衆議院

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第18号 令和4年4月7日(木曜日)

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令和四年四月七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十三号

  令和四年四月七日

    午後一時開議

 第一 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)

 第二 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)

 第三 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)

 日程第二 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)

 日程第三 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)

 衆議院規則の一部を改正する規則案(議院運営委員長提出)

 衆議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 衆議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 常任委員会合同審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出)

 日程第二 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案、日程第二、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長上野賢一郎君。

    ―――――――――――――

 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案及び同報告書

 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔上野賢一郎君登壇〕

上野賢一郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、内閣提出の法律案の概要について申し上げます。

 本案は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するため、基本方針を策定するとともに、安全保障の確保に関する経済施策として、所要の制度を創設する等の措置を講ずるものであります。

 次に、足立康史君外二名提出の法律案の概要について申し上げます。

 本案は、経済安全保障に関する諸施策を実効的かつ総合的に推進するため、その基本原則及び配慮事項を定めるとともに、その推進のため必要な事項を定めるものであります。

 両法律案は、去る三月十七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌十八日小林国務大臣及び提出者足立康史君からそれぞれ趣旨の説明を聴取した後、二十三日から質疑に入りました。二十九日には経済産業委員会との連合審査会を開会するとともに、三十一日には参考人から意見を聴取しました。

 四月六日には、内閣提出の法律案に対し、立憲民主党・無所属の提案による修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、両法律案及び修正案を一括して質疑を行いました。同日、岸田内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を行い、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、両法律案及び修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、まず、足立康史君外二名提出の法律案につきましては、賛成少数をもって否決すべきものと決しました。次に、内閣提出の法律案につきましては、立憲民主党・無所属の提案による修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、内閣提出の法律案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 討論の通告があります。順次これを許します。塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表し、経済安全保障推進法案に対し、反対の討論を行います。(拍手)

 反対理由の第一は、科学技術の軍事研究化を推進し、学問の自由などを侵害するということです。

 政府が指定する特定重要技術の研究開発のために設けられる指定基金に想定されているのは、二千五百億円もの育成プログラムです。その研究成果は軍事技術として将来的に防衛省の判断で活用されることはあり得ると答えました。指定基金において必置とされている協議会は、政府から機微情報の共有など伴走支援が行われ、参加者に罰則つきでの守秘義務を課しています。これまで、研究開発において、このような罰則つきのやり方が設けられたことはありません。研究活動に大きな制約を持ち込むものです。

 東北大学名誉教授の井原聰参考人は、競争的研究費を乱発すれば基礎研究がおろそかになると指摘し、裾野の広い自発的な研究土壌でこそ人類の発展に寄与する学問が育つと訴えました。本案の官民技術協力は、これに反し、巨額の研究費で軍事転用可能なデュアルユース技術の強化を狙うものです。

 憲法九条に矛盾する特許出願非公開制度は、民生技術を軍事技術に吸収し戦争遂行に動員した、戦前の秘密特許制度の復活にほかなりません。外国出願を禁じた特定技術分野の発明は、アメリカに対してのみ、防衛特許協定を理由に除外されます。軍事特許を日米の軍事力強化に役立てる新たな仕組みとなりかねません。

 さらに、法案の先にセキュリティークリアランス、適性評価制度が検討されていることは重大です。政府の秘密保全だけでなく、研究者、民間企業も対象とした秘密保護法制の拡大につながり、プライバシー、学問の自由の侵害、労働者の不利益取扱いを含め、深刻な人権侵害が生じかねない問題であり、認められません。

 第二に、政府による企業への介入を強化する問題です。

 基幹インフラの事業者に対し、設備導入などの際、納品業者、委託業者などを事前に届出させ、政府が審査し、勧告、命令まで行うとしています。また、特定重要物資の供給事業者に対しても、取引先などを記載した安定供給のための計画を提出させます。このようなやり方に、経済界からも懸念の声が上がっています。この間、経済安保の名の下、警視庁が大川原化工機社長ら三人を不当逮捕、長期勾留した冤罪事件を起こしています。経済安保を大義名分として企業活動に対する恣意的な規制が拡大する懸念が拭えません。

 第三に、政官業の癒着の問題です。

 民間企業に対して、様々な規制とともに、安定供給確保支援法人基金助成などの支援策を行うとしています。現時点で五千億円ともされる、半導体大手、TSMCのように、特定企業への巨額支援が横行しかねません。

 また、本案は、重要な事項が百三十八か所も政省令に委ねられており、国会の関与は僅か二か所しかありません。政府への白紙委任と言えるものです。

 このことが、企業が政府とのパイプを得ようと特別な働きかけをする契機となり、藤井敏彦前経済安保法制準備室長の事件にもつながっています。天下りが横行することになります。政官業の癒着が避けられません。

 本案は、国家安全保障局が外交防衛政策と並びで経済政策を国家安全保障の一つの柱としてつかさどるものとなります。その経済政策には、住民監視、私権制限の土地利用規制法も位置づけられていることは看過できません。岸田総理は、年内策定予定の国家安全保障戦略に経済安全保障を位置づけると認めました。軍事、経済の両面で日本がアメリカの安保戦略に組み込まれるものとなることは明らかです。

 以上を申し述べ、反対討論を終わります。(拍手)

議長(細田博之君) 本庄知史君。

    〔本庄知史君登壇〕

本庄知史君 立憲民主党の本庄知史です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました内閣提出法案、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案について、その問題点も指摘をしつつ、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 まず冒頭、今なお続くロシアによるウクライナ侵略について、改めて、最大限の言葉で非難するとともに、戦争の犠牲となられた方々、一千万人を超える難民、避難民の方々に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 とりわけ、無辜の民間人の殺害は、重大な国際人道法違反であり、戦争犯罪です。キーウ郊外ブチャでの殺りく始め、ウクライナ各地で行われているロシア軍による無差別攻撃、無差別殺人等について、その真相究明と責任追及、戦争犯罪人への厳正な処罰が必要です。

 他方、ウクライナから我が国への避難民の方々については、私たち立憲民主党が本院に提出した法案の内容、例えば、戦争等避難者という在留資格によって就労活動を可能とすることなど、更なる支援の拡充が必要です。

 政府の一層の御尽力と党派を超えた国会の取組を強くお願い申し上げるとともに、一日も早い停戦、平和的解決に向けて、立憲民主党としてでき得る限りの努力と協力をお約束いたします。

 以上申し述べ、以下、討論に入ります。

 私たち立憲民主党は、昨年の衆議院総選挙において経済安全保障の確立を政権政策として掲げるなど、かねて経済安全保障の重要性と必要性を訴えてまいりました。

 今回の法案審議に当たっても、自由で開かれた経済、民間活力と経済成長を基本としつつ、いかに経済安全保障の実効性とのバランスを図っていくか、そういう観点から、丁寧に経済界や有識者の意見を聞きながら、論点を整理し、国会で問題点を指摘し、政府答弁で確認をしてまいりました。

 確かに、経済安全保障という新しい多岐にわたる概念を法制化することは容易な作業ではありません。その意味において、小林大臣を始めとする政府・与党関係者の御尽力には率直に敬意を表しています。

 他方、内閣提出法案の作成過程で明るみになった藤井敏彦前経済安全保障法制準備室長の一連の非違行為は、法案の根幹を揺るがしかねない重大な問題です。経済安保ビジネスともやゆされるように、本法律案が射程に置いている分野は、様々な利権や癒着が生じかねないものです。だからこそ、他の法律や制度以上に、政府には厳正、厳粛な姿勢が求められます。いまだ藤井氏の国会招致が実現していないことも含め、政府の真相究明、説明責任が十分に果たされていないこと、危機感の欠如、これは甚だ遺憾です。政府、そして与党の適切な判断と対応を改めて求めます。

 その上で、内閣提出法案の内容について申し述べます。

 委員会審議の中で私たちが指摘してきたとおり、本法律案には幾つもの問題点が残されています。

 例えば、法律の前提となる経済安全保障の定義が法文上明示されていないこと、法律全体に通底する基本理念がないこと、新設する四つの制度に関する重要事項が法律ではなく今後の閣議決定や政令、省令に委ねられていること、政府の規制措置が合理的に必要と認められる限度とされており、必要最小限としている外為法などと比べて広範であること、国会報告など事後的な検証の仕組みが不十分であること、そして、これらの結果、政府の権限や裁量が過大になるおそれがあることなどであります。

 立憲民主党が内閣委員会に提出した修正案は、こうした内閣提出法案の問題点を補完し、補強するものです。改めてその一部を御紹介申し上げたいと思います。

 第一に、法案全体に通ずる基本理念を定め、今後の基本方針や基本指針、政令、省令は基本理念にのっとり策定するものとします。この基本理念には、自由で開かれた経済と国家国民の安全確保の両立、事業者の自主性の尊重、公正な競争、事業者と国民に対する十分な説明、行政の肥大化を招かないこと、国際約束の誠実な履行などを掲げています。

 第二に、政府の運用を国会がコントロールするため、重要な政令や省令を制定、変更する場合に外部専門家の意見を聴取することを法律上明記するとともに、事業者への影響が大きい措置に当たっての要件を厳格化します。

 そして、第三に、政府の運用を事後的に検証するため、政府による国会への報告を義務づけます。

 立憲民主党の修正案は、国益、とりわけ国家国民の安全を経済面から確保することを旨とする経済安全保障の確立に大きく資するとともに、自由で開かれた経済をしっかりと守り抜くものであると確信をしております。残念ながら、衆議院において修正は成りませんでしたが、その大部分が附帯決議の中に盛り込まれたことは多といたします。

 国際情勢や社会経済構造が急激に変化する中、経済安全保障の確保は我が国にとって待ったなしの課題です。るる申し述べたとおり、内閣提出法案には懸念点、足らざる点がありますが、私たち立憲民主党の指摘や提案を含め、委員会審議の中で質疑と答弁を丁寧に積み上げてまいりました。これらの議論、そして附帯決議の内容を踏まえ、今後の参議院審議、法案成立後の運用において政府が適切に対応することを期待し、私たち立憲民主党は本法案に賛成することといたしました。

 なお、日本維新の会提出の法律案につきましては、これが内閣提出法案の対案と言えるかは別として、罰則の強化など、経済活動の自由を過度に阻害するおそれがあり、私たちの基本理念とは相反することから、反対をいたします。

 戦後、内閣総理大臣となった石橋湛山氏は、戦前の帝国主義全盛の時代にあって小日本主義を掲げ、植民地主義や保護主義ではなく、国際協調と自由貿易こそが我が国を発展せしめると訴えました。不幸にして、我が国はその逆の道をたどり、無謀な戦争に突入するに至りましたが、戦後は、その教訓と反省を踏まえ、自由貿易体制と日米同盟を両輪として、七十年以上の長きにわたって平和と繁栄を築いてきました。

 経済と安全保障は、時に一体であり、時に相反し、そのバランスを図ることは、本法律案にも内在する、いわば永遠の課題とも言えるものです。覇権主義や狭いナショナリズムが拡大し、不安定、不透明な現代の国際社会にあって、それでもなお、自由で開かれた経済こそが我が国繁栄の礎であり、それを守り抜くことが最大の安全保障でもある、このことを最後に申し上げて、私の討論を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 青柳仁士君。

    〔青柳仁士君登壇〕

青柳仁士君 日本維新の会の青柳仁士です。

 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました、政府提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び日本維新の会提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案について、それぞれ賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 経済安全保障について、我が党は、一月二十七日に行った大臣提言に始まり、三月十七日の国会審議入り以降、本日この場に至るまで、議員立法を提出して対案を示しつつ、本会議と内閣委員会を通じて質疑を重ねてまいりました。

 その中では、国会において充実した審議を行おうという基本姿勢を貫く小林大臣の誠実な対応と答弁により、本法案が必ずしも明らかにしていない本質的な論点についても一定程度生産的な議論を行うことができました。また、新たな国際経済秩序の形成を見越した経済安全保障の戦略的検討の必要性など、幾つかの重要な点について見解の一致が見られたことは、大変意義深かったと考えています。

 しかしながら、そうした協議の結果が実際の法案の条文に反映されることはありませんでした。我が党として客観的に見て合理性の高い修正案を提示し、それらについて質疑を通して政府側から説得力のある反論はなかったにもかかわらず、一文字たりとも条文修正が行われなかったことは、数の力を背景にした政府・与党による国権の最高機関である国会の軽視であると言わざるを得ません。

 そもそも、過去五年間の安倍政権及び菅政権では、およそ三十本の法案が国会審議を経て条文修正されました。しかしながら、岸田政権は、昨年の発足以来、ただの一度も国会において法案の条文修正を行ったことがありません。総理は聞く力を標榜していますが、国会においてはかつてなく異なる意見に耳をかさない政権になっていることについて、改めてこの場で強調させていただきたいと思います。

 我が党は、本法案に関するこれまでの一連の過程を通じて、昨今の国際情勢を踏まえれば、日本にとって経済安全保障法制を直ちに整備する必要性は極めて高いということを一貫して主張し続けてきました。

 ロシアのウクライナ侵攻でのハイブリッド戦で私たちが今目の当たりにしているように、経済や情報など非軍事領域へ戦争と安全保障の裾野は拡大してきています。各国は経済安全保障に関する法制度や体制の整備を急速に進めてきており、我が国も早急に体制構築を進めていかなければなりません。

 本法案に含まれる経済安全保障の分野は、原料、物資のサプライチェーン、基幹インフラの確保、官民の技術協力及び特許の非公開という四つの施策のみであり、最低限の防御と言える程度にとどまっていますが、それでも経済安全保障の統合的な実行体制のない現状に比べれば極めて意義のある前進であると評価しています。

 しかしながら、次に述べる三つの点で、本法案に疑問なしとはしません。

 第一は、本法案において経済安全保障の定義がなされていないことです。

 経済安全保障とは何かという定義がなければ、我が国にとっては新しい概念となる経済安全保障について、従来の安全保障とどのように融合させていくべきであるか、精緻な議論を行うことが困難です。

 また、経済安全保障の範囲を示さなければ、規制や保護をする物資、技術、産業等の範囲が不明確になり、本法案で示す四つの施策がどこまでを含んでいるのか、今後、何を拡充し、どの範囲まで広げて対応すべきなのかが明らかになりません。経済安全保障には国民の自由な経済活動を規制する側面があることを踏まえれば、その範囲を国民にあらかじめ明確にしておかなければ、経済活動は萎縮し、ひいては我が国の経済成長に悪影響を及ぼしかねないことも問題です。

 こうした視点を踏まえ、年内に予定されている国家安全保障戦略等の防衛三文書改定に係る議論等を通じて経済安全保障の定義を明らかにしていくことが重要であると考えます。

 第二は、本法案は実効性の面で深刻な懸念があるということです。

 特に、サプライチェーンの強靱化に関し、本法案第四十八条が定める、特定重要物資を見極めるための一般事業者の報告、資料の提出について、努力義務にとどめ、罰則を定めていないことは、本法案の実効性を著しく損なっていると考えます。

 我が党は、あまねく事業者に一律に厳しい罰則をかけることを是としているわけではありません。サプライチェーンの実態を知るには、民間企業による自発的な協力が不可欠であることも理解しています。

 しかしながら、サプライチェーンの全体像に関する一般的な調査や協力的な事業者を対象とした情報収集であれば、改めて法律を成立させる必要はありません。政府がふだん行っているシンクタンク等への外注調査で十分に対応が可能です。

 本法案がなぜ必要かといえば、経済安全保障上懸念される活動を意図的に行っているような事業者からも情報を引き出すことが安全保障の観点から不可欠であるためです。こうした事業者が虚偽の報告や応諾拒否に対する罰則なしで自発的に政府に情報を提供することはとても考えられません。

 サプライチェーンの実相が把握できなければ、経済安全保障は不完全なものとなり、我が国の国民の生命と財産を危険にさらすことになります。実効性の強化については、本法案が成立した後であっても、引き続き検討を続けていくべきと考えます。

 第三は、インテリジェンスの問題です。

 本法案の適切な施行に当たり、特に戦略物資の見極めの際などには、政府の持つインテリジェンスが成否を分ける鍵となります。さきの半導体における失敗を見ても、我が国のインテリジェンスは他国の比較対象とはならないほどに脆弱であり、抜本的に見直さなければなりません。

 政府・与党からは、政策部門に関する定員を約二百五十名、経済インテリジェンスに関する情報コミュニティーの定員を約百三十名増やすとの説明がありましたが、ただ人を増やしても意味がありません。何の能力を持つ人材がどのような役割を持って何を達成するために動くのか、それが安全保障にどのようにつながるのか、戦略的かつ実効性の高い体制を考案し、構築していかなければなりません。

 日本維新の会は、政府案とは別に、独自に法案を提出しました。その中では、経済成長に配慮した施策の実行、新たな国際経済秩序形成の促進、客観的な指標に基づく評価と選定過程での公平性の確保、罰則を含めた実効性の担保といった、政府案では不十分な部分を含めた必要な措置を定めています。経済成長に配慮しつつ、戦略的に必要最小限の対象を絞り込むと同時に、選定された対象については、罰則の措置を含め、実効性を担保して進めていくという、めり張りのある内容になっています。

 政府案の足らざる点を明確にし、反論とともに対案をぶつけていく、是々非々の提案型政党という日本維新の会の基本姿勢をはっきりと示したものです。政府においても、この維新案を参考としつつ、今後の経済安全保障政策を進めていただければと考えます。

 経済安全保障は、日々刻々と変化する国際情勢や技術革新に即時に対応していかなければなりません。本法案は、経済安全保障の一部の施策を定めるものにとどまらず、国民の生命財産を守るという本来の目的を達するためのものでなければなりません。そのための実効性を担保するためにも、三年ごとといわず、絶え間ない見直しを行うことを求め、両法案の賛成討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 浅野哲君。

    〔浅野哲君登壇〕

浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の経済安全保障推進法案に対し、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、この度のウクライナ・キーウ近郊の町ブチャにおいて多数の民間人が虐殺されたことに、私は、強い憤りを禁じ得ません。ロシアによるウクライナへの侵略行為に対し、我が国はこれまで毅然とした態度で臨んできておりますが、今回の事件はジェノサイドの可能性が指摘されるなど、事態はより深刻化しています。一方、日本は、ジェノサイド犯罪を認定するための法整備がされておらず、ジェノサイド条約を批准できておりません。日本政府には、国際社会と協調して、ロシアに対し即時の作戦中止と撤退に向けた圧力をかけ続けていくこととともに、ジェノサイド条約の批准に向けた国内環境整備を早急に進めることを求め、討論に入ります。

 今回、内閣委員会で審査を行った経済安全保障推進法案は、昨今の国際情勢の複雑化などを背景として、我が国のサプライチェーンへの支援強化、基幹インフラに関する事前審査制度の創設、官民連携による重要技術の開発促進、特許出願の非公開制度の創設という四つの施策から構成されていました。

 これに対し、私たちは、委員会の中で、経済インテリジェンス機能の強化、重要物資、重要設備、重要技術などの選定に対する公平性、透明性の確保、サプライチェーン調査の実効性の確保、重要技術開発財源の継続的確保などを求めてまいりました。

 経済インテリジェンス機能の強化については、小林大臣より、令和五年度に設立を目指すシンクタンク組織について、海外情勢、技術動向の調査分析機能、各種調査機関同士をつなぐハブ機能、人材育成機能を持つ組織とすることや、段階的にこの組織を拡大させていく方針を確認いたしました。

 また、重要物資、重要設備、重要技術などの選定に対する公平性、透明性の確保については、小林大臣より、産業界やアカデミアも対象に含める形で、国会での質疑内容も踏まえながら御対応いただけることを確認させていただきました。

 さらに、サプライチェーン調査の実効性の確保については、岸田総理より、私どもが提案してきた、分野と期間を限定した調査手法について、アメリカで行われた百日間レビューなども参考にしながら実効的な調査方法を検討していくことを、そして、重要技術開発財源の継続的確保に関しては、特定重要技術開発のための二千五百億円の指定基金について必要な予算を確保し続けていくとの総理方針、総理発言を確認することができました。

 以上に述べた点などを総合的に勘案し、国民民主党・無所属クラブは本法案に賛成することとしたものであります。

 一方、本法案においては、具体的な事項のほとんどが政省令で今後定められることになっており、その具体化に当たっては、有識者はもちろんのこと、教育界や産業界に対しても政府から積極的に意見聴取を行い、具体的内容の予見可能性を高め、幅広い合意形成が図られるよう、十分な配慮を求めます。

 また、本法案には、我が国の経済安全保障を確保する上で重要な幾つかの観点がまだ含まれていないという課題もあります。具体的には、国際共同研究などを円滑に行うために、情報を取り扱う者の適性について認証を行うためのセキュリティークリアランス制度の整備や、人権問題に起因した経済活動上のリスクに対処するための人権デューデリジェンスの観点です。これらの課題についても政府内で検討を重ねられることを求めて、私の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

 ただいまから十分後に採決いたしますので、しばらくお待ちください。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一、足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第二、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長関芳弘君。

    ―――――――――――――

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔関芳弘君登壇〕

関芳弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国における脱炭素社会の実現に向けた対策の強化を図るため、温室効果ガスの排出の量の削減等を行う事業活動に対し資金供給等の支援を行うことを目的とする株式会社脱炭素化支援機構に関し、その設立、機関、業務の範囲等を定めるとともに、都道府県及び市町村が温室効果ガスの排出の量の削減等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するための費用について、国が必要な財政上の措置等を講ずる努力義務を定めるものであります。

 本案は、去る三月二十四日本委員会に付託され、翌二十五日山口環境大臣から趣旨の説明を聴取し、二十九日から質疑に入り、四月一日参考人から意見を聴取しました。

 五日、立憲民主党・無所属及び国民民主党・無所属クラブより修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。

 次いで、修正案について内閣の意見を聴取した後、原案及び修正案について採決を行った結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 旅券法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、旅券法の一部を改正する法律案、日程第五、東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長城内実君。

    ―――――――――――――

 旅券法の一部を改正する法律案及び同報告書

 東日本大震災の被災者に係る一般旅券の発給の特例に関する法律を廃止する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔城内実君登壇〕

城内実君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、旅券法改正案は、旅券の発給申請手続等の電子化に係る関連規定の整備、旅券の査証欄の増補の廃止、発行後六か月以内に受領されず、失効した一般旅券の発行経費を徴収するための規定の整備、大規模な災害の被災者に係る手数料の減免制度の創設等の措置を講ずるものであります。

 次に、震災特例旅券法廃止法案は、東日本大震災から十年が経過し、震災特例旅券の発給申請が行われることは想定されなくなったため、震災特例旅券法を廃止するものであります。

 両案は、去る三月二十九日外務委員会に付託され、翌三十日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。昨四月六日に質疑を行い、質疑終局後、順次採決を行いました結果、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、旅券法改正案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

山田賢司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、衆議院規則の一部を改正する規則案、衆議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案、衆議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案及び常任委員会合同審査会規程の一部を改正する規程案の四案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 衆議院規則の一部を改正する規則案(議院運営委員長提出)

 衆議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 衆議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 常任委員会合同審査会規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

議長(細田博之君) 衆議院規則の一部を改正する規則案、衆議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案、衆議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案、常任委員会合同審査会規程の一部を改正する規程案、右四案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 衆議院規則の一部を改正する規則案

 衆議院憲法審査会規程の一部を改正する規程案

 衆議院情報監視審査会規程の一部を改正する規程案

 常任委員会合同審査会規程の一部を改正する規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました各案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 今回の改正は、経費の節減及び議員活動の利便性の向上、情報提供の充実等に資するため、本会議及び委員会等の会議録について電磁的記録の提供その他の適当な方法により各議員に提供することができるよう関係の規則及び規程を改めるものであります。

 さらに、衆議院規則の改正については、各議員への官報の配付の取りやめに関する改正も併せて行うものであります。

 なお、施行日は、いずれも第二百九回国会の召集の日であります。

 各案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出をいたしました。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 四案を一括して採決いたします。

 四案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、四案とも可決いたしました。

     ――――◇―――――

 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、電波法及び放送法の一部を改正する法律案及び中司宏君外二名提出、情報通信行政の改革の推進に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。総務大臣金子恭之君。

    〔国務大臣金子恭之君登壇〕

国務大臣(金子恭之君) 電波法及び放送法の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 電波の公平かつ能率的な利用を促進するため、電波監理審議会の機能強化、携帯電話などの特定基地局の開設指針の制定に関する制度の整備、電波利用料制度の見直しなどを行うほか、近年の放送を取り巻く環境の変化などを踏まえ、基幹放送の業務に係る認定申請書などの記載事項に外国人などが占める議決権の割合などを追加し、その変更を届出義務の対象に追加するなど情報通信分野の外資規制の見直しを行うとともに、日本放送協会の受信料の適正かつ公平な負担を図るための還元目的積立金の制度を整備するなどの措置を講ずる必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、電波監理審議会の機能強化として、電波の有効利用の評価は、これまで総務大臣が電波の利用状況調査の結果に基づき行ってきたところ、技術の進展などに対応した、より適切な評価を行うため、広い経験と知識を有する委員から構成される電波監理審議会が行うこととしております。

 第二に、携帯電話などの特定基地局の開設指針の制定に関する制度の整備として、既に開設されている電気通信業務用基地局が現に使用している周波数について、その周波数を使用する特定基地局の開設指針の制定をすべきことを希望する者は、その旨を総務大臣に申し出ることができる制度を創設するとともに、その開設指針は、総務大臣が、申出に係る開設指針の制定が必要である旨を決定したとき、電波の有効利用の評価の結果が一定の基準を満たしていないと認めるときなどに制定することとしております。また、携帯電話などの特定基地局の開設指針の記載事項として、電波の公平な利用の確保に関する事項を追加するとともに、当該特定基地局に係る認定開設者は、認定計画に記載した特定基地局の無線設備の設置場所以外の場所においても、当該特定基地局の開設に努めなければならないこととしております。

 第三に、令和四年度から令和六年度までの電波利用共益費用などの見込みを勘案した電波利用料の料額の改定を行うとともに、電波利用料の使途として、研究開発のための補助金の交付を追加することとしております。

 第四に、情報通信分野の外資規制を見直すこととし、基幹放送の業務に係る認定申請書、基幹放送局の免許申請書の添付書類などの記載事項として、外国人などが占める議決権の割合などを追加するとともに、当該事項の変更を届出義務の対象に追加するほか、外資規制に違反した場合にその事情を考慮して認定基幹放送事業者の認定などの取消しを一定期間猶予できる措置について、所要の制度の見直しを行うこととしております。

 第五に、日本放送協会の受信料の適正かつ公平な負担を図るための制度の整備として、日本放送協会は、毎事業年度の損益計算において生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額の一定額を還元目的積立金として積み立てるとともに、積み立てた額は受信料の額の引下げの原資に充てなければならないこととするほか、専ら日本放送協会の業務に密接に関連する政令で定める事業を行う者を子会社として保有することを目的とする関連事業持ち株会社への日本放送協会の出資に関する制度及び受信契約の締結義務の履行を遅滞した者から日本放送協会が徴収することができる割増金の額に関する制度を整備することとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしておりますが、一部の規定を除き、情報通信分野の外資規制の見直しに関する規定、還元目的積立金に関する規定などは、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 提出者中司宏君。

    〔中司宏君登壇〕

中司宏君 日本維新の会の中司宏です。

 ただいま議題となりました情報通信行政の改革の推進に関する法律案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 近年の情報通信分野における急速な技術革新は、通信と放送の融合ともいうべき時代をもたらし、これまであった事業者間の垣根を取り払うとともに、既存の事業制度の抜本的な再構築を迫っております。

 このような変化に対応して、利用者のニーズに応じた多様なサービスが提供されるよう、有限希少な資源である電波の有効利用を促進するため、また、情報通信行政の運営の透明性及び公正性を確保するため、スピード感を持って時代に合った制度に変えていくことが喫緊の課題となっております。

 これらの課題に適切に対処するに当たって、その基本理念等を明らかにすることでその方向性を示し、情報通信行政の改革を迅速かつ着実に推進するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容を御説明申し上げます。

 この法律案は、情報通信行政の改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、情報通信行政の改革を迅速かつ着実に推進することを目的としております。

 その上で、まず、基本理念として、情報通信分野において、事業者間の公正な競争の促進等を通じた事業活動の活性化を図るとともに、国民の利益の増進及び行政に対する国民の信頼の確保に資することを旨として行わなければならないことを定めています。

 次に、情報通信行政の改革の基本方針として、第一に、電波の有効利用に資するための、同一の周波数の電波を共用することができる仕組み、いわゆるダイナミック周波数共用の一層の活用の促進、第二に、透明性の確保に資するための、無線局の免許について競争を経て申請を行う制度、いわゆる周波数オークションの導入、第三に、新規参入の促進に資するための、二次取引による事業の実施の制限の緩和、第四に、電波の集中の排除に資するための、多様な主体による基幹放送の業務の健全かつ効率的な運営の促進、第五に、公正性の確保に資するための、情報通信に係る事業の規制に関する事務をつかさどる独立行政委員会の設置について定めています。

 最後に、政府は、基本方針に基づく情報通信行政の改革に関する施策を実施するため、法制上の措置その他必要な措置を講じなければならないこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容でございます。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鈴木庸介君。

    〔鈴木庸介君登壇〕

鈴木庸介君 立憲民主党の鈴木庸介です。

 私は、ただいま議題となりました電波法及び放送法の一部を改正する法律案に対し、立憲民主党・無所属を代表し、関係閣僚に質問をいたします。(拍手)

 三月八日未明、国際放送NHKワールドJAPANの英語テレビ放送がロシア国内での配信が停止され、大きな衝撃を受けました。インターネット同時配信や、ロシア語や英語によるラジオ国際放送などについては、引き続き、ロシア国内で視聴できるとのことです。三月十四日から、新たにウクライナ語での対応も始まりました。在外邦人や避難民の方々への情報提供に大きな役割を果たしている国際放送の御尽力に、心から敬意と感謝を申し上げます。

 私は、学生時代に、アフガニスタン、ルワンダ、ボスニアなど紛争地を巡り、世界の理不尽で残酷な現実を目の当たりにしました。無数の亡きがら、絶望が蔓延する社会、そして極度に悪化した治安など、戦争の残酷な現実を前に無力な人々の姿がありました。その経験が政治家を志した原点であるだけに、ついこの間まで平穏な日常を過ごしていたウクライナの善良な人々が突如として戦火に見舞われ、その苦しみが今も続いている現実にやりきれない思いがいたします。

 民間人に対する虐殺、無抵抗の女性や子供への容赦ない暴力など、戦争犯罪行為の疑いが次々に明らかになっています。何よりも、一日も早い停戦の実現、ロシア軍の撤退が必要です。

 平和憲法を持つ日本として、ロシアとウクライナの仲介の汗をかくことはできないのでしょうか。松野官房長官の御所見を伺います。

 立憲民主党は、あらゆる戦争などで避難する外国人に、入国当初から就労が可能で、一年間滞在できる在留資格を付与することなどとした法案を国会に提出いたしました。

 ウクライナの人たちに安心して日本社会の一員として生活してもらうとともに、シリアやアフガニスタンなど世界中の戦争避難民に対する支援を拡大したいと考えていますが、松野長官、いかがでしょうか。

 政府が保有の是非を検討する敵基地攻撃能力に関し、基地に限定する必要はない、向こうの中枢を攻撃することも含むべきだと主張する政治家もいます。中枢攻撃とは、相手国の指揮統制系統の中枢をたたく戦争遂行能力であり、相手国をせん滅するような打撃力イコール反撃能力にほかなりません。首都攻撃であるならば、多くの民間人にも犠牲を伴います。戦争放棄をうたい、海外での武力行使を禁止した憲法九条に真っ向から反するのは明白であり、専守防衛や戦時国際法にも違反する暴論と考えます。

 松野官房長官、中枢攻撃についての政府としての見解を伺います。

 本題に入ります。

 私は、NHK出身です。NHKが、今後とも、公共放送としての責任と自覚を持って、営利を目的とせず、政府から独立して、公共の福祉と文化の向上に寄与するとの役割を果たしていくことを願う立場から、今回の電波法、放送法改正案について、以下、金子総務大臣に質問をさせていただきます。

 まず、本改正案によって導入される関連事業持ち株会社は、中間持ち株会社で、有識者による公共放送の在り方に関する検討分科会においてNHKが提示した要望を反映して法案化されたものであります。

 NHKが要望する中間持ち株会社を認めることとした理由は何でしょうか。

 NHKは、本年一月、NHKサービスセンター、NHKインターナショナル、NHKエンジニアリングシステム、NHK研修センターの四つの一般財団法人と公益財団法人NHK交響楽団の合わせて五つの財団法人を来年度に統合する方向にあることを公表しました。中間持ち株会社の議論などとともに、グループ一体改革の動きが今後更に加速していく気配があります。

 その際、職員の雇用や処遇を損なわないように進めるべきではないかと考えますが、政府の見解を伺います。

 次に、割増金制度について伺います。

 現行でも日本放送協会受信規約第十二条で割増金が定められており、本改正案の成立により法定化され、不正な手段により受信料の支払いを免れた場合又は正当な理由がなくて第二号に規定する期限までに受信契約の申込みをしなかった場合に割増金が適用されることとなります。

 しかし、本改正案では、不正な手段や正当な理由の定義がなく、総務省令で定められる予定の割増金の基準も明示されておらず、現時点では割増金が徴収され得る具体的要件が明確になっておりません。また、現行の受信規約に基づく割増金制度が適用された事例はなく、本改正案においても割増金に税や社会保険料のように特別な地位や強制力を持たせておらず、受信契約に基づく受信料の支払いをする基本的な仕組みに変更はないように思われます。

 今回、割増金制度をあえて法定化する理由と、放送法で規定することが受信料の公平負担の実現という観点で実効性があるのか、確認をいたします。

 我々立憲民主党は、地域に根差し、地域社会、文化の活性化に貢献しているローカル局を維持するため、NHKとの協力体制の構築を進めることを求めております。私も、本年二月三日の衆議院総務委員会において、剰余金を活用して、民放を含む全国の地域放送を維持する経費に活用することも検討するべきではないかと申し上げました。

 本改正案では、NHKに対して、ほかの放送事業者が字幕放送、解説放送をできる限り多く放送するように努める責務や放送対象地域において難視聴解消の責務にのっとり講ずる措置の円滑な実施に協力する努力義務を課するとしています。一定の評価をしたいと思います。

 その一方、本改正案のNHKの協力は努力義務であり、その内容は、電波不感地域を主とした難視聴解消やNHKが保有する技術を利用した字幕放送、解説放送の実施を目的とした限定的な協力にとどまっているものと考えられます。

 地方の民間放送事業者に対する支援を強化することについて、政府の見解をお聞かせください。

 本改正案により、外資規制を遵守するために報告の機会を設ける等の措置を整備したことにより、外資規制違反の防止や認識に対して一定の改善効果を期待することができると考えられます。

 しかし、本改正案において外資規制に係る規定の見直しがなされる契機となった東北新社とフジ・メディア・ホールディングスにおいて判明した外資規制違反の事案は、いずれも当該事業者の集計上の誤りが大きな原因の一つでありました。本改正案の対策は、報告書等の提出を求めることを含めて、事業者の認識を喚起する対策に依拠しており、提出書類やその添付書類で発見できない事業者の過誤を総務省が指摘、若しくは外資規制違反を把握する手段や体制が明確になっておりません。

 そこで、事業者が提出する申請書や報告等に依拠することなく外資規制違反を把握するための施策は何か、また、事業者の過誤を見逃さないための体制の強化策について明らかにしてください。

 次に、電波監理審議会についてお尋ねをいたします。

 電波監理審議会が二〇二一年中に審議した事項は二十七件ですが、同審議会の委員五名のうち、電波に係る技術的知見を持った者は一名しかおらず、その委員すら、ほかの本務の傍らに執務している状況です。このように、技術的に十分な審議が可能な体制であるとは言い難い状況にあります。また、委員の人選についても、慣例により委員構成が固定化しており、本改正案においても、同審議会において技術的知見のある委員の増強は図られておりません。

 現状の同審議会の審議体制が不透明な中、本改正案では機能強化が図られますが、現行の同審議会の委員の人選の基準はどうなっているのか、本改正案及び総務省令で同審議会の体制をどのように強化していくつもりなのか、金子大臣に確認をいたします。

 我々立憲民主党は、通信・放送行政を内閣の構成員の一人である総務大臣の率いる総務省から切り離し、放送免許の付与、更新や番組規制などを行う規制監督部門を独立性の高い独立行政委員会として設置する通信・放送委員会、いわゆる日本版FCCに移し、国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消するとともに、放送に対する国の恣意的な介入の排除を進めるべきことを提案しています。世界では、米連邦通信委員会を始め、政府から独立した機関による規制監督が主流です。通信・放送行政の独立は、言論、報道、放送の三つの自由を確保する手段になると考えます。

 通信・放送行政における推進と規制監督の分離について、現時点で政府としてどのようにお考えなのか、金子大臣の見解をお願いいたします。

 また、国民共有の財産である電波は有限希少な資源であります。電波の割当てに当たっては、透明性の高い制度であること、割当てを希望する者に対して公平な機会があること、また割当てが公正であることが求められています。

 本改正案によって十分に透明、公平、公正なものとなっていると考えているのか、また、更なる改善の必要性について考えているのか、金子大臣の見解を求めます。

 電波利用料についてお尋ねいたします。

 不法電波の監視や無線局の管理に要する電波利用共益費用という位置づけで制度化された電波利用料の歳出総額は、一九九三年の制度創設時には約七十五億円でありましたが、ほぼ右肩上がりで増加し続け、二〇二二年度には約七百五十億円と十倍になっています。用途も拡大されてきています。有識者によるデジタル変革時代の電波政策懇談会は、約七百五十億円の総額規模は据置きとされました。

 政府としても、現行規模を妥当とお考えでしょうか。理由も含めて明らかにしてください。

 また、ビヨンド5Gに係る研究開発に対する補助金について、今回、総務大臣による電波利用料を原資とした補助金交付制度を創設することとなりましたが、一般会計予算からの拠出だけではなく電波利用料を原資とすることを可能とした理由や、NICTの助成金との違いについてお答えください。

 そして、電波利用料制度について、原点に立ち戻り、真の共益的費用として縮小を図るか、電波利用料の位置づけを転換する必要があると考えていくのか、政府としての見解をお願いいたします。

 最後に、今回の改正案には、去年提出されながら廃案となった内容が含まれています。廃案となったのは、放送事業会社、東北新社による総務省幹部らへの接待問題が大きな原因と言わざるを得ません。

 外資規制や携帯電話料金問題などで総務省幹部らへの接待が常態化していた実態が明らかになりましたが、市民団体の刑事告発に対し、東京地検特捜部は、先月二十九日、収賄や贈賄などの疑いで告発されていた十二人をいずれも嫌疑不十分又は嫌疑なしとして不起訴処分としました。

 しかし、これにより事件の幕引きとすることは許されません。総務省の情報通信検証委員会の報告書でも、外資規制違反を意図的に見逃す等、行政がゆがめられた可能性があることが指摘され、会食等に関する資料は必ずしも十分でなかったとされています。

 更なる追加調査が必要ではないかと思われますが、金子大臣、いかがでしょうか。

 総務省の問題の解明と通信・放送行政の信頼回復に向けた決意について答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣金子恭之君登壇〕

国務大臣(金子恭之君) 鈴木議員からの御質問にお答え申し上げます。

 まず、中間持ち株会社制度の導入の理由とNHKグループの一体改革について御質問いただきました。

 中間持ち株会社によるNHKグループの経営管理を認めることとしたのは、グループ内での重複業務の排除などにより、グループ全体の業務を合理化、効率化し、NHK本体の支出抑制につなげるためであります。

 NHKが策定した中期経営計画においても、グループ全体の業務の合理化、効率化の方針が示されておりますが、その際には、職員の雇用や処遇についてもNHKにおいて適切に対応していただきたいと考えております。

 次に、割増金制度を法定化する理由とその実効性について御質問いただきました。

 受信料は、公共放送を支えるため、広く国民・視聴者に公平に御負担いただくものでありますが、現状、受信設備を設置した方のうち、約二割の方が受信料を支払っておらず、受信料を支払っている方との間で負担の不公平が生じております。

 このため、本法案では、受信料の負担の公平性の確保に向けて、他の立法例も参考にしながら、割増金の制度を設けることとしました。

 割増金を法律上の制度として設けた上で、NHKにおいて国民・視聴者の方に受信料制度について丁寧に説明していただくことで、実効性が確保されていくものと考えております。

 次に、ローカル局に対する支援の強化について御質問いただきました。

 ローカル局は、地域に密着した情報や災害情報などを提供する重要な社会的役割を担っておりますが、動画配信サービスの拡大など放送を取り巻く環境は大きく変化しており、経営環境は厳しくなってきていると認識しております。

 こうした認識の下、本法案においては、ローカル局が難視聴解消などの取組を行うに当たり、NHKがこれに協力する努力義務を定めております。

 さらに、総務省では、有識者検討会を開催し、ローカル局に関する課題も含め、放送の将来像と制度の在り方について検討しているところであり、その結果を踏まえて、必要な対応を行ってまいります。

 次に、外資規制の適合性の確保や審査体制の強化について御質問いただきました。

 外資規制の適合性を確保するため、放送事業者が申請書類を提出する際に株主名簿などの客観性を有する証拠書類も併せて添付することを義務づける制度改正を行っており、これにより申請内容が正しいことを確認してまいります。

 また、今月から外資規制審査官を新たに設置するなど、審査体制を強化しており、外資規制の実効性の確保にしっかりと取り組んでまいります。

 次に、電波監理審査会委員の人選と体制強化について御質問いただきました。

 同審議会の委員については、周波数の割当てに関する指針や計画に関する調査審議を行うほか、行政処分の審査請求を処理するため、学界、経済界、法曹界、消費者関係の各分野から技術や法制度などに精通した専門家を電波法に基づき任命しています。

 本法案では、電波の有効利用の評価を同審議会が新たに行うこととしており、電波に関する技術や需要の動向など幅広い観点から検討を行う必要があるため、同審議会の下に専門の部会や特別委員を置くことができるよう、体制の強化を図るものであります。

 次に、通信・放送行政における推進と規制監督の分離について御質問いただきました。

 我が国は議院内閣制を採用しており、内閣の一員である各省大臣が責任を持って行政を執行することが原則であると認識しています。

 また、通信・放送を含む情報通信分野は、技術革新や国際競争が激しく、国家戦略的対応が求められる分野です。

 したがって、機動的、総合的な判断が可能となるよう、内閣の構成員である大臣の責任の下において、規制と振興の両輪で迅速に取り組んでいく体制が適当と考えています。

 次に、周波数の割当ての透明性等について御質問いただきました。

 総務省では、従前より、携帯電話などの周波数の割当てに当たり、パブリックコメントや電波監理審議会の諮問、答申手続を踏まえているほか、定量的な評価が可能となる基準の策定、採点基準や配点の事前公表など、透明性、公平性、客観性の確保に努めております。

 さらに、本法案では、周波数の再割当てに当たり、事前に既存の事業者にも意見を述べる機会を与えることを総務大臣に義務づけることとしています。

 これにより、透明かつ公平で客観的な周波数の割当てに向けてしっかりと取り組んでまいります。

 次に、電波利用料の規模や使途、その位置づけについて御質問いただきました。

 電波利用料の規模については、新たにビヨンド5Gなどの研究開発の補助金の交付を新たな使途として追加する一方、現行の取組については歳出抑制に努めてまいります。その結果、現行の規模を維持することが妥当と考えております。

 国際競争の激しいビヨンド5G等の分野については、集中的に投資を行う必要があるため、NICTの助成金と適切に役割分担しながら、電波利用料財源による研究開発を進めることといたしました。

 これにより、おおむね五年以内に開発すべき電波の有効利用に資する技術の研究に集中的に取り組むことができるようになります。

 また、共益費としての電波利用料の性格は今後も維持しつつ、適正な制度運用に努めてまいります。

 最後に、総務省幹部による接待問題への対応に関して御質問いただきました。

 情報通信検証委員会の最終報告書では、事業者との会食等により行政がゆがめられたのではないかとの疑念について、そのような事実は確認されませんでしたが、重要な政策決定等については適切に記録を残し透明性を図ることなど、五つの指針に基づいた信頼回復方策を総務省が実行するよう、御指摘をいただきました。

 これを受け、公文書管理の徹底など、具体的な取組に着手しています。

 この問題について追加の調査を行うことは考えておりませんが、総務省として報告書の内容を正面から重く受け止め、国民の信頼回復を図るため、全力で取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 鈴木議員にお答えをいたします。

 ウクライナの停戦仲介と避難民支援についてお尋ねがありました。

 我が国として、ロシア軍の行為によりウクライナにおいて多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止め、強い衝撃を受けています。こうした無辜の民間人の殺害は、重大な国際人道法違反であり、断じて許されず、厳しく非難します。

 なお、ウクライナとロシアとの間で停戦交渉が断続的に行われていますが、その先行きは不透明であり、予断を許しません。このような状況においては、ロシアが国際社会の声に耳を傾け、一刻も早く侵略をやめるよう、ロシアに対して強い制裁措置を講じていくことが必要です。我が国として、引き続き、今後の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携をし、適切に取り組んでいきます。

 また、日本への避難民受入れを進めるための取組については、私を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議の下で、ウクライナ避難民の円滑な受入れと生活支援を行っていきます。その一環で、先般、林外務大臣がポーランドを訪問しました。同訪問の結果も踏まえつつ、ロシアによる侵略によって祖国を追われた避難民の方々が一日も早く元の生活を取り戻せるよう、日本政府として、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施していく考えです。

 なお、御指摘の法案が国会に提出されたことは承知をしていますが、その取扱いについては、国会で御議論いただくべきものと考えます。

 いわゆる敵基地攻撃能力についてお尋ねがありました。

 いわゆる敵基地攻撃とは、昭和三十一年の政府答弁で述べられているように、我が国に対して急迫不正の侵害が行われ、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置を取ること、例えば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことであり、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能とされています。

 その上で、お尋ねの点について一般論として申し上げれば、この昭和三十一年の政府答弁における誘導弾等の基地とは必要最小限度の措置の例示の中で述べられたものであり、法理上、その対象を攻撃することが誘導弾などによる攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置か否かという観点から、個別具体的に判断されるものです。

 政府としては、急速なスピードで変化、進化しているミサイルなどの技術に対しても、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を維持しつつ、現実的に検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 沢田良君。

    〔沢田良君登壇〕

沢田良君 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 政府提出の電波法及び放送法の一部を改正する法律案及び日本維新の会提出の情報通信行政の改革の推進に関する法律案について、会派を代表して質問をいたします。(拍手)

 IoT、AI、ロボット、ビッグデータなどの先端技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、経済発展と社会的課題の解決を図るソサエティー五・〇を世界に先駆けて実現することは、我が国が低迷する経済から脱却する大きなキーであり、最大のチャンスであると考えています。そして、そのソサエティー五・〇を支える必要不可欠なインフラが電波であります。

 電波利用の需要が飛躍的に拡大することが見込まれている中、二〇一八年八月に電波有効利用成長戦略懇談会の報告書が出されて以降、政府としてこれまで様々な分野において環境整備やシステム基盤の構築等の取組を行ってきていることは一定の評価をしております。

 そこで、総務大臣にお尋ねします。

 ソサエティー五・〇の実現に向けて、現時点で積み残されている課題はどのようなものがあると認識し、それを各々いつ頃までをターゲットに実現していくのか、御答弁願います。

 電波は有限希少な国民共有の財産です。これをいかにして有効に活用していくかが我が国の成長に直結する重要なポイントであります。電波の有効利用を図るためには、一、使われていない帯域を把握し、二、その帯域を返上させ、三、共有できるシステムは共有する等により周波数帯を空けつつ整理再編し、四、中長期的な再編プランに即して、新たな事業者に割り振るというステップが必要です。

 電波の有効利用を図るという観点から、政府としてこれまで各々のステップに関してどのような施策を講じてきたのか、そして、その施策によりどれだけの有効利用に資してきたか、総務大臣、具体的にお答えください。

 ソサエティー五・〇実現のためには、新たな技術やアイデアを有する事業者に積極的に事業参入してもらうことも大切な要素です。

 新規参入がしやすくするために、二〇一八年の懇談会報告書以降、どのような施策を講じ、結果としてどれだけの新規参入が図られてきたのでしょうか。携帯電話事業以外の事業も含めて、お答えください。

 これまでの政府の取組を見ていると、喫緊の5G対応として、携帯電話事業に関しては様々な取組が行われてきていますが、それ以外の分野での取組については、報告書が出された二〇一八年から既に四年近くがたっているのに、いまだ検討中のものも多く見受けられます。電波オークション制度がその典型です。

 我が党は、一貫して、透明性が高く、経済的価値に重点を置いた電波オークション制度の導入が必要と訴え、オークション制度法案も国会に提出してきております。

 携帯電話事業に関して、政府は、現在、新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会を開催し、オークション制度について本年夏に結論を得るとしていますが、当該検討会が立ち上がったのが二〇二一年の十月、二〇一八年八月に報告書が出されてから三年も後のことです。しかも、本年三月に出された一次取りまとめ案は、諸外国の制度をレビューしながらメリット、デメリットを列挙している程度の内容で、中身もスピード感もありません。更に申し上げれば、現在検討しているのは携帯電話用周波数の割当てに限定しており、携帯電話以外の分野はいまだ検討すらしていません。

 日本維新の会が提出した情報通信行政の改革の推進に関する法律案では、基幹放送局を含めた全ての無線局を対象としてオークションを行うこととされています。

 そもそも、OECD加盟国の中でオークション制度を導入していないのは日本だけです。諸外国では、オークション制度導入による落札額の過度な高騰や特定事業者への周波数の集中といったデメリットについて、既に様々な対応策を組み合わせることで解決してきています。

 総務大臣、新たな技術が日進月歩で進展し、それを支える重要インフラである電波に係る各種施策についての我が国の検討のスピードについて、及び携帯電話事業以外の分野におけるオークション制度導入を検討していない理由をお伺いいたします。

 二〇一八年の報告書では、二〇三〇年代に実現すべき次世代ワイヤレスシステムとして七つのシステムを挙げました。二〇二一年八月に出されたデジタル変革時代の電波政策懇談会報告書では、特に帯域を必要とする5G、ビヨンド5G等の携帯電話網システム、衛星通信、HAPSシステム、IoT、無線LANシステム、次世代モビリティーシステムの四つの電波システムを対象に、二〇三〇年代に約百二ギガヘルツ幅の周波数帯域の確保が必要と結論づけました。

 そこで、総務大臣にお伺いします。

 新たな帯域確保目標百二ギガヘルツ幅をどのように実現していく予定なのか。既存システムの再編で何ギガヘルツ、システムの共用促進で何ギガヘルツ、未使用周波数帯の活用で何ギガヘルツといった積み上げの計画があるのでしょうか。計画があるのであれば、具体的にお答えください。

 現在、プラチナバンドと呼ばれる使い勝手のよい周波数帯の隣の周波数帯を使用しているテレビ放送分野について、政府には、その周波数帯を整理再編し有効活用していこうという積極的な姿勢が感じられません。二〇一八年の報告書でも触れられている二〇四〇年代の社会の姿を考えた場合、二〇三〇年代に百二ギガヘルツ幅を確保することが決してゴールではなく、まだまだ帯域の確保が必要となるのは明らかです。ネットでの同時配信や見逃し配信等が進み、テレビを見る若者が急激に減少している中、今後ますます必要となる周波数帯域を確保するために、放送から通信への移行をより積極的に促進する必要はないのでしょうか。総務大臣にお伺いいたします。

 放送について、既存の電波利用料は、その経済価値と比して格段に安過ぎるのではないかと認識をしております。

 二〇二〇年度の電波利用料負担額は、NHKで約二十五億円、首都圏の基幹民放局では一社七億円にも満たない額であります。NHKの収入予算が七千億円近くあることを考えると、いかに既存の放送事業者が有限希少な国民の財産である電波を格安で利用しているかが明らかであります。

 携帯電話やインターネットでの大容量データ送受信等といった技術の進展により、電波の価値は急激に上がってきており、その使用料について、市場原理を導入していくべきではないでしょうか。今後、ソサエティー五・〇の実現に向けて必要となる費用の財源を確保していくという観点でも、電波利用料の適正化は必要と考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

 そこで重要となるのが、新規事業者の参入促進のための環境整備です。

 多様で自由な言論活動を保障するため、限られた電波が特定のメディアに集中しないようにするために、現在、マスメディア集中排除原則があります。日本の放送行政の柱の一つであると認識をしております。ところが、日本の新聞社には、諸外国では類を見ない特徴があります。それは、大手新聞社とテレビ局が完全に系列化されている、新聞社が株主として支配力を有しているという現状があります。

 新聞社がテレビの議決保有権を有することは、放送の多元性、多様性、地域性の確保を目指すために設定されているマスメディア集中排除原則の趣旨に大きく反するものではないでしょうか。持ち株会社傘下での新聞とテレビの事業支配等も含めて抜本的な見直しが必要と考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

 新規に放送事業に参入する場合、資本と実際に業務を実施する主体が異なっていてもよいのではないでしょうか。

 政府は、二次取引制限の緩和について、現在は具体的なニーズがないとして検討にすら着手しておりませんが、既存事業者の周波数返上を促すこともなく、割当て方式をオークション方式にすることもなく、しかも認定放送持ち株会社に三分の一未満という議決保有権の制限をかけている現状では、放送分野に新規参入できる余地がなく、だからこそ、二次取引の具体的なニーズが発生していないのではないでしょうか。

 資本規制や二次取引制限を緩和すれば、ニーズが出てくるのではないですか。大臣の見解を伺います。

 電波監理審議会という総務省の諮問機関が電波の割当て等規制に係る事務を所掌する体制では、これまで繰り返してきた総務省と事業者の癒着構造を解決できないのではないでしょうか。許認可権を握る官庁と接待攻勢ですり寄る事業者との癒着の構造を根本から見直さない限り、国民からすると不透明、不公正感が強いのではないでしょうか。

 総務省が所掌する情報通信に関する事務のうち、情報通信に係る事業の規制に関する事務について、公正取引委員会のように、中立公正な立場で、独立をして事務をつかさどる独立委員会を新たに設置する必要があるのではないでしょうか。いつまでも総務大臣下の諮問機関に任せていては、国民の財産である電波を守ることも有効利用することもできないのではないでしょうか。大臣の御認識をお聞かせください。

 続きまして、日本維新の会提出の情報通信行政の改革の推進に関する法律案について、提案者に質問をさせていただきます。

 本案には、同一の周波数の電波を共用することができる仕組みの一層の活用の促進やオークション制度の導入など、電波の有効利用に資するための基本方針が定められています。

 政府の進める電波の有効利用に係る施策について、どこに課題があるとお考えでしょうか。御見解をお伺いいたします。

 我が国では、特定された者の間の通信と、公衆による直接受信を目的とする通信である放送とは区別して制度化されています。しかし、近年の著しい情報通信技術の進化は、通信と放送の分野に大きな変化をもたらしております。通信基盤のブロードバンド化やデジタル化による、双方向テレビ、携帯電話向けワンセグ放送、ブロードバンドでの映像配信等、従来の枠組みにとらわれない、端末、コンテンツの各レイヤーで通信と放送の様々な連携、融合、移行が進んでいると理解しております。

 そこで、提出者に伺います。

 デジタル化が進展する中、なぜ放送を通信に移行していくことを促進する必要があると考えるのか、御説明をお願いいたします。

 日本維新の会は、放送と通信の大融合時代に合わせた電波放送制度への移行を促進し、さらには、その後のソサエティー五・〇社会を我が国の持てる技術力を最大限に活用することによって世界に先駆けて実現することこそが、我が国の低迷する経済を強力に牽引する成長戦略の大きなチャンスであると捉えています。そのためにも、既存権益を守る従来の発想ではなく、新規事業者の参入を促し、事業者間の技術力、事業力の競争を促進させていくとともに、もって国民生活に資することを実現していくことをお誓い申し上げて、質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣金子恭之君登壇〕

国務大臣(金子恭之君) 沢田議員からの御質問にお答えいたします。

 まず、ソサエティー五・〇の実現に向けた課題や取組について御質問いただきました。

 ソサエティー五・〇時代に向けて、社会全体のデジタル変革が進む中、ビヨンド5Gなどの次世代の無線システムの実現に向けて、更なる電波の有効利用が必要です。

 これを踏まえ、昨年八月のデジタル変革時代の電波政策懇談会報告書において、二〇二五年度末までに約十六ギガヘルツ幅、二〇三〇年代までに約百二ギガヘルツ幅の新たな周波数の確保の目標が示されました。

 この目標の実現に向けて、周波数の再編や共用、高い周波数の利用技術の開発を一層推進してまいります。

 次に、電波の有効利用のために講じてきた施策について御質問いただきました。

 総務省では、これまで、電波の利用状況の調査、評価を行い、その結果に基づき、周波数の移行、再編、共用を計画的に推進してまいりました。

 例えば、昨年四月には、一・七ギガヘルツ帯において、5Gのために既存のシステムを別の周波数に移行して新たな事業者に割り当てたほか、今年三月には、地理的、時間的に周波数を柔軟に共用するシステムを活用し、二・三ギガヘルツ帯を新たに5G用に割り当てるための申請を受け付けるなど、電波の有効利用にしっかりと取り組んできたところであります。

 次に、電波を利用した事業の新規参入について御質問いただきました。

 携帯電話事業については、楽天モバイルが、二〇一八年に周波数の割当てを受けて新規参入しており、さらに、二〇一九年には新たに5G用周波数の割当ても受けております。

 携帯電話事業以外の分野では、地域の企業や自治体等の様々な者が導入できるローカル5Gを二〇一九年に制度化し、現在、百者以上が参入しております。

 また、多数の小型衛星を一体的に運用し、高速大容量通信等を提供する衛星通信サービスに関する制度整備を進めているところであり、今後、新規参入が期待されているところであります。

 次に、電波オークションの検討状況と今後のスケジュールについて御質問いただきました。

 携帯電話用周波数については、5Gの導入等によって利用ニーズが増大しており、更なる電波の有効利用が喫緊の課題となっています。

 このため、昨年八月のデジタル変革時代の電波政策懇談会報告書を踏まえ、速やかに有識者会議を立ち上げ、オークション方式も含め、周波数の割当て方式の在り方について精力的に検討を進めており、本年夏頃を目途に取りまとめる予定です。

 携帯電話以外の周波数については、現時点では大きな利用ニーズが顕在化していないため、まずはその状況を注視する必要があると認識しております。

 次に、新たな帯域として百二ギガヘルツ幅を確保するための取組について御質問いただきました。

 総務省では、特に周波数を必要とする5G、ビヨンド5Gなどを対象に、二〇三〇年代までに約百二ギガヘルツ幅の新たな周波数の確保を目指すこととしております。

 具体的には、周波数の共用、再編の促進により合計で約十三ギガヘルツ幅を、また、未利用の周波数を活用することで約八十九ギガヘルツ幅を確保することを目指しています。

 次に、今後の周波数帯域の確保について御質問いただきました。

 今後、ビヨンド5Gを始めとする次世代の無線システムの本格的な社会実装や、高い周波数の利用ニーズが増大することが想定されます。

 このため、放送も含め、既存システムの電波の利用状況の調査、評価を行い、必要な場合は周波数の移行、再編、共用に取り組むとともに、高い周波数の利用技術の開発等を一層推進することにより、将来を見据え、必要となる周波数をしっかりと確保してまいります。

 次に、電波利用料の適正化等について御質問いただきました。

 電波利用料は、不法な電波の監視など、無線局全体の受益を直接の目的として行う事務の処理に要する費用を公平に分担していただくものであり、この考え方に基づいて算出された現行の電波利用料の水準は適正であると考えております。

 その上で、令和元年の電波法改正では、携帯電話の周波数の割当てにおいて、周波数の経済的価値も踏まえた審査を行う制度を導入いたしました。この制度による収入は、ソサエティー五・〇の実現に資する施策に充てることとしております。

 次に、新聞社によるテレビ局の事業支配について御質問いただきました。

 マスメディア集中排除原則は、新聞社も含め、特定の者がテレビなどの複数の放送局を支配することを制限しています。

 加えて、同一の放送対象地域における新聞、テレビ、ラジオのいわゆる三事業支配も制限しています。

 このマスメディア集中排除原則が遵守されることにより、放送の多元化、多様化、地域性が適切に確保されていると認識しており、現状、大きな問題があるとは考えておりません。

 次に、放送事業における資本規制及び二次取引について御質問いただきました。

 認定放送持ち株会社の議決権の保有については、放送の多元性などを確保するため、一定の制限を設けているものです。

 また、御指摘の二次取引は、売買などの取引に基づき無線局を運用するものと理解していますが、専ら転売を目的とする事業者が現れるなどのおそれがあることや、転売先が様々な基準に適合しているか確認が困難となる可能性があるなどの問題があり、慎重な検討が必要であると考えています。

 最後に、独立行政委員会の設置等について御質問いただきました。

 我が国は議院内閣制を採用しており、内閣の一員である各省大臣が責任を持って行政を執行することが原則であると認識しています。

 また、通信・放送を含む情報通信分野は、技術革新や国際競争が激しく、国家戦略的対応が求められる分野です。

 したがって、機動的、総合的な判断が可能となるよう、内閣の構成員である大臣の責任の下において、規制と振興の両輪で迅速に取り組んでいく体制が適当と考えています。(拍手)

    〔中司宏君登壇〕

中司宏君 日本維新の会、沢田良議員からの質問にお答えいたします。

 沢田議員からは、政府の進めている電波の有効利用に係る施策に対する問題認識及び放送の通信への移行促進の必要性について質問をいただきました。

 まず、政府が進める電波の有効利用に関する施策への問題認識についてお答えいたします。

 政府がこれまでソサエティー五・〇社会の実現に向けて様々な分野において鋭意検討を進め、諸施策を講じてきていることは、一定評価をしているところであります。しかしながら、携帯電話事業に対する施策など直面する課題への対応に追われ、それ以外の分野についての検討や対応が進んでいないという問題認識を持っております。

 二〇一八年八月に出された電波有効利用成長戦略懇談会の報告書によりますと、二〇三〇年までには自動運転レベル5、すなわち完全運転自動化された自動車が商用化され、あるいは、二〇四〇年頃には、機器を介さず、脳が直接ネットワーククラウドへ信号を送ることも可能といった社会を想定し、それを基に各種の検討や環境整備について計画を立てています。

 ドッグイヤーで革新をもたらす情報通信技術を考えれば、こうした想定が予想より早く実現する可能性が大きいというのがこれまでの経験則であり、常にスピード感を持って検討を進めていく必要があります。しかし、報告書が出てから四年近くたってもまだ検討中というスピード感では話にならず、特に、携帯電話事業以外の分野において、もろもろの課題の検討スピードを上げる必要があると認識しております。

 次に、放送の通信への移行の促進の必要性についてですが、二〇二一年八月に出されたデジタル変革時代の電波政策懇談会の報告書では、二〇三〇年代に約百二ギガヘルツ幅の周波数帯域の確保が必要と結論づけています。その一方で、この新たな帯域確保の目標である百二ギガヘルツ幅を確保する計画の中に、政府は、既存のテレビ放送が使用している使い勝手のよい周波数帯の再編をメニューとして入れていません。

 その理由として、総務省からは、放送と通信の大融合時代にあっても、放送は既存のまま使用し続けた上でネット配信を拡大していくことを想定しているとの説明を受けています。

 しかしながら、二〇四〇年代には、確保すべき周波数帯が更に必要となるのは明白であり、それに向けた長期的な取組を開始することが急務であります。まして、若者のテレビ離れが急速に進み、二〇一九年にはネット広告費がテレビ広告費を上回ったということを考えれば、むしろ、政府が主導して積極的に放送の通信への移行を後押しし、周波数帯を確保していくことが必要ではないでしょうか。

 海外では、ネットでドラマ配信を行いながら、ドラマの中で女優の着ている服装などを同じ画面で通販購入できるといった配信も行われており、広告収入のみに頼らないビジネスモデルもどんどん生まれているところであります。

 既存の放送事業者が、今の制度のままなら、有限希少な電波を使用して放送を続けながらネット配信を拡大していくということであれば、安い現在の電波使用料を市場価値に見合うよう適正化して徴収すべきであります。

 遅れている我が国の情報通信行政を前に進めていくためには、既得権益にとらわれず、放送・通信事業に新しいアイデアや技術を持った新規事業者が参入しやすい環境、すなわち、オークション制度の導入や二次取引ルールの緩和、資本規制の見直しなどの環境を整えていくことが必要だと考えております。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣     金子 恭之君

       環境大臣     山口  壯君

       国務大臣     小林 鷹之君

       外務大臣臨時代理

       国務大臣     松野 博一君

 出席副大臣

       総務副大臣    中西 祐介君


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