衆議院

メインへスキップ



第7号 令和4年11月8日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年十一月八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  令和四年十一月八日

    午後一時開議

 第一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまフィリッポ・グランディ国際連合難民高等弁務官御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第一、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長三ッ林裕巳君。

    ―――――――――――――

 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔三ッ林裕巳君登壇〕

三ッ林裕巳君 ただいま議題となりました感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症の発生及び蔓延に備えるため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、都道府県知事等は、予防計画等に沿って、新型インフルエンザ等感染症等に係る医療提供体制の確保について、医療機関等と協定を締結することに加え、公立・公的医療機関等、地域医療支援病院及び特定機能病院に対しては、その機能を踏まえ感染症発生時に担うべき医療の提供を義務づけること、

 第二に、新たな臨時の予防接種の類型を設けるとともに、個人番号カードにより予防接種の対象者を確認することができる仕組み等を導入すること、

 第三に、検疫所長が、入国者に対し、居宅等での待機を指示し、待機状況の報告を求めることができる仕組みを設けるとともに、報告の求めに応じない場合等の罰則を設けること

等であります。

 本案は、去る十月二十五日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、翌二十六日加藤厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、二十八日から質疑に入り、十一月一日には参考人から意見を聴取し、四日には岸田内閣総理大臣に対する質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会及び公明党の四会派より、本案に対し、政府は、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状に係る医療の在り方、新型コロナウイルス感染症の新型インフルエンザ等感染症への位置づけの在り方並びに予防接種の有効性及び安全性に関する情報の公表の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする規定を追加することを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣谷公一君。

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 令和三年八月、マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策に関する政府間の枠組みであるFATF、金融活動作業部会から、対策の一層の強化に向け、我が国が優先的に取り組むべき事項が示されました。こうした状況を踏まえ、国際的協調の下に防止及び抑止が図られるべき不正な資金等の移動等をより一層効果的に防止し、及び抑止するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法を改正して、国家公安委員会による公告の対象となった大量破壊兵器関連計画等関係者について、特定の財産を処分しその対価の支払を受けること等の特定の行為を都道府県公安委員会の許可に係らしめるなど財産の凍結等の措置の対象とするほか、金銭以外のその財産的価値の移転が容易な財産に係る債務の履行を受けること等を、財産の凍結等の措置の対象となる者が許可を受けるべき行為に追加することとしております。

 第二に、外国為替及び外国貿易法を改正して、電子決済手段に関する取引を資本取引規制の対象とするとともに、電子決済手段等取引業者等に顧客の本人確認義務及び資産凍結措置に係る確認義務を課すなど、電子決済手段等取引業者等及び電子決済手段取引に係る規定の整備をするほか、外国為替取引等取扱業者が外国為替取引等を行うに当たり遵守すべき基準に関する規定の整備を行うこととしております。

 第三に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律を改正して、犯罪収益等隠匿罪、薬物犯罪収益等隠匿罪等の法定刑を引き上げるとともに、犯罪収益等として没収することができる財産を拡大することとしております。

 第四に、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律を改正して、国際的に保護される者を殺害する行為その他の一定の犯罪行為を特定犯罪行為と定義した上で、各処罰規定について、特定犯罪行為のための資金等の提供等を処罰対象に加えるとともに、法定刑を引き上げることとしております。

 第五に、犯罪による収益の移転防止に関する法律を改正して、司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が顧客等との間で、特定取引を行うに際して行う取引時の確認事項に、取引を行う目的等の事項を追加するほか、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が行う疑わしい取引の届出に関する規定を整備することとしております。また、外国為替取引及び電子決済手段の移転に係る通知事項に、支払又は移転の相手方の本人特定事項等を加えるほか、暗号資産の移転についても通知義務の対象とすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中谷一馬君。

    〔中谷一馬君登壇〕

中谷一馬君 立憲民主党の中谷一馬です。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 本法律案は、マネーロンダリング、いわゆるマネロンの防止やテロ資金供与、拡散金融対策の国際的協調を推進する金融活動作業部会、FATFによる第四次対日相互審査の結果を踏まえて起案されました。

 世界的に日本はマネーロンダリングに甘い国という烙印を押されることはデメリットが多く、社会的法益の保護に必要な施策を講じることは急務です。

 マネロン全体の規模は、世界のGDPの約二%から五%、日本円にして百十七兆円から二百九十四兆円程度と推計されています。

 一方、近年の我が国における犯罪収益及び薬物犯罪収益として没収、追徴された人員と金額を法務省に尋ねたところ、令和二年は四百二十八人、約十六億六千九百万円、令和三年は四百十一人、約二十五億五千九百万円との報告をいただきました。また、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に基づくマネロン事犯の検挙件数を警察庁に尋ねたところ、令和二年は六百件、令和三年は六百三十二件と過去最高を更新したとのことです。

 そこで、まず、国家公安委員長に伺いますが、我が国においてマネロン事犯の検挙件数が過去最高を記録したことや約二十五億五千九百万円の没収、追徴が行われたことをどのように受け止め、対策を講じていく考えですか。見解を伺います。

 次に、第四次対日相互審査報告書への対応について伺います。

 日本はFATFの第四次相互審査で重点フォローアップ国に置かれ、この結果を踏まえ、対策の強化に向け、本法案が提出されました。

 そこで、谷大臣に伺いますが、我が国は第五次審査では通常フォローアップ国を目指すという考えを持っていますか。また、その際、改正法の施行により法令の整備状況は国際基準に向けて改善されますが、法制度の有効性の観点など様々な審査が行われることが想定される中で、我が国の評価が重点フォローアップ国から通常フォローアップ国に引き上げられる見通しはありますか。見解を伺います。

 さらに、マネロン対策等については、報告書に対応するだけではなく、今後も、国際的な要請などを踏まえ、継続的に対策を続ける必要があります。現在は内閣官房のFATF勧告関係法整備検討室で対応を行っていますが、本法案の成立後に、同室に相当する組織を引き続き存置する想定はありますか。見解を伺います。

 そして、本法案は四省庁六法案の一括法案として提出されていますが、マネロン対策等は政府全体で取り組むべき課題です。各省庁で施策の統一性を図る観点から、マネロン対策等に係る法律を一本化する必要性をどのように考えていますか。見解を伺います。

 次に、テロ資金供与について伺います。

 報告書においては、四十の勧告の中で、唯一、NPOのテロ資金供与への悪用防止を求める事項が不履行、NCとされました。

 この状況を改善すべく、政府は、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針において、NPOのテロ資金供与リスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングの実施と、リスク及び対策の好事例を周知するとしています。なお、FATFがNPOと表している言葉の対象を、政策会議では、特定非営利活動法人、公益法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、宗教法人と定めています。

 そこで、谷大臣に伺いますが、政府は、これらの取組がNPOの悪用防止に対して効果的に作用し、勧告の評価がCの履行若しくはLCのおおむね履行に改善される見通しがあると考えていますか。また、NPOの悪用防止のため、リスクの評価やモニタリング等の取組を法律上義務づけるなど、関係法令を改正するといった考えはありますか。見解を伺います。

 るる、マネロン、テロ資金供与対策について伺いましたが、一方で、規制とイノベーションのバランスも重要な視点です。

 人が想像できることは、人が必ず実現できる。サイエンスフィクションの父、ジュール・ヴェルヌの言葉ですが、実際に私たちの生活においても、数十年前にこんな未来が来るかもと想像していた多くのことが実現されています。

 例えば、アニメ「ドラえもん」は近未来を想像しやすい物語ですが、SFの秘密道具が、現実世界でもそれらに近い形で実装されています。

 具体的には、ほんやくコンニャクというどんな言葉でも操れるようになる道具は、ウェアラブル翻訳端末という形で実装され、個人で空を飛べる道具タケコプターは、電動式の一人乗りヘリコプターという形で実現されました。

 さすがにタイムマシンはできないだろうと思っていたら、メタバースとブロックチェーンの発展で、実質的なタイムリープが体験できます。

 例えば、過去の疑似体験として、戦国時代に本能寺の変で織田信長が死んでいなければどんな時代になっていたのかなど、フィクションストーリーのシミュレーションを行うことや、未来の予測として、若者向けのベーシックインカム政策を導入したら出生率、婚姻率、就業率、労働力率、自殺死亡率等にどのような変化があるのかなど、仮説検証を行うことが可能となります。

 ブロックチェーン技術を基盤とするウェブ3に対しては、各国政府が国として取り組む姿勢を鮮明にしており、日本政府もウェブ3の推進に向けた環境整備の検討を進めることを閣議決定しました。

 そこで、谷大臣に伺いますが、政府は、分散型自律組織、DAOに関する法整備や、ブロックチェーン技能に精通した起業家、エンジニアの育成支援など、ウェブ3エコシステムの健全な発展に必要な具体策をどのように考え、国家戦略を策定、推進しようと考えているのか、お答えください。

 また、財務大臣に伺いますが、ウェブ3に関係する有力スタートアップ企業が海外に転出する原因となっている、暗号資産に関する法人税制の在り方を改善する考えはありませんか。見解を伺います。

 次に、リスクベースアプローチの具体策について伺います。

 FATFは、暗号資産に関連するリスクベースアプローチのガイダンスを改定し、FATF基準における暗号資産、暗号資産交換業者の定義の明確化、ステーブルコインに対するFATF基準の適用など、六つの主要領域に焦点を当てた内容に更新しました。また、FATFでは、ピア・ツー・ピア取引、非代替性トークン、NFT、分散型金融、DeFiなどを含め、暗号資産に関するモニタリングを継続していくとしています。

 これらの対応は、国家の安全保障上不可欠な施策であり、暗号資産などの新しい金融が社会的に定着していく上でも必要な規制ですが、対応するためには事業者負担の増加が見込まれます。

 例えば、本法案では、リスク評価や実質的支配者情報の把握等を行うこととなるため、事業者負担が増加します。

 そこで、谷大臣に伺いますが、ウェブ3関係企業にはベンチャー、スタートアップ企業が多く存在する現状を踏まえれば、政府は、必要な規制を講じていく上で、事業者側へのサポートが必要だと考えますが、いかがですか。見解を伺います。

 次に、ステーブルコインについて伺います。

 本法案においては、ステーブルコインについて、居住者、非居住者間の取引に関する資産凍結を強化することとしています。

 世界のステーブルコイン全体の流通額は二〇二二年十月時点で二十一兆円程度とされていますが、このステーブルコインがマネロン等の手段として用いられている実態をどの程度把握しているのか、お答えください。

 さらに、本法案における電子決済手段、いわゆるステーブルコインとは具体的にどの決済がこれに該当するのか、お答えください。

 そして、ステーブルコインの取引の在り方について、資産凍結者との取引等を資本取引として規制するマネロン対策及びテロ資金供与対策など規制の観点と、一般利用の普及を妨げないイノベーションを牽引するための観点を考えた際に、政府としては、ステーブルコインの規制とイノベーションのバランスをどのように考えているのか、所見を伺います。

 次に、中央銀行のデジタル通貨、いわゆるCBDC、セントラル・バンク・デジタル・カレンシーについて伺います。

 CBDCは、マネロン対策及びテロ資金供与対策に対して有効な手段として制度設計することが可能です。

 現在、オンライン決済における匿名性とマネロン対策及びテロ資金供与対策への対応に不可欠な取引データの追跡可能性については、日本銀行が技術的な観点から調査研究を進めています。また、オフライン決済についても、求められるセキュリティーレベルを調整することで、セキュリティーと利便性のバランスを確保できると考えます。

 そこで、財務大臣に伺いますが、プライバシーの保護とマネロン対策、テロ資金供与対策を両立させたCBDCの制度設計は現実的に可能であると考えていますか。見解を伺います。

 日本におけるCBDC、デジタル円の発行予定は現時点ではないものの、欧州中央銀行のCBDC、デジタルユーロが最短で二〇二六年頃にも発行される可能性を踏まえて、日本でも少なくとも二〇二六年にはデジタル円を発行できる能力があるかないかについて判断はできていますかという質問を日本銀行の黒田東彦総裁に行った際、そう思っているという見解が示されました。この見解は日本政府においても同様の認識を持っているのか否か、財務大臣の見解を伺います。

 また、CBDCの概念実証フェーズ2が二〇二三年三月に終える予定ですが、その後、パイロット実験は実施する想定であるのか、ある場合には、どのような内容をどの程度の期間行う想定なのか、見解を伺います。

 次に、北朝鮮のミサイル発射に関連する問題について伺います。

 拡散金融について、FATFは、大量破壊兵器の拡散に対する資金供与を防止するため、対象を特定した経済制裁の実施を各国に求めています。

 しかし、国際社会が協調して経済制裁を実施している状況下においても、北朝鮮は、今年に入ってから三十一回八十発以上のミサイルを発射し、過去最高を更新しています。

 北朝鮮は、多額の暗号資産を違法に取得することを有力な資金調達手段にしていると見られ、警察庁などが、北朝鮮のサイバー攻撃グループが日本の暗号資産交換業者を狙ってサイバー攻撃を行っていると発表しました。

 そこで、谷大臣に伺いますが、北朝鮮による脅威を取り除くためには、不法な資金調達を阻止するとともに、制裁違反、回避の事例や手法を踏まえ、経済制裁や法執行機関による措置の実効性確保を図ることが必要と考えますが、政府はどのような具体策を講じていく予定ですか。見解を伺います。

 そして、国民の安全を守るためには、政府の全国瞬時警報システム、いわゆるJアラートの改善が必要です。

 十一月三日七時五十分、北朝鮮によるミサイルの発射をめぐりJアラートが発令されましたが、ミサイルが日本上空を通過したと見られるとされたのは、発令の二分前、七時四十八分でした。

 情報は事前に周知しなければ被害を最小限に抑えることはできませんので、迅速性を重視しつつ、必要な地域に確実に伝達され、不要な影響を与えないように改善していただけませんか。

 また、政府はJアラートのシステム改修を行うとのことですが、スピード感を持って進めるべきです。いつ頃までに何をどのように改善しようと考えているのか、官房長官、政府の見解をお示しください。

 以上で質問を終わります。御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 中谷一馬議員の御質問にお答えします。

 まず、マネロン事犯の検挙件数が過去最高を記録したこと等に対する受け止め方とその対策について御質問をいただきました。

 マネーロンダリング対策は、国民生活の安全と平穏や経済活動の健全な発展の観点から、これを国際的な協調の下で推進していくことは重要であると考えているところでございます。御指摘のとおり、令和三年中のマネロン事犯の検挙件数は六百三十二件と過去最高となっているなど、マネロン対策の重要性はこれまで以上に高まっているものと認識しております。

 そのため、政府としては、昨年八月、マネロン対策等の関係省庁で構成されるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を設置し、本年五月にはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針を策定するなど、関係省庁間で緊密に連携して、精力的にマネロン対策の強化に取り組んでおります。

 今後も、今申し上げた基本方針等に基づき、関係省庁が一体となって、マネロン対策の一層の向上に取り組んでまいります。

 次に、第五次審査では通常フォローアップ国を目指す考えを持っているか、また、今回の改正法の施行により通常フォローアップ国に引き上げられる見通しがあるかについて御質問いただきました。

 御審議いただくFATF勧告対応法案は、FATFから勧告された事項のうち、法改正を要する事項を盛り込んだものです。

 法律改正を要しない事項についても、政府は、マネロン等対策のための政策会議の設置や行動計画を公表するなど、関係省庁で緊密に連携し、精力的に取り組んでいるところです。

 これらの取組を着実に進め、日本のマネロン等対策を抜本的に強化することにより、第四次審査のフォローアップにおいて相応の評価が得られるものと期待するとともに、今後とも、政府一丸となって、将来の第五次審査に向けてマネロン等対策に取り組んでまいります。

 次に、法案成立後のマネロン対策等のための組織体制について御質問いただきました。

 マネロン対策等については、法案成立後も引き続き、社会情勢等の変化に応じて強化を図っていく必要があります。そのため、政府としては、昨年八月、マネロン等対策の関係省庁で構成される政策会議を設置し、本年五月にはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針を策定するなど、関係省庁間で緊密に連携して、精力的にマネロン等対策の強化に取り組んでいるところです。

 こうした政策会議の枠組みを活用し、政府一丸となって、マネロン対策等を推進します。

 我が国のマネロン対策等に関し、将来的に法律を一本化することについて御質問いただきました。

 今回改正する法案については、改正の趣旨、目的が一つであり、相互に関連して一つの体系を形作っていると認められることから一括法としており、本法案によって統一性のある形で施策を展開することが可能と考えております。マネロン対策等に当たっては、引き続き、政府一丸となって取り組んでまいります。

 NPOに関する取組により勧告の評価が改善される見通しがあるかについて御質問いただきました。

 NPOについては、テロ資金供与に悪用されるリスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングを実施するとともに、高リスク地域で事業を実施するNPOの活動の健全性が維持されるよう、テロ資金供与リスクとテロ資金供与対策の好事例に関する周知を行うこととしております。

 このような取組を着実に進めていることについて、FATFから相応の評価を得られるよう、関係省庁が一体となって、FATFに対する適切な説明を尽くしてまいります。

 NPOの悪用防止について御質問いただきました。

 昨年八月のFATFの対日審査報告書において、関連法令の改正は求められていないものの、NPOのリスク評価を実施し、リスクベースアプローチによりモニタリングを実施すること等が求められたところです。

 これを受けて、関係府省において、NPOのテロ資金供与リスクに関する文書を取りまとめ、全国の所轄庁等へ通知することなどにより、モニタリング等を進めるとともに、テロ資金供与への悪用を防止するための周知資料等を作成し、全国のNPOへの注意喚起を行うなどの取組を行ったところです。

 関係府省等においては、引き続きモニタリングを行うとともに、必要に応じて各関係法令等に定める権限を適切に行使することなどにより、NPOに係る対応を進めてまいります。

 次に、ウェブ3エコシステムの健全な発展について御質問いただきました。

 政府としては、新たなデジタルサービスを我が国の経済成長につなげるべく、骨太の方針やデジタル社会の実現に向けた重点計画において、政府一体となって、ウェブ3の推進に向けた環境整備に取り組むこととしております。

 それを受け、本年九月、デジタル庁にWeb3・0研究会が設置され、ウェブ3により実現を目指す経済、産業、社会の姿につき、更なる検討が行われています。

 本研究会では、ウェブ3エコシステムの健全な発展に向けて、例えば、実際にDAOと呼ばれる分散型自律組織を組成し、利用体験を共有しながらその可能性と課題を把握した上で、必要な対応について議論すべき、エンジニアの育成の観点から、ウェブ3に関するタイムリーで正確な情報を提供する場を設けるべきといった御意見がありました。こうした御意見を踏まえ、今後、年末までに議論が取りまとめられる予定です。

 政府としては、本研究会での取りまとめを踏まえながら、技術の進展等に応じ、スピード感を持って、ウェブ3推進に向けた環境整備を進めてまいります。

 必要な規制を導入する上での事業者負担の増加に関し、事業者側へのサポートの必要性について御質問いただきました。

 今般のFATF勧告対応法案においては、マネロン対策等の強化の観点から、必要な規制を導入する上で、暗号資産交換業者に対するトラベルルールの導入など、新たな事業者負担が生じるものが含まれております。そのためにベンチャー企業等に大きな混乱が生じるものとは承知しておりませんが、事業者負担の状況については、関係省庁と連携して、注視してまいります。

 いわゆるステーブルコインの実態について御質問いただきました。

 いわゆるステーブルコインについては、本年六月に成立した改正資金決済法において電子決済手段等として規定され、その仲介業者に対して規制が導入されることになりますが、現時点で同法は未施行であり、登録等を受けて取り扱う国内事業者は存在しないことから、マネロン等の手段として利用されている実態に関する公的な統計等は存在していません。

 いわゆるステーブルコインの取引について御質問いただきました。

 いわゆるステーブルコインに関しては、本年六月に成立した改正資金決済法において、いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格、例えば一コイン一円のように発行され、発行価格と同額で償還することを約するもの等を電子決済手段等として規制対象としています。

 こうしたものは、銀行、資金移動業者等が発行する既存のデジタルマネーと同様に、送金・決済手段として社会で幅広く使用されることが想定されます。

 今般の法律案では、電子決済手段に関する取引を資本取引とみなす旨規定し、当該取引に際して主務大臣の許可を受ける義務を課すことができるようにすることにより、制裁対象者から第三者へ電子決済手段を移転する取引も規制対象に追加し、銀行等や暗号資産交換業者と同様に、電子決済手段を取り扱う業者に対しても、制裁対象者に係る移転でないことを事前に確認する義務を課すこととしています。

 最後に、北朝鮮による不法な資金調達の阻止や、経済制裁や法執行機関による措置の実効性確保について御質問いただきました。

 北朝鮮による不法な資金調達を阻止し、経済制裁や法執行機関による制裁措置の実効性を確保していくことは、我が国にとって喫緊の課題です。

 こうした認識の下、御審議いただいているFATF勧告対応法案においては、ステーブルコインに対する資産凍結を強化するとともに、暗号資産交換業者等に対し、資産凍結の実効性確保のため必要な体制を確保する義務を課すこととしております。また、暗号資産取引の追跡可能性を高める観点から、暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転に係る通知義務を課すこととしております。

 引き続き、北朝鮮の不法な資金調達活動の抑止等に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 中谷一馬議員の御質問にお答えを申し上げます。

 まず、暗号資産に関する法人税制の在り方についてお尋ねがありました。

 暗号資産については、期末の時価評価による現行の取扱いについて、ウェブ3推進に向けた環境整備を図る観点から、令和五年度税制改正の要望をいただいていると承知いたしております。

 現行の取扱いを変える場合には、暗号資産の会計上や実務上の取扱いを念頭に置いて議論する必要があり、今後、与党税制調査会等の場での御議論を踏まえて、適切に対応してまいりたいと思っております。

 次に、いわゆるステーブルコインの取引の規制とイノベーションのバランスについてお尋ねがありました。

 ステーブルコインについては、幅広い分野において一般に利用される送金・決済手段となる潜在的な可能性が指摘される一方、マネロン、テロ資金供与対策を始め、利用者保護上の課題が指摘されるものもあると承知いたしております。

 金融庁としては、事業者において適切な利用者保護が図られながら、健全な競争により金融イノベーションが生み出されていくことが重要と考えており、ステーブルコインの取引の規制に当たっては、その両立が図られるよう配意してまいります。

 最後に、CBDCの制度設計等に関してお尋ねがありました。

 CBDCにつきましては、欧州や米国等、世界各国で調査検討が進められているものと承知しており、我が国としても、社会経済のデジタル化の流れの中で、当然、検討を進めていくべきものと考えております。

 その上で、CBDCの在り方につきましては、多岐にわたる制度面や法律面の論点の検討が必要と考えており、御指摘のプライバシーの保護、マネーロンダリングへの対応は、今後の制度設計における課題として、両立に向けた検討を行うことが重要であると考えております。

 また、御指摘の黒田総裁の御発言は、概念実証を進める日本銀行として、技術的な実現可能性の検証に関する一つの考え方を示されたものと承知しておりますが、財務省としては、引き続き、日本銀行とも連携しつつ、技術的な検証に加えて、制度面や法律面の検討を進めていく必要があると考えております。

 さらに、お尋ねのパイロット実験につきましては、日本銀行の取組方針等において、概念実証を経て、更に必要と判断されれば、視野に入れて検討するものとされており、その実施の有無や時期につきましては、日本銀行において適切に判断されるものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) Jアラートについてお尋ねがありました。

 Jアラートの運用、在り方については、送信時間を一層早めることなどについて様々な御意見もいただいていることも踏まえ、関係省庁が連携し、システム改修も含めた改善策を検討しております。

 具体的な改善策の内容や実施時期等については、現時点、確定しておりませんが、速やかに検討を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 岩谷良平君。

    〔岩谷良平君登壇〕

岩谷良平君 日本維新の会の岩谷良平です。

 ただいま議題に上がりました国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案について、党を代表して、関係大臣に質問します。(拍手)

 今回の法改正は、マネーロンダリングやテロ資金供与、大量破壊兵器拡散に寄与する資金供与への対策に関する国際基準の策定、履行審査を担う多国間の枠組みであるFATFが昨年八月に公表した、日本のそれら対策に対する第四次審査報告書を受けたものです。

 我が国は、マネーロンダリング、テロ資金供与リスクの評価と国内連携、国際協力などの分野で一定の評価を受けたものの、金融機関等への監督などに改善の余地があるとして、三段階評価の中間に当たる重点フォローアップ国に認定され、資産凍結措置や暗号資産への対応、マネーロンダリング対策等の強化が求められました。

 重点フォローアップ国とされたことで、現段階で我が国に対して具体的にどのような悪影響が生じていますか。また、今後、仮にFATFの勧告への対応が遅れた場合、更に具体的にいかなる問題が生じると考えますか。財務大臣に答弁を求めます。

 日本は、二〇一八年以降、度々FATFから勧告が出され、近年では、暗号資産を取り扱う業者に対して銀行並みの厳しい規制を課すことや、制裁対象者への資金その他の資産の流れを遅滞なく止めること、制裁の潜脱リスクの評価やリスク低減措置を行うことなどを求められました。

 もちろん政府は対策の強化を急いできたと考えますが、第四次対日審査報告書では、あのロシアよりも低い重点フォローアップ国に認定され、三年間、毎年、改善状況を報告するよう義務づけられました。

 財務大臣に質問します。

 当然、政府は、今回の法整備によって残りのFATFの要求に十二分応え得る対策を講じるべきだと考えますが、今回の法案に現時点で万全の対策を盛り込むことができたと言い切れますか。

 加えて、改正法の施行により、我が国の取組への評価が重点フォローアップ国からその上の通常フォローアップ国に引き上げられるとお考えですか。なおも取り組むべき課題があるというなら、その内容も併せてお答えください。

 専門家からは、マネーロンダリング等が行われると、経済政策のコントロールの喪失や経済のゆがみ、経済成長の阻害等の悪影響が生じると指摘されています。仮に国際社会としてマネーロンダリングを完全に封じ込めることができないなら、我が国の経済社会に具体的にどのような影響を及ぼすとお考えですか。

 マネーロンダリングやテロ資金供与の根絶に向けては、金融機関の取組、すなわち金融システムが犯罪収益の隠匿やテロ資金供与に悪用されないための予防措置と、法執行、すなわち刑事罰によるマネロンやテロ行為の抑止と違法な資金の剥奪が車の両輪となります。国際基準に沿った強固な体制を構築するためには、目先のFATF対策で対症療法的に対応するのではなく、官民がより連携し、指摘された課題の本質を捉えた取組が求められます。

 国連薬物犯罪事務所によると、マネーロンダリングの規模は、世界全体のGDPの約二から五%、つまり約八千億ドルから二兆ドルと推計されています。他方、国家公安委員会による年次報告書によれば、我が国では、犯罪収益及び薬物犯罪収益として没収、追徴された金額は、令和二年で四百二十八件、約十七億円でした。

 政府としては、近年、我が国においてマネーロンダリングが疑われる事案は具体的にどれほどあり、どれほどの被害額が生じていると把握されていますか。谷国務大臣、答弁を願います。

 第四次対日審査報告書においては、日本におけるテロ資金供与リスクは相対的に低いと評価されているほか、テロ資金供与の事案での起訴事例がないと指摘されています。我が国において、起訴に至らなかったものの、テロ資金供与の疑いが持たれた事例や未然に防いだ事例は過去にありましたか。谷国務大臣に答弁を求めます。

 また、同報告書において、テロ資金供与のリスクに対する評価と理解は、テロ対策の専門家からは示されていますが、その対策を担う他の行政当局の職員には及んでいないとの指摘がありました。認識が甘いと言わざるを得ませんが、この原因は何だと考えますか。この指摘を踏まえ、テロ資金供与のリスクについての行政当局内の周知をいかに徹底していくお考えなのか、谷国務大臣に伺います。

 第四次対日審査報告書において、過去にテロリストの活動に関係があった、あるいは活動の疑いがある国内グループのテロ資金供与活動については、現行のテロ資金提供処罰法の不備によってカバーされていないと指摘されました。

 本法案においては、一定の犯罪行為を特定犯罪行為と定義し、テロ資金提供処罰法の処罰の対象を拡大していますが、これによって、先ほど述べた国内グループも処罰の対象に含まれ得るのでしょうか。また、現在は適法な活動のみを行っている国内グループについても、過去の違法な活動を基に、新たに同法による処罰の対象となり得るのでしょうか。谷国務大臣にお尋ねします。

 本法案により、リスク評価や実質的支配者情報の把握等を行うことが不可欠となるため、金融機関始め民間事業者の事務負担がかさむことが予想されます。特に、経営状況が芳しくない小規模事業者は取り残される可能性が捨て切れません。何より重要なのは、法の実効性が担保されることです。

 現段階で、今回の法改正後の事務負担増について事業者から懸念の声が届いていますか。また、実効性を担保するために、全ての対象事業者が法令を遵守するよう徹底する必要がありますが、いかなる対策を講じていくお考えですか。谷国務大臣に答弁を求めます。

 マネーロンダリング対策のためには、金融機関での口座開設の際に本人確認を厳格に行うことが鉄則です。本人確認を迅速かつ確実に実施できるようにするためには、デジタル技術を積極的に利活用してしかるべきだと存じますが、谷国務大臣の見解を伺います。

 第四次対日審査報告書において、FATFによる四十の勧告のうち唯一不履行とされたのは、NPOのテロ資金供与への悪用防止を求める勧告八に関してです。我が国はNPOに対して十分な措置を行っていないと指摘されました。

 今年五月のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針では、NPOのテロ資金供与リスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングを実施すること、並びにリスク及び対策に関する好事例に関する周知を行うとされています。

 政府は、これらの取組がNPOのテロ資金供与への悪用防止にどの程度寄与するとお考えですか。これによって勧告八の評価が改善される見通しだと言い切れますか。また、NPOの悪用防止を徹底するために、リスク評価やモニタリング等の取組を法で義務づけるなど、特定非営利活動促進法を改正することも一案と考えますが、いかがですか。いずれも谷国務大臣にお答え願います。

 近年、FATFにおいては、環境犯罪について高い関心が持たれています。第四次対日審査報告書においても、前提犯罪となる環境犯罪の範囲が不十分であると指摘され、あらゆる重大犯罪への資金洗浄罪の適用を求める勧告三について、おおむね遵守とされました。

 環境保護団体からは、これまで環境犯罪を理由にマネーロンダリング等として検挙された事例がないことを踏まえ、環境犯罪を重大なリスク分野として捉えた上で、環境犯罪への対策を速やかに導入すべきだという意見も出ています。

 こうした状況の下、政府として、環境犯罪への対応を強化する必要があるとお考えですか。必要だとすれば、具体的にどのような対策を講じていく方針なのか、谷国務大臣にお伺いをいたします。

 本法案は四省庁六法案の一括法案として提出されていますが、マネーロンダリング対策等は政府全体で取り組む課題であります。各省庁の施策の統一性を図り、縦割り行政を排除する観点から、マネーロンダリング対策等に係る法律を一本化して対処するのがあるべき姿ではないですか。官房長官に答弁を求めます。

 インターネットの飛躍的普及などに伴い国際犯罪は日々巧妙化しており、国際社会が一致結束して矢継ぎ早に対策を打っても、イタチごっこの状況が続くことも十分想定されます。ゆえに、マネーロンダリング対策については、日本としても、FATFの第四次審査報告書に対応するだけでは十分とは言えません。

 来年、我が国はG7の議長国でもあります。FATFに指摘されてから動くのではなく、今後も、国際的な要請に鑑み、一切の抜け道を遮断するために、我が国が主体的かつ不断に対策を検討し、国際社会をリードしていくべきではないですか。政府の見解と具体的な対応方針を併せて官房長官に伺います。

 マネーロンダリング対策等をめぐっては、政府の組織体制も強化してしかるべきです。

 この点、改正法の施行に伴い、疑わしい取引の届出件数が増加すると見込まれるため、警察庁の組織体制を強化する必要があると考えます。

 また、第四次対日審査報告書への対応は内閣官房のFATF勧告関係法整備準備室で行っていますが、本法案成立後、どのように組織体制を構築していく方針ですか。

 そもそも、FATF勧告で度々不合格と判定される根本の原因に我が国の縦割り行政があり、今回も縦割りでばらばらに法整備が行われていますが、縦割り行政を根本から変革する必要があるのではないですか。併せて官房長官に答弁を求めます。

 東京、福岡と並んで、大阪では、経済の血液たる金融機能の強化を図り、ポストコロナに向けた大阪、関西経済の再生、成長の柱とするため、独自の個性、機能を持つ国際金融都市の形成を目指す国際金融都市OSAKA戦略に取り組んでいます。

 マネーロンダリング、テロ資金供与対策等で我が国が国際社会から後れを取れば、日本の金融システムの安定性や信頼性を損ない、東京、福岡、そして国際金融都市OSAKA戦略の行方にも暗い影を落としかねません。一方で、過度な規制が金融、経済に締めつけとならないようにするべきです。

 この点、今後有望な革新的技術、産業を育てる観点からも、政府として主体的にFATFに働きかけるなど、適切なルール作りを行うと同時に、FATFと確認しながらも、国際競争力を損なわないようにする運用を行っていくべきだと考えますが、財務大臣のお考えをお伺いいたします。

 また、そもそも、FATF勧告に対処する理由の一つが国際金融センターとしての地位の確保であれば、一方で、国際金融センターとしての地位向上のための施策を打っていくべきです。そのためには、特区制度を用いるなど特定地域に限定して、大胆な減税措置、在留資格の緩和、私設取引所の総量規制、競争売買規制の緩和など、人材や投資を呼び込むための施策を戦略的に打ち出すべきだと考えますが、金融担当大臣の御見解を伺います。

 政府に対しては、日本経済の成長を軌道に乗せるためにも、我が国が世界を牽引する決意と覚悟を持ってマネーロンダリング対策等に取り組んでいただくと同時に、金融、経済に過度な制限とならぬよう、適切な制定、運用が行われることを強く求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 岩谷良平議員の御質問にお答えします。

 まず、我が国においてマネーロンダリングが疑われる事案の数と被害額について御質問いただきました。

 令和三年までの三年間において、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法上のマネーロンダリング罪の行為で検挙された件数は一千七百六十九件でした。

 また、マネーロンダリング事案の被害額について網羅的に把握しているものではありませんが、この三年間に組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の規定により没収、追徴が言い渡された犯罪収益等の合計額は約六十七億円と承知しております。

 次に、テロ資金供与のリスクについて御質問いただきました。

 御指摘のとおり、我が国ではテロ資金供与に係る検挙事例はないものの、例えば、テロ資金供与との関連が疑われる取引について、特定事業者から疑わしい取引の届出がなされている事例はあるものと承知しております。

 このほか、過去には、ライフルスコープを不正にインドネシアに輸出したとして外国為替及び外国貿易法違反で逮捕された在日インドネシア人二人のパソコン等に、イスラム過激派の思想に共鳴していたと見られる画像等が保存されていた事例などもあったと承知しております。

 次に、テロ資金供与についての行政当局における理解と今後の周知について御質問いただきました。

 行政当局の一部においてテロ資金供与のリスクの理解が不足しているとの指摘に関しては、当該部局におけるテロ資金供与のリスクに関する啓発等が必ずしも十分でなかったことも一因であると考えております。

 今回の指摘も踏まえつつ、国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書においては、テロ資金供与のリスクに関する理解を促進するため、最新の国際テロ情報等を記載したほか、令和三年八月に設置した警察庁と財務省を共同議長とするマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を活用して必要な情報交換を行うなどしているところであり、引き続き、関係省庁間でのテロ資金供与のリスクに関する共通認識を醸成してまいります。

 次に、テロ資金提供処罰法に特定犯罪行為を新設した場合の処罰対象について御質問いただきました。

 今回の改正は、FATFの勧告に対応し、国際協調によるテロ資金対策をより十全にするため、テロ資金供与防止条約及び各関連条約の文言に則して新たに定義した特定犯罪行為を資金提供等の罪の対象に追加するものです。新たな処罰規定は改正の施行後の行為にのみ適用されますので、処罰規定が施行前の過去の行為に遡って適用されることはなく、そのような過去の行為が新たに処罰の対象となるということはありません。

 次に、事業者の事務負担について御質問いただきました。

 FATF勧告対応法案には、例えば、暗号資産交換業者が暗号資産の移転時に送付人、受取人の情報を通知する義務や、法律、会計等専門家が特定の行為を受任、代理する場合の確認義務等が盛り込まれておりますが、現段階で、事務負担増について事業者から強い懸念の声があるとは承知しておりません。

 関係省庁における事業者の監督等を通じて法令遵守の徹底を促し、また、この法案の改正事項についての御理解と御協力を得られるよう、引き続き、関係省庁と連携して、丁寧な説明等に取り組んでまいります。

 次に、金融機関が行う本人確認におけるデジタル技術の利活用について御質問いただきました。

 政府としては、本人確認においてデジタル技術の利活用は有効であると考えており、これまでも、犯罪収益移転防止法の施行規則を改正するなど、環境整備に努めてまいりました。

 こうした中、金融機関においては、公的個人認証サービスの署名用電子証明書を用いた方法や、オンラインで顧客から顔写真つきの本人確認書類と容貌の画像の送信を受ける方法の導入が進みつつあると認識しており、引き続き、デジタル化の進展を踏まえつつ、実効的なマネーロンダリング対策を実施してまいります。

 次に、NPOのテロ資金供与について御質問いただきました。

 現在、FATF対日審査での指摘を踏まえ、NPOを所管する関係府省を中心に、NPOのリスク評価やテロ資金供与対策に関する周知など、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画で掲げている取組等を行っており、これらの取組を着実に進めることにより、第四次審査のフォローアップにおいて相応の評価が得られるものと期待しています。

 NPO法人に関しては、昨年八月のFATFによる対日審査報告書において、リスク評価を実施し、リスクベースアプローチによりモニタリングを実施すること等が政府に対して求められたところです。

 これを受けて、内閣府において、NPO法人のテロ資金供与リスクに関する文書を取りまとめ、本年六月に全国の所轄庁等へ通知することでモニタリング等の実施を依頼するとともに、テロ資金供与への悪用を防止するためのガイダンスを作成し、全国のNPO法人に周知したところです。

 引き続き、所轄庁等を通じてモニタリングを行うとともに、必要に応じて、特定非営利活動促進法等に定める権限を適切に行使し、NPO法人に係る対応を進めてまいります。

 最後に、環境犯罪への対応について御質問いただきました。

 捜査当局においては、従来から、環境を汚染する不法投棄等の悪質な廃棄物事犯や、生物多様性に影響を及ぼす野生動植物の不法取引事犯など、いわゆる環境犯罪の取締りを強化しているものと承知しています。

 また、このような犯罪が組織的犯罪処罰法における犯罪収益の前提犯罪である場合には、その犯罪収益は没収、追徴の対象となり、犯罪収益の隠匿などの行為はマネーロンダリング罪の処罰対象となります。

 今回の法案によりマネーロンダリング罪の法定刑が引き上げられ、没収可能な犯罪収益の範囲が拡大されることとなった場合には、捜査当局や裁判所において、法改正の趣旨を踏まえて関係規定が適用されることとなるものと考えています。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 岩谷良平議員の御質問にお答えを申し上げます。

 まず、日本が重点フォローアップ国とされたことによる我が国への影響、また、今後対応が遅れた場合の問題についてお尋ねがありました。

 重点フォローアップ国は、審査後三年間、毎年、FATFへの改善状況の報告が求められますが、これは我が国の金融取引に制約を課すものではなく、直ちに悪影響が生じるものではありません。

 他方、三年が経過しても改善状況が芳しくない場合、マネロン等のリスクの高い国として名指しされることや、日本への対抗措置を各国に要請するといった対応につながる可能性があります。仮にこうした措置が講じられた場合、海外の金融機関が日本の金融機関との取引のリスク管理を強化したり取引を回避したりするなどのおそれがあると考えられます。

 いずれにせよ、政府としては、一丸となってマネロン等対策の強化に取り組むことで、我が国の安全保障や健全な経済活動の実現、国際金融センターとしての地位向上に貢献していきます。

 次に、今回の法案で万全の対策と言えるのか、法改正により通常フォローアップ国に引き上げられるのか、また、マネロン等の我が国に及ぼす影響についてお尋ねがありました。

 御審議いただくFATF勧告対応法案は、FATFから法改正すべきと勧告された事項を盛り込んだものであります。

 その他法律改正によらない事項については、政府は、マネロン等対策のための政策会議を設置し、行動計画を策定、公表するなど、関係省庁で緊密に連携し、精力的に取り組んでいるところです。

 これらの取組を着実に進めることが、今後のFATF対日審査においても、通常フォローアップ国も含め、相応の評価を受けるために必要と考えております。

 また、マネロン等の不正な資金移動は、将来の犯罪活動等に利用されたり大量破壊兵器の拡散を助長することで、我が国の安全保障や健全な経済活動、国際金融センターとしての地位に悪影響を及ぼすと考えられます。引き続き、国際社会と連携しつつ、政府一丸となって、マネロン等対策の強化に取り組んでまいります。

 次に、過度の規制が金融経済の引締めとならないよう適切なルール作りを行い、国際競争力を損なわないよう運用すべきとのお尋ねがありました。

 経済、金融サービスのグローバル化や技術革新は、マネロンやテロ行為、大量破壊兵器の拡散に寄与する資金供与の新たなリスクをもたらす一方、金融システムや経済に便益をもたらすことも事実であります。

 こうした認識の下、日本が議長を務めた二〇一九年のG20財務大臣・中央銀行総裁会議の声明では、FATFに対し、技術革新がマネロン等対策にもたらすリスクと機会の双方について検証していくよう要請しました。

 今後とも、我が国としてFATFの議論に積極的に参画していくとともに、国内においても、技術革新がもたらす機会とリスクへの対応の両立を図りながら、マネロン等対策を進めてまいりたいと考えております。

 最後に、国際金融センターとしての地位向上のための施策についてお尋ねがありました。

 金融庁といたしましては、我が国が国際金融センターとしての地位を確立するためには、国内の特定地域に施策を限定するのではなく、我が国自体がビジネスを行う場として魅力的な国家となることが重要と考えております。

 こうした観点から、国内外の金融関係者からの要望を聞きながら、これまで、海外事業者に対する英語によるワンストップでの支援窓口の創設、金融人材の在留資格の特例の創設、税制の抜本的な見直しなどに省庁横断で取り組んできたところであり、さらに、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画等も踏まえ、国際金融センターの実現を目指して、官民一体となって金融創業支援等を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 我が国のマネロン対策等に関し、将来的に法律を一本化することについてお尋ねがありました。

 今回改正する法案については、改正の趣旨、目的が一つであり、相互に関連して一つの体系を形づくっていると認められることから一括法としており、本法案によって統一性のある形で施策を展開することが可能と考えております。マネロン対策等に当たっては、引き続き、政府一丸となって取り組んでまいります。

 マネロン対策等について我が国が主体的かつ不断に検討し、国際社会をリードするべきとのお尋ねがありました。

 マネロン対策等については、技術の進歩等を踏まえ、国際社会が足並みをそろえて対応することが肝要です。

 我が国は、来年のG7議長国であり、FATF等の場における国際的な議論に一層主体的に関与し、国際社会の取組をリードしてまいります。

 法案成立後のマネロン対策等のための組織体制と縦割り行政の変革の必要性についてお尋ねがありました。

 マネロン対策等については、法案成立後も引き続き、社会情勢等の変化に応じて強化を図っていく必要があります。そのため、政府としては、昨年八月、マネロン等対策の関係省庁で構成される政策会議を設置し、本年五月にはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針を策定するなど、関係省庁間で緊密に連携して、精力的にマネロン等対策の強化に取り組んでいるところです。

 引き続き、こうした政策会議の枠組みを活用するなどして、政府一丸となってマネロン対策等を推進します。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 鈴木敦君。

    〔鈴木敦君登壇〕

鈴木敦君 国民民主党の鈴木敦です。

 会派を代表して、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。(拍手)

 我が国周辺のみならず、世界において軍事的な脅威が一段と増している昨今において、テロや大量破壊兵器の開発等の資金源を断つという取組は、本来、アジアにおいて最も脅威にさらされている地域に位置する我が国が主導しなければならない課題でありました。

 その我が国が、FATFの評価で、英国、香港より一段下の重点フォローアップ国の指定を受け、三年間にわたって改善状況を報告せねばならなくなったことは誠に残念です。本勧告に従い速やかな是正を行うことはもちろんですが、その実効性を担保するために、以下質問いたします。

 我が国の周辺には、大量破壊兵器あるいはその運搬手段となり得る長距離ミサイルを実際に保有している国家がありますし、特に新規に配備するための開発等を行う国家も存在しています。多額の費用がかかるにもかかわらず、数々の制裁を物ともせず開発、実験を続けることができているのは、その制裁に穴があるからだと言わざるを得ません。

 特に北朝鮮による大量破壊兵器、ミサイル開発等は、その実験過程において長距離弾道ミサイルを我が国上空を通過する軌道で発射するなど、極めて深刻な問題です。

 その北朝鮮は、ハッキング等により昨年一年間で合計七件、合計三・九五億ドル相当の暗号資産等を窃取し、これが大量破壊兵器や弾道ミサイル等の研究開発費用の原資となっています。

 まず、これら窃取された犯罪収益に対する法体系について伺います。

 犯罪収益が没収できる前提犯罪の範囲については、法定刑が四年以上の懲役などに限定されており、現行の日本の法体系では全ての犯罪を網羅できていません。

 例えば、不正アクセス禁止法における不正アクセスは、法定刑が三年以下の懲役なので、犯罪収益を没収できないことになります。IDやパスワードの不正使用、ハッキング行為など、まさに北朝鮮が行っている方法ですが、これら不正アクセスにより得られた収益が没収できない可能性があります。現状は、法の網に穴が空いていると言っても過言ではありません。

 本法律案では、没収を可能とする前提犯罪を拡充する規定はありません。前提犯罪は可能な限り漏れのないように拡充すべきと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。

 また、本法律案の中には、暗号資産等に係る更なる措置として、トラベルルールや資産凍結の強化等がうたわれていますが、より実効性を担保するためには、サイバーセキュリティーの観点からも併せて議論し、金融インテリジェンス能力の向上を図るべきと考えますが、国務大臣の御所見を伺います。

 我が国のマネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策に係る法律とそれを実施する所管省庁は、複雑かつ多岐にわたります。そのため、本法律案は、四省庁にわたる六法案を改正する束ね法案として提出されております。

 まずもって、マネロンや拡散金融に対する法律体系と所管行政機関の在り方が非常に複雑であると感じざるを得ません。FATFの報告書でも法的枠組みの複雑さについて言及しておりますが、複雑多岐にわたる法体系と実施体制が迅速かつ漏れのない対処に対する一つの障害となっているのではないかと危惧しています。

 今回、六つの法律を改正することとなりますが、将来的によりシンプルな法体系とすること、また、金融インテリジェンスに係る各種情報を評価し関係機関を統括して戦略を立案する組織を構築する必要があると考えますが、谷大臣の御見解を伺います。

 FATFの勧告は、世界の二百を超える国、地域がコミットするグローバルな基準ですが、FATFの対日相互審査報告書に全体を通して指摘されているとおり、日本政府全体の金融インテリジェンスの重要性についての認識、これを包括的にコントロールすることにより、マネロンや拡散金融に対処することが安全保障に直結していくという危機意識を強化すべきです。金融インテリジェンスの強化は安全保障の一環です。

 昨今、日本周辺の安全保障環境の悪化から、防衛力強化の議論が盛んに行われておりますが、我が国で整備が遅れているインテリジェンス部門を強化することが安全保障をより確かなものにすると信じます。国際機関から指摘を受ける前に我が国が率先してマネロンやテロ資金供与、拡散金融に対して実効性ある体制を取ることが、ひいては我が国の安全保障の強化につながることをお訴えして、私の質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣葉梨康弘君登壇〕

国務大臣(葉梨康弘君) 鈴木敦議員にお答え申し上げます。

 犯罪収益の前提犯罪を拡充すべきではないかとのお尋ねがありました。

 組織的犯罪処罰法における犯罪収益の前提犯罪は、暴力団等の犯罪組織によって多額の収益を獲得するために実行されると認められる犯罪などが個々に列挙されていましたが、平成二十九年の改正により、国際組織犯罪防止条約の規定に適合するよう、その範囲が拡大され、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪はその全てが前提犯罪とされたところです。

 その上で、御指摘のように前提犯罪を拡充することについては、現実に当該犯罪により暴力団等の犯罪組織が多額の収益を獲得している実態があるかどうかや、関連する条約その他国際的な犯罪収益規制の動向などを踏まえて検討されるべきものであると考えています。(拍手)

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 鈴木敦議員の御質問にお答えします。

 まず、FATF勧告対応法案における暗号資産等に係る措置につき、より実効性を担保するため、サイバーセキュリティーの観点も含めた金融インテリジェンス能力の向上を図る必要性について御質問いただきました。

 御審議をお願いしているFATF勧告対応法案におきましては、FATFの勧告も踏まえ、暗号資産に対するトラベルルールの導入や資産凍結の強化等の措置を盛り込んでいるところです。こうした新たな措置を実効性ある形で実施していく上では、御指摘のとおり、サイバーセキュリティーの観点も含めた金融インテリジェンス能力の向上を図っていくことは重要な課題です。

 こうした課題については、金融機関のサイバーセキュリティー強化のため、仮想サイバー攻撃への対応のための演習を毎年実施しているほか、疑わしい取引の事例集を作成するなど取り組んでいるところであり、今後ともしっかりと対応してまいります。

 次に、我が国のマネロン対策等に関し、将来的によりシンプルな法体系とすること、及び、金融インテリジェンスに関し、関係機関を統括して戦略を立案する組織を構築する必要性について御質問いただきました。

 将来の法整備の在り方や金融インテリジェンスに関する今後の組織整備については、技術の進歩や社会経済情勢の変化も踏まえて様々な観点から検討する必要があることから、現時点で予断を持ってお答えすることは控えたいと思いますが、マネロン対策等の実施に当たっては、こうした状況の変化をタイムリーに把握し、実効性のある形で対応していくことが肝要です。

 このため、政府としては、昨年八月、マネロン対策等の関係省庁で構成される政策会議を設置し、本年五月にはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針を策定するなど、関係省庁間で緊密に連携して、精力的にマネロン等対策の強化に取り組んでいるところです。

 まずは、御審議いただいておりますFATF勧告対応法案の早期成立を改めてお願いするとともに、政策会議の枠組みを適切に活用し、関係省庁一丸となって実効性のある形でマネロン対策等を実施するべく、不断に努力してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、FATF勧告対応法案について質問します。(拍手)

 本法の改正を審議した法制審議会では、マネロン罪の法定刑の引上げについて、統計上、日本では重罰化の立法事実は認められない、処罰根拠が不明確などの意見が出されています。また、法定刑の引上げにより犯罪収益等収受罪などが新たに共謀罪の対象になり、共謀罪の対象が拡大されることに危惧する声も出ています。

 こうした点についての政府の見解を求めます。

 FATFが二〇一七年十一月三日に発表した北朝鮮に対する声明は、北朝鮮から生じる拡散金融リスクについて深く懸念し、北朝鮮の不正な金融活動を根絶するべく、FATF勧告の強力な履行の重要性を強調すると述べています。

 日本政府はこの声明に応えてどのような措置を取ったのか、お答えください。

 次に、北朝鮮の不正な金融活動に関して具体的に伺います。

 統一協会の文鮮明は、一九九一年に四千五百億円を、一九九三年に三百万ドルを北朝鮮に寄附したと米国の国防情報局、DIAの文書に記載されていることが先日の予算委員会で取り上げられました。

 また、北朝鮮が九〇年代中盤から旧ソ連製のゴルフ級の潜水艦を導入してSLBM技術を獲得したと韓国国防部国防政策室長が韓国の国会で答弁し、ロシアからの潜水艦購入には統一協会の関与も指摘されています。

 政府は、当然、こうした情報を承知したと思いますが、極めて違法性の高いこれらの疑惑について調査をしたのですか。

 統一協会は、一九九九年から二〇一一年にかけて、七千六百五十一億円もの資金を日本から韓国に送金したと言われています。その資金の一部が北朝鮮に流れていないと政府は断言できますか。明確な答弁を求めます。

 昨日の毎日新聞の報道によれば、統一協会の創始者文鮮明氏が、一九八九年に韓国で行った説教で、日本の国会内に教会をつくる、国会議員の秘書を輩出する、そして、自民党の安倍派などを中心にしてそうした議員たちの数を徐々に増やしていかないといけないと述べ、地方にもそのような関係強化を進めると発言しています。

 自民党と統一協会の抜き差しならない深い関係性を一方の当事者が隠すことなく語った、極めて重大な発言です。もはや議員個々の関与とは次元の異なる、自民党全体の疑惑ではありませんか。

 政府及び自民党には、この問題を徹底的に調査し、全容を解明し、国民に明らかにする責任があります。内閣官房長官の答弁を求めます。

 最後に、暮らしと経済についてお聞きします。

 多くの国民が終わりの見えない物価高騰に苦しんでいます。三年にわたるコロナ禍を融資で耐えてきた多くの中小企業や個人事業主、農業、漁業や酪農家などの売上げは、いまだ回復していません。さらに、日銀の金融政策による円安で、資材高騰に拍車がかかり、飼料、肥料の急激な値上げが経営を直撃しています。

 異常な物価高騰の火事を消すには、直接、売買価格を引き下げる消費税減税が一番効果的です。見解を求めます。

 このような経済下で、インボイス制度の実施を強行するなど、とんでもありません。日本のインフラを支える建設業の一人親方や職人は、離職せざるを得ないと訴えています。アニメ、漫画産業や声優、俳優の皆さんは、若手クリエーターたちが夢を諦め、業界そのものが崩壊すると訴えています。あらゆる業界で事業の継続が困難になるとの声が上がっています。

 経済への深刻な影響を考えて、即時、インボイス制度を中止すべきです。

 以上、真摯な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣谷公一君登壇〕

国務大臣(谷公一君) 田村貴昭議員の御質問にお答えします。

 まず、マネーロンダリング罪の法定刑の引上げの立法事実及び処罰の根拠について御質問いただきました。

 今般、FATFから、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を詐欺罪や窃盗罪と同水準に引き上げるよう勧告を受けています。

 また、国内的にも、特殊詐欺を始めとする多くの事案でマネーロンダリングが行われ、暗号資産等の新たな形態の財産が利用されるなど、その態様が多様化、巧妙化する傾向も見られます。

 こうした点を踏まえ、法定刑を引き上げることとしたものです。

 また、マネーロンダリング罪は、犯罪組織の維持、拡大、将来の犯罪への再投資、合法的な経済活動への悪影響などを生じ得る行為を具体的に処罰対象として規定しているものであり、もとより、その処罰の根拠や範囲は明確であると考えています。

 次に、法定刑の引上げとテロ等準備罪の関係について御質問いただきました。

 テロ等準備罪については、国際組織犯罪防止条約が定める犯罪化の義務を実施するため、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものが対象犯罪とされているものと承知しています。

 今回、犯罪収益等収受罪の懲役刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴い、同罪がテロ等準備罪の対象犯罪に加わることになります。犯罪収益等収受罪は、例えば、暴力団組織が様々な犯罪によって獲得した収益を上納させて収受する場合など、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪であることから、法定刑の引上げに伴いこれがテロ等準備罪の対象犯罪に加わることは、国際組織犯罪防止条約の定める犯罪化義務を実施する上で不可欠であると承知しています。

 次に、北朝鮮の不正な金融活動の根絶のための措置について御質問いただきました。

 北朝鮮に対しては、国連安保理決議に基づく措置等に加え、我が国独自の措置として、二〇一六年二月以降、北朝鮮向けの支払いを原則禁止とするなど、御指摘の北朝鮮に対する声明が出される以前から非常に厳しい措置を実施してきております。

 また、同声明の発出後も、個人、団体等に対する資産凍結措置を累次にわたって追加的に講じているところです。

 引き続き、関係国と緊密に連携し、安保理決議の実効性の確保や、我が国の講じている措置の実施を徹底してまいります。

 次に、北朝鮮と統一教会との関わりについて御質問いただきました。

 御指摘のような報道があることは承知していますが、現時点で御指摘の情報の真偽を確認することは困難であると考えます。

 いずれにしても、旧統一教会に限らず、いかなる資金によるものであれ、北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できません。

 我が国としては、引き続き、北朝鮮制裁に関する国連安保理決議の実効性を確保するとともに、北朝鮮向け支払いの原則禁止等の我が国として独自に講じている措置の実施を徹底してまいります。

 最後に、旧統一教会からの資金の流れについて御質問いただきました。

 お尋ねの点につきましては、詳細が不明であり、御指摘の情報の真偽についてお答えすることは困難です。その上で申し上げれば、我が国としては、累次の国連安保理決議に基づく措置を実施するとともに、二〇一六年以降、北朝鮮向け支払いを原則として禁止する等、北朝鮮への金の流れを厳しく規制する我が国独自の措置を累次にわたって実施してきております。

 いずれにいたしましても、引き続き、関連安保理決議の実効性を確保するとともに、我が国として講じている措置の実施を徹底してまいります。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 自民党と旧統一教会の関係についてお尋ねがありました。

 自民党の対応について政府の立場として申し上げることは差し控えます。

 政府における旧統一教会との関係については、各閣僚等それぞれが旧統一教会との過去の関係を調査、説明し、新たな接点が判明した場合は、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底することとしており、引き続き、この方針に沿って、各閣僚等においてそれぞれ適切に対応していく考えです。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 消費税減税についてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、これをあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられております。このように消費税は全世代型社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。

 なお、足下の物価高騰に対しては、これまでの累次の物価高騰対策に加え、今般の経済対策においても、電気、ガスへの支援など、エネルギー、食料品等の価格高騰により厳しい状況にある生活者、事業者を支援する措置を講じ、的確に対応することといたしております。

 最後に、インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものであり、その円滑な移行を図る観点から、十分な経過措置を設けるとともに、様々な支援策を実施しております。

 今般の総合経済対策においても、持続化補助金について、インボイス発行事業者に転換した場合の補助金額の一律引上げ、IT補助金について、インボイス対応のための会計ソフトを購入できるよう、補助対象の拡大などの支援策の充実を盛り込んでいるところです。

 また、免税事業者を始めとした事業者の取引について、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドAにより明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど、取引環境の整備に取り組んでおります。

 引き続き、こうした事業者の負担を軽減する支援や取引環境の整備等に政府一体となって取り組んでまいります。(拍手)

議長(細田博之君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣   葉梨 康弘君

       財務大臣

       国務大臣   鈴木 俊一君

       厚生労働大臣 加藤 勝信君

       国務大臣   谷  公一君

       国務大臣   松野 博一君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 星野 剛士君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.