第17号 令和7年4月8日(火曜日)
令和七年四月八日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第十五号
令和七年四月八日
午後一時開議
第一 港湾法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(内閣提出)
第三 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
第四 日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出)
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一 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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○本日の会議に付した案件
日程第一 港湾法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(内閣提出)
日程第三 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
日程第四 日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出)
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 港湾法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、港湾法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。国土交通委員長井上貴博君。
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港湾法等の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔井上貴博君登壇〕
○井上貴博君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、近年の気候変動等に対応して港湾の保全及び円滑な利用の確保を図るため、所要の措置を講じようとするものであります。その主な内容は、
第一に、港湾の保全を図るための官民協働の取組を促進するための協働防護計画制度及び同計画に基づく取組を促進するための協定制度を創設すること、
第二に、海洋再生可能エネルギー発電設備等拠点港湾における港湾施設の利用を調整する制度を創設すること、
第三に、港湾管理者が管理する港湾施設の改良工事の国土交通大臣による代行制度を創設すること、
第四に、非常災害時における他人の土石の収用等に係る措置を拡充すること
などであります。
本案は、去る四月一日本委員会に付託され、翌二日中野国土交通大臣から趣旨の説明を聴取し、四日、質疑を行い、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対しまして附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案(内閣提出)
日程第三 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第二、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案、日程第三、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。内閣委員長大岡敏孝君。
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重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案及び同報告書
重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔大岡敏孝君登壇〕
○大岡敏孝君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
まず、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案は、重要電子計算機に対する特定不正行為による被害の防止のための報告の制度や通信情報の取得等の措置及びサイバー通信情報監理委員会による審査、検査等について定めるものです。
次に、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案は、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴い、重大な危害を防止するための一定の警察官又は自衛官によるアクセス・無害化措置に関する規定を整備するとともに、サイバーセキュリティ基本法その他の関係法律について所要の規定の整備等を行うものです。
両案は、去る三月十八日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。
本委員会においては、翌十九日平国務大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入りました。二十八日には参考人から意見を聴取するとともに、四月三日には総務委員会及び安全保障委員会との連合審査会を開会し、さらに、四日には石破内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど慎重に審査を重ね、同日質疑を終局いたしました。
質疑終局後、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案に対し、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び有志の会の共同提案により、本法律の適用に当たっては、必要最小限度において、法律の規定に従って厳格に権限を行使するものとし、いやしくも通信の秘密その他日本国憲法の保障する国民の権利と自由を不当に制限するようなことがあってはならない旨を明記すること及びサイバー通信情報監理委員会の国会報告に関し、必要的報告事項を列挙すること等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。
次いで、両案及び修正案を一括して討論を行い、順次採決しましたところ、まず、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案につきましては、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。次に、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきましては、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、両法律案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告いたします。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。上村英明君。
〔上村英明君登壇〕
○上村英明君 れいわ新選組の上村英明です。
私は、いわゆる能動的サイバー防御二法案について、れいわ新選組を代表し、反対の立場から討論いたします。(拍手)
現在、特に海外からのサイバー攻撃に日本がさらされており、重要な社会インフラを守る必要があることは一定理解します。しかし、それが、現在の受動的サイバー防御やその強化という枠組みを超え、サイバー版敵基地攻撃能力ともやゆされるアクセス・無害化、また、人権の侵害や治安管理、監視社会化につながりかねない、令状なしに通信情報を政府が収集、分析する活動を含む、今回の能動的サイバー防御になぜ飛躍するかが、今回の質疑の本質です。
両案が国会審議入りした三月十八日の本会議で、両案の問題点について、大きく四点を指摘いたしました。第一に、アクセス・無害化が他国の主権侵害とみなされる危険性が極めて高いこと。第二に、憲法第二十一条第二項後段が保障する通信の秘密を守るための規定が全く不十分であること。第三に、この活動を公正中立に、また効果的に監視しなければならないサイバー通信情報監理委員会の実効性、独立性が担保されていないこと。そして第四に、能動的サイバー防御の前に、現在の中小規模組織の情報セキュリティー対策の根本的底上げが最優先になるなどです。こうした問題が山積みであることです。
しかし、これまでの審議を経ても、一定の前進があったとはいえ、上記の問題点を払拭できる法案にはなっていません。例えば、アクセス・無害化が紛争や戦争に拡大しないためには、問題があると言われる政府を含めた信頼醸成措置の構築や国際法の共有化が不可欠です。しかし、現在、最大の同盟国アメリカの信頼も揺らぐ中、法案では同盟国、同志国との国際協調ばかりが強調され、現実には軍事部門のサイバー攻撃共同演習も行われています。軍事同盟の強化と言われても仕方がありません。
また、法律が施行されれば、これらの活動は市民の目からは見えなくなります。その点、人権や国際法を遵守する目的で、サイバー通信情報監理委員会の独立性や国会への報告義務などが十分担保される仕組みも不可欠です。しかし、日本学術会議問題が示すように、そもそも日本では、政府の下にありながら政府から独立した第三者機関が設置された例はまれです。現在想定されている組織で、この独立性が担保されるかは甚だ疑問だと思います。
さらに、三百三十万を超える中小規模の民間企業や病院等の情報アクセス対策が貧弱であることは明らかで、そのサプライチェーンがサイバー攻撃に対する脆弱性の要因であるにもかかわらず、積極的な財政支援など、新たな改善策の表明はありませんでした。
選択肢は、アメリカやイギリスなどのいわゆるファイブアイズを目標に、政府自らがハッカーになってサイバー攻撃を行う能動的サイバー防御ではありません。進めるべきは、回復力、レジリエンスの強化を含めた受動的サイバー防御力の向上に重点を置き、中小企業など社会基盤組織の情報セキュリティー対策を抜本的に底上げするとともに、問題とされる政府との関係を含む、広範で国際的な信頼醸成措置の構築こそが、平和国家日本が取るべき政策であることを改めて強調します。日本は平和国家であることを我々は忘れてはならないと思います。
れいわ新選組を代表して、反対討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 藤岡たかお君。
〔藤岡たかお君登壇〕
○藤岡たかお君 立憲民主党・無所属の藤岡たかおです。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりましたサイバー対処能力強化法修正案及び同法整備法案につきまして、課題を指摘しつつ、いずれも賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
私たち立憲民主党は、サイバー攻撃の脅威が増大している中で我が国の重要インフラ等を守る重要性と必要性を十分に認識した上で、今回の法案審議に当たっては、通信の秘密との整合性とのバランス、国外にある攻撃サーバー等に対するアクセス・無害化措置が武力行使に当たらないかなどの観点から、有識者や関係者の意見も聞きながら、問題点を指摘し、政府答弁で確認をしてまいりました。
政府が取得した通信情報に対し、機械的情報のみが記録されるような自動選別や個人が特定されないような非識別化措置などの運用が適切に行われなければ、政府の通信監視の対象がなし崩し的に拡大する懸念などもあります。
通信傍受法、特定秘密保護法などにおいては、通信の秘密や国民の基本的人権を尊重する条文が盛り込まれており、法の慎重な運用につながる柱が規定されておりました。今回の法案には同様の規定が措置されていなかったことから、私たちの修正案によって、新たに、サイバー対処能力強化法案第二条の二として、通信の秘密を尊重する旨の規定が追加されました。
また、国外にある攻撃サーバー等に対し、自衛隊を含めてアクセス・無害化措置を講じる場合に、武力行使や先制攻撃に該当するのではないかとの懸念があります。これに対し、政府は、通常兵器による有形力の行使と同様の深刻な被害を伴うことは想定されず、国連憲章が禁ずる武力の行使に当たることはないと考えます、その意味で先制攻撃になることはあり得ませんなどと答弁をされております。
この政府のアクセス・無害化措置が必要最小限度の措置だったかどうかなどを確認することも重要ですが、政府は手のうちをさらせないとする趣旨の答弁を続け、国会報告の対象として当該措置内容が追加されることはありませんでした。
本来は、情報監視審査会のような国会の常設機関において本関連法案の運用をチェックする体制を構築すべきであり、条文修正の提案もいたしましたが、これが受け入れられなかったのは非常に残念です。国会の監視機能を高める取組が進まず、民主的統制が不十分であることには強い懸念を表明します。
第三者委員会となるサイバー通信情報監理委員会が、政府の通信情報の取扱い等に対して適切に検査を行い、検査結果の国会報告という規律を通じてその適正性を担保することが重要ですが、政府原案では不十分です。政府原案には、国会報告するとだけしか書かれていなかった規定について、具体的な報告事項を条文上明記するよう条文修正を提案し、報告事項が具体的に条文に追加をされました。
例えば、アクセス・無害化措置を行うに当たり、サイバー通信情報監理委員会の事前承認が原則であり、例外的に事後通知で足りることとされています。これが、運用において事後通知ばかりとなって、事前のチェック機能が形骸化するのではないかとの懸念があり、国会報告を通じた監視が重要です。私たちの修正案によって、アクセス・無害化措置に係る事前の承認の求めと、承認の件数、承認を得るいとまがなかったときの事後通知の件数についても国会報告の対象として追加されるなど、必要的報告事項が列挙されました。
さらに、今後、政府が内閣委員会などにおいて国会報告又は国会に求められた説明を行う場合には、誠実に対応し、通信情報等の取扱いやアクセス・無害化措置の適切性などについて、最大限の説明責任を果たすことを求めます。これは、私たちの提案によって附帯決議に盛り込まれた内容に基づくものであります。
これらに加え、法案の附則として、施行後三年をめどとして、検討、必要に応じた見直し規定を追加するよう求め、実現されました。
以上のように、政府原案を補完し、補強するため、通信の秘密の保障や国会による民主的統制を担保する観点から修正案をまとめ、日本維新の会と共同で他会派へ呼びかけをし、この結果、六会派で修正案の共同提出に至り、自民、維新、国民、公明、有志の会の皆様の御理解と御協力には感謝を申し上げます。
これまで述べたように、政府原案には懸念点、足らざる点もありますが、我が国の重要インフラ等を守るために、サイバー攻撃への対処は待ったなしの課題でもあり、本法案の修正、これまでに積み上げた国会答弁や附帯決議などに基づき、政府によって丁寧な運用が行われることを前提として、私たちは賛成することといたしました。
以上で討論を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 塩川鉄也君。
〔塩川鉄也君登壇〕
○塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる能動的サイバー防御法案に対して、反対の討論を行います。(拍手)
反対理由の第一は、通信の秘密を根本から覆す違憲立法だからです。
本法案は、サイバー攻撃の実態把握を口実として、送受信者の同意もなく、政府が電気通信設備から通信情報をコピーできるようにするものです。さらに、自治体を含む基幹インフラ事業者のみならず、あらゆる民間事業者と協定を結ぶことで、利用者情報の吸い上げを可能としています。まさに、国民の通信の秘密の侵害法案にほかなりません。
自動選別により機械的情報のみを分析するといいますが、機械的情報は、IPアドレスや指令情報など、通信の秘密の対象となるものであることは政府自身も質疑で認めております。
さらに、その自動選別も、特定のサイバー攻撃に関係する機器などの探査が容易になると認めるに足りる状況のある情報も含まれており、政府による恣意的な選別が行われる懸念は拭えません。
また、収集した情報は、外国政府など第三者提供も可能です。そもそも個人情報は、必要以上に収集しないこと、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得ることが大原則です。政府がこれらをことごとく無視するもので、極めて重大だと言わなければなりません。
国民への監視強化の危険も深刻です。協定を通じて得た情報は、海外からのサイバー攻撃被害防止の目的以外にも利用できる規定が盛り込まれています。目的外利用の範囲に制限はなく、警察や自衛隊などが自らの業務に使用することも否定しませんでした。まさに公安警察が個人情報を収集、保有、提供したことについて違法と断じた大垣事件の判決をないがしろにするものであり、全く容認できません。
反対理由の第二は、自衛隊と警察が、憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険があるからです。
サイバー攻撃に関する世界の共通認識がいまだ形成途中であることは、政府も認めるところです。そのような中、自衛隊と警察が海外の機器に対して侵入し、監視し、その機器を使えなくするアクセス・無害化措置を行えば、相手国から主権侵害と受け取られる危険があります。政府は国際法上の緊急状態によって違法性を阻却できると言いますが、そのように主張しているのは一部の国だけで、国際社会の共通認識とはなっていません。にもかかわらず、相手国の同意もなく、しかも疑いがあるだけでそのような措置に踏み切れば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険は否定できません。
さらに、政府は、自衛隊によるアクセス・無害化措置について、いわゆるグレーゾーン事態や重要影響事態で、米軍が軍事行動を行う相手国のサーバーに発動できることを認めました。日本が武力攻撃を受けていないにもかかわらず、アメリカと交戦状態にある相手国に対して日本が先制的にアクセス・無害化措置に踏み切ることになれば、日本の側から参戦してきたとみなされ、エスカレーションの引き金を引くことになりかねません。憲法九条を踏みにじり、日本に戦争の危険を呼び込むものであり、断じて容認できません。
また、警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使に踏み込むことは、他国の領域主権を侵害し、日本の警察の在り方を根底から覆すものです。こうした行為を、裁判所の令状さえなく、第三者機関の承認などというまやかしで容認するものです。その第三者機関は、あくまで、法における措置の適正な実施を確保するための審査及び検査を行うための機関にすぎません。権力の濫用防止や人権を保障する機関ではありません。戦前の反省の下、警察権の濫用が起きないよう取ってきた令状主義の形骸化につながりかねず、警察の権限拡大そのものであり、全く認められません。
以上、憲法と国際法を踏みにじる本法案の廃案を求め、討論を終わります。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 三木圭恵君。
〔三木圭恵君登壇〕
○三木圭恵君 日本維新の会の三木圭恵です。
私は、会派を代表し、重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、日本維新の会、立憲民主党を始めとした与野党六会派で共同提案した新法案に対する修正案に賛成、そして修正部分を除く政府原案及び整備法案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
陸、海、空、宇宙に次ぐ第五の戦場とも言われるサイバー空間における他国による攻撃の脅威は、我が国においても急速に高まっています。
昨年末には、組織的なサイバー攻撃による被害が相次いで確認されました。金融機関では、インターネットバンキングの送金機能等に障害の発生が確認され、航空会社においては、五便の欠航、七十一便に遅れが出るなどの被害が出たことは、記憶に新しいと思います。
また、ロシアによるウクライナ侵攻や、イスラエルとハマスの戦闘においても、実際の軍事衝突の前からサイバー攻撃が繰り広げられていたことが確認されています。
国民生活がサイバー攻撃によって脅かされる事態が実際に目の前で起きている今、重要インフラに対するサイバー攻撃をいかに未然に防ぎ、国民の大切な情報をいかに守るかということは、国家の存亡に関わる事態と言っても過言ではありません。
そうした中、政府が、三年前の二〇二二年十二月に策定した国家安全保障戦略で導入を宣言した能動的サイバー防御が、本法案によって本格的に第一歩を踏み出したことに対して、一定の評価をいたします。
本法案では、通信当事者の同意によらない場合であっても、重要なインフラ機能がサイバー攻撃によって損なわれることを防ぐ高い公益性があること等の場合に限って、公共の福祉の観点から、通信の秘密の保障の例外として、情報が取得、分析できるものとなっています。
当然ながら、このような措置が憲法の保障する国民の権利と自由を不当に制限することのないよう、政府原案においても、第六十一条において、サイバー通信情報監理委員会は、毎年、内閣総理大臣を経由して国会に対し所掌事務の処理状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならないとされています。
しかし、条文上に具体的な項目が明示されていなかったため、我々は、この規定は曖昧で不十分であるとみなし、条文に国会への報告が必要な項目を具体的に列挙して明記する修正案を維新が考え、各党に提案をいたしました。
委員会質疑においては、行政機関が取得した全ての情報を国会に提出すべきといった旨の議論がありました。しかし、これは、国会法第百四条にある、国家の重大な利益に悪影響を及ぼす場合に該当する可能性が高い上、通信の秘密に抵触するおそれもあることから、受け入れられるものではありませんでした。
そして、最終的には、我が党が提案した該当事項の承認件数やその概要という案に与野党の意見がまとまったことから、我が党は単独での修正案提出を撤回し、与野党六会派の共同で今回の建設的な修正案を提案するに至りました。これは、熟議の今国会における有意義な成果であり、賛成するに十分な理由であります。
それでも、まだ課題は残っています。今回の新法で、能動的サイバー防御を可能にする第一歩を踏み出したことは評価するものの、分析の対象となる情報は、日本を経由して伝送される外国から外国への通信、外外通信のほか、外国から日本への外内通信、そして日本から外国への通信、内外通信となっており、国内の通信、内内通信は外れています。
政府の説明では、サイバー攻撃のうち九九・四%が海外からの発信によるものという理由からですが、仮に〇・六%であっても、サイバー攻撃の可能性を残したことになります。また、テロリストが国内に潜んでサイバー攻撃を行ってくる可能性も否定できません。サイバー攻撃が日々進化していることを考えると、法律上、全ての芽を取り除けるようにしておく必要があると思います。
そして、警察、自衛隊、民間事業者においてどのようにサイバー人員を強化、育成し、基幹インフラとサプライチェーンを守るかといった人材面の課題の解決や、国外におけるアクセス・無害化措置の実施が外交問題に発展しないための国際法上のルール形成を進めることに貢献するといった国外に向けたアプローチも進めていかなければなりません。
そこで、我々は、今回の修正案で、施行後三年を目途として検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずることも盛り込みました。今後の法改正に向け、しっかりと議論し、検討を進めていきたいと思います。
我々日本維新の会は、本法案を、国家、重要インフラ等を守る第一歩とし、今後も効果検証を重ね、国家の一大事、いざというとき、真に国家国民を守る法律を作ることをお約束いたします。そして、この立法こそが国会議員の第一の使命であり、我々は責任ある仕事を全うする政党であり続けることを改めてこの場で宣言し、賛成討論とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 田中健君。
〔田中健君登壇〕
○田中健君 国民民主党の田中健です。
私は、会派を代表して、政府提案の重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案とその修正案、そして重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)
サイバー空間における脅威は、日々、その深刻さと複雑さを増しています。国家機関、重要インフラ、民間企業、そして国民一人一人の生活がサイバー攻撃の危険にさらされている現状において、我が国が従来の受け身の姿勢から脱却し、能動的な防御体制へと踏み出すことは、まさに今、不可欠な判断です。
国民民主党は、安全保障政策二〇二二において、早くから能動的サイバー防御の必要性を提言しております。二〇二四年四月には、議員立法として、サイバー安全保障を確保するための能動的サイバー防御等に係る態勢の整備の推進に関する法律案、いわゆるサイバー安全保障法案を提出いたしました。本法律案は、その方向性と基本理念において我々の主張と一致しており、現実的かつ責任ある国家防衛の第一歩であるため、賛成をいたします。
今回の政府案には、特に重要な三つの柱が盛り込まれています。
第一に、官民連携の強化です。
電気、金融、空港などの基幹インフラ事業者がサイバー攻撃を受けた際には、政府への報告が義務化されます。これは、迅速な情報共有と初動対応を可能にする制度的な前進です。また、政府と基幹インフラ事業者などが参加する官民協議会が新たに設置され、政府が把握しているサイバー攻撃の手口や分析情報をインフラ事業者に提供する仕組みが整備されます。これによって、民間側の防御力も飛躍的に向上することが期待をされます。
第二に、通信情報の適切な利用です。
外国間、あるいは外国サーバーを送信元又は送信先とする通信の中で、サイバー攻撃に関する疑いのある通信について、政府は、独立機関の承認を得た上で、当事者の同意はなく通信情報を取得できるようになります。分析の対象はあくまでIPアドレスなどの機械的情報に限定され、メールの本文やファイルの中身など、通信の本質的中身は対象から除外をされます。あわせて、通信の秘密を保障する憲法の趣旨を踏まえ、独立性の高いサイバー通信情報監理委員会が設置をされ、運用の適正性を継続的に監督します。プライバシーの保護と安全保障のバランスを取る重要な制度的工夫であると評価をいたします。
第三に、無害化措置の実施です。
警察や自衛隊が原則として独立機関の承認を得た上で攻撃元のサーバーにアクセスし、指令通信の遮断やマルウェアの無効化といった無害化措置を行うことが可能になります。また、自衛隊法の改正により、国家の関与の疑いがある特に高度に組織的、計画的な攻撃が海外から行われる場合には、総理の命令により、自衛隊が通信防護措置を取ることが可能となります。これにより、国家安全保障上の対応が明確化されます。
以上のように、本法案は、サイバー空間という新たな戦場において、我が国の主権と国民の暮らしを守るために不可欠な制度設計であり、制度的整備であり、国民民主党としても、かねてより主張してきた方向性に即したものであります。
しかし、サイバー空間は変化のスピードが極めて速く、制度の整備と並行して、今後更に実効性を高めるための不断の努力が必要です。ここで、幾つかの課題と提言を申し上げます。
第一に、サプライチェーンの強靱化です。
サイバー攻撃の手法は多様化しており、直接的な攻撃だけでなく、関連企業や下請企業を通じたサプライチェーン攻撃が増加をしています。こうした攻撃に対処するためには、委託元の企業だけではなく、サプライチェーンを構成する中小企業の体制整備や支援策の強化が不可欠です。政府には、包括的なセキュリティー基準や支援制度の整備を求めます。
第二に、サイバー人材の育成です。
サイバーセキュリティーは、人の力に支えられています。攻撃の巧妙化、高度化に対応するには、専門的知識と高度な技能を有する人材の育成、確保が急務です。国、自治体、教育機関、企業が一体となって、戦略的かつ計画的な人材育成プログラムを推進すべきです。
第三に、制度の継続的な見直しです。
現時点では、IPアドレスなどの機械的情報に基づいてリスク判断が可能な場合も多いですが、今後、AI技術の悪用などにより、外形的な情報のみではリスク判断が困難になる可能性もあります。今回の法制度を肯定しつつも、その内容や運用を時代に応じて柔軟かつ継続的に見直していく姿勢が極めて重要です。
第四に、海底ケーブルの保護です。
国際通信の大半を担う海底ケーブルは、我が国にとって極めて重要な情報通信インフラです。近年では、その脆弱性が国家安全保障上の懸念ともなっています。政府には、海底ケーブルの保護に関する責任体制の明確化と、必要な法整備に早急に着手することを強く求めます。
国民を守るのは、理想論ではなく、現実に即した行動と責任です。見えない敵に立ち向かうこの挑戦に、国家と社会全体で共に取り組むべきときです。国民民主党は、これからも、単なる批判ではなく、建設的かつ現実的な安全保障政策の実現を追求していくことを国民の皆様にお誓い申し上げ、私の討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 両案を一括して採決いたします。
日程第二の委員長の報告は修正、日程第三の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり議決いたしました。
――――◇―――――
日程第四 日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第四、日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。安全保障委員長遠藤敬君。
―――――――――――――
日本国の自衛隊と我が国以外の締約国の軍隊との間における相互のアクセス及び協力の円滑化に関する日本国と我が国以外の締約国との間の協定の実施に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
〔遠藤敬君登壇〕
○遠藤敬君 ただいま議題となりました本法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、円滑化協定の適確な実施等を確保するため、実施に関する諸法律を統合するとともに、刑事手続の特例等を定めるものであります。
本案は、去る三月二十六日本委員会に付託され、翌二十七日中谷防衛大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。四月四日、質疑、討論、採決を行いました結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
なお、本案に対して附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣城内実君。
〔国務大臣城内実君登壇〕
○国務大臣(城内実君) 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案の趣旨についてご説明申し上げます。
人工知能関連技術は、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化並びに新産業の創出をもたらすものとして経済社会の発展の基盤となる技術であるとともに、安全保障の観点からも重要な技術であります。近年、人工知能関連技術を巡る国際的な競争が激化する中、我が国において、人工知能関連技術の研究開発を行う能力を保持するとともに、関連産業の国際競争力を向上させるための取組が不可欠となっております。
この法律案は、このような背景を踏まえ、人工知能戦略本部を内閣に設置するとともに、政府が人工知能基本計画を定め、これを推進するなどの所要の措置を講ずることにより、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。
以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。
第一に、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進について、基本理念及び国の責務等を定めております。
第二に、基本的施策として、研究開発の推進、施設及び設備等の整備及び共用の促進、人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性の確保、人材の確保、教育の振興、情報収集及び調査研究等の実施、国際協力の推進等を規定しております。
第三に、政府は、基本理念にのっとり、基本的施策を踏まえ、人工知能基本計画を定めるものとしております。
第四に、人工知能基本計画の推進体制として、内閣に人工知能戦略本部を設置することとし、内閣総理大臣を本部長とするなど、組織、所掌事務等を規定しております。
以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案の趣旨であります。(拍手)
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人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。梅谷守君。
〔梅谷守君登壇〕
○梅谷守君 立憲民主党・無所属の梅谷守です。
ただいま議題となりました人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案について、会派を代表し、質問します。(拍手)
冒頭、一言申し上げます。
石破総理が昨夜、米国トランプ大統領と電話会談し、今後は担当閣僚を指名し、交渉継続で一致したとのことですが、しかるべきタイミングで総理とトランプ大統領と直接交渉することにより、関税措置の撤回、見直しを実現すること、国内対策を早期実現することを求め、質問に入ります。
私たちは今、人工知能、AI技術がもたらす人類史上かつてない劇的な転換点のただ中にいます。AIをめぐっては、世界各国で今この瞬間も熾烈な開発競争が繰り広げられています。我が国がこの分野で後れを取ることは、産業の競争力を失うにとどまらず、未来のこの国の形、社会の形を他国に委ねることを意味しかねません。本法案はその意味で重要な法案であり、一歩であり、AI政策を強力に前へ進めようとする姿勢は立憲民主党も共有するところです。
その上で、AIの開発で大きく後れを取っている現状や国民の間に広がる懸念を踏まえ、具体的な質問をさせていただきます。
まず、日本のAI技術の現状について伺います。
我が国は、AI、特に大規模言語モデルの開発において、米国や中国に大きく後れを取っています。その原因としては、海外諸国に比べ官民のAIへの投資の規模が小さいことや、AI専門家の人材不足などが挙げられます。
二〇一六年度に人工知能技術戦略会議を設置し、人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップを策定して以降、政府が国家戦略としてAIの研究開発を進めてきたことは承知をしています。しかし、結果として、研究開発も産業化も、海外との差はむしろ開いたのではありませんか。これまでの取組の具体的成果及びAIの研究開発の遅れの現状と原因について、どう検証し認識していますか。お答えください。
本法案では、AIを経済社会の発展の基盤と位置づけ、国際競争力の向上を掲げていますが、典型的な推進法の域を出ず、推進に当たって従来と異なる点は何か、全く見えてきません。
政府は、AI研究開発の推進に当たり、何を目標として設定し、何に重点を置くのですか。その中で、国産AIの開発の必要性をどのように考えていますか。また、スタートアップ企業を始め、官民の研究開発に対し、どのような内容や規模の支援を行うのですか。具体的な答弁を求めます。
次に、プライバシー侵害、著作権侵害などの懸念への対応について伺います。
AIに係るイノベーションの促進が重要であることに異論はありません。しかし同時に、AIには様々なリスクがあります。
例を挙げると、一つ目はプライバシー侵害です。同級生や知人の写真を基に性的な画像を生成、拡散した、AIの学習に同意なく個人情報が利用されたなど、AIによる権利や利益の侵害とされる事案が国内外で相次いで報告をされています。こうした現状を受け、どの世論調査でも、AIに対する国民の強い懸念が示されています。法案の前提となった内閣府AI制度研究会の中間取りまとめに対するパブリックコメントでも、適切な規制を望む声が多く見られます。
政府は、これまで、こうしたプライバシー侵害や個人情報保護違反のリスクに既存の法制度で的確に対応してきたとお考えですか。また、国民の懸念をどう受け止めておられますか。見解を伺います。
二つ目に、著作権など知的財産権の侵害です。記事の無断使用、特定の作風の模倣などの事案が報じられ、クリエーターを中心に懸念が広がっています。著作物、肖像、音声の無断学習や生成は生成AIの持つリスクの一つですが、本法案の記述は抽象的で、著作権法などの今後の議論に丸投げされています。
AIによる著作権や人格権の侵害について、なぜ本法案は制度的な手当てをしていないのですか。既存の法制度で対応可能とお考えなのですか。政府として、法的責任や規制、救済の在り方について、今後、いつ、どのような方針の下で整備を進めるのか、城内大臣並びにあべ文科大臣に具体的な答弁を求めます。
知的財産保護においては、適切な対価還元も重要です。無断での学習利用が放置されれば、優良なコンテンツを創出する好循環も損なわれます。AI開発者による学習データの利用に対し、創作者へ何らかの対価を還元する仕組みが必要ではないでしょうか。必要ならば、いつ、どのように整備する見通しでしょうか。政府の方針を城内大臣にお伺いをします。
三つ目は、ディープフェイクなどへの対応です。本法案には、AIが生成した偽情報による被害について、誰が責任を負うのかという原則や、勧告や命令、救済などのリスクに対する具体的対応策がほとんど盛り込まれておりません。中間取りまとめでは、既存の法令で一定の対応がなされているとされています。また、今後、指針で追加のリスク対応を打ち出すのかもしれません。
しかし、実際に、アメリカ大統領選など海外の選挙で、偽音声、偽画像が拡散し、投票行動に影響を与えたとされる事例が報告をされています。これが日本で起きた場合、果たして、公職選挙法など現行法で対応できるのでしょうか。
政府は、既存の個別法や、法的拘束力のないガイドラインや規範による対応で、AIを用いた権利利益の侵害から本当に国民を守れるのでしょうか。そもそも、どのような方法で対応するのでしょうか。また、ディープフェイクによる選挙における偽情報の拡散への対応について、どのように考えますか。政府の見解を伺います。
次に、AIが社会に及ぼす影響についてお伺いをします。
AI技術の進展が加速する中で、いわゆるシンギュラリティー、技術的特異点の到来を懸念する声があります。シンギュラリティーが起きた場合、科学技術の飛躍的な進化によって、様々な課題の解決や経済成長が急速に進む可能性がある反面、雇用の喪失や富の集中、倫理や民主主義の混乱、さらにはAIが人類に敵対する危険性までが指摘をされています。
このシンギュラリティーの到来する可能性について、政府はどのような認識を持っておられますか。また、現在の科学的知見を踏まえつつ、リスクへの備えとして、どのような政策的対応を検討しているのですか。見解を伺います。
次に、イノベーション促進とリスク対応の両立についてお伺いをします。
我が国は、G7広島サミット以来、広島AIプロセスを主導し、人間中心のAI、安全、安心で信頼できるAIを国際社会に提唱してきました。法案の前提となった中間取りまとめでも、イノベーション促進とリスクの対応の両立を掲げ、各国のモデルとなるようなAI制度を構築することを求めています。
これら従来からの議論を踏まえ、AIの持つリスクや国民の懸念を考えれば、我が国の初の包括的なAI立法は、基本法として立法すべきではないでしょうか。リスクへの対応を含め、国としての基本姿勢を明らかにし、政策の全体像を国民に示すものとすべきところ、基本法ではなく、技術推進法にとどめたのはなぜですか。見解を伺います。
次に、法案の内容について伺います。
まず、第二条の人工知能関連技術の定義について伺います。この定義次第では、第六条から第八条の責務規定や、第十六条の調査研究等の及ぶ対象者の範囲が大きく変わり、必要以上に幅広い事業者に懸念が広がりかねません。
人工知能関連技術には、具体的にどのようなものが含まれますか。そもそも、政府は人工知能をどのように定義しているのか、見解を伺います。あわせて、人工知能関連技術の対象となる研究者や事業者は国内にどのくらいいるのですか。また、対象となる者には国外の者も含まれるのですか。お答えください。
第七条には、活用事業者の責務として、国及び地方公共団体が実施する施策に対する協力義務が規定をされています。この責務の具体的内容について伺うとともに、研究機関など他の責務規定が努力義務となっている中、本条項のみ義務規定である理由について伺います。また、協力義務といえども、実効性を問う声がある中で、罰則を設けなかった理由を伺います。あわせて、今後の見直しの議論によっては罰則が設けられる可能性があるのか、お伺いをします。
また、第八条には、国民の責務として、AIに対する理解と関心を深めること、及び、国及び地方公共団体の施策に対する協力が努力義務として定められています。義務ではなく、罰則もないことは理解をしますが、例えば、AIなんてよく分からないという御高齢の方々は、国民の責務に違反していることになるのですか。あるいは、国が整備を進めるデータセット、学習に使われるデータベースですが、これへの情報提供を拒んだら、これも責務違反になるのでしょうか。どこからどこまでが責務となるのか、責務の具体的な内容について、国民に分かるようお答え願います。
そもそも、国に対して理解増進の義務を負わせるなら理解できますが、理解と関心を深めることをなぜ国民の責務として規定するのでしょうか。なぜ責務まで課す必要があるのかの理由を含め、お答えください。また、あわせて、施策に協力しない国民が何か不利益を受ける可能性があるのですか。明確にお答えください。
結びに、これから私たちを待っているのは、AIとともにある新たな社会です。そこへ向けて、AIを適切なガバナンスの下に置き、信頼できる構成要素として社会の中に組み込んでいくことが政府と政治の責任です。また、国民一人一人にとっても、AIへの理解を深め、AIに振り回されることなく、自らの体と頭の一部のごとく使いこなすことが求められます。
本法案をめぐる議論が、国民の皆様にとって、AIに対する理解と関心を深め、AIとの共存の在り方を考えるきっかけとなることを願い、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣城内実君登壇〕
○国務大臣(城内実君) 梅谷守議員からは、まず、AIに関するこれまでの取組の成果及び研究開発の遅れの原因についてお尋ねがありました。
政府は、これまで、我が国におけるAIの研究開発を加速するため、研究者やスタートアップ等が利用できる計算資源やAI学習用データの整備、提供などの取組を進めてまいりました。
これらにより、日本の企業が開発するAIの性能は確実に向上していると考えております。しかしながら、これまでAIの研究開発に資本や人材が迅速に集まってこなかったことや、日本語のデータが少なくAIの学習が難しいことなどにより、我が国のAI開発は後れを取っていると承知しております。
このため、我が国の研究開発力の更なる向上に向けて、本法案を踏まえ、研究開発や人材育成などの取組を推進してまいります。
次に、AI研究開発を推進するに当たっての目標、国産AIの開発の必要性、研究開発への支援等についてお尋ねがありました。
AIの研究開発に当たっては、例えば、我が国が良質なデータを保有するロボット、医療、防災等の強みを有する分野から、世界を先導する役割を果たしていきたいと考えております。
また、AIは国民生活や経済社会に密接に関係するものであることから、我が国の歴史、文化、商習慣等を日本語で学習し、正確に答えることのできるAIを開発する必要があると考えております。
こうした取組を始め、AIに関する競争力強化と安全性確保を一体的に推進するための経費として、令和七年度予算で合計一千九百六十九億円を措置したところであります。
なお、本法案が成立した暁には、AI政策の司令塔となるAI戦略本部を新たに設置し、AIの研究開発等を推進するためのAI基本計画を策定することとしております。基本計画の策定に当たっては、適切な目標について検討し、AI関係施策の基本的な方向性や政府が講じるべき具体的な施策等を定める予定であり、全ての府省庁が一丸となって研究開発の支援に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、プライバシー侵害や個人情報保護法違反のリスクについてお尋ねがありました。
プライバシー侵害などについて、一般論として申し上げれば、捜査機関において、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処していると承知しております。
また、個人情報保護法との関係では、これまでに、個人情報の取扱いに関する注意点等を取りまとめた「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」の公表や、個別の生成AIサービスに関して留意すべき点についての情報提供などを行っているものと承知しております。
引き続き、既存の法令等で適切に対応することを基本としつつも、AIのリスクをめぐる国民の皆様の不安や懸念があることは承知しており、今後、AI政策の司令塔機能を十分に発揮し、関係省庁との連携を一層強化することで、そうした不安や懸念を払拭できるよう、しっかりと取り組んでまいります。
次に、著作権や人格権の侵害への対応についてお尋ねがございました。
内閣府では、著作権などの知的財産権について、生成AIに関する懸念やリスクへの対応等について検討を行い、昨年五月に、AI時代の知的財産権検討会中間取りまとめ、これを公表しました。この中で、生成AIによる知的財産権の侵害リスクへの対応については、法、技術、契約の各手段を組み合わせた取組を行うことが必要であることなどを示しております。
また、いわゆる人格権のうち、例えば肖像権については、事案によって民事上の責任が生じ得ることなどが整理されております。
このように、AIの様々なリスクに対しては、個別のリスクの内容に応じて既存法や既存のガイドライン等で対応することを基本としつつ、本法案に規定された情報収集や調査等の取組を活用して、関係省庁と連携し、リスクへの対応を適切かつ迅速に行っていくことになると考えております。
次に、創作者への対価還元の仕組みについてお尋ねがございました。
AI時代の知的財産権検討会中間取りまとめでは、AIの開発者による学習データの利用に対し、創作者への対価還元の仕組みとして、一律の制度的措置を講じることは困難であるとの整理をしております。
その上で、当事者間の契約による対価還元の実現が重要であるとし、これを法的ルールや技術により担保するための方策例を示しております。
創作者が適切な対価還元を得て新たな創作活動につながる好循環を実現できるよう、関係省庁と連携しながら、引き続き、この中間取りまとめの周知を丁寧に進めてまいります。
次に、既存の法令やガイドラインの対応で権利利益の侵害から国民を守れるか、また、選挙における偽情報の対応についてお尋ねがございました。
他人の名誉を毀損する画像の作成など、AIを利用した違法な事案については、引き続き、既存の法令に基づき対処してまいります。
その上で、本法案では、国が、AIの研究開発及び活用の適正性を確保するための基本的考え方を示す指針を整備するとともに、悪質な事案に対する調査やその結果に基づく指導助言等を行うなどの措置を講じることとしております。これにより、顕在化するリスクに対して適切かつ迅速に対応できるようになるものと考えております。
また、現行の公職選挙法においては、公職の候補者に関して虚偽の事項を公表したり、虚偽の氏名等を表示して通信したりすること、いわゆる成り済ましについては罰則が設けられていると承知しております。
偽情報の拡散への対応も含めた選挙活動規制の在り方については、表現の自由や政治活動、選挙運動の在り方にも関わる問題であるため、各党各会派において御議論いただくべき事柄であると考えております。
次に、シンギュラリティーの到来する可能性についてお尋ねがありました。
シンギュラリティーについては、例えば、電力の大量消費や性能向上に必要な学習データの不足などの技術的な課題があり、その到来の有無や時期については専門家によって意見が分かれているものと承知しております。
倫理的に誤った判断をする懸念への対応など、社会的な課題があることも承知しておりますが、現時点でシンギュラリティーがもたらすリスクを明確化するには至っていないと認識しております。
いずれにせよ、本法案が成立した暁には、法に基づく情報収集や調査などによって実態や課題を把握し、必要に応じて有識者の意見も聞きつつ、関係省庁との連携の下、シンギュラリティーがもたらし得るリスクへの対応を検討していくことになるものと考えております。
次に、AI法を推進法とした理由についてお尋ねがありました。
本法案においては、イノベーションの促進とリスク対応を両立しながら、諸外国と比べて遅れていると指摘されている我が国のAIの研究開発及び活用を強力に推進することによって、国民生活の向上と経済社会の発展を目指しております。このため、本法案の名称を、基本法ではなく推進に関する法律としております。
なお、リスク対応については、AI基本計画において基本姿勢を示した上で、指針や調査、情報収集等を通じた取組を推進してまいります。
次に、人工関連技術の定義などについてお尋ねがありました。
御指摘の人工知能については、現時点で国際的に確立した統一的な定義はないものと承知しております。
本法案においては、国際的な議論の動向等も踏まえつつ、今後の技術変化にも対応できるものとなるよう、対象を広く捉えることを意図して、人工知能関連技術として定義を置いたものであります。
当該技術には、例えば機械学習、深層学習、自然言語処理等に係る技術のほか、AIが生成したことを示す識別情報をコンテンツに埋め込む電子透かしや、不適切な出力を抑止するガードレールに係る技術が含まれております。
また、お尋ねのあった、人工知能関連技術に関わる研究者や事業者の数等について、当該技術は様々な分野や場面によって活用され得る汎用性の高いものであるため、集計を行うことは困難と考えております。
また、本法案における事業者等の対象について、海外事業者であっても、日本語を用いてAIの研究開発や活用を行うなど、我が国の事業者や国民に対して事業活動を行う者は対象となります。
次に、活用事業者の責務及び罰則を設けなかった理由についてお尋ねがありました。
御指摘の法案第七条に規定する活用事業者の責務に関し、国及び地方公共団体が実施する施策への協力に係るものとして、例えば、法案第十三条に規定する指針の遵守や、第十六条に規定する情報収集、調査などへの協力を求めていくことを想定しております。
また、活用事業者の責務に関し、他の責務規定と異なり、協力しなければならないとの表現を用いた理由は、人工知能関連技術を社会に実装していくためには、同技術を活用した製品又はサービスの開発、提供などを行う事業者からの協力が不可欠であるためであります。活用事業者からの協力を政府として重視しているからこそ、そのような表現を用いております。
さらに、本法案では、現時点において顕在化しているリスクについては、既存の法令に基づき対処することが可能と考えていることから、罰則を設けておりません。
ただし、AIについては技術変化が極めて速いことから、現時点では予測できない新たなリスクが生じた場合には、関係省庁と連携しながら、必要となる法的措置を検討していくことも将来的にはあり得るものと考えております。
次に、国民の責務の具体的な内容についてお尋ねがございました。
御指摘の法案第八条の国民の責務は、国民の皆様に人工知能関連技術を適正に活用していただくためには、当該技術に対する正しい御理解と御関心を深めていただくことが重要であることから、この規定を置いたものであります。
このため、本法案においては、基本的施策の一つとして、人工知能関連技術に関する教育及び学習の振興、広報活動の充実等を国として行う旨を規定しております。
御指摘のように、AIに対する理解と関心の度合いは人によって異なるものであるため、各人が置かれている状況に応じて、可能な範囲で御協力いただくことを期待しております。したがいまして、画一的な基準によって当該責務への違反の有無を判断するものではありません。
最後に、国民の責務を規定した理由とそれによる国民への不利益の有無についてお尋ねがございました。
現在のAIは間違った出力をすることもあり、それを知らずに活用すると、被害者になることや、場合によっては加害者となってしまうこともあり得ます。
このため、先ほど申し上げたとおり、国民の皆様に人工知能関連技術を適正に活用していただくためには、当該技術に対する正しい御理解と御関心を深めていただくことが重要であるとの考えから、本法案において国民の責務を想定したものであります。
国等が実施する施策への協力については、各人が置かれている状況に応じて、可能な範囲で協力いただくことを期待するものであり、当該規定により、国民の皆様が何らかの不利益を受けることがない旨を明確に申し上げておきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣あべ俊子君登壇〕
○国務大臣(あべ俊子君) 梅谷議員にお答えいたします。
AIと著作権についてお尋ねがありました。
AIと著作権との関係については、クリエーター等の関係者からの懸念の声を受け、文化審議会の小委員会で議論を行い、令和六年三月に、AIと著作権に関する考え方について取りまとめたところです。
文部科学省においては、この考え方について、セミナー等を通じて周知啓発に努めているほか、文化庁の文化芸術活動に関する法律相談窓口を通じ、著作権侵害に関する事例の集積を行っているところです。
まずはこうした周知啓発や事例の蓄積に努めつつ、AIやこれに関する技術の発展、諸外国における検討状況、この進展等を踏まえながら、必要に応じた検討を続けていく予定です。(拍手)
〔議長退席、副議長着席〕
―――――――――――――
○副議長(玄葉光一郎君) 伊東信久君。
〔伊東信久君登壇〕
○伊東信久君 日本維新の会の伊東信久です。
ただいま議題となりました人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案について、日本維新の会を代表して質問します。(拍手)
本格的な人工知能が登場してから余り時間もたっておらず、まだ不明確な部分が多いこともありますが、ネット社会が発達しているところに登場した新技術でもあり、社会への浸透はこれまでの新技術に比べて速いと考えられています。かつては読みにくかった出力結果が今や滑らかとなり、その進歩に驚かざるを得ません。
人工知能の急速な技術の進展に対して、法律の整備は著しく遅れています。我が国でもようやく、本法案により、イノベーションを推進するとともに、起こり得るリスクに対応しようとしています。これまでの新しい技術の導入において失敗した事例を繰り返さないようにすべきだということを改めて申し上げまして、質問に入ります。
政府は、規制と振興の両面から国の政策を支える司令塔として、AI戦略本部を設置することとしています。人工知能の利用は多種多様にわたるため、全ての省庁が関係することになることが想定される中、司令塔機能を果たす部署が必要であることは分かります。しかし、AI戦略本部が実際に必要な施策を主導して行っていけるかどうかについては、大いに疑問を感じます。
また、人工知能の利用によって国民の権利利益の侵害が生じた場合への対処の方針は、国民に誤解を与えない形で示すことも必要です。そのため、AI戦略本部において主導的立場に立つ人物には、経験はもちろん、洞察力や表現力が求められます。天下りを防ぎ、新たなイノベーションを推進するためには、そうした人材は、官公庁よりも民間企業から採用するのがふさわしいのではないでしょうか。
以下について、科学技術政策担当大臣に質問します。
AI戦略本部における主導的立場には、どのような人材が登用されるのでしょうか。そして、民間からの登用を行う予定はあるのでしょうか。その際、どのような基準で判断するのでしょうか。お答え願います。
政府は、人工知能の開発と社会への実装化を進めるに当たり、AI基本計画を策定することとしています。人工知能の進歩はこれまでの技術革新と比べてとても速いことが予想され、基本計画はすぐに時代に合わなくなることが起こり得ます。基本計画の改定の頻度を増やすことや、新技術の登場などで状況が急変した場合に行うべき改定についてもルールを決めておく必要があると考えます。
本法案では、AI基本計画の策定と改定の期限の目安がありませんが、技術革新の速さに合わせて、どのような対応を取っていくのでしょうか。この分野で新しい技術が登場した場合に、臨機応変に基本計画改定が行われるのでしょうか。お答え願います。
人工知能開発の司令塔的役割を果たす機関を設置するに当たって危惧されるのは、政府が必要な人材を集めることができるかどうかということです。また、人工知能の更なる進展に対応するための人材育成を継続的に実施できるかということも大切です。現時点で欧米先進国に対して後れを取っているという現状においては、人材の確保と育成を他国の努力以上に実施していかなければならないことは明らかです。
省庁組織の中に、人工知能の開発に詳しい特殊な人材を導入することになると思いますが、特に待遇面についてはどのように考えているのでしょうか。人工知能の開発については、これまでの給与基準にとらわれず、優秀な人材を破格の待遇をもって迎えるべきと思いますが、見解を伺います。
優秀な人材を集めるだけでは組織の運営は難しく、また人件費もかかります。必要な人材を一から育てて一人前にする仕組みも必要です。新しいアイデアを創造し、日本があるべき未来を描き、築いていく組織としては、様々な能力を持つ人たちによって構成されることがポイントであると考えます。
人材の継続的育成についてはどのように進めていくのでしょうか。また、省庁組織のAI人材だけでなく、ニーズが高まる社会の人材の育成についてはどのように進めていくのでしょうか。お答え願います。
本法案において、政府が民間などの人工知能開発についての調査権を持つことになります。発展途上にある人工知能の開発にとって、余計な規制は技術開発の障害になります。諸外国でも盛んに開発が進められている現状を考えると、政府の調査権が濫用されることは、国際競争力への足かせになります。調査権の誤った行使は、開発を適切でない方向に向けてしまう可能性があることを危惧しています。
権力の行使に対して、一般に濫用を防ぐための仕組みが必要ですが、人工知能開発に関する政府の調査権について、行使の濫用を防ぐための規定や仕組みはどのようになっているのでしょうか。調査権行使のためのガイドラインを設定するのでしょうか。お答え願います。
人工知能の悪用には多くの国民が不安を抱えており、現行の規則や法律で人工知能を安全に利用できると思っている国民は、たった一三%にすぎません。本法案の制定によって、ようやく、人工知能を利用する上で国民の不安を払拭するための道筋ができるものと考えます。悪質な事業者は日本に法人を置かず、日本の法律を守りません。事業者名の公表を行っても、名前を変えて再び同じ行為を繰り返すでしょう。このような事案に対応するためには、悪質な事案の例を国民に周知していくことが肝要と考えます。
日本法人を置かない海外の悪質な事業者に対する対応として、迅速に必要な調査を行うためにどのような施策を取っていくのでしょうか。また、警察庁など他の省庁と連携し、全省庁的に調査分析に当たるべきと考えますが、どのような対策を実施するのでしょうか。お答え願います。
海外に目を向けますと、欧州連合、EUは、二〇二四年五月にAI法を策定し、容認できないリスクを持つAIの使用、提供を禁止するなど、禁止や罰則を明示した法律を施行しています。一方、本法案においては、開発者や企業に対する罰則規定がありません。
人工知能の開発や利用だけでなく、不正利用への対応という側面においても、海外の専門家や政府との連携は不可欠です。罰則の有無の違いや政府の姿勢の違いが国際協力を進める上で水位差を生じさせ、連携にそごを来す可能性があります。
不正の取締りにおける国際協力が不十分であると考えますが、本法案で十分にできるようになっているとお考えでしょうか。お答え願います。
石破総理は、AIの研究開発や社会実装を世界で最も進めやすい国を目指し、世界のモデルとなるAI制度を構築すると力説されました。人工知能技術はインターネットを介して世界とつながるものであり、国際的なルールに直接関わります。安全に利用することにおいて、また安全保障上の観点においても、日本が国際的ルールの構築に関わることは重要です。
日本が国際的ルール作りにより深く関わる必要性については、どのようにお考えでしょうか。それを実現するための方策としては何を考えているのでしょうか。お答え願います。
AIのリスク評価について、事業者に対して、ガバナンスポリシーの作成、販売前のリスク想定、発売後の情報収集を規定しています。しかし、こうした事業者任せの対応ばかりではなく、政府から、AIリスク評価に関する情報提供を積極的に行っていくべきではないでしょうか。
事業者に求めているレッドチームテストの手法ガイドや評価ツールについてのガイドブックなどについて、人工知能の安全性の評価手法の検討を行う機関であるAIセーフティ・インスティテュートから情報提供を行うべきだと考えますが、具体的な方策として、どのように進めていくのでしょうか。お答え願います。
米国は、バイデン前政権においては、人工知能開発に関して法規制をする方向で動いていました。ところが、トランプ政権は、人工知能のリスク管理などを企業に求めた前政権の大統領令を廃止して、規制緩和による人工知能開発の推進を打ち出す新たな大統領令を発効しました。世界全体が共通認識を持つ状況ではなくなり、国として方向性を定めることがますます重要性を帯びています。EUは、禁止や罰則を入れたAI法を策定して運用中であり、日本は、対EUと対米国とで異なる対応が求められる複雑な状況に直面しています。
人工知能の開発をめぐり、先進諸外国の間では異なる方向性を目指す施策が講じられています。中途半端な方策は、国際競争でしのぎを削る革新的技術を進める意味では好ましくないと考えます。人工知能開発を推進していく立場から、国際社会にどのような働きかけを行っていくのでしょうか。お答え願います。
続いて、総務大臣に質問します。
二〇二三年G7広島サミットにおいて、AIの開発や利用に関する広島プロセスが合意されました。G7首脳により包括的政策枠組みが承認され、それに基づいて広島AIプロセス・フレンズグループが発足しました。
総務省は、このフレンズグループに関して、米グーグル、マイクロソフトなど、日本ではKDDI、NECなどの民間企業が加わった、安全なAIの利用に関する新たな組織を立ち上げることを発表しました。
広島AIプロセス・フレンズグループに構築される民間企業を交えた新組織は何を目指しているのでしょうか。そして、現時点で、その実行可能性をどの程度に考えているのでしょうか。
次に、経済産業大臣に質問いたします。
ネット社会の進展によるデータセンターの増加により、必要とされる電力が増大することが予測されています。日本は二〇五〇年カーボンニュートラル実現を目指して様々な取組を進めていますが、人工知能が社会に取り込まれていくことによる進展に合わせた電力の供給が必要とされるようになると考えられます。
増大が予想される電力量に対応するために、どのような対策を実施するのでしょうか。お答え願います。
日本維新の会は、人工知能技術を、新たな産業として育て上げるべき分野であり、技術と創造性の両面から大きな花を咲かせるための適切な法整備を実施すべきことを改めて主張いたしまして、私からの質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございます。(拍手)
〔国務大臣城内実君登壇〕
○国務大臣(城内実君) 伊東信久議員から、まず、AI戦略本部における人材登用についてお尋ねがございました。
AI戦略本部は、本部長を内閣総理大臣、副本部長を内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣、本部員をこのほか全ての国務大臣が務める会議となります。
AI戦略本部がその所掌事務を遂行する際には、AI関連技術の研究開発及び活用の推進において、高い専門性や広範な知見が要求されると考えております。このため、様々な分野の有識者からの意見を聴取できるよう、民間有識者によって構成される会議体を設けることを検討してまいります。
次に、AI基本計画の策定と改定の期限についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、AIは技術の進展が速い分野であります。このため、AI基本計画を速やかに策定し、また、計画に盛り込む内容については、状況に応じて臨機応変に更新していく必要があると考えております。
次に、政府における人工知能に関する人材導入についてお尋ねがございました。
AI政策の司令塔機能を発揮するために、AI戦略本部の事務局を担う内閣府の体制を強化していくことは重要と考えております。
そうした中で、特定の技術に関する優れた見識を持つ人材を行政官として破格の待遇で採用することは容易でないことから、国立研究開発法人や大学等に所属する専門家の意見を聴取するなどによって対応しております。
加えて、専門的知識を有する行政官を確保するため、民間企業等の人材を非常勤の公務員として採用するなどの工夫も進めているところであります。
次に、人材の継続的育成についてお尋ねがございました。
AI人材の育成については、大学や高等専門学校における数理、データサイエンス、AIに関する体系的な教育プログラムを認定する制度や、次世代のAI分野に貢献する研究開発を行う若手研究者や博士後期課程学生への支援などを実施しているところであります。
本法案では、人材の確保等に必要な施策を講ずる旨を規定しており、関係省庁と連携して、AI人材の育成にしっかりと取り組んでまいります。
次に、国による調査の濫用防止の仕組みについてお尋ねがありました。
本法案では、国は、AI関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報収集等の調査及び研究を行うことを規定しております。
御指摘のとおり、国による調査の濫用は防ぐ必要があると考えております。このため、AI基本計画において、調査の基本的考え方を示すとともに、詳細な実施方法等については、有識者の意見を聞きつつ、関係省庁と連携して定めてまいります。
次に、日本法人を置かない海外の悪質な事業者への対応についてお尋ねがございました。
現在、国内で利用される生成AIの多くは海外事業者によって提供されており、国内事業者と同様、海外事業者においても適切な対応がなされるよう、本法案では、海外事業者を含む研究開発機関及び活用事業者等に対し、国が実施する施策に協力する責務を定めております。
御指摘の日本法人を置かない海外事業者による悪質な事案への対応については、米国、欧州等の諸外国の政策当局及び事業者等と連携を図り、情報収集等に取り組んでまいります。
加えて、本法案により新たに設置する司令塔たるAI戦略本部の下で、全府省庁が一丸となり、調査や情報収集、国民への情報提供等に取り組んでいく考えとしております。
次に、不正の取締りにおける国際協力についてお尋ねがございました。
AIはボーダーレスかつグローバルに利用される技術であり、御指摘のとおり、AIのリスクに対応していくための世界各国との緊密な協力が必要であると考えております。例えば、警察では、AIに関わる事案も含めたサイバー事案の捜査に当たっては、外国捜査機関との連携が不可欠であることから、国際共同捜査の推進に向けた情報交換や信頼関係の構築に取り組んでいるものと承知しております。
今後、本法案により新たに設置するAI戦略本部の下、関係府省庁が一層緊密に連携することで、我が国が国際的な場や枠組みにおいて主導的な役割を果たせるよう、積極的に取り組んでまいります。御指摘の不正利用を始めとするリスクへの対応についても、本法の着実な運用を図る中で、適切に対処してまいりたいと考えております。
次に、国際的なルール作りに関わる必要性についてお尋ねがございました。
AIは、御指摘のあった安全保障分野も含め、様々な分野に応用可能な技術であり、我が国として、AIの研究開発力を保持するとともに、国際的なルール作りにも関与し、その国際競争力を向上していくことが重要であると考えております。
我が国は、これまで、G7、OECD、国連などの国際的な場や枠組みにおいて、AIに係る国際的なルール作りの議論に積極的に参加してまいりました。今後、関係各国と連携し、安全、安心で信頼できるAIの実現に向けて、関連する議論に貢献してまいります。
次に、AIセーフティ・インスティテュートによる情報提供についてお尋ねがありました。
昨年二月、我が国では、AIの安全性に関する評価手法等の検討及び推進を行うAIセーフティ・インスティテュートを設置いたしました。
AIセーフティ・インスティテュートでは、国内外の関係機関とのネットワークを構築し、AIの研究開発及び活用の安全性向上のための検討を進めており、これまでに、AIの安全性に関する評価観点ガイドやレッドチーミング手法ガイドを公開してまいりました。
引き続き、関係省庁や関係機関と連携して、分かりやすいコンテンツをホームページ上で公開するなど、AIセーフティ・インスティテュートの取組を推進してまいります。
最後に、国際社会への働きかけについてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、近年、世界各国においてAI法制度に関する対応が進んでおり、各国においては、各々の法体系や社会的、歴史的背景に応じて異なる形で制度の検討や整備が進められているものと承知しております。
AIは、技術の変化が速く、将来発生するリスクの全てを予測することは難しいと考えております。このため、我が国としては、イノベーションを促進するために過剰な規制は避け、また、国際整合性を保ちながらリスクへの対応を図るため、諸外国の制度についての情報もしっかりと収集した上で、今般の法律案の内容としたところであります。
本法案は、イノベーションの促進とリスク対応を両立し、AIの研究開発や実装を加速することのできるバランスのある法制度として、世界各国のモデルになり得るものと考えております。
今後とも、国際社会に対して、広島AIプロセスを始めとする国際的枠組みなどの機会を捉えつつ、我が国の考え方について積極的に発信していきたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕
○国務大臣(村上誠一郎君) 伊東議員からの御質問にお答えいたします。
広島AIプロセスのフレンズグループに構築された民間企業を交えた新組織について、その目的及び実行可能性に関する御質問がありました。
広島AIプロセスについては、本年二月、広島AIプロセスの精神に賛同する各国政府の協調枠組みであるフレンズグループを東京にて開催し、AI開発企業などを交えた新たな枠組みを立ち上げることに決定いたしました。
この新たな枠組みは、AI開発企業や国際機関などの多様な関係者を巻き込むことによって、安全、安心で信頼できるAIのグローバルな普及を図ることを目的としております。
現在、この枠組みには、日米の主要なAI開発企業などが参画しております。今後とも、幅広いAI開発企業などに対して参画の呼びかけを積極的に行い、広島AIプロセスの普及促進に図ってまいりたいと考えております。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣武藤容治君登壇〕
○国務大臣(武藤容治君) 伊東信久議員の御質問にお答えをさせていただきます。
電力需要の増加に対する対策についてお尋ねがありました。
今後の電力需要については、データセンターの増加などのDXやGXの進展により、省エネの進展を見込んでも、なお増加が見込まれております。
こうした電力需要の増加に対しては、徹底した省エネに加え、再エネや蓄電池のほか、火力、原子力を含めあらゆる電源を活用し、電力の安定供給の確保を図ってまいります。
その上で、今後は、脱炭素電源を十分確保できるかどうかが国力を左右する状況にあります。このため、再エネと原子力といった脱炭素電源を最大限活用していく必要があり、そのために必要な事業環境の整備を進めてまいります。(拍手)
○副議長(玄葉光一郎君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十九分散会
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出席国務大臣
総務大臣 村上誠一郎君
文部科学大臣 あべ 俊子君
経済産業大臣 武藤 容治君
国土交通大臣 中野 洋昌君
防衛大臣 中谷 元君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 平 将明君
出席副大臣
内閣府副大臣 辻 清人君