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第5号 平成28年10月28日(金曜日)

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平成二十八年十月二十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 秋元  司君

   理事 谷川 弥一君 理事 平井たくや君

   理事 ふくだ峰之君 理事 牧島かれん君

   理事 松本 文明君 理事 緒方林太郎君

   理事 神山 洋介君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    岩田 和親君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    岡下 昌平君

      神谷  昇君    木内  均君

      國場幸之助君    今野 智博君

      武部  新君    武村 展英君

      中山 展宏君    長坂 康正君

      長島 忠美君    務台 俊介君

      和田 義明君    井出 庸生君

      大串 博志君    金子 恵美君

      高井 崇志君    辻元 清美君

      角田 秀穂君    濱村  進君

      池内さおり君    島津 幸広君

      浦野 靖人君

    …………………………………

   国務大臣         金田 勝年君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松本  純君

   国務大臣

   (少子化対策担当)    加藤 勝信君

   国務大臣

   (規制改革担当)     山本 幸三君

   国務大臣         丸川 珠代君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   内閣府大臣政務官     務台 俊介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  永井 達也君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鈴木 達也君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官)           石田 高久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室内閣審議官)       田中 勝也君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三角 育生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 緒方 俊則君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   西崎 文平君

   政府参考人

   (内閣府国際平和協力本部事務局長)        宮島 昭夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   三浦 正充君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    井上 剛志君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    松本 光弘君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 宮地  毅君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    杉山 治樹君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   木村 徹也君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石田  優君

   参考人

   (独立行政法人都市再生機構理事)         伊藤  治君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

秋元委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として独立行政法人都市再生機構理事伊藤治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣官房内閣審議官永井達也君、内閣官房内閣参事官鈴木達也君、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局セキュリティ推進統括官石田高久君、内閣官房内閣情報調査室内閣審議官田中勝也君、内閣官房内閣審議官三角育生君、内閣府大臣官房審議官緒方俊則君、内閣府政策統括官西崎文平君、内閣府国際平和協力本部事務局長宮島昭夫君、警察庁長官官房長三浦正充君、警察庁交通局長井上剛志君、警察庁警備局長松本光弘君、総務省大臣官房審議官宮地毅君、総務省大臣官房審議官開出英之君、法務省大臣官房審議官加藤俊治君、法務省大臣官房審議官佐々木聖子君、公安調査庁次長杉山治樹君、スポーツ庁審議官木村徹也君、国土交通省大臣官房審議官石田優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

秋元委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

秋元委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田義明君。

和田委員 おはようございます。自由民主党、北海道五区選出の和田義明でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 まず、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、丸川大臣を初め政府関係各位には、御多忙の中お越しいただきまして、まことにありがとうございます。

 初の委員会質問でございまして、何かと不手際があるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、最初のポイントでございます。

 我々日本国民の生活のIT依存度が高まる中、サイバー攻撃の事例が年々増加をしております。自治体や企業、団体の情報が漏えいしたり、改ざんされたり、破壊されたりする例が後を絶ちません。

 二〇一〇年には、イランのナタンズのウラン濃縮遠心分離施設がサイバー攻撃を受け、八千四百機の遠心分離機が稼働不能に陥りました。インターネット接続環境から切り離された状況での事例でございます。また、二〇一二年のロンドン・オリンピック期間中には、二億件のサイバー攻撃が発生いたしました。この日本におきましても、二〇一一年に大手重工メーカーが標的型ウイルスに感染して情報が漏えいしたり、また、二〇一五年に日本年金機構の情報が流出したりと、こういった例が多々ございます。

 特に憂慮されますのが、交通や金融、電力といった我々の生活インフラへの攻撃であり、これらは国民の生命や財産への直接的な脅威になり得ます。

 そこで、お伺いいたします。

 最初の質問でございますが、政府のサイバーリスクの認識についてお聞かせください。そして、昨今の国内外のサイバー攻撃の事例と今後の潜在的なリスクを交えながらお話しください。よろしくお願いします。

三角政府参考人 お答えいたします。

 重要インフラに関するサイバー攻撃の御質問だと存じます。

 海外の重要インフラに対しますサイバー攻撃につきましては、例えば、昨年末のウクライナにおける大規模停電がサイバー攻撃によるものと発表されるなど、重要インフラサービスの障害に至る攻撃が発生していると認識しております。

 一方、我が国におきましては、重要インフラサービスの障害に至るような攻撃は、現在のところ、報告はされておりません。

 しかし、重要インフラ事業者などから重要インフラ所管省庁を通じまして私どもNISC、内閣サイバーセキュリティセンターへ報告されたパソコンのウイルス感染等に関する情報連絡の件数は、二〇一五年度は四百一件でございました。これは、前年度、百二十四件の三倍の値に当たります。サイバー攻撃のリスクが高まっているものと考えております。

和田委員 どうもありがとうございました。

 次に、お伺いいたします。

 我が国の重要インフラにおける全般的な対策についてお聞かせください。

三角政府参考人 お答え申し上げます。

 重要インフラ防護は、IT障害が国民生活や社会経済活動に重大な影響を及ぼさないようにする観点から、極めて重要でございます。サイバーセキュリティ基本法におきましても、国は必要な施策を講ずることとされております。

 政府といたしましては、重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第三次行動計画、これを決定いたしまして、その中で、情報通信、金融、電力等の十三分野を重要インフラと位置づけまして、情報セキュリティーの観点から継続的な防護策を講じているところでございます。

 具体的には、私どもNISCが中心となりまして、重要インフラ所管省庁などと緊密な連携を図りまして、IT障害等の未然防止及び再発防止の双方の観点から、必要な情報セキュリティー対策を盛り込んだ安全基準の整備、浸透、官民の情報共有体制の強化、IT障害発生時における対応能力向上のための分野横断的な演習、これらの諸施策を推進しているところでございます。

 また、現在、この当該行動計画の見直しを検討しているところでございまして、次期行動計画、これは来年度からを想定しておりますが、安全で継続的なサービスの提供という機能保証の考え方に基づきまして、対策をより強化すべく、重要インフラ事業者の中で特に先導的な取り組みを行っているところ、そういったところを推進して、それに基づいてほかにも普及させていくような政策、それからオリパラ大会を見据えた情報共有体制の強化、そして、リスクマネジメントを踏まえ、緊急時の対応計画を含めた対処体制の整備、こういったことを重点項目として検討しているところでございます。今年度末をめどに結論を得たいと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 特に情報共有、それから演習の回数をふやすことというのは非常に大事だと思っております。

 実は、私の地元北海道では、既に朝晩の気温が五度を下回ることがありまして、こういった状況下におきまして、例えば電気やガスがとまってしまいますと、しかも長期にとまってしまいますと、これは本当に地元の方々の死活問題につながる、そういった思いで非常に脅威を感じております。

 より確実にサイバーリスクに対処していく上で、もう一点お伺いいたします。

 サイバーリスクに対する対策を行う上での一番の重要課題、そして、それに対する対処法についてお聞かせください。

三角政府参考人 お答えいたします。

 重要インフラ分野におきましては、重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第三次行動計画に基づいて、情報通信、金融、電力等の十三分野を重要インフラと位置づけて、官民情報共有の体制を構築しているところでございます。また、現在、当該行動計画の見直しの検討を進めているところでありまして、その中で、二〇二〇年のオリパラ大会を見据えた情報共有体制の強化を重点項目の一つにしたいと考えております。こういった情報共有ということは非常に重要だと考えております。

 また、今後、重要インフラ事業者等は、そのサービスの提供に当たりましては相互に依存関係がありますので、現在指定する重要インフラ事業者以外の事業者、そういったところとの連携も考えているところでございます。このため、現在、その対象範囲の見直しなども含めて検討しているところでございます。

和田委員 どうもありがとうございました。

 ぜひとも、情報共有等々の対象の裾野を広げて、少しでも多くの関連企業、そして個人が守られるような体制を築いていただければ幸いと存じます。

 二〇一五年にはサイバーセキュリティ本部が設置され、菅官房長官が本部長に就任されました。ことし四月にはサイバーセキュリティ基本法が改正、公布されました。目下、菅官房長官と丸川大臣のイニシアチブのもと、東京オリンピック・パラリンピックを見据えた第三次行動計画が進行中であり、年末にはこれの見直しが始まるものと了解いたします。

 また、東京オリパラに先立ち、二〇一九年にはラグビーのワールドカップが日本で開催されます。そして、東京オリンピック・パラリンピックの後の二〇二六年には、北海道札幌の冬季オリパラが開催されるかもしれません。日本で開催される国際イベントはメジロ押しでございます。

 そして、イベント以上に日々飛躍的なスピードで増大するサイバー攻撃のリスクは、日本国民にとって引き続き大きなリスクであり、政府の継続的な重要課題でもございます。

 ここでお伺いいたします。丸川大臣、サイバーリスク対策についての意気込みについてお聞かせください。

丸川国務大臣 御質問ありがとうございます。

 今、サイバー空間が社会に欠くことのできない基盤となり、多くの我々の生活の中がそのサイバー空間での仕組みに依存している状況にございます。我々が自覚をしている以上にこの依存度というのは高まってきております中で、我々が企業やまた政府機関を脅かす悪質なサイバー攻撃に対してさらに感度を高め、また共有をしていくということが非常に重要だと思います。いち早くそうした情報をまず、攻撃されてしまったことを内に秘めておくのではなくて、出した方がいいんだ、出して早く対策をみんなで共有した方がいいんだという意識を持っていただくことが第一歩ではないかと思っております。

 今、先ほど三角さんのお話にあった、重要インフラ事業者の皆様方には、リスクアセスメントに着手をしていただいておりますのは、御自身たちの体制についてのアセスメントに着手をしていただいておりますけれども、まずもって、当事者としての意識を、そうした重要なインフラを握る皆様方に持っていただくということについて、スピード感を持って臨んでいきたいと思っております。

 そして、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会というのは、世界じゅうからのいい注目も集まれば、それを契機にさまざまなことをしかけていこうというサイバー空間においてのリスクも高まっていくという認識を持っております。

 あのリオの大会においても、さまざまな、特にウエブサイトに対する悪質なアクセスがあったというようなことも聞こえてはきております。こうしたことを、過去の経験をしっかりと我々もリオあるいはロンドンから学びまして、我々なりの準備をしっかりと進めていきたいと思っております。

 とりわけ、もう四年を切ってきている中で、スピード感を持つということが非常に重要であるということと同時に、それがきちんとできていなかったときに、より強力に事業者の皆様に自覚していただくためにどういう方法があり得るのか。

 裾野を広げるというのも非常に重要な議論であると思いますけれども、実は、国民の皆様お一人お一人にもサイバーセキュリティーというのは守っていただくことができます。どこかに置いてあったUSBを自分のパソコンに突っ込まないとか、職場のサイバーセキュリティーのルールをしっかり守っていただくとか、本当に国民全体で取り組んでいけるような普及啓発ということもしっかり念頭に置きながらやってまいりたいと思います。

和田委員 丸川大臣、ありがとうございました。丸川大臣、政府のサイバーセキュリティー関係者の皆様、政府の真摯な取り組みにつき御回答いただきまして、まことにありがとうございました。私も一議員として、サイバーセキュリティーの強化のお役に立っていきたいと思っております。

 これよりマイナンバーの質問に移りますので、御退席いただいても結構でございます。

 あと、先ほど触れました二〇二六年の北海道札幌冬季オリンピックの誘致につきましては、また別途御相談させていただけたら幸いでございます。どうぞよろしくお願いします。

 さて、マイナンバーについてお尋ねいたします。

 マイナンバー制度導入による電子政府、電子自治体の加速化による政府、自治体の業務効率化、企業の税、社会保険手続の効率化、国民生活の利便性の向上に、大きな期待が寄せられております。私も、マイナンバーに大きな期待を寄せる一人でございます。そのような状況下、肝心のマイナンバー普及がいまだ一千万件と伸び悩んでいるようであり、マイナンバープロジェクト自体の勢いが若干トーンダウンしているようにお見受けいたします。

 そこで、お尋ねいたします。マイナンバーの普及計画についてお聞かせください。

宮地政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバーカードにつきましては、十月二十六日の時点で約一千百六十八万件の申請がございます。そのうち約八百八十九万枚が交付されているところでございます。

 一時カードの交付が滞っていたところでありますが、現在は順調化しつつありまして、今後はカードの普及の促進が大きなテーマとなってくるものと考えております。

 そのためには、多くの国民の皆様にカードの利便性を実感いただくことが不可欠であると考えておりまして、本年九月、関係府省の課室長で構成するワンストップ・カードプロジェクトチームを立ち上げまして、マイナポータルを活用した子育てワンストップサービス、戸籍や住民票などの証明書に関するコンビニ交付、マイキープラットフォームなどについて、全国の市区町村で取り組んでいただくためのアクションプログラムを、年内を目途に取りまとめていきたいと考えております。

 今後、一人でも多くの方々にマイナンバーカードの申請をしていただけるように、関係府省一体となって、カードの利便性の向上のための検討を行いますとともに、取得促進に向けて、広報についても積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

和田委員 ありがとうございました。

 このワンストップ・カードプロジェクトの件でございますけれども、なかなか国民の方々にまだ浸透していないようなふうにお見受けいたしますので、ぜひとも広報活動をよりアクティブに進めていただければ大変幸いだと思います。

 続いてお伺いいたします。

 書類削減計画についてお聞かせください。また、マイナポータルの普及計画についてもあわせてお聞かせください。

向井政府参考人 お答えいたします。

 来年七月からの行政機関間でのシステムを使った情報連携が開始されれば、例えば、従来であれば、保育所の利用申請、介護保険の減免申請などの社会保障サービスに関する申請の際に必要としていた住民票の写し、所得証明書、障害者手帳や生活保護受給証明書などの添付が不要になるなど、申請者の負担軽減が図られることとなります。

 さらに、現在、マイナンバーの利用や情報連携が提起されている日本年金機構においても、将来、情報連携の対象となれば、例えば、年金機構に対する年金の裁定請求の際に住民票の写しや所得証明書が不要となるほか、生活保護の申請の際にも年金振り込み通知書の添付が省略できるなどのメリットが実現できる見込みでございます。

 マイナポータルの普及に当たりましては、マイナポータルを活用した住民サービスの拡充によるマイナンバー制度のメリットを住民の皆様に実感していただくことが重要と考えております。

 まずは、七月からの本格運用に合わせまして、各地方公共団体におけます子育てに関する施策を一覧でき、検索することができるサービスを開始いたしまして、順次、保育園の入園申請や児童手当の現況届などのオンライン提出にも対応できるよう準備を進めているところでございます。

 将来的には、子育て支援のみならず、引っ越し、死亡等に係るワンストップサービス、年金保険料のワンクリック免除申請、電子交付による医療費通知を活用した医療費控除の簡素化などについても順次実現できるよう検討するほか、民間の事業オンラインサービスとの連携を進めるなど、利便性の高いものにしてまいりたいと考えております。

和田委員 どうもありがとうございました。

 今、向井審議官からお話がありましたとおり、マイナンバーの本格運用は国民生活の利便性を格段に上げるものでございまして、ぜひともそれを着実に進めていただけたら幸いと思いますし、その利便性が高まるというストーリーを、ぜひとも広報活動を通じて広めていただければ大変幸いだと思います。

 さて、マイナンバー制度開始で、行政側の事務効率は一歩一歩着実に進んでいると理解いたします。その一方で、企業の社員や家族のマイナンバー収集、改正個人保護法による書類保管や情報システムの改修など、企業と従業員の負担は高まっております。

 特に私が懸念しておりますのは、住民税特別徴収の納付プロセスでございます。企業から源泉徴収や総括表をeLTAXで地方自治体に送っておりますが、大半の地方自治体は、住民税決定通知書二種類、これを紙媒体で送っているところがまだまだございます。企業は、毎年五月に、約千八百の自治体から決定通知書を受け取り、これらを開封して内容確認をして、システム入力して保管するという間接業務が発生しております。

 某一部上場企業で従業員を約六万人有するところの例をとりますと、約一カ月もの間、関係各所の人たちが残業を物すごくした上に、一カ月間、十五人の追加採用を行いましてこの作業に当たる、こんな実態がございます。作業する部屋や必要な什器のレンタルも必要になりますし、社員にこれらを送付するための簡易書留の費用だけでも三千万円を超えているというのが現状でございます。

 そのほか、新規採用、中途採用、そして、退職、勤務先変更、休職などの人事異動が起こる都度、こういった手続が必要になりまして、企業そして個人の大変な負担になっていることが事実でございます。

 そこで、お伺いいたします。

 地方自治体から企業に送付される住民税決定通知の電子化を義務づけることはできないでしょうか、またマイナンバー情報に基づき、従業員宛ての決定通知は、直接従業員に送付することはできませんでしょうか、お尋ねいたします。

開出政府参考人 お答えいたします。

 地方税の電子化は、納税者や特別徴収義務者の利便性の向上や税務事務の効率化の観点から極めて重要であり、このため、平成十七年一月に、地方税共同電子申告システムであるeLTAXを稼働いたしまして、推進を図ってきたところでございます。現在、このシステムを使いまして、電子申告等の受付サービス、年金からの特別徴収等のサービスを利用することが可能となっております。

 これに加えまして、今年度からは、個人住民税に係る特別徴収義務者用の特別徴収税額通知につきまして、eLTAXを通じて、正本のオンライン送付が可能となっているところでございますが、対応する市町村の増加によりまして、企業の事務負担が相当程度軽減するということがございますので、総務省としても、対応市町村の増加に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。

 今後、マイナンバーが税務申告に記載されることによりまして、一層の事務の効率化、公正公平な課税につながることが期待されているところでございまして、御指摘の通知の義務化等につきましても、今後の税務事務の効率化の一層の推進の検討の中で検討を進めてまいりたいと考えております。

和田委員 どうもありがとうございました。努力をされているところはもう重々承知しておりますけれども、ぜひとも、地方税法における電子データ送付の義務化を前向きに御検討いただければ大変幸いだと思います。

 働き方改革、業務効率化、企業の競争力強化が叫ばれる中、本件は早急に改善を要するポイントだと思いまして、また、人事業務は、特にシェアードサービスにおいては女性が多くかかわっておりますので、これは女性の活躍の観点からも改善は急務だと思っております。

 私も二十年間サラリーマンをやっておりまして、間接業務等々による営業に費やせる時間の減少、これは本当に問題だと思っておりまして、これが実は日本の企業の競争力をおとしめているのではないのかなと思っております。ITやマイナンバーの究極的な目標というのは、利便性を高めて競争力を高める、こういったことにあると思いますので、ぜひとも前向きに御検討のほど、よろしくお願いいたします。

 これにて質問を終わります。どうもありがとうございました。

秋元委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野です。よろしくお願いをいたします。

 まず冒頭に、きのう夜にニュースで流れていたことで、質問通告ももちろんできておりませんので、指摘というか、お願いだけをしておこうと思うんですけれども、会計検査院の検査で、内閣官房、内閣府が購入した備品、一九八三年から二〇一四年までに購入した備品のうち、二百二十七個、六十四億七千二百五十六万円分が所在不明になっているという指摘を受けて、きのう二十七日に、安倍総理に、この改善をしなさいということを報告したという記事がありました。

 これは、きのうのきょうですので、ぜひ、内閣委員会に、しっかりとこの事実関係を確認していただいて、報告をしっかりとしていただくことをちょっと委員長にお願いをしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

秋元委員長 ただいまの件につきまして、理事会で協議いたします。

浦野委員 ありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 先ほどの和田先生の質問とほぼほぼ、かぶってしまう質問に一番目はなってしまうので、もう一回質問するのもどうかと思うんですけれども、オリンピック・パラリンピックでサイバー攻撃が実際、先ほどの大臣の答弁にもありました、実際にあったということをおっしゃって、実際にあったかどうかということとかを聞こうと思っていたんですけれども、あったということをおっしゃっていました。

 少し答弁はかぶるかもしれないですけれども、もう一度、どのような対策をとっているのかとか、実際に過去オリンピックでこういう攻撃があったかどうかという確認をしたいと思います。

丸川国務大臣 なるべくかぶらない範囲で御答弁申し上げようと思いますが、ことしの夏のリオデジャネイロ大会では、大会関連のさまざまなウエブサイトがサイバー攻撃を受けたとされております。

 また、二〇一二年のロンドン大会でも、大会公式ウエブサイトに対しておよそ二億件の悪意のある接続要求があったとされておりまして、実際に国民の皆様や観客の皆様が最も情報を得るツールとして接触されることが多いウエブサイトに対しての何らかの働きかけといいますか、悪意を持った接触というのが非常に大きかったという経験を、過去から我々は学ばなければいけないのではないかと思っております。

 その上で、東京大会におけるサイバーセキュリティーを確保するために、先ほど申し上げましたリスク評価というのは、エネルギー、通信、交通など、大会運営に影響を与える重要なサービスを提供する事業者等においてやっていただいておりまして、なおかつ、当然ですが、当該評価に基づく対策の実施の促進をお願いし、また、私どもも促しているという状況です。

 また、脅威・インシデント情報を集約して関係事業者等に注意喚起や予防的措置を促す中核的体制、これはオリパラCSIRTと呼んでおりますが、この構築、運用を図っておりまして、既にG7、この前の伊勢志摩サミットのときに試験的な運用というものを行っております。

 まだまだやるべきことはたくさん残っておりますので、四年という時間を切ったということをよく念頭に置いて、スピード感を持って臨んでまいりたいと存じます。

浦野委員 サイバー攻撃というのはよくあるパターンと新手のパターンと、いろいろもう本当に、攻撃というか、その技術も日進月歩で、それに対する防衛の技術もイタチごっこという形で、本当に日々のそういった闘いが繰り返されるわけですけれども、問題がなくて当たり前という世界ですので、ぜひしっかりと目を光らせていただけたらと思います。

 大臣はオリンピック・パラリンピック担当大臣でもありますので、この委員会でいろいろそれに関連した質問をしようかなと思ったら、所管委員会が違うということで大臣は答弁できませんということ、僕が聞こうと思っていることに関しては答弁できませんということですので、事務方の方から答弁をいただくことになっております。それももうちょっと何か柔軟に対応していただけたらなと本当は思いますけれども、それはもう仕方がないことなので、事務方の方で答弁をして、もし時間に余裕があるんだったら聞いておいていただいて、また考えていただけたらと思います。

 私も学生時代はアルペン競技のスキーをしていました。(発言する者あり)なぜ、えっということになるのかちょっとよくわからないですけれども、その当時に比べると、上と下の体重の数字が逆転していますので、その辺かなと思うんですけれども。

 去年、残念なニュースがありました。これは、東京オリンピック・パラリンピックということで、今、東京、東京ばかりになっていますけれども、実際にその前には平昌で冬季オリンピックが行われます。もちろん、日本も選手団、やはり代表的な競技は、日本の強いジャンプだとか、あとモーグルになると思うんですけれども、アルペンスキー競技も、今まで世界の壁は非常に厚くてなかなか世界のトップクラスに入れないということもありますけれども、女子のナショナルチームのコーチ代が出せないということで、実はコーチがいない時期があったんですね。ナショナルチームですよ。日本代表選手が、お金がないということでコーチをつけずに練習をしていたというのが聞こえてきて、そんなことがあるのかとちょっと思ったんですね。

 もちろん東京オリンピック・パラリンピックでも、会場代に何百億だとか総額で何兆だという非常に大きな大きな話になっています。もちろんそれも重要ですけれども、やはり、その競技に出ていく、日本、国を代表して日の丸を背負って出ていってくれる選手にしっかりとそういう予算をつけていくというのは、根本的な、基礎的な話だと思うんですね。そこが、なかなかやはり日の目が当たらない。今まででもオリンピックのたびにそういった選手たちの苦境を伝えるようなニュースも流れています。

 私はやはり、もちろんオリンピックのそういう経費も大事ですけれども、今、既にもう次のオリンピックに向けて、選手は練習をスタートしているわけですね、実際。そういった人たちがしっかりと練習できるような環境を整えていく方がまず先決だと思っているんですけれども、オリンピック・パラリンピックに向けて強化予算をどういうふうにしているのかというのをお聞かせください。

木村政府参考人 お答えいたします。

 選手強化のための事業である競技力向上事業におきましては、メジャーな競技であるか否かを問わず、基盤的選手強化として、各競技団体の日常的、継続的に行う強化活動を支援しているところでございます。例えば、国内外の強化合宿、海外で開催される競技大会への派遣や諸外国のチーム招聘、ナショナルコーチや専任コーチ等の設置等を支援しております。

 また、戦略的基盤強化として、これまでメダルを獲得している競技にかかわらず、二〇二〇年東京大会等において活躍が期待される競技については重点的に強化をすることとしているところでございます。例えば、次世代アスリートの発掘、育成、有望アスリートを海外のリーグ等に派遣して強化する取り組み等を行っております。

 文部科学省におきましては、引き続き、各競技団体の日常的、継続的な活動は支援しながら、戦略性を持った選手強化を進めてまいりたいと考えております。

浦野委員 例えば、ロンドン・オリンピック、二〇一二年開催ですね。リオがことし二〇一六年でした。競技力向上事業の予算額というのはどうなっていますか。

木村政府参考人 お答えいたします。

 リオデジャネイロ大会が開催された平成二十八年度は、平成二十四年度に比べまして約二・五倍の八十七億円を措置しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、日本代表選手が二〇二〇年東京大会等において最高のパフォーマンスを発揮し優秀な成績をおさめることができますよう、競技力向上の充実に努めてまいりたいと考えております。

浦野委員 二・五倍ということで、資料をいただきますと、平成二十四年、二〇一二年のロンドン・オリンピックのときが三十四億、今回のリオのときは八十七億。

 実は、残念ながら、前政権の時代と今の政権の時代の差なんですね。コンクリートから人へとおっしゃっていた割には非常に寂しい予算しかつけていなかったというのが前政権の結果です。事業仕分けで、今の代表をされている方が仕分けをされまして、非常に寂しい思いをした過去があります。

 しかし、逆にそれが何くそと思ったのかわからないですけれども、ロンドンのときは過去最高のメダルをとりましたから、一概にどうだったかというのはちょっとわからないです。しかし、そのときは皆さん本当に、非常に困っていました。オリンピック代表、アーチェリーの山本さんだとかも、非常に苦境に立たされて、このままじゃだめだということをその当時おっしゃっていましたし、オリンピックを目指す選手は本当にみんなつらい思いをそのときしたというふうに、過去に記事も、探せばいっぱい出てきます。

 八十七億、たくさんつけていただいておりますけれども、では、世界各国、途上国は別にして、先進国、やはりオリンピックでメダルをたくさんとっているような国はどうなっているかというと、日本もふやしたとはいえ、例えばドイツは二百七十四億円、これは北京オリンピックのときのドイツの強化費です。アメリカは百六十五億円、イギリスも百二十億円。少しスポーツに対する取り組み方というか文化が違う。世界各国、それは違うとは思うんですけれども、やはり、それでも金額、先進国の中でも比べればまだまだ十分じゃないという額になっていると思いますので、ぜひ、これからも選手のためにしっかりと予算を確保していっていただけたらと思います。

 なぜ予算をしっかり確保していただきたいかというと、やはり、強い競技にはスポンサーもつきますし、それなりの強化費もしっかり予算措置されますし、それは当然だと思うんですね。ただ、我々がしっかりと見ていかないといけないのは、そういった目立つ競技に隠れて苦労している競技の皆さんこそ、しっかりとフォローしてあげないとだめだと思うんですね。

 例えば、今回のオリンピックでも、カヌーの羽根田選手なんかは、ほとんどそういった手助けなしで努力を重ねてメダルをとって、メダルをとった瞬間、わあっとなるわけですね。ラグビーもそうです。ワールドカップでああいう結果を残して、残したからこそ、今またラグビーが盛り上がって、これからどんどんどんどん競技人口もふえていくでしょうし、環境もどんどん整っていくと思うんですね。

 やはり、今、日の目を見ていないけれども、しっかり努力をして、オリンピックに向けて頑張っている、そういった、目立っていない、まだまだ世界の壁に阻まれているような競技の人たちをしっかりと見ていくためには、この予算を大きくとってあげないと、要はそこまで予算が行き渡らないんですね。やはり、目立ったところにしか、オリンピックのそういう予算がおりていかない。

 それは、国がこうしてください、ああしてくださいというのではなくて、今では、日本スポーツ振興センターの方に予算をお渡しして、その中で皆さんで議論をしていただいて、分配を決めていただいている。でも、それは、やはりパイが小さければ小さいほど隅々まで行き渡らないですし、大きければ、多いほどそういったところにも行き渡るのは明らかですので、ぜひ予算をしっかりとつけていただきたいと思います。

 それと、選手の中にはふだんの生活も非常に苦しい人たちがたくさんいてます。そういった人たちも、やはり、結果を残すためには競技に集中していただかないとだめですし、国は何らかのバックアップをした方がいいと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

木村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のございましたとおり、オリンピック選手やパラリンピック選手など優秀な選手が競技活動に専念できる環境を整備することは、我が国の競技水準の向上を図る上からも重要な課題であると認識をしております。

 このため、日本スポーツ振興センターにおきましては、優秀な選手が競技活動に専念して選手生活を継続できるよう奨励するため、対象活動や対象経費の範囲を定めない助成金を交付するアスリート助成制度を設けているところでございます。また、今年度より、パラリンピック選手についても新たな助成の対象として位置づけるなど、制度の充実を図っているところでございます。

 スポーツ庁といたしましては、今後とも、日本スポーツ振興センター、日本オリンピック委員会、日本パラリンピック委員会などの関係団体と連携しながら、優秀な選手が競技活動に専念できる環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

浦野委員 企業も、大企業なんかはいろいろな選手を会社で採用して、CMに出たりとかしている選手もいてますけれども、やはり何かメリットがないと、企業もなかなかそういったことができません。

 だから、そういった優遇措置、そういう選手を採用するときに、やはり国もその企業に対して何か優遇措置みたいなものをしてあげたらいいんじゃないか。やはり何かメリットがないと、企業もなかなか手を出しづらいと思うんですけれども、いかがですか。

木村政府参考人 お答えいたします。

 強化選手やメダリストの採用につきましては、スポーツ振興くじの財源を活用しながら、JOCにおいてアスリートと企業の就職マッチング、通称アスナビと呼んでおりますけれども、こうした取り組みを実施しておりまして、平成二十二年度の事業開始以来、百二十五名の実績がございます。

 アスリートを雇用する企業に対するインセンティブといたしましては、世界的規模のスポーツの競技会においてすぐれた成績を上げた選手のスポーツ活動に対し多年にわたる支援を行った団体に対して、文部科学大臣より表彰を行っておりまして、この三年間で二十三企業を表彰しております。

 スポーツ庁といたしましては、平成二十七年度よりスポーツキャリアサポート戦略を実施しております。選手としてのキャリアと引退後を含む人生設計全体を考える、いわゆるデュアルキャリアという考え方のもとで、アスリートのキャリア形成の支援をすることにしております。

 この中でキャリアアドバイザーの育成などに取り組むほか、スポーツ団体、大学、企業、スポーツクラブ等の多様な関係者が情報共有を行うコンソーシアムの構築を進めているところでございまして、今後、コンソーシアム等を活用して企業とも連携をしながら、必要な支援を検討してまいりたいと思います。

浦野委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、あと平昌まで、もう時間も少ないですし、東京オリンピック・パラリンピックという大きなイベントもあります。しっかりとやっていただきたいと思います。

 最後に、今この答弁を聞いていただいて、担当大臣、オリンピックのことをここで答弁するのは難しいということを事務方はおっしゃっていましたけれども、もし一言あるのであれば。

丸川国務大臣 オリンピックそしてパラリンピックの成功に向けて、何よりも国民の皆様に夢と希望を持っていただける大会にするという意味では、選手の強化も重要でありますので、政府を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

浦野委員 ありがとうございます。以上で終わります。

秋元委員長 次に、木内均君。

木内(均)委員 自由民主党、長野県の木内均です。

 まず最初に、山本幸三内閣府特命大臣の長野県出張につきましてお聞きをいたします。

 山本大臣におかれましては、十月十六日の日曜日に長野県佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院医療センター、基幹医療センター、救急救命センター、南佐久郡川上村の林業総合センターとJAの集荷場、さらには東御市のワイン醸造所をお訪ねいただきました。

 現在、政府におかれましては、規制改革推進会議の農業ワーキング・グループにおきまして生産資材及び加工流通構造に関する意見を取りまとめておりますが、これらの視点から、今回の長野出張で特に印象に残ったこと、所感をまずお尋ねいたします。

山本(幸)国務大臣 十六日、日曜日でしたけれども、長野県出張に参りました。そこでは、健康長寿県と知られております長野県内でも半世紀以上にわたり地域の医療を支えてきた佐久市の佐久総合病院を視察したほか、高原野菜の一大産地として有名な川上村、そしてワイン用ブドウについて六次産業化の取り組みを進める東御市を視察いたしました。

 川上村では、現在のような稼げる農業を実現するまでの経緯をお伺いしたところであります。大変過酷な作物生育条件を逆手にとってレタスなどの高原野菜の栽培を始めて、現在では耕作放棄地がゼロで、むしろ労働力不足によって外国人労働者の活用の拡大を求めるほどにまで成長した稼げる農業を実現していると伺い、みずからの手で地域を興そうとする自助の精神に満ちた取り組みに感銘を受けたところでございます。

 また、東御市では、ワイン用ブドウの栽培から醸造、そして海外も視野に入れた販売まで、農業の六次産業化のモデルともいうべき取り組みを視察いたしました。企業誘致などの点では不利がある傾斜地という土地の特性を生かした、まさにピンチをチャンスに変える取り組みに大いに刺激を受けたところであります。

 一方で、規制改革会議あるいは未来投資会議等で、農業の生産資材、あるいは流通、加工の問題について今検討しているところであります。こうした農業家にとっては、経費は一円でも安く、そして販売価格は一円でも高いということが大変大事なところでありまして、それに資するような提言を今検討中でございます。

 そうした観点から、こうした地域での農業を成長産業とするために、農業をめぐる規制、制度の改革も含めて、意欲ある生産者が元気に活躍できる環境づくりを行うことが大変大事だろうという思いを一層強くして、そうした取り組みにしっかり頑張っていきたいと思っております。

木内(均)委員 山本大臣におかれましては、本当に慌ただしい、忙しい視察になりました。私の選挙区内なんですけれども、川上村から東御市まで移動時間は一時間半以上かかりますし、そんな強行軍の中で、十七市町村ありますけれども、特に元気に輝いている地域を御視察いただいて、改めて感謝を申し上げます。

 なかなか、地方創生の担当大臣もしておりますが、それは特別委員会に譲るといたしまして、規制改革という観点から少しお話をさせていただきたいし、お聞きをいただきたいんです。

 大臣に今回御視察をいただきました長野厚生連の佐久総合病院の医療センター、救急救命センター、これは実はつくるのに大変苦労した病院なんです。平成二十六年、二〇一四年の三月一日に新しく開院をしたわけでありますが、当初この土地は工業専用地域だったんですね。病院の建設に関しては限りなく制限がかかる土地を厚生連が取得して、取得後しばらく病院建設というのは前に進みませんでした。

 当時、私は県議会議員を務めておりましたけれども、命を守るために法があるんだというような主張を県議会でもさせていただきました。その後、当時の村井仁知事があっせんに入りまして、佐久市長、JA長野厚生連の理事長、知事の三者会談が何度も持たれまして、最終的に佐久市の協力を取りつけました。これはどういうことかといいますと、工業専用地域を準工業専用地域に変更して、佐久病院の医療センター建設をさせていくということにしていったわけですね。

 そもそも、工業専用地域でも病院建設というのは可能なんです。やろうと思えばできるんですが、ただ、これには物すごい制約がありまして、なかなか工業専用地域のまま病院を建てるということは難しいのが現実なんですね。もう少し早くこの規制改革の議論が始まっていれば、特区などで対応できたかもしれない事例なんですね。

 そういった意味では、こうやって困っているところが恐らく全国にたくさんあると思いますので、規制緩和、規制改革の観点から御指導いただければありがたいと思います。

 また、川上村の高原野菜につきましては、今、藤原忠彦村長が全国町村会長も務めておりまして、村長みずからが、年収二千五百万円の村という本も著しました。それだけ元気のある農業地帯なんですが、実は、多くの外国人実習生にこの農業が支えられているというのも事実なんですね。

 当然、流通ですとか生産資材の問題もたくさんあることは間違いありません。しかしながら、外国人実習生の問題に関しましては、これから、私自身も川上村やJAの皆さん、農家の皆さんと御相談をさせていただきながら、大臣が担当されております国家戦略特区、こういったものを考慮しながら、よりよい農業の発展に尽くしていきたいというふうに思っています。

 衆議院では、今回、外国人労働実習生の法改正が通りまして、これで参議院が通過をしますと、少し、ある分野では緩和をされてくるわけですけれども、やはり農業分野ではまだまだ課題が多いのが実態でありますので、今回の法改正が成ったとしても、農業分野に関しての外国人実習生の働きやすさといいますか、受け入れやすさが変わってきてくれればいいんですが、そこまでは余り期待できないというのが今回の法改正なんです。

 大臣には川上村で実態を見ていただきましたし、また、参議院選挙の折には、私ども自民党の小泉進次郎農林部会長にもお越しをいただきまして、夜中の二時、三時に、レタスを収穫している畑に現地調査をしていただきました。

 やはり、朝どれ野菜ということで、予冷庫、保冷庫を使わずに、とった野菜をすぐ、東京や中京圏や関西に出荷をしていくということになりますと、夜中に収穫をしているというのが実態なんですね。そういう農家で付加価値を高めているからこそ、ほかの地域と区別化、差別化ができて、高付加価値のレタス、高原野菜を売ることができるということですから、それを担っているのは、多くの皆さんは、今、外国人実習生に頼っているということもありますので、国家戦略特区等々、また御指導いただければありがたいと存じます。

 また、最後に御視察をいただきました東御市に関しましては、やはり私が県議会議員を務めておりますときに、田中康夫知事が、長野県産ワインに関しましては、長野県原産地呼称管理制度というものを立ち上げました。田崎真也さんですとか玉村豊男さん、こういった専門家の皆さんの大変厳しい審査を通過したワインに認定マークをつけさせていただいて、付加価値を高めていくということに取り組んでまいりました。

 その後の村井仁知事、村井知事も通産官僚でありましたし、また衆議院議員として国家公安委員長も御経験をされたその村井知事も、この原産地呼称管理制度の有効性というものを大いに評価していただいて、続けてまいりましたし、現在の阿部守一知事も、総務省の御出身でありますけれども、こういった長野県産ワイン、これはワインだけじゃなくて、今、焼酎にも日本酒にも米にも広げていっているわけでありますけれども、こういった原産地呼称管理制度の有効性を認めていただいて、推進をして、ようやく定着をしてまいりました。

 規制改革というと、どうも規制緩和の方にばかり目が行くんですが、これはある意味で逆ですよね。規制をしていく、縛っていくことによって付加価値を高めていくということをやらせていただいたわけですけれども、おかげさまで、ことし五月の伊勢志摩でのサミット本体、さらには、九月に行われました軽井沢でのG7交通大臣会合でも長野県産のワインを使っていただき、ヨーロッパの首脳の皆さんからも大変高い評価をいただきました。

 これも、ある意味では規制改革。規制改革は規制緩和をすればいいというだけじゃなくて、規制を強めることによって付加価値を高めていく、ほかの地域と区別化、差別化をしていくという事例ですので、大臣に今回見ていただきましたし、公務の御都合もありまして、テースティングが本当にちょっとだけで、もっとゆっくり楽しんでいただければよかったわけでありますけれども、こういった規制改革等に関しましても、大臣の御指導を改めてお願い申し上げる次第でございます。

 この後は、首都機能の、中枢機能バックアップについてお聞きをしますが、実は、これは担当がないんですね。

 災害対策の面からやりますと、災害対策の特別委員会でお聞きをしなければいけなくなってしまうんですが、また、道州制だとか首都機能移転ということになりますと、これを担当する政府の所管がないんですね。そういった意味では、もしお時間がありましたら、これから質問することもお聞きをいただければありがたいと思いますし、忙しければ御退席をなさってくださっても結構ですが。よろしいですか。では、そのまま進めさせていただきます。

 それでは、引き続き、東京、首都圏の中枢機能バックアップについてお聞きをいたします。

 現在、立法、司法、行政の三権の中枢機能、さらには、経済や情報等の諸機能の中枢は東京に集中をいたしております。さらに、当然、東京は都ですから、皇室もございます。また、外交機関や高等教育機関などの多くも東京、首都圏に集中しています。その結果生じる東京一極集中の弊害、これも多くの識者の皆さんから指摘を受けているところであります。

 さて、この東京、首都圏が被災した場合に、東京圏のみならず、日本全体に深刻な影響が出てまいります。

 そこで、東京、首都圏の中枢機能に関して、首都直下型地震等が発生した場合にも停止をしない、あるいは即座に復旧できるような防災面での対策が必要になってまいります。また、万が一停止した場合でも、ほかの地域で最低限必要な機能を代替するバックアップの必要性がございますが、現在、首都直下型災害が発生した場合の首都機能の備えにつきまして、国が検討している事項をお尋ねいたします。さらに、バックアップすべき具体的な業務の種類、範囲をお示しいただきたいと思います。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 首都地域におきまして大規模な地震が発生した場合、甚大な人的、物的、経済的被害が予想され、また、首都中枢機能の継続性の確保が大きな課題となってまいります。

 こういった事態に対処するため、平成二十五年には首都直下地震対策特別措置法が制定、施行されまして、同法に基づき、施策に関する基本的な方針を定めました首都直下地震緊急対策推進基本計画が作成されております。

 この計画の中では、今後十年間で達成すべき減災目標と、それを達成するための実現方策といたしまして、住宅などの耐震化や電気に起因する出火の防止を初めとします取り組みを定めたところでございまして、目下、その取り組みを推進しているところでございます。

 また、本年の三月には、首都直下地震発生時におきます救急、救助、医療、物資などについての具体的な災害応急対策活動に関する計画を策定いたしました。首都直下地震を想定いたしました各種訓練を通じまして、計画の内容を評価し、定期的に検討、改善していくなど、実効性を高めるための取り組みを進めてまいります。

 さらに、平成二十六年三月には、首都直下地震が発生した場合に、首都中枢機能の維持を図り、国民生活と国民経済に及ぼす影響を最小化することを目的としました政府業務継続計画を策定いたしました。この方針のもとに、各府省庁では、首都直下地震発生時に優先的に実施する業務と、これを実施するために必要な執行体制、執務環境などを定める計画を策定しておりまして、現在、その見直し、充実に取り組んでおります。

 政府全体におきまして、地方自治体等とも緊密に連携をとりながら、こういった取り組みを鋭意進めていくことによりまして、首都直下地震対策を推進してまいります。

 また、議員御指摘の、首都機能が万一停止した場合にも他の地域で最低限必要なバックアップすべき機能といった点でございますが、首都直下地震発生時であっても、政府としても維持すべき必須の機能がございます。こういった業務の種類と範囲ということで、政府業務継続計画におきましては、非常時優先業務といった名称でございますけれども、六つの業務を位置づけております。

 具体的には、一つは内閣機能、二つ目に被災地域への対応、三つ目に金融、経済の安定、四つ目に国民の生活基盤の維持、五つ目に防衛及び公共の安全と秩序の維持、六つ目に外交関係の処理、これら六つに該当する業務でございます。

木内(均)委員 今、大臣官房審議官から御答弁をいただきましたが、バックアップ等々の関係については、政府業務継続計画、首都直下型地震対策ということで、特措法に基づいて実施計画が計画をされています。

 そして、今御答弁をいただいたように、それぞれの項目について、例えば、発生直後からおおむね三日目までには何をしなくてはいけない、それから、おおむね三日目から一週間までは何をする、おおむね一週間以降は何をするというふうに取りまとめられております。

 これはこれで評価をするんですが、ただ、根本的な議論というのはやはり必要になってくると思うんですね。それは、首都機能の移転ですとか道州制ですとかこういったものを、抜本的な議論もしていかなければいけないんですが、この首都機能の移転に関しましては、平成十七年の十月二十四日に第十五回の国会等の移転に関する政党間両院協議会が開かれた以降、もう十年以上開かれていないんですね。

 私も、これを今回質疑しようと思いまして相談をしましたら、答える大臣はおりません、これはそもそも国会、議員主導でやっていたことでありまして、当時もそういう答える立場にはありません、いろいろお助けすることはありましたがという答弁だったんですね。

 そして、詳しく調べてみますと、確かにこれは国会で決議をしているんですよね。平成四年には国会等の移転に関する法律を公布、施行。平成十一年には国会等移転審議会が三地域を移転候補地に選定をした。さらに、十五年には国会等の移転に関する政党間両院協議会を設置して、このときに座長とりまとめにおいて、分散移転や防災、危機管理機能、いわゆるバックアップ機能の中枢の優先移転などに関し、調査、検討を盛り込むということで、最終的には、平成十六年の十二月二十二日に、当時、衆議院の座長は鈴木恒夫先生、そして参議院の座長は、後に防災担当の大臣、国家公安委員長もされましたが、沓掛哲男先生、当時の川崎二郎衆議院議院運営委員長宛てにこのとりまとめというものを出しているんですが、その後、全くとまってしまっている。

 首都直下型地震は必ず来る、東南海地震も必ず来る、そういった意味で国土強靱化法も整備したわけですけれども、具体的に我々議会の側が国会の問題としてもう一度取り上げていかなければいけない時期にかかっていると私自身は思っております。

 そこで、最後に提案をさせていただきますが、我が党自民党も、私が当選をさせていただきました平成二十四年暮れの総選挙の公約では、「「道州制基本法」の早期制定後五年以内の道州制導入を目指します。」が選挙公約でした。しかしながら、翌年七月の参議院選挙では、「地方自治体の機能を強化し、地方分権を推進するとともに、道州制の導入を目指します。」というように、五年以内という単語を削ったんですね。

 私も出てきておりましたから議論に参加をさせていただきましたけれども、やはり、地方出身の議員さんを中心にかなり抵抗があったのも事実です。私のところには、先ほどお話をしましたけれども、全国町村会長さんもおりますが、全国町村会は反対ですよという意思表明もされました。

 そういった中で、防災、減災という観点からの道州制の議論とか首都機能移転の議論、これも大事ですし、もう一つは地方創生ですよね、東京一極集中を是正していくという意味でも、やはりそれぞれの地域地域の個性を生かしていくためには、最終的な手段は道州制にあるのではないかと私自身は考えております。

 しかしながら、これは政府の方で進んでやるべき問題ではなくて、我々国会議員の方でやるべき問題ですから、地方創生担当大臣をされております、内閣府特命大臣と言わなければ後で問題が出てきてしまいますので、内閣府特命大臣の山本幸三大臣におかれましては、我々にも御指導、御助言をいただきながら、こういった国土計画のあり方についても御指導いただきますよう改めてお願いを申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

秋元委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 民進党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 私たち抜きに私たちのことを決めないで。訴え続けながら、障害当事者の皆様方が制度改革をしっかり進めようと本当に力を尽くされてこられています。

 民主党政権のときに、その当事者の方々の意見をしっかりと政策に反映させる、そういう仕組みをつくろうということで障がい者制度改革推進会議がつくられまして、その中で、皆様が本当に議論に議論を重ねて骨格提言もつくり上げました。

 なかなかそれが実現できないということで、昨日は骨格提言実現のための大フォーラムが日比谷野音で開催されたのは、加藤大臣も御存じのことだと思います。私もそこに参加をさせていただきました。私たち抜きで私たちのことが決められているのではないか、そういう声がありました。

 そしてまた、相模原で発生してしまったあの痛ましい事件。私たちはほかの方と同じように生きる権利を持っている、多くの方々がそのように訴えています。

 今まで、我が政権のときにその制度改革が進められ、障害者基本法、そして障害者差別解消法が成立し、そして障害者権利条約の批准ということが進められてきました。民主党から民進党になっても、その大きな渦というのをストップさせてはいけないという思いでいるところでありますし、また、本当に、ともに生きる社会というのをつくっていかなくてはいけません。

 そういった中で、ことし七月に相模原市の障害者施設で本当に痛ましい事件が起きました。津久井やまゆり園で、十九名の方々の大切な命が奪われ、二十七名の方が負傷しました。犠牲となられました皆様方の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、負傷された方々の順調な御回復をお祈りしたいというふうに思っております。

 障害のある私の妹は、テレビで報道されている現地の様子を見て、恐怖におののき、怖いと叫びました。恐らく、全ての障害のある人たち、御家族が同じ思いだったと思います。

 殺傷事件の容疑者は、障害者は不幸をつくることしかできませんと、差別意識を助長する手紙で、衆議院議長や総理に向けて犯行を予告していました。突きつけられたのは、障害者がいなければいいという優生思想に社会が向いていかないだろうか、そういう問題、そして恐怖感にも似た不安であります。

 そこで、まずは障害者施策を担当する加藤大臣にお伺いさせていただきます。

 今回のこの事件について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

加藤国務大臣 金子委員におかれては、この障害者施策に対して、今お話があるような形も含めて、さまざまな形で取り組んでいただいていることに敬意を表させていただきたいと思います。

 また、今御指摘ありました相模原市の障害者施設で起きた事件については、まず、お亡くなりになられた方々に御冥福を心からお祈りしたいと思いますし、御遺族の方にもお悔やみを申し上げたいと思います。そしてまた負傷された方々に、一日も早い回復を心からお祈り申し上げます。

 私もこの施設に行かせていただいて、献花を行うとともに、施設の現状等について視察、懇談をさせていただきました。やはり、職員の方々が、また中におられる方々もそうだと思いますけれども、再生に向けて今一生懸命取り組んでいただいております。一日も早くもとの姿に戻って生活ができるよう、我々もしっかりと取り組ませていただきたいというふうに思います。

 また、今回の事件にあって、今御指摘があるように、障害者の方々、あるいは御家族の方々から、大変この事件に対する、怖い、心配だという不安の声は多くいただいたところであります。そういう意味においても、総理も閣僚会議でおっしゃっておられましたけれども、特に被疑者から障害者の存在を否定するような発言があったとされておりますけれども、こうしたことは断じて我々として許すことはできない、受け入れることはできない、このことははっきりと言っていかなければいけないというふうに思っております。

 また同時に、全ての命はひとしくとうといものであり、かけがえのない存在であるということであります。内閣府としても、障害者に対する国民の関心と理解が一層深まっていけるように、さらに全力で取り組んでいきたい、こう思っております。

金子(恵)委員 再発防止、このようなことを本当に二度と起こしてはいけないということです。内閣府としての取り組みはどうなっていますでしょうか。

加藤国務大臣 政府においては、関係閣僚会議及び関係省庁局長級から成る関係閣僚会議幹事会を開催するとともに、厚生労働省を中心に事件の検証及び必要な対策の検討が行われているところでありまして、九月十四日にはその中間報告が厚労省から公表されておりまして、これは事件の再発防止を中心とした議論だというふうに思います。

 そういう意味で、内閣府においては、この事案ということだけではなくて、やはり障害者に対する国民の関心と理解がより一層深まる、こういうように努力をしていかなければならないというふうに思っております。

 私も、先般、内閣府と神奈川県が共催した障害者差別解消地域フォーラムというのに出席をさせていただいたり、あるいは内閣府のホームページ、あるいは政府広報、こういったことも活用しながら、障害者及び共生社会に関する理解の促進、啓発、こういったことにしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 また、この十二月には、障害者週間の中で障害者フォーラムも行う予定でありまして、そういう中では、命の大切さを考えるシンポジウム、こういったことも開催して、先ほども申し上げた命のとうとさや共生社会の実現の重要性、こういったことについて引き続き発信し、また広報啓発、こういったことに取り組んでいきたいと思います。

金子(恵)委員 広報啓発ということが主な内閣府の仕事というようなお答えだったのかもしれません。私が実は、内閣府の障害者政策の分野、担当にやはり期待する部分というのは、各省庁に対してもしっかりと横串を刺した形で、例えば今回の障害者差別解消法、差別はいけないということ、これは当然、行政そして民間は義務でありますが、合理的な配慮をすることについては、行政のみが義務、そして民間は努力義務となっていますが、このようなことも含めて、実はまだまだ足らざるところがある差別解消法だというふうに思っています。しかし、そこをしっかりと現段階でも補っていけるような、そういうお答えを私はいただきたいというふうに思っていました。

 ですので、実は、今大臣が、障害のある方々に対する関心と理解を深めるというようなことをおっしゃって、この部分をお伺いしますと、ということであれば、まだまだ、国民の皆さんあるいはこの社会の中で、障害のある方々は取り残され、まさに差別を受けながら生きているんだなというのを明確にする言葉だったのではないかと思います。

 障害のある方々に関心は向けられていないとお思いですか。

加藤国務大臣 ちょっと古いんですけれども、平成二十四年の七月に、障害者に対する世論調査というのが行われているところであります。そういう中で、一つは、障害のある人が身近で普通に生活をしていることが当たり前だと思いますかということに対しては、多くの方々がそうだということでありまして、八八・四%の方がそう思っている。もっとも、否定している人もいるということも、これは注目しなきゃいけないと思いますけれども。しかし同時に、差別や偏見がありますかということに対して、八九・二%の人があるという認識をし、そしてさらに、そうしたことが意図的ですか、無意識に行われていますかということに対しては、無意識で行われている差別が多いと思う方が六五・三%ということであります。

 そういった意味で、今御指摘もありましたように、関心という意味において、無意識であるというところは、出し手の方は無意識かもしれませんけれども、受け手はそうではないわけでありますから、そういったことも含めて、しっかりとこういった問題に取り組む必要があると思います。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 松本国家公安委員長、ありがとうございます、お時間をいただいております。

 同じ質問をさせていただきますが、今回の本当に凶悪な殺傷事件でございます、再発防止のためにどのような取り組みをいただいておりますでしょうか。

松本国務大臣 改めまして、亡くなられた方の御冥福をお祈り申し上げ、また御遺族にはお悔やみを申し上げたいと思います。また、負傷された方にお見舞いを申し上げたいと存じます。

 本件につきましては、現在、神奈川県警察におきまして、事件の全容解明に向けての捜査を進めているところと承知をしております。私も現場を直接視察させていただいてきたところでございますが、まことに凄惨で痛ましい事件であり、二度とこうしたことが起こらないよう、政府として必要な対策を講じていかなければなりません。

 そのために、関係閣僚会議を設置いたしまして、私もメンバーになっているほか、警察庁におきましては、厚労省に設置された検証・検討チームに参画しまして、検証と再発防止の検討を行っているところでございます。

 また、警察におきましては、これまで、社会福祉施設等から要請を受けまして、防犯訓練への参加をしたり、職員等への防犯指導を行うなどしていると承知をしているところでございます。

 引き続き、再発防止に向け適切な対応を図るよう、警察を指導してまいりたいと存じます。

金子(恵)委員 今、関係閣僚会議への参加と、そしてまた、検証・再発防止策検討チームへの参加というようなことをおっしゃっていただきましたが、実際に、検証・再発防止策検討チーム、こちらでの議論というのは、措置入院のあり方が本当に主になっているというふうに思います。

 当然、防犯対策についての検証というものも行われているようではありますが、必ずしもその部分について十分ではないのがという御指摘であったり、そもそもが、この殺傷事件が起こる前にどのような形で防止できたのかというようなことで、警察の対応に抜かりはなかったかどうかということなど、そういう部分についての検証がないのではないかという指摘もあるようでございます。

 まずは加藤大臣にお伺いします。

 このチームでの中間とりまとめが九月にもう出ているということであります。九月の十五日に取りまとめられたというふうに伺っておりますので、その中間報告についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 九月に出ております中間とりまとめ、今委員御指摘のように、やはり事案そのものに対してかなり、精神科治療の問題とか、あるいは、そういった意味で施設に対して防犯がしっかりできていたのか、これはまずしっかりやらなきゃいけない問題だというふうに思います。

 しかし、それに加えて、この中間とりまとめの「今後の検討」というところにおいて、「今回の事件により、障害者の方々への偏見や差別が助長されるようなことは断じてあってはならない。」また、「全ての人々が、お互いの人格と個性を尊重し合いながら共生できる社会を実現していくことが重要である。」ということを記述させていただいているところでありまして、それをしっかりと踏まえながら、関係省庁と連携しながら、先ほどの繰り返しになりますけれども、障害者に対する国民の関心と理解、これがしっかり深まっていけるように引き続き努力をしていきたいと思っております。

金子(恵)委員 今後の検討ということではありますけれども、今大臣が御指摘いただいたような新たな偏見というものが生まれていないだろうかという部分であります。

 繰り返しになりますけれども、今回、この検証・検討チームの中で措置入院のあり方というものを主に議論しているということで、例えば容疑者と同じ措置入院を経験している方々への偏見が大きくならないだろうか。つまり、精神障害者は危険な存在だという偏見、差別というものを助長しかねないという懸念もあるという指摘があります。まさにそのとおりだというふうに思います。

 検討チームがすべきことというのは、やはり、容疑者の中に原因を探すということと同時に、容疑者が事件を起こさなければならなかったという社会の中での原因というものも考えていかなくてはいけないというふうに思いますし、この事件は障害のある人たちに対する最悪のヘイトクライムでありますので、政府はもっと、このヘイトクライムがなぜ生まれたのかということを国の政策として徹底的に検証すべきだというふうにも思います。

 国家公安委員長にも、このチームの中間とりまとめについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松本国務大臣 厚生労働省に設置されて、警察庁も参画をしているということでございますが、検証・検討チームにおきましては、先般九月十五日、それまでの検討の中間とりまとめを、障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議幹事会に報告されたものと承知をしているところでございます。

 引き続き、同チームにおきまして再発防止策等の検討が進められるところと承知をしているところでございまして、警察としても引き続きこれに参画をさせていただきまして、必要な協力を行うよう指導してまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 しっかりと進めていただきたいということ。

 そして、まさに今回のことによって、防犯という視点で、例えば、また施設等が囲われた形になっていって、地域社会とまた隔離されるようなことがあってはいけない。

 先ほど加藤大臣からもありましたけれども、意識調査をすれば、障害のある方々が身近にいらっしゃると思っている、感じる方も多いということではあるわけですが、やっとここまで来たんだと思います。ともに生きる社会づくりを進めようと、先ほども申し上げました多くの障害当事者の方々のお訴えということによってやっとここまで来た今の社会を後退させるようなことがあってはいけない、隔離政策のようなことがまた起きてはいけないというふうに思っています。

 そこで、加藤大臣にお伺いしますが、大臣にとってこの共生社会とはどのような社会でしょうか。

加藤国務大臣 もう委員が御指摘のように、障害者基本法の第一条の目的規定に具体的に書かれている、そこに尽きるんだろうというふうに思いますけれども、やはり大事なことは、先ほど申し上げましたけれども、お互い理解をし合いながら、そして一緒に生きていく、いわば包摂という言葉がありますけれども、そういった社会をしっかりつくっていくということなんだろうというふうに思います。どちらかがどちらかを助けるという面だけで捉えるのではなくて、それぞれが一緒に住んでいる、一緒に理解し合っていく、そういったことが私は非常に大事なんだろうというふうに思います。

 きのうの夜も、議員御承知のように、NHKの教育テレビで「バリバラ」という番組が放映されています。いろいろな御意見があるかもしれませんけれども、そうしたことも通じながら、障害を持つ方々がどういう思いを持っているのかといったことをさまざまな形で発信していくということも非常に大事なことなのではないかなというふうに思います。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 そうしますと、本当にともに生きる社会づくりをしていくために、先ほどから申し上げております障害者差別解消法、これをしっかりと国民の全ての皆様に御理解いただき、そしてそれを実現していくということだというふうに思いますが、実際にこの法律のもとで、共生社会の実現にどのように取り組んでいかれますか。

加藤国務大臣 障害者差別のない社会の実現のために、本年四月に障害者差別解消法が施行されております。その趣旨、目的を含めて、しっかりと国民の方々に理解いただけるように努めていかなければならないというふうに思っております。

 政府においても、昨年二月に閣議決定をいたしました基本方針に即して、大きく二つの柱があります、不当な差別的取り扱いの禁止そして合理的配慮の提供。こうしたことについてしっかり対応していくために、各府省においては、その職員に向けた対応要領を策定し、これに沿った適切な対応を行う。

 また、事業を所管する主務大臣においては、所管事業者に向けた対応指針を策定し、事業者団体等を通じて、事業者に対して周知し、適切な対応を求めているところであります。

 また、内閣府においては、合理的配慮等の具体例を収集、整理し、ホームページ上に合理的配慮サーチというのを載せさせていただいておりまして、こういったものに対する充実、あるいはさまざまなフォーラムの開催などを通じて、この法の中身あるいは内容についての周知徹底をしっかりと図っていきたいと思います。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 障害者差別解消法が施行されたこの年に、このような本当に残念な事件が発生しているということであります。もう本当にしっかり、共生社会の実現のために、心を一つに政府一丸となって取り組んでいただきたいということと、そして、この事件が発生した後、全国手をつなぐ育成会連合会の会長から声明文が出ているのは御存じだというふうに思います。「もし誰かが「障害者はいなくなればいい」なんて言っても、私たち家族は全力でみなさんのことを守ります。ですから、安心して、堂々と生きてください。」と、最後は締めくくられています。

 この守るという思い、親御さんの本当に子供に対する強い強い愛情のあらわれの言葉でありますが、これをやはり我が国として、政府として、あるいは私たちここで立法府にいる身としても、しっかりとやっていかなくてはいけないことだというふうに思っています。

 何か御感想があれば。

加藤国務大臣 それぞれ、そうした方々を守っていくということで、先ほど申し上げたように、今回の容疑者の方のそうした考え、思い、これは我々として断じて許容するわけにはいかない、許すわけにはいかない、こういう強いメッセージを同時に発していく必要があるんだろうと思います。

金子(恵)委員 ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 関連ではありますけれども、障害のある方々は、災害等が発生したときに要援護者という形でやはり支える仕組みというものが必要になっていきます。私も、御存じのとおり、福島県の人間でございますので、東日本大震災直後、障害のある方々は、障害のない方々と比較しますと死亡率が二倍であったという、本当にショッキングな数字もございまして、これをどうにか改善しなくてはいけない、東日本大震災からの教訓を得て、しっかりとこれからも障害のある方々も含めた要援護者の方々を支える仕組みをそもそもふだんからつくり上げなくてはいけないというふうに思っているところでもあります。

 そこで、務台政務官、おいででございますけれども、東日本大震災からの教訓を得て、今回、熊本震災、台風の被害もありました。そしてまた、鳥取地震も発生いたしましたが、災害時の要援護者への対応というのはどのようになされていくべきだというふうにお思いになっていらっしゃいますでしょうか。そしてまた、先ほど来お話があります合理的な配慮というのも提供されなくてはいけません。いかがでしょうか。

務台大臣政務官 金子委員から、災害時の福祉避難所等のあり方を中心としての御質問があったというふうに理解しております。

 障害者、妊産婦といった皆様、あるいは特に支援を要する高齢者の皆様は災害時に特に配慮されるということが非常に大事であり、そのためには福祉避難所の確保が大変大事だというふうに思っております。

 熊本地震に際しましても、福祉避難所の重要性を念頭に、政府としては、被災直後に通知を発しまして、避難所における良好な生活環境の確保の一環として、福祉避難所の設置を求めているところでございます。

 今回は、あらかじめ指定された福祉避難所の活用を行うとともに、エコノミークラス症候群などにも配慮して、ホテル、旅館を活用することとするほか、新たな対策として、トレーラーハウスを益城町に導入するといった対応もしております。

 その一方で、福祉避難所を開設する際の事前の段階における応援体制、周知不足など、十分ではないという指摘もあったことも事実でございます。

 現在、熊本地震を踏まえた応急対策・生活支援検討ワーキンググループを設置しまして、避難所における生活環境の改善も含め、対応の検証を進めております。避難所運営上の課題や改善等については、全国の自治体職員やNPO団体などに対してアンケート調査も実施しているところでございます。

 これらの検証を通じて、福祉避難所の確保、運営に関して生じた課題について整理した上で、具体的な改善方法について関係自治体に広く周知するとともに、災害時に特に配慮を要する方々の良好な生活環境が保持できるように努めてまいりたいと思っております。

金子(恵)委員 十月の十四日でありますけれども、熊本地震からちょうど半年となったこの日に、熊本のNPO法人の自立生活センター、ヒューマンネットワーク熊本が、八月の二十日に開催しましたシンポジウムで意見の集約を行いまして、まとめた提言書を内閣府に提出されたということでございます。

 どのような障害があっても安心して避難できるインクルーシブな避難所と仮設住宅について、災害時における合理的な配慮の確保というタイトルで、どのような障害があっても安心して避難できる一般避難所について、一般避難所においては合理的な配慮が提供されるべきだという御意見。そして、二つ目には、二次的な避難所として福祉避難所の設置をしっかりやってほしいということ。今おっしゃっていただいた内容でございます。そしてまた、三つ目には、真のバリアフリー社会の住環境を見据えた仮設住宅の設置についてということで、この大きく三つでございますけれども、そういう内容での提言書というものが提出されたということでございます。

 今おっしゃっていただきましたように、東日本大震災からの教訓というのは実際余り生かされていなかったんですよね。

 実際に問題になったのは、福祉避難所もそうですが、仮設住宅。今もそうなんですけれども、仮設住宅の建設は全体の九割が完成しているということではあるけれども、多くの障害のある方々は、ニーズのある方々はまだ福祉避難所にもいらっしゃるということで、一般の仮設住宅には移ることができないという状況というふうにも聞いています。

 そもそも、福祉避難所についても、例えば熊本市の場合は、八団体に加盟する約百七十の施設と協定を結んでいたということではありますけれども、でも、実際に三割ぐらいの福祉避難所しか開設ができなかったというふうにも聞いていますので、なかなかこれは、計画を立てたとしても実際には動かないという状況だったと思います。

 ですので、例えば、仕組みの中で、国から新たに通知を出していくとかいうことだけではなくて、一回、震災等が発災したとき、被災地ではどのような混乱が起きているかというのをしっかりと把握していかなくてはいけないというふうに思うんです。

 大変な状況にあります。台風でも、当然のことながら、革靴では行けるような状態ではないです。ですので、内閣府のガイドライン等があったとしても、それをただ周知徹底しただけでは足りないということは御存じかというふうに思います。

 また、今申し上げましたように、仮設住宅の一割にはしっかりとスロープはつくられているけれども、しかし、やはりバリアフリー住宅は、本当に障害のある方々のニーズに合わせた形で必要だということがわかっています。そのことについて、一言どうでしょうか。

務台大臣政務官 おっしゃるとおりに、政府がただ通知を発して、こうしてくれということだけではだめだと思います。

 今回、さまざまな教訓をいただいておりますので、そういうものをしっかりと検証して、NPO、障害者団体の皆様の意見をしっかり聞いて、今後の対応に生かせるように対応してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 よろしくお願いいたします。

 それでは、ちょっと時間が経過してしまっていますので、最後の部分で、また被災地の部分ではありますけれども、実際に国家公安委員長は、所信の中で、警察の災害対応能力の向上に取り組むということをおっしゃっていただきました。先ほど来申し上げてはおりますけれども、東日本大震災やその後に発生したさまざまな災害の教訓を踏まえて、どのように取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

松本国務大臣 警察では、東日本大震災を初めとするさまざまな災害の教訓を踏まえまして、被災地へ派遣する部隊の拡充、二つ目に、実践的訓練の推進、三つ目に、装備資機材の整備などの取り組みを行っております。

 今後とも、さまざまな災害に対応するために、災害対処能力の向上に努めるよう警察を指導してまいりたいと存じます。

金子(恵)委員 東日本大震災の当時も、本当に警察の皆さんが、全国各地からも派遣していただいたわけなんですけれども、大変御尽力をいただいたということも御礼を申し上げたいと思います。

 ただ、初動の対応というのは重要なんですが、今度は、被災地では、復興が進む中で新たな課題が発生してきています。外から被災地に入っている、復興にかかわる作業員の方々が事件に巻き込まれるということも起こっているということ、あるいは、福島県では除染作業員が事件を起こしてしまう、そういう状況もあります。住民が避難中の旧警戒区域等で窃盗事件も多発していましたし、現在は、避難指示解除後に住民が戻らない地域での防犯の強化についての必要性というのも言われています。

 このような中で、その対応能力というのを向上していただけないかと思いますが、いかがでしょうか。

松本国務大臣 御指摘の、現地で起きているさまざまな問題についての対処能力を高めていくということは本旨と受けとめておりますので、さらに警察を指導してまいりたいと思います。

金子(恵)委員 質問を終わらせていただきますけれども、警察官の方々の派遣の継続等、いろいろな課題というものもあるというふうに思います。とにかく、人々の財産と命を守る警察に期待をしながら、そして、被災地でもしっかりと、障害のある人たちもない人たちも、ともに生きる社会をつくるために頑張っていけるような対応をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

秋元委員長 次に、池内さおり君。

池内委員 日本共産党の池内さおりです。

 きょうは、URの団地における高齢居住者の問題について、まず初めに質問をいたします。

 住まいは福祉、住まいは人権というふうに言われています。高齢社会対策基本法の十二条で、「国は、高齢者が自立した日常生活を営むことができるようにするため、高齢者に適した住宅等の整備を促進し、及び高齢者のための住宅を確保し、並びに高齢者の円滑な利用に配慮された公共的施設の整備を促進するよう必要な施策を講ずるものとする。」というふうに定めてあると思います。

 どのような措置を講じているか、お答えください。

西崎政府参考人 お答えいたします。

 高齢社会対策基本法の規定に基づきまして、高齢社会対策大綱というのを政府としては策定しております。この中におきまして、高齢者の居住の安定確保を図るため、高齢者がその特性に応じて適切な住宅を確保できるよう、公的賃貸住宅の供給を促進することなどを盛り込むとともに、数値目標として、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合等を掲げているところでございます。

池内委員 公団自治協によりますと、世帯主の年齢分布を調べた結果があります。それによると、高齢化率というのはすごく今進んでいて、六十歳以上の世帯主が七割以上、七十歳以上で見ても五割を超している状況があります。

 重ねて聞きますけれども、世帯総収入の分布というのは今どうなっていますか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 当機構では、五年に一度、賃貸住宅にお住まいの皆様を対象とする定期調査というものを実施しております。平成二十七年に実施をした結果で申し上げますと、世帯収入が三百万円未満の世帯が全体の三八%、三百万円以上五百万円未満の世帯が二九%、五百万円以上八百万円未満の世帯が二一%、八百万円以上一千万円未満の世帯が六%、一千万円以上が六%、こういう結果でございます。

 これは五年前の、平成二十二年の調査結果と比較いたしますと、八百万円以上の、それなりに高額な所得の方々の構成比はほぼ同様でございますが、三百万円未満の世帯の構成比が三二%から三八%に増加をしておるという結果でございます。

 なお、厚生労働省が実施をされております国民生活基礎調査で同様の比較をいたしますと、三百万円未満の世帯は三二%から三四%に増加をしておりまして、当機構の調査結果と同様の傾向にあるというふうに認識をしております。

池内委員 つまり、高齢化の進行と所得の低下の双方が、今、全国の公団の中で進んでいるということだと思います。この事実からわかることは、高齢者が住みやすい住宅と先ほど最初の答弁で言われましたけれども、その住宅を維持していくこと、住み続けられる負担可能な住宅を維持するためには、この二つの、高齢化そして低所得化という問題に向き合わなければならないときにいよいよ来ている、この政策課題が明らかになっているというふうに思うんです。

 入居者の皆さんの声を聞いても、公団自治協の方々が行ったアンケート調査では、七割以上の人が公団賃貸住宅に住み続けたいと答えて、家賃負担が大変重い、こう答えている皆さんが三五・五%、やや重いを加えると、実に七二・六%の皆さんがこのようにお答えになっているんです。

 加藤大臣にお伺いいたしたいと思うんですけれども、公団住宅に住んでいる方々が一番不安に思っていることは何だとお考えになりますか。

加藤国務大臣 手元にそれを具体的に調査したような資料がないのでわかりませんけれども、基本的に、やはり高齢者の方々が、そこでいつまでも住み続けていけるかどうか、またそういう中で、御自身が身体的にも、やはり老齢化に伴ってさまざまな支障が生じてくるわけでありますから、そういったことに対して、今のままの生活が続けていけるかどうか、それに対応できるような場を確保することができるかどうか、こういったことに対する不安は高いのではないかな、こういうふうに思います。

池内委員 やはり私は、さまざま健康面とかある、それは高齢化に伴ってあると思うんですけれども、食費も医療費も削ろうと思えば我慢できる。だけれども、家賃だけは毎月かかってくる、逃げられない出費なんだという声をしっかり受けとめるべきじゃないかというふうに思うんです。

 六五%もの人が、値上げや高家賃で家賃が払えなくなること、これが不安だと。私も今紹介したいと思うんですけれども、家賃を払えないと公団から出ていかざるを得ないんじゃないか、自分が住める住宅ではもうなくなる、この不安を多くの人が抱えているということだと思うんですね。住めなくなる不安を抱えている人が六割もいる公団住宅、これは一体何かということが今問題になっていると思うんです。

 高齢者対策全般を担当されている大臣として、この状況、おかしいとお思いになりませんか。

加藤国務大臣 今の話は、できないんじゃなくて、不安を抱えているということなんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、住宅は生活の基礎ということでありますし、先ほど申し上げたように、生涯を通じて安定した住生活の確保を図っていくということは非常に重要だというふうに思います。

 そういう意味で、高齢者の居住の安定確保に向けて、良質な高齢者向け住まいの供給あるいは高齢者の自立等に配慮した住宅の建設の促進などに関係省庁においても取り組んでいただいているところでありまして、全体を取りまとめる立場としても、そうした高齢者の方々がその特性に応じて適正な住宅を確保し、御自分の立場からいえば住み続けていけるように努めていきたい、こういうふうに思います。

池内委員 やはり、住めなくなる不安を抱えているという居住者が六割もいる公営住宅というのは、本当に異常なことだというふうに私は思います。

 私の地元にも、赤羽台団地や王子五丁目団地、そして豊島五丁目団地と、本当に巨大な団地がたくさんあるわけなんですけれども、私自身も歩いて、居住者の声を聞いています。

 厚生年金月額九万二千円の七十五歳の女性、ひとり暮らしの方。高優賃の適用を受けて、家賃は月額四万三千円、食費はできるだけ切り詰めている。高優賃の期限が三年で来る。その先どうしたらよいのか、期限が切れたら、死んで明け渡せということになるのか。同じような声というのは、私はたくさん、行く先々で今聞いている状況なんです。

 確認をしますが、高優賃とはそもそもどういう制度ですか。

伊藤参考人 お答えいたします。

 高齢者向け優良賃貸住宅、いわゆる高優賃でございますが、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づきまして、国の財政支援を得ながら、バリアフリー等の住戸内の改善を行い、また、家賃の減額を実施しておるものでございまして、昨年度末時点で二万二千戸を管理しております。

 家賃の減額につきましては、世帯の所得月額の合計が十五万八千円以下、その場合を対象といたしまして、本来の家賃から、政令で定める方法により算定した額まで減額を行っているところでございます。

 以上です。

池内委員 低所得の方々の、まさに高齢者世帯の皆さんの負担の軽減という点では命綱のような、今、制度だというふうに思うんですね。

 負担の軽減措置、これが二十年で終わることになっています。高優賃の住宅に居住しているという方々は、どの方々も高齢者です。二十年住んでいるとなれば、それだけ皆さん、お年をとられているということです。この人たちに軽減措置を停止したら、それこそ死んで明け渡せと言っているに等しい状態になってしまうのではないか。

 URの高齢居住者の生活の安心、家賃の安心、これは物すごい、ほかにも問題がたくさんあるわけですけれども、やはり緊急に、二十年の期限切れが目前に迫っているこの高優賃、負担軽減措置の延長を直ちに検討すべきではないでしょうか。

石田(優)政府参考人 お答えさせていただきます。

 平成三十一年度以降のURの高齢者向けの優良賃貸住宅の検討に関しましては、まず、お住まいを今されている方、この方が安心して住み続けられること、また、経営の効率化を図りながらも、その中で、住宅のセーフティーネットとしての機能を果たしていくというような使命、これらの観点を踏まえて検討を行っていくことが重要だというふうに国土交通省としても考えております。

 一方、平成三十年度に向けまして、URの賃貸住宅全体に係る課題として、賃貸住宅のストックの再生、再編方針の見直しを行うことを求められております。こうしたことと並行して、優良賃貸住宅への対応につきまして検討させていただければと思っております。

池内委員 現場の声に即して、誠実に検討をお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 先日、私は、車椅子の方から、日本で一番バリアフリーが進んでいる場所はどこだと思いますかと問われたんです。すぐには答えることができませんでした。その方が、車道ですというふうにおっしゃったんです。考えてみると、なるほど車道は大きな段差がないし、整備がされていて、車椅子の方でも一旦車に乗れば行動範囲が広がって、社会参加の可能性がうんと広がっていく、さらに就労の促進にもつながる、この点を私も教えていただいて、なるほどというふうに思ったんです。自動車免許は社会参加に極めて重要な手段になっているということが私もよくわかりました。

 そこで、お尋ねします。

 車椅子の皆さんが自動車免許を取得するためには、政府の定めた障害者プラン、ノーマライゼーション七か年戦略というものがありまして、この中で、身体障害者用教習車両を教習所にそろえるか、本人が改造車を持ち込まなければならないというふうに書いてあります。

 都道府県公安委員会が指定する教習所には、車椅子の方々が教習できる下肢障害者用の教習車両というのは何台ありますか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年末現在、全国の指定自動車教習所におきましては、御指摘の下肢障害者用教習車両は百七十七台配備をされておるところでございます。

池内委員 全国千三百カ所ある中で、車両というのが百七十七台だと。これは、車の改造に費用がかかるということが一つの要因で、なかなか配備が進んでいないという面もあると思いますし、他方で、障害者が車を持ち込む場合は本人に負担を、それこそ大きな負担を強いることになるということだと思うんですね。これでは、車椅子の人たちが免許を取るというのは極めて困難な現状があるということだと思います。

 今、車の大がかりな改造をしなくとも、簡単な装置を一般車両に取りつけたら身体障害者の運転が可能になるような技術革新がいろいろ進んでいるということは御存じだと思います。しかも、安価なものも出てきている。冒頭に述べた政府の指針というのは、もう既に時代に合わなくなっているのではないか。いつまで車椅子の方々に、自分で車を買って改造し、その車を持ち込んで教習せよ、こういう態度を続けるのかということが問われていると思います。この点、どうですか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 下肢に障害のある方が、今御指摘のございました、車両への簡易取りつけ部品を使用して自動車教習所において教習を行うことは現在も認められておるところであり、簡易取りつけ部品を使用して教習を行い、運転免許を取得した方が既におられるものと承知をしておるところでございます。

 警察庁におきましては、各都道府県警察に対して、十月十二日付で通達を発出いたしまして、障害者差別解消法を踏まえ、身体に障害がある方の教習について、身体障害者用の車両だけではなく取りつけ部品についても使用できるということを通達上に明示をし、教習所への整備を促すよう指示をしておるところでございます。

 また、先日、各都道府県の指定自動車教習所協会の代表者を集めた会議におきましても、警察庁の担当者から、教習において積極的に、お尋ねのような取りつけ部品の使用を受け入れるとともに、教習所においても取りつけ部品の整備を図るよう要請を行ったところでございます。

 加えまして、現在、一般社団法人日本福祉車輌協会が、身体障害者用の車両や簡易型取りつけ部品を紹介するパンフレットを作成中と承知しておりまして、そのパンフレットが完成次第、これを教習所や各都道府県警察に配付をいたしまして、障害のある方等への周知を図っていくことも検討しておるところでございます。

池内委員 免許を取りたいと希望して適性判断された下肢障害者の皆さんがどこでも受け入れられるという状況をつくることが今求められていると思うんですね。

 まずは、今御答弁されましたけれども、通達を出したりいろいろ努力されていることは私もわかっているんですけれども、一般車に取りつけて教習できる安価なもの、これをやはり教習所の側がきちんと購入をして準備をする、こういう経済的な、財政的な援助も含めて促進させるべきじゃないですか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまも御答弁を申し上げましたとおり、取りつけ部品を使用して教習を行うことを認めているということは、当然、教習生の方が持ち込んで使用するということだけではなくて、教習所においてその取りつけ部品の整備を図っていくということも一方で必要でございまして、そのような部品の整備を図るよう、先ほども申し上げたとおり、教習所の団体を通じて要請を行っておるところでございますし、今後も、そのような整備が積極的に推進されるよう、教習所に働きかけを進めてまいりたいと考えておるところでございます。

池内委員 先日、この簡易な装置についてNHKでも報道されまして、関連の動画が一万回の再生ということだったんです。簡易な装置で教習できるとなれば、利用者は本当に喜ぶし、全国で教習所に通う障害者はふえると思うんですね。それにあわせて、今なかなか進んでいない教習所のバリアフリーという問題も前向きに好転していくと思うんです。

 この課題は進めていくべきだと思いますが、加藤大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 今の話も含めて、障害者の方々が自分自身の思いの中で活動していくに当たって、さまざまな支援をすることによってそれが可能になっていく、そうしたものに対してしっかり対応していくというのは大切なことだろうというふうに思います。

 具体的な話はそれぞれの省庁で対応されるという話だと思いますが、基本的には、特に車によって御自身で活動できるようになる、大変重要なことだろうというふうに思います。

池内委員 ぜひとも進めていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 加藤大臣、もう質問は終わりましたので、ありがとうございました。

 大阪府警の機動隊の暴言についてお聞きします。

 大阪府警の機動隊員が沖縄の高江で行った暴言ですけれども、国家公安委員長は、この発言について国会で問われて、不適切、極めて遺憾と述べられておりますが、どの発言が、どういう意味で、どう不適切だったのか、お答えください。

松本国務大臣 今般の大阪府警から沖縄県警に派遣された機動隊員の発言は、今おっしゃられたとおり、不適切であり、まことに遺憾であると存じております。

 今後、こんなようなことがないように、適切な警備活動を行っていくよう警察を指導してまいりたいと思いますが、今般の大阪府警から沖縄県警に派遣された機動隊員の発言は、沖縄の方々を極めて不快にさせ、警察の信用を失墜させるような内容であるため、不適切であり、極めて遺憾と発言をさせていただいたところでございます。

池内委員 よくわからないのでもう一度お聞きしますけれども、どの発言がどう不適切だったんですか。これを明確にしないと再発防止はできないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松本国務大臣 この中で申し上げておりますのは、沖縄の方々に対して、その思いに不快な心証を与えるということをここで言っているところでございまして、まず、そういった配慮ある態度をとるということは非常に重要なことだと思っております。

池内委員 沖縄の皆さんの思いに不快な心証を与えたという点を繰り返されて、では、何が具体的にそうだったのかということにはお答えいただいていないわけですけれども、私は、今回の発言というのは極めて重大だ、大問題だと思っています。しかも、この発言が公務中に発せられた。

 大阪府警が、二十一日に、発言を行った二人の警察官の処分を行ったということですけれども、何が問題で処分したんですか。

三浦政府参考人 大阪府警察におきまして、当該機動隊員二名に対しまして、今大臣の御答弁にもございましたけれども、相手方を極めて不快にさせ、警察の信用を失墜させるような不適切な発言を行ったということで、戒告の懲戒処分を行ったものと承知をいたしております。

池内委員 問題は、なぜ二人の警察官が、一人は土人と言い、一人はシナ人と言ったのかということです。この問題を深掘りしないと私はいけない、幾ら不適切、遺憾、こういう言葉を繰り返しても、再発は防げないというふうに思うんですね。

 二人はなぜこんな発言をしたんでしょうか。

三浦政府参考人 大阪府警察からの報告によりますと、当該職員らは、現場が混乱して感情が高ぶった結果、こうした発言をしてしまったというものであり、沖縄の方々を差別するような意識は全くなかったと申し述べているところでございます。

 ただ、いずれにしても、不適切な発言であったことを本人たちも認め、深く反省をしているということでございます。

池内委員 本人に府警が事情聴取した、その際、本人たちがどう述べたかはもう報道されていますので、ちゃんと答えてください。

三浦政府参考人 ただいまお答えを申し上げたとおりでございますけれども、現場が混乱をする中で、感情が高ぶり、こうした発言を不用意にしてしまったということでございまして、沖縄の方々を差別する意識は全くなかったということを申し述べているところでございます。

池内委員 何度も答えないわけですけれども、明確に言っていますよね。抗議行動をしている人が泥にまみれていたので土人という言葉を連想した、差別的な言葉だなんて思っていなかったなどと。泥にまみれていたから土人なんて、こんな言い逃れが許されるんですか。誰も信じないですよ、こんなこと。

 公安委員長、御自身の中に、日常の生活の語彙の中に、土人という言葉はありますか。

松本国務大臣 一般に申し上げますが、土人とは、その土地に生まれ住む人々のほか、未開の土着人という意味で用いられていると承知をしております。

 いずれにいたしましても、今般の機動隊員の発言は不適切であり、極めて遺憾であると存じます。

池内委員 私は、土人という言葉は知っていても、とっさに口を出るような類いの語彙としては持ち合わせていません。

 警察庁の幹部職員に来ていただいたときに皆さんにお聞きしましたけれども、例外なく、土人という言葉は自分の日常生活にないと言っていました。まさに不思議ですよ、非日常の言葉、まさに。差別用語と思う思わないの以前の問題として、何でこんな土人などという言葉が口をついて出たのか。

 ただ、私たちの社会の中には、この表現、相手をおとしめて喜ぶ汚れ切った表現ですよね、これを日常的に使っている集団がいます。ネット上にもあふれている。なぜ機動隊員の口からとっさにこうした言葉が出たのか。それは、彼がもしかしたらネットで学んだかも、日常生活のどこかで学んで身につけたものかもしれない。沖縄の人たちに土人とさげすむ言い方を内面化した経過があるはずなんですね。警察組織の中にこうした考え方、物の見方が浸透しているのではないか。私はとても深く危惧いたします。笑い事ではないと思うんですね。

 公安委員長にお尋ねしますけれども、この事件は、単に一人の若い警察官が不適切な発言をした、ここにとどまらない重大問題である。警察は二人を処分して終わりにするんじゃなくて、なぜこのような発言が出たのか、内面化された経過をきちんと明らかにすべきじゃないですか。

松本国務大臣 まず、警察の活動といたしましては、不偏不党かつ公正中正を旨とするということとされておりまして、私の立場からは、その指導をしていく、こういった立場にあるところでございまして、さらに教養を身につけていくというようなことを学んでいくことが必要だと思います。

池内委員 一般的に教養を身につけてという教育は警察内でやられていると思うんですけれども、その結果起きたこと、だから私は重大だと思っているんです。

 シナ人という発言も、私の危惧を裏づけていると思います。この発言をした警察官はどういう状況にあったか。

 高江の現地でヘリパッド強行に抗議する住民に対して、右翼系の人々が妨害行動を行っていたと。警察の説明では、トラブル阻止のためにそこに割って入った機動隊員だった。そして、シナ人という言い方、物の見方、これら右翼系の集団の主張でもあることはもう事実です。

 つまり、この一連の事実が示しているのは、この警察官が中立的な立場を踏み外して右翼系の人々の主張に共鳴をしていた、もしくは親和的な立場だったということを物語っているというふうに思うんですね。

 公安委員長にお聞きしますけれども、もし、大阪府警の機動隊の一部ではあっても、こうしたヘイトスピーチにつながる思想が入り込んで、浸透しているとしたら、それは大問題じゃないですか。この立場から、この問題を徹底的に究明すべきではないですか。

松本国務大臣 大阪府警によりますと、当該機動隊員が混乱した現場において感情が高ぶってしまい、今般の不適切な発言を行ったとのことでございまして、同府警におきましては厳正に対処したものと私は承知をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、警察の活動は、不偏不党かつ公正中正を旨として行われるものと承知をしているところでございます。

池内委員 感情が高まってとっさに出たということでは済まされないと私は言っているんですね。

 なぜかといいますと、まさにこのシナ人という発言は、政治的な言葉にもう既になっています。中国の陰謀などと、抗議する沖縄の人たちに向けて悪罵を投げつけているわけですから。とっさには思いつかない類いの使われ方をしているんです。

 沖縄の人たちに対してシナ人と言うのは、もう既にそれが政治的な使われ方です。警察組織がヘイトスピーチに汚染をされている、もしこんなことがあったら大変なことです。そうじゃないと私は願っているから、きょう質問をしています。

 土人にしてもシナ人にしても、徹底究明、こうした言葉が発せられた背景、なぜ明らかにできないんでしょうか、大臣。

松本国務大臣 何度も申し上げておりますが、警察の活動そのものにつきましては、不偏不党かつ公正中正を旨としてすることとされておりまして、そのように努めているところであると承知をしております。

 ただし、今般の、沖縄の方々を極めて不快にさせ、警察の信用を失墜させるような発言があったことから、大阪府警におきまして厳正に対処したところでありまして、警察庁からも、全国警察に対して再発防止の徹底を指示しているものと承知をしております。

 なお、お尋ねの、調査する、また、どう対応していくか、考えていくかということについての必要性ということは認識をしておりませんが、いずれにいたしましても、しっかり教養を行いまして、今後このような事案をなくし、適切な警備活動を行っていくよう指導してまいりたいと存じます。

池内委員 警察官だけが購読する月刊バンという雑誌があります。この雑誌に執筆している恵隆之介という人物が自身のフェイスブックで、「大阪府警機動隊員「土人」発言どこが悪い?」と題して、以下のように述べている。

 「昨年、翁長知事は国連人権委員会で「沖縄人は先住民、自決権を尊重せよ」と自己差別的発言をしました。要するに自らをいっしゅの「土人」とアピールしたのです。 今度は大阪府警の機動隊員が基地反対派左翼に「土人」と発言しただけで「差別」ですって? 私は幸運にも本日発売の全国警察官雑誌「BAN」沖縄特集にその実態を書きました。」「警察官諸兄に大きなエールとなると確信します。」と、このように書いてある。もう愕然としますね。驚きます。支離滅裂でひど過ぎるし、しかも、これが警察官へのエールになると言っている。

 幾ら公安委員長が遺憾だ、再発防止と言っても、こうした形で問題発言が擁護されて、警察内に広がっている。私はここにこそ今回の問題の本質があると思いますけれども、大臣、いかがですか。

松本国務大臣 何度も申し上げておりますが、大変沖縄の皆様の心に触れる発言をしたということに対して、まことに遺憾と存ずるところでございます。

 適切な警察警備活動というものを行っていく上では、やはり警察官そのものの教養を身につけるという、またこの教育が必要ということで、これからもその指導を徹底してまいりたいと思います。

池内委員 時間が来ましたので終わりますが、本人たちがこの特殊な言葉を、日常では使わなくなったような言葉をどのように内面化して、口をついて出るほどまでに内面化したか、この経過を明らかにしないと、警察全体の信頼は、私は回復できない。国民の信頼を回復するためには少なくともやらなければならない仕事だということを求めて、強く指摘をして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

秋元委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民進党の大串でございます。

 きょうは、菅長官、よろしくお願いします。

 南スーダンPKOの件について質疑をさせていただきたいと思います。

 南スーダンPKOは、今週ですか、第十次隊から十一次隊への期間の延長の閣議決定がなされました。三月末までということで延長をされるわけですけれども、ここに駆けつけ警護という安保法制による新任務を付与するかということが注目されているわけであります。

 一方で、この南スーダン、特に自衛隊施設部隊が活動しているジュバの近辺では、今国会でもたくさん取り上げられていますけれども、状況が非常に変化していることが懸念されます。ことしの七月に和平合意も成ってはいるんですけれども、キール大統領派とマシャール、今となっては前第一副大統領派、この間の武力の衝突ですね、衝突と政府の方は言葉を使われていましたけれども、衝突が大規模にかつ繰り返し非常に密集して発生した。その後もいろいろな衝突、政府の言葉を使うと衝突ですけれども、これが発生している、こういう状況にある。私は非常に心配しているわけです。

 この状況下で、PKO法に定めるPKO五原則、これに該当するかどうかという点においていろいろな議論がされているわけでありますけれども、この間、稲田防衛大臣は現地を訪問されましたね。私も代表質問の際に、大臣自身が現地を視察することは非常に大切だというふうに申し上げました。大臣は行かれまして、そのときの記者会見、ぶら下がりでしたけれども、状況は落ちついているというふうな発言をされていました。

 どうですか、菅長官、今でもこのジュバ付近の状況は落ちついているという認識でいらっしゃいますか。

菅国務大臣 今委員から御指摘がありましたけれども、七月七日以降、そこで首都ジュバ市内の治安情勢が急激に悪化をした。そこは、キール大統領派とマシャール第一副大統領派の激突であったということでありますけれども、現時点において、南スーダンの地方において引き続き散発的、偶発的な衝突は見られておりますけれども、自衛隊が展開しております首都ジュバにおいては比較的情勢は平穏であるというふうに認識をしています。

 なお、ジュバでは、地元の商店やスーパー、さらに商業銀行、病院などはおおむね通常どおり営業しているということです。そしてまた、主要航空会社も通常運航であります。

 ですから、政府としては平穏であるというふうに考えておりますけれども、いずれにしろ、現地情勢については引き続き緊張感を持って注視してまいりたい、このように思っています。

    〔委員長退席、松本(文)委員長代理着席〕

大串(博)委員 引き続き落ちついているとおっしゃいますけれども、ポイントは、この間の参議院の予算委員会でもこれが武力行使というか闘争に当たるのかみたいな議論がありましたけれども、本当に議論しなきゃならないのはPKO法上の定義ですね。

 PKO法上は、いわゆる五原則との関係で、武力紛争の当事者間の停戦の合意があること、こう法文上書かれているわけですね。ですから、武力紛争という状況にあるのかないのかということが非常に大切で、私は、この間ずっとこの議論を聞いていて、あるいはこれまでもPKOを日本は送るかどうかということを考える際に、私自身もPKO担当の政務官を担当したんですけれども、非常に難しいなと思ったのが、武力紛争という言葉の定義がこれまで十分なされてきたのかという点が問題ではないかと非常に思うんですね。

 ちなみに、PKO法上の武力紛争とはどういうふうな基準、考え方で判断するのでしょうか、長官。

菅国務大臣 武力紛争を定義した規定は存在をしていないということは委員も御承知のとおりであります。

 一般に、従来からは、実力を用いた争いが我が国のPKO法における武力紛争に該当するか否かについては、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断する、このようにしているわけです。

 例えば、七月のこの衝突、キール大統領派とマシャール前第一副大統領派の衝突によるものでありますけれども、マシャール前第一副大統領派は系統立った組織性を有しているとは言えないということも事実でありますし、また、同派による支配が確立されるに至った領域があるわけでもありません。また、キール大統領派とマシャール前第一副大統領派の双方とも、事案の平和的解決を求める意思を有している、このことも事実であります。

 こうしたことから総合的に判断をして、このマシャール前第一副大統領派は紛争当事者には当たらないというふうに政府は考えております。

大串(博)委員 国会の場なので、過去に余りなかったことだと思いますので、ここできちっと、事務方からで結構なので、確認します。

 今長官の方から、武力紛争に該当するか否かについては、事案の態様、それから当事者及びその意思等を総合的に勘案してという話がありました。

 事務方の方できちんと答弁していただきたいんですけれども、態様ということを考える際にどういう論点で見るのか、当事者ということを見るときにどういう論点で見るのか、意思というものを見るときにどういう論点で見るのか。今長官が発言された態様、当事者、意思を総合的に勘案するだけではとても私は具体的な基準とは言えないと思うんですね。

 もう少し突っ込んで、態様、当事者、意思、それぞれについて、どのような論点、基準で見るのか。これは事務方で結構ですから、きちっと答弁してください。

宮島政府参考人 お答えいたします。

 今長官からも答弁がありましたけれども、PKO法上は、武力紛争を定義した規定はございません。

 政府としては、一般に、実力を用いた争いが我が国のPKO法における武力紛争に該当するか否かは、今御説明のとおり、事案の態様、当事者及びその意思等を総合的に勘案して個別具体的に判断するということにしております。

 このうち、事案の態様でございますが、これは、ある実力を用いた争いが散発的、偶発的なものであるか否かということでございます。

 また、当事者とは、当該争いの主体が系統立った組織性を有しているか、また、支配が確立されるに至った領域を有しているかといったことでございます。

 意思とは、当該争いを起こした主体が事案の平和的解決を求める意思を有しているか否かということでございます。

大串(博)委員 今それぞれ、態様、当事者、意思について説明がありました。こういった基準みたいなものは、きちっとさらに深掘りしていく必要があると思うんですね。

 実は、今おっしゃったことでもまだ、PKOを送るかどうか、特に駆けつけ警護という新任務を与えるかどうか、非常に微妙な判断をする際にはまだこれでも十分な詳しさ、具体性を持っているかというと私は疑問なんですね。これはさらに詰めていかなきゃならないと思いますし、今回の具体的な事案に関して少し議論していきたいと思うんです。

 例えば、最初の態様ということに関して、散発的か偶発的か、次に、当事者ということに関して、系統的な組織性を有しているかどうか、これは先ほどマシャール前第一副大統領派に関して系統立った組織を有していないというふうにおっしゃいましたけれども、ちょっとこれは後ほどまた大統領派との関係で議論したいと思います。

 最後の意思のところで、事案の平和的解決を求める意思があるかどうか、これは両派とも事案の平和的解決を求める意思を有しているというふうに長官は言われましたけれども、本当にそうでしょうか。

 最近の明らかになっている報道を見ても、マシャール氏、最近においては、和平合意はもうないということをはっきり、いろいろな記者会見で発言されていますね。きのうの夕刊で報道された内容を見ると、首都攻撃もあり得る、こんなことをおっしゃっているんですよ。和平合意は崩壊しているともう何度も言っていて、かつ直近では、首都ジュバですよ、ジュバでの攻撃もあり得る、こういうふうに言っている派に対して、先ほど長官がおっしゃった、事案の平和的解決を双方求めているという認識は全く違うんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

菅国務大臣 現実を見てみますと、マシャール前第一副大統領派は現在は国外におって、国外からさまざまなことを、今言われたようなことを発信しています。

 また一方、キール大統領派はタバン・デン鉱業大臣を新しい第一副大統領に任命しました。これは反主流派内の手続を得て任命をしておりまして、大統領及びこの第一副大統領は衝突解決を、合意を履行していく考えを繰り返していますから、現実的にはこのような形で治安がおさまっているというふうに思っています。

大串(博)委員 タバン・デン現第一副大統領、これが反体制、反主流派の代表として和平合意をやっていきますと言っているからいいんだみたいな答弁でありましたけれども、今、国際的に注目されているのはマシャール氏の言動であり、マシャール氏の言動によって動く可能性のあるいろいろな勢力が注目されているがゆえに、多くのメディアもこぞってマシャール氏の発言を求め、それが、和平合意はもうない、崩壊していると言い、かつ首都の攻撃もあり得ると言っていることに国際社会は注目しているわけじゃないですか。

 タバン・デン第一副大統領なる人が本当に反主流派を全部押さえ切るかどうか、私は極めて不明確な状況にあるというふうに思いますし、マシャール派の状況を見誤ると非常に大きな問題を生じる可能性があるというふうに思います。

 現状の判断においては、先ほど申しましたように、武力紛争というものの定義は、態様、当事者、意思という三つが国会ではこれまで総合的判断要素と言われただけなんですね。きょう、初めてそれらの要素がもう少し詳しく言われましたけれども、もう少し各事案に即して慎重に、かつ、特に今回このような状況ですから、かなり厳密な判断をもって行っていただかないといけないんじゃないかというふうに思うので、ぜひここは私は注意を喚起しておきます。

 今のジュバの状況は、七月以降、相当悪化していると思われますし、先ほどタバン・デン現第一副大統領が和平合意を履行すると言っているがゆえに状況は落ちついていると言われましたけれども、つい最近でもジュバ周辺では人命を失うような衝突が起こっていますね。こういったことは軽く判断できることではないと私は思いますので、ここはよく注意を喚起しておきたいというふうに思います。

 それからもう一つ、当事者のところで先ほど、マシャール派の方は系統立った組織性を有していないということを根拠に、当事者性がないというふうに言われました。それは、一方当事者はそうなのかもしれません。しかし、もう一方当事者はどうでしょうか。大統領派です。つまり、政府軍。最近、この政府軍が相当な、政府の言うところの衝突行為、武力を使った大変な行為を行っているということが明らかになってきていますね。

 つい最近、アムネスティ・インターナショナルが、当時、七月の初旬に起こったジュバでの衝突、これを、百人近い当事者の方々のヒアリングをもとにまとめた文書が公開されました。「ウイ・ディド・ノット・ビリーブ ウイ・ウッド・サバイブ」、生きて帰れるとは思わなかったと。衝撃的な文書ですよ。私はこれを全部読みました。読んでみると、大変なことが書かれている。

 ほとんどが、政府軍が人命をあやめ、女性を暴行し、略奪の限りを尽くしたというようなことがこの中に克明に書かれているんです。なおかつ、この中に、襲われた場所として、一般市民の皆様のみならず、国際的な支援家、支援団体、支援者、エードワーカーと言いますけれども、こういう方々が宿泊されているホテル、ここにも政府軍が乱入してきて、武器を使い、人を殺し、女性を暴行し、略奪したということも書かれている。助けを求めたということも書かれている。しかし、この中の報告を見ると、国連の対応は、地元の方々が助けてくれと言ったことに対して国連は動かなかったということが指摘されたりしているんですね。

 これは何が問題になるかというと、こういう状況がこれだけ子細に報告されている中で、もしこの中で駆けつけ警護という任務が付与された場合には、衝突が起こった際に、政府軍から攻撃を受けている援助関係者を守るために、自衛隊が駆けつけ警護をお願いしますと言われる可能性は十分あるんじゃないかというふうに思うんですね。

 長官にお尋ねしますけれども、今のこの現状において、日本政府は、衝突が起こっているということは認められました、政府軍がその衝突に加わっているということの御認識はあられますか。

    〔松本(文)委員長代理退席、委員長着席〕

菅国務大臣 衝突発生のきっかけについて明らかでない場合や、軍の指揮命令に基づかない、現場レベルで偶発的に発生したものがある、このようには政府は認識しております。

 ただ、政府軍が何らかの形でかかわることによる衝突が発生した事案というのは、現場レベルで偶発的な発生、そういうふうに理解をしております。

大串(博)委員 政府軍が加わっているけれども偶発的だからいいじゃないか、こういうふうな印象と今受け取りましたけれども、果たしてそういう理解でいいんでしょうか。

 このアムネスティ・インターナショナルの報告書に書かれている、政府軍が使った武器等々を見ると、小火器、小さな火器みたいなものではないですよ。極めて重装備な、大砲みたいなものとか、あるいは重装備のタンクに近いものとか、そういったものを使って攻撃しているんですよ。これをもって、散発的、偶発的な、政府軍の一部みたいなものだから大丈夫じゃないかという判断は、私はとてもとても成り立ち得ないと思うんです。

 この駆けつけ警護の任務をもって自衛隊の方々が行かれて、もし駆けつけ警護を行うことになる。駆けつけ警護によって、武器使用が認められていますので、自衛隊の方々が武器を使用して、政府軍に対して武器を使用したということになると、これは、相手方、政府軍は間違いなく国または国に準じる組織ですよね、そうすると、憲法が禁じる、自衛隊が武力の行使を海外で行うということに該当し得る状況が起きてきてしまう、そういうふうな事態にもなり得ると思うんですね。

 これに関して、事態に関する御認識と、そういう中でも駆けつけ警護の任務を付与するという方向に進むのか否か、私は、ちょっとこの今の状況においてはかなり無理筋ではないかというふうに思うんですけれども、長官の御認識をお問い合わせしたいと思います。

菅国務大臣 誤解されると困りますので改めさせていただきますけれども、まず、現場レベルで偶発的に発生をしている、そして、首都ジュバは平穏である、このことについては政府は確認をいたしております。今、いろいろな武器を使った状況の話がありましたけれども、それはジュバ市内ではないというふうに認識をいたしております。

 そして、駆けつけ警護の件でありますけれども、これについて政府内で総合的に今検討している状況であります。

 そして、駆けつけ警護については、参加五原則を満たした上で、PKOの活動及び我が国部隊の行う業務に対する派遣先国の受け入れ同意が安定的に維持されると認められた場合に限り実施するものでありますので、こうして受け入れ同意が安定的に維持される場合には、派遣先国の政府軍が我が国部隊に敵対するものとして登場するということは想定はされずに、政府軍を相手方として我が国が憲法の禁ずる武力の行使を行うという状況が起こるとは考えておりません。

大串(博)委員 論理的に言うと、停戦受け入れ合意があるはずだから、そういうところと交戦する可能性はないので、憲法違反にはならないという論理的な答えだけなんですけれども、問題は実態なんですね。

 先ほど長官は、実態として、政府軍が重装備の武器を使った例はジュバではないとおっしゃいましたけれども、このアムネスティ・インターナショナルの報告書を見ると、そんなことではないんですよ。タンクとアーティレリーと、極めて重装備の武器ですね。タンクというのは戦車ですよ。これを、「デンスリー・ポピュレーテッド・シビリアン・ネーバーフッド」、人口密集地帯で、ジュバですよ、人口密集地帯で政府軍は戦車を使っている、こんなことが全部事実として書かれているんですよね。

 そういう事実認識もきちっと持っていただきたい。そうでないと、やはり私は認識を誤るというふうに思います。後ほど、もし補足があったら。時間の関係もあるので、この論点が一つ。

 だから、極めてこの点に関しては、現場の状況をきっちりと見定めた上で、ゆめゆめ軽々な判断はしないでいただきたい、こういうふうな国際的な状況もよく見据えた上で判断していただきたいと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 今の委員の発言というのは、七月の事案だというふうに思います。

 私どもも、ここで答えさせていただいているのは、七月のそうした事案については、激しいものがあったということは政府としても承知をしているわけでありますし、現時点においては、それ以降に平穏であるということを私は先ほど来申し上げているところであります。

 それと同時に、現在、南スーダンには世界から六十二カ国の部隊が派遣をされて、南スーダンのために懸命に努力をされておるところであります。どこの国も引き返すということは私どもは承知はしておりませんし、また、国連は新たに四千人の地域保護部隊を創設し、増派を決める、こういうことも私どもは報告を受けています。

 いずれにしろ、世界はまさに南スーダンの平和と安定確保のために取り組んでいる、このことも事実だというふうに私は思っております。

大串(博)委員 やはり、駆けつけ警護というのは、憲法との関係は極めて私は微妙なラインになってくるような、これまでのPKO活動とは一線を一つも二つも画すような内容だと思うので、ぜひ、これは今の現状において行うことは絶対にあり得ないような思いでいますし、もともと私たちは安保法制における政府の駆けつけ警護の仕組みに関しては反対であります。このことはしっかり申し述べさせていただきたいというふうに思います。

 さらには、これまでの委員会でも、駆けつけ警護を行った場合の自衛隊員の身の安全の確保という意味において、第一線の救急救命体制の話がありました。

 きょうは指摘だけにとどめておきますけれども、これはぜひしっかりやっていただきたいというふうに思いますし、私たち、議論していて、ここは手薄なんじゃないかなというふうに思いました。

 だから、これから、私たち民進党としても、提案もさせていただきたいということも考えています。できれば議員立法すら考え、御提案すらさせていただきたいということも視野に入れて考えています。自衛隊の皆様の第一次救急救命体制をしっかりするという、私は、もうこれはみんなでやらなきゃいけない話だと思いますので、その際にはぜひよろしくお願い申し上げたいということは、申しておきたいというふうに思います。

 次に、沖縄の負担軽減に関して少々質問させていただきたいと思います。

 沖縄の負担軽減に関して一つ非常に気になる発言が最近あったことに関してのお問い合わせをさせていただきます。

 十月十三日の参議院の方での議論、儀間さんの質疑に対して、安倍総理からの答弁で、沖縄普天間の空中給油機の十五機につきまして、これは山口県の岩国基地に全機移駐をしたわけでございます、また、訓練の一部は佐賀で行うということでこれは進めているわけでありますし、また、整備は、このオスプレイの整備は、これは千葉県木更津ですね、木更津で行うということも進めつつ、こういうふうに言われています。

 しかし、この佐賀空港におけるオスプレイ配備に関しては、米側、米軍ですね、米海兵隊のことをどうするかという論点に関しては、そもそも、この話が起こった平成二十六年七月、八月ですね、最初、武田防衛副大臣は、米海兵隊の佐賀空港暫定利用を要請されました。その後、小野寺防衛大臣が、訓練移転、こういうふうに言われました。これに関して佐賀県内でも大きな議論がありました。これを受けて、二十七年十月二十九日、中谷防衛大臣、当時、米海兵隊による佐賀空港の使用に関しては、これは切り離します、要請としては取り下げます、こういうふうに言われました。

 その後の防衛省からの説明は、ずっと一貫して、沖縄の負担軽減は行わなければならない、そういう意味において、他空港との横並びで、この負担軽減を佐賀空港にも受けてもらうことはあり得るかもしれません、こういったラインだったんですけれども、この安倍総理の、また、訓練の一部は佐賀で行うということでこれは進めているわけでありますという発言は、これまでの説明と全く違います。これは佐賀県の方でも大きな混乱を呼んでいます。

 やはり、政府の意図は陰ではここにあるんだというふうな理解にどうしてもなります。そういう意味からすると、総理の発言ですから、これは極めて重いと受け取らざるを得ません。

 本当は総理にこれをお尋ねできればいいんですけれども、機会がなかったので、これは政権を預かる官房長官にぜひ、防衛省がこれまで言ってきた、他空港との横並びで、沖縄の負担軽減を受け持ってくださいという話なのであれば、この総理の、訓練の一部は佐賀で行うということでこれは進めているわけでありますしという、このかたい答弁は撤回していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

菅国務大臣 質問していただきまして、ありがたく思います。

 実は、総理は、今委員から御指摘ありましたように、米軍オスプレイの訓練移転に関して、訓練の一部は佐賀で行われるということでこれは進めているわけでありますという答弁をしております。

 米軍オスプレイの沖縄県外への訓練移転については、これまでも、私ども、機会あるごとに、県知事会を初め全国の皆さんに、負担軽減を全国で分かち合うという、その観点からお願いをしているところであります。佐賀空港におきましても、そうした全国の他の空港と同様に利用させていただきたい、こういうお願いを防衛省で具体的にさせていただいているというふうに思います。

 総理の答弁は、こうした認識を前提とした上で、訓練移転についても佐賀空港を一つの例示として述べた、このように私は総理と話しておりますので、一つの事例として、従来の説明の中の、全国の受け入れ先の、ぜひオスプレイを、訓練を期間限定でもしてほしいといろいろなところで今お願いしていますので、それと同じような意味合いで総理が答弁をされたということでありますので、委員の御懸念するようなことではありません。このことを私から明確に否定させていただきたいと思います。

大串(博)委員 佐賀県の受けとめ方はそうじゃないんですよ。他空港との横並びで、佐賀にもお願いしますという話を聞きながらも、いやいや、他空港で自衛隊のオスプレイが入ると言われているところはないし、やはり、内々、将来、米海兵隊のオスプレイをお願いしますと言われるんじゃないか、そういうふうな魂胆ではないかとみんな思うわけですね。だからこそ聞くわけです。

 総理の発言は、訓練の一部は佐賀で行うということでこれは進めているわけでありますし。一つの例示、とんでもない、一つの例示とはとても言えないですよ。こういう、誤解を生むような表現というふうにおっしゃいましたけれども、一つの例示とはとても言えない発言なので、私は、これは明確に官房長官の口から、総理のこの発言は撤回しますと言っておくべきではないか、それぐらい言葉の意味としては離れていることだと思うんです。これはぜひ撤回すべきだと思いますけれども、いかがですか。

菅国務大臣 今委員の言われたような意図で総理が申し上げたのではなくて、佐賀空港においても、全国の空港と同じようにオスプレイの訓練をぜひ引き受けてほしいという、今全国でお願いをしている、そういう中の一例として総理は申し上げた、こういうふうに私も理解をしていますし、総理と直接話もいたしております。

大串(博)委員 撤回なさらないんですね。

 意図はそうだったとおっしゃいますけれども、予算委員会で総理が明確に言っていることですよ。これは重い。重いですよ。それを、いやいや、そう言ったけれども意図はそうじゃなかったと言っても、なかなか県民に通じるものではない。県民に大変な重い決断を、あるいは重い話を持ってこられているわけです。ここは真摯に、明らかでないものがあったら取り消すというふうにすべきだと私は思います。しかし、それをされない。この不誠実な態度の中でこの話がどのくらい進むのか、私は非常に疑問に思います。そのことを県民の声としてお伝えさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

秋元委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。

 本日は、松本国家公安委員会委員長と金田大臣に伺ってまいります。

 松本国家公安委員長とは、特定秘密の情報監視審査会でともに委員だったということもあり、ぜひそのときの志を引き続き新たな任務でも全うしていただきますよう、お願いを申し上げます。

 きょうは、テロのことについて伺っていきたい。

 二〇二〇年に東京オリンピックがあるということで、テロ対策の重要性が一層言われるようになりました。また、昨今の報道では、法務委員会の所管となりますが、共謀罪の議論もあります。そういうことを念頭に、テロというものについて少し根本的なところから考えてみたい。

 アメリカでは、テロという言葉が合衆国の法典に定義をされておりまして、例えば国際テロという定義について申し上げますと、暴力行為または人命に危険を及ぼす行為であり、米国または州の刑法違反となる行為、もしくは米国または州の司法管轄権内で行われた場合に犯罪行為となる行為にかかわる活動。それから、以下のいずれかのことを実行する意図が明らかに認められる活動として、民間人を脅迫または威圧すること。脅迫または威圧により政府の政策に影響を与えること。大量破壊活動、暗殺または誘拐により政府の行動に影響を与えること。その実行手段、脅迫または威圧の対象者、実行犯の活動場所、または潜伏先に鑑みて、主として米国の領域的司法管轄権の域外、または国境を越えて実行される活動。

 同様に、国内テロについても定義があるのですが、国際、国内の違いはあれ、共通をしているのは、暴力行為または人命に危険を及ぼす行為であり、米国や州の刑法の違反となる行為である。それから、民間人への脅迫、威圧。政府の政策に影響を与える。大量破壊活動、暗殺または誘拐により政府の行動に影響を与える。ここは、国際であろうと国内であろうと、テロとして共通の定義をしているわけです。

 日本において、では、テロとはどういう定義がされているのか。

 警察庁の組織令においてテロの定義があったかと思いますが、そのことをまず簡単に伺いたいと思います。

松本国務大臣 法令上の定義について申し上げれば、例えば警察庁組織令において、テロリズムについて、「広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動をいう。」と定義されております。

井出委員 ありがとうございます。

 もう少し具体的に議論をさせていただきたいんですが、例えば地下鉄サリン事件、これはテロだと明言をしている方も多いですし、そういう報道等もこれまでも幾つかありますが、地下鉄サリン事件というのは政府としてはテロに該当する、そういう認識を持たれているかどうか、教えてください。

松本国務大臣 平成七年三月、東京都内において地下鉄車内でサリンが散布され、乗客、駅職員十三名が死亡され、五千八百人以上が負傷した地下鉄サリン事件というのは、我が国において発生した主なテロの中の一つという位置づけで受けとめております。

井出委員 もう一つ伺いますが、その地下鉄サリン事件の前に、長野県松本市でありました松本サリン事件、これについてはどのような、これはテロという認識なのかどうか、伺いたいと思います。

松本国務大臣 まさにこれもその中に含まれる、同一という、テロという位置づけに理解をしております。

井出委員 地下鉄サリン事件と松本サリン事件、その後の捜査、刑事裁判によって、犯行の主体は同一でありましたし、サリンを使うという共通性もありました。ただ、被害者の数ですとか、そういったものは全く違いますし、私の記憶ですと、松本サリン事件が起こった当時は、それがテロという話は、地下鉄サリン事件ほど、そういう論調は少なかったかに思うんです。

 松本サリン事件と地下鉄サリン事件の、例えば、警察庁組織令ですから「暴力主義的破壊活動」ですね。そのあたりは共通点があるのかなと思います。また、「広く恐怖又は不安を抱かせること」というところも共通をしているかと思いますが、「政治上その他の主義主張に基づく」というところなどは、松本の事件とサリン事件とは少し、私の乏しい認識ですと、異なる部分もあるのではないかという思いもあるのですが、その点についてはいかがですか。

松本国務大臣 「政治上その他の主義主張」について、それがどう判断に影響するかということでありますが、これについて網羅的にお答えをするというのはなかなか難しいことでございます。

 例えば、イスラムの過激思想等の過激主義に基づくものが含まれるなどと明確にあればいいのでありますが、私も今正確な情報確認を持っておりませんけれども、時間的な経過の違いの中で、サリンについて、当初、冒頭にそれが判断できたかということについては、なかなか私としては今直ちにお答えできる材料を持っていませんで、申しわけありません。

井出委員 もう少し、テロとそうでないものとわかりやすく議論をしたいと思うのです。

 最近、お祭りのある公園の真ん中で爆発物を爆発させて、本人は死亡した、周りの方をけがさせたという事例もあり、また、相模原の、多くの障害のある方が殺された事件、この二つは大変な社会に対する不安、恐怖というものを与えたということは事実かなと思うんですが、この二件は、私の感覚ですと、テロなのかどうか、テロと言えるのかどうかというところは少し疑問に思うところがあります。

 それと地下鉄サリン事件と比して、こうした最近の事例がテロと言えるのか言えないのか、政府側の見解をいただきたいと思います。

松本国務大臣 法令上の定義について申し上げれば、例えば警察庁組織令において、テロリズムについては、先ほど申し上げたとおりでございますが、「その目的を達成することを意図して行われる」というところで読むと、相模原はその中では違うという受けとめをしております。

井出委員 そうしますと、この警察庁組織令の「広く恐怖又は不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」、これはやはり、全文をきちっと捉えて、その一部、例えば、社会に不安を与えるだけとか、暴力的破壊活動だけとか、その一部だけをもってしてはテロとは言えない、そういう認識でいいか、教えてください。

松本国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。

井出委員 それともう一つ、事務方でも結構ですが、国民の生命、身体、財産を守るということは、これは犯罪、テロ、それから外交安全保障においても大きな論点ですが、テロにおいて、国民の身体、生命、財産、特に財産の部分というのはテロに該当するのか、財産を侵す行為というのがテロに該当するかどうか、見解をいただきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 暴力主義的破壊活動ということでございますので、財産を損壊するようなものについても該当するということだと思います。

井出委員 金田大臣がいらしたので伺いますが、特定秘密保護法においてもテロの定義というものがるるございました。

 特定秘密保護法においては、テロというものは、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で」、ここまでは警察庁と似ているんですが、その後、「人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」とありますが、この特定秘密保護法におけるテロの定義というものは、今事務方から御答弁あった財産というものが含まれているのか、それと、人の殺傷というものを、警察庁の組織令と違って特出しされている、その違いについて説明いただきたいと思います。

田中政府参考人 御指摘のとおり、特定秘密保護法の第十二条第二項第一号でございますけれども、テロリズムの定義がございます。特定秘密保護法におきましては、テロリズムを、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう。」というふうに定義をいたしております。

 この表現でございますけれども、従来、一般的に、テロリズムと申しますのは、特定の主義主張に基づいて、国家等にその受け入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等、こういうことで、従来の見解がございました。

 この特定秘密保護法の制定に当たりましては、そのことをさらに厳格に法律上規定するために、このような表現になったというふうに承知をいたしております。

井出委員 もう一つ、事例を伺いたいのですが、インターネットの世界ですね。

 最近、サイバーテロという言葉があるんですが、これは警察庁の事務方に伺ったらいいんですかね、サイバーテロという言葉は、この法令上のテロ、政府としてのテロという概念に認定されるものなのか、それとも、一斉に攻撃をされるというところをもってテロという意味合いの言葉がつけられているのか、そこを政府の見解をいただきたいと思います。

松本政府参考人 お答えいたします。

 法令上の定義というのはございませんけれども、警察においては、実務的な使い方といたしまして、サイバーテロというのは、重要インフラの基幹システムに対する電子的攻撃または重要インフラの基幹システムにおける重大な障害で電子的攻撃による可能性が高いもの、このように定義づけております。

井出委員 ありがとうございます。

 サイバーテロについては、法令上のことではないが、実務上、テロの一つとして位置づけているということなんですが、二〇二〇年に東京オリンピックがありまして、テロ対策というものをやっていかなければいけない。恐らく、その先頭に立たれるのは警察であるかなと思うんです。

 松本さんにお伺いしたいんですが、一番は、何もなければそれにこしたことはないんですね。ただしかし、あらゆる、何かあったときのことを想定して、かなりの方が現場の警備にも出るでしょうし、その警備に、表に見えなくてもいろいろなこともされると思いますし、実際、この間、リオ・オリンピックが終わって、メダリストの皆さんがパレードをされたときも、そのパレードと同時に、警察の厳重な警備というものもニュースで取り上げられました。私はそのニュースを見ていて、また、これは一般的にも御理解いただけるんじゃないかなと思うんですが、やはり生命、身体、財産、サイバーもそうですけれども、そういうテロの対象物を考えたときに、一番やはり優先すべきは身体、生命だろう、そこのところは余り異論はないのかなと思いますが、松本さんの思いを伺いたいと思います。

松本国務大臣 先生御指摘のとおり、二〇二〇年、これは世界じゅうが注目するオリンピック・パラリンピックを迎えて、そこで安全に運営ができるかどうかというのは大変重要だと思います。

 この厳しい国際テロ情勢の中で、我が国に対するテロ脅威が現実のものになっていくだろうということから、テロに対しては万全の体制をとっていかなければならないと思っておりまして、その中で、特に、最もやはり重要なのは、外国治安情報機関、ここと緊密な連携をまずとるということが大変大事だと思っておりまして、情報収集と、分析をすることができる力を持つことができるか、この強化がまず一番大事で、これがいわゆる情報を知るということで予防をするということにつながってくるのだろうと思いますので、これは大変重要だと思います。

 そしてさらに、関係機関と協力をしまして、次のステップとすれば、水際作戦というんでしょうか、そこで、水際の対策や官民の連携によって民間の方からも情報をいただけるような、そういった準備を進めていくということが大切だと思います。

 そしてさらに言えば、事が起きたとき、では、どうするのかということになるとすれば、これは各種部隊の能力向上等によりまして、国内におけますテロ等の発生時の事態対処、対応ができるような能力を強化していくということなどが重要で、特定の取り組みに偏るんじゃなくて、やはり全体を見て、そして総合的に推進することによって、テロ対策に万全を期すというようなことが重要で、これからその方向性で警察を指導してまいりたいと思っております。

井出委員 総合的ということで、余り私の期待した答えはいただけなかったのかと思うんです。

 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、テロが起こらなければ一番いい、起こってしまったときはそれは最小限、いろいろなことを想定して動くのはそのとおりなんですけれども、テロというものを日本は犯罪として捉えるのか。よくテロとの闘いという言葉もあるんですが、テロを犯罪として捉えるかどうか、その点についての御見解をいただきたいと思います。

松本国務大臣 これも例えばというお話で、大変恐縮でございますが、テロ事件において死傷者が発生した場合は、刑法の殺人罪や殺人未遂罪が適用されます。また、爆発物が使用された場合には、爆発物取締罰則が適用されることが想定されるわけでありますが、実際の適用に際しましては、個々具体的な事実関係を踏まえ判断するということになっていくのだろうと思いまして、一概にそれを申し上げるということは今困難と考えております。

井出委員 一概に困難というお話の中でも、例示として、人が亡くなったりした場合は刑法、爆発物、行為に応じて刑罰の具体の例を挙げていただいたかと思うんです。

 金田大臣に伺いたいんですが、先ほどのテロとの闘いという言葉、これは大臣が就任以来、よくテロとの闘いは重要であるということをいろいろな場所でお話をされているんですが、テロとの闘いというところの意味について、大臣の真意を具体的に教えていただきたいと思います。

金田国務大臣 委員のこれまでの議論、テロということで位置づけて御質問されていると思うんですが、法務省においては、テロ対策というものに対しては、やはりさまざまな施策を講じております。

 具体的には、個人の識別情報、そういうものを活用した厳格な審査とか、あるいはテロリストの入国を水際で阻止するとか、あるいは公安調査庁における国際テロ組織の国内への浸透状況とか、あるいは内外における活動状況とか、あるいは国際テロに関する人、物、金の動向に関する情報の収集、分析とか、それに取り組んでいるわけでありますし、また、平成二十六年秋の臨時国会においてはテロ資金提供処罰法の一部が改正されて、資金以外のテロ行為の実行に関しましても、施行が二十六年の十二月にされておりまして、いずれもテロ対策のための施策として重要な施策を考えて対応しておりまして、テロの未然防止のための施策という意味では、情報の収集ということも中心にしっかり対応していかなければいけない、こういうふうに思っているところであります。

井出委員 このテロとの闘いという言葉は、やはり、アメリカで大きなテロがあって、そこからよく使われるようになった言葉だと思いますし、アメリカの状況を見れば、テロとの闘いという言葉に理解をするところも、私も十分にあります。

 今、金田大臣初め安倍総理大臣もそうですが、テロとの闘いという言葉を多用されるんですが、先ほど国家公安委員長にテロとは犯罪であるか否かというところをお尋ねしたんですが、その真意は、いろいろな事態が想定されますので、そういった被疑者、被疑者たる人間がみずから命を落としたり、または拘束の段階で命を落とすということも十分あり得ると思うんですが、私の、テロとは犯罪であるという問題意識は、やはり原則は、そうしたことがあった場合は、犯人を拘束して、きちっと法の裁きにかけて、全容の解明とそれにしかる刑を受けてもらう、そういう原則がきちっと貫かれるべきであるのではないかと思いますが、国家公安委員長の見解をいただきたいと思います。

松本国務大臣 これは、テロ対策でどのように犯罪そのものを、法制を立てた上でそれをおさめていくかということを考えたとき、これまでも、特に米国同時多発テロ事件以降、さまざまな法令が整備をされてきております。

 例えば、最近では、いわゆる国際テロリスト財産凍結法や小型無人機飛行禁止法などが制定されているところでもございますが、他方、諸外国では、各国の実情に応じてテロ対策のための法制が整備されていると承知をしておりまして、厳しい国際テロ情勢を踏まえまして、警察におきましても、諸外国の法制と比較してどういった状況にあるか、そういった観点も含めて、引き続き研究をしながら対応していきたいと考えております。

井出委員 余りはっきりとおっしゃっていただけなかったと思うんですが、ちょっと事務方にも確認をしたいんです。

 私の問題提起、テロは犯罪として、まあ原則ですよ、いろいろなことはあると思いますので、そこは私も理解はしますが、その犯人を拘束して、裁判にかけて刑罰をというところは政府としても同意をいただけるかどうか、端的に教えてください。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ある行為が犯罪に当たるかどうか、その犯罪の成否については、捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断される事柄でありますので、その点を一概に申し上げることは困難でございます。

 ただ、一般論として申し上げれば、当該行為が刑法等の刑罰法規の構成要件に該当するという場合には犯罪に当たることになります。その場合には、法の定める手続に従って厳正に対処するというのは当然のことであると考えております。

井出委員 テロと向き合っていくときに、殺人とか、人の体、命にかかわるものであれば刑法、爆発物であれば爆発物取り締まり、そういうきちっと対応する法律もある一方で、金田大臣や国家公安委員長もおっしゃっているような予防的な意味も含めると、いろいろな法整備も必要である、そういうところもあると思うんです。

 ただ、刑法の歴史を少し考えたときに、一番有名な言葉で、罪刑法定主義という言葉があります。実際に、ドイツのフォイエルバッハという、かなり昔になりますが、この世界の大家は、法律なければ刑罰なし、法律がなければ犯罪はなし、そういうことをおっしゃっているんです。

 私は、法律がなければ犯罪も刑罰もないんだ、そういうことで、テロに対していろいろな法整備をしていこうという思いも一つの御意見かなと思うんですが、冒頭にテロの定義を取り上げさせていただいたときに、テロの定義を厳密に解すれば、罪刑法定主義というのは、言うまでもなく、法律を拡大するというよりは、どちらかといえば、法律をできるだけ抑制的に、市民の生活、自由なんかを保障するという意味合いから発生したものでありますので、テロの定義、それに対する法律があるかないか、そこに応じて、これは金田大臣に最後、聞かなきゃいけないんですが、まさに共謀罪の議論でありますが、そうしたものを、テロの定義、それと刑法、特別刑法、そういうものと照らし合わせて、共謀罪が、テロをやる上で必要である、そういう議論をやっていきたい。

 テロとの闘いとか、テロ対策と言われると、我々も大変重要だと思いますが、ただ、そこは物すごくそうやって精緻にやっていくことが重要ではないかと思いますが、金田大臣の見解をいただきたいと思います。

金田国務大臣 ただいまの御質問に対しては、国際組織犯罪と言われるものの防止条約を締結するための法案というもの、これは、御承知のとおり、TOC条約を締結するためにその議論がかつてなされたことがあると思うんです。それにかかわる御指摘だと思うので、私としては、今の現状は、そのあり方を慎重に検討しているという状況でございます。

 したがって、委員の御指摘を踏まえながらの議論というのは、これからもまた先々する機会があろうかと思います。

 ですから、その発端としてのきょうの議論だったと思いますので、それはそれで、きょうは参議院の本会議に出ていましたので、到着がおくれて申しわけありませんが、そういう意味において、その条約を締結して、国際社会と協調をしてテロを含む組織犯罪と闘う、そのときに法整備が必要だと言われております。

 ならば、どういう法整備をするのか。しかしながら、平成十五年、十六、十七年当時だったと思いますが、そのときに既に国会で議論をされて、さまざまな議論が出た。その中にはやはり、ただいまの委員の御指摘のほかにいろいろな議論が出て、不安や懸念というものが指摘された経緯もあるわけであります。

 だから、そういうことも踏まえながら、どういうふうに考えていったらいいかという、そのあり方を慎重に現在検討しているところでございますから、そういう議論の場でまたいろいろとお答えをしていきたいな、こういうふうに思っております。

井出委員 ぜひ、その慎重な議論の中に、想定される行為と対応する法律の議論をしっかりやっていただきたいですし、各国との連携という意味においては、大臣が御担当されている特定秘密保護法で海外からテロに関する情報をもらえるようになっております。果たしてその連携ということがこの共謀罪においてもどの部分が必要なのかも明らかにしていかなければいけないですし、私はそういう精緻な議論をしっかりと求めてまいりたいと思いますので、きょう、いろいろな御示唆をいただきましたので、また今後の議論にしたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

秋元委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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