衆議院

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第16号 令和4年3月31日(木曜日)

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令和四年三月三十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十二号

  令和四年三月三十一日

    午後一時開議

 第一 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

 第三 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 岸田内閣総理大臣のG7首脳会合に関する報告及び質疑

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案(中島克仁君外十六名提出)、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案(中島克仁君外十六名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(中島克仁君外十六名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長中根一幸君。

    ―――――――――――――

 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中根一幸君登壇〕

中根一幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果の御報告を申し上げます。

 本案は、所有者不明土地の利用の円滑化及び管理の適正化等を図るための所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、地域福利増進事業の実施のための措置等の対象である特定所有者不明土地の範囲を拡大するとともに、地域福利増進事業について、対象事業の拡充、土地等使用権の存続期間の上限の延長をすること、

 第二に、管理が実施されていない所有者不明土地について、災害等の発生の防止のための市町村長による勧告、命令及び代執行制度を創設すること、

 第三に、市町村長は、所有者不明土地の利用の円滑化等の推進を図る活動を行うことを目的とする法人を指定することができること

などであります。

 本案は、去る三月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、昨三十日、質疑を行い、質疑終了後、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案、日程第三、植物防疫法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長平口洋君。

    ―――――――――――――

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案及び同報告書

 植物防疫法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平口洋君登壇〕

平口洋君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案は、農林漁業及び食品産業の持続的な発展等を図るため、環境と調和の取れた食料システムの確立に関する基本理念等を定めるとともに、農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う事業活動等に関する計画の認定制度を設け、所要の支援措置を講ずるものであります。

 次に、植物防疫法の一部を改正する法律案は、近年の有用な植物を害する動植物の国内外における発生の状況に対応して植物防疫を的確に実施するため、有害動植物の国内への侵入状況等に関する調査事業の実施、緊急防除の迅速化、発生予防を含めた防除に関する農業者への勧告及び命令等の措置の導入、植物防疫官の検査等に係る対象及び権限の拡充等の措置を講ずるものであります。

 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案は、去る三月十五日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 また、植物防疫法の一部を改正する法律案は、翌十六日本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、十七日金子農林水産大臣から両法律案の趣旨の説明を聴取し、二十三日から質疑に入り、翌二十四日に参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、昨三十日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案に対し、日本共産党から修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、両法律案及び修正案について順次採決いたしましたところ、まず、環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律案につきましては、修正案は否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 次に、植物防疫法の一部を改正する法律案につきましては、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(G7首脳会合に関する報告)

議長(細田博之君) 内閣総理大臣から、G7首脳会合に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 私は、三月二十四日にベルギー・ブリュッセルで開催されたG7首脳会合に出席をいたしました。その概要を報告いたします。

 今回のG7首脳会合は、ロシアのウクライナ侵略に関し、G7首脳が対面で議論する最初の機会となりましたが、ロシアの暴挙を決して許さず、G7が主導して国際社会の秩序を守り抜くとの強い決意を確認する大変有意義な会合となったと考えております。

 私からは、G7首脳は、国際秩序の根幹をめぐる歴史の岐路に立っており、連携して毅然と対応していく必要があること、我が国は、ロシアによる平和条約交渉中断宣言にひるむことなく、今後とも断固とした対応を取っていくことを説明いたしました。また、ロシアによる大量破壊兵器の使用を深刻に懸念しており、核兵器による威嚇、ましてやその使用は許されないこと、生物化学兵器の使用も決してあってはならないことを述べました。G7として、ロシアによる大量破壊兵器使用の威嚇に関し警告を発しました。

 また、私からは、G7と緊密に連携してロシアへの外交的、経済的圧力を一層強める旨述べ、一、ロシアの最恵国待遇の撤回のための法改正に向けた準備、二、輸出禁止対象団体の更なる追加、三、オリガルヒやその家族等の資産凍結対象への更なる追加、四、ぜいたく品の輸出禁止措置の導入、五、デジタル資産を用いたロシアの制裁回避に対応するための法改正に向けた準備、これらを進める旨表明いたしました。

 さらに、G7以外の諸国との連携については、私自身が先頭に立ってアジアなど各国に対する働きかけを行っている旨述べ、先般のインド及びカンボジア訪問の成果などを説明いたしました。こうした我が国の取組についてG7首脳から高い評価を得ました。

 G7として、制裁の回避や迂回、バックフィルを行わないことについて、G7で連携し、各国に働きかけていくことで一致をいたしました。

 世界経済については、ロシアの侵略はエネルギーや食料の価格高騰に拍車をかけており、G7が協調し、影響を受けている国々への支援を含め、エネルギー安全保障や食料安全保障の確保に取り組むことで一致をいたしました。エネルギー市場の安定化に向け、私自身がサウジアラビアやアラブ首長国連邦といった産油国の首脳と電話会談を行い、増産を含め原油市場の安定化に向けた積極的な協力を呼びかけたことを紹介いたしました。

 G7として、ウクライナ及び周辺国への支援を強化することで一致をいたしました。私からは、追加で一億ドルの緊急人道支援を行うことを表明し、さらに、周辺国に滞在する避難民支援のため、物資協力や医療保健等の分野での人的貢献を行うことも検討していること、加えて、避難民の受入れを促進していることを述べました。

 以上に加え、私からは、G7首脳会合の直前の北朝鮮によるICBM級の弾道ミサイルの発射について、国際社会の安全保障上の深刻な脅威である旨述べ、G7として、北朝鮮の核開発とともに、連携して対処していくことを確認いたしました。

 また、この機会に、バイデン米国大統領を始め、EU、英国、ポーランド、カナダの首脳及びNATO事務総長ともバイ会談で膝を突き合わせて率直な意見交換を行い、ウクライナ情勢等について緊密な連携を確認することができたことは、有益だったと考えております。

 我が国は、G7の来年の議長国として、ロシアの侵略に対する国際的取組について、本年の議長国ドイツを始めG7各国と緊密に連携して取り組んでまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(G7首脳会合に関する報告)に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中谷真一君。

    〔中谷真一君登壇〕

中谷真一君 自由民主党の中谷真一です。

 私は、自由民主党を代表して、岸田総理のG7首脳会合帰朝報告について、全て総理に質問いたします。(拍手)

 まず、今般、総理が異例の対応でベルギー・ブリュッセルを訪問し、G7で唯一のアジア国として対面でのG7首脳会合に出席したことを高く評価いたします。

 今回のG7首脳会合の意義と成果をお聞かせください。

 十九世紀の英国首相のパーマストンは、英国は永遠の友人も持たないし永遠の敵も持たない、英国が持つのは永遠の国益であるという言葉を残しました。この言葉は、外交の複雑さを表すとともに、外交にとっての唯一の羅針盤となるのは何より国益であるという事実に気づかせてくれます。

 こうした観点から、私は、ウクライナや周辺国に対する人道支援は可能な限り実施すべきと考えている一方、ウクライナに対する軍事支援やロシアに対する制裁措置については、各国の状況を見ながら、これらの措置が日本の国益に資するのか、慎重に見極めるべきと考えております。

 今回、日本としていかなる方針でウクライナに対する軍事支援やロシアへの制裁措置を策定していくのか、総理の見解をお聞かせください。

 これまでの対ロ外交では、北方領土問題の解決を含む日本とロシアとの間の平和条約締結問題を念頭に、経済協力や北方領土の元島民らによるビザなし交流を進めてきたものと承知をしています。また、こうした対ロ外交の背景には、日本の主たる脅威である中国とロシアの連携、一体化を進めないという方針があるものと理解をしています。

 およそ四年半もの間外務大臣を務められ、対ロ外交に精通している岸田総理の日本の対ロ外交に対する見解をお聞かせください。

 ロシアによるウクライナ侵略後、中ロが接近し、一体化が進んでいるようにも見えます。中ロ間の距離感によって、日本の対ロ及び対中外交を決定していかなければなりません。

 中ロの距離感について、総理はどのように見ているのでしょうか。また、G7では中国についてどのような議論が行われており、それを踏まえて日本として何を訴えていくのか、総理の考えをお聞かせください。

 ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みにほかなりません。私は、世界の各地において堰を切ったようにこうした動きが常態化する可能性を懸念しております。日本としては、中国と台湾の関係について、特に注意深く見ていく必要があります。

 この点について、G7内でいかなる議論が行われており、それを踏まえて日本として何を訴えていくのか、総理の考えをお聞かせください。

 ウクライナに対する軍事支援及びロシアに対する制裁措置についても、中国の動きやG7を始めとする各国の動きをしっかり見た上で、日本の国益に照らして考えていかなければなりません。

 他方、さきに申し上げたとおり、戦渦に巻き込まれたウクライナ及び避難民を受け入れる周辺国に対しては、可能な限りの人道支援を提供するべきです。約二百万人のウクライナ避難民を受け入れているポーランドに対して、現地のニーズを把握することも重要です。

 こうした避難民への支援を含め、日本としていかなる支援策を実施していくのか、具体的にお聞かせください。

 ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギーや食料価格の高騰が起きています。各国によるロシアへの制裁措置が価格高騰の原因の一つであるという見方もあります。

 こうした制裁による市民への影響に対して、G7ではどのような議論が行われているのでしょうか。また、日本としてはどのように対応していくのでしょうか。総理の見解をお聞かせください。

 最後に、総理は、一月の施政方針演説で、理想の旗を掲げつつ、現実を直視し、新時代リアリズム外交を展開する、現実から目を背けることなく、領土、領海、領空、国民の生命と財産を守り抜くと決意を述べられました。急速に変化する国際社会において、何が国益かという現実を常に見据え、今ある危機に迅速に対応されることを政府に求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中谷真一議員の御質問にお答えをいたします。

 G7首脳会合の意義及び成果についてお尋ねがありました。

 今回の会合は、ロシアのウクライナ侵略に関し、G7首脳が対面で議論する最初の機会であり、ロシアの暴挙を決して許さず、G7が主導して国際社会の秩序を守り抜くとの強い決意を確認する大変有意義な会合となったと考えます。

 私からは、我が国の対ロ追加制裁措置、ウクライナ及び周辺国への追加の一億ドルの緊急人道支援、保健医療分野の人的貢献の検討、避難民受入れ促進のための追加措置などの取組を紹介するとともに、先般のインド、カンボジア訪問の成果を含め、アジアを代表してG7に参加する日本の第三国への働きかけについても説明し、高い評価を得ました。

 議論の結果、ロシアに対する制裁、大量破壊兵器の使用の威嚇に関する警告、ウクライナ及び周辺諸国への支援、エネルギー安全保障及び食料安全保障の確保といった様々な点について、G7で引き続き緊密に連携することで一致をいたしました。

 我が国は、G7の来年の議長国として、ロシアの侵略に対する国際的取組について、本年の議長国ドイツを始めG7各国と緊密に連携して取り組んでまいります。

 ウクライナへの支援及びロシアに対する制裁措置の方針についてお尋ねがありました。

 今般のロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為です。国際社会が一致して、毅然と行動していかなければなりません。

 国際社会が前例のない対応を行っている中、我が国も、防弾チョッキ、ヘルメットなど装備品を提供いたしました。今後とも、困難に直面するウクライナの方々を支えるため、できる限りの支援を行ってまいります。

 ロシアに対する制裁措置については、これまで、G7を含む国際社会と連携し、機動的に厳しい措置を講じてきましたが、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、適切に対応してまいります。

 対ロ外交についてお尋ねがありました。

 これまでの対ロ外交においては、インド太平洋地域の戦略的環境が大きく変化しつつある中で、ロシアと安定的な関係を構築することは、日本の国益のみならず、地域の安定と発展にとっても重要との考えの下、取り組んできました。

 具体的には、ロシアとは、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など、幅広い分野での日ロ関係全体を国益に資するよう発展させるべく、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、これまで粘り強く平和条約交渉を進めてきました。

 しかしながら、今回のロシアによるウクライナ侵略は、欧州のみならず、アジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて容認はできません。

 国際秩序の根幹を守り抜くため、こうした暴挙に高い代償が伴うことを示すべく、断固として行動していく考えであり、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはできないと考えています。

 中ロ関係や両岸関係を踏まえた対ロ、対中外交についてお尋ねがありました。

 G7首脳に対しては、私から、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、我々がロシアの行動に適切に対処することは他の国々に誤った教訓を与えないためにも必要であることを訴えました。これに対し、G7首脳からは賛意が示されました。

 中国とロシアは、近年、緊密な関係を維持し、軍事協力も緊密化しており、その動向を関心を持って注視しています。我が国として、引き続き、中国に対しても責任ある行動を呼びかけていく考えであり、G7を始めとした関係国と緊密に連携して対応してまいります。

 ウクライナと周辺国への人道支援策についてお尋ねがありました。

 ロシアによる侵略が継続する中、ウクライナにおける人道ニーズが高まり、周辺諸国が困難な状況に直面していることを踏まえ、ウクライナ及び周辺諸国に対する支援を、G7を始めとする国際社会とも連携して強化していく考えです。

 具体的には、先般のG7首脳会合において、私から、人道状況についての深刻な懸念をG7首脳と共有した上で、日本は、ウクライナ及び周辺国に対して、これまで表明した一億ドルの緊急人道支援に加え、保健医療、食料等の分野において追加で一億ドルの緊急人道支援を行うこと、さらに、周辺国に滞在する避難民支援のため、物資協力や医療保健等の分野での人的貢献を行うことを検討していることも表明をいたしました。このため、モルドバに、WHOと連携し、JICAの調査団を派遣しています。

 また、避難民の方々の我が国への受入れも進めています。このため、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議を司令塔として、政府一体となってウクライナ避難民の円滑な受入れ等を行ってまいります。

 さらに、ポーランドにウクライナ避難民支援チームを設けたほか、近く、総理特使をポーランドに派遣し、避難民の受入れのための作業を促進してまいります。

 我が国は、今後も、G7を始めとする国際社会と連携しながら、現地のニーズを的確に把握しつつ、国難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいります。

 そして、エネルギーや食料の価格高騰についてお尋ねがありました。

 G7首脳会合では、ロシアの侵略はエネルギーや食料の価格高騰に拍車をかけており、G7が協調し、影響を受けている国々への支援を含め、エネルギー安全保障や食料安全保障の確保に取り組むことで一致をいたしました。

 政府としては、原油価格や物価の高騰による国民生活への影響に対し、緊急かつ機動的に対応するため、四月末をめどに原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 西村智奈美君。

    〔西村智奈美君登壇〕

西村智奈美君 立憲民主党・無所属の西村智奈美です。

 私は、ただいま岸田総理からありましたG7首脳会合に関する報告に対して、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず冒頭に、我々立憲民主党は、ロシアが、国際社会の制止や各国の仲介の努力を振り切り、国連安保理常任理事国でありながら自ら国連憲章に違反して、ウクライナに対して不当で不法な侵略に踏み切ったことに怒り、最大限に非難いたします。

 どのような歴史的な経緯があろうと、現在のウクライナの主権と領土の一体性は国際社会に認められたものです。軍事力による現状変更の試み、侵略は言語道断の暴挙であり、ルールに基づく国際秩序を無視した、国際社会に対する挑戦である。断じて許されません。

 また、日々、ウクライナの惨状、一般住宅や学校や病院までも攻撃され、大切な家族を失った方々、絶望に立ち尽くす方々、不安に涙する方々の姿を見て、いたたまれない気持ちです。

 このような人道に反する行為は断じて許されるものではなく、ロシアに対し、ウクライナ全土での即時の停戦、撤退を強く求めます。

 総理のG7会合の報告をお聞きしました。

 経済制裁を始め、G7が一致してロシアに対抗しウクライナに連帯する取組について、我々も支持します。G7においてこの連携がしっかり確認されたとのことを評価したいと思います。

 二十九日、トルコにおいて停戦協議が行われ、一定の進展があり得るとの報道があります。総理が現時点で把握されている最新の情報をお知らせください。

 協議の進展を望みますが、今後の情勢は決して予断を許しません。最終的な停戦が実現するまで、ロシアへの毅然とした対応を強く求めます。

 G7は結束している一方、国際社会全体は残念ながらそうなっていないのは、総理も御存じのとおりです。外務省によれば、世界百九十六か国のうち、ロシアに何らかの経済制裁を行っている国は僅か二十か国程度とのこと。例えば、日本と関係の深いASEAN十か国の中で経済制裁を行っているのは、シンガポール一国のみです。

 先日、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が国会で行った演説には、アジアのほかの国々とともに力を合わせ、状況の安定化に取り組んでくださいとの言葉がありました。岸田総理は、この思いに具体的にどうお応えになりますか。

 総理の報告にもありましたが、G7会合に先駆けて、インドのモディ首相、カンボジアのフン・セン首相とも総理は会談していますが、どのような働きかけを行い、両首脳の反応はどうだったのか、お答えください。

 各国にロシアとの関係に様々な経緯や利害関係があることは当然ですが、今回のようにあからさまで非道な侵略行為に対し、少なくとも経済制裁などで国際社会が一致して連携するためには、我が国として具体的にどのように取り組むのか、お答えください。

 ロシアにとって、特に中国の動向は大きな影響があると考えます。制裁などへの参加は困難だとしても、経済的、ましてや軍事的な支援をさせないことは極めて重要です。米国などは中国に働きかけをしているようであり、日本としても独自の働きかけを行うべきと考えますが、これまでにどのような取組をしたのか、今後どう取り組むのか、お答えください。

 今回、ロシアは、核兵器による抑止部隊を戦闘の特別態勢に移すとして、核兵器の使用をほのめかし、国際社会を威嚇しました。日本は、唯一の戦争被爆国として、これを強く批判すべきです。改めて、これに対する総理の見解をお聞かせください。

 今回、悲惨な戦争を目の当たりにして、多くの国民が我が国の安全保障に危機感を感じるのは当然のことだと思います。我が党も、自衛力の着実な整備、日米安全保障体制の堅持による抑止力の確保という現実的な安全保障政策を深めていきたいと考えています。

 一方、まだ悲惨な戦争のさなかに、国民の危機感に乗じるかのような、とても現実的とは思えない防衛論議が一部で見られるのはとても残念です。その象徴が、いわゆる核共有論です。核拡散防止条約、非核三原則、米国の意向、周辺国の反応などを考えると、実現の可能性が到底あり得ないのみならず、軍事的にも、核兵器の日本領域内への配備は、有事の際の攻撃目標にされかねず、合理性が見出せません。

 岸田総理が委員会質疑において核共有論について否定的な見解を示されたことには安心いたしました。しかし、例えば、現国家安全保障局長の秋葉剛男氏は、二〇〇九年、駐米公使時代、米国の核兵器の日本持込みに肯定的な姿勢を示したとの報道があるなど、政府内では既に検討されてきた可能性があります。

 この本会議場において、改めて、核共有論についての日本政府の見解を、核拡散防止条約、非核三原則、米国、周辺国の反応、軍事的合理性の観点、それぞれからお聞かせください。また、核共有、日本への核持込みについて、過去も含め、政府内での検討、米国との協議、意見交換等も行ったことがないのか、お答えください。

 東アジアの情勢は、中国の軍事力の台頭など、決してロシアの侵攻を他人事とは言えない状況にあるのは事実です。こうした中とはいえ、いや、こうした状況だからこそ、感情的対立をあおり、軍事面にのみ焦点を当て、軍拡競争へ進むことが、地域の安定、ひいては日本の国益に資するとは思えません。この地域で戦争を起こさせないため、どのような外交を進めるのか、特に中国とどのように信頼醸成の道筋をつくるのか、総理のお考えをお聞かせください。

 ロシアの侵攻ではチェルノブイリ原発やザポリージャ原発が攻撃対象となり、原発事故を体験した我々にとって、大きな衝撃でした。

 山中伸介次期原子力規制委員長は、参議院議院運営委員会で原発への武力攻撃への対策を問われ、武力攻撃に対する規制要求はしていないと答えています。更田豊志委員長は、十六日に、武力攻撃に対して堅牢性を持つ施設という議論は計画もしていないし、事実上無理だと記者会見で述べました。自民党幹部は、自衛隊による原発の警備などの検討について述べられたようですが、陸上からのテロなどには対応できても、ミサイル攻撃などに対応できるとは思えません。外国からの武力攻撃に原発は対応できますか。総理、お答えください。

 今回の戦争によるエネルギーの逼迫などを踏まえ、自民党議員連盟や日本維新の会は、原発再稼働を経産大臣に要望したとのことです。ロシアの原発への攻撃を踏まえて日本の安全保障を考えれば、日本の取るべき道は、再稼働推進とは逆の、脱原発の加速だと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 私たちの反対にもかかわらず、来年度予算が成立しました。反対の理由の一つは、ロシアへの経済支援が含まれていることです。中身が人道支援などと言い訳をされていますが、例えば、モスクワで二百名の肥満予防プログラムが今本当に必要な予算でしょうか。先行きが不透明などと言いますが、戦争が終結したとして、こうした支出を行える状況だとお考えでしょうか。

 予算の修正を拒否したいという極めて内向きの理由でこのような予算が成立したことは、極めて残念です。予算は、まさに国家の意思であり、政権の意思です。そこにロシアへの経済支援が入ることは、国際社会の大きな誤解を招きかねません。こうした項目の執行停止は当然として、予算の修正に応じなかったことについて、改めて見解を伺います。

 更に遡れば、北方領土問題の解決のためとはいえ、固有の領土との表現を取りやめるなど原理原則まで曲げて、また、経済協力を推進してきた挙げ句、成果を出せなかった安倍政権には、結果責任があります。ロシアの不当なクリミア侵攻の後も、友好姿勢を維持し、経済協力を進めた安倍政権の対ロ外交は、結果としてプーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性はありませんか。岸田総理のお考えをお尋ねします。

 多くの避難民が、戦火を逃れ、周辺国に避難しています。我々の要望にも応えていただき、岸田総理が避難民の日本への受入れに対して前向きな姿勢であることは評価しますが、実態を見れば、渡航費の支援などにしても、検討すると総理が答弁しているものの、検討のままで、一向に前に進んでいません。渡航費の支援について、いつまでに結論を出すのですか。お答えください。法務大臣の訪問に合わせて政府専用機の活用が検討されているとお聞きしていますが、まさか一回限りの渡航支援となることはありませんね。お答えください。

 現地では、NGOなどが避難民の支援のために精力的に活動されています。しかし、肝腎の日本国内での受入れ体制については、官邸に連絡調整会議はあるものの、相変わらずの省庁間のたらい回しになっているとの指摘があります。窓口の一本化などが必要だと考えますが、総理の御見解をお聞かせください。

 また、日本に来ていただいた後のことも重要です。

 立憲民主党は、二十五日に、渡航費用、入国後の暮らしの確保、長期化する場合に備えた支援などについて政府に提言し、二十九日、ウクライナから来た皆さんに安心して社会の一員として日本で生活していただきたいという思いで、戦争等避難者という特別の在留資格を定めた議員立法を提出いたしました。

 政府は、九十日の短期滞在の後、特定活動という在留資格を与えるとしていますが、期間や就労の可否については入管庁の裁量となっており、法的に極めて不安定な立場となる可能性があります。

 我が党提出の特例法案では、就労可能、期間は一年で更新可能、受け入れる自治体や企業に国が責任を持って財政的支援を行うことを明記しました。本法案はウクライナ避難民に限らず普遍的なものですが、ウクライナ避難民を受け入れるに当たって、こうしたベースの部分の整備も早急に行う必要があります。我が党の法案に対する総理の御見解を伺います。

 多くの避難民を受け入れているウクライナ周辺国への経済支援も喫緊の課題です。既に一億ドルプラス追加の一億ドルの支援を表明されていますが、避難民の規模から考えると、とても十分とは思えません。更なる支援を検討すべきと考えますが、お考えをお聞かせください。

 結びに、一刻も早い戦争の終結に向け、日本政府が最大限の力を尽くすことを強く総理に求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 西村智奈美議員の御質問にお答えいたします。

 ウクライナそしてロシアによる停戦協議についてお尋ねがありました。

 ロシアとウクライナとの間の停戦交渉については、一定の前進があったとの報道もありますが、具体的な停戦に結びつくかは依然不透明なままです。例えば、バイデン米大統領もロシアが提案を実行に移すかどうかを見守る旨発言しているほか、ロシアはウクライナから撤退しているのではなく部隊を再配置しているにすぎないとの見方を複数の米国政府関係者も示していると承知をしています。

 我が国としても、一日も早く具体的な停戦に結びつくことが重要であると考えており、引き続き、強い関心を持って事態の推移を注視してまいりたいと思います。

 一刻も早くロシアが国際社会の声に耳を傾け侵略をやめるよう、国際社会が連携して、ロシアに対して強い措置を取っていくことが当面重要であると認識をしています。

 我が国として、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7等と連携し、適切に取り組んでまいります。

 ロシアによるウクライナ侵略に関する我が国の取組についてお尋ねがありました。

 我が国として、ゼレンスキー大統領の国会演説におけるメッセージをしっかりと受け止め、今後とも、ウクライナを最大限支援していくとともに、ロシアの侵略をやめさせるべく、G7を始めとする国際社会との連携を強化し、結束を他国にも呼びかけていく考えです。

 インドではモディ首相と、カンボジアではフン・セン首相と、首脳会談において、力による一方的な現状変更はいかなる地域においても許してはならないこと、国際法に基づき、紛争の平和的解決を求める必要があることが重要であることを確認いたしました。

 また、中国とロシアは、近年、緊密な関係を維持しています。我が国として、中国に対しても責任ある行動を呼びかけてきており、引き続き、G7を始めとした関係国と緊密に連携して対応していきます。

 ロシアの核兵器による威嚇及び核共有論についての日本政府の見解等についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略の中で、核兵器が使用される可能性を深刻に懸念しています。唯一の戦争被爆国として、核兵器の使用も威嚇も決してあってはならないということを強く訴えています。

 日米両国間では、日頃から緊密かつ幅広く意見交換を行っていますが、我が国の安全保障に関わるやり取りの詳細については、事柄の性質や米側との関係もあり、お答えを差し控えさせていただきます。

 その中で、御指摘の核共有は、平素から、自国の領土に米国の核兵器を置き、有事には、自国の戦闘機等に核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することによって、自国等の防衛のために米国の核抑止を共有するといった枠組みであると考えられます。一般に、NPT上は、核兵器の所有権又は管理権の移譲を伴わない核共有は禁止されていないと考えられますが、我が国においては、非核三原則の堅持や原子力基本法を始めとする法体系との関係から認められず、政府としては、議論を行うことは考えておりません。

 戦争を起こさせないための東アジア外交についてお尋ねがありました。

 私は、国民の命と暮らしを断固として守り抜くとともに、地域そして国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に積極的に貢献していく決意です。

 このため、米国、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国、同志国とも連携し、日米豪印の取組等も活用しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を戦略的に推進していくことで、地域の平和と繁栄に貢献していきたいと考えています。

 その中で、中国とは、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、共通の課題については協力をするなど、建設的かつ安定的な日中関係の構築を目指していきたいと考えています。

 原発への武力攻撃と脱原発に対する考え方についてお尋ねがありました。

 まず、原子力発電所の安全については、原子炉等規制法に基づく発電所の設備上の対応や事業者の対応によって確保されており、意図的な航空機衝突等のテロリズムへの備えまで事業者に要求をしています。

 その上で、原発へのミサイルによる武力攻撃に対しては、イージス艦やPAC3により対応するほか、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下で、原子力施設の使用停止命令、住民避難等の措置を準備しています。

 そもそも、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、日米で共同して対処することとなります。日米同盟の抑止力、対処力を強化し、我が国に対する武力攻撃が発生しないよう、しっかり取り組んでいくことが重要です。

 こうした安全保障体制と事業者規制、この両面から原子力発電所の安全を確保してまいります。

 四方を海に囲まれ、資源の乏しい我が国としては、原子力を含め、あらゆるエネルギー源を活用していくことが重要です。我が国の置かれた状況を冷静に受け止め、安全の確保や様々なリスクへの備えを進め、エネルギー安定供給を確保してまいります。

 日ロ経済協力の予算についてお尋ねがありました。

 現下のウクライナ情勢を踏まえれば、ロシアの侵略により、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはできず、八項目の協力プランについて、今後、新たにロシア経済に資するような取組を行うことは考えられません。

 他方、当該予算事業の中には、撤退を含めた難しい判断を迫られる我が国の企業に対する情報提供などの事業が含まれており、また、ウクライナ情勢は刻一刻と変化していることから、今後の事態の動向や国際的議論の展望を現時点で予断を持って判断することは困難です。したがって、八項目の協力プランに係る予算の執行については、今後の状況を踏まえて適切に判断をしてまいります。

 二〇一四年のロシアによるクリミア併合に対しては、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害するものであることから、我が国として対ロ措置を課しました。我が国を含む国際社会は、ロシア、ウクライナ両国に対して様々な働きかけを行い協力を行うことによって、緊張緩和に努めました。同時に、ロシアとは、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、粘り強く平和条約交渉を進めてきたものであり、プーチン大統領に誤ったメッセージを送った可能性があるとの御指摘は当たりません。

 ウクライナ避難民の受入れについて、渡航費の支援、そして支援の在り方、ウクライナ周辺国への経済支援等についてお尋ねがありました。

 日本への避難民受入れを進めるための取組については、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議の下で、必要な在留資格の認定等について最大限の配慮を行うことを含め、ウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援を行ってまいります。

 また、ポーランドにウクライナ避難民支援チームを設けるとともに、近く、総理特使をポーランドに派遣するなどして、現地のニーズや課題を的確に把握した上で、御指摘の渡航費の支援についても、政府全体として早急に検討、調整を進め、ウクライナ避難民の方々に寄り添った支援を行ってまいります。

 ウクライナ避難民の状況に心を痛めた日本の多くの自治体や民間企業、団体の方々から避難民の受入れに協力したいとの声が上がっていることは大変心強く思っており、こうした協力を得つつ、まずは、ウクライナ避難民お一人お一人への支援をしっかりと行ってまいります。

 避難民の受入れについては、国内での一義的な窓口を出入国在留管理庁としており、避難民の方々からの相談を受け付け、関係省庁とも連携し、適切に対応していくこととしております。

 また、ウクライナ及び周辺国に対する支援について、これまで決定した一億ドルの緊急人道支援に加え、追加で一億ドルの緊急人道支援を行うことを表明しました。我が国は、今後も、G7を始めとする国際社会と連携しながら、現地のニーズを的確に把握しつつ、困難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいりたいと考えています。

 なお、御指摘の法案が国会に提出されたことは承知しておりますが、その取扱いについては、国会で御議論をいただくべきものであると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 藤田文武君。

    〔藤田文武君登壇〕

藤田文武君 日本維新の会の藤田文武です。

 党を代表して、G7首脳会合に関する報告について、総理に質問します。(拍手)

 質疑に先立ち、ロシアによる非道な侵略行為、無差別攻撃によって犠牲になられたウクライナの方々に、心より哀悼の意をささげます。

 覇権国家の力による現状変更は断じて容認できません。我が党としても、改めて、プーチン政権に対して最大限の非難を表明するとともに、即刻、武器を置き、撤退するよう強く訴えます。

 冷戦崩壊後、均衡を保ってきた国際秩序が、狂気に満ちたプーチン政権の暴挙によって崩れました。この一か月余り、戦場から日々届く嘆かわしい映像が突きつけているのは、ロシアの隣国日本の安全保障環境をも大きく揺るがしかねない現実です。

 その上で、伺います。

 去る二十七日の防衛大学校卒業式での訓示で、総理は、事態の展開次第では、世界も、そして我が国も戦後最大の危機を迎えると述べましたが、戦後最大の危機とは具体的にいかなる危機を想定されているのですか。

 多くの専門家は、今日のロシアは明日の中国、北朝鮮、今日のウクライナは明日の日本、台湾と分析していますが、総理の認識をお示しください。

 ウクライナ危機を受け、ドイツは、GDP比一%程度に抑えていた防衛費を二%超に引き上げると宣言し、ウクライナに武器も提供しました。フィンランドやスウェーデンも国防政策の見直しに動いています。明日は我が身として目を覚ましたのです。もちろん、日本も人ごとではありません。

 長らく太平の眠りについていた江戸時代の国民の目を覚ましたのは、一八五三年の黒船来航でした。あれから百七十年足らず。総理、日本はいつ目を覚ますのですか。

 特に、年末に改定が予定されている国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画のいわゆる戦略三文書は、今後十年の我が国の安全保障の方向性を定めるものですが、抜本的な戦略の変更をすべきではないですか。お答えください。

 自ら守ろうとしない国に手を差し伸べる国はありません。必要なのは、自主防衛への強い意思です。

 総理は、三月十三日の自民党大会で、我が国には日米同盟という世界屈指の同盟関係があると胸を張りましたが、同盟を円滑に機能させるための前提は我が国自身の防衛努力であることは言をまちません。認識を伺います。

 バイデン大統領は、ロシアと軍事的に直接対峙すれば第三次世界大戦になる、だから米兵はウクライナに送らないと弁明しました。同じ核保有国たる中国が虎視眈々と企図する台湾有事、日本有事でも使える論法であります。これは日本が肝に銘じるべき教訓だと考えますが、総理の見解を求めます。

 日本は、ロシア、中国、北朝鮮という三正面への防衛体制強化に迫られており、防衛費を大幅に増やすことは不可欠です。自民党は、昨年の衆議院選挙マニフェストに、GDP比二%以上も念頭と掲げましたが、今もって一%枠という殻は実質打ち破られません。

 なぜ国民との約束を果たさないのですか。一部与党への配慮ですか。具体的な数字を口にすると、無責任野党や一部与党から批判を浴び、参議院選挙に影響するとお考えなのですか。併せてお答えください。

 令和五年度当初予算案については、概算要求段階で、総理が防衛費の大幅な増額を財務、防衛の両大臣に指示すべきだと考えますが、見解を伺います。

 また、近年、中国の脅威をにらんで、自衛隊の防衛体制は尖閣諸島周辺始め南西方面にシフトされてきましたが、急速に高まるロシアの脅威に対し、北部方面の防衛も増強すべきではないでしょうか。日本への攻撃態勢に入った敵のミサイルを破壊するための自前の打撃力の保有、整備は待ったなしですが、政府内の検討状況を説明してください。

 国防にタブーはありません。

 現実に核保有国によって非核保有国が侵攻された今回の事態は、国の主権と国民の生命財産に関わる極めて重大かつ深刻な事態です。

 日本としても、そのような事態を未然に防ぎ、抑止することは当然であり、核共有を含め、あらゆる選択肢を排除すべきでないことは言うまでもありません。理想論が国家の存亡に優先されることはあってはならないことです。米国の核の傘による拡大抑止を強化するための議論はタブーなく行われるべきであります。日本ほど国の防衛に様々な縛りをかけている国はありません。

 翻って、昨今の各種世論調査では、おおむね、核共有の議論をすべきが七〇%を超え、国民の間では安全保障上の不安や危機感が募っていることは明白です。

 その上で、質問します。

 核共有の議論に対する国民の意識と、非核三原則を盾に議論はしないとする総理の主張との乖離をどう受け止めますか。

 北朝鮮が、米本土が射程に入るICBMの開発を着々と進め、中国も、昨年八月に実施した極超音速ミサイルの発射実験で、標的に極めて近い地点に着弾させました。これによって、日米デカップリングの問題が生じ、米国の核の傘による拡大抑止が綻びかねないという懸念がありますが、総理の認識を伺います。

 また、アメリカは自国への核攻撃のリスクを冒してまで日本を助けてくれると認識されていますか。アメリカが実際に核を使用する基準や標的などについて、核の傘を仰ぐ日本はアメリカと情報共有しているのですか。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、平和の番人たる国連安全保障理事会が機能しないという現実を浮き彫りにしました。ロシアの暴挙に対し、安保理は完全に無力でした。常任理事国としてロシアが持つ拒否権により、制裁はおろか、非難決議すら葬り去られました。

 安保理の機能不全は、アジア太平洋の安定にとっても大きな脅威になります。仮に中国が台湾や我が国に侵攻した場合、中国の拒否権により、安保理は身動きが取れなくなります。台湾有事、日本有事を見据えたら、安保理改革の実現は待ったなしであることは言をまちません。

 お尋ねします。

 総理も安保理改革の必要性を訴えられておられますが、具体的にどのように安保理改革を推し進めていくお考えですか。

 我が党は、国連におけるロシアの投票権剥奪を日本として明示的に支持することで、安保理改革を軌道に乗せる契機とすべきだと提言しています。所見をお示しください。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、さきの国会でのオンライン演説で、安保理に代わる新しい予防的な仕組みづくりに日本のリーダーシップを求めました。これについて、どう応えていきますか。

 いつまでに政府として改革の方向性を打ち出し、各国との調整に乗り出す意向ですか。見解を求めます。

 ウクライナ危機を受けて、世界市場でエネルギー価格が急騰し、我が国も打撃を受けています。国際社会では、ロシアからエネルギーの輸入を停止し、代替調達に切り替えていく動きが広がっています。それが価格上昇に拍車をかけています。三月二十二日には東京電力と東北電力管内で電力需給逼迫警報が出され、経済社会活動に欠かせない電力供給の脆弱さが露呈しました。現下の情勢は国難であると認識をすべきです。

 そこで、我が党は、エネルギー資源の安定調達と電力の安定供給を確保するために、安全が確認された原発については早急に再稼働をさせ、有事のエネルギー政策に転換すべきだと訴えています。

 小林経済安保担当大臣は、三月二十五日の衆議院内閣委員会で、安定供給の確保を図る観点から、安全性の確保を大前提とした上で、原発の再稼働を着実に進めることが重要だと考えると答弁しました。至極真っ当な見解だと存じますが、総理はこの小林大臣の答弁をどう評価しますか。原発再稼働に向けた総理の政治決断が求められていると思いますが、所見を伺います。

 一方的な暴力による主権侵害という意味ではウクライナ侵略と変わらない、北朝鮮による拉致問題について伺います。

 総理は、今月十二日、昨年暮れに八十三歳で亡くなった拉致被害者家族会前代表、飯塚繁雄さんのお別れ会に出席し、拉致問題は内閣の最重要課題、総理大臣として自ら先頭に立ち、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく全力で取り組むと故人のみたまに決意を示されました。

 ところが、翌十三日の自民党大会での総理演説において、夏の参議院選挙に向けて挙げた課題の中に、拉致のラの字もありませんでした。加えて、総理は、二十二日の参議院予算委員会で、自民党大会で拉致問題を素通りさせたことを指摘され、私自身、そういう指摘を受けて驚いたと答弁しました。まるで人ごとで、北朝鮮を喜ばせるだけのことです。総理の姿勢に対し、家族会の関係者からは、政府は真剣に考えていないなどといった怒りや失望の声が私どもにも届いていますが、どう受け止めますか。

 拉致被害国のトップたる総理には、絶えず拉致問題について語り、内外に発信し続ける責任があります。G7首脳会合でも当然言及すべきだったと思いますが、その形跡はありません。なぜですか。

 あわせて、拉致問題解決に向けた偽りなき覚悟をお示しください。

 日本維新の会は、過日、我が国を取り巻く安全保障状況の激変に即応すべく、政務調査会に新しい外交安保調査会を設置し、現実を直視した外交・安全保障政策の新機軸を打ち出す方向で作業を進めています。

 安全保障環境の激変に対し、今こそ国民の皆様に見える形でのタブーなき議論が必要です。総理は、口癖のように、考え続けなければならない、検討するなどと語りますが、決断と実行がなければ国は守れません。与党内の一部が忌避する難題は夏の参議院選挙後まで先送りするといった不作為は到底許されません。我々政治家にとっても、そして岸田政権にとっても、守るべきは国家国民であり、権力や自分たちのバッジではないはずです。

 以上、総理の前向きな答弁を期待し、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤田文武議員からの御質問にお答えいたします。

 ロシアによるウクライナ侵略を踏まえた国家安全保障戦略等の見直し、我が国の防衛力の強化等についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反として厳しく非難されるべきものです。ロシアによるウクライナ侵略により、原油やガスの国際市場は急騰し、穀物市場を始め食料関連市場も逼迫するとの見方が広がっています。こうした状況を踏まえたときに、事態の展開次第では、世界も、そして我が国も戦後最大の危機に陥る可能性があると考えているところです。

 このような力による一方的な現状変更を、インド太平洋、とりわけ東アジアで許してはなりません。我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中、新たな国家安全保障戦略等の策定は喫緊の課題です。ウクライナ情勢を含め、我が国が直面する厳しい現実から目を背けることなく、国家安全保障戦略等の検討を加速してまいります。

 また、我が国の防衛力の強化は、日米同盟を一層強化していくためにも不可欠です。我が国の領土、領海、領空、国民の生命と財産を断固として守り抜くために、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せずに検討し、防衛力を抜本的に強化していきます。

 この際、防衛費については、金額あるいは結論ありきではなく、現実的な議論の結果として、国民の命や暮らしを守るために必要なものを計上してまいります。

 また、ウクライナと我が国の比較については、NATO加盟国でないため、米国を含むNATOの集団防衛の対象でないウクライナと、日米同盟に基づき、米国の拡大抑止を繰り返し確認してきている我が国とは、事情が大きく異なっていると考えています。

 核共有の議論及び米国の拡大抑止とデカップリングの問題についてお尋ねがありました。

 核共有について様々な意見があることは承知していますが、いわゆる核共有は、これまで申し上げているとおり、非核三原則を堅持していくことや、原子力利用は平和目的に限ると定めている原子力基本法を始めとする我が国の法体系との関係から認められず、政府として議論する考えはありません。

 その上で、米国は累次の機会に日米安全保障条約の下での自国の対日防衛義務及び拡大抑止を確認してきているところであり、この点を本年一月の日米首脳テレビ会談においてもバイデン大統領が改めて表明をいたしました。日本としては、米国が核を含むあらゆる種類の能力を用いて条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いています。

 日米間では、核抑止を含む米国の拡大抑止に関し、日米拡大抑止協議の場を含め、様々なやり取りを行ってきており、引き続き、米国の拡大抑止の信頼性の維持強化に向けて、日米間でしっかりと協議を行ってまいります。

 安保理改革の進め方についてお尋ねがありました。

 国際社会の平和と安全の維持に大きな責任を持つ安保理の常任理事国であるロシアが国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に出たことは、新たな国際秩序の枠組みの必要性を示しています。

 二十三日のゼレンスキー大統領による国会演説においても、国連や安保理が機能していないとの訴えがあったところであり、しっかりと受け止めたいと思います。

 安保理改革については、我が国は、長年、その改革の必要性を訴え、積極的に活動してきました。先般の私のインド及びカンボジア訪問の際にも、安保理改革の早期実現に向けた協力について首脳間で確認をしたところです。

 常任理事国の権利及び特権の停止は、国連憲章上、ロシアを含む常任理事国の同意が必要であるという手続上の難しさがあります。また、各国の複雑な利害も絡んでいます。このように、安保理改革は決して簡単ではありませんが、多くの国々と協力し、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に向け、引き続きリーダーシップを取ってまいりたいと考えます。

 そして、原子力発電所の再稼働についてお尋ねがありました。

 原子力は、実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定供給確保の観点から、重要な電源として活用していく必要があると考えています。

 その上で、小林大臣も先日申し上げたように、原子力発電所の再稼働については、独立した原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合に、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めるというのが政府の方針であります。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致被害者の御家族からは、私自身、累次お会いする機会に、何としても結果を出してほしいという思いを直接伺っています。今月十六日にも、拉致被害者家族会及び救う会の皆様と面会をし、長年にわたる苦しみや悲しみ、そして、運動方針に込められた、決して諦めない、諦められないとの切実な思いをお伺いしたところです。

 自民党党大会あるいはG7首脳会合で拉致問題に言及がなかったとの御指摘でありますが、個々の挨拶、発言において拉致問題という用語を使っていないとしても、拉致問題を含む北朝鮮問題、国際情勢についての認識はしっかり述べていると考えています。いずれにせよ、拉致問題の解決に向けた私の思い、決意はいささかの揺るぎもありません。

 拉致問題は最重要課題です。各国と連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で取り組んでまいります。私自身、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う決意であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 吉田宣弘君。

    〔吉田宣弘君登壇〕

吉田宣弘君 公明党の吉田宣弘です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたG7首脳会合に関する報告に対して質問をいたします。(拍手)

 ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナ国民の多大な犠牲を目の当たりにしても、いまだに継続されています。力による現状変更への試みは国際秩序を著しく脅かすものであり、強く非難するとともに、侵略の即時停止を強く求めるものであります。

 先日行われたゼレンスキー・ウクライナ大統領の国会演説に私も参加させていただきました。ゼレンスキー大統領は、国家存立の危機に瀕しながらも、国家と国民を守るために命懸けで大統領としての職責を果たそうとされておられることに感銘を受けました。

 ロシアによるウクライナ侵略が開始されてすぐに援助の手を差し伸べた日本の対応に感謝の意が示されました。

 また、日本が唯一の被爆国であり、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の歴史を意識されたのか、ウクライナの原子力施設へのロシア軍による攻撃について触れられました。演説の前半でロシア軍による原子力施設への攻撃について触れられた意味を強く深く受け止めなければならないと存じます。

 チェルノブイリ原発事故のときに、日本が先頭に立って医療支援を行った歴史があります。福島原発の事故のときには、IAEAの指揮の下、ウクライナの皆様方が応援に来てくださいました。さきの参議院予算委員会で、このような歴史を踏まえた、我が党の秋野公造参議院議員による、除染や被曝者を日本へ移送して緊急被曝医療を提供すべく準備を検討すべきとの質問に対し、林外務大臣は、唯一の被爆国であり、福島第一原子力発電所事故を経験した日本にとって大変に重要であり、早速関係当局と協議を開始したいと考えている旨の答弁をされました。

 そこで、まず、この協議の状況について、林外務大臣の答弁を求めたく存じます。

 次に、ゼレンスキー大統領は、国際機関が機能しませんでした、国連の安保理も機能しませんでした、改革が必要です、機能するためには誠実の注射が必要です、話し合うだけじゃなくて影響を与えるためですと述べられました。

 ロシアは常任理事国です。国際社会のリーダーとして、他国の模範となって国際法を遵守し、国際平和への取組が強く期待される存在でした。しかし、そのような国が、国際法を無視し、侵略を侵した挙げ句、核で威嚇するという事実を強く受け止めなければならないと考えます。

 ゼレンスキー大統領の期待に応えるべく、日本が憲法前文にうたう、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めるためにも、岸田総理に安保理改革のリーダーシップを取っていただきたく存じますが、岸田総理のお受け止めをお聞かせください。

 さて、三月二十四日に行われたG7首脳会合は、ロシアの暴挙を決して許さず、G7が主導して国際社会の秩序を守り抜くという強い決意を確認する、大変に有意義な会合となったとお聞きをいたしました。日本が果たすべき役割についても、岸田総理の決意が説明されたと存じます。

 日本は、これまで、G7各国と国は違えど心を一つに、ロシアの侵略を止めるための取組を行ってきたと承知しています。ロシア関係の資産凍結や金融分野での制裁、半導体などの輸出管理の厳格化、SWIFTからのロシアの排除、ロシア中央銀行との取引制限など、様々な制裁を矢継ぎ早に実行してきました。公明党は、これら政府の取組を強く支持するところでございます。

 しかし、いまだロシアはウクライナへの侵略を止めようとしません。ゼレンスキー大統領も、引き続き、制裁の継続をお願いしておられるところでもございます。

 この点、岸田総理は、G7会合の報告として、抜け穴を埋めながらG7と緊密に連携してロシアへの外交的、経済的圧力を一層強める旨をお述べになられておられます。そこで、どのようにロシアへの外交的、経済的圧力を強めるのかについて、岸田総理の答弁を求めたいと存じます。

 次に、日本は、これまで一億ドルの緊急人道支援の実施や第三国に避難したウクライナ避難民の受入れを行ってまいりました。国際社会や日本国民からも高く評価されていることを確信いたします。そして、岸田総理は、このG7首脳会合で、更に物資協力や医療、保健等の分野で一億ドルの追加支援を行うことを表明されました。また、これらの分野においては人的支援を行うことを検討しているとのことでございます。公明党は、この岸田総理の対応を高く評価し、強く支持するところであります。

 また、岸田総理は、困難に直面するウクライナの人々への連帯を示すため、可能な限り避難民の受入れに協力し、欧州諸国の負担を共有したいとお述べになられました。では、どのように可能な限り避難民の受入れに協力し、欧州諸国の負担を共有しようとされておられるのかについて答弁を求めたく存じます。

 岸田総理の積極的な人道支援が進めば、多くのウクライナ避難民を日本に受け入れることになってくると推察されます。中には、日本に親族や知人がいない方も含まれてくるでしょう。遠く祖国を離れて異国の地に逃れてくるウクライナの方々の思いはいかばかりでしょうか。しかも、破壊された故郷への帰還はかなり先になることが予想されます。ウクライナ避難民に寄り添う国内の体制づくりが不可欠です。

 そこで、滞在の長期化に備え、第三国定住制度を参考に、自治体、NPO、NGO、経済界、大学等と連携し、日本語学習支援、住まいの確保、就労、就学など、生活支援を実施すべきと考えますが、受入れ自治体等に対する十分な財政支援と併せて、岸田総理の答弁を求めます。

 さて、三月二十四日午後、北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、我が国の排他的経済水域、EEZ内に落下したと見られます。発射されたのは新型のICBM級の弾道ミサイルと考えられるとのことです。

 今般の発射は、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、安保理決議に違反する行為です。さらに、日本のEEZ内に着弾させたことは、我が国の安全保障に対する深刻な脅威です。

 国際社会がロシアによるウクライナ侵略に対応している中にあって、北朝鮮は国際社会に対する挑発を一方的にエスカレートさせており、断じて容認できず、強く非難します。政府には厳しい措置を検討していただきたく存じますが、岸田総理の答弁を求めます。

 最後に、ウクライナ人への人道支援の一方で、差別や誹謗中傷にさらされる危険が心配されるのが在留ロシア人やベラルーシ人です。ロシアによるウクライナ侵略で誹謗中傷されたという在留ロシア人の報道にも触れました。

 そこで、罪なき在留ロシア人やベラルーシ人がいじめや誹謗中傷を受けることがないよう対策を強化すべきと考えますが、津島法務副大臣の答弁を求めます。

 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田宣弘議員の御質問にお答えいたします。

 安保理改革に向けたリーダーシップの発揮についてお尋ねがありました。

 国際社会の平和と安全の維持に大きな責任を持つ安保理の常任理事国であるロシアが国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に出たことは、新たな国際秩序の枠組みの必要性を示しています。

 安保理改革については、我が国は、長年、安保理改革の必要性を訴え、そして積極的に活動してきました。先般の私のインド及びカンボジア訪問の際にも、安保理改革の早期実現に向けた協力について首脳間で確認をした次第です。

 各国の複雑な利害が絡み合う安保理改革は簡単ではありませんが、政府としては、多くの国々と協力しつつ、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に向け、引き続きリーダーシップを取っていきたいと考えております。

 ロシアへの外交的、経済的圧力についてお尋ねがありました。

 我が国は、一刻も早くロシアが国際社会の声に耳を傾け侵略をやめるよう、G7各国、国際社会とともに、ロシアに対して強力な制裁措置を取っていくことが必要だと考え、迅速に厳しい措置を打ち出しています。

 G7首脳会合において、私からは、国際社会が結束して厳しい対ロ制裁措置を講ずる中、ロシアへの支援や制裁のバックフィルには大きなリスクがあるということを指摘いたしました。議論の結果、G7として、制裁の回避や迂回、バックフィルを行わないことについて、G7で連携し、各国に働きかけていくことで一致をいたしました。

 ウクライナ避難民の受入れの協力、欧州諸国の負担の共有についてお尋ねがありました。

 日本への避難民受入れを進めるための取組については、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議の下で、ウクライナ避難民と受入先のマッチング、日本語教育、就労、就学、定住等、ウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援を行ってまいります。

 また、ポーランドにウクライナ避難民支援チームを設けるとともに、近く、総理特使をポーランドに派遣するなどして、避難民の受入れのための作業を促進してまいります。

 こうした点を私からも先日の首脳会談でポーランドのモラビエツキ首相に対して伝え、両国で連携して取り組んでいくということで一致をしています。

 ウクライナ避難民の受入れを表明した三月二日以降三月二十九日までに、三百二十五人のウクライナ避難民を受け入れてきています。今後とも、困難に直面するウクライナの方々を支えるため、できる限りの支援をG7を始めとする国際社会と連携して行ってまいります。

 ウクライナ避難民に対する支援の在り方、受入れ自治体等に対する財政支援についてお尋ねがありました。

 日本への避難民受入れを進めるための取組については、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議の下で、ウクライナ避難民と受入れ先のマッチング、日本語教育、就労、就学、定住等、ウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援を行ってまいります。

 今月二十五日には、ウクライナからの避難民に対する支援に必要な経費として、一般予備費から約五億二千万円を支出することを決定したところであり、支援の具体策を速やかに決定してまいります。

 ウクライナ避難民の状況に心を痛めた日本の多くの自治体や民間企業、団体の方々から避難民の受入れに協力したいとの声が上がっていることは大変心強く思っており、そうした御協力を得つつ、まずは、ウクライナ避難民お一人お一人への支援をしっかり行ってまいりたいと考えています。

 そして、北朝鮮についてお尋ねがありました。

 三月二十四日、北朝鮮がICBM級の弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮がこのような挑発行為を行い、しかも我が国EEZ内に落下したことは、我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、また、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、到底看過することができない暴挙です。

 また、本土から約百五十キロという日本海上に着弾させたことは、極めて問題のある危険な行為です。許されない暴挙であり、断固非難をいたします。

 今般の発射を受けて、北朝鮮に対して北京の大使館ルートを通じて厳重に抗議をするとともに、二十四日のG7首脳会合においても、私からこの発射について国際社会の安全保障上の深刻な脅威である旨述べ、G7として、北朝鮮の核開発とともに、連携して対処していくことを確認し、その後、北朝鮮を非難するG7外相声明が発出されたところです。

 政府としては、引き続き、情報収集、警戒監視に全力を挙げ、我が国の平和と安全の確保に万全を期していくとともに、今般の発射を受けた今後の対応については、追加的な制裁措置や国連安保理での対応も含め、米国、韓国とも連携しつつ対応してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 吉田議員からは、除染や被曝者に関する協力に係る準備についての関係当局との協議の状況についてお尋ねがありました。

 秋野議員からの御指摘も踏まえ、原子力規制庁から量子科学技術研究開発機構に対しまして、ウクライナで放射能汚染が発生した場合に備え、ウクライナとの原子力技術者間の協力の歴史も長い日本にこそできる被曝医療の観点からの協力について、準備を検討すべきとの問題意識が伝達され、同機構から、何ができるか検討したい旨の回答を得られたものと承知をしております。

 これまでにも、日本とウクライナは、原子力発電所における事故へのその後の対応を推進するための協力に関する協定に基づきまして、原発事故に関する知識経験の共有を目的として、両国の間で合同委員会を定期的に開催し、主に、避難指示区域の見直し、放射線防護措置、オフサイト除染、モニタリング、リスクマネジメント、原子力損害賠償、学術界の協力等について、専門家間で議論を行ってきています。

 困難に直面するウクライナの方々を支えるため、できる限りの協力を行うべく、秋野議員から御提案のあった点も含め、日本ができることを政府全体としてしっかりと進めてまいります。(拍手)

    〔副大臣津島淳君登壇〕

副大臣(津島淳君) 吉田宣弘議員にお答え申し上げます。

 在留ロシア人やベラルーシ人の方々に対するいじめや誹謗中傷への対策についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによる侵略は、総理も発言されているとおり、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であって、断じて許容できるものではありません。こうした、国としてのロシアの行動については、国民の皆様も様々な意見や感情をお持ちのことと思います。

 我が国は、憲法により保障された自由、基本的人権の尊重、法の支配の理念の下、国民が自由に表現活動を行うことにより、多様な意見が尊重される豊かな社会を築き上げてまいりました。国民の皆様には、不安や怒りなどのお気持ちを差別や偏見につなげることなく、良識ある言動を取ることを期待いたします。

 法務省においても、このような観点から、人権擁護活動等に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 会派を代表して、総理に質問します。(拍手)

 今回のG7首脳会合の成果については、私は一定の評価をしています。特に、インド、カンボジアを訪問し、モディ首相、フン・セン首相と首脳会談をしてからG7に臨んだことは、安保理改革を進める意味でも、アジアのリーダーとしての日本の役割を果たしたと考えます。

 さて、ロシアが進めようとしている力による一方的な現状変更の試みは、絶対に許してはなりません。そのためにも、国際社会、とりわけG7が連携して対応することが重要です。その意味で、G7とも連携をしてSWIFTからロシアを除外したことは評価します。ただし、その後、これらの経済制裁は一体どの程度効果を発揮しているのでしょうか。暗号資産による決済がかなり拡大しているとも言われ、ロシアが持ちこたえているようにも見えます。経済制裁の効果について、まず総理の現状認識を伺います。

 次に、極東での石油・ガス開発事業、サハリン2から、イギリス、オランダ系石油大手のシェルが撤退を表明しました。日本はこのサハリン2からは撤退しない方針だと聞いておりますが、事業を継続することでG7の経済制裁の結束を乱すことにはなりませんか。総理の認識を伺います。

 あわせて、岸田総理、これまでの対ロシア外交をどのように総括しますか。先週二十一日、ロシアは、二〇一六年に当時の安倍総理が合意した北方四島での共同経済活動からの撤退を表明しました。国民民主党は以前から求めていますけれども、国際社会に誤ったメッセージを与えかねないロシア経済分野協力担当大臣は、この際、廃止すべきではありませんか。

 先週、フォン・ゲッツェ駐日ドイツ大使からお話を伺いました。ドイツでは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ショルツ首相が対GDP比で一%程度だった国防費を二%以上に増額する方針を表明しましたが、これは、これまで慎重だった中道左派のドイツ社会民主党や環境政党である緑の党が主導して実現したもので、国民の幅広い賛同もあるとのことでした。今こそ、イデオロギーではなく、厳しい安全保障環境の変化に現実的に対応する政治姿勢が日本でも必要だと思います。日本においても、ますます厳しくなる安全保障環境の変化を踏まえ、防衛費を対GDP比二%程度に増額すべきとの議論がありますが、総理の見解を伺います。

 今月二十四日に北朝鮮が発射したミサイルは、これまでで最も長く飛翔し、最も高く上がり、最も日本の近くに着弾したミサイルです。ウクライナをめぐり国連安保理が機能不全に陥る中でのミサイル発射は、断じて許すわけにはいきません。総理、日本は国際社会とともに最大限の追加制裁を行うべきだと思いますが、総理の見解を伺います。

 原発への攻撃は国際法に違反します。しかし、ウクライナ侵略では、戦争で原発が実際に標的になりました。昨日、全国知事会も緊急要請を行いましたけれども、ミサイル攻撃やテロに備えて、自衛隊による原発警護を検討するとともに、万が一の場合には、PAC3の配備などによるミサイル防衛を強化すべきではありませんか。お答えください。

 国民民主党は、核兵器を持たず、造らず、持ち込ませずの非核三原則は堅持すべきとの立場です。

 ただ、有事の際の核搭載艦の寄港など、持ち込ませずの意味や範囲については、二〇一〇年以降、政府は、時の政権が判断すると答弁してきました。しかし、有事になって、時の政権が場当たり的に判断するのではなく、平時から議論を深めておくべき課題だと考えます。一九九〇年代以降、核搭載艦が寄港する運用はなくなっていると承知しておりますが、それでも、非核三原則のうち、持ち込ませずについては、今後生じ得るあらゆる事態を想定した認識の共有が国内においても米国との間においても必要だと考えます。総理の認識を伺います。

 次に、ウクライナ侵略による経済への影響について伺います。

 今、日本は、戦後最悪のスタグフレーション、つまり不景気下での物価上昇に陥る可能性があると考えます。岸田総理は、日本経済がスタグフレーションに陥っているとの認識はありますか。伺います。

 景気悪化を防ぐための指し値オペで金利上昇を抑制すれば、内外金利差から円安となり、物価、特に輸入物価の上昇を招きます。金利上昇抑制と物価上昇抑制の板挟みにならざるを得ない状況ですが、岸田内閣としてはどちらを重視しますか。また、為替介入は考えておられますか。答弁を求めます。

 現在、潜在成長率と実態との差であるデフレギャップがどの程度存在しているのか、まず認識を伺います。その上で、コロナ禍からの回復が遅れ、いまだに二十兆円程度のデフレギャップが存在しているとしたら、金融緩和政策は変更すべきではないと考えますけれども、総理の見解を伺います。

 賃金が十分に上がらない中での物価上昇は、可処分所得を減少させます。金融緩和を続けるなら、消費税減税やトリガー条項凍結解除によるガソリン減税など、家計減税を追加経済対策の柱とすべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 また、コロナ融資の返済期限が迫っている事業者も多く、中小企業向けの資金繰り対策が重要です。国民民主党が先週二十三日に国会に提出したコロナ版金融円滑化法を早期に成立させ、支払い猶予や支払い条件の変更を柔軟に行うことが必要ではありませんか。

 エネルギーの安定供給とともに、エネルギー価格の高騰を抑えるためには、法令に基づく安全基準を満たした原子力発電所は再稼働すべきです。また、原発の審査について、長期化する傾向があることから、審査体制の強化や審査プロセスの効率化、合理化が必要ではありませんか。

 日本の原発の国産化率は現時点では九〇%を超えていますが、要素技術を持つ企業の原子力事業からの撤退が相次いでいます。アメリカ、イギリスでは、原発の新設停止によって技術や人材が弱体化し、国内の原子力産業のサプライチェーンを喪失してしまいました。一方、現在、世界で建設中の原発の六〇%が実は中国製又はロシア製になっています。今のままでは、早晩、原発も中国やロシアに頼らざるを得なくなります。経済安全保障の観点からも、安全基準を満たした原発の再稼働は必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 日本国憲法前文には、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努める国際社会において、名誉ある地位を占めたいとうたわれています。私たち国民民主党は、まさに、隷従の平和ではなく、ウクライナの皆さんとともに自由や独立、人権という価値を守り抜く姿勢を貫くことこそ日本の歩むべき道だと表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えいたします。

 対ロ制裁の効果についてお尋ねがありました。

 一刻も早くロシアが国際社会の声に耳を傾け侵略をやめるよう、G7各国、国際社会が連携して、ロシアに対して迅速に厳しい制裁措置を打ち出してきています。経済制裁の効果が出るまでには一般に一定の時間を要しますが、既に、実際に、各国の措置により、物価の上昇、外国企業の撤退、操業停止といった様々なロシア経済への影響が出ていると認識をしています。

 御指摘の暗号資産を用いたロシアの制裁回避への対応についても、制裁の実効性を更に強化すべく、今国会で外為法の改正を行うための準備を進めているところです。

 我が国としては、抜け道が生じないよう、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、ロシアへの外交的、経済的圧力を一層強めるべく、適切に対応してまいります。

 サハリン2や対ロシア外交及び経済分野協力担当大臣についてお尋ねがありました。

 サハリン2は、自国で権益を有し、長期かつ安価なLNG安定供給に貢献しており、エネルギー安全保障上、極めて重要なプロジェクトです。G7でも、各国それぞれの事情に配慮し、持続可能な代替供給を確保するための時間を提供することになっています。こうしたことから、我が国としまして、撤退はしない方針であります。今後とも、G7の方針に沿って、ロシアへのエネルギー依存を低減すべく、更なる取組を進めてまいります。

 これまでの対ロシア外交については、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など、幅広い分野で日ロ関係全体を国益にかなうよう発展させるべく、適切に対応してきました。しかしながら、現下のウクライナ情勢を踏まえれば、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはできません。

 御指摘の担当大臣については、事態の展開に応じて円滑な撤収等を支援するため、引き続き、経済産業大臣にお願いをしてまいります。

 そして、防衛費についてお尋ねがありました。

 何よりも大事なことは、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、こうした議論をしっかりと突き詰めていくことです。防衛費についても、金額、結論ありきではなく、現実的な議論の結果として、必要なものを計上してまいります。

 現在、新たな国家安全保障戦略等の策定に取り組んでいるところであり、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討し、防衛力を抜本的に強化してまいります。

 北朝鮮についてお尋ねがありました。

 三月二十四日、北朝鮮がICBM級の弾道ミサイルを発射しました。北朝鮮がこのような挑発行為を行い、しかも我が国EEZ内に落下したことは、我が国の安全保障にとっても重大かつ差し迫った脅威であり、また、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、到底看過することはできない暴挙です。

 また、本土から約百五十キロという日本海上に着弾させたことは、極めて問題のある危険な行為です。許されない暴挙であり、断固非難をいたします。

 今般の発射を受けた今後の対応については、追加的な制裁措置、そして国連安保理での対応も含め、米国、韓国とも連携しつつ対応をしてまいります。

 原発警護についてお尋ねがありました。

 原子力発電所の警護については、第一義的には、公共の安全と秩序の維持を責務とする警察機関において実施していますが、状況によっては、自衛隊が治安出動等により対処することも可能となっています。

 また、PAC3を含む自衛隊の部隊配備については、様々な観点を総合的に勘案した上で決める必要がありますが、状況に応じて、PAC3を機動的に展開して対応してまいりたいと考えます。

 その上で、我が国に対する武力攻撃が発生した場合には、日米で共同して対処することとなります。日米同盟の抑止力、対処力を強化し、我が国に対する武力攻撃が発生しないよう、しっかりと取り組んでまいります。

 非核三原則についてお尋ねがありました。

 政府として、非核三原則を堅持していくとの考えに変わりはありません。

 その上で、非核三原則のうち、持ち込ませずについては、二〇一〇年に、当時の岡田外相が、余り仮定の議論をすべきではないと思いますが、緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運を懸けて決断し、国民の皆さんに説明する、そういうことだと思っておりますと答弁しており、岸田内閣においてもこの答弁を引き継いでおります。

 また、米国との関係については、平素より様々なやり取りを行ってきていますが、我が国を取り巻く安全保障環境や、現実に核兵器が存在していることを踏まえれば、核抑止力を含む米国の拡大抑止は不可欠であると考えており、いわゆる米国の拡大抑止の信頼性の維持強化に向け、日米間でしっかりと協議を行ってまいります。

 足下の日本経済の動向に関する認識と対応策についてお尋ねがありました。

 御指摘のスタグフレーションについては、ウクライナ情勢の影響も含め不確実性が高く、現時点で確たることを申し上げることは困難ですが、原材料価格高騰の影響がすぐに収束するとは考えられず、当面、物価は上昇の方向に進んでいくと見込まれます。

 原油価格や物価の高騰等による国民生活や経済活動への影響に対しては、四月末を目途に原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめ、緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいります。

 その中で、トリガー条項発動等、原油価格高騰への対応については、三党における協議を踏まえて対応を検討してまいります。消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、当面、消費税について触れることは考えてはおりません。

 経済財政運営に当たっては、金利と物価のどちらか一方を重視するということではなく、様々な金融経済動向を総合的に勘案しながら適切に政策対応を行っていくことが重要であると考えています。その上で、金融政策については、引き続き、日銀において二%の物価安定目標の実現に向けて努力されることを期待しております。

 為替介入についてコメントすることは差し控えますが、為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくないと考えております。引き続き、米国等の通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、為替政策に適切に対応してまいります。

 中小企業向けの資金繰り対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナやウクライナ情勢によって多くの事業者が影響を受ける中、中小企業の資金繰り支援を徹底することは非常に重要であると認識をしております。

 そうした観点から、これまで、金融機関に対し、貸付条件の変更について、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応等を要請しているほか、金融機関による条件変更等の取組状況の報告を求め、その状況を公表しており、かつての中小企業金融円滑法と同様の対応を実施しているところであると考えます。

 こうした取組により、金融機関の中小企業に対する返済猶予等の条件変更の実行率は約九九%となっております。

 その上で、実質無利子無担保融資を更に延長したほか、今後策定する原油価格・物価高騰等総合緊急対策に中小企業への資金繰り支援を含めるよう指示したところであり、今後とも中小企業の資金繰り支援に万全を期してまいります。

 原子力発電所の審査体制、プロセス及び再稼働の必要性についてお尋ねがありました。

 原子力発電所の審査体制の強化や審査プロセスの効率化、合理化については、審査過程における主な論点等を公表することによる審査の効率化、審査内容が共通する案件を同じチームで担当するなど審査官の機動的な配置といった様々な取組を原子力規制委員会において行っているものと承知をしております。

 原子力発電所の安定的な稼働を担う原子力産業サプライチェーンの維持は、経済安全保障の観点からも重要な課題であり、原子力発電所の再稼働を通じた現場力の維持強化が必要です。

 原子力発電所の再稼働に当たっては、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会の新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めるというのが政府の方針です。

 引き続き、原子力の人材、技術、産業基盤を維持強化していけるよう、官民連携の下、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 本村伸子君。

    〔本村伸子君登壇〕

本村伸子君 私は、日本共産党を代表し、G7首脳会合に関する報告について、総理に質問いたします。(拍手)

 ロシアのプーチン政権が、国連憲章を真っ向から踏みにじり、ウクライナへの軍事侵略を開始してから一か月以上が経過しました。ロシア軍は、国際人道法にも違反して、原発を攻撃、占拠し、学校、病院、そして劇場、商業施設などへの無差別な攻撃を繰り返してきました。既に数千人の命が奪われ、ウクライナの人口のおよそ四分の一、一千万人を超える人々が国内外への避難を余儀なくされています。

 国連総会は、三月二十四日、緊急特別会合を開催し、ロシア軍の即時、完全、無条件撤退を要求したさきの国連決議の完全履行とともに、民間人や民間施設に対する敵対行為の即時中止、国際人道法の尊重、政治対話と交渉、仲介による平和的解決を求める決議を百四十か国の圧倒的多数の賛成で採択いたしました。

 今、トルコ政府の仲介による停戦協議が続けられているほか、国連のグテーレス事務総長も、和平合意を目指した真剣な政治交渉を進展させるため、人道的停戦の実現に取り組む考えを示しています。

 日本政府に対し、こうした国際社会の努力を後押しし、国際法違反の侵略を一刻も早く終結させ、対話による平和的解決の道に戻すために、外交努力を強く求めるものです。

 戦闘が激化する下で、ロシアによる生物化学兵器、核兵器の使用が危惧されています。プーチン大統領に続き、ロシア大統領府のペスコフ報道官も、ロシアが存亡の危機に陥った場合には核兵器使用もあり得ると公言しました。こうした発言は、核兵器が抑止にとどまらず現実に使用される危険があることを示すものです。

 人類が核の恐怖から逃れるためには、核兵器を廃絶する以外に道はありません。総理は、G7の場で、唯一の戦争被爆国の総理大臣として、核兵器による威嚇も使用も許されないと述べていますが、そうした発言は、日本が核兵器禁止条約に参加し、核廃絶を正面から訴える立場に立ってこそ説得力を持つのではありませんか。

 自民党の議員や日本維新の会から、アメリカとの核共有や非核三原則見直しを求める議論が起こっていることに、被爆地広島、長崎から抗議の声が上がっています。長崎の被爆者五団体は、二十五日、抗議声明を出し、「私たち長崎の被爆者はこれまで自らの被爆体験に基づいて七十七年、“三度許すまじ原爆を!!”を合言葉に、核廃絶を世界に訴えてきました。」「核抑止力の共有で、自国だけが生存できるなど、誤った考えを直ちに改めることを求めます。」と述べ、核兵器禁止条約への加盟を求めています。総理は、こうした被爆者の声に応えるべきです。

 今回の軍事侵略は、日本政府、とりわけ第二次安倍政権以降の対ロシア外交を根本から問うものです。

 安倍元総理は、千島列島や北海道の一部である歯舞、色丹を不法に占拠したロシアの覇権主義を批判せず、プーチン大統領との個人的な信頼なるものをてこに、ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ているなどと言ってこびへつらい、日ロの経済協力を進め領土問題を解決するという方針を取りました。ロシアがクリミアを一方的に併合した際も、欧米諸国が厳しい制裁を科す中で、実質的な影響を及ぼさない措置にとどめ、二〇一六年の首脳会談では、四島での共同経済活動や八項目の経済協力プランの具体化で合意しました。さらに、二〇一八年の会談では、四島返還という従来の立場さえ投げ捨て、事実上、歯舞、色丹の二島返還で終わらせようとする合意を結びました。

 ところが、その後、二〇二〇年のロシア憲法改定で領土割譲禁止を明記し、プーチン大統領は、領土不拡大の原則に反する千島占領を大戦の結果として受け入れるよう迫るに至ったのです。

 総理は、領土交渉の行き詰まりの原因をどう認識していますか。ロシアの覇権主義に対する無批判、無原則なこれまでの外交を根本から改めるべきではありませんか。

 総理は、就任以来、敵基地攻撃能力の保有を検討し、防衛力を抜本的に強化する考えを示してきました。しかし、軍事に軍事で対抗することは、軍拡のエスカレーションを招き、破滅的な戦争を引き起こすことになりかねません。

 台湾有事は日本有事などと危機をあおり立てる発言が繰り返されていますが、台湾有事で安保法制を発動し、日本が自ら軍事介入をすれば、沖縄を始めとする南西諸島、日本列島に戦火を呼び込み、甚大な犠牲を生むことになるのは明らかではありませんか。

 中国に対して、軍事ブロックで包囲するという排他的アプローチではなく、中国を包み込む形で地域的な平和秩序をつくっていく包括的なアプローチを追求するべきです。仮想敵を前提とし、緊張を高める軍事同盟の強化ではなく、ASEANの経験に学び、北東アジアを平和と協力の地域とするための外交努力こそ必要です。

 また、今回の経験を踏まえ、安保理常任理事国の拒否権を制限し、総会の機能を強化するなど、国連機構全体の民主化を進めるべきです。

 憲法九条を生かした平和外交で積極的役割を果たすよう政府に求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 本村伸子議員の御質問にお答えいたします。

 ロシアのウクライナ侵略を終結させるための外交努力についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許容はできません。

 ロシアとウクライナとの間の停戦交渉については、一定の前進があったとの報道もありますが、具体的な停戦に結びつくかは依然不透明なままです。

 こうした現下の状況では、ロシアが侵略をやめ、国際社会の声に耳を傾けるよう、ロシアに対し強い制裁措置を講じていくことが重要であると考えており、G7を始めとする関係国と緊密に連携をして取り組んでまいります。

 そして、ロシアによる核兵器使用の可能性と、核兵器の廃絶に向けた日本の立場についてお尋ねがありました。

 今般のロシアによるウクライナ侵略の中で、核兵器が使用される可能性を深刻に懸念しています。唯一の戦争被爆国として、核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないということを引き続き強く訴えていきます。

 そして、核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であると考えます。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要であり、同条約には核兵器国は一か国も参加しておりません。御指摘のような対応よりも、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしていかなければなりません。

 そのためにも、核兵器のない世界に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係を基礎としつつ、引き続き、米国と協力しながら、現実的な取組を進めてまいります。被爆地広島出身の総理大臣として、被爆地の方々の思いを胸に、引き続き、核兵器のない世界に向けて全力を尽くしてまいります。

 対ロ外交についてお尋ねがありました。

 安倍政権を含め、ロシアとは、平和条約締結問題を含む政治、経済、文化など、幅広い分野での日ロ関係全体を国益に資するよう発展させるべく、領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、これまで粘り強く平和条約交渉を進めてきました。

 北方領土問題に関する我が国の立場に変わりはなく、これまでも適切に対応してきたと考えております。

 しかしながら、現下のウクライナ情勢を踏まえれば、ロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできず、平和条約交渉を含む今後の日ロ関係について申し上げる状況にはないと考えております。

 台湾有事、東北アジア地域の平和のための外交努力、そして国連改革についてお尋ねがありました。

 台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えますが、我が国としては、台湾をめぐる問題については、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場です。

 また、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化しながら、米国、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国、同志国とも連携し、日米豪印の取組等も活用しながら、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を戦略的に推進し、地域の平和と繁栄に貢献してまいります。

 安保理を含む国連全体の改革は、各国の複雑な利害が絡み合うなど、決して簡単ではありませんが、多くの国々と協力し、こうした国連改革の実現に向けて、引き続きリーダーシップを取ってまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) この際、十分間休憩いたします。

    午後三時十分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二十三分開議

議長(細田博之君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案(中島克仁君外十六名提出)、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案(中島克仁君外十六名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(中島克仁君外十六名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案並びに中島克仁君外十六名提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案、中島克仁君外十六名提出、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案及び中島克仁君外十六名提出、新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣後藤茂之君。

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) ただいま議題となりました医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 感染症に対する我が国の危機管理強化の観点から、緊急時において、治療薬やワクチンを始めとする医薬品等を速やかに国民に届けるとともに、非接触型の医療提供を行うに当たり必要となる処方箋の電子化を図ることにより、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延等による健康被害の拡大を防止することが必要です。

 こうした状況を踏まえ、緊急時に新たな医薬品等を速やかに薬事承認する仕組みを整備するとともに、処方情報及び調剤情報の即時的な一元管理を可能とする電子処方箋の仕組みを整備するため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、緊急時において、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延等による健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品等について、当該医薬品等の使用以外に適当な方法がない場合に、安全性の確認を前提に、有効性が推定されたとき、その適正な使用の確保のために必要な条件や期限を付した上で迅速に薬事承認を与える仕組みを創設することとしています。

 第二に、薬局に対して迅速に処方箋を伝達するとともに、重複投薬や併用禁忌の回避等による質の高い医療サービスの提供、医療機関や薬局、患者といった関係者間でのコミュニケーションの促進等を実現するため、医師等が電子処方箋を提供できる仕組みの創設及び社会保険診療報酬支払基金等が行う電子処方箋関連業務に関する業務規定の整備等を行うこととしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 提出者中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 ただいま議題となりましたオミクロン・感染症対策支援法案、コロナかかりつけ医法案及び日本版EUA、特定医薬品特措法案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 昨年十一月、岸田総理は、感染拡大が生じても、国民の命と健康を損なう事態を回避すると発言をされました。しかし、第六波では、再び保健所や病床が逼迫し、自宅や高齢者施設での療養者が医療にアクセスできずお亡くなりになる自宅放置死や高齢者施設死が繰り返されてしまいました。

 コロナ自宅放置死について、私は、昨年一月から、本会議や委員会で、こういう状況を二度と招いてはいけないと繰り返し訴え、第四波後には、当時の田村厚生労働大臣は、厚生労働省として十分にそこは対応できなかった、本当にじくじたる思いと答弁をされましたが、その後の第五波では更にひどい状況となり、現在も自宅放置死発生の検証すら十分にできておりません。

 我が国の国民皆保険制度は、医療を必要とする患者さんが医療にアクセスできることを保障したものであったはずです。

 このような状況が二年以上続いていることが異常であることを政府は強く認識するべきです。

 医療にアクセスできず不安を抱える国民に、かかりつけ医に相談してくださいと政府は度々案内をいたしますが、かかりつけ医の定義や法的な位置づけも明確でないままに、かかりつけ医に相談しろとは無責任です。

 この無責任状態を解消するため、昨年、我々は家庭医法案を提出いたしましたが、審議もされず廃案となってしまいました。

 我が国に家庭医制度が存在していたら、コロナ禍において自宅放置死は防げたのではないでしょうか。

 二度と自宅放置死を発生させないために、コロナかかりつけ医により、必要な方が必要なときに確実に医療にアクセスでき、早期治療を実現する仕組みを改めて提案いたします。

 コロナかかりつけ医との相談は、生活習慣改善や健康寿命延長にもつながることが期待をされ、将来の我が国の医療基盤再構築、医療制度改革の本丸である日本版家庭医制度創設への第一歩として、コロナかかりつけ医を導入すべきであります。

 二月の予算委員会で、鈴木財務大臣が、かかりつけ医機能の明確化の方針を示し、岸田総理も、かかりつけ医が広く普及するよう進めていきたいと答弁をされました。コロナかかりつけ医導入は、政府の方針にも重なるはずであります。日本医師会に遠慮せず、国民の皆様の声に耳を澄まし、今すぐに政治が応えるべきです。

 また、コロナかかりつけ医による早期治療には、有用な医薬品の迅速な供給が必要です。

 政府案では緊急承認制度が創設されますが、スーパーコンピューター「富岳」での治療薬研究結果の放置や、我が国発の医薬品アクテムラが、米国EUA取得後、我が国での承認申請まで約半年間の放置などの事例から、緊急承認だけでは有用な医薬品の迅速な実用化には不十分であり、基礎研究から生産までの医薬品開発全体を加速しなければなりません。

 以下、三法案の概要を御説明いたします。

 まず、オミクロン・感染症対策支援法案について申し上げます。

 本法律案では、緊急時の医療提供体制の確保のための都道府県等と医療機関の協定の締結、医療機関の管理者に対する要請又は指示、都道府県知事に対する医療の提供に係る要請等について定めることとしております。

 次に、コロナかかりつけ医法案について申し上げます。

 本法律案では、重症化リスクの高い者等の生命及び健康を保護するため、新型コロナウイルス感染症に係るハイリスク者等が必要な医療を確実に受けることができるよう、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等を一貫して担う新型コロナウイルス感染症登録かかりつけ医制度を導入するために必要な措置等を講ずることとしております。

 最後に、日本版EUA、特定医薬品特措法案について申し上げます。

 本法律案では、新型インフルエンザ等の治療に有用な医薬品について厚生労働大臣による指定制度を導入し、当該医薬品の買取り、増産要請等の確保の措置等を講ずることとしております。

 以上が、三法案の提案理由及び内容の概要でございます。

 これらの法案の内容は、コロナ自宅放置死された方々の無念の思い、なくなった命を無駄にさせないという自宅放置死遺族会の思いを反映した内容であり、二年以上続くコロナの混乱、国民の皆様の不安を解消するものであります。

 何とぞ御賛同いただきますよう、お願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案(中島克仁君外十六名提出)、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案(中島克仁君外十六名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(中島克仁君外十六名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。佐々木紀君。

    〔佐々木紀君登壇〕

佐々木紀君 自由民主党の佐々木紀です。

 ただいま議題となりました医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 我々自由民主党は、新型コロナウイルス感染症から国民の皆様の命と暮らしを守るために、常に最悪の事態を想定した危機管理を原則として、これまで様々な対策強化に取り組んでまいりました。その中で、感染症に対する我が国の更なる危機管理強化の観点から、速やかに対応可能な課題については、迅速に法的基盤を整備していく必要があります。

 そこで、まずお伺いいたします。

 今回の法律案について、改正の背景及び必要性について、総理にお伺いいたします。

 続いて、緊急承認制度の具体的な内容について伺います。

 先日、全ての都道府県で蔓延防止等重点措置が解除されたところですが、変異を繰り返す新型コロナウイルス感染症との戦いでは油断は禁物です。このため、国内外で開発が進められている治療薬やワクチンについて迅速に薬事承認を行い、新たな治療の選択肢を国民に届けていくことが不可欠だと考えます。

 まず、今回政府が本法案において提案する緊急承認制度の基本的な考え方や制度創設の効果を改めて総理にお伺いいたします。

 次に、医薬品の安全対策について伺います。

 もちろん副作用のない医薬品があれば理想的ですが、病気を治すという医薬品の利点の裏には、絶えず副作用という危険が潜んでいます。医薬品を原因とした薬害事件の発生防止に努めることは、官民を問わず、医薬品に携わる全ての者にとって基本的な責務です。緊急承認制度で承認した医薬品であっても、安全対策がおろそかになることは決して許されることではありません。

 そこで、緊急承認制度で承認された医薬品に関する安全対策について、厚生労働大臣にお伺いします。

 また、感染症の拡大時においては、非接触型の医療を提供することで、患者の医療アクセスを損なうことなく、感染拡大を防止することが可能となります。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、オンライン診療やオンライン服薬指導の導入や利用が進みましたが、処方箋についても電子化し、患者が簡便に調剤を受けられる体制を整備する必要があると考えます。

 本法案では電子処方箋の仕組みの創設が盛り込まれていますが、その電子処方箋の仕組みの概要と意義について、厚生労働大臣にお伺いします。

 電子処方箋の円滑な導入には、その意義について、現場で対応される医療機関や薬局、そして国民の理解を得ることが必要不可欠です。また、電子化に伴うシステムの改修など、一定のコストが発生することも考えられます。

 電子処方箋の仕組みが円滑に導入されるよう、国においても最大限の周知、広報や支援策を行うべきと考えますが、対応について、厚生労働大臣にお伺いします。

 緊急時の薬事承認制度については、安全性の確認を前提とした上で、国民から信頼される形で薬事承認を行っていくことが不可欠です。また、電子処方箋については、電子処方箋の導入によって現場に混乱が生じることがないよう、医療現場に寄り添い、国民にも十分理解を求めるなど、丁寧な対応をしていくことが必要だと考えます。

 今回の法案は、現下の新型コロナウイルス感染症への対応であるとともに、将来、未知の感染症が発生した際の未来への備えとして、まさに緊急に対応すべき法案です。本法案の速やかな成立が求められるとともに、我々自由民主党は、国民の皆様の命と健康を守るため、新型コロナウイルス感染症への対策に引き続き最優先で取り組んでいく覚悟です。

 最後に、長く続く新型コロナウイルス感染症への対応に粘り強く御協力をいただいている国民の皆様への感謝の意を添えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 佐々木紀議員の御質問にお答えいたします。

 法改正の背景と必要についてお尋ねがありました。

 感染症に対する我が国の危機管理強化の観点から、緊急時において、必要な医薬品等を速やかに国民に届けるとともに、オンラインで完結する非対面型の医療提供を行うに当たり必要となる法的基盤を整備することが必要です。

 こうした状況を踏まえ、緊急時に新たな医薬品等を速やかに薬事承認する仕組みや、医師等が電子処方箋を提供できる仕組みを整備することにより、国民の生命や健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延等による健康被害の拡大防止に取り組んでまいります。

 緊急承認制度についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対策として、外国で使用が認められたワクチンや治療薬について、特例承認制度により、できる限り早期の薬事承認に取り組んできました。

 しかしながら、特例承認制度は、国内企業が世界に先駆けて開発した場合には適用できないことや、承認の要件である有効性を確認するため、一定程度の期間を要する治験を実施する必要があるといった課題がありました。

 今般創設する緊急承認制度は、安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組みとしています。これにより、有効性が推定された段階で承認が可能となるため、国民の皆様により早く必要な医薬品等をお届けできるようになると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 佐々木紀議員の御質問にお答えいたします。

 緊急承認制度で承認された医薬品に対する安全対策についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のように、医薬品を原因とした薬害事件の発生防止に努めることは、行政や製薬企業を始めとする、医薬品に関わる全ての者にとって基本的な責務です。

 このため、緊急時であっても国民から信頼される形での薬事承認が行われることが重要であり、緊急承認制度においても、有効性については推定された段階で承認を可能とする一方で、安全性については、現行の承認制度と同様、確認を前提とした仕組みとしています。

 その上で、緊急承認制度で承認された医薬品に対する市販後の安全対策として、今般の新型コロナワクチン等への対応も参考として、審議会の累次の開催等による専門家の評価、リアルワールドデータの活用、集積した事例の統計的な解析など、十分な安全対策を実施してまいります。

 電子処方箋の仕組みの概要と意義についてお尋ねがありました。

 電子処方箋は、紙で交付されている処方箋を電子化し、そのデータをオンライン資格確認等システムを拡張したシステムを通じてやり取りする仕組みです。

 電子処方箋の導入により、医療機関、薬局間でリアルタイムに共有される患者の処方や薬剤情報に基づく医療サービスの最適化、処方時や調剤時それぞれにおける重複投薬等のチェックや不適切な処方及び調剤の抑制、医療現場におけるデータ入力時等の業務効率化など、患者や医療機関、薬局にとって大きなメリットがあると考えています。

 次に、電子処方箋の円滑な導入に向けた対応についてお尋ねがありました。

 電子処方箋は来年一月に運用を開始することとしていますが、それに向けて、国民への丁寧な周知、広報に努めてまいります。

 また、医療現場において円滑に実施されるよう、医療情報化支援基金三百八十三億円を活用した、医療機関や薬局のシステム導入を支援していくとともに、複数の地域でのモデル事業を本年秋頃に実施し、実装可能なシステム検証に取り組み、万全を期してまいります。

 さらに、運用開始後も現場の意見を丁寧に聞くなど、PDCAサイクルに基づく改善や導入を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 早稲田ゆき君。

    〔早稲田ゆき君登壇〕

早稲田ゆき君 立憲民主党の早稲田ゆきです。

 私は、政府提出の薬機法等改正法案及び立憲民主党提出の対案について、会派を代表して、総理並びに対案提出者に伺います。(拍手)

 冒頭、申し上げます。

 ロシアのウクライナ侵攻は、私たち衆議院でも決議したように、国際法と国連憲章の深刻かつ重大な違反であり、決して許されない暴挙であります。改めて、一日も早い停戦を強く訴えてまいります。

 鎌倉市始め全国青年市長会の七十自治体がウクライナ避難民の受入れを表明し、国に早急な財政措置を要望していますが、自治体に必要な国からの財政支援措置はいつ決めるのでしょうか。総理に伺います。

 侵攻から一か月たって、子供を含む多くの命が奪われる悲劇が続く一方で、日本を含む世界経済にも甚大な影響を及ぼしつつあります。そこで、三月二十九日に総理が指示した、コロナ禍における、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格や物価の高騰に対応するための緊急経済対策について伺います。

 年金受給者の五千円の給付に対しては、世論調査では二人に一人以上が反対しており、立憲民主党は、三月二十二日、厚生労働省に対し、夏の参議院選挙目当てのばらまきと言わざるを得ないと検討の中止を求める要請文を提出いたしました。

 この事態に、政府・与党は白紙ベースで見直すようですが、マクロ経済スライドによって長期にわたり基礎年金の減額が続くことを踏まえ、四月からの年金支給額が引き下げられる要因である、年金カット法で導入された年金給付の抑制を強化する改定ルールは間違いであったと岸田総理は認め、撤回するのが先なのではないでしょうか。五千円の給付に充てる予算があるなら、コロナ困窮労働者給付金法案など、困窮家庭に対する給付に回すべきではないでしょうか。

 以上二点、総理に伺います。

 さらに、この緊急経済対策の四つの柱に、あらゆる選択肢を排除することなくと書かれておりますが、あらゆるとは、消費減税や、子育て世帯にとって大きな負担となっている住居費、教育費についての支援の拡充も含まれるのでしょうか。総理に伺います。

 そもそも、現下の原油価格、物価高騰の事態は、コロナ予備費をへ理屈で流用してお茶を濁すレベルではありません。この国会中に、きちんと補正予算を組んで、本格的な対策を講じるべきではないでしょうか。総理に伺います。

 次に、明日からの緊急の課題について質問させていただきます。

 明日、四月一日から民法改正が実施され、成人年齢が十八歳に引き下げられることに伴い、事実上、十八歳の高校生のアダルトビデオ出演が解禁されることになります。従来からアダルトビデオ出演強要問題が深刻化していましたが、明日以降、十八歳、十九歳は未成年取消権が使えなくなるため、断り切れず同意して契約したものの、やはりアダルトビデオには出たくないと十八歳の高校生が契約取消しを求めても、取消しは困難になり、アダルトビデオの主流が十八歳、十九歳や高校生になるのではないかという懸念の声が多く出ています。

 ついては、総理にお伺いします。

 明日以降、民法改正に伴い、高校生や十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演被害が増えるという懸念はお持ちでしょうか。また、未成年取消権が使えなくなり、リスクが高まる中、現行法だけの取組により十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演被害の増加を阻止することは可能とお考えでしょうか。総理のお考えを伺います。

 さらに、この問題に対処するために、十八歳、十九歳のアダルトビデオ出演契約に臨時的に取消権を与える議員立法を超党派で成立させる協議が今行われている最中ですが、政府が法的対応をするまでの間、議員立法で対応することについての総理の御所見をお聞かせください。

 それでは、政府提出の薬機法等改正案及び立憲民主党の対案について質問いたします。

 今般の政府提出法案の改正は、三年目を迎えるコロナ禍に対応する内容としては、余りに不十分で、実効性が乏しいと言わざるを得ません。

 昨年来、総理は、感染症対策の司令塔をつくるとしていました。また、政府は、昨年末の段階では、実際に受入れ可能な病床確保や在宅医療確保の体制整備を内容とする感染症法等の改正案を準備したと報道されています。

 しかし、実際には、国の感染症対策の根本の議論は後回し、医療体制については自治体丸投げ、保健所や医療機関の逼迫を招き、その結果、国民が検査も受けられず、医療にもアクセスできず、みなし陽性や自主療養といった国民皆保険の日本で信じ難い事態になってしまったのは、安倍政権、菅政権、そして岸田政権のコロナ失政のせいと言わざるを得ません。

 現時点では、第六波は収束傾向を見せているものの、リバウンドの兆しも見られます。第六波の死者数は、これまでの最大であった第四波の約五千五百人の二倍近い九千五百人にまで達しております。そして、残念ながら、第三波から第五波まで以上に自宅放置死が発生してしまいました。高齢者施設における死亡者も続出し、関係者も疲弊しておられます。

 教訓が何も生かされていません。もう二度と、感染が拡大して、保健所や医療機関が逼迫し、自宅療養中に病状が急変し、最後は重大な結果になるという不幸な連鎖を起こしてはならないと考えます。

 そこで、今回の第六波における自宅放置死、高齢者施設死の発生を踏まえ、リバウンドも見られる中、どのような対策を講ずるべきなのでしょうか。また、今回の法整備により、第三波以来続いている自宅放置死発生を防ぐことはできるのでしょうか。岸田総理と議法提出者にお尋ねいたします。

 オミクロンBA・2、さらには、もっと強力な変異株が発生する可能性もあり、イギリス、イタリアなど、感染が再拡大をしております。

 蔓延防止重点措置の解除から一週間、愛知県の知事は、東京の解除ありきで国が前のめりに突っ走ったと話しています。昨日の厚生労働委員会で長妻昭議員が指摘されたように、新規感染者が前週比の推移で増加したのは何と三十七都道府県に上ることが明らかになりました。リバウンドの入口にあると、行動制限を呼びかける専門家もいます。

 このように感染拡大のリバウンドの可能性が高い中で、海外産のワクチン、治療薬頼みとなっている現状は大変問題です。十三歳の子供がコロナワクチン接種後僅か四時間後に亡くなりましたが、ワクチンとの因果関係がいまだ解明されず、子供への接種に不安を感じている声も多く届いています。後遺症で苦しむ方も増える一方ですが、その対応も極めて不十分です。検査キットや治療薬の十分な準備、そして副反応や後遺症の研究推進など、新たな変異株に備える対策を今から講ずるべきです。

 そこで、伺います。

 AMED内に設置をされました先進的研究開発戦略センター、SCARDAは、国産のワクチン、治療薬の開発が海外と比較して大変遅れていることを踏まえた対応と推察いたします。では、国産のワクチン、治療薬の開発が海外と比較して遅れている本質的な原因は、政府においてどのように分析されているのでしょうか。その分析は、今回の薬機法等改正の内容にどのように反映され、そして、今回の薬機法改正は、安全性と迅速性の両面から本当に実効性があるのでしょうか。総理に伺います。

 コロナ感染が拡大していた昨年、既に他の疾患で承認されていたアクテムラ、イベルメクチンなど、単なる適用外使用ではなく、副作用健康被害救済を可能とする緊急使用を求める声が高まっていました。これに対し、国会の衆参の委員会などで、政府は一貫して、これらの医薬品は、安全性、有効性が確認されておらず、患者と医師の自己責任での使用、つまり適用外使用で済むとして、そのような声をことごとく退けてきました。

 そこで、コロナのパンデミックなど有事の際に製薬企業任せではなく国が主導して有用な医薬品を迅速に確保するために特定医薬品特措法案を、そして、必要な方が必要なときに確実に医療にアクセスできるためにコロナかかりつけ医法案を立憲民主党は提出されたものと承知しています。

 この立憲民主党の対案は、製薬メーカー等の申請がない場合でも、新型コロナ感染症を含む新型インフルエンザ等の治療薬として指定できるものとしていますが、そのような法案とした理由と、それにより今後どのような効果が見込まれるのか、お答えください。議法提出者に伺います。

 有用な治療薬と期待される医薬品があるにもかかわらず、当該治療薬を製造する製薬企業に日本の薬事承認を申請する気がないという場合や、あるいは、アクテムラのように、欧米での承認や緊急使用許可が先行し、半年たってからやっと日本の薬事承認申請を実施したような場合がありました。今回の薬機法等改正案や立憲民主党の法案では、このような場合にどのような対応が可能となるのか、総理、そして議法提出者にそれぞれ伺います。

 以上で私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 早稲田ゆき議員の御質問にお答えいたします。

 ウクライナ避難民の受入れを表明した自治体への財政支援措置についてお尋ねがありました。

 ウクライナ避難民の状況に心を痛めた日本の多くの自治体や民間企業、団体の方々から避難民の受入れに協力したいとの声が上がっていることは大変心強く思っており、そうした協力を得つつ、まずは、ウクライナ避難民お一人お一人への支援をしっかり行ってまいります。

 その上で、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議の下で、避難民受入れを進めていく中で、必要な対応について検討してまいりたいと考えております。

 年金額の改定と困窮家庭への支援についてお尋ねがありました。

 公的年金制度については、将来世代の負担が過重なものとなることを避けつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保する仕組みとしており、この仕組みの下で年金を支給してまいりたいと考えています。

 コロナ禍の中で生活にお困りの方については、緊急小口支援等の特例貸付けや生活困窮者自立支援金の支給、住民税非課税世帯等に対する十万円の給付など重層的な支援を講じているところですが、今後、原油価格・物価高騰等総合緊急対策を検討していく中で、コロナ禍において物価高騰等に直面する国民生活の不安を解消する観点から、必要な対応を検討してまいります。

 原油価格や物価の高騰への対応についてお尋ねがありました。

 ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等による国民生活や経済活動への影響については、四月末をめどに原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめ、緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいります。

 その際、新たな財政措置を伴うものについては、まずは、一般予備費、コロナ予備費を活用した迅速な対応を優先してまいります。

 御指摘のあらゆる選択肢を排除することなくとは、原油価格が更に高騰し続けた場合への対応について述べたものであり、何が実効的で有効な措置かという観点から、現在講じている措置の効果も見極めつつ、あらゆる選択肢を排除することなく検討してまいります。

 AV出演被害問題についてお尋ねがありました。

 議員御指摘の問題意識は、私自身も共有しております。新たに成人となる十八歳、十九歳の方々が未成年取消しの保護対象でなくなるということにつけ入り、性的搾取をするような行いは決して許されません。

 だまされたり強要されたりした場合などには、民法や消費者契約法に基づき、契約の取消しができます。また、暴行、脅迫等、刑法で処罰される場合もあります。成年年齢が引き下げられる局面において、被害を起こさないように、刑法のほか、労働者派遣法や職業安定法による取締りも強化するとともに、十八歳、十九歳の方々を始め、教育、啓発の強化等に政府一丸となってしっかりと取り組んでまいります。

 この観点から、本日、「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージを決定し、こうした対策を政府内に徹底するよう指示をいたしました。性的搾取をするような行いは見逃さない、許さない。この姿勢でしっかりと関係法令の執行に努め、被害の防止、被害に遭った方の救済を図ってまいります。

 さらに、超党派で御議論いただいている立法措置の内容、議論の状況をしっかりとフォローアップした上で、政府としての対応も検討してまいりたいと考えております。

 新型コロナ患者の療養に関するお尋ねがありました。

 新型コロナへの対応に当たっては、今後しばらくは最大限の警戒を保ち、第六波への対応として準備した全体像の医療体制を堅持しながら、オミクロン株の特徴に合わせて強化してまいります。

 具体的には、自宅療養者に対する医療機関を一月の一・六万から二・二万機関へと増やし、更なる拡充を図るとともに、高齢者施設での療養への医療支援の強化を継続するなどの取組を進めてまいります。

 また、今般創設する緊急承認制度によって、国民の皆様に、より早く必要な医薬品をお届けすることが可能となり、全体像に基づく医療体制の強化など、各種の取組と相まって、国民の安全、安心の確保に更に寄与するものと考えております。

 国産ワクチン等の開発が遅れている原因、法改正の実効性についてお尋ねがありました。

 国内でワクチンや治療薬を開発できる体制を確立しておくことは極めて重要と考えており、医療に関わる経済安全保障にもつながるものであり、必要な支援を実施してまいります。

 新型コロナのワクチンや治療薬の開発が遅れることとなった一因として、ワクチンや治療薬の収益や投資回収が見込みづらいことが指摘をされています。

 今般創設する緊急承認制度は、安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組みであり、国産のワクチンや治療薬の実用化を促す効果があるものと考えております。

 製薬企業の承認申請と国の対応についてお尋ねがありました。

 医薬品の製造販売については、承認申請に必要な治験の実施とデータの解析、承認後の副作用情報の収集、解析、医療現場への情報提供などの安全対策を含め、製薬企業が責任を持って対応する必要があることから、製薬企業からの申請に基づき承認をしておりますが、国としては、新型コロナ対応として、治験等の手続の簡素化や企業相談の実施など、承認申請を行う製薬企業の負担軽減に努めてきました。

 加えて、今般創設する緊急承認制度により、申請に必要な臨床試験データが軽減され、日本での承認申請の促進に資するものであると考えております。(拍手)

    〔吉田統彦君登壇〕

吉田統彦君 早稲田ゆき議員から、製薬メーカー等の申請がない場合でも新型インフルエンザ等の治療薬として指定できる仕組みを提案する理由やその効果について、また、製薬メーカーが我が国において速やかに薬事承認の申請をしない場合等に立憲民主党の法案ではどのような対応が可能であるかについてお尋ねがありました。

 例えば、イベルメクチンは、抗寄生虫薬として国内で開発され、寄生虫が依然蔓延している海外などでは幅広く使用され、また安全性も確認された医薬品です。しかし、一方で、薬の単価は安く、製薬メーカーなどにとっては承認されても利益がそれほど見込めないということもあり、新型コロナウイルス感染症の治療薬として申請を行わないということがありました。

 今回の立憲民主党の法案では、そのような製薬メーカーや外国産医薬品の国内取扱メーカーの意向にかかわらず、また、恣意的な政治主導ではなく、エビデンスに基づく学会の意見を聞いた上で、国民にとって必要な医薬品を、新型コロナウイルス感染症を含む新型インフルエンザ等の治療薬として遅滞なく指定できるようにしたものです。

 これにより、例えば、炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン6の作用を阻害する働きを持つアクテムラについて、米国ではいち早く緊急使用許可をいたしましたが、我が国におきましても、学会の意見を聞いた上で、エビデンスに基づく判断で、いち早く新型コロナウイルス感染症の治療薬として指定することが可能となり、より一層その使用が広がることが期待されます。

 そして、今回の立憲民主党の法案は、政府案とは異なり、パンデミック時だけではなく、平時にも製薬メーカーの申請によらず医薬品の使用を認める制度について検討することを盛り込んでいます。

 この制度が実現すれば、更に幅広く、我が国で現在余り進んでいない遺伝子治療などを含め、アカデミアで完結する医薬品の承認使用が可能になることにより、承認が全体的に迅速化することが期待されます。また、難病患者、特に希少疾患の患者の医薬品などでは、営利性の問題から進まない安価かつ高品質な薬剤の開発が進み、更に言えば、昨年の健康保険法改正案の審議の際に私が指摘したように、医療経済的にも大きなメリットが得られるものと考えます。(拍手)

    〔山田勝彦君登壇〕

山田勝彦君 早稲田ゆき議員から、自宅放置死や高齢者施設死の発生を防ぐためにどのような対策を講ずるべきなのか、今回の法整備によりこうした事態の発生を防ぐことができるのかについてお尋ねがありました。

 これまでの感染拡大時では、政府の不作為で保健所や医療機関が逼迫し、医薬品供給の目詰まりが発生するなど、必要な医療を必要な人に届けることができないという事態が起きております。その結果、医療へのアクセスがままならない異常な状態の中、自宅放置死や高齢者施設死といった最悪の事態が生じており、これらに対する対策が急務となっております。

 感染拡大期に国民の命と健康を守るためには、医療へのアクセスを確保することが必要不可欠であります。そのために、コロナかかりつけ医法案は、高齢者等の新型コロナに感染した場合の重症化リスクの高い方々が、自らの新型コロナに係る健康管理等を一貫して担う、いわゆるコロナかかりつけ医を平時の段階から登録できる制度を導入するものです。

 このコロナかかりつけ医は、一、その登録を行った重症化リスクの高い方々について日頃から新型コロナ対策等の健康相談や症状がある場合の検査を行い、二、新型コロナにかかった場合や濃厚接触者となった場合には健康観察や医療の提供を行い、三、症状が急変した場合には自治体や他の医療機関との連絡調整を担うこととしております。このような平時からの一貫した取組を通じ、これらの者の医療アクセスを、感染症有事の際にも、オンライン診療等の活用も図りながら、確保できるようにするものです。

 また、コロナかかりつけ医が適切な医療を提供し、自宅放置死を防ぐためには、迅速に有用な治療薬を確保することが重要です。そこで、特定医薬品特措法案により、国の主導により有用な治療薬を迅速に確保する仕組みを創設することとしております。

 加えて、オミクロン・感染症対策支援法案では、病床が逼迫し、中等症や重症の患者が入院するための病床が不足する事態が生じることのないよう、政府対策本部長が都道府県間の調整を行うこととしているほか、都道府県等と医療機関の病床の確保のための協定の締結を協力金により支援することとしており、病床の確保に万全を期すこととしております。

 今現在でも何十万人の方が自宅療養をしている中で、助ける命を確実に守り、自宅放置死や高齢者施設死という最悪の事態が二度と生じることのないよう、そのためには、我々が提出したこれらの三法案により、必要な医療を必要な者に迅速かつ確実に提供する体制を整備することが必要不可欠であると考えております。政府には真摯に我々の提案を受け止めていただくとともに、各会派におかれましては、これら三法案に賛同していただくことを強く求めたいと思います。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 吉田とも代さん。

    〔吉田とも代君登壇〕

吉田とも代君 日本維新の会の吉田とも代です。

 ただいま議題となりました医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 二〇二二年一月からのオミクロン株による感染急拡大、いわゆる第六波がようやく峠を越え、新型コロナウイルス新規陽性者数も減少傾向が続いています。また、三月二十一日をもって蔓延防止等重点措置も終了いたしました。

 岸田総理にお尋ねします。

 本年一月九日から実施され、延長を重ねた蔓延防止等重点措置は、感染拡大防止にどの程度効果があったのでしょうか。何人程度の感染者数、重症者数、死亡者数を減らすことができたのか、大まかな数字で結構ですので、明確にお答えください。

 この二年を超えるコロナ禍において、国民は何度も人流抑制などの感染拡大防止に努めてきました。その一方で、高齢者においては、行動制限により、いわゆるフレイルと呼ばれる虚弱状態が更に進行することで、要介護状態がより悪化することが指摘されています。また、高齢者、若者にかかわらず、社会的な孤立や経済的な苦境から、残念ながら自殺に至る方もおられます。

 いわゆるコロナ禍とは、新型コロナウイルスそのものの脅威だけではなく、政府が取る新型コロナ対策が引き起こしている面もあるかと思いますし、その傾向は、オミクロン株に置き換わって以降、ますます大きくなっていると思います。新型コロナウイルスをむやみに怖がるのではなく、その時々の新型コロナウイルスの特性に合った対策を機敏に取ることができるようになれば、コロナ禍を克服できると日本維新の会は考えています。

 コロナ禍を終わらせる方法の一つとして、日本維新の会は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけを五類感染症又は五類感染症相当へ変更することを提言してまいりました。

 本年一月二十日の衆議院本会議での代表質問において、我が党の馬場伸幸共同代表が岸田総理に感染症法上の位置づけについて質問したところ、岸田総理はこう答弁されました。「オミクロン株の感染が急拡大している中、今、このタイミングで感染症法上の位置づけを変更することは現実的ではないと考えていますが、変異を繰り返す新型コロナの特質をしっかり考えた上で、今後の感染状況等も踏まえ、厚生労働省の審議会等において、専門家の意見を伺いながら、議論してまいりたいと思います。」

 オミクロン株の感染急拡大は、峠を越え、収束しつつあります。今こそ感染症法上の位置づけの変更について議論を始めるべきときだと考えますが、岸田総理の見解をお伺いします。

 もし今もまだ議論を始めるタイミングではないとされるのであれば、一体、いつになれば議論が始められるのでしょうか。

 そもそも、岸田総理の頭の中に、新型コロナウイルス感染症を五類感染症あるいは五類感染症相当にするという考えはおありでしょうか。

 感染症法上の位置づけは、科学的なデータを踏まえて論じられるべきものです。もし五類感染症にするお考えがなければ、ないという御答弁でも構いませんし、もし少しでもその考えがあるのであれば、新型コロナウイルス感染症が五類感染症となり得る基準を明確に示すべきと考えますが、岸田総理の見解をお伺いします。

 新型コロナウイルスのオミクロン株が主体となったいわゆる第六波では、これまでの感染拡大と比較して、致死率や重症化率は減少しました。

 一方で、先日、厚生労働省アドバイザリーボードにおいて、オミクロン株の致死率が季節性インフルエンザよりも高いとする分析が示されました。しかし、その分析を見ると、季節性インフルエンザの致死率が〇・〇一%から〇・〇五%ほどだった一方、オミクロン株の致死率は〇・一三%ほどでした。

 確かに、季節性インフルエンザの致死率よりも、オミクロン株の致死率は高い数値であります。しかし、感染症法上二類感染症に位置づけられ、新型コロナウイルス感染症と同じくコロナウイルスが病原体とされている重症急性呼吸器症候群、SARSの致死率は約一五%程度、中東呼吸器症候群、MERSの致死率は約三五%程度と推定されております。オミクロン株に季節性インフルエンザの約三倍の致死率があるとしても、二類感染症であるSARSの約百十五分の一、MERSの約二百七十分の一にすぎません。致死率で見れば、オミクロン株は、二類感染症であるSARSやMERSよりも、五類感染症である季節性インフルエンザに近いことは明らかです。ウイルスに変異のリスクがあることは、季節性インフルエンザでも同様であります。

 オミクロン株について、五類感染症又は五類感染症相当とすることができない科学的な根拠をお伺いします。

 新型コロナウイルス感染症を感染症法上五類感染症に位置づけることこそが、社会活動を正常化させるには必要不可欠です。

 新型コロナウイルス感染症の管理を、積極的疫学調査による感染者発見と自宅待機等の行動抑制による早期発見、早期隔離を目的とする保健所から、早期発見、早期治療を第一の目的とした地域包括ケアシステムに移行させることこそが、多くの患者さんを助けることにつながります。

 岸田総理におかれましては、新型コロナウイルス感染症を五類感染症に位置づけることの必要性とメリットを熟考していただきますようお願い申し上げます。

 次に、法律案に対する質問に入ります。

 今回の政府案による医薬品等の緊急承認制度の創設は、国内製薬企業による新薬実用化にどの程度寄与するのでしょうか。

 新薬の実用化には、基礎研究等の開始から製造販売、市販後の安全対策、副作用、副反応の被害の救済に至るまで、様々な段階があります。今回の政府案によって実用化が加速される部分は、その様々な段階のうちの一部にすぎません。この政府案により新薬実用化がどの程度加速されるのか、具体的にお答えください。

 新薬実用化に携わる関係者からは、審査手続に要する期間の短縮よりも、創薬の初期段階である基礎研究、前臨床段階への支援を求める声があります。そうした声に応えるべきではないでしょうか。

 基礎研究や前臨床段階への支援について、政府の取組を伺います。

 臨床研究へのサポート、特に、治験の参加者を集めるなど、治験を実施するための環境整備を求める声もあります。

 以前より、我が国では諸外国と比べて治験参加者を集めることに苦労するとの指摘があります。我が国では、治験イコール人体実験といったネガティブな感情があるのに対し、海外では、治験への参加は、最新の医療に接するチャンスであり、社会貢献にもなるとポジティブに捉えられているといった差があるとの指摘も見られます。

 政府は、国民の治験に対する意識を改善し、治験参加へのインセンティブを高めるべきと考えますが、見解をお伺いします。

 また、政府案では、緊急承認された医薬品について、原則として緊急承認から二年以内に再び薬事承認を得ることとされています。そして、この二年間に安全性、有効性について確認できない場合など承認を維持することが適切でないことが判明した場合には、速やかに承認を取り消すこととされています。

 しかし、緊急承認とはいえ、一度承認がされてしまえば、その取消しについては行政にはためらいが生じるのではないでしょうか。そして、その結果、行政は二年間の期限到来を待ってしまうことはないのでしょうか。

 有害事象の発生を迅速に収集する仕組みをどのように構築し、維持していくつもりなのか、また、速やかに承認が取り消されるのはどのような場合なのか、具体的にお答えください。

 緊急承認における有効性、安全性の判断について、安全性は特例承認等と同じく安全性が確認されることが求められ、有効性は推定でよいこととされています。しかし、特例承認され、安全性が確認されたはずの新型コロナワクチンにおいて、接種後に千五百名以上の方が亡くなったことが副反応疑い報告制度を通じて報告されており、また、多くの方がワクチンの後遺症が疑われるような症状に悩まされております。

 仮に、緊急承認されたワクチンについて現状の新型コロナワクチンと同様の状況が生じたとしても、当該ワクチンの安全性は確認されたことになるのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 二〇二一年二月十七日の新型コロナワクチン接種開始日から二〇二二年二月二十日までの間に、厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料では、新型コロナワクチン接種後の死亡と報告された事例は千五百十三件であり、これらの分析の結果は三つのカテゴリーに分類されております。α、ワクチンと死亡との因果関係が否定できないものは〇件、β、ワクチンと死亡との因果関係が認められないものは十件、γ、情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないものが千五百三件となっています。

 新型コロナワクチンの安全性に対する国民の不安要因の一つに、ワクチン接種後の死亡事例の評価について、その千五百十三件中千五百三件、つまり約九九・三%が情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないとされていることにあるのだと思います。

 この亡くなられた方千五百十三名のうち、病理解剖された方は何名おられるのでしょうか。また、接種後死亡者のどのような情報があれば情報不足とはされないのでしょうか。厚生労働大臣の答弁を求めます。

 今回の法律案は、日本国内における緊急時の医薬品等の供給には一定の役割を果たすことが期待されると同時に、政府の取り組むべき課題が山積していることを示しているとも言えます。

 日本維新の会は、一日も早く新型コロナウイルス感染症を克服し、社会活動を正常化させることに全力を尽くすことをお誓い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田とも代議員の御質問にお答えいたします。

 蔓延防止等重点措置の効果についてお尋ねがありました。

 蔓延防止等重点措置を含む感染対策に取り組んだ結果として、飲食店でのクラスターが減少したほか、病床を始めとする医療体制がしっかり稼働し、全国的な感染状況が改善したなど、その効果が出たものと考えております。

 しかしながら、感染者数や重症者数等を減少させる要因としては、蔓延防止等重点措置のほか、ワクチン接種や治療薬など様々なものが考えられることから、重点措置の効果だけを取り出して定量的にお示しすることは困難であると考えております。

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけについてお尋ねがありました。

 五類感染症への変更には、感染力及び罹患した場合の重篤性に基づく総合的な観点から危険性が高くない等の要件に該当する必要があります。新型コロナウイルス感染症については、オミクロン株であっても致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、更なる変異の可能性もあります。

 こうした中、新型コロナウイルス感染症を五類にした場合、例えば、健康状態の報告、把握や外出自粛等の要請、入院措置ができなくなるので、現時点では、国民の命を守るという観点から、現実的ではないと考えております。

 今後しばらくは最大限の警戒を保ちつつ、必要な科学的な知見を引き続き収集し、今後の感染状況等も踏まえて、政府において、専門家の意見を伺いながら、現在も議論をしておりますし、議論を続けていきたいと考えております。

 そして、緊急承認制度の創設と新薬の実用化についてお尋ねがありました。

 緊急承認制度は、安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組みです。その効果は個々の医薬品等の性質等に応じて異なりますが、例えば、国内で開発された治療薬の場合において、第三相試験が完了していない段階の限定的なデータに基づいて承認の判断が可能な事例があると考えております。

 また、新薬実用化に向けては、研究開発への支援のほか、国内外における治験費用への補助など、実用化を加速するための支援も実施しているところであり、国民の皆様に、より早く必要な医薬品等をお届けできるよう、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 吉田とも代議員の御質問にお答えいたします。

 創薬の支援についてお尋ねがありました。

 創薬の実用化に向けては、基礎研究や前臨床段階における支援が重要です。そのため、厚生労働省としても、健康・医療戦略に基づき、日本医療研究開発機構、AMEDを通じ、関係府省一体となって、研究開発の早期フェーズへの支援を企業やアカデミア等に対して行ってまいりました。

 引き続き、創薬の研究開発支援にしっかり取り組んでまいります。

 国民の治験参加の促進についてお尋ねがありました。

 治験の推進に当たっては、患者にとって、最新の治療を受けることができ、医療の発展に貢献できる制度であるとの理解を深め、患者、国民の参画を促進することが重要であると認識しています。

 このため、患者の皆様を対象としたウェブサイトによる普及啓発や実施中の治験情報に関するデータベースの充実に取り組んでいるところであり、患者、国民の理解がより深まるよう、引き続き取組を進めてまいります。

 市販後安全対策及び承認の取消しについてお尋ねがありました。

 緊急承認された医薬品の市販後の安全対策を徹底するため、製造販売業者に対し、医薬品のリスクに関する情報を収集する等の目的のため、医薬品安全性監視計画を策定させることとしています。

 また、収集した情報は審議会の累次の開催等により専門家に評価を受け、これを踏まえた安全対策措置を実施します。こうした取組により、市販後安全対策に万全を期してまいります。

 その上で、緊急承認制度はあくまでも緊急時の対応であることから、一定期間内に有効性等が確認できない場合等承認を維持することが適当でないことが判明した場合は、速やかに承認を取り消すことといたします。

 緊急承認制度における安全性の考え方についてお尋ねがありました。

 医薬品については、効果、効能を有する以上、一定の副作用が発生することは避けられず、その頻度や程度について治験等を通じ確認し、ベネフィットがリスクを上回る場合に承認しています。

 こうした考えの下、新型コロナワクチンについては、人種差や地域差も含めて、大規模な検証的臨床試験のデータから、日本人の安全性を確認し、特例承認を行ってきたものであり、緊急承認制度においても同様に安全性を確認してまいります。

 なお、新型コロナワクチンの市販後の副反応が疑われる症状については、常に情報を収集して、定期的に開催している審議会において評価を行っておりますが、接種後の死亡例やいわゆる後遺症のような症状については、現時点において、ワクチン接種と因果関係があると確認されたものはなく、ワクチン接種によるベネフィットはリスクを上回るとされております。

 新型コロナワクチン接種後の死亡事例とその因果関係についてお尋ねがありました。

 直近の審議会で、ワクチンとの因果関係の評価を行った千五百十三件の新型コロナワクチン接種後の死亡事例のうち、病理解剖を含めて解剖されたことが報告された事例は百四十三件です。

 ワクチン接種後の副反応疑い事例の評価に当たっては、医療機関や製造販売業者から情報を収集しており、特に厳密に評価する必要がある疾患については、個別調査票を作成し、より詳細な情報収集を図っていますが、偶発的なものも含め、起こり得る症状が様々であることから、一概に因果関係の判断に必要な情報をお示しすることは困難と考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 伊佐進一君。

    〔伊佐進一君登壇〕

伊佐進一君 公明党の伊佐進一です。

 ただいま議題となりました薬機法改正法案について、公明党を代表し、質問いたします。(拍手)

 医療や科学技術が進んでいるはずの日本で、国産ワクチンや治療薬の実用化になぜこれほどまで時間がかかるのか。コロナ禍の二年間、こうしたお声を幾度となくいただいてまいりました。その原因の一つは、薬価制度上の創薬イノベーションに対する評価が十分でなく、研究開発基盤そのものが傷んでしまっていることと認識しています。

 日本以外のG7の国々は、新薬の価格は特許期間中維持され、期間が過ぎたら、安いジェネリックに市場を譲るために、一気に薬価が下げられます。我が国では、二〇一八年の制度改定から、特許期間中でも薬価が下がることとなり、しかも、薬価改定は毎年行われ、診療報酬改定の財源の調整弁となっているのが実情です。

 こうした状況から、日本市場で最先端の新薬を出せば値段が下がり、国際市場にも影響を与えてしまうので、海外企業も日本での販売は消極的となります。すると、日本の患者さんは、最先端の薬が使えず、何百万円もかけて個人輸入せざるを得ない場合もあります。

 そして、最新の薬が使えないところでは臨床試験ができず、病院も、医者や学生まで、治験や創薬の力が更に失われていくという負のスパイラルが懸念されています。

 本年四月からの薬価改定においては、イノベーションを評価しようという工夫が少し加えられましたが、海外と比較して、ほど遠い状況です。日本の創薬イノベーションの基盤強化のため、引き続き、適切な評価と支援をお願いいたします。

 国産の治療薬、ワクチンの開発は経済安全保障の観点からも重要であり、また、多額の購入費が国内へと回れば、新たなイノベーションへの投資にもなります。

 国産に対する政府の支援について、これまで、総理への申入れを含め、公明党から累次にわたりお願いをしてまいりました。具体的には、薬事承認に当たり、条件付早期承認制度の活用も検討すること、また、一定の安全性、有効性が示された段階で必要量の購入、確保に関する基本合意を締結すること、さらには、治験への強力な支援などでした。

 現在、我が国初の国産治療薬の申請について、条件付早期承認制度での審査が始まり、また、先週には百万回分の購入についての基本合意が締結され、さらには、予備費の活用により治験への支援を倍増するなど、我々の要望を一つ一つ実現していただきました。総理のこの御決断に感謝申し上げます。

 引き続き、国産ワクチンや治療薬の開発に政府を挙げて力強く御支援いただきたく、総理の御決意を伺います。

 今回の法案においては、緊急に使用する必要があり、また他の医薬品での代替が困難な医薬品に対して緊急承認を認める新たな制度が定められています。

 そこで伺います。

 緊急に使用する必要があるとは具体的にどのような場合なのか。また、代替が困難とは、現在のようにメルク社やファイザー社製のコロナの経口薬始め中和抗体薬や抗炎症薬、抗ウイルス薬などが既に承認されている状況においても、更に認められる場合があるのか。

 あわせて、具体的な適用についてはどのような手続で進められることになるのかについて伺います。

 世の中の治療薬やワクチンにおいて、副作用や副反応が全くないものはありません。全ての治療薬やワクチンにはリスクがあります。この副作用や副反応というリスクと使用したときのメリット、つまり安全性と有効性を十分に比較しながら承認がなされることになります。

 創設される承認制度での審査においては、有効性は推定でも可能としています。しかし、安全性については、治療薬やワクチンに対する国民の信頼性が重要であることを考慮すれば、緊急といえども、推定ではなく、通常の審査と同様に、確認されることが必要と考えますが、いかがですか。

 その上で、緊急承認された医薬品の副作用や副反応によって健康被害が出た場合、医薬品副作用被害救済制度によって、通常承認された医薬品と同様に救済されるべきと考えますが、いかがでしょうか。

 また、市販後においても、事業者に安全性監視計画を設定させ、徹底したリスク管理を行わせるとともに、安全性についての情報収集、評価を実施し、政府としてもより手厚い評価体制で安全対策に万全を期すべきと考えますが、政府の見解を求めます。

 我が国におけるコロナワクチンの接種は、米国や欧州と比較して大きく後れを取りました。その後、医療現場や自治体の皆さんの御努力により、世界に追いつき追い越すペースで接種を進めてまいりました。

 接種が遅れた主な原因は、諸外国と比べて承認が遅れたことにあります。ファイザー製では二か月、モデルナ製では五か月遅れての承認となりましたが、これは、海外での第三相試験に加えて、我が国独自に日本人を対象に治験、第一、二相試験を実施したことによります。こうした追加的な試験によって安全性や有効性をより確かなものとしましたが、これは、政府・与党のみならず、野党の皆さんからより強い主張がなされて行われたものでした。一部野党には、我が国において第三相試験を行わない限り接種を認めるべきではないと訴えていた方々もいらっしゃいました。

 そこで伺います。

 今回の緊急承認制度において、海外で第三相の大規模治験が実施されたワクチンは、顕著な有効性が認められるのであれば、日本人に対する国内治験が未実施であっても承認可能となります。その場合、日本人にとっての安全性、有効性はどのように評価されることになるのか、人種差、地域差をどのように考慮するのかについて伺います。

 現在、我が国初のコロナの国産治療薬の申請で活用されている条件付早期承認制度と、今回新設される緊急承認制度との関係について伺います。

 安全性については、両制度とも確認することが条件となっています。しかし、有効性については、早期承認制度では確認が求められる一方、新たな緊急承認制度は推定が認められることとなっています。この考え方の違いについて伺います。

 また、既に早期承認制度で申請され審査中である医薬品に対して、本法案施行後にそのまま緊急承認制度を適用していくことが可能なのか、伺います。

 本法案では、現在、紙で行われている処方箋の運用をデジタル化対応していく仕組みも盛り込まれています。

 現在、個人の医療や介護の情報をデジタル化してマイナポータルとリンクさせ、食事や睡眠といったライフログデータとも連携させていく、パーソナル・ヘルス・レコードの取組が進められています。アプリを提供する民間企業とも連携しながら、国民の皆さんの健康増進を目指していこうという重要な取組であり、本法案の処方箋の電子化もその一環と認識しています。

 この取組を進めていく上で、幾つかの課題が出てきています。例えば、民間が提供するサービスの標準化をどうするか、健康状態に即して自動的に提供される助言、リコメンデーションの基準をどう設定するかなどです。

 こうした課題への取組を含め、新しいデジタル社会の重要なツールとしてパーソナル・ヘルス・レコードを強力に推進していただきたいと思いますが、総理の御決意をお願いします。

 以上、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 伊佐進一議員の御質問にお答えいたします。

 薬価制度についてお尋ねがありました。

 日本の製薬産業が絶え間ないイノベーションにより革新的な新薬を生み出し、グローバルに競争するための環境整備をしていくことは重要であると考えます。

 同時に、公的保険で賄われる薬剤費全体は高齢化の進展等により増加する傾向にあり、国民皆保険の持続性という観点も重要です。

 今後の薬価制度の在り方については、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性を両立するよう、両者のバランスを取りながら、不断の見直しに取り組んでまいりたいと考えます。

 そして、国産ワクチンや治療薬の開発支援についてお尋ねがありました。

 国産ワクチンや治療薬の開発については、公明党の皆さんからも御提言をいただいておりますが、政府としても、国内で開発、生産できる体制を確立しておくことは極めて重要であると考えており、医療に関わる経済安全保障にもつながるものです。

 このため、ワクチンについては、ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、世界トップレベルの研究開発拠点の形成、デュアルユースのワクチン製造拠点の整備など、産学官のワクチン開発、生産体制の強化を進めることとしております。

 また、国産の新型コロナ治療薬については、研究開発への支援のほか、国内外における治験費用への補助など実用化を加速するための支援も実施しており、引き続き、しっかりと後押しをしてまいります。

 パーソナル・ヘルス・レコード、PHRの推進についてお尋ねがありました。

 健康意識の高まりや情報端末の普及により、アプリを活用した運動や食事等の管理を支援するヘルスケアサービスが拡大をしています。その更なる利便性向上に当たっては、PHRの活用につながるデータ標準化や、これを利用する事業者が遵守すべきルールの整備が重要です。

 政府として、まずは、マイナポータルとPHR事業者の間でデータ利用の連携を開始するとともに、事業者に向けた個人情報保護等のガイドラインを策定したところです。

 今後、事業者間でのデータ標準化等につながる業種横断的な団体の設立支援等を通じて、より一層強力に、国民の健康づくりにつながる新たなサービスの創出に取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 伊佐進一議員の御質問にお答えいたします。

 緊急に使用する必要性や代替の困難性の具体的な内容や手続についてお尋ねがありました。

 緊急に使用する必要性については、新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同等の疾病の蔓延状況や感染者の急速な増加が確認された場合、医療提供体制が逼迫している場合等を想定しています。

 また、代替の困難性については、国民への供給の観点等も踏まえて判断することとしており、他の複数の医薬品が既に承認されている状況においても、治療の選択肢を拡大し、より安定的な供給に資するような場合には、緊急承認制度の適用が認められます。

 具体的な適用の手続については、まずは、制度の適用対象となる医薬品を政令で定め、その上で、個別具体的な製品について、PMDAによる審査や審議会での審議を経て、厚生労働大臣が承認の判断を行うこととしています。

 緊急承認制度における安全性の考え方についてお尋ねがありました。

 安全な医薬品を市場に供給するよう努めることは、行政や製薬企業を始めとする、医薬品に関わる全ての者にとって基本的な責務です。

 このため、緊急時であっても国民から信頼される形での薬事承認が行われることが重要であり、緊急承認制度においても、有効性については推定された段階で承認を可能とする一方で、安全性については、議員御指摘のとおり、現行の承認制度と同水準の確認を前提とした仕組みとしています。

 健康被害の救済、市販後安全対策についてお尋ねがありました。

 緊急承認された医薬品の安全性については、通常承認と同水準で確認を行うことを前提としていることから、健康被害が発生した場合、現行の独立行政法人医薬品医療機器総合機構法等に基づく救済の対象となります。

 また、市販後の安全対策を徹底するため、製造販売業者に対し、医薬品のリスクに関する情報を収集する等の目的のため、医薬品安全性監視計画を策定させることとしています。

 さらに、収集した情報は、審議会の累次の開催等により専門家に評価を受け、これを踏まえた安全対策措置を実施いたします。こうした取組により、市販後安全対策に万全を期してまいります。

 日本人に対する国内治験が未実施のワクチンに関する評価についてお尋ねがありました。

 今般創設する緊急承認制度では、日本国内での臨床試験成績がまだ得られていない段階であっても、例えば、海外での大規模な検証的臨床試験において十分な有効性が示されており、人種差や地域差があったとしても高いベネフィットがあると推定できる場合には、他の関連する科学的知見も踏まえて、日本人において同様の有効性が推定できるものと評価いたします。

 また、安全性については、人種差や地域差も含めて、大規模な検証的臨床試験のデータから、日本人での安全性を確認することとしています。

 条件付承認制度と緊急承認制度との関係についてお尋ねがありました。

 条件付承認制度は、希少疾病用医薬品など、検証的な大規模試験の実施が困難な医薬品等を早期に実用化するため、安全性と有効性の確認を前提に、大規模試験を省略するものです。

 他方、緊急承認制度は、緊急時に有用な医薬品を速やかに実用化するために、安全性の確認を前提に、入手可能なデータにより有効性が推定できる段階で早期に承認を行うものです。

 本法案は公布日施行を予定していることから、施行日以後に承認される医薬品等であれば緊急承認制度が適用可能となりますが、個別の適用の可否については、施行日における状況を踏まえながら検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 私は、会派を代表して、医薬品等品質確保法等改正案について質問をいたします。(拍手)

 今回の新型コロナ感染症に対する我が国の危機管理の観点から、特例承認などでワクチンや治療薬について確保が進められてきた中、更なる早期化を実現すべく、緊急時に迅速な薬事承認を可能とする新たな制度が創設されることになりました。

 まず、制度の発動要件である緊急時とはどのような場合なのかを明確にすべきです。その上で、発動要件の認定手続に関しても明確化が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 今回の薬事承認はコロナ感染症のワクチン、治療薬が元となっていますが、原子力事故、バイオテロなどの幅広い想定がされていると聞きます。このような想定の場合も関与するのは厚生労働省だけになるのでしょうか。他省庁との連携についても伺います。

 その際、大切なのは、緊急時の具体的な状況や、医薬品、医療機器の性質等に応じて、審査プロセスの透明性、公平性の確保や国民への十分な情報開示だと考えます。大臣の見解を伺います。

 市販後の安全対策について伺います。

 感染症対策として、予防接種行政において、ワクチンの市販後の有効性また安全性を見るためのツールとして、米国のVSD、ワクチンモニタリングシステムを参考にしつつ、予防接種に係る情報とレセプト情報との連携による有効性、安全性の評価を行う仕組みを構築し、それらを医薬品医療機器総合機構や医薬行政において活用する体制にすべきであると考えます。見解を伺います。

 今回の薬事承認制度によって複数の承認制度が整備されることになりますが、国民に広く理解されているわけではありません。緊急承認制度について国民が不安を感じることなく安心して使ってもらうためには、緊急時の承認であっても安全性については確認しているといった基本的なことの説明や周知、広報の徹底した取組がまず必要と考えますが、見解を伺います。

 感染症有事に備えた検討の中で、ワクチンを国内で開発、生産し、速やかな供給ができる研究開発、生産体制の構築をするための一つの要素として、薬事承認のプロセス迅速化の体制、基盤整備が掲げられています。国民の疑問や不満は、どうして国産のワクチンや治療薬ができないのか、外国産のワクチンをこれからも打ち続けなければならないのかであります。

 今回の緊急時の薬事承認を含めて、国産ワクチンの開発や迅速な承認に対してどのように取り組んでいくのか、総理の決意とともに伺いたいと思います。

 次に、電子処方箋について伺います。

 データヘルス改革に関する取組の一環として、電子処方箋が全国的な仕組みとして運用が開始されます。処方情報を単に電子化するだけでなく、医療機関、薬局をまたいでリアルタイムでの処方、調剤情報を含む薬剤情報が閲覧できることで、特に高齢者で問題となっている重複投薬の抑制や、また業務効率化による質の高い医療サービスの提供につながることを期待しています。

 コロナ禍で、オンライン診療やオンライン服薬指導というものが注目をされました。この電子処方箋の導入で更に前に進めていってほしいと考えますが、患者の利便性にどのように寄与することにつながるのか、取組を伺いたいと思います。

 今回の仕組みは、オンライン資格確認システムを使い、紙の処方箋の運用を電子で実施するのが肝でありますが、始めるに当たり、医療機関や薬局が、顔認証つきカードリーダー、また資格確認端末、オンライン資格確認連携ソフト、これらを整備していることが大前提となっています。

 大きな負担になることも考えられますが、そもそも、全国でこれらの整備がどれだけ進んでいるのでしょうか。全ての医療機関や薬局に整備されるのはいつと考えているのでしょうか。また、診療報酬上、どのように評価をされるのでしょうか。患者側から見ると、それは新たな負担につながるのではないでしょうか。伺います。

 電子処方箋にアクセスするための医師や薬剤師の本人確認や医療情報が改ざんされていない真正性を担保するのに、HPKIという、医師や薬剤師の電子証明書を今回活用するとのことですが、このカードの保有者数が二月二十八日時点で二万三百五十七人、全国の医師の約六%という余りに低い普及率となっています。政府は二〇一三年から十分の十の補助率で普及啓発事業を続けていますが、結果に全く結びついていません。このような状況で本当に電子処方箋の運用が開始できるのでしょうか。

 令和六年度施行予定で、デジタル改革関連法の中では、マイナンバーによる国家資格の管理も計画がされているところです。後からシステムを変えるのは、手間も、また費用、税金もかかることを考えると、医師、薬剤師の電子証明書も今回の電子処方箋のスタートに合わせてマイナンバーカードに統一すべきではないかと考えますが、見解を伺います。

 政府は、オンライン資格確認の本格運用が開始されたことで、薬剤情報や特定健康診断の様々な情報が閲覧できるだけでなく、多様な医療サービスの提供が可能になったことでいわゆるデータヘルスの基盤ができたとしていますが、電子処方箋に係るシステムの整備状況を見るだけでも、絵に描いた餅にならないのか、大変に心配であります。

 国が目指す医療ICTの姿をどのように考え、データヘルス社会の実現に向けて取組を進めていくのか、総理の決意とともに見解を伺います。

 以上、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、田中健議員にお答えする前に、先ほどの玉木雄一郎議員に対する答弁の中で、足下の日本経済の動向に関する認識について発言をいたしましたが、その答弁に加えて、潜在成長率と実態との差であるデフレギャップについて、内閣府の推計によれば、二〇二一年七―九月期のGDPギャップは年率換算でマイナス二十七兆円であると承知をしておりますという答弁をつけ加えさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 その上で、田中健議員の質問にお答えをさせていただきます。

 国産ワクチンの開発や迅速な承認についてお尋ねがありました。

 国産ワクチンを開発し、迅速な承認を行う体制を確立しておくことは、極めて重要と考えており、医療に関わる経済安全保障にもつながるものです。

 このため、ワクチン開発・生産体制強化戦略に基づき、新たな創薬手法による産学官の実用化研究への集中的な支援や、世界トップレベルの研究開発拠点の形成など、ワクチン開発体制の強化を進めるとともに、今般、緊急承認制度を創設することとしております。

 政府としては、国民の皆様に、より早く必要な国産ワクチンをお届けできるよう、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

 そして、データヘルス社会の実現についてお尋ねがありました。

 保健医療分野におけるデータの利活用やデジタル化の推進は、健康寿命の延伸や国民の利便性向上の観点から、重要な課題であると考えております。

 このため、薬剤情報や特定健診情報を含めた保健医療情報を国民が自ら閲覧したり、本人同意の下で医療機関等で共有できる仕組みの整備など、データヘルス改革や保健医療分野におけるICTの活用を着実に進めていきます。

 また、オンラインで完結する非対面型の医療提供を実現することが、感染症に対する我が国の危機管理強化の観点からも重要であり、本法律案において、医師等が電子処方箋を提供できる仕組みを整備し、しっかりと機能させていきます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 田中健議員の御質問にお答えいたします。

 緊急承認制度における、緊急に使用する必要性についてお尋ねがありました。

 緊急に使用する必要性については、これまで特例承認制度を適用した新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同等の疾病の蔓延状況や感染症の急速な増加が確認された場合、医療提供体制が逼迫している場合等を想定しています。

 具体的な適用の手続については、まずは、制度の適用対象となる医薬品を政令で定め、その上で、個別具体的な製品について、PMDAによる審査や審議会での審議を経て、厚生労働大臣が承認の判断を行うこととしています。

 緊急に使用する必要性の具体的な内容や手続についてお尋ねがありました。

 医薬品を緊急に使用する必要性について、具体的な状況は様々であることから、最も想定されるのは感染症の蔓延と考えていますが、原子力事故やバイオテロ等による健康被害についても、個別具体的な状況に応じて、緊急に使用する必要性に該当し得ると考えています。

 また、緊急承認制度の適用対象となる医薬品は政令で定めることとしており、必要に応じて関係省庁とも連携しながら、政府全体として対応してまいります。

 審査プロセスの透明性、公平性の確保や情報開示についてお尋ねがありました。

 審査プロセスの透明性及び公平性の確保については、今般の新型コロナに関する医薬品の承認審査に当たり、審査報告書を当日又は数日以内に公表するとともに、審議会議事録についても三週間以内に公表しています。

 また、国民への情報開示については、特設サイトで承認済みの医薬品や開発中の医薬品の情報を公表したり、新型コロナに関するQアンドAでも、治療薬やワクチンの情報を掲載しています。

 引き続き、審査プロセスの透明性、公平性の確保や国民への十分な情報開示、情報発信に努めてまいります。

 予防接種の有効性等の評価についてお尋ねがありました。

 予防接種の有効性、安全性等に関する調査をより的確に行う観点から、予防接種の実施状況、副反応等に係る匿名データベースを整備し、レセプト情報・特定健診等情報データベース、NDB等との連結解析を可能にすることに向けて、具体的な検討を進めてまいります。

 また、こうした仕組みを整備する際には、医薬品行政においても活用したいと考えています。

 国民の理解を得るための取組についてお尋ねがありました。

 国民の皆様に広く安心して緊急承認制度の対象となる医薬品を使用していただくためには、制度についての理解が必要であることは議員御指摘のとおりであります。

 このため、本制度に基づき医薬品等を承認する際には、緊急に承認するものであっても通常の承認時と同様に安全性が確認されていることについて、リーフレット等の分かりやすい情報提供ツールを活用し周知徹底するなど、理解の醸成にしっかり取り組んでまいります。

 電子処方箋のオンライン診療等の活用についてお尋ねがありました。

 現在、オンライン診療等においては、原則、医療機関が患者の指定する薬局にファクス及び郵送で処方箋を送付することとしており、薬局は、処方情報が届いてから調剤やオンライン服薬指導が実施可能となります。

 電子処方箋により薬局に処方情報が速やかに共有されることで、患者を待たせることなく調剤やオンライン服薬指導が可能となるなど、非対面型の医療が促進されると考えています。

 オンライン資格確認の普及状況等についてお尋ねがありました。

 マイナンバーカードを健康保険証として利用できるオンライン資格確認は、実施に必要となる顔認証つきカードリーダーの申込みをしている医療機関等は全体の約五七%、実際に運用を開始した施設は全体の約一四%となっています。

 オンライン資格確認は、医療機関等には、導入で事務コストが削減されるメリット、患者には、自ら同意した上で過去の薬剤情報や特定健診結果を医療機関等に提供することでよりよい医療が受けられるメリットがあります。

 令和四年度診療報酬改定においては、外来でこれらの情報を活用して診療が行われた場合等に、初診料等に新たな加算を設けることといたしました。この場合、通常の診療報酬改定と同じ負担関係になりますが、国民の皆様には、よりよい医療が受けられるというメリットについて、丁寧に周知、広報に取り組み、御理解を得られるよう努めてまいります。

 あわせて、令和五年三月末までにおおむね全ての医療機関等での導入を目指し、関係者が一体となって対応していく環境づくりを行うとともに、導入加速化に向けた集中的な取組を講じてまいります。

 電子処方箋の電子署名の対応についてお尋ねがありました。

 電子処方箋は、真正性を担保するために、医師等の電子署名を付すこととしています。

 このため、電子処方箋の円滑な運用開始に向けて、まず、令和三年度補正予算二・一億円を活用したHPKIカードの更なる普及を促進するとともに、多様な方法による電子署名が可能となるよう、民間の電子署名サービスの活用やマイナンバーカードによる電子署名への対応検討等の対応を進めているところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党を代表して、薬機法等改正案について質問いたします。(拍手)

 物価の急激な上昇が、国民の生活となりわい、日本経済に深刻な影響を与えております。緊急に補正予算を組み、消費税減税、年金削減中止、行き過ぎた円安政策の見直しなどなど取り組むべきであります。新型コロナウイルス対応予備費の活用は、財政法違反の目的外使用ではありませんか。総理の答弁を求めます。

 さて、安全で有効な治療薬とワクチンは、人々の命を守り、人類がパンデミックから抜け出すために決定的な役割を果たします。パンデミックへの対応で、緊急時の使用許可、薬事承認の制度は必要です。しかし、緊急時であっても、安全性、有効性がないがしろにされてはなりません。薬害の温床になるような制度であっては決してなりません。

 政府は、新たに設ける緊急承認の制度について、安全性については確認を行い、有効性については推定すると説明します。何をもって有効性が推定できるとするのでしょうか。

 二〇二〇年五月、安倍元総理が今月中の承認を目指したいと前のめりになったアビガンは、百三十九億円の予算を組み、二百万人分を備蓄しましたが、その後、新型コロナウイルス感染症に対する有効性を示すことができませんでした。

 岸田総理に伺います。

 時の総理が有効性が確認されていない個別の治療薬の薬事承認に口を出すなど、あってはならないことなのではありませんか。本法案により、時の権力者の意向で、有効性が確認されていない医薬品が承認されることは絶対ないと断言できますか。

 次に、本法案の緊急承認の制度では、例えば、アビガンの観察研究、臨床試験で示されたデータで有効性が推定されるものとなるのか、伺います。

 さらに、感染力を持つウイルスの量が有意に減少することは確認できたが、症状改善の効果はプラセボと比べて統計学的に有意な差は認められないようなケースは有効性が推定されるものとなるのか、伺います。

 安全性についてです。

 第三相試験の結果が出る前に確認できる安全性には限界があるのではありませんか。

 医薬品の安全性、有効性は、人種差、民族差がある場合があります。緊急承認の制度では、海外でしか治験が行われていない場合、日本人が使用した場合の安全性と有効性をどのように確認、推定するのでしょうか。

 期限内に改めて行う承認申請については、通常の承認申請と同様の第三相試験の成績の提出を原則とすべきであります。

 次に、発動の要件です。

 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのある疾病の蔓延その他の健康被害の拡大を防止するためという法案の規定のみでは、何が緊急かはどこまでも拡大されるおそれはありませんか。

 また、海外で許可された治療薬とワクチンがコロナの特例承認で使われております。これらと比べて効能、効果がはっきり劣るものは、緊急承認の対象となり得るのでしょうか。

 次に、市販後の安全対策について伺います。

 緊急承認した場合、使用を広げる中で、効果に欠けていたり、メリットを上回る重大な副作用が判明することがあり得ます。この場合、政府は、二年間の期限を待たずに速やかに承認を取り消すのでしょうか。

 かつて、スピード承認されたイレッサでは、多くの方が副作用、間質性肺炎で亡くなりました。有効性は第二相試験における腫瘍縮小率によって判断し、延命効果の証明が承認の条件とされました。ところが、第三相試験で有効性の証明ができなかったにもかかわらず、承認は取り消されませんでした。日本だけが、有効性のない患者にも使用を続けました。こうした薬害の歴史を絶対に繰り返さない、法的な担保はありますか。

 緊急承認する場合、その後の有効性や副作用、副反応等の徹底した情報収集と解析、監視の体制が極めて重要であります。

 特例承認した新型コロナウイルスのワクチンをめぐっては、接種後の死亡の九九%以上が情報不足により評価不能とされ、安全対策に生かされておりません。情報不足であっても因果関係が否定できないものは、安全対策に生かすべきであります。

 小さなシグナルも検出できるよう、米国のVSDのように、ワクチン接種の記録とその後の診療データを組み合わせて追跡調査できる仕組みを設けるべきではありませんか。

 また、市民自らが副反応、副作用を容易に報告できる仕組みも設けるべきであります。

 さらに、新型コロナワクチン接種後の重篤な症状の機序や治療法の研究を進めるべきであります。答弁を求めます。

 次に、健康被害の救済についてであります。

 緊急承認された医薬品は現行の救済制度の対象とするとしていますが、そもそも有効性等について推定であり、救済制度もそれに応じて支給要件を緩和すべきではありませんか。新型コロナワクチン接種後の死亡について、救済されたものはいまだありません。国には、積極勧奨した責任があります。根拠を持って因果関係を否定できるもの以外は、積極的に救済の対象にすべきであります。

 また、書類を集めるのにも大変な時間と労力がかかり、国に申請後も、審査に更に数か月かかります。仕事ができず、生活に窮する事態も生まれております。救済の思い切った迅速を図るべきではありませんか。

 以上を指摘し、質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員にお答えいたします。

 物価高騰への対応についてお尋ねがありました。

 ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするため、今月二十九日に、原油価格・物価高騰等総合緊急対策の策定を指示いたしました。

 その際、新たな財源措置を伴うものについては、まずは、一般予備費、コロナ予備費を活用した迅速な対応を優先してまいります。

 そして、コロナ予備費については、本予備費の趣旨に該当しているか否かなど、個別具体の施策の内容に基づいて判断されることになると考えております。

 今後、具体的な施策の検討を進め、四月末をめどに本対策の取りまとめを行ってまいります。

 緊急承認制度における有効性の考え方についてお尋ねがありました。

 今般創設する緊急承認制度は、安全性の確認を前提に、有効性が推定された段階で迅速に薬事承認を与える仕組みとしています。

 有効性の推定については、例えば、後期第二相試験の成績により、一定の有効性があると考えられる場合を想定しています。

 申請者から提出されたデータに基づき、専門家の意見も踏まえつつ、総合的に審査することとしており、個々のケースについて予断を持ってお答えすることは困難ですが、いずれにせよ、緊急承認制度も含め、薬事承認に当たっては、科学的なエビデンスに基づき、公平かつ公正に手続を行ってまいります。

 なお、お尋ねのアビガンは承認審査中であり、その取扱いについてはお答えすることを控えます。

 安全性の確認等についてお尋ねがありました。

 安全性については、通常の薬事承認と同等の水準で確認することとしており、第三相試験の結果が出る前であっても確認できるものとされています。

 また、日本人での臨床試験が実施されていない場合であっても、海外の臨床試験のデータや科学的な知見に基づき、人種差や地域差の懸念があっても高いベネフィットがあると推定できる場合には、日本人での有効性を推定でき、また、同様のデータ等から安全性が確認できるものとされています。

 期限内に改めて行う承認申請にあっては、原則として、通常の承認申請と同様に第三相試験の成績の提出が必要とされており、個々の品目ごとに適切に対応してまいります。

 緊急承認制度の適用についてお尋ねがありました。

 緊急承認制度は、緊急に使用する必要があり、他の医薬品での代替が困難な医薬品を制度の対象とすることとしています。緊急性については、感染者の急速な増加等の状況を踏まえ、当該医薬品を緊急に使用する必要があるかを勘案することとしており、具体的には、新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同等の疾病の蔓延状況を想定しています。

 また、個々の製品の承認については、安全性の確認を前提として、一定の有効性が必要であり、一定の有効性が推定されない限り、緊急承認の対象にはなりません。また、期限内に、通常の承認申請と同様に有効性を確認し承認することとしております。

 市販後の安全対策等についてお尋ねがありました。

 今般創設する緊急承認制度は、市販後の安全対策の中で重大な副作用が判明した場合等に、速やかに承認を取り消すことができる仕組みとしています。市販後は、製造販売業者による医薬品安全性監視計画の策定や、患者自らが医薬品の副作用やワクチンの副反応が疑われる事例を報告できる仕組みなどを活用し、しっかりと安全対策を行ってまいります。

 また、新型コロナワクチン接種後の死亡事例については、情報不足により評価不能とされた事例も含め、集団としての傾向の評価を行い、安全対策に活用しています。引き続き、新型コロナワクチン接種後の症状に対しては、治療法を含め、必要な研究を行ってまいります。

 さらに、予防接種の実施状況と副反応と疑われる症状の発現状況等を個人単位で連結し、効果的に報告、把握するシステムがないことが課題となっていると承知しており、予防接種の安全性等に関する調査をより的確に行うためのデータベースの整備に向けた具体的な検討を進めてまいります。

 健康被害の救済についてお尋ねがありました。

 緊急承認された医薬品については、通常承認と同水準で安全性の確認を行うことを前提としており、その健康被害に対しては、現行の医薬品副作用被害救済制度に基づく救済の対象とすることが適切と考えています。

 また、新型コロナワクチンによる健康被害については、予防接種健康被害救済制度により、国の審査会が因果関係を認定した場合に迅速に救済を行うこととしており、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も含め、救済の対象としています。

 さらに、一定の場合に診療録等の提出を不要とし、国の審査会に新たに新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会を設置するなど、救済の迅速化を図っています。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       外務大臣    林  芳正君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       農林水産大臣  金子原二郎君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       法務副大臣   津島  淳君

       厚生労働副大臣 佐藤 英道君


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