衆議院

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第19号 平成30年5月23日(水曜日)

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平成三十年五月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山際大志郎君

   理事 石原 宏高君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 永岡 桂子君

   理事 松野 博一君 理事 阿部 知子君

   理事 稲富 修二君 理事 佐藤 茂樹君

      池田 佳隆君    泉田 裕彦君

      大隈 和英君    大西 宏幸君

      岡下 昌平君    加藤 鮎子君

      金子 俊平君    神谷  昇君

      亀岡 偉民君    木村 弥生君

      小寺 裕雄君    古賀  篤君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      武井 俊輔君    長坂 康正君

      西田 昭二君    三浦  靖君

      三谷 英弘君    村井 英樹君

      大河原雅子君    篠原  豪君

      福田 昭夫君    森山 浩行君

      山崎  誠君    源馬謙太郎君

      森田 俊和君    浜地 雅一君

      濱村  進君    中川 正春君

      塩川 鉄也君    宮本  徹君

      浦野 靖人君    串田 誠一君

      玉城デニー君

    …………………………………

   議員           中谷  元君

   議員           佐藤 茂樹君

   議員           中川 正春君

   議員           岩屋  毅君

   議員           桝屋 敬悟君

   議員           浦野 靖人君

   議員           初鹿 明博君

   国務大臣

   (経済再生担当)     茂木 敏充君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   内閣府大臣政務官     村井 英樹君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   農林水産大臣政務官    上月 良祐君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中川  真君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   藤江 陽子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           大野 高志君

   参考人

   (独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長)            樋口  進君

   内閣委員会専門員     長谷田晃二君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     木村 弥生君

  長坂 康正君     三浦  靖君

  塩川 鉄也君     宮本  徹君

  浦野 靖人君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     大西 宏幸君

  三浦  靖君     長坂 康正君

  宮本  徹君     塩川 鉄也君

  串田 誠一君     浦野 靖人君

    ―――――――――――――

五月二十二日

 特定複合観光施設区域整備法案(内閣提出第六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)

 ギャンブル等依存症対策基本法案(中谷元君外七名提出、衆法第二〇号)

 ギャンブル依存症対策基本法案(初鹿明博君外十名提出、第百九十五回国会衆法第六号)


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     ――――◇―――――

山際委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、内閣府知的財産戦略推進事務局長住田孝之君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官宇都宮啓君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君、農林水産省生産局畜産部長大野高志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山際委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮本徹君。

宮本(徹)委員 おはようございます。日本共産党の宮本徹です。

 打ち切られた先週の続きです。

 先週、米国は二国間ディールに関心を有すると総理が答弁した、この二国間ディールのディールは日本語にすれば何となるのかというふうに私がお伺いしましたら、大臣からは、ディールに対応する日本語はないかのような答弁がございました。

 私、ちょっと速記録を見ていましたら、十六日の当委員会で、茂木大臣は、グッドディール、いい取引をしたいという米国の思いはあって当然でありまして、こう答弁されているんですよね。グッドディール、それですぐ、いい取引をしたいと訳し直されているわけですよ、御自身で。

 ディールは取引というのは、大臣御自身がそういうふうに訳されているんじゃないんですか。

茂木国務大臣 一つ一つの言葉をとって、その全体の文脈の中でいろいろなお話をわかりやすいようにしているわけでありまして、定義について言われたら、日本語と英語で、一対一で対応しないものもあるという話をしているわけであります。

 さらには、同じ言葉であっても、日本人が受け取る受けとめ方と、アメリカやヨーロッパの人が受け取る受取方というのは違ってくる。

 オリンピックが開かれたリオデジャネイロと、そして今度オリンピックが開かれる東京。恐らく、東京という言葉は、海外の人から見ると単に東京だと思います。一方で、日本にとっては、政治の中心が大阪や京都から江戸に移る、そしてそれが東の都、東京になる、こういった思いはどこかに日本人はあるんだと思います。

 一方で、リオデジャネイロ、これは……(宮本(徹)委員「そんな話は聞いていないんだからさ」と呼ぶ)いや、お話ししています。リオデジャネイロ、これはやはり、スペイン人、さらにはポルトガル人が中南米に入っていくときに、まずは一番いい港であるサンパウロをとる、そしてリオデジャネイロに進出をする。リオデジャネイロですから、一月の川、こういうことになるわけでありますけれども、どこかそういったニュアンスというのはあるんだと思います。

 コミットメントについて、先生は前回、関与という言葉をおっしゃいましたが、一般的に日本語で言う関与はインボルブメントだと思います。そして、正式な関与ということだとエンゲージメントになるんじゃないかな、私はそんなふうに思うわけですけれども。例えば、最近よくテレビのコマーシャルで、筋肉をつけたり、そしておなかの回りをスリムにする、こういうトレーニングについて、結果にコミットするということを言うんですけれども、もし結果に関与するということであったら、誰もそんなトレーニング、申し込まないんじゃないかな、そんなふうに思うわけであります。

 個々の言葉を切り出して、どういう意味かというのではなくて、全体の文脈、文章の中で解釈するのが適切である。

 その上で、改めて申し上げれば、日米間の合意なくして、どのようなディールも実行されることはないと考えております。(宮本(徹)委員「委員長、注意してください」と呼ぶ)

山際委員長 答弁に関しては簡潔にお願いをいたします。

宮本(徹)委員 短い時間しかないんですから、長々と聞いてもいないことに時間を費やしていただきたくないと思いますよ。あなた御自身が、大臣御自身がディールを取引と言いかえてやっていたのに、突然、ディールは当てはまる日本語はないんだということを言い始めるからおかしな話になるわけですよ。

 それで、ディール、取引がこれから茂木大臣とライトハイザーの間で始まっていくわけですよね。米側から適切な時期にFTAを結ぶことに関心があると日本に伝えたのは、昨年十月の日米経済対話のときであると大臣は先週答弁されました。

 外務省にお伺いしますが、このとき日本はアメリカに対して、FTAは結ばない、こう返事したんですか。

岡本大臣政務官 お答え申し上げます。

 米国側から我が国に関しまして、今委員御指摘のように、日米経済対話の議論の中で、二国間FTAに関する考え方は確かに示されました。また、その後、ライトハイザー氏が議会の中で発言されているように、将来的な可能性といたしまして米国側が二国間FTAを視野に入れていることはもちろん政府として承知をしておりますが、私ども日本といたしましては、TPPが最良の策だというふうに考えていることは常々米国側にも申し上げてきておりますし、今後もその姿勢で臨んでまいります。

 FFRも何度か答弁させていただきましたように、日米FTA交渉と位置づけられるものではありませんし、またその予備協議でもないということを明らかに申し上げておりますので、今後もTPPが最良の策という姿勢で交渉には取り組んでいく姿勢でございます。

宮本(徹)委員 お答えになっていないんですけれども。TPPが最良だと言っているというのはもう何回も聞いている話なんですよね。FTAについて、日本としてはこんなものは結ぶつもりはないと言ったのか、それとも拒否はしていないのか、どっちなんですか。

岡本大臣政務官 米側の考えは示されましたけれども、私どもの対応は、TPPが最良であるということを常々申し上げてきておりまして、今後もその姿勢で取り組んでまいります。

宮本(徹)委員 つまり、FTAは結ばないということは、日本側は明言はしていないということですね。

岡本大臣政務官 同じお答えで申しわけありませんけれども、私どもが最良と考えておりますTPP、最善の策として交渉を続けていくということを申し上げております。

宮本(徹)委員 つまり、こんなに聞いてもFTAは結ばないということを言っていないということは言っていないわけですよ。アメリカ側からすれば、日本は明示的には拒否していないとしか受け取れないですよ。私はそういうのは極めて重大な姿勢だと言わなければいけないと思います。

 安倍総理は、十七日の当委員会で、TPP12のとき、今、11でもそれは残っているわけでございますが、ここでの農業分野における譲歩というのはもうマックスだということは明確にトランプ大統領にも伝えているわけでございます、こう答弁されました。

 TPPは譲歩したんだ、こういうことを認めた重大な答弁だと思いますが、茂木大臣もこの総理の答弁と同様の認識ですよね。

茂木国務大臣 TPPの交渉においては、特に農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかりと確保し、関税割当てやセーフガード等の措置を獲得したところで、まさに全体の交渉の中で、攻めるべきは攻め、守るべきは守ったと考えております。

 国際交渉であります。そこの中で、一国の制度を少しでも変えるというのが譲歩だからだめだというのでは、国際協定は成り立たないわけであります。共通のルールをつくることもできないわけであります。自分の要望を全て通すけれども相手の要望は何も聞かないということでは、国際的な合意はできないと考えております。

 世界の成長センターでありますアジア太平洋地域に、自由で公正な二十一世紀型の新しい共通ルールを確立すること、そしてそれを日本がリードをしていくことは、日本にとっても、またアジア太平洋地域の発展にとっても、極めて意義のあることだと考えております。

宮本(徹)委員 守るべきものは守っていないから問題になっているわけですよ。

 大体、国会決議は、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などの重要五品目は、関税交渉からは除外を求めていたわけですよ、除外を。一部例外にしてくれという話じゃないんですよ、除外だったわけですよ。全くこの国会決議も守らずに譲歩したという話じゃないですか。守るものは守れていない。こういうことでは、TPPは撤回するしかないというのが結論になると思います。

 茂木大臣は、十七日の内閣委員会で、新協議、FFRの協議のテーマは、日米双方がお互いの関心事項を持ち寄る、こう答弁されました。

 アメリカ側の関心は、日本に対しては外国貿易障壁報告書があります。これは当然、ライトハイザー氏も頭に入れて臨んでくるというふうに思います。

 ちょっと外務省に確認しますけれども、過去のこのUSTRの外国貿易障壁報告書で、日本側が受け入れてきた項目というのはどういうものがありますか。

岡本大臣政務官 委員今御指摘をいただきました報告書は、米国の一九七四年通商法に基づきまして、毎年、政府から議会に対しまして提出をされる、米国の貿易相手国に対する関心事項についての報告書であります。

 そして、この報告書が米国議会に提出されたその後、この報告書の位置づけですけれども、米国の政府が諸外国に対して何か措置をとるものという位置づけではございません。また、日本からも、その報告書を受けてこちら側から何か措置をとるという類いの報告書でもございません。報告書の位置づけ自体がそういうものでございます。

宮本(徹)委員 だから、報告書をアメリカが議会に対して出しているというのは、その関心事項に基づいてアメリカは日本と交渉しているということじゃないですか。事細かに書いているじゃないですか。

 例えば、二〇一六年、郵便局ネットワークへのアクセスに関し、アフラック社のがん保険商品を取り扱う郵便局数が二〇一五年一月までに一千局から二万局以上にふえたことなど大きな進展があったとか、毎年毎年、書かれてきた項目がどう前進したのかということで、アメリカでは、USTRは議会に報告しているわけですよね。

 アフラックの話だけじゃないですよ。三十カ月齢未満の牛肉、牛製品、米国産の米の流通増加、農薬使用の緩和、木材輸入の緩和、アイダホ産のポテトの問題、ここで書かれたことは次から次へと譲歩してきているというのが実際の日米交渉の歴史じゃないですか。こういう歴史のもとで新協議が始まっていくと、極めて私は危険だと思っております。

 ライトハイザー氏は、ことし三月二十一日の米国議会下院歳入委員会の貿易政策に関する公聴会で、米国と個別のFTAを結んでない他の五カ国のうち、日本が最も重要だ、こういう認識を示されております。これは日本政府も同じ認識なんでしょうか。そして、TPP11参加国のうち、米国とFTAを結んでいない国はどこなんでしょう。外務省、お願いします。

岡本大臣政務官 ライトハイザー氏の発言は認識をしておりますけれども、ライトハイザー通商代表がお考えになることですので、どういうふうなことかということを政府として正式にコメントする立場にありませんけれども、先ほど来申し上げているように、我が国の一貫した考え方は、TPPが日米両国にとって最善という考え方でございますので、この後の機会を通じましても、米国側にその立場をしっかりと説明してまいりたいというふうに思っております。

 また、二つ目の御質問の、TPP11の協定参加国のうち、米国が二国間FTAを締結していないのは、日本、ブルネイ、マレーシア、ニュージーランド、ベトナムの五カ国であります。

宮本(徹)委員 ですから、日本が一番ターゲットになっているわけですよね。

 茂木大臣にもお伺いしますけれども、この日本をターゲットにアメリカは交渉をずっとやってくる。そうすると、アメリカのいわゆるロビー活動をやっているような業界団体も含めて、USTRの外国貿易障壁報告書に書かれていない部分も含めて、いろいろなものがこの交渉に持ち込まれてくるというふうに思いますが、その点はいかがですか。

茂木国務大臣 実際に、私とライトハイザー通商代表との協議はこれからでありまして、そのテーマ、TORというものは、日米双方でお互いの関心事項を含めて今後調整していくものだと考えております。

宮本(徹)委員 つまり、際限なくアメリカ側はいろいろな要求を持ち込んでくる場というふうになるわけですよ。そして、過去の歴史は、譲歩ばかり繰り返してきた。

 そして、最近、米韓FTAというのもありましたけれども、はっきり言ってアメリカの一方的な勝利なわけですよね。韓国の一方的な譲歩に終わったのが米韓FTA交渉の結果だったというふうに思います。

 そうすると、今回のこの新協議はFTA交渉に位置づけられない、そしてそのための準備の場でもないということを繰り返されますが、この間のライトハイザー氏の証言からいけば、二国間協議でいろいろな取引が行われて、その先はFTAに向けた二国間協議が実際には始まっていくことになるんじゃないですか。違いますか。

茂木国務大臣 それぞれの国の交渉、違うんですよ。

 韓国とアメリカは、KORUSでずっとやってきているんです。そして、KORUSをどうするかという観点から見直しを行ったわけですよ。日本の場合は、TPPの中で相当の協議が進んできたのは事実でありますから、そういったことも踏まえて、今後の協議を進めていきたいと思っております。

宮本(徹)委員 FTAに更に進んでいくということは絶対ないと。絶対ないと断言できるんですか。

岡本大臣政務官 日本に関しましては、日米両国にとりまして最良の協定というのはTPPだというふうに確信をしておりますので、そのことを相手方に粘り強く申し伝えてまいりたいと決意しています。

宮本(徹)委員 絶対ないとは言えないわけじゃないですか。

 絶対ないなら絶対ないというふうに、茂木大臣、言ってください。

茂木国務大臣 FFRについての基本的な考え方は、先ほど答弁させていただいたとおりです。

宮本(徹)委員 ですから、FTAに進まないということをこれだけ聞いても、外務省からも茂木大臣からも明言いただけない。これはもう、譲歩に譲歩を重ねた末、日米FTAに進んでいく可能性だって含まれているということになるんじゃないですか。

 既に、アメリカ側は日米FTA交渉に関心がある、そこを視野に入れているということが伝えられているわけですよね。そして、ライトハイザー氏も議会で、そのことをアメリカで報告しているというのが今の状況なわけですよ。

 新協議が終わればFTA交渉になる、そういう危険な可能性があるもとで、このTPP12、TPP11、新協議は即刻中止すべきだということを強く申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。

山際委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 昨日は、茂木大臣の不信任決議の趣旨を弁明させていただきましたので、きょうは特に大臣にお伺いすることはございません。政府参考人から私が懸念していることについての御見解をお伺いできればというふうに思います。

 まず一点目、五月十七日の参考人として、東京大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘先生が、「TPP11はTPP12より悪い」と題した資料をお出しいただきました。その中から少し引用させていただいて私の質問につなげていきたいと思いますので、参考人の方、よろしくお願いいたします。

 日本農林水産業が過保護だから自給率が下がった、耕作放棄がふえた、高齢化が進んだというのは間違いである。過保護なら、もっと所得がふえて生産がふえているはずだ。逆に、米国は競争力があるから輸出国になっているのではない。コストは高くても、自給は当たり前、いかに増産して世界をコントロールするかという徹底した食料戦略で輸出国になっている。つまり、一般に言われている、日本イコール過保護で衰退、欧米イコール競争で発展というのは、むしろ逆である。

 だから、日本の農林水産業が過保護だから、TPPなどのショック療法で競争にさらせば強くなって輸出産業になるというのは、前提条件が間違っているから、そんなことをしたら、最後のとりでまで失って、息の根をとめられてしまいかねない。早くに関税撤廃したトウモロコシ、大豆の自給率がそれぞれ、トウモロコシ〇%、大豆七%であることを直視する必要がある。

 我が国では、国家安全保障のかなめとしての食料の位置づけが甘い。実現目標として掲げられたカロリーベースで四五%という数字はあるが、今や三八%まで下がり、そこから上がる見込みも、上げる努力の気配も感じられず、食料自給率という言葉さえ、死語になったかのように扱われなくなってきていることは、世界の流れに完全に逆行している。

 このように、資料の中で我が国の食料自給率について非常に深い懸念を述べられています。

 農は国のもとなりという考え方に立ち、国民の生命を維持し、国家の安全保障のかなめとなるのは、我が国における農林水産業の途切れることのない、かつ極端な不足に陥ることのない、安定、安全、安心して取り組むことができる生産環境の整備であり、それを根底から支えていく国策としての支援、保障体制の構築でなくてはなりません。

 農業所得に占める補助金の割合から見ても、日本は二〇一二年の統計で見ますと三八・二%、スイス一一二・五%、フランス、ドイツは六五パー、七二・九パーというふうに、やはり諸外国の方がはるかに補助金の割合が、しっかりサポートしているという数字にあらわれています。

 では、参考人にお伺いいたします。

 今般のTPP11における食料自給率の向上を始めとする農林畜産水産業への直接的な影響について、今後どのような方法で判断するとともに、自給率向上のための具体的対策をどのように講じようとするものか、伺いたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生お話しされたような、農業に対してTPP、これは12のときからそうなんですけれども、TPPが与える影響について、大変懸念の声をさまざまな場面で、国会でも頂戴したところでございます。

 国会決議もいただきまして、決議を十分踏まえながら交渉を行ってきたつもりでございますが、いずれにいたしましても、TPPの交渉におきましては、ほかの国が農林水産品の九八・五%を関税撤廃とする中、我が国は、重要五品目を中心に約二割の関税撤廃の例外を確保し、さらに関税割当て、セーフガード等の措置を獲得して、国益にかなう交渉結果が得られたと認識しているところでございますが、さらに、それに加えまして、TPP関連政策大綱を取りまとめまして、農林水産業の体質強化策、さらにはTPPが発効した後は牛肉、豚肉のマルキンなどの経営安定対策、こういったものをしっかりやるということを政府として決めたところでございます。

 今後、引き続きどうやってやっていくかということでございますけれども、政策大綱は私ども内閣官房の方で取りまとめたものでございます。農林水産省を始め各省の施策の状況など、私どもとしてしっかりウオッチをして、必要があれば必要な対応をとって、御懸念のないような形で農業をしっかり守っていきたいというふうに考えております。

玉城委員 鈴木参考人は、この資料の中で、どのような影響が出るのかということを質問したときに、影響が出るようなところに対策をとるから影響はないというふうにおっしゃったそうなんですね。

 ですから、きょうの理事会で、農林水産省から、農林水産物の生産額への影響について、TPP11というところに出ていますのは、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込むというふうにあります。ここでも、二十八年度は、生産額ベースでは六八%、しかし、試算を反映したもののカロリーベースは三八%というふうに、変わっていないんですね。

 生産減少額を見てみますと、例えば、砂糖ですと、生産量減少率はゼロ%でも、糖価調整制度が現行どおり維持される中で、しかし、生産減少額は四十八億円と試算されています。牛乳・乳製品は、これも生産量の減少率がゼロ%なんですが、約百九十九億から三百十四億円。生産量の減少率はゼロというのは、これは非常に不思議な感じです。これは全部なんですよね。

 だから、こういうふうに数字だけ見ていると、さも手当てができているから大丈夫だというふうに思いがちなんですが、鈴木参考人は、牛乳の全量取引は撤廃せよという法案になっている以上、ことしの夏からは店頭に並ぶ牛乳が見えなくなる日が来るかもしれない、そういう不安の警鐘を鳴らしているわけです。

 もう一つ質問いたします。

 これは、五月十七日、NPO法人アジア太平洋資料センターの共同代表内田聖子さんが出されたものですが、TPPは、米国が自国のグローバル企業の強い意向を受け、自国に有利になるようルールを書きかえるためのツールとして機能してきた、米国離脱後、その通商交渉方針はいまだ不明瞭な部分もあるが、米国がTPP12に復帰若しくはTPP11に加入する可能性は当面ないということだけは明らかであると言っています。そして、米国通商代表部、USTRが二〇一八年二月二十八日に公表した二〇一八年通商政策課題においては、対日政策として、慢性的な貿易障壁、不均衡、貿易赤字に対処するために、対等で確かな市場アクセスを追求するとあります。また、毎年三月末に提出される外国貿易障壁報告書二〇一八では、日本に関する記述からTPPという文言は消え、米国輸出に係る幅広い日本の障壁を除去することを求めていくとしています。

 TPP12では、関税撤廃のみならず、あらゆる分野における非関税障壁の撤廃が目標とされ、そのことによる関連業界などからの反論はTPP11になっても今なお強いと思料いたします。

 TPP12における二十二項目が凍結されはしたものの、米国復活をも期待する日本政府が、業界、団体、関係者に対する保護、支援策は万全であるべきなんですね。しかし、TPP11に戻ってくる可能性は非常に低い上、米国は日本に対してより高い要求を求めて新しい通商交渉をしようということは、先ほどの宮本委員への答弁からもうかがえることは明らかであります。

 では、質問いたします。

 本TPP11に関する法整備に際して、関連する業界、団体、農林水産畜産業者などとの協議等でどのような課題が示され、それについてどのような対策をとられるのか。先ほど御説明しましたとおり、生産減少額は、ゼロであっても生産額は大幅に下がっていくことが農林水産省の資料からも明らかであります。そのことについて、TPP11での協議をどのように説明をなさったかについてお聞かせください。

山際委員長 澁谷統括官、時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

澁谷政府参考人 簡潔にお答えいたします。

 先生幾つかのことをたくさん盛り込まれて御質問いただいたわけですが、非関税障壁の撤廃につきましては、私ども、TPP12交渉に正式に入る前に、何度か業界団体向け説明会を開催いたしまして、その都度、関係団体から要望書を受け取っております。

 その要望内容を踏まえて、非関税障壁の撤廃については、必要なものは留保するという形をとっておりまして、留保表の中で懸念のあることについてはしっかり留保させていただいた。これは、今回のTPP11についても何ら変わりがないところでございます。

 11につきましては、凍結項目がございますけれども、当然、凍結するに当たって、日本が凍結に合意するに当たって、各省と調整をしているところでございます。

 基本的に、各関連する団体との調整等は関係省庁において行うということでございますが、今回の11取りまとめに当たって関係省庁から聞いたところによりますと、関係団体等から特段の意見が寄せられたということではないというふうに聞いているところでございます。

玉城委員 私は、TPP12も11も反対です。決議すべきではありません。

 以上を表明して、質問を終わります。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

山際委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党、森山浩行でございます。

 質問に入ります前に、愛媛県の新文書というものが今ニュースで話題になっております。総理の方は、この文書にあった、いいねと言った覚えはない、もちろん会った覚えはないというような形で、きのうから話題になっておりますが、大臣、この見解、これについては信じているということでよろしいですか。

茂木国務大臣 事実関係そのものについて私が承知しているわけではありませんので、基本的にコメントは控えさせていただきますが、総理のおっしゃっていること、それを信頼するのが閣僚の一人だと考えております。

森山(浩)委員 きのうのことですから、まだ閣議も十分されていないかと思いますが、安倍内閣の閣僚でございますので、この件についてはきちんと総理に聞いていただいて、総理がうそを言っているのか、愛媛県がうそを言っているのか、しっかり内閣として確定をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、まずISDS条項、これをアメリカはもう既に求めていないということですが、削除ではなくて凍結という形にした理由についてお伺いをいたします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ISDSは、投資章、第九章に盛り込まれているところでございますけれども、第九章で、投資の受入れ国が守らなきゃいけないルールというものが多々規律されているところでございます。このルールに投資の受入れ国が違反をして、投資家が損害をこうむった場合に、損害賠償の訴えを仲裁廷に出すことができるというのがISDSの基本でございます。

 このISDSというのは、まさに、投資のルールを決めて、それの実効性を確保するために必要な手段だということで、この基本は残すということで合意がなされました。

 ただ、TPPの場合は、通常の投資協定にない、そういうルールに違反した場合に加えて個別の投資の許可でありますとか投資の合意について違反した場合についても対象にするという、ややプラスアルファの部分がございまして、このプラスアルファの部分だけを凍結するということで合意したもので、基本は変わっていないというふうに認識しているところでございます。

森山(浩)委員 そうですね。これについては、投資家を優先する余りに国益を毀損する、このおそれがあるという形で、随分議論をされてきた条項でもあります。アメリカが戻ってくるのにはこれが絶対必要だという状況ではなくなっている今、削除というような形を含めてもやっていくべきだと考えます。

 また、先日、我が党の篠原議員の方から、なぜ八十項目の中で二十二が凍結となったのかという経緯についての資料提出を求めておりますけれども、記者会見録で言っているというような形で資料を提出されています。しかし、記者会見録では、どの項目が凍結なのかということは書いてありますけれども、その経緯についてはわからないという状況であります。

 この経緯について、資料提出を求めたいと思います。

澁谷政府参考人 お答えを申し上げます。

 篠原先生からそういう御指摘をいただいたところで、恐らく、参考人の御発言の中で、八十項目の当初あった凍結リストが二十項目に絞り込まれたという御発言があったのを踏まえての御質問だったと思うんですけれども、私は、交渉にずっと出ていましたが、八十項目のリストというのは見たことがありません。

 どんな実態だったかということを申し上げます。

 各国とも凍結の要望を出して、これは全員合意が必要ですので、それがだめだと言われると、なかなかこれは各国とも出した人はつらい立場になるわけでございまして、実態はどういうことをやっていたかといいますと、国内から凍結をお願いしたいというような要望がありましたら、まず、それを各国にバイの形でサウンドするわけです、こういう凍結要望を出したとしたらどうだろうかと。とてもこれは我が国としては受け入れられないというような反応が強かった場合には、それはもう撤回するということです。

 したがって、正式に全員の会議で出てきた中でどんどんそれが潰されていくという形ではなくて、そういう個別の国同士の交渉、交渉といいますか、そういう協議の中で二十二項目に実態として絞り込まれていった、全体の会議の場ではその二十二項目を確認するという行為がとられたわけですので、事実として、プロセスとして、何項目から何項目に絞り込まれたということではないわけでございます。

 それは、記者会見録をごらんいただければと申し上げたのは、記者会見の中で、記者さんからは、何項目出てきたんですかと毎回交渉会合のたびに聞かれて、それに対して首席交渉官の方から、何項目という数には意味がありませんということを申し上げているので、そういう趣旨だということでございます。

 なお、ちなみに、二十項目について、ダナンの大筋合意の後、当時二十項目だったわけですけれども、二十項目の凍結項目がいかなる理由で合意されたかということについては、説明会の場で丁寧に御説明をさせていただいておりまして、それも公表させていただいているところでございます。

森山(浩)委員 結局、バイでやっているからわからない、個別にやっているから出せないというような話だということですね。

 それでは、二〇一八年五月十六日、日本経済新聞の記事において、TPP11では発効まで米国との二国間交渉に進まないとの申合せがある、合意を主導した日本が拘束破りをすれば一気に信頼を失いかねないとありますけれども、これは本当でしょうか。

澁谷政府参考人 本当ではありません。そのような申合せはした事実はございません。

森山(浩)委員 このTPPの交渉については、二〇一二年の選挙におきまして、自由民主党を始めとする皆さんが、TPPの交渉はしないんだというような形での話があった。しかしながら、11を急ぐことによって日米FTAが避けられるからやるんだというような形に変化をしていったのではないかということなんですけれども、TPP11を急げば日米FTAが避けられるという論理については、今でもそのようにお考えですか。

茂木国務大臣 恐らく、物事の順番からいいますと、TPP12の交渉を行い、そして最終的にアトランタで大筋合意をして、署名をする、その後、昨年の一月の二十三日にトランプ大統領がTPPからの離脱を表明する、その上で、残った十一カ国が、今後の進め方についてどうしようかという話合いをして、TPPの持つ意味合いは大きい、十一カ国で結束をして交渉を続けて早期にまとめよう、こういう観点からTPP11がまとまっていったということであります。

 何らかの違う交渉を避けるためにTPP11をまとめるというよりも、二十一世紀型の共通ルールを世界の成長センターであるアジア太平洋地域にしっかりと確立していく、そのことが重要である、こういう問題認識のもとで、TPP11、三月の八日に署名に至り、また今、各国が国内手続を進めることによって早期発効を目指している、このように考えております。

森山(浩)委員 それでは、TPPあるいはTPP11、こういったハイレベルな交渉が進んでいく、また形ができていくことによって、世界じゅうの自由貿易に影響を与えていくんだ、いい影響を与えていくんだというようなお話がありましたが、一方でRCEPの交渉については停滞をしているのではないかと思いますけれども、この理由についてはどのようにお考えでしょうか。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のRCEPでございますが、TPPに参加していない中国、韓国を含めて巨大な広域経済連携となっておりまして、我が国企業にとって、ダイナミックに成長する地域のサプライチェーン構築に大変寄与するものと考えております。

 御指摘のように、RCEP交渉については、二〇一三年五月に第一回交渉会合が開催されて以来、これまで二十二回という多数の交渉会合が開催され、また十回の閣僚会合も開催されてきたということは事実でございます。

 RCEP交渉は、TPPと比較して参加国が多うございまして、中にはカンボジア等、後発開発途上国と呼んでおりますけれども、それを含む多様な発展段階にある十六カ国が参加していることから、確かにRCEP交渉の妥結には一定の時間が必要だということは当然認識をしているところでございます。

 ただ一方では、RCEPの交渉において徐々に各分野の論点が絞り込まれるという状況にありまして、一定の質が確保されることを前提として、我が国は年内妥結を目指すASEANを支持しているところでございます。

 我が国としては、アジア太平洋地域における自由貿易を推進すべく、TPP11の協定の早期発効を目指すとともに、引き続き、包括的でバランスのとれた質の高いRCEPの早期妥結を目指し、精力的に交渉を進めていくという考えでございます。

森山(浩)委員 つまり、TPPの交渉が進んで、あるいはTPP11が妥結をされたからといって、それがそのまま自由貿易が進んでいくんだという話にはならない、それぞれの地域によって事情は違うんだという話だということでございます。

 国内への影響についてですが、TPP参加国からの輸入食品の主な食品衛生法違反という記事が、二〇一六年七月二十五日、アエラの記事に載っております。海外からのものについて七%のチェックしかしていないということは問題ではないかというふうに記事にはなっておりますけれども、これについてはどのようにお考えでしょうか。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 輸入食品の安全性確保につきましては、食品衛生法に基づきまして、まず輸出国段階、次に輸入時の水際段階、そして国内流通段階の三段階で対策を実施しているところでございます。

 輸出国段階では、日本の法規制等の情報提供、検査技術協力、二国間協議等を通じまして、輸出国政府による輸出国内での安全対策の推進を図っているところでございます。

 また、輸入時には、輸入事業者に対しまして、輸入前の事前相談に対応するほか、輸入の都度、届出を義務づけてございまして、検疫所では、これに基づいて審査及び検査を行っているところでございます。

 全国の港や空港の検疫所では、我が国の食品の安全に関する基準に適合しない食品が輸入されないように、まず、食品添加物、残留農薬、遺伝子組み換え食品等を検査するためにサンプルをとって行うモニタリング検査、それから、モニタリング検査などの結果、食品衛生法の違反の可能性が高いと判断された食品を対象に、輸入者の経費負担で全量をとめ置いて検査する命令検査など、違反のリスクに応じた検査を実施しているということでございます。

 このような違反リスクに応じて検査を実施した結果として、輸入食品の検査率は八%台となっているところでございますが、検査対象とならない食品につきましても、原材料、製造、加工の方法、過去の検査結果等の届出情報等に基づく審査を行いまして、安全性に問題はないと判断しているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後の輸入食品の増加の可能性を踏まえまして、検疫所職員の資質の向上、職員あるいは検査機器の確保等、適切な監視指導を徹底するための体制の整備に加えまして、事前に違反食品の輸入を防止する効果の高い輸入前相談の充実を図ることとしているところでございます。

 さらに、現在国会に提出させていただいてございます食品衛生法等の改正法案では、食肉等に対しまして、輸出国にHACCPに基づく衛生管理を求めるなど、輸入食品のさらなる安全性の向上を図ることとしてございまして、こうした取組を含めまして、輸入食品の安全性の確保に万全を期しているところでございます。

森山(浩)委員 ということは、食品衛生法違反、これについては、水際でやったもの、それから、市場に流通してから出てきたものがあるのではないでしょうか。市場に出てきたものというのはどのぐらいありますか。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げたように、輸入前、輸入時、それから国内での体制で検査をしているところでございますが、具体的に国内でどのくらい流通という数字は現在持ち合わせてございません。

森山(浩)委員 輸入食品の安全性というところに非常に不安が残るわけなんですね。これについて、やはりもっと検査率を上げるとか、更に工夫をしていかなければいけないというところではないかと思います。

 さて、先日の篠原委員の質問の中で、食料の自給率ということで、十番でやらせていただいていますけれども、影響額についてお伺いをしたいと思います。

 生産量の減少を農業分野の全品目でゼロと仮定をしておりますけれども、国内対策がどの程度寄与して生産量が維持をされるのか、対策の規模などを説明していただきたいと思います。

天羽政府参考人 平成二十九年十二月に公表をいたしましたTPP11の定量的な影響試算におきましては、国内農林水産物の生産額への影響とあわせて食料自給率への影響もお示しをしたところでございます。

 まず、TPP11における農林水産物の生産額への影響についてでございますけれども、私どもが行いました定性的な影響分析の結果を踏まえながら、個別の品目ごとに、国産品及び輸入品の価格を出発点として、国産品と輸入品の競合関係を踏まえ、価格の動きについて一定の仮定を置いた上で、国内対策の効果も考慮しながら、合意内容の最終年における生産額への影響を算出し、これを積み上げて試算をしたところでございます。

 その結果でございますけれども、関税削減等の影響で国産品の価格低下によりまして生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き国内生産量が維持されるものと見込んだところでございます。

 ここで申し上げております体質強化対策の規模でございます。平成二十七年の補正予算、二十八年度の補正予算、二十九年度の補正予算、それぞれ三千億円強の予算額を計上しておるところでございます。

森山(浩)委員 本当に量は減少しないのかというところですが、国内生産量が減少しない場合に、需給バランスはどのようにして維持をされるのか。

 農水省は、輸入の増加を見込んでいないと答弁をされているようですけれども、TPPに先立つ二〇〇七年の試算では、国境措置を撤廃した場合に、たとえ国内価格の低下により内外価格差が解消しても輸入は増加すると見込んでいたのと整合性がとれていないのではないでしょうか。説明をお願いいたします。

天羽政府参考人 ただいま先生からお話のございました交渉に入る前の試算におきましては、国境の関税が全て撤廃をされて、国内対策も考慮しないという前提のもとでの試算であったと承知をしております。

森山(浩)委員 影響をどのように考えるかというところでいきますと、国内対策がないという場合にその影響額を試算する、その上で国内対策とその効果を示すのが本来のあり方だと思います。

 農業分野において国内対策がとられなかった前提のデータ、いわゆる裸のデータ、これを示す考えはあるでしょうか。

 二〇〇七年の二月、日本、オーストラリアのFTA交渉の検討に際しては、農水省さん、農産物の関税などの国境措置を全て撤廃した場合の影響について、農業生産額減少三・六兆円、一部は農業生産額減少額と重複するが農産物加工業の生産減少二・一兆円、GDPの減少九兆円、就業機会喪失三百七十五万人、カロリーベース自給率は一二%まで低下、そして農作物作付面積は六割減少、多面的機能の喪失三・九兆円というようなことを出しておられますけれども、裸のデータが出せないわけではないですよね。これはいかがでしょうか。

天羽政府参考人 裸の試算を出せないのかという御質問でございます。

 たびたび御答弁をさせていただいておりますけれども、今回のTPP11につきましては、国内対策を実施するということを大綱で決めて、先ほど申し上げたとおり、この三年度、対策も実施してきておるところでございます。

 現実と異なる試算をするということは試算の意味がないというふうに考えておりますので、対策のない、対策を考慮しない試算をすることは考えてございません。

森山(浩)委員 つまり、国内対策をやった結果はこのぐらいになると思いますよということを、その前提となるデータなしに試算をしました、こういう話にしかなりません。前提が、まずはどういう影響があるかということが出て、それに対してこういう対策をとるから、これだけ緩和できますよという話でなければ、到底これは説得も納得もできるものではないと考えます。

 国民に対して大きな不安を残した状態で、いやいや、対策をやるから大丈夫です、その前提となるデータはありませんというのが農水省さんの説明であります。これでは幾ら何でも、食料自給率は大丈夫だ、あるいは影響は少ないといっても、国民を説得することはできないのではないかと考えます。大変残念に思います。

 安全保障政策としての農林水産業政策という部分で、食料自給率、これはオーストラリアとのFTAだけでもあれだけ下がるという試算が出ているわけですから、TPP11を進めていく、あるいはアメリカが帰ってくる、こういうことも含めていくと、絶大なマイナスの効果が出てくるのであろうと思います。

 きのう、玉城デニー議員の本会議での発言でもありましたけれども、日本において農産物に対する補助金、いろいろなものを足していくと三〇%ぐらい、それに対してヨーロッパでは八〇%、九〇%、一〇〇%というような形で、単なる食料の値段ではなく、それに加えて保水効果であるとか環境効果であるとか、こういったものを全てあわせて価値として考え、それに対して予算をつけるという考え方が主流です。

 だからこそ国内農産物というのが守られるわけでありますけれども、こういった部分について、食料安全保障としての農林水産業政策について、これはTPPで大きく影響を受ける部分だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

上月大臣政務官 お答え申し上げます。

 農業は、国民に対しまして食料を安定的に供給するとともに、地域と経済、地域経済を支えるという重要な役割を担っていると考えております。

 生産活動を通じて、国土の保全や水源の涵養といった、委員から御指摘のありましたような多面的機能も発揮をいたしておりまして、我が国の国土あるいはふるさとを守るという観点からも、大変重要な役割を担っていると思っております。

 今申し上げましたような食料安全保障も含めた観点から、農業というのを守っていくということは大変重要であると思っておりまして、我々は、国際交渉の中でも、しっかり国内対策をとることでそういった食料安全保障の面からも農業をしっかり守り、また育てていく、攻めと守りを両方ともしっかりやっていく、そういう観点から取り組んでいきたいと考えております。

森山(浩)委員 政務官、茨城県の副知事をやっておられましたよね。茨城県の現場のこともよく御存じだと思います。今回の対策で、食料安全保障、十分だとお考えですか。

上月大臣政務官 対策は、今やり始めているわけでございます。常に現場と対話をしながら、必要であれば見直しもしないといけない場面もあるかもしれません。

 現場のことをよく見ながら、対話をしながら、我々としては、日本の農業を守っていく、弱いところを。そしてまた、弱いところを守り、今まで以上に海外のマーケットもとっていく、そういうふうな攻めと守りを両方やっていく姿勢でしっかり対策をとっていきたいと考えております。

森山(浩)委員 前提となる数字がない、これから頑張っていく、こういう話でございます。とてもTPP11、今の状態で締結をし、そして日本の農業を守っていけるという状況にはないのではないかというふうに思わざるを得ません。

 さらに、自由経済、自由貿易は、今の地球上において、あるいは経済体制において非常に大事なものでありますけれども、グローバル企業に対して、今、主権国家だけでは十分な規制がかけられない状態になっています。タックスヘイブンの問題、あるいは環境破壊の問題、気候変動への逆行、人権侵害、膨大な個人情報の流出、単なる国内での問題として国内法で規制ができる、あるいは人々を守っていける、こういう状況ではなくなっているのが現在の経済状態でもあります。

 こういう多国間の協定において、グローバル企業に対して、全体、主権国家として対応していくということが大事だと考えますが、グローバル企業への適切な規制についてはどのようにお考えでしょうか。

澁谷政府参考人 お答えいたします。

 TPP協定には、この手の協定には珍しく、環境、労働というチャプターがございます。これは、環境破壊をしてまでも、あるいは労働のルールを逸脱してでもコストを下げて、とにかく自由貿易第一という考え方に対して、環境それから労働の先進国並みのルールはちゃんと守った上でフェアな貿易を、そういう趣旨で、先進国並みの規律を途上国にも求めるというのが環境と労働のもともとの趣旨でございます。

 それから、例えば電子商取引については、単にデータの自由なフローだけではなくて、消費者保護の規定も盛り込んでいるところでございまして、また、投資のチャプターには、安全、健康、その他、各国がそれぞれ必要な規制をとれるということもあえて明記しているところでございます。

 むしろ、こういうルールが途上国を含めて多くの国に共有されることで、非常に自由で、かつ公正な貿易ルールができるものと考えているところでございます。

森山(浩)委員 各国の規制だけでは十分ではない、あるいは各国がばらばらに法制をするだけでは十分ではないというのがグローバル企業に対する規制の大きな問題であります。せっかくの多国間の交渉をしているのでありますから、全体についてきちんと規制をしていくべきであると考えます。

 農業の保護の問題、TPP11交渉の経過がTPP12からも含めて十分オープンになっていないということ、そして、アメリカとの二国間交渉についても十分に否定をできる状況にはないというところ、ISDS条項によって国の大事な財産が企業によって簒奪をされるかもしれないという恐怖、こういう部分も含めて、まずは国内対策、そして国民が安心をして暮らしていけるための基盤を守るということ、これを十分対策をしているとは言えない状況でTPP11の締結に進んでいくということには非常に大きな危惧を持って、反対をしたいというふうに思いまして、私の質問を終わります。

山際委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山際委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。大河原雅子君。

大河原委員 立憲民主党の大河原雅子です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法令の一部を改正する法律案に対して反対の立場から討論いたします。

 TPP11はTPP12より悪い。保護主義との闘いのためにとTPP11などを推進するのはもってのほかです。

 そもそもTPPは、全ての関税や規制を撤廃することを原則とし、農業や食の安全を始め、医療、医薬品、サービス貿易、投資、政府調達、国有企業、地域経済など、多くの分野に影響が及ぶものです。

 政府は、TPP11の意義を、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げるとしております。自由貿易の価値については一定理解もいたしますが、究極の自由貿易と言われるTPPは、内容がわずかながらも知れるにつれて、グローバル企業に一方的に有利な環境を提供するものであり、グローバル企業への便宜供与、グローバル企業による世界の私物化との市民の批判の声は広がり、高まっております。

 TPP12を主導してきたアメリカは、一昨年の大統領選挙では、全ての候補者がTPPを否定せざるを得ず、そして、アメリカの国民は、トランプ大統領を選び、TPPを否定しました。これまでの協定でも、賃金が下がり、失業がふえる、国家主権が侵害される、食の安全が脅かされるとして否定をしてきたものです。世界最強の経済大国アメリカの国民のこのTPPへの否定は、自由貿易が反省の時代に入ったことを意味しています。

 TPP12のキープレーヤーが抜けたTPP11では、二十二の凍結項目が定められました。多くの参加国は自国の利益を守るために凍結項目をかち取ったと言われていますが、一体日本はどんな項目を交渉のテーブルにのせたんでしょうか。日本の守るべき凍結項目は確実にあったはずです。

 アメリカの離脱により医薬品の特許期間や国有企業に関する規定の一部などが凍結されましたが、これは全体のわずか二%にすぎません。TPPが人々の命や暮らし、地域、主権を脅かし、多国籍企業の利益を追求するものであることに変わりはありません。

 日本で、食料自給率が四〇%にも満たないこの国で、今後、この協定の効果によって食料の輸入は更に増大をいたします。そして、自給率は更に下がる。国内の一次産業、国民の命を守る農林水産業の疲弊、そしてこれを支えてきた地域社会の崩壊は、火を見るより明らかです。

 TPP11では、食の安全、遺伝子組み換えの食品などに対してもリスク分析主義がとられています。リスクが明確になっていなければ受け入れざるを得なくなり、予防原則をとっている日本の食の安全は明らかに後退させられる。安全を確保してきた基準の緩和、これを迫られるという大きな深刻な現実があります。

 TPP11の交渉では、各国が自国の利益を守るために多くの項目の修正、凍結を主張したのに対して、日本政府は、合意を急ぐために、農畜産物の輸入枠などで更に不利になるものさえ修正を求めずに受け入れているんです。

 国民や国会に対して協定の交渉過程における情報の開示もせず、国会の決議も顧みず、強引に協定を推し進める政府の姿勢は明らかに間違っています。

 TPP11は12の延長、中身は変わらないから審議する必要はない、そのようなお考えなのでしょうか。わずか三日間、十数時間の審議で終わらせようとするこの政府の姿勢、明らかに、国民を守る、そうした姿勢は見受けられません。

 安倍政権は、国難政権どころか、国を滅ぼす亡国政権と言わなければなりません。政府の描く希望的な観測だけを聞かされて、納得のいくわけがありません。TPP11の締結に断固反対をいたします。

 多くの国民の皆さんが徐々にこの協定の中身を知る事態になっていますが、政府は、よらしむべし、知らしむべからず、この中身を知られては困る、この一点で締結を急いでいるんじゃないでしょうか。

 このような、国会の機能を無視した、そして国民にしっかりとした真実を伝えない政権に対して、私たちはこのTPP11締結には断固反対することを申し上げまして、私の反対の討論といたします。(拍手)

山際委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、TPP11整備法案に断固反対の立場から討論を行います。

 何よりまず、委員長職権により、当委員会の質疑を短時間で打ち切り、採決を強行することに厳しく抗議をするものです。

 野党は、関係委員会との連合審査、食の安全、国民の暮らしと命、健康を脅かす問題、政府調達、ISD条項、環境や労働にかかわる論点などテーマ別審議、中央、地方公聴会、参考人質疑、さらなる総理質疑などを求めてきました。

 アメリカが抜けたTPP11が日米二国間協議と相まって日本経済と国民生活にどのような打撃を与えるのか、審議を打ち切れば、国民に問題点を明らかにすべき国会の責務を果たしたとは到底言えません。

 わずかな審議を通じても、TPP11の重大な問題点が明らかになっています。

 もともとTPPは、二年前の国会で、国民の厳しい批判にさらされ、審議中にアメリカが離脱したにもかかわらず、政府・与党が採決を強行したものです。TPPを丸ごと組み込んでよみがえらせたTPP11は、関税、非関税措置の撤廃がそのまま生きており、大問題となった国会決議に真っ向から反する実態もそのままであり、認めることはできません。

 参考人質疑の中で、内田聖子参考人は、TPP11の変更点について、TPPの危険性は基本的に変わっていないと指摘をしています。

 また、四月の日米首脳会談で新たな経済協議の枠組みFFRをつくることで合意したことは重大です。アメリカが具体的な通商要求項目を日本へ突きつけ、取引する場へ更に踏み込み、TPPを出発点にして、更に際限ない譲歩を迫られ、行き着く先は日米FTAです。TPP、TPP11、日米二国間協議が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至であります。

 TPPとは何のために行われるものなのか、鈴木宣弘参考人は、アメリカのグローバル企業が、自分たちがもうけられるルールをアジア太平洋地域に広げたい、これが端的なTPPの本質だ、日本のグローバル企業にとっても同じこと、グローバル企業の利益はふえるが、現地の人は安く働かされる、国内の人々は安い賃金で働くか失業すると明確に述べられました。

 世界の流れは、各国の食料主権と経済主権を尊重しながら、平等互恵の貿易と投資のルールづくりです。日本が進むべき道はTPP11、日米新協議ではないということを申し上げて、反対討論を終わります。(拍手)

山際委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

山際委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山際委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

山際委員長 次に、中谷元君外七名提出、ギャンブル等依存症対策基本法案及び第百九十五回国会、初鹿明博君外十名提出、ギャンブル依存症対策基本法案の両案を一括して議題といたします。

 提出者から順次趣旨の説明を聴取いたします。中谷元君。

    ―――――――――――――

 ギャンブル等依存症対策基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中谷(元)議員 ただいま議題となりましたギャンブル等依存症対策基本法案について、提出者を代表して、提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 ギャンブル等依存症がギャンブル等依存症である者など及びその家族の日常生活又は社会生活に支障を生じさせるものであり、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせていることに鑑み、ギャンブル等依存症対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の基本となる事項を定めることなどにより、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進する必要があります。

 以下、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、この法律においてギャンブル等依存症とは、法律の定めるところにより行われる公営競技、パチンコ屋に係る遊技その他の射幸行為であるギャンブル等にのめり込むことにより日常生活又は社会生活に支障が生じている状態をいうこととしております。

 第二に、ギャンブル等依存症対策は、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の各段階に応じた防止及び回復のための対策を適切に講じるとともに、ギャンブル等依存症である者など及びその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援することなどを基本理念として行われなければならないこととしております。

 第三に、ギャンブル等依存症対策を講じるに当たっては、アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がされるものとすることとしております。

 第四に、国、地方公共団体、関係事業者、国民及びギャンブル等依存症対策に関連する業務に従事する者の責務を規定することとしております。

 第五に、政府は、ギャンブル等依存症対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないこととしております。

 第六に、政府は、ギャンブル等依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定しなければならないこととしております。

 第七に、基本的施策として、国及び地方公共団体は、医療提供体制の整備、相談支援等の推進、社会復帰の支援等の施策を講じるものとすることとしております。

 第八に、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、ギャンブル等依存症対策推進本部を置くこととしております。また、同本部は、ギャンブル等依存症対策の推進基本計画の案を作成しようとするときなどには、同本部に置かれるギャンブル等依存症対策推進関係者会議の意見をあらかじめ聞かなければならないことといたしております。

 第九に、この法律は、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同いただきますことをお願い申し上げます。

山際委員長 次に、初鹿明博君。

    ―――――――――――――

 ギャンブル依存症対策基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

初鹿議員 ただいま議題となりましたギャンブル依存症対策基本法案につきまして、提出者を代表して、提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げます。

 ギャンブル依存症が、その患者の日常生活及び社会生活にさまざまな問題を生じさせる国際的にも認められている疾患であるのみならず、その家族に深刻な影響を及ぼすとともに、重大な社会問題ともなっていることに鑑み、ギャンブル依存症対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル依存症対策を総合的かつ計画的に推進する必要があります。

 以下、本法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、この法律においてギャンブル依存症とは、法律の定めるところにより行われる公営競技の投票、パチンコ屋等における遊技その他の財産上の利益の得失に関し射幸心をそそるおそれのあるものを行うことに関する依存症をいうこととしております。

 第二に、ギャンブル依存症対策は、ギャンブル依存症の発生、進行及び再発の各段階に応じた防止及び回復並びにこれに関連して生ずる問題に応じたその防止を図るための施策を適切に講ずること、財産上の利益の得失に関し射幸心をそそるおそれのある行為を客に行わせる事業についてギャンブル依存症の患者等による利用が制限されるようにすること等を基本理念として行わなければならないこととしております。

 第三に、国、地方公共団体、ギャンブル関連事業者、国民及び医師等の責務を規定することとしております。

 第四に、政府は、ギャンブル依存症対策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないこととしております。

 第五に、政府は、ギャンブル依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、ギャンブル依存症対策推進基本計画を策定するものとすることとしております。

 第六に、基本的施策として、国及び地方公共団体は、医療提供体制の整備、相談支援の充実、社会復帰の支援等の施策のほか、民間による支援を受けるギャンブル依存症の患者等及びその家族の経済的負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとすることとしております。

 第七に、ギャンブル依存症対策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、ギャンブル依存症対策推進本部を置くこととしております。また、同本部は、ギャンブル依存症対策推進基本計画の案を作成しようとするとき等には、同本部に置かれるギャンブル依存症対策関係者会議の意見をあらかじめ聞かなければならないこととしております。

 第八に、政府は、ギャンブル依存症対策を推進する観点から、ギャンブル関連事業者の事業の方法に関し、公営競技の投票法及びパチンコ屋等において使用される遊技機の性能に係る射幸性の抑制等の検討に早急に着手し、結論を得た事項から直ちに、遅くともこの法律の施行後三年以内に、必要な措置を講ずるものとすることとしております。

 第九に、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

山際委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山際委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長樋口進君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官中川真君、スポーツ庁審議官藤江陽子君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長宮嵜雅則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山際委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 まず、きょうは、第一会派でございます自民党の加藤先生に順番を変えていただきまして、ありがとうございます。感謝申し上げます。

 二十分しかいただいていませんので、端的にもう質問に入りたいと思っております。

 まず、基本的な定義の確認からさせていただきます。

 今回のこのギャンブル等の意義でございますけれども、法案を見ますと、自公維の法案提出者にお聞きをしておりますけれども、いわゆる法律で定める公営競技、そして遊技でありますパチンコ、その他射幸行為をギャンブル等というふうに定義をされております。

 私があらかじめ聞いたところによりますと、パチンコは含まれますが、いわゆるアプリ、スマホゲームなどの、最近、ガチャという、非常に、課金をして自分のゲームの主体者を強くして、子供がのめり込むような行為については今回規制の対象から外されているというふうに私は聞いております。

 まず、この射幸行為の意味と、なぜ、遊技であるパチンコは含まれますが、先ほども申し上げましたアプリやスマホゲームなどが含まれないのか、自公維の提出者にお答えいただきたいと思います。

中谷(元)議員 射幸行為とは、偶然を当てにして利益を得ようとする行為であります。

 一般的なアプリ、スマホゲームについては、必ずしも偶然を当てにして利益を得ようとする行為ではないために、こういったものは射幸行為に当たらず、ギャンブル等には含まれないと整理をしておりますけれども、御指摘のありましたガチャというような課金ゲーム、これは、課金し過ぎて数万円、数十万円以上の請求が来る場合があると聞いております。

 したがいまして、スマホゲームの中で比較的簡単に課金される仕組みで、電子くじ等は一般的には射幸性が高いと考えられます。また、発達段階でありますので、技術の進歩に応じて新しい形態が生じるものも想定をされますので、定義に当てはまるいわゆる偶然を当てにして利益を得ようとする行為でありますれば、スマホのゲームの中でも射幸行為に当てはまるものがあると考えております。

浜地委員 ありがとうございます。正確な定義をお聞きいたしました。

 法律が仮に通りますと、また検討ということで、さまざまございますので、また時代の変化も見ながら、対象のところをとっていただきたいというふうに思っております。

 次に、久里浜医療センター、樋口先生にお聞きをしたいと思っております。

 先生、資料を見させていただきましたが、日本初のギャンブル依存症に対する調査をしていただきまして、私も非常に興味深く拝見をさせていただきました。

 きょう先生に聞きたいのは、いわゆる自公維案の第一条は、ギャンブル等依存症が日常生活、社会生活に支障を生じさせるものであり、その後、多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせていることに鑑みということで、ギャンブル等依存症は、そういった多重債務や貧困、虐待、自殺等との因果関係があるように書かれております。

 私、前職は弁護士をしておりまして、多重債務の問題を多く扱いましたけれども、余り私の経験では、いわゆるギャンブルによって多重債務になったという方は、そう多くはございませんでした。ですので、こういったギャンブル等依存症が、先ほども申し上げましたとおり、多重債務や貧困、虐待、自殺、犯罪との因果関係があるのか、医学的な観点から先生にお答えいただきたいと思っております。

樋口参考人 お答えいたしたいと思います。

 ギャンブル等依存に関する実態を調査するために、平成二十八年度から三十年度までの三カ年の調査研究で、日本医療研究開発機構、AMEDというふうに言われていますが、の委託により、国立病院機構久里浜医療センターの私たちの研究班で国内のギャンブル等依存に関する疫学調査を実施いたしました。

 その調査で、SOGS、これはサウス・オークス・ギャンブリング・スクリーンの略でございまして、世界で最もよく使われているギャンブル依存症のスクリーニングテストですが、このスクリーニングテストを用いてギャンブル等依存が疑われる人の割合を推計いたしました。しかし、御質問のございました多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等との因果関係についての調査項目はこの中に設けられていませんでした。そのために、科学的な見地から直接の因果関係をお話しするのはちょっと難しいということでございます。

 しかし、片方で、我々は外来の現場で患者さんを拝見しているわけですけれども、このようなギャンブル依存症を抱えた患者さんたちの問題について、少しデータがございますので、それをちょっとお示ししたいと思います。

 このような受診者の借金の平均の金額ですけれども、およそ六百万円ぐらいです。これは生涯の金額ですね。それから、ギャンブルに関連した問題で警察沙汰になったケースが全体の一七%います。そのうち七%が窃盗だと思います。それから、希死念慮は過去一年間で四四%、自殺企図は過去一年間で一二%となっており、単にギャンブルに伴う借金の問題にとどまらず、生活全般の問題であると捉えて支援していく必要があると思います。

 以上です。

浜地委員 樋口先生、ありがとうございました。

 今、犯罪率一七%、自殺一二%という数字が出てきたので、これはやはり普通よりもかなり高い数字だなというふうに私、認識をさせていただきましたので、ギャンブル依存症とそういった多重債務やまた犯罪、自殺等については強い因果関係にあるということを医者でございます先生の口からお答えいただきまして、大変納得をしたところでございます。

 次に、これも自公維提出者にお聞きをしたいと思いますが、この法案の中では、政府及び都道府県に対しましては、ギャンブル等依存症対策基本計画をつくる、そして推進計画をつくるんだというふうに書いてございます。

 ここにはやはり、PDCAサイクルをしっかり回すために、依存症の患者の数値目標、当然減少の数値目標でございますが、これを私は定めるべきだと思っております。仮にこれを定めないとすれば、なぜ定めないのかという点についてお答えいただきたいと思います。

佐藤(茂)議員 今、浜地委員の方から、政府及び都道府県が定める基本計画、推進計画には依存症患者の減少の目標を定めるべきじゃないのかという御質問でございましたが、今、樋口先生からもございましたように、ギャンブル等依存症については、昨年九月に政府においてギャンブル等依存症患者の実態調査が行われたところでございまして、今後も継続的に実態を把握することが求められているところでございます。

 また、ギャンブル等依存症による問題が生じても、それがギャンブル等依存症により生じていることに本人や家族は気がつきにくく、適切な相談や治療につながりにくいことから、国民にギャンブル等依存症の正しい知識を普及啓発していくことも重要でございます。

 このような現状を踏まえますと、現段階では、ギャンブル等依存症患者の減少の目標を定めることについては慎重な検討が必要であると考えております。

 その上で、基本計画に定める施策の具体的な目標については、提出者としましては、委員御質問のとおり、当然ギャンブル等依存症患者を減少させていく方向に期待をいたしておりますけれども、本法の成立以降、関係者の意見も聞きながら、政府において適切な検討がなされるもの、そのように考えております。

浜地委員 ありがとうございます。提出者としての御意見も踏まえてお答えいただきました。

 シンガポールでは、IRと余り関連するつもりはございませんが、四・数%あったギャンブル依存症が〇・数%台に下がっているというデータがあって、非常に依存症対策がきいているというデータがございます。

 そういった諸外国の姿という部分において、そういうデータを示すことによってやはり説得力あるものになりますので、私自身は、ぜひ環境整備が整った時点でこういった数値目標もしっかりと出していただきたいなというふうに思っております。

 続きまして、立憲、無所属の会、自由、社民案の法案提出者の方にお聞きをしたいと思っています。

 検討事項におきまして、皆様方の案によりますと、事業者に負担金を課すことを検討しようという項目がございます。

 既に公営競技につきましては納付金の制度がありますし、ほかのパチンコ業者につきましては、そうはいっても、これは民間でございます。いわゆる税金を払っている立場のものでございます。そして、風営法施行規則でも依存症対策を義務づけられて、実際は業界の方で出玉の規制でありますとか、又は本人、家族のアクセス制限等の取組が今進んでいる最中でございます。その上でこの負担金を課すというのは、私は少し過度な負担のような気がしております。

 なぜこの負担金を課すという検討事項を入れられたのか、お答えいただきたいと思います。

中川議員 質問ありがとうございます。

 御指摘のように、本法では、検討事項として、ギャンブル関連事業者のギャンブル依存対策に係る費用負担を、遅くとも本法の施行後三年以内に検討して早急に着手すべしということになっています。

 これは、一つは、ギャンブル依存症対策を総合的かつ計画的に進めていくということに当たって必要な経費の財源を安定的に確保していくということ、これが一つございます。

 もう一つ、既に御指摘のように、収益金を公益事業であるとかあるいは地方自治体に向けて配分しているということはありますが、しかし、依存症対策の解決に向けて、ギャンブル依存症の発生等の原因となる者が負担をしてそこのところを特定するということについては、これはふさわしいことだというふうに思っております。

 そういう意味で、そこで原因となっている収益金を得ている主体がギャンブル依存症の発生に対して貢献をするという意味合い、そのこともあわせて特定をすべしということで、我々の思いがございます。

浜地委員 さまざまな対策の経費の安定的な財源を確保と、原因を特定するというお言葉がございました。

 自公維案には、こういった検討事項で、事業者に負担金を課すといったことは検討事項にも入っておりません。

 先ほどの立憲、無所属の会、自由、社民案ではこの財源の安定的確保という観点も、私は重要かと思いますが、それを踏まえて、自公維案ではなぜ金銭的負担を現在求めないのか、御答弁をいただきたいと思います。

岩屋議員 これについては、先ほど浜地先生御自身がおっしゃったように、公営競技につきましては、もう御案内のとおり、特別立法によって刑法上の違法性を阻却し、一方で、納付金をいただき、それを公益還元するという仕組みをつくっているわけでございます。

 それぞれの制度に基づいて、公営競技につきましては既に収益配分の仕組みが構築されております。それを変更したり、さらなる負担を求めることについては、慎重な検討が必要ではないかと私どもは考えております。

 一方の、これも先生御指摘ございましたが、パチンコにつきましては、公営競技施行者とは異なりまして、民間事業者にすぎません。そこに租税以外の新たな負担を求めることには大変困難を伴うのではないか、しかも、公営競技と一緒くたにして制度設計をするということも極めて困難ではないかなというふうに思っているところでございます。

 一方で、安定的な対策のための予算を確保することは当然だというふうに思っております。

 また、これらそれぞれの事業者において既に、事業者団体などを通じて、自主的な取組としてさまざまな必要な社会貢献を行っているという点にも留意をする必要があるのではないかと考えております。

浜地委員 ありがとうございます。

 民間でいうと、パチンコ業者さんになると思います。私も、大学時代の友人がパチンコ店を経営していまして、もう三代目になって、非常に真面目な男です。最近は出玉の規制とか本人アクセスが非常に厳しいんだけれども、これはやってもらって結構です、きちっと自分たちはやっているので、まずその姿を見てほしいという意見がございました。やらない業者については厳しいさまざまな指摘があってもいいけれども、まずは自分たちの自主規制を見てほしいというような意見もございましたので、ここで御紹介をさせていただきました。

 次に、今後のギャンブル依存症対策の医療体制について、これは厚労省にお聞きをしたいと思っております。

 ギャンブル依存症対策の専門医というのは、お医者さんの中では非常に少ないというふうにも聞いております。そして、専門の医療機関も、資料をいただきましたけれども、国内で大体百三カ所程度でございますので、ギャンブル依存症が疾患である、病気であるということを前提としますと、やはり一番は医療体制の充実というのが大事だろうと思っております。

 今後、医療体制はどのように整備をしていくのか、厚生労働省にお聞きをしたいと思います。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 ギャンブル等依存症につきましては、地域で必要な医療を受けられるように、依存症対策の全国拠点機関といたしまして国立病院機構の久里浜医療センターを指定しますとともに、都道府県等において、専門医療機関の選定を始めとする医療体制の整備を進めているところでございます。

 具体的には、二十九年度からでございますが、六十七の都道府県と指定都市に対しまして必要な働きかけを行うことによりまして、専門医療機関の選定を進めているところでございます。

 この結果、現時点では十カ所の自治体で専門医療機関が選定されておりまして、さらに、年度内に十一の自治体で選定が行われるという予定でございます。

 また、専門医療機関の選定には、依存症に係る研修を修了した医師が配置されていること等を要件としております。

 このため、二十九年度から、国立病院機構久里浜医療センターにおきまして地域で専門的な研修を行うための指導者の養成をいたしますとともに、都道府県などにおきましても地域の医療機関を対象とした依存症医療研修を実施してきているところでございます。

 また、距離的、時間的な制約で養成研修の受講が困難な医師等のために、今後は、依存症対策の情報ポータルサイトを活用したeラーニングの導入とか、養成研修の地方での開催についても検討を進めていくこととしております。

 さらに、平成三十二年度、再来年度からですが、医師の臨床研修の到達目標としても新たにギャンブル等依存症を含む依存症が適用される予定でございまして、医師の臨床研修においても経験すべき疾病、病態として位置づけられることとなっております。

 厚生労働省といたしましては、これらの取組を通じて、ギャンブル等依存症の方が地域で必要な医療を受けられる体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

浜地委員 もう時間がないので、最後の質問は飛ばします。

 ぜひ、医療体制の充実がやはり一番のキーだと思っておりますので、厚生労働省には体制整備を頑張っていただきたいと思っております。

 また、日本で初めてのギャンブル依存症に対する基本法が、自公案、また立民を含め野党の皆様方も出される中で、やはり国会としては非常に画期的なことでございますので、しっかり議論をしてぜひ前に進めていただきたいと思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山際委員長 次に、加藤鮎子君。

加藤(鮎)委員 自由民主党、山形三区選出の加藤鮎子です。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 早速ですが、国民の関心も大変高いギャンブル等依存症対策基本法につきまして、政府参考人や提案者の方々に質問をさせていただきます。

 我が国では、競馬や競輪、競艇、オートレースなど、公営競技などの賭博を楽しむ方が多くいらっしゃいます。節度ある利用により、憩いの場として、また気分転換を図る場所として広く愛されているものもございます。しかし、中には、それらにのめり込んでしまって、本人の生活に支障が生じ、治療を必要とする状態に陥ってしまうケースがあります。

 こうしたいわゆるギャンブル等依存症については、本人が財産や職を失って自己破産に追い込まれてしまったりする場合があるのみならず、家族や親族等に多大な影響を与え、家庭崩壊を招くだけでなく、自殺や犯罪等につながるなど、深刻な問題が提起される場合があります。

 このようなギャンブル等依存症となってしまった方々については、早期に相談や治療を受けられるような環境を整えるとともに、安易にギャンブル等に依存することを防ぐための対策を講じていく必要があると考えます。

 そこで、まず最初に、政府としてギャンブル等依存症の実態についてどのように把握されているかをお尋ねしたいと思います。日本国内に、ギャンブル等依存症に陥っている方々は今どのくらいいらっしゃるのでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 ギャンブル等依存に関する全国の実態を調査するために、平成二十八年度から三十年度までの三カ年の調査研究で、日本医療研究開発機構の委託によりまして、国立病院機構久里浜医療センターの研究班が国内のギャンブル等依存に関する疫学調査を実施いたしました。この調査につきましては、昨年の九月に中間の取りまとめが行われて、研究班の方から公表されております。

 その結果によりますと、過去一年以内の経験からギャンブル等依存が疑われる者の割合は成人の〇・八%であり、成人人口に換算した場合には約七十万人と推計されております。また、調査時までの生涯の経験からギャンブル等依存が疑われる者の割合は成人の三・六%であり、成人人口に換算した場合は約三百二十万人と推計されております。

 以上でございます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 経験者も含めれば、ギャンブル等依存症が疑われる方々は我が国に大変多くいらっしゃるということだと思います。

 そんな実態を踏まえて、平成二十八年に成立した特定複合観光施設区域の整備推進法の附帯決議におきましては、政府に対して、ギャンブル等依存症の対策の強化を求めています。

 そこには、ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること、また、我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備し、その原因を把握、分析するとともに、患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること、加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取組を整備すること、また、カジノにとどまらず、ほかのギャンブル等に起因する依存症を含めて、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組み、体制を設けるとともに、関係省庁が十分連携して包括的な取組を構築し、強化すること、また、そのための十分な予算を確保することとされています。

 そこで、政府にお尋ねをいたします。政府におきましては、ギャンブル等依存症について、今現在どのような取組を行っていらっしゃるでしょうか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 ギャンブル等依存症対策につきましては、今委員御指摘のIR推進法の附帯決議を契機といたしまして、政府では、一昨年末、平成二十八年十二月に内閣官房長官が主宰をいたしますギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議を立ち上げ、昨年の八月にはギャンブル等依存症対策の強化策を取りまとめました。

 具体的な強化策といたしましては、まず、安易にギャンブル等へ依存することを防止するため、本人、家族申告によるアクセス制限措置や、簡単にお金をかけられるインターネット投票における取組の強化、遊技機の射幸性の抑制などを順次実施してまいりました。

 また、ギャンブル等依存症患者が必要なときに早期に相談や治療が受けられるような環境を整備すべく、全国における相談、治療体制の整備、医師等の人材育成、自助グループ等民間団体への支援を推進してまいりました。

 さらに、学校教育における指導、啓発を推進するとともに、多重債務等における相談体制の強化などを進めております。

 政府といたしましては、ギャンブル依存症により不幸な状況に陥る人をできるだけ少なくし、健全な社会を構築するため、政府一体となって不断に取組を強化していく所存でございます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 次に、提案者にお伺いをいたします。

 この法律の目的は、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することとされていますが、本法律が制定されることの意義はどのような点にあるとお考えでしょうか。

中谷(元)議員 ギャンブル依存症から抜け出すには大変な苦労と努力が必要でありまして、これについて、この発生、進行、再発、それぞれの段階に応じて防止、回復の対策を行おうとする理念を設けまして、それで、医療体制、相談、民間活動に対する支援、人材の確保など、国と地方団体に必要な施策を講じることを義務づけるということと、この推進に関する基本計画を策定することを政府に義務づけ、地方公共団体も推進計画を推進する努力義務、これを課すなどで対策を抜本的に強化するということにその意義があります。

 そして、三年ごとに実態調査をいたしまして、その結果を踏まえて基本計画に検討を加える、いわゆるPDCAサイクルが法律に基づく恒久的な制度として確立されることになりまして、これによって依存症の対策を一層総合的、効果的に推進する基盤が恒久的な制度として構築をされるということになると考えております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 この法律が、ギャンブル等依存症対策の抜本的な強化を求めるものであり、またPDCAサイクルを回してその効果が推進され続けていくことが後押しをされる、そういう意義があるものと理解をいたしました。

 提案者の皆様のお骨折りに心より敬意を表したいと思います。

 続けて提案者にお伺いをいたします。当法案の第十五条についてであります。

 この第十五条では、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとすると規定をされていますが、ここでうたわれているギャンブル等依存症の予防等に資する事業の実施というのは、具体的にはどのような取組を想定されているものでしょうか。お願いします。

佐藤(茂)議員 今、加藤委員お読みいただきましたように、法案第十五条では、関係事業者が行う事業の実施方法について、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるように、各関係事業者による取組の強化を促進し、ギャンブル等依存症の予防等に資する仕組みの導入、拡充、普及等を推進する施策を想定しております。

 そこで、お尋ねになりました具体的な内容についてでございますが、広告及び宣伝、入場管理のほか、相談窓口の設置などの相談対応体制の強化、さらに、インターネット投票における対応等を想定しております。

 本法に基づく基本計画の策定に当たっては、本法の趣旨を十分に反映した施策を講じるよう、提案者としては、政府において適切に検討してもらいたい、そのように考えております。

加藤(鮎)委員 ありがとうございます。

 続きまして、同法案の第十六条についてお伺いをいたします。

 この第十六条におきましては、次のような文言がございます。国及び地方公共団体に対し、ギャンブル等依存症である者がその居住する地域にかかわらずひとしくその状態に応じた適切な医療を受けることができるよう、専門的な医療の提供等を行う医療機関の整備その他の医療提供体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする、このように定められておりますが、この第十六条の医療提供体制の整備については、どのような取組を想定していらっしゃるのでしょうか。

桝屋議員 お答えをいたします。

 医療提供体制の整備に関しての具体的なお尋ねでございます。

 先ほどからお話が出ておりますけれども、ギャンブル等依存症は、適切な治療によりまして回復が可能な方も随分いらっしゃるわけであります。しかしながら、これに対応する医療体制は決して十分とは言えません。地域において依存症患者が必要な診療を適切に受けられる体制を確立することが必要不可欠だと考えております。

 先ほど厚生労働省から、現状の取組、専門医療機関等の整備を進めているというお話がございましたけれども、十六条では、各都道府県・指定都市において、ギャンブル等依存症の専門的な治療機関を整備しまして、地域の関係機関との連携体制を構築するとともに、他の医療機関への研修あるいは地域住民への普及啓発等を通してギャンブル等依存症である者等を適切な相談、治療につなぐことができる、こうした相談、治療体制を整備することを想定しているわけでございます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 医療整備については、まだまだ体制づくりが急務の課題であろうかと思います。ぜひとも国及び地方公共団体の取組の迅速化をお願い申し上げます。

 次に、依存症についての相談支援等についてお伺いをいたします。

 ギャンブル等依存症の患者及びその家族は、孤立し、打開策を探りつつも、誰に相談してよいかもわからず、思い悩んでいる方も多く存在すると言われています。

 家族が依存症になって、会社もやめ、職探しにも身が入らず、生活が苦しくなっているにもかかわらず、その配偶者が、自分のせいかもしれないと思い込んでしまったり、誰かに相談したら本人に不利益になってしまうのではないかと不安になったりと、それで相談ができないというようなケースもあると聞きます。

 そして、孤立して、悩んで、いよいよ配偶者が勤め先の会社のお金を着服してしまったりですとか、あるいは、人によっては、生活保護などの公的支援を受けているものの、その給付をほとんどギャンブルにつぎ込んでしまって、その後ろめたさから、周囲に相談することができないまま悪化の一途をたどるようなこともあると聞いております。

 そんな現状の中、法案の第十七条では、相談支援等について、国及び地方公共団体に必要な施策を講じるように求めておりますが、この第十七条の相談支援等とはどのような取組を想定していらっしゃいますでしょうか、提案者にお伺いします。

桝屋議員 ありがとうございます。

 先ほどの医療提供体制の整備以上に大事なのは、この相談体制だろうと思います。委員御指摘のとおりでありまして、本当にギャンブル等依存でお悩みになっている方、どこへどのように相談をし、それに対してどう的確に対応するかということが実に大事でありまして、この十七条を設定したわけであります。

 特に、相談支援機関あるいは自助グループ等の活動もあるわけでありまして、こうした方々としっかり連携をとりながら、そういう個人の相談に対応するという体制をぜひ整備したいというふうに思っております。

 二つありまして、一つは、今、そういう相談体制が全国的に整備されていないわけでありますから、パブリックの仕組みとして精神保健福祉センター、これは全都道府県にありますけれども、ギャンブル等依存症に関する問合せや相談を受けておりますけれども、これはギャンブル等依存症に対する専門的な相談員がいないという状況もございますので、しっかり、全ての都道府県・指定都市においてギャンブル等依存症の相談体制を整備するために、ギャンブル等依存症に関する専門の相談員を配置し、そして体制を整えたいというふうに思っております。

 それからもう一つは、先生もおっしゃいましたように、さまざまな悩みがあるわけでありますから、そうした対応をするために、全国に設置されております消費生活センターあるいは日本司法支援センター等において、多重債務問題あるいはギャンブル等に関連した消費者トラブルに関する相談をここでも受けておりますけれども、ギャンブル等依存症の発見の端緒となり得るものの、相談者がギャンブル等依存症であると思われる場合に、ギャンブル等依存症に対応できる専門家への案内をするなどの連携が十分に行われていない、委員の御指摘のとおりであります。

 そこで、相談員のギャンブル等依存症に関する理解、知識の向上を通じた的確な相談の実施、両センターとギャンブル等依存症に対応できる相談拠点あるいは専門医療機関等との連携体制を構築すること等をぜひ整備しなきゃいかぬということで想定をしている内容でございます。

加藤(鮎)委員 ありがとうございました。

 この予防や回復のために、ぜひ、相談の支援というのは非常に大事だと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、最後の質問となりますけれども、法案第十九条についてお伺いをいたします。

 法案第十九条には、民間団体がギャンブル等依存症対策に関する自発的な活動をするために必要な施策を講ずるよう国や地方公共団体に求めています。

 昨今、ギャンブル依存症の予防や回復のためにいろいろなさまざまなノウハウを持って当事者のサポートをする民間団体も活躍をしていると聞いております。彼らを支援することは大変重要と考えますが、この第十九条の民間団体の活動に対する支援とはどのような取組を想定したものでありましょうか。

浦野議員 ギャンブル等依存症の予防等及び回復においては、自助グループ等の民間団体が重要な役割を担っております。定期的にミーティングを開催して、ギャンブル等依存症である者やギャンブル等依存症であった者が自分たちの体験談を話したり回復に向けたプロセスを話し合うなど、ギャンブル等依存症である者等が互いにみずからの経験を語り合うことがギャンブル等依存症の予防等及び回復を図る上で非常に重要になってまいります。

 そこで、本条では、国、地方公共団体が、こうした民間団体と連携し、その機能を活用することとともに、必要な支援を行っていく旨を規定しております。

 具体的には、自助グループ等への支援としては、依存症回復施設や自助グループを対象とした研修に加え、民間団体の活動そのものの支援へと拡充することを念頭に、民間団体が行う相談活動に対する助成が想定されています。

加藤(鮎)委員 提案者の皆様の丁寧な御答弁に感謝を申し上げます。まことにありがとうございました。

 これらの御答弁を受けて、この法案では、ギャンブル等依存症対策のために国や地方公共団体に多くの施策を講ずるように求めていることに加えて、事業者、医療、教育関係など多岐にわたる分野の方々との連携も欠かせないことが理解をできました。より実効性の高い制度とするために、法案成立後の調査結果を反映した見直しや調整等も重要と考えます。

 ギャンブル等依存症対策基本法の成立によって、国民の健全な生活の確保を図るとともに、国民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを御祈念申し上げて、私からの質問を終わらせていただきます。

 まことにありがとうございました。

山際委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 一昨日、愛媛県が参議院に提出した加計学園の獣医学部新設に関する文書に、安倍総理が加計学園の理事長と面会し、獣医学部いいねと発言したなど具体的な記載がされており、安倍総理のこれまでの答弁がうそであったということが改めて明白になったのではないかと多くの国民が感じていることと思います。

 また、TPPについては、TPP11協定は亡国の協定です。

 我が国は、もう既に十分に自由貿易の恩恵を受けております。過ぎたるは及ばざるがごとし、あるいは徳川家康公御遺訓には、及ばざるは過ぎたるよりまされりという教えがあります。

 十年後、関税がゼロにされた日本、非関税障壁がなくなった日本が、その後の十年後、二十年後、どんな姿になっているのか、想像することができないのでしょうか。昭和二十五年、木材、丸太が当時のGHQ政府によって関税ゼロにされました。その後、山で仕事をする人が少なくなり、材木屋さんが極端に減りました。これがまさに関税ゼロの世界であります。想像力の欠如は国を滅ぼします。

 さて、国立病院機構久里浜医療センターによる国内のギャンブル等依存に関する疫学調査によると、ギャンブル等依存が疑われる者の割合が、米国、オランダの一・九%、フランス一・二%、韓国〇・八%等に比べて、三・六%と非常に高くなっています。

 なぜこのように諸外国と比較して高くなっているのかを考えたときに、パチンコの存在を無視することはできないと考えます。カジノの解禁を待つまでもなく、現時点で、歩いて行ける範囲にパチンコ屋さんがあり、国民が気軽にギャンブルに触れる機会があることが依存症患者の割合を引き上げているのだと考えられます。

 また、競馬の主要なG1レースの前になると、駅を丸ごとJRAの広告で埋め尽くすようなことも行われており、国民がギャンブルに触れる機会が多くあることも影響しているのではないかと考えております。

 我が国は、身近にギャンブルがあるにもかかわらず、適切な対策がとられていませんでした。より実効性のある法律にしていくためにも、これまでギャンブル依存症患者の支援を行ってきた支援団体や弁護士などの経験や意見が反映されるよう、参考人質疑を含めた充実した審議を行う必要があると考えます。

 まず最初に、委員長に、十分な審議時間の確保と関係者を招いての参考人質疑を行うことを求めたいと思います。理事会で御協議をお願いします。

山際委員長 はい。

福田(昭)委員 よろしいですね。

 では、質問に入ります。

 本日、二つの法案について審議が行われることになりましたが、まず最初に、立憲民主党を含めた野党案の提出者に伺います。

 自公維案との違いについて説明をしてください。

初鹿議員 自公維案と立憲民主党、無所属の会、社民、自由案との違いについて御説明をということでございました。

 我々、立憲民主党、無所属の会、社民、自由案については、ギャンブル関連事業者に対し、ギャンブル依存症の患者等をふやさないようにすることを求めていくことを大前提としております。

 関係者会議の法定については、これまで自公案と立憲民主党などの野党案との大きな違いとされてきておりましたが、ギャンブル依存症対策を実効性あるものにするための意見聴取が形骸化しないよう、自公維案で関係者会議を決定したことは評価をしたいと考えております。

 しかしながら、関係者会議の委員の意見を提言にまとめる等、関係者会議の実効性確保のためには、今後の運用についてしっかりと監視していくことが必要であると考えております。

 その上で、残る大きな二つの違いでありますが、まず、立憲民主党、無所属の会、社民、自由党案第十九条に規定する、民間による支援を受けるギャンブル依存症の患者等及びその家族の経済的な負担を軽減するための施策です。

 ギャンブル依存症の回復に当たっては、医療機関による治療だけでなく、自助グループ等の民間団体による支援が不可欠であり、自助グループ等の民間団体がギャンブル依存症の発生等の防止に大きな役割を果たしております。しかしながら、民間団体による支援を受けるための費用は基本的に自己負担になるため、それによって患者等や家族の生活を圧迫し、支援を受けることをちゅうちょするおそれがあります。

 そこで、我々の案では、第十九条を規定し、患者や家族等への直接の経済的支援を行うものと想定をしております。

 次に、立憲民主党などの野党案では、附則第二項において、ギャンブル関連事業者の事業の方法について検討する規定を設けております。

 先ほども浜地議員からの質問にありましたが、特に、附則の第二項第六号に規定をしております、ギャンブル関連事業者のギャンブル依存症対策に係る費用負担の検討が重要であると考えております。ギャンブル関連事業者は、ギャンブル依存症の発生等の原因になり得る事業を行っている主体として、収益の中から資金を拠出するべきであると考えております。

 なお、先ほど、事業者に負担を求めるのは、負担が過度になるのではないかという御指摘がありましたけれども、現状、環境省の所管する法律の中で、汚染の原因となる事業者等に対して負担を求めている法律が幾つか存在をします。例えば公害防止事業費事業者負担法などがあるということを御紹介させていただきます。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 それでは次に、自公維案提出者に三点まとめてお伺いをします。

 今、野党案の提出者から、自公維案との違いを説明していただきました。

 ギャンブル等依存症対策推進関係者会議について、当初の自公案では規定されておりませんでしたが、自公維案で規定したのはどのような理由からでしょうか。これが一点。

 二点目。野党案の提出者から、ギャンブル依存症から回復する上で民間団体の役割が大きい一方で、患者や家族の経済的な負担が大きいので、そこに支援する規定を設けていることが自公維案との違いでありますが、自公維案の提出者は、民間による支援を受けるギャンブル依存症の患者及びその家族の経済的負担について支援が必要だと考えていないのでしょうか。

 三点目。野党案では、附則二項で、ギャンブル依存症対策にかかわる負担について、ギャンブル関連事業者に負わせる旨の検討を行う規定を設けておりますが、自公維案には、ギャンブル依存症対策にかかわる費用についての規定がありません。自公維案の提出者は、依存症対策にかかわる費用について、どこから捻出することを考えているんでしょうか。ギャンブル関連事業者に費用を負担させる考えはないのでしょうか。

 以上三点、お伺いをいたします。

桝屋議員 三点のお尋ねを頂戴いたしました。

 一つは、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議であります。

 当初規定していなかったのになぜ入ったのか、こういうことでありますが、ただ、昨年の特別国会に提出しました旧与党案においても、基本計画案の作成等に際しては、ギャンブル等依存症の実体験を有する当事者及びその家族、関係事業者並びにギャンブル等依存症問題に関して専門的知識を有する者の意見の聴取を政府に義務づけていたところであります。

 今般、与党とそれから日本維新の会との間で、これらの者の意見をギャンブル等依存症対策を講ずるに当たり参考にすることの重要性に鑑みまして、意見の聴取の方法を会議体からの意見聴取という形で明確にすることで合意が成立したものでございます。

 本音を申し上げますと、実は、最初は、ワーキングチームを始めたときは、中谷座長は、ぜひこうした会議体を設けよう、こういう思いもあったわけでありますけれども、私どもも、この法案、二年ぐらい準備を、ずっと関係団体と意見聴取をしてまいりました。そして感じたことは、やはり関係団体の方々をまずしっかり御支援をする、そしてしっかりした支援体制のノウハウをつかんでいただくということが急務ではないかなということであったのであります。

 中谷座長を我々が抑え込んだわけではありませんが、御理解をいただいたのでありますが、今回、こうしたことで、野党の皆さんの御意見もございまして、こんな合意が成立したということでございます。

 それからもう一点、患者、その家族の経済的負担、ここも大変悩むところでありますが、ギャンブル等に依存する患者やその家族に対して直接経済的な支援を行うということが直ちに国民の理解を得られるものかどうかということは大変悩むところであります。むしろ、医療提供体制の整備でありますとか、あるいは患者やその家族を支援する民間団体の活動に対する支援を充実する、これを急ぐべきではないかということでございます。

 それから、あわせて、依存症対策に係る費用、これの捻出について、ギャンブル等関係事業者に費用を負担させてはどうかということでございますが、ここもやはり基本的には、現在の時点では、依存症対策に係る費用については一般財源から捻出するということを想定しております。

 公営競技については、今も議論がありましたが、既に収益配分の仕組みが構築をされている。それから、パチンコ等遊技についても、あくまでも民間事業者ということでありますが、租税以外に新たな負担を求めるということについて、大きな問題があると思っております。

 民間事業者、私たちも随分いろいろな意見交換をいたしましたけれども、例えば、リカバリーサポート・ネットワークなどは、業者の皆さん方が、業界の皆さん方が支援をなさり、自主的な社会貢献活動と、そして依存症対策の研究なども随分取り組んでいただいているという事実もございますので、そうした事実も留意する必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 私、栃木県知事のときに、こういう経験があります。パチンコ業界も、社会貢献活動にすごく積極的です。それこそ、使わなくなったパチンコ台がもう何万台と山積みになっていた場所がありました。苦情があったので話してみたところ、これを無償できれいに片づけてくれました。それからさらに、いろいろなものに寄附をしたりなんなりしています。

 パチンコ業界も、相当、私は、社会貢献活動に前向きになっていると思いますので、これはやはり交渉してみる価値は十分あるんじゃないかと思っていますので、どうぞ御検討ください。

 そこで、時間がなくなってまいりましたので、あと、久里浜医療センターの樋口先生にもおいでいただいておりますので、樋口先生にはぜひ専門家の立場からいろいろ教えていただきたいと思います。

 やはりこれもまとめて聞いた方がいいですかね、時間の都合で。まず、四点お伺いしたいと思います。

 最初にお伺いしますのが、我が国では、ギャンブル依存症が疾患であるという認識が広がっておらず、ギャンブルをとめられないのは本人の意思が弱いからだと考えている方が多いのだと思います。そもそもギャンブル依存症とはどのような病気、疾患なのかということを一つまず教えていただきたい。

 二点目は、久里浜医療センターは、国立病院機構として唯一、ギャンブル依存症をうたった治療部門を設けておりますが、ギャンブル依存症の治療はアルコールや薬物依存症の治療と異なるところがあるのかどうか、ある場合は、その点について教えていただきたい。

 三点目。ギャンブル依存症は完全に治すことができるものなのでしょうか。それとも、一定期間やめていても、一回でもギャンブルに手を出してしまうと再びやめられなくなってしまうのでしょうか。教えていただきたい。

 そして、四点目でありますが、ギャンブル依存症の患者をこれ以上ふやさないためには、ギャンブルに触れる機会が少なくなることが望ましく、カジノのような新たなギャンブルを認めるべきではないと考えておりますが、医療者の立場から、どのような影響があると考えているのか、教えていただければと思います。

 以上、四点。済みません。

樋口参考人 端的にお答えしたいと思います。

 ギャンブル依存症とは、最初は娯楽で始めたギャンブルですが、やがて自己制御ができなくなり、その結果、重大な社会、家族問題が生じる状態になる疾患です。

 一般に、依存症とは、特有の依存行動と、その結果引き起こされる問題の組合せと考えられています。

 実際の診断には、現在、米国精神医学会で策定されたDSM―5、そういう診断基準がございまして、この基準を使って診断してございます。全部で九項目あって、そのうち四項目以上を満たす場合にはギャンブル依存症というふうに診断いたします。

 九項目といってもよくわからないでしょうから、簡単に。

 まず、興奮を得たいがために、かけ金の額をふやす必要性。それから、賭博をするのを中断したり、又は中止すると落ちつかなくなる、これは禁断症状といいます。賭博をするのを制限する、減らす、又は中止する努力を繰り返すけれども成功しないこと。しばしば賭博に心を奪われている。苦痛の気分があるときに賭博をすることが多い。それから、賭博でお金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い。賭博へののめり込みを隠すために、うそをつく。ここまでが依存の行動ですね。それから、賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育又は職業上の機会を危険にさらした、又は失ったことがある。最後に、賭博によって絶望的な経済状況を逃れるために、他人にお金を出してくれるように頼む。この九項目でございます。

 また一方で、世の中では、ギャンブルをやめられないのは本人の意思が弱いからといった偏見もございます。

 このような偏見のゆえに、依存症から脱したいと願う本人、家族が、正しい知識を得ることなく、適切な治療の機会を逸してしまうことがあれば、非常に残念なことです。

 依存症は、適切な治療とその後の支援により回復が可能な疾患ですので、偏見の除去と正しい知識の普及は、ギャンブル等依存症対策として不可欠な取組であるというふうに考えてございます。

 二番目に、治療の話でございますけれども、基本的に、薬物依存、アルコール依存とギャンブルの依存の治療というのは変わりません。

 ギャンブル依存症は、アルコールや薬物依存症と同様に、ギャンブル行動を制御することが困難、それから再発などといった特性があります。

 再発というのは、ギャンブルにのめり込んでいる状況に気がついて本人がやめても、例えば三年たち五年たちしてまた始めるとすぐもとへ戻ってしまう、この特性を再発というふうにいいます。

 こういうふうな特性がございますので、ギャンブルを完全に断ち続けるのが治療目標になります。基本的には、本人に自分のギャンブルの問題を理解いただき、やめ続けることを決断していただいて、それを支援することが治療です。

 具体的には、疾病の教育、個人カウンセリング、又は個人、集団認知行動療法などを行います。この認知行動療法というのは、間違った考え方があるのでギャンブルを続けるんじゃないか、そういう考えをもとにして、その間違った考えを修正していこうというのが治療でございます。

 ギャンブル依存症からの回復には、ギャンブラーズ・アノニマスのような自助グループの利用も重要です。また、家族は特に大きな被害を受けているので、家族支援も治療には重要です。

 これら全て、アルコール、薬物依存と同様です。

 しかし、ギャンブル依存症の特異な部分は、お金にまつわる問題が大きいということです。そのため、借金の適切な対応のために、弁護士等、その他の方面の専門家との連携も重要になります。

 最後に、アルコール依存症の場合には薬物治療というのが既に開発されていますが、ギャンブルの場合には世界的にどこにも治療薬物がまだ開発されていません。この方面の研究も重要だというふうに考えています。

 それから、ギャンブルの依存症を完全に治すことができるか、そういう御質問ですけれども、米国の疫学研究では、ギャンブル依存で自然に回復するケースがあるというふうに報告されています。しかし、これはあくまでも疫学研究なので、つまり、軽い方々も含んでいるということです。実際に我々の外来にお見えになるような方々ですけれども、このような自然回復ということは望めないケースが多いのではないかというふうに考えています。

 先ほど、再発という特性について説明いたしましたが、ギャンブル依存症もまさにこれに当てはまるために、回復するためにはギャンブルをやめ続けることが重要になります。

 回復するとは、アルコールで例えると、断酒を続けることによって、失った健康や社会的な信頼を取り戻していくという過程を指し示すことになります。ギャンブルも同様に、やめ続けることによって、経済的問題、家庭や社会の失った信頼等を少しずつ取り戻し、依存症としての症状から回復していく、そういうふうなことを指します。

 それから、最後に、カジノのような新しいギャンブルという話がございましたが、これは私は専門家として、カジノによりギャンブルをする人がふえれば、そのうち一部の方がギャンブル依存症になる可能性があると思います。しかし、それはカジノの規模と規制のあり方に依存しているように思います。そのため、より有効な、アクセス制限のようなメカニズムが必要だというふうに考えます。

 欧米では、カジノの開場の前後でギャンブル依存症の有病率を調べた研究がございますが、開場前後で有病率に変化がなかったという調査結果も示されています。もちろん、このような研究は全体の研究ではございませんので、この研究の結果がそのまま我が国の状況に当てはまるかどうかについては必ずしも明確ではございません。

 以上でございます。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 アルコールでは断酒会というのがありますけれども……

山際委員長 質問時間が過ぎていますから、まとめてください。

福田(昭)委員 はい、わかりました。

 ストップギャンブルの会みたいなものをつくってやっていくことも一つの方策かなと思います。

 これで質問を終わります。

山際委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 国民民主党の稲富です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、樋口参考人にお伺いをいたします。

 二十九年九月に公表された疫学調査についてでございます。

 この結果についてなんですけれども、地域ごとの傾向とか、都会、都心部、農村部など、こういった地域の偏在というのはあるのかどうか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 お答えいたしたいと思います。

 本調査においては都道府県別のサンプル数が十分でないので、都道府県別の解析までは今のところ行っていないということなので、そのあたりはよくわからないということです。

 しかし、今後、地域ごとの調査や対策について解析を進めて検討してまいりたいと考えてございます。

稲富委員 先生、ありがとうございます。

 引き続いてこの調査についてですけれども、先ほど来御指摘があったように、生涯を通じた依存症が疑われる方の割合が三・六%ということで、他の国よりも非常に数字上高いというふうになっているということでございますが、これは、高いと言っていいのか、あるいはサンプルの問題なのかということ、そして、もし高いとするならどう評価するかというか、日本のギャンブル依存症が高いということをどう評価するのか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 お答えいたします。

 まず、今回の調査でございますけれども、御自宅に訪問して面接をしていくという調査でございました。海外の調査は、多くは電話による調査でございまして、調査方法が異なりますので、直接比較は難しいということだと思います。

 しかし、一般的に、日本では諸外国と比べてギャンブル等を行う環境が比較的身近にあるというふうなことなどが日本の割合の高さが目立つ一因というふうに考えますが、今後、更に知見の蓄積が必要だというふうに考えてございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 これからの蓄積が必要だということの前提の中で、ただ、身近にあるという要因があるのではないかという御示唆かなと思いました。

 さらに、病気だとすると、先天性あるいは環境、そういった要因もあるのかどうか、ちょっと先生という立場から教えていただけないでしょうか。先天的なものがあるのか、あるいは後天的に、やはり環境によってそういう症状に陥るのか、教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 この点に関しては、少ないながらも、遺伝に関する研究というのが行われています。特に、双子を使った研究、一卵性双生児と二卵性双生児の一致率を見た研究でございますが、これによると、ギャンブル依存症の場合には、遺伝の貢献が五〇%ぐらいではないか、環境の貢献が五〇%ぐらいではないかということなんですね。これは、ほかの依存症もほぼ全て同じです、行われた研究で。

 ですから、そういうふうなことになっていますが、ただ、遺伝といいますと、決定論的な話がすぐ出てきますから。決してそうではなくて、リスクが高くなる、だから、適切な予防をすると発症を予防できるというふうなことだと思います。

稲富委員 ありがとうございます。

 今回の公表されたこの疫学調査は非常に示唆するところが多いなと思って拝見したんですが、ただ、サンプルの数、そして、先ほど、さらなる調査が必要かなという御指摘もあったかと思います。

 今後の調査研究についてはどうあった方がいいかという御示唆があれば、また教えていただけますでしょうか。

樋口参考人 今回の実態調査については、先ほども申し上げましたが、平成二十八年度から平成三十年度の三カ年にわたって行っている調査でございまして、現在も解析が進んでいるところでございます。

 また、ギャンブル等依存症が疑われる人の割合を一時点だけで評価するというのは問題が起きてくる可能性がございますので、その推移を定期的に把握する重要性が多くの有識者の方からも指摘されています。

 私たちの研究班としては、ギャンブル等依存について全国調査を定期的に行う必要があると強く考えてございます。しかし、その時期や頻度については、今後検討が必要だというふうに考えてございます。

稲富委員 引き続きまして、先ほど御質問があったことで、ちょっと通告ができなかったことなんですけれども、依存症をどう克服するかということで引き続き先生に一点お伺いしたいのは、病気というふうに考えると、もちろん、なってからどう克服するかも大事ですけれども、ならないように、予防をどうするかというのが更に大事なのではないかと思うんですね。

 そういう意味では、この法案にも予防ということが、対処が必要であるということが書かれておりますが、より具体的に、どういった予防が考え得るのか、専門家の立場からぜひ御教示をいただきたいと思います。

樋口参考人 お答えいたします。

 予防には、一次予防、二次予防、三次予防というふうに、レベルによって分かれてございます。

 一次予防というのは発生予防ですけれども、こういうふうな場合には、やはり教育、それからあと国民に対する知識の普及というのがすごく大事だというふうなことになってございます。

 それから、二次予防の場合には、早期に発見して早期に治療に導入していくというふうなことが言われていまして、そのためには、相談体制がしっかりできていることとか、あるいは、御家族の中には御自分の例えば御主人に問題があっても全然何が起きているかわからないような、理解できないようなケースもあったりするので、そういうふうな知識の普及と相談体制、それから早期の治療の導入の状況があればよろしいんだと思うんですね。

 もう一つ、三次予防というのは、回復した人が再び、要するに、もとに戻らないこととかあるいは社会復帰を支援するようなことでございますので、そういうふうなことを支援していくような社会的なメカニズムが確立されていくことが大事だというふうに考えてございます。

稲富委員 院長、ありがとうございます。

 続きまして、法案の方に幾つか御質問させていただきます。

 まず、基本的なことで、今年度のギャンブル依存症対策予算の規模についてお伺いをいたします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 政府におきましては、ギャンブル等依存症対策について、一昨年末に関係閣僚会議を設置し、昨年夏にはその強化策を取りまとめ、患者さんが必要なときに早期に治療や相談を受けられる環境の整備等を推進しているところでございます。

 委員お尋ねの平成三十年度の予算につきましては、全ての都道府県・政令都市における依存症専門医療機関と相談拠点の選定、依存症を正しく理解するための普及啓発活動、そして、依存症者、家族を対象に全国規模で支援に取り組んでいる自助グループ等民間団体への支援、さらには、学校教育などにおける依存症の予防教育、そして、貸付自粛制度の整備や多重債務対策における取組等の経費を合わせれば、ギャンブル等依存症を含む依存症対策全体の推進に係る予算として、総額で約六・四億円を計上しております。

 政府としては、ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をできるだけ少なくし、健全な社会を構築するため、政府一体となって不断に取組を強化していく所存でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 この財源についてですが、先ほど来ずっと、両案の違いがここに非常にくっきりとあらわれていると思います。

 そこで、ちょっと重なりますが、立憲、無所属の会、自由、社民案、まずお伺いをします。

 もちろん、さまざまな立場で考え方は違いますけれども、どういう考え方に基づいて事業者負担の可能性をここに明記したのかということをもう一度ぜひお答えください。

初鹿議員 お答えいたします。

 先ほども御答弁させていただいておりますけれども、ギャンブル依存症対策を実施するためには、やはり費用をしっかりと確保するということが非常に重要だというふうに思っております。

 一般財源も当然ですけれども、やはりギャンブル依存症の発生等の原因となり得る事業を行っているギャンブル関連事業者が負担をするということは、私は適切ではないかというふうに思っております。

稲富委員 続きまして、自公維修正案の方にお伺いをします。

 これも同じことですけれども、では、今後どれぐらいの規模で、先ほど六・四億円というふうに伺いましたけれども、これは絶対値なので、多い、少ないとは言えませんけれども、抜本的にギャンブル依存をなくすということからすると、例えば医療施設を充実させるとか相談所をふやすだとか教育を充実させるだとかいうふうに考えると、ちょっと予算的にはえらく、直観的にですけれども、少ないなと私は思いました。

 とするなら、現実的にどうやって財源を確保するかということは考えざるを得ないところでありますので、どれぐらいを、もちろん大体ですね、そして、どうやってそれを調達するのか、改めてお伺いをさせていただきます。

桝屋議員 お答えを申し上げます。

 先ほど政府の方から六億円の話が出ましたけれども、先生、確かに、ギャンブル等依存症対策として今後どの程度の事業規模、予算規模が考えられるのかというお尋ねでありますが、ここは、今回お出ししている法案は基本法でありますので、これから基本計画をつくっていただき、そして、各地方にあっても、地方によって随分格差もございますので、地方も努力義務として計画をつくっていただく。その中で、必要な予算の規模、事業の規模というのは決まってくるんだろうと思います。

 こうした、今回、ギャンブルの依存症が議論になりまして、少なくとも、厚生労働省の予算を見ておりましても、今まで中谷先生がお取り組みになったアルコール健康被害対策、あるいは薬物依存対策、これに加えてギャンブル依存ということも大きな問題になりまして、厚労省としても、この三つをあわせて依存症対策ということで特段の取組をしようと、これは相互に関連し合っているという位置づけもございますので。

 私は、予算は確実にふえてきていると思いますが、なお今後の事業については、計画の中で、政府において適切に計画化し、必要な予算を一般財源として確保してもらいたい。そうした中で、民間の事業者の皆さん方の協力体制というのは、これから大きな検討課題ではないかなと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 民間事業者も検討課題かなというところまでおっしゃっていただきました。ここの点は、私、最も対策としての両案の哲学が出る部分じゃないかと思うわけです。

 と申しますのは、もちろん、事業者が負担をする仕組みが難しいというお話がありましたけれども、税金でやるということは、当然ながら、全く関係ない人から税を、その対策に充てるということでありますので、それは一納税者の理解が得られないといけないとも言えます。したがって、これはやはり、それなりの財源を確保し、どうするのかといったときに、納税者にどう説明するのかということは当然必要になってくると思います。

 そういう意味で、ここは両案違いますけれども、やはり事業者にもというのが、やっていない人間からすると人情の部分ですし、納税者としての気持ちはやはりあると思います。ぜひ、そういった意味で、御検討いただければなということを思います。

 ということで、続きまして、自公維案の第二条の中で、そもそもギャンブルというところで、その定義の中で、公営競技とパチンコ、そしてその他の射幸行為という言葉がありますが、その他の射幸行為というのは何なのか、教えていただけますでしょうか。

中谷(元)議員 射幸行為というのは、偶然を当てにして利益を得ようとする行為ということで、そのような行為を射幸行為としております。法律でギャンブル等といたしておりまして、これは、法律の定めるところにより行われる公営競技、パチンコ屋に係る遊技その他の射幸行為ということで定義をさせていただいております。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、政府の参考人に伺います。

 このギャンブル依存症について、高等学校教育指導要領解説というものをつくられる、既につくり始めているんですね。これはいつから使用されるのか、またどのように使われるのか、教えてください。

藤江政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、平成二十九年八月にギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議において取りまとめられました「ギャンブル等依存症対策の強化について」に基づきまして、学校教育の観点から、平成二十九年度末に公示されました高等学校学習指導要領の保健体育の指導内容の一つとして、新たに精神疾患を取り上げたところでございまして、現在作成中の高等学校学習指導要領解説保健体育編におきまして、精神疾患の一つとしてギャンブル等依存症を記載することといたしておるところでございます。

 今後、周知徹底や教科書検定等を経まして、新高等学校学習指導要領及び同解説に基づく高等学校の授業は、二〇二二年度に入学する生徒から年次進行で実施される予定でございます。

 以上でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 与野党ともに、第十四条で教育のことは明記をされております。教育においてどういう指導を行うのか、それぞれ政治家という立場で御答弁いただければと思います。

佐藤(茂)議員 今、稲富委員御指摘のとおり、我々の自公維案でも、第十四条では、ギャンブル等依存症である者等やその家族が十分に相談や受診につながっていないという課題を解消するために、国民に対し、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、ギャンブル等依存症問題に関する知識を普及することをこの第十四条では想定しております。

 その中でも、先ほど樋口先生もおっしゃいましたように、一次予防では教育が大事である、こういうことを述べられておりました。私どもも、まさに依存症の予防教育が大切である、そのように考えておりまして、今、文部科学省からもありましたように、高等学校の学習指導要領解説への記載をする方針も政府の方で決定されたというように聞いておりますので、ギャンブル等依存症を予防する観点からは、成人する前に子供の発達段階に応じてギャンブル依存症問題に関する知識を得ておくことが私どもは望ましい、そういう観点から、この第十四条に教育ということも入れさせていただいているということで御理解いただきたいと思います。

初鹿議員 我々も、今、与党の答弁があったとおり、考え方としてはほとんど変わりはありません。

 最近では、インターネットで馬券を購入することができるようになっているなど、若い者がギャンブルにアクセスしやすくなっているという現状もあります。

 また、大阪商業大学のアミューズメント産業研究所の研究員であります大谷信盛氏の論文によりますと、北米の調査結果で、八歳までにギャンブルを経験した子供は、そうでない子供に比べて五倍の確率で成人してからギャンブルに関する問題を引き起こすことになるという調査結果も紹介をされております。また、この論文では、これも、ネバダ州の調査なんですけれども、青少年のギャンブル依存症の発症率がおよそ四%から八%であって、北米全体における成人のギャンブル発症率が一%から三%と比較をして、二倍から三倍になっているということであります。

 つまり、若い方々がギャンブル依存症に陥るリスクが高いということでありますので、中高生の段階から依存症に対する知識をしっかりと持っていくことが望ましいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 次に、依存相談所、そして医療機関についてでございます。

 私の出身の福岡は、実は公営競技場が全てそろっている県でございまして、全国で埼玉と福岡、そして中央競馬を含めて全てがそろっているのは福岡のみでございます。しかし一方で、では、相談支援体制という意味では充実しているかというと、表を見てみても、特段という感じがいたします。

 そういった意味で、自治体によっては多いところ、少ないところがありますが、その理由をどう分析されているか、政府の答弁を求めます。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、ギャンブル等依存症につきまして、地域で必要な医療や支援等を受けられるように、医療体制や相談体制の整備に取り組んでいるところでございまして、具体的には、都道府県等において、専門医療機関の選定や、依存症の専門相談員を配置した相談拠点機関の設置の働きかけなどをしているところでございますが、委員御指摘のように、整備が進んでいない実態が存在するのも事実でございます。

 厚生労働省としては、さらなる体制の整備が必要であると考えておりますが、整備が進んでいない自治体に対しましてその理由を幾つか聞いたところ、専門医療機関につきましては、その要件の一つである依存症に係る研修を修了した医師の確保などが進んでいないということ、あるいは、アルコール依存症等と異なりまして、地方公共団体の責務などを定める基本法などが整備されていないというような理由も挙げられたところもございました。

 厚生労働省におきましては、平成二十九年度から、国立病院機構久里浜医療センターにおいて地域で専門的な研修を行うための指導者を養成するとともに、都道府県等においても地域の医療機関を対象とした依存症医療研修を実施しておりますが、これに加えまして、距離的、時間的な制約で養成研修の受講が困難な医師のために、情報ポータルサイトを活用したeラーニングの導入などについても検討を進めているところでございます。

 今回のギャンブル等依存症基本法案も踏まえまして、さらなる医療提供体制及び相談支援体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 両案提出者にお伺いします。

 十六条、十七条で、相談支援体制、医療体制の充実ということがうたわれておりますが、具体的にこれからどのように整備を図っていくのか、両案の提出者にお伺いをいたします。

岩屋議員 まず、第十六条に基づく医療提供体制の整備についてですけれども、各都道府県・指定都市におきまして、ギャンブル等依存症の専門的な治療機関を整備し、地域の関係機関との連携体制を構築するとともに、他の医療機関への研修や地域住民への普及啓発等を通じて、ギャンブル等依存症である方々を適切な相談、治療につなぐことができる相談、治療体制を整備することを想定しています。

 第十七条に基づく相談支援等につきましては、例えば、各都道府県・指定都市において、ギャンブル等依存症の相談体制を整備するために、精神保健福祉センター等を相談拠点として整備をいたしまして、かつ、そこに依存症相談員を配置するということを想定しております。

初鹿議員 我々の案も、与党案と大きく異なるところはございません。

 第十六条に基づく医療提供体制の整備については、与党の方がおっしゃったこととほぼ同様だと思います。

 更に加えて申し上げれば、ギャンブル依存症に対する専門的な医療の確立に向けた研究の推進をいかに図っていくかが課題となっていることから、ギャンブル依存症に対する専門的な医療の確立に向けて、標準的な治療プログラムの開発やエビデンスの構築を進め、医療現場にその成果を広めていくことなどを想定させていただいております。

 第十七条に基づく相談支援等につきましても、こちらも、各都道府県・指定都市において、ギャンブル依存症の相談体制を整備するためには、精神保健福祉センター等をギャンブル依存症に関する相談拠点として整備し、やはりここで依存症相談員を配置するということを想定しております。

稲富委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

山際委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 ギャンブル依存症対策に関しては、喫緊の課題であると思っております。先ほど、調査方法が違うということの御指摘がありまして、ただ、三百二十万人、また三・二%という数字であるということは、これは間違いないわけでございます。諸外国と比べましても、フランスは一・二%、イタリアは〇・四%、そしてドイツは〇・二%ということで、非常に高い割合でギャンブル依存症というのが発生しているわけでございます。

 それでは、なぜこんなに我が国の依存症が高いのかということなんですが、先ほど、そういうギャンブルをするところが身近であるというところの御指摘がありました。

 仮に、公営の競技場を考えると、例えば競馬とかを考えますと、今挙げました三つの国においてももちろん競馬場はあるわけでございます。フランスはロンシャン競馬場、イタリアはカパネッレ、ドイツはホッペンガルテン、こういったような代表的な競馬場もあるわけですし、もともとサラブレッドというのは、イギリスで改良されて、一七〇〇年代につくられたわけでございます。

 よく関ケ原の戦いでは、格好いい俳優さんがサラブレッドに乗って戦っているシーンが歴史ドラマでありますけれども、本来はあれは農耕馬でやっていたわけでございますので、そういう意味で、諸外国でサラブレッドが開発されたぐらいということですから、競馬とかというのも大変盛んなわけでございます。

 それに対して、なぜ我が国がこういう非常に高い割合で依存症になっているかというと、やはりパチンコやスロットというようなかなり身近なギャンブル施設というのがあるからではないかなと思います。

 そういう意味で、今、パチンコ、スロットの施設は全国で一万店舗以上あるということで、これも日々また開業されていくというようなこともございますので、こういう施設による依存症というのをやはり考えていかなきゃいけない。

 逆に言えば、一万店舗以上もあって依存症がこれほど高いという状況の中で、IR施設を上限三カ所つくろうと言っているときに、依存症の問題を、これだけをもって問題であるという指摘自体が、私としてはちょっと違和感を感じるわけでございます。むしろ、現在のギャンブル場に関する依存症対策というものに真剣に取り組むということの方が大事なのかなというふうに考えているわけでございます。

 先ほど、費用をどうするかという議論がありましたけれども、事業者負担については今回の法案にはありません、具体的に書かれていません。これは恐らく、書くことによってそれをまずスタートとしてしなきゃいけないということで、スタートがなかなか切れないということなのかなと私は思っております。

 日本維新の会は、事業者負担も当然していかなきゃいけない、そういうスタンスでありますので、これは、書かれていなくても、事業者負担というのは今後考えていく必要があるかと思います。

 先ほど、質疑者の中で、そういう提案をすれば乗ってくれるんじゃないかというそんな話もありますが、もともとパチンコというのは、十八歳以上であれば本来は入れる、ところが、高校から入れないというのは、これは法律じゃなくて協会が自主的に決めていることなんですね。ですから、協会自身に依存症対策に関する発案なり提案をすれば、協会もみずからそういったようなことを始めてくれるんじゃないかと思いますので、そういう意味でも、提案というのは私の方も賛成させていただきたいと思っているわけでございます。

 それでは、最初に質問させていただきたいんですが、IR実施法というのがきのう本会議場で質疑が行われましたが、このIR実施法と当該法律との関係というのはどうなっているんでしょうか。

浦野議員 本法は、委員御指摘のとおり、今既にあるギャンブル等依存症に対する国民の不安や懸念の声に応えるために、ギャンブル等依存症対策の基本となる事項を定めること等により、ギャンブル等依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、対策を抜本的に強化することを目的とする法律です。

 一方、IR整備法の制定は、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律第五条に基づき講じられる法制上の措置であり、同法では、カジノ施設の入場者がカジノ施設を利用したことに伴いギャンブル依存症等の悪影響を受けることを防止するために必要な措置が講じられることとされており、同法の附帯決議では、依存症予防等の観点から、カジノには厳格な入場規制を導入すること、第十条に定める各種規制等の検討に当たっては、依存症防止等の観点から問題を生じさせないよう、世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を構築することとされております。

 こうした点を踏まえ、今国会に提出されたIR整備法案では、厳格な入場制限を始めとする重層的かつ多段階的な依存症対策が制度的に整備をされます。

串田委員 自公の皆さんは、こういう答弁と質疑というのはなれていらっしゃるんだと思うんですけれども、こんなに浦野委員が真面目な顔をするのかなと非常に違和感を感じたわけでございますけれども。

 大変失礼な発言をしてしまいまして、申しわけございません。

 そういう意味で、IR法案に関しましても入場制限というのがあるわけでございますし、そういう意味では、IR法案自身にも非常にそういう予防施策というのがあるわけですけれども、更にそれに合わせて設けられるということが大変よくわかったわけでございます。

 次に、第四条で、講ずるに当たって、アルコール、薬物等に対する依存に関する施策との有機的な連携というのがあります。

 これは、先ほどの医学的な見地からも、意思の問題じゃなくてかなり疾患という部分というのがあるんだということで、アルコールや薬物等と連携していくというのは非常にわかりやすかったわけでございますが、私は、そういう意味では、何でパチンコは十八歳以上ならいいのかなというのがあるわけですし、逆に、競馬や競輪はなぜ、成人年齢を十八歳にするのに対して二十歳のままなのかなと。そこの差というのは実はもうちょっと考えていなきゃいけないんじゃないかというふうにちょっと思っているわけです。

 特に若年者が被害を受けているものの中で、最近ではFXとか、為替ですよね、あとは仮想通貨とか、非常に大きな損失をこうむっている部分があるわけで、公営競馬とかオートレースだとか競輪だとか、それだけが典型的なギャンブルというような形で、それを二十歳にするというようなことと、例えばたばことかアルコールを二十歳にする、これはよくわかるんですけれども、そういう意味では、そういう依存症があるということであれば、同じような年齢に合わせていかなきゃいけないんじゃないかなと、ちょっとそんなふうに私自身、個人としては思ったりはしているんです。

 これに関連して、アルコールや薬物等の有機的な連携が図れるように配慮するという趣旨なんですが、これはどういうことなんでしょうか。

中谷(元)議員 種類によって、依存症として関連性はありますけれども、アルコールはやはり体中心の依存症障害が出るということで、これはもう既に対策基本法ができまして、閣議決定で基本計画をつくり、そして今、全国の都道府県の半数近くが地方の基本計画ができて、施策が実施されています。それから、薬物は、これは犯罪でありまして、再犯防止等の推進に関する法律がございますので、これの再犯防止策として施策を実施されておりまして、これらの三つの依存症につきましては、平成二十八年十二月に厚労省において依存症対策本部が設置をされております。

 したがいまして、ギャンブルの場合も、この法律ができましたら基本計画ができるわけでございますので、従来の依存症対策に係る例えば医療、それから薬物依存、提供などにも関連して、この施策が連携されていくものだと考えております。

串田委員 次に、第七条で質問させていただきたいんですが、この規定の中では、予防等に配慮するよう努めなければならない主体の中で、関係事業者という記載があります。

 この関係事業者というのは特別にどういうものであるのかということが明確になっていないということでありますので、ぜひ、どういったようなものが入るのか、具体的なものを示していただければと思います。

岩屋議員 本法第七条に言う関係事業者とは、ギャンブル等の実施に係る事業のうち、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発に影響を及ぼす事業を行う事業者を指します。

 現時点におきまして、それでは関係事業者とは何かということですが、例えば、公営競技の施行者、場外券売場の運営事業者、そしてそれをネットで売っている事業者、それからパチンコの営業者、パチンコの遊技機器を製造する事業者等が想定されております。

 他方、例えば新聞、テレビ局等については、ギャンブル等の実施に直接かかわっているわけではないことから、関係事業者には含まれないと考えております。

 なお、本条は、関係事業者をあらかじめ特定する、限定するという趣旨ではなくて、現時点での整理において関係事業者に含まれていない事業者であっても、今後の実態調査によりまして影響を及ぼしているというふうに認められれば、これは本条の関係事業者に含まれるということになるということでございます。

串田委員 大変よくわかりました。具体的な列挙をしないということによって、かえって弾力的な解釈ができるということがよくわかりました。法律を適用するに当たって、これからいろいろな検証が行われていくということだと思いますので、非常に弾力的な解釈をしていただきたいと思います。

 次に、第十条で、これは大変変わった規定といいますか、啓発週間が法律に明記されているというのは非常にわかりやすいわけなんですけれども、なぜ五月十四日から同月二十日までというような日にちが決められたのか、この理由を教えていただきたいと思います。

中谷(元)議員 五月病というものもありますけれども、いわゆる新入生とか新社員が、非常に厳しいそういった競争試験から解かれてほっとして、精神的に非常にゆとりのあることで、何やら心理的に普通と違う状態等もあると聞いておりますが、やはり、新年度に新社会人、大学生となった層に対して、ギャンブル等の依存症の問題の関心と理解を深める機会をつくってはどうかということと、昭和二十九年の五月十八日に風営法の改正がありまして、そこでぱちんこ屋という表現が明記されたということで、五月十四日から二十日までの期間がそういった時期に適しているのではないかということで、この期間を定めたということでございます。

串田委員 過ぎてしているわけですが、今後、来年とかそういったようなことなんでしょうけれども、五月の啓発という形で積極的に進めていただければと思います。

 次に、第二十条についてお伺いをしたいと思います。

 ここには連携協力体制の整備を図るために必要な施策ということが書かれているわけでございますけれども、この条文からはどのような施策であるのか、ちょっとイメージ的にわかりにくいんですが、これの具体的なものというのはどんなことを想定されているんでしょうか。

中谷(元)議員 これにつきましては、ギャンブル等の依存症である者が早期に必要な相談、治療を受けて、多重債務対策とか消費者トラブル対策等にもつながるように、相談拠点そして依存症の専門的な治療拠点の中心として、相談窓口、医療機関、民間団体等の間で連携体制を構築するということを想定しております。

 また、各種の相談窓口におきまして、ギャンブル等の依存症に関する相談拠点、また医療機関との具体的な連携方法や相談実施を整理した対応マニュアルというものを整理することなどを想定いたしております。

串田委員 そして、今回、それができ上がりましたらば、それを担当する人を養成といいますか発掘といいますか、していかなければならないんだと思うんですが、その規定が二十一条にあるわけですけれども、ここには十分な知識を有する人材の確保、一体どんな人たちなんだろうというようなことが考えられるんですけれども、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

岩屋議員 例えば、ドクター、医師については、これから、医学教育のモデル・コア・カリキュラムの中にギャンブル等依存症を含む依存症対策を明確化する、それから医師の臨床研修の到達目標の中にもそういう項目をきちんと入れていく。

 それから、保健師や看護師さんについても、国家試験出題基準の中にギャンブル等依存症対策に関する項目を追加する。そして、療養上の世話、診療の補助を行える者の養成をしっかり行っていくということ。

 加えて、精神保健福祉士、社会福祉士につきましても、ギャンブル等依存症問題への支援を効果的に実施するという観点も含めて、養成のカリキュラムを見直していく。

 そして、教育については、さっきも答弁をさせていただきましたが、学習指導要領等において、各その発達段階に応じた指導をしっかり行っていく。

 そして、消費生活センター、法テラス等におきましては、多重債務の相談窓口になってもらわなきゃいけませんので、そういう理解、知識の向上に努めていく。

 そして、刑務所等につきましては、矯正ということで、ギャンブル等依存症の予防並びに回復に関する指導のために必要な研修を行っていく、そういうことを想定しております。

串田委員 多方面にいろいろな人材を確保しているんだなというのがよくわかりました。特に、医師試験の中にもそういう項目を入れるというようなこともあるということで、そういう意味では、いろいろな専門というのがあるんでしょうけれども、ギャンブル依存症対策を専門とするお医者さんというのもこれからふえていくのかな、また逆にそういったような人たちも期待したいなと思っているわけです。

 次に、第二十五条ですが、この法律は、制定されただけではなくて、それが正しく運用されているのかを検証していくというような規定も設けられています。

 昨日、安倍総理の質疑の中で、IR実施法案においても、七年ごとに見直していくということでありますけれども、この第二十五条においても、その推進に関して評価をしていくということでありますが、その中で、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議の意見を聞かなければならないという規定がありますが、この趣旨というのは、どうしてなんでしょうか。

中谷(元)議員 これは、現場の意見を聞いて、それに現実的に対応していくということでございまして、特に、実体験を有する当事者、それから関係事業者、そしてこの問題の専門的な知識を有する有識者、そして、この基本計画、行政機関がこれに基づいて実施する施策の実施状況など、適切に反映をさせていくという趣旨でございます。

 こういった会議で御意見を伺うことによって、この対策を真に実効性のあるものとするというのが趣旨でございます。

串田委員 時間の関係で、最後に、その会議、先ほど対策ということに対してはお医者さんだとかいろいろなところがありましたが、検証する会議に十分な知識を有する者というのは、どんな人たちを示しているんでしょうか。

中谷(元)議員 この問題は、法律で定義するギャンブル等の依存症対策ということで、先ほど申し上げましたけれども、多重債務とか貧困とか自殺、犯罪等の問題とされているところでございまして、この問題を解決するにはどうしたらいいのかということで、この知見を有している人たちに広く呼びかけて集まっていただくということを考えているわけでございます。

串田委員 多方面からの検討がなされた法案だと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 ギャンブル等依存症対策基本法案について質疑をさせていただきます。

 私たち自由党は、立憲、無所属の会、社民党とともにこの法案を提出させていただいておりますが、きょうは自民、公明、維新提出の修正案の方への質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 質問の前に、IR法案をめぐって、めぐってといいますか、その審議の前提となっているような形でギャンブル依存症の対策をとろうということが、この法案の提出、そしてしっかり整備をしておくんだということのいわゆる前構えというふうな形で考えております。

 では、これまで、どういうふうなこのカジノ法案に対する市民の声が上がっていたのかということを少し調べてみましたら、これは二〇一六年ですが、一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会がカジノ法案審議入りに対して声明文を出しております。一度この声明文を読み上げて、それぞれその問題点について、修正案に対する質問をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

  二〇一六年十一月三十日 衆議院内閣委員会で、カジノを含む統合型リゾート整備を推進する法案(IR法案)について、審議入りすることとなりました。わが国は、競馬・競艇・競輪・オートレースといった様々な公営競技が認められ、また、パチンコという事実上のギャンブルが広く普及している世界有数の「ギャンブル大国」でありながら、国としてギャンブル依存症対策は全く行われてきませんでした。その結果二〇一四年の厚生労働省の調査によれば、我が国のギャンブル依存症罹患者は推定五百三十六万人、成人人口のおよそ四・八%、との推計が出され、我が国が「ギャンブル依存症大国」でもあることが明らかになりました。ギャンブル依存症は予防・回復が可能な病気であるという事実、及び、諸外国でも多くのギャンブル場が存在する中で罹患率が日本の半分以下の二%以内に抑えられている事実から鑑みるに、こうした我が国の状況はひとえに、ギャンブル依存症対策の遅れから来るものであると当会は考えております。

  当会はIR法案に決して賛成という立場をとるわけではありませんが、IR法案の審議を通じて国会の場でギャンブル依存症に関する議論が活性化し、カジノに限らず、既存の公営競技や事実上のギャンブルであるパチンコも含めた形で骨太な依存症対策が実現することを強く望んでおります。IR法案に関しては、カジノの是非に議論が集中する傾向があるように懸念しておりますが、当会としては問題はギャンブル場の是非ではなく、ギャンブル依存症対策の是非にあると我々は考えており、こうした観点から見たとき、現行のIR法案は対策が不十分で修正が必要なものと考えております。

  ギャンブル依存症は罹患者本人の、多重債務、貧困、失踪、自殺、といった問題に直結し、さらには児童虐待、DV、窃盗、横領、果ては強盗や殺人といった重大な二次的問題も引き起こします。当会の調査では二〇一五年九月〜二〇一六年八月の一年間でおよそ七十件に及ぶ、ギャンブル問題が根底にある事件を把握しております。

さきの国会で、これは当時の国会ですが、

 今国会でIR法案が審議入りしましたが、これをきっかけにこうした既存のギャンブルが引き起こす問題からも目をそむけず、骨太なギャンブル依存症対策に関する議論が行われることを、切望致します。

ということで、一般社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事田中紀子さんのお名前でこのような声明文が出されております。

 つまり、やはり、なかなか表に出てこないことなのかもしれませんが、家族からすると、家族や身内、友人の中に、このようにギャンブル依存症という非常に切実な、そして重い現実を抱えてしまっている方々が少なからずいらっしゃるということと、そして、そのための対策をきっちりととっていただきたい。

 しかし、これまでのギャンブルは各省ごとにばらばらな運用でなされていて、その取組についても一体的になされていないこともるる指摘をされてきた次第です。

 そして、今般、与党及び野党からこのギャンブル等依存症対策基本法案が出されるという経緯に至ったということで、では、ここからは質問に入らせていただきます。

 まず、与党提出の基本理念についてお伺いをしたいと思います。

 この基本理念について、ギャンブル等依存症対策として、野党提出案では、ギャンブル依存症が重大な社会問題となっていることに鑑み、特定原因行為をその客に行わせる事業についてギャンブル依存症の患者等による利用の制限を規定しています。

 与党の修正案では、そのような利用の制限等の規定はどのようになっているのか、お聞かせください。

岩屋議員 まず、先生が今紹介していただきましたように、我が国は特別立法を行って幾つかの公営競技を認めてきました。なおかつ、遊技としてのパチンコも事実上認めてきて今日に至っているわけですが、一方で、ギャンブル依存症対策というのは、まともに調査、対策がなされずに今日まで来たということについては、やはり国会としても不作為の責任というのがあったのではないかとずっと私ども考えておりまして、そういう意味でいうと、決してIR実施法の前提ということではなくて、そもそもこのギャンブル依存症対策というものがしっかりなされるべきだという考え方から、今般の法案を提出させていただいているところでございます。

 そこで、先生がおっしゃった基本理念についてですが、私どもの案におきましても、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の各段階に応じた防止及び回復のための対策を適切に講ずるということを基本理念といたしておりますので、その取組の一環として、依存症の患者に対する利用制限措置を講ずるということを想定しております。

 具体的な内容については、広告及び宣伝のあり方、入場管理のあり方、相談窓口の設置、インターネット投票における対応等を想定しておりまして、一部もう政府において実施されているものもありますが、この法案が成立することによって更にそれが充実強化されていくということを考えているところでございます。

玉城委員 そのシーズンになりますと、沖縄ではなかなかそういう放映はなされていないんですが、例えば競馬のその時期のグランプリですとか、いろいろなCMが流れたりいたします。

 ボートレースもそうですが、沖縄は、競馬、ボートレース、競輪、オートレースというものがありません。ですから、私は、生涯の中で一回だけ競馬に行ったことがあります。つい最近、勉強のためにやはり公営競馬をきちんと見ておこうということで行かせていただきましたが、ボートレースやオートレース、競輪などは、国体の競技で行われたときには競輪競技は見たことがありますけれども、いわゆるギャンブルとしての競輪はまだ勉強したことがありません。

 では、そういう環境にいないということがいいのかどうかということは、これは議論が分かれるわけですが、しかし、対策というものは、どこで依存症という入り口に差しかかるのかわからないということを考えると、決して、あるから危ない、ないから大丈夫という議論ではないのではないかと思うんですね。

 ですから、依存症の入り口に立つ、あるいはもう既にそういう重い現状を抱えていらっしゃるという方々に対してはさまざまな手だてを講じるということと、やはり、そこから逃れたいと思っている、今依存症に罹患されていらっしゃる方々に対する手だてもしっかりと講じなくてはいけない。それはまた、ある意味でいうと、規制という観念からも必要な部分が出てくるのかもしれません。

 ここで、お伺いいたします。

 ギャンブル依存症の発生等の防止を図る観点から、特定原因行為をその客に行わせる事業については、国又は地方公共団体による適切な監督のもとに行われるようにするとともに、法律の規定に違反して行われるものに対する取締りの強化が図られるようにするということについて、修正案では、このような点、取締りの強化が図られるようにするということについて、どのように規定するものでしょうか。又は、法案ではどのように捉えておりますでしょうか。お聞かせください。

佐藤(茂)議員 玉城委員にお答えをいたします。

 今質問の中でおっしゃったように、適切な監督のもとに行われるようにするとともに、法律の規定に違反して行われるものに対する取締りの強化が図られるようにするというのは、大前提で、当然のことでございまして、自公維案においても、ギャンブル依存症の発生の防止を図る観点から、違法な事業に関しては引き続き適切な監督のもとに行われるようにするとともに、違法な事業に関しては徹底して厳しく取り締まるもの、そのように考えております。

 ただ、これは依存症対策法案なので、そのことは当然、我々提案者として、国を含め行政の方に要望いたしますが、規定として具体的にどこにあるかというと、そういう条文はございませんが、当然大前提だ、そのように考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 先ほど来申し上げておりますように、その環境にいるということは、都会に出るとさまざまな、いわゆる飲食であったり、あるいは着るものであったり、そのどれが自分の興味につながるか、つまりはどれに関心を持つかということも大きな観点というか問題にもつながりかねないというところがあるんですが、それを、では、町全体として、行政全体として、どういうふうにしてきちんとさまざまな管理監督をしていくかということについては、このギャンブル依存症対策においても、そういう具体的な公的な取組がハード面、ソフト面でも行われなければならないというふうに考えております。

 この与党案の第二章に置いておりますギャンブル等依存症対策推進基本計画についてお伺いいたします。

 この基本計画等における規定について、政府が、依存症対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、基本計画を策定することとしておりますね。依存症に関する状況変化を勘案し、法律内で規定する調査結果及び依存症対策の効果に関する評価を踏まえ、基本計画への検討、必要な場合の変更等を少なくとも三年ごとに行うように規定しております。

 しかし、町の状況、人々の求める変化の状況というのは、やはりもう少し、単年として、毎年度というふうな形の規定もまた必要になるのではないかと思うんですが、この基本計画への検討、必要な場合の変更を三年と置いているその根拠についてお聞かせください。

中谷(元)議員 この参考にした例としてはシンガポールでありまして、シンガポールは、三年ごとに、こういったギャンブル等の依存症の問題の実態を明らかにして、調査を行わなければならない旨の規定がございます。

 こういったことで三年といたしておりまして、こういった結果を踏まえまして、基本計画を変更していくという期間としては、この法律においては少なくとも三年というふうに定めたわけでございます。

玉城委員 それでは次に、民間団体の活動に対する支援策についてお伺いいたします。

 アルコール依存症ですと、例えば、私たちの市町村にも断酒会というグループがありまして、皆さんで、お酒を飲まないで水を飲みながら語り合おう、そういう時間をつくろうという、非常に緩やかですけれども、自分たちで率先してみんなに声をかけて、ちょっと苦しんでいらっしゃる人がいたらぜひお誘いして、そこでいろいろな話を聞きながら、ああ、苦労なさったんですね、でも大丈夫ですよ、仲間がいますよという、そういう仲間づくり、ムードづくりをして、できるだけアルコール依存から、そこに依存しないように時間を過ごせるような工夫をしようということが行われているということを聞いたことがあります。

 同じように、いわゆる薬物の病気から立ち直ろうとしている方々にもそういうグループがあるというふうに聞いております。

 「ギャンブル等依存症対策の強化について」というこの政府の資料を見ますと、医療・回復支援、学校教育、消費者行政における対応などについても置かれておりますが、その中の医療・回復支援といたしまして、目を通してみますと、例えば、自助グループなど民間団体の活動への支援の拡充ということが置かれています。自助グループ、ギャンブラーズ・アノニマスやギャマノンを含む民間団体が行うミーティングなどを行い、自己啓発、相談等の活動を支援するということが厚生労働省のその対策の中で置かれております。

 民間団体の活動に対する支援策について、国及び地方公共団体は、互いに支え合って予防及び回復を図るための活動のほか、先ほどの、民間団体による依存症対策の自発的な活動を支援するための必要な施策を講ずるという点についてお聞きいたします。

 それらに関連する業務を行う機関との連携等はどのように行うものとなっておりますでしょうか。

中谷(元)議員 先ほど断酒会のお話がありましたが、玉城議員も応援をいただいておりますが、毎年、全国大会をしまして、全国のこういった関係者が一堂に会して会合をやっています。沖縄でも大会がございましたが、今回の法案の提出者であります初鹿議員また中川正春議員も、アルコール依存症の健康障害対策基本法案のときに、ともに議員立法を手がけた超党派の仲間でありまして、毎年、この断酒会の全国大会にも出席をさせていただいております。

 やはり、一人ではなくて、みんなが仲間で、連携をしてやっていくことでこの依存症を克服するということで、非常に意義があると思いますので、ギャンブル依存症の方も、民間団体が活動しておりますので、大いにこういった連携を強化するべきだというふうに思います。

 そこで、それぞれ関連する連携ということで、アルコールの団体とギャンブルの団体双方が、幹部の皆さんが連携をして、先ほど来られていた久里浜病院の樋口先生などにも相談しながら、もう既に有機的に連携をされていますので、この法案の成立によりまして、相談拠点また専門的な治療拠点、窓口、医療機関、民間団体との連携の仕方などが更に活発的に行われるように、基本計画を定めることによって統合した対応マニュアル等も整備をすることなども想定しまして、より有機的に連携ができるようにしてまいりたいと考えています。

玉城委員 ありがとうございます。

 民間のグループの皆さんの中には、例えば、補助金や支援策は要らないけれども、私たちが行っている活動を独立した活動として認めていただきたいというグループもいますし、さまざまな意義を持ったグループの方々や団体の方々が連携していると思います。

 政府においては、できるだけその活動の意義を伸ばす方向での手だてをぜひ、支えるという意味では、いろいろな御意見を聴取して、できるところからしっかり支えるということで、安心して民間の方々の活動がこれからも安定的に取り組んでいけるという、安心できる場の設定についてもお力をいただければと思います。

 今回、このギャンブル等依存症対策基本法案、これは、与党修正案とそれから野党案両方で、ギャンブル依存症対策推進関係者会議を設置するということで規定しております。

 最後に、ここについてお伺いいたします。この法律の条文での詳細規定等を記述していない場合には、この推進関係者会議をどのように定めるものと考えますでしょうか。お聞かせください。

中谷(元)議員 既にアルコール健康障害対策基本法案におきまして関係者会議が定められておりまして、これは政令で会議令というものがつくられております。

 関係者会議の組織に関する細部的事項におきましては、第三十六条の、政令で規定することといたしておりまして、これの運営等につきましてもしっかりと法律で定めてまいりたいと思っております。

玉城委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。ニフェーデービタン。

山際委員長 次に、中川正春君。

中川委員 中川正春です。

 引き続き、質疑をしていきたいというふうに思います。

 今回、先ほどの議論にありましたように、アルコール障害対策基本法の骨子というのを与党も野党も基本にしながら、こうした形で法案を組み立ててきたということ、その中で、今回、修正案の方が与党の方から出てきているんですが、なるべく野党の方で組み立てた考え方も入れ込んで、そして修正案として成立をさせたいという、そうしたスタンスに対しては評価をしたいというふうに思います。ただ、もうちょっとなんですね。まだ足りないという、基本的な部分で恐らく考え方の違いというのが出ておりまして、そこのところも含めて少し議論をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、入り口の問題として、これは私自身の懸念でもあるんですけれども、樋口参考人に、改めてちょっと整理した話を聞かせていただきたいんです。

 この問題を議論するときに、いわゆる射幸性というものと、それから、さっきお話が出ていた身近さというか日常性にどれだけ近いかというような、そういうバロメーターみたいなものがそれぞれギャンブルの性格によってあって、それに呼応する形で、依存症にかかりやすいか、あるいは依存症を起こしやすい環境として出てくるのか、それともそれをどのように制御するのかというようなことがあるのかなというのが私の思いなんですね。

 そんな中で、この後、IR法、カジノが出てきますが、そのほかに公営ギャンブル的な、モーターボートだとかあるいは競輪、競馬等々があり、また、本当に日常性の中で、これは異常なほど日常性の中でということだと思うんですが、パチンコというのがある、これと射幸性との関係の中で恐らくどう制御するかということを考えていかなきゃいけないんだと思うんです。

 それを一つ一つ類型的に見た場合に、樋口先生の目から見て、それぞれの特色というか特徴というのをちょっと整理して、そういう観点からお話をいただければありがたいというふうに思います。

樋口参考人 お答えしたいと思いますが、済みません、非常に難しい御質問でございまして、なかなか整理するのは難しいなというふうに思ってございます。

 一つ、研究についてちょっと御紹介したいと思いますが、ギャンブルの依存性について学際的に検討するワークショップ、かなり有名な方々が集まったワークショップが二〇一三年、二〇一四年に開催されました。その要旨が既に論文として発表されているんですけれども、この論文によると、ギャンブルの中で最も依存性が高いと考えられるのは電子ゲーム機であり、日本のパチンコやパチスロもこの電子ゲーム機の一種と考えられます。

 電子ゲーム機の依存性の要素で重要なものとして二つ挙げられておりまして、一つは惜しい負けであり、負けているにもかかわらず勝ったように脳が反応して、ギャンブルを続けてしまわせるような効果があると言われています。それからもう一つは、電子ゲーム機で用いられる画像や音響によって、負けているにもかかわらず勝ったかのような感覚を抱かせるような認知のゆがみ、考え方のゆがみをもたらすというようなことも言われています。

 それから、今御指摘にございましたとおり、ギャンブルの危険要因としてよく挙げられるものがあるんですけれども、一番よく言われるのが、いつでもどこでもできる環境だというふうなことですね。これも、日本の中にはそのようなものもあるように認識しています。

 それから、ちょっと話がかわるんですけれども、射幸性には、多幸性とかわくわく感を求める心の心性も含まれているというふうに思います。脳の中でこのような活動をつかさどっているのがいわゆる報酬系と言われている部位でございまして、近年、このような活動は主に脳の機能的MRIというのを使って研究されています。

 ギャンブルにおいても、ギャンブルに勝ったときなど、この神経系が活性化されていることがわかっています。しかし、ギャンブルを続けていると、この神経系が報酬に鈍感になってくる。勝っても余りいい感じがしないということですね。これを報酬欠乏状態と呼びます。そうすると、ますます強い報酬を求めてギャンブルをエスカレートするということで、これは依存の、脳の中の一つのメカニズムというふうに言われています。

 一方、ギャンブルの行動を含めた欲望などを制御する機能というのは、脳の前頭前野、ちょうど額の後ろのところあたりですけれども、この部位は理性の脳とも呼ばれていまして、この理性の脳の働きは、ギャンブルの依存が進行するとだんだんだんだん下がってくる。そうすると、ギャンブル依存症になってしまうと自己の行動を制御することがますます困難になってしまって、これが依存を継続させる一つのメカニズムになっているというふうなことが言われています。

 これは、全体を言っているわけではなくて、ごく一部の知見について申し上げていますが、以上でございます。

中川委員 先般、私も、韓国の状況を少しでも実際に見たいということで、カジノに行ってきました。たまたま案内されたのが仁川だったんですが、韓国の状況を聞いていると十カ所に近い数でそれぞれカジノがあるようなんですが、その中で唯一、江原ランド、前に炭鉱、鉱山の町というか村だったんですが、それが閉鎖になって、それを何とか再生させるためにカジノを誘致してIR施設をつくった。ここだけが実は国民対象、韓国の国民も入れるところなんです、九十何%が、韓国の国民のためのカジノになっていて。ほかの施設は、私が行った仁川も含めて全部、外国人を前提にしているということだと思います。

 さっきの射幸性とそれから気持ちの上で麻痺させるような環境づくりというのはカジノが一番そういう意味では高い。魅力的な賭博場なんだと思うんですが、その結果何が起きたかというと、やはり江原ランドは今、韓国では非常に否定的に見られています。批判が多い。

 それはやはり依存症にかかる国民というのが根底にあって、非常にそれが多くを占めてきた。その中で、その通りに行ったら、車で行って、そのまま大負けして、車を売って借金を返さなきゃいけないという人たちのための中古街というのが並んでいたり、あるいは売春宿というのがその周辺にあったりということで、このままこれを続けるということに対しては、ひとつ見直す方向で考えていかなきゃいけないという向こうの国会議員の説明がありました。

 そういう意味で、なるほど、外国人に限られているというのは、日常性を切るために入場制限の最たるところというか、一番最たるところで日常性を切っているんだろうというふうに思うんです。

 そんなことも含めて、いろいろこれから考えていかなきゃいけないのかなということを前提に私は議論していきたいというふうに思っているんです。

 もう一つ。さっきの話で、この修正案の中でぜひここのところも考えていくべきなんじゃないかというところを具体的にお話ししていきたいと思うんですが、その前に、もう一つあるんです。

 さっき、アルコールあるいは薬物依存症との連携が必要ですねということで答弁がありましたけれども、中谷先生とは中中コンビでこの問題、アルコール対策をやってきたんですが、アルコールの団体あるいは薬物の依存症の団体からいうと、ギャンブルは怖いんですね。

 というのは、ここが注目されて、予算化されたらいいんだけれども、予算がないままにこれだけがぐっと行くと、我々のこれまでの積み上げてきた予算をギャンブルにとられるんじゃないかという心配がありますよということと、それからもう一つ、窓口なんですが、日常の医療相談窓口、あるいはその以前の窓口なんですけれども、これにアルコール依存症、あるいはアルコールの問題ですよということを掲げるということ、これはギャンブルの問題なんですよということを掲げるということがそこに行く人たちにとってはとても大事なポイントになるので、それがただただ依存症という話になっていくと非常に混乱が出てくるのではないかというふうなこと。

 これは、同じ依存症でも、専門性の中でいくと領域が違うというか、専門性が違うというか、そういうことも含めて考えていかなきゃいけないんじゃないかというふうなこと、こんなことが議論としてあるんですね。恐らく中谷先生はよく御存じの話だと思うんです。

 そういうところをこの連携という言葉の中で、この連携ということだけじゃなくて、それぞれの特徴に応じた形にしていきますよというやはり意思というのがこの法案の提出者にないといけないと思うので、そこのところをまず確認しておきたいと思います。

中谷(元)議員 中川議員とは、アルコール健康障害対策基本法、これは議員立法で、超党派で議論させていただきまして、各党の皆さんとともに議論した途中に、この予算の問題と、窓口が一緒じゃないかという問題はもう既に具体案として議論をされておりました。

 アルコールは最初、内閣府にありましたので、各省の連携をする上においては非常によかった、内閣府に事務局があってよかったんですが、今、厚労省に移管をするということで、厚労省に行っております。厚労省は、そういう先進的な問題もありまして、アルコールと薬物とギャンブル、こういった依存症対策の推進本部が設けられまして、三つを一体として省庁で取りまとめをしておりますが、担当部局が多少違うところがあると聞いております。

 今回のギャンブルの対応につきましては、内閣府に本部が設けられるということで、総合的に各省の調整ができるようになっておりますので、こういった部門におきましてアルコールとしっかり連携ができますように、そして、この三つの依存症対策というのは非常に重要でありますので、予算が偏ることがないように、今回の法律を契機に、しっかりとした依存症としての対策、そして三つの分野のしっかりとした対策ができるように努めて、今後、基本計画や関係者会議等を通じて充実させていければいいなというふうに考えております。

中川委員 修正案と野党案でまださまざまに話し合っていかなきゃいけない項目があるんだと思うんですが、そのうちの重立った二つについてお話をさせてもらいたいと思うんです。

 一つは、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議、これを設けていただいたことについては評価をしたいというふうに思います。ただ、ここで話をまとめて、ちゃんと諮問機関としてまとめた話、出してきたものをしっかり中に政策として入れ込んでいくよという前提がないと、ただ話、意見を聞くだけ、いわゆる聞きっ放しにするということではないということだと思うので、そこのところの確認をしていきたいというふうに思います。これが一つ。

 それからもう一つは、検討事項の中で、野党のサイドがさまざまに、七項目にわたって検討事項を提起させていただきました。一番最後のところ、附則の後ですね。附則の二のところなんですが、これで、例えば公営競技の投票及びパチンコ屋において使用される遊技機等のいわゆる射幸性の抑制というのをどこかで考えていかなきゃいけないねという話だとか、あるいは遊技、投票等というのが行われる事業所への未成年、これは入り口規制ですね、これについて考えなきゃいけないねとか、ギャンブル依存症の患者等による投票等の制限だとか、あるいはギャンブル関連事業者の広告宣伝のあり方であるとか、あるいはギャンブルの事業者の対策に係る費用の負担であるとか、ほかに幾つかあるんです。

 これは、それぞれのギャンブルに応じて、恐らく、ギャンブル自体の事業法というか、その中で整理をされる部分とそうでない部分、ということは、ギャンブルの類型によって今、相当違っているんですね。違っているんです。だから、それを共通項としてトータルで制御するような話を、恐らく、この専門家会議の中での議論にするか、あるいは、こうした共通の法律、この法律の中でこうしたものを共通項として制御するような形にするか、何らかの形でやっておかないと、この検討項目の一つ一つを考えておかないとだめでしょうというのが私たちの思いなんです。

 だから、この検討項目をぜひ入れていこうという提案をさせてもらったんですが、修正案の方では、ここは完全に無視されているというか、取り上げてもらっていない部分なんですね。これは非常に大事なところだと思うので、これから先の議論の中で、ここについてもどうするか。ただただ、それぞれの法律に任せておくわけにはいかないでしょう。

 今回、IRが出てきますが、IRの中に入場制限やなんかはありますよ。しかし、ほかのパチンコにしてもあるいは公営のものにしても、同じようなことは考えておかなきゃいけないんじゃないかというのは共通してあるんだと思うんですよ。

 だから、それをこの機会に共通項として考える場をつくるか、あるいは、法律でそれをこれから規定していきなさい、そういう指示をこの法案でするか、どっちかの選択だと思うんですが、そこのところをひとつ取り上げて、もう少し柔軟な議論をしてはどうか、修正も含めてと思うんですが、どうでしょうか。

中谷(元)議員 アルコール法案の場合は、製造者、販売者、提供者、患者ということで多岐にわたっていましたが、関係者会議を置くことによって、こういった問題も詰めて基本計画をつくり、チェックもされていますので、非常によく機能できたというふうに思います。

 ギャンブルの場合は更に複雑で、事業者が多岐にわたっておりますので、法律で定める場合に、その調整などで非常に時間がかかってしまいます。したがって、やはり関係者会議をいかに重視していくかということが大事なことでございますので、基本的なことについては基本計画の中で定めるということで、その場合に関係者会議を積極的に活用すべきであるというふうに思います。

 後段は岩屋議員から。

岩屋議員 先生がおっしゃった先生方の案の中の検討事項、全部とは言いませんが、かなりの部分について共通の関心を私どもも持っておりますが、やはりこの法案は基本法案でございますので、そこに書き込んでいくにはちょっと施策の中身が具体的に過ぎるのではないかなと思っております。

 今、中谷提出者から答えさせていただきましたように、この法律に基づいて定められる基本計画の中にしっかりとその検討事項に相当する部分が盛り込まれていくものというふうに考えておりますし、それから費用負担のところについては、きょうも何回も答弁させていただきましたが、なかなか現段階では困難なのではないかなと思っておりますし、それから、対策に当たる組織につきましては、内閣官房長官を本部長として、関係国務大臣を部員とする本部が内閣に設置されることになっておりますので、先生方の検討事項に盛られた事項はかなりしっかりと基本計画の中に反映されていけるものと考えております。

中川委員 本来は、法案の修正で話し合うことが必要なんだろうというふうに思います。そういう意味では、さっきの答弁には満足はしていません。同時に、だとすれば、もう一つあるとすれば……

山際委員長 質問時間が終わっていますから、急いでください。

中川委員 決議でひとつ工夫をしていくということも含めて考えていただきたいというふうに思います。

 以上です。

山際委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 ギャンブル依存症対策基本法案について、両案の提出者にお尋ねをいたします。

 最初に久里浜医療センターの樋口院長にお尋ねをいたしますが、厚生労働省として、ギャンブル依存症者と疑われる、そういう人の割合についての調査をしていると承知をしております。生涯を通じたギャンブル等の経験等を評価した場合にギャンブル依存症者と疑われる者の割合は、この日本においてどうなっているのか、また諸外国はどうかということで、同様の指標で調査を行っていますオーストラリア、オランダ、フランス、スイス、カナダ、イタリア、ドイツはどうなっているのか、このあたりについて質問をいたします。

樋口参考人 お答えいたします。

 まず、海外におけるギャンブル依存に係る調査結果と私たちが行った全国調査の結果の比較については、先ほども申し上げましたけれども、調査の方法が違うこともありまして双方の結果を単純に比較することはできませんが、私たちの研究班が行った全国調査において、SOGSというスクリーニングテストを用いてギャンブル等依存が疑われる人の割合を推計いたしました。その結果は、生涯の経験等による評価でギャンブル等依存が疑われる人の割合は三・六%。これは、生涯の過去のどこかでSOGSを満たす期間があった、そういうふうな理解でございます。それが三・六%。

 同じように、海外の調査では、オーストラリアは男性と女性で分けてありまして、男性二・四%、女性一・七%という報告がございます。オランダは男女合わせて一・九%、フランスは一・二%、スイスは一・一%、カナダは〇・九%、イタリアは〇・四%、ドイツは〇・二%と報告されています。

 国ごとに調査手法が異なるため、各国の調査結果を単純に比較することには注意が必要だと思います。

塩川委員 単純に比較できないというお話でありますが、やはり議論の土台として、目安としては極めて重要だと思っております。

 そういった点でも、日本における既存のギャンブル、公営ギャンブルやまたパチンコのあり方というのが問われている。そういった点で、この三・六%、推計すれば約三百二十万人の方々がギャンブル依存症者を疑われる、そうなっているということは極めて重いというふうに受けとめております。

 そこで、両案の提出者にそれぞれお尋ねをいたしますけれども、このように日本のギャンブル依存症者と疑われる方の割合が高いというもとにおいて、今回の法案というのは、こういったギャンブル依存症者を減らそう、そういうことを考えて提出しておられるのか、この点についてお答えください。

初鹿議員 済みません、御指名いただきましたので、先に立民、無所属の会、社民、自由党案について答弁をさせていただきます。

 先ほども福田議員からの御質問に対してお答えをさせていただいておりますけれども、我々の案については、ギャンブル関連事業者に対して、ギャンブル依存症の患者等をふやさないようにすることを求めていくことを大前提としておりますので、議員からの御指摘どおりでございます。

岩屋議員 おっしゃるとおりだと思います。これまで、さまざまな公営競技あるいは遊技を認めてきたにもかかわらず、しっかりとしたギャンブル依存症対策の調査、対策がとられていなかったということに問題があったと思っておりまして、対策をしっかり講じることによって、結果的にギャンブル依存症比率を低下させていくことができるというふうに期待をしております。

塩川委員 やはりギャンブル依存症者を減らしていこう、こういうお立場でのそれぞれの案というふうにお聞きしております。

 ただ、先ほどの議論でも、数値目標を持つかどうかという議論というのは、佐藤さんのお答えがあった。そういった課題は、これはこれとしてあるとは思いますけれども、決してふやさない、減らしていこうという決意のもとでの案ということで受けとめております。

 その上で、ぜひお尋ねしたいというのがやはりIR、そのかなめとなっているカジノの問題であります。

 日本において、一連の公営ギャンブルがあり、またパチンコがあってギャンブルの依存症者を多く生じる、そういう環境の中において新たなギャンブルを広げようというのがIRの推進法だったわけであります。

 そこで、両案の提出者にお尋ねをいたします。といいますか、各会派、両案の提出者において、それぞれの各会派を代表される方にそれぞれ伺えればと思うんですけれども、一昨年審議をしましたIR推進法についての各党の態度がどうだったのか、この点について確認をしたいと思います。

岩屋議員 自由民主党でございますが、賛成をさせていただきました。

佐藤(茂)議員 公明党は、最終的に党議拘束をかけませんで、各政治家、それぞれの信念に基づいて賛否をそれぞれ態度表明した、そういう状況です。

初鹿議員 御存じのとおり、我が党は、昨年の採決の際にはまだ存在をしておりませんでしたので、態度を表明しておりません。

中川議員 当時は民進ですが、反対をしました。

塩川委員 自公維案で、維新の方はちょっとおいでになっていないのであれですけれども、IR推進法については賛成をしておられるということであります。

 公明党さんでは自主投票ということで、佐藤さんは賛成をされたということですね。

佐藤(茂)議員 先ほどまでいた桝屋議員は別の委員会の理事で、ちょっと移動しましたけれども、きょうの二人の答弁者のうち、私は賛成をし、桝屋議員は反対、こういう、まさに自主投票でございますので態度が分かれたということでございます。

塩川委員 ということであります。

 IRのかなめはカジノということで、カジノ収益において、もちろん、IRですから、統合型のリゾートとしてのそういった支えをするけれども、しかし、それを回していく、その収益の大きなところ、カジノに依存するという仕組みになっているわけです。

 率直なところ、この自公維案の提出者の方に伺いますけれども、カジノを新たに解禁すればやはり新たなギャンブル依存症者を生じることになるんじゃないかと率直に思うんですが、いかがですか。

岩屋議員 ここはIR実施法について審議をしている場ではありませんが、お尋ねでございますのでお答えさせていただきますと、IR実施法の場合は、ギャンブル依存症を抑止するための仕組みが法案の中にビルトインされているというふうに承知をしております。それは、厳格な本人確認であったり、厳格なまた入場規制であったり、入場料の賦課であったり、先生もう御案内のとおりでございますが、したがって、そこから生じるギャンブル依存症というものを最小化する、極小化するという仕組みがビルトインされた形になっているものというふうに承知をしております。

塩川委員 ギャンブル依存症者対策がビルトインされている、ギャンブル依存症者を生じさせない、極小化、最小化をしていく、そういう対策がビルトインされているということでありますが、お答えのように、じゃ、生じないかといえば、最小化、極小化というお話であれ、生じるということであるわけです。

 それはまた制度設計全体の問題も当然出てくるわけで、実際にこのIRを回していく上でカジノをどういうふうに制度設計するかというのが当然議論されてきたわけで、課題になるのは、カジノの収益をどこまで見るのか、それに対してこの依存症者対策との関係、この二つの兼ね合いというのはなかなかやはり相入れないところが当然あるわけですから、そういった点で、制度設計次第ではやはり今後どうなるかわからない、依存症者を生じることというのは否定できないことではないかと思うんです。

 全体としてのギャンブル依存症者を減らしていこうというお立場であれば、こういったカジノについて、新たに依存症者を生むような仕組みを入れるということについては矛盾があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

岩屋議員 現段階では日本にIRはない、カジノも存在しないということですから、この法案は、既存の公営競技や遊技等、違法なものも含めて、そこに起因している依存症にまず対策をとるための法案でございますが、仮にIRが誕生し、カジノができるということになりますと、それは当然、この法律の対象になっていきます。

 きょう、公明党の質疑者から紹介をいただきましたが、シンガポールは、二カ所のIRを開業して、徹底的なギャンブル依存症対策をやって劇的に依存症比率を全体として減らすことに成功したという事例がございます。私どもはそういう方向を目指していくべきだというふうに考えております。

塩川委員 シンガポールはそもそもIRがあって、その依存症者が問題となって、統合的に、一体的な仕組みをつくることによって対策をとってきた、それで結果として減らした。それはそれとしてあると思いますけれども、しかし、日本においては、カジノはないんですから、それを新たに始める必要はないんじゃないのか。依存症者対策を本気でやるというのであれば、新たにギャンブルを生むということ自身はあってはならないんじゃないかと法案提出者としては思いませんか。

岩屋議員 先ほども申し上げましたように、まずIRについてはしっかりとした抑止政策がビルトインされている、そして既存のものについても今までにない対策をしっかり講じる、相まって、全体としての依存症の比率を必ず低下せしめることができるというふうに私どもは考えております。

塩川委員 ですから、公営ギャンブルあるいはパチンコについて依存症者を減らしていこう、こういう取組が極めて重要であるわけで、それに資するような法案であってほしいと思っておりますし、そういった点で知恵を出す必要があると思っていますが、しかし、新たにギャンブルをふやす必要はないでしょう。依存症者を生じ得る、そういったものについて、新たにカジノというギャンブルをつくる必要はないんじゃないですか。依存症者を減らすというのであれば、新たに生み出すような新たなギャンブルをつくる必要はないんじゃないのかと率直に思うんですが、いかがですか、佐藤さんや中谷さん。

中谷(元)議員 この問題は、ギャンブル依存症の対策基本法案でありまして、IRができるかできないかではなくて、現状、IRがない状況でありますが、現にギャンブル依存症で大変苦しんでいる方々がたくさんいますので、その対策をするための法案でございます。

 新たに、IRにつきましては、別途法案の審議がありますので、そこで議論をしていただきたいと思いますが、この法案は依存症にかかっている方々に対する対策法案でありますので、その点について真剣にこの場で御議論いただきたいというふうに思います。

佐藤(茂)議員 今、同じく自公維案の提案者の岩屋また中谷両議員からもありましたけれども、この法案をまずやはりきちっと議論して、既存の公営ギャンブル及びパチンコ等の対策をしっかりとやって、現におられる依存症患者、こういう方々への対策をしっかりとやる。

 IRについては、またこれは別途政府から法案が出され、きのうも本会議質疑があったわけですから、その中で、本当に懸念される依存症対策等がきちっとビルトインされているのか、そういうことはきちっと改めて議論すべき問題である、そのように私どもは考えております。

塩川委員 それこそ、まさにIR実施法、カジノ実施法とセットのように今議論されているというところがこの内閣委員会で大問題になっているわけですから、我々はやはりTPPの審議だってしっかりしたかったのに、それをまさに打ち切ってまで進めるようなやり方自身がおかしいということも言ってきたところで、切り離されていないんですよ。

 というより、そもそも、ギャンブル依存症を減らそうということであれば、新しいカジノというギャンブルをわざわざ解禁する必要がないじゃないですかということの話であって、これについては、依存症者を減らしたいという法案を出しておられる方々が責任を持って答えられるのは当然のことだと思うんです。何か別途カジノ実施法できちっとした対策をとりますから、そういう話じゃないんですよ。

 そういう話じゃなくて、新しいギャンブルを認めるか認めないのか。依存症者をふやす、そういった懸念がある、そういった新しいギャンブルを新たに解禁して具体化をする、それでいいのかということが問われているんですから、それははっきりお答えいただかないといけないんじゃないですか。

中谷(元)議員 この法案とIRを関係づけようといたしておりますが、これは全く別の法案でありますし、そもそも、前の国会でギャンブル対策の法案を提出しておりました。本来でしたらもっと早く審議していただきたかったんですけれども、議員立法でありますので、国会の関係もありますが、非常に審議がおくれまして現在に至っている。これは与野党双方に原因があるかもしれませんが、たまたまこれは重なってしまったわけでありまして、本来は単独で審議をして議論してほしかったという法案でございます。

塩川委員 法案はもちろん別ですから。別ですよ。別ですけれども、私が聞いているのは、ギャンブル依存症者を減らしましょうという法案を出されているということであれば、新たにギャンブルによって依存症者を生じるようなカジノを解禁、具体化するようなことはしてはならないんじゃないですかといったことを、当然、今回の法案との関係で問うているわけですけれども、それは別途ちゃんとやりますからと言う。その話じゃないんですよ。この法案上についてどう考えるかという、その考え方を聞いているわけですから。

 その点についてお答えがなかったという点は極めて重大ですし、もともと二年前については、自民党や維新はこれを推進する立場だということははっきりしておりますし、閣法としてカジノ、IRの実施法が出されているということを見ても、我々は、こういった問題について、新たなギャンブルを拡大するようなそういう法案は認められない、ギャンブル依存症者を減らそうというのであれば、こういったカジノの実施法というのはもうやるべきではないということはあわせて申し上げておくものであります。

 そこで、立民、無所属の会、自由党、社民党の提出者にお尋ねをいたします。

 今、今国会に特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律を廃止する法律案、いわゆるIR推進法の廃止法案を出しておりますけれども、これについて、本案の提出者の方々の態度などについてお聞きできればと思います。

初鹿議員 では、私からは立憲民主党の立場で答弁をさせていただきますが、塩川議員からも今御指摘があるとおり、我々も、カジノを解禁することによって新たな依存症者が増加をする、依存症対策を進めていく上で新たな依存症者が増加するようなことを進めるべきではないと考えております。そのような考えに基づきまして、今回、廃止法案を提出することといたしました。

 この法案については、日本共産党さんにも提出会派として賛同していただいておりますことを申し添えさせていただきます。

中川議員 無所属の会としては、共同の提案者にはなっていませんけれども、これに賛成をしていく方向にしていきます。

塩川委員 そういう点でも、今回の依存症者を減らそうという法案の趣旨からいって、新たなギャンブルであるカジノを解禁、実施する、そういうことというのは認められないということを私は申し上げておくものであります。

 その上で、既存のギャンブル、公営ギャンブルとそれからパチンコについてですけれども、そもそも今、現状はどうなっているのかについて、政府の方から確認したいと思っています。

 公営ギャンブル及びパチンコの直近の売上げ、市場規模、これがどうなっているのかについて説明いただけますか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 公営ギャンブル、パチンコの直近の市場規模などについてのお尋ねがございました。

 まず、公営競技の直近の売上げでございますけれども、それぞれの競技ごとに申し上げます。

 中央競馬は、平成二十九年、ここは一月から十二月の決算でございます、その売上げが二兆七千五百七十八億円。地方競馬、これは年度になっておりまして、平成二十九年度の売上げが五千五百二十五億円。競輪も同様に二十九年度でございますけれども、六千四百億円。オートレースにつきましては、二十九年度が六百六十億円。モーターボート競走は、同様に平成二十九年度で一兆二千三百七十九億円でございます。

 また、パチンコでございますけれども、その市場規模、遊技人口、店舗数につきまして、まず、市場規模につきましては、日本生産性本部、レジャー白書二〇一七年によれば、二十一兆六千二百六十億円でございます。これは平成二十八年でございます。遊技の参加人口は、同様に平成二十八年で九百四十万人。営業所数につきましては、警察庁の調べによりますと、平成二十九年末現在で一万五百九十六店舗となってございます。

 以上でございます。

塩川委員 公営ギャンブル、中央、地方競馬で大体三兆円ぐらい、オートと競輪で大体七千億ぐらい、競艇が一兆円、パチンコが二十一兆円。公営ギャンブルもいろいろ規模の間隔はありますけれども、やはりパチンコが非常に大きいということでもあります。

 そういったときに、こういった既存ギャンブル、公営ギャンブルやまたパチンコに対して規制対策をどう進めていくのか、こういうことについて、両案の方にお尋ねをしたいと思っております。

岩屋議員 まず、公営競技についてですけれども、これについては、既に政府においてギャンブル依存症対策関係閣僚会議というのが設けられておりまして、対策が既に発表され、実施に移されているところでございます。

 私どもは、この法律を成立させていただくことによって更にその取組を強化充実していってもらいたいというふうに思っておりますが、具体的な中身については、これも先生御案内のとおりと思いますが、今、公営競技というのは六割、七割ぐらいがインターネット投票になっておりますので、このインターネットの投票における対応をもっとしっかりしていかなくちゃいけない。そして、家族や本人申告に基づく利用制限等も、既に取組が始まっておりますが、更に充実強化させていかなければならない。相談窓口はもっとしっかりと配置されなければならない。そういう方向が、この法律ができますれば、基本計画の中に更にしっかりと盛り込まれていくと考えております。

 それから、パチンコにつきましては、既に、わかりやすく申し上げますと、射幸性が今までの三分の二ぐらいになったという措置がとられておりますが、ここにおいても、業界の自主的な取組をもっと進めていただいて、相談窓口の設置、本人、家族申告によるアクセス制限等を徹底してもらうようにしていきたい。これも、この法律が成立すれば、しっかり政府から促していただきたいというふうに思っております。

初鹿議員 我々野党案の方には、十五条二項に、公営ギャンブルについてもパチンコ事業についても、ギャンブル依存症の患者等による利用が制限されることとなるように特に配慮するよう規定を設けております。具体的には、本人申告によるアクセス制限の導入や、家族申告によるアクセス制限の仕組みの構築などを考えております。

 公営競技においては、今御答弁がありましたようにインターネット投票が進んでいることもありますから、インターネット投票サイトにおける注意喚起や相談窓口の案内の掲載等も検討しているところであります。

 また、附則第二項において検討事項を設けておりまして、ここにおいて、公営競技の投票及びパチンコ屋等において使用される遊技機の性能に係る射幸性の抑制、若しくは入場制限の方策や、ギャンブル依存症の患者等に係る投票等の制限や、広告宣伝のあり方なども検討事項に加えていることとしております。

塩川委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

山際委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、明二十四日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十四日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十二分散会


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