衆議院

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第27号 令和7年5月20日(火曜日)

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令和七年五月二十日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十五号

  令和七年五月二十日

    午後一時開議

 第一 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第三 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 令和五年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 第五 令和五年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 第六 令和五年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 第七 令和五年度特別会計予算総則第二十一条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第三 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 令和五年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第五 令和五年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第六 令和五年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第七 令和五年度特別会計予算総則第二十一条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまウズベキスタン共和国のヌリッディン・ムイディンホノヴィッチ・イスマイーロフ最高議会下院議長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第一 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長近藤昭一君。

    ―――――――――――――

 環境影響評価法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔近藤昭一君登壇〕

近藤昭一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、環境影響評価法の施行を通じて明らかになった課題等に対応するため、工作物の新設又は増改築の事業であって現に存在する工作物の撤去及び当該工作物と類似の工作物の新設を目的とするものについて環境影響評価方法書の作成前の手続の見直しを行うこと、環境影響評価に係る書類の公開を環境大臣が行うこと等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る五月八日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託をされました。

 本委員会におきましては、翌九日、浅尾環境大臣から趣旨の説明を聴取した後、質疑に入りました。十三日参考人から意見を聴取し、十六日に質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、本案に対しまして、立憲民主党・無所属から修正案が提出され、趣旨の説明を聴取しました。

 次いで、採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(額賀福志郎君) 日程第二、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長大岡敏孝君。

    ―――――――――――――

 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大岡敏孝君登壇〕

大岡敏孝君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告します。

 本案は、最近における悪質ホストクラブ問題を始めとする風俗営業等をめぐる情勢に鑑み、接待飲食営業に係る遵守事項等を追加するとともに、風俗営業の許可に係る不許可事由を追加する等の措置を講ずるものです。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る五月十三日本委員会に付託され、翌十四日坂井国家公安委員会委員長から趣旨の説明を聴取しました。次いで、十六日に質疑を行い、質疑終局後、採決しましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告します。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第三、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長藤丸敏君。

    ―――――――――――――

 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔藤丸敏君登壇〕

藤丸敏君 ただいま議題となりました労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、多様な労働者が活躍できる就業環境の整備を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、カスタマーハラスメント及び求職者等へのセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主に、雇用管理上必要な措置を講ずることを義務づけること、

 第二に、男女間における賃金差異及び女性管理職比率の情報公表を、常時雇用する労働者の数が百人を超える事業主等に義務づけるとともに、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の有効期限を十年間延長すること、

 第三に、職場における治療と仕事の両立を支援するため、事業主に、必要な措置を講ずる努力義務を課すこと

等であります。

 本案は、去る五月八日本委員会に付託され、翌九日福岡厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、十三日に参考人から意見を聴取し、翌十四日から政府に対する質疑を行い、十六日に質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五会派より、本案に対し、カスタマーハラスメントに関する雇用管理上の措置の例示を追加すること等を内容とする修正案が、また、日本共産党より、本案に対し、労働者の就業環境を害する言動等を禁止すること等を内容とする修正案が提出され、両修正案について趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び両修正案について討論、採決を行った結果、日本共産党提出の修正案は賛成少数をもって否決され、五会派共同提出の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 令和五年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第五 令和五年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第六 令和五年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

 日程第七 令和五年度特別会計予算総則第二十一条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)(第二百十六回国会、内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第四、令和五年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第五、令和五年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第六、令和五年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(承諾を求めるの件)、日程第七、令和五年度特別会計予算総則第二十一条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(承諾を求めるの件)、右四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。決算行政監視委員長鈴木義弘君。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木義弘君登壇〕

鈴木義弘君 ただいま議題となりました各件につきまして、決算行政監視委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 これらの各件は、憲法、財政法等の規定に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。

 まず、令和五年度一般会計原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費について、その使用事項は、地域の実情に応じた低所得者支援及び定額減税を補足する給付に必要な経費で、その使用総額は一兆一千三百十億円余であります。

 次に、令和五年度一般会計予備費について、その使用事項は、道路等災害復旧事業等に必要な経費等計六十七件で、その使用総額は三千七十七億円余であります。

 次に、令和五年度特別会計予備費について、その使用事項は、給油所等設備災害復旧に必要な経費等計二件で、その使用総額は十九億円余であります。

 次に、令和五年度特別会計予算総則第二十一条第一項の規定による経費増額は、交付税及び譲与税配付金特別会計における地方譲与税譲与金に必要な経費の増額等計三件で、その増額総額は七百十億円余であります。

 委員会におきましては、これら各件につき去る十二日加藤財務大臣から説明を聴取した後、昨十九日質疑を行いました。質疑終局後、討論、採決の結果、各件はいずれも賛成多数をもって承諾を与えるべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第五につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第六につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第七につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣福岡資麿君。

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) ただいま議題となりました社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 我が国においては、健康寿命が延伸し、単身世帯や共働き世帯が増加するとともに、高齢者や女性の就業の更なる進展や持続的な賃上げの継続が見込まれます。こうした社会経済の変化を踏まえ、年金制度において、ライフスタイル等の多様化を反映し、働き方に中立的な制度を構築するとともに、高齢者の生活の基盤の強化のための所得保障及び再分配機能の強化を行うため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、被用者保険の適用範囲を拡大するため、短時間労働者を適用すべき事業所の企業規模要件を段階的に引き下げ、撤廃するとともに、賃金要件についても、最低賃金の動向をみながら撤廃します。また、既存の事業所に配慮しつつ、常時従業員を五人以上使用する個人事業所に係る非適用業種を解消します。

 第二に、在職老齢年金制度について、支給停止が開始される賃金と老齢厚生年金の合計額の基準を六十二万円に引き上げ、支給停止とならない範囲を拡大します。

 第三に、子のない二十代から五十代までの者に係る遺族厚生年金制度について、受給要件等の男女差を解消し、併せて、所得等に応じた給付の継続等の配慮措置を設けます。

 第四に、厚生年金保険の標準報酬月額の上限について、七十五万円に段階的に引き上げます。

 第五に、個人型確定拠出年金の加入可能年齢を七十歳未満に引き上げます。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、令和八年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。三谷英弘君。

    〔三谷英弘君登壇〕

三谷英弘君 自由民主党の三谷英弘です。

 自由民主党・無所属の会を代表して、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案について、私も氷河期世代の一員ですので、その思いも込めて、以下、質問させていただきます。(拍手)

 まず、被用者保険の適用拡大について伺います。

 今回の改正では、賃金要件を撤廃して、いわゆる百六万円の壁を取り除いたほか、企業規模要件も段階的に撤廃することで、これまで国民年金しか加入できていなかった方が厚生年金に加入できるなど、改正のメリットは相当大きなものです。

 一方、事業主の側から見れば、この改正は、人材確保に資する側面もありますが、事業者のいわゆる裏負担が大きくなり、今後の賃上げ余力すらなくしかねません。そうならないよう事業主に経済的支援を行うとしても、今度は申請手続など多大な事務負担を負わせることになります。

 そのため、被用者保険の適用を拡大するに当たっては、中小企業や小規模事業者の過度な負担にならないよう、適切な形での支援を実施すべきと考えますが、この点、福岡厚生労働大臣の見解を伺います。

 次に、在職老齢年金制度の基準額引上げと標準報酬月額の上限の見直しについて伺います。

 在職老齢年金制度の基準額引上げは、六十五歳以降も希望に応じて働くことを選択しやすくするものであり、本人の年金の確保に加え、人手不足緩和に資する重要な改正です。

 他方、標準報酬月額の上限の見直しは、該当者の現役時の負担は増えますが、負担が増えた分、将来給付も増えますので、メリットも大きなものです。

 これらは本来別々の制度ですが、二つ並べたとき、現役世代の負担を増やして高齢者の給付を厚くするといった誤ったメッセージとならないよう、これらが現在と将来、双方の年金受給者にとってメリットの大きな改正であるとの説明が重要です。この点について、福岡厚生労働大臣の説明を求めます。

 遺族年金制度の見直しについて伺います。

 現行の制度は、いわゆる専業主婦世帯を前提とした制度設計となっているため、共働きが一般化した現状に合わせて変えていくことが求められます。今般の遺族年金制度の見直しの考え方について、福岡厚生労働大臣に伺います。

 iDeCoの見直しについても伺います。

 高齢期に向けた資産形成を応援するためには、企業年金の推進に加えて、iDeCoをより活用しやすくしていくことが重要です。今般のiDeCoの加入可能年齢の引上げの趣旨について、福岡厚生労働大臣に伺います。

 最後に、基礎年金の水準について伺います。

 政府は、マクロ経済スライドの早期終了に関する具体的な措置を盛り込んでいない法案を提出いたしました。この点については、既に、必要な改革の先送りである、就職氷河期世代が年金受給世代となるのはそう遠くない時期であることを考えても不適切であるといった批判をいただいています。しかしながら、それでは、単にマクロ経済スライド早期終了のための措置を盛り込めばよかったかというと、そう単純ではありません。

 まず、厚生年金の積立金を基礎年金に充当することが、いわゆる厚生年金の流用であり、不適切であるという批判が予想されます。この点、確かに、それまで仕事を行い、社会保険料を支払ってきた方々の中に、一時的とはいえ、受給できる年金が減るという不利益を被る方々が出てくることは事実です。

 加えて、厚生年金の積立金を基礎年金に充当する場合、現行制度では、国民年金法第八十五条により、基礎年金に充当したのと同じ金額を新たな国庫負担により基礎年金に加える、すなわち、厚生年金から基礎年金に回せば回すだけ国庫負担が増えていく仕組みになっています。厚労省の試算によれば、これによる新たな国庫負担額は、二〇三〇年代以降徐々に増えていき、二〇五〇年頃には一年で二兆円程度となるようです。

 この毎年発生する新たな国庫負担について、国債で賄うなら将来世代に負担を先送りすることになる、税金で賄うならその時点での現役世代の負担を増やすという指摘もあるところであり、この点の財源を明らかにせず、制度を単に進めるのは、無責任との批判を免れません。

 このように、この点については、出しても批判、出さなくても批判という、まさにダブルバインド状態です。これが政権与党のつらさといえばそれまでですが、そうも言っていられません。このプラスとマイナスの両面を含めて、できるだけ多くの国民の皆様の御理解をいただきながら丁寧に改革を進めていくべきものと考えていますが、この点についての石破総理大臣のお考えをお聞かせください。

 公的年金制度は、老後の生活の柱であり、持続可能な仕組みとすることが不可欠です。ただし、この持続可能性は、制度を守ることではなく、十分な給付を行うことで年金受給者の生活を守ることになければなりませんが、この点について、一層の国民の信用を得られるような更なる取組は不可欠だと考えています。

 とすれば、今回の法改正は、あくまで一里塚。氷河期世代の年金水準を確保することは当然ですが、負担と給付のバランスや受給者間の公平性等に鑑みると、専業主婦世帯を前提とする現在の所得代替率算定モデルや第三号被保険者制度そのものを含めて、今後、制度全体を見直す議論も必要になるものと考えています。

 そこで、政府は今後の年金制度改革にどのように取り組もうと考えているのか、石破総理大臣のお考えを伺います。

 以上、年金制度が国民の皆様から一層信頼される制度になることに加えて、現在の国会は少数与党です、野党の方々からの御理解をもいただけるような真摯な答弁を求めて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 三谷英弘議員の御質問にお答えいたします。

 マクロ経済スライドを早期終了させる措置についてのお尋ねをいただきました。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、全国民共通の基礎年金について、将来にわたって一定の給付水準を確保する重要性がある一方で、保険料、拠出金、積立金の関係が分かりづらいことなどから、国民の理解が得られるのかという賛成、慎重両方の御意見があり、社会保障の専門家の間でも意見が分かれているところであります。

 こうしたことを踏まえまして、今回の法案では、その具体的な仕組みについては規定しないことといたしましたが、今後の社会経済の情勢も踏まえ、丁寧な説明と議論をいたしてまいります。

 今後の年金制度改革についてのお尋ねをいただきました。

 年金の給付水準は今後の経済状況によって変わり得るものであり、だからこそ、厚生年金保険法及び国民年金法に基づき、五年に一度の財政検証を踏まえ、給付と負担のバランスを保ちつつ、老後の生活の安定と経済成長に資するよう、適時適切に制度の改正を考えてまいります。

 政府といたしましては、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指しながら、社会経済情勢の変化を踏まえつつ、三谷議員御指摘の様々な論点を含め、適切に検討し、必要な措置を講じてまいります。

 残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 三谷英弘議員の御質問にお答えいたします。

 被用者保険の適用拡大に係る中小企業への支援についてお尋ねがありました。

 今回の被用者保険の適用拡大では、今まで以上に小規模の企業を対象とすることから、企業経営に与える影響であったり事務負担の増加等も踏まえ、施行までの十分な準備期間の確保や段階的な施行により、必要な配慮を行うこととしております。

 その上で、様々な助成措置等を活用できるよう、支援体制を整備することなどにより、円滑に施行できる環境を整備してまいります。

 在職老齢年金制度と標準報酬月額の上限見直しについてお尋ねがありました。

 今回の法案は、働く高齢者の就労意欲を阻害するとして指摘されている在職老齢年金制度について、人手不足の中で高齢者の方が働きやすい環境を整備するため、支給停止の基準額を見直すとともに、標準報酬月額の上限については、収入に応じた負担をお願いしつつ、保険料の増加に応じた将来の給付増にもつなげるための見直しを行うものです。

 引き続き、それぞれの見直しの趣旨やメリットについて、分かりやすく周知、広報してまいります。

 遺族年金制度の見直しについてお尋ねがありました。

 現在の遺族厚生年金は、夫と死別した妻が就労して生計を立てることが困難であった社会経済状況を背景としており、就業率や賃金の男女差が縮小している状況の変化を踏まえ、制度上の男女差解消が課題となっています。

 このため、今回の法案では、新たな加算の創設などの様々な配慮措置を講じつつ、男女共に原則五年間の有期給付とする見直しを盛り込んでおります。

 iDeCoの見直しについてお尋ねがありました。

 公的年金の上乗せとして、老後に向けた資産形成を行うためのiDeCoについては、現在、国民年金の被保険者のみ加入できることから、自営業者などの国民年金第一号被保険者は六十歳、サラリーマンなどの国民年金第二号被保険者は六十五歳と、働き方などにより、iDeCoに加入できる上限の年齢に差が生じています。また、七十歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となるなど、高齢者の就業環境は変化しています。

 このため、今回の法案では、多様な働き方やライフコースに対応し、誰もが長期的に老後資産を形成できるよう、iDeCoの加入可能年齢の上限を七十歳未満まで引き上げる内容を盛り込んでおります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 井坂信彦君。

    〔井坂信彦君登壇〕

井坂信彦君 立憲民主党・無所属の井坂信彦です。

 会派を代表して、政府提出の国民年金法等の一部を改正する法律案について、総理及び厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 冒頭、米価格高騰で国民が苦しむ中、今月十八日に江藤農水大臣が、米は買ったことがないなどと発言をしました。高い米価で困っている国民の気持ちを全く理解できない農水大臣に、米不足対策を任せるわけにはいきません。

 石破総理は、昨日、江藤大臣を官邸に呼んで厳重注意したものの、江藤大臣を続投させる考えを示しました。今朝の新聞報道によれば、江藤大臣は、総理に辞職すべきだと言われればそうするつもりで官邸に来たと明かしたとのことですが、なぜ江藤大臣を辞めさせなかったのか、総理の任命責任をどう考えているのか、併せて総理に伺います。

 年金改革法案の質問に入ります。

 まず初めに、今国会の最重要法案である年金改革法案の提出が二か月も遅れたこと、ようやく出された法案が骨抜きになっていることに対して、怒りを込めて抗議します。

 なぜ重要広範議案である年金改革法案の提出がここまで遅れたのか、そのことの責任についてどう考えているのか、総理に伺います。

 骨抜き法案のままでは、現役世代と若者の年金は最大三割減ってしまいます。選挙が怖くて問題を放置するなら、石破総理に政権担当能力はありません。この法案は、将来の問題から逃げる無責任法案であります。

 総理は、全ての現役世代と若者を見捨てるつもりですか。減り続ける年金を、総理はいつまで放置をするのですか。お答えください。

 私が本日、与野党の皆様に訴えたい最大のポイントは一つです。今からでも遅くない、厚生年金等の底上げをしましょう。年金を底上げして、現役世代や若者が老後の貧困に陥るリスクを解消しましょう。

 二〇〇四年に導入されたマクロ経済スライドにより、このままでは、二〇五七年まで年金は毎年減り続けます。もらえる基礎年金の水準は今より三割減ってしまい、国民年金だけでなく、厚生年金の加入者でも老後の生活が成り立たなくなります。

 今のままでは厚生年金を含めた現役世代の年金が減り続けるという厳しい現実について、総理がどの程度の危機感を持っているのか、お伺いいたします。

 この問題を解決するために、今回の年金改革法案が提出されるはずでした。だからこそ、私たちは、年金改革法案を今年の最重要法案の一つと位置づけ、重要広範議案に指定したのです。しかし、三月に提出されるはずだった法案は、自民党の中で了承を得られず、提出が遅れに遅れました。そして、先週ようやく提出された法案からは、驚くべきことに、一番大事な現役世代の年金底上げが削除されていたのです。このような骨抜き法案は、到底認められません。あんこの入っていないあんパンなど要りません。

 厚生年金を含めた現役世代の年金が減り続けることが分かっていながら、なぜ年金の底上げを削除したのか。また、会期末まで一か月しかないこのタイミングで無責任な骨抜き法案を出してきて、本当に今国会で衆議院と参議院を通す気があるのか。併せて総理に伺います。

 現役世代と若者の年金底上げをしないと、大変なことが起こります。NIRA総研のシミュレーションによると、現在五十歳前後の世代は老後に貧困となる可能性が高いとのことです。潜在的な生活保護受給者は七十七万人、その方々が実際に生活保護を受給すると、追加の予算が累計で二十兆円近く必要になると予想されています。

 政府は、現役世代の老後の貧困率や生活保護の受給者数について、将来見通しの数字を持っていますか。厚生労働大臣に伺います。

 マクロ経済スライドで年金を減らし続ければ、年金制度は百年もっても、現役世代と若者の老後の生活がもちません。減り続ける年金を放置したことが理由で生活保護が増えるなどということは、絶対にあってはならないことです。総理の見解を伺います。

 立憲民主党は、野党第一党として、この問題に正面から取り組みます。厚生年金等を底上げして現役世代と若者の年金を増やし、老後の貧困を防ぐための修正案を用意しています。本日、この後、修正案の骨子を政府と与党にお渡しします。総理には、修正を受け入れていただき、自民党の総裁として、年金底上げのために責任を持って自民党内を説得していただきたいと思います。

 今回の年金底上げに対しては、厚生年金加入者のお金が国民年金に流用されて、厚生年金の人は損をするとの批判が数多く見られます。しかし、これは、政府の説明が不十分だったことによる誤解であります。

 私たちが修正提案する厚生年金等の底上げは、こういう内容です。これまでも、厚生年金のお金は、厚生年金加入者の二階の報酬比例部分と一階の基礎年金部分の両方に投入をされていました。今後は、この一階の基礎年金部分に多めに投入するよう、配分割合を変えようというのが提案であります。基礎年金部分が増えれば、自動的に国庫負担分も増えます。この修正が実現すると、果たして厚生年金加入者の年金額は減るのでしょうか。実は、多くの場合、増えるのです。

 先週の厚生労働委員会で、私なりの試算を発表しました。計算してみて驚きました。低年金の方は、もちろん年金が増えます。加えて、何と、平均的な収入の厚生年金加入者であっても、二十歳から六十代まで幅広い世代でもらえる年金が増えるのです。

 ついては、厚生労働大臣に確認します。

 私たちが修正提案する厚生年金の底上げで、男女それぞれ何歳以下の厚生年金の加入者の年金が増えるのか、政府側の試算についてお答えください。私たちが修正提案をする現役世代の年金底上げにより増える年金額の多さに、皆様も驚かれると思います。

 社会保障審議会の資料によれば、厚生年金加入者で現在五十歳のモデル世帯の年金は、修正で厚生年金が底上げされると、一生でもらえる年金額が夫婦二人で何と四百五十一万円も増えるとのことであります。さらに、四十歳、三十歳と若い世代になるほど厚生年金の底上げで増える年金額も更に大きくなると、厚生労働省からは回答をいただいています。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 仮に、私たちの修正案が実現し、厚生年金の底上げが行われたら、現在、六十歳、五十歳、四十歳、三十歳、二十歳の厚生年金加入者は、一生にもらえる年金額が何万円増えるでしょうか。お答えください。

 私たちの修正案で、厚生年金の五十歳以下のほとんどの方の年金が増え、六十歳の方でも平均的な収入の方は年金が増えるはずです。しかし、年金が増える現役世代や若者の中にも、自分たちの年金が減るのではないかと反対している方々がおられます。この週末の共同通信の世論調査でも、三十代以下で四三%、四十代、五十代で五四%が年金底上げに反対をしておられます。

 私は、本日の質問で、一部を対象にした底上げだという誤解を防ぐために、あえて就職氷河期世代という言葉を使いませんでした。政府には、正しい説明で国民やメディアの誤解を解く責任があります。

 今回削除した年金底上げは、厚生年金を一方的に減らしたり、国民年金だけを増やす変更ではない、厚生年金加入者の報酬比例部分のお金を、厚生年金加入者が九割を占める基礎年金部分に回す変更である、年金底上げをすれば、現役世代のほとんどの厚生年金加入者の年金額は増えると、総理から分かりやすく説明をしてください。

 一方で、七十代の厚生年金受給者を中心に、年金額が僅かに減ってしまう方々も出てきます。ここは大事なポイントで、年金額がマイナスになる方々を何もせずに放置をしていると、世代間対立が起こって年金改革は進みません。立憲民主党の修正案では、改革で年金額が減ってしまう世代への緩和策を検討するよう求めています。

 厚生年金を含めた現役世代の年金底上げを行うと同時に、年金額が減ってしまう方々に対して何らかの手当てが必要だと考えますが、検討できないか、総理に伺います。

 次に、厚生年金の適用拡大について伺います。

 今回の法案では、中小企業のパート労働者に対する厚生年金の適用について、最長で二〇三五年まで先送りされます。この企業規模要件は、二〇一二年の法改正で経過措置として設けられたものであります。既に十年以上がたっており、当初の予定どおり、二〇三〇年までに企業規模要件を撤廃すべきではないでしょうか。また、企業規模要件の撤廃で新たに保険適用される中小零細企業の保険料負担について、経過措置として財政支援を行うことはできないでしょうか。併せて総理に伺います。

 今回の法改正には、在職老齢年金の見直しも含まれています。望めば何歳になっても働き続けられるという社会と、働き続けても損をしない制度は重要です。しかし、在職老齢年金があるから働く時間を減らすんだという高齢者は一体どれだけいるのか、政府の持っているエビデンスをお示しください。

 また、今回の法改正では、第三号被保険者の実情に関する調査研究も検討事項に盛り込まれています。総理は、将来的に第三号被保険者制度を廃止すべきと考えているのでしょうか。お伺いします。

 最後に、議場の与野党全ての皆様にお訴えします。

 私たちが修正提案する年金底上げには、厚生年金の流用だと、相変わらず批判が寄せられています。しかし、私たちの修正案で、現役世代と若者の厚生年金は増えます。いわば、現役世代と若者の厚生年金底上げ案であります。低年金の方々だけでなく、多くの現役世代と若者が老後の貧困から救われます。生活保護の増加による将来の財政破綻を防ぐことができます。

 与野党を超えて、未来を見据え、今二〇二五年の国会に身を置いている意味をお互いに自覚をし、年金改革に正面から向き合ってまいりましょう。議場の皆様に、修正案への御協力を、心より、心よりお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 井坂信彦議員の御質問にお答えいたします。

 江藤農林水産大臣の任命責任についてのお尋ねをいただきました。

 江藤大臣に対しましては、昨日、大臣を官邸に呼び、厳重に注意をいたしました。大臣からは、深い反省の意が示されたところであります。

 江藤大臣の発言は、米の価格が高い中で、消費者の皆様、生産者の皆様、双方に配慮を欠き、極めて不適切なものであったと考えております。国民の皆様には大変申し訳のないことでございました。任命権者は私でございます。心より深くおわびを申し上げます。大変申し訳ございません。

 米の価格の高止まりを始めとして、農政の課題が山積する中、その解決に向け、今まさに全力を挙げるべきときであります。江藤大臣には、国民の皆様の御理解が得られますよう、職務に邁進し、農政の課題の解決に全力を尽くさせたい、かように考えております。

 今回の年金改正法案の提出時期や内容についてのお尋ねであります。

 年金は国民の皆様の生活と密接に関わりますことから、例えば、自民党では十五回にわたる議論を行うなど、丁寧に、慎重に議論を進めてきたところであります。私自身も、厚生労働大臣や与党の幹部に対して、早急に党内手続を進めるよう指示をいたしました。先週の国会提出に、そのような経緯で至ったものでございます。

 今回の法案では、いわゆる百六万円の壁を撤廃し、より手厚い年金が受けられるようにする被用者保険の適用拡大、就労収入を得ながら年金をより多く受け取れるようにする在職老齢年金制度の見直し、個人型確定拠出年金、iDeCoの加入可能年齢を七十歳まで拡大する措置など、将来の受給者の給付も充実させつつ、現在の受給者の年金の増額措置を盛り込んだ極めて重要なものであり、決して現役世代や若者を見捨てるような法案と評価されるようなものではございません。政府といたしましては、この法案の意義や内容につき、今後とも更に丁寧に説明を尽くすことといたしております。

 将来の年金給付水準についてのお尋ねです。

 年金の給付水準を保つことは重要な課題と考えております。当然のことであります。一方、これは経済状況によって変わり得るものでもありますことから、政府といたしましては、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指し、年金の給付水準が将来も維持できるように努めてまいります。

 今回の財政検証の結果、年金財政は前回改正時よりも好転が見込まれており、過去三十年投影の低いケースでも所得代替率が最終的に五〇・四%となり、二〇一九年の同水準のケースの四四・五%と比べて上昇している状況にございます。

 御指摘の措置は、今後も経済が好調であれば発動の必要性がないものであるとともに、次の財政検証の結果により適切に検討し必要な対応を講ずることなどから、具体的な仕組みについては今回の法案に規定しないこととしたものであります。

 その上で、今回の年金改革法案では、被用者保険の適用拡大など、将来の受給者の給付を充実させつつ、在職老齢年金制度の見直しなど、現在の受給者の年金の増額措置を盛り込んでおり、政府としては、今国会での速やかな御審議をお願いする立場から、この法案の意義や内容について、今後とも更に丁寧に説明をいたしてまいります。

 年金と生活保護との関係についてであります。

 年金の給付水準は今後の経済状況によって変わり得るものであり、政府として、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指し、年金の給付水準が将来も維持できるように努めてまいります。また、将来の生活保護受給者数の見込みにつきましては、経済情勢等の様々な要因が影響し、年金制度の改正が実際にどのような影響があるかについては、一概に言えないものと考えております。

 生活が困窮するリスクを減らす取組として、今回の法案に盛り込んだ被用者保険の適用拡大のほか、低所得の年金受給者に対する年金生活者支援給付金、生活困窮者に就労支援や家計改善などきめ細かい相談支援を行う生活困窮者自立支援制度など、社会保障全体での総合的な対応に引き続き取り組んでまいります。

 底上げ措置についてのお尋ねをいただきました。

 政府におきましても、経済が好調に推移しない場合の備えとして、基礎年金のマクロ経済スライドを早期終了させる措置を検討いたしておりました。

 これは、基礎年金の財政を安定させるため、現行制度でも行っている厚生年金の積立金の基礎年金への活用を更に行うことで、基礎年金の給付水準を上げることを目的とするものであり、この措置を実施した場合、最終的には九九・九%を超えるほぼ全ての厚生年金受給者の方の給付水準が上昇すると見込まれておりました。

 しかしながら、厚生年金の積立金を使うことについて、流用といった御意見もあり、今回の法案に具体的な仕組みを規定しないこととしたものです。一方、基礎年金の給付水準の確保は重要な課題です。給付水準は今後の経済状況によって変わり得るものでございますので、二〇二九年に行われる次の財政検証の結果を踏まえ、年金制度における対応が必要な場合に、適切に検討し、必要な措置を講じます。

 被用者保険の適用拡大に係る企業規模要件の撤廃等についてのお尋ねです。

 今回の法案では、今まで以上に小規模の企業で働く方に被用者保険の裾野を広げることから、企業経営に与える影響や事務負担の増加等を踏まえつつ、今まで以上に十分な準備期間を設けることといたしました。こうした対応の下、着実に被用者保険の適用拡大を進めてまいります。

 その上で、社会保険料の事業主負担は、医療や年金の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であることから求められているものであります。今般、キャリアアップ助成金を含め、経営や事務に関する事業者支援は用意いたしますが、こうした枠組みと異なり、公費により社会保険料の減免を行うことにつきましては、経過措置であるとしても課題が多いと考えております。

 第三号被保険者制度についてでございます。

 第三号被保険者制度につきましては、いわゆる専業主婦の方のみならず、病気や育児、介護などの理由で働けない方々など、様々な属性の方々が混在する中で、今般の年金制度改正では、将来的な見直しの方向性について意見がまとまらなかったところであります。

 引き続き、被用者保険の適用拡大を進めることで第三号被保険者の対象者を縮小していくことを基本とした上で、今後、第三号被保険者の実態も精緻に分析しながら、制度に関する様々な論点や国会での御指摘も踏まえ、議論を進めてまいります。

 残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 井坂信彦議員の御質問にお答えいたします。

 老後の貧困率や生活保護の見通しについてお尋ねがありました。

 将来の生活保護受給者数や貧困率の見込みについては、経済情勢等の様々な要因が影響することから、推計することは困難ですが、高齢化が進展する中で、様々な対応を通じて、生活が困窮していくリスクを低減していくことは重要と考えています。

 令和六年財政検証では、新たに個人単位の年金額の分布推計を行い、若い世代ほど労働参加が進展することにより、厚生年金の被保険者期間が伸び、年金の給付水準が充実する傾向にあることが確認されました。今回の法案では、こうした傾向の加速につながる被用者保険の適用拡大も盛り込んでおります。

 仮に基礎年金の底上げが行われた場合の年金額の試算についてお尋ねがありました。

 基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了については、今回の法案で具体的な仕組みを規定していないため、これに関する試算のお答えは難しいですが、その上で、令和六年財政検証に基づいて、モデル年金で平均余命まで受給するとして機械的に試算すると、実質一%成長を見込んだケースでは年金受給総額がマイナスとなる方はおらず、実質ゼロ成長を見込んだケースでは、男性で現在六十二歳以下、女性で六十六歳以下の方は年金受給総額が増加する見込みとなっています。

 また、実質ゼロ成長を見込んだケースで、年代別の夫婦の年金受給総額を同じく機械的に試算すると、現在六十歳の方は九十九万円、五十歳の方は三百八十九万円、四十歳の方は五百四十一万円、三十歳の方は五百四十六万円、二十歳の方は五百四十六万円増加する見込みとなっております。

 在職老齢年金制度についてお尋ねがありました。

 在職老齢年金制度に関連する世論調査では、六十代後半の方のうち約三割の方が、年金額が減らないように就業時間を調整しながら会社などで働くと回答しているほか、一部業界の声としても、従業員の就業調整がある旨をお伺いしているところです。

 こうしたことも踏まえ、今回の年金改正法案では、高齢者の活躍を後押しし、できるだけ就業を抑制しない制度となるよう、在職老齢年金制度の見直しを盛り込んでおります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 梅村聡君。

    〔梅村聡君登壇〕

梅村聡君 日本維新の会の梅村聡です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、以下、全て総理に質問いたします。(拍手)

 国民の関心の高い年金制度は、世代間の公平性を担保しながら、十分な給付を実施する仕組みにしなければなりません。政府が提案する年金制度の改定はそのような内容になっているのか、質問を通じて明らかにしてまいりたいと思います。

 昨年の財政検証は、現実から乖離した楽観的な予測を前提にしており、適切であるとは言えません。

 運用利回りと賃金上昇率の差であるスプレッドは、過去三十年投影ケースでは一・七としており、これは、前回の令和元年財政検証時の最も好調なケースの一・四を大きく上回っております。この非現実的な設定が、将来の年金財政が好転するように見せていると言えます。

 また、前回は六つあった経済の前提が今回は四つしかなく、これでは将来の詳細な検証を期待できません。経済前提を減らした理由について、年金部会での議論を交えて御回答願います。

 将来推計人口は、中位推計を基に、二〇二〇年では一・三三である合計特殊出生率は、二〇七〇年には一・三六になるとしていますが、実際には、二〇二三年の合計特殊出生率は一・二〇にまで下がり、出生数は二〇一六年に百万人を割り込んで以来、毎年減少するなど、僅か数年の間に前提から大きくずれ始めています。外国人の増加が寄与するとしていますが、外国人労働者の年金加入率は低く、賃金水準も日本人より低い傾向があるため、年金財政への貢献を日本人と同等に見積もることには無理があります。

 性別、年齢階級別に見た就業率の変化と今後の見通しでは、二〇二三年では八〇・一%であった三十歳から三十四歳女性の就業率は、二〇四〇年には九五・一%に上がり、同世代の男性より高くなると見込む一方、出生率は今より高くなるという、両立しない内容になっています。

 人口と労働力において、こういう理解に苦しむ前提を用いた財政検証に意味はあるのでしょうか。そして、信用に値するとは思えない財政検証を基に年金の仕組みを見直すことは、国民の不安を増大させることにはならないでしょうか。お答え願います。

 政府が前提とする四十年就労の夫と専業主婦という世帯モデルは、現代の多様な家族形態や就労状況と合いませんし、就職氷河期世代が抱える特殊性も反映されていません。年金の実態とは異なる検証結果で国民の目を欺いているうちに、ない袖を振れなくなることを危惧します。年金の財政検証は、年金の本当の姿を国民に提示するように、現在のやり方を抜本的に改めるべきと考えますが、見解を伺います。

 本法律案においては、基礎年金の給付水準の底上げのための基礎年金のマクロ経済スライドの早期終了を盛り込むことが見送られました。その結果、マクロ経済スライドによる給付調整は、二〇二九年に予定されている次回の財政検証の翌年度まで継続することになりました。

 令和二年改正の附則では、所得再配分機能の強化やマクロ経済スライドの長期化への対応を検討する旨が定められており、それが更に五年先送りされるのは非常に問題であり、また、無責任です。年金制度を安定したものにするために必要と考えられる、マクロ経済スライドの早期終了についての判断を五年も先送りする合理的な理由は何でしょうか。明確な答弁を求めます。

 九〇年代後半からの厳しい雇用環境の中、非正規雇用を選択せざるを得なかったいわゆる就職氷河期世代においては、多くの人が年金を十分に積み上げることができず、年金給付への不安を抱えています。低年金受給者が増えれば、その分、生活保護受給者が増えることも想定されますが、本来、低年金受給者は年金制度の中で支えられなければならないはずです。生活保護受給者の半数以上が六十五歳以上の高齢者である現状から考えても、現在の年金制度は十分に機能していないと考えられますが、総理の御所見を伺います。

 また、低年金を理由に生活保護を受けている高齢者が生活保護から抜け出すためにはどのような方策が考えられるのかについても、併せて伺います。

 年金の支給開始年齢は徐々に引き上げられ、今年、ようやく男性の六十五歳支給開始が始まりました。支給開始年齢をアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアが六十七歳にしていることを考えると、平均寿命がそれらの国より長い日本では、更なる支給開始年齢引上げの議論は避けて通れません。年金の実態を明らかにして、支給開始年齢引上げの議論を進めることが必要と考えますが、見解を伺います。

 第三号被保険者制度は、かつては専業主婦を支える制度でしたが、今は、パートタイム労働者のもっと働きたいという思いの実現への足かせになっています。百六万円や百三十万円の壁問題は、第三号被保険者の地位を維持する働き控えであり、特に年末の繁忙期の働き手不足の要因になっています。そもそも、この制度がなければこれらの問題は生じません。

 第三号被保険者数は、令和五年度では六百八十六万人であり、毎年およそ三十万人ずつ減り続けています。この制度を廃止し、任意加入に戻すことについての見解を伺います。

 厚生労働省の資料によれば、令和五年度末時点の国民年金の第一号被保険者千三百八十七万人のうち、保険料納付者数は七百十二万人であり、五一・三%にすぎません。制度維持のためには未納者等への対策が必要です。

 第一号被保険者のおよそ半数が年金を納めていない現状をどのように認識していますか。また、未納者に対してはどのような対策を取るのでしょうか。御答弁願います。

 さらに、免除者は、全額免除期間については将来受給する基礎年金は半分となるなど、保険料免除、納付猶予制度が低年金の原因となっています。対策を取る必要があると考えますが、政府の認識を伺います。

 公的年金制度の弱点を補う仕組みとして、個人型確定拠出年金、iDeCoがあります。本法案では、加入可能年齢の上限を七十歳未満まで引き上げることとする点は大いに評価します。iDeCoは、個人の老後の資産形成を可能とするのみならず、投資された資金が安定的に株式市場や債券市場に投入されるので、投資の促進や経済成長にも寄与すると考えます。

 老後の資産形成の自由な選択を可能とするために、一定の上限は必要であるものの、拠出限度額については、さらに、例えば月額十万円程度まで引き上げることを検討すべきと考えますが、見解を伺います。

 本法案では、パートタイム労働者などの短時間労働者の賃金要件及び将来的に企業規模要件が撤廃され、また、常時五人以上の被用者がいる個人事業所についての適用業種については、既存事業所は除外されますが、現在の十七業種から、農林漁業、宿泊業、飲食サービス業などにも拡大されます。

 被用者保険の適用拡大として、月額基本給八・八万円以上の基準を撤廃することとしていますが、週労働時間二十時間以上の基準がある以上、すぐに新たな壁が生じ、根本的な解決にはならないと考えますが、見解を伺います。

 また、厚生年金の適用範囲は、主に中小零細企業に適用拡大されますが、被用者本人と企業が保険料を半分ずつ負担する現制度においては、企業負担が増大します。適用拡大による経済へのマイナス影響はどの程度になると見積もっているのか、お答え願います。

 日本の労働人口が減少する中、高齢者の就業率は主要国G7の中でも最も高く、六十五歳から六十九歳で五二%、七十歳から七十四歳で三四%です。在職している年金受給権者三百八万人の一六%に当たる約五十万人が、在職老齢年金制度の支給停止対象になっています。きちんと働き、税金と社会保険料を納めている人が、一定の年収額を超えたことを理由に年金の一部又は全部が支給停止となることは不合理です。

 内閣府の調査では、年金が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働くと答えた人が六十五歳以上では三一・九%もおり、働きたいけれども損をするから働かないという実態があることを示しています。

 本法案では、支給停止基準額を現状の五十万円から六十二万円に引き上げるとしていますが、これにより、支給停止対象者約五十万人のうち約二十万人が対象から外れますが、約三十万人は対象のまま残ります。働きたい高齢者の働く意欲をそぎ、合理的な理由がない在職老齢年金制度による支給停止は全廃すべきと考えますが、見解を伺います。

 厚生年金の標準報酬月額は、令和二年九月の政令の見直しにより、それまでの上限であった六十二万円の上に六十五万円という新等級が設定されました。本法案では、さらに、上限額を三年かけて七十五万円まで段階的に引き上げることとしています。

 標準報酬月額の上限である六十五万円の等級には、賞与を除いた報酬月額が六十三・五万円以上の被保険者が二百七十八万人います。厚生労働省によれば、この等級の三九・六%の方が賞与額がゼロであるとのことです。賞与にも年金の保険料負担がかかりますが、例えば、年収千二百万円の被用者は、賞与をゼロにして月収を百万円とした方が、月収六十五万円として賞与を夏、冬、二百十万円ずつとする場合に比べて、標準賞与額の百五十万円に対する二回分の保険料負担がなくなり、負担する保険料全体が少なくて済むようになっています。

 月給と賞与の割り方を変えれば保険料負担が異なる制度は公平ではありません。このような現状を政府は認識しているか、伺います。同じ年収であれば保険料負担は同じであるべきであり、実際の年収に応じた保険料負担を実現すべきであると考えますが、見解を伺います。

 ここまで述べてきましたように、日本維新の会は、年金制度の根本的な見直しを訴えています。政府の提案している年金制度は、前提となる財政検証から信頼性に足るものではなく、本法案に示された対策も、問題の核心に手をつけず、小手先のびほう策を並べているにすぎません。中長期的には、基礎年金の税方式化等を含む抜本的な構造改革に踏み込まなければなりません。

 それらを実現するために、政府、与野党の枠組みを超えた新しい議論の場が必要と考えており、総理大臣主催による社会保障国民会議の設置を提案いたしますが、このような仕組みを創設及び抜本改革の必要性に対する見解を伺います。

 日本維新の会は、年金制度を真に国民生活を支えるものにすることを実現し、あわせて、現役世代の社会保障負担を軽減するために努力してまいりますことをお約束いたしまして、私からの質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 梅村聡議員の御質問にお答え申し上げます。

 年金の財政検証についてのお尋ねをいただきました。

 今回の年金の財政検証の経済前提について、前回の六ケースから四ケースといたしましたのは、ケースの意味を分かりやすく明確にした上で簡素化すべきとの専門家の御意見に基づくものであり、ケース数は減少しているものの、将来の経済状況については前回より幅広いものといたしております。

 この前提は、実績に基づきながら専門家による検討を経て設定されており、財政検証における見込みを直近の実績と比較をいたしますと、例えば、出生率は実績が見込みを下回っている一方、女性の就業率はおおむね見込みと同水準であり、外国人の入国超過の実績は高位の見込みに近い水準となっておりますが、恣意的に設定したものでは決してなく、財政検証実施時における設定としては適切であると考えております。

 財政検証は、五年ごとに最新の実績を反映しつつ、専門家による検討を経て実施する仕組みであり、引き続き常に実績を把握し、適切な前提を立てながら実施していくことが必要であると考えております。

 マクロ経済スライドの早期終了についてであります。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、全国民共通の基礎年金について、将来にわたって一定の給付水準を確保する重要性がある一方で、保険料、拠出金、積立金の関係の分かりづらさから賛成、慎重両方の御意見があり、社会保障の専門家の間でも意見が分かれていたところでございます。

 今回の年金改正法案の前提として行われた財政検証の結果、年金財政は前回改正時よりも好転が見込まれる状況にあり、この措置は、今後も経済が好調であれば発動の必要性がないものであるとともに、二〇二九年に行われる次の財政検証の結果により適切に検討し必要な対応を講ずることなどから、具体的な仕組みにつきましては今回の法案に規定しないこととしたものでございます。

 生活保護と年金制度についてのお尋ねです。

 年金は老後生活の柱の一つであり、給付と負担のバランスを保ちつつ、年金の給付水準を保つことは重要な課題と考えております。年金の給付水準は今後の経済状況によって変わり得るものであり、政府として、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指して、将来の給付水準の向上につなげてまいります。

 生活保護になる理由は様々であり、必ずしも低年金だけが理由となるものではありませんが、生活が困窮するリスクを減らす取組は重要と考えており、将来の年金給付につながる被用者保険の適用拡大のほか、低所得の年金受給者に対する年金生活者支援給付金の支給、生活困窮者に就労支援や家計改善などきめ細かい相談支援を行う生活困窮者自立支援制度など、低年金の高齢者の方々に対する社会保障全体での総合的な対応に引き続き取り組んでまいります。

 年金の支給開始年齢の引上げについてのお尋ねです。

 年金の支給開始年齢につきましては、過去の改正で、定年退職年齢の引上げと併せて、六十五歳に引き上げることを決定し、これを進めてまいりました。

 その後、平成十六年の年金制度改正により、現在の年金制度は、保険料の上限を固定しつつ、その範囲内で給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入いたしました結果、六十五歳の支給開始年齢を維持した場合であっても、年金財政の長期的なバランスが取れる仕組みとなっているところでございます。このため、今回の年金制度改正でも、年金の支給開始年齢の引上げを行うべき、このような議論にはなっていないと承知をいたしております。

 第三号被保険者制度についてのお尋ねをいただきました。

 第三号被保険者につきましては、いわゆる専業主婦の方々のみならず、病気や育児、介護などの理由で働けない方々など、様々な属性の方が混在する中で、今般の年金制度改正では、将来的な見直しの方向性について意見がまとまらなかったところでございます。

 引き続き、被用者保険の適用拡大を進めることで第三号被保険者の対象者を縮小していくことを基本といたしました上で、今後、第三号被保険者の実態も精緻に分析しながら、制度に関する様々な論点や国会での御指摘も踏まえ、議論を進めてまいります。

 国民年金保険料の免除、納付猶予制度の現状及び対応についてのお尋ねをいただきました。

 我が国の公的年金制度では、世帯の所得が少ないなどの理由で保険料の納付が困難な方には、保険料の免除や猶予の制度を用意し、全ての方が年金制度に加入し続けられるようにすることで、国民皆年金を実現しております。保険料納付者以外ではこうした保険料免除や猶予を利用されている方が多く、これらを第一号被保険者の約六%である未納者と合計して、半数が保険料を納めていない、このように評価することは適当ではないと考えております。

 その上で、年金受給権を確保する観点から、国民年金保険料が未納等の方の収納対策として、日本年金機構において、制度の周知や納付勧奨、定められた期間内での追納の勧奨を進めております。

 お一人でも多くの方に国民年金保険料を納めていただくことは、制度の信頼性確保はもちろんのこと、御本人の生活保障の観点からも重要であると考えております。様々な理由から低所得、低年金となってしまわれた方に対しましては、年金生活者支援給付金の支給も進めております。

 iDeCoの拠出限度額についてでございます。

 iDeCoの拠出限度額につきましては、令和七年度の税制改正において、自営業の方などの拠出限度額を現行の月額六・八万円から七・五万円に引き上げる、会社員の方などの拠出限度額を現行の月額二万円又は二・三万円から六・二万円に引き上げるといった方針が決定されました。

 これらは賃金上昇や利用実態等に照らして設定されたものであり、まずは、法案と併せて速やかな実現を目指すことといたしております。今後につきましては、これを踏まえまして、引き続き議論をいたしてまいります。

 被用者保険の適用拡大についてのお尋ねです。

 いわゆる百六万円の壁と呼ばれる短時間労働者の賃金要件の撤廃など、今回の法案により、最終的に二百万人が被用者保険に適用されると見込んでおります。今後は、週二十時間以上という分かりやすい要件の下、より希望に応じた働き方が実現できる環境の整備に資するものと考えております。

 適用拡大による経済への影響について、定量的な評価は一概には申し上げられませんが、使用者に保険料負担が発生する一方で、事業主に対しましては助成金等による支援を講ずるほか、厳しい人手不足の中、事業主にとりましても、労働者への年金給付等が手厚くなることで、人材確保、定着につながるというメリットがあるものと考えております。

 在職老齢年金制度の見直しについてであります。

 在職老齢年金制度は、納めていただいた保険料に応じた給付を行うことが原則である社会保険制度においては、例外的な仕組みでございます。この仕組みは、高所得者であっても高齢者の就業意欲を阻害するといった御指摘もありましたことなどから、今回の法案では、現役世代の収入水準や高齢者の就労実態等に照らして、年金の減額を行う基準を五十万円から六十二万円に緩和する見直しを行うことといたしております。

 今後の在職老齢年金制度の在り方につきましては、今回の改正の結果なども踏まえまして、引き続き議論をいたしてまいります。

 保険料負担の在り方についてでございます。

 保険料賦課は総報酬制であり、基本的には月収と賞与に等しく賦課するのが原則ですが、それぞれに賦課上限が求められていることにより、同じ年収でも保険料負担が異なるという状況が起こり得ることは承知をいたしております。

 総報酬制の下、より公平な保険料の賦課に取り組むことは重要であり、今回の改正法案におきまして、厚生年金における標準報酬月額の上限を七十五万円まで段階的に引き上げることとしておりますことは、このような差を一定程度縮小することに寄与するものと考えております。

 社会保障国民会議の設置と年金制度の抜本改革の必要性についてのお尋ねです。

 我が国の年金制度は、本人と事業主が保険料を拠出する社会保険方式を基本としております。仮に、この仕組みを今から税方式に変えました場合、これまで払ってきた保険料負担に応じた給付が得られなくなることについて御理解が得られるか、給付を支えるために新たに多額の税財源が必要になることについて御理解が得られるかなどの課題があり、社会保険を税方式に変更することは、困難な課題を伴うものと考えております。

 社会保障全体に関しましては、内閣総理大臣を本部長とする全世代型社会保障構築本部の下に設置しております全世代型社会保障構築会議におきまして、引き続き給付と負担のバランスを確保しつつ、若年期、壮中年期及び高齢期の全ての世代で安心できる全世代型社会保障制度の構築に取り組んでまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 福田徹君。

    〔福田徹君登壇〕

福田徹君 国民民主党、福田徹です。(拍手)

 質疑に先立ち、今月十四日、航空自衛隊練習機が愛知県犬山市入鹿池に墜落した事故について触れさせていただきます。

 まず、何より、お二人の隊員の一刻も早い発見を望みます。そして、愛知十六区は、私をここへ送り届けていただいた、その町で起こっています。入鹿池は、日本有数の農業用ため池です。これからの米作りのための農業用水の安全の確保をお願いします。

 また、自衛隊機をめぐっては、二〇一八年以降、五件の事故が起こっております。周辺住民のためにも、そして何より、自らの危険を顧みず、国民のために尽くさんという自衛隊員のためにも、原因の究明の徹底と再発防止の徹底を強くお願いします。

 質疑に入らせていただきます。

 私は、救命救急センターの救急医として働いてまいりました。現役世代の負担を抑えながら、世界一の日本の医療を守る、救える命は必ず救う、その思いで政治の舞台に参りました。命のために働いてきた自分が、今、この壇上で年金の質疑をさせていただく。この法案について指導を受けた友人からは、おまえの仕事も変わったなと笑われました。

 でも、実は、私はそう思っておりません。救急医の仕事は、命の危機を救う仕事です。一方で、年金を始め、私たち政治家がここで議論する事柄は、人間の毎日の生活です。命の危機、それよりも前にある、命の日常を守る仕事だと思っています。

 私は、友人に対して堂々と、年金の質疑をする自分は、今も人の命を守っている、そう言いたいと思っています。そして、総理と、今ここにいらっしゃる全ての議員の皆様と一緒に、命の日常を守る、その自覚とともに、真剣で前向きな議論をさせていただきたいと思います。

 本日の質疑は、一つ、今回の法改正の目的、二つ、議論の前提の確認、三つ、その目的を達成するために行う施策の内容、四つ、そして、その施策が合理的だと考えられる根拠、この順でお聞きします。

 まず、総理にお尋ねします。

 今回の法改正の目的、一番の狙いは何でしょうか。年金の持続性の強化なのか、現在の受給者の年金額確保なのか、将来の受給者の年金額の確保なのか、若しくは、その全てなのか。目的によって、取るべき施策は違います。まず、目的を教えてください。

 私は、最大の目的は、将来の年金受給者の年金額確保だと思っております。特に、今、五十代に差しかかった氷河期世代、そして、それ以降の世代、この方々に、将来、生活ができる、生きていけると思える金額の年金を受け取ってもらえるようにすることです。

 今のままでは、年金で生活できない高齢者がたくさん生まれることが予測されています。二〇二四年財政検証では、氷河期世代が年金を受給するようになる七十一歳から八十七歳となる二〇五七年には、誰もが受け取れる基礎年金は今と比較して三割減ることが予測されています。現在月十三・四万円もらえる年金が、十・七万円となります。しかも、これは夫婦二人の年金を合わせた金額です。単身ではもっと少なくなります。これではとても生活できません。

 総理にお尋ねします。

 この二〇五七年の年金額についてどうお考えでしょうか。今回の法改正で二〇五七年の年金額を幾らにする目標でしょうか。年金は数学です。今、法案が出された時点でこれは分かるはずです。経済シナリオによって変化することは分かりますが、大まかな金額が分かるだけで、氷河期世代やそれ以降の世代が資産形成等で準備することができます。どうか目標の金額を教えてください。

 そして、私が今回の二〇二四年財政検証で最も大きな懸念を感じているのは、試算の前提です。今回の将来推計は、二〇七〇年の合計特殊出生率を一・三六として試算しています。近年、合計特殊出生率はどんどん低下して、二〇二四年は一・一五と予測されています。二〇七〇年に一・三六、これは現実的な数字でしょうか。これよりも低ければ、実際もらえる年金はもっともっと低くなります。

 総理にお尋ねします。

 この前提は余りにも楽観的過ぎるのではないでしょうか。どのような想定で一・三六とされたのでしょうか。実際、一・三六よりも低くなれば、将来の年金は予測より大きく下がります。このことについてどうお考えでしょうか。

 次に、総理が目標とする年金額を達成するために行う施策についてお聞きします。

 本案では、被用者年金の適用拡大、在職老齢年金の見直し、標準報酬月額の上限の見直しが盛り込まれています。どれも、頑張れる人はもっと頑張って保険料を払って、そして老後に備えよう、こういう施策だと思います。もちろん全て必要な施策です。でも、最も重要な施策が抜け落ちていると思います。それは、全ての人が受け取れる基礎年金を生きていける年金として保障する、その施策です。

 これは氷河期世代対策でも同じです。リスキリング、就労支援、資産形成支援、もちろんどれも大事です。でも、五十代に差しかかった氷河期世代の方から現場で届く生の声というのは、何を今更、もう遅い、増やす資産なんてない、これがその声です。

 そして、これは厚生労働省のデータでも示されています。氷河期世代の金融資産は五百万円以下が半分近く、これはほかの世代よりも少ないです。そして、最近は賃金が上がっていると言いますが、二〇一九年から二〇二四年、この間の賃金上昇率は、就職氷河期世代でほかの世代と比べて低いです。これは個人の努力不足ではありません。違います。大卒者の就職率は六九・七%、ほかの世代と比べて一〇ポイント以上低いです。そして、一九九〇年には二・三%であった完全失業率、これが二〇〇二年には五・三%。ありとあらゆるデータが、これは個人の努力不足ではなくて政治や社会の問題であった、そう示しています。その氷河期世代に対して必要な施策はリスキリングだけではありません。必要なのは、生きていける年金の保障だと考えます。

 私たち医師が治療する細菌性肺炎の根本治療は、細菌を死滅させる抗生剤です。決して、せき止めや解熱剤ではありません。でも、今回の法案は、基礎年金を増やすという抗生剤なしで、せき止めと解熱剤だけで肺炎の治療をするようなものです。抗生剤なしでは患者の命は救えません。抗生剤投与が遅れれば、救えるはずの命を救えません。

 総理に御提案します。

 昨日、総理は、基礎年金の底上げ策について、結論を得るためには多少の時間がかかるとお話しされました。違います。今です。氷河期世代の命の日常を守るために、そして、その後の世代の未来のために、今すぐ、基礎年金を増やすという抗生剤を投与しませんか。是非、お考えをお聞かせください。

 当初の法案には、現在の厚生年金受給者の年金額を少し減らして、将来の基礎年金を増やす、その施策が入っていたと報道されています。私は、本案でその施策が外れていることを非難する気持ちは全くありません。政府や与党という集団の中で様々な論点が丁寧に議論されて、その結果、何かしらの意思決定がなされる、これは正しい姿です。そして、今はここ、国会という別の集団で丁寧な議論をさせていただきたいと思います。ただ、そのために必要なこととして、よりよい議論を行うために、これまで政府や与党の中でどのような議論を経て意思決定がなされたのか、これを知りたいと思います。

 総理にお尋ねします。

 当初検討されていたというマクロ経済スライドの早期終了による基礎年金の底上げ、これが本案から外れるに至った議論の内容について教えてください。政府として、削除すべきでないと説得されましたでしょうか。もしされていないのであれば、なぜしなかったのか、教えてください。

 私は、この施策が妥当なのか、国民に向けてオープンに議論し、丁寧に説明すれば、受け入れられる可能性は十分にあると思っています。そして、氷河期世代やその後の世代のために必要な施策だと思っております。

 マクロ経済スライド早期終了による基礎年金の底上げ、これは何なのか。最もシンプルに説明すれば、二〇四〇年までの厚生年金受給者の年金額を月に数百円程度減らして、二〇四〇年以降のほぼ全ての年金受給者の基礎年金を上げる、こういうものです。なお、二〇四〇年というのは氷河期世代が年金をもらい始める時代です。

 二〇四〇年までの厚生年金受給者にとっては年金減額となる施策です。どのようなお気持ちになるか、私も十分に理解しています。そして、このような施策を提案しなければいけないことを心からおわび申し上げながら、どうしてこの施策に合理性があるのか、説明させていただきたいと思います。

 この施策の合理性を理解するためには、二〇〇四年の年金制度改正まで遡る必要があります。二〇〇四年の時点で、経済状況に合わせて足下の給付を抑えて百年先まで安心の年金制度とする、こういう予定でした。

 ただ、その後、デフレの程度ほど基礎年金の給付を下げることができず、二〇〇四年時点で五九・三%であった所得代替率、これを、本来、二〇二三年に五〇・二%にまで下げる予定だった。ただ、実際は二〇二四年に六一・二%と逆に上がってしまっています。つまり、現在の年金は、百年安心のために作った二〇〇四年の時点での計画より多く支払ってしまっていることになります。それでは将来の年金が減るのは当然です。

 総理にお尋ねします。

 二〇〇四年時点での見込みとして、現在の年金が高く、将来の年金が低くなること、このことについてどうお考えでしょうか。この問題を解決するためにすべきことは何とお考えでしょうか。

 私は、政策を間違えることは悪いと思いません。政策の運用がうまくいかないことも悪いと思いません。悪いのは、一度始めた政策を検証せず、見直さず、間違ったままでいることだと思います。優れた政治とは、一〇〇%正しい政策をつくることではなく、根拠に基づいた政策をつくり、確実に検証し、よりよい政策に修正できる政治だと思っています。

 総理に御提案します。

 今の政策を見直し、よりよいものにしませんか。今、当初の計画より払い過ぎてしまっている年金を見直し、将来の年金を守りませんか。そして、受け取れる年金が減ってしまう一部の受給者を心から大切に思って、思いに共感しながら、場合によっては別の何かで支援を考えながら、この経緯を説明し、合意を得る努力をしませんか。御意見をお聞かせください。

 今回の年金法改正を国民のために真に価値のあるものとして実現するためには、多くの政治家、全ての国民の合意を得る必要があると思っています。今は政党同士で戦うときではありません。私たち全員が、私たちが知る困っている一人一人の顔を思い浮かべながら、一緒に力を合わせるときだと思っています。

 救急医療チームは、一つの命のために一つになります。ふだん意見が違う医師同士でも、一たび患者が救急ベッドに横たわれば、命を守るために一緒に戦います。

 私たち国民民主党は、対決よりも解決、この本会議場の議員の皆様と、命の日常を守るために一つになることを望みます。共に国民のために働きましょう。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 福田徹議員の御質問にお答えを申し上げます。

 冒頭、先般発生をいたしました航空自衛隊T4練習機の事故につきまして、言及を頂戴をいたしました。

 私どもといたしまして、航空自衛隊のみならず、防衛省・自衛隊、政府全体といたしまして、搭乗員の発見、原因の究明、事故防止策の確立について全力で取り組んでまいります。農業用水の安全で安定的な供給にも努めてまいります。御指摘、誠に恐縮に存じます。

 今回の年金改革法案の目的について、お尋ねを頂戴をいたしました。

 今回の年金改革法案は、いわゆる百六万円の壁を撤廃し、より手厚い年金を受けられるようにする被用者保険の適用拡大、就労収入を得ながら年金をより多く受け取れるようにする在職老齢年金制度の見直し、iDeCoの加入可能年齢を七十歳まで拡大する措置などを盛り込んでおりまして、すなわち、年金制度の持続可能性を確保するとともに、将来の受給者の給付も充実させつつ、現在の受給者の年金を増額させるもの、このようなものであり、目的はそのようなものであると理解をいたしておるところでございます。

 将来の年金額についてでございますが、二〇五七年の年金額について目標を示すべきとの御指摘ですが、そのとおりでございますが、二〇五七年時点での年金額は経済前提等によって大きく異なり、加えて名目額と実質額とでは大きく異なることから、これをお示しすることは困難でございます。こうしたことを踏まえまして、公的年金制度におきましては、法律上、給付水準は、現役世代の平均的な手取りの五〇%を維持するという所得代替率を目標として規定しております。

 二〇二四年の財政検証におきまして、過去三十年投影ケースで今回の年金改正法案の効果を織り込んで試算をいたしますと、最終的な二〇五二年度以降の所得代替率は五一・八%と推計されております。さらに、政府といたしましては、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指し、年金の給付水準が将来も維持できるように努めてまいります。

 年金の財政検証についてでございます。

 公的年金の財政検証における出生率等の前提につきましては、これまでの実績に基づきながら専門家による検討を経た上で幅広い複数のケースを設定した、適切なものであると考えております。

 具体的に、財政検証に用いている中位推計の合計特殊出生率は、二〇二三年まではコロナ禍による結婚、出生の落ち込みを反映することにより、二〇二〇年の一・三三から二〇二三年に一・二三まで低下し、二〇二四年以降は緩やかに上昇して二〇七〇年に一・三六になると推計されていると承知をしております。

 その上で、こうした前提は、今後も財政検証を実施するたびに、そのときの最新の実績を踏まえ設定していきます。なお、政府といたしましては、こども未来戦略等に基づく少子化対策を着実に進めてまいります。

 基礎年金の底上げ措置についてでございますが、年金の給付水準は、今後の経済状況によって変わり得るものでございます。政府の目指す成長型経済では、基礎年金の底上げ措置がなくとも、将来の給付水準がおおむね維持されるものと考えております。こうしたことも踏まえ、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指すのが政権の考え方でございます。

 他方、仮に経済が好調に推移しない場合には、基礎年金の将来的な給付水準の低下のおそれがあります。ただし、就職氷河期世代以降の方が年金を受けるのは二〇三〇年代半ば以降でありますことから、それまでにも様々な支援策を講じつつ、二〇二九年に行われる次期財政検証の結果を踏まえ、年金制度における対応が必要な場合には、適切に検討し、必要な措置を講じます。

 さらに、被用者保険の適用拡大は、就職氷河期世代を含め、より手厚い年金が受けられるようにするとともに、将来の基礎年金水準の改善にもつながるものであり、政府といたしましては、この法案の意義や内容について、今後とも更に丁寧に説明を尽くしてまいります。

 基礎年金の底上げ措置が法案に盛り込まれなかった経緯についてでございます。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、全国民共通の基礎年金について、将来にわたって一定の給付水準を確保する重要性がある一方で、保険料、拠出金、積立金の関係が分かりづらいことなどから、国民の御理解が得られるのかという賛成、慎重両方の御意見があり、社会保障の専門家の間でも意見が分かれていたところでございます。

 その上で、与党における議論において、例えば、自民党では十五回にわたって丁寧に議論を行い、その中で、政府からは、この措置を行う場合の目的や効果などについて説明をさせていただきました。

 こうした中、厚生年金の積立金を活用してこの措置を行うことなどについて慎重な御意見があったことを踏まえ、基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置の具体的な仕組みについては規定しないことといたしたものでございます。

 所得代替率の見込みと対応についてでございます。

 現在の所得代替率は、デフレ等の影響により、平成十六年に導入したマクロ経済スライドが発動しない年があり、結果として、当時の見込みよりも高い状態にございます。他方で、将来の所得代替率につきましては、平成十六年当時は五〇・二%と見込んでおりましたところ、今回の財政検証におきましては、過去三十年投影ケースでも五〇・四%になることが見込まれており、当時の想定に比べ低くなっているものではございません。

 今後とも、成長型経済を目指した経済運営を行っていくことが重要であり、その上で、経済が好調に推移しない場合におきましては、二〇二九年に行われる次期財政検証の結果を踏まえ、年金制度における対応を適切に検討し、必要な措置を講じるものといたします。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 会派を代表し、年金制度改正法案について、総理及び厚生労働大臣に質問をいたします。(拍手)

 年金制度の大きな転換を図ったのが、平成十六年の年金改革でありました。当時、公明党の坂口力厚労大臣の下で、改革前は、まず年金の給付水準を設定し、その給付水準に必要な保険料負担を現役世代に求める制度であったものから、改革後は、保険料負担の上限を設定をし、その財源の範囲内で給付水準を調整する制度となりました。

 仮に平成十六年改正を行わなかった場合、厚生年金は給与の二五・九%、国民年金は月二万九千五百円まで保険料が上昇するとの予測でありましたが、改革により、厚生年金で現在は一八・三%、国民年金は平成十六年価格で月一万七千円と上限を固定し、保険料がどこまで上がってしまうのかとの現役世代の負担面での不安を払拭し、給付面では、財源の範囲内で給付水準を賄うマクロ経済スライドを導入することで、少子高齢化が進んでも制度の持続可能性が図られることになりました。さらに、年金財政の健全性の一つの目安として、所得代替率が五〇%を下回らないような運用を目指すことになったわけであります。

 もっとも、少子高齢化は当時の予測を上回るスピードで進み、また、長期に及んだデフレ経済下で、マクロ経済スライドも十分には発動されない状況が続きました。こういった背景もあり、被用者保険の適用拡大など数度の制度改正を経ながら、今日まで運用がなされてきましたが、二〇二四年の年金財政検証では成長率をゼロと仮定した過去三十年投影ケースでも所得代替率は五〇・四%と、前回二〇一九年の四四・五%を上回る結果が出ております。

 そこで、まず総理に、平成十六年から累次にわたり行ってきました年金制度改革の総括的な評価と、今回の改正案に盛り込まれた内容が施行された場合、所得代替率はどの程度改善するのか、答弁を求めます。

 次に、年金財政検証に用いる社会経済状況に関する前提数値の妥当性について質問します。

 特に出生率は、二〇七〇年中位で一・三六と設定されていますが、現状は一・二程度です。また、実質賃金上昇率も、過去三十年投影ケースでも〇・五%に設定されるなど、現在の数字と比較しても楽観的な数値を前提としているように感じますが、この社会経済状況の前提数値は合理的なものと言えるのか、厚労大臣の答弁をお願いいたします。

 また、所得代替率は夫婦片働きの世帯をモデルにしておりますが、女性の社会進出が進み、単身世帯も増加した現在において、男女別の被保険者一人一人の年金水準についてはどのような傾向にあるのか、厚労大臣に併せて答弁を求めます。

 今回の改正では、被用者保険の適用拡大が段階的に図られ、二〇三五年には、原則、週二十時間以上働く方は社会保険へ加入することとなります。就業調整を減らすための支援策の一つとして、厚生年金保険料及び健康保険料共に事業主の判断で労使折半を超えて事業主が負担できる仕組みを導入し、労働者側の負担を軽減することが可能となります。事業主が労使折半を超えて負担した社会保険料については全額事業主に還付されるよう、公明党としても求めてまいりましたが、還付の財源が社会保障財源であることから、その影響を懸念する声も党内でありました。

 そこで、労使折半を超える事業主負担を全額還付することによる厚生年金財政及び健康保険財政に与える影響をどのように考えるのか、また、事業主側への支援として、百六万円の壁支援パッケージを百三十万円の壁にも対応できるよう支援メニューを拡充するとの国会答弁がありましたが、支援メニューの具体的な内容と施行時期について、いずれも厚労大臣の答弁を求めます。

 そもそも、就業調整が生じる大きな原因が、社会保険料を納めなくても給付が受けられる三号被保険者の存在であります。専業主婦の方が多かった時代には適した制度と言えましたが、女性の就業率が上昇するなど、現状は大きく変化しております。三号被保険者の在り方について、総理はどのようにお考えか、お聞かせください。

 次に、年金の給付水準の引上げについて質問をいたします。

 公明党は、かねてより、年金給付水準の引上げを公約として掲げており、当初政府案として検討されておりました、経済状況が好転しない場合には厚生年金の積立金を基礎年金の給付に活用し、基礎年金の給付水準を引き上げる案に一定の理解を示しておりました。今回、厚生年金の積立金を活用しての基礎年金の引上げ案が本改正案では見送られた理由について、総理にお伺いいたします。

 一方、厚生年金のマクロ経済スライドを二〇二八年度に終了させずに、次期財政検証の翌年である二〇三〇年度まで延長することが附則に盛り込まれました。次期財政検証以降、経済状況を勘案しながら基礎年金の引上げを行うためのオプションを残したものと私は評価をしております。現在の厚生年金受給者に不利にならないように配慮しながら、厚生年金のマクロ経済スライドを二〇三〇年度まで延長する意義について、総理の答弁を求めます。

 年金水準の引上げの方法としては、厚生年金の積立金の活用以外にも、例えば、基礎年金の拠出期間の延長、また、米国のベンドポイント方式のような、高額受給者の年金額を低額の受給者に配分し、厚生年金の中で所得再分配機能をより一層利かせることも一案と思料します。

 いずれにせよ、就職氷河期を始め低年金となる受給者の方々の年金給付水準を引き上げることは政権の責務であります。総理は年金給付水準の引上げの必要についてどのようにお考えか、答弁を求めます。

 今回の改正で在職老齢年金の支給停止基準額が五十万円から六十二万円に引上げとなり、働く意欲のある高齢者からは歓迎の声が寄せられていますが、そもそも在老の存在自体への疑問も聞くところです。確かに、在老を完全撤廃すると、将来の所得代替率にマイナス〇・五%の影響があるため、即時撤廃は困難かと思いますが、厚生年金のマクロ経済スライドの期間が終了すると、所得代替率の低下は生じなくなるため、調整期間の終了とともに在職老齢年金の制度は廃止すべきと考えます。総理はどのようにお考えになるか、答弁を求めます。

 現在の遺族厚生年金は、夫は妻が亡くなっても六十歳未満であれば支給されないなど、男女で差異があります。女性の就業率の上昇等を受け、遺族厚生年金の男女の区別をなくし、かつ、原則五年間の有期給付とすることは、社会の変化に対応するものとして理解します。しかし、女性の就業率が上昇したとはいえ、実際にはいまだ男女の賃金格差は存在しますし、男女問わず障害等で就労が困難な方にとっては、遺族年金は重要な生活の支えであります。

 そこで、五年の有期給付経過後も就労困難など一定の場合には給付の継続が必要であるとの公明党の意見も受け、配慮が必要な方には六十五歳到達まで遺族厚生年金の給付を継続する旨が法案に盛り込まれたところであります。

 この配慮が必要な一定の場合とは、具体的にどのような要件を検討しているのか、最後に厚労大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 浜地雅一議員の御質問にお答え申し上げます。

 これまでの年金制度改革の評価と制度改正案の影響についてのお尋ねです。

 公的年金制度につきましては、平成十六年以降の累次の改正で、制度の持続可能性を確保し、将来世代への過重な負担を抑制するとともに、自ら望む働き方を選択しやすい制度としつつ給付水準を確保するなど、老後の所得保障の柱としての役割を担ってきているものと考えております。

 その上で、今回の制度改正案を実施した場合、財政検証に基づく試算では、将来の所得代替率は、実質一%成長のケースでは二〇三七年度以降五七・六%から五八・九%に、実質ゼロ%成長のケースでは二〇五七年度以降五〇・四%から五一・八%に改善することが見込まれております。

 第三号被保険者の在り方についてでございますが、第三号被保険者につきましては、いわゆる専業主婦の方々のみならず、病気や育児、介護などの理由で働けない方々など、様々な属性の方々が混在される中で、今般の年金制度改正では、将来的な見直しの方向性について意見がまとまらなかったところでございます。

 引き続き、被用者保険の適用拡大を進めることで第三号被保険者の対象者を縮小していくことを基本といたしました上で、今後、第三号被保険者の実態も精緻に分析をしながら、制度に関する様々な論点や国会での御指摘も踏まえ、議論を進めてまいります。

 基礎年金の底上げ措置の取扱いについてでございます。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、全国民共通の基礎年金について、将来にわたって一定の給付水準を確保する重要性がある一方で、保険料、拠出金、積立金の関係が分かりづらいことなどから、国民の御理解が得られるのかという賛成、慎重両方の御意見があり、社会保障の専門家の間でも意見が分かれていたところでございます。

 今回の年金改正法案の前提として行われました財政検証の結果、年金財政は前回改正時よりも好転が見込まれており、過去三十年投影の低いケースでも所得代替率が最終的に五〇・四%となり、二〇一九年の同水準のケースの四四・五%と比べて上昇している状況でございます。

 この措置は、今後も経済が好調であれば発動の必要性がないものであるとともに、次の財政検証の結果により適切に検討し必要な対応を講ずることなどから、具体的な仕組みにつきましては今回の法案に規定しないことといたしたものでございます。

 厚生年金のマクロ経済スライドを延長する意義でございます。

 今回の法案では、基礎年金の底上げなどについての検討を引き続き行うに際し、今後の社会経済情勢の変化を見極めるため、次期財政検証の翌年度である二〇三〇年度まで、厚生年金のマクロ経済スライド調整を継続することといたしております。これにより、二〇二九年に行われる次の財政検証の結果を踏まえ、年金制度における対応が必要な場合には、適切に検討し、必要な措置を講じます。

 その上で、マクロ経済スライド調整の継続措置により、給付水準が低下し、厚生年金受給者が不利にならないよう、配慮措置を講じております。

 年金給付水準の引上げについてのお尋ねです。

 年金は老後生活の柱の一つであり、給付と負担のバランスを保ちつつ、年金の給付水準を保つことは重要な課題でございます。給付水準は今後の経済状況によって変わり得るものであり、政府として、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指し、将来の年金の給付水準の向上につなげてまいります。

 就職氷河期世代を含む将来の年金給付水準の充実につながる被用者保険の適用拡大などに加え、年金生活者支援給付金などの低年金者対策を活用しつつ、今後とも、社会や経済の変化に合わせ、五年に一度の財政検証の結果を踏まえた年金制度の不断の見直しに取り組んでまいります。

 在職老齢年金制度の見直しについてでございます。

 在職老齢年金制度は、社会保険においては例外的な仕組みでございます。この仕組みは、高所得者であっても高齢者の就業意欲を阻害するといった指摘もあったことなどから、現役世代の収入水準や高齢者の就労実態等に照らし、今回、年金の減額を行う基準を五十万円から六十二万円に緩和する見直しを行うことといたしております。

 今後の在職老齢年金制度の在り方につきましては、今回の改正の結果なども踏まえて、引き続き議論をいたしてまいります。

 残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣福岡資麿君登壇〕

国務大臣(福岡資麿君) 浜地雅一議員の御質問にお答えいたします。

 公的年金の財政検証の前提についてお尋ねがありました。

 公的年金の財政検証に用いる出生率や実質賃金上昇率などの前提については、これまでの実績を踏まえつつ、専門家による検討を経た上で幅広い複数のケースを設定しており、適切なものと考えています。

 なお、公的年金の財政状況を評価するに当たっては、出生率や実質賃金上昇率のように、実績が前提を下回る要素がある一方で、外国人の入国超過数や年金積立金の運用利回りのように、実績が前提を上回る要素もあることから、これらの要素を総合的に見る必要があります。

 男女別の年金水準についてお尋ねがありました。

 昨年七月に公表した二〇二四年財政検証では、新たに、個人単位で年金額を推計する年金額分布推計を実施しております。

 分布推計では、若い世代ほど労働参加が進展することで、厚生年金の被保険者期間が伸び、年金が充実する傾向にあることが確認されました。

 こうした傾向は、特に女性で顕著になっており、将来の女性の年金が充実することが確認されております。

 被用者保険の適用拡大に係る保険料調整制度についてお尋ねがありました。

 厚生年金に係る保険料調整制度の所要額については、対象となる全ての事業所等が御利用するとした場合に、総額で約三百億円程度と見込まれます。段階的な施行に合わせて必要になるものであり、厚生年金財政全体の財政規模に照らせば、給付水準への影響はないものと考えております。

 百三十万円の壁に対応する支援メニューの具体的な内容と施行時期についてお尋ねがありました。

 現在、百六万円の壁への対応として実施しているキャリアアップ助成金に、新たなコースを設け、労働者に新たに被用者保険を適用し、労働時間の延長や賃上げを通じて労働者の収入を増加させてキャリアアップにつながる取組を行う事業主に対し、労働者一人当たり最大七十五万円の支援を行うこととしております。

 この措置は本年七月から施行することを予定しており、より多くの事業主に活用いただけるよう、周知等に取り組んでまいります。

 有期化される遺族厚生年金の給付の継続要件についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、子のない二十代から五十代の配偶者への遺族厚生年金について、男女共に原則五年間の給付としつつ、支給期間終了後も様々な事情によって十分な生活再建に至らない方には、御党の御提案も踏まえ、最長で六十五歳まで給付を継続することといたしました。

 この継続給付の支給要件は、障害年金の受給権者である場合のほか、国民年金保険料の免除基準となる所得を参考に、所得額に応じて全額又は一部を支給することとしております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 八幡愛君。

    〔八幡愛君登壇〕

八幡愛君 れいわ新選組の八幡愛です。

 ようやく政府から出てきたと思ったら、基礎年金の底上げ部分が削除されていたという、骨抜き年金改革法案について質問をいたします。(拍手)

 まず最初に、石破総理にお伺いしたいのですが、総理は公的年金の保険料支払いを滞納しそうになったことはありますか。支払いがしんどかったという経緯はお持ちでしょうか。

 私はめちゃくちゃしんどかったんですよ。貧困な家庭で育ったこともあり、大学進学を諦めて、家計を支えるために高校卒業後はすぐに働きました。芸能界を目指していた経緯もあったのでアルバイトで生計を立てておりましたが、現在三十七歳の私が二十歳、二十歳であった二〇〇七年、平成十九年の国民年金保険料は月額一万四千百円、当時の手取り収入の一割を超える金額です。

 そんな中、将来、年金制度が破綻するかもしれないなどのマスコミ報道を目にしたり、年金積立金の運用機関であるGPIFが損失を出したなどと聞くと、生活をするだけでしんどいのに、なぜちゃんともらえるかどうかも分からない国民年金を支払わないといけないんだろうと思い悩みましたが、破綻するはずはないと信じて、老後への備えなんだと思い直して、保険料の支払いを継続いたしました。

 二〇二五年現在の国民年金保険料は一万七千五百十円。物価は高騰するのに給料はなかなか上がらない、そんな中で毎月毎月支払いをしている国民の気持ちが、総理には分かりますか。そして、現在、年金を受給されている方の厳しい暮らしは耳に届いておられますか。

 物価だけでなく、水道光熱費までもが高騰する世の中で、消費税もどんどん上がっていく。年金だけでは到底暮らせないから、六十代、七十代でもアルバイトをされている方もいらっしゃる。

 先日、労働安全衛生法の改正について厚労委員会で法案審議をする中で、高齢者の労働災害防止の推進を図る法案が追加されていることに関して、そもそも高齢者が働かないといけない世の中がおかしいし、一生懸命これまで働いて年金を納めてきたんだから、縁側でお茶でも飲ましたってくれよと思いました。

 れいわ新選組は、社会保険料の減免と年金の底上げを結党当初から訴えております。

 本改正案は、当初、非正規雇用などが多いとされる就職氷河期世代が高齢化した際に低年金に陥ることを避けるため、厚生年金の積立金を活用し、基礎年金の給付水準を底上げする案が盛り込まれておりました。しかし、政府・与党は、厚生年金の流用だとの批判を恐れ、提出された法案では基礎年金底上げは削除されております。また政府は就職氷河期世代を見捨てるんですか。石破総理に足らないのは、愛と勇気です。誰に何を言われたのか、参院選を前にどんな議論が党内でなされたのか分からないですけれども、公的年金の所得再配分機能を重視して、基礎年金の給付水準を底上げすべきじゃないですか。まだ間に合います。愛を持って、勇気を出してください、総理。

 れいわ新選組は、就職氷河期世代を含む低年金の方、無年金の方の生活を支えるために、最低保障年金を導入することを訴えております。総理、最低保障年金の導入、検討しませんか。

 本改正法案では、いわゆる年収百六万円の壁の撤廃などが盛り込まれ、現在は厚生年金の加入対象となっていないパートやアルバイトなど、短時間労働者も新たに厚生年金に加入できることとなっていて、この百六万円の壁が今回の目玉みたいになっておりますけれども、これ、みんなが手放しで喜ぶ改正案だと本気で思われておりますか。

 新たにおよそ二百万人が厚生年金の加入対象になる見込みなんですが、もちろん、将来受け取れる年金が増えることでありがたいと思う人もいらっしゃると思いますが、大多数が、賃金がなかなか上がらない中での物価高に加えて増税で、ただでさえ生活が苦しいのに、今の手取りが減ることに不安を覚える人も相当数います。

 実際、私の地元東大阪でも、中小零細企業やパートタイムで働く方々から悲痛な叫びが届いております。厚生年金に入ったら手取りの収入が減る、今現在収入が減るのは困る、一人親としての生活が苦しい、生活費で精いっぱいで食費まで回らなくなってしまう。総理、このように、老後という将来よりも、目の前の手取りが減ることの方が大変な方がたくさんいらっしゃるんですよ。そして、当然、労使折半ですから、中小零細企業からは、保険料の追加負担が経営を圧迫して実質的な増税だとの批判も相次いでおります。

 そこで厚生労働省は、労使合意を前提に、企業が従業員の社会保険料の負担を一部肩代わりするという特例措置を検討しているようなんですけれども、従業員の賃金調査や新たに社会保険加入対象となる人のリスト作成、手続の増加など、労務管理の負担増に直面して、これはまた、インボイス制度のときみたいに、中小零細企業を淘汰したいための法改正なのかなと疑いたくなってしまいます。

 このままでは、この国の年金制度を国民が信用することはできません。昔の私のように、払いたくないという人が、働く側も雇用する側からも出てくるんじゃないでしょうか。悪い物価高が収まるまで、社会保険料の減免措置を導入する、季節ごとの一律現金給付をする、そして何より消費税を廃止する、せめて一律減税を検討する。この国の経済をまずは立て直しませんか。それができてこそ、初めて老後の心配ができるのではないでしょうか。

 今日食べる主食のお米すらも満足に買えないこんな世の中で、老後のことなんて、正直言って、みんな考えられませんよ。支持者がくれるからといって、うちには米がたくさんあるから売るほどあんねんといって、そんなことを言っている大臣がいらっしゃる。そんなこと、現実を見てくださいよ。この国は、いつの間にか、老後の心配すらもぜいたく品になってしまいました。そんな国に誰がしたのか。

 れいわ新選組は、結党した二〇一九年から一貫して消費税廃止を訴えてきました。最初は、また山本太郎がおかしなことを言っているわと笑われましたけれども、悲しいかな、時代がれいわ新選組に追いついてしまった。今、各党でも消費税減税が議論となっております。それなのに、今回の年金改革法案、年金を底上げするどころか、更に追加で保険料を支払わせることばかり考えている。

 れいわ新選組の理念、日本を守るとはあなたを守ることから始まる。今拡充すべきは、社会保障費です。公金をしっかり投入して、誰もが、生きていてよかったという社会を実現する。ああ、また青臭いことを言っているなと思いましたか。私がガッツポーズしたぐらいで、集まって話合いして。でも、この本会議場にいる先輩方、思ったかもしれませんが、その感覚こそが恥ずかしいですよ。何のために政治家になったんだ。こんな当たり前のことを議員七か月の私に言われること、それこそ恥じていただきたい。

 お願いを申し上げます。年金底上げ、これを政府に強く要請します。

 質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 八幡愛議員の御質問にお答えします。

 年金保険料を支払われている方や年金を受給されている方々の暮らしについてでございます。

 現役世代の方も高齢者の方も、その生活の状況は様々でございます。私個人のことにつきましてつまびらかに申し上げることはいたしませんが、公的年金の被保険者として保険料を納付させていただく中で、様々な方々のお声を伺い、所得が低く厳しい生活を送っておられる方々がいらっしゃいますことはよく承知をしておるところでございます。

 基礎年金の底上げ及び最低保障年金の導入についてです。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期に終了させる措置につきましては、社会保障の専門家の方々の間でも賛成、慎重両方の御意見があることや、今後も経済が好調であれば発動の必要性がないものであるとともに、次の財政検証の結果により適切に検討し必要な対応を講ずることなどから、今回の法案には具体的な仕組みを規定しないことといたしました。

 さらに、被用者保険の適用拡大は、就職氷河期世代を含め、より手厚い年金が受けられるようにするとともに、将来の基礎年金水準の改善にもつながるものであり、就職氷河期世代を見捨てているという御指摘は全く当たりません。

 最低保障年金については、保険料納付実績とは無関係に一定の年金を保障するものとすれば、多額の税財源が必要になること、これまで保険料を払ってきた方々と払ってこなかった方々との間の公平性を確保できるのかといった難しい問題があり、慎重な検討が必要でございます。

 今回の年金改正法案の意義についてですが、今回の改正法案は、いわゆる百六万円の壁を撤廃し、より手厚い年金を受けられるようにする被用者保険の適用拡大のほか、就労収入を得ながら年金をより多く受け取れるようにする在職老齢年金制度の見直し、iDeCoの加入可能年齢を七十歳まで拡大する措置など、将来の受給者の給付も充実させつつ、現在の受給者の年金の増額措置を盛り込んだ、極めて重要なものであると考えております。政府といたしましては、この法案の意義、内容につき、今後とも更に丁寧に説明を尽くし、国会の御審議を賜りたいと考えております。

 社会保険料の減免措置の導入などについてのお尋ねです。

 社会保険料の事業主負担は、医療や年金の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であることから求められているものでございます。今回、キャリアアップ助成金を含め、経営や事務に関する事業者支援は用意いたしますが、こうした枠組みとは異なり、公費によって社会保険料の減免を行うことについては慎重な検討が必要と考えております。

 消費税については、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増額する中において、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられていることから、政府として、その引下げを行うことは適当ではないと考えております。

 なお、新たな給付金について検討してはおりませんが、物価や国民生活の状況に応じて、賃上げの効果が出るまでの間の対応として追加してきた備蓄米の売渡し、ガソリン価格の定額引下げ、電気・ガス料金支援といった対応を着実に、確実に実行いたしてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法改正案について、石破総理に質問します。(拍手)

 物価高騰が国民生活を脅かしています。物価高でも年金が増えない高齢者からは、風呂の回数を減らした、米が高くて買えず麺類ばかり食べている、スーパーで値引きのシールが二度貼られるまで待つ等々、深刻な声が寄せられています。

 昨年の夏、電気代の負担を苦にしてエアコンの使用を控えて熱中症になり、亡くなる高齢者が相次ぎました。年金だけでは生活できず、働く高齢者も増え続けています。特に女性の低年金は深刻で、十万円以下が八三%、五万円以下が二三%に及んでいます。

 総理、高齢者の生活を低年金と物価高騰が苦しめています。その認識はあるでしょうか。

 物価が上がっても年金が上がらない。年金受給者の生活を困窮させているその元凶は、百年安心の年金だとして導入されたマクロ経済スライド制です。

 マクロ経済スライド制導入からこの二十年間で、公的年金の給付水準は実質八・六%も削減されました。これがなければ、現在月十万円の年金の人は、月額で九千四百円、年額で十一万円多い年金でした。このことをお認めになりますか。

 石破総理は、物価上昇に負けない賃上げを起点として、国民の所得の向上を図ると何度も強調しています。一方で、高齢者に実質収入減を押しつけるのは、矛盾ではありませんか。高齢者の生活水準は下がってもいいと思っているのですか。

 過去三十年の経済状況が続く前提の下で、マクロ経済スライドは二〇五二年まで続くことになります。前回の財政検証から、年金削減は更に五年間延長になります。その結果、年金給付水準は、現在から実質一五%切り下げられます。これでは、生涯削減の年金ではありませんか。

 世論調査では、将来の年金受給額に非常に不安があると答えた人は五六・四%、どちらかといえば不安があると答えた人は三三%、合わせて九割の人が将来の年金額に不安があるとしました。総理、今や、百年安心の年金は完全に崩壊したのではありませんか。

 基礎年金のマクロ経済スライド調整期間の長期化で基礎年金額が大幅減少することは、前回の財政検証のときから大きな問題でした。年金部会の議論の整理では、マクロ経済スライドによる削減期間を短くするために、年金積立金を活用する案が盛り込まれました。今回、この案が見送られたのはなぜですか。

 とりわけ重大なのは、低年金者ほど年金削減額が大きくなる問題です。基礎年金は二〇五二年まで削減が続きます。この結果、厚生年金の実質削減額は一・六%にとどまる一方、基礎年金の削減は二五%に及びます。基礎年金だけの高齢者や、低所得で厚生年金が少ない低年金者ほど、年金が削減されます。非正規、低賃金の下で働かざるを得なかった就職氷河期世代は、今以上の低年金を余儀なくされるのではありませんか。

 調整期間を短くする年金部会の案でも、マクロ経済スライドは直ちに止まらず、今後十年以上にわたって削減が進み、給付水準は大きく切り下げられます。今やるべきことは、マクロ経済スライド制を直ちに停止させることであります。そして、給付の五年分、現在二百九十兆円にも上る年金積立金は計画的に給付の維持拡充に充てるべきです。

 政府案では、厚生年金二百万人の適用拡大や十万円の厚生年金保険料上限引上げが入っていますが、十分とは言えません。厚生年金の更なる適用拡大や、年金保険料の上限額を健康保険と同じ年収二千万円に引き上げるなどの対策が必要です。答弁を求めます。

 就職氷河期世代や若い人たちが、将来の年金に大きな不安を抱いています。過去三十年と同様、経済状況が変わらなければ、現在月六万八千円の国民年金は、今四十歳の人が六十五歳になるときには月に五万二千円に下がり、今二十歳の人が六十歳になるときには月四万八千円まで下がります。基礎年金の底上げを図るとともに、雇用の安定と賃上げを進めることが重要です。中小企業への支援とともに、最低賃金を全国一律時給千五百円に直ちに引き上げ、非正規をなくすべきではありませんか。

 現役世代で低賃金を強いられた人は老後にも低年金を強いられるという、現行制度の構造を改めるべきです。そのためには、最低保障年金制度の導入が不可欠です。国連社会権規約委員会から、最低年金を公的年金制度に導入することが度々勧告されています。低年金、無年金の解消のために、政府が早期決断することを求めます。

 障害年金を申請して二〇二四年度に不支給と判定された人が、前年度の二倍以上に急増し、三万人になること、障害年金センター長の交代により判定が厳格化されたと報道されています。厚労省は調査中だとしていますが、報道から既に三週間がたっています。不支給二倍は事実なのか。事実なら、社会福祉の根幹を揺るがす問題です。どう対処するのか、答弁を求めます。

 最後に、増えない年金に加え、物価高騰が国民の暮らしを直撃しています。総理、消費税の減税を求める国民の声は多数です。五%の減税を行えば、世帯十二万円の負担減です。国民生活の安定に、総理が消費税減税を決断することを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 年金と物価高騰についてのお尋ねです。

 公的年金制度では、前年の物価等の変動に応じて年金額を改定することを基本としながら、マクロ経済スライドにより、長期的な給付と負担のバランスを確保することで、将来にわたって持続可能な仕組みといたしており、こうした仕組みの下で年金を着実に支給していくことが重要であると考えております。

 その上で、政府といたしましては、所得や年金額の低い高齢者の方々には年金生活者支援給付金制度を設けており、こうした施策等により、高齢者の方々の暮らしが安定するよう、引き続き支援をいたしてまいります。

 物価高につきましては、低所得者世帯向けの給付金などに加え、随時、ガソリン価格の定額引下げ、電気・ガス料金支援といった施策を追加するなど、あらゆる政策を総動員しておるところであり、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら、引き続き対策に取り組んでまいります。

 マクロ経済スライドについてでございます。

 平成十六年の制度改正で導入されたマクロ経済スライドの仕組みは、現役世代の保険料上限を固定し、過重な負担が生じないようにした上で、年金額について一定の調整を行い、長期的な給付と負担のバランスを確保するものでございます。

 マクロ経済スライドの仕組みの結果、年金額の実質的な価値が緩やかに減額されることは御指摘のとおりですが、これは経済状況によって変わり得るものでありますことから、政府としては、賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指し、年金の給付水準が将来も維持できるように努めてまいります。

 政府として、この仕組みを百年安心であると申し上げたことはございませんが、五年に一度の財政検証に基づき、適切に年金制度を改正するなど、着実に運営をいたしてまいります。

 マクロ経済スライドについてでございます。

 基礎年金のマクロ経済スライドを早期終了させる措置につきましては、今後も経済が好調であれば発動の必要がないものであるとともに、次の財政検証の結果により適切に検討し必要な対応を講ずることなどから、具体的な仕組みについては今回の法案に規定しないことといたしたものでございます。

 マクロ経済スライドは、将来世代の負担が過重にならないよう、保険料の上限を固定しつつ、その範囲内で給付を行う仕組みであり、これを単に停止することは考えておりません。また、こうした仕組みの下で、積立金は将来の年金受給者の給付水準を確保するために計画的に活用していくことといたしており、これを特定の世代のためだけに使うことは適当ではないと考えております。

 被用者保険の更なる適用拡大などについてでございます。

 被用者保険の適用拡大や標準報酬月額の上限の見直しは、将来の給付の充実につながる重要な改正事項であります。

 今回の改正案は、昨年末の厚生労働省における審議会、社会保障審議会年金部会でございますが、審議会の議論の整理や与党の御議論において、更なる適用拡大や標準報酬月額の上限の見直しについては、被保険者や事業主の負担が増加することに留意しつつ検討された結果、幅広い合意が得られたものとして提案をしているものでございます。

 中小企業支援、最低賃金及び非正規雇用労働者についてでございます。

 中小企業支援につきましては、五月十四日に開催された新しい資本主義実現会議において、賃金向上推進五か年計画の策定に向け、四本柱から成る施策パッケージをお示しいたしました。中小企業等が賃上げできる環境を整備するため、政策を総動員いたしてまいります。

 最低賃金につきましては、政府として、地域間格差の是正に配意しつつ、引き続き、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続けてまいります。

 非正規雇用労働者については、誰もが希望する働き方の実現に向け取り組むことが重要であると考えており、引き続き、望まない非正規雇用を減らすための正社員への転換の支援や、同一労働同一賃金の推進等に取り組んでまいります。

 最低保障年金制度についてでございますが、いわゆる最低保障年金につきましては、多額の税財源が必要になること、これまで保険料を払ってきた方々と払ってこられなかった方々との間の公平性をどのように確保するのかといった課題があるものと考えております。

 政府といたしましては、低所得の年金受給者に対する年金生活者支援給付金の支給や、今回の法案にも盛り込んだ被用者保険の適用拡大などを通じて、高齢期の所得保障に取り組んでまいります。

 障害年金の認定状況についてでありますが、御指摘がございました障害年金の認定状況に関しましては、一連の報道も踏まえ、厚生労働大臣から、日本年金機構等に対して、令和六年度における認定状況の実態把握のための調査を行うよう指示が行われており、六月中旬をめどにその結果を公表できるよう作業が進められているものと承知をいたしております。その結果を踏まえまして、必要な対応を行います。

 消費税減税についてでございます。

 急速な高齢化等に伴って社会保障給付費が大きく増加する中、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であること、高所得者にも負担軽減がなされるため、物価高の影響を最も受けている低所得者への支援という意味では効率性に乏しいこと等から、消費税につきましては、その引下げは適当ではないと考えております。

 物価高に対しましては、お一人二万円から四万円の所得税減税や、世帯当たり三万円の低所得者世帯向けの給付金などに加え、随時、ガソリン価格の定額引下げや電気・ガス料金支援といった施策を追加するなど、あらゆる政策を総動員しているところであり、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら、その対策に取り組んでまいります。

 以上でございます。(拍手)

副議長(玄葉光一郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  石破  茂君

       財務大臣    加藤 勝信君

       厚生労働大臣  福岡 資麿君

       環境大臣    浅尾慶一郎君

       国務大臣    坂井  学君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 橘 慶一郎君

       厚生労働副大臣 鰐淵 洋子君


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