衆議院

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第3号 平成28年10月21日(金曜日)

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平成二十八年十月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 秋元  司君

   理事 谷川 弥一君 理事 平井たくや君

   理事 ふくだ峰之君 理事 牧島かれん君

   理事 松本 文明君 理事 緒方林太郎君

   理事 神山 洋介君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      門  博文君    神谷  昇君

      木内  均君    國場幸之助君

      武村 展英君    中山 展宏君

      長坂 康正君    長島 忠美君

      橋本 英教君    宮川 典子君

      務台 俊介君    和田 義明君

      泉  健太君    大串 博志君

      岡田 克也君    金子 恵美君

      高井 崇志君    辻元 清美君

      角田 秀穂君    濱村  進君

      池内さおり君    島津 幸広君

      浦野 靖人君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (沖縄基地負担軽減担当) 菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (海洋政策・領土問題担当)

   (消費者及び食品安全担当)            松本  純君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済財政政策担当)   石原 伸晃君

   国務大臣

   (一億総活躍担当)

   (働き方改革担当)

   (女性活躍担当)

   (再チャレンジ担当)

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)   加藤 勝信君

   国務大臣

   (規制改革担当)

   (行政改革担当)

   (国家公務員制度担当)  山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   内閣府大臣政務官     務台 俊介君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   防衛大臣政務官      宮澤 博行君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平川  薫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       甲斐 正彰君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官)           石田 高久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡田  隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三角 育生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 田中愛智朗君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           斉藤  実君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    松本 光弘君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 堀江 宏之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 四方 敬之君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   可部 哲生君

   政府参考人

   (スポーツ庁スポーツ総括官)           平井 明成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉本 明子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           竹内 芳明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 多田 明弘君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 谷井 淳志君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     橋本 英教君

  大隈 和英君     宮川 典子君

  武部  新君     門  博文君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     武部  新君

  橋本 英教君     池田 佳隆君

  宮川 典子君     大隈 和英君

    ―――――――――――――

十月二十日

 日本軍慰安婦問題の真の解決に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

秋元委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平川薫君、内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣官房総合海洋政策本部事務局長甲斐正彰君、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官石田高久君、内閣官房内閣審議官岡田隆君、内閣官房内閣審議官三角育生君、内閣府大臣官房審議官田中愛智朗君、警察庁長官官房総括審議官斉藤実君、警察庁警備局長松本光弘君、総務省大臣官房審議官堀江宏之君、外務省大臣官房参事官四方敬之君、財務省主計局次長可部哲生君、スポーツ庁スポーツ総括官平井明成君、厚生労働省大臣官房審議官吉本明子君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、経済産業省大臣官房審議官竹内芳明君、資源エネルギー庁次長多田明弘君、防衛省地方協力局次長谷井淳志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

秋元委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

秋元委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。濱村進君。

濱村委員 おはようございます。公明党の濱村進でございます。

 本日は三十分時間をいただきました。質問をさせていただきたいと思いますが、まず、冒頭に丸川大臣にサイバーセキュリティー関連で御質問をさせていただいた後に、加藤大臣に働き方改革そしてまた再チャレンジについてお話をできればというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 まず、サイバーセキュリティー関連ということでございます。

 まず最初に申し上げたいことは、このサイバーセキュリティー対策で非常に大事なのは、大きなスポーツイベントがあります、東京オリンピック・パラリンピックが当然あるわけでございますけれども、どうやらちょっと、ちまたでは、この東京オリパラ大会に対して政府がどのように関与していくのか、責任分界がなかなかわからないというような意見も聞こえてきておりますので、多少そのあたりも踏まえてお話をできればと思います。

 まず、政府が今、財政的にさまざま、東京オリンピック・パラリンピック大会の準備あるいは会場の話で、口出しといいますか、どういう状況であるのか確認を政府としても着実にされておられるんだというふうに思っているわけですが、なぜそういうことをやるんだろうなということを考えたときに、やはり政府として財政保証をしている点が挙げられるのかなというふうに私は思ったわけでございます。

 確認をしてみました。そうしたところ、立候補ファイルの時点のときに、組織委員会がこのようなことを明確にしております。

 万々が一、大会をなかなかうまく財政的に運営することができないのであれば、補填メカニズムを適用させますよということでございます。この補填メカニズムについては、基本的にはIOCあるいは組織委員会がしっかりとこの財政について拠出をしていくというわけでございますけれども、その上で、東京都が補填することを保証するということが書かれてあります。その上で、東京都が補填し切れなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い補填するということがあります。

 当然、東京都というのは財政的にも非常に恵まれた団体でございますし、万々が一東京都が財政破綻するようなことがあった場合は、日本国政府が補填するということが筋なのであろうかというふうに思っているわけでございますので、基本的には余りそういうことは想定できないなというふうに考えている、私もそう思っているわけでございます。そういう意味においては、財政の部分についてそんなに大きく政府が関与するというと、少しそういうわけでもないのかなというふうに思うわけでございます。

 では、どういうところで関与するべきなのかといいますと、やはりサイバーセキュリティーの分野、これは非常に大事なのであろうということでございますので、その上でまず確認をさせていただきたいのが、国、政府におけるサイバーセキュリティーの取り組みと、東京都、警視庁とかがやるようなサイバーセキュリティー対策、このようなものがさまざま組み合わさってサイバーセキュリティー対策ということができるのであろうかというふうに思っているわけでございますが、その政府と東京都の責任分界点のようなもの、それぞれの役割について明確にお答えをいただければというふうに思います。

丸川国務大臣 ありがとうございます。

 システムやネットワークが国民生活や経済活動に不可欠な社会基盤として定着をしているところでございますが、そうした中で、サイバー空間の脅威が深刻化をしております。二〇二〇年東京大会を安全かつ円滑に運営するためには、国全体としてのサイバーセキュリティー対策を強化していかなければならないところから、政府としては、サイバーセキュリティ戦略の着実な実施を推進しております。

 その上で、大会におけるサイバーセキュリティーを確保するために、エネルギー、通信、交通など、大会運営に影響を与える重要なサービスを提供する事業者等において、サイバーセキュリティー上のリスクの評価及び当該評価に基づく対策の実施の促進、そして、脅威やインシデント情報を集約して関係事業者等に注意喚起や予防的措置を促す中核的体制、これをオリパラCSIRTと呼んでおりますけれども、このオリパラCSIRTの構築、運用に国として取り組んでいるところでございます。

 では、東京都においてどういうことをしているかといいますと、東京都は、交通、水道、行政サービスなどをみずから提供する側、提供する主体でございますので、都民や国民、また大会会場や大会関係者に対して、安全かつ安定的にそれらのサービスを提供する事業主体としての責任を持ってサイバーセキュリティー対策に取り組んでおられるというふうに承知をしております。

濱村委員 ありがとうございます。

 オリパラCSIRTがあるということでございますので、これは当然、今までNISCがずっと取り組んでこられたセプターカウンシルなどとしっかりと連携をされているものというふうに思いますし、先ほどおっしゃったとおり、エネルギー、通信、交通、そうした分野ごとにしっかりと体制構築をしているというわけでございます。

 一方で、都は都で、大会の事業主体であるということでございますので、その分しっかりと、水道もそうなわけでございますが、関与する方々の安全確保のためにも、しっかりとサイバーセキュリティー対策を行う、そういう分界であるということを確認できました。

 ますます大事なお役割であろうかというふうに思いますので、ラグビーワールドカップも含めて、ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 もっと本当は深めたいんですが、働き方改革の話をしたいというふうに思っておりますので、丸川大臣はこれにて結構でございますが、もしお時間があれば残っていただいても。この後も質問が続くと聞いておりますが、ここで退室していただいても結構でございます。

秋元委員長 どうぞ。

 濱村君、どうぞ続けてください。

濱村委員 続きまして加藤大臣に、働き方改革についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、この働き方改革の中で、今、さまざまテーマを掲げて議論していこうということを決めておられる。まだ、この会議自体は、これから有識者も交えて議論していくというわけでございますので、これから議論が深まっていくのであろうというふうには思うんですけれども、一つ、やはりテーマとして掲げられている中には、労働生産性を向上していくというテーマがございます。

 まず、冒頭に確認しておきたいのは、この労働生産性というものは一体どういう指標であるのかということでございます。

 OECDで言うところの労働生産性というのは、国全体の産業のGDPを合計いたしまして、その合計を就労者数、就業者数で割ったもの、これによる国全体の平均値であるというふうに理解をしております。

 一応、この後、労働生産性の話をいたしますので、今政府が想定されておられる労働生産性というのはどういう指標であり、どういう計算式であるのか、これを確認したいと思います。

加藤国務大臣 今、濱村委員のお話がありましたように、OECDでは、国全体の労働生産性を、GDPを就業者数、場合によっては就業者数掛ける労働時間で割って算出をしているというふうに承知をしております。

 政府では、労働生産性を、労働者一人または労働者一人が時間当たりに生み出す付加価値として捉えておりますけれども、利用する統計あるいは資料によっては幾つかの計算式があると承知をしております。

 例えば、実質GDPを今申し上げた雇用者数等で割る方式、あるいは名目GDPを割る方式、それから、これは国全体という場合もありますけれども、企業別、産業別等で見る場合には、企業の付加価値額をその企業の人員で割る、こういった形で算出をしておりますけれども、基本的には、最初に申し上げた、労働者一人当たりが生み出す付加価値、こういうことで労働生産性を捉えているところであります。

濱村委員 おっしゃるとおりで、GDPを、就業者、あるいはそれの労働時間の要素も交えて算出される、それが労働生産性である。たまに、企業別あるいは産業別という分析もされているようであります。

 これは主に公益財団法人の日本生産性本部などが毎年毎年しっかりと分析しているようでありますので、その分析については恐らく今後もしっかりと根拠として利用されるのであろうというふうには思うわけでございますが、そもそも、分母、分子の関係でいいますと、就労者数が減ると労働生産性が向上するということであります、分母が就労者数でありますので。それであるならば、就労者数をふやすという政策は効果が限定的なのかもしれないなというふうに思うわけでございます。

 就労者数をふやせば、そのふやした分以上にGDPの向上に寄与するということがあればいいのかもしれませんけれども、そのあたりについてどのように分析されて評価をされておられるのか、お答えをいただければと思います。

加藤国務大臣 今の御指摘は、労働生産性の算出式は、GDPを分子として、分母に例えば就業者数を置くといった場合に、分子が変わらなければおっしゃるようなことになるわけでありますけれども、問題は、いかにGDPを高めるかということにつながるんだというふうに思います。したがって、逆にGDPを高めるという観点から見ると、今の式でいえば、労働者数と労働生産性をそれぞれ上げていくということが大事だというふうに考えております。

 特に、我が国の場合は人口が減少しているということでありますから、ある意味では労働人口を維持していくということが非常に大事であります。そういった意味では、人口が減少する中で維持をしようとすれば、就業率とかそういった割合を高めていくということも当然必要であります。

 同時に、やはり、特に一人当たりの、時間当たりまで言ってもいいのかもしれませんが、生産性が上がっていかなければ給与が上がっていくということにはならないわけでありますので、そういったこともしっかりやっていく、そうしたところを具体化する、その方策が私どもは働き方改革である、こういうふうに考えております。

濱村委員 その働き方改革の理念については、非常に私も賛同いたします。

 おっしゃるとおりで、分子であるGDPが上がらないといけないということでありますので、今、就労人口が減っているというのがあるので、今の現状ではGDPを上げるためにはやはり就労者を確保しなければいけないということであろうかと思いますが、実はそれが目的ではないということだと思います。

 もちろん、IoTあるいはAI、そしてロボット、こういうものを使いながら、就労者数は一定のままGDPを上げられるのであるならば、これはこれで非常に大事な視点であろうかというふうに思いますが、当然、今、既に現状働いておられる方がおられるわけでございます。IoTとかロボットとかAIに代替していくといっても、今雇用されておられる方々がしっかりと雇用継続していける環境を整えていく必要もあるんだろう。そういう意味では、緩やかにここは変えていかなければいけないんじゃないかというふうに私は思っております。

 雇用をしっかりと、これは労働移動というような言い方もいたしますけれども、労働移動していくということであるならば、次に大事になっていきますのが、雇用吸収力がある産業というのはどこなんだろうかという話であろうかと思います。これは当然、働き方改革の中でも議論されるテーマとなっているわけでございますが、今現状で、雇用吸収力が高い産業というものはどこなのか、どこと想定されておられるのか、お答えできる限りでお願いします。

加藤国務大臣 雇用吸収力が高い産業、基本的には今後の成長を牽引していく、こういう産業であるというふうにも考えております。

 具体的には、例えば、日本再興戦略二〇一六に、新たな有望成長市場ということで掲げておりますが、健康、環境、エネルギー、ロボットなどに係る分野を考えているところであります。

 いずれにしても、自分のライフスタイルに合わせて多様な働き方を自由に選択できる、こういう社会の実現に向けて、雇用吸収力の高い産業へ転職あるいは再就職したい、そういった方をしっかり支援していく、あるいは、そのためには転職、就職に関する情報の提供インフラを構築していく。

 それからもう一つは、先ほどお話がありましたように、AIとかIoTとか、どんどん変わっていきますから、それについていくためにも、やはり人材育成あるいは人材投資、こういったことをしっかりしていく、こういった観点も、この働き方改革実現会議で議論したいと思っています。

濱村委員 今、最後におっしゃっていただいた人材に対する投資というのは、恐らく、新しい、これからの時代に成長力がある、そういった産業に適応できるように人材育成をしていくということであろうかというふうに思います。

 私、先ほどの労働生産性の話にまたちょっと戻っていくんですけれども、雇用吸収力が高いといっても、人を投入して時間をかけて成果物をつくっていくというような非効率な仕事をどんどんしていく、そういうことでは決してないというふうに思っているわけでございまして、労働生産性の観点からも、これは先ほど言ったとおり、時間当たりの労働生産性を向上させるということもしっかりと意識しなければいけないわけでございます。

 そうした観点から、労働生産性を上げていくということでいえば、時間当たり労働生産性の向上が非常に大事になってくるのであろうと思います。

 ちょっと質問を飛ばしますけれども、例えば、その中で、長時間労働が慣例的になっているようなIT産業、このIT産業における長時間労働の解消については今後どのような議論をしていかないといけないとお考えであるのか、お答えいただければと思います。

加藤国務大臣 委員も御指摘されておりますけれども、IT産業の労働時間、これはこれからの産業という割には非常に比較的長いということでありまして、平成二十五年の厚労省調査によりますと、IT産業などの通信業における一カ月の時間外労働が月四十五時間を超えている者がいる事業所割合は一二・六と、全事業平均の九・〇に比べて高くなっています。

 背景としては、IT産業では、重層下請構造のもと、急な仕様変更や曖昧な発注から生じるやり直しなど、取引慣行上の問題なども指摘をされております。これらを踏まえて、関係省庁、業界団体が連携いたしまして、平成二十八年から新たに検討委員会を設置いたしまして、実態の調査等の事業も実施をしているというところであります。

濱村委員 今、月四十五時間、大体それが全産業平均九・〇に対して一二・六%だということで、非常に、私も若干IT産業に身を置いていた者としては、もうちょっと働いていたかもなというぐらいの感覚です。

 実は、波があるんですね。IT産業とはいえ、忙しい時期、あるいは比較的時間に余裕がある時期、それはいろいろあるんでしょうが、こうしたものは、これからもそこまでならすことはなかなか難しいのかなというふうには思いますが、実は、今ほど大臣からおっしゃっていただいたとおりで、重層下請構造がある。この下請構造がある限り、元請さんが残業時間が減ってきても、下請さんが残業が多いという状況が続いていると、これはよくないんであろうというふうに思います。そしてまた、たび重なる仕様変更であったりとか、そもそも、どれだけ効率的に働いたとしても、結局、残念ながらまたやり直しが発生する。それは、もちろん労働時間も長くなってしまうということでありますので、システム開発のあり方自体を見直していく必要もあるんであろうというふうに思います。

 実は、この産業の中で、とある会社がすばらしい取り組みをやっていまして、一五年七月ぐらいからやっておられるんですけれども、この会社はもともと普通に残業代を支払っていた会社ですが、裁量労働制を適用いたしまして、基幹職の方には三十四時間、それ以外には二十時間の残業手当相当を初めから支給しますということをやり始めました。

 そうすることによって、多少それで労働負荷をふやした方が得なんじゃないかというような議論が生まれそうなものなんですが、真逆の効果が生まれまして、部門ごとの残業時間削減の達成度合いに応じて、賞与という形で上積みをしました。ちょっとしたインセンティブを与えることによって、社員の方々が効率的に仕事をするという習慣が身についてきた。結果的に、残業がふえないという状況を生み出すことができて、生産性の低い長時間労働は意味がないというようなDNAがもう生まれ始めているということでございます。

 私は、これはすばらしいことだなというふうに思うわけでございますけれども、実は、そんな中でも生産性というか残業がなかなか減らない部門があったらしいんです。それは何でなのかと確認したところ、システム開発の手順が悪かったということでございました。

 そういう意味でいうと、このIT産業においては、労働生産性を高めるという議論は、システム開発の手順にまで踏み込んで議論をしていかなければいけないのかなというふうにも思いましたので、ぜひともそこまで踏み込んでいただいて御議論をしていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 続いて、もう一つテーマとして挙げられておりますが、環境整備でございます。

 女性、若者が活躍しやすい環境整備について議論するというわけでございますが、兼業、副業を促進することについてはどのようにお考えなのか、確認したいと思います。

加藤国務大臣 兼業、副業に関しては、今、企業の就業規則等で認めている企業の割合は非常に少ないというふうに認識をしております。また、その上で、私も先般、副業、兼業を認めるようになった企業に行ってお話を伺ったところ、これも、会社側がではなくて、従業員の方々の発意によってこういう方向に入っているわけでありますけれども、その原点は、やはり自分たちが企業人として成長していく、そのためにはいろいろな経験を積むということが非常に大事だ、その一つの手法として副業、兼業ということをテーマに挙げて、具体的に進めているということもあります。

 それから、高齢化社会でありますから、これから第二の人生ということも当然出てくる。そういったことを考えたときに、その準備にもなるということがあります。

 それから、これは海外の事例でよく見られるんですけれども、海外でベンチャー企業で成功しているという方は、前の職をやめてスタートするというよりは、その職に残りながらベンチャーをスタートし、そして、ある程度企業がうまく回り始めてから具体的に副業を主業にするというか、そういった形で成功しているという事例もあります。

 そういったメリットがある一方で、兼業、副業を行うということになると長時間労働になるんじゃないかということも懸念されるわけでありまして、その場合にも、そういった長時間労働、あるいはそれによる働いている方の健康の障害、こういったことにも十分配慮する必要があると思っております。

 いずれにしても、そうした両方の問題意識を念頭に置きながら、この副業、兼業のあり方についても議論していきたいと思っています。

濱村委員 私は、オープンイノベーションを推進していくことがGDPに寄与すると思っておるんですね。そういう観点からしても、兼業、副業を進めながら、自分の本業はこれなんだ、しかしながら、この本業を軸としながらその会社からスピンアウトしていくとか、そういうことを促進していかなければいけないのであろうということを考えたときに、やはり働き方という意味においてもこれは進めていくべきだというふうに思っております。

 そうした中でいいますと、本業が定まっているという方であるならば恐らくわかりやすいんですが、これは働き方としては非常に流動性が高まるわけでございます。流動性が高まってきますと、終身雇用制なんかも崩れるかもしれません。そうしたときでも安心できる社会保障の環境をつくっていく必要があるんだろうというふうに思うわけでございますが、複数企業に所属する方がどのように厚生年金をもらえるのか、あるいは健康保険組合に所属するのか、こうしたところを現状の状況を踏まえた上で確認したいと思います。

古屋副大臣 お答えいたします。

 兼業や副業を行っている方に対する厚生年金や健康保険といった被用者保険の適用につきましては、個々の事業所における就業状況を別々に要件に当てはめて、それぞれ判断を行うこととなっております。

 この十月から、短時間労働者にも被用者保険を適用すべく要件が緩和をされ、従来は労働時間が通常の労働者の四分の三以上働いている場合に適用であったものが、現在は、従業員五百一人以上の大企業において、労働時間が週二十時間以上でその他の要件も満たせば被用者保険が適用されることとなりました。この適用拡大により、兼業や副業を行っている方は以前よりも被用者保険に加入しやすくなったと考えております。

 現在、中小企業で働く短時間労働者にも被用者保険の加入の道を開く法案を提出するとともに、今後もさらなる適用拡大について検討することとしており、その検討の過程の中で、おっしゃいました兼業や副業を行っている方への被用者保険適用のあり方も検討課題の一つと考えているところでございます。

濱村委員 この十月から適用要件が緩和されて、さらに適用される方々がふえたと。働きやすい環境を整備していくということは進んでいっているというわけでございますので、これも、兼業、副業の方も含めた議論をぜひ今後もしっかり進めていただきたいというふうに思うわけでございます。

 それで、最後に、再チャレンジについてお伺いしたいと思います。

 基本的には、一般的に、若者とか女性の方々が一度失敗してもとか、そういう文脈の中で再チャレンジということは議論されているわけでございますが、私はちょっと絞り込んで、アスリートについてお話をしたいと思います。

 スポーツ選手、アスリートといっても、いろいろいらっしゃいます。それはもちろん、それだけで飯を食えるというプロの選手もいれば、実業団として所属しながら、あるいは、本業は全然違う、ライスワークはしっかり持ちながら、ライフワークとしてスポーツ選手としてやっているというような方もおられるわけでございまして、これはさまざまあります。

 しかしながら、引退後のことを考えたときに、しっかりとこういう人たちが活躍できるところというのはあるんじゃないかなというふうに私は思っておりまして、今、実際、現状でも、さまざまなプロスポーツでも取り組みが進んでいるわけでございます。

 学び直しを促進するために大学に入学させるとか、就職できる企業を見つけてきて就職活動をさせるとか、そういうことをやっているというのは聞いておりますけれども、今、どのような議論が積み重なってきて、政府としてどのような取り組みを行うのか、確認したいと思います。

平井政府参考人 先生御指摘のとおり、アスリートの引退後につきましては、例えばプロ野球機構が若手選手に対して調査しましたところ、引退後に不安を感じると答えた選手が七二%、また、JOCが強化指定選手に対して行った調査でも、約半数、四七・四%の選手が引退後の就職先について不安を抱えているという状況がございました。

 こういった状況を踏まえまして、スポーツ庁としましては、選手としてのキャリアと引退後を含む人生設計全体を考える、いわゆるデュアルキャリアという考えのもとで、アスリートのキャリア形成を支援し強化することが重要だと考えてございます。

 現在、アスリートを対象としたキャリア形成に係る研修や企業等へのインターンシップを支援するほか、キャリアアドバイザーの育成などに取り組んでいるところでございます。

 また、スポーツ振興くじの財源を活用しまして、JOCにおいても、キャリアカウンセリングや、アスリートと企業との就職のマッチング、通称アスナビと呼んでおりますけれども、などの取り組みを実施するほか、また、選手引退後のスポーツ指導者としてのスキルを向上するため、海外の大学等での研修事業等も実施しているところでございます。

 このような取り組みを進めることによりまして、アスリートの引退後のキャリア形成が円滑に行われるよう支援してまいりたいと思ってございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 もう時間が来ましたので終わりますけれども、スポーツ界においてはデータ化が進んでいるんですね。データ化が進んでいるんですが、例えば、GPSをしょって、どの選手がどれだけ動いた、あるいはどれだけジャンプしたとかダッシュしたとかというのはすごくつぶさにわかります。ただ、それを分析できるデータアナリストの育成というのは進んでおりません。

 選手で多少そういうところが好きな方については、その後のキャリアとしてデータアナリスト、あるいは、もう一つ、スカウトとか代理人といった分野も非常に可能性がある分野であろうかというふうに思います。ぜひとも、適材適所といいますか、こういう人にはこういう道をということも絞り込んだ議論も活発に行っていただけることを望みまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

秋元委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 本日は一時間、時間をいただいておりまして、よろしくお願いいたします。温和、温厚、円満を旨としてやっておりますので、その方針に基づいてやっていきたいと思います。

 そして、きょうは我が町選出の山本大臣を目の前に質問できるということを本当に光栄に思います。よろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、情報公開というか、公文書のあり方ということについて、最初に質問させていただきたいと思います。

 公文書管理法という法律がありますが、この第四条のところに、行政機関の職員は、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ、または検証することができるよう文書を作成しなければならないということになっております。

 まず、公文書担当の山本大臣にお伺いいたしたいと思います。この公文書管理法第四条の言わんとするところ、その精神についてお答えいただければと思います。

山本(幸)国務大臣 公文書管理法において、行政文書というのは、「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。」とされておりまして、この定義によりまして公文書管理法の行政文書に該当するか否かが判断されることになります。

 したがいまして、個々の文書が行政文書に該当するか否かについては、この定義に基づいて、当該文書の作成または取得の状況、利用の状況、保存または廃棄の状況などを総合的に考慮して実質的に判断されるものであり、各行政機関において適切に判断されるものであります。

緒方委員 ちょっと、答弁が少し先の方に行ってしまいました。

 公文書管理法第四条で、文書を作成しなければならないということが決められておりますが、その言わんとするところ、その精神についてお答えいただければと思います。

山本(幸)国務大臣 失礼しました。

 公文書管理法の第四条においては、行政機関の職員は、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程及び実績を合理的に跡づけ、または検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成することとされております。

 具体的にどのような文書を行政文書として作成すべきかについては、公文書管理法や各行政機関が定める文書管理規則の規定に基づき、当該行政機関における意思決定に至る過程や実績を合理的に跡づけ、検証することができるようにするため必要であるかどうかを、各行政機関において、個々の状況に応じて適切に判断することとなります。

緒方委員 ありがとうございます。

 それで、齋藤副大臣にお伺いいたしたいと思うわけでありますが、SBS米の報告書について、予算委員会やTPP特別委員会でも議論になりました。

 まず行政機関の職員、農林水産省の職員がメモをとり、そしてそれを集約する形で最後の報告書ができ上がったということで、その行政機関の職員がそれぞれとったメモについては、そもそも行政文書ですらない、そういう話でありましたが、農林水産省文書管理規則、今、山本大臣の方からもありましたが、各省の文書管理規則ということで、おおむねこういうことが書いてあります。

 「職員は、」「農林水産省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに農林水産省の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、文書を作成しなければならない。」というふうになっております。

 各農林水産省の職員が、SBS米の報告書ということでいうと、さまざまな業者から聞き取ったそのメモ、手書きだと言っておりますが、そういうものについて、行政文書として作成をしなかったと。私が聞いたところでは、行政文書としてそもそも不存在であると。不開示ではなくて、開示できないところがあるということではなくて、そもそも行政文書として存在をしていないというふうに言っているんですね。

 そうすると、この文書管理規則との関係でいうと、先ほど言った文書管理規則、おおむね三つのパーツに分かれていると思うんですけれども、まず一つ目が、農林水産省における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに農林水産省の事務及び事業の実績であること、そして、それを合理的に跡づけ、または検証することができるようという規定があって、そして、処理に係る事案が軽微なものである場合を除きという、この三つに分かれているんです。これのどれかに当てはまらないから、だから農林水産省として文書を作成しなかった、メモを行政文書として起こさなかったということだと思うんですね。

 そうすると、では、農林水産省文書管理規則第九条との関係で、そのメモを作成しなかったのは、何に当てはまらないから、だから文書でないのだということだと思っておりますか、齋藤副大臣。

齋藤副大臣 まず、この個人メモなんですが、電話あるいは面談で対象の事業者からお話を伺って、その場で、例えば電話をしながら書き取った個人の備忘録、そういう認識を我々はいたしておりますので、個人が忘れないようにとった手書きのメモみたいなもの、これが行政文書に該当するという判断はしていないということでございます。

緒方委員 もう一度、農林水産省文書管理規則との関係でいいますと、管理規則で、文書を作成しなければならない、三つのパーツに、エレメンツに分かれたその結果として文書を作成しなければならないとなっているわけで、となると、意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績でないということなのか、合理的に跡づけ、または検証することが必要とされないということなのか、それか、処理に係る事案が軽微であるというふうに判断したということなのか、どれかのはずなんです。

 どれですか、副大臣。

齋藤副大臣 繰り返しますけれども、このメモは個人で備忘録のためにとったものでありますので、これを個人として利用している段階にとどまる限りは、行政文書には該当しないと判断しております。

緒方委員 その説明はわかりました。

 その説明はわかったんですが、文書管理規則との関係では、意思決定に至る過程並びに事務及び事業の実績に、そのとったメモがそもそも当たらない、そういうことなのか。そうではなくて、至る過程並びに事務及び事業の実績ではあるんだけれども、合理的に跡づけ、または検証することが必要ないと思っているということなのか。そうでなければ、処理に係る事案が軽微なものであるというふうに判断しているか。この三つのうちのどれかでなきゃおかしいわけですよね。

 それが何であるのかということを、まさに農林水産省の文書管理規則との関係で聞いております、副大臣。

齋藤副大臣 繰り返しになりますけれども、個人として利用する段階にとどまっている以上、行政文書に当然該当していないという判断をしております。

緒方委員 お答えがなかったというふうに受けとめたいと思います。

 今度は行政文書の定義ということでありますが、職務上作成し、または取得した文書であり、そして、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして当該行政機関が保有しているものということであります。

 山本大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 特に、当該行政機関の職員が組織的に用いるものという、その組織性というのはいかなることを意味するのか、山本大臣。

山本(幸)国務大臣 個別の文書は、当該行政機関の職員が組織的に用いている場合に行政文書であると言えるものでございます。

 個別の文書がどのような状態にあれば組織的に用いたものと言えるかについては、職員個人の便宜のためにのみ作成または取得するものかどうかといった文書の作成または取得の状況、あるいは他の職員もその職務上利用しているかどうかといった当該文書の利用の状況、あるいは専ら当該職員で保存または廃棄の判断ができる性質の文書であるかどうかなどを総合的に考慮して実質的な判断を行うものであり、この点について各行政機関に対して周知徹底を図ってきたところでございます。

 各行政機関においては、上記の判断の基準を踏まえて、適切に判断いただいているものと考えております。

緒方委員 何となくわかったような、わからなかったような気がするんですが。

 いずれにせよ、公文書管理法の規定では、三つのパーツに、これも分かれます。行政機関の職員が職務上作成し、または取得した文書、これがまず一つ目。その次が、当該行政機関の職員が組織的に用いるものということが二つ目。そして三つ目が、当該行政機関が保有しているもの。この三つのパーツに分かれています。

 齋藤副大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 農林水産省の職員の方が手書きでいろいろメモをとられたということであります。手書きであるかどうかということは行政文書の是非に影響しないということだと思いますが、そのメモが行政文書に当たらないということは、この職務上作成し、または取得した文書でないということなのか、それとも当該行政機関の職員が組織的に用いるものでないということなのか、それとも当該行政機関が保有していないということなのか。いずれでございますでしょうか。

齋藤副大臣 このメモは、聞き取って自分でその要点、あるいは略語で書いたり、いろいろ、急いで書いていますから、そういうメモでありますので、行政文書以前の、個人が自分の備忘のためにとったメモというふうに理解をいたしております。

緒方委員 なので、どれですかということをお伺いしておりまして、職務上作成し、または取得した文書でないということなのか、組織的に用いるものでないということなのか、そもそも保有していないということなのか。この三つのエレメンツに分けたときに、どれに該当しますかということであります。

 法令に基づいて聞いておりますので、法令に基づいた御答弁をいただければと思います、副大臣。

齋藤副大臣 三つ目の、保有しているかしていないかというのは、個人が保有しているので、組織として保有しているわけではありません。

 それから、一つ目、二つ目の問題につきましては、これも行政手続に入る前の、これからシェアする前の個人的な備忘録と理解しております。

緒方委員 ただ、そのメモに基づいて、それを集約する形で、結構立派な報告書ができ上がっているわけですよね。個人メモを集約したら行政文書になりましたということで、そのベースとなるところの文書については、それは行政文書ではありませんというふうに言うことが本当に可能なのかなというふうに思うんですよね。その一個一個の、単なる書き取りではなくて、そこには貴重なデータが入っていて、そのデータを集約する結果としてSBS米の報告書ができ上がっているわけです。

 今の理屈からいうと、行政文書との観点でいうと、何もないところから、それを集約したら行政文書ができました、そういう理屈になるわけですね。本当にこの理屈が可能なのであれば、私もお役所にいたのでよくわかるんですけれども、何でもかんでも個人メモだということにして、個人メモファイルがもうどんどんふえていくわけですよ。緒方個人メモ、一、二、三、四、五みたいなファイルができ上がっていって、それが全て行政文書でないということになるときに、これは情報公開法とか、もっと言うと公文書管理法との関係で非常に問題なんじゃないかというふうに思うわけですが、これは、では、まず齋藤副大臣。

齋藤副大臣 繰り返しますけれども、この電話で聞き取ったメモというのは略語で書いてあったり、私も、例えばメモをとるときは、農業というのをNGと書いているんですよね。そうやってとったりしている個人的な備忘録であります。ただ、これを次のステップでどうシェアしていくかという段階になったら、また新たに行政文書かどうかの判断をしていかなくちゃいけないと思いますけれども。

 緒方先生も外務省時代にいろいろなメモをとられたと思いますけれども、それを全部、行政文書として認識していらしたかどうか、私はわかりませんが、本件はあくまでも備忘録で、次の作業に備えての個人的なメモだと理解をしております。

緒方委員 決して納得するわけではありませんが、次の質問に移っていきたいと思います。

 TPPの情報公開ということについて、これは石原大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 よく安倍総理であったり石原大臣が国会で答弁するのが、TPPの結果については全て公開しているんだ、交渉経緯など公開するものではない、そういった感じの答弁をしておられますが、これは石原大臣、そのとおりでよろしいですか。

石原国務大臣 委員も、この問題について長くフォローされておりますので。

 各国が最終合意をする以前につきましても、実はA4で五百ページほどの情報を提供させていただいております。しかし、機微に触れる各国の利害に関するようなやりとりについては公表していない、こういう整理でございまして、最終合意について四千ページにわたりまして公表させていただいております。

 使い勝手についても、自分の見たいものがすぐ出てこない、そういう意見を地方の方々からもいただいておりますので、その都度、使用しやすいように整理をさせていただいておりますし、当委員会を含め、TPP特別委員会の皆様にも、千七百ページ、A4版でございますけれども、そういう形で情報を提供させていただいているというふうに御理解をいただければと思います。

緒方委員 私は、正直、結果を全て公開している、結果の条文がそこにあるから、それを見て判断してくれ、そういうふうに言われるときに、若干違和感を持つんですね。

 私、外務省国際法局条約課にいたときに、一番の基本となるのがウィーン条約法条約というものであります。ウィーン条約法条約というのは、条約をつくるときの基礎となる条約でありまして、国際法条約をつくるときの基礎的なルールが書いてあるわけでありますが、そのウィーン条約法条約の第三十二条に何と書いてあるかというと、条約を解釈するときに、解釈の補足的手段、特に条約の準備作業及び条約の締結の際の事情に依拠することができるということになっております。

 つまり、交渉経緯も含めて物事は解釈するんだということがウィーン条約法条約に書いてあって、それとの関係をいつも念頭に置くときに、ちょっと何か、結果が全てだから、結果の文書だけ見てくれればそれでいいんだというのはすごい違和感があるわけでありますが、これは、外務省から武井政務官が来ておられますので、御答弁いただければと思います。

武井大臣政務官 お答えいたします。

 ウィーン条約法条約では、条約の解釈の原則といたしまして、まず、この三十一条、一つ前の条文ですが、これにおきまして条約文を解釈すると規定をいたしておるところでございます。

 その上で、この第三十二条でございますが、条約文の解釈によっては意味が不明確となる等の場合においては、あくまでも解釈の補足的な手段として、条約の準備作業及び条約締結の際の事情に依拠することができるというものであると規定をしているところでございます。

 そもそも、この規定でございますが、条約の解釈をめぐって、主に関係国の間で不明な点がある場合に、解釈の判断の基準として用いることが想定されているものであります。また、条約法条約の規定上、交渉経緯はあくまで解釈の補足的な手段という位置づけでございまして、条約は条約文に則して解釈をするのが基本であるというふうに解されておるところでございます。

 さらに、条約法条約では、条約の準備作業及び条約の締結の際の事情を開示するということを求めているものではございません。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、条文の内容を正しく理解していただくのに十分な内容の情報は開示していると考えておるところでございます。

 以上でございます。

緒方委員 よく、国際交渉で経緯なんて明らかにすべきでないというような話がありますが、特に通商問題で、例えば二国間で交渉しているとき、二国間のEPAとかFTAであれば、最後はお互いに話して決めればいいわけで、争い事があるときでも、もちろん紛争解決手段に訴えることもできますけれども、お互いに折り合えればいいわけですが、このTPPというのは多国間でやっているわけでありまして、しかも、いろいろな文化の違う国がたくさん入ってきている。そうすると、条約の一つ一つの解釈が非常に割れることがある。まさにそういうときのためにこのウィーン条約法条約のような規定があって、そういう多国間の協定のときと二国間のときというのは結構事情が異なると思うんですね。だからこそ、条約の準備作業及び条約の締結の際の事情に依拠することができ、それによって解釈を補足的に補おうということだと私は思うんですね。

 である以上、TPPみたいなものについては、一定程度の条約の準備作業や条約の締結の際の事情が明らかにならないと、いざ紛争が起こったときに解釈をするのが難しいのではないかというふうに思うわけですが、石原大臣。

石原国務大臣 先ほども御答弁をさせていただきましたとおり、大筋合意の前段としても、A4判五百ページにわたりまして、でき得る御説明はさせていただいておりまして、委員の御懸念、具体的に出せるもの出せないものということも、当委員会あるいはTPP委員会で御議論をしていただいた答弁のとおりでございます。

 そこには何も変わりはございませんが、でき得るものは出させていただいているというふうに御理解をいただきたいと思います。

緒方委員 そんなにたくさん開示されていたかなと思うわけでありますが、ただ、その中には、交渉の準備作業とか条約の締結の際の事情というものに当たるものはほとんどなかったというふうに記憶をいたしております。

 例えば、ほかの通商交渉、例えばガットとか、今でいうとWTOですね、WTO協定をそもそもつくるとき、今、通商交渉の基礎となっているWTO協定をつくるときの経緯については、かなりのものが開示をされています。例えば、交渉の過程でこういう提案が出てきました、そしてそれに基づいてこういう合意がありました、それが全部集約して今WTO協定になっているとか、かなり公式な文書として明らかになっています。そして、今、WTOドーハ・ラウンド交渉においても、日本が出している提案とかそういったものは、全部WTOの公式文書として出ております。

 そういう、この提案があって、これがこう変わってこうなったから、この最後の規定は、この経緯に鑑みればこういうふうに解釈するんだということが、例えば今のWTOドーハ・ラウンド交渉では検証可能なわけですね。

 それとの見合いで見たときに、TPPが、条約の準備作業及び条約締結の際の事情が一切公開されていないこととの間で、段違いの差があるんですね。

 WTOとTPPの違いは何だと思いますか、石原大臣。

石原国務大臣 情報開示ということについて言うならば、今委員が御指摘されましたWTOのドーハ・ラウンドにおけます情報開示は、各国が同意をしたものについて公開されているというふうに解しているところでございます。

緒方委員 余り答えになっていないような気がしますが。

 日本がどういう提案をして、各国いろいろな提案をした上で、最後、集約していって、それが最終的に条約の解釈の補足的な手段になるというふうになっているわけです。

 これが、今回のように、そういった準備作業とかについて何も開示されないときに、もしかしたら政府としてはいろいろ情報を当然お持ちだと思いますけれども、我々からすると、条約の解釈、これはどう解釈するんだろうなというのが非常に難しいときに、それを自分たちで補足していくための手段が全くないということでありますが、これで構わないということですか、石原大臣。

石原国務大臣 今、緒方委員が武井政務官とお話をされましたウィーン条約法条約をめぐっての議論というものは、緒方委員と岸田外務大臣の間で繰り広げられたことを私は記憶しております。

 そんな中で、私の方からももう既に御答弁をさせていただいたかと思いますが、いわゆる十二カ国、我が国が参加表明する以前に、いわゆる保秘契約というものが十二カ国で結ばれております。

 そして、交渉の過程について申させていただくならば、日本国を除きます十一カ国の議会から、今、緒方委員のような、経過の説明あるいは説明に足りない資料の請求というものが議会から政府に対してなされているという事実は承知していないということもぜひ御理解いただきたいと思います。

緒方委員 余り納得的なものはなかったような気がいたしますが、この後は、TPPの特別委員会もまたいつか開かれるようになると思いますので、そのときに、私は委員ではありませんけれども、チャンスがあればこの議論はさせていただきたいというふうに思います。

 ここで、石原大臣、山本大臣そして齋藤副大臣、結構でございます。ありがとうございます。武井政務官も、もう大丈夫であります。

 続きまして、全くテーマの違うものを取り上げさせていただければと思います。

 きょうは、松本海洋政策担当相兼国家公安委員長にお越しをいただいております。基本的に海洋政策担当相としてきょうは質問をさせていただきたいと思いますが、冒頭一つだけ、国家公安委員長に対しまして質問をさせていただきたいと思います。

 既に報じられておりますが、米軍のヘリパッド建設反対派に対しまして、大阪府警の機動隊員の方々が、口にするのもはばかられる言葉でありますけれども、土人という言葉を使ったという報道がありました。私も、ビデオも見ました。

 この件について、私、特段のコメントを加えませんので、国家公安委員長としてどうお思いか、御答弁いただければと思います。

松本国務大臣 今般の大阪府警察から沖縄県警察に派遣された機動隊員の発言は不適切であり、極めて遺憾と受けとめております。今後、このような事案をなくし、適切な警備活動を行っていくよう警察を指導してまいりたいと存じます。

 なお、本件の事案を受けまして、沖縄県警察において、当該隊員及びその上司に対し口頭で厳重に注意を行い、既に派遣元であります大阪府警察に帰任させたものと承知をしております。今後、大阪府警察において、速やかに事実の確認の上、厳正に対処するものと受けとめております。

緒方委員 大臣のコメントを、そのまま承りたいというふうに思います。

 それでは、ここでシャポーをかえまして、海洋政策担当相としてお伺いをさせていただきたいと思います。

 ことしの夏、中国の艦船が口永良部島、種子島と口之島の間にある海峡を通っていって、そして、そのときに日本から抗議をしたら、いやいや、あそこは国連海洋法条約上の国際海峡だ、自由な航行が約束されているじゃないか、だから何の問題もないんだという反論が中国から返ってきました。私は極めて遺憾だというふうに思っております。

 ただ、その一方で、そこの口永良部島や種子島と口之島、正確に言うと、口之島からちょっと行ったところに、日本の領土であります平瀬と言われる場所がありまして、そこと口永良部島、種子島との間の海峡ということになるわけでありますが、この海峡は、国連海洋法条約上の国際海峡に当たるとお考えでしょうか。これは、中国がそういうふうに主張しているわけです。違う場合、なぜであるかということについて、海洋政策担当相、御答弁いただければと思います。

松本国務大臣 中国政府がトカラ海峡について、国際航行に使用されている海峡に該当し、通過通航が認められると主張しているということは承知をしているところでございますが、このトカラ海峡は、国連海洋法条約上の国際航行に使用されている海峡には該当しないと考えられることから、中国独自の主張は受け入れられないというように受けとめております。

 そして、中国政府に対しても、外交ルートを通じまして、我が国の立場を申し入れているところでございます。

緒方委員 国際航行に使用されている海峡ではない、そういう答弁でありましたが、では、これは事務方にお伺いをいたしたいと思います。

 いかなる根拠を持って国際航行に使用されていないと、その具体的なデータも含めて、もしございましたら答弁いただければと思います。

甲斐政府参考人 お答えいたします。

 我が国として、この海峡が国際海峡として使用されているかどうかにつきましては、いろいろな角度から考える必要があると思っていますが、一番大事なのは使用実態ということであると思います。

 現在のこのトカラ列島につきましては、大体、年間、二〇一五年に百五十一隻ぐらい、一日に〇・四隻ぐらい。他方で、大隅海峡という国際海峡がありますが、ここは大体三千四百二十九隻、これは二〇一五年のデータベースですが、一日平均九・四隻程度ということであります。

 私どもとしては、やはりこういう使用実態も含めて、ここは国際海峡として使用されている海峡ではないというふうに判断をさせていただいております。

緒方委員 今、データで、結構説得的だったなという気がいたします。

 では、日本に、国際航行に使用されている海峡、略して国際海峡でありますけれども、日本の領海の中に国際航行に使用されている海峡というのはございますでしょうか、大臣。

松本国務大臣 我が国では、国際航行に使用されている海峡は、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡が該当すると認識をしております。

緒方委員 そうなんですね。国際海峡と言われるものがその五つなんです。宗谷海峡、津軽、そして対馬の西東、そして大隅海峡。簡単に言いますと、大体、両方から十二海里ずつ主張すると公海部分が残らない、そういう海峡でございます。

 ただし、この五海峡については、先ほど言いました自由な航行や、本来、国際海峡であれば、通過通航制度といいまして、領海を通るときよりももっと自由度の高い通過通航権というものが認められるということになっておりますが、この五海峡においてこの通過通航制度を適用されておられますでしょうか、大臣。

松本国務大臣 この五海峡でございますが、国際交通の要衝であるということでございますので、自由な航行を確保するために、昭和五十二年の領海及び接続水域に関する法律の制定時に特定海域に指定をして、領海の幅を三海里という位置づけにしているところでございます。

 これによりまして、これらの海峡内は、国連の海洋法条約第三十六条の、航行上、水路上の特性において同様に便利な公海または排他的経済水域の航路が存在することになるため、通過通航に関する制度を含め、国際航行に使用されている海峡に関する同条約の第三部の規定は適用されないというような受けとめになっております。

緒方委員 今、聞いておられる方は、少し答弁が専門的だったので難しかったと思いますが、何かというと、本来、十二海里、十二海里を主張すれば全部埋まってしまっているところを、日本の領海というのは基本的に十二海里を主張するんですけれども、この五海峡については三海里しか主張せずに、その三海里を主張していることで残りの部分を公海としてあけていて、自由に通っていいですよということになっているんです。

 そこは、まさに、津軽海峡であっても、宗谷海峡、大隅海峡、対馬の西、東、全部そうですけれども、簡単に言うと、太平洋のど真ん中の公海部分と法的なステータスとしては全く変わらない部分をあけているということなんです。

 これは余り知られていないんですけれども、昭和五十二年から、当分の間こういう制度にしますということで、昭和五十二年ですので一九七七年、もう四十年続いているんですね。

 四十年間そういう状態が続いているということは、私はそろそろ考え直した方がいいんじゃないかなと。日本が本来主権を主張できるところを、日本の自主的な判断によって狭めているわけですね。これというのは、主権意識の高い方はこの中にもたくさんおられると思いますけれども、ぜひ知っていただきたいし、この件は非常に問題だと思う。

 その中でも私が問題だと思うのが、外国と面している海峡。これは、対馬の西水道が韓国と面しています。そして宗谷海峡がロシアと面しています。

 実は、対馬の西水道については、日本が三海里にセットバックしているのと同様に、韓国も三海里でセットバックしています。お互いが三海里ずつで主張をとめていることによって、公の部分があいている。何となく、お互いそれだからいいかなと言ってはいけないんですけれども、何となくそういう気になるんです。

 ただ、宗谷海峡は違うんですね。ロシアはどこまで主張しているかというと、ロシアはそんな謙虚なことを言わずに、ばしんと中間線まで自国の領海を主張しています。そして、日本だけが三海里を主張しています。

 となると、今、公海であいている部分というのは何かというと、日本が主権を主張すれば全部埋まってしまうところだけがあいている。これは非対称性があるんですね。これはおかしいと思われませんか、松本大臣。

松本国務大臣 見直しもすべき時期を迎えているのではないかという御下問でもございますが、我が国が特定海域の領海幅を三海里としているのは、海洋国家、先進貿易国として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカーなどの自由な航行を確保することが総合的な国益の観点から必要であることを踏まえたものでございます。

 領海及び接続水域法を改正し、国連海洋法条約で規定されている国際航行に使用されている海峡に通過通航制度を導入した場合、通常の領海とは異なり、その上空の通過の自由を認めなければならないということなどに留意をすべき点がありまして、その導入については慎重に対処する必要があるのではないかと考えているところでございまして、本件をめぐるこれらの基本的状況に大きな変化は見られず、我が国の特定海域における領海の幅を三海里のまま維持する方が適切であるという今の政府の判断は変わっていないところでございます。

緒方委員 今、大臣は、自由な航行を確保するとかいろいろなことを言われましたが、実は領海法を制定するときに何の議論があったかというと、これは非核三原則との関係がある、非核三原則との議論でこういうことをしたんじゃないかというのが、おおむね、研究者の方々とか、先般お亡くなりになられた外務省の北米局長経験者の方も似たようなことを言っておられました。

 まさに領海で埋めて自由な航行を認めてしまうと、日本の領海の中を核搭載艦が通っていくときに、持ち込ませないに当たるじゃないかと。イントロダクションに当たるから、それは、日本の領海を通過することが、持ち込ませないという非核三原則との関係で問題だから、だから日本がセットバックして、非核三原則との関係で問題が生じないようにしてあげているんだというようなことを言う方が多いし、研究者の方々、もっと言うと、当時の責任者の方々もそういうふうに言っておられる。ただ、この話はやり始めると物すごく長い議論があるので、もうこれ以上言いませんけれども。

 ただ、通過通航制度、自由な航行を確保する通過通航制度について、私が何回か質問主意書等々で国会で聞いているときに、必ず返ってくる答弁が、当該制度に関する各国の実行の積み重ねが十分でなく不確定な面もあると考えている、人のせいにしているんですね。

 ほかの国で何をやっているかがよくわからないから、うちとしても導入していいのかどうかがよくわかりませんという言い方をしているんですが、ただ、世界のよく船が通っていく海峡、例えばボスポラス、ダーダネルス海峡、マゼラン海峡、ジブラルタル、マラッカ、これらの海峡は、実は、それぞれの海峡に伴う特別な条約をつくっていて、国連海洋法条約の通過通航制度の適用がないんですね。ないんです。

 ということは、各国の実行の積み上げが十分でなく不確定な面もあると思いますと言っていますが、これらの世界の主要な海峡については、そもそもそれを見たって、何の参考にもならないわけです。

 では、どこを見ているんだ。どこの海峡の実行の積み重ねを日本はずっと見ていて、しかも国連海洋法条約ができてもう二十年ですよ。二十年間ずっと、今言った、主要でない、マイナーとまで言うと失礼かもしれないけれども、余り世界で知られていない海峡の実行を、では、ずっと見ているのか。こういう答弁を続けているということは、私は非常に問題だと思っております。

 各国の実行の積み重ねが不十分だから国際海峡に伴う通過通航制度についてはどうやっていいかがよくわからないというのはおかしいと私は思っておりまして、もっと日本が主体的に判断をすべきではないかというふうに思いますが、松本大臣。

松本国務大臣 御趣旨は承り、思いはよくわかります。

 今までもいろいろ議論をしてまいりまして、三海里におさめておくことの意義、公海があるということの意義というのも、実はその意味はいろいろあるわけでございまして、そういったことの周辺との関係をしっかりと見据えた中で、今後慎重に検討していくものと思います。

緒方委員 日本はこの国際海峡制度に、目を背けているとまでは言いませんが、自分と関係ないと思っている節があるんじゃないかなと時々思うんです。

 なぜかというと、日本にある国際海峡、国際的な航行に使われる海峡はあるけれども、そこは日本が主権をセットバックしているので、結果としてそこは考えなくていい、そもそも適用がないから考えなくていいんだと。さらには、通過通航制度というものがどういうものかということについては、人のせいにしている。各国の実行の積み上げがよくわからない、だから不確定だと。

 こういうふうに、国際海峡制度、さらにはそれに伴う通過通航制度について、思考停止とまで言うとちょっと本当に失礼なんですけれども、こういう状態にあるから、中国の船がぼんと入ってきたときに、それで中国に、国際海峡じゃないか、通過通航制度が適用されているじゃないかと言われたときに、戸惑うわけですよ。

 そのときに、やはり日本はもう少し、国際海峡制度そして通過通航制度というものについて真正面から向き合った上で、これが何なのかと。人のせいにするんじゃなくて、そういうことをやるべきではないかと思いますが、松本大臣、もう一言、答弁いただければと思います。

松本国務大臣 外国船舶の通航の自由及び外国航空機の上空飛行の自由が保障されるということにつながってくるわけですね。

 その中で、やはり注意をしていかなければならないポイントとしては、国際海峡上空、これは領空でございますが、における外国航空機による飛行が可能になること、また、潜水艦の浮上航行を求める規定がないということ、また、通過通航権以外は領海としての沿岸国の主権が保たれる、こういった権利ということになるのだと思いますが、これらのことが、公海を置いておくことによって一部担保できる部分も残っていることも事実であって、それを真摯にしっかりと議論して、将来に向けての考えを検討するということになるのではないかと思います。

緒方委員 別に嫌みを言うつもりはないですが、松本大臣、所掌が非常に広うございます。国家公安委員長、防災、消費者、そして海洋政策・領土担当と。どうしても海洋政策の話というのは、今のこういう大どころを見ていくと、なかなか、大臣として海洋政策本部からいろいろブリーフを受けたり説明を受けたりする回数というのは、ほかの担務に比べると少し下がるのかなと思うんですけれども、これは非常に重要な話ですので、国際海峡制度そして通過通航制度、今議場で聞いておられた方の中にも、なるほど、そんな話があるんだなと思った方は多いと思います。なので、松本大臣、海洋政策担当相、領土担当相として頑張っていただければと思います。

 松本大臣は、ここで結構でございます。ありがとうございます。

 最後、残った時間で、丸川サイバーセキュリティー担当相と宮澤防衛政務官に質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、丸川大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 先般の予算委員会で、丸川大臣は、自分の所掌はサイバーを含むセキュリティーというのとオリパラ関係で運送面というのと、あと機運の醸成、大体そういう答弁をされたと思います。自分の所掌は大体そんな感じだと。

 けれども、先般、大西議員からも予算委員会で質問があったと思いますが、オリパラ法では大臣のことを何と書かれているかというと、内閣総理大臣の命を受け、大会の円滑な準備及び運営に関する施策の総合的かつ集中的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣、これが丸川大臣ですね。よろしいですね。

 そう考えると、法律に書いてある国務大臣としての業務と、先般の予算委員会の質疑で答弁があったサイバーを含むセキュリティー、そして運輸面、運送面、何かそんなことを言われたと思いますが、プラス機運の醸成と。結構差があると思うんですよね、この間に。

 大臣が言われたサイバーを含むセキュリティー、運送面、機運の醸成と、法律に書かれている大臣の所掌との差分、残りの部分、差分というのは、これは何ですか、丸川大臣。

丸川国務大臣 ややちょっと、御指摘の部分の意味がよくわからないのですが、恐らく、私が今取り組んでいる主たることは何ですかという意味で、例えば輸送とかセキュリティーということを申し上げました。一方で、もう御承知だと思いますけれども、サイバーセキュリティ本部の方で事務局を担当しているという立場もあったので、サイバーセキュリティーを含むセキュリティーという言い方をしたわけでございます。

緒方委員 そういうことではなくて、多分、オリパラ法に書いてある大臣の所掌というのはこれぐらいだとすると、サイバーを含むセキュリティーとか運送面、機運の醸成というのはこのうちの一部だと思うんですよね。残りの部分というのは何が入るんですかということを聞いているんです、大臣。

丸川国務大臣 特に今大きな課題となっている部分を述べさせていただいたのですが、それ以外に今取り組んでいることとしては、CIQの強化ですね。これはほかの省庁との協力にもなりますけれども、これから、これはある意味、オリンピック・パラリンピックも含む、これからの訪日外国人数増という政府の目標に対応するCIQの増強ということについては、関連省庁の施策を強力に加速させていくという立場があろうかと思います。

 それから感染症対策ですね。これは厚生労働省の主たる所掌ではございますけれども、オリンピック・パラリンピックに備えて進めていくという面においては、私もかかわっていくことになります。

 それから暑さ対策。これは国土交通省と、一方では医師会の皆様初め厚生労働省の方も対策にかかわっていただくことになりますので、これも関連省庁と連携を、私が橋渡しをするというような役割になってございます。

 そうしたことも含まれております。

緒方委員 やはり先般の予算委員会での答弁というのは、ああいう答弁はされない方がいいですよ。

 誤解を与えますし、本来、先ほど言ったように、本当に大会の円滑な準備、運営に関する施策の総合的かつ集中的な推進に関して内閣総理大臣を助けることと書いてあるわけでありますから、そこを包括的に、自分が全部責任を負うんだというような、国務大臣として、そういう気持ちをぜひ持っていただきたいということを、これは指摘だけにとめさせていただきます。

 ここからは、サイバーセキュリティーと自衛権の問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 政府は、私も一回質問主意書を出しまして、答弁として、サイバーセキュリティーと自衛権の関係ということで、こういう答弁が返ってきました。いろいろ書いてあったんですけれども、肝として、一般論として、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる、こういう答弁でありました。

 武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われという言葉の、その意味合いについてお伺いをいたしたいと思います。

 これは、サイバー攻撃そのものが武力攻撃に該当することがあり得る、サイバー攻撃だけをもってこれが武力攻撃に該当するというふうに考えておられるということでしょうか。

 これはどちらですかね。宮澤政務官でよろしいですか、宮澤政務官。

宮澤大臣政務官 お答えいたします。

 サイバー攻撃のみで武力攻撃と評価することができるかについては、政府としても従来から検討を行っているところですけれども、これまで国際社会の中において、サイバー攻撃のみをもって武力攻撃に該当するとした国家実行というものは確認されておりません。

 国際的にも、国連とかNATOとかでさまざまな議論が行われている段階なんですけれども、政府としては、どのようなサイバー攻撃であればそれのみでも武力攻撃と評価できるかについては、確定的な判断を示すことは差し控えるという立場をとらせていただいております。

 ですので、政府としては、今後とも、サイバー攻撃をめぐる情勢や国際的な議論を踏まえつつ、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

緒方委員 サイバー攻撃のみで武力攻撃に当たるかどうかについては返答を控えるということでありました。

 ただ、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われるときなので、結局、この答弁でイメージしているのは、別途物理的な、例えばミサイルを撃ってくるとか、何らかの物理的な攻撃が生じて、それを補完する形というか、それと相まってサイバー攻撃が生じるときは自衛権の対象になる、自衛権を発動して対処することは可能と考えられるということで、あくまでも、主として武力的な攻撃が行われ、それと相まってやってくるサイバー攻撃については、けれども、これが武力攻撃でないとすると、武力攻撃でないものに自衛権を発動することというのは私は難しいんじゃないかと思うんですよね。

 そこに今、混乱を生じるわけでありまして、今、武力攻撃であるかどうかということについては返答を差し控えると言いましたけれども、それが起こったら自衛権を発動することは可能と考えられると言っているんです。

 ちょっともう少し意を尽くしていただかないと、多分わかりにくいと思うんですが、政務官。

宮澤大臣政務官 お答えいたします。

 議論を整理しなくちゃいけないなと思うんですけれども、サイバー攻撃のみのときに、それが武力攻撃と認めて自衛権を発動できるかどうかについては、そのサイバー攻撃が実際に物理的な損傷に至る重大な攻撃かどうかということも含めて、これは判断するということです。

 武力攻撃の一環としてサイバー攻撃がなされてきた、そういう場合においては、これは中期防の中にも書かせていただいたんですが、我が国に対する武力攻撃への対処に際して、自衛隊がこれを効果的に排除するためには、相手方によるサイバー空間の利用を妨げることが必要となる可能性、こういう言葉で書いてあるものですから、こうせざるを得ないんですけれども、相手側によるサイバー空間の利用を妨げることが必要となる可能性にも留意しつつ自衛隊の運用を検討する、こういうことになっているところでございます。

緒方委員 とすると、例えば、同じ攻撃をサイバー攻撃で行ってきます。ただ、単体でいるときは、よくわかりません、まだ判断しませんと。けれども、武力攻撃と一緒になってやってくるときについては、仮に同じサイバー攻撃をしたとしても、それに、肝となると言うとちょっと表現がよくないですけれども、実際の武力攻撃が生じているときにそれが行われるのであれば自衛権の行使の対象となり得るということになると、同じことをやっているんだけれども、肝があるかないかによって判断が分かれるということになるんじゃないかと思いますが、政務官。

宮澤大臣政務官 お答えします。

 二点目に言われた、武力攻撃の一環としてのサイバー攻撃であるならば、そのときに我々が判断するのは、武力攻撃全体そのものを見て自衛権を発動するかどうかでありますから、同じ行為で判断するということには当たらないんじゃないかと思います。

緒方委員 多分そういう答弁だろうなと思いました。

 では、ちょっと質問をかえまして、武力攻撃が起こっています、それにあわせてサイバー攻撃をやってきますということなんだけれども、そのサイバー攻撃をしている主体が、国家ではなく民間主体、今、例えばどこぞやの国が日本に攻撃をしてきています、それに呼応して、よし、やってやれということで、その国の民間の主体がサイバー攻撃をやってくる、日本の枢要な機関に対してサイバー攻撃をやってくる。これは、武力攻撃の一環としてのサイバー攻撃だというふうにお考えになられますでしょうか、宮澤政務官。

宮澤大臣政務官 お答えします。

 それは、個別具体的な事態になってまいりますので、サイバー攻撃と自衛権の行使の関係については、一概に申し上げることはここでは困難でございます。何らかの事態が武力攻撃に当たるか否かは、個別具体的な状況を踏まえて判断すべきもの、そして、それが武力の行使の三要件を満たす場合には、憲法上、武力の行使が許される、そういう立場でございます。

緒方委員 だんだん、答弁が難しいんだろうなということを、自分で質問を考えながら、これは難しいだろうなと自分でも思ったので、これ以上厳しい質問をするのはあれなんですが。

 ただ、ぜひ聞いておきたいのが、では、逆で、サイバー攻撃の対象が国家でない、例えば自衛隊とか国家の組織でなくて、民間企業とか民間の事業体、原子力発電所とか、もっと言うと水道とか、そういうとき、武力攻撃と相まって、相手方がどういう方かはともかくとして、サイバー攻撃が、日本の民間事業体、ただし、日本のさまざまな社会的な経済的な機能を動かしていくために枢要な民間事業体であるときというのは、これは武力攻撃の一環としてのサイバー攻撃だというふうに思われますでしょうか、宮澤政務官。

宮澤大臣政務官 お答えします。

 それもまた個別具体的な話になってきますので、ここで一概にそれは申し上げることはできないなというふうに考えざるを得ません。

緒方委員 それでは、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合は自衛権を発動して対処することが考えられるということなんですが、安保法制との関係でよく議論になるのが、例えばミサイル等での武力攻撃が日本に対して今にも行われそうだというときには、そのミサイルを撃とうとする敵地攻撃も、これは個別的自衛権で整理されていたというふうに理解をしています。

 ただ、日本の自衛隊には、そういう敵地攻撃、パワー・プロジェクション・ケーパビリティーというのがないから、ないというか十分でないので、そもそも、法的には可能だけれども、そういう敵ミサイル基地の攻撃ということについてはなかなか検討することが難しいというのが、安保法制が通る前の自衛権の解釈としてそうなっていました。

 ただ、この敵地攻撃という考え方、サイバー攻撃においては、全く様相を異にするんですね。敵地攻撃がそのまま可能なんです。

 なので、例えば、ミサイル等での武力攻撃が今にも起ころうとしているというときに、自衛権の行使として、そのミサイルを撃とうとしている敵基地に対してサイバー攻撃を、日本側からぼんと攻撃をしかけることというのは、これは、これまでの答弁の中にあるところの、自衛権を発動しての対処というものに含まれるというふうに思われますか、宮澤政務官。

宮澤大臣政務官 それも個別具体的な話になりますので、この場でそれをきちんと答弁するというのは、これは我が方の出方を事前にさらしてしまうことになりますので、それはなかなか答弁することはできません。

 しかし、中期防の中に書かれているのは、相手方によるサイバー空間の利用を妨げることが必要となる、そういう可能性にも実は言及はしているということだけは申し添えておきます。

緒方委員 もう少し細かい質問を用意しているんですが、もうあと三分しかないので。

 これは最後に、丸川大臣にお伺いしたいと思います。

 サイバーセキュリティーと自衛権の関係ということについて言うと、サイバーセキュリティーを専門にやっている方は技術的に非常にレベルが高い、サイバー空間でいろいろなことを押し返す力とかそういうことについて、技術的なところが非常に高いと思うんですね。逆に、こういう安保法制とか法制度、自衛権とかそういうのを担当している人との、実際の担当しておられる方々とこういう安保法制を担当しておられる方々のインターフェースが少し少ないんじゃないかと私はいつも危惧をするわけです。技術を持っている、実際に現場でやっておられる方と、法制度。

 これは私、御提案なんですけれども、そういう実際の現場で技術的なことをやっている方々と、例えば防衛省とか警察とか、いろいろな法制度を構築している方々とのインターフェースを、もっと連携を密にしてやっていくべきではないかなと私は思うわけでありまして、もし何か一言ございましたら、丸川大臣、よろしくお願いいたします。

丸川国務大臣 現実に事態をどう判断していくかということについては、官邸の危機管理センターのもとに、いろいろな事態の大きさによってさまざまな会議体が設けられ、最後は政府対策本部であったりNSCになるわけでございますが、その場面において、またNISCが実際に現場を運用していく、あるいはCYMATを運用していく点においては、防衛省と密接な連携を持って進んでいるわけでございますので、法整備についてどのような判断が必要かという現場との連携については、少しまた勉強させていただきたいと思います。

緒方委員 はい、やりますと一言答えてほしかったんですが。

 ちょっと残念でありますが、質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

秋元委員長 次に、神山洋介君。

神山(洋)委員 神山洋介でございます。

 前段でサイバーセキュリティーの議論がなされておりまして、引き続き私もと用意をしているところなんですが、きょうはお忙しい官房長官にもお越しをいただいておりますので、丸川大臣、ちょっとお待ちをいただければと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まずは、きょう、菅官房長官にお越しをいただきました。先日の所信の中でも、まず冒頭、北朝鮮について言及をいただきましたし、これは我々としても極めて重大な問題であるという認識の中で、何点か議論をさせていただきたいと思います。

 まずは一つ、事実関係について確認なんですが、先日こちらでお話をいただいた大臣所信の中で、我が国独自の措置という言葉、新たな安保理決議、そして我が国独自の措置により、断固たる対応をとっていく決意ですということでお話をいただいたわけですが、ここで言う我が国独自の措置というのは、これは確認なんですが、ことし二月に行われた独自の措置のことを指しているのか、そうではなくて、これから新たにプラスオンで、新しい我が国独自の措置をということでおっしゃっているのか。これはいずれか、どちらでしょうか。

菅国務大臣 従来の措置を徹底して行うと同時に、さらに、この北朝鮮の挑発に対しては、我が国としても、拡大をする厳しいものを今考えているところでありますけれども、それについては、今、国連でも審議していますので、関係国と連携をとりながら、一番効果的なタイミングにというふうに考えています。

神山(洋)委員 ありがとうございます。

 国連であり、同盟国との平仄も合わせながらきちんと検討していかなきゃいけないということだと思いますし、この後の議論とも連なるわけですが、やはり深刻度はかなり高まってきたのではないかなというふうに私は実は考えております。

 きょう、添付の資料を幾つかつけさせていただきましたが、1は、ちゃんとまとまっているかなと思うのを一つだけつけさせていただきました。要は年表です。

 思い起こせばもう二十年以上前からということになるわけですが、核の開発のみならず、これはミサイルの開発ということも含めて、北朝鮮による、ある意味での国際社会であり地域秩序への挑戦というものが行われてきたわけです。

 青になっているところはミサイル開発の話で、赤が核開発ということになりますが、例えば、九三年のところ、日本のほぼ全域を射程におさめるノドンを発射した、九三年五月。思い起こせば、これはもう二十三年前になるわけです。その前の段階から寧辺あたりで軽水炉の開発をずっとやってきたという中で、九四年に米朝枠組み合意があって、そこからまたいろいろな経過がある中で、十三年前になりますか、二〇〇三年から、六者協議というか、枠組みの中で議論がなされてきたという、ここ二十年ぐらいのさまざまな経過があります。

 結果として、今現在、この二十年ないし二十五年近くでしょうか、さまざまな国際社会、我が国も含めてですが、取り組みは、北朝鮮による核開発であり、それの運搬手段としての弾道ミサイルを含めた部分の開発を抑制していく、抑止をするということであったわけです。しかし、ことしになってからの経過を考えれば、既に核実験は二回、弾道ミサイル発射は、先般のものも含めれば十五回ぐらいになろうかと思います。

 結果としては、それはどこまで目的が達せられたかといえば、これは事実として、なかなか目的を達することには至っていないという認識はまず必要なのではないかというふうに考えているわけです。

 官房長官、この点について、現在の開発状況、いかに深刻な状況かという観点での評価も含めてですが、どういう御認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

菅国務大臣 委員から提出をいただいたこの資料でも、これは非常にわかりやすいと思いますが、核実験は、今までは三年に一回ぐらいだったんですけれども、ことしになってからもう既に二回行っています。そして、ミサイル発射も何発となく行っています。

 ですから、そうしたことを考えたときに、これは総理が国会で答弁していますけれども、新たな段階になったと。そこについては、その脅威について、私どもは国民の平和な暮らしと命を守るのが責務でありますから、そういう思いの中で今対応をいたしているところであります。

神山(洋)委員 大変厳しい認識を持っていただいているということで、そこは我々も共有をしたいというふうに思っております。

 今官房長官に言及をいただきましたこの資料のところでいうと、これはことしの八月、まだ御記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、一つやはり大きな局面だったかなと思いますのは、八月に潜水艦からSLBMの発射がありました。もちろんそれは、北朝鮮はこれまでも核開発をし、ノドンに始まり、テポドンであり、最近ではムスダンそしてテポドン2という形で、どんどん飛翔能力を高めているという経緯があるわけですが、SLBMから発せられたというところは、やはり、潜水艦の秘匿性という観点であるとか、第一撃でどこまでそれを壊滅させることができるかという意味で、一つ大きな局面なのではないかというふうにも思うわけです。

 もちろん、北朝鮮の潜水艦の静粛性がどこまであって、SLBMがどこまでその秘匿性を担保することができるかといえば、まだまだなのかなという想像はするわけですが、しかし、やはり、新たな秩序に向かって北朝鮮がひたひたと、着々と進めているというこの現実はきっちりと受けとめなければいけないなというふうに思うわけです。

 このSLBMの話も含めてでありますし、今の北朝鮮の核の開発状況、それは、細かいことはこういう平場でお聞きをする話じゃないと思っていますので聞きませんが、しかし、今までの戦後の核抑止であり、ある種のこの地域での均衡点というものが、少し次のステージを考えなければならない、そういう局面になっているのかなという認識を私も持っておりますし、恐らく、今官房長官から御紹介をいただいた、総理が新たな段階という言葉を使われたというお話でしたが、そこも同じ認識なのではないかなというふうにも思うわけです。

 にわかに新しい段階に入ったと言いたくもありませんし、そういう段階に入ることは全く望ましくありませんし、そうしないがために、先ほどおっしゃっていただいた新たな我が国独自の措置ということも力強く進めていかなければいけないということを我々も考えているわけではありますが、しかし、やはりこの新たな段階には備えなければならないとしたときに、実際、今どういう認識でどういう対応を、言える範囲で結構なんですが、考えていらっしゃいますでしょうか。

菅国務大臣 私たち政府としては、金正恩、この指導者が誕生してから、さまざまな行動様式というものを情報収集、分析してまいりました。そういう中で、特定秘密保護法、平和安全法制、こうした法律を成立させていただきました。それについては、やはり日米が連携をして、しっかり情報を日本が米国を中心とした関係国から入手できるような、そこが極めて私どもは重要だという思いの中で、なかなか国民の皆さんには厳しいこの二つの法律でありましたけれども、成立をさせていただきました。

 結果として、機微な情報、また核心に迫る情報というのは、正直、日本に提供いただけるようになったということも事実であります。ですから、例えば発射の兆候等の中で、私どもが事前にイージス艦とかさまざまな対応をとることが可能になったということもここは申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 ただ、いずれにしろ、それだけでは足りませんので、やはり、日米、さらには韓、ここをしっかり連携して対応していく必要性というのが私どもはあるというふうに思っています。

神山(洋)委員 今、官房長官からも情報についての言及がありました。少しその観点で幾つか議論させていただきたいと思っております。

 日本においてインテリジェンスの体制がどういう状況であるかとか、もっとそれを強めていかなければいけないという話はずっとされてきたわけでありますが、いろいろな関係者の話を伺っていると、もちろん少しずつではあるけれどもという前置きつきではありますが、いろいろな意味で前進をしてきたんじゃないか、そういうお話を最近聞いているところでもあります。

 そんな中でありますが、これは松本大臣にお伺いをさせていただこうと思っていますが、今年度から警察庁の中でオシントセンターという形で稼働させたという話を伺っています。インテリジェンスの領域で、ここで言うオープンソースインテリジェンスもあれば、ヒューミントもあれば、シギントもあればと、いろいろな領域があるわけです。

 そこで、オシントセンターという形で一つそこに着目をしたというのは、私はこれはいいことだと実は思っておりまして、今まで、もっと日本でオシントできるのにねという話を聞いていた中で、こういった形でまずは第一歩、今年度予算はたしか二億円ちょっとだったかなというふうに理解をしていますが、というのはよかったかなと思っています。

 まずは、このオシントセンターが今どういう稼働状況にあるかという事実関係のところをお答えいただければと思います。

松本国務大臣 ただいま御紹介いただきましたオシントセンターでございますが、ISILなどイスラム過激派組織は、インターネットを活用して過激思想を広める、またテロの実行を呼びかけるなどしておりまして、こうした情報を適時適切に収集してテロ等に関する動向を把握することは、テロ対策上重要であると認識をしております。

 そこで、ことし四月に警察庁にインターネット・オシントセンターを設置して、インターネット上のテロ等関連情報の情報収集、分析を進めているところでありまして、これは、今後とも同センターの能力向上を図るとともに、テロ等関連情報の収集、分析強化に取り組んでいくよう、警察を指導してまいりたいと考えているところでございます。

神山(洋)委員 今お話しいただいたように、テロ対策というところが主眼であるということなのだろうと思います。それはそれで私は必要なことだと思っていますが、もう一つ実は問題意識があります。

 我が国が情報なりインテリジェンスという領域の中できちんとその能力を高めていかなければならないのだとしたときに、もちろんその中での主要観点はテロを防止するのだということも含まれますが、しかし、果たしてそれだけかといえば、恐らくそれは違うんだろうというふうにも思うわけです。

 先ほど、前段でお話もさせていただきましたが、北朝鮮を含むような地域の安全保障とか、ある意味ではミリタリーな話というのも当然あるでしょうし、前段、これは緒方委員がTPPの話をされていましたが、通商交渉の中でもこのオープンソースのインテリジェンスというのは、極めてやはり大事になるものだというふうにも思うわけです。恐らく、警察庁の中にあるオシントセンターの中で、例えば通商交渉にかかわるようなオープンソースのインテリジェンスを何かやっていくかというと、なくはないのかもしれませんが、基本的には外れているのかなというふうにも思うわけですね。

 もう少し広範な形でオープンソースのインテリジェンスというものをプッシュしていく必要が私はあると思っておりまして、そこは官房長官にお伺いをしたいんですが、そういう観点でのこれからのアプローチは検討の余地はあるでしょうか。

菅国務大臣 いずれにしろ、国際社会がこのような、ISILに代表されるように、極めて厳しい状況になっている中で、やはり情報収集というものは極めて重要な役割をしています。水際でまずしっかり対策をとる、そういうことを考えたときに、幅広く私は必要だというふうに考えます。

神山(洋)委員 優先順位づけが私は実は大事だと思っておりまして、先ほど少しだけ申し上げましたが、インテリジェンスの領域の中にもいろいろな領域があって、あれもやります、これもやりますといって、全部やりますという議論は恐らく通用しませんし、アメリカでCIAなりNSAの中でやられていることを完全にまねしますというのも、恐らくこれは無理だと思いますし、そこまでやるべきでもないと思っています。

 ただ、アジアの近隣地域の中でのヒューミントというのはやはり大事だよねという話もあるでしょうし、先ほどの国内及び海外も含めたテロ対策というところもやはり大事でしょう。どこにフォーカスをして、どこに優先順位をつけるのかという議論が余り実は見えてこないなという懸念を私は持っておりまして、ここについては御答弁は求めませんが、その点だけ一点、指摘をさせていただきたいと思います。

 ちなみに、オープンソースの話でいえば、これは政府としてやるということはもちろん大事ではありますが、政府だけじゃ決してないと思うんですね。対北朝鮮でいえば、ラヂオプレスなんというのは、ある種民間ではありますが、貴重な情報をいつも持っているというのはよく知られているところだと思っております。

 それで、その関連、先ほどの北朝鮮の話も含めての流れで実は出てきていて、最近実は気になっているのは、新聞紙上で時折、三次補正という言葉が出てきます。その中身を読むと、北朝鮮のさまざまな問題がある中で、MDを少しプッシュするのだということが書いてあって、SM3ブロック2Aを先行導入するんだとか、PAC3の改良を早めるんだということが書いてある中で、補正予算、三次補正をやるのだということがぽろぽろと出てきます。

 先日ようやく補正予算の話が終わって、いきなりもう三次補正の話が出てくるというところに少し違和感を抱きつつ、まずは、これは官房長官に、三次補正を、中身はともかくとしてですが、やろうとしているというところが事実関係としてあるのかどうか、お伺いをさせていただきます。

菅国務大臣 委員から今御指摘ありましたけれども、今度の国会で、去る十一日に、御党を初め多くの野党の皆さんも協力をいただいて、私ども第二次補正を成立させていただきました。まさに、この補正によって内需を力強く下支えし、アベノミクスをさらに加速させる、そういう経済を中心とした対策でありました。まず、こうしたことを一つ一つ実行に移していくこと、このことが極めて大事だというふうに思っています。

 ですから、その報道があったということですけれども、私どもは全くそうしたことは考えておりません。

神山(洋)委員 補正予算そのものの中身にはいろいろ議論がありましたし、それはこの後も少し議論させていただきたいと思っておりますが、ひとまず、今の官房長官の御答弁はそういうものとして受けとめさせていただきます。

 この後、今の話も受けながらアベノミクスの話とかを幾つか議論させていただきたいと思いますが、お時間がいろいろお忙しいとお伺いをしておりますので、官房長官とそして大臣も、もしよろしければ御退席をいただいて結構です。ありがとうございました。

 それでは、今、最後に官房長官からも話がありました、補正予算でも議論になりましたし、ひとつここでアベノミクスについて数点、石原大臣にお越しをいただいていますので、議論させていただきたいと思います。

 まず、一般論から申し上げたいというふうに思いますし、これは恐らく多くの方々に共有いただけると思うんですが、何か問題があって、その問題を解決していこうとするときに、私は、実は大事なことは現状認識なのだと思っています。

 よく、あれをしましょう、これをしましょうという議論は、もちろんいろいろな場面で世の中にあるわけですが、あれをしましょう、これをしましょうという話がなかなかまとまっていないところの根っこをよくよく探っていくと、そもそも、何が問題だという理解をしているかという、そこの着眼点なり着眼の仕方が全く違っていて、であるがゆえに、それを解決する、改善をしていくためのアウトプットが全く違っているという議論によく出くわすときがあります。

 その意味で、アベノミクスに関連をして、特に先般の補正予算に関してでいえば、アベノミクスの、ある意味では第二ステージに移行するというようなことの中でその経済を下支えするんだ、そういう意図が込められたと思いますが、まずここで議論させていただきたいのは、第一ステージ、アベノミクスそのものの総括の話をさせていただきたいと思います。

 大臣、これは繰り返しいろいろなところで答弁をされているとは思いますが、まず、簡潔にで結構なんですが、アベノミクスの第一ステージ、どう総括をされていますでしょうか。

石原国務大臣 神山委員にお答えしたいと思います。

 第一ステージは、やはり、大胆な金融緩和、財政出動、そして構造改革、この三つによりまして何が変わったか。

 いわゆる名目GDPと実質GDPの逆転現象を解消する。そして、税収は、消費税を合わせてでございますけれども、二十一兆円増加、名目GDPで見ても三十三兆円の増加。やはり、特筆すべきは雇用環境の大幅改善、そして所得が上がる、三年連続二%程度の賃上げを行い、これを四巡目、五巡目につなげていく。こういうことによりまして、デフレではない、デフレじゃないよね、こういう状態までつくり出すことができたと思っております。

 しかし、デフレを脱却したのか。脱却というのは、やはり多くの方々が必ず、物の値段は上がり、賃金が上がっていくということを認識される状態でありますので、まだまだそこの点については、一つ政策を間違えますとまたデフレに戻っていく、そういうことのないように、今回、十一日でございますけれども、第二次補正予算を通させていただいて、底入れしないように下支えをしっかりしていく。

 これはまた、G7伊勢志摩サミットでの各国の共通の認識でありますけれども、持ち得る政策は全て総動員をして、世界経済をしっかりと支えていこう、そういうことに沿ってやってまいりまして、総理の言葉をおかりするならば、まだ道半ばであるけれども、経済の好循環というものは間違いなく動いている、こういうふうに認識をさせていただいているところでございます。

神山(洋)委員 こういう形でお伺いをすれば、当然、よかった、こういう形でよくなったというお話はもちろんされますし、これは、先日の消費税の議論の本会議でのときにも我が党の木内議員だったと思いますが、全部否定しようと思っているわけではありません、いいこともありましたという、そんなお話もあったかと思いますし、私もそれはそうだと思っています。

 ただ、例えば、今大臣からもお話があった一つ、所得が上がったというお話もありました。これももう何度もいろいろなところで繰り返された議論なので、これそのものを深めるつもりはないんですが、確かに雇用者所得というものは上がりました、これは事実だと思うんですね。一方で、では、実質賃金はどうなんでしょうという話で、アベノミクスは失敗じゃないかという話は、これは我が党も含めていろいろやってきた経緯はあるわけです。

 どっちもこれは事実なのではないかというこの現状認識に基づいたときに、では、我が国経済をどういう形でさらに前に進めることができるのかという意味では、生産的な議論というのは私はできるんじゃないかなという気持ちも実は持っております。

 そこの数字の中身の是非というところは議論はしませんが、今大臣からお話しいただいたステージがこれは全てではないのかもしれませんが、全てであるとすれば、それは現状をきちっといいことも悪いことも含めて正確に認識をして、よりよいアウトプットを出すのだというところからすれば、やはりちょっと欠ける点があるんじゃないかなという気がするわけです。

 大事なことは、この第二ステージに移行するのだというお話の中で、第一ステージで、では、一体何が問題であって、何が欠けていて、どういう課題が明確になって、やろうとしていたけれども、それはどこまでしかいかなかったのだということが明確になっていって初めて、それを次に向けてやっていくんだというこの論理的な結節点が私は必要だと思うんですね。

 事前にこれは御担当の方にも何回か説明を伺いましたが、どうも何度聞いてもそこの結節点が見えないわけです。断絶のように見えてしまうわけです。

 今までアベノミクス、アベノミクスといって第一ステージをやってきました、これから第二ステージなんですと。この間はどうなっているんだ。総括がどうなっていて、何が足りなくて、足りないところをどう補おうとしているのかというこの論理展開とか因果関係というものは私はやはり大事なものだと思うんですね。それがあって初めて、公金をそこに投入して経済対策をするのだというその正当性が生まれるんだと私は考えています。

 その意味で、大臣にここでお伺いをしたいのは、第二ステージに既に移行済みなのかもしれませんが、もう一度ちょっと立ち戻っていただいて、第一ステージのところで本当に何が足りなかったのだということをもう一度明確にした上で、第二ステージへの移行の部分、ここの因果関係をひとつ御説明いただければと思います。

石原国務大臣 ただいまの神山議員の御指摘は、私も聞かせていただいて、ごもっともだと思います。

 完璧、完全なる政策というものはないと思いますし、私どもも全ての政策が全て的を射ているとも考えておりません。足らざるところがあることは、これまでの委員会等々で各種の数字を明らかにされて御指摘されていることも実はあると思います。

 しかし、忘れてならないのは、やはり、成長戦略、構造改革、ここの部分に軸足を移して、そしてさらに、G7での約束のとおり、世界経済を底割れしないようにしっかりとでき得る政策を全て行っていく、この点に一つポイントがあるのではないかと思っております。

 そして、私が考えますに、さまざまな構造改革をさせていただきました。電力の送電分離の話、自由化の話、あるいは農協改革、高いと言われた法人税の改革。しかし、こういうさまざまな政策を、もう一度立ち戻って総点検する。構造改革の部分については、総点検を行って、何が足りていないのか、また何が弱かったのか、こういうステージに私どもは今入っているんだと思います。

 そんな観点に立ちまして、これまで、官民対話あるいは規制改革会議、いろいろございましたけれども、ブラッシュアップして、パワーアップして、スピードアップできる体制、未来投資会議というものをつくらせていただいて、今委員御指摘の点について年内にもう少し具体的な姿を皆様にお見せできるように努力をさせていただいているところでございます。

神山(洋)委員 大変真摯に御答弁をいただいてありがたいとは思うんですが、しかし、今御答弁をいただいた中で一つ気になる点がありまして、まさにその総点検をしているのだというお話がありました。

 少なくとも、私の中での常識でいえば、一つのプランがあって、次のプランに移るというときには、一つ目のプランについてのその点検なり検証なりが終わって、そこで課題が明確になって、できたものはそこで終わりにしましょう、できていないものは、では、なぜ進まなかったのかという分析をし、その上でそれを次の段階でどう実現するかという形で新たなアクションを考えるというのは常識ではないかなというふうに思うわけです。

 実は、前回の委員会のときの議論を伺っていて、これは与党側のたしか大岡委員からの議論だったかなと思いますけれども、規制改革か何かの議論で、なかなか実感に至らしめられていませんよねという話の中での御答弁、どなただったかちょっと忘れましたけれども、やはりPDCAサイクルをきっちりと回していくんだ、そういう議論があったことを記憶していて、それはそれで私はいい議論だったなと思いますし、そういうふうにあるべきだと思うんです。

 しかし、実態としては、もう既に第二ステージに移ってしまっていますと。移っている中で、それをプッシュするために補正予算でバックアップをするんですというお話がされていて、一方で、第一ステージについてはこれから検証していくんですというのは、これはちょっと論理的におかしいかと思うんですが、大臣、いかがですか。

石原国務大臣 若干言葉が足りなかったところがあると思うんですけれども、第一ステージというのは、大胆な金融緩和、財政出動、そして成長戦略、そんな中で、構造改革の部分、さまざまなことをやってまいりました。誰も手をつけることのできなかった農協改革、これもまだ現在進行形でございます。生産資材を安くして、それによって農家の方々の所得をふやしていく、こういうことに導いていこうというようなことも今行わせていただいているわけでございます。

 決して政策が途切れてはいけない。そして、立ちどまることも重要でありますけれども、特に構造改革分野についての総点検、特区という形を利用して、ウーバー等々のクオリティーを高めるようなものもやらせていただいております。

 しかし、やはり、全てを、構造改革が点で行われているわけでございますが、それをやはり面にしていくためにどういうものが必要で、またどういうものが足らざるのかということをチェックさせていただいている。アベノミクス全体のチェックというよりも、三番目の部分の、構造改革についての総ざらいというものを今させていただいているというふうに御理解をいただければと思います。

神山(洋)委員 済みません、私の理解能力の問題なのか、余りよくわからなかったわけですが、しかし、きちっとした因果関係を詰めていく、論理を詰めていくということは、我々の日常生活の中でももちろんそうではあるわけですが、国家の重要政策を左右し、そしてそこに公金を投入するという責任を負っている我々は、やはりもっとシビアにならなきゃいけないんじゃないかなということをまず一つ、ここで御指摘だけさせていただきます。

 時間の都合もありますので、また改めてその議論は別途させていただきたいと思いますが、関連もするので、改めて石原大臣にお伺いをさせていただきます。

 前段の、第一ステージの総括がどこまできちっとなされているかという議論は、それはそれとして、第二ステージに移るのですという話を伺いました。日本再興戦略二〇一六というものを大ざっぱに御説明いただきまして、いろいろ資料も含めて見せていただいていたところです。

 その中で、やはり一つ大きく掲げられていて、世の中的な着目も強いなという感じもしていますが、名目GDP六百兆に向けて頑張っていくという話がありました。大変大事なことだと思いますし、現在のGDPの規模五百兆そこそこというところから考えると、かなり野心的な目標でもあるなという実感は実は持っているところです。

 大事なことは、先ほど来の議論にも通ずるところではありますが、では、現在の五百兆そこそこの名目GDPの段階から、どういうプロセス、どういう道筋をとって名目GDP六百兆に持っていくのかというその具体的な中身の話だと私は思っています。

 そこでまず、この資料を見ていて非常に不思議に思ったのが、やらなければならない骨子がいろいろ書いてある中で、当然ではありますが、そこに一定の目標値、ターゲットが書いてあるわけです。例えば、第四次産業革命の実現というところには、付加価値を二〇二〇年に三十兆円つけるんだというふうに書いてあります。世界最先端の健康立国へというところには、市場規模、マーケットですね、二〇一一年の十六兆円を二〇二〇年には二十六兆円にするのだということが書いてあって、ほかのところであると、投資金額、付加価値、市場規模、消費額、いろいろなマーケットが書いてあります。

 一つ不思議なのは、六百兆を目指すんだとおっしゃっていて、ここにGDPのプラスオンの部分が、この領域の中でどのぐらいやるんだと書いてあるのであれば、こういうシェアで考えているのねというのはわかるんですが、六百兆円を目指すんですと言っている中での具体的な中身の目標値のところが、GDPの話ではなくて、物によってはマーケットであったり、物によっては付加価値の金額であったり、物によっては投資の金額だったりするということ、これは実はばらばらなんですよ。大臣、これはそろえた方がいいと思うんですが、いかがですか。

石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されましたのは、日本再興戦略二〇一六の概要の中で、例えば、新たな有望成長市場の創出で、世界最先端の健康立国へ、市場規模で、これは二〇一一から二〇二〇になったときに十兆円程度拡大する。あるいは、スポーツ等々で、スポーツ産業を成長産業化することによって、市場規模、二〇一五年の五・五兆円が十五兆になる、そういう数字が提示されているものと、五百三十兆円の名目GDPを六百兆円にするという政策が、数値がリンクをしていない部分があるんじゃないかという御指摘だというふうに私は聞かせていただきました。

 名目GDPは、先ほど申しましたとおり、三十三兆円拡大して五百三十兆円程度になっております。補正予算も成立させていただきました。これによるGDPの底上げ効果は、およそ一・三%を見込んでおります。

 そんな中で、この前の議論に戻るんですけれども、構造改革をなぜやるのかということは、やはり生産性を上げるということが一つポイントになっているんだと思います。そのためには第四次産業革命、情報革命の後に、次はビッグデータというものが出ていまして、IoTあるいはAI、こういうものは本当に十年前は誰も想像できなかったものでございます。

 こういうものを生産現場に落としていく、あるいは、私たちの生活がこれによってどう変わるのかということまで落としていく。いわゆる社会実装という言い方をさせていただいておりますけれども、こういうことによりまして名目GDPを拡大していかない限り、生産性を上げていかない限りは、必ずどこかで生産年齢人口の減少あるいは高齢化、少子化というもので限界が来る。いわゆる、マーケットが大きくなることによっての人口ボーナスがなくて、日本の経済は人口オーナスの世界に入っているわけでございますので、こういうことをこの日本再興戦略の中では具体的に示させていただいたわけであります。

 では、これとこれがリンクしていないではないかという御指摘でございますけれども、これは、安倍総理の一番最初のときの国会での演説を私は聞かせていただきまして、実質で二%、そして名目で三%程度を上回る成長を続けていくと、二〇二〇年ごろ六百兆円経済を達成することができると。

 そのためのツールとして、成長分野は一体何なのか、そして、地方を置き去りにすることは決してあってはならないということで、ローカルアベノミクスの深化、農業あるいは観光、こういうものを全て総合的に勘案して六百兆円を目指すというふうに取りまとめさせていただいているというふうに御理解をいただければと存じます。

神山(洋)委員 その議論はこの後もう一回させていただこうと思っているんですが、まずはそれぞれの分野、領域を指定されていて、そこに書いてある定性的な意味では別に異論はないわけですよ。IoT、もちろんこれは大事だし、生産性を上げなきゃいけない、もう当然だと思います、私も。

 ただ、ここでいろいろ挙げられていますが、そのIoT、ビッグデータ、AI、ロボット、第四次産業革命の実現ということであるとか、健康立国へとか、環境、エネルギー云々かんぬんという幾つかの分野について、では一体どのぐらいのボリュームで、どこに軸足を置き、どこに事の軽重を考えてやっていくのかという姿が見えないわけです。

 私は直接経営をしたことはありませんが、一定の経営マインドは持っているつもりであります。例えば、会社の経営者が、うちの会社は売り上げは年間五百億円です、では、それを五年先に六百億円に伸ばしましょうという目標を社長が掲げられました。では、具体策を、会社の上の方の方々にプランを練ってください、練って、アウトプットが出てきました。五年間で売上高を百兆円これで伸ばしましょうというふうに書いてあります。

 いろいろやらなきゃいけないことが例えば十個書いてある。十個がこう書いてある中で、私であれば、その十個それぞれが、では、売上高を百億円伸ばすことに対してどの程度寄与するのかということを私は必ず求めると思うんです。一番に挙げたので実は五十億いけるんです、残り九個で五十億、それぞれこういう計算ですということであっても、それはそれでいいと思います。

 逆に、百億円伸ばすんですといって十個書いてあって、その十個のところが、物によっては、これは利益が幾ら幾らですとか、これは人数が何人ですとかということでばらばらに書いてあったら、私は怒って突き返しますよ。六百億円にするという目標を考えているんだから、その細分化された一つ一つの要素についてどれだけ全体に対して寄与するのかを持ってこいというのを、私が経営者だったら求めると思うんです。それと同じ話を実は大臣にお伺いしているんです。

 六百兆円に伸ばすんだ、これは確かに結構なことだと思います。幾つかやらなきゃいけない項目がこれだけあります。それも、そんなに大きな異論は私も、中身の細かいところはともかくとして、まあいいでしょう。では、それぞれの要素がどれだけその六百兆に向けたところに対して寄与するんですか、それが全く見えないわけです。きちんとそれを計算されてプログラムをしているのであれば、それを教えてくださいというふうに申し上げているんです。いかがでしょうか。

    〔委員長退席、松本(文)委員長代理着席〕

石原国務大臣 今委員が五百億円の企業としてという例は非常にわかりやすいと思うんですが、では、企業と国は何が違うかというと、さまざまな政策の相関関係が複雑に絡み合っています。生産性を向上するといっても、どの分野の生産性、マクロでいえば、製造業とサービス業みたいな割り切り方でその寄与度をはかることはできるかもしれませんけれども、やはり経済活動と国民生活というものが、浸透していって初めて、先ほど社会実装という言い方をしましたけれども、どれがどうなったという結果がわかるんです。

 企業体であるならば、扱っている分野というものは、例えば製造業であるならばどういうプロダクツ、電機会社であるならばコンピューター部門あるいはAI部門と、部門ごとに割り出すことができると思うんですけれども、国というふうに、そして社会実装まで落としていこうということに究極的な目的を持って、経済のパイだけ大きくなっても、生活が向上されなければ何の意味もございませんので、そこのところを説明することは、例えばイノベーションということを一つ例にとってみますと、イノベーションの促進と働き方改革が相まって、実は経済全体の生産性向上につながる、これは誰でもがそうだろうなと思いますけれども、それを分断して、各々、一つ一つの寄与度として、企業の経営で五百億円の売り上げを六百億円に持っていくということを示すのとはやはり若干違いがある。

 ですから、私どもは先ほどマクロの数字をお話しさせていただきましたけれども、マクロの経済としてこれだけの成長、それを支える個々のツールというものはいろいろなものがこれからまた出てくるでございましょうし、進歩が非常に速くて、先般あるロボットを見てまいったんですが、そのロボットをつくっているエンジニアの方がおっしゃるには、今ここで先生がさわっているこのロボット、これは三カ月たったら陳腐化すると言うわけですね。

 ですから、一つの産業である、日本の強い分野であるロボット一つとっても、どれだけのものがどれだけの社会でどうなるかということを数字であらわすということは非常に難しい。そういうことを考えましてマクロでお示しをさせていただいているというふうにぜひ御理解をいただきたいのと、企業の五百億から六百億というのは非常にいい例なのでありますけれども、国のマネジメントはそんなに、一つ一つを割り切ってこういうふうにやるということが難しいということもぜひ御理解いただきたいと思います。

神山(洋)委員 企業の例がそのまま国にマッチするとは、私も確かに思っていません。それは例として申し上げました。そんなに単純なものでもなかろうし、今申し上げたことを全部算式に落として、一個一個数学の世界のような数字に、やろうと思えばできると思いますが、やることにどこまで意味があるかというところも、大臣がおっしゃっている認識とそんなに変わらないと私は思います。

 ただ、さはさりながら、これだけのことをやろうとしている中で、いろいろなメニューがあるけれども、それも判断される大臣であり政権でありということかもしれませんし、公金の行き先に責任を有する我々としては、事の軽重の判断というのはやはりしなきゃいけないと思うんです。

 これだけ例えば十個メニューがあるけれども、極めて大事でクリティカルで落とせないのは一と二と三なのだということがわかっている中で判断をする場合と、一から十まであって、十個のメニューのうち、どれがどの程度貢献するのかよくわかりません、全部平たく頑張りますということであってはならないと思うんですね。

 そうしたときに、せめて、冒頭申し上げましたが、六百兆を目指しますというのであれば、それぞれのメニューの中で、それぞれが六百兆に対してどのぐらいのインパクトを持つのかということのおおよその事の軽重の判断ぐらいつかないと、これは大臣だって判断できないと思うんですよ。

 その意味でいえば、ここにいろいろ指標としてある、付加価値であるとかマーケットの規模であるとか投資金額であるとかという、このばらばらな指標というのは、私は好ましくないんじゃないかなと思って指摘をさせていただいたわけです。

 それはむしろ、細かい数式、算式のところはいろいろあるけれども、しかし、この項目の中で、どれだけGDPを伸ばそうとしているんだという具体的な因果関係の中での説明がつくレベルまであって初めて、ここの領域はやはり外せないから、例えば補正予算を組むときにはここだけは重点的にやらなきゃいけないという判断ができるんだと思うんです。

 先ほど来の大臣のお話であると、やはりそれぞれのウエートというのがよくわからないわけです、どのぐらい大事なのか。大事じゃないとは言いませんが、ウエートとして下げていいものがどれなのか、判断がつきません。

 としたときに、最終的にまた、先ほど第一ステージの総括をしていただきましたが、どこかの段階でこのプランも総括をするときが来るんでしょう。そのときに、では、その二回目のプランは一体どの程度達成することができたのか、どこまでよかったのか悪かったのかという価値判断ができないと思うんですね。だから、あらかじめそこをきちっとやっているべきじゃないかということを実は申し上げているわけです。

 この議論ばかりをやっていると終わってしまいますので、また改めて議論させていただきたいと思います。

 ついでながらもう一点申し上げると、極めて気になっているこれの話が、さっき大臣も使われましたが、達成時期は二〇二〇年ごろだというお話なわけです。五百億円の会社の話をするとまた怒られるかもしれませんが、私が社長だったら、その目標を持ってきたときに、ごろと書いてあったら突き返します。あり得ないですよ。目標年限にごろをつけるなんという目標は、これは目標として機能しません。そのことだけ、一点申し上げておきます。

 きょうは、加藤大臣にもお越しをいただいておりますので、続いて、働き方改革関連についても少し議論させていただきたいと思います。

 まず一点、全体の文脈はともかくとして、お伺いをしたいのが、最近やはり大きく取り上げられた、電通で一人、女性が自殺をされたという大きな事件がありました。あの事件を大臣はどう受けとめられていますでしょうか。

    〔松本(文)委員長代理退席、委員長着席〕

加藤国務大臣 私も、ニュースとかそうした報道を聞いて、大変ある意味ではショックといいますか、強い思いをしたところであります。

 また、総理も、一昨日に開かれた第二回の働き方改革に関する総理と現場の方々との意見交換会において、「長時間労働によって過酷な状況の中で自ら命を絶つという大変悲しい出来事がありました。このようなことは、二度と起こしてはならないとの思いの中でも、やはり働き方改革を進めていかなければならないと、こう思っております。」ということで、この働き方改革、また、その中心である長時間労働の是正に対する取り組みに対する強い決意を申しておるところでありますし、私も同じ思い、また、もちろん総理の指示もありますから、そういった方向でしっかり取り組んでいきたい、こう思っています。

神山(洋)委員 私もかつて会社で、いわゆる会社員としての生活をしていたことがあります。二十代の後半だったかと思いますが、私はそこまでではありませんでしたが、間違いなく、今でいう長時間労働の領域でやっていたことがあったなと思いますし、それこそ、朝七時ぐらいに会社に行って、会社を出るのは日がかわってからということも非常にあったなということを実は思い起こしているわけです。

 もちろん、表に出ないことも含めて、非常に厳しい内面状態があったがゆえのああいう形であったろうということを想像すると、大変、残念だなという一言というよりも、何というか、自分の身にも迫るような、そんな気が実はしています。

 ただ、そういうことを言葉で明確に強いられるということも中にはあるかもしれませんが、自分自身の経験を踏まえても、そういう状況になったのは、例えば、上司に朝七時から夜中の二時まで働けと言われたからやっていたわけでは全然ありませんで、そのときに、納期も含めたアウトプットをどう出すかという観点の中で、自分でやはりそうせざるを得ないという、ある意味で自分でそういうことに追い込んでいたというか、自分での判断の中でそういう行動に至っていたという部分もあるかと思うんです。

 長時間労働の話は、きょう細かい話をここでしようとは実は思っていませんが、規制の部分をいじるということが一つ柱としてあるのかもしれません。もちろん、それは大事だと思っていますが、いろいろな意味での雇用環境、もっと言えば、具体的には会社の中での文化にまで作用してくるような、そういう話かもしれませんので、ぜひちょっと幅広な議論をしていただきたいということは、一点ここでお願いをさせていただきます。

 今の話とも少し絡むんですが、この働き方改革というのは肝いりで大事な話なんだということで、恐らく加藤大臣はこれから担務としてなされるということだと思うんです。その中で、これは総理も使われていたかもしれませんが、大臣も使われていたかもしれません、この働き方の問題というのは、社会問題とか労働問題であると同時に経済の問題なんだというお話がありました。これはどういうことか、少し解説をいただければと思います。

加藤国務大臣 例えば、今の長時間労働、やはりそうした過酷な状況で働いている、これを是正する。あるいは、同一労働同一賃金ということで、明らかに賃金的に格差がある、それも決して合理的ではない、そういったことを是正していく。こういったことは、ある意味では社会問題の解決という側面があるということ。

 そして同時に、そうした長時間労働を是正していくということによって、例えば、より若い方、あるいは女性や高齢者の方々も選択し得る、要するにワーク・ライフ・バランスがとり得る状況になれば、より選択しやすくなってくる。あるいは、同一労働同一賃金が実現することによって、今は制約条件があるから、こういう働き方をしたいけれども、やはり処遇の問題があるから選べないということが、むしろ、処遇の問題が是正をされることによって選択肢の幅が広がっていく。そういうことを通じて、一つは、働く人、いわゆる労働市場に入ってくる人たちがふえていくということがあるんだろうと思います。

 それからもう一つは、そういったことを通じて、例えば長時間労働を是正しようとすれば、経営者の方々が、限られた時間をどう有効に使うんだ、こういうことを考えていく。さらには、働いている人の時間がいろいろ、余暇というんでしょうか、自由な時間が出てまいりますから、それによって自己啓発をしていく、そういったことを通じた生産性の向上、こういったことにも通じていく、それがつながって経済の成長につながっていく。そういった意味で、経済問題にもかかわる話だということを申し上げているわけであります。

神山(洋)委員 おっしゃる点がわからないということではありませんが、しかし、ある意味では、やはり経済問題であるという観点を強めれば強めるほど、さっきの、冒頭御答弁をいただいた今回の悲しい事例も含めて、人間というものを、言葉としては非常に不適切かもしれませんが、一つの生産財としてみなすようになってしまう、そういうことになりやすいという意味で、すごくここは御配慮をいただきたいなというふうに思うわけです。

 経済の生産性を高めていく、効率性を高めていくということはもちろん大事ではありますが、一方で、そこで働いている個々の人間性というところは極めて重視をされなければいけないと思いますし、そこの部分のバランスがやはり近年少し崩れているんじゃないか、場合によっては大きく崩れているんじゃないかというお話もあります。そこを少しでも是正していただける部分があるのであれば、それは、我々としても協力することはもちろんしていかなきゃいけないなということを実は考えているところです。

 この後、この働き方改革については非常に幅広な議論が展開をされていくと思います。

 先日の大臣からの御所信の中でも、たしか九項目ぐらい具体的な事例として挙げられていたかと思います。一個一個議論していると時間がなくなってしまいますので、きょうは一個だけ。

 その中に、外国人材受け入れの問題というのが、九項目あるうちの九項目めに掲げられていました。

 これは、本当はかなり深い議論だと思いますので、また改めてどこか別の場で議論させていただきたいと思いますので、きょうは、さわりだけ議論させていただきたいと思います。

 外国人材の活用の拡大ということを盛り込まれているということなんですが、では、どの分野で、どういう人数、どのくらいのボリューム感で外国人材をこれから受け入れようとされているのか、この事実関係をちょっとまず教えてください。

加藤国務大臣 先ほど委員から、働く人の人間的な部分という御指摘がありました。

 今回の働き方改革の目的でも、働く方によりよい将来の展望を持っていただくというところに主眼は置いてあるつもりであります。それから、やはり生産性の向上等が行われなければ、処遇の改善とかそういったことにもつながっていかない。継続的な部分、その辺も申し上げて、今委員御指摘のことは十分踏まえながら、我々は考えていきたいと思っております。

 それから、外国人材のことでございますけれども、これは、これまでも専門的な技術を持った外国人の受け入れ促進が図られてまいりました。そして、現在、外国人の技能実習に係る法律案も出させていただいておりますので、こういった法案の成立に向けて、政府としては努力をしていきたいと思っております。

 その上で、将来的な外国人材の受け入れのあり方については、現時点で申し上げられることは、真に必要な分野に着目しつつ、総合的かつ具体的な検討を進めていく、こうした方向性を申し上げているということでありまして、今、それ以上の議論に入っているわけではございません。

神山(洋)委員 詳細な議論はまた改めて別の場でと思っておりますが、そろそろ深くいろいろ考えなきゃいけない時期に来ているのかなというふうにも思うわけです。

 今大臣御指摘いただきました領域は、今でいう、この添付資料二番でつけていますが、技術、人文知識、国際業務というあたり、もしくは技能一・七%、ここに含まれる方々の部分で先ほどお話をされたかなと思うわけです。

 一方で、このグラフを見ると、左上の方ですが、技能実習一号、二号、それぞれで八・三%、結構なボリュームにもうなっています。

 いずれにしても、就労を目的にするのか否かという法務省、入管的な基準はともかくとして、相当数の外国人の方々が我が国の中で就労し、そこで所得を得、生活をし、場合によっては、そこで出産、子供が生まれというプロセスが確実に始まっているんだと思うんです。

 単に労働力とか経済の生産性、労働力コスト云々という話ではなくて、そういったところまできちんと目を向けていかないと、これは後になってからではちょっと取り返しがつかない可能性もあるなという問題意識のみ、この場では、もう時間もありませんので、お伝えをさせていただきます。

 本当は、まだ加藤大臣にも幾つかお伺いをしたかったんですが、丸川大臣にもお待ちをいただいていますので、最後、残りの時間でサイバーセキュリティーの話をさせていただきたいと思います。

 石原大臣、加藤大臣、もしお時間、よろしければ結構です。ありがとうございました。

 それでは、お待たせをいたしました。先ほどの緒方委員の議論も下敷きにしながら幾つか議論をさせていただきたいと思っていますが、緒方委員のように、細かい条文云々、そういうお話ではありませんので、そこは御安心をいただければと思います。

 ただ、最初に話をされていた自衛権の話、ここはすごく私は大事なことだと思っています。先ほどの御答弁を踏まえれば、サイバー領域における自衛権をではどう考えるのかという話は、実はこの場だけではなくて、私はこれまで何度もほかの委員会も含めて議論をさせていただいていますが、要は、世界各国もまだ決めていないので我が国も決めていません、必ずそういう話になるわけです。しかし、私は、それで本当にいいんですかということを実は大臣に問いかけをさせていただきたいんです。

 いざ本当に事が起きたときに、基準も決まっていないという中で、では、どうやってその自衛権を発動する必要が、しなきゃいけない領域になったときにできるのか、何をもとにそれを発動するという判断をするのか。それは、恐らくそういった判断をされる、内閣総理大臣はもちろんではありますが、丸川大臣も御担当の担務を持っていらっしゃるわけですから、極めて厳しい立場に置かれると思うんです。あらかじめ基準というものを私は定められておくべきじゃないか、こう思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。

丸川国務大臣 武力攻撃事態かどうかを判断するというのは、極めて総合的な判断であろうと思います。

 私どもがサイバーセキュリティーの分野で今実際に行っていることというのは、こうした判断を支える情報収集、また、これはサイバーの面でございますが、実際に今起こりつつあることに対して対処する、そのためのCYMATを運用しているということでございます。御指摘の議論については、今後、政府全体として取り組んでいくべきことかと承知をしております。

神山(洋)委員 政府全体として取り組んでいただき始めてはや何年なのかはわかりませんが、確かに、国際社会の中でのサイバーアタックとは何ぞやという定義が定まっていない、これは確かに事実でありましょう。ただ、だからといって、では我が国がそれに対してそれを待っているというスタンスでいいかといったら、これは私は違うと思うんです。ぜひ、今御検討いただくというお話もいただきましたし、問題意識を強く持ってやっていただければありがたいなというふうにも思います。

 なぜその話を申し上げたかというと、オリンピックに向けて、サイバー攻撃であるとかサイバーセキュリティーの部分をということで強調されていますが、そもそも論を言えば、このサイバーセキュリティーの領域は、オリンピックがあるから云々ではないと私は理解をしています。オリンピックがあるがゆえに狙われやすくなるというリスクを考え、そこに対してプラスオンのアプローチをとっていく、これはもちろんそのとおりでいいんですが、そもそもを言えば、オリンピックがあろうがなかろうが、そういう世界の話だと私は思っています。

 一つここで問題にしたいのは、その危険性、先ほど自衛権の話をしましたが、自衛権の発動をも考えなければならない可能性がこのサイバー領域の中で、サイバー攻撃の中で、続々と事例が出てきているという、ここにやはり我々は着目をしなきゃいけないんだと思うんです。

 ここでちょっと議論したいのは、制御系システムの話です。古くは、制御系システムという、要は、いろいろな公共インフラであり、重要インフラという言い方を多分政府はされていると思いますが、それを今では全部システム化されているわけです。そこが狂うと、人命も含めた多大な損害がある、これは容易に想像ができるわけです。

 かつてでいえば、これは一番最初にそこに具体的な事例があらわれたのはイランでした。スタックスネットと言われているものです。ずっとそれからいろいろな進展があるのかないのかというような議論がありましたけれども、大臣、恐らく御存じなんだと思いますが、昨年、電力の領域で初めてと言ってもいいかと思いますが、大規模なサイバーアタックが、これはウクライナでしたけれども、発生をしたわけです。

 スタンドアローンの制御系システムに対して、では、どういう形でマルウエアを埋め込むのか。かつてのスタックスネットのときはUSBだと言われていました。では、今はどうなのか。わかりません。

 細かい事実関係は、表に出てくる部分、出てこない部分、あると思いますが、大事な事実は、電力に対してのサイバーアタックが既に現実のものとなったという、この現実を見詰めなきゃいけないんだと思うんです。

 直近、きのうだったか、世耕大臣が電力関係の会社を集めて、ああいうことは二度とないようにしてくれと言ったなんという報道を見ましたけれども、東京でも大規模な停電が一時期起きました。あれはそういう理由ではありませんでしたが、いざそういうことがあったときに引き起こされる社会的な混乱、金融面もあるかもしれません、それを考えたときに、さっき大臣のおっしゃったような悠長なことを言っていられないと私は思うんです。

 その意味で、もっとスピーディーにやはりここは主導していただいた方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。

丸川国務大臣 全く委員の御指摘のとおりだと思います。

 我々が認知をしているよりもはるかに速いスピードで、システムをダウンさせるという意味で、アタックなのか、それともそもそもそのシステム自体の課題なのかということは別として、非常に大きな混乱を実社会に与えるだけのシステムに対する依存ということは、もう皆様御承知のとおりでありますので、私どもが今取り組んでいるスピード感で本当にいいのかということは、私自身が一番懸念をしている点でもありますし、それは非常に大きな課題として、念頭に置いて取り組んでまいりたいと思っております。

神山(洋)委員 ぜひ、スピードアップをしていただきたいと思います。

 最後に一点。

 先ほどの緒方委員との議論にも少しだけそんな話が出てきたかもしれませんが、サイバー領域の中で、では、実際にサイバーアタックがあった、もしくはありそうだ、起こりそうだというときに、一つ問題になるのは、これは私、昔、中谷大臣と予算委員会でも議論したんですけれども、いわゆる専守防衛の問題です。

 我が国は、軍事領域の中では、ミリタリーの世界では専守防衛ですという原則を打ち立てていて、これは今でも変わっていないはずです。サイバーの領域で果たして専守防衛ということが成り立つのかというのは、実は、関係者の中でもいろいろな議論がこれまでされてきています。

 結論から言えば、私は技術的な細かいことはわかりませんが、少なくとも、専門的なことをこれまでずっと詰めてこられている方々に共通して言えるのは、専守防衛がサイバー領域の中で成り立つかといえば、無理だというお話をいただいています。

 ここは、制度も含めた技術的な面も兼ね合わせた意味で検討が必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

丸川国務大臣 この点についての議論は、全体的に取り組んでいかなければならないと思います。恐らく、世界的にまだ議論をしているところもあろうかと思います。とりわけ我が国においては重要な課題であると思いますし、少なくとも、今、現時点で言えることは、私どもの政府が判断をする上において必要な情報を滞りなく私どもが用意をしておくということだろうと思います。

神山(洋)委員 国によりますが、例えばアメリカはそんなことは問題にならないんですよ、専守防衛じゃありませんから。要は、兆候をつかんだら、そこのサーバーなりなんなりを先制攻撃できるわけですよ。

 我が国の議論の中にも、核の話を含めて策源地攻撃という話があって、それがどこまでできるかという話はいろいろありますが、しかし、サイバーの領域では、まさにさっき申し上げたとおりで、電力を含めた重要インフラを含めたさまざまなリスクがそもそも顕在化をしているという現状の中で、いざそのことを情報としてつかみました、兆候があります、オリンピックを狙った大規模なサイバーアタックが起こりそうだ、それを何とかとめなければならないというときに、では、どういう判断をされますかというときです。

 先ほどの自衛権の定義、ありません。そもそも、我々から起こそうとしているアクションは専守防衛の領域で大丈夫なんだろうかという議論を含めて、きちっと精緻な制度、仕組みをあらかじめやっておかない限り、そのときに判断できずに、最終的に国民に、国家に大きな損害が起こるということになりかねませんので、スピーディーにぜひそこの対応をしていただきたいというお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 以上です。

秋元委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。

 きょうは、一時間も質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 お忙しい大臣にたくさん来ていただきましたので、順次、質問が終わりましたら御退席いただいて結構でございますし、また、石原大臣と加藤大臣、ちょっと後の方になりますので、もしよろしければ、最初は席を外していただいても結構でございます。三十分ぐらいは質問いたしませんので。

 実は、きょう大変盛りだくさんになりましたのは、私は内閣委員会をずっとやっておりますけれども、前回質問したのは四月二十七日、半年ぶりでございます。なかなか国会の会期も、今国会、さきの国会も、参議院選挙もあったということもございますけれども、ぜひ会期をもう少しとっていただいて、あるいは、閉会中審査なども活用して、ぜひ質問の、国会審議のチャンスというものをふやしていただけたらということをまずお願いしておきます。

 それでは、まず最初に、国家公安委員長松本大臣にお伺いいたします。

 先般、沖縄で、大変残念な、言語道断なことが起こりました。機動隊員が、あってはならない差別的な発言をされたという事案、かなり新聞やテレビでも大きくトップニュースで報じられた。私もその映像を拝見いたしましたけれども、本当に許しがたいものを感じました。

 改めて、警察のトップであります国家公安委員長から御所見を伺います。

松本国務大臣 今般の大阪府警察から沖縄県警察に派遣された機動隊員の発言は、まことに不適切でございまして、極めて遺憾と受けとめております。

 今後、このような事案をなくし、適切な警備活動を行っていくよう警察を指導してまいりたいと存じます。

高井委員 実は、これだけではなくて、沖縄タイムスによれば、別な機動隊員からも別な差別的な発言があったということもお聞きをいたしておりますし、また、十月二十日の沖縄タイムスなんですが、翁長知事が那覇市長だった二〇一三年一月に東京銀座をデモ行進したとき、「沿道からは「非国民」「売国奴」などの罵声が上がり、「中国のスパイ」「日本から出て行け」などの暴言が飛び交った。 底流には沖縄を見下し、「植民地」扱いする意識がいまだにあると考えざるを得ない。だが、これだけではない。基地問題をきっかけに出てきた沖縄バッシングの空気が渦巻いている背景もある。」こういう厳しい御指摘であります。

 菅官房長官、沖縄の基地問題の担当大臣としてお伺いしたいのでありますが、この話をするときによく話題になりますけれども、沖縄のさきの大戦のときに、沖縄県民二十万人の方々が犠牲になった。そして、そのときの海軍中将、大田実中将が自決をされます。その一週間前の六月六日の日に海軍次官に宛てた電報、これが「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」、こういう電報を打って自決をされた。そして、それを小渕元総理が、二〇〇〇年の沖縄サミットを決定した際に、この思い、沖縄への恩返しなんだ、そういうふうに言われたと言われています。

 今、私は、やはりこの気持ちが、政府、あるいは政府だけじゃなくて国民の皆様の中にも失われているのではないかということを、この沖縄の基地問題の報道を見るにつけて、いつも感じるわけでありますが、菅官房長官、お考えはいかがですか。

菅国務大臣 私ども、政権の座に着いてから、沖縄の基地負担軽減、できるものは全てやる、そして目に見える形で実現する、これは総理の強い指示であります。私は、その命を受けまして、沖縄の西普天間住宅地区の返還を実現することができました。

 そして、今問題になっている北部訓練場のことでありますけれども、実は、これについては、今から二十年ほど前、SACO合意で、ここは基地返還することが日米の間で決まっているところです。そして、地元、二つの村がありまして、国頭村と東村、ここは返還後の跡地利用というものを強く要望していまして、それは、国立公園にぜひ指定をしてほしい、そしてまたその暁には世界自然遺産に登録したい、それについて協力してほしい、ここは強く言われています。

 それと同時に、沖縄にある基地全体の約二〇%に当たる部分が、これは北部訓練場の約半分で二〇%になる、それが返ってくるわけでありますから、そういう意味で政府としては全力で取り組んでいるところであります。

 そして、沖縄全体について、今委員から御指摘がありました、沖縄に米軍基地が数多く存在をしている、このことも事実です。

 そしてまた、辺野古移設問題でも、これについても、約二十年前に、普天間飛行場の危険除去をし、そして抑止力を考えたときには、その固定化は避けるということで、まさに日米で合意をして、そのことを地元の県知事も市長も受け入れをし、それを閣議決定して進めていることであります。

 結果的に、辺野古移設が完成をすれば、沖縄に今駐留すると言われていますアメリカのいわゆる軍人、アメリカ軍、この約三分の一、二万八千人のうち九千人の方が、沖縄はもちろんですけれども、県外、日本国外に出ていくということになっていますので、そうしたことを政府としては誠心誠意、丁寧に説明をさせていただきながら、この沖縄問題には今携わっているところであります。

高井委員 政策の面はわかりますが、今私が御質問したかったのは、政府の職員ですらこういう発言が出る、そして国民の皆さんに対しても、やはりそういう、もっと沖縄に寄り添った、そういう雰囲気というか風土を醸成していく、これも官房長官のお務めではないかと思いますが、改めて、そういう観点からいかがですか。

菅国務大臣 約束したことを、できるだけ説明をさせていただきながら、まさに沖縄の県民の皆さんに寄り添う思いの中で一つ一つ着実に実行していく、そのことが極めて大事だというふうに思っています。

高井委員 そのことがやはり、沖縄県知事初め沖縄県民の皆さんからのコメントでは、なかなか受け取られていないということだと思います。

 改めて、この沖縄サミットの、小渕恵三元総理は出席できなかったわけでありますが、そのとき決めたことは本当に大英断だったと思います。そういった気持ちをもう一度、もちろん政府が中心となっていきますように、ぜひそこはくれぐれもお願いいたします。

 それでは、松本大臣は結構でございます。

 次の問題に移りますが、次は、天皇陛下の生前退位の件でございます。

 先日、岡田委員がかなり詳しく質疑をいたしましたので、私からは少し観点を変えて御質問いたしますが、宮内庁の長官の人事でございます。

 風岡長官が、九月の二十六日ですか、時事通信の配信によれば、もう事実上の更迭だ、そういう記事。政府関係者はということで、こういう会話の記事を書いています。「「お気持ち表明に関し、誰かが落とし前をつけないと駄目だ」と語った。」と。あるいは、「宮内庁に対し、「陛下が思いとどまるよう動くべきだった」」と。

 この政府関係者が誰かというのは聞いても仕方ありませんし、事実かということを追及してもしようがないんですが、しかし、一般的にやはり春が通例と言われる風岡長官がかわって、そして、山本次長が昇格するのはいいとして、その次長に西村内閣危機管理監が官邸から直接行くというのはかなり、極めて異例だということでありますが、この人事は一体どういう意図なんでしょうか。

菅国務大臣 適材適所の人事であります。

高井委員 なぜこの時期だったんでしょうか。

菅国務大臣 通例ですと、七十歳を迎えますと、そこでやめられるのが今までの例であります。ですから、その七十を迎えられた中で、全体のことを考えられて、そうした、御本人がやめると言っても、全体のことを考えた上で当然人事は行われる、こういうふうに思います。

高井委員 非常に、やはりそのタイミングといい、適材適所とおっしゃいましたが、いろいろな臆測を生む人事ではないかと思っております。

 この問題に限らず、菅官房長官、非常に実力ある官房長官で、私も役所の出身でございます、総務省出身なんですが、やはり官僚の皆さんは、菅さんの人事というものに非常に気を使うというんでしょうか、そういうところがあると思うんですね。

 もう一つ。きょうは法制局長官もいらしていただいていますね。法制局長官人事も、これは少しさかのぼりますけれども、歴代、法制局次長が長官に昇格するというのがもうずっと続いてきていた。これが、ある意味、法制局の権威を保ち、中立性、独立性というものを保ってきたと思うんですが、小松さんが外務省から突然長官に昇格をするという人事がありました。

 当時、横畠長官は次長だったわけであります。普通、当然、次長が、過去何代にもわたって長官に昇格をしていたときに、突然、外務省から長官が来たんですけれども、長官、そのとき、ちょっとおかしいと思いませんでしたか。

横畠政府特別補佐人 突然のお尋ねでございますけれども、人事のことでございます。これはもう人事権者において、まさに適材適所の観点で適切に発揮すべきものでございまして、私の立場から何か意見、感想を申し述べることはございません。

高井委員 法制局長官としてお伺いいたしますけれども、法制局の独立性といいましょうか、役割は、かなり特殊な役割だと思うんですね。これを全うするのに、こういう人事が行われることで、それは担保されるんでしょうか。その点、お聞かせください。

横畠政府特別補佐人 まさに先ほどお答えしたとおりでございまして、個別の人事について何か申し上げるという立場にはございませんが、前任であります小松法制局長官でございますけれども、言われるとおり、内閣法制局における勤務はなかったわけでございますけれども、国際法の分野ではプロでございまして、高い専門性、識見を持っておられたわけでございます。

 そういう意味で、リーガルマインドというのは持ち合わせておられたわけで、法制局に来られてからも、もちろん我々もサポートいたしましたが、法制局長官として立派に仕事をされていたというふうに思っております。

高井委員 リーガルマインドを持っていたぐらいで、法制局の長官という、最も法律の専門家としてのトップの立場というのは、私はいかがかと思いますが、これ以上長官にお聞きしてもお答えにはなれないと思いますので。

 実は、こういう質問をさせていただくのは、私は、役所に入ろうと思ったのは、「官僚たちの夏」という城山三郎さんの本を中学校のときに読んで、官僚になろうと思いました。その中にこういうシーンが出てくるんですね。主人公の事務次官が、時の大臣そして総理に対して、総理が役所の人事に口を出すとは何事だと言う、そういうシーンがあります。正直それは言い過ぎだろうと思います。しかし、私が入省したのは平成五年、一九九三年ですが、その前までは、かなりそういう、役所の人事に対して政治が、自律的に、自主的な判断で余り介入しないということはあった。その微妙な緊張関係というのは、私はあってもよかったのかなと。

 もちろん、政治主導ということは、我が民進党、民主党のときも言ってまいりましたけれども、今のこの安倍政権、恐らく菅長官がやっておられる人事というのは、さすがにそれを逸脱しているのではないか。制度上は、それは官房長官が全部決めていいのでありますけれども、しかし、そこにやはり何らかの抑制的な、自制的なものがあって政治家と官僚との関係というのは保たれ、そして、「官僚たちの夏」で描かれたような、あの高度成長期、日本が成長してきた姿というものがあったのではないかと思います。

 私は、今のこの人事は、非常に役所の皆さんは戦々恐々としてしまう、やはり意見具申もしにくい、正論も言いにくい、イエスマンがどうしても多くなってしまう、そういう傾向を生んでしまう原因になっていると思いますけれども、菅長官、いかがですか。

菅国務大臣 私は全く考えていません。

 高井委員はこの場で何回となく質問されました。非常に改革意欲に富んで、これからの将来を考えながら、さまざまな建設的な質問をされていたというふうに思っています。現に、委員は、族議員と組織、省益を守るためには手段を選ばず、そういうものを打ち破るために維新から立候補された、そういうふうに私は承知をしております。

 今の人事で役所の人たち、政治は、私どもは国民の皆さんから審判を受けて政治家になっています。そして、全体を見ながら、私たちの政策というのがありますから、政策をやはり実行に移していくに、それぞれの官僚の皆さんのさまざまな意見を聞くのは、これは当然のことです。私どもはしっかり聞きながら、ただ、方針が決定をしたらそれには従ってもらう、それが私ども政治の責務だというふうに思っています。

 今、役所の人が萎縮しているというような話がありましたけれども、それは自分の自信がないからじゃないでしょうか。私は、課長も含めて、幅広く意見は客観的に聞きます。その上で判断します。

高井委員 人事権というのは、役所に限らず、どの組織、会社でも強大な、まさに組織を掌握するための最大の手段でありますから、それを官房長官がうまく巧みに使われているということは、ある意味、評価もいたすわけであります。

 しかし、やはり人事権の濫用ということは、これは組織をおかしくいたしますので、これ以上聞きませんけれども、私の考えであり、多くの国民はそう思っている。新聞、テレビで官房長官も耳にするでしょうから、わかっているとは思いますけれども、ぜひ自制的にしていただけたらというふうに思います。(菅国務大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)はい、では、どうぞ。

菅国務大臣 私は、高井委員と本当に考え方は近いと思っていたんです。

 今、役所の人事のことですけれども、例えば、訪日外国人観光客が一挙にふえたじゃないですか。これは今までなぜふえなかったか。それは法務省と警察庁が大反対したからですよ。少なくとも私たちは、こうした訪日観光客をふやすために何が必要かと考えました。結果的に、ビザを緩和することですよ。これに対して両省庁がずっと反対していたわけですから。

 例えば、こうした人たち……(発言する者あり)いや、違う。これを、私どもは一挙にビザを緩和したわけです。例えば、そういうものに従来どおり反対する人、賛成する人、どっちを選ぶかということは、それは政治が判断することじゃないでしょうか。

高井委員 冒頭申し上げましたとおり、全て役所に人事不介入というのはおかしいし、政治主導というのは我々民進党も掲げてきたテーマでありますので、本当にそのバランスが大事だということだと思っております。この話はこのくらいにさせていただきます。

 次も官房長官にお伺いなんですけれども、新潟知事選挙が終わりました。その選挙の前に、泉田現知事が挨拶回りをするということで、官房長官と二階幹事長にアポイントをとっていたけれども、急遽総理が会うということになったということでございますが、これは官房長官も同席されたんでしょうか。

菅国務大臣 私は同席していません。私にはアポイントは入っていませんでした。

高井委員 同席されていないというなら、何を話したかというのを聞きたかったんですが、それはお答えいただけない。

 ただ、我が党の江田憲司代表代行が十月十四日の記者会見でこう言っています。泉田さんが急遽、会う予定はなかったんだと。これはもう泉田さんと直接、江田憲司さんは経済産業省の先輩後輩ですから、聞いたということでありますが、突然総理と会ったと。その場に、総理のところに会いに行ったら、泉田さんが知事選挙に立候補したときの自民党のお歴々が全員顔をそろえていた、まるで圧力をかけられるような面々だった、こういうことがあったということであります。菅長官が同席されたのであれば、この点、聞きたかったわけでありますが。

 私は、今回のこの知事選挙の結果、やはり非常に当初の予想を覆す米山さんの勝利であったと思いますし、また、その前、鹿児島県では三反園知事、いずれも脱原発、原発の再稼働に対して非常に慎重な立場をとる知事が誕生しております。これが私は民意だと思います。

 国民のさまざまな世論調査でも原発に対しては大変厳しい民意がありますけれども、この流れでございますので、官房長官からぜひ、この民意について、どのように受けとめておられますか。

菅国務大臣 政府として、原発再稼働についてはいかなる事情よりも安全性を最優先して、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、そして世界で最も厳しいと言われるレベルの新規制基準に適合するものと認めた原発を、地元の理解を得ながら再稼働する、これが政府の基本姿勢であります。このことには変わりはありません。

高井委員 私はこれは民意だと思いますので、引き続き、経済産業大臣初め政府の皆さんと議論していきたいと思います。

 もう一問、官房長官、最後でございますが、総理の解散権について。

 官房長官は記者会見で繰り返し、総理の専権事項だというふうにおっしゃっていますが、解散権というのは総理の専権事項なんでしょうか。

菅国務大臣 そう思っています。

高井委員 内閣法制局長官、解散権というのは総理の専権事項なんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 専権事項と一般に言われておりますが、衆議院の解散の憲法上の根拠ということでありますれば、憲法第七条の規定により、天皇の国事に関する行為とされておりまして、実質的に衆議院の解散を決定する権限を有するのは、天皇の国事に関する行為について助言と承認を行う内閣であるというふうに解されております。

高井委員 つまり、六十九条は不信任の場合ですからもう明確なんですが、七条の規定、天皇の国事行為に対する助言と承認が、つまり、総理の一存で決めることができると。

 総理がたった一人で、しかも、何の条件もなく、国民がどんなに反対していても決めることができる、そういうふうに憲法第七条は解釈できるんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 解散権の行使についての制約条件というお尋ねだと思いますけれども、衆議院の解散は、先ほどお答えしたとおり、実質的には内閣に与えられた権能であって、いかなる場合に衆議院を解散するかは、内閣が政治的責任において決すべき事柄であり、憲法上はこれに関する制約は規定されておりません。

高井委員 確かに、どういう条件でということは何も書いていないわけですが、しかし、だからといって、じゃあ何でもやっていいんだということは、私は、憲法であれ法律であれ、そういう解釈ではないと思うんですね。

 これは、朝日新聞に、野中さんという政治学者から、無制限な解散権というのは今や時代おくれだ、国民に深刻な悪影響をもたらす、先進主要国では解散権を制約してほぼ使えないようにするというのが民主主義の潮流だと。日本と並んで、首相に強い解散権が残されてきた例外的な国としてイギリスがありましたが、二〇一一年に、議会が内閣不信任したとき以外にはほぼ解散できないとする法律が成立したと。私は、これがやはり先進主要国の流れではないかと思っています。

 一回の選挙に六百から七百億がかかるわけであります。今、東京でさんざん話題になっているボートの会場変更、これは五百億がいいか悪いかということで大問題になっていますけれども、それを上回る金額が一回の選挙であるわけです。

 そして、この間、日本で解散、平均二・五七年、二年半だそうであります。これを、もし仮に、戦後、任期満了まで選挙をやらないときと二・五七年でやったときを比較しますと、実に七千億、税金が余計に使われているということであります。

 今、国民の調査を見ても、なぜ解散するんだ、何で任期までやらないんだと。私も地元に帰ると言われます。もっと働けよ、何でそんなに選挙ばかりやっているんだというのが本当に民意だと思います。

 ぜひ、官房長官、専権事項などとおっしゃらずに、内閣が決めるんでしょうけれども、総理が一人で決めるんじゃなくて、内閣でしっかり、いろいろなことを官房長官は総理に助言されていると思いますので、この件についてもぜひ国民の声を伝えるべきではないかと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 まず、衆議院の解散権というのは、内閣が、国政上の重大な局面等における、主権者たる国民の意思を確かめる必要があるような場合に、国民に訴えて、その判定を求める、このことを狙いとするというふうに思っています。そしてまた、立法府と行政府の均衡を保つその見地から、憲法が行政府に与えた国政上の重要な権能であるというふうに考えています。

 さらに、いかなる場合に衆議院を解散するかは、内閣がその政治責任で決すべき事柄だというふうに思っています。ですから、党利党略のために衆議院を解散するようなことは、そこは考えられないというふうに思います。

高井委員 まさに、今読み上げていただいたことが、そうなんだと思います。ですから、やはりそこは内閣として、しっかりと国民の声も聞きながら、私はやはり国民だと思いますよ。国民が望めば、いろいろな問題で、これは国民の信を問わなきゃいけないというのであれば、解散することはやぶさかではありませんけれども、やはり、これだけの国民の声というものはしっかり踏まえて、漏れ聞くところでは、官房長官は余り解散には前向きじゃないと聞いておりますので、ぜひ、しっかりと国民の声を総理にも伝えていただきたいと思います。

 それでは、官房長官、ここで結構でございます。

 続きまして、公文書管理、山本大臣にお尋ねをいたします。

 これは、前回三月二十五日の日に、前の河野行革担当大臣に、私、二回、その前の三月十六と二十五と、続けてお聞きをしました。

 政官の接触記録、政治家と官僚の記録が、さまざまな、国家公務員改革基本法や公文書管理法等で記録を残すということが決まっているにもかかわらず、何と、毎日新聞の調査、情報公開請求では一件もなかった、この記録が。政治家と官僚の皆さんが接触していないわけがなく、つくっていない根拠というのもないので、私が、最初は、せめて河野さんの所掌だけでいいから出してくださいと言ったら、それも何か、段ボールを何箱もひっくり返さなきゃならないので、そんなに簡単には出ませんと。だったら、期間を区切って、一カ月とか三カ月と区切って出せませんかというふうにお聞きしたら、件数というか、接触したという記録は何件あるという答えだったんですけれども、じゃ、どういうやりとりだったかという記録を出してください、あるいはその記録をつくったメモが何件あるかだけでも教えてくださいと言っても、出てこずというか、それについてはちょっと検討させてくださいと言ったまま、国会が閉じてしまったわけであります。

 それからもう半年たっているんですが、改めて、山本大臣、これは全部出せといっても難しいでしょうから、せめて河野大臣に、そのとき、役所の皆さんにも、ちゃんと後から聞きますから用意しておいてくださいねと私は言ってありましたし、いや、それでもというのであれば、山本大臣が着任してから、まだわずかな日数でありますが、それでもいいから、ちゃんとやりとりの記録がどれだけあるのかということを出してくれということをきのうも通告をしております。昼過ぎには通告しておりますけれども、山本大臣、いかがでしょうか。

山本(幸)国務大臣 高井委員も御案内のとおり、国会議員と行政官庁であります各府省との間では、日常的にさまざまな接触が行われております。

 仮に特定の省庁や部局に限定しても、本年四月以降、もしくは八月の内閣改造以降にそのような接触がなされた記録の件数については、膨大な量の文書の中からそれが記録されていると思われるものを確認する必要があるため、回答することは困難であります。

 その上で、一つの御参考として申し上げますと、議員が御指摘の政と官の接触記録に合致するものとは言い得ないと考えておりますが、対象を限定して調べた結果、例えば、平成二十八年十月一日から十月二十日、昨日までの間に、衆参の国会議員から内閣府、内閣官房の国会連絡室に要求があった規制改革、私の所掌のところでありますが、に関係するいわゆる資料要求やレクの件数は五件程度でありました。

 また、例えば、各党の部会などの会議に出席を求められた件数は五件程度でございました。そういうことです。

高井委員 いや、前回、河野大臣もそうだったんですけれども、その件数じゃないんですよ。資料要求があって、それを記録にしているかという質問です。五件とも記録にしているということでよろしいんですか。

山本(幸)国務大臣 河野大臣のときもそうですが、各省等の公文書管理法及び関係部局等に係る規則に基づいて作成した記録というのは、限定的に調べた範囲では、いずれもゼロ件ということであります。

高井委員 だから、なぜつくらないんでしょうかね。

 資料要求とかレク要求で接触をして、そこでやりとりがあるわけです。私も役所で働いていましたから、やはり必ずメモはつくるんですよ、上司に報告するために。それが、この公文書管理法なり国家公務員改革基本法の、その記録に残すべきという資料に該当しないということはどう考えてもおかしい、ゼロ件という回答はどう考えてもおかしいと思うんですけれども、それはなぜゼロ件なんでしょうか。

山本(幸)国務大臣 平成二十四年十二月の閣僚申し合わせ、「政・官の在り方」というのがございますけれども、そこで記録を保存することとされているのは、国会議員等からの接触のうち、個別の行政執行に関する要請、働きかけであって、政府の方針と著しく異なる等のため、施策の推進における公正中立性が確保されないおそれがあり、対応が極めて困難なものということでありまして、これに該当すれば記録をしなければいけませんけれども、これに該当する文書は存在していないということであります。

 そうした接触に該当しない場合においては、記録の作成、保存等は、大臣等の指揮監督のもとに適切に対処することとされておりまして、いわゆる通常の政官の接触の記録や意思決定に至る過程等を合理的に跡づけるものに当たらない記録の作成までが義務づけられているものではございません。

 以上の結果として、公文書管理法等に基づき作成した文書、記録がゼロ件になったものと考えております。

 いずれにせよ、記録の作成、保存等については、今後ともこれらの規定にのっとって適切に対処していく所存であります。

高井委員 今の解釈というか規定だと、今後もずっとゼロなんですよ。もうつくらないということで、こんな法律はそもそもない方がいい、つくる必要もなかったということになりますので、ここは、ちょっともう、きょうは次の質問をしたいので、引き続き、私は、これは本当におかしい、国民の知る権利、情報公開にとって。そんなに別に、公開して何か問題になるようなやりとりを我々政治家と役所の皆さんはしていませんので、ぜひここはきちんと記録をとっていただくように、引き続きこの議論は続けてまいりたいと思います。

 きょうは、法制局長官にもこの件について、特に、法制局が文書を残していないということ、集団的自衛権の合憲の判断という、国民が一番知りたいことが何も残っていないということは、私はこれは大問題だと思っていますが、ちょっときょうは時間がありませんので、この件の質問はこれで終わらせていただきます。

 山本大臣と長官、結構でございます。

 それでは、加藤大臣、お待たせいたしました。

 一億総活躍社会の関連でございますが、まず、少し具体的なことをお聞きいたします。これは厚労省だと思うんですけれども。

 実は、学童保育の話なんですが、私の地元岡山県で、学童保育連絡協議会が、発達障害を持っているお子さんが学童保育に結構いらっしゃるということで、岡山県で調査しました。

 明確に発達障害のお子さんは七%、それから、疑いがあるも含めると一三%という数字で、これは、学童の支援員さん、ただでさえ重労働なのに、発達障害のお子さんのこともケアするとなると相当大変だということで、実は、岡山県が全国で初めて、作業療法士さんに学童保育に入ってもらって、いろいろアドバイスをするという取り組みをやって、結構全国でも注目されて、全国から視察も殺到しているというような状況なんですが、いかんせん、作業療法士さんの数がそもそも少ない。

 やはり、アメリカとか韓国なんかは、学校に作業療法士さんが配属されて、きちんと職員として配置されている。そうなると、仕事があるから作業療法士になろう、あるいは、作業療法士にもいろいろな分野があって、発達障害のことを一生懸命やろうという専門家がふえるんですが、日本の場合、職場がないから育成も難しいということであります。

 ぜひ、これは厚労省に伺いたいんですが、放課後児童クラブの国庫補助に、学童保育と作業療法士などのリハビリ職との連携費用、これを創設していただけないでしょうか。あと、あわせて、今申し上げた作業療法士さんの育成、特に発達障害を専門とする育成策というのもお願いできないか。

 先般、岡山県学童保育連絡協議会の糸山会長が、厚生労働大臣宛てに、実際には橋本副大臣に、同じ岡山ですけれども、御要望に行ったということであります。加藤大臣も岡山でございますので、ぜひ取り組んでいただきたいんですが、厚生労働省、これはいかがでしょうか。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 放課後児童クラブにおきましては、療育手帳や身体障害者手帳などをお持ちのいわゆる障害児の方以外にも、お話のとおり、発達障害の児童も含めまして、できる限り受け入れに努めているところでございまして、現在、全部のクラブの中の半数以上はそうした受け入れを行っているところでございます。

 今、私どもといたしましては、障害児を受け入れているクラブに対しましては、専門的な職員が必要だということで、その配置のために必要な経費を補助しております。

 今御紹介いただきました新たな取り組みでございますが、大変有効な支援方法だというふうに私どもも考えております。

 これにつきましては、現在、発達障害児に関する専門家が子供やその親の集まる場所や施設を巡回して助言を行うといった支援専門員整備事業というのがございまして、その対象にもなり得るのではないかなというふうに考えているところでございます。

堀江(裕)政府参考人 失礼申し上げます。

 発達障害支援を担う作業療法士をもっとふやすべきではないかというところで、担当させていただいておりますので、障害保健福祉部長の方から補足させていただきます。

 発達障害児一人一人の特性に沿った支援を行うということで、委員御指摘のように、作業療法士のような専門的な観点からの指導助言というのが非常に重要だというのは、私どもも認識を共有しているところでございます。

 今、審議官の方から少しございましたけれども、厚生労働省では、発達障害に関する知識を有する作業療法士などの各種の専門家が、放課後児童クラブ、保育所等を巡回する巡回支援専門員整備ということで、平成二十三年度から行っております。それは要するに、各市町村で決めて、保育所にこういう人を送ろうというようなことを発達障害に関係してやっているものでございますけれども、平成二十七年度には、全国で二百十七の市町村で実施されております。

 それからさらに、その巡回支援専門員を対象とします発達障害支援者研修を、平成二十五年度から国立リハビリテーションセンターにおいて実施している。ただ、現状におきまして、平成二十八年度の特に十月のあたりで受講していただいた四十二人のうちに、作業療法士の方は一人しかいらっしゃいません。

 ただ、委員の御指摘のようなことで、作業療法士、例えばその子に合ったような遊び方を教える、それから、それを親にもわかってもらって家でスムーズにやっていただくというようなことが非常に重要かなとも思いまして、日本作業療法士協会にも、より積極的な参加を呼びかけていけるかなというふうに考えております。

 こうしたことで、作業療法士等の専門家の確保、育成を、発達障害の分野で活躍いただけるような形で進めていきたいと考えております。

高井委員 本当にこれは非常に有効だと思いますので、私も視察に行きましたけれども、岡山県が全国で先駆けてやっていますので、ぜひ橋本副大臣、加藤大臣の地元岡山でもありますので、ぜひ見に行っていただいて、現場を見ていただけたらと思います。

 それではもう一つ、学童保育の支援員、指導員、一般的にはお子さんたちのですね、その方々が非常にやはり処遇が、給与が低くて、時間も中途半端な時間のためになかなか集まらないし、集まってもお給料が安いからすぐやめてしまう、これが大問題であります。これについて、どういった対策を考えているかという点。

 あわせて、支援員の処遇改善補助金というのが創設された、これは非常に評価をいたします。ただし、実は余り使われていません。これが非常にわかりにくい。私は県や市町村の担当者からも聞きましたけれども、制度が非常に複雑でわかりにくいということ。それから、自治体の負担、やはり三分の一という負担が、保育士や介護職員は国が二分の一出していますけれども、これは国は三分の一の補助であるということが非常にやはり使いにくいし、活用されていないと思うんですが、このあたり、改善をするお考えはないでしょうか。

吉本政府参考人 放課後児童クラブはどんどん受け入れ人数はふえておりますので、それを担う支援員の人たちの人材確保は非常に重要だというふうに思っております。

 具体的に申し上げますと、一つは処遇改善でございまして、支援員の方の処遇改善のための事業。そしてまた、常勤職員の配置に対する費用の補助。あわせまして、支援員の方々の業務負担の軽減といったことで、ICT化なども進めておりますし、さらに、質の担保ということも必要でございますので、支援員の養成を図るための研修費用の補助、こうしたことをやっております。

 さらに、ニッポン一億総活躍プランにおきまして、経験等に応じた職員の処遇改善、業務負担軽減策を進めるということになっておりまして、この具体的な内容については、予算編成過程で検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 この処遇改善事業の使い勝手のことでございますが、確かにこの事業につきましては、この事業のスタートの前年である平成二十五年との賃金の改善分の比較をしなきゃならないとか、既にその運営費の基本分に盛り込まれているところとは区別して処遇改善が図られているかを見なきゃいけない。

 ただ、この方式は、加算がきちんとクラブの支援員の方の処遇改善に反映されているということを確認するための手法といった面もございますので、そうしたことも踏まえながら、改善の余地がないか、検討してまいりたいというふうには考えております。

 補助率につきましては、これは、この事業を含めました子ども・子育て支援事業の運営費に関しましては、国庫補助三分の一、県三分の一、市町村三分の一といったような負担で一律やるといった形で現在進めているところでございます。

高井委員 その三分の一を、ですから、上げてほしいということなんですが、ちょっと時間もないので。

 厚生労働省さん、よくやっていただいていると思うんです。現場からもそういう声はいただいています。ただ、今まさに審議官がおっしゃっていただいたように、改善点があるわけですから、わかっておられるなら、ぜひそれは早急に改善をしていただきたいということ。

 あと、これはやはり、市町村の職員は事務が本当に大変なんですね。なかなか、通達とか出しても、一読してすぐわからない。わかりやすい通達を出してほしいということ。

 あと、放課後児童クラブの運営指針というのは局長通達ということで、これだと、都道府県、政令市それから中核市にしか行かない。市町村まで行くには告示にしてほしいという要望もありますので、これはもう答弁は結構です、要望だけさせていただきます。

 それと、加藤大臣、済みません、お待たせをしております。

 実は、きょうは、特別養子縁組や里親制度をもっともっと進めるべきとか、あと不妊治療支援、先般、菅官房長官が、働きながら不妊治療というのは本当に、実際受けている方は、大変時間もかかるし、働きながら両立させるというのは本当に大変なんですが、それを支援すると。このことは評価いたしますけれども、これは何で菅長官が記者会見をしたのかよくわからないんですが。この点も質問したかったんですが、きょうはちょっともう、次の石原大臣もお待ちなので、この質問は割愛をいたします。

 最後に加藤大臣に、こうしたさまざまな具体的な制度、特に学童保育ですね、地元の岡山でも全国に先駆けてやっているということもあって、ぜひ大臣に、正直に言って、厚生労働省とこの一億総活躍担当大臣、加藤大臣とのすみ分けというか役割分担というのもちょっとよくわからないところがあるんですが、いずれにしても御担当であると思いますので、ぜひこういった分野を前に進めていただきたい、厚生労働省がなかなか動かないのであれば、まさに加藤大臣のリーダーシップでこれを進めていただきたいと思うんですが、その辺について決意をお聞かせください。

加藤国務大臣 誰もがその能力を十分に発揮できる、そういう一億総活躍社会の実現、そういうことで、この六月にニッポン一億総活躍プランというのも出させていただきました。そして、今の御質問の関係でいえば、希望出生率一・八というような具体的な目標を掲げて、その政策の実現を図っていく。

 もう具体のことは申し上げませんけれども、それについても、タイムスケジュールも入れた、そうしたプランを出しておりますので、それをしっかりフォローアップしながら、各省庁における施策の実行状況、それをしっかりフォローしながら、そして、それぞれの施策が具体的に実現していけるように私も努力していきたいと思います。

高井委員 ありがとうございました。

 加藤大臣、では、結構でございます。済みません、一問で申しわけありません。

 それでは最後に、成長戦略について石原大臣にお伺いさせていただきます。

 まず、アベノミクス第一、第二、第三の矢、この御担当でありますけれども、やはり、いろいろなマスコミや評価を見ますと、第三の矢が飛んでいないという指摘がほとんどなわけでありますが、これはなぜ第三の矢は飛ばないとお考えでしょうか。石原大臣、お願いいたします。

石原国務大臣 ステレオタイプの、いや、いいんだ、いや、よくないんだという議論は、先ほど神山委員の方から意味がないとおっしゃられておりますので、私も避けたいと思うんですが、やはり、成長戦略、構造改革の分野は結果が出るのに時間がかかるということがあります。

 例えば、規制改革などをして、先ほどビザの緩和の話を官房長官がされていましたけれども、これは割と早く結果の出ることでございます。

 しかし、その一方で、ウーバー等々のものをタクシー過疎地みたいなところで実施しても、そういうシステムになじめない人たちの方が多い。ウーバーの一つの例をとりますと、もともとサンフランシスコで発生いたしまして、サンフランシスコは丘の多い町で、そしてタクシーが少ない。やはり皆さん困っていたから飛びついたんですけれども、なかなか、そういうことで、何をやったけれどもどうだということが、点になっている。

 それ以外にも、例えば農作物なんかにしても着実に上っていますけれども、ことし若干伸びが落ちたのは、特殊要因で、ホタテガイの輸出が非常に落ちたという天候要因があるわけですね。

 ですから、そういうものを、何がやった、かにがやったということではなくて、やはりここの部分が充実していきませんと日本の経済成長の潜在成長率というものは高まりませんので、ここの部分にもう少しフォーカスを当てて、これまでどうしても、大胆な金融緩和、どこの委員会でも金融の話は黒田総裁を呼んですごくやるんですけれども、なかなかこの構造改革部分の議論というものは、これまでもあるんですけれども、そういう財政とかわかりやすいものに比べて、非常に、規制緩和系の話というのは、御関心のある方には関心があるんですけれども、国民サイドで見ますと、一部の自分に関係するところは関心があるけれども、それ以外のところは関心ないみたいなことがありますので、そこにフォーカスを当ててこれからも議論をさせていただき、何が足らざるのか、何ができているのかということを整理して、やはり、先ほども御答弁させていただきましたように、面にしていかない限り、数字として大きな効果は出てこないんではないかと思っております。

高井委員 私が思うに、やはり既存の業界であったり、そこになかなか流動性がない。これは政策研究大学院大学の大田弘子さん、政権与党の大臣をされていたと思いますが、あの方が同じことを指摘されていますが、もっと成長分野に流動して、シフトしていかなければだめなんだと。本当に、私はそこに尽きるんだろうなと、既存の業界に気を使い過ぎる余りに、成長分野にいろいろなものが回らないということだと思います。

 これから取り上げるフィンテック、それからブロックチェーン、シェアリングエコノミー、あるいはビッグデータ、オープンデータ、こういったことを順次お聞きしますが、こういったものをやはりもっともっと力強くやっていくということが大事で、ようやくことしの成長戦略から、第四次産業革命という、IoT、ICTが一番目に書かれたということは評価いたしますが、しかし、まだまだその内容は十分じゃないと思っております。

 まずはフィンテックからお聞きいたしますが、きょう来ていただいていますので、まずは、ではフィンテックの、消費税を仮想通貨に対しても適用するという議論が今政府内で行われていると承知していますが、これはもう結論は出るんでしょうか。

越智副大臣 金融庁担当の副大臣としてお答えをさせていただきます。

 まず、高井委員におかれましては、従前からフィンテックに対して推進の立場で御努力いただいて、その中できょう質問をいただいたということに感謝を申し上げたいと思います。

 その中で、仮想通貨の消費税、これをどう扱うのかということであります。

 まず、この仮想通貨の消費税を考えるときには、仮想通貨の基盤になりますブロックチェーン技術、こういった活用の推進の中でそういう取引が進んでいく、その一つのハードルとして税制というものもあるんじゃないか、そういう問題意識だと推察いたします。

 その中で、フィンテックというのは、委員重々御承知のとおり、金融取引の仕組み自体の変革や、従前見られなかったIT関連技術の取り込みを通じて、金融の将来を大きく変えていくという可能性があると思っております。その中で、特に仮想通貨の基盤であるブロックチェーン技術は、決済サービスを初めさまざまな金融サービスに大きな影響を及ぼすという可能性がありまして、こうした動きを、利用者保護に配慮しつつ、日本の金融のみならず経済の発展につなげていきたいということで考えています。

 その中で、さきの通常国会では法整備もいたしました。また、ブロックチェーン技術につきましては、今後全銀協で検討が進められるというふうに聞いております。

 その中で、消費税につきましては、これは改正資金決済法で仮想通貨に係る法制度の整備をしたことを踏まえて、非課税化を含めて、その整理を今、税務当局に要望しているところでございます。ちなみに、EUや米国のニューヨーク州では、仮想通貨の譲渡に係る消費税は非課税というふうになっておるところでございますので、しっかりと要望をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

高井委員 まさに、こういうことを財務省を説得してやっていくということが成長戦略につながるということだと思いますので、ぜひ力を入れていただきたいです。

 ほかにも、中間的事業者をどう扱うか、あるいはAPIをどう扱うかというテーマをお聞きしたかったんですが、もう時間がないので、申しわけありません。あと、ブロックチェーンは経産省も担当していただいて、本当に、フィンテックとかブロックチェーンというのは、金融のIT化にとどまらず、あらゆる社会変革を起こす極めて重要な技術だと思いますので、ぜひこれは、それぞれの省庁だけじゃなくて、きょう、IT室の室長代理さんも来ておりますけれども、内閣でも、フィンテック、ブロックチェーンというのはぜひ取り上げていただきたいということでございます。

 それでは、次の質問ですが、シェアリングエコノミー、これも内閣官房が御担当だと思いますが、超少子高齢社会の課題解決に資する大変期待の持てる分野で、世界で見ると、今一・五兆円の市場だそうですが、二〇二五年までには三十三兆円まで広がるという試算があると聞いていますが、我が国でのシェアリングエコノミーに対する検討状況、課題、そして、きちんとその業界の皆さんの声を聞いているのかということをお尋ねいたします。

向井政府参考人 お答えいたします。

 ITの普及、高度化に伴いまして、空き部屋、駐車スペースのシェア、あるいは家事代行、育児代行等のマッチングなど、多様な分野でシェアリングエコノミーと呼ばれる新たなサービスが登場しつつある状況と認識してございます。

 シェアリングエコノミーは、遊休資産の有効活用、新たなビジネスの創出等を通じて、消費者の選択の幅を拡大、我が国の課題解決への貢献が期待されることから、政府としてもシェアリングエコノミーを推進しているところでございます。

 シェアリングエコノミーは、従来のような事業者による個人へのサービス、BツーBとは異なり、プラットホームを通じた不特定多数の個人間の取引、CツーCを基本としておりますので、事故、トラブル時の不安の低減というのが普及を進める上での課題になっていると考えております。このような状況を踏まえまして、シェアリングエコノミーの普及を図るためには、サービスの提供者である個人、事業者、プラットホームを管理するシェア事業者の全てについて、一定の安全性、信頼性を確保することが必要と認識しております。

 このため、内閣官房IT総合戦略室におきまして、シェアリング事業者を含めて、有識者等を構成員といたしますシェアリングエコノミー検討会議を開催しつつ、その構成員となっていないシェアリング事業者につきましても、事業者ヒアリングを実施しながら、事業者団体による自主的なルール整備を促すガイドラインの策定を初めとした振興策について検討しておるところでございます。

高井委員 最後に、石原大臣に改めて決意を聞きたかったんですが、もう時間が参りましたので、済みません、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

秋元委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十三分散会


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