衆議院

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第20号 令和4年4月14日(木曜日)

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令和四年四月十四日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十五号

  令和四年四月十四日

    午後一時開議

 第一 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案(岡本あき子君外十二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、関税暫定措置法の一部を改正する法律案、日程第二、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長薗浦健太郎君。

    ―――――――――――――

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

 外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔薗浦健太郎君登壇〕

薗浦健太郎君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、関税暫定措置法の一部を改正する法律案は、最近における内外の情勢を踏まえ、国際関係の緊急時に特定の国を原産地とする物品に課する関税率の規定の整備を行うものであります。

 次に、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律案は、支払い規制及び資本取引規制をより一層効果的なものとするため、暗号資産に関する取引を資本取引規制の対象とする等の措置を講ずるものであります。

 両案は、去る四月十二日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、当委員会に付託され、同日鈴木財務大臣から趣旨の説明を聴取し、翌十三日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、順次採決いたしましたところ、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

山田賢司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(細田博之君) 山田賢司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

議長(細田博之君) 国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長山口俊一君。

    ―――――――――――――

 国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 ただいま議題となりました国会法及び国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、文書通信交通滞在費の名称を調査研究広報滞在費に改め、国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動を行うために支給することとするとともに、その支給を原則として日割りとするものであります。

 本法律案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案(岡本あき子君外十二名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案及び岡本あき子君外十二名提出、保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣後藤茂之君。

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) ただいま議題となりました児童福祉法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 児童相談所における児童虐待相談への対応件数が増加し、また、育児に対して困難や不安を抱える子育て世帯がこれまで以上に顕在化してきているなど、子育て世帯への支援の充実やそのための体制強化に取り組む必要があります。

 こうした状況を踏まえ、子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化等を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、子育て世帯等に対する包括的な支援のため、市町村は、地域における包括的な相談支援等を行うこども家庭センターの設置や身近な子育て支援の場における相談機関の整備に努めるとともに、支援を要する児童や妊産婦等に対する支援計画を作成することとしています。また、支援を要する児童や子育て世帯等に対して訪問支援等を行う家庭支援の事業を創設し、あわせて、市町村がその利用勧奨や措置を必要に応じて行う仕組みを設けるとともに、障害種別にかかわらず障害児を支援できるよう、児童発達支援の医療型と福祉型を一元化することとしています。

 第二に、児童や妊産婦等への支援の質の向上を図るため、都道府県が一時保護施設の設備運営基準を定め、その環境改善を図ることとしています。また、親子の再統合を図るための事業、困難を抱える妊産婦等に対して一時的な住居の提供等を行う事業を創設するとともに、里親支援センターを児童福祉施設に位置づけることとしています。

 第三に、社会的養護における措置解除者等や障害児入所施設の入所児童等に対する自立支援の強化を図るため、措置解除者等への自立支援を都道府県の業務に位置づけるとともに、児童自立生活援助の利用可能年齢の弾力化や、措置解除者等を支援する拠点を設置する事業の創設を行うほか、障害児入所施設の入所児童等の地域生活等への移行調整の責任主体を都道府県等とした上で、移行が困難である場合は、満二十三歳に達するまでの入所継続を可能とすることとしています。

 第四に、児童の権利擁護を図るため、児童相談所長等が一時保護や施設への入所措置等を行う場合においては、児童の最善の利益を考慮しつつ、その意見又は意向を勘案するよう、意見聴取等の措置を取らなければならないこととしています。また、児童の意見表明等を支援する事業を創設するとともに、児童の権利擁護のための環境整備を都道府県の業務に位置づけることとしています。

 第五に、児童相談所長等が行う一時保護の適正性を確保するため、一時保護を行うに当たっては、親権者等の同意がある場合等を除き、その開始から七日以内又は事前に裁判官に対して一時保護状を請求しなければならないこととする等の仕組みを創設することとしています。

 第六に、児童福祉の実務者の専門性の向上を図るため、児童福祉司の任用要件に、児童虐待等の専門的な対応を要する事項についての十分な知識や技術を有する者を追加することとしています。

 第七に、児童等にわいせつな行為を行った保育士の登録を取り消すこととするとともに、その再登録に当たって審査を行う仕組みを創設するなど、保育士資格の管理の厳格化を図るほか、認可外保育施設に対し事業停止命令等を行った場合には、その旨の公表や情報共有をすることができることとしています。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 提出者岡本あき子君。

    〔岡本あき子君登壇〕

岡本あき子君 立憲民主党の岡本あき子です。

 ただいま議題となりました保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案、いわゆる保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案につきまして、提出者を代表し、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 子供たちが健やかに成長できる社会を実現するためには、未就学期の子供に携わる保育、幼児教育等の従業者が特に重要な役割を担っております。しかし、保育士の賃金は全産業平均と比べて月額約八万円も低く、この処遇の低さが保育士不足に拍車をかけています。私たちは、以前から、保育等従業者の賃金を引き上げるための法案を提出し、その成立を求めてまいりました。

 私たちの再三にわたる提案を背景に、岸田政権は、保育士、幼稚園教諭などを対象に、常勤換算で月額九千円引き上げる措置を本年二月から行うこととしました。これは、処遇改善に向けた第一歩、前進であり、その点は評価いたしますが、支給金額、支給対象など、不十分な点があると言わざるを得ません。

 特に、保育士の家賃補助事業打切りの検討や減額する自治体もあり、これでは九千円上がっても手取りが減少する保育士が増えてしまいます。

 また、長引くコロナ禍において、感染対策を取ることが難しい環境の中で様々に工夫をしながら子供たちに向き合い、保育等の継続に尽力をされている現場の方々の負担は非常に大きいものになっています。

 こうした状況を踏まえ、私たちは、政府の措置に加えて更なる処遇改善を緊急に行う必要があると考え、本法律案を提出しました。

 次に、本法律案の概要を御説明いたします。

 第一に、保育等従業者の賃金を改善するための措置を講ずる保育事業者等に対し、その要する費用に充てるための助成金支給等を行うこととしております。これらの措置による賃金、給与改善の対象者は、保育所、幼稚園、認定こども園、地域型保育事業、認可外保育施設等の従業者とし、いずれも常勤換算で月額一万円の上昇を想定しております。

 第二に、国等は、保育、幼児教育等従業者の就業の継続、潜在保育士の再就職促進、業務に係る負担の軽減など、処遇の改善等に関し必要な施策を講ずることとしております。

 第三に、国は、児童養護施設等の従業者、放課後児童クラブ、放課後子供教室に従事する者、その他の社会的養護を含めた子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇改善のために必要な措置を講ずることとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要です。

 この処遇改善により優れた人材を確保することは、閣法の児童福祉法等改正案が目的としている子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化を実現するために必要不可欠なものと考えます。

 何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案(岡本あき子君外十二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。山田勝彦君。

    〔山田勝彦君登壇〕

山田勝彦君 立憲民主党の山田勝彦です。

 会派を代表し、政府提出の児童福祉法等の一部を改正する法律案並びに立憲民主党・無所属及び国民民主党・無所属クラブ共同提出の保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案について質疑をいたします。(拍手)

 いつの時代も、戦争で犠牲になるのは子供たちです。

 最後の被爆地である長崎で生まれ育った私は、原爆によって親戚を亡くしており、子供の頃から当たり前に平和教育を受けて育ってきました。

 今現在、二百万人を超えるウクライナの子供たちが国外へ避難を余儀なくされ、二百五十万人を超える子供たちが今なお国内避難民として不安と恐怖の日々を送っています。

 平和な日常や大切な人の命を奪う戦争が一日でも早く終わり、ウクライナに再び平和が訪れることを心より願います。

 そして、犠牲になられた全ての方々に対し、哀悼の意をささげます。

 改めて、国家の大きな役割は、戦争をしないことと国民を飢えさせないことではないでしょうか。

 子供の貧困についてです。

 行き過ぎた資本主義、いわゆる新自由主義的な政策を推進し続けた結果、お金持ちはよりお金持ちに、貧しい者はより貧しく、日本は格差と貧困が拡大しました。富の再分配機能を失った社会の中で、七人に一人の子供たちが貧困状態にあり、三食十分に御飯を食べられない子供たちが現実にいます。そのような社会環境の中、貧困で苦しむ子供たちへ温かい食事を提供する子供食堂が自発的に誕生し、全国各地に支援の輪が広がっていきました。改めて、関係者の皆様へ、心より敬意を表し、感謝を申し上げます。

 しかし、この子供食堂、このまま運営を寄附やボランティアに頼り続けていいのでしょうか。強い疑問を感じておりました。私たちの国で多くの子供たちが貧困に苦しんでいる責任はそもそも今の政治にあり、国から子供食堂に対し公的支援を行う必要があるのではないでしょうか。

 そこで、後藤厚生労働大臣にお伺いします。

 今や、子供食堂の役割は進化をし続け、食事の提供だけでなく、子供の安心して過ごせる居場所となっています。本改正案によって、児童の居場所づくりの支援とありますが、国から全国各地の子供食堂に対し、どのような支援が可能なのでしょうか。

 私自身、会社の仲間とともに、発達障害の子供たちの自立支援事業、放課後等デイサービスを長崎県内の各地域で運営しています。障害児支援の現場で子供たちから教わったことは、障害とは正確には個性であり特徴であるということ、そして、子供たちは無限の可能性を秘めているということです。

 しかしながら、発達障害の子供たちの多くは、学校でその個性や特徴を十分に理解してもらえず、お友達からいじめられたり、先生からはたくさん注意を受けたり、おうちに帰っても、他のきょうだい児に比べ親から叱られることが多く、現実的に自己肯定感が低くなりがちです。

 そこで、本改正案の児童の意見聴取などの仕組みの整備について、後藤大臣に伺います。

 発達障害に限らず、貧困や虐待など様々な事情を抱えた子供を人権侵害から保護するため、子供が意見を表明するための支援体制を整備しなければなりません。児童相談所などは、このような自己主張が苦手な子供の心の声にどのようにして耳を傾けるのでしょうか。

 続いて、本改正案の児童発達支援センターが地域における障害児支援の中核的役割を担うことの明確化についてお尋ねいたします。

 障害児支援政策の推進はとても大切なことです。各地域の児童発達支援センターの機能強化により、より質の高い専門的な療育サービスが提供されることで、子供たちの自己肯定感が高まり、コミュニケーション能力や社会性の向上が期待されます。

 しかし、現場では深刻な課題があります。発達障害を診断する専門の小児科医が不足しており、地域によっては診断を受けるのに半年以上待たされるケースが存在しています。これでは、必要な子供たちへ必要な支援を行うことがかないません。発達障害児の早期発見と早期療育のための基盤整備が急がれます。

 どのような具体策を講じ、課題解決を図られるのでしょうか。後藤大臣、教えてください。

 次に、本改正案の身近な子育て支援の場における相談機関の整備についてお尋ねします。

 新たに、身近な子育て支援の場として、保育所等を活用し地域子育て相談機関とすることとしていますが、保育士の人材確保は困難な状況にあります。その上で、業務負担が重い、業務に対して賃金が見合っていないという現場の声があります。この度の政府の月額九千円程度の改善ではまだまだ不十分であり、一層の改善が必要です。

 そこで、保育の質の向上に必要な三千億円を確実に確保し、一歳児、四歳児、五歳児それぞれの保育士配置基準の見直しを早急に進めることを求めます。後藤大臣、いかがでしょうか。

 関連して、立憲民主党と国民民主党が共同で提出した保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案について、法案提出者に伺います。

 保育士や幼稚園教諭などの方々に対し、政府の処遇改善に加え、月額一万円の処遇改善を行うための法案が衆議院に提出されています。今、政府が行っている保育士の処遇改善に上乗せし、更に処遇改善をする必要性を、保育現場や保護者の声を含め、お答えください。

 また、同法案の法案提出者に伺います。

 政府の処遇改善策では、コロナの影響の中で子供たちの命を預かっている責任や、他の産業の方々との平均年収の格差からしても、まだまだ不十分と言わざるを得ません。この法案は、予算措置にとどまる政府案と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。

 また、子育て支援の質の向上のためには、同じ職場で働く栄養士や調理師、事務職員などについても処遇改善が必要であると考えます。これらの方々へ、どのような措置を講ずるのでしょうか。

 続いて、本改正案の子供家庭福祉の実務者の専門性の向上について伺います。

 先日、私のところに、里親支援を行っている友人から相談を受けました。現場のケースワーカーさんたちが余りにも過酷な労働環境であり、相談業務が回っていない、子供たちに会いに現場に出てきてくれる日は休日を利用している、これはあんまりではないか、ケースワーカーの処遇改善がなければ子供たちの未来を守れない。現場の支援者の方がここまで気を遣い、そして気の毒に思うほどの児童相談所の労働環境のままでは、様々な境遇に置かれている子供たちを救うことはできません。また、その支援者の方は、専門性が求められる職種であるにもかかわらず、二年から三年で人事異動があり担当者が替わってしまう現状にも強い懸念を抱いておりました。

 急増する児童虐待相談数に対応するため、児童相談所の児童福祉司の配置基準を大幅に引き上げ、それに応じた財政措置を行い、児童福祉司を増員しなければなりません。政府は二〇一八年に増員目標を掲げ、増員が実現されておりますが、現場はいまだ深刻な人手不足です。また、専門的な資格を持った担当者が長く働ける環境を整える必要もあります。虐待から子供たちを守るため、重要かつ緊急の課題です。

 後藤大臣、今回の改正案によって、いつまでにどれくらいの人員を確保する目標なのでしょうか。そして、その専門性を持った児童福祉司をどのようにして職場に定着させていくのでしょうか。

 最後に、本改正案の児童をわいせつな行為から守る環境整備についてです。

 この四月一日から、児童福祉法の理念に反する深刻な問題が起こっています。具体的には、民法改正により成人年齢が十八歳に引き下げられたため、事実上、高校生AV出演が解禁され、現役高校生AVが既にこの二週間で販売が急増しています。十八歳からAV出演させるため、高校一、二年生から囲い込みが始まり、幼さや高校生を売りとしたAVが主流になることにより、更なる被害の低年齢化が懸念されます。

 後藤大臣、この現状は児童福祉法の理念に明らかに反するのではないでしょうか。この現状をどう思われますか。そして、どのような対策を取られるのでしょうか。

 続けて、後藤大臣へお伺いします。

 AV出演強要自体が性暴力である上に、強姦や強制わいせつ等の逮捕者の約三割がAVを見て影響を受けたとの調査結果があります。現役高校生AVがこのまま急増するのを放置していれば、児童福祉法改正案の児童をわいせつな行為から守る環境整備に明らかに反し、高校生や児童への性犯罪や性暴力が増えるとの深刻な懸念があるのではないでしょうか。

 次に、野田大臣にお伺いします。

 このように四月一日から十八歳の現役高校生AVが急増していますが、啓発や現行法による対応により、十八歳の現役高校生などの出演AVを防止することは可能と考えられるでしょうか。

 最後にもう一度、野田大臣にお尋ねします。

 この問題に対処するために、十八歳、十九歳のAV出演契約に臨時的に取消権を与える議員立法を超党派で成立させる協議が今行われている最中です。政府が法的対応をするまでの間、議員立法で対応することについて、男女共同参画担当の野田大臣の御所見をお聞かせください。

 以上、十一項目の質問や提案をいたしました。子供を守るのは大人の責任です。虐待や貧困から児童を守る改正案であること、また、AV出演強要から子供や若者を守る国会であることを強く願いまして、私の質疑を終わります。(拍手)

    〔国務大臣後藤茂之君登壇〕

国務大臣(後藤茂之君) 山田勝彦議員の御質問にお答えいたします。

 子供食堂についてお尋ねがありました。

 子供の食事の確保や子供たちが安心して過ごせる居場所を提供する観点から、子供食堂等の活動は大変有意義なものであると考えています。

 厚生労働省としては、令和三年度補正予算において、民間団体を通じて子供食堂等に対して支援を行うひとり親家庭等の子どもの食事等支援事業を実施しています。

 また、令和四年度においても、子供食堂等が活用可能な施策として、一人親家庭の子供に対する学習支援を行う子どもの生活・学習支援事業や、子育て支援を行う民間団体等が子供等の状況の把握や食事の提供等に要する経費を補助する支援対象児童等見守り強化事業などを実施しているところです。

 さらに、今般の児童福祉法改正案においては、市区町村のこども家庭センターが、地域において子育て支援を担う関係主体同士のネットワークを構築し、子供や子育て世帯が子供食堂等の支援に適切につながる環境の整備にも取り組むこととしています。

 引き続き、現場の御意見を伺いながら、子供食堂等の活動をしっかりと支援してまいります。

 子供の意見表明支援についてお尋ねがありました。

 今般の児童福祉法改正案においては、児童相談所等は、一時保護や入所措置を行うに当たっては子供の意見聴取を行うこととしておりますが、その際、子供の年齢、発達の状況等に応じて実施することとしています。

 このため、子供の属性や状態、抱える悩みは多様であることを踏まえ、弁護士、社会福祉士、NPOなど多様なバックグラウンドを持った意見表明等支援員による支援の仕組みを設けるとともに、その担い手の養成についても支援してまいります。

 これまで子供の意見表明支援に関するモデル事業を幾つかの自治体で実施してきており、その取組も踏まえながら、子供の態様に応じた意見聴取の仕組みの具体化を進めてまいります。

 発達障害の早期発見、早期療育のための体制整備についてお尋ねがありました。

 発達障害を早期に診断し、適切な支援につなげていくためにも、地域における診断待機の解消は重要な課題であると考えています。

 このため、医療機関に、診断前のアセスメントを実施できる医師以外の職員を配置することや、地域の児童発達支援センター等において、アセスメントや保護者へのカウンセリングを実施することなど、医療機関における速やかな診断のための取組を進めています。

 また、地域で発達障害を専門的に診療可能な医療機関を広げるため、発達障害の診療、支援ができる医師の養成のための実地研修の実施や、地域の拠点となる医療機関への研修実施のコーディネートを行う職員の配置等の取組を進めています。

 今後とも、このような取組を通じて、発達障害の早期発見、早期療育のための体制整備に努めてまいります。

 保育士の処遇改善と配置基準の見直しについてお尋ねがありました。

 保育士等の処遇改善については、昨年十一月の経済対策を受けて、令和三年度補正予算及び令和四年度予算において、本年二月から、収入を三%程度、月額九千円程度引き上げるための措置を実施するための予算を盛り込んでいるところです。

 また、配置基準の改善については、これまでも、子ども・子育て支援の質の向上のメニューとして、平成二十七年度より、三歳児に対する保育士の配置を二十対一から十五対一とする改善等を実施してきたところでありますが、いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項に含まれる一歳児や四、五歳児の配置改善については未実施となっており、これらの実施について、引き続き、内閣府と連携して財源の確保に努めてまいります。

 児童福祉司の増員と定着についてお尋ねがありました。

 児童相談所の虐待相談対応件数が約二十万件と増加する中、児童相談所の体制強化は喫緊の課題です。

 児童福祉司については、関係省庁で策定したプランに基づき計画的に増員をしてきており、令和四年度には、当初の目標から更に五百五人増員し、約五千七百六十五人の体制とすることを目標としております。

 また、児童福祉司の定着に向けては、今般の児童福祉法改正案に基づき創設される認定資格の活用や研修の充実等により、そのキャリアアップを図ってまいります。

 引き続き、児童相談所の質、量双方の体制強化にしっかり取り組んでまいります。

 性犯罪被害の低年齢化の懸念と児童福祉法の理念についてお尋ねがありました。

 そもそも、アダルトビデオへの出演の強要や性暴力は、あってはならない重大な人権侵害であり、政府一丸となって対応すべき課題と認識しています。また、こうした性暴力が十八歳未満の児童を対象としたものであれば、児童の健全育成といった児童福祉法の理念からいっても許されるものではないと考えています。

 厚生労働省としても、内閣府を中心とした若年層の性暴力被害の防止に関する取組に協力しており、引き続き適切に対応してまいります。

 若年層に対する性犯罪や性暴力の増加の懸念についてお尋ねがありました。

 若年層への性暴力被害が深刻化するのではないかという大変大きな懸念については、私としても共有しております。

 先ほども申し上げたとおり、アダルトビデオへの出演の強要や性暴力は、あってはならない重大な人権侵害であり、政府一丸となって対応すべき課題と認識しています。厚生労働省として、内閣府を中心とした性暴力被害の防止に関する取組に協力しており、引き続き適切に対応してまいります。(拍手)

    〔国務大臣野田聖子君登壇〕

国務大臣(野田聖子君) 十八歳のアダルトビデオ出演に関する被害の問題についてお尋ねがありました。

 アダルトビデオへの出演に関する被害の問題は、被害者の心身や私生活に長期間にわたって悪影響を与える重大な人権侵害であり、あってはならないことです。

 このため、まず、行政府としてできることは全てやるという観点から、三月三十一日、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する関係府省対策会議を開催し、「アダルトビデオ」出演強要問題緊急対策パッケージを決定いたしました。

 このパッケージは二つの柱から成っており、一つ目は、若年層に向けた教育、広報、啓発等の強化、二つ目は、被害者保護に係る各種法制度の運用強化等です。

 このパッケージに基づき、引き続き、アダルトビデオ出演に関する被害の問題の根絶に向け、関係省庁と連携して、しっかり取り組んでまいります。

 次に、アダルトビデオ出演に関する被害の問題に関して議員立法で対応することについてのお尋ねがありました。

 昨日、与党において、AV出演被害防止に関するPTが立ち上がり、立法措置の基本的考え方が公表されたと承知しております。

 このように、現在、各党の皆様の間でその御議論の動きもあると承知しております。その内容、御議論の状況をよく見守りたいと考えております。(拍手)

    〔吉田はるみ君登壇〕

吉田はるみ君 山田議員の質問に対して、更なる処遇改善の必要性を、保育現場や保護者の生の声、実情を交えてお答えします。

 長引くコロナ禍で、保育の現場は疲弊しています。感染対策の業務増はもちろんのことですが、元々慢性的な人手不足に悩まされている中、コロナ禍が追い打ちをかけました。保育士さんに一人でも感染者、濃厚接触者が出た途端に勤務シフトが崩れてしまう、まさに綱渡りの状況です。コロナ禍になり三年目、業務増に低待遇、子育て現場の皆様は心身共に限界に来ています。

 このような声をいただきました。男性保育士の声です。子供たちに感染させないよう慎重な行動をしなければならないという責任感があります、そのため、旅行はおろか、家族の法事があっても実家に帰省できない、GoToトラベルやワクワク割なんて別世界の話に思えます。大変切実な声です。

 この言葉を御存じでしょうか、片手飯。これは、片手でお子様のお昼寝のために背中をとんとんして寝かしつけ、もう片方の手で素早くお昼御飯を食べることです。片手飯、これだけ現場は厳しい環境に置かれています。

 加えて、保護者の不安も増大しています。保護者同士がLINEでつながり、コミュニケーションすることを禁止する保育園の運営者もいます。なぜでしょうか。それは、保護者が団結し、保育園にクレームを上げられては困る、また、保護者間のトラブルに巻き込まれることを恐れるからです。慢性的な人手不足により運営はいっぱいいっぱいなのに、これ以上面倒が増えてはお手上げだということです。

 この深刻な状況を解決するためには、業務負担が重く長時間労働、それに対して待遇が低いという保育士の処遇を更に改善するしかありません。もう先延ばしはできません。

 私たちの大切な宝である子供たちを預けているのが、保育園、幼稚園、そのほか全ての子供たちの保育の現場です。そこで働く方々の処遇改善は子供たちが大切に育てられるための絶対条件と考え、今回の政府の処遇改善だけでは不十分であり、本法案を提出するものです。(拍手)

    〔田中健君登壇〕

田中健君 山田勝彦議員から、保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案は政府案と比較してどのような特色を有するのかについて、また、本法案では保育施設等で勤務する栄養士や調理師、事務職員等の方々の処遇改善に関しどのような措置が講じられているのかについてのお尋ねがありました。

 まず、山田議員から御指摘をいただきましたように、本法案の提出者といたしましても、子供が健やかに成長することのできる社会を実現するために保育所や幼稚園等で働く皆様が果たしている役割の重要性に鑑みれば、今回、政府が講ずることとした月額九千円相当の賃上げ、賃金引上げという単発の予算措置は全く不十分であると考えております。

 このような政府による予算措置と比較して、我々が提出した保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案は、政府が講ずる予算措置に加え、一人当たり月額一万円の賃金の引上げを、優れた人材の確保に支障がなくなるまでの間、恒久的な措置として講じようとするものであり、単発の予算措置にすぎない政府の措置とは全く異なるものであると認識をしております。

 また、本法案では、賃金の引上げにとどまらず、保育所や幼稚園等で働く皆様の就業の継続、情報通信技術の活用等による業務負担の軽減、資質の向上等の様々な施策についても定めており、これらをトータルで実施することで、賃金に限られない、保育所や幼稚園等で働く皆様の処遇全般を改善することにより、優れた人材を確保し、もって子ども・子育て支援の水準の向上を目指すこととしております。

 このような措置の対象となるのは、保育士や幼稚園教諭の方々に限られません。提出者といたしましては、子ども・子育て支援の水準の向上のためには、同じ保育施設等で勤務する仲間である栄養士や調理師、事務職員といった方々についての処遇改善も不可欠であると考えており、本法案で規定する賃金の引上げを始めとする様々な措置の対象には、これらの方々も当然に含まれることになります。

 以上のように、本法案は、保育所や幼稚園等で働く優れた人材を確保し、子ども・子育て支援の水準を向上させるために必要な施策をトータルでまとめたものであり、子供が健やかに成長することができる社会の実現のために不可欠なものであると考えております。

 私も、息子が幼稚園に通っております。子供の命を預かる責務とともに、コロナ禍の中でも園を休ませてはならない、また、感染を広げてはならないと懸命に頑張っている保育士、幼稚園教諭及び関係者の姿を目の当たりにしてまいりました。

 是非、野田大臣、また後藤大臣にも御理解をいただき、子育て環境の充実を皆で前に進めていきたいと思います。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣    鈴木 俊一君

       厚生労働大臣  後藤 茂之君

       国務大臣    野田 聖子君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣 佐藤 英道君


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