第12号 令和4年3月17日(木曜日)
令和四年三月十七日(木曜日)―――――――――――――
議事日程 第八号
令和四年三月十七日
午後一時開議
第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
第三 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)
第五 情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案(内閣提出)
第六 二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)
第七 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第八 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第九 貿易保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
日程第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
日程第三 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)
日程第五 情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案(内閣提出)
日程第六 二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)
日程第七 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第八 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第九 貿易保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)及び経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(細田博之君) これより会議を開きます。
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中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
○議長(細田博之君) 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名を行います。
○山田賢司君 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
議長は、中央選挙管理会委員に
宮里 猛君 門山 泰明君
神本美恵子君 西 博義君
及び 橋本 雅史君
を指名いたします。
また、同予備委員に
元宿 仁君 阿部 信吾君
平川 憲之君 魚住裕一郎君
及び 島松 洋一君
を指名いたします。
――――◇―――――
○議長(細田博之君) 日程第一とともに、日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略し、両案を一括して議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。
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日程第一 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(農林水産委員長提出)
○議長(細田博之君) 日程第一、土地改良法の一部を改正する法律案、日程第二、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。農林水産委員長平口洋君。
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土地改良法の一部を改正する法律案及び同報告書
特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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〔平口洋君登壇〕
○平口洋君 ただいま議題となりました両法律案につきまして申し上げます。
まず、土地改良法の一部を改正する法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、自然災害に対する土地改良施設の安全性の向上を図るとともに、農用地の利用の集積を促進するため、ため池等の農業用用排水施設の豪雨対策を目的とした急施の防災事業の実施、農地中間管理機構が賃借権等を取得した農用地を対象とした土地改良事業の拡充等の措置を講ずるものであります。
本案は、去る三月一日本委員会に付託され、翌二日金子農林水産大臣から趣旨の説明を聴取し、十五日質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。
次に、特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法は、特殊土壌地帯の保全と農業生産力の向上を図ることを目的として、昭和二十七年四月、議員立法により五年間の時限法として制定され、以後十三度にわたり期限延長のための一部改正が行われました。
今日までの七十年間にわたる特殊土壌地帯対策事業の実施により、災害防除と農業振興の両面において改善がなされてきたところでありますが、台風の襲来や、近年の短時間強雨の発生頻度等が増加する中、依然として、特殊土壌地帯において大きな被害が発生しているなど、今なお対応すべき多くの課題に直面しており、引き続きこれらの事業を推進していく必要があります。
こうした観点から、本案は、本年三月三十一日をもって期限切れとなる現行法の有効期限を更に五年間延長しようとするものであります。
本案は、去る十五日、農林水産委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) これより採決に入ります。
まず、日程第一につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第二につき採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
――――◇―――――
日程第三 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第三、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。安全保障委員長大塚拓君。
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防衛省設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔大塚拓君登壇〕
○大塚拓君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官の定数の変更、外国における緊急事態に際して防衛大臣が行う在外邦人等の輸送の要件等の見直し、外国の軍隊への麻薬等の譲渡に係る特例規定の整備及び保険医療機関等から診療を受けようとする自衛官等に係る電子資格確認の導入等の措置を講ずるものであります。
本案は、去る三月八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、十日岸防衛大臣から趣旨の説明を聴取し、十五日、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
○議長(細田博之君) 日程第四は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。
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日程第四 豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)
○議長(細田博之君) 日程第四、豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長小里泰弘君。
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豪雪地帯対策特別措置法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔小里泰弘君登壇〕
○小里泰弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
豪雪地帯においては、人口減少や高齢化が進み、除排雪の担い手の不足やその安全の確保、積雪による空き家の倒壊等が深刻な問題となっております。
また、近年は、気候変動による降雪の態様の変化への対応も求められております。
本案は、このような状況に鑑み、豪雪地帯対策の基本理念を定め、財政上の措置に関する規定を見直すとともに、豪雪地帯の特性を踏まえた防災施策の促進、交付金の交付その他の措置、除排雪時の死傷事故防止、幹線道路の交通の確保等のための規定の追加等を行い、あわせて、本年三月三十一日までとなっている特別豪雪地帯に対する特例措置の期限を十年間延長する等の改正を行おうとするものであります。
本案は、昨十六日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。
なお、豪雪地帯対策の充実強化に関する件を本委員会の決議として議決したことを申し添えます。
何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
――――◇―――――
日程第五 情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第五、情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長上野賢一郎君。
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情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔上野賢一郎君登壇〕
○上野賢一郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、国の歳入等の納付に係る関係者の利便性の向上を図るため、国の歳入等の納付の方法について定めた他の法令の規定にかかわらず、情報通信技術を利用する方法による国の歳入等の納付を可能とするために必要な事項を定めるものであります。
本案は、去る三月十日本委員会に付託され、翌十一日牧島デジタル大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、十六日に質疑を行い、質疑終局後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第六 二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第六、二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。外務委員長城内実君。
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二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔城内実君登壇〕
○城内実君 ただいま議題となりました法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、令和七年に開催される大阪・関西万博に関し、国際博覧会条約の規定に基づく政府代表の設置及びその任務、給与等について定めるものであります。
その主な内容は、
外務省に、特別職の国家公務員であり、かつ外務公務員である二千二十五年日本国際博覧会政府代表一人を置くこと、
政府代表は、大阪・関西万博に関する事項について、国際博覧会条約の定めるところにより、日本国政府を代表することを任務とすること、
政府代表の任免は、外務大臣の申出により内閣が行うこと
などであります。
本案は、去る三月十日外務委員会に付託され、翌十一日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨十六日に質疑を行い、討論の後、採決を行いました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第七 構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第七、構造改革特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。地方創生に関する特別委員長石田真敏君。
―――――――――――――
構造改革特別区域法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔石田真敏君登壇〕
○石田真敏君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地方創生に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図るため、所要の措置を講ずるものであります。
その主な内容は、
第一に、学校教育法の特例として、区域内の職業能力開発短期大学校における高度職業訓練で長期間の訓練課程のものを修了した者が区域内の大学に編入学できること、
第二に、国立大学法人法の特例として、革新的な研究開発等を行おうとする者に区域内の国立大学法人の土地等の貸付けを行う場合は、文部科学大臣の認可を事前の届出をもって代えることができること
等であります。
本案は、去る三月九日本委員会に付託され、翌十日野田国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、十六日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第八 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第八、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生労働委員長橋本岳君。
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雇用保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔橋本岳君登壇〕
○橋本岳君 ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、新型コロナウイルス感染症による雇用情勢及び雇用保険財政への影響等に対応し、雇用の安定と就業の促進を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、雇用保険の失業等給付について、雇い止めによる離職者等に係る基本手当の給付日数の特例等を継続するほか、離職後に事業を開始した者に係る基本手当の受給期間の特例を創設するとともに、公共職業安定所長が受講を指示する公共職業訓練等の対象に求職者支援訓練を追加すること、
第二に、雇用保険財政について、令和四年度の保険料率を激変緩和のために引き下げるとともに、雇用情勢や雇用保険財政に応じ、失業等給付に係る国庫負担を機動的に行える仕組みを導入することなどの措置を講ずること、
第三に、職業安定法について、労働者になろうとする者に関する情報を収集して行う募集情報等提供事業に係る届出制の創設等により事業運営の適正化の推進を図ること、
第四に、地域の実情に応じた職業能力の開発及び向上の促進のための取組が適切かつ効果的に実施されるよう、都道府県の区域ごとに関係者による協議会を組織する仕組みの創設等を行うこと
等であります。
本案は、去る三月三日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、翌四日後藤厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、九日から質疑に入り、十一日に立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の三会派より、雇用保険について、国庫負担割合を引き下げる改正を行わないこと、政令で定める基準に従い機動的な国庫の負担が確保されるようにすること等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。
また、十五日には原案及び修正案について参考人から意見を聴取し、昨日質疑を終局いたしました。質疑終局後、修正案について内閣の意見を聴取した後、原案及び修正案について討論、採決を行った結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
日程第九 貿易保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(細田博之君) 日程第九、貿易保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。経済産業委員長古屋範子君。
―――――――――――――
貿易保険法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔古屋範子君登壇〕
○古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本法律案は、本邦企業の国際的な事業展開を取り巻く環境の変化に対応して、円滑な外国貿易その他の対外取引の進展を図るため、輸出入、貸付け及び海外投資に係る貿易保険の填補事由等の拡大、新たな貿易保険の創設、株式会社日本貿易保険による外国法人への出資業務の追加等の措置を講ずるものであります。
本案は、去る三月八日本委員会に付託され、翌九日萩生田経済産業大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨十六日に質疑に入り、質疑終局後、討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
○山田賢司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
議院運営委員長提出、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案の三案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
―――――――――――――
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
○議長(細田博之君) 国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案、国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長山口俊一君。
―――――――――――――
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案
国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案
国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔山口俊一君登壇〕
○山口俊一君 ただいま議題となりました各法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案は、人事院勧告に伴い、内閣総理大臣等の特別職の国家公務員に令和四年六月に支給される期末手当の特例措置が講じられることに準じて、各議院の議長、副議長及び議員について同様の措置を講じようとするものであります。
次に、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案は、人事院勧告に伴い、一般職の国家公務員に令和四年六月に支給される期末手当の特例措置が講じられることに準じて、国会議員の秘書について同様の措置を講じようとするものであります。
次に、国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案は、政府職員の改正に準じて、国会職員について育児休業の取得回数の制限を緩和しようとするものであります。
各法律案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。
何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) これより採決に入ります。
まず、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。
次に、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。
次に、国会職員の育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
――――◇―――――
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)及び経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明
○議長(細田博之君) この際、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣小林鷹之君。
〔国務大臣小林鷹之君登壇〕
○国務大臣(小林鷹之君) ただいま議題となりました経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設する必要があります。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
第一に、特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度として、外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある重要な物資の安定供給確保を図るため、特定重要物資を指定し、事業者の取組を支援するとともに、安定供給確保が困難と認めるときは政府が更なる対策を講ずる制度を創設することとしております。
第二に、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度として、国民生活及び経済活動の基盤となる特定の役務の安定的な提供を確保するため、妨害行為の手段として使用されるおそれがある重要な設備等を審査する制度を創設することとしております。
第三に、特定重要技術の開発支援に関する制度として、先端的技術のうち、当該技術が外部に不当に利用された場合等において、国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがある技術の研究開発の促進と適切な活用のため、必要な情報の提供、資金の確保、調査研究等の措置を講ずる制度を創設することとしております。
第四に、特許出願の非公開に関する制度として、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明の特許出願につき、出願公開等の手続を留保し、発明の開示や実施を制限することを可能にする制度を創設することとしております。
以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日としております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(細田博之君) 提出者足立康史君。
〔足立康史君登壇〕
○足立康史君 日本維新の会の足立康史でございます。
私は、党を代表し、ただいま議題となりました経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
ウクライナ危機とそれに伴う国際経済秩序の混乱は、決して対岸の火事ではありません。また、東アジアにおける中国の軍事、経済面での急拡大を背景とした覇権主義的な動向は、我が国の安全保障上、喫緊かつ深刻な問題となっています。
一方、国際社会における米国のプレゼンスは低下しており、これまで我が国の安全保障上のよりどころであった日米同盟は、将来にわたっての絶対的な防衛力とは言い難い状況にあります。それは経済安全保障についても同様であり、世界各国がしのぎを削る国際経済社会において、我が国が、独立国として、自らの意思と努力により、国民の生命と財産を守る覚悟、決断、実行力があるのか、今まさに問われているものと考えています。
また、経済安全保障の確立のためには、民間事業者に一定の義務を課することもやむを得ないものであり、仮にその実効性を担保する措置が政治的な配慮によってねじ曲げられたといった事態があるとすれば、国民の生命と財産を守る覚悟、決断、実行力が足りないとのそしりを免れないものと指摘をしておきたいと存じます。
次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
この法律案においては、経済安全保障を、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保と位置づけ、経済安全保障に関する諸施策を実効的かつ総合的に推進するため、基本原則及び配慮事項を定めています。
そして、国は、基本原則にのっとり、かつ、配慮事項に基づき、経済安全保障に関する諸施策を実効的かつ総合的に推進する責務を有することを明記するとともに、事業者に対しても、国が実施する経済安全保障に関する諸施策に協力する努力義務を規定しています。
そのほか、国、事業者等の相互間の緊密な連携協力体制の整備、経済安全保障の調査研究等を支えるインテリジェンス体制の整備、経済安全保障の重要性に関する国民の理解の増進を規定しています。
なお、この法律は、公布の日から施行することとしています。
以上が、この法律案の提案の趣旨及びその内容です。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)
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経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)及び経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。工藤彰三君。
〔工藤彰三君登壇〕
○工藤彰三君 自由民主党の工藤彰三です。
ただいま議題となりました経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)
まず冒頭に、昨夜の地震により被害に遭われた方に対し、お見舞い申し上げます。
政府におかれては、既に対応を始めておりますが、被害に対し必要な対策を早急に行うことを願います。
また、ロシア軍によるウクライナ侵攻で戦火の犠牲になられた皆様に対し、お見舞いを申し上げるとともに、哀悼の誠をささげます。そして、一刻も早く平和と安寧の日が戻るよう、心からお祈り申し上げます。
政府には、国際社会と結束して、ロシア政府に対して、国際秩序を揺るがす暴挙を即刻中止するよう強く働きかけることを求めます。
その上で、本題に入ります。
緊迫する国際情勢の中、経済は経済、安全保障は安全保障という時代は終わりを迎え、我が国の経済安全保障の確保は待ったなしの状況となりました。
例えば、コロナ禍において、世界中でワクチンや治療薬、先端半導体の争奪戦が激化し、サプライチェーンの脆弱性が国民の生命や生活を脅かすリスクが露呈しました。
また、世界各国において、国家の関与するものも含め、サイバー攻撃により経済活動が混乱する事例が生じています。さらには、革新技術が安全保障環境を左右する中で、世界各国は、技術流出の防止に加えて、先端技術の研究開発にしのぎを削っています。
自民党では、政府に先行していち早く議論を積み重ね、戦略的自律性と戦略的不可欠性を経済安全保障の要諦と定め、経済安全保障推進法の制定を求めてきました。
岸田政権において、小林鷹之大臣が初の経済安全保障担当大臣に任命されたことで、経済安全保障推進法案が策定されるに至りました。この法律案は重要な第一歩です。
そこで、まず、経済安全保障推進法案の意義について、岸田内閣総理大臣の基本認識をお伺いいたします。
本法律案では、安全保障の確保に関する経済施策として、四つの制度を創設します。
まず、サプライチェーン強靱化支援についてお尋ねいたします。
近年、世界各国は、国民の生存と繁栄の基盤を他国に依存するリスクに正面から向き合い、強靱なサプライチェーンを構築するため、競うように巨額の支援を打ち出しています。
自民党は、これまでも、サプライチェーン全体を俯瞰して我が国の脆弱性を特定した上で、我が国自身の努力によってそれを克服し、サプライチェーンの強靱化、多元化に取り組む必要性を訴え続けてきました。
本法律案によって、どのように重要な物資のサプライチェーンの強靱化を図り、戦略的自律性と戦略的不可欠性の確保につなげていくのか、小林大臣にお伺いいたします。
次に、基幹インフラの安全性、信頼性の確保についてお尋ねいたします。
基幹インフラの安定的な提供は、安全保障の観点からも重要です。サイバー攻撃の中には、国家間の緊張が高まる中で、相手国の電力などの基幹インフラを停止させ、混乱を引き起こした事案も出ています。
機器のサプライチェーンが複雑化、グローバル化する中、基幹インフラの設備に一たび悪いものが入り込むと取り返しがつかない事態が生じ得るため、従来のセキュリティー対策にとどまらない対策が必要です。
このため、基幹インフラの設備等の事前審査を行うことが重要と考えますが、本法案においてこの制度を設けるに当たっての基本的な考え方について、小林大臣にお伺いします。
次に、先端的な重要技術の開発支援についてお尋ねいたします。
先端的な重要技術をめぐっては、既に各国間で将来の覇権獲得に向けた苛烈な競争が行われており、これに立ち遅れることになれば、将来の我が国の生存と繁栄に影響が及びかねません。
主要国が国としての優位性を維持、確保するために巨額の投資を進める中、我が国として、技術的な優位性を高め、不可欠性につなげていく取組が不可欠であります。
先端的な重要技術の研究開発に我が国として取り組む決意とともに、この法案を通じていかに研究開発を進め、また人材の育成、確保を図っていくことについて、小林大臣にお伺いいたします。
最後に、特許出願の非公開についてお尋ねいたします。
G20で特許非公開制度がないのはメキシコ、アルゼンチンそして日本のみという状況の中で、諸外国並みの制度を整え、機微な発明の特許出願を非公開とする制度を整備することは、安全保障の観点から大きな一歩です。
一方で、最先端の技術の研究開発については、世界各国で熾烈な競争が行われている中で、我が国で研究の芽を摘むことなく、イノベーションを促進していくことも重要です。本法律案で設ける特許出願を非公開にする制度において安全保障とイノベーション促進の両立をどのように図っていくのか、小林大臣にお伺いします。
かつて我が国は大戦後から奇跡の復興を成し遂げ、経済の安定、安全な治安を構築し、教育制度も充実させ、安定した雇用を創出し、豊かに暮らせる世界一の長寿大国。世界各国から、一度は訪ねてみたい、働いてみたい、暮らしてみたい日本。過去には、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた時代がありました。もう一度挑戦して、新たな時代をつくり出したいと考えています。
今やるべき課題は山積しています、震災からの復興、国土強靱化、長く続くコロナ禍からの早期復活。大変な我慢に耐えていただいた子供たち、若者の皆さんに希望の持てる国家を渡す責任と義務があります。そして、混迷する世界を再度牽引できるだけの経済を取り戻さなければなりません。
そのための重要な経済安保法案だと確信しております。議場の皆様方でしっかりと議論と質疑をしていただきまして、一刻も早い成立を祈念いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 工藤彰三議員の御質問にお答えいたします。
経済安全保障推進法案の意義についてお尋ねがありました。
経済安全保障の取組を進めるに当たっては、民間の自由な経済活動を阻害しない形で、経済構造の自律性の向上、日本の技術優位性ひいては不可欠性の確保を目指すと同時に、こうした分野に民間投資を呼び込むことが重要です。
本法律案は、こうした考え方の下、国民生活や経済活動への影響が大きい物資のサプライチェーンの強靱化への支援、通信や電力など基幹インフラの安全性や信頼性の確保、AI、量子といった分野の官民の研究開発、安全保障上機微な発明の特許非公開制度、この四つの取組により、経済安全保障を総合的かつ効果的に推進することを目的とするものです。
本法律案により、経済安全保障の一層の確保を図ってまいります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小林鷹之君登壇〕
○国務大臣(小林鷹之君) 工藤議員からの御質問にお答えいたします。
まず、サプライチェーン強靱化についてお尋ねがありました。
近年、世界各国が戦略的物資の確保や重要技術の獲得にしのぎを削る中、経済構造の自律性の向上、我が国の技術などの他国に対する優位性、ひいては国際社会にとっての不可欠性の確保に向けた取組を推進していく必要があると認識しております。
こうした認識の下、今回の法案は、国民の生存や国民生活、経済活動にとって重要であるにもかかわらず、その供給を外部に依存している、又は依存するおそれがあり、安定供給確保を図ることが特に必要な物資について、平時からサプライチェーンの強靱化を図るものです。
具体的には、物資の特性に応じた生産基盤の整備や代替物資の開発など、民間事業者の多様な取組に対し、必要な助成や金融支援の措置等を講じることで、当該物資のサプライチェーン強靱化を図ることとしております。
次に、基幹インフラの安全性、信頼性の確保についてお尋ねがありました。
国民生活や経済活動の基盤となる基幹インフラの安全性、信頼性の確保は、我が国の安全保障上の重要な課題です。
一方で、世界各国において、基幹インフラ事業がサイバー攻撃の対象となる事案が増加しており、また、ICT機器の高度化やサプライチェーンの複雑化などにより、サプライチェーンの過程で基幹インフラ事業者が使用する設備に不正機能が埋め込まれる可能性があるなど、基幹インフラ事業者が利用する設備を取り巻くリスクが高まっています。
こうした現状を踏まえ、基幹インフラの安定的な提供を確保するため、基幹インフラ事業者による重要な設備の導入等について、その設備が外部からの妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいか否かを事前に審査するなどの制度を設けることとしています。
本制度については、我が国の安全保障と事業者の経済活動の自由の両立を図ることが重要であるとの考えに基づき、事業者の経済活動を過度に制約しないためにも、規制対象となる事業、事業者、設備は、国家及び国民の安全に与える影響に鑑み真に必要なものに限定することとしています。
次に、先端的な重要技術の研究開発の促進等についてお尋ねがありました。
近年、科学技術、イノベーションが激化する国家間の覇権争いの中核を占めている中、先端的な重要技術の研究開発の促進等は、我が国の国民生活や経済活動にとって重要であるのみならず、中長期的に我が国が国際社会で確固たる地位を確保し続ける上で不可欠です。
本法案は、若手の研究者、技術者を中心とした人材の養成と資質の向上の観点も踏まえ、諸外国に伍する形で研究開発を進めるべく、国による資金支援、官民協力体制の構築、先端的な重要技術に係る情報収集等に関する制度を整備するものです。
こうした施策を通じて、我が国でも、近年重要性が増している宇宙、海洋、量子、AI等の研究開発等を促進し、国民生活の向上等にとどまらず、世界が直面する様々な課題への積極的な貢献等により、国際社会での不可欠性の獲得に取り組んでまいります。
次に、特許出願の非公開制度についてお尋ねがありました。
特許出願の非公開制度は、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載された特許出願につき、出願公開などの手続を留保するとともに、その間、必要な情報保全措置を講じることで、特許手続を通じた機微な技術の公開や情報流出を防止するものです。
御指摘のありました安全保障とイノベーション促進の両立という観点は、政府としても、この制度を創設する上で最も気をつけなければならない重要な点であると認識をしております。
そこで、本法律案では、発明を非公開とすることが適当か否かの判断に当たり、技術の機微性のみならず、非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響を考慮して、保全の対象となる発明を十分に絞り込む仕組みとするなど、我が国の経済活動やイノベーションを阻害することのないよう配慮した制度としております。(拍手)
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○議長(細田博之君) 篠原豪君。
〔篠原豪君登壇〕
○篠原豪君 立憲民主党の篠原豪です。
会派を代表し、経済安全保障推進法案について質問いたします。(拍手)
冒頭、昨晩午後十一時三十六分、福島県沖を震源とした最大震度六強の大規模な地震が宮城、福島県を中心に発生いたしました。
この地震でお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、東日本大震災からの復興のさなか、再び大きな被害を受けた皆様に、お見舞いと、多くの国民が心を痛めていることをお伝えし、政府には、迅速な状況把握と必要な支援、対策に最大限の御尽力をお願いいたします。
また、今回のロシアによるウクライナ侵攻は、侵略であり、明確な国際法違反であることを確認したいと思います。力による国際秩序の変更は許されません。特に、国連常任理事国が、武力行使の違法化を定めた国連憲章に真っ向から反する行動を取ったことは、極めて重大です。
我々は、今、ロシアの暴挙に対し勇敢にも国を守るために戦っているウクライナの国民に、連帯の意を示したいと思います。
また、同時に、犠牲になられた方々に、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。
さて、法案についてです。
まず、法案作成に携わった藤井前法制準備室長に関してです。
報道等で、民間のビジネススクールで師範役を務め、たくさんの民間事業者への無届け講演活動を行っていたことが明らかになりました。特に、民間事業者から金銭授受をした上で講演を行い、さらには、頻繁に国家安全保障局事務所に招き入れたことも明らかになりました。このことから、本法制にゆがみが生じているのではないかという疑念が払拭できない。岸田政権の経済安保法制が、民間事業者からの不適切な介入を受け、ゆがみを生じさせたとなると極めて重大です。
先般、政府が公表した調査報告書において、藤井前審議官のあってはならない行為をもって法案がゆがめられた、あるいは情報が漏えいされたといった核心的な点に関しては、何ら報告がされていませんでした。
そこで、改めて岸田総理に伺います。
岸田政権の一丁目一番地たる経済安保法制が藤井前審議官の不適切な行為の下でゆがめられたのではないか、この点について明快な答弁を求めます。
加えて、このような不適切な人物を経済安保法制の作成責任者として任命していたことによる総理の任命責任についてどのようにお考えか、明快な答弁をお願いいたします。
さて、法案そのものについてです。
経済安全保障法制に関する有識者会議の提言は、冒頭で、我が国が、自由で開かれた経済を原則とし、民間主体による自由な経済活動を促進することで、経済発展を続けてきたことを述べています。他方、その重要性を確認しつつも、近年、科学技術やイノベーションをめぐる国家間の覇権争いが激化している状況に対応するため、諸外国では、産業基盤強化の支援、先端的な重要技術の研究開発、機微技術の流出防止、輸出管理強化等の施策の推進、強化を指摘しています。
したがって、経済と安全保障を切り離して考えることはもはや不可能で、我が国としても、他国への過度の依存を克服するため、経済の自律性を向上させるとともに、技術面でも他国との競争において優位性を確保することは喫緊の課題であるとする基本認識には異存はありません。
しかし、安全保障を名目とした規制は、たとえ意図していなかったとしても、先ほど引用した、自由で開かれた経済、あるいは民間主体による自由な経済活動にダメージを与える可能性がございます。
自由な経済は、商品の価格低下や生産性の向上に必要不可欠で、世界経済発展の基盤であり、その実現を妨げたのでは本末転倒になります。ですから、問題は、経済と安全保障がバランスの取れたものになっているかということです。
この点で、経済安全保障の定義が法案の中にないのはこの根本問題に真剣に向き合う姿勢が感じられないという意味で、法案には欠陥があると考えられます。なぜならば、経済安全保障の定義が曖昧なまま議論が拡大をすれば、経済の根幹である費用対効果を無視した政策が行われる危険性があるからです。
まずは、政府はこうした疑問にどう答えるのでしょうか。お伺いをいたします。
次いで、サプライチェーンの強靱化についてです。
特定重要物資の定義ですが、この定義については、他国への過度な依存を減らし自律性を確保するために指定される特定重要物資の定義、これは第七条ですけれども、これが余りにも広い。端的に供給途絶リスクが高い物質と規定すれば、極めて限定的で分かりやすいと思います。ですので、こうすればいいと思うんですが、政府の答弁を求めます。
次に、サプライチェーンのリスク調査についてです。
特定重要物資の指定に当たっては、あらかじめサプライチェーンを広く調査し、経済安全保障に関わる安定供給のリスクを把握しておく必要があります。しかし、サプライチェーンは極めて複雑で、外部からはうかがい知ることができないのが実態です。
したがって、企業が調査に応じる意思があるとしても、サプライチェーンはグローバルに広がっているので、報告をまとめるため、とてつもない時間とコスト、人員を必要とします。本当に企業にそんな負担を求めることが可能であると考えているのでしょうか。場合によっては、調査対象を絞り込むことで実効性を上げることもあり得るのでしょうか。伺います。
また、サプライチェーンに関する情報は、企業の競争力を左右するものであり、外部には決して公開しない企業秘密に属します。もちろん、財政支援につながりますので、それなりの対応は期待できますが、実際上、政府は、民間企業はどこまで求めに応じていただけると考えているのでしょうか。御説明ください。
さらに、幾ら所管官庁が守秘義務を負うとはいっても、国家間競争の様相を呈している中、例えば、中国の企業が素直にそうした情報をストレートに我が国に出すと考えているのか、政府にお伺いしたいと思います。
財政支援によるサプライチェーンの再構築について伺います。
これは、政府が特定重要物資を指定すると、関係する民間企業は、国の取組方針に沿った取組計画を作成し、最終的には財政支援を受けることになります。しかし、財政支援を通じた自国産業の保護が行き過ぎれば、企業の新陳代謝を阻む可能性があります。
いずれにせよ、戦略的自律政策は、短期的には国際分業の利益を失い、日本経済の弱体化につながります。また、国内生産強化は、各国の政府による補助金競争になることは目に見えています。この誰もが指摘している問題に政府はどのようにお答えいただけるのか、お伺いをいたします。
さきの国会で、半導体については、政府は既に先端半導体工場の新増設を支援する改正法を成立させ、台湾のTSMCに四千億円の補助金を出し、熊本県内に汎用型の半導体工場を誘致しました。
これで安定調達が実現するのであれば、経済安全保障推進法案がなくても、政府の政策判断で戦略的自律ができるということではないのでしょうか。そうなると、半導体を改めて特定重要物資に指定する意味はどこにあるのか。四千億円も使って、国会を通していますから。国民の皆様に分かりやすく御説明ください。
次に、特別の対策を講ずる必要がある特定重要物資の指定についてです。
民間の取組だけでは不十分な場合、国自らが対策に乗り出すことが第四十四条に規定をされています。こうした措置は、経済原理と相反するもので、極めて緊急性の高い場合のみ発動が許されるものでなければなりません。
第八項には、供給不足による価格高騰時の在庫放出を挙げていますが、買占めの禁止、上限価格の設定、生産の委託、生産命令等も含まれるのか、このことについてお伺いします。
また、供給不足による価格高騰時以外にどのような緊急時を想定しているのか、お答えください。
基幹インフラの安全性、信頼性確保について伺います。
事前審査制度についてです。
政府は、基幹インフラの安全強化のため、対象事業者が設備を導入する際、また、その設備の維持管理等を委託する場合にも、事前審査を行うとしています。
しかし、その目的がサイバーセキュリティーであることがなぜ法文に明記されていないのでしょうか。お伺いいたします。
また、経済への過剰介入を避けるため、対象事業者を大手企業に絞り込むことになっていますが、対象分野の全ての大企業でなく、厳に最小限の企業に絞り込むということは考えていないのか、教えてください。その際、事業者の意見はどのように聞いてもらえるのかについても、併せてお答えをお願いいたします。
先日、トヨタの取引先の部品メーカーがサイバー攻撃を受け、国内のトヨタ全十四工場が稼働停止に追い込まれるという事件が発生をいたしました。政府は、こうした事態を回避するためどのような方策を考えているのか、御説明ください。
また、基幹インフラのドローンによる維持管理システムを提供する業者のシステムは自社製でも、ドローンは中国製ということがよく言われていますけれども、これが圧倒的に多いとされていますので、その場合はどのような措置が取られるのか、お伺いをいたします。
勧告、命令についてもお伺いをいたします。
勧告で、リスク低減策を示すことは当然としても、設備の導入自体を変更、中止することは、余りにも事業者負担が大きいので、可能な限り回避すべきと考えますが、政府の方針を伺います。
次に、官民協力による先端的重要技術の育成、支援について伺います。
まず、既存プロジェクトとの調整についてです。
経済安保の対象になることが予定されている宇宙、海洋、量子、AI、バイオなどでは、既存の振興策に従ったプロジェクトが既に進行中であると考えます。また、そうしたプロジェクトには海外の企業や研究者が参加をしていることも珍しくないと思います。
仮にそうしたプロジェクトが特定重要技術に指定された場合、これまで参加してきた海外からの企業や研究者の扱いはどのように変わるのでしょうか。国籍だけで排除することはできないと考えますが、参加基準はどのようなものになるのか、お示しください。
次に、情報の流出についてです。
協議会の構成員あるいはシンクタンクの関係者に求める守秘義務の対象は機微な情報とされていますが、その定義をあらかじめ明確にしておくことで、民間の協力も得られやすいと考えます。ついては、その定義をお示しください。
セキュリティークリアランス制度についてです。
安全保障に関わる先端技術の取扱いについては、国際共同研究を円滑に推進し、我が国の技術的優位性を確保、維持する観点からも、いわゆるセキュリティークリアランス制度が重要であるとされています。政府は、今後、民間人もカバーをするセキュリティークリアランス制度の整備をどのように考えているのか、お伺いをいたします。
特許の非公開制度について伺います。
まず、制度導入についてです。
特許制度による発明情報の公開が安全保障に深刻な影響を与えるということで特許の非公開制度が導入されているわけですが、他方で、論文等による研究成果の公表は自由であり、こうした形態による公表については、自律的な研究倫理、そして契約等に委ねることが大前提ということでよろしいのか、お伺いします。
また、場合によっては、特許の非公開制度が実質無意味になることもあり得ると考えますが、政府による罰則等の規制があるのかどうかもお答えください。
次に、機微技術の判断についてです。
公になれば我が国家国民の安全を損なう事態を生じるおそれが大きい発明、つまり機微技術であるか否かの判断基準では、どういうものが蓋然性が高いかを予見可能な形で具体的に示すことが重要と考えます。ですから、こうした制度の根幹に関わる事柄が政令に委ねられているのはおかしいとは思いませんでしょうか。
政令には、核兵器の開発につながる技術及び武器のみに用いられるシングルユース技術が明記されているでしょうか。伺います。
また、非公開の対象となる発明の選定は、発明の機微性だけでなく、経済活動やイノベーションにどのような影響を及ぼすかも考慮して判断するとされています。しかし、こうした二重基準では国の裁量が広過ぎると考えています。ここについての政府の見解をお伺いします。
最後、補償についてです。
非公開となった発明については、本来得られるはずだった特許料収入を企業に補償するとされています。しかし、外国において同じ内容の発明が特許を取得して莫大な利益を上げた場合の損失補償額は国費で本当に払える額ではないというふうに思います。このことについてどのように処理するおつもりなのか、お答えください。
本法案は、経済安全保障という新しい用語で、世界経済が直面をする新たなリスクに対処する必要性を示しながら、想定しているリスクについては実はほとんど語られておらず、ただ、行政が持つことになる新たな権限を示すだけになっていないでしょうか。
事実、権限が経済にどのような影響を与えるかを判断する肝腎な事柄は閣議決定や政令に委任されています。これでは問題点を具体的に指摘することもできません。
しかし、元々、我々野党の追及を逃れるために政府がこのような形の法案を国会に出したのであれば、議会制民主主義をおとしめる危険性をはらみ、極めて深刻な事態であると考えます。
その真否は、政府の国会答弁を見て、しっかりとこれから判断をさせていただきたいと思っています。つきましては、今後の議論において政府に真摯な対応をお願いし、代表質問を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 篠原豪議員の御質問にお答えいたします。
まず、藤井元審議官の不適切な行為による経済安全保障推進法案への影響及び任命責任についてお尋ねがありました。
本法案は、十六回に及ぶ有識者会議での議論を経た提言を踏まえるとともに、与野党、経済団体、労働組合との意見交換を重ね、策定したものであり、そもそも、特定個人の一存で法案の内容がゆがめられる余地は構造上ありません。
その上で、今般の藤井氏の非違行為に関する調査を通じても、法案に関する情報の流出を含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されてはおりません。
高い倫理観を持って業務に取り組むことが求められる国家公務員、とりわけ幹部職員による非違行為は、国民の公務に対する信頼を著しく失墜させるものとして、言語道断であります。
今般の処分を受け、私より、藤井氏の監督責任者であった国家安全保障局長に対して職務上の厳重注意を行ったところです。
このような事案が生じたことは大変遺憾であり、私としても、国家公務員一人一人が全体の奉仕者として高い倫理観と使命感を持ち職務の遂行に当たるよう、関係部局をしっかりと指導してまいります。
経済安全保障の考え方と本法律案の運用についてお尋ねがありました。
絶えず変化する国際情勢や厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、経済構造の自律性の確保、我が国の優位性、不可欠性の獲得、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目標として、そのための経済施策を総合的、効果的に推進していくことが経済安全保障の中心にある考え方です。
今般の法案は、こうした経済安全保障という多岐にわたる新しい課題への取組のうち、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応すべく、所要の制度整備を行うものであります。
その上で、本法案に基づいて施策を実施する場合には、費用対効果を常に念頭に置いてまいります。
特定重要物資の指定及びサプライチェーン調査についてお尋ねがありました。
特定重要物資の指定については、物資の重要性、海外への依存度、供給途絶時に国家及び国民の安全を損なうか等といった要件により、真に必要な物資に絞り込むこととしています。また、今後、指定の具体的な考え方を基本指針にて示し、予見性の確保を図ることとしております。
サプライチェーン調査については、企業負担の増加や、企業が求めに応じるかといった点を踏まえ、事業者に本調査の重要性や趣旨、目的を丁寧に説明することで、調査の実効性を確保してまいります。
サプライチェーンに関してお尋ねがありました。
国民生活や経済活動に必要な物資の安定供給を確保することは重要な課題です。
このため、本法案では、重要物資の国内生産基盤の整備だけでなく、供給源の多様化、備蓄、代替物資の開発など、民間事業者による多様な取組について、物資の特性に応じて支援することとしております。
専ら国内生産を支援するものではなく、本法案は、御指摘があった各国政府による補助金競争をもたらすとは考えておりません。
特定重要物資の指定は法定する手続に沿って行うため、現時点で半導体をその対象とするかどうかは決定しておりません。仮に半導体やその他の重要物資を指定すれば、本法案に基づき、補助金以外にも金融支援等の措置を行うことが可能となります。
本法案では、民間事業者の取組だけでは重要物資の安定供給が確保されない場合には、国自らが備蓄等の対策を講ずることとしています。国が備蓄した国民の生存に必要不可欠な物資は、その供給不足によって価格が騰貴する場合において、騰貴前の価格で市場に放出することを想定しています。
なお、本法案では、御指摘のあった買占めの禁止、上限価格の設定、あるいは生産命令等の施策は想定しておりません。
基幹インフラの安全性、信頼性確保についてお尋ねがありました。
まず、本制度の目的は、基幹インフラの役務の安定的な供給を確保することであり、このため、外部からの妨害行為の防止を図るものですが、妨害行為はサイバー攻撃に限定されるものではありません。
本制度の規制対象は、国家及び国民の安全を確保するために真に必要な対象事業者に限定する必要があり、その指定基準を定める際には、事業者も含め、広く意見募集を行う予定です。
サイバー攻撃に対する方策については、サプライチェーンを通じて影響が生じた昨今の事案も踏まえ、引き続き、関係省庁が緊密に連携しながら、産業界のサイバーセキュリティー確保に努めてまいります。
本制度の対象設備は、その機能が損なわれた場合に基幹インフラ役務の安定的な提供に大きな影響を及ぼすものを定めることとしており、その対象範囲については、今後、産業界ともよく調整してまいります。
勧告を行うに当たっては、あらかじめ基本指針で勧告等の考え方を定めておくとともに、妨害行為の防止に向けた情報提供を政府から行うなど、日頃より事業者と緊密に連携することで、事業者の予見可能性を確保し、自主的な取組を促してまいります。
先端的な重要技術の開発支援等についてお尋ねがありました。
本法案の協議会の枠組みは、所管大臣が研究開発プロジェクトを進める上で必要と認める研究者等を本人の同意を得て構成員とすることとしており、外国人であることをもって参画を拒否することはありません。
また、協議会で守秘義務の対象となる機微な情報とは、国家公務員法の守秘義務の対象と同様に、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものと解されます。
なお、セキュリティークリアランスの整備に係る御指摘ですが、これについては、国際共同研究等においてクリアランスが求められる具体的事例の検証や、クリアランス制度への国民の理解の醸成の度合いなどをまずは踏まえるべき性質のものであると考えております。
そして、特許出願の非公開制度についてお尋ねがありました。
本制度は、安全保障上機微な発明が特許出願された場合に、その開示等を制限するものであり、それに違反する所定の行為に対し罰則を設けています。一方、この枠組みに入らない限り、論文等による研究成果の公表を妨げるものではありません。
本制度の対象となる技術分野については、先端技術が日進月歩で変わるものであることも踏まえ、政令により定めることとしており、予見可能な形で具体的に定めてまいります。
また、イノベーションの促進との両立を図るため、本制度では、技術の機微性のみならず、産業の発達に及ぼす影響を考慮し、保全の対象となる発明を十分に絞り込むこととしております。そうした観点から、補償に関しても、民生で広く活用され得る発明を保全の対象とすることは、そもそも慎重な検討が必要であると考えております。(拍手)
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○議長(細田博之君) 青柳仁士君。
〔青柳仁士君登壇〕
○青柳仁士君 日本維新の会の青柳仁士です。
ただいま議題となりました、政府提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び日本維新の会提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案について、会派を代表して質問します。(拍手)
まず、政府提出の法案について質問します。
ロシアによるウクライナへの全面的な侵攻が始まった二月二十四日、私たち日本維新の会は、松井一郎代表の声明を通じて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国家主権と領土の一体性を侵害する露骨な侵略行為であり、力による現状変更を重ねるロシアの不法行為は断じて容認できないとの基本的認識を明確にし、その後、二度の緊急提言を通じて、日本政府に対して、民主主義陣営と固く結束しつつ、終始一貫した行動と、状況変化に応じた迅速な対応を取るよう求めてきました。
ウクライナの危機は、我が国の安全保障について、二つの現実を私たちに教えています。
一つは、戦後の世界の平和を担ってきた国連安保理を中心とする国際秩序は機能不全に陥っており、現在の国際情勢下においても、大国による核兵器による威嚇や侵略のリスクが現実に存在することです。
もう一つは、核保有国がしかける戦争に対してアメリカは及び腰であり、これまで我が国の安全保障上の唯一のよりどころであった日米同盟は、将来にわたっての絶対的な抑止力、防衛力とは言い難い状況にあることです。
今こそ、独立国として、自らの意思と努力により、国民の生命と財産を守る覚悟、決断力、そして実行力が政府に求められています。そのためには、従来の枠組みにとらわれない、安全保障の抜本的な強化が必要不可欠です。我が党は、今国会での経済安全保障法制への取組は、その重要な一歩になると確信しています。
総理に伺います。
緊迫化する昨今の国際情勢を踏まえた安全保障についての認識、及び、その一環として本法案の成立に取り組む決意をお聞かせください。
次に、我が国の経済安全保障の現状に対する政府の基本認識についてお尋ねします。
ロシアは、ウクライナ侵攻に当たり、いわゆるハイブリッド戦をしかけていると言われています。
ハイブリッド戦とは、二〇一四年のクリミア危機によって世界に広まった新たな戦争の概念であり、戦争行為を、軍事だけでなく、経済制裁のよりどころともなる貿易、金融、資源、経済援助といった経済分野に加え、外交、サイバー、情報といった非軍事、超軍事領域まで拡大して捉える考え方です。
安全保障の裾野の拡大を受けて、各国は、経済安全保障に関する法制度や体制の整備を急速に進めてきています。こうした中、我が国は、周回遅れの状況にあり、各国並みの体制を早急に構築する必要があります。
しかしながら、今回の法案に含まれる経済安全保障の分野は、原料、物資のサプライチェーン、基幹インフラの確保、官民の技術協力及び特許の非公開という四つの施策のみであり、最低限の防御と言える程度にとどまっています。
総理に伺います。
本法案において整備される我が国の経済安全保障体制は、日々刻々と変化する現在の国際環境に適切に対応できるものになっているとお考えでしょうか。基本法制の制定で終わらせず、今後の拡充、フォローアップ、点検、アップデートなど、随時の見直しと拡充が必要だと考えますが、総理の見解をお聞かせください。
次に、経済安全保障の定義についてお尋ねします。
今回のロシアの暴挙に対し、NATO、そしてG7を中心とした国際社会は、国際ガスパイプライン計画の撤回、ロシアの金融機関の国際銀行間通信協会、SWIFTからの排除、武器供与を含む軍事的後方支援など、自国にも影響が大きく、国内でも賛否の分かれる政治決断をトップダウンで矢継ぎ早に打ち出してきました。
こうした欧米の政治リーダーの行動は、今のこの世界がこのまま続くことを前提にしているようには見えません。ここが新たな国際秩序が形成される歴史の転換点である、そういった大局観と覚悟を持ち、次の時代の世界をつくり上げ、その中での自国の安全と繁栄を目指しています。我が国も同様に、次の世界の構想を描き、そこから振り返って、今なすべきことを考え、迅速かつ大胆に行動することが求められています。
我が党は、政府に対する緊急提言において、その構想として、あらゆる国が世界経済のつながりを保ちつつも、安全保障上重要な技術、インフラ、物資等については、ロシアや中国など懸念される国、地域からは戦略的に切り離されている緩やかなブロック経済というビジョンを示しています。そして、そのような新しい世界経済システムの構築に当たり、何をどのようにつなげ、切り離すかについて、安全保障と経済成長の両方の観点で国家が戦略的に考えることを経済安全保障と定義しています。
総理に伺います。
今回の政府の法案は、四つの個別の施策が並んでいるだけで、そもそも経済安全保障とは何かという定義が欠落しています。本来であれば、まず定義があり、その中で今回の四つの施策がどのような意味を持つのかについて法案の中で説明されるべきと考えます。
定義を定めずに法案を提出した政府の責任において、現在、総理の考える経済安全保障の定義、そしてその背景にあるビジョンについて、この場でお示しください。
また、食料安全保障については、経済安全保障の重要な要素の一つと考えます。有事に備えた食料自給率の向上や国内需要の維持等については、経済安全保障の文脈の中でどのようにお考えでしょうか。
次に、経済安全保障を実現するための政府のインテリジェンスについてお尋ねします。
本法案に基づき、経済安全保障に関する施策を進める上では、安全保障上重要性が高いと認定された原料、物資、技術及び産業等は、特別な措置により保護を受けることになります。この際、何を重要性が高いと認定し特別扱いするかについては、高度な分析に基づく合理的な選定が行われなければなりません。
一方、昨今の経済安全保障上の最重要物資の一つである半導体について、我が国は、一九九〇年頃には世界一のシェアと技術を持っていましたが、現在は高性能半導体の自給率はゼロです。昨年末の臨時国会で総理は様々な反省の弁を述べておられましたが、将来的に経済安全保障上重要な位置づけになるものをこれまで見抜くことができなかった今の政府に、今後それができるとは到底思えません。
総理に伺います。
経済安全保障を実効性のあるものにしていくためには、適切な対象を見分ける組織的なインテリジェンスが不可欠と考えますが、これはどのように担保するのですか。今の政府の体制でできるとお考えですか。
次に、経済安全保障の対象を選ぶ際に起こり得る恣意的な決定のリスクについてお尋ねします。
本法案の中では、経済安全保障の対象物、すなわち、戦略的重要性の高い技術、産業、原料、物資の多くは特定されていません。主に、決め方に関するルールを決めていると理解しています。
実際の意思決定を行う際、安全保障を名目にすると、決定プロセスが不透明化することが懸念されます。安全保障の名の下での既得権への資金導入、市場原理では淘汰されるはずの企業や産業への過剰な保護、費用対効果を度外視した施策の実行などが起こり得ます。これらは、精緻に法律を作り込んだとしても、運用の際に起こるリスクが払拭できません。
総理に伺います。
本法案に基づき、経済安全保障の対象となる原料、物資、技術及び産業等を決める際には、対外的に非公開であっても恣意的な判断は絶対に起こさせないということについて、政策の最終決定責任者である総理から、この場で明確にお約束いただけないでしょうか。
最後に、罰則の適用についてお尋ねします。
我が党は、一月二十七日の大臣提言及びその後の国会質疑を通して、経済安全保障の対象となる技術、製品、サプライチェーン等は、経済成長や民間企業によるイノベーション創出への影響を最小限とするため、戦略的かつ限定的に選定されるべきとする一方、一たび選定されたものについては、経済安全保障上の実効性を高めるべく、刑事罰を含む厳しい罰則を適用することを提言してまいりました。
本法案では、施策に様々な罰則が適用されております。しかし、最も肝腎なサプライチェーンに関する事業者等の報告、資料提出義務については、罰則が除外されています。これについては、政府内の当初案には恐らく条文案の第四十八条に該当する部分に記載があったと思われますが、公明党の要望により、与党内の協議を経て、罰則が削除されたとの報道がありました。
総理に伺います。
サプライチェーンに関する事業者等の報告、資料提出義務に関し、罰則を適用せず、努力義務としたのはなぜでしょうか。
これは、実際に経済安全保障上問題のある行動を行っている事業者が、本法案に基づき政府から調達先などの情報提供を求められた際、断っても罰則が適用されないということを意味しています。
そうした悪意を持つ事業者が、本法案の求める努力義務のみで政府に対する情報提供を自発的に行うと本当に考えているんでしょうか。もしそうお考えであれば、昨今の厳しい国際情勢の中で、政府・与党は余りにも楽観的かつ非現実的な前提で安全保障を捉えており、国民の生命と財産を託すに値しないと言わざるを得ません。一方、そう考えていないのであれば、この法案は国会審議以前に最も肝腎な部分を骨抜きにされてしまった不完全な法案であるということを自ら認めているに等しいと思います。
この罰則の適用について、総理の明確な答弁を求めます。
続いて、日本維新の会提出の法案に関し、質問します。
本法案は、これまで指摘してきた政府の法案の内容を補完し、あるいはその枠組みを柔軟に捉えることにより、経済安全保障のあるべき姿を描いていると理解しています。
本法案では、経済成長に十分配慮しつつ、経済安全保障上重要な利益を確保すること、新たな国際経済秩序の形成の促進の観点など、三つの事項を基本原則として位置づけ、さらには、配慮事項として、実施能力の確保と罰則その他必要な措置を講ずることを規定することにより、実効的かつ総合的な施策の推進を可能にしています。
そこで、法案提出者である足立康史議員に伺います。
本法案の提出に至った現状の認識及び政府案との違いについて、お考えをお聞かせください。
一方で、経済安全保障とは、経済学的な観点で見れば、市場が解決できない問題への政府による介入を意味し、効率や自由競争をゆがめる可能性のある施策という側面もあります。政府が企業活動に過度に干渉するようになれば、経済全体としては大きなコストと非効率を招くことになります。
本法案において経済成長とのバランスを図りつつ経済安全保障を実現するための方策について、お考えをお聞かせください。
以上、最後に、私たちの子供たち、孫たちの世代まで安心して暮らせる日本をつくるために、政府案と維新案のどちらが真に我が国の安全保障に資するのか、政府・与党と真っ向から議論し、国民の皆様につまびらかにしていくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 青柳仁士議員の御質問にお答えいたします。
現下の国際情勢を踏まえた安全保障の認識などについてお尋ねがありました。
今回のロシアの暴挙は、ヨーロッパのみならず、世界の秩序、平和に対する挑戦であり、我々は、今回の暴挙を我が事として捉え、対応していかなければなりません。
ロシアによるウクライナ侵略も踏まえながら、あくまで現実的に検討した上で、国民の生命と財産を断固として守り抜くため、国家安全保障戦略等三文書を改定し、日本自身の防衛力を抜本的に強化してまいります。また、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化してまいります。
経済安全保障も、国民の命と暮らしを守るための待ったなしの課題です。このため、我が国の経済構造の自律性の向上、技術の優位性ひいては不可欠性の確保を進めてまいります。政府として、経済安全保障を総合的かつ効果的に推進するため、本法案の成立に向け、全力で取り組んでまいります。
現在の国際環境における経済安全保障推進法案の位置づけ、さらに、その見直しと拡充についてお尋ねがありました。
今回の経済安全保障推進法案は、経済安全保障という多岐にわたる新しい課題への取組のうち、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応しようとするものであり、政府としては、法案の成立に全力を挙げてまいります。
変化のスピードが速い国内外の情勢によって、講じるべき経済安全保障上の措置も変わり得ることから、今後も、幅広く、不断に点検、見直しを検討し、必要な取組を進めてまいります。
経済安全保障の定義についてお尋ねがありました。
絶えず変化する国際情勢や厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、経済構造の自律性の確保、我が国の優位性、不可欠性の獲得、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目標として、そのための経済施策を総合的、効果的に推進していくことが経済安全保障の中心にある考え方です。
今般の法案は、こうした経済安全保障という多岐にわたる新しい課題への取組のうち、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応すべく、所要の制度整備を行うものであります。
食料安全保障についてお尋ねがありました。
人間の生命の維持に欠くことができず、健康で充実した生活の基盤である食料を、平時には豊かな食を提供するとともに、不測時であっても国民生活の安定などに著しい支障が生じないよう確保していくことは、経済安全保障の観点からも重要です。
経済安全保障を確立していくためには、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していくことが必要です。
このため、農林水産業の成長のための投資と改革を更に進め、担い手の確保、農地の集約化、デジタル技術の実装など、生産基盤を強化するとともに、成長する海外市場を取り込むための輸出促進体制の整備を含め、多様化する国内外の需要に対応した農業構造への転換を実現することにより、国際情勢の変化や国際競争、そして災害にも負けない足腰の強い農林水産業を構築し、食料自給率の向上を図ってまいります。
経済安全保障の実効性を担保するための体制についてお尋ねがありました。
経済安全保障の取組の実効性を担保するには、御指摘のとおり、情報コミュニティーを含めた政府全体が行う情報収集、分析等に基づき、経済安全保障の観点から重要な原材料や物資、技術、産業などを認識、把握することが重要です。
そのため、体制の確保は喫緊の課題であるとの認識の下、令和四年度予算では、経済安全保障に係る政策分野の人員強化として約二百五十人の定員増を計上したほか、経済インテリジェンスに係る人員についても約百三十人の定員増を計上させていただいております。
法案における対象物資等の決定プロセスについてお尋ねがありました。
法案においては、措置の対象となる物資、事業、技術分野等は政令などの下位法令で定める仕組みとしていますが、その要件は法律上可能な限り明確化しています。
その上で、対象物資等は、有識者の意見を聞いて制度ごとに策定する基本指針において考え方を明らかにした上で定めることとしており、恣意的な判断が可能な構造とはなっておらず、恣意的な判断が行われることはありません。
サプライチェーンの調査についてお尋ねがありました。
サプライチェーンの調査については、本法の規制や支援スキームの枠組みに入っていない業者も対象とするため、調査を拒否した場合の罰則は置かず、事業者からの回答を担保できるよう、努力義務規定を措置することとしております。
これは、国内法体系における同様の他の法令の規定ぶりをも踏まえたものです。
事業者や関係団体等に本調査の重要性や趣旨、目的を丁寧に説明することで、調査の実効性を確保してまいります。(拍手)
〔足立康史君登壇〕
○足立康史君 日本維新の会提出の法案に関し、二問質問をいただきました。
まず、本法律案の提出に至った現状の認識及び政府案との違いについてお答えします。
本法律案は、国際情勢の急激な変化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、さらには、新たな国際経済秩序の形成が促進されることとなるようにするとの観点を踏まえて提出したものであります。
政府案では現状の国際情勢を複雑化と表現していますが、私たちは、ウクライナをめぐる状況を含め、国際情勢が急激に変化しているという強い認識の下、国が経済安全保障に関する諸施策を実効的かつ総合的に推進することを責務として位置づけています。
そして、経済安全保障に関する諸施策を実効的かつ総合的に推進するために、三つの基本原則、配慮事項を明らかにし、事業者に経済安全保障に関する諸施策に協力するよう努力義務を課するとともに、国、事業者等の相互間の緊密な連携協力体制の整備に努めなければならないことを定めています。
さらには、経済安全保障に関する諸施策についての調査研究、情報の収集等を行う専門機関等の整備を行わなければならないこととし、これにより、インテリジェンス体制の強化を図ることとしております。
このように、本法律案は、経済安全保障に関する諸施策について、政府案における経済安全保障の枠組みを超えて、経済安全保障のあるべき姿を提示するものであると考えています。
次に、経済成長とのバランスを図りつつ経済安全保障を実現するための方策についてお答えします。
本法律案では、基本原則の第一の事項として、我が国経済の成長に十分配慮しつつと規定し、経済安全保障に関する諸施策と経済成長との両立を強く求めています。
その上で、配慮事項として、経済安全保障に関する諸施策の対象となる利益の選定に当たっては、客観的な指標に基づく厳正な評価を行い、選定過程の公平性を確保すること及び客観的な費用効果分析を行い、その結果を考慮することと規定しています。
このように、経済安全保障に関する諸施策において、政府による企業活動への過度の干渉を防止し、経済成長への負担を可能な限り減らすことにより、初めて経済成長と経済安全保障との両立が可能になると考えています。
なお、以上申し上げた私の答弁は政府案に対する野党の懸念や疑問点への答えにもなっているものと自負をしています。
本日を皮切りとする法案審議にあっては、国の安全と国民の生命と財産を守るため、単なる行政監視にとどまらず、与野党を超えた積極的な討議が行われるべきであります。本法案の審議を通じてそうした新しい国会が実現することへの大きな期待を申し上げ、私の答弁といたします。
ありがとうございます。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 伊佐進一君。
〔伊佐進一君登壇〕
○伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。
ただいま議題となりました経済安全保障法案について、公明党を代表し、質問いたします。(拍手)
まず冒頭、昨夜の地震で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
また、ウクライナでの戦渦に巻き込まれ命をなくされた全ての方々に心より哀悼の意を表します。
ロシアのウクライナ侵略は、断じて許されるものではありません。関係諸国と一致結束して対応することにより、力による一方的な現状変更はいついかなる場合でも国際社会において許されるものではないことを歴史に刻んでいく必要があります。
ロシアのウクライナ侵略は、冷戦後の国際秩序が崩壊し、大きく変化しつつある時代の一つの証左だと認識しています。核を保有する大国が、その使用をもちらつかせながら戦争を行い、NATOという巨大な軍事機構すら座視せざるを得ない。また、我が国周辺においても、経済成長とともに人権や民主主義の秩序に組み入れられていくことが期待された大国が独自の秩序形成を目指しているよう見受けられます。まさしく、戦後の国際秩序が変わりつつあります。
こうした時代にあって、我が国は、今後、どのような国際秩序を描き、具体的に行動していくのか。今回の経済安全保障法案は、その一つの側面での政府の回答であると認識していますが、日本として目指すべき国際秩序を総理はどう考えておられるのか、伺います。
足下では、原油の高騰のみならず、小麦やトウモロコシなどの穀物も価格高騰が始まっています。また、経済制裁による金融市場への影響を含め、我が国においても、国民生活への影響は避けられない状況となってきました。
コロナ禍でただでさえ疲弊している国民生活や日本経済を下支えするためには、今後、一層のまとまった経済対策が必要になってくるのではないかと考えます。総理のお考えを伺います。
それでは、法案に対する質疑に入ります。
各国の経済依存関係が深まる中、国益を追求する新たな手段として、経済的な影響力を利用する動きが見られるようになりました。
そんな中、経済安全保障を国家安全保障の重要な一側面と捉え、様々な施策を講じていく必要性は十分に理解できます。
一方で、自由で開かれた経済活動、海外との技術交流や研究協力などから我が国が恩恵を受けてきたのも事実です。経済や技術を守るために自律性を確保する施策、同時に、自由な経済連携を推進する施策の両方を戦略的に推し進めていくことが重要です。米中両国においては、これだけ経済安全保障の分野でしのぎを削りながらも、この間、米中貿易総額は増加を続けて過去最大となっている事実を冷静に理解する必要があります。
こうしたバランスの取れた、ある意味したたかな戦略が重要だと思いますが、総理の御見解を伺います。
本法案においては、重要物資のサプライチェーンの強靱化、基幹インフラの安全性、信頼性の確保、官民技術協力の推進、特許出願の非公開化という四つの施策が柱となっており、その横断的な事項は、基本方針として閣議により定めることとしています。
それぞれの規制については、事業者への負担など経済活動に与える影響を考慮しつつ、安全保障を確保する上で合理的に必要と認められる限度のものとするべきだと我が党から政府に対して求めてまいりました。
結果、総則に新たな条文が追加されることになりましたが、この条文の意義を改めて確認するとともに、こうした事項は閣議決定される基本方針において明示されるべきと考えますが、総理の考えを伺います。
重要物資のサプライチェーンの確保について伺います。
このコロナ禍、あるいは米中の貿易摩擦の余波を受け、グローバルなサプライチェーンのリスクが顕在化しました。半導体や部品の途絶による自動車の減産、手術で使用される抗菌剤の不足など、これまで見えなかったリスクが顕在化いたしました。
本法案では、国が戦略的に重要な物資を指定し、供給確保のための支援措置を行うこととしており、重要な取組として評価できます。一方で、食料や燃料を含め、その指定を国民生活や経済に必要な全ての物資にまで拡大することはできません。
特定重要物資の指定はどのような基準でなされるのか、伺います。
また、物資を指定する判断に当たり、主務大臣は関係する事業者に対して原材料などについての報告を求めることができるとしています。一方で、事業者にとってみれば、独自の営業努力による企業秘密などであれば、必ずしも積極的な情報提供を望まない場合もあります。また、その調査対象は、中小零細企業を含めて、あまねく全ての事業者が対象となり得ます。
当初、政府作成の条文では、事業者のこの報告義務に対して罰則が設けられておりました。公明党からは、基幹インフラに関する規定ならともかく、サプライチェーンの調査に対する事業者の報告については、政府は安易に罰則規定に頼るのではなく、あくまで努力義務とすべきものだと主張しました。
政府提出法案でどのような規定となったのか、また、政府の考え方について伺います。
基幹インフラの安定的な提供について伺います。
法案の党内審査に先立ち、対象分野となる事業者からヒアリングを重ねてまいりました。一口に基幹インフラといっても、その業態や設備は多種多様です。また、ほかの三つの柱と異なり、基幹インフラ事業者への支援や補償はなく、一方的な規制が課されることとなっています。こうしたことから、規制の指定に当たっては、事業者と丁寧なコミュニケーションを図り、事業実態を十分に踏まえた上で、真に必要な設備への規制とする必要があります。
政府の定める基本指針においてはこうしたことを明記すべきと考えますが、見解を求めます。
特許出願の非公開化について伺います。
特許とは、本来、発明者に一定期間独占的な権利を与えることで発明を保護し、同時に、その発明を公開することで新しい技術の進歩、産業の発展を目指す制度です。
本法案においては、公開することで国家国民の安全が損なわれるような場合には、特許制度に例外を設け、非公開とできる制度を導入します。
しかし、最近の技術動向を見れば、軍事のみにしか使用されないシングルユース技術と、民生でも同時に使用され得るデュアルユース技術の区別ははっきりしていません。どういった技術が非公開とされるべき機微技術かの判断は決して簡単ではありません。きらりと光る中小企業の技術開発も、実用化間近という段階で特許非公開の対象になってしまうのではないかとの不安の声もいただきました。
非公開の対象となる発明は、我が国の安全保障を著しく損なうおそれがある発明に限定されるべきであり、また、経済活動やイノベーションに及ぼす影響を十分に考慮すべきと考えますが、政府の見解を伺います。
非公開となって製品の製造、販売ができないことになれば、財産権の侵害に当たりかねません。そういった場合には政府は補償金を支払うこととなりますが、その算定方法は明確ではありません。
補償金額は、一方的に政府が決めるものではなく、特許出願人との十分なコミュニケーションの上で確定すべきものと思いますが、政府の考えを伺います。
以上、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 伊佐進一議員の御質問にお答えいたします。
日本として目指すべき国際秩序についてお尋ねがありました。
今、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹が、ロシアのウクライナ侵略により脅かされています。この力による一方的な現状変更の試みは、欧州のみならず、アジアを含む国際社会全体を揺るがす暴挙です。
こうした深刻な危機のさなかにある今こそ、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り、強化していくべきです。そのために、普遍的価値を共有するパートナーとの結束を強め、力による一方的な現状変更の試みに対抗する国際社会の取組を主導してまいります。また、経済安全保障の確保に向けても、同志国との協力を拡大、深化させてまいります。
国民生活や日本経済を下支えするための対応についてお尋ねがありました。
ロシアによるウクライナ侵略の影響による我が国経済、暮らしへの影響の緩和については、既に、ガソリン価格を百七十二円程度に抑える激変緩和措置や、漁業、農林業、運輸業などの業種別の対策など、当面の対応を決定し、国民の皆さんにお届けしています。
今後も、原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及の状況を注視し、事態が長引く場合には、更に機動的に対応してまいります。
経済安全保障の戦略的な推進についてお尋ねがありました。
経済安全保障の取組を進めるに当たっては、他国の動向にも目を配りながら、我が国として主体的に国益を確保していくことが重要です。
このため、民間の自由な経済活動を阻害しない形で、経済構造の自律性の向上、日本の技術優位性ひいては不可欠性の確保を目指すと同時に、TPPの着実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大など自由な経済連携も推進し、戦略的な取組を進めていく考えです。
規制措置の実施に当たっての留意事項と基本方針についてお尋ねがありました。
御指摘の経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度とは、この法案における規制措置を実施するに当たり、経済活動の自由との両立、事業者の負担、民間の主体の予見可能性の確保、国際ルールとの整合性などに配慮したものとすることを意味しています。
政府が閣議決定する基本方針においては、この法案における規制措置の実施についての基本的な考え方を明示的に定め、その実施に当たり、企業活動を始めとした経済活動に十分配慮することを明らかにしてまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣小林鷹之君登壇〕
○国務大臣(小林鷹之君) 伊佐議員からの御質問にお答えいたします。
まず、特定重要物資の指定の基準についてお尋ねがありました。
国民の生存や国民生活、経済活動を損なうことがないよう、我が国にとって重要な物資の安定供給を確保することは、我が国の安全保障上の重要な課題です。
このため、本法案では、広く国民生活、経済活動が依拠しているかといった物資の重要性や、海外への依存度や将来的な依存の可能性を踏まえ、国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため、安定供給確保を図ることが特に必要と認められる物資を特定重要物資として政令で指定することとしています。
その際、指定の具体的な考え方や、より詳細な要件などは、経済施策や産業構造などに関する有識者の意見を聞いた上で、安定供給確保基本指針において定めることとしています。
次に、サプライチェーンの調査に関する罰則についてお尋ねがありました。
本法案では、重要な物資についてのサプライチェーンの把握や供給途絶リスクの評価などのため、物資の生産、輸入、販売を営む事業者に対し、サプライチェーンの状況を調査できる旨の規定を措置しています。
この調査については、特定重要物資としての指定の検討時などに行うことを想定しており、本法案の規制や支援の枠組みに入っていない事業者を含め、幅広く対象としているため、調査を拒否した場合の罰則は置かず、事業者からの回答を担保できるよう、努力義務規定を置くこととしたものでございます。
次に、基幹インフラの安定的な提供のための基本指針の策定についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、本制度の整備と運用に当たっては、事業者と丁寧にコミュニケーションを図り、各事業の実態を十分に踏まえること、また、規制対象を、国家及び国民の安全に与える影響に鑑み真に必要なものに限定することが重要です。
このため、閣議決定する基本指針では、例えば、国家及び国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスが取れた制度とする観点から、規制対象となる設備や業務を真に必要なものに限定すること、制度及びその運用が効率的かつ実効性があるものとなるよう、事業の実態や規制の影響等について事業者と常日頃から相談窓口等を通じ意思疎通を図ること等を規定し、事業者の実態や負担に配慮して制度を運用する旨明らかにしていくことを考えております。
次に、特許出願の非公開制度の対象となる発明の在り方についてお尋ねがありました。
本制度による非公開の対象となる発明の選定に当たり、我が国の安全保障が著しく損なわれるおそれがある発明に限定すべきであり、経済活動やイノベーションに及ぼす影響を十分考慮すべきであるという点は、有識者会議からもまさしく同趣旨の御提言をいただいているところでございます。
政府としてもそうした観点を意識して今回の制度設計に当たっておりまして、技術の機微性のみならず、非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響を考慮して、保全の対象となる発明を十分に絞り込む仕組みとするなど、我が国の経済活動やイノベーションを阻害することのないよう配慮した制度としております。
また、特許非公開制度における補償金額の算定についてお尋ねがありました。
特許非公開の審査の結果、保全指定の対象となった発明については、その実施に当たって内閣総理大臣の許可が必要であり、政府としては、許可するか否かの判断をする段階で特許出願人から実施計画の詳細などを聞くこととなります。
さらに、当該発明の実施が不許可又は実施に条件が付された場合に特許出願人から損失補償の請求があった段階でも特許出願人から説明を聞くほか、専門家の意見も聞きながら、妥当な補償金額を決定することとなります。
このように、補償金額の算定に当たっては、特許出願人と十分なコミュニケーションを取った上で、適切に対応してまいります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 浅野哲君。
〔浅野哲君登壇〕
○浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。
私は、会派を代表し、経済安全保障推進法案を中心に質問をいたします。(拍手)
冒頭、この度のロシア軍によるウクライナへの侵略行為で犠牲となられた方々に心より哀悼の誠をささげるとともに、ロシア軍の作戦中止と即時撤退を求めます。
また、昨夜発生した地震で被害に遭われた方々に対し、心よりお見舞いを申し上げます。
被害の全容の早期把握に努め、今後の復旧に党を挙げて全力で取り組むことをお誓い申し上げ、質問に入ります。
本法案では、サプライチェーンに対する政府の調査権限が新設される予定です。米国では事業者に対し応答義務が課せられている一方、本法案では応答努力義務が規定されています。産業界への配慮としては一定の理解ができるものの、調査の実効性を確保する必要があることから、事業者側のインセンティブ又はディスインセンティブの在り方について、これまでの議論経過と政府の見解を伺います。
特定重要物資と指定された物資については、所管大臣に備蓄などの必要な措置を講ずる責務が規定されています。類似の概念が適用されている分野として、例えば、エネルギー資源については、水素やバイオ燃料などが注目されています。エネルギー安全保障の観点から、これらの国内製造を国家戦略に含めるべきと考えますが、いかがでしょうか。特に、発電所などで発生する大量の熱を利用した水素、バイオ燃料の製造環境構築及びサプライチェーン構築は強力に推進すべきと考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。
関連して、現在、国際取引の現場では原油価格が高騰し、国内のエネルギー供給環境に重大な支障を来しかねない事態となっており、現在行われているガソリン元売への補助と併せて、トリガー条項の発動が多くの国民から期待されています。この間、懸念事項とされてきた地方財政への影響緩和策や発動、解除方法の具体化などについて早急に結論を得るべきと考えますが、総理から関係省庁に対し、期限を設けた検討を御指示いただけないでしょうか。
コロナ禍で国内経済は疲弊し、GDPギャップは二十七兆円の需要不足となっています。原油高に起因した物価上昇が起こる中、景気後退と物価上昇が同時に起こるスタグフレーションの現実味が増しています。国内外の諸情勢の先行きが不透明感を増す中、速やかに追加の経済対策の検討に入るべきと考えます。国民民主党は、事業者の金融支援、エネルギー安定供給の確保、そして防衛関連予算の拡充などのため、最低でも十兆、できれば二十兆円規模の対策が必要と考え、検討を進めておりますが、追加予算の必要性について、総理の御認識を伺います。
ここからは、日本の経済安全保障施策をより総合的な内容とするための論点を三つ提示させていただき、それらに対する政府の見解を求めたいと思います。
一つ目は、人材の育成、確保についてです。
経済安全保障分野において、経済活動を支える人材の安定的確保と優秀な人材の育成は重要な論点です。例えば、セキュリティー人材が不足していると答えた企業の割合ですが、米国で一六%に対し、日本は八六%に上るそうです。ですが、本法案では、人材の育成、確保に関する強い問題意識を感じ取ることができませんでした。なぜでしょうか。小林大臣に伺います。
二つ目は、信頼できる相手との取引の重点化についてです。
経済安全保障分野において、特定の国家、とりわけ、非友好的な関係にある国家に特定の品目を依存している状態は危険です。一方、信頼できる相手と共同でサプライチェーンを構築することは、相互の脆弱性を克服することにもつながると考えます。このような観点から、TPP11の意義、そして昨年バイデン政権が提唱したインド太平洋経済枠組みに対する総理の御認識を伺います。
三つ目は、人権デューデリジェンスへの対応についてです。
近年、欧米などでは、人権の観点から輸出規制や輸入規制を強化する動きが活発化しています。米国のバイデン政権も、強制労働に基づく製品の輸入を禁止するなど、人権を重視する姿勢を明確にしました。企業の人権デューデリジェンスへの対応不足が国際取引網から排除されるリスクにもなり始めている中、法制化の必要性について、経済産業大臣にお伺いをいたします。
国民民主党は、以上の論点を始め、我が国の経済安全保障を確保するために必要な、より包括的な政策パッケージをまとめた法案、総合的経済安全保障施策推進法案を提出いたしました。我が国の経済安全保障施策体系の更なる充実に向けて、総理にも是非御一読いただき、参考にしていただきたいと思いますが、総理、我々の法案を読んでいただけますでしょうか。
最後に、この言葉を御紹介させていただきます。繁栄した経済国家であることを誇る前に、道義国家であることを目指すべきである。これは、私の師である大畠章宏先生と親交のあった梶山静六先生が一九九五年に記した言葉だそうです。
今の時代、日本に住む我々は、より困難な状況に置かれている人々が世界に多くいることを常に思い出すことが重要だと思います。経済安全保障を考える上でも、我が国の繁栄のみならず、他国の繁栄にも心を向け、便益を共に享受する精神を持ってこれからの議論を尽くされることを切に望み、私の発言を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 浅野哲議員の御質問にお答えいたします。
トリガー条項の発動についてお尋ねがありました。
原油価格の高騰に対しては、ガソリン価格を百七十二円程度に抑える激変緩和措置など、当面の対応を講じ、国民生活や企業活動への影響を最小限に抑えていくこととしております。
その上で、今後、引き続き原油価格が上昇し続ける場合には、トリガー条項の凍結解除も含め、あらゆる選択肢を排除することなく、何が最も効果的なのか、どのようにそれを実施することがより大きな効果につながるのかといった観点からしっかり検討し、機動的に対応してまいります。
追加の経済対策等についてお尋ねがありました。
まず、新型コロナの影響を受けておられる方々への支援に引き続き万全を期し、事業と雇用、暮らしを守り抜いてまいります。
ロシアによるウクライナ侵略の影響による我が国経済、暮らしへの影響の緩和については、既に、今年度の一般予備費を三千五百億円活用してガソリン価格を百七十二円程度に抑える激変緩和措置を講じるなど、当面の対応を決定し、国民の皆さんにお届けをしています。
今後も、原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及の状況を注視し、事態が長引く場合には、更に機動的に対応してまいります。
信頼できる相手との取引重点化との観点から、TPP11の意義やインド太平洋経済枠組みについてお尋ねがありました。
政府として、これまで、我が国企業がより効率的で持続可能なサプライチェーンを構築することができる環境を整えるべく、TPP11に始まり、日・EU・EPA、さらには日米貿易協定、日英EPA、RCEP協定などを通じて、自由で公正な経済圏の拡大に取り組んできました。
とりわけ、TPP11は、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めるだけでなく、基本的価値を共有する国、地域がルールに基づく自由で開かれた経済秩序を構築するとの戦略的意義も有することから、経済安全保障の観点からも重要であると考えています。
インド太平洋経済枠組みについては、我が国として、この取組を含む米国の地域へのコミットメントを歓迎しており、一月の日米首脳テレビ会談においてもその旨私からバイデン大統領に伝えました。
我が国として、引き続き、経済安全保障の観点も踏まえ、あり得べき国際秩序の構築に向けて、日米間で引き続きしっかりと意思疎通を図るとともに、同志国とも緊密に連携しながら取り組んでまいります。
経済安全保障施策体系の更なる充実についてお尋ねがありました。
経済安全保障は、安全保障と経済を横断する新しい課題として広く認識されるようになったと受け止めています。
経済安全保障の確保に向けては、本法案による制度整備にとどまらず、今後、例えば、我が国の基幹産業が抱える脆弱性や強みについて、幅広く、不断に点検、見直しを検討していくことなどが重要と考えています。
いずれにしても、今後の情勢の変化を見据えた更なる課題について不断に検討を進めていくことが重要と考えており、国民民主党が提出された法案も参考にさせていただきたいと考えております。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
〔国務大臣萩生田光一君登壇〕
○国務大臣(萩生田光一君) 浅野議員の質問にお答えします。
水素とバイオ燃料の国内製造の推進についてお尋ねがありました。
国内で製造可能なエネルギー資源である水素やバイオ燃料のサプライチェーンを構築することは、エネルギー安全保障強化の観点からも重要です。
水素は、再生可能エネルギーを活用した水電解や、高温ガス炉などから出る高温熱源の活用により、国内製造が可能です。その実用に向けて、まずは、コスト低減に資する水電解装置の大型化や、脱炭素型の高温熱源を活用した革新的な水素製造法などの研究開発に取り組んでまいります。
バイオ燃料については、今後特に需要拡大が見込まれる持続可能な航空燃料の国内生産に向けて、国内での大規模生産を実現する技術開発支援など、導入拡大に向けた取組を進めてまいります。
こうした取組を通じて、国産の脱炭素燃料のサプライチェーンを構築することで、カーボンニュートラルの実現やエネルギー安全保障の確保に戦略的に取り組んでまいります。
人権デューデリジェンスへの対応についてお尋ねがありました。
国際社会において人権問題への関心が高まる中、企業が人権尊重の取組をしっかり行わない場合、不買運動、投資の引揚げ、顧客との取引停止など、多くのリスクがあり得ると承知しております。
こうした中、昨年行った企業調査で多くの要望が寄せられたことも踏まえ、人権尊重のための業種横断的なガイドライン作りに取り組むこととしました。日本企業にとって、予見可能性が高く、国際競争力強化につながるものにしてまいります。
また、企業が公平な競争条件の下で積極的に人権尊重に取り組める環境を整備する観点から、国際協調により各国の措置の予見可能性を高める取組も進めます。今後、国際協調の議論など国内外の動向も踏まえ、将来的な法律の策定可能性も含めて、関係府省庁とともに更なる政策対応も検討してまいります。
同時に、様々な先端技術を有する我が国として、人権侵害に対するツールとして輸出管理の枠組みが活用可能かどうか、議論、検討するとともに、基本的価値観を共有する欧米等の同志国と緊密に連携をしてまいります。(拍手)
〔国務大臣小林鷹之君登壇〕
○国務大臣(小林鷹之君) 浅野議員からの御質問にお答えいたします。
まず、サプライチェーンの調査の実効性確保に関する議論の経過と政府の見解についてのお尋ねがありました。
サプライチェーンの調査の在り方については、有識者会議から、実効的な調査を実施するための政府の調査権限と事業者の応答を確保できる法的枠組みを整備することが必要、また、調査の趣旨及び目的を丁寧に説明することが必要との提言をいただきました。
こうした提言を踏まえ、本法案においては、物資の生産、輸入、販売を営む事業者を対象とし、サプライチェーンの状況を調査するための法的枠組みを整備するとともに、事業者からの回答を担保できるよう、努力義務規定を置くこととしました。
また、サプライチェーンの調査については、事業者に本調査の重要性や趣旨、目的を丁寧に説明することで、調査の実効性を確保してまいります。
次に、経済安全保障分野における人材の育成、確保についてお尋ねがありました。
経済安全保障は多岐にわたる新しい課題であり、御指摘の人材の安定的な育成、確保につきましても、経済安全保障を確保していく上で重要であると認識をしております。
例えば、岸田政権の重要施策の一つである人的投資の強化は、経済成長の基盤であるとともに、技術革新を担う研究者、高度IT人材、特殊技能を持ちサプライチェーンを担う人材、国際的なルール作りに携わる人材などの育成、確保は、経済安全保障の取組を進めていく上での基礎となるものと考えております。
本法案におきましても、特定重要技術の研究開発の促進や成果の活用に係る国の施策として人材の養成及び資質の向上に努める旨盛り込むなど、人の要素にも問題意識を持って取り組むこととしており、御指摘の人材の育成や確保を含め、政府として必要な取組を進めてまいります。(拍手)
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○副議長(海江田万里君) 笠井亮君。
〔笠井亮君登壇〕
○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる経済安全保障推進法案について、岸田総理に質問します。(拍手)
冒頭、昨夜の福島県沖地震で亡くなられた方々に心からお悔やみを、被災された皆さんにお見舞いを申し上げます。
経済安全保障とはそもそも何を指すのか、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を害する行為とは具体的にどのような状況を指すのか、いずれも法案には何の定義も置かれていません。政省令への委任は百二十四か所にも及びます。政府に白紙委任せよというのですか。
定義も定かでない経済安全保障とは、すなわち、経済を安全保障の下に置き、軍事に組み込むということではありませんか。経済、産業、科学技術、知的財産まで国の管理下に置くことは、無謀な戦争に突き進んだ戦前の国家統制そのものであり、日本国憲法に真っ向から反するものではありませんか。明確な答弁を求めます。
軍事、経済をめぐるアメリカと中国の覇権争いは先鋭化しています。総理は、今年一月のバイデン米大統領との首脳会談で、強固な日米同盟の下、経済安全保障で緊密に連携することを確認し、閣僚レベルの経済版2プラス2の立ち上げに合意しました。経済安全保障とは、結局、日本を軍事、経済の両面でアメリカの戦略に組み込むものではありませんか。同志国、同盟国の枠組みの下、敵国を想定して経済の力で脅しをかけることは、歴史の教訓を顧みないものであり、緊張関係を一層高めるだけではありませんか。
次に、経済と国民生活への影響について伺います。
第一に、企業活動に対する制約の問題です。
企業秘密でもあるサプライチェーンの政府への報告、基幹インフラの安全性、信頼性の確保や特許出願の非公開化が与える企業活動への影響について、経済界から懸念の声が上がっています。法案は、民間企業の経済活動に制約をもたらすものではありませんか。
法案では、基幹インフラの安定的提供の確保のために、事業者に対し納品業者や委託業者までも事前に届け出させ、審査の対象としています。政府が妨害行為のおそれがあると判断すれば、審査が通りません。結果として、下請、取引先企業を選別、監視することになるではありませんか。
さらに、政府が指定した特定重要物資への特別な支援は、半導体製造大手、TSMC熊本工場への既に五千億円にも及ぶとされる青天井の国費投入のような、特定事業者への巨額支援の横行につながりかねません。答弁を求めます。
第二に、科学技術と人権に対する制約の問題です。
昨年六月の成長戦略実行計画には、経済安保政策の冒頭に、「デュアルユース技術(軍事転用可能な民生技術)への関心が高まっている。」とあります。総理自身、デュアルユースでの製造等に五千億円規模の支援を措置したと国会で答弁されています。この巨額な官民伴走支援によって、軍事技術開発の研究を行わせようというのではありませんか。
特許出願の非公開、いわゆる秘密特許制度が特許法を一切改正せずに持ち込まれようとしていることは重大です。戦前の秘密特許制度は、戦争放棄を掲げる憲法九条の規定に抵触するとして廃止されました。民主化された特許制度の根幹となった公開原則は、民生技術が軍事技術に吸収され、軍産一体となって戦争遂行のための技術開発に邁進した歴史の教訓と反省に立ったものです。ところが、法案は、保全指定を行う発明を選別し、特許手続を留保し、非公開にするもので、かつての秘密特許制度の復活ではありませんか。
さらに、法案では、特定重要技術の研究開発のためとして、機微情報の管理と守秘義務を規定しています。既に、入管庁は、留学生、外国人研究者の受入れ審査の運用を強化し、今国会に、大学や研究機関における内部管理を強化する法案を提出しています。学術分野における管理強化や非公開が、研究活動や科学技術、産業活動を制約することになりませんか。イノベーションを阻害する危険をどう認識しているのですか。
家族や交友関係、資産、飲酒歴、精神疾患などを調査し、プライバシー侵害のおそれがあるセキュリティークリアランス、適性評価制度の導入を検討課題としていることも看過できません。政府による選別、監視そのものではありませんか。答弁を求めます。
ユネスコは、二〇一七年十一月の科学及び科学研究者に関する勧告で、科学技術は、人類の利益、平和の保持及び国際的な緊張の緩和に発展の見通しを開くと同時に、戦争や搾取等で人間の尊厳への脅威となるという危険性を指摘し、人類の尊厳を損なう場合や軍民両用に当たる場合に良心に従って当該事業から身を引く権利を科学研究者に認めています。法案は、この国際標準を否定するものです。
日本国憲法は、戦前、政治権力によって人権を抑圧し、学術研究が制約、動員された反省に立って、平和原則、基本的人権の尊重、学問の自由を打ち立てました。この原則を貫き、真の経済発展と人類の進歩に貢献することこそ、我が国が進む道ではありませんか。
このことを最後に強調して、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 笠井亮議員の御質問にお答えいたします。
経済安全保障の定義についてお尋ねがありました。
絶えず変化する国際情勢や厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、経済構造の自律性の確保、我が国の優位性、不可欠性の獲得、基本価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目標として、そのための経済施策を総合的、効果的に推進していくことが経済安全保障の中心にある考え方です。
例えば、近年、我が国を含む世界規模で、国家主体の関与が疑われる事案、基幹インフラ事業を対象とした事案を含む様々な形でのサイバー攻撃が多発し、特に、サイバー攻撃により我が国の国民生活及び経済活動の基盤となる基幹インフラ事業の安定的な実施が妨げられた場合、国家及び国民の安全が損なわれる事態が生じるおそれがあると考えます。
その上で、本法案における規制措置は、経済活動に与える影響を考慮し、合理的に必要な限度で行うことを明記しているほか、政省令への委任事項については可能な限り明確化するよう努めており、白紙委任や国家統制という御指摘は当たりません。
経済安全保障は、我が国を米国の戦略に組み込むもので、敵国を想定して緊張関係を高めるだけではないかとのお尋ねがありました。
経済安全保障の取組を進めるに当たって、我が国として主体的に国益を確保していく考えであり、我が国を米国の戦略に組み込むものとの御指摘は当たりません。
経済安全保障は特定の国を念頭に置いたものではありませんが、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化に向けて、米国を始めとする同盟国、同志国との連携強化は重要であると考えております。
経済活動に対する制約についてお尋ねがありました。
この法案に基づく規制措置は、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行うものであり、経済活動に過度の制約をもたらすものではありません。
基幹インフラに関する制度は、事業者が導入する重要設備が外部からの妨害行為の手段として使用されることを防止するために必要な措置を講ずるものです。御指摘のあった下請、取引先企業を選別、監視するものではありません。
政府が指定する特定重要物資については、その安定供給を確保するため、物資の特性や事業者の取組に応じて、助成金の交付、金融支援などを行うこととしております。この支援は国民生活や経済活動にとって真に必要な物資に限定して行うこととしており、御指摘のあった特定事業者への巨額支援の横行につながることはありません。
先端的な重要技術の開発支援と特許非公開制度についてお尋ねがありました。
御指摘のあった私の答弁は、医療品メーカーが、平時にはバイオ医薬品を製造する一方で、パンデミック等の有事には感染症に対するワクチンを製造するといった両用性を備えたデュアルユース設備の導入支援について言及したものです。また、経済安全保障重要技術育成プログラムは、AIや量子などの先端的な重要技術の研究開発を進めるためのものです。
本法案における特許出願の非公開制度は、国家及び国民の安全を損なうおそれの大きい発明につき、特許手続を留保して、情報流出を防ぐことを可能とする制度です。戦前の秘密特許制度を復活させるものではありません。
特定重要技術に係る情報管理等についてお尋ねがありました。
本法案における特定重要技術の適正な情報管理や守秘義務に係る規定は、研究開発を進める上で有用ではあるが機微性の高い情報を協議会の場で官民が安心して円滑に共有し、意見交換するために設けられるものです。
また、情報管理等の具体的な運用方法は、協議会において全ての参加者が納得する形で決定していくこととしており、研究活動や科学技術等への制約やイノベーションの阻害には当たらないと考えています。
なお、セキュリティークリアランスの御指摘ですが、国際共同研究等においてクリアランスが求められる具体的事例の検証や国民理解の醸成度合いなどをまずは踏まえて検討していく必要があると考えております。
最後に、科学技術政策の在り方と法案の関係についてお尋ねがありました。
本法案の先端的な重要技術に係る協議会に参加する研究者は、その同意を前提とした上で協議会の構成員となり、また、協議会に参加した後に自らの意向により離脱することも可能な仕組みであり、研究に強制的に従事させられることはありません。
なお、我が国の科学技術政策については、第六期科学技術・イノベーション基本計画に基づき、持続可能で強靱な社会、国民一人一人がそれぞれの幸せを実現できる社会の実現に向けた取組を推進しているところです。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時四十一分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 岸田 文雄君
総務大臣 金子 恭之君
外務大臣 林 芳正君
厚生労働大臣 後藤 茂之君
農林水産大臣 金子原二郎君
経済産業大臣 萩生田光一君
国土交通大臣 斉藤 鉄夫君
防衛大臣 岸 信夫君
国務大臣 小林 鷹之君
国務大臣 野田 聖子君
国務大臣 牧島かれん君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 木原 誠二君
内閣府副大臣 大野敬太郎君