衆議院

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第16号 令和7年4月4日(金曜日)

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令和七年四月四日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  令和七年四月四日

    午後一時開議

 第一 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、児童福祉法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長谷公一君。

    ―――――――――――――

 児童福祉法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔谷公一君登壇〕

谷公一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、保育人材を確保するため、国家戦略特区における地域限定保育士制度の一般制度化等を行うほか、虐待対応を強化するため、保育所等の職員による虐待に関する通報義務等の創設等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月三十一日本委員会に付託され、翌四月一日に三原国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、三日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。防衛大臣中谷元君。

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、自衛官定数の変更及び水上艦隊の新編その他自衛隊の組織の改編を行うとともに、自衛官の再任用に係る要件の見直し、航空管制官手当の新設その他自衛官等の人材確保のための制度の整備、物品役務相互提供協定に係る規定の整備、装備移転等に伴う装備品等の製造等を適切に実施するための規定の整備等の措置を講ずるものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、自衛隊の任務をより効果的に遂行し得る体制を整備するため、防衛省設置法及び自衛隊法の一部を改正し、自衛官の定数の変更や、陸上自衛隊の補給統制本部の補給本部への改編、海上自衛隊の水上艦隊等の新編、そして航空自衛隊の航空総隊の改編を行うことといたしております。

 第二に、人的基盤の抜本的強化に向けた自衛官等の処遇改善のため、自衛隊法及び防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正し、自衛官の再任用に係る要件の見直し、航空管制官手当の新設、各種手当の引上げ、指定場所生活調整金や事業を営む予備自衛官に対する給付金の新設等を行うことといたしております。

 最後に、同志国等との協力強化に関する事項として、日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定の署名を機に、自衛隊法、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正し、関連する規定を整備するほか、装備移転や研究開発のため、自衛隊法の一部を改正し、航空法や船舶安全法等を適用除外し、防衛大臣が、装備移転の対象として製造される航空機や船舶の安全基準等を定めること等の規定を整備することといたしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。篠原豪君。

    〔篠原豪君登壇〕

篠原豪君 立憲民主党の篠原豪です。

 会派を代表し、防衛省設置法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、本法案を束ね法案として審議することに、国会軽視であると抗議をいたします。

 本法案の内容は、人的基盤の抜本的強化策、自衛隊の組織改編、同志国等との関係強化の三分野にわたり、それぞれ、八項目、四項目、二項目と、多数の内容が含まれております。

 防衛省や自衛隊の活動は重要であり、それを国会が慎重に審議するためにも、束ねはできる限り回避するべきであります。特に、今回の物品役務相互提供協定、通称ACSAですけれども、別の法案で出すべきだったのではないかと思います。なぜならば、束ね法は国会軽視と批判されている上に、内閣法制局の審査基準では、政策の統一性、条項の関連性、こういったことが求められています。

 そこで、まずお伺いいたします。

 本法案も含めて、なぜ束ね法案として国会に提出をできるのか、その理由及び国会軽視との批判に対する政府の御見解をお答えください。

 加えて、法案を束ねて国会の審議を形骸化するようなことを避けるように主張しているにもかかわらず、政府は今後も束ね法案の問題を解決する努力を行わぬまま国会に提出するつもりでしょうか。それとも、この矛盾を解消するように各省庁に働きかけるおつもりがあるのかどうか、官房長官にも御答弁を求めたいと思います。

 さて、自衛隊の人的基盤の強化についてです。

 自衛隊の人的基盤の抜本的強化については、自衛隊の役割は、国の防衛や災害派遣に加え、諸外国との共同訓練や国際支援活動など多岐にわたり、求められる任務も増える一方です。その一方で、自衛官は慢性的な人員不足に陥っています。

 こうした状況を踏まえ、石破総理は、自らが議長となり、自衛官の処遇、勤務環境の改善等に関する関係閣僚会議を設置をし、十二月に基本方針が策定されました。本法案で改正される手当の新設、拡充などの処遇改善や、隊舎の個室化等の勤務環境の改善などは、この基本方針に盛り込まれている施策です。

 そこで、この基本方針で示された施策が、自衛官の採用増や中途退職の抑制に、どの程度の期間で、どの程度の効果が見込めると考えているのかをお伺いいたします。

 また、政府は、当面、この処遇改善策を、防衛力整備計画に基づく五年間の総額四十三兆円、この中で工面する方針です。しかし、昨今の円安や原材料価格が高騰する中で、果たして支障なく達成できるのか、甚だ疑問です。

 そこで、自衛官の採用率や充足率などの改善が見込まれなくなった場合にはどのように対処なさるのか、また、追加の費用はどのように捻出するお考えなのかをお伺いをいたします。

 次に、予備自衛官等についてもお伺いいたします。

 予備自衛官制度は、有事の際に迅速に防衛力を増強するという、国家防衛力を支える重要な制度です。しかし、予備自衛官等の現在の充足率は、予備自衛官が約七〇%で、即応予備自衛官が約五〇%と低迷をしています。この状況に対応すべく、本法案には、予備自衛官及び即応予備自衛官に対する手当の額の引上げが盛り込まれています。

 予備自衛官の手当の引上げは三十八年ぶり、即応予備自衛官の手当の引上げは平成九年の制度開始後初とのことですが、なぜこんなにも長い期間、手当の額を引き上げなかったのでしょうか。理由をお尋ねいたします。

 また、これまでに充足率向上のためにどのような施策を行ってきて今の実態につながってしまったのか、その評価と、それを踏まえた上での今後の改善の見込みもお聞かせください。

 次に、自衛官の定数の変更についてお伺いいたします。

 自衛官の定数の総計については、直近十年以上にわたり二十四万七千人強の水準で横ばい状態であることに加え、防衛力整備計画において、二〇二七年度末まで現行水準を維持することが定められています。

 その中で、いわゆる基盤的防衛力構想が長らく自民党政権の下で続いてきましたが、民主党政権時の二〇一〇年に、冷戦時代のソ連による北海道侵略を陸上で食い止めるための体制を、南西諸島の防衛強化が重要という観点から、動的防衛力に変え、その後、名称は統合機動防衛力に変わりましたけれども、考え方はほぼ引き継がれております。

 本法案は、海上自衛隊、航空自衛隊等の増員所要に対応するため、三百六十四人の陸上自衛官の常備自衛官の定数を振り替えることとなりました。しかし、陸上自衛隊では、二〇二三年度末において約一万六千人の欠員がございます。他方で、陸自部隊には、米海兵隊と連携して島嶼部への侵攻に対処する役割を果たすことも求められています。

 ついては、陸上自衛隊の定員のあるべきレベルについて、どのような構想をお持ちなのか、お考えをお聞かせください。

 他方、無人機やサイバー攻撃などを駆使した現代戦においては、今以上に限られた人材を適切に配置する必要がある中で、現行の定員や陸海空の人員バランスの抜本的な見直しを行う必要があるのではないかと考えますが、御見解をお伺いいたします。

 次に、統合作戦司令部の発足について伺います。

 在日米軍の指揮権はハワイの米インド太平洋軍司令部が握っているため、日本側は、在日米軍の作戦指揮権を持つ司令部を日本国内に置き、自衛隊との連携を強化するように要望してきました。

 このため、日本側は、この三月、陸海空の三自衛隊の各部隊を一元的に指揮する防衛省の常設組織、統合作戦司令部を発足させましたが、トランプ政権が在日米軍再編を停止する可能性が報じられたため、日本側に懸念が生じていました。

 もちろん、三月三十日に行われた中谷防衛大臣との会談で、ヘグセス米国国防長官は在日米軍の統合軍司令部への移行の第一段階が開始されたと発表しましたので、懸念は払拭された感が多少はありますけれども、統合軍司令部の発足の時期は実は示されていません。

 そこで、政府は、在日米軍の再編停止の懸念が完全に払拭されたと判断しているのか、そうであるならば、その根拠は何かをお聞かせください。

 在日米軍の統合軍司令部の司令官は、自衛隊の統合作戦司令部と同格の大将ではなく、中将になるのではないかとされています。また、神奈川県に司令部を置く米海軍第七艦隊、そして在沖縄海兵隊を管轄する第三海兵遠征軍といった主要部隊を指揮するかどうかの権限を持つかどうかも定まっていません。これでは、作戦運用の最終決定者は結局インド太平洋司令官になり、調整の手間が増えることが懸念をされています。

 そこで、今後、どのような方策を、この点をしっかりと払拭していくために取られるのか、お聞かせください。

 そして、大きな課題が、指揮統制の連携強化で自衛隊と米軍が一体的に運用された場合、有事に日本側の指揮権の独立性が果たして担保されるのかという懸念があることです。

 米軍は自衛隊に比べ圧倒的に多くの情報と装備を持つため、自衛隊が事実上、米軍の指揮統制下に置かれるという懸念は拭い切れません。

 そこで、たとえトランプ政権から日米の指揮権を統一すべきとの要求があっても、従来どおり、一貫してこれを拒否をし、有事でも自衛隊と米軍がそれぞれ独立した指揮系統で行動することを堅持するということを御確約いただけるかどうか、防衛大臣に伺います。

 次に、同志国等との協力強化についてです。

 物品役務相互提供協定、ACSAについて伺います。

 これまで、新たな国とのACSAが締結された場合、ACSAの国内実施法に締結国の国名を追加するなどの改正を行ってきました。しかし、本改正案でACSAの国内実施法を共通規定化すると、今後は、法改正という形で国会でチェックができなくなります。安全保障委員会で審査することも困難になりかねません。

 そこで、締約国とはどこなのか、法文上入れなくていいという理由をまず御説明ください。

 また、政府は、共通規定化の目的として、国民への分かりやすさを挙げています。しかし、国会の審議を省略することで、国民にとって分かりやすい法制と言えるのでしょうか。このことについても御見解を伺います。

 二〇一七年の日豪及び日英ACSAの国内実施法の審査の際、これは四月二十一日の衆議院の安全保障委員会でのことですけれども、当時の稲田防衛大臣は、締約国ごとに別個の条文を規定する理由として、1豪軍及び英軍に対する物品、役務提供の根拠規定、自衛隊法第百条の八及び第百条の十は、豪側及び英側それぞれとの議論を踏まえ、それぞれの相手国軍隊と自衛隊が物品、役務を提供し得る活動類型のメニューを規定したものであって、結果的に内容が同じになったにすぎず、そのような立法経緯を踏まえれば、それぞれ別個の独立した条文とすることは自然である。2仮に、今後、日豪又は日英間の議論により当該メニューに変更が生じた場合、第百条の八と第百条の十とで内容に違いが生ずる可能性もあると御答弁されています。

 稲田防衛大臣が述べたこの理由は、本改正案における共通規定化とは逆の考えを述べていると考えます。政府は、共通規定化するに当たり、これらの課題をどのように克服をし、結論を出したのか、御説明をお願いいたします。

 今後、新たに物品役務相互提供協定を締結する国が増えた場合の政府の国会の対応について伺います。

 今回の法案が仮に成立した場合にも、今後、外務委員会だけでなく、安全保障委員会でも、従来どおり、新締約国との間で締結されたACSA協定の国内実施に関し審議できることが極めて重要だと考えますが、この点に関する政府の基本的な考え方を伺います。

 最後に、世界の安全保障が激動する中、日本も前例のない事態に直面しています。我々政治家は、柔軟かつ慎重に対応し、日本の未来と国際秩序を守るために、今こそ、責任ある議論を深め、確かな道を切り開いてまいりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 篠原豪議員にお答えいたします。

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案を、一つの法律案として国会に提出する理由についてお尋ねがありました。

 政府は、従来から、二つ以上の法律の改正を提案をしようとする場合は、一般に、法律に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨、目的が一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるときは、一つの改正案として提案することができると考えております。

 本法律案につきましては、防衛省設置法、自衛隊法、防衛省の職員の給与等に関する法律及び国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の四つを一括して改正しようとするものでありますが、現下の安全保障環境を踏まえ、防衛省・自衛隊の任務の円滑な遂行を図るため、人的基盤の抜本的な強化、自衛隊の組織改編、同志国等との協力強化に関する法整備であるとの政策が統一的なものでありまして、この結果として法律の趣旨、目的が一つであると認められ、また、内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるものと考えております。

 これらを踏まえて、御指摘の物品役務相互提供協定に関する改正事項を含め、一本の法律案で一覧的に示し、一体として審議をしていただくことが適当であると考えられることから、このような形で御審議をお願いするものであります。

 そのため、国会軽視との御批判は当たらないと考えております。

 次に、基本方針で示された施策の自衛官の採用増や中途退職の抑制への効果についてお尋ねがありました。

 我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、防衛力の担い手である自衛官の人材確保は至上命題であります。昨年、関係閣僚会議において取りまとめた基本方針に基づきまして、三十を超える手当等の新設、金額の引上げ、叙勲の対象範囲の拡大など、自衛官の処遇、生活、勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立に向けて取り組んでいるところであります。

 こうした取組により、自衛官の生活環境が改善をされ、また、給与面における処遇が充実することなどから、中途退職の抑制や、特に若年層に対して、職業としての自衛官の魅力が向上し、採用市場における競争力が増して、採用に好影響があると期待をいたしております。

 また、こうした効果が早期に表れるように、基本方針で取りまとめた各施策を強力に推進するとともに、基本方針の内容も含め、職業としての自衛官の魅力について、SNSや動画も用いて分かりやすく発信するなど、広報や募集の強化にも積極的に取り組んでまいります。

 いずれにしましても、自衛官の採用、中途退職抑制、充足率向上にいかに寄与しているかという観点から、関係閣僚会議において、令和七年中に効果の検証を行い、毎年フォローアップを行うことといたしております。このような検証も踏まえつつ、基本方針で取りまとめた各施策の実効性を確保するとともに、人材の確保に資する新たな方策について不断に検討をしてまいります。

 次に、自衛官の採用率等の改善やその費用についてのお尋ねがありました。

 先ほど答弁したとおり、我が国の安全保障環境が厳しさを増す中、防衛力の担い手である自衛官の人材確保は至上命題であります。

 このため、昨年、関係閣僚会議において取りまとめた基本方針に基づき、三十を超える手当の新設、金額の引上げや叙勲の対象範囲の拡大などによりまして、自衛官の処遇を改善することといたしております。また、営内居室の個室化や、駐屯地、基地等における無線LAN環境の充実等による生活、勤務環境の改善なども行うことといたしております。さらに、知識、技能、経験を生かした再就職先の拡充や公的資格取得の簡素化など、新たな生涯設計の確立に向けた施策に取り組んでいるところであります。

 その上で、自衛官の採用、中途退職抑制、充足率向上にいかに寄与しているかという観点から、関係閣僚会議において、令和七年中に効果の検証を行い、毎年フォローアップを行うことといたしております。このような検証も踏まえつつ、基本方針で取りまとめた各施策の実効性を確保するとともに、人材確保に資する新たな方策についても不断に検討をしてまいります。

 防衛省としましては、こうした取組を進める上で、円安を伴う為替レートの変動、国内外の全般的な物価上昇が生じている状況にあっても、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底をし、防衛力整備計画に定められた四十三兆円程度の範囲内において、自衛官の処遇改善を含め、人的基盤の強化についてもしっかりと対応をしてまいります。

 次に、予備自衛官等の手当の引上げについてお尋ねがありました。

 これまで、手当面の処遇改善につきましては、予備自衛官等より常備自衛官を優先をし、予備自衛官等の手当が据え置かれておりました。

 昨年十二月に、石破総理を議長とする関係閣僚会議で取りまとめた基本方針におきまして、有事や災害に際して自衛官となって防衛力を急速に増強する役割を担い、継戦能力の上でも重要な存在である予備自衛官について、処遇改善を図ることとされました。これを踏まえて、予備自衛官手当及び即応予備自衛官手当を大幅に増額することとしました。これにより、一任期勤めた場合に支給される手当額については、予備自衛官は現行の約二十七万円から約六十八万円の約二・五倍、即応予備自衛官は三曹であれば現行の百七十一万円から約二百七十四万円の約一・五倍となります。

 防衛省としましては、まさに継戦能力の上で重要な予備自衛官の安定的な確保に向けて、引き続き処遇改善に向けて努力をしてまいります。

 次に、予備自衛官等の現状の評価とその改善の見込みについてお尋ねがありました。

 予備自衛官等の大半は、平素はほかに本業を持ちながら予備自衛官等の職務に従事をしていることから、本業との両立が困難を理由として退職する者が多いと認識をいたしております。

 このため、防衛省においては、予備自衛官等を雇用する企業等の御理解と御協力を得るための施策として、予備自衛官等の職務に対する理解と協力の確保に資するために給付金を支給をしています。これに加えて、本法律案において、自ら事業を営む予備自衛官等に対して、その事業の継続に資するために、その給付金を新設をするということといたしました。

 また、予備自衛官等が安んじて訓練に参加しやすい環境を整えるためには、国民の皆様に予備自衛官等に対する理解の促進を図ることも重要であります。そのため、SNSやパンフレット等を活用した広報活動に加えて、動画広報などの取組を積極的に進めてまいります。

 予備自衛官等の確保は継戦能力の観点からも重要であると考えておりまして、防衛省としては、予備自衛官等の職務と本業の両立がしやすくなるための施策を始め、予備自衛官等の安定的な確保に向けた施策を着実に進めてまいります。

 次に、陸上自衛隊の定数についてのお尋ねがありました。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、陸上自衛隊においても、防衛力整備計画に基づき、スタンドオフ防衛能力の強化による遠方での侵攻部隊の阻止、多様な経空脅威から重要拠点等の防御、そして島嶼部等への迅速な機動展開及び地上で粘り強い活動などといった役割を果たすことができるように、体制の整備をしているところであります。

 陸上自衛隊の定数については、このような陸上自衛隊の役割等を踏まえ、任務遂行に必要な自衛官の人員数を積み上げたものであります。

 次に、現代戦を踏まえた定数や陸海空の人員バランスの見直しについてお尋ねがありました。

 現在、宇宙、サイバー、電磁波の新たな領域や、無人アセットなどを用いた新たな戦い方が顕在化をしておりまして、これに対応するための新たな人員所要が発生しております。

 このため、防衛力整備計画では、このような新たな人員所要に対して、陸海空自衛隊間で定数のつけ替えや既存部隊の見直し、民間委託等の部外力の活用によりまして対応することとしておりまして、引き続き、現在の自衛官定数を維持したまま、防衛力の抜本的強化に対応してまいる考えであります。

 在日米軍の統合軍司令部への移行及びその停止への懸念についてのお尋ねがありました。

 三月三十日の日米防衛相会談におきまして、ヘグセス長官から、自衛隊の統合作戦司令部の創設とタイミングを合わせる形で、在日米軍が統合軍司令部へのアップグレードを開始したことを発表したとおりでありまして、在日米軍の再構成の方針に変更があったということは認識をいたしておりません。

 また、会談では、日米同盟を取り巻く厳しい安全保障環境に対処するために、同盟の抑止力及び対処力の一層の強化に向けて、日米双方が指揮統制枠組みの向上に関する取組を進めていくことを確認をしており、御指摘のような懸念は有しておりません。

 米国の指揮統制関係についてお尋ねがありました。

 現在、在日米軍の司令官は中将であるところが、アップグレードが完了した後の統合軍司令部の司令官の階級についても、今後、米国内で検討を経た上で段階的に進められるものであり、まだ決まっていないと承知をいたしております。

 アップグレードが完了した後の司令官の階級や任務、権限の詳細も含めまして、引き続き、日米の作業部会を通じて議論をしてまいります。

 次に、有事における自衛隊と米軍の指揮系統独立についてのお尋ねがありました。

 日米間で様々な能力発揮のため緊密な連携を図ることは当然でありますが、自衛隊の全ての活動は、主権国家たる我が国の主体的判断の下、日本国憲法、国内法令等に従って行われること、また、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することに何ら変更はございません。

 また、自衛隊の指揮については、法令で定めているとおり、日本国内閣総理大臣が最高指揮官として自衛隊を指揮監督することにも変わりはありません。

 このように、自衛隊及び米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動することを前提に、引き続き、日米それぞれの指揮統制の枠組みの向上について議論を進めてまいります。

 次に、本法律案において、法文上、ACSAの締約国は規定しない理由についてのお尋ねがありました。

 我が国は、現在まで七か国との間でACSAを締結をしておりますが、これまで、ACSAを締結するごとに、ACSAに対応する自衛隊法及びPKO法の規定を整備をしてきました。

 他方、これまでに締結されたACSAでは、適用対象となる活動の範囲や提供される物品、役務の類型が基本的に同様となっています。こうしたACSAの締結の実績の積み重ねを踏まえ、ACSAに関する国内担保措置の内容は定型化していると判断しております。

 また、本法律案について今国会で御承認をいただけた場合は、今後のACSAの交渉は、基本的に、共通規定化された国内実施法の範囲内の内容となることを念頭に行われることとなりまして、潜在的なACSAの締約国にとって、我が国と締結をするACSAに関する予見可能性を高めることにもつながり得ると考えております。

 こうした点を踏まえまして、この法律案におきまして、締約国名を列挙しない形で、ACSAの国内実施法を共通規定化するということとしたところであります。

 次に、国民にとって分かりやすい法制についてのお尋ねがございました。

 ACSAの国内担保措置に関して、自衛隊法については、これまで相手国ごとに条文を整備していたために、自衛隊が行う物品、役務の提供の内容が一見して分かりにくい状況にありました。

 今回の法改正によって、ACSAの国内担保措置に関する条文を統合して共通化することとなれば、相手国ごとに個別の条文を参照することなく、ACSAに関する国内担保措置が総覧できるようになります。

 こうした点で、共通規定化によりまして、国民にとって分かりやすい法制になるものと考えております。

 次に、共通化規定に当たり、日豪、日英ACSAの国内実施法制定時の課題を踏まえて、どのように検討されたのかということについてのお尋ねがありました。

 我が国は、日豪、日英ACSAの締結後、フランス、カナダ、インド、ドイツと、更に四か国との間でACSAを締結をしてまいりましたが、それらのACSAでは、適用対象となる活動の範囲や提供される物品、役務の類型が基本的に同様となっております。こうしたACSAの締結の実績の積み重ねを踏まえまして、ACSAに関する国内担保措置の内容は定型化しているというふうに判断をいたしております。

 また、国内実施法の共通規定化は、将来的なACSA交渉を円滑に進めるという観点からも重要であると考えております。我が国が戦後最も厳しい安全保障環境に直面をし、外国軍隊との連携強化の必要性が高まっている中で、今後、複数の国々とACSAを締結することも予期されます。共通規定化によりまして、潜在的なACSA締約国にとって、我が国と締結するACSAに関する予見可能性を高めることにもつながり、将来的なACSAの交渉の円滑化に資するものと考えております。

 こうした点を踏まえて、本法案において、ACSAの国内実施法を共通規定化するとの結論に至ったところでございます。

 最後に、新たにACSAが締結された場合の政府の国会への対応についてお尋ねがありました。

 本法案においてACSAの国内実施法を共通規定化する理由は、これまでのACSA締結の実績の積み重ねを踏まえまして、ACSAに関する国内担保措置の内容は定型化していると判断をされるためであります。

 したがって、本法律案について今国会で御承認をいただけた場合には、新たに締結されるACSAの国内担保措置は、共通規定化された国内実施法の範囲の内容になるということが見込まれます。

 一方で、仮に共通規定化された国内実施法の範囲内にとどまらないものが出てきたり、法整備が必要となり国会で御審議をいただく、そういう場合は、国会で御審議をいただくことになります。

 防衛省としましては、国の防衛政策について、国会議員の皆様に対する丁寧な御説明を通じて、国民の皆様の御理解を得ることは極めて重要であると考えており、こうした観点から、新しくACSAが締結をされる場合には、説明に努めてまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 篠原豪議員から、法律の改正方式についてお尋ねがありました。

 本法案も含め、政府においては、従来から、法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨、目的が一つであると認められるかどうか、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるかどうかを十分に検討した上で、一つの改正法案として提案することが適当であるという結論に達した場合、そのような形で提案してきており、国会軽視との御批判は当たらないと考えております。

 また、今後につきましても、一つ一つの法案について、こうした考え方に基づいて十分に検討し、対応してまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 平岩征樹君。

    〔平岩征樹君登壇〕

平岩征樹君 国民民主党・無所属クラブの平岩征樹です。

 ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案につきまして、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、先月から続く全国各地の山林火災について一言申し上げます。

 岩手県、岡山県、愛媛県など、各地で大規模な火災が発生し、多くの方々が被害を受けておられます。被災された皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、消火活動に従事されている消防隊員、自衛隊員、そして関係機関の皆様に深く敬意を表します。特に、困難な環境下で昼夜を問わず活動されている自衛隊の皆様には、改めて感謝申し上げます。

 さて、二〇二二年二月二十四日に始まったロシアのウクライナ侵攻から三年がたちました。この間、国際社会は、ロシアの侵略行為に対して制裁を科し、ウクライナへの支援を継続してきましたが、戦闘は依然として収束していません。アメリカの仲介により停戦が模索されていますが、双方の条件が折り合わず、現在も激しい戦闘が継続しています。さらに、ウクライナ侵攻においてロシアと北朝鮮の関係が深まり、北朝鮮は、自国の兵士を参戦させて実戦経験を積み上げ、その軍事的脅威を増大させています。

 東アジアに目を向けると、中国の力による一方的な現状変更の試みが継続しており、南シナ海や台湾周辺での活動が活発化しています。加えて、北朝鮮は、弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、挑発行動をエスカレートさせています。

 これらの情勢を踏まえ、防衛力の強化は待ったなしの課題であると言わざるを得ません。

 二〇二二年に策定された防衛三文書で示された、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にあるという文言は、二〇二五年現在もその質量を更新し続け、その認識は更に深刻さを増しています。

 また、国内に目を向ければ、自然災害の激甚化により、国民の自衛隊の災害派遣への期待はこれまで以上に高まっています。令和六年能登半島地震を始め、台風、豪雨災害、地震、そして冒頭で申し上げた山林火災など、多くの場面で自衛隊が国民の命を守るために活動してきました。

 こうした状況を踏まえ、自衛隊の人的、物的基盤の強化は、もはや避けて通れない喫緊の課題であります。

 これらの観点から、本法案の三本柱である、人的基盤の抜本的強化、自衛隊の組織改編、同志国等との協力強化について、順次、防衛大臣に質問いたします。

 今回の法改正において、自衛隊の人的基盤の抜本強化が大きな柱の一つとされています。我が党も、自衛隊の基礎となる自衛官の処遇改善については大いに賛成するところです。安全保障環境が厳しさを増す中、自衛官一人一人の士気と能力の向上なくして、我が国の防衛体制を維持強化することは不可能だからです。

 しかし、処遇改善の目的は、単なる待遇向上ではなく、自衛官の定数充足や精強性向上につながらなければ意味がありません。今回の法案によって、どのように隊員のモチベーションアップや採用難の解消が図られるのか、防衛大臣に見解を伺います。

 処遇改善の具体的な中身について伺います。

 手当の新設や増額については大いに賛同するところですが、入隊前の志願者にとって、自分がどの職種、役職に就くかは一部の職種を除いて未確定であり、直ちに自衛隊の魅力向上につながるかは不明瞭です。また、職務内容が変われば手当が大幅に減少する可能性があり、特に航空手当や乗組手当は給与に対する手当の割合が大きく、異動や教育課程への入校によって手取りが大きく減少してしまいます。給与については、昨年の臨時国会で引上げが図られたものの、人事院勧告自体が物価高騰には及ばない部分もあり、現在の春闘のニュースと比べると、どうしても見劣りするものがあります。

 ほかの公務員との均衡を図ることも必要ではありますが、手当ではなく給与を上げることにより手取りを増やし、自衛官が安心して職務に従事できる環境を整備する必要があるのではないでしょうか。防衛大臣の認識を伺います。

 次に、自衛官の採用難の問題について伺います。

 令和五年度の自衛官採用率は五一%と、過去最低となりました。任期制自衛官候補生は三〇%と低迷しており、まさに我が国の防衛力の基盤が揺らぐ事態となっています。募集現場では非常な危機感が共有され、地方協力本部においては、本部長が街頭に立って手ずからチラシ配りを行ったとも聞いています。

 今回の法案において、任期制自衛官の処遇改善として、初任給の低さの要因となっていた自衛官候補生の廃止や、特殊な生活環境下でのモチベーション維持を目的とした指定場所生活調整金が創設されたことは、大いに評価するところです。

 しかし、任期制自衛官が採用難となっている理由は、任期中の給与や待遇に加え、任期終了後の就職に難があるといったことが挙げられます。三〇%まで低下した採用率を改善するには、より抜本的な対策が必要と考えますが、いかがでしょうか。防衛大臣の認識をお聞かせください。

 任期制自衛官だけでなく、災害対応の初動部隊や救難活動を主任務とする隊員、いわゆる緊急参集要員も特殊な勤務環境に置かれています。待機指定時は、休日であれお酒は飲めない、電話にはすぐ応じる、駐屯地や基地から二キロ以内の場所にいなければならないといった制約が課される場合があります。

 こうした自由が制限される環境について、最近では無料官舎の整備や営内残留制度の見直し等が進んでいますが、自宅が待機指定エリア内にある場合は手当が支給されないなど、不公平な制度が残っています。こうした制度不備の洗い出し、特殊な勤務環境下にある隊員の負担軽減を図る意思はあるのでしょうか。見解をお示しください。

 今改正案では、予備自衛官及び即応予備自衛官の手当や給付金、勤続報奨金の引上げが示されました。ウクライナ戦争での事例を引くまでもなく、予備役の存在は実動戦力としても抑止力としても非常に重要であり、今回の処遇改善は評価できるものです。

 しかし、予備自衛官の充足率が七〇%、即応予備自衛官の充足率に至っては五〇%と低迷する中で、処遇の改善が抜本的な強化と呼べるものかは疑問が残ります。予備自衛官等が誇りを持って職務に専念できるよう、家族や職場、さらには広く社会全体の理解を醸成する取組が今まで以上に必要であると考えますが、どのような施策を講じているのでしょうか。御説明をお願いします。

 昨年の能登半島地震では、即応予備自衛官及び医師、看護師たる予備自衛官が派遣されました。

 しかし、災害派遣における日当の支給は、本業の給与の補償ではなく、自衛官としての日額給与に基づいて計算されるため、結果として、派遣された予備自衛官の収入が本業の収入に及ばず、減少するケースが多々あります。このこと自体は、同じく災害派遣任務に就く常備自衛官との均衡を図る観点から理解できますが、そうであれば、日当以外の待遇についても均衡を図るべきだと考えます。

 自衛隊では、給与と名誉としての防衛記念章の両輪によって自衛官の士気を高めていると認識しています。しかし、災害派遣に従事した予備自衛官にはこの防衛記念章が授与されてこなかった問題があります。予備自衛官等に対しても、給与と名誉の両面から処遇を改善するべきではないでしょうか。防衛大臣に認識を伺います。

 次に、三本柱の二つ目である組織改編についてです。

 今回の法律案には、陸上自衛隊では補給統制本部の補給本部への改編、海上自衛隊では水上艦隊及び情報作戦集団の新編といった大規模な部隊改編が盛り込まれています。これは、激変する安全保障環境に際し、有事においても即応でき、また、地理的、領域的な横断、さらには全国的に複数正面での運用に対応するため、部隊を一元化することを目的とする一連の改編であると承知しています。

 我が国では、同盟国である米国との共同や、近年では同志国との連携が重視されていますが、今回のこの改編が具体的に有事の際にどのように機能するのか、立法事実を踏まえ、また、同盟国、同志国との連携といった観点も含めて御説明ください。

 自衛官定数の変更について伺います。

 今回の改正では、陸上で三百六十四名減少、海上、航空、共同の部隊でそれぞれ増加があり、全体としての定数は、なぜか一名の増減もないという案になっています。一方で、先ほども申し上げたとおり、採用難は続いており、常備自衛官の充足率は九〇%前後となってしまっているのが現状です。

 もちろん、安易に現状に定数を合わせるのではなく、現下の安全保障環境に対して、我が国の防衛に必要な防衛力を算定し、積算することで定数を定め、それに対して必要な採用活動を行っていくことが不可欠です。しかし、低充足が続けば、現場の部隊では、九人の人員に対して十人分の任務が付与されるという事態が恒常的に生起し、隊員の方々が疲弊していくことも事実です。現場では、有給はおろか、代休の取得も困難であるといった悲痛な声も上がっており、現場の負担軽減の観点からも対処が必要です。

 現在、海上自衛隊では、乗組員が従来の同じような大きさの艦艇に比べて二分の一以下となる「もがみ」型の就役が進んでおり、こうした省人化の試みは全自衛隊においてなされていくと考えます。今回、あえて定数の変更を行わない中、低充足からくる現場の過重負担について、どのような認識をお持ちでしょうか。また、対策の検討状況についてもお伺いします。

 三本柱の三つ目、同志国との協力強化に関して伺います。

 当然、同志国との協力強化は、我が国の安全保障、国防に資するものでなくてはなりません。本法律案では、装備移転や研究開発のための航空機、船舶の関連法案の適用除外規定の整備が盛り込まれていますが、このことが我が国の防衛力の強化につながるのかが重要です。この措置が具体的にどのような効果をもたらすのか、御説明ください。

 言うまでもなく、技術開発の促進と装備移転の円滑化、防衛産業基盤の強化は喫緊の課題です。防衛装備移転を通じて、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する同志国との関係が強化され、また、国内防衛産業基盤の維持、育成が図られるという前提も共有しています。

 しかし、特定の条件下で関連法令の適用を除外することと、最初から装備移転の対象となる機体や艦船について無差別に適用除外とすることとでは、性質が大きく異なります。特に、航空法や船舶安全法といった安全確保のための法制度において適用除外の範囲を広げ過ぎれば、我が国の空や海の安全確保に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 そこで、本法律案では、どのようにセーフティーネットを設け、こうしたリスクに対応しようとしているのか、また、防衛装備移転を進めることで得られる我が国の安全保障上の利益とのバランスをどのように取っているのか、防衛大臣の御説明をお願いします。

 最後に、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、当然、外交的努力を最大限した上で自衛隊の機能を強化すること、そして、その基礎である人的基盤を強化していくことこそが、国民の生命、自由、財産、我が国の平和と独立を守ることにつながると確信しています。

 自衛官の皆様が日夜職務に精励されていることに改めて敬意を表し、本法律案が自衛隊の強化に資するものとなるよう、政府の前向きな答弁をお願い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 平岩征樹議員にお答えいたします。

 隊員のモチベーションのアップと採用難についてのお尋ねがありました。

 防衛力の中身である自衛官の確保は政府としての至上命題であり、自衛官が、国防という国家にとって極めて枢要な任務に誇りと名誉、高い使命感を持って専念できる体制を整えるということが不可欠であります。

 そのため、昨年末、関係閣僚会議で取りまとめられました基本方針に基づきまして、手当の新設や引上げ、即応のための営舎内生活等に関する給付金の新設、任期制士の処遇確保のための自衛官候補生の廃止、自衛官の定年退職後の再任用の見直し、並びに事業を営む予備自衛官等に対する給付金の新設などの処遇改善を含む法案を提出をしております。

 こうした処遇の充実によりまして、職業としての自衛官の魅力が向上し、自衛官の募集や隊員のモチベーションへの好影響があると期待をいたしております。

 防衛大臣として自らが先頭に立って、隊員の処遇改善に向けて、基本方針で取りまとめられた各施策を引き続きスピード感を持って全力を挙げて推進をしてまいります。

 次に、自衛官の給与引上げについてのお尋ねがありました。

 昨年末に関係閣僚会議で取りまとめられた基本方針においては、手当の拡充のほか、自衛官の俸給表の改定についても実施をするということにしております。

 具体的には、自衛官の任務や勤務環境の特殊性に見合った給与とするため、勤務実態調査の結果、公平性、公正性を確保するための部外専門家の意見を踏まえまして、また、諸外国の状況も見ながら、自衛官の俸給表の改定を目指すこととしております。

 これを踏まえて、本年二月、防衛省人事審議会に新たな部会、処遇・給与部会を設けまして、早速、部外の専門家による検討体制を確立をしまして、既に二回審議を行い、検討を進めているところであります。

 こうした施策を通じて、入隊前の志願者等に対して、自衛官という職業が魅力あるものであると理解していただき、より多くの方々に自衛官という職業を選んでいただけるように取り組んでまいります。

 次に、任期制自衛官の採用率改善のための取組についてお尋ねがありました。

 任期制自衛官の募集が厳しく、喫緊の課題となっている中、防衛力の担い手である人材の確保は至上命題であります。

 こうした状況を踏まえて、任期制自衛官の処遇改善については、昨年、関係閣僚会議において取りまとめた基本方針に基づき、本法律案において、自衛官候補生制度を廃止をし、新たな任期制士を創設をするということにしております。これにより、非任期制自衛官と同等の対処を確保しております。また、営舎内の居住など特殊な生活環境下での即応のための集団生活を強いられる自衛官への給付金として、指定場所生活調整金を新設することといたしました。これにより、採用から六年経過するまでの間、新たに一年ごとに二十万円支給することといたしました。さらに、任期制自衛官を対象とした自衛官任用一時金の引上げや進学支援給付金制度の拡充を行いまして、任期制自衛官の処遇改善に努めているところであります。

 任期制自衛官について、任期終了の一年前から退職管理教育、職業訓練、進路相談を行いまして、積極的に再就職を支援をしています。これらの支援により、例えば、令和五年度、再就職を希望する隊員に対して約四十倍にも及ぶ求人数を獲得をしておりまして、支援を希望するほぼ全ての退職予定者が様々な業種への再就職先を確保しております。その上で、基本方針に基づいて、退職自衛官が自衛隊で培った知識、技能、経験を生かすことができますように、関係省庁と連携をしまして、再就職先の拡充を図っているところであります。

 そして、自衛官の採用、中途退職抑制、充足率の向上にいかに寄与しているかという観点から、関係閣僚会議において、令和七年中に効果の検証を行いつつ、基本方針でも取りまとめた各種施策の実効性を確保するとともに、人材確保に資する新たな方策についても不断に検討し、任期制自衛官の確保に全力を挙げて取り組んでまいります。

 次に、緊急参集要員の負担軽減についてのお尋ねがありました。

 近年、大規模かつ長期間の災害派遣活動が増えておりまして、災害派遣活動に従事する隊員や緊急参集要員には、従来以上に、精神的、肉体的な負担が増大をいたしております。そのため、災害派遣に従事した隊員にはしっかりと災害派遣等手当を支給するとともに、各種装備品の充実などに取り組んでいるところであります。

 昨年末に関係閣僚会議で取りまとめられた基本方針に基づきまして、緊急参集要員等が災害派遣に従事した場合に支給される災害派遣等手当については、一人当たり日額千六百二十円から二千百六十円に引き上げるということにいたしました。

 防衛大臣として、緊急参集要員等の自衛隊員が特殊な状況に置かれているということを考慮しまして、これらの隊員の処遇や生活、勤務環境の改善に向けて取り組んでまいります。

 次に、予備自衛官等の理解醸成の取組についてのお尋ねがありました。

 予備自衛官等の大半は、平素は他に本業を持ちながら訓練等に従事しているために、訓練等への参加には、雇用企業等の御理解と御協力が不可欠であると考えております。

 このため、防衛省としましては、予備自衛官等である企業等の従業員が災害派遣の活動で招集に応じた場合に、その使用者に対して、予備自衛官等の職務に対する理解と協力の確保に対するための給付金といたしまして、雇用企業協力確保給付金を設けております。また、本法律案において、自ら事業を営む予備自衛官等に対しても、災害派遣の活動で招集に応じた場合に、その事業の継続に資するための給付金として予備自衛官事業継続給付金を新設することといたしました。

 加えて、自衛隊から雇用企業等に対して訓練などの情報を提供する制度や予備自衛官等の制度の説明を通じまして、雇用企業等の理解促進に努めるとともに、幅広い国民の皆様に予備自衛官制度の理解を深めていただけるように、より積極的に動画広報などの取組を行ってまいります。

 そして、防衛省としましては、予備自衛官等が誇りを持って職務に専念できますように、家族や職場、さらに、広く社会全体の御理解を得るための取組を行いまして、予備自衛官が安んじて活動できる環境づくりを進めてまいります。

 次に、予備自衛官等の処遇改善についてのお尋ねがありました。

 予備自衛官等の処遇改善につきましては、昨年、関係閣僚会議で取りまとめた基本方針に基づきまして、本法律案において、予備自衛官手当及び即応予備自衛官手当等を大幅に引き上げるほか、新たに予備自衛官に対して勤続報奨金、これを支給できるようにすることとしております。これによりまして、一任期勤めた場合に支給される手当額については、予備自衛官は現行の二十七万円から六十八万円の約二・五倍、即応予備自衛官は三曹であれば現行の百七十一万円から二百七十四万円の約一・五倍となります。

 また、現在では、自衛官と同様に功績のあった予備自衛官又は即応予備自衛官に対しては、その功績をたたえ、賞詞及びそれに伴う防衛記念章、これを授与しております。

 防衛省としましては、引き続き、予備自衛官等が安んじて活躍できる環境づくりを進めてまいります。

 次に、部隊改編についてのお尋ねがありました。

 今般の法律案では、補給統制本部の補給本部への改編、海上自衛隊における水上艦隊の新編、情報作戦集団の新編などの部隊改編を実施することといたしております。

 補給統制本部の補給本部への改編は、従来、各方面総監が指揮監督を行い、補給統制本部が統制を行うとしていた体制を改めまして、補給本部が全国の各補給処を一元的に指揮監督する体制を構築をするものでありまして、これにより、補給処が所在する方面の警備区域をまたいで、より円滑な補給の実施や装備品等の整備を行うことが可能となります。

 水上艦隊の新編は、護衛艦隊、掃海隊群等に所属する水上艦艇を集約をするものでありまして、これにより、高い迅速性と活動量を継続的に遂行することが可能な体制となります。

 そして、情報作戦集団の新編は、艦隊情報群、システム通信隊群等に分散している情報戦に係る機能を集約をするものであり、これにより、横断的に情報収集、分析して、それに基づく迅速な対処が可能となります。

 今般の部隊改編を通じまして、部隊の即応性を一層高めるとともに、改編後も引き続き同盟国、同志国との連携を深化をさせ、我が国の防衛に万全を期してまいります。

 次に、現場の隊員の負担への対策についてのお尋ねがありました。

 自衛官の定数は、自衛隊の任務遂行に必要な自衛官の人員数を積み上げたものでありまして、防衛計画、整備計画においては、自衛官定数を総計を維持するということにいたしております。

 一方、我が国は深刻な人手不足社会を迎える中で、自衛隊全体の充足率は令和五年度末には約九〇%、中でも、各種任務を直接遂行する立場にある士の階級の充足率は約七〇%となっており、現場の隊員の業務負担が増大をしているということは事実であります。

 これを解消すべく、様々な負担軽減策に取り組んでいるところでありますが、令和六年度に、艦艇乗組員の代休の取得の促進を図るために、停泊中の一部の業務を民間企業へ委託をするということを検討する調査研究のほか、帰港中に行っていた業務を帰港前の洋上で処理できるようにするための艦艇内業務端末の増設などを行っております。

 また、必要な人材を確保すべく、関係閣僚会議で取りまとめた基本方針に基づき、自衛官の勤務の特殊性を踏まえた給与面の処遇改善や、若い世代のライフスタイルを踏まえた生活、勤務環境の改善などに取り組んでいるところであります。

 さらに、民間委託等の部外力を引き続き積極的に活用するとともに、定員が従来の汎用護衛艦の半分程度である「もがみ」型護衛艦など、省人化、無人化装備の導入による装備体系、組織の最適化といった取組を進めております。

 このような様々な取組によりまして、厳しい安全保障環境において引き続き円滑に任務に遂行できるように万全を期してまいります。

 そして、同志国との協力強化に向けた装備移転や研究開発のための関係法令の適用除外規定の整備についてお尋ねがありました。

 我が国の平和と安全を確保するために、同盟国のみならず、一か国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要であります。

 現在、こうした同志国等との連携強化に資する我が国の航空機や船舶の装備移転について、一定の引き合いがあるほか、研究開発の重要性が高まっております。

 今回の法改正におきましては、装備移転の対象として製造される航空機や船舶、いわゆる装備移転航空機や装備移転船舶の製造に関して、関係法令の適用除外規定などを設けた上で、防衛大臣の下で、安全性を始めとした基準への適合を一元的に確保いたします。これによりまして、円滑な装備移転や研究開発の環境整備をし、同志国等との連携強化、ひいては我が国自身の防衛力の強化につながると考えております。

 最後に、航空法の適用除外の範囲の在り方についてのお尋ねがありました。

 自衛隊の使用する航空機や船舶は、構造、設備、運用方法等が一般の航空機や船舶と異なることから、これまで、自衛隊法に基づき、防衛大臣が安全基準を定めて、その管理の下で航行の安全を確保してまいりました。

 今回の法改正におきましては、装備移転航空機や装備移転船舶等についても、自衛隊の使用する航空機や船舶と同種のものであるということから、航空法や船舶安全法等の適用除外を規定をしますが、自衛隊の使用する航空機や船舶と同様に、防衛大臣が装備移転航空機や装備移転船舶の安全基準等を定めまして、その適合を確認するなどの必要な措置を取ることで、航行の安全確保にもしっかりと対応してまいります。

 その上で、同志国等との連携の強化や、防衛生産・技術基盤の維持強化の観点から、装備移転や研究開発を円滑かつ効果的に進めてまいります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       防衛大臣  中谷  元君

       国務大臣  林  芳正君

       国務大臣 三原じゅん子君

 出席副大臣

       防衛副大臣 本田 太郎君


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