第5号 令和7年2月14日(金曜日)
令和七年二月十四日(金曜日)―――――――――――――
議事日程 第五号
令和七年二月十四日
午後一時開議
一 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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○本日の会議に付した案件
検査官任命につき同意を求めるの件
総合科学技術・イノベーション会議議員任命につき同意を求めるの件
預金保険機構理事長、同理事及び同監事任命につき同意を求めるの件
電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件
日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
運輸安全委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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検査官任命につき同意を求めるの件
総合科学技術・イノベーション会議議員任命につき同意を求めるの件
預金保険機構理事長、同理事及び同監事任命につき同意を求めるの件
電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件
日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
運輸安全委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
○議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。
内閣から、
検査官
総合科学技術・イノベーション会議議員
預金保険機構理事長、同理事及び同監事
電波監理審議会委員
日本銀行政策委員会審議委員
労働保険審査会委員
中央社会保険医療協議会公益委員
社会保険審査会委員
中央労働委員会公益委員
運輸審議会委員
及び
運輸安全委員会委員長及び同委員に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。
内閣からの申出中、
まず、
検査官に田中淳子君を、
中央労働委員会公益委員に石井浩君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
検査官に挽文子君を、
預金保険機構理事に正願隆一君を、
同監事に大谷益世君を、
電波監理審議会委員に西村暢史君及び矢嶋雅子君を、
中央社会保険医療協議会公益委員に笠木映里君を、
社会保険審査会委員に辻本京子君を、
中央労働委員会公益委員に安西明子君、磯部哲君、小畑史子君、小圷淳子君、小西康之君、鹿士眞由美君、原恵美君、深道祐子君、川田琢之君、権丈英子君及び山川隆一君を、
運輸安全委員会委員長に李家賢一君を、
同委員に早田久子君、津田宏果君及び高橋明子君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
総合科学技術・イノベーション会議議員に宮園浩平君を、
日本銀行政策委員会審議委員に小枝淳子君を、
労働保険審査会委員に比佐和枝君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
総合科学技術・イノベーション会議議員に鈴木純君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
総合科学技術・イノベーション会議議員に波多野睦子君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
預金保険機構理事長に三井秀範君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
預金保険機構理事に山崎英司君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
労働保険審査会委員に廣尚典君を、
中央社会保険医療協議会公益委員に城山英明君を、
中央労働委員会公益委員に鹿野菜穂子君及び久保田安彦君を、
運輸安全委員会委員に松井裕子君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
中央労働委員会公益委員に荒木尚志君を、
運輸審議会委員に三浦大介君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
運輸安全委員会委員に高野滋君を
任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
――――◇―――――
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣加藤勝信君。
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策、地域経済の好循環の実現、国際環境の変化への対応等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに特定親族特別控除の創設を行うこととしております。
第二に、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すため、中小企業経営強化税制の拡充を行うこととしております。
第三に、国際環境の変化等に対応するため、防衛特別法人税の創設等及び外国人旅行者向け免税制度の見直しを行うこととしております。
このほか、相続に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。
以上、この法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
――――◇―――――
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中西健治君。
〔中西健治君登壇〕
○中西健治君 自由民主党の中西健治です。
自由民主党・無所属の会及び公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)
本年は、戦後八十年に当たる節目の年であります。また、明治維新から終戦までも約八十年でありました。終戦を挟んだ前後八十年において、我が国は、政治、経済両面において大きな変化を遂げてまいりました。この節目の年において、これからの八十年の我が国の在り方を展望し、地方創生、経済再生、国際環境の変化への対応など、内外の課題に対してあらゆる政策を動員していかねばなりません。
こうした観点を踏まえ、令和七年度税制改正について質問いたします。
石破総理が掲げる地方創生二・〇は、都市対地方という二項対立ではなく、都市に住む人と地方に住む人が相互につながり高め合うことで、全ての人が希望と幸せを実感できる社会を目指すものと理解しています。そのためには、都市、地方を問わず、全国各地の産業や雇用を支える中小企業に対して税制支援を通じて思い切った投資を促し、地域経済に好循環を生み出すことが重要です。
こうした観点から、今般、中小企業税制の拡充が行われたところでありますが、どのように中小企業のチャレンジを後押しし、活力ある地域経済の実現につなげていくのか、総理の見解を伺います。
次に、防衛財源の確保について伺います。
今から約二千年前、共和政ローマの高名な政治家であり哲学者であるキケロは、資金がなければ戦はできない、つまり、お金がなければ国を守るために戦えないという演説を行いました。ロシア、中国という軍事大国や、核兵器の開発を公然と推し進めている北朝鮮などに囲まれ、戦後最も厳しい安全保障環境にある我が国の現状に鑑みると、防衛力を抜本的に強化するための安定的な財源を確保することは、今を生きる我々の将来世代への責任であります。
これまでの行財政改革や税外収入、剰余金の活用などの様々な努力に加え、本法案には防衛財源確保のための税制措置が盛り込まれております。いま一度、総理から、防衛財源確保の重要性と今般の税制措置の必要性について御説明をお願いいたします。
長く続いたデフレ状態からの脱却という大きな経済情勢の変化への対応が課題となっている所得税の見直しについて伺います。
今回の税制改正では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、所得税の基礎控除や給与所得控除の引上げを行うこととされています。
加えて、税制が一因となって、年末が近くなると学生アルバイトが今年はこれ以上働けませんと就業調整しているとの指摘があり、これに対応する新たな措置が盛り込まれました。これは、厳しい人手不足に直面する事業者にとっても重要なものであります。
学生アルバイトの就業調整への対応として、今回どのような見直しを行ったのか、また、その意義について、財務大臣から御説明ください。
後年度影響試算について質問いたします。
財務省が公表する後年度影響試算は、中長期的な財政状況を意識した予算編成を促すものでありますが、その中で使われる税収弾性値は、名目成長率と税収との関係を示すものであるために注目を集めております。
ただ、本年度から従来の一・一から一・二へ改定となったものの、ここ数年は税収の伸びが名目成長率を著しく上回る年があるなど、試算自体の有効性に対する疑問の声も聞かれます。
その大きな理由には、弾性値の算出に当たって、昭和五十一年度から令和五年度まで、何と四十八年間という極めて長い期間のデータを参照していることもあると思われます。この間に経済や社会の構造が大きく変化した上に、消費税の導入、所得税率や法人税率の大きな変更などもあったことから、税制自体も変わっております。
我が国の戦後の景気循環は、平均すると一サイクル約五十五か月、四年半となっています。こうしたことを踏まえながら、後年度影響試算における税収の推計をより適切に行っていくべきと考えますが、財務大臣の見解をお伺いします。
最後に、この場をおかりして、改めて、外国人旅行者の消費税免税措置の廃止についてお伺いします。
昨年十二月の財務金融委員会においてこの問題を提起し、SNSにも投稿したところ、X、旧ツイッターだけで九十八万人もの閲覧があり、大量のコメントがほとんど賛成というものでありました。さらに、予算委員会や一昨日の財務金融委員会では、野党の委員からも全く同じ趣旨の質疑が行われており、この提言に対しては与野党を問わず賛成する方が多いと承知しております。
二〇二三年の免税購入額は一兆五千八百五十五億円でした。昨年は恐らく二兆円を大きく超えており、したがって、免税額もその一〇%分に当たる二千億円超と推計されています。また、全国の免税店は約六万店となっています。
したがって、影響が極めて大きいことを踏まえて、当事者の皆さんの声をよくお聞きしながら、例えば、日本のよさを知ってもらうために、海外のブランド品を除外し、国産品だけを免税の対象とするなどといったことも含めて、議論を前に進めていくべきではないでしょうか。本件について、改めて財務大臣にお伺いします。
本法案の審議を通じて、あるべき税制の実現に向けて真摯な議論が重ねられていくことを祈念し、私の質問を終了いたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 中西健治議員の御質問にお答え申し上げます。
中小企業税制についてお尋ねを頂戴をいたしました。
地域経済の活性化のためには、成長意欲の高い中小企業の積極的な挑戦を支えていくことが重要であります。
このため、令和七年度税制改正におきまして、売上高百億円超を目指す成長意欲の高い中小企業の支援を強化することといたしました。具体的には、中小企業経営強化税制を拡充し、工場の生産ラインの増強や店舗の拡大等を行うための建物を適用対象設備に加えることといたしております。
加えまして、中小企業投資促進税制や固定資産税の特例措置等を延長することといたしております。
これらの措置により、中小企業による設備投資を促し、活力ある地域経済の実現に取り組んでまいります。
防衛財源確保の重要性、今般の税制措置の必要性についてのお尋ねでございます。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、国家安全保障戦略等に基づき抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していく必要があり、これを安定的に支えるための財源を確保していく必要がございます。
具体的には、安定財源の約四分の三は、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保など、あらゆる工夫を行うことにより賄うこととし、それでも足りない約四分の一につきまして、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いいたしております。
今般の令和七年度税制改正におきましては、法人税とたばこ税における措置を盛り込んだ税制改正法案を提出させていただいており、所得税の措置については引き続き検討することといたしております。
以上でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) 中西議員の御質問にお答えをいたします。
まず、大学生年代の特定扶養控除についてお尋ねがありました。
現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生年代のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘があります。具体的には、大学生が、自分の所得が一定水準を超えたことが原因で自分を扶養している親が控除を受けられなくなることを懸念し、就業時間を調整するというものであります。
このような状況を踏まえ、今般の見直しでは、十九歳から二十二歳までの大学生年代の子等の給与収入が百五十万円以下である場合には、親等が特定扶養控除と同額の六十三万円の所得控除を受けることができる、また、百五十万円を超えた場合も、親等が受けられる控除額をいきなりゼロとするのではなく、段階的に縮小する仕組みを導入することとしたものであります。
これにより、アルバイトに従事する大学生等の就業調整が緩和される効果があるものと考えております。
次に、後年度影響試算における税収の推計についてお尋ねがありました。
後年度影響試算における税収の推計に当たっては、名目経済成長率と税収弾性値を用いております。この税収弾性値の試算につきまして、議員の御提案は、より短い期間で計算することも検討してはどうかとの趣旨と思いますが、税収弾性値の算出に当たっての対象期間について、これまでも何度か見直しを行い、現在、昭和五十一年から直近時点までと長い期間を取った上で推計を行っております。
これは、ショックを受けて経済が後退し、又は回復する過程においては税収弾性値が大きくなる傾向が見られること、分母となる名目経済成長率が小さい場合、税収弾性値が大きな振れを示す傾向も見られることを踏まえ、こうした影響をならすためであり、一定の意義があるものと考えております。
引き続き、適切な試算に努めてまいります。
最後に、外国人旅行者向け免税制度についてお尋ねがありました。
外国人旅行者向けの免税制度は、外国人旅行者が一定の条件の下で購入する物品について、実質的に輸出取引と変わらないものとして消費税が免除される仕組みであり、OECD加盟国においても本制度が導入されている国が大半であると承知をしています。
また、本制度は、令和五年三月に閣議決定された観光立国推進基本計画においても言及されており、観光立国の実現に資する制度であると認識しております。
本制度については、これまでも、令和四年度に行った免税購入対象者の見直し、今般行うこととしている、出国時に税関で購入品の持ち出しを確認した場合にのみ消費税相当額を返金するリファンド方式への見直しなど、免税店等の声も聞きながら、必要な見直しを行ってきたところであり、今後とも、外国人旅行者や免税店等への影響も考慮しつつ、関係省庁や業界団体と緊密に連携して対応してまいりたいと考えております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 阿久津幸彦君。
〔阿久津幸彦君登壇〕
○阿久津幸彦君 立憲民主党の阿久津幸彦です。
私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)
冒頭、政府の高額療養費制度の自己負担上限額引上げについて、福岡厚生労働大臣はがん患者団体などと面会されましたが、がん患者団体などは一時凍結を強く要望し、微修正を検討している福岡大臣とは隔たりが大きく、患者団体などの怒りや不満はますます高まっています。我が党は、野党にも呼びかけて、早ければ来週中にも、高額療養費自己負担引上げ凍結法案を国会に提出予定です。総理、上限額引上げは一旦凍結すべきではないですか。
あわせて、様々な政策を実現するため、本日、我が党の野田代表が令和七年度予算修正案を発表しました。今後、与党にも説明させていただくとともに、国会に提出して、政府案との並行審議を求めます。総理、私たちの修正提案に耳を傾けていただき、熟議の国会が機能し始めてきたのだと国民に希望を持っていただくことから共に始めようではありませんか。
米の価格やエネルギー価格の高騰など、国民は物価高の影響で疲弊しています。少しでも安いものを求めてスーパーを回ったり、生活費を切り詰めたりして、何とか日々をしのいでいるのが現状です。総理は、この国民生活の現実を認識しておられるのでしょうか。
農林水産省は、本日、備蓄米の放出を発表されました。これで米不足が解決するのか、米価は適正な水準に落ち着くのか。総理、お答えください。
それでは、本題に移らせていただきます。
まず、ガソリンの暫定税率廃止についてです。
昨年十二月に自民党、公明党、国民民主党の三党の幹事長間で交わされた合意では、いわゆるガソリンの暫定税率は廃止すると明記されていますが、その時期については示されていません。石破総理は、三党で協議中であることを理由に、実施時期について一切の発言を控えておられます。しかし、物価高にあえぐ国民からすれば、一刻も早く減税を実現してほしいに決まっています。石破総理は自民党総裁でもあります。自らリーダーシップを発揮して、令和七年度から直ちにガソリンの暫定税率廃止を実現するお考えはないのか、御見解を伺います。
確かに、ガソリンの暫定税率を廃止した場合、国、地方合わせて一・五兆円規模の減収が生じますから、財源を確保する必要はあります。しかし、政府がこれまでに実施しているガソリン等補助金の予算額の累計で八・二兆円にも上ります。これは暫定税率を廃止した場合の五年半分の減収額に相当しますが、こちらについては、特段、財源確保策を講じていません。したがって、国民生活の窮状に鑑み、財源について、まずは我々が省庁別審査等で指摘した財源をもって対応することも可能と考えますが、御認識を伺います。
また、いずれの場合でも、地域の住民サービスの質が低下することのないように、ガソリンの暫定税率廃止を実施する際は、地方自治体の財政に悪影響が生じないようにすることをお約束いただきたいと思います。総理の明快な御答弁を求めます。
次に、防衛増税について伺います。
今回の法案では、防衛特別法人税とたばこ税見直し、引上げの実施は明記されていますが、東日本大震災の復興財源を流用する形での防衛特別所得税の導入、つまり、所得税の増税については先送りされました。しかし、政府は、防衛増税について、令和九年度に向けて実施すると令和五年度税制改正大綱に明記しています。
国民に具体的な負担を求める法律の施行に当たっては、少なくとも一年程度の周知期間が必要です。今回結論を先送りしたとはいえ、必然的に、令和八年、つまり来年の通常国会に所得税の防衛増税法案を提出して、令和九年度から増税を実施する以外に政府には選択肢はないと思われますが、令和九年度から増税を実施するのですか。増税隠しはやめて、誠実に御答弁いただきたいと思います。
そもそも、防衛増税については、与党内では反対の声が根強いのではないでしょうか。我々野党は一致して撤回を求めてきました。現状、衆議院では防衛増税反対が過半数の意思となっているものと思います。石破総理には、この状況を真摯に受け止め、この際、法人税、たばこ税を含め、防衛増税の撤回を決断していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
今回、政府は、物価上昇局面における税負担の調整として、いわゆる百三万円の壁の引上げを行うこととしています。一方で、約四十年間見直しをされていないのが、食事手当の非課税限度額です。同じく企業が支給する通勤手当の非課税限度額については、過去、複数回引き上げられてきました。食事手当の充実は、労働者の福利厚生、ひいては生産性の向上にもつながります。この間の食費の上昇や昼食代の相場等も踏まえて、食事手当の非課税限度額も引き上げるべきと考えますが、総理の御認識を伺います。
近年、大規模な災害が相次いでいます。現状、災害による損失は、盗難による被害を受けた場合と同様に、雑損控除で勘案されます。この雑損控除は、基礎控除など災害を受けていない人にも適用される所得控除に先立って控除するものです。被災者は、長期間にわたって災害の影響を受けます。その間、ほかの人と比べて担税力が失われることになります。よって、災害による損失は、ほかの人にも適用される控除を適用した上で勘案する方が公平なはずです。
我々が度々求めているように、独立した災害損失控除を創設し、現行の繰越控除期間を更に延長するとともに、この控除については、ほかの人にも適用される人的控除を適用した後に適用すること、加えて、災害が生じた年分の純損失額の繰戻しによる還付を可能とする恒久的な繰戻し還付制度の創設を求めたいと思いますが、総理の御見解を伺います。
今、自民党による政治と金、裏金疑惑もあり、税制に対する国民の信頼が揺らいでいます。この信頼を取り戻すため、立憲民主党として、二つの御提案を申し上げたいと思います。
石破総理は、企業・団体献金で自民党が政治をゆがめたとは思っていないと述べ、政治資金の透明性を高めることが重要と説いています。実は、税制には全くその透明性が担保されていないのです。主に企業向けの減税を行うための租税特別措置、いわゆる租特の問題です。
現在、民主党政権で成立した租特透明化法に基づき、租特の適用状況については毎年国会に報告され、適用された企業の数や減税額は明らかにされています。しかし、肝腎の企業名は公表されていません。これでは、本当に政治がゆがめられていないかどうか客観的に確認することができません。
総理は、企業・団体献金については、禁止より公開とおっしゃっています。本当に政治がゆがめられていないというなら、租特の適用対象となっている企業の実名を公表すべきではないですか。御見解を伺います。
また、公表できないというのであれば、補助金の場合は交付先の企業名を明らかにできるのに、租特に限って公表できない理由を合理的に御説明ください。
税制に対する国民の信頼を取り戻すためには、もう一つ、納税者の権利利益の保護を法律上明確化する必要があります。具体的には、納税者権利憲章を制定することです。
現在、この納税者権利憲章は、OECD加盟国の大半の国で制定されており、我が国においても、二〇一一年、民主党政権のとき、税法の改正案に盛り込むところまで行きましたが、当時の野党自民党の反対により断念したという経緯があります。当時、石破総理は自民党の政調会長をお務めでした。納税者権利憲章を今こそ制定すべきではないでしょうか。総理の御見解を伺います。
立憲民主党は、政権を担い得る責任政党として、財源に対しても責任を持ちたいと考えています。
例えば、先ほど取り上げた租特に当たる賃上げ促進税制ですが、この租特による減収額は二〇二三年度で七千億円強に上っています。しかし、我が国雇用の約七割を占め、賃上げの鍵を握る中小企業は、その多くが赤字法人であるため、そもそもこの恩恵を受けることができません。一方で、実際に減税の恩恵を受けている大企業は、別に租特がなくとも賃上げを行うはずです。
立憲民主党は、中小企業が正規雇用を増やした場合に新たに発生する社会保険料の事業者負担の半分を十年間国が補填する法案を作りました。これなら赤字企業でも恩恵があります。中小企業は、社会保険料負担軽減によって正社員を増やし、生産性を高め、賃金を上げられるようにするという考え方です。総理の御見解を伺います。
最後に、我々立憲民主党は、ただいまの質疑で申し上げたような問題意識を基に、本法案に対する修正案を準備しています。石破総理には、予算の修正だけでなく、この税法の修正にも応じていただきたいと思いますが、その御意思はおありになるのか、明快に御答弁をお願いいたします。
国民の負託に応えるため、政府の問題点をただしながら、よりよい税制の実現に全力を注いでいくことをお誓い申し上げ、私、阿久津幸彦の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 阿久津幸彦議員の御質問にお答えいたします。
高額療養費制度の見直しについてお尋ねがありました。
高齢化の進展や高額薬剤の急速な普及等により、高額療養費の総額が医療費全体の倍のスピードで伸びております中で、現役世代を中心に保険料負担が大きな課題となっていることを踏まえ、今回の見直しを提案したところでございます。
日本が世界に誇るべき医療保険制度の大切なセーフティーネットであります高額療養費制度を将来にわたって堅持しつつ、保険料負担の抑制につなげることが必要であると考えております。その上で、さらに、当事者の方々のお声も真摯に受け止めつつ、可能な限り幅広い合意形成が図られますよう、提案の修正を含め、対応いたしてまいります。
政府備蓄米の放出についてのお尋ねであります。
消費者の皆様方に主食である米を安定的に供給できますよう、一定期間後に買い戻すことを条件といたしますが、現時点で二十一万トンの政府備蓄米を売り渡すことといたしました。売り渡す量は必要に応じちゅうちょなく拡大をいたしますが、まずは、初回十五万トンの入札の実施に向け準備を急いでまいります。こうした措置により、米流通の目詰まりが解消し、上昇した価格が落ち着くことを期待いたしております。
いわゆるガソリンの暫定税率についてお尋ねがございました。
昨年十二月、自民、公明、国民民主の三党ではありますが、幹事長間におきまして、いわゆるガソリンの暫定税率を廃止する、具体的な実施方法について、引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされており、政府といたしましては、その結果を踏まえた上で、適切に対応いたしてまいります。
御指摘の財源につきましては、仮に、揮発油税、地方揮発油税、軽油引取税の全ての暫定税率が廃止されました場合、国、地方合わせて年間一・五兆円の税収が恒久的に失われると見込まれております。そのため、地方財政に与える影響も踏まえれば、これらに代わる安定的な財源の確保は大変重要な論点であると考えております。
省庁別審査等において御党からいただきました財源に係る様々な御指摘につきましては、真摯に政策議論を行ってまいりますが、安定的な財源となり得るかといった点も含めて検討する必要があると考えております。
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置についてお尋ねをいただきました。
戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、国家安全保障戦略等に基づき抜本的に強化される防衛力は、将来にわたって維持強化していく必要があり、これを安定的に支えるための財源を確保していく必要がございます。
具体的には、安定財源の約四分の三は、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入の確保など、あらゆる工夫を行うことにより賄うこととし、それでも足りない約四分の一につきましては、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることといたしております。
令和七年度税制改正におきましては、こうした考え方に基づき、法人税、たばこ税における措置を盛り込んだ税制改正法案を提出させていただいております。所得税につきましては、令和五年度税制改正大綱等の基本的方向性を踏まえ、引き続き検討することとしたところであり、実施時期も含めまして、与党税制調査会で検討されるものと考えております。
引き続き、こうした防衛力の抜本的強化及び安定的な財源確保の必要性について、丁寧な説明に努めてまいります。
食事手当の非課税限度額についてでございます。
食事に限らず、企業から従業員に対して経済的な利益が与えられたときは、原則、給与所得として課税対象となりますが、食事につきましては、福利厚生的な性格があるとともに、少額なものには課税しないという観点から、企業の負担額が月額三千五百円以下など、一定の要件の下で、非課税とする取扱いがなされているものと承知いたしております。
この非課税限度額につきましては、議員御指摘の物価動向だけではなく、金銭で食事手当が支給され、給与課税されている方々もいらっしゃること、社員食堂のある企業が大企業を中心とした一部に限られていることなど、非課税の適用を受ける機会がない方々との公平性にも留意しつつ、対応の必要性について見極める必要があるものと考えております。
災害損失控除についてお尋ねをいただきました。
災害による損失を翌年度以降に繰り越せる繰越控除期間につきましては、令和五年度税制改正において、特定非常災害の場合には最長で五年に延長する措置を講じたところでございます。更なる延長は、同じ損失額であっても所得の多寡による納税者間の不公平を広げかねないことから、慎重に検討すべきものと考えております。
所得税の計算に当たりましては、まずは収入から必要経費を差し引き、納税者が自由に処分できる所得を求め、その後に、世帯の事情に応じて担税力を調整するため人的控除を適用する仕組みとなっておるのは御承知のとおりでございます。災害による損失は、必要経費に類似した性質を有するものとして取り扱われておりますことから、人的控除よりも先に控除することとなります。御指摘のように、人的控除より後に控除することといたしました場合、同じ収入額、同じ損失額の納税者の間で、世帯構成によって損失の繰越額が異なり、不公平が生じますことから、現行の取扱いをいたしておるものでございます。
災害による損失を前年の所得と相殺する恒久的な繰戻し還付制度の創設につきましては、繰越しが可能であること、一旦完結した前年の課税関係を事後的に変更するものであり、法律関係の安定性を損ないかねないこと等から、慎重に検討すべきものと考えております。
租税特別措置の実名公表についてでございますが、平成二十二年の租税特別措置透明化法の制定時に、適用実態調査の報告書におきまして、個別法人名まで公表する必要はない、そのような整理がなされた経緯がございます。
国が個別企業の税務情報を公表することにつきましては、一般論として申し上げれば、財務情報が類推されることで価格交渉への影響といった競争上の不利益を生じかねないため、そうしたデメリットを上回る公益上の必要性があるかどうかを考えていく必要がある、このように考えております。
補助金との比較について申し上げますと、補助金の場合には、一般に、国からの交付の決定を受けて個別法人名が公表されても、それによって個別企業の財務情報等が類推されるという事態は想定されない、このような違いがございまして、租税特別措置と同様に扱いますことは必ずしも適当ではございません。
納税者権利憲章についてでございますが、一般に、納税者の権利義務を分かりやすい言葉で説明し、より多くの納税者に周知しようとする試みである、このように承知をいたしておりまして、御指摘のような納税者権利憲章を定めることも一つの方法であります。
しかしながら、そのような形にかかわらず、実際に納税者の皆様方の視点に立った利益の保護、利便性の向上に向けました措置を手厚くいたしますとともに、その内容を適切に説明していくことが重要であると考えております。
政府といたしましては、引き続き、適正かつ円滑な税務行政に取り組んでまいります。
中小企業の社会保険料の負担軽減についてでございます。
御党の法案が提出されました場合の取扱いにつきましては、国会で御議論いただくべきことと考えておりますが、中小企業に対して社会保険料の事業主負担を公費で助成すべき、このような御提案につきましては、社会保険料が医療や年金等の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であることなどから、慎重な検討が必要であると考えております。
非正規雇用労働者を正社員に転換した事業主には、キャリアアップ助成金による支援など、中小企業への支援を行っております。
中小企業に対しましては、賃上げが実現できますよう、利益を上げていただくための適切な価格転嫁や生産性向上を支援しながら、社会保険については、年齢にかかわらず適切に支え合うことを目指す改革を進めることが重要であり、これらを着実に実行いたしてまいります。
税制改正法案の修正についてお尋ねをいただきました。
令和七年度税制改正法案は、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものとするとともに、経済社会の構造変化等に対応するために必要なものでございます。政府といたしましては、多くの御賛同がいただけますよう、法案の内容について丁寧に説明を尽くしてまいります。
党派を超えました合意形成を図るためには、与党、野党共に責任ある立場で熟議をし、国民の皆様の納得と共感が得られますように努めることが必要であります。各党の御主張も十分に拝聴し、今後とも真摯に議論をいたしてまいります。
以上でございます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 斎藤アレックス君。
〔斎藤アレックス君登壇〕
○斎藤アレックス君 日本維新の会の斎藤アレックスです。
会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
現在、国会では、衆議院の予算委員会を主戦場に、来年度の国家予算、ひいては国の財政の在り方全般に関する議論が繰り広げられています。貨幣経済を前提とする現代国家の運営において、我が国が国家として機能するため、また、政府が様々な行政サービスを住民に提供するため、国民を始めとする日本国に居住する方々、経済活動を行う主体に税を納めていただくことが必要不可欠であることは言をまちません。改めて、税金を納めることの必要性、重要性について、総理から御説明をいただきたいと思います。
その上で、現下の物価高を含めた苦しい国民生活を取り巻く状況を鑑みて、その御説明に国民、納税者が御納得いただけるのかを総理には考えていただきたいと思います。そして、自民党が長年にわたり裏金をつくり、そして今国会でもその真相解明に後ろ向きであるばかりか、政治腐敗を絶つために三十年以上前に与野党間で合意された企業・団体献金の禁止についても、この期に及んで目を背け続けるその態度が、国民、納税者に御納得いただけるものであるかを改めて考えていただきたい。税という、国民に負担をお願いするこの法律の審議を始めるに当たって、総理のお考えを御教示いただきたいと思います。
総理、政治家はお金に汚い人たちだと国民から思われてしまっています。そのような世相の中で、まともな税と社会保障の議論が成り立つとお考えでしょうか。お金に汚い政治家が正論を振り回しても、白々しく聞こえるだけで、国民はついてきてくれません。政治不信を払拭し、まともな政策議論をするため、これ以上、企業・団体献金に固執することがないよう、重ねて総理と自民党には強く求めます。
ほとんどの国民にとって、収入に対して最も重い負担になってしまっているもの、つまり、手取りが増えない最大の理由となっているのは社会保険料です。
一例として、年収三百五十万円の単身世帯の年間の所得税額は約七万円ですが、社会保険料は五十万円にもなります。社会保険料は雇用主の会社なども同額を負担していますので、会社は四百万円を人件費に使っているのに、社会保険料を引いた後、手元に残るのは三百万円となってしまいます。果たしてこの負担の在り方は本当に適切なものなのでしょうか。総理の御所見をお伺いをいたします。
日本維新の会は、社会保険料負担が、個人の生活と賃上げを伴う健全な企業の経済活動を阻害し、過去三十数年間にわたり日本経済の好循環を妨げてきた主要な要因の一つだと考えています。この上、更に社会保険料負担が増えることがないように、そしてそれを引き下げるのだという強い決意の下、社会保障制度の改革を行っていくことが必要であると考えていますが、石破内閣は社会保険料を引き下げる必要があるとの認識を持っているのか、総理の答弁を求めます。
また、現在の社会保険料の問題の一つが、働き控えを招く制度となってしまっている点です。現在実施しているキャリアアップ支援金などの働き控え対策がどの程度効果を発揮しているのか。また、効果不十分だとすれば、その理由は何か。あわせて、働き控えの問題を解消するためには、三号被保険者制度のフェードアウト、廃止を含め、働き方や家族構成に中立的な社会保障制度へと全体を抜本的に改革することが必要だと思料いたしますが、総理の御所見を伺います。
税や社会保険料の応能負担の原則を真に機能させるためには、納税者の所得や資産の状況について行政が適切に把握すること、つまり、担税能力を把握することが重要ですが、そのためには、一層のデジタル技術、マイナンバー制度の活用が重要です。
日本維新の会は、昨年五月、税と社会保険料の徴収や給付金などの支給業務を一元管理するデジタル歳入給付庁の創設を目指す法案を衆議院に提出しています。働き方などにかかわらず、所得に応じて公平に税を納めていただくため、コロナ禍での給付のような、様々な支援が適時適切に必要な人に届けられるよう、我々が提唱するデジタル歳入給付庁のような行政のアップデートが必要だと思いますが、総理の御所見をお伺いします。
あわせて、金融所得課税の在り方についてもお尋ねいたします。
自民党総裁選では金融所得課税の強化を訴えていた人物が、総理就任後には、前言を翻して、その主張を引っ込めるということが二代続けて起きています。総理の、そして現政権の方針がよく分かりません。今後、金融所得課税の在り方をどうされるおつもりなのか、端的に教えてください。
金融所得に関しては、個人の年間所得に対する所得税額の負担率が、所得の下位から九九・九%までの範囲においては所得が多い人ほど負担率が上昇する一方、上位〇・一%以内の範囲に限っては所得が多い人ほど逆に負担率が低下するという、いわゆる一億円の壁が問題となりますが、単純に金融所得に対する税率を引き上げたり総合課税にするだけでは、富裕層より、むしろ中間層が負担する税額が重くなってしまったり、あるいは、中間層の重要な資産形成の場となりつつある株式市場などに悪影響を与える危険性があります。
九九・九%の方に対する新たな税負担を生み出さずに、同時に公平な税制とするという視点が重要かと思いますが、この一億円の壁問題に対する政府の対処方針をお示しいただきますようお願いします。
日本維新の会、自民党、公明党の実務者で協議を行ってきた教育政策に関して、論点の一つになったのが、教育の無償化など、子供の教育などに関する支援策に所得制限を設けることが妥当なのかという点です。
応能負担の考え方に基づき、我が国では、年収が上がるほど高い税率が適用されて、高い税金を納めていただくことになります。平均より高い税金を払ったからといって、その分、救急車が早く来てくれたり、高額納税者用の優先レーンが道路で使えたり、役所で特別対応をしてくれるわけではありませんし、そうすべきでもありません。それでも、所得が高い人からはそれに応じて高い税金を払っていただいているわけですから、税金を使って行う行政サービスには基本的に所得制限を設けない、つまり、所得が高くなるとサービスを受けられなくするという所得制限は今後見直していくべきだと思います。総理の見解を伺います。
予算制約が強い中で、あらゆる施策から所得制限をすぐになくすことが難しいとしても、特に子供の教育や子育て支援施策は、子供の立場、視点に立って、速やかに所得制限を外すべきです。よっぽどの高所得の家庭でない限り、ほとんど全ての家庭で子育てや子供の教育に係る費用の負担感は大変重いのが通常ですから、中途半端な所得制限を残すと、子供の進路や教育の機会が親の所得によって制限されてしまう状況が残ることになります。
現役世代、子育て世代の勤労意欲を阻害しないためにも、何よりも、日本で生まれてくる子供たちがひとしく学ぶチャンスを得られ、親の所得によらず自由にその進路を選べる社会をつくるために、日本維新の会は、高校の無償化を始め、教育や子育てに関する支援からは即刻所得制限を外し、全ての子供を対象にすべきと考えていますが、石破内閣のお考えを総理にお伺いをいたします。
次に、租税特別措置について伺います。
特定の政策目標を達成するために、税の公平の原則から外れて例外的に設けられる租税特別措置に関して、近年の与党税制改正大綱では、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行うと毎年のようにうたわれている一方で、真に必要な検証や見直しが行われているのかが疑われます。
総務省行政評価局が実施した令和六年度の租税特別措置等に係る政策評価の点検結果においても、適用数が不十分であったり、効果の説明が不十分な措置や、適切な目標設定がなされておらず、よって効果の測定も不可と指摘された措置もありました。政府として、この政策評価の点検結果をどう受け止め、どう租税特別措置を適正化していく方針なのか、総理の答弁を求めます。
バブル経済崩壊以降、日本の法人税率は順次切り下げられ、二〇一〇年代には一層の法人税減税が実施されました。企業業績、利益は確かに拡大しましたが、現預金などが積み上がる一方で、投資や賃上げの好循環にはつながらなかったというのが現実ではないでしょうか。これまでの法人税減税政策に関して、石破内閣はどのように評価をされているのでしょうか。
低い法人税が企業業績にとってプラスであることは言うまでもありません。一方で、めり張りの利いた税制、つまり、国内投資や賃上げを促すような税制でなければ、費用対効果が伴わない悪い政策になってしまいます。過去の法人税減税政策への評価を踏まえた上で、今後、政府はどのような方針で法人税制を考えていくのか、特に、今般の防衛増税にあるような法人増税は今後も追加で検討されることがあるのか、総理の答弁を求めます。
今回の税制改正では、世界的な法人税の減税競争に一定の歯止めをかけるための軽課税所得ルール、国内ミニマム課税の法制化が含まれています。広く主要先進国間で必要性が認識され、推進されてきたこの施策ですが、第二次トランプ政権の発足によって、この枠組みもまた重大な岐路に立たされています。トランプ大統領や米上下院で多数を占める共和党は、国際課税に反対し、軽課税所得ルールによって米国企業が課税された場合、報復を行うことを示唆しています。
先日のトランプ大統領との会談では、この軽課税所得ルールを始めとした国際課税について、意見交換はなされたのでしょうか。また、軽課税所得ルールなどの国際課税に関する政府の取組に関して、何らかの変更があるかなど、その方向性について総理の答弁を求めます。
日本は、先進国の中でも納税者の痛税感が高い国だと言われています。その根本には、国民の政治不信と制度上の不備が横たわっています。デジタルやマイナンバー制度といった新たなツールを活用するとともに、個人と企業の負担感を軽減し、活発な経済活動を支える税制と社会保障制度の実現に向け、国会内外での政策提言と真摯な議論を行っていくことをお約束して、日本維新の会を代表しての私の質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 斎藤アレックス議員の御質問にお答え申し上げます。
納税の必要性、重要性についてでございます。
税とは、御指摘のように、国民の生活と財産を守るために必要な公的サービスの費用を皆で分かち合って負担する、いわば社会共通の費用を賄うための会費であって、社会に必要不可欠なものでございます。
政府といたしましては、今後とも、納税に対します国民の皆様方の御理解、納得感が得られますように、丁寧な説明に努めてまいります。
政治資金に関する議論についてでございますが、自民党における収支報告書の不記載事案につきましては、検察による厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてまいりました。
党といたしましても、可能な限りの調査を行い、その結果を国民の皆様方に御説明をいたしてまいりました。このような事案を二度と繰り返しませんよう、政治資金に関する研修を定期的に行うなど、コンプライアンスの徹底を進めており、引き続き、国民各位の信頼の確保に努めてまいりたいと考えております。
平成の政治改革の際に、政党に対する企業・団体献金の禁止が与野党間で合意されたという事実はないものと承知をいたしておりますが、企業・団体献金を含む政治資金の透明性の確保は極めて重要でございます。
我が党といたしましては、禁止より公開という考え方により様々な取組を進めており、今国会にも、透明性の更なる向上のため、企業・団体献金公開強化法案を提出をしています。国民の皆様方から更なる御理解をいただくべく、引き続き、この課題につきまして各党各会派との真摯な議論を行ってまいります。
社会保険料の負担についてお尋ねを頂戴いたしております。
社会保険料は安心のための拠出であり、全て必要な給付として再分配されるものでございます。これまでも必要な改革を継続してきており、社会保険料が健全な企業の経済活動を阻害し、日本経済の好循環を妨げてきたとの御指摘は、適切でないものと考えております。
一方、国民所得に対する社会保険料負担の割合はコロナ禍以前の水準に低下をいたしておりますが、少子高齢化が進む中で、社会保険料負担の抑制に取り組むべきという問題意識は議員と共有をいたしておるものでございます。
このため、年齢にかかわらず適切に支え合うことを目指す全世代型社会保障の理念にのっとり、改革工程に沿って、医療DXによる効率化や医療提供体制の改革なども含む取組を着実に実行し、保険料負担の抑制につなげてまいります。
働き控え対策、第三号被保険者制度についてのお尋ねでございます。
社会保険の適用に関するいわゆる年収の壁につきましては、当面の対応策として、年収の壁・支援強化パッケージの活用に取り組んでおり、御指摘のキャリアアップ助成金につきましては、昨年十二月末時点で、二万を超える事業所、三十二万人を超える労働者の皆様への活用が予定をされております。
第三号被保険者につきましては、育児や介護などの様々な御事情により働くことのできない方のほか、被保険者の配偶者のみならず、両親や子といった多様な属性の方がおられまして、廃止、縮小して保険料を求めていくことには課題がございます。
まずは、働き方に中立的な制度の構築の観点から、被用者保険の更なる適用拡大などを含みます年金改正法案の取りまとめに向けまして、丁寧に対応してまいりたいと考えております。
マイナンバー制度を活用したデジタル歳入給付庁についてでございますが、マイナンバー制度は、公平公正な社会を実現するデジタル社会の公的基盤でございます。
御指摘のデジタル歳入給付庁のような新たな組織をつくるということではございませんが、マイナンバー制度の利活用を進め、より正確に所得を把握し、適正、公平な課税につなげますとともに、正確な所得情報などを基に給付すべき方を特定し、迅速かつきめ細やかに給付をお届けできますよう、今後とも努めてまいります。
金融所得課税についてのお尋ねでございます。
金融所得課税の検討に当たりましては、税負担の公平性を確保することは重要であります一方、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすることも重要でございまして、これらを総合的に考えていく必要があるものと考えております。
教育無償化における所得制限についてでございます。
議員が御指摘なさいましたように、経済的な理由で教育が受けられないということがあってはなりません。
一方で、所得制限なく無償化することにつきましては、十分な所得がある御家庭とそうでない御家庭との間の格差是正の効果を薄めてしまうことにはならないのか、十分な所得がある御家庭も対象にすることになりますが、これが多くの国民の御理解が得られるかといった論点も整理する必要があるものと考えております。
自民党、公明党と維新の会との間で実務者によります協議を行っておるところでございまして、そのような論点を含めまして、政党間で協議が進められるものと政府といたしては考えておるところでございます。
租税特別措置についてでございますが、令和七年度税制改正におきまして、令和六年度末に適用期限が到来するなどにより見直しの対象となりました二十九の法人税関係の租税特別措置のうち、御指摘の租税特別措置等に係る政策評価の点検結果なども踏まえ、二十三につきまして廃止又は縮減を含む見直しを行うことといたしております。
今後とも、必要性や政策効果を見極め、不断の見直しを行ってまいります。
今後の法人税の在り方についてでございますが、我が国の法人税につきましては、世界的な法人税率の引下げ競争が展開されます中、二〇一〇年代に、投資や雇用、賃上げの促進等を図るため、税率を二三・二%まで引き下げ、経済界にはその趣旨を踏まえた国内投資の拡大や賃上げを求めてまいりましたが、企業部門では、収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積み上がり続けておりまして、このような状況をどのようにして転換させていくかが課題となっております。
令和七年度与党税制改正大綱におきましても、斎藤議員御指摘のような評価が下されておりまして、今後の法人税の在り方について、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、めり張りのある法人税体系を構築していくこととされておるところでございます。
政府といたしましては、このような与党税制改正大綱で示されました考え方や、経済情勢の変化、国際的な動向等を踏まえながら、不断の見直しを行っていく必要がある、このように考えております。
国際課税の取組についてでございますが、斎藤議員御指摘のグローバルミニマム課税は、国際的な法人税引下げ競争を防止するため、各国とも最低一五%以上の課税を確保しようという制度でございまして、国際的に議論してきた仕組みでございます。グローバルに活躍する日本企業を後押しする観点からも、引き続き、国際的な議論を踏まえた制度の導入を進めるべきものと考えております。
今回の首脳会談におきまして、国際課税に関するやり取りはございませんでしたが、今後の国際課税の在り方につきましては、引き続き、米国を含めました各国政府とよく議論をいたしてまいります。
以上でございます。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(玄葉光一郎君) 田中健君。
〔田中健君登壇〕
○田中健君 国民民主党・無所属クラブの田中健です。
ただいま議題となりました所得税法等改正案について、会派を代表して、石破総理に質問をさせていただきます。(拍手)
まず、年収百三万円の壁について伺います。
予算委員会の質疑の中で、税金を国民の皆様にお返しできる状況ではないとの総理の発言がありました。本当にそうでしょうか。昨年から今年にかけて、法人税は一二・九%増、所得税は三〇・一%増、消費税は四・六%増と、所得が一番伸びており、所得税は昨年の定額減税を割り引いても一五・二%の伸びです。いずれもGDPの伸び二・七%より大きく、歳出は三兆円増えているのに対し、税収は八・八兆円増えています。
私たちは、インフレが続く中、税金を取り過ぎている、国民の手元にお金を戻していく、つまり、手取りを増やすことが大事であると言い続けてきました。今はその状況にないとのことですが、それでは、返すことができる状況とは具体的にどのような状況を指すのでしょうか。その状況を政府は今つくろうとしているのでしょうか。総理に伺います。
総理は、一月二十八日、政府として百五十万円程度への引上げについて検討している事実はないと言い、一方で、一月三十一日には、百二十三万円からびた一文たりとも動かないぞというかたくなな姿勢を取るものでもないと言ったり、足下が定まらない印象を受けます。
引上げは必要であるが、財源がないから仕方なく百二十三万円と言っているのでしょうか。そうではなくて、そもそも、これ以上の引上げは必要ないと思っているのでしょうか。私には、総理は後者としか思えません。総理の見解を伺います。
国民民主党は、年収百三万円の壁は生存権の問題であるとし、生存権を保障する他の制度、具体的には生活保護の給付水準との整合性も考えるべきとの考えも提示をさせていただきました。また、公明党の斉藤代表からは、百五十万円ぐらいまでなら根拠があるとし、生鮮食品の伸びを念頭に置いた発言もありました。
私たちは、三十年ぶりのインフレにどこまで対応が可能かという議論を真剣に続けています。皆がそれぞれの立場で少しでも百七十八万円に近づける案を摸索している中、総理は、納税者に寄り添う気持ちがあるのでしょうか。いつまでに結論を出すのでしょうか。総理のリーダーシップを求めたいと思います。見解を伺います。
ガソリン税についても伺います。
昨年十二月十九日、本年一月十六日の二回にかけて、ガソリン補助金が段階的に縮小されています。ガソリン価格の高騰は家計に深刻な影響を与えており、月の給油費用は、一世帯当たり平均して二千円から三千円程度増加、特に、通勤や送迎などで車の使用頻度が高い世帯では月五千円以上の負担増となっているとの声もあります。また、物流コストの上昇により、食品や日用品の価格上昇にもつながり、間接的な家計負担も増加をしています。
運送業界では、大型トラックの燃料費は月約二万円の追加負担となっています。価格転嫁が難しい中小企業では、利益率の低下や赤字転落のリスクが高まり、一部の企業では配送料金の値上げや配送ルートの見直しなどの対応まで迫られています。
そんな中でありますが、既に、令和七年度税制改正大綱には、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止方針が明記をされています。今やるべきことは、ガソリン減税を来年度から速やかに実施することです。先送りする課題ではありません。令和八年に向けての目標ではなく、今必要な政策なんです。
地方の声、物流業界の声が総理には届いていませんか。ガソリン価格を下げて、物価高に苦しむ家計を、物流を支えていこうではありませんか。三党の議論の推移ではなく、総理の考え、総理の決意を伺います。
定額減税について伺います。
二〇二四年分の確定申告が二月の十七日から始まりますが、定額減税に係る特別税額控除が実施される申告であり、様々な課題が指摘をされています。
定額減税は、所得税、住民税を一人当たり計四万円差し引くのが基本ですが、収入や家族状況によって実施時期が変わります。さらに、納税額が少なく減税し切れない人に調整給付を行うなど、極めて仕組みが複雑です。
所得税の納税額が三万円に満たず、年末までに三万円を払い戻せない対象者は三千二百万人にも上り、自治体は、前年の課税実績を基に臨時給付金を支給するとしています。端数は一万円単位で切り上げるとしており、結果的に通常の三万円よりも多くもらえる人もいることになります。
また、令和五年の所得が低く、令和六年の所得が高い場合には、令和五年の所得の金額に基づき調整給付を受けて、令和六年分の確定申告において定額減税に係る特別税額控除が実施されるため、定額減税の二重取りが発生します。この場合も、調整給付が結果的に過払いになったとしても、払い過ぎた分を返してもらうことは想定されていません。
どれだけの臨時給付金が支払われると政府は想定しているのでしょうか。また、定額減税の二重取りについても、問題であるという認識はないのでしょうか。そもそも、国民に税金をお返しする状況にはないと言っていながら、一方で所得税の納税が正しく行われない制度をつくり、公平性の観点にも問題を生むような状況をつくった責任は政府にあると考えますが、総理の見解を伺います。
早期給付の実現のため、令和六年分推計所得税額を用いて定額減税調整給付金の額を算定したことに伴い、令和六年分の所得税額及び定額減税の実績額等の確定をした後に、本来給付すべき所要額と定額減税調整給付金額に差額が発生する方が一定数生じることになります。その差額を、対象者に対して、令和七年度以降に定額減税不足額給付金として支給する予定となっていますが、自治体からは、国が事務処理基準日や実施時期等について具体的に示さない限り、住民にも説明ができないでいる状況が続いていると聞いています。
いつ頃に詳細が示されるのでしょうか。スケジュールをお示しください。自治体の大きな事務負担をどう考えているのか、その対応はあるのか、総理の見解も併せて伺います。
様々な課題が指摘される中、見切り発車した一度きりの定額減税制度は、企業に多大な事務負担、人件費負担を負わせ、その後、市区町村に今全てしわ寄せが行っている状況です。政権の人気取りを狙った愚策と言わざるを得ません。費用対効果を検証し、妥当性と政府の責任をしっかりと示すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
デジタル小作人について伺います。
日本の貿易・サービス収支は、双子の赤字を背負っています。一つは、言わずと知れた原油の輸入です。もう一つが、デジタル貿易赤字です。
直近の国際収支速報によると、経常収支は過去最大となる二十九兆円超の黒字となっています。しかし、貿易・サービス収支は六兆五千億の赤字、特にクラウドサービスなど通信、コンピューター、情報サービスの収支は二兆五千億円の赤字であり、ここ十年で三倍超に達しました。インバウンドで稼いでも、デジタル貿易赤字が打ち消す構図となってしまっています。企業や個人がクラウドやネット広告などのサービスを海外のIT大手に依存する構図、いわゆるデジタル小作人化はますます進展しています。この流れは、とどまるどころか、政府の試算によると、二〇三〇年にはデジタル貿易赤字額が十兆円に達し、昨年の原油輸入額に肩を並べる規模になる見通しです。
世界を見渡せば、インドや中国など、独自のIT企業を養成し、大きなデジタル黒字を稼いでいる国がある一方で、日本は世界の中で貿易赤字が多い国となってしまっています。この状況を打開する鍵は、改めて人と技術に投資をすることにほかなりません。日本独自のデジタル技術の開発とデジタルサービスに半導体並みの投資をしていく、国がその先頭に立って旗を振っていく必要があるのではないでしょうか。デジタル研究開発分野での政府投資の拡大や人材育成を担う大学への投資、IT技術への大幅減税などが必要と考えます。
こうした急激に進むデジタル小作人化と拡大するデジタル貿易赤字の現状と、国内のデジタル技術基盤の強化をどう認識され、対策を考えているのか、伺います。
また一方で、先進国に鉱物資源や食料を供給してきた発展途上国は、デジタル分野を含めて独自の成長を進めようとしています。岐路に立つのは先進国です。日本を始めとした先進国は、人口が増え、中間層も拡大する新興国を、消費地や人材供給源として自らの成長につなげてきました。グローバルサウスとして力をつけている彼らとうまくつき合えるかが、次の経済成長を左右します。
ODAのような、先進国が対外援助という施しを発展途上国に分け与えるというような時代は終わりました。先端技術をめぐる協力、協業が必要とされています。グローバルサウスとの新たな関係強化をどのように考えているのか、総理に伺います。
暗号資産について伺います。
金融庁が、先日、暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づける方向で検討に入ったことが報道されました。日本暗号資産等取引業協会によると、仮想通貨の開設口座は、二四年十二月時点で千百八十一万件にも上ります。投資家を保護するだけでなく、適切に関連ビジネスを活性化していく上でも、実情に合った法整備が不可欠だと判断したことは高く評価をしたいと思います。
トランプ米大統領は、一月の二十三日、暗号資産の利用を推進する大統領令に署名をし、仮想通貨を含むデジタル資産が米国のイノベーションや経済発展に重要な役割を持つと規定し、経済の各分野で、デジタル資産やブロックチェーン技術の責任ある発展と利用を支援すると記しました。
日本も、より早期に、ダイナミックに動くときです。国民民主党が訴えてきた二〇%の分離課税導入、レバレッジ倍率の引上げ、暗号資産ETF導入の早期実現が重要と考えますが、総理の見解を伺います。
賃上げ税制について伺います。
賃上げを促す国の税制優遇制度をめぐり、会計検査院は、一月十五日、社員の教育訓練費を増やした企業に対する法人税の税額控除の仕組みが適切でないおそれがあるとして、制度の検証や見直しを求めたと発表がありました。検査院が一八年から二一年度に制度を利用した延べ一万二千八百六十一法人のうち同九千九百七十法人を調べたところ、二百九十三億円が控除されており、会計検査院の試算額と比べ百五十七億円大きくなって、仕組みが適切でないおそれがあるとの指摘です。
国は、この制度を通じ、企業の賃上げやリスキリングなどへの意欲を引き出し、経済を好転させようと力を注いできました。しかし、制度が賃上げにもたらす効果は着目されず、二二年には衆参の委員会が制度の検証、公表を求める決議をしたものの、訓練費に関する検証は行われてきませんでした。
優遇措置の拡充、延長は昨年四月に施行されたばかりですが、検証もされずにここまで来たのは問題ではないですか。会計検査院の指摘に対しての所感と併せて総理に伺います。
制度が適切に運用されるように検証を行い、制度の在り方を見直すべきです。私たちは、効果の薄い政策は見直し、社会保険の事業者負担の軽減に回すべきではないかと考えますが、総理の見解を伺います。
法人税について伺います。
二〇一五年度以降、成長志向の法人税改革が進められ、企業による投資、賃上げの促進や国際社会での立地競争力の強化を目的に、課税ベースを拡大し法人税率を引き下げる改革が行われました。その中で、現在、政府税制調査会の税制のEBPMに関する専門会議において、法人税改革の振り返りが進められています。
その中の議論では、二〇一〇年代に法人税率を二三・二%まで引き下げ、この間、経済界には、法人税改革の趣旨を踏まえ、国内投資の拡大や賃上げを求めてきたが、企業部門では収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積み上がり続けた、海外の先行研究を見ても、法人税率が設備投資や賃金に与える影響は限定的であるとの分析や、我が国の法人税改革が国内投資の増加には効果的でなかったとの分析が示されているとあります。企業収益が拡大した状況でも国内投資が進まなかったことを踏まえ、法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと断じています。アベノミクスにおける法人税税率引下げに対して否定的な見方を示しています。
アベノミクスへの決別とも読むことができますが、総理も同じ認識でよろしいでしょうか。法人税率引下げの競争の総括、また、今後の法人税の在り方の転換についてどのようなお考えをお持ちか、見解を伺い、以上、国民民主党としての代表質問といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 田中健議員の御質問にお答え申し上げます。
税収の還元についてお尋ねをいただきました。
先日の答弁では、令和六年度当初税収との比較で令和七年度税収が八・八兆円増加していますのは事実でございますが、一方におきまして、現下の厳しい財政事情等を踏まえた議論が必要であるということを申し述べたところでございます。
具体的には、令和七年度の国の歳出は、給与改善や物価動向の反映などを行いつつ、政策的予算を適切に確保した結果、百十五・五兆円と過去最高となっております。その結果、過去最高と見込まれます税収を歳出に充てましてもなお、赤字公債を含め、二十八・六兆円の新規国債を発行いたしておりまして、令和七年度末の国の債務残高が約千百二十九兆円、GDP比で一七九%に上る見込みでございます。
国民の皆様方にお返しできるような状況にあるかどうかにつきましては、厳しい財政事情だけではなく歳出による給付等も考慮する必要があることから、具体的にお答えすることは困難でございますが、税収が増加していることのみをもって税金を取り過ぎているとの御指摘は、必ずしも適切ではないものと考えております。
政府といたしましては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現することが基本である、このように考えておりまして、引き続き全力で取り組んでおるところでございます。
百三万円の壁の引上げについてお尋ねをいただきました。
政府といたしましては、生活必需品を多く含む基礎的支出項目のものを含め、最後の基礎控除の引上げ以降の物価動向等を勘案し、基礎控除の額と給与所得控除の最低保障額を十万円ずつ引き上げ、合計百二十三万円とすることといたしたものでございます。
このいわゆる百三万円の壁に関しましては、昨年十二月二十日、三党の幹事長間で十二月十一日に合意した内容、すなわち、百七十八万円を目指して引き上げることなどにつきまして、引き続き関係者間で誠実に協議を進めることが確認をされております。合意を踏まえた対応につきましては、財源も含め、引き続き政党間で協議が進められているもの、そのように承知をいたしております。
ガソリン税についてでございます。
昨年十二月、自民、公明、国民民主、三党の幹事長間におきまして、いわゆるガソリンの暫定税率を廃止する、具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進めるとの合意がなされております。
令和七年度与党税制改正大綱におきましても、引き続き政党間で真摯に協議を行うとされておりまして、政府といたしましては、その結果を踏まえた上、適切に対応いたしてまいります。
ガソリン価格につきましては、小売価格が全国平均でリッター当たり百八十五円程度になるよう、激変緩和事業で支援を継続しておるところでございます。
定額減税及び給付金についてでございます。
給付金、定額減税一体措置に伴い必要となる給付金といたしまして、令和五年度補正予算、令和五年十二月の予備費と令和六年度補正予算によりまして、合計約二・八兆円を措置をいたしております。
このうち、定額減税し切れないと見込まれる方への調整給付につきましては、迅速な給付、自治体の負担軽減という観点から、令和六年中に入手可能な前年の課税情報を用いて給付額を算定することといたしました上で、支給を一万円単位としたものでございます。
この結果、定額減税と給付金の一部が重複することなどにつきましては、公平性に配慮することは重要であります一方、一時的な措置でありますことから、企業や地方自治体の事務負担にも配慮することも重要であるとの考え方の下で進めていくことといたしたものでございまして、重複を認めないといった考え方には立たなかったもの、このように承知をいたしております。
実績が判明し、見込みで給付した調整給付だけでは不足する場合等におきます不足額給付につきましては、自治体に対して円滑な執行に必要な情報の提供を速やかに行っておるところでございまして、支給を一部開始している自治体もあるもの、このように承知をいたしております。自治体の事務負担を軽減する観点から、デジタルの積極活用により、引き続き、可能な限り速やかな給付に向け、努力をいたしてまいります。
定額減税の実績と効果の分析をしていくことは重要であると考えておりまして、令和六年分の税務統計がまとまります来年度末以降、速やかにその分析を開始し、結果を公表したい、このように考えております。
デジタル貿易赤字についてでございますが、いわゆるデジタル貿易赤字につきましては、年々拡大をいたしておりまして、二〇二三年では約五兆円となっております。これが拡大し続けていくことは、我が国の経済成長や経済安全保障の観点からも好ましくないと考えております。
日本国内に事業基盤を持つ事業者によってデジタルサービスが提供されるようにしていくことが重要であり、政府といたしましては、令和七年度当初予算も活用し、デジタルサービスの研究開発投資、データセンター等のインフラ整備、AI分野を始めとする人材育成やスタートアップ支援など、デジタル産業基盤の強化に取り組み、デジタル赤字の拡大抑止、さらには赤字の改善につなげていきたい、このように考えております。
グローバルサウスとの関係強化でございますが、国際社会が対立と分断を深めます中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、貧困、保健、気候変動といった様々な課題への取組をリードしていくために、グローバルサウスとの連携を強化していくことは極めて重要であります。御指摘のとおりでございます。
私自身、そうした問題意識を踏まえまして、年始には、ASEAN議長国を務めますマレーシア、この地域で最大の人口と経済規模を誇るインドネシアを訪問し、安全保障協力や資源外交等の分野で具体的成果を得た、このように考えております。
我が国自身の安定と成長も念頭に、海洋安全保障、災害対応、脱炭素化等の分野で実務的な協力を一層進めていくべく、グローバルサウスの国々との間で積極的な外交を今後とも展開をいたしてまいります。
暗号資産の税制、制度についてでございます。
社会問題の解決や生産性を向上させる観点から、暗号資産等のデジタル資産分野の健全な発展に向けて、利用者保護を確保しつつ、ブロックチェーン技術を基盤とするイノベーションの進展を踏まえた環境整備を進めていくことは極めて重要であると考えております。
これまでも、我が国は、世界に先駆け二〇一七年に暗号資産の交換業者に登録制を導入するなど、利用者保護を確保しつつ、イノベーションを促進するための環境整備に取り組んでまいりました。
政府といたしましては、今後とも、暗号資産税制の在り方、個人向け暗号資産デリバティブ取引、暗号資産ETFに係る規制の在り方を含めまして検討いたし、必要な取組を進めてまいる所存でございます。
賃上げ促進税制につきましてであります。
政府といたしましては、令和四年の衆議院、参議院の委員会での御決議を踏まえ、政府税制調査会の下に設置されました専門家会合等において議論をいただくなど、賃上げ促進税制の効果検証に取り組んでまいりました。
その結果、客観的なデータによる分析からは、因果関係の特定に課題があり、今後、必要なデータの整備、蓄積や更なる分析手法の精査が必要とされております。こうした結果も踏まえまして、税制の適用企業の実態につきましてのアンケート調査などの更なるデータ収集、分析を進めてまいりました。
令和六年度税制改正では、教育訓練費に係る上乗せ税額控除の適用実態データを踏まえまして、賃上げ促進税制の制度の見直しを行ったところでございます。
今般、会計検査院から、教育訓練費に係る上乗せ税額控除について、その効果及び措置の妥当性の検証を行い、見直しを検討することが重要との指摘があったことは承知をいたしております。こうした指摘を踏まえまして、教育訓練費に係る上乗せ税額控除がもたらす賃上げへの政策効果を検証するための追加的なデータの収集方法や分析手法などについて直ちに検討を開始したところでございまして、よりよい制度となりますよう、議論を深めてまいります。
社会保険料の事業主負担の軽減につきましては、社会保険料が医療や年金等の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であることなどから、慎重な検討が必要である、このように考えております。
今後の法人税の在り方についてでございますが、我が国の法人税につきましては、世界的な法人税率の引下げ競争が展開されます中、二〇一〇年代に、投資や雇用、賃上げの促進等を図るため、税率を二三・二%まで引き下げ、経済界にはその趣旨を踏まえた国内投資の拡大や賃上げを求めてまいったのでありますが、企業部門では、収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積み上がり続けておりまして、このような状況をどのように転換させていくかが課題となっております。
令和七年度与党税制大綱におきましても、議員御指摘のような評価が下されておりまして、今後の法人税の在り方につきましては、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、めり張りのある法人税体系を構築していくとされております。
政府といたしましては、このような与党税制改正大綱で示された考え方や、経済情勢の変化、国際的な動向等を踏まえながら、不断の見直しを行っていく必要がある、このように考えておるところでございます。
以上でございます。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(玄葉光一郎君) 高井崇志君。
〔高井崇志君登壇〕
○高井崇志君 れいわ新選組の高井崇志です。
会派を代表して、石破総理にお聞きします。(拍手)
本題に入る前に、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故について、被害者の方の一日も早い救出を願うとともに、今も救出に尽力されている方々や、節水に協力された百二十万の埼玉県民の皆様に心から敬意と感謝を申し上げます。
今後、耐用年数を迎える上下水道を維持するのに、三十年で九十兆円が必要と試算されています。加えて、道路、橋、トンネルなどのインフラの維持には年間七、八兆円が必要と見込まれています。今後、この財源をどのように捻出していくつもりでしょうか。
令和の米騒動も深刻です。農業に市場原理を導入したことも問題ですが、根本的には、農林水産予算がピーク時の四・五兆円から半分に減らされ、米の生産力が著しく低下しているのが最大の問題です。本気で国を守るつもりならば、防衛費ばかり増やさずに、農林水産予算を元に戻すべきではないですか。
三十年続く不況に、コロナ、物価高で国民生活は地獄の苦しみです。三十年間経済が全く成長していない国は、世界中で日本だけ。先日の予算委員会でその原因を石破総理に問うたところ、人口減少がとか、企業の内部留保が賃金に回らずなど、まるで他人事でした。原因は自民党の経済政策の失敗であるという認識はないのでしょうか。
原因ははっきりしています。三十年間に三度も消費税を増税したことです。一回の増税で、百年に一度と言われたリーマン・ショックをはるかに上回る消費の減少が起きています。つまり、日本は、三十年間の間に、百年に一度のリーマン・ショックが四回起きたことになります。これで経済が成長するはずがありません。景気が悪いときには税金を下げる、これは中学校で習う経済学の基本中の基本です。総理はこの経済学の基本を習った覚えはありますか。自民党はなぜ百八十度真逆の政策を行ってしまったのでしょうか。
現在、野党各党がそれぞれ減税策を訴えていますが、簡素、公正、中立の原則に鑑み、消費税廃止に勝る政策はありません。そもそも、消費税は逆進性が強く、応能負担が原則の社会保障の財源には適しておらず、世界中で、消費税、付加価値税を社会保障に充てている国はありません。
加えて、消費税は、大企業には優しく、中小企業には過酷な税です。法人税と違い、赤字でも払わなければなりません。消費税が払えず倒産する中小企業は後を絶ちません。人件費にも消費税がかかるため、正社員を増やせず、賃金も上げられない大きな要因になっています。インボイスなど論外で、直ちに廃止すべきです。
総理は、このような消費税が持つ数々の欠陥を御存じでしょうか。きっと財務省は説明しないので、御存じないのでしょう。
冒頭申し上げたインフラの更新も、令和の米騒動も、消費税廃止も、いずれも財源が必要です。我々は、国債をもっと発行すべきと主張しています。誤解しないでほしいのですが、我々は、無限に国債を発行すべきとは一言も言っていません。インフレが急速に進み、国債が暴落するおそれが少しでもあれば国債の発行は抑えるべきです。しかし、そのようなおそれは全くありません。
財務省は債務残高対GDP比ばかり強調し、危機をあおりますが、その他の指標、対外純資産対GDP比や政府債務対外債務比率はG7では断トツトップ、政府純利払い費対GDP比、経常収支対GDP比はG7で二番目に安全です。だから、CDS、クレジット・デフォルト・スワップで算出した国債の五年以内のデフォルト確率は僅か〇・三三%、G7ではドイツの次に低い確率です。
そもそも、自国通貨で発行した国債が債務不履行になった例は、歴史上、一度もありません。債務残高だけを強調し、いたずらに財政破綻の危機をあおる財務省を総理としていさめていただけませんか。
私も、かつては不勉強でこうした事実を知らず、財務省の説明をうのみにして、消費税増税法案に賛成してしまいました。本当に、今、不明を恥じ、国民の皆様に申し訳ない気持ちでいっぱいです。当時の私は、増税反対はポピュリズムだ、たとえ選挙に落ちても未来に責任を持つ政治家でありたいなどと考えていました。でも、それは無知からくる間違いでした。財務省の説明をうのみにして、マスコミにもあおられ、目の前で苦しむ人々を救おうともせず、これ以上国債を発行すれば日本の財政は破綻する、減税は将来世代にプラスにならないなどと言う方がよほどポピュリズムです。
消費税減税は、立憲民主党を除く全ての野党がさきの総選挙で公約に掲げています。立憲民主党の中でも七十名が食料品の消費税ゼロを目指す勉強会に参加しており、自民党でも積極財政を掲げる議員連盟に百名が参加しています。与野党のごく一部の幹部だけが、忙し過ぎて勉強する時間もなく、財務省の御説明をうのみにして、思考停止に陥っているのではありませんか。
総理、もう一度、よく考え直してください。消費税は廃止、少なくとも減税、直ちにやりましょう。
れいわ新選組は、六年前の結党以来、一貫して消費税廃止を訴えてきました。必ず消費税廃止を実現することをお誓いして、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 高井崇志議員の御質問にお答えを申し上げます。
インフラ維持についてでございます。
今回の道路陥没事故に巻き込まれたドライバーの方の救出を最優先に行っておりまして、原因究明は今後行っていく必要がございますが、御指摘のとおり、高度成長期に集中的に整備されてまいりました我が国のインフラは老朽化が進展をしておりまして、維持管理、更新費用は今後増加が見込まれております。御指摘のとおりでございます。
維持管理、更新に当たりましては、壊れてから補修する事後保全型ではかえって多額のコストがかかりますことから、AI、ドローン、ロボットなどのデジタル技術をフルに活用いたしまして、定期点検を確実に行い、緊急度に応じて事前に対策を講じることで長寿命化を図ります予防保全型に本格転換していくことが極めて重要であると認識をいたしております。
こうした考え方に基づきまして、本年六月めどに策定することといたしております国土強靱化実施中期計画の中におきましても、今回の事故も踏まえました下水道の老朽化対策を含め、インフラの強靱化に必要な対策を盛り込むべく、検討を加速をいたしてまいります。
農林水産関係予算についてでございますが、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面します中、防衛力の抜本的強化は国民生活を守るために重要でございます。食料の安定供給を担う農林水産業の活性化も国民生活にとって喫緊の課題であり、防衛費か農林水産関係予算かの二者択一ではございません。
こうした観点から、令和七年度予算におきましては、引き続き防衛力の抜本的強化実現に向け必要な経費を計上いたしますとともに、食料安全保障を強化しつつ、農林水産業をもうかる産業といたしますために必要な農林水産関係予算を計上いたしておるところでございまして、これを有効活用し、実効性を持って農林水産施策を展開をいたしてまいります。
我が国のこの三十年間の経済についてでございますが、バブル崩壊以降、金融システム問題やリーマン・ショックなど、様々な困難に見舞われてまいりました。この間、企業は、短期的な収益確保のため、賃金や成長の源泉である投資を抑制するコストカット型の経営を行い、結果として、消費の停滞や物価の低迷、さらには成長の抑制がもたらされたと認識をいたしております。
この低物価、低賃金、低成長というデフレの悪循環が過去三十年間の基本的な構造であった、このように認識をいたしておりますが、ようやく、六百兆円超の名目GDP、三十三年ぶりの高い水準となった賃上げが実現するなど、明るい兆しが表れております。このチャンスを逃がさず、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へと移行することで、生活が豊かになったことを多くの国民の皆様方に実感していただける社会を実現したい、このように考えております。
消費税について様々な御意見がありますことは承知をいたしておりますが、国民が広く受益をされる社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、消費税の税収は社会保障の財源として位置づけられておるところでございます。諸外国、例えばフランス、ドイツ、スイスなどにおきましても、付加価値税収の一部を社会保障の支出に充てることとされているもの、このように承知をいたしております。
逆進性についての御指摘でございますが、消費税財源が充当される社会保障給付等によります受益は、低所得者の方々ほど手厚いのでありまして、所得の再分配につながる面もありますことから、負担面だけでなく、受益の面と併せて評価すべきものと考えております。
赤字企業につきましても納付が必要となる場合はございますが、売上げに関して受け取る消費税額から、仕入れ時に支払った消費税額を差し引いた差額を納付する仕組みでございまして、あくまで売上げに関して受け取る消費税額の一部から納税していただくものでございます。
人件費の関係につきましては、消費税が課されていない給料として支払う場合にも、消費税を上乗せして派遣料を支払った上で仕入れ税額控除を活用する場合も、全体としての支払い額は同じでございまして、消費税が正社員の採用や賃上げを妨げるものではない、このように考えております。
インボイス制度につきましては、複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な制度でございまして、これを廃止することは考えておりません。インボイス制度に対する御不安、御懸念を抱かれておられる方々も多くいらっしゃると存じますので、事業者からの相談には引き続き丁寧に対応をいたしてまいります。
財政状況についてでございますが、議員御指摘のような様々な指標を用いて検証し、議論をしていくことも重要と考えております。
一方におきまして、債務残高対GDP比は、政府の債務の総額が、返済原資となる税収を生み出す国の経済規模、すなわちGDPに対しまして、どの程度の割合になっているかを示した指標でございますが、これは、財政の持続可能性を見る上で有意義なものであり、我が国のみならず、EUなどの先進国の多くで財政健全化に係る指標として用いられているものでございます。
市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることがありませんように、経済あっての財政との考え方の下、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済、財政をつくってまいります。
消費税の廃止、減税についてでございますが、消費税につきましては、急速な高齢化などに伴い社会保障給付額が大きく増加します中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられておりますことから、政府として、これを廃止すること、引下げを行うことは適当ではないと考えております。
以上でございます。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(玄葉光一郎君) 堀川あきこ君。
〔堀川あきこ君登壇〕
○堀川あきこ君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等改正案について質問します。(拍手)
今、政治に求められているのは、物価高騰から国民の暮らしを守ることです。毎日の暮らしに欠かせない食料品が軒並み値上げです。お米の値段は高止まりし、キャベツや白菜などの野菜も昨年の二倍以上に跳ね上がっています。エンゲル係数が四十三年ぶりの高水準、三〇%に迫る事態となっています。とりわけ低所得世帯は深刻です。食費が増えれば消費税も増える、二重の負担増が生活を苦しめています。
石破総理は、御自身の著書で、国民の経済格差が拡大する下で、格差が大きいと消費税はその逆進性が顕在化しますと指摘し、食べ物のように生活のためにどうしても必要な費用は富裕層でも低所得者層でも似たような出費になり、そこに同じように消費税がかかる、一千万円ある人の五万円と五十万円しかない人の五万円は全く価値が違うのに同額の税負担になってしまうと述べ、低所得者に厳しい制度と言及されています。
総理は、消費税を考え直す必要があるとも述べていますが、今こそ消費税の廃止を目指し考え直す議論をするときではありませんか。答弁を求めます。
税制に求められるのは、負担能力に応じて税金を負担し、毎日の生活のための最低限の費用には課税をしない、応能負担と生計費非課税の原則です。
それに逆行する税制を進めてきたのが自公政権です。
消費税の増税で、課税最低限以下の収入世帯では、所得税の負担はゼロなのに、消費税が八%、一〇%へと上がるたびに消費税の負担が重くのしかかってきました。家計調査によれば、年収二百万円の世帯では、所得税の十倍の消費税を負担しています。とても能力に応じた税負担とは言えません。消費税の負担を含めた税負担率で見れば、既に累進性は崩壊しています。答弁を求めます。
三十年間据え置かれてきた課税最低限は引き上げるべきです。
政府の減税案では、低所得者の減税額は僅か年五千円にすぎません。恩恵を受けない低所得者が三千万人以上に上ります。低所得者にも全ての人にも減税となるのは、消費税の引下げです。緊急に五%に減税することこそ、物価高対策としても、中小企業支援としても、最も効果的な減税ではありませんか。
インボイス制度の下で生活を脅かされ、廃業を迫られている多くのフリーランスや小規模事業者の声に応え、インボイスの廃止を求めます。
大企業や富裕層への行き過ぎた減税を元に戻すとともに、所得一億円を超えると証券優遇税制で所得税の負担が逆に下がる、一億円の壁を取り払うべきです。
税制全体のゆがみを正す抜本改革で財源を確保すべきです。
さらに、税制で正すべきは、大企業優遇の不公平税制です。
安倍政権は、四回も法人税率を大幅に引き下げただけでなく、租税特別措置で更に大企業の税負担をとことん減らしてきました。その結果、大企業は空前の利益を上げ、内部留保も最大規模の五百三十九兆円に上っています。
優遇税制の典型が研究開発減税です。研究開発の名目で減税された税金は、二三年度、九千億円を超えています。対象となった企業が研究予算を減らしたにもかかわらずです。まさに法人税負担を減らすだけの優遇税制です。しかも、最も恩恵を受けたトヨタ自動車一社だけで減税額全体の一割もの恩恵を受けています。一部の大企業を優遇する不公平税制は、廃止すべきではありませんか。
企業版ふるさと納税は、企業が自治体に寄附をした金額の九割が戻ってくる上、寄附した自治体から事業を受注するなどの経済的見返りを期待する制度となっています。石破総理も、問題があると指摘されましたが、きっぱり廃止すべきではありませんか。
最後に、税金の使い道は、支援を必要としている人々を最優先すべきです。
高額療養費の見直しについて、石破総理は、一番苦しんでいる方々の声を聞かずに、このような制度を決めていいとは思わないと答弁しました。ならば、直ちに高額医療費見直しの撤回を表明すべきです。
自公政権による二〇二四年四月の介護報酬引下げ後、高齢者の在宅介護を支える訪問介護事業所が一つもない自治体が昨年末時点で全国百七町村に及び、この半年間で新たに十町村が事業所ゼロとなっています。介護崩壊ではありませんか。総理、国の責任で、訪問介護報酬を元へ戻し、抜本的支援をすべきです。
二〇二五年度予算案は、年金、介護、医療などの社会保障、高等教育などの教育予算、農業などの暮らしの予算は、どれも物価上昇に追いつかない、実質マイナス予算です。異常に突出した軍事費を削減をして、大企業や富裕層に応分の負担を求めることで財源を確保し、国民の暮らし最優先に抜本的に組み替えることを求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 堀川あきこ議員の御質問にお答えを申し上げます。
消費税の廃止についてでございます。
消費税につきましては、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であると位置づけられておりますことから、政府として、これを廃止することは適当ではないと考えております。
税制の在り方についてお尋ねをいただきました。
個人所得課税の課税最低限について議論いたします際は、生計費だけではなくて、公的サービスを賄う費用を広く分かち合う必要性などを総合的に考える必要がある、このように考えております。
消費税につきましては、消費を多く行う消費者ほど担税力があるものとして、より多くの消費税を負担いただく仕組みとなっております。消費税財源が充当される社会保障給付などによる受益は、低所得者ほど手厚く、所得の再分配につながる面もありますことから、負担面だけではなく、受益面と併せて評価すべきもの、このように考えております。なお、受益はかぎ括弧をつけております。
課税最低限の引上げと消費税減税についてお尋ねをいただきました。
給与所得者の課税最低限につきましては、所得税の基礎控除の額などが定額でありますことにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題に対応しますため、最後の基礎控除の引上げ以降の物価動向などを勘案し、基礎控除の額などを引き上げ、百二十三万円とすることとしております。
消費税につきましては、先ほど申し上げましたとおり、政府として、その引下げを行うことは適当ではないと考えておりますが、物価高対策という観点からは、賃上げこそ成長戦略の要との認識の下、物価上昇を上回る、物価上昇に負けない賃上げを起点といたしまして、国民の皆様方の所得と経済全体の生産性の向上を図りますため、成長力を強化する施策などを講じていくことといたしております。
インボイス制度についてでございますが、複数税率の下で課税の適正性を確保するためにこれは必要な制度でございまして、廃止することは考えておりません。インボイス制度に対する御不安、御懸念、これを抱かれる方もいらっしゃると思っておりまして、事業者からの相談に引き続き丁寧、誠実に対応いたしてまいります。
所得税や法人税の在り方についてでございますが、所得税について、金融所得課税の検討に当たりましては、税負担の公平性の確保が重要であります一方、貯蓄から投資への流れを引き続き推進し、一般の投資家が投資しやすい環境を損なわないようにすることも重要でございまして、これらを総合的に考えていく必要がございます。
法人税につきましては、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、めり張りのある法人税体系を構築していくという与党税制改正大綱で示されました考え方などを踏まえながら、不断の見直しを行っていく必要があるものと考えております。
研究開発税制についてでございますが、研究開発税制は、大企業、中小企業にかかわらず、将来の経済成長の礎となる企業の研究開発投資を後押しするものでございます。企業規模の大きな大企業の適用金額は大きいものの、適用件数で見ますれば、令和五年度の合計一万七千件のうち、中小企業の利用は約七〇%になっておりまして、大企業だけではなく、幅広い企業に御利用いただいておるものでございます。
本税制を活用して、我が国全体の研究開発投資が進んでいくことを期待をいたしております。
企業版ふるさと納税についてでございますが、企業版ふるさと納税につきましては、自治体が寄附企業に対して、寄附を行うことの代償として経済的な利益を供与することを禁止をいたしております。
地方創生二・〇の実現には民の力を生かすことが必要でございまして、本税制を通じました企業による地方への資金の流れの実現は重要であると考えております。
御指摘のような御懸念が生じることがありませんよう、令和七年度税制改正におきまして、一者応札で寄附企業などが受注した場合の国への報告と企業名の公表を義務づけるなど、制度の改善を図ることといたしております。
高額療養費制度の見直しについてでございます。
高齢化の進展や高額薬剤の急速な普及などによりまして、高額療養費の総額が医療費全体の倍のスピードで伸びております中で、現役世代を中心に保険料負担が大きな課題となっておりますことを踏まえ、今回の見直しを提案したところでございます。
日本が世界に誇るべき医療保険制度の大切なセーフティーネットであります高額療養費制度を将来にわたって堅持しつつ、保険料負担の抑制につなげることが必要でございます。その上で、さらに、当事者の方々のお声も真摯に受け止めつつ、可能な限り幅広い合意形成が図られますよう、提案の修正も含めまして対応をいたしてまいります。
訪問介護についてでございます。
高齢者になられましても住み慣れた地域でできる限り暮らしていただけますよう、在宅介護サービス基盤の整備を行うことは重要な課題でございます。御指摘のとおりであります。
訪問介護につきましては、令和六年度の介護報酬改定の影響の丁寧な把握に努めますとともに、処遇改善加算の更なる取得促進、先般の補正予算によります、地域の特性や事業所の規模などに応じたきめ細かい対策を着実に進めてまいります。
御指摘の町村を含め、訪問介護事業所が閉鎖されました場合には、近隣市町村の事業所などによる広域的な介護事業のサービス提供が行われておりまして、介護崩壊という御指摘は当たらないものと考えております。
以上でございます。(拍手)
○副議長(玄葉光一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
――――◇―――――
○副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十三分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 石破 茂君
総務大臣 村上誠一郎君
財務大臣
国務大臣 加藤 勝信君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
国土交通大臣 中野 洋昌君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 林 芳正君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 橘 慶一郎君
財務副大臣 斎藤 洋明君