衆議院

メインへスキップ



第4号 令和4年10月25日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年十月二十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

  令和四年十月二十五日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 野田佳彦君の故議員安倍晋三君に対する追悼演説

 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 岸田内閣総理大臣の山際国務大臣の辞任についての発言並びに同発言に関連する逢坂誠二君、金村龍那君、浅野哲君及び塩川鉄也君の発言

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案(早稲田ゆき君外八名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(早稲田ゆき君外八名提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 故議員安倍晋三君に対する追悼演説

議長(細田博之君) 去る七月八日逝去されました議員安倍晋三君に対し弔意を表するため、野田佳彦君から発言を求められております。これを許します。野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 本院議員、安倍晋三元内閣総理大臣は、去る七月八日、参院選候補者の応援に訪れた奈良県内で、演説中に背後から銃撃されました。搬送先の病院で全力の救命措置が施され、日本中の回復を願う痛切な祈りもむなしく、あなたは不帰の客となられました。

 享年六十七歳。余りにも突然の悲劇でした。

 政治家としてやり残した仕事。次の世代へと伝えたかった思い。そして、いつか引退後に昭恵夫人とともに過ごすはずであった穏やかな日々。

 全ては一瞬にして奪われました。

 政治家の握るマイクは、単なる言葉を通す道具ではありません。人々の暮らしや命が懸かっています。マイクを握り日本の未来について前を向いて訴えているときに、後ろから襲われた無念さはいかばかりであったか。改めて、この暴挙に対して激しい憤りを禁じ得ません。

 私は、生前のあなたと政治的な立場を同じくするものではありませんでした。しかしながら、私は、前任者として、あなたに内閣総理大臣のバトンを渡した当人であります。

 我が国の憲政史には、百一代六十四名の内閣総理大臣が名を連ねます。先人たちが味わってきた重圧と孤独を我が身に体したことのある一人として、あなたの非業の死を悼み、哀悼の誠を捧げたい。

 そうした一念の下に、ここに、皆様の御賛同を得て、議員一同を代表し、謹んで追悼の言葉を申し述べます。(拍手)

 安倍晋三さん。あなたは、昭和二十九年九月、後に外務大臣などを歴任された安倍晋太郎氏、洋子様御夫妻の次男として東京都に生まれました。

 父方の祖父は衆議院議員、母方の祖父と大叔父は後の内閣総理大臣という政治家一族です。幼い頃から身近に政治があるという環境の下、公のために身を尽くす覚悟と気概を学んでこられたに違いありません。

 成蹊大学法学部政治学科を卒業され、一旦は神戸製鋼所に勤務した後、外務大臣に就任していた父君の秘書官を務めながら、政治への志を確かなものとされていきました。そして、父、晋太郎氏の急逝後、平成五年、当時の山口一区から衆議院選挙に出馬し、見事に初陣を飾られました。三十八歳の青年政治家の誕生であります。

 私も同期当選です。初登院の日、国会議事堂の正面玄関には、あなたの周りを取り囲む、ひときわ大きな人垣ができていたのを鮮明に覚えています。そこには、フラッシュの閃光を浴びながらインタビューに答えるあなたの姿がありました。私には、その輝きがただまぶしく見えるばかりでした。

 その後のあなたが政治家としての階段を瞬く間に駆け上がっていったのは、周知のごとくであります。

 内閣官房副長官として北朝鮮による拉致問題の解決に向けて力を尽くされ、自由民主党幹事長、内閣官房長官といった要職を若くして歴任した後、あなたは、平成十八年九月、第九十代の内閣総理大臣に就任されました。戦後生まれで初。齢五十二、最年少でした。

 大きな期待を受けて船出した第一次安倍政権でしたが、翌年九月、あなたは、激務が続く中で持病を悪化させ、一年余りで退陣を余儀なくされました。順風満帆の政治家人生を歩んでいたあなたにとっては、初めての大きな挫折でした。もう二度と政治的に立ち上がれないのではないかと思い詰めた日々が続いたことでしょう。

 しかし、あなたは、そこで心折れ、諦めてしまうことはありませんでした。最愛の昭恵夫人に支えられて体調の回復に努め、思いを寄せる雨天の友たちや地元の皆様の温かい御支援にも助けられながら、反省点を日々ノートに書き留め、捲土重来を期します。挫折から学ぶ力とどん底からはい上がっていく執念で、あなたは、人間として、政治家として、より大きく成長を遂げていくのであります。

 かつて、再チャレンジという言葉で、たとえ失敗しても何度でもやり直せる社会を提唱したあなたは、その言葉を自ら実践してみせました。ここにあなたの政治家としての真骨頂があったのではないでしょうか。あなたは、諦めない、失敗を恐れないということを説得力を持って語れる政治家でした。若い人たちに伝えたいことがいっぱいあったはずです。その機会が奪われたことは誠に残念でなりません。

 五年の雌伏を経て、平成二十四年、再び自民党総裁に選ばれたあなたは、当時内閣総理大臣の職にあった私と、以降、国会で対峙することとなります。最も鮮烈な印象を残すのは、平成二十四年十一月十四日の党首討論でした。

 私は、議員定数と議員歳費の削減を条件に、衆議院の解散期日を明言しました。あなたの少し驚いたような表情。その後の丁々発止。それら一瞬一瞬を決して忘れることができません。それらは、与党と野党第一党の党首同士が、互いの持てるもの全てを懸けた、火花散らす真剣勝負であったからです。(拍手)

 安倍さん。あなたは、いつのときも手ごわい論敵でした。いや、私にとっては、仇のような政敵でした。

 攻守を替えて、第九十六代内閣総理大臣に返り咲いたあなたとの主戦場は、本会議場や予算委員会の第一委員室でした。

 少しでも隙を見せれば、容赦なく切りつけられる。張り詰めた緊張感。激しくぶつかり合う言葉と言葉。それは、一対一の果たし合いの場でした。激論を交わした場面の数々が、ただ懐かしく思い起こされます。

 残念ながら、再戦を挑むべき相手は、もうこの議場には現れません。

 安倍さん。あなたは議場では闘う政治家でしたが、国会を離れ、一たび兜を脱ぐと、心優しい気遣いの人でもありました。

 それは、忘れもしない、平成二十四年十二月二十六日のことです。解散・総選挙に敗れ、敗軍の将となった私は、皇居で、あなたの親任式に前総理として立ち会いました。

 同じ党内での引継ぎであれば談笑が絶えないであろう控室は、勝者と敗者の二人だけが同室となれば、しいんと静まり返って、気まずい沈黙だけが支配します。その重苦しい雰囲気を最初に変えようとしたのは、安倍さんの方でした。あなたは、私のすぐ隣に歩み寄り、「お疲れさまでした」と明るい声で話しかけてこられたのです。

 「野田さんは安定感がありましたよ」

 「あのねじれ国会でよく頑張り抜きましたね」

 「自分は五年で返り咲きました。あなたにも、いずれ、そういう日がやってきますよ」

 温かい言葉を次々と口にしながら、総選挙の敗北に打ちのめされたままの私をひたすらに慰め、励まそうとしてくれるのです。

 その場は、あたかも、傷ついた人を癒やすカウンセリングルームのようでした。

 残念ながら、そのときの私には、あなたの優しさを素直に受け止める心の余裕はありませんでした。でも、今なら分かる気がします、安倍さんのあのときの優しさがどこから注ぎ込まれてきたのかを。

 第一次政権の終わりに、失意の中であなたは、入院先の慶応病院から、傷ついた心と体にまさにむち打って、福田康夫新総理の親任式に駆けつけました。僅か一年で辞任を余儀なくされたことは、誇り高い政治家にとって耐え難い屈辱であったはずです。あなたもまた、絶望に沈む心で、控室での苦しい待ち時間を過ごした経験があったのですね。

 あなたの再チャレンジの力強さとそれを包む優しさは、思うに任せぬ人生の悲哀を味わい、どん底の惨めさを知り尽くせばこそであったのだと思うのです。

 安倍さん。あなたには謝らなければならないことがあります。

 それは、平成二十四年暮れの選挙戦、私が大阪の寝屋川で遊説をしていた際の出来事です。

 「総理大臣たるには胆力が必要だ。途中でおなかが痛くなっては駄目だ」

 私は、あろうことか、高揚した気持ちの勢いに任せるがまま、聴衆の前でそんな言葉を口走ってしまいました。他人の身体的な特徴や病を抱えている苦しさをやゆすることは許されません。語るも恥ずかしい、大失言です。

 謝罪の機会を持てぬまま時が過ぎていったのは、永遠の後悔です。今、改めて、天上のあなたに、深く深くおわびを申し上げます。

 私からバトンを引き継いだあなたは、七年八か月余り、内閣総理大臣の職責を果たし続けました。

 あなたの仕事がどれだけの激務であったか、私にはよく分かります。分刻みのスケジュール。海外出張の高速移動と時差で疲労は蓄積。その毎日は、政治責任を伴う果てなき決断の連続です。容赦ない批判の言葉の刃も投げつけられます。在任中、真の意味で心休まる時などなかったはずです。

 第一次政権から数え、通算在職日数三千百八十八日。延べ百九十六の国や地域を訪れ、こなした首脳会談は千百八十七回。最高責任者としての重圧と孤独に耐えながら、日本一のハードワークを誰よりも長く続けたあなたに、ただただ心からの敬意を表します。(拍手)

 首脳外交の主役として特筆すべきは、あなたが全くタイプの異なる二人の米国大統領と親密な関係を取り結んだことです。理知的なバラク・オバマ大統領を巧みに説得して広島にいざない、被爆者との対話を実現に導く。片や、強烈な個性を放つドナルド・トランプ大統領の懐に飛び込んで、ファーストネームで呼び合う関係を築いてしまう。

 あなたに日米同盟こそ日本外交の基軸であるという確信がなければ、こうした信頼関係は生まれなかったでしょう。ただ、それだけではなかった。あなたには人と人との距離感を縮める天性の才があったことは間違いありません。

 安倍さん。あなたが後任の内閣総理大臣となってから、一度だけ、総理公邸の一室でひそかにお会いしたことがありましたね。平成二十九年一月二十日、通常国会が召集され政府四演説が行われた夜でした。

 前年に天皇陛下の象徴としてのお務めについてお言葉が発せられ、あなたは野党との距離感を推し量ろうとされていたのでしょう。

 二人きりで、陛下の生前退位に向けた環境整備について、一時間余り語らいました。お互いの立場は大きく異なりましたが、腹を割ったざっくばらんな議論は次第に真剣な熱を帯びました。

 そして、政争の具にしてはならない、国論を二分することのないよう立法府の総意をつくるべきだという点で意見が一致したのです。国論が大きく分かれる重要課題は、政府だけで決め切るのではなく、国会で各党が関与した形で協議を進める。それは、皇室典範特例法へと大きく流れが変わる潮目でした。

 私が目の前で対峙した安倍晋三という政治家は、確固たる主義主張を持ちながらも、合意して前に進めていくためであれば、大きな構えで物事を捉え、のみ込むべきことはのみ込む、冷静沈着なリアリストとして柔軟な一面を併せ持っておられました。

 あなたとなら、国を背負った経験を持つ者同士、天下国家のありようを腹蔵なく論じ合っていけるのではないか。立場の違いを乗り越え、どこかに一致点を見出せるのではないか。以来、私は、そうした期待をずっと胸に秘めてきました。

 憲政の神様、尾崎咢堂は、当選同期で長年の盟友であった犬養木堂を五・一五事件の凶弾で喪いました。失意の中で、自らを鼓舞するかのような天啓を受け、かの名言を残しました。

  人生の本舞台は常に将来に向けて在り

 安倍さん。あなたの政治人生の本舞台は、まだまだこれから先の将来にあったはずではなかったのですか。

 再びこの議場で、あなたと、言葉と言葉、魂と魂をぶつけ合い、火花散るような真剣勝負を戦いたかった。

 勝ちっ放しはないでしょう、安倍さん。

 耐え難き寂寞の念だけが胸を締めつけます。

 この寂しさは決して私だけのものではないはずです。どんなに政治的な立場や考えが違っていても、この時代を生きた日本人の心の中に、あなたの在りし日の存在感は、今大きな空隙となってとどまり続けています。

 その上で、申し上げたい。

 長く国家のかじ取りに力を尽くしたあなたは、歴史の法廷に永遠に立ち続けなければならない運命です。

 安倍晋三とは一体何者であったのか。あなたがこの国に残したものは何だったのか。そうした問いだけが、いまだ宙ぶらりんの状態のまま、日本中をこだましています。

 その答えは、長い時間をかけて、遠い未来の歴史の審判に委ねるしかないのかもしれません。

 そうであったとしても、私は、あなたのことを問い続けたい。

 国の宰相としてあなたが残した事績をたどり、あなたが放った強烈な光も、その先に伸びた影も、この議場に集う同僚議員たちとともに、言葉の限りを尽くして問い続けたい。

 問い続けなければならないのです。

 なぜなら、あなたの命を理不尽に奪った暴力の狂気に打ちかつ力は、言葉にのみ宿るからです。(拍手)

 暴力やテロに民主主義が屈することは絶対にあってはなりません。

 あなたの無念に思いを致せばこそ、私たちは、言論の力を頼りに、不完全かもしれない民主主義を少しでもよりよきものへと鍛え続けていくしかないのです。

 最後に、議員各位に訴えます。

 政治家の握るマイクには、人々の暮らしや命が懸かっています。

 暴力にひるまず、臆さず、街頭に立つ勇気を持ち続けようではありませんか。

 民主主義の基である自由な言論を守り抜いていこうではありませんか。

 真摯な言葉で建設的な議論を尽くし、民主主義をより健全で強靱なものへと育て上げていこうではありませんか。

 こうした誓いこそが、マイクを握りながら不意の凶弾に斃れた故人へ、私たち国会議員が捧げられる何よりの追悼の誠である。私はそう信じます。

 この国のために重圧と孤独を長く背負い、人生の本舞台へ続く道の途上で天に召された安倍晋三元内閣総理大臣。

 闘い続けた心優しき一人の政治家の御霊にこの決意を届け、私の追悼の言葉に代えさせていただきます。

 安倍さん、どうか安らかにお眠りください。(拍手)

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 裁判官弾劾裁判所裁判員稲田朋美君から裁判員を、また、裁判官訴追委員鈴木淳司君から訴追委員を、辞職いたしたいとの申出があります。右申出をそれぞれ許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(細田博之君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員及び裁判官訴追委員の選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員の予備員、検察官適格審査会委員の予備委員、国土審議会委員及び国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

佐々木紀君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に田中和徳君を指名いたします。

 また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に古川禎久君を指名いたします。

 なお、その職務を行う順序は第二順位といたします。

 次に、裁判官訴追委員に後藤茂之君を指名いたします。

 また、裁判官訴追委員の予備員に

      津島  淳君 及び 小林 鷹之君

を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は、津島淳君を第一順位とし、小林鷹之君を第二順位といたします。

 次に、検察官適格審査会委員の予備委員に三谷英弘君を指名し、牧原秀樹君の予備委員といたします。

 次に、国土審議会委員に

      梶山 弘志君 及び 高木 陽介君

を指名いたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に

      遠藤 利明君 及び 萩生田光一君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(山際国務大臣の辞任について)及び同発言に関連する発言

議長(細田博之君) この際、内閣総理大臣から、山際国務大臣の辞任について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 山際経済財政担当大臣の辞任に関し、私から一言申し上げます。

 昨日、山際大臣から、自ら十分に説明責任を果たせないことで、経済対策、補正予算審議など担当する重要課題の推進が妨げられることは本意ではなく、職を辞したいとの申出がありました。

 総理大臣として、被害者救済を始めとする旧統一教会問題への対応、経済対策、補正予算審議等に集中することを最優先し、了とする決断をいたしました。

 国会開会中に大臣が辞任する事態となり、深くおわびを申し上げます。

 本日午前、後藤茂之さんを後任とすることとしたところです。

 物価高、新型コロナ対策などの山積する課題への対応、特に月内の総合経済対策の取りまとめに向けて、しっかりと取り組んでまいります。

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) ただいまの内閣総理大臣の発言に関連して、それぞれ発言を求められております。順次これを許します。逢坂誠二君。

    〔逢坂誠二君登壇〕

逢坂誠二君 皆さん、旧統一教会には、日本人に贖罪を強いるという考え方があります。日本が過去、韓国を支配していた罪を償うために、日本人から金を集めて韓国に貢ぐべきというものです。この実践として、宗教に名をかりて、多額の献金をさせたり、霊感商法などを行ったり、旧統一教会は多くの日本人を苦しめています。

 岸田総理は、この団体と縁を絶つことを明言しました。当然のことです。しかし、岸田総理は、あくまでも議員個人の自己点検だけにこだわって、真相解明から逃げ続けています。

 昨夜、山際大臣が辞任を表明しました。遅過ぎます。山際大臣は、記憶がない、記憶がない、記憶がない、これを連発し、その不誠実極まりない答弁に国民はあきれ果ててしまいました。

 総理、八月の内閣改造時に、山際大臣から旧統一教会との関係を聞いていたのかいなかったのか、はっきりお答えください。総理は山際大臣にだまされていたのではないですか。

 今、物価高に多くの国民が苦しみ、一刻も早い対応が必要です。山際大臣の辞任で昨夜の経済財政諮問会議が延期になるなど、国民の生活を守る対策が先送りされるおそれがあります。

 今回の混乱は山際大臣の更迭を決められない岸田総理が引き起こしたものであり、その責任は重大です。総理、いかがですか。

 旧統一教会との関係を確実に絶つためには、自民党と旧統一教会とのこれまでの関係を隠し続けることは許されません。

 旧統一教会関連団体と政策に関する文書を取り交わしたり、選挙の応援を受けたりしている議員の存在が明らかになっています。このような議員が、政府の一員として、旧統一教会に対して有利な判断をすることがなかったのでしょうか。できないと言われていた旧統一教会の名称変更に関し、政治家が無理強いをしたことはなかったのでしょうか。これらに対する徹底した調査を強く求めます。

 あわせて、いまだに貝のように口を開かない細田衆議院議長の記者会見も必要です。

 加えて、被害者の皆さんを救済するための法律の今国会での成立が不可欠です。また、政府による旧統一教会の解散請求も年内に行う必要があります。この確実な実施を、総理、約束できますね。

 以上、総理、国民の皆さんに答弁ください。

 終わります。(拍手)

議長(細田博之君) 金村龍那君。

    〔金村龍那君登壇〕

金村龍那君 日本維新の会の金村龍那です。

 山際経済再生担当大臣の辞任を受け、岸田総理の発言に対し、我が党を代表し、一言申し上げます。

 昨晩の山際大臣の辞任は遅きに失していると言わざるを得ません。しかし、山際大臣の、このタイミングしかなかったというのは一体どういう意味なのでしょうか。

 ロシアによるウクライナ侵略を受け、食料やエネルギーを中心とした世界的な物価高騰が続いている中、我が国の家計や中小企業の経営を圧迫し、個人消費も減退しています。加えて、長引くコロナ禍により国民生活が疲弊していることは明らかです。

 経済再生担当大臣はまさに経済政策の司令塔であり、こうした状況の中で政府の本気度が試されています。目先だけの耳触りのよい政策だけでなく、若い世代にも将来に向けた希望の持てるような施策を期待しています。

 日本維新の会は、政府に対して、今後も是々非々の姿勢で臨み、国民の役に立つ議論を進めていくことについては協力を惜しみません。一日も早く国会が正常化し、各党が日本の未来を示し、骨太な議論が行われることを切に願い、私からの一言を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(細田博之君) 浅野哲君。

    〔浅野哲君登壇〕

浅野哲君 国民民主党・無所属クラブの浅野哲です。

 この度の山際前大臣の突然の辞任に関して、一言申し上げます。

 昨日の予算委員会終了後間もなく、山際前大臣は辞任の意向を示しました。これにより、本日午前中に予定されていた総務委員会、農林水産委員会、国土交通委員会などが全て一時止まるなど、国会審議に甚大な影響が発生をしました。

 さらに、この本会議中においても、先ほど裁判官訴追委員に後藤茂之議員が指名されたばかりであり、その直後、岸田総理から後任に指名したという発言がございましたが、これもまた立法府に対して大きな影響を与えるものであります。

 そもそも、山際前大臣は、国会召集以前より旧統一教会との関係が指摘されていた中で今回のてんまつとなったわけですから、任命責任者たる岸田総理の見通しの甘さ、判断の遅さにも責任があると言わざるを得ません。猛省を求めます。

 何より、山際前大臣は、経済再生、コロナ対策、新しい資本主義、スタートアップ、全世代型社会保障など、岸田内閣における最重要政策の担当大臣でした。今回の辞任による国会審議への影響は計り知れません。

 しかし、我々は、現下の逼迫した国内情勢を考えたとき、今回の辞任が国会のみならず国民生活にも甚大な影響を来すことは絶対に避けなければならないと考えます。

 長引くコロナの影響だけでなく、円安、物価高騰により国民生活は一層厳しくなっています。ですが、臨時国会開会から既に三週間経過しているにもかかわらず、補正予算はおろか、経済対策すら政府からは提示されていません。

 国民民主党は、九月十三日に二十三兆円の緊急経済対策を提示し、総理にも説明してきました。とりわけ、参議院選挙のときから訴え続けている電気料金の負担軽減策や、喫緊の課題であるエネルギー逼迫を受けた原子力の安全かつ高度な利活用、クリーンエネルギー自動車に対する補助の十一月以降の継続など、我々の具体的な提案に今こそ真摯に耳を傾けて実現していただくことが、国民生活、ひいては我が国の国益につながるものと考えます。

 岸田総理には、今回の件についての猛省を求めるとともに、我々の提案を真摯に盛り込んだ経済対策を早く決定することを求め、発言といたします。(拍手)

議長(細田博之君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 統一協会との深い癒着が問われていた山際大臣が辞任しました。記憶がないなどとごまかしながら、新たな事実を突きつけられると後追いで認めるなど、余りにも無責任な態度に国民の怒りが広がり、ついに国会答弁に行き詰まって辞任に追い込まれたのです。

 しかし、辞めるのは政権に迷惑をかけるからであって、癒着への反省は一言もありません。

 岸田総理は、山際大臣の辞任を認めたのは政策推進のためだと言いました。なぜ山際大臣と統一協会の癒着関係を理由に更迭しないのですか。

 山際議員は、明らかになっているだけでも、統一協会そのものが主催、後援した会合に二回、文鮮明夫妻が創設した国際政治団体である天宙平和連合、UPF主催の会合に四回も出席しています。韓鶴子総裁と三回も面会し、韓国、ネパール、ナイジェリアと、海外の会合に三度も参加しています。これほど統一協会の広告塔となった議員はほかに知りません。

 山際議員は、二〇一六年、ネパールで行われた国際指導者会議に出席し、アジア太平洋圏の世界平和国会議員連合の創設に関わりました。今問題となっている、統一協会と自民党議員が交わした推薦確認書では、世界平和議員連合に入会することを条件に掲げています。まさに、統一協会の政治活動の中核的な政治団体設立に深く関与してきたのが山際議員であります。選挙支援の見返りに統一協会の政策要求を受け入れて、政治をゆがめたのではないかという国民の疑問に答えられなければ、議員を続ける資格すらありません。

 岸田総理は、このような山際大臣と統一協会の関係について一体どのように認識しているか。総理の口からは一切語られていません。

 岸田総理は、統一協会との関わりをまともに問うことなく、内閣の骨格の大臣として山際大臣を再任し、その後も、後追い続きの山際大臣をかばい立てしてきたのではありませんか。このような山際氏を大臣に任命した責任、これだけの疑惑が指摘されながら職務を続けさせた岸田総理の責任を厳しく問うものであります。

 今、岸田総理が行うべきことは、自民党と統一協会の癒着の徹底解明であります。議員任せ、政務三役任せではなく、党と政府の責任で癒着の全容を調査すべきです。自民党と統一協会関連団体が政策協定と選挙支援を交わす推薦確認書は、外国に本拠を置く団体が自民党を通じて日本の内政に干渉したという疑惑であり、党として、調査、徹底解明を行うべきです。安倍元総理と統一協会の関係について調査をすべきです。

 細田議長も、議院運営委員会の場で説明、質疑を行うことを求めるものです。

 最後に、統一協会の解散命令の要件については、既に、組織性、悪質性、継続性の事実は積み上がっています。反社会的、反国民的団体である統一協会に対し、直ちに解散命令を請求することを求め、発言を終わります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) この際、内閣総理大臣から改めて発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 各党から様々な御意見をいただきました。私自身、任命責任を重く受け止めております。

 御意見を受け止め、政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、暫時休憩いたします。

    午後一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十二分開議

議長(細田博之君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案(早稲田ゆき君外八名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(早稲田ゆき君外八名提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案並びに早稲田ゆき君外八名提出、国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣加藤勝信君。

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及びまん延に備え、発生の初期段階から効果的に対策を講ずることができるよう、保健医療提供体制を構築する必要があります。

 このため、国、都道府県及び関係機関の連携協力による入院医療、外来医療、医療人材及び感染症対策物資等の確保の強化、保健所や検査等の体制の強化、情報基盤の整備、機動的な予防接種の実施、水際対策の実効性の確保等の措置を講ずることを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、都道府県知事等は、国の基本指針や都道府県の予防計画、医療計画に沿って、新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制の確保について、医療機関等と協定を締結することとします。加えて、公立・公的医療機関等、地域医療支援病院及び特定機能病院に対しては、その機能を踏まえ感染症発生時に担うべき医療の提供を義務付けます。

 また、感染症の流行初期段階における医療の提供を行う協定を締結した医療機関について、協定に基づく措置を講じたことに伴い、感染症の発生前と比べて診療報酬の収入が減少した場合に、医療の確保に要する費用を支給することとします。

 第二に、宿泊療養又は自宅療養を行う患者への健康状態の報告の求めについて、都道府県知事等は、協定を締結した医療機関等に委託することができることとします。また、当該患者が受けた医療について、都道府県等がその費用を負担する仕組みを創設します。

 第三に、感染症患者に対する医療を担当する医療従事者等に係る国による広域の応援調整の仕組みや、都道府県知事の求めに応じて災害、感染症医療に従事する者の養成、登録の仕組み等を整備します。

 第四に、都道府県は、保健所設置市、特別区その他関係者により構成される連携協議会を組織するとともに、緊急時の入院勧告等について、保健所設置市、特別区に指示することができることとします。また、感染症発生時等における保健所等の人材の確保を支援する仕組みを整備するほか、都道府県等は、専門的な調査研究や試験検査等に必要な体制整備等を行うこととします。

 第五に、医療機関による届出等について、電磁的方法による入力を努力義務とするとともに、感染症情報と医療保険の給付の費用に関する情報等との連結利用等を可能とする規定を整備します。

 第六に、感染症対策物資等の確保のため、緊急時に厚生労働大臣が事業者に対し、生産の促進の要請及び必要な支援等を行うことができることとします。

 第七に、新たな臨時の予防接種の類型、ワクチン製造販売業者等と損失補償契約を締結することができる仕組み、個人番号カードにより予防接種の対象者を確認することができる仕組み等を導入します。

 また、厚生労働大臣及び都道府県知事の要請により、医師、看護師等以外の一部の者が新型インフルエンザ等の検査のための検体採取や予防接種のための注射行為を行うことを可能とする枠組みを整備します。

 第八に、検疫所長は、新型インフルエンザ等感染症の病原体に感染したおそれのある者であって居宅等から外出しないことの協力の求めに応じないもの等に対し、外出しないことの指示及び報告の求めができることとするとともに、報告の求めに応じない場合等の罰則を設けます。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和六年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 提出者早稲田ゆき君。

    〔早稲田ゆき君登壇〕

早稲田ゆき君 ただいま議題となりました国民本位の新たな感染症対策を樹立するための二法案につきまして、提出者を代表して、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 内閣提出の感染症法改正案は、提出時期、施行時期共に遅過ぎます。岸田内閣は、感染拡大防止と社会経済活動の両立を掲げておりますが、第七波で何ら効果的な対策をせず、その結果、感染者数、死亡者数、医療難民数が過去最多となっております。両立どころか、感染拡大も防止できず、社会経済活動も中途半端となっております。

 感染症対策とは、国民の理解を基礎に、迅速的確に医療や医薬品等を備え、過度の人権制約や国民生活への悪影響を防ぎ、柔軟に感染症の位置づけの在り方を見直すものであるべきです。

 以下、二法案の概要を御説明いたします。

 まず、国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部改正法案では、コロナ後遺症、ワクチン副反応に関する情報の公表や医療機関の支援、新型コロナの新型インフルエンザ等感染症への位置づけの見直し等について定めることとしております。

 次に、新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案では、新型インフルエンザ等の治療に有用な医薬品について厚生労働大臣による指定制度を導入し、当該医薬品の買取り、増産要請等の確保の措置等を講ずることとしております。

 これらの法案は国民本位の感染症対策を樹立しようとするものであり、何とぞ御賛同を賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案(早稲田ゆき君外八名提出)及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案(早稲田ゆき君外八名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田畑裕明君。

    〔田畑裕明君登壇〕

田畑裕明君 自由民主党の田畑裕明です。

 私は、ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部改正案につきまして、会派を代表いたしまして質問いたします。(拍手)

 我々自由民主党は、新型コロナウイルス感染症から国民の皆様の命と暮らしを守るために、これまで対応に取り組んでまいりました。その新型コロナウイルス感染症への対応の教訓を踏まえ、いつ起こるとも分からない次の感染症危機に備え、感染の初期段階から、より効果的に対策を講ずるため、保健医療提供体制を整備しておく必要があります。

 そこで、まずお伺いをいたします。

 今回の法律案につきまして、改正の背景及び必要性について、岸田総理にお伺いをいたします。

 続いて、次の感染症危機に備えた保健医療提供体制の整備について、具体的な内容を伺います。

 感染症危機時に確実に稼働する体制を構築するためには、平時から、地域の医療機関の間で役割分担を議論し、病床確保や発熱外来など、感染症発生、蔓延時における具体的な対応についてあらかじめ取決めを行い、それに沿って、設備整備や人材確保など、計画的に準備を進めることが不可欠だと考えます。

 まず、今回、政府が本法律案において提案する医療機関との協定の法定化の基本的な考え方や効果を加藤厚生労働大臣にお伺いいたします。

 あわせて、協定の実施に際しては、新たに都道府県等が支弁する費用が発生し、地方財政に多大な負担が生ずることも考えられます。地方自治体等の関係者が一体となって円滑に体制整備を進めるため、懸念をどう解消されるのか、寺田総務大臣にお伺いをいたします。

 また、医療機関との協定については、単に法定化するということだけではなく、地域で必要となる医療提供体制を構築するため、医療機関との間できちんと協定が締結され、医療を必要とする方に確実に医療が提供されることが重要であります。

 本法律案では、公立・公的医療機関等、特定機能病院、地域医療支援病院に対しては、感染症発生、蔓延時に担うべき医療提供を義務づけるとのことでありますが、それ以外の医療機関についても、それぞれの役割に応じて、協定の締結や履行の確保が図られることが必要と考えます。

 本法律案において協定の実効性をどのように確保することとしているのか、加藤厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 次に、保健所の体制、機能について伺います。

 保健所は、医療機関と並び、今回の新型コロナウイルス感染症への対応において中核的な役割を果たす一方で、度々、その業務の逼迫が課題となりました。

 そこで、本法律案に盛り込まれました保健所の体制、機能の強化について、加藤厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 今回の法律案は、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応に関する本年六月の有識者会議の提言も踏まえ、次なる感染症危機への備えとして、保健医療提供体制を構築するものであり、早急に対応すべき法案であります。

 一方で、足下の感染対策に目を向けると、今冬に向けては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に加えて、季節性インフルエンザ同時流行への備えも進める必要があります。その対策としてオンライン診療の活用が注目されているようでありますが、まずは、対面での受診を希望される方に適切な医療が提供される体制づくりが大事ではないでしょうか。

 ついては、この冬を見据えて、これまで発熱外来をどのように強化してきたのか、また、更なる強化をどのように図っていくのかについて、加藤厚生労働大臣に伺います。

 もう一点、足下の感染対策のうち、マスクについて伺います。

 厚生労働省からは、屋外ではマスクは原則不要、屋内でも、人との距離が確保でき、会話をしない静かな環境であれば不要と示しておりますが、国民の皆様への浸透が十分とは言えません。

 マスク生活が長く続く中、めり張りをつけたマスクの適切な着脱について改めて分かりやすく説明する必要があると考えますが、加藤厚生労働大臣の見解をお伺いいたします。

 この法律案は、三年近くにわたる新型コロナウイルス感染症との戦いの中で培ってきた知恵や経験を法律の形として表したものであり、我々自由民主党は、国民の皆様の命と健康を守り抜くため、この経験を次に生かしていく必要があります。本法律案の速やかな成立が求められます。

 最後に、長く続く新型コロナウイルス感染症への対応に御協力をいただいている国民の皆様へ感謝の意を申し伝えて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田畑裕明議員の御質問にお答えいたします。

 感染症法等の改正法案の背景及び必要性についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナ対応において、医療機関の迅速な人員確保や入院調整、病床確保の困難さ、保健所業務の逼迫、医療物資の不足などの課題があり、平時からの感染症危機管理の重要性が浮き彫りとなりました。

 これを踏まえ、次の感染症危機から国民の生命及び健康を守るために、平時からの予防計画に沿った医療機関との協定の締結、保健所機能や検査体制の強化、機動的なワクチン接種の実施等について政府としてその枠組みを法定化し、流行の初期段階から速やかに機能する保健医療提供体制の構築を図ることを目的とし、感染症法等の改正を行うこととしたものであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣寺田稔君登壇〕

国務大臣(寺田稔君) 田畑議員からの御質問にお答えをいたします。

 医療機関との協定に係る都道府県等の負担について御質問いただきました。

 医療機関等が協定に基づき実施する病床確保等に関する費用については、新たに都道府県等の負担が生ずることとなります。

 このため、総務省といたしましては、九月二日の政府対策本部決定を踏まえ、次期通常国会で提出を目指す新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法案について、地方公共団体の財政負担を軽減する必要な措置を講ずることを関係省庁と検討しております。

 引き続き、地方の声も踏まえ、地方公共団体が安心して感染症対応に取り組めるよう、関係省庁と連携し、必要な措置について検討してまいります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 田畑裕明議員より、五問御質問いただきました。

 協定の法定化の考え方についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、都道府県知事が平時に各医療機関と協議を行い、感染症発生、蔓延時における役割、対応に関する協定を締結することとしています。

 具体的には、病床確保を始め数値目標を盛り込んだ予防計画、医療計画を各都道府県において策定します。その上で、計画を踏まえ、各医療機関の機能や役割に応じた病床確保や医療人材の派遣等の措置を実施することを内容とした協定を締結し、平時からの体制整備を行っていくこととしています。

 こうした仕組みを通じて事前の備えを計画的に行うことにより、危機時に確実に稼働する体制を整備できるものと考えております。

 協定の実効性確保についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、民間医療機関を含めた全ての医療機関に対し、予防計画や医療計画の達成のために必要な協力をする努力義務、都道府県との協定の協議に応じる義務、協議が調わなかった場合に都道府県医療審議会の意見を尊重する義務を課すこととしており、協定締結のプロセスを通じ、それぞれの医療機関に、その機能や役割を踏まえ、できる限りの協力をいただくこととしています。

 その上で、公立・公的医療機関等については、地域における医療の確保に関し、通常の民間医療機関とは異なる能力や位置づけ等を有していることを踏まえ、その機能や地域における役割に鑑みた感染症対応を担っていただくため、医療の提供を義務づけることとしています。

 また、協定を締結した医療機関が感染症発生、蔓延時に協定に沿った対応をしない場合には、その状況を確認し、正当な理由がなく必要な対応を行わないときは、指示、公表等をできることとする履行確保措置を設けることとしています。

 こうした仕組みについて丁寧に説明を行うとともに、協定の締結に当たっては、各都道府県知事と医療機関の間で地域の医療の確保についてよく御議論いただき、必要な体制を確保していただきたいと考えております。

 保健所の体制強化についてお尋ねがありました。

 次の感染症危機に備え、平時から計画的に検査体制を含む保健所体制の強化を図ることが重要であります。

 このため、今般の改正案においては、各都道府県に設置する連携協議会において、保健所設置市、医療機関、保健所と地方衛生研究所等の関係者が感染フェーズに応じた連携の在り方等を検討、議論した上で、保健所体制の整備について予防計画に盛り込むこと、保健師等の専門人材が保健所等の業務を支援する仕組みであるIHEATを整備すること等としたところであります。

 こうした取組により、感染拡大時に保健所が健康危機管理の拠点として十分に対応できる体制を平時から備えてまいります。

 発熱外来の強化についてお尋ねがありました。

 いわゆる発熱外来の強化については、都道府県、日本医師会とも連携して、累次にわたる拡充の要請や必要な財政支援を行い、昨年十二月時点での約三・五万から、現在は約四・一万まで増やしてまいりました。

 また、十月十七日には、この冬の新型コロナと季節性インフルエンザとの同時流行に備えて、都道府県等に対し、発熱外来の箇所数の増加に加えて、地域の感染状況に応じた診療時間等の拡大、かかりつけ以外の患者への対応など、地域の実情に応じた取組を依頼しております。

 さらに、診療所における感染対策の取組事例や発熱外来の公表率等のデータもお示しする予定であり、都道府県には、これらを活用して発熱外来の更なる拡充に努めていただきたいと考えております。

 こうした取組に加えて、地域の医師会の協力を得たセンター方式による臨時の発熱外来の整備や、発熱外来を補完するための電話診療、オンライン診療の体制の強化などの取組を進めることにより、外来医療体制の強化に万全を期してまいります。

 マスクの着脱についてお尋ねがありました。

 マスクの着用については、まず、屋外では、近くで会話をする場合などには例外的にマスクを着用いただきたいと考えていますが、原則として不要であります。屋内でも、例えば図書館など、人との距離が確保できて会話をほとんど行わない場合は不要であります。基本的な感染対策はめり張りをつけて、マスクは場面に応じた適切な着脱に努めていただければと考えております。

 政府としては、こうしたマスクの着用の考え方について、先日、より分かりやすいリーフレットを新しく作成し、周知したところであります。また、テレビCMの放映などについても予定しており、引き続き、関係省庁とも連携し、国民の皆さんへの広報の強化に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 立憲民主・無所属の中島克仁です。

 ただいま議題となりました、政府提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案、立憲民主党、日本維新の会提出、国民本位の新たな感染症対策樹立法案及び特定医薬品特別措置法案について、会派を代表して質問をいたします。(拍手)

 新型コロナウイルス感染症第七波では、一日の感染者数や各波の累計感染者数、一日の死亡者数や各波の累計死亡者数が過去最高となりました。

 さらに、警察庁によれば、令和四年八月に警察が取り扱ったコロナ陽性の御遺体のうち、自宅等で発見された方の数は八百七件と、過去最高だった令和四年二月の五百十二件を大きく上回りました。

 私はこれまでも二度と自宅放置死を繰り返してはならないと何度も訴えてまいりましたが、第七波において、必要な方が医療につながらず自宅でお亡くなりになった人数が過去最高となった可能性が否定できない状況に、自分自身、無力を痛感いたします。

 先日、大阪・河内長野市に赴き、日本維新の会の浦野靖人議員とともに、自宅放置死遺族会の高田かおり共同代表や、地域でコロナ医療に日々奮闘される水野宅郎医師、また、大阪、京都を中心にコロナ自宅療養者を独自に支援するため編成されたKISA2隊の守上佳樹医師とお会いし、これまでの取組、その状況などを聞かせていただきました。必要な方が必要なときに医療にアクセスできない、自宅放置死を起こさないために奮闘される方々とお会いをし、改めて、二度と自宅放置死を繰り返してはならないという強い思いを新たにしたところでございます。

 岸田総理は、先日の所信表明演説で、緊急事態宣言等の行動制限を行わずに今年の夏を乗り切れたのはと発言をされましたが、一体、どこが乗り切れたのでしょうか。過去最悪の多くの犠牲、現場の混乱が生じているのに、政府は何もせず、ただ無策に立ちすくんでいただけではありませんか。

 岸田総理、まず、国民の皆様、コロナ対応する医療者、重症化リスクの高い利用者の支援に当たる介護、障害福祉現場等に対して、第七波における政府の無策、そして大きな被害、混乱を生じさせたことを謝罪するべきです。岸田総理の見解を伺います。

 我々立憲民主党は、今年の通常国会に、オミクロン・感染症対策支援法案など、第七波が訪れた際、必要な方が必要なときに確実に医療にアクセスでき、迅速に検査、治療が開始されるためのコロナ対策三法案を提出いたしました。否決されましたが、コロナ感染再拡大の際に自宅放置死を出さない、国民の命を守るための内容でありました。

 そして、今議題となっている政府提出法案については、内容は我々が提出したオミクロン・感染症対策支援法案とほぼ同様、加えて、主な施行期日は令和六年四月一日であり、再来年まで施行されません。第八波が我が国を襲った際、また立ちすくむつもりですか。

 この秋冬は、既に厚生労働省のアドバイザリーボード等で指摘されているように、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザ、さらにはRSウイルスなど、発熱などの症状を伴う感染症が同時に流行する危険が大いにあります。まずは目の前の秋冬の対策、国民の命と健康を守るための法整備が必要なのではないでしょうか。

 ほぼ同様の内容であった我々の法案、自宅放置死をさせない提案を通常国会でなぜ受け入れなかったのか、理由をお尋ねするとともに、今回の政府提出法案の施行期日がなぜここまで遅いのか、岸田総理にお尋ねいたします。

 この秋冬の同時流行に備えて対策を検討する新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォースでは、驚きを禁じ得ない対策が示されております。

 小学生以下の子供、妊婦、基礎疾患のある方、高齢者、この四つの類型のいずれにも当てはまらない方は、発熱等の症状が出た場合、新型コロナの検査キットを購入してコロナの感染の有無を調べ、陽性であれば登録して自宅療養、陰性であればオンライン診療等でインフルエンザの診断を受けるとされております。

 すなわち、四つの類型に当てはまらない方は、発熱がひどく、体を動かすのも困難な状態であったとしても、まず新型コロナの検査を自力で行うことが求められ、直ちに医療にかかることができない仕組みではありませんか。

 約二年半前の新型コロナの流行初期、厚生労働省は、三十七・五度以上の発熱が四日以上続いた場合と、受診の目安を示しました。この目安を保健所や医療機関、患者さんが忠実に守った結果、命を落とされた方もおられました。そして、この受診の目安を忠実に守ったことを、こういう誤解もありましたと、当時、また現在の加藤勝信厚生労働大臣が発言をされたのでした。

 この秋冬、たとえ四つの類型のいずれにも当てはまらなくても、高熱など症状がひどい場合には直ちに医療にかかることが可能である、これは私の誤解でしょうか。岸田総理にお尋ねいたします。

 このタスクフォースの対策には、東京都医師会の尾崎会長が記者会見で、同時流行が始まったからあの方針でやってくださいという話ではありませんと発言をされておられます。そうであるならば、政府が示した四類型に該当しない方の医療制限はどのような場合で発動するのか、具体的に数値を用いた基準を示すべきです。また地方自治体の判断任せでしょうか。岸田総理の見解を伺います。

 四類型に該当しない方の多くは、保険料を支払い、国民皆保険を支えているにもかかわらず、この秋冬は、発熱等の症状があれば、直ちに医療機関にかかることができず、まずコロナの検査を要求されます。

 このような仕組みで、日本医師会が殊更こだわるフリーアクセスは守られていると言えるのでしょうか。あるいは、財政審の建議にもあるように、このコロナ禍において我が国医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは肝腎なときに十分に機能しなかった、そのため、フリーアクセスをもはや政府は放棄したのでしょうか。岸田総理の見解を伺います。

 続いて、政府提出法案とともに、立憲民主党、日本維新の会共同提出二法案について伺います。

 さきの通常国会において、我が党は、薬事承認の重さを踏まえ、薬事承認手続とは異なる緊急使用許可制度の創設を提案いたしましたが、否決され、閣法の薬機法改正案が成立、緊急承認制度が設けられました。

 しかし、その後の薬食審での議論等を見ると、緊急時、有事にはやはり薬事承認手続以外の医薬品を使用可能とする手続の必要性を痛感いたします。もし日本発の強力な感染症やバイオテロが発生した場合、国民の命と健康を守るために直ちに医薬品が必要となったとき、現行の緊急承認制度で対応できるのでしょうか。

 薬事承認手続ではなく、医薬品に係る厚生労働大臣の指定制度を導入した理由について、法案提出者にお尋ねをいたします。

 コロナワクチンについては、接種の積極派と消極派のように、国民や社会を分断する対立が目立ちます。これは、予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会等の情報公開の在り方など、情報発信や情報公開の問題が原因であり、改善するべきではないでしょうか。岸田総理及び法案提出者に伺います。

 同じく、コロナ感染後の後遺症についても、当初は精神疾患であるとされるなど、医療従事者の中にも否定的な立場を取る方がおられました。後遺症に苦しむ患者と理解のない周辺の人々との間で分断が生じたようにも思われます。こうした後遺症についても積極的な情報公開と対策を講じるべきだと考えますが、岸田総理及び法案提出者に伺います。

 感染症対策は、隔離など一定の人権制約を伴うものであります。感染症対策は、感染症の危険性に応じて迅速かつ適切に変化させるべきです。今後の変異の可能性を理由に、弱毒化した感染症を強力な人権制約を可能とする感染症類型にとどめるべきではありません。一方、警戒は怠らず、強毒性となったことが判明した場合には速やかに感染症類型を変更する、そうした柔軟性こそ必要なのではないでしょうか。

 柔軟に感染症の位置づけを変更するよう検討する必要性について、新型コロナの類型を第七波収束後に見直すとしていた岸田総理及び法案提出者に伺います。

 次に、かかりつけ医の制度化、日本版家庭医制度の必要性について伺います。

 政府が進めるコロナ対策や感染症対策には随所にかかりつけ医が登場しますが、我が国において、かかりつけ医に法律上の定義は存在いたしません。かかりつけ医が一体どこにいるのか、何人いるのか、全く分からないのが我が国の状況です。

 そして、このコロナ禍において、かかりつけ医だと思っていた医師に、あなたのかかりつけ医ではないとして、ワクチン接種や往診を断られたとの事案が多数発生をいたしました。

 財政審の建議には、かかりつけ医機能の要件を法制上明確化、かかりつけ医として認定するなどの制度を設ける、事前登録、医療情報登録を促す仕組みを導入していくとされております。

 コロナの教訓を生かし、平時での、少子高齢化、人生百年時代、疾病構造の大きな変化に対応する家庭医制度の創設に向けて、大きく踏み出すべきです。

 本年五月二十五日の衆議院本会議で、我が党の重徳和彦議員の質問に、かかりつけ医について、岸田総理は、速やかに制度整備を進めてまいりますと答弁をされております。日本医師会の圧力に屈して骨抜き議論となるのか、総理のリーダーシップにより、国民に寄り添った医療制度改革に向け大きく前進するのか、勝負どころです。五月二十五日の答弁より踏み込んだ御答弁を御期待いたします。

 改めて、かかりつけ医の制度化、日本版家庭医制度創設に向けた岸田総理の意気込み、決意を伺います。

 立憲民主党と日本維新の会は、今回の共同提出の検討に際し、地域包括ケアシステムの中核として家庭医を位置づけ、平時は健康管理やプライマリーケア、有事には検査、往診、専門医療機関との入院調整に当たる仕組みを設ける必要性について認識を共有いたしました。今後、更に議論を深め、共同での法案提出に向けて検討を進めてまいります。

 国民本位の医療提供体制構築のための、医療制度改革の本丸である日本版家庭医制度創設に向けた決意と覚悟を改めて表明いたします。

 最後に、旧統一教会関連について質問いたします。

 毎日新聞の二十二日、二十三日の世論調査によれば、旧統一教会に解散請求をすべきが八二%でした。速やかに質問権を行使し、年内に解散請求をすべきではないでしょうか。岸田総理にお尋ねいたします。

 旧統一教会の被害に苦しみ、返金要求をしている大多数は御家族です。よって、被害者救済の法案には、家族などが献金の返金を請求できるように特別補助制度を盛り込むべきではないでしょうか。岸田総理にお尋ねいたします。

 さらに、橋田達夫さんに対して、旧統一教会は、元奥様による反論の動画をテレビやホームページで公開しています。これは発言する被害者への悪質な口封じであり、旧統一教会に動画をホームページから削除するよう文化庁から指導するべきだと考えますが、岸田総理の明確な答弁を求めます。

 山際大臣が事実上の更迭となりました。遅きに失した対応に国民の皆様の疑念はより一層高まっています。岸田総理の任命責任は重大です。これで幕引きなど到底あり得ないことを申し述べ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中島克仁議員の御質問にお答えいたします。

 今年の夏の新型コロナ対応についてお尋ねがありました。

 今年の夏は、国民お一人お一人が基本的な感染対策を徹底してくださったおかげで、三年ぶりに緊急事態宣言等の行動制限を行わずに過ごすことができ、多くの国民の生活となりわいを支えることができたと考えております。

 一方、オミクロン株が主流となった本年七月から九月までの感染拡大に際しては、約一千百万人が感染し、一万人以上の方がお亡くなりになられました。御家族の皆様方に心よりお悔やみを申し上げます。

 医療提供体制については、最大確保病床約五万床のフル稼働に向けた対応など、病床や緊急医療の逼迫の回避に向けて累次にわたる対策を行った結果、第七波における確保病床使用率は、療養状況調査によれば、全国平均で、重症病床において最大三五%、コロナ病床全体でも最大六二%と、必要な入院医療を提供することができたと考えております。

 法案の施行期日についてお尋ねがありました。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行への備えについては、これまで拡充強化してきた医療体制に加え、今月十三日、発熱外来や電話診療、オンライン診療体制の強化等による保健医療体制の強化、重点化策を取りまとめたところであり、都道府県と協力して万全を期してまいります。

 御指摘の感染症法等の改正案については、病床不足時の対応等について政府案と異なる点がありますが、いずれにせよ、国会で御審議をいただき、その結果、否決されたものであると承知をしております。

 今般の改正案の施行期日については、改正案の主眼が次の感染症危機への備えであり、保健医療体制の整備には地方公共団体等で一定の準備期間が必要であることから、令和六年四月一日としております。一方で、緊急時の入院勧告に係る都道府県知事の指示権限の創設は公布日から施行するなど、可能なものから順次施行することとしております。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行対策等についてお尋ねがありました。

 新型コロナとインフルエンザが同時流行した際の対策をお示ししておりますが、四類型に該当しない重症化リスクが低い方であっても、症状が重いと感じるなど受診を希望する場合には、発熱外来やかかりつけ医を受診いただくことに変わりはなく、医療制限を行うものではありません。

 今般のウィズコロナに向けた新たな段階への移行の中でお示しした対策は、同時流行下で多数の発熱患者が生じる場合においても重症化リスクの高い方に適切な医療を提供できるように、重症化リスクの低い方には、まずは新型コロナに関する検査キットで自己検査を行っていただき、陽性であれば安心して自宅療養を行っていただくため、健康フォローアップセンターの拡充等に取り組むものです。

 その上で、具体的な保健医療体制の整備等については、国としても、体制の整備等に対する必要な支援を行うほか、新型コロナとインフルエンザの感染状況について、専門家による評価もいただきつつ、感染状況に遅れることなく都道府県にも情報を共有することとしており、国と都道府県で緊密に連携をしながら、必要なときに必要な医療にアクセスできる、いわゆるフリーアクセスが確保できるよう、保健医療体制の確保に万全を期してまいります。

 新型コロナワクチンや後遺症についてお尋ねがありました。

 新型コロナワクチン接種後の副反応については、医療機関等からの全ての副反応疑い報告の情報を、審議会で専門家の評価を受けた上で定期的に公表しております。また、有効性や安全性等については、様々な媒体を通じて、より分かりやすく速やかに情報発信をしてまいります。

 新型コロナのいわゆる後遺症については、まずはかかりつけ医等につなぐことが重要であり、リーフレットや国内外の科学的知見を盛り込んだ診療の手引の普及により、積極的に情報発信をしております。

 新型コロナの感染症法上の位置づけについてお尋ねがありました。

 先月、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、感染症法上の扱い等について、全数報告の見直しや療養期間の短縮など、相当の緩和を行って、社会経済活動との両立を進めたところです。

 新型コロナの五類への引下げを含めた感染症法上の扱いの更なる見直しについては、今後、ウイルスに新たな大きな変異が生ずる可能性や、第八波に向けた、病床、発熱外来の確保、ワクチン接種の促進、高齢者施設における療養体制の強化などの備えが必要であることも踏まえる必要があり、専門家の意見も聞きながら、引き続き、エビデンスに基づき議論を進めてまいります。

 かかりつけ医についてお尋ねがありました。

 今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行います。

 その際、質の高い医療を効率的に提供できるよう、かかりつけ医機能を明確化しつつ、患者と医療者の双方にとってその機能が有効に発揮されるための具体的な方策を取りまとめてまいります。

 旧統一教会に対する解散命令の請求や文化庁による指導、そして被害者救済法案についてお尋ねがありました。

 宗教法人法においては、所轄庁に一般的な監督権限は与えられておらず、御指摘のような、ホームページの削除を指導する権限はありません。一方、文化庁では、旧統一教会に対して、年内のできるだけ早いうちに報告徴収、質問権を行使することとしており、その中で、御指摘の点を含めた様々なトラブルやそれらへの対応状況に関する情報等を集め、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにした上で、宗教法人法にのっとり、必要な対応を講じてまいります。

 また、政府としては、契約の取消権の対象の拡大や行使期間の延長など、消費者契約法等の法制度の見直しについて、準備ができたものから臨時国会に早期に提出をしていきたいと考えております。御提案の、第三者による契約等の取消しに関する制度は、財産権との関係などの課題があると考えております。与野党で設立が合意された協議会において、将来の被害防止、被害者救済に向け、会派を超えて議論をしていただきたいと考えており、そこでの議論も参考にしながら、政府法案を具体化してまいります。(拍手)

    〔野間健君登壇〕

野間健君 立憲民主党の野間健です。

 中島克仁議員にお答えいたします。

 立憲民主党、日本維新の会共同提出の二法案のうち、まず、特定医薬品特措法案について、薬事承認手続ではなく、厚生労働大臣の指定制度を導入した理由についてお尋ねがありました。

 薬事承認手続によらない厚生労働大臣の指定制度につきましては、新型インフルエンザ等の発生などの有事の際には、国民の命と健康を守るべく、迅速に医薬品を確保することが重要であることから、薬事承認の重さを十分に踏まえた上で、安全性が確保されていることを大前提として、指定によりその使用を認めることとしたものであります。

 次に、新型コロナウイルス感染症とワクチンの後遺症に関する情報公開の在り方について御質問いただきました。

 新型コロナウイルス感染症の予防接種は、蔓延の防止、医療逼迫の防止のために有効である一方、接種するかどうかは国民一人一人の判断に最終的には委ねられております。したがって、その判断に資するよう、予防接種の有効性や安全性について、全ての国民に対して分かりやすい形で発信するべきことは当然であります。しかし、政府がこれまで行ってきた情報公開は、分かる人にだけ分かればよいと言わんばかりの、国民本位とは到底言えない、国民の信頼を失墜させるものでありました。

 また、新型コロナウイルス感染症の後遺症についての知見も二〇二〇年以来蓄積されつつあります。後遺症を有する方々に対する医療の提供に向けた施策が急務であることは当然ですし、誰もが感染のリスクを避けられない状況においては、感染した際に何が起こるかは国民の重要な関心事であり、国民に対する分かりやすい情報公開も求められています。しかし、政府はこれらを怠っており、後遺症を有する方々とそうでない方々の分断をも招いているんです。現政権は感染症対策に積極的ではないとの疑いを国民が持つのも必然であります。

 こうした問題意識を踏まえ、国民本位の新たな感染症対策樹立法案においては、新型コロナウイルス感染症について、その予防接種に関する情報公開や後遺症に関する情報公開及び医療の提供について明文の規定を設けることとしております。

 最後に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけ変更の検討の必要性についてお尋ねがありました。

 国民生活への悪影響を防ぐためには、新型コロナウイルス感染症の蔓延の状況やこれにかかった場合の病状の程度など、その時々における感染症の状況を広く勘案して、迅速かつ柔軟にその感染症法上の位置づけの在り方を見直していくことが必要であると考えております。本法案にもその旨を盛り込むこととしております。

 政府には、真摯に我々の提案を受け止めていただくとともに、各会派におかれましては、これら二法案に是非御賛同いただきますようお願いいたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 遠藤良太君。

    〔遠藤良太君登壇〕

遠藤良太君 日本維新の会の遠藤良太です。

 私は、ただいま議題となりました、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案、国民本位の新たな感染症対策を樹立するための感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び予防接種法の一部を改正する法律案及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案について、日本維新の会を代表し、質問をいたします。(拍手)

 政府案の主な規定は、施行期日を令和六年四月一日としております。主な規定の施行が再来年ということであれば、この秋冬にも到来が予想されている新型コロナ第八波、また来年の新型コロナの感染拡大には、今回の改正は役に立ちません。政府案が本格的に施行されるまでの間、新型コロナを含む感染症対策をどうするおつもりなのでしょうか。

 この秋冬には、新型コロナと季節性インフルエンザ、その他の発熱等の症状を伴う感染症の流行が懸念されております。この冬には、免疫を持たない児童を中心に季節性インフルエンザの大流行が発生することを想定しておく必要があるのではないでしょうか。

 感染症法上、五類感染症とされる季節性インフルエンザ、新型インフルエンザ等感染症として特定の医療機関での対応が求められる新型コロナウイルス感染症オミクロン株、さらには感染症法上の類型に位置づけられないその他の感染症と、様々な感染症が同時に流行した場合、医療機関は全ての発熱患者を二類相当として扱わざるを得ないのではないでしょうか。

 これは、すなわち、発熱患者を一般的な地域の医療機関で診なくてもよいことを認めることとなり、本来救える命が救えなくなる状況となってしまいます。早急に、全ての発熱患者を地域の医療機関、一般的な医療機関で診ることができる仕組みに変更すべきです。加藤厚生労働大臣の見解を伺います。

 新型コロナウイルス感染症の死亡者は、コロナ陽性で亡くなられた場合には、新型コロナが直接死因でなくても新型コロナ死亡者数にカウントされていると承知しております。この新型コロナが直接死因ではない死亡者数を含めて、コロナの致死率とされる数字が算定されております。このような数字で季節性インフルエンザの致死率と比較してよいのでしょうか。

 新型コロナを直接の死因とする死亡者数からコロナの致死率を算定できるよう、データ収集の方法や指標を確立すべきです。こうしたデータ収集方法や指標の確立に向けた政府の取組について、加藤厚生労働大臣に伺います。

 新型コロナウイルス感染症は、ワクチンの広がりや抗ウイルス薬等を用いた治療の効果の向上、感染による免疫獲得、新型コロナウイルス自体の弱毒化などで、致死率、重症化率が低下しつつあります。

 オミクロン株BA・1が流行していた今年一月から二月のデータでも、六十歳未満については致死率と重症化率は季節性インフルエンザと大差ありません。オミクロン株対応ワクチンの登場など、更に状況が好転した十月現在では、オミクロン株の致死率と重症化率は一層低くなっている可能性が高いと思われます。

 政府には、オミクロン株や今後流行する変異株の致死率、重症化率について正確なデータを取得して公表した上で、できる限り早期の新型コロナウイルス感染症の五類感染症への見直しを求めたいと思います。第七波収束後に位置づけを見直すとされていた岸田内閣総理大臣に伺います。

 我々日本維新の会が、新型コロナウイルス感染症オミクロン株の感染症法上の位置づけを五類感染症とすべきと主張しているのは、経済活動再開だけを念頭に置いたものではありません。むしろ、オミクロン株は、地域の医療機関であるかかりつけ医など一般的な医療機関で診療すべき感染症であり、医師の応招義務の対象とすることが狙いであります。

 医師の応招義務についての令和元年十二月二十五日の通知では、患者を診療しないことが正当化される事例として、「一類・二類感染症等、制度上、特定の医療機関で対応すべきとされている感染症にり患している又はその疑いのある患者等」が挙げられております。自宅療養が中心とされ大半の患者が自宅療養で済むオミクロン株が、特定の医療機関で対応すべき感染症とは到底思えません。

 なぜオミクロン株が応招義務の対象とならないのでしょうか。応招義務の対象となる感染症にすべきではありませんか。加藤厚生労働大臣の見解を伺います。

 また、早急にオミクロン株の感染症法上の扱いをどうするのか議論する場、検討する場を公式に設けるべきと思いますが、加藤厚生労働大臣の見解を伺います。

 日本維新の会は、以前より、新型コロナウイルス対策に関する提言を行っております。提言では、かかりつけ医等の応招義務の強化、軽症者のケアを保健所中心からかかりつけ医が担うように転換すること、自宅療養中の患者を身近なかかりつけ医に登録する新制度の創設、往診体制の拡充等を求めております。

 コロナ禍において、患者はかかりつけ医と思っていたのに、医師から、あなたのかかりつけ医ではないと、往診やワクチン接種を断られたという声が多く聞かれました。

 政府は、新型コロナウイルス感染症対策において、かかりつけ医に相談してくださいと積極的にアピールしていますが、まず、患者と医師のミスマッチを埋め、いざというときに医師の側が逃げられないようにする必要があるのではないでしょうか。感染症医療におけるかかりつけ医の応招義務の強化やかかりつけ医登録制の創設について、岸田内閣総理大臣に伺います。

 それでは、政府提出の感染症法等改正案、立憲民主党及び日本維新の会共同提出の国民本位の新たな感染症対策樹立法案及び特定医薬品特措法案について伺います。

 政府案が提出された理由には、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及び蔓延に備えるためとされています。

 今回の法改正で創設される都道府県知事と医療機関等の協定締結の仕組みなどは、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症対策ということになりますが、新型コロナウイルス感染症と比較して重症化率や致死率がはるかに高い強力な感染症が流行した場合でも、今回の法改正で設けられる協定で対応することが可能なのでしょうか。それとも、そのような場合には、新たな法改正や新法などの立法措置が必要となるのでしょうか。

 もしそのような場合には新たな立法措置が必要となるのであれば、今回の法改正は、事実上、新型コロナウイルス感染症類似の感染症にのみ対応するための感染症法改正となります。今回の法改正で設けられる協定で対応可能となる感染症の範囲について、岸田内閣総理大臣の見解を伺います。

 政府案では、保健所の体制整備を推進しつつ、健康観察の実施について、協定を締結した医療機関等への委託を可能としています。

 しかし、自宅療養者はいつ容体が急変して医療提供が必要となるか分かりません。自宅療養者の健康観察は医療に密接に関連していると考えるべきです。

 自宅療養者等への健康観察について、協定を締結した医療機関のほか、都道府県知事が適当と認める者に委託することができることとされています。適当と認める者は医療機関に限定すべきと考えますが、岸田内閣総理大臣の見解を伺います。

 政府案では、初動対応等を行う協定締結医療機関について、協定に基づく措置を講じたため収入が減少した場合に財政的な支援が行われます。この支援に要する費用は公費と保険者で折半することとしています。感染症初動対応をした医療機関への財政支援を行うことは我々も必要と考えますが、保険者に費用負担をさせることは疑問です。

 この流行初期医療確保措置の検討過程においては、保険者側から、国民全体の利益につながるものは公費で負担すべきと政府案に反対の意見が示されております。そして、仮に感染症発生初期の緊急的な対応として行う場合であっても、対象期間は数か月に限定し、対象とする医療機関も限定すること、補助金等の公的制度が整うまでの暫定的制度として立替え払いであることを明確にすること、今後こうした保険者負担の仕組みが安易に使われることにならないよう減収補償の使用は例外的かつ限定的であることを明確にすることといったことが強く求められます。保険料を財源に運営している保険者として当然の主張であると考えます。

 感染症への対応は、基本的には公費で対応すべきであって、医療実績がないのに医療保険料を流用することは、医療保険制度の本来の趣旨になじまず、筋が悪いのではないでしょうか。岸田内閣総理大臣の見解を求めます。

 他方で、立憲民主党と日本維新の会が提出した国民本位の新たな感染症対策樹立法案では、感染症に係る医療提供体制を迅速かつ適確に構築するための措置を講じた医療機関への補填措置を講ずるとした上で、その費用を保険者等に負担させてはならないこととされています。その趣旨を提出者に伺います。

 私たち日本維新の会は、新型コロナウイルス感染症がかかりつけ医を始めとする地域の医療機関で診られる感染症となるよう、応招義務が適用される五類感染症へと位置づけを早急に変更すべきであることを改めて主張いたしまして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 遠藤良太議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナの感染症法上の位置づけについてお尋ねがありました。

 先月、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、感染症法上の扱い等について、全数報告の見直しや療養期間の短縮など、相当の緩和を行って、社会経済活動との両立を進めたところです。

 新型コロナの五類への引下げを含めた感染症法上の扱いの更なる見直しについては、今後、ウイルスに新たな大きな変異が生ずる可能性や、第八波に向けた、病床、発熱外来の確保、ワクチン接種の促進、また、高齢者施設における療養体制の強化などの備えが必要であることも踏まえる必要があります。こうしたことを念頭に、専門家の意見も聞きながら、引き続き、エビデンスに基づき議論を進めてまいります。

 感染症医療におけるかかりつけ医の応招義務についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、都道府県が、感染症蔓延時における医療提供体制の確保に関し、発熱外来や自宅療養者に対する医療等の数値目標を盛り込んだ計画を平時から策定するとともに、医療機関との間で協定を締結することで、感染症蔓延時に外来機能を担う医療機関をあらかじめ適切に確保し、明確化することとしております。

 その上で、協定に沿って対応いただけるよう、正当な理由なく必要な対応を行わない医療機関に対する指示、公表等の仕組みを設けています。

 御指摘の感染症医療における応招義務については、未知の感染症への対応について、全ての医療機関に感染症医療を行うことを求めることは困難と考えており、政府としては、感染症医療を担う医療機関の役割分担を明確にすることを通じて、必要な医療を受診できる体制を構築していきます。

 また、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行います。

 法改正で設けられる協定で対応可能となる感染症の範囲についてお尋ねがありました。

 今回の法改正では、法文上、新型コロナウイルス感染症を含む新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症を協定の対象とすることとしております。

 具体的な協定の内容については、感染症に関する国内外の最新の知見を踏まえつつ、一定の想定に基づき協議、締結することとなりますが、まずは、現に対応しており、これまでの対応の教訓を生かすことのできる新型コロナウイルスへの対応を念頭に取り組むこととしております。

 その上で、実際の新たな感染症の発生、蔓延時には、事前の想定とは大きく異なる事態も考えられますが、その場合には、その感染症の特性に合わせて協定の内容を見直すなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行ってまいります。

 健康観察の実施の委託先についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、保健所業務の逼迫への対応や、医療が必要な自宅療養者へのフォローアップの観点から、都道府県が協定を締結した医療機関等に健康観察の実施を委託することができることとしております。

 医療機関以外に委託することも想定していますが、委託の具体的な範囲については、今後、施行に向けて、新型コロナ対応の経験を参考に、関係者の意見も踏まえ、適切に健康観察が実施できるよう判断をしてまいります。

 流行初期医療確保措置についてお尋ねがありました。

 流行初期医療確保措置は、今回の新型コロナ対応において、診療報酬の特例措置や補助金等の財政支援が整備されるまでに一定の時間がかかり、特に流行初期の医療提供体制に混乱が生じたことから、新しく制度として設けるものです。

 感染症の態様が明らかでない流行初期には、診療報酬の特例を設けるまでに一定の時間を要しますが、その間に行われる感染症医療には、本来、診療報酬で支えるべき部分が含まれています。

 また、流行初期に必要な医療提供体制を確保することは、感染症医療のみならず通常医療の確保にも直結するほか、社会経済活動の維持にもつながるものであり、被保険者、保険者共に広く受益するため、このような期間の措置について保険者が相応の負担をすることは必要な対応と考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 遠藤良太議員より、四問の御質問をいただきました。

 発熱患者を診る仕組みについてお尋ねがありました。

 新型コロナウイルス感染症については、オミクロン株であっても、致死率や重症化率がインフルエンザより高いと評価されており、感染力も高いことから、全国的かつ急速な蔓延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるため、新型インフルエンザ等感染症に位置づけております。

 新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザなどが同時流行した場合には、症状からは判別がつかないため、まずは新型コロナウイルス感染症を疑って、いわゆる発熱外来において対応いただくこととなります。

 この発熱外来の強化については、都道府県、日本医師会とも連携し、累次にわたる拡充の要請や必要な財政支援を行った上で、十月十七日には、この冬の新型コロナと季節性インフルエンザとの同時流行に備えて、都道府県等に対し、発熱外来の箇所数の増加に加え、地域の感染状況に応じた診療時間等の拡大、かかりつけ以外の患者への対応など、地域の実情に応じた取組を依頼しております。

 こうした取組に加え、地域の医師会の協力を得たセンター方式による臨時の発熱外来の整備や、発熱外来を補完するための電話診療、オンライン診療の体制の強化などの取組を進めることにより、外来医療体制の強化に万全を期してまいります。

 新型コロナのデータ収集等についてお尋ねがありました。

 新型コロナの致死率については、新型コロナによる死亡と新型コロナによる基礎疾患の悪化が引き金となった死亡を明確に区分することが難しい場合もあり、新型コロナが直接死因ではない死亡も含めて計算をしております。

 また、季節性インフルエンザについても、特に高齢者では、季節性インフルエンザ罹患に伴って基礎疾患が悪化し、続発性の細菌性肺炎によって亡くなる場合もあり、インフルエンザが直接死因ではない死亡も含めて致死率を計算しているところであります。

 感染症に罹患した後の重症化率や致死率の把握は感染症対策上重要であることから、今般の改正案においては、新型インフルエンザ等感染症等について退院時の届出を行うことができるようにする規定を設け、入院中に患者が重症化したのか、死亡したのかなどの予後に関するデータを収集する体制を構築することとしております。

 医師の応招義務についてお尋ねがありました。

 応招義務については、御指摘になった通知における基本的考え方でお示しをしたとおり、緊急対応の必要など個々の事情を総合的に勘案する必要があり、一概に判断するものではありません。

 新型コロナについては、未知の感染症として対応していた発生当初と比べるとその実態が判明してきたものの、依然として、感染力が強く、高齢者等のハイリスク者においては重症化する確率が高い状況にあります。

 新型コロナのこうした特性を踏まえ、医療機関、医師の専門性や診察能力、医療機関における施設整備の状況、他の医療機関等による医療提供の可能性を総合的に勘案しつつ、事実上診療が不可能と言える場合であれば、診療しないこともやむを得ないと考えております。

 その上で、発熱患者等が適切に医療を受けられるよう、現在までに診療・検査医療機関を約四・一万か所確保しており、今後もその充実強化を図ってまいります。

 新型コロナの感染法上の扱いについてお尋ねがありました。

 先月、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、感染症法上の扱い等について、全数報告の見直しや療養期間の短縮など、相当の緩和を行って、社会経済活動との両立を強化いたしました。その際に、専門家の意見等も踏まえ、新型コロナについて、新型インフルエンザ等感染症という分類は維持し、今後も、変異していくウイルスに応じて対策を柔軟に対応できることとしました。

 また、感染症法上の位置づけについては、仮に五類に引き下げた場合は、感染症法上の入院勧告、措置などが行えなくなることや特措法の適用がなくなること、第八波に向けて、病床、発熱外来の確保、ワクチン接種の促進、高齢者施設における療養体制の強化などの備えが必要であることなども踏まえる必要があります。

 引き続き、御指摘の点についても、専門家の御意見も聞きながら、エビデンスに基づき議論を進めてまいります。なお、感染症法上の位置づけについては、厚生科学審議会感染症部会で御議論をいただくこととなります。(拍手)

    〔池下卓君登壇〕

池下卓君 遠藤良太議員から、国民本位の新たな感染症対策樹立法案において、医療提供体制の構築のための措置を講じた医療機関への補填措置を講ずる上で、その費用を保険者等に負担させてはならないこととした趣旨についてお尋ねがありました。

 感染症の初動対応をした医療機関に対して財政支援を行うこと自体については、政府案と同様、我々も必要であると考えております。しかしながら、今般の政府案で設けようとしている流行初期医療確保措置のように、その費用を保険者に対して求めることは、医療保険制度の趣旨になじまないと言わざるを得ません。

 保険料は、診療行為の対価として診療報酬に充当すべきものです。今般の政府案の流行初期医療確保措置では、実際に診療行為が行われていなくても保険者がその費用を負担することとなり、その原則を逸脱することとなります。到底、保険料を負担する国民の皆様の理解や納得を得られるようなものではありません。

 感染症対策は国の責任において行われることが原則であり、その費用は、保険者に負担させるべきでなく、全額を公費負担により賄うことが当然であります。国民本位の新たな感染症対策樹立法案は、医療機関への減収補填措置について、保険者の負担を求めることがないようにしつつ、必要な法制上及び財政上の措置を講ずることとしております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 古屋範子さん。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 新型コロナウイルスを含め、感染症に強い国をつくることは政治の責任であります。公明党は、自宅療養者に欠かせないパルスオキシメーターの配備や、ワクチン確保、接種促進など、新型コロナ対策をリードしてきました。

 第七波では、感染力の非常に強いオミクロン株の影響で、新規感染者数が急速に拡大し、医療現場も逼迫しました。医療従事者の御尽力と国民の皆様の御協力により新規感染者は減少しておりますが、第八波の到来や、遠くない将来に新たな感染症が発生するとの懸念も示されております。

 感染症のパンデミックから国民の命と暮らしを守るため、これまでの知見や経験を生かしながら、感染症に備えた万全の体制構築が重要であります。

 今年の冬は、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行の懸念が指摘されています。

 新型コロナの患者が一日四十五万人、インフルの患者が一日三十万人規模で同時に流行し、ピーク時には一日七十五万人の患者が生じる可能性があると推計されています。

 公明党は、松野官房長官に、同時流行の可能性を踏まえ、緊急要請を行いました。

 この秋冬にも到来する可能性がある第八波対策、特にコロナとインフルの同時流行について、国民の命を守るために万全の体制で臨むべきと考えます。

 新型コロナに関しては、オミクロン株対応のワクチン接種が始まりました。十月二十日、厚生科学審議会で、これまで五か月以上とされていた接種間隔期間が三か月以上に短縮されました。

 ワクチンの有効性や安全性に関する情報とともに、接種間隔期間の短縮についても、国民への周知、広報を徹底し、早期の接種を呼びかけるとともに、自治体への丁寧な説明と支援に全力を挙げるべきです。また、コロナとインフル双方のワクチン接種も促進すべきです。

 総理の答弁を求めます。

 公明党は、コロナ感染拡大の始まった二年前の党大会重要政策において、既に、的確かつ迅速に対応する日本版CDCの創設を明記し、国の司令塔機能の強化に向け提言してきました。

 政府がまとめた次の感染症危機に備えるための対応の具体策において、内閣感染症危機管理統括庁の設置等が決定されております。感染拡大防止と社会経済活動を両立するには、政府が一丸となって対策を実施する必要があります。速やかに実効性のある組織が設置されるべきです。

 感染症対策の司令塔設置に対する岸田総理の決意を伺います。

 次に、感染症法等改正案について伺います。

 本法案の提出は、昨年十一月、岸田総理の、感染症危機管理の抜本的強化策を取りまとめるとの発言から始まりました。

 そして、本年六月、有識者会議の報告書で、感染拡大防止と社会経済活動の両立に向けた課題と取り組むべき方向性等が示され、本年九月の、次の感染症危機に備えるための対応の具体策の決定等があったと承知しております。

 厚生労働大臣に、これらの経緯も含めて、法案提出に至る経緯を伺います。

 本法案は、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれのある感染症の発生及び蔓延に備えるため、国、都道府県及び関係機関の連携を強化することで、病床、外来医療、医療人材の確保の強化等の措置を講ずるものと承知しております。

 法案の趣旨について、厚生労働大臣に伺います。

 本法案では、平時からの計画的な保健医療提供体制整備として、国の基本指針、都道府県の予防計画、都道府県と医療機関等との協定等を整備することになっております。平時からの備えは大変意義のあることと考えます。

 一方で、新たな感染症への対応は、起きてみないと分からない点もあります。これらの内容が厳格過ぎれば臨機応変な対応が難しく、その内容が曖昧であれば実効性を欠くことになりかねません。国、都道府県、医療機関等と緊密に連携しながら、基本指針、予防計画、協定のいずれも、具体性と柔軟性のバランスに十分配慮した運用をすべきと考えます。

 厚生労働大臣の見解を伺います。

 都道府県等と医療機関等の協定締結については、正当な理由なく協定を実行しない場合の勧告や指示、公表の措置が創設されます。

 一方、協定を締結した医療機関は、一般の医療を行っており、やむを得ず協定を実施できない可能性もあります。正当な理由の内容が不明確であれば、どのような協定不履行が許されないのか分からず、医療機関が協定締結に二の足を踏むことになりかねません。

 正当な理由とはどのようなものなのか、基礎となる考え方や想定される具体例について、厚生労働大臣の見解を伺います。

 本法案では、健康観察の医療機関等への委託の法定化、自宅療養者生活支援についての都道府県と市町村の情報共有の仕組みが整備されております。

 ただ、健康観察や感染症医療に全ての医療機関等が参加するとは限りません。高齢者等にとっては、通い慣れているかかりつけ医の対応が何よりも安心です。地域のかかりつけ医が健康観察や感染症医療に積極的に対応できるような取組が必要と考えます。また、かかりつけ医と健康観察等を実施する医療機関等の連携円滑化の取組も重要です。

 地域のかかりつけ医と感染症医療等に対応する医療機関との連携確保について、厚生労働大臣に伺います。

 本法案では、予防接種の対象者確認、記録作成、保存等が整備されます。

 接種券、費用請求の電子化など予防接種事務全体のデジタル化は、国民の利便性向上、また、地方公共団体、医療機関の事務負担軽減のために強力に推進すべきです。また、発生届の電子化、入院患者の状況報告届出義務化、感染症サーベイランスシステム等のビッグデータ化など、感染症対策関係全体のデジタル化、情報基盤整備も実施されます。

 デジタル化や情報基盤の強化による国民の利便性向上について、本法案成立後どのように取り組まれるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 本法案では、マスク、非滅菌手袋等の個人防護具や酸素濃縮器等の医療機器を感染症対策物資として平時における物資の備蓄を可能とし、緊急時における感染症対策物資の確保についての法的枠組みが整備されることとなっております。

 緊急時の物資不足は国民に大きな不安を与えるため、需要にしっかりと対応する必要があります。政府の取組を伺います。

 感染症に強い国を実現すべく、公明党は、これからも、国民の命と健康を守るため、全力で取り組んでいく決意を申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 古屋範子議員の御質問にお答えいたします。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行等についてお尋ねがありました。

 新型コロナとインフルエンザの同時流行への備えについては、今月十三日、発熱外来や電話診療、オンライン診療体制の強化等による保健医療体制の強化、重点化策を取りまとめたところであり、都道府県と協力し、万全を期してまいります。

 オミクロン株対応ワクチンについては、オミクロン株の種類にかかわらず、オミクロン株成分を含むことで、従来ワクチンを上回る重症化予防効果等や、今後の変異株に対するより高い効果が期待されております。

 また、接種間隔を三か月以上に短縮しており、様々な媒体を用いて情報発信し、希望する全ての対象者が年内に接種を受けていただけるよう、自治体を支援してまいります。

 さらに、この冬のインフルエンザワクチンの接種については、重症化予防効果を目的として六十五歳以上の方等に早期接種を呼びかけており、新型コロナワクチンと併せて、円滑な接種に取り組んでまいります。

 感染症対策の司令塔についてお尋ねがありました。

 政府においては、次の感染症危機に備えて司令塔機能を強化するため、司令塔機能を担う組織として、内閣総理大臣を直接助け、厚生労働省を始めとする各省庁の対応を強力に統括する内閣感染症危機管理統括庁を設置するとともに、厚生労働省における感染症対応能力を強化するため、科学的知見の提供を担う新たな専門家組織として、いわゆる日本版CDCを設置する等の組織の見直しを行うこととしております。

 これらの組織が一体的に連携し、内閣総理大臣のリーダーシップの下、総合的な視点で感染症対策を講じることが重要であると考えており、次期通常国会での法案提出に向け、準備を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 古屋範子議員より、七問の御質問を頂戴いたしました。

 法案の提出に至る経緯についてお尋ねがありました。

 新型コロナ対応については、これまで、昨年十一月の全体像による取組や、その後のオミクロン株の特性を踏まえた保健医療体制の確保に取り組んできたところであります。

 そして、本年六月には、有識者会議において、次の感染症への備えとして、政府の対応に対する客観的な評価や中長期的視点からの課題の整理が行われ、感染拡大に病床確保が追いつかない事態が生じた、陽性判明後、治療開始が遅れ重症化する事例や在宅で亡くなる事例が生じた、医療用マスクや抗原定性検査キットの需給の逼迫により医療機関や国民が入手しにくい状況が生じたなどの課題が指摘をされました。

 このため、九月には、次の感染症危機に備えた中長期的観点から必要な対策を講ずるため、新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の具体策を取りまとめました。この対応の具体策を踏まえ、さらに関係審議会において検討いただいた上で、今般の改正案を提出したところであります。

 法案の趣旨についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナウイルス感染症対応においては、医療機関の迅速な人員確保、入院調整、病床確保の困難さ、保健所業務の逼迫、医療物資の不足などの課題があり、平時からの感染症危機管理の重要性が浮き彫りとなりました。

 これを踏まえ、次の感染症危機から国民の生命及び健康を守るために、平時からの予防計画に沿った医療機関との協定の締結や、保健所機能や検査体制の強化、機動的なワクチン接種の実施等について政府としてその枠組みを法定化し、流行の初期段階から速やかに立ち上がり機能する保健医療提供体制の構築を図ることを目的として、感染症法等の改正を行うこととしたものであります。

 基本指針等の運用についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、国が定める基本指針や都道府県等が定める予防計画の記載事項を充実させるとともに、都道府県が定める予防計画には、協定に基づく病床確保数等の具体的な数値目標を定めることで、実際の感染症発生、蔓延時における実効性を確保することとしております。

 国において基本指針を策定するに当たっては、都道府県や医療関係者等の御意見をしっかりと踏まえつつ、今般の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の特性に合わせて柔軟に対応できるよう、厚生科学審議会感染症部会で御議論いただくこととしております。

 また、都道府県が予防計画を策定する際は、自治体、感染症指定医療機関、学識経験者の団体等で構成する都道府県連携協議会で協議することとしており、平時からあらかじめ意見交換を行うことで関係機関の連携が強化され、地域の実情に応じ、また、感染症の性質に応じた柔軟な対策が可能となるようにしてまいります。

 協定を履行しない正当な理由についてお尋ねがありました。

 協定を締結した医療機関が感染症発生、蔓延時に協定に沿った対応をしない場合の正当な理由については、感染状況や医療機関の実情に即した判断が必要でありますが、例えば、病院内の感染拡大等により医療機関内の人員が縮小し、協定の内容を履行できない場合などが該当するものと考えております。

 今般の改正案の施行に当たっては、こうした考え方を医療機関等に十分に周知するなど、協定の締結が円滑に進むよう、丁寧に対応してまいります。

 かかりつけ医と感染症対応医療機関の連携確保についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、各医療機関の機能や役割に応じた協定を締結し、感染症蔓延時に発熱外来や自宅療養者に対する医療を担う機関をあらかじめ適切に確保し、明確化することとしています。

 かかりつけ医によっては、こうした機能を有する場合もある一方で、こうした機能を有しない場合もあり得るところであります。

 そうした場合に当たって、感染症医療を担う医療機関と日頃から患者のことをよく知るかかりつけ医の連携の確保は重要な課題であります。連携確保の在り方について、感染が拡大し医療が逼迫している中でどのような対応が可能であるかという観点も含めて、関係者の意見を聞きながら検討してまいりたいと考えております。

 感染症対策の情報基盤強化についてお尋ねがありました。

 今般の改正案では、対象者の確認等の予防接種事務のデジタル化に向けた規定を整備し、これまで紙で行われていた事務を効率化することで、自治体や医療機関等の負担軽減を図ることとしております。

 また、医療機関による発生届の電磁的方法による入力等を強力に推進するとともに、電磁的に収集した疫学情報のレセプト情報、ワクチン接種情報等との連携分析等を可能とし、保健所、医療機関等の負担軽減や感染症の重症度等の迅速な把握、分析、感染症に関する研究等に利活用できることとしております。

 改正案が成立した暁には、自治体や医療機関等の意見を丁寧に聞きながら、円滑な施行に向けた準備を進め、情報基盤の強化を推進してまいります。

 感染症対策物資等の確保についてお尋ねがありました。

 新型コロナを始め感染症有事への対応において、医療現場に必要な物資が円滑に行き渡るように取り組んでいく必要があります。そのためには、事業者に対して生産、輸入の促進や出荷調整について要請を行い、感染症対策物資等を確保する必要があります。

 今般の改正案では、こういった要請を法律上に位置づけ、また、これに伴う必要な支援を行うことにより、その実効性を確保することとしており、引き続き、感染症有事における物資の確保にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました、政府提出、感染症法等の改正法案について質問をいたします。(拍手)

 まず、台風十五号豪雨災害で被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 そして、私の地元静岡県、とりわけ静岡市清水区においては、全国から温かい御支援をいただきました。感謝申し上げます。

 先日、総理にも要請をさせていただいたところですが、一日も早い復旧のために力を合わせていきたいと思います。

 ワクチンについて伺います。

 新型コロナウイルス新規感染者数は約二か月ぶりに増加に転じ、医療現場や専門家からは、流行第八波の到来を懸念する声が上がっています。

 政府はワクチン接種を訴えていますが、オミクロン株派生型BA・5に対応したワクチンへの切替え時期をめぐり、自治体で対応に差が生じています。九月下旬から当初の主流型BA・1対応のワクチンに切り替えたばかりで、その在庫がまだ残ってしまっているからです。

 さらに、海外で始まっている新しい流行は、BQ・1やBQ・1・1、BF・7に置き換わり、BQ・1・1が主流になるのではないかと言われています。イタチごっこに早くも負けています。

 そもそも、国産ワクチン、国産治療薬を作り、安定した、そして安心した医療体制を築くのではなかったのでしょうか。オミクロン株対応ワクチン接種間隔も三か月になり、ワクチン接種はこのままでいいのか、いつまで海外産のワクチンを打ち続けるのか、ワクチンに対して国民が様々な思いを持っています。第八波についての認識、また、今後のワクチン接種に対する総理の見解を伺います。

 あわせて、生後六か月から四歳の乳幼児へのワクチン接種が昨日二十四日から可能となりました。子供へのワクチン接種は、親御さんの心配は当然のこと、専門家からも懸念の声が上がっています。子供へのワクチン接種に関しての総理の見解を伺います。

 また、ワクチン後遺症について、厚労省は実態調査を始めるとのことです。これまでは、コロナ後遺症はあってもワクチン後遺症はないと頭から決めつけられていました。大きな転換です。実際に後遺症で苦しむ多くの人からの声も届いています。ワクチン後遺症についての総理の見解を伺います。

 感染症法について伺います。

 新型コロナ対応においては、身近な医療機関にかかることができない、また、多くの患者が自宅、宿泊療養を余儀なくされる事態となりました。

 今回の改正法案では、各医療機関と協定を締結すること、地域において医療機関の役割分担を明確化することが挙げられましたが、公立・公的医療機関等には医療提供義務が課された一方、民間医療機関は協定にのっとった対応にとどまりました。この両者の差はどのようなものなのでしょうか。また、どのような改善がこれによってなされるのか、総理に伺います。

 また、発熱等の症状が生じた場合、まずかかりつけ医等の身近な医療機関に電話相談することが前提とされてきました。国民が必要とする場面で確実に外来医療や訪問診療等を受診できるようにするためには、医療の機能、役割分担と併せて、かかりつけ医の制度整備をセットで行うべきだと考えます。総理の見解を伺います。

 「地方自治体の保健所や地方衛生研究所を含めた感染症対策に関わる危機管理を専門に担う組織や人員体制の大幅な強化、人材の育成を進めるとともに、関係機関のあり方や相互の役割分担、関係の明確化等が必要である。」この文章は、今回の法改正の内容ではありません。平成二十二年の新型インフルエンザ対策総括会議報告書の一文です。十三年前に、今求められていることが提言をされています。

 今回の改正法案では、一部体制強化、機能強化が掲げられていますが、本来は、保健所、公衆衛生行政の抜本的な強化が必要ではないのでしょうか。現場は何とかしのいでいるのが現状です。また先延ばしをすることは許されません。感染症拡大のたびに逼迫した保健所業務がどう改善され、保健所がより一層の感染症対策の拠点となり得るのか。保健所に対する総理の考えと、今回の法改正で十三年前の提言が実現できるのか、見解を伺います。

 流行初期医療確保措置について伺います。

 国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある新たな感染症の発生時、蔓延防止時に対応する医療機関の減収補填の仕組みが創設されます。感染症流行初期の医療機関の事業継続を支えるためにその必要性は理解しますが、財源に関しては、公費だけではなく保険料財源を充てることについては反対です。診療実績がなくても支払うことになる負担であることや保険者機能を踏まえると、基本的に全額公費によって賄われるべきであると考えますが、総理の見解を伺います。

 新型コロナウイルス感染症は、感染症法上は最も多くの措置を講じることができる疾病とされ、当初の正体不明の状態の位置づけのままとなっています。一部緩和はされてきているとはいえ、このことが保健所や一部の医療機関への過度な負担につながっています。

 これまでの変異の経緯を踏まえて、必要のない措置を適用から外し、段階的に一般的な感染症に近づけていく必要があると考えます。現在の二類相当の位置づけをどう考えているのか。また、既存の類型に当てはまらないのならば、新たな感染症類型をつくることも検討すべきです。感染症類型の見直しについて、総理の見解を伺います。

 さらに、ワクチンや治療薬が十分に国民に行き渡り、良好な環境が整ったならば、段階的にワクチン接種や診療等の窓口負担を求めていくことも将来の検討課題であると思います。出口戦略をどのように考え、進めていこうとしているのか、総理の見解を伺い、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中健議員にお答えいたします。

 第八波についての認識や今後のワクチン接種等についてお尋ねがありました。

 本年十月から来年三月の半年間にコロナの流行拡大等が発生する可能性は極めて高いとの指摘が専門家から示されており、重症化リスクの高い高齢者などはもとより、若い方にも、是非、年内の接種の御検討をお願いしたいと思っております。

 また、国産ワクチンや治療薬については、国内での開発、生産体制の確立が極めて重要です。これまで、新型コロナのワクチンについて研究開発等に関する支援を行っているほか、有力な治療薬の我が国での実用化に向け、重点的に支援をしています。

 乳幼児への新型コロナワクチンの接種については、一定の発症予防効果や安全性が認められており、希望する方に安心して接種を受けていただけるよう、必要な情報を発信してまいります。

 ワクチン後遺症に関する調査については、今後、診療の蓄積による新たな知見も収集し、必要な研究を行ってまいります。

 医療機関の役割分担についてお尋ねがありました。

 公立・公的医療機関等については、医療法における位置づけ等を踏まえ、本法案においては、地域における医療の確保に関し、通常の民間医療機関とは異なる取扱いとしています。

 その上で、民間医療機関を含め、各医療機関の機能や役割に応じた協定を締結し、感染症蔓延時に入院や外来機能を担う医療機関をあらかじめ適切に確保、公表し、国民が必要とする場面で確実に必要な医療を受診できるような体制を構築していきます。

 また、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行います。

 保健所の体制強化についてお尋ねがありました。

 保健所が感染症対策の拠点として機能するよう、新型インフルエンザに対応した際の課題を踏まえ、対応マニュアルの策定等を進めてきましたが、新型コロナが急速かつ広域にわたって感染拡大する中、保健所業務の逼迫が発生をしました。

 こうした経験を踏まえて、今般の改正案では、保健所設置自治体に、感染症有事に備えた人員確保や育成など、体制整備を含む予防計画の策定を義務づけるとともに、各都道府県に、関係者が感染拡大時の連携の在り方等を議論するための協議会を設置いたします。

 こうした取組により、感染症危機時でも機能する強化された保健所体制を平時から計画的に構築してまいります。

 流行初期医療確保措置についてお尋ねがありました。

 流行初期医療確保措置は、今回の新型コロナ対応において、診療報酬の特例措置や補助金等の財政支援が整備されるまでに一定の時間がかかり、特に流行初期の医療提供体制に混乱が生じたことから、新しく制度として設けるものです。

 感染症の態様が明らかでない流行初期には、診療報酬の特例を設けるまでに一定の時間を要しますが、その間に行われる感染症医療には、本来、診療報酬で支えるべき部分が含まれています。

 また、流行初期に必要な医療提供体制を確保することは、感染症医療のみならず通常医療の確保にも直結するほか、社会経済活動の維持にもつながるものであり、被保険者、保険者共に広く受益することから、この期間の措置について保険者が相応の負担をすることは必要な対応であると考えております。

 新型コロナの感染症法上の位置づけ等についてお尋ねがありました。

 先月、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、感染症法上の取扱い等について、全数報告の見直しや療養期間の短縮など、相当の緩和を行って、社会経済活動との両立を強化したところです。

 新型コロナの現在の位置づけについては、感染症法上、新型インフルエンザ等感染症という分類の下、変異するウイルスの特性に応じて柔軟に対応できるようにしています。

 感染症法上の扱いの更なる見直しについては、第八波に向けた、病床、発熱外来の確保などの備えが必要であることも踏まえる必要があると考えております。

 また、ウィズコロナに向けた医療費等の公費支援の在り方については、自宅療養者の外出自粛の在り方や治療薬の普及などの状況を踏まえる必要があります。これらの論点については、専門家の意見も聞きながら、引き続き、内外の科学的知見に基づき議論を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党を代表して、感染症法等改正案について質問します。(拍手)

 冒頭、統一協会問題について二点聞きます。

 総理、統一協会関連団体と推薦確認書を結んだ自民党の国会議員は何人いたのですか。地方議員も含め、統一協会による選挙支援の実態を党の責任で調査、公表すべきではありませんか。

 総理は、予算委員会での私たちとの議論を踏まえ、宗教法人の解散命令の要件について、法解釈を改め、民法の不法行為責任なども該当すると述べました。重要です。

 総理は、組織性、悪質性、継続性が明らかとなるか、事実を積み上げることが必要だと述べていますが、既に、統一協会の不法行為責任、使用者責任を認めた判決は多数、さらに、刑事事件で組織性、継続性を認めた判決もあります。組織性、悪質性、継続性が明らかな事実は現に積み上がっているのではありませんか。

 法務省、検察、霊感商法対策弁連の皆さんの力も結集し、早急にこれまでの判決、資料を分析し、組織性、悪質性、継続性を確認すべきではありませんか。速やかな解散命令請求を求めるものであります。

 次に、法案について質問いたします。

 総理は、この間の新型コロナ対応から何を学んだのでしょうか。

 多くの方が医療を受けられないまま自宅や介護施設で亡くなりました。このパンデミックが明らかにしたことは、緊急時の対応には平時の医療提供体制に余裕が必要だということです。医療費抑制政策の下で、パンデミック以前から医療機関はマンパワーに余裕がありません。医療費抑制政策を改め、平時から余力のある医療提供体制を再構築する必要があるのではありませんか。

 ところが、政府は、地域医療構想で、マンパワーの手厚い急性期病床二十万床の削減を進めようとしています。消費税を使って、この二年で五千六百十六の病床が削減され、急性期病床は四千五百四十九床削減されました。急性期病床の削減を進めれば、緊急時の人材確保が更に困難になるのではありませんか。

 本法案では公的病院に感染症対応の義務を課しますが、ならば、再編統合を求める公立・公的病院四百四十三のリストは撤回すべきではありませんか。地域医療構想の根本的な見直しを求めます。

 第二に、政府の新型コロナ対応は、専門家の意見を大事な場面でしばしば聞かず、重大な結果を招きました。

 尾身会長は、文芸春秋で、専門家の意見を聞かずに政府が決め、発表してしまうことがあったと述べ、安倍元首相の一斉休校とアベノマスク配付、菅前首相のGoToキャンペーン停止の遅れとオリンピック、岸田総理の濃厚接触者の待機期間短縮、検査キット確保の遅れなどを挙げ、批判をしております。総理は、尾身会長の指摘についてどう受け止めていますか。反省と検証、総括が必要なのではありませんか。

 尾身会長は、新型コロナ対策の最大の教訓は、最終判断は総理がするものですが、専門家の意見を聞いた上で判断すること、判断したなら、なぜかを総理が自分で国民に説明することの大切さだと指摘しています。総理に同じ認識はありますか。姿勢を改めるべきではありませんか。

 本法案の問題点について聞きます。

 本法案は、都道府県が数値目標を持って予防計画を立て、都道府県と医療機関が協定を結び、病床や発熱外来などの確保を図ろうとするものですが、協定等の履行確保措置として、協定履行状況を公表し、指示に従わない場合には、病院名の公表、特定機能病院、地域医療支援病院については指定取消しなど、重いペナルティーが設けられていることは問題です。

 予防計画の数値目標達成のために実情に合わない病床割当て等が協定で事実上強制されることや、事実上強制された協定が履行できないためにペナルティーの対象になることはありませんか。医療ニーズを把握しているのは現場の医療機関であり、協定が守れないケースに正当性があるかないか、大臣や知事が判断するなどできないのではありませんか。

 医療機関に必要なのは、ペナルティーではなくリスペクトです。ペナルティーまで設けて特定機能病院、地域医療支援病院の指定取消しをやることは、地域医療を崩壊させるものであり、やめるべきであります。

 本法案では、流行初期医療確保措置の費用負担の半分を保険者に求めるものになっています。感染症対策の費用は公費負担という原則を掘り崩すものであり、認めるわけにはまいりません。

 地域の通常医療を維持するための対策、支援も必要です。保健所体制も、保健所数や職員数を増やすことが必要です。なぜ法案にないのでしょうか。

 最後に、第八波の対策についてもお伺いをいたします。

 治療薬には投薬のタイミングがあり、新型コロナもインフルエンザも、早期検査、早期治療が重要であります。

 新型コロナ、インフルエンザ以外にも発熱する病気はあります。財政的な支援で更に発熱外来などを拡充して、希望する人には、最大限、対面受診が可能な体制をつくる必要があるのではありませんか。

 また、コロナ抗原検査キットの入手を個人責任にするのではなく、あらかじめ政府の責任で配付すべきではありませんか。

 さらに、エアロゾル感染対策が重要であります。換気設備、CO2モニター始め、一層の支援とイニシアチブの発揮を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員にお答えいたします。

 旧統一教会との関係の党の調査や宗教法人法に基づく解散命令の請求についてお尋ねがありました。

 内閣総理大臣として答弁しておりますので、自民党の対応について申し上げることは控えるべきではありますが、一般論として、選挙に当たり、各候補者が政策分野を含め様々な団体とやり取りを行っていると考えております。その上で、推薦確認書に署名したことが選挙での支援につながっているかどうかがポイントであると考えております。この点については、党として所属国会議員による点検結果を取りまとめ、既に公表しているところです。推薦確認書に署名したと名のり出た議員がいることは承知しており、党の点検結果との関係については議員本人から説明すべきものであると考えております。

 宗教法人法に基づく解散命令の請求については、現在、旧統一教会に関して把握している事情からは、過去に解散を命じた事例と比較して、現状は解散事由に該当すると明確には認められないものと考えております。このため、まずは、文部科学省において、報告徴収、質問権の行使等を通じて、行為の組織性、悪質性、継続性等について、本件をよく知る弁護士による団体等から情報提供など必要な協力を得つつ、具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにしてまいります。

 新型コロナ対応と地域医療構想についてお尋ねがありました。

 今般の新型コロナのような新興感染症等の感染拡大時には、機動的に対応できるよう、地域の医療機関における役割分担、連携の強化、そして弾力的な対応を可能とする医療従事者等の配置などが必要であると認識をしております。

 このため、今般の改正案では、都道府県知事が平時に各医療機関と協議を行い、感染症発生、蔓延時における病床確保や人材派遣等について協定を結ぶ仕組みを法制化するなど、流行の初期段階から機能する医療提供体制を構築することとしております。

 地域医療構想は、中長期的な人口構造の変化や地域の医療ニーズに応じて、病床機能の分化、連携により質の高い効率的な医療提供体制の確保を目指すものであり、新型コロナ対応を通じて明らかになった、地域の医療機関の役割分担等の課題にも対応するものです。

 公立・公的病院の在り方についても、病床の削減や統廃合ありきではなく、地域の実情を十分に踏まえて、自治体等と連携して地域医療構想を着実に進めてまいります。

 分科会長の指摘についてお尋ねがありました。

 新型コロナウイルスはその性状を急激に変化させることから、それぞれの特徴に合わせた効果的な対策を講じるためには、幅広い専門家の方々の科学的知見を踏まえた判断が極めて重要です。

 このため、これまでも専門家の方々とは様々な局面においてコミュニケーションを取り、知見や意見を伺った上で、政府として必要な判断を行い、責任を持って対策を講ずるとともに、国民の皆様に対して説明をしてまいりました。

 今後とも、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行を進める中で、引き続き専門家の方々とコミュニケーションを取り、内外の科学的知見に基づきながら、平時に近い社会経済活動が可能となるよう取り組んでまいります。

 都道府県と医療機関の協定の履行確保措置等についてお尋ねがありました。

 今回の都道府県と医療機関の協定の仕組みについては、地域における医療機関の機能や役割を適切に踏まえた協定の締結を進めてまいります。その上で、協定に沿った対応をしない場合の正当な理由の有無については、締結した内容を踏まえつつ、締結の際に想定していたウイルスの性状と実際の性状の相違など、個別具体の状況に応じて適切に判断をしてまいります。

 特定機能病院や地域医療支援病院については、承認取消しの規定を設けていますが、これは、正当な理由なく協定に沿った対応をせず、さらに都道府県知事からの勧告、指示にも応じない場合に行使されるものであり、地域医療を崩壊させるようなものではないと考えております。

 そして、感染症の態様が明らかでない流行初期には、診療報酬の特例を設けるまでに一定の時間を要しますが、その間に行われる感染症医療には、本来、診療報酬で支えるべき部分が含まれています。

 また、流行初期に必要な医療提供体制を確保することは、感染症医療のみならず通常医療の確保にも直結するほか、社会経済活動の維持にもつながるものであり、被保険者、保険者共に広く受益するため、このような期間の措置について保険者が相応の負担をすることは必要な対応であると考えております。

 保健所体制強化については、今般の改正案では、保健所設置自治体に、感染症有事に備えた人員確保や育成など、体制整備を含む予防計画の策定を義務づけるとともに、各都道府県に、関係者が感染拡大時の連携の在り方等を議論するための協議会を設置いたします。

 こうした取組により、感染症危機時でも機能する強化された保健所体制を平時から計画的に構築してまいります。

 そして、発熱外来の拡充についてお尋ねがありました。

 この冬の新型コロナとインフルエンザとの同時流行に備え、これまでも発熱外来の対応能力の強化を図っており、必要な財政支援等により発熱外来の拡充を行うとともに、地域の感染状況に応じて診療時間等を拡大すること等を行っています。

 検査については、政府として検査キットの確保を行うとともに、十分な量の検査キットのインターネット等での販売を可能とし、国民の皆様があらかじめ購入し、自宅で速やかに検査できるようにしております。

 エアロゾル感染対策のための換気設備等については、医療機関における簡易陰圧装置等の設置に対して緊急包括支援交付金による支援等を行っており、引き続き、科学的知見を積み上げ、適切な対策を講じてまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   岸田 文雄君

       総務大臣     寺田  稔君

       厚生労働大臣   加藤 勝信君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  木原 誠二君

       厚生労働副大臣  伊佐 進一君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.