第1号 令和7年1月24日(金曜日)
令和七年一月二十四日(金曜日)―――――――――――――
議事日程 第一号
令和七年一月二十四日
正午開議
第一 議席の指定
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一 国務大臣の演説
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○本日の会議に付した案件
日程第一 議席の指定
東日本大震災からの復興・防災・災害に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会、政治改革に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治改革に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会、原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会及び地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)
石破内閣総理大臣の施政方針に関する演説
岩屋外務大臣の外交に関する演説
加藤財務大臣の財政に関する演説
赤澤国務大臣の経済に関する演説
午後零時二分開議
○議長(額賀福志郎君) 諸君、第二百十七回国会は本日召集されました。
これより会議を開きます。
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日程第一 議席の指定
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、議席の指定を行います。
衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。
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特別委員会設置の件
○議長(額賀福志郎君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
東日本大震災からの復興・防災・災害に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会
政治改革に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治改革に関する特別委員会
沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会
北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会
消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会
原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会
及び
地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会
を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
ただいま議決されました七特別委員会の委員は追って指名いたします。
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○議長(額賀福志郎君) この際、暫時休憩いたします。
午後零時四分休憩
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午後二時二分開議
○議長(額賀福志郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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国務大臣の演説
○議長(額賀福志郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、赤澤国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣石破茂君。
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 今年は戦後八十年、そして昭和の元号で百年に当たる節目の年です。これまでの日本の歩みを振り返り、これからの新しい日本を考える年にいたしてまいります。
そのためには、我が国の直面する現実を直視しなければなりません。
我が国の生産年齢人口は、これからの二十年で千五百万人弱、二割以上が減少すると見込まれております。このような中、かつて人口増加期に作り上げられた経済社会システムを検証し、中長期的に信頼される持続可能なシステムへと転換していくことが求められております。
今や、我が国は人材希少社会に入っています。年齢や障害の有無にかかわらず希少な人材を大事にする社会づくり、すなわち、国民一人一人の幸福実現を可能にする、人中心の国づくりを進め、すべての人が幸せを実感できる、人を財産として尊重する人財尊重社会を築いていく必要があります。
加えて、食料自給力、エネルギー自給率が低い現状では、外的な事象に国民生活が大きく影響を受けてしまう懸念があります。より自立した形で国民生活を守ることができるよう、戦略的な国家運営が必要です。
新しい日本を創る上で、サステーナブルでインディペンデントであること、すなわち持続可能で自立することを重視しなければなりません。そのため、価値観の転換が必要だと考えております。
故堺屋太一先生の著書によれば、我が国は、明治維新の中央集権国家体制において強い日本を目指し、戦後の復興や高度経済成長の下で豊かな日本を目指しました。そして、これからは楽しい日本を目指すべきだと述べられております。
私は、この考えに共感するところであり、かつて国家が主導した強い日本、企業が主導した豊かな日本、加えてこれからは一人一人が主導する楽しい日本を目指していきたいと考えております。
楽しい日本とは、すべての人が安心と安全を感じ、自分の夢に挑戦し、今日より明日はよくなると実感できる。多様な価値観を持つ一人一人が、互いに尊重し合い、自己実現を図っていける。そうした活力ある国家です。
外交、安全保障体制、防災立国、感染症対策など危機管理を確立し、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するとともに、人財尊重を基軸として、楽しさを実現できる、バランスの取れた国づくりを目指します。
楽しい日本を実現するための政策の核心は、地方創生二・〇です。これを、令和の日本列島改造として強力に進めます。
都市対地方という二項対立ではなく、都市に魅力を感じる方、地方に魅力を感じる方、そうしたお一人お一人の多様な幸福が実現できる場として、都市も地方もその魅力を高めていきます。
かつて、田中角栄元首相の日本列島改造では、道路や鉄道といったハードなインフラの整備を起点として人の流れを生み出し、国土の均衡ある発展が目指されました。
地方創生二・〇は、官民が連携して地域の拠点をつくり、地域の持つ潜在力を最大限引き出し、ハードだけではないソフトの魅力が新たな人の流れを生み出す。新技術を徹底的に活用し、一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会を構築していくものです。
令和の日本列島改造は、五本の柱で、厳しい国際競争の中、日本全体の活力を取り戻すべく進めてまいります。
第一の柱は、若者や女性にも選ばれる地方であります。若者や女性が楽しいと思えるような新しい出会いや気づき、そこから生まれる夢や可能性が重要です。
新たな人の流れを太くするため、いわゆる関係人口に着目し、都市と地方といった二地域を拠点とする活動を支援します。地域に継続的に関わる方々が登録でき、地域づくり活動に参加する担い手となっていただけるふるさと住民登録制度等の有効性について検討を行い、結論を得てまいります。地域の外の方々がリモートワーク等で地方の取組を応援しやすい環境を作ります。
若者や女性が働きやすく魅力ある職場づくりを進めるため、アンコンシャスバイアス、すなわち無意識の思い込みの解消を図るとともに、男女の賃金格差の是正を促進する法案を提出いたします。車座対話の開催や地域に対するサポートを進めることにより、日本全体の機運を高め、取組の裾野を広げてまいります。
日本各地で事業を起こそうと考えている若者や女性の方々の声を伺い、起業の障害を解決し、ネットワークの構築を支援する等の取組を強化します。
日本全国に約九千社存在する中堅企業や成長志向の中小企業は、地方経済を支える存在です。こうした企業の賃上げを伴う成長投資を強力に支援し、全都道府県での地方版政労使会議の開催等により、最低賃金を含め、地方で賃金が上がっていく環境を創り出してまいります。
暮らしやすいまちづくりには、官民で、AI、デジタル技術を活用し、地方の持続可能な生活インフラを作っていくことが重要であります。自動運転の実装加速に向けた制度整備を進めるとともに、電子カルテ等の医療機関での共有、遠方の医療機関まで行かずともオンラインで適切な診療を受けられる体制の整備を進めます。
人口減少下においては、官民が連携した人づくりや公教育の再生、改革により、一人一人が持つ可能性を最大限引き出すことが必要です。そのために大事なことは、教育の内容と質であり、子供たちをどのように育てたいのかを明確にすることです。知識や能力だけでなく、歴史や文化、地域や周りの人々を大切にし、行動する力を有した人材や、大学や農業・工業高校等における観光等の地域の魅力やニーズを捉えた産業やサービスを支える人材を育成します。教職員の働き方改革や給与面を含む処遇改善等を進めてまいります。
これらの取組を応援するため、地方公務員の兼業、副業の弾力化、会計年度任用職員の在り方の見直し等により、地域の中の方々が力を発揮できる環境を整備します。国の職員が、課題を抱える市町村に寄り添って、顔が見え、熱が伝わる伴走支援を行う仕組みを新たに始めます。
第二の柱は、産官学の地方移転と創生です。
まずは、官が一歩前に出ます。防災庁など政府関係機関の地方移転、国内最適立地を推進します。これまでの取組を検証し、地方からの提案を改めて募り、日本全体にとって望ましい効果を生み出すのはどこかという視点を踏まえ、順次結論を出してまいります。
地方創生二・〇では、民の力を活かすことが不可欠です。地方創生に取り組む経営者や現場の方々との意見交換を重ね、都市部に立地する企業の本社機能の移転などを実現する環境整備を進めます。
地方でも、地域の中核となる特色ある地方大学が育ちつつあります。東京二十三区内の大学等の定員の抑制を行いつつ、地方大学による実践的な人材の育成を進めます。
第三の柱は、地方イノベーション創生構想です。
地方創生一・〇では、優良事例が点の取組で終わり、相互に作用し合い面的な広がりにつながる化学変化が起きませんでした。その反省を踏まえ、地方における新結合を通じた新たな産業分野の創造やイノベーションの開花を目指します。
大学、企業、自治体等が連携し、地域にイノベーションの主役を生み出し、地域活性化や社会課題解決を実現するスタートアップとして大きく育てていける環境を整備します。スタートアップ育成五か年計画を強化し、地域における拠点都市の拡充や自治体による調達の促進など、独自性ある取組を大胆に支援いたします。
グローバルあるいはローカルな様々な社会課題が、その解決に向けたイノベーション、革新的な製品、サービス、新たな市場を生み出す可能性を秘めております。大学や研究機関等の産学連携拠点に対する支援を抜本的に強化いたします。
世界有数の潜在力を持つ日本の農林水産業、食品産業を、徹底的な高付加価値化により、基幹産業として確立します。これらが儲かる産業となるよう、スマート化、大区画化など生産基盤を強化します。米を世界へ輸出するプロジェクトの推進、安定的な輸出入と備蓄の確保などを通じて、食料安全保障を確保します。総合的な林業、木材産業施策として、施業地の集積、集約化やCLT等の技術開発、普及など、森林資源の循環利用を進めます。水産業の発展のため、水産資源管理を行いつつ、スマート化や海業の全国展開を進めます。
新たな重点として、官民連携により文化芸術、スポーツの振興を図ります。その効果的な広報等により、地方創生に繋がる観光産業の活性化を進めます。海外売上げで半導体や鉄鋼に肩を並べるエンタメコンテンツ産業について、二〇三三年までに海外売上高を五兆円から二十兆円とする目標を掲げ海外展開を支援し、クリエーターの方々の育成や安心して働ける環境の整備を含め、その発展を強力に支援します。
今年は、いよいよ大阪・関西万博が開催されます。明日の世界を担う子供たちに、未来社会への希望を持って、将来について考える機会となることを願って止みません。開催国である日本そして各地域が世界との交流を深め、自らの魅力を世界に向けて発信する絶好の機会となるよう、政府として最大限の力を尽くします。多くの方々に御来場いただき、各地を訪ねていただいて、万博と地方創生のシナジー効果を実現します。
第四の柱は、新時代のインフラ整備です。GX、DXを支える新時代のインフラを軸として、産業拠点や生活拠点の再配置を促進します。
再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源、そして水素等の次世代燃料供給拠点を拡大するとともに、その供給網を効率的に整備していきます。脱炭素電源の整備と新たな産業用地や関連インフラの整備を共に促す施策を具体化します。百五十兆円超のGX投資を呼び込むための成長志向型カーボンプライシングの制度化及び循環経済への移行に向けた法案を提出いたします。
AIは、今や、国の競争力や社会の豊かさを左右する極めて重要な技術です。イノベーションの加速とリスクへの対応を両立させる法案を提出いたします。AI、データセンター等を繋ぐ情報通信ネットワークを、サイバーセキュリティーを確保しつつ整備いたしてまいります。AI、半導体分野に五十兆円を超える投資を引き出す環境整備のための法案を提出します。
第五の柱として、都道府県域を超えた広域連携の新たな枠組みである広域リージョン連携を強力に推進します。
自治体が、他の自治体との縦横のつながりを最大限生かせる最適な体制を築きます。必要な制度改革を進め、自治体同士の広域連携を抜本的に強化します。
人財尊重社会における経済政策にとって、最重視すべきは賃上げであります。賃上げこそが成長戦略の要との認識の下、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の皆様の所得と経済全体の生産性の向上を図ってまいります。
三十三年ぶりの高水準の賃上げとなった昨年の勢いで、大幅な賃上げを促すとともに、最低賃金を着実に引き上げ、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることにより、賃金は据置きで動かないという縮み志向を過去のものといたします。
賃上げができるよう、多くの中小企業に利益を上げていただくためには、取引の上流から下流まで、適切な価格転嫁や生産性向上を実現することが重要です。下請法の改正法案を提出するとともに、自治体等の官公需での価格転嫁を促進します。
賃上げの原資となる生産性の向上への支援を強化するため、各業種の実態に即した省力化投資を進めるための計画を策定し、現場での支援体制を整備します。
人材、経営基盤を強化する事業承継やMアンドAを後押ししてまいります。望まない非正規雇用を減らし、同一労働同一賃金を実現するとともに、リスキリング、ジョブ型人事、労働移動の円滑化の三位一体の労働市場改革を強力に進めます。求職者の状況に応じたきめ細かい就労支援を行います。
現在や将来の賃金の増加等を活かした資産形成の後押しも重要であり、NISAやiDeCoの充実など資産運用立国の取組を強化します。
賃上げの効果が出るまでの間にも物価高対策を講じます。地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々、価格転嫁が困難な中小企業、学校給食費への支援等を行う重点支援地方交付金や、低所得者世帯の方々に対する給付金など、総合経済対策で決定した施策を迅速に執行してまいります。
日本のGDPは、一九九四年には世界の一八%を示していましたが、直近の二〇二三年では四%となっております。今日より明日はよくなると実感できる楽しい日本となるには、こうした流れを転換し、持続的な成長が必要です。このため、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していきます。官民投資フォーラムを開催し、国内投資目標を示し、規制改革の検討を深め、大胆な国内投資促進策を具体化することを通じ、投資立国の取組を強化します。
科学技術・イノベーション基本計画の改定を進め、AI、量子、バイオ、宇宙、フュージョン等の戦略分野での投資を促してまいります。
企業が未来に向けた成長投資に更に踏み込むための会社法改正に向けた具体的議論を開始します。長期の企業価値向上に向けた投資家との対話等を通じて、人や技術への投資を進める環境を整えます。
経済安全保障の観点から、我が国の自律性と不可欠性を高めるため、重要サプライチェーンの国内回帰、立地促進を含む強靱化や技術流出対策等の取組を進めます。官民が連携し、脅威、リスクを分析する経済インテリジェンス機能の強化を図ります。
国、重要インフラ等に対するサイバー攻撃を排除するため、能動的サイバー防御を可能とする法案を提出いたします。
経済あっての財政との考え方の下、成長率の引上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出歳入両面の改革を継続し、引き続き財政健全化を目指します。金利のある世界となる中、大災害や有事に備えた財政余力を確保する観点も踏まえ、経済・財政新生計画の枠組みの下、今年の骨太方針において、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、今後の財政健全化に向けた取組を示します。
社会保険料は安心のための拠出であり、すべて必要な給付として再分配されます。国民所得に対するその割合は、コロナ禍以前の水準に低下しております。一方で、少子高齢化に対する将来不安があるため、社会保障制度への不安が解消いたしません。年齢にかかわらず適切に支え合うことを目指す全世代型社会保障の理念に則り、改革工程に沿って着実に進めます。高額療養費制度の見直しなどにより、保険料負担の抑制につなげます。
来年度、少子化対策は本格実施の年を迎えます。父母がともに育児休業を取得した際の給付率を手取りで十割に引き上げるとともに、保育士等の配置、処遇を改善します。
コロナ禍の検証を踏まえた万全の感染症対策の実施に加え、入院だけでなく、外来、在宅医療や介護との連携も含む新しい地域医療構想を策定し、地域での協議を促進します。あわせて、医師偏在対策を総合的に推進するための法案を提出いたします。
年金制度の財政状況は、支え手の増加などにより、前回の見直し時に比べ好転しております。今後とも成長型経済の実現に努めるとともに、働き方に中立的な制度とするなど、将来にわたる安心をより確実なものとしてまいります。
単身の高齢者が増加する中、介護体制の整備とともに、生活に困難を抱える方、障害のある方、子育て世帯が、地域の中でつながり、支え合い、共に地域を創っていく地域共生社会の実現を目指します。
旧優生保護法を執行してきた立場として、真摯な反省に立ち、補償金の着実な支給と差別のない社会の実現に力を尽くしてまいります。
令和七年秋に日本で初めて開催される東京二〇二五デフリンピックを強力に支援します。
能登半島地震から一年、復興中の奥能登を襲った豪雨から四か月が経過しました。復旧復興への着実な取組により、地震に係る応急仮設住宅は全て完成し、農林水産業や輪島塗の再開も進みつつあります。能登の賑わいと笑顔を一日も早く取り戻すため、災害廃棄物処理の加速、公営住宅の建設等により、被災者の生活、生業の再建を強力に支援します。
福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。引き続き、復興庁が司令塔となり、被災者の生活や産業、生業の再建、福島イノベーション・コースト構想の推進等に取り組みます。
阪神・淡路大震災から三十年が経ちました。その経験、教訓を忘れることなく継承し、災害対策に活かしてまいります。
我が国は、世界有数の災害発生国であり、平時の備えにより被害の最小化を図るとともに、発生時にはスフィア基準を踏まえた環境を迅速に提供する必要があります。こうした国家の責務を果たすため、災害対策基本法等の改正案を提出し、被災地での福祉支援やボランティアとの連携を推進します。豪雨等の災害の発生予測を高度化し、情報発信を強化します。
防災対応の司令塔として防災監を内閣府に設置するとともに、内閣府防災担当の機能を予算、人員の両面から抜本的に強化します。その上で、防災庁を令和八年度中に設置すべく、準備を加速いたします。
今後三十年以内に、首都直下型地震は七〇%程度、南海トラフ地震は八〇%程度の確率で発生するとされております。被災の地域や規模が予想できる大規模災害に対しては、自治体間の支援、受援の組合せの事前決定、支援物資の計画的備蓄など、事前防災を一層具体化いたしてまいります。
防災・減災、国土強靱化を着実に推進します。令和八年度からの実施中期計画については、施策の評価や資材価格の高騰等を勘案し、概ね十五兆円程度の事業規模で実施中の五か年加速化対策を上回る水準が適切との考え方に立ち、本年六月を目途に策定します。人命、人権最優先の防災立国を構築し、世界一の防災大国にいたしてまいります。災害対策の知恵や技術を海外に発信し、世界の防災に貢献するとともに、新たな産業の柱にいたします。
犯罪は長期的に減少傾向にありますが、多くの国民が治安の悪化を感じています。闇バイトによる強盗、詐欺、巧妙なサイバー犯罪等が後を絶たず、女性が悪質ホストクラブに搾取される問題も生じています。犯罪対策を強力に推進し、世界一安全な日本を実現します。
匿名・流動型犯罪グループに対し、仮装身分捜査等により検挙を徹底いたします。闇バイトの求人情報の削除の促進、SNS等での若者向けの注意喚起、防犯カメラの整備の支援等を進めます。
学校と連携したサイバー防犯指導、官民連携でのサイバー攻撃対処訓練等を推進します。また、悪質ホストクラブへの規制を強化する法案を提出するとともに、性暴力、DV、虐待等を防ぎ、被害者支援を推進します。
間もなく四年目を迎えるロシアによるウクライナ侵略。我が国周辺での中国、ロシアの軍事活動の活発化。北朝鮮による核・ミサイル開発。戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、我が国の独立と平和、人々の暮らしを守り抜くためには、バランス・オブ・パワーに常に最大限の注意を払い、我が国自身の能力を高める、日米同盟を更なる高みに引き上げる、同志国との連携を更に拡大、深化する、こうした取組を進めなければなりません。同時に、彼我の誤解、誤算を避けるために、関係国との緊密な意思疎通を重ねることは死活的に重要であります。
防衛力は我が国の安全保障の最終的な担保です。我が国への侵攻に自らが主たる責任をもって阻止、排除する能力を保有し、もって我が国への侵攻自体を抑止することを主眼に、国家安全保障戦略等に基づき、防衛力の抜本的強化を着実に進めます。シェルターの確保等を着実かつ早急に進めるなど、国民保護の取組を強化します。
自衛隊の人的基盤の強化に取り組みます。自衛官が十分に充足されていないことは極めて深刻な課題であります。三十を超える手当等の新設、金額の引上げなど、過去に例のない取組を令和七年度から実現します。自衛官の処遇の魅力向上、若くして定年退職を迎える自衛官が退職後も活躍できる環境の創出等を内容とする法案を提出いたします。
基地負担の軽減、駐留に伴う諸課題の解決に引き続き取り組みます。昨年末、大浦湾側の地盤改良工事に着手することで、普天間飛行場全面返還の実現に向け大きく前進をいたしました。引き続き、着実に工事を進めてまいります。また、沖縄振興の経済効果を十分に域内に波及させ、それを実感していただくため、地元事業者の成長や県産品の活用に配意し、沖縄経済の構造改革に向けて支援を継続いたします。
日米同盟は我が国の外交、安全保障政策の基軸です。地域におけるパワーバランスが歴史的変化を遂げる中、力の空白が地域の不安定化につながることのないよう、日米の協力を更に具体的に深化させ、合衆国の地域へのコミットメントを引き続き確保しなければなりません。
また、日米豪印、日米韓、日米比を含め、地域における安全保障の重層的なネットワークを構築し、自由で開かれたインド太平洋を強化する上では、日米のリーダーシップは不可欠です。その際、我が国は同盟国として責任を共有し、応分の役割を果たさなければなりません。
来るべき日米首脳会談におきましては、トランプ大統領との間で、こうした安全保障や経済の諸課題につき、認識の共有を図り、一層の協力を確認し、日米同盟を更なる高みに引き上げたいと考えます。
韓国は、国際社会の諸課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国です。内政上の動きはありますが、現下の戦略環境の下、日韓関係の重要性は変わりません。韓国側とは、引き続き、国交正常化六十周年を含め、緊密に意思疎通してまいります。
年頭にはマレーシア及びインドネシアを訪問し、先日はラオス首相をお迎えをいたしました。国際社会が対立と分断を深める中、ASEAN諸国との関係強化は、我が国のグローバルサウス外交の観点からも、最優先事項の一つです。今後とも、海洋安全保障、災害対応、脱炭素化等につき実務的な協力を進めてまいります。
対ウクライナ支援、対露制裁を今後とも強力に推し進めます。
中国との関係では、懸案や意見の相違につき、主張すべきことは主張する、その上で、協力できる分野では協力していく、そうした現実的な外交を行ってまいります。価値を共有する同盟国、同志国との確固たる連携を大前提とした上で、中国の安定的発展が地域全体の利益となるよう、習近平主席とも確認した、戦略的互恵関係の包括的推進、建設的かつ安定的な関係の構築という大きな方向性に基づき、今後も首脳間を含むあらゆるレベルで中国との意思疎通を図ってまいります。日中韓の枠組みも前進させます。
日露関係は厳しい状況にありますが、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持いたします。
拉致問題は、単なる誘拐事件ではなく、その本質は国家主権の侵害であります。拉致被害者や御家族が御高齢となられる中、時間的制約のある、ひとときもゆるがせにできない人道問題であり、政権の最重要課題であります。日朝平壌宣言の原点に立ち返り、すべての拉致被害者の一日も早い御帰国、北朝鮮との諸問題の解決に向け、断固たる決意の下、総力を挙げて取り組んでまいります。
気候変動、軍縮・不拡散といった地球規模の課題、各地の人道状況にも、引き続き正面から取り組みます。ガザ傷病者への医療支援を早期に実現すべく、関係国等との調整を進めてまいります。
私は、年頭の外国訪問において、LNGの安定供給に向けた協力、脱炭素化に向けたアジア・ゼロエミッション共同体を通じた連携を確認いたしました。資源外交を引き続き強力に推進します。
戦後八十年は民主主義を考える年でもあります。政治改革の課題について結論を得るのは我々政治家の使命であり、民主主義をどのように支えるかについての議論が重要です。国費による助成、企業、団体や個人からの資金、そして政治家本人からの支出、それらのバランスはどうあるべきか。国費による助成を受け、原則として非課税であるという特別な扱いを受ける以上、それにふさわしい政党や政治団体としての規律の在り方をどのように考え、また、その規律をどのように担保していくか。そのための法制度の在り方も含めて、与野党の枠を超えて議論を深めていきたいと考えます。
民主主義の根幹である選挙についても課題があります。
選挙活動について、これまで想定されなかったことが起き始めており、それらを踏まえた議論も求められています。民主主義は、多くの意見が健全な言論の場において戦わされてこそ成り立つものであり、それが担保される必要があります。
政治資金にしても選挙活動にしても、重要なことは、有権者に判断材料が正しく提供されることであり、そうした正しい判断材料に基づいて、より幅広い世代のより多くの民意が政治に適切に反映されることです。それが国民主権の本質であり、今の選挙制度がそれにふさわしいものなのか、約三十年の歴史を踏まえ、改めて党派を超えた検証を行い、あるべき選挙制度を議論していきたいと考えます。
今年は戦後八十年の節目の年となります。国民の意識や国際情勢の変化を踏まえ、国のかたちを定める憲法のあるべき姿について、主権者である国民の皆様に案を示すのは、我々国会議員の責務です。国会による発議の実現に向け、今後、衆議院及び参議院に設置された憲法審査会において建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待いたします。
皇位の安定的な継承等は極めて重要であり、とりわけ皇族数の確保は喫緊の課題です。国会において、早期に立法府の総意が取りまとめられるよう、積極的な議論が行われることを期待します。
昨年の所信表明演説に引き続き、本施政方針演説におきましても石橋湛山元首相の言葉を引いて、結びといたしたいと存じます。石橋湛山元首相は、昭和三十二年の演説会で、国会の運営の正常化、政界及び官界の綱紀粛正、雇用の拡大と生産の増加、福祉国家の建設、世界平和の確立という五つの誓いを述べられました。その第一である国会の運営の正常化については、自ら、反省すべき点は十分に反省するが、同時に反対党その他の協力を求め、国会がまっすぐに行くようにしたいと表明されました。
昨年の総選挙の結果、約三十年ぶりの少数与党となりましたが、比較第一党として、自由民主党は、公明党とともに、今の、そして次の世代の国民の皆様に対して責任を持つ責任与党でなければなりません。党派を超えた合意形成を図るため、臨時国会に続き、与党、野党ともに、責任ある立場で熟議し、国民の納得と共感を得られるよう努めることが必要であります。多様な国民の声を反映した真摯な政策協議によって、より良い成案を得るという民主主義の本来の姿に立って、政権運営に当たります。
令和七年度予算や税制改正、さらには社会保障や教育など各分野の施策について、多くの御賛同が得られるよう、説明を尽くしてまいります。各党の御主張も十分に拝聴し、議論を重ねます。中長期的な政策の方向性や制度の持続可能性についても、給付や負担の在り方を含め、真摯に議論をいたしてまいります。
国民の皆様、並びに、この場に集う全国民を代表される国会議員の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 外務大臣岩屋毅君。
〔国務大臣岩屋毅君登壇〕
○国務大臣(岩屋毅君) 第二百十七回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。
ウクライナ侵略が国際秩序を揺るがし、安全保障環境も厳しさを増す中、日米同盟の強化、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた同盟国、同志国との連携、グローバルサウスとの連携の三点を重視し、我が国の平和と地域の安定を実現し、国際社会を分断から協調に導く外交を展開してまいります。
私は、昨年十一月にウクライナを訪問し、侵略の現場を前にして、力による一方的な現状変更は世界のどこであれ許されないとの思いを強くいたしました。国際社会の随所で法の支配に大きな挑戦がもたらされる中、粘り強い外交を通じ、法の支配に基づく国際秩序を回復し、地域及び国際社会の平和と安定を確保することが必要です。
先般、私は、韓国、フィリピン及びパラオを訪問し、地域情勢に関する連携を確認しました。また、今週、米国、豪州、インドとの外相会談や日米豪印外相会合において、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を確認したところです。引き続き、こうした積極的かつ戦略的な外交を進めてまいります。
外交と防衛は国の根幹を成すものであり、車の両輪です。とりわけ、外交の失敗は国を誤るとの認識の下、使命感と緊張感を持って全力で職務にあたってまいります。
去る二十日、米国ではトランプ政権が発足し、私自身も大統領就任式に出席いたしました。ルビオ国務長官との会談では、日米関係を一層強化するとともに、来る日米首脳会談が有意義なものとなるよう、今後も緊密に連携することで一致いたしました。
日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸であり、その充実強化は石破政権の最優先事項です。トランプ政権との間でも、強固な信頼関係を構築し、グローバルパートナーとしての日米協力を更に高みに引き上げてまいります。
日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化、拡大抑止の信頼性と強靱性の強化、在日米軍の態勢の最適化に向けた取組を進めます。同時に、普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指して辺野古移設を進めるなど、沖縄を始めとした地元の負担軽減と米軍の安定的駐留に取り組んでまいります。
また、経済面での協力も重要です。日米間の投資の拡大に向けた取組、先端技術分野における協力、インド太平洋地域の持続的、包摂的な経済成長のための協力といった、経済分野における幅広い日米協力を更に拡大、深化させてまいります。
そして、重層的な人的交流も一層強化してまいります。
自由で開かれたインド太平洋の実現に向けては、G7、ASEAN、豪州、インド、韓国、EU、NATOなどとの協力関係を更に強化し、日米豪印、日米韓及び日米比を始め、実践的な協力を広げてまいります。
我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、国家安全保障戦略の下、防衛装備移転、OSAの推進や、サイバー安全保障分野での対応能力の向上に取り組んでまいります。
また、テロ及び暴力的過激主義の脅威、サイバー犯罪を含む国際組織犯罪への対策は、引き続き重要な課題です。こうした分野においても、我が国自身の取組や国際的な協力関係を強化してまいります。
同盟国、同志国と密接に連携しつつ、サプライチェーンの強靱化や経済的威圧への対応、重要・新興技術の保全、促進など、経済安全保障の課題にも引き続き全力で取り組んでまいります。
偽情報の拡散といった国際的な情報戦に対しては、情報の収集、分析能力の向上、適時適切な発信とともに、情報セキュリティー基盤の強化にも取り組んでまいります。同時に、SNSを通じた発信を強化するなど、外交政策に対する国民の理解と支持を得るための情報発信に努めてまいります。
近隣諸国などとは、難しい問題に正面から対応しつつ、未来志向の安定的な関係を築いてまいります。
日本と中国の間には、様々な可能性があると同時に、尖閣諸島情勢を含む東シナ海、南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、我が国周辺での一連の軍事活動を含め、多くの課題や懸案が存在しています。
台湾海峡の平和と安定も重要であり、さらに、中国の人権状況や香港情勢についても深刻な懸念を有しています。
しかし、その上で、日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を負っています。
昨年、石破総理と習近平主席の間で確認したように、戦略的互恵関係を包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な関係を構築するという大きな方向性の下、課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくために、互いに努力していかなければなりません。昨年の訪中で、私は王毅外交部長とそのための対話を行ってまいりました。
ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制に関する日中両政府による発表に基づき、中国による日本産水産物の輸入回復を早期に実現するよう引き続き求めてまいります。また、拘束されている邦人の早期釈放、在留邦人の安全確保にも全力を尽くしてまいります。
日本と韓国は、互いに国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国です。日本政府として、今般の韓国国内の一連の動きについては、引き続き特段かつ重大な関心をもって注視してまいりますが、現下の戦略環境の下、日韓関係の重要性はいささかも変わりません。先般の私の韓国訪問においても、チョ・テヨル外交部長官との間で、北朝鮮への対応も含め、引き続き、日韓、日米韓が緊密に連携していくことを確認いたしました。韓国側とは、今後も緊密に意思疎通をしてまいります。
一方、竹島については、歴史的事実に照らしても、国際法上も、日本固有の領土であるとの基本的な立場に基づき、毅然と対応してまいります。
日中韓の協力も、大局的な視点から、地域及び世界の平和と繁栄にとって重要であり、議長国としての取組を着実に進めてまいります。
北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて容認できません。また、北朝鮮兵士のウクライナに対する戦闘への参加といった露朝軍事協力の進展は、ウクライナ情勢のみならず、我が国周辺地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に懸念しています。引き続き、関連安保理決議の完全な履行に向け、国際社会と緊密に連携してまいります。
日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するとの方針に変わりはありません。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、総理自身の強い決意の下に、総力を挙げて最も有効な手立てを講じてまいります。
ロシアによるウクライナ侵略を終わらせ、一日も早く公正で永続的な平和を実現するため、G7を始めとする国際社会と連携して、ウクライナ支援と対露制裁を強力に推進してまいります。ウクライナの復旧復興支援についても、官民一体で取組を強化してまいります。
日露関係は引き続き厳しい状況にありますが、その責任を日本側に転嫁することは受け入れられません。ロシア側による一方的な発信や措置には毅然と対応してまいります。同時に、日露間には隣国として解決しなければならない懸案事項もあり、ロシア側との意思疎通を適切に行っていく必要があります。
北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持しつつ、最優先事項の一つである北方四島交流訪問事業の再開については、特に北方墓参に重点を置いて、事業の再開を強く求めてまいります。
中東情勢は、引き続き予断を許しません。ガザ情勢をめぐって、人質の解放と停戦に関する合意が当事者間で成立したことは重要な一歩であり、歓迎いたしますが、その誠実かつ着実な履行を通じて、人道状況の改善と事態の沈静化に繋げていくことが必要です。
シリアにおいては、シリア人による対話を通じた包摂的な政治的解決が実現することを強く望んでおり、そのための支援を行ってまいります。イスラエルとレバノンの停戦合意の完全な履行も不可欠です。
引き続き、G7や国連を始めとする関係国、機関と緊密に連携しながら、事態の早期沈静化、人道状況の改善、そして中長期的な地域の平和と安定の確立に向け、外交努力を重ねてまいります。
多様化する国際社会において、グローバルサウスとの連携も極めて重要です。特に、アフリカとの関係については、本年八月に横浜で開催する第九回アフリカ開発会議、TICAD9の機会も捉え、これまでの日本の取組を土台に様々な課題への解決策を共に創り上げるべく、取り組んでまいります。ODAやOSAも活用し、丁寧な対話を通じたきめ細やかな外交を進め、ODAについては、民間資金動員の促進などの新しい仕組みを導入してまいります。
海上交通の要衝であり世界の成長センターである東南アジアとの連携を進めるとともに、太平洋島嶼国との間でも、そのニーズを踏まえた協力を強化してまいります。
また、中南米外交イニシアティブに基づく中南米諸国との協力を強化してまいります。
国際社会の平和と安定のためには、国家間のみならず、人と人の交流による相互理解の促進が重要です。各国との人的交流を一層推進するとともに、文化外交を精力的に展開し、対日理解の促進に注力してまいります。
日本経済の成長や地方創生に貢献すべく、日本企業の海外展開、日本産食品の輸出拡大、対日直接投資の推進を後押ししてまいります。在外公館では、公館長自ら先頭に立ち、経済広域担当官や日本企業支援担当官も活用して日本企業をバックアップするとともに、対日直接投資を促進してまいります。
そして、二〇二五年大阪・関西万博、二〇二七年国際園芸博覧会の成功に向けた取組を推進してまいります。
ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持拡大も重要です。多角的貿易体制の一層の強化のためのWTOの改革、CPTPPを始めとする経済連携協定の推進、安全、安心で信頼できるAIの実現や、信頼性のある自由なデータ流通、DFFTの推進を含む新興分野での国際的なルール作りに取り組んでまいります。
本年、国連が創設八十周年を迎える中、分断や対立が深刻化する国際社会を融和と協調に導くべく、安保理改革を含め、国連の機能強化に取り組んでまいります。
女性・平和・安全保障、いわゆるWPSに関する国連加盟国ネットワークの二〇二五年共同議長国として、人権や女性参画に根ざした外交を引き続き推進してまいります。
核軍縮・不拡散については、NPT体制を維持強化し、核兵器のない世界の実現に向けた現実的で実践的な取組を行ってまいります。
ALPS処理水の海洋放出の安全性については、IAEAと緊密に連携し、科学的根拠に基づき、高い透明性をもって国内外に丁寧に説明し、理解を得てまいります。
気候変動、国際保健、防災といった地球規模課題については、人間の安全保障の理念の下、二〇三〇年までのSDGsの達成に向けて、取組を加速してまいります。また、ポストSDGsを見据えての国際的なルール形成を主導します。国際機関における邦人職員の活躍も一層後押ししてまいります。
これらの取組に向けて、人的体制の強化、財政基盤の充実、業務の合理化、DXや働き方改革の推進など、外交・領事実施体制の抜本的強化に取り組んでまいります。また、緊急事態対応や邦人保護、情報保全対策などに万全を期すため、在外公館の強靱化を推進します。
以上の所信の下、我が国がこれまで平和国家として築いてきた国際社会からの信頼の土台の上に、対話と協調の外交を戦略的かつ精力的に進めてまいります。
議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 財務大臣加藤勝信君。
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) 令和七年度予算の御審議に当たり、財政政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。
日本経済は、三十三年ぶりの高水準の賃上げと過去最大規模の設備投資が実現するなど明るい兆しが見られており、これを確かなものとし、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回り、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していく必要があります。
こうした中、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金、所得の増加を最重要課題とし、省力化投資支援等の賃上げ環境の整備や成長分野における投資促進などにより、生産性や付加価値を高め、安定的に賃金、所得が増えていくメカニズムを構築してまいります。そのため、日本経済、地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心、安全の確保を柱として閣議決定した国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策と、その裏付けとなる令和六年度補正予算を迅速かつ適切に執行するとともに、令和七年度予算、そして令和七年度税制改正を着実に実行に移していく必要があると考えております。
同時に、財政は国の信頼の礎であり、我が国を取り巻く諸課題に的確に対応するため、歳入歳出両面の改革を着実に推進し、日本の信用や国民生活を守るための財政基盤を平時より備えることが不可欠です。日本の財政は、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にあるなど、引き続き厳しい状況にあることも踏まえ、経済財政運営と改革の基本方針二〇二四で示された経済・財政新生計画の枠組みの下、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでまいります。
このように、経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。
続いて、令和七年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。
令和七年度予算では、官民連携のもとでのAI、半導体分野の投資促進やGX投資促進の実施、こども未来戦略に基づく子育て支援の本格実施、防衛力の抜本強化の着実な実施といった、複数年度で計画的に取り組むこととしている重要課題への対応のほか、地方創生交付金の倍増や内閣府防災担当の予算、定員の倍増など、重要政策に予算を重点的に配分しています。
あわせて、公務員、教職員、保育士の給与改善や物価動向の反映などを行いつつ、政策的予算を適切に確保するなど、経済財政運営と改革の基本方針二〇二四に基づき、経済、物価動向等に配慮しつつ、これまでの歳出改革努力を継続しています。
一般歳出につきましては約六十八兆二千五百億円であり、これに地方交付税交付金等約十九兆八百億円及び国債費約二十八兆二千二百億円を加えた一般会計総額は、約百十五兆五千四百億円となっており、前年度当初予算に対し約二兆九千七百億円の増額となっております。
一方、歳入につきましては、租税等の収入は七十八兆四千四百億円、その他収入は約八兆四千五百億円を見込んでおります。また、公債金は、平成二十年度以来、十七年ぶりに三十兆円を下回る約二十八兆六千五百億円であり、前年度当初予算に対し約六兆八千億円の減額となっております。
次に、主要な経費について申し述べます。
社会保障関係費につきましては、薬価改定により、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保にも対応しつつ国民負担を軽減しております。また、高額療養費制度の見直しにより、制度のセーフティーネットとしての持続可能性を確保しつつ現役世代を含む保険料負担を軽減するなど、様々な改革努力を積み重ねております。さらに、こども未来戦略に基づくこども・子育て支援加速化プランの取組を本格的に進めていくために必要な予算を確保いたしました。これらを含め、経済、物価動向等に配慮しつつ、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるとの方針に沿った姿を実現しております。
文教及び科学振興費につきましては、教師を取り巻く環境整備のため、学校における働き方改革を進めるとともに、教職員の給与及び定数について必要な措置を講じるほか、科学技術立国の観点から、AI、量子等の重要分野の研究開発を戦略的に推進するとともに、国際性の高い研究や若手研究者への支援を強化することとしております。
地方財政につきましては、地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行額を制度創設以来初めてゼロとするとともに、交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金償還額を増額するなど、地方財政の健全化を図ることとしております。
防衛関係費につきましては、厳しい安全保障環境の中で、防衛力整備計画に基づき、防衛力の強化を着実に進めるとともに、引き続き、防衛力を安定的に維持するための財源を確保することとしております。
公共事業関係費につきましては、能登半島地震等の教訓を踏まえた制度改正や、規制、誘導手法の活用といったハード、ソフト一体となった取組などにより、防災・減災、国土強靱化を推進するとともに、地方創生や生産性向上に向けたインフラ整備等についても重点的に取り組んでいくこととしております。
経済協力費につきましては、気候変動等のグローバルな課題解決や、台頭するグローバルサウス諸国との関係強化の観点から、ODAを効果的に実施していくこととしております。
中小企業対策費につきましては、価格転嫁対策、経営改善、事業承継支援など、持続的な賃上げに向けた環境整備等に取り組むこととしております。
エネルギー関係予算につきましては、エネルギー対策特別会計において、GX経済移行債を発行し、カーボンニュートラル目標の達成に必要な民間のGX投資を支援するとともに、AI・半導体産業基盤強化フレームに基づき、次世代半導体の量産化に向けた金融支援等を実施することとしております。
農林水産関係予算につきましては、食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、食料安全保障の強化等に資する施策の充実強化を図るとともに、林業、水産業の成長産業化に向けた生産基盤の強化、資源管理等に取り組むこととしております。
東日本大震災からの復興につきましては、第二期復興・創生期間の最終年度において必要な復興施策を確実に実施するため、令和七年度東日本大震災復興特別会計の総額を約六千六百億円としております。
能登半島地震、豪雨災害からの復旧復興につきましては、引き続き、被災者の生活、生業の再建支援やインフラ復旧などの被災地のニーズに切れ目なく対応してまいります。
令和七年度財政投融資計画につきましては、成長型経済への移行に向けた取組を進めるため、総額約十二兆一千八百億円としております。
国債管理政策につきましては、金融市場の状況に変化が見られる中で、市場との対話に基づき、引き続き安定的な国債の発行に努めてまいります。
令和七年度税制改正では、まず、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額等の引上げ及び大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行います。また、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充するとともに、国際環境の変化等に対応し、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置や外国人旅行者向けの免税制度の見直し等を行います。
以上、財政政策の基本的な考え方と、令和七年度予算及び税制改正の大要について御説明申し上げました。
これまでのデフレ脱却に向けた様々な政策、そして国民の皆さんや各企業といった各層での御努力の結果として、我が国の経済状況は改善してきております。今は、この明るい兆しを本格的な足取りとし、コストカット型経済から高付加価値創出型経済への移行を実現できるかの重要な時期を迎えております。
そのため、本予算及び関連法案の一刻も早い成立が必要であります。
本予算及び関連法案が現下の我が国の経済社会に果たす役割に御理解を賜り、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただくとともに、財政政策について、国民の皆様及び議員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 国務大臣赤澤亮正君。
〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕
○国務大臣(赤澤亮正君) 石破総理は、施政方針演説において、危機管理を確立し、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するとともに、人財尊重を基軸として、楽しさを実現できる、バランスの取れた国づくりを目指すという決意を明らかにされました。我が国は、かつて、強さや豊かさを追求し幾多の国難を乗り越えてきましたが、直面する人口減少に伴う諸課題に対応するためには、新たに、国民一人一人にとっての楽しさという価値を重視する社会づくりが求められています。
私は、こうした認識の下、全ての国民の皆様が安心、安全と楽しさを実感できる新しい日本を創ることを目指し、経済財政政策担当大臣として、所信を申し述べます。
我が国経済は、現在、六百兆円超の名目GDP、三十三年ぶりの高い水準となった賃上げが実現するなど、成長と分配の好循環が動き始めています。その一方、物価高が継続する中で、消費は力強い回復には至っておらず、あらゆる経済主体がデフレマインドを払拭して、コストカット型経済から脱却し、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあります。
こうした中、昨年十一月には、国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策を取りまとめました。日本経済、地方経済の成長、物価高の克服及び国民の安心、安全の確保という三本の柱の取組みを実行します。その裏付けとなる令和六年度補正予算を速やかに執行するとともに、これと一体的に編成した令和七年度予算を着実に実行に移し、切れ目のない経済財政運営を推進します。
このような当面の経済財政運営の効果も勘案し、令和七年度の我が国経済は、実質で一・二%程度、名目で二・七%程度の成長を見込みます。
経済対策の三本の柱に沿って、具体的な取組みを申し述べます。
第一の柱は、全ての世代の現在及び将来にわたる賃金、所得を増やす日本経済、地方経済の成長です。
まず、足元の賃上げに向けた環境の整備についてです。地域の中堅・中小企業を含め、物価上昇を上回る賃上げを普及、定着させるため、人への投資、価格転嫁等の取引適正化、DX等の省力化投資等を通じた生産性向上や経営基盤の強化に資する事業承継、MアンドAの支援に取り組みます。
最低賃金の引上げを後押しし、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続します。このため、今後の中期的な引上げ方針について、政労使の意見交換において議論を行い、本年春までに、最低賃金の引上げに向けた対応策を取りまとめます。
全世代にわたるリスキリング、ジョブ型人事の導入や労働移動の円滑化からなる三位一体の労働市場改革を推進します。
賃上げ原資の確保に資する価格転嫁は一定程度進捗し、人件費の比率が高いサービスの価格も上昇してきています。価格転嫁を更に徹底するため、発注者、受注者間の取引の実態調査の結果等を踏まえ、公正取引委員会を中心として、下請代金支払遅延等防止法の執行を強化するとともに、コストが上昇する中での価格の据置き等の不適切なケースに対応するため、今国会に同法の改正案を提出します。
地方創生は、楽しい日本を実現するための政策の核心です。賃金、所得の増加を全国津々浦々に波及させるとともに、元気な地方から元気な日本をつくる試みを全国的に広げていくため、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定した上で、地方創生二・〇を展開することとし、それに先立ち、令和七年度の地方創生の交付金は、本年度比で倍増となる二千億円を計上しました。
地域の産官学金労言が連携し、知恵と情熱を活かして潜在力を引き出そうという取組みとして、例えば、ウェブ3、ブロックチェーン技術、NFTといったデジタル技術を活用し、地域資源のアナログの価値を大幅に高め、新たな需要創出につなげる取組みを後押しします。
地方創生二・〇では、かつての優良な取組事例が特定の地域という点に止まったという反省も踏まえ、今後、面的な広がりを生み出すため、地方イノベーション創生構想及び広域リージョン連携を推進します。これらに、若者や女性にも選ばれる地方づくり、産官学の地方移転と創生及び新時代のインフラ整備を合わせ、五本の柱からなる令和の日本列島改造として、大胆な変革を起こしてまいります。
将来の賃金、所得を増やすため、成長分野において、思い切った官民連携の投資が行われる投資立国に向けた取組みと合わせ、貯蓄から投資への流れを確実なものとし、国民の資産形成を後押しする資産運用立国の取組みを推進し、我が国経済を高付加価値創出型の成長型経済へと転換してまいります。
科学技術の振興、イノベーションの促進、GXやAI、半導体に関する国内投資の促進、宇宙、海洋分野のフロンティア開拓に取り組むほか、スタートアップへの支援を充実します。特に、我が国が再び世界の半導体市場を牽引できるよう、ラピダスを始め、未来に挑戦する半導体産業を強力に支援します。また、NISAやiDeCoの充実等を進めてまいります。
私は、一月二十一日に開催されたダボス会議において、人口減少下にある我が国は、人手不足に直面する一方で、諸外国のように失業率の上昇を心配することなく、賃上げや生産性向上に注力できる。政治においても、少数与党の状況では、むしろ、幅広い国民の皆様の納得と共感が得られる政策を導き出すことができる。正に、ピンチをチャンスに変える絶好機を迎える日本は大いに今後買いである、そして、内外の要人に対し、本年開催される大阪・関西万博に多くの方々に御来場いただきたいと訴えてまいりました。
海外の経済活力を取り込むため、対日直接投資の拡大に強力に取り組みます。あわせて、農林水産品の輸出や中小企業の海外展開を促進するほか、諸外国との経済連携を強化します。特に、自由貿易や開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合を更に促進していく上で大きな意義を有するCPTPPについては、コスタリカの加入交渉や協定内容の見直し等を通じ、自由で公正な経済秩序の維持拡大に向け、引き続き、我が国としてイニシアチブを発揮してまいります。
第二の柱は、誰一人取り残されない形で、成長型経済への移行に道筋をつける物価高の克服です。
当面の措置として追加的に実施する低所得世帯への給付金の支援については、多くの市区町村で給付に向けた手続きを進めていただいているところです。給付事務を担う市区町村には、支援を迅速にお届けできるよう、一層のお力添えをよろしくお願いいたします。
LPガスや灯油を使用する生活者や事業者、医療、介護、保育施設等への支援、学校給食費の支援など、地域の実情に応じたきめ細かい物価高対策を引き続き講じてまいります。
第三の柱は、成長型経済を支える国民の安心、安全の確保です。
梨の一大産地である鳥取県では、その生産に必要となる花粉を輸入に依存せず、自ら花粉専用樹を計画的に育成してきました。その結果、果樹に大きな被害をもたらす火傷病の世界的な感染拡大を受け、発生国産の花粉の輸入が禁止されても、梨の生産を安定的に継続することができただけでなく、花粉の調達が困難な他産地にも供給し、それらの生産を支えました。これは、鳥取県が我が国の食料安全保障にも寄与した危機管理の取組事例ですが、私は、平時からの備えを万全にしておくことは、成長型経済への移行に向けた必須の条件であると考えます。
東日本大震災、令和六年能登半島地震等の自然災害からの復旧復興、避難所環境の整備など、防災・減災、国土強靱化の取組みを推進します。人命、人権最優先の防災立国を実現するため、令和七年度には、内閣府防災担当の機能を予算、人員の両面から抜本的に強化することとしました。その上で、災害発生時の司令塔機能を更に強化するとともに、防災業務の企画立案機能を飛躍的に高め、平時から万全の備えを行う本気の事前防災に取り組むため、令和八年度中の防災庁設置に向け、準備を加速してまいります。
今後、本格的に人口減少が進み、超高齢社会に入っていく中にあっては、国民の皆様に安心していただける社会保障制度を構築することが不可欠です。現役世代の負担を軽減するため、若者、子育て世代への支援を強化するとともに、増加する社会保障給付を重点化、効率化しつつ、能力に応じて皆で支え合う仕組みを構築してまいります。
女性や高齢者の皆様も含めて、全ての国民が意欲や能力に応じて楽しく働き続けることが可能となれば、生涯所得が増えるほか、健康寿命の延伸や幸福度の向上につながることも期待されます。働き方に中立的な社会保障制度とすることによって、必要な労働力を確保しつつ、支え手を増やします。
こうした方向性の下、全世代型社会保障を構築するための改革工程に掲げられた具体的な改革項目について、被用者保険の更なる適用拡大など、実現できるものから着実に実施します。また、少子化への対応は地方創生と表裏一体をなすものであり、若者、地方にも選ばれる地方を構築してまいります。
ここまで申し述べた対応を含め、引き続き、経済あっての財政との考え方の下、経済財政運営を推進してまいります。
本年一月の中長期の経済財政に関する試算では、二〇二五年度の国、地方のプライマリーバランスは黒字化しないものの、二〇〇一年度に目標を掲げた以降、最も赤字幅が縮小する見通しを示しました。財政状況は、着実に改善しています。潜在成長率の引上げに重点を置いた対応を進めるとともに、歳出歳入両面の改革を継続します。経済・財政新生計画の枠組みの下、骨太方針二〇二五において、早期のプライマリーバランス黒字化の実現を含め、今後の財政健全化に向けた取組みを示してまいります。
私は、人口が全国で最も少ない地元鳥取県からの地方創生を実現したいと考えています。先の総選挙でも、最低賃金の近傍で働き、年収が二百万円に満たないと見られる地元の若者やシングルマザーの方々から、暮らしていけるようにしてくださいという差し迫った要望を頂きました。
生活保護を受けずに働くという決断をしてくださったにもかかわらず、明日の心配なく暮らしていけないという現状を必ず変える。これは政治の重大な使命だと思っております。地方創生の取組みによって地域の稼ぐ力を高めるとともに、鳥取県を含む最低賃金が低い多くの地域はもとより、全都道府県の水準を引き上げ、全ての働く国民の皆様が明日の心配のない生活を営めるようにしたい。働くことができない国民の皆様もしっかりお支えしたい。そういう強い思いを持って、今日まで政治活動を続けてまいりました。
私は現在、石破内閣において、現行憲法下初の賃金向上担当大臣を拝命しています。人手不足が常態化する中にあって、最低賃金を二〇二〇年代に全国平均で千五百円まで引き上げるとともに、地域間の格差を是正する。私に切実な声をお寄せくださった方々とのお約束を果たすためにも、この目標の達成に向け、全力で取り組んでまいる所存です。
国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願いをいたします。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 赤澤国務大臣から、発言を訂正したいとのことであります。これを許します。国務大臣赤澤亮正君。
〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕
○国務大臣(赤澤亮正君) 一点訂正をさせていただきます。
先ほど、また、少子化への対応は地方創生と表裏一体をなすものであり、若者や地方にも選ばれる地方と申し上げたようでございます。若者や女性にも選ばれる地方を構築してまいりますの誤りでございますので、謹んで訂正をさせていただきます。(拍手)
――――◇―――――
○鈴木隼人君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十七日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 鈴木隼人君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
本日は、これにて散会いたします。
午後三時二十八分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 石破 茂君
総務大臣 村上誠一郎君
法務大臣 鈴木 馨祐君
外務大臣 岩屋 毅君
財務大臣 加藤 勝信君
文部科学大臣 あべ 俊子君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
農林水産大臣 江藤 拓君
経済産業大臣 武藤 容治君
国土交通大臣 中野 洋昌君
環境大臣 浅尾慶一郎君
防衛大臣 中谷 元君
国務大臣 赤澤 亮正君
国務大臣 伊藤 忠彦君
国務大臣 伊東 良孝君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 坂井 学君
国務大臣 平 将明君
国務大臣 林 芳正君
国務大臣 三原じゅん子君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 橘 慶一郎君