衆議院

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第11号 令和4年3月15日(火曜日)

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令和四年三月十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  令和四年三月十五日

    午後一時開議

 第一 津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 第二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第三 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 日程第二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第三 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(細田博之君) 日程第一、津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長小里泰弘君。

    ―――――――――――――

 津波対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小里泰弘君登壇〕

小里泰弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 津波による被害の想定される各地域においては、津波対策の推進に関する法律を始め関係法律等に基づき、鋭意津波対策が進められてきております。他方、日本海溝、千島海溝沿いの巨大地震について新たな検討が進められ、また、南海トラフ地震を始めとする大規模な地震の切迫性も指摘される中で、デジタル技術も活用しながら、津波対策をより一層推進していく必要があります。

 本案は、このような状況に鑑み、積雪寒冷地など地域の特性に応じた津波避難施設等の整備の推進に関する規定及び津波対策における情報通信技術の活用に関する規定を追加するとともに、地方公共団体の作成する津波ハザードマップ等に係る国の財政上の援助を定めた規定の期限を令和九年三月三十一日まで五年間延長する改正を行おうとするものであります。

 本案は、去る十日の災害対策特別委員会において、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ議員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(細田博之君) 日程第二、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長城内実君。

    ―――――――――――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔城内実君登壇〕

城内実君 ただいま議題となりました在日米軍駐留経費負担に係る特別協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本協定は、本年一月七日に東京において署名されたもので、在日米軍駐留経費の我が国による負担を図り、我が国にある合衆国軍隊の効果的な活動を確保するため、経費の分担について定める日米地位協定第二十四条について新たな特別の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、我が国は、令和四年から令和八年までの会計年度において、合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与等の全部又は一部、合衆国軍隊等が公用のため調達する電気等の料金又は代金の全部又は一部、米国が施設・区域内に設置される訓練資機材等を調達するための経費の全部又は一部、及び、我が国の要請に基づき合衆国軍隊の訓練場所が日本国内又は米国の施政下の領域若しくは米国の領域に変更される場合に必要となる追加的経費の全部又は一部を負担すること等であります。

 なお、本協定は、令和九年三月三十一日まで効力を有することとなっております。

 本件は、去る三月一日、本会議において趣旨の説明及び質疑が行われた後、外務委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、四日林外務大臣から趣旨の説明を聴取し、九日及び十一日に質疑を行い、討論の後、採決を行いました結果、本件は多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長薗浦健太郎君。

    ―――――――――――――

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔薗浦健太郎君登壇〕

薗浦健太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国際開発協会の第二十次増資に伴い、同協会に対し、政府は、従来の出資額のほか、四千二百五億五千七百二十四万円の範囲内において追加出資することができることとするものであります。

 本案は、去る三月八日当委員会に付託され、翌九日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、十一日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣金子原二郎君。

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 近年、気候変動や生物の多様性の低下等、農林水産物及び食品の生産から消費に至る食料システムを取り巻く環境は大きく変化しています。そのため、農林水産省においては、令和三年にみどりの食料システム戦略を策定し、農林漁業及び食品産業における環境への負荷を低減していくこととしました。将来にわたり農林漁業及び食品産業の持続的な発展と食料の安定供給の確保を図るためには、農林水産物等の生産から販売に至る各段階で環境への負荷を低減し、当該農林水産物等の流通及び消費が広く行われる環境と調和の取れた食料システムを確立することが必要となっています。特に農林漁業は環境の変化による影響を受けやすい産業であり、その持続的な発展を図るためには、環境への負荷の低減の取組を促進することが重要となっています。

 このような状況を踏まえ、農林漁業及び食品産業の持続的な発展、環境への負荷の少ない健全な経済の発展等を図る観点から、農林漁業者、食品産業の事業者、消費者等の食料システムの関係者が取り組むべき視点を基本理念等として定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する計画の認定制度を設け、認定を受けた者に対する特別の支援等の措置を講ずるため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、基本理念等についてであります。

 環境と調和の取れた食料システムの確立を図るため、基本理念として、食料システムの関係者の連携、環境への負荷の低減と生産性の向上との両立の実現に資する技術の研究開発等を定めることとしています。

 その上で、国の責務等を定めるとともに、国が講ずべき施策として、食料システムの各段階における環境への負荷の低減に資する取組の促進等を定めることとしています。

 第二に、環境負荷低減事業活動の促進等に関する基本方針の策定についてであります。

 農林水産大臣は、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針を策定するとともに、市町村及び都道府県は、この環境負荷低減事業活動の促進に関する基本的な計画を策定することができることとしています。

 第三に、環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立のための措置についてであります。

 農林漁業者は、環境負荷低減事業活動等の実施に関する計画について都道府県知事の認定を受けられるものとし、認定を受けた者には、農業改良資金等の償還期間の延長、農地法等に基づく手続の簡素化等の支援措置が講じられるほか、有機農業の生産団地を形成する場合には、栽培管理方法等を定めた協定を締結し、市町村長の認可を受けることができることとしています。

 また、これらの活動の基盤を確立するため、先端的技術の研究開発や実証等を行おうとする者は、その実施に関する計画について主務大臣の認定を受けられるものとし、認定を受けた者には、農地法等に基づく手続の簡素化等の支援措置が講じられることとしています。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようにお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。神谷裕君。

    〔神谷裕君登壇〕

神谷裕君 私は、立憲民主党・無所属を代表し、ただいま議題となりました環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まずは、現在、ウクライナ国内にあって、ロシアの侵攻により多数の犠牲が出ていることを深く憂慮いたしております。本院でも決議を行っておりますが、一刻も早く停戦の上、ウクライナに平和と正義が回復されるよう、政府には積極的な働きかけを求めます。米国や西側諸国との協調はもとより、関係国に対し毅然と働きかけを行うよう求めたいと思います。また、ウクライナや避難民に対しての支援を迅速かつ積極的に行うよう、重ねて求めたいと思います。

 さて、この影響もあると考えますが、三月九日に輸入小麦の政府売渡価格の改定が行われており、五銘柄加重平均で、昨年十月期に比べ、一七・三%の引上げとなりました。

 我が国は小麦需要の九割を外国に頼っており、輸入小麦の大幅な上昇は、日常食であるパンやうどん、中華そばの値上げに直結し、直ちに家計へと影響する重大な問題となります。しかも、今次の価格上昇は米国やカナダの不作の影響が大きいと聞いており、小麦輸出の世界シェアの三割を占めるロシア、ウクライナの緊迫した情勢はまだまだ反映されているとは言えず、今後、まだまだ価格上昇の懸念を有しています。

 原油価格の高騰が問題となっておりますが、日常の食に対する影響も看過できません。小麦は国家貿易でもあり、政府の対応が急務であると考えます。政府の対応について、農林水産大臣に伺います。

 それでは、本法律案について伺います。

 みどりの食料システム戦略は、二〇五〇年を目標年次として、サプライチェーン全体における各般の取組とイノベーションの社会実装が実現した姿を目指すとしています。

 このため、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬の使用量をリスク換算で五〇%低減、化学肥料の使用量を三〇%低減、耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を二五%、すなわち百万ヘクタールに拡大するという極めて野心的、意欲的な目標が掲げられています。

 しかし、これまでの農政は、効率的な農業を目指し、農業の競争力強化を図ることを基本としてきました。中小家族経営体等多様な農業者に光を当てる旧民主党政権が打ち出した戸別所得補償制度の実施とその成果を背景に、若干の見直しがなされたものの、一部の担い手に施策を集中し、強い農業を目指す施策は続けられてきました。

 有機農業や環境保全型農業の取組は、コストがかかり効率の悪いものという考え方の下、一つの選択肢として示されていたにすぎません。効率性を重視した農業生産は、化学農薬や化学肥料の依存につながります。こうした農業を農業者、生産者に推奨してきたこれまでの農政が、今回、大きく転換されることになります。

 であるならば、農業者に対する説明のためにも、まずはこれまでの農政を批判的に検証し反省に立った上で、新たな政策を打ち出すべきではないでしょうか。反省もなく、これまでの農政の延長線上で環境負荷低減をうたっても、信頼もされず、効果は期待できません。

 従来農政に対する政府の反省について、農林水産大臣の明確な答弁を求めます。

 また、二〇二〇年三月、食料・農業・農村基本計画が閣議決定をされています。おおむね二〇三〇年までの農政の柱となる重要な政策文書でありますが、これまでの農政の延長線上にあるこの基本計画には、唐突に出てきたみどり戦略の考え方が入っているとは思えません。加えて、今回のみどり戦略の中にも基本計画が掲げる二大目標である食料自給率の向上とそれを支え得る担い手の在り方について触れていないことを見ても、基本計画の考え方とみどりの食料戦略との関係が必ずしも整合的でないことは大きな問題です。

 そこで、基本計画と新しいみどりの食料戦略との関係について、農林水産大臣の説明を求めます。

 さて、有機農業についての目標です。耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を百万ヘクタール、二五%に拡大するという目標です。世界の中で有機農地面積比率の高いEUでも現在は八・五%であり、驚くべき目標と言ってもいいでしょう。

 高い目標を掲げることは決して悪いことではありませんが、生産者がついてこられなければ意味がありません。このために政府はどのような施策を実施し可能たらしめるのか、お尋ねいたします。また同時に、有機農業以外の七五%の農業についてはどういう未来をお考えなのか、このことも併せてお聞かせください。

 また、化学農薬については、二〇五〇年までに使用量をリスク換算で五〇%低減するとの目標を掲げられております。

 令和二年には、米国農務省が農業イノベーションアジェンダを策定し、EUの欧州委員会がファーム・トゥー・フォーク戦略を策定するなど、化学農薬の使用低減や有機農業の拡大は世界的な潮流と言えるでしょう。

 しかしながら、乾燥傾向にある欧州と我が国では気候風土が根本的に違うことを考えなければいけません。我が国の場合は、この温暖多雨な気候により病害虫が発生しやすく、化学農薬の使用低減や有機農業の拡大に向けては、生産者の皆さんに大きな負担をかける懸念があります。

 実現に向けて、どのような施策を考え、道筋を描くのか、お尋ねいたします。また、今回の取組の結果として単収は維持向上されると考えているのか、お聞かせください。

 次に、技術開発とその支援についてお尋ねします。

 みどりの食料システム戦略では、持続可能な食料システムの構築に向け、中長期的な観点から、調達、生産、加工、流通、消費の各段階の取組とともに、カーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進することとされています。

 本法律案でも、基本理念において、環境と調和の取れた食料システムの確立の実現に資する技術の研究開発及び活用の推進が規定されております。

 このことから、イノベーション、技術の研究開発が戦略の実現の鍵を握っていることが分かります。非常に重要な役割ですが、イノベーションは口で言うほど簡単なものではないでしょう。

 例えば、有機農業を例とします。

 みどりの食料システム戦略で示された有機農業の取組面積拡大に向けた取組によれば、二〇三〇年を目標として、除草の自動化を可能とする畦畔、圃場周縁の基盤整備が取り上げられています。これはまだ現実味を感じますが、二〇四〇年を目標として開発される、病害抵抗性を有した品種の育成、先端的な手法を駆使した害虫防除技術、ネオニコチノイド系農薬を含む従来の殺虫剤を使用しなくても済むような新規農薬の開発、二〇五〇年を目標として開発される、土壌微生物機能の完全解明、生物農薬供給チェーンの拡大については想像の域を超えています。

 私もつくばの農研機構を視察しましたが、施設等を拝見しても、予算が十分でないことは容易に感じられ、これまで十分にできなかったことが急にできるようになるとは思えません。また、ハイテクを有する民間企業の力を活用することもお考えだとは思いますが、研究開発を通じた開発企業による資材の独占や流通の独占の懸念はないのか、開発のメリットを第一に享受すべき農業者や消費者が置いていかれることがないのか、気にかかります。ましてや、農水省自身も令和二年度の白書でお認めのように、高額機械費ゆえに利益が減少することを指摘しており、機械等の新しい技術の導入が農業経営に与える影響も考慮しなければなりません。

 その上で、お伺いします。

 これらの技術開発はどのように行われるのか、そして、予算等を含めた支援策は用意されているのか、人材は確保できるのか、また、研究開発の進捗状況をどのように把握し目標年次を守っていくのかについてお聞かせください。

 次に、農業者のメリットについてお尋ねいたします。

 環境と調和の取れた食料システムとは、農林水産物等の過程において環境への負荷の低減が図られ、農林水産物等の流通及び消費が広く行われる食料システムであり、農林水産物等の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することによって確立を図ることとしており、最終的には生産者から消費者までの国民全体が利益を享受できるものでなければなりません。

 そのための方法として、環境負荷低減に資する事業活動を促進することとしていますが、化学肥料や化学農薬を低減することにより除草等の労力が増加することが考えられることから、生産現場の農業者の努力が最も必要となることが考えられます。

 苦労をして化学農薬や化学肥料の使用量を削減して生産された農産物の価値を消費者が正しく理解し、一定以上の付加価値がついた価格で購入をしていただく必要があります。

 しかし、農林水産省の資料によりますと、有機農業に取り組む生産者の経営を慣行農業経営と比較した場合、品目によっては、労働時間当たりの所得は不利になるとしています。有機農産物については、一定の付加価値が認められているため、所得の確保が期待できるかもしれませんが、化学農薬や化学肥料の使用量を低減した農産物に対しては、有機農産物ほどの付加価値が認められているとは言い難く、価格面での期待と生産者の所得の確保にも懸念が残ります。

 本法律案が国民全体の利益のためのものであるとしても、最も汗をかくことになる農業者がメリットをしっかりと確保できなければ、そもそもこの戦略は現実のものとはならず、生産者と消費者の好循環も生まれることはありません。

 改めて、農業者、生産者がしっかりと利益を確保できる方策についてお尋ねをいたします。

 本戦略は、食料、農林水産業の生産性の向上と持続性の両立をイノベーションで実現とあるように、イノベーションの開発、実装が大きな鍵となります。このイノベーションの中には、現在農水省が旗を振っているスマート農業等の施策もありますが、一部の消費者にはまだ受け入れられていないゲノム編集技術の応用などもあると思います。

 生産者から消費者まで、国民各層が真に納得し、将来世代に受け継いでいけるような農林漁業、食料システムの確立に期待し、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 神谷議員の御質問にお答えいたします。

 輸入小麦の政府売渡価格についてのお尋ねがありました。

 輸入小麦の政府売渡価格は、本年の四月期は前期の十月期より一七・三%の引上げとなりますが、直近六か月間の平均買い付け価格を基に年二回改定しているため、現在のような国際相場の急激な大幅な上昇は反映されにくい仕組みとなっています。

 また、小麦は原材料の一部であり、今回の政府売渡価格の改定による小麦粉関連製品への影響は、百八十円の食パン一斤当たり二・六円増、約二百八十円の小麦粉一キログラム当たり十二円増程度と試算されます。

 今後の国際相場の動向は本年十月期の政府売渡価格に反映されるため、輸出国の動向とともに、更に注視してまいります。

 次に、従来の農政に対する反省についてのお尋ねでありました。

 農林水産行政においては、これまで、国の最も基本的な責務の一つである食料の安定供給を確保するため、生産基盤の強化、輸出力の強化等の施策を講じ、足腰の強い農林漁業の構築を図ってきたところであります。

 一方、近年は、大規模自然災害による作物の収量減少など、気候変動による農林漁業への影響が拡大しており、農林漁業に起因する一定割合の温室効果ガスの排出削減など、環境への負荷の低減にも配慮をしながら、農林漁業を将来にわたり持続可能なものとしていく必要が生じています。

 このため、本法律案に先駆けて昨年定めたみどりの食料システム戦略では、環境負荷低減に向けた意欲的な目標を定めたところであり、その実現に向けた取組は、従来の施策と相まって、農林漁業の生産基盤の強化や食料の安定供給に資するものと考えております。

 次に、食料・農業・農村基本計画とみどりの食料システム戦略の関係についてお尋ねがありました。

 令和二年三月に策定された食料・農業・農村基本計画は、食料、農業、農村に関する各種施策の基本となるものとして、今後十年程度先までの施策の方向を示したものです。この基本計画では、SDGsに貢献する環境に配慮した施策の展開として、環境負荷低減の取組を進める旨について記載しています。

 これを踏まえ、生産力向上と持続性の両立を実現するために検討を重ねた上で、みどりの食料システム戦略は、翌年の令和三年五月に作成したものであります。

 本戦略の実践を通じて環境と調和の取れた食料システムの確立を図ることは、健全な作物を育てる土づくり、化学肥料や燃油等の輸入依存からの脱却など持続的な農業の発展、ひいては基本計画に掲げる施策の推進にも寄与するものと考えております。

 次に、有機農業の取組についてのお尋ねがありました。

 みどりの食料システム戦略では、二〇五〇年までに有機農業の取組面積を百万ヘクタールに拡大する目標を掲げているところであります。

 この実現に向け、米やニンジンなど、有機栽培で安定的な生産が可能となってきた品目から先進的な取組を横展開していくとともに、除草ロボットなど、有機農業に取り組みやすくする様々なイノベーションを創出し、普通の農家が選択肢として有機農業に取り組むことができる環境をつくってまいります。さらに、生産から消費まで一貫した地域の取組を支援するとともに、消費者や流通業者など様々な関係者を巻き込み、有機農産物、有機食品の市場拡大を図ってまいります。

 一方、有機農業に取り組む農地以外にも、みどりの食料システム戦略に基づきまして、天敵の活用による化学農薬の使用量の低減や、土づくりによる化学肥料の使用量の低減などを進めます。

 これらの取組によりまして、農業全体が環境と調和して持続可能なものとなるよう、様々な施策を展開してまいります。

 次に、化学農薬の使用低減についてのお尋ねがありました。

 農作物を安定的に生産するためには、病害虫防除が必要不可欠であり、防除効果や作業の効率化の観点から、農薬は重要な防除手段の一つです。

 一方、化学農薬の使用による環境負荷を軽減し、持続的な農業生産を実現していくためには、病害虫が発生しにくい生産条件の整備や病害虫の発生予測も組み合わせた総合的病害虫管理の取組の推進、化学農薬を使用しない有機農業の面的拡大、リスクのより低い化学農薬等の開発等を推進していく必要があります。

 こうした施策と併せて、生産コスト低減に資する防除技術の開発等によりまして、単収のみならず、農家の所得向上を図りながら、環境負荷の低減を実現してまいります。

 次に、技術開発の進め方についてのお尋ねがありました。

 みどりの食料システム戦略に掲げる目標を達成していくためには、イノベーションの創出が不可欠であり、技術開発はとりわけ重要です。

 このため、開発済みの技術については速やかに普及を図りつつ、化学農薬を低減するための雑草抑制や病害虫予察など、現場への導入に改良が必要な技術につきましては、そのための予算を確保するとともに、牛からのメタンの大幅削減など、技術開発に時間を要するものについては、ムーンショット型農林水産開発事業等を活用して、着実に技術開発を進めてまいります。

 技術開発に当たりましては、地場企業や大学等の参画を得ながら人材を確保し、現場の要望に応じたものとなるよう研究開発を進めるとともに、スマート農業等のシェアリングや産地全体での技術導入など、農業者の負担を軽減するための手法を併せて検討し、技術導入を促進していく考えです。

 技術開発を含む本戦略の進捗状況につきましては、省内に設けたみどりの食料システム戦略本部において、それぞれの取組をフォローアップするとともに、戦略目標の実現に向けて必要な取組の実行に努めてまいります。

 次に、生産者が利益を確保する方策についてのお尋ねがありました。

 近年、世界的にSDGs等の認知が進み、農林漁業についても環境に与える影響が注目されるようになる中で、有機食品の市場がこの十年間で世界的に倍増するとともに、EU等、化学農薬の使用低減等の環境政策を推進する動きが出ています。

 我が国の農林漁業、食品産業におきましても、世界の人口増を見据え、輸出促進に取り組む中、このような世界の潮流を踏まえていち早く対応することは、競争力の強化を図る上で重要です。また、SDGs等への意識の高まりを受けて、環境負荷低減に取り組む必要が生じています。

 また、生産現場においても、健全な作物を育てる土づくり、化学肥料や燃油等の輸入依存からの脱却等の取組は、足腰の強い持続的な経営に寄与することになると考えています。

 このため、本法律案は、生産者だけでなく、食品事業者や消費者も含めた関係者全ての行動変容を促すための基本理念を法定化しています。また、国が講ずべき施策の方向性として、流通対策や消費対策も明記しています。さらに、技術の開発、普及等、当面考えられる支援措置を講ずることとしています。

 これらを通じて、生産者から消費者に至る食料システムの好循環を促し、環境負荷低減に取り組む生産者が利益を確保できるように、取組を進めてまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 空本誠喜君。

    〔空本誠喜君登壇〕

空本誠喜君 日本維新の会の空本誠喜でございます。

 私は、日本維新の会を代表しまして、ただいま議題となりました環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず最初に、本法案における食料システムとは、具体的にどのような仕組み、システムなのでしょうか。

 本法案では、食料システムについて、農林水産物等の生産から消費に至る各段階の関係者が有機的に連携することにより、全体として機能を発揮する一連の活動の総体と定義していますが、抽象的であって、その内容を容易に理解することができません。

 また、二〇二一年の国連食料システムサミットでは、食料システムについて、食料の生産、加工、輸送及び消費に関わる一連の活動とし、科学グループにおいて、農業、林業又は漁業、及び食品産業に由来する食品の生産、集約、加工、流通、消費及び廃棄に関する全ての範囲の関係者及びそれらの相互に関連する付加価値活動、並びにそれらが埋め込まれているより広い経済、社会及び自然環境を含むものと示しています。

 ここで、食料システムをサミットで言う食料の生産から消費に関わる一連の活動とするなら、我が国の食料システムの在り方を議論する場合、地球規模の農業生産等における環境負荷を考慮する必要があります。

 現在、世界では、八億人が栄養不良の状態にある一方、飽食による肥満で苦しむ人口も十九億人に上ると報じられております。さらに、世界の貧困層の約八割が農村部で主に農業に従事しており、食料と農業をめぐっては、世界的に富と貧困の二極化によるいびつな状況となっています。

 また、我が国の農業生産に由来する温室効果ガスは四%にすぎず、その環境負荷は、国内生産ベースでそれほど大きくありません。逆に、食料の六割強を輸入に頼っており、国際的に見ても、食料輸入大国と言っても過言ではありません。

 したがいまして、我が国の食料システムの在り方を議論する場合、地球規模の環境負荷を考慮する必要があります。すなわち、地球規模の視点から、農業生産による環境負荷として、二五%の温室効果ガス、熱帯雨林など六〇%の森林の農地転用、七〇%の取水など、これらを考慮しなければ本質の議論から大きく逸脱する可能性があります。

 さらに、本法案では、国内の農林水産物等の生産から消費については言及されていますが、食品ロスや食品廃棄といった、国際的に注目されているもったいない精神の立場からの記述や、国際貢献の立場からの施策が見受けられません。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 我が国の食料システムとは、具体的にどのような仕組み、システムなのでしょうか。食料と農業をめぐる国際的な情勢を踏まえ、地球規模での農業生産等による環境負荷の観点から、国民の皆様により分かりやすく御説明をお願いいたします。

 特に、輸入している食料や飼料などの環境負荷を本法案ではどのように捉えているのでしょうか。具体的に御説明ください。

 さらに、みどりの食料システム戦略に関する基本理念における農林漁業者、事業者、消費者等の有機的連携とはどのような連携を表すものなのでしょうか。具体的に御説明ください。

 また、我が国の食習慣の源流たるもったいない精神の立場から、本法案における取組についても御説明をお願いいたします。

 次に、食料安全保障と食料自給率についてお聞きいたします。

 現在、小麦など輸入に頼っている食料や飼料の高騰が始まっており、ウクライナ情勢によって、安定的に輸入できるか、懸念が広がっています。また、十四億人を抱える中国の巨大な胃袋、すなわち、中国の食料覇権主義を考えるとき、食料安全保障の強化も重要となっています。

 しかし、我が国の食料自給率はカロリーベースで三七%と低く、政府は食料自給率を二〇三〇年四五%と掲げていますが、これまでの一次産業のありようを振り返ってみた場合、本当に可能なのでしょうか。昨今のような国際的有事が拡大したとき、国民の胃袋を本当に賄えるのか、食料安全保障を確立できるのか、大変心配です。

 我が国の食料自給率は、私が生まれた東京オリンピック直後、昭和四十年度は七三%と安定しておりましたが、平成十年度は四〇%、さらに、平成三十年度は三七%、下降線をたどっております。

 その要因としては、自給率の高い米の消費減少、自給率の低い輸入飼料による畜産物、小麦や油脂類などの消費増加であって、米作りから飼料作物などへの転作奨励などによって食料自給率を上げようと試みていますが、小手先の対策であって、抜本的な見直しとはなっておらず、自給率向上は見込まれません。

 令和三年産米の米価下落は衝撃的であって、九月の相対価格は、前々年の六十キロ一万五千七百十六円から二千四百六十一円も下落しています。特に、西日本の米作りが危機的な状況にあります。農家の悲鳴をたくさん聞いています。これ以上下がるなら、いえ、この価格のままならば、米作りを維持できない、もうやめてしまおうとおっしゃる農家も多くおられます。競争原理といえばそれで済むのですが、一旦、耕作放棄地にしてしまえば、なかなか元どおりに戻せません。

 さらに、耕作放棄地の急増、あわせて水田荒廃による鳥獣被害の激増や限界集落の急加速化が確実視されています。

 食料自給率と担い手対策の最も効果的な方策は、誰の目にも分かるとおり、九七%と自給率の高い米の消費量を上げることです。政府は、これまで、米の消費減少を見過ごすだけで、放置してきました。

 ここで、政府が示す令和十二年度における食料消費の見通し及び生産努力目標では、平成三十年度の一人当たり一年間の米の消費量は五十四キログラムであって、令和十二年度には五十一キログラムに下落すると見通しており、これでは自給率アップにはつながるはずもありません。

 本法案では、消費者の努力義務として、消費者は、環境と調和の取れた食料システムに対する理解と関心を深め、環境への負荷の低減に資する農林水産物等を選択するよう努めなければならないと規定されています。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 消費者の努力義務とは、具体的にどのような義務なのでしょうか。国民の皆様により分かりやすく御説明をお願いいたします。

 また、消費者の努力義務として、食料安全保障の観点からも、米の消費目標を設定し、自給率向上を目指すことが肝腎と考えますが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。

 現在、アサリの産地偽装問題がクローズアップされ、真面目に出荷してきた善良な水産業者が風評被害を被っております。

 今回の偽装問題の本質は、瀬戸内海や有明海などでアサリの不漁が続いていることです。国産アサリの漁獲量は、一九六〇年代から一九八〇年代まで十二ないし十六万トン程度で安定していましたが、一九九〇年代から減少し、二〇二〇年には四千三百五トンまで落ち込んでいます。

 この原因の一つとしては干潟の消失ですが、さらに、海水中の栄養塩濃度の低下によるものです。すなわち、海がきれいになり過ぎたことによるものとの研究報告があります。

 兵庫県では、水産資源の持続的な利用の確保が盛り込まれた瀬戸内法に基づき、ノリの色落ちやイカナゴの不漁が栄養塩の不足に起因するものであることをデータに基づいて明らかにし、環境省が管理運転と呼ぶ下水道の緩和運転を進め、海域の栄養塩濃度レベルに上限値ではなく下限値を設けて、海の再生を図っています。

 窒素やリンといった海の肥料たる栄養塩がなければ生育できず、ノリやカキなども不漁となってしまいます。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 下水道放流の緩和等によって流入負荷を上げない限り、水産業は崩壊する危機にあります。ただし、下水道放流の緩和自体にはまだまだ法的な壁があります。赤潮は困りますが、大腸菌などの消毒や水質管理はしっかり行った上で、下水道放流の緩和等によって水産物の栄養分を海洋にまき、海を育てることは大変重要です。本法案の環境負荷低減の観点から、推進すべき施策であると考えますが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。

 最後に、国家戦略特区、農業特区の全国展開の是非について質問いたします。

 みどりの食料システム戦略を実現するに当たっては、担い手不足についても対策を講じる必要があります。

 私たち日本維新の会は、担い手不足対策として、さらに、農業の活性化のために、民間企業や株式会社の新規参入や土地保有を進めるべきと考えます。

 私も、元々、農地の民間所有については否定的な立場でした。企業はもうけ優先だから、うまくいかなければすぐに耕作放棄や産廃置場にするに違いないなどという発想がありました。特に、外国資本の参入を一番心配しておりました。

 しかし、今年二月、養父市に伺って、特区の農地や地域を直接確認して、市長や担当者からいろいろと事情をお聞きしました。このまま放置すれば、農業の担い手が消え、耕作放棄地が増えるばかりで、地域を維持できなくなることは必至です。結論から申し上げて、養父市は農業特区をやってよかった。

 ただし、全国展開するには条件をつける必要があります。例えば、農家が安心できる仕組み、外国資本や外国人による農地、森林、水源地などの土地取得の制限、農地転用の厳格化、農地のゾーニング、自治体などによる買戻し制度、農業特区が必要な地域の限定など、安全装置を組み込めば、全国展開できます。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 みどりの食料システム戦略を実現するに当たって、担い手不足対策として、農家が安心できる仕組み、安全装置を組み込んだ上で、農地所有にこだわらず、農地のリース方式も併用しながら、農業特区が必要な地域への全国展開を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。

 最後に、私たち日本維新の会は、農家や農業関係者だけではなく、農家と消費者のための農業への大転換、大改革を行ってまいります。日本維新の会は、これまでの政治によって翻弄され衰退してきた農業を再興するために、約五十年続いてきた減反政策、生産調整によって競争力を失った米作りを再興するために、農家と消費者の目線で農政の抜本的な改革を行ってまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 空本議員の御質問にお答えいたします。

 食料システムの意味等についてのお尋ねがありました。

 本法律案における食料システムとは、フードシステムという国際的に用いられている用語と同様、農林水産物、食品の生産、製造、卸売、小売等を経て消費に至る一連の流れを指します。

 近年、気候の変動、生物多様性の低下等を背景に、国際的には、食料システム全体を捉えて、その環境負荷の低減に取り組むことが共通の認識となっており、欧米を中心に、これに向けた各国の動きが出てきています。

 また、我が国におきましても、SDGs等の環境への意識が高まる中、消費者支持の下、農林漁業及び食品産業を将来にわたり持続可能なものとしていく必要が生じています。

 このような観点を踏まえ、本法律案では、環境と調和の取れた食料システムの確立を図ることとし、食料や飼料の輸入も含め、国内外を問わず、農林水産物、食品の生産から流通までの過程において環境負荷の低減を図ることを目指しております。

 また、これを実現するためには、農林漁業者及び食品事業者が環境負荷低減の取組を行い、消費者等も、このような取組の意義を理解し、共感しながら購買を行うなど、システム全体で環境負荷が低減されるような有機的な連携が必要であると考えています。

 食料システムにおける食品ロスの削減に当たりましては、納品期限の緩和などの事業者の商慣習の見直し、小売業を始め各事業者における需要予測の精緻化、規格外品の積極的な利用等の取組が重要であり、本法律案に規定する関係者の理解の増進、流通の合理化の促進等の措置の一環として、引き続き食品ロスの削減に取り組んでまいります。

 次に、消費者の努力義務及び米の消費目標についてのお尋ねがありました。

 本法律案は、環境と調和の取れた食料システムの確立を図ることを目的としており、農林漁業者や食品事業者の取組だけではなく、消費者においても、趣旨を十分理解いただき、有機農産物など環境に配慮した農林水産物の選択をすることで、生産サイドの取組を後押しし、環境負荷低減に貢献していただくことを意図したものです。

 国としても、環境負荷低減の取組が、消費者や関係者に、より理解され、そうした農林水産物等が選択いただけるよう、消費者等に分かりやすい表示や広報、環境負荷低減の状況を把握する手法の開発等の取組を進めてまいります。

 また、米の一人当たりの消費量は減少傾向が続いていますが、令和二年度に策定した食料・農業・農村基本計画では、米の一人当たり消費量の減少傾向に歯止めをかけることを明記しており、その実現に向けて、米飯給食の促進、米の機能性の発信、さらにはパック御飯など新たな需要拡大や輸出促進等に取り組んでまいります。

 次に、下水道放流の緩和による栄養塩の供給についてのお尋ねがありました。

 瀬戸内海においては、窒素、リンといった栄養塩類の不足が水温上昇等の環境変化と相まって、ノリの色落ちが起きていること、また、イカナゴなどの漁獲量が減少していることが指摘されています。

 このため、農林水産省は、水産資源の適切な保存及び管理を図るための措置として、栄養塩類が水産資源に及ぼす影響の解明のための調査研究、下水処理場の管理運転などを行っている海域において、栄養塩類濃度の上昇などの海域に対する影響の調査、ノリの養殖漁場などへの施肥の技術開発を行っているところです。

 農林水産省としては、引き続き、環境省など関係省庁とも連携を取りまして、瀬戸内海などにおいて、海況の特殊性を踏まえつつ、漁業の生産性の確保に向けて、府県や漁業関係者による栄養塩類の適切な管理や供給のため、必要な調査研究などを進めてまいります。

 次に、農業特区の全国展開についてお尋ねがありました。

 株式会社等の企業は、高齢化や担い手不足が進行する地域等において農業生産を担う存在として期待できるものであり、その農業参入を進めることも重要です。

 企業の農業参入については、平成二十一年度の農地法の改正で、農地リース方式での参入を完全に自由化したところです。現に、法改正前の五倍のペースで参入が進んでおり、これを更に推進してまいります。

 一方、企業の農地取得については、農業からの撤退、農地の転売等に対する生産現場の懸念が存在することも事実であり、慎重に検討していくことが必要と考えております。

 養父市で活用されている法人農地取得事業については、昨年六月の成長戦略フォローアップで、ニーズと問題点の調査を実施することとしており、本特例の取扱いについては、この調査の結果に基づき検討してまいります。

 以上です。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       国務大臣    二之湯 智君

 出席副大臣

       農林水産副大臣 武部  新君


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