第5号 令和6年2月13日(火曜日)
令和六年二月十三日(火曜日)―――――――――――――
令和六年二月十三日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
裁判官訴追委員辞職の件
裁判官訴追委員の選挙
裁判官訴追委員の予備員の選挙
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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裁判官訴追委員辞職の件
○議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。
裁判官訴追委員石田真敏君及び中川正春君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申出があります。右申出を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。
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裁判官訴追委員の選挙
○議長(額賀福志郎君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。
○井野俊郎君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
議長は、裁判官訴追委員に
田村 憲久君 及び 吉川 元君
を指名いたします。
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裁判官訴追委員の予備員の選挙
○議長(額賀福志郎君) ただいまの選挙の結果、裁判官訴追委員の予備員吉川元君が裁判官訴追委員に選任され、同予備員が一名欠員となりました。
この際、裁判官訴追委員の予備員の選挙を行います。
○井野俊郎君 裁判官訴追委員の予備員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名され、その職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
議長は、裁判官訴追委員の予備員に青柳陽一郎君を指名いたします。
なお、その職務を行う順序は第三順位といたします。
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所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣鈴木俊一君。
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、物価高を上回る持続的な賃金の上昇が行われる経済の実現、生産性の向上等による供給力の強化等の観点から、国税に関し、所要の改正を行うものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、賃金の上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和し、物価の上昇を上回る持続的な賃金の上昇が行われる経済の実現を目指す観点から、所得税の定額減税の実施及び賃上げ促進税制の強化等を行うこととしております。
第二に、資本の蓄積の推進及び生産性の向上による供給力の強化のため、戦略分野国内生産促進税制及びイノベーションボックス税制の創設を行うこととしております。
第三に、スタートアップエコシステムを抜本的に強化するため、ストックオプション税制の適用要件の見直し等を行うこととしております。
第四に、経済のグローバル化を踏まえたプラットフォーム課税の導入等を行うこととしております。
このほか、住宅用家屋の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。
以上、この法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。斎藤洋明君。
〔斎藤洋明君登壇〕
○斎藤洋明君 自由民主党の斎藤洋明です。
自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等改正法案について質問いたします。(拍手)
まず冒頭、能登半島地震の被災者の皆様に、お悔やみとお見舞いを申し上げます。災害対応に昼夜を問わず当たっておられる全ての方々に感謝を申し上げ、立法府の一員として、復旧復興に全力を尽くしてまいります。
今回の地震により、能登半島を始め北陸地方の広い範囲で、住宅を中心に大きな被害が発生しております。
そこで、まず、災害に対する税制上の対応についてお伺いいたします。
生活再建支援法での支援額の上限が三百万円となっているところ、政府は、能登地域六市町を中心に、高齢者や障害者のいる世帯を対象に新たに最大三百万円を目安とした給付を行う方針を決めました。
しかし、能登半島地域以外の石川県や富山県や新潟県でも住宅に大きな被害が生じており、また、高齢者や障害者のいる世帯が特に困難であることは間違いありませんが、どのような被災世帯であっても、困難に直面していることでは同じです。
また、新潟市などでは住居用賃貸アパートにも液状化により被害が生じておりますところ、なりわい再建支援事業は、住居用賃貸アパート、マンションの被害は対象とならないのが現状です。しかし、他の私有財産と異なり、住居用アパート等は、居室そのものが私有財産でありながら、同時に、事業上欠かすことができない設備でもあるという特殊性があります。さらに、高齢者や低所得者のたな子の方々は、居住しているアパート等が被災していても、他のアパート等に容易に引っ越すことができず、なるべく修繕の上で住み続けたい方が多くいらっしゃいます。
三百万円から六百万円への生活再建支援法での支援額の上限の引上げや対象地域の拡大、住居用賃貸アパート等の被害へのなりわい再建支援事業の適用などの対応は引き続き与党内で求めてまいりますが、この場では、こうした被害に対して税制上の対応ができないか、伺います。また併せて、今回措置しようとしている、災害による損失を令和五年所得に適用する特例を設けることの意義と政府の準備状況を財務大臣にお伺いいたします。
次に、社会構造の変化を踏まえた税制改正についてお伺いします。
賃金や社会保障の格差拡大、正規労働者と非正規労働者の固定化、派遣労働の行き過ぎた拡大などにつながらないよう留意すべきですが、その上で、日本社会は、個々人の価値観、目標、ライフステージに合わせて多様な働き方を選択する社会に大きく変化していることは事実として認識すべきと考えます。
働き方の多様化により、今後、給与所得者の在り方もますます多様化していきます。今後の税制を考えるに当たり、働き方に左右されない、人々の選択に中立的な控除の在り方が必要になるのではないでしょうか。すなわち、サラリーマンにのみ適用される給与所得控除から、人的事情に左右されない基礎控除に負担調整の比重を移していくべきと考えますが、財務大臣の見解をお聞かせください。
最後に、人口減少、少子化への対応について質問いたします。
子育て支援税制が盛り込まれていることは高く評価します。子育て世帯等に対する住宅ローン控除及び住宅リフォーム税制の拡充は、妊娠、出産を機に住宅の購入を検討される方が多いことを考えると、子育て支援として適切と考えます。
また、住宅の購入と同様に、自分に万が一のことがあったときの子供の将来を思い、生命保険への加入を検討される方も多くいらっしゃいます。そこで、子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充は非常に重要と考えます。
また、多子世帯の大学無償化が今回大幅に拡充されることは喜ばしいことですが、特定の時期の教育支出額のみに着目して、上の子が卒業して扶養から抜けた場合、下の子が対象から外れるとの運用については、実際には、貸与型奨学金や教育資金の積立てや教育ローンなどにより、多くの学生や家庭がストック的に教育支出を拠出していること、また、同じ子供の数で同額の教育支出であったとしても、年齢構成により無償化の対象、非対象が分かれることとなることから、適切ではないと考えます。
以上のことから、子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充に向けた検討状況及び高等教育の無償化の更なる対象拡大について、財務大臣にお伺いします。
最後に一言。税の基本もまた、公正と信頼です。今、自由民主党に対する信頼が根底から揺らいでいます。党内から政治資金とガバナンスの問題を正し、自由民主党の信頼回復の長い道のりに挑む決意を申し上げ、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 斎藤洋明議員の御質問にお答えいたします。
まず、能登半島地震への税制上の対応等についてお尋ねがありました。
地震等により個人が保有する賃貸アパート等が被害を受けた場合、その損失額を令和六年分の必要経費に算入し、所得税の負担を抑えることができます。令和六年分で引き切れない場合、今回のような大規模な災害であれば、被害の状況に応じて五年間の繰越しが可能です。
また、先般、こうした損失を含め、今回の地震で生じた住宅等の損失額を前年の令和五年分の所得から控除することを認める特別措置等を講ずる方針を閣議決定いたしました。現在、法案提出に向け準備を急ぐとともに、手続等の周知、広報を行っております。
こうした措置により、被災者の皆様の負担軽減や、生活再建に向けた資金繰りの円滑化を図ってまいります。
次に、所得税の人的控除についてお尋ねがありました。
働き方に中立的な税制を実現していく観点から、平成三十年度税制改正において、給与収入や年金収入にのみ適用される給与所得控除、公的年金等控除から、どのような所得にも適用される基礎控除に負担調整の比重を移すための見直しを行いました。
今後、この改正の影響等も踏まえ、引き続き、個人所得課税の各種控除の在り方等について検討を深めてまいります。
最後に、生命保険料控除の拡充と高等教育の無償化の拡大についてお尋ねがありました。
生命保険料控除の拡充については、令和六年度与党税制改正大綱において、子育て支援税制の一環として、子育て世帯に対して控除額の上乗せ措置を講ずる方向性で検討し、令和七年度税制改正において結論を得ることとされております。
また、令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料等の無償化は、扶養する子供が三人以上いる間が対象になりますが、これは、三人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが三人同時に扶養している期間であることを考慮し、財源が限られている中で設定したものであります。
こども未来戦略の加速化プランに基づくこれらの施策については、その実施状況や効果等を検証しつつ、高等教育費の負担軽減を中心に、適切な見直しを行うこととしております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 馬場雄基君。
〔馬場雄基君登壇〕
○馬場雄基君 立憲民主党・無所属の馬場雄基です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
ちまたにあふれる声があります。国民は増税、自民は脱税。
誠に申し上げにくいことではございますが、今回のテーマは税です。裏金と脱税の話に決着をつけずに、税の話はできません。
新たな政治と金に関する問題が発覚いたしました。今度は、政府の官房機密費の問題です。
これだけ裏金問題が大きくなっていたにもかかわらず、あろうことか、疑惑の渦中にいた松野博一前官房長官が、更迭直前の十二月、四千六百六十万円の機密費を自らに支出していたことが明らかになりました。政治と金をめぐる問題は、今や、自民党だけではなく政府にも、雪だるま式に広がっています。このことを伝えた報道によると、松野前官房長官は、在任中、約二年間で二十六億円以上ものお金を自分自身に支出しており、その全てが、使い道が明らかになっていません。
この事態を放置することは、ますます国民に政治への不信をあおると思います。私たちは、松野前官房長官を含めた裏金議員に対し、政治倫理審査会への出席を求めています。百名近い議員の名が挙がった一連の行動は、自民党派閥裏金事件です。
これから確定申告が本格化する今、私たちは一円も大切に納税しているのに、なぜ政治家は許されるのか、インボイスまで導入して、政治家は脱税か。国民の当然の怒りに、鈴木財務大臣はどう答えられるのでしょうか。
国民と政治家の間にある大きなギャップ。国民は少額でも税務調査の対象、一方、政治家はお目こぼし。こんな不公平なことを、国として許されるはずがありません。この国の税をつかさどる財務大臣、国税庁は脱税の疑いのある裏金議員へ税務調査に入るべきと考えますが、いかがでしょうか。
自民が脱税をする一方、国民は増税。これから強いられる三つの大きな増税があります。
国民は増税、その一、防衛増税です。
昨年の通常国会は増税国会、岸田増税でした。少なくとも年間一兆円、防衛増税が必要。これが、あのときの政府の決断でした。
この規模の増税をいつから行うのか。二〇二三年度与党税制改正大綱には、二七年度に向けて複数年かけてとされています。複数年度となると、遅くとも二六年度には増税は開始です。周知期間を考えると、遅くとも二五年、来年の今頃には増税法案を出さないと間に合いません。来年には増税法案を出すのか、出さないのか。来年にも出さない可能性があるということなのか。今、明確にお答えください。
税外収入が防衛財源というのは乱暴極まります。例えば、働く方を守る、雇用を守るために用意した労働保険特別会計、防衛とは全く関係ない大切な目的を持つお金が、千九百六十四億円、防衛財源となります。雇用のためのお金が防衛財源となる仕組みはおかしいと思いますが、財務大臣の御見解を伺います。
国民は増税、その二、子育て支援金。
平均すると負担は月五百円弱という岸田総理の答弁もありましたが、加入している保険によって負担額は更に増える場合があります。負担増は最大幾らになるのか、お答えください。
国民は増税、その三、高校生年代の扶養控除の縮小。
児童手当の増額が十分でないまま扶養控除を縮小することは、子育て支援に逆行します。認められません。
これら増税トリプルパンチが国民生活を襲います。少子化対策と政府は言いますが、若者を助けようとする政策でかえって若者が苦しむ姿を、私は見たくありません。
所得減税について伺います。
昨年からの物価高に応えるには、所得減税ではなく、即効性のある給付だと私たち立憲民主党は政府に一貫して提案し続けてまいりました。給付であれば、事務負担も軽減、今頃はお金も届き切っていたでしょう。結局は、岸田増税、増税というイメージを打ち消したい、選挙目当てではないでしょうか。
なぜか。事務コストが莫大です。
減税だけでは戻し切れない場合、給付と組み合わせて損をしないように補填しますが、減税と給付を同時に行い、かつ税も所得税と住民税と二つに分かれる複雑怪奇な仕組みとなっています。現場で対応する市役所職員また各企業の会計担当者の悲鳴は計り知れません。この政策だけで仕事がどれほど増えることになるのか、財務大臣は確認をした上で制度設計をしたのでしょうか。
そして、遅い。
政府は今年の六月を強調して効果の説明をなされますが、フリーランスや個人事業主の方の場合、高収入で予定納税をしている方以外は、減税の時期は何と来年の確定申告のときになります。目的が昨年来の物価高対策であるにもかかわらず、遅過ぎるのではないでしょうか。しかも、この対象となる方は、昨年の確定申告ベースで推測すれば、およそ一千万人にもなります。物価高の影響をもろに受けているのはまさにこの層の方であるはずなのに、支援が届くのが一年以上先となるのは、余りにも遅過ぎます。
加えて、この減税は今年だけでしょうか。二回目があると期待してもいいのでしょうか。恒久的に行うのでしょうか。仮に減税が今回の一度きりの場合、これほどの矛盾がある中で、なぜ給付にしなかったのか。明確にお答えください。
事務コストやスピードといった政策効果ではなく、政局で判断する岸田総理に振り回されているのは、財政当局の皆様ではないでしょうか。
続いて、賃上げ促進税制について伺います。
この目標は、物価高に負けない賃上げとされていますが、それは賃上げ率が物価上昇率を上回ることなのか、それとも追いつくことなのか、説明がころころ変わって分かりません。
六日、厚生労働省が毎月勤労統計調査を発表し、二〇二三年の実質賃金は前年比マイナス二・五%。名目賃金こそ一・二%のプラスですが、それ以上に消費者物価指数が三・八%上昇しました。
確認します。政府は来年、この数字、つまり毎勤統計の実質賃金をプラスにする、これが目標と捉えていいでしょうか。
そもそも、この間を見ると、賃上げ促進税制があるから賃上げができるというよりも、元々賃上げができる大企業が賃上げをして減税の恩恵を受けているだけではないでしょうか。中小企業はいまだ苦しく、ついていけていません。賃上げ税制は二〇一三年から導入され、十年もたちますが、効果も不透明です。にもかかわらず、なぜ賃上げ税制を拡大するのでしょうか。同じ予算があるならば、中小企業への賃上げ対策を強化すべきではないでしょうか。
賃上げ、つまり、企業の固定費は人件費になります。だから賃上げするのが難しいわけです。今回の税法改正で、赤字の年に法人税を減税できなかった分を最大五年間繰り越せるようになるのは、使いやすくなり、一定の評価をいたします。しかし、法人税は企業にとっては変動費になります。固定費である給与を引き上げるインセンティブとしては弱いのではないでしょうか。給与という固定費を引き上げるには、同じ固定費である社会保険料の事業主負担を引き下げる方が妥当ではないでしょうか。
私たちは、正社員を雇った中小企業は社会保険料の負担分を補助しましょうという法案を提出しています。この法案に対する財務大臣の御見解を伺います。
戦略分野国内生産促進税制について伺います。
EV、半導体など五つの分野の重要性は年々高まっています。しかし、中小企業への対策が強化されるべきという流れがある中で、更に十年間で合計二兆円という大規模な減税を大企業中心に実施することが、税の資源配分機能として適切なのか、財務大臣に御見解を伺います。
考えたくはありませんが、特定の業界に絞って大企業に大幅減税し、その分、自民党のパーティー券や企業献金に回る。自民党、官僚、財界の癒着といった昭和の仕組みとならないようにしなくてはなりません。
時代に決着をつけるときです。つけなくてはなりません。本日、私は平成生まれとして初めてこの本会議場の質疑に立っております。これから、たくさんの平成生まれがこの場に立つでしょう。だからこそ、昭和のあしき風習をここで止めたいんです。
国民は増税、自民は脱税。
必死に働いても実質賃金は上がらず、暮らしも苦しい状況なのに、防衛増税、子育て支援金、扶養控除の縮小と、負担、増税ばかりを強いられることに、国民、とりわけ将来を担う若者たちは怒っています。
そんな怒りを横目に、自民党の政治家は脱税。偉くなるには集金力、大臣並みの金を集めてやろう。先日起訴された谷川弥一前議員の言葉です。裏金、脱税のリスクを冒してまで派閥の評価を上げ、派閥順送りで大臣を目指す、そんな昭和の自民党政治が今も続いていることに、国民、若者の怒りは頂点に達しているのではないでしょうか。
若者は投票率が低いからけしからぬ、大人はよく言いますが、脱税、裏金、悪いことをした人たちが、悪いと認識も持てない世界に、どうして若者が安心して参加できるでしょうか。政治家自身が若者を遠ざけている事実に、私たちは真っ正面から向き合わなくてはなりません。
社会に危機感を抱き、挑戦心を持って行動する若者はたくさんいます。私たちに求められているのは、自らの襟を正し、若者と同じ目線に立ち、国を背負う覚悟で将来に向けて、都合の悪いことも含めてお伝えし、お互いの知恵を出し合い、一緒になって前に歩みを進めていくことではないでしょうか。隠すのではなく、正々堂々とです。
自民党の昭和のあしき風習との決別。新たな政治を切り開く。与党も野党もなく、ここに集う志ある私たち一人一人がです。たとえどんな矢を受けたとしても、確かな未来をつくる一番の先頭に、私も、立憲民主党も立つ。必ず時代を切り開く覚悟を申し上げ、また、この歴史ある国会で、裏金を話題とする平成生まれの議員が私で最初で最後であることを願い、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 馬場雄基議員の御質問にお答えいたします。
まず、納税に関する国民の声などについてお尋ねがありました。
今般の政治資金をめぐる問題に関連して、国民の皆様から厳しい御指摘があることは承知をしております。
税制は国民の理解と信頼の上に成り立っており、国税当局において、今後とも、適正な申告、納税を行った国民の皆様が不公平感を抱くことがないよう取り組んでいくことが重要と考えております。
なお、国税の個別案件については、税務行政の中立性を確保する観点等を踏まえ、財務大臣として国税庁に指示等を行うことは控えており、歴代の大臣も控えておられたと承知をしております。
次に、防衛力強化に係る財源の確保のための税制措置についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的な強化については、将来にわたって維持強化していく必要があるものであり、これを安定的に支える財源の確保は避けることのできない重要な課題です。
そのための税制措置については、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとした令和五年度及び令和六年度税制改正大綱に基づき、所要の検討を加え、その結果に基づいて適当な時期に必要な法制上の措置を講ずることとしております。
今後、実施時期を含めて、与党税制調査会において議論されるものと承知しており、法案の提出時期について、現時点で予断を持ってお答えすることは控えたいと思います。
次に、防衛力強化のための財源についてお尋ねがありました。
御指摘の令和六年度予算における労働保険特別会計からの受入金については、雇用調整助成金等におけるコロナ特例措置の財源に充てるために一般会計から繰り入れていたもののうち、令和五年三月末に特例措置が終了したことで生じた〇・二兆円の剰余金について一般会計に返還することとなったものです。
この返還金について、今回、防衛力強化のための財源として活用することとしておりますが、これは、防衛力の抜本強化に係る国民の負担をできるだけ抑えるべく、あらゆる工夫を検討する中で、令和五年度予算と同様、コロナ対策予算の不用分の返納について活用することとしたものです。
こうした考え方について、国民の皆様に御理解をいただけるよう丁寧な説明を行ってまいります。
次に、子供、子育て政策の抜本的強化を支えるための財源として導入される支援金制度についてお尋ねがありました。
御指摘の支援金制度の一人当たりの拠出額については、国会審議の中で、総理から、現時点で正確にお示しすることは困難であることを前提に、粗い試算についてお伝えしたものと承知をしております。
本制度については、現在、こども家庭庁において法案提出に向けた最終調整を行っていると承知しており、その拠出額などの詳細についてお答えすることは困難です。
次に、定額減税及び給付金に係る業務負担等についてお尋ねがありました。
今般の定額減税及び給付金については、企業が減税開始後に雇用した方について、前職での減税についての確認を不要とし、また、定額減税し切れないと見込まれる方への給付を一万円単位で支給するなど、各企業や自治体の事務負担にも配慮した制度設計としております。
その上で、企業や自治体が早期に準備に着手できるよう、パンフレットやQアンドA等を策定、公表してきたところですが、引き続き、企業や自治体が事務を円滑に実施できるよう丁寧な対応を行ってまいります。
今般の定額減税については、コロナ禍や物価高騰という苦しい中において納税していただいた方々に所得の上昇をより強く実感していただくことが重要と考え、減税という分かりやすい方法が望ましいと判断したものです。
また、今般の定額減税は、デフレ完全脱却のための一時的な措置として実施するものであり、複数年度にわたって実施することは想定しておりません。
次に、賃上げの目標や賃上げ促進税制等についてお尋ねがありました。
具体的な賃上げ率の水準については、労使の間で個別に議論して決定していただくべきものですが、政府としては、賃上げ促進税制の拡充等により、賃上げを強力に後押ししつつ、定額減税等を組み合わせることで、今年、物価高を上回る所得の実現を図ることとしています。その上で、今年の賃上げや所得増を来年以降にもつなげるため、人への投資や企業の稼ぐ力を強化し、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げが行われる経済を目指すこととしています。
また、賃上げ促進税制については、これまでも幅広く活用されてきており、令和四年度に抜本的に強化された本税制は、三十年ぶりとなる昨年の高い賃上げにも一定程度寄与したものと考えております。その上で、賃上げの裾野を広げつつ、中小企業も含め、賃上げへのインセンティブを高めるため、今般、本税制を更に強化することとしております。
このほか、労務費の価格転嫁に関する指針の周知徹底や省力化投資の支援等も講じることにより、中小企業の賃上げを力強く後押ししてまいります。
次に、社会保険料の事業主負担の引下げについてお尋ねがありました。
社会保険料の事業主負担については、医療や年金の給付を保障することで働く人が安心して就労できる基盤を整備することが事業主の責任であり、また、働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資することから求められているものであり、その減免を行うことには慎重な検討が必要と考えています。
政府としては、昨年十二月に閣議決定した全世代型社会保障に係る改革工程に従い、医療、介護制度等の改革を中心として着実に取組を進め、社会保険料負担抑制の効果を積み上げていくとともに、賃上げ促進税制の強化や、中小企業等への生産性向上のための支援など、賃上げしやすい環境づくりのための施策を引き続き推進してまいります。
最後に、戦略分野国内生産促進税制についてお尋ねがありました。
本税制は、GX、DX、経済安全保障の戦略分野について、国として特段に戦略的な成長投資が不可欠となる国内投資を後押しするものです。
こうした投資によるサプライチェーン全体への波及効果を通じ、中小企業を含め、我が国経済が幅広く活性化することが期待されていると考えており、財政の資源配分機能の在り方として適切なものであると考えております。
なお、今回の税制改正においては、赤字企業も含めた中小企業に賃上げの裾野を拡大する観点から、賃上げ促進税制において五年間の繰越控除制度を創設することとしており、こうした措置も含め、引き続き中小企業への支援強化を図ってまいります。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 伊東信久君。
〔伊東信久君登壇〕
○伊東信久君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。(拍手)
冒頭に、能登半島地震でお亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、今なお非常に寒い中で避難生活をされている被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。
会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
税制の基本は、言うまでもなく、公平、中立、簡素であります。一方で、国民から不当、特権、隠蔽と見られているのが政治資金の税制です。自民党によるパーティー券収入の裏金化に国民からの疑惑の目が向けられている中、パーティー券収入が非課税であること自体が、民間感覚からは特権的に見えるのではないでしょうか。政治資金パーティーを含む収益事業で上げた収益は、国税庁がチェックし、納税を通じて透明性を確保すべきと考えますが、財務大臣の考えを伺います。
また、物販は課税、出版は非課税など、複雑化している政治活動の課税のルールを整理し、政治家の納税意識を是正する必要があると思慮しますが、併せて所見を伺います。
引退する政治家がその地盤を政治団体ごと身内に継承させる、いわゆる世襲の事例も枚挙にいとまがありません。当然、立候補する権利は憲法の保障するところではありますが、政治団体の資金は非課税で後継者に承継でき、民間感覚では著しく不公平と思われかねません。裏を返せば、相続税を逃れる手法としても悪用し得ます。親族間の政治団体やその資金の承継については、規制若しくは課税するべきではないでしょうか。総務大臣及び財務大臣の考えを伺います。
今般の税制改正大綱には、租税特別措置について、真に必要なものに限定していくことが極めて重要との記載があります。我が党も、税制を複雑化する租特の整理には賛同するところです。
一方で、今般の改正で廃止した租特の件数、新設された件数は何件であり、総額で幾らの租特を廃止し、また新設したのでしょうか。具体的に御回答を願います。
日本維新の会は、規制改革の観点で、新しい規制を一つ作る場合には既存ルールを二つ以上撤廃する二対一ルール法案を既に国会に提出しています。年を重ねるごとに複雑化する租特についても、同様の考えをルール化して適用すべきと考えますが、財務大臣の見解を伺います。
また、同様に、租特の効果検証を行い、効果を余り発揮していない租特は逐次中止し、租特の総量を規制していくという考えについて、財務大臣の見解を伺います。
イノベーションボックス税制は、研究開発のアウトプットたる知財による所得への税制優遇であり、新たなイノベーションを促進する税制として注目されています。
その一方で、イノベーション投資のインプットたる研究開発税制は、めり張りづけと称して、研究開発費が減少している場合の控除率を引き下げるとしています。しかしながら、過去三年の平均の研究開発費と比較して当年度投資額の減少割合が三割未満であれば、控除が可能となります。これがめり張りづけでしょうか。
我が国の研究開発投資は停滞し、米国から大きく水を空けられる一方、韓国にも猛追を受けています。その米国や韓国では、過去十年で、成長産業たる情報通信業やコンピューター等のハイテク製造業への研究開発投資が大幅に伸びる一方、日本では業種にかかわらず停滞しています。かれこれの差はどこにあるとお考えでしょうか。財務大臣にお伺いします。
研究開発投資を促進するためには、研究開発費が減少する場合の控除率を一層厳しくし、また、増加する場合には控除率を更に上げる等、より一層踏み込んだめり張りづけが必要との考えもありますが、財務大臣の見解を伺います。
今年は、物価と賃金の好循環の実現に向け、要の年となります。岸田総理は、一月三十一日の衆議院本会議で、実質所得を、医療従事者などの公的賃上げ、企業に対する賃上げ促進税制、そして定額減税などで増加させると述べました。これは、補助金や税制上の優遇措置等、既得権の墨守にきゅうきゅうとしてきた過去三十年の自民党の手法と同じであり、期待感が持てない国民は多いと思います。財務大臣の考えを伺います。
また、物価と賃金の好循環の先に実質賃金の増加がなければ、国民生活は豊かにならず、賃上げが一時的なトレンドに終わりかねません。一部の企業では、人手不足という供給制約によって、設備不足という供給制約の改善が困難となる状況が起きているとの声もあります。
財政出動による需要の拡大に頼り切り、生産性の向上を伴わない賃上げは、設備投資額の上振れや研究開発費用の減少を通じて将来的な生産力の足かせとなり、来年以降の賃上げを停滞させる要因になるとも考えられますが、財務大臣のお考えを伺います。
政府が拡充を予定する賃上げ促進税制は、令和四年度には、既に、適用件数で約二十一万五千件、適用額で五千百五十億円に上る巨額の減収を引き起こしています。一方で、その適用事例を見ると、賃上げ促進税制で定めた要件とは無関係に賃上げしている動きが見られるとの報道もあります。加えて、減税の要件である給与総額に賞与が含まれるという大きな抜け穴があり、これは拡充後も同様です。
本改正案では、一兆円を超える巨額の減税が見込まれるものの、企業がより踏み込んだベースアップに挑戦するインセンティブにはならず、あくまで物価高と人材市場の需給の引き締まりに起因する賃上げしか起こらないと考えますが、財務大臣の考えを伺います。
岸田総理の述べられた公的賃上げによる実質所得増加は、ありていに言えば、世の中に受け入れられやすい言い訳づくりではないかと思われます。これは、子ども・子育て支援金制度の導入に際して、医療従事者等の賃上げ負担を国民に転嫁するための錦の御旗と思案しますが、厚生労働大臣のお考えを伺います。
岸田総理は、さきの臨時国会で、子ども・子育て支援金制度について、全体として実質的な追加負担を生じさせないと強弁してきましたが、閉会後に、突如として、医療従事者の賃上げ分は負担に含まないとの新たな解釈を示しました。賃上げによる保険料増加分を負担するのは、医療従事者だけではありません。また、一〇〇%全ての業種で安定的に賃上げが達成できることはありません。
支援金制度に上乗せして公的賃上げを遂行することで、負担増になる現役世代が一定数発生するのではないでしょうか。厚生労働大臣の見解を伺います。また、医療従事者への賃上げのためであれば、手取りが減少する現役世代が発生することはやむを得ないとお考えですか。併せて伺います。
賃上げ負担を、国庫なり医療従事者以外の国民なり、特定のセクターに求めることによる賃上げは、持続可能性がありません。企業の生産性向上に加えて、国民負担率を抑制する。この両輪でこそ、実質的な賃上げが持続可能なものとなると考えますが、財務大臣の見解を伺います。
るる述べてきたとおり、物価を上回る賃金上昇を実現するには、企業の生産性向上が必要です。そのためには、転職者に不利な雇用制度に大なたを振るい、主体的なキャリア選択を尊重するとともに、比較的賃金の高い成長産業へと労働移動を促すべきです。
労働市場の流動化を推進するために、終身雇用や年功賃金といった日本型雇用慣行を改革し、ジョブ型雇用や同一価値労働同一賃金への転換を進め、企業間の自由な労働移動の活性化に政府が手を尽くすべきと考えますが、厚生労働大臣の考えを伺います。
また、実情に合わせた解雇の金銭補償など、新しい労使間のルール構築に取り組むべきとも考えますが、見解をお尋ねします。
雇用の流動化とセーフティーネットの強化の組合せであり、デンマーク等で効果を発揮したとされるフレキシキュリティーの我が国での実現についても、併せて厚生労働大臣の考えを伺います。
今般の税制改正では、児童手当の対象拡大とバーターで、扶養控除の引下げを今後検討することとしています。政府は、児童手当の増額分が負担額を下回ることはないとしていますが、アクセルを踏みながらブレーキをかける政策は、少子化対策の肝である国民へのメッセージ性を減じます。金額の多寡ではなく、政府が本気で少子化対策に取り組む姿勢を国民に見せ、現役世代の行動変容を喚起するべきではないでしょうか。扶養控除の引下げは、少子化対策全体の効果を減ずるため中止すべきと考えますが、財務大臣の考えを伺います。
また、出生率向上のためには、フランスで導入され実際に成果を出したとされる、子供の数が多いほど税負担が軽減される世帯単位課税、いわゆるN分N乗方式を検討し、導入するべきと考えますが、財務大臣の見解を伺います。
結婚や出産にちゅうちょする現役世代の背中を押すには、生活保護の捕捉率が二割程度にとどまるとされる、我が国のセーフティーネットの脆弱性解消も重要です。我々は、マイナンバーに資産情報をひもづけ、収入と資産を適切に把握し、機械学習等を活用しながら個々人に必要な額を算定し、プッシュ型で公正公平に給付するデジタル歳入庁の設置を検討しています。セーフティーネットも、マイナンバーやAI等、新技術の活用を前提に改革し、全国民に安心を提供する最低生活保障を確立すべきではないですか。デジタル歳入庁構想に対する見解と併せてお答えください。
現役世代の背中を押すためには、手取り収入の予見可能性を高めることも不可欠です。シンプルで公正な制度設計は、政治や行政の恣意的な運用を封じ、税の不透明感を解消します。また、納税手続を簡素化することで、経済活動を活性化すると考えます。税制全体の構造をフラットタックスに近づける必要性について、財務大臣の見解をお伺いします。
一方で、所得のうち、金融所得の存在感は目に見えて増しています。本年初に開始した新NISAは、同制度対象の公募株式投資信託への資金流入額が先月の合計で約一兆三千七百億円に上るなど、投資への意識拡大を後押ししています。この動きを考慮すれば、損益通算範囲を拡大して所得税の総合課税化を行うことで税負担を公平化すべきと考えますが、財務大臣の見解をお尋ねします。
日本維新の会は、日本経済の停滞を打破するため、フローからストックへをかけ声に、税制を抜本的に変革すべきと考えています。資金の流れに係る税制は軽くして、可処分所得を増やし、消費を喚起する。資産部分に係る税制は適正化し、流動化を促し、併せて景気を刺激する。フローとストックの両輪で経済成長を支えるという考え方です。租税特別措置で微修正を重ねるのではなく、この発想を基に、税制を根本的に再検討しませんか。財務大臣の思いを伺います。
日本維新の会は、日本経済の成長のために、税、社会保障制度、成長戦略を三位一体とした抜本的な改革を提唱しています。実現に向け、我々は政府と真っ正面から向き合い、国会で真摯な議論を行っていくことをお約束して、私の質問とします。
御清聴、誠にありがとうございます。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 伊東信久議員の御質問にお答えいたします。
まず、政治資金パーティー等に係る課税関係についてお尋ねがありました。
政治団体は、法人税法上、公益法人等又は人格のない社団等に該当し、収益事業から生じる所得について、法人税を課すこととされています。
この収益事業については、営利企業の経済活動や公益法人等が行う事業内容の変化などにより、これまで必要に応じて見直しを行ってきたところですが、政治団体が政治資金を集めることを目的としたパーティーを開催し、会費を受け取る行為は、法令に規定された収益事業のいずれにも該当せず、課税関係は生じないと解釈されております。
今後とも、収益事業の在り方については、時代の変化を見据えつつ、必要に応じて検討していくとともに、政治資金に係る課税関係も含め、国税庁において引き続き税制度について丁寧な説明を行うことで、納税意識の向上を図ってまいります。
次に、親族間の政治団体等の承継に対する相続税についてお尋ねがありました。
ある政治団体の代表者が死亡した後、その親族が代表者になり、政治団体を引き継いだとしても、その政治団体が保有する財産は代表者個人が取得したものではないことから、相続税の課税関係は生じないものと承知しています。
この代表者の地位の承継に対して相続税を課税することについては、相続税は財産を取得した個人に対して課されることが原則であることに加え、政治団体以外の団体における代表者の地位の承継とのバランスなどを踏まえれば、慎重な検討が必要であると考えております。
次に、租税特別措置についてお尋ねがありました。
令和六年度税制改正により、廃止する租税特別措置は四件であり、これに伴う増収見込額は僅少、新設する措置は六件であり、これに伴う減収見込額は二兆三千二百五十億円程度と見込んでおります。
租税特別措置については、税制の公平、中立、簡素の基本原則に鑑み、真に必要なものに限定し、いたずらに全体の項目数を増加させないことは極めて重要ですが、その見直しに当たっては、機械的なルールの当てはめではなく、その必要性や政策効果をよく見極めた上で、不断の見直しを行うことが重要と考えております。
次に、研究開発投資についてお尋ねがありました。
我が国の研究開発投資額は、対GDP比で見て、諸外国と比べても遜色のない水準でありますが、他方で、米韓と比較してコンピューター及び情報通信産業の比率が低くなっている背景には、経済状況や企業業績、産業構造、政府による政策内容の違いなど、様々な要素があると考えております。
また、研究開発税制については、従前より試験研究費割合が減少した場合でも、研究開発投資を継続するインセンティブとなるよう一定の割合までは税額控除を認めてきたところですが、研究開発投資のインセンティブの更なる強化を図るため、令和六年度税制改正では、研究開発費が減少している場合の控除率の引下げを行っているところです。
次に、実質所得の増加への期待と生産性の向上を伴わない賃上げについてお尋ねがありました。
持続的な賃上げに向けては、賃金が上がることが当たり前という前向きな期待を社会に定着させていくことが重要であり、先月開催された政労使の意見交換では、昨年を上回る水準の賃上げを総理から経済界に強く呼びかけ、春季労使交渉では、それに呼応する動きが広がっていると認識しております。
また、生産性向上を伴わない賃上げとの御指摘については、政府としては、財政出動に頼り続けるのではなく、経済の好循環による自律的な成長の中で賃上げを実現していくことが重要と考えており、具体的には、中堅・中小企業の省力化投資や研究開発、イノベーションへの支援などを通じて、企業の生産性向上につなげ、持続的で構造的な賃上げを実現してまいりたいと考えております。
次に、賃上げ促進税制についてお尋ねがありました。
令和四年度税制改正において抜本的に拡充された賃上げ促進税制については、幅広く企業の賃上げに活用されてきたことから、三十年ぶりとなる昨年の高い賃上げにも一定程度寄与しているものと考えておりますが、その上で、物価上昇を上回る持続的な賃上げを実現する観点からは、賃上げへのインセンティブの更なる強化が必要と考えております。
そのため、今回の改正に当たっては、大企業向けの基本控除率の見直しや更に高い賃上げ要件の創設、中小企業向けの繰越控除制度の創設など、本税制の更に思い切った強化を行うこととしており、企業に対しては、新たに強化された本税制を活用し、賞与や一時金だけでなく、ベースアップによって強力に賃上げを実現していただくことを期待しています。
次に、持続可能な賃上げについてお尋ねがありました。
持続的な賃上げについては、単に財政による再分配に頼るのではなく、経済の好循環による自律的な成長の中で実現していくことが重要と考えております。
具体的には、賃上げと所得減税等によって可処分所得の伸びが物価上昇を上回る状態をつくり上げ、デフレマインドの払拭を図るとともに、三位一体の労働市場改革などを通じ、人への投資や企業の生産性向上を促進することにより、持続的で構造的な賃上げを実現してまいりたいと考えております。
こうした賃上げの取組に加え、社会保障関係費を始めとする徹底した歳出改革の取組も進めることで、高齢化等による国民負担率の上昇に歯止めをかけることも必要であると考えております。
次に、扶養控除と課税方式についてお尋ねがありました。
十六歳から十八歳の扶養控除の見直しについては、高校生年代に支給される児童手当と併せて、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充する方針としており、少子化対策全体の効果を減ずるとの指摘は当たらないと考えております。
N分N乗方式は、所得税率の累進性を緩和することができる仕組みですが、低中所得者層にはその効果が全く及ばない一方、高額所得者、とりわけ片働き世帯に大きな利益が生ずることや、多額の減収が見込まれることなどを踏まえれば、我が国への導入については極めて慎重な検討が必要と考えております。
次に、デジタル歳入庁構想についてお尋ねがありました。
議員の御指摘は、マイナンバーなどを活用して様々な情報を連携することで、セーフティーネットに係る給付を公正公平に実現するという趣旨と理解しますが、政府としても、デジタルの力を活用しつつ、行政事務の効率化や効果的な執行を不断に図っていくことは極めて重要であると考えております。
具体的には、御指摘のように、新たな組織をつくるということではなく、行政機関の間のデジタルによる連携を深める中で、マイナンバー制度を通じた正確な所得情報等を基に給付すべき方を特定するとともに、国民の皆様にあらかじめ公金受取口座を登録いただくことで、迅速かつきめ細かい公的給付が可能となっており、今後もこの仕組みをしっかりと活用してまいりたいと考えております。
次に、フラットタックス及び金融所得課税についてお尋ねがありました。
御指摘のフラットタックスについては、簡素な税制度と手続を構築する御提言であると理解しますが、税率構造等をできるだけ簡素化することにより所得再分配機能が損なわれることがないか、慎重に検討する必要があると考えている一方で、納税手続の円滑化は納税者の負担を軽減する観点から重要であり、国税庁における丁寧な説明や納税手続のデジタル化にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
また、金融所得のうち上場株式の譲渡益等に対し、他の所得から分離して単一税率により課税していることについては、金融市場にゆがみを与えにくいこと、税負担の軽減を目的として意図的に金融取引のタイミングを調整する行為を抑制できることなどの観点から、一定の合理性があると考えております。
最後に、税制の抜本的な変革についてお尋ねがありました。
政府としては、公平、中立、簡素という租税原則の例外として、その時々の政策ニーズに応じて時限的に講じられる租税特別措置の積み上げによってではなく、所得、消費、資産などの課税ベースのバランスにも配慮しつつ、少子高齢化を始めとする中長期的な経済社会の構造変化に応じて見直しを行うことによって、あるべき税制を構築していくことが重要と考えております。
近年の改正においても、例えば、再分配機能強化や格差固定化防止の観点から、所得税や相続税の最高税率の引上げ等を行っているほか、働き方の多様化に対応する観点から、特定の収入のみに適用される給与所得控除等の一部を基礎控除に振り替えるなどの見直しを行っており、今後とも、中長期的な構造変化に対応したあるべき税制の構築に向けて取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣松本剛明君登壇〕
○国務大臣(松本剛明君) 伊東信久議員から御質問がありました、政治団体の承継について御答弁申し上げます。
政治資金については、相続と異なり、親族に対して当然に引き継がれるというような類いのものではないと理解しております。
政治家が引退したときなどに団体を存続する場合の代表者の選任は、規約などに基づき当該団体において決める内部の問題と認識しております。現行の政治資金規正法上は、政治団体の代表者について、選任要件や資格に関する規制は設けられておりません。
政治団体の在り方などについては、政治活動の自由に関わることから、立法府において御議論いただいてきたものと承知しております。(拍手)
〔国務大臣武見敬三君登壇〕
○国務大臣(武見敬三君) 伊東信久議員の御質問にお答えいたします。
医療従事者等の賃上げとそのための負担についてのお尋ねがありました。
約九百万人が働く医療、介護分野の従事者の物価高に負けない賃上げについて、今般の報酬改定により対応することは、日本経済の消費につなげ、成長と分配の好循環を実現するためにも大変重要であります。
一方、少子化対策における支援金制度は、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で構築することにより、全体として実質的な負担が生じないこととしております。
報酬改定における賃上げ加算部分は、それ自体は社会保険負担の増加要因でありますが、医療従事者等を含む全体の賃上げによって雇用者報酬が増加することで、その実質的な社会保険負担軽減の効果により打ち消されることから、全体としては実質的な負担にはならないものと考えております。
賃上げによる実質的な社会保険負担軽減の効果が一人一人に与える影響は様々でありますが、政府としては、国民全体に広く賃上げの恩恵が及ぶよう、賃上げに向けてあらゆる手段を尽くしてまいります。
労働市場の流動化と雇用の金銭補償についてお尋ねがありました。
厚生労働省では、持続的な賃上げを実現するため、関係省庁とも連携をし、個々の企業の実態に応じた職務給の導入や、成長分野への労働移動の円滑化等の三位一体の労働市場改革に取り組んでおり、こうした取組を通じ、希望する労働者が主体的に、安心して労働移動できるよう支援をしてまいります。
また、こうした労働市場改革は、働く個人の立場に立って、多様なキャリアや処遇の選択肢の提供を確保しようとするものであり、金銭を支払えば自由に解雇できる制度を導入することは考えておりません。
フレキシキュリティーの実現についてお尋ねがございました。
希望する労働者が主体的に、安心して労働移動を行うことができるようにするためには、雇用のセーフティーネットを確保しつつ、就職支援や能力開発支援などに総合的に取り組んでいくことが重要です。
こうした観点から、ハローワークにおける丁寧な就職支援や、職業訓練と併せて月十万円の給付金を支給する求職者支援制度などを実施しております。
さらに、リスキリングに取り組む個人を直接支援する教育訓練給付の拡充等の検討を進めており、引き続き、雇用のセーフティーネットの確保を図りながら、円滑な労働移動を支援してまいります。
以上です。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 田村貴昭君。
〔田村貴昭君登壇〕
○田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案に対する質疑を行います。(拍手)
最初に、緊急を要する震災対策についてです。
先週、我が党の田村智子委員長が石川県の被災地に入り、直接被災者から実情を伺いました。
輪島漆器商工業協同組合の理事長さんから、ここで終わるわけにはいかない、何とか次につなげていきたいと切実な声を聞きました。輪島塗の職人さんたちからは、被災者の生活と生業支援のためのパッケージについて、百二十もの工程を持つ実情を踏まえて、住居と工房をセットで支援対象にしてほしいと要望が出されました。そして、事業継続に必要な道具や原材料確保のために、その費用について新たな借入れができない下で、全額補助を求める強い声が寄せられました。
輪島塗を始め、なりわいの再建は復興に不可欠です。政府は、これらの声に正面から応えるべきではありませんか。
今、多くの事業者や国民が、確定申告書を作成しながら、自民党の裏金事件に激怒しています。国民には一円の単位で領収書を求めながら、裏金議員が収支報告書のいいかげんな訂正で済まされていいはずがありません。全容の徹底解明が必要です。同時に、国税庁は厳正に調査をすべきです。
所得税の脱税が疑われている自民党議員と岸田政権がインボイスによる新たな増税を国民に押しつけるのは、言語道断であります。
インボイス制度を考える会の緊急調査では、個人事業主やフリーランスから、仕事をなくした、取引価格を下げられた、弱い者いじめ、インボイスに殺される等々、悲痛な声が寄せられています。インボイス制度は直ちに中止すべきです。
この三十年、企業・団体献金を温存し、政治資金パーティーを使った裏金にまみれた金権腐敗政治が続く下で、消費税増税が三回行われ、法人税は七回も引き下げられました。自民党の税制改正大綱でさえ、近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと指摘しているのに、今なお法人税減税を続けるのは、まさに金の力で税制がゆがめられていることを示すものではありませんか。
来年度税制改正でも、戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックスなど、大企業減税を一層拡充しようとしています。大企業優遇税制を正し、低所得者ほど負担が重い消費税を減税する、民主的税制改正への転換を図るべきです。答弁を求めます。
経済対策の最重要課題は、賃金の引上げです。政府は賃上げ税制を拡充するとしますが、赤字の中小企業には支援は届きません。政府がやるべきは、労働者の全体の賃上げを促す実効ある施策です。そのためには、中小企業への直接支援で最低賃金を一気に千五百円に引き上げること、医療、介護、福祉に携わる労働者の給与を物価高を上回る水準に引き上げることです。これこそ、政府の役割ではありませんか。
岸田総理は、少子化対策の財源として創設する支援金について、国民一人当たり五百円弱の負担になると示しました。これまで、実質的追加負担は生じさせないと繰り返してきましたが、新たな追加負担そのものではありませんか。歳出改革でも、医療窓口負担や介護保険利用料の新たな負担をもたらすのではありませんか。子育て支援の財源は、大軍拡と大企業減税へのばらまきをやめ、庶民の負担増なしでつくるべきです。
児童手当の高校生年代までの延長に併せて、高校生年代の扶養控除を縮小するのはとんでもありません。高校の教育費負担は義務教育よりもはるかに大きく、一層の支援の拡充こそが必要です。高校授業料無償化の所得制限の撤廃に踏み切るべきです。
以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。
まず、輪島塗の再生と復興についてお尋ねがありました。
輪島塗を始めとする伝統産業は、地域の産業、雇用を支えるとともに、伝統文化を今に伝える重要な産業と認識しております。
このため、先般決定した被災者の生活と生業支援のためのパッケージでは、輪島塗などの伝統工芸の事業継続のために必要となる道具や原材料の確保を支援する補助制度を創設するなど、様々な施策を盛り込んだところです。
引き続き、政府として、被災された事業者の方々の声に寄り添い、復旧復興に向けた取組を全力で推進してまいります。
次に、国税庁による調査とインボイス制度についてお尋ねがありました。
国税庁では、課税上有効な資料情報の収集、分析等の調査が不断に行われており、課税上問題があると認められる場合には、実地の税務調査も実施されているものと承知をしております。
その上で、税務調査の個別事案については、税務行政の中立性を確保する観点等を踏まえ、財務大臣として国税庁に指示等を行うことは従来から控えております。
また、インボイス制度は、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な仕組みであるため、中止することは考えておりません。
次に、法人税減税と消費税についてお尋ねがありました。
近年の消費税率の引上げは社会保障の費用を公平に分かち合う観点から、また、法人税率の引下げは我が国の競争力強化等の観点から、それぞれ行われてきたものであり、金の力で税制がゆがめられているとの御指摘は当たりません。
また、令和六年度税制改正における戦略分野国内生産促進税制等については、持続的な賃上げにつながる企業の稼ぐ力を高めるためのものであり、大企業の優遇を目的としたものではありません。
なお、消費税については、全世代型社会保障制度を支える財源と位置づけられており、その税率を引き下げることは適当ではないと考えております。
次に、賃上げについてお尋ねがありました。
中小企業の賃上げ実現に向けては、賃上げ促進税制の強化や、生産性向上に資する設備投資への支援などの施策を引き続き推進していくことが重要と考えております。
また、最低賃金については、最低賃金審議会における議論の積み重ねにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指してまいります。
さらに、医療、介護等の分野における賃上げについては、令和六年度の報酬改定において、物価高に負けない賃上げの実現に必要な報酬の改定率を決定しており、今後、フォローアップの仕組みを整備するなど、確実な賃上げの実現につなげてまいります。
次に、少子化対策の財源についてお尋ねがありました。
こども未来戦略でお示しした加速化プランを支える財源については、まずは徹底した歳出改革等で財源を確保することを原則としており、この歳出改革と賃上げによって生じる実質的な社会保険負担軽減の効果の範囲内で支援金制度を構築することにより、全体として実質的な負担が生じないこととしています。
また、歳出改革については、昨年末に閣議決定された全世代型社会保障に係る改革工程に沿って実施をしてまいりますが、その際には、負担能力に応じて公平に支え合う仕組みを構築することによる影響にも十分配慮しながら、必要な保障が欠けることがないよう進めてまいります。
次に、扶養控除の見直しと高校授業料の無償化についてお尋ねがありました。
十六歳から十八歳の扶養控除の見直しについては、高校生年代が教育費等の支出がかさむ時期であることに鑑み、児童手当と併せて、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充する方針としております。
また、高等学校の授業料の無償化について所得制限を撤廃することについては、公立高校は世帯年収約九百十万円まで、私立高校は世帯年収約五百九十万円までが既に対象となっている現状や、更なる充実を図る場合、安定財源を確保する必要があることなどを踏まえて、慎重に検討する必要があると考えております。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇〕
○国務大臣(齋藤健君) 田村議員の御質問にお答えいたします。
輪島塗の再生と復興についてお尋ねがありました。
先月、私自身、七尾市や輪島市等を訪問した際には、輪島塗を始め、石川県内の伝統産業に関わる職人の皆様から直接お話を伺い、伝統工芸を途絶えさせることなく未来につなげていく、そういう強い思いに触れました。経済産業省として、こうした現場で頑張っている事業を守っていくという使命を改めて自覚し、この方々をしっかり支えていかなければならないとの気持ちを新たにいたしました。
輪島塗の再生と復興に向けては、被災事業者の方々から強く御要望いただいた、事業に不可欠な施設や設備の復旧に御活用いただけるなりわい補助金や、事業再開に必要となる道具や原材料の確保を支援する伝統的工芸品産業支援補助金、被災事業者が仮設工房として活用できる集合型仮設施設の整備支援事業など、手厚い支援を講じていきます。
加えて、百貨店等での催事や展示会への出展支援を行うとともに、外務省の協力の下、在外公館等を活用したPR支援など、伝統工芸のすばらしさを国内外に発信すべく取り組んでまいります。
引き続き、被災された事業者の方々に寄り添って、きめ細やかに対応してまいります。(拍手)
〔国務大臣武見敬三君登壇〕
○国務大臣(武見敬三君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。
賃上げについてお尋ねがありました。
最低賃金については、着実な引上げを行っていくため、引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかりと議論をいただき、その積み重ねにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となることを目指しております。また、中小企業の賃上げをしっかりと後押しするため、生産性向上支援や価格転嫁対策を進めます。
なお、賃金の直接補填については、企業の生産性や稼ぐ力を向上させない限り、企業収益の拡大につながらず、長期的な賃上げや事業の継続には結びつかないことから、慎重な検討が必要であると考えています。
また、医療、介護等の分野については、昨年末、物価高に負けない賃上げの実現に必要な水準の報酬の改定率を決定しており、加算措置部分の報告を求めたフォローアップなど、確実な賃上げの実現につなげてまいります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕
○国務大臣(加藤鮎子君) 子供、子育て政策の財源としての支援金についてお尋ねがありました。
加速化プランについては、若い世代の所得を増やすとの理念との調和を図るべく、まずは徹底した歳出改革等で財源を確保することを原則としていますが、この歳出改革と、まさに若い世代の所得向上策の一環として取り組む賃上げにより、実質的な社会保険負担軽減効果が生じることから、その範囲内で支援金制度を構築することで、全体として実質的な負担が生じないとしています。
また、歳出改革については、昨年末に閣議決定された改革工程に基づき、将来にわたって社会保障制度を持続させる観点や、年齢に関わりなく全ての国民がその能力に応じて負担し支え合うことによって、それぞれの人生のステージに応じて必要な保障がバランスよく提供されることを目指す観点から、取り組むこととされていると承知をしております。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 浅野哲君。
〔浅野哲君登壇〕
○浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。(拍手)
質問に先立ち、令和六年能登半島地震で犠牲となられた方々に心よりお悔やみを申し上げ、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
国民民主党も、被災地の一日も早い復旧に向けて、被災者生活再建支援制度の更なる拡充や、被災地ライフラインの早期復旧に取り組む自治体職員や産業界等の支援にも努めてまいります。
私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に関する質疑を行います。
所得税の定額減税について伺います。
本制度では、令和六年分の所得税額から一人当たり三万円を控除することとしておりますが、本施策の目的は物価高騰対策なのかデフレ脱却なのか判然とせず、国民には十分に伝わっていないと思われるため、財務大臣からの明確な説明をお願いいたします。また、三万円の根拠と、本施策による効果をどのように見積もっているかについても教えてください。
給与所得者や事業所得等がある者、事業主のそれぞれに対する減税のタイミングがばらばらで、令和六年度末の確定申告まで減税効果を受けられない方もいます。
そもそも即効性を求める施策とは言えませんが、それでも本施策を行う背景には、非課税世帯との公平性を確保する目的もあると推察いたしますが、いかがでしょうか。本来、給付を担当する自治体の負担なども考慮すれば、給付つき税額控除制度とした方が、公平性と即効性、簡便性を両立できませんか。財務大臣の見解を伺います。
続いて、戦略分野国内生産促進税制について伺います。
本施策では、現在アメリカのみが実施している生産比例型の税額控除制度を日本でも導入する、その意欲的な姿勢は大いに評価しています。一方、対象物資がEV等、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF、半導体のみに限定されていることの妥当性には疑問があります。例えば、水素や単体の蓄電池はなぜ含まれないのでしょうか。また、EVに対する税額控除の恩恵を受けるのは自動車販売メーカーですが、本施策の恩恵をサプライチェーン全体に波及させる方法は検討されたのか、経済産業大臣の答弁を求めます。
また、減税措置は事業計画認定時から十年間とされていますが、生産設備を建設、導入するためのリードタイムへの配慮が不足しています。事業計画認定時から十年間というのを、事業計画認定時に約束した生産開始時期から十年間に変更できませんか。そうすれば、現場における建設資材や機材の納入遅延が深刻な中、早く事業計画認定に着手するインセンティブが働きます。経済産業大臣には、現場に寄り添う賢明な判断を求めます。
続いて、イノベーションボックス税制について伺います。
まず、本制度の目的は何でしょうか。国内での継続的な研究開発力を向上させるためには、国内で開発された知的財産権のライセンス収入や譲渡所得の一部を所得控除するだけで十分なのでしょうか。
なぜなら、日本の産業競争力の向上のためには、新しい技術を早期に市場に投入し、消費者の意見を取り込みながら改善を重ね、その技術が持続的に利用、消費される市場環境を形成していくことが重要です。したがって、ライセンス所得だけでなく、ライセンスを活用した製品の売上げに比例した法人減税制度とした方が、事業者にとって市場投入の早期化を図るためのインセンティブになると考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。
昨今、複数の自民党議員が一斉に政治資金収支報告書の訂正を行いました。政治資金収支報告書に記載されなかったお金に追徴課税あるいは重加算税が課されない理由を教えてください。
また、このような問題を今後起こさないようにするためにも、政治資金収支報告書の訂正期限を設け、期限を過ぎた資金については政治家個人の雑所得とみなし、追徴課税や重加算税を課すべきではありませんか。総務大臣、財務大臣、それぞれの見解を求めます。
以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣鈴木俊一君登壇〕
○国務大臣(鈴木俊一君) 浅野哲議員の御質問にお答えいたします。
まず、定額減税の目的等についてお尋ねがありました。
今回の定額減税については、賃金上昇が物価高に追いついていないことによる国民の負担を緩和するとともに、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭につなげることを目的としています。
一人当たりの減税額については、令和二年度から令和四年度への所得税の税収増に見合う規模とすること等を勘案し、三万円としたところです。
経済効果については、減税規模である約三・三兆円の半分程度が消費に回ると見込まれるものと承知をしております。
次に、定額減税の目的と給付つき税額控除についてお尋ねがありました。
今般の定額減税と給付措置については、いずれも、物価高から国民生活を守るために実施するものです。
このうち、定額減税については、賃上げと組み合わせることでデフレマインドの払拭を図ることも目的としていることから、六月以降に実施していくこととなりますが、他方で、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々には、給付で迅速に対応することといたしました。
なお、給付つき税額控除の導入については、生活保護などの他の低所得者支援制度との関係を十分に整理することが必要であり、また、現行制度では把握できない、非納税者の所得や資産の保有状況の把握が必要であるといった課題が考えられ、慎重な検討が必要と考えております。
最後に、政治資金の課税関係についてお尋ねがありました。
一般論として、政治資金については、その収入がどの主体に属するかなど、個々の事実関係に基づき、法令等に照らして適切に取り扱われるべきものと考えております。
その上で、所得税については、経済的利益を実質的に享受しているかに着目して、その収益の帰属者を判定し課税することを原則としており、このため、政治資金収支報告書への記載の有無という形式的な要件をもって課税、非課税が判断されるわけではありません。
また、議員の御提案については、ただいま申し上げた所得税の基本原則から逸脱すること等を踏まえ、慎重に検討する必要があると考えています。(拍手)
〔国務大臣齋藤健君登壇〕
○国務大臣(齋藤健君) 浅野議員の御質問にお答えします。
戦略分野国内生産促進税制についてお尋ねがありました。
本税制は、戦略分野のうち、特に生産段階のコストが大きい等の理由から投資判断が難しい分野について、国内投資を促進する観点から制度を創設するものであります。投資促進のためには、初期投資補助、需要側支援など様々な手法があり、戦略分野ごとの特徴も踏まえながら投資促進策を講じることが重要であります。
御指摘の蓄電池につきましては、これまで、初期投資に対する補助金により投資を促進しており、来年度予算案にも関連予算を計上しています。水素につきましては、まずは国内の供給体制の構築が必要であることから、GXサプライチェーン構築支援事業において、水素製造に必要な水電解装置の量産化を進めていきます。
また、電気自動車につきましては、米国を始め各国が国内投資促進策を強力に打ち出す中、我が国においても電気自動車等の国内投資を拡大すべく、本税制を措置します。これにより、国内サプライチェーンを通じて、部素材等の発注の確保、拡大や、雇用、所得への好影響など、本税制の効果が波及するものと考えております。
本税制の適用期間について、御指摘の、事業者が生産設備を建設、導入する期間も踏まえて、十年間という長期の措置期間を設けています。一方で、事業者にできる限り早期に国内投資や生産を促すことも重要でありまして、これらの観点を踏まえて、事業計画認定時から十年間と定めております。
イノベーション拠点税制についてお尋ねがありました。
イノベーション拠点税制は、研究開発の成果である特許権等の知財から生じる所得に減税措置を適用するものであり、イノベーションの国際競争が激化する中、我が国の研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による投資を後押しするものであります。
議員御指摘のとおり、知財を生み出した事業者が自らその知財を活用して事業化した製品やサービスの売却益を制度の対象に含めるべきとの声もあることは承知をしております。
他方で、製品やサービスの売却益を対象とする場合、売却益の中からその知財由来の所得を特定する際に、国際ルールに沿った計算をするため、一定の負担が生じることになります。
我が国で初めての制度を創設する上で、こうした負担への対応を含めて、適切な執行が可能かどうかの検討を要するため、まずは、ライセンス所得及び譲渡所得を対象としたものであります。
税制の対象範囲につきましては、制度の執行状況や効果を十分に検証した上で、執行可能性等の観点から、状況に応じ、見直しを検討することとしており、本税制がよりよい制度となるよう、引き続き検討を進めてまいります。(拍手)
〔国務大臣松本剛明君登壇〕
○国務大臣(松本剛明君) 浅野哲議員から、収支報告書の訂正期限に係る御質問をいただきまして、御答弁申し上げます。
政治資金規正法上、収支報告書の訂正については、特段の定めは明記されておりません。事実に基づいての訂正であるとの申出があった場合には、期限を設けず、訂正していただく取扱いとしております。
御質問で、訂正期限を設けることにお触れになりましたが、政治資金の収支の公開の在り方については、政治活動の自由と関わることから、立法府において御議論いただいてきたものと承知しております。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十六分散会
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出席国務大臣
総務大臣 松本 剛明君
財務大臣 鈴木 俊一君
厚生労働大臣 武見 敬三君
経済産業大臣 齋藤 健君
国務大臣 加藤 鮎子君
出席副大臣
財務副大臣 赤澤 亮正君