衆議院

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第14号 令和7年4月1日(火曜日)

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令和七年四月一日(火曜日)

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 議事日程 第十二号

  令和七年四月一日

    午後一時開議

 一 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

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本日の会議に付した案件

 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、災害対策基本法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣坂井学君。

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 災害対策基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 本法律案は、令和六年能登半島地震から得られた教訓を今後に生かし、国による地方公共団体の応援体制の強化、被災者援護協力団体の登録制度の創設、広域一時滞在等における被災住民への情報提供の充実、地方公共団体における物資の備蓄状況の公表の義務化、救助の種類への福祉サービスの提供の追加、災害時における日本下水道事業団の業務の特例の創設、内閣府の防災監の新設等の措置を講じることで、災害対策の強化を図ることを目的としております。

 このような趣旨から、この度、本法律案を提案することとした次第であります。

 次に、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国による災害対応の強化についてであります。

 国は、高度かつ専門的な技術、知識又は経験を有する人材の確保等を推進することにより、地方公共団体を迅速かつ的確に応援するよう努めなければならないこととするとともに、災害応急対策について、緊急の必要がある場合、都道府県知事からの要求を待たずに応援をすることができること等としております。このほか、内閣府設置法において、内閣府に防災監を設置することとしております。

 第二に、被災者に対する福祉的支援等の充実についてであります。

 災害救助法における救助の種類に福祉サービスの提供を追加し、福祉的支援を強化するとともに、災害応急対策を行う責任を有する者は、相互に連携しつつ、情報通信技術等も活用しながら、避難所の運営状況及び被災者の状況の把握等に努めなければならないこととしております。

 第三に、民間等と連携した支援体制の構築についてであります。

 国及び地方公共団体に協力して、避難所の運営、炊き出し等の業務を行う団体は、内閣総理大臣の登録を受けることができることとし、協力の要求及び被災者の個人情報の提供を可能とすることとしております。

 第四に、広域的に避難する被災住民に対する支援の充実についてであります。

 広域で一時的に避難する被災住民の受入れを円滑に行い、滞在先においても適切な支援が受けられるよう、広域一時滞在の協議を行う市町村長の間で被災住民の情報を共有するとともに、被災住民に対して援護に関する情報を提供することとしております。また、市町村長が被災者台帳を作成するに当たり、他の都道府県に滞在する被災者の情報を把握できるよう、都道府県知事による必要な協力ができることとしております。

 第五に、防災に必要な物資の確保についてであります。

 地方公共団体は、毎年一回、物資の備蓄の状況を公表しなければならないこととしております。

 第六に、インフラの復旧及び復興の迅速化についてであります。

 水道法において、日本下水道事業団が災害により損傷した水道施設の工事を行うことができることとするとともに、水道事業者は、配水管の復旧に必要な作業を行うため、水の供給を受ける者の土地に立ち入ることができることとしております。また、災害の定義の例示に、地盤の液状化を追加するとともに、宅地の耐震化に関する事項の実施に努めることとしております。加えて、復興まちづくりを推進するため、大規模災害からの復興に関する法律において、一団地の復興拠点市街地形成施設に関する都市計画を定めることができる災害の範囲を拡大することとしております。

 その他、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、本法律案の趣旨及びその内容の概要であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 災害対策基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。岡島一正君。

    〔岡島一正君登壇〕

岡島一正君 立憲民主党の岡島一正です。

 私は、会派を代表して、災害対策基本法等の一部を改正する法律案について質疑を行います。(拍手)

 冒頭、岩手県大船渡市、愛媛県、岡山県など、各地の山林火災で被害に遭われた方々に対しまして、心よりお見舞いを申し上げます。また、消火活動に従事された方々に敬意を表します。

 また、ミャンマー大地震で、ミャンマーとタイで甚大な被害が発生しています。亡くなられた方々への御冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。日本政府においては、被害が甚大なミャンマーの方々への最大限の支援を講じますようお願い申し上げ、質疑に入りたいと思います。

 さて、政府は、今回の災害対策基本法等の改正に当たり、昨年十二月の二十日、官邸で防災立国推進閣僚会議を開いておりました。議事録を見ますと、石破総理大臣は、本気の事前防災を進めると述べています。そして、それは、人命、人権最優先の防災立国を確立するためとしていました。

 防災立国、それが我が国が目指す国のありようであることには、私も賛成です。ただし、石破総理が政府の防災対策について本気の事前防災とキャッチフレーズを語ったのは、違和感を覚えます。石破総理は、これまでの自民党政権の防災政策は本気ではなかった、本気ではない防災政策の下で、その下では国民への責任は果たせていなかったと認識していたということなのでしょうか。

 私は、現在も東日本大震災復興・防災・災害対策に関する特別委員会に所属しておりますが、二〇二一年秋まで災害対策特別委員会で野党の筆頭理事を務めさせていただいておりました頃を振り返ると、委員の方々は、与野党を問わず、皆さん一致して本気の防災対策に取り組んでおられました。災害政策に関しては、政党を問わず、委員も、そして政府も、いつも本気でした。石破総理が事前防災に取り組むと言うならば、防災立国を目指す事前防災と語るべきだったのではないでしょうか。

 本日、私は、石破政権に対して、私たち立憲民主党の災害対策に対する本気の思いをも改めてお示しいたしたく、壇上に立ちました。与野党を問わず国会を挙げての災害対策に向けて、私は、災害対策基本法等の改正について、コンストラクティブエンゲージメント、つまり建設的関与として質疑を行います。坂井大臣、赤澤大臣におかれましては、是非とも真摯にお聞きいただき、御答弁いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 大船渡市の山林火災では、二次災害防止のため、一部の送電を停止していましたほか、今治市においても市内全域が停電になる可能性が危惧されたことなどから、山林火災による生活インフラへの大規模な影響を露呈いたしました。

 坂井大臣におかれましては、三月十六日に大船渡市の被害状況を視察されたと聞いております。最近頻発する山林火災を見て、どのような教訓を得たのか、今後の対応に向けての見解をお伺いいたします。

 本法律案の内容について質問をいたします。

 能登半島地震では、発災当初、半島特有の道路事情のほか、ボランティアの受入れ体制が整っておらず混乱したことが、政府の災害対応検討ワーキンググループの報告書で指摘されています。

 今改正案では、国や自治体に協力して避難所の運営や炊き出しなどの業務を行う団体を被災者援護協力団体として、国が事前の審査会を通して登録する制度を創設して、これにより登録を受けた団体は、いわば国によるお墨つきを受け、災害発生直後で混乱しかねない自治体側も、登録団体を信頼して協力を求めることが可能となることであります。

 登録には実績が相当程度あることが要件とされていて、慎重な審議も必要であると思います。しかし、その反面、実績の乏しい団体は、幾らボランティア意欲があっても、何度か災害を経ないと登録団体になれないということであります。経験や実績の少ないボランティア団体や個人ボランティアの意欲を損なうことのないよう制度を運用されることを期待しますが、大臣の見解を伺います。

 また、民間の力は必要ですが、これは本来、国が担うべき公助の民間任せ、官製ボランティアとなるとの懸念も生まれます。これについても、坂井大臣の御見解をお伺いいたします。

 災害対策基本法等の改正に当たり、政府は、内閣府に防災監という次官級ポストを新設するとしています。現在の内閣府防災は局長級の政策統括官が事務方トップであることから、各省との連携を進めていくに当たっては次官級の職員を置くことは必要であると内閣府から説明を受けていますが、役職という形だけでは十分ではなく、いかに機能させるか、それが問われています。

 石破内閣が意図する防災監の役割とは何か、そして、それによって今後どのように国の防災の対応が変わっていくのかを坂井防災担当大臣に伺います。

 防災監は、防災担当大臣を助け、災害に関する事務を統理すると規定されていますが、その事務からは原子力防災に関するものが除かれています。東日本大震災による福島第一原発事故以降、原子力災害を含めた複合災害への対応も焦点となっております。

 防災監が災害対応の司令塔をうたう一方で、原子力災害は別枠というのはなぜなのでしょうか。防災の司令塔には原子力防災を含めた一体的な組織、運用が求められていると考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

 防災監は、石破総理がアメリカの連邦緊急事態管理庁、FEMAに倣う組織として令和八年度の設置を目指している防災庁の長官とも目される役職だと思われます。防災庁の設置に向けて、政府は今年度から、内閣府の予算を約百四十六億円、定員を二百二十人へと、前年度に比べ倍増したと承知しております。私は、政府の防災体制強化への姿勢には賛成です。

 しかし、安倍政権時代には、政府は、日本版FEMAの設置については否定的な答弁ばかりでした。それが、なぜ設置に前向きと一変したのでしょうか。

 そもそも、平成二十七年に危機管理組織の在り方に係る副大臣会合が出した報告書において、日本版FEMAのような危機管理対応官庁の創設等の抜本的な組織体制の見直しの検討については、積極的な必要性は直ちに見出し難いと結論が出されました。

 当時の副大臣会合の座長は、現在の赤澤防災庁設置準備担当大臣です。赤澤大臣は、現在の内閣府防災の体制はパンク寸前だとおっしゃっていますが、そうであるならば、これまでの政府の防災体制は誤りだったということなのでしょうか。防災庁が昨年暮れになって突然に必要となった理由、それまでと何が急に変わったのか、災害対策上の客観的な説明を赤澤大臣に伺いたいと思います。

 米国のFEMAには、EMI、エマージェンシー・マネジメント・インスティテュートという部局があり、国や州、地方の危機管理担当者、ボランティア組織を対象にして、危機管理訓練、教育をしております。防災力の強化には、組織の強化、連携もさることながら、実際に連携に当たる人と人の連携、そうした訓練こそが必要となっております。

 防災庁を目指すなら、組織の人材をつくるEMIのような防災教育機関こそ検討すべきではないでしょうか。赤澤大臣の見解をお伺いいたします。

 福祉関係者への従事命令についてお伺いします。

 能登半島地震において、災害関連死とされた方は直接死とされた方の人数を優に超えました。この状況を踏まえ、本改正案には、災害救助法による救助の種類に福祉サービスの提供が加えられます。これは、被災者支援の充実につながり、災害関連死を減らす結果、結果として犠牲者の総数を減らすことが可能となるでしょう。

 しかし、福祉関係者について、単純に従事命令の対象に加えることは看過できません。

 そもそも、従事命令は、国民各自の自発的な協力が得られず、協力が欠かせない場合に、最後の手段として都道府県知事に付与された強制措置の一つで、一定の医療、土木建築工事又は輸送関係者を救助に関する業務に従事させる、そうした権限です。命令に従わない者は、六か月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処せられることになっています。

 この点につきましては、能登半島地震発災後、地元自治体の声も聞きながら、我が党におきましても議論を重ねてまいりました。その中では、福祉関係者という幅広い分野にわたる職域の概念を政令により限定をかけるとはいえ、そのまま従事命令の対象とし、罰則の対象にもすることにはためらいを覚える、そもそも自発性の強い福祉関係者に対して罰則規定は不要ではないかという意見が大半でした。

 福祉関係者については、従事命令の対象にしたとしても、罰則規定は要らない、不要と考えます。坂井大臣にお考えを伺います。

 この議論の際に思い返されたのは東日本大震災です。東日本大震災では、多くの公務員や消防団員がその職務において亡くなっています。現在の防災基本計画は、この教訓も踏まえて作られたものであると承知しております。

 石破総理は、人命、人権最優先の防災立国を構築すると発言されていますが、この発言や現行の防災基本計画と、刑事罰による威嚇つき従事命令とは相入れないと受け取れます。坂井大臣、政府のお考えをお示しください。

 結びに、私は、自然災害に象徴される災害対策には、政党や政派、個々の政治家の壁はあってはならないと考えています。自然のもたらす災害から、社会事象や人によってもたらされる社会的災害や複合災害など様々ですが、どの災害に対しても、国会、政府は迅速にして冷静に協力して取り組むべきものであると考えています。議員の皆さん、いつ、どんな災害があっても対応できる国会として、災害対策を進めてまいりましょう。

 これにて私の質疑は終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 御質問にお答えをいたします。

 林野火災についてお尋ねがありました。

 政府においては、火災を早期に鎮圧すべく、消防や自衛隊などが一体となって昼夜を分かたず消火活動に従事し、全力で対応に当たるとともに、被災自治体と緊密に連携をし、温かい食事を提供するなど、良好な生活環境の確保に努めてきたところです。

 私自身も、三月十六日に大船渡市を訪れ、林業、漁業の被災現場、家屋が焼失した集落、避難所を視察し、被害の甚大さを認識するとともに、林野火災の対応に当たっては政府一体となって取り組む必要があると改めて実感をいたしました。

 引き続き、被災者の皆様が一日も早く元の生活を取り戻すことができるよう、住まいや生業の再建等、必要な支援を行ってまいります。

 被災者援護協力団体制度についてお尋ねがありました。

 被災者援護協力団体の登録に当たっては、活動実績を一つの要件としています。

 活動実績の確認に当たっては、形式的な確認にとどまらず、構成員の経験や自治体との連携状況等を踏まえて総合的に確認することで、意欲と能力のある団体を登録できるよう検討してまいります。

 また、NPO等の自主性を尊重するとともに、登録団体を含む民間団体と行政が適切な役割分担により被災者支援を実施できるよう、適切な官民連携の推進に努めてまいります。

 防災監の役割等についてお尋ねがありました。

 防災監は、世界有数の災害発生国である我が国において、次なる大規模災害に備え、人命、人権最優先の防災立国を構築するため、災害対応における事務レベルの司令塔として設置するものです。

 事前防災から発災時の初動、被災者支援や復旧復興まで、防災監が一貫して司令塔となり、関係省庁の幹部や自治体の首長等との高度な調整を通じて、必要な施策を的確に実現することにより、我が国の災害対応力の向上につながるものと考えております。

 防災監の所掌についてお尋ねがありました。

 原子力防災の取組には高度な専門性が求められます。自然災害の司令塔の役割を担う防災監の所掌に原子力防災に関するものを含めておりません。

 なお、原子力災害と自然災害の複合災害が発生した際には、原子力災害対策本部と緊急災害対策本部等との合同会議を開催し、密接に連携して災害対応に当たることとしております。

 福祉関係者に対する従事命令及び罰則についてお尋ねがありました。

 災害時における福祉サービスの提供を充実させ、災害関連死の防止を図るためには、福祉関係者の皆様の御協力は極めて重要です。

 現行の災害救助法においては、災害発生時に、人命を守り、被災者の保護を図るため、医療、土木建築工事又は輸送関係者に対して、罰則を伴う従事命令について規定しているところです。

 政府の改正案においては、災害関連死の防止を図る観点からも、被災者への福祉サービスの提供が確実に行われるよう、福祉関係者に対して、医療、土木建築工事又は輸送関係者と同様の措置を講じることとしています。

 これらは、人命を守るに当たって、万が一の場合に備えた、いわば最後の手段として規定されるものであり、これまで適用実績はありません。改正法の運用に当たっては、災害派遣福祉チーム、DWATの活動範囲を拡大し、福祉サービスの提供を充実させることを想定していますが、これまでと同様、福祉関係者の皆様の御協力により、被災者への支援が円滑に行われるよう取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕

国務大臣(赤澤亮正君) 岡島一正議員から二問お尋ねをいただきました。

 今から十年前の政府の報告書に御言及の上、これまでの政府の防災体制や防災庁の必要性についてお尋ねがありました。

 我が国は、世界有数の災害発生国であり、平成二十七年に御指摘の関係副大臣による報告書が出されて以降のこの十年間でも、災害は頻発化、激甚化の一途をたどり、平成二十八年熊本地震や平成三十年七月豪雨、あるいは令和六年能登半島地震など、数百名規模の犠牲を伴う自然災害が数多く発生をしております。現在の体制では、事態対処に最大限注力することにより、防災施策に係る企画立案業務は中断せざるを得ないのが実情です。

 頻発、激甚化する風水害、南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、富士山噴火などを始めとする巨大自然災害から我が国と国民を守り抜くため、司令塔機能を含む事態対処の機能を大幅に強化するとともに、防災業務の企画立案機能を抜本的に強化し、本気の事前防災に取り組む必要があると考えております。

 このため、平時、発災時の災害対応の司令塔となる防災庁を設置することで、人命、人権最優先の防災立国を実現し、我が国を世界一の防災大国にするべく取り組んでまいります。

 防災教育機関についてお尋ねがありました。

 令和八年度中の設置に向けて準備を進めている防災庁は、専任の大臣を置き、十分な数の災害対応のエキスパートをそろえた組織とすることとしております。国の職員の育成に加え、自治体職員や民間の防災人材の育成も重要です。

 現在、防災分野の専門家から成る有識者会議を開催しており、様々な御意見、御提案を賜りながら、幅広い防災人材の育成に必要な体制も含め、防災庁の設置に向けた検討を加速してまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 林佑美君。

    〔林佑美君登壇〕

林佑美君 日本維新の会、林佑美です。

 私は、会派を代表して、災害対策基本法等の一部を改正する法律案に対して質問いたします。(拍手)

 地震、津波、風水害などが頻発する災害大国とも言える我が国において、国民の生命と財産を守る上で、万全な災害対策を講じることは最重要課題です。

 最近も、岩手、岡山、愛媛など、全国各地で連続して大規模な山林火災、山火事が発生し、多くの人たちが家を失い、死者も出るなど、大きな被害が生じています。

 また、県の内外から集まった多くの消防隊員、消防団員、自衛隊員、警察官が、昼夜を分かたず消火救難活動に当たられました。心から敬意と感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

 さて、今回の一連の山火事は、空気が乾燥していたことが延焼拡大の大きな要因であることは明らかですが、それだけでは火災にはなりません。火災の原因については現在究明中とのことですが、これだけの被害を出したのですから、曖昧にすることなく、原因を特定し、今後の防火対策に生かすことが求められます。

 令和五年に発生した山林火災は千二百九十九件ですが、その原因の一位はたき火で四百十六件、三二%にもなります。たばこは四十九件、三・八%でした。はっきりと言えることは、特に空気が乾燥する季節において、たき火をしない、歩きたばこをしないなど、当たり前のことをしっかりと守ることが重要だということです。

 今、山火事の怖さに対する社会的関心が高くなっている中で、山火事での火の不始末を起こさないための一層の啓発活動を強化すべきと思いますが、いかがですか。総務副大臣の答弁を求めます。

 どの地域の山火事も、懸命の消火活動にもかかわらず、制圧、鎮火までに長い日数を要しました。斜面地であること、消火に使える水利がないことなど、消火を困難にする要因は幾つもあると思います。

 だからこそ、今回の被災を通じて、山火事の発生や延焼を防ぐための消火体制に関する課題を明らかにして、今後の迅速かつ効果的な消火を可能にする体制をどうつくるかについて、直ちに検討を始めることが重要だと考えますが、総務副大臣の所見を伺います。

 今回、被災された方々は、通常の火災とは異なり、個々の火の用心では防ぎようのない大火に巻き込まれています。今回の被災者の今後の生活再建に向け、政府を挙げて、なりわいや住宅の再建など、ニーズに応じた十分な支援を行うべきだと思いますが、被災者支援に対する防災担当大臣の決意をお聞かせください。

 以下、今回の改正案の柱に沿って具体的に質問します。

 第一に、国による災害対応の強化についてです。

 国は、地方公共団体から要請を待たず、先手で支援するといいますが、これを実現するためには、発災直後からの素早い情報の収集と集中、分析力が必要となります。しかし、大災害であればあるほど、情報網が混乱することが予想されます。混乱した状況下、限られた人員の中でどうやって必要な情報を集めるのか、防災担当大臣に具体策をお聞きいたします。

 さらに、応援組織体制を整備、強化するとしていますが、いざというときに動員をかけても、災害対応の経験もノウハウもない人たちばかりでは、活躍は期待できません。やはり、平時からの取組が重要です。平時において、どうやって応援組織体制を維持するのですか。防災担当大臣の答弁を求めます。

 初動からの迅速な災害対応では、やはり自衛隊の力が不可欠です。

 しかし、その自衛隊員の処遇は、任務の重大性、過酷性に比べて、余りに低いレベルだと言わざるを得ません。今般、一定の処遇改善が行われることになりましたが、まだまだ不十分です。災害対応という困難を伴う任務を十分に遂行してもらうためにも、災害派遣される自衛隊員の処遇の更なる抜本的改善を求めるものですが、いかがですか。防衛大臣の答弁を求めます。

 第二に、被災者支援の充実についてです。

 改正案には、福祉サービスの提供が追加されました。しかし、福祉を必要とする人たちの状況は様々です。

 過去の災害では、例えば、避難所での団体生活になじめないような障害を持つお子さんがいる家族が安全な避難所を利用できなかったなどの声を多数耳にしているところです。こうした事例にはどのように対処することになるのですか。防災担当大臣の明確な答弁を求めます。

 また、いわゆる福祉避難所について、抜本的な増設が必要だと考えます。様々な障害の特性に応じた多様な避難所を設置すべきと思いますが、いかがですか。併せてお答えください。

 石破総理大臣は、体育館の床に雑魚寝の避難所スタイルを改めるべきだと、常日頃から公言されています。総理の主張どおりに、雑魚寝スタイルをやめて、一家族一室の避難施設に移行させるべきだと思いますが、その実現可能性について、防災担当大臣の所見を伺います。

 多くの国民が不安を感じている南海トラフ地震について、政府の中央防災会議が昨日公表した報告書によりますと、すぐに避難する人の割合を現在想定している二〇%から七〇%に高められれば、津波による死者数を現在の想定である二十一万五千人から九万四千人にまで抑えられることができるとしています。しかし、地震発生から津波到達までの時間が極めて短いことも想定されています。

 足の不自由な方、高齢者や障害者は、安全な高台への移動が困難です。津波の際の避難は徒歩が原則とされていますが、自力で歩けない方は自動車に頼らざるを得ません。防災大臣は、この状況をどうお考えですか。

 二月十四日の予算委員会において、私が避難時の自動車利用について質問したところ、坂井大臣は、各自治体において検討することをお願いしているという趣旨の答弁をされました。地域の地理や交通事情をよく知っているのは、その土地の自治体であることはもちろんです。しかし、何もかも自治体任せでは、いつまでたっても、命を守る避難計画は完成しません。

 まず、自動車による避難では、その利点とともに渋滞などのリスクを洗い出すシミュレーションを行い、検証することが必要です。しかし、小さな自治体では、そうしたシミュレーションの実施は難しいでしょう。国が先導し、十分なシミュレーションを行った上で、自動車を利用する避難方法を含む移動困難者の有効な避難計画のモデルを各自治体に示すべきと思いますが、防災担当大臣の所見を伺います。

 近くに高台がない地域では、津波避難ビルや津波避難タワーが住民の命綱となります。

 しかし、既存のビルを一時避難の施設に利用するには、平時は、防犯上、部外者の侵入を防ぐ一方、津波警報の発令時には、一転して不特定多数の者を受け入れることが必要になります。建物の一部を改修することが必要になることもあり、特に民間ビルの所有者には大きな負担となることが課題となっています。

 津波避難ビルの指定を増やす取組の課題は何か、その課題の解決の具体方法はありますか。

 また、津波避難タワーは、すぐ近くの避難場所として住民に安心感を与えるだけではなく、平時において、海の景色を望める展望台として有効に活用できます。海辺の道の駅などに設置すれば、観光施設にもなります。津波避難タワーの増設について、併せて防災担当大臣の所見を伺います。

 改正案では、新たに、被災者救護協力団体についての規定が設けられました。

 被災者の救援活動において、民間のボランティア団体の皆さんに活躍してもらうことはとても有益なことですが、心配なこともあります。一つは、登録時には活発に活動している団体であっても、年月を経る中で、高齢化や引っ越しなどで活動が停滞していることも考えないといけません。常日頃から、連絡、連携で団体の状況を把握していくことが必要です。

 この協力団体については、災害時だけではなく、平時から国や自治体との連携を図ることが重要であり、その具体的方策を検討すべきですが、いかがですか。

 また、ボランティアを装いながら被災地でいわゆる火事場泥棒行為を行う者がいることも、残念ながら事実です。

 改正案の第三十三条の二では、こうした犯罪や非行を防ぐために、登録被災者救護協力団体でない者は、被災者救護協力業務を行うに際し、登録を受けているものの表示又はこれと紛らわしい表示をしてはならないとの規定が設けられました。しかし、これだけでは、一般の被災者には本物と偽物の違いは見分けられません。不正表示を禁止するだけではなく、正しい表示を示すことで、被災者とボランティアの双方に安心してもらうことが大事です。

 ボランティアを偽装した者の犯罪を防ぐためにも、登録した協力団体が被災地で活動する際には、分かりやすい標識を着用してもらうことが必要だと思いますが、いかがですか。

 以上、協力団体に関する二点について、防災担当大臣の答弁を求めます。

 改正案では、防災DXが掲げられました。

 しかし、能登地震では、通信インフラが破壊され、情報遮断が起きました。避難所にもWiFi環境がなく、被災された住民は、日頃使っていたメールやSNSなど、家族や友達との会話も、連絡も取ることができなくなる事態が起きていました。この事態を解決したのがスターリンクなどの衛星通信でした。防災DXは、行政機関のみに役立つだけではなく、住民の日常生活を守ることにも使われるべきだと思います。

 災害時のスターリンクの活用について、どのように評価されていますか。また、こうした衛星通信の設備をもっと充実させるべきと思いますが、いかがですか。総務副大臣の答弁を求めます。

 改正案では、地方公共団体は、年に一回、備蓄状況を公表することとされています。

 公表することはよいのですが、住民がこれに安心して各家庭での備蓄を怠るようになっては本末転倒です。一方で、各家庭での過剰な備蓄が買占めとなって、品不足を招くことがあってはなりません。行政による備蓄と各家庭における備蓄はそれぞれ重要であり、その意義も含めて、正しい知識を国民に広報することが必要ではありませんか。防災担当大臣の答弁を求めます。

 最後に、インフラ復旧復興の迅速化についてです。

 改正案では、水道復旧の迅速化が掲げられました。能登地震では今なお水道が使えない地域が残されており、復旧の迅速化は切実です。同時に、次善の策として、給水車の更なる充実や井戸水の生活水への利用など、災害時に活用できる水を広げる対策も検討すべきと思いますが、いかがですか。水の確保に関する国交大臣の所見を伺います。

 埼玉県八潮市の道路陥没事故では、下水道管が破断したため、住民は水の使用を制限される事態となり、改めて下水道の重要性を認識させられました。下水道復旧の迅速化はどう進めるのか、国交大臣の答弁を求めます。

 日本維新の会は、災害に強い国づくりを掲げ、迅速で実効性のある災害対策を重視してきました。引き続き、現場目線で課題に向き合い、誰一人取り残さない防災・減災対策の実現に全力を尽くすことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 御質問にお答えいたします。

 林野火災の被災者支援についてお尋ねがありました。

 政府においては、火災を早期に鎮圧すべく、消防や自衛隊などが一体となって昼夜を分かたず消火活動に従事し、全力で対応に当たってきました。

 私自身、三月十六日に大船渡市を訪れ、林業、漁業の被災現場、家屋が焼失した集落、避難所を視察し、被害の甚大さを実感するとともに、被災された方の生活再建に取り組む決意を新たにしました。

 これまで、岩手県とも連携し、災害救助法や被災者生活再建支援法の適用、激甚災害の指定を行ったほか、森林の復旧や漁具倉庫の再建、災害廃棄物の処分への支援など、政府一丸となって取り組むこととしております。

 また、岡山県及び愛媛県などにおいても、被災自治体と連携して、温かい食事の提供等、被災者の良好な生活環境の確保を図ってきたところです。

 引き続き、被災者の皆様が一日も早く元の生活を取り戻すことができるよう、政府一体となって必要な支援を行ってまいります。

 災害時の情報収集体制についてのお尋ねがありました。

 発災時においては、あらゆる手段を用いて被害の全体像を速やかに把握し、それを基に関係機関が連携して対応に当たることが重要です。

 このため、能登半島地震の教訓等も踏まえ、ヘリコプター搭載カメラ、定点カメラなど、様々な手段を用いるとともに、被災自治体とも迅速にホットラインを構築し、被害状況等に関する情報を収集することとしております。

 また、新総合防災情報システムの活用により、現場の情報を把握し、リアルタイムで共有するなど、限られた人員の中でも迅速に情報把握を可能とする体制を構築することで、国による支援につなげてまいります。

 応援組織体制の維持についてのお尋ねがありました。

 能登半島地震においては、災害応急対策に関する国の応援組織、例えば、国土交通省のTEC―FORCE等が活動しました。

 このような国の応援組織が果たす役割は重要であり、平時から、体制を構築し、災害に備えることが重要です。

 このため、高度かつ専門的な技術、知識、経験を有する人材を平時から育成し、応援に即応できるチームを確保するとともに、民間等との連携も進めることで、応援組織の体制の維持と迅速的確な応援につなげていきます。

 障害を抱える方々の避難所利用、福祉避難所の増設、避難所環境の改善についてお尋ねがありました。

 障害を抱える方々やその御家族が避難所を利用しにくいという声があることについては承知しています。

 障害のある子供たちが安心して避難生活を送ることができるよう、例えば、内閣府と文部科学省が連携して、特別支援学校を障害のある子供の福祉避難所に指定するよう促す通知を発出しています。

 福祉避難所については、協定の締結等により、増加に努めているとともに、一般の避難所においても、障害者等のニーズを踏まえた要配慮者スペースの設置を促し、障害者等に配慮した避難所の確保を図っています。

 また、避難所において良好な生活環境を確保することは重要と考えており、パーティションテントを設置し、プライバシー空間の確保を図るとともに、ホテルや旅館等への避難を促しているところでございます。

 高齢者、障害者等の自動車での避難についてお尋ねがありました。

 津波から避難を行うに当たっては、地震による道路等の損傷や液状化等による交通障害、渋滞が発生することによる避難支援活動への支障等が考えられることから、徒歩を原則としています。

 一方、市町村は、高齢者、障害者といった要配慮者の存在や津波到達時間等、地域の実情を踏まえ、やむを得ず車両で避難せざるを得ない場合には、自動車で安全かつ確実に避難できる方策をあらかじめ検討することとしています。

 津波からの避難は、訓練等を通じて具体的かつ実践的な避難計画の策定を行うとともに、避難路等の整備、確保等、町づくりと一体となって地域防災力の向上を図ることが重要であり、政府としては、津波避難対策におけるマニュアルを整備し、使用していただいております。

 引き続き、地域の課題に耳を傾けながら、確実な避難ができるよう、市町村への支援に努めてまいります。

 被災者援護協力団体の自治体との連携と、ボランティアを偽装した者の犯罪防止についてお尋ねがありました。

 本制度は、災害時において円滑かつ効果的な被災者支援が行われるよう、登録団体情報のデータベースにより、全国の自治体に団体の活動内容や活動実績等を広く共有することで、平時からの連携体制づくりの後押しを図るものです。

 制度の適切な運用を図るため、登録団体であることを表す腕章を着用するなどの方策により、活動が円滑に行われるよう検討してまいります。

 備蓄の広報についてお尋ねがありました。

 政府としては、自治体等における備蓄を推進するとともに、大規模災害時には行政による支援が直ちに届かないおそれがあることから、最低でも三日間、可能な限り一週間分程度の備蓄を国民の皆様にお願いしています。

 いざ災害が起きた際の水や食料など生活必需品の備蓄については、自治体、関係機関から地域住民への普及啓発、政府広報を通じた国民への呼びかけ、パンフレットの作成やインターネットでの周知などを通じて、国民への普及啓発に努めています。

 引き続き、備蓄の正しい知識、意義について、国民への普及啓発に努めてまいります。(拍手)

    〔副大臣冨樫博之君登壇〕

副大臣(冨樫博之君) 林議員からの御質問にお答えいたします。

 まず、林野火災を防止するための啓発活動の強化について御質問をいただきました。

 林野火災については、たき火や火入れなど、人為的な要因による火災の割合が高いことから、総務省消防庁では、これまで、予防の徹底など、啓発活動の取組を進めてきたところです。

 今後も、自治体、消防本部、林野庁などとの連携を更に強化し、広報啓発活動などを一層充実させてまいります。

 次に、今般の林野火災を踏まえた効果的な消火体制の構築について質問がありました。

 今般の林野火災では、林野の焼損が広範に及ぶなど、住民生活に大きな影響を及ぼしたところです。

 このため、林野火災に対する今後の消火体制の在り方については、今般の火災における消防活動を振り返った上で、より効果的な対応に向け、消防力の充実強化に努めてまいります。

 最後に、災害時における衛星通信の活用に対する評価と衛星インターネット機器を充実させることについて質問がありました。

 令和六年能登半島地震では、衛星インターネット機器を避難所などに設置することにより、迅速な通信の確保が図られ、その有効性が確認されたと承知しております。

 衛星インターネット機器については、自治体などにおいて導入が進められているほか、総務省や通信事業者が保有する通信機器を災害発生時に自治体などに貸し出す取組も行っております。

 避難場所などにおける通信の確保がより迅速に進むよう、こうした取組について一層の周知を行うとともに、通信機器の設置を支援する体制の整備などに取り組んでまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 林佑美議員にお答えいたします。

 自衛隊員の処遇改善についてお尋ねがありました。

 近年、大規模かつ長期間の災害派遣活動が増えてきており、災害派遣活動に従事する現場の自衛隊員には、従来以上に精神的、肉体的な負担が増大していることも事実であります。そのため、災害派遣に従事した隊員にはしっかりと災害派遣手当を支給するとともに、各種装備品の充実などに取り組んでいるところであります。

 具体的には、災害派遣活動に従事する隊員が身に着ける被服、靴下、手袋の耐久性や快適性といった品質改善や数量の見直しの実施、活動中の食事の充実、そして、災害派遣活動に従事する隊員の留守家族に対する支援も充実させてきております。加えて、代休の確実な取得を通じまして、隊員の体力回復にも留意をしております。

 その上で、昨年、石破総理を議長とする関係閣僚会議で取りまとめた基本方針に基づき、災害派遣手当を増額することといたしました。具体的には、令和七年度予算において、一人当たり日額千六百二十円から二千百六十円に引き上げることとしております。

 防衛大臣として、現場の自衛隊員が厳しい任務に安心して従事できますように、引き続き、隊員の処遇や生活、勤務環境の改善に全力を挙げて取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣中野洋昌君登壇〕

国務大臣(中野洋昌君) 林佑美議員にお答え申し上げます。

 まず、災害時に活用できる水の確保についてお尋ねがありました。

 能登半島地震では、全国の水道事業者による応急給水活動に加え、井戸水や可搬式浄水装置の活用などにより、水の確保を図った事例がございます。

 これらを踏まえ、先月策定した災害時地下水利用ガイドラインを広く自治体に周知することなどにより、災害用井戸の活用を促進するとともに、令和七年度より、都道府県等による可搬式浄水施設の配備や水道事業者による給水車の追加配備について、新たに支援をしてまいります。

 引き続き、災害時に被災地の状況に合わせて適切かつ迅速に水を供給できるように、関係省庁と連携し、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、下水道の迅速な復旧についてお尋ねがありました。

 災害時に被災地の皆様に平時と同様に水を使っていただくためには、水道と下水道の両方が使用となることが必要であり、上下水道一体となった一刻も早い復旧が重要であります。

 能登半島地震では、国からも現地に職員を派遣し、日本下水道事業団などとも連携して、仮設の配管や浄化槽の設置など、水道と下水道の復旧工程を共有しながら、効率的に復旧を進めました。

 このような取組を踏まえ、災害対応に係る各種マニュアルの拡充、見直しなどを実施し、更なる復旧の迅速化に取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 鳩山紀一郎君。

    〔鳩山紀一郎君登壇〕

鳩山紀一郎君 国民民主党・無所属クラブの鳩山紀一郎でございます。

 ただいま議題となりました災害対策基本法等の一部を改正する法律案について、会派を代表いたしまして質問いたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、一言申し上げます。

 去る三月二十八日、ミャンマー中部において、過去百年で最大規模とされるマグニチュード七・七の大地震が発生し、ミャンマー国内のみならず、隣国タイにおいても多くの貴い命が失われ、甚大な被害がもたらされました。犠牲となられた方々に対し心より哀悼の意を表するとともに、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。

 被災地では、現在も余震が続き、インフラの寸断や避難生活など、極めて厳しい状況が続いていると報じられています。日本としても、災害大国としてのノウハウを生かし、国際社会と連携しながら、迅速かつ実効性のある支援を行っていくべきであると強く感じております。この思いを申し上げた上で、質問に入らせていただきます。

 改めて言うまでもなく、日本は世界有数の災害大国です。この国に生きるということは、災害と常に向き合いながら生きるということを意味いたします。それゆえ、私たちは、自然の脅威を前提に、いかにして被害を最小限に抑え、迅速に立ち上がるかという知恵と備えを持たなければなりません。

 同時に、災害から国民の命と財産を守ることは国家の責務であるということを、私たちは忘れてはなりません。国には、多様な災害を想定した上で、合理的かつ実効性のある対策を整えておく責務があります。本改正案は、令和六年能登半島地震を始めとするこれまでの災害の教訓を踏まえ、より現実的で機能的な災害対策を実現するためのものであると認識しております。

 そうした中、本年二月下旬、岩手県大船渡市で発生した林野火災により、実に二千九百ヘクタールもの広大な森林が焼失するという深刻な事態となりました。さらに、その後も、愛媛県今治市や岡山県岡山市など、各地で例年を上回る規模の林野火災が相次いで発生しております。

 林野火災は、その特性上、いかに初期の段階で火勢を抑え込むかが被害の規模を左右いたします。リモートセンシング技術を用いた早期検知に関する研究は、既に二十年ほど前から行われていたと承知しておりますが、現時点でその技術が実用レベルに達しているとは言い難く、今回の火災においても、NASAのFIRMSなど、海外の火災監視サイトを通じて延焼状況を把握するにとどまっていたのが現状であります。

 林野火災の多くは、たき火や火入れなどの人為的要因によるものであり、初動対応においてアクセスが極端に困難になるケースは少ないと考えられます。であればこそ、もしリモートセンシングなどの研究開発が進み、初期段階での検知と対応が可能となっていれば、ここまで大規模な被害には至らなかったのではないでしょうか。あべ文部科学大臣の御見解を伺います。また、これまで、この分野の研究開発が十分には進まなかった背景についても併せて御説明ください。

 林野火災が時として激甚災害に指定されるほどの甚大な被害をもたらし得ることが明らかとなった以上、リモートセンシングやUAVといった先端技術を活用し、林野火災の予防、監視に積極的に取り組んでいくべきではないでしょうか。坂井防災担当大臣の御見解をお聞かせください。

 あわせて、本法改正を機に、災害の定義にこれまで含まれていなかった林野火災についても、地盤の液状化と同様に、明示的に加えるべきと考えますが、いかがでしょうか。

 次に、国による地方自治体への支援体制の強化についてお伺いいたします。

 今回の法改正では、国が、地方公共団体からの要請を待たずに、先回りして支援を行えるようになることが盛り込まれております。これは一歩前進でありますが、実際の対応を担うのは現場の地方自治体です。そのため、たとえ法律で指示系統が明確に定められていても、現場での連携がうまくいかない可能性があります。

 例えば、災害時にボランティアの受入れを担うのは、多くの場合、市区町村の社会福祉協議会ですが、大量のボランティアが一度に訪れた場合、いつ、どこで、どのような作業をしてもらうのかといった調整に多くの労力が必要となり、対応が追いつかないことがあります。こうした現場で起こり得る課題については、避難訓練などで事前にシミュレーションし、備えていくことが重要だと考えます。

 しかし、災害はいつ、どこで発生するか、分かりません。その中で、国が最大限に力を発揮するためには、どのような事態を想定し、どのような備えや行動を取っていくべきとお考えでしょうか。これまでの災害の教訓を踏まえた上で、今後の国の対応方針について、坂井防災担当大臣のお考えをお聞かせください。

 次に、避難所環境の抜本的改善について幾つか質問いたします。

 私は、これまで約二十年にわたり、交通計画や町づくりを専門とする研究者として活動してまいりました。東日本大震災の際には、岩手県釜石市の被災地に何度も足を運び、復興支援に携わった経験がございます。その中で、避難所となった学校の体育館で、多くの方々が窮屈そうに雑魚寝をしておられる姿を幾度となく目の当たりにしてきました。

 今の日本では、学校の体育館などのプライバシーがない空間での避難生活が当たり前になっており、安心して暮らせる環境になっていません。この環境が好ましくないからこそ、自家用車の中に避難をする方もいらっしゃるわけですが、その場合は、プライバシーを守ることはできる一方で、やはり、狭い空間内で生活をしなければならず、エコノミークラス症候群になってしまうリスクなども指摘されています。そして、避難生活で心身共に苦しんだ結果として、災害関連死も増えてしまう。

 度重なる災害を経験しながら、なぜ避難所環境の抜本的改善が進まないのか。今の日本の現状は、まるで、みんな大変なのだから我慢するのが当たり前だと国が被災者に我慢を強いているかのようであり、到底看過できません。

 石破総理は、今般、避難所の環境をスフィア基準に沿ったものとするよう促すと発言されましたが、スフィア基準では、一人当たり三・五平方メートルの居住スペースや、二十人に一基以上のトイレの設置が求められており、その実現には相当の創意工夫が必要であります。

 近年、良好な避難所環境の例としてよく比較されるのがイタリアです。イタリアでは、災害時、トイレ、キッチン、ベッドに加え、シャワー、テント、食堂なども整備された避難所が設置されます。中でも注目すべきは、避難所の設営を、原則として被災地以外の近隣自治体が担う仕組みが制度化されている点です。これは、被災自治体の職員もまた被災者であるという、ごく当然かつ合理的な発想に基づくものであります。日本においても同様に、避難所設営は、原則としてほかの自治体が担うべきではないでしょうか。坂井防災担当大臣の御見解を伺います。

 また、ボランティアに対する考え方についても、イタリアと日本では大きく異なります。日本では、被災地で活動するボランティアに対して基本的に実費弁償しか行われませんが、イタリアでは、職能訓練を受けた専門的ボランティアが主であり、出動時には給与や保険料も支払われるなど、生活保障が制度として整っています。こうした仕組みは、被災地への迅速かつ継続的な支援を可能とする極めて合理的な制度です。

 今回の法改正により、被災者援護協力団体の登録制度が創設されますが、災害時に十分な職能ボランティアを確保、派遣するには、実費弁償に加えて報酬支給も制度化すべきではないでしょうか。さらに、そのためには、平時においてどの程度の数や種類の職能ボランティアに登録しておいてもらうべきか、国として具体的にどこまで想定できているのか、坂井防災担当大臣に伺います。

 加えて、災害時に必要となる資機材や備蓄品についても同様に、必要となる量や内容について、国として十分に想定できているのでしょうか。いざというときに備え、地方自治体に丸投げするのではなく、国が率先して資機材や備蓄品を調達し、全国の自治体へ配備するような、よりプロアクティブな体制整備が求められていると思います。こちらについても坂井大臣の御見解を伺います。

 次に、住民への情報伝達の在り方についてお伺いします。

 これまでの災害対応において、現場の被災者からは、どこに何を申請したらよいのか分からない、情報が錯綜しているといった声が数多く寄せられてきました。実際、弁護士や司法書士の方々が自ら被災地に入り、まずは罹災証明書を役所で取得してください、家屋の被害状況は写真に残しておいてくださいといった基本的な説明をしてくださっている現状も少なくありません。

 今回の法改正案には、情報通信技術その他の先端的な技術の活用に努めるという文言が随所に盛り込まれていますが、その具体的な内容や実効性は依然として不透明であります。

 災害前後を問わず、住民に必要な情報をいかに正確かつ迅速、そして分かりやすく届けるかは、被災地の混乱を最小限にとどめる上で極めて重要です。しかし、現状では、国が有益な情報を提供していると考えていても、それが住民一人一人にとって理解しやすく、必要なときに確実に届いているとは言い難いのが実態ではないでしょうか。情報の質だけではなく、伝え方、届き方にまだまだ課題が残されていると考えております。

 国として、今後、どのような工夫や体制整備によって、住民への情報共有をより効果的に進めていくおつもりなのか。災害時の混乱を防ぐための情報戦略について、坂井大臣のお考えをお聞かせください。

 最後に、株式会社地域経済活性化支援機構、いわゆるREVICについてお伺いします。

 REVICは、地域経済の活性化及び事業再生を目的とした官民共同出資のファンドであり、これまでにも一定の成果を上げてきたと承知しております。政府が二月十四日に国会に提出した株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律案においては、災害後の復興フェーズにおけるREVICの位置づけを明確にし、その活用を促進する趣旨が盛り込まれていると理解しております。

 しかしながら、被災した事業者への金融支援については、既に民間金融機関や日本政策金融公庫なども融資をしておる実態がございます。そうした中で、あえてファンドスキームを用いた支援を強化する意義はどこにあるのでしょうか。その必要性と具体的な優位性について、そして各機関との役割分担について、赤澤経済財政政策担当大臣にお伺いしたいと思います。

 また、REVICが既に関わっている復興支援ファンドの事例について、私も幾つか承知はしておりますが、それらの運用実績や成果について、現時点でどのような評価がなされているのか。成功事例、課題の双方を検証し、そこから得られた知見を今後の制度運用や支援の在り方に反映していく姿勢が求められると考えます。そのような観点から、REVICのこれまでの取組に対する評価並びに今後の戦略的活用の方向性についても、赤澤大臣の所見をお聞かせいただきたく願います。

 改めて、災害から国民の命と財産を守ることは国家の責務であるという原点に立ち返り、海外の優れた事例には積極的に学び、さらに、日本の実情に即した改良を加えていくことで、避難所では被災者の尊厳が確保され、支援者も安心して支援に当たれる、そんな世界に誇れる防災大国日本の実現に向けて、果断な取組を進めていくべきだと考えます。私自身も貢献してまいりますので、是非前向きかつ具体的な御答弁をお願い申し上げ、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣あべ俊子君登壇〕

国務大臣(あべ俊子君) 鳩山議員にお答えいたします。

 林野火災に対するリモートセンシングなどの研究開発についてお尋ねがありました。

 先般の能登半島地震への対応を始め、文部科学省では、JAXAの衛星による緊急観測等を通じまして、被災の状況把握等に貢献をしているところでございます。

 御指摘の岩手県大船渡市の火災についても、国土交通省からの要請に基づき、JAXAの衛星「だいち」二号による緊急観測が実施され、データが提供されたと承知しています。

 引き続き、こうした取組を継続するとともに、様々なニーズに対して効果的なデータが提供できるよう、更なる研究開発の推進に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 鳩山議員への答弁の前に、先ほどの林議員への答弁の中で、津波避難ビル等についてのお尋ねについて答弁漏れがあったということでございまして、追加で答弁させていただきたいと思います。

 津波避難ビルの指定や津波避難タワーを整備することは、津波や、住民等の命を守るために重要です。

 津波避難ビルの指定に関して、不特定多数の避難者を受け入れることに管理者が不安を感じる等の課題に対応するため、避難スペースや防災備蓄倉庫等の整備に対して財政的な支援制度を設けるとともに、市町村との協定締結の事例等を示しています。

 また、津波避難タワーの整備については、観光施設等と併せた複合的なものについても財政支援が可能です。

 これらにより、津波避難ビル、津波避難タワーを確保し、住民の迅速な避難ができるよう、関係省庁と連携して取り組んでまいります。

 鳩山紀一郎議員の御質問にお答えいたします。

 林野火災での対応、災害の定義についてお尋ねがありました。

 二月十九日に発生した大船渡市での林野火災においては、衛星写真を活用して林野の焼損状況を確認し、激甚災害の迅速な指定につながったところです。関係大臣と連携して、災害対応に必要な技術の活用を進めるよう取り組んでまいります。

 大規模な火事については、災害対策基本法上の災害に位置づけられており、本年発生した大船渡市を始めとする林野火災についても、災害対策基本法上の災害として対応しているところでございます。

 国が地方自治体の支援に当たり最大限に力を発揮するための方針についてのお尋ねがありました。

 災害が発生した際には、国が迅速に被災自治体を応援することが必要であり、そのためには、平時から、あらゆる事態を想定した体制を構築することが重要です。

 このため、今般の改正においては、高度かつ専門的な技術、知識、経験を有する人材を平時から育成し、応援に即応できるチームを確保するとともに、民間との連携を進めることとしております。

 また、被災自治体による支援の受入れを円滑に行うことも重要であり、能登半島地震の教訓も踏まえ、国としても、こうした地方自治体における人的支援の受入れが円滑に進むよう、取組を後押ししてまいります。

 避難所の運営主体についてお尋ねがありました。

 避難所運営については、第一義的には、住民に最も身近な行政主体である市町村が実施することが適当であると考えています。

 一方、被災市町村の職員も被災をしていることから、被災市町村への人的支援として、国の調整の下、近隣市町村だけでなく、全国の自治体から多くの応援職員を派遣することとしており、加えて、ボランティア団体の御協力もいただき、良好な避難所環境の確保を進めてまいります。

 被災者援護協力団体制度についてお尋ねがありました。

 被災自治体が登録団体等に対し災害救助費による業務委託を円滑に行えるよう、手順や具体例等をまとめたマニュアルの作成などにより、登録団体の活動に対し適切に支援してまいります。

 また、被災地に支援に駆けつけるNPOやボランティア団体等の交通費の支援も行っています。

 能登半島地震では、三百を超える支援団体が避難所運営、炊き出し、重機による土砂、廃棄物撤去などの活動を行っており、これらの経験も踏まえ、登録申請を呼びかけてまいります。

 災害時に必要となる国の資機材や備蓄品についてお尋ねがありました。

 大規模災害発災時において迅速に物資を届けるには、被災地方自治体の備蓄が一番効果的ではありますが、自治体のみでは必要な物資量を調達することが困難な場合には、国が被災者支援や避難所環境の整備に必要な物資をプッシュ型で支援をいたします。

 こうした物資のうち、発災直後に必要量を市場調達するのが困難なパーティションや段ボールベッド等について、令和六年度補正予算において、全国八地域で国が分散備蓄することとしております。

 被災者が良好な生活環境を確保するためには、自治体と国の取組、どちらも必要であり、引き続き双方の強化を進めてまいります。

 災害時の情報発信の在り方についてお尋ねがありました。

 災害発生時に被災地の住民等に被害情報や生活支援に関する情報など必要な情報を分かりやすくお伝えすることは、重要な課題であると考えております。

 内閣府防災のウェブサイト、SNS等を活用し、被災者の方々に必要な情報を発信しているほか、関係省庁においても、生活やなりわいの再建に必要な各種の情報を発信しております。

 被災者の方々に分かりやすく情報をお届けするため、情報発信の在り方等について改善に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕

国務大臣(赤澤亮正君) 鳩山紀一郎議員から二問お尋ねがございました。

 地域経済活性化支援機構、いわゆるREVICのファンドを用いた支援についてお尋ねがありました。

 被災地域の復興には、被災事業者のなりわい再建支援を効果的に行うことが極めて重要でございます。

 機構が取り組むファンドスキームでは、被災事業者のほか、事業者に融資を行う複数の金融機関等、様々な地域の関係者と調整をしながら、事業者にとって最善の再建計画を策定しています。

 また、必要なときは、単なる融資にとどまらず、出資、債権買取り、専門家派遣等を組み合わせ、被災事業者をハンズオンで支援をしてまいります。

 こうした、単独の金融機関では取り組み難い支援を一体的に提供できる点に機構の取組の優位性があり、先般提出させていただいた株式会社地域経済活性化支援機構法の一部を改正する法律案には、意義があるものと考えております。

 その上で、金融機関の関与も被災事業者支援に不可欠でございます。このため、機構は、復興ファンドに金融機関の参画を求めているほか、機構の知見、経験を積極的に金融機関に移転することとしています。

 地域経済活性化支援機構の取組に対する評価についてもお尋ねがありました。

 機構は、熊本地震や西日本豪雨などに際して復興ファンドを運営し、現在は、能登半島地震復興支援ファンドに参画をしているところです。

 これまでの取組を通じ、機構は、被災地域のなりわい再建に貢献するとともに、成功事例、課題を含め、支援に必要な知見、経験を蓄積してきたものと評価をしております。

 世界有数の災害発生国である我が国において、過去の災害の教訓を生かしていくことが重要であり、次なる大規模災害も見据え、こうした機構の知見、経験を活用した被災事業者支援に万全を期してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 中川宏昌君。

    〔中川宏昌君登壇〕

中川宏昌君 公明党の中川宏昌です。

 私は、公明党を代表して、災害対策基本法等の一部を改正する法律案について、以下、坂井防災担当大臣に質問をいたします。(拍手)

 私自身、能登の被災地に何度も足を運びました。ほとんどの避難所の生活環境水準は、人道援助の国際基準、スフィアスタンダードをはるかに下回っており、戦前と現代の避難所の様子を比べても大きな変化がないとの識者の指摘もあるように、生活と命を守るための福祉的な避難環境が不足していた現実がありました。

 また、特に被害の大きかった石川県珠洲市、輪島市の高齢化率は五五%と高く、御近所同士の助け合いにも限界がありました。避難行動の遅れ、体調悪化のリスクや認知症、障害のある方への対応など、全国で高齢化を迎える中で、被災者支援の今後の大きな課題となりました。

 こうした教訓を踏まえ、公明党として、災害関連法制の救助の種類に介護などの福祉が含まれていないことを指摘し、災害から命を守り、災害発生後の災害関連死を防ぐため、災害法制に福祉を明記するよう、重ねて訴えてまいりました。

 災害救助法は一九四七年に施行され、本来は社会保障的な支援制度として設計されていたのにもかかわらず、その後の制度の運用では福祉との接続が失われ、被災者が孤立する構造が続いてきました。本改正において福祉の理念が初めて明記されたことは、戦後の災害法制において歴史的な転換点であると評価しています。

 そこで、災害対策基本法等に福祉の視点を明記したことにより、救助の現場や避難所、ひいては地域社会において、今後どのような変化をもたらすと考えているか、被災者支援の実効性を高める観点から、その具体像をお伺いいたします。

 今回の改正では、福祉サービスの提供が新たに救助の種類として追加をされます。これにより、従来の避難所の供与や物資の提供といった物の支援から、人と支援を届ける仕組みへと大きく転換が図られることになり、中でも、災害派遣福祉チーム、DWATなど福祉専門職の役割はますます重要となります。

 能登半島地震では、DWATによる避難所支援、介護職員の広域派遣、仮設住宅での見守り活動が行われましたが、一方で、避難所外避難である在宅避難者や車中泊避難者など、支援が届きづらい層に対する支援には限界がありました。今回、福祉の視点が明記されることにより、福祉サービスの提供があらかじめ整備されていきます。

 そこで、今回の改正による、DWATによる在宅避難者、車中泊者への支援の強化がなされますが、現実の人材不足、自治体間の格差、平時からの準備不足といった課題にどう対応していくのか、また、平時からの育成や訓練、財政措置など、厚生労働省の取組も含め、政府全体の取組をお伺いいたします。

 今回の改正では、被災地における支援の担い手として、民間企業やNPO、ボランティア団体などの団体を事前に登録し、発災時には、地方自治体等と連携をして、避難所運営や炊き出し、被災者の相談支援などに迅速に従事できるようにする新たな登録制度が創設をされます。

 能登半島地震では、発災直後から、経験豊富なNPOやボランティア団体が、行政の手が届かない地域で被災者支援を懸命に行ってくださいました。しかし、制度上の連携体制が十分でなく、活動費の確保や現地入りの調整、情報共有の不足など、現場では多くの困難がありました。また、被災自治体では、自治体の職員自らも被災している中、慣れない災害対応に懸命に対処していただいた現状もありました。

 これらの経験からも、より効果的な災害対応を行っていくには、官民連携の強化が重要であり、地域に精通する民間、団体との連携や官民の役割分担を明確にすることで、災害対応の実効性を高められ、被災自治体の負担軽減につながると考えます。今回の、災害対応における指定公共機関の拡大と官民連携の強化についてお伺いをさせていただきます。

 また、NPOやボランティア団体の登録制度について、どのような基準、要件で団体を登録し、災害時にいかに迅速に現場へ展開されていくのか、あわせて、登録団体に対する資金支援や研修、平時からの連携体制づくりなど、実効性を担保するための政府の具体的な取組についてお伺いをさせていただきます。

 能登半島地震の支援現場では、制度自体を知らない、罹災証明の意味が分からないという声も数多く聞かれ、支援団体の現場からは、社会福祉士などが被災者宅を訪問し、制度の説明や生活再建の選択肢を示すことが、結果として、被災者の精神的負担を軽減し、災害関連死の防止にもつながると強く訴えられております。

 こうした訪問型、アウトリーチ型支援の必要性について、政府はどう制度的担保を講じていくのか、また、自治体で進めている個別避難計画の策定とその連動、自治体の地域福祉計画との整合性の確保をどう進めるのか、お伺いをいたします。

 また、避難所の環境整備も大きく改善すべきです。

 避難所に関するガイドラインが改定をされ、トイレや段ボールベッド等の整備が推進される見込みでありますが、各自治体の取組には大きな差があり、実効性にも課題があります。避難所の質を全国一律に底上げをするため、人道救助の国際基準であるスフィア基準を踏まえた避難所の最低基準を明確に法令や指針に定め、必要な財政的、人的支援を講じる必要があると思いますが、この点についてお伺いをさせていただきます。

 今回の改正を第一歩として、安心、安全な防災大国を目指して、より機能する防災庁の設置にも公明党として最大の努力をしていくことを申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 御質問にお答えいたします。

 災害対策基本法等における福祉の視点についてお尋ねがありました。

 被災者の生活環境の向上、災害関連死の防止のため、場所の支援から人の支援へ考え方を転換することが重要です。

 災害時には、避難所に限らず、在宅等で避難生活を送られる方が多くいらっしゃいます。今般、災害救助法の救助の種類として福祉サービスの提供を追加するとともに、DWATのガイドラインを改正することで、そうした方々に対しても福祉的支援を実施することが可能になると考えています。

 このような要配慮者の方々に対する支援を通じ、災害時も含め、地域社会において、一人一人の立場に寄り添った福祉的支援につなげてまいります。

 指定公共機関の拡大と官民連携の強化についてお尋ねがありました。

 防災上、重要な役割を果たす民間企業等を指定する指定公共機関については、東日本大震災で明らかになった課題等を踏まえ、東日本大震災発生当時の五十七から百六に増加させるなど、取組を強化してきており、引き続き適切に対応してまいります。

 また、政府においては、協定の締結等を通じた企業やNPOとの災害時の連携を進めるとともに、防災推進国民会議を毎年開催し、産学官民の各界各層と連携した防災体制の強化を図っているところでございます。

 被災者援護協力団体制度についてお尋ねがありました。

 被災者援護協力団体の登録に際しては、専門的な知識と技能を有している者がいることなどを要件として確認することとしています。

 また、登録団体情報のデータベースにより、全国の自治体に団体情報を共有して平時からの連携を後押しするとともに、災害時には、災害中間支援組織を中心とするネットワークを活用して、自治体ほか関係機関との情報共有、活動調整を図り、被災地への迅速な展開を支援することとしています。

 さらに、被災自治体が登録団体等に業務委託を行う際の手順や具体例等をまとめたマニュアルを作成するとともに、自治体や登録団体への制度の周知や研修等を今後実施していくことで、被災者支援が円滑に行われるよう取り組んでまいります。

 訪問型支援の必要性についてお尋ねがありました。

 発災時には、関係者が連携し、被災者一人一人に寄り添った支援を行うことが大変重要であり、福祉関係者やNPOが被災者を戸別訪問し、被災者のニーズの把握に努めているところです。

 内閣府としても、こうした支援の在り方を防災基本計画において災害ケースマネジメントとして位置づけ、手引や事例集も活用し、自治体や福祉関係者、NPO等の幅広い関係者に対して普及啓発を行っているところです。

 また、例えば、市町村による個別避難計画の作成や、地域における福祉の計画や取組を通して構築される地域の関係者間の顔の見える関係も活用し、被災者支援に取り組んでまいります。

 避難所の環境整備についてお尋ねがありました。

 避難所において発災直後から尊厳ある生活を営める環境を整備するため、昨年十二月、自治体向けの指針等について、発災直後は五十人に一基のトイレ、一人当たり三・五平米のスペース等、スフィア基準に沿って改定したところです。

 また、令和六年度補正予算においては、避難所の生活環境の改善に資する自治体の先進的な取組を新地方創生交付金により支援するとともに、全国のトイレカーやキッチンカーを登録するデータベースの整備や、避難生活支援リーダー、サポーター研修の拡充を行うこととしています。

 引き続き、良好な避難所環境の整備に向けた取組を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 櫛渕万里君。

    〔櫛渕万里君登壇〕

櫛渕万里君 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 私は、会派を代表して、災害対策基本法等改正案について質問いたします。(拍手)

 まず、大船渡、岡山や愛媛の山火事、またミャンマー大地震で被災された皆様、今なお被災のさなかにある能登半島の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 さて、日本の避難所は百二年前の関東大震災の頃から変わらない、これは石破総理の言葉です。初動態勢の遅れ、体育館に雑魚寝、冷たい食事、劣悪な環境による災害関連死の多発。避難所だけではありません。被災者の人権も憲法も守られていない。総理も大臣も、これが自民党政治の結果であるという自覚がありますか。

 今の能登の姿は、明日のあなたかもしれない。我が党の山本太郎代表は、何度も何度も能登半島に足を運び、そう警告を鳴らしています。

 なぜ繰り返されるのでしょうか。理由ははっきりしています。一つは、圧倒的に公助が足りないこと、二つ目は、公務員が減らされてきたこと、三つ目は、災害ボランティアを機動的に生かすシステムがないことです。

 私は、政治家になる前、NGOで国内外の災害支援に関わってきました。ボランティア元年と呼ばれた阪神・淡路大震災から三十年、今や、被災地支援の知見や経験を蓄積する災害ボランティアの存在なしには日本の災害対応は立ち行かない、これが実態です。

 大臣に伺います。こうした災害NPOの代表を、国の防災計画を決める中央防災会議や国や地方自治体の災害対策本部の正式な構成員として、災害対応の意思決定プロセスに参画してもらうべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 今回の法案では、国にNPOや団体の登録制度が創設されます。これは、都道府県は、災害救助法が適用された場合、登録団体を救助業務に協力させることができ、実費を支弁とあります。しかし、事前に確認したところ、知事が団体に協力命令を出さなければ実費弁償する義務はないということです。これでは、登録制度をつくっても、団体には自腹を切って事故リスクを背負い支援を続けろということになってしまいます。

 大臣、協力命令がない場合でも、団体には、支援に要した使用機材、燃料を始め宿泊費や人件費、旅費などの経費を行政から出すよう見直していただけませんか。

 災害対応の先進国イタリアでは、実費に加え、最大二週間の休業手当や保険が整備され、災害ボランティアの身分を国が保障しています。だから、自治体任せではない避難所運営や温かい食事などの提供が可能なんです。

 そもそも、近年の大きな災害の教訓は、平時からの備えであります。行政などに災害対応ノウハウの研修や訓練を通じた基盤整備は特に重要でしょう。

 大臣、都道府県が災害救助法を適用されなくても、平時から、登録団体始め災害NPOが継続的に人員を派遣したり育成する環境整備のための公費投入が必要と考えますが、いかがですか。

 NPOは、基本、全国からの寄附や会費を集めて事業運営していますが、発災時そして平時では財政状況が全く異なります。いわば季節労働者のようなもので、これでは、経験ある人材の持続的な雇用が難しく、多発する災害やスピーディーな初動態勢に備えられなくなってしまいます。知見も蓄積することができず、国にとっても大きな損失です。

 また、災害救助法には従事命令があります。今回、ここに福祉関係者が追加されていますが、そもそも、医療や土木建築、輸送関係者なども、従わないと罰則が科されるのは民間救助にそぐわないと考えます。

 大臣、昭和二十二年に定められた災害救助法の従事命令と罰則は強権的で、今の時代にふさわしくありません。撤廃していただけませんか。

 従事命令はほかに自衛隊法の中にもあり、そこにも医療や土木関係者などが対象となっていますが、こちらには罰則はありません。その理由を、二十年以上前、中谷防衛庁長官は、強制的に従事させても効果が出ず、かえって業務に支障が出ると答弁しています。

 では、なぜ災害救助法には罰則があるのでしょうか。非常時における動員として、行政の手足として縛る扱いは許されません。

 れいわ新選組は防災省の設置を公約としています。積極財政で、被災者の生活再建まで国が責任を持つこと、災害NPOの人材を公務員的に雇用し、その知見や経験を被災者支援に生かすことを目指しています。

 今回の法改正がその第一歩となることを強く求め、私の質問といたします。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 誠に申し訳ありませんが、櫛渕議員の答弁の前に、中川議員の答弁でも答弁漏れをやってしまいました。ここで追加で答弁させていただきます。以下ないように、重々頑張ります。

 DWATの体制についてのお尋ねがありました。

 在宅、車中泊避難者を含め、災害時に福祉的支援を円滑に行うためには、平時からの体制整備が重要であると認識しています。

 これまでも、厚生労働省において、災害福祉支援ネットワーク中央センターにおける、DWATで中心的な役割を担う方向けの研修の実施や、都道府県における関係者のネットワークの構築やDWATの訓練等の実施を支援しており、今後も支援の充実が図られるものと承知しております。

 内閣府としても、こうした取組や改正する制度の内容について自治体に周知を徹底するなど、引き続き、厚生労働省と連携し、必要な取組を講じてまいります。

 櫛渕万里議員の御質問にお答えいたします。

 中央防災会議や災害対策本部の構成員についてお尋ねがありました。

 中央防災会議の構成員については、全ての国務大臣、指定公共機関の代表者等のほか、幅広い観点から、防災に関する識見のある学識経験者に参画いただいております。

 国や地方自治体の災害対策本部については、行政機関の災害応急対策を推進するための組織であり、構成員は行政機関の関係者としております。

 引き続き、平時から災害中間支援組織の構築を進めるとともに、災害発生時には被災自治体と連携してNPO等との情報共有を図るなど、官民の連携強化に努めてまいります。

 登録団体の活動経費についてお尋ねがありました。

 これまでも、被災者支援を実施するNPO等が自治体からの委託契約等により救助に関する業務に従事した場合は、災害救助法等に基づき、その費用が支弁されています。

 こうした実態を踏まえ、被災自治体がNPO等に対し業務委託を行う際の手順や具体例等を取りまとめたマニュアルを作成し、周知することで、災害時にNPO等に迅速に活動経費が支弁できるよう検討してまいります。

 平時における災害NPOの環境整備についてお尋ねがありました。

 内閣府としては、避難生活支援を担う地域のボランティア人材を育成する研修を実施するとともに、今後、被災者援護協力団体向けの研修の実施などにより、人材育成を行うことを検討してまいります。

 災害時においては、官民連携による被災者支援活動が重要であり、引き続き、行政、ボランティア、NPO等の多様な主体による被災者支援活動が円滑に行われるよう、平時からの環境整備に努めてまいります。

 災害救助法における従事命令についてお尋ねがありました。

 災害時、迅速に救助業務を遂行し、国民の命を守るためには、関係者の皆様の御協力は重要です。

 現行の災害救助法においては、災害発生時に、人命を守り、被災者の保護を図るため、医療、土木建築工事又は輸送関係者に対して、罰則を伴う従事命令について規定しているところです。

 この規定は、これまで適用実績はありませんが、今後の前例のない大規模災害の発生など、万が一の場合に備え、人命を守るための最後の手段として定められているものです。その運用に当たっては、これまでと同様、関係者の皆様の御協力により、被災者への支援が円滑に行われるよう取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 堀川あきこ君。

    〔堀川あきこ君登壇〕

堀川あきこ君 私は、日本共産党を代表し、災害対策基本法等改正案について質問します。(拍手)

 今年は、阪神・淡路大震災から三十年です。東日本大震災から十四年。地震だけでなく、台風や大雨、洪水、大雪など、この間、多くの災害が発生してきました。そのたび、災害対応の在り方が問われてきましたが、最大の課題は、被災者の人権を保障するという視点が欠けているという点です。人間としてまともな避難生活が保障されていない、被災前の生活となりわいの再建に対する支援が極めて不十分です。こうした現状に関する大臣の受け止めをお聞かせください。

 同時に、被災者や被災自治体任せでなく、被災者の生活再建を柱とする被災地域の一日も早い復興を進めるために、国は何をどうするのか、お答えください。

 災害対策基本法の改正では、避難所及び避難所以外の場所に滞在する被災者への福祉サービスの提供を、災害応急対策責任者の義務として明記しています。福祉サービスの提供とは何をするものなのでしょうか。災害救助法に基づく救助の実施については、登録被災者援護協力団体による業務を可能とするとしていますが、災害救助法が適用されていない場合は、この福祉サービスの提供は一体誰が担うのでしょうか。

 応急対策の時期を過ぎた被災者への支援は、移動支援から見守り支援など多様化していきます。個別に要望を聞き取り、医療や福祉などあらゆる観点で対応していく災害ケースマネジメントなど、被災者の生活となりわいの再建に寄り添う支援が求められています。応急的支援から長期的支援へとどうつなぎ、長期的支援の担い手をどう想定しているのでしょうか。

 能登半島地震でも、地域の福祉施設は、被災した職員が戻れない、あるいはそのまま退職するケースが相次いでいます。

 能登で障害者支援を続けるJDF、日本障害フォーラムという団体は、職員が不足している事業所に全国からスタッフを派遣し、支援活動を担っています。東日本大震災や熊本地震ではこの支援活動を地元に引き継いでいく芽があったが、能登はどう引き継いでいくのかが見えないとおっしゃっていました。支援活動の延長を決定されたそうですが、ボランティア頼みでは限界があります。

 被災地の福祉に係る人的資源をどう確保するのか、法案はこうした実態をどのように配慮しているのでしょうか。

 被災者援護協力団体の登録に際し、内閣府令で定める障害者を役員とする団体は登録ができないとしていますが、ボランティア団体等との協力と連携という法改正の趣旨に照らしても、障害者を含めた自主的活動で被災者支援の実績を重ねてきた団体の活動を踏みにじることがあってはなりません。罰則や登録の取消しという強制力を背景にした福祉関係者に対する従事命令や協力命令も、できるだけ多くの幅広い福祉関係者等に被災者支援に参加してもらうためには、強制力でなく協力を得られるような環境整備こそ必要なのではありませんか。

 法案は、防災監を新設するとしており、石破総理は防災庁の設置を掲げています。能登半島地震では、被災した地方自治体の職員体制の不十分さが、応急対策を始め被災者支援にとって大きな障壁となっています。政府の体制を強化することだけでは、被災者の人権保障に基づく避難生活を確保することはできません。災害発生後の応急対策だけでなく、その後の生活やなりわいの再建、地域の復興に至るまで、一貫した被災者の見守り、支援をきめ細かく行うためには、自治体の職員体制の拡充が不可欠です。

 今回の改正だけでなく、防災庁設置を見通した取組をお示しください。

 被災者支援に関する国を始めとした行政の責任は、被災者援護協力団体の活用を進めることで曖昧にされるものではありません。

 このことを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 避難生活やなりわい再建の支援についてお尋ねがありました。

 被災者の方々が避難所において発災直後から尊厳ある生活を営める環境を整備することは重要です。

 昨年十二月、避難生活に関する自治体向けの指針等について、スフィア基準に沿って改定するとともに、令和六年度補正予算において、避難所の生活環境の改善に資する自治体の先進的な取組を新地方創生交付金により支援しています。

 また、関係者の住まいの確保やなりわい再建については、関係省庁連携して、被災自治体と密接に協力しながら、被災地、被災者の目線に立った支援を行ってまいります。

 被災地域の一日も早い復興に向けて、国の役割についてお尋ねがありました。

 災害が発生した際には、国が前面に立ち、関係自治体と連携協力を図り、被災地の復興に取り組んでいくことが重要であると考えています。

 能登半島地震では、総理大臣を本部長とする能登半島地震復旧・復興支援本部を司令塔に、政府一丸となって被災地の復旧復興を全面的にバックアップするとともに、能登創造的復興タスクフォースにより、国、県、市町の関係者が緊密な連携を図りながら課題の解決に取り組んでいます。

 このように、一日も早い復興に向けて国に求められる役割は、財政的な支援や技術的な助言、物資の支援や人材の派遣に加え、関係する行政機関による施策の総合調整など多岐にわたり、それらを計画的かつ迅速に行う必要があると考えます。

 福祉サービスの対象や担い手、長期的支援のつなぎ及び福祉人材の確保についてお尋ねがありました。

 災害救助法の救助の種類として福祉サービスの提供を追加するとともに、DWATのガイドラインを改正することで、避難所に限らず、在宅等で避難生活を送られる方に対する相談支援や日常生活上の支援等が可能になると考えています。災害救助法が適用されているかどうかにかかわらず、社会福祉士等の福祉関係者が連携し、被災者一人一人に寄り添った継続的な支援である災害ケースマネジメントを行うことが重要です。

 国としては、手引や事例集も活用し、自治体や社会福祉協議会等の福祉関係者、NPO等の幅広い関係者に対して災害ケースマネジメントの普及啓発を行うことを通じて、人的資源を確保してまいります。

 災害救助法の改正と併せて、在宅等で避難生活を送られる方も含め、一人一人の立場に寄り添った福祉的支援につなげていきます。

 障害者を役員とする団体の登録についてお尋ねがありました。

 被災者援護協力団体は、国、地方公共団体、その他の協力団体等と協力して、被災現場において厳しい環境に置かれている被災者の支援に当たる必要があることから、一定の登録要件を設けることとしています。

 この役員についての要件は、被災者援護協力団体の活動方針を決める者であることから設けるものであり、障害者であっても、必要な認知、判断及び意思疎通が適切に行うことができない者に該当しなければ、この要件には当たらないものと考えています。

 被災地の支援に当たる障害者の方々を排除することは全く考えていないことから、そのような団体が排除されることのないよう、内閣府令について必要な検討を行ってまいります。

 福祉関係者に対する従事命令や協力命令についてお尋ねがありました。

 災害時における福祉サービスの提供を充実させ、災害関連死の防止を図るためには、福祉関係者の皆様の御協力は極めて重要です。

 政府の改正案においては、災害関連死の防止を図る観点からも、被災者への福祉サービスの提供が確実に行われるよう、福祉関係者に対して、医療、土木建築工事又は輸送関係者と同様に、罰則を伴う従事命令を規定しています。

 これは、人命を守るに当たって、万が一の場合に備えて、いわば最後の手段として規定されるものであり、これまで適用実績はありません。

 また、登録被災者援護協力団体に対する協力命令については、正当な理由がある場合には、従わなくとも、登録取消しの対象としないこととしております。

 改正法の運用に当たっては、これまでと同様、関係者の皆様の御協力により、被災者への支援が円滑に行われるよう取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣赤澤亮正君登壇〕

国務大臣(赤澤亮正君) 堀川あきこ議員から、被災者支援のための自治体の職員体制拡充についてお尋ねをいただきました。

 災害に対する応急対応から復旧復興まできめ細かく被災者を支援していくためには、国等による自治体への支援体制の強化や、国と自治体との連携の推進により、地域の防災体制の強化を図ることが重要であると考えています。

 自治体の支援については、災害の規模に応じ、都道府県による域内の被災市町村への支援や、自治体間で広域に応援を行う応急対策職員派遣等の取組も進めているところでございます。

 また、令和八年度中の防災庁の設置を見据え、今年度から、内閣府防災担当の予算、人員を倍増し、内閣府に各都道府県を担当する地域防災力強化担当を置くとともに、各都道府県側で新たに指定するカウンターパートの職員と密に連携し、平時から自治体と顔の見える関係を構築することとしております。

 防災庁の設置により、人命、人権最優先の防災立国を実現をし、我が国を世界一の防災大国にするべく取り組んでまいります。(拍手)

副議長(玄葉光一郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣 あべ 俊子君

       国土交通大臣 中野 洋昌君

       防衛大臣   中谷  元君

       国務大臣   赤澤 亮正君

       国務大臣   坂井  学君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 鳩山 二郎君

       総務副大臣  冨樫 博之君


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