衆議院

メインへスキップ



第11号 令和4年11月21日(月曜日)

会議録本文へ
令和四年十一月二十一日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十号

  令和四年十一月二十一日

    午後一時開議

 第一 日本放送協会平成三十年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書

 第二 日本放送協会令和元年度財産目録、貸借対照表、損益計算書、資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書

 第三 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員辞職の件

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙

 日程第三 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

 岸田内閣総理大臣の閣僚の交代に係る経緯についての発言

 鈴木財務大臣の財政についての演説及びこれに対する質疑


このページのトップに戻る

    午後二時四十七分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員辞職の件

議長(細田博之君) お諮りいたします。

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員吉田豊史君から、予備員を辞職いたしたいとの申出があります。右申出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙

議長(細田博之君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙を行います。

佐々木紀君 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名され、その職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に三木圭恵君を指名いたします。

 なお、その職務を行う順序は第四順位といたします。

     ――――◇―――――

佐々木紀君 日程第一及び第二は延期されることを望みます。

議長(細田博之君) 佐々木紀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一及び第二は延期することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(細田博之君) 日程第三、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長大西英男君。

    ―――――――――――――

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大西英男君登壇〕

大西英男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用した公共施設等の整備等の一層の促進を図るためのものです。

 その主な内容は、

 第一に、PFI事業の対象となる公共施設等の定義にスポーツ施設及び集会施設を追加するものです。

 第二に、実施方針で定めた公共施設等運営事業に係る施設の規模又は配置の変更を可能とするものです。

 第三に、株式会社民間資金等活用事業推進機構の業務に民間支援業務を追加するものです。また、同機構が保有する株式等の処分に係る期限を延長するものです。

 本案は、去る十一月十五日本委員会に付託され、翌十六日岡田国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、十八日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(細田博之君) 日程第四とともに、日程第五は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略し、両案を一括して議題とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(細田博之君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第四 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案(厚生労働委員長提出)

議長(細田博之君) 日程第四、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案、日程第五、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。厚生労働委員長三ッ林裕巳君。

    ―――――――――――――

 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔三ッ林裕巳君登壇〕

三ッ林裕巳君 ただいま議題となりました両案について申し上げます。

 まず、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、障害者等の地域生活及び就労を支援するための施策の強化により、障害者等が希望する生活を営むことができる社会を実現するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、グループホームの支援内容に、一人暮らし等を希望する者に対する支援、退居後の相談等が含まれることを明確化すること、

 第二に、障害福祉サービスとして就労アセスメントの手法を活用した就労選択支援を創設するほか、雇用義務の対象外である週所定労働時間が特に短い精神障害者等について、実雇用率の算定対象とすること、

 第三に、精神障害者の家族等が同意又は不同意の意思表示を行わない場合に、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とすること、

 第四に、難病患者及び小児慢性特定疾病児童等に対する医療費助成について、助成開始の時期を申請日から重症化したと診断された日に前倒しすること

等であります。

 本案は、去る十一月八日本委員会に付託され、翌九日加藤厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、十一日から質疑に入り、十六日には参考人から意見を聴取し、十八日質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法に基づく給付金の支給の請求の状況に鑑み、給付金の請求期限を五年延長するとともに、C型肝炎ウイルスにより劇症肝炎に罹患して死亡した者に係る給付金の額を引き上げる等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る十一月十八日の厚生労働委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第五につき採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(細田博之君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(閣僚の交代に係る経緯について)

議長(細田博之君) この際、内閣総理大臣から、閣僚の交代に係る経緯について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣岸田文雄君。

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 葉梨法務大臣及び寺田総務大臣の辞任に関し、私から一言申し上げます。

 先々週、葉梨大臣から、政権として様々な懸案を抱える中、軽率な発言によって今後の補正予算や重要法案の審議に迷惑をかけたくない、身を引きたいと辞任の申出がありました。

 また、先日、寺田大臣から、補正予算そして被害者救済法など重要課題処理の最終段階を迎えているときに、自らの政治資金に関する質疑が続くことで悪影響を与えたくないとの辞任の申出がありました。

 総理大臣として、補正予算審議、被害者救済新法、コロナ対応、当初予算編成等の重要課題に答えを一つ一つ出すことを最優先とし、それぞれの辞任を認めることといたしました。

 そして、葉梨大臣の後任には齋藤健氏を任命いたしました。民法改正、旧統一教会による被害者救済などの山積する課題にしっかりと取り組んでまいります。

 また、寺田大臣の後任には松本剛明氏を任命いたしました。補正予算関連法案の早期成立や当初予算編成、さらにはマイナンバーカードの普及、地方活性化やデジタルインフラの整備などの重要課題に全力で取り組んでまいります。

 国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を重く受け止めております。政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(細田博之君) 財務大臣から財政について発言を求められております。これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 先に閣議決定いたしました物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策を受けて、今般、令和四年度第二次補正予算を提出することといたしました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明申し上げます。

 日本経済につきましては、ウィズコロナの下、社会経済活動の正常化が進みつつある中、緩やかに持ち直しております。しかし、足元では、ロシアによるウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇に加え、円安の影響などから、日常生活に密接なエネルギー、食料品等の価格上昇が続いており、また、世界的な景気後退懸念も高まっております。

 こうした認識の下、十月二十八日に、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策を閣議決定いたしました。

 総合経済対策は、足元の物価高や世界経済の下振れリスクを乗り越え、社会課題の解決と持続的な成長の実現により日本経済を再生するためのものです。

 具体的には、第一に、物価高騰、賃上げへの取組、第二に、円安を活かした地域の稼ぐ力の回復、強化、第三に、新しい資本主義の加速、第四に、防災・減災、国土強靱化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全、安心の確保を進めてまいります。また、今後への備えとして、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費を増額するとともに、新たにウクライナ情勢経済緊急対応予備費を創設いたします。

 総合経済対策により、まずは足元の物価高への対応と日本経済の再生に全力で取り組み、持続的な経済成長の実現を図るとともに、引き続き、責任ある経済財政運営を進めていくことが重要であると考えております。

 次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出いたしました令和四年度第二次補正予算の大要について申し述べます。

 一般会計につきましては、歳出において、総額で約二十八兆九千二百億円を計上しております。

 その内容としては、総合経済対策に基づき、物価高騰、賃上げへの取組に係る経費に約七兆八千二百億円、円安を活かした地域の稼ぐ力の回復、強化に係る経費に約三兆四千九百億円、新しい資本主義の加速に係る経費に約五兆五千億円、防災・減災、国土強靱化の推進、外交・安全保障環境の変化への対応など、国民の安全、安心の確保に係る経費に約七兆五千五百億円、今後への備えとして、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費に三兆七千四百億円を計上するとともに、新たに創設するウクライナ情勢経済緊急対応予備費に一兆円を計上しております。これらにより、総合経済対策関係の国費のうち一般会計分の金額は約二十九兆九百億円、特別会計分を合わせた金額は約二十九兆六千三百億円となっております。

 また、国債整理基金特別会計への繰入として約六千九百億円、その他の経費として約二千二百億円を計上するとともに、既定経費を約一兆八百億円減額しております。

 歳入においては、租税等の収入について、最近までの収入実績や雇用、賃金の動向等を勘案して約三兆一千二百億円の増収を見込んでおります。また、税外収入について、約六千七百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約二兆二千七百億円を計上しております。

 以上によってなお不足する歳入について、公債を約二十二兆八千五百億円発行することとしております。

 この結果、令和四年度一般会計第二次補正後予算の総額は、一般会計第一次補正後予算に対して歳入歳出ともに約二十八兆九千二百億円増加し、約百三十九兆二千二百億円となります。

 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

 財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、物価高騰、賃上げへの取組や、新しい資本主義の重点分野への投資等を推進するため、約一兆二百億円を追加しております。

 以上、令和四年度第二次補正予算の大要について御説明申し上げました。

 日本経済を取り巻く環境には厳しさが増している中、国民生活や事業活動をしっかりと支えることで、この難局を乗り越え、さらに、日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せていく必要があります。そのため、本補正予算の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(細田博之君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。吉田はるみ君。

    〔吉田はるみ君登壇〕

吉田はるみ君 立憲民主党の吉田はるみです。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 既にコロナ第八波に入っています。物価高で家計が圧迫されています。国会審議には国民の命と暮らしが懸かっているのです。真剣な国の議論の場です。

 そんな中、昨日、寺田大臣が更迭されました。遅過ぎです。

 寺田総務大臣は、度重なる政治資金規正法違反、公職選挙法違反、脱税疑惑など、違法行為の連続でした。担当大臣である寺田大臣が取り繕う答弁をするたびに運用がゆがめられ、これで統一地方選挙の違法行為を取り締まれるのでしょうか。だからこそ私たちは早期辞任を求めてきましたが、この状態を放置してきたことこそ、総理のリーダーシップのなさのまさに象徴ではないでしょうか。

 岸田総理、なぜもっと早く更迭しなかったのですか。せめて外遊に出発する前に、葉梨大臣と同時に寺田大臣を更迭すべきだったのではないですか。葉梨大臣更迭の遅れが外交の失態を招いたのに、今度は、物価高対策として急がれる補正予算の審議が遅れてしまうことになります。総理、危機管理に問題があるのではないですか。こんなことで有事や大災害に緊急対応できるのでしょうか。

 この臨時国会では、衆参の本会議、予算委員会、総務委員会や倫理特など、膨大な審議時間が寺田大臣の疑惑解明に割かれてしまいましたが、貴重な審議時間が無駄になったことの責任を、総理、どう考えますか。謝罪すべきではないですか。

 また、寺田大臣が自らの違法行為を取り繕うためにゆがめてしまった政治資金規正法の運用などに関する答弁は、そのままでよいとお考えですか。全て撤回し、ゆがめられたルールを元に戻すべきではないでしょうか。岸田総理に伺います。

 総理は一か月弱で毎週のように三人もの大臣を更迭、前代未聞のドミノ辞任という大失態であり、大臣辞任は今や永田町の風物詩となりました。そもそも、なぜこういった人物を大臣に任命したのか。岸田総理は人を見る目がないのではないでしょうか。

 葉梨大臣も、更迭の決断が遅れました。

 総理は十一月十一日の参議院本会議で続投の意向を示していたのに、その日のうちに更迭したのは、国会に対する冒涜ではないでしょうか。十一日の衆議院法務委員会、参議院本会議における葉梨大臣に関する審議時間が無駄になった責任を、総理、どう考えますか。謝罪すべきではないですか。そもそも、九日夜にも更迭を決断しなかったのはなぜですか。その程度の発言なら大丈夫と甘く見ていたのでしょうか。

 また、外遊への出発が十時間ほど遅れた結果、十二日に予定されていたラオス、ブルネイとのバイの首脳会談が取りやめとなりましたが、更迭の判断の遅れが外交にも悪影響を与えたのは大失態ではないでしょうか。総理に伺います。

 政府提出の令和四年度第二次補正予算は、一言で言えば、遅過ぎる上に、巨額予備費と基金だらけの見せかけ予算です。

 まず、何よりも、政府の対応は遅過ぎです。

 私たちが求めていたように、今年度当初予算の時点で組替えをしていれば、あるいは補正予算の編成を求めた四月の時点で対応していれば、今頃、国民の皆様の元に支援が行き届いていたはずです。なぜこれほどまでに物価高騰対策が遅れたのでしょうか。岸田総理には、国民が納得できる答弁を求めます。

 また、総理は、六月の時点で、日本の物価上昇率は欧米に比べて低い水準にあると自らの物価高騰対策の成果を誇っていましたが、この認識の甘さが対応の遅れを招いたのではありませんか。総理の見解を伺います。

 今回の補正予算は、物価高克服をうたっています。総理も、消費者物価を一・二%程度押し下げる効果があると説明しましたが、政府に聞くと、これは電気、ガス、ガソリン対策だけの試算で、経済対策全体の効果は示せないというのです。

 巨額の財政出動はインフレを助長するというのが経済学的な常識であり、都合のよい数字だけを取り出して説明するのは、国民の皆様に対して余りにも不誠実ではありませんか。この場で訂正のメッセージを出すべきと考えますが、総理、いかがでしょうか。

 その上で、結局のところ、総合経済対策及び第二次補正予算全体で見た場合、消費者物価は何%上がるのか、下がるのか、その数字をエビデンスとともにお示しください。

 さらに、象徴的なのは、直接生活の役に立たない大量の基金です。

 基金は、一度つくられると、国の監視の目が届きにくく、無駄遣いが増えるおそれがあります。報道によれば、今回、基金は、少なくとも三十八事業、合計八兆五千億円程度、実に補正予算の約三割にも及び、もはや基金だらけの予算と言っても過言ではありません。

 総理、これだけの大量の基金があると、巨額の無駄遣いが生じるのではないでしょうか。そうでないとおっしゃるなら、その根拠も併せて明確に御答弁ください。

 巨額の予備費も問題です。

 政府は、総合経済対策の決定直前に、急遽、予備費を四兆円も増額しました。自民党からの圧力を受けて、大した議論もなく数時間で増額を決めたのではありませんか。総理、お答えください。

 現在の残額と足し合わせると実に六兆円、今年度予算全体では十兆円を超える予備費となり、極めて異常な規模です。予備費は、国会審議なしで支出できる、いわば白紙委任のポケットマネーを政府に与えるようなものです。今年度はあと四か月ほどしかありませんが、約六兆円ものポケットマネーが必要になる理由を国民が納得できる形で示すべきです。総理の明快な答弁を求めます。

 なお、予備費は、予見し難い予算の不足に充てるためのものです。つまり、巨額の予備費を積み上げるということは、裏を返せば、今後どのように社会経済情勢が変化していくかを見通す能力がないことを自ら証明していることにほかならないと思いますが、総理の見解を伺います。

 また、政府は、基金と予備費のほかにも明らかに年度内の支出が困難な予算をつけて、予算全体を膨らませています。実際に、これまでも、令和二年度は過去最大の約三十一兆円、令和三年度は約二十二兆円もの予算を使い切れずに繰り越しています。

 総理、今回もまた巨額の予算を使い切れずに繰り越すことになるのではないですか。お答えください。少なくとも、現時点で繰越しを予定している繰越明許費の総額をお示しください。

 そして、こうした見せかけ予算のツケを払わされるのは、今の子供たち、そしてこれから生まれてくる子供たちです。

 現在、普通国債の発行残高は一千兆円目前ですが、政府は、今回の補正予算で、新たに約二十三兆円もの国債発行を予定しています。財政赤字は拡大するばかりですが、総理は、この財政赤字をどのように解決すべきか、全く語っていません。将来世代に対して余りにも無責任です。これが持続可能な国家予算なのでしょうか。

 一体どのようにしてこの巨額の財政赤字を解消するおつもりなのか、抽象論ではなく、具体的にお答えください。

 次に、世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会の問題についてお尋ねします。

 私たちは、安倍元総理の銃撃事件後、すぐに旧統一教会被害対策本部を立ち上げ、被害者のヒアリングなど調査、会議を重ね、その結晶として、十月十七日に、日本維新の会と共同で悪質献金被害救済法を提出しました。

 一方、政府は、先週金曜日になって、やっと救済法の概要を発表しました。まず、この法案により、旧統一教会の被害者の多くが本当に救済されますか。骨抜き法案になっていませんか。お答えください。

 実際、専門の弁護士からは、これでは被害者のほとんどは救済されないとの懸念が示されています。禁止される寄附の要件が厳し過ぎる、また、マインドコントロール下でする献金の実態に合っていないからです。ついては、旧統一教会の被害者の多くが救済対象になるように、マインドコントロール下での寄附が取消し対象になる法案に改善すべきではないですか。お答えください。

 次に、概要にある民法の債権者代位権についても、専門の弁護士から、救済対象が扶養家族等に限られて狭過ぎる、また、献金の全額ではなく、生活費相当の少額しか返金されないとの懸念が示されています。ついては、今回の新法により、債権者代位権を行使できる家族の範囲は広がりますか。マインドコントロールによる献金については、扶養家族以外の家族も本人に代わり全額献金の取消しを請求できるという、本当の意味での家族取消権を法案に入れるべきではないですか。お答えください。

 また、概要では、個人に対し、借入れや個人等が居住する建物等の処分により寄附資金の調達を要求してはならないと書かれていますが、旧統一教会側が直接これを要求しなければ、信者が借金をしたり建物を売って全財産を献金することは禁止されないのですか。それらも規制すべきではないですか。また、取消権の行使期間十年では短過ぎるので、二十年にすべきではないでしょうか。総理、お答えください。

 女性の立場から感じる、旧統一教会による被害の中で非常に悪質な問題の一つは、合同結婚式で結婚し、韓国に在住している日本人妻の問題です。こうした旧統一教会信者の日本人妻は約七千人と推定されます。被害実態を調査し、保護、帰国支援をすべきではないですか。メールやLINEなどで無料相談できるようにすべきではないですか。また、帰国費用を負担する帰国支援を韓国在住の日本人妻に適用すべきではないでしょうか。総理、お答えください。

 また、旧統一教会のハンドブックにおいて、組織的に養子縁組を推奨しています。教団広報部への取材によると、旧統一教会が、一九八一年から二〇二一年まで、信者家庭間で七百四十五人の養子縁組があったそうです。総理、これは養子縁組あっせん法違反ではないですか。妊娠前に養子縁組をするケースもあるようです。これではまるで人身提供、物扱いではないかとの批判も出ています。このような実態を聞いて、総理はどう思いますか。

 また、養子縁組あっせん法違反は刑事罰の対象です。つまり、解散請求の理由となり得ます。質問権の質問項目の中に、この違法の疑いがある養子縁組の実態解明も当然入れるべきではないですか。総理、お答えください。

 ネグレクト、そして貧困にある宗教二世の子供たち、まさにこの状況は児童虐待であり、国として支援すべきではないでしょうか。総理、約束してください。

 旧統一教会の最大の被害者、犠牲者は、子供たちです、女性たちです、社会的に弱い立場にある方々なのです。そのことを決して忘れないでください。

 見せかけだけの、実効性のない、ただお金を積み増しただけの補正予算を改め、さらに、骨抜きではなく旧統一教会の被害者が救済される実効性ある被害救済法案に作り変えるために、与野党協議を更に深めて、着地点を探る努力をすべきです。岸田総理のリーダーシップがここに問われます。

 それができないなら、今度は、岸田総理御自身が身を引くことを考えるべきではないでしょうか。

 以上を申し上げ、代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 吉田はるみ議員の御質問にお答えいたします。

 寺田大臣の辞任及び大臣の任命についてお尋ねがありました。

 寺田大臣には従来から丁寧に説明責任を尽くすよう指示をしてきたところですが、昨日、本人から、補正予算、被害者救済新法など重要課題処理の最終段階を迎えているときに、自らの政治資金に関する質疑が続くことで悪影響を与えたくないと辞任の申出がありました。

 総理大臣として、補正予算審議、被害者救済新法、コロナ対応、当初予算編成等の重要課題に答えを一つ一つ出すことを最優先とし、辞任を認めることといたしました。

 大臣の任命は適材適所の観点から実施しておりますが、国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を重く受け止めております。危機管理はもちろん、政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。

 なお、政治資金に関するルールについては、政治資金規正法等、関係法令にのっとって運用されるべきであると考えております。

 葉梨前大臣の辞任やそれに伴う外交等への影響についてお尋ねがありました。

 葉梨前大臣の発言については、私自身、問題があると強く感じたことから、翌朝には、官房長官から厳しく注意をし、説明責任を徹底的に果たすよう指示をいたしました。

 そして、先々週、葉梨大臣から、政権として様々な懸案を抱える中、軽率な発言によって今後の補正予算や重要法案の審議に迷惑をかけたくない、身を引きたいと辞任の申出がありました。

 総理大臣として、補正予算審議、被害者救済新法、コロナ対応、当初予算編成等の重要課題に答えを一つ一つ出すことを最優先とし、これを認めたところです。

 なお、出発時刻変更のために二国間会談が一旦キャンセルになったラオス、ブルネイ、ベトナムについては、それぞれの首脳と、マルチの会合の前後の機会を活用しながら、会談、懇談を行うことができ、当初の目的を果たすことができたと考えております。

 国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を重く受け止めております。政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。

 これまでの物価高対策の評価についてお尋ねがありました。

 政府としては、これまでも、エネルギー、食料を中心とした物価上昇は、欧米より低いものの、消費者の暮らしや事業者の経営に大きな影響を与えているものと認識をしてきたところです。

 このため、物価高対策については、三月、四月、七月、九月とスピード感を持って取り組んできており、さらに、間を空けることなく、十月に、国費三十五・六兆円、事業規模七十一・六兆円の総合経済対策を取りまとめ、電気・ガス料金の上昇による負担軽減策等を盛り込みました。この総合経済対策に盛り込まれた各施策を国民の皆様の手元に届け、国民生活と事業活動をしっかりと支えてまいります。

 総合経済対策の消費者物価抑制効果についてお尋ねがありました。

 今般の総合経済対策は、全体として需給ギャップが存在する中で、ウクライナ情勢、円安による、エネルギー、食料品に重点を置いて、物価高対策を講じました。その価格高騰への対応効果を定量的に分かりやすく国民の皆様にお示しする観点から、ガソリン、電気・ガス料金の負担軽減策の直接的な効果として、消費者物価上昇率を一・二%ポイント程度抑制するという試算をお示ししたところです。

 総合経済対策には様々な財やサービスの需要と供給の双方に影響をもたらす内容が含まれており、需給を通じて間接的に価格に与える影響を試算することは難しく、全体として消費者物価に与える影響を定量的にお示しすることは困難であると考えております。

 基金事業についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算において計上された基金事業については、経済対策に掲げられた政策課題を迅速かつ効率的に実施する上で必要となるとそれぞれ判断したものを措置しております。

 その上で、基金については、行政事業レビューの枠組みの下で、各府省自らが執行状況を継続的に把握するほか、行政改革推進会議による検証や各府省によるPDCAの取組を通じて、不断の適正化に取り組んでおります。引き続き、こうした取組を通じ、基金事業の適正な執行管理に努めてまいります。

 予備費についてお尋ねがありました。

 経済対策の決定に至るまでの調整過程について逐一コメントすることは差し控えますが、今般の予備費については、新型コロナや物価高騰の影響に加え、緊迫しているウクライナ情勢や現時点で見通し難い世界規模の経済下振れリスクに備え、万全の対応を図るため、必要な措置であると考えております。

 具体的には、コロナ、物価予備費については、今後への備えとして、新型コロナの感染拡大や物価高騰に引き続き万全を期すべく、ほぼ同額である五兆円程度を確保しておくことが望ましいという考えから、三・七兆円程度を増額することといたしました。

 また、新しく創設するウクライナ情勢経済緊急対応予備費については、過去に類似の目的で措置された平成二十一年度当初予算の経済緊急対応予備費が一兆円措置されたことも参考にして、一兆円を措置することとしたものであります。

 予算の繰越しと財政赤字の解消に関する認識についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算は、先日策定された総合経済対策を速やかに実施するためのものであり、成立後、早期の執行に努めるべきものであることは言うまでもありません。

 一方で、新型コロナの感染状況、地方自治体等からの申請の状況など、様々な要因により事業の進捗が遅れることも想定されます。

 このため、繰越明許費としては、令和四年度補正予算後の予算額は二十六兆七千百六十四億円となっています。

 また、財政赤字の解消に向けては、累積する債務残高を中長期的に減少させていくことが重要であり、プライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げることを政府の方針としております。

 足下の経済状況に機動的に対応しつつ、同時に、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることがないよう、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

 被害者救済新法についてお尋ねがありました。

 現在政府で検討している被害救済、再発防止のための寄附適正化の仕組みは、まず、消費者契約法の対象とならない寄附一般について社会的に許容し難い悪質な勧誘行為を禁止すること、悪質な勧誘行為に基づく寄附について取消しを可能とすること、子や配偶者に生じた被害の救済を可能とすること、こういった点を盛り込んだものとしております。

 さらに、借入れ等による資金調達の要求の禁止、また、刑事罰を含めた罰則規定を設けることなども盛り込んでおります。

 政府としては、寄附適正化の仕組みの概要を土台として、委員御指摘の点も含め、各党からの御意見も参考にしつつ、法案化の作業を進めてまいります。

 韓国人と結婚し、韓国に在住している旧統一教会信者の日本人女性の方々に対する支援についてお尋ねがありました。

 政府としては、これまでも、邦人保護の観点から、在外公館の領事が中心となって、電話、メール等を含む様々な手段を通じて在留邦人からの相談に応じ、問題解決に向けた支援を行ってきています。

 また、様々な原因により困窮状態に陥り、自ら帰国するための費用を負担できない方に対しては、帰国費用を貸し付ける支援も行っています。

 今後とも、旧統一教会の信者を含む在留邦人の方々からの相談に丁寧に応じることにより、相談者の個別の事情やニーズの把握に努め、より一層きめ細やかな支援を行っていく所存です。

 旧統一教会における養子縁組あっせんの実態及び質問権の行使等についてお尋ねがありました。

 どのような組織であっても、養子縁組あっせん法に規定する許可を受けずに、養親希望者と児童との間を取り持って養子縁組の成立が円滑に行われるように第三者として世話をすることを反復継続的に行うのであれば、同法違反となります。

 御指摘の報道を受け、厚生労働省において、養子縁組あっせん事業に当たる行為が旧統一教会内で行われているか等、まずは事実関係の確認を行うこととしております。

 その上で、宗教法人法上の報告徴収、質問権については、文部科学省において、様々な観点から具体的な内容について検討を行っていると承知をしておりますが、この問題を権限行使の内容に含めるかどうかについては、当該権限の効果的な行使に支障を来すおそれがあるため、お答えは差し控えさせていただきます。

 また、児童虐待の被害に苦しまれている宗教二世の方々の救済に着実につながるよう、児童相談所等が相談において適切に対応できるようにするためのQアンドAを年内めどに作成してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 井上信治君。

    〔井上信治君登壇〕

井上信治君 自由民主党の井上信治です。

 私は、自由民主党を代表し、令和四年度第二次補正予算案について質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、今般の相次ぐ大臣の辞任をめぐり、政府におかれては、改めて襟を正し、一層の緊張感を持って、国民の負託に応えるべく汗をかいていただきたいと思います。

 先週十八日、北朝鮮がICBM級の弾道ミサイルを発射し、我が国のEEZ内、北海道から僅か二百キロという地点に着弾しました。北朝鮮は、今月に入って六回目、異例の高い頻度で発射を繰り返し、挑発を続けています。国民生活を著しく脅かす暴挙であり、断固非難します。

 さて、新型コロナ、世界的な物価高騰、激変する安全保障環境など、我々は、今、歴史を画するような厳しい環境に直面しています。国難とも言える時代の中で、国民の命や暮らしを守る。あらゆる政策を総動員し、まずは足下の不安を打破することが急務です。

 他方で、経済構造の転換や成長分野への投資など、中長期的な視座に基づく政策も重要です。目先の課題ばかりではなく、先を見据えた政策も進めていく。いわば未来に向けた希望を育てることも、我々政治家が果たすべき責任です。

 こうした問題意識の下、以下、質問いたします。

 北朝鮮による相次ぐミサイルの発射に加え、ロシアによるウクライナ侵略、台湾問題等をめぐる米中の緊張関係の高まりなど、国際情勢が急速に緊迫度を増しています。

 先週、岸田総理は、東南アジアを歴訪し、各国首脳らと会談されました。加速度的に厳しさを増す外交・安全保障環境の中で、国際社会と緊密なコミュニケーションを図り、外交努力を積み重ねることは極めて重要です。

 来年、我が国は、G7の議長国、国連安全保障理事会の非常任理事国を務めます。国際秩序の根幹が揺らぐ今こそ、日本がリーダーシップを発揮し、国際社会の結束を力強く呼びかけるべきです。新時代リアリズム外交実現に向け、日本外交をどのように展開していくのか、総理の御所見を伺います。

 我が国においても、国民の命や暮らしを守り抜くための体制整備を進めていかなければなりません。現在、年末の安保関連三文書改定や今後の防衛費の在り方について、与党協議が行われていますが、国民の安心、安全に資する防衛力の抜本強化に向け、政府・与党が連携して進めていくべきです。年末までの最重要課題の一つである防衛力の抜本強化をどのように進めていくお考えか、総理の御決意を伺います。

 今回、政府から、総額二十九・一兆円、事業規模七十一・六兆円、相当な規模となる総合経済対策が打ち出されたことは高く評価します。重要なのは質と量の両面です。物価高から生活を守る、未来へ向けて日本経済を更に強くする、そのために必要十分な内容と規模であることが求められます。そして、何よりも、経済対策の裏づけとなる補正予算の早期成立を図り、これを速やかに執行し、一刻も早く国民の皆様の手に届くようにしなければなりません。今回の経済対策、補正予算に込められた狙いについて、総理の御所見を伺います。

 今、国民が最も不安に感じていることは、足下の物価高騰です。エネルギーや食料品など生活に欠かせないものの値段が上昇し、生活が苦しい、事業が成り立たないなど、悲鳴とも言える切実な声を多く聞きます。国民の不安に寄り添うことは政治の責務です。最優先すべき物価高騰対策について、総理の御所見を伺います。

 賃上げの実現は、新しい資本主義の下で成長と分配の好循環を実現するためにも必要不可欠です。

 まずは、足下の物価上昇を上回る賃上げを速やかに実現する。同時に、労働移動の円滑化、さらには、生産性を高めるための学び直し、リスキリングを始めとする人への投資を行う。こうした三つの改革を一体的に進め、構造的な賃上げを早期に実現し、賃上げによる好循環を加速させていくべきです。総理の御所見を伺います。

 新型コロナから国民の命と健康を守りつつ、社会経済活動を回復させる。その両立に全力で取り組む中、足下では再び新規感染者が増加し始めており、第八波への懸念も高まっています。この冬はインフルエンザとの同時流行の可能性もあり、引き続き、感染症対策に万全を期すとともに、新たな感染拡大を見据えた体制の強化に取り組むべきです。ウィズコロナに向けた取組を着実に進める必要があると考えますが、総理の御所見を伺います。

 エネルギー価格の負担軽減策は、国民の生活や事業を支える上で緊急に必要な施策です。他方、より中長期的には、化石燃料に依存した社会から、脱炭素化を進めて、カーボンニュートラル社会を実現することが重要です。

 昨日閉幕したCOP27において、我が国は、質の高い炭素市場構築に向けたパリ協定六条実施パートナーシップの立ち上げを宣言しました。脱炭素の国際展開に向け、日本が主導的役割を果たしていくべきです。

 国内においても、新規制基準に適合すると認められた原発の再稼働、次世代革新炉の研究開発を含め、省エネ、再エネの普及促進に向けた取組を進める。科学技術・イノベーションにより、我が国の産業競争力を高めるためにも、官民が一体となってGXに対する投資を行っていくべきです。GX実現に向けた総理の御決意を伺います。

 さきの通常国会で経済安全保障推進法を成立させたことは大変画期的なことだと思います。国際情勢が一段と不確実性を高めている中、経済分野における安全保障の強化は極めて重要です。現下の原材料価格の上昇をピンチではなくチャンスと捉え、半導体など経済安全保障上の重要物資の生産拠点の国内回帰を進め、サプライチェーンの強靱化につなげていくべきです。経済安全保障の推進に向けた総理の御所見を伺います。

 二〇二五年大阪・関西万博の開催まで九百日を切りました。万博は、世界中が注目する一大イベントであり、大阪、関西のみならず、日本経済の活性化の起爆剤ともなり得る絶好の機会です。日本が世界の先頭に立ち、最新の先端技術によって時代を切り開き、社会課題を解決していく。まさに「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマにふさわしい万博となることを期待しています。そのためにも、開催に向けた準備を更に加速化する必要があります。大阪・関西万博の成功に向けて、総理の御決意を伺います。

 我々自由民主党は、今後、いわゆる統一教会や関連団体と関係を持たない方針を明らかにし、党のガバナンスコードに盛り込む改定を行いました。また、被害救済、再発防止についても、消費者契約法など既存の法律の改正に加え、消費者契約法ではカバーされない悪質な寄附の勧誘等についても禁止する新法の今国会での成立を目指しています。この法律については、与野党協議が精力的に重ねられていますが、政争の具にはせず、与野党でできる限り協力して、早期に成立させなければなりません。最後に、改めて、被害救済、再発防止に向けた総理の御決意を伺い、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 井上信治議員の御質問にお答えいたします。

 日本外交の展開と防衛力の抜本的強化の進め方についてお尋ねがありました。

 日本が、また世界が歴史的な大きな転換点にある中、緊迫する外交、安全保障上の課題に対応するには、御指摘のとおり、国際社会の結束に向けた外交努力の積み重ねが重要だと考えます。

 今回の東南アジア歴訪でも、対面外交の利点を活用しながら、日本として法の支配に基づく国際秩序の重要性を訴えかけ、多くの国から同意を得ることができました。

 また、G20バリ・サミットでは、私自身、強く働きかけを行い、核兵器の威嚇や使用は受け入れられないことを盛り込んだ首脳宣言を発出することができました。今回このような宣言を発出できたことは、G7広島サミットにつながる大きな一歩になったと考えています。

 さらに、ポーランドでの爆発事案を受け開催されたG7・NATO緊急首脳会合においては、ウクライナ情勢が国際秩序の根幹に関わる問題であり、インド太平洋の安全保障とも不可分であること、また、このようなときだからこそ、G7、NATO、そして有志国の連携協力を一層密にしていく必要があることを確認いたしました。

 来年のG7議長国として、また、国連非常任理事国入りも見据え、引き続き、各国に国際秩序を守ることの大切さを働きかけ、私自身が先頭に立って新時代リアリズム外交を推進してまいります。

 防衛力については、その抜本的強化に向け、防衛力強化の内容、予算、財源の三つに関する議論を一体的かつ強力に進めているところです。

 安全保障環境が急速に厳しさを増す中、国民の命を守るために何が必要か、あらゆる選択肢を排除せず検討し、与党とも十分連携しながら、新たな国家安全保障戦略等の策定や予算編成過程において結論を出してまいります。

 総合経済対策と物価高騰対策についてお尋ねがありました。

 今般の総合経済対策は、世界的な物価高騰と景気減速という世界規模の経済下振れリスクに万全の備えをするとともに、物価高、円安への対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革、これらを重点分野として日本経済を再生するためのものです。

 特に、物価高への対応については、これまで講じてきた累次の対策に加え、電気・ガス料金の上昇による家計や企業の負担を直接的に軽減する、前例のない負担緩和策を盛り込んでおります。また、目下の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することであり、賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充するとともに、価格転嫁対策を強化してまいります。

 構造的賃上げについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、賃上げ、労働移動の円滑化、学び直しやリスキリングなどの人への投資、この三つの課題の一体的改革による構造的な賃上げの実現が成長と分配の好循環を加速するために必要であると考えます。

 まずは、来年春の賃金交渉に向けた賃金引上げに向けて、物価上昇を特に重視すべき要素として掲げ、これに負けない対応を労使の皆さんにお願いするとともに、政府としても、その取組を後押ししてまいります。

 また、労働移動円滑化に向けた指針を来年六月までに取りまとめるとともに、人への投資の政策パッケージを五年で一兆円に拡充し、取組を抜本強化してまいります。

 ウィズコロナに向けた取組についてお尋ねがありました。

 いわゆる第八波への対応については、季節性インフルエンザとの同時流行も念頭に、これまで拡充強化してきた医療体制に加えて、先月、発熱外来や電話診療、オンライン診療の体制強化等による保健医療体制の強化、重点化策を取りまとめており、都道府県と協力し、万全を期してまいります。

 また、九月に、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、社会経済活動との両立を進めてきました。引き続き、ウィズコロナに向けて、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、専門家の意見も聞きながら、着実に取り組んでまいります。

 脱炭素の国際展開とGXの実現についてお尋ねがありました。

 GXは、単なる化石エネルギーからの脱却にとどまるものではなく、エネルギー、全産業、ひいては経済社会の大変革を実行し、産業競争力の強化や経済成長の機会としていく取組です。

 また、成長志向型カーボンプライシングの具体化や規制・制度一体型の大胆な資金支援により、官民一体で脱炭素投資を促進し、エネルギー関連技術を実装する先導プロジェクトを最大限前倒ししてまいります。これにより、気候変動という社会課題を成長のエンジンとするとともに、アジアの膨大な脱炭素需要に連結することで、成長も環境もの二兎を追っていくアジア・ゼロエミッション共同体構想などの国際戦略を具体化していきます。

 COP27では、二国間クレジット制度の展開等に取り組んできた我が国の提唱により、御指摘のパートナーシップを立ち上げ、六十以上の国、機関の賛同を得ることができました。こうした枠組みも活用しながら、脱炭素の取組の世界的拡大を主導してまいります。

 経済安全保障の推進についてお尋ねがありました。

 国際情勢等の変化により安全保障の裾野が経済分野へ急速に拡大する中、経済安全保障の取組を抜本的に強化していくことが急務となっています。そのため、我が国の自律性の確保、優位性ひいては不可欠性の獲得に向けた取組を推進するとともに、同志国との協力の拡大、深化を図っていく必要があります。

 こうした観点から、まずは、先般の通常国会で成立した経済安全保障推進法で定められているサプライチェーンの強靱化などを着実に実施していくことが重要です。今般の補正予算案においては、円安を生かした経済構造の強靱化などにも資する支援策として、経済安全保障の確保に資するサプライチェーンの強靱化に係る経費を計上しております。

 こうした取組を通じて、重要物資の安定供給確保を進めることで、経済安全保障を推進してまいりたいと考えております。

 大阪・関西万博についてお尋ねがありました。

 本日で、二〇二五年の大阪・関西万博の開催まで残すところ八百七十四日となりました。国を挙げた一大イベントであり、世界に向けて日本の魅力を発信する絶好の機会です。

 大阪・関西万博の開催に当たっては、二〇二〇年十二月に大阪・関西万博に関する基本方針を閣議決定し、会場整備や参加招請活動などを着実に実施してきております。

 また、大阪・関西万博のコンセプトである未来社会の実験場を実現していくための施策を具体化するため、アクションプランを取りまとめており、政府支援の下、既に開発プロジェクトが動き出しています。

 引き続き、パビリオン建設等の会場整備、アクションプランの改定を通じた未来社会の実験場の具体化、また全国的な機運醸成など、万博開催に向けた準備に、政府一丸で、全力で取り組んでまいります。

 旧統一教会関連の被害救済、再発防止についてお尋ねがありました。

 旧統一教会については、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使により事実把握と実態解明を進める、被害者の救済に向けた相談体制を強化する、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しによりしっかりと取り組んでいく、これらを方針として臨んでいるところです。

 政府としては、消費者契約法等の改正法案を国会に提出いたしましたが、御指摘の新法に関しても速やかに検討を行い、できるだけ早く法案を国会に提出できるよう、最大限の努力を行ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 藤田文武君。

    〔藤田文武君登壇〕

藤田文武君 日本維新の会の藤田文武でございます。

 党を代表して質問をいたします。(拍手)

 今、国民は、急激な物価高騰から暮らしや経営を守るための緊急かつ効果的な対策を切に求めています。しかし、総合経済対策を裏づける補正予算案は、その願いに応えるものとなっていません。

 規模は総額二十九兆円に上りますが、真水が少ない上、中身は円安や物価高対策には直接関係がない打ち手が多く、緊急性も実効性も乏しい施策、事業のオンパレードです。総合経済対策で掲げた目的と補正予算案との内容もリンクせず、円安も物価高も止められません。多くの予算が年度内に執行されず、即効性も望めません。

 総理にお尋ねします。

 今回の総合経済対策と補正予算案は、適切な分析と課題設定ができておらず、解決策もどきを総花的に羅列しているだけと受け止めています。いかにこの円安と物価高に歯止めをかけ、どのような経済状態にするのか、明確なグランドデザインを示すことができますでしょうか。

 政府・与党は、総合経済対策の決定直前に、一夜にして予算を四兆円も上積みしました。四兆円といえば消費税一%分以上に相当します。さしたる吟味もなく四兆円も積み増す感覚は理解できません。上積み分には予備費も含まれ、規模ありきの度が過ぎると考えますが、認識をお示しください。

 また、価格抑制を声高にうたいながら、自民党、霞が関とのしがらみのある特定業界に対して既得権として補助金をばらまく一方、生活困窮者への支援と称して、住民税非課税世帯に対して選挙対策的な給付を行っているのが実態であります。これこそが自民党政治の限界だと考えますが、見解を求めます。

 経済成長の呼び水となる労働市場の流動化や、生産性向上などの規制改革、抜本的な構造改革は皆無に等しく、岸田政権が掲げる中小企業向けの構造的な賃上げは進まないと考えます。

 原油高や円安から下請企業を守る価格転嫁についても、十分な効果が期待できない下請Gメンの倍増といったミクロ政策を偏重し、小手先の施策でお茶を濁していると言わざるを得ません。認識をお伺いいたします。

 今回の補正予算案も、歳出の八割に当たる二十三兆円が赤字国債で賄われ、無制限の国債発行と予算の無駄遣いが常態化しています。反面、GDP比二%への増額を目指している防衛費については、政府内で増税策が浮上しているほか、国民年金保険料の納付期間を六十五歳まで延長することが検討されています。

 岸田政権は、改革による歳出削減や、経済成長による増収を図るための規制、構造改革に取り組むことなく、国民に負担を押しつけているのが実態ではないでしょうか。所見をお伺いいたします。

 日本維新の会は、十月二十一日、総理に対し、時限的な消費税減税や社会保険料減免等を盛り込んだ総額十八兆円規模の総合経済対策を提言いたしました。国民に公平かつストレートに支援が届く施策に重点を置き、電気料金に上乗せされる再エネ賦課金の一時的な徴収停止による電気代値下げも打ち出しました。また、単に危機を乗り越えるだけでなく、成長する日本とその中での国民の幸せの具体的な社会像を描き、そのための将来世代への投資を行うことを強く主張してまいりました。

 総理は、席上、馬場代表に対し、できる部分は取り入れていくと応じましたが、今回の政府の対策、補正予算には反映させるべき施策がなかったということですか。その理由も併せてお答えください。

 我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、政府は、年末までに安保関連文書を改定し、防衛力の抜本的強化に乗り出します。本改定は、将来世代を二度と戦争の惨禍に遭わせないための強固な抑止力を保持することに主眼を置くべきです。

 日本維新の会は、イデオロギーやタブーに左右されない、現状変化に即した防衛のあるべき姿を追求し、現実に必要な防衛能力を積極防衛能力と定義し、党の安全保障戦略を打ち出してまいりました。

 我が国の防衛の基本理念たる専守防衛は遵守すべきでありますが、これは、国土や国民の生命に被害が出た後のみ反撃できるということではありません。他国の侵略を未然に防ぐに足る十分な抑止力、すなわち我が党が掲げる積極防衛能力の保持は、専守防衛の理念に合致し、現行憲法が認める制約つきの必要な自衛措置の範囲にとどまると認識していますが、所見をお示しください。

 侵略を受けた場合に敵対国を直接攻撃する反撃能力の保有は、独立国の自衛措置として認められるべきです。反撃能力を担保する最大の目的は、敵対国に我が国を侵略する難しさを知らしめ、抑止力を機能させることにあります。反撃能力の保有について、国内外に向けて宣言すべきではないでしょうか。なおも検討段階であるならば、何がネックになっているのか、認識をお伺いいたします。

 核兵器の根絶は人類共通の目標でありますが、我が国の平和と国民の安全は米国の核の傘を含む軍事的な抑止力によって守られている現実を認識すべきです。いざというとき、実際に米国による拡大抑止が十分に機能すると総理は断言できますか。

 米国による拡大抑止を一層強固に機能させるために、具体的な方策を米国側に提案し、同盟関係をより揺るぎないものにしていくことが不可欠であります。国防にタブーはありません。核保有国が力で現状変更に動く可能性を直視し、核共有を含む防衛力強化に関する議論を開始することによって同盟国との関係を強化し、抑止力を高める必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 自衛隊の能力強化に向けては、決定的に不足するサイバー分野を含む自衛官の増員は欠かせません。国の存立を担う任務の特殊性に鑑み、他の国家公務員とは異なる給与体系を設定し、特殊勤務手当の見直しや給与水準の引上げなどで待遇を抜本的に改善すべきだと考えますが、見解を求めます。

 増額される防衛予算は、弾薬、燃料の確保や装備の部品不足解消、施設の抗堪性強化にも十分に振り向けられるべきです。正面装備中心に自衛隊が保有すべき装備の数量が明記された防衛計画の大綱の別表は、後方の予算が後回しになる原因となるため見直しが不可欠でありますが、認識を伺います。

 日本の海を守り抜くには、自衛隊と海上保安庁が切れ間なく連携できる体制が必要であります。我が党が法案を提出した自衛隊法の改正により、自衛隊の警戒監視活動と限定的な武器使用を認めるとともに、海保法改正で海保の任務に領海の警備を加えるべきではないでしょうか。

 平和安全法制によって、自衛隊は集団的自衛権の限定的行使や平時の米艦などの防護に道が開かれましたが、米軍支援は武力行使の一体化にならない範囲に限られています。現状では、戦闘現場で自衛隊が米軍を見捨てて撤退する余地を残し、同盟の信頼性が担保できない可能性も指摘されています。グレーゾーン事態でも後方支援できるよう法改正を急ぐべきだと考えますが、見解をお示しください。

 総理の指示の下、いわゆる旧統一教会の被害者を救うための新法へ意欲を示されていることについては評価をいたします。

 しかしながら、政府案の概要には不十分な点が散見されます。

 例えば、禁止される行為の類型の一つに、霊感等による知見を用いた告知行為がありますが、この定義を、寄附をすることが必要不可欠であると告げることとしています。わざわざ必要不可欠と告げる団体は旧統一教会を含めてほとんどなく、この要件は新法を一気に死文化させてしまいます。さらに、家族の取消権については、範囲が極めて狭い上、立証が難しく、行使をちゅうちょするおそれもあります。

 このように、実効性の観点から、政府案はいまだに被害者救済に不十分です。我が党と立憲民主党による共同提出法案と突き合わせて修正に応じるよう、指示を出すお考えはありませんか。総理にお伺いしたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症との対峙は丸三年を迎えようとしています。

 我が党は、オミクロン株に移行した段階で、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いを、現行の二類相当から五類ないし五類相当に変更するよう提案してまいりました。

 折しも流行の第八波が押し寄せつつあり、この冬はインフルエンザと同時流行する懸念が強まっています。感染症法上の扱いが異なる両者が同時流行すれば、国民の混乱に拍車をかけかねません。ウィズコロナ下での社会経済活動を円滑に進めるためにも、感染症法上の位置づけの見直しは不可欠だと考えます。

 しかし、政府は、致死率がインフルエンザより高く、更なる変異の可能性があるとして、感染症法上の位置づけを墨守しています。

 総理にお尋ねいたします。

 多くの自治体において、新型コロナ感染者が死亡すれば、別の原因で死亡したとしても新型コロナによる死亡に計上されてしまう現状を鑑みれば、政府の説明は客観性や説得力に欠けると考えますが、いかがですか。

 新型コロナウイルスの病毒性について、正確に評価するためのデータ収集方法や指標を早急に確立すべきです。その上で、新型コロナウイルス感染症を五類に位置づけるなど、感染症法上の扱いをどうするか検討する場を公式に設けるべきだと考えますが、併せて見解を求めます。

 昨年の衆院選直後に、国会議員に対して毎月の歳費とは別に百万円支給されている調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費の問題が再び注目されてから一年がたちました。

 さきの通常国会で、日本維新の会は、日割り支給、使途の公開、残金の国庫返納の三点セットによる抜本改革を訴え、会期中に結論を得ることで与野党の合意を取り付けました。

 ところが、日割り支給と名称変更のみが先行し、本丸の使途公開と残金返納には自民党が背を向け、合意はほごにされたままです。十五日の衆議院議院運営委員会国会改革小委員会で、我が党が議論を進めるよう提案しましたが、自民党の委員長に却下されました。

 そこで、我が党は、十七日、使途公開と残金返納を義務づける歳費法改正案を立憲民主党、国民民主党と三党で共同提出いたしました。公明党も改革に前向きだと伺っております。主要政党で後ろ向きなのは自民党のみとなりました。

 自民党総裁たる岸田総理に御質問いたします。

 税金の使途を透明化し、不用分を国に戻すのは至極当然のことでありますが、なぜ自民党は後ろ向きなのでしょうか。

 国民の皆さんが物価高等で苦しんでいらっしゃるのに、自分たちの特権だけは死守する姿勢が見え隠れするようなことがあるならば、国民の理解が得られるとは思いません。旧文通費改革は国会議員に求められる身を切る改革の一端にすぎませんが、巨大与党がこのような有様では、生産的な国づくりなど到底望めないと断言いたします。

 旧文通費改革に真摯に取り組むよう、党に指示をしていただきたいと思います。今国会で必ず実現させるとお約束していただけませんでしょうか。

 以上、明確な答弁を求め、私からの質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤田文武議員の御質問にお答えいたします。

 総合経済対策の内容についてお尋ねがありました。

 今般の物価高騰の要因は、ウクライナ情勢等による国際的な原材料価格の上昇に加え、円安などの影響によるものであると考えており、消費者の暮らしや事業者の経営に大きな影響を与えていることから、切れ目のない対応を講じていくことが重要です。

 こうした観点から、三月、四月、七月、九月の対策に加えて、今般の総合経済対策では、電気・ガス料金の上昇による家計や企業の負担を直接的に軽減する、前例のない負担緩和策を盛り込んでおります。また、目下の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することであり、賃上げ促進策を強化しています。その上で、構造的賃上げと成長のための投資と改革を重点分野として、日本経済を再生させるため、リスキリングを始めとした五年間で一兆円のパッケージや、スタートアップ、GX、DX等の四分野に前例のない総額六兆円規模の支援措置を盛り込んでいます。

 経済対策の決定に至るまでの調整過程について逐一コメントすることは差し控えますが、需給ギャップがある中で、足下の物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応し、日本経済の再生を図るために必要な個別施策を積み上げ、さらに、世界経済の下方リスクを十分に視野に入れて、最終的な規模を決定した次第であります。

 経済対策の手法についてお尋ねがありました。

 物価高が国民生活や事業活動に大きな影響を与える中で、生活に身近なエネルギー、食料品等の価格高騰対策を講じ、幅広い国民、事業者に裨益するよう取り組んでいます。また、今般の給付金は、物価高による家計への影響が特に大きい低所得層に対して迅速に給付を行うための施策です。

 労働市場の構造改革に関しては、賃上げと労働移動の円滑化、そして人への投資という三つの課題の一体的改革を進めていきます。賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという好循環が機能していないという積年の構造問題に挑み、構造的賃上げを実現してまいります。

 生産性向上等に向けた規制改革については、例えば、アナログ的規制を総点検し、見直しをしていきます。

 さらに、中小企業等の賃上げ支援については、生産性向上支援の拡充、価格転嫁対策の強化、これらを進めてまいります。

 これらの対策によって、我が国の成長力を強化し、経済再生を実現してまいります。

 歳出削減や規制改革の取組を含む経済財政政策についてお尋ねがありました。

 財政は国の信頼の礎であり、歳出歳入両面の改革の取組を続け、責任ある経済財政運営を進めることが重要であると考えております。

 この中で、歳出効率化に向けた努力として、例えば、コロナ禍からの社会経済活動の正常化を進め、今般の補正予算では、コロナ対策に関連する事業のウェートを低下させています。

 また、成長のためには規制改革が重要であり、岸田政権においても、アナログ的規制の見直しなどを強力に進めているところです。

 引き続き、年末までの予算編成過程においても、歳出効率化に向けた努力と各分野の規制改革にしっかりと取り組んでまいります。

 総合経済対策と御党からの提言についてお尋ねがありました。

 御党からの提言には、家計消費の下支え、促進、事業者のなりわいの維持、活性化の方向性、また原発再稼働、グリーン、DX投資の促進、労働市場改革など、政策の目標や内容について共通するところが多く、可能な限り経済対策の中に反映させていただきました。

 引き続き、御党とも議論を重ねながら、日本経済再生に向けて取り組んでまいります。

 抑止力といわゆる反撃能力についてお尋ねがありました。

 御指摘の積極防衛能力について詳細を承知しているわけではありませんが、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、抑止力と対処力の強化は最優先の使命であると考えます。

 このため、いわゆる反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を進めており、年末までに結論を出します。

 米国による拡大抑止及び核共有についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、米国の拡大抑止は我が国の安全保障にとって極めて重要です。

 政府としては、米国が核を含むあらゆる種類の能力を用いて日米安全保障条約上の義務を果たすことに全幅の信頼を置いており、拡大抑止は十分機能していると考えております。

 今後も拡大抑止が揺るぎないものであり続けることを確保するため、日米2プラス2や拡大抑止協議を含め、日米間で一層緊密な意思疎通を行っていきます。

 なお、核共有については、非核三原則や原子力基本法を始めとする法体系との関係から認められず、政府として議論することは考えておりません。

 自衛官の待遇改善及び防衛予算についてお尋ねがありました。

 自衛官の給与制度は、民間準拠を基本とする一般職の国家公務員の給与を参考にしつつ、任務の特殊性を踏まえた手当等を独自に設けており、今後とも、待遇改善に取り組んでいきます。

 また、大綱や中期防の別表は、主要装備品や部隊の整備規模を明らかにすることで透明性を確保することを目的としており、不可欠なものであると考えています。

 その上で、御党の御指摘のとおり、十分な弾薬の確保や装備品の可動数の増加等も極めて重要であり、新たな国家安全保障戦略等を策定する中で、しっかり取り組んでまいります。

 領海警備の見直しについてお尋ねがありました。

 武力攻撃に至らない侵害に適切に対応するためには、警察機関と自衛隊との連携が極めて重要であり、現行の法制の下、海上警備行動等の発令手続の迅速化を図ったほか、海上保安庁等関係機関の対応能力の向上、情報共有、連携の強化、各種訓練の充実など、必要な取組を推進しています。

 今後の取組については、お尋ねの法案を含め、法整備が必要という声もあります。その中で、各機関の連携を充実させ、円滑にさせるために必要なものがないか、訓練等を通じてなお一層の検討を進めてまいります。

 政府としては、今後とも、あらゆる事態を想定し、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命と財産を断固として守り抜くという強い覚悟を持って、冷静かつ毅然と対応してまいります。

 平和安全法制の下での自衛隊の活動についてお尋ねがありました。

 あらゆる事態においても国民の命や平和な暮らしを守り抜くことは、政府の最も重い責任です。平和安全法制の成立により日米同盟はかつてないほど強固になり、憲法の範囲内で最大限の対応を可能とするものであります。

 また、平和安全法制によって、武力攻撃に至らない侵害に際し、切れ目のない十分な対応に必要な体制を整備したところであり、現時点では新たな法整備が必要であるとは考えておりません。

 被害者救済新法についてお尋ねがありました。

 現在政府で検討している被害救済、再発防止のための寄附適正化の仕組みは、消費者契約法の対象とならない寄附一般について社会的に許容し難い悪質な勧誘行為を禁止すること、また、悪質な勧誘行為に基づく寄附について取消しを可能とすること、子や配偶者に生じた被害の救済を可能にすること、こうした点を盛り込んだものとしております。

 さらに、借入れ等による資金調達の要求の禁止、刑事罰を含めた罰則規定を設けることなども盛り込んでおります。

 政府としては、寄附適正化の仕組みの概要を土台として、委員御指摘の点も含め、各党からの御意見も参考にしつつ、法案化の作業を進めてまいります。

 新型コロナの感染症法上の位置づけについてお尋ねがありました。

 新型コロナの病原性の評価については、新規死亡者数や致死率のほか、重症化率等を基に総合的に専門家に評価をいただいております。

 新型コロナについては、九月に、ウィズコロナに向けた新たな段階への移行の全体像をお示しし、感染症法上の扱い等について、全数報告の見直しや療養期間の短縮など、相当の緩和を行って、社会経済活動との両立を進めたところです。

 新型コロナの五類への引下げを含めた感染症法上の扱いの更なる見直しについては、今後、ウイルスに新たな大きな変異が生ずる可能性や、病床、発熱外来の確保、ワクチン接種の促進、高齢者施設における療養体制の強化などの備えが必要であることを踏まえる必要があります。衆議院における感染症法案の修正も踏まえ、専門家等の意見も聞きながら、その時々の最新のエビデンスに基づき議論を進めてまいります。

 調査研究広報滞在費についてお尋ねがありました。

 調査研究広報滞在費の扱いについては、議員活動の在り方に関わる重要な課題であるからこそ、引き続き、使途公開等について与野党の間で御議論いただいているものと認識をしております。そのため、引き続き、国民の皆様の理解を得られるような全議員共通のルール策定に向け、各党各会派における真摯な議論を通じて合意を得ていただくことが重要であると考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 公明党の稲津久です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました令和四年度第二次補正予算案について質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、一言申し上げます。

 総理から、寺田総務大臣の辞任に対し、陳謝の言葉がありました。国会開会中に三人もの閣僚が辞任するという異例の事態となっていますが、総理としての任命責任を重く受け止め、しっかり体制を固めて、今国会の第二次補正予算案を始めとする課題に取り組まれるよう、お願いを申し上げます。

 質問に入ります。

 現在、国際的な原材料価格の上昇や円安等により、燃油価格の高騰に加え、電気・ガス料金の上昇が続くことが見込まれており、家計への負担軽減策を講ずることが急務です。

 また、子育て世帯を応援するため、妊娠期からの伴走型支援により、安心して子育てできる環境整備も今日強く求められています。

 一方で、持続的な賃上げに向けた人への投資や、中小企業支援、円安を生かした地域の稼ぐ力の回復など、経済再生のための取組も喫緊の課題です。

 以上の観点から、公明党は政府へ必要な政策を提言し、今回の補正予算案に多くの施策が盛り込まれたところです。

 今日の物価高を克服し、国民の安心の生活基盤を強化するため、政府は、補正予算の早期成立、執行に全力を挙げて取り組んでいただきたい。

 以下、具体的に質問します。

 今回の補正予算案の最大の目玉は、高騰する電気・ガス料金に対する前例のない負担軽減策です。

 電気料金については、一般家庭で一キロワットアワー当たり七円、都市ガスについても、公明党の強い主張を受けて、一立方メートル当たり三十円の支援を行うことが盛り込まれ、継続する燃油価格抑制策などと合わせると、総額約六兆円が計上されました。

 エネルギー支出が家計に占める割合は、所得が低い家庭ほど大きくなると言われています。また、私の地元の北海道では、これから冬場を迎え、暖房の燃料費が高騰すれば家計を直撃します。その意味で、今回の支援策は、国民生活を守る対策であり、高く評価します。

 しかし、現在行われている燃油価格抑制策に対し、本当に価格を抑えられているのか分からないとの声が上がったように、せっかく多くの費用を投入しても、国民が効果を実感できなければ意味がありません。さらに、これらの施策が事業者を経て消費者に届くまでのスピードも大切です。

 そこで、電気、都市ガス、LPガス、燃油、それぞれの支援策について、具体的にいつからどのくらいの負担軽減になるのか、国民の皆様に分かりやすい形で示すべきです。総理の答弁を求めます。

 子育て支援について、何点か伺います。

 公明党は、今月、子育て応援トータルプランを発表し、結婚、妊娠、出産から高等教育までの各ライフステージや、子供の年齢に対応した支援策を取りまとめました。

 今般の補正予算案には、その第一歩として、公明党の主張を踏まえ、出産・子育て応援交付金が計上されています。

 全ての妊産婦が公的支援につながる機会を確保し、誰もが安心して子供を産み育てられる環境を整備するために重要な政策であると考えますが、まずは、同事業の必要性や効果について、厚生労働大臣から国民への分かりやすい説明を求めます。

 次に、同事業の制度設計について伺います。

 補正予算については、年度内に事業を開始できるよう、自治体の事務負担等に配慮し、簡素な形での実施を可能にするとともに、来年度以降も継続的に実施していくことを見据えた制度設計が必要です。

 政府は具体的にどのような仕組みを考えているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 出産・子育て応援交付金に係る地方自治体への支援について伺います。

 同事業が全ての自治体で実施され、対象となる方へ漏れなく行き届かせるには、地方自治体における伴走型相談支援のための体制整備や、デジタルの活用等による事務負担の軽減など、国として最大限支援することが必要です。

 一方で、この事業を実施するに当たり、事業費について、補助率、都道府県六分の一、市町村六分の一の地方負担分が足かせとなり、全ての自治体で実施できないといったことがないよう、地方創生臨時交付金を本事業の地方負担分に活用できるようにするなど、国として、地方負担分に対する地方自治体への支援をすべきと考えます。

 地方自治体への支援について、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 リスキリングなど、人への投資について伺います。

 今般の補正予算案には、構造的賃上げに向けた一体改革のために約一兆円が計上されました。これまで行ってきた賃上げへの支援に加えて、リスキリングの支援や、成長分野への労働移動の支援が大きく拡充されます。

 一方で、リスキリングや失業なき労働移動の円滑化を推進するに当たっては、労働者本人の意思を尊重することが重要です。

 そのためには、労働者が必要な情報を得ながら、転職やキャリアアップについて相談ができ、リスキリングから転職まで一気通貫で支援する仕組みを官民が協力してつくっていく必要があると考えますが、総理の答弁を求めます。

 ウィズコロナの社会を見据えて、日本経済の屋台骨である中小・小規模企業を発展させていくための支援も重要です。そのため、GXやDXといった成長分野への設備投資などを通して、事業再構築や生産性向上に取り組めるよう、強力な後押しが必要です。

 今回、公明党の強い主張で複数年度にわたる切れ目ない支援が可能になりましたが、これにより、事業者が安心して、前向きな投資や賃上げ、海外展開などに取り組むための環境整備が大きく進むものと考えます。

 一方で、DXをどのように進めればよいか分からないとお困りの事業者に寄り添う支援も重要です。

 今回盛り込んだ中小企業支援策の効果の見通しと伴走型支援の取組について、総理の答弁を求めます。

 ロシアによるウクライナ侵略などにより、国民生活に欠かすことのできない食料の価格高騰が進んでおり、本年十月の消費者物価指数で見ると、食料は前年同月比で六・二%上昇しています。

 一方で、食を支える農林水産業の現場では、燃油、肥料などの生産資材や家畜の飼料の価格高騰により、生産者の経営が圧迫されています。

 このような厳しい状況を受け、公明党では、輸入小麦の政府売渡価格の抑制による価格安定や肥料価格高騰の影響緩和対策の創設などを訴え、政策として実現してまいりましたが、引き続き、生産、流通、消費、各段階への財政的支援が必要と考えます。

 食品、農林水産分野への物価高騰対策の必要性について、総理の答弁を求めます。

 農林水産業の危機は、食料の安定供給や価格に影響します。農林水産業の生産性が向上すれば、食料品の原材料価格を安定化することにつながり、物価高に苦しむ消費者への支援になります。

 今般の物価高騰により、輸入農産物や輸入生産資材への依存を低減し、国内での生産を増やし、必要な穀物や生産資材の備蓄を進めるなど、食料安全保障を強化していくことの重要性が改めて認識されました。

 食料安全保障の強化に向け、具体的にどのような施策を推進していくのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 以上、補正予算に盛り込まれた主な支援策についてお伺いしました。

 現在、我が国は、物価高騰や新型コロナの感染拡大など、危機的状況が続いています。今こそ政治がリーダーシップを発揮し、国民に希望と安心を送り届けることが何よりも重要です。

 そのためにも、一日も早く補正予算案に含まれた支援策を国民や事業者の皆様にお届けする必要があります。そのことを政府に強く求めるとともに、公明党は危機克服へ全力を尽くすことをお誓いし、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 稲津久議員の御質問にお答えいたします。

 電気、都市ガス、LPガス、燃料油に対する支援策についてお尋ねがありました。

 今回の補正予算案に盛り込んでいる電気料金、都市ガス料金、燃料油価格の対策により、標準世帯では、来年度前半までに四万五千円の支援につながります。

 電気、都市ガス料金の支援については、標準世帯で、電気約二・四万円、都市ガス約八千円の負担軽減を見込んでいます。既存の料金請求システムを活用し、一月の使用分からの開始を目指すと同時に、負担軽減を実感していただけるよう、御家庭や事業者に届く毎月の請求書や検針票において分かりやすく記載を行う方針です。

 燃料油についても、標準世帯で約一万三千円の負担軽減を見込んでいます。来年一月以降も制度が継続することを踏まえ、消費者に効果を実感いただけるよう、ガソリンスタンドにおいて毎週の支給額や抑制効果を周知してまいります。

 なお、LPガスについては、電気、都市ガス、燃料油のような直接的な負担軽減ではなく、事業体質の強化に向けた支援により、今後の更なる価格上昇を抑制するとともに、その抑制効果をホームページ等を通じて分かりやすく示してまいります。

 リスキリングから転職までの支援についてお尋ねがありました。

 リスキリングや失業なき労働移動を推進する際には、御指摘のとおり、希望する労働者が、必要な情報や支援を得ながら、主体的に成長分野の企業へ転職できるような環境整備を進めていくことが重要です。

 そのため、今回の補正予算案において、在職者が民間の専門家に相談して、リスキリングから転職まで一気通貫で支援を受けられる仕組みの整備を盛り込んだところです。

 さらに、労働移動円滑化に向けた指針を来年六月までに取りまとめるとともに、人への投資の支援を五年間で一兆円のパッケージへと抜本強化します。リスキリングについて政府が支援を行うに当たり、個人への直接支援を強化するなど、労働者が主体的にリスキリングに関与できる環境整備を進めてまいります。

 そして、補正予算に盛り込んだ中小企業支援策についてお尋ねがありました。

 新型コロナや物価高により引き続き厳しい事業環境に置かれた中小企業が、GXやDXなどの成長分野に前向きな投資を行えるよう支援することは重要であり、今回の補正予算に一兆円を超える中小企業支援策を計上いたしました。

 このうち、事業再構築補助金や生産性革命推進事業では、これまで既に累計約三十三万者を支援していますが、今回の補正予算により、十二万者を上回る支援を切れ目なく実施する予定であり、着実に中小企業の成長や賃上げにつなげていきます。

 また、これまでに商工団体等による約十六万件の相談対応を支援しているところですが、商工団体等の専門家の配置に加え、新たに指導員向けの研修を行うことで、伴走支援も含め、相談体制の強化を進めていきます。

 食品、農林水産分野への物価高騰対策の必要性についてお尋ねがありました。

 ウクライナ情勢や円安の影響などを受けて、食料の安定供給の重要性が改めて浮き彫りになっており、海外に依存する農産物や肥料、飼料の国産化などを強力に推進し、危機に強い食料品供給体制を構築することが必要です。

 このため、配合飼料価格安定制度の拡充や輸入小麦価格の年度内据置きなど、これまでの累次の機動的対応に加え、総合経済対策において、フードバンクへの支援強化など、厳しい状況にある生活者支援と併せ、小麦、大豆、飼料作物等への作付転換による増産への支援、堆肥や下水汚泥資源の肥料利用拡大など、先々を見据えた構造的な対策を総合的に講じてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 稲津久議員より、出産・子育て応援交付金についてお尋ねをいただきました。

 核家族が進み、地域のつながりも希薄となる中で、孤立感や不安感を抱く妊産婦、子育て家庭も少なくないことを踏まえ、妊産期から出産、子育てまで一貫して身近で相談に応じ、様々なニーズに即した必要な支援につなぐ伴走型相談支援と、その実効性をより高めるための経済的支援を一体として実施する出産・子育て応援交付金事業を創設し、継続的に実施することといたしました。

 伴走型相談支援については、市町村の子育て世代包括支援センター等で、全ての妊婦や子育て家庭と面談し、アンケートや子育てガイドを活用しつつ出産、育児等の見通しを一緒に確認するとともに、その後も継続的に子育てに関する情報を発信することなどを通じ、必要なサービス等につなげることとしております。

 また、経済的支援については、令和四年四月以降に出産された方を対象に、妊娠届出後と出産届出後を通じて合計十万円相当を支給することとします。各自治体の判断により、クーポンの支給、子育て支援サービスの利用券、交通費やベビー用品の購入、レンタル費用等の助成など、幅広く認める方向で検討しております。

 本事業の地方負担については、今般の補正予算による今年度分の地方交付税の増額による対応が想定されております。なお、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金のうち、原油価格・物価高騰対応分や重点交付金を充てることも可能と承知しております。(拍手)

    〔国務大臣野村哲郎君登壇〕

国務大臣(野村哲郎君) 稲津議員の御質問にお答えをいたします。

 食料安全保障の強化についてお尋ねがございました。

 食料は人間の生活に不可欠であり、食料安全保障は、生産者だけの問題ではなく、消費者を含めた国民一人一人に関わる国全体の問題でございます。その上で、食料安全保障を強化していくためには、国内で生産できるものは国内で生産していくことが大変重要でございます。

 このため、麦や大豆、飼料作物の海外依存の高い品目の生産拡大や米粉の利用拡大の推進、肥料の国産化に向けた、堆肥や下水汚泥資源などの国内資源の利用拡大等を強力に進めてまいります。

 こうした対策によって、今回の補正予算においても、食料安全保障の強化に向けた構造転換対策として盛り込んでいるところでございます。引き続き、食料や生産資材の多くを海外からの輸入に依存している我が国の食料供給の構造の転換を進めることにより、食料安全保障の強化に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 会派を代表し、ただいま議題となりました鈴木財務大臣の財政演説について質問いたします。(拍手)

 まずは、岸田総理に一言申し上げます。

 山際前経済再生担当大臣、葉梨前法務大臣に続き、昨夜、寺田総務大臣が辞任しました。この一月弱の間に、三人の閣僚が事実上更迭されたことになります。

 これまで、岸田総理は、山際大臣辞任のときも、葉梨大臣辞任のときも、寺田大臣辞任のときも、丁寧な説明をするように、説明責任を尽くすようにと指示されてきましたが、私たちは、総理自身の任命責任について丁寧な説明をまだ聞いていません。改めて自身の任命責任について説明を尽くしていただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

 総務省が十一月十八日に発表した十月の全国消費者物価指数は、値動きの大きい生鮮食品を除き、総合で一〇三・四と前年比三・六%上昇しています。上昇率は、第二次石油危機に伴うインフレが続いていた一九八二年二月以来、四十年八か月ぶりの高い伸び率となっています。物価の上昇は十四か月連続で、十月は、原料価格の高騰や記録的な円安の影響で、都市ガス代が二六・八%、電気代は二〇・九%値上がりしています。総務省は、今後も総合で三%台の高い伸びが続く可能性があるとしており、民間調査会社によれば、物価高による家計負担は昨年に比べ九万八千円増加しています。

 岸田総理は、先月、物価高騰の現場の声を聞くために、買物客らでにぎわう都内の商店街を視察されましたが、そのとき聞かれた生の声は総合経済対策に反映されているのでしょうか。今の物価上昇についての認識をお伺いします。

 私たち国民民主党が参議院選挙の公約でも掲げ、九月十三日に発表した緊急経済対策にも盛り込んだ、国民一人当たり一律十万円を給付するインフレ手当こそ、今必要な経済対策ではありませんか。財源としては、今回の補正予算案に計上された予備費四兆七千四百億円を充当するほか、円買い・ドル売りの為替介入によって外国為替資金特別会計に生じた九兆千八百三十一億円の円貨を利用することを提案します。

 具体的な使途が決まっていない予備費が約五兆円規模で常態化しています。国会承認を経ずに使える予備費の濫用は財政民主主義を空洞化させるものです。我が党は、インフレ手当に充当するため、この予備費の組替え動議を提出し実現を求めますが、鈴木財務大臣の見解を伺います。

 国民民主党は、外為特会について、令和四年度における外国為替資金特別会計からの繰入れの特別措置に関する法律案を今国会で議員立法として提出します。この法案は、外為特会の資金を物価高騰等の諸事態に対処して国民生活の安定を図るための施策に有効に活用することができるようにするため、令和四年度における同特別会計から一般会計への繰入れの特別措置を定めるものとするものです。

 外為特会に着目しているのは我が党だけではありません。自民党の伊藤達也元金融担当相も、十月十七日の衆議院予算委員会で、小泉政権で特会改革に取り組み、埋蔵金を掘り起こしたと、外為特会を是正する必要性を強調しました。

 日本の外貨資産の規模は百七十兆円をはるかに超え、先進国でも極めて突出して大きく、一部を売却してもアメリカ政府の理解は得られると考えますが、財務大臣の見解を伺います。

 我が党が求め続けてきた電気代の値下げについて、家庭用は平均で約二割引き下げられるとのことですが、産業用には再エネ賦課金相当額の引下げが行われると承知しています。産業用は平均で何%下がるのでしょうか。

 政府のガソリン値下げの補助金は、エンドユーザー向けの値下げではなく、一部が事業者の経営改善に使われていたとの批判がありました。小売電気事業者に補助金を入れることで、同じようなことが起こる可能性はないのでしょうか。

 ガソリンと異なり、電気料金請求書の燃料調整費の欄で値下げを表すとしていますが、大手電力会社はできるとして、約七百社ある新電力会社でも、請求書で分かる形で一月から値下げができるのでしょうか。

 また、クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金は、補正予算成立後、執行団体の決定などを経て、申請の受付開始はいつになるかについても教えてください。

 ガソリン補助金は、財務省の調査で、補助額五千五百七十七億円の二%、百十億円が値下げに回っていないことが明らかになりました。今後は値下げに全額回すことはできるのでしょうか。

 トリガー条項の凍結解除によるガソリン税の減税であれば、その心配はありません。ガソリンがまだまだ高いとの声も多く寄せられています。トリガー条項の凍結解除も併せて行うべきではないでしょうか。

 これらについては、さきに国民民主党から物価高対策、需要不足対策を申し入れさせていただきました岸田総理にお伺いします。

 先日、国際子供平和賞を日本人として初めて受賞した川崎レナさんのオランダでのスピーチを総理も聞かれたと思います。十七歳の彼女は、私たち国会議員の姿を見て、次のように考えたそうです。

 変わりそうにない日本、自分の生まれた国、日本に誇りを持てないことについて、とてつもない悔しさを感じました。私たち日本の若者は政治に興味がないのではなく、政治を信頼する理由、投票する理由が今はまだ見つからないことが多いのです。市民の声を最初から聞いてくれないように見える日本の政治に誰が協力しようとするのでしょうか。

 そして、最後に彼女はこう訴えました。

 私たち若者は、見るはずではなかった、つらい、悔しい日本の現実を見てきています。それでも理想や希望をまだ持っています。政治家になる前に格好いい大人になってください。私たちに子供らしく夢を持たせてください。私たち日本の子供は、皆が理想とする格好いい日本になってくれるのをずっと待っています。

 岸田総理、最後に、是非、彼女の質問に答えてください。日本の子供、若者が夢を持てる日本にいつになったらなるのでしょうか。いつまで彼女たちを待たせるのでしょうか。

 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 長友慎治議員の御質問にお答えいたします。

 閣僚の任命責任についてお尋ねがありました。

 先々週、葉梨大臣から、政権として様々な懸案を抱える中、軽率な発言によって今後の補正予算や重要法案の審議に迷惑をかけたくない、身を引きたいとの辞任の申出がありました。

 また、昨日、寺田大臣から、補正予算、被害者救済新法など重要課題処理の最終段階を迎えているときに、自らの政治資金に関する質疑が続くことで悪影響を与えたくないと辞任の申出がありました。

 総理大臣として、補正予算審議、被害者救済新法、コロナ対応、当初予算編成等の重要課題に答えを一つ一つ出すことを最優先とし、それぞれの辞任を認めることになりました。

 国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾なことであり、私自身、任命責任を重く受け止めております。政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。

 物価対策についてお尋ねがありました。

 先月、都内の商店街を視察し、消費者や事業者の方から、エネルギー価格や物価の高騰について不安の声を直接伺いました。こうした物価上昇は消費者の暮らしや事業者の経営に依然大きな影響を与えていると考えます。

 お伺いした声を踏まえ、今般の総合経済対策では、思い切った電気、都市ガス料金対策、ものづくり・商業・サービス補助金などによる生産性の向上、価格転嫁対策の抜本的強化等を盛り込みました。

 こうした対策を一日も早く全国の家庭、事業者にお届けし、物価高騰の声にお応えしたいと思っています。

 電気料金支援策及びクリーンエネルギー自動車に関する補助金についてお尋ねがありました。

 電気料金への支援措置は、高圧契約の企業等に対しては、FIT賦課金の負担を肩代わりする一キロワットアワー当たり三・五円の支援を行い、平均的には一割強の負担軽減につながると考えております。

 できる限り多くの新電力においても、請求書等で分かる形で、一月の使用分、二月の請求分から値引きを開始していただけるよう、既存の料金請求システムを活用する方針です。

 システムを改修しなければ値引きの処理ができない場合や請求書等への値引き単価等の表示ができない場合には、その改修に必要な経費について、事業者への支援を行ってまいります。

 なお、支援に際しては、需要家に対する販売実績を確認し、事後的に確定検査等を実施することを通じて、いわゆる中抜きを発生させない仕組みといたします。

 クリーンエネルギー自動車の購入補助金については、補正予算の成立を前提としながら、先立って執行団体の公募などの手続を開始し、予算成立後、今年度内のできるだけ早い時期に申請の受付を開始いたします。

 いずれにせよ、補正予算案の閣議決定日以降に登録された車両を補助対象とすることで、隙間のない支援を行ってまいります。

 燃料油の激変緩和事業及びトリガー条項の凍結解除についてお尋ねがありました。

 燃料油の激変緩和事業の支給額全てが値下げに回っていないという指摘については、各ガソリンスタンドの在庫状況等によって小売価格への反映に時間差が生じるという課題もありますが、小売事業者に対し、制度の趣旨を周知徹底して、補助額を全て値下げに回すよう求めてまいります。

 トリガー条項については、今年四月、御党も含めた三党検討チームにおいて議論いたしましたが、現時点で、発動に際しての課題を解決するための具体的な方策について結論を出すに至っていないものであると承知しております。

 そして、子供、若者が夢を持てる日本についてお尋ねがありました。

 日本人の若い世代が世界で活躍していることについて、心からうれしく、また大変心強く思います。

 年齢に関係なく、現実は時につらいものではありますが、私も理想や希望を持ち続けています。いつまでと申し上げるのは難しいですが、我々一人一人が力を合わせることで、今より日本をよい国にしていくことができると信じております。

 社会をつくり上げるのは、今を生きる我々一人一人です。格好よい日本になってくれるのを待つだけではなく、是非、皆さんとともに、この国を格好よい国にしていきたいと思っております。そのために全力を尽くしてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕

国務大臣(鈴木俊一君) 長友慎治議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、補正予算の組替え動議についてお尋ねがありました。

 インフレ手当について御提言をいただきましたが、足下の物価高に対しては、これまで累次にわたり物価高騰対策を講じてきたところであり、さらに、今般の経済対策では、電気・ガス料金への支援など、エネルギー、食料品等の価格高騰によって厳しい状況にある生活者、事業者を支援する措置を講じることとしております。

 政府といたしましては、こうしたきめ細かい支援策を迅速に実行していくことが重要と考えており、更に追加で御提言のような一律の現金給付が必要とは考えておりません。

 また、外為特会の外貨資産は、政府短期証券を元手に保有しているものです。為替介入で円貨を得た場合、まずは償還期限を迎える政府短期証券の償還に充てることとなっており、これを財源として捻出することは適当ではありません。

 さらに、今般措置した予備費は、直面する困難に機動的、弾力的に対応するために、万全の備えとして講じるものです。

 したがって、組替え動議の御提案をいただきましたが、政府といたしましては、本補正予算に御賛同をいただきたいと考えております。

 最後に、外貨資産についてお尋ねがありました。

 外貨準備の適正な規模については、国際的に統一された見方があるわけではありませんが、一般論として申し上げれば、市場に急激かつ過度な変動が生じた場合に自国通貨を買い支えるために十分な額の外貨準備を保有しておくことは重要であることから、現在の外貨準備の規模が過大であると考えてはおりません。

 また、御提案のように財源確保のためであっても、外貨を円貨に替えるのは、実質的にドル売り・円買いの為替介入そのものになります。為替介入は、G7等での国際的な合意において、過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われることとされており、この面から見ても、財源確保のために外貨準備を取り崩すのは適当ではないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、二〇二二年度第二次補正予算案について質問します。(拍手)

 昨夜、岸田総理は、寺田総務大臣を更迭しました。政治資金と選挙に関し違法行為を行っていた人物を、それを所管する大臣に任命するなど、あり得ません。また、人権、命の尊厳に関わる法務大臣が死刑を軽々しく話題にするなど、絶対に許されません。総理の任命責任は重大です。一月で三人もの閣僚が辞任に追い込まれたということは、内閣総辞職に値するのではありませんか。お答えください。

 統一協会の問題も、疑惑は深まるばかりです。集会出席や挨拶だけでなく、選挙に際し政策協定に署名をしていた問題、関連団体が運営するセネガルの学校にODA予算が供与されていたなど、政治と行政に深く関与していたことが判明しています。統一協会と政府・自民党との関係を徹底調査するべきではありませんか。

 異常な円安と物価高騰に対する最大の処方箋が賃上げであることは論をまちません。総理は構造的な賃上げを強調しますが、成長分野への労働移動に重点化するだけです。一方、コロナ禍で雇用維持のために活用された雇用調整助成金は段階的に縮小していくのですから、逆に格差を拡大するのではありませんか。

 最低賃金全国一律千五百円は待ったなしです。賃上げしたくてもできない中小企業等には、社会保険料の減免など、直接支援すべきです。特に国の決断でできることとして、公定価格や報酬で水準を決めている介護、障害、保育などのケア労働者の賃金を全産業平均まで引き上げること、さらに、国や自治体の非正規労働者の時給を千五百円以上に引き上げるべきではありませんか。

 政府は、公的年金を補完する個人版確定拠出年金を拡充し、老後の資金を自己責任の投資へ誘導しようとしています。公的年金への国の責任を棚上げするのではなく、今こそ物価に応じて年金を上げ、暮らせる安心の年金制度を目指すべきではありませんか。

 大事なことは、国民の懐を暖め、内需の充実で実体経済を立て直していくことです。最大の決め手は、物価全体を押し下げる消費税減税です。フリーランスや零細な免税業者まで増税になるインボイス制度もやめるべきです。答弁を求めます。

 食料自給率が三八%、エネルギー自給率は一二・一%と、危機のときにもろいのが今の日本です。経済対策では、飼料、肥料、穀物などの国産化の推進を掲げていますが、食料自給率引上げの目標を示してください。目標を持って国産化を目指しつつ、当面は高騰部分をカバーし、生産費を償える制度の拡充が必要と考えますが、見解を伺います。

 政府が重点とする電気代、ガス料金の値上げ対策は、利用者ではなく供給側への補助によって値下げにつなげようというものです。電力会社が相次いで値上げを発表している中、補助の効果も、出口も見えなくなるのではありませんか。

 エネルギー源のほとんどは、輸入による化石燃料に依存しています。一〇〇%自給でクリーンな地域発の再エネに思い切ってシフトすべきです。

 一方、総理は、原発の再稼働、延命、新増設を打ち出しました。東電福島第一原発事故から十一年、高線量の燃料デブリの処理など、廃炉の最終の姿は決まっていません。高レベル放射性廃棄物の最終処分地も依然として決まっていないのです。未来に責任の持てない原発推進路線からきっぱり決別してこそ、気候危機の待ったなしの課題に責任を果たせるのではないでしょうか。

 今般、原発事故被災者への損害賠償について、中間指針の見直しがようやく始まりました。ふるさとと当たり前の日常、なりわいが一瞬で奪われた被災者の苦しみに心寄せ、同じことを二度と起こさないためには、原発ゼロの決断しかありません。

 子育て支援策が目玉の一つとなっています。

 青森県母子寡婦福祉連合会が母子家庭を対象に行ったコロナ禍の影響調査で、三人に一人は収入が減った、なくなったと答えています。朝四時から深夜零時までトリプルワークで働いている母親もいます。自分がコロナになったらどうするか、不安でたまらないと多くの母親が訴えています。

 補正予算案で子供食堂やフードバンクなどNPOに対する支援が拡充されたことは大事ですが、そこにつながる人はごく一部です。NPO法人全国こども食堂支援センターが行った全国調査でも、利用者は増えていますが、本当に必要な人に支援が届いているのかと悩む声が六割から上がっています。

 むしろ、国は、支援団体の相談活動などを通して明らかになった課題に向き合うときではありませんか。学校給食無料化、医療費無料化、児童扶養手当の拡充など、根本的な制度見直しこそ待たれています。シングルマザーは、仕事と子育てに追われながら、資格を取って安定した仕事に就きたいと強く望んでいます。職業訓練から就職まで切れ目のない支援こそ、しっかりと行うべきです。

 最後に、岸田総理は、バイデン米大統領に、防衛力の抜本的な強化と防衛費の相当な増額を表明しました。防衛費をGDPの二%、五年間で実質倍増とし、文科省などの研究開発予算や、港湾、空港など公共事業予算を軍事に組み込む検討を始めています。有識者会議では、財源に新たな増税が取り沙汰されています。国民に痛みだけ押しつける大軍拡、大増税は、到底認められません。

 国を守るためには全てを我慢せよとされた、かつての戦時体制に戻りつつある気がします。今こそ、対話の平和外交努力で、憲法九条を持つ国、唯一の被爆国としての役割を果たすべきです。

 以上述べて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。

 閣僚の任命責任についてお尋ねがありました。

 先々週、葉梨大臣から、政権として様々な懸案を抱える中、軽率な発言によって今後の補正予算や重要法案の審議に迷惑をかけたくない、身を引きたいと辞任の申出がありました。

 また、昨日、寺田大臣から、補正予算、被害者救済新法など重要課題処理の最終段階を迎えているときに、自らの政治資金に関する質疑が続くことで悪影響を与えたくないと辞任の申出がありました。

 総理大臣として、補正予算審議、被害者救済新法、コロナ対応、当初予算編成等の重要課題に答えを一つ一つ出すことを最優先とし、それぞれの辞任を認めることといたしました。

 国会開会中に大臣が辞任する事態となったことは誠に遺憾であり、私自身、任命責任を強く受け止めております。政策に遅滞が生じないよう、政府一丸となって、国政の運営にしっかりと取り組むことで職責を果たしてまいります。

 旧統一教会との関係の調査についてお尋ねがありました。

 閣僚を含む多くの議員が、社会的に問題がある旧統一教会、その関連団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の皆様の政治への信頼を傷つけたことを率直におわびいたします。

 私の内閣における閣僚等については、その任命時において、自ら当該団体との関係を精査し説明責任を果たすこと、そして今後は当該団体との関係を絶つことを指示し、それを前提に職務に当たらせているところです。

 また、自民党においては、各議員それぞれが、旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告し、新たな接点が判明した場合は、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底することを方針としています。

 大切なことは、未来に向かって関係を絶つということであります。自民党においては、旧統一教会及び関連団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、ガバナンスコードを改定し、対応方針について党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいります。

 構造的な賃上げ等についてお尋ねがありました。

 構造的な賃上げとは、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、更に賃上げを生むという好循環を実現するものであり、国民全体に恩恵が及ぶものであると考えています。

 その実現に向けた環境整備として、人への投資の政策パッケージを五年で一兆円に拡充することといたしました。

 こうした取組に併せて、新型コロナ対策の雇用調整助成金の特例措置については、構造的な賃上げにつながるリスキリングと労働移動の円滑化を実現する観点も踏まえ、業況の厳しい企業には配慮しつつ段階的に縮減することといたしました。

 引き続き、賃上げ、労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革により、構造的な賃上げの実現を目指してまいります。

 最低賃金等についてお尋ねがありました。

 最低賃金については、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指し、生産性向上の支援や価格転嫁の実現など、中小企業が賃上げしやすい環境整備に総合的に取り組んでまいります。なお、その際、社会保険料の減免は、被保険者と事業主の支え合いの精神に基づき保険料負担が労使折半とされていることから、これは慎重な検討が必要であると考えております。

 また、介護、障害福祉、保育職員等の処遇改善については、給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置を講じたところです。今後も、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減を進めてまいります。

 国の非常勤職員の給与については、常勤の職員や民間との均衡を考慮し、改善してきたところです。また、地方自治体についても、処遇の適正化に取り組んできたところであり、今後とも適切に対応してまいります。

 公的年金制度についてお尋ねがありました。

 公的年金制度については、前年の物価等の変動に応じて年金額を改定することを基本としながら、将来世代の負担が過重にならないようにしつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保し、将来にわたって持続可能な仕組みとしており、今後とも、この仕組みの下で、年金を着実に支給してまいります。

 消費税、インボイス制度についてお尋ねがありました。

 消費税については、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、これをあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられています。このような消費税は、社会保障制度を支える重要な財源であるため、減税は考えておりません。

 また、インボイス制度は、複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものです。免税事業者を始めとした事業者の取引について、取引環境の整備に取り組むとともに、今般の総合経済対策においても、IT導入補助金の補助対象の拡大など、インボイス対応のための支援策の充実を盛り込んでおり、引き続き、政府一体で連携して、制度の円滑な移行に向けて万全の対応を図ってまいります。

 食料自給率目標と生産費の高騰への支援についてお尋ねがありました。

 現行の食料・農業・農村基本計画では、令和十二年度に、カロリーベースで四五%、生産額ベースで七五%とする食料自給率目標を掲げており、現下のウクライナ情勢や円安の影響等を踏まえ、海外に依存する農産物や肥料、飼料の国産化を強力に推進し、食料安全保障を確保してまいります。

 また、足下の燃油や肥料、飼料の高騰に対しては、これまで累次の機動的な対応を実施しており、今般の総合経済対策においても、配合飼料価格安定制度の積み増しや、施設園芸等の燃油価格高騰対策の拡充により、生産者への影響を緩和してまいります。

 電気料金支援策、再エネ、原子力についてお尋ねがありました。

 電気料金支援策は、事業者ではなく需要家に対する支援です。来年春以降に見込まれる料金の値上げの中でも、需要家が支援策による値下げの効果を実感いただけるよう、各家庭や事業者へ届く毎月の請求書や検針票において、値下げの単価等を分かりやすく記載することとしております。

 また、この支援措置は、脱炭素の流れに逆行しないよう、来年九月に縮小することを予定しています。それまでに、省エネ対策の抜本強化、さらには、再エネ、原子力の推進などによりGXを加速し、需要側、供給側の双方で燃料価格高騰の影響を緩和できる構造への転換も最大限進めてまいります。

 再エネは重要な国産エネルギー源であり、二〇五〇年カーボンニュートラルや二〇三〇年度再エネ比率三六%から三八%という野心的な目標の実現に向け、国民負担の抑制と地域の共生を図りつつ、最大限導入に取り組んでまいります。

 御指摘の原子力発電の問題についても、正面から取り組んでまいります。

 まず、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、福島の復興の大前提であり、政権の最重要課題です。引き続き、国も前面に立って取り組んでまいります。

 また、今後も安定的かつ継続的に原子力発電を利用するために、高レベル放射性廃棄物の最終処分等の課題に対して、責任ある取組を進めてまいります。

 一人親家庭に対する切れ目のない支援についてお尋ねがありました。

 一人親家庭については、経済的基盤が弱く、厳しい状況の御家庭も多い中、新型コロナや物価高の影響を受け、大きな困難が生じている家庭も多いと認識をしております。こうした点を踏まえ、就業支援を基本としつつ、子育て・生活支援、経済的支援など、一人親の自立に向けた切れ目のない支援の充実に取り組んでいます。

 その際、御指摘の学校給食費無料化や医療費無料化、児童扶養手当の拡充など恒久的な制度の見直しには、安定財源の確保等の課題があり、慎重な検討が必要であると考えております。

 防衛費増額に必要とされる財源及び外交努力についてお尋ねがありました。

 これまでるる申し上げているとおり、安全保障環境が急速に厳しさを増す中、世界の平和と繁栄に向けた外交努力を尽くす必要があることは言うまでもありません。同時に、国民を守り、地域の平和と安定を確保するため、本年末までに新たな国家安全保障戦略等を策定する中で、防衛力を抜本的に強化してまいります。

 財源の在り方については、政策課題によって様々であり、防衛力強化についても、必要となる防衛力の内容に応じて、財源確保策を考えてまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       法務大臣    齋藤  健君

       外務大臣    林  芳正君

       財務大臣    鈴木 俊一君

       文部科学大臣  永岡 桂子君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  野村 哲郎君

       経済産業大臣  西村 康稔君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    西村 明宏君

       防衛大臣    浜田 靖一君

       国務大臣    秋葉 賢也君

       国務大臣    小倉 將信君

       国務大臣    岡田 直樹君

       国務大臣    後藤 茂之君

       国務大臣    河野 太郎君

       国務大臣    高市 早苗君

       国務大臣    谷  公一君

       国務大臣    松野 博一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       財務副大臣   井上 貴博君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.