衆議院

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第13号 令和4年12月6日(火曜日)

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令和四年十二月六日(火曜日)

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  令和四年十二月六日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(細田博之君) これより会議を開きます。

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 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(細田博之君) この際、内閣提出、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣河野太郎君。

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) ただいま議題となりました消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 社会経済情勢の変化に対応して、消費者の利益の擁護を更に図るため、消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる範囲を拡大するとともに、取消権の行使期間を伸長する等の措置を講ずるほか、独立行政法人国民生活センターの業務として適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行う業務を追加する等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概説を御説明申し上げます。

 第一に、消費者契約法に関しては、意思表示を取り消すことができる不当な勧誘行為の類型を改正し、事業者が消費者に対し、霊感等による知見として、当該消費者又はその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、当該消費者契約を締結することが必要不可欠である旨を告げることとしています。

 この不当な勧誘行為に係る取消権の行使期間を、追認することができるときから三年間、消費者契約の締結のときから十年を経過したときに伸長することとしています。

 第二に、独立行政法人国民生活センター法に関しては、独立行政法人国民生活センターの業務に、適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助を行うことを追加するとともに、和解仲介手続及び仲裁の手続について、適正かつ迅速な審理が実現されるように所要の規定を新設するほか、消費者紛争の当事者である事業者の名称等を公表することができることとするなどの改正を行うこととしています。

 その他、所要の規定を整備することとしています。

 引き続きまして、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について御説明申し上げます。

 法人等からの寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護等を図る観点から、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、当該不当な寄附の勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を定めるとともに、寄附の意思表示の取消しの範囲の拡大及び扶養義務等に係る定期金債権を保全するための債権者代位権の行使に関する特例の創設等の措置を講ずる必要があるため、この法律案を提出した次第です。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、法人等は、寄附の勧誘を行うに当たり寄附者等に配慮しなければならないことを規定するとともに、寄附の勧誘に関する禁止行為として、不当な勧誘により寄附者を困惑させてはならないこと及び借入れ等による資金調達を要求してはならないことを規定しております。

 第二に、法人等が禁止行為に違反した場合の勧告、命令等の行政上の措置等について規定するとともに、当該行政措置に係る罰則について規定しております。

 第三に、不当な勧誘により寄附者が困惑して寄附を行った場合における意思表示の取消しについて規定するとともに、扶養義務等に係る定期金債権について、確定期限の到来していない部分を保全するための債権者代位権の行使に係る特例を設けることとしております。

 第四に、国は、寄附者等が権利の適切な行使により被害の回復等を図ることができるようにするため、日本司法支援センターと関係機関及び関係団体等との連携の強化を図り、利用しやすい相談体制を整備する等必要な支援に関する施策を講ずるよう努めなければならないこととしております。

 その他、この法律の運用上の配慮に関する規定など、所要の規定を整備することとしております。

 以上が、これらの法律案の提案理由及びその概要であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(細田博之君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。宮崎政久君。

    〔宮崎政久君登壇〕

宮崎政久君 自由民主党の宮崎政久です。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案並びに法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 先生、私たちを助けてください。旧統一教会の信者を御両親に持ち、苛烈で厳しい生活環境の人生を余儀なくされてきた宗教二世の方の言葉とその真っすぐな目線が私の脳裏から離れません。

 唯一のごちそうが学校の給食でした。いつもお金がなくて、給食費未納の茶封筒が机に置かれているのが恥ずかしかった。こういったお話も直接お聞きしました。

 この問題にはどこまでも誠実に取り組まなければならないと今も固く誓って、この場に立っています。

 被害に遭われた方を救済し、今もまだ声を上げることができないでいる方に手を差し伸べ、今後同様の被害が生じないようにするために、この問題には、与野党が立場を超え、政府とも一体となって、多角的な取組を進めることが必要です。

 政府においては、本年八月、消費者庁に有識者検討会を設置し、十月には提言が提出されました。また、関係省庁連絡会議の下、広く相談を受け付け、被害者救済に向けた総合的な相談体制の充実強化を図り、実態解明への取組としても、旧統一教会に対して、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権を行使していることと承知しております。

 我が党においても、霊感・悪徳商法等の被害救済に関する小委員会を立ち上げ、若宮健嗣小委員長の下、被害に遭われた宗教二世の方からお話を聞くとともに、被害対策に携わられてきた弁護士の方、憲法や民事法の学者の方、専門家、NPO法人、宗教法人等の関係者の方々からも御意見を伺ってまいりました。

 そして、十月十九日には、自由民主党、公明党、立憲民主党、日本維新の会の四党において、悪質な献金被害などを救済するために協議の場を設け、今国会中の法案の成立を期すことが合意され、厳しい議論もある中、この与野党協議会は九回を重ね、意見を交わしてまいりました。

 また、自民、公明と国民民主党との協議の場も設置され、さらには六党の幹事長会談も行われるなど、与野党の間では、建設的に、精力的かつ活発な意見交換が今も続けられています。

 こうした与野党での協議の成果を踏まえて、十一月十八日に消費者契約法及び国民生活センター法改正法案が、また、消費者契約法の対象とならない寄附などへの対応として、十二月一日に法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案がそれぞれ閣議決定され、国会に提出されました。

 そこで、まず、この改正法案と新法の両政府法案により、どのように被害者を救済し、また、今後再発の防止を図ろうとしているのか、岸田総理にお伺いをいたします。

 次に、新法では、個人から法人等への寄附をその規制対象としていますが、法人等による勧誘行為は、実際には法人の役職員や信者が行っていると考えられています。そのため、被害を救済し、再発を防止するためには、こうした信者らによる寄附の勧誘行為についても規制対象とすべきと考えます。

 そこで、この法案で、規制対象を個人から法人等への寄附とした趣旨、さらには、こうした信者らによる寄附の勧誘行為も規制対象となっているのか、河野大臣にお伺いいたします。

 旧統一教会に関する問題では、法人が、その正体を隠して近づき、不安をあおり、精神的に自由な判断ができない状況、いわゆるマインドコントロール下にある状況をつくり出した上で、長い期間にわたって献金をさせ続けているという特徴があり、与野党協議会の場においても、これを法律でどう規律するか、激しい議論が展開されました。

 被害者を救済し、再発を防止するという観点からは、このような事案への対応が重要になると考えておりますが、マインドコントロールにより寄附を繰り返すような事案について、政府法案でどのように対応できるのか、河野大臣にお伺いをいたします。

 旧統一教会の被害事例では、本人が繰り返し献金し、経済的に困窮することで最も被害を受けているのは信者の家族の皆さんです。先祖伝来の土地を失ったり、教育条件や食生活にも困窮するなど、大変苛烈な状況に置かれていることを承知しています。家族の救済は最も重要な課題の一つであります。

 その上で、法律を作るに当たっては、憲法に抵触することがあっては、実務の現場では救済に機能しないことになります。家族といえども、法律の主体としては第三者に該当することから、憲法の財産権保障などとの整合を図ることは不可欠となります。

 そこで、政府法案では、信者の家族をどのように救済する仕組みとなっているのか、河野大臣にお伺いをいたします。

 新法では、禁止行為に違反する場合、法人等に対して、報告徴収、勧告、命令といった行政上の措置、さらには刑事罰まで盛り込み、抑止力、実効性を担保しています。

 そこで、我が党の小委員会では、NPO法人、学校法人、宗教法人など、寄附によってその活動が支えられている団体の皆様からも意見をお聞きしました。

 その中では、例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大による社会状況の変化から、いただいた寄附を当初予定していた使途では使えず、別の用途に使うことがあったので、これが法律で言うところの使途誤認に当たらないのかなど、新法に対する御懸念についても耳を傾けてまいりました。もとより、新法が、寄附によって活動を支えられている団体の正当な活動に不当な影響を与えることがあってはならないと考えております。

 そこで、新法はこうした点にどのような配慮をしているのか、河野大臣にお伺いをいたします。

 冒頭申し上げましたとおり、この問題への対処には、与野党の別なく、また政府と一体となって、被害者の救済、再発の防止に全力で取り組まなければなりません。それが、苛烈な人生を送らざるを得なかった被害者の方へ法律を作ることでできる全てだと考えているからであります。

 最後に、政府法案の今国会での成立を含めて、旧統一教会問題への取組について、岸田総理の思い、意気込みをお伺いして、質問を終わります。よろしくお願いいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮崎政久議員の御質問にお答えいたします。

 被害者救済法案についてお尋ねがありました。

 消費者契約法の改正法案は、旧統一教会問題等のいわゆる霊感商法や契約に当たる寄附について、取消権の対象範囲の拡大や取消権の行使期間の伸長等の措置を講じ、被害防止及び救済の可能性を高めます。あわせて、国民生活センター法の改正により、ADRの活用促進を図ります。

 また、新法案では、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約法に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、取消しを認める制度としています。さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。

 この二法案により、これまで救済できなかった被害をより幅広く救済でき、また、将来に向けて、被害の防止にも役立つと考えております。

 旧統一教会問題への取組についての意気込みについてお尋ねがありました。

 旧統一教会については、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使等により事実把握と実態解明を進める、被害の救済に向けた相談体制を強化する、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しにしっかりと取り組んでいく、こうした方針で臨んでいくこととしております。

 政府としては、改正法案及び新法案の国会審議において、法案の趣旨や目的について説明を尽くし、早期の成立に向け努力していくとともに、これらの法律がより実効的に運用されるよう、相談体制の強化等にも引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 新法案の寄附の勧誘行為に係る規制対象についてお尋ねがありました。

 寄附の勧誘をしている者が個人であっても、法人等の行為と評価される場合には、新法案の規制対象になります。

 具体的には、法人等の代表者、役員又は使用人等が行った勧誘行為は法人等が行ったものと認められることになります。また、宗教団体と委任や雇用関係がない信者が当該宗教団体への寄附の勧誘行為を行った場合においても、宗教団体と当該信者間の明示又は黙示の契約の有無など使用人と同等程度の法人との関係性がある場合には法人等の行為と評価することができ、新法案の規制の対象になると考えております。

 なお、法人等による寄附の勧誘、募集とみなされ得ない純粋な個人間の寄附については、民法、刑法といった一般法で対応されるべきと考えており、新法案では、個人から法人等への寄附を対象としています。

 マインドコントロールにより寄附を繰り返す事案への対応についてお尋ねがありました。

 新法案では、いわゆるマインドコントロールによる寄附について、現行の日本の法体系の中で許される限り、最大限、禁止行為や取消権の対象としております。具体的には、不安を抱いていることに乗じるなど不適切な勧誘行為により困惑させる場合を消費者契約法改正及び新法で取消権の対象とするとともに、新法において禁止行為としました。

 これにより、過去に不安をあおられたことによって生じた不安をその後も抱き続けている者に対して、これに乗じて複数回、長期にわたって寄附を勧誘する行為は、各々の時点において改めて不安をあおらなかったとしても、各々、不安を抱いていることに乗じての要件を満たし、これにより困惑して行った寄附を取り消すことが可能となります。

 また、新法案は、禁止行為を規定し、行政措置を導入している点が重要であり、これによって、民事ルールである取消権によって個別の被害者の救済に資するだけでなく、被害の未然防止に資するものと考えています。

 さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定めており、配慮義務に反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、更に実効性が高まるものと考えております。

 家族の救済についてのお尋ねがありました。

 本法案では、債権者代位権という、自らの権利を守るために必要な限度で他者の権利の行使を認める制度を活用しやすくすることで、家族らの被害救済を図ることとしています。この債権者代位権の適切な行使のため、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備など、被害者やその家族の支援を行っていくこととしています。

 また、家族の住居や生活維持のために欠くことのできない事業用資産を処分して寄附資金を調達することを求める行為を禁止し、これに抵触する場合は、勧告、命令等の行政措置の対象となります。

 さらに、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。

 これらの禁止規定や配慮義務の規定により、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性も高めることができると考えております。

 また、新法案は、行政処分を導入しています。寄附者の家族から法人等による禁止行為の情報提供がなされ、勧告、命令や法人名等の公表により、本人に対して脱会を働きかけやすくすると考えております。加えて、寄附者本人が自身の被害に気づいて被害を回復する行動を起こす契機となることも考えられます。

 寄附勧誘の規制がNPO法人に与える影響についてのお尋ねがありました。

 新法案の運用に当たっては、NPO法人等様々な法人の活動において寄附が果たす役割の重要性に留意しなければならない旨を規定しております。

 また、本法案における禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられるものであり、配慮義務も、真っ当に寄附を募っている法人等であれば当然に配慮されているものに限っているものであります。そのため、通常のNPO法人であれば寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないと考えております。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得ると考えられます。

 なお、今後とも、NPO法人等を含め、関係者に対し、本法案の趣旨についてしっかりと説明を尽くしてまいります。(拍手)

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議長(細田博之君) 柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 立憲民主党の柚木道義です。

 ただいま議題に上がりました法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、会派を代表して、岸田総理大臣に質問いたします。(拍手)

 立憲民主党と日本維新の会が提出した悪質献金被害救済法案をきっかけに、与野党協議が何度も何度も行われ、政府・与党が今国会での被害者救済法の成立を決断したことは評価したいと思います。

 しかし、新法にはまだ実効性が不十分な部分がございます。特に、宗教二世の救済が困難を極めることは深刻でございます。

 岸田総理、生まれてくる子供たちは、生まれてくる親も親の信仰も選べません。だからこそ、法律で被害者を救済できるようにしなくてはなりません。そして、私は、それは可能であると、そう信じて、岸田総理にはもう一歩の決断を切に期待して、質疑に入ります。

 岸田総理、本来は、条文に我々の提案を明記していただきたいわけであります。さらに、総理答弁というのは、行政行為を行うに当たって、法律の条文にまでは及ばずとも、相当の効力を持つ場合がある、極めて重要なものであります。岸田総理には、その自覚と責任を十二分にお持ちいただく中で、この質疑での実際の被害者救済につながる答弁を切にお願いいたします。

 まず、この間、与野党協議や幹事長会談等で提案してきた内容について、岸田総理のもう一歩の決断を期待し、修正提案をいたします。

 寄附の勧誘に際しとの書きぶりでは、入信させて献金させた事例が適用範囲か不明瞭です。入信の勧誘に際して困惑させたことがこの要件に当たる旨を明らかにすべきです。

 既に総理は、入信当初のみに不安をあおられた場合で、その後は外面的には自分から進んで献金を行っているように見えたとしても、その不安を継続して有していて、そのような不安に乗じられて勧誘され、後から振り返ってみて困惑されていたと気づいた場合には取消しの対象となり得るものと答弁されていますが、素直に条文案を読んでも、そのようには残念ながら読めません。

 誤解なく、裁判で不利に働くことがないように、入信の前後から寄附等に至るまでが対象の期間と分かるように修正すべきです。総理、御答弁ください。

 旧統一教会の手法は、被害者に友人として近づいたり、親身に相談に乗ったりして弱みをつかみ、その人間関係等を利用して霊界を信じさせることで、教義に基づき進んで寄附をさせています。政府案の、禁止行為に基づき困惑して寄附という要件では、困惑の解釈の幅が狭く、いわゆるマインドコントロール下に置かれ、合理的な判断ができない状況にされてしまったことを立証して救済することは困難です。

 政府逐条解説に記載のある、精神的に自由な判断ができない状況など、政府答弁も含めた条文とすることを求めます。総理、御答弁ください。

 必要不可欠であることを告げるとの書きぶりでは、救済可能性が著しく低くなります。旧統一教会の被害は、献金の段階ではそのような強い誘導や勧誘行為は必要ないほどに被害者当人の自由な意思表示ができなくなっています。

 よって、必要不可欠の不可欠は削除し、必要である旨を告げるとし、救済可能性を高めるべきです。総理、御答弁ください。

 配慮義務規定について、岸田総理は、禁止規定とする場合、行政措置、刑事罰につながるため要件の明確化が必要であり、また、勧誘行為が多様なため一概に要件を決めるのは困難と述べられました。また、配慮規定を置くことで民法の不法行為認定が容易になり得るとの答弁がありました。

 そのとおりなんですが、一方で、配慮義務規定を禁止規定とした場合、これまで旧統一教会が行ってきたいわゆる正体隠しやマインドコントロール的手法を用いた献金への抑止、救済の実現可能性が高まります。自由意思を抑圧しないこと、三条一号。法人等を明らかにすること、三号。過去の旧統一教会事件の判例で同趣旨の内容が既に認定されております。札幌地裁の判決等です。したがって、禁止規定とし得るものであります。

 また、既に、公益法人認定法十七条では、寄附者等の利益を不当に害するおそれのある行為という抽象的規定にも行政処分、罰則の効果が与えられており、今回の新法に行政処分、罰則の効果を与えることは極めて合理的であります。

 寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務規定を禁止規定にすべきではないでしょうか。実効性のある被害防止、被害救済のためにも、岸田総理の御決断による修正を強く求めます。

 家族の救済策として政府は債権者代位権を提案しておりますが、この間、宗教二世の方や弁護団、さらに政府にも再三確認をさせていただいたところ、現実問題、なかなか使いにくい面は否めません。

 例えば、小川さゆりさんの事例では、当時、高校時代を含めた五年間でアルバイト代二百万円から三百万円を小川さんの同意なく親が寄附してしまいました。この場合、債権者代位権を使うとするならば、まず、寄附をした親が旧統一教会によって禁止行為に基づいて困惑して寄附をしたことを立証して、加えて、親が無資力でなければなりません。それらが晴れてクリアできれば、債権者代位権の下、損害賠償請求が認められ、さゆりさんの二百万円から三百万円が返ってくる可能性があります。

 しかし、現実的に考えれば、親の寄附の違法性を立証できるのであれば、寄附をした親自身が、寄附した全額を取り戻すための請求を行うのではないでしょうか。未成年の代位権行使に至っては、訴訟で親権停止が必要であるなど、到底、現実的とは言えません。さらに、損害賠償請求の時効はたった三年です。これで家族の救済策であると言えるでしょうか。

 小川さゆりさんや橋田達夫さんらの被害は、例えば、野党案の特別補助制度を導入すれば救済可能性が高まります。子供、家族がいわゆるマインドコントロール下にある被害者本人を保護し、献金を止め、献金を取り戻せる可能性が高まるのです。総理、是非、特別補助制度の導入に前向きな御答弁をお願いいたします。

 また、この法案は霊感商法が対象になっていません。確かに、取消権のあるなしだけで見れば消費者契約法で対象となっていますが、それでは刑事罰には結びつきません。新法でも霊感商法も対象とすべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 さらに、岸田総理、三年の見直し規定を一年に前倒しすべきです。

 家族救済のための措置である債権者代位権は、要件、範囲とも限定的であり、いわゆるマインドコントロール下に置かれた被害者本人はそのままです。判例が出てから法律の見直しをするということは、最短でも旧統一教会関連の裁判で三年から五年、最長では何と提訴から最高裁判決まで十六年もかかったものもあります。被害者の方々にそれまで待ってくれというのは余りに酷です。

 一年以内の見直しとし、少しでも救済の課題になる部分は前進させていくことが必要であると考えます。総理の答弁を求めます。

 これまで、旧統一教会被害に関して、多くの宗教二世の皆さんが、ひどい誹謗中傷にも負けず、勇気を出して声を上げて、切実な訴えを続けてこられました。そうした皆さん全てを救える、実際に使える被害救済新法であることが肝腎です。

 小川さゆりさんのケースです。

 我々は、被害者や弁護団の意見を聞き、今の政府案のままでは、統一教会被害者はなかなか救われない、特に宗教二世を救うことは困難であるとの懸念を持っています。例えば、小川さんの御両親のように、余りに献身的になり過ぎて、家庭崩壊を顧みず、自主的に献金を続ける信者は大勢おられます。

 一般論として、政府案で、長年にわたって自主的に献金を続けてきた場合であっても、献金した本人が脱会し、献金時は困惑していたと証言した場合、献金は取り消せますか。総理、御答弁ください。

 鈴木みらいさんのケースです。

 みらいさんの七十代の両親は、当時、平日夜中の十二時を過ぎて、一億六千万円の献金のうち、僅か三千万円の返金の念書に教会でサインをさせられました。

 一般論として、子供も大反対をしていて書いた念書は、献金した本人が念書を書いたときは困惑していたんだと証言すれば、政府案では、無効になり、献金は全額が取消しの対象になりますか。総理、御答弁ください。

 元信者、A子さんのケースです。今年七月に社会問題になって以降、旧統一教会により念書作成が行われたことが確認された初のケースです。

 二千五百万円の献金をしていたA子さんの家に今年九月に教区長や複数の顔見知りの信者が訪れ、私たちも念書にサインしているからなどと言って、A子さんに、自由意思で寄附をした、返金請求はしないとの念書へのサインを求めました。被害者は、迷いに迷い、これを書いたらもう終わりだ、返金してもらえないと思いながらも、知り合いの信者からの強い説得を断り切れずに念書にサインをさせられました。

 そこで、一般論として、今回の政府案について伺います。多額の献金をした信者がサインさせられた念書を、信者が困惑状態でサインをしたので念書は無効だと意思表示した場合、たとえ旧統一教会側が自主的な献金であったので返金しないと主張しても、念書は無効となり、全額返金になるでしょうか。

 そもそも、そのような悪質勧誘された献金に対する返金逃れの手段としての念書やビデオの撮影は無効であり行うべきではないわけで、岸田総理、そうした念書やビデオ撮影そのものを行うべきではないと明確に御答弁いただけないでしょうか。

 旧統一教会における信者間の養子縁組について、一九八一年から今年五月までの四十一年間に七百四十五人もの養子縁組が行われました。さらに、養子縁組のあっせん事業が許可制となった二〇一八年四月以降の養子縁組が三十一件あったと報道されました。

 教団は養子縁組あっせん事業の許可を受けておらず、昨日回答期限の厚生労働省の調査結果も踏まえ、直ちに刑事告発すべきではないでしょうか。また、この違法な養子縁組もこれ以上行わないように直ちに行政指導を行うべきではないでしょうか。岸田総理、御答弁ください。

 最後に、岸田総理にお願いです。

 小川さゆりさんや鈴木みらいさんや橋田達夫さんや中野容子さんや、その他本当に多くの、何人もの被害者の皆さんが、この三か月間だけでも、与野党それぞれのヒアリングで何度も何度も何度も涙ながらに被害を訴えてこられました。

 それは、自分たちのような被害者をもうこれ以上出したくない、未来の子供たちに宗教被害を残したくないとの必死の思いで発言されてきたからです。実際に被害者を追い込んだのは旧統一教会かもしれません。しかし、政治はそれを救済するどころか放置し、国会議員が数々の集会に参加するなど、旧統一教会にお墨つきを与えてきました。その政治こそが今まさに責任を取るべきときではないでしょうか。

 そのためにも、どうか、宗教二世を含む被害者や、被害者支援に長年尽力されてこられた全国霊感商法対策弁護士連絡会の皆さんが、この新法なら本当に被害者が救われると思っていただけるような救済新法となるよう、政府、与野党各々が最後まで英知を結集することと、岸田総理のいま一歩、もう一歩の御決断を強く、切に求めて、お願いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 柚木道義議員の御質問にお答えいたします。

 寄附の勧誘をするに際しという要件の修正についてお尋ねがありました。

 寄附の勧誘をするに際しとは、法人が当該寄附の勧誘を行う場合に、個人と接触してからその個人が寄附を行うまでの間にという趣旨であり、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合には対象となります。

 一方、一連の寄附勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法の第四条第六号の不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことから、条文を修正せずとも、取消権の適用対象になると考えています。

 困惑要件の修正についてお尋ねがありました。

 消費者契約法逐条解説において、「「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。畏怖をも含む、広い概念」とされています。

 精神的に自由な判断ができない状況とは困惑の解説の一部を切り取ったものであり、これを法律の条文とすることは適当ではないと考えています。

 他方、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、消費者契約法の改正法案と新法案による取消権の対象となると考えられます。また、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できると考えております。

 必要不可欠という要件についてお尋ねがありました。

 必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くはそのような必要性や切迫性を有しているものと考えられることから、政府案で十分実効的に対応できるものと考えております。

 なお、御指摘の部分を単に必要とすると、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、真に取消しに値する程度に不当な勧誘行為を適切に捉えることが困難になると考えられます。

 配慮義務を禁止行為とすることについてお尋ねがありました。

 禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきであると考えられます。

 配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状況等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果が高いと考えております。

 なお、配慮義務規定の更なる実効性向上に関し、与野党で様々な御意見があると承知しておりますが、政府としては、そういった意見も伺いつつ、本法案の早期成立を図ってまいります。

 野党案の特別補助制度についてお尋ねがありました。

 御党を始め野党から既に国会に提出されている法案について政府の立場から意見を述べることは差し控えさせていただきますが、政府提出の新法案においては、自らの権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める制度である債権者代位権を活用しやすくしており、これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につなげることができると考えております。

 また、債権者代位権の適切な行使により被害回復等を図ることができるようにするための支援は重要であると考えており、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備など、支援の在り方も検討してまいります。

 一方、これらを超えて、家族を含めた第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。

 消費者契約法における罰則の導入についてお尋ねがありました。

 高額な献金による被害が特に重大な問題として指摘されている中で、今般の法案では、悪質な寄附の勧誘行為を禁止行為とし、行政措置や罰則を規定することとしたものです。

 商取引に該当する契約については、現行の消費者契約法により取消権の対象となるほか、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の対象となりますが、勧告、命令等の行政措置や罰則を導入する場合には、寄附よりも更に幅広い事業主体に影響を及ぼすものであることから、慎重な検討が必要であり、現段階では、勧告、命令等の行政措置や罰則の導入は行わないこととしたものであります。

 見直し規定についてお尋ねがありました。

 法律の見直しに当たっては、規定の施行の状況及び社会経済情勢の変化を勘案すべく、一定の法運用の実績を確保する必要があります。

 このため、法施行後三年をめどとしての期間を置くことが相当と考え、このような見直し規定といたしましたが、必要に応じて、それより早く見直しに着手することも考えられます。

 困惑してした献金や念書の考え方についてお尋ねがありました。

 先ほど申し上げたとおり、過去に不安をあおられたことによって生じた不安をその後も抱き続けている者に対して、これに乗じて複数回、長期にわたって寄附を勧誘する行為は禁止行為に該当し、これにより困惑して行った寄附は取り消すことが可能となります。

 また、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後に冷静になって考えると、当時、不安に乗じられ困惑して寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って、全額の取消権を行使することが可能であると考えられます。

 困惑状態でサインした寄附の一部の返金の和解の合意や、寄附の返金を求めない旨の念書は、公序良俗に反するとして無効となり得るものと考えられます。

 また、個別具体の事例によっては、むしろ、法人等が寄附の勧誘に際して、個人に対して念書を作成させ、あるいはビデオ撮影をしているということ自体が法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素の一つとなり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められやすくなる可能性もあると考えられます。当然のことながら、不法行為を隠蔽する証拠隠滅や被害回復の妨害行為は社会的に許容し難いものであると考えます。

 旧統一教会による養子縁組についてお尋ねがありました。

 御指摘の旧統一教会における養子縁組については、厚生労働省において事実関係の確認を行っていたところであり、昨日、厚生労働省が旧統一教会からの回答を受領したと承知をしております。

 現在、厚生労働省において回答の内容を精査しており、法律にのっとり、精査の結果に基づいて適切に対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(細田博之君) 漆間譲司君。

    〔漆間譲司君登壇〕

漆間譲司君 日本維新の会の漆間譲司です。

 会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案についてお尋ねします。

 平成三十年に消費者契約法が改正され、霊感商法等に関して契約を取り消せるようになりましたが、その後、実態として、この条文が適用されて取消しが行われることはありませんでした。

 総理大臣にお聞きします。今般の消費者契約法改正により実効性が高まり、本法適用による取消し件数は増えると考えていますか。

 今般の改正では、取消権の行使期間を追認できるときから三年、契約締結から十年と、各々一年、五年から延長をしています。個人と個人の契約のルールを定める民法の二十年の規定よりは短くするという考えは一定理解できますが、旧統一教会におけるマインドコントロールの特殊性を勘案すれば、可能な限り長い期間を担保しておく必要があると考えます。

 今回、例えば十五年ではなく十年とした根拠について、河野大臣にお尋ねします。

 次に、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問いたします。

 元々、政府は本法案を今国会に提出することには後ろ向きでしたが、十一月七日、総理が新法を今国会に提出すると英断され、本日、いよいよ審議入りする運びとなりました。改めて、総理が本法案を今国会に提出すると英断された理由を伺います。

 我が党が立憲民主党と共同で法案を提出した十月十七日の翌々日、与野党四党で与野党協議会を設置することで合意がなされ、その後、九回にわたって真剣な議論がなされてきました。

 今日法案が審議入りしたのは我々が法案を提出したことが大きな契機となったと考えますが、総理の認識を伺います。

 総理は、新法の議論において、被害に遭われた方を救済しなければならない、そして再発を防がなければならないと国会で発言されていますが、まさに我々も同じ思いです。この法案は、旧統一教会だけではなく全ての法人等、つまり、適正に運営されている宗教団体やNPO法人等を始め広く団体一般も対象になり得ることや、憲法上の信教の自由や財産権や自己決定権などの制約があることも十分理解した上で、今、社会的に許容されない悪質な勧誘行為を禁止することとのバランスの中で、ぎりぎりの議論をしていると認識しています。

 そこで、総理にお伺いしますが、この新法では、総理のおっしゃる、これまで被害に遭われた方を救済するということに対してはどのような手当てがなされているのでしょうか。

 これまでの与野党協議会や幹事長会談での議論などを経て、我々の懸念や要望を幾つか取り入れていただいたことに対し、与党の実務者を始め、省庁の皆様の御努力、御尽力には感謝を申し上げたいと思います。

 しかしながら、まだまだ残された課題は多く、被害者の方や被害者弁護団の皆さんを始め、国民が百点をつけてくださる法案とはならないかもしれませんが、我々日本維新の会は、何とか合格点をいただけるよう、最後の最後まで汗をかきたいと考えています。

 より実効性を高めるための知恵を最後の最後まで出し合って、少しでもよりよい法律にしていくことについて、総理には、担当大臣に任せるだけではなく、さきの英断と同じように自らが先頭に立ってリーダーシップを発揮されることを期待していますが、総理の決意、覚悟をお伺いいたします。

 さきの予算委員会でも、法案の文言の解釈をめぐって多くの時間が費やされてきています。本法案は行政措置も規定されていることから、運用に当たっては、行政庁自身が解釈に係る基準を持たなければなりません。

 総理も、さきの参議院予算委員会において、我が党の高木かおり議員の質問に答えて、法案が成立した際には、条文の解釈の明文化を図るなどにより、更に利用しやすく実効性のある制度とする努力を続け、結果として被害者救済という成果につながる、こうした取組を万全を尽くして進めていきたいと答弁されました。

 解釈基準は、通達やQアンドA、逐条解説などでしっかりと示されなければならないと考えますが、多くの方が抱いている不安や懸念を払拭する意味でも、できるだけ早期に示されるべきであります。所管官庁としてどのようなロードマップを描いているのか、河野大臣にお尋ねします。

 以下、法案の各条文について、少し細かくなりますが、質問いたします。

 法案で定める法人等には、法人の役職員等に関する寄附も含まれますか。旧統一教会においては、教区長といった役職者のみならず、アベルと呼ばれる、役職者ではないものの地域のリーダーのような人に寄附する事例も多いと聞いていますが、こうした場合には適用されますか。適用されるということであれば、疑義を生じさせないためにも条文にしっかりと書き込む方がよいと考えますが、河野大臣の見解をお尋ねします。

 政府案では、寄附の勧誘に当たっての配慮義務として、自由意思の抑圧状態、配偶者、親族の生活の維持、寄附の使途の誤認についての規定を設けましたが、ここには行政措置や刑事罰が適用されないこととなっています。政府は、この規定によって民法での不法行為として訴えやすくなる、あるいは、家族等が行政に情報提供を行うことによって悪質な勧誘の抑止につながると説明されています。しかしながら、その説明を聞くと、逆に、宗教法人がこの規定を逆手に取って、刑事罰がない民法の不法行為の方に流れてしまうということにならないかが懸念されます。

 そうしたことを考えれば、やはり本法での実効性を持たせるためには、配慮義務規定を禁止行為に格上げする、あるいは、配慮義務に従わない場合は何らかの行政処分や刑事罰を科せるように手当てしておくことが必要と考えますが、総理の見解をお尋ねします。

 第四条にある寄附の勧誘に際しに関して、総理は、衆議院予算委員会において、入信当初だけでなく、その後の献金についても当てはまると考えております、寄附の勧誘をする際にと記載しているのは、法人が当該寄附の勧誘を行う場合に、個人と接触してからその個人が寄附を行うまでの間にという趣旨でありますと答弁されました。

 であれば、寄附の勧誘に際しではなく、寄附の勧誘に当たりとした方が分かりやすいと考えますが、なぜ際しの文言にこだわるのでしょうか。かたくなに変更を拒むのはとても不自然に感じるのですが、なぜ寄附の勧誘に当たりとできないのか、総理、御説明ください。

 消費者契約法にある不実告知、重要事実の不告知、生計、健康不安などの行為が新法からは抜け落ちています。寄附を受ける事業者が虚偽を述べ、あるいは宗教名などの重要事実を意図的に告知しないで寄附を勧誘する場合は禁止行為には該当しないということでしょうか。該当するということであれば、どの条文で規制されるのか、河野大臣にお尋ねします。

 新法における困惑の定義は、消費者契約法の逐条解説に定める、困り戸惑い、精神的に自由な判断ができない状況と同様のものとすると河野大臣は予算委員会で答弁されました。困り戸惑いとなると、旧統一教会における、進んで、喜んで献金をしているケースには適用できないのではないかという懸念が被害者や被害者弁護団から示されています。

 確かに、同じ困惑という言葉の定義が消費者契約法と新法で異なることは混乱を来すという政府の主張は理解しますが、そもそも、新法は、総理がおっしゃるように、消費者契約法改正ではカバーされない悪質な勧誘行為を禁止するために制定するわけでありますから、必ずしも消費者契約法と文言を合わせる必要はありません。

 新法では、あえて困惑という文言を用いず、精神的に自由な判断ができない状況と置き換えればよいのではないでしょうか。それをしない、あるいはできない理由は何ですか。総理にお伺いいたします。

 河野大臣は、第四条にある必要不可欠について、必ずその言葉をそのまま使わなければならないことではない、勧誘行為全体として同等の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えていると我が党の高木かおり議員に参議院予算委員会で答弁されていましたが、必要不可欠というと、必要性や切迫性に加えて、他に選択肢がないというニュアンスが入ってしまうと考えます。必要不可欠という言葉遣いは、河野大臣の答弁とは適合していないのではないでしょうか。お答えください。

 また、同じく、河野大臣は、献金か、つぼの購入か、教典の購入のいずれかが絶対に必要といった形で誘導する場合にも、寄附をすることが必要不可欠である旨を告げることに該当するとの説明をされました。普通に条文を読めばなかなかそのような解釈はできないと感じますが、そこまで解釈を広げるのであれば、不可欠の文字を外して、必要とすればよいのではないでしょうか。

 必要だけだと、厄払いや交通安全祈願、合格祈願にまで対象が広がってしまう懸念があるという河野大臣の答弁がありましたが、では、不可欠の文言があればそれが回避できるのかといえば、結局は、その解釈に当たって、前後の事実から総合的に判断するわけですから、同じことです。総理の見解をお伺いいたします。

 第五条にある資金調達要求の禁止についてお尋ねします。

 不動産を処分して資金を調達することを要求してはならないのであれば、当然、その不動産そのものを寄附として供与することも要求してはならないと理解しますが、河野大臣の見解をお伺いします。我々の理解が正しければ条文で明確にすべきですし、不動産そのものの寄附の要求は対象外ということであれば中途半端な規定と考えますが、併せて見解をお願いいたします。

 債権者代位権の行使のためには、債務者が無資力で債権を行使していないことが要件の一つとなりますが、政府案では、第三条で、法人は、寄附の勧誘を行うに当たっては、寄附により、個人、配偶者、親族の生活の維持を困難にすることがないようにすること、第五条で、居住している家や敷地等を処分して寄附の資金調達をすることを要求してはならないと定めていますので、債務者が無資力である例は実質的にほとんどなく、実効性のない制度になってしまわないか懸念するところですが、河野大臣の見解をお伺いいたします。

 最後に、法案では、法施行後三年をめどとして検討を加えるとしていますが、まだまだ残された課題も多く、また、これだけ与野党で協議をしながら作成してきた法案ですので、三年では長過ぎると考えます。一年や二年ではなく三年とした理由、根拠を総理にお伺いいたします。

 我々日本維新の会は、最後の最後まで、本法案を少しでもより実効性のある法案とすべく努力してまいります。

 改めて、総理には、自らが先頭に立ってリーダーシップを発揮されることを期待することを申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 漆間譲司議員の御質問にお答えいたします。

 消費者契約法の改正案の実効性についてお尋ねがありました。

 現行のいわゆる霊感商法に関する取消権の規定については、消費生活相談等では活用されています。また、この規定があることによって、霊感商法に対し一定の抑止効果があったものであると考えております。

 そして、今般の改正によって、霊感等による知見を用いた告知に関し、本人に関する不利益のみならず親族に関する重大な不利益や、将来生じ得るもののみならず現在生じている重大な不利益について回避ができることを告げる場合も取消権の対象とすること、また、消費者の不安をあおる場合のみならず不安を抱いていることに乗じた場合も対象とすることといった点が改正され、現行の規定の明確化及び取消しの対象範囲の拡大が図られることにより、裁判上及び裁判外において消費者保護の実効性が更に高まるものであると考えております。

 本法案を今国会に提出するに至った経緯等についてお尋ねがありました。

 私自身、旧統一教会の被害者の方々と内々お会いをして、凄惨な御経験を直接伺い、被害者の救済及び再発防止を図るために、今国会で被害者救済法案の実現に取り組む決意を新たにいたしました。このため、消費者庁に対し、総力を挙げて法制度の検討を進め、可能な限り早急に国会に提出するよう指示をしてまいりました。

 この間、与野党において、新規立法に向けて精力的な協議を重ねていただいたものと承知しております。

 こうした与野党間の議論も踏まえ、政府としての新法案を決定し、今国会に提出したものであります。

 新法における、これまでに被害に遭われた方の救済への手当てについてお尋ねがありました。

 本法律案は、原則として、施行日以降に行われる寄附の勧誘について適用されるものです。一方、配慮義務については、それ自体が遡って適用されることはないものの、寄附勧誘に当たっての規範を示すものであり、こうした規範は、過去の寄附に関する被害についての民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求の裁判の実務においても考慮される可能性があると考えています。

 また、過去、いわゆるマインドコントロールを受け、現在も不安を抱いている方に対し、その不安に乗じ寄附勧誘を行うことを禁止行為とすることで、新たな被害の発生を抑制いたします。

 法律の実効性を高めるための努力についてお尋ねがありました。

 改正法案と新法案では、現在の我が国の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、禁止行為、取消権、配慮義務、行政措置や刑事罰など、様々な規定を組み合わせて立法作業を行いました。

 両法案は実効的なものとなったと考えておりますが、政府としては、改正法案及び新法案の国会審議において、法案の趣旨や目的について説明を尽くし、与野党の御意見も伺いつつ、早期成立に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。

 配慮義務の規定についてお尋ねがありました。

 禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきであると考えています。

 一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えております。

 なお、配慮義務規定の更なる実効性向上に関し、与野党で様々な御意見があると承知していますが、政府としては、そういった御意見も伺いつつ、本法案の早期成立を図ってまいります。

 第四条の勧誘をするに際しという文言についてお尋ねがありました。

 第四条の勧誘をするに際しとは、個別の寄附の勧誘に際し、法人等が個人に接触してからその個人が実際に寄附を行うまでの間にという時間的概念を含む規定です。

 これに対し、第三条では、一見類似している表現として、寄附の勧誘を行うに当たってはと規定しています。これは、時間的概念を含むものではなく、一般論として寄附勧誘を行う場合を指しています。

 このように新法案では際しと当たりという表現を使い分けており、法制上の観点から御指摘のような修正はできませんが、こうした法律上の言葉の使い分けが分かりにくいという御指摘はしっかりと受け止め、新法案が成立した際には、改めて法律の解説において説明を尽くしてまいります。

 困惑の要件の修正についてお尋ねがありました。

 消費者契約法逐条解説において、「「困惑」とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況をいう。畏怖をも含む、広い概念」とされています。

 精神的に自由な判断ができない状況とは困惑の解説の一部を切り取ったものであり、これを法律の条文とすることは適当ではないと考えています。

 他方、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、消費者契約法の改正法案と新法案による取消権の対象となると考えられます。また、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できると考えています。

 第四条第六号の必要不可欠という文言についてお尋ねがありました。

 今回の規定については、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで規制対象が広がる意図はなく、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くが有する必要性や切迫性の有無を規制対象とするか否かの判断の基準とする旨を的確に表現する観点から、不可欠という文言を規定に入れることとしたものです。

 必要不可欠の規定の趣旨については、法成立後、法律の解説においても明確にしてまいります。

 見直し規定についてお尋ねがありました。

 法律の見直しに当たっては、規定の施行の状況及び社会経済情勢の変化を勘案すべく、一定の法運用の実績を確保する必要があります。

 このため、法施行後三年をめどとしての期間を置くのが相当と考え、このような見直し規定といたしましたが、これは、必要に応じて、それより早く見直しに着手することも考えられます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 取消権の行使期間についてお尋ねがありました。

 消費者契約法の改正法案において、霊感等の告知を用いた類型については、その取消権の時効期間を、追認することができるときから三年、契約のときから十年に伸長し、新法案もこれと同様としています。

 このうち、追認をすることができるときからの期間については、消費者庁の検討会において、霊感等による告知を用いた勧誘を受けた者が困惑状態から脱するには現行の一年では短いという趣旨の御指摘があったことを踏まえ、三年とするものです。

 また、契約のときからの期間については、現行の五年から一定程度伸長することが適当である一方で、寄附金が法人の様々な活動に供されることも想定され、契約や寄附に関し、法律関係を早期に安定させる必要性もあります。これらの事情を総合的に判断し、明確で理解しやすい期間として十年とするものです。

 このように、霊感等による告知を用いた勧誘については、他の類型より特に時効期間を伸長しているところ、法律関係を早期に安定させる必要性もあることから、十年を超えて伸長することは困難であると考えております。

 法運用の解釈基準についてお尋ねがありました。

 新法案では、速やかに対策を講じる観点から、原則として施行時期の規定としては公布から二十日が経過した日とする一方、行政処分や刑事罰等は相当程度の周知期間を置いて施行する必要があるため、施行日は一年を超えない範囲内の政令で定める日としています。

 民事ルールの規定についてはできるだけ早期に逐条解説などを準備するとともに、行政処分の判断基準等については、施行日も踏まえつつ、できる限り早期に適切な方法で基準を明確化し、新法が機能するようにしてまいります。

 法人等に含まれる者の範囲についてお尋ねがありました。

 新法は、規制の対象を法人等としており、具体的な勧誘行為を行う者について、法人等の代表者、役員、使用人と明示して規定していないものの、これらの者が行った勧誘行為は法人等の代表者又は業務の補助者によるものとして法人等が行ったものと認められ、規制の対象となると考えております。

 また、財産の移転先の名目を見かけ上幹部などにすれば規制対象にならないというわけではなく、法人等による寄附の勧誘と評価される場合には適用対象となると考えられます。

 法人等が虚偽を述べるなどして寄附の勧誘をする場合が禁止行為に該当するのかについてお尋ねがありました。

 新法案四条では、消費者契約法上の不当な勧誘行為のうち、片務契約あるいは単独行為である寄附への適用が想定されるものを禁止行為として規定しています。議員御指摘の不実告知、不利益事実の不告知、加齢等による判断力の低下の不当な利用等については、いずれも事業者が提供する物品等が消費者契約の目的となるものであることが前提とされており、寄附への適用は想定されないものと考えております。

 法人等が寄附の勧誘を行うに当たって、正体を隠していた場合や寄附される財産の使途について虚偽の内容を述べたような場合には、新法案三条三号の「寄附の勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を明らかにするとともに、寄附される財産の使途について誤認させるおそれがないようにすること。」という配慮義務に反することになると考えられます。

 また、寄附の勧誘であることを告げずに退去困難な場所に同行し勧誘する場合には、四条三号の禁止行為に該当すると考えられます。

 必要不可欠の言葉遣いについてお尋ねがありました。

 必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのままに告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えており、多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くはそのような必要性や切迫性を有しているものと考えられます。

 また、必要不可欠は、唯一の選択肢しか示さない場合のみということではなく、例えば、重要な不利益を回避するために、一千万円の献金、一千万円のつぼの購入、一千万円の教典の購入のいずれかが絶対に必要といった形で勧誘する場合にも該当し得るものと考えています。こうした趣旨については、法成立後、法律の解説においても明確にしてまいります。

 資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。

 新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことのできない事業用資産について、法人等の側から、あえて寄附者に処分による換金という手間をかけさせて寄附するよう要求する行為を禁止しており、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止しておりません。

 居住用不動産や事業用資産そのものの寄附については、施設に入居した高齢者が居住用不動産を世話になった法人に寄附しようとするときなど、自発的な意思に基づいて行われるものが想定できないとは言えず、そのような寄附を求める行為も一律に禁止まですることは困難と考えます。

 なお、家族も居住している不動産を寄附する場合は、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務の対象となり得ると考えられます。

 債権者代位権の実効性についてお尋ねがありました。

 第三条が定める配慮義務に反する勧誘や、第五条に反する資金調達の要求によって寄附した場合でなくとも、他の原因により無資力に陥っている者が存在することは考えられるところ、債権者代位権が活用されるケースは一定程度存在すると考えております。

 債権者代位権の適切な行使により被害回復を図ることができるようにするための支援は重要と考えており、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備など、支援の在り方も検討してまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 大口善徳君。

    〔大口善徳君登壇〕

大口善徳君 公明党の大口善徳です。

 私は、ただいま議題となりました、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案及び法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について、公明党を代表して質問いたします。(拍手)

 世界平和統一家庭連合、旧統一教会に関して、過去数十年にわたり多くの被害が生じました。配偶者の入信をきっかけに高額の献金等により家族崩壊に至ったり、いわゆる宗教二世の方が生活に困窮して進学を断念し、あるいは心理的な虐待を受けるといった痛ましい現実も明らかになっています。こうした被害に現在も悩み苦しんでいる方々が大勢いらっしゃいます。

 被害者の方々を何としても救済したいとの思いから、我が党においても、消費者問題対策本部において、被害者を支援していただいている弁護士の方、また消費者庁の検討会の有識者の方々等と精力的に意見交換を重ねてまいりました。十月二十八日には、新たな法制度の整備を含め、霊感商法等による被害の救済及び防止に向けた提言として取りまとめ、政府に対して実効性のある対策を強く求めたところであります。

 こうした中で、本年十月以降の真剣な九回に及ぶ与野党協議や幹事長会談での議論も踏まえ、今般、政府から、消費者契約法等の改正法案と新法、寄附不当勧誘防止法案が国会に提出されました。

 被害者救済と被害の未然防止のためには、憲法を含む我が国の法体系の中で真に実効性のあるものでなければなりません。この観点から、以下、質問をいたします。

 まず、我が党の提言には、現在被害に苦しんでいる方々の救済のために、総合法律支援体制、法テラスの充実強化を始め、旧統一教会をめぐるいわゆる宗教二世の方の生活支援や心身のケア等の支援、国民生活センターが行う紛争解決機能の拡充や強化、宗教法人法の質問権、報告徴収の適正な行使などを盛り込みました。

 被害者が確実に救済されるようにすることが極めて重要であると考えますが、現在の被害者救済に向けた政府の取組について、総理に伺います。

 現在の消費者契約法には、霊感商法に係る取消権の規定があります。その要件が厳しく、また行使期間も短いため、現在問題となっている旧統一教会関連の寄附、献金に係る被害に十分に対処できないと指摘されています。こうした問題意識から、今般、消費者契約法の改正案と新法案が提出されました。

 消費者契約法改正案は、霊感商法に係る取消権の対象範囲の拡大とその行使期間の延長を内容としています。また、新法案では、消費者契約法の対象とならない寄附を含めた寄附一般について、社会的に許容し難い悪質な勧誘行為を禁止し、寄附の取消しや違反行為に対する行政措置、刑事罰、子や配偶者等に生じた被害の救済の措置を盛り込んでいます。

 これらの法案により、被害者救済や被害の未然防止が十分に図られるのか、改めて、改正法案と新法案の意義について、総理に伺います。

 次に、新法案の各条文について伺います。

 まず、第三条では、旧統一教会の問題を踏まえ、寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務が規定されています。その第一号は、いわゆるマインドコントロール下での被害実態に対応するため、寄附の勧誘に当たって、個人の自由な意思を抑圧し、その勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状況に陥ることがないように配慮しなければならないと規定しています。

 この規定を含む第三条各号の規定は、法人等の勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態に着目したものとなっており、旧統一教会の事例に即して、被害者救済や被害防止の実効性を高めるためにかなり工夫されたものと考えていますが、この規定の意義について、総理に伺います。

 さらに、第四条について伺います。禁止される寄附の不当な勧誘行為のうち、霊感商法に係る勧誘行為について、同条六号では、不安をあおり、又は不安を抱いていることに乗じて、重大な不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠である旨を告げて困惑させる行為が禁止行為とされています。

 この規定の必要不可欠の文言について要件が狭過ぎるとの批判がありますが、必要不可欠について、解釈上どのような事例まで含まれると考えればよいのか、また、不安を抱いていることに乗じて困惑させるの定義について、救済の実効性の観点から、総理の御所見を伺います。

 また、旧統一教会に関する被害事例では、借金をさせ、家や土地を処分させるなどの事例が報告されています。この点を捉えて、寄附の上限規制の目安が必要との主張もされています。他方、年収等に応じて上限の目安を設ける場合、法人等から年収に関する情報の提供を求められるなど、悪用による更なる被害の増大が懸念されます。

 そこで、第五条は、借入れや、居住用の建物、敷地や生活の維持に欠くことができない事業用の資産の処分による資金調達の要求を禁止することによって、実質的に上限規制を設ける機能を果たしています。また、行為規範として明確であり、裁判実務上立証しやすいと考えますが、この点について、総理の御所見を伺います。

 次に、第六条及び第七条は、禁止される寄附の勧誘行為を行う法人等に対する報告徴収、勧告、命令、公表の行政措置や刑事罰の規定です。行政措置や刑事罰等は、取消しという民事上の効果とは異なり、強い制裁及びそれに至る手続となります。そのため、新法案では、その対象となる行為に関し、悪質な禁止行為が繰り返し行われる場合に限定されています。

 第六条では、禁止行為規制の施行に関し特に必要と認められるときは、その必要の限度において報告を求めることができると規定されていますが、具体的にどのような場合を想定しているのか。

 また、第七条では、不特定又は多数の個人に対して禁止行為に違反する行為をしていると認められる場合において、引き続き当該行為をするおそれが著しいと認めるときに勧告することができると規定されていますが、具体的にどのような場合か、併せて総理に伺います。

 また、第十条は、子や配偶者の救済のために、債権者代位の特例を定めています。親子の関係では、債権者代位権を行使することによって、不当な寄附の勧誘行為により親が寄附して生活が困窮した場合に、子供が持つ扶養を求める権利等に基づいて、その権利の保全に必要な範囲で親に代わって寄附を取り消し、取り戻すことができます。また、親が行った寄附の取消しについては、親本人の自己決定権や財産権への配慮も必要となります。

 新法案は、現在の法律では認められていない、将来にわたる債権についても保全の対象とし、供託させることを特例的に認めるものでありますが、憲法との関係も含め、この措置の実効性について、総理の御所見を伺います。

 旧統一教会に関して、大変痛ましい被害が長期間にわたり継続して発生してきました。このような被害を二度と繰り返さないためにも、被害者救済、被害の未然防止のための実効性のある法案の速やかな成立が不可欠であり、立法府にある私たちの責務でございます。

 最後に、改正法案及び新法案に込められた総理の思いと、各法案の早期成立に向けた総理の御決意を伺い、質問を終わります。

 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 大口善徳議員にお答えいたします。

 旧統一教会問題における被害者救済に向けた政府の取組についてお尋ねがありました。

 政府は、旧統一教会問題に関し、相談体制の強化等による被害者の救済、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直し、この三つの対策を並行して進めています。

 このうち、相談体制の強化等については、先般、関係省庁において総合的な方策を取りまとめ、法テラスにおける対応窓口や心理専門職を配置した対応部署の新設などの抜本的な充実強化、国民生活センターにおける裁判外紛争解決手続の充実などの消費生活相談等の強化、そして市町村や児童相談所における虐待対応に関するQアンドAの作成などの宗教二世も念頭に置いた救済や支援の充実、これらの諸施策を盛り込み、関係機関で連携して取り組んでいくこととしております。

 また、文化庁においては、宗教法人法に基づき、宗教法人審議会に諮問した上で、旧統一教会に対し報告徴収、質問権を行使したところです。

 政府としては、こうした取組を通じ、引き続き、被害者の救済に万全を尽くしてまいります。

 改正法案と新法案の意義についてお尋ねがありました。

 消費者契約法の改正法案は、旧統一教会問題等のいわゆる霊感商法や契約に当たる寄附について、取消権の対象範囲の拡大や取消権の行使期間の伸長等の措置を講じ、被害防止及び救済の可能性を高めます。あわせて、国民生活センター法の改正により、ADRの活用促進を図ります。

 また、新法案では、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け、困惑した中で行われた寄附の意思表示については瑕疵があることから、取消しを認める制度としています。さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。

 この二法案により、これまで救済できなかった被害をより幅広く救済でき、また、将来に向けて、被害の防止にも役立つと考えております。

 配慮義務についてお尋ねがありました。

 新法案では、旧統一教会の被害実例で明らかになった多様な手口も踏まえ、一定の寄附勧誘行為を禁止行為と規定することに加え、勧誘を受ける側が、いわゆるマインドコントロールで適切な判断をすることが困難な状況に陥る、過大な寄附により生活の維持が困難となる、法人の正体や寄附の使途を誤認するといった結果に陥る寄附勧誘行為を行わないよう、包括的な配慮義務の規定を置いたものです。

 より幅広い行為を捉えることができる配慮義務を措置することで、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合、民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、禁止行為や取消権等の規定と相まって、被害救済の実効性が高まるものと考えております。

 新法案の禁止規定の文言についてお尋ねがありました。

 まず、必要不可欠要件は、必ずしも必要不可欠という言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えております。多額の寄附に至るような悪質な勧誘事例の多くはそのような必要性や切迫性を有しているものと考えられることから、政府案で十分実効的に対応できるものと考えています。

 不安を抱いていることに乗じるの要件については、不安を抱いているという本人の精神的な状態に乗じ、霊感等の知見を示しつつ勧誘を行い、それにより困惑させて寄附の意思表示をさせた場合が対象となります。これにより、新たな寄附を勧誘するたびに不安をあおる行為がなくても取消しを可能にするものであります。

 困惑とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような精神的に自由な判断ができない状況をいい、畏怖をも含む広い概念です。

 これらの考え方に照らせば、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、消費者契約法の改正法案と新法案による取消権の対象となると考えられます。また、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できると考えております。

 寄附の上限規制についてお尋ねがありました。

 年収等に応じた寄附の目安を設ける、又は一律の金額を決めて上限規制を設けることについては、御指摘のように、寄附を勧誘する法人等が寄附者の所得を把握する口実に使われるなど、悪用されるリスクがあります。

 新法案では、借入れによる資金調達の要求や、居住用の建物、敷地、生活の維持に不可欠な事業用資産の処分による資金調達の要求の禁止という形で、明確に寄附を勧誘する側の行為規範を設定しました。これにより、裁判上立証しやすいと同時に、実質的に上限を設ける考え方としております。

 また、新法案では、この禁止規定と併せ、配慮義務規定で、寄附者とその家族の生活の維持を困難とすることがないようにすることを求めており、双方の規定で過度な寄附の要求がなされないようになると考えております。

 報告徴収、勧告、命令についてお尋ねがありました。

 報告徴収、勧告、命令に関しては、同法案が、多くの法人等に影響が及び、かつ、寄附の性質が無償で財産に関する権利を移転させる行為等が中心であることを踏まえると、その要件は一定の厳格性が必要と考えております。

 第六条の報告徴収の要件である、特別に必要があるときについては、例えば、禁止行為が不特定又は多数の者に対して繰り返し組織的に行われており、社会的な影響が大きいと考えられる場合が想定されます。

 また、勧告、命令については、報告徴収によって明らかになった組織性、悪質性に加え、禁止行為が将来にわたって継続する蓋然性が高い場合が想定されます。

 これらの行政措置により、より実効的に寄附勧誘の適正化が図られるものと考えております。

 債権者代位権の特例についてお尋ねがありました。

 債権者代位権は、自らの権利を保全するために必要な範囲で他者の権利を行使することを認める制度であり、新法案においてこれを活用しやすくすることで、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につなげることができると考えております。

 また、債権者代位権の適切な行使により被害回復等を図ることができるようにするための支援も重要であると考えており、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備を進めるほか、このための支援の在り方も措置しております。

 他方、これらを超えて、家族を含めた第三者が幅広く、本人の意に反して、又は本人の同意なく、本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から、現行の我が国の法体系上は困難であると考えております。

 法案の成立に向けての決意についてお尋ねがありました。

 改正法案と新法案では、現在の我が国の法体系の中で許される限り最大限実効的な法案とすべく、禁止行為、取消権、配慮義務、行政措置や刑事罰など、様々な規定を組み合わせて立法作業を行いました。

 両法案は実効的なものとなったと考えておりますが、政府としては、改正法案及び新法案の国会審議において、法案の趣旨や目的について説明を尽くし、与野党の意見も伺いつつ、早期の成立に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 私は、国民民主党を代表しまして、ただいま上程されました、法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案、消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法改正法案について質問します。(拍手)

 今年七月に起きた安倍晋三元首相の銃撃事件。その後、旧統一教会の問題が明らかになる中、主に二つの論点に焦点が当たりました。一つは、献金被害に遭った人をどう救済するか、もう一つは、旧統一教会という宗教法人を解散させるべきかという議論です。これらの問題をどう解決できるのか、質疑をいたします。

 まず、寄附の勧誘についてお尋ねします。

 新法の枠組みが分かりづらくなっているのが、配慮義務という言葉です。寄附に関して、配慮義務という大枠の中に特に悪質である禁止行為を定め、違反をした場合の罰則規定を設けたと理解をしておりますが、そもそも、配慮義務の内容自体も行ってはいけないことであります。だからこそ、今回、民法による不法行為の認定の容易化を定め、被害防止をうたっているのではないでしょうか。

 参考にした公益法人法第十七条は、同様の内容で禁止行為と位置づけられています。配慮したからと言って逃げられることのないように、しっかりと禁止行為と分かるようにすべきではないかと考えます。

 配慮義務の考え方、そして禁止行為と定めなかった理由を総理に伺います。

 家族の救済についてお尋ねします。

 献金をどう扱うかは、自分の財産の使い道は自分で決めるという基本的な財産権との衝突をどう回避していくかが大きな問題です。その中で、親の過度な献金によって修学旅行に行けない、奨学金まで献金され進学の道が閉ざされるなど、子供たちの不利益を確実に救済しなくてはなりません。

 今回の新法では、第三条の中で、配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることのないようにという配慮義務が定められていますが、これはどこまでを指すのでしょうか。

 また、債権者代位権の特例が設けられ、家族による寄附の取消権行為が可能になることは評価をいたしますが、この実効性が問われています。担保を確保するために、保全すべき子供の養育のための必要経費として、何歳までに幾らの基準を詰めておく必要があると考えます。

 養育費算定基準などを活用し、債権者代位制度の実効性をまず検証した上で基準策定を進め、宗教二世の立場に立って、でき得る限り十分な救済可能性を確保することを求めます。総理の見解を伺います。

 被害者支援についてお尋ねします。

 被害回復のために、法テラスと関係機関、関係団体等の連携による利用しやすい相談体制の整備等、必要な支援に備えるとありますが、これまでその役目が果たせてきたとは言えません。

 旧統一教会でいえば、人権問題、虐待問題、消費者問題や経済問題と、様々な課題が混在をしています。法務省が中心となっていくとのことですが、省庁を横断した連絡会議をつくるなど、具体的な取組をどのように進めていくのか、法務大臣に伺います。

 あわせて、法律相談にとどまらず、脱会ケアとして、心理相談や社会復帰施設のカウンセリング等、幅広い支援も必要と考えますが、総理の見解を伺います。

 宗教法人法との関係についてお尋ねします。

 宗教法人法は、規制するというよりも信仰の自由を守るものといった考えがありますが、正体隠しや身分を偽っての伝道などは、むしろ、個人の信教の自由を害する行為と言えます。

 総理は、寄附の勧誘を行う法人等を特定できる事項を明らかにすることを配慮義務として定めることにより、これに反する行為があった場合に、不法行為に基づく損害賠償請求による救済が容易になると考えます、よって、正体を隠すということはこれに反することになると予算委員会で述べられました。そうであるなら、新法案第三条に違反した場合には、宗教法人法八十一条一項一号の法令に違反に当たり、同法の解散命令の対象になり得るということでよいのか、総理、明確に答弁を願います。

 さらに、法人等が寄附の勧誘に際して、個人に対して念書を作成させ、あるいはビデオ撮影をしているということ自体が法人等の勧誘の違法性を基礎づける要素の一つとなるとも総理は述べられています。これは、宗教法人法八十一条一項二号の宗教団体の目的を著しく逸脱した行為に当たるのではないでしょうか。つまり、これらの行為も同法の解散命令の対象になり得るということでよいのか、総理、明確に答弁を願いたいと思います。

 また、新法では、内閣総理大臣が第四条、五条の規定に違反した団体に報告、勧告、命令、そして刑事罰までの権限が与えられ、行政権だけでの判断が可能となります。今法案は宗教法人だけではなく全ての法人への適用ではありますが、宗教法人法のように司法の判断が入らないことになった経緯とその理由を総理に伺いたいと思います。

 最後に、そもそも、三十年来政治が放置してきたとも言える旧統一教会の問題をこの臨時国会の短い期間で解決することに無理があったということは事実ではないでしょうか。

 今後、宗教法人法の改正による献金規制の在り方、また、カルト対策の本質的な議論が必要になってくると思いますが、総理の決意を伺い、質問を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中健議員の御質問にお答えいたします。

 配慮義務の考え方と禁止行為と定めなかった理由についてお尋ねがありました。

 禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないかを的確に認識できるよう、その類型及び要件をできる限り客観的で明確なものとして規定するべきであると考えられます。

 一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えています。

 配慮義務の考え方と債権者代位権についてお尋ねがありました。

 第三条第二号に定める、配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務は、旧統一教会問題において、寄附者本人だけでなくその家族も生活上困難に直面された実態があったことを踏まえ、寄附者本人だけではなく配偶者と寄附者本人に対して、民法で定める扶養請求権を有する直系血族及び兄弟姉妹等を対象として、法人等に配慮義務を課すものです。

 また、養育費の算定や養育期間の終わりがいつかといった問題は、家庭裁判所において判断がされる際の参考とされる考え方がある一方、実際の算定については個別の事情による判断となるため、宗教二世の立場に立って、できる限り救済可能性を確保すべく、法テラスと関係機関等が連携した相談等の充実に取り組んでまいりたいと思います。

 そして、旧統一教会問題に関する幅広い支援の必要性についてお尋ねがありました。

 関係省庁において、先般、相談体制の強化等について総合的な方策を取りまとめ、法テラスについては、対応窓口や心理専門職を配置した対応部署の新設など、抜本的な充実強化を図ることとしております。

 このほか、総合的な方策では、生活困窮者の自立支援や子供の心のケアなど幅広い支援を行うこととしており、法テラスと関係機関、団体等が連携して、被害者の多様かつ複合的なニーズに応じて、実効的な救済につなげてまいりたいと思います。

 そして、法案第三条の配慮義務に違反した場合や法人等が個人に対する念書の作成やビデオ撮影を行った場合について、宗教法人法に基づく解散命令請求の対象になるのかについてお尋ねがありました。

 個別の宗教法人について解散命令請求を検討するに当たっては、所轄庁において把握した事実関係を踏まえ、宗教法人法に基づき、行為の組織性、悪質性、継続性等をその個別事案に応じて判断していくこととなります。

 そして、新法案の行政措置の判断権限についてお尋ねがありました。

 宗教法人法においては、法人格を喪失させるという強い効力を持つ措置を講ずる一方、信教の自由に配慮する必要があることを踏まえ、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められることなどの厳格な要件に加え、裁判所が解散命令を行う旨を規定しています。

 これに対して、新法では、第四条及び第五条の禁止行為の実効性を担保するため、行政庁による報告徴収、勧告及び措置命令について規定を設けていますが、これらの行政措置は、法人格を喪失させる解散命令のような強い効力を有するものではないことから、行政だけで判断することとしております。

 そして、宗教法人法の改正やカルト対策についてお尋ねがありました。

 政府としては、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の整備、この三つの対策を並行して進めています。

 今般、消費者契約法の改正案に加え、被害者救済のための新法を国会に提出し、御審議いただきます。

 御指摘の宗教法人法の改正やカルト対策については、まず、この新法を含めて、これらの対応に万全を期すべく取り組み、その上で議論されるべき課題であると考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 田中健議員にお答え申し上げます。

 関係省庁連絡会議の取組についてお尋ねがありました。

 旧統一教会問題につきましては、総理大臣の指示の下、本年八月、悪徳商法等の不法行為の相談、被害者の救済を目的として関係省庁連絡会議が設置され、法務省のほか、警察庁、消費者庁、厚生労働省、文部科学省などを構成員といたしまして、関係機関等が緊密に連携しつつ、様々な課題について相談対応などを行ってきたところでございます。

 先般、十一月十日に開催された第三回会議においては、合同電話相談窓口の相談状況等を踏まえまして、被害者の救済に向けた総合的な相談体制の充実強化のための方策を確認し、申合せを行いました。

 これによりまして、合同電話相談窓口の機能や知見は法テラスにおいて設置した相談窓口に承継されましたが、他の関係各機関においても引き続き被害者の救済に向けた様々な取組を行っていくことから、関係省庁連絡会議においては、法テラスと関係各機関との相互の連携についても強力に推進してまいります。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党を代表して、寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 今必要なことは、統一協会によるこれまでの被害者を救済し、新たな被害を防止することです。

 統一協会は、数十年にわたり、違法な霊感商法、高額献金で国民の財産を収奪し、被害を広げてきました。統一協会のイベントに参加し、祝電を送り、広告塔の役割を果たしてきた政治家の責任は重大であります。統一協会と政治の癒着の中で、解散命令請求も行わず、被害を防ぐ有効な手だてを取ってこなかった政府の責任もまた重大ではありませんか。

 本法案は、これまでの被害を直接救済するものではありません。被害者救済へ国の責任を果たすべきではありませんか。

 本法案の最大の弱点は、統一協会の被害実態に即した規制となっていない点です。

 統一協会は、宗教勧誘であることも、入信後、高額献金を求めることも秘匿して、数か月かけ、正体隠しの伝道、教化システムによって教義を植え付けます。信者は、自由意思に基づかないで統一協会の教義に帰依させられ、自由な意思決定ができない状態にされます。そして、統一協会は、教義の実践として献金などをさせます。

 本法案は、寄附の勧誘をするに際し、不利益を回避するためには当該寄附をすることが必要不可欠であることを告げ、困惑させてはならないとしています。しかし、寄附の時点だけを見れば、信者は、困り戸惑うことなく、違法に植え付けられた教義への確信、使命感から進んで寄附を行っているように見えるケースが多くあります。

 河野大臣は、義務感、使命感に駆られている状況を全て困惑と言うのは無理だと思うと答弁されています。統一協会の献金被害の多くが取消しの対象から外れるのではありませんか。法案を修正して、困惑類型とは異なる、統一協会の被害の実態に即した規制を設けるべきであります。

 総理は、答弁で、入信当初に不安をあおられる等で困惑し、その後は自分が困惑しているか判断できない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に取消権を行使することが可能な場合があると述べています。どういう場合が可能で、どういう場合が不可能なのか。四条六号は行政措置の対象ですから、判断基準を責任を持って示していただきたいと思います。

 入信当初に不安をあおられて困惑しても、その際に寄附が必要不可欠との勧誘がなく、入信当初と寄附の勧誘に大きなタイムラグがあり、寄附の勧誘の際には、既に教義に基づく確信で、使命感で進んで献金しているように見える状況の場合、四条六号の取消しの対象とは読めないのではありませんか。

 この法案では、統一協会は、最初の入信のときには寄附を求めていない、寄附の勧誘の際は困惑していない、必要不可欠とは告げていないなどと反論するでしょう。取消しの対象となるか、最終的に判断するのは司法です。条文は明確でなければなりません。総理は、法案が成立した際には条文の解釈の明文化を図ると答弁されていますが、明文化できる解釈なら、今修正して条文化すべきではありませんか。

 法人等への配慮義務として、寄附の勧誘が個人の自由な意思を抑圧し、寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすることを課しますが、この規定では、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがあり、寄附の勧誘の際には、教義に基づく確信で、使命感で進んで献金しているように見える場合、配慮義務の対象にならないのではありませんか。

 被害防止の実効性を高めるために、文言を修正するとともに、配慮義務規定全体を禁止規定とし、報告徴収、勧告、公表等の行政措置及び取消しの対象とすべきではありませんか。

 次に、子や配偶者など被害者家族の救済です。

 法案では、債権者代位権の特例を設けますが、扶養義務の範囲では取り戻せる範囲は余りに狭く、無資力要件があるため、取り戻せるケースは極めて限定的であります。新法が成立した場合、一年をめどに、債権者代位権の活用について速やかな検証と法の見直しが必要ではありませんか。

 さらに、禁止される、寄附のための資金調達要求について、生命保険の解約など、生活の維持に重要な財産に広げるべきであります。

 また、取消権の行使期間についても、マインドコントロールを脱するのに時間がかかることを考慮し、民法に準じて、寄附したときから二十年とすべきではありませんか。

 解散命令請求について伺います。

 政府は質問権を行使していますが、統一協会の側が違法行為を裏づける新たな事実を答えないことも想定されます。その場合でも、これまでの判決などで統一協会の法令違反の組織性、悪質性、継続性は明らかであり、速やかに解散命令請求に踏み切るべきではありませんか。

 総理に残されている最大の宿題の一つが、自民党と統一協会の癒着の解明、癒着の一掃であります。

 自民党の点検では、隠されていた国会議員と統一協会との関係が今国会の中でも次々と明るみになってまいりました。地方議員については、更に深刻な状況が広がっております。今後一切関係を絶つという総理の方針は徹底されておりません。自民党として責任を持った調査を国会議員、地方議員問わず行うべきではありませんか。

 以上、指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 宮本徹議員の御質問にお答えいたします。

 旧統一教会問題の被害者救済への国の責任についてお尋ねがありました。

 政府として、旧統一教会による霊感商法や多額献金による被害者の方々が存在するということを深刻に受け止めております。

 だからこそ、政府として、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化等による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直し、この三つの対策を国として責任を持って進めてまいります。

 統一教会の献金被害の実態に即した規制についてお尋ねがありました。

 いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、新法案による取消権の対象となると考えられます。また、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態であったとしても、脱会した後に冷静になって考えると、当時、不安に乗じられて困惑して寄附をしたということであれば、そのような主張、立証を行って、取消権を行使することが可能であると考えられます。

 また、取消権の対象とは明確に言えない場合についても、今回措置する配慮義務規定に抵触し、民法上の不法行為認定に基づく損害賠償請求により、被害救済に対応できると考えております。

 取消権及び第四条第六号の禁止行為の対象となると判断される基準についてお尋ねがありました。

 御指摘のような事案では、事後的に寄附当時困惑していたと考え、その寄附が、不安をあおり、又は不安に乗じ、重大な不利益の回避のために寄附が必要不可欠である旨告げるという不当な寄附の勧誘行為によるものであることが、勧誘者の持参した資料や当時の記録、本人や周囲の供述等により総合的に認められる場合に、取消権や禁止行為の対象となります。

 入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合等の取消権の取扱いについてお尋ねがありました。

 御指摘のような場合でも、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断でき、また、事後的に寄附当時困惑していたと考えた場合には、取消権の対象になると考えています。

 また、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法案の第四条第六号の不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことから、取消権の適用対象になると考えています。

 条文の解釈の明確化についてお尋ねがありました。

 新法では、行政としての姿勢を示す観点から、法人等の行為の類型を可能な限り客観的で明確なものとして規定するなど、可能な限り要件が明確となるよう条文化を進めてまいりました。

 法律の解釈についてその全てを条文化することは困難ですが、法案が成立した際には、個別の事例に即して条文の適用可能性を示し、法律の周知を図り、その適切な活用を促進してまいります。

 配慮義務についてお尋ねがありました。

 御指摘のような、入信当初と寄附の勧誘にタイムラグがある場合であっても、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合には、配慮義務規定の対象となります。

 また、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できない場合であっても、入信時に、寄附に関する適切な判断が困難な状況に陥っている個人に対し更に行われる寄附の勧誘については、より一層、個人の自由意思を抑圧する行為と言え、配慮義務規定の対象になると考えられます。

 配慮義務規定全体を禁止規定とすべきとの御指摘ですが、禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないか的確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。

 一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態等、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招く、より幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易にする効果が高いと考えております。

 債権者代位権についてお尋ねがありました。

 債権者代位権は、債権者が自らの権利を守るために必要な範囲で債務者の有する第三者への債権を行使できるようにする制度です。

 この制度は、本人が無資力であることが前提となりますが、今回の新法では、将来の債権の保全を可能とするなど、制度を活用しやすくすることで、家族らの被害救済につながると考えております。

 また、家族の住居や生活維持のために欠くことのできない事業用資産を処分して寄附資金を調達することを求める行為を禁止するとともに、寄附勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養家族の生活の維持を困難にすることがないようにすることを配慮義務として規定しています。

 これらの禁止規定や配慮義務の規定により、家族自身に対する民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、被害救済の実効性も高めることができると考えております。

 こうした債権者代位権の適切な行使や損害賠償請求などを通じ被害回復を図ることができるよう、法テラスと関係機関が連携した相談体制の整備や訴訟費用の支援なども進めてまいります。

 なお、債権者代位権の特例に関する規定については、他の規定と同様、規定の施行の状況及び社会経済状況の変化を勘案し、適切に見直してまいります。

 そして、寄附のための資金調達要求及び取消権の行使期間についてお尋ねがありました。

 御指摘の生命保険については、それが現在の生活の維持に重要な財産である場合には、その解約による寄附を勧誘することは個人や家族の生活の維持を困難にすることがないよう配慮する義務に抵触すると考えられます。このため、こうした寄附勧誘があった場合には、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求が可能であると考えられます。

 一方で、現住居の不動産等とは異なり、現在の生活の維持に重要でない場合も想定されることから、その解約による寄附資金の調達の禁止までは定めなかったものであります。

 また、取消権の行使期間については、民法よりも取消し対象が広がることとの比較考量で短くなる一方で、権利を適切に行使することができない状態から脱するために相応の期間を要する事例があることを踏まえ、寄附の意思表示をしたときから十年間とするなど、いわゆるマインドコントロール以外の類型の取消権の行使期間よりも長い期間を設定することとしております。

 そして、解散命令請求についてお尋ねがありました。

 旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収、質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の業務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにし、法律にのっとり、必要な対応を行ってまいります。

 このため、十一月二十二日に所轄庁たる文部科学大臣が宗教法人法に基づき報告徴収、質問権を行使したところであり、今後もスピード感を持って適切に対応するものと考えております。

 そして、旧統一教会との関係の調査についてお尋ねがありました。

 閣僚を含む多くの議員が、社会的に問題がある旧統一教会、その関係団体と接点を有していたことが明らかになり、国民の皆様の政治への信頼を傷つけたことを率直におわび申し上げます。

 自民党においては、各議員それぞれが、旧統一教会との過去の関係を八項目に分けて詳細に点検、報告し、新たな接点が判明した場合には、その都度、追加的に報告、説明を行い、今後は関係を持たないことを徹底することを方針としております。

 大切なことは、未来に向かって関係を絶つことであります。自民党においては、旧統一教会及び関係団体と一切関係を持たない方針であることを踏まえ、既にガバナンスコードを改定し、対応方針について党所属全国会議員及び全国都道府県連に対して通知をしたところであり、これを徹底してまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十分散会

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 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       法務大臣    齋藤  健君

       国務大臣    河野 太郎君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 木原 誠二君

       内閣府副大臣  大串 正樹君


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