衆議院

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第9号 令和4年3月8日(火曜日)

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令和四年三月八日(火曜日)

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  令和四年三月八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員石原慎太郎君は、去る二月一日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 石原慎太郎君に対する弔詞は、議長において去る四日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され 再度国務大臣の重任にあたられた正三位旭日大綬章 石原慎太郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。防衛大臣岸信夫君。

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官定数の変更、外国における緊急事態に際して防衛大臣が行う在外邦人等の輸送の要件等の見直し、麻薬等の譲渡に係る特例規定の整備及び保険医療機関等から診療を受けようとする自衛官等に係る電子資格確認の導入等の措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を説明いたします。

 まず、防衛省設置法の一部改正について御説明いたします。

 これは、宇宙・サイバー領域における優位性の獲得に必要な部隊の新編や拡充を始めとする防衛省・自衛隊の体制の整備のため、航空自衛隊の自衛官の定数を六十六人増加し、陸海空の共同の部隊に所属する自衛官の定数を三十六人増加し、統合幕僚監部に所属する自衛官の定数を一名増加し、防衛装備庁に所属する自衛官の定数を一人増加する一方、陸上自衛隊の自衛官の定数を九十人、海上自衛隊の自衛官の定数を十四人、各々削減するものであります。なお、自衛官の定数の総計二十四万七千百五十四人に変更はありません。

 次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。

 第一に、外国における緊急事態に際して防衛大臣が行う在外邦人等の輸送について、輸送手段を原則として政府専用機とする制限の廃止、実施に当たっての安全に係る要件の見直し及び主たる輸送対象者の拡大を行うこととしています。

 第二に、麻薬及び向精神薬取締法に規定する麻薬及び向精神薬の譲渡に係る規制について、自衛隊法又は他の法律の規定により自衛隊が外国軍隊に提供する場合は適用しないこととしています。

 最後に、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部改正について御説明いたします。

 これは、国家公務員共済組合員の例に準じて、保険医療機関等から診療を受けようとする自衛官等に係る電子資格確認の導入等をするものであります。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

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 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。伊藤俊輔君。

    〔伊藤俊輔君登壇〕

伊藤俊輔君 立憲民主党の伊藤俊輔です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、防衛省設置法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭、ロシアによるウクライナ侵略により犠牲になられた全ての方々に哀悼の誠をささげます。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、言うまでもなく力による一方的な現状変更の試みであって、国際秩序の根幹を揺るがす明白な国際法違反であり、断じて許すことはできず、立憲民主党としても、ロシアに強く抗議、非難をいたします。今一人一人が声を上げないと、武力による侵略を容認することになり、世界は極めて不安定化します。我が国も多くの懸念を抱える中で、危機感を強くせざるを得ません。今回の侵略があらゆることの前提になっては絶対になりません。

 かつて、二〇一四年のクリミア併合のとき、外務大臣は現在の岸田総理でありました。そのときも形ばかりの制裁であり、ロシアに対する抑止効果はないに等しいものでありました。

 今回は、覚悟と危機感を持って、より強い制裁を行うことが必要なことは明らかです。きちんと我が国のメッセージが伝わっているのか。ロシアにも国際社会にも間違ったメッセージが広まらないように、我が国の立場をしっかり打ち出さなければなりません。

 大臣と長官の覚悟と認識、そして今後の制裁の在り方をお聞きいたします。

 ウクライナでの邦人並びにウクライナ人配偶者等、また日本国籍でない方々も含めて、保護や退避においても、また第三国に避難された方々も、人道的な観点から、早急に受入れ対応を求めます。

 現在、ウクライナのキエフの大使館は閉鎖をされ、リビウに連絡事務所が開設されていますが、聞くところによると、混乱を来しているとのことです。

 まず、現在、日本にビザの発行や渡航を求めている方がどれくらいいるのか、ウクライナから日本に渡航を希望する方に対して渡航を許可する要件はどう設定をされているのか、また、希望者がビザを手にし日本への渡航が可能になるまでどれくらいかかるのか、お聞きをいたします。

 言葉だけで実態が伴わないということになってはなりません。難民の受入れの基準も従来の手続にとらわれずに、強く対応を求めて、法案の質問に入らせていただきます。

 まず、今回、複数法案を一本に束ね、安全保障委員会での質疑機会を減らすことは、国家の防衛を論じる国会を軽視することだと強く主張しておきたいというふうに思います。

 本改正案には宇宙領域に係る体制強化を図るための定数変更がありますが、関連して、監視及び探知能力向上を目的とする小型衛星網構築の見通し及び課題についてお聞きをしたいと思います。

 新しい国家安全保障戦略を検討する中で力を入れるべき分野の一つは、宇宙安全保障です。

 第一に、宇宙システムを活用して国家の安全保障を強化すること、第二に、宇宙システムそのものの安全保障を強化することです。

 宇宙システムの活用でとりわけ重要なのが、中国や北朝鮮、ロシアが開発をしているとされる極超音速滑空体、HGVへの対応です。米国は、小型衛星を数千個配備し、HGVの軌道を追跡することで迎撃ミサイルの命中率を上げようというふうにしています。我が国でもそうした能力の開発が始まっていると報じられておりますが、米国との調整等はこれからの課題であります。

 また、衛星による情報収集も今後の課題であります。既に内閣官房の下で、情報収集衛星が運用され、画像情報は収集されておりますが、諸外国が進める、電子情報、エリントや、信号情報、シギントといった情報収集は宇宙では行われていません。宇宙システムを国家安全保障に活用するためにも不可欠なのが、宇宙システムの安全保障です。

 小型衛星網構築について、現在の検討の進捗状況及び実現の見通しを、米国との調整状況も含めて、お聞きいたします。

 次に、本改正案にはサイバー領域に係る体制強化を図るための定数変更もあります。サイバー領域における安全保障に係る課題については様々な論点が指摘をされていますが、今回は、体制、人員の面を中心にお聞きをいたします。

 防衛省や自衛隊ではサイバー攻撃を年間百万件ぐらい受けているとの数字もあります。企業や官公庁、金融機関や衆参両院なども、おびただしい数の攻撃を受けています。これからも、どんどん狙われるリスクがあります。情報流出のリスクはもちろん、原子力施設、電力施設、医療施設、金融などに対して悪意を持って侵入をされれば、途方もない被害が社会的にも経済的にも起こり得ます。そうなれば、まさに有事と捉えた方がいいほどの状況となります。大切なのは、一つには、侵入をさせないこと。そして、侵入されたときの復元力も重要です。アナログの部分を残し、最悪のときの対応に備えるという対策もあるでしょう。

 このように、これまでも、昨今でも、サイバー攻撃が頻繁に行われている中、対応できる体制の強化と、専門的な人材がより多く必要なのではないでしょうか。どのようにして専門的な人材を確保するのか、お聞きをいたします。

 自衛隊のサイバー防衛部隊の防護対象は自衛隊内のシステムだけだと聞いております。

 政府全体のサイバーセキュリティーを統括する機関としては、内閣にサイバーセキュリティ戦略本部が、内閣官房に内閣サイバーセキュリティセンターが設置をされていますが、これらの機関が行うのは、政策の企画、立案、推進や、何らかのときの司令塔機能とのことです。

 結局、個々のシステムを守るのは個々の主体というのが我が国の考え方と聞いています。システムの詳細を知っているのが個々の主体だからという理屈は、一見合理的に思います。

 しかし、例えば、事件、事故を起こさないために戸締まりや火の元の確認を個々人で行うことは当然としても、治安や安全を守るための警察や消防の必要性は誰もが認めることでしょう。我が国のサイバーの世界では、そういう大きな権限を持って全体を守る組織が存在しません。これでは不安が免れません。

 あるいは、サイバー戦や情報戦は、高度なサイバー戦能力を持つ軍や情報機関が実施をする一方、攻撃対象は国民の意識や民間の重要インフラであり、その構図は国対民間となるので、民間のサイバーセキュリティーでは到底太刀打ちできないという指摘もあります。

 安全保障の観点から、国家的規模でサイバーセキュリティーのための権限を持つ組織をつくる必要性についても、政府の見解をお聞きいたします。

 昨年八月十五日、アフガニスタンでは、タリバンが首都カブールを制圧し、実権を握りました。混乱した状況から在留邦人や大使館、JICA関係者を救出すべく、同月二十三日、岸防衛大臣は邦人等の輸送の実施を命令し、輸送機等航空機四機と自衛隊の部隊が派遣をされました。しかし、実際に輸送できたのは邦人一人とアフガニスタン人十四人。八月三十一日、岸大臣は輸送の終結を命令しました。

 本改正案の在外邦人等の輸送の要件等の見直しは、この経験等を踏まえて提案されているものと聞いております。ついては、まず、自衛隊のアフガニスタン派遣の事実関係について、何点かお聞きをしたいと思います。

 輸送対象者が約五百人とも言われていた中で、実際に輸送できたのは合計十五人。ほとんどの方々が現地に残されてしまったことは国際的に信頼を失う失態となったと考えますが、幾つかの報道で、八月前半の段階では首相官邸では危機意識が必ずしも高くなかったと報じられていますが、実際、どうだったのでしょうか。首相官邸、外務省及び防衛省、それぞれ、自衛隊機派遣を具体的に検討開始したのはいつなのか、お聞きをしたいというふうに思います。

 我が国は八月二十六日に退避させる計画を立てましたが、カブール空港周辺でのテロ事件のため、結局、実施できなかったと報道されています。韓国が前日に退避作戦を成功させたことと比較をして、一日の遅れが随分批判をされたところでありますが、防衛大臣はオペレーションとしては問題なかったと答弁をしておりますけれども、政権としての決断が遅れたことが原因と考えてよいか、お聞きをいたします。

 一方で、昨年九月以降、大使館職員、JICA職員及び留学生であるアフガニスタン人や在留邦人が我が国に到着したということを時々聞くようになりました。当初は、自力でアフガニスタンを出国した方々でありましたが、十月以降は、カタール政府の協力を得て出国した方々で、我が国に到着したアフガニスタン人は本年二月現在で五百人以上となったと聞いております。

 その後、現在では何名の方がアフガニスタンから日本に入国されているのか。また、要件としては、今回の改正で追加される輸送対象者の範囲と同じなのでしょうか。さらには、その方たちはどういったステータスで日本に在留されているのでしょうか。お聞きをいたします。

 在外邦人等の輸送の規定に基づいて輸送が行われた例の一つとして、二〇一三年のアルジェリアでの輸送があります。政府として、アルジェリア邦人拘束事件の際は、委員会が立ち上げられ検証が行われましたが、今回のアフガニスタンの事案については、そのような検証作業が行われておりません。

 検証あっての法改正だというふうに思います。もし行われていなければ、今からでも、今後の教訓を導くためにも、検証組織をつくり検証が必要だと考えますが、御見解をお聞きいたします。

 今回の改正案では、輸送対象者を、一、邦人の配偶者若しくは子、二、名誉総領事若しくは名誉領事、在外公館の現地職員、三、独立行政法人のいわゆる現地職員まで広げるとしておりますが、アフガニスタンの事例にこだわった、幅の狭いものになっていないでしょうか。

 例えば、イラク人道復興支援特措法に基づく活動においては、航空自衛隊が、関係国、関係機関が行っている人道復興関連の人員の輸送も行っており、約五年の活動で、多国籍軍関係者三万二百三十五人及び国連関係者二千七百九十九人を含む四万六千四百七十九人の人員を輸送したとされています。あるいは、昨年八月のアフガニスタンの場合では、輸送した十四人の外国人について、政府は、外国から要請があったと言うのみで、詳しい身元を明らかにしていません。

 少なくとも、人道的な観点からは、支援活動の関係者とか窮地に陥った避難民等も輸送できるようにしておく方が、現場の活動がやりやすくなるのではないかと考えます。輸送対象者の範囲を今後拡大していくお考えがあるのか、お聞きをいたします。

 アフガニスタン、ウクライナ、どちらのケースも事態は急転直下で悪化をしています。ウクライナから避難民を受け入れることにしたことは評価をしておりますけれども、実務上、台湾有事が起きた際に、自衛隊法第八十四条三に基づく邦人等の保護はできますでしょうか。同条によれば、現地国の同意が必要となっておりますけれども、台湾の場合はどのように認識をするのか。それが決まっているのかいないのかもお聞きをしたいというふうに思います。

 また、非戦闘員退避作戦は準備をしておかなければいけないというふうに考えます。様々なシナリオが想定されますが、政府内ではそういったオペレーションのシナリオが用意されているのか、お聞きをしたいというふうに思います。

 立憲民主党は、専守防衛という概念をしっかりと守りながら、間違った戦争や紛争には参加をしない、こういうことをもう一度私たちが捉えながら、国際協調と現実的な安全保障や外交政策を推進していくことを改めて申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 伊藤俊輔議員にお答えをいたします。

 まず、小型衛星網、すなわち衛星コンステレーションの検討状況等についてお尋ねがありました。

 衛星コンステレーションについては、現在、日米連携の可能性について米国とも議論しつつ、検討を行っています。

 具体的には、今年度より、HGVの探知、追尾に関する概念検討を行うとともに、来年度予算案では、所要の技術実証について調査研究を行うための経費を計上しています。

 現時点で衛星コンステレーションの導入や米国との連携について結論を得ていませんが、引き続き検討を行っていきます。

 次に、サイバー領域における体制強化と人材確保についてお尋ねがありました。

 防衛省・自衛隊においては、サイバー防衛能力の抜本的強化が必要との考えの下、サイバー関連部隊の体制強化などを進めています。また、サイバー人材の確保のため、部内の人材について、部内の教育課程や部外の教育機関等を通じて育成に努めています。そのほか、高度な知見を有する部外の人材を活用するなど、様々な取組を進めてまいります。

 次に、国家的規模でのサイバーセキュリティーのための権限を持つ組織の必要性についてお尋ねがありました。

 政府としては、我が国の安全保障環境を脅かすようなサイバー空間における脅威に対しては、内閣官房を中心に、関係省庁が一体となって、取り得る全ての有効な手段と能力を活用し、断固たる対応を取ることとしております。

 次に、昨年八月のアフガニスタンの事案に関する政府の対応についてお尋ねがありました。

 自衛隊機による退避オペレーションに関し、政府としては、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下において、可能な限りの対応を行ったと認識しています。

 防衛省に対しては、八月十四日夜、外務省より自衛隊機の利用可能性につき内々に打診があったものの、翌十五日には、カブールの陥落により混乱を極めていた空港の状況等を踏まえて、外務省から検討を一時ホールドしてほしい旨連絡がありました。

 その後、二十日に防衛省と外務省で議論をし、自衛隊機による輸送について、両省で緊密に連携して検討を進めることといたしました。

 次に、昨年八月のアフガニスタンにおけるオペレーションについてのお話がございました。

 私から、自衛隊法の現行規定がオペレーションの障害になった事実はないことを申し上げてきました。その上で、邦人の退避という最重要な目標は達成しており、政権としての決断が遅れたとの指摘は当たらないものと考えています。

 次に、昨年九月以降、アフガニスタンから我が国に入国された方々についてお尋ねがありました。

 アフガニスタンから我が国に入国された方々については、今般の法改正において主たる輸送対象者に追加される外国人よりも広い範囲であると承知しています。

 なお、法改正後も、主たる輸送対象者に該当しないそのほかの外国人について、これまでどおり、同乗者として輸送することが可能です。

 次に、在外邦人等輸送における主たる輸送対象者の拡大についてのお話がございました。

 今般の法改正は、自衛隊法第八十四条の四の規定に基づく在外邦人等の輸送について、我が国の国籍を有しない者のうち、邦人の配偶者又は子など、我が国国民と同視できるものは、我が国国民と同様に、その生命又は身体の保護を行うために自衛隊を派遣し、輸送を行うことが適当であるとの考えの下に行うものであります。

 その上で、その他の外国人についても、これまでどおり、主たる輸送対象者の同乗者として輸送することが可能です。

 今回の法改正により、主たる輸送対象者が拡大し、自衛隊を派遣できる場面が広がることを踏まえれば、今後、拡大した類型に属さない外国人のみの輸送が必要になる状況が生じる可能性は、現時点では想定されません。

 次に、台湾における、自衛隊法第八十四条の三に基づく在外邦人等の保護措置についてお尋ねがありました。

 在外法人等の保護措置が実施され得る個別の状況についてあらかじめ予断することは適当でないことから、仮定の御質問にはお答えすることは差し控えます。

 その上で、一般論として申し上げれば、防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態において適切に対応できるように不断に検討しているところですが、事柄の性質上、その内容については申し上げることは差し控えます。

 次に、非戦闘員退避作戦の準備についてお尋ねがありました。

 海外で邦人が危機にさらされたとき、邦人の保護、退避に全力で当たることは、国として当然の責務です。

 その上で、一般論として申し上げれば、防衛省・自衛隊としては、あらゆる事態において適切に対応できるように不断に検討しているところですが、事柄の性質上、その内容については申し上げることは差し控えます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 伊藤議員からお尋ねがありました。

 まず、ロシアや国際社会への我が国のメッセージの在り方や対応についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反として、断じて許容できず、厳しく非難します。

 今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会が結束して毅然と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく、断固として行動していきます。こうした暴挙には高い代償が伴うことを示してまいります。

 こうした考え方の下、我が国として、欧米と足並みをそろえて、金融や輸出管理の分野等で、主体的にかつ迅速に厳しい措置を打ち出してきているところです。

 引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携し、有効と考えられる取組を適切に検討、対応してまいります。

 次に、昨年八月のアフガニスタンの事案に関する政府の対応についてお尋ねがありました。

 自衛隊機による退避オペレーションに関し、政府としては、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下において、可能な限りの対応を行ったと認識をしております。

 八月十四日までには、民間チャーター機による大使館員、現地職員やその家族等の退避計画をほぼ整えていました。また、それと並行して、十四日夜の時点で、外務省から防衛省に対して、自衛隊機の利用可能性につき、内々打診をしていました。

 しかし、十五日にカブールが陥落し、カブール国際空港の民間機が運航を停止して以降は、混乱を極めていた空港の状況等を踏まえ、これまでの計画を一から再検討する必要が生じました。

 その後、カブール国際空港の混乱の収束状況等を見極めながら、退避実現のための様々な手だてを検討した結果、最終的に、自衛隊機派遣が可能な状況となり、また、それが最も効果的で、かつ、それ以外の有効な手段はないとの結論に達したため、二十日に外務省から防衛省にそのような考え方を伝え、自衛隊機派遣の具体的検討を要請しました。

 これら一連の経過については、内閣官房を含む政府内でも随時共有を図りつつ対応を行っていたものでございます。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 伊藤俊輔議員にお答えをいたします。

 ロシアや国際社会への我が国のメッセージの在り方や対応についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反として、断じて許容できず、厳しく非難します。

 今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会が結束して毅然と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく、断固として行動をしていきます。こうした暴挙には高い代償が伴うことを示していきます。

 こうした考えの下、我が国として、金融や輸出管理の分野等で、主体的にかつ迅速に厳しい措置を打ち出してきているところであります。

 引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携し、有効と考えられる取組を適切に検討、対応してまいります。

 昨年八月のアフガニスタンの事案に関する政府の対応についてお尋ねがありました。

 自衛隊機による退避オペレーションに関し、政府としては、事態が刻一刻と変化していく当時の状況下において、可能な限りの対応を行ったと認識しています。

 八月十四日には、民間チャーター機による大使館員、現地職員やその家族等の退避計画をほぼ整えていました。また、それと並行して、十四日夜の時点で、外務省から防衛省に対して、自衛隊機の利用可能性につき、内々打診していました。

 しかし、十五日にカブールが陥落し、カブール国際空港の民間機が運航を停止して以降は、混乱を極めていた空港の状況等を踏まえ、これまでの計画を一から再検討する必要が生じました。

 その後、カブール国際空港の混乱の収束状況等を見極めながら、退避実現のための様々な手だてを検討した結果、最終的に、自衛隊機派遣が可能な状況となり、また、それが最も効果的で、かつ、それ以外の有効な手段はないとの結論に達したため、二十日に外務省から防衛省にそのような考え方を伝え、自衛隊機派遣の具体的検討を要請しました。

 これら一連の経過については、内閣官房を含む政府内でも随時共有を図りつつ対応を行っていたものであります。

 昨年八月のアフガニスタンの事案に関する検証についてお尋ねがありました。

 昨年八月のアフガニスタンに関する政府の対応については、その経験等も踏まえ、政府として不断の検討を行う中で、政府部内の更なる連携強化や意思決定の迅速化に努めています。

 実際に、エチオピアやウクライナなど海外における治安情勢が悪化する兆候が見られる際には、より機動的に関係省庁間で会議を開催する等してきたところであります。

 有事の際の邦人等の退避支援を含む政府の対応については、今後も引き続き、平素から様々な状況を想定し、適切に対応していきたいと考えています。(拍手)

    〔国務大臣古川禎久君登壇〕

国務大臣(古川禎久君) 伊藤俊輔議員にお答え申し上げます。

 まず、ウクライナから日本への渡航を求める方についてお尋ねがありました。

 現在、我が国には在留資格を有するウクライナ人が約千九百人おられますが、日本にこれらの親族や知人がおられる方々については、個別に短期査証が発給され、入国が認められています。

 また、日本に親族や知人がおられない方についても、人道上の配慮の要否を個別に判断し、配慮が必要な場合には、原則として短期査証が発給されるなどにより、入国が認められることとなります。

 査証申請から日本渡航までの期間は、避難民の方々の所在や置かれた状況によってそれぞれ異なると考えられますが、いずれにせよ、速やかな対応が求められるものと考えます。

 法務省としても、関係省庁と連携の上、我が国への避難民の受入れに積極的かつ適切に対応してまいります。

 最後に、アフガニスタンから我が国に退避されてきた方々についてお尋ねがありました。

 アフガニスタンから我が国に退避されてきた方々については、個々の事情を踏まえ、適切な在留資格を付与しています。

 令和四年二月末時点で、我が国の支援を受けて約五百七十人の日本関係のアフガニスタン人が本邦に到着しており、主な在留資格については、特定活動で滞在している方が約三百六十人で全体の約六三%、留学と家族滞在で滞在している方がそれぞれ約七十人で全体の各約一二%となっております。(拍手)

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議長(細田博之君) 美延映夫君。

    〔美延映夫君登壇〕

美延映夫君 日本維新の会の美延映夫でございます。

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、党を代表して質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、ロシアのウクライナ侵略で戦火の犠牲になられたウクライナ国民、ロシア国民の方々にお見舞いを申し上げるとともに、えも言えぬ恐怖にさいなまれている皆様の元に一刻も早く平和と安寧の日が戻るよう、心よりお祈りを申し上げます。

 政府には、国際社会と一糸乱れず結束し、ロシア政府に対して、国際秩序を揺るがす暴挙を即時とどまるよう、強く働きかけるよう求めます。

 いかに苛烈な状況下にあっても自国を守るという堅固な意思がどれほど尊く大切なものであるかということを、ウクライナの方々が命懸けで私たちに教えてくれております。

 世界で法と正義を一顧だにしない国は、ロシアにとどまりません。私たち日本人は、自国を守るという固い決意と覚悟なくして自由も民主主義も堅持できない現実を今こそ直視せねばなりません。

 その上で、本題に入ります。

 冷戦後の国際秩序を崩さんとするロシアの蛮行は、対岸の火事ではありません。台湾や尖閣諸島の侵略を始め、東シナ海、南シナ海で力による一方的な現状変更にひた走る中国を、より先鋭化させる可能性が高まっております。北朝鮮も、五日、二週連続で弾道ミサイルを発射しました。日本の防衛は、中国、ロシア、北朝鮮の三方面での対処を迫られています。

 今回の防衛省設置法改正は、宇宙・サイバー領域における優位性の獲得に必要な部隊の新編、拡充を図るために、自衛官の定数を変更するものです。

 しかし、そもそも不十分な自衛官定数枠内での員数合わせにかまけているときではありません。有事において指揮系統を破壊されたら、一巻の終わりです。わけても、サイバー領域の強化は喫緊の課題と考えます。

 そこで、防衛大臣に質問いたします。

 今後、自衛隊のサイバー防衛隊の人的規模について、どの程度まで増強していくお考えですか。当面目指す宇宙作戦群のそれと併せて、お示しください。

 こうした新たな領域の脅威に対処すると同時に、加速度を上げて増大する脅威に立ち向かう、従来の陸海空の正面の守りを担う人員と装備の大幅な増強、拡充が不可欠と考えますが、どのように対処される方針でしょうか。

 戦後、軍事力忌避の姿勢を貫いてきたドイツが、ウクライナ危機で目を覚まし、対戦車兵器千基などのウクライナへの供給を決めたほか、国防費をGDPの二%に即増やすと宣言いたしました。日本の防衛費も、長らくとらわれてきたGDP比一%なる非現実的、しゃくし定規的な枠組みを打破して、当面の目標としてGDP比二%に増額し、自衛力を抜本的に見直すべきだと考えますが、防衛大臣の御所見を伺います。

 今回の自衛隊法の改正は、昨年八月のアフガニスタンでの日本人やアフガン人協力者の退避作戦における蹉跌を教訓としたものであると承知をしております。

 首都カブールがイスラム主義勢力タリバンの手に落ちたとき、事もあろうに、日本大使館が不在の上、アフガン人職員、協力者を見捨てて、日本人大使館員だけが国外に逃れたことは、外務省の大失態だと指摘せざるを得ません。結果的に、政府の自衛隊機派遣の正式決定がカブール陥落から八日かかり、出国を希望するアフガン人協力者とその家族ら五百人が置き去りにされました。人道と信義が問われる問題です。

 そこで、官房長官に伺います。

 自衛隊機による在外邦人等の輸送を機動的かつ円滑に実施するためには、外務大臣が防衛大臣に依頼してから計画に着手する現行法上の手順を改め、総理の陣頭指揮で関係閣僚による国家安全保障会議を速やかに開き、政府の意思決定を図るようにすべきと考えますが、御所見を伺います。

 自衛隊機派遣について、岸田総理は、一月十九日の衆議院本会議で、現在の規定では民間機と同程度の安全性が必要であるかのような誤解があると述べた上で、その誤解の解消に取り組む意向を示されました。しかし、平成二十五年の自衛隊法改正で、民間での輸送と同じ程度の安全な場合しか自衛隊機派遣ができないという意味に誤解される懸念を踏まえ、予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると規定された経緯があります。

 総理が言う誤解は、二十五年の法改正で解消されたはずではないのですか。なぜ、改めて法改正をする必要があるのでしょうか。以前の自衛隊機派遣に際して講じてきたという、自衛隊として予想される危険を回避するための方策とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。今回の法改正では、自衛隊法八十四条の四における、輸送を安全に実施できるという要件がなくなりました。防衛省は、危険を避けるための方策を講じた上で派遣を行う点ではこれまでと変わらないとしていますが、あえて安全の文言を外した理由は何ですか。いずれも、官房長官の答弁を求めます。

 アフガンへの自衛隊派遣では、政府は、安全な実施を盾に、自衛隊の活動を空港内に限定し、輸送対象者に自力でバスで空港まで来てくださいと血も涙もない要求を突きつけました。危険をはらんでいるから自衛隊が派遣されるのに、笑止千万であります。手を差し伸べたくてもじだんだを踏まざるを得なかった自衛隊員の方々の無念たるや、察するに余りあります。情報収集でヘリコプターを市街地に飛ばして着陸させ、自衛隊の管理下に入ったとみなして退避者を空港まで運ぶことは、法的にぎりぎり可能だったはずです。自衛隊のイラク派遣時にも想定されていた知恵であります。

 そこで、官房長官に質問いたします。

 日の丸を背負う自衛隊員に、金輪際、海外でアフガン派遣のときのような不条理な思いをさせないと約束していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。更に法整備が必要だというなら早急に取り組むべきだと考えますが、御見解を求めます。

 今回の法改正で、海外で緊急事態発生時に、日本人がいなくても自衛隊機を派遣し、邦人の外国籍の配偶者や子、日本大使館、独立行政法人等で働いている外国人だけでも輸送する道が開かれます。

 もっとも、これはほんの一歩にすぎません。中国が力ずくで台湾を統一する野望をあらわにする中、台湾有事に際しての日本の非戦闘員退避活動、いわゆるNEOが喫緊の課題であることは言をまちません。

 台湾には二万人前後の日本人を含む外国人約八十万人が在留し、うち七五%がアジア諸国の出身者とされます。これらの国々は自国民を退避させる能力に乏しく、米軍のみならず、台湾周辺で最大の輸送力を持つ日本が大きな責任を担うことになります。台湾人の方々も見捨てるわけにはまいりません。

 これまで、日本は、欧州や中東など遠方での緊急事態時の邦人退避を欧米等の諸国に頼ってまいりました。台湾有事では立場が逆転します。日本が果たすべき責務、役割は重大です。外務省、防衛省、国土交通省の綿密な連携は欠かせません。

 官房長官に伺います。

 台湾有事となれば、台湾のみならず、沖縄本島、先島諸島等での退避者も大量に生ずることが想定されますが、その際、自衛隊始め政府の現行の輸送機等の装備、輸送能力で台湾有事のNEOに対応できますか。できないならば、台湾有事を想定したNEOの体制を早急に固めるべきだと考えますが、どのように取り組む方針でしょうか。既に計画策定に着手をしておられるのでしょうか。台湾有事におけるNEOの対応方針は、年末までにまとめる国家安全保障戦略に明記すべき事項ではありませんか。特定の事案に後手後手で対応するのではなく、必要ならば平時に法整備を行っていくことが不可欠ですが、見解を求めます。

 条文には規定されていませんが、政府は、公式見解で、在外邦人等の輸送には相手国の同意が必要であるとしています。

 しかるに、アフガンでの輸送において、当時の加藤官房長官は、緊急的な措置として、人道上の必要から、安全が確保されている状況で自国民の退避のために輸送するものであり、仮に明確な同意が取られていなくても国際法上問題はないという見解をお示しになりました。

 そこで、外務大臣に伺います。

 当時の政府見解は、黙示的に同意が取られているとみなしたという意味なのでしょうか。政府の見解を御説明ください。

 一九七二年の日中共同声明第三項を鑑み、台湾有事が発生し、自衛隊が台湾在住の邦人等を輸送しようとする場合、同意を取る相手は台湾になるのですか、それとも中国になるのですか。見解を求めます。台湾有事となれば、日米同盟の敵となる中国に同意を求める道理も必要性もないと考えますが、外務大臣の認識を伺います。仮定の話には答えられないと逃げずに、明確にお答えください。

 本日、北朝鮮による拉致問題等の特別委員会が開かれました。

 北朝鮮による拉致問題打開への展開が全く開けない中、自衛隊を活用した拉致被害者の救出の実現を求める声が、長らく拉致問題に取り組む民間の方々から政府に投げかけられてきました。

 官房長官に伺います。

 日本の主権をじゅうりんする北朝鮮の国家犯罪に対して、座視を決め込んでいいのですか。自衛隊の活用に法的な壁があるなら、政治決断で法改正に動くべきと考えますが、何か問題があるのでしょうか。拉致被害者救出のために何ができるのか、政府全体で不断の検討を継続するという霞が関用語はもう結構です。自衛隊の活用をはなから除外し、具体的にどのような道筋、方策で拉致被害者を奪還するお考えなのでしょうか。

 最後に、ウクライナ侵攻を受けて、日本も米欧と歩調を合わせて直ちにロシア機の領空通過を禁止すべきと考えますが、なぜ遅れているのか、外務大臣にお尋ねして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 美延映夫議員にお答えをいたします。

 まず、新たな領域と従来の領域の人員と装備についてお尋ねがありました。

 現在の防衛大綱及び中期防においては、陸、海、空という従来の領域に加えて、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域を活用した防衛力の構築に取り組んできています。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、新たな国家安全保障戦略等の策定をする中で、必要な防衛力を更に強化するため、具体的な人員と装備の規模等をしっかりと検討してまいります。

 次に、防衛費の増額についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増す中、必要な防衛力を抜本的に強化していく考えです。

 我が国の防衛関係費の対GDP比を一%以内に抑えるという考え方は取っておらず、厳しさを増す安全保障環境の下で必要な予算をしっかりと確保してまいります。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 美延映夫議員にお答えをいたします。

 在外邦人等の輸送に関する政府の意思決定についてお尋ねがありました。

 政府としては、在外邦人の安全確保を含め、いかなる事態にも迅速に意思決定し対応できるよう、司令塔たる国家安全保障会議を中心に、平素から幅広く議論を重ねてきています。また、内閣官房を中心に、関係省庁が連携し、様々なケースを想定して、政府の危機管理対応について検討を進めてきています。

 今後とも、在外邦人等の退避が必要となる様々な状況に適切に対応すべく、引き続き、各省の縦割りを排し、内閣官房を中心に、関係省庁との間で緊密な連携を図ってまいります。

 自衛隊法の改正についてお尋ねがありました。

 自衛隊法第八十四条の四に基づく在外邦人等輸送については、これまで、予想される危険を避けるため、チャフ、フレア、防弾板等の自己防護措置の使用等、輸送機ならではの方策を講じた事例を含め、自衛隊機の派遣実績が積み重なっています。

 こうした積み重ねに照らすと、現行規定の予想される危険を避けるための方策を講ずることができると認められれば、自衛隊による輸送の支障となるような危険は避けることができると判断されるため、当然に、輸送を安全に実施することができると判断されることが分かってきました。

 このため、緊急時の意思決定を迅速的確に行えるよう、本規定を改正することとしたものです。

 なお、輸送の安全の要件については、平成二十五年に、その本来の趣旨をより明確かつ簡潔に示す表現に改めました。

 アフガニスタンにおける在外邦人等輸送についてお尋ねがありました。

 先般のアフガニスタンにおける対応については、政府として、現地で退避オペレーションを行っている米国を始めとする他国との調整も踏まえ、市内からカブール空港の移動は日本政府が支援する形で行い、カブール空港から周辺国への輸送については自衛隊機により実施することとしたものです。

 海外で邦人が危機にさらされたとき、邦人の保護、退避に全力で当たることは国として当然の責務であり、引き続き、自衛隊の活用も含め、在外邦人等の安全確保に万全を期してまいります。

 その上で、アフガニスタンの経験等を踏まえ、必要な法改正については、今国会に提出しているところであります。

 台湾有事における対応についてお尋ねがありました。

 我が国の領土、領海、領空を保持し、地域の平和と安定、そして国民の命と財産を断固として守り抜くことは、政府の最も重要な責務です。

 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えますが、一般論として申し上げれば、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、政府として、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していくことは当然であり、これまでも平和安全法制の整備等を行ってきました。法制面を含め、必要に応じた検討を不断に行ってまいります。

 また、政府としては、様々な事態を想定し、各種訓練の実施を含む体制の整備に努めているところであります。

 拉致被害者の救出についてお尋ねがありました。

 拉致被害者御家族及び拉致被害者の方々は、一年一年と年を重ね、御高齢となっている中、二〇〇二年に五人の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現をしていないことは痛恨の極みであり、誠に申し訳なく思っております。御家族の皆様とは、もはや一刻の猶予もないとの切迫感を共有させていただいております。

 平和安全法制の整備により、領域国の同意に基づく武力の行使を伴わない警察的な活動として、自衛隊による在外邦人等の救出や警護などの保護措置が新たにできるようになりました。他方、自衛隊による活動には、国際法上の観点に加え、我が国憲法上の制約があり、自衛隊の活用には限界があることは事実であります。

 政府として、今後の対応の詳細については説明を差し控えますが、拉致問題の解決に向けては、米国バイデン政権を始めとした関係国と引き続き緊密に連携しつつ、我が国自身が主体的に取り組むことが重要です。御家族も御高齢となる中、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するため、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 美延議員から御質問がありました。

 アフガニスタンからの在外邦人等の輸送に際する相手国の同意についてお尋ねがありました。

 国際法上、一般に、自衛隊を他国の領域に派遣する際には、派遣先国との関係で国際法上の問題が生じないように、派遣先国の同意を得る必要があります。

 当時のアフガニスタンの現地情勢は流動的であり、通常の状況とは大きく異なりましたが、政府としては、運用上も国際法上も問題が生じないように、関係し得る当事者の同意を得るために意思疎通を図りました。これにより、当時のような状況においては、国際法上の問題が生じない状況となったと考えています。

 それに加え、本件輸送は、当時の例外的な状況において、人道上の必要性から、輸送の安全が確保されている状況で行った緊急的な措置でした。この点に鑑みても、本件輸送は国際法上問題なかったと考えます。

 次に、台湾有事における自衛隊による邦人輸送における同意の取付けについてお尋ねがありました。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は外務省の最も重要な責務の一つであり、平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、必要な準備、検討を行っており、邦人保護の強化を図っているところです。

 有事における我が国の個々の対応について、個別具体的な国、地域名を挙げてつまびらかにすることは、事柄の性質上、差し控えますが、いずれにせよ、邦人の安全確保に万全を期するべく、政府として全力を尽くす考えであります。

 次に、ロシア航空機の領空内飛行を禁止する措置についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、厳しく非難します。

 今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会が結束して毅然と行動しなければなりません。我が国として、このことを示すべく、断固として行動していきます。こうした暴挙には高い代償が伴うことを示していきます。

 そうした考えの下、我が国は、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、迅速に厳しい措置を打ち出しています。ロシアの航空機の領空内飛行を禁止する措置を含む更なる措置については、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携して、適切に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 本村伸子君。

    〔本村伸子君登壇〕

本村伸子君 私は、日本共産党を代表し、防衛省設置法等一部改定案について質問をいたします。(拍手)

 初めに、ロシア政府によるウクライナ侵略についてです。

 国連総会は、四十年ぶりに緊急特別会合を開催し、武力行使の即時停止、軍の完全かつ無条件の撤退を求める決議を百四十一か国の賛成多数で採択いたしました。加盟国の七割を超える圧倒的多数の声が示されたことの意義を政府はどう認識していますか。

 政府に対し、侵略やめよの一点で国際的な共同を更に広げるための外交努力とともに、ウクライナの人々の命と生活を支援する食料、防寒着、医薬品など非軍事支援に全力を挙げることを求めます。

 プーチン大統領が核兵器の使用を示唆したことを契機に、米国との核共有が取り沙汰されています。広島、長崎の惨禍を二度と繰り返させないと、生涯をかけて核兵器の廃絶を訴え続けてこられた被爆者の願いを踏みにじるものであり、絶対に許すことはできません。唯一の戦争被爆国の政府として、事態を悪化させる議論と決別し、核兵器禁止条約への参加を決断し、核廃絶の先頭に立つべきではありませんか。

 本法案は、自衛隊法八十四条の四に定める在外邦人等の輸送の要件を緩和し、輸送対象者を外国人協力者などに拡大するものです。

 今回の改定は昨年八月のアフガニスタンからの邦人輸送の経験を踏まえたものとしていますが、当時の派遣決定の背景に何があったのか、明らかにされておりません。当初、防衛大臣は、現地に出入りしている関係国の軍用機で退避することが最善としていたにもかかわらず、その数日後には、自衛隊の派遣に踏み切りました。アメリカからの要請があったことが報じられていますが、日米間でどのようなやり取りがあったのですか。アメリカの事実上の占領統治が崩壊する下で、米軍による退避作戦の一翼を担うものであったのではありませんか。

 そもそも、在外邦人等の輸送は、地域紛争や内戦、内乱などの緊急事態が発生した外国領域に自衛隊を派遣するものです。

 政府は、派遣先国政府の同意を得るといいますが、もう一方の紛争当事者である反政府勢力などの同意を得るわけではありません。そのような状況下で、自衛隊が外国領土に足を踏み入れること自体が敵対行為とみなされ、攻撃対象となり、かえって邦人を危険にさらすことになるのではありませんか。

 自衛隊は国際法上軍隊であり、その航空機や船舶、車両に搭乗する民間人は国際人道法による保護を受けられないのではありませんか。

 今回、政府専用機の使用を原則としてきた規定を廃止し、さらに、実施の要件を、輸送の安全から、予想される危険を避けるための方策に改めるとしていますが、これはなぜですか。

 政府は、従来、派遣先国政府によって安全が確保されないときは輸送を行うことはあり得ないとしてきましたが、防衛大臣が実行可能と判断しさえすれば、輸送を行えるということですか。

 米軍の撤収をめぐる混乱は、二十年前に始めた報復戦争に端を発したものです。二〇〇一年の九・一一テロに対し、当時のブッシュ政権は、自衛の名の下にアフガンへの軍事攻撃に踏み切り、タリバン政権を崩壊させました。ところが、米軍の空爆と掃討作戦は新たな憎しみと暴力の連鎖を生み、それがタリバンの復権を招き、撤退を余儀なくされたのです。政府は、インド洋に自衛隊を派遣し報復戦争に加担した誤りを認めるべきではありませんか。

 いかなる国であれ、大国による横暴を許してはなりません。

 憲法九条を持つ日本がやるべきことは、敵基地攻撃能力の保有ではなく、東アジアを平和と協力の地域とするための外交努力だということを強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 本村議員にお答えいたします。

 国連総会の緊急特別会合についてお尋ねがありました。

 現地時間三月二日、国連総会の緊急特別会合におきまして、ロシアによるウクライナへの侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時、完全、無条件の撤退を求めることなどを内容とする総会決議が採択されたことを歓迎します。百四十一か国が賛成し、総会決議案が採択されたことは、国際社会で幅広く共有されている強い意思が改めて確認されたものと受け止めています。

 我が国は、ロシアによるウクライナへの侵略を厳しく非難するという基本的な立場に基づき、総会決議案の共同提案国となり、賛成票を投じました。決議が実施されることが重要です。

 政府として、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、ロシアに対して、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収し、国際法を遵守するよう強く求めていく考えであり、国連においても、我が国の基本的立場を踏まえ、積極的に貢献していきたいと考えています。

 次に、ロシアによる侵略の即時停止を国際社会が一体となり求めることの重要性についてお尋ねがありました。

 三月二日、国連総会の緊急特別会合において、ロシアによるウクライナへの侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時、完全、無条件の撤退を求めること等を内容とする総会決議が賛成国百四十一か国で採択されました。これほど多くの国が賛成し、総会決議案が採択されたことは、国際社会で幅広く共有されている強い意思が改めて確認されたものと受け止めております。

 日本としては、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、ロシアに対して、厳しい制裁を実施しつつ、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収し、国際法を遵守するよう強く求めていく考えであり、国連においても、我が国の基本的立場を踏まえ、積極的に貢献をしていきます。

 次に、ニュークリアシェアリング及び核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。

 ニュークリアシェアリングは、平素から、自国の領土に米国の核兵器を置き、有事には、自国の戦闘機等に核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することによって、自国等の防衛のために米国の核抑止を共有するといった枠組みと考えられますが、我が国については、非核三原則を堅持していくことから、認められません。

 また、核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約には核兵器国は一か国も参加をしていません。

 御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。

 そのためにも、まずは、唯一の同盟国である米国との関係が重要です。先般の日米首脳テレビ会談でも、核兵器のない世界に向け共に取り組んでいくことが確認され、信頼関係構築に向けた一歩を踏み出すことができました。引き続き、米国と協力しながら、現実的な取組を進めていきます。

 次に、インド洋における海上自衛隊による支援活動についてお尋ねがありました。

 我が国は、二〇〇一年十二月以降、テロリズムの防止、根絶に向けた国際社会の連帯において責任を果たし、我が国を含む国際社会の平和と安全の確保のための取組の一翼を担うため、旧テロ対策特別措置法及びテロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法に基づき、インド洋における海上阻止活動に参加する各国艦船に対して、海上自衛隊による燃料、水の補給支援を実施しました。

 我が国による補給支援活動については、アフガニスタンや米国を含む多くの国や国連などから、アフガニスタンの平和と安定に寄与するものとして、歓迎の意が示されました。

 次に、東アジアを平和と協力の地域とするための外交努力についてお尋ねがありました。

 今般のロシアのウクライナ侵略や緊張する米中関係に見られるとおり、厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視しながら、したたかで、徹底的な現実主義を貫く、新時代リアリズム外交を展開していきます。

 力による一方的現状変更は認められません。我が国の外交、安全保障の基軸である日米同盟の抑止力、対処力を一層強化し、地域の平和と繁栄、そして、より広く国際社会に貢献する同盟へと導いていきます。また、私自身、先月、日米豪印外相会合、フランス、EU共催のインド太平洋閣僚会合等に参加したところですが、米国、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国、同志国とも連携しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を引き続き推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣岸信夫君登壇〕

国務大臣(岸信夫君) 本村伸子議員にお答えをいたします。

 まず、昨年八月のアフガニスタンにおける在外邦人等輸送の実施の決定の背景についてお尋ねがありました。

 アフガニスタンからの邦人等の退避については、邦人等を退避させ、安全の確保を図ることは極めて重要であるとの考えの下、八月二十三日、外務大臣臨時代理から依頼を受け、防衛大臣から自衛隊に対して在外邦人等の輸送を命じたものであり、米軍による退避作戦の一翼を担うものとの御指摘は当たりません。

 実際のオペレーションに際し、米国との間では、現地情勢に関する情報共有や出国希望者の迅速かつ安全な退避を実施するための連携等、様々なレベルで緊密に調整、連絡を行いました。

 次に、紛争当事者の同意がない状況下での在外邦人等の輸送の実施についてお尋ねがありました。

 派遣先国と紛争当事者との関係等、個別具体の緊急事態の状況は様々であり、お尋ねについてあらかじめ一概に申し上げることは困難でありますが、輸送の実施に当たり、邦人に事故が起きる事態を避け、在外邦人の安全確保というそもそもの目的を達成することが重要であることは言うまでもありません。

 国際人道法についてお尋ねがありました。

 自衛隊は、国際法上、一般的には軍隊として取り扱われるものと考えられますが、ジュネーブ諸条約に代表される国際人道法は、基本的には、武力紛争の当事国の間における関係を規律しているものです。

 自衛隊法第八十四条の四に基づく自衛隊の活動は、外国における緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人を本邦等の安全な地域に輸送する活動です。当該輸送は国際法上禁じられた武力の行使に当たるものではなく、我が国がこうした活動を行うこと自体によって紛争当事国になることはありません。

 したがって、このような活動について、そもそも国際人道法における軍事目標主義の適用を論じる意義はなく、当該輸送を行う自衛隊の部隊に対して武力の行使を行うことは、国際法上違法な武力の行使であって、正当化されません。

 次に、輸送の安全についてお尋ねがありました。

 自衛隊法第八十四条の四に基づく在外邦人等の輸送については、これまで、予想される危険を避けるため、チャフ、フレア、防弾板等の自己防護措置の使用等、輸送機ならではの方策を講じた事例を含め、自衛隊機の派遣実績が積み重なっています。

 こうした派遣実績の積み重ねに照らすと、現行規定の予想される危険を避けるための方策を講ずることができると認められれば、自衛隊による輸送の支障となるような危険は避けることができると判断されるため、当然に、輸送を安全に実施することができると判断されることが分かってきました。

 このため、緊急時の意思決定を迅速的確に行えるように、本規定を改正することとしたものであります。

 なお、従来、派遣先国政府等の措置により輸送の安全を確保することと御説明してまいりましたが、今後とも、予想される危険を避けるための方策について外務大臣と協議し、当該方策を講じた上で派遣を行うという点については変更はありません。

 次に、インド洋への自衛隊の派遣についてお尋ねがありました。

 九・一一テロに対して、我が国は、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための取組に積極的かつ主体的に寄与することは国益にもかなうという立場から、旧テロ対策特別法に基づき、インド洋において海上阻止行動を行う諸外国の軍隊に対する補給活動等を行いました。

 自衛隊による補給活動については、国連やアフガニスタンを含む各国からの評価や謝意が表されており、御指摘の報復戦争に加担した誤りを認めるべきとの御指摘は当たりません。

 最後に、いわゆる敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 政府としては、御指摘の外交努力を尽くすとともに、いかなる事態にも対応できるよう万全を期していくことは当然です。

 我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中で、ミサイル防衛体制を始め、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討してまいります。この検討は、憲法及び国際法の範囲内で行ってまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣  古川 禎久君

       外務大臣  林  芳正君

       防衛大臣  岸  信夫君

       国務大臣  松野 博一君

 出席副大臣

       防衛副大臣 鬼木  誠君


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