衆議院

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第22号 令和4年4月21日(木曜日)

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令和四年四月二十一日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  令和四年四月二十一日

    午後一時開議

 第一 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)

 第三 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)

 日程第三 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出)並びに刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。消費者問題に関する特別委員長松島みどり君。

    ―――――――――――――

 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔松島みどり君登壇〕

松島みどり君 ただいま議題となりました法律案につきまして、消費者問題に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を更に図るため、契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる類型を追加する等の措置を講じるとともに、被害回復裁判手続の対象となる損害の範囲を拡大する等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月二十五日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、二十九日若宮健嗣国務大臣から趣旨の説明を聴取し、四月七日質疑に入り、十二日参考人から意見聴取を行い、十九日質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 情報通信行政の改革の推進に関する法律案(中司宏君外二名提出)

 日程第三 電波法及び放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、中司宏君外二名提出、情報通信行政の改革の推進に関する法律案、日程第三、内閣提出、電波法及び放送法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 情報通信行政の改革の推進に関する法律案及び同報告書

 電波法及び放送法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました両案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の電波法及び放送法の一部を改正する法律案は、電波の公平かつ能率的な利用を促進するため、電波監理審議会の機能強化、携帯電話等の特定基地局の開設指針の制定に関する制度の整備、電波利用料制度の見直し等を行うほか、近年の放送を取り巻く環境の変化等を踏まえ、基幹放送の業務に係る認定申請書等の記載事項に外国人等が占める議決権の割合等を追加し、その変更を届出義務の対象に追加するなど情報通信分野の外資規制の見直しを行うとともに、日本放送協会の受信料の適正かつ公平な負担を図るための還元目的積立金の制度を整備する等の措置を講じようとするものであります。

 次に、中司宏君外二名提出の情報通信行政の改革の推進に関する法律案は、電波の有効利用の促進並びに行政運営の透明性及び公正性の確保を図ることが喫緊の課題となっていることに鑑み、これらの課題に対処するため、情報通信行政の改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、情報通信行政の改革を迅速かつ着実に推進することを目的とするものであります。

 両案は、去る四月七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、十二日両案それぞれ提出者より趣旨の説明を聴取した後、十四日及び十九日に両案について質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、順次採決いたしましたところ、中司宏君外二名提出の情報通信行政の改革の推進に関する法律案は賛成少数をもって否決すべきものと決し、内閣提出の電波法及び放送法の一部を改正する法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、内閣提出の電波法及び放送法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二、中司宏君外二名提出、情報通信行政の改革の推進に関する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第三、内閣提出、電波法及び放送法の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長中根一幸君。

    ―――――――――――――

 宅地造成等規制法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中根一幸君登壇〕

中根一幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、宅地造成、特定盛土等又は土石の堆積による災害を防止し、国民の生命及び財産の保護を図るため、所要の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月二十九日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、四月一日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取しました。四日には、本案審査に資するため、熱海市の被災現場等の視察を行い、六日から質疑に入り、八日参考人から意見を聴取しました。

 十三日には、本案に対して、立憲民主党・無所属、日本共産党、有志の会及びれいわ新選組の四会派共同提出による修正案が提出され、趣旨の説明を聴取し、本案及び修正案について一括して質疑を行いました。

 昨二十日に四会派共同提出の修正案について撤回を許可し、質疑終了後、本案に対し、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、有志の会及びれいわ新選組の六会派共同提出により、政府は、法律施行後五年以内に、規制区域以外の盛土等に関する工事等の規制の在り方について検討等を行う旨の修正案が提出され、趣旨の説明を聴取しました。

 次いで、討論を行い、採決いたしました結果、本案に対する修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 討論の通告があります。

 順次これを許します。神津たけし君。

    〔神津たけし君登壇〕

神津たけし君 立憲民主党・無所属の神津たけしです。

 私は、会派を代表して、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 昨年七月三日、二日間降り続いた大雨により、静岡県熱海市において土石流災害が発生し、死者・行方不明者が二十八人になるなど、甚大な被害をもたらしました。

 災害によって犠牲となられた方々に謹んで哀悼の誠をささげるとともに、被災された全ての皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 熱海市の災害は、被災地域の上流部にあった盛土の崩落が被害の甚大化につながったとの指摘があり、単なる豪雨による自然災害とは言えない側面があると言わざるを得ません。これまでも、豪雨などをきっかけに、不適切に投棄された盛土が崩れて流出し、下流部の人家や施設などに被害を及ぼす災害が各地で発生してきています。

 このような災害が二度と起こらないよう、災害を防ぐための実効性を備えた法整備が必要です。

 盛土等に関する規制は、これまで、宅地造成等規制法や森林法など、各法の目的に応じた規制が行われてきました。しかし、全ての盛土を包括的に規制する制度がなかったことから、地方自治体は対応に苦慮しており、全国知事会のアンケートでは、実に四十六都道府県が法制化を希望しています。また、国土交通委員会での盛土に関する議論の中で、各委員が地元の事案で苦慮されており、法規制が必要であることは共通認識であります。

 私たちは、熱海市土石流災害の現地視察や参考人からの意見聴取等を踏まえ、いかに盛土による災害を防ぎ、国民の生命及び財産を保護するかという観点から議論してまいりました。

 参考人からの意見聴取では、森林における盛土について心配する意見が聞かれました。また、特定盛土等規制区域の指定には、元々土砂災害のおそれがある土砂災害特別警戒区域や山地災害危険地区は自動的に規制区域として指定すべきという御意見もありました。さらに、運用面での課題として、調査、監視、行政代執行などが市町村の担当部局だけで難しいとの御指摘もありました。

 以上を踏まえ、問題点を指摘するとともに、政府答弁等により本法律案の内容を確認してまいりました。

 本法律案が、昨年七月の熱海市土石流災害の発生から短い期間で法律案提出までこぎ着けたことについては、高く評価するものであります。しかし、法律案には幾つかの課題が残っております。

 宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域以外の土地における盛土等に関する工事の規制、また、発生元となる建設残土の処理の適正化を図るための規制が規定されていません。また、盛土等の自然環境に与える影響への対策や、盛土等の許可の際に有識者や関係市町村の意見を聞く仕組みについても、その実効性に課題が残っています。

 このため、野党間、与党間において真摯に修正協議が行われてきました。

 修正案の内容を御紹介申し上げますと、政府は、この法律の施行後五年以内に、宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域以外の土地における盛土等の状況、そのほかこの法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、盛土等に関する工事、土砂の管理等に係る規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨の検討条項に修正するものであります。

 この修正案は、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、有志の会及びれいわ新選組の六会派共同提出によるものですが、自由民主党及び公明党の御賛同をいただき、国土交通委員会で全会一致で可決しました。

 また、国土交通委員会で全会一致で議決されました十三の項目から成る附帯決議では、宅地造成等工事規制区域及び特定盛土等規制区域の指定が迅速に行われるよう、早期に基本方針、政省令等の案を都道府県等に示すこと、これまでの基礎調査を有効活用すること、基礎調査の予備的な調査を施行日前に実施するよう促し、基礎調査の早期完了を目指すこと、さらに、これに必要な財政的支援を検討するとともに、地方公共団体への技術的支援のため、支援に係る体制の整備に努めること、盛土等による災害防止のため、都道府県知事等による勧告、改善命令及び行政代執行が適時適切に実施されるよう、ガイドライン等で明確に示すこと、また、行政代執行に係る必要な財政的支援を検討すること、工事許可の技術的基準の策定に当たっては、現行の基準にとらわれることなく、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震等で起きた滑動崩落が起きないことを担保できる厳格な基準とすること等を含めています。

 附帯決議には、各会派による委員会での質疑で明らかになった課題への対応が盛り込まれたものと認識しております。六会派共同提出の修正案や国土交通委員会において付されました附帯決議は、こうした本法律案の課題を補完し得るものであります。

 国土交通委員会における政府提出法案、修正案、附帯決議への全会一致は、与野党の国土交通委員、そして斉藤大臣、国土交通省の、命を守る姿勢が示されたものであります。

 本法律案は、まだまだ規定内容や実効性に課題があります。私たち立憲民主党・無所属や各会派の指摘及び提案、本法律案に対する附帯決議などを踏まえ、政府が適切に対応し、実効性の伴う規制が行われるよう強く求め、本法律案に対し賛成することを申し述べまして、私の討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史でございます。

 私は、日本維新の会を代表して、宅地造成等規制法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論します。(拍手)

 まず最初に、今回、全会派の賛成により、閣法である宅地造成等規制法の一部を改正する法律案に対する六会派共同提出の修正案が昨日の国土交通委員会で可決いただいたことについて、ここまで御尽力くださった全ての皆様、斉藤鉄夫大臣始め国交省、農水省等の皆様、国対を始めとする与野党の皆様に深く感謝を申し上げます。

 一般的に申し上げて、閣法の国会修正可決というのは決して珍しいことではありません。第二次安倍政権下においては、その施政八年近くの間に七十九本の閣法が国会で修正可決されました。つまり、年平均十本近くの閣法が国会で修正されたのであります。菅内閣にあっても、五本の閣法が修正可決されました。つまり、一般に流通しているイメージとは異なり、安倍政権、菅政権は、少なくとも国会においてはいわゆる聞く力が一定程度あったと言うことができる、私はそう考えています。

 ところが、聞く力を標榜しているはずの岸田内閣は、昨年の政権発足以来、国会修正可決した閣法が一つもないなど、聞く力を全く発揮してきませんでした。先日、衆院本会議で可決した経済安保法案についても、私たち日本維新の会がいかに合理的で説得的な修正提案をしても、政府・与党は耳をかそうとせず、いわゆる附帯決議の調整をもってお茶を濁してきたのであります。

 そうした中で迎えた盛土規制法案の国会審議。私たちは、閣法の足らざるところを補う観点から、二〇一四年から政策提案を続けてきた二つの法案、特定土砂等の管理に関する法律案及び土砂等の置場の確保に関する法律案を提出し、三月二十九日には、閣法とともに同時審議入り。何としても閣法をよりよい内容に条文修正可決することを獲得目標に置いて、衆院国土交通委員会での法案審議に臨みました。

 ところが、ここでも聞く力が発揮される兆しはほとんどありませんでした。四月十三日の採決予定日が近づく中、八日の理事会で、我が党の理事から改めて修正協議を求めましたが、反応は芳しくなく、同日の委員会後、私も参加して、与野党の両筆頭と協議の場を持ちました。

 その際に、驚いたのは、閣法を事前審査してきた与党ならいざ知らず、与党との修正協議をリードすべき野党筆頭が最も修正協議に後ろ向きだったことでありました。

 最終的には、我が党の遠藤敬国対委員長の力もおかりすることで与党との修正協議が開始され、四月十三日に予定されていた採決日を一週間延期してまで修正可決いただいたわけでありますが、驚いたのは、与党が修正協議に応じてくださることが決まった途端、最も修正協議に後ろ向きだった立憲民主党の筆頭理事が急に前に出てきて、自分が野党のリーダーだと胸を張り出したのであります。委員会で可決された六会派共同提出の修正案は、元々、日本維新の会が提案してきた内容をベースにしたものでありましたが、立憲民主党は、同様の内容を含む修正案を審議の最終日に提出し、あたかも自分たちがリードして条文修正をかち取ったかのように装ってきたのであります。

 こう言うと、立憲民主党の皆様は、何を言うのだとお怒りになられることでしょう。しかし、その証拠に、立憲民主党の筆頭理事は、私たちが早々に国会提出した議員立法について、採決前に取り下げろ、採決することは認めないと言い出したのであります。

 私たちの議員立法については、共産党でさえ、わざわざ先方から、話を聞きたいと耳を傾けてくださり、有志の会の福島伸享委員、そしてれいわ新選組のたがや亮委員におかれては、採決に当たって、維新の議員立法に賛成票を投じたいと公言くださっていたのにです。れいわ新選組のたがや委員におかれては、その旨、つまり維新提出の議員立法にも賛成するつもりだったと昨日の委員会採決時の討論において明言くださいました。その誠実な対応に、ここ衆院本会議場で改めて感謝を申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきました。

 どの法案にどの政党が賛成したのか反対したのか、そうした審議結果、つまり各政党の意思を採決の形で明らかにするのは民主主義の基本ではないでしょうか。ところが、採決の実現に力を尽くすべき野党筆頭、立憲民主党は、前例がない、衆法を否決した後、当該衆法の提出会派が閣法の修正議決に賛成した前例がない等とし、衆法の採決前の取下げを求めてきたのであります。開いた口が塞がらないとはこのことであります。

 調べてみると、平成十六年から十八年にかけて、法務委員会や財務金融委員会等において、同様の事例、つまり前例が三件見つかりました。そもそも前例踏襲主義に私たちはくみしませんが、採決した前例があるにもかかわらず、立憲民主党が断固として採決を認めようとしなかったのは、維新提出の議員立法に有志の会やれいわ新選組が賛成するという、立憲民主党にとっては極めて都合の悪い構図がこの衆院本会議場で実現してしまうことを阻止したかったのではないかと邪推したくもなります。

 立憲民主党が、そういうことではないとおっしゃるのであれば、どのような理由から採決を認めようとしなかったのか、明確な説明を求めておきたいと存じます。

 以上、私たちの議員立法に賛意を示してくださった有志の会及びれいわ新選組の皆様の国会審議に臨む真摯かつ誠実な対応に改めて謝意を表する意味からも、事の次第を紹介させていただきました。

 私は、初当選から九年余り、幾多の国会質問を通じて、政府・与党に対して政策提案等を行う一方、一部の野党のていたらくを厳しく批判してきました。そうした経緯から、野党には感情的に私を嫌う方々が多いことも承知していましたが、盛土規制だけは、盛土規制だけは何としても少しでもよい法律を作りたい、そんな必死の思いで精いっぱい取り組んできました。そうした中、与野党の多くの同僚議員が力をかしてくださるようになり、岸田政権下で初となる、政府提出法案の国会修正可決を実現することができたのであります。感謝を申し上げたいと思います。

 二〇一四年二月二十五日の夜、私の地元、大阪府の豊能町で、大規模な土砂の崩落事故が発生しました。そして、私の力足らずで盛土規制を強化できないまま、昨年、二〇二一年の七月三日、静岡県熱海市において、大規模な土石流災害が発生し、直接の死者二十六名、災害関連死一名、そして依然としてお一人が行方不明という、死者・行方不明者が二十八人に上るなど甚大な被害をもたらしたのであります。ざんきに堪えません。

 本日、衆院での本会議採決を迎えた修正後の盛土規制法案が、成立の暁に、しっかりと施行され、安全で安心な地域社会を支えていくことを願いつつ、また、担当した国会議員の一人として、この法の施行状況を見守りながら、不断の見直し作業に取り組んでいくことを国民の皆様にお誓いし、賛成の討論といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

議長(細田博之君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、盛土等規制法案について賛成の討論を行います。(拍手)

 昨年七月の熱海土石流災害では、死者・行方不明者二十八名もの犠牲を出しました。盛土の崩落による土砂災害などはこれまでもあり、国会と地方自治体からも全国一律の規制と立法化が求められてきました。遅きに失したとはいえ、二度とこうした被害を繰り返さないために、本法案に賛成し、実効ある取組を求めるものです。

 法案は、盛土や一時的な土砂の堆積等も知事の許可制とするなど、従来の宅地造成等規制法の範囲を広げ、規制を強化します。また、既存の造成宅地や建設残土の仮置場にも技術基準が適用されること、許可盛土等の公表を通じて周辺住民への周知や住民からの通報を促すという措置も重要であります。

 論点の一つは、規制区域の設定についてです。

 政府案は、盛土等に知事の許可あるいは届出を必要とする区域を指定します。しかし、それでは区域外への土砂廃棄を防ぐことはできません。さらに、区域指定に当たっては、人家等に被害を及ぼし得るエリアとしたために、自然環境や生態系への影響が考慮されません。人目のつかない山林などに投棄されてしまえば、発見も原状回復も困難になります。規制区域は限定せず、許可に当たっては環境アセスや住民等の意見聴取などを行うべきです。

 論点の二つ目は、盛土等に使われる土砂の多くが建設残土であることです。

 建設残土は、工事現場内や工事間での利用により、発生そのものを抑制することが原則です。しかし、利用先も最終処分地も決まらず、一時仮置場などに土砂が堆積される事例が散見されます。建設残土の発生者に最終処分まで責任を持たせること、公共工事で実施している指定処分制度を民間工事も対象にすること、搬出先まで追跡、確認するトレーサビリティー制度をつくるべきです。

 また、リニア中央新幹線のトンネル工事では、膨大な建設残土が排出されます。そのうち、処分先が決まらず、土砂災害警戒区域内に仮置きされている地域さえあります。大規模な残土を排出する建設工事は、建設残土の最終処分先を確保することなしに工事に着手できないこととするべきです。

 終わりに、日本共産党の提案も尊重され、四会派共同の修正案が審議に付されたこと、最後は六会派共同の修正案がまとまり、与党賛成の上で全会派一致による政府原案を修正できたことは、立法府の本領が発揮されたものだと喜びたいと思います。

 以上で討論を終わります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 民事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第五、民事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長鈴木馨祐君。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木馨祐君登壇〕

鈴木馨祐君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、民事訴訟手続等の一層の迅速化及び効率化等を図り、民事裁判を国民がより利用しやすいものとする観点から、インターネットを利用した申立て等の範囲の拡大、判決書等を電子化する規定及びウェブ会議等による口頭弁論の手続を行うことを可能とする規定の整備、当事者の申出による法定審理期間訴訟手続の創設、訴えの提起の手数料等に係る納付方法の見直し等の措置を講ずるなどのほか、犯罪被害者等の権利利益の一層の保護を図るため、民事関係手続において犯罪被害者等の氏名等の情報を秘匿する制度を創設しようとするものであります。

 本案は、去る三月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日古川法務大臣から趣旨の説明を聴取し、二十五日質疑に入り、同日参考人からの意見を聴取いたしました。四月二十日、質疑を終局し、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第六、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案、日程第七、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長平口洋君。

    ―――――――――――――

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平口洋君登壇〕

平口洋君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案は、農業の成長産業化及び農業所得の増大を図るため、農業経営基盤強化促進基本構想を定めた市町村による地域農業経営基盤強化促進計画の作成について定め、この地域計画の区域において担い手に対する農用地の利用の集積、農用地の集団化その他の農用地の効率的かつ総合的な利用を促進するための措置を講ずるとともに、農業を担う者の確保及び育成を図るための措置等を講ずるものであります。

 次に、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案は、農用地の荒廃が進む農山漁村における農用地の保全等を図るため、地方公共団体が作成する定住等及び地域間交流の促進による農山漁村の活性化に関する計画の記載事項として、農用地の保全等に関する事業を新たに位置づけ、当該事業の実施に必要な農林地等についての所有権の移転等を促進するための措置等を講ずるものであります。

 両法律案は、去る四月五日本委員会に付託され、翌六日金子農林水産大臣から趣旨の説明を聴取し、十二日から質疑に入り、翌十三日に参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、昨二十日質疑を終局しました。質疑終局後、両法律案について一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律案は全会一致をもって、いずれも原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、両法律案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第六につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第七につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

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 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出)並びに刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案並びに米山隆一君外二名提出、刑法等の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。法務大臣古川禎久君。

    〔国務大臣古川禎久君登壇〕

国務大臣(古川禎久君) まず、刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 新たな被害者を生まない安全、安心な社会を実現するためには、罪を犯した者の改善更生及び再犯防止を図ることが重要です。これまで、国、地方公共団体、民間協力者が一体となって様々な取組を進めてきたこともあり、再犯者の人員は減少傾向にありますが、依然として刑法犯の検挙人員のうち五割近くを再犯者が占めています。

 こうした状況を踏まえますと、罪を犯した者について、その特性に応じたきめ細やかな指導、支援を行うことができるようにするなど、その改善更生及び再犯防止に向けた処遇の充実を更に推進することが必要であると考えられます。

 また、近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識も高まっていることに鑑みると、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であると考えられます。

 そこで、この法律案は、罪を犯した者の施設内、社会内処遇をより一層充実させるため、刑法、刑事訴訟法、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、更生保護法その他の法律を改正し、所要の法整備を行うとともに、刑法を改正して侮辱罪の法定刑を引き上げようとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、懲役及び禁錮を廃止し、これらに代わるものとして、拘禁刑を創設し、拘禁刑は、刑事施設に拘置し、拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができることとするとともに、再度の刑の全部の執行猶予の言渡しをすることができる対象者の範囲を拡大し、あわせて、猶予の期間内に更に犯した罪について公訴の提起がされている場合には、当該罪についての有罪判決の確定が猶予の期間の経過後となったときにおいても、猶予された当初の刑を執行することができることとするものであります。

 第二は、資質及び環境の調査の結果に基づき受刑者ごとに定めるものとされている処遇要領について、入所後できる限り速やかに、矯正処遇の目標並びに作業、指導ごとの内容及び方法をできる限り具体的に記載して定めることとするほか、再び保護観察付全部執行猶予を言い渡された者については、少年鑑別所による鑑別を行うなどして再犯の要因を的確に把握し、保護観察を実施することとするものであります。

 第三は、刑事施設の長や保護観察所の長は、被害者等から申出があったときは、その心情等を聴取することとし、これを矯正処遇や保護観察に生かすこととするほか、被害者等から申出があったときに保護観察対象者に対して被害者等の心情等を伝達する現行法上の措置に加えて、受刑者に対しても被害者等の心情等を伝達することとするものであります。

 第四は、侮辱罪の法定刑について、現行の拘留又は科料から、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げるものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 続いて、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴い、爆発物取締罰則等の関係法律の懲役及び禁錮を拘禁刑に改めるなど所要の整理等を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 以上が、これら法律案の趣旨であります。(拍手)

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議長(細田博之君) 提出者鎌田さゆり君。

    〔鎌田さゆり君登壇〕

鎌田さゆり君 今般、立憲民主党・無所属会派が提出いたしました加害目的誹謗等罪を創設する刑法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法案は先ほど趣旨説明がありました政府提出の侮辱罪厳罰化を始めとする刑法等の一部を改正する法律案に代わる対案ですので、まず、政府提出の侮辱罪厳罰化法案の問題点を指摘します。

 現在、SNS、インターネット上の誹謗中傷は大きな社会問題となっています。

 一昨年五月、二十二歳の若さで木村花さんが命を失ったのは、極めて痛ましい事件でした。この場をかりて、衷心より御冥福をお祈りします。

 SNS、インターネット上の誹謗中傷対策として、政府は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」とされていた侮辱罪の法定刑に、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金を付加する侮辱罪厳罰化法案を提出しました。しかし、この法案は、端的に、SNS、インターネット上の誹謗中傷対策として有効ではありません。

 まずもって、外部的名誉を保護法益とする侮辱罪では、死ねばいいのに、いつ自殺するのといったような、SNSで見られる人を傷つける心ない言葉が侮辱とは言えず、必ずしも処罰の対象となりません。また、侮辱罪は、公然性を要件としていますので、ダイレクトメッセージや電子メール、LINEなどで行われる少人数での誹謗中傷やいじめにも対応できません。

 その一方で、政府案には、言論の自由を強く萎縮させる大きな問題があります。

 侮辱というのは非常に広い解釈がなされる言葉で、おまえあほやなといった日常的な会話も侮辱罪となり得ます。また、Aさんは総理の器じゃないといった、本人は正当な論評のつもりで言った批判の言葉でも、侮辱罪となることもあり得ます。その結果、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金となり得るのです。

 日本における言論の自由を、なかんずく、民主主義に欠かせない、公務員、政治家に対する正当な批判を大きく萎縮させるものになります。

 このような批判をしますと、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金と定められている名誉毀損罪があり、そのようなことは起きないという反論があり得ますが、名誉毀損罪には公共の利害に関する場合に違法性が阻却される特例が明文で定められているのに、今回の侮辱罪にはそのような規定がありません。

 さらに、侮辱罪自体は今までも存在しており、そのようなことは起きなかったという反論もあり得るでしょう。しかし、この政府案による厳罰化では、侮辱罪による逮捕が可能となり、教唆犯、幇助犯の従犯が処罰されるようになります。厳罰化されると、今までの侮辱罪とは全く異質のものになってしまうのです。

 この政府案の問題点を正面から解決するのが、立憲・無所属会派が提出した、人の内面における人格に対する加害の目的でこれを誹謗し又は中傷した者は拘留又は科料に処すと定めた、加害目的誹謗等罪です。

 加害目的誹謗等罪は、端的に、人の内面における人格権を保護法益としています。これにより、死ねばいいのに、いつ自殺するのといった、人の人格を傷つける言葉が処罰対象になります。

 一方で、おまえあほやなといったような日常的な言葉については、これを言った人が加害の目的がないと弁明をすることが可能になります。その上で、このようなことを言われた人が、例えば、私は東京出身なのであほと言われると傷つくんです、やめてくださいと言っていたことを知っていながら、なおそれを繰り返していた場合は、加害の目的があると認定され、処罰されることになります。

 つまり、加害目的誹謗等罪では、加害の目的を要件とすることで、被害者がやめてほしいと言っていることを知りながら誹謗中傷したことという客観的事実によって、処罰すべき誹謗中傷と処罰すべきでない言葉を適切かつ明確に画することができるのです。

 また、加害目的誹謗等罪には明文で公共の利害に関する場合の特例を定めていますので、公務員、政治家に対する正当な批判をした人がこの罪で処罰されることはありません。法定刑も、拘留又は科料となっています。逮捕されたり従犯が処罰されたりすることも基本的にありません。

 同時に、本法案では、犯罪被害者保護法における損害賠償命令制度の対象に加害目的誹謗等罪、名誉毀損罪、侮辱罪等を加えて被害者救済を図るとともに、プロバイダー制限責任法の使い勝手をよくして、誹謗中傷の行為者を特定しやすくする現実的対策を講じています。

 私たちは、矜持を持って、加害目的誹謗等罪こそが、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対し、処罰すべき対象を適切に捉えて処罰し、処罰すべきでない正当な批判を処罰対象から除外し、言論の自由を抑制することなく誹謗中傷を抑制し、被害者救済を実現する適切な法律であることを申し上げて、趣旨説明とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

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 刑法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案(内閣提出)並びに刑法等の一部を改正する法律案(米山隆一君外二名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。藤岡隆雄君。

    〔藤岡隆雄君登壇〕

藤岡隆雄君 立憲民主党・無所属会派の藤岡隆雄でございます。(拍手)

 まず、地元栃木県の皆様に感謝をし、質疑の機会を与えてくださった先輩、関係各位に感謝を申し上げます。

 そして、先ほどの、日本維新の会、足立康史議員の一方的な解釈による一方的な討論は、国会の権威をおとしめるものであり、到底容認することができません。強く苦言と抗議を申し上げます。

 このことを申し上げまして、法案の質疑に入る前に、喫緊の円安の課題について触れさせていただきます。

 急激な円安に関し、今週月曜日の国会にて、鈴木財務大臣と黒田日本銀行総裁に質問をいたしました。財務大臣は、現下の円安について、どちらかといえば悪い円安と語り、全体として円安がよいとか悪いとかは一概に言えるものではない、日本経済にプラスとは言い切れないという認識を答弁されました。一方で、日銀総裁は、急速な円安はマイナスとしつつ、円安が全体としてプラスという評価を変えたわけではないと答弁をされました。

 円安に対する認識が、財務大臣と日本銀行総裁の間でずれが生じております。政府として、このずれに対し、また現在の円安に対し、それぞれどのような認識をお持ちでしょうか。官房長官の御所見をお伺いします。

 また、政府、日銀は、共同声明、アコードを引き継いでおります。為替に対する重要な認識にずれが生じた今、共同声明をこのまま引き継ぐのでしょうか。官房長官の御所見をお伺いいたします。

 続きまして、ただいま議題となりました、侮辱罪の法定刑引上げを含む刑法等の一部を改正する法律案、刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案及び立憲民主党・無所属会派提出の刑法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 まず初めに、一昨年、インターネット、SNS上の誹謗中傷によりお亡くなりになられました木村花さんに心から哀悼の誠をささげます。

 インターネット、SNS上の誹謗中傷は、匿名性の高い環境で次から次へと書き込みがなされることがあります。非常に先鋭化すると言われ、人の心を大きく傷つけるとして、重大な社会問題と言え、十分かつ適切な対応が必要であります。一方で、対処の仕方を間違えると、政治的な弾圧が可能となり、民主主義の破滅を招くおそれがございます。

 今回の政府案は、木村花さんが自らお命を絶たれたことに真摯に十分向き合っているとは言えません。それどころか、言論の自由の弾圧が可能となる、極めて危険な法案になっている強い懸念がございます。このままだと断じて容認できないことを初めに指摘いたします。国民の皆様、メディアの皆様にも十分な関心を払っていただきたいと思います。

 まず、政府にお伺いをいたします。

 政府案は、法定刑を重くするだけで、刑罰の構成要件を定める、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、」の文言の部分は変わっておらず、侮辱を罰するものとしています。

 侮辱の意味を辞書で引きますと、他人を低く評価する価値判断を表示することであります。

 この考え方によれば、例えば、A総理は外交でだまされる、B総理は総理の器にあらず、C総理は聞く力が足りない、これが侮辱であることに異論があることを唱える人は少ないと見込まれます。

 一方で、SNS、インターネット上の誹謗中傷でしばしば見られる、死ねばいいのに、いつ自殺するのなどの言語道断の言葉は、非常に人を傷つけますが、通常の意味で侮辱と言えるかどうか、必ずしも明らかではありません。実際、今まで処罰されておりません。処罰の範囲が変わらないなら、資料が公開されている二〇一六年以降で、侮辱罪で処罰される人は年間三十人程度にすぎません。

 今般の政府改正案では、処罰対象となる行為の範囲は変わらず、最も処罰すべき行為に対応できないと考えられますが、御所見をお伺いいたします。

 また、逆に、処罰の範囲が変わる、広げるのであれば、構成要件を定める文言が変わらないのに、なぜ処罰対象となる行為の範囲が変わるのでしょうか。一体、どのような基準で、どこまで広げるというのでしょうか。お示しください。

 政府案は、また、公然と侮辱することを要件とします。SNS上での侮辱は、通常、公然性の要件を満たすと思われます。しかし、ダイレクトメールや電子メールでの誹謗中傷や、LINEいじめのようなものは、必ずしも公然となされたとは言えないものもあります。これは処罰対象とならないのでしょうか。処罰なしで放置してよいのでしょうか。御所見をお伺いします。

 次に、政治家への批判は、能力に対する低い評価を伴い、侮辱的要素を含む場合は少なくなく、批判する本人が正しいと思うほど公然と行われやすいと思います。

 インターネット上の誹謗中傷において最もよく用いられている犯罪類型である名誉毀損罪については、刑法二百三十条の二、公共の利害に関する場合の特例の条項が明文で定められております。すなわち、政治家、公務員などについての事実を摘示している場合は、その事実が真実であった場合等は罰せられないものとされております。政府案が成立すれば厳罰化され逮捕や勾留が広く可能となる侮辱罪には、このような条文は定められておりません。

 街頭演説で、悪夢のような民主党政権、立憲は批判ばかりと言えば、議員に対する侮辱になり得て、侮辱罪に当たるとして逮捕、勾留される可能性がありますよ。それでもいいんですか、自民党さん。

 今のままだと、政治的な批判に萎縮効果をもたらす可能性があります。政治家に対する侮辱的要素を含む批判は侮辱罪に該当するのか。該当しないとしたら、どのような法的根拠に基づき該当しないと考えるのか。御所見をお伺いします。

 刑事訴訟法百九十九条一項により、三十万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪は原則逮捕されないが、政府改正案では、一年以下の懲役が付加されることで、逮捕、勾留が広く可能となります。

 侮辱は軽微なものがあり得るが、警察が逮捕事案を選別するなら、どのような基準で選別することになるのでしょうか。制度の視点からお答えください。

 時の政権による恣意的な運用により言論弾圧、政治的な弾圧が可能になってしまう、極めて危険な制度になっているのではないでしょうか。官房長官の御所見をお伺いします。

 そして、逮捕が可能であれば、現行犯の私人逮捕も可能となります。飲み屋の口論のように、私人間でお互いに悪口を言い合うことは日常生活に間々あることであります。そのときに私人逮捕が行われると、警察がいかに適切に逮捕事案を選別しても、私人間での混乱が避けられないことになります。このようになる制度は妥当でしょうか。

 刑法六十四条で「拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。」とされておりますので、今まで侮辱罪の共犯は罰せられませんでした。

 ところが、政府案で厳罰化することで、共犯が罰せられることになります。例えば、デモで、A総理は総理の器にあらずと叫んだ場合、これに、そうだと言った人のみならず、拍手した人も幇助犯となり得ます。さらに、そのような言葉を言うように指示した人は教唆犯となり得ます。

 これは適当でしょうか。適当でないのであれば、幇助犯、教唆犯の処罰範囲をどのように画するのでしょうか。お答えください。

 次に、立憲民主党・無所属会派の提出者にお伺いをします。

 加害目的誹謗等罪という新たな罪を設けつつ、刑は従来の侮辱罪と同じようにしていますが、これはなぜでしょうか。誹謗中傷とは何か。人の内心の人格とは何か。加害の目的が構成要件となっているが、加害の目的とは何か。加害の目的は抽象的だが、実際に認定できるのか。政府案の公然の要件は必要か。

 加害目的誹謗等罪について、公共の利害に関する場合の特例を定めるのはなぜか。他方で、侮辱罪には公共の利害に関する場合の特例を定めないのはなぜか。

 加害目的誹謗等罪において、政府案のような不適切な逮捕、勾留、不適切な従犯の処罰の問題は生じるのか。

 加害目的誹謗等罪が成立しても、犯人は一万円未満の科料であり、余りに軽くないか。犯罪抑制効果はあるのか。被害者の救済はどのように行うのか。

 SNS、インターネット上の誹謗中傷対策においては、民事訴訟が重要な役割を果たしておりますが、匿名で行われることが多いSNS、インターネット上の誹謗中傷では、相手を特定するのに困難があります。この点はどのように対処されるのでしょうか。

 立憲民主党・無所属案提出者には、政府の答弁を聞いた上で、その違いが国民の皆様に分かりやすく伝わるよう、丁寧な答弁を求めます。

 最後に、政府案は、誹謗中傷に苦しむ方のためというより、それを盾にした権力者のための法案であります。政治家が公に尽くす立場から一定の批判を甘受する謙虚な気持ちを忘れ、自らを批判する者を逮捕、勾留、自由刑によって弾圧する法案を成立させることは、言論の自由を骨抜きにし、この国の戦後最大の民主主義の危機をもたらすものではありませんか。

 改めて、政権交代が絶対必要と訴えまして、私の質疑を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣古川禎久君登壇〕

国務大臣(古川禎久君) 藤岡隆雄議員にお答え申し上げます。

 まず、侮辱罪の処罰対象となる行為の範囲についてお尋ねがありました。

 今般の法整備においては、侮辱罪の構成要件に変更はなく、処罰対象となる行為の範囲は変わりませんが、その法定刑に懲役、禁錮、罰金を選択刑として加えることによって、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対してこれまでよりも厳正に対処することを可能とするものです。

 検察当局においては、今般の法改正の趣旨、内容を踏まえつつ、法と証拠に基づき、事案の内容等に応じて、処罰すべき悪質な行為については厳正な処分を行い、適切に対処していくものと承知しています。

 次に、公然性の要件を満たさない誹謗中傷等の処罰についてお尋ねがありました。

 侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱する行為を処罰対象とするものであり、今般の法整備がなされた後も、この点に変わりはありませんので、公然性の要件を満たさない場合、侮辱罪の処罰対象にはなりません。

 公然性のない侮辱行為を侮辱罪の処罰対象とすることは、侮辱罪の保護法益との関係で問題があり、適当でないと考えていますが、処罰対象とはならない事案であっても、被害に遭われた方からの人権相談への対応など、行政的な諸施策を推進していくことが重要であると考えています。

 次に、政治家に対する批判と侮辱罪との関係についてお尋ねがありました。

 表現の自由は、憲法で保障された極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。

 犯罪の成否は、収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であることから、お尋ねの、政治家に対する侮辱的要素を含む批判に侮辱罪が成立するかどうかについて、一概にお答えすることは困難です。

 その上で、一般論として申し上げれば、侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、すなわち、不特定又は多数の人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に構成要件に該当することとなりますが、刑法第三十五条が定める正当行為に該当するときには、違法性が阻却され、処罰されないこととなります。

 次に、侮辱罪の法定刑を引き上げた場合の逮捕についてお尋ねがありました。

 今般の法整備は、侮辱罪の法定刑に懲役、禁錮、罰金を選択刑として加えるものですが、構成要件に変更はなく、処罰の対象となる行為は変わらない上、拘留、科料を存置することとしており、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨ではありません。

 その上で、逮捕に関して、今般の法定刑の引上げにより住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、それ以外の要件に変わりはないことから、逮捕状による逮捕は、従来と同様に、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合において、逮捕の必要性があるときに、あらかじめ裁判官が逮捕の理由及び必要性を判断した上で発した逮捕状によらなければならず、捜査機関においては、法と証拠に基づいて適切に対処するものと承知しています。

 次に、侮辱罪の法定刑の引上げによって私人による現行犯逮捕に伴う混乱が生じるのではないかとのお尋ねがありました。

 逮捕に関して、今般の法定刑の引上げにより住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、それ以外の要件に変わりはなく、現行犯逮捕は、現に罪を行い又は現に罪を行い終わった者が対象とされており、犯人による特定の犯罪であることが明白で、かつ、犯人も明白である場合にしか行うことができないことに変わりはありません。

 したがって、侮辱罪の法定刑を引き上げたからといって、私人による現行犯逮捕に伴う混乱が生じるようなことはないと考えています。

 最後に、侮辱罪の法定刑を引き上げた場合の幇助犯、教唆犯の処罰範囲についてお尋ねがありました。

 犯罪の成否は、捜査機関により収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であり、一概にお答えすることは困難です。

 その上で、今般の法整備によって教唆や幇助自体の意義や処罰範囲を変更するものではない上、正当な表現行為との関係については、法制審議会においても、捜査、訴追を行う検察、警察の委員から、これまでも表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については今般の法定刑の引上げにより変わることはないとの考え方が示されたところであり、検察、警察当局においては、法定刑の引上げがなされた後も引き続き適切に対処していくものと承知をしております。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 藤岡隆雄議員の御質問にお答えをいたします。

 円安に対する認識と共同声明についてお尋ねがありました。

 政府として、為替の水準等についてコメントすることは差し控えますが、為替の安定は重要であって、急速な変動は望ましくないと考えております。

 この点、日銀の黒田総裁も為替の安定は極めて重要である旨述べられていると承知をしており、政府と日銀との間で認識に相違はないものと承知をしております。

 特に、最近の円安の進行を含め、為替市場の動向や日本経済への影響をしっかりと、緊張感を持って注視してまいります。

 また、金融政策の具体的な手法については、日銀に委ねられるべきと考えております。日銀におかれては、平成二十五年の政府、日銀の共同声明の考え方に沿って、引き続き、適切に金融政策運営を行われることを期待しております。

 侮辱罪での逮捕に関し、恣意的な運用を可能とするものではないかとのお尋ねがありました。

 今般の法定刑の引上げにより、逮捕に関しては住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、改正の前後を通じて侮辱罪の処罰対象となる行為は変わらない上、今般の法整備は、悪質性の低い侮辱行為までも一律に重く処罰する趣旨ではありません。

 その上で、引き続き、逮捕状による逮捕については裁判官による令状を要することなどから、侮辱罪の法定刑の引上げにより、御指摘のような恣意的な逮捕が行われることとなるとは考えていません。(拍手)

    〔米山隆一君登壇〕

米山隆一君 それでは、提出者として、藤岡隆雄議員の御質問にお答えいたします。

 本法案で新設する加害目的誹謗等罪は政府の侮辱罪厳罰化に対する対案ですので、御質問にお答えする前に、まず、政府案の問題点について簡潔にお話しいたします。

 政府案は、従来あった侮辱罪の構成要件を変えずに、拘留又は科料だけであった法定刑に一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金を加えることで、現在多数の人が苦しんでいるSNS、インターネット上の誹謗中傷に対処しようとするものです。

 しかし、これは、そもそも論理的でなく、有効でありません。侮辱罪の保護法益は外部的名誉であり、公然と侮辱することを要件とするために、SNS上でしばしば見られる、死ねばいいのに、人間やめたら、そういった侮辱とは言いづらい誹謗中傷や、ダイレクトメールや電子メール、LINEなどによる少数での誹謗中傷が対象とならないからです。

 先ほど、大臣、官房長官共に、処罰対象は変わらないとおっしゃられましたが、現在、侮辱罪で処罰されているのは年間六十名程度です。もし処罰範囲が変わらないのであれば、この六十人が犯罪抑制されるだけにとどまり、全く効果がない、そういうことになってしまいます。

 一方で、侮辱という言葉は範囲が広く、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対処するために処罰対象となる侮辱の意味を広げた場合、否定されましたがこれを広げた場合、おまえあほやなという日常的な会話や、○○総理は総理の器でないといった政治的な批判までが幅広く侮辱罪の対象となってしまいます。

 先ほど、維新の会、足立議員がおっしゃられましたような演説は、もちろん、憲法五十一条、両議院の議員は、議院内で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われないという条項がありますので、侮辱罪には該当しませんが、仮にこれを院外で行った場合には、侮辱罪で逮捕されるということになります。

 また、それまで拘留又は科料のみだった法定刑に懲役刑が加わることで、原則として逮捕が可能となり、教唆犯、従犯が処罰されることになるなど、その影響は、単に法定刑が重くなったことだけにとどまりません。

 このように、侮辱罪厳罰化は、SNS、インターネット上の誹謗中傷を処罰、抑止する効果が低いにもかかわらず、言論の自由を強く萎縮させる、極めて大きな問題点をはらむ法案だと言わざるを得ません。

 これに対して、立憲・無所属会派が今般提出した法案の加害目的誹謗等罪は、SNS、インターネット上の誹謗中傷を適切に処罰、抑制しつつ、政府案の問題点を適切に解決するものであることを申し上げ、以下、回答させていただきます。

 加害目的誹謗等罪を創設し、その法定刑を現行の侮辱罪と同じにしている趣旨についてお尋ねがありました。

 本法案では、SNS、インターネット上の誹謗中傷という新たな課題に対応するためには、政府案のように、外部的名誉を保護法益とする現行の名誉毀損罪や侮辱罪を流用するのは適切ではなく、SNS、インターネット上の誹謗中傷による被害の実情を正面から捉え、ダイレクトに、内面の人格、いわゆる人格権を保護法益として、処罰すべき行為を適切に捉える新たな構成要件を定めた加害目的誹謗等罪を創設することとしたものです。

 御指摘のとおり、本罪の法定刑は、現行の侮辱罪と同じ、拘留又は科料としておりますが、これは、本罪が憲法で保障された表現の自由を制約する側面を有することから、国民の正当な言論活動を萎縮させることのないよう、あえて軽い法定刑にとどめたものです。

 加害目的誹謗等罪における誹謗中傷の意義についてお尋ねがありました。

 一般的な語義として、誹謗とは、そしること、悪口を言うことをいい、中傷とは、事実に基づかないことを言って人を傷つけることをいうものと承知しております。

 したがいまして、加害目的誹謗等罪の「誹謗し、又は中傷した」もこのような行為を指すものでありますが、本罪の保護法益との関係から、人の内面における人格を害するに足りる程度の誹謗中傷である必要があると考えております。

 政府案のように、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対処するのに、これと異なる侮辱を処罰するのは極めて迂遠かつ不合理であり、SNS、インターネット上の誹謗中傷に対処するためには、端的に誹謗中傷を処罰するのが最も直接的で効果的だと考えられます。

 加害目的誹謗等罪における、人の内面における人格の意義についてお尋ねがありました。

 人の内面における人格は、いわゆる人格権、個人の尊厳と言われるものです。本罪の保護法益であるとともに、本罪の構成要件の一つである加害の目的の加害の対象を示すものです。

 SNS、インターネット上の誹謗中傷で人はなぜ傷つくのかを真摯に考えた場合、それは、侮辱罪や名誉毀損罪の保護法益である外部的名誉、すなわち評判や社会的評価を害されたからというよりも、むしろ人格権、個人の尊厳を害されたから傷つくのだと考えられます。そのため、本罪では、ダイレクトに、人の内面における人格、すなわち個人の尊厳を保護法益として明示したものです。

 加害目的誹謗等罪における加害の目的の意義についてお尋ねがありました。

 加害の目的は、相手の内面の人格、いわゆる人格権を積極的に害そうとする意思のことで、刑法上、主観的超過要素と言われているものです。

 どのようなSNS、インターネット上の誹謗中傷が刑罰に当たり処罰すべきかを真摯に考えたとき、それは、自分はそのつもりはなかったけれども結果として相手を傷つけてしまったというような誹謗中傷ではなく、積極的に相手の人格権を害そうとする意思に基づいてなされた誹謗中傷が処罰に値すると考えられます。そのため、本罪では、加害の目的を犯罪の成立に必要な構成要件として定めました。

 加害の目的は抽象的だが、実際に認定できるのかについてお尋ねがありました。

 加害の目的は、確かに抽象的な要件で、何の客観的な証拠もない状態で検察官がこれを認定することは困難です。しかし、だからこそ、おまえあほやななどといった、悪意なく言ってしまった日常の言葉については、それを言った者が、相手を傷つけるつもりはなかった、加害の目的はなかったと抗弁することによって、処罰されないことになります。

 一方で、例えば、先ほど来例に挙げている、死ねばいいのに、いつ自殺するのといった度を超えた言葉は、その言葉を使うこと自体で加害の目的を認定できます。また、先ほどの、おまえあほやななどの例は、それだけでは加害の目的が認定できませんが、例えば、これを言われた人が、事前に、私は東京生まれなのであほと言われると傷つくんです、言わないでくださいと言っていることを知っていたのに、あえて言ったというような事情がある場合には、加害の目的があるものと認定できます。

 つまり、加害の目的は、一見抽象的に見えますが、それ自体、度を越した言葉を使ったとか、相手が嫌がっているのを知っているのにあえて誹謗中傷したという客観的な事実によって、客観的に認定できることになります。そして、この加害の目的が構成要件とされていることで、同じく、それ自体、度を越した言葉を使ったとか、相手が嫌がっているのを知っているのに誹謗中傷したという客観的な事実によって、本罪で処罰されるべき行為と処罰の対象とならない行為が客観的に分けられることになります。

 政府案にある公然の要件は必要かについてお尋ねがありました。

 政府案は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」と定める従来の侮辱罪の法定刑だけを厳罰化するものなので、政府案では、侮辱は公然となされる必要があります。このため、どれほどひどい誹謗中傷がなされても、ダイレクトメールや電子メール、少人数のLINEなどで公然でなく行われたものについては処罰の対象になりません。

 これに対して、我々が提出した加害目的誹謗等罪では、人の内面における人格に対する加害の目的でこれを誹謗し又は中傷した者は拘留又は科料に処すと定めておりますので、公然と行われることは必要ではありません。これによって、公然と行われなくても、ダイレクトメールや電子メールでの誹謗中傷や少人数でのLINEいじめなど、昨今SNS、インターネット上の誹謗中傷として問題となっている行為が適切に処罰の対象となることになります。

 加害目的誹謗等罪に公共の利害に関する特例を定めるのはなぜか、また、侮辱罪にはなぜ公共の利害に関する場合の特例が定められていないのかについてお尋ねがありました。

 前述したとおり、加害目的誹謗等罪は、加害の目的を要件とすることで、処罰すべきと処罰すべきでないものを適切に分けることができる罰条です。

 しかしながら、人の心は複雑であり、例えば、総理大臣がそんなことは言わないでくださいと言っていることを知っていても、義憤に駆られ、国のために、国会で事実と異なる答弁をするとは総理はうそつきだと言うことはあり得ます。そのような言葉は、それ自体は恐らく加害目的も認定し得ると思いますが、同時に、公共の利害に係り、公益目的でなされたものとも考えられます。

 そのような言論が自由になされることは、民主主義を維持するために極めて重要なことです。このため、本罪では、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しないという条項を適用することで、これを処罰しないこととしたものです。

 侮辱罪に公共の利害に関する場合の特例が定められていない理由については諸説ありますが、侮辱罪では、事実を摘示しておらず、犯罪類型として軽度であるため、あえてそのような違法性阻却事由を設定する必要がないからだという説が有力であると承知しております。

 なお、政府案の侮辱罪厳罰化において、公務員、政治家等に対する正当な批判は刑法三十五条の正当業務行為として保護されるとの説明が、大臣、先ほどなされましたが、SNS、インターネット上の言説を正当な業務と言えるか疑問があり、濫用的適用を防ぐには、加害目的誹謗等罪のように、明文で公共の利害に関する場合の特例のような条項をつけるべきだと考えております。

 加害目的誹謗等罪において、政府案のような不適切な逮捕、不適切な従犯の処罰の問題は生じるかについてお尋ねがありました。

 刑事訴訟法百九十九条一項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。」と定めておりますので、法定刑が拘留又は科料のみである加害目的誹謗等罪では、原則、逮捕はできません。したがって、政府の侮辱罪厳罰化のように、不適切な逮捕が生じることはございません。

 また、刑法六十四条は、「拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。」と定めております。加害目的誹謗等罪は、法定刑が拘留又は科料のみですので、教唆犯及び従犯は処罰できません。したがって、政府の侮辱罪厳罰化法案のように、不適切な教唆犯及び従犯の処罰が生じることはございません。

 以上、私の答弁でございます。(拍手)

    〔山田勝彦君登壇〕

山田勝彦君 藤岡隆雄議員の御質問にお答えいたします。

 加害目的誹謗等罪の法定刑及び犯罪抑止効果についてお尋ねがありました。

 加害目的誹謗等罪は、人に対する社会的評価、いわゆる外部的名誉を保護法益とする現行の名誉毀損罪や侮辱罪では処罰し難い誹謗中傷行為を新たに正面から処罰の対象とするものであり、まず、そのこと自体に大きな意味があると考えております。

 御指摘のとおり、本罪の法定刑は拘留又は科料でございますが、これは、本罪が憲法で保障された表現の自由を制約する側面を有することから、国民の正当な言論活動を萎縮させることのないよう、あえて軽い法定刑にとどめたものでございます。

 御指摘の犯罪抑止効果についても、法定刑の軽重によって大きな差が生ずるとは考えておらず、本罪の創設それ自体により十分な効果が発揮されるものと考えております。

 被害者の救済についてお尋ねがありました。

 誹謗中傷の被害者の救済としては、まずは刑事手続で加害者を適正に処罰することが求められますが、それに劣らず大事なのは、被害者が受けた精神的苦痛に係る民事上の損害賠償請求でございます。

 この点、誹謗中傷の被害者については、身体的、精神的に疲弊して通常の民事訴訟を提起することが困難な状況にある方も少なくないと思われますし、そもそも、通常の民事訴訟における損害賠償請求については、高い費用と多くの労力、時間を要すること、独力では証拠が十分に得られないことなど、様々なハードルがございます。

 そこで、本法案においては、犯罪被害者が刑事手続の成果を利用して簡易迅速な手続で損害賠償請求を行うことができる、犯罪被害者保護法上の損害賠償命令制度の対象事件に、名誉毀損罪、侮辱罪、そして新設する加害目的誹謗等罪に係る被告事件を追加することとしております。これにより、誹謗中傷の被害者が損害賠償請求を行う際の負担を大きく軽減し、その被害の実効的な救済を図ることができると考えております。

 SNSやインターネット上で誹謗中傷がされた場合には相手の特定が困難であり、そのための対処をどのように考えるのかとお尋ねがありました。

 現行のプロバイダー責任制限法の発信者情報開示請求制度は、開示請求の要件が余りにも厳格であり、また、開示される情報の範囲も限定されていることから、インターネット上の権利侵害に対する被害救済手段として十分に機能しているとは言い難い部分がございます。

 そこで、この法案では、発信者情報の開示請求を被害者にとって利用しやすい制度とするため、六つの改正を行うこととしております。

 第一に、特定電気通信の定義から、不特定の者によって受信されることを目的とするという要件を削り、不特定の者に拡散されていない、例えばメールなどの一対一のやり取りの場合も開示請求の対象とすることとしております。

 第二に、現行の開示請求は、情報の流通が直接の原因となって被害が生じた場合に限り認められることとされております。このため、例えば、ネット上に詐欺情報が載っていて、それを閲読した人がそれを誤信して財産上の損害を受けた場合には、開示請求は認められません。このような詐欺情報などにより被害が生じた場合も開示請求が認められるようにするため、権利侵害の態様の要件から、流通の要件を削ることとしております。

 第三に、発信者情報の開示請求を受けたプロバイダーが開示の判断をするに当たって高いハードルとなっていると言われる、権利侵害の明白性の要件を削ることとしております。

 第四に、現行法では、権利を侵害する情報のログ保存期間が経過した後には、たとえ同一の発信者から送信された情報であっても、その情報を基にして開示請求を行うことは認められていません。そこで、権利を侵害する情報を発信した者と同一の者から送信された情報であれば、その情報を基に開示請求を行うことができるとしております。

 第五に、発信者情報の内容について、現行法では、総務省令で定めるものに限定されております。しかし、情報通信技術の進展に伴い、発信者の特定に必要な情報が今後変化することは十分あり得ることです。そこで、発信者情報の定義に、その他これらに準ずると認められる情報を加え、発信者の特定に資する情報を広く認めることとしております。

 最後に、現行法では、個人サーバーの運営者がそのドメイン名管理をドメイン名管理サービス会社に委託している場合には、その会社はプロバイダーではないため、その運営者に関しての情報をプロバイダー責任制限法の規定により開示させることはできません。そこで、開示請求の対象として、ドメイン名役務提供者を追加することとしております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 斎藤アレックス君。

    〔斎藤アレックス君登壇〕

斎藤アレックス君 国民民主党の斎藤アレックスです。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました刑法等の一部を改正する法律案等について質問いたします。(拍手)

 私が大学に入学した二〇〇四年、米国のフェイスブックや日本のミクシィといったSNSのサービスが始まり、それ以来、そういったサービスとともに私も生活をしてきました。今日では、主要なSNSは世界で数十億を超すユーザー数を抱えるようになるなど、日々のコミュニケーションに欠かせない存在となりました。それは、私たち国会議員が行う日々の政治活動や選挙運動でも同様だと感じます。

 一方で、SNSなどのインターネットを介したコミュニケーションでは、匿名性が高いこと、情報拡散が容易なことなどから、社会問題を引き起こす事例が相次いでいます。テレビ番組の出演者が誹謗中傷を受けて自殺に追い込まれた事件は国内に衝撃を与え、こういった痛ましい事件が繰り返されないため、規制などが必要だと私も強く感じます。

 本法律案には、このようなインターネット上の誹謗中傷の社会問題化を踏まえて、侮辱罪の法定刑を引き上げる内容が含まれています。

 まず、法定刑を引き上げることがどのようにインターネット上での侮辱等の犯罪に対する抑止につながるのか、政府の認識をお聞かせください。

 今回の侮辱罪の法定刑引上げに関する法制審議会刑事法部会での審議は僅か二回となっており、十分な議論が尽くされないまま法定刑引上げの方向性が決まったとの懸念が出されていますが、その懸念の声にはどのようにお応えになりますでしょうか。

 今回の法定刑の引上げに関しては、通常の言論活動に対する萎縮効果を生じさせないか、懸念の声があることは事実です。今、ウクライナの人々は、多大な犠牲を強いられながら、強固な意志でロシアからの侵略にあらがっています。生命を賭して自国の自由や民主主義を守ろうとするウクライナの人々を見て、改めて、我が国の自由や民主主義の基礎となっている言論の自由を擁護することの重要性を認識させられます。

 政府には、今回の法定刑の引上げによって、正当な言論活動、例えば政治的な批判や評論行為は処罰の対象になることがないと明確な答弁をいただきたいと思います。

 同時に、SNSでの誹謗中傷をなくしていくために、法定刑の引上げのみでは十分な効果が上がらない可能性が高いと認識すべきだと思います。

 日本でも利用者の多い短文型のSNSである米国のツイッター社は、世界一の富豪となったイーロン・マスク氏から買収提案を受けており、マスク氏はツイッターのコンテンツ規制の緩和を目指していると伝えられています。国民の重要な表現、コミュニケーションの場となっているSNSですが、これらはあくまで民間の営利企業によって運営されており、企業の自主性に任せるだけでは、株主や経営陣の意向次第で規制の在り方が望ましくない姿に容易に変更させられてしまうという危険性があることを今回のマスク氏による買収騒動が示していると思います。

 誹謗中傷の拡散を防ぐための仕組みや規制をSNSの運営会社に義務づけ、監視していく国の取組を強化していくべきだと思料いたしますが、政府の認識を伺います。

 また、昨今では、インターネット上での人格も自分自身の個を形成する重要な一部となっていることなどに鑑みれば、SNS上での表現行為に対する知識などは、学校で行う社会的自立と社会参画の力を育む教育の極めて重要な要素であるはずです。また、真偽が疑わしい情報が容易に拡散するインターネットの特性を理解して、情報の取捨選択を行う力は、もはや全国民にとって必須の技能だと思います。

 学校教育などを通じてSNSなどのインターネット上の言論空間とのつき合い方を学ぶ、情報モラル教育やデジタルシチズンシップ教育の取組を強化することが肝要だと思いますが、政府の認識を伺います。

 二十一世紀の情報化社会においては、国民の言論の自由を擁護しつつ、インターネット上での誹謗中傷やストーカー行為など犯罪行為を未然に防ぐための仕組みは、国民の生命と尊厳を守る上でますます重要になってきます。法定刑の引上げに安易に頼ることなく、あるべきSNSの規制や教育の取組などを議論し、実現していくことを求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣古川禎久君登壇〕

国務大臣(古川禎久君) 斎藤アレックス議員にお答え申し上げます。

 まず、侮辱罪の法定刑の引上げによる犯罪抑止効果についてお尋ねがありました。

 一般に、刑罰には、犯罪を犯した者を処罰することによって社会の一般人を威嚇し警戒させて犯罪から遠ざからせる、一般予防の機能があるとされています。侮辱罪の法定刑を引き上げ、厳正に対処すべき犯罪であるという評価を刑法として示すことにより、その威嚇力によって、インターネット上のものを含めて侮辱罪に該当する行為を抑止する効果があると考えています。

 次に、侮辱罪の法定刑の引上げに関する法制審議会での議論の状況についてお尋ねがありました。

 法制審議会刑事法部会においては、表現の自由との関係を中心に、集中的な議論が行われました。

 具体的には、第一回会議において、侮辱罪の法定刑の引上げの相当性に関連して、正当な表現行為との関係について、各委員、幹事から様々な御意見が述べられ、第二回会議においては、これらの御意見を踏まえ、論点を整理しつつ更なる議論が行われたところであり、全体を通じて活発な議論が行われました。

 このような充実した議論を経た上で、第二回会議において、本諮問に対する議論は尽くされたと認められたことから、全ての委員、幹事が同意した上で、部会としての意見の取りまとめが行われたものです。

 したがって、部会において十分な議論が尽くされたものと考えています。

 次に、侮辱罪の法定刑の引上げと正当な言論活動との関係についてお尋ねがありました。

 今般の法整備は、侮辱罪の法定刑に懲役、禁錮、罰金を選択刑として加えることによって、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、当罰性の高い侮辱行為に対して厳正に対処することを可能とするものです。

 侮辱罪の構成要件に変更はなく、処罰の対象となる行為は変わらない上、拘留、科料を存置することとしており、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨ではありません。

 法制審議会では、刑事法研究者や、警察、検察、裁判所、弁護士といった実務家も交えた議論において、現行法の下で、個別の規定はないものの、正当な表現行為は、侮辱罪に当たる場合であっても、刑法第三十五条により違法性が阻却され、処罰されないことが確認されたところです。

 このように、今回の法整備は、もとより正当な言論活動を処罰の対象とするものではありません。

 次に、誹謗中傷の拡散を防ぐための仕組みや規制についてお尋ねがありました。

 SNS上の誹謗中傷の書き込みは、重大な人権侵害にもつながるものであって、決してあってはなりません。

 議員御指摘のような拡散防止の仕組みや規制を運営会社側に義務づけるなどの取組の在り方については、様々な意見があり得るところであり、所管省庁において適切に検討されるものと承知しております。

 法務省の人権擁護機関においては、被害者から相談を受けた場合には、その意向に応じ、中立的な立場で違法性を判断した上で運営会社などのプロバイダー等に対して削除要請を行っています。

 また、その実効性を高めるため、総務省とともに、プロバイダー等との意見交換を行うなどして、削除要請に対する事業者等の理解を求めています。

 法務省としては、引き続き、このような取組を通じ、誹謗中傷の拡散防止に向けた事業者の適切な対応を促してまいります。

 最後に、インターネット上の言論空間を適切に活用するための教育についてお尋ねがありました。

 法務省においては、インターネット上における人権尊重やその安全な利用に関する理解等を深めるため、中学生等を対象として、携帯電話会社等の実施するスマホ、携帯安全教室と連携した人権教室の実施や、全世代を対象とした啓発動画の配信や啓発冊子の配布等の各種人権啓発活動に取り組んでおります。

 また、学校教育を通じ、所管省庁において、情報モラル教育を含めた情報活用能力の育成を推進しているものと承知しております。

 法務省としては、学校教育とも連携しながら、引き続き、国民一人一人がインターネット上の言論空間を適切に活用できるよう、人権啓発活動にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   金子 恭之君

       法務大臣   古川 禎久君

       農林水産大臣 金子原二郎君

       国土交通大臣 斉藤 鉄夫君

       国務大臣   松野 博一君

       国務大臣   若宮 健嗣君

 出席副大臣

       法務副大臣  津島  淳君


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