行ってまいります。

 次に、有識者会議の提言で記載されている事例について御質問いただきました。

 まず、政府として、民間の個別の経済活動について、経済合理性があるか否かをお答えするのは必ずしも適切でないと考えます。

 その上で、一般論として、目的が明らかでないと考えられる土地取得が安全保障上のリスクとなるかどうかは、直ちに評価できません。

 他方で、我が国の防衛関係施設の周辺や国境離島等は安全保障上重要な地域であり、経済合理性が見出し難い外国資本による土地取得について、その意図が不透明であるとして、地域住民の不安が広がっている事例もあると承知しています。

 今般の法案は、こうした多くの国民の不安に対し、安全保障上、取り返しがつかない事態となることのないよう、取りまとめたものであります。

 次に、有識者会議の提言で記載されている事例を取り上げた趣旨について御質問いただきました。

 繰り返しとなりますが、政府として、民間の個別の経済活動について、経済合理性があるか否か、お答えをするのは適切でないと考えます。

 その上で、北海道千歳市の航空自衛隊千歳基地の事例や長崎県対馬市の海上自衛隊対馬防備隊の事例については、当該施設の周辺で外国資本による土地取得があり、両市議会で懸念が示されたことから、有識者会議の提言において、地域住民に不安が広がっている事例として取り上げられたものと承知しております。

 次に、機能阻害行為に対する措置について御質問いただきました。

 機能阻害行為については、予見可能性の確保の観点から、閣議決定する基本方針において、想定される行為をできるだけ具体的に例示したいと考えております。

 その上で、注視区域内の土地等の利用者に対する勧告を行うに当たっては、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、その行為の安全保障上のリスクを評価し、措置の必要性及び妥当性について慎重に判断してまいります。

 また、勧告等の対象となった土地等の利用者に対しては、勧告等の理由、措置の必要性について十分に説明を行い、理解を得るよう努めてまいります。

 その上で、本法案に基づく当該土地等の利用の中止等の命令に不服がある場合は、行政不服審査法に基づく不服申立てや行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟を行うことが可能であり、これらの枠組みによって対応することとなります。

 次に、法的予見性の重要性について御質問いただきました。

 法律による規制については、国民に対し予見可能性を確保することが必要であることから、本法案においても、規制の対象について、「重要施設の施設機能又は国境離島等の離島機能を阻害する行為」と明記しております。

 一方、機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、全ての類型を個別具体的に規定することは困難であると考えております。

 このため、国民の予見可能性の一層の確保に資する観点から、機能阻害行為については、条文上の規定に加えて、閣議決定する基本方針において、想定された行為をできるだけ具体的に例示したいと考えております。

 次に、機能阻害行為として想定される行為を法律等に規定することについて御質問いただきました。

 議員の御指摘は、機能阻害行為を法律及び政令において限定列挙すべきであるという趣旨と認識いたしますけれども、先ほども申し上げたとおり、機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、全ての類型を個別具体的にお示しすることは困難です。

 仮に、法律や政令において機能阻害行為の類型を限定列挙することとした場合、その類型を潜脱する行為や明示された類型以外の機能阻害行為を助長するおそれがあると考えております。

 このため、法律等の規定において機能阻害行為の類型を限定列挙することは適当ではないと考えています。

 次に、注視区域や特別注視区域の指定手続について御質問いただきました。

 区域の指定については、有識者会議から、予見可能性の確保や過度な負担防止の観点から、施設からの一定の距離で範囲を設定しておくことが適当である、ただし、距離の基準を一律に設定することは必ずしも適当ではない、安全保障の観点から、施設の性格やその区域の地理的な特性等を総合的に勘案して、ケース・バイ・ケースで柔軟に設定し得る仕組みとしておくことが適当との提言をいただきました。

 これを踏まえ、本法案では、一律の距離基準を設けず、重要施設の機能を阻害する行為が相当に懸念される範囲の目安として、その敷地からおおむね一千メートルを区域の範囲を上限として設定したところであり、国会の関与を排除する趣旨ではありません。

 なお、制度運用の適正さを確保する観点から、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、指定の要否や範囲等の判断を行うこととしております。

 また、区域指定された場合には、法定の手続に沿ってその区域等を官報で公示するほか、本法案に基づく措置の実施状況については、毎年、国会を含め、広く国民に対して公表してまいります。

 次に、特別注視区域の指定について御質問いただきました。

 特別注視区域として、いかなる区域を指定するかについては、法施行後に、法定する手続に沿って決定することとしております。

 したがって、現時点において、御指摘のあった市谷の防衛省や海上保安庁の施設、原発などの重要インフラの周辺について、特別注視区域の対象から除外することを決定した事実はありません。

 本法案に基づく注視区域又は特別注視区域の指定に当たっては、指定に伴う社会経済活動への影響も勘案しつつ、個々の区域ごとに指定の要否、区分等を慎重に判断してまいります。

 次に、個人情報の取扱いについてですが、本法案に基づく調査により収集された個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、個人情報の漏えい防止のため必要な措置を講じるなど、適切な管理が求められます。

 このため、本法案においては、個人情報の取扱方法に関する規定を設けていないところであります。

 なお、本法案の第三条において、個人情報の保護に十分配慮することとしており、個人情報の保護、管理には万全を期してまいります。

 次に、個人情報の目的外利用について御質問いただきました。

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律や地方公共団体における個人情報保護条例では、個別の法令に根拠がある場合に、個人情報の外部提供や目的外利用を行うことができることとされております。

 本法案においては、関係行政機関、関係地方公共団体等が保有する情報を土地等利用状況調査に活用するため、第七条で、内閣総理大臣は、関係行政機関、関係地方公共団体等に対し、指定区域内にある土地等の利用者等に関する情報の提供を求めることができ、当該求めがあったときは、関係行政機関、関係地方公共団体等は、その情報を提供することを規定しております。

 次に、本法律案に基づく調査の内容について御質問いただきました。

 本法案に基づく調査は、注視区域内にある土地等の利用状況を把握するために行うものであります。

 第七条において、内閣総理大臣が、調査の一環として、関係行政機関の長等に提供を求めることができる情報は、氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られています。

 また、第八条において、内閣総理大臣は、対象区域内にある土地等の利用者等に対し、報告徴収等を行うことができますが、報告等を求めることができる事項は、条文上、土地等の利用に関するものに限定されます。

 このため、本法案に基づく調査では、注視区域内にある土地等の利用者等について、その土地等の利用に関連しない、例えば、御指摘のあった思想、信条等に係る情報を収集することは想定しておりません。

 次に、本法案に基づく調査の体制について御質問いただきました。

 本法案に基づく調査としては、不動産登記簿等の公簿の収集、土地等の利用者等からの報告徴収、現地・現況調査があります。

 このうち、公簿の収集及び報告徴収については、内閣府に新設する部局が一元的に実施し、情報管理を行います。

 現地・現況調査については、必要に応じて重要施設等の所管省庁及びその地方支分部局に協力を依頼することも想定しております。具体的な協力の在り方については現在検討中ですが、現地・現況調査は、対象区域の土地等の利用実態の把握のために行うものであり、御指摘のような運動を調査するものではなく、御懸念のような事態が生じることはありません。

 最後に、農地、水源地等の取扱いについて御質問いただきました。

 農地や水源涵養機能を有する森林については、現行の農地法や森林法において、食料の安定供給や国土の保全等を目的として、土地取得の際の許可や届出等といった措置が講じられています。

 有識者会議の提言においても、既存の措置があることを踏まえ、これらの土地を対象とすることについては慎重に検討していくべきとされ、また、防衛関係施設の周辺や国境離島の土地は、まず最優先で制度的枠組みの対象とすべきとされたところであります。

 このため、本法案に基づく調査等の対象には、重要施設の周辺や国境離島等に所在するもの以外の森林や農地は含めないこととしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 篠原議員にお答えをいたします。

 本法案に基づく調査の体制についてお尋ねがありました。

 本法案に基づく調査としては、不動産登記簿等の公簿の収集、土地等の利用者等からの報告徴収、現地・現況調査がありますが、このうち、公簿の収集及び報告徴収については、内閣府に新設する部局が一元的に実施し、情報管理を行うものと承知をしています。

 その上で、現地・現況調査に際しては、必要に応じて重要施設等の所管省庁及びその地方支分部局が協力することも想定されますが、具体的な協力の在り方については、内閣官房において検討中と承知をしております。

 防衛省としては、本法案は我が国の国防上の基盤である防衛関係施設の機能発揮を万全にする観点から大きな意義があるものと考えており、適切に連携してまいります。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 篠原議員からの御質問にお答えをいたします。

 新型コロナワクチンについて御質問をいただきました。

 先般、総理から私に対して、自治体支援に万全を期すよう指示があったことを踏まえ、総務大臣として、国と地方公共団体の連絡調整を所掌する立場から、予防接種法を所管する田村大臣及びワクチン接種を円滑に推進するための事務の調整を担当する河野大臣と、接種事務を担う自治体との連携協力がスムーズに行われ、希望する高齢者に七月末を念頭に各自治体が二回の接種を終えることができるよう取り組んでおります。

 このような中、自治体ごとの状況を確認したところ、取組の熟度や精度に差はあるものの、見込みとして、七月末までに高齢者に二回の接種を終えられる状況にあるとしている自治体が、先週までの時点では、おおむね千自治体となっております。

 そうした中、四月三十日には、厚労省より、自治体ごとのワクチンの割当ての見通しとともに、休日や夜間における接種単価の引上げなど、早期接種に向けた一層の措置が示されたところであります。

 こうした様々な対応が講じられた中で、自治体の接種計画について、現在、厚労省と連携して調査を行っているところであり、その結果がまとまりましたら、可能な範囲で示してまいりたいと考えております。

 引き続き、自治体の取組状況や課題等をお伺いし、関係省庁にフィードバックするなど、課題解決に向けて個別に、丁寧な支援を行い、希望する高齢者に七月末を念頭に各自治体が二回の接種を終えることができるよう、政府一丸となって全力で取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 濱村進君。

    〔濱村進君登壇〕

濱村進君 公明党の濱村進です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました重要土地等調査法案について質問いたします。(拍手)

 政府は、二〇一三年十二月十七日に閣議決定された国家安全保障戦略において、国家安全保障の観点から国境離島、防衛施設周辺等における土地所有の状況把握に努め、土地利用等の在り方について検討するとの方針を示されました。また、二〇一八年五月十五日に閣議決定された海洋基本計画においては、国境離島についても同様の方針が示されました。

 その上で、昨年の経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇において、安全保障等の観点から、関係府省による情報収集など土地所有の状況把握に努め、土地利用、管理等の在り方について検討し、所要の措置を講ずることを決定いたしました。

 本法案は、こうした議論の延長線上にあるものと認識しており、公明党としても、安全保障上のリスクに適切に対応するためには、政府が重要な土地の所有、利用状況を把握することができる必要性があると考えております。

 現状では、国や地方自治体は、不動産登記簿、固定資産課税台帳等、それぞれの行政目的のために土地の所有、利用に関する情報を保持しておりますが、安全保障の観点から必要な情報が網羅されているわけではありません。また、その情報は各担当部局において分散管理されているため、必要な情報を政府が一元的に集約し、分析することはできません。さらには、調査の結果、不適切な利用実態が明らかになったとしても、個別法令で対処できることは限られております。

 本法案により、安全保障の観点から必要な情報を一元的に集約、分析が可能となり、不適切な利用について防止することができる法的根拠を整備することになると理解いたしますが、本法案の必要性と目的について、小此木担当大臣に伺います。

 世界に目を向けますと、経済活動がグローバル化し、国際的な不動産投資が進展する中、各国で投資に対する規制の取組が進んでおります。

 例えば、米国では、外国投資リスク審査現代化法により、対米外国投資委員会に事前届出が必要で、CFIUSは、審査や調査、取引内容の変更を求める交渉が可能であるだけでなく、安全保障上の懸念が解消されない場合には、大統領による取引中止命令が可能であります。二〇二〇年二月に、この審査対象に軍事施設近傍の不動産購入等が追加されました。

 また、オーストラリアでは、本年の一月一日に施行された、外資による資産取得及び企業買収法の改正により、外国人投資家が国家安全保障通知義務行為を行う場合、事前承認が必要となりました。

 さらには、英国では、先日の四月二十九日に、国家安全保障及び投資法が成立し、原子力発電や通信、防衛等、十七の分野への対内直接投資について、事前届出が義務づけられました。なお、土地建物は事前届出の対象外ではあるものの、国務大臣が取引に関し安全保障上の脅威を認めた場合、審査の対象となり得ることとなっております。

 米国やオーストラリアのように、WTOのサービス取引に関する国際ルールに留保を付しているため、専ら外国人や外国資本のみを対象とする制度を設けている国がある中で、日本は、GATSのルールに基づいて、内外無差別の原則を前提とした法整備を行うこととしております。

 技術やデータ、サプライチェーンをも含めた国際貿易の枠組みづくりにおける経済安全保障の確立と我が国経済の持続的成長の両立を図るためには、米国と欧州の間で、機能不全に陥っているWTOに対して、その役割を再確認し、改革を主導するべきと考えますが、茂木外務大臣の御所見をお伺いいたします。

 財産権の制約について伺います。

 日本国憲法第二十九条第一項において、「財産権は、これを侵してはならない。」とあり、土地を所有し、その所有権に基づき自由に利用することは保障されております。

 一方、第十二条において、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とあり、第十三条において、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあり、また、第二十九条第二項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」としております。

 安全保障の確保は、国民の生命、身体及び財産の保護等のために必要不可欠な要素として、国民の平穏な生活の実現に資するものであり、そのためには財産権を一定の範囲で制約することは、公共の福祉による制約として、許容され得ると考えられますが、小此木担当大臣の御所見を伺います。

 土地取引の大半が善意の経済活動であり、日本人、外国人を問わず、全ての人を対象とする制約を課すため、安全保障の確保と自由な経済活動を両立させなければなりません。

 本法案の総則である第三条では、個人情報の保護に十分配慮しつつ、注視区域内にある土地等が重要施設の施設機能又は離島機能を阻害する行為の用に供されることを防止するために必要な最小限のものとなるようにしなければならないと規定されております。

 この規定によって、法律の解釈、基本方針や運用にどのような効果が生じることとなるのか、小此木大臣にお伺いいたします。

 調査、規制の対象となる注視区域、特別注視区域の指定について伺います。

 例えば、防衛関係施設であれば全ての施設が指定を受けるというわけではなく、事務所施設や宿舎施設のように、その有する機能の阻害を特に防止する必要があるとまでは言えず、要件に合致しなければ区域指定はしないと認識しております。

 では、注視区域、特別注視区域に指定する基準は、それぞれどのような要件を想定しておられますか。また、四条二項二号にある経済的社会的観点から留意することで、どのような影響が生じると想定しておられますか。区域指定の基本的な考え方について、小此木大臣に伺います。

 本法案は、法施行後五年経過時に、施行の状況について検討を加え、必要に応じて見直しを行うこととされております。そのためにも、適切な基本方針を設定し、施行後の実施状況を評価、検証することができる人員、体制の整備も必要であることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 濱村議員から、四問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、本法案の必要性と目的について御質問いただきました。

 我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地を買収していることは、安全保障の観点から、長年問題視されてきた課題です。

 例えば、航空自衛隊千歳基地、海上自衛隊対馬防備隊の周辺では、外国資本による土地の取得について、地域住民の不安が広がり、国会や地方議会で議論が行われてきました。

 全国各地の地方公共団体からは、安全保障の観点から土地の管理を求める意見書も提出されています。

 我が国の安全保障をめぐる内外情勢は、近年、厳しさを増しています。多くの国民の不安に対応し、安全保障を確保するためには、土地の管理を含め、万全の対策を講ずる必要があると考えます。

 こうした認識の下、昨年、国土利用の実態把握等に関する有識者会議を開催したところ、この有識者会議からは、国民の権利との関係に十分留意しつつ新しい立法措置による実効的な枠組みを整備することについて提言をいただきました。

 本法案は、その提言を踏まえて取りまとめました。

 具体的には、我が国の安全保障等に寄与することを目的として、防衛関係施設等の重要施設の周辺及び国境離島等の区域内にある土地等に関し、政府が一元的に情報を集約、管理し、利用実態の調査を行う、そして、調査の結果、重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為が明らかになった場合には、その利用の中止の勧告、命令を行うなどの措置を定めております。

 次に、安全保障の確保のために財産権を一定の範囲で制約することについて御質問いただきました。

 安全保障の確保は、国民の安全、安心な生活及び自由な経済活動の前提であり、そのために必要最小限の範囲で私権を制限することは、許容されるものと考えています。

 有識者会議の提言でも、財産権の保障が重要であることは論をまたないが、我が国の安全保障の確保のために財産権を一定の範囲で制約することは、公共の福祉による制約として、許容され得ると考えられるとされたところであります。

 本法案は、公簿収集等による土地等の利用状況の調査を行った結果、防衛関係施設等の機能を阻害する土地等の利用が判明した場合に限って、その利用の中止を勧告、命令する等の措置を取り得るとしております。

 こうした措置は、安全保障の観点からリスクとなる、重要施設及び国境離島等の機能を阻害する土地等の利用を防止するために必要最小限のものとしており、国民が平穏な日常生活を送り、あるいは経済活動を行うことを妨げることはないものと考えています。

 次に、第三条の規定と法律の解釈、基本方針や運用との関係について御質問いただきました。

 第三条は、我が国の安全保障と自由な経済活動の両立を図るため、法の目的の達成に必要な最小限度の範囲で本法案に基づく措置を行うという基本的な考え方を定めたものです。

 本規定を踏まえ、基本方針を策定し、そして、実際の区域指定に当たっては、指定に伴う社会経済活動への影響に配慮しつつ、必要な最小限度のものとなるよう、指定の要否、範囲等について適切に判断することとしています。

 また、第八条に規定する報告徴収等についても、土地等の利用者の負担に配慮するという観点から、公簿等の調査の結果、なお必要があると認めるときに限り、行うこととしています。

 加えて、本法案に基づく調査では、不動産登記簿や住民基本台帳等の公簿の収集等を通じて個人情報を取り扱いますが、関係法令にのっとり、その保護、管理には万全を期してまいります。

 最後に、区域指定の基準及び第四条第二項第二号に規定する経済的社会的観点から留意する事項について御質問いただきました。

 注視区域や特別注視区域の指定に当たっては、先ほど申し上げたとおり、指定に伴う社会経済活動への影響に配慮することが必要です。

 このため、閣議決定する基本方針には、御指摘のあった第四条第二項第二号の規定を踏まえ、重要施設の周辺における密集市街地の形成状況等の地理的特性など、区域の指定に関し留意すべき事項を盛り込むこととしております。

 その上で、例えば、防衛施設に関しては、第五条第一項に規定する、機能を阻害される用に供されることを特に防止する必要があるとの要件に該当し得る、部隊等の活動拠点となる施設、部隊等の機能支援を行う施設、装備品の研究開発等を行う施設、我が国の防衛に直接関連する研究を行う施設といった施設の周辺が、注視区域として指定の検討対象になるものと考えています。

 また、第十二条第一項に規定する、機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、他の重要施設による機能の代替が困難であるものとの要件に該当し得る、指揮中枢機能及び司令部機能を有する施設、警戒監視、情報機能を有する施設、防空機能を有する施設、離島に所在する施設といった施設の周辺が、特別注視区域として指定の検討対象になるものと考えています。

 この特別注視区域の指定については、基本方針に定める経済的社会的観点から留意すべき事項を踏まえて評価した結果として、例えば、施設周辺の密集市街地の形成状況等に応じ、特別注視区域の要件に当たる区域であっても、当初は注視区域として指定することがあり得るものと考えています。

 いずれにせよ、具体的な区域の指定については、法施行後に、個々の重要施設の周辺や離島ごとに、法律の要件や基本方針の内容に照らして評価をして、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、必要最小限の原則を踏まえ、指定の要否、範囲等について個別に判断してまいりたいと思います。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 濱村議員から、WTO改革についてお尋ねがありました。

 日本経済及び世界経済の持続的成長の実現のためには、WTOを中核とする多角的貿易体制の維持強化が重要です。一方で、昨今のデジタル化の進展に対応した新たなルール作りやサプライチェーンの強化等の新しい課題も顕在化し、WTO改革は待ったなしの課題であります。

 日本として、年末の第十二回WTO閣僚会議を見据え、特に三点、一つは、輸出規制措置のルール化を含みます貿易と保健分野の取組、二つ目に、電子商取引を始めとする各種ルール作り、第三に、紛争解決制度改革を重視しております。

 こうした考えに基づき、私自身、米国やEU、またG7貿易大臣会合等において、WTO改革の進め方につき突っ込んだ議論をしてきておりまして、引き続き、喫緊のWTO改革を主導していきたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、土地利用規制法案について質問をします。(拍手)

 本法案は、政府が安全保障上重要とする全国の米軍、自衛隊基地、海上保安庁の施設、原発などの周囲約一キロメートル、さらに、国境離島で暮らす住民を全て監視の対象にし、土地建物の利用を中止させることを可能にするものです。憲法の平和主義と基本的人権を踏みにじる違憲立法にほかなりません。

 基地周辺住民は、軍用機の墜落や部品の落下、昼夜を分かたぬ爆音、環境汚染、軍関係者による犯罪など、基地あるがゆえの被害に日常的に苦しめられています。

 とりわけ、沖縄の住民は、米軍占領で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかったものであります。

 国策により負担を強いてきた住民を監視の対象にするとは一体どういうことですか。これほど住民を愚弄するものはありません。

 法案提出に当たり、昨年、政府が設置した有識者会議で、このことが一切議論されていないのはなぜですか。関係自治体、住民の意見は聞いたのですか。

 政府は、法整備の根拠として、北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地を外国資本が購入したことを挙げますが、それらが一部メディアで取り上げられるようになったのは十年以上も前のことです。

 当初から、政府自身が、運用に支障が生じるような事態は確認されていないと答弁し、さらに、二〇一三年以降、二度にわたり、全国約六百五十の米軍、自衛隊基地の隣接地を対象に、約六万筆、八万人近くの所有者らを調査してきましたが、結果は同じでした。

 法案の必要性、つまり立法事実自体が存在しないということではありませんか。

 にもかかわらず、具体的な根拠もなく、政府がこうした法整備に踏み切ることは、排外主義的な主張にお墨つきを与え、特定の国に対する差別と偏見を助長することになるのではありませんか。

 重大なことは、どこで誰をどのように調査、規制するのかという法案の核心部分を全て政府に白紙委任していることです。

 注視区域は、法案成立後の基本方針で指定の考え方を決め、新設する審議会の意見を踏まえ要否を判断するといいますが、全国何か所の施設と離島を対象に検討し、どういう基準で指定するのですか。

 特別注視区域の指定基準は何ですか。

 調査範囲を周囲一キロとし、他の施設や国境離島に拡大すれば、膨大な数の国民が調査対象にされるのではありませんか。

 重要施設や国境離島の機能を阻害する行為や、その明らかなおそれがあれば、土地建物の利用を中止させるとしていますが、それをどう判断するのですか。

 不動産登記簿や住民基本台帳などの公簿情報にとどまらず、職歴や海外渡航歴、思想、信条、家族、交友関係まで調査することになるのではありませんか。

 機能阻害行為の事例として、電波妨害やライフラインの供給阻害、施設への侵入などを挙げますが、これらは既に現行法で規制されているのではありませんか。

 沖縄では、政府が県民の民意を無視して強行する辺野古新基地建設に抗議の座込みが続けられていますが、こうした活動に適用しようというのですか。

 憲法が保障する基本的人権と民主主義、地方自治を守るための活動を処罰の対象にするなど、断じて容認できません。

 以上、本法案は廃案にするべきことを主張し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 赤嶺議員から、十問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、防衛関係施設の周辺の区域の住民を監視の対象とするのかという点について御質問いただきました。

 本法案は、安全保障等の観点から重要な防衛関係施設等の周辺や国境離島等の土地等の利用実態を調査し、必要に応じて、それらの機能を阻害する利用を規制しようとするものであります。

 御指摘のあった、対象区域の住民の方を監視するものではありません。

 有識者会議における住民の負担に関する議論、及び地方公共団体や住民からの意見聴取について御質問いただきました。

 有識者会議では、我が国の安全保障をめぐる内外情勢を踏まえた新たな制度の基本的な枠組みについて議論が行われました。その中で、新たな制度に伴う地方公共団体及び地域住民の負担や懸念の声などを考慮する必要性についても議論が行われたところであります。

 本法案のベースとなった有識者会議の提言は、こうした幅広い議論を経て取りまとめていただいたものです。

 また、有識者会議での議論に加え、防衛関係施設が所在する地方公共団体等とも意見交換を行いました。

 この意見交換の中では、例えば、住民の安全、安心な暮らしを確保するため、安全保障上重要な施設の周辺において、土地利用等の規制に係る関係法令の整備を行うべき、外国資本に限らず、土地取得後の利用に問題があれば、財産権の行使に一定の制限をかけることは問題ない、国が責任を持って安全保障上の必要性から相応の規制を行うことについては、国民生活の安定という観点からも評価できるなどの意見がありました。

 本法案に基づく措置を実施するに当たっては、地方公共団体の理解、協力を得ていくことは重要です。

 今後とも、関係する地方公共団体等とは丁寧に意見交換を行ってまいります。

 次に、法案の必要性、立法事実について御質問いただきました。

 御指摘のあった防衛省の調査は、全国六百五十の防衛関係施設の隣接地のみを対象として、土地登記簿謄本等による調査を行ったものです。

 これまで、住所、氏名から外国人による所有と類推される土地が七筆確認された一方で、登記簿の地目以上の利用実態までは把握できていないと承知しています。

 本法案が想定する機能阻害行為があったかどうか、あるいはその内容についてお答えすることは、安全保障の観点から、必ずしも適切でないと考えます。

 我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地の買収を行っていることは、安全保障の観点から、長年問題視されてきた課題であり、国会や地方議会でも議論されてきました。

 全国各地の地方公共団体からは、安全保障の観点から土地の管理を行うための法整備を求める意見書が提出されています。

 本法案は、そうした要請に応えるため、防衛関係施設等の重要施設の周辺や国境離島等における土地等の利用状況を調査し、必要に応じて、それらの機能を阻害する利用行為を規制するものとして、取りまとめたものです。

 次に、特定の国に対する差別と偏見を助長するのではないかとの懸念について御質問いただきました。

 安全保障の観点からリスクのある、防衛関係施設等の重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為については、その主体が外国人、外国法人であるか又は日本人、日本法人であるかにかかわらず、適切に対処することが必要であり、本法案は、内外無差別の枠組みとしています。

 すなわち、安全保障の観点からリスクのある土地建物については、それらの利用者が外国人、外国法人である場合に限定せず、利用の実態を調査し、必要に応じて利用規制を行うこととしています。

 したがって、本法案が特定の国に対する差別と偏見を助長するとの御指摘は当たらないと考えます。

 なお、有識者会議の提言においても、我が国の法律に基づいて設立された会社であっても、実質的な所有者や支配者が日本人ではないケースもあり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適切でないとされたところであります。

 次に、区域指定の基準及び検討状況について御質問いただきました。

 本法案の対象区域は、重要施設の周辺及び国境離島等に関し、まず、土地等が当該重要施設及び国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを特に防止する必要がある区域を、注視区域として指定し、その上で、重要施設又は国境離島等の、機能が特に重要なもの又は阻害することが容易であるものであって、その代替が困難であるものについては、特別注視区域として指定することとしています。

 重要施設の周辺のうち、自衛隊施設については、例えば、指揮中枢機能、警戒監視、情報機能、防空機能等を有する施設、部隊等の活動拠点となる又は機能支援を行う施設等の周辺が、区域指定の検討対象になるものと考えています。

 その他、海上保安庁の施設や政令で定めることを想定している原子力関係施設など重要インフラ施設の周辺も、区域指定の検討対象になるものと考えています。

 次に、国境離島等については、領海基線を有する離島である国境離島、及び有人国境離島法に基づく有人国境離島地域を構成する離島である有人国境離島地域離島において、それぞれ区域を指定いたします。

 領海基線の近傍や領海警備等の活動の拠点となる港湾施設及び行政機関の施設等の周辺が、区域指定の検討対象になるものと考えています。

 法施行後に行う具体的な区域の指定は、法定する手続に沿って、第三条に規定する必要最小限の原則を踏まえ、適切に判断いたします。

 このため、現時点においては、区域指定の数の見通しをお示しすることは困難です。

 次に、調査対象となる国民の数について御質問いただきました。

 本法案に基づく調査は、対象区域における土地等の利用状況を把握するものです。

 対象区域は、法施行後に、法定する手続に沿って決定いたします。

 このため、現時点において、対象区域に所在する土地等の利用者や所有者など、数の見通しをお示しすることは困難です。

 なお、対象区域の指定に当たっては、第三条に定める必要最小限の原則を踏まえ、指定に伴う社会経済活動への影響にも配慮し、区域指定の要否、範囲等を慎重かつ適切に判断してまいります。

 次に、機能を阻害する行為のおそれに関する判断について御質問いただきました。

 本法案では、調査の結果、防衛関係施設等の機能を阻害する土地等の利用が判明した場合に、その利用の中止を勧告、命令する等の措置を講ずることとしております。

 重要施設等の機能を阻害する行為が行われるおそれがあるか否かは、不動産登記簿、住民基本台帳等の公簿情報の収集、現地・現況調査、利用者からの報告徴収を通じて収集する情報によって、土地等の利用者やその利用状況を総合的に勘案して判断することとしています。

 その判断に当たっては、防衛関係施設等の重要施設を所管する関係省庁や当該施設を運営する事業者等から機能阻害行為の兆候等に係る情報提供をいただき、その内容も参考にさせていただく予定であります。

 次に、本法律に基づく調査の内容について御質問いただきました。

 本法案に基づく調査は、注視区域内にある土地等の利用状況を把握するために行うものです。

 第七条において、内閣総理大臣が、調査の一環として、関係行政機関の長等に提供を求めることができる情報は、氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られております。

 また、第八条において、内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用者等に対し、報告徴収等を行うことができますが、報告等を求めることができる事項は、条文上、当該土地等の利用に関するものに限定されております。

 このため、本法案に基づく調査では、注視区域内にある土地等の利用者等について、その土地等の利用に関連しない、例えば、御指摘のあった思想、信条等に係る情報を収集することは想定しておりません。

 次に、機能阻害行為と現行法の規制との関係について御質問いただきました。

 本法案が対象とする重要施設等への機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢、施設等の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、現行法では規制が不十分な場合もあると考えております。

 例えば、重要施設に対する電波妨害については、電波妨害を行うための送信機とアンテナが接続され、電波を発射し得る状態にあれば、無線局の不法開設として電波法違反になりますが、アンテナのみが設置され、電波を発射し得る状態にない場合、電波法違反とはなりません。

 最後に、辺野古基地建設を例に、抗議活動に対する法の適用について御質問いただきました。

 御指摘のあった行為に対する本法案の適用について、一概にお答えすることは困難でありますが、その上で、注視区域内にある土地等において、単に座込みを続けている場合など、重要施設の機能を阻害する明らかなおそれがない態様で行われているものについては、本法案に基づく勧告、命令の対象となるとは考えておりません。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 私は、党を代表し、議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案について質問します。(拍手)

 まず、一言申し上げます。

 日本維新の会は、国民投票法改正案の原案に賛成し、立憲民主党提出の修正案には断固反対しました。この修正案は施行後三年をめどにCM規制や外国人寄附規制等についての検討を求めるものですが、禍根を残すと言わざるを得ません。立憲民主党に憲法本体の議論に入ることを拒む大義を与え、また、憲法改正に向けた国会の発議権が制限されるという誤解を招きかねないからです。

 現に、立憲民主党の議員は、自分たちが主張する宿題が片づくまでは憲法改正の国会発議はできないと発言しています。

 各党に対し、今週木曜の定例日から憲法審査会をつつがなく開催し、憲法をめぐる中身の議論を粛々と進めることを強く訴え、本題に入ります。

 自衛隊や海上保安庁の施設、原発など重要インフラ施設の周辺や国境離島といった安全保障上重要な土地を敵対的な国家や勢力等から守ることは喫緊の課題です。

 日本維新の会は、平成二十八年十一月を最初に、今国会を含む五国会にわたり、国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案を参議院に提出してきました。

 長年、安保上の要衝地を外国資本や外国人等に野方図に買いあさられてきた実態を鑑みれば、政府の対応は遅過ぎたと言わざるを得ません。ようやく重い腰を上げたとはいえ、守りの実効性が担保されなければ意味がありません。

 小此木大臣に伺います。

 特に重要度の高い特別注視区域に指定されたエリアの土地売買については事前届出が義務づけられていますが、取引自体は自由に行われます。これでは、安保上重大な懸念を惹起しかねない取引を未然に阻止できません。取引後に瑕疵が判明すれば利用規制の措置が取られますが、その空白の時間に悪意の土地取得者やその背後に潜むであろう国家、勢力にテロや妨害工作等をしかけられる事態は否定できません。

 事前の届出を受けて取引前にチェックする事前審査制を導入し、必要ならば取引の変更や中止の勧告、命令を出すべきだと考えますが、見解を求めます。

 与党は、法施行時に、東京・市谷の防衛省を含む市街地や海保施設、原発等の重要インフラを特別注視区域から除外することを確認したとされます。しかし、防衛省は国防の中枢で、その敷地内では弾道ミサイルを迎撃する地対空誘導弾PAC3が展開されます。また、沖縄県石垣島には尖閣諸島を守る海保の専従部隊の港湾施設があります。

 一層警戒を要する重要施設の周辺こそ特別注視区域に指定し、事前届出等で土地所有の実態把握に努めるべきと考えますが、認識をお示しください。これらの施設があるエリアを特別注視区域から除外することについて、安全保障上の観点から合理性があると判断されますか。特別注視区域とせずして、監視の目を具体的にどのように光らせておく考えですか。

 法案における土地取引の規制対象は重要施設の周辺のみで、我が党の法案にある敷地は含まれていません。沖縄県にある自衛隊の基地や駐屯地等施設の敷地のうち、約六割が民有地です。自衛隊施設内の民有地は特別注視区域に指定してしかるべきだと考えますが、答弁を求めます。

 法案では、農地や森林が規制対象に含まれていません。特に、水源の保全やその他多面的機能を持つ森林は外資等の大きな脅威にさらされており、我が党は、保安林又は保安林予定森林である民有林の土地取引の事前届出を義務づける森林法改正案も提出しています。

 しかし、政府は、現行の森林法や農地法等で取引規制の枠組みが整備されているとし、監視対象に加えない方針を貫いています。現行法で不足があるからこそ規制が必要だと考えますが、最後に大臣の見解を求め、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 浦野議員から、四問御質問いただきました。順次お答え申し上げます。

 まず、取引に関する事前審査及び規制について御質問いただきました。

 土地等の取引に関する事前審査及び規制について、有識者会議の提言では、あらかじめ規制の基準や要件を明確に定めることが困難であり、慎重に検討すべきとされたところであります。

 政府としては、この提言を踏まえ、本法案では、取引の事前審査及び規制を行う、いわゆる取引規制は導入しないことといたしました。

 他方、本法案には、安全保障の観点からリスクのある土地等の利用行為に対する中止の勧告、命令のほか、国が土地の買取りの申出を行う等の措置を盛り込んでおり、全体として、制度の実効性を担保しております。

 次に、特別注視区域の指定に関して御質問いただきました。

 本法案では、安全保障上のリスクが大きい区域を特別注視区域として指定し、土地等の利用状況の調査、必要に応じた利用規制に加え、その取引に係る事前届出制度を設けることによって、一段厳格な管理を行う仕組みとしております。

 この特別注視区域として、いかなる区域を指定するかについては、法施行後に、法定する手続に沿って決定することとしております。

 したがって、現時点において、御指摘のあった市谷の防衛省や海保施設、原発等の重要インフラの周辺について、特別注視区域の対象から除外することを決定した事実はありません。

 本法案に基づく注視区域又は特別注視区域の指定に当たっては、指定に伴う社会経済活動への影響も勘案しつつ、個々の区域ごとに指定の要否、区分等を慎重に判断してまいります。

 次に、自衛隊施設内の民有地の取扱いについて御質問いただきました。

 御指摘のあった自衛隊施設内の民有地を含め、防衛関係施設の敷地は、防衛省が既に所有権又は利用権に基づき管理を行っている土地です。それらが防衛関係施設の機能を阻害する行為のために利用されることは通常想定されないことから、本法案の対象とはしていないところであります。

 一方、防衛関係施設が民有地を囲む形で設置されている場合、その防衛関係施設内に所在する民有地は、重要施設の敷地の周囲おおむね一千メートルの区域内に位置するものとして、本法案に基づく調査等の対象となり得ます。

 防衛関係施設内に所在する民有地を含め、具体的な区域の指定の取扱いについては、法施行後に、法定する手続に沿って適切に判断してまいります。

 最後に、森林、農地の取扱いについて御質問いただきました。

 森林や農地については、現行の森林法や農地法において、国土の保全や食料の安定供給等を目的として、取得の際の許可や届出等といった措置が適切に講じられています。

 有識者会議の提言においても、既存の措置があることを踏まえ、これらの土地を対象とすることについては慎重に検討していくべきとされたところであります。

 このため、本法案に基づく調査等の対象には、重要施設の周辺や国境離島等に所在するもの以外の森林や農地は含めないこととしております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 国民民主党・無所属クラブの岸本周平です。

 本法案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 我が国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、いわゆる重要施設周辺や国境離島等の区域内にある土地等について、その機能を阻害する行為の用に供されることを防止することの重要性は言うまでもありません。このタイミングで政府から法案が提出されたことは評価したいと思います。

 一方で、刑事罰に担保された取引の事前の届出や利用規制など、私権を制限する内容を含むものでありますので、通常の経済活動に悪影響を与えないようにすることが肝要であります。

 まず、自衛隊の施設や米軍基地、海上保安庁の施設などの重要施設の周辺おおむね千メーターの区域を注視区域とすることは、重要施設の存在する市町村の経済活動にどのような影響があるとお考えか、お伺いしたいと思います。特に、特別注視区域に指定された場合には、調査対象になるのみならず、事前届出の対象になり、通常の不動産取引に悪影響を及ぼすのではないか、二百平米という面積の制限は妥当なのか、お聞きします。

 重要施設として生活関連施設が定義されていますが、国民保護法に基づく生活関連等施設とは同じなのでしょうか、異なるのでしょうか。原子力関係施設、自衛隊が共用する民間空港、鉄軌道施設、放送局、ダムなどのインフラ施設も対象になるのでしょうか。

 経済活動に大きな影響を与える可能性があるため、注視区域を指定する場合に、関係機関の長への協議や土地等利用状況審議会の意見聴取が定められていますが、さらに、区域指定についての一般の意見公募や国会報告を追加し、民主的な統制を行うべきではないか、お伺いします。

 また、届出事項として契約当事者に関する情報が定められていますが、現実の土地取引の慣行等を考えますと、売主の前の所有者に関する情報についても対象とすべきではないでしょうか。

 そして、調査の結果、機能阻害行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認められるときには、利用中止などの勧告、さらには、正当な理由なく勧告に従わないときには、命令が出されます。この命令違反には二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金という刑事罰が下されます。

 そうだとすると、この機能阻害行為に関しては、具体的な予見可能性が必要だと考えます。

 例えば、航空法第七十三条の四第五項では、命令の対象となる安全阻害行為等に関して、乗降口又は非常口の扉の開閉装置を正当な理由なく操作する行為、便所において喫煙する行為、航空機に乗り組んでその職務を行う者の職務を妨げる行為などの例示が列挙されています。

 しかし、本法案の条文には、阻害行為の例示すらありません。阻害行為の具体的な内容は、政府の基本方針に丸投げになっています。国民の権利義務に重大な影響を与える問題ですから、少なくとも、法律の明文上、例えば、施設の運営に支障を来す構築物の設置、あるいは、電波妨害、施設への侵入の準備行為など、具体的な機能阻害行為の例示が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 また、国民の権利義務に重大な影響を与える勧告や命令に関しては、民主的統制の観点から、その実施状況について国会への報告を求めるよう法律で明確に定めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 以上につきまして、合理的な説明をいただけない場合には、委員会質疑を通じて、建設的な修正提案をさせていただくことを申し添え、民主的統制の観点から立法府として最低限の関与が必要であることを強く訴えて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小此木八郎君登壇〕

国務大臣(小此木八郎君) 岸本議員から、御質問いただきました。六問でございます。

 まず、区域指定による経済活動への影響及び特別注視区域における事前届出に関する面積要件について御質問いただきました。

 本法案の対象区域で通常の生活を送る住民の方々や事業活動を行う企業にとっては、本法案に基づく調査や事前届出制度が実施されたとしても、土地等の使用、収益、処分について制約を受ける可能性は小さいと考えております。

 また、特別注視区域においては、二百平方メートルを下回らない範囲内で政令で定める規模以上の土地等の所有権等の移転について、事前届出義務を導入することとしております。

 これは、土地等の権利移転の実態を随時把握するための措置であり、取引の事前審査や規制を行うものではありません。

 このことから、通常の不動産取引に悪影響を及ぼす可能性は小さいと考えております。

 また、事前届出の対象となる土地等の規模については、当事者にとっての手続負担を最小限のものとするため、相対的に取引頻度が高いと考えられる小規模物件の売買等を除外するものであります。その具体的な面積要件は、政令で設定することとしております。

 次に、生活関連施設について御質問いただきました。

 本法案の生活関連施設の類型については、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるものについて、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、政令で定めることとしております。

 本法案は、武力攻撃事態等における措置を定める国民保護法とは異なり、平時における重要施設周辺の土地等の利用について必要な措置を講ずるものであることから、条文上も、国民保護法の生活関連等施設と比べて限定的に規定しており、具体的な施設類型は異なるものと考えております。

 その上で、具体的な施設類型については、有識者会議での提言において、原子力発電所や自衛隊が共有する民間空港が挙げられたことを参考としつつ、国会での御議論や施設ごとの懸念の実態等を勘案して、政府として検討してまいります。

 次に、注視区域の指定手続について御質問いただきました。

 我が国の安全保障のための措置は、国が責任を持って判断し、実施することが必要です。

 このため、注視区域の指定については、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、国として、指定の要否、範囲等について慎重に判断いたします。

 区域指定を行った場合には、法定の手続に沿って官報で公示します。

 また、区域の指定を含め、本法案に基づく措置の実施状況については、毎年、国会を含め、広く国民に対して公表することを予定しており、本法案において、御指摘のあった一般の意見公募や国会報告に関する手続の規定は設けておりません。

 一方、本法案に基づく措置を実施するに当たり、地域住民に身近な地方公共団体の理解、協力を得ていくことは重要です。

 区域指定を行う前には、十分な時間的余裕を持って、関係する地方公共団体としっかり意見交換を行ってまいります。

 次に、土地等の取引に係る届出事項について御質問いただきました。

 本法案では、対象となる土地等を取引する場合には、取引の当事者に対し、取引の当事者の氏名や住所、対象となる土地等の所在、面積、取引の対象となる権利の種類、土地等の利用目的等に加え、内閣府令で定める事項を届け出なければならないこととしています。

 内閣府令で定める届出事項としては、現時点では、土地等の買主の国籍、土地等の地目及び利用の現況等を想定していますが、国会での御審議を踏まえつつ、引き続き検討してまいります。

 次に、法律において具体的な機能阻害行為を例示することについて御質問いただきました。

 機能阻害行為として具体的に想定している行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されます。

 このため、特定の行為を普遍的な機能阻害行為として法案に例示することは必ずしも適当ではないものと考えております。

 いずれにせよ、閣議決定される基本方針において、可能な限り具体的に機能阻害行為の例示をお示ししたいと考えております。

 最後に、勧告、命令に関する手続について御質問いただきました。

 本法案に基づく勧告、命令を行うに当たっては、政府として、対象となる個々の行為について、法律の要件や基本方針の内容に照らして適切に評価するとともに、勧告に先立ち、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、それらの要否、内容等について慎重に判断してまいります。

 また、本法案に基づく措置の実施状況については、毎年、国会を含め、広く国民に対して公表をしてまいります。

 以上です。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   武田 良太君

       外務大臣   茂木 敏充君

       厚生労働大臣 田村 憲久君

       防衛大臣   岸  信夫君

       国務大臣   小此木八郎君

       国務大臣   坂本 哲志君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 赤澤 亮正君


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