衆議院

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第23号 令和4年4月26日(火曜日)

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令和四年四月二十六日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十八号

  令和四年四月二十六日

    午後一時開議

 第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 第二 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 航空法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員金田勝年君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 日程第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 日程第二 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 航空法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 国会議員として在職二十五年に達せられました金田勝年君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員金田勝年君は国会議員として在職すること二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) この際、金田勝年君から発言を求められております。これを許します。金田勝年君。

    〔金田勝年君登壇〕

金田勝年君 

    謝辞

 この度は、院議をもって永年在職表彰の栄誉を賜りましたことに、心から感謝を申し上げます。

 思えば、今日に至るまで、ただひたすらに「公的なものへの献身という思い」一つで駆け抜けてきた日々であったと思います。

 私の父は、ふるさと秋田で水力発電所に勤務をする会社員でありました。

 父はいつも私に、自分が作る電気で世の中が明るくなるんだ、おまえも父さんを見習って、将来、人の役に立つような仕事をするんだぞと言われて育った少年時代、これが私の原点でありました。

 大学を卒業して、私は、大蔵省に入省し、国の予算を預かる主計局を中心に公務員生活を送るのですが、入省した当時は、主計局長のかばん持ちとして、国会の予算委員会に陪席したことがしばしばでありました。

 あれから四十八年。

 当初、第一委員室の末席に付添いで座っておりました私が、後に国会議員となって、昨年は、予算委員長の席に座る運命をいただくことになる。(拍手)

 人生とは実に不思議な巡り合わせでもありますが、こうした私ですから、大蔵省で働く中で政治の世界と関わる機会を豊富にいただいたことも事実であります。

 その例の一つとして、国会の予算を担当した際には、例えば、ここにおられる国会議員の皆さん全員がお世話になっております、なじみの深い制度、すなわち政策秘書制度の設立に携わったときのことであります。当時、各党並びに秘書会から、第三秘書をつくってほしいということで御相談をいただいたものですが、アメリカなども参考に、また、当時の議運の指導もいただきながら、それまでの第一秘書よりも俸給の高い格付で、新たに政策秘書制度をつくることができたのであります。我が国の議会政治の向上に資するのであればとの私たちの願いがかなった瞬間でありました。

 また、大蔵省時代には、大蔵大臣として薫陶を賜りました竹下登先生や渡辺美智雄先生のお世話になったことに加え、野呂田芳成先生との出会いもあり、ふるさと秋田のために力を尽くすべく、平成七年に参議院議員となり、後に衆議院に転じ、今日に至っております。

 すばらしい政界の先輩、同僚の皆様から御縁をいただいたことに心から感謝を申し上げる次第であります。

 この間、法務大臣や外務副大臣、党の幹事長代理、また、衆議院予算委員長、財務金融委員長などの要職を拝命するなど、折々に、政治と行政の枢要において汗をかかせていただきました。

 また、法務大臣時代は、百二十年ぶりの民法の債権法分野の改正、百十年ぶりの刑法改正に加え、長年の懸案となっていたテロ等準備罪処罰法の東京オリンピック前の成立に取り組むなど、僅か一年で二千回に及ぶ国会質疑に応じたことは、得難い体験でありました。(拍手)

 国民の安全と国際社会秩序の安定に取り組むという重大な責務を自分の手で果たすことができましたことは、政治家として大きな矜持となりました。

 振り返ればたくさんの思い出が去来いたしますが、それらは全て「公的なものへの献身の思い」の結果でありました。

 こうした私を後押しして支えてくれましたのは、地元秋田の皆様、同志議員の皆様、党や役所、また事務所スタッフの皆様たちであって、そして、今日まで私を支えてくれた妻に対しても、心から感謝を申し上げる次第であります。(拍手)

 今後も、国会議員としての職務に愚直に励み、次の世代に誇れる日本、愛するふるさと秋田のために、全力で責任を果たしていく決意を申し上げ、私の心からの謝辞とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(細田博之君) 日程第一、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長小里泰弘君。

    ―――――――――――――

 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔小里泰弘君登壇〕

小里泰弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 日本海溝及び千島海溝沿いの海溝型地震については、関係法律等に基づき、鋭意防災対策が進められてきましたが、甚大な被害が発生した東日本大震災の教訓を踏まえ、本年三月に、最新の科学的知見に基づく最大クラスの地震、津波を想定した防災対策がまとめられました。

 本案は、こうした状況に鑑み、同地震に係る地震防災対策について、先に対策が進められてきた南海トラフ地震に係るものと同程度に強化するため、地震防災対策推進協議会の組織、津波避難対策特別強化地域の指定、津波避難対策緊急事業計画の作成及びこれに基づく事業に係る財政上の特別の措置等について定めようとするものであります。

 本案は、去る二十一日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 なお、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の強化に関する件を本委員会の決議として議決したことを申し添えます。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第二、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長関芳弘君。

    ―――――――――――――

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔関芳弘君登壇〕

関芳弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、特定外来生物による生態系等に係る被害を防止する対策を強化するため、国と地方公共団体の役割分担の見直し等による防除体制の強化、特定外来生物のうち緊急に対処を要するものに係る検査並びに当該検査対象の移動禁止及び消毒命令等の措置の新設、特定外来生物の一部についてその飼養の状況等に鑑み規制を適用除外とする規定の整備等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る十四日本委員会に付託され、翌十五日山口環境大臣から趣旨の説明を聴取し、二十二日に質疑を行い、質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 航空法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、航空法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長中根一幸君。

    ―――――――――――――

 航空法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中根一幸君登壇〕

中根一幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、航空分野における脱炭素化の推進及び新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた航空会社への支援を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国による航空脱炭素化推進基本方針の策定及び航空会社等が作成する計画の認定制度の創設並びに同計画に基づく事業等に係る特別の措置を定めること、

 第二に、航空会社への支援措置を講じる特例措置を令和四年度においても引き続き行うこと

などであります。

 本案は、去る四月十九日本委員会に付託され、翌二十日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、二十二日、質疑を行い、質疑終了後、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第四、安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長古屋範子君。

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 安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、第六次エネルギー基本計画等を踏まえ、我が国のエネルギー需給構造の転換を後押しすると同時に安定的なエネルギー供給を確保するため、省エネルギーの対象範囲の見直しや非化石エネルギーへの転換促進、脱炭素燃料や技術への支援強化、電源休廃止時の事前届出制の導入や蓄電池の発電事業への位置づけ等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る四月五日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託され、八日萩生田経済産業大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。十三日に質疑に入り、更に十五日に質疑を行い、二十日参考人から意見を聴取し、二十二日、日本維新の会から、エネルギーの使用の合理化等に関する基本方針策定時の勘案事項の追加等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論、採決を行った結果、修正案は否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣西銘恒三郎君。

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、福島の復興及び再生を一層推進するとともに、我が国の科学技術力及び産業競争力の強化に貢献するため、福島において取り組むべき新たな産業の創出等に資する研究開発等に関する基本的な計画を内閣総理大臣が定めることとするとともに、福島の創造的復興の中核的な役割を担うものとして、研究開発、研究開発成果の産業化、これらを担う人材の育成等の業務を行う福島国際研究教育機構を新たに設立するものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、内閣総理大臣は、福島において取り組むべき新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に資する研究開発並びにその環境の整備及び成果の普及並びに当該研究開発に係る人材の育成及び確保に関する施策等の推進に関する新産業創出等研究開発基本計画を定めるものとし、同計画は、福島国際研究教育機構が中核的な役割を担うよう定めるものとしております。

 第二に、福島国際研究教育機構の目的、業務の範囲等に関する事項を定めております。

 第三に、福島国際研究教育機構の役員として、理事長、監事及び理事を置くこととしております。

 第四に、福島国際研究教育機構の主務大臣等について定めるほか、中期目標の策定等に当たって、復興推進委員会、総合科学技術・イノベーション会議及び福島県知事の意見を聞くこととしております。

 その他所要の改正を行うこととしております。

 以上が、この法案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。菅家一郎君。

    〔菅家一郎君登壇〕

菅家一郎君 自由民主党の菅家一郎であります。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 まず冒頭に、北海道知床半島沖で乗員乗客二十六名を乗せた観光船が浸水して消息を絶った事故によりお亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、懸命に続けられている捜索活動により、行方不明となっている方々が一日も早く救出されることをお祈り申し上げます。

 東日本大震災そして東京電力福島第一原子力発電所の事故が発生してから十一年の月日がたちました。また、最近でも、二度にわたって、福島県沖を震源とする大きな地震が被災地を襲っています。

 改めまして、震災でお亡くなりになられた方々、御遺族の皆様に哀悼の誠をささげるとともに、現在も避難生活を強いられている方々、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 原子力発電所の事故によって被災した福島を、私たちは責任を持って復興させていかなければなりません。事故の収束はもとより、夢と希望にあふれた福島の創造的復興を成し遂げるためには、単に震災以前の状態に戻すことを目指すのではなく、福島において新しい研究開発を推進し、原発事故の福島から研究開発の福島へ、抜本的な転換を図る必要があります。

 そして、本法案で新しく設立しようとしている福島国際研究教育機構は、各市町村で帰還できていない人が数多くいらっしゃる中、困難な課題を抱える避難指示区域を始めとする福島の復興に寄与する大きな起爆剤となるものだと考えています。この国家的プロジェクトを何としてでも成功させるべく、政府においては、覚悟を持って、また、政府一丸となった取組を求めたいと思います。

 かかる前提の下、以下、本法案の内容等について質問をいたします。

 まず初めに、福島国際研究教育機構の設立に当たり、復興大臣の決意について伺います。

 福島国際研究教育機構が、我が国の科学技術力及び産業の国際競争力の強化に貢献するものであり、さらには世界に誇れるものとするためには、復興大臣のリーダーシップの下、省庁間の縦割りを超えるものである必要があり、復興庁の強いリーダーシップを発揮することが重要であると思いますが、西銘復興大臣の御決意について伺います。

 次に、福島国際研究教育機構の役割について伺います。

 これまで、福島では、福島イノベーション・コースト構想が進められてきており、既に様々なプロジェクトの具体化や産業集積に向けた取組が進められてきています。例えば、福島県立医科大学においては、復興予算を活用し、新しい感染症の分析にも活用できるような新たな研究開発に取り組んでおり、新たな創薬につながるこうした取組をより一層推進する必要があります。そして、これらの取組を更に発展させていくためには、福島国際研究教育機構の役割が重要になってくると考えます。

 福島を始め東北全体の創造的復興に向けて、福島国際研究教育機構は福島イノベーション・コースト構想の中でどのような位置づけとなるのか、西銘復興大臣にお伺いをいたします。

 次に、研究者等の呼び込みについて伺います。

 世界に誇れる研究開発を進めていくには、国内外の優秀な研究者等が福島国際研究教育機構における研究開発等の活動に参画していただく必要があります。そのためには、研究者等に対する処遇の確保や研究環境の整備はもちろんのこと、研究者の御家族にも福島に来ていただけるよう、生活環境の整備も重要です。

 福島に優秀な研究者等を呼び込むためにどのような対策を講ずる予定なのか、西銘復興大臣に伺います。

 次に、福島国際研究教育機構における研究内容について伺います。

 福島国際研究教育機構が地元の夢や希望となるものとしていくためには、福島だからこそ取り組むべき研究開発、あるいは福島だからこそ取り組める研究開発を行っていくべきと考えます。

 この機構が世界に冠たる研究機関となるよう、どのような研究開発を進めていくのか、西銘復興大臣にお伺いいたします。

 最後に、福島の復興再生が本格的に始まったばかりであり、今後も中長期的な対応が不可欠です。震災から十一年が経過する中で、全国に、そして世界に誇れる福島をつくっていくためには、福島国際研究教育機構が中心となって取組を加速させていくことができるよう、本法案の早期成立を訴えて、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 菅家一郎議員から、四点御質問がございました。

 福島国際研究教育機構の設立への決意についてお尋ねがありました。

 福島国際研究教育機構については、政府として、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるとともに、我が国の科学技術力、産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる創造的復興の中核拠点となることを目指します。

 また、昨年度末に策定した機構の基本構想等に基づき、機構の設立に向けた取組を、復興庁が中心となり、政府一体となって進めてまいります。

 引き続き、被災地の皆様の声をしっかり受け止め、東北の復興なくして日本の再生なしとの強い決意の下で、被災地の復興に全力を尽くしてまいります。

 福島イノベーション・コースト構想における福島国際研究教育機構の位置づけについてお尋ねがありました。

 これまで、福島イノベーション・コースト構想に基づく廃炉、ロボット等の研究・実証拠点等の整備、さらには医療関連、航空宇宙などにも拡大された取組を通じて、浜通り地域等に新たに進出した企業と地元企業が連携して研究開発に取り組むなど、産業集積の芽が出始めています。

 福島国際研究教育機構は、この福島イノベーション・コースト構想を更に発展させ、各施設等の取組に横串を刺す司令塔として位置づけられております。今後、福島国際研究教育機構を設立することにより、研究開発や産業化、人材育成の取組を更に加速させてまいります。

 福島国際研究教育機構における研究者等の確保についてのお尋ねがありました。

 福島国際研究教育機構が、福島の中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進するためには、国内外から優秀な研究者が参画することが重要です。

 このため、最先端の研究を支える研究設備の設置や、国際的に優れた能力を有する人材を確保する必要性を考慮した処遇、人事制度を整備すること等により、魅力ある研究環境の整備に取り組んでまいります。

 あわせて、住まい、教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要であり、地元が取り組むまちづくりと緊密に連携して、機構の施設整備を進めてまいります。

 福島国際研究教育機構における研究開発についてのお尋ねがありました。

 機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進することとしています。

 例えば、廃炉作業の着実な推進を支え、災害現場等の過酷環境下や人手不足の産業現場等でも対応が可能な遠隔操作ロボットやドローンの開発、放射性同位元素、いわゆるRIの先端的な医療利用や創薬技術開発等につながる、アルファ線放出核種等を用いた新たな医薬品の開発などの研究開発を進めていくことを想定しております。

 国内外から優秀な研究者が参画する研究環境の下で、新たな技術や手法を分野横断的、学際的に融合させることなどにより、世界最先端の研究開発の実現を目指してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 金子恵美君。

    〔金子恵美君登壇〕

金子恵美君 立憲民主党の金子恵美です。

 立憲民主党・無所属の会派を代表して、ただいま議題となりました福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 冒頭、北海道知床半島の沖合で、乗客乗員二十六名が乗った観光船が消息を絶ち、現在、懸命な捜索活動が行われておりますが、一人でも多くの人命が救助されることを心から願います。

 また、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、このような事故が二度と起こることがないよう、早急に原因究明を図り、再発防止の徹底を求めます。

 また、連日、ロシア軍によるウクライナへの侵攻が報じられています。ウクライナは、チョルノービリ原発事故を経験し、東日本大震災の際には我が国に放射線サーベイメーター、個人線量計などの物資を提供してくださいました。東京電力福島第一原発事故によりウクライナと同じ痛みを経験した我が国として、政府に、ウクライナに対する更なる人道的な支援を行うことを求めます。

 去る三月十六日深夜、福島県沖を震源とする最大震度六強の地震が、東日本大震災から十一年を迎えたばかりの被災地を襲いました。

 今回の地震により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 本日議題となりました福島復興再生特別措置法改正案の対象地域である福島県は、東日本大震災、令和元年東日本台風、昨年の福島県沖地震、そして先月の福島県沖地震に加え、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、復旧復興への気力を失いかねない大変厳しい状況にあります。

 政府は四月八日に支援策を取りまとめましたが、被災地からは、十分ではないとの声があります。今後のより手厚い政府の対応策について、二之湯防災担当大臣にお伺いいたします。

 度重なる災害により、被災地の方々の復興に向けた希望が失われることがないよう、そして、今回の改正が被災地にとって本当の夢や希望となることを願い、本法律案の質問に入ります。

 東日本大震災から十一年、地震、津波被災地域では、土地の造成や災害公営住宅の建設等のハード面の整備はおおむね完了し、復興事業はハード整備から持続可能な地域づくりという新たな段階に移っております。

 原子力災害被災地域では、避難指示が解除された地域での生活の再建が始まった一方で、帰還困難区域全域の避難指示解除や廃炉、汚染水対策についてはまだ長い年月を要することが見込まれ、中長期的な対応が必要であり、引き続き、国が前面に立って取り組まなければなりません。

 本法律案では、このようないまだに厳しい状況にある福島の復興及び再生を一層推進するため、福島の創造的復興の中核的な役割を担うものとして、福島国際研究教育機構を新たに設立するものとされています。

 本年三月に取りまとめられた福島国際研究教育機構基本構想では、二〇二二年度は機構設立の準備期間とし、二〇二三年四月に機構を設立するとしています。

 一方で、その立地場所については、四月八日に、復興庁は、福島県に対し、機構の本施設及び仮事務所の立地について意見を伺う通知を発出しました。福島県は、避難地域十二市町村の意向を確認した上で、八月に候補地を選定し、国は、それを尊重して、九月までに立地場所の決定を目指すとしております。

 機構の設立に当たっては、国内外から大学、研究機関、企業などの人材を集積させるため、教育、医療、介護、福祉、交通などの生活環境整備、まちづくりが極めて重要になります。

 二〇二三年四月の機構設立まで残り一年となる中で、機構周辺の生活環境整備を早急に進める必要があると思いますが、どのようなスケジュールで、どのような支援策を講じることを想定しているのでしょうか。西銘復興大臣に伺います。

 次に、研究開発の内容について伺います。

 福島県は、昨年十一月の政府要望において、新拠点で初めて取り組む目玉となるような研究内容を打ち出すことを求めています。本年三月の基本構想において、ロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療や放射線の産業利用、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の五つの研究分野が公表されておりますが、既存の研究機関が研究している分野と重なっているように見え、新鮮味が感じられません。

 福島県が求める、福島ならではの新たな研究を本機構で行う必要があると思いますが、現在、研究内容の具体化はどこまで進んでいるのでしょうか。検討状況を復興大臣に伺います。

 二〇二〇年六月の有識者会議の最終取りまとめでは、研究分野に廃炉、廃炉技術応用が記載されていました。ところが、二〇二〇年十二月、二〇二一年十一月の政府決定、本年三月の基本構想では、五つの研究項目から廃炉の文字がなくなってしまいました。東京電力福島第一原発の廃炉は、福島の復興の大前提です。廃炉こそが福島でやらなければならない研究分野ではないでしょうか。

 また、福島第一原発第二号機のデブリ取り出しのロボットアームは、国際廃炉研究開発機構、三菱重工、英国のメーカーで共同開発されましたが、新型コロナウイルスの影響により英国での開発が遅れ、デブリ取り出しも約一年間遅れたと聞いています。こうした廃炉に特化したロボットの開発こそ、本機構で行われるべきではないでしょうか。復興大臣の見解を求めます。

 機構は、研究開発成果の産業化の役割も担っています。福島浜通り地域は、原子力災害により、産業基盤や働く場も失われ、人口減少が著しい状況にあります。住民の帰還や新たな住民を呼び込むためには、生活環境整備とともに、住民の生活基盤を支える収入を確保するための働く場を生み出すことが不可欠です。

 地元福島では、本機構の設立により地元の雇用が創出されることが期待されていますが、機構の最先端の研究を地元企業の雇用にどのように結びつけていくのでしょうか。復興大臣の見解を求めます。

 機構の役割に人材の育成があります。福島の復興再生のためには、地元の人材育成が非常に重要であります。地元の高校生を始め、小中学生も含めたシームレスな形で、本機構による地元人材に対する育成の仕組みを構築することが必要です。

 二〇二〇年六月の有識者会議の最終取りまとめでは、「おわりに」の中で、福島浜通り地域においても、まずは本拠点が研究所方式で教育、人材育成機能を担っていくとしても、将来的には、大学、大学院の設置がなされ、人材育成の厚みが増していくことを期待したいとしています。

 若い世代が帰還、移住を判断する際に、子供のための教育環境の整備は必要不可欠な要素であります。将来的な地元の意向を踏まえた大学、大学院の設置等を含め、福島浜通り地域の教育環境の整備充実についての検討状況を復興大臣に伺います。

 機構が地域に根づき長期的に発展していくためには、将来的に地元で育った子供たちに機構に関わってもらう必要があります。

 本年三月の基本構想でも、機構や連携する大学、研究機関等の研究者による地元の小中学校や高校等への出前授業等を行うとともに、実証フィールドを活用した体験学習会や競技会等を行うことで、小中高校生等が先端的な研究、学術分野に触れる多様な機会を設けるとあります。

 機構の役割は、研究開発はもちろんでありますが、この人材育成の役割が非常に重要であると考えます。また、こうした取組により、子供を持つ世代の帰還が進むことも考えられます。文部科学省と連携して、地域の未来を担う子供たちを対象とした人材育成を計画的に進めていくことについての復興大臣の見解を伺います。

 本法律案では、研究者等に対する有期労働契約を無期労働契約に転換させる期間を通算五年から十年とする特例が規定されています。

 報道によれば、同様に十年の無期転換ルールの特例が適用されている国立研究開発法人理化学研究所の有期の研究系職員およそ六百人が来年三月末で雇い止めになるとして、一部職員でつくる労働組合が見直しを求めているとのことです。

 本機構については、本年三月の基本構想において、研究者、職員については、当初は有期雇用を活用しながら、随時、必要性と実行可能性を考慮して、任期なし契約への移行を図るとしております。

 研究者が安心して研究開発に取り組むためには、雇用の安定は重要であり、研究者等本人の意に反した雇い止めが行われないよう、可能な限り任期なし契約へ移行すべきと考えますが、政府としてどのような対策を講じようとしているのか、復興大臣に伺います。

 本年三月の基本構想では、機構の活動が本格的に軌道に乗った時点において、研究グループの数は五十程度になることが想定され、人員規模として数百名の国内外の優秀な研究者等が研究開発等の活動に参画することを想定するとしています。

 今年度後半から先行プロジェクトを実施するとしていますが、機構の活動が本格的な軌道に乗る時期について、いつ頃を想定されているのでしょうか。

 また、数百名もの国内外の優秀な研究者を呼び込むのは簡単なことではないと思います。特に海外の著名な研究者に来ていただき、地域に親しみ定着してもらえるようにするには、魅力的な研究環境や生活環境整備に加え、処遇の柔軟性が必要と思いますが、現状での検討状況を復興大臣に伺います。

 本年三月の基本構想では、財源措置について、復興特会設置中は復興財源等で必要な予算を確保するとともに、復興特会終了以降も見据え、外部資金や恒久財源による運営への移行を段階的、計画的に進めるとしています。

 研究開発については、研究者の長期にわたる努力の末に成就することが少なくないと思います。しかし、復興特会は、復興庁の設置期限と同様に、二〇三一年三月末までとなっています。

 世界最先端の研究を実施するためには、長期にわたって十分な研究資金の確保が不可欠です。福島県も十分な予算確保を求めており、世界に冠たる創造的復興の中核拠点にふさわしい規模の予算が必要です。

 政府は、復興特会後を見据えて、今から財源確保の在り方について検討を開始し、その具体的な方向性を可能な限り早急に福島県民を始め国民の皆様に示すべきと思いますが、復興大臣の答弁を求めます。

 本法律案に基づき設立される福島国際研究教育機構が、被災地を始め、東北、そして我が国の明るい未来につながることを願いつつも、我々立憲民主党は、県外避難者を含めた被災者の方々が真に安定した生活を取り戻すことができるよう、最後の一人に至るまで支援を継続し、若者たちが未来に希望を持てるふるさとの復興再生を果たすまで全力でお支えすることを誓い、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 金子恵美議員から九問の質問をいただきました。

 機構設立と生活環境整備に関するお尋ねがありました。

 様々な研究人材等を機構の立地地域や周辺地域に呼び込み、定住につなげていくためには、住まいや教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要です。

 福島県においても、機構の立地選定に当たっては、研究者が安心して研究教育活動に打ち込める、そして福島イノベーション・コースト構想の効果が最大化できるよう、広域的な視点に立って候補地を選定する考えであると承知しております。

 また、機構の本格的な活動のために必要となる機構の施設については、復興庁設置期間内での順次供用開始を目指すこととしています。

 今後、機構の立地を契機として、福島県や市町村が取り組むまちづくりについては、国としても緊密に連携しつつ、機構の施設整備を進めてまいります。

 福島国際研究教育機構における研究開発についてお尋ねがありました。

 機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進することとしています。

 例えば、廃炉作業の着実な推進を支え、災害現場等の過酷環境下や人手不足の産業現場等でも対応が可能な遠隔操作ロボットやドローンの開発、放射性同位元素、いわゆるRIの先端的な医療利用や創薬技術開発等につながる、アルファ線放出核種等を用いた新たな医薬品の開発などの研究開発を進めていくことを想定しています。

 国内外から優秀な研究者が参画する研究環境の下で、新たな技術や手法を分野横断的、学際的に融合させることなどにより、世界最先端の研究開発の実現を目指してまいります。

 廃炉ロボットの開発に関するお尋ねがありました。

 廃炉を着実に進めるためには、遠隔かつ過酷環境における高精度、高信頼性が求められる技術が必要不可欠であり、こうした高度な遠隔技術等の研究開発に取り組むこととしています。

 具体的には、次世代高速通信やバーチャルリアリティー、人工知能、AIなどを遠隔技術に導入し、高い専門性、信頼性を必要とする作業を遠隔で実現する遠隔操作ロボットの研究開発等を行うことを想定しており、引き続き、廃炉の着実な推進に資する研究開発を進めてまいりたいと考えています。

 機構の地元雇用への効果についてお尋ねがありました。

 機構における研究開発の取組を福島を始め東北の復興に結びつけていくためには、研究開発の成果を社会実装、産業化に着実につなげていくことが重要です。

 このため、産学連携体制の構築や機構発ベンチャー企業等の創出、育成などの取組を通じて、地元の雇用創出にも貢献できるよう取り組んでまいります。

 また、機構においては、数百名の国内外の優秀な研究者等が研究開発等の活動に参画することを想定しています。研究者やその家族が機構の立地地域周辺に集積することで、新たな需要が生まれ、雇用創出にもつながるものと期待しています。

 福島浜通り地域の教育環境の整備充実についてお尋ねがありました。

 これまでの福島イノベーション・コースト構想の取組により、産業化の動きに加えて、大学や高等専門学校等と連携した人材育成や国内外の研究機関等との連携等も進んでいます。これを更に発展させ、司令塔となる中核的な拠点として機構を設立することで、研究開発や産業化、人材育成の動きを加速させていきます。

 こうした機構の取組を通じて、地域における人材の厚みを増すことにより、今後、関係機関との連携や役割分担、人材の育成や確保に関するニーズ等の状況を踏まえて、人材育成の取組について、更に検討、具体化を図ってまいります。

 機構における人材育成についてお尋ねがありました。

 機構が立地地域等に定着し長期的に発展するためにも、未来を担う若者世代に対する人材育成の取組が重要であると考えております。機構等の研究者による地元の小中学校や高校等への出前授業等や実証フィールドを活用した体験学習会や競技会等を行うことで、小中高校生等が先端的な研究、学術分野に触れる多様な機会を設けてまいります。

 また、例えば、実証フィールドの視察や伝承館と連携した研修等を含む、学校教員や教員志望学生向けの実地研修等を行うことで、科学教育や防災教育に関する人材育成の基盤構築に資するとともに、機構の取組に対する小中高校生等の関心の醸成と参加の促進を図ってまいります。

 機構における研究者の雇用の安定についてお尋ねがありました。

 国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性から、成果や能力に応じて柔軟に設定した給与等の水準や、安心して研究開発等に取り組むことができる研究環境の整備等をもって処遇することにより、国内外に誇れる研究活動を推進してまいります。

 大学等、研究開発法人等の研究者等については、業務の特性に照らして、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律において、無期転換の申込みができるまでの期間を通算十年とする特例が定められており、研究開発を主たる業務とする機構においても同様に特例を設けています。

 機構において有期雇用される研究者については、随時、必要性と実行可能性を考慮して、任期なし契約への移行を図ってまいります。

 福島国際研究教育機構の活動スケジュールと研究者等の確保についてお尋ねがありました。

 機構については、中期目標の期間である七年間及び必要な施設の順次供用開始を目指す復興庁設置期間内において本格的軌道に乗せることを目指します。

 また、機構が、福島の中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進するためには、国内外から優秀な研究者が参画することが重要です。

 このため、研究者やその家族にとって、住まい、教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要であり、地元が取り組むまちづくりと緊密に連携して、機構の施設整備を進めてまいります。

 また、最先端の研究を支える研究設備の設置や国際的に卓越した能力を有する人材を確保する必要性を考慮し、成果や能力に応じて柔軟に設定した給与等の設定を可能とすることについて本法案に規定しています。これらにより、国内外の優秀な研究者の定着を図ってまいります。

 機構の財源確保の在り方についてお尋ねがありました。

 福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の復興を前進させるとともに、我が国の科学技術力、産業競争力の強化にもつながる、創造的復興の中核拠点を目指すこととしています。

 その実現に向けて、機構が長期、安定的に運営できるよう、復興特会設置中は復興財源等で必要な予算を確保するとともに、復興特会終了以降も見据え、外部資金や恒久財源による運営への移行を段階的、計画的に進めることとしています。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣二之湯智君登壇〕

国務大臣(二之湯智君) 金子議員より、福島県沖を震源とする地震の支援策について御質問いただきました。

 改めて、今回の地震によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された全ての皆様に対し、心よりお見舞いを申し上げます。

 私も、総理からの指示を受け、直ちに現地に入り、被災現場を視察し、内堀福島県知事や立谷相馬市長と意見交換をしてまいりました。

 その際に見聞きした被害の状況や被災自治体からの要望について私から総理に報告したところ、総理から、被災者の方々に寄り添った支援策を取りまとめるよう指示がありました。

 この地震による被災地は度重なる災害などに見舞われた地域であり、被災した方々の復興に向けた希望が失われることのないよう、関係省庁が協力して、被災者の生活となりわいの再建に向け、四月八日に支援策を取りまとめたところです。

 被災自治体からも一定の評価をいただいたと認識しており、引き続き、被災地の声をよく伺いながら、復旧復興に全力を尽くしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 早坂敦君。

    〔早坂敦君登壇〕

早坂敦君 日本維新の会、早坂敦です。

 私は、会派を代表して、福島復興再生特別措置法の一部改正法案に関して、関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 東北では、最近、地震が相次ぎ、大きな揺れのたびに東日本大震災の恐怖と不安がよみがえっています。

 中でも、三月十六日の福島県沖を震源とする地震では、お亡くなりになった方もおられました。謹んで哀悼の意を表するとともに、災害に遭われた全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 さて、今回の改正案は、福島の復興再生の一環として、原発事故と津波で大きな被害を受けた福島浜通り地域に、新産業の創出、産業の国際競争力強化につながる事業の拠点として、福島国際研究教育機構を設立するというものです。地元福島においては、夢や希望に向かって進む福島の創造的復興の中核になるものとして期待されています。

 私たち日本維新の会も、震災から十一年目となった東日本大震災の復興政策において、人に着目したソフト中心の復興支援策の継続、推進を重視し、政策提言しています。

 同時に、この新しい機構が本当に福島を始め東北の復興に役立つものとなるには、幾つも解決すべき課題があることも指摘せざるを得ません。

 そこで、関係大臣に質問をいたします。

 まず、この新しい拠点は、人が住む場所にしなければなりません。幾ら最先端のすばらしい研究を行っていても、人々の暮らしから隔絶されていては、福島の夢や希望にはつながりません。

 有識者会議の議論では、研究者六百人、雇用創出五千人という人的規模も見込まれていました。また、拠点が置かれる場所や施設の内容は今後選定するとのことですが、私は、人々が住みたくなるような魅力ある新しい町をつくり、そこに生き生きした輝きとにぎわいが生まれることこそが、福島を始め東北地方の本当の夢と希望につながると考えます。

 復興大臣にお聞きします。

 就労者、居住者など人的な規模の見込みとともに、新しい町をつくることについてどのような認識をお持ちですか。お答えください。

 今回新設される機構においては、ロボット、エネルギー、農林水産、放射線科学・創薬医療、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の五つを重点分野として取り組むとしており、いずれも福島の復興と発展にとって欠かせない分野であり、期待が高まっています。

 中でも、廃炉作業の着実な推進につながる技術課題に真っ正面から取り組む姿勢は大変評価できるものです。ただ、廃炉の完了は数世代先という途方もない時間がかかることも直視しなければなりません。

 復興大臣にお聞きします。

 新機構において、先端技術及び先進的な産業の開発拠点や共同研究利用施設とすべく、技術の寄せ集めとならぬよう、例えば、廃炉技術と要素技術の研究開発拠点として、さらに加速器やアルファ放出核種等を活用した群分離・核変換技術の開発やラジオアイソトープ医薬品の最先端開発の拠点として位置づけることは大変価値のあるものと考えますが、いかがですか。

 また、福島県内に残る約一千四百万立方メートルという膨大な除染土については、現行の政府目標は、二〇四五年までに県外で最終処分とするという、実現が見通せないものとなっていますが、機構において重要課題に位置づけ、科学的根拠を踏まえた実行可能な処理のロードマップが早急に策定できるようにすべきと考えますが、併せてお答えください。

 地元、福島県議会は、令和二年十二月十七日、政府に意見書を提出し、新たに設置される研究施設が風評払拭のための拠点として不可欠な施設であるとして期待を表明するとともに、機構が取り組む研究が原子力災害での教訓や逆境をはね返す姿を国内外に発信し、風評払拭につなげるものとすることを求めています。

 原子力については、科学的研究や技術開発だけではなく、国民の理解を阻む風評への対策も欠かすことはできません。地元福島の願いに応え、風評対策を全ての重点分野での共通課題に位置づけてほしいと思いますが、新たに設置する機構では風評対策についてどのように取り組んでいくのか、復興大臣の決意をお聞かせください。

 特に、水産業は深刻な風評被害にさらされています。

 福島産の水産物は、厳しい検査と品質管理を行っており、世界一安全、安心であると言っても過言ではありませんが、それでも根拠なく危険視する風評が後を絶ちません。

 先日、南相馬市を訪問した際、地元の方から郷土料理のガニ汁をごちそうになりました。ガニ汁は、モクズガニというカニを石臼で潰して水とみそやしょうゆで味つけをした素朴な料理ですが、カニのうまみがぎゅっと詰まったぜいたくな味わいでした。そんな地元の皆さんが愛されている郷土料理も、風評により、食す人が減ってしまったという話を伺いました。国内においてもまだこのような状況ですから、海外における風評はどれほどかと心配してしまいます。

 福島の漁業関係者の皆様の努力により、長らく輸入を禁止していた諸外国のうち、最近、台湾が福島県産水産物の輸入を解禁しました。しかし、隣国の韓国はいまだに輸入を禁止しており、このことが福島県の水産物への風評を助長しています。

 韓国では、尹錫悦氏が新大統領に選ばれました。

 農水大臣にお聞きします。

 政権交代を好機として、韓国に対して福島の水産物の輸入を解禁するように申し入れ、輸出を再開させることで、世界に向け安全性をアピールするとともに、風評を払拭するように努めるべきではありませんか。大臣の御所見をお示しください。

 また、環境大臣にお聞きします。

 韓国にあるCANDU型原子力発電所からトリチウムの海洋放出の影響をどのように評価し、日本としてどのように対応していますか。お答えください。

 ALPS処理水に関する風評も、漁業関係者を直撃する問題になっています。

 来年春から、処理水を放射線の影響が全く出ないレベルまで希釈した上で海洋放出されますが、この方法は、国際原子力機関、IAEAも安全性を承認しています。にもかかわらず、処理水を汚染水と呼び続けることは、福島県民を苦しめる風評の元凶として厳しく非難されるべきです。

 経済産業大臣に伺います。

 ALPS処理水に関する風評を絶つ上で、汚染水と処理水の科学的違いを明確に訴えるとともに、処理水の安全性に係る事実を全国で共有することが重要です。

 処理水の海洋放出に当たっては、福島県外、特に沿岸部から離れた海洋での放出も検討することを提案するものですが、御見解をお聞かせください。

 また、薄めても同じだなどという、量や濃度という科学の初歩的な概念も無視した無責任な発言が野党の国会議員からなされている事態は嘆かわしいばかりです。共通の言葉がなければ話合いができないように、自然科学の法則について共通の理解がなければ議論は成り立ちません。

 環境大臣にお聞きします。

 特に、環境問題について、社会に流布されている情報の真偽を科学常識に基づいて見分ける科学リテラシーの能力を、学校教育のみならず、社会人にも、生きる能力、根拠のない偽の情報にだまされないための能力として身につけていただく取組を国を挙げて本格的に進めるべきだと思いますが、いかがですか。お答えください。

 小泉、細川、菅、鳩山、村山の首相経験者の方々五名が、今年一月二十七日、EUの欧州委員会委員長宛てに書簡を送り、多くの子供たちが甲状腺がんに苦しんでいるなどと発信しました。山口環境大臣の二月一日の抗議文書の内容は、いわれのない差別や偏見を助長することの懸念を表明したものの、適切でないと考えるというにとどまり、抗議としては甚だ不十分なものでした。実際、五名からは、発言の撤回どころか、反省の言葉すら返ってきません。福島の県民の皆さんに過度な動揺や心配を与えるだけであって、自民党や立憲民主党を含む首相経験者の方々の無責任な発言に対して憤りを覚えるものです。

 問題なのは、政府や関係機関がこの問題に言及する際、完全には否定できないとか、影響とは考えにくいなどと曖昧な表現をするため、結果として風説が野放しとなっていることです。

 環境大臣に質問します。

 人権侵害の風説を流布する五名の首相経験者に対して、政府として、改めて明確に断固抗議し、発言の撤回を求めるべきです。御所見をお示しください。

 また、過剰診断の問題に真っ正面から向き合い、これ以上の不安が福島県民や国民に広がらないように、実効性を重視した科学的説明を行うように求めるものですが、いかがですか。お答えください。

 日本維新の会は、あの震災を風化させることなく、福島を始め東北地方の一日も早い復興と発展のために粉骨砕身努力してまいることをお誓い申し上げ、質問を終わりにします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 早坂議員から、私には四問御質問をいただきました。

 福島国際研究教育機構の人的規模とまちづくりについてお尋ねがありました。

 機構においては、数百名の国内外の優秀な研究者等が研究開発等の活動に参画することを想定しています。

 こうした様々な研究人材等を機構の立地地域や周辺地域に呼び込み、定住につなげていくためには、住まいや教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要です。

 福島県においても、機構の立地選定に当たっては、研究者が安心して研究教育活動に打ち込める、そして福島イノベーション・コースト構想の効果が最大化できるよう、広域的な視点に立って候補地を選定する考えであると承知しています。

 機構の立地を契機として、福島県や市町村が取り組むまちづくりについては、国としても緊密に連携しつつ、機構の施設整備を進めてまいります。

 福島国際研究教育機構における放射線科学等の研究についてお尋ねがありました。

 機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する研究開発を推進することとしています。

 例えば、廃炉作業の着実な推進等を支えるため、様々な過酷環境下で対応が可能な遠隔操作ロボットの研究開発などに取り組むことや、放射性同位元素、いわゆるRIを用いた新たな医薬品の研究開発等に取り組むことを想定しています。

 これらの取組により、福島浜通り地域等が原子力災害を乗り越える一助となること、そして、同地域に国内外から優秀な人材が結集し、我が国全体の科学技術力の強化に貢献することを目指してまいります。

 除去土壌の県外最終処分に係る取組についてお尋ねがありました。

 福島県内で発生した除去土壌等の県外最終処分という方針は、法律にも規定された国の責務です。現在、平成二十八年、二〇一六年に策定した技術開発戦略及び工程表に基づき、環境省が中心となって、減容に関する技術開発、再生利用の実証事業、全国での理解醸成活動などに取り組んでいるところです。

 機構においては、原子力災害からの環境回復にも貢献する、放射性物質の環境動態に係る研究に取り組むこととしており、科学的知見の集積や情報発信を通じて、福島浜通り地域等の復興に貢献できるよう取り組んでまいります。

 福島国際研究教育機構における風評対策の取組についてお尋ねがありました。

 機構においては、原子力災害に関するデータや知見の収集、分析や、研究開発成果の普及を業務として位置づけております。原子力災害に見舞われた福島を中心とした放射性物質の環境動態を解明するとともに、得られた科学的知見及び関係機関が蓄積した原子力災害に関するデータや知見を収集、分析し、継続的、効果的に情報発信に取り組むことを想定しています。

 また、ロボットや農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用といった各分野における最先端の研究も、原子力災害からの復興再生を起点として世界共通の課題解決を目指すものであり、こうした取組全体を通じて機構の活動が風評払拭の大きな力となるよう取り組んでまいります。

 私からは以上です。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 早坂議員からの質問にお答えいたします。

 ALPS処理水の安全性に関する情報発信と福島県外等での海洋放出についてお尋ねがありました。

 政府が海洋放出の方針を決定したのは汚染水を浄化処理したALPS処理水であり、両者は明確に異なるものです。こうした点も含め、処理水の安全性について、科学的根拠に基づく情報を国内外に丁寧に発信してまいります。

 また、福島県外からの海洋放出については、方針決定前に政府の専門家会議で検証されておりますが、持ち出し先の自治体や住民など新たな関係者との調整、関係法令上の手続などに相当な時間を要するとの指摘があり、こうした点を踏まえれば、現実的な対応策にはならないと考えています。

 なお、沿岸部から離れた海域での海洋放出は、国際条約上、行うことができないことになっております。(拍手)

    〔国務大臣金子原二郎君登壇〕

国務大臣(金子原二郎君) 早坂議員の御質問にお答えします。

 韓国に対する福島県産水産物の輸入解禁の申入れや風評の払拭についてのお尋ねがありました。

 水産物を含む日本産の食品の安全性は科学的に証明されており、輸入規制は科学的見地に基づき早期に撤廃すべきというのが我が国の立場です。

 韓国に対しても、これまでも、多国間協議の場などを活用して働きかけてまいりました。

 今後とも、関係省庁と連携し、あらゆる機会を活用いたしまして、規制が早急に撤廃されるよう、より一層働きかけるとともに、正確な情報の発信等により風評の払拭に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣山口壯君登壇〕

国務大臣(山口壯君) 早坂敦議員から、韓国にある原子力発電所からのトリチウムの海洋放出についてお尋ねがありました。

 原子力安全条約に基づき、韓国を含む締約国は、当該条約に基づく義務を履行するための法令や規制基準を設定しているものと承知しておりますが、御指摘の韓国によるトリチウムの海洋放出の影響について、環境省として評価は行っておりません。

 次に、環境問題と科学的知見についてのお尋ねがありました。

 科学的知見は環境政策の基盤であり、環境省としては、分かりやすい情報発信に取り組んでいます。

 また、環境教育等促進法に基づき、科学的知見を理解し、問題の本質や取組の方法を自ら考え、解決する能力を身につけていただく環境教育を、学校のみならず、職場、地域等のあらゆる場で推進されるよう取り組んでいるところです。

 引き続き、分かりやすい科学的な情報発信と、それに基づく環境教育を推進してまいります。

 最後に、福島県における甲状腺がんについてお尋ねがありました。

 まず、五名の総理経験者が欧州委員会委員長宛てに送付した書簡について、多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみという記述が、いわれのない差別や偏見の助長が懸念されるものであり、適切でないと考え、それを指摘する書簡を五名の総理経験者へ送付しました。加えて、同様の趣旨を、総理から欧州委員会委員長へ伝達したところです。

 また、福島県の原発事故に係る住民の健康管理は、医学等の専門家のコンセンサスが得られた科学的知見に基づいて進めることが何よりも重要であると認識しています。

 環境省としては、引き続き、科学的知見に基づき、福島県が実施する県民健康調査の支援を行うとともに、甲状腺検査の対象者も含め、県民の不安に寄り添いながら、正しい知識の国内外への情報発信により、放射線の健康影響に関する不安や風評払拭に取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 庄子賢一君。

    〔庄子賢一君登壇〕

庄子賢一君 公明党の庄子賢一です。(拍手)

 質問に入ります前に、北海道知床沖の海難事故によりまして犠牲となられました皆様のみたまに心から哀悼の意を表します。

 救難、救出作業の加速と、御家族の皆様方へのきめ細やかなフォロー、そして再発防止に向けた原因の徹底究明を強く願い、順次質問に入らせていただきます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 東日本大震災から十一年が経過しました。

 改めて、犠牲となられた皆様の御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族並びに被災された全ての皆様に心からお見舞い申し上げます。

 また、東京電力福島第一原発事故により、当たり前の日常を奪われ、いまだにふるさとに帰ることができない福島の県外避難者は、十一年が過ぎた今も、四十六都道府県に二万五千人以上おられます。復興と再生はまさに現在進行形であり、これからも息の長い支援が必要であることを決して忘れてはならないと思うものであります。

 その上で、復興と再生に向けては、立ち止まることなく、総力を挙げて着実に歩みを進めることが必要です。

 まず冒頭、復興大臣の福島の復興と再生に向けた現状の御認識と取組への御決意を伺います。

 今回の福島復興再生特別措置法改正案の柱の一つである新産業創出等研究開発基本計画については、内閣総理大臣は、総合科学技術・イノベーション会議及び福島県知事の意見を聞いてこの基本計画を定めるとした上で、計画策定に当たっては、福島の自然的、経済的及び社会的な特性が最大限に活用されるよう努めることと明記されています。

 この特性について、大臣は現在どのような認識を持っておられるか、また、計画の中でいかなる活用を想定されるのか、お尋ねいたします。

 また、同基本計画において定める新産業の領域、その技術レベルについては、どのような想定をお持ちでしょうか。実際に産業化されるまでの達成期間も含め、見解をお聞かせ願います。

 次に、同基本計画の中核を担うとされている福島国際研究教育機構の基本構想について伺います。

 令和三年十一月、政府の復興推進会議は、機構が担う機能について、世界の課題解決に資するものとして、国内外から優秀な研究者を参画させ、世界最先端の研究開発の実現を目指すこと、さらには、研究開発を担う人材の集積と育成を図るという壮大なプランが示されました。また、その規模感においては、その活動が本格的に軌道に乗った時点において数百名規模の国内外の優秀な研究者等が参画することを目指すとし、質、量共にかつてないスケールの拠点となることをうたっています。

 改めて、国が位置づけるこの機構の存在意義について、見解をお尋ねいたします。

 加えて、立地場所については、地元の意見が反映されることは当然として、国としては、選定に際し、どのような事柄に重点を置くのでしょうか。立地場所決定の時期も含め、お答え願います。

 地元福島県の意見をいかに尊重するかは非常に重要な点です。先日、内堀知事が、新聞社のインタビューに対し、国内外から優秀な研究者を呼び込むためには、研究環境だけでなく、まちづくりの視点も重要だと答え、研究者とその家族が住みやすいまちづくりを進め、安心して創造的な活動に打ち込める生活環境の整備の重要性を訴えましたが、私は、この際、研究機構の基本構想がまとめられたことを受け、研究教育拠点の整備を核としたまちづくり基本構想を県や自治体と一体となって策定し、町の全体像を明確にすべきと考えます。大臣のお考えを伺います。

 さらに、現状、決して利便性があるとは言えない福島沿岸部のアクセスは、国内外から優秀な研究者を招く際のボトルネックです。例えば、成田や羽田から小型機で直接乗り入れ可能な航空設備の整備や、JR常磐線の高速化、高規格道路網の整備など、世界に冠たる拠点にする以上、それに見合った交通インフラが必要だと思います。大臣の御所見をお聞かせ願います。

 研究の柱として五分野が示されております。それぞれが極めて重要なテーマではありますが、原発事故に見舞われた地であるがゆえに、放射線科学や放射線制御、あるいは放射線の産業利用に関する研究で大きな成果を期待するものであります。加えて、事故を起こした原発の廃炉は世界で初めてのことであり、そこで得られる知見やデータ、新たな技術開発は、世界中で注目を集め、各国の原子力施策に生かされる国際貢献事業になり得るのではないでしょうか。福島の地であるがゆえに大きな意味を持つであろう、放射線科学と産業利用、放射性物質の環境動態の解明等について、お取組の方針を伺います。

 イノベーション・コースト構想が二〇一四年に取りまとめられた際、政府の研究会委員として携わった小沢喜仁福島大学特任教授は、イノベ構想自体の認知度について、ともすれば廃炉作業しかやっていないと誤解されていると危機感を示されています。今回、基本構想が示されたことを契機に、研究ジャンルごとに何をしようとしているのか、どんな可能性を秘めているのか、世界的にどのような課題解決に貢献するのかを分かりやすく発信し、広く御意見を得ていくべきと考えます。情報発信についてのお考えを伺います。

 そもそも、福島イノベーション・コースト構想は、失われた福島沿岸地域の産業基盤を回復させ、新たな産業を創出し、地元雇用に貢献することを柱としてつくられた国家プロジェクトであります。今後、機構が正式に設立され、各研究施設が稼働していった際に地元雇用に与える効果について、見解をお尋ねいたします。

 大阪万国博覧会が、二〇二五年四月から百八十四日間開催されます。想定する来場者は約二千八百二十万人。現在、百か国・地域、七つの国際機関が万博への公式参加を表明しています。コンセプトは、人類共通の課題解決に向け、先端技術など世界の英知を集め、新たなアイデアを創造、発信するというものであります。そこで、大阪万博と福島復興再生拠点のテストフィールドとのコラボレーションや、万博来場者が福島、東北へ足を運ぶ仕掛けなどを検討し、風評の払拭と被災地の観光振興につなげることを提案いたします。率直な御見解をお聞かせ願います。

 福島で生まれた野口英世は、黄熱病の研究に生涯をささげ、病原体を特定し、その成果を基にワクチンで多くの人命を救ったことで有名です。生前、野口英世は、過去を変えることはできないし、変えようとも思わない、人生で変えることができるのは自分と未来だけだとの言葉を残しています。

 被災者の皆様と過去を乗り越え、最も苦しんだところが最も幸せになっていく権利があるとの信念の下、福島の復興を成し遂げるとの決意を申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 庄子議員の御質問にお答えいたします。

 福島の復興再生についてお尋ねがありました。

 福島の避難指示解除地域では、小中学校の再開や医療機関の開設といった生活環境整備が進むなど、復興再生に向けた動きが本格的に始まっている一方、いまだ三万人を超える方々が避難生活を余儀なくされています。

 福島の原子力災害被災地域における復興再生は、中長期的な対応が必要であり、復興、創生の基本方針を踏まえ、生活環境整備、長期避難者への支援に加え、特定復興再生拠点区域の整備及び拠点区域外の避難指示解除に向けた取組、福島国際研究教育機構の整備、風評の払拭等を着実に進めます。

 復興のステージが進むにつれて生じる新たな課題や多様なニーズにきめ細かく対応していくことが重要であり、引き続き、国が前面に立って、福島の本格的な復興再生に向け、全力で取り組んでまいります。

 新産業創出等研究開発基本計画の策定についてお尋ねがありました。

 新産業創出等研究開発基本計画の策定に当たっては、同計画が福島の復興の実現に寄与することを担保する観点から、福島の自然的、経済的、社会的特性が最大限に活用されるよう努めることとしています。

 この特性については、豊かな自然環境を生かした農林水産現場の存在、これまでに培われてきた産業集積や技術開発の成果、原子力災害からの復興再生の経験、実績等を想定しています。

 これらの特性を最大限活用し、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決に資する、福島だからこそ可能な特色ある研究開発を推進することができるよう、計画策定に取り組んでまいります。

 新産業創出等研究開発基本計画に係る産業化についてお尋ねがありました。

 新産業創出等研究開発基本計画においては、福島における新たな産業の創出及び産業の国際競争力の強化に資する研究開発や、それに関連した産業化の取組について記載することを想定しています。

 産業化を進める領域は研究開発の領域に連動することを想定していますが、研究が研究だけで終わることなく、研究成果の社会実装、産業化を推進し、産業の集積などにつなげていくことが重要と考えています。

 また、同計画のほか、国は機構が七年間において達成すべき研究開発等に係る中期目標を策定することとしており、機構はその目標を達成するための中期計画を策定することになることから、当該計画に基づき、着実に産業化の取組を進められるよう取り組んでまいります。

 福島国際研究教育機構の存在意義及び立地場所についてお尋ねがありました。

 福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、我が国の科学技術力、産業競争力の強化を牽引し、経済成長や国民生活の向上に貢献する、世界に冠たる創造的復興の中核拠点を目指すこととしています。

 機構の立地場所については、四月八日に、福島県に対し、意見を伺う通知を発出いたしました。

 福島県における検討に当たっては、生活環境やまちづくり計画等との関係、研究者等の受入れ体制を含む地元の理解、協力などの観点と併せて、円滑な施設整備の観点が重要と認識しており、こうした観点から総合的に検討いただくよう依頼をしたところです。

 今後は、八月末までに福島県から御意見をいただき、この意見を尊重して、九月までに国としての立地の決定を目指してまいります。

 機構とまちづくりに関するお尋ねがありました。

 様々な研究人材等を機構の立地地域や周辺地域に呼び込み、定住につなげていくためには、住まいや教育、子育て、医療を始めとする生活環境の充実が重要です。

 福島県においても、機構の立地選定に当たっては、研究者が安心して研究教育活動に打ち込める、そして福島イノベーション・コースト構想の効果が最大化できるよう、広域的な視点に立って候補地を選定する考えであると承知しています。

 機構の立地を契機として、福島県や市町村が取り組むまちづくりについては、国としても緊密に連携しつつ、機構の施設整備を進めてまいります。

 機構への交通アクセスについてお尋ねがありました。

 福島浜通り地域等におけるインフラ整備については、これまでに、復興支援道路として相馬福島道路が全線開通し、また、常磐自動車道の四車線化も鋭意進められてきています。

 機構が、被災地における中長期の課題解決だけでなく、世界共通の課題解決にも資する世界水準の研究開発を推進するためには、国内外の優秀な研究者等が機構における研究開発等の活動に参画することが重要です。

 そのためには、機構への交通アクセスの確保は重要であり、機構の立地検討に当たっては、交通アクセス等を含む周辺環境等に関する観点も踏まえ、総合的に検討いただくよう、福島県に依頼をしています。

 今後、立地の決定等を踏まえ、福島県や市町村が取り組むまちづくりとも緊密に連携しながら、機構の施設整備に取り組んでまいります。

 機構における放射線科学等の研究についてお尋ねがありました。

 放射線の利用は、医療、工業、農業を始めとする幅広い分野で利用され、社会を支える重要な基盤となっています。

 機構は、放射線科学に関する様々な研究開発を実施することとしており、具体的には、放射性同位元素、いわゆるRIを用いた新たな医薬品の研究開発や、自動車等の大型部品等を丸ごと計測し、効率的にデジタル化、モデル化して活用する技術の開発等に取り組むことを想定しています。

 また、原子力災害に関するデータや知見を収集、分析し、世界に向けて積極的に発信することにより、風評払拭や、将来の大規模複合災害に備えた、より効果的な対策の構築等に貢献してまいります。

 これらの取組により、福島浜通り地域が原子力災害を乗り越える一助となること、そして、同地域に国内外から優秀な人材が結集し、我が国全体の科学技術力の強化に貢献することを目指してまいります。

 機構の情報発信についてお尋ねがありました。

 機構は、国内外に誇れる研究開発を推進するとともに、研究成果の社会実装、産業化や人材育成についてもその主要な業務として行うこととしており、福島県内だけでなく、広く世界に対しても、そうした成果を積極的に発信してまいります。

 加えて、機構の業務として、原子力災害に関するデータや知見の収集、分析を位置づけ、世界に向けて積極的に発信することにより、風評払拭や、将来の大規模複合災害に備えた、より効果的な対策の構築等に貢献することとしており、こうした取組等を通じても、機構の存在が広く知られるように取り組んでまいります。

 機構の地元雇用への効果についてお尋ねがありました。

 機構における研究開発の取組を福島を始め東北の復興に結びつけていくためには、研究開発の成果を社会実装、産業化に着実につなげていくことが重要です。

 このため、産学連携体制の構築や機構発ベンチャー企業等の創出、育成などの取組を通じて、地元の雇用創出にも貢献できるよう取り組んでまいります。

 また、機構においては、数百名の国内外の優秀な研究者等が研究開発等の活動に参画することを想定しています。研究者やその家族が機構の立地地域周辺に集積することで、新たな需要が生まれ、雇用創出にもつながるものと期待しています。

 大阪・関西万博についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、二〇二五年大阪・関西万博は、復興の進捗や被災地の状況について発信し、風評払拭や観光振興につなげる重要な機会と認識しています。

 令和二年十二月に閣議決定された大阪・関西万博の基本方針や、令和三年三月に閣議決定された復興の基本方針において、二〇二五年大阪・関西万博にて復興の進捗や被災地の状況を発信する旨が盛り込まれております。

 今後、福島イノベーション・コースト構想や福島国際研究教育機構等の取組の情報発信に加えて、風評の払拭や来場者の被災地への訪問につながるような情報発信を検討してまいります。

 引き続き、具体的な取組の内容につきまして、国際博覧会推進本部事務局や経済産業省などの関係省庁、自治体等と連携し、検討してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題になりました法律案について質問します。(拍手)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故発生から十二年目にして、立入りが制限されていた帰還困難区域にやっと人々の暮らしが戻ってきました。大熊町と葛尾村はこの春、双葉町は六月の避難指示解除を目指しています。

 福島県によれば、津波で被災した県管理公共土木施設の復旧事業は、帰還困難区域を除き、河川や海岸、道路、防災緑地など全五百二十四か所のうち九〇%超が完了しています。大津波に襲われた沿岸部では、震災前より一メートルから二・五メートルかさ上げされた防潮堤が完成しました。

 生活を支える福島の道路も、災害に強い路面造りが進みました。各地に整備された交通網は物流や広域観光の活性化など復興への効果が期待され、これらのインフラを活用することで住民帰還に結びつけ、にぎわい再生につなげることが期待されています。つまり、東日本大震災発生から十一年がたって、やっとハード整備の完了が見え、復興再生が本格的に開始できる環境が整ったわけです。

 昨年九月にアメリカが福島産食品の輸入規制を撤廃したのに続き、今年二月には台湾が禁輸措置を緩和しました。放射性物質検査報告書の添付が輸出の条件となるなど規制の一部は残ったとはいえ、原発事故前は福島県産農作物の主要輸出先だっただけに、緩和の意義は大きいと考えます。

 規制を維持しているのは、事実上、中国や韓国、香港など計十四か国・地域となりました。規制の完全撤廃に向けて、科学的根拠に基づいた正確な情報を発信し続けなければならないと思いますが、政府の認識を伺います。

 また、福島産農作物の根強い風評被害に終止符を打つためにも、農林水産省の食堂や議員会館などの食堂で一年を通して積極的に福島県産の農作物を活用し、風評被害払拭と消費拡大に政府が先頭を切って取り組むべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 震災、原発事故から十一年がたった今も、福島では、子供が花を摘んだり、土遊びをしたり、ほほ笑ましいはずの光景にも放射能の不安が影を落としています。子供の成長のために自然の中で存分に遊ばせてあげたい一方、被曝を心配する余り、あれも駄目、これも駄目と子供から経験を奪ってしまう、その矛盾に苦悩する保護者がまだまだいらっしゃいます。

 チョルノービリ原発事故後、被害の大きかった隣国ベラルーシ共和国では、子供たちが三週間以上、放射線量の低い土地に滞在し、健康的な食事を取ることで心身のリフレッシュを図る保養が生まれ、三十年以上たった今も国策として続けられています。

 被災地の子供の心を休ませたり、震災の影響でできなくなった体験の機会を補ったりする保養は、東日本大震災後、全国各地で始まり、活発な活動が展開されましたが、震災関連の助成金や補助金打切りとともに減少に転じています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、保養の機会も減りました。しかし、除染で出た汚染土は袋に詰められ、福島県内の庭や公園など、生活環境のすぐそばにまだまだ残されています。

 放射能の心配をしないで自然の中で思いっ切り遊ばせてあげたいと考える子育て中の方々に寄り添うために、保養に取り組む団体をこれからも国策として支援すべきだと考えますが、政府の認識を伺います。

 福島県では、震災と原発事故に伴う避難の影響で体調を崩すなどして死亡し、関連死として認定された人が今年三月時点で二千三百三十一人に上ります。地域で見ると、南相馬市が五百二十人で最も多く、次に富岡町四百五十四人、浪江町四百四十一人。避難指示が出るなどした十二市町村で二千百十九人と、全体の九〇%になります。

 震災に関連する福島県内の自殺者の数は、今年一月までで百十九人。岩手県の五十五人、宮城県の六十二人に比べて約二倍の数で、甚大な被害を受けた被災地三県の中でも突出しています。

 福島県内の震災関連死、震災関連自殺者を一人でも減らすことが急務だと考えますが、このことについての政府の見解と今後講じられる対策についてお答えください。

 最後に、大震災からの五年間は集中復興期間として財源の集中的配分を条件にハード事業の早期実施が自治体に半ば強制され、復興に住民の意見が反映されにくくなるようなことがありました。ハード面の整備にめどが立ったこれからこそ、住民の意見を最大限尊重した、住民が主役の復興に取り組んでいただくことを政府に強くお願いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 長友議員にお答えいたします。

 諸外国の輸入規制撤廃のための情報発信と福島県産農林水産物等の消費拡大についてお尋ねがありました。

 原発事故に伴う日本産食品への輸入規制については、規制を導入した五十五の国、地域のうち、現在までに四十一の国、地域が規制を撤廃しましたが、依然として、中国、韓国、台湾、香港を含む十四の国、地域が日本産食品に対して規制を維持しています。

 食品の安全管理については、放射性物質のモニタリング検査を実施し、仮に基準値を超過した場合には流通しないようにするという安全管理体制を構築しており、規制の撤廃に向けた働きかけに当たり、検査結果などの科学的根拠に基づく正確な情報を発信しているところです。

 引き続き、規制を早期に撤廃するよう、一層働きかけてまいります。

 被災地の農林水産物等の消費拡大については、「食べて応援しよう!」の下で、生産者、消費者等の団体や食品事業者等、多様な関係者の協力を得て、被災地産食品の販売フェアや社内食堂等での積極的利用を進めています。具体的には、農林水産省を始めとした全府省庁の食堂、売店において、積極的に被災地産食品を利用、販売しています。

 加えて、今年の二月から三月にかけて、衆議院会館の食堂において福島県産品を含む被災三県の食材を使ったメニューを提供するとともに、産品の展示即売会を開催したところであり、今後、参議院議員会館でも同様の取組を行う予定です。

 さらに、昨年度は、十八府省庁において、職員向けにオンラインにより福島県産品を販売いたしました。

 福島県産農林水産物等の消費拡大に向けて、政府一丸となって、全力で取り組んでまいります。

 保養に取り組む団体への支援についてお尋ねがありました。

 福島県内に住む子供たちが自然体験活動等を通じて心身の健康保持を図ることは重要だと認識しており、福島県の子供たちを対象とする自然体験・交流活動支援事業を被災者支援総合交付金を通じて支援しています。

 具体的には、社会教育団体等が実施する福島県内の児童生徒等のキャンプ、ハイキング、自然観察、農林漁業体験等の自然体験活動への参加を支援しているところであり、今後も、団体等の状況をお伺いしつつ、被災者に寄り添った支援を実施してまいります。

 震災関連死についてお尋ねがありました。

 被災者の方が震災後に震災に関連してお亡くなりになることがないよう、被災者の方々の住まいや生活の再建の後押しとともに、災害公営住宅等に入居された方に対しても孤立防止や心身のケアに取り組むことが重要だと認識しています。

 このため、被災者支援総合交付金を活用し、心のケアセンターによる相談支援や保健師による健康相談、災害公営住宅等に入居された方の見守り、自治会の形成や交流会の開催などのコミュニティーづくりの支援等の自治体の取組を支援しています。

 今後とも、被災者に寄り添った支援に努め、被災自治体とともに、震災関連死の防止に引き続き取り組んでいきます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 高橋千鶴子さん。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、福島復興再生特措法改正案について質問します。(拍手)

 原発事故の避難者らが国と東電を訴えた約三十件の集団訴訟で、最高裁はこれまで七件で東電の上告を退け、国の基準を上回る賠償額が確定しました。今夏にも国の責任について統一判断を示すといいますが、原発を推進し、安全審査で合格させてきた国の責任は免れません。賠償基準と現状について直ちに検証し、必要な見直しを行うべきです。

 帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域では、今春から避難指示解除が始まります。それ以外の区域については、帰る意向がある人の周辺のみ除染すると聞いています。それで帰還が進むとは到底考えられませんが、お答えください。

 被災者にとって、医療、介護の減免措置は命綱です。政府は、二〇二五年度から段階的に終了すると各自治体に通知しました。年金暮らしの高齢者などは、今より収入は増えず、物価高もあって、生活は厳しさを増すばかりです。低所得の固定化に着目した医療、介護の助成制度が必要ではありませんか。

 今月五日、岸田総理は、全漁連の岸会長と面会し、ALPS処理水海洋放出について理解を求めました。同日、萩生田大臣名で示した回答書には、二〇一五年に福島県漁連と交わした約束を今後も遵守するとあります。それなら、関係者の反対がある以上、海洋放出は行わないという理解でよいのか、お答えください。

 被災地の水産業は、主要魚種の水揚げ減少やコロナ禍の影響もあって、厳しい状況が続いています。歯を食いしばって、ようやく後継者も増えてきたのに、賠償で漁業を継承することはできません。

 こうした中、復興庁が全国の学校に送ったチラシには、まるで事故炉を通った処理水と自然界にあるトリチウムがほぼ同じであるかのように描いています。こうした政府の姿勢こそが風評被害になっているのではありませんか。

 このような被災地の現状の中、本法案はどんな意味があるでしょうか。

 まず、提出者である復興大臣が主務大臣に含まれていないのはなぜですか。

 政府が新産業創出等に関する基本計画を定める際には、総合科学技術・イノベーション会議、福島県知事からの意見を聴取し、特殊法人福島国際研究教育機構がその中核的な役割を担うとされています。主務大臣は、基本計画に基づき、七年間の中期目標を作成します。復興庁の設置期限は二〇三一年三月末であり、これ以降はどうなるのでしょうか。

 同様に、財源については、昨年十一月の復興推進会議の決定では、復興特会終了後も見据え、外部資金や恒久財源に移行していくとしています。復興特会も二〇三一年三月末で終了しますが、その後の財源確保の見通しについて伺います。

 次に、基本構想では、五分野五十のテーマが示されました。福島の復興のために国を挙げて推進してきたはずの福島イノベーション・コースト構想との関係はどうなりますか。

 経団連は、国家的課題解決を目標とした戦略的研究や、破壊的イノベーションともいう創発的研究などを政府研究開発投資に求めていますが、基本計画とはこうしたことですか。基本構想がうたう、復興を実現するための夢や希望とは無関係に思えます。

 法案では、国際的に卓越した能力を有する人材を確保すると言いますが、世界トップレベルの人材を特別待遇で招致したとしても、クロスアポイントメント制度によって、福島には居住せず、肩書だけということもあります。福島県知事が強く求めてきた教育機関としての役割、研究を通しての人材育成についてはどのように考慮されるのか、伺います。

 終わりに、浜通りの住民には、原発で仕事をしていた方がたくさんいます。複雑な被災者の思いに寄り添い、今取り組むべきは廃炉そのものであり、トリチウムの除去を始めとした技術の確立、放射性物質の動態研究を通して環境回復や医療に貢献するなど、原発事故という負の遺産を将来の希望につなげる研究へ国を挙げて取り組んでいただきたい、このことを提案して、質問とします。(拍手)

    〔国務大臣西銘恒三郎君登壇〕

国務大臣(西銘恒三郎君) 高橋議員の御質問にお答えをいたします。

 医療、介護の助成制度についてお尋ねがありました。

 これまで、原発事故により設定された避難指示区域等に居住されていた方について、医療、介護保険等の保険料、窓口負担の減免措置を実施してきました。

 本措置については、復興の基本方針において、被保険者間の公平性等の観点から、避難指示解除の状況も踏まえ、適切な周知期間を設けつつ、激変緩和措置を講じながら、適切な見直しを行うこととされており、これを踏まえて、被災者の方々の実態を把握している関係自治体の御意見を丁寧にお伺いしてきました。

 今般、本措置の見直しを決定しましたが、関係自治体の御意見を踏まえ、急激な負担増にならないよう、避難指示解除から十年という十分な経過措置を取るとともに、複数年かけて段階的に見直すこととしております。

 また、現行の国民健康保険制度等においても、所得の低い方に対して保険料の負担軽減措置が講じられています。さらに、個々の事情に応じた納付相談の実施など、きめ細やかな対応が行われるよう、厚生労働省とも連携して、市町村に対して周知をする予定です。

 全国の学校に送付したチラシの内容がかえって風評被害を増大させているのではないかというお尋ねがありました。

 風評被害を生じさせないためには、科学的根拠に基づく正確な情報を分かりやすく丁寧に届けることが重要と考えています。

 このため、ALPS処理水という専門性が高いテーマについて、安全性等に関する正しい情報を、分かりやすく、できるだけ多くの方々に伝えられるよう、このチラシを作成し、水道水にも通常トリチウムが含まれていることなどを説明しています。

 引き続き、風評被害を生じさせないため、政府一丸となって、科学的根拠に基づく正確な情報の発信などに取り組んでまいります。

 福島国際研究教育機構の主務大臣についてお尋ねがありました。

 機構については、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び環境大臣が内閣総理大臣とともに共管することとしています。

 復興庁設置法上、復興庁の長は内閣総理大臣であり、復興大臣は内閣総理大臣を助けるものとされています。したがって、主務大臣としては内閣総理大臣と規定していますが、機構の運営に当たっても、復興大臣が内閣総理大臣を助けて、復興庁の事務を統括してまいります。

 復興庁設置期限後の福島国際研究教育機構の運営についてお尋ねがありました。

 機構は、創造的復興の中核拠点として、政府を挙げて、長期、安定的な運営の確保を図ることとしています。

 復興庁設置期限後の機構の在り方については、復興施策全体の整理を踏まえ、適切に検討することとなりますが、今後、機構が長期にわたり、必要な研究開発や産業化、人材育成を担うことができるよう、政府一体となって取組を進めてまいります。

 機構の財源確保の在り方についてお尋ねがありました。

 福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の復興を前進させるとともに、我が国の科学技術力、産業競争力の強化にもつながる、創造的復興の中核拠点を目指すこととしています。

 その実現に向けて、機構が長期、安定的に運営できるよう、復興特会設置中は復興財源等で必要な予算を確保するとともに、復興特会終了以降も見据え、外部資金や恒久財源による運営への移行を段階的、計画的に進めることとしています。

 福島イノベーション・コースト構想における福島国際研究教育機構の位置づけについてお尋ねがありました。

 これまで、福島イノベーション・コースト構想に基づく廃炉、ロボット等の研究・実証拠点等の整備、さらには医療関連、航空宇宙などにも拡大された取組を通じて、浜通り地域等に新たに進出した企業と地元企業が連携して研究開発に取り組むなど、産業集積の芽が出始めています。

 福島国際研究教育機構は、この福島イノベーション・コースト構想を更に発展させ、各施設等の取組に横串を刺す司令塔として位置づけられております。今後、福島国際研究教育機構を設立することにより、研究開発や産業化、人材育成の取組を更に加速させてまいります。

 新産業創出等研究開発基本計画における研究開発等の取組についてお尋ねがありました。

 新産業創出等研究開発基本計画は、福島における新たな産業の創出等に資する取組を総合的かつ計画的に推進するために策定することとしています。

 機構は、同計画の中核的な主体として、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する研究開発を推進することとしており、福島を始め東北の復興を実現するための夢や希望となるよう取り組んでまいります。

 機構における人材育成についてお尋ねがありました。

 これまでの福島イノベーション・コースト構想の取組により、産業化の動きに加えて、大学や高等専門学校等と連携した人材育成や国内外の研究機関等との連携等も進んでいます。これを更に発展させ、司令塔となる中核的な拠点として機構を設立することで、研究開発や産業化、人材育成の動きを加速させていきます。

 教育機関としての役割や研究を通しての人材育成については、こうした機構の取組を通じて地域における人材の厚みを増すことにより、今後、関係機関との連携や役割分担、人材の育成や確保に関するニーズ等の状況を踏まえて、更に検討、具体化を図ってまいります。

 原発事故の経験を踏まえた研究についてお尋ねがありました。

 機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する、国内外に誇れる研究開発を推進することとしています。

 例えば、廃炉作業の着実な推進を支え、災害現場等の過酷環境下や人手不足の産業現場等でも対応が可能な遠隔操作ロボットやドローンの開発、放射性同位元素、いわゆるRIの先端的な医療利用や創薬技術開発等につながる、アルファ線放出核種等を用いた新たな医薬品の開発などの研究開発を進めていくことを想定しています。

 また、原子力災害に関するデータや知見を収集、分析し、世界に向けて積極的に発信することにより、風評払拭や、将来の大規模複合災害に備えた、より効果的な対策の構築等に貢献してまいります。

 これらの取組により、福島浜通り地域等が原子力災害を乗り越える一助となること、そして、同地域に国内外から優秀な人材が結集し、我が国全体の科学技術力の強化に貢献することを目指してまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 高橋議員からの質問にお答えします。

 国の責任と賠償基準の見直しについてお尋ねがありました。

 国の責任については、本年四月から五月にかけて最高裁判所が口頭弁論を開いた後に、判断が示されるものと承知しています。

 また、賠償基準については、集団訴訟の判決の確定を踏まえて、今後、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会において、類型化が可能で一律に賠償すべき損害の項目やその範囲等の目安を示す原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針の見直しの要否等について議論されるものと承知しており、専門家による議論を踏まえ、政府として適切に対応してまいります。

 福島第一原子力発電所のALPS処理水についてお尋ねがございました。

 ALPS処理水の処分については、福島の復興を成し遂げるためには避けては通れない課題です。

 引き続き、政府が前面に立ち、処理水の安全性を確保するとともに、風評払拭に向けてあらゆる対策を行うことを通じて、地元の漁業関係者も含め、皆様の御理解を得てまいります。

 ALPS処理水の放出に伴う風評影響についてお尋ねがございました。

 昨年四月の基本方針の決定以降、被災地の漁業者の皆様などからは、ALPS処理水の放出に伴う風評の影響についての懸念が示されていると認識しています。

 こうした御懸念を踏まえ、昨年十二月、政府が取り組む具体的な対策を盛り込んだ行動計画を取りまとめ、その中では、IAEAの協力を得て、科学的根拠に基づく安全性を発信し、安心を浸透させる等の、風評を生じさせない対策や、漁業者の設備投資や販路拡大に対する支援、基金の整備などの、風評に打ちかつための対策など、賠償以外にも様々な対策を講じることとしております。

 引き続き、政府一丸となって、これらの対策をしっかりと実行するとともに、対策の進捗や地元の皆様の御意見なども踏まえつつ、随時、対策の追加、見直しを行って、御懸念を払拭してまいります。(拍手)

    〔国務大臣山口壯君登壇〕

国務大臣(山口壯君) 高橋千鶴子議員から、特定復興再生拠点区域外への帰還についてお尋ねがありました。

 拠点区域外については、昨年夏、事故から十年が経過した中、自宅に帰りたいという切実な思いにお応えするため、住民の方々の帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除を行うという政府方針を決定しました。

 帰還する住民の方々の生活環境の放射線量を着実に低減させ、避難指示解除及び住民の安全、安心に万全を期すため、除染の手法、範囲について、十分に地元自治体と協議しながら、検討してまいります。

 二〇二〇年代をかけて、帰還意向のある住民の方々が全員帰還できるよう、政府方針の実現に向けて、関係省庁と連携し、取り組んでまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣 金子原二郎君

       経済産業大臣 萩生田光一君

       国土交通大臣 斉藤 鉄夫君

       環境大臣   山口  壯君

       国務大臣   二之湯 智君

       国務大臣   西銘恒三郎君

 出席副大臣

       復興副大臣  冨樫 博之君


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