衆議院

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第7号 令和4年3月1日(火曜日)

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令和四年三月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

  令和四年三月一日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案(山口俊一君外十二名提出)

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

山田賢司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 山口俊一君外十二名提出、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

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 ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案(山口俊一君外十二名提出)

議長(細田博之君) ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。山口俊一君。

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 ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 私は、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、有志の会を代表いたしまして、ただいま議題となりましたロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。(拍手)

 案文の朗読をもちまして趣旨の説明に代えさせていただきます。

    ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議案

  ウクライナをめぐる情勢については、昨年末以来、国境付近におけるロシア軍増強が続く中、我が国を含む国際社会が、緊張の緩和と事態の打開に向けて、懸命な外交努力を重ねてきた。

  しかし、二月二十一日、プーチン・ロシア大統領は、ウクライナの一部である、自称「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」を承認する大統領令に署名し、同二十二日、ロシアは、両「共和国」との間での「友好協力相互支援協定」を批准した。そして、同二十四日、ロシアは、ウクライナへの侵略を開始した。

  このようなロシアの行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反である。

  力による一方的な現状変更は断じて認められない。この事態は、欧州にとどまらず、日本が位置するアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態である。

  本院は、ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する。そして、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める。

  本院は、改めてウクライナ及びウクライナ国民と共にあることを表明する。

  政府においては、本院の意を体し、ウクライナに在住する邦人の安全確保に全力を尽くすとともに、国際社会とも連携し、制裁を含め、事態に迅速かつ厳格な対応を行い、あらゆる外交資源を駆使して、ウクライナの平和を取り戻すことを強く要請する。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。(拍手)

 この際、外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) ロシアによるウクライナへの侵略は、東アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす極めて深刻な事態です。力による一方的な現状変更は断じて認められず、日本政府は、ロシアを最も強い言葉で非難し、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求めます。

 今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、結束して毅然と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく、断固として行動してまいります。

 ただいまの御決議の趣旨も踏まえ、政府として、引き続き、可能な限りの在留邦人の安全確保に努めるとともに、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、強い制裁措置の速やかな実施を含め、適切に対応してまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、我が国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費を日本側が負担し、我が国に駐留する合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、米国政府と協議しつつ検討を行ってきました。その結果、本年一月七日に東京において、私と駐日米国臨時代理大使との間で、この協定に署名を行いました。

 この協定は、我が国が、我が国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与及び手当の支払い並びに合衆国軍隊等が公用のため調達する電気等の料金又は代金の支払いに要する経費の全部又は一部を負担することを規定しています。

 また、我が国が、施設及び区域に設置される訓練能力に関する資機材及び関連する役務を米国政府が調達するための経費、並びに、我が国政府の要請に基づき米国が合衆国軍隊の行う訓練を他の施設及び区域又は米国の施政の下にある領域若しくは米国の領域に変更する場合にはその変更に伴って追加的に必要となる経費に係る費用の支払いに要する経費の全部又は一部を負担することを規定しています。

 この協定は、二〇二七年三月三十一日まで効力を有することを規定しています。現行の協定が本年三月三十一日まで効力を有することとなっておりますので、この協定は、本年四月一日に発効させる必要があります。

 この協定の締結は、日米安全保障条約の目的達成のため我が国に駐留する合衆国軍隊の効果的な活動を確保するためのものであり、ひいては日米関係全般並びに我が国を含むインド太平洋地域の平和及び安定に重要な意義を有するものであると考えます。

 以上が、この協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。徳永久志君。

    〔徳永久志君登壇〕

徳永久志君 立憲民主党・無所属の徳永久志です。(拍手)

 先ほど、本院において、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議が採択されました。

 また、二月二十七日に開催された立憲民主党二〇二二年定期大会におきまして、「立憲民主党は、日本国憲法が掲げる平和主義のもと、国際社会の恒久平和を世界に訴えつつ、ウクライナの主権、一体性、独立を支持することを改めて表明し、日本政府が経済制裁や人道支援において、G7をはじめとする国際社会と一致した措置をとることを支持する。重ねて、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊を撤収するよう強く求める。」とする、ロシアによるウクライナ侵略を強く非難する決議を行いました。

 これらの決議が、愛する人と祖国を、自由と民主主義を守るために戦っているウクライナの人々を勇気づけ、また、ロシアにこの暴挙をやめさせる契機となることを切に願うものです。

 政府がG7を始めとする国際社会と一致した制裁措置を取ることを支持するものですが、一方で気になる点がございます。

 二〇一六年五月の日ロ首脳会談において、対ロシア経済協力として八項目の協力プランの実施が合意され、今日まで続けられてきました。そして、先日、本院で可決されました令和四年度予算案にも予算が計上されています。

 よもや、この状況下において協力プランを粛々と実施されることはないものと推察いたしますが、お考えをお聞かせください。

 それでは、会派を代表して、議題であります在日米軍駐留経費負担に係る特別協定について質問いたします。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増してきています。我が国周辺には質量共に強大な軍事力を有する国家が存在し、軍事力の更なる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっています。

 そうした中、日米安全保障体制に基づく日米同盟が我が国の防衛や地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることや、在日米軍が緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢が平時からしっかりと取られていることが不可欠です。

 このため、我が国は日米安保条約に基づいて米軍の駐留を認めており、在日米軍の駐留は日米安保体制の中核的要素となっています。

 したがいまして、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を十分に確保するためにも、在日米軍の駐留経費を負担することは一定の理解をするものであります。

 しかしながら、アメリカの言いなりで何でもかんでも負担するわけにはいかないことは当然です。国民の多数が日米同盟を支持しているからこそ、その負担の在り方に国民の理解と納得が必要であることは言うまでもありません。

 そうした観点に立ち、以下、質問してまいります。

 日米安保条約は、第五条でアメリカの日本防衛義務を規定する一方で、第六条で日本の施設・区域の使用をアメリカに認めています。日米両国の義務は同一ではないものの、日米双方の義務のバランスは取られています。

 つまり、アメリカの日本防衛義務に対し、日本はアメリカ防衛義務は負わない代わりに領土の一部の使用を認めるという、非対称型の双務的条約だと私は理解しています。

 しかしながら、日本がアメリカの防衛義務を負わないことを強調し過ぎ、そして、引け目を感じ、少々の無理は受け入れないといけない、アメリカが言うのだから仕方がないという心理が働いているのではないかと危惧しています。

 繰り返しますが、日米安保条約は双務的条約である以上、何ら引け目を感じることなく、過度に忖度することなく、主権国家として堂々と自らの主張を展開していくべきであり、間違っても、アメリカの言い分を唯々諾々と受け入れる交渉であってはなりません。

 そこで、まずは、今回の本特別協定について、アメリカとどのような姿勢で交渉に臨まれたのか、安保条約の解釈を踏まえ、お伺いをいたします。

 政府は、在日米軍駐留経費についての日本の負担水準は、日本を取り巻く安全保障環境など様々な要素をアメリカ側と協議し、適切な有効期間を設定した後、日本として主体的に適切な水準を判断して決定すると説明してきました。

 しかしながら、アメリカの基地を設置する諸外国と比較して、日本の負担割合は余りにも突出しています。

 この場で何度も引用されていますが、二〇〇四年のアメリカ国防総省の発表によりますと、日本の負担率は七四・五%であるのに対し、クウェートは五八・〇%、スペインは五七・九%、トルコは五四・二%、イタリアは四一・〇%、韓国は四〇・〇%、ドイツは三二・六%、イギリスは二七・一%となっています。また、二〇一五年の防衛省の試算でも、日本の負担割合は八六%にも達しています。

 もちろん、それぞれの国を取り巻く安全保障環境や米軍の駐留目的などが異なってくるため、単純に比較はできないことは十分に承知しています。しかし、国の防衛を一〇〇%アメリカに依存しているのならまだしも、日本は、自衛隊という世界有数の実力組織を有しているのです。

 そして、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの策定や安保法制の施行により、アメリカ艦艇の防護など自衛隊の任務や活動が広がり、防衛装備品の購入も積み増しています。日本が分担する役割というものが増大してきているのです。

 アメリカにとっても、前方展開の重要な拠点である日本の適正な負担水準は、同盟の全体像の中で議論すべき重要なテーマだと考えます。

 本特別協定の交渉に当たり、適正な負担水準についてどのように考えておられたのか、今回の負担率はどれほどになるのかも併せてお示しください。

 さて、今回の特別協定によって、二〇二二年度から五年間の在日米軍駐留経費の日本の負担は、総額で一兆五百五十一億円となっています。単年度当たりでは二千百十億円となり、前回合意した二〇一六年度から二〇年度に比べ、約百五十億円の増額となっています。

 中身を見て目を引いたのが、負担への批判が強い光熱水費が減額となっていることです。二〇二二年度二百三十四億円から段階的に減らしていき、二五、二六年度は百三十三億円に抑えていくとしています。これで、日本の負担割合は、現行の六一%が三五%に引き下げられることになります。政府の粘り強い交渉の成果の一つであり、評価したいと思います。

 もう一つ、別の意味で目を引いたことは、訓練資機材調達費というものが新たな費目として二十六年ぶりに設けられたことであります。

 これは、仮想空間で日米が共同訓練を行うための最新システムを導入するもので、人工知能、AIがつくる仮想敵と戦闘訓練を行ったり、アメリカ本土で実際に行われる戦闘機飛行訓練に自衛隊がシミュレーターを通じて参加できるとし、五年間で最大二百億円が計上されています。

 こうしたシステムを導入すること自体は、米軍のみならず自衛隊の能力向上にも役立つものであると理解はいたします。しかし、なぜ特別協定による負担に組み込まないといけないのか、疑問でなりません。

 そもそも、日米地位協定二十四条には、米軍を維持するための全ての経費は米国が負担するとあり、アメリカの全額負担が原則です。しかし、日米両国の社会経済情勢の変化などにより、思いやり予算の名目で日本の負担が始まりました。

 当時、政府は、特例、暫定的な一時的措置と説明し、労務費の負担を皮切りに、施設整備費、光熱水費、訓練移転費と、その特例措置は拡大してきました。労務費、施設整備費、光熱水費、訓練移転費、ここまでは何とか駐留経費として理解できます。しかし、訓練資機材調達費を加えることは、かなりの無理筋だと言わざるを得ません。

 日米が共同で使用する訓練システムならば、日米両国で費用を分担し合うというのが筋ではないでしょうか。アメリカは国防総省の、日本は防衛省の本予算で堂々と計上すべきではないでしょうか。そもそも、この費目の日米の負担割合はどうなのか、使用頻度はどのくらい見込むのかも併せて、防衛大臣の見解を伺います。

 さらに、この訓練資機材調達費の中身として、LVCシステム、サイバー実践訓練装置、戦闘射撃訓練用標的装置となっていますが、次の改定の際に、新たな状況に対応するための新たな訓練の充実などを理由に増額を求められる可能性は否定できません。

 また、訓練に伴う資機材の調達は、アメリカの意向次第で変わってきます。訓練の回数などが増えれば、その分、費用が膨らむ可能性が出てきます。光熱水費には上限がおのずとありますが、資機材の調達には上限がありません。

 つまり、歯止めがかからなくなるのではないか、際限がなく青天井となるのではないかと危惧するものですが、どのように考えておられるのでしょうか。

 さて、この在日米軍駐留経費は、思いやり予算と言われ続けてきました。そして、二〇一一年、民主党政権時には、ホスト・ネーション・サポートと呼ぼうと呼びかけました。そして、今回は同盟強靱化予算とするのだそうです。

 先ほどの訓練資機材調達費は、駐留経費負担という名称では組み込めないので、あえて同盟強靱化という言葉をひねり出し、思いやり予算の通称に伴う米軍への過剰な配慮との批判を避けたいとの思惑があると見るのは邪推というものでしょうか。

 政府は、これまで、国会での答弁において、特別協定の性格について、一時的、暫定的、限定的な特別措置であると説明してきました。それがゆえに、その期間は、五年、三年、あるいは二年というように、一定の期間で終了することになっているとも説明してきました。

 そうなると、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定を同盟強靱化予算というとなると、アメリカとの同盟関係の強靱化を図ることは、一時的で、暫定的で、限定的な特別措置で、一定の期間をもって終了するということになってしまいます。

 アメリカとの同盟関係を強化していくことに何ら異論はありません。同盟強靱化予算を五年ごとに交渉して改定することそのものが、かえって同盟が不安定なものに映ってしまうのではと感じますし、同盟の強靱化の度合いが負担額の多寡で左右される、もろい関係に聞こえてしまいます。

 つまり、同盟関係の強化を図ることは不断に行うべきであり、特別協定による一時的、暫定的、限定的な特別措置であってはならないのです。ですから、同盟強化に当たる予算は、堂々と本予算に計上するのが本筋だと考えます。あるいは、日米地位協定を改定して、堂々と同盟強靱化をうたい上げることも考えられると存じますが、御見解を伺います。

 最後に取り上げなくてはならないことは、在日米軍基地で新型コロナウイルスのクラスターが発生したことです。基地を由来として、市中感染の拡大につながったとする見方もあります。

 この件では、昨年九月から三か月以上、日本側に連絡することなしに入国前の検査を取りやめていたことが判明しており、ずさんな対応の背景として、日本の国内法の適用が幅広く免除される日米地位協定の問題が可視化されることとなりました。

 日本は検疫や感染症対策は米軍に任せっ切りなのに対し、米軍が駐留する他国では、国内法の適用を明記し、受入れ国側に幅広い関与を認めています。

 ここはやはり、今回のコロナの件を機に、地位協定の改定に着手すべきだと考えます。政府は、地位協定の改定ではなく、運用改善に努めると言いますが、それでは政府に白紙委任せよと述べるに等しいことになります。

 本来、条約は、国会の承認を得た後も、外交の民主的統制の下で、その運用等が厳格にチェックされるべきものであります。改めて、地位協定の改定に着手すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 在日米軍のプレゼンスは重要です。しかし、米軍基地が住民の安全を脅かすことがあってはならないことは言うまでもありません。政府は、アメリカに対し主張すべきは主張し、その法的枠組みを整備することなしに駐留経費の負担に対する国民の理解は得られないと申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 徳永議員から、八項目の協力プランについてお尋ねがありました。

 国際社会は、ロシアの侵略により、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと考えており、我が国としましても、ロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはないと考えております。

 他方、今回の事態を受けまして、関係する日本企業には様々な影響が及ぶこととなることから、その対応など、検討すべき事項が残されており、萩生田大臣と協力しつつ、適切に取り組んでいきたいと思います。

 在日米軍駐留経費負担に係る特別協定に関する交渉姿勢と安保条約の解釈についてお尋ねがありました。

 日米安保条約は、第五条において、我が国への武力攻撃に対して日米が共同で対処することを定め、第六条において、米国に対し、我が国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために我が国の施設・区域を使用することを認めています。

 日米両国の義務は同一ではないものの、全体として見れば日米双方の義務のバランスは取られており、片務的ではありません。また、在日米軍の施設・区域は、極東のみならず地域への米軍の前方展開を支え、インド太平洋地域全体における米国の利益の確保に大きく貢献しており、米国も日米安保体制から極めて大きな恩恵を享受していると認識しています。

 本特別協定は、かかる認識の下、政府として、厳しい財政状況を踏まえつつ、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力をより一層効果的に強化していくことが必要であるとの認識の下、主張すべきは主張しつつ、協議を重ね、今回、合意に至ったものでございます。

 次に、日本の適正な負担水準及び負担率についてお尋ねがありました。

 我が国の適切な負担規模を考えるに当たっては、日米の負担割合を論じる前に、まずは、我が国の平和と安全を確保する上で、日米でいかなる役割、任務の分担を行っていくか、また、その下で我が国の負担規模が適切か否かを考えることが重要です。

 また、在日米軍駐留経費の米側負担額及び日米の負担割合については、米軍の駐留に伴い必要となる経費の範囲について様々な捉え方があることから、一概に算定し得るものではありません。

 そのような発想に立って、我が国の負担規模については、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力を強化する同盟強靱化予算が引き続き重要である点を踏まえ、我が国の厳しい財政状況や我が国を取り巻く安全保障環境等の各種要素を総合的に考慮し、主体的に判断したものです。

 次に、訓練資機材調達費の負担上限についてお尋ねがありました。

 日本側が負担する経費については、協定上、日本国政府が、相互に適当と判断する経費を負担するとの通告を米国政府に対して行う場合に限る旨、規定しています。したがって、日本側の意に反して経費の負担を強いられることはありません。

 加えて、本特別協定期間の五年間で最大二百億円を負担することとしたものですが、これは概算要求のための全ての必要な手続を完了することを条件とした額であることについて日米間で一致しており、日本が際限なく負担することになるとの御指摘は当たりません。

 次に、同盟強靱化予算に関するお尋ねがありました。

 これまでは、在日米軍の駐留を支援することに重きを置いた経費負担でしたが、今回の合意により、本件経費を用いて日米同盟を一層強化する基盤を構築することで一致いたしました。これを踏まえ、今回の合意に基づく在日米軍駐留経費負担の性質を端的に示すものとして、その通称を同盟強靱化予算とすることとしました。

 この際、日米両国を取り巻く諸情勢を総合的に勘案し、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつ、あくまでも暫定的、限定的、特例的な措置として、期間を五年間とする地位協定の特則である特別協定を締結することが適当との判断を改めて行ったものであります。政府としては、現時点において、これ以外の措置を取ることは検討しておらず、地位協定第二十四条に定める経費負担の原則それ自体を変更することは考えておりません。

 このような枠組みの下で、今後とも、国民の理解を得られるよう、我が国の厳しい財政状況や我が国を取り巻く安全保障環境等の各種要素の推移に応じて、日本側の適切な負担の在り方について不断に検討してまいります。

 最後に、在日米軍の新型コロナ感染及び日米地位協定についてお尋ねがありました。

 在日米軍の新型コロナ感染については、日米地位協定や関連の日米合同委員会合意を踏まえ、現地の保健当局間を含め、米側からの緊密な協力を得ながらやり取りを行って対応してきているところであり、政府として、日米協定を見直す必要はないものと考えております。

 日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府としては、事案に応じて、効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきています。引き続き、政府としては、新たに日米合同委員会の下に設立された検疫・保健分科委員会も活用しつつ、感染防止対策の徹底及び地元の方々の不安解消に向けて、日米間での連携をより一層強化していきます。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 徳永久志議員にお答えいたします。

 訓練資機材調達費についてのお尋ねがありました。

 訓練資機材調達費については、在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力をより一層効果的に強化することが必要との認識の下で交渉を行った結果、五年間で最大二百億円を負担することを合意したものであり、日米の負担割合を決める形式とはしていません。

 この経費により米側が調達する訓練資機材を自衛隊も適切な形で活用できるように、引き続き、日米間で議論してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 吉田宣弘君。

    〔吉田宣弘君登壇〕

吉田宣弘君 公明党の吉田宣弘です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました在日米軍駐留経費負担に係る特別協定について質問いたします。(拍手)

 公明党は、結党以来、世界平和のために勇敢に前進することを誓い、地球益、人類益の立場に立ち、今世紀内に平和と人道と連帯の世界を構築すべく取り組んでまいりました。

 この公明党の平和への取組は、現実離れした理想主義ではありません。常に、時の状況変化に応じ、地に足の着いたものであります。

 例えば、一九九二年に制定されたPKO法案。この法案審議においては、日本だけが平和ならよいとする一国平和主義から脱却し、日本の自衛隊が国際貢献を推進することと併せて、PKO部隊が戦いに巻き込まれないように厳格な参加五原則を導入することによって国民の不安を取り除いた点において大きな役割を果たしたと自負しております。

 また、近年では、二〇一五年に成立した平和安全法制。日本を取り巻く厳しい安全保障環境に対応するため、日米同盟の信頼性と抑止力を高めたこの法案、戦争に巻き込まれるリスクを回避するために武力行使における新三要件を提唱し、隙のない国防への備えと平和維持を目的とした戦争回避の両立を実現することにも尽力いたしました。

 しかし、国際社会の状況は、常に変化、変化の連続です。今国会の開会日に、林外務大臣は、その外交演説の中で、国際社会のパワーバランスの変化が加速化、複雑化し、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさと不確実性を増していますと述べられました。ウクライナ情勢など国際社会の現実を直視したときに、確かにそのとおりであると認識せざるを得ないと感じます。とするならば、日本の外交政策も、そのような厳しさや不確実性に的確に対応していかなければならないことは言うまでもありません。

 その上で、やはり重要なことは、日本の外交、安全保障の基軸である日米同盟の強化です。基軸である以上、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す現実が存在するのであれば、そのような状況に的確に対応すべく、日米同盟の抑止力、対処力が強化されなければなりません。

 以上を前提に、以下、質問に入らせていただきます。

 まず、本特別協定は、日米地位協定においてアメリカ側に負担義務がある経費の一部について、一九八七年、昭和六十二年以降、日本が負担することを特則として定めたものであると承知をしております。

 そこで、まず、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定が日米地位協定の特則として締結された経緯とその意義について、改めて確認させていただきたく存じます。林外務大臣の答弁を求めます。

 次に、本特別協定は、一九九一年から数えて、これまで過去八回、そして今般の改定で九回目の改定となります。

 これらの改定においては、前回の改定の負担枠組みを維持する形での改定と、その負担の範囲が変化する形での改定が行われております。前回の負担枠組みが維持された改定としては、二〇〇一年、二〇〇六年、二〇〇八年、二〇一六年、二〇二一年のそれぞれの改定が挙げられます。これに対し、一九九一年には労務費の内容変更と光熱水料等の追加、一九九六年と二〇一一年の改定においては訓練移転費の内容が変化する改定が行われております。それぞれの改定は、国際社会の変化による日米関係の状況変化に応じた改定であると承知をしております。

 今般の改定においては、前回の改定と光熱水料等に変化があります。具体的には、日本側の負担として、現在の六一%から三五%に相当する金額への段階的削減が合意されたとお聞きしております。そこで、この削減の経緯について、外務省の取組と併せて、林外務大臣の答弁を求めます。

 次に、これまでの特別協定には含まれていなかった項目として、訓練資機材調達費が含まれております。

 これは、在日米軍の即応性のみならず、自衛隊と米軍の相互運用性の向上にも資するものとして、新たに負担するものであるとお聞きをしております。

 そこで、自衛隊と米軍の相互運用性の向上は、日米同盟の強化、特にその対処力の強化において非常に重要であると思われますが、今般の改定においてこの訓練資機材調達費が項目として追加された経緯とその意義について、林外務大臣の答弁を求めます。

 次に、この訓練資機材の調達に関する経費は五年間で最大二百億円になるとお聞きをしております。

 この五年間で見込まれる経費を用いることで自衛隊と米軍の相互運用性がどのように向上するのか、また、どのような訓練資機材の調達を想定しているのかについて併せて、岸防衛大臣の答弁を求めます。

 次に、提供施設整備費について質問いたします。

 提供施設整備費については、一九七九年以来、日米地位協定に基づき、地位協定の範囲内で負担されていると承知をしております。その後、二〇一一年から、特別協定の改定の機会に提供施設整備費の水準の目安が定められているとお聞きをいたしました。また、二〇一六年の改定においても、同様の目安が定められております。

 そこで、日米地位協定の範囲内で負担している提供施設整備費の水準が特別協定の交渉に際して定められている理由について、林外務大臣の答弁を求めます。

 次に、二〇一六年の改定時には、この提供施設整備費は、その額が毎年度二百六億円を下らないことが取り決められたとお聞きをしております。

 これに対して、今般の改定においては、五年間で最大一千六百四十一億円を負担するとお聞きいたしました。二百六億円の五年分より多い額となっています。この点、外務省の説明によると、日本側が特別協定に基づいて負担する経費に加え、日米地位協定の範囲内で負担している提供施設整備費も併せてアメリカ側と交渉が行われ、在日米軍の即応性、抗堪性強化に資する事業を重点的に負担することが取り決められたとのことでございます。

 日米同盟の強化の必要性の観点からは、在日米軍の即応性、抗堪性が強化されることは望ましいことではありますが、特に、これまで取り決められていた負担の目安より額が増加していることからすれば、今般の特別協定の改定で具体的にどのように在日米軍の即応性、抗堪性が強化されるのかについての説明が必要になってくると存じます。林外務大臣の答弁を求めます。

 次に、ロシアのウクライナ侵略について質問いたします。

 ロシアのウクライナへの侵略は、国際法上許されないことは言うまでもありません。他国の特定地域を一方的に独立国家として承認することも許されません。何より、ロシアも当事者であるミンスク合意を破棄する行動に出たことに至っては言語道断であります。これに加え、国際社会の平和的解決への外交努力を無視してウクライナの複数の場所を攻撃する暴挙により、民間人に多くの犠牲者まで出しております。軍事力を行使し、力による現状変更は断じて許されるものではありません。

 G7首脳会談を通じ、情報収集に努め、まずは、ウクライナ国内の邦人及びその家族の安全確保に万全を期していただきたく存じます。外務省の取組について、林外務大臣の答弁を求めます。

 その上で、国際社会と連携し、結束してルールを示し、ルールに反する行為は制裁を受けることを明確に示し切っていかなければなりません。ロシアのウクライナ侵略に限らず、国際社会で力を使った国が優位になり、国際法が意味をなさないものになってはならないことを、日本を含む国際社会の結束によって示す必要があります。日本にはその主体的役割を果たしてほしいと存じますが、林外務大臣の答弁を求めます。

 最後に、平和は全人類共通の究極の価値であり、これから未来永劫変わることがない永遠の価値であります。この価値を全世界が享受できるそのときまで、言葉上は矛盾をしているかもしれませんが、戦いであると思います。公明党は、全世界に平和がもたらされるために、これまでも、これからも全力で戦い抜くこと、このことをお誓い申し上げ、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 吉田議員から、在日米軍駐留経費負担に係る特別協定に関する経緯と意義についてお尋ねがありました。

 我が国は、昭和六十二年度以降、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を確保するため、その時々の日米両国を取り巻く諸情勢に鑑み、日米協定により米側に負担義務がある経費の一部について、同協定の特則である特別協定を締結して負担をしてきております。

 インド太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟及び在日米軍は、我が国の防衛のみならず、インド太平洋地域の平和と安定のためにはなくてはならない存在です。その中で、在日米軍駐留経費負担、すなわち同盟強靱化予算は、在日米軍の円滑かつ効果的な活動、米軍の地域への前方展開を確保する上で重要な役割を果たしてきております。

 次に、光熱水料等と訓練資機材調達費の交渉経緯等についてお尋ねがありました。

 政府としては、厳しい財政状況を踏まえつつ、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力をより一層効果的に強化していくことが必要であるとの認識の下、主張すべきは主張しつつ、協議を重ねました。

 その結果、日米同盟の抑止力、対処力強化への貢献が直接的には見えにくい光熱水料等については、大幅に削減することで日米間で意見の一致を見ました。具体的には、本特別協定期間中、日本側の負担額を二百三十四億円から百三十三億円に段階的に削減することとし、これは、平成二十九年度から令和元年度の実績を基にすれば、約六一%から約三五%への削減に当たります。

 また、新たに訓練資機材調達費の項目を設け、在日米軍のみならず自衛隊の即応性及び相互運用性の強化にも資する在日米軍による訓練資機材の調達のための経費の全部又は一部について、本特別協定期間の五年間で最大二百億円を負担することで日米間で合意をいたしました。

 次に、在日米軍に係る提供施設整備費が、特別協定の交渉に際して併せて扱われている理由についてお尋ねがありました。

 提供施設整備は、日米地位協定の範囲内で、個々の事業ごとに日米安保条約の目的達成との関係、我が国の財政負担との関係、社会経済的影響等を総合的に勘案の上、我が国の自主的判断により措置してきております。

 その上で、米国との交渉に際しては、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力を強化するため、我が国の限られた予算を効果的に活用する観点も踏まえながら、日本側としてどのような費用負担をどのような規模で行うのが適切かについて、包括的な形で日米間の議論を行うことが必要であるため、提供施設整備費の水準についても議論の対象としてきています。

 提供施設整備費によってどのように在日米軍の即応性、抗堪性が強化されるかについてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、在日米軍があらゆる事態に適時適切に対応できるよう、必要な基盤をしっかり整備していくことは極めて重要です。その一環として、提供施設整備についても、例えば、航空機掩体や整備用格納庫等の整備といった在日米軍の即応性の向上及び施設・区域の抗堪性強化に資する事業を重点的に推進していきます。

 次に、ウクライナにおける邦人保護についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略を受け、在ウクライナ日本国大使館より、ウクライナ滞在中の邦人に対し、連日、領事メールを発出して、自身の身の安全を最優先とした行動を取ることを呼びかけ、邦人一人一人に連絡するとともに、関連する情報をきめ細やかに発信してきています。

 在ウクライナ日本国大使館としては、ウクライナ在留邦人の陸路でのポーランドへの出国を支援するべく、リビウ市に臨時の連絡事務所を開設しています。また、在ポーランド日本国大使館は、ウクライナから退避してきた邦人の受入れを支援するべく、同国のジェシュフ市に臨時の連絡事務所を開設しております。

 私からも、ラウ・ポーランド外相に対し、ウクライナの在留邦人がポーランドに陸路退避する場合の円滑な入国等について協力を要請したのに対し、ラウ大臣からは、引き続き、我が国と連携を密にしつつ、最大限の支援を提供する旨の発言がありました。

 さらに、ポーランドから他の国へと移動するためのチャーター機を既に手配済みです。

 引き続き、ウクライナの在留邦人の方々の安全確保のため、最大限取り組んでまいります。

 そして、ルールに反する行為に対する国際社会の結束における日本の役割についてお尋ねがありました。

 ウクライナをめぐる情勢は、欧州にとどまらず、国際社会の秩序の根幹を揺るがす深刻な事態です。世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みは断じて認められません。

 力による現状変更は世界のどこであっても決して許されないという意思を、G7を始めとする国際社会と連携して強く発信していくことが重要です。このような意思を強く示すことが、今後、他の地域においても今回のような国際法違反あるいは国連憲章に反するような行為を抑制することにもつながると考えております。

 その観点からも、日本は、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を実現すべく、米国、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国、パートナー国と連携して取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 吉田宣弘議員にお答えいたします。

 訓練資機材調達費についてお尋ねがありました。

 本特別協定に基づいて調達する訓練資機材として、現時点では、ネットワークを介して複雑かつ大規模な訓練を実施するためのシステム機材、戦闘射撃能力を向上するための標的装置、実践的なサイバー対処訓練を行うための機材を想定しています。

 こうした訓練資機材を日米共同訓練にも活用することにより、自衛隊と米軍との相互運用性を強化し、日米共同対処能力の向上につながると考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 鈴木敦君。

    〔鈴木敦君登壇〕

鈴木敦君 国民民主党の鈴木敦です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました在日米軍駐留経費特別協定について質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、ロシア連邦によるウクライナ共和国への侵略に強く抗議します。

 力による現状変更の取組は、この地球上のどこにおいても決して承認されるものではなく、国際社会の枠組みに正面から対決しようとするものであり、我が国として毅然とした態度で臨まねばなりません。

 また、こうした紛争は、過去の例を見ても、エネルギー価格の上昇を常に伴います。政府におかれては、元売への補助金によるガソリン価格の劇的な上昇を緩和するだけでなく、トリガー条項凍結解除による国民生活に直結した対策の検討を速やかに開始していただくことを望みます。

 これを申し上げた上で、以下、特別協定について質問いたします。

 冒頭述べましたとおり、国際社会の緊張感は高まる一方です。このような状況において、我が国を防衛することの意義、さらには、我が国を取り巻く環境を注視し対応を講ずることの意味は、極めて大きなものになっております。

 その意味において、在日米軍の駐留に対し我が国が経費負担を行うことの重要性は認識をいたしつつも、必要な額が最適に手当てをされているかについては、これを別としてしっかりと確認をいたさねばなりません。

 しかし、今回の改正協定においても、日米での算定基準の違いを理由に米側の費用負担割合が明らかにならないことは残念でなりません。いま一度、防衛大臣にこの内訳の御説明をいただきたいと思います。

 次に、ウクライナ情勢を踏まえた米軍の抑止力について伺います。

 現段階において、米国は、ウクライナに対して派兵など直接的な軍事行動を起こしてはおりません。また、西側諸国も同様に、最大の切り札とも言えるSWIFTからのロシア排除を決定しましたが、依然として、経済制裁以外の手段を持ち合わせてはおりません。この際、侵略したとしても軍事的な支援を行う国はないと判断すれば、この二十一世紀においても、一部の国家は侵略を決断し得ることが明らかとなったのです。

 防衛大臣に伺います。軍事的支援を受けているとはいえ、米国と同盟を結んでおらず駐留もしていないという意味においては、台湾も同様です。これを踏まえて、本協定の前文で、新たに、「困難を増す安全保障環境に即して、抑止力及び対処力を強化し、防衛協力を深化させる」との文言が追加されていますが、米軍が持つ抑止の意味について、大臣の認識を伺います。

 こうした国家の最終目的は、法と基本的価値観を無視し、自らの政治体制を維持、拡大することにあります。自由と民主主義を重んじる我が国は、こうした国家に対して断固とした決意を持って対抗せねばなりません。これまで以上に外交が重要な役割を果たすと考えられますが、外務大臣の御見解を伺います。

 最後に、近年よく耳にし、また、この度の本特別協定にも入っている強靱化という言葉について伺います。

 ウクライナは、あの大国ロシアの一方的な侵略に対し、自国は自国で守るとの覚悟の下、国民一丸となって、今も必死に国を守る戦いを続けています。ところが、我が国では、昨今、国土強靱化、そして今回は同盟強靱化予算など、いろいろとおっしゃいますが、肝腎の我が国の防衛力強靱化については、攻撃能力等々についても議論が進まないどころか、議論することをタブー視するような傾向すらあり、防衛についてはまさに他力本願と言わざるを得ません。ウクライナが総兵力で約四倍もの差があるロシアに対抗できているのは、自国を守るとの覚悟を明確にし、自分の国を守るという考えがしっかりと国民に認識されているからにほかなりません。

 ウクライナ情勢のみならず、我が国周辺の情勢を考えても、我が国の防衛力そのものの強靱化の議論を深めていくべきと考えますが、防衛大臣の御所見を伺います。

 以上で質問を終わります。

 防衛とは、自国のみであるか友好国とであるかにかかわらず、あらゆる手段を用いて行うものであり、武力によってのみ行われるものとは思っておりません。今必要なことは、現下の異常な国際情勢を踏まえ、どうすれば国民の生命、財産、国土を守ることができるのかの議論です。我が国民民主党は、真摯に、現実的な観点からこの至上命題に取り組み、もって国民の皆様の負託に応えんとするものであります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 鈴木議員にお答えをいたします。

 現在の情勢下で我が国の外交が果たすべき役割についてお尋ねがありました。

 ウクライナをめぐる情勢は、欧州にとどまらず、国際社会の秩序の根幹を揺るがす深刻な事態です。世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みは断じて認められません。

 日本として、力による現状変更は世界のどこであっても決して許されないという意思を、G7を始めとする国際社会と連携して強く発信していくことが重要です。このような意思を強く示すことが、今後、他の地域においても今回のような国際法違反あるいは国連憲章に反するような行為を抑制することにつながると考えております。

 私自身、一昨日もG7外相会合に出席し、G7として、ロシアによるウクライナ侵略を改めて強く非難した上で、制裁を含む今後の対応やウクライナ及び周辺諸国への支援について引き続き緊密に連携していくことを確認いたしました。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 鈴木敦議員にお答えをいたします。

 まず、在日米軍駐留経費の負担割合についてお尋ねがありました。

 日米の負担割合については、在日米軍の駐留に伴い必要となる経費の範囲の捉え方について様々な考え方があることから、一概に算定し得るものではありません。

 その上で、我が国の負担規模については、日米同盟の抑止力、対処力を強化する同盟強靱化予算は引き続き重要である点を踏まえた上で、厳しい財政状況や我が国を取り巻く安全保障環境等の各種要素を総合的に考慮し、主体的に判断してまいります。

 次に、米軍の抑止力の意義についてお尋ねがありました。

 一層厳しさを増す安全保障環境の中で、日米同盟は、インド太平洋地域の平和、安全及び繁栄の礎であり、これまでになく重要になってきています。

 我が国に駐留する米軍のプレゼンスは、地域における不測の事態の発生に対する抑止力として機能し、我が国や米国の利益を守るのみならず、地域の諸国に大きな安心をもたらすことで、いわば公共財としての役割を果たしていると考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定について質問します。(拍手)

 初めに、ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻は、主権の尊重と領土保全、武力の行使の禁止を義務づけた国連憲章を真っ向から踏みにじる侵略行為そのものです。ましてや、核保有国であることを誇示し、核で恫喝するなど言語道断です。戦後の国際秩序を根底から揺るがす暴挙を厳しく糾弾し、ロシア政府に対し、軍事行動の即時中止、ウクライナからの撤退を断固として要求するものであります。

 今、世界各地で市民が街頭やSNSで抗議の声を上げ、国連でも各国政府による努力が続けられています。日本政府に対し、こうした国際社会の取組と一致協力して、国連憲章と国際法に基づき、無法な侵略をやめさせるためのあらゆる外交努力を尽くすことを求めます。

 核兵器禁止条約に参加し、唯一の戦争被爆国の政府として、核兵器の使用、威嚇、保有を禁止する先頭に立つことを求めます。

 本特別協定は、日米地位協定の負担原則に反する米軍駐留経費の負担を拡大して、更に五年間継続しようとするものです。

 そもそも、日米地位協定二十四条は、米軍の維持経費は、日本国に負担をかけないで合衆国が負担すると明記しています。米軍の治外法権的な特権を保障した同協定によっても、日本に負担義務はないのであります。

 ところが、政府は、一九七八年、アメリカの要求に応え、思いやりと称して基地従業員の福利費などの負担に踏み切り、その後、隊舎や家族住宅などの施設整備、一九八七年の特別協定締結以降は、給与本体、光熱水料、訓練移転にまで拡大してきました。来年度は二千五十六億円、負担開始以来の総額は八兆円を超えます。

 政府は、特別協定締結当時、アメリカの財政赤字を最大の理由とし、暫定的、限定的、特別的な措置だと説明しました。しかし、日本の債務残高は今や千二百兆円を超え、対GDP比でアメリカの二倍、主要先進国で最悪のレベルです。特別協定は廃止するのが当然ではありませんか。

 今回、新たに、米軍が訓練で使用する資機材の調達費用まで負担するとしていますが、一体どういう理由で負担するのですか。協定に書き込みさえすれば何でも負担できるというのですか。政府は、自衛隊も使用できるようにすると言いますが、一旦米軍に提供した資機材は米軍が所有、管理するものであり、そのような滑稽な言い訳は通用しません。

 米軍嘉手納、三沢、岩国各飛行場の戦闘機訓練の移転先に、新たに米本国のアラスカを加えるのはなぜですか。在日米軍は従来からアラスカで実施される大規模訓練に参加してきていますが、こうした費用まで肩代わりしようとしているのではありませんか。米軍が本国で訓練するのは当たり前であり、これを基地負担軽減の名で合理化することは許されません。

 鹿児島県西之表市にある馬毛島では、米空母艦載機の離発着訓練のための新基地建設計画を問答無用で強行しています。環境アセスメントの手続が昨年始まったばかりなのに、既に本体工事の入札手続に着手しています。しかも、今審議中の来年度予算案の成立を見越して行っているのであります。国会の予算審議権を侵害する入札公告は、即刻取り下げるべきではありませんか。民意を無視し、住民生活と自然環境を破壊する馬毛島基地計画の撤回を求めます。

 同じく鹿児島県の海上自衛隊鹿屋基地でも、新たに米軍の無人機MQ9を配備する計画を推し進めています。訓練の拡大や米軍基地化は行わないことを約束した鹿屋市との協定書に背くものであり、撤回すべきです。

 最後に、在日米軍が、昨年九月以降、日本に入国する際の出国前検査を免除し、コロナ対策に大穴が空いていたことが明らかになりました。米軍に検疫を委ねる仕組みを改めない限り、国民の命と健康は守れません。日米地位協定を改正し、検疫法などの国内法を米軍に適用すべきではありませんか。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) ロシア政府に対して侵略をやめさせるための外交努力についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難します。

 今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、結束して毅然と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく、断固として行動していきます。こうした暴挙には高い代償が伴うことを示していきます。

 ロシアによるウクライナ侵略は、欧州にとどまらず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす深刻な事態です。日本として、力による一方的な現状変更は断じて認められないとの立場から、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して対応していきます。

 次に、核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。

 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加していません。

 御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければなりません。

 そのためにも、まずは、唯一の同盟国である米国との関係が重要です。先般の日米首脳テレビ会談でも、核兵器のない世界に向け共に取り組んでいくことが確認され、信頼関係構築に向けた一歩を踏み出すことができました。引き続き、米国と協力しながら、現実的な取組を進めていきます。

 次に、特別協定の廃止についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟及び在日米軍は、我が国の防衛のみならず、地域の平和と安定のためにはなくてはならない存在であり、在日米軍駐留経費負担は、在日米軍の円滑かつ効果的な活動、米軍の地域への前方展開を確保する上で重要な役割を果たすものです。

 我が国は、このような状況及び日米両国を取り巻く諸情勢等を総合的に勘案した上で、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつ、あくまでも暫定的、限定的、特例的な措置として、これまで特別協定を米国との間で結んできました。

 在日米軍駐留経費負担の将来の在り方については、国民の理解を得られる内容となるよう、我が国の厳しい財政状況や我が国を取り巻く安全保障環境、雇用の安定等の各種要素を考慮しつつ、真剣に協議を重ね、適切に対応してまいります。

 次に、訓練資機材調達費の負担理由及び特別協定の下での負担項目についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米同盟の抑止力、対処力を高めるためには、自衛隊と在日米軍の双方が、日米共同訓練を含む各種の高度な訓練の実施等を通じ、即応性を向上させていく必要があります。

 かかる観点から協議を行った結果、本特別協定において、新たに、在日米軍のみならず自衛隊の即応性及び米軍との相互運用性の強化にも資する在日米軍による訓練資機材等の調達のための経費の全部又は一部について、本特別協定期間の五年間で最大二百億円を負担することとしました。

 在日米軍駐留経費負担の将来の在り方については、引き続き、国民の理解を得られる内容となるよう、我が国の厳しい財政状況や我が国を取り巻く安全保障環境等の各種要素を考慮しつつ、真剣に協議を重ね、適切に対応してまいります。

 次に、訓練移転費についてお尋ねがありました。

 日米間では、日米2プラス2の機会を含め、実践的な演習及び訓練の重要性を確認してきています。

 また、沖縄の負担軽減は政府の最重要課題の一つであり、嘉手納飛行場等に所属する戦闘機の訓練移転等に取り組んできたところであり、引き続き、地元の負担軽減に取り組んでいく必要があります。

 かかる観点から協議を行った結果、航空機の訓練移転について、米軍による訓練の日本国外への移転を拡充し、広大な空域など恵まれた訓練環境を有するアラスカを訓練移転先の対象とすることについて日米間で一致しました。

 これにより、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図るための訓練移転を更に促進することが可能になると考えております。

 その上で、個々の訓練移転の時期や実施場所については現時点で確定しておらず、今後、個別の訓練移転の都度、日米間において議論していくことになります。

 最後に、在日米軍の新型コロナ感染及び日米地位協定についてお尋ねがありました。

 在日米軍の新型コロナ感染については、日米地位協定や関連の日米合同委員会合意を踏まえ、現地の保健当局間を含めて、米側からの緊密な協力を得ながらやり取りを行って対応してきているところであり、政府として、日米地位協定を見直す必要はないものと考えております。

 日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府としては、事案に応じて、効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきております。引き続き、政府としては、新たに日米合同委員会の下に設立された検疫・保健分科委員会も活用しつつ、感染防止対策の徹底及び地元の方々の不安解消に向けて、日米間での連携をより一層強化してまいります。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) まず、先ほどの鈴木議員の答弁の中に答弁漏れがございました。申し訳ございません。

 防衛力の強化についてのお尋ねがございました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、急速に厳しさを増しています。こうした中で、ミサイル防衛体制を始め、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているかという問題意識の下、いわゆる敵基地攻撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、防衛力を抜本的に強化していきます。

 次に、田村貴昭議員にお答えをいたします。

 馬毛島における自衛隊施設整備についてお尋ねがありました。

 厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、馬毛島における自衛隊施設を早期に整備する必要があります。防衛省としては、環境影響評価書の公告後、円滑かつ速やかに施設整備に着手するために今できる準備として入札公告を行ったところです。

 このうち、開札が来年度となるものについては、令和四年度予算の成立を開札の条件としています。そのため、国会の予算審議権を侵害するとの御指摘は当たらないものと考えており、防衛省としては、国会での御審議において説明に努めてまいります。

 引き続き、種子島の一市二町と緊密に連携しつつ、地元への丁寧な説明に努め、環境影響評価法を遵守して環境に適切に配慮し、自衛隊施設の整備を着実に進めてまいります。

 最後に、海上自衛隊鹿屋航空基地への米軍無人機の一時展開についてお尋ねがありました。

 日米同盟の情報収集能力を向上させる一環として、現在、米軍の無人機MQ9の一時展開について検討していますが、現時点での鹿屋航空基地への展開が決まっているものではございません。

 なお、御指摘の空中給油機KC130の鹿屋基地におけるローテーション展開に関する協定は、KC130のローテーション展開以外には直接関係しないとの見解を鹿屋市長と九州防衛局長との間で確認をしています。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣  林  芳正君

       防衛大臣  岸  信夫君

 出席副大臣

       外務副大臣 小田原 潔君


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