衆議院

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第29号 令和4年5月25日(水曜日)

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令和四年五月二十五日(水曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十四号

  令和四年五月二十五日

    午後一時開議

 第一 労働者協同組合法等の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

 第二 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案(厚生労働委員長提出)

 第三 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 労働者協同組合法等の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

 日程第二 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案(厚生労働委員長提出)

 日程第三 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 鈴木財務大臣の財政についての演説及びこれに対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員尾身幸次君は、去る四月十四日逝去されました。痛惜の念に堪えません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 尾身幸次君に対する弔詞は、議長において去る二十日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに大蔵委員長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられた正三位旭日大綬章 尾身幸次君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 日程第一及び第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 労働者協同組合法等の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

 日程第二 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案(厚生労働委員長提出)

議長(細田博之君) 日程第一、労働者協同組合法等の一部を改正する法律案、日程第二、令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。厚生労働委員長橋本岳君。

    ―――――――――――――

 労働者協同組合法等の一部を改正する法律案

 令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔橋本岳君登壇〕

橋本岳君 ただいま議題となりました両案について、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 まず、労働者協同組合法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、労働者協同組合の事業の健全な発展を図り、持続可能で活力ある地域社会の実現に資するため、非営利性が徹底された労働者協同組合を特定労働者協同組合として認定することができる制度を創設するとともに、特定労働者協同組合に対する税制上の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月二十日の厚生労働委員会において、全会一致をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 次に、令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金に係る差押禁止等に関する法律案について申し上げます。

 本案は、低所得の子育て世帯に対する令和四年度子育て世帯生活支援特別給付金の支給の趣旨に鑑み、その支給を受けることとなった者が自ら給付金を使用することができるようにするため、給付金の支給を受ける権利の差押え等を禁止するとともに、給付金として支給を受けた金銭の差押えを禁止する措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月二十日の厚生労働委員会において、全会一致をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長中根一幸君。

    ―――――――――――――

 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中根一幸君登壇〕

中根一幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、建築物のエネルギー消費性能の一層の向上及び建築物における木材の利用の更なる促進を図ることにより、我が国における脱炭素社会の実現に資するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、建築物省エネ基準への適合を義務づける範囲を住宅を含む原則全ての建築物に拡大すること、

 第二に、市町村が定める区域の建築物に再生可能エネルギー利用設備の設置を促進する制度を創設すること、

 第三に、建築物の防火及び構造に関する規制を合理化すること

などであります。

 本案は、去る五月十二日本委員会に付託され、翌十三日斉藤国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、二十日質疑に入り、昨二十四日、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(細田博之君) 財務大臣から財政について発言を求められております。これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 先に原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議において決定いたしましたコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策を受けて、今般、令和四年度補正予算を提出することといたしました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明申し上げます。

 日本経済につきましては、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が緩和されつつありますが、国民生活や経済への感染症による影響は依然として続いております。こうした中、ロシアによるウクライナ侵略等を主な背景に、原油や穀物等の価格や供給の不安定化など、先行きの不確実性は高くなっており、今後、コロナ禍からの経済社会活動の回復の足取りが大きく阻害されかねません。

 こうした認識に立ち、四月二十六日に、コロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策を決定いたしました。

 総合緊急対策は、物価高騰による影響を緩和するための対応を緊急かつ機動的に実施するとともに、円滑な価格転嫁や賃上げを促し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするためのものです。

 総合緊急対策に盛り込まれた措置について、まずは、一般予備費及び新型コロナウイルス感染症対策予備費を使用するなど、迅速に対応した上で、令和四年度補正予算を編成いたしました。

 次に、令和四年度補正予算の大要について申し述べます。

 一般会計につきましては、歳出において、総額で約二兆七千億円を計上しております。

 その内容としては、総合緊急対策に基づき、今後の災害、新型コロナウイルス感染症の再拡大や原油価格、物価の更なる高騰等による予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保するため、六月以降の燃料油価格の激変緩和事業等の原油価格高騰対策に係る経費に約一兆一千七百億円、一般予備費に四千億円を計上するとともに、新型コロナウイルス感染症対策予備費を新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費として使途を拡大した上で、これに一兆一千二百億円を計上しております。

 また、国債整理基金特別会計への繰入として、約七十億円を計上しております。

 歳入においては、公債を約二兆七千億円発行することとしております。

 この結果、令和四年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに約二兆七千億円増加し、約百十兆三千億円となります。

 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

 以上、令和四年度補正予算の大要について御説明申し上げました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(細田博之君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。重徳和彦君。

    〔重徳和彦君登壇〕

重徳和彦君 立憲民主党・無所属の重徳和彦です。

 会派を代表して、財政演説に関連し、岸田総理に質問します。(拍手)

 冒頭、本日早朝、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを複数発続けて発射したことは、明確な国連安保理決議違反であり、我が国及び地域の平和と安全、国際秩序に挑戦する言語道断の行為であり、強く非難いたします。

 それでは、質問に入ります。

 初めに、日米首脳会談について、何点かお尋ねいたします。

 今回のバイデン大統領の訪日は、ロシアのウクライナ侵略が続く中、日米同盟の強化とインド太平洋地域の平和と安定のため、極めて重要なタイミングで行われたものと評価し、歓迎しております。

 対中関係において、米国が台湾防衛のため軍事的に関与する考えが明示されたことは、従来の米国のスタンスから変化があったものと捉えていますか。それに対応して、日本が取るべき安全保障政策への影響はありますか。答弁を求めます。

 総理は、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏づけとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明されましたが、財源をどのように確保するのか、他のどの経費を節減するのか、財政運営の重荷にならぬよう、責任を持ってお示しください。

 また、GDP二%など防衛費の総額を論じる前に、我が国がF35戦闘機等の高額な防衛装備品を外国から爆買いすることで防衛予算を圧迫させ硬直化させているという質的な問題を解決せねばなりません。防衛力強化と予算効率向上のためにも、防衛装備品の外国依存度を下げ、国内防衛産業への発注と健全な育成を進めるべきと考えますが、いかがですか。

 十三か国で立ち上げた新たな経済連携、IPEF、インド太平洋経済枠組みへの参加は、日本にとってどんな具体的メリットがあるのですか。米国が参加していないTPPの枠組みとの違いを踏まえ、どう使い分けていく戦略なのですか。答弁を求めます。

 さて、安全保障政策について、立憲民主党は、我が国周辺の厳しい安全保障環境やウクライナ情勢も踏まえ、着実な安全保障を実現していくこととしています。

 我が党は、弾道ミサイルなどの脅威に対する抑止力と対処能力を総合的に備えるため、日米同盟の役割分担を前提としつつ、専守防衛との整合性など多角的な観点から検討を行い、国民的理解を得ながら、現実的な防衛力を整備すべきと考えています。総理は、自民党の提言どおり、相手国の指揮統制機能等も含む反撃能力を保有する方針か。答弁を求めます。

 我が国周辺における海上保安体制と自衛隊による補完体制の強化のためには、立憲民主党が提出した領域警備・海上保安体制強化法案を成立させるべきと考えますが、なぜ、政府は、相変わらず電話閣議など運用レベルの対応に終始し、法制化に消極的なのか。答弁を求めます。

 次に、岸田内閣の基本姿勢について質問します。

 岸田内閣発足から八か月、当初の安倍、菅両政権からの路線転換への期待はすっかりしぼみ、自民長期政権の弊害が深刻化しています。

 先日、細田博之議長は、一人当たりの月給で百万円未満のような議員を多少増やしても罰は当たらないと、あるまじき発言をされました。衆院選の一票の格差を是正するいわゆる十増十減についても、繰り返し批判されています。憲法や法律に基づく措置に対する議長のこうした発言について、岸田総理は、総理大臣として、あるいは自民党総裁として、どう認識をされていますか。また、一部週刊誌で報じられているセクハラ疑惑についてしかるべき公の場で説明していないことを含め、議長の資格があると考えていますか。答弁を求めます。

 四月二十三日、知床半島沖の観光船事故が発生しました。

 亡くなられた方々及び御家族の皆様に改めて心よりお悔やみを申し上げ、行方の分からない方々の一日も早い発見、救助を望みます。

 事業者の責任が極めて重いのは言うまでもありませんが、国交省の検査対応における問題も明らかになりました。昨日は、海底から一旦引き揚げたカズワンの船体が落下するアクシデントが発生、監視体制上の問題がうかがわれます。国土交通大臣の責任についてどう考えるのか、お答えください。

 コロナの第五波、第六波で多発したいわゆる自宅放置死を防ぐため、立憲民主党は、コロナかかりつけ医法案を提出しました。この法案は、これまでいわば患者側からの片思いにすぎなかったかかりつけ医について、明確な登録制度を整備し、医療の裾野を広げるものです。コロナ対策として既存の施策を繰り返すだけの政府と異なり、コロナ医療における出口戦略を明確に示しました。参院選の重要な争点にしてまいります。

 岸田内閣もここへ来て検討の意向をにじませていますが、制度の概要すら明らかにしません。総理は、コロナ医療の出口戦略は何だと考えておられますか。政府として、一部の関係団体の異論を恐れず、国民の命を守る、国民本位の立場から、かかりつけ医の制度化を出口戦略に位置づけることはできますか。お答えください。

 今、何より、国民生活は輸入品の物価高と円安による悪いインフレに苦しめられています。現在の円安について、黒田日銀総裁は全体で見てプラスと述べていますが、総理の認識も同じですか。

 立憲民主党は、国民生活を守るため、物価高と戦うことを宣言し、今こそ、政府、日銀アコードを見直し、前政権から続くアベノミクスの金融緩和策から脱却すべきと考えますが、総理、いかがですか。

 また、安倍元総理の、日銀は政府の子会社という発言については、明確に否定することはできますか。お答えください。

 立憲民主党は、所得の再分配機能を強化するため、所得税の累進性強化、金融所得課税の見直しなど抜本的な税制改革を訴えています。分配なくして成長なしを訴えた総理は、なぜこうした税制改革に取り組まないのですか。答弁を求めます。

 総理は、先般、外遊先で、資産所得倍増目標を表明しました。その際に言及した新たな仕組みとは何ですか。金融資産からの所得倍増を目指す政策は、富裕層を重視するものであり、分配重視の政策と矛盾します。金融所得課税の強化は、結局、やるのですか、やらないのですか。明確な答弁を求めます。

 立憲民主党は、先進国で最低レベルの最低賃金について、時給千五百円を将来的な目標に、企業に公的助成を行い、百三万円の壁などと言われる控除や社会保険の扶養の在り方を検討しつつ、段階的に引き上げます。令和版所得倍増を高らかに訴えた岸田総理は、なぜ最低賃金の大胆な引上げ策を示さないのですか。また、百三万円の壁などについて、どう考えていますか。答弁を求めます。

 物価が上がる中、高齢者の皆様が受け取る年金は、この四月から〇・四%下がりました。自民党は、予備費を濫用し、選挙前一回きりの五千円ばらまきで取り繕おうとしましたが、撤回に追い込まれました。そもそも、今回の年金減額は、我々が反対してきたいわゆる年金カット法が招いた結果です。法成立を強行した与党の一員として、総理は今回の年金減額は妥当と考えていますか。答弁を求めます。

 建設工事受注動態統計調査において書換えや二重計上等の不正が行われていた影響により、統計が年間で兆円単位で過大になっていました。社会の姿を映す鏡であるべき統計において不正が十年近く続き常態化していたのに、GDPに与える影響は軽微と言ってのける政府の態度は、統計を信頼してきた国民に対し、不遜ではありませんか。国交大臣の責任をどう考えていますか。答弁を求めます。

 立憲民主党は、子供、子育て関連予算を、対GDP比三%台を目標に、ほぼ倍増させることを訴えています。総理も同様のことを提唱していたはずですが、五月十三日の衆議院内閣委員会で、我が党の泉健太代表の質問に対し、いつまでに倍増するとか、そうした期限を区切ってはいないと答弁されました。いつまでにという目標がなければ、予算倍増は実現しません。なぜ目標を曖昧にするのですか。お答えください。

 今回の補正予算への質問に入ります。

 遅い、小さい、中身がない。予備費の埋め戻しを含め、こんな恥ずかしい予算を私は見たことがありません。

 立憲民主党は、既に四月八日、二十一兆円規模の緊急経済対策をまとめ、大規模な補正予算の必要性を強く訴えてきました。我々の案との比較を含め、以下、質問します。

 私たちが今年二月の本予算審議中から再三指摘してきた燃油高騰対策補助金の追加財源措置が、今頃になって計上されています。二月の段階で私たちが予見できていた事柄を政府が予見できなかったのはなぜですか。

 燃油高騰対策補助金の値上がり抑制の効果をどう評価していますか。九月までの財源を予算化していますが、十月以降をどう予見していますか。

 本予算審議の際にあらゆる選択肢に含まれていたトリガー条項凍結解除は、現時点で選択肢に入っていますか。答弁を求めます。

 総額二・七兆円の予算のうち、予備費埋め戻し一・五兆円が、燃油高騰対策に充てる一・二兆円よりも多い。前例はありますか。

 予算とは、政策そのものです。今回の補正予算における政策は何ですか。語ってください。需給ギャップがマイナス三・一%、実額ベースで十七兆円もあるのに、なぜ経済対策がたった一・二兆円なのですか。

 予備費埋め戻し一・五兆円を今後の備えと呼んでいますが、これは政策ですか。過去に例はありますか。答弁を求めます。

 令和二年度に始まったコロナ予備費は、今年度で総額二十兆円。ざっと国民一人当たり二十万円が、政府の自由に使えるポケットマネーに入ったわけです。そして、今回は、使った予備費を一月後に補正予算で埋め戻すという、更に悲惨な次元に突入しました。絶対にやめるべきです。政策を具現化するための予算提案権という行政の使命を投げ出し、国会監視から逃れ、三権分立を崩壊させ、強権的な行政府をつくり出す、愚かな行いです。

 この議場にいる全ての皆さん、目を覚ましてください。政府が使いたい放題に使ったプリペイドカードを、減った分だけチャージするのが国会の役割なのでしょうか。

 絶対王政から議会制民主主義を獲得した歴史を暗転させる岸田政権は、歴史に残る愚かな内閣と言わざるを得ません。

 総理には、予備費埋め戻しは民主主義を根底から崩壊させるとの懸念の声は届いていますか。聞く力はどこへ行きましたか。

 予備費の埋め戻しだけではありません。この予算では、コロナ予備費を更に使途拡大する、コロナ・原油価格・物価高騰対策予備費という何でもありの予備費の創設を企図していますが、財政民主主義を完全に度外視しているという声に対し、聞く力はどこに行きましたか。お答えください。

 先月、四月二十八日に既に支出された予備費について質問します。

 本予算成立から僅か一月後の予備費支出は、政府の予見能力がゼロであることを露呈しています。年度が始まったばかりの四月中に一・五兆円も予備費を支出した例は過去にありますか。特に、一般予備費が四月に三千九百四十五億円も支出された例はありますか。

 累次の閣議決定で、予備費の使用は、国会開会中はこれを行わないのが原則とされています。なぜ、国会開会中なのに、補正予算でなく、予備費を使うのですか。閣議決定を無視しているという声に対し、聞く力はどこへ行きましたか。お答えください。

 立憲民主党は、緊急経済対策において、低所得の子育て世帯の給付金では対象とならないワーキングプア、低年金者への五万円の臨時給付金と、消費税の時限的五%引下げを打ち出していますが、政府の今回の緊急対策では、なぜ、コロナ予備費を使った低所得子育て世帯給付金のみ支出し、同じように支援が必要な他の方々への給付金のための補正予算を組まないのですか。お答えください。

 コロナ予備費の使途は、予算総則に厳格に規定されています。今回の支出が全てコロナ対策と言い切れますか。観光推進への九十億円が認められるなら、ほかの何にでも充てられるのではないですか。答弁を求めます。

 現に、令和二年度の予備費には不透明な使途が明らかになっており、我が党は、一般予備費、コロナ予備費に反対しました。

 政府は、これまで八億八千二百万回分のワクチンに使われた支出の詳細を国会の場で明らかにしてください。また、医療現場で廃棄されたワクチンの量を調査し、国会に報告してください。

 さらに、今年、二億回分の増産要請をした抗原検査キットのうち、九割が出荷されていないという事例も発生しています。このまま一億八千万回分が余剰在庫となれば、政府が買い取る費用に予備費九百二十九億円が充てられることになるのでしょうか。答弁を求めます。

 最後に、立憲民主党は、我が国の議会制民主主義の根幹部分を崩壊させる岸田内閣から国民主権や国民生活を守り抜き、生活安全保障を実現していきます。

 与党議員の皆さん、立法府の一員として、この恥ずかしい補正予算を是としないでください。

 野党各党の皆さん、結束して政府・与党に対抗し、自民党内の政権たらい回しではなく、本物の政権交代を目指してまいりましょう。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 重徳和彦議員の御質問にお答えいたします。

 米国の台湾政策についてお尋ねがありました。

 今般の日米首脳会談では、バイデン大統領との間で、台湾に関する両国の基本的な立場に変更はないことを確認し、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促しました。

 台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要です。我が国としては、今後とも、米国を始めとする同盟国、同志国と緊密に連携しながら、両岸関係の推移を注視してまいります。

 防衛費の増額、その財源及び国内防衛産業の育成についてお尋ねがありました。

 我が国の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、まず行うべきことは、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、具体的かつ現実的に議論し、積み上げていくことです。

 その結果、防衛力の抜本的強化に当たって必要となるものの裏づけとなる予算をしっかり確保していく考えであり、こうした観点から、先般の日米首脳会談では、防衛費の相当な増額を確保する、こうした決意を述べたところです。

 こうした考え方の下、防衛費の内容や規模等について、新たな安全保障戦略等の策定や今後の予算編成過程を通じて検討してまいります。その際に、防衛費を安定的に確保する観点から、財源の在り方についても併せて検討してまいります。

 また、国内防衛産業は、我が国の防衛力の一部であり、産業基盤強化が急務です。

 近年、国内調達を増やしている一方で、FMS調達が高水準で推移しているほか、複数の国内防衛企業が撤退している厳しい現状も踏まえ、防衛産業強化のための抜本的な対策を検討してまいります。

 IPEFへの参加についてお尋ねがありました。

 今般、東京でバイデン大統領がIPEFの立ち上げを宣言されたことは、この地域への米国の強いコミットメントを明確に示すものであり、我が国として高く評価しています。TPPに入っていない米国、インドとともに地域の経済秩序を形作っていくという意義があり、自由で開かれたインド太平洋の実現にも資するものです。

 IPEFは、サプライチェーンの強靱化など四つの分野の今日的課題について協力していくものであることに特徴があります。

 IPEFが地域の経済秩序にとって有意義な枠組みとなるため、できるものから早期に具体的な成果を出していくことが重要であります。

 一方、TPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広げていくとの意義を有しており、日本としては、引き続き、米国にTPP復帰を求めてまいります。

 自民党から提言を受けた反撃能力の保有についてお尋ねがありました。

 国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討しているところです。

 現在検討中であるため、お尋ねについてお答えできる段階ではありませんが、この検討は、これまでるる申し上げているとおり、あらゆる選択肢を排除いたしません。そして、憲法及び国際法の範囲内で、日米の基本的な役割分担を維持しつつ進めてまいります。

 領海警備の見直しについてお尋ねがありました。

 武力攻撃に至らない侵害に適切に対応するためには、警察機関と自衛隊との連携が極めて重要であり、現行の法制の下、海上警備行動等の発令手続の迅速化を図ったほか、海上保安庁等関係機関の対応能力の向上、情報共有・連携の強化、各種訓練の充実など、必要な取組を推進しています。

 今後の取組については、お尋ねの法案を含め、法整備が必要という声があります。その中で、各機関の連携を充実させ、円滑にさせるために必要なものがないか、訓練等を通じて、なお一層の検討を進めてまいります。

 政府としては、今後とも、あらゆる事態を想定し、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を断固として守り抜くという強い覚悟を持って、冷静かつ毅然と対応をしてまいります。

 細田議長の発言等についてお尋ねがありました。

 いわゆる十増十減については、政府としては、審議会の勧告を受け、区割り改定法案を粛々と国会に提出するというのが現行法に基づく対応であると認識をしています。

 その上で、議長の発言のあった議員定数を含めた選挙制度の在り方については、議会政治の根幹に関わる重要な問題であることから、各党各会派間で御議論をいただくべき課題であると考えております。

 また、御指摘の一部報道については事実関係を承知していませんが、一般論として、議長の資格があるかどうかについて、行政府の長として、意見を述べる立場にはないと考えております。

 知床遊覧船事故に関する国土交通大臣の責任についてお尋ねがありました。

 まず、今回の事故で亡くなられた方々に対し、改めて心より哀悼の意を表するとともに、御家族の方々にお悔やみを申し上げます。

 今回の事故を起こした事業者については、昨年の事故後、国土交通省において特別監査を実施し、さらに、抜き打ちで改善内容の確認を行ったとの報告を受けていますが、事業者の安全意識の欠如を十分に把握できなかったことについて、真摯に受け止め、監査の方法も含め改善を図っていく必要があると考えています。

 今回の事故を受け、私からは、法的規制の在り方を含め、安全対策の在り方について検証、検討を行う検討会を立ち上げ、徹底的に安全対策を講じていくことを指示し、現在、国土交通省において、有識者から成る検討委員会で検証、検討を進めていると承知しています。

 このような痛ましい事故を二度と起こさないよう、国土交通大臣において、責任を持って小型旅客船の総合的な安全対策に取り組んでまいります。

 また、カズワンの引揚げについて、昨日、作業中に船体が落下し、現在、事業者が原因を調査しているとの報告を受けており、国土交通省において、事業者が安全かつ確実に作業を実施するよう、適切に指導をしていくこととしております。

 新型コロナの出口戦略及びかかりつけ医についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対応については、平時への移行期間として最大限の警戒感を維持しつつ、専門家の意見も踏まえながら、徐々に通常の社会経済活動を取り戻してまいります。

 かかりつけ医については、今後、その機能を明確化しつつ、患者と医療者双方にとってその機能が有効に発揮されるための具体的な方策を検討していくこととしており、コロナ禍での課題への対応という観点も含め、速やかに、かつ丁寧に制度整備を進めてまいります。

 円安と金融政策についてお尋ねがありました。

 黒田総裁の個々の発言、特に為替の水準等についてコメントすることは差し控えますが、為替の安定は重要であり、急速な変動は望ましくないと考えます。

 その上で、一般論として、円安により、輸出や海外展開をしている企業の収益は改善する一方、輸入価格の上昇を通じて企業や消費者に負担増となると承知をしており、円安は日本経済に対して様々な影響を与えると考えます。

 金融政策については、日銀において、平成二十五年の政府、日銀の共同声明の考え方に沿って、引き続き、物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて努力されることを期待しております。

 また、政府と日銀の関係については、一般論として、政府は日銀に対して出資をしているものの議決権はなく、日銀には日本銀行法において金融政策や業務運営の自主性が認められていることから、政府がその経営を支配している法人とは言えず、会社法で言うところの子会社には当たらないと考えております。

 金融所得課税の見直し等の税制改革についてお尋ねがありました。

 金融所得課税の見直しについては、様々な分配政策を進める選択肢の一つとして挙げたものであり、令和四年度税制改正においては、賃上げに向けた税制の抜本的強化を優先的に取り組んだところです。その上で、今後の金融所得に対する課税の在り方については、令和四年度の与党税制改正大綱において、様々な観点を踏まえ、総合的に検討していくこととされています。

 また、日本の家計金融資産の半分以上が預貯金であることに鑑みると、我が国には、この預貯金を投資へとシフトすることにより家計の金融資産を大きく拡大することのできるポテンシャルがあり、これを中間層に広げることが重要であると考えています。そうした観点から、NISAの抜本的拡充のほか、新たな仕組みについて、今後、六月までに新しい資本主義のビジョン等を取りまとめ、それらを踏まえ、どのような施策を講じていくのか、幅広い観点から検討を進めてまいります。

 なお、税制については、これまでも所得再分配機能の強化を行ってきており、今後も、成長と分配の好循環の実現に向け、総合的に検討してまいります。

 最低賃金と百三万円の壁問題などについてお尋ねがありました。

 最低賃金については、まずは、現実的な目標として、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指すこととしており、千円に到達した後も継続的に引上げに取り組んでまいります。

 いわゆる百三万円の壁については、税制上、解消したところですが、企業の諸手当などへの援用などの慣行が残っており、引き続き、働き方に中立的な制度を幅広く検討し、必要な見直しを進めてまいります。

 また、労働時間や収入によって社会保険の適用が変わる問題などについて、働き方に中立的な制度となるよう検討を進め、男女が希望どおり働ける社会づくりを進めてまいります。

 年金額の改定についてお尋ねがありました。

 令和四年度の年金額改定率はマイナス〇・四%となっておりますが、これについては、年金額の改定ルールに基づき、前年の物価等がマイナスとなったことを反映している数字です。公的年金制度については、将来世代の負担が過重にならないようにしつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保し、将来にわたって持続可能な仕組みとしており、この仕組みに基づいて、年金を着実に支給してまいります。

 国土交通省の統計問題についてお尋ねがありました。

 建設工事受注動態統計調査における不適切な処理により統計の数値に影響が生じていたことは、極めて遺憾であると考えます。

 国土交通大臣は、今般の事案を受けて、給与等を自主返納して公的統計への不信を招いた責任を取るとともに、統計の遡及改定、再発防止策の検討を進めているところです。

 なお、統計の専門家から構成される遡及改定検討会議の報告においては、GDPの推計に用いられる建設総合統計への影響は軽微と考えられるとの評価があったと承知をしております。GDPへの影響も限られたものになると考えられますが、建設総合統計の遡及改定が必要であり、引き続き、検証を行ってまいりたいと思います。

 今回の事態を重く受け止め、統計の信頼回復に向け、人材育成、デジタル化、精度向上等に政府一体となって取り組んでまいります。

 子供関連予算についてお尋ねがありました。

 今後の子供政策に関する予算については、こども家庭庁の下で、子供の視点に立って、必要な子供政策が何かをしっかりと議論した上で、体系的に取りまとめ、社会全体での費用負担の在り方の検討と併せて、子供政策の充実にしっかりと取り組むことが重要であると考えております。

 このように、まず必要な政策の在り方、そして社会全体での負担の在り方、これをしっかり検討した上で、将来的に予算の倍増を目指しているところです。

 燃油高騰対策についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略などの予見し難い影響に機動的に対応するため、本年一月以降、状況を見極めながら、予備費によるきめ細かな原油価格高騰対策を講じてきました。六月以降も切れ目なく事業を実施していくため、今般、補正予算を計上しています。

 政府による措置がなければ二百円を超える大幅な価格上昇が想定された中、ガソリン価格を全国平均で当面百六十八円程度に据え置くなど、価格抑制の効果が確認されています。十月以降の対策については、今後、原油価格の高騰がどの程度長期化するのかなどを見極めながら、対応を検討してまいります。

 トリガー条項については、三党検討チームにおいて引き続き検討するものとされたと承知をしております。

 予備費の計上については、平成二十八年度第一次補正予算において、熊本地震復旧等予備費を新設し、事業費よりも多く予備費を計上した例や、平成三十年度第一次補正予算において、大規模災害のため多額の予備費を使用していた状況を踏まえ、一般予備費を積み増した例があると承知をしています。今般の補正予算は、不透明な情勢に伴う予期せぬ財政需要にも迅速に対応し、国民の安心を確保するための政策であると考えております。

 今般の総合緊急対策に盛り込まれた各施策を迅速に実行するとともに、昨年十一月に策定した事業規模七十九兆円の経済対策に基づく令和三年度補正予算の繰越し事業や、過去最大の令和四年度当初予算の事業を迅速かつ着実に執行した上で、新型コロナからの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいります。

 そして、補正予算において予備費を計上する趣旨についてお尋ねがありました。

 足下のウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等については、総合緊急対策によって緊急かつ機動的に対応してまいりますが、今後の災害や新型コロナの再拡大、ウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格、物価の更なる高騰など、状況は予断を許しません。

 こうした不透明な状況に伴う予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保するため、今般の補正予算においては、一般予備費と新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費、合わせて五・五兆円の十分な水準を確保することといたしました。

 政府としては、これら予備費を適切に活用することで、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。

 国会開会中の予備費使用についてお尋ねがありました。

 まず、お尋ねの、四月に一・五兆円の予備費が使用された例や三千九百四十五億円の一般予備費が使用された例はないものと承知しております。

 御指摘の閣議決定との関係については、国会開会中における予備費の使用について、予備費の使用によらなければ時間的に対処し難いと認められる緊急な経費等であれば可能とされています。今般の予備費は、ウクライナ情勢に伴う原油価格高騰に緊急に対応するため、これに沿って使用決定をしたものであります。

 予備費を活用した今般の総合緊急対策や新型コロナワクチン、抗原定性検査キットについてお尋ねがありました。

 今般の総合緊急対策においては、子育て世帯生活支援特別給付金など、コロナ禍において物価高騰に直面し、真に困窮されている方々に対するきめ細かな支援を、予備費を活用して迅速にお届けすることとしております。

 コロナ予備費の使用については、御指摘の観光推進の事業も含め、個別具体の事業内容について、予算総則に定められた趣旨に該当しているか判断した上で、適切に使用決定をしております。

 新型コロナワクチンについては、これまで、約二・四兆円の予算措置により、計八億八千二百万回分を確保してきています。企業との関係もあり、お示しできる内容に限りがありますが、国民の皆様に必要なワクチンを確実にお届けし、経済社会活動を回復していくために必要な取組であると考えております。なお、ワクチンの医療現場における廃棄数については、現場の負担となることから、現時点では、調査を行うことは考えておりません。

 また、抗原定性検査キットについては、余った場合には国が買い取ることを前提に、メーカーに対し最大限の供給を求めたものです。既に一・三億回分の買取り費用を予算措置しており、今後、在庫量に応じて適切に買い取ることとなります。(拍手)

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議長(細田博之君) 福田達夫君。

    〔福田達夫君登壇〕

福田達夫君 自由民主党の福田達夫です。

 私は、自由民主党を代表し、令和四年度補正予算案について質問いたします。(拍手)

 まず、質問に入る前に、今朝も北朝鮮がミサイル発射という許されない蛮行を繰り返しました。地域の平和と安全を脅かすもので、断じて許すわけにはまいりません。

 強く非難した上で、質問に入ります。

 我が国の経済社会に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症がいまだ収束しない中、ロシアによる侵略行為などを背景に、原油価格や物価が不安定に推移し、国民の暮らしに大きな影響をもたらしています。

 かかる状況の中で必要なのは、適切に対策を打つことであります。適切な対策で国民に安心を与える。その上で、国民が希望を抱いて持てる力を思う存分発揮できる環境を整える。そのことこそが政治に求められる役割である、そういうふうに考えております。

 今後も物価の上昇が見込まれる中、新型コロナの対策については、感染症対策から経済社会活動を動かす方へと、責任を持って軸足を移す必要が増してきたように思います。日本経済の現状、なかんずく国民生活に与える影響をどのように考えるか、岸田総理の御見解を伺います。

 政府・与党で取りまとめた総合緊急対策、そしてこの対策を受けた補正予算は、現在の経済社会の状況に迅速に対応するものであります。加えて、次に起こり得る事態に備え、国民の安心、安全を確保するために必要不可欠なものであると考えます。改めて、補正予算も含め、総合緊急対策の意義、そしてその効果について、総理から分かりやすい御説明をお願いします。

 本補正予算の内容として特徴的なのは、今後の備えとして、約一兆五千億円の予備費を計上していることでしょう。

 現在我が国にも大きな影響を与えている新型コロナの感染拡大やウクライナ情勢は、今後の見通しが極めて不透明で不確定要素が多い。このような打つべき手の予測し難い状況下では、臨機応変な対応の重要性も理解できます。

 一方で、予備費は、我々国会による事前議決の原則の例外であり、憲法や財政法などの規定に従って、慎重かつ適切に運用されるべきものと理解しています。本補正予算において、予備費を上積みするとともに、コロナ予備費の使途を拡大する趣旨について、鈴木財務大臣にお伺いいたします。

 全ての国民、特に地方にお住まいの方や事業者の皆様にとり、コロナの推移に加えて非常に関心が高いのは、物価の高騰、中でも原油価格の高騰でしょう。

 今回の補正予算を含め、これまで、燃料油価格の激変緩和事業に二兆円近くを役立て、国民の不安に応えてまいりました。この事業がなければ、現在、全国のガソリン価格は二百円を超えていたとも言われておりますが、最近の全国平均は約百七十円と、一リットル当たり三十円を超える価格抑制効果がしっかりと出ています。すなわち、暮らしに密着している灯油や、中小企業、農林漁業など産業向けの重油も含め、国民の負担軽減に確実につながっております。

 他方で、我が国全体としては、化石燃料の輸入に、多いときには年間二十兆円もの国富が国外に流出していることを忘れてはなりません。

 無論、今日現在で申せば、化石燃料の輸入、そして価格高騰を抑えるための支援がすぐに必要です。しかしながら、その先には、化石燃料中心の経済社会構造から、クリーンエネルギーを中心にしたグリーントランスフォーメーション、いわゆるGXを進めるという課題が待っていることも忘れられません。また、緊迫度の高い国際情勢に対応した、各種サプライチェーンの見直しも必須であります。

 エネルギーの安定供給を確保し、価格の高騰を回避しながら、こうした構造転換を行う。そして、国富を高め、将来のために必要なインフラを構築していく取組を進める必要があると思いますが、萩生田経済産業大臣の御見解を伺います。

 こうした当面の対策や経済社会構造のアップデートの一方で、一般家庭がこの物価高を乗り越える環境の整備を進めなければなりません。

 家計への所得の分配を増やす主役は、国民の七割の生計の基である中小企業、小規模事業者であります。各省の壁を越え、政府を挙げて全ての政策を総点検し、有機的かつ効果的に運用することによって、中小企業、小規模事業者がしっかりとした賃上げを行える環境づくりに政府は邁進すべきです。これは、岸田総理が目指す新しい資本主義の下、成長と健全な分配の好循環の実現にもつながると思いますが、総理のお考えを伺います。

 昨日まで行われた一連の首脳外交では、多くの重要な成果が得られたと考えております。

 総理は、日米首脳会談後の共同記者会見で、アジアにおいて力による一方的な現状変更を許してはならない、だからこそ、ウクライナにおける力による現状変更を止めるべく、国際社会の努力に日本も参画していく、そして、日本自らの防衛力の抜本的強化とともに、日米同盟を更に強化していくという旨の発言をされました。さらに、総理は、インド太平洋地域の経済枠組み、いわゆるIPEFの立ち上げについて、中国に対し、国際的なルールに従って、大国としての責任を経済面でも果たす、このことを促すためにも重要であるという趣旨を述べられております。

 今回の首脳外交の成果を踏まえ、今後、どのような戦略を持って世界に貢献する日本外交を展開していくお考えか、総理の御決意をお尋ねします。

 冒頭に申し上げたとおり、政治の役割は、国民に安心と希望を与えることであります。そのために不可欠なのは、国民が納得をする政治であります。

 国民から納得を得る政治を実現するためには、国民目線と国民の共感が必要です。岸田総理の聞く姿勢は、まさにそのためのものであると感じております。

 納得感、そして安心感を持った国民に対し、先々の見通し、行き先を指し示す。幾つもの課題に対し、力を合わせて共に乗り越え、日本を前へ動かす。岸田総理を先頭に、我が党も総力を挙げて取り組んでまいることをお誓い申し上げ、私の質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 福田達夫議員の御質問にお答えいたします。

 我が国の経済の現状及び総合緊急対策の意義等についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略は、原油高、資源高、穀物高、金融資本市場の不安定化などを招き、コロナ禍と相まって、世界経済に大きな影響を与えています。そうした中で、我が国経済は、持ち直しの動きが続いていますが、ウクライナ情勢等に伴う原油価格や物価の高騰がマインドの悪化や実質購買力の低下を通じて民間消費や企業活動を下押しするなど、実体経済への影響が顕在化する可能性があります。

 こうした状況に緊急かつ機動的に対応するため、先般、事業規模十三兆円の総合緊急対策を取りまとめ、直ちに、その実行のための予備費の使用を閣議決定いたしました。速やかに実施することで、国民生活や経済活動への影響に対し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいります。

 その上で、この総合緊急対策の一環として、今般、今後の不測の事態に備えた予備費の計上及び六月以降の燃料油価格の激変緩和事業を内容とする補正予算を今国会に提出した次第です。本補正予算の早期成立を図り、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。

 中小企業、小規模事業者の賃上げについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、雇用の七割を支える中小企業の賃上げを進め、消費の拡大などを通じて成長と分配の好循環を実現していくことが重要です。

 このため、物価高に直面する中、中小企業が賃上げを行うことができるよう、賃上げ税制の抜本的な拡充に加え、事業再構築補助金などの各種企業向け補助金における賃上げ企業への優先的な取扱い、公共調達における賃上げに積極的な企業の優遇など、各省の壁を乗り越え、あらゆる施策を動員して、賃上げ支援を行ってまいります。

 また、適切な価格転嫁の実現に向け、公正取引委員会と中小企業庁が関係省庁と連携し、取引適正化に関する政策を強力に進めてまいります。

 現在の国際情勢を踏まえた日本外交の展開に関する決意についてお尋ねがありました。

 国際社会が歴史の岐路に立つ中、私は、未来への理想の旗をしっかりと掲げつつ、普遍的価値を重視し、したたかで、徹底的な現実主義を貫く、新時代リアリズム外交を展開してまいりたいと考えています。

 東南アジア、欧州訪問や、日米首脳会談、日米豪印首脳会合を通じ、力による一方的な現状変更はいかなる地域においても許してはならないこと、そして、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け協力をしていくこと、こうしたことで一致をいたしました。

 ウクライナ危機を乗り越え、平和秩序、自由と民主主義を守り抜き、国際社会の様々な課題に取り組むため、同盟国、同志国との連携を重視し、日本ならではの最大限の貢献を行ってまいりたいと考えています。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 福田達夫議員の御質問にお答えいたします。

 予備費の上積み等についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算では、年度の残り期間において、今後の災害や新型コロナウイルス感染症の再拡大、原油価格、物価の更なる高騰などによる予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保するため、予備費を積み増し、十分な水準を確保することといたしました。

 また、新型コロナの影響が続く中、ウクライナ情勢が原油価格、物価に対して及ぼす様々な影響について、確たる見通しが困難な状況となっております。これらの複合的な影響を見据え、状況の変化に応じ臨機応変に対応していく必要があるため、今般、コロナ予備費について使途を拡大することといたしました。

 政府といたしましては、これら予備費を活用することで、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 福田達夫議員の御質問にお答えいたします。

 エネルギー分野の構造転換に向けたインフラ構築についてお尋ねがありました。

 二〇五〇年カーボンニュートラルを目指し、脱炭素への取組を新たな成長につなげるためには、エネルギーの安定供給を確保しながら、クリーンエネルギーを中心とした経済社会、産業構造への転換や、それに向けた社会システム、インフラの整備が必要となります。

 そのためには、日本全体で、今後十年間において、官民協調で百五十兆円規模の投資が必要となります。予算措置、規制・制度的措置、金融パッケージ、GXリーグの段階的発展、グローバル戦略の五つの柱により、投資を加速させてまいります。

 今後、これらの政策を具体化するため、今年の夏に新たに設置されるGX実行会議において検討を深めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 金村龍那君。

    〔金村龍那君登壇〕

金村龍那君 日本維新の会、金村龍那です。

 党を代表し、鈴木財務大臣の財政演説について、我が国が直面する諸課題を含め、全て、岸田総理に質問をいたします。(拍手)

 総理は、二十三日の日米首脳会談で、ロシアによるウクライナ侵攻や東、南シナ海で覇権主義的行動を強める中国を念頭に、日米同盟の抑止力と対処力を強化することでバイデン大統領と一致しました。

 日米同盟が日本の安全保障の基軸であることは言をまちません。しかし、自ら守ろうとしない国に手を差し伸べる国はありません。日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなっている中、日本維新の会は、一%枠にとらわれている防衛費をGDP比二%まで増額するなど、積極防衛能力を整備していく覚悟です。古代ローマ時代から伝わる格言、なんじ平和を欲さば戦いに備えよであります。

 その上で、伺います。

 日米首脳会談で総理は日本の防衛費を増額する方針を伝えましたが、漠然としています。NATO加盟国は、二%を目標に増額を急いでいます。総理が思い描く増額の規模と時期をお示しください。日本の決意を内外に示すためにも、明快な答弁を求めます。

 間もなく政府内では令和五年度当初予算案の概算要求作業が始まります。年末に予定される国家安全保障戦略など三文書の改定を待っていては、来年度予算で、現下の安保状況に対応できる防衛費は確保できません。概算要求で総理が防衛費の大幅な増額を財務、防衛の両大臣に指示すべきだと考えますが、見解を求めます。

 核保有国によって非核保有国が侵攻されたウクライナ危機は、国の主権と国民の生命財産に関わる極めて重大かつ深刻な事態です。

 核を持つロシア、中国、北朝鮮に囲まれる日本は、このような事態を防ぐために、あらゆる選択肢を排除すべきではありません。我が党は、国を守るため、核共有を含む拡大阻止に関する議論をすべきだと考えます。議論すること自体、抑止につながります。この我が党のスタンスについて、総理はどのように評価しますか。

 専守防衛の定義、見直しについても根本的に議論すべきです。

 専守防衛は、敵に主導権があるため、常に初動が遅れます。国土に攻め込まれてから立ち上がるため、国民には甚大な被害が出ます。ゆえに、反撃の態様にしても、保持する防衛力にしても、必要最小限にとどめておくわけにはいきません。十分な装備を手に、全力で応戦しなければ、国民を守れません。

 総理、専守防衛の定義について、見直す考えはありますか。見直さないというならば、日本は、国防に対して一体いつまで手足を縛り続ければいいのか。未来永劫ですか。

 ロシアが蛮行を続ける中で、日本国憲法は施行七十五年を迎えました。現憲法前文の前提は崩れ、九条の改正が待ったなしとなっています。

 現憲法の前文には、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と書かれています。この一文は、日本の周辺諸国が善人であることが前提です。平和を愛するどころか、現在進行形で平和を破壊しているロシア、その予備軍たる中国、北朝鮮のいずれもが持ち得ない公正と信義に日本の安全保障を委ねるのはナンセンスです。日本を取り巻く安全保障状況を踏まえれば、他国に侵攻を諦めさせるに足る抑止力を備えることが不可欠です。

 日本維新の会は、去る十八日、平和主義、戦争放棄を堅持した上で自衛隊を明記した憲法九条改正条文イメージを発表しました。九条の一項、二項を残した上で、九条の二として、「前条の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の一として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する。」と書き加えるものです。

 自民党総裁である総理に伺います。

 我が党が九条改正条文イメージを打ち出したこと及びその内容をどのように評価しますか。国会で自民党が我が党とがっぷり四つで九条議論を交わし、成案が得られるよう、党内で指導力を発揮していくお考えはありますか。参議院選挙では具体的なゴールを想定した改憲スケジュールを明示すべきだと考えますが、覚悟をお示しください。

 歳出総額二兆七千億円の補正予算案は、原油高や物価上昇を受けた緊急経済対策の財源となるものですが、実質、政府にとって使い勝手のいい予備費の積み増しであり、政策的な合理性は見出せません。財政規律からかけ離れており、国民の税金を使わせていただいているという意識と責任感が欠落しています。

 そこで、伺います。

 予備費は本来例外的であるべきですが、五兆五千億もの巨額な予備費の水準を、補正を編成してまで維持する必要があるのですか。参議院選挙を意識したばらまき、財政の私物化と言わざるを得ません。総理は、真っ当な補正予算だと胸を張れますか。

 今回の緊急経済対策は、小手先の対処療法にすぎず、抜本策にはほど遠い内容と考えます。原油価格の高騰は、ウクライナ危機の余波で今後も長引く可能性が高く、補助金のみによる価格抑制策は持続可能とは言えません。補助金対象のガソリンと灯油は家計のエネルギー関連支出の三分の一に満たず、ガソリン以上に負担がかさむ電気代、ガス代の値上げに対する家計支援策はなおざりになっています。

 総理、今回の緊急経済対策に公平性はあると言い切れますか。生活困窮者への給付や中小企業の事業再構築の補助は大切ですが、真に必要な人々に広く支援を届ける視点が欠けていませんか。この対策がどれだけの効果をもたらすのか、具体的に説明してください。

 日本維新の会は、三月十五日、消費税の軽減税率の段階的引下げや、中小企業、低所得者層の社会保険料減免、原発再稼働等を盛り込んだ、国民生活を守るための緊急経済対策を政府に提出しました。

 私たちの対策は、広く公平に支援が行き届き、政府の対策よりも国民生活に資する内容だと確信していますが、総理は我が党の対策についてどう評価しますか。スタグフレーションを防ぐには、賃金上昇を後押しし、低迷する潜在成長力を押し上げるための構造改革が欠かせません。覚悟を伺います。

 総理の金看板である新しい資本主義の絵図は、おぼろげのままです。聞こえてくる政策課題の大半は従来のものの焼き直しであり、新しい資本主義なる大風呂敷を広げる意味がどこにあるのか疑問です。六月に閣議決定される骨太の方針には、文字どおり骨太の新しい資本主義の具体像が打ち出されてしかるべきですが、その一端でもお示しください。

 総理は、五月五日、ロンドンでの演説で、岸田に投資をと市場関係者に訴えるとともに、貯蓄から投資への流れを加速させ、資産所得倍増を目指す意向も示しました。

 新しい資本主義の柱の一つになると推察しますが、国内外からの投資を促す前に、企業の競争力や生産性を強化して経済成長力を高めることが本筋ではないですか。総理は、昨秋の自民党総裁選で金融所得課税の強化を掲げましたが、投資の促進と運用の負担を増やす政策は一貫性を欠きます。金融所得課税強化の旗は降ろしたのですか。

 政府の全世代型社会保障構築会議が、十七日、議論の中間整理をまとめました。総理肝煎りの勤労者皆保険の実現も盛り込まれましたが、制度設計や財源案は示されておらず、最大の課題である現役世代の負担軽減策さえ素通りされました。

 もはや、びほう策で社会保障制度を維持することは限界です。

 そこで、日本維新の会は、税制、社会保障制度、労働市場を三位一体で改革する日本大改革プランを掲げています。プランの肝は、セーフティーネットをチャレンジのための公平な制度と位置づけ、最低所得保障制度のベーシックインカムを基軸とした再配分の最適化を進め、社会保障全体を再構築することです。

 私たちは、企業に社会保険の負担をあまねく委ねる勤労者皆保険には懐疑的な立場ですが、総理はいつまでに実現させるのですか。現行の社会保障制度では、この先、消費増税の検討は避けられないと考えます。参議院選挙が終わった後、お得意の検討を始めるおつもりですか。

 エネルギーの供給不足や価格高騰をめぐる危機が世界を覆っています。日本も電力供給の綱渡りが続き、三月には四十一年ぶりとなったエネルギー価格が企業経営や家計に重くのしかかっています。

 日本維新の会は、三月、エネルギー資源の安定調達と電力の安定供給を確保するために、安全性が確認された原発については可能な限り速やかに再稼働させるべきであると政府に提言しました。

 原発再稼働が滞る背景には、政府の原子力規制委員会による安全審査の非効率性があります。原発の安全性確保は欠かせませんが、規制委が独善に陥ってはなりません。

 原発再稼働には、総理の強い指導力と決断が求められます。現状維持に徹すれば、日本のエネルギー安全保障が一層大きな危機に直面すると考えますが、総理の見解を求めます。

 総理は、原発の安全審査の効率化に取り組む意向を示されましたが、どのように取り組むのですか。規制委に働きかけて、原発再稼働を主導する考えはありますか。あくまで規制委の裁量に委ねるのですか。

 新型コロナウイルスとの闘いは、転換期を迎えつつあります。政府も水際対策や行動制限の緩和に大きくかじを切りました。

 足かせは、感染法上の分類で、新型コロナが二類相当に据え置かれたままであることに尽きます。このままでは、特定の医療機関しか患者を入院させられず、病床不足を招きやすく、保健所も入院先の調整や感染者数の把握などで過重な負担を強いられ続けます。

 日本維新の会は、季節性インフルエンザ並みの五類に変え、国民の命と健康をより着実かつ機動的に守っていく体制を整えるよう訴えています。

 総理は、新型コロナを感染法上の五類ないし五類相当とすることに慎重な姿勢を示されてきましたが、何が変更への条件、指標となるのですか。出口が見えれば、国民には大きな希望の光となります。総理が思い描く工程表を分かりやすくお示しください。

 今年は、北朝鮮から五人の拉致被害者が帰国して二十年の節目です。この間、拉致問題は全く進展が見られません。総理は、内閣の最重要課題だと強調されていますが、ざれごとに映ります。

 北朝鮮による拉致被害者は、およそ政府認定の十七人にとどまりません。警察庁によると、拉致の可能性を排除できない特定失踪者は約九百人に達します。事実上、政府に見捨てられています。

 今月、特定失踪者家族会は結成五年を迎えました。家族会の今井英輝会長は、二十日の衆議院拉致特別委員会に提出した意見陳述書で、こう訴えられました。

 総理も官房長官も、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者を取り戻すと言っておられますが、私たち家族会が何度要求しても、認定していない人の家族には会わないと断り続けています。特定失踪者家族会の代表に面会していただき、政府は国民を見捨てないという意志を国の内外に態度で示してください。それは、岸田総理がいかに強い思いを持っているかを国民に示し、北朝鮮政府に示すことになります。総理が面会を拒むことは北朝鮮の思うつぼですと。

 総理、今井さんの叫びをどのように受け止めますか。

 日本人を一人残らず救出するならば、特定失踪者全てを被害者の対象にすべきです。拉致問題解決のために総理は金正恩総書記と無条件で会うとおっしゃっていますが、なぜ特定失踪者家族会の方々とは無条件で会うことを拒まれるのですか。早期に家族会の方々と面会し、全ての日本人救出に全力を尽くすと約束していただけませんか。

 日本維新の会は、結党以来、身を切る改革を実践してきました。その立場から、各国会議員に月額百万円が支給される文通費について、日割り支給、使途の公開、残金の国庫返納の義務づけの三点セットによる抜本改革の必要性を強く訴えてきました。

 しかし、四月十五日成立の改正法では、日割り支給への変更のみにとどまり、これでお茶を濁すわけにはいきません。全ては、与党と、そして立憲民主党の協力が得られるかに懸かっています。私たちは、使途公開と残金返納も会期中に実現するよう、最後まで闘う覚悟です。

 自民党総裁たる総理に、今国会での文通費の使途公開と残金返納の義務化実現に向け、党内でリーダーシップを発揮するお考えはあるのかお伺いし、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 金村龍那議員からの御質問にお答えいたします。

 防衛費の増額についてお尋ねがありました。

 我が国の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、まず行うべきことは、国民の命や暮らしを守るために何が必要なのか、具体的かつ現実的に議論し、積み上げていくことです。

 その結果、防衛力の抜本的強化に当たって必要となるものの裏づけとなる予算をしっかり確保していく考えであり、こうした観点から、先般の日米首脳会談では、防衛費の相当な増額を確保する決意を述べたところです。

 こうした考え方の下、防衛費の内容や規模について、新たな安全保障戦略等の策定、また今後の予算編成過程を通じて検討し続けていきたいと考えております。

 また、核共有及び専守防衛についてお尋ねがありました。

 核共有については、非核三原則や原子力基本法を始めとする法体系との関係から認められず、政府として議論することは考えておりません。

 専守防衛は、憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針であり、今後とも、専守防衛の定義を変更する考えはありません。

 いずれにせよ、国民の生命と財産を断固として守り抜くため、新たな国家安全保障戦略等を策定し、我が国自身の防衛力を抜本的に強化していきます。同時に、日米同盟の抑止力、対処力を一層強化していきたいと考えます。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 現行憲法については、今の時代にふさわしいものであり続けているかどうか、与野党の枠を超え、積極的な議論が行われることが重要であると考えており、お尋ねの憲法改正案も含め、憲法審査会で議論が重ねられていることを歓迎したいと思います。

 今、内閣総理大臣の立場からは、憲法改正の議論の進め方あるいは内容について直接申し上げることは控えなければならないと思いますが、憲法の在り方を決めるのは国民の皆様でありますので、憲法改正に関する国民的議論を喚起し、国民の理解を深めるため、引き続き、憲法審査会においてしっかりと議論を深めていくことが重要であると考えます。

 予備費、対策の効果、そして構造改革についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算は、今後の災害、新型コロナの再拡大、原油価格、物価の更なる高騰等による予期せぬ財政需要に迅速に対応し、国民の安心を確保するために必要なものだと考えております。

 今般の総合緊急対策においては、家計にとって重大な問題であるガソリン価格や小麦価格の国内価格の上昇を抑制するとともに、コロナ禍において物価高騰等に直面し、真に困窮されている方々の生活を守るためのきめ細かな支援を行うこととしております。御党の対策とは考え方は異なりますが、政府としては、これらを迅速に実行することで、国民生活を守り抜くとともに、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいります。

 その上で、新しい資本主義の下、賃上げ、人材投資といった人への投資や、気候変動など我が国の社会課題を投資分野とすることで、社会課題を克服しながら、持続可能な経済成長を実現していく考えです。さらに、この夏の参議院選挙後には、新しい資本主義のグランドデザイン、また骨太の方針、こうしたものに基づく総合的な方策を具体化し、エネルギー分野を含め、経済社会の構造変化を日本としてリードしていきたいと考えております。

 新しい資本主義の具体像についてお尋ねがありました。

 新しい資本主義については、六月にもグランドデザインと実行計画を取りまとめ、具体像をお示しいたしますが、その際に私が重視するのは、人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップ投資、そしてグリーン、デジタルへの投資などの柱であり、これらの成長戦略によって、国内外から投資を促すとともに、企業の生産性向上や競争力の抜本的な強化につなげてまいります。

 今後の金融所得に対する課税の在り方については、令和四年度の与党税制改正大綱において、様々な観点を踏まえ、総合的に検討していくということとされています。分配戦略において、各施策を進めていくためには順番が大切であり、まずは実際の所得を底上げする施策に重点を置いてまいります。政策に一貫性を欠くという指摘は当たらないと考えております。

 勤労者皆保険と消費税についてお尋ねがありました。

 先般取りまとめられた全世代型社会保障構築会議の中間整理を踏まえ、まずは、令和二年年金制度改正法に基づき、被用者保険の適用拡大を着実に実施し、さらに、企業規模要件の撤廃も含めた見直しや非適用業種の見直し等の検討を行ってまいります。

 さらに、フリーランスなどを含め、より幅広い社会保険の適用の在り方について総合的な検討を進めることにより、勤労者皆保険の実現に向けた取組を進め、働き方に中立的な社会保障制度を構築してまいります。

 また、消費税については、社会保障の財源として今後も重要な役割を果たすべきものと考えていますが、当面、消費税について触れることは考えておりません。

 原発再稼働への見解と安全審査の効率化についてお尋ねがありました。

 原子力は、安定供給、経済性、脱炭素等の観点から重要な電源であり、特に、現下のエネルギーの供給制約や燃料価格の高騰が続く中で、安全性を大前提として、最大限活用していく必要があると考えています。

 原子力発電所の再稼働については、独立した原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合に、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら進めるというのが政府の方針です。

 原子力発電所の安全審査の効率化については、過去の審査における主要な論点などを公表することによる事業者の予見性の向上、審査内容が共通する案件を同じチームで担当するなど審査官の機動的な配置といった様々な取組を原子力規制委員会において行い、これまで以上に効率化に努めていくものと承知をしております。

 新型コロナの感染症法上の位置づけについてお尋ねがありました。

 新型コロナについては、オミクロン株であっても、致死率や重症化率がインフルエンザよりも高く、更なる変異の可能性もあります。仮に五類にした場合、入院措置ができなくなるだけでなく、健康状態の報告、把握、自宅療養や外出自粛等の要請ができなくなります。このため、平時への移行期間として最大限の警戒局面にある現時点で五類に変更することは、現実的ではないと考えています。

 引き続き、最大限の警戒を保ちつつ、今後の感染状況等も踏まえ、専門家の意見を伺いながら、社会経済活動の回復に向けて取組を進めてまいります。その中で、感染法上の分類の見直しについても議論を続けてまいりたいと思います。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 政府としては、拉致被害者として認定された十七名以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者が存在するとの認識の下、認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くしてまいります。

 拉致被害者の認定については、北朝鮮側に反論する材料を与えないように慎重に対応しているところであり、拉致の可能性を排除できない行方不明者の方々の家族に対しては、拉致問題担当大臣がお会いしてお話をお伺いさせていただいているところであります。

 今後とも、情報提供や要望の聴取など、御家族の気持ちに寄り添い、丁寧な対応に努めてまいります。

 文書通信交通滞在費についてお尋ねがありました。

 文書通信交通滞在費については、御指摘の改正法の成立により、まずは名称を調査研究広報滞在費に改め、日割り計算による支給が可能とされたところ、引き続き、使途公開等について与野党の間で議論をいただいているものと認識をしています。

 本件は、議員活動の在り方に関わる重要な課題であることから、引き続き、各党各会派における真摯な議論を通じて、合意を得て、全議員共通のルールをつくることが大事であると考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 石井啓一君。

    〔石井啓一君登壇〕

石井啓一君 公明党の石井啓一です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました財政演説に対しまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 まず、ロシアのウクライナ侵略により亡くなられた方々と御遺族に心からお悔やみを申し上げますとともに、戦時下で、また避難先で厳しい生活を余儀なくされているウクライナ国民に心からお見舞いを申し上げます。

 ロシアの非道な侵略を強く非難するとともに、政府には、国際社会と連携をして、一刻も早い停戦を目指し、全力の取組を求めます。

 総理は、二十三日に日米首脳会談、二十四日には日米豪印のクアッド首脳会談に臨まれ、ウクライナ情勢で国際秩序が揺らぐ中、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組など、幅広い分野での連携協力についての認識を共有されたことを評価いたします。今後も、日米同盟を始め、関係国との協力を密に、国際社会の平和と安定に向けた外交政策を進めていただきたいと思います。

 さて、昨年来の物価高に加えて、ウクライナ危機と円安が追い打ちをかけ、原油や原材料の価格が高騰し、四月の消費者物価指数が昨年より二・一%アップするなど、物価上昇が止まりません。

 その影響を調査するため、公明党は、三月に、国民生活総点検・緊急対策本部を設置、全国で生活や事業経営に苦しむ方々に聞き取り調査をし、その結果を基に政府に緊急提言を行いました。今回の補正予算案の基となる政府の総合緊急対策には、その内容が多く盛り込まれております。

 特に、公明党は、ウクライナ侵略が長期化していることの影響に加え、コロナの感染再拡大や梅雨時の豪雨災害など不測の事態に備えて十分な予算を確保する必要があるとの考えから、今国会での補正予算編成を強く求めてまいりました。

 今回の補正予算案編成の必要性、意義について、岸田総理の認識をお伺いいたします。

 以下、総合緊急対策の中身も含め、具体的な課題について質問いたします。

 初めに、燃油価格の激変緩和策について伺います。

 総合緊急対策では、ガソリンなど燃油価格を抑えるため石油元売会社に支給している補助金について、基準価格を一リットル百七十二円から百六十八円に引き下げ、補助上限を一リットル当たり二十五円から三十五円に引き上げ、三十五円以上の分は半額補助するとともに、実施時期を当面九月末まで延長、補助対象もガソリン、軽油、灯油、重油の四油種に航空機燃料が追加されました。これは、公明党が全国総点検運動で得た現場の声を踏まえた提言の内容が反映されたものと評価をいたします。

 今後もウクライナ情勢の先行きが見通せない中で、円安も相まって、原油価格は高い水準で続くことが予想されます。

 改めて、燃油価格高騰激変緩和策のこれまでの効果と今後の見通しについて、総理の答弁を求めます。

 次に、中小企業対策について伺います。

 経済再生、物価高対応の最大の鍵は、持続的な賃金引上げであります。しかし、ここ二十年、日本では賃金が十分に上がらない傾向が続いており、企業が積極的に賃金上昇に取り組めるような促進策が必要です。

 賃上げが進めば、国民にとっては物価高に対応することができ、企業は原材料等のコスト上昇分を適切に価格転嫁できます。とりわけ、日本企業の約九九%を占める中小企業が適正な取引によって収益を上げ、賃上げにつなげていけるような環境整備が重要となります。

 中小企業の賃上げを後押しする支援策について、総理の答弁を求めます。

 次に、エネルギー、食料、原材料価格高騰への対策についてお尋ねいたします。

 第一に、こどもみらい住宅支援事業の拡充です。

 これは、昨年度補正予算で始まった事業で、子育て世帯や若者夫婦等が高い省エネ性能を有する住宅の取得や省エネ改修等に対して補助を行うものです。

 原油価格が高騰し、これまで以上に省エネが重要になります。公明党の総点検運動においても拡充を要望する声を受け、強く主張した結果、住宅の省エネ対策、住宅価格上昇への対策として、同事業の拡充が総合緊急対策に盛り込まれました。

 同事業の内容、申請期限など、広く周知すべきと考えますが、国土交通大臣の答弁を求めます。

 第二に、食料の安定供給対策です。

 海外からの輸入に多く依存している食材や食品は海外情勢の影響等により価格が高騰し、食品の値上げに踏み切った小売業等も増加するなど、家計への影響が出ております。

 そこで、公明党は、農林水産物の価格高騰の影響を緩和するよう強く要求し、その結果、総合緊急対策には、農業、水産業のセーフティーネット支援や、肥料、飼料への支援、国産米、米粉等の需要拡大や国産小麦の生産の拡大等、きめ細かい支援策が盛り込まれました。

 今後も、食料安全保障や自給率向上の観点も踏まえつつ、代替国からの調達や国産の原材料への転換等に向けた支援を強力に実施し、食品等の更なる価格高騰を防ぐとともに、安定供給を確保すべきです。総理の答弁を求めます。

 生活困窮者への支援について伺います。

 コロナ禍における原油価格、物価高騰に直面する生活困窮者への支援も喫緊の課題です。政府の総合緊急対策には、公明党の緊急提言を踏まえ、これまでの生活困窮者支援策について、申請期限の延長や要件の緩和、拡充等が盛り込まれております。

 具体的には、緊急小口資金等の特例貸付けや生活困窮者自立支援金、住居確保給付金の特例措置について、申請期限が八月末まで延長されました。このうち、生活困窮者自立支援金は、求職活動の要件も緩和されております。

 また、住宅や食料の支援に関しては、UR賃貸住宅の空き住戸を居住支援法人等に低廉な家賃で貸し出す仕組みの全国展開や、食料の提供等の活動を行うNPO法人等への支援が盛り込まれたほか、新型コロナの影響や物価高騰で生活に困窮する方に対して、住宅、生活、就労、職業訓練の相談支援をワンストップで行う窓口が全てのハローワークに設置をされます。

 さらに、低所得の子育て世帯に対して児童一人当たり一律五万円の生活支援特別給付金を給付するとともに、住民税非課税世帯等に一世帯当たり十万円を給付する臨時特別給付金の運用が改善をされます。

 生活に困窮する方々がこうした支援策をしっかりと利用できるように、きめ細かく情報提供すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 次に、地方創生臨時交付金について伺います。

 公明党は、コロナの影響とともに物価高騰で苦しい状況を強いられている国民や事業者にきめ細かな支援策を届けるため、同交付金の拡充と丁寧なサポートを訴えてまいりました。その結果、同交付金に、新たにコロナ禍における原油価格・物価高騰対応分を設け、予算を一兆円拡充し、学校給食費等の負担軽減や水道料金の減免など、物価高騰から国民生活や事業者を守る事業に幅広く活用することが可能となりました。

 公明党は、国、地方のネットワーク力を生かし、同交付金を活用して各地域ごとに実情に応じた支援策づくりを提案しておりますが、政府には、自治体の意向に最大限寄り添い、事業を確実に実施するための力強い後押しをお願いしたい。

 優れた活用事例の周知とともに、自治体からの質問、相談に適切に対応できるよう、窓口の体制強化を図るべきであります。総理の答弁を求めます。

 結びに一言申し上げます。

 長期化するウクライナ危機の本格的な影響は、この夏以降に及んでくると言われております。そのため、速やかに本補正予算案を成立させ、総合緊急対策を着実に実行することが何よりも重要であります。

 公明党は、これからも、連立与党の一員として岸田政権を支えつつ、小さな声にしっかりと耳を傾け、国民生活を守る政策の実現に全力を挙げることを申し上げ、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 石井啓一議員の御質問にお答えいたします。

 補正予算の必要性と意義についてお尋ねがありました。

 足下のウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等については、総合緊急対策によって緊急かつ機動的に対応してまいりますが、今後の災害や新型コロナの再拡大、ウクライナ情勢の長期化に伴う原油価格、物価の更なる高騰など、状況は予断を許しません。

 こうした不透明な情勢に伴う予期せぬ財政需要にも迅速に対応し、国民の安心を確保するため、今般の補正予算において、一般予備費と新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費、合わせて五・五兆円の十分な水準を確保することといたしました。

 政府としては、これら予備費を適切に活用することで、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。

 燃油価格高騰激変緩和策の効果と今後の見通しについてお尋ねがありました。

 政府による措置がなければ二百円を超える大幅な価格上昇が想定された中、激変緩和事業を強化し、ガソリン価格を全国平均で当面百六十八円程度に据え置くなど、価格抑制の効果が確認されているところです。

 原油価格は国際情勢などの様々な要因により国際的な市場で決まるものであることから、引き続き、原油価格の動向を注視しながら、国民生活や経済活動への影響を最小化すべく、四月末に決定した総合緊急対策に沿って、着実な事業実施に取り組んでまいります。

 中小企業の賃上げについてお尋ねがありました。

 厳しい物価高に直面する中、中小企業が賃上げを行うことができるよう、賃上げ税制の抜本的拡充に加え、事業再構築補助金などの各種企業向けの補助金における優先的な取扱いなど、各省の壁を越え、あらゆる施策を動員して賃上げを支援してまいります。

 また、適切な価格転嫁の実現に向け、公正取引委員会と中小企業庁が、関係省庁と連携して、取引適正化に関する対策を強力に進めます。

 食料品の価格高騰や安定供給への対策についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略等によって、原油や穀物等の国際価格が高騰し、予断を許さない状況にある中、我が国の食料安全保障の確保はますます重要となっています。

 このため、農林水産業の燃油価格高騰への業種別対策、化学肥料原料の調達支援、飼料の価格高騰対策、輸入小麦から国産の米、米粉や国産小麦への切替えや国産小麦の生産拡大などの総合緊急対策を着実に実施し、穀物等の国際価格の急騰の影響を緩和しつつ、輸入依存度を下げ、直面する危機に緊急かつ機動的に対応してまいります。

 さらに、食料を将来にわたって合理的な価格で安定的に供給していくためには、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していくことが重要であり、食料安全保障の観点も踏まえつつ、農林水産業の成長のための投資と改革を更に進め、国際競争や災害に負けない足腰の強い農林水産業を構築してまいります。

 生活にお困りの方への支援についてお尋ねがありました。

 石井議員から御紹介いただいたとおり、総合緊急対策においては、コロナ禍の中で物価高騰等に直面する生活困窮者の生活を守るため、緊急小口資金の特例給付の申請期限の延長等のほか、低所得の子育て世帯に対して子供一人当たり五万円の給付をするなどの経済的支援、全てのハローワークにおけるワンストップ相談体制の整備など、幅広い支援策を盛り込んでいます。

 こうした取組が支援を必要とする方々にしっかりと行き届くよう、申請不要なプッシュ型の給付、SNSの活用による情報発信などにも取り組みながら、自治体等と連携しつつ、きめ細かな情報提供を行ってまいります。

 地方創生臨時交付金の原油価格・物価高騰対応分についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、コロナの影響が続く中で、物価高騰の影響を受けた生活者や事業者の負担の軽減を、自治体が地域の事情に応じ、きめ細やかに実施することができるよう、地方創生臨時交付金に一兆円の原油価格、物価高騰に対応した枠を創設いたしました。

 各自治体には、当該予算を活用可能な事業例やQアンドAをお示しするなど、制度の趣旨の周知に努めているところです。引き続き、自治体からの質問や相談に丁寧に対応することにより、地域の事情に応じたきめ細やかな支援をお届けしてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕

国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、こどもみらい住宅支援事業についてお尋ねがありました。

 原油価格、資材価格等が高騰する中、住宅価格の更なる上昇が住宅需要を減退させ、経済回復を阻害しかねないと懸念されているとともに、省エネルギー対策の一層の強化が求められております。

 このため、令和三年度補正予算で創設したこどもみらい住宅支援事業を通じ、住宅取得費用を軽減し、子育て世帯等による省エネ住宅関連投資の喚起を継続して図ることができるよう、令和四年度予備費等により六百億円を措置し、本年十月末までとなっていた申請期限を令和五年三月末まで延長しました。

 本事業の内容や申請期限などについては、政府広報を活用して広く国民に周知するほか、業界団体を通じた説明会の開催など、あらゆる機会を通じて周知に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 西岡秀子さん。

    〔西岡秀子君登壇〕

西岡秀子君 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 ただいま議題となりました令和四年度補正予算案について、国民民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、ロシアによるウクライナ侵攻の一刻も早い停戦を強く求めるとともに、我が国は、唯一の戦争被爆国として、いかなる理由があっても核兵器を使用することは絶対にあってはならないというメッセージをワンボイスでロシアに向けて強く訴え続ける、国際社会における重要な役割があります。岸田総理の引き続きのリーダーシップを持ったお取組をお願いいたします。

 この度のバイデン大統領来日に当たり、来年、日本で開催されるG7サミットが、初めて被爆地である広島で開催されることを心から歓迎いたします。各国首脳が、直接、被爆の実相に触れ、核兵器の悲惨さ、非人道性を認識し、二度と核兵器の惨禍を起こさせないための誓いを共有する機会を持つことは大変意義深いことです。同時に、被爆地長崎における関係閣僚会議の開催を岸田総理に強く求めたいと思います。

 二年半にわたるコロナ禍により地域経済が深刻な影響を受け続ける中で、ウクライナ危機が拍車をかけ、今般の燃油価格、エネルギー、原材料、そして食料品、生活必需品の価格の高騰に、地域経済、そして国民生活、特に地方の暮らし、事業者の皆様への打撃は計り知れないものがあります。

 物価が上昇する一方で経済の低迷が続く、この現状に的確に対応する有効な経済政策が政府からはいまだ打ち出されておりません。五月十八日に発表された令和四年一月から三月期の国内総生産速報値は前年同期比で〇・二%減となり、令和三年度にコロナ前の水準に戻すという政府方針を達成することはできませんでした。現状では、消費税増税によって失われた二十兆円を取り戻せていないのが現状です。現下の経済情勢について、岸田総理の認識をお伺いいたします。

 今回の補正予算は、四月の緊急経済対策により支出した令和四年度予備費の支出を補填する内容となっており、予備費の補填のための補正予算の編成は異例とも言えるものです。また、国民民主党は従来から二十兆円規模の補正予算の必要性を訴えており、今回の二・七兆円という予算規模では、需給ギャップを埋めることができずに、景気刺激効果は限定的にとどまると想定されます。更なる経済対策が必要だと考えますが、岸田総理の見解をお伺いいたします。

 補正予算の内容は、六月以降の燃料油価格の激変緩和事業等の原油価格高騰対策に約一兆一千七百億円、一般予備費に四千億円、また、これまで新型コロナウイルス感染症予備費であったものを名称変更し、使途を拡大して、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費とし、一兆一千二百億円が計上されています。

 そもそも、予備費は、憲法八十七条、財政法二十四条において、予算編成後、予見し難い予算の不足に充てるものと規定されており、財政民主主義の観点からも、コロナ禍においてコロナ予備費が創設されて以来、本来であれば補正予算で国会でしっかり審議するべきものまで予備費で支出される事態が常態化していることは問題です。

 今回、名称変更、使途の拡大等、一層不透明なものとなるおそれがあり、今後どのように使途を決定し、予算執行に透明性を持たせ、国民への説明責任を果たしていかれるのか、鈴木財務大臣にお伺いいたします。

 四月の消費者物価指数が前年同月比二・一%上昇する一方で、賃金上昇率は一・二%にとどまり、この数字が現状の厳しさを如実に示しています。国民民主党は、積極財政で消費や投資を活性化し、労働需要を好転させることで、物価を上回る賃金アップを実現することを提案しています。四月のエネルギー価格は前年同月比一九・一%上昇、具体的には、ガソリン価格一五・七%、電気代二一・〇%、都市ガス代二三・七%の上昇となっています。補助金制度は拡充されましたが、与党と国民民主党の検討チームにおける議論では、トリガー条項凍結解除の実現にはいまだ至っておりません。

 トリガー条項凍結解除については、早期に結論が得られるように引き続き検討することとなっております。トリガー条項凍結解除も含めた総合的なエネルギー高騰対策が必要であると考えますが、岸田総理の見解をお伺いいたします。

 また、物価が上昇し景気が低迷するスタグフレーションに陥らないために、国民民主党は、消費税減税やガソリン減税等の家計減税により、家計における消費力を高める政策を打ち出しています。

 岸田総理は、可処分所得の減少に対してどのように対応していかれる方針か、お伺いいたします。

 四月の緊急経済対策において生活困窮者等への支援策が盛り込まれましたが、これは当然必要な支援策ですが、早期に配付が可能な児童手当のスキームや非課税世帯の枠組みによる支援が中心となり、いわゆるワーキングプアと言われる方々への支援が届いていない現状となっています。国民民主党が提案をし実現した十万円の定額給付金が唯一の支援策であったという方々が多くおられます。

 現在、国民民主党は、燃油高騰から家計を守る、十万円のインフレ手当の導入を提案しています。岸田総理の御見解をお伺いいたします。

 国民民主党は、国民に寄り添った、国民のための政治に邁進し、今後とも全力で取り組んでまいることをお誓いし、質問を終わります。

 御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 西岡秀子議員の御質問にお答えいたします。

 経済情勢に関する認識と経済対策の策定についてお尋ねがありました。

 ロシアによるウクライナ侵略は、原油高、資源高、穀物高、金融資本市場の不安定化などを招き、コロナ禍と相まって、世界経済に大きな影響を与えています。そうした中で、我が国経済は、持ち直しの動きが続いていますが、ウクライナ情勢等に伴う原油価格や物価の高騰がマインドの悪化や実質購買力の低下を通じて民間消費や企業活動を下押しするなど、実体経済への影響が顕在化する可能性があります。

 こうした状況に緊急かつ機動的に対応するため、先般、事業規模十三兆円の総合緊急対策を取りまとめ、直ちにその実行のための予備費の使用を閣議決定いたしました。

 議員の方からは規模が小さいという御指摘がありましたが、昨年十一月に、事業規模七十九兆円の経済対策を策定しています。この経済対策に基づく令和三年度補正予算の繰越事業や過去最大の令和四年度当初予算の事業を迅速かつ着実に執行するとともに、今回の総合緊急対策に盛り込まれた各施策を迅速に実行することで、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいりたいと考えています。

 そして、エネルギー価格高騰対策についてお尋ねがありました。

 エネルギー価格のうち、ガソリンや重油などの高騰に対しては、激変緩和事業を強化し、ガソリン価格を全国平均で当面百六十八円程度に据え置くことにより対応しています。

 また、家庭向けの電気や一部のガス料金については、上限の設定により一定の歯止めがかかる仕組みになっています。事業者の電気・ガス料金の負担に対しては、省エネ補助金によって、電気やガスの使用量を減らすための投資を支援しています。さらに、自治体が地域の事情に応じ、生活者や事業者に対してきめ細やかに対策を講ずることができるよう、地方創生臨時交付金による支援の仕組みを設けました。

 なお、トリガー条項については、三党検討チームにおいて引き続き検討するものとされたと承知をしております。

 物価高を踏まえた家計への支援策についてお尋ねがありました。

 今般の総合緊急対策においては、家計にとって重大な問題であるガソリン価格や小麦価格等の国内価格の上昇を抑制するとともに、低所得の子育て世帯への給付金の支給や地方自治体による地域の事情に応じた生活困窮者や低所得者支援を後押しするなど、コロナ禍において物価高騰等に直面し、真に困窮されている方々にきめ細かく支援を行うこととしており、これらを迅速に実行することで、景気の下振れリスクにしっかりと対応してまいります。

 こうしたことから、御指摘の消費税減税や一律十万円の現金給付を行うことは考えてはおりませんが、予期せぬ事態に対しては、今般の補正予算で五・五兆円の予備費を用意し、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。

 あわせて、物価が上昇する中においては、賃上げをしっかりと実現していくことが重要であり、引き続き、官民連携して、賃金引上げの社会的雰囲気を醸成してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 西岡秀子議員の御質問にお答えいたします。

 予備費の使途決定等についてお尋ねがありました。

 予備費の使用に当たっては、各省庁から予備費を使用したいという要求があったものについて、その要求の個別具体の内容を踏まえ、憲法、財政法の規定に沿って適切に判断していくとともに、事業の執行状況を含め、国会での質疑など、様々な機会を通じて丁寧な情報提供、説明を行うことで、国民への説明責任をしっかり果たしてまいりたいと考えております。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、岸田総理に質問します。(拍手)

 なぜ、今、物価が高騰しているのか。原因は、新型コロナやウクライナ侵略だけではありません。アベノミクスの異次元の金融緩和が異常円安と物価高騰を招いたことは、誰もが認めている事実です。総理、この重大な失政の責任を認め、金融政策を根本から見直すべきではありませんか。答弁を求めます。

 物価高騰でどうしてこうも暮らしが苦しいのか。労働法制の規制緩和で、非正規雇用が四割近くに増え、賃金が上がらない国になってしまっているからではありませんか。社会保障の連続削減で、この十年間で公的年金が実質六・七%も減らされているからではありませんか。総理、弱肉強食の新自由主義が日本経済を冷たく弱い経済にしてしまったことが国民の生活苦の根本にあるという事実をお認めになりますか。答弁を求めます。

 物価高騰から暮らしを守るためには、小手先の対策ではなく、新自由主義を終わらせて、冷たく弱い経済から優しく強い経済への抜本的転換が必要です。

 具体的に五点、提案をいたします。

 第一は、消費税を緊急に五%に減税し、インボイスを中止することです。

 政府の物価対策は、ガソリンなどごく一部です。しかし、物価高騰は全般に及び、特に食料品や水光熱費などの生活必需品の上昇率は前年比四・八%にも達し、所得の少ない人は打撃が深刻です。消費税減税こそ、物価高騰から暮らしを守る上で最も効果的な対策であることは明らかではありませんか。

 円安の下、大企業の利益は過去最高です。富裕層も資産を大きく増やしています。大企業と富裕層に応分の負担を求め、消費税を減税することは、税の公正という観点からも、当然のことではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、賃金が上がる国にするために政治が責任を果たすことです。

 大企業の内部留保は、アベノミクスの八年で百三十兆円も増え、四百六十六兆円に達しています。四十兆円もの大企業減税が行われてきたことが、その一因となっています。

 日本共産党は、アベノミクスで増えた内部留保に、毎年二%、五年間で十兆円の時限的課税を行うことを提案しています。これは、大企業への行き過ぎた減税の不公平を正す、適切な控除を設けることで賃上げとグリーン投資を促進する、十兆円の税収を中小企業への支援に充てて最低賃金を時給千五百円に引き上げるという一石三鳥の効果があります。

 大企業の利益や内部留保を賃上げや設備投資に還流させることの重要性は、総理も強調しています。ならば、大企業の内部留保課税を実行し、政治の責任で賃上げを推進すべきではありませんか。答弁を求めます。

 第三は、社会保障と教育予算を経済力にふさわしく充実することです。

 六月から年金の支給額が更に減額されます。物価高騰時に年金を下げる。総理、余りにも理不尽だと思いませんか。持続可能にするためと言いますが、現役世代の年金不信をひどくするだけではありませんか。年金削減を中止し、低過ぎる年金の底上げを図ることを強く求めるものです。

 大学の学費を半分にし、入学金制度を廃止し、給付奨学金を抜本的に拡充することを求めます。憲法二十六条は義務教育の無償化をうたっていますが、給食費負担が重過ぎます。国の制度として、給食無償化を進めるべきではありませんか。答弁を求めます。

 第四は、気候危機打開への本気の取組です。

 日本のエネルギー自給率は一〇%程度、先進国で最低水準です。原油価格高騰はいつまでもエネルギーを外国に頼る危うさを示しているという認識はありますか。

 日本共産党は、二〇三〇年までに、省エネルギーと一体に、再生可能エネルギーで電力の五〇%を賄い、二酸化炭素を最大六〇%削減する、二〇三〇戦略を提案しています。一〇〇%国産の再生可能エネルギーの大規模な普及を図るべきではありませんか。そのためにも、原発即時ゼロ、石炭火力撤退の政治決断が必要ではありませんか。答弁を求めます。

 農業再生は、持続可能な社会の鍵です。三七%まで落ち込んだ食料自給率を更に引き下げる水田活用交付金の削減は中止すべきであります。お答えいただきたい。

 第五は、ジェンダー平等の視点を貫くことです。

 日本共産党は、生涯賃金で一億円にも上る男女の賃金格差をなくすために、企業に格差公表を義務づけることを求めてきました。

 総理が、五月二十日、男女の賃金格差の公表を義務づける方針を表明したことは、一歩前進です。公表を徹底するとともに、企業に格差是正計画の作成を義務づけ、国がその実施を促す仕組みをつくることを強く求めます。いかがでしょうか。

 政府提出の補正予算案は、物価高騰から生活を守る上で余りに不十分で、かつ、予備費の積み増しなど財政民主主義に反するものです。これを撤回し、我が党の提案を踏まえて出し直すことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。

 金融政策の見直しや新自由主義の評価等についてお尋ねがありました。

 足下の物価上昇は、為替の影響もあるものの、主には世界的な原材料価格の高騰等を背景としたものと認識をしており、総合緊急対策により、影響を受ける方々へ必要な支援を迅速に届けてまいります。

 金融政策については、日銀において、平成二十五年の政府、日銀の共同声明の考え方に沿って、引き続き、物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて努力されることを期待しております。

 非正規雇用労働者の待遇改善については、同一労働同一賃金の導入など、労働者の保護に欠けることのないよう十分留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度整備を行ってきたところです。

 公的年金制度についても、将来世代の負担が過重にならないようにしつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保し、将来にわたって持続可能な仕組みの下で、年金を着実に支給してまいります。

 また、新自由主義は、世界経済の成長の原動力となりました。一方で、市場に依存し過ぎたことで、格差や貧困が拡大するなどの弊害も生んだと承知をしています。岸田政権では、新しい資本主義の下、市場や競争任せにせず、官と民が協働して、社会課題を解決しながら、成長と分配の好循環を生み出し、持続可能な経済社会を実現してまいります。

 物価高騰対策や消費税減税等についてお尋ねがありました。

 物価高騰等への対策としては、事業規模十三兆円の総合緊急対策を取りまとめました。これらを速やかに実施することで、国民生活や経済活動への影響に対応し、コロナ禍からの回復を確かなものとしてまいります。

 その際、コロナ禍の中で物価高騰等に直面し、真に困窮されている生活者や事業者にきめ細かく支援をお届けすることとしており、御指摘の消費税減税は考えておりません。

 また、インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、十分な経過措置を設けるとともに、事業者への支援と周知、広報を行ってまいります。

 その上で、税制については、これまでも所得再分配機能の強化を行ってきており、今後も、成長と分配の好循環の実現に向け、総合的に検討をしてまいります。

 内部留保への課税等についてお尋ねがありました。

 内部留保への課税については、二重課税に当たるとの指摘があることなどから、慎重な検討が必要になると考えております。

 一方で、成長の果実が賃金や設備投資に向けられることで、次の成長につなげ、持続可能な経済をつくり上げていくことが重要であると考えております。

 このため、賃上げ税制の抜本強化、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などにより、企業の賃上げを促してまいります。

 同時に、デジタル投資やカーボンニュートラルに向けた投資を促進するため、税制も活用して、企業の積極的な設備投資を促してまいります。

 公的年金制度と教育費、給食費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 公的年金制度への信頼を確保することは重要であり、将来世代の負担が過重にならないようにしつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保し、将来にわたって持続可能な仕組みの下で、年金を着実に支給してまいりたいと考えます。

 大学の教育費については、先般、教育未来創造会議において、これまで実施してきた授業料等の減免や給付型奨学金について、中間層への拡大や、ライフイベントに応じた柔軟な出世払いの仕組みの創設を提言したところであり、着実に実行してまいります。

 学校給食費については、家庭の経済状況が厳しい児童生徒について、就学援助等により支援を実施しており、更なる負担軽減については、各自治体において地域の実情に応じて検討いただくものですが、コロナ禍において物価高騰等に直面する子育て世帯を支援するため、地方創生臨時交付金により、各自治体による学校給食費の負担軽減に向けた取組を後押ししてまいります。

 エネルギー自給率と再生可能エネルギー、そして食料自給率などについてお尋ねがありました。

 今回のロシアによるウクライナ侵略の影響を踏まえれば、エネルギー自給率の向上は重要であり、御指摘の再生可能エネルギーについては、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら、最大限、導入に取り組みます。

 他方で、資源が乏しい我が国において、単一の完璧なエネルギー源がない現状では、原子力や火力を含む多様なエネルギー源をバランスよく活用することで、エネルギーの安価で安定的な供給を確保してまいります。

 水田活用の直接支払交付金による作付転換への助成については、現場の課題を検証しながら、麦、大豆、野菜等の需要に応じた生産、販売を一層推進し、農家の所得向上と食料自給率の向上を図ってまいります。

 男女間賃金格差についてお尋ねがありました。

 労働者の男女間賃金格差を解消していくため、早急に女性活躍推進法の制度改正を実施し、労働者三百人を超える事業主に対し、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を開示することを義務化し、この夏に施行するよう準備を進めます。

 同法では、企業が管理職割合や平均勤続年数など男女間賃金格差の要因に関する状況把握を行い、企業としての目標を定め、行動計画を策定してPDCAを回す仕組みに既になっており、政府としては、男女間賃金格差の開示を義務づけることで、女性活躍推進法に基づき、各企業の取組を加速させ、格差の更なる縮小を目指します。

 今般の補正予算についてお尋ねがありました。

 足下のウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等については、総合緊急対策によって緊急かつ機動的に対応した上で、今後の予期せぬ財政需要に迅速に対応するため、予備費の確保等を内容とする補正予算を提出したところであり、早期成立を図り、国民生活を守り抜くための万全の備えを固めてまいります。

 また、予備費については、これまでと同様、憲法、財政法等の規定に従って適切に計上し、使用を判断していくものであり、財政民主主義に反するものではなく、補正予算の撤回や修正をする考えはありません。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   岸田 文雄君

       総務大臣     金子 恭之君

       法務大臣     古川 禎久君

       外務大臣     林  芳正君

       財務大臣     鈴木 俊一君

       文部科学大臣   末松 信介君

       厚生労働大臣   後藤 茂之君

       農林水産大臣   金子原二郎君

       経済産業大臣   萩生田光一君

       国土交通大臣   斉藤 鉄夫君

       環境大臣     山口  壯君

       防衛大臣     岸  信夫君

       国務大臣     小林 鷹之君

       国務大臣     二之湯 智君

       国務大臣     西銘恒三郎君

       国務大臣     野田 聖子君

       国務大臣     牧島かれん君

       国務大臣     松野 博一君

       国務大臣     山際大志郎君

       国務大臣     若宮 健嗣君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  木原 誠二君

       財務副大臣    岡本 三成君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  近藤 正春君


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