衆議院

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第2号 令和3年12月8日(水曜日)

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令和三年十二月八日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  令和三年十二月八日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 永年在職の議員岩屋毅君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました岩屋毅君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員岩屋毅君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

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議長(細田博之君) この際、岩屋毅君から発言を求められております。これを許します。岩屋毅君。

    〔岩屋毅君登壇〕

岩屋毅君 岩屋毅でございます。

 ただいま、院議をもって永年在職表彰を賜り、身に余る光栄に存じます。

 長きにわたって御支援いただいた地元大分の後援会の皆様、この間御指導いただいた先輩、同僚議員各位、事務所のスタッフ諸君、そして家族に心から感謝したいと思います。とりわけ、苦難のときもいつも笑顔で支えてくれた家内に、この場をおかりして礼を言いたいと思います。本当にありがとう。(拍手)

 平成二年に初当選したときの同期生は、与野党含めて百三十三名、自民党は五十三名でした。あれから三十二年を経て、現在、細田議長始め、十六名の同期が今なお国会で活躍をしております。しかるに、なぜ私が今日一人でここに立っているのか。二回目、三回目の選挙で落選し、七年間の浪人生活を送ったからであります。おかげで、本日、発言の機会をいただきました。落選していいこともあるんだなあと初めて思っているところであります。(拍手)

 七年の浪人生活は私の心境を大きく変えました。三十二歳で初当選を果たし、初めて国会の門をくぐったとき、私は、来るべきところにやってきたと思い上がっておりました。しかし、七年の浪人を経て戻ってきたときには、自分のような未熟な者がこんなところに出てきていいのだろうかと思うに至りました。九期目を数えた今も、日々、その自問自答を繰り返しております。

 一期目は政治改革に没頭いたしました。冷戦崩壊の波が我が国政界にもひたひたと押し寄せておりました。もはや五五年体制のままでは日本の政治は立ち行かない、政治の構造改革が必要であり、そのためには選挙制度を変えなければいけない、その思いで一心不乱に活動をいたしました。勢い余って一たび自民党を離れることにもなりましたが、その後、選挙制度改革は細川政権下で実現し、今日に至っております。

 この改革については今なお様々な評価があると承知しています。しかし、確かに言えることは、以後、衆議院選挙は、文字どおり、政権選択の選挙となりました。マニフェストも大きな意味を持つようになり、政権の求心力は大幅に強化されました。そして、この間、二回にわたって本格的な政権交代が実現しました。この改革の最大の目的は、政権交代の可能性がある緊張感あふれる政治の実現にありました。政権担当能力を有する野党が存在してこそ、時の与党は緊張感を持って最大限の力を発揮することができます。野党の皆様の一層の御奮起に期待したいと思います。(拍手)

 三年前、防衛大臣を拝命する栄に浴しましたが、その任にあった一年間は、我が国を取り巻く安全保障環境の厳しさを痛感した日々でもありました。新たな冷戦が始まったとも言われる中で、我が国の安全をいかにして確保し、地域の安定と平和を維持していくのか。また、今回のようなパンデミックや気候変動、民主主義、法の支配、人権、貧困、こういった地球規模の課題の解決のために我が国は何をなすことができるのか。時局は極めて重大な局面を迎えていると思います。

 したたかで粘り強い外交と、同盟国、友好国との連携を通じた防衛努力によって、冷戦が決して熱戦に至ることのないようにしていかなければなりません。そして、世界が分断ではなく協調へと向かうことができるように、我が国でなければできない役割を果たしていかなければなりません。さらに、その取組は、国民の皆様はもとより、広く国際社会の理解と共感を得られるものでなくてはなりません。このような考え方に基づいて、今後の議論に参画してまいりたいと思っております。

 光陰は矢のごとし。馬齢を重ねている間に、私も来年には高齢者の仲間入りをすることとなりました。残された政治家としての時間の中で、国家国民のために、そして郷土のために、何をなしていくことができるのか。懸命に模索し、微力をいたしてまいりたいと存じます。

 皆様の今後ともの御指導、御鞭撻を心よりお願い申し上げ、御礼の御挨拶といたします。

 本日は誠にありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(細田博之君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 岩屋議員、まず、永年在職、誠におめでとうございました。

 立憲民主党代表の泉健太です。

 現在四十七歳。就職氷河期世代であり、ロスジェネ世代とも言われます。また、気候変動世代。その一人として、日本、そして地球の未来を明るくしていきたい、その思いで今回立ち上がらせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

 気候変動、少子高齢化、格差の固定化、地方の衰退、人権の侵害や安全保障環境の悪化、この国の未来には様々な課題が存在をしています。

 私たち立憲民主党は、国民に寄り添う、地域に寄り添う政党です。まさに、こうした課題解決には、地域の現場、国民生活の実情に触れることこそが不可欠なのではないでしょうか。私たち立憲民主党は、全国各地の皆様とともに歩みます。

 そして、立憲民主党は、これら課題の発生や解決を単に新自由主義的考えや自己責任に帰すのではなく、共助とともに公助が発揮される政府を目指します。政府の適切な関与によって、公正な社会を実現し、国富の適正配分を進めてまいります。

 立憲民主党は、権力の不正や横暴を許すことなく、常に国民の側が権力をコントロールできるよう、行政、政治を監視し、是正してまいります。また、分権、分散型の発想から、課題解決の具体策を提示してまいります。国民に開かれた政府、オープンガバメントによる課題解決を目指してまいります。

 そして、我が国においては、自由や多様性がまだ十分に尊重されているとは言えません。旧態依然とした法制度や硬直的な主張が続けば、多様性が損なわれ、社会の活力にも影響を与えることになります。寛容さと柔軟さを持ち、互いを認め合う。自由と多様性を生かし、互いに成長する。立憲民主党は、この自由と多様性の尊重を通じて課題解決に取り組んでまいります。誰もが夢や希望をかなえられる国にする。未来はきっとよくなる、国民がそう思える国にしてまいります。

 私は、岸田総理からは十七歳年下、共産党の志位委員長からは二十歳年下ですが、誕生日は同じ七月二十九日であります。自民、共産のトップとの不思議な御縁を感じますが、その両名のど真ん中で、国民に寄り添う、地域に寄り添う、公助が発揮される政府、さらに、分権、分散型、自由、多様性を掲げる立憲民主党の代表として、これからの日本に必要なことを遠慮なく申してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、早速、総理に質問いたします。

 総理とは、昨年、共に党政調会長としてコロナ対策の議論をいたしました。まず、コロナ対策について質問いたします。

 総理は、私に言わせれば、遅過ぎた救助隊ではないか、こう思っています。

 昨年の第一波、第二波の頃、当時の岸田政調会長には、随分、コロナ対策の改善を求めました。収入が減少した個人への追加給付、持続化給付金や家賃支援給付金の再給付、医療従事者への手当、またPCR検査の拡大などです。岸田政調会長は、当時、それらを実現しませんでした。その後、第三、第四、第五波と大きな被害が起きたのです。

 総理に伺いたいのは、なぜ、自由民主党政調会長時代に、必要な手を打たなかったのですか。お答えをいただきたいと思います。

 そして、今年六月も、立憲民主党は、このまま国会を閉じればコロナ対策に空白が生じるとして、会期延長と三十三兆円の補正予算を提案しました。しかし、政府・与党は耳をかすことなく、第五波が起きました。この臨時国会で補正予算を提出するというのは、余りに遅過ぎたとは思いませんか。

 続いて、オミクロン株の水際対策です。

 十一月二十九日、国交省が航空会社に日本入国便の新規予約停止を要請し、その後、撤回するという混乱がありました。総理、この日の昼に、国交大臣や法務大臣、外務大臣などと官邸で協議をされていると思いますが、そこでこの話は全く出なかったのでしょうか。真実をお答えいただきたいと思います。

 そして、提案があります。入国検疫は、やはり、抗原検査ではなく、精度の高いPCR検査を行うべきではないですか。改善を求めます。

 さらに、入国者の隔離について提案いたします。現在、政府は、隔離期間を入国地域別に十日、六日、三日と分けていますが、世界での感染拡大を考えれば、全員の隔離期間は十日とすべきではないですか。隔離施設が足りないなら、どれほど足りないのか、是非、数字でお答えください。

 次に、今後の備えについてです。

 政府がまとめた取組の全体像では、今後の感染ピーク時の自宅、宿泊療養者は約二十三万人とされています。一方、宿泊療養施設は約六万一千室確保というところにとどまっています。この差は約十七万人。これは自宅療養を強いられるのでしょうか。

 昨年十二月、私たち立憲民主党と賛同する政党で新型インフルエンザ特措法の改正案を共同提出し、その後、宿泊療養が制度的にも位置づけられるようになりました。しかし、実際の宿泊療養施設の確保は進まず、今年四月には大阪、夏には日本中で、自宅療養の方が多く亡くなることにつながりました。このようなことを二度と繰り返さぬよう宿泊療養施設を確保できるのか、お答えください。

 三回目のワクチン接種についてです。

 総理は、所信表明で、モデルナを活用し、八か月を待たずに、できる限り前倒しすると述べましたが、モデルナのCEOは、オミクロン株のワクチンについて、デルタ株と同じレベルの効果が得られることはないと述べ、オミクロン株のワクチンを大規模に製造するのに数か月はかかるとの見解を示しております。前倒しの三回目接種を可能とするには、もう年明け間もなくから新たなワクチンが必要となります。オミクロン株対応の新たなワクチンは年明けに確保できるのか、お答えいただきたいと思います。

 また、総理は、無料検査を抜本的に拡充、無症状の方でも無料で検査とようやく今回述べました。だから、遅過ぎると言っているのです。なぜ今まで無料検査を実施してこなかったのか、その理由を明らかにしてください。

 次に、空気感染についてです。

 厚労省のホームページが十月に更新をされ、政府はエアロゾルによる感染を認めました。これは、空気感染を認めたということでよいですね。

 WHOやアメリカCDCは、今春には空気感染を認めておりました。しかし、政府はこれまで感染は飛沫と接触によるとの姿勢を変えず、第五波までに大きな被害になったのではないでしょうか。

 総理、飛沫と接触だけではなく、空気感染があり、そして換気も重要である、これを明確に発信していただけますでしょうか。

 続いて、コロナに関する経済対策です。

 まず、十八歳以下への十万円給付、これは何なんでしょうか。わざわざ半分現金、半分クーポンという配付になると、経費は膨らみます。市町村の手間も非常にかかります。これは、重要な三回目のワクチン接種業務とも時期が重なります。忙しい市町村は、非常に今困惑をし、文句を言っています。市町村それぞれの自らの判断で、クーポンではなく現金給付を選択できるようにするべきじゃないでしょうか。そして、十万円一括給付、これも、やむを得ない場合など難しい条件をつけずに、自治体の自由で認めるべきではないでしょうか。

 我が党の後藤祐一議員の指摘によって、クーポンに分割支給をするだけで何と事務費が九百六十七億円も余計にかかるということが判明いたしました。

 そこで、提案です。

 別途、住民税非課税世帯等には一世帯十万円の臨時特別給付金が予定されていますが、総理、今からでも補正予算を組み替え、このクーポン事務費分は生活困窮者向けの臨時特別給付金に上乗せをし、さらに、ワーキングプア層へ支給を広げるべきではないでしょうか。

 私も、先日、東京・新宿で、生活に苦しむ方々へのお弁当の配付のボランティアに参加をしてまいりました。今まさにワーキングプア層が非常に増えているということ、是非、総理は重く受け止めるべきだと思います。

 そして、事業復活支援金です。

 要件が厳しく、かつ、最大二百五十万という規模は不十分ではないでしょうか。

 先日、札幌と福岡の飲食店経営者とも意見交換を行いました。商店街も回らせていただきました。中堅企業や複数店舗を持つ店からは、営業のエリアによって売上げが大きく異なる、だから、やはり支給対象というものを店舗ごとにしてほしいという声を聞きました。

 総理、是非、この事業復活支援金、店舗ごとの支給に変更しませんでしょうか。是非このことも提案をしたいと思います。

 続いて、経済政策、資本主義についてです。

 総理の所信表明にあった、人に優しい資本主義、これはよい言葉です。私も党の代表選で一番目に訴えたのが、人に優しい持続可能な資本主義です。だからこそ、総理、企業におけるESG投資、環境や人権、雇用への配慮を強力に進めるべきです。

 例えば、企業のカーボンフリー電力化、脱炭素経営への支援。企業間取引における環境配慮に日本企業が遅れるわけにはまいりません。

 さらには、営農型太陽光発電の普及。農業収入プラス売電収入で農業経営も持続可能性が増し、これは地域活性化にもつながります。

 さらには、本年十月の政府の第六次エネルギー基本計画で、熱と電気の両方を活用し大幅な省エネが可能となるコージェネレーションの導入目標と、新規住宅の省エネ導入目標がなぜか引き下げられています。これらを引き上げるとともに、日本の新築住宅の断熱基準を高め、省エネを進め、市場を拡大していこうではありませんか。

 是非、こうした民間投資を促す支援策、立憲民主党としても提案をしてまいります。このように、企業、農業、住宅の分野で環境投資を支援してまいりましょう。

 次に、人権です。

 児童労働や搾取的労働で生産された商品は、市場から排除されるべきです。そして、職場の低待遇、長時間労働、ハラスメントの横行を許してはなりません。

 総理、勤務間インターバルの普及、過労死防止、職場いじめ防止など、ブラック企業を具体的になくしていく政策を強力に遂行する、これを是非改めて宣言していただけないでしょうか。それが人に優しい資本主義であると我々は考えます。

 特に、雇用について伺います。

 かつて、日本の町工場なら、正社員で年収三百万ぐらいは稼げました。しかし、二〇〇四年の小泉改革で製造業の派遣労働を認めて以降、フルタイム勤務でも年収二百万円というワーキングプア層が増えました。望まない非正規雇用が増えることで所得格差が拡大、個人消費が減り、先進国で唯一、実質所得が下落し続ける国となってしまっています。

 総理は、所信表明の中で、新自由主義的な考えは多くの弊害も生んだ、市場に依存し過ぎたことで格差や貧困が拡大したと述べました。これは、自民党総裁としても、非常に明確に新自由主義を批判したものだと考えられます。

 では、お答えをいただきたいのですが、市場に依存し過ぎたというのは、まさにこの製造業への派遣労働緩和のことをおっしゃっておられるのでしょうか。明確にお答えをいただきたいと思います。そして、そのほかにも何かこの規制緩和で、市場に依存し過ぎた、問題であると思うことがあれば、これもお答えをいただきたいと思います。

 私たち立憲民主党は、中小企業の味方です。

 中小企業が正社員を増やす際の障壁の一つは何か。それは、社会保険料の会社負担ではないかと思います。新たに正社員を雇用した中小企業の社会保険料を軽減する、これを是非実現しませんか。希望すれば正規雇用で働ける社会をつくっていく、このことこそ、人に温かい資本主義ではないでしょうか。

 さらに、総理は、演説の中で、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭にターゲットを置き、その所得を大幅に引き上げることを目指していくといたしました。しかし、具体策は何も記されておりません。まさか、令和版所得倍増論のように、そのままフェードアウトしていく言葉ではないでしょうね。

 先ほど述べたように、例えば中小企業の社会保険料軽減で正社員化を促進する、さらには育休を取得しても月収が一円たりとも減らない、あるいは児童手当の増額やその児童手当の高校卒業年までの延長、そして給食費の無償化、学生ローンと呼ばれる貸与型奨学金ではなく給付型奨学金の大幅拡充など、私たち立憲民主党は、当事者からの声を既に具体的な政策にしております。是非ともこれを採用していただけませんか。

 親の所得にかかわらず、どんな子も同じ教育が受けられるために、岸田総理は具体的に何をすべきとお考えか、お答えください。

 次に、税制です。

 総理、所得税の累進性強化には反対ですか。

 一九八六年、所得税の最高税率は七〇%。それが、現在は四五%であります。一方で、消費税率はゼロから一〇%へと上がっています。総理、改めて所得税の累進性を強化し、税収を確保しようではありませんか。

 さらに、高額所得になればなるほど金融所得の割合が増えているのが現実ではないでしょうか。その意味では、総理が総裁選の初期に掲げていた金融所得課税の引上げは必要な策だと思っております。

 なのに、総理は、当面触れることは考えていないと方針転換をしてしまったようでありますが、もし市場の反応を恐れるならば、突然の実施ということではなく、やはり今から段階的に着手をしてはいかがでしょうか。これならば、市場も予見をし、落ち着いて対応することだと思います。是非とも進めていただきたいと思います。

 我々立憲民主党は、政策立案型政党です。

 原油価格の上昇対策においては、ガソリン一リットル百六十円を超える状態が三か月続けば一リットル当たり約二十五円の暫定税率分を引き下げる、トリガー条項発動法案を提出いたしました。

 そして、文書通信交通滞在費についても、同じく昨日、法案を提出いたしました。立憲民主党の案は、日割り化、そして収支報告と領収書を議長に提出、また年間の残高を国庫に返還の三点セットに加え、直近の解散と当選時の歳費、文通費の自主返納、今後は解散後の歳費も日割り化、そして、収支報告のルールは地方議会の政務活動費と同様の理念を入れて厳格化したいと思っています。こういった面で、最も先進的な内容となっております。我々立憲民主党は、こうした先進的な改革案に各党各会派に御賛同いただけるよう呼びかけてまいります。

 総理、与党にやる気があるのならば、今国会で何らかの合意を得ることはできるはずです。是非とも、総理、そして自民党の決断を強く求めます。

 さて、マイナンバーカードの普及率は現在約四割。政府は、令和四年度末までにほぼ全国民に引き上げようと、国民一人当たり最大二万円分のマイナポイント付与に一・八兆円もの巨額予算を計上しています。果たして、これは賢い支出と言えるでしょうか。立憲民主党は、この事業を厳しく監視してまいります。

 続いて、農業です。政府は、今、この全国の農業が厳しい中で、水田活用の直接支払交付金を一方的に見直そうとするのでしょうか。既に農家は来年の作付に向けて動き出しており、現場の事情を踏まえた対策を講じるべきではないでしょうか。

 漁業では、北海道の赤潮対策です。海洋調査や原因究明だけではなく、直接的にウニやサケ、昆布などの被害に対する支援を考えるべきではないですか。

 震災復興については、東日本大震災から十年九か月がたちましたが、ハード面での復興は一定程度進む一方、今なお安定した生活を取り戻すことができないという被災者の方も多く、引き続き、支援をしていくべきです。

 特に、福島県では、二〇四〇年をめどに一次エネルギー供給の一〇〇%相当以上を再生可能エネルギーにする目標を掲げています。是非、国の支援を強化し、この目標の前倒しを実現しようではありませんか。

 外交では、三点申し上げたいと思います。

 まず、私は、政府は、外国における人権問題について、関与した外国の人物や団体に制裁を科すことを可能にする日本版マグニツキー法を検討すべきと考えます。

 総理は人権問題担当の補佐官を置いたにもかかわらず、その補佐官はマグニツキー法に否定的、慎重的な発言をしているようです。これは、自民党の皆様もいかがお考えでしょうか。岸田総理は法案に前向きなのか慎重なのか、是非、明確にお答えください。

 続いて、経済安全保障です。

 立憲民主党は、日本政府が戦略的物資を確保し、重要技術を守るため、必要な対応を図っていくべきだと考えています。

 経済安全保障推進会議の対象分野には、明確にエネルギー、食料安全保障が記されておりません。是非これを明確に記すことを提案いたしますが、総理の見解を伺います。

 拉致問題については、今年も十二月十日から十六日までが北朝鮮人権侵害問題の啓発週間となっており、立憲民主党も、拉致対策本部を中心に、国民意識の啓発に協力してまいります。

 昨年は、大変残念ながら横田滋さんや有本嘉代子さんが亡くなられ、やはり一刻の猶予もないという言葉の重みを痛感せざるを得ません。

 ここ数年の自民党政権下では、残念ながら、条件をつけずに金委員長と直接向き合うと、同じ文言が繰り返されるばかりでした。岸田総理の今回の演説も同様でありました。

 アメリカと韓国の協議では、コロナ禍や水害支援を含めた北朝鮮との対話再開が議論されているとの動きもございます。総理、条件をつけずにだけでは変わらない。何か具体的アプローチは考えていますでしょうか。お答えください。

 続いて、政治改革についてです。

 総理、先日、国会議員の政治資金収支報告書が公開をされました。やはりそれを見ると、自民党所属議員の平均年収は断トツであり、派閥の資金力にも愕然といたします。

 私たち立憲民主党は、自民党に比べれば資金力は圧倒的に負けている。しかし、それでも、政治は資金力だけではない、そう信じて選挙を戦い、論戦を挑んでおります。

 総理、そのような中でありますが、選挙演説の動員に日当が支払われていたという問題、このことについてはいかがお考えでしょうか。

 確かに、現在の法律では違法ではないかもしれません。しかし、陣営から支援団体に動員要請が行われ、支援団体が構成員に呼びかけ、日当を払って演説会に人を集める。総理、もうこうしたことはやめにしませんか。

 私は、与野党を問わず、是非、こうしたことをやめようと、各政党は民間企業や支援団体に呼びかけるべきだと思います。総理、是非、この件についても明快にお答えいただきたいと思います。

 さて、最後に、憲法についてです。

 総理がまさに演説で述べたように、憲法の在り方に真剣に向き合っていくことが大事です。改正ありきではありません。自民党の皆様には、まず、現行憲法にも真剣に向き合っていただきたいと思います。

 総理は、時代の変化に対して、現行憲法のどの部分にどのような決定的な問題があるとお考えなのでしょうか。是非、お答えいただきたいと思います。まずは、その内容を国民に説明していただく必要があるのではないでしょうか。

 私たち立憲民主党は、立憲主義を掲げる政党です。

 日本は、将来にわたり、過度の権力集中も、政治権力の強大化も、権力の暴走も許してはなりません。我が国の歴史を振り返っても、また世界各国の騒乱を見ても、歯止めがかからない権力ほど国民にとって恐ろしいものはないのです。

 現行憲法によって国民の自由と権利が守られていること、また我が国の平和と国民生活の平穏が守られていること、このように現行憲法の役割は非常に大きいと思います。立憲民主党は、このことも国民の皆様に広く伝えてまいりたいと思います。

 私たち立憲民主党は、新執行部を発足いたしました。特に政治分野では与野党共にジェンダー平等が遅れていると言われており、党内においても、そして候補者選定においても、女性の登用が少ないと言われてまいりました。まずは立憲民主党から新しい時代を切り開いていくために、戦後の主要国政政党では初となる女性幹事長として西村智奈美幹事長を任命いたしました。そして、十二名で構成される党の執行役員の半数を女性、半数を男性といたしました。これは、小さな一歩ですが、大きな一歩であります。

 是非、与野党共に、更にこのジェンダー平等の取組を進めていこうではありませんか。

 私たち立憲民主党は、立憲主義、多様性の尊重、共生社会の実現という理念を持ち、それに基づく具体的な政策をそろえています。確かに、様々な問題を起こす政府・与党と戦い続けてまいりましたが、決してそれのみの政党ではありません。これからも、政府・与党を監視し、不正をただしながら、立憲民主党は、政府・与党よりもよい対案を国民の皆様にお届けいたします。皆様にとって身近な存在となり、現場の声を政治に届けてまいります。是非、これからの立憲民主党に御期待ください。

 本日のこの代表質問でも、十七項目の政策提案を行いました。

 私、泉健太と立憲民主党は、政策立案政党として、この立憲民主党に集う全国千二百名を超える自治体議員の皆様と、そして党員、協力党員、パートナーズの皆様とともに、地域で活動し、そして声を集め、当事者と現場、生活に根差した政策立案を続けてまいります。国民の皆様のために、日本の政治にもう一つの選択肢をつくるべく、これから論戦をしてまいりたいと思います。

 以上、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、泉健太議員の党代表御就任、心からお喜びを申し上げます。

 泉代表とは、これまでも、それぞれの党の政調会長として議論を交わすなど様々な御縁がございましたが、是非、これからは、また新しい立場で政治の責任を果たすために努力を続けていきたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 その上で、御質問にお答えさせていただきます。

 まず、コロナ対策についてお尋ねがありました。

 特に、昨年の前半、私が政調会長を務めていた当時のコロナ対策について御質問がございました。

 当時、新型コロナの感染力の実態がまだまだ明らかでない、こうした状況の中にあり、また、ワクチン、治療薬が開発されていない中で、新型コロナから国民の命と暮らしを守り抜くことを優先に、できるだけの対策を講じてきたと振り返っています。

 具体的には、医療体制を構築するための病床確保や人材確保のための支援、新型コロナの影響を受けておられる方々の事業と雇用、暮らしを守るため、事業規模に応じた協力金や雇調金の支給など、世界的に見ても最大級の規模の対策を講じた次第です。

 その後、国民の皆さんの御協力の結果、G7諸国で最高のワクチン接種率を実現したほか、倒産件数や失業率も低水準を維持しております。

 足下では、我が国の新型コロナの感染状況は落ち着いているものの、新型コロナの次なる感染拡大への備えを固め、コロナ禍で厳しい影響を受けた方々に万全の支援を行うとともに、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環を生み出していくため、この度、コロナ克服・新時代開拓のための経済対策を取りまとめたところであります。

 総額五十五・七兆円の大規模な対策によって、日本経済を一日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新たな社会を切り開いてまいります。

 水際対策についてお尋ねがありました。

 まず、御指摘の十一月二十九日の関係閣僚が集まった場において、本邦に到着する航空便の新規予約停止の話、この話は出ておりません。

 次に、空港検疫でのPCR検査の実施については、検査判明までの待機時間を短くする必要があることから、迅速に結果が判明しPCR検査と一致率が高い抗原定量検査が現時点では最も適していると考えています。抗原定量検査では判定が難しい場合には追加的にPCR検査を行うなど、適切に対応しております。

 また、入国者の隔離期間の設定については、強い私権制限を伴うことに留意しつつ、医療専門家の意見も踏まえて、オミクロン株対応に限られた資源を集中させる、こういった観点から、リスクに応じた対応が適切であると考えています。

 さらに、待機施設については、本日時点で、先週土曜日から二千二百六十室を追加的に確保し、九千六百十室を運用しているところですが、引き続き、待機者の増加に備え、地方自治体とも連携して、必要な待機施設の確保に取り組んでまいります。

 宿泊療養施設の確保についてお尋ねがありました。

 先月取りまとめた新型コロナ対応の全体像に基づき、今般、都道府県が策定した計画において、軽症者向けの宿泊療養施設は、今夏と比べて約四割増、一万九千室増え、約六万六千室となっています。

 また、自宅で療養する方が必要な診療を受けられるよう、全国で延べ約三万四千の医療機関と連携し、オンライン診療、往診、訪問看護等を実施する体制をつくりました。

 これらの取組によって、全ての自宅、宿泊療養者について、陽性判明当日ないしは翌日に連絡を取り、健康観察や診療を実施することができる体制を構築しています。

 こうした体制をしっかりと機能させることによって、今後、感染拡大が生じた際の対応に万全を期してまいります。

 ワクチンの三回目接種及び無料検査についてお尋ねがありました。

 オミクロン株に対するワクチンの効果やオミクロン株の特徴については、専門家や製薬企業の間で検証が進められているところです。

 ワクチンの三回目接種の前倒しについては、感染防止に万全を期す観点から、できるだけ早期に、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を見極めた上で、優先度に応じ、前倒しの範囲や方法をお示ししたいと考えています。

 また、無料検査については、検査能力等が拡大され、また検査の強化による患者の発見が早期治療につながる、こうした環境が整備されたことを踏まえて、抜本的に拡充することにしたという次第であります。

 具体的には、感染拡大時に感染不安を有する方が予約不要で簡易に検査を受けられる環境を整備するとともに、健康上の理由等でワクチン接種を受けられない方の検査を無料化することで、ワクチン・検査パッケージの定着を促進してまいります。

 空気感染についてお尋ねがありました。

 空気感染の定義については様々な議論があるものと承知をしておりますが、政府としては、エアロゾル感染とは、エアロゾルと呼ばれる、ウイルスを含む飛沫より更に小さな水分を含んだ状態の粒子によって引き起こされる感染をいい、水分が蒸発していないという点で空気感染とは異なる、このように考えております。

 エアロゾル感染については、接触感染や飛沫感染では説明できないものとして、当初より、注意を呼びかけ、三密の概念の提唱を行うとともに、換気の徹底も発信してきたところです。

 この日本の取組は、WHOにおいても取り入れられていると承知をしており、世界の新型コロナ対策にも貢献してきたものであると考えております。

 子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。

 子育て世帯への給付については、早期に実現可能な五万円の現金給付と、現金より子育て目的への支出が促進される五万円相当のクーポンの二本立てとし、迅速性と政策効果の双方に目配りした仕組みとしたところです。

 クーポンによる給付は、子育てに係る商品やサービスを直接お届けできるという意味で、より直接的、効果的に子供たちを支援することが可能であり、これに加え、地域の創意工夫を促し、民間事業者の振興や新たな子育てサービスの創出、消費の下支え等につながることも期待をされます。

 地方自治体の皆様には、こうした政策的意義について理解をいただく中で、まずは、クーポン給付を原則として検討していただきたいと考えておりますが、地方自治体の実情に応じて、現金での対応も可能とする運用といたします。その際、どのような場合に現金給付とすることができるかということにつきまして、地方自治体の御意見を伺いつつ、具体的な運用方法を検討してまいります。

 なお、非正規雇用や生活にお困りの方への支援については、今回の経済対策において、住民税非課税世帯等に対する給付金のほか、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援など、様々な施策を講ずることとしており、重層的な支援を図ってまいりたいと考えております。

 事業復活支援金についてお尋ねがありました。

 事業復活支援金は、コロナの影響で売上げが減少した事業者を支援するものであり、売上げ減少を店舗ごとに見ると証憑書類が整っておらず正確性に欠けるため、事業者ごとに給付する、このようにしております。

 持続化給付金のときと比べて要件を緩和し、新たに売上高減少三〇%以上の事業者も対象とするとともに、事業者規模に応じて最大二百五十万円と上限額も引き上げて支援を行ってまいります。

 民間の環境投資を促す支援についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年カーボンニュートラル及び二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減の実現を目指し、気候変動問題を新たな市場を生む成長分野へと大きく転換していきます。このため、企業による環境・エネルギー分野における投資を後押ししてまいります。コージェネレーションの導入拡大、新築住宅の断熱強化、営農型太陽光などのカーボンフリー電源への投資など、クリーンエネルギー分野への大胆な投資を進めてまいります。

 今後、将来にわたって安定的で安価なエネルギー供給を確保し、更なる経済成長につなげるためのクリーンエネルギー戦略を策定し、供給側に加えて、産業など需要側の各分野でのエネルギー転換に向けた企業投資を具体的に後押しするための方策を具体化してまいります。

 職場における人権についてお尋ねがありました。

 長時間労働など職場環境を原因として働く方が健康を害し、さらに、貴い命を落とすようなことはあってはならないことです。

 働き方改革関連法により創設された時間外労働の上限規制の遵守徹底を図るとともに、勤務間インターバル制度の普及促進を図り、長時間労働の是正を図ってまいります。

 職場におけるハラスメントについては、パワーハラスメントの防止措置を事業主に義務づけたところであり、この遵守徹底を図ってまいります。

 このような政策を推進することを通じて、ブラック企業をなくし、健康で充実して働くことのできる社会を目指してまいります。

 雇用に関する規制緩和についてお尋ねがありました。

 平成十五年の製造業への労働者派遣の解禁は、厳しい雇用情勢の中において雇用の場の確保等を目的として行われたものであり、この措置自体が市場に依存し過ぎたことには当たらないと考えています。

 その後も、同一労働同一賃金の導入など、労働者の保護に欠けることのないよう十分留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度整備を行ってまいりました。

 制度が適切に運用され、派遣労働者の待遇改善や雇用安定が図られるよう、引き続き、指導監督等を徹底してまいります。

 社会保険料負担についてお尋ねがありました。

 若者、子育て世帯を中心に保険料負担の増加を抑制し、所得の増加につなげていくことは、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現において重要な課題であると認識をしています。

 このため、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う持続的な社会保障制度を構築することにより、現役世代の保険料の負担増の抑制を目指してまいります。

 こうした労使の社会保険料負担増の抑制を含め、女性の就労の制約となっている制度の見直し、子育て支援、家庭介護の負担軽減など、正規雇用を増やし、男女が希望どおりに働ける社会をつくっていくことが重要であると考えています。

 若者世代、子育て家庭の所得の引上げについてお尋ねがありました。

 新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環の流れを加速していくための鍵は、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭であり、ここに焦点を絞り、賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中していきたいと考えます。

 制度面では、全世代型社会保障構築会議を中心に、男女が希望どおりに働ける社会を目指して、女性の就労の制約となっている制度の見直しや勤労者皆保険の実現、仕事と子育ての両立支援、家庭介護の負担軽減、大学卒業後の所得に応じて出世払いを行う仕組みを含め、子育て世代の教育費等の支援などに取り組むとともに、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じて皆が支え合う持続的な社会保障制度を構築することにより、若者、子育て世帯の保険料負担増の抑制も目指してまいります。

 様々な政策を御提案いただきました。我々としても、当事者の声に耳を傾け、必要な政策を総動員することによって、分厚い中間層を取り戻してまいりたいと考えております。

 税制についてお尋ねがありました。

 所得税については、再分配機能の回復を図る観点から、平成二十五年以降、最高税率を引き上げることで累進性を強化する等の施策を講じてきたところです。

 今後の税の再分配機能の在り方については、これまでの改正の効果を見極めるとともに、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き、よく考えてまいります。

 また、金融所得課税の見直しについては、成長と分配の好循環を実現するための様々な分配政策の選択肢の一つとして挙げております。

 分配政策については、様々な政策の優先順位が大事であり、令和四年度税制改正においては、賃上げに向けた税制の抜本的強化に取り組むとともに、下請対策の強化などに取り組んでまいります。

 トリガー条項発動法案、そして文書通信交通滞在費についてお尋ねがありました。

 現在凍結中のトリガー条項については、発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、また国、地方の財政への多大な影響等の問題があることから、この凍結解除は適当ではないと考えております。

 政府としては、国民の皆さんが年末から春先までを見通せるように、農業や漁業等に対する業種別の対策を強化します。加えて、ガソリン、灯油の急激な値上げに対する備えとして、年内から執行可能な激変緩和措置も講じます。これにより、国民の皆様に、スピーディーに、かつ混乱なく効果が行き渡ると考えております。

 また、国会議員の文書通信交通滞在費の問題は、議員の政治活動の在り方と密接に関連する重要な課題と認識をしています。このため、各党各会派がそれぞれのお考えを持ち寄って、しっかりと議論していただき、合意を得る努力を重ねていただく必要があると考えております。

 マイナポイントについてお尋ねがありました。

 今回の経済対策におけるマイナポイントは、マイナンバーカードの普及のみならず、キャッシュレス決済の拡大や消費の喚起、さらにはカードの健康保険証利用や公金受取口座の登録促進により、デジタル社会の実現を図ることを目的に実施するものです。

 補正予算案では、一人当たり最大二万円相当のポイントとして一・八兆円を計上したところであり、こうした目的のために必要なものであると考えております。

 水田活用の直接支払交付金の見直しと赤潮による漁業被害の支援についてお尋ねがありました。

 主食用米の需要が毎年減少すると見込まれる中、野菜などの収益性の高い、需要のある作物への転換を一層進め、将来にわたって産地として定着させていくことが必要です。このため、令和四年度の水田活用の直接支払交付金について、見直しの趣旨を丁寧に説明しながら、作物間の支援水準のバランスを見直すとともに、現場の課題を検証しつつ、今後五年間に一度も米の作付を行わない農地を対象外とするなどの見直しを行ってまいります。

 北海道での赤潮発生によるサケ、昆布等の漁業被害に対しては、漁業共済等により減収補填を行います。また、漁業共済の対象外のウニについても、ウニ殻の除去等の漁場環境の回復の取組を支援し、経営継続を支援していくこととし、これに伴う地方自治体が負担する経費に対して特別交付税措置を講じてまいります。

 福島県における再生可能エネルギーの導入支援と目標の前倒しについてお尋ねがありました。

 福島県では、これまでの再生可能エネルギー導入の取組を更に進めるために、二〇四〇年をめどに再エネ一〇〇%とする福島県再生可能エネルギー推進ビジョン二〇二一を年内に策定すると承知しております。

 政府としては、本年二月に改定した福島新エネ社会構想に基づき、再生可能エネルギーの導入拡大に必要な送電線の整備促進や再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造する実証実験などを通じ、福島県の掲げる目標を前倒しできるよう、福島への支援を強化してまいります。

 他国における人権侵害に対して制裁を科す法律に関する岸田政権の立場についてお尋ねがありました。

 私の内閣では、人権を始めとした普遍的価値を守り抜くこと、これを重視しております。

 深刻な人権侵害については、省庁横断的に取り組むとともに、米国などの同盟国、同志国と緊密に連携して、しっかり声を上げてまいります。

 その上で、法整備については、幅広い理解が重要との観点から、今、超党派での議論が進んでいると承知をしています。その議論をよく見守るとともに、これまでの日本の人権外交を踏まえて、引き続き検討してまいります。

 経済安全保障についてお尋ねがありました。

 近年、世界各国が戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る中、経済安全保障が急務の課題となっています。

 御指摘のエネルギーや食料も含め、重要な物資が必要なときに確実に手に入るようにする備えは当然重要であり、経済安全保障推進会議には経済産業大臣、農林水産大臣も参画して議論を進めてまいります。同会議の下、多岐にわたる新しい時代の課題について、政府一体となって、戦略的観点から、しっかりと取り組んでまいります。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致問題は最重要課題です。拉致被害者の御家族が御高齢となる中、拉致問題の解決には一刻の猶予もありません。

 私自身、米韓中ロなど各国首脳との電話会談において、拉致問題について直接提起をいたしました。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、米国バイデン政権を始めとした関係国と緊密に連携してきており、米韓とも、次官級あるいは局長級協議を重ねております。私自身、金正恩委員長と直接向き合うべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでいきたいと思っています。

 そして、選挙演説の動員についてお尋ねがありました。

 候補者や政党はもとより、選挙に関わる全ての人により、法令の定めに従って公正な選挙が行われるべきであるということ、これは当然のことであります。

 選挙演説の動員の在り方については、公正な選挙に関することであり、各党各派の議論を進めていただきたい、議論をしていただくべき問題であると考えております。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正について、与野党の枠を超え、積極的な議論が行われることを心から期待いたしますが、現行憲法のどの部分にどのような課題があるかを含め、憲法改正についての議論の具体的な内容については、これは国会でお決めいただくことであり、内閣総理大臣としてその点についてお答えすることは差し控えたいと思います。

 いずれにせよ、我々国会議員は、大きく時代が変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、その在り方に真剣に向き合っていく責務があります。

 国会での議論と国民の理解、これは車の両輪です。広く国民の議論を喚起し、理解を深めていくことが重要であると考えております。(拍手)

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議長(細田博之君) 茂木敏充君。

    〔茂木敏充君登壇〕

茂木敏充君 自由民主党の茂木敏充です。

 会派を代表して、岸田総理の所信表明演説並びに財政演説について質問します。(拍手)

 この臨時国会前、十月の総選挙で、自民党は絶対安定多数二百六十一議席を獲得することができました。国民の皆様から大きな信任を得ることができたと考えています。今後とも、国民との丁寧な対話を続け、政策の実現力、改革の実行力で国民の期待に応えていくことが何より大切だと思います。

 古代ギリシャの英雄アレキサンダー大王、僅か十年でギリシャから東はインダス川に至る巨大な帝国を築いた力の象徴、若きアレキサンダーがこんな言葉を残しています。剣によって得たものは長続きしないが、優しさと節度によって得たものは永遠である。まさに、岸田総理が強調されている寛容、そして信頼と共感、これこそが、今、政治に求められているのではないでしょうか。

 まず、コロナ対策についてお聞きします。

 昨年の初め、中国・武漢から始まった新型コロナ感染症は世界中に広がり、世界各国がかつてない危機に直面しました。今年の四月には世界全体の一日の感染者が八十九万人と過去最大になりましたが、現在では、その半分以下、四十万人程度となり、米国やヨーロッパでの感染再拡大や新たな変異株の影響が懸念されているものの、世界全体では、また日本でも、感染はやや落ち着きを見せています。

 特に日本の場合、ロックダウンなどの強制的な措置を取らない中でも、感染者や死亡者は低い水準に抑えられてきました。これは、ワクチンの接種の加速に加え、日本人の高い公衆衛生意識、医療現場の皆さんの献身的な対応、そして国民の皆様や様々な事業者の協力があってこそだと考えています。

 もちろん、今後も、新たな変異株の海外からの流入を食い止める水際対策、今回のオミクロン株に対する水際措置のような厳格かつ機動的な対応が極めて重要であり、批判は私が全て負う覚悟とした総理の決断を支持します。

 その上で、新型コロナは未知の感染症であり、日本ばかりか世界各国が試行錯誤で対応に追われてきたのは事実です。そこで、新型コロナが落ち着きを見せている今こそ、これまでのコロナ対応を総合的に検証し、反省点や課題を今後の対策に反映していくことが重要だと考えます。まさに、マサチューセッツの夏、JFKの、屋根を修理するなら日が照っているうちに限るです。

 反省点、幾つかあると思います。

 まず、感染拡大の初期に、流行一か月から二か月で新規感染者が何百倍に増えるといった感染拡大の予測数値、予測モデルが乱立し、独り歩きしたこと。これらの予測が適切な感染対策にどこまで役に立ったのか、大いに疑問です。

 全国レベルで何倍になるということより、むしろ、自治体単位での感染状況、トレンドや、どこにコロナ病床の空きがあるかなどの実態を見える化した方が、医療関係者などにとって、より有益な情報だったのではないでしょうか。これは、台湾のオードリー・タン・デジタル政策担当大臣が先頭になってマスクの流通状況などの情報を積極的に公開した台湾の好事例を見ても明らかだと思います。

 また、一時提案された新しい行動様式にしても、横並び一列で会食するといった提案など、人間行動学的に初めから定着するのが困難なものがあったかと思います。

 さらに、当初、感染が急拡大する状況では現場の判断、保健所の判断に依存せざるを得なかったのは確かだったと思いますが、知見や経験の集積とともに、現場任せではなく、より統合された指揮命令系統をつくり上げていくべきではなかったでしょうか。

 強調したいのは、これらの反省点を踏まえて、今後のコロナ対策をどう進めていくかです。これに関連して、総理に三点お伺いします。

 まず、指揮命令系統について。

 総理は、来年六月までに感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめると表明されており、危機管理では、最悪の事態を想定した対応が何より重要だと考えます。

 その上で、医療提供体制の強化、例えば、病床数をどこまで確保するかやワクチンの接種などについて、基本方針は国が明示する、一方、地方自治体や保健所はその実施に集中し、これを国や都道府県が支援する体制に転換していくべきだと考えますが、この基本的な方向性について、総理の見解を伺います。

 そして、二点目、円滑な実施を進めるための仕組みづくりも不可欠です。

 例えば、病床の増強については、三つのステップの準備が必要です。まず、患者動線や陰圧室などの整備、次に、病床そのものを患者のいない空き病床として確保する、そして最後に、コロナ患者を実際にそこに受け入れる。

 今回の経済対策にも、都道府県による病床の確保に活用できる新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金として二兆三百十四億円が措置されていますが、今進められている病床の拡大確保に当たっても、これら三つの段階それぞれに応じた補助金としていくことが適切だと思います。

 また、単に病床を準備するだけでなく、そこに十分なスキルを持った医師、看護師などの人材を配備しなければ意味がありません。

 そこで、人材を拠出した病院への補填とともに、施設基準についても柔軟に対応すること、都道府県単位で人材登録を行うこと、医療機関等に対し、待機報酬、危険手当に対応できるような支援策を拡充し、感染症対応の実習、研修も行うこと、こういった実際にコロナ病床や人材供給の増加につながる取組、仕組みづくりが必要ではないでしょうか。総理の見解を伺います。

 最後に、ワクチンの開発、製造について。

 今後、国産ワクチンの開発、製造が経済安全保障の観点からも極めて重要であり、今回の経済対策にも七千三百五十五億円の予算が確保されています。

 同時に、新たなウイルスのワクチン開発にどの国、どの企業が先行するかは、なかなか予測困難です。

 今回のワクチン開発でも米国と英国が先行しましたが、アストラゼネカはオックスフォード大学と共同研究し、製薬大手の米国ファイザーはドイツの医薬品ベンチャー、ビオンテックと組んでワクチンを開発しました。

 ワクチンの開発に関し、世界中のシーズを最も早く見出す産学官のネットワーク力の強化や、業態、国境を越えた共同開発も視野に入れた取組が必要ではないでしょうか。

 さらに、私も、外務大臣として、EU域内で製造されたワクチンの日本国内への調達に携わり、ぎりぎりの交渉も行いましたが、今後、海外で開発されたワクチンの調達力強化、また、開発後に国内で生産能力を一気に拡張するための、例えば、平時は医薬品、緊急時はワクチン製造に使えるデュアルユースの生産設備の整備、大幅拡充といった対策が必要ではないでしょうか。

 感染症克服の鍵を握るのは、やはりワクチンです。三回目の接種も、八か月を待たず、前倒しすべきです。

 以上、ワクチンに関する今後の取組について、総理の見解を伺います。

 経済対策に入ります。

 昨年の新型コロナ発生後、政府は三度にわたる補正予算を編成し、財政支出百五十兆円を超える対策を行ってきましたが、その主体は、コロナの影響から暮らしや事業、雇用を守るための対策でした。

 今後必要になるのは、攻めの経済政策です。生活支援、事業支援にとどまらず、たとえ次の感染の波が来たとしても、十分な医療提供体制や治療薬を確保し、ウィズコロナの下でも経済をしっかりと動かせる体制をつくっておくことです。

 コロナ前の成長トレンド、二〇二二年から二三年に実質GDP五百六十兆円を超える成長軌道に戻していくためには、相当思い切った対策が不可欠です。

 先月、政府の経済対策が取りまとめられました。財政支出は過去最大の五十五・七兆円、事業規模は七十八・九兆円に上る、大胆かつ総合的な経済対策だと受け止めています。

 この新たな経済対策によって日本経済をどのように成長軌道に乗せていくのか、総理が描くシナリオと、その実現に向けた重点政策について御説明ください。

 日本経済を新しい成長軌道に乗せていくに当たっては、単に成長率を引き上げるだけでなく、それを広く国民が実感できるよう、成長の裾野を広げる、より幅広い成長と、成長の果実をより速く、より多く、より隅々まで分配できる、成長と分配の好循環を目指していくことが大切だと思います。

 我々は、成長戦略によって、デジタル、グリーンなど成長分野への投資を加速し、そこで生み出された利益が国民、すなわち消費者に回り、それがマーケットの拡大、そして更なる投資へとつながる好循環をつくっていきます。これこそまさに資本主義なのですが、ただ、我々は、新自由主義と言われるような、競争一辺倒で、もうこれ以上消費できない勝ち組と意欲を失ってしまう負け組をつくるような市場原理主義にはくみしません。

 一方、分配というと、資本家、大企業からお金を吸い上げて労働者に回すというような、社会主義的なゼロサムゲームを思い浮かべるかもしれませんが、我々の目指すものは全く違います。ウィンストン・チャーチルも、資本主義と社会主義の違いについて、資本主義に内在する悪徳は幸運を不平等に分配することだ、社会主義に内在する美徳は不幸を平等に分配することだと語っています。

 資本主義をより適正に機能させる。神の見えざる手が及ばない、マーケットに任せておくだけではうまくいかない、例えば正規、非正規の壁や看護、介護の公定価格などマーケットが機能しにくいところを官が補完することで、より多くの受益者、アクティブプレーヤーを生み出す、そういう分配政策が必要です。

 イギリスのエコノミスト誌では、新しい資本主義のことをニューモデル・オブ・キャピタリズムと表現しています。自動車も、何年かに一度はモデルチェンジが必要ですし、蒸気機関からガソリンへ、そして電気自動車へといった、より大きなシフトも進みます。私たちの資本主義も、時代のニーズやトレンドに合わせてモデルチェンジや更なる進化を図っていくべきだと考えます。

 自民党でも、先月、新しい資本主義実行本部を立ち上げました。政府の新しい資本主義実現会議と車の両輪で、検討作業を加速していきます。

 そこで、岸田総理の描く成長と分配の好循環、そして新しい資本主義について、そのビジョンと実現への道筋についてお聞かせください。

 総理は、成長戦略の柱として、デジタル田園都市国家構想を打ち出されました。発想の源泉は、一九七〇年代末、当時の大平総理が打ち出した田園都市国家構想だと思います。当時、日本は、高度成長期を終え、安定成長期へ、成長から暮らしの豊かさに国民のニーズがシフトする時代環境でした。そんな中、大平総理は、都市の活力と田園のゆとりを結合させる田園都市国家構想を打ち出しました。

 キーワードは、都市と地方の長所の結合だと思います。特に今の時代、デジタル技術を活用すれば、距離は問題にならず、場所が制約にならない時代になっています。ネットショッピング、オンライン教育や遠隔診断で、地方にいながら都会同様に最先端で多様なサービスを享受することができます。

 デジタル田園都市、国民にとってはまだなじみのない言葉だと思います。総理が目指すデジタル田園都市国家構想について、分かりやすく御説明ください。

 東日本大震災の発生から十年がたちました。被災地の復興、再生に向けた歩みは着実に進んでいます。自民党は、これからも、お一人お一人に寄り添いながら、被災地の復興と再生に向けた取組を続けるとともに、福島県に整備する国際教育研究拠点を始め、被災地の新しい発展に向けた取組を加速します。

 さらに、近年、気候変動の影響により自然災害が頻発、激甚化する一方で、高度成長期に整備された我が国のインフラは、大規模な補修や改善が必要となっています。壊れてから直すのではなく、壊れる前に、センサーやデジタル技術をフル活用して、先手先手の対応を行っていくことが大切です。

 今回の経済対策でも、国民の安全、安心の確保に向け、防災・減災、国土強靱化に二兆七千四百三十二億円の対策が盛り込まれています。政府には、デジタル時代にふさわしい、賢いインフラ整備を進めてもらいたいと思います。また、デジタル技術は、農林水産業での担い手の確保や生産基盤の強化、そして中小企業の生産性向上にも活用が期待されます。

 防災・減災、国土強靱化の推進、さらに、コロナの影響を受けている農林水産業や中小企業、小規模事業者への支援策について、総理の決意を伺います。

 外交、安全保障の話に入ります。

 国際政治学者グレアム・T・アリソンは、新興勢力が台頭し支配勢力と拮抗するようになると衝突の危険性が高まる、いわゆるツキディデスのわなを指摘し、注目を集めました。そして、その危険を回避するためには、最大限の想像力と慎重さ、柔軟さを駆使する必要があり、途方もない政治的手腕が求められていると述べています。

 我が国を取り巻く安全保障環境も、厳しさと不確実性が増しています。日本の周辺には大きな軍事力を有する国家が集中しており、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著になっています。まさに、我が国の政治的、外交的手腕が試されています。

 中国による透明性を欠いた軍事力の拡大や、東シナ海、南シナ海における一方的な現状変更の試みは、日本を含む地域と国際社会の安全保障の強い懸念となっています。尖閣諸島周辺の日本の領海で独自の主張をする中国海警船の活動は明らかに国際法違反であり、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意の下、今後とも、冷静に、そしてより毅然と対処していくことが重要です。

 岸田総理は、就任翌日にバイデン大統領と日米首脳電話会談を実施し、日米同盟の一層の強化を確認されました。また、総選挙直後に英国グラスゴーでのCOP26に出席し、バイデン大統領との間で、早期に首脳会談を実現することで一致しました。

 本年四月の日米首脳会談では、日米同盟の強化や自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を確認するとともに、台湾問題について、実に五十二年ぶりに、共同声明に台湾海峡の平和と安定という要素を盛り込みました。両岸関係について、軍事バランスは全体として中国側に有利に変化していると見た方がいいのではないかと思います。この台湾をめぐる情勢の安定は、日本の安全保障にとってはもとより、地域や国際社会の安定にとっても重要であり、一層緊張感を持って注視、対応していくことが必要であると考えます。

 そこで、今後の日米同盟強化に向けた抱負、五年前のTICAD6で日本が提唱し、今や、日米豪印、クアッドの協力、ASEANやEUとの連携に発展している自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組、さらに、今お話しした台湾問題への対応について、総理のお考えを伺います。

 北朝鮮による核・ミサイル能力の向上始め、我が国が直面する安全保障環境に鑑みれば、日米同盟の抑止力、対処力の向上が必要不可欠です。また、我が国自身の防衛力の強化が重要であり、GDP比一%枠といった従来の考え方にとらわれるのではなく、現実の安全保障環境に対応した防衛費の拡充が必要だと思います。

 ミサイル技術が発達する中で、迎撃能力を向上させるだけで本当に日本を守れるのかという問題意識の下、敵基地攻撃能力、厳密な言葉で言えば敵基地反撃能力、その保有は有力な選択肢であると考えます。今後、専守防衛の考え方、また日米の基本的な役割分担を維持しつつ、このような能力の保有について検討を加速すべきと思いますが、以上、総理の見解をお聞かせください。

 自由で公正な経済圏の拡大について伺います。

 世界で保護主義や内向き志向が強まる中、日本は、TPP11以降、日・EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEPと、自由貿易の旗手として、自由で公正な経済圏の拡大にリーダーシップを発揮してきました。また、デジタル分野の新たなルール作りでも、日本は議論を主導してきました。

 一方、中国は、この分野でビッグ・エレファント・イン・ザ・ルームと呼ばれています。中国は、世界最大の途上国を自称し、国際的な枠組みにおいて、主要国が負うべき責務を回避し、恩恵だけを享受し続けています。その一方で、経済的手段を用いた圧力、国際ルール、スタンダードの枠外での開発金融によって影響力の拡大を図っています。

 これらの分野で中国にどう対応し、また、自由で開かれた経済圏の拡大や新たなルール作りで日本としてどうリーダーシップを発揮していくのか。さらに、先端半導体など戦略物資の確保、サプライチェーンの強靱化始め、新たな課題である経済安全保障に、今見えるものだけではなく、中長期的な視点も含め、どう取り組んでいくのか、総理のお考えを伺います。

 近年、世界各地で、これまでになかったような極端な大雨や記録的な猛暑が続いています。日本でも、ここ数年、これまでに経験したことのないと形容される気象現象が頻発しています。気候変動問題への対応は、もはや待ったなしの課題です。

 先日のCOP26において、岸田総理は、パリ協定の目標に向けて、五年間で最大百億ドルの国際的な支援を行うという日本の新たなコミットメントを発表し、アジアを中心とした脱炭素社会の構築を通じて、世界全体の気候変動対策に貢献していくことを表明されました。

 世界の投資は、今後、DX、デジタルトランスフォーメーションとともに、GX、すなわちグリーントランスフォーメーションへと一気に向かっていきます。世界経済の成長エンジンとして発展が期待されるアジア諸国にとっても、このGXのうねりは、経済成長と脱炭素化を両立させる鍵になります。

 その際、重要なことは、これまでの様々な国際課題への対応が先進国と途上国の分断を生んだように、先進国の時間軸や手法だけを押しつけるのではなく、アジア各国などの置かれた状況や課題を踏まえ、現実的に気候変動問題に取り組んでいくことです。高い目標を掲げつつ、それぞれの実情に合った最も有効な対策を講じていくことが、最終的に、途上国も含めた地球規模の温室効果ガスの大幅削減につながると考えます。

 今後、この気候変動問題に日本としてどういう立ち位置で取り組んでいくのか、また、どのような日本らしい貢献をしていくのか、改めて総理のお考えを伺います。

 日本国憲法の制定から今年でちょうど七十五年。我が国を取り巻く国際環境や気候変動などの自然環境、さらに、社会構造や国民意識も大きく変わってきています。この一、二年に限っても、新型コロナ感染症の拡大という危機に直面し、緊急事態というものへの切迫感も高まっていると思います。

 自民党は、緊急事態対応を含む四項目を中心に、憲法改正の条文イメージを提示しており、国会での活発な議論を期待しています。

 一方、一部には、改正を前提とした審議はしないという御意見もあるようです。決して真意ではないと思いますが、聞きようによっては、議論のための議論ならやってもいいとも取れます。一体、これで、我々国会議員の責務、憲法の改正原案を策定し国民に発議する権限と責任を有する国権の最高機関、国会の役割を果たしたと言えるのでしょうか。

 総理は、かつて、我が党の政調会長として、この場で、「憲法のありようについては、時代の変化の中で、常にどうあるべきか考えていかなければならない」と述べられました。感染症による新たな緊急事態、厳しさを増す安全保障環境など、時代は大きな転換点を迎えています。今こそ、我々国会議員が、広く国民の議論を喚起し、国民に選択肢を示すべきではないかと考えますが、総理の御所見を伺います。

 早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。チームワークで困難な課題解決に取り組むという岸田総理の考えを共有します。

 中国史上最高の名君とうたわれた唐の二代皇帝太宗は、その言行録「貞観政要」の中で、チームの力を強調し、諫言に耳を傾けよ、さすれば国はよく治まると語っています。まさに、総理が重視する聞く力だと思います。

 同時に、太宗は、事をなす時間軸を持つことの大切さを強調しています。「中庸」の中にある、「遠きに行くに必ず邇きよりす」にも通じます。

 岸田総理が、我が国が直面する内外の重要課題に明確な時間軸の下一つ一つ結果を出していくことを期待し、自民党としてチーム力でそれを支え、国民の皆さんの期待にお応えしていくことを約束して、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 茂木敏充議員の御質問にお答えいたします。

 感染症危機管理の基本的方向性についてお尋ねがありました。

 先般、新型コロナ対応の全体像をお示しし、政府としての基本的考え方や、次の感染拡大を見据えた病床の確保等の医療提供体制の強化、ワクチン接種の促進等の取組を明示しています。

 そして、政府においては、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金等により、都道府県による病床、医療人材の確保や保健所の人員体制強化等を支援するとともに、ワクチン接種の実施主体である市町村を、都道府県とともに支援する体制を構築しています。

 また、国が主導して感染症危機に対応できるよう、国と地方の連携強化等を行うための法整備を行います。さらに、これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証し、その上で、来年六月までに、感染症危機などの健康危機に迅速的確に対応するため、抜本的体制強化策を取りまとめてまいります。

 コロナ病床や人材供給の増加につながる取組についてお尋ねがありました。

 先般、新型コロナ対応の全体像をお示しいたしました。これに沿って、次の感染拡大を見据えた医療提供体制を確保いたします。

 感染力が今夏の二倍となる状況を想定し、公的病院の専門病床化を始め、新たな病床の徹底的な確保と個々の病院の病床利用の見える化を図り、確保した病床をしっかりと稼働させていきます。

 このため、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金等により、陰圧室等の施設整備、病床の確保、患者の受入れといった、それぞれの段階に応じた支援を準備しています。また、医療人材の確保についても、人材の派遣を円滑化するための支援、都道府県における人材確保、配置調整等を一元的に担う体制の構築、重症患者を診療する医療人材を拡充するための研修などの対応を強化いたします。

 これらの取組により、国民の皆さんの安心を取り戻し、何としても、国民の命と健康を守り抜く決意です。

 ワクチンに関する今後の取組についてお尋ねがありました。

 変異株も含め、今後の感染症危機に備えるため、今回の補正予算案において、ワクチン開発、生産体制の強化を図ります。具体的には、新たな創薬手法による産学官の実用化研究を集中的に支援するとともに、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、創薬ベンチャーエコシステムの底上げ、治験環境の整備などに取り組み、ワクチン開発を強力に進めてまいります。

 海外で開発されたワクチンや治療薬の調達力の強化については、必要な財源を措置した上で、厚生労働大臣直轄で取り組んでいるところです。また、今回の補正予算案では、デュアルユース生産設備の整備に約二千三百億円の投資を行うことで、国内生産体制においても、今後脅威となり得る感染症への備えに万全を期してまいります。

 新型コロナワクチンの三回目の接種については、感染防止に万全を期す観点から、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を一定程度見極めた上で、優先度に応じ、追加承認される見込みのモデルナ社のワクチンを活用して、八か月を待たずに、できる限り前倒しいたします。

 経済対策についてお尋ねがありました。

 コロナ克服・新時代開拓のための経済対策は、新型コロナの次なる感染拡大への備えを固め、コロナ禍で厳しい影響を受けた方々に万全の支援を行うとともに、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環を生み出していくためのものです。

 新型コロナについては、決して楽観せず、コロナ予備費も含め十三兆円規模の財政資金を投入し、最悪の事態を想定した医療体制の確保や、予防、発見から早期治療までの流れを強化いたします。

 そして、通常に近い経済社会活動を取り戻すまでの間は、十七兆円規模の手厚い支援を講じ、断固たる決意で、新型コロナでお困りの方の生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜いてまいります。

 さらに、二十兆円規模の財政資金を投入し、イノベーション、デジタル、クリーンエネルギー、経済安全保障などの重点分野における大胆な投資を進めるとともに、経済的な力強さをもたらす原動力である、人への投資を強化し、新たな時代を切り開いていくための大きな一歩を踏み出してまいります。

 総額五十五・七兆円の大規模な対策によって、日本経済を一日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新たな社会を切り開いてまいります。

 新しい資本主義についてお尋ねがありました。

 新型コロナによる危機を乗り越えた先に、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の課題に対応しつつ、国と民間が協調して大胆な投資をし、力強く成長していくための経済社会の変革に取り組んでいかなければなりません。この変革こそ、私の掲げる新しい資本主義の実現です。

 この新しい資本主義を起動させるため、今般の経済対策において、成長戦略としては、科学技術、気候変動、デジタル、経済安全保障などの分野に大胆な投資を行うとともに、分配戦略として、人への投資の強化や公的価格の在り方の見直しに取り組むなどにより、成長と分配の好循環を実現してまいります。

 民間における賃上げについては、来年の春闘に向けて議論をスタートしています。政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境整備に全力で取り組んでまいります。中でも、賃上げ税制については、抜本的に強化し、企業の税額控除率を、大企業で最大三〇%、中小企業で最大四〇%、大胆に引き上げることといたしました。

 来春には新しい資本主義実現会議の場でグランドデザインとその実行計画を取りまとめ、世界、そして時代が直面する挑戦を先導してまいります。

 デジタル田園都市国家構想についてお尋ねがありました。

 デジタル田園都市国家構想は、高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するものです。

 同構想実現のため、まずは、時代を先取るデジタル基盤を公共インフラとして整備いたします。具体的には、海底ケーブルで日本を周回するデジタル田園都市スーパーハイウェーや各地に設置するデータセンター、そして光ファイバー、5Gを組み合わせ、日本中、津々浦々、どこにいても高速大容量のデジタルサービスを使えるようにいたします。

 世界最先端のデジタル基盤の上で、今回の経済対策で新しく創設するデジタル田園都市国家構想推進交付金を始めとする各種交付金などをフルに活用して、自動配送、ドローン宅配、遠隔医療、教育、防災、リモートワークなど、地方における先導的なデジタル実装の取組を支援いたします。

 さらに、誰一人取り残さず、全ての方がデジタル化のメリットを享受できるよう、デジタル推進委員を全国に展開いたします。

 これらの取組により、地域が抱える人口減少、高齢化、産業空洞化などの課題をデジタルの力を活用することによって解決し、地方から国全体へ、ボトムアップの成長を実現してまいります。

 防災・減災、国土強靱化の推進や農林水産業、中小企業、小規模事業者への支援策についてお尋ねがありました。

 防災・減災、国土強靱化を効率的に進めるためには、デジタル技術の活用が不可欠です。このため、ICTを活用した施工の効率化やセンサーを活用したインフラ点検の実施、線状降水帯の予測など、デジタル技術の活用を進めてまいります。今後とも、効率的かつ強力に取組を推進してまいります。

 コロナによる影響を受けた農林水産業に対しては、資金繰りや新たな販路開拓への支援等により経営継続を支援するとともに、デジタル技術の実装等を通じたスマート化を生産現場で推進してまいります。

 厳しい状況に直面する中小事業者に対しては、二・八兆円規模の事業復活支援金などにより事業継続を支援するとともに、デジタル化の推進などを通じ、生産性向上を強力に後押ししてまいります。

 日米同盟、自由で開かれたインド太平洋、台湾をめぐる情勢についてお尋ねがありました。

 バイデン米国大統領とは、十月に電話会談を行い、十一月のCOP26の際にも懇談を行いました。できるだけ早期に訪米して、バイデン大統領と会談をし、これまでに培った信頼関係を基礎に、インド太平洋地域、国際社会の平和と繁栄の基盤である日米同盟の抑止力、対処力を一層強化してまいります。

 自由で開かれたインド太平洋の実現について、インド太平洋地域において、ルールに基づく自由で開かれた秩序の実現により、地域、世界の平和と繁栄を確保することが重要です。日本が推進してきたこの考え方は、日本による外交的働きかけもあり、最近では、国際社会において幅広い支持を得てきています。米国を始め、豪州、インド、ASEANや欧州などの同志国とも連携し、日米豪印、クアッドの取組等も活用しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を深めてまいります。

 台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要です。台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待するというのが、従来から一貫した立場です。このような立場から、台湾をめぐる情勢について、引き続き、関心を持って注視してまいります。

 防衛費と敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 何よりも大事なことは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、こうした現実的な議論をしっかりと突き詰めていくことです。防衛費についても、金額あるいは結論ありきではなく、現実的な議論の結果として、必要なものを計上してまいります。

 ミサイル防衛についても、最近では、極超音速滑空兵器や変則軌道で飛翔するミサイルなど、ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、進化しています。

 国民の命や暮らしを守るために何が求められるのか、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討していき、その中で国民の皆様にもしっかりと御理解いただきたいと考えております。御指摘の専守防衛の考え方や日米の基本的な役割分担を維持しつつ、こうした検討を進めてまいります。

 自由で公正な経済圏の拡大と経済安全保障についてお尋ねがありました。

 自由で公正な経済圏の拡大は、我が国の安全と繁栄に不可欠です。

 このため、TPP11を始めとする高いレベルの経済連携協定等の着実な履行等を通じた国際的なルール作りを推進してまいります。また、中国に対し、G20、WTO等を通じ、国際ルールにのっとり、その責任を果たすよう求めてまいります。

 経済安全保障については、世界各国が戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る中、経済構造の自律性の向上、日本の技術の優位性ひいては不可欠性の確保、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目指すと同時に、こうした分野に民間投資をしっかり呼び込み、経済成長を実現してまいります。

 こうした観点から、サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの信頼性確保を進めるため、与党との協議を踏まえ、来年、通常国会へ新たな法案の提出を目指します。また、我が国にとり重要な戦略物資である半導体の国内立地を推進するための法案をこの国会に提出いたします。

 気候変動問題への取組についてお尋ねがありました。

 気候変動問題は、人類共通の課題です。先月開催されたCOP26の首脳級会合では、私から、二〇三〇年までの期間を勝負の十年と位置づけ、全ての締約国に野心的な気候変動対策を呼びかけました。

 我が国は、この社会課題を新たな市場を生む成長分野へと大きく転換していきます。そのために、二〇五〇年カーボンニュートラル及び二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減の実現、さらに、五〇%の高みに向けた挑戦を続けるべく、安定供給の確保を前提に、再エネ最大限導入のための規制の見直し及びクリーンエネルギー分野への大胆な投資、これを進めてまいります。

 また、火力のゼロエミッション化に向け、アンモニアや水素への燃料転換を進め、その技術やインフラを活用し、アジアの国々の脱炭素化に貢献してまいります。アジアなどの脱炭素化支援など、新たに今後五年間で官民合わせて最大百億ドルの追加支援を行う用意があることを、先般のCOP26で表明いたしました。

 さらに、COP26決定に沿って、防災等適応のための資金支援を倍増するとともに、二国間クレジット制度の拡大等を通じて、世界の気候変動対策に貢献してまいります。

 我が国は、引き続き、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた取組を強力に推進し、各国と連携しつつ、パリ協定の目標である脱炭素社会の実現に向け、国際社会を主導してまいります。

 憲法についてお尋ねがありました。

 憲法は国の礎であり、そのあるべき姿を最終的に決めるのは、主権者である国民の皆様です。

 憲法改正については、大きく時代が変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、国民の皆様の理解を更に深めることが重要です。

 国会での議論と国民の理解は車の両輪であり、広く国民の議論を喚起していくことは、まさに我々国会議員の責務であります。与野党の枠を超えて、これまで以上に活発な議論が行われることを心から期待いたします。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 西村智奈美さん。

    〔西村智奈美君登壇〕

西村智奈美君 立憲民主党幹事長の西村智奈美です。

 今回、党の代表選挙に立候補し、理不尽を許さない、そして多様性を力にとの思いを訴えさせていただきました。そうした思いも込めて、質問をさせていただきます。(拍手)

 岸田総理から最初に新しい資本主義という言葉をお聞きしたとき、もしかしたら私たちが主張してきた分配重視の政策へとかじを切るのではないか、そんな期待をしました。残念ながら、今回の所信をお聞きし、その期待は失望に変わっています。

 分配という言葉は入りましたが、具体策が全く見えません。何より、これまで格差と差別を生んできた、何でも自己責任、競争至上主義、いわゆる新自由主義の構造そのものには全くメスを入れようとしておりません。さらには、これまで新自由主義路線の象徴のお一人であった竹中平蔵氏を官邸会議のメンバーとして起用するなど、本当に新自由主義と決別する気があるのか、大きな疑問です。

 新しい資本主義は、大きな格差を生んだ新自由主義と明確に決別するものなのか、総理のお考えをお聞かせください。

 泉代表から、我々の新型コロナウイルス対策についての提案をさせていただきました。これからの国会論戦を通して、実現に向けてしっかり議論をしていきたいと考えます。

 私から、医療体制の確保について改めて質問します。

 今年、新型コロナウイルスに感染した多くの方が入院できないまま十分な医療を受けられずに亡くなったという、まさに理不尽の極みのようなことがこの日本で起こりました。昨年の一月から今年の十月末までで自宅等でお亡くなりになった方は、警察庁が把握しているだけでも八百四十五名にも上ります。医療先進国と言われたはずの日本で、どうしてこのようなことが起きてしまったのでしょうか。本当に悔しくてなりません。感染症の流行直後であれば様々な言い訳もあり得るかもしれませんが、新型コロナウイルス感染発生から一年経過した後の出来事です。

 岸田総理も、新型ウイルス禍の昨年、九か月程度、与党で要職を担われていました。やはり政治の責任は免れないと思います。今後の対策は当然重要ですが、まずは反省、そして謝罪をすべきと考えます。明確な答弁を求めます。

 所信表明で、約三万七千人が入院できる体制を確保しましたと総理は述べられましたが、どのような形で確保したのでしょうか。また、病床だけでは当然医療はできません。看護師などの人材の確保はできているのか、お答えください。

 医療政策全般についてお尋ねします。

 政府が検討中の四百三十六の公立・公的病院の統廃合についてです。新型コロナ危機が続く中、例えば私の地元では、クラスターが発生した際などに患者さんを率先して引き受けたのは公立・公的病院でした。不採算だからといって単純に統廃合させるなどは、新型コロナウイルス感染禍を経験した今、到底許されません。新型コロナ禍の今、抜本的に見直すお考えはないか、お尋ねします。

 保健所と地方衛生研究所は、感染症などの際に、地域で公衆衛生の最前線の役割を担う組織です。自民党政権は保健所数の削減を進めてきました。今でも正しい政策だったとお考えですか。反省し、方針転換すべきと考えますが、いかがでしょうか。地方衛生研究所の体制も地域で大きな差が生じており、感染症が拡大している中では対応が難しかった、そんな地域もあるようです。地方衛生研究所の体制を強化すべきと考えますが、併せて所見を求めます。

 保健所の例でも分かるように、公的サービスは、私たちの命と暮らしを守るため、特に災害や感染症などの危機対応に不可欠であります。事件や火災が少ないからといって、警察や消防の縮小を望む方はいないと思います。

 しかし、悲惨な児童虐待が相次ぎ、時には亡くなるお子さんもいる現実がある一方、対応に当たる児童相談所の人員や予算は十分ではないと指摘されています。総理は、児童相談所の現状の体制が十分だとお考えですか。私は増強すべきだと考えますが、いかがですか。

 長時間労働による過労死、自殺などもなくなりません。監督すべき労働基準監督署の人員、体制は現状で十分だと総理はお考えでしょうか。お答えください。

 また、裁量労働制の拡大については、二〇一八年の働き方改革関連法の際に統計データの不備などで一度は見送られたものの、現在は、学識経験者から成る検討会で対象業務の範囲の見直しも含めて議論がされていると承知しています。残業代が未払いになっている実態がある中で、残業代込みで定額働かせ放題を許す裁量労働制の範囲拡大を認めるべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

 総理の所信をお聞きし、格差と貧困の拡大を明確にお認めになったことは、これらの言葉を使うことさえ避け続けてきた安倍政権、菅政権と比べて、評価したいと思います。

 問題は、どう解決するかです。私たち立憲民主党は、働く皆さんの給料を上げることがその第一歩だと考えています。

 今回、総理の所信表明の中で、最低賃金についての言及がないのはなぜですか。私たち立憲民主党は、引上げの際に中小零細企業を中心に公的助成を行いながら、時給千五百円を将来的な目標に、最低賃金を段階的に引き上げるべきと考えています。分配を掲げる岸田総理は、最低賃金の引上げを考えていないということでしょうか。

 また、総理が掲げる賃上げ企業への減税は本当に効果的なのでしょうか。同様の目的で進められた安倍政権以降の法人税減税は、賃上げに寄与しましたか。明確にお答えください。

 また、賃上げ額の算定については、時間外、休日出勤手当などは除外すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 我々が主張し続けてきた、今の社会にとって必要不可欠なケアワーカーでありながら低い待遇のままであった介護分野、保育分野などでの賃上げについて、取り組んでいただけることは評価します。

 しかし、所信表明をお聞きすると、介護、保育、幼児教育について、年間十一万円程度というまだまだ不十分な引上げ額で、全産業の平均的な賃金水準には及びません。あくまで今回の引上げは第一歩で、更なる引上げを目指すのか、お尋ねします。

 また、看護職については、年間十四万円程度引き上げるとしていますが、一定の条件を満たす医療機関で勤務する方、段階的になど、他の職種と比べ、限定条件が付されています。他の職種と同様に一律の引上げを目指すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 格差と貧困の存在をようやく認めた岸田総理には、その解決に取り組む義務があります。国連が定めた持続可能な開発目標、SDGsでは、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある全ての年齢の男性、女性、子供の割合を二〇三〇年までに半減するとの目標が掲げられています。この目標を日本政府も共有しているとの理解でよろしいでしょうか。残念ながら先進国の中でも高いレベルにある相対的貧困率の削減に数値目標を掲げて取り組むべきと考えますが、いかがですか。

 今や労働者の約四割を占める非正規労働の皆さん、その非正規雇用における女性の割合は約七割です。非正規雇用の賃金格差、不安定雇用の放置は、事実上の男女差別を放置するということです。職務評価に基づく待遇の改善ができるような、また、望む方は正規雇用として働ける法改正が必要だと考えますが、いかがでしょうか。総理の所信では、非正規雇用の正社員化と述べられていますが、具体策が不明です。労働者派遣法の見直しなどに踏み込むつもりがあるのか、明確にお答えください。

 女性の就労の制約となっている制度の見直しについても、総理は所信で触れられました。これは、女性が働けば働くほど不利になる配偶者控除制度や基礎年金第三号被保険者制度などを指すということでよろしいでしょうか。お尋ねします。

 これらの課題は、何度も議論の俎上にのりながら、見直しが先送りされてきた経緯があります。こうした経緯を踏まえながら、今回所信で見直しを表明された総理の決意のほどをお聞かせください。

 子ども・子育て関連予算についてお尋ねします。

 我が国の家族関係政府支出は、先進国の中でも最低水準であり、欧州諸国に比べると半分程度です。泉代表が先ほど質問したとおり、私たちは、出産育児一時金を引き上げ、出産に関する費用の無償化、児童手当の所得制限を撤廃し、大幅に予算を拡充すべきと考えます。子ども庁の在り方を検討する前に、まずは大幅な予算の拡充を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

 教育予算の割合、対GDP比においても、OECD加盟国中、アイルランドに次いで下から二番目であるということに、私は強い危機感を感じています。総理はこの現状をどうお考えでしょうか。

 義務教育の学校給食を無償化すること、高校授業料無償化の所得制限を撤廃すること、中学校の三十五人以下学級を実現し、将来的には小学校から高校まで三十人以下学級を目指すために、教育予算を大幅に拡充すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 また、家庭などの経済状況によって進学できない、こんな理不尽をなくすため、国公立大学の授業料を大幅に引き下げ、独り暮らし学生への家賃補助制度を創設すべきと考えますが、総理はどうお考えですか。

 日本の競争力低下を招いている大学での科学技術研究環境の劣化、これも深刻な課題です。ノーベル賞を受賞した大隅良典さんが、かつて、日本の大学の状況は危機的で、このままいくと十年後、二十年後にはノーベル賞受賞者が出なくなると述べていた言葉を思い出します。引用される学術論文の数などの国際順位も低下してきています。中国に対抗せよと経済安全保障に取り組むことも重要かもしれませんが、まず、我が国の深刻な研究、科学分野の地盤沈下を食い止めるべきです。

 政府は、短期的、ビジネス面で有用なものに焦点が当たりがちな十兆円規模の大学ファンドを創設し、今年度中に運用を開始するとしています。しかし、基礎研究どころか、まさに喫緊の課題である新型コロナウイルス感染症治療薬の研究者の雇用さえ不安定な現状がある。これを改善するために、国立大学運営費交付金を大幅に増額すべきと考えますが、いかがでしょうか。そうした基盤整備なくして、日本の科学技術研究分野での地盤沈下を食い止めることはできないと考えますが、いかがでしょうか。

 今年三月に入管施設の中で適切な医療を受けることなく亡くなったスリランカ人女性ウィシュマさんの事件は、まさに、日本社会の理不尽を象徴しています。

 ウィシュマさんの御遺族は、十月に、事件の真相究明と死亡前のビデオ等を提供してほしいという趣旨の手紙を岸田総理に発送していますが、まだ返事をいただけていないようです。岸田総理、手紙を読まれましたか。返事を出すか、直接お会いしてお話を聞くつもりはありませんか。そして、御遺族の思いを受け止めて、ビデオ映像のデータや司法解剖の結果に関する書類などを御遺族に提供するべきだと考えますが、いかがですか。

 そもそも、ウィシュマさんが飢餓状態であることを示す数値を入管が認識していたのに、なぜ放置したのですか。明確にお答えください。名古屋地方検察庁は殺人罪の被疑事実で捜査をしているのに、入管庁の最終報告書では名古屋入管局長らの責任を認めず、国家公務員法上の懲戒処分も見送られたのはなぜでしょうか。もはや内部調査では真相究明は不可能です。総理自らが主導し、法務省とは無関係な第三者による真相究明を行うべきと考えますが、いかがですか。

 入管施設では、過去にも、医療放置に起因すると見られる死亡事案を始め、人権侵害事案が続発しています。当事者である法務省、入管庁任せにせず、総理主導で、現状把握、改革に取り組むべきと考えます。総理の思いをお聞かせください。

 私たち立憲民主党が、そして私が大切にする多様性を認め合う課題についてもお伺いします。

 総理も、言葉だけでは多様性の尊重を言われますが、政策面では全く内容が伴っていません。

 様々な課題がありますが、最初の一歩として訴え続けてきた選択的夫婦別姓制度の導入さえ、自民党の反対で実現できません。この課題について、前国会で岸田総理は、国民の間に様々な意見があるところであり、引き続きしっかりと議論すべき問題であると思っておりますと極めて不誠実な答弁をされました。法制審議会の答申からでも既に二十五年も議論してきています。更に何をいつまでに議論するのか、明確にお答えください。

 同性婚制度の導入についても、「我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えます。 また、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはならないと考えます。 多様性が尊重され、全ての人々が互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現に向け、関係大臣が連携して、しっかりと取り組んでまいります。」と岸田総理御自身が第二百五国会で答弁されておられますが、おっしゃっていることが支離滅裂です。青森県でこの問題に取り組んでこられた方は、同性パートナーが制度として認められるように、地方でも性的少数者が暮らしていけるようにと、闘病中ながら声を上げ続け、今年九月三十日にお亡くなりになりました。性的指向によって結婚を認めないことは不当な差別ではないのか、明確にお答えください。

 外交・安保政策について二点お聞きします。

 岸田総理は、被爆地出身の総理大臣として私が目指すのは核兵器のない世界ですと表明されました。外務大臣当時、オバマ氏の米国大統領として初の広島訪問にも尽力されました。核軍縮、核兵器廃絶に向けて、世界の先頭に立たれることを強く希望します。

 この度、ドイツでは、政権交代の結果、核兵器禁止条約にオブザーバー参加することが新政権で合意されました。ドイツは米国との同盟関係にあります。ノルウェーに続き、NATO加盟国であっても、米国との関係を維持しつつ、国際的な核廃絶の動きに一歩踏み込もうとしています。唯一の戦争被爆国として、日本こそが核兵器禁止条約にオブザーバーとして参加すべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。

 沖縄県辺野古新基地移設についてお尋ねします。

 沖縄の民意に反するのみならず、海底で軟弱地盤が見つかり、工事費、工期も大幅に膨張することが明らかになっています。当初の見込みから工事費、工期がどれだけ延びているか、現状での政府の試算をお示しください。

 専門家によれば、どれだけ工事費、工期をかけたとしても、技術的に本当に完成は可能なのか、疑問視する声さえあります。自民党議員の中や米国政府、議会の中からもこうした声が聞こえてきます。

 米中対立の中、米国の戦略が部隊の小型化、分散化にシフトする中、米国海兵隊の運用の実績などから考えても、大規模な新基地建設によらずとも、抑止力を維持することが十分可能になるのではないでしょうか。唯一の解決策などとかたくなな答弁を繰り返すのではなく、現実的検討、米国との協議の開始を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

 安定的な皇位継承について、政府有識者会議の報告書骨子案によれば、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる案と、養子縁組による皇統に属する男系男子の皇族復帰の二案を軸とすると報道されております。岸田総理は、この点をどう受け止めていますか。また、国会が附帯決議で求めた女性宮家の創設につながるとお考えですか。さらに、女性・女系天皇の在り方も含めた検討を行うべきと考えますが、岸田総理の御見解を伺います。

 政治と金の問題も後を絶ちません。

 私の地元新潟では、衆議院議員が、県議会議員から選挙に関連して裏金を要求されたとの告発をされています。事実であれば、広島における選挙違反の反省はないのでしょうか。自民党総裁として、事実関係を調査し、国民に明らかにすべきと考えますが、いかがでしょうか。

 最後に一言申し上げます。

 岸田総理、憲法改正に随分前向きな御発言が目立ちます。久しぶりの自民党内リベラル派、宏池会総理として、御自分の本意なのか、安倍元総理など党内の改憲に前向きな勢力への御配慮なのか、明確にお答えください。

 立憲民主党は、憲法議論を否定しませんが、法律で十分可能なことを憲法で行おうとするなど、改正のための改正にはくみしません。

 そもそも、憲法の議論をしたいのなら、まず憲法をしっかりと守ってからにしてください。憲法五十三条には、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」とあります。自民党の過去の政権がこの条項を無視してきたことは、御存じのとおりです。岸田内閣は今後この五十三条に従うおつもりかどうか、明確な答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 西村智奈美議員の御質問にお答えいたします。

 まず、新しい資本主義についてお尋ねがありました。

 一九八〇年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば全てうまくいくという新自由主義的な考えは、世界経済の成長の原動力となった反面、格差や貧困の拡大など多くの弊害も生み出しました。

 こうした弊害を是正しながら、更に力強く成長するため、成長も分配も実現する新しい資本主義を実現していきたいと思っています。

 まずは、この新しい資本主義を起動させるための分配戦略として、今回の経済政策においては、人への投資を抜本的に強化する、三年間で四千億円の施策パッケージを創設し、民間部門における賃上げの議論に先んじて、看護、介護、保育、幼稚園などの現場で働く方々の収入の継続的な引上げなどを盛り込みました。

 人への分配は、コストでなく、未来への投資です。官と民が役割を果たすことで成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで次の成長につなげ、成長と分配の好循環を実現してまいります。

 医療提供体制の確保についてお尋ねがありました。

 スピード感を持って進めてきたワクチン接種の効果もあり、足下では我が国の新型コロナの感染状況は落ち着いていますが、決して楽観視せず、次なる感染拡大への備えを固めることが私の務めです。

 このため、先般取りまとめた全体像に基づき、今後、感染力が二倍となった場合にも、必要な方が確実に入院できる体制整備を進めてきました。具体的には、公立・公的病院に法律に基づく要請を行い、新型コロナの専用病床化を進め、都道府県が個別の病院名を明らかにして新たな病院の確保を計画的に行うとともに、都道府県と医療機関が書面で緊急時に確実に入院を受け入れることを明確化しています。これらの取組により、既に、この夏に比べて三割、一万人増の約三万七千人が入院できる体制を確保いたしました。

 医療人材につきましても、都道府県において、病床確保と併せて、応援派遣を調整し、結果、全国で約二千の医療機関から医師約三千人、看護師約三千人の派遣に協力いただけることとなっています。

 また、公立・公的病院の在り方につきましては、病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえつつ、地方自治体等と連携して検討を進めてまいります。

 また、厚生労働行政に関する組織体制についてお尋ねがありました。

 保健所数の減少については、住民に身近な保健サービスの市町村への移譲や、保健所の機能強化を図るため、施設設備の拡充を図りつつ、集約化が進んだものと認識をしています。

 その上で、今般の新型コロナ対応を踏まえ、感染症対応業務に従事する保健師の増員などを図っており、引き続き、新型コロナ対応の中心となる保健所と地域における科学的、技術的中核となる地方衛生研究所の体制強化に努めてまいります。

 また、児童相談所については、児童虐待防止対策体制総合強化プランにより、二〇一九年度からの四年間で児童福祉司を約五千人とすることとし、今年度は、計画を一年前倒しし、五千二百六十人の児童福祉司を確保できるよう、体制強化に取り組んでおります。

 さらに、労働基準監督署についても、長時間労働をなくし、働く方の健康と安全を守るため、必要となる労働基準監督官の人員、体制確保をしっかりと進めてまいります。

 そして、裁量労働制についてお尋ねがありました。

 裁量労働制の在り方については、現在、厚生労働省の学識者による検討会で、実態調査の結果や労使の現場での運用状況等を踏まえた検討が行われていると承知をしています。

 裁量労働制が制度の趣旨に沿って労使双方に有益な制度として活用されるよう、今後とも丁寧に検討を進めてまいります。

 また、最低賃金及び賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 最低賃金については、既に、骨太の方針において、感染拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均千円とすることを目指すこととしており、その方針に基づいて、今後も着実にその引上げに取り組んでまいります。

 賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものです。税制の効果だけを取り出して経営者の賃上げ判断への影響を測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で二%程度の賃上げを達成しており、税制もその一助となったものと考えます。

 そして、今般、民間企業の賃上げを支援するための税制を抜本的に強化し、企業の税額控除率を大胆に引き上げることにより、企業の実務面を踏まえて、具体的な制度設計を進めてまいります。

 ケアワーカーの賃上げについてお尋ねがありました。

 今般、新しい資本主義を起動するための分配戦略の柱の一つとして、まずは、国が率先して、介護、保育、幼児教育の現場で働く方や、地域で新型コロナ医療対応などを行う医療機関で勤務する看護職の方々の給与の引上げを行います。

 その後、更なる引上げにつきましては、安定財源の確保と併せた道筋を含めて、公的価格評価検討委員会において議論をしていただいております。年末までに取りまとめていただく中間整理を踏まえて、取組を進めてまいりたいと思います。

 そして、貧困に関する数値目標についてお尋ねがありました。

 SDGsは世界全体の普遍的な目標であり、日本政府も当然その目標を共有しています。その上で、各国の置かれた状況を念頭に、各国政府が具体的な政策等に反映していくものとされています。

 そして、御指摘の相対的貧困率ですが、相対的貧困率は、高齢化が進めば、年金暮らし等で相対的に所得の低い高齢者層が増えることで高まることになります。このため、貧困を表す指標として、我が国の数値目標とすることにはなじまないと考えています。

 成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現していく観点から、未来を担う若者世代、子育て家庭にターゲットを置いて、男女が希望どおり働ける社会を目指してまいります。このため、女性の就労制約となっている制度の見直し、仕事と子育ての両立支援、家庭における老親介護の負担軽減などに取り組むこととし、全世代型社会保障構築会議を中心に、広く検討してまいります。

 あわせて、最低賃金の全国的な引上げや同一労働同一賃金、不合理な待遇等の禁止などの取組に加え、生活にお困りの方を含む全ての方の就労や社会参加を促進できるよう、教育訓練の充実あるいは正社員化の支援に取り組んでまいります。

 なお、御指摘の配偶者控除については、配偶者の収入増による税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることはない仕組みとなっております。

 いずれにせよ、社会保険や税制の在り方を含め、女性の就労の制約となっている制度を幅広く検討し、その見直しを進めてまいります。

 子ども・子育て関連予算についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て関連予算については、少子化の中で、これまでも、安定財源を確保しつつ、ライフステージに応じた様々な支援を充実させてきたところです。

 今後も、費用実態を踏まえた出産育児一時金の支給額の検討や、本年五月に成立した改正児童手当法の円滑な施行を行ってまいります。

 さらに、子供中心の行政を確立するための新しい行政組織を設立し、妊娠、出産、子育てしやすい環境整備や、子育て、教育に係る経済的負担の軽減など、子供をめぐる様々な課題に適切に対処するため、安定財源の確保を図りつつ、必要な子ども・子育て支援策を促進してまいりたいと思います。

 そして、教育予算についてお尋ねがありました。

 子供たちの誰もが、家庭の経済事情にかかわらず、質の高い教育を受けられるチャンスが平等に与えられ、個性や能力を最大限伸ばせるようにすることが必要です。このため、少子化の中、それぞれの学校段階に応じて、必要な予算を措置してきたところです。

 具体的には、教育環境の整備に向けて、小学校三十五人学級やGIGAスクール構想を推進するとともに、教育費の負担軽減に向けて、安定財源を確保しつつ、幼児教育、保育の無償化や、住居費などの生活費への支援も含む高等教育の無償化を着実に実施してきました。

 人への分配は、コストではなく、未来への投資です。こうした観点から、今後とも、大学卒業後の所得に応じて出世払いを行う仕組みを含め、教育費などの支援を強化するなど、必要な教育予算をしっかりと確保してまいります。

 我が国の科学技術分野の基盤整備についてお尋ねがありました。

 科学技術立国を目指す政府として、今後もノーベル賞につながるような基礎研究力を確保していくため、若手研究者等がじっくり腰を据えて研究に打ち込める環境をつくることが何よりも重要だと考えております。

 具体的には、国立大学の運営費交付金などの基盤的経費や科研費の確保に加えて、十兆円の大学ファンドを年度内に実現するとともに、博士課程学生への経済的支援、若手研究者の自由な発想による挑戦的な研究への支援、これらを実施してまいります。

 これらの取組を通じ、科学技術予算を充実させ、我が国の研究力が世界と伍するよう強化してまいります。

 名古屋出入国在留管理局における被収容者の死亡事案についてお尋ねがありました。

 まず、亡くなられた方の御冥福を心からお祈り申し上げるとともに、御遺族に対しお悔やみを申し上げる次第です。

 御指摘の手紙は拝読させていただきました。御遺族の気持ちはしっかりと受け止めさせていただきました。

 今般の事案を受け、法務省において、可能な限り客観的な資料に基づき、外部有識者からの意見もいただきつつ、調査を行い、その結果を踏まえた必要な人事上の処分も行った上で、改善策を着実に進めているものであると承知をしております。

 また、御指摘のビデオ映像や関連する文書の提供については、法務省において、法令にのっとり対応しており、ビデオ映像の一部については、御遺族に御覧いただいたものと承知をしています。

 いずれにせよ、このような事案が二度と起こらないよう、法務省においてしっかりと取り組んでもらいたいと考えております。そして、私としても、法務省からしっかり報告を受けていきたいと考えております。

 選択的夫婦別氏制度及び同性婚についてお尋ねがありました。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、現在でも国民の間に様々な意見があることから、子供の氏の在り方についてしっかり議論をし、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えています。

 また、性的指向、性自認を理由とする不当な差別や偏見はあってはなりませんが、同性婚制度の導入については、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものであると考えております。

 いずれにせよ、全ての人々が、お互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を送ることができる、多様性が尊重される社会を実現すべく、しっかり取り組んでまいりたいと考えます。

 核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、しっかり取り組んでまいります。

 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加をしておりません。

 御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。そのためには、まずは、核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国と信頼関係構築に努めていきたいと考えております。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 御指摘の地盤改良工事については、沖縄防衛局において、有識者の助言を得つつ検討を行った結果、十分に安定した護岸等の施工が可能であることが確認されていると承知をしています。

 工事費については、平成二十一年に、約三千五百億円以上との見積りをお示しし、令和元年に、約九千三百億円との見積りをお示ししています。

 工期については、平成二十五年の沖縄統合計画において、工事に五年を要する旨お示しをいたしました。その後、令和元年には、変更後の計画に基づく工事に着手してから工事完了までに九年三か月、提供手続完了までは十二年との見積りをお示ししています。

 安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に、優れた機動性と即応性により幅広い任務に対応可能な米海兵隊が駐留し、そのプレゼンスを維持することは、日米同盟の抑止力を構成する重要な要素となっています。

 また、住宅や学校に囲まれた普天間飛行場の危険性を除去するため、普天間の三つの機能のうち、二つを県外へ、残る一つを辺野古に移設して、普天間飛行場を廃止する。これが危険性除去の基本です。

 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策です。米国とは、閣僚間を含め様々なレベルにおいて、この方針について累次にわたり確認をしてきているところです。

 この方針に基づき着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。

 安定的な皇位継承等についてお尋ねがありました。

 御指摘の附帯決議に示された課題について、有識者会議において議論が続けられており、これまでしっかりとした議論が丁寧に重ねられてきているものと受け止めています。

 ただ、具体的な内容について私の考えを述べることは控えたいと思います。引き続き、この会議の議論を見守ってまいります。

 また、政治と金の問題に関して、沖縄県の事案についてお尋ねがありました。

 この事案については、当事者間のやり取りについて双方の主張の食い違いが生じています。まずは、当事者において説明される必要があるものと考えております。

 また、憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正について、我々国会議員は、大きく時代が変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、その在り方に真剣に向き合っていく責務があります。憲法改正に取り組むことは、まさに私の本意であります。

 また、憲法五十三条の解釈については、これまで法制局長官が度々答弁してきたとおりであると考えております。岸田内閣においても、その解釈に基づき、憲法の規定を遵守してまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) 岸田内閣総理大臣から発言を求められております。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 済みません、一つ、答弁の中で言い間違いをいたしました。

 政治と金の問題について答弁させていただいた際に、新潟県の事案と言うべきところ、沖縄県の事案と申し上げてしまったようであります。

 訂正をし、おわびを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

山田賢司君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明九日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(海江田万里君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(海江田万里君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    金子 恭之君

       法務大臣    古川 禎久君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  末松 信介君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       経済産業大臣  萩生田光一君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    山口  壯君

       防衛大臣    岸  信夫君

       国務大臣    小林 鷹之君

       国務大臣    二之湯 智君

       国務大臣    西銘恒三郎君

       国務大臣    野田 聖子君

       国務大臣    堀内 詔子君

       国務大臣    牧島かれん君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    山際大志郎君

       国務大臣    若宮 健嗣君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       財務副大臣   岡本 三成君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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