第30号 令和7年5月30日(金曜日)
令和七年五月三十日(金曜日)―――――――――――――
議事日程 第二十八号
令和七年五月三十日
午後一時開議
第一 円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案(内閣提出)
第二 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 行政書士法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案(内閣提出)
日程第二 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 行政書士法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)
社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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日程第一 円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第一、円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。経済産業委員長宮崎政久君。
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円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔宮崎政久君登壇〕
○宮崎政久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、経済的に窮境に陥るおそれのある事業者が、早期で円滑に事業再生を行うことができるようにするため、当該事業者の申出により、経済産業大臣の指定を受けた公正な第三者機関の関与の下で、金融機関等である債権者の一定割合以上の多数決とその決議に対する裁判所の認可により、当該事業者がその債務に係る権利関係の調整を行うことができる手続等を整備するものであります。
本案は、去る五月二十日本委員会に付託され、翌二十一日に武藤経済産業大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十三日に質疑に入り、二十八日質疑を終局いたしました。
質疑終局後、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び有志の会の六派共同提案により、目的規定に、事業者が「その事業の価値の毀損並びに技術及び人材の散逸の回避を図った上で」との文言を追加すること等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。
次いで、討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
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日程第二 資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第二、資金決済に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。財務金融委員長井林辰憲君。
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資金決済に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔井林辰憲君登壇〕
○井林辰憲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、金融のデジタル化等の進展に対応し、利用者保護を確保しつつ、イノベーションを促進するため、暗号資産交換業者等に対する資産の国内保有命令の創設、暗号資産等の売買又は交換の媒介のみを行う者の登録制の創設、国境をまたぐ一定の収納代行に対し、資金移動業の規制を適用すること等の措置を講ずるものであります。
本案は、去る五月十五日当委員会に付託され、翌十六日加藤国務大臣から趣旨の説明を聴取し、二十八日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。
質疑終局後、本案に対し、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案により、検討規定について、検討の目途を施行後三年とするとともに、資金移動業の規制を適用する国境をまたぐ収納代行の範囲を検討の対象として明記する修正案が提出され、提出者から趣旨の説明を聴取いたしました。
次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって修正議決すべきものと決しました。
なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 日程第三は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。
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日程第三 行政書士法の一部を改正する法律案(総務委員長提出)
○議長(額賀福志郎君) 日程第三、行政書士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。総務委員長竹内譲君。
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行政書士法の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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〔竹内譲君登壇〕
○竹内譲君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
本案は、デジタル社会が進展するなど、近時の行政書士制度を取り巻く状況が大きく変化していることを踏まえ、行政書士の使命及び職責を明らかにする規定を設けるとともに、特定行政書士が行政庁に対する不服申立ての手続について代理等することができる範囲を拡大するほか、行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限違反等に対して両罰規定を設ける等の措置を講じようとするものであります。
本案は、昨二十九日、総務委員会におきまして、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。
何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。
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○鈴木隼人君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
内閣提出、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 鈴木隼人君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。
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社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)
○議長(額賀福志郎君) 社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生労働委員長藤丸敏君。
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社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔藤丸敏君登壇〕
○藤丸敏君 ただいま議題となりました社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、年金制度において、ライフスタイル等の多様化を反映し、働き方に中立的な制度を構築するとともに、高齢者の生活の基盤の強化のための所得保障及び再分配機能の強化を行うため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
第一に、被用者保険の適用範囲を拡大するため、短時間労働者への適用について、企業規模要件及び賃金要件を撤廃し、また、常時従業員を五人以上使用する個人事業所に係る非適用業種を原則として解消すること、
第二に、在職老齢年金制度について、支給停止が開始される基準を六十二万円に引き上げること、
第三に、遺族厚生年金制度について、配慮措置を設けた上で、受給要件等の男女差を解消すること、
第四に、厚生年金保険の標準報酬月額の上限について、七十五万円に段階的に引き上げること、
第五に、個人型確定拠出年金の加入可能年齢を七十歳未満に引き上げること
等であります。
本案は、去る五月二十日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、同日福岡厚生労働大臣から趣旨の説明を聴取し、翌二十一日から質疑に入り、二十七日には参考人から意見を聴取いたしました。
翌二十八日には、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属及び公明党の三会派より、次期財政検証において、将来の基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、基礎年金及び報酬比例部分のマクロ経済スライドによる調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずること等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取し、同日から原案及び修正案を一括して質疑を行い、本日、石破内閣総理大臣に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。
質疑終局後、国民民主党・無所属クラブより、短時間労働者の被用者保険の適用に係る企業規模要件の早期撤廃等の検討規定を設けること等を内容とする修正案が、また、日本共産党より、マクロ経済スライドによる調整を速やかに終了させるための検討規定を設けることを内容とする修正案が提出され、両修正案について趣旨の説明を聴取いたしました。
次いで、原案及び各修正案について討論、採決を行った結果、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党提出の両修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、三会派共同提出の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。
なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。阿部圭史君。
〔阿部圭史君登壇〕
○阿部圭史君 日本維新の会の阿部圭史です。
私は、党を代表して、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)
本法案の政府原案は、基礎年金の底上げが除外されたことを捉えて、あんこのないあんパンであるということばかりが注目されてきました。しかし、本当の問題はそこではありません。本法案は、昨年の年金の財政検証の結果を基に議論されたものではございますが、問題はこの財政検証にあります。
運用利回りと賃金上昇率の差であるスプレッドは、基本シナリオとされた過去三十年投影ケースにおいては一・七という利回りの高い値を用いており、あたかも将来の年金財政が安全であるかのように見せています。これは国民に対するごまかしであります。
また、将来の人口の見込みとしては、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計の中位推計を用いてきました。しかし、一九九二年の財政検証から二〇一七年までの過去六回、実際の出生率は中位推計であったためしはありません。実際は推計をことごとく外してきており、実際の出生率は低下の一途をたどってきました。中位推計だから適正な推定だろうということは全くなく、低位推計を用いるべきであることは言うまでもありません。
しかしながら、二〇二四年の財政検証においても中位推計を用いて検証しています。これまで推計を外してきたという実態について全く触れず、実態に近いであろう低位推計を使わず中位推計を使うという姿勢こそが、国民の目を欺くものであるとしか言いようがありません。
政府が前提とする四十年就労の夫と専業主婦という世帯モデルは、夫婦共稼ぎや独身世帯が増えている現実の家族形態や就労状況とは全く合っておりません。夫婦共稼ぎをする理由は、子育てのためには一方の親の収入だけでは足りないという現実があるからです。かつては夫の収入だけでも子育てが可能であった時代の考え方を現在にも当てはめて、それがモデルケースとして所得代替率を考えること自体が、もはや何らの意味を持ちません。所得代替率は個人ベースで考えるべきものであります。
二〇二三年のOECDのデータを用いて、個人単位、男性、保険料差引き後の所得代替率で国際比較をすれば、日本の所得代替率は三八・八%にすぎません。イタリアは八〇%を超え、アメリカ、イギリス、ドイツが五〇%を超えていること、OECD平均で六六・三%であることを考えると、我が国日本は明らかに年金の給付が低いことが分かります。政府が用いている、いわゆる世帯モデルでは、あたかも五割を超えているかのように見せるためのごまかしにすぎません。
本法案に対して立憲民主党が提案した修正案を与党が受け入れましたが、基礎年金の底上げという表現は、余りにきれいに装飾された表現であります。
今般の問題の本質は、次の三点に集約されます。一つ目、厚生年金の積立金を基礎年金に投入すること。二つ目、基礎年金に税金を投入すること。三つ目、この税金の財源を明らかにしていないこと。この三つであります。
一つ目について、厚生年金は、第二号被保険者が長い年月をかけて働き、努力して積み上げてきたものであります。それを第一号と第三号の被保険者向けの資金にすることは、果たして適切と言えるのでしょうか。全くもって筋が通りません。二つ目及び三つ目について、税金を投入するための財源は明らかにされていません。無責任であり、不適切以外の何物でもなく、疑問を持たざるを得ません。
本法案では、保険料率の設定を見直すこともなく、第三号被保険者についての廃止を含めた見直しをすることもなく、長寿化している我が国においては根本的な問題である年金の支給開始年齢の引上げについても検討することもなく、ただただ、小手先のびほう策だけを俎上に上げて検討しているだけではありませんか。
私たち日本維新の会は、国民の皆さんの未来のために、なるべく多くの選択肢を次世代に残すべきであると考えています。考えるべきことを考えない、思考停止に陥ってしまっては、次世代に対する責任が取れないのではないでしょうか。ましてや、年金の実態を高めにごまかして、あたかも問題がないかのように見せる姿勢は、明らかに無責任であります。
国民年金を余り積み上げることができなかった方が大勢いる就職氷河期世代の一番上は五十歳代前半になっており、十数年たてばいよいよ給付が始まります。議論を先延ばしにすれば、給付される年金では生活ができない世帯が急激に増え、生活保護受給者が増え続ける未来が来ることが容易に予想されます。そうなってしまってから年金制度をどうするかという議論をしては遅過ぎるのです。今からでも、年金制度全体をどうするのかという、骨太で抜本的な制度論に関する議論を直ちに始めねばなりません。
年金という国民生活に密着した課題については、政争の具にするべきではありません。年金制度の抜本改革を行うに当たっては、国民のための社会保障制度の議論は政局にしないとの合意の下、政局や党派を超えて、国民一丸となった新しい議論の場が必要であります。
我々日本維新の会は、内閣総理大臣主宰による社会保障国民会議の設置を提案いたします。年金問題を政争の具とせず、国民一丸となり、真摯に未来の生活の安定のための議論を国会の場で尽くすべきです。
年金問題の本質を議論せず、五年後の財政検証まで先送りにする政府に対して、その姿勢を改めるべきことを強く求め、私からの反対討論といたします。
ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 浅野哲君。
〔浅野哲君登壇〕
○浅野哲君 冒頭、本日朝の厚生労働委員会理事会で、委員長職権で質疑の終局、採決が進められたことに遺憾の意を表します。
私は、ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案及びその修正案に対し、いずれも反対の立場から討論をいたします。(拍手)
まず、政府提出原案について反対の理由を申し述べます。
年金制度は、高齢者の生活を底支えする基盤的な制度であるだけでなく、本制度を支えている現役世代にとっても、給付と負担のバランスが制度への信頼感、すなわち老後への不安あるいは期待に直結する、極めて重要かつ繊細な制度であります。
年金制度の財政検証結果を受けて、厚生労働省の年金部会では、制度の持続可能性を高め、給付と負担のバランスとその納得感を高めるための真摯な議論が重ねられてきました。これらの議論の上に、年金制度を国民から期待され、老後への不安を軽減させる制度へと見直していくことは、私たち立法府の責務であります。
しかし、自民党内での事前審査は長期に及び、本法案が国会に提出されたのは五月十六日。重要広範議案であった法案が、当初予定よりも二か月以上も遅れて国会に提出されるなど前代未聞です。また、遅れた理由も、参議院選挙へのマイナス影響を回避したい一部の自民党議員による慎重論が原因だと伝えられています。政策内容を真剣に議論していたならまだしも、選挙のために法案審議を避けようとしていたとしたら言語道断。そのような疑惑を晴らすためにも、自民党の皆様には、二度とこのような疑惑が生じないよう、法案提出期限を遵守していただくよう求めます。
我々は政府原案には反対ですが、評価できる点もあります。それは、被用者保険の賃金要件の撤廃や企業規模要件の撤廃等を通じて、労働市場に中立的かつ持続可能性の向上を図ろうとしている点です。また、在職老齢年金制度の見直しを通じた高齢労働者の働き控えの抑制策も、現場の声にかなったものと評価をしています。
しかしながら、政府原案には不足している要素が多数あることを指摘しなければなりません。
まず、基礎年金の底上げに踏み込まなかった点です。自民党の事前審査の中でマクロ経済スライドの同時終了措置が削除され、将来の基礎年金支給額の所得代替率の低下に対する有効な手だてを失う内容となっています。
次に、企業規模要件の撤廃に十年もかける内容ですが、これは余りにも長いと言わざるを得ません。この点については、次期財政検証を踏まえた再改正までの間に完遂すべきです。
また、企業規模要件を段階的に撤廃する期間中は、勤め先の規模によって被保険者になれる人となれない人が出てくることが予想されます。同様に、既設の個人事業所について当面の間は適用事業所としないとされていますが、新設の個人事業所には適用となるため、公平性には疑義が残ったままです。
さらに、遺族年金制度については、早くに配偶者を亡くした子のいない女性に対する遺族年金の支給期間が短縮される改正も盛り込まれており、これは男女差の解消という理由も示されているものの、その影響については更なる慎重な審議が求められています。
このように、政府提出原案には、具体的内容や公平性の観点から問題が多く残っており、賛成することはできません。
続いて、自民党、公明党、立憲民主党提出の修正案について反対の理由を申し述べます。
本修正案は、自民党が一旦削除したマクロ経済スライドの同時終了措置を復活させ、一部の減額影響を受ける方への配慮措置を設ける内容です。基礎年金の給付水準を中長期的に改善する部分は評価できるものですが、次回の財政検証が行われる二〇二九年までに内容を検討し、その結果に基づいて措置を講ずることとされており、十分な検討期間がある割には、修正案によって追加された検討項目は極めて限定的で不十分だと言わざるを得ません。
例えば、五月二十七日に行った厚生労働委員会の参考人質疑では、全ての参考人が、第一号被保険者期間を四十五年まで延長し、基礎年金の基盤を強化する必要性を指摘しました。これを受けて、先日の委員会で、修正案提出者に対し被保険者期間の延長を盛り込むべきと申し上げましたが、会期までの時間がないことを理由に議論は前進しませんでした。
我々としては、二〇二九年まで時間的猶予があるのであれば、なぜこの国会で成立を急ぐのか理解がしかねます。国民民主党は、臨時国会まで継続審議することも念頭に、十分な審議時間を通して法改正に取り組むべきであることを主張をいたします。
これに加え、与党と立憲民主党の修正案では明らかになっていない課題も多く存在します。例えば、基礎年金の底上げによって増大する公費負担分の財源確保策、老後不安を抱える就職氷河期世代に対する支援策、第三号被保険者制度の在り方についての検討など、責任ある制度設計の視点や時代の変化に応える抜本的な制度改正の内容を欠いています。
厚生労働委員会に私たち国民民主党が提出した修正案は、これらの内容を含んだ内容で、次回二〇二九年の財政検証まで十分な期間があることを踏まえ、より包括的な検討規定を整備しようとするものでした。財源確保策、就職氷河期世代への支援、第一号被保険者期間の延長や第三号被保険者制度の在り方の見直し、これらは近いうち検討の蓋然性が必ず高まっていくテーマであることを壇上から改めて主張させていただきます。
さらに、国民民主党は、年金制度に関わる国庫負担金の財源を安定化させるため、クローバック制度、すなわち、基礎年金受給者の前年度の所得が一般的な必要生計費を大きく上回る場合に国庫負担分の支給額を調整させていただく制度や、二〇二七年から米国でスタートするセーバーズマッチについても、我が国の年金財政の安定化や国民の老後不安解消のために検討していくべきと考えます。
最後に、今回の法改正は、五年に一度の財政検証を受けて行う重要な機会であります。重要広範議案であるにもかかわらず、参議院選挙への影響を懸念してか法案提出に二の足を踏んだ挙げ句、年金底上げという中心的な政策要素を削除した一連の経過は、自民党の政権政党としての矜持を欠いた行動と思います。大変残念に思います。
他方、立憲民主党に対しても一言申し上げます。
様々な委員会で野党の総意を、野党の総意を与党に伝える筆頭の立場を有する野党第一党である皆様が、重要広範議案の審査に当たって、他の野党との協議を横に置き、真っ先に与党との協議に突き進んだ一連の行動には強い違和感を覚えざるを得ません。そして、今朝の与党の採決提案に対し立憲が同調し、委員長職権による強行採決につながったことは大変遺憾と言わざるを得ません。
国民生活に密着した法案だからこそ、対決より解決の姿勢で、時間に追われ拙速な審議を進めるのではなく、今できることと次の財政検証までにやらなければならないこと、さらに、長期的に取り組まなければならないことを整理した法律として、きちんと、きちんと仕上げるべきです。
政府原案及び与党と立憲民主党提出の修正案については、法案の中身の不十分さはもとより、立法府として重ねるべき議論が重ねられていないことを指摘し、私の討論を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 高井崇志君。
〔高井崇志君登壇〕
○高井崇志君 れいわ新選組の高井崇志です。(拍手)
冒頭、一言申し上げます。立憲民主党、おまえもか。古代ローマのカエサルの言葉、ブルータス、おまえもかをほうふつさせる出来事が起こりました。
先週の党首討論で、立憲民主党の野田代表が、与党第一党と野党第一党で年金法案の修正協議をやりましょうと言い出したときには、腰が抜けるほど驚きました。日本維新の会と国民民主党が繰り広げてきた醜い手柄争い、与党へのすり寄り合戦に、野党第一党までが加わるのかと悲しい気持ちになりました。
やじを飛ばしておられる新人議員の皆さんは御存じないかもしれませんが、野党第一党にはとてつもなく大きな権限が与えられています。国会運営のほぼ全ては、与党と野党の第一党が交渉で決めるというルールです。強大な権限には、当然、責任も伴います。野党各党の意見をよく聞いて、それをまとめて与党と交渉するという責任です。今回、立憲民主党は、野党第一党の責任を放棄したと言わざるを得ません。
立憲民主党の修正案は、自民党内で意見が分かれ、引っ込めたものとほぼ同じ内容です。あんパンに例えるのがはやりのようなのでそれに倣えば、自民党はあんこが腐っているかもしれないからあえて入れなかったのに、立憲民主党が入れろと言ってきたので入れることにした。自民党からすれば、こんなおいしい話はありませんよ。もしあんこが腐っていても、立憲民主党のせいにできるんですから。
立憲民主党が自ら認めているとおり、この法案には幾つもの問題点があります。それを全て時間がないの一言で片づけ、基礎年金の底上げ部分だけを修正する。自らの選挙対策のために法案提出を遅らせた自民党は万死に値しますが、結果として、それをアシストしてしまった立憲民主党も同罪です。
低所得者ほど給付が下がるマクロ経済スライドは、即刻廃止すべきです。世界に類を見ない二百九十兆円もの巨額の積立金は必要ですか。厚生年金の適用拡大は必要ですが、中小企業の負担軽減策は用意していますか。倒産件数が一万件を超え、三十六か月連続で前年を上回る戦後最長の倒産ドミノが続いているのに、その対策がないまま法案だけ成立させるんですか。最低保障年金の議論はしないんですか。年金の空洞化問題は放置したままですか。
保険料で足りない分は公費で賄うべきです。与党も野党もマスコミも、何かやろうとするたびに財源示せの大合唱ですが、財源は国債で十分です。財務省やマスコミがばかの一つ覚えで債務残高対GDP比がと叫びますが、これ以外の指標は、どれを見ても日本の財政が破綻する予兆はみじんもありません。いいかげん、財源示せの罰ゲームはやめませんか。
総理は予算委員会で、日本の財政はギリシャより悪いなどと発言しましたが、とんでもない暴言です。一国の総理が自国の国債をおとしめるような発言をするなど言語道断。更迭された江藤元大臣の失言よりも、よっぽど恥ずべき暴言です。江藤氏だけではなく、石破総理も即刻辞めるべきです。
この議場の半分を超える野党の皆さん、なぜ醜い手柄争いばかりするんですか。党の支持率よりも、三十年続く不況に苦しむ、物価高に苦しむ国民のことを考えませんか。野党がまとまれば、年金を増やすことだって、消費税を減税することだってできるんですよ。衆議院を通して参議院で否決されたら、不信任案を出して解散を迫りましょうよ。年金解散、消費税解散なら、政権交代間違いなしですよ。どうしてやらないんですか。野田代表、やりましょうよ。野田代表が決断すれば、多くの国民は救われるんですよ。やりましょうよ。
そんな決断もできないなら、結党以来、一貫して消費税廃止を訴え続けているれいわ新選組が先頭に立って政権交代を実現する決意を申し上げ、反対討論を終わります。
御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) 田村貴昭君。
〔田村貴昭君登壇〕
○田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等改正案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
物価高騰が国民生活を脅かしている中で、年金生活者の暮らしは特に大きな影響を受けています。その原因は、物価が上がっても年金給付水準は引き上げないとするマクロ経済スライド制にあります。本法案の最大の問題は、このマクロ経済スライドによる年金削減を今後も数十年にわたって続けるとしていることです。
政府・与党は百年安心の年金と言い続けてきましたが、マクロ経済スライドの導入からこの二十年間で、公的年金の給付水準は実質約一割も削減され、さらに、昨年の財政検証によれば、過去三十年の経済状況が続く前提では、マクロ経済スライドによる給付調整は二〇五二年度まで継続する見込みとされています。その結果、年金給付水準は、現在から実質一五%引き下げられます。多くの年金生活者にとっては年金削減が生涯続くと言っても過言ではなく、国民の年金制度に対する不安感や不信感は増すばかりです。
マクロ経済スライドの長期化による年金給付水準の低下が大きな問題であることは、党派を超えて広く認識されているところです。しかし、その対策として、自民、立憲、公明による修正は、給付水準低下の原因であるマクロ経済スライドを直ちに止めるものではなく、早期終了の措置を講じたとしても、今後十年以上にわたって実質一〇%削減、年金給付水準が引き下げられていきます。これで果たして真に国民が安心できる年金、暮らせる年金と言えるでしょうか。
調整期間が長期化することで、現在の受給者や就職氷河期世代の一部にとっては年金の実質価値は生涯減り続け、減らされる年金が若い世代にも引き継がれることになります。このような仕組みは絶対に認めるわけにはまいりません。
日本共産党は、長引く物価高騰の中で年金生活者の暮らしを守るとともに、現役世代の大幅減額を避けるために、マクロ経済スライドを直ちに停止するための修正案を提出しました。公的年金制度の財政基盤を強化し、マクロ経済スライドを速やかに終了させるためには、厚生年金の積立金を活用し、基礎年金の早期終了の措置を講じた上で、現在年収一千万円が上限となっている厚生年金保険料の上限を医療保険並みに年収二千万円に引き上げる、短時間労働者の更なる適用拡大を行うことがどうしても必要です。
また、法案は、遺族厚生年金の給付削減、配偶者加算年金の引下げを盛り込んでいます。配偶者に先立たれた遺族や新規年金受給者の生活を不安定化、困窮化させるもので、容認できません。
この四月に、二〇二四年度の障害年金の不支給が前年度の二倍以上に急増し、約三万人になることが明らかになったと報道されています。収入の少ない障害者にとって、障害年金の可否は死活問題です。年金制度の信頼を揺るがす事態であり、事実関係をきちんと調査、公表し、是正することを求めます。
公的年金は社会保障の根幹を成す制度でありますが、今回の法改正でも、無年金、低年金の問題は解決されていません。就職氷河期世代など無年金、低年金の方が増加することが懸念されていますが、この問題の解決には最低保障年金制度の創設、導入が不可欠です。国連社会権規約委員会からも、最低年金を公的年金制度に導入することが度々勧告されています。この勧告に応えて、最低保障年金制度の導入に踏み出すべきです。
以上で討論を終わります。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて討論は終局いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。
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○議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後一時四十六分散会
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出席国務大臣
総務大臣 村上誠一郎君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
経済産業大臣 武藤 容治君
国務大臣 加藤 勝信君