衆議院

メインへスキップ



第4号 令和4年2月1日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年二月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

  令和四年二月一日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案(古屋圭司君外四名提出)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

山田賢司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 古屋圭司君外四名提出、新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案(古屋圭司君外四名提出)

議長(細田博之君) 新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。古屋圭司君。

    ―――――――――――――

 新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋圭司君登壇〕

古屋圭司君 私は、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。(拍手)

 案文の朗読をもちまして趣旨の説明に代えさせていただきます。

    新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案

  近年、国際社会から、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている。人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。

  この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けていると訴える人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。そして、日米首脳会談、G7等においても、人権状況への深刻な懸念が共有されたところである。

  このような状況において、人権の尊重を掲げる我が国も、日本の人権外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書を採択し、確固たる立場からの建設的なコミットメントが求められている。

  本院は、深刻な人権状況に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識するとともに、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める。

  政府においても、このような認識の下に、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、まず、この深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきである。それとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。(拍手)

 この際、外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 岸田内閣では、人権を始めとした普遍的価値を守り抜くことを重視しており、我が国としては、こうした普遍的価値が各国においても保障されることが重要と考えております。

 そのような考えから、これまで、新疆ウイグルの人権状況等に対しても、日米首脳会談やG7等の場を含め、我が国として深刻な懸念を表明するなど、我が国と価値観を共有する国々とともに連携しつつ取り組んできています。

 ただいまの御決議の趣旨も踏まえ、政府として、引き続き、国際社会と緊密に連携しつつ、着実に取り組んでまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、成長と分配の好循環の実現に向けた積極的な賃上げ等の促進、カーボンニュートラルの実現等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げ等を促す観点からの賃上げに係る税制措置の拡充等及びオープンイノベーション促進税制の拡充等を行うこととしております。

 第二に、カーボンニュートラルを実現する等の観点から、住宅ローン控除制度の見直しを行うこととしております。

 このほか、住宅用家屋の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。

 以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。藤丸敏君。

    〔藤丸敏君登壇〕

藤丸敏君 自由民主党の藤丸敏でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 国民の皆様におかれましては、コロナ禍の中、お亡くなりになられた方にお悔やみを申し上げます。

 また、療養中の方にお見舞いを申し上げます。

 医療関係者の方々には大変感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 税は、言うまでもなく、国又は地方公共団体の統治権としての公権的課徴金であります。また、担税力に基礎を置く均等性、いわゆるアダム・スミスさんやワグナーさんからの租税原則の要請に応じ、人的、社会的事情を加味された歴史的発展の所産でもあります。

 我が国の税の発祥は、氏族国家の貢ぎにあると言われております。大化の改新により唐の租庸調を導入し、江戸幕府では、地租が中心となり、明治の渋沢栄一氏も影響を与えた地租改正により収穫高から地価に改め、明治二十年の所得税の創設に至るわけであります。そして、明治憲法に租税法律主義がうたわれ、租税の賦課や徴収が整備されたわけであります。昭和十五年に法人税が創設され、昭和二十五年のシャウプ税制改正に至るわけであります。

 片や、世界の税制も、第一次世界大戦を契機として、現代税制の基盤ができ上がったと言われております。

 今次の税制改正について質問に入らせていただきます。

 岸田総理も、新しい資本主義を提唱され、成長と分配の好循環の実現、多様なステークホルダーに配慮した経営と賃上げを促進し、分厚い中間層をつくると言われております。

 成長だけでなく分配にも注力し、持続的な成長につなげていく。分配面で重要なのが、持続的な所得水準の向上です。我が国の賃金の増加ペースは、長期にわたって不十分な状況であり、他の先進国と比べてみても見劣りをしております。

 その一方で、日本企業全体を見てみれば、コロナ禍の影響で業況にばらつきがあるものの、経常利益や現金保有高、内部留保は、財務省の、二〇二〇年度末が四百八十四兆円。個人資産も、日銀の、昨年九月末の段階で千九百九十九・八兆と高水準にあります。

 成長と分配の好循環を実現するためにも、様々な政策手段を用いて企業に賃上げを促すことが重要です。その一つに、今回の賃上げ税制があると思います。岸田総理に、その基本的な政策理念についてお聞かせ願います。そして、鈴木財務大臣より、具体的な賃上げ税制について御説明をお願いします。

 次に、予算と税収についてでありますが、令和元年度予算百一・五兆、補正予算三・二兆、令和二年度予算百二・七兆、一次補正二十五・七兆、二次補正三十一・九兆、三次補正十五・四兆、令和三年度予算百六・六兆、補正三十六兆。そして、今、令和四年度は百七・六兆が審議をされております。

 また、税収は、令和元年度五十八・四兆、令和二年度六十・八兆、令和三年度六十三・九兆となっており、そして、令和四年度の税収は増収と聞いておりますが、鈴木財務大臣に、令和四年度の税収見込みをお聞かせ願えればと思います。

 税収も増えておりますし、GDPも本年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれるなど、経済指標としては悪くはありません。

 次に、今回の住宅ローン控除制度見直しについて、家を建てる、住宅を購入するというのは、言うまでもなく、人生最大の買物です。若い人たちが家を買って家族のために頑張るということは、日本経済が活気づくことでもあります。今回の見直しについて、財務大臣に御説明願います。

 また、成長面では、イノベーションの促進やデジタルを活用した地方活性化が重要です。オープンイノベーション促進税制、5G導入促進税制の政策意図を含め、持続的な成長をどのように実現していくのか。萩生田経済産業大臣に説明願います。

 最後に、岸田総理の新しい資本主義で、国民の皆さんが心豊かに幸せになる、幸せは主観的にはその人の心の持ちようでありますが、政治は幸福を享受できる客観的社会環境制度の実現を目指します。

 そこで、アメリカの右肩上がりの株・金融市場は、一九八〇年代、四〇一kにより、給料から、毎月、金融市場にお金が流れ込み始めます。一九九〇年代に、コンピューターが進み、個人金融市場も活発になります。二〇〇〇年代になって、デリバティブで取引が拡大されます。二〇一〇年代、GAFAに誘導され、買いが強い右肩上がりの金融市場ができ上がっています。

 日本の金融市場も活性化できれば、あまねく人たちに、また企業に、資金循環ができると考えております。岸田総理も金融市場研究の会長もされており、日本の国が豊かになるために御一考願えれば幸いです。

 終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤丸敏議員にお答えいたします。

 賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが分配戦略であり、その第一の柱は、所得の向上につながる賃上げです。

 成長の果実を広く国民お一人お一人に分配することで、消費を拡大し、次の成長につなげるなど、成長と分配の好循環を実現することを政策理念として、賃上げ税制を抜本的に拡充いたします。

 あわせて、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員し、企業が賃上げしようと思える雰囲気を醸成してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 藤丸敏議員にお答えを申し上げます。

 藤丸議員からは、賃上げ促進税制の具体的内容についてお尋ねがありました。

 まず、大企業向け税制については、継続雇用者の給与総額を対前年度比で三%以上増加させた企業が適用対象となり、税額控除率を最大三〇%に引き上げることとしております。また、一定規模以上の大企業については、持続的な賃上げ等、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを適用要件としております。

 次に、中小企業向け税制については、全雇用者の給与総額を対前年度比で一・五%以上増加させた企業が適用対象となり、税額控除率を最大四〇%に引き上げることとしております。

 企業においては、こうした税制措置も活用し、持続的な賃上げに取り組んでいただきたいと考えております。

 次に、令和四年度の税収見込みについてお尋ねがありました。

 令和四年度の税収につきましては、給与や企業の生産活動の伸び、消費の回復が見込まれていること等を反映し、六十五・二兆円を見込んでおります。

 最後に、住宅ローン控除の見直しについてお尋ねがありました。

 今回の税制改正においては、従来の消費税率八%への引上げ時における反動減対策として講じた措置を、カーボンニュートラルを実現する等の観点から見直しております。

 具体的には、環境性能等が高い良質な住宅について借入限度額の上乗せを行うなどの措置を講じることとしています。

 また、会計検査院の指摘を踏まえ、控除率の見直し等を行う一方、新築住宅等について控除期間を十三年とする措置を講じることとしています。

 この結果、税額を控除し切れていなかった中間層以下の納税者にとっては、控除期間が延長されることにより、総控除額が増えるといった支援の充実につながるものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 藤丸議員からの質問にお答えします。

 税制の政策意図や、持続的な成長を実現する方策についてお尋ねがありました。

 今回の税制改正においては、大企業等とスタートアップのオープンイノベーションを促進するため、スタートアップへの出資に対して所得控除を措置するオープンイノベーション促進税制を延長、拡充するとともに、自動走行や工場等のスマート化の実現など、地域の社会課題解決に資する重要インフラである5Gネットワークを都市と地方で一体的に整備するため、5G導入促進税制を見直し、延長します。

 これらの税制に加え、デジタル産業基盤の確保に向け、大胆な民間投資を促進する予算措置や二兆円のグリーンイノベーション基金など、あらゆる政策を総動員することで、デジタル、気候変動などの社会課題の解決に向けて、官民連携して投資を拡大し、成長のエンジンとすることにより、持続的な成長を実現してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 伴野豊君。

    〔伴野豊君登壇〕

伴野豊君 立憲民主党・無所属の伴野豊です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 質問に入る前に、現下の新型コロナウイルスの感染拡大により罹患された皆さん方に心からお見舞いを申し上げるとともに、エッセンシャルワーカーの方々に改めて感謝と敬意を表させていただきます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 現在、日本経済は、失われた三十年とも言われる長期低迷のさなかにあり、一昨年からは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、ますます厳しい状況に追い込まれております。こうした状況を打開していく上で、税制が果たすべき役割はますます大きくなっていると考えております。

 我々は、長らく、分配の重要性を訴え続けてまいりました。今回、岸田総理が、従来のトリクルダウンの方法ではなく、我々と同様の考え方を示され、賃上げ税制の強化などの政策を掲げられたことは、素直に歓迎いたします。しかしながら、その具体的な中身について言えば、不合理、不十分な点が数多く見受けられます。

 以下、総理に質問させていただきます。

 まず、岸田政権の主要政策である賃上げ税制の強化について伺います。

 企業の賃上げを促進する税制自体は、第二次安倍政権以降、所得拡大促進税制や人材確保等促進税制といった形で導入、実施されてまいりました。

 しかしながら、これらの税制は十分な効果を上げることができておりません。実際に、所得拡大促進税制が導入された二〇一三年以降の現金給与総額の上昇率を見てみますと、最大でも一%台前半にとどまっております。当然、実質賃金も上がっておらず、むしろ下がっていたと言ってもいいのが現状でございます。

 今回の賃上げ税制も、税額控除率の大幅引上げ等、制度の拡充が行われたとはいえ、基本的な仕組みは一向に変わっておりません。これまで十分な効果を上げることができなかったこの仕組みで、なぜ賃上げを実現できると言えるのでしょうか。

 今回の賃上げ税制の強化により、国税、地方税合わせて、平年度ベースで千七百三十三億円の減収が見込まれます。現下の厳しい財政状況の折に、これだけの規模の減収を前提にする以上、具体的な根拠に基づいて、説得力のある説明が必要かと存じますが、総理の御答弁を求めます。

 また、今回の賃上げ税制もこれまでと同様に給与総額の増加を要件としておりますけれども、岸田総理は、この点についても、給与総額を対象とすることで、より多くの企業に賃上げを行っていただける、そうした制度設計とする必要があるとこの会議の場でもお答えになられました。しかし、安心して消費できるマインドを形成できなければ、仮に賃上げが実現したとしても、その分は貯蓄に回ってしまう可能性が高く、経済成長に結びつかず、分配されども成長なしの状況に陥りかねません。

 そうであるならば、やはり、賞与など一時的に増減し得るものではなく、基本給の増加を要件とすべきだと考えますが、改めて総理の御見解を伺いたいと思います。

 今回の賃上げ税制では、新たに、マルチステークホルダーへの配慮、具体的には、従業員への還元や取引先への配慮を行うことを宣言していることが適用要件に加えられております。このこと自体は歓迎したいと思いますが、これはあくまで宣言しているだけのことであり、実際にそうした配慮を行っているかどうかは問われず、監査も行われません。

 この要件に実効性は本当にあるのか。また、仮に取引先企業などからの告発などがあった場合、さらに宣言内容を遵守していないことが明らかになった場合、賃上げ税制の適用は一体どうなるのでしょうか。総理の御答弁を求めます。

 続けて、金融所得課税についてお伺いいたします。

 当初、岸田総理は、所得が一億円を超えると所得税の負担率が逆に下がっていく、いわゆる一億円の壁の問題を指摘され、金融所得課税の強化について前向きな御発言があったことから、議論が進展するのではないかと我々も大いに歓迎をしておりましたし、期待もしておりました。

 しかしながら、与党の税制改正大綱では、「課税のあり方について検討する必要がある。」とされただけで、具体的には全く言及がありませんでした。大変残念です。私たちは、金融所得課税について、将来的な総合課税化を見据え、当面は分離課税のまま超過累進税率を導入すること、同時に、資産形成を支援するためにNISAを拡充すること等、具体的な提案をしてまいりました。政府・与党内で議論が進展しなかったことは、極めて残念に思っております。

 今後、いつまでに、どのような方向性を持って議論するお考え、おつもりなのか、総理の明快な答弁を求めたいと思います。

 インボイス制度についてお伺いいたします。

 インボイス制度の導入が、来年、二〇二三年十月に迫っておりますが、取引過程から排除されたり廃業を迫られたりする免税事業者が生じかねないといった懸念や、とりわけ中小企業にとっては、インボイスの発行、保存等におけるコストが大きな負担になるといった問題が随分指摘されております。我々は、その度々、導入の延期や見直しを求めてまいりました。

 岸田総理は、免税事業者を含めた事業者の準備のため、軽減税率の実施から十年間の十分な経過措置を設けていると御答弁されましたが、二〇一九年の軽減税率実施から二〇二三年のインボイス制度導入まで、この間、僅か四年しかありません。

 加えて、この間、新型コロナウイルス感染症の発生と拡大の影響を受けて、多くの事業者が青息吐息、厳しい状況に置かれており、経過措置の期間を設定したときとは状況を全く異にしております。

 したがって、少なくとも、コロナ禍が収束し、経済状況が回復するまでの間についてはインボイス制度の導入を延期すべきではないかと考えますが、改めて総理の御所見をお伺いいたします。

 続いて、揮発油税についてお伺いをいたします。

 昨今、レギュラーガソリン小売価格の全国平均が、約十三年ぶりに一リットル当たり百七十円を超える状況になっております。ただでさえコロナ禍で家計が傷んでいる中で、この値上がりは大きな衝撃的打撃です。

 こうした事態を受けて、政府は、燃料油価格激変緩和措置を発動し、石油元売会社に対して補助金を支給することを決定いたしましたが、その額は僅か単価三・四円の支給であり、あくまで卸売価格の更なる高騰を抑制するための措置でしかないことから、家計負担の軽減という観点からは不十分な仕組みと言わざるを得ません。

 直接的に、かつ十分に家計の負担を軽減するならば、やはり揮発油税のトリガー条項を発動すべきと考えます。実際に小売価格の値下がりにつながるか分からない、僅か、僅か、僅か三・四円の補助金支給か、発動されれば確実に小売価格が約二十五円下がるトリガー条項の発動か、どちらが優れている政策かは自明の理でございます。

 岸田総理は、トリガー条項が発動された場合の買い控えやその反動による流通の混乱を理由に発動に否定的ですが、このまま値上がりが続いた場合、家計に与える影響は甚大なものとなりかねず、最大単価五円の元売補助金で十分な効果が得られるとは到底思えません。致命的なことになるかもしれません。

 我々は、税収の減少にも配慮し、トリガー条項の凍結を一時的に解除し発動すべきと考え、昨年十二月の臨時国会でそのための法案も提出しております。先日、萩生田経済産業大臣も、我々の主張に御共鳴いただいたのか、御理解いただいたのか、これまでの発言を改められて、トリガー条項について、有効的に使えるのならば、使うことは常に考えていくと御発言されました。

 あとは総理の御決断を待つのみとなっておると思いますが、現下の原油価格高騰を受けても、トリガー条項を発動するお考えはないのでしょうか。改めて総理の御見解をお伺いいたします。

 それでもなお、現行のトリガー条項の制度設計のままでは問題があり、あくまでも発動は認められないということであれば、制度設計の見直しも含めて、柔軟な対応が必要だと考えます。

 岸田総理は、予算委員会で、我が党の議員からトリガー条項の制度設計の見直しについて提案を受けた際に、これは、是非、経済産業省においても考えてもらいたいと御答弁されました。この答弁に基づいて経済産業省に何らかの検討を指示されたのか、あるいはこれから指示されるおつもりがあるのか、御予定があるのか、事実関係について、総理の明快な答弁を求めたいと思います。

 最後に、財源確保策についてお伺いいたします。

 この間、新型コロナウイルス感染症の拡大とその影響を受けて、日本だけではなく、世界各国で大規模な財政出動が行われてまいりました。それを受けて、欧米諸国では、財源確保のために、大企業や富裕層に対する増税等を検討あるいは実施する動きが見られております。

 しかし、今回の税制改正では、財源確保策について、明快な内容が全く示されませんでした。公債残高は令和三年度末で初めて一千兆円を超える見通しであり、財政状況がますます厳しくなることは明らかでございます。財源確保に向けた税制改正の議論が政府・与党内で低調だったことは、極めて問題と考えております。

 我々は、コロナ禍での国民生活を支える政策とともに、所得税の最高税率引上げ、金融所得の総合課税化、法人税への超過累進税率導入など、負担増をお願いする財源確保策も明確に主張してまいりました。

 岸田内閣では財政が軽んじられているような印象さえ見受けられます。今後の財源確保策として、具体的にどのような内容をお考えになっているのか、そしてそれをどのように実現しようとされているのか、是非、この場で総理自身の口からお答えいただきたいと思います。

 我々は、分配政策の本家として、この厳しい状況を乗り越えていくために、政府・与党に対し、そして何よりも国民の皆さん方に対し、あるべき税制の在り方について提案を続けてまいります。政府・与党の真摯な対応を心からお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 伴野豊議員にお答えいたします。

 賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを定量的に測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で二%程度の賃上げを達成しており、税制も寄与してきたものと考えております。

 民間企業の賃上げを支援するための環境整備として、今般、賃上げ税制について税額控除率を大胆に引き上げるなど、抜本的に拡充をいたします。

 加えて、公的価格の引上げ、補助金による中小企業の生産性向上のための支援、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員し、企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成していきます。

 経済界においても、経団連が示した春闘における基本スタンスの中で、新しい資本主義の起動にふさわしい賃金引上げが望まれると明記されており、私の発言について、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい三%を超える賃上げを期待したい、また、今回の春闘においては、低下する賃上げの水準を思い切って一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待すると引用されています。

 これを受け、経団連から各企業に対して、成長と分配の好循環実現への社会的な期待や、企業の賃金引上げの環境整備に向けた政府の支援策をも考慮に入れながら、企業として主体的な検討が望まれると明記し、呼びかけを行うなど、十分に政府側と問題意識を共有していただいていると理解しており、実効性が上がるものと期待しております。

 賃上げ税制の要件についてお尋ねがありました。

 賃上げ税制については、各企業の給与体系が多様になっており、それらを対象にする必要があること、また、企業の実務面も踏まえ、煩雑でない制度設計とする必要があること、基本給や賞与を含めた給与総額を対象とすることで、より多くの企業に賃上げを行っていただける制度設計とする必要があること、こうしたことから、賞与を含めた給与総額を対象として要件を設定しています。

 また、マルチステークホルダーへの配慮に関する要件については、資本金が十億円以上で従業員数が千人以上の企業を対象に、賃上げや人材投資を行うこと、取引先と適切な関係を構築することなどの方針の公表を求めるため、社会全体で実効性を持つことになると考えています。更に実効性を高める方策についても、制度設計の中で検討を進めてまいります。

 金融所得課税についてお尋ねがありました。

 金融所得に対する課税の在り方については、令和四年度の与党税制改正大綱において、高所得者層において所得税負担率が低下する状況を是正し、税負担の公平性を確保する観点から検討する必要がある、さらには、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的に検討を行うこととされているところであり、今後、見直しの時期あるいは方向性等も含めて、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えております。

 インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、その円滑な移行を図る観点から、軽減税率の実施から十年間の十分な経過措置を設けた上で、これまでも事業者への支援を行ってきたところです。さらに、令和三年度の補正予算においても、会計ソフト等のITツールに加え、パソコン等のハードウェアの導入も含めて補助するなど、できる限り円滑な移行に向けて、周知、広報も含めて必要な取組を進め、事業者の方々の不安に応えてまいりたいと考えています。

 トリガー条項の発動についてお尋ねがありました。

 トリガー条項については、これまでも申し上げているとおり、発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、国、地方の財政への多大な影響などの問題があることから、その凍結解除は適当でないと考えております。

 このため、今回の燃料価格高騰に対しては、政府として、激変緩和措置や、業界、業種ごとへの支援、地方自治体が独自に支援する際のしっかりとした財源支援、こういった様々な対策を重層的に用意しております。

 そして、御指摘の私の発言については、このような様々な対策を講じていく中で何が効果的なのかについて絶えず検討していくという政府の考え方を表明したものであります。

 今後の財源確保策についてお尋ねがありました。

 今、我が国は、新型コロナ危機に直面しています。まずは、経済の立て直しに向け、危機対応に全力を傾けたいと考えております。

 新型コロナ危機を乗り越えた上で、新しい資本主義の下、成長と分配の好循環を生み出し、社会課題を解決しながら、持続可能な経済成長を実現していく中で、税収の確保を図ってまいります。

 税収の確保については、社会経済の構造変化、あるいは税負担の公平性、そして成長と分配の好循環の実現など、様々な要素を勘案して考えていくべきであると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 吉田豊史君。

    〔吉田豊史君登壇〕

吉田豊史君 日本維新の会の吉田豊史です。

 五年前に初めてこの壇上に上がらせていただいた折に、国士無双の誓いを立てました。私自身、一層精進、努力してまいります。まさに、高い壇上からではございますけれども、議員諸兄の引き続きの御指導を心からお願い申し上げます。

 私は、党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 新型コロナウイルス感染症の大流行によって、日本社会は、三年近くの間、国民生活は強い自粛を強いられました。新しい生活様式という見方もありますが、全体としては、個人消費が低迷しており、相次ぐ蔓延防止等重点措置、そして緊急事態宣言に対し、飲食店やイベント等は、営業時間の時短、そして人数制限の実施についての協力を何度も何度も続けてまいりました。多くの国民の皆さんの協力に心から感謝申し上げなくてはいけないと改めて感じております。

 オミクロン株というこれまでにない感染力を持つ変異株の出現により、現在では連日七万人を超す新規陽性者を出している現状、都道府県がこれまで大変な努力を重ねて拡充してきた新型コロナ患者用の重症病床についての対応、新型コロナ自体は無症状あるいは軽症である感染者が持つ別の持病の治療のために占有される傾向が増加してきております。そして、元々対象としていた新型コロナの重症患者が発生したときには重症病床に入れなくなる可能性も出てまいりました。デルタ株までの流行にはなかった、新たなタイプの医療逼迫をもたらす状況を迎えようとしております。

 これまでは、新型コロナウイルス感染症の感染者に対しては、一般療養とは完全に隔離して治療をするという国の方針に従って対応を進めてきました。しかし、今は感染者が爆発的に増えており、患者の治療を新型コロナに対応する病院だけに任せておくような状況は既に超えております。これだけ感染力が高いオミクロン株から国民の皆さんの命と健康、そして日本社会を守り抜くためには、日本の医療機関全体が協力して対抗する体制に改めるべきではないでしょうか。そのためには、感染法上の位置づけを変更する必要があります。

 日本維新の会としては、現在新型コロナウイルス全体を感染法上の二類相当としている現状を見直し、オミクロン株に対しては五類又は五類相当とした上で、日本の医療全体が強い感染力を持つ新型コロナ感染症に当たるという体制づくりにすべきと考えております。一度決めたことを見直さないかたくなな対応ではなく、変異株の性質に合わせた細かく柔軟な対応への変更が必要です。このことを強く求めさせていただきます。

 質問に入ります。

 政府は、継続雇用者の給与総額を一定の割合以上増加させた企業に対し、対前年度増加額の最大三〇%を税額控除できる制度を定めようとしております。政府自身は賃上げ促進税制と呼んでいらっしゃいますが、賃上げが実現するのかどうかは大きな疑問があります。

 税制によって動かすことができる経済効果は、政府が考えるほど大きくはありません。日本経済は非常に大きく、経済のパイが成長、拡大する仕組みに沿って賃金が上がる仕組みを導入していかなければ、大きくかつ長続きする経済効果を手に入れることはできないと考えます。税制による対応は、やらないよりやった方が少しはましだという程度のものでしかありません。

 日本全体の賃金が上がるためにはどうすればよいか。働く人々が現在働いて給与を得ている以上に生産効率が高い分野に移動すること、労働力を大きな経済成長をもたらす可能性がある分野にシフトしやすくすることが必要だと考えます。そのためには、安心して新しい職業に就くことを促進すること、つまり労働市場の流動化が必要となります。

 控除を増やすことも効果があるかもしれません。しかし、小手先で、賃上げを実施した企業に対する税制を優遇するよりも、規制緩和を実施して、大きな経済成長をもたらす分野へ労働力をシフトさせることの方が、日本全体の賃金総額を引き上げることにつながるのではないでしょうか。

 日本維新の会は、昨年、税制改革、社会保障改革、成長戦略を一体となって行う日本大改革プランを発表いたしました。このうちの成長戦略としては、地方分権改革、労働市場改革などを中核としております。雇用に流動性を高めることと働く人たちが転職を決意するために必要なセーフティーネットをつくることが、経済が成長する環境をつくる上では欠かせないと考えているからです。今、日本社会は、これまでの路線に対する微調整を必要としているのではなく、大きな改革を必要としております。

 総理に質問いたします。

 政府は、昨年十二月に令和四年度の税制改正の大綱を公表いたしましたが、税制全体を抜本的に見直す内容は全く含まれていませんでした。税制全体の見直しを実施しないのでしょうか。

 また、賃金総額を増やした企業に対する税制控除を行うという小手先の税制改革のようなものではなく、より抜本的に雇用流動性を高めることで高い賃金分野の雇用者を増やし、経済成長を実現すべきと考えますが、回答を求めます。

 政府は、中小企業に対する賃上げのための税制として、雇用を守った場合に控除率の上乗せ要件を見直し、控除率を最大四〇%に引き上げた上で、制度を一年間延長するとしておられます。新型コロナによる経済への影響もある現状において、中小企業の賃上げの効果としてどれだけのことが期待されるかは大いに疑問です。

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって一番被害を受けたのは中小企業です。賃上げは経済問題としては重要ですけれども、中小企業が倒産する事態を引き起こすことになれば、かえって雇用の主体を失うことになります。何よりも、中小企業の皆さんには、コロナ禍においても企業を堅持し雇用を維持するということを是非とも進めていただきたいと考えています。

 日本維新の会は、これまで、新型コロナウイルス対策に関する提言を第一弾から第十弾まで政府に行ってまいりました。その中でも、中小企業を支える持続化給付金と家賃支援給付金などの拡充を何度も提案してまいりました。改めて、中小企業を維持することが日本経済の未来を支えることにつながる最重要項目であることを主張させていただいて、支援の拡充を政府に求めます。

 総理に質問いたします。

 現行制度である控除率最大二五%において、どれだけの賃上げ効果があったのでしょうか。お答えいただきたい。

 また、今回の改正によって、中小企業に多少の無理をさせることによって雇用が失われる事態を引き起こすおそれは考えていないのか、御回答をいただきたいと思います。

 政府は、新築住宅に対するZEH、ゼロ・エネルギー・ハウス水準省エネ住宅と省エネ基準適合住宅への控除額を引き上げること、そして、既存住宅については認定住宅に対する控除を引き上げることにより、省エネ性能の高い住宅への切替えを促進しようとしています。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現にかじを切った政府の施策として、このこと自体は好ましい方向であると考えております。

 しかし、住宅への投資というのは巨額であり、国民一人一人にとっては大きな決断を伴います。件数自体はそれほど多くない一方で、少子化、人口減少の影響により、住宅余りという状況が散見されています。控除の見直しだけで省エネ住宅への切替えが目に見えて促進するとは到底思えません。税制改正は進めるとしても、より大きな省エネへの取組が必要ではないでしょうか。

 総理に質問いたします。

 今回の住宅ローン控除の見直しにより、どれだけのカーボンニュートラルが進むことを期待なさっているのでしょうか。具体的にエネルギー消費量などに換算してお答えください。

 一月十八日に公表された日銀の経済・物価情勢の展望では、政策委員の中央値は、十月時点の経済見通しと比べた場合、二〇二二年度の実質GDPの対前年比成長率で〇・九%見通しを上げました。また、生鮮食品を除いた消費者物価指数も〇・二%見通しを上げております。両者とも今年となって上向きの状況であり、日銀の見通しは、コロナで抑制されていた社会経済からの回復を見通していると思われます。この見通しもプラスの度合いが増大するということです。

 これまで、長い間、消費が抑えられてきました。一定の我慢需要があることにより、外出や旅行などが増えて、消費は上向くことも考えられます。その流れに沿って経済促進を促すべきと考えますが、平成十年以降続く長いデフレが続いてきたことから考えて、それだけで済むとは到底思われません。日本経済が成長するためには、消費者物価指数が安定的に一定以上の値を維持する状況をつくり出すべきではないでしょうか。

 総理に質問いたします。

 新型肺炎がもたらしてきた経済への悪影響に対し、オミクロン株の更に先の変異株の出現を想定した上で、政府としてどのような手を打つことを考えていらっしゃるか、お答えいただきたい。

 より積極的に手を打ち、経済成長する流れをつくり出すために、一定期間、消費税率を五%に引き下げるべきと考えますが、改めて見解をお伺いします。

 日本は、新型コロナウイルス感染症に対する従来の政策を転換すべき時期を迎えております。特定の医療機関だけが新型コロナの患者を治療することでは、もはや対処はできません。流行しているウイルスの特性に合わせた柔軟な対応に変更が求められており、日本の医療機関が一丸となって、社会に蔓延するウイルスに対抗すべきときに至っております。今すぐ政策の転換を行うべきです。

 政府に対しては、改めて、全ての国民のために政治は何をしなければならないかということを考え、行動していくかを考えて、国難と言える状況を乗り切っていくということを主張させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田豊史議員の御質問にお答えいたします。

 令和四年度税制改正等についてお尋ねがありました。

 令和四年度税制改正大綱では、賃上げに係る税制措置の抜本的な強化などを盛り込んでおり、こうした改正と併せて、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員して賃上げを促進していくこととしております。

 同時に、人への投資を抜本的に強化し、三年間で四千億円規模の施策パッケージを創設し、民間ニーズを反映しつつ、成長分野への労働移動の円滑化、そして人材育成を強力に推進し、成長と分配の好循環につなげていきます。

 そして、税制体系全般の見直しについては、引き続き、経済社会の構造変化も踏まえつつ、考えてまいります。

 中小企業に対する賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを定量的に測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で中小企業においても二%程度の賃上げを達成してきており、税制も寄与してきたものだと考えております。

 また、中小企業の雇用が失われることがないよう、本税制は、全雇用者の給与等支給額の増加を要件としており、新規雇用を増やすことによる賃上げでも活用することを可能としております。

 その他、生産性向上や価格転嫁への支援等も通じて、中小企業が賃上げの原資をしっかり確保できるような環境を整備し、雇用を守りつつ、賃上げを後押ししてまいります。

 住宅の省エネ対策についてお尋ねがありました。

 来年度の税制改正における住宅ローン控除の見直しについては、省エネ性能等が高くなるほど控除限度額が大きくなる仕組みとし、年間最大五十万戸の高性能省エネ住宅の取得を推進することとしています。

 このような取組により一定の省エネ効果が期待されますが、二〇五〇年カーボンニュートラル、二〇三〇年度の温室効果ガス削減目標の達成に向けては、税による取組だけでなく、省エネ基準への適合義務化などを含め、税、予算、規制などの政策により総合的に取り組んでいく必要があると考えております。

 新型コロナの経済的な悪影響に対する対応についてお尋ねがありました。

 足下で再び新型コロナの感染が拡大する中、厳しい状況に直面する事業者の皆様や生活にお困りの方々をしっかりと支えていくことが重要です。

 現在、昨年末に成立した補正予算に盛り込んだ、事業復活支援金、雇用調整助成金などの事業者支援や、住民税非課税世帯等に対する現金給付、緊急小口資金等の特例貸付け等による生活支援、こうした手厚い支援を実行しているところであり、今後、新型コロナ対応に当たっても、新型コロナウイルス感染症対策予備費の活用を含め、支援に万全を期してまいります。

 また、消費税につきましては、社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えてはおりません。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 国民民主党・無所属クラブの岸本周平です。

 本法案につきまして、会派を代表して質問をいたします。(拍手)

 政府は、一月二十七日、ガソリン補助金制度を実施いたしましたが、現場のガソリンスタンドでは、値下げは一部に限定され、据え置き若しくは引き上げたスタンドすら見られ、大変混乱しています。さきの臨時国会で国民民主党と日本維新の会で法案を提出したトリガー条項の発動が今こそ必要であると考えますが、総理の御見解をお伺いします。

 これまでのコロナ対応の予算が全てワイズスペンディングと言えるかどうか、疑問です。トリガー条項の発動は、費用対効果の観点からも是非とも進めるべき課題、政策だと考えます。

 仮に、これまでのコロナ対応策が緊急避難的なものとして許容されるとしても、二〇二〇年度、二一年度の補正予算を加えた公債依存度は、それぞれ、七四%、四六%となります。歳出の五割から七割を借金に頼る財政は放漫財政と呼ばざるを得ません。

 二二年度当初予算における公債依存度は三四%です。コロナ禍以前の数年と同様の比率です。これは、放漫財政とは呼ばないまでも、明らかに積極財政に分類されます。

 安倍内閣、菅内閣と積極財政を続けながら、押しなべて低い経済成長率しか実現できないばかりか、潜在成長率はほぼゼロになっています。アベノミクスが目標とした二〇二〇年度の名目GDPは六百兆円でした。皆さん、覚えていますか。実績は五百三十六兆円にすぎませんでした。財政金融政策は、カンフル剤にはなっても、経済の構造を変える力はありません。

 しかしながら、私も含めて、このような状況に感覚が麻痺をし、与野党共に、財源の議論はほったらかしにして、歳出増加の議論のみをしています。それが可能になっているのは、家計や企業の民間部門が消費や投資をせずにひたすら貯蓄を増やし、その金融資産を担保にして日銀が国債を吸収することができているからであります。

 経済が成長しないため、金利が上がらず、本来機能すべき財政規律が働きません。このままでは、低成長で低金利の生ぬるい経済状況の下、まさに、MMT、現代貨幣理論のモデルとも言えるような事態が今後数年間は確実に続くと思われます。

 しかし、経済学の教えるところによれば、ただのランチはありません。民間の貯蓄が公的な債務を吸収できなくなるか、大きな経済イベントが起きれば、インフレになることは確実であります。MMTの学者は、インフレになりそうになれば、そのとき、増税するか歳出をカットすればよいと言いますが、それは現実的ではありません。

 一九九二年に土地バブル対策として導入された地価税は、議論が始まってから施行まで三年かかっています。当時の国会議員よりも私たちの方が優秀であるとは私には到底思えません。インフレは三年も待ってくれません。

 しかし、コロナ禍と戦っている今現在、私は、増税や歳出削減の議論をするべきと申し上げているわけではありません。根拠のない高い経済成長率を前提に、国民の誰もが信用しないプライマリーバランスの黒字化目標を掲げてお茶を濁すのではなくて、コロナ禍が収束した後には財政の健全化に向けた建設的な議論をすべきだと考えますが、総理の見解をお示しください。

 東日本大震災の後、巨額の復興予算が必要となりました。そのときの国会は、将来の世代にツケを回さないために、震災復興特別税を決めました。その結果、二年間の復興特別法人税に加え、一世代の二十五年間、二・一%の所得税の付加税を徴収し、住民税は、十年間、千円引き上げる形で徴収し、財源に充てることができています。

 今回のコロナ対策の財源として、イギリスは、二〇二三年からの法人税率引上げ、配当所得への増税、国民保険料の引上げを決定しています。ドイツ、フランスでは、コロナ対応予算の公債は二〇四二年までに償還することを決定しました。アメリカでも、今、議会で議論中のビルド・バック・ベター法案の財源について、法人税や富裕層への増税が検討されています。

 コロナ禍に対応するため、真に国民の命と暮らしを守るための歳出増加はやむを得ないと考えますが、そのための債務は特別に管理し、将来は震災復興特別税のような仕組みで、後代に負担を残さないようにすべきではないでしょうか。総理の御所見を伺います。

 次に、本法案の目玉政策である賃上げ税制について質問します。

 この三十年間で、アメリカの名目平均賃金は約二・四倍増加する中、日本は横ばいです。賃金を引き上げることは日本経済にとって喫緊の課題であり、我が党も、さきの衆議院総選挙では、給料が上がる経済を公約に掲げました。

 しかし、企業の生産性が向上しない限り、賃金は上がりません。政策のターゲットは企業の生産性向上であるべきです。減税があるからといって賃金を上げる企業などありません。これまでの制度でも、たまたま、生産性が上がり、賃金引上げができた企業がいわば御褒美として減税の恩典に浴しているだけで、政策誘導効果はありません。総理の御認識を伺います。

 百歩譲って政策効果を認めるとしても、国民の税金で給料を上げるぐらいであれば、直接、所得型の給付つき税額控除を実施した方が分かりやすいのではないでしょうか。

 その財源を、総理が自民党総裁選で主張された株式配当などへの金融所得課税に求めれば、所得再分配にも資することになり、格差是正が進みます。財源は、所得控除の整理縮減でも捻出できます。所得控除から税額控除に移行すれば、富裕層の負担を増やし、所得再分配効果が更に強化されます。総理の御見解を伺います。

 ディカプリオ主演のアメリカのコメディー映画、「ドント・ルック・アップ」という映画がはやっています。アメリカの分断を風刺する映画です。地球を破壊する巨大隕石をめぐって分断が生じ、大統領派は、隕石が近づいている事実を認めないよう、国民に、空を見上げるな、ドント・ルック・アップとキャンペーンします。ついに最終的には、隕石が地球に激突して、人類が滅亡する物語です。

 与野党を問わず、私も含め、同僚議員の皆様とともに、日本の財政問題の不都合な真実から目をそらさないよう努力すべきことを訴えて、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 岸本周平議員の御質問にお答えいたします。

 トリガー条項の発動についてお尋ねがありました。

 トリガー条項については、これまでも申し上げているとおり、発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、国、地方の財政への多大な影響などの問題があることから、その凍結解除は適当でないと考えております。

 このため、今回の燃料価格高騰に対しては、政府として、激変緩和措置や、業界、業種ごとへの支援、地方自治体が独自に支援する際のしっかりとした財源支援といった様々な対策を重層的に用意しています。

 また、ガソリンスタンド等の状況について御指摘がありましたが、経済産業省においては、毎週、全国約三万か所のガソリンスタンドへの全数調査を行うなど、しっかりと小売価格の動向をフォローアップいたしております。

 そういった様々な対策の中で何が効果的なのかについては、引き続き考えてまいります。

 財政健全化についてお尋ねがありました。

 現下の新型コロナ危機を乗り越えた上で、新しい資本主義の下、成長と分配の好循環を生み出し、社会課題を解決しながら、中長期試算でお示しした持続可能な経済成長を目指してまいります。

 経済あっての財政の考え方の下、経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでまいります。

 コロナ禍に対応するための歳出についてお尋ねがありました。

 後代に負担を残さないという問題意識は共有いたします。

 しかしながら、今、我が国は新型コロナの危機に直面しており、危機に対する必要な財政支出はちゅうちょなく行い、万全を期す必要があります。同時に、経済社会を変革し、包摂的で持続可能な経済をつくり上げていくための大きな転換点にあります。

 まずは、経済の立て直しに向け、危機対応に全力を傾けたいと考えております。経済あっての財政の考えの下、経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでまいります。

 賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 新しい資本主義の下、デジタル化、気候変動問題への対応等を成長分野として、民間の投資を促す成長戦略をしっかりと実行することで、生産性向上に全力で取り組んでまいります。

 そして、こうした成長戦略をしっかり進めた上で、賃上げ税制の拡充に加え、公的価格の引上げ、補助金による中小企業の生産性向上のための支援、そして中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員し、企業が賃上げをしようと思える雰囲気を醸成してまいりたいと考えます。

 そして、給付つき税額控除についてお尋ねがありました。

 給付つき税額控除については、所得や資産の正確な把握など、様々な課題があると考えております。

 金融所得に対する課税については、令和四年度の与党税制改正大綱を踏まえ、今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えております。

 また、所得控除の在り方については、これまでも、所得再分配の観点から、給与所得控除の上限の引下げや公的年金等控除の上限の設定などの見直しを行ってきたところであり、今後も、経済社会の構造変化等を踏まえ、総合的に検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、岸田総理に質問します。(拍手)

 まず、格差と貧困の拡大問題について伺います。

 総理は、新自由主義的な考え方が格差や貧困の拡大などの弊害を生んだと述べました。しかし、その原因については、世界経済の出来事やバブル崩壊のことをあたかも自然現象のようにしか語っていません。肝腎の日本における格差や貧困について、どう考えているのですか。答弁を求めます。

 この間の日本経済を見ると、二〇〇〇年度から二〇二〇年度にかけて、大企業の経常利益は約二倍に、利益剰余金、いわゆる内部留保は約三倍に、配当金に至っては約六倍に増えました。一方、同じ期間に、労働者への分配を示す労働分配率は低位水準を維持し、大企業の人件費はマイナス〇・四%と若干減りました。雇用者数は七百万人ほど増えたものの、そのほとんどが非正規雇用であります。これは、新しい資本主義実現会議に出された政府の資料に描かれた、今日の日本の姿であります。

 なぜ、大企業にたまった利益は分配されなかったのか。なぜ、好循環は生まれなかったのか。小泉構造改革、アベノミクスという新自由主義の政策が生み出した弊害がここに現れているのではありませんか。総理の見解を求めます。

 公平な分配が行われずに進行した貧困の実態は深刻です。

 コロナ禍で、多くの非正規労働者が企業の雇用調整として真っ先に職を失いました。その多くが女性労働者です。地元の福岡で、フードバンクに支援を求めに来たシングルマザーは、三歳の子供にお菓子すら買ってあげられないと涙を流しながら話していました。今、全国各地で取り組まれているフードバンクには、あふれるばかりの人が支援を求めてやってきています。分配を重視するというのであれば、真っ先に、今ある貧困の解決に力を注ぐべきではありませんか。

 初めて全国規模で行った内閣府の子供の生活状況調査の分析は、貧困が全国に広がっている実態を裏づけています。子育て世帯四世帯のうち一世帯が、生活は苦しい、大変苦しいと回答し、一人親世帯に限れば、五〇・二%が貧困ライン以下で、貧困世帯の約四割は、過去一年間で食料が買えなかった経験があると訴えています。この調査結果を受けてどのような対策を取るのか、お答えください。

 報告書によれば、多くの子育て世帯が生活の困窮を訴えているにもかかわらず、生活保護、生活困窮者の自立支援相談窓口、母子家庭等就業・自立支援センターを現在利用している人の割合は一%以下です。生活保護を始め公的支援制度があるにもかかわらず、活用されていません。なぜなのか。原因を解明し、早急に改善を図るべきです。総理の見解を求めます。

 税制は、社会保障と同様に、所得再分配機能の柱です。

 しかしながら、所得税の最高税率の引下げと消費税の導入により、過去三十年間で税による再分配機能は低下し、現在、改善効果はたった四・八%しかありません。OECD諸国の中でも最低レベルです。税の所得再分配機能を強化すべきではありませんか。

 総理は、自民党総裁選の際に、新自由主義の弊害の改善として、所得一億円の壁の打破を打ち出しました。金融所得優遇税制について、なぜ見直さないのですか。来年度の税制改正でやらなければ、いつやるのか。それとも、もうやらないのですか。答弁を求めます。

 政府の賃上げ促進税制は、中小企業の約六割を占める赤字企業には使えません。賃上げの財源の一部を法人税から控除する仕組みでは、体力のある企業とそうでない企業の格差拡大を促進するだけです。総理は、赤字企業で働く労働者の賃金は上がらなくてよいとのお考えですか。

 本制度について、政府は、安倍内閣からの八年間で減税額は二兆円に上ると言いますが、一体、どれだけの企業が賃上げ減税を受けているのでしょうか。私たちの試算では、大企業で約一五%、中堅企業で一二%、中小企業では三・五%にすぎません。この制度でどれだけの賃上げにつながったのですか。具体的にお答えください。

 日本全体の労働者の賃金を上げるためには、赤字の中小企業の賃上げも支援することが必要です。負担の重い社会保険料を軽減するなど、どのような企業でも活用できる制度に転換すべきではないですか。お答えください。

 最後に、消費税についてです。

 オミクロン株の感染大拡大で、飲食業を始め、あらゆる中小企業は経営に展望を失っています。加えて、物価上昇が経費負担を重くしています。生活必需品の相次ぐ値上げで、国民の生活も苦しくなっています。今こそ消費税減税を実行すべきです。消費税減税こそ、中小企業や国民生活を支援する有効な政策ではありませんか。答弁を求めます。

 来年十月施行の消費税の適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度の導入は、コロナ禍で苦しむ中小零細業者やフリーランスなど個人事業主に廃業、倒産をもたらしかねない重大問題です。総理は、インボイスの導入がそのような中小零細業者の経営を左右する事態となっていることを理解していますか。

 影響は免税業者にとどまりません。シルバー人材センターや、地元野菜を売る産直センターなどでも、多額の消費税負担が発生し、事業の継続が困難になります。どのくらい事業者に影響があるのか、法律の規定に従い、調査結果を示すべきです。

 インボイス制度の導入中止を強く要求するものです。

 以上、総理の真摯な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 格差や貧困を含む新自由主義の弊害についてお尋ねがありました。

 一九八〇年代以降、新自由主義的な考え方が世界的に主流となり、世界経済の成長の原動力となりましたが、一方で、市場に依存し過ぎたことで公平な分配が行われず、中間層の所得が減少し、格差や貧困が拡大するなどの弊害も明らかになりました。

 我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレにより、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷し、デフレが加速をし、企業に賃上げを行う余力が生まれにくい悪循環であったと承知をしています。その後、アベノミクスにより二%程度の賃上げを実現したものの、コロナ禍の影響もあり、近年、賃上げ率が再び低下傾向となっています。

 その結果、我が国の人的投資の対GDP比や設備投資の伸び、また可処分所得の伸びは、主要先進国に対して劣後してきました。

 新型コロナ危機を乗り越えた上で、岸田政権では、新しい資本主義の下、市場や競争に全てを任せるのではなく、官と民が協働して、成長と分配の好循環を生み出してまいりたいと考えています。

 その中で、デジタル化への対応などの社会課題を投資分野として、成長を実現するとともに、賃上げ等の分配を次の成長につなげることで、格差や貧困を含めた社会課題を解決しながら、持続可能な経済社会を実現してまいります。

 コロナ禍での貧困についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響でお困りの方々の暮らしを支えるため、住民税非課税世帯に対する十万円の給付、生活困窮者自立支援金の再支給による最大六十万円の給付、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援など、重層的な支援を講じています。

 また、御指摘の調査は、一人親世帯などがコロナ禍で一層多くの困難に直面していることを改めて示していると考えます。こうした状況も踏まえ、低所得の子育て世帯への臨時給付金の支給や地域子供の未来応援交付金など、地方自治体のNPO等を活用した居場所づくりを支援するなどの施策を実施してきました。

 加えて、支援を必要とする方に支援がしっかりと行き届くよう、生活保護を始めとした公的支援制度の周知、相談に丁寧に取り組んでまいります。

 所得再分配機能についてお尋ねがありました。

 税制については、再分配機能の回復を図る観点から、所得税の最高税率の引上げなど、これまで、時々の経済社会の変化を踏まえながら累次の改正を行ってきたところであり、今後も、成長と分配の好循環の実現に向け、総合的に検討をしてまいります。

 金融所得課税についてお尋ねがありました。

 金融所得に対する課税の在り方については、令和四年度の与党税制改正大綱において、高所得者層において所得税負担率が低下する状況を是正し、税負担の公平性を確保する観点から検討する必要がある、一般投資家が投資しやすい環境を損ねないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的に検討を行うこととしているところであり、今後、見直しの時期や方向性も含めて、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えております。

 賃上げ税制についてお尋ねがありました。

 御質問にある御党の賃上げ税制を活用した企業の割合の試算については、承知をしておらず、コメントは控えますが、賃上げは、税制のみならず、企業収益や雇用情勢等に影響を受けるものであり、税制の効果だけを定量的に測ることは難しいものの、アベノミクスの取組の中で二%程度の賃上げを達成しており、賃上げ税制も、令和二年度で約十万件活用いただくなど、賃上げに寄与してきたものと考えております。

 また、事業再構築補助金など各種企業向け補助金における、賃上げを行う企業への優先的な取扱い、年間四兆円を超える、公共事業やビルメンテナンスなどの委託事業、ITなどの公共調達における、賃上げに積極的な企業の優遇、こうしたことにより、赤字であっても生産性向上に取り組み、賃上げにつなげていく企業を支援してまいりたいと思います。

 支え合いで成り立つ我が国の社会保障において、社会保険料の事業主負担分を単に軽減するだけでは、持続的な賃上げ、そして持続的な社会保障にはつながりません。むしろ、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支え合う持続的な社会保障制度を構築することにより、現役世代の保険料の負担増の抑制を目指してまいりたいと考えます。

 中小企業や国民生活への支援と消費税率の引下げについてお尋ねがありました。

 新型コロナ対策として、新型コロナの影響を受ける中小企業やお困りの方々に重層的な支援を行うとともに、足下の物価上昇に対しては、原油価格高騰対策や価格転嫁円滑化のための施策パッケージ等を着実に実行し、経済と生活を下支えしてまいります。

 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を行うために必要なものであり、円滑な移行を図る観点から、十年の十分な経過措置を設けているところです。

 その上で、事業者の準備状況や同制度への移行による事業者取引への影響について調査をし公表するとともに、事業者への支援など、環境整備に向けて必要な対応を進めているところであり、できる限り円滑な移行に向けて、周知、広報も含めて必要な取組を進め、事業者の方々の不安に応えてまいりたいと考えます。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       経済産業大臣  萩生田光一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       財務副大臣   岡本 三成君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.