衆議院

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第19号 令和4年4月12日(火曜日)

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令和四年四月十二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  令和四年四月十二日

    午後一時開議

 第一 地方公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 第五 令和二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 第六 令和二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 第七 令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地方公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第五 令和二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第六 令和二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第七 令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 地方公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、地方公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 地方公務員の育児休業等に関する法律及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、育児又は介護を行う職員の職場と家庭の両立を一層容易にするため、地方公務員について、国家公務員と同様に、育児休業をすることができる回数を、現行の一回までを二回までとするとともに、非常勤職員については、介護休業の取得要件から、一年以上の雇用期間の要件を廃止するものであります。

 本案は、去る四月四日本委員会に付託され、翌五日金子総務大臣から趣旨の説明を聴取し、七日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告いたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長薗浦健太郎君。

    ―――――――――――――

 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔薗浦健太郎君登壇〕

薗浦健太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、会計監査の信頼性の確保並びに公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上を図り、企業財務書類の信頼性を高めるため、上場会社等の財務書類について監査証明業務を行う監査法人等に関する登録制度を導入する等の改正を行うものであります。

 本案は、去る四月四日当委員会に付託され、翌五日鈴木国務大臣から趣旨の説明を聴取し、八日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長義家弘介君。

    ―――――――――――――

 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔義家弘介君登壇〕

義家弘介君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、校長及び教員の資質の向上のための施策をより合理的かつ効果的に実施するための措置を講ずるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、公立の小学校等の校長及び教員の任命権者は、校長及び教員ごとに研修等に関する記録を作成しなければならないこととするとともに、指導助言者は、校長及び教員に対し資質の向上に関する指導助言等を行うものとすること、

 第二に、普通免許状及び特別免許状を有効期間の定めのないものとし、更新制に関する規定を削除するとともに、本案の施行の際に現に効力を有し、本案による改正前の規定により有効期間が定められた普通免許状及び特別免許状については、本案の施行日以後は有効期間の定めがないものとする等の経過措置を設けること

などであります。

 本案は、去る三月二十四日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、三十日末松文部科学大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。四月一日参考人から意見を聴取し、六日、八日と質疑を行い、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、立憲民主党・無所属及び日本共産党から、それぞれ修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論、採決の結果、両修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第五 令和二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第六 令和二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

 日程第七 令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百七回国会、内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第五、令和二年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第六、令和二年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第七、令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)、右四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。決算行政監視委員長原口一博君。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔原口一博君登壇〕

原口一博君 ただいま議題となりました令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書外三件につきまして、決算行政監視委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 これらの各件は、財政法の規定等に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。

 まず、令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費について、その使用事項は、営業時間の短縮等協力要請の支援に必要な経費、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援等に必要な経費、持続化給付金の支給に必要な経費等計三十八件で、その使用総額は九兆千四百二十億円余であります。

 次に、令和二年度一般会計予備費について、その使用事項は、新型コロナウイルス感染症対策に係る布製マスクの緊急配布等に必要な経費、道路等災害復旧事業等に必要な経費、大雪に伴う道路事業に必要な経費等計四十三件で、その使用総額は二千八百三十八億円余であります。

 次に、令和二年度特別会計予備費について、その使用事項は、労働保険特別会計雇用勘定における新型コロナウイルス感染症対策に係る雇用調整助成金の特例措置に必要な経費の一件で、その使用額は五百五十億円であります。

 次に、令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額は、労働保険特別会計雇用勘定における新型コロナウイルス感染症対策に係る雇用調整助成金の特例措置に必要な経費の増額の一件で、その増加額は一千億円であります。

 委員会におきましては、これらの各件につき去る四日鈴木財務大臣から説明を聴取した後、昨十一日、質疑を行い、質疑終局後、討論、採決の結果、令和二年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費、令和二年度一般会計予備費は賛成多数をもって、令和二年度特別会計予備費、令和二年度特別会計予算総則第十九条第一項の規定による経費増額は全会一致をもって、承諾を与えるべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四及び第五の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第六及び第七の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 本法律案は、ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、G7と連携し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を一層強める等の観点から、貿易優遇措置である最恵国待遇を撤回するものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 国際関係の緊急時において、WTO協定による関税についての便益を与えることが適当でないときは、特定の国から輸入される物品に課する関税の率を基本税率等とすることとしております。

 次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 本法律案は、ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、G7と連携し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を一層強める等の観点から、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、制裁の実効性を更に強化するものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、暗号資産に関する取引を資本取引とみなす取引として新たに定義することにより、資本取引規制の対象とすることとしております。

 第二に、暗号資産交換業者に資産凍結措置に係る確認義務等を課すこととしております。

 以上、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。八木哲也君。

    〔八木哲也君登壇〕

八木哲也君 自由民主党の八木哲也です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案並びに外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、本年の二月二十四日以降のロシアによるウクライナ侵略に対し、ロシアの暴挙を強く非難するとともに、ロシアの蛮行により亡くなられた方々に哀悼の意を示すとともに、今もなお苦しんでおられるウクライナの方々に心からお見舞い申し上げます。我々は、ウクライナの人々に寄り添って支援してまいります。

 ロシアによるウクライナ侵略は断じて容認できません。G7を始めとする国際社会が連携して、ロシアに対し強い姿勢で取り組んでいくことが極めて重要であります。

 これまでも、我が国としては、ウクライナ国民と共にあることを示すため、国際社会の平和と秩序を守り抜き、国際社会と緊密に連携し、様々な制裁措置を実施してきております。

 こうした中、先般のG7首脳声明において、ロシアの最恵国の地位を否定する行動を取るよう努めることや、各国の国内手続と整合的な形で、デジタル資産を用いて自身の富を拡大及び移転するロシアの不法行為者にコストを課すことについて、G7が更に連携して措置を取ることが合意されました。このことを踏まえて、岸田総理が、ロシアに対して外交的、経済的圧力を一層強めると表明されました。

 今回の関税暫定措置法と外為法の改正は、G7と連携してロシアに対する制裁を強化するために必要な措置であり、早期に成立させ実施することが極めて重要であります。

 まず、関税暫定措置法改正案についてお尋ねいたします。

 最恵国待遇とは、貿易相手国の産品に対して、第三国に与える条件よりも不利にならない待遇を与えることであり、WTO加盟国であるロシアに対し、ほかの加盟国と同様、優遇的なWTO協定税率が適用されています。

 歴史上の汚点となるべき非道な行為を行うロシアに対し、優遇的な地位をこのまま与えておくわけにはまいりません。G7を始めとする国際社会と一致団結して、ロシアからこの最恵国の地位を剥奪することが重要だと思いますが、今般、関税暫定措置法を改正する意義について、財務大臣の御所見をお聞かせください。

 次に、外国為替及び外国貿易法の改正案についてお尋ねいたします。

 ロシアによるウクライナへの侵略を受けて、我が国としては、G7を始めとする西側諸国と連携し、ロシアの主要金融機関を対象とした資産凍結措置など、これまで累次にわたって金融制裁をロシアに対して実施してきております。

 国際社会と連携し、断固たる措置を取っていく必要があり、国際社会による金融制裁が強化される中、我が国でも、取引が拡大している暗号資産が抜け穴となることは防がなければなりません。今般、外為法を改正する意義について、また、新たな取組の実効性をどのように確保していくのか、財務大臣の御決意と御見解をお聞かせください。

 このような対ロシア制裁に関する二法案や、先日一億ドルが追加された人道支援などの取組は、言うまでもなく重要でありますが、ロシアによる侵略行為を完全に止めることができるのか、ウクライナの人々への支援として行き渡らせることができるのか、なかなか難しい部分もあると思います。

 ロシアの蛮行を止めるため、そしてウクライナで苦しむ人々の不安や心配を少しでも和らげるため、より強力なメッセージを発信していく必要があります。今般のロシアによるウクライナ侵略に対し、我が国として今後どのような外交戦略で対応していくのか、総理大臣の御見解をお聞かせください。

 最後に、ウクライナからの避難民の受入れを始め、政府が、侵略と戦い、祖国を守るため懸命に行動するウクライナの人々を強い覚悟で支援することへの期待を表明いたしまして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 八木哲也議員の御質問にお答えいたします。

 ロシアによるウクライナ侵略に対する今後の外交戦略についてお尋ねがありました。

 一刻も早い停戦を実現し、ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるためには、国際社会が結束して強固な制裁を講じていくことが重要です。

 こうした考えの下、先週八日、我が国は、G7と連携して、ロシアに対し追加制裁を科し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を強化いたしました。

 ウクライナ支援については、ウクライナ、モルドバを含む周辺国に対して、二億ドルの緊急人道支援を供与するとともに、保健医療分野の更なる人的貢献を具体化してまいります。また、ウクライナ避難民の方々が今後とも円滑に我が国に渡航できるよう支援してまいります。

 引き続き、G7を始めとした関係国と連携して、日本が、そして国際社会がロシアによる暴挙を決して許さないこと、そして、日本がウクライナと共にあること、これらを断固たる行動とウクライナの方々に寄り添った支援で示してまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 八木哲也議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、今般の関税暫定措置法改正の意義についてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権や領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反であります。

 政府としては、先般のG7首脳声明を踏まえ、ロシアへの外交的、経済的圧力を一層強める観点から、ロシアに対する最恵国待遇を迅速に撤回することといたしました。

 本法案は、関税について、ロシアからの輸入品に対してWTO協定税率を適用しないとするものであります。

 今回の措置を通じて、国際社会と一致団結してロシアに対して厳しい措置を取るという我が国の意思を強く示すことに大きな意義があると考えております。

 最後に、外為法改正の意義と実効性確保についてお尋ねがありました。

 今般の外為法の改正は、G7と連携し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を一層強める等の観点から、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、制裁の実効性を更に強化するものです。

 その実効性の確保のため、暗号資産交換業者に対して、今般の法改正の内容を速やかに周知徹底するよう努めるとともに、必要に応じて立入検査や報告徴求等を行うことで、確認義務の適切な履行を図ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 末松義規君。

    〔末松義規君登壇〕

末松義規君 立憲民主党・無所属の末松義規です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 まずもって、ロシアの侵略で犠牲になられたウクライナの方々に心からの哀悼の意を表しますとともに、苦しみの中におられる方々に深くお見舞いを申し上げます。

 ユア・ファイト・イズ・アワー・ファイト、あなた方の戦いは私たちの戦いだ。これは、四月八日にウクライナ、特にブチャを訪問したフォン・デア・ライエンEU委員長がゼレンスキー・ウクライナ大統領に呼びかけた言葉です。

 この言葉を敷衍すれば、ウクライナの戦いは、我が国を含めた平和を求める世界全体の戦いでもあります。EU委員長以外にも、東欧の三首脳や英国首相も最近ウクライナを訪れています。

 岸田総理、東洋から初めてウクライナへの熱い連帯のメッセージを直接伝えるために、近々ウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領とお会いされてはいかがでしょうか。是非御検討ください。

 さて、ロシアのウクライナ侵略に対する外交戦略として、第一の要点は、当然のことですが、ロシアのウクライナ侵略を絶対に成功例とさせてはならないということです。この侵略によってロシアの目的が達成されるようなことがあれば、他の潜在的な危険国がロシアの成功例を見習って周辺国に侵略を開始する危険性が高くなるからです。

 アジアにおいては、台湾海峡や尖閣諸島などで大きな軍事的危機が高まる危険性も出てくるという、我が国の安全保障に直結する問題です。その意味で、日本政府が、G7の場で議論して、その決定に速やかに協力し、国際社会の連帯強化に貢献していることは、適切な行動だと評価しています。

 第二の要点は、ロシアに協力するような国を外交的に説得し、ロシアを孤立化させて、G7との共同歩調を取らせることです。

 その意味で、岸田総理が、ロシアに対するインドの態度を変えさせるまでには至りませんでしたが、いち早くインドのモディ首相と会談して説得を試みたことは、意義深いことだと高く評価しています。

 次なる日本及び国際外交の急務は、いかにして中国の対ロシア協力を制止させるかということです。中国のロシアに対する軍事、経済、金融協力が、対ロシア経済制裁の抜け道をつくり、ロシアの継戦能力や経済力を強化することになるからです。

 ここで、岸田総理が、他のG7諸国と連携しながら、できるだけ早く訪中して、中国の習近平主席と直接会談して、少なくともロシアを支持しないよう説得すべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。これは、日本外交にとっても大きなチャレンジです。

 また、その際、中国とは北朝鮮の度重なるミサイル発射についても協議するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 世界は、このロシアのウクライナ侵略を契機に、第三次世界大戦勃発の間際まで来ています。私も、外務省勤務時代に、イラン・イラク戦争や湾岸危機を体験してきたことから、戦争という恐ろしい怪物が偶発的事件をきっかけにして一挙にエスカレートして巨大化するのを見てきました。もちろん、ロシアのウクライナからの撤兵、撤退が実現できれば問題なくなるわけですが、米国を始めとするNATO側とロシア側との間で、第三次世界大戦を避けるような内々の駆け引きが行われていると思いますが、まさにこの点について、岸田総理は主要国首脳とどの程度まで腹を割って話しておられますか。総理にお聞きしたいと思います。

 ブチャ等でのロシア軍による無辜の市民に対する殺りくは、国際人道法上許し難い行為であり、明白な戦争犯罪です。G7も速やかにロシアに対する追加的制裁措置を行うことを決定したようですが、日本としてどのような追加措置を決めたのでしょうか。総理、具体的にお述べいただきたいと思います。

 国際的な対ロシア制裁措置に積極的に参加した日本は、ロシアによると、敵性国家、敵国になったようです。今後、ロシアからは、様々な軍事的、経済的な対抗措置、さらには中期的に軍事的挑発がエスカレートすることも想定しておく必要があります。その上でも、G7と足並みをそろえ、国際秩序を守るため、対ロシアの厳しい経済制裁を維持していく、そのような想定と覚悟が岸田総理にあるのか、まずお伺いします。

 特に、最近、公共部門や民間企業へのサイバー攻撃が盛んに行われているとの報道もあります。政府として、これらのサイバー攻撃に対してどのような防衛策を取ってきたのでしょうか。

 さらに、日本近辺において、ロシアや中国の動きに変化はないのでしょうか。

 今後は警戒レベルを上げていく必要があると思いますが、総理の御認識をお伺いします。

 ロシアのウクライナ侵略後、ロシアのデフォルトの危険性や経済崩壊などの情報で大幅に落ち込んだルーブルの価値は、意外なことに、直近ではかなり回復してきています。その理由として、ロシア中央銀行がルーブル売りを制限するなど、人為的にルーブル需要をつくり出しているとの報道があります。

 さらに、ロシア中央銀行が金を固定相場で買い取ることを発表したり、現行のSWIFTシステムからロシアの銀行を排除しても、今後主流となるであろうQFS、量子金融システムへ移行するので問題はない、さらには、ロシアと中国の送金連携システムが存在するので問題ないなど、ロシアの経済金融システムは意外と堅固ではないかとの見方もあります。

 ロシアの継戦能力や経済能力にも関わる認識だけに重要ですので、総理の御認識を伺います。

 先日、林外務大臣が、ポーランドで、日本に在住を希望するウクライナ難民を政府専用機に搭乗させることとしましたが、結果的には僅か二十人だけが搭乗し、日本に到着されました。座席の余裕は百五十人分もあったと報道されています。海外から見ると、二十人という少数はウクライナ難民を受入れ制限する日本政府の意図の表れだとマイナスに評価する向きもあったと言われています。

 政府は、元々日本に渡航希望していたウクライナ難民の総数を示していませんが、その数は何人だったのでしょうか。そして、なぜ二十人まで絞ったのでしょうか。外務大臣にお伺いします。

 また、現在四百二十八万人とも言われるウクライナ難民がいる中、日本が現在までに正式に受け入れたウクライナ難民の数を教えてください。

 現在、急速な円安や原油高、さらには鉱物資源や食料価格の高騰によって、国民生活を困窮させる物価高が現実のものとなっています。その意味で、今こそ有効な物価抑制策を取っていかねばなりません。

 立憲民主党としては、四月八日に総額二十一兆円の緊急経済対策を発表し、時限的な五%消費減税やエネルギー購入費補助、さらには、ワーキングプアの方々や低年金者、低所得子育て世帯に五万円を給付する生活支援策などと同時に、債務減免や事業復活支援金の上限額二百五十万の倍増などの事業者支援策を公表しました。

 これらの緊急経済対策は、国民生活を救うために、スピードが命です。総理としては、これまでどのような緊急経済対策を策定して実施してきたのでしょうか。また、このような緊急事態では新たに補正予算を組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 ウクライナにおいて、ロシアは巨大原発を攻撃しました。この事実は、万が一、日本が戦争状態となったときには、敵対国から原発攻撃が頻繁に行われる危険性があることを明白に示しています。

 敵対国から通常ミサイルなどの対原発攻撃がなされれば、すぐに原発周辺地域を超える広範な地域が深刻な放射能汚染となります。原発再稼働という平時レベルのチェックではなく、有事対応も想定していかねばならない時代に入ってきました。ロシアからのLNG供給に頼っているドイツでさえ、これらの問題意識をも踏まえ、原発廃止計画を推進しています。

 立憲民主党が計画している脱原発政策のように、安全保障の観点からも、総理、今こそ原発廃止政策を強力に進めていくべきときではないでしょうか。

 今回の二法案は、いずれも侵略国ロシアに対する経済制裁を強化する手続整備であり、基本的に賛同できるものですが、不十分な点や不明瞭な点も見受けられます。

 関税暫定措置法改正案によりロシアに対する最恵国待遇が撤回され、ロシアからの輸入品に対しては日本の国定税率が適用されます。そもそも、昨年のロシアからの輸入額ベースで見れば、輸入総額一・五兆円のうちLPGなどのエネルギー分野の一・二兆円分については元々無税であることから、ロシアは全く悪影響を受けません。

 これに加え、最近のエネルギー価格の高騰により、ロシアからの輸入額がかなり増大することが予想されます。米国などが禁輸措置まで踏み込んだ制裁を行っているときにロシアからの輸入額が拡大すれば、国際的に非難される対象となり得ますが、輸入量制限や禁輸措置などを行うことは考えないのでしょうか。総理の見解を伺います。

 一方、英国のジョンソン首相が四月九日明らかにしたように、ウクライナに対して貿易融資枠の拡大や関税引下げ、通関手続の簡素化などの経済優遇措置は、ウクライナ復興の観点からも有益だと思います。総理、我が国も同様の支援を行うことを検討してはいかがでしょうか。

 外為法改正案により、制裁対象者から第三者への暗号資産の移転が規制対象となりますが、どの程度の制裁効果があると考えているのか、総理の答弁を求めます。

 両法案に共通する質問ですが、関税法案については、最恵国待遇を撤回する対象国及び対象品目について政令で定めますし、外為法に基づく資産凍結などの措置の対象者は外務省の告示により指定されます。これらの非常措置は、いずれも国会の関与がなく、政府だけで決定される点が問題だと思います。

 どの国を制裁の対象とするかは外交上極めて重要な問題であり、国会による承認を求めるなど立法府の関与を確保するような仕組みにするべきだと思います。総理の御見解を問います。

 いずれにせよ、対ロシア経済制裁については、一方で国際連帯の下で制裁の有効性を追求していくと同時に、制裁の実施に伴う国民生活の様々なマイナス影響に目配りをしながら、同時並行して進めていく必要があります。

 最後に、総理に対して、これらの諸条件を円滑に行える情報の取りまとめや情報活用体制の整備について質問して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 末松義規議員の御質問にお答えいたします。

 ウクライナ訪問の可能性についてお尋ねがありました。

 我が国はウクライナと共にあります。ロシアによるウクライナ侵略以降、私も二度、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、我が国の連帯を伝達したところです。

 ロシアによる侵略を一刻も早くやめさせるために、G7を始めとする国際社会と連携しながら、適切に対応してまいります。その観点から、現地の状況も含め総合的に勘案し、我が国として何をすることが適切なのか、不断に検討してまいりたいと考えます。

 中国の対ロシア支援及び北朝鮮情勢に関する中国への働きかけについてお尋ねがありました。

 中国とロシアは、近年、緊密な関係を維持し、軍事協力も緊密化しており、その動向を関心を持って注視しています。ウクライナ情勢に関し、我が国として、これまでも、中国に対して様々な機会に責任ある行動を呼びかけてきています。引き続き、G7を始めとした関係国と緊密に連携し、適切な機会に適切なレベルで対応していきたいと考えています。

 先月のICBM級弾道ミサイルのような、事態を更に緊迫化させる弾道ミサイルの発射を含め、最近の一連の北朝鮮の行動は、日本、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認することはできません。引き続き、安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に向け、中国を含む国際社会とも連携してまいります。

 ウクライナ情勢をめぐる主要国首脳との外交についてお尋ねがありました。

 一刻も早くロシアの侵略をやめさせ、ロシア軍を撤退させるため、国際社会が連携してロシアに強い措置を取っていくことが重要です。

 こうした国際社会の連携はG7が主導していますが、私は、G7の首脳テレビ会議及び対面での首脳会合、G7プラスでの首脳電話会談に出席したほか、G7の首脳とも、バイ、マルチの場で、また電話あるいは対面などで度々会談をし、率直な意見交換を行ってきました。

 各国首脳との間のやり取りの詳細についてお答えすることは、外交上のやり取りでもあり、差し控えたいと思いますが、我が国として、引き続き、G7等と連携し、適切に取り組んでまいります。

 対ロ制裁の内容やそうした制裁措置を維持していく覚悟、サイバー攻撃に対する防衛策、日本近辺での中ロの動きについてお尋ねがありました。

 G7と連携し、八日、一、石炭の輸入禁止、二、一部物品の輸入禁止、三、新規投資の禁止、四、ロシアの最大手銀行の資産凍結、五、ロシアの軍関係者、議員など資産凍結の対象の更なる拡大、こうした五つの柱から成る追加制裁を発表いたしました。

 ロシアによる軍事的、経済的対抗措置の可能性については、予断を持ってお答えすることは差し控えますが、政府としては、様々な事態を想定して、適切に対応してまいりたいと考えております。

 我が国としては、一刻も早い停戦を実現し、ロシアによる侵略をやめさせるため、ロシアに対する外交的、経済的圧力を強化し、これからも国際社会と結束して強固な制裁を講じていく考えです。

 昨今の情勢を受け、サイバー攻撃の脅威は高まっています。政府として、産業界とも連携し、各国の動向をしっかり注視しつつ、サイバーセキュリティ戦略の着実な実施など、サイバーセキュリティーの確保に万全を尽くしてまいります。

 ロシアと中国は、共同航行、共同飛行といった日本周辺での一連の動きなど、軍事協力が緊密化しています。政府として、我が国周辺における両国の動向について関心を持って注視し、情報収集、警戒監視に万全を期してまいります。

 ロシアの通貨ルーブルの価値や経済、金融システムについてお尋ねがありました。

 これまでG7各国が緊密に連携して広範な制裁措置を科してきたことで、ロシアの通貨や経済、金融システムに深刻な打撃を与えてきていると考えております。

 足下ではルーブル相場は回復してきていますが、議員御指摘のとおり、ロシアの輸出企業に対する外貨売却の義務づけや国民に対するルーブルの外貨への両替停止など、ロシア当局の措置により相場が支えられている側面も大きいと理解をしています。他方、闇市場においては大幅な安値でルーブルが取引されている、こうした指摘もあると聞いております。

 また、株価の下落や国債利回りの上昇が見られるほか、生活必需品を含め消費者物価が急上昇するなど、様々な面でロシアの経済や金融に影響が出ていると認識をしております。

 引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、制裁の実効性を高めるべく、適切に対応してまいります。

 原油価格や物価の高騰等に対する対応策についてお尋ねがありました。

 エネルギー価格の高騰等に対しては、昨年来、総額五十五・七兆円の経済対策の中に燃料油価格の激変緩和措置等の施策を盛り込んだほか、昨年末に価格転嫁円滑化のための施策パッケージを策定するとともに、賃上げの環境整備などにも取り組んでまいりました。

 さらに、三月四日には、激変緩和措置の大幅な拡充強化や、漁業、農林業、運輸業などの業種別の対策など、当面の対策を決定し、実行しているところです。

 その上で、ウクライナ情勢に伴う原油価格、物価高騰等への対応について、先般、総合緊急対策の策定を指示したところであり、四月中に具体的な対策を取りまとめます。

 その際、まずは、予備費を活用した迅速な対応を優先してまいりたいと考えております。

 原子力政策に対する考え方についてお尋ねがありました。

 まず、原子力発電所の安全については、原子炉等規制法に基づく発電所の設備上の対応や事業者の対応によって確保しており、意図的な航空機衝突等のテロリズムへの備えまで事業者に要求をしています。

 その上で、原発へのミサイルによる武力攻撃に対しては、イージス艦やPAC3により対応するほか、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下で、原子力施設の使用停止命令、住民避難等の措置を準備しています。

 そもそも、我が国に対する武力攻撃が発生した場合には、日米で共同して対処することとなります。日米同盟の抑止力、対処力を強化し、我が国に対する武力攻撃が発生しないよう、しっかりと取り組んでいくことが重要です。

 四方を海に囲まれ、資源の乏しい我が国としては、こうした安全保障体制と事業者規制の両面から原子力発電所の安全を確保した上で、安価で安定したエネルギーを確保するため、原子力を含め、あらゆるエネルギー源を活用してまいります。

 ロシアに対するエネルギー分野での対応と、ウクライナに対する支援についてお尋ねがありました。

 ロシアに対するエネルギー分野での対応については、安定供給に万全を期しつつ、これまでのG7首脳声明に従い、石炭の禁輸や、石油を含むエネルギーのロシア依存度の低減に取り組んでまいります。

 具体的には、再エネや原子力など、エネルギー安全保障の確保及び脱炭素の実現につながるエネルギー源の多様化や、米豪そして中東など調達先の多角化に向けた取組、そして生産国への増産の働きかけなどを一層強力に進めてまいります。

 また、我が国は、機械類、一部木材、ウォッカなどのロシアからの輸入を禁止しました。

 さらに、我が国は、困難に直面しているウクライナの人々を支援し、ウクライナとの更なる連帯を示すため、ウクライナ及びモルドバを含む周辺国に対して合計二億ドル規模の緊急人道支援を実施することを決定するとともに、避難民の受入れも進めています。ウクライナ支援については、御指摘のような国際的な動向も注視しつつ、不断に検討してまいります。

 外為法改正による制裁効果についてお尋ねがありました。

 今般の外為法改正の効果を定量的に申し上げることは困難ですが、今回の法改正は、暗号資産交換業者に確認義務を課し、制裁対象者から第三者への暗号資産の移転を規制対象とするなど、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、できる手当てを速やかに講じるものです。

 三月十一日のG7首脳声明を踏まえ、各国が連携して暗号資産の移転に関する規制を強化する中、我が国も足並みをそろえて暗号資産に対する規制を強化することが重要であり、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をして、ロシアへの圧力を一層強めるべく、適切に対応をしてまいります。

 そして、今回の法改正等による制裁対象、関連情報に関する体制等についてお尋ねがありました。

 今回の最恵国待遇の撤回や外為法に基づく資産凍結等については、緊迫した国際関係等を踏まえ、機動的かつ効果的に対応する必要があるため、法律で定める要件に基づき、法令や告示により対応することとしております。

 ロシアへの制裁については、G7を始めとする国際社会と緊密に連携するとともに、国民生活への影響にも目配りしながらしっかりと対応していく必要があり、外務省を中心に、必要な情報の収集や活用を図るとともに、政府一丸となって、国民への情報発信を含め、必要な施策を適時適切に実行してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 末松議員にお答えをいたします。

 先般の政府専用機でのウクライナ避難民の方々への移送支援の基準についてお尋ねがありました。

 政府専用機に同乗いただいたのは、在ポーランド大使館や在ウクライナ大使館に対して日本への渡航を相談してこられたウクライナ避難民の方々のうち、日本への渡航を切に希望するものの、現在、自力で渡航手段を確保することが困難なウクライナ避難民の方々です。

 具体的な人数は、このような方々の渡航を支援すべく所要の調整や手続を進めた結果、最終的に決まったものでございます。

 なお、現在まで、避難を目的として本邦に入国した方は、総理がウクライナ避難民の受入れを表明された三月二日以降四月九日までで五百二十四人となっております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 藤巻健太君。

    〔藤巻健太君登壇〕

藤巻健太君 日本維新の会の藤巻健太です。

 ただいま議題に上がりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 今回の改正案は、本年三月十一日、G7首脳会合での合意を踏まえた必要な法律の改正であり、戦争犯罪を一向にやめないロシアに対する制裁強化に資するものであり、異論はありません。

 その基本的な認識に立った上で、岸田総理大臣に質問させていただきます。

 関税暫定措置法改正法案は、今般のロシアの暴挙のような事案が発生した際に、WTO協定に定める最恵国待遇の関税を適用しないというものであり、当然の措置です。

 しかしながら、ロシアからの輸入の約八割を占めるエネルギー資源が元々無税であること、さらには八日に総理が表明したロシアからの一部木材の禁輸措置を併せ考えれば、本改正による効果は、イクラ、ニシン等の魚介類などごく限定的なものになると思われますが、総理の見解を伺います。

 今月六日、ロシア外務省報道官は、日本の各種制裁に対し、効果的な報復措置を講じていくと明言いたしましたが、そうした中、総理は、八日に、ロシア産石炭輸入を段階的に削減し、最終的に禁止する措置や、個人制裁の対象拡大を打ち出しました。

 しかし、ここに来てまだサハリン1、2から撤退しないということを表明し続けることは、ロシアに足下を見られることにならないでしょうか。また、ロシアが供給を止めた場合、どのような対応策を取られるのでしょうか。相手が報復措置という強い言葉を使っていることを考えれば、仮定の話には答えられないなどという緊張感のない答弁では国民は納得しません。総理、明確にお答えください。

 暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう外為法を改正することについても、全く異論はありません。

 しかし、この改正は、本来はもっと前に実施していなければならなかったのではないでしょうか。

 暗号資産に係る取扱いについては、今回のロシアのウクライナへの侵略開始のはるか前から、国際組織の金融活動作業部会であるFATFは何度も勧告を出しています。二〇一八年十月に、仮想通貨におけるマネロンやテロ資金対策の基準強化に関して公表し、暗号資産を取り扱う業者に対して銀行並みの厳しい規制を課すこと、二〇一九年六月には、制裁対象者への資金その他の資産の流れを遅滞なく止めることについて、銀行等に加えて暗号資産交換業者に対しても要請すること、二〇二〇年十月には、制裁の潜脱リスクの評価やリスク低減措置を行うことなどの勧告を行っていました。

 にもかかわらず、二〇二一年八月に公表されたFATFによる第四次対日審査報告書では、日本はロシアよりも評価の低い重点フォローアップ国にされ、毎年、法令等の整備状況について改善状況を報告しなければならないとされました。

 二〇一八年に暗号資産に係る勧告が最初に出されて以降、政府はこれらの勧告に対しどのような取組を行ってきたのか、そうした取組にもかかわらず、なぜ重点フォローアップ国とされたのか、総理に見解をお伺いいたします。

 また、この報告書を受けて、ようやく政府も重い腰を上げたようですが、外為法改正以外に指摘された様々な点に対して、どのような体制で、いつまでを目標として対応しているのかについても併せてお答えください。

 これまで、暗号資産取引は、例えば、ビットコイン取引であれば、ビットコインアドレスによって完全に追跡可能ではあるものの、取引情報からは取引当事者である実際の個人や組織を特定することはできない仕様になっていたことから、匿名性が高いとされていました。しかし、FATFが、二〇一九年六月に、暗号資産交換業者における暗号資産の送金時に送受金者の個人情報を記録するという新たな規制基準であるトラベルルールを発表し、我が国においては、金融庁が、二〇二一年三月、業界に対し、まさに今ですが二〇二二年四月をめどにトラベルルールに関する自主規制規則を導入するよう要請しました。

 この自主規制が四月に導入されたことにより、これまで制裁対象への資産移転のみを規制対象としてきた外為法について、制裁対象から第三者への暗号資産移転を規制対象に拡大することが可能になったという理解でよろしいでしょうか。お答えください。

 つまりは、今般の外為法改正は、あたかも対ロ制裁強化を背景として法案を提出すると政府は説明していますが、たまたまこのタイミングで改正が可能になったにすぎず、本来は、今般のロシアの侵略があろうがなかろうが、マネロン、テロ資金対策として外為法改正案を今国会開会時に閣法として提出すべきだったのではないかと思いますが、総理の認識をお伺いいたします。

 また、実際に取引を捕捉するには、取引先相手国がトラベルルールを適用していなければ実効性はなく、また、交換業者を介さない個人間の直接取引の捕捉は難しいとも考えますが、現時点において、実務としてどの程度まで取引を捕捉できるとお考えでしょうか。併せて答弁願います。

 暗号資産取引は、匿名性が高いということも大きな要因として広がりを見せてきたと認識しておりますが、財の移転において、その匿名性が今春から消滅していく方向になるかと思います。マネロンやテロ資金対策、制裁対象者への取組を強化することは当然ですが、一方で、自由な金融活動やブロックチェーン技術の発展を阻害することのないよう、今回の改正も踏まえて、何か対策は講じているのでしょうか。総理、お答えください。

 暗号資産などに対応した税制については、我が国が雑所得としての課税方式を取る中、世界では、既に、株式と同様、キャピタルゲイン課税となっており、国際競争上、不利となっています。国際金融市場における競争力の確保、ブロックチェーン技術の発展という観点からも、日本も先進各国と同様にキャピタルゲイン課税にすべきと考えますが、これを機に税制の改正を行っていくのか、総理、お答えください。

 ウクライナ情勢の影響もあり、世界的にインフレが加速し、各国の中央銀行が金利引上げを行う中、我が国は、GDPギャップを抱えており、金融緩和を継続せねばならず、結果として円安が進行しております。日米金利差は今後更に拡大していくことが予想されますが、この現状について、総理の認識をお答えください。

 関連して、我が国を取り巻く安全保障環境についてお伺いいたします。

 総理は、G7で、停戦交渉やウクライナの安全保障枠組みに中国を関与させようとするフランスやドイツに対して懸念を訴えたという報道がなされています。中国が、ロシアと同様、力による一方的な現状変更を試みていることを考えれば、総理の発言は当然のことです。

 二月二十四日のロシアのウクライナ侵略に乗じて、中国は、二月二十五日から一か月以上にわたり、機関砲らしきものを搭載した中国海警局の艦船を尖閣諸島周辺に航行させ、我が国に対する挑発を行っています。

 総理のそうしたG7での姿勢を国内外に毅然と公表することが肝要と思いますが、なぜそうした発言に関する記述が国会に提出されたG7首脳会談に関する報告にないのでしょうか。よもや、ロシアの侵略後も対ロ制裁に反対する立場を取り続けている中国に対して何らかの外交配慮をしていることはないとは思いますが、総理の答弁を求めます。

 報道によると、国連改革に関して、杉山前駐米大使が、改革しようとしても、拒否権という既得権益を持つ国がそれを手放すわけがない、それよりも、日本が中心となって、他国を巻き込み、第二の国連をつくる方が現実的だと語ったとのことです。

 今月一日の参議院本会議において、我が党の浅田均議員から、理事国や拒否権の在り方を抜本的に見直した第二国連のような組織を新設することも一つの選択肢ではないかと総理の見解を伺いましたが、総理は、即座に、第二国連のような新しい組織をつくることは考えていないと否定され、現在の枠組み内での国連安保理改革にリーダーシップを取っていくと答弁されました。

 新たな国際秩序の枠組みについては、あらゆる選択肢を排除せずに検討していくことが必要と考えますが、総理が第二国連のような組織を新設することについて即座に否定された理由について御答弁を願います。

 最後に、岸田総理が本年一月に行った施政方針演説において触れられた、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画、いわゆる戦略三文書の策定についてお尋ねいたします。

 今般のロシアの暴挙は、我が国の安全を脅かす軍事的挑発行為等への対処、平和維持のための国際的枠組みの発展及び国境警備などに関する我が国の主体的な取組を加速させる必要性、重要性を突きつけました。

 国家安全保障戦略については、二〇一三年に策定されてから初めての改定、防衛大綱、中期防衛力整備計画については、二〇一八年以来の改定となります。

 通常であれば、政府が予算案を策定する前の十二月中旬頃に策定されますが、通常国会は閉会されており、国会での実質的な審議が行われません。

 これから五年、十年レンジでの我が国の外交防衛戦略を決める重要な改定であると同時に、昨今の緊迫した状況において、文書の最終取りまとめを待つことなく、重要なものは前倒しで取組を行っていく必要性があることを考えれば、是非、今国会中に取りまとめの中間報告を国会に対して行っていただきたいと考えますが、総理の見解をお尋ねいたします。

 ロシアは北海道の権利を有する。先日、十年近く上院議長を務めたロシアのセルゲイ・ミロノフ議員が表明した言葉です。もちろん少数ではあると考えますが、ロシアの一部の政治家がこのような考えを持っているのは事実です。

 最も大事なことは、日本から戦争を少しでも遠ざけることです。自衛力強化のための防衛予算の増額について、そして、戦略三文書改定にかける総理の強い決意をお示しいただくことを求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤巻健太議員の御質問にお答えいたします。

 今回の関税暫定措置法の改正案の効果についてお尋ねがありました。

 今回の法改正は、国際社会と一致団結してロシアに対して厳しい措置を取るという我が国の意思を強く示すことに大きな意義があります。三月十一日のG7首脳声明を踏まえ、ロシアに対する関税についての最恵国待遇を迅速に撤回することといたしました。

 ロシアに対する制裁の効果については、輸出入禁止措置を含め、様々な措置と併せて、制裁全体の中で判断していくことが必要であると考えており、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、ロシアに対する国際的な経済制裁の実効性確保に努めてまいります。

 サハリン1、2や、ロシアが供給を停止した場合の対応についてお尋ねがありました。

 サハリン1、2は、単なる資源の売買を通じたビジネスとしてではなく、自国で権益を有し、原油やLNGの長期かつ安価な安定供給に貢献しており、国民生活や事業活動にとって重要なため、今後も権益を保有してまいります。

 こうした我が国の対応にロシアがどう反応するか、予断することは控えますが、我が国として、エネルギー安定供給を確保しつつ、G7首脳声明に従い、石炭の禁輸や石油を含むエネルギーのロシア依存度の低減に取り組んでまいります。

 一方で、G7を始めとする国際社会が対ロ制裁を更に強化していることを踏まえれば、ロシアがエネルギー供給を止めるという不測の事態も想定し、官民挙げて万全の対策を取ってまいります。

 とりわけ、LNGについては、今後、LNGの事業者間の融通に加えて、機動的な電力の広域融通なども組み合わせることで、エネルギー全体での安定供給の確保に向けて万全を期してまいります。

 FATF第四次対日審査の結果と対応についてお尋ねがありました。

 FATFは暗号資産に関する国際基準の見直しを行ってきましたが、我が国は、基準の見直しが行われる前から、国内の関連法制を整備し、暗号資産交換業者に登録制を導入して、顧客の本人確認義務等を課すとともに、マネロン対策等の実施状況の検査監督の対象としてまいりました。

 FATF第四次対日審査では、こうした点について評価された一方、銀行等に対して制裁対象者へ送金を行わないことなどを求めるFATF勧告の要請について、暗号資産交換業者にはその義務が課されていない等の指摘がなされたところです。

 今般の外為法改正は、こうした対日審査での指摘を踏まえつつ、三月十一日のG7首脳声明を受けて、金融制裁の実効性の更なる強化を図る観点から、速やかに講ずべき措置について対応するものです。

 FATF勧告に対しては、暗号資産取引に関する事項以外の指摘も含め、関係省庁で構成するマネロン対策等のための政策会議において、二〇二四年春までに実施する行動計画を策定し、今般の法改正以外についても法整備を速やかに検討し、所要の措置を講ずることとしております。

 そして、暗号資産取引の規制等についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、暗号資産がマネロンやテロ資金に活用されないようにするためには、いわゆるトラベルルールが重要であり、二〇一九年にはFATFからも勧告されています。これを受けて、我が国では、本年四月より、暗号資産交換業者において、同ルールの導入に向け、試行的に一部取組が開始されているところです。

 トラベルルールの実施も含めたマネロン、テロ資金対策は、ロシアによる侵略とは関係なく実施していく必要があるものと認識しておりますが、今般の外為法改正は、暗号資産が制裁の抜け道として悪用されないようにするため、三月十一日のG7首脳声明を受けて、緊急に対応が必要な措置について早急に国会に提出したものです。

 他方、暗号資産の取引の実態については、暗号資産交換業者を介さない取引を含め、把握が困難な場合もあるところであり、自由な金融活動や技術の発展を阻害することがないよう留意しつつ、関連業者とも調整しながら、FATF勧告を踏まえたトラベルルールの義務化など、適切な対応を検討してまいります。

 暗号資産の課税方式についてお尋ねがありました。

 暗号資産の取引への課税については、御指摘のとおり、分離課税としている国もあれば総合課税を行っている国もあると承知をしており、そうした国際的な動向や国内の所得税制全体の中でのバランスを踏まえた丁寧な検討が必要であると考えております。

 円安と日米の金利差に関する認識についてお尋ねがありました。

 欧米の中央銀行において金融緩和の見直しの動きがあることは承知しておりますが、各国の金融政策は、それぞれの国の経済、物価、金融情勢に応じて実施されるものと理解しております。日米金利差は様々な要因により決まるものであり、今後の見通し等について一概に申し上げることは困難ですが、日本銀行には、引き続き、二%の物価安定目標の実現に向けて、適切に金融政策運営が行われることを期待しています。

 また、為替の水準等についてコメントすることは差し控えますが、為替の安定は重要であり、急速な変動は好ましくないと考えております。政府としても、引き続き、様々な金融経済動向を総合的に勘案しながら、経済財政運営に万全を期してまいります。

 G7首脳会合における中国に関する議論についてお尋ねがありました。

 G7首脳会合で各国首脳とは様々な課題について率直な議論を交わしておりますが、そうしたやり取りについては公表しないこととされています。今回の国会報告は、こうしたG7の慣例も踏まえつつ、先般のG7首脳会合の結果を国会に対してできる限り報告したものであり、中国に外交配慮をしたものではありません。

 我が国として、引き続き、中国に対しても責任ある行動を呼びかけていく考えであり、G7を始めとした関係国と緊密に対応してまいります。

 第二国連のような組織についてお尋ねがありました。

 国連安保理改革については、我が国は、長年、その改革の必要性を訴え、積極的に活動してきているところです。

 同時に、現在の国連が一定の役割を果たしていることにも留意をしています。例えば、ウクライナに対する人道支援の実施には国連の存在は不可欠です。また、法の支配の確立、人権、開発といった幅広い分野での活動についても、重要な役割を果たしています。

 また、百九十三の加盟国のうち多数を占める中小国や途上国が、こうした国連の役割に引き続き大きな期待を持っていることも認識をしています。

 このような認識の下、まずは、今ある国連の改革が重要であり、御指摘の第二国連のような新たな組織をつくることは考えていない旨答弁したところです。同時に、新たな国際秩序の枠組みを模索し、同盟国、同志国との連携を更に深めるため、様々な取組は進めてまいりたいと考えております。

 新たな国家安全保障戦略等についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略は言うまでもなく、我が国を取り巻く安全保障環境はこれまで以上に急速に厳しさを増しています。

 こうした中で、新たな国家安全保障戦略等は、中長期的な視点から基本方針を定めるものであると同時に、重要な課題については早急に取り組むべきであることは、議員と同じ認識であります。国家安全保障戦略等の検討については、様々な機会に、国民の皆様にも、また国会においても、できるだけ丁寧に説明をしていきたいと考えております。

 そして、我が国の領土、領海、領空、国民の生命と財産を断固として守り抜くため、あらゆる選択肢を排除せず検討し、新たな国家安全保障戦略等を策定するとともに、防衛力を抜本的に強化していきたいと考えます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 中川宏昌君。

    〔中川宏昌君登壇〕

中川宏昌君 公明党の中川宏昌です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案に対して質問をいたします。(拍手)

 ロシアによるウクライナへの侵略から約一か月半、この間にお亡くなりになられた全ての方に対し哀悼の誠をささげるとともに、一日も早くウクライナに平和が戻るよう強く願います。

 ウクライナの必死の抗戦でロシア軍の苦戦も伝えられ、停戦協議も始まっておりますが、ロシアの蛮行は一向に収まらないどころか、一般市民を虐殺するという残虐で非道な行為の疑いがあり、戦争犯罪であり、ジェノサイドというべきもので、厳しく非難しなければなりません。

 今回の暴挙は、国際社会が長年築き上げてきた、力ではなくルールに基づく国際秩序を大国自らが覆すという、許されざる出来事です。ロシアに対し、即時停戦と撤退を強く求めるものであります。

 日本を始め国際社会は、ロシアに対し決然と対峙することを常に示し、結束して対応していかなければなりません。

 公明党としても、引き続き、政府、自治体と緊密に連携を取りながら、避難民の受入れや人道支援等に全力で取り組んでまいります。

 初めに、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について伺います。

 ロシアの最恵国待遇を撤回する措置は、国際社会におけるロシアの最恵国としての地位を否定し、我が国の姿勢を明確にする観点から必要な措置であり、速やかに実行するべきものと考えます。

 また、本改正案では、対象国や期間を政令で定め、今後の情勢に応じて柔軟かつ迅速に変更することが可能となっている点を評価いたします。

 対象国はロシア、期間は施行から令和五年三月三十一日までと定めることとしておりますが、例えば、ロシアが原産国名を偽って協力国を迂回して貿易をするような、いわゆる抜け道も考えられます。そうした潜脱行為が行われないよう、各国と連携をして迂回防止に努めていただくとともに、仮にそうした事実が明らかになった場合には、速やかに対象国を追加するなど、制裁措置の実効性を確保するための取組をお願いしたいと思いますが、岸田総理に答弁を求めます。

 今回の制裁措置によって、魚介類や木材等の関税率の引上げが行われ、年間約四十億円の税収増になると財務省は試算をしております。しかし、これはそのまま日本国内の輸入業者にとっての負担増となります。既に原油高騰に伴う原材料や輸送費などが上昇する中で、今回の措置によって輸入価格が更に高騰することが想定をされ、大きな影響が出ると考えられます。

 さらに、四月六日、ロシア財務省は、四月四日に支払い期限を迎えたドル建て国債の利払いと元本償還について、ロシアの自国通貨であるルーブルで送金したと発表しました。ロシアは、外貨の獲得ができず、今後、様々な場面で、ロシアと商取引をしている日本企業に対し、ルーブルでの決済を求めてくる可能性があります。その状況に至った場合は、機動的、迅速な支援をお願いしたいと思います。

 そこで、今回の措置によって我が国の事業者や家計にどの程度の影響が出ると見ているのか、また、それに対する対応策をどのように検討しておられるのか、岸田総理の答弁を求めます。

 次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 本法案の目的は、暗号資産が金融制裁の抜け穴として悪用されないよう、暗号資産に関する取引を資本取引規制の対象とし、暗号資産交換業者に対して制裁対象者への移転でないことを事前に確認する義務を課すものとされ、趣旨は理解できます。

 日本を始め世界の金融機関のシステムにおいては、現金の移転については事前の確認ができますが、これは、金融機関が中央集権型のシステムですのでチェックが可能であります。一方、暗号資産が取引をされる仮想空間は、ブロックチェーン技術を用いた分散型のシステムであり、この分散型のシステムの中で暗号資産の取引の実態をつかむのは難しいと言われております。

 今回の法改正で、暗号資産が金融制裁の抜け穴として悪用されないようにするために、どのように実効性のある取組をされていくのか、財務大臣に答弁を求めます。

 近年、世界中で、暗号資産を始め、様々な対象にサイバー攻撃が行われており、我が国においても、この数年、激増をしております。

 一般社団法人JPCERTの調査によれば、今年二月からマルウェア感染が急速に拡大していることが報告をされ、先月には、大手自動車メーカーの取引先企業がサイバー攻撃を受け、工場全体が操業停止に追い込まれるという事案も起こりました。

 また、経済産業省のアンケート調査によれば、大企業、中堅企業の五社に一社が、サプライチェーンである中小企業の取引先等を経由したサイバー攻撃被害の経験があると答えており、中小企業のサイバーセキュリティー対策が急務であると考えます。

 経済産業省は、毎月少額でサイバーセキュリティー対策に不可欠な各種サービスを受けることができるサイバーセキュリティお助け隊サービスを実施しており、この活用を推奨しておりますが、こうした制度を更に周知するとともに、幅広い中小企業への意識啓発に努めていただきたいと思います。

 そこで、攻撃を受ける可能性が高いサプライチェーン全体のサイバーセキュリティー対策を早急に進めるべきと考えますが、岸田総理に答弁を求めます。

 日本は、このコロナ禍で、油断することなく感染対策を行い、生活、医療そして企業支援を続けるとともに、急騰している原油、エネルギー等の資源価格や資材の高騰に迅速に対応することが不可欠です。加えて、急変する世界的な外交、社会経済の変化に対して、その構造変化を看取し、時間軸を持っての対応を考えていかなくてはなりません。

 ロシアに対しては、国際社会は更なる追加制裁を相次いで表明し、岸田総理も追加制裁を表明いたしました。

 一方、ロシアは、四月六日に、日本への報復を検討していると明かしました。今このときを岸田総理の言われている戦後最大の危機と真っ正面から捉え、万全の備えを講じておくことが政治の責務であります。

 岸田総理の更なるリーダーシップでこの難局を乗り越えていくことを期待し、公明党として内外の諸課題解決に全力で取り組む決意を申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中川宏昌議員の御質問にお答えいたします。

 関税上の制裁措置の実効性確保のための取組についてお尋ねがありました。

 御指摘のような、ロシアを原産地とする貨物が第三国を迂回して輸入されるおそれに対しては、税関の審査や検査の際に、契約書等の関係書類、貨物の表記、原産地証明書等に基づき、輸入貨物の原産地を厳格に確認することとしております。また、仮に迂回の事実が明らかになった場合には、厳正に対処してまいります。

 引き続き、税関当局間の協力を含め、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をし、制裁の実効性の確保に万全を期してまいります。

 今回の関税上の措置の影響と対応策についてお尋ねがありました。

 今回の法改正により、例えば、魚介類や木材の一部の品目について、WTO協定税率に代わり国内法に基づく関税率が適用されることにより、関税率が数%程度引き上がることになります。

 この措置自体による影響は限定的であると考えますが、この影響を含め、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる影響全般について、今後とも注視をしてまいります。

 ウクライナ情勢に伴う原油価格、物価高騰等への対応については、先般、総合緊急対策の策定を指示したところであり、政府として、直面する危機に緊急かつ機動的に対応し、影響を受ける方々に必要な支援が行き届くよう、与党とも十分連携をしながら、具体的な対策を取りまとめてまいります。

 サイバーセキュリティー対策についてお尋ねがありました。

 昨今の情勢を踏まえてサイバー攻撃のリスクが高まっており、製造業など、日本企業を対象とする複数のサイバー攻撃が確認されていると承知をしております。

 これらのサイバー攻撃の中には、中小企業等、サプライチェーンの中でセキュリティーが脆弱な部分を狙ったものが多く、その対策は喫緊の課題です。

 このため、政府としては、中小企業を含むサプライチェーン全体でのセキュリティー強化に向けて、業種別のガイドラインの策定や、地銀と連携した中小企業の意識啓発などに取り組みます。また、中小企業のセキュリティー対策を支援するサイバーセキュリティお助け隊サービスを導入する企業をIT導入補助金の優先採択の対象とするなど、更なる普及に取り組んでまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 中川宏昌議員の御質問にお答え申し上げます。

 外為法改正の実効性確保についてお尋ねがありました。

 今般の外為法の改正は、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、制裁の実効性の更なる強化を図るものであります。

 その実効性確保のため、暗号資産交換業者に対して、今般の法改正の内容を速やかに周知徹底するよう努めるとともに、必要に応じて立入検査や報告徴求等を行うことで、確認義務の適切な履行を図ってまいります。

 また、令和四年度においても、経済安全保障やマネロン対策等のための定員を大幅に拡充しておりますが、規制の実効性を確保すべく、引き続き、体制整備も図りつつ、しっかりと臨んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 鈴木敦君。

    〔鈴木敦君登壇〕

鈴木敦君 国民民主党の鈴木敦です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)

 質問に先立ち、ロシアのウクライナ侵略に対して最も強い言葉で非難するとともに、ウクライナの方々にお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 ウクライナでは、無辜の市民が残虐に殺害される戦争犯罪が行われ、また、現在も継続しています。憤りを禁じ得ません。

 同時に、我が国にとっても許し難いことがかつての旧ソ連、今のロシアで行われたことを我々は忘れてはなりません。いわゆるシベリア抑留です。第二次大戦後、五十万人以上の我が国国民が旧ソ連により捕らわれ、奴隷的強制労働を強いられました。シベリアの極寒の地で、満足な食事や休養も与えられず、五万人以上もの国民の命が奪われました。このような国際法違反の非人道的行為を将来再発させないためにも、後世に伝承し、風化させてはなりません。

 岸田総理は、シベリア抑留についてどのような思いをお持ちでしょうか。シベリア抑留に関する今後の政府の広報活動についても併せて伺います。

 ロシアのウクライナ侵略により、エネルギーや食料等の価格が上昇し、円相場の下落も国民の負担となっています。本法案による関税率の引上げは、輸入者の負担を増加させ、価格転嫁を通して事業者や消費者に直接影響を及ぼします。関税率引上げの影響について、総理にお伺いします。

 また、現下の状況に鑑み、国民民主党でも緊急総合対策を策定いたしましたが、政府の経済対策についても併せてお伺いいたします。

 本法案により暗号資産に係る規制が強化されますが、先ほどもありましたように、暗号資産は分散処理される特性から、本人確認と結びつかず、実態把握が困難との指摘があります。規制強化の実効性について、財務大臣にお伺いします。

 ウクライナ侵略は、中長期的に、我が国の外交、経済、安全保障にも多大な影響を与えます。特に、中国の動向を注視しなければなりません。西側諸国が依存度を下げていくロシア産の資源、エネルギーの獲得に中国が動くことは容易に想像できます。中国が狙うのは、ロシアに対する経済的な影響力を増大させ、中国の意向を無視できない程度にコントロールすることではないでしょうか。中長期的な中国のロシアに対する影響力拡大について、総理の認識をお伺いします。

 中国は、債務のわなを伴う経済協力などにより途上国に対する影響力を強め、さらには、ポスト・ウクライナ戦争を見据えながらロシアをも取り込み、資源、エネルギー、食料などを自給できる経済圏の構築も視野に入れていると考えるべきです。

 一方、基軸通貨ドルへの依存度を下げることは、西側諸国の制裁の効果をそぐことにつながります。ロシアは、クリミア半島併合以降、外貨準備に占めるドルの割合を下げる代わりに人民元を大きく増やし、中国も、九〇年代以降、外貨準備のドルの比率を約八割から六割まで徐々に引き下げています。また、IMFによれば、各国政府や中央銀行の外貨準備に占めるドルの比率は、この二十年余りで一〇%以上低下しています。

 基軸通貨ドルの優越的地位の将来見通しと、ドルへの依存度低下が制裁の効果に与える影響、また、通貨システムが中長期的にドルと人民元に分散化、ブロック化していくかについて、総理の御見解を伺います。

 デジタル人民元は、決済においてSWIFTを介す必要がないとされます。自らの通貨で経済圏を広げていくことで、制裁の影響を減衰させることができます。中国は、一帯一路などを活用し、デジタル人民元を途上国を中心に広め、今すぐには無理としても、中長期的には決済のサプライチェーンを構築することで、制裁の影響を受けない独自の国際決済網の構築も視野に入れていると思われます。

 また、デジタル人民元を決済で使用すれば、払う側、受ける側、動いた金額等、決済情報が瞬時に中国当局に把握されることを意味します。中国は、これらの情報を統合、分析し、外交、安全保障など様々な戦略に活用できることになります。

 将来的なデジタル人民元決済網の拡散が西側諸国の制裁及び経済安全保障に与える影響について、また、デジタル人民元拡散に対する対処方針について、総理にお伺いします。

 昨今、日本、EUがロシア産石炭の禁輸に踏み切るなど、一段と制裁が強化されつつあります。

 しかし、我々は、八十年余り前の出来事を忘れ去ることはできないのであります。すなわち、当時の我が国政府は、国際社会から石油、金属などの禁輸を始めとしたありとあらゆる制裁を受け、国際連盟からの再三の非難にも耳をかさず、あるいはこれを脱退した結果、南太平洋を始めとするアジア全域に戦火を広げました。その後、我が国は、残虐極まる原子爆弾の投下を二度も受け、結果として数百万の同胞を失い、戦後しばらくにわたって国民に惨たんたる貧困生活を強いた上、北方領土を一方的に不法占拠されるに至りました。さらには、今現在に至るまで、祖先より受け継いだ国土の守りを一部外国軍隊に委ねなければならなくなったのです。

 我が国としては、ロシアによる国際法違反の残虐行為は人類に対する挑戦として毅然として対応するとしても、ロシアに対して、かような行動を取り続ければ、ロシアという国家だけでなく、そこに住む一億四千万の国民生活に多大な影響をもたらすということを我が国の過去の経験に照らしてしっかりと伝え、翻意を促すべきではないでしょうか。これが、我が国が取り得る、我が国独自の最も効果的な平和的外交手段であると考えますが、岸田総理の御見解を伺います。

 本法案はロシアに対する制裁の効果を高めることが目的ですが、ロシアに対してだけでなく、国際法に違反し、一方的な現状変更を試みようとするいかなる国に対しても、そのような行為を絶対に許すことはないとの強い意志を表明し、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 鈴木敦議員の御質問にお答えいたします。

 シベリア抑留についての私の思い、今後の政府の広報活動についてお尋ねがありました。

 いわゆるシベリア抑留は、人道上問題であるのみならず、当時の国際法に照らしても問題のある行為であったと認識をしております。

 このようなシベリア抑留者の方々の労苦について国民の理解を深めるための各種事業がこれまでも実施されてきておりますが、今後とも、国民の理解がより深まるよう、効果的な広報活動に努めてまいりたいと考えます。

 本法案による関税率引上げの影響と政府の経済対策についてお尋ねがありました。

 今回の法改正により、例えば、魚介類や木材の一部の品目について、WTO協定税率に代わり国内法に基づく関税率が適用されることにより、関税率が数%程度引き上がることとなります。

 この措置自体による影響は限定的であると考えますが、この影響を含め、ロシアによるウクライナ侵略をめぐる影響全般について、今後とも注視してまいります。

 ウクライナ情勢に伴う原油価格、物価高騰等への対応については、先般、総合緊急対策の策定を指示したところであり、政府として、直面する危機に緊急かつ機動的に対応し、影響を受ける方々に必要な支援が行き届くよう、具体的な対策を取りまとめてまいります。

 中長期的な中国のロシアに対する経済面での影響力の拡大についてお尋ねがありました。

 中国とロシアは、近年、緊密な関係を維持し、エネルギー分野を始めとした経済面での協力も緊密化していると承知をしております。

 こうした中ロ間の経済面での協力の緊密化が中長期的な中ロ関係に与える影響について、予断を持ってお答えすることは控えますが、我が国としては、中ロ関係について関心を持って注視してきており、引き続き、米国を始めとする関係国と連携しながら、適切に対応していきたいと考えております。

 国際通貨システムやデジタル人民元への対応についてお尋ねがありました。

 特定の通貨が基軸通貨となるためには、流動性、安全性の観点から、通貨としての高い利便性が必要であると考えております。米ドルについては、基軸通貨として広く国際的に利用されている一方、人民元については、資本規制等がその利便性に及ぼす影響等も踏まえて見ていく必要があります。

 将来的な見通しについて、予断を持ってお答えすることは困難ですが、こうした点も踏まえながら、今回の経済制裁の効果、経済安全保障への影響、さらには中長期的な国際通貨システムの在り方について、引き続きしっかりと状況を注視してまいります。

 その中で、デジタル人民元を含め、中央銀行デジタル通貨への対応については、昨年十月のG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、G7内外における検討に当たっての公共政策上の原則を策定したところであり、引き続き、中国等の動向を注視しつつ、G7や国際機関と連携しながら、国際通貨金融システムの安定等に向けて取り組んでまいります。

 ロシアに対する働きかけについてお尋ねがありました。

 さきの大戦における我が国の経験をロシアに伝えていくことが必ずしも有効であるとは考えませんが、いずれにせよ、一刻も早い停戦を実現し、ロシアによるウクライナ侵略をやめさせるためには、国際社会が結束して強固な制裁を講じていく、これが重要であると考えております。

 こうした考えの下、先週八日、我が国は、G7と連携して、ロシアに対し追加制裁を科し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を強化いたしました。

 引き続き、G7を始めとした関係国と連携して、日本が、そして国際社会がロシアによる暴挙を決して許さないこと、そして、日本がウクライナと共にあること、こうしたことを断固たる行動で示してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 鈴木敦議員の御質問にお答え申し上げます。

 外為法改正の実効性確保についてお尋ねがありました。

 今般の外為法の改正は、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されないよう、制裁の実効性の更なる強化を図るものであります。

 その実効性確保のため、暗号資産交換業者に対して、今般の法改正の内容を速やかに周知徹底するよう努めるとともに、必要に応じて立入検査や報告徴求等を行うことで、確認義務の適切な履行を図ってまいります。

 また、令和四年度においても、経済安全保障やマネロン対策等のための定員を大幅に拡充しておりますが、規制の実効性を確保すべく、引き続き、体制整備も図りつつ、しっかりと臨んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、関税暫定措置法と外為法の両改正案について、岸田総理に質問します。(拍手)

 報道やインターネットを通じ、リアルタイムで拡散されるロシア軍の残虐行為は、世界中の人々に深い衝撃を与え、国際社会を震撼させています。ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権と領土保全を侵害し、国連憲章に基づく世界の平和秩序を根底から揺るがすものであり、断じて許されません。

 病院や学校などの民間施設や原子力発電所への攻撃、ブチャなどで起きた一般市民の大量虐殺。音と映像で伝わる廃墟とその生々しい残骸に、恐怖と悲しみ、そして強い憤りを禁じ得ません。

 民間人や民間施設、原発への無差別攻撃は、国際人道法に違反する戦争犯罪であり、早急にこの卑劣な暴力行為をやめさせなければなりません。国連のグテレス事務総長は、独立した調査による事態解明の必要性を訴えています。

 総理、ロシアによる侵略と無差別攻撃を直ちにやめさせ、戦争犯罪の責任を追及するために、あらゆる外交努力を尽くすべきではありませんか。

 今重要なことは、ロシアは侵略をやめよ、国連憲章を守れの一点で、全世界の政府と市民が声を上げ、国際世論の力でロシアを包囲することです。同時に、国内外で避難を余儀なくされているウクライナの人々を全面的に支えることです。

 一千万人を超える避難民は、歴史上、類を見ない事態となっており、国際社会と日本の姿勢が問われています。ポーランドを始めウクライナ周辺国が受入れに全力を挙げていますが、世界がその荷を分かち合うことが必要です。

 ウクライナの人々が、遠い日本に対して、言葉や文化の違い、子供の教育や生活費などに不安を感じるのは当然です。国際機関や周辺国への資金提供を進めると同時に、政府の責任で、日本に安心して避難できる環境、条件をつくり、選択肢を提供することが必要ではないでしょうか。

 二度の世界大戦の教訓から、戦争の違法化、一般市民の保護の機運が高まり、国連憲章と国際人道法の発展に結実しました。その歴史の潮流の下で定められた平和憲法の精神を発揮し、非軍事の人道支援でリーダーシップを発揮することが日本の歴史的使命ではないでしょうか。

 本法案の背景にある強力な経済制裁は、世界経済と国際金融システムからロシアを孤立させるための重要な手段となります。一方で、原油、天然ガスなどエネルギー、食料品、肥料などの国際価格の高騰に拍車をかけ、コロナ禍で傷んだ世界経済を不安定化させる危険もはらんでいます。

 とりわけ、世界で最も脆弱な人々の食料入手を一層危機的な状況にさらしています。国連世界食糧計画、WFPは、二〇二二年は壊滅的な飢餓の年となり、三十八か国で四千四百万人が飢餓の瀬戸際に立たされると警告していました。ウクライナ危機で、更に危険性が高まっています。

 ロシアに対する経済制裁を実効性あるものにするためには、国際社会の協調が必要です。世界中の経済力の弱い人々への食料、燃料、肥料の安定供給に、総理はどのように取り組みますか。

 既に問題が深刻化している最貧国には速やかに支援を実施することが大事です。来週開催されるG20会合で、日本はどのような提言を行うのでしょうか。

 ロシアの最恵国待遇撤回は当然の措置です。同時に、影響を受ける国内産業への支援が必要です。日本の水産業では、カニやウニは品目別輸入金額でロシアが五割を占めており、水産物は輸入停滞で既に値上がりをし、今般の措置で更に輸入コストが上がります。政府はどのような対策を取るのですか。

 穀物、原油等の国際価格の高騰から国内食料品の価格の上昇を食い止めるためにも、小麦の売渡価格を引き下げるべきではありませんか。

 飼料、肥料などの価格高騰が生産者の経営を脅かし、既に廃業を決めた農家もいます。この上、水田活用交付金をカットすれば、農家を更に追い詰め、僅か三七%しかない食料自給率は更に下がることになります。交付金カットを中止し、今こそ食料自給率を抜本的に向上する農政への転換を求めるものであります。

 また、物価高騰の影響は個人消費を痛めつけます。欧州委員会は、加盟国に対し、低所得者対策として、付加価値税の減税をこのタイミングで推奨しました。日本も、生活困難と物価高騰に対して、消費税減税に踏み出すべきではありませんか。

 政府が追加政策として表明したロシア産石炭の輸入禁止は、経済制裁の強化のための必要な措置です。しかし、代替策として原発の最大限の活用を挙げていることは、東電福島第一原発事故の教訓を顧みないものであり、断じて容認できません。今取るべきは、脱石炭、原発ゼロ、再生可能エネルギーへの大胆な転換です。

 ところが、政府と大手電力会社は、東日本大震災以来、再エネ固定価格買取り制度で送電網の増強が求められていたのに、そのための投資をほとんど行ってきませんでした。原発最優先のルールの下で、九州電力では、二〇一八年十月以降、二百五十回近くも再エネ出力を抑制。さらに、今週四月十日から、四国電力と東北電力でも再エネの出力制御が実施されています。本末転倒ではありませんか。

 政府は、日本は自前の資源がないと言いますが、我が国には、太陽光、風力、水力、地熱など、自前で枯渇しない再エネ資源が豊富にあり、これを組み合わせて分散型電源に転換すれば、安定供給も確保できます。

 再生可能エネルギーへの投資を進め、エネルギー自給に大きく踏み出すことが、ロシア制裁にも力を発揮し、気候危機打開という世界的な課題にも貢献していくことになるのではありませんか。

 以上、答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 ロシアによる侵略と無差別攻撃を直ちにやめさせ、戦争犯罪の責任を追及するための外交努力についてお尋ねがありました。

 ロシアによる残虐で非人道的な行為が、キーウ近郊のブチャのみならず、ウクライナ各地で次々と明らかになってきています。多数の無辜の民間人の殺害は、重大な国際法違反であり、断じて許されない戦争犯罪です。

 ロシアは戦争犯罪の責任を厳しく問われなければなりません。我が国としても、戦争犯罪が行われたと考えられることを理由に、ウクライナの事態を国際刑事裁判所、ICCに付託しており、同裁判所の検察官による捜査の進展を期待しています。

 我が国は、議員御指摘のグテーレス国連事務総長が要請した独立した調査を支持しており、引き続き、国連を含む国際社会と緊密に連携しつつ、一般市民に対する武器の無差別使用を含むロシアによる侵略を直ちにやめさせ、戦争犯罪の責任を追及するための外交努力を続けてまいります。

 ウクライナ避難民の方々への受入れ後の支援及び人道支援分野でのリーダーシップの発揮の重要性についてお尋ねがありました。

 我が国へ受け入れた避難民の方々への支援については、官房長官を長とするウクライナ避難民対策連絡調整会議を司令塔として、ウクライナ避難民への一時滞在場所の提供や、生活費、医療費の支給、日本語教育、就労支援等、受入れ後の各場面に応じた具体的な支援策を政府として行うこととしており、四月十日までに五百三十人の避難民を受け入れました。

 避難民の受入れに協力したいとする多くの自治体や民間企業、団体の方々の御協力を得つつ、オール・ジャパンで、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいります。

 ウクライナ及び周辺国に向けた計二億ドルの緊急人道支援は、国際社会からも高く評価されています。我が国として、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携しつつ、人道支援分野でも積極的に役割を果たしてまいります。

 食料、燃料等の国際的な安定供給への対応についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略によって、エネルギーや食料等の国際価格が高騰しています。

 世界経済の安定を確保しつつ、経済制裁を実効性のあるものとするためには、エネルギー市場の安定や価格高騰の影響を最も受けやすい脆弱な国々に対する対応などが重要です。

 エネルギー市場を安定化させるため、先日、IEA加盟各国と協調し、日本として、IEAの割当て量の一・五倍の千五百万バレルの備蓄を放出することといたしました。日本として初めての国家備蓄の放出です。引き続き、日本としてできることにしっかりと取り組んでまいります。

 また、先般のG7首脳会合で合意されたように、G7と協調し、影響を受けている国々への支援を含め、エネルギー安全保障や食料安全保障の確保に取り組んでまいります。G20でも、こうした立場から、適切に対応してまいります。

 水産物や輸入小麦の価格上昇への対策、食料自給率の向上等についてお尋ねがありました。

 水産物や輸入小麦の価格上昇等に対しては、ウクライナ情勢を受け、先般、総合緊急対策の策定を指示したところであり、政府として、食料の安定供給対策を含め、直面する危機に緊急かつ機動的に対応するべく、具体的な対策を取りまとめてまいります。

 また、食料安全保障を確立していくためには、できる限り国内で生産していくことが必要であり、農林水産業の成長のための投資と改革を更に進め、国際情勢の変化や国際競争、そして災害にも負けない足腰の強い農林水産業を構築してまいります。

 この中で、水田転作への助成については、現場の課題を検証しながら、麦、大豆、野菜等の需要に応じた生産、販売を一層推進し、農家の所得向上と食料自給率の向上、これらを図ってまいりたいと考えております。

 消費税減税についてお尋ねがありました。

 消費税については、社会保障の財源として位置づけられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 ウクライナ情勢に伴う原油価格、物価高騰等への対応については、先般、困窮する方々の生活を守るための支援を含む総合緊急対策の策定を指示したところであり、政府として、直面する危機に緊急かつ機動的に対応し、影響を受ける方々に必要な支援が届くよう、具体的な対策を取りまとめてまいります。

 そして、再エネの出力抑制の是非や大胆なエネルギー転換についてお尋ねがありました。

 再エネの出力制御については、供給が需要を上回ると見込まれるときに、電力システム全体の安定供給を支えるべく、需給バランスを保つために行うものです。また、再エネ大量導入とレジリエンス向上のために、地域間連系線の増強を含む系統のバージョンアップや、再エネが優先的に基幹となる送電線を利用できるようルールの見直しを行うなど、再エネの普及を促進しているところです。

 今回のウクライナ情勢を踏まえれば、エネルギー自給率の向上は重要であり、洋上風力の推進なども含め、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、引き続き再エネの最大限の導入に取り組んでまいります。

 他方で、資源が乏しく、周囲を海で囲まれた我が国において、単一の完璧なエネルギー源がない現状では、多様なエネルギー源をバランスよく活用することがエネルギーの安定供給を確保する観点から重要であり、着実に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    金子 恭之君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣  

       国務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  末松 信介君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       財務副大臣   岡本 三成君


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