衆議院

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第5号 令和4年11月1日(火曜日)

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令和四年十一月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  令和四年十一月一日

    午後一時開議

 第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 第四 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官訴追委員辞職の件

 裁判官訴追委員の選挙

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 カジノ管理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 電気通信紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 日程第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員辞職の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 裁判官訴追委員後藤茂之君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申出があります。右申出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官訴追委員の選挙

議長(細田博之君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。

佐々木紀君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官訴追委員に渡辺博道君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 カジノ管理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 電気通信紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 内閣から、

 食品安全委員会委員

 カジノ管理委員会委員

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員

 電気通信紛争処理委員会委員

 電波監理審議会委員

 日本放送協会経営委員会委員

 中央更生保護審査会委員

 公安審査委員会委員

 運輸審議会委員

 運輸安全委員会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。

 内閣からの申出中、

 まず、

 食品安全委員会委員に山本茂貴君を、

 日本放送協会経営委員会委員に礒山誠二君を、

 公安審査委員会委員に遠藤みどり君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 カジノ管理委員会委員に石川恵子君及び北村博文君を、

 日本放送協会経営委員会委員に水野節子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 証券取引等監視委員会委員長に中原亮一君を、

 同委員に高田さゆり君及び橋本尚君を、

 電気通信紛争処理委員会委員に田村幸一君、前原賀代君、中條祐介君、小塚荘一郎君及び三尾美枝子君を、

 中央更生保護審査会委員に伊藤冨士江君を、

 運輸審議会委員に堀川義弘君及び大石美奈子君を、

 運輸安全委員会委員に丸井祐一君、石田弘明君、奥村文直君、鈴木美緒君及び新妻実保子君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に星景子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 電波監理審議会委員に大久保哲夫君を、

 公安審査委員会委員に外井浩志君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本放送協会経営委員会委員に相原香織君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長鬼木誠君。

    ―――――――――――――

 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鬼木誠君登壇〕

鬼木誠君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、一般職の国家公務員の例に準じて防衛省職員の俸給月額等を改定するものであります。

 本案は、去る十月二十六日本委員会に付託され、翌二十七日浜田防衛大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十八日、質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

議長(細田博之君) 日程第二、日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長黄川田仁志君。

    ―――――――――――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔黄川田仁志君登壇〕

黄川田仁志君 ただいま議題となりました日米貿易協定改正議定書につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本議定書は、本年六月二日にワシントンにおいて署名されたもので、現行協定の附属書1に定める米国産牛肉についての農産品セーフガード措置を適用する条件の修正等を行うものであります。

 本件は、去る十月二十六日外務委員会に付託され、同日林外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、二十八日に質疑を行い、討論の後、採決を行いました結果、本件は多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 日程第四 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案、日程第四、最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員長平口洋君。

    ―――――――――――――

 地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案及び同報告書

 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔平口洋君登壇〕

平口洋君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律案は、全国多数の地方公共団体の議会の議員又は長の任期が令和五年三月から五月中に満了することとなる実情に鑑み、国民の地方選挙に対する関心を高めるとともに、これらの選挙の円滑かつ効率的な執行を図るため、選挙の期日を統一するものであります。

 次に、最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案は、令和四年五月二十五日の最高裁判所大法廷における違憲判決を受け、在外国民審査制度を創設し、技術的に対応が可能で、審査人の意思表示が容易な分離記号式による投票を可能とする等の措置を講じるものであります。

 両案は、去る十月二十五日に本委員会に付託され、翌二十六日に寺田総務大臣から趣旨の説明を聴取し、昨三十一日に質疑を行い、順次採決を行った結果、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、民法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣葉梨康弘君。

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、無戸籍者の問題を解消し、児童虐待を防止するなどの観点から、民法等の一部を改正しようとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、民法の一部を改正して、嫡出推定規定を見直し、母の婚姻の解消等の日から三百日以内であっても、母の再婚後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定することとし、これに伴い不要となる女性の再婚禁止期間に関する規定を削除するとともに、嫡出否認をすることができる者の範囲及び嫡出否認の訴えの出訴期間を見直し、また、事実に反する認知についてその効力を争うことができる期間を設けるなどの措置を講じ、さらに、親権者の懲戒権に関する規定を削除し、子の監護及び教育において子の人格を尊重することや体罰をしてはならないこと等の規定を新設することとしております。

 第二に、国籍法の一部を改正して、事実に反する認知の効力を争えなくなった場合でも、事実に反する認知によっては日本国籍を取得することができないことを明らかにする規定を設けることとしております。

 第三に、人事訴訟法及び家事事件手続法の一部を改正して、嫡出否認の判決又は審判が確定した場合に、その内容をこの判決等により嫡出推定を受けることになる母の前夫に通知すること等の規定を設けることとしております。

 第四に、生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律の一部を改正して、嫡出否認をすることができる者の範囲の見直しに係る民法の一部改正に伴い、第三者の精子を用いた生殖補助医療により出生した子について、妻及び子の嫡出否認権を制限する規定を設けることとしております。

 第五に、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正して、親権者や児童相談所長等が児童に対して行う監護及び教育等に関する必要な措置について、子の監護及び教育等に係る民法の一部改正と同様の見直しを行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 民法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。米山隆一君。

    〔米山隆一君登壇〕

米山隆一君 ただいま葉梨法務大臣より趣旨説明がありました民法等の一部を改正する法律案について、立憲民主党・無所属会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず、葉梨法務大臣におかれましては、先般の法務委員会において、御自身の後援会幹部が葉梨後援会ゴルフ大会、主催葉梨康弘後援会なるビラを作って後援会会員に参加者を募って開かれたゴルフ大会において、会費二千円からは到底考えられない高額賞品が提供されていたことが公職選挙法第百九十九条の五に、この会の収支が後援会の政治資金収支報告書に記載されていなかったことが政治資金規正法第二十五条に反するのではないかとの私の質問に対して、後援会員がアドホックに集まって執り行った会であるから問題ない、自民党の顧問弁護士も確認しているとお答えになりました。

 これは法務大臣として非常に大きな御発言であり、本当にそうであるなら、葉梨法務大臣が所信演説でおっしゃられた法治主義に鑑み、この議場にいる全議員、日本中の全地方議員が、同様の手法を用いることによって、公職選挙法第百九十九条の五、政治資金規正法第二十五条の規律を免れることになります。

 私は、これは、法務大臣自らが公職選挙法第百九十九条の五及び政治資金規正法第二十五条を潜脱する、脱法する手段を示したものであり、極めて問題が多く、葉梨大臣の法務大臣としての資質に極めて強い疑問を呈せざるを得ません。

 今後、一層の事案の究明が必要であることをまず申し上げさせていただきます。

 さて、今般の改正は、近代戸籍制度が導入された一八七二年以降、戦後の改正でもそのまま維持されてきた民法第七百三十三条の、女性のみに課せられた再婚禁止規定を削除するとともに、民法七百七十二条を始めとする嫡出推定規定について改め、民法第八百二十二条の懲戒権を削除するものであり、改正に長い期間を要した事情はさておくとして、まずは、大筋において、民法典における家族法の根幹部分を時代に合わせたものと評価いたします。

 婚姻、出産、育児は、それをするしないのいずれであっても、個人の人生において非常に大きな事柄です。私の人生も結婚を契機に大きく変わりました。そして、これらの事柄は、その個人の人生を集めた社会の在り方をも規律する極めて重要な問題であるとともに、現代においては、個人の生活の在り方、社会生活のありようのみならず、科学の進歩もまたこの問題に大きな影響を与えています。

 特に、DNA鑑定技術の進歩の影響は大きく、今までは、父の確定は、もちろん、様々な状況からほぼ確定する場合がほとんどであったとはいえ、最終的には神のみぞ知るものでした。そのとき法律は実社会において父を確定する最終的なよりどころであり、どのようなものであれ、父を確定することそのものに意義があったと言えます。

 ところが、DNA鑑定によって、個人の生活も社会状況も法律も全て捨象して、純粋に科学的にほぼ一〇〇%の確率で父を確定できるようになりました。それは、もはや法律は、父を確定するというただそれだけの役割ではその意義を保てず、婚姻、出産、育児というものをこの社会がどう捉えているのかを示す合理的規範としてその意義を持たなければならなくなったということだと思います。

 さて、その観点から御質問いたします。

 今般廃止される民法第七百三十三条の、女性のみに百日間の再婚禁止を課す規定は、二〇一五年十二月十六日の最高裁判所の判決によって、従前の六か月間の再婚禁止期間を定めた民法第七百三十三条の規定が憲法第十四条の法の下の平等に反して違憲とされたことを受けて、二〇一六年六月一日に改正されて、百日間になっていたものです。

 二〇一六年の改正における議論でも、百日間の再婚禁止規定を維持する必要はなく、直ちに撤廃すべきだという意見は多数あったと理解しておりますが、当時の答弁を見ると、政府は、違憲の法律を直ちに改正すべきだからというだけの理由で百日間の再婚禁止期間を残しました。

 政府の公式見解に従うなら、まずは急いで違憲部分を是正し、その後、時間をかけて削除の議論をしたということになるのでしょうが、昨今報道されているところによると、大串正樹デジタル兼内閣府副大臣、山田賢司外務副大臣を含む与党自由民主党の複数の議員が、伝統的な家庭教育の推進、LGBTQや同性婚に関する制度化に慎重であるべきだといった政策の推進を求める内容の推薦確認書を旧統一教会若しくはその関連団体と交わしていたとのことであり、にわかに信じることはできません。

 そこで、葉梨大臣にお伺いいたします。

 先般自民党が行った点検の結果を総理と共有し、女性のみに、従前六か月、二〇一六年の改正以降は百日間の再婚禁止期間を定めるこの差別的な民法第七百三十三条の条項が今般の改正まで修正されずに残っていたことについて、旧統一教会若しくはその関連団体との影響がなかったのか、調査する意思があるのかないのか、お答えください。

 さて、この再婚禁止規定の削除によって、離婚後、前夫の嫡出推定期間である三百日以内に女性が再婚し出産した場合でも、再婚した夫の子と推定されると定める民法第七百七十二条第三項が加えられました。この規定が設けられたのは、従前、前夫の嫡出推定期間である三百日以内に出産した女性が子供が前夫の子供と推定されて戸籍に登録されることを回避するために出生届を出さないことによって、無戸籍児となって様々な公共サービスを受けられなくなってしまうことが社会問題化したことが大きな理由の一つであると理解しております。

 確かに、この民法第七百七十二条第三項の規定によって、離婚後三百日以内に再婚して出産した場合には再婚後の現在の夫に嫡出推定が働きますので、一定程度、無戸籍児の解消には資するものと思います。一方で、離婚後三百日以内に再婚せず出産した女性にとっては問題は何も変わっておらず、一定数の無戸籍児は残るものと思います。

 そこで、葉梨法務大臣に伺います。

 法務省の把握しているところで、現在、日本には年間何人程度の無戸籍児が生じているのか、そして、この改正によってそのうちどの程度の数が減少すると見込まれているのか、その根拠とともにお答えください。

 あわせて、なぜこの離婚後三百日を前夫の嫡出推定期間とする規定を残しているのか、その根拠も伺います。

 さて、先ほど申しましたとおり、今般の改正後も、様々な理由によって、無戸籍児、そして無戸籍者は一定数発生し続けます。現在の日本の制度において、戸籍がないということは、様々な行政サービスの対象からこぼれ落ちるということであり、本来当然有しているはずの日本国民としての権利を行使できないということです。国民主権国家たる日本が、そのような状態の人を放置していいはずがありません。

 法務省においては、発生してしまった無戸籍状態を解消するために、無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書のようなパンフレットを作って周知に努めているものと承知しておりますが、一方で、無戸籍者には家庭環境、経済環境に困難を抱えた人も少なくなく、手引書に書かれた手続を行うこと自体が困難であるという事情もあります。行政において、積極的に、無戸籍者に対して無戸籍状態を解消する手続を支援する必要があるものと思います。

 そこで、葉梨法務大臣に伺います。

 法務省において、無戸籍者の無戸籍状態を解消するために、前述のパンフレットの作成、周知のほか、どのような施策を講じており、また、今後どのような施策を講じる予定があるのか、お答えください。

 そして、そのようにして無戸籍を解消するとしても、手続には時間がかかり、一定期間無戸籍状態が続くことは避けられません。

 ところで、この問題は、実のところ、住民票への記載や義務教育を受けることなどは無戸籍であっても一定の手続を経て可能であるにもかかわらず、戸籍がなければ公共サービスを受けられないと、無戸籍者のみならず、自治体、行政機関の職員が誤解していることにも一因があると承知しております。

 一方で、無戸籍者には前述のとおり家庭環境、経済環境に困難を抱えた人も少なくなく、この行政サービスを受けるための一定の手続を行うこともまた困難であり、行政において、積極的に、無戸籍者に対して、戸籍を獲得するまでの期間、行政サービスを受ける支援をする必要があるものと思います。

 そこで、葉梨法務大臣にお伺いします。

 法務省において、無戸籍者が戸籍を取得するまでの間、行政サービスを受けることができるようにするためにどのような施策を講じており、また、今後どのような施策を講じる予定があるのか、お答えください。

 さて、無戸籍問題を考えてまいりますと、その手続的困難の根幹は、日本国民として新しく出生した者を、原則として、父及び母を確定した上で、実のところ実体のない、どちらかの戸に編さんするとしているところにあるものと言わざるを得ません。この戸という概念に何か非常に特殊な価値を見出す意見も根深くあることは承知しておりますので、その議論には深入りしませんが、私は、この実体のない戸という概念にとらわれた日本の戸籍制度もまた、現代の個人の在り方、社会の在り方、そして科学の進歩を受けて変化すべきものであると思います。

 そして、その最も端的な例が、我が立憲民主党ほか多数の政党が推進している選択的夫婦別姓制度であり、私は、是非ともこの選択的夫婦別姓制度を実現すべきものと思います。

 そこで、葉梨法務大臣にお伺いいたします。

 選択的夫婦別姓制度に対する御所見と今後の取組についてお答えください。

 最後に、今般の改正案においては、民法第八百二十二条に定める懲戒の規定が削除され、親権を行う者は、その監護及び教育を行うに当たっては、子の人格を尊重し、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない旨が定められました。この改正は極めて当然であるものと思います。

 ここで、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動には様々なものがありますが、昨今、旧統一教会問題で注目を集めている宗教二世の問題は、その極めて顕著な一例であると思われます。旧統一教会問題の被害者救済については、現在、与野党の協議が行われていることと承知しておりますが、宗教二世の救済については、まだ議論の端緒にも至っていないものと理解しております。

 まずは、今般の民法第八百二十一条、八百二十二条の改正を契機に、児童虐待の防止等に関する法律、通称児童虐待防止法第二条の児童虐待の定義に宗教的虐待を加え、宗教的虐待を児童福祉行政の対象と明示し、併せて救済のための関係法令を整備することを検討すべきと考えますが、加藤厚労大臣の御所見を伺います。

 最後に、我が立憲民主党は、男女を不平等に扱う固定観念や不合理なこだわりを離れ、現代の科学を踏まえ、今を生きる一人一人の生活と社会の在り方に適合し、何よりも、個人が個人として尊重され、幸福を追求できる家族法制の立法と、政治、行政の実現に向けて全力で取り組んでまいりますことをお誓いして、私の質問とさせていただきます。

 御清聴、大変ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 米山隆一議員にお答え申し上げます。

 まず、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定がこれまで維持されていた理由等についてお尋ねがありました。

 女性の再婚禁止期間の定めは、前夫の嫡出推定と再婚後の夫の嫡出推定との重複を回避することを目的として設けられていたものです。

 本改正法案では、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子について、母が子の出生のときまでに再婚していた場合には子は再婚後の夫の子と推定することとしたため、推定の重複により父が定まらない事態は生じなくなることから、再婚禁止期間を廃止することとしたものです。

 女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定がこれまで維持されてきたことについて、特定の団体による影響があったのではないかとの御指摘は全く当たりません。調査をする予定もありません。

 次に、現在の無戸籍者の数やその減少の見込み等についてお尋ねがありました。

 法務省が一年間に新たに無戸籍者として把握した人数は、年によって多少の変動はあるものの、約六百人程度であります。

 本改正案では、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子について、母が子の出生のときまでに再婚している場合には、子は再婚後の夫の子と推定することとしています。法務省が令和二年に実施した調査の結果によれば、離婚後三百日以内に出生した無戸籍者のうち、母の再婚後に出生した者は約三五%であり、これらの者は本改正法案により再婚後の夫の子と推定されることとなることから、これらの者が前夫の嫡出推定を避けるために無戸籍となっていたとすれば、その解消が見込まれます。

 また、本改正案では、再婚禁止期間を廃止することから、再婚がしやすくなって再婚後の夫の子と推定される場合が増加すると見込まれ、また、前夫のみならず、子及び母にも否認権を認めることとしており、否認権が適切に行使されることによって、母が再婚しておらず前夫の子と推定されるものについても、無戸籍の解消が図られます。

 これらによれば、無戸籍者の将来の減少数を具体的に予測することは困難ですが、無戸籍者の増加が抑制され、無戸籍の解消が進むことにより、無戸籍者問題の解消が大幅に図られると考えています。

 嫡出推定制度の意義は、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、子について逐一父との遺伝的つながりの有無を確認することなく、子の出生の時点で父子関係を定め、子の地位の安定を図ることにあります。

 そこで、本改正案では、婚姻の解消等の日から三百日以内に生まれた子について、前夫の子と推定するとの規律を維持することとしています。

 次に、無戸籍者問題を解消するための施策についてお尋ねがありました。

 無戸籍の解消のため、法務省においては、平成二十七年五月から無戸籍者ゼロタスクフォースを設置するとともに、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続が取れるよう、一人一人に寄り添った取組を実施しているところです。

 今後とも、これらの取組を継続するとともに、無戸籍者解消に至るまでの期間が短くなるよう、法務省ホームページや無戸籍者解消の流れに関する動画等のウェブコンテンツを充実させ、裁判手続等の情報を分かりやすく提供するとともに、関係機関と連携を取りながら、引き続き、無戸籍者問題の解消に向けて、各種施策を推進してまいりたいと考えております。

 次に、無戸籍者が戸籍を取得するまでの間、行政サービスを受けられるようにするための施策についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、戸籍に記載される前であっても、一定の要件の下で行政上のサービス等を受けることができます。

 法務省においては、配布用の冊子や法務省ホームページにおいてこのことの周知を行うとともに、相談窓口においても同様の内容を無戸籍者に適切に案内しているところです。

 今後は、これらの取組を継続するとともに、無戸籍者ゼロタスクフォースにおいて関係省庁と更に連携を取りながら、引き続き、適切に対応してまいりたいと考えております。

 最後に、いわゆる夫婦別姓制度についてお尋ねがありました。

 夫婦の氏の在り方については、現在でも国民の間に様々な意見があり、今後とも、国民各層の意見や国会における議論を踏まえて、その対応を検討していく必要があるものと考えています。

 そのため、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかりと議論していただき、コンセンサスを得ていただくため、法務省としては、引き続き、積極的に情報提供を行ってまいる所存です。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 米山隆一議員より、児童虐待防止法の児童虐待の定義に関しお尋ねがございました。

 現行の児童虐待防止法第二条各号に該当する行為を保護者が行った場合には、宗教の信仰等保護者の意図にかかわらず、児童虐待に該当し得るものであり、現行の児童虐待防止法で対応可能と考えております。

 この点に関し、保護者の信仰に関連することのみをもって消極的な対応を取らないことと併せ、自治体に周知をしたところであります。

 さらに、宗教二世の方々からの相談に対して児童相談所等の虐待対応の現場において適切に対応できるよう、例えば、具体的な方策、対応の留意点を整理したQアンドAを年内を目途に作成し発出することを目指し、当事者の方々の御意見も踏まえながら検討するよう、事務方に指示を行っているところでもあります。

 宗教二世の方々に対し現場で円滑な対応が図られるよう、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 沢田良君。

    〔沢田良君登壇〕

沢田良君 日本維新の会、沢田良です。

 ただいま議題となりました民法等の一部を改正する法律案について、日本維新の会を代表して質問をいたします。(拍手)

 民法とは、民のための法律の略称から分かるとおり、日々の暮らしに関わっている法律です。明治二十九年に民法が制定され、今日に至るまで様々な改定が行われてきました。

 しかし、明治民法の改定は、戦後の状況下、時間的な余裕がなかった等の理由により、新たな規定を形成するという作業が遅れていた、希薄であったという事実があります。

 本日議題になっている法律案の中で大きな柱となっている嫡出推定制度や懲戒権についても、基本的に明治以来の規定が引き継がれていると理解しております。時代に合わなくなってきた法律は、多くの国民の利便性を損ない、日々の生活に影響を及ぼします。

 本日は、様々な観点から質問をさせていただきます。

 本法案の柱の第一は、親権者による子供への懲戒権を規定した民法第八百二十二条を削除するというものです。

 懲戒権は、明治時代に規定されたもので、父親の強い権限で家庭をまとめるという、当時は一般的であった家父長制の考えを反映したものでした。

 しかし、現代においては、時代遅れの感は否めません。既に十数年前から、児童虐待の口実にされる、懲らしめる、戒めるという強力な威圧を感じさせるなど、子供に関わる現場からは、廃止を含めた見直しを求める声が多く上がっていました。今回の法改正はこうした声に応えたものと言えますが、児童虐待の問題が深刻化している現況に鑑みると、遅過ぎる改正という印象を持たざるを得ません。

 そこで伺いますが、法案提出までになぜこんなにも長い時間を要したのか、この間の議論の概要を含め、法務大臣の見解をお聞かせください。

 今回の民法からの懲戒権削除に伴い、児童福祉法及び児童虐待防止法からも懲戒権の文言がなくなります。

 しかし、子供に関しての法律から懲戒を容認する規定が全て消えたわけではありません。学校教育法第十一条において、教師から児童生徒に対する懲戒権の規定は、何ら改正されることもなく、そのまま残されています。これまで、政府は、家庭と学校とは場面が違うとの立場から、学校教育法は民法改正の影響を受けないとして、第十一条から懲戒権を削除しようとはしていません。

 しかし、家庭においての懲戒権を否定している一方で学校においては教師の懲戒権を認めていることは、親の立場からすれば、我が子を叱ることができないのに、他人である先生は叱ることができるのはおかしいとの意見も出かねません。

 一方で、現代の教育現場での教職員と児童生徒、保護者との関係も大きく変化をしています。以前なら指導として捉えられていたことが体罰ではないかと問題になるケースもあり、例えば、逆上がりを教える際も、児童の体には触れず、声だけで指導するといった場面があると聞いております。

 現場の教職員の声を反映して法律を改正する、このことこそ、我々国会議員、省庁の役割ではないでしょうか。私ごとで恐縮ですが、私には二人の子供がいます。教育現場の混乱は、少子高齢化の現代において、最も避けなければならない事案ではないでしょうか。

 法務大臣にお聞きします。

 虐待の口実にされるとの理由から民法から懲戒権を削除したのに、学校教育法には懲戒権が残ることに合理性があるとお考えでしょうか。見解をお示しください。

 また、文科大臣にお聞きします。

 今回の民法改正を受けて学校教育法第十一条を見直す必要性について、どのようにお考えですか。お答えください。

 確かに、学校教育において、例えば中学生が喫煙するといった非行を正すための叱責のように、全ての懲戒行為を否定してしまったら、教育指導が成り立たないという事態が生じてしまう懸念もあります。

 しかし、民法において否定した懲戒権という概念を学校教育法には従来のまま存続するのでは、学校における懲戒の意義が誤解されるおそれも生じてきます。そうなれば、教育現場をかえって混乱させることにもなりかねません。少なくとも、学校において認められる懲戒とは何かについて、再検討をすべきです。

 現在、文科省のホームページに掲載されている、学校教育法第十一条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例は平成二十五年三月に発せられたものですが、そこでは、懲戒の例として、授業中、教室内に起立させる、学校当番を多く割り当てる、練習に遅刻した生徒を試合に出さず見学させるなどが例示されています。

 これらが現在の視点から見て適切と言えるのか。見直すべきです。中でも、生徒が大切に考えていた試合に、懲戒を理由に教師が出場させないとなれば、生徒の心に深い傷を与えることになるのではありませんか。この参考事例を改定すべきと考えますが、文科大臣の答弁を求めます。

 民法から懲戒権を削除したからといって、児童虐待の問題が解決するわけではありません。大事なのは、虐待を防ぐ啓発とともに、起こってしまった虐待を早期に発見し、子供の命を守る具体策です。今回の民法改正の意義を子育て中の保護者を始めとした広い国民に普及し、虐待防止の機運を今以上に高めていく方策について、法務大臣の所見をお聞かせください。

 また、早期発見の端緒として学校現場は特に重要な場であると考えます。

 しかし、教師の目だけで虐待の痕跡を発見することは困難な場合が多く、学校内に福祉の専門家を配置し、プロの目による見守りが是非とも必要です。学校に福祉や子供に関する問題の専門職員としてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置することを提案するものですが、文科大臣の答弁を求めます。

 本法案の第二の柱である嫡出推定規定の見直しについて伺います。

 嫡出推定制度の趣旨ですが、父子関係は、分娩の事実があれば認められる母子関係と異なり、生物学上、その存否を明らかにすることが困難であることに鑑み、法律上、父子関係の確定をし、父子という身分関係の法的安定及び家庭の平和を保持することと認識をしております。

 その観点から考えると、嫡出推定制度ではなく、DNA型鑑定等、遺伝子診断を用いて生物学上の父の確定を行うということが極めて理にかなっているのではないでしょうか。

 例えば、イギリスでは、コモンロー上の原則として、出産した女性が法的な母となり、父子関係については、子の遺伝上の父が法的な父となるとされています。日本では、日本医学会による、医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドラインの中で、遺伝子情報の特性として七つの項目があります。生涯変化しないこと、血縁者間で一部共有されていること、血縁関係にある親族の遺伝型や表現型が比較的正確な確率で予測できること等が記されております。

 科学技術の発展の成果であるDNA鑑定、遺伝子検査が確立、普及したことにより、生物学的な親子関係の確定は、かつてに比べて格段に容易になっているのではないでしょうか。DNA鑑定、遺伝子検査を取り入れない理由をお聞かせください。また、今後議論を進めていくべきと考えますが、法務大臣の御見解をお示しください。

 無戸籍者問題について質問をします。

 法務省によると、戸籍に記載されない理由として、民法の規定により出生届を出すことによって前の夫の嫡出推定を受けてしまうことを理由として出生届を出さないというケースが七二%を占めているとのことです。今回の改正によりこの部分が大きく解消されることを期待していますが、そもそも、法務省による無戸籍者の把握方法は適切なのでしょうか。

 令和二年にコロナ対策で支給された特別定額給付金を申請するため自治体に連絡をして無戸籍が把握される事例が相次いだといった報道があったと記憶しておりますが、このような給付金の申請で把握するのではなく、日頃から更なる情報収集が必要ではないでしょうか。

 市区町村、児童相談所、教育委員会等と連携を強化して把握に努めるべきと考えるが、今後、法務省としてどのように無戸籍者問題に取り組んでいくのか、法務大臣の答弁を求めます。

 女性の再婚禁止期間の廃止について質問します。

 再婚禁止期間については、諸外国でも規定が様々です。イタリア、タイ、インド等は規定があり、ノルウェー、ドイツ、オランダ等は再婚禁止期間が廃止となっております。

 他方、我が国は、平成二十八年三月には、国連女子差別撤廃委員会より、再婚禁止期間を廃止するよう勧告を受けております。

 再婚禁止期間を廃止した場合、今後起こり得る問題についてどのように考えているか、法務大臣の所見をお聞かせください。

 また、平成二十八年六月の民法改正により女性の再婚禁止期間が六か月から百日に短縮されましたが、この短縮によって効果はあったのでしょうか。このような細切れの法改正が関係省庁の負担を増やしているのではないでしょうか。

 政治の決断、リーダーシップが大事だと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。

 今回の法律案では、国籍法の一部を改正して、事実に反する認知の効力を争えなくなった場合でも、事実に反する認知によっては日本国籍を取得することができないという規定を設けることも含まれております。これは虚偽認知による国籍の不正取得を防止する方策であると認識をしています。

 国籍の不正取得を防止するという我が国にとっても安全保障に関わる方策を、ついでのように議論してよいのでしょうか。国籍制度の改正については更なる議論が必要ではないかと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。

 ここまで様々な観点から今回の民法改正について質問をしてまいりました。

 未来を担う子供たちの利益を第一に考えるという方向性は我々日本維新の会と志を同じくするものであると思いますが、何より大切なのはその実効性です。

 冒頭にも述べたとおり、民法には明治時代からいまだ変わらない規定も多くあります。当時から劇的に暮らしの在り方が変わる中、多様性という言葉が多く求められていることが、変化の少なさにおける切実なメッセージとも感じます。いずれの規定の見直しにおいても重要なのは、国民の真の利益を追求するための幅広く奥深い議論を時代に即したスピード感を持って行うということです。

 今まさに違和感や困難を抱える人々の声に応えるため、そして、国民の自由と平等を保障する基本法である民法を真の意味で民のための法律としていくためにも、今後とも、時代に即した不断の改革が必要であることを申し述べ、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 沢田良議員にお答え申し上げます。

 まず、懲戒権に関し、民法八百二十二条を削除する本改正法案に至る経緯についてお尋ねがありました。

 懲戒権に関する民法第八百二十二条については、平成二十三年の民法改正においても、これを削除することを含め、検討がされました。最終的には、同法八百二十条に、子の利益のためにとの文言を加え、その範囲内でのみ懲戒できる旨を明確化することで合意されました。

 しかし、その後も児童虐待事件が頻発したため、令和元年の児童福祉法等の一部を改正する法律により、児童虐待防止法において親権者の体罰が禁止されるとともに、同改正法の附則に、民法の懲戒権について、その規律の在り方を検討する旨の検討規定が置かれました。

 このような経緯の下、令和元年六月、法務大臣から法制審議会に対し、民法(親子法制)の見直しに関する諮問を行い、調査審議が開始され、令和四年二月、民法第八百二十二条の削除等を内容とする答申がされました。

 その後、法務省において、この答申の内容を踏まえて法律案の立案作業を進め、本改正法案を提出するに至ったものです。

 次に、学校教育法等の懲戒権に関する規定を残すことについてお尋ねがありました。

 民法第八百二十二条は、親権者の懲戒権に関する規定であり、その削除を踏まえて、学校教育法第十一条の校長等の懲戒権に関する規定を見直すかどうかについては、同法を所管する文部科学省において検討されるべき事項であると認識しております。

 次に、本改正法案の意義の周知についてお尋ねがありました。

 本改正法案において懲戒権に関する民法第八百二十二条を削除した趣旨は、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発し、児童虐待の防止を図ることにあります。

 そのため、本改正法案の意義について広く国民に周知、広報することは極めて重要であると考えており、適切かつ十分な周知、広報を行ってまいります。

 次に、法律上の父子関係の確定に関し、DNA型鑑定等を取り入れることについてお尋ねがありました。

 嫡出推定の意義は、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、子について逐一父との遺伝的つながりの有無を確認することなく、子の出生の時点で父子関係を定め、子の地位の安定を図ることにあり、DNA型鑑定等が発展した現在でも、その意義は異なりません。

 仮に、嫡出推定制度を廃止し、子全てについてDNA型鑑定等を義務づけることについては、家庭の平穏を害する懸念があり、また、手続的な負担の増加も見込まれ、さらに、父が鑑定に応じないときは子の父が確保されないおそれがあるなど、子の利益の観点からも妥当ではありません。

 そこで、本改正法案では、嫡出推定制度を維持した上で、法律上の父子関係の確定にDNA型鑑定等を取り入れることとはしていません。

 次に、無戸籍者問題の解消に向けた取組についてお尋ねがありました。

 無戸籍の問題の解消のためには、まずは、無戸籍の方を的確に把握することが重要です。このため、無戸籍の方は、本人やその母親が市区町村の戸籍や住民票の窓口などに相談に来られた際に把握されることが多いほか、市区町村の福祉担当部署や教育委員会等においても無戸籍の情報に接することがあることから、これまでも、無戸籍者を把握したり無戸籍者の情報に接した場合には、市区町村の戸籍担当部署又は法務局に情報提供をするよう、それらの機関に対して協力を依頼してまいりました。

 今後とも、これらの取組を継続するとともに、関係機関と更に連携を取りながら、引き続き、無戸籍者解消に向けて各種施策を推進してまいりたいと考えております。

 次に、再婚禁止期間の廃止により生ずる問題等についてお尋ねがありました。

 女性の再婚禁止期間の定めは、前夫の嫡出推定と再婚後の夫の嫡出推定との重複を回避することを目的として設けられていたものです。

 本改正案は、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子であっても、母の再婚後に生まれた場合には再婚後の夫の子と推定することとしたため、推定の重複により父が定まらない事態は生じなくなることから、再婚禁止期間は、その必要性がなくなり、廃止することとしています。

 このような廃止の理由に照らせば、女性の再婚禁止期間の廃止について、法律上何らかの問題が生ずるということは想定されません。

 平成二十八年の民法改正において、再婚禁止期間が六か月から百日に短縮された趣旨は、当時の嫡出推定制度の下で父性推定の重複を避けるために必要十分な期間に限って女性の再婚を制限するというものであり、かつては合理的理由なく再婚が制約されていたような事案について、この改正により再婚が可能になったという効果があったと考えています。

 民事基本法制は、国民の意識や社会情勢の変化等に対応し、不断に見直しをしていくことが重要であると考えており、今後も、引き続き、必要な検討を行ってまいります。

 最後に、本改正法案における国籍法の改正についてお尋ねがありました。

 本改正法案では、事実に反する認知であっても、認知の無効を主張することができる者が出訴期間内に認知の無効を主張しない限り、有効な認知として確定し、その民事法上の効力を否定することはできないこととなります。

 そこで、我が国の国籍を取得することを目的とする虚偽の認知がされることを防止するため、本改正法案では、認知による国籍の取得に関する規定は、認知について反対の事実があるときは適用しないこととしております。

 一般的に、国籍制度の改正については、国籍の問題に関する国民の意識や国際的な動向等も踏まえながら議論していく必要があると考えていますが、今回の国籍法の改正は、民法の改正によって国籍取得に係る従前の取扱いに疑義が生じないように明文で規定したものにすぎません。(拍手)

    〔国務大臣永岡桂子君登壇〕

国務大臣(永岡桂子君) 沢田議員にお答えいたします。

 まず、学校教育法第十一条の見直しの必要性についてお尋ねがありました。

 民法第八百二十二条の懲戒権の規定は、民法第八百二十条が定める監護教育権の一環として行われるしつけのうち、子に問題行動等があった場面について特に規定を置いたものであり、児童虐待の防止等に資するため、今般の改正で当該規定を削除しても、引き続き、民法第八百二十条に基づき、親権者が適切なしつけを行うことはできるものと承知をしております。

 これに対し、学校教育法に規定する懲戒とは、学校が教育目的を達成するため、教育上必要な範囲で叱責、注意や退学、停学等を行うことができるとされており、今般の民法改正の趣旨とは異なることから、学校教育法第十一条を見直す必要はないと考えております。

 なお、体罰は学校教育法第十一条で禁止しており、文部科学省としては、引き続き、教育委員会や学校における研修の促進、相談体制の整備等を通じて、体罰の根絶に向けて全力で取り組んでまいります。

 次に、学校教育法第十一条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例の見直しについてお尋ねがありました。

 学校教育法における懲戒は、学校の教育目的を達成するため、教育的配慮の下で行われるものです。文部科学省ホームページに記載のある参考事例は、通常、懲戒権の範囲内と考えられる行為でありますが、個々の事案ごとに判断することが必要であります。

 御指摘のような、児童生徒の心に深い傷を与えるような指導や体罰は、学校教育法に定める懲戒権から逸脱した行為と考えられ、参考事例が想定するものではありません。

 次に、学校における児童虐待の対応についてお尋ねがありました。

 学校は、児童虐待を発見しやすい立場であることを自覚し、関係機関と連携し、児童虐待の早期発見、早期対応に努めることが求められています。

 このため、児童虐待の対応について、教職員だけでなく、養護教諭やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を含むチーム学校として対応することが重要です。

 文部科学省としては、令和五年度概算要求におきましても、これらの専門家の増員を含む、教育支援体制の充実に向けた経費を盛り込んでいます。

 引き続き、専門家を活用した教育支援体制を整備し、関係機関の連携を含む、学校、教育委員会における適切な対応の徹底に努めてまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 鈴木義弘君。

    〔鈴木義弘君登壇〕

鈴木義弘君 国民民主党・無所属クラブを代表して、上程された民法の改正について、順次質問いたします。(拍手)

 まず、民法第八百二十二条の削除について質問いたします。

 マスコミの報道に触れますと、目を覆いたくなるような児童虐待の事件が後を絶ちません。その解消のために、懲戒権を廃止する民法の改正が上程されたと聞いています。

 民法第八百二十二条は、平成二十三年に、子の利益のために監護及び教育に必要な範囲内で懲戒することができるとする法改正がなされ、あくまでも親権者が子の利益のために監護、教育を行う一環として、しつけができることを注記したにすぎないと解されています。

 よって、同条は、子の利益のための監護、教育を超える特別な権限を親に与えるものではないと言えるため、同条の削除によっても、親権者の監護、教育を行う範囲に変更はありません。

 そうであるにもかかわらず、あえて八百二十二条を削除する狙いは、しつけの社会通念の変化と児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘を受け、児童虐待は決して許されるものではない、正当な親権の行使とは言えないという強く明確なメッセージを発するという理解でよろしいのか、法務大臣にお尋ねいたします。

 今回の法改正で懲戒権が削除されたとはいえ、児童虐待根絶への実効性が疑問視されています。保護すべき者が、本来守るべき存在である、言葉もしゃべれない、自分で身を守れない児童に対して暴行や殺人を犯した場合には、一般の暴行、殺人に比べてより厳罰化する刑法改正議論まで踏み込んだ検討もするべきと考えますが、法務大臣に御所見を伺います。

 次に、嫡出否認制度の見直し規定に関わる改正について質問いたします。

 今回の改正案では、嫡出否認の訴えを提起できる否認権者を子や母にまで拡大したのは理解できるんですが、出訴期間について、出生してから三年の子供に否認できるのか、疑問です。さらに、前夫が提起する場合、前夫が子の出生を知ったときから三年とあるんですが、夫婦仲が悪くて離婚するのに、出生を知り得るものでしょうか。

 このような出訴期間の問題について、法務大臣に見解をお尋ねします。

 最後に、嫡出推定規定の見直しに関わる改正について質問いたします。

 国内において、令和四年九月時点での無戸籍者の数は七百九十三人と聞きます。このうち約七二%の五百七十二人が、前夫の嫡出推定を避けるため出生の届出がなされなかったためと言われており、嫡出推定制度が無戸籍者問題の一因とも言われています。

 今回の改正においても、女性が出産時に再婚していなければ従来どおり前夫の子とみなされ、無戸籍児が解消されないと考えるのですが、見解を法務大臣にお尋ねいたします。

 また、近年、離婚、再婚の増加、懐胎を契機に婚姻する夫婦の増加など、社会の変化が生じていることなどを踏まえると、無戸籍者問題の解消以外の観点からも見直しをする必要があると考えられます。

 そこで、今回の法改正では、民法の嫡出推定制度そのものの見直しが盛り込まれていませんが、改正する考えはありますか。法務大臣にお尋ねいたします。

 近年、結婚観や親子の関係も大きな意識の変化が起きており、我が国のこれまでの家族の在り方、家族と個人とのバランスについて変化があるように感じます。法務大臣も、法の秩序の維持と国民の権利の尊重という二つの要請をバランスの取れた形で実現することが不可欠と述べています。社会制度を現状に合わせていくのは時代の趨勢でしょう。

 しかし、制度を改正することで新たな問題が生じ、そのことにより長期的に社会がどのように変貌していくのかを視野に入れて制度改正をしていかなくてはならないと考える一人です。

 全ての人々の幸せを願って、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 鈴木義弘議員にお答え申し上げます。

 まず、民法第八百二十二条を削除する趣旨についてお尋ねがありました。

 懲戒権を規定する民法第八百二十二条については、懲戒の文言が同法第八百二十条の監護教育権を超えた強力な権利であるかのような印象を与えることなどから、児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘や、懲戒として体罰が許容されるといった誤解を与えかねないとの指摘がされていました。

 本改正案において民法第八百二十二条を削除したのは、児童虐待の防止に向けた明確なメッセージを国民に向けて発することにより児童虐待の防止を図るという趣旨によるものです。

 次に、保護すべき者による児童虐待の厳罰化に向けた検討についてお尋ねがありました。

 いわゆる児童虐待に適用され得る罰則としては、例えば、児童に暴行を加えた場合には暴行罪により二年以下の懲役等に処する、児童の身体を傷害した場合には傷害罪により十五年以下の懲役等に処する、児童に暴行を加え死亡させた場合には傷害致死罪により三年以上の有期懲役に、あるいは殺人罪により死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処するものとされています。

 児童虐待であることを理由としてこれらの罰則よりも刑を加重する罰則を設けることについては、児童虐待事案に関する実際の処罰の状況等を踏まえたときに、法定刑が低いため適正な量刑が困難となっているような状況にあるのか、児童虐待として法定刑を加重すべき行為の外延を明確かつ限定的に定義することができるのかなどの観点から、慎重に検討することが必要であると考えています。

 次に、子や前夫による嫡出否認の訴えの出訴期間についてお尋ねがありました。

 子がその出生のときから三年以内の原則的な出訴期間に自ら嫡出否認の訴えを提起することはなかなかできないと思います。

 そこで、本改正法案においては、親権を行う母、親権を行う養親又は未成年者後見人が、子のために嫡出否認の訴えを提起することができるものとして、子の利益を保護することとしております。

 また、前夫が子の出生を知る時期は事案ごとに異なりますが、前夫が子の出生を知らない間にその嫡出否認権が消滅することは相当でないため、嫡出否認の訴えの出訴期間の起算点を前夫が子の出生を知ったときとしています。

 次に、母が子の出生のときまでに再婚していない場合の無戸籍問題への対応についてお尋ねがありました。

 本改正法案の下でも、離婚後三百日以内に生まれた子については、母が子の出生のときまでに再婚をしていない場合には、子は前夫の子と推定されることになります。

 本改正法案では、前夫の子と推定される子については、前夫のみならず、子及び母にも否認権を認めることとし、否認権が適切に行使されることによって、無戸籍者問題の解消が図られるものと考えています。

 最後に、嫡出推定制度の更なる見直しについてお尋ねがありました。

 本改正法案では、主として無戸籍者の問題を解消する観点から、民法の嫡出推定規定や嫡出否認制度を見直すこととしていますが、婚姻前に懐胎することが増加している実情を踏まえ、婚姻後に出生した子は、婚姻後二百日以内に出生した場合も嫡出子と推定する改正も行うこととしています。

 民事基本法制については、国民の意識や社会情勢の変化等に対応し、不断に見直しをしていくことが重要であると考えており、今後も、引き続き、必要な検討を行ってまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 本村伸子君。

    〔本村伸子君登壇〕

本村伸子君 私は、日本共産党を代表して、民法等改正案について質問をいたします。(拍手)

 一九四七年、日本国憲法の施行を受け、その理念に反する家制度を廃止する、旧民法の全面改正が行われました。取り残されてきたのが、女性の再婚禁止規定や嫡出推定の規定、子供に対する懲戒権などです。

 今回の法案は、個人の尊厳やジェンダー平等の足かせとなってきたこれらの規定を全面的に改めるものになっているでしょうか。

 まず、女性だけに課せられた再婚禁止期間の問題です。

 この規定は、憲法二十四条、両性の平等に反し、国連の女性差別撤廃委員会などからも廃止が勧告されてきたものです。日本共産党は、多くの女性たちの運動と連携し、女性の結婚の自由を侵害する規定の廃止を主張してきました。

 この規定について、旧民法制定時の政府は、血統の混乱を防止するためだと述べています。帝国憲法下で家制度を中心とした男性優位の社会が国家の基本とされてきたことを前提とするものであり、当然、憲法二十四条、ジェンダー平等の見地から廃止されるべきものです。

 再婚禁止期間を存続する口実とされてきた嫡出推定制度を見直すとしていますが、本法案は、DVで前の夫から逃げ、離婚できていないケースなど、様々な事情で法律上の再婚をしない、できない場合は前の夫の子と推定されてしまうという、現行法と同様の問題が残っているのではありませんか。

 嫡出という用語は、家督制度と家督相続の下、正統な血統かどうかという差別的な概念で用いられてきたものです。嫡出推定制度及び戸籍制度を根本的に見直すべきではありませんか。

 嫡出推定制度の見直しの一方で、国籍法三条三項の新設によって、認知が事実に反する場合、国籍の取得を否定されてしまうことは重大です。何十年も日本国内で日本人として暮らし、安定した生活がなされていても、反対の事実があると認められた場合、日本国籍を失い、無国籍となってしまいます。子の権利利益の保護に反するのではありませんか。

 懲戒権の削除や体罰禁止の明記は、子供の人権を保障する観点から当然のことです。条文にある、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動という文言は何を言うのか。曖昧な条文で児童虐待が容認されるということはありませんか。

 選択的夫婦別姓について伺います。

 法制審議会が一九九六年に再婚禁止期間の問題とともに答申していたものですが、なぜいまだに実現しないのでしょうか。

 選択的夫婦別姓に反対してきた統一協会と政府・自民党の癒着が原因ではありませんか。統一協会と関係を絶つというのであれば、婚姻の平等の重要な課題である選択的夫婦別姓を前に進めるべきです。

 次に、自衛隊の中であった性暴力について質問いたします。

 元自衛官であった五ノ井里奈さんが、自衛隊の中で性暴力の被害を受けたと告発されました。被害を訴えてから一年以上たった今年の九月二十九日、防衛省が被害を認め、謝罪し、十月十七日、加害者が謝罪をいたしました。

 しかし、被害者が顔と名前を出さなければ隠蔽され、救われない、こんなことを許すわけにはいきません。

 まず行うべきは、徹底した実態把握と事実の究明です。過去に遡って、自衛隊内で起こった全ての被害について徹底的に調査、検証するべきです。

 特別防衛監察も、上司や部隊に知られてしまうのではないかと心配の声が寄せられています。完全なプライバシーの保護を図ること、口止めの圧力をかけた上司などの厳正な処分を求めます。

 有識者会議で五ノ井さんの被害を始め具体的事例を検証するといいますが、被害者心理を含めた正確な検証を行うためにも、五ノ井さん始め被害者の参画が必要です。会議録、資料の公開も約束してください。

 性暴力、暴力をなくすために政府として全力を挙げることを強く求め、質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 本村伸子議員にお答え申し上げます。

 まず、再婚禁止期間の廃止に関する考え方についてお尋ねがありました。

 女性の再婚禁止期間の定めは、前夫の嫡出推定と再婚後の夫の嫡出推定との重複を回避することを目的として設けられていたものです。

 本改正法案では、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子について、母が子の出生のときまでに再婚していた場合には子は再婚後の夫の子と推定することとしたため、推定の重複により父が定まらない事態は生じなくなることから、再婚禁止期間を廃止することとしています。

 このように、本改正法案は、嫡出推定制度を見直すことに伴い、これと密接な関係を有する再婚禁止期間を廃止することとするものです。これにより、再婚がしやすくなるなど、重要な意義があるものと考えています。

 次に、女性が再婚しない場合における無戸籍者問題への対応についてお尋ねがありました。

 本改正法案においても、離婚等により婚姻を解消した日から三百日以内に生まれた子について、母が子の出生のときまでに再婚していない場合には、子は前夫の子と推定されることとなります。

 本改正法案では、前夫の子と推定される子については、前夫のみならず、子及び母にも否認権を認めることとしており、否認権が適切に行使されることによって、無戸籍者問題の解決が図られるものと考えています。

 次に、嫡出の用語の見直しについてお尋ねがありました。

 嫡出でない子という用語について、最高裁判所は、民法の規定上、法律上の婚姻関係にない男女の間に出生した子を意味するものとして用いられているものであり、差別的な意味合いを含むものではないと判示しています。

 一方で、嫡出でない子という用語が用いられてきた社会的、歴史的な背景を踏まえると、嫡出の用語を見直すべきとの指摘があることも承知しています。

 もっとも、嫡出である子と嫡出でない子とでは、法律上の父子関係の成立のみならず、親権者、氏、入籍すべき戸籍の決まり方においても区別がなされているところであり、これらの規律を見直す際には、各制度について、具体的な立法事実や国民の意識等を踏まえた検討が必要と考えられます。

 法令用語については、社会情勢の変化等を踏まえ、見直しを要するものと考えており、法務省としては、引き続き、検討を進めてまいります。

 次に、本改正法案における国籍法の改正についてお尋ねがありました。

 我が国の国籍を取得することを目的とする虚偽の認知がされることを防止するため、本改正法案では、認知による国籍の取得に関する規定は、認知について反対の事実があるときは適用しないこととしております。これは、虚偽の認知がされた場合には国籍の取得は認められないとの従前からの確立した考え方を明らかにして、疑義が生じないようにしたものです。

 認知について反対の事実があった場合でも必ずしも子が無国籍になるとは限りませんが、仮に子が無国籍となるような場合であっても、無国籍者の置かれた立場に配慮しつつ、無国籍状態の解消に向け、可能な対応をしてまいります。

 次に、改正法案の民法第八百二十一条の内容等についてお尋ねがありました。

 改正法案の民法第八百二十一条で禁止される、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動とは、子に不当に肉体的又は精神的な苦痛を与え、その健やかな身体又は精神の発達に悪影響を与え得る行為を指すものです。

 これに該当するか否かは、最終的には、具体的な事案を前提として、裁判所における社会通念に照らした個別的な判断に委ねられますが、一般論として、当該行為の態様のほか、子の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的、時間的環境等が配慮されるものと考えています。

 このような観点を踏まえた適切な判断が可能であることから、改正法案の民法第八百二十一条の文言が御指摘のように曖昧であるとは考えておりません。

 次に、いわゆる選択的夫婦別姓制度の実現に向けた課題についてお尋ねがありました。

 法制審議会は、平成八年二月に、選択的夫婦別氏制度を導入すること等を内容とする答申をいたしました。

 その後、法務省は、平成八年及び平成二十二年に、法制審議会の答申を踏まえた改正法案を準備しましたが、国民の間に様々な意見があったほか、当時の政権内においても様々な意見があったこと等から、改正法案の提出には至らなかったものと認識しています。

 夫婦の氏の在り方については、現在でも国民の間に様々な意見があり、今後とも、国民各層の意見や国会における議論を踏まえてその対応を検討していく必要があると考えています。

 このため、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかりと議論していただき、コンセンサスを得ていただくため、法務省としては、引き続き、積極的に情報提供を行ってまいります。

 最後に、いわゆる選択的夫婦別姓制度が実現しない原因等についてお尋ねがありました。

 既にお答えしたとおり、改正法案の提出に至っていないのは、国民の間に様々な意見があるためです。

 政府の政策決定に当たって、幅広く国民の皆様の意見を聞くとともに、関係省庁、有識者、専門家、議員等との議論など、様々なプロセスを経ています。

 したがって、特定の団体の影響のみを受けて政策を決定するものではなく、御指摘は当たらないものと考えています。

 既にお答えしたとおり、夫婦の氏の在り方については、現在でも国民の間に様々な意見があり、今後とも、国民各層の意見や国会における議論を踏まえてその対応を検討していく必要があるものと考えています。

 このため、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかり議論していただき、コンセンサスを得ていただくため、法務省としては、引き続き、積極的に情報提供を行ってまいる所存です。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 本村伸子議員にお答えをいたします。

 まず、自衛隊内で起きた全ての性被害の徹底した実態把握と事実の究明についてお尋ねがございました。

 先般、九月二十九日に公表しました陸上自衛隊におけるセクシュアルハラスメント事案は、上官の対応、複数の事案の存在も含め、極めて深刻な事案であり、誠に遺憾であります。まず、本事案につきましては、速やかに懲戒処分を実施いたします。

 現在、ハラスメントの根絶に向けた措置に関する防衛大臣指示に基づき、全職員に対し、ハラスメントがあった場合には直ちに相談窓口等に相談、通報するよう指示するとともに、相談の対応状況の緊急点検や特別防衛監察の実施を指示し、徹底的なハラスメントの実態把握と事実究明に努めております。

 特別防衛監察の個人情報の取扱いについては、関係規則に基づき厳正な管理を行っているところですが、万一、被害を申し出たために所属する部隊、機関等で不利益な取扱いを受けたときは、申出者からの通知により、厳格に対応することとしております。

 最後に、有識者会議における被害者の参画及び会議録等の公開についてお尋ねがありました。

 有識者会議においては、自衛隊内部の意識やこれまでのハラスメント防止対策を検証していただき、新たなハラスメント防止対策の提言を行っていただく予定です。このため、学界、法曹界などの分野から知見のある委員をお招きする準備を進めております。

 有識者会議の進め方につきましては、その検討に際し、いかなる方のお話を伺う必要があるかも含めて、有識者会議において御議論をいただくことになります。

 なお、会議の概要等につきましては、適切に公開する方向で検討しております。

 以上であります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   寺田  稔君

       法務大臣   葉梨 康弘君

       外務大臣   林  芳正君

       文部科学大臣 永岡 桂子君

       厚生労働大臣 加藤 勝信君

       国土交通大臣 斉藤 鉄夫君

       環境大臣   西村 明宏君

       防衛大臣   浜田 靖一君

       国務大臣   河野 太郎君

       国務大臣   鈴木 俊一君

       国務大臣   谷  公一君

 出席副大臣

       法務副大臣  門山 宏哲君


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