衆議院

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第3号 令和3年12月9日(木曜日)

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令和三年十二月九日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  令和三年十二月九日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

 小渕優子君の故議員竹下亘君に対する追悼演説


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    午後二時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(細田博之君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。

 私は、我が党を代表して質問いたします。(拍手)

 新型コロナウイルス感染の状況は落ち着きを見せていますが、依然、出口は見えず、日本国内の空気も国民の気持ちもすっきりと晴れません。

 こうした中、アメリカ・メジャーリーグで、今季、投げて打っての八面六臂の活躍をしたエンジェルスの大谷翔平選手が、メジャー最高の栄誉、MVPに輝き、日本国民に大きな感動や希望、勇気を与えてくれました。大谷選手に心から祝福と感謝を申し上げるとともに、来季以降の更なる飛躍を祈念いたします。

 大谷選手が、プロ入り後、日本資本主義の父と称される渋沢栄一の著書「論語と算盤」を座右の書とし、渋沢の思いを胸に抱いてメジャー行きの目標をかなえたという逸話を、渋沢家五代目の子孫、渋沢健さんが披露されています。

 「論語と算盤」の中で渋沢栄一はこう説いています。正しい道理の富でなければ、その富を完全に永続することはできない、論語とそろばんを合致することが大切だと。つまり、論語とそろばんが未来に向かって前進する車の両輪という考え方です。

 この本をプロ入り二年目の大谷選手に薦めたのが、当時、日本ハム球団の監督だった栗山英樹さんです。栗山さんは、「論語と算盤」から、見えない未来を信じる力を学んだそうです。

 日本の高度成長期を生んだ昭和の時代と、平成の三十年が過ぎ去り、超少子高齢化が進む令和の時代を迎えましたが、まだ未来の明かりはおぼろげです。だからこそ見えない未来を信じる力が大事であることを渋沢栄一と大谷選手が教えてくれていると渋沢健さんはおっしゃっています。

 総理に伺います。

 総理は、新しい資本主義を唱えておられます。私たちは、そうした言葉だけではなく、未来を信じる力を実際に国民に届けることこそが肝要と考えますが、日本の最高指導者としての御所見を御披露ください。

 世界で感染が広がる新型コロナウイルスのオミクロン株が日本国内でも見つかり、第六波到来の懸念が強まっています。

 オミクロン株の感染力など正体は明らかになっていませんが、水際対策の徹底によって感染拡大を少しでも遅らせ、その間に、検査や治療、入院患者の受入れ体制などの備えに万全を期すことが不可欠です。感染が広がれば、経済や社会活動を再び制限する事態になりかねません。

 先般の迅速な水際規制の展開については評価をしておりますが、問題はその中身です。

 外国人の入国禁止措置に係る例外の、特段の事情について、政府は、真に必要があると認められるものに限るなど、厳格に運用していくと説明していますが、真に必要とはどのような場合なのか、国民にも説明するべきです。

 総理に伺います。

 外国人の入国禁止の例外、真に必要がある場合とは、どのようなケースを想定しているのですか。具体的かつ網羅的に御紹介ください。

 そもそも、感染拡大の防止を目的とする外国人の入国規制については、昨年二月三日に我々日本維新の会が緊急提言で公表し、入管法の整備を強く求めてきました。

 総理に質問します。

 現行の入管法第五条一項十四号を援用するのではなく、正面から必要な規定を新設すべきと考えますが、いかがですか。私たちの提言から既に二年が経過しようとしています。検討が進まない理由を含めて、御説明ください。

 日本人についても、帰国後の宿泊施設での待機がしっかり遵守されているかどうかチェックする体制を強化するとともに、施設内の感染対策も徹底する必要があります。

 そもそも、日本人帰国者に宿泊施設での待機を求める、いわゆる厳格な隔離の対象は、限定された国、地域からの帰国者にとどまり、その他からの帰国者は自宅待機が原則となっています。

 総理に伺います。

 日本人帰国者の厳格な隔離措置の対象について、全世界を対象に拡大する必要はありませんか。新型コロナ流行の初期に中国や欧州からの水際対策が不徹底であったため、ウイルスの流入を許し、感染を拡大させた教訓を踏まえつつ、お答えください。

 政府は、二回目接種から原則八か月経過後としていたワクチンの三回目接種を前倒しすることを決めましたが、判断が遅く、現場は大混乱です。

 総理に質問します。

 ワクチンの追加接種期間の前倒しについては、可能な限り多くの層の国民を対象にすべきであり、まずは高齢者施設や介護療養型医療施設等の入所者を対象にすべきと考えますが、見解を求めます。

 政府は、クラスターが出た医療機関等を対象にワクチンの三回目接種を前倒しするとしていますが、クラスターが発生してからでは意味がありません。

 クラスター発生の場合に必要なのは、迅速な治療です。現在、病院等での活用が進められている中和抗体薬の、発症抑制のための投与です。

 高齢者施設や介護療養型医療施設等でのクラスター発生時において、重症化リスクを持つワクチン未接種者の濃厚接触者に早期に中和抗体薬を投与できるよう、対象を拡大すべきと考えますが、いかがですか。総理の見解を伺います。

 第五波では、都市部を中心に、入院先が見つからないなどの理由で自宅療養を余儀なくされ、容体悪化で亡くなる方が相次ぎました。

 医療崩壊の危機に直面しても医療提供体制が強化できなかった最大の要因は、新型インフルエンザ等特別措置法や感染症法などの制約があったからだと考えます。

 総理に伺います。

 政府は、今年夏のピーク時より三割増の約三万七千人が入院できる病床の確保を予定していますが、対応し得る医療従事者をどのように確保する方針ですか。

 より実効性を持たせるために、十分な補償を前提として、新型インフル等特措法三十一条に医療機関に対する命令規定を新設し、医療機関、従事者の確保に努めるべきだと考えますが、見解を求めます。

 国内で感染が広がれば、感染経路の調査や患者の健康観察を行う保健所の負担が増えます。保健所の業務が逼迫する事態を回避するためにも、感染症対策の中心を保健所からかかりつけ医に大転換するなど、感染拡大の新しい局面に対応した法整備が必要と考えます。認識をお示しください。

 政府が決定した経済対策は、財政支出が五十五・七兆円と最大規模となり、令和三年度補正予算案の一般会計の追加歳出も過去最大の三十六兆円が計上されました。

 規模が先行し、質が置き去りにされていると断じざるを得ません。徹するべき賢い支出から乖離した施策のオンパレードです。風呂敷ばかり広げて中身はさんざん、政策効果を吟味せずに積み上げたとしか思えません。

 これが、総理が唱える成長と分配の好循環につながるのでしょうか。目立つのは、家計や企業への給付ばかり。経済成長を呼び込むための適切な支出とは言えません。

 最たる愚策は、十八歳以下に対する十万円相当の給付です。支援すべきは、経済的に厳しい状況に置かれている方々です。所得制限が中途半端で、政策目的もはっきりしません。挙げ句に、十万円を現金とクーポンに分けたことで、約九百七十億円の事務経費が上乗せされる始末です。

 総理に伺います。

 一括して現金で給付すれば、九百七十億円は不要です。これだけの税金を納めるのに国民の皆さんはどれだけ苦労されているのか、認識されていますか。

 九百七十億円を投じてまでクーポンでの支給に固執される理由が理解できません。この経費を本当に困っている人への支援に役立てるべきではないですか。説明を求めます。

 内閣府によると、そもそも、自治体が補正予算成立後に現金で一括給付したくてもできないということです。理由を聞けば、現金給付はコロナ対策関連の予備費から、クーポンは補正予算からと別々に手当てするからだというではありませんか。

 このままでは、現金五万円の支給、ワクチンの三回目接種、五歳から十一歳対象のワクチン接種、そして五万円のクーポン支給の四連発で、自治体の事務がパンクしかねません。クーポンが届くのは春どころか夏になってしまうと現場から悲鳴が上がっています。

 総理に伺います。

 役所側の事情で国民を振り回すなどということはあってはなりません。今からでもクーポン給付を取りやめ、全額現金に切り替える考えはありませんか。

 政府は、地方自治体の実情に応じて現金給付も可能とするとしていますが、自治体の実情が分かるのは自治体だけです。自治体の判断で全額現金給付を選択した場合、補助対象としないなどのペナルティーが科されますか。自治体の皆様、国民の皆さんに御理解いただけるよう、はっきりお答えください。

 今実施すべきは消費税減税です。複雑な十万円給付など、政策目的も不明で、無駄な事務コストもかかる政策にかまけているときではありません。日本維新の会は、消費税率を二年目安で時限的に五%に引き下げる消費税減税法案を週内に提出する方針です。

 総理にお尋ねします。

 消費税減税は、消費を喚起するとともに、国民の皆さんにあまねく公平かつストレートに恩恵が行き渡ると確信していますが、見解をお示しください。

 政府の経済政策には、失われた三十年の反省が見られません。五十五・七兆円もの巨額資金を投じるのに、成長戦略と位置づける施策は財政支出の二割程度です。

 総理肝煎りの新しい資本主義実現本部は、科学技術立国の推進、スタートアップの支援、デジタル田園都市国家構想といった成長戦略を掲げています。理想的なフレーズが並びますが、中身は、実質、従来型の施策の上書きです。

 人への投資や規制改革を通じ、産業の新陳代謝や労働者の移動を促す施策を深掘りし、技術革新や生産性の向上につなげない限り、日本経済の地盤沈下は食い止められません。

 政府が進める場当たり的な賃上げ政策にしてもしかりです。成長を後回しにして分配に走るのは本末転倒です。分配の原資たるパイを決するGDPが伸びない限り、分配は増えません。痛みを伴う構造改革や資源分配の見直しを断行し、経済成長に本気で力を傾けるべきです。成長なくして分配なし、改革なくして分配なしです。これに反論できますか。総理の見解を求めます。

 振り返れば、自民党政権において改革が浮上しながら日の目を見ていない施策は枚挙にいとまがありません。

 昨年五月に当時の高市早苗総務大臣がマイナンバーと全ての預貯金口座とのひもつけ義務化への意欲を表明したものの、進まず。安倍内閣が着手した解雇紛争の金銭解決ルールの創設は、野党のレッテル貼りに腰砕けになり、頓挫しました。企業による農地所有の特例措置は、兵庫県養父市の国家戦略特区で実験的に導入され成功しましたが、自民党農林族議員の反発で、全国展開は見送られました。電波オークションに至っては、一九九〇年代以降、検討中のままです。

 総理に伺います。

 腰を据えて経済成長に取り組むというなら、岩盤と言われる規制の改革を完遂すべきではないですか。私が例に挙げた四点について、ここで、やると約束してください。

 ハイスピードで進む人口減少と少子高齢化により、社会保障費は増える一方、支える側の労働力は減少し続けています。旧態依然とした規制にがんじがらめの日本経済は、成長を阻まれ、主要先進国から取り残されています。

 ところが、政府・与党は、国民に痛みを強いながら、行財政改革なぞ、どこ吹く風です。かさむ税と社会保障費の重圧で、平均的な世帯の可処分所得は低下の一途をたどり、今の日本は、どれだけ働いても豊かになれない、固定化された格差社会の様相を呈しています。

 高度成長を支えた昭和モデルの経済社会システムはとうに賞味期限切れなのに、自民党政権は新たなモデルをつくろうとしません。

 格差社会を打破し、成長経済を取り戻さなければ、日本の未来はありません。そこで日本維新の会が掲げたのが、税制、社会保障制度、労働市場を三位一体で改革する日本大改革プランです。

 大改革プランの肝は、セーフティーネットをチャレンジのための公平な制度と位置づけ、ベーシックインカムあるいは給付つき税額控除の最低所得保障制度の導入と、学び直しを支える教育の無償化を実現させることです。

 最低所得保障制度によって、一人一人が離職で収入が途絶える不安から解放され、社会人が大学や専門学校などで能力を高めながら人生設計に合わせて転職や挑戦を繰り返すことができます。

 総理に質問します。

 政府・与党のプランAと、私たちのプランBとをテーブルにのせ、四つに組んで日本の未来をかけて競い合いませんか。来週の予算委員会で、私たちは、日本大改革プランを掲げて、正面から政府・与党にチャレンジします。自公チームの総大将として、正々堂々論戦を受けると宣言してください。

 原油価格の異常な高騰を踏まえ、我が党は、六日、揮発油税などの税率を一定の上限で時限的に引き下げるトリガー条項の凍結解除法案を国民民主党と共同提出しました。

 政府は、価格抑制策として、石油元売業者への補助金を打ち出していますが、効果は全く不透明です。この手法は、実効性と公平性を度外視しているだけでなく、市場の機能をゆがめる価格統制だと言わざるを得ません。

 ガソリンや軽油の値上がりは、コロナ禍で冷え込む家計に追い打ちをかけ、とりわけ日常生活に自動車が欠かせない地方で負担が重くのしかかっています。

 総理に質問します。

 私たちの政策理念は、国民や国家にとって何が利益になるのかに尽きます。国民の皆さんの暮らしや飲食、観光といった産業を下支えするために、今こそ、ガソリンや軽油の価格を直接下げるトリガー条項の適用は不可欠だと考えますが、答弁を求めます。

 政府は、子供関連政策の司令塔となる子ども庁を令和五年度に設置する方針とされます。

 当初、縦割り行政の弊害を打破するために関係省庁をまたいで組織を一本化する構想でしたが、結局、組織の一本化は見送られるそうです。

 省益と子供のどちらが大事なのか、理解できません。骨抜き組織なら、無駄な役所が一つ増えるだけです。

 我が党は、組織ありきの議論にはくみせず、子供のために使われる大規模な財源を確保することを目指しています。まず、OECD加盟国で最下位となっている教育予算の対GDP比を引き上げ、教育への公的支出を他の先進国レベルに向上させるべきです。

 総理に質問します。

 問われるのは、子ども庁が真に子供のためになる組織なのかです。屋上屋を架すものであってはなりません。子ども庁の創設によって、既存省庁と重なる業務に係る人員、予算は当然削減され、必要な箇所に振り向けられるべきですが、いかに対処する考えでしょうか。

 日本維新の会は、結党以来、身を切る改革を実践してきました。

 その立場から、看過できないのは、国会議員に一人月額百万円が支給される文書通信交通滞在費の改革が、自民党と一部野党の談合によって、なし崩し的に葬られようとしていることです。

 文通費の最大の問題は、領収書の公開義務がなく、私的に流用されても放置されていることです。

 我が党は、過去に、日割り支給と領収書公開の義務づけをセットとした歳費法改正案を提出してきましたが、当然のように無視され、自主的に領収書を公開してきました。

 日割り支給にするだけで片づく問題ではありません。使途の公開と未使用分の国への返還を義務づけることが絶対条件です。

 ところが、議員の身分に関わることは全会派の合意が原則なる永田町のへ理屈で、改革が先送りされようとしています。この改革に臆面もなく背を向ける会派は、国民の皆さんが汗水流して納めた税金に群がるシロアリ集団と言わざるを得ません。

 我が党は、去る六日、文通費の領収書を添付して精算し、余れば国に返金する歳費法改正案を国民民主党と提出するとともに、翌日に同趣旨の議員立法を提出された立憲民主党にも一本化するよう申入れを行いました。

 古き永田町の体質を変えていく第一歩が文通費改革だと確信しています。国のルールメーカーである国会議員がぬるま湯につかっていては、生産的な国づくりなど望めません。

 総理に伺います。

 文通費の抜本的な改革から逃げを打つ立法府、特に自民党の姿勢をどう受け止めますか。このような状況で国会改革や行財政改革が推し進められると考えておられますか。

 私たちの文通費の改革法案に賛同していただけますか。できないなら、理由を御説明ください。

 総理御自身が率先して自主的に領収書を公開されるお考えはないでしょうか。

 我が党は、来年の通常国会に国会議員の定数と歳費をそれぞれ三割削減する法案を提出しますが、そろそろ自民党もこうした身を切る改革に真剣に取り組んでいく覚悟はないでしょうか。

 以上、国会でお決めになることなどというお決まりの逃げ口上ではなく、自民党総裁として、一国会議員としての答弁を求めます。

 覇権主義国家と化した中国が、台湾統一への野心をむき出しにしています。もはや、台湾有事は、あるのか否かではなく、いつあるのかという次元に移っているという観測が強まっています。

 台湾有事は日本有事です。インド太平洋において台湾が持つ戦略的重要性は比類なく高く、アメリカ政府は、台湾周辺の平和と安定を維持する上で同盟国との協力は不可欠としています。当然、日本の軍事的役割が大きくなります。

 政府に求められるのは、我が国と台湾を守るという覚悟と万全の備えです。それは、中国を思いとどまらせる抑止力にもなります。

 台湾有事が勃発すれば、台湾に在留する日本国民約二万五千人、並びに、中国が攻撃の標的にする可能性が高い沖縄本島や宮古、石垣など先島諸島の数十万人規模の住民をいち早く退避させて保護しなければなりません。

 総理にお尋ねします。

 台湾海峡の緊張を受け、総理は、テレビ番組で、どんな事態にも対応できる体制、法整備をしっかりしておかなければならないと述べられましたが、法整備とは何を想定されているのですか。

 台湾有事に備えた政府、自衛隊のシミュレーションは戦闘シナリオに力点が置かれていると聞きますが、台湾の在留邦人や沖縄本島、先島諸島などの住民の退避や訓練、インフラ整備などの計画の策定に具体的に着手されているのですか。

 有事の際、中国が狙う第一列島線の支配を阻止するためにも、沖縄本島、先島諸島に手厚く自衛隊を配備し、在日米軍とのタッグで防衛施設、機能を早急に充実させていくことが不可欠だと考えますが、見解を求めます。

 沖縄県の尖閣諸島防衛の要諦は、尖閣は日本が守るという国家的な意思表示であり、領海警備体制の強化は待ったなしです。日本維新の会は、今年六月、自衛隊法と海上保安庁法の改正案を国民民主党と共同提出いたしましたが、今国会に改めて共同提出する方針です。

 趣旨は、防衛庁設置法の規定による調査研究という曖昧な形で自衛隊が行っている情報収集と警戒監視活動を本来任務に位置づけ、合理的と判断される限度で活動に当たる自衛官に武器使用を認めること、さらに、海保法に明文化されていない領海の警備を海保の任務に据えるものであります。

 これにより、尖閣周辺で、事実上の軍である中国海警船と第一線で対峙する海保と、後方で控える自衛隊が、シームレスかつ機動的に対処できる体制が整います。

 総理に質問します。

 私たちの法案は、中国を牽制する日本の強いメッセージとなり、抑止力にもなると考えますが、御認識をお示しください。この法案に賛同いただけますか。できないというなら、具体的にどのように対処されるのですか。尖閣防衛は現行法の運用で事足りるとお考えですか。見解を伺います。

 政府は、今年四月、中学の社会科や高校の地理歴史、公民科の教科書にある従軍慰安婦という表現について、不適切であり、単に慰安婦という用語を使うのが適切だとする答弁書を閣議決定しました。

 これを受けて多くの教科書が修正しましたが、政府見解を併記して、従軍の二文字を残したまま文部科学省の検定をパスしたケースもありました。外務省の資料など記述のある文献を注釈つきで引用すれば、検定基準を満たすからです。

 いつまで史実をゆがめる言葉を教育現場でばっこさせるのですか。これこそ、平成五年の河野洋平官房長官談話がもたらした弊害です。

 河野談話が、慰安婦の強制性等を裏づける証拠がないまま韓国側に配慮した、虚構まみれの作文だったことは明らかになっています。誤っていたと判断すれば修正してしかるべきだと考えますが、歴代政権は頑として継承し続けています。このダブルスタンダードは理解できません。このままでは、中国や韓国が外交的優位に立つべくしかけてくる歴史戦で、ノーガードのまま負けるだけです。

 総理に伺います。

 政府が公式に不適切だとした従軍慰安婦や強制連行という用語がなおも一部の教科書に残り続けている現実をどう受け止めますか。

 日本の未来を担う子供たちに、このような不適切な用語が残る教科書で学ばせることをよしとするのでしょうか。

 この際、河野談話の撤回ないし修正を政治決断するお考えはありませんか。ないというなら、理由を御説明ください。

 今国会は、憲法改正に向けた議論が軌道に乗るか否かの重大な試金石になると考えています。

 衆参両院の憲法審査会を毎週定例日に開き、憲法の中身の議論を滞りなく進めていくことが不可欠です。国民が判断材料を持ち得ないという状況を早急に打破しなければなりません。

 憲法論議が停滞してきた要因は、オールド野党の執拗な妨害と、やるやると言いながら本気度が疑わしい自民党の優柔不断さに尽きます。

 最終的に憲法改正を決めるのは、主権者たる国民です。オールド野党が改憲反対の立場を取られるのは自由ですが、論議の封じ込めは断じて許されません。

 総理に伺います。

 所信表明で、国民理解の更なる深化が大事だ、与野党の枠を超え、国会で積極的な議論が行われることを心から期待するなどと述べられましたが、まだ熱意は伝わってきません。自民党総裁として、憲法論議を主導するという強い決意を示していただけませんか。

 総裁任期中に憲法改正を実現するという思いは揺るぎませんか。

 国会において、あらかじめ国民投票の日程など改憲スケジュールを定め、逆算して議論の集約を進めていくことが必要だと考えますが、自民党総裁としての見解を求めます。

 日本の繁栄に暗雲が垂れ込める中、日本維新の会は、国政政党としての重責を果たしていく決意です。必ずや日本大改革への流れをつくり、この国を再生させるために全身全霊を傾けていくことをお誓い申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えいたします。

 未来を信じる力を実際に国民に届けることについてお尋ねがありました。

 私は、苦しい状況にあっても必死で未来を切り開こうとする多くの方々と一緒に新しい時代をつくり上げていくことが、岸田内閣の使命だと考えております。

 我が国の未来は、現在を生きる我々の決断と行動によって決まります。私は、明治維新、戦後高度成長、幾多の奇跡を実現した我が国の底力を信じております。

 内閣総理大臣として、具体的に政策を実行することで、我が国の潜在力を引き出し、国民お一人お一人が未来を信じ、果断に挑戦していけるよう、後押しをしてまいります。

 新しい資本主義の実現は、こうした私の思いを込めたコンセプトです。このコンセプトの下で、新たな日本の経済社会システムをつくり上げてまいります。そのための大きな一歩を踏み出すための政策を、この度のコロナ克服・新時代開拓のための経済対策に盛り込みました。

 今、世界が新たな資本主義のモデルを模索する中にあって、我々の国も、新型コロナを克服し、格差や貧困、気候変動といった社会課題を解決しながら、力強く成長を実現させる。そのための政策をしっかりと具体化することで、この国の未来を切り開くという大いなる挑戦の先頭に立つ覚悟で、行動によって国民の皆さんにお示ししていきたいと考えております。

 水際対策についてお尋ねがありました。

 現下の外国人の入国については、入管法の上陸拒否の規定に基づき、上陸拒否の対象地域を指定し、対象地域からの入国は、特段の事情がない限り拒否する対応を行っているところです。

 この特段の事情による外国人の新規入国については、今回のオミクロン株の発生を受け、このタイミングでの入国が真に必要であると認められる者に限るなど、厳格に運用していくこととしております。

 具体的にどうなのかという御質問ですが、具体的には、外国政府関係者やワクチン開発の技術者など極めて公益性が高い者のほか、日本人の配偶者や、病気である本邦居住者の看護をする者など人道上の配慮が必要である者などが考えられます。

 このように、政府としては、現行の入管法の規定に基づき、刻々と変化する状況等に応じて、上陸拒否の範囲を明確に限定しつつ、機動的かつ適切な水際対策を講じてまいりたいと考えています。

 また、入国者の隔離については、強い私権制限を伴うことに留意しつつ、オミクロン株対応に限られた資源を集中させるという観点から、医療の専門家の意見も踏まえ、リスクに応じた対応が適切と考えています。

 引き続き、水際対策において、強い危機感を持って状況把握に努めるとともに、各国の感染状況を踏まえ、機動的かつ迅速な判断が重要だと考えておりますが、こうした判断を重視しながら行っていく考えであります。

 そして、ワクチンの三回目接種と中和抗体薬の投与対象についてお尋ねがありました。

 新型コロナワクチンの三回目接種の前倒しについては、感染防止に万全を期す観点から、できるだけ早期に、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を見極めた上で、優先度に応じ、前倒しの範囲や方法をお示ししたいと考えています。

 また、中和抗体薬については、重症化等の防止に効果があり、全世界向けの総供給量が限られている中で、来年初頭までに約五十万回分を確保しています。

 ロナプリーブの発症抑制に係る投与については、現時点では、投与する意義が大きいとされている免疫抑制状態にある患者を投与対象としています。

 この投与対象者の範囲については、本剤の供給量や、学会の議論など専門家の意見も踏まえて、引き続き、治療薬を必要とする方々が適切に使用できるよう、治療薬の開発、確保と投与体制の整備を進めていきたいと考えています。

 新型コロナに関する医療提供体制の確保等についてお尋ねがありました。

 公立・公的病院の専用病床化を進める、都道府県と医療機関が書面で緊急時に確実に入院を受け入れることを明確化する、こうした取組によって、既に、この夏に比べて三割、一万人増の約三万七千人が入院できる体制を確保いたしました。

 医療人材については、こうした病床確保と併せて、応援派遣を調整し、結果、全国で約二千の医療機関から医師約三千人、看護師約三千人の派遣に協力をいただけることになっています。

 また、自宅、宿泊療養者への対応については、従来の保健所のみの対応を転換し、保健所の体制強化のみならず、全国で延べ約三万四千の医療機関と連携し、全ての自宅、宿泊療養者について、陽性判明当日ないし翌日に連絡を取って、健康観察や診療を実施することができる体制を構築しております。

 さらに、これまでの対応を徹底的に検証した上で、来年の六月までに、感染症危機などの健康危機に迅速的確に対応するため、司令塔機能の強化を含めた抜本的体制強化策を取りまとめ、必要な法改正を行ってまいります。

 子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。

 政府としては、できるだけ早期にプッシュ型で支援をお届けする観点から、コロナ予備費の使用により五万円の現金給付を措置するとともに、来年春の卒業、入学、新学期に向けて、現金よりも子育て目的への支出が促進される五万円相当のクーポンによる給付を本補正予算で措置することで、迅速性と政策効果双方に目配りした仕組みとしたところです。

 クーポンの給付は、子育てに係る商品やサービスを直接お届けできるという意味で、より直接的、効果的に子供たちを支援することが可能であり、これに加え、地域の創意工夫を促し、民間事業者の振興や新たな子育てサービスの創出、また消費の下支え等につながることも期待されます。

 地方自治体の皆様には、こうした政策的意義について理解をいただく中で、まずは、クーポン給付を原則としながらも、地方自治体の実情に応じて、現金での対応も可能とする運用といたします。この一連の執行過程において、地方自治体の御意見を伺いながら、柔軟な制度設計を進めてまいりたいと考えます。

 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。

 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 成長と分配、規制改革についてお尋ねがありました。

 私は、まずは経済を成長させ、その成長の果実を国民お一人お一人に広く分配する、成長と分配の好循環を目指すと言ってきており、成長や改革を軽視してはおりません。

 こうした好循環を実現する中で、私は、デジタルの活用を成長戦略の最も重要な柱と位置づけています。そして、デジタルによる成長を実現するために、デジタル改革、規制・制度改革、行政改革、これを三位一体で進めてまいります。

 その際に、規制する側、規制される側、そして国民の皆さん、それぞれから納得される、三方よしの制度見直しが新しい資本主義を実現する観点から重要だと考えています。単に規制を緩和すればよい、市場に任せればうまくいく、こういったことではないと考えています。

 そうした観点から、四点の考えを示せという御質問でありました。

 一点目、預貯金口座へのマイナンバーの付番については、今年五月に成立した預貯金口座個人番号利用申出法では、新規口座開設時に金融機関がマイナンバーの告知を求めることを義務づけるとともに、本人の同意を前提に、一度に複数の金融機関の預貯金口座への付番が行える仕組み等を設けることとしています。

 二つ目の、解雇無効時の金銭救済制度については、金銭を支払えば自由に解雇できるといった制度の導入には課題がありますが、同一労働同一賃金を原則としつつ、労使双方が望ましいと考えている多様な働き方ができる、こうした制度整備は推進していきたいと考えています。

 三点目、法人農地取得については、成長戦略フォローアップに基づいて、特区区域外におけるニーズと問題点の調査などを進めてまいります。

 電波オークションについては、電波の保有者も、利用する事業者も、また一般の利用者も、全てにメリットがある形での周波数の割当ての在り方を検討しており、来年夏をめどに取りまとめを行ってまいります。

 次に、新たな社会モデルについて御質問がありました。

 新型コロナを克服し、格差や貧困、気候変動問題といった社会課題を解決しながら、力強く成長を実現させる、そのための経済社会変革こそ、私が掲げる新しい資本主義の実現です。今回の経済対策には、これを起動させるための様々な政策を盛り込みました。

 起動した好循環の流れを更に大きく、加速していくための鍵は、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭です。今後は、特にここにターゲットを置いて、賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中させ、その所得を大幅に引き上げることを目指していきたいと考えています。

 政府としては、来春に、新しい資本主義会議の場で、全体のグランドデザインとその実行計画を取りまとめることとしているところです。御党の御提案も含めて、国会の場を通じてしっかりと議論を行っていきたいと考えています。

 トリガー条項についてお尋ねがありました。

 現在凍結中のトリガー条項については、発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱や、国、地方の財政への多大な影響等の問題があることから、その凍結解除は適当ではないと考えています。

 政府としては、国民の皆さんが年末から春先までを見通せるように、農業や漁業等に対する業種別の対策を強化いたします。加えて、ガソリン、灯油の急激な値上がりに対する備えとして、年内から執行可能な激変緩和措置も講じてまいります。これによって、国民の皆様に、よりスピーディーに、かつ混乱なく効果が行き渡ると考えております。

 子供政策についてお尋ねがありました。

 子供をめぐる様々な課題に適切に対応するため、子供目線に立って、縦割りを排した行政を進めていかなければなりません。

 子供政策の基本理念や目指すべき方向性を実現していくための新しい行政組織の設立に向け、年末までに基本方針を決定し、来年の通常国会に法案を提出する方向で検討を進めているところです。

 新しい行政組織の設立に当たっては、各府省から法律や事務を移管することに伴い、所要の予算と人員を移管するとともに、新規の政策課題への対応、司令塔機能や政策立案機能の強化に必要な体制を整備していきたいと考えます。

 また、身を切る改革についてお尋ねがありました。

 我々政治家は、政策を実現するため真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。また、常に自らを省みる必要がある、これも当然のことです。

 政治に要する費用や議員定数の問題、議会政治や議員活動の在り方、すなわち民主主義の根幹に関わる重要な課題であります。それゆえ、御指摘の文書通信交通滞在費の見直し等については、国会において、国民の代表たる国会議員が、真摯な議論を通じて、合意を得る努力を重ねていくべきであると考えます。私自身も、国会議員の一人として、合意に従い対応していきたいと考えています。

 台湾海峡に関する事態への備えに関するお尋ねがありました。

 我が国の領土、領海、領空を保持し、地域の平和と安定、そして国民の生命と財産を断固として守り抜くことは政府の最も重要な責務であり、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していくことは当然であり、これまでも平和安全法制の整備等を行ってまいりました。こうした法制面を含め、必要に応じた検討を不断に行ってまいります。

 また、政府としては、様々な事態を想定し、各種訓練の実施を含む体制の整備に努めております。

 加えて、南西地域の防衛体制の強化は、我が国の防衛にとって喫緊の課題です。こうした観点から、先島諸島への陸上自衛隊の配備を進めるとともに、在沖縄米軍を始め、米軍とのこの地域における連携を一層強化してまいりたいと思います。

 領海警備体制の強化についてお尋ねがありました。

 武力攻撃に至らない侵害に適切に対応するためには、警察機関と自衛隊との連携は極めて重要であり、現行の法制の下、海上警備行動等の発令手続の迅速化を図ったほか、海上保安庁等関係機関の対応能力の向上、情報共有・連携の強化、各種訓練の充実など、必要な取組を推進しています。

 今後の取組については、法整備が必要という声もあります。その中で、各機関の連携を充実させ、円滑にさせるために必要なものがないか、訓練等を通じて、なお一層検討を進めてまいります。

 政府としては、今後とも、あらゆる事態を想定し、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命財産を断固として守り抜くという強い覚悟を持って、冷静かつ毅然と対応してまいります。

 教科書における記述についてお尋ねがありました。

 教科書の検定は、民間の図書の具体的な記述について、教科書検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会の学術的、専門的な審議に基づいて、用語の正確性など記述の欠陥を指摘するものであり、政治的、行政的意図が介入する余地はないものとされています。

 御指摘の答弁書が閣議決定されたことを受け、教科書発行者から政府の統一見解を踏まえた訂正申請が行われ、文部科学省において、審議会の学術的、専門的な審議を経て、訂正が承認されたと聞いております。

 御指摘の教科書の記述についても、こうした手続にのっとって適切に訂正が承認されたものと認識をしております。

 なお、政府の基本的立場は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話を継承しているというものであります。この談話について見直すことは考えておりません。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正について、与野党の枠を超え、積極的な議論が行われることを心から期待いたしますが、憲法改正の議論の進め方については、国会でお決めいただくことであり、内閣総理大臣としてお答えすることは控えたいと存じます。

 我々国会議員には、大きく時代が変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、その在り方に真剣に向き合っていく責務があります。私自身も、真剣に向き合っていく強い覚悟を持っている次第であります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表して、所信表明演説等に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 さきの衆議院選挙で公明党は多くの国民の皆様から御支持をいただき、引き続き、自民党とともに連立与党として政権運営に携わる重責を担うこととなりました。

 十一月一日に改めて連立政権合意を交わし、コロナ対策、経済再生、子育て、教育支援を始め、社会保障、共生社会、防災・減災、国土強靱化などに総力を挙げて取り組むことを確認いたしました。

 国民とお約束した一つ一つの課題に真剣かつ着実に取り組み、結果を出すことで、国民の負託に応えてまいります。

 今回の選挙結果を受けて、決しておごることなく、一層身を引き締めて、謙虚な姿勢で真摯な政権運営に当たらなければなりません。

 二〇一九年末に世界で初めて新型コロナウイルスが確認されてから、間もなく二年が経過しようとしております。この間、我が国は、ワクチン接種の推進や治療薬の活用などを通じて感染症に立ち向かってまいりました。痛みを伴いながらも、国民一人一人の筆舌に尽くし難い努力によって、新規感染者が全国的に大幅に減少するなど、ようやく明るい兆しが見え始めております。一方で、欧州始め海外諸国での感染再拡大や新たな変異株の発生によって、我が国への感染再拡大への懸念から、先行きはいまだ予断を許さない状況であります。

 まずは、これまで得られた経験や知見を生かしつつ、コロナ第六波への備えに万全を期し、コロナ禍の克服とともに、傷んだ経済を一日も早く立て直し、経済再生を果たすことが極めて重要です。また、原油価格の高騰は、世界経済の大きなリスクであり、我が国の運送業や農林水産業を始め幅広い分野への影響も大きく、経済再生の大きな足かせとなりかねません。加えて、硫黄島近海の海底火山の噴火による大量の軽石が漁港や港湾、海岸へ漂着し、漁業や観光業、離島航路などに対して大きな被害をもたらしました。各地域の実情に合わせた柔軟な対応も重要です。

 また、産業構造や社会構造の転換を促す脱炭素やデジタル化などの分野で成長戦略が実を結ぶかも経済再生の鍵を握ります。

 このため、予備費の活用や令和三年度補正予算案の早期成立と円滑な執行とともに、来年度税制改正と来年度当初予算の編成へとつなげ、予算を一体として捉えていくことが極めて重要です。

 改めて、今後の政権運営とコロナ克服・新時代開拓のための経済対策の狙い、円滑な執行について、総理の見解を伺います。

 以下、具体的に質問をいたします。

 新たな変異株への対応について伺います。

 世界的に拡大しつつある新型コロナウイルスの新たな変異株、オミクロン株が国内において確認をされました。水際対策を徹底し、国内における変異株の拡散を防ぐことが喫緊の課題であります。現状では、重症化のリスクやワクチン効果への影響など、明らかになっていない点も多くあります。科学的知見を集約し、それらを踏まえた対策を講じることが急務です。また、オミクロン株を迅速に検知する監視体制を強化するとともに、第六波への備えを急ぐなど、対策が後手に回ることのないよう、政府には高い緊張感を持って対応に当たっていただきたい。

 新たな変異株への対応について、総理の答弁を求めます。

 三回目のワクチン接種と経口薬の普及について伺います。

 時間の経過とともに効果が減少すると指摘されているコロナワクチンについて、三回目の追加接種を着実に推進することが重要です。二回目までのワクチン接種の経験を生かし、円滑に実施できるよう、国は自治体と緊密な連携を図っていただきたい。

 また、国民の中には、三回目の接種による副反応に不安を抱いている人や、二回目までと異なるワクチンを使用する交互接種の安全性などに懸念を示している人も少なくありません。そうした不安や懸念を払拭すべく、政府は国民に対して分かりやすく丁寧に説明することが求められております。

 さらに、オミクロン株への対策として、総理は、既存ワクチンのオミクロン株への効果等を一定程度見極めた上で、八か月待たずに、できる限り前倒しをしますと表明されました。是非、ちゅうちょなく取り組んでいただきたい。

 一方で、公明党は、さきの衆院選におきまして、経口薬、飲み薬の開発、実用化についても重点政策として掲げ、党を挙げて強力に推進してきました。そうした後押しもあり、今後、薬事承認されれば、合計で約百六十万回分の飲み薬が確保されることとなりました。

 飲み薬は、患者が手軽に自宅で服用することができ、重症化のリスクを減少させる効果が期待をされていることから、今後のコロナ対策の切り札となります。ただ、発症からできるだけ早い時期に服用することが推奨されていることから、コロナ陽性と判明した患者に対してこうした飲み薬を速やかにお届けする具体的な仕組みを構築しておかなければなりません。

 三回目のワクチン接種の円滑な実施と接種時期の前倒し、飲み薬の開発普及の促進について、総理の見解を伺います。

 自宅、宿泊療養者への対応について伺います。

 第五波では、保健所業務が逼迫をし、自宅、宿泊療養者への健康観察や医療支援が十分に行き届かない事例がありました。こうした事態を二度と招かないとの決意で対策を考えなければなりません。

 政府が先月策定したコロナ対策の全体像において、感染ピーク時においても、全ての自宅、宿泊療養者に、陽性が判明した当日、遅くとも翌日に連絡を取り、健康観察や診療を実施できる体制を確保するとの方針が示されました。

 第六波への備えとして極めて重要な取組でありますが、その役割を担うのは保健所だけでは限界があります。

 政府は、保健所のみの対応から転換し、地域の医療機関等と連携をし、健康観察や診療を実施するとされておりますが、保健所と地域の医療機関等との連携を具体的にどう行うのか、総理の答弁を求めます。

 生活困窮者等の支援について伺います。

 新型コロナによる影響が長期化する中、特に生活が厳しい方々に対して、給付金等の支援を速やかに届けることが重要です。

 公明党は、衆議院選挙の公約において、生活困窮者の生活を守る給付金の支給を検討することをお約束しました。

 今般の経済対策には、住民税非課税世帯に対して一世帯当たり十万円の現金をプッシュ型で給付するとともに、厳しい状況にある学生等の学びを継続するための緊急給付金を支給することが盛り込まれております。住民税非課税世帯に対する給付については、昨年の収入が非課税であった方だけでなく、今年に入ってから収入が減少して非課税の水準に至った家計急変世帯も対象とするとされております。

 真に困った方を支援するために、困窮学生や家計急変世帯について、なるべく柔軟に認定していただきたいと思います。総理の答弁を求めます。

 事業者支援につきましては、これまでも持続化給付金や月次支援金の迅速な支給を進めてまいりましたが、売上げが半減に満たない場合は支援の対象外となっておりました。

 そこで、公明党は、本年三月一日の衆議院予算委員会の場でこの問題を取り上げ、売上げが三割減少した事業者等についても支援するよう求めてまいりました。

 補正予算案には、こうした事業者等も含め、地域や業種を限定せず、幅広く支援を講じる観点から、事業復活支援金が盛り込まれており、評価いたします。

 足下では感染再拡大への懸念など先行きの不安感も増していることから、中小事業者等が安心して今後の見通しを立てられるよう、事業復活支援金の申請手続の簡素化や迅速な支給等に努めるべきと考えます。総理の答弁を求めます。

 成長と分配の好循環を通じた経済再生を本格的に進めるためには、経済対策に盛り込まれたグリーン、デジタルなど、分配の原資を生み出す成長分野への投資や研究開発を着実に実行することが重要となります。

 コロナ禍からの経済再生に向けて、欧米等では、かつて我が国が世界をリードしてきた半導体や蓄電池への大規模な開発支援を進めております。

 我が国としても、経済安全保障や国際競争力強化の観点を踏まえつつ、国民生活や経済活動の基盤を支えるため、補正予算案には、国内での生産基盤の確保に向けた支援措置等が大幅に盛り込まれております。

 今後は、グリーン社会の実現に必要な電気自動車等の普及も一層加速することから、半導体や蓄電池の安定供給を通じて需要回復を後押しできるよう、長期的な戦略を策定し、設備投資支援やサプライチェーンの強靱化等を大規模かつ計画的に支援すべきです。

 あわせて、我が国の強みである物づくりを生かしつつ、開発や供給等で再び世界をリードし、脱炭素社会の構築を始め、地球規模の課題解決に貢献できるよう、研究開発や社会実装、技術協力等に取り組むべきです。

 半導体や蓄電池の開発支援について、総理の答弁を求めます。

 デジタル基盤の構築は、安定的、持続的な経済成長をつくり出すための重要な取組であります。

 令和三年度補正予算案には、公明党が衆議院選挙で公約に掲げた新たなマイナポイント制度が盛り込まれました。この新制度は、一人当たり最大二万円相当のポイントを付与する消費喚起策としての役割だけでなく、マイナンバーカードの普及拡大策、さらにはキャッシュレス化を含む国全体のデジタル基盤構築に向けた効果が期待をされます。

 しかし、新制度に当たりましては、既に健康保険証の利用登録をしている人は対象にならない、銀行口座を登録すると所得情報も抜き取られるなどという誤解や懸念の声も上がっております。

 新たなマイナポイントについては、正確な情報を周知するとともに、いつからポイントを使うことができるかを早期に明確化し、地方公共団体による準備や運営に配慮すべきであります。また、ポイント終了後も、マイナンバーカードの利便性を実感できるよう、新制度を通じて、キャッシュレスの拡大や健康保険証などの利用拡大も併せて加速化させるべきです。総理の答弁を求めます。

 コロナ禍に伴い、長年続いてきた東京一極集中に変化が出始めております。

 総務省調査によると、東京都は、昨年の五月、初めて転出超過が確認をされ、就職や進学などの月を除けば十五か月もの間、転出が転入を上回るなど、転出超過の傾向が定着しつつあります。これは、テレワーク導入が進んだことが要因の一つであり、地方創生の着実な前進です。

 転職なき移住を実現するとともに、引き続き地方への新たな人の流れをつくり出すために、地方のデジタル化を更に加速させる財政支援が重要です。その際、これまでのような設備の整備等だけではなく、運営費等の支援もできるよう、地方公共団体に寄り添った施策を講じるべきです。

 デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、地方公共団体のデジタル化への一層の財政支援が重要です。総理の答弁を求めます。

 コロナ禍の影響によって、農林水産業も大きな打撃を受けております。

 とりわけ水産業では、コロナ禍の影響に加え、本年九月、北海道で、これまでにない大規模な赤潮が発生をし、ウニやサケが大量死する問題が起こりました。迅速な原因究明とともに、漁場環境の早期回復を図り、持続可能で豊かな漁場を取り戻すための対策が極めて重要です。

 また、海底火山の噴火によって、沖縄県や鹿児島県、東京都の離島など、各地の漁港に軽石が漂着をし、漁船の損傷やエンジントラブルなどの被害が発生しました。

 更に追い打ちをかけるように、原油の価格高騰による燃料費への影響など、漁業者にとって大変厳しい状況が続いております。

 今後の風向きや潮流次第で更なる被害の拡大が懸念されるため、しっかりと注視をし、引き続き、漁業者を支えるよう、地域の実情に即した柔軟な対応が必要です。

 赤潮や軽石等による水産被害への対応について、総理の見解を求めます。

 子育て、教育支援について伺います。

 コロナ禍は、子供たちをめぐる環境にも様々な影響を及ぼし、小学校一年生から高校三年生のうち、何らかのストレス反応のあった子供が七割に上ります。こうした中で、昨年は、児童虐待の相談対応件数や不登校、いわゆるネットいじめ、そして子供の自殺者数がいずれも過去最高を更新し、極めて憂慮すべき事態です。また、保護者も、精神的な負担や、家事、育児の負担、食費、水道光熱費等の出費が増加したとの指摘もあります。

 コロナ禍を克服し、我が国の再生を成し遂げる主役は、未来を担う子供たちです。次世代の人材を育てることは、持続的な経済成長や安定的な社会保障制度の構築など、日本社会の活力と発展にもつながります。

 公明党は、こうした観点から、衆議院選挙の公約において、子育て、教育を国家戦略にと訴え、ゼロ歳から高校三年生に相当する世代の子供たちに一人当たり十万円相当の未来応援給付をお約束しました。

 今般の経済対策には、児童を養育している者の年収が標準的な世帯で九百六十万円以上の世帯を除き、平成十五年四月二日から来年三月末までに生まれた子供たちに対し、一人当たり五万円の現金と、子育てに係る商品やサービスに利用できる、子供一人当たり五万円相当のクーポンを基本とした給付が盛り込まれました。

 今回の給付はコロナ禍での特例的な支援策ですが、我が国の家族関係社会支出がGDP比でいまだOECD諸国の平均を下回っている状況を踏まえ、今後、更に子育て、教育を国家戦略に据えて、子育て支援や教育費の負担軽減といった恒久的な支援策の強化へとつなげていくことが重要であります。

 今回の子育て世帯への給付に関し、改めてその意義を確認するとともに、中長期的に子育て、教育に力を入れていくことの決意について、総理の答弁を求めます。

 子供政策については、先般、政府の有識者会議において報告書が取りまとめられました。公明党は、衆議院選挙の公約において、子ども基本法の制定や、子供政策に関して調査、勧告等を行う機関の設置を掲げましたが、有識者会議の報告書は公明党の公約とも軌を一にするものです。

 来年の通常国会での関連法案の提出に向けて、法制化の作業を着実に進めるとともに、子供政策の新たな行政組織については、必要十分な予算、人員を確保すべきと考えます。総理の答弁を求めます。

 孤独・孤立対策について伺います。

 新型コロナによる影響の下、子供や女性による自殺の増加、DV、虐待に加え、八〇五〇問題、うつ、引きこもり、孤独死など、社会的孤立をめぐる課題が深刻化しております。人とのつながりが減ったために社会的に孤立していると見られる人は、十八歳以上の一二%に上ると推計されておりますが、コロナ禍でもっと高い数字になる可能性も指摘をされております。

 本年六月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針二〇二一では、「孤独・孤立対策の重点計画を年内に取りまとめ、安定的・継続的に支援する。」と明記をされております。重点計画の策定に向けて、現在、政府の有識者会議において検討が進められておりますが、社会的孤立の問題は、個人だけの問題ではなく、社会の問題として国を挙げて取り組むという姿勢を明確にし、誰一人孤立させないとの我が国の決意を国内外に広く示すことが重要です。

 また、安定的、継続的な支援を実現するためには、複数年にわたり、切れ目なく継続的に取り組むことが不可欠です。国を挙げて孤独・孤立対策に取り組む体制を恒久化するとともに、孤独・孤立対策に携わっているNPOや社会福祉法人等の民間団体に対して、単年度主義の弊害を是正して、複数年度にわたって広く支援を行うべきと考えます。

 今後の孤独・孤立対策について、総理の答弁を求めます。

 今回の補正予算案では、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策の二年目として、十分な規模の予算が確保されております。加えて、国庫債務負担行為の柔軟な運用、いわゆる事業加速円滑化国債の設定により、複数年にかけて行われる大規模な事業が円滑に進められるようになりました。

 これらにより、我が党が主張してきました、五か年加速化対策に盛り込まれたインフラ老朽化対策を始め、様々な取組について着実な実施が図られるものと考えます。

 五か年加速化対策の着実な実施とともに、当初予算におきましても必要十分な予算の継続的な確保、さらには五か年加速化対策後も見据え、防災・減災、国土強靱化の推進に向けた総理の決意についてお伺いいたします。

 本格的な冬の到来に際し、豪雪地帯対策も重要です。

 昨年十二月の中頃から本年一月の上旬にかけて、日本海側を中心に記録的な大雪となり、高齢者などの雪下ろし等に伴う事故や北陸地方での大規模な交通障害など、大きな被害がありました。

 また、今年度末で豪雪地帯対策特別措置法の特例措置の期限を迎えることから、その延長等の法改正を始め、様々な課題を抱える今後の豪雪地帯対策の在り方を幅広く検討しなければなりません。

 豪雪地帯対策の推進について、斉藤国土交通大臣の答弁を求めます。

 本年五月に改正された災害対策基本法において、市町村に対し、高齢者や障害者等の個別避難計画の作成が努力義務化されました。現在、市町村では、優先度が高いと判断する高齢者や障害者等から個別避難計画の作成が進められておりますが、行政の事務負担等が課題となっております。

 そこで、被災者支援システムを活用し、個別避難計画作成や更新事務の効率化を図ることが求められます。さらに、同システム内の被災者台帳との連携が可能となれば、被災者支援の向上も期待されます。

 デジタル技術を活用した個別避難計画作成等の推進とその効果について、総理の答弁を求めます。

 次に、外交政策について伺います。

 安全保障環境が厳しさを増す中、我が国の平和と繁栄を守り抜くためには、日米同盟の更なる強化が不可欠です。

 総理は、十一月のCOP26での懇談など、バイデン大統領との間で着実に信頼関係を構築されていると評価いたします。

 首脳間の信頼関係を更に強固なものとし、地域、世界の諸課題に日米両国で立ち向かうために、早期に訪米をし、バイデン大統領との首脳会談を実現されることを期待いたします。

 中国は我が国にとって最大の貿易相手国であり、また両国間には様々な交流の歴史があります。一方で、米中関係の悪化や、中国の軍事力増強、人権問題への懸念などの課題も山積する中、対話と実務協力を適切な形で進めることが重要です。

 十月、総理と習近平主席との電話会談において、来年の日中国交正常化五十周年を契機に、経済、国民交流を後押しすることで一致されました。懸念への指摘を含め、率直な対話を通じて相互理解を深めることが重要と考えます。

 今後の日米関係、特に日米首脳会談に向けた意気込み、また中国との関係について、総理の見解を伺います。

 北朝鮮は、弾道ミサイル等の発射を繰り返し、非核化や、一刻の猶予もない拉致問題解決に向けた動きを全く見せておりません。

 我が国が共同提案国として名を連ねた北朝鮮人権状況決議が、十一月、国連総会の人権問題を扱う第三委員会において採択をされました。このことは、国際社会から大きな後押しを受けたあかしであります。

 北朝鮮をめぐる諸問題解決に向けた総理の決意を伺います。

 先般の衆議院選挙を受けて、十月の在職日数が一日にもかかわらず、文書通信交通滞在費が一か月分満額支給されたことについて、国民から見直しの声が高まりました。

 公明党としましては、今般の見直しの声を受け、衆院選で当選した新人と元職は同月分を全額、前職は日割り支給となる五十五万円を党に拠出し、党から国民の理解の得られるところに寄附する措置を取ります。

 国民の声に今後も応えるため、文書通信交通滞在費を現行の月割り支給から日割り支給に変更する法改正を与野党の合意の下で成立させ、国民との信頼構築に一層努めていくべきであります。

 文書通信交通滞在費について、使途公開などの透明化も重要であり、実現すべきであります。ただし、適切な使途の範囲の明確化など、検討すべき課題が残されており、引き続き、議院運営委員会などで政党間の協議を続けるべきと考えます。

 また、コロナ収束までの間として実施しておりました国会議員歳費二割削減につきましても、前衆議院議員の任期満了までとなっており、現在では二割削減が元に戻っている状況であります。

 コロナ収束がいまだ見えない中、国会議員は引き続き国民に対し寄り添う姿勢を示すことが重要です。歳費二割削減については、各党の合意の下、確実に実現すべきと考えます。

 最後に一言申し上げます。

 長期にわたるコロナ禍との戦いは、明るい兆しが見え始めてはいるものの、感染再拡大への懸念から、いまだ先行き不透明な状況が続いております。引き続き、警戒を怠らず、国民の命と暮らしを守る政策を推し進めていくことが極めて重要です。

 こうした不透明な時代において、山積する内外の諸課題に真っ正面から挑戦をし、解決に導くためには、自民党と公明党の連立与党による安定した政治基盤が不可欠であります。

 私たち公明党は、これからも、「大衆とともに」の理念の下、現場第一主義を貫き、一日も早いコロナ禍からの再生と、誰もが希望を持ち安心して暮らせる社会の実現を目指し、全力で闘うことをお誓いし、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員にお答えいたします。

 今後の政権運営と経済対策の狙いについてお尋ねがありました。

 新型コロナを克服し、新しい時代を切り開くという極めて難しい課題に、国民の皆さんとともに挑んでまいります。その大きな一歩を踏み出すため、コロナ克服・新時代開拓のための経済対策、これを取りまとめました。

 総額五十五・七兆円の大規模な対策によって、新型コロナの次なる感染拡大への備えを固め、コロナ禍で厳しい影響を受けた方々に万全の支援を行うとともに、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環を生み出していくことで、日本経済を一日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新しい社会を切り開いてまいります。

 その上で、重要なことは、スピード感を持って執行し、国民の皆様にお届けしていくことです。現場の声や地方自治体の意見を直接聞き、課題やニーズをきめ細かく把握することで、執行の改善に反映し、盛り込まれた施策が最大限の効果を上げるよう、政府一体となって万全の対応を行ってまいりたいと考えます。

 さらに、十六か月予算の考え方の下、この補正予算と一体として令和四年度予算を編成するとともに、来年度税制改正においても、賃上げ税制の抜本強化など、経済対策に盛り込まれた政策を実現してまいります。

 新たな変異株への対応についてお尋ねがありました。

 オミクロン株への対応に当たっては、未知のリスクには慎重の上にも慎重に対応すべきと考え、水際対策において、緊急避難的、予防的措置を講じているところです。

 具体的には、外国人の入国について、全世界を対象に停止するとともに、帰国者には、専門家の意見を踏まえつつ、滞在国、地域のリスクに応じて指定施設停留措置を講じつつ、十四日間の待機と健康フォローアップを求めています。また、オミクロン株の陽性が確認された場合には、同乗者全員を濃厚接触者として取り扱い、保健所と連携して定期的な検査や施設待機等の措置を講じています。

 さらに、国内感染対策として、新規感染者数が落ち着いている現状において、全ての国内新規感染者について変異株PCR検査やゲノム解析の実施によりオミクロン株の検査を行うことで、早期探知に全力を尽くしております。

 引き続き、官房長官の下に設置したタスクフォースを中心に、強い危機感を持って状況の把握に努めるとともに、各国、地域の感染状況を踏まえ、機動的に、かつスピード感を持って必要な対応を行ってまいります。

 三回目のワクチン接種と経口薬についてお尋ねがありました。

 新型コロナワクチンの三回目の接種については、本年十二月一日から始めました。自治体と緊密に連携するとともに、ワクチンの有効性や安全性について国民に丁寧に説明しながら、着実な実施に万全を期してまいります。

 また、接種間隔については、二回目の接種から八か月以降を原則としておりましたが、感染防止に万全を期す観点から、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を一定程度見極めた上で、優先度に応じ、追加承認される見込みのモデルナ社のワクチンを活用して、八か月を待たずに、できる限り前倒しをいたします。

 今後の切り札となる経口薬については、年内の実用化を目指すとともに、薬事承認が行われれば、まず年内に約二十万回分、年度内に更に四十万回分を医療現場にお届けいたします。さらに、この冬を始め、中期的な感染拡大にも対応できるよう、追加で約百万回分、合計でこれまでに約百六十万回分を確保しております。

 引き続き、経口薬を必要とする方々が適切に使用できるよう、経口薬の開発、確保と投与体制の整備を進めてまいります。

 保健所と医療機関等との連携についてお尋ねがありました。

 この夏の感染拡大の場面においては、保健所の業務が逼迫し、自宅、宿泊療養者への健康観察や診療が十分に行えなくなる事態が発生をいたしました。

 このため、今後もこうした感染拡大が中長期的に繰り返される可能性があることも想定し、全国で延べ約三万四千の医療機関と連携をし、オンライン診療、往診、訪問看護等を実施する体制を構築したところです。

 これらの取組により、全ての自宅、宿泊療養者について、陽性判明当日ないし翌日に連絡を取り、健康観察や診療を実施することができる体制を構築しております。

 困窮学生や家計急変世帯に対する給付金支援についてお尋ねがありました。

 今般実施する、学生等の学びを支援するための十万円の緊急給付金については、学生の経済状況を最も身近な場で把握している大学等が支給の可否を総合的に判断することとしております。

 その際、例えば自宅生であったり家庭から一定の仕送りがある場合でも、大学等が修学の継続が困難になっていると判断した場合には給付金を支給することとしており、大学等に周知をしてまいります。

 また、住民税非課税世帯に対する十万円の臨時特別給付金についても、新型コロナの影響を受けて家計が急変し、住民税非課税世帯と同様の事情にあると認められる場合には支給を行うこととしております。

 経済対策の執行に当たっては、新型コロナでお困りの方に寄り添いながら、適時適切にこうした支援が行き届くよう、しっかりと対応してまいります。

 事業復活支援金についてお尋ねがありました。

 事業復活支援金の申請手続については、これまでと同様に電子申請とした上で、過去の給付金の申請情報を活用することで簡易な申請を可能とするなど、できる限り申請手続を簡素化してまいります。

 また、持続化給付金などのこれまでの給付金制度の経験を踏まえて、多数の申請にも対応できるよう、審査人員やシステム処理能力を増強するなど十分な審査体制を構築することで、事業者の皆様に迅速に支援金をお届けすることができるよう、準備を進めてまいります。

 半導体や蓄電池の開発支援についてお尋ねがありました。

 半導体と蓄電池は、デジタル化や脱炭素化、経済安全保障の確保を支えるキーテクノロジーであり、これらに係る技術的優位性の確保と安定供給体制の構築は、我が国にとって喫緊の課題です。

 このため、半導体と蓄電池の製造拠点整備や次世代技術開発を支援し、官民合わせて一兆五千億円を超える大胆な投資を行うよう、今回の補正予算案で必要な予算額を計上させていただいております。

 新たなマイナポイントについてお尋ねがありました。

 御指摘の御懸念については、新たなマイナポイント制度は既に健康保険証利用登録済みの方も対象とするほか、公金受取口座を登録しても国に所得情報が把握されるということはありません。新制度が国民の皆様に正確に理解いただけるよう、丁寧な周知や広報に取り組んでまいります。

 また、マイナンバーカードを新規に取得した方等に対する最大五千円相当のマイナポイントの付与は来年一月一日から開始することとし、その方針を自治体に速やかにお伝えします。カードの健康保険証利用や公金受取口座の登録に伴う各七千五百円相当のポイント付与についても、システム改修等の調整を行い、できるだけ早期に開始をいたします。

 新たなマイナポイントをきっかけとして、国民の皆様にキャッシュレス決済の利便性やカードの健康保険証利用のメリットを実感していただくとともに、マイナンバーカードの利便性を更に向上させ、デジタル社会の実現に向けた取組を加速させていきたいと考えます。

 地方のデジタル化に対する財政支援についてお尋ねがありました。

 デジタル田園都市国家構想は、デジタル技術の活用によって、地域の個性を生かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会を実現するものです。新型コロナを契機とした地方への関心の高まりやテレワークの拡大、デジタル化といった変化を後押しして、地方へ大きな人の流れを生み出し、活力ある地方づくりを進めてまいります。

 このため、海底ケーブルで日本を周回するデジタル田園都市スーパーハイウェーなど、時代を先取るデジタル基盤を公共インフラとして整備いたします。その上で、設備の整備だけでなく、今回の経済対策で新しく新設するデジタル田園都市国家構想推進交付金などにより、サテライトオフィスの運営や地方に進出する企業による地域活性化に向けた事業を支援することを通じ、地方におけるテレワークを更に推進し、転職なき移住の実現に向けた環境整備を進めてまいります。あわせて、地方公共団体に寄り添って、自治体情報システムの標準化、共通化、マイナンバーカードの普及、デジタル推進委員の全国展開を推進してまいります。

 こうしたデジタル化に向けた総合的な支援により、地域が抱える人口減少、高齢化、産業空洞化などの課題をデジタルの力を活用することによって解決し、地方から国全体へ、ボトムアップの成長を実現してまいります。

 赤潮や軽石等による水産被害への対応についてお尋ねがありました。

 北海道での赤潮発生によるサケ等への被害や、鹿児島県、沖縄県等への軽石の漂流、漂着による操業自粛、漁船の故障などの被害に対しては、漁業共済等により減収補填や漁船の修繕費用への支援を行います。

 漁業共済の対象外であるウニの赤潮被害についても、ウニ殻の除去等の漁場環境の回復の取組を支援し、経営継続を支援していくこととし、これに伴う地方自治体が負担する経費について特別交付税措置を講じてまいります。

 赤潮の発生原因の究明や、漁港等における軽石の回収、処理への支援を行いつつ、現場の状況を丁寧に把握し、被害への対応に全力で取り組んでまいります。

 子育て世帯への給付及び子育て、教育支援についてお尋ねがありました。

 子育て世帯への給付は、新型コロナが長期化し、その影響が様々な人々に及ぶ中、我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を開く観点から、ゼロ歳から高校三年生までの子供たちに一人当たり十万円相当の給付を行うこととしたものです。

 これにより、迅速かつ効果的に子ども・子育て支援を推進し、少子化の克服と子供を産み育てやすい社会の実現を目指してまいります。

 また、子育て、教育支援については、これまでも、安定財源を確保しつつ、ライフステージに応じた様々な支援を充実させてきたところです。

 さらに、子供中心の行政を確立するための新しい行政組織を設置し、妊娠、出産、子育てしやすい環境整備や、子育て、教育に係る経済的負担の軽減など、子供をめぐる様々な問題に適切に対処するため、安定財源の確保を図りつつ、必要な子育てや教育の支援を促進してまいります。

 子供政策についてお尋ねがありました。

 子供をめぐる様々な課題に適切に対応するため、子供目線に立って、縦割りを排した行政を進めていかなければなりません。

 子供政策の基本理念や目指すべき方向性を実現していくための新しい行政組織の設立に向け、年末までに基本方針を決定し、来年の通常国会に法案を提出する方向で検討を進めているところです。

 新しい行政組織の設立に当たっては、子供政策を強力に進めるために必要な安定財源の確保についても、国民各層の理解を得ながら、社会全体での負担の在り方を含め、幅広く検討を進めてまいります。

 また、定員については、新規の政策課題への対応、司令塔機能や政策立案機能の強化に必要な人員を配置するため、移管する定員を上回る体制を目指してまいります。

 孤独・孤立対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響により、孤独、孤立の問題がより一層深刻な社会問題になっています。孤独、孤立に悩む人を誰一人取り残さない社会を目指し、国全体で取り組んでいく必要があります。

 今回の補正予算において、孤独・孤立対策に取り組むNPO等への支援を更に充実いたしました。さらに、年内に重点計画を取りまとめ、これに沿って、単年度主義の弊害を排して、政府一体となって安定的、継続的に支援をしてまいります。

 防災・減災、国土強靱化の推進についてお尋ねがありました。

 災害から国民の生命、財産、暮らしを守ることは政府の大切な使命であり、強靱な国土づくりを進めるため、防災・減災、国土強靱化の取組を強化していくことが必要です。

 このため、十六か月予算の考え方に基づき、今回の補正予算案に計上した五か年加速化対策を速やかに実施するとともに、当初予算において必要十分な予算を継続的に確保してまいります。

 防災・減災、国土強靱化は、国家百年の大計として、中長期的かつ明確な見通しの下、計画的に進めることが必要であり、五か年加速化対策後も見据え、引き続き、取組を強化してまいります。

 個別避難計画作成時等におけるデジタル技術の活用推進とその効果についてお尋ねがありました。

 政府においては、災害時の被災者支援に必要な情報を一元的に統合しクラウド化した、被災者支援システムの開発を進めており、令和四年度から運用を開始する予定にしております。

 市町村においては、本年五月に改正された災害対策基本法に基づき、高齢者や障害者等の個別避難計画の作成を進めていただいているところ、こうしたシステムの活用により、計画作成の効率化や省力化を図ることが可能になると考えております。

 また、システム内の被災者台帳と連携することなどによって、被災者の被害状況、支援状況、配慮事項等の横断的な把握が容易となり、ニーズに沿った支援を行うことも容易になると考えております。

 今後の日米関係、さらに、日米首脳会談に向けた意気込み、また、中国との関係についてお尋ねがありました。

 バイデン大統領とは、十月に電話会談を行い、十一月のCOP26の際にも懇談を行いました。できるだけ早期に訪米して、バイデン大統領と会談し、これまでに培った信頼関係を基礎に、インド太平洋地域、国際社会の平和と繁栄の基盤である日米同盟の抑止力、対処力を一層強化してまいります。

 中国との関係については、総理就任後、早速、習近平主席と電話会談を行いました。引き続き、中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、共通の課題には協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指してまいります。

 北朝鮮についてお尋ねがありました。

 北朝鮮による拉致問題、核・ミサイル開発は断じて容認はできません。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、日朝国交正常化の実現を目指してまいります。

 拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、米国バイデン政権を始めとした関係国と緊密に連携してきており、米韓とも、次官級あるいは局長級の協議を重ねております。私自身、金正恩委員長と直接向き合うべく、あらゆるチャンスを逃さず、全力で取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、豪雪地帯対策の推進についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、昨年度は記録的な大雪に見舞われ、雪害による死者数は百十人に上っており、改めて豪雪対策の重要性を認識したところです。

 このことから、令和三年度補正予算案においては、除雪、排雪作業中の死傷事故防止に向けた新たな交付金の創設や、地方整備局を通じた生活道路除雪への支援を盛り込んだところでございます。

 国土交通省としましては、今年度末に特例措置の期限を迎える豪雪地帯対策特別措置法の改正への対応も含め、総合的な豪雪地帯対策の推進に関係省庁とも連携しながら全力で取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)

 私たちは、さきの総選挙で国民の皆さんの信託を受け、より多くの議席をお預かりすることができました。これからも、改革中道政党として、国民のためになる政策を提案し、対決より解決を実践してまいります。

 さて、岸田総理の所信表明演説は片仮名だらけでした。デジタル田園都市スーパーハイウェー、スタートアップエコシステムなど抽象的な言葉がたくさん出てくる一方で、なじみのある片仮名が出てきませんでした。それは、ガソリンです。まだ高止まりが続いています。

 私が、ガソリン価格の高騰対策として、いわゆるトリガー条項の凍結解除を提案したのは、二か月前の十月十二日の代表質問でした。総理、覚えていらっしゃいますか。そのときも、そして昨日も、総理は、買い控えが起こるからできないと答弁をされました。

 しかし、総理、今、レギュラー満タン入れてくれとか言えなくて、二千円分だけ入れてほしい、中には、千円分だけ入れてほしい、こういうお客さんが増えているのを御存じでしょうか。買いたくても、高くて十分買えないのが現実です。

 私たち国民民主党は、この国会の初日に、日本維新の会の皆さんとともに、ガソリン値下げ法案を提出しました。やはり、トリガー条項の凍結解除が必要だと考えます。霞が関の論理の代弁ではなく、総理の政治家としての見解を伺います。

 アメリカ、イギリス、オーストラリア、そしてカナダが北京オリンピックの外交的ボイコットを表明しました。中国の人権問題を黙認する誤ったメッセージを国際社会に発しないためにも、日本も北京オリンピックの外交的ボイコットを検討すべきではないですか。総理の明確な答弁を求めます。

 また、重大な人権侵害に対して出入国制限や資産凍結などの制裁措置を可能とする人権侵害制裁法、いわゆるマグニツキー法を持っていないのは、G7の中で日本だけです。この人権侵害制裁法を制定するのかしないのか、岸田内閣の方針を伺います。

 加えて、企業が人権侵害に加担していないことを担保する人権デューデリジェンス法についても、制定するのかしないのか、併せて伺います。

 国民民主党は、公約として人権外交の推進を掲げて選挙を戦い、日本版マグニツキー法案と人権デューデリジェンス法案を既に準備しています。政府が動かないのであれば国会に提出しますので、どうぞ、議場の同志の皆さん、賛同よろしくお願いいたします。

 外国人労働者の拡大について伺います。

 政府は、在留期間に上限がなく、家族の帯同も可能な外国人在留資格、特定技能二号について、現在の建設、造船の二分野から、宿泊、農業などの全十四分野に拡大を検討しているとのことですが、これは事実ですか。また、この分野拡大は、閣議決定だけで可能で、法改正が不要とのことですが、これも事実ですか。

 事実上の移民解禁とも言える重大な決定を国会での十分な議論なく進めることには反対です。特定技能二号の拡大は、法改正時の附帯決議にもあるように、厳格な運用が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 新型コロナの変異種であるオミクロン株の対策にこそ、デジタル化を最大限活用すべきです。

 総理に三つ提案します。

 一つ目は、医療機関の持つ情報と行政の持つ情報の連携です。

 医療情報と行政情報を連携させれば、例えば、コロナワクチンの三回目接種について、基礎疾患のある方に優先して先行して接種券を送付することが可能となります。これは、すぐやるべきです。総理の見解を伺います。

 二つ目は、デジタル健康証明書です。

 国民民主党は、ワクチン接種だけでなく検査での陰性の両方をQRコードで証明する、デジタル健康証明書を昨年四月から提案してきました。しかし、政府が十一月に発表したワクチン・検査パッケージでは、デジタル化されるのはワクチン接種証明だけ。検査の陰性証明はデジタル化の予定すらありません。

 ワクチン接種しても感染する、いわゆるブレークスルー感染もある中で、感染拡大防止には定期的な検査がむしろ重要です。検査の陰性証明も速やかにデジタル化すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 三つ目は、抗原検査キットのネット販売です。

 その場で速やかに検査結果が出る抗原検査キットは、私が昨年十一月の予算委員会で提案してから約一年近くたった今年の九月末、ようやく一般販売が解禁されました。

 総理、国が承認した抗原検査キットについては、現在認められている薬局販売だけでなく、ネットでの販売も全面解禁すべきです。これぐらいやりませんか。総理の見解を伺います。

 総選挙の前の代表質問で、所得倍増が岸田総理の所信表明演説から消えたことを私は指摘しましたが、今回の所信にも所得倍増は入っていません。残念です。

 国民民主党は、給料が上がる経済を公約に掲げ、物価上昇率が二%なら名目賃金上昇率が四%になるまで、金融緩和と積極財政を継続するとの政策目標を掲げて選挙を戦いました。毎年四%賃金が上がれば、十八年で賃金は倍になります。三%なら二十三年です。

 岸田内閣は所得倍増を諦めたんでしょうか。いつまでに所得や賃金を倍増させるのか、政策目標を明確に定めるべきです。総理の見解を伺います。

 生産性を上げ、賃金を上げるためには、成長分野への円滑な労働移動が鍵です。労働市場の柔軟性を実現しつつ、手厚い保障によって労働者の暮らしを守る、フレキシビリティーとセキュリティーを組み合わせたフレキシキュリティーの概念が重要です。

 国民民主党は、総選挙の公約として、職業訓練や学び直しとその間の生活保障給付を組み合わせた求職者ベーシックインカム制度を提案しましたが、このフレキシキュリティーの必要性についての総理の見解を伺います。

 十八歳以下への十万円給付について伺います。

 十万円分を全額現金で給付すれば、九百六十七億円の事務経費を節約できます。そして、九百六十七億円あれば、困窮する大学生に十万円を給付する学生支援緊急給付金の予算六百七十五億円を倍にして、支援できる大学生の数を倍にできます。

 総理、十万円を全額現金で給付して、より多くの人を助けようではありませんか。総理の決断を求めます。

 なお、既に全額現金で給付することを表明した自治体の長も出てきていますが、自治体の判断で全額現金で給付する際に、何らかの条件やペナルティーがあるのかを併せて確認します。近くにクーポンが利用できる商業施設がない、こういった条件をつけるとの報道がありますが、そもそも商業施設がないような場所には子供はいないのではないですか。

 総理、やはり十万円は全額現金で給付すべきです。なぜなら、一番使い勝手のいいクーポン券は日本銀行券、現金だからです。

 次に、低所得者向けの現金給付について伺います。

 住民税非課税世帯のうち、六十代以上の高齢世帯は何割になりますか。厚生労働省の国民生活基礎調査を基に、全世帯から住民税課税世帯を差し引いた非課税と思われる世帯数は、六十代以上が約八割を占めています。

 政府の低所得者向け現金給付では、コロナ禍で歯を食いしばって頑張っている多くの現役世代を救えません。総理の見解を伺います。

 国民民主党は、十万円の現金給付は全国民に一律で行った上で、高所得者には後に課税、すなわち逆還付を求める所得連動型課税条件付一律給付を提案しています。複雑怪奇な政府案より迅速に給付できます。そもそも、岸田内閣の給付事業では、年収二百万円程度の独身のワーキングプア層を救うことができません。

 総理、今からでも遅くありません。私たち国民民主党は、この所得連動型課税条件付一律給付を盛り込んだ補正予算の組替え動議を提出しますので、是非賛成してください。

 国民民主党は、マイナンバーを全ての銀行口座にひもづけ、イギリスのように少なくとも月単位で所得と資産を把握できるようにし、生活に困った人が申請不要で迅速に振り込まれるプッシュ型支援を提案しています。コロナ禍で露呈した政策インフラの不備を一年以上放置してきたことは問題です。給付方法をめぐる今のような不毛な論争に終止符を打つためにも、マイナンバーを全ての銀行口座にひもづけるべきだと思いますが、総理の見解を伺います。

 国が税金を集めて必要な人に配るのがこれほど非効率で遅いのなら、そもそも税金を取るのをやめたらどうですか。今こそ、コロナ禍からの経済回復までは消費税率を五%に引き下げるべきです。私たち国民民主党は、賛同いただける他党とも協力して消費税減税法案を国会に提出するので、どうか賛成してください。

 国民民主党は、選挙公約で、人づくりこそ国づくりを訴えました。総理も、所信で、人への分配が未来への投資と述べられました。もし本当に投資と考えておられるなら、教育や科学技術の予算を公債発行対象経費として、国債を発行して、人への投資予算を倍増させるべきです。

 国民民主党は、使途を人づくりに絞った教育国債の発行によって、今後十年間、教育、科学技術予算を年間五兆円規模から約十兆円規模に倍増させることを公約に掲げています。教育国債を発行可能とする財政法の改正を検討すべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 総理は、半導体国内立地推進のための法案をこの国会に提出すると表明しましたが、この工場の新設支援は何件ぐらい、そして稼働はいつ頃を想定していますか。報道によれば、最初の支援先とされる台湾のTSMCが熊本に新工場を操業するのは三年後です。総理、それでは当面の半導体不足の解消には間に合わないのではないですか。

 国民民主党は、企業、特に中小企業におけるデジタル、環境分野への投資を加速するため、投資額以上の償却を認めるハイパー償却税制を公約に掲げました。デジタル化が遅れている政府が民間のデジタル化を主導するのは無理筋です。あくまで民間主導でデジタル化を一気に進めるため、ハイパー償却税制を導入すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 農業分野は後継者の育成が急務です。

 しかし、岸田内閣は、全額国庫負担だった青年就農給付金、現在の農業次世代人材投資資金について、地方自治体に半額負担を求める制度に変えようとしています。これでは、財政力の乏しい地方では後継者育成が困難になります。自治体の負担割合を引き下げるべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 最後に、皇位の安定継承について伺います。

 先日、皇位継承に関する有識者会議は、旧皇族の男系男子を養子として皇族にすることも提案しました。政府として、今、二十代、三十代の旧皇族の男系男子が何名いらっしゃるのか、把握していますか。また、皇族となる意思を確認しているのか、答弁を求めます。

 日本の最大の課題は、四半世紀にわたって賃金が上がらないことです。頑張って就職して一生懸命働けば給料が上がる、そんな希望があれば、学生さんたちも奨学金を借りることが不安ではなくなるでしょう。若い人が結婚もできるし、望めば子供を持つこともできます。老後の年金の不安だって和らぐでしょう。つまり、日本の問題の多くは、給料、賃金が上がらなくなったことに起因しています。

 しかし、この間、日本人が怠けたから賃金が上がらなくなったわけではありません。みんな、自分のため、何より家族や子供のために懸命に働いてきたはずです。それでもなお賃金が上がらないのは、やはり政策が間違っているからです。だからこそ、今、経済政策の転換が必要です。

 国民民主党は、経済政策を規律ある積極財政に転換し、特に人への投資を倍増させることで、給料が上がる経済の実現に全力で取り組みたいと思います。国民民主党に任せていただければ、岸田内閣が諦めた所得の倍増を実現させたいと思います。この決意を国民の皆さんにお誓い申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員にお答えいたします。

 トリガー条項の凍結解除についてお尋ねがありました。

 現在凍結中のトリガー条項については、発動された場合に、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、また国、地方の財政への多大な影響、こうした問題があることから、凍結解除は適当ではないと申し上げております。

 政府としては、国民の皆さんが年末から春先までを見通せるように、農業や漁業等に対する業種別の対策を強化しています。加えて、ガソリン、灯油の急激な値上がりに対する備えとして、年内から執行可能な激変緩和措置も講じています。これによって、私は、国民の皆さんに、スピーディーに、かつ混乱なく効果を行き渡らせることができると考えている次第であります。

 日本の人権外交についてお尋ねがありました。

 私の内閣では、人権を始めとした普遍的価値を守り抜くことを重視しています。我が国としては、こうした普遍的価値が中国においても保障されることが重要であると考えており、様々なレベルで中国側に直接働きかけをしております。私自身も、習主席との十月の首脳電話会談で、香港、新疆ウイグルの人権状況について直接提起をいたしました。

 深刻な人権侵害については、省庁横断的に取り組むとともに、米国などの同盟国、同志国と緊密に連携して、しっかり声を上げてまいります。

 北京冬季大会への日本政府の対応については、適切な時期に、オリンピック、パラリンピックの趣旨、精神や外交上の観点等、諸般の事情を総合的に勘案し、我が国の国益に照らして、自ら判断したいと考えます。

 御指摘の二つの法整備についてですが、幅広い理解が重要との観点から、超党派での議論が進んでいると承知をしております。その議論をよく見守るとともに、これまでの日本の人権外交や企業を取り巻く状況等を踏まえ、引き続き検討していきます。

 特定技能二号の対象分野の追加についてお尋ねがありました。

 特定技能制度は、生産性向上や人材確保の取組を行った上で、なお人材確保が困難な状況にある十四の特定産業分野について、一定の技能を有する外国人材を受け入れるものであり、平成三十年の入管法改正により創設されたところです。

 特定技能二号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人を受け入れる在留資格であり、既存の就労資格と同様、受入れ企業との雇用契約を前提に、一定の期間ごとに更新を認めるものです。

 政府は、改正入管法に基づいて、平成三十年十二月に特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針を定めており、同方針においては、特定技能二号の対象分野の追加等について、閣議に諮ることとしております。

 現在、特定技能二号は、十四の分野のうち、建設及び造船・舶用工業の二分野での受入れが可能となっており、その他の分野については、法務省が関係省庁とともに基本方針等に基づいて慎重に検討を行っているものであると承知をしています。

 政府においては、改正入管法の附帯決議も踏まえ、特定技能二号の厳格な運用に努めてまいります。

 オミクロン株対策でのデジタル技術の活用についてお尋ねがありました。

 三つお尋ねがあったと思いますが、まず一つ目の、医療情報と行政情報の連携についてですが、これについては、個人情報保護等の観点から課題があり、新型コロナワクチンの一、二回目接種においても、本人が基礎疾患を有する者であると申告した場合に優先接種の対象とした次第です。その上で、デジタルを活用したワクチン接種証明について、十二月二十日から、マイナンバーカードを使い、スマートフォンによって国内外で利用できるワクチン接種証明を入手できるようにいたします。

 二つ目の、検査結果についてですが、検査結果については、国において電子化に関する制限は設けておらず、既に民間検査機関では独自にアプリやメールを活用した結果通知が行われるなど、民間においてデジタル化の取組が進められていると認識をしております。

 また、三点目の、抗原検査キットについては、本年九月末に薬局における販売を可能といたしました。今後、一定の要件を満たした飲食店やイベント業者等の事業者が医薬品卸事業者からインターネット等により入手できることを明確化し、周知していくことを予定しております。今後、販売状況の把握も進めつつ、その結果も踏まえ、円滑に利用できる環境の整備を引き続き検討してまいります。

 令和版所得倍増についてお尋ねがありました。

 総裁選挙で掲げた令和版所得倍増は、官と民がそれぞれの役割分担をしつつ、成長と分配の好循環をつくっていくという、私の経済政策の基本的な方向性として申し上げたものです。今回の経済対策では、成長と分配の好循環による新しい資本主義を起動させるための成長戦略と分配戦略を盛り込みました。

 起動した好循環の流れを更に大きく、加速していくための鍵は、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭であると考えます。そこで、今後、特にここにターゲットを置き、賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中させ、その所得を大幅に引き上げることを目指してまいります。

 来春に新しい資本主義会議の場で全体のグランドデザインとその実行計画を取りまとめることとしており、その中で政策目標についても検討してまいります。

 フレキシキュリティーの必要性についてお尋ねがありました。

 雇用情勢の変化や産業構造の変化を踏まえた労働移動が円滑に行われるためには、就職支援や能力開発支援、雇用のセーフティーネットの確保などに総合的に取り組んでいくことが重要であると考えています。

 こうした観点から、ハローワークにおける丁寧な就職支援を行うとともに、技術革新と産業界のニーズに合ったスキルを身につけるため、リカレント教育などの学び直しや教育訓練を推進するほか、収入が一定額以下の方を対象に職業訓練と月十万円の給付金を支給する求職者支援制度を実施しております。

 今般の経済対策においても、人への投資を積極化させるため、三年間で四千億円規模の施策パッケージを新たに創設すること等により、成長分野における雇用の確保をしっかり図ってまいりたいと考えています。

 子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。

 できるだけ早期にプッシュ型で支援をお届けする観点から、コロナ予備費の使用により五万円の現金給付を措置するとともに、来年春の卒業、入学、新学期に向けて、現金よりも子育て目的への支出が促進される五万円相当のクーポンによる給付を本補正予算で措置することで、迅速性と政策効果の双方に目配りした仕組みとしたところです。

 クーポンによる給付は、子育てに係る商品やサービスを直接お届けできるという意味で、より直接的、効果的に子供たちを支援することが可能であり、これに加えて、地域の創意工夫を促し、民間事業者の振興や新たな子育てサービスの創出、消費の下支え等につながることを期待されています。

 地方自治体の皆様には、こうした政策的意義について理解いただく中で、まずは、クーポン給付を原則としながらも、地方自治体の実情に応じて、現金での対応も可能とする運用といたします。この一連の執行過程において、地方自治体の意見を伺いながら、柔軟な制度設計を進めてまいりたいと考えます。

 また、今般実施する、学生等の学びを支援するための十万円の緊急給付金では、昨年よりも多くの学生を支援できるよう十分な予算を計上し、給付型奨学金の受給者については、本人からの申請によることなく全員を支給対象とし、それ以外の学生についても、昨年実績と同人数の支給を行ってまいります。

 低所得者向けの現金給付についてお尋ねがありました。

 厚生労働省の国民生活基礎調査では、全世帯から住民税課税世帯を差し引いた世帯のうち、世帯主が六十代以上の世帯数は、機械的に試算すると、約七八%となっています。

 御指摘の給付金については、新型コロナの影響を受けて家計が急変し、住民税非課税世帯と同様の事情にあると認められる世帯についても、今回、給付の対象としております。

 加えて、今回の経済対策においては、生活にお困りの方や非正規雇用の方への支援として、厳しい状況にある学生等の学びの継続をするための十万円の緊急給付金の給付、生活困窮者自立支援金の再支給による最大六十万円の給付、また、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援など、様々な施策を講じることとしております。

 これらの施策を重層的に進めていく、こうしたことによって、現役世代を含む、新型コロナでお困りの方を全体としてしっかり支えていきたいと考えております。

 課税条件付の一律給付についてお尋ねがありました。

 御提案の所得連動型課税条件付一律給付について、その詳細について承知しているわけではありませんが、一般論として、中小企業、個人事業主などの源泉徴収義務者や、通常、確定申告をする必要がない多くの給与所得者、年金受給者に対して多大な事務負担がかかるといった問題点があるとは考えております。

 政府としては、今回の経済対策に盛り込んだ、新型コロナの影響を受けた方々へのきめ細かい各種の支援をスピード感を持って国民に届けたいと考えております。

 マイナンバーと全銀行口座のひもつけについてお尋ねがありました。

 今年五月に成立した預貯金口座個人番号利用申出法では、新規口座開設時に金融機関がマイナンバーの告知を求めることを義務づけるとともに、本人の同意を前提に、一度に複数の金融機関の預貯金口座への付番が行える仕組み等を設けることとしております。

 引き続き、マイナンバー制度を基盤として、デジタル社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 消費税率の引下げについてお尋ねがありました。

 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられており、当面、従来から申し上げておるように、消費税について触ることは考えておりません。

 教育、科学技術予算についてお尋ねがありました。

 新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環の流れを加速していくため、日本の未来を担う子供、若者への教育、イノベーションをもたらす科学技術の振興は極めて重要です。

 このため、政府としては、GIGAスクール構想、幼児教育、保育の無償化や高等教育の無償化、十兆円の大学ファンドの年度内実現などの政策を着実に推進しており、今後とも、必要な教育、科学技術予算をしっかりと確保してまいります。

 一方で、教育国債との御指摘については、安定財源の確保あるいは財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。

 半導体の安定供給やハイパー償却税制についてお尋ねがありました。

 半導体製造拠点の整備については、今回の補正予算において、複数箇所の支援が可能な予算額を計上しており、半導体製造拠点の稼働には三年程度を要することが一般的であると認識しております。

 このため、こうした取組と併せて、足下の半導体不足に対しては、大手半導体メーカーへの増産要請や東南アジアの半導体工場の稼働率向上に向けた働きかけ等に取り組んでおり、引き続き、安定供給確保に努めてまいりたいと考えております。

 政府としては、デジタル、環境分野における民間企業の投資を促進するため、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制あるいはカーボンニュートラル投資促進税制など、必要な税制措置を講じております。ハイパー償却税制の御提案をいただきましたが、政府としましては、こうした税制の取組によって、今後も民間による取組をしっかりと支援し、民間の投資を促していきたいと考えております。

 そして、農業次世代人材投資事業についてお尋ねがありました。

 これまで、新規就農対策として、就農準備研修や就農後の早期の経営確立への支援をしてまいりましたが、今後一層の人口減少が進む中において新規就農者を確保していくため、経営発展のための初期投資への支援、また就農後の技術サポートを含む総合的な支援を行ってまいりたいと思います。

 国と地方が連携して新規就農と定着促進に取り組めるよう、年末に向け、地方の意見も踏まえて具体的な内容を検討し、新たに農業に挑戦する若者をしっかり支援してまいりたいと考えます。

 安定的な皇位継承についてお尋ねがありました。

 政府としては、昭和二十二年に皇族の身分を離れた方々の御子孫の現状については承知はしておりません。

 御指摘の有識者会議においては引き続き議論が続けられており、今後とも、その議論を見守ってまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 まず、新型コロナのオミクロン株への対応について聞きます。

 医療崩壊をもたらしたデルタ株への対応の失敗を厳しく反省し、最悪の事態を想定して、水際対策の強化、検査、医療体制の強化など、あらゆる手だてを取ることが必要です。

 二点に絞って質問します。

 第一は、医療機関に病床確保を求めながら病床削減を推進するという矛盾した政策を直ちに改めることです。

 総理は、所信表明で、公立・公的病院に法律に基づく要請を行い、新型コロナの専用病床化を進めると述べました。そう言いながら、なぜ、地域医療構想の名で四百三十もの公立・公的病院をリストアップして統廃合計画を進め、消費税を財源にして二十万床もの急性期病床の削減を進めるのか。説明がつかないではありませんか。

 病床削減計画を中止し、病床の抜本的拡充にかじを切るべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、ワクチン接種の問題です。

 総理は、所信表明で、三回目のワクチン接種をできる限り前倒しすると表明しました。我が党は、政府が、安全性と供給への責任を果たしながら、思い切った前倒しを決断、実施することを強く求めます。

 同時に、富裕国と貧困国とのワクチン格差の解消に真剣に取り組む必要があります。誰もが安全にならない限り、誰も安全ではない。これはデルタ株の痛切な教訓であり、オミクロン株の出現でもその重要性が示されました。

 総理、途上国での十分なワクチン供給のために、ワクチンに関する知的財産権の保護義務を一時免除するという、世界百か国以上が求めている提案を日本政府としても強力に支持することを始め、ワクチン格差解消へのイニシアチブを発揮すべきではありませんか。答弁を求めます。

 岸田政権が提出した補正予算案について、二つの角度から聞きます。

 第一は、コロナで疲弊した暮らしと営業の苦境を救うものとはほど遠いという問題です。

 個人向けの現金給付案の最大の問題点は、コロナで困窮している人への支援が住民税非課税世帯に限定され、困っている人に届かないことにあります。東京二十三区に暮らす単身世帯の場合、年収百万円以下にならないと住民税非課税になりません。政府案では、年収百万円から二百万円で働かされているワーキングプアと言われる方々さえ、現金給付の対象外になってしまいます。

 総理は、十月の所信表明で、コロナでお困りの方々を守るための給付金を公約しましたが、コロナで困窮に陥っている非正規労働者を生活に困っていない状態とみなしているのでしょうか。給付金は、生活に困っている方々、コロナで収入が減った方々を広く対象にして支給すべきではありませんか。答弁を求めます。

 事業者向けの給付金について、総理は、持続化給付金、家賃支援給付金の再給付を約束してきました。補正予算案では事業復活支援金が計上されていますが、その予算規模は二・八兆円。持続化給付金の実績五・五兆円の半分にすぎません。しかも、今年一月から十月の時期の売上げ減少は対象とされていません。しかし、一月から十月といえば、そのほとんどの期間で緊急事態宣言が出され、多くの事業者が深刻な打撃を被った時期です。この時期を対象にしないのは余りに不合理ではありませんか。

 コロナ関連の経営破綻は三か月連続で過去最悪を更新しています。過剰な債務を抱える事業者も増えており、融資だけで支えるのはもはや限界です。

 総理、事業復活支援金を少なくとも二倍にし、家賃支援給付金を再支給し、国民への公約を果たすべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、看護師、介護士、保育士などの賃上げを公約してきました。しかし、補正予算案で具体化されたものは余りに不十分な内容です。

 看護師の賃上げは月四千円。しかも、コロナ医療などに従事している人に限られ、全体の半分程度しか対象になりません。総理、月四千円で看護師が集まると思っているのかという現場の怒りの声にどう応えますか。賃上げ額を大幅に引き上げ、対象を医療従事者全体に広げるべきではありませんか。賃上げを言いながら診療報酬の引下げを行うなど言語道断であり、引上げこそ必要ではありませんか。

 介護士、保育士などの賃上げは月九千円。総理、一桁足らないという現場の批判の声にどう応えますか。全産業平均との格差、月七万円から八万円を埋める引上げを行うことを目標に据えるべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、大企業と軍事費に異常な大盤振る舞いの予算案となっているという問題です。

 補正予算案には、経済安全保障の名で、半導体製造で世界最大手の台湾企業に四千億円もの補助金をつぎ込む前代未聞のばらまきが計上されています。

 しかし、本来、半導体の安定確保は、電機や自動車などのユーザー企業の自己責任で行うべきものです。コロナの下でも電機、自動車大企業の内部留保は五十四兆円にも膨れ上がっています。そのごく一部を半導体確保のための投資に充てれば済む話ではありませんか。国民の税金で支援するなどということは到底国民の理解を得られるものではないと考えますが、いかがですか。

 補正予算案には、過去最大の軍事費七千七百三十八億円が計上されています。当初予算と合わせますと、軍事費は初めて六兆円を超えることになります。しかも、今回は新規に導入する多額の正面装備費が含まれています。

 しかし、そもそも、補正予算案は、財政法で規定しているように、大規模災害への対応など、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費の支出について作成するものです。今回のような軍事費の計上は緊急を要するものではなく、財政法と財政民主主義に反するものであることは明らかではありませんか。答弁を求めます。

 大企業と軍事費への異常な大盤振る舞いをやめ、コロナで苦しむ国民の暮らしに充てるべきです。消費の喚起というなら、コロナの下でも大もうけをしている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を五%に減税するべきです。答弁を求めます。

 英国で開催された国連気候変動枠組み条約第二十六回締約国会議は、グラスゴー気候合意で、気温上昇を一・五度に制限するための決意を参加国の総意として確認しました。

 そこで、総理に聞きます。

 日本政府として、一・五度以下達成に責任があるという認識ですか。そういう認識だとしたら、なぜ首相のスピーチで石炭火力の撤廃について一言も触れなかったのですか。二〇三〇年度も電源の一九%を石炭火力に頼り、九つもの石炭火力の新増設を進めることは、一・五度以下と根本的に矛盾すると考えませんか。明確な答弁を求めます。

 総選挙での党首討論で選択的夫婦別姓に反対したのは、総理ただ一人でした。総理は、半年前には自民党の夫婦別姓推進議連の呼びかけ人だったのに、総理になると反対に回る。それは、自民党内の一部の強い抵抗に総理が屈したということでしょうか。

 しかし、自民党内でも強い抵抗はもはや少数派です。自民党の衆議院議員のうち、候補者アンケートで選択的夫婦別姓に反対と回答したのは、二百六十一人中七十三人、二八%にすぎません。自民党内のたった二八%のために、選択的夫婦別姓がいつまでも先送りされていいでしょうか。

 総理、自民党総裁としてのイニシアチブを発揮し、いいかげんに推進の方針を決めるべきではありませんか。それができないというのであれば、党議拘束を外して、直ちに民法改正案を採択しようではありませんか。いかがでしょうか。

 沖縄県の玉城デニー知事は、政府が申請していた辺野古新基地建設の設計変更を不承認とする決定を行いました。日本共産党は、知事の決定を断固支持するものであります。

 知事が不承認の決定を行った理由の一つは、軟弱地盤対策で必要な調査すら行われていないということでした。

 軟弱地盤はB27と呼ばれる地点で、最深部が海面下九十メートルに達します。設計変更で、この場所は海面下七十メートルまで地盤改良するとされ、残りの二十メートルは地盤改良がされません。防衛省は、七十七メートル以下の地盤は固いと主張していますが、B27地点では地盤の強度を測る調査は行われていません。その地盤のデータは、百五十メートルから七百五十メートルも離れた三つの地点のデータを使った推定値でしかありません。

 そこで、総理に伺います。

 なぜ軟弱地盤の最深部での調査を拒むのですか。調査をすれば新基地は造れなくなるからとしか説明がつかないではありませんか。

 沖縄県民の総意を受け止め、破綻した新基地建設は中止し、世界一危険な普天間基地の無条件撤去を求めて米国と交渉すべきです。明確な答弁を求めます。

 この間、ドイツで新政権を担う三党が発表した連立政権合意で、ドイツが核兵器禁止条約の第一回締約国会議にオブザーバー参加することが決められました。NATO加盟国からのオブザーバー参加表明は、ノルウェーに続いてドイツが二か国目になります。

 そこで、総理に伺います。

 同じ米国の核の傘の下にありながら、ドイツやノルウェーが参加できて、日本が参加できない理由を説明してください。

 我が党は核兵器禁止条約への参加を強く求めますが、唯一の戦争被爆国の政府として、まずは、締約国会議にオブザーバーで参加し、核兵器廃絶を実現するための話合いの輪に加わるべきではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、総理が所信表明で敵基地攻撃能力の検討を進めると表明したことは、極めて重大です。

 総理に端的に伺います。

 平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない、すなわち敵基地攻撃能力の保有は憲法違反、これが歴代政権の憲法解釈であります。この憲法解釈を変更することを検討の対象にするおつもりですか。しかとお答えいただきたい。

 海外で戦争する国づくりへの暴走を決して許してはなりません。安保法制に続く立憲主義の破壊、九条改憲を始めとする自民党改憲四項目に断固として反対を貫くことを表明して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の質問にお答えいたします。

 地域医療構想についてお尋ねがありました。

 先般お示しした全体像に基づき、病床の徹底的な確保を進めるとともに、公立・公的病院に対して法律に基づく要請を行い、新型コロナの専用病床化を進めています。これらの取組により、既に、この夏に比べて三割、一万人増の約三万七千人が入院できる体制を確保いたしました。

 一方で、人口構造の変化を踏まえ、地域の医療ニーズに合わせ、質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指して取り組むことが重要です。

 こうした観点から、地域医療構想を進める必要があり、その推進に当たっては、地域での合意を踏まえ、自主的に行われる病床の減少に対して支援を行っています。

 公立・公的病院の在り方については、病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の事情を十分に踏まえつつ、地方自治体等と連携して検討を進めてまいります。

 三回目のワクチン接種の前倒しとワクチン格差解消についてお尋ねがありました。

 新型コロナワクチンの三回目接種の前倒しについては、感染防止に万全を期す観点から、できるだけ早期に、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を見極めた上で、優先度に応じ、前倒しの範囲や方法をお示ししたいと考えています。

 ワクチン格差の解消については、ワクチンの公平な供給に係る唯一の国際的枠組みであるCOVAXファシリティーとも連携しつつ、六千万回をめどとして、ワクチンの現物供与の支援を行っています。

 あわせて、ワクチンを接種現場まで届けるためのラストワンマイル支援につき、五十九か国・地域に対し、合計百三十七億円の支援を実施しています。

 知的財産権の保護義務を一時的に免除するという提案に関しましては、どのような対応や措置が実際にワクチンの国際的な生産拡大あるいは公平なアクセス確保につながるか、よく検討することが重要であると考えています。

 住民税非課税世帯に対する給付金についてお尋ねがありました。

 新型コロナウイルスの影響が長期化する中、様々な困難に直面した方々が速やかに生活、暮らしの支援を受けられることが重要であり、そのための施策の一つとして、住民税非課税世帯に対して十万円の給付をすることとしております。

 非正規雇用や生活にお困りの方への支援については、今回の経済対策において、住民税非課税世帯に対する給付金のほか、新型コロナウイルス生活困窮自立支援金の拡充や緊急小口資金等の特例貸付け、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援など、様々な施策を講じることとしております。新型コロナの影響を受けた方々に、こうした様々な政策を通じて、広く重層的な支援を行ってまいります。

 事業復活支援金についてお尋ねがありました。

 事業復活支援金は、新型コロナの影響で売上げが減少した事業者に対して、家賃を含めた固定費負担分の支援として、十一月から来年三月までの五か月分を一括して支給する事業であり、地域、業種を限定しない、そして事業規模に応じた給付金として、まさに私が国民の皆様にお約束したものであります。

 また、事業復活支援金の一月当たりの支援上限額は昨年の持続化給付金を超える額としているなど手厚い支援となっていることに加えて、新たに売上高の減少が三〇%以上の事業者も対象としております。

 なお、一月から十月までは、一時支援金や月次支援金などによる事業者支援を既に行ってきているところです。

 看護、介護、保育などの現場で働く方々への賃上げについてお尋ねがありました。

 今般、新しい資本主義を起動するための分配戦略の柱の一つとして、まずは、国が率先して、介護、保育、幼児教育の現場で働く方や、地域で新型コロナ医療対応などを行う医療機関で勤務する看護職の方々の給与の引上げを行います。

 その後の更なる引上げについては、安定財源の確保と併せた道筋も含めて、公的価格評価検討委員会において議論をいただいております。年末までに取りまとめていただく中間整理を踏まえて、取組を進めてまいりたいと考えます。

 また、令和四年度診療報酬改定については、物価、賃金の動向や、医療機関の経営状況、保険料などの国民負担、新型コロナを踏まえた政策課題等の観点も含め、予算編成過程でしっかりと検討してまいります。

 半導体の安定確保のための政策に対する国民の理解についてお尋ねがありました。

 カーボンニュートラルの実現には、社会、経済のあらゆる側面を電化していくことが不可欠であり、その際、これを制御する半導体は不可欠です。また、デジタル社会の構築に当たっても、データセンターや5G、通信端末など、あらゆるものに半導体は使用されます。さらに、半導体を通じて機微技術や重要情報のやり取りが行われるため、経済安全保障を考える際にも半導体は重要な要素です。

 こうした公益性の高い目的から、我が国として半導体を自律的に確保できることは大変重要であり、国内に一定の製造、開発基盤を確保する必要があると考えております。

 防衛費についてお尋ねがありました。

 補正予算は、財政法において、当初予算作成後に生じた事由につき特に緊要となった経費の支出等を行う場合などに作成できるとされています。

 今回の補正予算案では、周辺国の軍事力強化を含め、我が国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、変化する国際情勢に迅速に対応し、国家の安全保障をしっかりと確保するため、令和三年度中に実施すべき特に緊要な事業に要する経費を計上しております。

 したがって、財政法を始めとする我が国の予算制度の趣旨に反するものではないと考えます。

 経済対策の在り方についてお尋ねがありました。

 新型コロナでお困りの方々に対しては、今般の経済対策において、十七兆円規模の手厚い支援を講じ、断固たる決意で、その生活を支え、事業の継続と雇用を守り抜いてまいります。同時に、新しい資本主義を起動するため、成長戦略と分配戦略を車の両輪として実行し、成長と分配の好循環を実現していきます。

 税制については、再分配機能の回復を図る観点から、所得税や相続税について、これまでも最高税率の引上げ等に取り組んでまいりました。今般の税制改正では、成長と分配の好循環を実現するための分配戦略の一つとして、民間における賃上げを支援するため、賃上げ税制について抜本的に強化することとしております。

 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えてはおりません。

 COP26を踏まえた我が国の気候変動対策についてお尋ねがありました。

 COP26の成果文書では、一・五度努力目標への決意や、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減に向けた努力を加速すること等が盛り込まれており、我が国としても合意をしたところです。

 我が国は、COP26の成果文書と整合的な形で、既にコミットした非効率な石炭火力のフェードアウトを始め、石炭火力発電比率を着実に減らしていきます。あわせて、二〇五〇年に向け、水素、アンモニアやCCUS等を活用することで、脱炭素型の火力に置き換える取組を引き続き推進いたします。

 我が国は、引き続き、二〇五〇年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な二〇三〇年度温室効果ガス削減目標の確実な達成に向け、徹底した省エネと再エネの最大限の導入に向けた取組、地域の脱炭素化や国民のライフスタイルの変革の推進など、あらゆる施策を総動員し、持続可能な、強靱な脱炭素社会を構築してまいります。

 選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。

 選択的夫婦別氏制度の導入については、国民の間に様々な意見があると承知をしています。

 私は、政治家として、選択的夫婦別氏制度に賛成の方の声にも反対の方の声にも真摯に耳を傾けてまいりましたが、それらの声を踏まえた上で、本件は、引き続き、しっかり議論し、より幅広い国民の理解を得る必要があると感じております。

 政府としても、選択的夫婦別氏制度について、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、更なる検討を進めてまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 御指摘の変更承認申請の不承認については、現在、沖縄防衛局が国土交通大臣へ審査請求を行っているところであり、不承認理由の内容に関しては、私から申し上げることは差し控えます。

 今後、公有水面埋立法の所管大臣である国土交通大臣において、法律に従って手続がなされるものと承知しており、その手続を見守りたいと考えます。

 世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思っています。

 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策です。米国とは、閣僚間も含め様々なレベルにおいて、この方針について累次にわたり確認をしてきているところです。

 この方針に基づき着実に工事を進めていくことこそ、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。

 核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。

 我が国が、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、しっかり取り組んでまいります。

 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であると考えています。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加しておりません。

 御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければなりません。そのためにも、まず、核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係構築に努めていかなければならないと考えております。

 敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 政府としては、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器を保有することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、憲法上許されないと考えており、この一貫した見解を変更することは考えておりません。ただ、敵基地攻撃能力については、従来から申し上げておりますように、昭和三十一年の鳩山内閣における政府見解、この見解を踏襲しているところです。

 そして、その上で、何よりも重大なことは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、こうした現実的な議論をしっかり突き詰めていくことであると考えます。

 ミサイル防衛については、最近では、極超音速滑空兵器や変則軌道で飛翔するミサイルなど、ミサイルに関する技術は急速なスピードで変化、そして進化しています。

 国民の命や暮らしを守るために何が求められるのか、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討していき、その中で国民の皆様にもしっかりと御理解いただきたいと考えております。もとより、この検討は憲法の範囲内で進めているということ、これは変わりはありません。

 以上です。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

    〔副議長退席、議長着席〕

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 御報告することがあります。

 議員竹下亘君は、去る九月十七日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 竹下亘君に対する弔詞は、議長において去る十月十二日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力され さきに予算委員長の要職につかれ また再度国務大臣の重任にあたられた議員従三位旭日大綬章 竹下亘君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

    ―――――――――――――

 故議員竹下亘君に対する追悼演説

議長(細田博之君) この際、弔意を表するため、小渕優子君から発言を求められております。これを許します。小渕優子君。

    〔小渕優子君登壇〕

小渕優子君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、本院議員竹下亘先生は、去る九月十七日、七十四年の生涯を閉じられました。

 その日は、くしくも自民党の総裁選が告示をされた日でした。来る衆議院選挙を間近に控え、派閥の行く末や総裁選についても様々な御指導や御心配をいただいていたばかりであり、にわかにその訃報を信じることができませんでした。

 先生は、平成三十年暮れに体調を崩され、入院して治療に専念された後、一時は御快癒に向かわれ、政治活動を再開されました。しかし、本年五月頃より再び体調を崩されたとの由、皆で先生の回復をお祈りしておりましたが、その願いもむなしく、今、この議場に先生のお姿を拝見することはできません。

 思えば、先生と初めてゆっくりお話をしたのは、平成十二年、西暦二〇〇〇年のミレニアムの年に実施された衆議院選挙の後でした。共に初当選をした新人議員同士でしたが、特別な親近感と安心感を覚えたことを記憶しています。

 先生の兄、竹下登元内閣総理大臣と私の父、小渕恵三は、揺るがぬ信頼で結ばれた師弟関係にありました。その父、恵三が内閣総理大臣在任中に病に倒れ、帰らぬ人となりました。二〇〇〇年五月十四日のことでした。それから一月余りしかたっていない六月十九日、今度は、父の後を追うように竹下元総理も旅立たれました。

 衆議院選挙は六月十三日に既に公示されており、先生も私も、人生で最も悲しい別れの真っただ中で選挙に立ち向かいました。幸い、地元の皆様の熱い御支持をいただき、先生と私は同時に政治の道を歩むことになりました。

 私と先生は二十七歳の年の差があり、社会経験も人生経験も、比べるのも恥ずかしいほどの落差がありました。あれから二十一年、いつも私の前に竹下先生がいました。先生は、兄であり、父であり、政治の師でありました。そして、振り返れば、何よりも、同じ理想を追い求める同志として、晴れの日も雨の日も共に励まし合いながら歩んでいたことに気づきました。今、この本会議場で先生にお別れを告げることになろうとは、誠に哀悼痛惜の念に堪えません。

 竹下亘先生は、昭和二十一年十一月三日、中国山地の懐に抱かれた島根県飯石郡掛合村、現在の雲南市掛合町で生をうけられました。生家は江戸時代から続く造り酒屋で、父、勇造様と母、恕子様との間に誕生された次男でした。勇造様は、掛合村長、島根県議会議員を務められました。兄は、後の内閣総理大臣竹下登先生です。兄とはいっても、二十三歳違いで、親のように亘先生を導かれたとお聞きしています。

 亘先生は、幼少期から学業、スポーツ共に万能で、故郷を離れて慶応義塾高校に入学され、その後、進学した慶応義塾大学では経済学部で学ばれました。

 御卒業後は、ジャーナリストを目指してNHKに入局されました。赴任地の札幌では事件記者として取材に飛び回り、東京の報道局経済部に配属されると、才能を開花されました。大蔵省、日銀など日本経済の最前線で取材、報道に当たり、NHKでは初めての経済ニュースキャスターに抜てきされました。名実共にNHKのエースとして、将来を嘱望されておられました。

 そんな亘先生に転機が訪れました。亘先生がジャーナリストとして着々と実績を積み重ねられるのと時期を同じくして、登先生が、中曽根内閣の大蔵大臣として、次の総理大臣に最も近い政治家の一人になられたのです。そこで母上にこう言われたそうです。

 「家族から総理大臣が出るかもしれんのに、うちは誰も踏み台になっていない。あなたが草履取りをやりなさい。」

 昭和六十年七月、亘先生はNHKを辞め、秘書として、裏方として、登先生を十四年間にわたって支え続けることになりました。登先生は、この間に、大蔵大臣から自由民主党の幹事長、そして昭和六十二年十一月に第七十四代内閣総理大臣に就任されました。竹下総理の行った、消費税導入を始め、地方に光を当てるふるさと創生の提唱は、今なお政治の重要課題であり続けています。

 その竹下政治を最も近い立ち位置で見詰め、相談相手となり、時として助言をされてこられたのが亘先生でした。

 平成十二年、先生に再び人生の転機が訪れました。かねてより病気入院中であった登先生が、次期衆議院選挙に立候補しないことを表明し、政界からの引退を宣言されました。先生は、急遽、その後継者として名のりを上げ、同年六月に実施された第四十二回衆議院議員選挙で、生まれ育った島根県第二区から立候補することを決意されたのです。

 「日本で一番重いバトンを渡された。ふるさとの皆さんと徹底的に議論し、行動することで、このバトンを引き継ぎたい。」

 選挙期間中、登先生が静かに御逝去される中、先生は見事に圧倒的大差でトップ当選され、政治の道を歩み始めたのであります。

 本院に議席を得られた先生は、以来、当選すること七回、在籍二十一年四か月の長きにわたり、財務金融委員会、環境委員会、議院運営委員会を中心に多くの委員会で理事、委員を歴任され、卓越した識見と行動力を発揮されました。平成二十八年一月には予算委員長に就任され、公正かつ円満な運営に努められ、その職責を全うされたのであります。

 内閣にあっては、平成十七年九月に第三次小泉内閣の環境大臣政務官に就任され、同年二月に発効された京都議定書を受けた脱温暖化社会や循環型社会の構築に向け、尽力されました。

 平成二十年八月からは、福田改造内閣及び麻生内閣の財務副大臣を務められました。平成二十年九月のリーマン・ショックの際には、国際金融の枠組みづくりが重要であるとの観点から、各国との対話に積極的に取り組まれました。

 そして、先生は、平成二十六年九月、第二次安倍改造内閣において、復興大臣として初入閣を果たされます。東日本大震災の爪痕がまだ生々しく残る被災地、被災者にかける思いの深さは、亘先生の実像そのままでした。

 「被災地の復興なくして日本の復興はない。皆さんとともに懸命に汗をかいていく。」

 在任期間中に、亘先生は、岩手、宮城、福島など、被災地域に四十二回にわたって足を運ばれました。被災地を昔に戻すのではなく、未来に向かって明るさを伴って元気にすることが私の責任だ。先生が取り組まれた復興政策は、「第二期復興・創生期間」に受け継がれ、魅力的でにぎわいのある「新しい東北」の実現に向けて、更なる取組が続けられています。

 党にあっては、組織運動本部長、国会対策委員長、総務会長を歴任されました。御縁という言葉をよく用いられた先生は、温和な人柄で与野党議員を問わず人脈を築かれ、信頼される存在でありました。

 先生は類いまれな聞き上手でした。大好きなたばこを片手に、誰に対しても嫌な顔一つせず耳を傾け、的確な方向性、答えを示してくださいました。そのお姿、その笑顔を、ここにいる多くの方々が、今、それぞれの心に思い浮かべることができるのではないでしょうか。温かなそのお人柄に、議員仲間はもちろん、役所の皆さん、党本部職員、若い記者さんに至るまで、自然と多くの人たちが集まりました。先生が自民党にとってもかけがえのない存在になるまでに時間はかかりませんでした。

 先生の信用、人脈は、国境を越えて広がりました。隣国の中国、韓国には、先生を慕う多くの友人、知人があらゆる分野にいました。とりわけ困難な状況にある近隣外交の中にあって、最も重要な政治家を失ってしまいました。

 先生は十五歳で故郷の島根を離れ、人生の大半を東京中心に生活をされてきましたが、先生はどこまでも島根を愛し、島根とともに歩んだ政治家でした。

 先生は、本年七月、政界引退を表明されましたが、今年の初めには、実は、来るべき選挙に向けてリーフレットを準備されていました。そのリーフレットには、先生の笑顔とともに、「八風吹不動」という言葉が記されています。

 今、コロナ禍という大きな試練と直面する時代に、私たち政治家は新たな覚悟と決断が求められています。「八風吹不動」、これは、先生御自身が自らに向けられた言葉であったかと思いますが、今となっては、この時代を生き抜く我々政治家に向けられた竹下先生からの叱咤激励の言葉に思えてなりません。

 先生のように圧倒的な経験を積み、将来を見据え、優しさと信念を持って進む政治家がこの世を去られたことに、言葉では言い尽くせない深い悲しみと無念さを覚えます。

 御多忙の先生の趣味は読書でありました。政治に関するものから歴史物まで多岐にわたり、御自宅近くの本屋さんで一度に四十冊、五十冊とまとめて買い求められては読みふけっておられたそうです。

 しかし、私の印象では、空いている時間があれば、仲間や後輩に声をかけ、おそばを食べに行ったり、お酒に誘ってくださったり、お休みの日には、落選した同志の選挙区を訪ねたり、家族を失った仲間のところへ足を運んでくださったりと、御自身のことはさておき、人のために歩かれた政治家人生だったように思います。

 それでも、優秀な二人の息子さんのことは誇りにされていて、特に、お医者様を務める御長男さんが、入院中に病室に立ち寄ってくれることを頼もしく思い、うれしそうに話をされておられました。

 また、お孫さんたちの成長を心から喜ばれ、この上ない笑顔で話されるときだけは、政治家からおじいちゃんへと戻れる、数少ないほっとする時間だったのかもしれません。

 短くとも全力で生き抜かれた先生、そしてその先生をお支えになってこられた奥様始め御家族の皆様に、お悔やみと同時に感謝を申し上げたいと思います。

 二十一年前、地元の島根県掛合町で竹下元総理の御葬儀が営まれました。その場で青木幹雄先生が涙ながらに弔辞で読まれた言葉が改めて私の胸によみがえります。

 「島根に生まれ、島根に育ち、やがて島根の土となる。」

 心より御冥福をお祈りし、追悼の言葉といたします。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    金子 恭之君

       法務大臣    古川 禎久君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  末松 信介君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       経済産業大臣  萩生田光一君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    山口  壯君

       防衛大臣    岸  信夫君

       国務大臣    小林 鷹之君

       国務大臣    二之湯 智君

       国務大臣    西銘恒三郎君

       国務大臣    野田 聖子君

       国務大臣    堀内 詔子君

       国務大臣    牧島かれん君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    山際大志郎君

       国務大臣    若宮 健嗣君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       財務副大臣   岡本 三成君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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