衆議院

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第1号 令和4年1月17日(月曜日)

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令和四年一月十七日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  令和四年一月十七日

    正午開議

 第一 議席の指定

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会、東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会及び原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会を設置するの件(議長発議)

 地方創生に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる地方創生に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 岸田内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 林外務大臣の外交に関する演説

 鈴木財務大臣の財政に関する演説

 山際国務大臣の経済に関する演説


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    午後零時二分開議

議長(細田博之君) 諸君、第二百八回国会は本日召集されました。

 これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(細田博之君) 日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(細田博之君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会

及び

 原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 次に、地方創生に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる地方創生に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました九特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員唐沢俊二郎君は、昨年十一月十九日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 唐沢俊二郎君に対する弔詞は、議長において昨年十二月二十四日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力され 特に院議をもってその功労を表彰され さきに社会労働委員長 災害対策特別委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等唐沢俊二郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

議長(細田博之君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(細田博之君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、山際国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 今、我が国は、オミクロン株の感染急拡大に直面しています。

 まず、新型コロナに感染し、苦しんでおられる方々にお見舞いを申し上げます。

 また、長期にわたり新型コロナとの闘いに御協力いただいている国民の皆さんに心から感謝申し上げます。

 そして、新型コロナ対応の最前線におられる自治体、医療機関、介護施設、検疫所、保健所などのエッセンシャルワーカーの皆さんに、深く感謝申し上げます。

 岸田政権の最優先課題は、新型コロナ対応です。しかし、政府だけで対応できるものではありません。

 国民皆で助け合い、この状況を乗り越えていきたいと思います。引き続き、皆さんの御協力をお願いいたします。

 内閣総理大臣に就任してから、国内外の山積する課題にスピード感を持って決断を下し対応してきました。

 行蔵は我に存す。

 それぞれの決断の責任は自分が全て負う覚悟で取り組んでまいりました。

 その際、皆さんの声に丁寧に耳を澄まし、状況が変化する中で、国民にとってより良い方策になるよう、粘り強く対応し、判断の背景をしっかり説明する努力をしてきました。

 このように、信頼と共感の政治姿勢を堅持しつつ、まずは、新型コロナに打ち克つことに全身全霊で取り組んでまいります。

 新型コロナという困難に直面しているからこそ、立ちすくむのではなく、皆で協力しながら、挑戦し、コロナ後の新しい日本を創り上げていこうではありませんか。

 オミクロン株による感染が拡大しています。

 国民の皆さんの、またか、いい加減にしてくれ、もう限界だという声を、私自身、聞いてきました。しかし、新型コロナという見えない敵は想定以上に手強いことを改めて認識しなければなりません。

 昨年、我が国は、ワクチン接種など国民一丸となった取組により、デルタ株を何とか抑え込むことができました。そこにすかさず変異株が現れました。ウイルスの怖さを改めて感じます。

 ただし、新しい変異株の可能性は、専門家からも指摘されてきました。

 私自身、総理に就任した時から、デルタ株を超える強力な変異株が現れる、そうした最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて取り組んできました。

 先般の補正予算では、医療体制の拡充、ワクチン接種の推進や経口薬の確保、さらには、仕事や暮らしを守り抜くための支援策を盛り込んでいます。

 もちろん、新型コロナには未知のことも多く、全てを見通した上で判断を行える訳ではありません。

 私としては、専門家の意見を伺いながら、過度に恐れることなく、最新の知見に基づく対応を冷静に進める覚悟です。

 また、一度決めた方針でも、より良い方法があるのであれば躊躇なく改め、柔軟に対応を進化させていく所存です。

 国民の皆さん、今一度御協力いただき、共にこの国難を乗り越えていこうではありませんか。

 具体的な対応について申し上げます。

 これまで、政府は、G7で最も厳しい水準の水際対策により、海外からのオミクロン株流入を最小限に抑えてきました。

 この対策により、三回目のワクチン接種の開始、無料検査の拡充、経口薬の確保、医療提供体制の充実など、国内感染の増加に備える時間を確保できました。

 当面の対応として、二月末まで水際対策の骨格を維持します。

 その上で、今後は国内対策に重点を置きます。少しずつ明らかになってきたオミクロン株の特性を踏まえ、メリハリをつけた対策を講じていきます。

 専門家から、オミクロン株について、感染力が高い一方、感染者の多くは軽症、無症状であり、重症化率は低い可能性が高い、高齢者等で急速に感染が拡がると重症者が発生する割合が高くなるおそれがあるといった分析が報告されました。

 こうした報告も踏まえ、重症者や中等症の患者、あるいはそのリスクが高い方々に的確に医療を提供することに主眼を置いて、医療提供体制を強化します。

 私から各自治体に、自己点検を依頼し、医療提供体制の確保に万全を期すよう要請をいたしました。

 即応病床数の確保は順調に進んでいます。

 また、今後重要となる在宅、宿泊療養に対応する地域の医療機関を、全国一・六万、全体像の計画を更に三割上回る体制を準備できました。

 陽性と判断されれば、直ちに健康観察や訪問診療を実施するとともに、必要な方へのパルスオキシメーターの迅速なお届け、経口薬へのアクセスの確保を徹底します。

 稼働状況の見える化を強化し、これらをしっかりと動かしていきます。

 その上で、感染が想定を超えて急拡大し、重症者の絶対数の増加が生じた時に、病床がひっ迫するような緊急事態に陥ることは、何としても避けなければなりません。

 この観点から、先進諸国の取組を参考にしながら、入退院基準などについて、科学的知見の集約を急ぎ、対応を検討いたします。

 予防、検査、早期治療の強化も重要です。

 ワクチンについては、医療関係者、高齢者三千百万人を対象とする三回目接種の前倒しについて、ペースアップさせます。

 三月以降は、追加確保した一千八百万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を六か月間隔で行うとともに、五千五百万人の一般向け接種も、少なくとも七か月、余力のある自治体では六か月で接種を行います。

 国としても、自衛隊による大規模接種会場を設置し、自治体の取組を後押しします。

 感染拡大が懸念される地域において、予約なしでの無料検査を拡充します。

 メルク社の経口薬百六十万人分について、既に全国二万二千の医療機関、薬局が登録し、医療現場に三万人分をお届けしています。

 作用の仕組みが異なるファイザー社の経口薬についても、月内に二百万人分の購入に最終合意し、来月できるだけ早くの実用化を目指します。

 オミクロン株は、お子さんの感染も多く見られます。これまでワクチンの接種対象ではなかった十二歳未満の子どもについても、希望者ができるだけ早くワクチン接種を受けられるよう、手続を進めます。

 保健所について、体制の強化、科学的根拠に基づく業務の合理化、保健所に頼らない地域の重層的ネットワークの整備を進め、必要な即応体制を確保いたします。

 感染を抑えるためだけでなく、BCP計画遂行、社会活動維持のために、テレワークを積極的に活用していただくようお願いいたします。

 学校においても、休校時のオンライン授業の準備を進めます。入試については、追試などにより受験機会を確保するとともに、四月以降の入学を可とするなど、柔軟な対応を要請いたします。

 米国は、必要不可欠な場合以外の外出は認めない、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染拡大防止措置を発表しました。在日米軍の駐留に関わる保健衛生上の課題に関し、地位協定に基づく日米合同委員会において、しっかり議論していきます。

 息の長い感染症対応体制の強化策として、まずは、安全性の確認を前提に、迅速に薬事承認を行う仕組みを創設します。

 さらに、これまでの対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、本年六月を目途に、危機に迅速に、的確に対応するための司令塔機能の強化や、感染症法の在り方、保健医療体制の確保など、中長期的観点から必要な対応を取りまとめます。

 新型コロナとの闘いに打ち克ち、経済を再生させるため、令和三年度補正予算の早期執行など、危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。

 経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。

 経済再生の要は、新しい資本主義の実現です。

 市場に依存し過ぎたことで公平な分配が行われず生じた、格差や貧困の拡大。市場や競争の効率性を重視し過ぎたことによる、中長期的投資の不足、そして持続可能性の喪失。行き過ぎた集中によって生じた、都市と地方の格差。自然に負荷をかけ過ぎたことによって深刻化した、気候変動問題。分厚い中間層の衰退がもたらした、健全な民主主義の危機。

 世界でこうした問題への危機感が高まっていることを背景に、市場に任せれば全てが上手くいくという新自由主義的な考え方が生んだ様々な弊害を乗り越え、持続可能な経済社会の実現に向けた、歴史的スケールでの経済社会変革の動きが始まっています。

 私は、成長と分配の好循環による新しい資本主義によって、この世界の動きを主導していきます。官と民が全体像を共有し、協働することで、国民一人ひとりが豊かで生き生きと暮らせる社会を作っていきます。

 日本ならばできる、日本だからできる。共に、この経済社会変革に挑戦していこうではありませんか。

 様々な弊害を是正する仕組みを成長戦略と分配戦略の両面から資本主義の中に埋め込み、資本主義がもたらす便益を最大化していきます。

 成長戦略では、デジタル、気候変動、経済安全保障、科学技術・イノベーションなどの社会課題の解決を図るとともに、これまで日本の弱みとされてきた分野に官民の投資を集め、成長のエンジンへと転換していきます。

 分配や格差の問題にも正面から向き合い、次の成長につなげます。こうして、成長と分配の両面から経済を動かし、好循環を生み出すことで、持続可能な経済を作り上げます。

 まずは成長戦略。第一の柱は、デジタルを活用した地方の活性化です。

 新しい資本主義の主役は地方です。デジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していきます。

 そのために、インフラ整備、規制・制度見直し、デジタルサービスの実装を一体的に動かしていきます。

 高齢化や過疎化などに直面する地方においてこそ、オンライン診療、GIGAスクール、スマート農林水産業などのデジタルサービスを活用できるよう、5G、データセンター、光ファイバーなどのインフラの整備計画を取りまとめます。

 5G基地局を信号機に併設するなど多様な手法で民間投資を促し、自動運転や、ダイナミックな交通管制、ドローンなど、未来のサービスを支えるインフラを整備します。

 デジタルサービスの実装に向けて、規制、制度の見直しを進めます。

 単なる規制緩和ではなく、新しいルールを作ることで、地域社会に新たなサービスを生み出し、日々の暮らしを豊かにすることを目指します。

 例えば、運転者なしの自動運転車、低速、小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを新たに定めることで、安全を確保しながら、新サービス展開の道を拓きます。

 例えば、企業版ふるさと納税のルールを明確化することで、企業の支援による地方のサテライトオフィス整備の取組を後押しし、企業や個人の都市から地方への流れを加速させます。

 マイナンバーカードは、デジタル社会の安全、安心のためのパスポートであり、その利便性を改善させます。

 例えば、二〇二四年度までに、運転免許証とマイナンバーカードの一体化を進めます。転居時、住所変更手続を市役所で行えば、警察署での手続を不要とします。

 リアルとネットが密接不可分となる中、サイバー攻撃等への対処体制を整備するとともに、企業のセキュリティー強化に取り組み、デジタル社会のリスクに対し、正面から向き合います。

 経済安全保障も、待ったなしの課題であり、新しい資本主義の重要な柱です。

 新たな法律により、サプライチェーン強靱化への支援、電力、通信、金融などの基幹インフラにおける重要機器、システムの事前安全性審査制度、安全保障上機微な発明の特許非公開制度等を整備します。

 あわせて、半導体製造工場の設備投資や、AI、量子、バイオ、ライフサイエンス、光通信、宇宙、海洋といった分野に対する官民の研究開発投資を後押ししていきます。

 社会課題を成長のエンジンへと押し上げていくためには、科学技術、イノベーションの力が不可欠です。

 世界と伍する研究大学を作るため、研究力に加え、研究と経営の分離、若手研究者の登用など、先端的なガバナンスを導入する大学に対し、十兆円の大学ファンドで支援します。

 官民のイノベーション人材育成を強化するため、大学の学部再編や文系、理系の枠を超えた人材育成の取組を加速します。

 本年をスタートアップ創出元年とし、五か年計画を設定して、大規模なスタートアップの創出に取り組み、戦後の創業期に次ぐ、日本の第二創業期を実現いたします。

 二〇二五年には、大阪・関西万博が開催されます。科学技術やイノベーションの力で未来を切り拓いていく日本の姿を世界に発信していきます。

 成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが、分配戦略です。

 その第一は、所得の向上につながる賃上げです。

 先日、車座でお話を伺った中小製造事業の社長さんは、生産性向上を図り、従業員の可処分所得を三%引き上げたい、それが経営者としての信念だと力強く語ってくれました。

 成長の果実を従業員に分配する。そして、未来への投資である賃上げが原動力となって、更なる成長につながる。こうした好循環を作ります。

 賃上げ税制の拡充、公的価格の引き上げに加え、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めます。

 春には、春闘があります。近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待いたします。

 できる限り早期に全国加重平均千円以上となるよう、最低賃金の見直しにも取り組んでいきます。

 第二に、人への投資の抜本強化です。

 資本主義は多くの資本で成り立っていますが、モノからコトへと進む時代、付加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す人的資本、人です。

 しかし、我が国の人への投資は、他国に比して大きく後塵を拝しています。

 今後、官民の人への投資を早期に少なくとも倍増し、さらにその上を目指していくことで、企業の持続的価値創造と賃上げを両立させていきます。

 スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が、デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるための鍵です。

 世界が、産業界が、そして地域が必要とする人材像やスキルについて、現場の声を丁寧に聞き、明確化した上で、海外の先進事例からも学び、公的職業訓練の在り方をゼロベースで見直します。

 人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤であるという点について、株主と共通の理解を作っていくため、今年中に非財務情報の開示ルールを策定します。

 あわせて、四半期開示の見直しを行います。

 第三に、未来を担う次世代の中間層の維持です。

 子育て、若者世代に焦点を当て、世帯所得の引き上げに向けて、取り組みます。

 全世代型社会保障構築会議において、男女が希望通り働ける社会づくりや、若者世代の負担増の抑制、勤労者皆保険など、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う持続的な社会保障制度の構築に向け、議論を進めます。

 世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマです。

 この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します。

 新たな官民連携を進めるにあたっては、公共施設の運営を民間に任せるコンセッションの一層の活用、ベンチャー・フィランソロフィーによるNPOや社会的企業への支援、社会的インパクト投資、民による公的機能の補完も重要な論点です。

 今春、新しい資本主義のグランドデザインと、実行計画を取りまとめます。

 来年、日本がG7議長国を務めることを見据え、ダボス会議やG7の場を活用し、世界の首脳や経済界のリーダーと問題意識を共有しながら、世界の議論を牽引し、資本主義の変革に向けた大きな流れを作っていきます。

 過度の効率性重視による市場の失敗、持続可能性の欠如、富める国と富まざる国の環境格差など、資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題でもあります。

 二〇二〇年、衆参両院において、党派を超えた賛成を得て、気候非常事態宣言決議が可決されました。皆さん、子や孫の世代のためにも、共にこの困難な課題に取り組もうではありませんか。

 同時に、この分野は、世界が注目する成長分野でもあります。二〇五〇年カーボンニュートラル実現には、世界全体で、年間一兆ドルの投資を、二〇三〇年までに四兆ドルに増やすことが必要との試算があります。

 我が国においても、官民が炭素中立型の経済社会に向けた変革の全体像を共有し、この分野への投資を早急に少なくとも倍増させ、脱炭素の実現と、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていきます。

 二〇三〇年度四六%削減、二〇五〇年カーボンニュートラルの目標実現に向け、単にエネルギー供給構造の変革だけでなく、産業構造、国民の暮らし、そして地域の在り方全般にわたる、経済社会全体の大変革に取り組みます。

 どの様な分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋を、クリーンエネルギー戦略として取りまとめ、お示しします。

 送配電インフラ、蓄電池、再エネはじめ水素、アンモニア、革新原子力、核融合など非炭素電源。需要側や地域における脱炭素化、ライフスタイルの転換。資金調達の在り方。カーボンプライシング。多くの論点に方向性を見出していきます。

 もう一つ重要なことは、我が国が、水素やアンモニアなど日本の技術、制度、ノウハウを活かし、世界、特にアジアの脱炭素化に貢献し、技術標準や国際的なインフラ整備をアジア各国と共に主導していくことです。

 いわば、アジア・ゼロエミッション共同体と呼びうるものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指します。

 新しい資本主義を支える基盤となるのは、老若男女、障害のある方も、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会です。

 人生や家族の在り方が多様化する中、女性の経済的自立や、コロナ下で急増するDVなど女性への暴力根絶に取り組みます。

 孤独、孤立に苦しむ方々に寄り添い、支えるため、NPO等の活動をきめ細かく支援するとともに、国、自治体、NPOの連携体制を強化します。

 少子化対策やこども政策を積極的に進めていくことも喫緊の課題です。

 不妊治療の範囲を拡大し、四月から保険適用を始めます。

 こども政策を我が国社会のど真ん中に据えていくため、こども家庭庁を創設します。

 こども家庭庁が主導し、縦割り行政の中で進まなかった、教育や保育の現場で性犯罪歴の証明を求める日本版DBS、こどもの死因究明、また、制度横断、年齢横断の教育、福祉、家庭を通じたこどもデータ連携、地域における障害児への総合支援体制の構築を進めます。

 消費者という視点から、本年四月の成年年齢の引き下げを控え、若者の消費者被害防止に集中的に取り組みます。

 デジタル以外の地域活性化にもしっかりと取り組みます。

 農林水産業については、輸出の促進とスマート化による生産性向上により、成長産業化を進めます。

 昨年の農林水産品の輸出額は一兆円を突破しました。次の目標である二〇二五年二兆円突破に向け、輸出品目別に、オール・ジャパンで輸出促進を行う体制を整備いたします。

 コロナ禍による米価下落に対して、十五万トンの特別枠の設定により対処してきました。現下の状況を重く受け止め、家族農業や中山間地域農業を含め、多様な農林漁業者が安心して生産できる豊かな農林水産業を構築できるよう取り組みます。

 観光産業についても、新型コロナの影響への適切な支援を図りつつ、コロナ後を見据え、観光産業の高付加価値化を推進します。

 日本酒、焼酎、泡盛など文化資源のユネスコへの登録を目指すなど、日本の魅力を世界に発信していきます。

 本年は、沖縄の本土復帰五十周年です。この節目の年に、復帰の歴史的意義を想起し、沖縄の歴史に思いを致します。強い沖縄経済を作るための取組を進めます。

 二十七年前の今日、阪神・淡路大震災が発生し、六千名を超える尊い命が失われました。

 この震災を教訓に、これまで以上に、災害対策や危機管理の充実を図ってきました。

 切迫する南海トラフの巨大地震や首都直下地震。日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震。風水害、豪雨への備え。

 五年間で十五兆円規模の集中対策を進め、引き続き、強い覚悟を持って、防災・減災、国土強靱化を強化します。

 昨年熱海で発生した土石流災害と同様の悲劇を繰り返すことがないよう、これまで規制をかけることができなかった地域においても、危険な盛土を規制するための法律を整備します。あわせて、全国に三万六千か所ある、点検が必要な盛土の安全確認も進めます。

 福島の再生を含め、東日本大震災からの復興は、政権の大きな課題です。

 大熊町、双葉町、葛尾村から、復興再生拠点の避難指示解除に向けた準備宿泊の取組を進めます。被災者の方の心に寄り添いながら、住民の方の帰還を進めていきます。

 福島の復興再生を前進させるのみならず、世界の課題解決にも貢献する、国際教育研究拠点を具体化するための法律を整備します。

 昨年、米国が日本産食品の輸入規制を撤廃し、福島県産米の輸出が始まりました。私自身、ジョンソン首相に働きかけを行った英国も、規制撤廃に向けた手続を開始しています。一日も早く全ての国と地域で規制が撤廃されるよう、政府一丸となって働きかけていきます。

 厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、日本外交のしたたかさが試される一年です。

 私自ら先頭に立ち、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、現実を直視し、新時代リアリズム外交を展開していきます。

 新時代リアリズム外交の第一の柱として、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則を重視していきます。

 これらを共有する米国のバイデン大統領とは早期に会談し、我が国の外交、安全保障の基軸である日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、地域の平和と繁栄、そして、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていきます。

 豪州のモリソン首相とは、円滑化協定に署名をし、安全保障協力を強化するなど、特別な戦略的パートナーシップを新しいステージへと引き上げました。

 同盟国、同志国と連携し、深刻な人権問題への対処にも、私の内閣で、初めて任命した専任の補佐官と共に、しっかりと取り組む覚悟です。

 最重要課題である拉致問題について、各国と連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。

 我が国が提唱し推進する、自由で開かれたインド太平洋の考え方は、多くの国から支持を得ています。

 日米豪印では、ワクチンや質の高いインフラ整備など、実践的な協力が具体化しており、協力を前へと進めます。

 ASEANや欧州など、パートナーとも連携を強化します。

 TPPの着実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大に取り組みます。信頼性のある自由なデータ流通、DFFTの実現に向け、国際的なルール作りにおいて中心的な役割を果たしていきます。

 地域の平和と安定も重要です。

 中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。

 ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの諸合意を踏まえ、二〇一八年以降の首脳間でのやり取りを引き継いで、粘り強く交渉を進めながら、エネルギー分野での協力を含め、日露関係全体を国益に資するよう発展させていきます。

 重要な隣国である韓国に対しては、我が国の一貫した立場に基づき、適切な対応を強く求めていきます。

 第二の柱として、気候変動やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を含め、地球規模課題に積極的に取り組みます。

 六年前、オバマ大統領は、原爆資料館で、核兵器のない世界を追求する勇気を持ちましょうと記帳し、自作の折り鶴を残しました。被爆地広島出身の総理大臣として、私は、この思いを引き続き、勇気を持って核兵器のない世界を追求していきます。

 外務大臣時代に設置した賢人会議の議論を更に発展させるため、各国の現、元政治リーダーの関与も得ながら、核兵器のない世界に向けた国際賢人会議を立ち上げます。本年中を目標に、第一回会合を広島で開催いたします。

 貧困削減への貢献に向け、国際開発協会に対して、過去最大の約三十四億ドルを拠出します。

 TICAD8では、コロナ後を見据えたアフリカ開発の針路を示していきます。

 第三の柱は、国民の命と暮らしを断固として守り抜く取組です。

 北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません。

 こうしたミサイルの問題や、一方的な現状変更の試みの深刻化、軍事バランスの急速な変化、宇宙、サイバーといった新しい領域や経済安全保障上の課題。これらの現実から目を背けることなく、政府一丸となって、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を守り抜いていきます。

 このため、概ね一年かけて、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画を策定します。

 これらのプロセスを通じ、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討します。先月成立した補正予算と来年度予算を含め、スピード感を持って防衛力を抜本的に強化いたします。

 海上保安庁と自衛隊の連携を含め、海上保安体制を強化するとともに、島嶼防衛力向上などを進め、南西諸島への備えを強化します。

 海外で邦人等が危機に晒された際の輸送に万全を期すため、自衛隊法の改正案を今国会に提出いたします。

 日米同盟の抑止力を維持しながら、沖縄の皆さんの心に寄り添い、基地負担軽減に引き続き取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。

 先の臨時国会において、憲法審査会が開かれ、国会の場で憲法改正に向けた議論が行われたことを歓迎します。

 憲法の在り方は国民の皆さんがお決めになるものですが、憲法改正に関する国民的議論を喚起していくには、我々国会議員が、国会の内外で議論を積み重ね、発信していくことが必要です。

 本国会においても積極的な議論が行われることを心から期待します。

 昨年末に明らかになった建設工事受注動態統計調査における不適切な処理について一言申し上げます。

 先週十四日に、国土交通省の第三者委員会及び総務省の統計委員会から検証結果が公表されました。

 検証結果を真摯に受け止め、国民の皆さんにお詫びを申し上げます。

 関係大臣に対し、直ちに、再発防止に取り組むよう指示をしました。政府統計全体の信頼を回復すべく、指導監督してまいります。

 己を改革する。

 幕末に生きた勝海舟は、行蔵は我に存すとともに、己を改革す、自らを律することに重きを置きました。

 今、新たな時代を切り拓くに当たり、統計の不適切処理はもとより、我々政治、行政が自らを改革し、律していくことが求められています。

 その最大の原動力は、国民の声です。国民の声なき声に丁寧に耳を傾ければ、そして国民と共に歩めば、自ずと改革の道は見えてきます。

 引き続き、信頼と共感の政治に向けて、謙虚に取り組んでいきます。共に力を合わせ、この国の未来を切り拓くため、心より国民の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 外務大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 第二百八回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。

 現在、国際社会は時代を画する変化の中にあります。国際社会のパワーバランスの変化が加速化、複雑化し、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさと不確実性を増しております。

 そうした中、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や国際秩序が厳しい挑戦にさらされています。また、革新的技術の出現などにより、安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在化するなど、安全保障の裾野が急速に拡大をしています。

 同時に、気候変動、新型コロナ、軍縮・不拡散といった地球規模課題への対応も立ち止まることは許されません。新型コロナからの回復を支えるためにも、自由で公正な経済秩序の拡大や、デジタル分野を含め、新しい時代に対応したルール作りや国際秩序の構築が求められています。

 こうした認識に立ち、先人たちの努力により世界から得た日本への信頼を基礎に、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして人類に貢献し国際社会を主導する覚悟、これら三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢で、日本外交の新しいフロンティアを切り拓いていきます。

 まずは、日米同盟の強化です。日米同盟は、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎であり、日本の外交、安全保障の基軸です。岸田内閣においても、先般の日米2プラス2においてブリンケン国務長官、オースティン国防長官と確認したように、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していきます。

 そのためには、日本自身の防衛力の抜本的な強化も必要です。日本の平和と安全の確保、自由で開かれたインド太平洋の実現、新型コロナや気候変動への対応などの課題に対し、日米両国の強固な信頼関係の下、緊密に連携協力していきます。その中で、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を始め、地元の負担軽減と在日米軍の安定的駐留に全力を尽くします。

 また、日本を取り巻く厳しい安全保障環境に対処するため、国家安全保障戦略の改定に、関係大臣との協力の下、取り組んでいきます。

 次に、自由で開かれたインド太平洋の実現です。インド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくというこのビジョンは、今や国際社会で幅広い支持を集めています。米国を始め、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国、パートナー国と連携し、日米豪印等も活用しながら、その実現に向けた取組を一層推進していきます。

 近隣諸国との関係については、難しい問題に正面から毅然と対応しつつ、安定的な関係を築くべく、積極的に取り組みます。

 日中両国間には、隣国であるが故に、様々な懸案も存在します。尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海における一方的な現状変更の試みは、断じて認められません。冷静に、かつ毅然と対応していきます。また、南シナ海をめぐる問題についても、緊張を高めるいかなる行為にも強く反対し、力や威圧によらない、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性を強調していきます。台湾海峡の平和と安定も重要です。加えて、香港情勢や新疆ウイグル自治区の人権状況についても深刻に懸念します。同時に、日中関係は、日中双方にとってのみならず、地域及び国際社会の平和と繁栄にとって重要です。主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、共通の諸課題については協力することにより、本年、国交正常化五十周年を迎える中で、建設的かつ安定的な日中関係の構築を目指します。

 韓国は重要な隣国です。北朝鮮への対応を始め、地域の安定にとって、日韓、日米韓の連携は不可欠です。日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題などにより非常に厳しい状況にありますが、このまま放置することはできません。国と国との約束を守ることは、国家間の関係の基本です。日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。また、竹島は、歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も日本固有の領土です。この基本的な立場に基づき、毅然と対応していきます。

 ロシアとは、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など、幅広い分野で日露関係全体を国益に資するよう発展させていきます。最大の懸案である北方領土問題の解決のために、首脳間及び外相間で緊密に対話を重ねることが必要です。次の世代に先送りせず、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、二〇一八年のシンガポールでの首脳会談のやり取りを含め、これまでの両国間の諸合意を踏まえてしっかりと取り組んでいきます。また、元島民の方々のための人道的措置や北方四島における共同経済活動の更なる具体化に向けた取組の着実な進展を図ります。

 北朝鮮との間では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化の実現を目指します。今後とも、日米、日米韓の三箇国で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の完全な非核化を目指します。また、政権の最重要課題である拉致問題について、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組みます。

 日本外交が培ってきた信頼を基礎に、地域外交を推進していきます。

 ASEANとの関係強化は、地域全体の安定と繁栄にとって重要です。友好協力五十周年となる来年、日・ASEAN関係を新たな段階に引き上げるべく、自由で開かれたインド太平洋とインド太平洋に関するASEANアウトルックとが共有する本質的な原則の強化に資する具体的協力を進めます。また、ミャンマー情勢については、国際社会と連携しつつ、事態打開に向けて取り組んでいきます。

 今年は、日本・南西アジア交流年です。この節目の年に、南西アジア各国との交流を一層深化させます。

 中東地域の緊張緩和と情勢の安定化のため、中東諸国との伝統的な友好関係及び米国との強固な同盟関係を活かし、様々な外交努力を通じて貢献していきます。アフガニスタン情勢については、日本に関係する方々の出国支援を継続するとともに、周辺国を含めた人道支援の実施やタリバーンへの働きかけなど、安定化に向けた取組を続けていきます。また、世界の主要なエネルギーの供給源である中東地域の海域において航行の安全を確保すべく、引き続き、対策を徹底していきます。

 新型コロナがアフリカの社会経済にも甚大な影響を及ぼす中、国際的な連携が今こそ重要です。本年開催予定の第八回アフリカ開発会議、TICAD8を通じ、アフリカ自身が主導する発展を力強く後押しし、ポストコロナも見据え、アフリカ開発の針路を示していきます。

 また、中南米や外交関係樹立三十周年を迎える中央アジア・コーカサス諸国など、法の支配に基づく国際秩序を維持強化していくパートナーであり、かつ経済的にも重要な国々との関係を一層強化していきます。

 自由で公正な経済秩序の拡大に向けた国際的取組を主導していきます。

 経済安全保障は岸田内閣の最重要課題の一つであり、政府一丸となって取り組んでいます。外務省としても、国際法上の観点も踏まえつつ、同盟国、同志国との連携強化や新たな課題に対応する規範の形成など、積極的に貢献していきます。

 世界で保護主義的な動きが広がる中、日本は、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮し、ルールに基づく多角的貿易体制の維持強化に取り組んできました。引き続き、TPP11協定のハイスタンダードの維持やRCEP協定の完全な履行の確保に取り組むとともに、WTO改革を主導し、APECでも取組を強化していきます。

 エネルギー、鉱物資源の安定的な確保や日本企業の海外展開支援にも、引き続き、積極的に取り組みます。日本産食品に対する輸入規制措置については、多くの国、地域で撤廃、緩和を実現してきており、全ての国、地域における撤廃に向け、政府一丸となって働きかけていきます。また、二〇二五年大阪・関西万博の成功に向け、引き続き、力強く取り組みます。

 ポストコロナで重要性を増すデジタル分野においては、関係国やOECDなどとも連携しつつ、信頼性のある自由なデータ流通、DFFTの実現に向け、WTO電子商取引交渉など、国際的なルール作りで中心的な役割を果たします。また、サイバー空間の脅威が高まる中、サイバー犯罪への効果的な対策やサイバー空間における法の支配の推進に取り組みます。

 宇宙空間についても、米国や同志国との連携の下、持続的かつ安定的な利用の確保に向けた国際的なルール作りや国際協力を推進していきます。

 人間の安全保障の理念に立脚し、地球規模課題への対応に主導力を発揮し、国際社会での日本の存在感を高めていきます。

 積極的かつ戦略的なODAの活用を通じ、SDGs達成を始めとする地球規模課題への取組や自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を加速します。その一環として、質の高いインフラ投資に関するG20原則の実施を促進します。

 新型コロナの収束に向け、途上国を含めた、ワクチン、診断薬、治療薬への公平なアクセスの確保の支援に引き続き取り組みます。将来のパンデミックへの国際的な備えと対応を強化し、より強靱、より公平で、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けて取り組みます。

 気候変動問題については、COP26交渉の成果を踏まえ、引き続き、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた取組を強力に推進するとともに、各国によるパリ協定の着実な実施への貢献を通じ、脱炭素社会の実現に向けて国際社会を主導していきます。

 海洋プラスチックごみ、生物多様性の保全、難民・避難民、テロ対策、男女共同参画推進など、SDGs達成に向けた諸課題にも積極的に取り組みます。

 普遍的な価値である人権の擁護は、達成方法や政治体制の違いに関わらず、全ての国の基本的な責務です。日本は、深刻な人権侵害に対してしっかり声を上げるとともに、努力をしている国に対しては、対話や協力により、その取組を促してきました。こうした日本独自の貢献の積み重ねを活かしつつ、現下の国際情勢も踏まえた、日本らしい人権外交を進めていきます。

 国連においては、安保理を改革し、日本の常任理事国入りなど今日の世界を反映したものとする必要があります。改革実現に向けた具体的交渉を開始すべく取り組むとともに、本年の安保理非常任理事国選挙での当選に万全を期します。また、PKOその他の国連の平和構築の取組に貢献するとともに、国際機関で活躍する日本人を増やす取組も行っていきます。

 NPTは、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石です。今回、運用検討会議の開催延期が決まったことは残念ですが、日本としては、同会議が可能な限り早期に開催され、意義ある成果を収めることが重要であると考えています。核兵器のない世界の実現に向け、引き続き、しっかりと取り組んでいきます。

 ここまで、外交の重要分野における政策方針を申し上げてきました。対応力の高い、低重心の姿勢の外交を展開するには、人的体制、財政基盤、DX推進を含めた外交実施体制の強化が不可欠です。新型コロナの影響が続く中、水際防疫措置や在外邦人の安全確保にも引き続き万全を期します。同時に、国際社会から日本の政策、取組、立場に対する理解と支持を得るための戦略的な対外発信を強力に展開するとともに、親日派、知日派育成や日系社会との連携強化に努めます。

 議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 令和四年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況から徐々に回復しつつありますが、オミクロン株の感染拡大に直面し、国民生活や経済への影響は依然として続いております。また、先行きにつきましては、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、景気が持ち直していくことが期待されますが、下振れリスクにも十分注意する必要があります。

 こうした中、まずは、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期してまいります。また、この感染症による危機を乗り越え、新しい資本主義に向けて、成長と分配の好循環を実現していく必要があります。そのため、先に成立した令和三年度補正予算の速やかな執行を期すとともに、いわゆる十六か月予算として同補正予算と一体的に編成した令和四年度予算、そして令和四年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。

 日本の財政は、少子高齢化が進む中、社会保障の受益と負担のアンバランスという構造的課題に直面しております。財政は国の信頼の礎であり、財政健全化の旗を降ろすことなく、経済財政運営と改革の基本方針二〇二一等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革をしっかり進めてまいります。

 続いて、令和四年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 令和四年度予算は、先ほど申し上げたとおり、いわゆる十六か月予算の考え方のもと、令和三年度補正予算と一体として編成し、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しつつ、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を図るための予算としております。

 具体的には、まず、令和三年度補正予算による感染拡大防止策等を着実に進めるとともに、令和四年度予算においても、引き続き、五兆円の新型コロナウイルス感染症対策予備費を措置し、予期せぬ状況変化に備えることとしております。次に、新しい資本主義の実現のため、成長戦略として、科学技術立国の観点から、過去最高の科学技術振興費を確保し、イノベーションを促進するとともに、デジタル田園都市国家構想の観点から、地方創生推進交付金等による支援を行うほか、経済安全保障の観点から、研究開発等を推進することとしております。また、分配戦略として、看護、介護、保育、幼児教育等の現場で働く方々の処遇改善や、人への投資を推進する施策等に取り組むこととしております。

 同時に、歳出全般にわたり見直しを行い、一般歳出等について、経済財政運営と改革の基本方針二〇二一の目安を達成するなど、歳出改革の取組を継続しております。また、予算の単年度主義の弊害是正に取り組むなど、予算の質も向上させております。

 一般歳出につきましては約六十七兆三千七百億円であり、これに地方交付税交付金等約十五兆八千八百億円及び国債費約二十四兆三千四百億円を加えた一般会計総額は、約百七兆六千億円となっております。

 一方、歳入につきましては、租税等の収入は約六十五兆二千四百億円、その他収入は約五兆四千四百億円を見込んでおります。また、公債金は約三十六兆九千三百億円であり、前年度当初予算に対し約六兆六千七百億円の減額を行っております。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費につきましては、看護、介護、保育等の現場で働く方々の処遇改善に必要な経費を確保しつつ、診療報酬のメリハリある改定や市場価格を反映した薬価改定など、様々な改革努力を積み重ねた結果、実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるという方針に沿ったものとなっております。

 文教及び科学振興費につきましては、小学校高学年における教科担任制の推進等のため必要な教職員定数の措置及び合理化等を行うほか、科学技術立国の観点から、デジタル、グリーン等の研究開発を推進するとともに、博士課程学生の処遇向上に向けた支援を充実することとしております。

 地方財政につきましては、国税及び地方税の増収等を反映し、地方の臨時財政対策債の発行を大幅に縮減しつつ、地方の一般財源総額を適切に確保することとしております。

 防衛関係費につきましては、緊迫化する国際情勢を踏まえ、中期防衛力整備計画に基づき、調達の効率化を図りつつ、宇宙やサイバーといった新領域を含め、防衛力を着実に強化することとしております。

 公共事業関係費につきましては、ソフト対策の強化と新技術の活用による効率化といった観点を踏まえつつ、防災・減災、国土強靱化の取組への重点化を図るほか、国庫債務負担行為の積極的な活用により、施工時期の平準化や計画的な整備の円滑化に取り組むこととしております。

 経済協力費につきましては、新型コロナウイルス感染症の国際的な収束に向けた継続的支援や、気候変動対策等の途上国支援に重点化し、ODAは予算、事業量ともに必要な額を確保することとしております。

 中小企業対策費につきましては、下請取引対策及び事業承継支援を充実するほか、生産性向上に向けた支援など、現下の中小企業を取り巻く経営課題に対応することとしております。

 エネルギー対策費につきましては、再生可能エネルギーの主力電源化やカーボンリサイクルの推進など、イノベーションの創出による脱炭素化を進めるほか、災害等に強いエネルギー供給網の整備に取り組むこととしております。

 農林水産関係予算につきましては、農林水産物、食品の輸出拡大や、農業経営の生産性向上と環境負荷軽減の両立を推進するほか、林業、水産業の持続的成長に向けた資源管理等に取り組むこととしております。

 東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間において、復興のステージに応じたきめ細やかな取組を実施するとともに、創造的復興を実現していくため、令和四年度東日本大震災復興特別会計の総額を約八千四百億円としております。

 令和四年度財政投融資計画につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者への支援に引き続き万全を期すとともに、科学技術立国の実現、デジタル田園都市国家構想や経済安全保障の推進、防災・減災、国土強靱化等の分野に重点的に取り組むため、総額約十八兆八千九百億円としております。

 国債管理政策につきましては、借換債を含む国債発行総額が約二百十五兆円と依然として極めて高い水準にある中で、引き続き、市場との緊密な対話に基づき安定的な国債発行に努めてまいります。

 令和四年度税制改正につきましては、成長と分配の好循環の実現に向けて、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための措置を講ずることとしております。また、カーボンニュートラルの実現に向けた観点等を踏まえ、住宅ローン控除等を見直すこととしております。

 以上、財政政策の基本的な考え方と、令和四年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。

 日本経済は、戦後の荒廃から立ち直り、高度経済成長を成し遂げ、二度の石油危機を乗り越えました。平成の時代にも、巨大な自然災害や金融経済の危機等がありました。現在も、新型コロナウイルス感染症に伴う厳しい状況に直面する中、少子高齢化等の構造的な課題に取り組まなければなりません。

 しかし、幾多の試練を乗り越えてきた日本が克服できない困難はないと固く信じております。次の世代に未来をつなぐためにも、まずは今回の危機を乗り越え、経済をしっかりと立て直し、財政健全化に向けて取り組んで行く必要があります。

 そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 国務大臣山際大志郎君。

    〔国務大臣山際大志郎君登壇〕

国務大臣(山際大志郎君) 経済財政政策担当大臣として、我が国経済の現状と課題、政策運営の基本的考え方について所信を申し述べます。

 この二年間、世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響を受け続けてきました。今もまた、オミクロン株の世界的な感染拡大に直面しています。緊張感を持ってその動向を注視するとともに、予防、検査、早期治療の枠組みを一層強化し、万全の体制をとってまいります。

 我が国経済については、一昨年来の新型コロナウイルス感染症による厳しい状況から徐々に回復しつつありますが、対面サービスを中心に感染症の影響を大きく受けた業種、そこで働く方々、あるいは休業を余儀なくされた方々など、国民生活や経済への影響は依然として続いています。まずは厳しい状況にある方々を全力でお支えし、経済活動の再開、拡大に向けた基盤を整えていただきながら、傷ついた日本経済を一日も早く立て直す。あわせて、感染状況について最悪の事態を想定して、医療提供体制の強化やワクチン接種の促進、治療薬の確保に万全を期し、経済社会活動を極力継続できる環境を作り、安全、安心を確保してまいります。

 また、世界的に生じている半導体不足等のグローバルサプライチェーンを通じた供給制約、原油などの資源、原材料価格の世界的な高騰など、我が国経済を取り巻く環境には多くの下振れリスクが存在しています。内外経済の動向を常に注視し、感染症による影響や金融資本市場の予期せぬ変動等の影響にも十分な目配りを行いながら、万全の経済財政運営を行ってまいります。

 こうした観点から、昨年十一月、財政支出五十五・七兆円にのぼる、コロナ克服・新時代開拓のための経済対策を閣議決定し、十二月には、その裏付けとなる令和三年度補正予算が国会で成立いたしました。医療提供体制の強化をはじめとする感染症対策の強化や、厳しい状況にある事業者や生活にお困りの方々への万全の支援、安全、安心を確保した上での経済社会活動の再開といったコロナ対応と同時に、ウィズコロナ、ポストコロナの経済社会をしっかりと見据え、成長戦略と分配戦略を車の両輪にした、成長と分配の好循環を起動させる未来志向の経済対策としております。

 この経済対策の効果をより早く、より多くの人々にお届けできるよう、地方や現場の声をきめ細かく聞きながら、円滑かつ着実に実行してまいります。令和三年度補正予算と令和四年度本予算を切れ目なく、十六か月予算の執行を通じた万全の経済財政運営により、実質経済成長率は今年度に二・六%程度、来年度に三・二%程度となることが見込まれ、GDPは来年度には過去最高となると見込まれます。我が国経済を一日も早く民需主導の自律的な成長軌道に乗せ、デフレ脱却、経済再生が実現できるよう全力で取り組んでまいります。

 危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。経済あっての財政です。経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組みます。また、新経済・財政再生計画改革工程表の着実な実行やエビデンスに基づく政策立案により、適切かつ効果的な支出を推進してまいります。

 日本経済を成長軌道に乗せた上で、岸田政権が目指す新しい資本主義を実現していきます。新しい資本主義は、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の課題に対応しつつ、力強く成長する経済社会への変革を目指すものです。この変革に向けて、単に競争や市場に任せるのではなく、官と民がそれぞれの役割を果たすことで、成長と分配の好循環を実現してまいります。

 まずは、成長戦略です。科学技術・イノベーション、気候変動問題への対応、デジタル、経済安全保障を柱とし、大胆な投資を進めてまいります。その際、政府、民間企業、大学等、地域社会、国民・生活者が、それぞれの役割を果たすことが重要です。

 科学技術・イノベーションについては、十兆円規模の大学ファンドを本年度内に実現し、運用を開始します。また、世界と伍する研究大学に求められるガバナンス改革や外部資金確保の強化などの大学改革の実現に向けて、新たな大学制度を構築するための関連法案を今国会に提出する予定です。加えて、人工知能、量子、ライフサイエンスといった最先端の科学技術の開発力を強化します。

 気候変動問題への対応については、エネルギー供給のみならず、需要側のイノベーションや設備投資など、需給両面を一体的に捉えて、クリーンエネルギー戦略を作ります。

 デジタルについては、デジタル田園都市国家構想の実現に向けて、自動配送や自動運転、ドローン宅配、テレワークといったフロンティア部分を地方から実装します。このため、自動配送サービスや自動運転移動サービスについて、今国会に関連法案を提出し、構造改革を進めてまいります。

 経済安全保障については、サプライチェーンの強靱化や基幹インフラの信頼性確保などを進めるため、与党との協議を踏まえ、今国会への新たな法案の提出を目指し、経済安全保障の確立を進めてまいります。

 次に、分配戦略です。人への分配は、コストではなく、未来への投資です。官と民が共に役割を果たすことで成長の果実をしっかりと分配し、消費を喚起することで次の成長につなげます。

 まずは、国が率先して、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の給与を引き上げます。その上で、民間企業における賃上げを支援するため、賃上げ税制や補助金など、あらゆる施策を総動員していきます。また、中小企業等が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるよう、パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージに基づく取組を進めるなど、賃上げに向けた環境を整えてまいります。

 付加価値を創出し、経済的豊かさや力強さをもたらす原動力は、人です。人への投資を抜本的に強化するため、三年間で四千億円規模の施策パッケージを講じてまいります。

 春には、新しい資本主義実現会議において、全体のグランドデザインと、その実行計画を取りまとめます。

 TPP11等、経済連携の強化も進めてまいります。我が国は、これまで、TPP11協定等の経済連携協定の推進を通じて、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してきました。日本は、昨年のTPP委員会議長国、本年の副議長国として、引き続き、本協定を通じた自由貿易の推進や、デジタル化などの新たな課題への対処において、主導的な役割を果たしてまいります。

 昨年六月、TPP11として初めて、英国の加入手続の開始を決定しました。TPP11は、自由で公正な二十一世紀型の新たなルールを確立するものであり、市場アクセスの面でもルールの面でも高いレベルの内容となっています。日本は、英国の加入作業部会の議長の立場で、手続が協定の高いレベルを維持しつつ進むよう、他の参加国と共にしっかり取り組みます。また、その他の加入に関心を示しているエコノミーについても、協定の高いレベルを満たす用意ができているかどうかについて、しっかりと見極めてまいります。

 あわせて、成長戦略に沿った、我が国の発展につながるような対日直接投資を戦略的に推進してまいります。

 子供から子育て世代、お年寄りまで、誰もが安心できる全世代型の社会保障を構築してまいります。

 先ほど述べた、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の給与の引上げは、分配戦略としても最優先の課題です。その第一歩として、民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、昨年十一月に閣議決定した経済対策において、必要な措置を行い、前倒しで引上げを実施することとしました。更なる引上げに向けて、昨年末に取りまとめていただいた中間整理に沿って、取組を進めてまいります。

 男女が希望どおりに働ける社会や社会保障による負担増の抑制を目指して、女性の就労の制約となっている制度の見直し、勤労者皆保険の実現、子育て支援、家庭介護の負担軽減、若者、子育て世帯の負担増を抑制するための改革等について、全世代型社会保障構築会議において議論を進め、取組を前に進めてまいります。

 新型コロナウイルス感染症という厳しい状況の中にあっても、デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙など、新しい時代の種が芽吹き始めています。リモートワークをはじめとする私たちのライフスタイルや意識も大きく変化しました。この萌芽を大きな木に育て、経済を成長させ、その果実を分配政策によってしっかりと国民全員で享受していく、明るい未来を皆様と共に築いてまいりたいと思います。

 国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

山田賢司君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る十九日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    金子 恭之君

       法務大臣    古川 禎久君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  末松 信介君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       経済産業大臣  萩生田光一君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    山口  壯君

       防衛大臣    岸  信夫君

       国務大臣    小林 鷹之君

       国務大臣    二之湯 智君

       国務大臣    西銘恒三郎君

       国務大臣    野田 聖子君

       国務大臣    堀内 詔子君

       国務大臣    牧島かれん君

       国務大臣    松野 博一君

       国務大臣    山際大志郎君

       国務大臣    若宮 健嗣君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 木原 誠二君


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