衆議院

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第22号 令和7年4月18日(金曜日)

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令和七年四月十八日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十号

  令和七年四月十八日

    午後一時開議

 第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    …………………………………

  一 日本学術会議法案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日本学術会議法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長谷公一君。

    ―――――――――――――

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔谷公一君登壇〕

谷公一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、行政手続における国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図るため、マイナンバーの利用が可能な国家資格に関する事務等を拡大すること等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る四月十五日本委員会に付託され、同日平デジタル大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、十七日に質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

鈴木隼人君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(額賀福志郎君) 鈴木隼人君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長西村智奈美君。

    ―――――――――――――

 情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔西村智奈美君登壇〕

西村智奈美君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、近年における情報通信技術の進展及び普及の状況等に鑑み、刑事手続において取り扱う書類について電磁的記録をもって作成、管理、発受することを可能にし、対面で行われる手続についてビデオリンク方式の一層の活用を可能にするとともに、電磁的記録をもって作成される文書に対する信頼を害する行為等についての処罰規定の整備等を行おうとするものであります。

 本案は、去る三月二十七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 委員会においては、翌二十八日鈴木法務大臣から趣旨の説明を聴取し、四月一日質疑に入り、四日参考人から意見を聴取し、十一日には民間事業者のデータセンターの視察を行うなど、慎重に審査を行いました。

 本日、本案に対し、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案により、電磁的記録提供命令に係る秘密保持命令は一年を超えない期間を定めて行わなければならないものとし、捜査機関の個人情報取得に係る留意規定、映像と音声の送受信による外部交通の推進に係る規定を追加することを内容とする修正案が提出され、提出者から趣旨の説明を聴取し、原案及び修正案に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日本学術会議法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、日本学術会議法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣坂井学君。

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 日本学術会議法案につきまして、その趣旨及び内容の概要を御説明申し上げます。

 本法律案は、日本学術会議の機能強化に向けて、その独立性、自律性を抜本的に高めるため、学術に関する重要事項に係る審議、大学、研究機関、学会その他の学術に関係する者の間における連携の確保及び強化、学術に関する研究を円滑に進めるための社会環境の整備、学術に関する外国の団体及び国際団体との交流等を行うことにより、学術の向上発達を図るとともに、学術に関する知見を活用して社会の課題の解決に寄与することを目的とする法人として、日本学術会議を設立し、その目的、業務の範囲等に関する事項を定めるものです。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、日本学術会議について、特別の法律により設立される法人とするほか、日本学術会議の目的等に関する事項を定めることとしています。

 第二に、日本学術会議の機関として、日本学術会議会員、総会、会長、監事、会員候補選定委員会、選定助言委員会等を置き、それらの職務等を定めることとしています。

 第三に、日本学術会議会員は、優れた研究又は業績がある科学者のうちから、総会が選任することとし、日本学術会議は、客観性及び透明性を確保する方法でこれを行い、会員の選任の過程を国民に明らかにするよう努めなければならないこととしています。また、会長は、特に優れた研究又は業績があり、人格が高潔で、かつ、日本学術会議の業務を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する会員のうちから、総会が、その決議により選任することとし、日本学術会議は、会長が選任されたときは、会長の選任の理由等を公表しなければならないこととしています。

 第四に、日本学術会議の業務の範囲等について定めるほか、日本学術会議が、その適正な業務運営を確保し、また、国民に対する説明責任を果たすため、中期的な活動計画及び年度計画を作成し、毎事業年度の終了後における業務の実績等に関し、自ら点検及び評価を行うこと等を定めるとともに、内閣府に日本学術会議評価委員会を設置し、日本学術会議の自己点検評価の方法及び結果について、調査審議し、意見を述べることができることとしています。

 第五に、政府は、予算の範囲内において、日本学術会議に対し、その業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができることとしています。

 第六に、日本学術会議の設立準備に係る規定を設けるほか、現行日本学術会議法の廃止など、所要の規定の整備を行うこととしています。

 なお、この法律の施行期日は、一部の規定を除き、令和八年十月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨及びその内容の概要でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 日本学術会議法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。市來伴子君。

    〔市來伴子君登壇〕

市來伴子君 立憲民主党の市來伴子です。

 ただいま議題となりました日本学術会議法案について、会派を代表して、全て坂井学内閣府特命担当大臣に質問いたします。(拍手)

 本法案は、七十六年もの歴史を刻んできた日本学術会議を、国の特別の機関から特殊法人に変更する法案ですが、そもそも、学術会議を法人化する立法事実はどこにあるのでしょうか。菅義偉政権において、二〇二〇年十月に、学術会議より推薦された六名の候補が任命されなかったことが判明し、その直後に法人化の検討が行われました。つまり、この任命問題が法人化の端緒となっています。そのため、法案審議に当たっては、まず、任命拒否の経緯を明らかにする必要があります。

 なぜ六名の会員候補者の任命を拒否する事態となったのですか。石破総理は、御自身の著書「保守政治家 わが政策、わが天命」において、任命拒否問題について、今回どういう手続が踏まれたのかも明確にしておいた方がいいと述べていますが、任命拒否について、明確な理由を坂井大臣に伺います。

 その上で、今回、なぜ学術会議を特殊法人に変更する必要があるのか、お答えください。総務省ホームページにおける説明によると、特殊法人は企業的経営になじむものとありますが、学術会議は企業的経営になじむのでしょうか。伺います。

 今週四月十五日、学術会議は総会を開き、科学者の代表により起草された現行法を廃止し、日本学術会議の理念や組織の骨格を定める内容の法案を政府が提出したことは遺憾と言わざるを得ないなどとの声明を発表しました。また、総会において法案修正を求める決議が承認され、光石会長は、七十六年の歴史の中で極めて重要な決議と述べています。学術会議のこれらの声明や法案修正を求める決議に対する見解を伺います。

 本法案で学術会議の独立性をどのように担保するのか、伺います。

 学術会議の業務を定めた本法案三十七条には、現行法三条の「独立して」の文言がありません。なぜ「独立して」の文言を省いたのですか。伺います。

 新法人に関する組織体制は極めて複雑です。内閣総理大臣が任命する監事、内閣府に置かれる評価委員会、外部有識者が務める選定助言委員会、運営助言委員会が設置されます。監査、評価、助言と、多重な監督により学術会議への関与を強め、管理強化となるおそれはないですか。見解を求めます。また、二百五十人の組織に少なくとも二十二人もの外部の者が関与することになりますが、これらの委員や監事などに天下りを含めた政府関係者が就く可能性はあるのでしょうか。伺います。

 内閣総理大臣が任命する二人の監事は、報告、監査のみならず、学術会議が総理大臣に提出する全ての書類を調査し、会長又は総理大臣に意見を提出できるとあり、三十五ある他の特殊法人の中で最も強い権限を持つとされています。監事の任期は三年ですが、再任に制限はなく、実質的に一人の者が務め続けられる唯一の役職です。なぜ監事には再任の制限がないのでしょうか。再任制限を設けるべきではないですか。伺います。

 会長の行為が利益相反事項に当たる場合、監事は学術会議の代表権を行使できるとされています。監査役である監事が代表権を行使するのはふさわしいのでしょうか。伺います。監事に権限が集中しないよう、代表権を有する者を総会が事前に定めておくなど、他の方法を講ずるべきと考えますが、見解を伺います。

 このような監事の強い権限は、学術会議の活動を萎縮させる可能性はありませんか。政府の意向が監事を通して活動全般に及ぶことのないよう、監事の在り方を見直すべきだと思いますが、見解を求めます。

 発足時に新会員を選考する候補者選考委員会の委員は、内閣総理大臣が指名した有識者と学術会議会長が協議の上任命するとしていますが、なぜ発足時に政府が関与する特別な選考を行うのでしょうか。会員選考がゆがめられるおそれがあり、極めて不自然です。候補者選考委員会の委員は現会員の中からも選定できるのか、伺います。

 発足時の候補者選考委員会は、三年後の会員候補者選定委員会にそのままスライドすることになっており、同じ委員が二回にわたり会員を選定することになります。現学術会議の会員は三年後の会員更新時に再任されないため、実質的に現会員との連続性はなくなり、学術会議を変質させるのではないかと危惧するものです。会員選考に当たっては、政府側の恣意的な選考とならないように、候補者選考委員会をやめて、学術会議が選考すべきと考えますが、見解を伺います。

 選定された新会員の候補者は、内閣総理大臣が権限の一部を委任した設立委員が指名するとしています。つまり、新会員は実質的に内閣総理大臣が指名することになるとの疑念が拭えません。他の特殊法人において、内閣総理大臣が全ての構成員を指名する法人はあるのでしょうか。伺います。

 新会員の候補者の選定に当たって、先端的、学際的又は総合的な研究分野、行政、産業界等との連携などと配慮事項が明記されていますが、先端的、学際的又は総合的な研究分野とは何を指すのか、伺います。行政、産業界等との連携とありますが、民間企業の研究者が会員となることを想定しているのでしょうか。伺います。

 現在約二千人が所属する学術会議の連携会員について、何ら規定されておりません。連携会員については廃止するのでしょうか。伺います。

 内閣総理大臣が任命する外部有識者による評価委員会は、学術会議の自己点検評価の方法及び結果を評価し、学術会議は、自主的に策定する中期的な活動計画に評価委員会の意見を反映させなければならないとしています。評価対象となる具体的な範囲と内容について伺います。

 政府が学術を評価することは、憲法二十三条で定められた学問の自由が脅かされかねません。日弁連は、本法案について、独立性、自律性というナショナルアカデミーとしての生命線ともいうべき根幹を損なうものであり、学問の自由に対する重大な脅威ともなりかねないと警鐘を鳴らしていますが、学問の自由との関係をどのように考えているのか、見解を求めます。また、独立性が担保されるべきナショナルアカデミーを政府が評価する国はほかにあるのか、伺います。

 選定助言委員会は、アカデミア全体や産業界等から会長が科学者を任命し、会員選考方針案などに意見を述べるとされていますが、会員の選定は、学術会議が独立性、自主性を確立するための中心的な要素であり、適当でないと思いますが、見解を伺います。また、選定助言委員会は個別の会員選考には介入しないという理解でよいか、伺います。

 外部の知見を取り入れるために設置される運営助言委員会について、政府は、会員ではカバーし切れない分野の人たちから適切なサポートを受けていくために活用されることが想定されていると説明していますが、業務の肥大化を招くのではないでしょうか。見解を伺います。

 新法人の事務局体制について、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会では、アカデミアと政府、産業界などの実務をつなぐ、いわばファシリテーターのような役割としてリサーチアドミニストレーター等を配置する必要性があるとされていますが、事務局の人選に政府が関与する余地はあるのか。事務局の人選は学術会議が行うべきではないですか。伺います。また、事務局に官僚は出向するのか。出向する場合は、その規模を伺います。

 学術会議の財源について、政府から長期的に十分な補助が行われるのか、伺います。世界の学術から孤立しないよう、国際学術団体への分担金を支払う十分な財源を補助すべきと考えますが、見解を伺います。また、自主財源に関する規定はありませんが、どのように考えているのか、伺います。

 役員及び会員に対し、任務を怠ったときの損害賠償責任を課していますが、どういった事案を想定しているのでしょうか。伺います。また、職務上知ることのできた秘密に守秘義務を課していますが、現学術会議は人事案件以外の議論については公開が原則です。人事案件以外に守秘義務の対象となる秘密とはどのようなものを想定しているのか、伺います。

 本法案四十九条では、内閣総理大臣が必要と認めたときは、職員が学術会議の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査できるとし、五十条では、不正行為のおそれがあると認める場合にも是正措置を講ずることを求めることができるという、強力な介入が明記されています。政府の介入が極めて強い立入りや是正措置は見直すべきと考えますが、見解を伺います。さらに、罰則規定を設けていますが、この規定は役員及び会員を萎縮させるものでしかなく、必要性が見当たりません。見解を求めます。

 今回の法改正により、科学者の国会とも言われるナショナルアカデミーの存在意義が揺らぐのではないかという懸念があります。現学術会議の使命として前文でうたわれた、科学者の総意の下に、平和的復興、人類社会の福祉に貢献の文言を削る一方、新法人の目的を、学術に関する知見を活用して社会の課題の解決に寄与するとしていますが、政府の言う社会の課題の解決に寄与することは何を指すのでしょうか。伺います。

 二〇二二年十二月に内閣府が発出した日本学術会議の在り方についての方針にある、政府等と問題意識や時間軸等を共有することが本法案に維持されているのか、伺います。

 学術は、独立した自由な営みがあってこそ進歩すると考えます。時の政府の政策を誘導するために都合よく利用するものであってはならず、耳の痛いことでも真摯に向き合うことこそが、民主主義のあるべき姿です。こうしたことが守られるのか徹底的に審議することを求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 市來伴子議員の御質問にお答えいたします。

 六名の会員候補者を任命しなかった理由についてお尋ねがありました。

 これまでも当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しているとおり、二〇二〇年の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断を行ったものであり、既に一連の手続は終了しているものと承知しております。

 個々人の任命の理由については、政府の機関に所属する公務員の任命であり、通常の公務員の任命と同様に、その理由については、人事に関することであり、お答えを差し控えさせていただきます。

 学術会議を特殊法人とする理由についてお尋ねがありました。

 特殊法人とは、一般的に、特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人等であって、独立行政法人以外のものと定義されます。ホームページの御指摘の記述は、全ての特殊法人に係るものではなく、特殊会社を念頭に置いた例示であり、学術会議についてはこの例示に該当しないものと理解しています。

 この法案では、学術会議が拡大、深化する役割に実効的に対応していくため、その機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めることを目的としており、それにふさわしい組織形態として学術会議を法人化するものであります。

 日本学術会議総会での声明及び決議についてお尋ねがありました。

 先日、日本学術会議総会において、日本学術会議法案に関し、御指摘の決議と、国会において十分に慎重な審議を望むこと等を内容とする声明が決定されたと承知しております。

 この法案は、有識者懇談会の報告書を踏まえ、独立性、自律性を抜本的に高めることによる学術会議の機能強化のために学術会議を法人化するものであり、アカデミーの自由な活動を阻害するというようなものではないと考えています。

 また、総会後の記者会見において、日本学術会議会長から、法人化自身に反対することではない旨の発言があったと承知しており、国会審議においては、学術会議を法人化するこの法案の趣旨、内容をしっかり説明してまいります。

 「独立して」の文言を省いた理由についてお尋ねがありました。

 現行法では、行政機関である学術会議が、関係省庁との調整等により自由な意思表出等ができなくなることを避けるため、独立して職務を行うと現行法では規定されておりますが、法人化により、学術会議の独立性が組織面でも明確になります。海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できるようになります。

 なお、国の責務として、日本学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならない旨も条文に明記しているところです。

 法人化後の学術会議に対する政府の関与、監事等に政府関係者が就く可能性についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の報告書を踏まえ、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として特殊法人に移行するものです。

 一方、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される法人である学術会議について、活動、運営を国民に説明する仕組み、活動、運営が適法、適正に行われるための仕組みなどを法定して制度的に担保することは、国が設立する他の法人でも同様に設けられている仕組みであり、活動の学術的な価値や独立性の尊重とは別な、財政民主主義からの要請によるものです。

 法案については、懇談会からも、国民からの負託に実効的に応えるための体制整備と、国の財政的負担により運営される法人としての説明責任の担保が、学術会議の独立性、自律性を尊重しつつ実現されたものであり、最終報告書に沿って適切に法案化されたものだと評価していただいたところでございます。

 具体的な人選については、法案の成立後にそれぞれの任命権者が適切に判断するものと考えておりますが、選定助言委員及び運営助言委員は学術会議が選任するものです。

 なお、監事は、法人の役員であることから、政府又は地方公共団体の職員が就任できないよう、欠格条項を規定しているところです。

 監事の再任についてお尋ねがありました。

 監事は、法人の業務が適法に行われていることを監査することを職務とするものです。法案における監事の所掌事務に関する規定も、他の法人における監事と同じく一般的なものであることから、任期についても他の法人と同様に制限を設けておりません。

 監事の在り方についてお尋ねがありました。

 まず、監事による代表権の行使については、会長等と法人の間に利益相反関係が生じた場合に、監事が法人を代表するものであり、独立行政法人等においても同様の仕組みが定められております。

 総会は会長に対する任命権を有することから、総会が定めた者は会長との関係で第三者性を満たしません。このため、利益相反関係が生じた場合、監事が代表権を行使することが適切です。

 監事の在り方については、監事は、法人の業務が適法に行われていることを監査することを職務とするものであり、法人の運営に職務として直接携わることはできません。法案における監事の所掌事務に関する規定も、他の法人における監事と同じものです。

 候補者選考委員会の委員についてお尋ねがありました。

 新法人発足時の会員の選定方法については、平成十七年制度改正時を参考にして、現会員だけによるコオプテーションではなく、多様な視点からよりオープンに慎重かつ幅広く選考する方法により行うこととしています。

 その上で、今回は、コオプテーションの要請を尊重し、平成十七年制度改正時とは異なり、現会員が候補者選定委員会の委員になることも可能としたところでございます。

 候補者選定委員会についてお尋ねがありました。

 有識者懇談会最終報告書においては、新法人発足時の会員の選定方法について、新分野、融合分野への対応などの観点から、現会員だけによる候補者の精査では必要十分な選考を行うことは難しく、大幅な見直しを行った平成十七年制度改正時を参考にして、現会員だけによるコオプテーションではなく、多様な視点からよりオープンに慎重かつ幅広く選考する方法により行うことが適当であるとされています。

 このため、この法案では、平成十七年制度改正時と同様に、新たに会員となる二百五十人の選考、選任は、オープンに慎重かつ幅広い方法で行うこととしました。

 その上で、学術会議の意見にも十分に配慮して、コオプテーションの要請を尊重し、平成十七年制度改正時とは異なり、現会員が候補者選考委員会の委員になることが可能であり、総会による承認、推薦の手続も追加していることから、新会員の選定に現会員の意向が反映されることになっています。

 新法人発足時に任期が残っている会員にも、引き続き会員として活躍していただくことになっており、組織としての継続性にも十分に配慮しているところでございます。

 新法人設立時に会員となる者の指名についてお尋ねがありました。

 新法人設立時に会員となる者の指名については、法人化後の学術会議の会員の選任に国が関与しないことを踏まえ、設立委員のうち、学術会議の会員と同じ、優れた研究又は業績を有する科学者である者に内閣総理大臣から新会員を指名する権限を委任しておりますので、内閣総理大臣が新会員の指名について指示をすることはできません。

 候補者選考委員会の委員は、現行の学術会議の会長が任命し、候補者選考委員会で選考された候補者については、現行の学術会議の総会の承認を経てから、候補者として設立委員に推薦されることになっております。

 よって、内閣総理大臣が新会員を実質的に指名するとの御指摘は当たりません。

 先端的、学際的又は総合的な研究分野の指すもの等についてお尋ねがありました。

 有識者懇談会の報告書では、法人発足時の会員について、既存の学問の分野や分類にとらわれない新分野、融合分野への対応や、大学、研究機関、民間企業などの所属にとらわれず、優れた研究又は業績がある科学者を選任することが求められていたところです。

 その上で、先端的、学際的又は総合的な研究分野の内容を始め、具体的な選考の方針や人選については、候補者選考委員会で御判断いただくものと考えています。

 連携会員についてお尋ねがありました。

 連携会員については、有識者懇談会の報告書において、法定事項とはせずに学術会議の内規により運用することとする方が法人化のコンセプトに沿ったものとなるとされており、組織運営の自律性、弾力性を高めるため、法定しないこととしたものです。

 日本学術会議評価委員会の評価の対象についてお尋ねがありました。

 日本学術会議評価委員会は、日本学術会議が中期的な活動計画の期間及び年度ごとに作成する自己点検評価書に記載された自己点検評価の方法及び結果について調査審議することとしております。

 自己点検評価は、中期的な活動計画やこれに基づいて作成される年度計画に基づいて学術会議が行うものです。中期的な活動計画に対しては、独立行政法人等とは異なり、国からの目標の提示や認可はありません。

 学問の自由との関係についてお尋ねがありました。

 憲法第二十三条に定められた学問の自由は、広く全ての国民に保障されたものであり、特に大学における学問研究の自由、その成果の発表の自由、教授の自由を保障したものであると承知しております。

 国が設立し国の財政的支援を受けて運営される法人である学術会議について、活動、運営を国民に説明する仕組みを法定して制度的に担保することは、国が設立する他の法人でも同様に設けられている仕組みであり、学術会議の活動の学術的な価値や独立性の尊重とは別な、財政民主主義からの要請によるものです。

 なお、海外アカデミーの状況は国によって様々でありますが、我が国のような特別な地位、権限及び国による財政的支援ができることが法律で明記されている国はないと承知しております。

 選定助言委員会についてお尋ねがありました。

 有識者懇談会の最終報告書においても、アカデミア全体や産業界等から会長が任命する会員等以外の科学者を委員とする選定助言委員会を法定し、会員選考の方針の案等を作成するに当たって意見を聞くことは、学術の独立性や日本学術会議の自律性、コオプテーションの理念と、外部の知見を取り入れる必要性、分野や選考の固定化、既得権益化の抑止、議論や決定過程の透明化、国民への説明責任などを調和させる工夫として、極めて優れた仕組みであると評価されているところです。

 選定助言委員会の委員は総会が選任し、意見に法的な拘束力はありません。個別の会員の選考について意見を言わないことも、条文上明らかです。

 運営助言委員会についてお尋ねがありました。

 有識者懇談会の最終報告書において、運営助言委員会は、会長が実効的な助言を求める専門性と機動性の高い組織として設計、運用されることが望ましいとされております。

 これを踏まえ、学術会議のよりよい役割発揮のため、業務の改善やプレゼンスの向上に、会長の諮問機関として活用いただきたいと考えております。

 事務局の人選についてお尋ねがありました。

 法人化後の学術会議の事務局の職員については、法人が雇用することとなり、公務員の出向の要否も含め、学術会議がお考えになることと考えます。

 財源についてお尋ねがありました。

 学術会議に対する国からの財源措置については、これまでも予算編成過程のプロセスを経て必要な金額が措置されているところであり、今後も必要な財政的支援は行っていくことになります。

 なお、法人化することにより、財政基盤を多様化し、自律的に活動を拡大する可能性が広がると承知しており、政府としては、学術会議が財源の多様化に向けた取組ができるよう、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

 賠償責任及び守秘義務についてお尋ねがありました。

 どのような場合に賠償責任が生じるか一概にお答えすることは困難ですが、賠償責任に係る規定は、国が設立する法人が適法、適正に運営されることを担保するため、法人に一般的に設けられているものです。

 同様に、守秘義務に係る規定についても一般的に置かれているものでありますが、学術会議においては特に、法人化後も政府に対し資料の提出、意見の開陳又は説明その他の協力を求めることができることとしており、国が法人に対して円滑に重要な情報を提供するためには、守秘義務規定を整備する必要がございます。

 是正措置や罰則規定についてお尋ねがありました。

 主務大臣による立入検査や違法行為等の是正の求めについては、国が設立する法人が適法、適正に運営されることを担保するため、一般的に置かれている規定です。

 同様に、法人のガバナンスの確保の観点から、認可や承認、届出、公表を義務づける規定に関して罰則を設けることは一般的なものであり、萎縮させることを意図したものではありません。

 学術会議の目的、使命についてお尋ねがありました。

 学術会議の在り方については、これまで様々な場で検討いただき、御意見をいただいてきましたが、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会において、学術会議の会長等にも毎回御参加をいただきながら、学術会議に求められる機能及びそれにふさわしい組織形態の在り方を検討し、昨年十二月に最終報告書を取りまとめたところです。

 この法案は、この報告書の内容を踏まえ、学術会議の独立性、自律性を抜本的に高めることによる機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を主な内容とするものです。

 報告書においては、「近年、いわゆる「政策のための科学」が強く求められるようになっていることも世界的な潮流であり、海外のナショナルアカデミーの使命・目的の中で大きなウェイトを占めるに至っている。」とされていると承知しています。

 この改革を通じて、学術会議が、サイエンス・フォー・サイエンスのみならず、サイエンス・フォー・ソサエティーやサイエンス・フォー・ポリシーなどの役割に主体的にチャレンジし、国民の期待に応えていくことを期待しております。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 三木圭恵君。

    〔三木圭恵君登壇〕

三木圭恵君 日本維新の会の三木圭恵です。

 私は、会派を代表して、日本学術会議法案について質問いたします。(拍手)

 答弁は全て坂井国務大臣にお願いします。

 本法案は、現在、国の機関となっている日本学術会議を、国から独立した法人としようとするものです。

 設立から七十六年を経た今、その役割は国民から見えなくなっています。既に役割を終えたとの声も上がっており、廃止も含めた抜本的改革が必要となっています。

 最近、唯一、国民の注目を集めたのは、令和二年に当時の菅総理が学術会議の推薦した新会員のうち六名を任命しなかった、いわゆる任命拒否問題でした。

 この問題の本質は、現行法において総理の任命権が明記されているにもかかわらず、長年、その法の規定が無視されて慣例で運用されてきたことこそが問題だと考えますが、なぜ法を無視した慣例が続いてきたのか、認識を伺います。

 政府は、任命拒否の理由について、人事に関することは答えないとの態度を繰り返すだけですが、これが問題を長期化させた大きな要因となっています。任命拒否が法に基づく政府の行為の結果である以上、国民に説明する責任があります。当時の政府の任命方針を大まかにでも明らかにすることを求めますが、明確な答弁をお願いします。

 本法案を審議するに当たって、何のための学術会議かという根本が問われます。現行法では、学術会議は、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とすると定められています。近年、国民の生活において、科学的知見を必要とする課題が続発していますが、学術会議は役に立ったのかというのが多くの国民の率直な思いです。

 例えば、新型コロナウイルスによるパンデミックの発生です。このとき、科学的に信頼できる情報があれば、多くの国民は心強く思ったでしょう。コロナ禍において、国民が求めていた正確な科学的知見を学術会議は提供したでしょうか。コロナ禍での学術会議の活動をどう評価されていますか。

 また、東日本大震災に伴う福島第一原発の事故の際には、国民は見えない放射能に恐怖し、心ない多くのデマも飛び交い、不安と混乱の状況が生じました。もしこのとき、放射線や放射性物質についての正しい知識があれば、こうした事態は防げたと思います。原発事故の際、学術会議は放射線や放射性物質に関する正確で有益な知見を国民に提供しましたか。原発事故に関しての学術会議の役割についてはどう評価していますか。

 さらに、事故後、復興に向けてのALPS処理水の海洋放出について、中国政府が、我が国の海産物を汚染しているとみなして輸入禁止にするという不当な措置を取りました。これに乗じて、国内でも、一部の国会議員が処理水を汚染水と呼び、福島県民や漁業関係者への中傷を続けるということも起きています。学術会議は、科学的知見に基づいて、中国政府に対しきっぱりと抗議の意思を示すべきではありませんか。また、国民に対して、ALPS処理水の海洋放出の安全性について、正確な知見を提供すべきではありませんか。

 また、旧優生保護法をめぐって、昨年七月の最高裁で同法が憲法違反として認定され、被害者への国家賠償を命じる判決が下されました。そして、国と原告との和解が合意され、国会においても、昨年秋、議員立法である補償金等支給法が全会一致で成立し、補償が始まっています。このように、法律的、政治的には長い年月を経てようやく一定の反省が示されたわけですが、この問題は科学的見地からの振り返りも大切だと思います。日本学術会議は、旧優生保護法の誤りについて、科学者の立場からどのような反省をしているのでしょうか。

 以上、近年の社会課題に対する日本学術会議の対応や役割について、それぞれの政府の認識と見解をお答えください。

 国民生活に科学を反映浸透させるという本来の目的がおろそかにされれば、一見科学のように見える偽情報に国民は翻弄されてしまいます。例えば、化学的には水と同じ性質のトリチウムが生物濃縮するかのような言説が一部にまかり通っています。こうした今もはびこる科学を装ったデマ情報への日本学術会議の対処方法をお聞きします。

 学術会議をあるべき姿に改革していくためには、歴史的検証も欠かせません。最大の問題は、学術会議が内外の政治勢力からの影響を大きく受けてきたという事実です。

 日本学術会議が設立された当時は、ソ連、中国共産党の社会主義勢力が台頭してきた時代でした。ソ連、中国の共産党を兄弟党としていた日本共産党は、民科イコール民主主義科学者協会を始めとする社会主義に同調的な科学者を組織し、学術会議の中心メンバーとして送り込んでいます。「日本共産党の七十年」の本には、同党が日本学術会議の設立に一定の役割を果たしたと誇らしげに書かれています。学術会議の設立が特定政党の成果のように語られること自体が、政治的中立性が求められる学術会議にとってふさわしくないことです。

 学術会議は、特定の政治勢力や外国勢力から独立していることが最も重要だと考えます。法人化に当たっては、独立性を担保し、不当な支配を排除するために、例えば、海外からの不当な資金を供与されている者が会員にならないようにするなどの対策を講じるべきと思いますが、いかがですか。

 会員には、自然科学のみならず、人文科学として法学や政治学の研究者も多くいます。これらの学問分野は、それぞれの政治信条とも深く関わるので政治的中立性を保つことが難しいと言えます。(発言する者あり)恥ずかしくないです。学術会議の運営が特定の政治思想に偏ることのないように、会議全体の政治的中立性をどのように維持するのか、見解をお示しください。

 今回、独立した法人格を有する組織として整備すると説明されています。しかし、政府からの独立性を担保するのであれば、政府にひもづいた法人化ではなく、完全民営化の選択肢もあったのではありませんか。なぜ、今回、民営化ではなかったのですか。また、今後、民営化することを検討すべきと思いますが、いかがですか。

 会員の選定について、現行の推薦に基づいて内閣総理大臣が任命するという規定が改められ、本法案では、学術会議の総会が選任することとされており、総理は監事を任命するだけになります。しかし、それでも学術会議の内部から、政府は人事に口出しすべきではないという意見も上がっています。

 会員を任命するから監事を任命することに総理の役割が変わることで、会員選任に関する政府の責任はどう変化するのでしょうか。監事は、人事についても影響力を持つことになるのですか。監事の具体的役割をお示しください。また、評価委員、選定助言委員会の役割についても御説明ください。

 学術会議の設立当初には選挙で会員を選定していましたが、日本共産党がこの会員選挙に介入し、大勢の党員学者を立候補させたことで混乱が生じたことから、選挙をやめ、現行の推薦方式に変わったという経緯があります。本法案の総会が選任するとは、選挙や推薦とはどう違うのか。会員選定をめぐる不公正を防ぐ方策と併せてお答えください。

 会員選定の方針については、今後も現行のコオプテーション方式を採用するとされています。コオプテーションは、現在の会員が次期会員候補を推薦する仕組みで、学術に関して専門性を持つ者にその価値の判断を委ねることが適当であるとの観点から、海外のアカデミーでも採用されていると説明されています。

 しかし、これでは、組織内の価値観が変化なく維持されることになり、世間から隔絶し、いわゆる象牙の塔にこもることにもなりかねません。また、会員資格が利権となることも心配です。新しい学問的知見を積極的に取り入れるためにも、コオプテーション方式は一定の見直しが必要ではありませんか。

 運営経費について、学術会議は、活動面での政府からの独立とともに、国家財政支出による安定した財政基盤を政府に要求しています。しかし、こうした、口は出すな金は出せという姿勢では、到底、国民の理解は得られるものではありません。

 経費について、法案では、政府は、予算の範囲内において、日本学術会議に対し、その業務の財源に充てるために必要と認める金額を補助することができるとしていますが、何を必要と認めるのか曖昧です。国民が、無駄なものに税金を出すのかと思うことがあってはなりません。公費補助についての考えをお示しください。

 使途についても明確に説明すべきです。

 学術会議に対しては、令和六年まで毎年約九億五千万円が支出されていました。それが、令和七年には十二億円にまで増額されています。なぜこんなにも巨額な税金が必要なのか、お答えください。

 海外のアカデミーを見渡すと、運営経費の全額を公費で賄っているのはごく少数で、ほとんどの国では、会費、寄附、事業収入などを財源としています。

 例えば、一六六〇年に設立された世界最古のアカデミーである英国王立協会は、八割が公費ですが、そのほかは会員が支払う会費や事業収入を財源としています。カナダの王立協会は、公費に全く頼らずに、全額を会費、寄附、イベント収入、投資で賄っています。

 我が国においても、学術会議の運営費用については、全額を税金に頼るのではなく、収益事業など多様な自主財源を設けるべきだと思いますが、いかがですか。中でも、寄附については、一般の人が少額から参加できるクラウドファンディングも普及しています。広く国民に学術会議への寄附を呼びかければ、国民の科学への関心も高まると思いますが、答弁を求めます。

 最後に、学術会議の姿勢についてです。

 先日、四月十五日、日本学術会議は総会を開き、本法案についての声明を発表しました。そこでは、科学者としての決意が表現された法律から、国、政府の側から見た学術への期待を表現する法律に変質させているなどと批判しています。しかし、科学は、科学者だけのものではなく、国民全てのためのものであるべきです。主権在民の今、政府が学問の自由を奪うということはあり得ないと考えますが、今回の改革により、学術会議はどうなっていくとお考えですか。

 日本学術会議は、昭和二十五年に戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明、昭和四十二年に軍事目的のための科学研究を行わない声明、そして、平成二十九年には軍事的安全保障研究に関する声明を発表し、我が国の防衛に関する研究を拒否し続けています。

 しかし、戦争を防止し、平和を維持するためにも、他国からの侵略を抑止するための防衛技術の研究開発を……(発言する者あり)そちらがどうぞ。研究開発を進めていく必要があります。今日の安全保障の厳しさを直視するならば、国防に関する研究も、知見を活用して社会の課題の解決に寄与するという学術会議の目的にかなうものです。かたくなな軍学共同反対のスローガンを改め、科学者が我が国の防衛や平和の維持に寄与できるようにしていただきたいが、いかがですか。

 日本維新の会は、国民生活のあらゆる分野で最新の科学研究や学問的知見が生かされるべきだと考えています。その一端は、現在開催中の大阪・関西万博でじかに感じることができるでしょう。

 今後、国民を豊かにする科学の発展を期待して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 三木圭恵議員の御質問にお答えいたします。

 日本学術会議法における総理の任命権についてお尋ねがありました。

 これまでも当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しているとおり、日本学術会議の会員任命については、法の規定により、学術会議からの推薦に基づいて内閣総理大臣が任命することになりますが、これまでも、同会議から推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長と任命権者との間で様々な意見交換が行われております。

 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命に当たっても、これまでと同様に、推薦名簿が提出される前に意見交換が学術会議の会長との間で行われましたが、その中で任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと承知しております。

 二〇二〇年の会員任命の大まかな方針についてお尋ねがありました。

 これまでも当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しているとおり、二〇二〇年の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から任命を行ったものと承知しております。

 コロナ禍、原発事故、ALPS処理水、旧優生保護法など、近年の社会課題に対する日本学術会議の対応や役割についてお尋ねがありました。

 日本学術会議では、コロナ禍に関連する課題について、早い段階から、公開シンポジウム等を通して、科学者コミュニティーや市民との対話を進めてきたと承知しております。また、G7各国のアカデミーとの共同声明を始め、提言や見解、報告書を公表し、これらの取組を学術会議のホームページに特集ページを設けるなどしてきたと聞いております。

 東京電力福島第一原発事故に関しては、原発事故の再発防止、放射能対策、エネルギー対策、また、処理水の問題を含めた原発事故に伴う環境汚染への対応等の多様な観点から審議を行い、被災の三か月後には科学的見地から放射線防護への正しい理解を促す会長談話を発出するほか、多くの科学的助言の発出、また公開シンポジウム等の開催を行ってきたと聞いております。

 旧優生保護法に関しては、令和二年に、人の生殖にゲノム編集技術を用いることに関する提言において、旧優生保護法の成立と運用の歴史も真摯に受け止める必要がある旨の言及があったと聞いております。

 日本学術会議は、現在、自ら策定したアクションプランに基づき、社会の要請を踏まえたタイムリーな意思の表出による課題解決型の助言機能の強化や、国民に向けた分かりやすい情報の発信等、よりよい役割発揮に向けた改革を進めていると聞いております。

 しかしながら、有識者懇談会の最終報告書においては、設立以来七十五年余りの学術の進歩と社会の変化を踏まえると、学術会議には拡大、深化する役割に実効的に対応していくことが求められており、国の機関のままの改革では限界があることから、機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化することが提言されたところです。この法案は、以上のような報告書を踏まえて取りまとめたものです。

 いわゆるデマ情報への対処方法についてお尋ねがありました。

 日本学術会議が自ら義務と責任を定めた日本学術会議憲章において、「科学に基礎づけられた情報と見識ある勧告および見解を、慎重な審議過程を経て対外的に発信して、公共政策と社会制度の在り方に関する社会の選択に寄与する。」としているところです。

 いわゆるデマ情報への対応については、日本学術会議は、憲章の趣旨を踏まえ、必要に応じて、科学的知見に基づく正確な情報を発信するものと考えています。

 海外からの不当な資金を供与されている者が会員にならないようにするなどの対策についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のように、ナショナルアカデミーが特定の政治勢力や外国勢力から独立して活動することが大事であることは言うまでもありません。

 政府全体としても、各大学、研究機関等において、採用や競争的研究費の申請に際して、研究者自身による適切な情報開示を所属機関に対し報告することなどを求めており、各大学、研究機関等において、こうした研究者からの報告も踏まえた上でマネジメントを行っているところです。

 我が国の科学者を代表する機関である学術会議は、このような我が国の科学者コミュニティー全体としての取組も当然踏まえながら、不透明な資金提供を受けるなど公正性に問題があるような人物が会員とならないよう、適切に対応されるものと考えています。

 会議全体の政治的中立性についてお尋ねがありました。

 アカデミーが政治的、社会的勢力から独立して活動することは極めて重要なことだと考えます。諸外国においても、アカデミーは、政治的、社会的あるいは宗教的な諸勢力からの独立性を保ちながら、学術の発展のための活動や政府への提言などを行っているものと承知しています。

 この法案でも、法律が定める目的と基本理念及びそれに基づいて作成した中期的な活動計画に沿って活動することとなっています。また、学術会議の活動、運営を国民に説明するための仕組みを法律により制度的に担保しています。

 加えて、会員の選任について、法律の規定に従い、客観性、透明性の高い方法で行われることや、選任の過程を国民に明らかにすることなどが法定されています。これにより、特定の政治思想などを理由とした選考が行われることにはならないと考えています。

 以上のことから、学術会議の運営が特定の政治思想に偏ることはないと考えています。

 学術会議の民営化についてお尋ねがありました。

 この法案は、学術会議が拡大、深化する役割に実効的に対応していくため、機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めることを目的としており、それにふさわしい組織形態として学術会議を法人化するものです。

 その際、学術会議に期待される役割、機能を十分に発揮するために、特別な地位、権限及び国による必要な財政的支援をすることができる旨を法律に明記することから、公益法人といった民間が設立する法人ではなく、国が設立する特殊法人とするものです。

 法人化後の会員選任に関する政府の責任並びに監事、評価委員及び選定助言委員会の役割についてお尋ねがありました。

 会員の選任については、内閣総理大臣による任命は行わず、政府は関与しないこととなり、海外アカデミーと同じように、学術会議だけで自律的に会員を選任できるようになります。

 監事は、法人の業務が適法に行われていることを監査することを職務とするものです。法案における監事の所掌事務に関する規定も、他の法人における監事と同じ一般的なものであり、人事も含め、法人の運営に職務として直接携わるものではありません。なお、学術会議の活動の学術的な内容、価値を判断するものではありません。

 日本学術会議評価委員会は、中期的な活動計画に係る期間及び年度ごとに、学術会議の行う自己点検評価の方法及び結果について評価することとしており、学術会議は、その意見を自己点検評価の方法の改善に適切に反映させなければならないこととしています。

 選定助言委員会は、会員選定に当たって作成される選定方針の案の作成に関し、会員候補者選定委員会に対し意見を述べることなどを職務としております。

 総会の選任について及び会員選定の不公正を防ぐ方策についてお尋ねがありました。

 設立当初の公選制は、一定の資格を有する科学者が、資格審査を経た会員候補者に対して投票を行うことにより会員を選定するものです。また、現行の推薦方式は、学術会議が優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員候補者を選考し、学術会議による推薦に基づいて内閣総理大臣が最終的に任命するものです。総会が選任するは、学術会議自身が最終的に会員の選任を決定できるという点で異なっています。

 この法案では、会員選定の不公正を防ぐ方策として、会員の選定が客観性、透明性の高い方法で行われること、選定基準や選定手続等について外部の知見を幅広く聞くこと、選任の過程を国民に明らかにすることなどの枠組みを法律により制度的に担保しているところです。

 コオプテーション方式の見直しについてお尋ねがありました。

 コオプテーション方式は、海外アカデミーにおいても一般的に行われているものです。

 ただし、日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会の最終報告書においては、コオプテーションが適切に機能する前提として、外部に説明できるような選考の仕組みを整えることなどの必要性が述べられています。

 このため、法案においては、コオプテーション方式を前提としつつも、会員の選定が客観性、透明性の高い方法で行われること、選定基準や選定手続等について外部の意見を幅広く聞くこと、選任の過程を国民に明らかにすることなどの枠組みを法律により制度的に担保しているところです。

 公費補助についてお尋ねがありました。

 国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織として、活動、運営が国民に説明できるものであることの重要性は、有識者懇談会の最終報告書において強調されています。

 この財政的支援については、学術会議の業務の財源に充てるため、必要と認める金額を補助することができることとしており、そのためには、予算要求の前提として、翌年度に予定する活動、運営についての考え方や概要が明確に示されていなければなりません。

 法人化後は、実施しようとする主な活動は年度計画の中にしっかり位置づけられ、その意義やコンセプトが国民に説明できるものになっている必要があります。

 予算の使途についてお尋ねがありました。

 日本学術会議については、政府や社会に対する提言等を行う審議活動や、国際学術団体への代表派遣や共同主催国際会議など国際的な連携、交流を行うための活動に要する経費のほか、これらを支える事務局の人件費等運営経費として、令和六年度予算は約九億五千万円を計上していたところです。

 令和七年度予算については、これらの活動を強化し社会課題の解決に寄与していただきつつ、組織の法人化に向けた準備を進めていただくための予算として約十二億円を計上しております。

 自主財源や寄附についてお尋ねがありました。

 財政基盤を多様化し、自律的な活動を拡大する可能性が広がることは、法人化によるメリットの一つです。

 海外のアカデミーは、政府から独立した自律的な組織として主体的に国民や社会と向き合い、社会的な責務を積極的に引き受けながら活動し、財政面を含めて運営の自律性を高めてきたと承知しています。

 懇談会の議論の中でも、各国のアカデミーと同じように、日本学術会議は政府以外からも資金を獲得する組織を目指すのが正しいと思うという意見が述べられていたと承知しています。私としても、そのような努力は、国民、社会や政府等の関心やニーズを正確に把握することにもつながると考えています。

 政府としては、学術会議が財源の多様化に向けた取組ができるよう、必要な支援をしてまいりたいと考えています。

 改革後の学術会議の展望についてお尋ねがありました。

 有識者懇談会においては、現行の日本学術会議法の使命、目的として、国民や社会という視点が欠けているということや、学術会議の活動、運営に外部の知見を取り入れることの重要性などが指摘されていたところです。

 このため、法案においては、法人の目的として社会の課題の解決に寄与することを明確にするとともに、活動、運営に外部の知見を取り入れる仕組みを入れ、評価結果や選定過程の公表などにより、国民に対する説明責任を果たしていただくこととしています。

 今回の改革を通じて、学術会議が、サイエンス・フォー・サイエンスのみならず、サイエンス・フォー・ソサエティーやサイエンス・フォー・ポリシーなどの役割に主体的にチャレンジし、国民の期待に応えていくことを期待しています。

 科学者による安全保障に係る研究についてお尋ねがありました。

 御指摘の声明について、日本学術会議においては、いわゆるデュアルユースに係る研究のような、安全保障に資する研究を一律に禁止するという趣旨のものではないと説明しております。

 また、令和四年七月、当時の梶田日本学術会議会長名で、今日の先端科学技術、新興科学技術は、従来のように、デュアルユースとそうでないものとに単純に二分することはもはや困難であり、研究対象となる科学技術を、その潜在的な軍事への転用可能性をもって峻別し、扱いを一律に判断することは現実的ではないといった考え方が示されたところです。

 加えて、日本学術会議からは、令和五年九月に、用途の多様性、両義性、いわゆるデュアルユースを有する先端科学技術、新興科学技術に係る研究が大学等の研究機関で円滑に実施される方策について見解が取りまとめられたところと承知しています。

 今後、この見解が大学等の研究機関の現場に浸透し、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などにつながることを期待をいたしております。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、日本学術会議法案について質問します。(拍手)

 先ほど、学術会議に対する全く事実無根の誹謗中傷の中で、我が党に対する言及がありました。しかし、我が党は、学術会議に対し、不当な介入、干渉を行った事実は一切ありません。我が党の党史には指摘のような記述はありません。断固抗議し、撤回を求めるものであります。

 その上で、まず、任命拒否問題です。

 二〇二〇年十月、学術会議会員の改選に当たり、菅総理が六名の任命を拒否したことは、学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が形式的に任命するという確定した法解釈を覆すもので、到底許されるものではありません。

 しかも、二〇年六月、学術会議が候補選考中の段階で、官邸側が学術会議事務局に六人を選考対象から外すよう求めていた文書が明らかになりました。極めて重大です。

 政府は、任命拒否の理由、事前介入の経緯を全て明らかにし、任命拒否を撤回すべきであります。任命拒否問題を棚上げにしたまま、学術会議の在り方の問題にすり替えた政府に、法案を提出する資格はありません。

 本法案は、現行の日本学術会議を廃止し、別組織に変えようというものです。

 現行法は、戦前の日本が学術を政治に従属させ、学術の側も戦争遂行に加担する役割を果たしたとの痛苦の反省の上に、学問の自由を保障する日本国憲法を具体化したものです。現行法の前文は、科学が文化国家の基礎であり、平和的復興、人類社会の福祉に貢献すると学術会議の使命をうたっています。しかし、本法案は、この前文を削除して、学術を経済社会の健全な発展の基礎、社会課題の解決に寄与するものと置き換えています。

 本法案は、憲法に立脚する学術会議の理念を真っ向から否定するものではありませんか。

 日本学術会議はナショナルアカデミーです。その組織が満たすべき五つの要件は、学術的に国を代表する機関としての地位、そのための公的資格の付与、国家財政支出による安定した財政基盤、活動面での政府からの独立、会員選考における自主性、独立性です。

 現行の学術会議は、政府からの独立を保障するルールを厳格に定め、学術の立場から政府の政策に反する提言や勧告も行ってきました。法案は、現行法の独立して職務を行うを削除し、法人とすると定め、学術会議の組織、運営に関する事務を内閣府の所掌事務に位置づけています。

 学術会議を政府の監督の下に置かれる組織へと変えるものではありませんか。独立性の担保はどこにあるのですか。

 さらに、学術会議の運営、財務に、政府や学術会議以外の者が介入できる仕組みを設けています。本法案は、外部者で構成される監事、日本学術会議評価委員会、運営助言委員会を新設し、学術会議の中期的な活動計画は評価委員会が意見を述べることとしています。

 これらの規定は、学術会議の運営、活動における政府からの独立性、自主性、自律性を剥奪するものではありませんか。政府からの独立が確保されなければ、学術会議の勧告権は失われるのではありませんか。

 会員選考においても、法案は、会員以外の者で構成される選定助言委員会を設置し、外部の意向が反映可能な仕組みを設けています。さらに、新たな組織の設立時、新会員候補者は、内閣総理大臣が関与する候補者選考委員会が推薦するとし、三年の任期が残っている会員は三年後の再任を認めないとしています。

 これまでの会員自身による選考方法を投げ捨て、会員をリセットしようというものではありませんか。会員選考における自主性、独立性を著しく毀損すると言わざるを得ません。

 今週開かれた日本学術会議の総会は、本法案がナショナルアカデミーの要件を充足しておらず、懸念を払拭していないと厳しく批判しています。このことを重く受け止めるべきです。金を出すから従えという政府などの言い分は、国際的に見ても、全く道理がありません。

 本法案は、科学の成果を軍事に利用し、目先の経済的利益追求に貢献させるため、現行法の理念を全面的に否定し、学術会議から独立性、自主性、自律性を奪い、政府の意向に従う組織へと変質させる憲法違反の立法です。

 断固廃案を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。

 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命についてお尋ねがありました。

 二〇二〇年の日本学術会議の会員任命については、日本学術会議法に沿って、任命権者である当時の内閣総理大臣が総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断を行ったものと承知をしております。

 その上で、当時の内閣総理大臣や官房長官が国会で答弁しているとおり、日本学術会議から推薦名簿を提出する前に、事務局を介して学術会議の会長と任命権者との間で意見交換が行われていましたが、二〇二〇年の任命に当たっても、これまでと同様に、推薦名簿が提出される前に意見交換が日本学術会議の会長との間で行われたものの、その中で任命の考え方のすり合わせまで至らなかったものと承知をしております。

 なお、二〇二〇年の会員任命については、一連の手続は終了しているものと承知をしております。

 次に、法案提出についてお尋ねがありました。

 この法案は、我が国の研究力の向上や国際競争力の強化などの観点から、学術会議の機能強化が先延ばしできない喫緊の課題となっている中、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化するため提出したものです。(拍手)

    〔国務大臣坂井学君登壇〕

国務大臣(坂井学君) 学術会議の理念についてお尋ねがありました。

 戦後間もなくの立法例を除けば、いわゆる基本法のほかは特に補償等を行う場合を除き前文は置かれていません。組織法である日本学術会議法案においても、基本理念は条文の形で規定をしております。

 法案における日本学術会議の目的及び基本理念は、日本学術会議の拡大、深化する使命、目的を現代の視点から捉え直し、法制的な観点も踏まえつつ、より恒久的、普遍的な用語を用いるという考えの下、科学が文化国家の基礎、我が国の平和的復興を包含する、学術に関する知見が人類共有の知的資源、経済社会の健全な発展という表現を用いています。

 その上で、有識者懇談会の報告書では、学術会議には拡大、深化する役割に実効的に対応していくことが求められており、国の機関のままの改革では限界があることから、機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として学術会議を法人化することが提言されています。

 学術会議が拡大、深化するアカデミーの役割にふさわしい組織にステップアップし、海外アカデミーのような活動しやすい体制を整えていくことが法人化の目的であり、学術会議の継続性が失われるということにはなりません。

 独立性の担保についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の最終報告書を踏まえ、学術会議の独立性、自律性を抜本的に高めることによる機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を内容とするものであり、学術会議の独立性、自主的、自律的な活動を阻害するようなものではありません。

 現行法では、行政機関である学術会議が、関係省庁との調整等により自由な意思表出等ができなくなることを避けるため、独立して職務を行うと規定されておりますが、法人化により、学術会議の独立性は組織面でも明確になり、海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できるようになります。

 なお、国の責務として、日本学術会議の自主性、自律性に常に配慮しなければならない旨も条文に明記しているところです。

 法案で置かれる組織が学術会議の運営、活動に与える影響についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の報告書を踏まえ、学術会議の機能強化に向けて独立性、自律性を抜本的に高めるため、よりよい役割、機能の発揮にふさわしい組織形態として特殊法人に移行するものです。

 一方、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される法人である学術会議について、活動、運営を国民に説明する仕組み、活動、運営が適正、適法に行われるための仕組みなどを法定して制度的に担保することは、国が設立する他の法人でも同様に設けられている仕組みであり、活動の学術的な価値や独立性の尊重とは別な、財政民主主義からの要請によるものでございます。

 この法案については、懇談会からも、国民からの負託に実効的に応えるための体制整備と国の財政的負担により運営される法人としての説明責任の担保が、学術会議の独立性、自律性を尊重しつつ実現されたものであり、最終報告書に沿って適切に法案化されたものだと評価していただいたところです。

 勧告権についてお尋ねがありました。

 この法案は、有識者懇談会の最終報告書を踏まえ、学術会議の独立性、自律性を抜本的に高めることによる機能強化と、国が設立し国の財政的支援を受けて運営される組織としての説明責任の担保を内容とするものであり、学術会議の独立性、自主的、自律的な活動を阻害するようなものではありません。

 また、法人化することにより、学術会議の独立性が組織面でも明確になり、海外アカデミーと同様に、政府とは完全に別な立場で活動できるようになります。

 この改革を通じて、学術会議が、サイエンス・フォー・サイエンスのみならず、サイエンス・フォー・ソサエティーやサイエンス・フォー・ポリシーなどの役割に主体的にチャレンジし、国民の期待に応えていくことを期待しています。

 会員選考の仕組みについてお尋ねがありました。

 選定助言委員会については、有識者懇談会からも、アカデミア全体や産業界等から会長が任命する会員等以外の科学者を委員とする選定助言委員会を法定し、会員選考の方針の案等を作成するに当たって意見を聞くことは、学術の独立性や日本学術会議の自律性、コオプテーションの理念と外部の知見を取り入れる必要性、分野や選考の固定化、既得権益化の抑止、議論や決定過程の透明化、国民への説明責任などを調和させる工夫として、極めて優れた仕組みであると評価されているところです。

 選定助言委員会の委員は総会が選任し、意見に法的な拘束力はありません。個別の会員の選考について意見を言わないことも、条文上明らかです。

 新法人発足時の会員の選定方法については、有識者懇談会最終報告書において、新分野、融合分野への対応などの観点から、現会員だけによる精査では必要十分な選考を行うことは難しく、大幅な見直しを行った平成十七年制度改正時を参考にして、現会員だけによるコオプテーションではなく、多様な視点からよりオープンに慎重かつ幅広く選考する方法により行うことが適当であるとされています。

 このため、この法案では、平成十七年制度改正時と同様に、新たに会員となる二百五十人の選考、選任は、オープンに慎重かつ幅広い方法で行うこととしました。

 その上で、学術会議の意見にも十分に配慮して、コオプテーションの要請を尊重し、平成十七年制度改正時とは異なり、現会員が候補者選定委員会の委員になることが可能であり、総会による承認、推薦の手続も追加していることから、新会員の選定に現会員の意向が反映されることになっています。

 新法人発足時に任期が残っている会員にも、引き続き会員として活躍していただくことになっており、組織としての継続性にも十分に配慮しているところです。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣   鈴木 馨祐君

       国務大臣   坂井  学君

       国務大臣   平  将明君

       国務大臣   林  芳正君

 出席副大臣

       内閣府副大臣 鳩山 二郎君


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