衆議院

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第15号 令和4年3月29日(火曜日)

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令和四年三月二十九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  令和四年三月二十九日

    午後一時開議

 第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定土砂等の管理に関する法律案(足立康史君外二名提出)及び土砂等の置場の確保に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長大塚拓君。

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 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔大塚拓君登壇〕

大塚拓君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、一般職の国家公務員の例に準じて防衛省職員の期末手当を改定するものであります。

 本案は、去る二十三日本委員会に付託され、翌二十四日岸防衛大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十五日、質疑を行い、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定土砂等の管理に関する法律案(足立康史君外二名提出)及び土砂等の置場の確保に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案並びに足立康史君外二名提出、特定土砂等の管理に関する法律案及び土砂等の置場の確保に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。国土交通大臣斉藤鉄夫君。

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 昨年七月に静岡県熱海市において発生した土石流災害では、多くの貴い生命や財産が失われ、上流部の盛土が崩落したことが被害の甚大化につながったとされております。このほかにも、全国各地で盛土の崩落による人的、物的被害が確認されており、盛土による災害の防止は喫緊の課題となっております。同様の被害が二度と繰り返されることがないよう、盛土等による災害から国民の生命、身体を守る観点から、盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制する法制度を整備することが強く求められております。

 このような趣旨から、この度、この法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、危険な盛土等を隙間なく規制するため、都道府県知事等が、宅地、農地、森林等の土地の用途にかかわらず、盛土等により人家等に被害を及ぼし得る区域を規制区域として指定できることとし、農地、森林の造成や土石の一時的な堆積も含め、規制区域内で行われる盛土等を許可の対象とすることとしております。

 第二に、盛土等の安全性を確保するため、盛土等を行うエリアの地形、地質等に応じて、災害防止のために必要な許可基準を設定し、工事の計画を事前に審査するとともに、施工状況の定期報告、施工中の中間検査及び工事完了時の完了検査を実施し、許可基準に沿った安全対策の実施を確認することとしております。

 第三に、工事後においても継続的に盛土等の安全性を担保するため、盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することを明確化し、災害防止のため必要なときは、都道府県知事等が土地所有者等や他の原因行為者に対して是正措置等を命令することができることとしております。

 第四に、違反行為に対する罰則が抑止力として十分に機能するよう、無許可での行為や命令への違反等について、行為者及び法人に対する罰則を大幅に強化することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 提出者足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 特定土砂等の管理に関する法律案及び土砂等の置場の確保に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 二〇一四年二月二十五日の夜、私の地元、大阪府の豊能町で、半年にわたって府道が通行止めとなるほどの大規模な土砂の崩落事故が発生しました。不幸中の幸い、人命に関わる事態には至りませんでしたが、土砂の問題、建設残土の問題の深刻さを痛感した私は、その翌日から、国会での問題提起を開始し、第一に、三本の議員立法から成る建設残土安全確保法案の提出と十数回に及ぶ国会質問、第二に、当時の松井一郎大阪府知事のリーダーシップによる府条例の制定、土砂問題対策全国ネットワーク会議の立ち上げと国家要望、そして第三に、総務省による行政評価の対象化に取り組んできました。

 私の力不足で与党の協力が得られないまま、昨年七月三日、静岡県熱海市において大規模な土石流災害が発生し、直接の死者二十六名、災害関連死一名、そして依然としてお一人が行方不明という甚大な被害をもたらしたことはざんきに堪えません。

 総務省の行政評価は本来の予定から大きく遅れ、総務大臣の勧告が公表されたのは、熱海の事故後、昨年十二月に入ってからでありました。

 一事が万事であります。自公政権には、安定感はあっても、危機感が足りません。改革のスピードが遅過ぎるのであります。国民の生命と財産を守るためには、被害が出てからでは遅いのです。

 日本維新の会は、本日、ウクライナ戦争を受けた、新しい外交安保調査会を立ち上げました。既に日本大改革プランを取りまとめた新しい経済社会調査会と並んで、我が党の政策づくりの両翼、両輪として、内政、外政にわたる政権担当能力をお示ししてまいりたいと存じます。

 さて、本日、様々な障害がある中で、斉藤国交大臣のリーダーシップ、そして宇野都市局長始め法案策定チームの皆様の御尽力により内閣提出法案が審議入りしたことについては、心から敬意を表します。ただし、今回の法案は、安全な地域環境を実現するための大きなステップではありますが、最初の一歩にすぎないと私は考えています。

 我が国では、大規模工事が全国各地で行われているにもかかわらず、発生する土砂等の使途や行方が不透明であり、これが建設残土の不適切な管理の温床となっています。加えて、建設工事で発生する大量の土砂等を適切に管理するための置場が不足しています。

 このような状況に鑑み、政府提出法案を補完し、災害の防止及び生活環境の保全に資するため、特定土砂等の管理の適正化を図るとともに、建設工事等により発生した土砂等の置場の確保について定める必要があることから、両法律案を提出した次第であります。

 以下、両法律案の内容を御説明いたします。

 まず、特定土砂等の管理に関する法律案については、大規模工事の発注者等が特定土砂等を他の者に引き渡す場合には特定土砂等管理票を作成し交付しなければならないこととし、交付を受けた者等が特定土砂等を他の者に引き渡す場合についても同様の取組等を義務づけるとともに、その他、特定土砂等管理票等の保存、罰則等について所要の規定を設けております。

 次に、土砂等の置場の確保に関する法律案については、都道府県は、単独で又は共同して、自然災害、大規模な工事等により発生した土砂等の置場を確保するよう努めることとするとともに、国は財政上の援助をするよう努めなければならないことといたしております。

 以上が、両法律案の提案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに特定土砂等の管理に関する法律案(足立康史君外二名提出)及び土砂等の置場の確保に関する法律案(足立康史君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。神津たけし君。

    〔神津たけし君登壇〕

神津たけし君 立憲民主党・無所属の神津たけしです。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 昨日、国土交通省から、基幹統計である建築工事費調査について問題が発生したと連絡を受けました。建設工事受注動態統計調査から、信頼回復に向け、全力で取り組んでいる中での新たな問題です。建設統計不正に対する国土交通大臣の謝罪と改善の決意は何だったのか。反省がかけらも生きていません。

 まずは、今回発生した新たな統計問題の概要、責任の所在、再発防止としていつまでにどのような対処をするのか、具体的にお示しください。

 本日の主題に戻ります。宅地造成等規制法の一部を改正する法律案、いわゆる盛土規制法案です。

 昨年七月三日、二日間降り続いた大雨により、静岡県熱海市において土石流災害が発生し、死者・行方不明者が二十八人になるなど、甚大な被害をもたらしました。また、私の地元、長野県におきましても、昨年八月十三日からの大雨により多くの土砂災害が発生し、岡谷市では、親子三名の貴い命が失われました。

 改めて、これらの災害によって犠牲になられた方々に謹んで哀悼の誠をささげるとともに、被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 熱海市の災害は、被災地域の上流部にあった盛土の崩落が被害の甚大化につながったとの指摘があり、単なる豪雨による自然災害とは言えない側面があると言わざるを得ません。これまでも、豪雨などをきっかけに、不適切に投棄された盛土が崩れて流出し、下流部の人家や施設などに被害を及ぼす災害が各地で発生してきています。

 まず、これまでの盛土対策について伺います。

 現在は、宅地造成等規制法、森林法、農地法等、個別の法律によって規制対象区域が定められていますが、実効性の伴う規制ができていません。盛土による被害が各地で繰り返されてきました。こうした現状から、各自治体が条例により独自の規制をかけてきました。しかし、条例による罰則には限界があります。国は、この限界を承知していたにもかかわらず、法整備を行わず、違法な盛土を野放しにしてきました。国の不作為は重大です。

 こうした従来の盛土対策について、政府はどのように総括されているのでしょうか。

 熱海の災害を踏まえ、政府は都道府県に対し盛土による災害の防止に向けた総点検を行うよう依頼し、全国で点検が進められてきました。昨年末に暫定的な取りまとめが行われ、必要な災害防止措置が確認できなかったなど、いずれかの点検項目に該当する盛土は全国で約千四百か所もあることが公表されました。

 本法案の審議に際し、まず、盛土の総点検の最新の取りまとめ状況を御説明ください。また、そのうち災害発生の危険性の高い盛土については、いつまでにどのように安全性を確保していくのか、お示しください。

 昨年十二月には、盛土による災害の防止に関する検討会の報告書がまとめられています。報告書の中では、地方自治体が定める条例では規制内容に差異があり、結果として規制の弱い地域に危険な盛土がされていたことなど、課題が指摘されています。本法案によってどのように対応されるのか、お示しください。

 次に、自治体への支援について伺います。

 本法案では、自治体が担う役割として、基礎調査、規制区域指定、工事許可審査、改善命令、行政代執行等が挙げられ、自治体の負担が大きいものになっています。財政基盤が厳しい自治体や、土木の専門的知識を有する職員が少ないなどにより、法律を円滑に施行するのは難しいのではないでしょうか。

 以前は、土砂災害防止法の基礎調査が円滑に進まなかったとされています。事務手続の迅速化を図るため、調査から行政代執行に至るまでの実施に係るマニュアルやガイドラインが必要ではないでしょうか。

 本法案は、基礎調査を実施後、宅地造成等規制区域と特定盛土等規制区域という二つの規制区域が指定され、一定の行為に対し許可が必要となります。実効性を伴う法律とするためには、監視を徹底する必要があります。

 しかし、規制区域の指定や監視が十分に行えない自治体があれば、条例で対応する場合と同様に、そのような地方自治体に残土が集まってくるという危険性はないのでしょうか。規制の弱い地域で盛土が行われやすいといったこれまでの指摘を踏まえれば、区域を指定することなく、全ての区域で規制を行えるようにする必要はないのでしょうか。

 さらに、近年は、毎年のように線状降水帯による豪雨や台風による暴風雨が発生し、家屋の浸水や土砂災害も頻発化しています。盛土による災害についても、このような豪雨等がきっかけとなって発生する場合が多いと考えられます。本法案による盛土の規制強化については、できるだけ早く開始する必要があると同時に、規制強化開始直前の駆け込み盛土を抑えるべきと考えます。

 本法案の施行予定時期や都道府県等による規制開始時期についてはどのように見込んでいるのか、そして、駆け込み盛土にはどのように対応されるのか、お示しください。

 熱海市で崩落した盛土は、申請の高さ十五メートルに対して五十メートル、届出の二倍の七万立方メートルの盛土がされていました。これまで問題となっているような事案は、許可された範囲外にも盛土が行われるなど、申請者が許可内容を大きく超えるような盛土を行うケースがありました。

 許可条件に違反するような盛土を行う者に対し行政が厳格に対応していかなければ、規制の実効性は確保できないと懸念しますが、本法案によって都道府県等はどのような対応ができるようになるのでしょうか。

 さらに、本法案では、改善命令に応じない場合等の行政代執行について、費用を工事主等に負担させることができるとされています。

 廃棄物処理法においては、命ぜられた処分者等が措置を講じない場合、生活環境の保全上の支障が生じているとき、行政代執行が行えますが、行政は、生活環境上の支障を認めてしまうと、措置命令に従わないとき、行政代執行による公費支出につながり得るため、措置命令の発出に消極的で、行政指導を繰り返す傾向がありました。

 このような事態を避けるため、行政代執行を支援する地方自治体への予算措置がどの程度行われるのか、確認させてください。

 去る予算委員会第六分科会で、我が党の後藤祐一議員が農地に残土が積まれている実態について質問し、野上農林水産大臣から、農地改良の名目で残土を搬入して、表面は耕作土で覆うことで農地の体裁を整え、実際は農地として利用しない、こうした巧妙な手口によって農地転用許可を免れている事例があるという答弁がありました。

 農地改良に係る脱法的な残土処分と盛土行為、本法案はこうしたケースにも対応できるような制度設計になっているのか、農林水産大臣の見解を求めます。

 地方自治体の条例では、土砂搬出時の届出を義務づけているものも見られます。盛土が行われる時点での規制だけではなく、盛土の造成に至る前の段階で適正な処理をより一層強めていくことも重要ではないでしょうか。

 このような、いわば盛土の発生源対策の強化は行わないのでしょうか。行うとすれば、どのような対応を行っていくのでしょうか。

 あわせて、建設残土の適正な処分を徹底していくためには、国が残土処分地を十分に確保していく必要もあるのではないでしょうか。今後、リニア中央新幹線の工事で、東京ドーム五十杯分に匹敵する五千六百八十万立方メートルの残土が発生するとも言われています。建設業の団体からは、残土処分場の不足が指摘されています。

 まず、そもそも残土処分場の不足に関してはどのような状況と認識しているのか。また、残土処分場を十分に確保していくため、国としては具体的にどのような取組を行っていくのでしょうか。

 私の地元の長野県では、リニア中央新幹線から出る残土の行き先が決まっているのは三割です。地元紙である信濃毎日新聞は、「土の声を」という、国策民営事業であるリニアの残土問題を連載し、注目されています。三月二十六日の記事の主題は要対策土でした。

 盛土は土石流災害を引き起こすだけではありません。トンネル掘削によって出る残土には、土壌汚染対策法で定める溶出量基準を超える、自然由来の重金属を含む土もあります。しかし、トンネル掘削で出た土は、土壌対策法の対象外と整理されています。要対策土が上流で盛土として使われてしまい、浸水が続けば、下流で井戸水を生活水として使用している方々の健康に影響を及ぼします。

 住民の健康被害を及ぼしかねない要対策土について、政府はどのような対策を取る予定でしょうか。重金属を含む要対策土は産業廃棄物として整理されるべきと考えますが、いかがでしょうか。

 以上申し述べたように、盛土をめぐる問題については、非常に広範な分野に関わる課題を含んでいます。今後、本法案により危険な盛土を効果的に規制していくためには、地方自治体に任せるのではなく、国が責任を持ってこの問題に当たる姿勢を明確に打ち出す必要があります。

 この点について、国土交通大臣の決意を伺います。

 最後に、国民の命と暮らしを守り、国土の強靱化を図るのは我々立憲民主党だということをお約束し、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 神津たけし議員から、今回発生した新たな統計問題についてお尋ねがありました。

 今般、基幹統計である建築工事費調査等について、調査票の配付が調査計画より大幅に遅れていることが判明しました。

 建設工事受注動態統計調査の不適切な処理を踏まえ、公的統計の信頼確保に向けて取り組んでいる中、このような事案が生じたことについて、極めて遺憾に思います。

 国土交通省としては、当初予定どおりに調査結果を公表できるよう、調査計画の変更等に係る手続を行い、早急に調査票の配付、その結果の集計等を進めてまいります。

 また、本件の背景には、建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る検証委員会の報告書でも指摘されている業務過多や統計部門におけるマネジメント上の課題があると考えております。

 今後、このような事案が発生することがないよう、先日設置した再発防止検証タスクフォースにおいて、今回の事案も含め、できる限り速やかに再発防止策を検討し、私自ら先頭に立ち、組織一丸となって取り組んでまいります。

 これまでの盛土対策に関する認識についてお尋ねがありました。

 盛土については、これまで、宅地造成等規制法のほか、森林法や農地法等の各法令等により規制してきたところですが、各法令等の目的に応じた規制であることから、必ずしも規制が十分でないエリアが存在しています。

 また、一部の地方公共団体では条例を制定して盛土を規制していますが、条例による罰則では抑止力として十分に機能していないとの指摘もあります。

 このような中、昨年、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生したことを踏まえ、今般、本法案を提出し、宅地や森林など土地の利用区分にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制するとともに、罰則の厳格化等の措置を講じ、盛土等に伴う災害を防止することとしております。

 盛土の総点検と、災害危険性の高い盛土に対する安全性確保についてお尋ねがありました。

 盛土の総点検については、昨年八月に関係府省から都道府県に依頼し、本年三月十六日時点において、全国で約三万六千か所の盛土が抽出され、それらのほぼ全ての盛土について目視等による点検が完了しました。

 このうち、必要な災害防止措置が確認できない、許可、届出等の手続が取られていないなど、点検項目のいずれかに該当する盛土が約一千百か所ありました。

 必要な災害防止措置が確認できなかった盛土については、都道府県等において、詳細調査等により崩落の危険性等を確認し、必要に応じて応急対策や盛土の撤去、擁壁設置等の抜本的な安全対策を講じていくこととなります。

 国土交通省としては、農林水産省と連携し、それらに必要な経費を地方公共団体に助成することとしております。

 また、今回の提出法案においては既存の盛土も規制対象としており、総点検で発見された危険な盛土への対応も含め、盛土等に伴う災害の発生防止に取り組んでまいります。

 これまでの課題への対応についてお尋ねがありました。

 宅地造成等規制法等の現行法令については、それぞれの目的に応じた規制であるため、必ずしも規制が十分でないエリアが存在するほか、条例では規制の内容に地域差があり、規制の弱い地域に不適正な盛土がされるとの指摘があります。

 このため、本法案では、土地の利用区分にかかわらず、人家等に被害を及ぼし得る盛土等について包括的に規制することとし、全国一律の厳しい安全基準により、盛土等の行為を許可に係らしめ、盛土等の安全確保に万全を期することとしております。

 地方公共団体への支援についてお尋ねがありました。

 地方公共団体においては、本法案に基づき基礎調査や区域指定、許可の審査、危険な盛土に対する改善命令、行政代執行等の事務を行うに当たり、ノウハウの獲得や人員、予算の確保などの対応が必要となると考えております。

 このため、国としては、基礎調査や盛土の許可に当たり参考となるガイドライン、不法な盛土への対応方法や危険な盛土の調査、対策工事の方法をまとめたガイドラインを示し、必要に応じて助言を行うこととしております。

 さらに、基礎調査に必要な経費に対する補助や地方整備局等からの職員派遣による個別的サポートなどを通じ、地方公共団体が円滑に事務を行えるよう、きめ細かく支援を行ってまいります。

 規制区域の指定及び監視についてお尋ねがありました。

 本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、許可制により厳しい権利制限をかけるものであり、過度な規制とならないよう、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしています。

 本法案により、人家等が存在するエリアのほか、人家等に危害を及ぼし得る斜面地のエリアなども含め規制区域に指定することができ、人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分なエリアが指定されるものと考えております。

 このような考え方に基づき、的確に規制区域が指定されるよう、国から都道府県等に対し、基本方針として考え方を示すとともに、区域指定に関する具体的なガイドラインを示し、法の円滑な運用を図ってまいります。

 あわせて、違法な盛土等に関しては、盛土担当部局と関係部局、警察との緊密な情報共有や、盛土許可地の公表等による市民からの通報が行われやすい環境の整備、監視カメラや衛星写真等による効率的な監視など、様々な取組により的確に状況を把握するよう、地方公共団体に促してまいります。

 本法案の施行スケジュール等についてお尋ねがありました。

 本法案については、盛土等に伴う災害の発生防止の必要性や緊急性に鑑み、可能な限り速やかに施行する必要があると認識しています。

 一方で、法施行に向けては、都道府県等における体制の整備や規制に当たっての調査の実施、国における技術基準の検討、整備などに一定の期間を要するため、公布の日から一年以内に施行することとしております。

 あらかじめ、法施行を見据えて体制整備や調査等を実施する都道府県等においては、法の施行から間もない時期に規制区域を指定できるものと見込んでおります。

 また、本法案においては、区域指定前に行われた既存の盛土についても、災害防止のため必要なときは、土地所有者や行為者等に是正命令ができることとしており、こうした対応も含め、盛土等に伴う災害の発生防止に取り組んでまいります。

 許可条件に違反するような盛土を行う者への対応についてお尋ねがありました。

 本法案により、許可条件に違反があった場合、工事中の造成主や工事施工者等に対しては、工事の施工停止や擁壁の設置等の是正措置を命令することができ、既に工事が終わっている場合は、土地所有者や造成主等に対して、土地の使用の禁止、制限や擁壁の設置等の是正措置を命令することができることとなります。

 また、命令しても土地所有者や造成主等が是正措置を講じないなどの場合には、行政代執行により、都道府県知事等が自ら災害防止のための工事を行うことができることとしております。

 国としては、これらの対応が適切に取られるよう、是正命令等をちゅうちょなく行うための対応方法をまとめたガイドラインを示すとともに、本法案の所管部局が関係部局や警察と緊密に連携し、不法行為に毅然と対応するよう促すなど、規制の実効性の確保に努めてまいります。

 行政代執行への支援についてお尋ねがありました。

 地方公共団体が、行政代執行により危険な盛土の災害防止措置を講ずるに当たり、その費用を懸念し、実行をちゅうちょするケースも考えられると認識しております。

 このため、国としては、来年度の当初予算で、総点検の対象となった盛土について、その撤去等を行う行政代執行等に要した費用について地方公共団体への財政支援を行うこととしております。

 あわせて、不法な盛土を発見した場合の対応方法をまとめたガイドラインを示し、地方公共団体がちゅうちょなく行政代執行等の対応をできるよう支援してまいります。

 建設残土の発生源対策についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、建設発生土の発生者側に対する取組の強化やその実効性の確保も重要と考えており、建設発生土の搬出先の明確化等を図ってまいります。

 具体的には、建設現場から搬出される建設発生土の約八割を占める公共工事について、関係省庁と連携して、発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組を徹底していくとともに、入札及び契約の適正化の観点も踏まえ、適切な費用負担の徹底に取り組んでまいります。

 また、民間工事も含めた取組として、資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化し、元請業者に搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。

 さらに、民間発注者による適切な費用負担等についてもガイドライン等で明確化し、様々な機会を捉えて周知してまいります。

 国土交通省としては、建設発生土の適正処理の確保にしっかりと取り組んでまいります。

 残土処分場の現状についてお尋ねがありました。

 建設発生土の約八割を占める公共工事においては、約八六%の建設発生土について、発注者が発注段階で受入先を指定する指定利用等を行っており、一概には受入れ地が不足している状況ではないと思われます。

 また、建設発生土の約二割を占める民間工事の中には、地域によっては受入れ地の不足があり、不足状況については地域差があるという業界団体の声もあります。

 国土交通省としては、関係省庁と連携して、公共工事における指定利用等や発注者における適切な積算への反映の徹底に取り組んでまいります。また、民間工事においても、特に継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者が適切な費用負担の観点から公共工事と同様に指定利用等の取組を実施し、それが困難な場合でも元請業者により適正処理が行われることを確認するなど、これまで以上の積極的な役割を果たせるよう、国土交通省として取り組んでまいります。

 こうした取組とともに、現場内利用等の促進や許可地一覧の公表によるマッチングの促進等を行うことにより、必要量に応じた新たな法制度による受入れ地の整備が進んでいくものと考えております。

 盛土の効果的な規制に向けた私の決意についてお尋ねがありました。

 豪雨災害が激甚化、頻発化する中、危険な盛土によって人命が失われることはあってはならず、盛土等に伴う災害の防止は国家的な政策課題であると認識しております。

 このため、本法案に基づき、盛土対策の総括的な考え方を基本方針において示し、関係行政分野の連携や法の的確な運用を図るとともに、地方公共団体に対して具体的なガイドライン等による助言や財政支援を積極的に実施し、全国における盛土対策を国として率先して進めてまいります。

 二度と熱海市と同様の悲劇を繰り返さないよう、関係省庁が連携して、盛土等に伴う災害の防止に向けてしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 神津議員の御質問にお答えいたします。

 農地における盛土への規制についてのお尋ねがありました。

 今般の宅地造成等規制法の改正によりまして、宅地、森林、農地といった土地の用途にかかわらず、規制区域を指定した上で、全国一律の安全基準により、残土置場を含めた盛土を都道府県等の許可制とするなど、危険な盛土を包括的に規制することが可能となります。

 また、農地として利用しない場合は農地転用許可が必要であり、許可を受けずに農地転用した場合は原状回復命令等の対象となります。

 農林水産省としても、農地転用許可制度に加え、新たな盛土に対する規制も含め、適正な運用に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣山口壯君登壇〕

国務大臣(山口壯君) 神津たけし議員から、トンネル掘削によって出る要対策土についてのお尋ねがありました。

 トンネル掘削等の建設工事から発生する汚染土壌の取扱いについては、国土交通省において、建設工事における自然由来重金属等含有岩石・土壌への対応マニュアルを取りまとめており、建設工事における自然由来の重金属等を含有する土壌等については、人への健康への影響の防止を目的として、調査、設計、施工、モニタリングにおける技術的な対応方法を示し、適切に対応していると承知しています。

 なお、土壌汚染対策法においても、汚染土壌を適切に管理するための技術的な知見等が蓄積されており、当該マニュアルの運用に当たって必要な協力を実施しています。

 また、廃棄物は、適正に処理しなければ、それ自体が腐敗、悪臭の発生等によって生活環境や公衆衛生に支障を生じさせることから、廃棄物処理法により規制されています。トンネル掘削で出た土は、それ自体はこうした性質を有するものではないことから、廃棄物として廃棄物処理法で規制するものではないと考えています。

 環境省としては、事業者において適切に対応していただけるよう、引き続き、国土交通省と連携してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 市村浩一郎君。

    〔市村浩一郎君登壇〕

市村浩一郎君 日本維新の会、市村浩一郎です。

 ただいま議題となりました政府提出、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案及び日本維新の会提出、特定土砂等の管理に関する法律案、土砂等の置場の確保に関する法律案の二案につきまして、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 昨年七月三日、静岡県熱海市で、大規模な土石流が発生し、二十七名の方がお亡くなりになられています。

 質問に先立ちまして、お亡くなりになられた方々の御冥福を衷心よりお祈りし、哀悼の誠をささげます。

 この大惨事の原因が建設残土であったことは既に明らかになっています。土石流が発生してから間もなく九か月がたとうとしていますが、土砂が流れ下った川の周辺は警戒区域に指定され、今もなお、立入りが禁止され、二百名以上の方々が地元を離れた暮らしを余儀なくされています。

 そして、昨日には、行政対応が適切だったかを検証する、静岡県の逢初川土石流災害に係る行政対応検証委員会が中間報告を公表し、その中で、危険性を認識していたが大規模崩落を予測していなかった、又は、静岡県と熱海市の連携協力体制が十分でなかったなどとしています。

 今回の法改正は、熱海市でのこうした大惨事を二度と繰り返さないという強い反省がなければなりません。改めまして、熱海市での土石流災害に対する国土交通大臣の御認識と再発防止への御決意をお聞かせいただきたいと存じます。

 また、御遺族や被災者の皆様は、心身の傷も癒えぬまま、生活の面でも大きな損失を被っておられます。政府は、今後、御遺族、被災者の方々にどのような支援をされていくのか、併せてお答えください。

 政府提出法案では、都道府県知事や政令指定都市、中核市の市長が、盛土等により人家等に被害を及ぼし得る区域をあらかじめ規制区域として指定することになっています。

 この規制区域内での盛土等は知事や市長の許可が必要になるとのことですが、土砂の流出事故はあらかじめ想定できる場所だけで発生するとは限りません。最初は安全で規制の必要なしと判断されていても、時を経て、建物や道路の工事の影響によって、又は地震や台風など自然現象によっても土地の形状や安全性は刻々と変わっていくものです。人が立ち入らないと思われた場所に、後になって、人家が建てられるということもあります。

 あらかじめ規制対象の区域を定めるのではなく、全ての地域を対象にして、盛土を行おうとする者に届出を義務づけ、届出の時点で行政が安全性を確認し、安全が担保されない場合には許可しないとする方がずっと合理的で、いわゆる想定外の事故を減らすことができると考えます。

 なぜ、あらかじめ規制区域を設ける必要があるのでしょうか。規制区域から除外される区域とはどのような区域を想定されておられるのでしょうか。対象区域を限定しないことこそ、隙間のない規制となるのではないのでしょうか。併せて、国土交通大臣の御所見をお伺いいたします。

 また、規制対象区域と規制除外区域を分けることによって、処分に困った建設残土が規制のない区域に集中してしまうという事態が懸念をされます。現状でも、規制が緩いことをいいことに、住宅地など、まさかと思えるような場所に産業廃棄物が混入された土砂が山積みされる事例が全国で発生しています。

 規制の対象から除外された地域に建設残土等が集まってしまうことにはならないのでしょうか。法律を的確に運用し実効性を高めるためにも全国一律に規制をするべきと考えますが、国土交通大臣の御所見をお伺いいたします。

 次に、他の法制度との関係についてお尋ねいたします。

 例えば、森林法上の許可を取って森林を伐採した後に、そこに残土処理場を整備しようとした場合、残土処理場が不許可となれば無駄な伐採となり、木を植え直しても元の森林に戻るには何十年とかかってしまうという極めて不合理なことが生じてしまいます。

 また、砂防法との関係でも矛盾があります。砂防法には、国交大臣が指定した土地において、都道府県知事が一定の禁止又は制限をするという今回の法案とよく似た条項がありますが、違反した場合の罰則は二万円の罰金という極めて低いものです。一方、今回の政府案では、建設残土を投棄した行為は罰金最高三億円となっており、余りにもひどい落差となっています。

 こうした矛盾や不合理を解消するためにも、森林法、砂防法など、他の土地利用、国土保全に関する法制度との一体的な運用をするべきだと考えます。

 また同時に、全国一律の規制基準とするためにも、森林法、砂防法などの法改正も進めるべきだと考えますが、国土交通大臣及び農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、責任の所在の明確化、そして改めまして実効性のある罰則についてお尋ねいたします。

 今回の政府案では、条例による罰則の上限であります懲役二年以下又は百万円以下の罰金を超える重い罰則が設けられています。一例を挙げますと、法人に対しては、先ほど申し上げましたように最高三億円の重科を措置できるようにされています。これによりまして、違反行為に対する強い抑止効果が期待されるものと考えます。

 一方、盛土に関する不法行為の事例を見れば、規範意識の極めて低い事業者によって行われていることが多く、行政による是正命令があっても、会社を倒産させ、社長が雲隠れしてしまい、罰金を逃れる事例も少なくはありません。

 罰則の強化に伴い、より悪質、巧妙な罰則逃れが表れる事態が懸念をされています。意図的な法人の解散や経営責任者の失踪などの罰則逃れに対しては特別な対応策を検討すべきと考えますが、国土交通大臣の御認識と御見解を求めます。

 また、政府案では、必要なときには、現在の土地所有者だけではなく、過去の所有者等に対しても、原因行為者として是正措置を命令できるようになっています。しかし、過去に遡って各々の責任を明確にするためには、残土がどこで発生し、どこを流通して、どのようにその場所に盛られることになったのか、各段階の状況を確認できる仕組みが必要です。

 例えば、産業廃棄物の場合には、マニフェスト制度があります。これにより、産業廃棄物は、排出先から最終処分までを把握することができます。つまり、追跡する仕組みがあるわけです。

 こうしたトレーサビリティーを可能にするマニフェスト制度を盛土規制においても導入し、関係者の責任を明確にすべきと考えますが、国土交通大臣の御所見はいかがでしょうか。答弁を求めます。

 続きまして、日本維新の会提出の法案について質問いたします。ここで法案提出者の足立康史代議士に伺います。

 このように日本維新の会が盛土規制について党を挙げて取り組むようになったきっかけは何なのでしょうか。また、今回の法案に至るまで、自治体や省庁と協力しながらどのような取組をされてきたのでしょうか。明確にお答えください。

 次に、日本維新の会提出の二法案の内容について質問いたします。

 まず、特定土砂等の管理に関する法律案では、建設残土等に対しても産業廃棄物と同様にマニフェスト制度を導入し、土砂の移動、流通を管理するものとされています。そして、土砂等の置場の確保に関する法律案では、都道府県が土砂等の置場を確保するものとの説明がありました。この二つの法律によりまして、土砂の不法投棄を未然に防ぐことができる趣旨と理解をしています。

 しかしながら、土砂置場の確保につきましては、都道府県ごとに、ニーズも地理的条件も財政状況もまちまちでありまして、取組にばらつきが出るとの意見もあります。こうしたばらつきを出さないためにはどのような施策が必要だとお考えなのか、お聞かせください。

 以上、熱海のような悲劇が二度と起こらないようにすることが政治の使命であります。子供たち、孫たちの世代まで国民の皆様が安心、安全に暮らせるようにしなければなりません。

 盛土の不安が解消され真に実効性のある法案は維新案と政府案のどちらなのか、日本維新の会は、政府・与党の皆さんと堂々と議論し、国民の皆様の前につまびらかにしていくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 市村浩一郎議員から、熱海市での土石流災害に対する私の認識と再発防止への決意についてお尋ねがありました。

 昨年七月三日、静岡県熱海市で発生した土石流により、災害関連死も含め二十七名の方が亡くなり、いまだ行方不明の方が一名いらっしゃるなど、大変悲惨な災害が引き起こされました。

 豪雨災害が激甚化、頻発化する中、危険な盛土によって人命が失われることはあってはならず、盛土等に伴う災害の防止は国家的な政策課題であると認識しております。

 このため、本法案を提出し、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制し、盛土等に伴う災害を防止することとしております。

 また、被災者の方々に対する支援についても、災害からの復旧復興が進むよう、河川改修等のインフラ整備と併せて、熱海市による復興まちづくり計画の策定に対して支援を行っているところです。

 二度と熱海市と同様の悲劇を繰り返さないよう、関係省庁とも連携して、しっかりと取り組んでまいります。

 規制区域についてお尋ねがありました。

 本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、許可制により厳しい権利制限をかけるものであり、過度な規制とならないよう、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしております。

 本法案により、人家等が存在するエリアのほか、人家等に危害を及ぼし得る斜面地のエリアなども含め規制区域に指定することができ、人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分なエリアが指定されるものと考えております。

 規制区域の運用についてお尋ねがありました。

 本法案では、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしています。

 区域の指定に当たっては、都道府県等が基礎調査を実施し、客観的なリスク把握に基づき、必要かつ十分な区域を指定すべきものと考えております。

 この基礎調査については、おおむね五年ごとに実施することとしており、定期的に土地の利用状況を把握し、必要な場合には、新たに規制区域に指定することで、盛土等に伴う災害が発生することを的確に防止することができると考えております。

 国土交通省としては、的確に規制区域が指定されるよう、こうした考え方を基本方針やガイドラインに示すとともに、調査に必要な費用について財政支援を行うこととしており、法の円滑な運用を図ってまいります。

 他法令との一体的な運用や砂防法等における対応についてお尋ねがありました。

 盛土等に伴う災害の発生防止のための対応策は、各種法令等による土地利用規制など、広範な行政分野に及び、相互の連携が不可欠となります。

 このため、盛土規制の実効性確保のため、森林法や砂防法等の関係法令に基づく許可等に際しては、都道府県等において盛土行為に関する許可の状況を確認するなど、関係法令を盛土行為の許可制度と一体的に運用してまいります。

 また、砂防指定地内の盛土の安全基準については、本法案における安全基準と整合性を確保しつつ運用されるよう検討し、砂防指定地内の安全対策に万全を期してまいりたいと考えております。

 盛土等に伴う災害の防止に向けては、これまでも関係府省連絡会議において取り組んできたところであり、国土交通省としても、引き続き、関係省庁と緊密に連携してまいります。

 本法案の規制に関する罰則逃れへの対応についてお尋ねがありました。

 まず、盛土等に関する違反行為については、早期に発見、是正することが重要です。

 このため、本法案において、工事現場における標識の掲示や許可を受けた土地の公表により住民等による通報を促す仕組みを設けるとともに、規制の運用に際しては、地方公共団体において廃棄物担当部局や警察等との情報共有や連携した取締りを行うよう促すこととしております。

 また、罰則については、違反行為に関与した法人が解散などにより消滅している場合、法人の代表者、役員、従業員などの自然人に対して懲役刑、罰金刑を科すこととなります。

 本法案による規制が実効性の高いものとなるよう、関係行政機関とも連携して取り組んでまいります。

 マニフェスト制度の導入についてお尋ねがありました。

 トレーサビリティー制度について、御指摘のとおり、新たな盛土規制と併せて、建設工事から発生する土の搬出先の明確化や、実際に適正に搬出されたことを確認する仕組みが必要と認識しております。

 このため、建設現場から搬出される建設発生土の約八割を占める公共工事について、工事の発注段階で建設発生土の搬出先を指定する指定利用等の徹底に取り組んでまいります。

 また、民間工事も含めて、搬出先の適正確保と資源としての有効活用を一体的に図ることが不適正処理の防止に効果的です。このため、現行の資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化し、元請業者に搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。

 国土交通省としては、建設発生土の搬出先の明確化等に向けてしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 市村議員の御質問にお答えいたします。

 盛土規制法と森林法との一体的な運用と森林法の改正についてのお尋ねがありました。

 御指摘の残土処分場の整備に当たっての森林法との関係につきましては、市町村長が森林法に基づく伐採造林届を受理する際に、本改正案における盛土行為に関する許可の状況を確認するなど、盛土行為の許可制度と一体的に運用するように取り組んでまいります。

 なお、本改正案は、宅地、森林、農地等といった土地の用途にかかわらず、全国一律の安全基準により、盛土を都道府県知事等の許可制とするなど、危険な盛土を包括的に規制するものであることから、森林法を改正する必要はなく、本改正案と森林法とを一体的に運用することにより、適切に対処していく考えであります。(拍手)

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会提出の法案に関し、市村浩一郎議員から、三問御質問いただきました。

 まず、維新の会が盛土規制について党を挙げて取り組むようになったきっかけについて御質問いただきました。

 我が党は、平成二十六年二月に発生した大阪府豊能町での建設残土に起因する大規模な土砂崩落をきっかけとして、一、盛土の規制、二、大規模工事に係る土砂のトレーサビリティー、三、土砂の置場の確保の三つを柱とする、いわゆる建設残土安全確保法案を衆議院に提出。以降、市村議員が御指摘のとおり、盛土の規制等の重要性を訴え続けてきました。

 他方、昨年の静岡県熱海市での痛ましい土砂災害を機に、政府も法改正に着手し、今回政府案が提出されたことについては一定の評価をするところであります。しかし、維新の会としては、土砂災害の防止のためには、政府案で定められている盛土の規制だけでは不十分であり、大規模工事に係る土砂のトレーサビリティー制度と土砂の置場の確保についても措置する必要があると考えております。そのため、今回、特定土砂等の管理に関する法律案と土砂等の置場の確保に関する法律案の二法案を提出するに至ったところであります。

 次に、今回の法案提出に至るまでに自治体や省庁と協力しながらどのような取組をしてきたのか、お答えをいたします。

 我が党が平成二十六年に衆議院に法案を提出した当時は、省庁の間で、土砂の担当が明確に決まっていませんでした。我が党の呼びかけに呼応して国土交通省が対応くださり、国交省主導で関係省庁連絡会議が設置され、平成二十九年八月に、建設発生土の取扱いに関わる実務担当者のための参考資料が作成されたところであります。これは感謝をしております。

 他方、自治体の方では、当時の松井大阪府知事の尽力により、残土等にかかる土砂問題対策全国ネットワーク会議が平成三十年十二月に組織されたところであり、国家要望等、活発に活動を続けてきているところと承知しています。

 そして、最後に、土砂の置場の確保については、都道府県ごとにニーズも地理的条件も財政状況も異なり取組にばらつきが出るとの御意見がございます、こうしたばらつきを出さないために国はどのような施策を講じることが必要と考えるか、御質問いただきました。

 この法律案では、土砂の置場の確保を都道府県の努力義務としているところでありますが、都道府県ごとに置場の確保の必要度合いや財政力が異なるため、都道府県によって置場の確保にばらつきが出るといった市村議員の御懸念はそのとおりであると考えております。このようなばらつきを出さないためには、国による十分な財政支援が必要不可欠であると考えております。

 そのため、この法案では、国は、土砂の置場の確保を実施する都道府県に対し、財政上の援助をするよう努めなければならないという規定を設けているところであります。この規定により、土砂の置場の確保が必要な都道府県については、国の十分な援助によってその実施が実現できるようになるものと期待しているところであります。

 いずれにせよ、二度と熱海のような悲劇を繰り返さない、そんな安全な地域社会を実現していくことにより、被災され亡くなられた方々の弔いになるよう、力を尽くしてまいりたいと考えています。よろしくお願いします。

 ありがとうございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 ただいま議題となりました宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について、公明党を代表し、質問いたします。(拍手)

 私の地元は静岡県であり、昨年七月三日に発生した静岡県熱海市の土石流災害では、多くの家屋が土石流にのみ込まれ、災害関連死一名を含む二十七名もの貴い命が奪われ、いまだ一名の方が行方不明になっています。誠に痛恨の極みであり、哀惜の念に堪えません。改めて、この災害でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 また、今月十六日の福島県沖を震源とする地震においてお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、熱海市の土石流災害は不適切に処理された盛土が原因との指摘もあり、また、盛土の崩落が被害の甚大化につながったとされています。県の調査検証委員会では、土石流の発生原因について調査、検証が進められており、本日、中間報告が出されると承知しています。

 近年、気候変動により、大雨、豪雨災害が激甚化、頻発化しており、こうした盛土による災害から国民の命を守るため、危険な盛土への対策を講ずることは我が国の喫緊の課題です。

 公明党は、発災後、令和三年七月一日からの大雨非常災害対策本部を設置し、速やかに被災地の声をお伺いし、提言を取りまとめ、盛土の総点検の実施や規制の見直しなど、原因究明と再発防止を全力で進めるよう政府に強く要請いたしました。

 その後、政府では、関係府省連絡会議や有識者による検討会を設置していただき、対策を真剣に、本格的に検討していただき、その中で、盛土の総点検など、公明党が要請してきた取組が具体化され、また、改正案においては、全国知事会等の要請に即し、全国一律の安全基準による盛土等の規制が盛り込まれました。

 このような経緯を踏まえ、以下、質問いたします。

 関係省庁において昨年から実施してきた盛土の総点検については、昨年末、暫定的に取りまとめられ、その後、年度内に点検をおおむね完了させるべく進められてきました。言うまでもなく、危険な盛土への対策に当たっては、既にある盛土について、その所在を把握し、安全性を確認することが重要です。

 そこで、まず盛土の総点検に関してお伺いします。

 盛土の問題については、地域により発生状況に差があるようにも見受けられますが、そうした状況を含め、総点検の結果についてお答えください。また、災害防止措置が不十分な盛土については今後どう対応していくのか、併せて国土交通大臣の答弁を求めます。

 次に、改正案では、土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的に規制することとされていますが、盛土の問題への対応策は、各種土地利用規制や廃棄物の処理など、広範な行政分野に及ぶものとなります。このため、効果的な規制を実施していく上では、行政の関係部局が連携しながら進めていくことが重要です。

 こうした観点から、改正案では、盛土等に伴う災害の防止に関する基本的な事項などについて、主務大臣が基本方針を新たに定めることとしています。

 この基本方針の下で都道府県等が規制を実施することになりますが、具体的にはこの方針でどのようなことを定めることにしているのか、国土交通大臣に伺います。

 次に、盛土規制を行う区域について質問します。

 改正案では、都道府県等が盛土等により人家等に被害を及ぼし得る区域を指定し、その区域内で規制を課することとなっています。一方で、条例により盛土規制を行っている自治体では、特に区域を指定していない場合が多いと承知しています。

 規制区域は基礎調査を実施した上で指定するものとされていますが、悲惨な災害を二度と起こさないように、住民の命を守るために十分な区域をカバーしていく必要があります。

 このような観点から見て、改正案における規制区域は具体的にどのような範囲とするのか、また、それは人命を守るために十分なものとなるのか、国土交通大臣の答弁を求めます。

 改正法により、規制区域内の新たな盛土等は許可の対象となり、規制が強化されますが、既存の危険な盛土に対して、法律に基づく対応を強化することも重要です。現在は、問題のある盛土が既存法令等の規制対象となる場合には命令等の処分を行うことができますが、規制対象とならない場合には行政指導のみとなり、実効性が乏しいと考えます。

 そこで、既存盛土の安全確保に関しては改正案によってどのような対応がなされるのか、国土交通大臣に伺います。

 また、規制区域の指定、基礎調査、許可制度の運用、検査の実施、監督処分など、実際の事務を担うのは自治体です。改正案では、都道府県や政令指定都市、中核市が施行権限を持つほか、その他の市町村も規制区域の指定の申出や災害防止に関する意見の申出など法の施行に関与でき、双方の連携協力が極めて重要でございます。

 一方で、自治体の中には専門職員の不足など体制面や財政面の課題を抱えているところが多いとも言われており、改正法の円滑な執行について懸念の声も聞かれます。改正案による規制の効果を上げていくためにも、国から自治体に対し、財政的、技術的支援が不可欠であると考えます。

 改正法の円滑な執行に向けて、自治体に対して国は具体的にどのような支援を行っていくのか、国土交通大臣の答弁を求めます。

 自治体の執行体制の強化と併せて、無許可の盛土など悪質な不法盛土については特に厳しく対処していく必要があります。改正案では罰則も大幅に強化されますが、不法盛土をしっかりと取り締まっていかなければ実効性を欠きます。

 悪質な盛土は地域住民の命を脅かしかねない問題であり、自治体の関係部局同士の連携のみならず、警察がこれらの部局と緊密に連携し、不法盛土の取締りに当たる必要もあるのではないでしょうか。関係府省連絡会議では警察庁が構成員となっており、警察としてもこの問題に主体的に取り組んでいく必要があると考えますが、国家公安委員長の見解を伺います。

 さらに、盛土について、その流れを遡れば、建設工事から発生する残土の問題にも触れなければなりません。

 残土の最終的行き先である盛土等の安全確保については、改正法により規制が強化されますが、それに加え、発生者側での残土の適正な取扱いを徹底させることも重要であります。このような建設残土の発生者側に対する取組は従来からも行われているものの、それで十分とは言えません。改正法と相まって一層の効果を上げていくため、その取組を強化すべきと考えます。

 この点について、具体的な取組強化の内容や、実際にどうやってその実効性を確保していくのか、国土交通大臣の答弁を求めます。

 熱海市で発生したような災害は、もう二度と引き起こしてはなりません。その決意を新たにし、そのためにも、今国会で速やかに本法案の審議が行われ、盛土の規制強化が実施されることを強く求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 大口議員から、盛土の総点検と、災害防止措置が不十分な盛土への対応についてお尋ねがありました。

 盛土の総点検につきましては、昨年八月に関係府省から都道府県に依頼し、本年三月十六日時点において、全国で約三万六千か所の盛土が抽出され、それらのほぼ全ての盛土について目視等による点検が完了しました。

 このうち、必要な災害防止措置が確認できない、許可、届出等の手続が取られていないなど、点検項目のいずれかに該当する盛土が大都市の周辺圏を中心に約千百か所ありました。

 必要な災害防止措置が確認できなかった盛土については、都道府県等において、詳細調査等により崩落の危険性等を確認し、必要に応じて応急対策や盛土の撤去、擁壁設置等の抜本的な安全対策を講じていくこととなります。

 国土交通省としては、農林水産省と連携し、それらに必要な経費を地方公共団体に助成することとしております。

 また、今回の提出法案においては既存の盛土も規制対象としており、総点検で発見された危険な盛土への対応も含め、盛土等に伴う災害の発生防止に取り組んでまいります。

 基本方針についてお尋ねがありました。

 本法案では、盛土対策の基本方針として国が国土全体にわたる包括的な考え方を示し、関係部局が相互に連携しながら、規制を円滑に実施できるようにすることとしております。

 その内容としては、盛土等に伴う災害の防止に関する基本的な事項や基礎調査の実施方法、区域指定の考え方など本法案の運用に関して指針となる事項のほか、建設発生土の搬出先の明確化や、廃棄物混じりの盛土、太陽光パネル設置に伴う盛土への対応等の取組などについて定めることを予定しております。

 都道府県等が効果的かつ円滑に規制を行えるよう、詳細については引き続き検討を進めてまいります。

 改正案における規制区域についてお尋ねがありました。

 本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るため、許可制により、厳しい権利制限をかけ、規制を行うものです。

 そのため、その目的に照らして、必要かつ十分な区域を規制対象とすることとしております。

 具体的には、盛土等に伴う崖崩れ等によって近隣の人家等に被害が生ずる蓋然性が高い市街地や集落のエリアのほか、人家等から離れた場所であっても、地形等の条件から、盛土等が崩落した場合に土砂が流下して下方の人家等に危害を及ぼし得る斜面地のエリアを指定できることとしております。

 これにより、盛土等に伴う災害から人命を守るために十分な区域が指定されるものと考えております。

 既存の盛土の安全確保についてお尋ねがありました。

 本法案により、規制区域内の既存の盛土については、区域指定前に行われたものも含め、災害防止のため必要なときは、土地所有者や行為者等に対し擁壁や排水施設の設置等の是正措置を命令することができることとなります。

 また、命令しても土地所有者等が是正措置を講じないなどの場合には、行政代執行により、都道府県知事等が自ら災害防止のための工事を行い、費用を土地所有者等に請求することができることとしております。

 これらの措置により、既存の盛土についてもしっかりと安全を確保してまいります。

 地方公共団体への支援についてお尋ねがありました。

 本法案を実効性のあるものとするためには、実務を担う地方公共団体において、必要なノウハウの獲得や人員、予算の確保、関係部局間の連携体制の整備などの対応が必要となると考えております。

 国としては、基礎調査や盛土の技術的審査、不法な盛土への対応等の参考になるガイドラインを示し、必要に応じて助言を行うとともに、基礎調査に必要な経費に対する補助や地方整備局等からの職員派遣による個別的サポートなどを通じ、きめ細かく支援を行い、本法案の執行体制の強化を図ってまいります。

 発生側での残土の適正な取扱いについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、建設発生土の発生者側に対する取組の強化や、その実効性の確保も重要と考えており、建設発生土の搬出先の明確化等を図ってまいります。

 具体的には、建設現場から搬出される建設発生土の約八割を占める公共工事について、関係省庁と連携して、発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組を徹底していくとともに、入札及び契約の適正化の観点も踏まえ、適切な費用負担の徹底に取り組んでまいります。

 また、民間工事も含めた取組として、資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化し、元請業者に搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。

 さらに、民間発注者による適切な費用負担等についてもガイドライン等で明確化し、様々な機会を捉えて周知してまいります。

 これらの取組の実効性の確保策としては、まず、公共工事については、国の発注工事では既にほぼ全ての工事で指定利用等を行っており、今後は、地方公共団体等に対して更なる取組の要請をしてまいります。

 また、再生資源利用促進計画制度の強化については、周辺住民等の目に触れるよう、計画の建設現場への掲示を義務づけるほか、立入検査等の対象事業者の拡大や建設現場パトロールの強化等により、実効性を確保してまいります。(拍手)

    〔国務大臣二之湯智君登壇〕

国務大臣(二之湯智君) 大口議員より、不法盛土の取締りや警察としての主体的な取組についてお尋ねがありました。

 議員の御指摘のとおり、違法な行為に対しては、関係機関としっかり連携しつつ、法と証拠に基づいた厳正な取締りを行う必要があると考えております。

 盛土による災害防止に関する検討会の御提言においても、新たな法制度を実効性のあるものとするためには、違反行為に対する厳格な罰則を措置することに加え、違法行為の早期発見、関係機関での情報共有など、法の施行体制、能力を強化することが極めて重要であるとされております。

 警察がこうした役割を積極的に果たすことができるよう、今後とも指導してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)

 昨年七月、静岡県熱海市で発生した土石流災害は、死者二十七名、行方不明者一名という大惨事でした。不適切な盛土の崩落による人災であることは論をまちません。こうした危険な盛土は全国に存在し、度々崩落事故等を起こしてきたため、危険な盛土に関する全国一律の規制、包括的な法律が要望されていました。

 本法案は、こうした被害を二度と生まないための決め手になるのでしょうか。

 少なくない地方自治体が土砂条例などを制定しています。しかし、条例では権限や罰則も弱く、その上、条例のない自治体へ土砂が持ち込まれる問題もあります。政府は、これまで立法化を避けてきた責任を認め、実効ある法整備を行うべきです。

 法案では、盛土により人家等に被害を及ぼし得る区域を規制区域として指定し、区域内で行う盛土等に都道府県知事の許可を必要とします。森林や農地まで広く規制区域としますが、区域外への盛土行為は防ぐことができません。土砂災害警戒区域など、盛土行為を禁止する区域を定め、それ以外は区域を定めず、盛土行為を規制対象にすべきではありませんか。

 例えば、リニア中央新幹線の南アルプス静岡工区のトンネル残土は、標高約一千三百メートルにある燕沢に置場を作る計画です。東京ドーム三杯分に当たる三百六十万立方メートルになり、静岡県知事は自然環境への悪影響を懸念しています。ここは規制区域に指定できますか。

 次に、危険な盛土等の大きな要因の一つが、建設残土の不適切な処理です。熱海の土石流となって崩落した大規模な土砂は、どこから持ち込まれたものか判明していません。しかし、工事現場から発生した建設残土である可能性は大いにあります。

 総務省の建設残土対策に関する実態調査結果に基づく勧告によると、土砂条例で対応した無許可埋立て五十八事案のうち、土砂流出の発生が十四事案、そのうち是正されたのは一事案にすぎません。建設工事の発注者、元請業者など建設残土の発生者責任を明確にし、最終的な処分先まで適切な管理を行う建設残土の処理に関する法律を盛土規制と一体で制定するべきではありませんか。答弁を求めます。

 建設残土のうち、廃棄物を取り除いた建設発生土は、工事現場等で資源として有効活用することが基本です。しかし、工事現場内で利用されなかった建設発生土は、全体の二割強、年間五千八百七十三万立方メートル、実に東京ドームの五十倍ほどです。これは確実に最終処分先に運び込まれているのですか。

 例えば、リニア中央新幹線のトンネル工事で発生する残土は約五千六百八十万立方メートルという膨大な量ですが、現時点で最終処分先が決まっている量はどれくらいですか。一時仮置場に堆積している残土はどれくらいか、伺います。

 山梨県の南アルプストンネル工事では、搬出した土砂のうち、最終処分先が決まらず、土砂災害警戒区域内の仮置場に堆積されたままになっているといいます。地元では、いつ崩落するかと不安が広がっています。早急に処分先を確保し、仮置場から搬出、撤去すべきではありませんか。

 公共事業の場合は、発注する際に最終処分先を指定して工事契約を結ぶ指定処分が制度化されています。この指定処分の徹底を図るとともに、民間工事に対しても指定処分を義務化すべきです。

 建設残土は、工事現場から一旦は仮置場や中間処理場に搬出されます。仮置場などの位置づけが曖昧であり、基準を明確にすべきではありませんか。建設発生土が最終処分先に確実に搬入されているかチェックできる、トレーサビリティー制度をつくるべきです。

 最後に、新幹線や高速道路などの大規模なトンネル掘削工事は大量の残土を排出します。工事発注者は、最終処分場が確実に確保されるまで工事には着手しないようにすべきです。

 以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 高橋千鶴子議員から、実効ある法整備等についてお尋ねがありました。

 盛土については、これまで、宅地造成等規制法のほか、森林法や農地法等の各法令等により規制してきたところですが、各法令等の目的に応じた規制であることから、必ずしも規制が十分でないエリアが存在しています。

 また、一部の地方公共団体では条例を制定して盛土を規制していますが、規制の内容には地域差があるほか、条例による罰則では抑止力として十分に機能していないとの指摘もあります。

 このような中、昨年、静岡県熱海市で大規模な土石流災害が発生したことを踏まえ、今般、本法案を提出し、宅地や森林など土地の利用区分にかかわらず、危険な盛土等を包括的に規制するとともに、罰則の厳格化等の措置を講じ、盛土等に伴う災害を防止することとしております。

 規制の対象とする区域についてお尋ねがありました。

 本法案は、盛土等に伴う災害から人命を守るという目的のため、許可制により厳しい権利制限をかけるものです。

 このため、過度な規制とならないよう、盛土等の崩落により人家等に被害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定することとしています。

 また、盛土行為を全面的に禁止することについては、土砂災害警戒区域など土砂流出等の危険性のある区域であっても、憲法第二十九条に基づく財産権の保護との関係で困難であると考えております。

 本法案に基づく具体的な規制区域の指定は都道府県等が行うものであり、ここで個別地区についての回答は差し控えますが、過度な私権制限とならないよう配慮しつつ、盛土等に伴う災害から人命を守るという法の目的に照らして、必要かつ十分な区域が指定されるものと考えております。

 建設残土の発生者責任の明確化についてお尋ねがありました。

 建設発生土の適正処理を確保するためには、発注者や元請業者が果たすべき役割を明確にし、建設発生土の搬出先の適正化、明確化を図っていくことが重要と考えています。

 公共工事については、発注段階で搬出先を指定する指定利用等の取組を徹底していくとともに、入札及び契約の適正化の観点も踏まえ、適切な費用負担の徹底に取り組んでまいります。

 また、建設発生土の不適正処理の防止には、搬出先の適正確保と資源としての有効利用を一体的に図ることが効果的であることから、民間工事も含めて、現行の資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化します。

 具体的には、専門的知識を持ち、建設工事の施工全体に責任を持つ元請業者に対し、搬出先が適正であることの事前確認や、実際にそこに搬出されたことの確認を義務づけるとともに、発注者には適切な費用負担を求めてまいります。

 国土交通省としては、建設発生土の適正処理の確保にしっかりと取り組んでまいります。

 建設発生土の搬出先についてお尋ねがありました。

 平成三十年度においては約六千万立方メートルの建設発生土が最終受入れ地等に搬出されていると回答されておりますが、この調査は工事の受注者から発注者を通して回答されており、この回答は受注者のみならず発注者も見た上で取りまとめた回答となっております。

 リニア中央新幹線の建設主体であるJR東海においては、令和三年九月末時点で、約五千六百八十万立方メートルの建設発生土のうち、約七割の最終受入先を確保しているとともに、残りの約三割についても複数の候補地と受入れの協議を進めていると聞いております。また、令和三年三月末時点で、一時仮置場に堆積している残土は約五十五万立方メートルであると聞いております。

 さらに、御指摘の山梨県南アルプストンネル工事で発生する残土の仮置きについては、JR東海によれば、地形や地質に関する調査を踏まえて安全対策を講じた上で、残土の仮置きを行う区域の届出など、山梨県条例などの関係条例等に従った必要な手続を行っており、仮置き期間が終了するまでに最終受入先を決定するものと承知しております。

 リニア中央新幹線における建設発生土の取扱いについては、工事実施計画認可を受けた工事着手後に事業主体が地方自治体からのあっせん等を受けて受入れ候補地を選定し、建設発生土が実際に発生する時期や土質、運搬距離等を考慮した上で事業主体により決定されていると承知しております。国土交通省としましては、地方自治体の条例等に従い、建設発生土が適切に処理されるよう、JR東海を指導監督してまいります。

 指定処分についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、公共工事では、発注者が土砂の搬出先を指定する指定利用等の取組が進んでおり、国の発注工事ではほぼ全ての工事で指定利用等が行われています。

 発注者による指定利用等の取組は、建設発生土の有効利用や適正処理を進める上で大変効果的であり、適切な費用負担の徹底と併せて、今後は、地方公共団体の発注工事を含めて公共工事での原則化に取り組んでまいります。

 一方、民間工事の発注者は、個人の施主を含め様々であることから、基本的には、専門的知見を持ち建設工事の施工全般に責任を持つ元請業者に適切な搬出先の選定等の役割を担わせ、発注者には費用の適切な負担を求めることが適当と考えております。

 なお、継続的に大規模な建設工事を発注している民間発注者は、公共工事と同様に指定利用等を行うなど、より積極的な役割を果たすことが求められると考えており、この旨をガイドライン等で明確化するとともに、様々な機会を捉えて周知してまいります。

 トレーサビリティー制度の創設についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、新たな盛土規制と併せて、建設工事から発生する土の搬出先の明確化や、実際に適正に搬出されたことを確認する仕組みが必要と認識しております。

 このため、建設現場から搬出される建設発生土の約八割を占める公共工事について、工事の発注段階で建設発生土の搬出先を指定する指定利用等の徹底に取り組んでまいります。

 また、民間工事も含めて、搬出先の適正確保と資源としての有効活用を一体的に図ることが不適正処理の防止に効果的です。このため、現行の資源有効利用促進法に基づく再生資源利用促進計画制度を強化し、元請業者に搬出先が適正であることを事前に確認させることや、実際にそこに搬出されたことを受領証等で確認させる仕組みを構築してまいります。

 なお、御指摘のいわゆる仮置場等で行われる土砂の一時的な堆積についても、新たな盛土規制の許可対象となることから、搬出先の事前確認を行うこととなります。

 国土交通省としては、建設発生土の搬出先の明確化等に向けてしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣  金子原二郎君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    山口  壯君

       防衛大臣    岸  信夫君

       国務大臣    二之湯 智君

 出席副大臣

       国土交通副大臣 渡辺 猛之君


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