衆議院

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第20号 平成30年5月24日(木曜日)

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平成三十年五月二十四日(木曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 山際大志郎君

   理事 石原 宏高君 理事 谷川 弥一君

   理事 中山 展宏君 理事 永岡 桂子君

   理事 松野 博一君 理事 阿部 知子君

   理事 稲富 修二君 理事 佐藤 茂樹君

      井野 俊郎君    池田 佳隆君

      泉田 裕彦君    上野 宏史君

      大隈 和英君    大西 宏幸君

      岡下 昌平君    加藤 鮎子君

      金子 俊平君    神谷  昇君

      亀岡 偉民君    小寺 裕雄君

      古賀  篤君    杉田 水脈君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      長坂 康正君    西田 昭二君

      百武 公親君    船橋 利実君

      三谷 英弘君    村井 英樹君

      大河原雅子君    篠原  豪君

      福田 昭夫君    森山 浩行君

      山崎  誠君    源馬謙太郎君

      森田 俊和君    浜地 雅一君

      濱村  進君    中川 正春君

      塩川 鉄也君    浦野 靖人君

      串田 誠一君    玉城デニー君

    …………………………………

   議員           初鹿 明博君

   議員           岩屋  毅君

   議員           桝屋 敬悟君

   議員           佐藤 茂樹君

   議員           浦野 靖人君

   議員           中谷  元君

   内閣府大臣政務官     村井 英樹君

   内閣府大臣政務官     長坂 康正君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中川  真君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    宮嵜 雅則君

   参考人

   (認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク代表理事)    西村 直之君

   参考人

   (公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事)          田中 紀子君

   参考人

   (弁護士)        三上  理君

   内閣委員会専門員     長谷田晃二君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     船橋 利実君

  杉田 水脈君     上野 宏史君

  武井 俊輔君     井野 俊郎君

  浦野 靖人君     串田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     武井 俊輔君

  上野 宏史君     百武 公親君

  船橋 利実君     大西 宏幸君

  串田 誠一君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  百武 公親君     杉田 水脈君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 ギャンブル等依存症対策基本法案(中谷元君外七名提出、衆法第二〇号)

 ギャンブル依存症対策基本法案(初鹿明博君外十名提出、第百九十五回国会衆法第六号)


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     ――――◇―――――

山際委員長 これより会議を開きます。

 中谷元君外七名提出、ギャンブル等依存症対策基本法案及び第百九十五回国会、初鹿明博君外十名提出、ギャンブル依存症対策基本法案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、認定特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク代表理事西村直之君、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事田中紀子君、弁護士三上理君、以上三名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。両案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 西村参考人、田中参考人、三上参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、西村参考人にお願いいたします。

西村参考人 それでは、ギャンブル等依存症及びギャンブル等依存症対策基本法、ギャンブル依存対策基本法に関する意見を述べさせていただきます。

 まず、本法案は基本法ですので、この問題に必要な対策をこの問題にかかわってきた私から見れば、過不足という感じはあります、正直。しかし、これはあくまでも基本法なので、この基本法が今後より有効に機能するために重要と思われる課題について、少し取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、用語の問題について少し触れさせていただきます。

 国民に対して、現在、この法案の議論の中で、わかりやすい用語で議論するということはとても重要なことだというふうに考えております。しかし、議論の根幹となるいわゆるギャンブル依存症、ギャンブル等依存症というのは、今回、両法案の中ではその定義自体が異なったまま今日に至っております。定義の明確化というのは、やはりその対策をする者から考えると必須の課題というふうに考えています。

 自公維の案では、ギャンブル等依存症は、海外の対策で標準的な考え方となっているプロブレムギャンブリング、いわゆる問題あるギャンブリングという、かなり幅が広いところを対象としております。一方、立憲、自由、社民案では、疾病と捉える、どちらかというと医学モデルというのが強く表現されております。

 これはどちらがよいということではないと思うんですが、やはりモデルが、いわゆる問題ギャンブリングという障害モデルに立つか疾病モデルに立つかというのは、実は、今後対策をしていく上でどこに重点的に対策の力をかけていくかというところでかなり変わってくるんだと思います。大きく言うと、医療モデル型の対策になるのか、公衆衛生モデル型の対策になるかというのがここで大きく変わってきます。

 この対策は、実は対策費用のかけ方に大きな違いが出てきます。費用面の異なり、違いというのは、今後の対策費をどう確保していくかということにおいても非常に大きな議論になりますので、やはり、納税者や事業者も含めたいろいろなステークホルダー、利害関係者が納得できる費用効果の達成というのが明確になる公衆衛生モデルの方が私はいいのではないかというふうに考えております。

 次に、医学的には、精神医療分野におけるギャンブル依存症という病名というふうに使われているものは、実はごく限られたところで使われている通称のもので、明確に医学的な定義として、ギャンブル依存症という病名は存在していません。これはやはり政治用語であるというところからスタートをぜひしていただきたいと思います。

 つまり、定義がはっきりせず、病的ギャンブリング、ICD10というWHOの定義ではこれは病的賭博という訳になっております、また、アメリカ精神医学会のDSM―5におけるギャンブリング障害はギャンブル障害と訳されていますが、これがやはりいつの間にか全て混在されて、ギャンブル依存症とされています。

 さらに、この法案ではギャンブル依存症、ギャンブル等依存症となっていますが、実は、世界の中では、依存症、いわゆるディペンデンス、という訳が当たっているものは既に診断基準から消えておりまして、依存症であるかないかという線引き、それから、ギャンブルやアルコールが原因であるかないかという議論自体が、治療論、因果関係をおいて、まずは問題がある人たちにどのように早期に介入するかというのが今援助及び対策の中心課題になっているので、やはり、ちょっと世界の流れから考えると、今回の対策の中でより医療的なものが中心に出てきていることに関してはかなり違和感を持っております。

 この点については、やはり海外の対策をしている人たち、研究者からも、なぜ、今新たな対策をするのに、一番コストがかかって費用効果の悪い医療モデルを使うのかというふうなことをたびたび聞かれて、返答に正直窮しているところです。

 また、用語と関連する部分ではあるんですが、今回の中で、ギャンブル等依存症、昨日は患者という言い方がかなり出ていましたが、このギャンブル等依存症の問題を抱える人たちというのは一体誰を指しているのかというのがやはり曖昧なところがあります。

 ギャンブルの参加者の中には、やはり実際、病的な依存状態に陥る、いわゆる本来の医学的水準の依存症レベルに陥る人たちがいることはもう間違いない事実で、これは非常に深刻な問題で、しっかりした対策が必要です。

 ただ、実際、いろいろな数値があります。数値の中で、実際、ギャンブルの習慣を持つ人たちの中で重度の依存状態にある人たちは全体の一から三%程度ということで、決して数としては多くないということがさまざまな疫学検査でわかっております。

 一方で、自分で何とかコントロールしながら、ギャンブリング習慣を、ギャンブルの習慣を何とかコントロールしながら若干問題を抱えている人たちというのがかなりの数います。この人たちがやはり参加者の五%から一〇%ぐらいはいるだろうというふうなことが世界的にも言われておりまして、この群がいわゆる問題ギャンブラーと呼ばれる人たち、プロブレムギャンブラーと呼ばれる人たちで、この方たちは必ずしも病的な状態に移行するわけではなくて、問題を抱えながら、割と長期間その状態をキープする。そういう意味では、その周辺の人たちには長いこと影響が出ることは間違いないので、これは対策が必要なわけです。

 ただ、この方たちは、何らかのきっかけでかなりの人たちが自己回復しているというデータもまたあります。

 そのようなことを踏まえて、世界の対策というのは、黎明期はより重篤な、いわゆる依存症レベルの治療介入を標的として始まってきたんですが、対策が進むにつれて、問題ギャンブラーへの早期介入と、どうやって依存症水準に進行させない自己制御を支援していくかというふうに対策がシフトしています。

 昨日のこの会の中でもAMEDのデータがかなり使われたと思うんですが、あの中に、直近一年、七十万人がいわゆるギャンブル依存症の疑いということになっていますが、あれは一体何を指すかというと、多分、実際、病的水準はその数分の一で、七十万人のうちの多分九〇%ぐらいは問題ギャンブラーであって、いわゆる医学的依存症ではないということは、これはやはり注意しておかないといけないと思います。この方たちは、病院に連れていったからといって、必ずしも治療効果が、まあ、ないわけではないですが、極端に言うと、費用効果がかなり悪い支援になり得るということですね。ただ、数万人の深刻な問題を抱える人たちがいるということは、もう間違いない事実です。

 さらに、問題ギャンブラーのレベルで見る場合というのは、実はアルコールや薬物の病的依存とやはりかなり病態が異なっておりまして、そのケアのやり方というのはもっともっと幅が広く、柔軟なものであった方がいいというふうに考えております。

 つまり、病的な依存症レベルではない問題ギャンブラーをいかにふやさないか、いかに問題ギャンブラーを病的な依存状態に進行させないかを主眼とした予防対策というのが、やはりこれからやる対策としては非常に重要だと思います。

 シンガポールなどもこの点を強調しておりまして、まずは予防できる人をして、その上で、その予防をすり抜けていく人たちに対して重点的に対策を行うというふうにしております。

 この問題ギャンブラーは、本人から援助を求める行動がかなり期待できますので、やはりこちらの方をより重点的にやっていった方がいいと思います。

 時間の関係で、少し飛ばさせていただきますが、もう一点、やはり、自助グループ、当事者活動に対しての支援ということに対して、これはとても重要なことではあるんですが、実は他の依存の問題でも、精神保健の行政が医療機関につないで、医療機関が、また精神保健の機関が単に自助グループに丸投げするという事態が、ずっとこれはアルコール、薬物の問題でも起こっております。これは実は支援の劣化というふうな問題を引き起こしておりまして、その途中にある、自分でコントロールできたり戻れる人たちの支援、それから、そうならない予防に対して、やはり、この法案の中では少し、両法案とも若干弱いように思います。その点はぜひ、より検討されていただきたいと思います。

 特に、カジノの是非は別として、この対策については、やはり海外は日本より三十年ぐらいさきに取り組んでおりますので、特に事業者や向こうの対策のノウハウというのは非常に有効なものを持っておりますので、その点は、ぜひ活用していくべきではないかというふうに思っております。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

山際委員長 ありがとうございました。

 次に、田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会代表理事の田中と申します。

 私は、自分自身がギャンブル依存症からの回復者でもあり、また、祖父、父、夫と、家族に依存症者を持つ立場でもあります。それらの経験を生かして、現在では、ギャンブル依存症問題に苦しむ当事者と御家族の支援を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、短いお時間でございますので、三つの要点に絞ってお話ししたいと思います。

 まず第一に、民間団体の役割と支援についてです。

 二〇一六年十二月にIR推進法が通って以来、ギャンブル依存症がにわかに注目され、各地の精神保健福祉センターほか、行政の窓口や、公営競技、遊技の運営者側の皆様方も電話相談窓口などを設置されました。

 その結果、早期に支援につながれる方たちもいる反面、重篤な案件に対しては、電話相談のたらい回しという現実も起きています。

 例えば、お金を渡さないと、暴力を振るったり、近所に聞こえるようにわざと大声を上げる、首をつるなどしながら、今から自殺するぞと脅迫動画を送ってくる、暴れて家の中を破壊するので、家族が車上生活を強いられている、こうした案件に対し、行政、医療その他電話相談窓口に相談しても、本人を連れてきなさいとどこでも言われてしまい、家族にはなすすべがありません。また、警察に相談しても、当事者に対する説教で終わってしまっています。

 これらの案件は、全て私どもが対処した事例です。私たちは、どこからの支援も受けられず、予算もつかないまま、同じ問題を抱えた家族同士で寄附を出し合い、こうしたハイリスクの案件に対応しております。こんなおばさんである私が、包丁を振り回したり、暴れている当事者の説得に向かい、医療や回復施設への入院、入寮を促し、自分の車で現地まで送っていき、その後、御家族の安全対策や自立支援を行っております。

 御本人が自殺を図ったケースもあります。家族と連携し、何とか一命を取りとめ救急病院へ運んだにもかかわらず、救急から精神科への連携を拒否されてしまいました。私どもが懇願しても入院はかなわず、結局自死されてしまい、救えるはずだった命を救えなかったという苦い経験もございます。

 現状の依存症対策は、こうした重篤な問題に対する支援が置き去りにされたまま、電話相談や数回の認知行動療法などの入り口対策ばかりが強化され、私たちの現実と対策が乖離しております。

 御参考までに、現状の課題について図でお示しいたします。

 第二に申し上げたいことは、連携の強化です。

 カジノ議論とともにギャンブル依存症対策が取り上げられると、医療の強化ばかりが叫ばれるようになり、我々は困惑しております。ギャンブル依存症は、アルコールのように身体的健康が損なわれるわけではなく、また治療薬もない現状では、医療の果たす役割はわずかです。

 むしろ、ギャンブル依存症は、多重債務などの金銭的な問題とそれに伴う犯罪によって介入されるケースの方がずっと多くあります。

 例えば、動機にギャンブルの問題があった事件は毎日のようにニュース報道となっており、つい最近も、五月十八日、信金職員着服、三百五十一万、使途はパチンコ、五月二十一日、青果卸会社元課長代理、八年間で二億五千万円着服、使途はギャンブル、五月二十一日、小学校職員、給食費六百八十八万円着服、使途はパチンコ、スロットと報道がありました。

 御参考までに、当会が二〇一八年一月以降ニュース報道で把握した事件を添付いたしております。

 私どものもとにも毎日、横領、窃盗、万引きなどの相談が寄せられ、こういった事件の裏には悲しみに暮れる御家族がいます。

 昨年十二月には、九十二歳の父親が、六十五歳になる無職で父親の年金をせびってギャンブルに行く長男をハンマーで殴り殺すという痛ましい事件もございました。

 ギャンブル依存症は、弁護士や司法書士、警察との連携及び職場への正しい知識の啓発や予防教育がむしろ急務と感じております。

 また、最近では、高校の養護教師から、家庭内にギャンブルの問題がある生徒が家に帰りたくないと言っているなどという相談も寄せられるようになったり、大学等の中退問題にギャンブル依存症が少なからずかかわっていることがわかっています。教育現場との連携も欠かせません。

 さらに、ギャンブル依存症は、残念ながら当事者が回復しない場合も多くあり、その場合には、残された妻子が貧困状態に陥り、問題が子供の世代へと伝播していきます。一人親支援や子育て支援との連携も必要です。

 また、医療と行政だけを強化することは、別の弊害も生みます。ギャンブル依存症の民間回復施設では依存症からの回復者が支援者として活躍しており、やりがいを感じ、生計を立て、納税者として社会復帰を果たしています。医療と行政に偏った支援は、このような回復した依存症者の居場所を奪うことにつながります。

 ギャンブル依存症対策を考える際には、必ず、民間団体、民間回復施設、そして自助グループを含め、弁護士、司法書士、警察、児童養護施設、自殺対策、学校教育、企業教育、地域社会、もちろん行政、医療、ギャンブル産業といった幅広い連携が必要です。

 御参考までに、多重債務や中退問題、養育問題に関するギャンブル依存症者の家族に対する筑波大学と当会との合同調査資料を添付いたします。

 最後に、予算の現状です。

 二〇一八年度、厚生労働省の依存症対策予算は六・一億円のうち、民間団体へ直接支援される助成金は、アルコール、薬物、ギャンブル全ての団体を合わせ一千八百万円です。

 また、国と都道府県・政令指定都市が折半で行う地域生活支援事業による民間団体の助成では、ギャンブル依存症支援への助成を検討していると答えてくださった自治体は、当会及び他団体の電話調査によると、六十七分の十九自治体となっており、実施率は二八%、金額は三万円から二十万円となっております。その中でも、企画は全て行政が行うというものや、事業の半分だけ助成するという、実質的には利用できない助成金もございました。

 そして、興味深いことには、早々にIRに名乗りを上げておられる北海道、東京都、横浜市、大阪府、和歌山県、長崎県は、この民間助成金にゼロ回答でございました。

 ギャンブル依存症対策をしっかりやるという口約束ではなく、対策費拠出を含めた対策のあり方、また予算の規模などをお示しいただかないと、私たちは安心できません。相談電話の設置だけでは、対策を行ったとはとても言えない現状があるからです。また、どのような対策が必要なのか、ギャンブル依存症により現状起きている社会負担費などのコスト計算や実態調査を行う費用なども計上されておらず、本当にしっかりとした対策が行えるのか、不安です。

 また、ギャンブル産業側が民間団体や研究者に直接助成することは利益相反の問題もあり、やはり、国が売上げの一部を税金などの形で管理し、依存症対策費として分担する制度を整備することが、世界的に見てもスタンダードな方式だと思います。ギャンブル依存症対策を整備する上で、いま一度御一考願えないかと思っております。

 最後になりますが、このギャンブル依存症対策で最も大きな前進となり、今後基本計画を作成する上で重要な役割を果たすと思われる関係者会議が実現したことは、中谷先生を筆頭とした与党のギャンブル依存症対策PTの先生方、また、この問題にお詳しい野党の先生方に心から御礼申し上げます。

 ギャンブル依存症問題により、悲鳴を上げ、助けを求めておりますのは、当事者そして家族でございます。どうか、当事者、家族の声を一つでも多く法案に取り入れていただけるよう、心からお願い申し上げます。

 お伝えしたいことはまだたくさんございますが、あとは質疑応答の時間に御質問いただければと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

山際委員長 ありがとうございました。

 次に、三上参考人にお願いいたします。

三上参考人 弁護士の三上理と申します。

 日本弁護士連合会のカジノ・ギャンブル問題検討ワーキンググループの事務局長をしております。

 本日、日本弁護士連合会の意見を二つ配付させていただきました。

 二枚目からあるのが、二〇一八年四月十三日付、ギャンブル依存対策推進に関する意見書です。ここでは、ギャンブル依存対策の推進に当たって留意すべきと考えられることを述べております。

 意見の趣旨として、まず、ギャンブル依存対策は、ギャンブル依存の問題が自己責任の問題ではないことを基本的な立脚点として、消費者安全の見地から考えられなければならないこと、また、ギャンブルとの物理的、精神的な近接性の排除をギャンブル依存対策の重要な柱の一つとし、厳格な入場制限が行われるべきこと、ギャンブル依存対策は全てのギャンブルを包括して行われるべきであり、そのために独立した司令塔が必要であることなどを述べております。

 また、一枚目のところで、四月二十七日付、日本弁護士連合会の会長声明として、特定複合観光施設区域整備法案の国会上程に反対し、廃案を求める会長声明を出しております。ここでは、今カジノを解禁することについて、ギャンブル依存症対策が不十分であることなどを理由として、反対することを述べております。

 これらの意見を踏まえて、以下、私の意見を述べさせていただきたいと思います。

 ギャンブル依存症対策においてまず一番に大事なのは、予防だと思います。

 ギャンブル依存症対策とは何かということについて、今提出されている法案では、例えばギャンブル依存症の発症、進行及び再発の防止及び回復のための対策とされ、あるいはギャンブル依存症の発生、進行及び再発並びに問題の発生の防止等を図るための施策等とされています。

 その中で、ギャンブル依存症になってしまった人の進行を防ぐこと、回復のための対策をし、支援すること、再発を防ぐことももちろん大事であり、必ずやらなければならないことであり、そういう深刻な現実があるからこそこういう法案が必要になってくるわけですけれども、やはり基本的な理念として一番大事なのは、ギャンブル依存症になる人を生み出さないこと、つまり、発症を防止することなんだろうというふうに思っております。間違っても、依存症になる人がこれから更にふえたとしても、その回復のための対策と支援さえ充実していれば大丈夫というふうになってはいけないというふうに考えます。

 私は、これまで、弁護士として多重債務の問題にかかわってきました。かつて、多額の借金を抱えて返せなくなる多重債務者が二百万人とも三百万人とも言われ、貸金業法の改正がありました。そのとき、多重債務になってしまった人をどう支援するか、むしろ弁護士にとってはそういう場面でこそ活躍する機会があるわけですけれども、やはり一番大事なのは、そもそも多重債務になる人を生み出さない社会をつくることだと考えられたわけです。

 今も同じだと思います。ギャンブル依存症の経験がある人が五百三十六万とも三百二十万とも言われる中で、ギャンブル依存症になってしまった人の回復と再発防止のための対策と支援、これを放置することはできないんですけれども、やはり基本的な理念として一番大事なのは、ギャンブル依存症の発症を防ぐことでなければならないと思います。

 そのような観点から、ギャンブル依存症になってしまう人を生み出さない社会をつくるために、ギャンブルについて、時間的、場所的な近接性を排除することが必要であると考えます。

 今、いつでもどこでもギャンブルが身近にあります。駅前にはすぐにパチンコがあり、テレビでは頻繁に競馬のCMが流れています。未成年者にとっても、ギャンブルが日常的に身近にあるわけです。

 このようなギャンブルとの物理的、精神的な近接性を排除することが必要であり、そのためには、ギャンブル事業者の広告は禁止されるべきであり、ギャンブル施設への入場については厳格な制限が行われるべきであると考えます。

 また、全てのギャンブルについて、包括的な対策が行われる必要があると思います。

 現状では、競馬については農林水産省、競輪については経済産業省、競艇については国土交通省、パチンコについては警察庁と、所管が分かれています。

 昨年八月二十九日、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議の「ギャンブル等依存症対策の強化について」、取りまとめが公表されましたけれども、そこでも、それぞれのギャンブルごとに、ばらばらに対策が検討されていました。全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策が見られないことは残念に思います。

 そのような、一貫した包括的な対策の必要性という観点から、幾つか具体的に意見を述べさせていただきたいと思います。

 例えば、射幸性の抑制という問題について。

 パチンコについては、最近、出玉規制が強化されました。警察庁としては、依存症対策のために射幸性を抑えることが必要であると考えたわけです。

 それでは、競馬、競輪、競艇はどうなのか。本来であれば、競馬、競輪、競艇等の公営ギャンブルについても射幸性の抑制が必要であるというふうに思いますし、今検討されているカジノについても、民間賭博であるという特性からしても、刑法で刑罰として禁止された賭博の違法性を阻却するためにも、射幸性を抑制することは不可欠であろうと考えます。

 次に、入場回数の制限という問題について。

 カジノについては、現在、週三回、月十回までの入場回数制限が検討されているようですけれども、それでも、パチンコには毎日通っていても問題はないというふうに言っていいのかどうか。週三日はカジノに通い、残りの四日はパチンコ、競馬に通うということができるのであっては、依存症対策にはならないのではないかという疑問があります。

 パチンコについても競馬についても含めるような形で、全てのギャンブルについての入場回数制限が検討されるべきであると思います。

 また、営業時間の制限という問題について。

 パチンコについては、現在、風俗営業法と条例で、営業時間が朝何時から夜何時までと定められています。

 これに対して、今想定されているカジノは、日本で初めての二十四時間営業のギャンブル施設です。三日連続で七十二時間、家に帰らず、ギャンブル施設にい続けることができるというのでは、依存症になってしまう危険性はかなり大きいと思います。

 カジノについても、営業時間の制限は必要であるはずです。

 さらに、ギャンブルのための資金調達という問題について。

 現在、競馬場などでは、ATMのキャッシング機能を廃止したり、ATMを撤去することが検討されています。

 しかし、カジノについては、一定の金額を預けた人に対してはカジノ事業者が貸付けを行うということが想定されています。ギャンブル事業者が顧客に対してギャンブル資金を貸し付けるというのも、日本で初めてのことです。

 例えば、五百万円を預けたら三千万円分のギャンブルができるということでは、いわゆる信用取引、証拠金取引と同じです。射幸性は更に高まるのであり、大きな問題があると思います。

 このように、それぞれのギャンブルについてばらばらに対策を考えると、ちぐはぐな、おかしなことになるという問題があると思います。独立した司令塔となる機関によって、全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策を考える必要があると思います。

 この基本法案に基づいてこれからギャンブル依存症対策推進基本計画が定められ、その計画に基づいて各種の対策が行われることになるわけですけれども、その基本計画の内容、各種対策の内容について、全て推進本部に委ねるというのではなく、やはり国民の代表である国会として、今きちんとその青写真を描くということを議論して、検討していただきたいというふうに考えます。

 その際、ギャンブル依存症の発症を防止するために、ギャンブル依存症になってしまう人を生み出さない、そういう人をできるだけ少なくする社会をつくっていくために、全てのギャンブルについて一貫した包括的な対策が必要であるという基本理念を打ち出していただきたいというふうに思っております。

 私からは以上です。(拍手)

山際委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山際委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子俊平君。

金子(俊)委員 おはようございます。自由民主党、岐阜県第四選挙区から選出をさせていただきました金子俊平でございます。

 きょうは、参考人の三名の皆様方におかれましては、早朝より貴重な御意見、また御教授を賜りまして、改めて御礼を申し上げさせていただきます。

 今、三名の皆様、時間が相当短くて、もっとおっしゃりたいことがそれぞれにあったのではないのかなというふうに思いますけれども、いただいた御意見、幾つか教えていただきたいこと、また更に御教授賜りたいことがありますので、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今回、このギャンブル等、またギャンブル依存に関して、法案自体は二つに分かれておりますけれども、一方で、我が国としては初めてギャンブル等依存症に対する法案が出されたわけでありまして、しっかりと国会において議論されるということは、まずは画期的なことであろうと思いますし、昨年の十月当選をさせていただいた私が言うのもなんでありますけれども、昨年、会期の都合だったというふうに認識しておりますけれども、一度廃案になったということは非常に残念でありますし、なおさら今国会に、我々国会議員として、この法案にかける意気込みというのはしっかりと持っていかなければならないのかなというふうに思います。

 今、皆様方の御主張を、また御意見を賜っておりまして、共通していることに関しては、やはり今、私自身、ギャンブル依存症というものに関して、またギャンブル等依存症というものに関しては、誰にでも起こり得る問題なんだというふうに改めて認識をさせていただきました。

 そして、この誰にでも起こり得るギャンブル等依存症を今度は社会でいかに助けていくのか、また、我々がそれを早期に発見をして、対処をして、彼らが、また依存症と思われるような方々が社会復帰をしていくのか、そのまさに支援をしていくことが重要なんだろうというふうに思います。

 依存症自体は、薬物でありますとかアルコールでありますとか、ニュースで見ていますと、例えば買物なんかももしかしたら依存症に陥ってしまう可能性があるんだろうというふうに思いますけれども、今御意見を拝聴しておりまして、依存症が重度になる前から認識また発見をいかにできるのか、また、それをどのような場所に、どのタイミングで相談をすればいいかという体制がやはり非常に大事なのではないのかなということを認識させていただきました。

 また、加えて、多重債務問題を取り扱われている相談支援機関、また精神保健福祉センター、また自助グループ、民間の皆様方でありますけれども、活動をしっかりとやっていただいているわけで、いかにこうした皆様方と我々、行政とが連携をしていく、またそういう体制を構築していくべきかという重要性も認識をさせていただきました。

 そこで、参考人の皆様方にお伺いをさせていただきます。

 皆様方は、ふだんの業務またお仕事の中で、数多くの本人、御家族の方から御相談をいただいているんだろうというふうに思います。相談をいただいた中で、この方は、どのタイミングでどのような相談をいただいて、依存症であるか、またどのぐらいの重度の依存症であるかというのを認識されるのか。また、先ほど参考人の皆様方も述べておられました相談体制の構築、繰り返しになって結構でありますので、どのようにしていくべきかというものもあわせて教えていただきたいなというふうに思います。

西村参考人 では、今の点についてお答えさせていただきます。

 まず、どなたも、全員の方がギャンブルの依存になり得るというのは、これは確かな事実ですが、一方で、誰もが依存症状態になるわけではない、これはやはり重要な事実で、依存と病的な依存の間にはかなりの開きがあります。

 私がやっております、NPO法人リカバリーサポート・ネットワークの方では、電話相談、パチンコホールにポスターを張っておりまして、そこで年間、現在六千件の相談があります。六千件は、うち八〇%が本人からです。この方たちがやはり問題を持っていらっしゃいます。

 この人たちの相談は、依存症であるかないかではなくて、現在自分の持っている習慣で生活にどのような影響が出ているか、それをどのように修正する手伝いをするかということで、そこにおいては依存症であるかないかということはほとんど問題にはならないわけでして、その中で自分なりの調整をしていただいて、そこが難しければ、いろいろな、段階的にアドバイスをしていく、又は専門機関に紹介するという形で、ほぼ半数の方たちは電話相談だけで対応がある程度終わるというふうな形になっております。

 このような簡易介入というのは、依存症であるかないかではなくて、早期の、さまざまな簡易介入ですね、最近は、スマートフォンのアプリケーションを使った簡易介入、それからチャット、それからメール相談等、そのような多様なことが可能になってくると思いまして、このように敷居を下げるということが非常に重要だというふうに考えております。

田中参考人 お答えさせていただきます。

 私の場合は、西村先生がおっしゃったような、問題あるギャンブラーというような状況をもう超えてしまって、本当に完璧に依存症になって、周りの方たちも困り果てていて、御相談を受けるというパターンがほとんどでございます。ですので、本人から相談を受けるということはほとんどありません。周りの御家族からの御相談がもう九割です。

 相談体制なんですけれども、やはり、ここまでいってしまうと、医療においそれとつながったりもしませんし、本人にどこかに行きなさいと言っても、まずつなげることが難しいんですね。なので、私がなぜ本人を説得してつなぐことができるかといえば、やはりそれは同じ道を経験しているということが大きいかと思います。

 その、やめたくない、でもやめなきゃいけない、やめた方がずっと幸せになれるのにというところで、もがき苦しんでいる、こんな人生嫌だって本当に自分のことが嫌いになっている、そういう状況が痛いほどよくわかるという、その当事者の経験が生かせているから、こうして多くの人たちを救うことに役立てられていると思っています。

 ですので、やはり、その辺のすみ分け、重篤な依存症に陥ってしまった人たちに対しては、同じ当事者であったり、同じ問題を経験した御家族が相談に乗って、一朝一夕にはうまくいかないので、やはり長い年月がかかるんですけれども、少しずつこの状況をよくしていく、その寄り添っていくサポーターみたいな体制が必要ではないかなというふうに思っております。

三上参考人 ギャンブル依存症というのは否認の病気と言われておりますので、御本人が自覚しづらい病気であり、自覚したとしても認めたがらない病気であるというところから、なかなかそれを発見するのは難しいというところがあるんだろうと思います。ましてや、私は弁護士ですので、基本的には、ギャンブル依存症そのものについて相談を受けるということは私はありませんので。

 私が相談を受けた中で、例えば多重債務者の相談を受けたときに、多重債務の原因となっているのがギャンブルであるということがあり、例えば自己破産をして、借金の問題については解決して、銀行とかクレジットとか、まともなところからは借りられなくなった人が、闇金から借りて、それでもまたギャンブルをやってしまうというような事例に直面したりとか、ギャンブルが原因で離婚の問題になって、もう二度としないということを誓って、やり直していこうということになったのに、またギャンブルをしてしまって、結局、離婚になってしまうとか、そういうような形で、私としては、法律問題の原因となっているのがギャンブルであるという形で、ギャンブル依存症の人に直面するというところがあります。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 時間が許せば、個別具体的にどのようなアドバイスを、ケース・バイ・ケースでしょうけれども、されているのかとか等々をお聞きしたいんですけれども、残り六、七分になってしまいましたので、次、お伺いをさせていただきたいと思います。

 きのう、同僚の加藤鮎子議員の質問に対して政府参考人から、今政府でどのような具体的な対処をしているのか、政策をしているのかという質問でございましたけれども、早期に相談や治療が受けられるような環境を整備すべく、全国における相談、治療体制の整備、医師などの人材育成、自助グループの皆様や民間団体への支援の推進、学校教育の指導、啓発を推進するとともに、多重債務における相談体制の強化等々の答弁がございました。

 今回議論になっております両案ともに、この指針はうたっていただいておるんだというふうに認識をしておりますけれども、西村参考人にお伺いをしたいんですが、先ほど西村参考人からの御意見の中で、公衆衛生モデルを今後進めるべきだというふうにおっしゃっていただいたというふうに認識をしておりますけれども、今現在この政府がやっておられる施策と西村参考人がおっしゃっていた公衆衛生モデルとの中で、乖離があるという部分としてはどの部分が乖離があるのか、教えていただきたいというふうに思います。

西村参考人 その点について、お答えさせていただきます。

 本来、公衆衛生モデルというのは、地域の保健全体、生活障害等をサポートするような全体の上に、さらに、その中に精神保健があって、精神保健の中に精神医療というのがピラミッドで存在していなければならないんですが、今回のモデルというのは先に精神保健医療というところが核になっていて、地域の保健、つまり、一次予防、教育にしても、それが、何がどういうふうにパッケージとして地域のモデルとしてやっていくかが明確でないまま、最終的には、依存症の人たちを見つけて、どう発見して医療につなぐかというところに余りにも主眼が置かれていて、そうならないため、そして、ギャンブルの問題の人たちは、実は先行する障害がたくさんありまして、つまり、お金の問題がもともとコントロールできていない人たちが、ギャンブルをやめても解決しないわけです。

 そういう生活障害の支援、先行する問題も含めて、地域の中でどのようにその人が暮らしていけるかということが、まずここに主眼を置いて、その中の一つの問題として依存症があるというふうに考えていかないといけないんですが、やはりそこが少し整理されていない。ゼロと言っているわけではなくて、やはりちょっと主眼がずれているというふうに感じております。

 以上です。

金子(俊)委員 ありがとうございます。

 続きまして、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど田中委員の御意見の中で、暴力を振るったり、近所に聞こえるようにわざと大声を上げるとか、また、首をつるしながら、今からでも自殺をするという脅迫動画を送ってくるとか、本当に生々しい現状を教えていただきました。

 こういう現状というものは、大都会だけではなくて、地方でも起こり得ることだろうと思いますし、むしろ地方の方が個人的には多いのではないのかなというふうに思います。

 私自身も非常に、飛騨高山という地方出身の人間でありますけれども、昨日この国会において議論されましたデータの中では、地方の差、地方同士の差というのは特段出てこなかったわけでありまして、そこはまた今後検証していく必要があるんだろうというふうに思いますけれども、今回、両法案ともに、第六条で、国と同時に地方公共団体に対しても義務を課しております。私が今一番心配をしているのは、国は多分、ある程度の施策をやっていただけるんだろうと思いますけれども、一方で、地方公共団体はそれなりに差がついてきてしまうのではないのかなというふうに思っております。

 今回、全国津々浦々にこのギャンブル依存症の対策をしっかり講じていくために、どのように地方自治体に対してやっていくべきなのか、若しくは、地方自治体を監視するためにどのようなことをすればいいのか、もしお考えがあれば教えていただきたいなというふうに思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 先生のおっしゃるとおり、地方によって物すごくばらつきがあって、やはりモチベーションの高い担当の方がいらっしゃるとすごく依存症対策をやるんだけれども、そういった方たちはみんな三年で異動してしまうので、私たち、急に北風が吹くときもあって、その辺の人材のばらつきというのはすごく大きな問題です。

 また、地方の方独特の問題なんですけれども、地方の方ほど行政に相談に行かれないという問題があります。

 それは、まず、精神保健福祉センターとか医療というところにギャンブル依存症がそもそも相談できるというふうに思っていないという人たちが多いんですね。私もそうですけれども、これ、医者に相談できるのというふうにすごく思ったんですね。自分ちの借金の問題が、何で医者に相談するんだろうということをすごく驚いたのと、まだ本当にこの問題に触れる前に、精神保健福祉センターなんというところは全く知りませんでした。

 あとは、もう一つは、地方の方たちは、そういったところにつながると、知り合いに会うということを物すごく恐れているんですね。なので、行政に相談に行くということができないのと、わざと県をまたいで相談に行ったりすると、県をまたいでしまうと、担当の方は、県をまたぐと相談は受けられないというふうに答えられたりするんですね。

 なので、地方の方ほど、やはり私たちのような民間団体を活用していただきたい。私たちは、東京から支援に行くというようなこともできるし、近くの県から支援に行くということもできるんですね。なので、世間の目ということを恐れている地方の方たちは、やはり民間団体を活用して、そして、地域の知り合いに会わないような、そういう心配を取り除いてあげるという配慮がすごく重要だと思います。

金子(俊)委員 時間が参りました。

 貴重な御意見を賜りまして、改めて御礼を申し上げさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、与野党の合意そして委員長の采配で参考人の皆さんに来ていただけて、本当によかったと思います。お話を聞けば聞くほど、本格的に、ギャンブル等と言ってもいい、ギャンブル依存症という言い方もあるでしょう、対策の奥の深さ、必要性が認識されたものと思います。

 まず、西村参考人にお伺いをいたします。

 もともと精神科のお医者様でいらっしゃると思いますし、このまとめられたレポートを拝見していても、そもそも、我が国の精神医療に対する治療体系が長年、疾患モデルできて、地域保健あるいは精神保健というものが手薄であったことを嘆かれて、また、そこからスタートしての御発言だと思います。ですから、今回のものも、疾患モデルじゃなくて、より広い障害と考えて、それをどう包み込みながら地域生活をしていくかという観点での問題の指摘だったと思います。

 ちなみに、私は野党案の提案者なので、先生の御指摘のように、この野党案が、単に疾患モデルにとどまるものとして規定したわけではございませんが、逆に、そのような不十分性を持つのであれば、私どもも今後その点を含んでいかなきゃいけないと思いますので、御指摘をありがとうございます。

 ちなみに、私どもの野党案では、ギャンブル依存等を特定原因行為というふうにして、広くそうした依存症を起こすような行為に、全般にやはり視野を持ちたいと思い、また、その後も、これは基本理念のところで述べさせていただきましたが、十九条においては、国及び地方公共団体が、こうした活動を行う民間団体と、医療、保健、福祉、教育、法務、矯正その他全てで必要な施策を講ずるようと。願わくば、地域包括ケアの中核にこれもきちんと位置づけられていくべきことと思います。もう少し踏み込んで書けばよかったなと思います。

 まず、長年この問題にかかわってこられて、ぜひ教えていただきたいのですけれども、先ほど、シンガポール等々での取組が、いわゆるギャンブルのアディクション、ディペンデンシー以前の、先生はディスオーダーという形で言われると思いますが、ギャンブル障害で、そこから更に依存症にならないための施策に力を注いできたと。

 私は、それが王道だ、本筋だと思いますが、その際、どのくらいの予算規模、例えば、日本でAMEDが七十万人と予想するような現在依存症に進みやすい方たちの対策を、社会が担うコストとしては、どのくらいあればよいのか。これはいろいろ私もこの法案の提出前に調べたんですけれども、いい前例を発見できなくて悩んでいたところでありますので、シンガポールの例等々で教えていただければと思います。

西村参考人 ちょっと申しわけありませんが、シンガポールと日本ではやはり全く規模が違うことと、それから、日本の場合、今後、対策はやはり、パチンコホールは全部ありますが、公営競技がある自治体、ない自治体、それからIRを誘致する自治体と、全然、それから人口構成も違うので、それを、シンガポールの数を押しなべて広げていくというのはかなり危険なことになります。

 むしろ大事なことは、やはり今回、基本法なので、対策を打っていったものの評価、アウトプットを、どのように費用効果を評価していくか。その中で適正な支出を、もうここにお金を上げたからいいだろうではなくて、本来、どこに上げるとどのような効果があるかを、どのような形でアウトプットを評価していくかという、そこのことこそが大事で、今からそれをむしろこの基本法をベースにして検証していくスタートにすべきではないかというふうに考えております。

阿部委員 確かに、御指摘いただいたように、アウトプットを評価しながら必要額を見積もっていくということが大変重要なのは、他の疾患でも、予防の方がより長い目で見たら費用は少なくなるということなんだと思います。

 ただしかし、そういうことをやるにも、ある程度の予算規模がなければ、先ほど田中さんがおっしゃったように、現在六億で、民間自助団体には千八百万円ですか、とてもこれは全部の依存症を合わせた費用としてもやれない額だと思いますので、まず国会としては、必要なそうした検証、あるいはそのためにかけられる費用を求めてまいりたいと思います。

 あと、医師としての観点から一つ教えていただきたいんですけれども、いわゆる今問題になっておりますカジノは非常に射幸性が高いと、私はやったことがないけれども、予想をいたします。プラス、夜中もできるということは、これはやはり睡眠障害等加わってまいりますので、より依存症として重篤なものをもたらす危険性があると思いますが、このあたりは、今、精神医療の分野ではどのように思われているんでしょう。

西村参考人 やはり、射幸性と依存性の問題というのは常に出てくる課題ではありますが、実を言うと、射幸性と依存性の明確な因果関係というのはいまだにわかっていないんですね。むしろ、射幸性が低くても、反復していく場合に問題が起きてくる。

 つまり、依存症ではなくて問題が起きる場合は、例えば少額でも、射幸性が低いものでも、繰り返し繰り返し行っているとその中で生活障害が起きてくるということなので、やはり、問題という点からいくと、射幸性とは必ずしも一致しないというところがありますので、余りそこを直線的に考えてしまうと、この問題の対策の本質がちょっと見えなくなるかもしれないというふうには思っております。

阿部委員 もう一つの御質問であった、夜間ということですね、不夜城のようにあいておりますので。パチンコなどは朝行くともう行列ができていて、でも夜の時間は基本は遮断をされていると思います。

 私は、おっしゃったように、射幸性も確かに証明はされていない、ただ、より大きなかけ金をかけることによって得る幸福感というのも大きいところもあるかもしれないなと思いますので、その点はちょっと懸念の点でございます。

 次に、田中さんにお伺いいたします。きょうはありがとうございます。

 そして、当事者としていろいろな方の声を受けとめる、もうこれにまさることは実はないと思います。特に、子育て中のお母さんたちからの声も聞いてこられたと思います。どこにもSOSが出せない、そして結局子供を虐待してしまわざるを得ない。そうしたことに対して、これまで田中さんのお取組、あるいは社会の政策として何があればよいか、ちょっとお話をお願いいたします。

田中参考人 ありがとうございます。

 やはり、御主人がギャンブル依存症になってしまうと、本当に家庭の中のお金の問題とか、あとは子育ての問題がすごくのしかかってくるんですね。

 まず一つには、私たち、ギャンブラーの妻、通称ギャン妻というふうに呼んでいるんですけれども、ギャン妻たちは助け合って、本当に就職活動なんかをすごく支援したりしているんですね。それで、旦那の給料に頼っているのは泥舟に乗っているようなものだよということで、まずそういった人たちを就職させようということを一生懸命頑張ります。

 なので、例えば、ギャンブル依存症とか、そういった障害とか疾病を持っている御主人というふうに、何かが認定されたりすると就労支援みたいなものとかが受けられたりするということがあると、すごくありがたいかなというふうに思います。

 あと、奥さんが働いていなかった場合に、やはりちょっと保育園の問題などがかかってきて、これは今、日本人の、みんな大きな問題だとは思うんですけれども、急には働けないみたいな、年度の途中だと急には働けないみたいなふうになってしまうんですね。でも、もう旦那のギャンブル依存症はとまらないわけなので、そこで、働くことがままならないというような状況もありまして、その辺がすごく大きな課題ではないかなというふうに思っております。

 また、やはり精神的な、メンタルのサポートということで、一つには、私たちも、こういうことをやっているところがあるんだというのですごく驚いたんですけれども、赤ちゃんが生まれたときに、保健所の方が一カ月健診で自宅に来てくれるんですね。そのときに、ギャンブルの問題はないですかと聞いてくれたということで、そのとき初めて打ち明けることができたということがあったので、あれは本当にプライベートな空間なので、そういう保健師さんなんかがいてくださるとすごくありがたいなというふうに思いました。

 ありがとうございます。

阿部委員 家庭内のDVの被害の方たちには、家庭内のそういう虐待防止法が、ドメスティック・バイオレンスの防止法ができて、シェルター機能のあるところもできてと。カジノの場合も、大半は家庭内暴力も伴いますし、また生活苦も大変強いものなので、何らかの社会的な支援策、緊急避難的なものも必要かなと思って、伺いました。

 また、保健所の機能にそういうものを付随させていくという御指摘も、ありがとうございます。

 最後に、三上参考人にお伺いいたします。

 私は、冒頭の西村参考人への質疑でも取り上げましたが、やはり、夜間にカジノというものが営業されているということは、極めて人間の生物学的なサイクルを狂わせますし、この前、お相撲さんの貴闘力がカジノの依存症であったというお話の中に、やはり夜の怖さというんでしょうか、そこに向かってしまう怖さを言っておられました。

 日弁連としておまとめになったところのいろいろでも、カジノに対しての入場制限が極めて緩いという御指摘もあるかと思いましたが、この営業時間規制等々についても一つお伺いしたいのと、また、全般的な規制、ギャンブルに関連するようないろいろな、私たちの言う特定原因行為に対しての規制と、それから社会的コストの負担のあり方について、御意見があればお願いをいたします。

三上参考人 私は、先ほども述べさせていただきましたけれども、やはり、二十四時間営業のギャンブル施設、そこに三日間続けて七十二時間い続けることができるということについては、かなり深刻な問題を引き起こすのではないかというふうに思っております。ギャンブルについて途中で自分の意思でやめることは難しいという状況の中で、パチンコであれば夜何時になれば店を出なければいけないというのと違って、いつまでもいられるということは、やはり深刻な問題、大きな問題なのではないかというふうに思っているところであります。

 全体的な規制というのはなかなか難しいところはありますけれども、やはり、そもそもギャンブル依存症になる人をできるだけ少なくする社会をつくるということで考えるのであれば、時間的な、場所的な近接性を排除するということで、ギャンブルについて、包括的な規制として、入場回数制限であったりとかそういうことを考えるべきなんだろうというふうに思っております。あるいは、その人の収入に応じてかけ金額の上限を設定するとか、御自身の、あるいは家族の事前の申告によって、入場回数、金額をあらかじめ制限した上でギャンブルを行うというような、そういうことも、カジノに限らず、既存のパチンコ、公営ギャンブルも含めた全体的な規制として考えなければいけない問題だろうというふうに思っております。

阿部委員 アメリカで以前、がん対策、がんになってから治療するよりもその予防対策にお金を投入する方が本当に社会的コストも低いと言われて、アメリカは国を挙げて取り組んだ。

 実は、このギャンブル依存症の問題は、多重債務、犯罪、あるいは子供への影響、社会的なマイナスの非常に大きな、それを誰も試算したことはないけれども、非常に大きな問題だと思いますので、そうならないためにも、規制、きちんと接近を制限する、あるいはやらない、私どもはカジノについては反対をいたしておりますし、そうした上で、なお、さらに、予防策に国として十分なお金と、また地域の協力をつくっていくということの必要性について、きょうは、お三方からそれぞれのお考えを伺うことができました。

 きょう伺いましたことを私たちも糧にして、よりよいギャンブル依存症対策ができるようやってまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

山際委員長 次に、森田俊和君。

森田委員 国民民主党の森田俊和でございます。

 本日は、西村様、田中様、三上様、本当に、それぞれ違うお立場のお話を先ほども聞かせていただきまして、なるほど、そういうことかということを、改めて納得をさせていただいたというところがございました。

 私自身は、うちの亡くなった祖母に、おばあさんですけれども、ギャンブルなんかやるもんじゃないというふうに、小さいころ、パチンコ屋の脇を通ったときにそんなことを言われて育って、それ以来、そういったところにはそもそも近寄らないというところから、子供の時代から今まで至っておりまして、そういった意味では、予防という意味では、非常に祖母の教育というか、そういう言葉も自分にとっては大きな影響があったのかなというふうに思っているんです。

 私、今のお話を伺って、大きく二つの点からお三方にお尋ねをさせていただきたいというふうに思っておりますが、一つは予防という観点と、もう一つが、御本人とかあるいは御家族の支援、ケアという意味でお尋ねをしていきたいと思います。

 まず、予防という観点なんですけれども、先ほど西村先生のお話の中で、まず定義づけの問題ですよね。問題ギャンブラーと言われている五%―一〇%という方たちから始まって、いわゆる依存症レベルの一から三%、こういった、それぞれの段階というか、分類分けされるということになってくると思います。

 そこで、皆様のいろいろな御経験、お立場の中で、少し、大きく二段階ぐらいに分けさせていただいて、まず、問題ギャンブラーにならないための予防策としてどんなようなものが優先的に挙がってくるかということと、今、問題ギャンブラーを病的ギャンブラーに持っていかないための予防という観点、この大きく二つの観点で、皆様、もうそれぞれ言っていただいた点もありますけれども、確認の意味も含めて、あるいはその補足も含めて、お答えいただけるとありがたいと思います。よろしくお願いします。

西村参考人 では、今の二つの点についてですが、まず、やはり予防は教育だと思います。ただし、その教育は、例えば今薬物でやっているようなフィア教育、いわゆる恐怖教育というか、これは怖いんだ、危ないんだだけでは、若い人たちは怖いものほど行きたがりますので、かえって抑止力にはなりません。

 それよりも、一番の問題は、この遊びは何か、この娯楽を安全に遊ぶためにはどういうことかというのを、もっと、娯楽が地域にあるものとして、リスクもその遊び方も含めてちゃんと教えるということは非常に大事なことだと思います。

 これは、海外では、ポジティブプレーヤーという、いわゆる安全で、ネガティブプレーヤーに対してどういうふうにポジティブプレーヤーの状態でいていただくかという対策に移っていっている。その方が、やはり参加している人たちが受け入れやすいというのが一番の問題だと思います。あなたは依存症ですとか問題ありますと言うと、いえいえとなるんですが、ポジティブにやって、やり方にもう少し工夫をしてください、リスクが高いですと。

 ですから、それはどういう遊び、どういうゲームで、どういうふうに認知を、自分の思い込みが間違っているか、そういうものが常々フィードバックできるというのは、予防の中では大事だと思います。その部分に関しては、いわゆる自己制御の強化ですね。

 一方で、病的な状態になった人は自己制御がやはりできなくなっているので、ここに関してはより集約的なケアでとめていく。ただ、この方たちも、それでもアルコールとか薬物に比べると、いろいろな介入があるととまっていく可能性というのは非常に高いということがわかっていますので、そこに関してはより早期の集約的なケアにつなげていく。

 それから、とまった後の生活支援ですね。特に、お金の問題が、ないので、孤立と、住居がないという問題がこの依存の問題にはついてきますので、極端に言えば、そこの部分の支援をしっかりしながらケアをする。つまり、住む場所がないとケアができない。そういうようなことが非常に重要になってくると思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 まず、問題ギャンブラーへの予防は、やはり、西村先生がおっしゃったように、教育ということはすごく大事で、前、私たちの調査の中に、ギャンブルの愛好家の方たちとギャンブル依存症者になった人たちとの明確な違いというのを幾つか出したことがありまして、その中の一つが、ギャンブルに触れた、開始の年齢なんです。ギャンブル依存症になった人たちというのは、もうほとんどの人たちが十代でギャンブルを経験しているんですね。なので、その辺の若者たちに対してのそういったリスク教育ということが必要ではないかなと思います。

 また、やはり周りの人たちに誘われたりということとかお金を貸してと言われたりすることがあるので、ライフトレーニングなんかを、断り方とかそういったことを予防教育では取り入れていくことが必要だと思います。

 また、問題ギャンブラーになってしまった人たちをそれ以上進行させないためには、依存症は、周りでお金を貸してしまう人たち、尻拭いをしてしまう家族の人たち、そういった人たちの対応が依存症を進行させてしまうので、やはり周りの、特に家族に対する教育とか地域社会の方々に対する教育といったものはすごく重要だと思います。また、企業の中でもお金を貸してしまうというようなことがたくさんあるので、そういった企業教育などがこれから求められていくのではないかなというふうに思っております。

三上参考人 今お話が出たところと重なる部分があるんですけれども、やはり私としても、その、ギャンブル依存症になった人の進行を防ぐ、問題ギャンブラーから病的ギャンブラーにならないようにという意味では、ギャンブルができる環境があるかどうかというのが非常に大きな問題なんだろうというふうに思っております。

 私は、多重債務の関連でギャンブルが原因になっている人を見ることはよくあるんですけれども、ほとんどの人は、ギャンブルのためのお金を借りることができなくなったら、その時点でギャンブルをやめることができる。それは病的なところまでは行っていない人だということになるのかもしれないですけれども。そこら辺の定義はちょっと難しいところはあると思いますが。

 また、借りられなくなったらギャンブルをやめることができる人であっても、逆に言えば、借りられる限り何年も、借りられるだけギャンブルにつぎ込んでしまう、それを繰り返して、弁護士のところに相談に来て、債務整理をして、借りられなくなったときに、それでぴたっとギャンブルをやめることができるということはよく見聞きするところです。

 病的にまで至らない問題ギャンブラーという意味では、借りることができなくなった、家族が尻拭いをしてしまうということもありますし、クレジットであり消費者金融であり銀行から借りられなくなる、そういうギャンブルを続けることができなくなる環境になればおさまるということはよくあるんだろうというふうに思っています。

 そういう意味で、重なってきますけれども、競馬場であったりとかパチンコ店にATMを置いて、そこでキャッシングができるようにするというようなことは大いに問題がありますし、そういうお金がなくてもギャンブルができる環境というのをなくしていくというのは非常に大きなことなんだろうというふうに思っております。

 以上です。

森田委員 ありがとうございます。

 それぞれの皆様から、まず入り口の段階では教育の重要性ということが出てまいりまして、なかなかこの教育というのが、依存症への対策というと、ちょっと前過ぎてなかなか取り組めていないことなのかな、そこまでなかなか対応がいっていないかなということがありまして、ぜひこのあたり、これからいろいろな取組を進めていかなければいけないなという思いを新たにさせていただいております。

 そういう観点から見て、今のこの法案について、もしお考えがなければもうそれで結構なんですが、この法案をそれぞれごらんになってお気づきになった点、今のその、問題ギャンブラーになるとか、あるいは問題ギャンブラーが依存症レベルになるとかというのを防ぐという意味で、今回の法案でお気づきになった点があれば、それぞれお答えいただければと思います。

西村参考人 先ほどの中でも述べさせていただいているんですが、ちょっと対策の全体、レンジが狭いというのがやはり一番問題で、生活、その方たちがどこでどのように、例えば専門の医療機関に行って地域から離れてしまうことが果たして回復にとっていいことなのかどうか、問題解決にとっていいのか。やはり、その地域、その人が暮らしていく中で、その問題と向き合いながら、支えられながら生きていくということを中心に置くということが非常に大事。

 もう一つは、一方で、この法案の中で気になっているのは、インターネットギャンブリングが急速に広がっている中で、対策は自治体の単位になっているということです。これは、やはり、何県の方が、もうどこのものでも買えるわけです、しかも違法のものにも入っていけるという、その部分に関して一体どう扱うのかというのがこの法案の中で正直見えていないというところに、やはり危惧を感じております。

田中参考人 ありがとうございます。

 私も先ほど申し上げましたけれども、やはりこの予算の規模感というのがわからないということで、一体どの程度の対策を想定されているのかというところがすごく不安なんですね。

 今出てきているのは、省庁が相談をするとかパンフレットをつくるとか啓発の冊子をつくるとか、あとは予防教育、保健の教科書の中に入れるとか、そういった、本当に少しだけという感じが私たちの中にはしていて、やはり重篤な人たち、もう本当ににっちもさっちもいかないような人たちに、深掘りしていくための予算みたいなものというのが全然獲得されていないんじゃないかなというふうに思っています。

 そのためには、やはり、地域社会に民間団体とか回復施設とか、あとは自助グループということを充実させていかなければならないんですね。今、受皿が、ギャンブルというのは本当に著しく少ないんです。アルコールや薬物に比べて、回復施設の数も自助グループの数も圧倒的に少ないのがギャンブル依存症なんですね。そういったものの種を植えていくためには、やはり時間もかかるし予算もかかるというようなことで、私たち、それはこの範囲の中で果たして実現できるのかなということはすごく不安です。

 また、あと、人材育成なんかにもすごくこれからお金がかかると思いますし、その辺が、示されている、こういうことをやります、こういうことをやりますと言っているところが本当に入り口のところという感じがしていて、その辺の規模感というものがわからないということが不安でございます。

三上参考人 今回、基本法案ということですので、基本理念を定めて、これから基本計画を定めてという、ある程度抽象的なものというのは、基本法案の性質上、そういうものなんだろうという気はします。

 ただ、やはりギャンブル依存症対策というのは喫緊の課題ですので、今すぐやらなければいけないことはたくさんあるという中で、例えば、野党案の中で、ギャンブル関連事業者の事業の方法に関する検討として、この法律の施行後三年以内にということですけれども、公営ギャンブルについての射幸性の抑制であるとか、未成年者の入場制限の方策であるとか、広告宣伝のあり方であるとか、そういうことが法律施行後の課題として指摘されておりますけれども、やはりそういうところも含めて、この法案が施行された後、具体的にどういう基本計画が定められて、どういう対策が行われていくのかということについて、私が先ほど述べましたように、既存のギャンブル、全てのギャンブルについての包括的な一貫した対策というのを検討する必要はあると思いますし、それはやはり今の段階でできるだけ青写真を描くところをやっていただきたいと思っているところであります。

 以上です。

森田委員 ありがとうございました。

 最後に、今までお話をしていただいたようなことをいろいろ考えた上で、これから、御本人のケアだとかあるいは御家族へのフォローという意味で、行政が特に力を入れていくべき点として一番優先的に挙げるとしたらどういうことがあるかということでお答えをいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。

山際委員長 どなたに。

森田委員 お三方からお願いします。

山際委員長 お三方。時間がありませんので。

森田委員 そうしたら、西村様からお願いいたします。

西村参考人 かなり大きな話でありますが、やはり、行政、一つは予算ですね、先ほど言っている。それから、その予算に対する費用効果をはっきりさせること。そして、何よりもやはり人材の育成だと思います。

 やはり、今、アルコール、薬物等いろいろな依存の問題がある中で、それぞれがばらばらにやっていてはだめで、それを地域の中でどのような窓口をしっかりさせていくか。今回、精神保健福祉士とか看護師さんの資格の中に入れていくと。だけれども、実はこの現場で非常に大事なのは保健師さんの働きになります。保健師さんがやはり前線でこの問題を拾ってくる率が極めて高いので、そのあたりの、地域保健への重点的な支援というのもやはり必要。これは行政がなかなか見えない部分だと思うので、ぜひそこは強化していただきたいというふうに思っております。

森田委員 どうもありがとうございました。

 これから法案をどういうふうに具体化をしていくかという、基本法ですから、具体化していくかということも含めて、ぜひお三方のお話を参考にさせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

山際委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 きょうは、三人の参考人の先生方、大変勉強になりました。ありがとうございます。

 十分ずつ聞いておりましたけれども、もう少し皆様方の各分野での経験を通したお話を聞きたいというふうに思っております。

 そこで、それぞれの分野、西村参考人は、精神科医であり、またNPOの代表でもございます。そして、田中さんは、御自身も経験があり、かつ今は民間団体で活躍をされている。そして、三上先生は、弁護士として、特に多重債務の分野の問題からこのギャンブル依存症対策のさまざまな活動をされているわけでございますが、その中で、御自身の分野の中で、もっとこういう制度があれば今の自分たちのこの活動は前に進むんだけれどもな、むしろ逆に、こういう弊害があるのでなかなか進まないなという点があれば、今後、各団体の連携ということも法案には入っておりますので、参考になろうかと思っています。

 ぜひ、どういう制度があるべきか、また、どういう制度が逆に邪魔をしていたのかということについて、御自身の経験を三人の参考人の方々に語っていただければと思っております。

西村参考人 私どもは二十五年ほど前から薬物依存の回復施設の支援もしておりまして、その中で、やはり一番の問題は縦割りの行政です。その中で法律が全部違ってきます。そして、ある部分は犯罪である、ある部分は医療である、ある部分はどちらでもないというようなところが、はっきりしないというところで、なかなか固まって一つの方針が見えない。

 そして、こういう民間の活動をしておりますと、その民間の活動に対する助成というのがまずほとんどありません。そして、こういう新しいケアを構築していくのに、どうしても地域に密着しているところではなくて大学とか研究所とか国に行ってしまうので、そうすると、いろいろな、目の前にある人たちに対してどういうことをやるとどういうふうな成果が出るかということを試験的にやっていく新しいケアの体制をやるのに、やはりお金が入ってこないというので、それはそういう対策法がなくて、私はNPOの方でパチンコの依存の問題で今まで二万五千件ほど相談を受けていますが、これは公的資金は一円も入れておりません。

 現在、もう一つ、RCPGという、依存問題をもっと全体、ギャンブル依存の問題全体を考える組織をつくって、より広く活動しようとしておりますが、これも現在、私が自己資金を出しておりまして、一切公的資金は入れておりません。

 今まで、実は公的資金を入れた活動を一度もしたことがないということなので、そのあたりは、新しいチャレンジに対して、また新しいこういう依存問題のケアに対して、やはり何らかの助成プロジェクトみたいなもの、これは当事者活動も含めてですが、より統合的に考えていただければありがたいかなというふうに思っております。

田中参考人 ありがとうございます。

 やはり、国の方がギャンブル依存症対策をやれやれというふうにどんなにお声がけいただいても、地方自治体が動いてくれないと私たちは動きにくいというところがあるんですね。

 それで、先ほども言いました民間団体の助成金なんかも、民間団体の助成金というふうにうたっているのに、特定の民間団体を支援はできないというふうに地方自治体は言うんですね。そうなってくると、私たちは本当に説得するだけで疲れてしまうというような状況が起きています。

 まず、今、ギャンブル依存症対策に求められているのは、何といっても受皿です。地域で寄り添ってくれる家族、こうやって暴れられたらこうしなさいとか、逃げなさいとか、こう言いなさいとか、そういうふうに寄り添ってもらえる家族会なんかをどんどん立ち上げていきたいんですね。

 今はまだ、ギャンブル依存症の家族会は何と七県にしかないんです。なので、このギャンブル依存症の家族会をもっともっとたくさんのところにつくっていきたいというふうには思っているんですけれども、その支援が得られないということで、私たちは結局、自分たちのお金で寄附をし合ってそれをやっているような状況なんですね。

 私たちも、お給料もありませんし、本当に自腹で走り回っているような状況で、そういった支援の受皿をつくらなきゃいけないというところ。ですので、国と地方自治体の温度差が物すごくあるというところに私たちはすごく限界を感じています。

 あとは、やはり西村先生がおっしゃったように、何か大きい機関だったら信用できるみたいな、なので、国の病院とか拠点病院だったらみたいなところがあって、民間団体というのはどれだけ長いキャリアがあっても信用されないみたいなところで、本当にそこが、すごく権威に走ってしまうような担当官の方とかがいらして、その辺の理解というのもぜひしていただけたらなというふうに思っております。

三上参考人 私は、弁護士として多重債務問題にかかわっている中でということで申し上げますけれども、やはり、多重債務の原因となるのがギャンブルであるというようなケースを見るときに思うのは、先ほどの繰り返しにもなってしまいますけれども、ギャンブルができる環境がある、お金がなくても借りられる環境にあるということでギャンブルをやめられずにいるという人が多いというふうに思っております。

 現在、競馬場などでのATMの設置、キャッシング機能の停止ということについて検討されているところでありますけれども、インターネットで馬券を購入するときはクレジットカードを使うことができるんですね。ショッピングという扱いで、クレジットカードで馬券を購入することができる。

 あるいは、最近では、銀行カードローンで目的を問わず何百万円の貸付けをする、そのカードさえあればギャンブルのための借入れが何度でもできてしまう、そういう環境にあることでギャンブルをやめられずにいるということが原因になっていることは多いのかなというふうに思っております。

 あるいは、そういう借金について家族が肩がわりして、もうやめると約束したにもかかわらず、家族が肩がわりした後、また銀行から借りてしまったり、クレジットを使ってしまったり、またもとに戻ってしまうというようなこともありますので、家族への教育であったり啓発とかということも大きな課題にはなってくるんだろうというふうに思っております。

浜地委員 ありがとうございました。

 今それぞれに語っていただきまして、より私も現場の現状というのが認識をできたというふうに思っています。特に、本当に、犯罪と医療のどちらでもないところを、民間の団体の皆様方が、今は自助努力といいますか、なかなか費用もない中でやっていらっしゃる現状というものを今勉強させていただいたなというふうに痛感をさせていただいた次第でございます。

 次に、西村参考人にお聞きしたいんですが、先ほどの御説明の中で、自公維案であるとか、また立憲及び無所属の会、自由、社民案で、医療モデル型と公衆衛生モデル型というふうに少し峻別をされました。その中で、対費用の観点についてということで、納税者や事業者も含めた利害関係者が納得できる費用効果の達成という部分では、公衆衛生モデル型がいいんじゃないかというような御発言だったと思っています。この点について、もう少し詳しく述べていただければと思っております。

西村参考人 この問題は、もともとはアルコール依存の成り立ちと非常に関係しまして、イギリスでアルコール依存の問題が発生したのは、産業革命でイギリスに農村からたくさんの人たちが集まって、産業が勃発してくる、それで大都市化する中で、社会病理としてアルコールの問題が起きてくるわけです。当然、その後、そこにアヘンの問題が出てくるという流れがありまして、つまり、そもそも依存の問題というものの対策は、その町が成長しているときに最も出てくる。

 つまり、今回、いろいろな依存の問題が、これは直接IRの話ではないと思うんですが、そこは今後の日本の発展を考えて、発展していく、人がふえていく、いろいろな人が入ってくる中における一つのリスク、つまり、そこには、新たなシムシティー、いわゆる町をつくっていく中のリスクとして考えていくということが重要で、それだけを取り除くということは本来できないわけです。

 つまり、一定の、そこに関与する全ての産業、住民が町を発展させるために少しずつその負担を負う、そういう責任の問題であって、つまり因果関係の直接の負担ではない。つまり、そこの地域の保健、地域の生活を守るために、またそれがみんなで協調して発展するために、どのように自分たちが連携できるかということが大事なわけで、責任論を追及していくということは余り実はそこでは、明らかな産業廃棄物とかああいう公害とかというものになってくると、ちょっと違いますけれども。

 ごみ問題なんかもまさにそうで、やはりそういう形で、地域が、誰の責任で、誰が金を出せということではなくて、責任ではないけれども、この町をよりよくするために、つまり、最終的にはこの依存対策は全ての福祉プロジェクトにつながるというふうに考えていくところはやはり公衆衛生モデルで、医療モデルというのは基本的に病気がなくなれば平穏になるという考え方なので、感染症対策なんかはまさにそうなわけで、そこはやはりちょっと見ている範囲が、つまり、地域の産業発展ということも含めて捉えるかどうかというところに大きな差があると思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 本当、今のまた更に深い話で私もイメージが大変持てたわけでございます。

 済みません、西村参考人にばかりお聞きをしますが、きょう配付いただきました資料の中で、病的ギャンブラーと問題ギャンブラーをしっかり立て分けをするということは、これは本当は基本中の基本だったと思いますが、私、改めてお話を聞きまして、目からうろこの思いがしております。

 私、実は先日の委員会の中で、医療体制が不十分なんじゃないかというような話をさんざんしたんですが、若干反省をしておりまして、病的なギャンブラーの方と問題を抱えるところというのは、やはり対処の仕方が違うんだなということを感じた次第でございます。

 しかし、先ほどアルコールの問題も、少し具体例の話をされましたけれども、我々公明党は、一つこの病的な部分というところでいいますと、アルコールや薬物の病的依存症とやはりかぶる部分があって、有機的に連携をしなきゃいけないということを、今回、実は自公維案の中の第四条に、ぜひ我が党の主張で入れてくれということで入ったわけでございます。

 先生のレジュメの中でも、アルコールや薬物の病的依存と治療法に大差はないということなんですが、アルコールや病的な依存症とこのギャンブル依存症との有機的な連携について、どう図っていくべきかという御意見がございましたら御教示いただければと思います。

西村参考人 この点は、医者の立場として少し答えさせていただきます。

 やはり、医療化されるレベル、又はかなり重篤になった場合は、余り治療法に差がないんです。つまり、それはとめていくということしかないわけですから、その場合は、やはり一定期間そこから離れていく、極端に言えば、入院又は何らかの施設への入所とか集約的なケアが必要になってくるので、余りそこに差はないですが、その前の段階では、一つは、ギャンブルの人たちはしらふである。

 それから、アルコールのように、どんどん脳に直接薬物のような化学物質が作用していって変性を起こしているわけではないので、かなり、問題が起こるもともとの問題が、前の問題があるわけです。つまり、先行する適応の問題とかいろいろな課題があって、それがほとんどそのまま残っている方が多いので、ギャンブルをとめながらも、なおかつ、その人がもともとはまり込んでいくギャンブル以外の原因のケアというのが非常に重要になってくるわけですね。

 つまり、これは皮肉な話ですが、重篤なギャンブル依存になる人たちは、ギャンブル以外の問題を持っているということなんですね、高率に。そのケアが医療でもやはりより重篤な、ただし、アルコールとか薬物になると、もう物質でその部分がかなりゆがんでしまっているので、治療の現場になると余りそこは課題にならないというところがあって、やはりそのあたりで治療法というのは変わってはきます。

 特に入り口のところでは、アルコールとか薬物に比べると、やはりしらふなのでちゃんと会話をしていく、又は、心理的ないろいろな療法をやっていくとレスポンスが非常によいし、私たちに電話をかけてくる人たちで、まずお酒を飲んでかけてくる人たちがほとんどいないという状態がありまして、このような介入はやはり段階的にいろいろな可能性というのはあるというふうに思っております。

浜地委員 ありがとうございます。

 残り一問にしたいと思いますが、西村参考人と、あと三上参考人に聞きます。

 弁護士会の資料を持ってきていただきまして、私も日本弁護士会の一応会員の一人でございますが、資料を見ますと、いわゆるギャンブル依存症は否認の病気という記述がございます。その上で、西村先生のお話によりますと、意外と本人からの相談は、八割方本人だというのがございます。これは決してどちらが正しいということではなく、それぞれの御経験だとは思いますけれども、実際に、弁護士会では否認の病気ということを使い、西村先生の経験では、どちらかというと本人が自分から申告しているということなんです。

 このあたりを、それぞれの意見を聞くというのはちょっとおかしいわけでございますが、実際、ギャンブル依存症というのはなかなか自己申告しにくいものなのか、そうではないのかというところについて、改めてちょっと両方に聞いてみたいなと思いまして、お願いします。

山際委員長 時間が過ぎていますので、どちらかに絞ってください。

浜地委員 わかりました。

 では、三上弁護士に聞きたいと思います。

三上参考人 私が相談を受ける中で、やはり私は弁護士ですので、ギャンブル依存症になってしまいました、何とかしてくださいというふうに弁護士に相談に来ているわけではないので。こちらに相談に来た中で話を聞いているところで、ギャンブルが原因であるということがわかってくる、本人は自覚はないということは、私のところではよくある話ではあります。それは立場の違いなのかもしれないとは思います。

浜地委員 終わります。ありがとうございます。

山際委員長 次に、中川正春君。

中川委員 それぞれ参考人の皆さんには、ありがとうございました。それぞれの立場から、非常に興味深くお話を聞かせていただいています。

 もうちょっと時間をかけて、この法律、何とか役に立つように変えていきたいなという思いで今おります。そんな中で、もう少し質問を続けていきたいと思うんです。

 さっきのお話にちょっと関連するんですが、アルコール対策でもそうだったんですけれども、済みません、最初に西村参考人と田中参考人にお聞きをしたいんですが、本人を、それこそ病的ギャンブラーと認知させて、それで先生のところへ向いて連れていくというのがなかなか大変なんだということだと思うんです。

 さっきのお話だと、電話では六千件から来ているけれども、本当に治療が必要な人たちがそれで先生にアクセスできているのかどうか。そのことをするためには何をしたらいいか。

 さっき、田中参考人の話では、もうそんなものは超えているんだ、とにかくとんでもない人たちに家族と一緒に対応していくので精いっぱいだというような話なんですが、そこのところをもう少し進めていただいて、どうやってそこへ向いて連れていったらいいのか、どういう工夫を社会的にしたらいいのかということをお聞かせいただければと思います。

西村参考人 これについては、今からもう二十年近く前になるんですが、カナダのやはり公衆衛生モデルの中でステップド・ケア・モデルというのがありまして、最初、やはり本人が気がついていなくて、機会的に、家族とか、それから何かのトラブルで問題を把握するということから起こりまして、次に、どう動機づけしていくかという段階がありまして、そのときに、やはり敷居を低くして、次に、機会介入から電話につなぐ、それから電話の中のサポートにつなぐという、その段階的にやっていく中で本人を連れていく、一つはそういう緩やかなやり方。

 もう一つは、かなり重度の場合、例えば、精神医学的にうつがあったりとか、それから自殺の問題があったりした場合は、これはむしろ精神科が救急的に介入する。

 それが、どうしても今のところでは、ギャンブルの依存だというと、精神科救急とか言われても、自殺を企図しない限り入らない、そのあたりの問題というのがあって、そのときに、やはり医学的な適切な、ギャンブルですねではなくて、なぜこうなったかという評価をしていくというところが必要です。ただ、やはりそこが余りにも今のところ途中がないので、家族がずっと深刻になるまであちこちに行っている。

 ただ、電話相談の場合、七〇%の人が過去に相談経験がないので、まずファーストコンタクト、それで役に立つかどうかということよりも、一本目の、いわゆる精神保健の相談につながる敷居をとにかく下げていく。そこで相談をして、次に、行動を起こすモチベーション、動機を少し高めていく。やはりこういうアプローチは、地味ではありますけれども、一番きくだろうと思います。

 そして、その上で、重篤な人たちに対しては、やはりこれはもっといろいろ対策を考えなければいけなくて、ここに関しては、精神医療自体がこの問題にどう取り組んでいくか、もう少し意識を変えていってもらわないと難しいかなというふうに思っております。

田中参考人 ありがとうございます。

 私の場合は、夫を、もうこの人おかしいというふうに思ったんですけれども、自分が依存症になったというふうには全然思わなかったんですね。この人を何とかしてくださいというふうには思ったんです。やはり、自分を振り返ってみても、自分がおかしかったというふうになかなか気づけないなというふうに思っているんですね。

 一つには、私たち、相談を受けていて、一回ぐらいお医者様にかかって、家族の手前、一回ぐらいかかるんだけれども、俺はやっぱり違う、あんなのとは全然違うとか、あんなやつらとは違うみたいなふうになってやめてしまうというパターンもすごく多いので、せっかく連れていっても、余り、そんなにその気になっていない人たちに効果がないのかなというふうに思っているんですね。

 あともう一つは、まだ現在は医療の方も診断基準がばらばらで、本当に家族が苦労をして、何十年も尻拭いをして、お医者様にせっかくつながったのに、お医者様に、まだ依存症までいっていないみたいなことを言われてしまって、水の泡になってしまうというような現実もあるので、必ずしも何かそういう医療につながるということがいいこととは思っていないです。

 私たち、じゃ、何で回復するのといったら、お金でお手上げになるというのはすごく効果があるんですね。

 今、昔に比べて、ギャンブル依存症の期間が短い期間でつながってくる人たちがふえたんです。それは、サラ金の総量規制が入ったことはすごく大きかったんですね、あそこからやはり時代の変化があったので。お金で行き詰まるというのはすごく大きい効果がある。

 だから、結果として、周りの人たち、この一億二千万の国民の人たちに、お金を貸しちゃいけないとかギャンブル依存症で誤った対応をしちゃいけないということが知れ渡っていくということは、すごく大きな抑止力になる。

 本当に依存症が進んだ人たちというのも、嫌々なんだけれども、もうそれしかないから仕方なくつながってくるというような状況があると思うんですね。仕方なくつながってきても、私なんかの場合も、人の話を聞いているうちに、ああ、そうなのか、やはり自分も同じだなというふうに思える瞬間があったんです。そこから回復できたので、やはり、嫌々でもつながってくる、そのためにはお金で行き詰まる、そのためには教育が必要というふうに思います。

中川委員 三上参考人にお尋ねをしたいんですが、この問題を考えるときに、一つは、ギャンブルというものの性格上、事業者があって、それが、さっきもお話が出ましたが、射幸性ということと、日常性の中でどれだけアクセスが簡単にできるかという、この二つの要因をどうコントロールしていくかという課題が一つあるんだと思うんですね。

 それが一つと、それからもう一つは、実際に依存症になった人、あるいはなりかけている人たちに対して、どんな予防をして、それに対してどう対応していくか、あるいは治療していくかという、この二つの側面があると思うんですよ。

 私は、先生の言われる包括的なルールでやらなきゃいけないというのは、その前段の部分で、いわゆる射幸性というものと日常性に対してどういうふうに入り口をつくるかという、その距離感ですね、これを一つルール化していくということが包括的に必要なんだろう、こういうふうに思うんです。

 実は、包括的にやろうと思ったら、今回、非常にいいチャンスなので、依存症ということを軸にして、そうした部分を包括的にこの中へ向いて組み込めないかというのが私の今の意識なんですが、そういう組み込み方をするか、あるいは、もう別個、ギャンブルに対しての事業法みたいなものをトータルでつくって、その中でやっていくかということになると思うんですね。

 これは、我々立法府の中での議論で、それこそ利害調整しながら事業者との間でやっていくんですが、これに対して不作為だったということだと思うんです、ある意味行政府が。

 というふうに思っているんですけれども、ここをそう切り分けたときに、先生のお立場として、これはどういう形で法制化をしていくか、あるいはどこで包括的にそこのコントロールをするか。

 今出ているIR法の中では、そうした監視委員会みたいなものをつくりますよと言っているけれども、これはIRを対象にしたものであって、ほかは違うんですよね。だから、そういう意味でも、こういうようなものを包括的につくるということがいいのか、それとも、また別な形で考えられるのか、ちょっと一緒に考えていただいて、示唆をいただければありがたいなというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

三上参考人 非常に難しい問題だと思っているんですけれども、ギャンブル事業者にとっては、特に民間の事業者が主体となる場合にはということになるかもしれないですけれども、できるだけ顧客がリピーターになってくれるように、繰り返し何度も来ていただけるように、端的に言ってしまえば、顧客にできるだけ依存症になっていただくことが一番利益を上げる方法である。そのギャンブル事業者に対して、顧客の依存症の発生の防止のために最大限の配慮をするというのは、特に民間の事業者がカジノ事業をやる場合には非常に難しい問題ということになるんだろうと思っております。

 この包括的な規制ということを考えるに当たっては、やはり、今御指摘あったように、ギャンブル依存症基本法案というのはいい機会なのかもしれないという面は他方で私にもありまして、今までのように縦割り行政の中で競馬は農林水産でパチンコは警察でとかいうのではなくて、今ここでつくられる依存症対策推進本部というものが、個別のギャンブルについてそれぞれ考えるのではなくて、全体的なギャンブル依存症対策というのを考える、そういうふうになるべきだと思いますし、そうならなければ意味がないということになってしまうのではないかな。

 ちょっとどこまで参考になるかわからないですけれども、消費者行政については、消費者行政の司令塔ということで消費者庁ができまして、その下に消費者委員会というものをつくって、内閣総理大臣に建議をするというようなことも含めて、独立した司令塔として消費者行政を担っていくということになっていますけれども、ギャンブル依存症対策について、独立した司令塔として包括的な対策を考える機関があるべきだろうというふうには思っております。

 以上です。

中川委員 ありがとうございました。

 最後にお聞きしたいのが、特に田中参考人それから三上参考人なんですが、これは単独で起こってくるわけじゃなくて、さっきの話で、多重債務がそれに伴ってくる、あるいはひょっとしたらアルコールの依存症なりDVなり、さまざま社会的現象の中で、躁うつになって自殺とかというふうなこと、それぞれがかみ合っているんだ、かみ合っているというか、サイクルを起こしているんだと思うんですね。

 その中で、御指摘があったように、民間団体、自助団体がつくられ、あるいは回復施設がつくられ、弁護士さん、司法書士さんや児童養護施設だとか、自殺対策だとか、さまざま縦系列であるんですが、これをいかに連携させて、トータルでケアをしていく、問題解決をしていくというような仕組みをつくらないといけないんだろうというふうに思うんです。

 これは地方自治体レベルで恐らくそれが必要なんだと思うんですが、アルコール対策の場合は、基本政策を国でつくりなさいよ、それに基づいて、地方でそうした意味も込めてやりなさいよ、こうなっているんですが、この法案については、国のレベルでそれがとまっている、そういう問題もあるなと私は思っているんですが。

 それを地方レベル、身近なところで連携させるとすれば、どのような形の組織化あるいはネットワーク化をしていったらいいか、また行政がそれにどうかんでいったらいいかというのを、実態の中で、もうそれこそ日々の中で感じておられると思うので、よろしくお願いしたいと思います。

田中参考人 アルコールの先行のモデルというのがすごく私たちには参考になっておりまして、私たちのように、アルコールの方ではASKさんという民間団体がございまして、そこが国の基本計画をすごくなさっているんです。

 ASKさんとよく話すんですが、研修みたいなことをやったり会議をやるということでは余り連携というのがつくられないんですね。それよりも、やはり保健師さんのような方にハブ機能を持っていただいて、地域で起きている事例に対して、保健師さんが中心になって、関係する人たちを呼び込んで、そこで事例検討みたいなことをやって、その人にかかわっていく方がうまくいくんですね。

 なので、何か大病院が研修をしてというような形よりも、各地の保健所さんが小さな連携をつくっていった方がうまくいくように思っております。

三上参考人 貸金業法の改正のときにも、多重債務問題はいろいろな問題にかかわっておりまして、虐待の背景に多重債務の問題があったりとか、税金の滞納の背景に多重債務の問題があったりとか、そういう税金を扱う部署、虐待を扱う部署と消費者センター等を含めていろいろなところに多重債務とは別の問題で相談に来た人について、多重債務の問題があることを発見して、相談につなげていくということをやっておりました。

 今回もそれと同じ話になってくるんだろう。ギャンブル依存とは別の問題で、多重債務の問題として、離婚の問題として、弁護士としてはそういうことになりますけれども、刑事事件としての犯罪であったりとか別の問題で相談に来た人に対して、ギャンブル依存があることを発見して、相談につなげていくということが必要なんだろうと思っています。

中川委員 時間が来たようです。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 三人の参考人の皆さんには、それぞれ貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 私の方からは、やはりギャンブル依存症の問題を考える際に、今政府が提出をして審議に入っておりますIR実施法案、カジノの解禁について、まずお尋ねをしたいと思っております。

 三人の皆さんにそれぞれお尋ねしたいんですけれども、やはり、ギャンブル依存症者を減らそうという今回の法案ではありますけれども、新たにギャンブルをつくるという仕組みになるわけです。そういう点で、制度設計上、世界最高水準のカジノ規制ということも言われているんですけれども、このIR実施法案におけるカジノ規制についての評価について、お三方にそれぞれお答えいただけないでしょうか。

西村参考人 この会は、いわゆる依存症対策のところなので、カジノの規制について私がお答えするのはどうかと思うんですが。

 現在、実施法等の中で依存症対策という名前の中で行われているものが、一体どの程度本当に実効性があるのか。それから、海外での対策をしてきたエビデンスのレベル、また研究者の目から見ると、やはりかなり奇異に見える部分があるというところがあります。そこはやはり、世界最高水準ということ、国内の事情もありますが、世界の評価というときには、これはどうなのかなというのは正直感じる部分はあります。

 あとは、カジノというのとIRというのは本来私は別のものだと思っておりまして、IRのないカジノもありますし、IRのあるカジノもありますし、カジノのないIRもあるので、そこの部分は少し、規模もあるので、一つを置いて全てカジノの中の対策、依存症対策というと、余りにもざっくりし過ぎていて、今度、国内における規模の中におけるフロア内の問題か地域の問題かというふうに少し分けていかないと、なかなかこの問題の規制の効果というのを評価するのは難しいかなというふうに思っております。

田中参考人 ありがとうございます。

 実は先生、私、はまったギャンブルが競艇とカジノなんですね。なので、カジノのことはすごく本当にかつて大好きだった人間として申し上げますが、入り口でやられている規制、いろいろ出てきている規制というのは、あれはギャンブラーにとって余り意味がないかなというふうに思っています。

 六千円の入場料みたいなものというのは、こちらは、やはりカジノに行ったときは何十万、何百万取り返してやろうと思って行っているので、六千円ぐらい取ったからといって、別にどうということないなというふうに思っちゃうんですね。

 あとは、入場規制といっても、本当に月何回というのが果たして効果があるのか。日本には、それこそ闇カジノもたくさんありますし、やろうと思えばオンラインカジノもありますし、そもそも海外に行けばいいことなので、あの入場回数の制限というのが果たして効果があるのかなというふうにも思っています。

 唯一、入り口の規制で効果があるなというふうに思うのは、家族と本人の申告です。あれは、やはり海外でもエビデンスありますよ。私たちの経験からいっても、あれは効果があるんじゃないかなというふうに思っているんですね。

 何よりも、何かお金の話ばっかりして、あいつ、金が欲しいのかなと思われていないかと思ってちょっと心配なんですけれども、やはり海外のカジノというのは、〇・一%から〇・五%の、売上げからギャンブル依存症対策費に回すという明示があるんですね。でも、今度の制度設計でもやはりそれがないということで、結局、公益に回すみたいな感じになっているんですけれども、その公益の中にギャンブル依存症対策が入っていないわけですよね。なので、私たちとしては、そこが一番片手落ちじゃないかなというふうに思っております。

 元ギャンブラーの経験からですけれども、以上です。

三上参考人 入場回数制限について、一週間三回、月十回という制限が依存症対策になるのかどうか、入場料六千円という金額がカジノ施設に安易に入場することを抑止する効果を持つのかということについては、非常に疑問を持っておりますし、そういう依存症対策としての効果があるとは言えないんだろうというふうに思っております。

 何よりも、今ここで依存症対策基本法案について審議されて、依存症というのが非常に深刻な問題になっているということを踏まえて、これから基本計画をつくって各種の取組を進めていこう、実態把握等をやっていこうというときに、新たにカジノをつくって新たな依存症の人をふやしていくというのは、非常に大きな矛盾なんだろうというふうに思っております。

 以上です。

塩川委員 それぞれ貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 私は、きのうの質疑の中でも、法案の提出者の方々に、この法案はギャンブル依存症の方を減らしていこうという法案ですねということを、そうですという確認をいただいたわけです。その場合に、既存の公営ギャンブルやパチンコなどもある、それに新たに、刑法で禁じられている賭博を解禁する、カジノを導入するということは、これは相入れないんじゃないですかということもお尋ねしたんです。

 ですから、今回の法案とまさに密接にかかわっているのがカジノ解禁を核とするIR法案であるわけです。私、率直に、カジノを解禁すれば、新たなギャンブル依存症者をふやすことにつながると思いますので、お三方にお尋ねしますが、こういったカジノ解禁はやめるべきではないかと思うわけですけれども、お三方の御意見をお聞かせください。

西村参考人 これにつきましては政治的な判断ですので、どうあるべきかというのはなかなか難しいんですが、ただ、対策をとっている側としては、現実問題、カジノができたエリアで対策を重点的にやっているところでの、ギャンブルの依存の問題を持っている人たちが開設前よりも減っていくという問題、それから治安の改善等々、やはり産業がある程度地域に投資をしていくということで社会問題をある意味起こす部分と抑止する部分というものが、これは両方、両面あると思うんですね。

 いかにその部分がバランスよくされるかであって、それが基本的に、カジノであろうが町の工場であろうが、どんな産業であれ、そこに来れば、例えば、私は沖縄にいますが、沖縄はインバウンドで今経済を活性化させております。その結果、何が起こっているかというと、今、感染症の問題が出ております。これは引き受けざるを得ない問題なんですね。

 何をとるかというのは、それは今後の、国益の問題であって、その中の一つとして、カジノというよりもIRというものを使う、そこは、やはりそれなりの覚悟の上で対策をしていくということであれば、いかにイニシャルの、今ある問題をより減らす。さらに、ギャンブルだけではなくて、他の、福祉財源がなくなっていく中でこれを活用するか、そこは知恵の問題であって、純粋にカジノがよいか悪いかという話だけでやはり議論するべきではないというふうに思っております。

田中参考人 ありがとうございます。

 私も、本当にギャンブル依存症者として思うことは、やはり、もしカジノができたとしたら、相当今ある既存ギャンブルに対しても規制がかけられるようであれば、総体的にギャンブル依存症を減らすことができるというふうには思います。

 例えば、今マイナンバーで管理するみたいなことがカジノで出ていますけれども、あれを、マイナンバーとかはやめて、もうちょっと出回っている運転免許証とかその程度の身分証明書で、パチンコとか競馬とか公営競技にもきちんと、機械を開発して年齢制限なんかをきっちりできるぐらいのことまでできれば、総体的にギャンブル依存症を減らすということはできるんじゃないかなというふうには思っています。

 息抜きとしてギャンブルということを楽しみたい人たちがいるという気持ちは本当に重々わかるんですけれども、本当に依存症対策がどの程度できるかというところ、そこがどこまで踏み込めるかということがカジノの是非にかかっているのではないかなというふうに思っております。

三上参考人 先ほど述べましたけれども、依存症対策についてこれからやっていこうというときに新たなカジノ施設をつくることは矛盾であるというふうに私は考えておりますし、少なくとも、今、特定複合観光施設区域整備法案として提出されているものについては、依存症対策は不十分であるというふうに言わざるを得ない内容だと思っていますので、これをつくることによって依存症の人が減るということはあり得ないだろうというふうに思っております。

 カジノについて、高い経済効果が期待されていると言われていますけれども、そこで期待される経済効果の中身は何かというと、突き詰めれば、単純に言えば、ギャンブルで負けた人のお金ということになるわけで、依存症の人をふやしていくことによって経済効果を上げる。それだけの経済効果を上げるためには、それだけ多くの人の生活が破壊されることになる。人の不幸をもとにして経済効果を上げるという経済政策でいいのかどうかということについては、私は反対意見を持っております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、田中参考人にお尋ねします。

 依存症者の団体をつくられて、支援を行っておられる。そういう点では、アルコールと薬物とそしてこういったギャンブルと、それぞれ団体の方がやっていらっしゃる、いろいろな努力をなされておられるわけです。

 そういった依存症に係るような、そういう自主的な運動をされておられる方同士の連携といいますか、それぞれの役割とそういう連携と、その持つ意味も大きいのではないかなと思うんですが、そういう点での体験、経験などを踏まえて、お聞かせいただけないでしょうか。

田中参考人 ありがとうございます。

 本当に、カジノのこの問題が出てギャンブル依存症対策ということが言われるようになって、初めて私たちも、アルコール、薬物、ギャンブルの御家族が連携するということが始まったばかりなんですね。

 それで、やはりギャンブルの基本法ができたら、アルコールはできたし、ギャンブルはできたし、次は薬物というふうに、私たち、悲願として考えております。そして、依存症ということが包括的に社会の中で認知されていけばありがたいなというふうに思っております。

 ただ、薬物の御家族というのは、なかなか声を上げたりとか、やはり違法であるということがあるので、顔出しで発言したりということはできないので、アルコールとかギャンブルの家族がその分を助けていくというようなことは必要ではないかなというふうに思っている。

 やはりアルコールに関しては社会が受け入れている部分というのもすごく多くて、それがよしあしなんですけれども、アルコールというのはたくさんの味方がいるんですね。お医者さんもたくさんかかわっていらっしゃいますし、何より議連もありますし、ほかにも、長い歴史があって、断酒会さんという地域に根差した活動をされている方たちがいて、またそういう方たちがたくさんの連携や知恵を持っておられるということがあるので、私たちのような、本当に今始まったばかりのギャンブルとか、あと、なかなか声を上げられない薬物というのは、アルコールの方々が敷いたレールに乗るというか、そこで耕していただいた土壌を使わせていただくということで、大変恩恵を受けております。

塩川委員 ありがとうございます。

 三上参考人にお尋ねいたします。

 日弁連のギャンブル依存対策推進に関する意見書で、ギャンブルとの物理的、精神的近接性の排除をギャンブル依存対策の重要な柱の一つとすべきことという話のところであります。

 依存症が疑われる方々に対してのさまざまな相談活動ですとか支援を行うと同時に、やはりギャンブル事業者に対する規制というのをしっかり行っていくということが必要だろうと思うんですけれども、こういう点で幾つかの例示もされておられるわけですが、その中身はどのようなものなのか、また、その意味するところがどういうことなのか、こういうことについて御説明いただけないでしょうか。

三上参考人 やはり依存症対策、予防という意味で一番大切なのは、今のように、時間的、場所的に、いつでもどこでもギャンブルが身近にあるという状況を変えていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、ギャンブル事業者のCMがテレビで普通に流されていると子供も目にするということがあり、駅前のすぐ近くにパチンコがあって、そこからにぎやかな音が聞こえてきて、子供と一緒にその目の前を通るというようなことがあり、子供のころから身近にギャンブルがあるという状況で育っていくことについては、非常に問題が大きいのではないかというふうに思っておりますというのが一点です。

 もう一点は、入場回数制限等入場制限という問題になってきますけれども、やはり全てのギャンブルを包括した形での入場回数制限等というのはあるべきだと思いますし、自己申告、家族申告による制限というものも、カジノだけではなくて全てのギャンブルを包括したものとしてやっていく必要があるんだろう。

 あるいは、収入に応じてかけ金額の上限を決めるとか、いろいろ、いつでもどこでも簡単にギャンブルができるという状況を変えていくためにやらなければいけないことはたくさんあるんだろうというふうに思っております。

塩川委員 実際に依存症で大きな比重を占めるのはパチンコですけれども、パチンコは一万店舗ある、こういった出店規制のような、そういった取組についてはどのようにお考えでしょうか。

三上参考人 出店規制というのもあるべきだろうと思っております。

 出玉規制ということがやられましたけれども、出玉規制ということよりも、やはり、どこに行っても何軒もパチンコが目の前にあるという状況でいいのかどうかということについて、風俗営業法の中でも、もうちょっと今の状況というのは、学校の近くにも駅の近くにも、どこにでもパチンコが並んでいるというのは変えなければいけないのではないかというふうに思っております。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

山際委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一です。

 先ほど田中参考人の方から、いろいろ、大声を出すとか、首をつるふりをするとか、包丁を振り回すとか、そういう社会問題が発生するような状況を民間団体が、実は国が本当はどんどん率先してやらなければいけないのを民間団体に頼っているというのが現状であるという部分であるにもかかわらず、予算が大変少ないというようなことを聞きまして、大変驚いたわけです。

 一方、田中参考人は、祖父、お父様、御主人、御本人、正真正銘のギャンブラーとでもいいましょうか、まず最初に、どうやって御本人が依存症から脱却できたのか、御家族はどうだったのか、そのきっかけを教えていただきたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 時代ということもあるかと思うんですが、祖父と父に関しては、生涯ギャンブル依存症で、亡くなりました。祖父は亡くなる二週間前までパチンコに行っておりましたし、父は一千四百万円の借金を残して昨年亡くなりました。

 私と夫がなぜ回復できたかというと、やはり一つには、ギャンブル依存症が病気だという情報を、十五年前、本当に数少ない情報だったんですが、キャッチできたことです。

 それによって、本当に私たちはお金がどうにもならなかった、二人の小さい子供を抱えていたのにもかかわらず、本当に幼稚園の学費も払えないんじゃないかみたいな状況になっていたので、これはどこかに、誰か助けてほしいというふうに思って、クリニックの門をたたいた。そして、クリニックのファーストコンタクトがすごくよくて、依存症回復の自助グループに行きなさいというふうにアナウンスしてもらったんですね。

 そこで、自助グループに行ったときに、そんな惨めな人たちの集まりに行くのは嫌だというふうに思ったんですけれども、ほかに手だてがないよというふうに言われたので通っているうちに、三回ぐらい通ったときに、ああ、ここは自分に必要な場所なんだなということに気づくことができました。

 どうしても行きたくなるんですね。ストレスがたまると行きたくなるんですけれども、そこに仲間たちがいて、もう行きたくてしようがないということを泣きながら電話をしていました。そうすると、わかった、じゃ、あした行っていいよ、きょうだけやめよう、一緒にミーティングに行ってあげるから、きょう一日やめようよというふうに寄り添ってくれるんですね。

 そして、泣きながら、本当に行こうかどうしようかということを悩んでいると、どこにいるのか言いなさいというふうに言われて、駅まで迎えに来てくれたりということで、本当に二人三脚で仲間たちに寄り添ってもらって、きょう一日、きょう一日というふうにやめることができて、そして、気がついたら一年、二年、五年ぐらいたったときに、ああ、ちょっと生き方が楽になったなというふうに思えました。

 ありがとうございます。

串田委員 お金がなくなるというのが一つ大きいと思うんですが、一方、お金がなくなる理由としては、商売に失敗したとかリストラに遭ったとか、そういうことがあるかと思うんですけれども、そういう人たちは、大声を出したりとか包丁を振り回したりとかというのが比較的少ないのかなと思うんです。

 そういう点で、田中参考人と三上参考人にお聞きをしたいんですが、同じ多重債務あるいは債務を負っているという部分の中でも、ギャンブル依存症による債務あるいはお金がなくなったということとそうでない部分の一番の違いというのはどこにあるんでしょうか。

田中参考人 私も後でわかったことなんですけれども、それはやはりギャンブル依存症という病気の特徴だというふうに思います。

 脳の疾患なので、ギャンブル依存症の場合は、やっていないと、いらいらいらいら、そわそわそわそわしていて、その強迫観念に耐えられないんですね。

 これは本当に経験したことのない人にはなかなかわかっていただけないと思うんですけれども、本当にいても立ってもいられないし、やめなきゃいけないこともわかっているし、この苦しみをどうしていいかわからないということで何かに当たってしまったりとか、私自身も、本当にもう死のうと毎日思っていたので、睡眠薬をビールで流し込むようなことをしていたので、死ぬか生きるかという瀬戸際を生きているという気持ちはすごくよくわかるなというふうに、それは本当に強迫観念だと思います。

三上参考人 多重債務になる人の中で、ギャンブル依存症の人とそうでない人と明確な差があるのかということについてですけれども、私が経験している中では、何度もギャンブルを繰り返している人でも、借りられなくなったらぴったりとやめられる人もかなりいる。実は、ほとんどはそうであろうというふうに思っている。ただ、そうであっても、借りられる限り、ギャンブルができる環境にある限りやめられないという人が多いのかな。そういう意味では、余り人としての違いというのは感じない部分が多いところではあります。

 ただ、多重債務になる人の経緯として、いろいろ事情を聞き取っている中で、やはりいろいろな原因が積み重なっている方が多いんですね。失業であったりとか、病気であったりとか、子供の教育費であったりとか、いろいろな原因が積み重なって多重債務になっている人が多いという中で、ギャンブル依存症だったりとか、買物依存症だったりもそうですけれども、長年にわたって同じことを繰り返してしまって、多重債務の原因としては、本当に単調な原因で、一つの原因を繰り返すことによって多重債務になっているというのがギャンブル依存であり、買物依存でありということになるのかなというふうに思っております。

串田委員 先ほど田中参考人の方から、入場の制限が六千円というのは、その後取り戻してやるぞというのがあったというお話を聞きましたので、貴闘力さんのお話も先ほどありましたけれども、ビギナーズラックというか、最初に勝ってしまうと、のめり込んでしまうという話もあったので、他の債務者と違って、取り戻せるというような部分がかなり要素としてあるのかな、ちょっとそんなような感じもしたんです。

 次に、西村参考人にお話を聞きたいと思うんです。

 定義のことについてはすごく参考になったんですけれども、アルコール依存症というのは、恐らく、依存によって肝硬変だとか、そういう依存自体が非常にぐあいが悪いという状況があると思うんですけれども、ギャンブル依存症の場合、例えば、かなりお金を持っていて、唯一の楽しみがパチンコで、朝から晩までいる、ただし、それが生活に支障を来さないぐらいお金はある、ただし、相続人からしてみると、お金を残しておいてほしいというような部分があるわけで、ここが一番定義の違いになるのかな。

 依存症ではあるんだけれども、生活や社会的支障が生じないで、朝から晩まで楽しいから行っているという、完全な依存症、でも生活に支障がないというような人は治療が必要なんでしょうか。

西村参考人 治療は必要か。医学的治療は必要ないと思われます。

 それは、例えば株をやっている方、それからトレードをやっている方もそうですし、極端に言えば骨とう品趣味の方とかも、やはりこそこそとずっとやっていて、それが家族の中で、まあいいだろうという許容範囲の中で折り合っていればいいわけで、そこはやはり余り医学がその中に入り込んでいくものではない。

 ただ、その人たちはハイリスク群として、その方が、例えば連れ合いさんを亡くしたとか、子供さんを亡くしたとか、退職したとかいうことに、結局、ギャンブルの問題がバランスを崩していくときの一つの問題は、孤立と、コミュニケーションが途絶えていくことなんですね。

 やはりその孤立の問題というのが起きたときに悪化していくので、むしろ、そういう方が参加しているときに、毎日来られている方であれば、いかにパチンコホールの従業員の方たちが気をつけて見てあげられるか、そういう文化をつくっていくというのが予防策の一つとして、実は今そういう取組もさせていただいております。

串田委員 依存はしているけれども恐らく日常生活や社会生活に支障が起きないということになると、誰も問題にしないということなんだと思うので、そういう意味では、依存ということ自体を捉えていくとちょっと方向性が違うのかな、やはり日常生活や社会生活に支障を来すということ自体が一番核心的な部分なのかな、そういうふうにちょっと私は思っているんです。

 次に、田中参考人にお話をお聞きしたいんです。

 先ほどから、いろいろ説得というようなことで、田中参考人はいろいろ御自身の経験だとかいったようなことがあったのでそういう説得力があるんだと思うんですけれども、今後、そういうようなことを、予算を費やしても、恐らくそういう人員というものを配置していかなきゃいけないというときに、スキルを育成するということはどういうような方法で、団体をやられているので、そういったところもやっていらっしゃると思うんですけれども、御自身の経験から、そういう説得をしたりする要員の養成というような部分で、どんなことを注意したらよろしいでしょうか。

田中参考人 ありがとうございます。

 実は、私のようなこういう介入する者をインタベンショニストというんですけれども、日本ではこの介入者ということが全然知られていないんですけれども、アメリカとかヨーロッパでは、インタベンショニストというのは職業として成り立っていて、もう何万人もこの職業に携わっている人たちがいるんです。私も、これをやるときに、アメリカで研修を受けてきました。

 一つには、やはりアメリカでこういう介入者の、携わっている方たちの研修みたいなものを日本に招聘して、人材育成をやるということは一つあるかなというふうに思います。

 それともう一つは、ただアメリカのをそのまま持ってきても、文化が違うので、少し変えていかないとうまくいかないんですね。なので、日本でこういう介入なんかを、今、私のような直接的な介入だけじゃなくて、オープンダイアログとかいろいろな手法というのが日本なりに、もういろいろ開発されているので、そういったことで、わずかながら、数人しかいないんですけれども、そういった人たちが事例なんかを検討してスキルを伝えていくということでやっていく、何回かに分けてやっていくと、少しずつこのような介入者が育っていくのではないかなというふうに思っております。

串田委員 次に、三上参考人にお聞きをしたいんです。

 時間と場所というのが非常に重要であるというお話があるんですけれども、一方、今、IR法案というのがありまして、これはMICE市場が非常に日本は今弱いというところの中で、てこ入れをするというようなことも考えているわけなんです。

 その場所が上限的に三カ所ということなので、時間と場所という意味では、三カ所という非常に数が私としては制限されていくのかなという部分と、先ほどちょっとお話がありました、パチンコは一万店舗以上のホールがあるということと、一方で、今、若い人たちがFXや仮想通貨、これは非常に射幸性が強いと思うんですね。ところが、今回の成人年齢が引き下げられるということに対しては、一般的な競馬、競輪は二十歳までといいながら、FXやそういう仮想通貨というような、それこそ二十四時間パソコンとにらみ合いっこすれば幾らでも取引ができる、そういうような部分があるんです。

 先生のお立場としては、そういう部分の、先ほどのIRも含めてなんですが、何が一番問題になっているのかということの認識、今のFXなんかも含めましてどうお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

三上参考人 今検討されているIRということについて言えば、パチンコのように、身近に、駅の近くに、学校の近くにあるというものではないというところで、場所的なものでいえばかなり限られたものにはなるんだろうとは思いますけれども、やはり、二十四時間営業のギャンブル施設を日本で初めてつくる、場所的に制限された場所に二十四時間三日間、七十二時間い続けることができるということについては問題が大きいんだろうというふうに思っております。

 FXとか仮想通貨についてこの場で言及することが適切かどうかというのもあるんですけれども、未成年者がパソコンとずっとにらめっこしているというような問題が生じるということについては、これはこれでまた別の問題としてあるんだろうというふうに思っております。

串田委員 時間になりました。

 参考になりました。ありがとうございました。

山際委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 きょうは、参考人お三方から貴重な御意見を賜りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、順にいろいろとお話を伺いたいと思いますが、まずは、三上参考人にお話を伺いたいと思います。

 きょうお持ちいただいた資料からも、非常に多岐にわたる御指摘をいただいております。それから、日本弁護士連合会の会長声明も添えていただきまして、非常に、カジノを導入することについて幅広い分野からの意見を聞く、そして、それが日本の将来にとってどうなるのかということを、私たちはしっかりとこのギャンブル等依存症対策の基本になる法律をつくる過程から取り組んでおかないといけないということを痛感いたします。

 といいますのは、きょうの三上参考人の資料にもありますし、それぞれの参考人の皆さんの資料の中にもあるんですが、既存のギャンブルにおけるのめり込みの防止策がないということが書かれています。

 先ほども委員からの話にありましたが、例えば仮想通貨であったりFXであったり、あるいは、もっと自分の生活をちゃんとするためにNISAを利用してくださいとかiDeCoを利用してくださいというふうに、自分の将来のために今活用できる仕組みをぜひ利用してくださいということになると、それはネットの入り口が一番早いと思うんですね。ですから、ネット証券なども今、間口が広がっているわけなんです。

 ところが、片方で考えると、子供たちは日常的に、携帯であれ、手元であれ、ゲームになれ親しんでいます。しかし、そのゲーム感覚がやがてネットの世界とつながり、ネットの世界から、現実ではないけれども、それを現実として捉えてしまう。ということは、やっていることは悪いことではないというふうに思ってしまうと、そこからのめり込んでいく。つまり、その入り口ののめり込み防止のための施策がほとんど、たかがゲームだからいいんじゃないのみたいな感覚になっているのではないかなと思うんですね。

 この、のめり込み防止のための施策がないことに関する三上参考人の意見を改めてお伺いしたいと思います。

三上参考人 依存症というのは、いろいろな依存症があるんだろうと思います。

 ここで検討されているギャンブル依存症、先ほどから話に出ておりますアルコール依存症、私が経験しているのでは買物依存症というのもあります。今は、それに加えて、スマホでのゲームの依存症という問題も出てきているところなんだろうと思います。お金をかける対象であるかどうかにかかわらず、スマホを二十四時間持っていて、そこと子供がにらめっこしている、そこから離れられなくなる依存症という問題も出てきているんだろう、ギャンブル依存とはまた別の問題として、そういうゲーム依存というものもあるんだろうというふうに思っております。

 FXとか仮想通貨までギャンブルと位置づけてここの対象にするかどうかというのはまた難しい問題があるんだろうとは思いますけれども、やはり依存症の問題であるということは指摘しておきたいと思います。

玉城委員 三上参考人に続けてお伺いいたします。

 資料の中にもありますが、ギャンブル依存症の特徴の一つである否認の病気、認めないという否認の病気、客観的には病態があらわれていても容易に治療等に結びつくことができないということで、自分は依存症ではないという人に対して、いや、あなたは何がしかの手だてを必要としていますよということを、どのようにしてそういう方々に、いわゆる手を差し伸べる側は救いかもしれないけれども、差し伸べられる方からすると迷惑、そういう観点、感覚ですね。

 では、それを法律として置く場合にどういうふうにして位置づけるべきかというのは非常に難しいと思うんですが、それに対しての御意見があれば、お伺いしたいと思います。

三上参考人 私どものところに相談に来るのは、多重債務であったりとか離婚であったりとかの法律問題として相談に来るところでありまして、ギャンブルに依存しているというふうに感じられるところはありますけれども、私どもからギャンブル依存について病院に行きなさいというふうに勧めることについては、なかなか難しい問題があるというのが率直なところです。

 あなたは病気だから病院に行きなさいということについて、なかなか本人がその気にならないというのは直面するところでありまして、ただ、私の方で相談を受けた件について、離婚であったりとか多重債務であったりとか、そういう法律問題を解決することによって自動的にギャンブルの問題も解決されていくことが多いというふうに私は経験しているところであります。

 それは、ギャンブル依存症というのが、問題ギャンブラーなのか病的なのかという、その定義は何なのかというところにかかってくるものでもあるとは思いますけれども、私の経験上はそういうところがあります。

玉城委員 ありがとうございます。

 次に、西村参考人にお伺いいたします。

 西村先生はお医者様でもいらっしゃいますので、私の地元の病院で勤務もしていらっしゃるということで、非常に近しいものを感じますが、沖縄は、戦後、パチンコより早くいわゆるスロットマシンが入りました。今でも恐らく全国で一番台数が多いのではないかというふうに思います。

 そういうなれ親しんでいる感覚でいうと、私が小さいころは映画館の隣にそういうスロットマシンの店があり、子供が映画を見に行っている間、お父さんは隣でマシン引っ張る、沖縄の言葉で言うと、マシン引っ張ると言うんですね、あれ。ノブを引っ張るという意味で、マシン引っ張りに行くという言葉が一般的でありました。

 しかし、いわゆる今回のギャンブル依存症は、その資料にもありますとおり、いわゆる依存症レベルの病的なギャンブラーはプレーヤーの一%から三%程度、プレーヤーの五%から一〇%程度はプロブレムギャンブラー、問題ギャンブラーだというふうに指摘をしていらっしゃいます。自己抑制を行いながらも、ギャンブル習慣により問題を抱えている状況にある人ですね。

 これは地元の例を挙げていただいても構わないんですが、お医者様として、こういう方々に対して接するための一番重要な、大切なところというのはどういうところでしょうか。

西村参考人 これは、一つは、海外の対策で、なぜ依存症という用語を使わなくなったかに関係するんです。

 海外では、スティグマ、いわゆる不名誉、偏見という言葉で、何らかのレッテルを、特に精神医療的に、地域の中で、特に、狭いコミュニティーの中で与えられるというのは、救済ではあると同時に、やはりその中で疎外される可能性が、そのつながりから疎外されること。

 つまり、そこの中でお友達があるわけです、パチンコホールでも、あるいはスロット屋さんでも。実際、沖縄の中には、ゴルフ場の横にアメリカ軍の施設があって、スロットマシンが朝から夜中までできる、直接お金がかけられる、いわゆるミニカジノが存在しています。そこにいらっしゃる方は、若者は一人もいません。全て高齢者の方たちです。それは、パチンコ屋さんにいる方たちとはかなり様相が変わります。でも、その方たちが抱えている問題というのは、やはりつながりの問題で、そこでしか友達がいない。

 そういう地域の中でやっていくときには、やはりその救済のための窓口の中で拾い上げるのも大事なんですが、なるべくレッテルを張らずに、どう介入していくかというのが非常に大事になっていくので、私たちは、電話相談では匿名で全てやっているということをやって事例に介入しているというのは、やはりそういうことも配慮しています。

玉城委員 レッテルを張らないこと、そして、顔の見えるコミュニティーだからこそ、接する場合のいろいろな状況を考えてその問題に取り組んでいく、これは非常に、今回の基本法をつくる上でも、そういう観点はやはりしっかり織り込んでおくべきだなというふうに今思いました。

 もう一つ、お医者様としての参考意見をお伺いしたいと思います。

 認定NPO法人ビッグイシュー基金の中で、脳科学から見るギャンブル依存症というのがあるんですが、パチンコやスロットなどの機器は、エレクトロニック・ギャンブリング・マシン、EGMといいます。このEGMは、人をギャンブルにのめり込ませるために、あらゆる技術改良と工夫が可能、古来からあるさいころゲームや花札、闘鶏などの比ではありません。もう少しで当たる錯覚を生み出すニアミスの細工、大当たりの前ぶれを知らせるリーチ表示だけでなく、画像になじみのアニメや映画を登場させて物語性を付加、これらの脳刺激は派手な映像と音響によって何倍にも増強される、危険ドラッグ同様、数回これらの脳刺激を受けると、もう抜け出せなくなる。

 これは、本当に私、時々パチンコ店にお手洗いを借りに行くんですが、借りただけではなく、玉を買って座って、少し還元するんですけれども、私は、あの騒音は苦手ですね。そして、ちかちかするあの視覚効果も非常に苦手です。

 ですから、正直言って、パチンコ屋さんに入って、そこにのめり込むしかない環境になっているのではないか、つまり、その騒音を全て遮断して、画面だけ食い入るように見詰める、そういうふうな、いわゆる脳科学に作用しているところが非常に大きいのではないかと思うんですが、お医者様の立場から、その点をどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

西村参考人 その点は、もっと研究しなきゃいけないレベルだと思っています。特に、いろいろな感覚刺激がどのようにのめり込みと関係しているかというのは、やはりもっと調べなければならない。

 ただ一方で、例えば海外の例で見ると、むしろスロットマシンというのは高齢者の問題ののめり込みで、多くのいわゆる病的な人たちは、バカラの問題が大きいわけですね。そうすると、バカラは電子化していないわけで、一概に、そこはやはり相性の問題というか、どういう特性でそこに親和するかということと非常に大きく関係しております。

 そして、騒音の問題で、のめり込まそうというか、今、実はあの騒音を機械で下げるようにパチンコホールもやっていて、そうすると、お客さんが最大まで上げてしまう。むしろ上げているのはお客さん側だったりということがあって、そういうふうな、ただ、そのリスクについては、もう少しやはり明確にしていく必要があると思っています。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、もう時間があと五分になりましたので、田中参考人にお伺いしたいと思います。

 昨日は、社団法人ギャンブル依存症問題を考える会の田中代表の声明文も紹介させていただきました。本当にありがとうございます。

 この法案でも、私はきのう法案提出者に質問もさせていただきましたが、重なる問題を一つ一つ解決していくためには、民間で活動している方々に対する公的な支援、バックアップ、そしてそれを省庁として束ねる司令塔の仕組みが私は絶対欠かせないものだというふうに思います。

 現在活動していらっしゃって、現実的に見る政策の欠落している部分、この基本法に求める部分があるとすれば、これをしっかり入れてほしいということをお伺いしたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 先生おっしゃるとおり、本当に、私たちが経験していて、公営競技なんかは省庁が全部違うんですね。そこでお話しさせていただきたいというふうに私たちが伺っても、ほとんど門前払いをされてしまうというような状況です。

 そして、私たちは電話相談をやっています、自助グループと連携していますというふうに言われるんですけれども、自助グループの人たちから話を聞くと、公営競技から紹介されてきた人なんというのは一人も見たことがないとか、一体、連携しているというのはどういうことを言っているんだろうというようなところがあって、省庁の方に全然私たちの声が届かないというところがあるのです。

 やはり、私たちの意見を集約してくれるような、どこか省庁をつくっていただいて、そこに、今、やはりこういう法案というのは育てていかないといけないと思いますので、こういう問題が起きてきた、こういう問題が起きてきた、だからこうしてほしいというようなところを受け入れてもらえるような窓口というのがあったらありがたいなと思います。

 また、それと同時に、やはりギャンブル依存症対策の議連も私たちは欲しいというふうにすごく切望しておりますので、先生方に御一考していただいたらありがたいなというふうに思っております。

玉城委員 きのうの声明文の中でも紹介させていただきましたのは、やはりギャンブル依存症は、本人の多重債務、貧困、それから失踪、自殺といった問題に直結いたします。さらには、児童虐待、DV、窃盗、横領、強盗、殺人といった重大な二次的問題も引き起こすということを考えると、おっしゃるように、責任を持って取り組む、公的な責任、役割というのは絶対に必要であろうというふうに思います。

 こういう言い方をすると業界の方に失礼かもしれないんですが、たかがパチンコ、されど何々という言い方をされるということは、依存症問題を考える会のホームページから見ても、あまたあるいろいろな事件の症状を見ても、原因がどこかというと大体パチンコが多いんですね。

 パチンコの借金の金額が百万、二百万とふえてくると、とてもじゃないけれども普通の給料では返せない。しかも、家族の皆さんは、よかれと思って、じゃ、もう借金を立てかえてあげるよというふうになってくると、今度は、それを本人が、悪かったと思って反省をして立ち直るかというと、実は立ち直るきっかけになっていなかったりする、助長してしまったりする。そういうふうなことを考えると、逆に、事業者に求める責任、事業者がそういう問題を惹起させないために取り組むべき問題は少なからずあると思うんですね。

 今回のこの基本法を策定するに当たり、事業者に対して、こういうことは民間では厳しいです、無理です、事業者の方々と役所でここはぜひやってもらわないといけないということの、相談事案から見える、そういう問題点があれば、ぜひ御指摘をいただきたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 やはり、まず今一番の問題は、事業者の方々、特に公営競技の方々というのは、ギャンブル依存症ということを言うと、すごく敵対意識みたいなことをむき出しにされてしまって、もうその話は聞きたくないみたいな感じになってしまうんですが、私たちは決して産業側を否定しているわけではないということで、まず業界の方々に依存症対策ということの教育をしてほしいというふうに思っております。

 そして、その上で、ばんばんレースなんかのCMというのが打たれているんですけれども、やはりギャンブル依存症は病気で、そして回復することができるんだというその啓発、それにはやはり産業側の方々が、あのCMを流す一部を、ギャンブル依存症の啓発のCMなどを打っていただけると、多くの国民にこの問題が知れ渡って、ありがたいなというふうに思っております。そういうことをやっていただけたらなと願っております。

玉城委員 参考人の皆様、貴重な御意見をありがとうございました。

 以上で終わります。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

山際委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 参考人の方々は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

山際委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中川真君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長宮嵜雅則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山際委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山際委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岡下昌平君。

岡下委員 自由民主党の岡下昌平でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 時間もございませんので、早速に質疑に入らせていただきたいと思います。

 昨日の当委員会でのギャンブル対策基本法案の質疑を聞いておりましたけれども、やはり重要な論点の一つとしては、経済負担のあり方、これが重要な論点ではないかなというふうに考えます。

 野党側という表現にさせていただきますけれども、その法案の中には、第十九条に、患者等及び家族の経済的負担を軽減するために必要な措置を講ずるものとする、このような条文が入っております。この条文を入れると、その解釈、拡大解釈がどこまでいくかというのが私は非常に疑問でありますし、範囲が、どこまで必要な措置を講ずるのかということも議論の対象になってくると思います。

 政府が先日、経済財政諮問会議の中で、介護や医療などの社会保障給付金が二〇四〇年度には現在の約一・五七倍に当たる約百九十兆円に上る、そのような推計も示したところであります。

 厳しい財政の中で、やはりこのような条文は、私はこの法案の中には入れるべきではないと考えます。その点をぜひ伺わせていただきたいのと、与党側の法案の中にはそういった一文が入っておりませんでした。その考え方をお示しいただけたらと思います。

初鹿議員 御質問ありがとうございます。

 まず、根本的な問題として、このギャンブル依存症というものは疾病であるという大前提で考えるならば、障害や病気がある方に対して、今の国の制度で、経済的な支援を含めて、さまざまな支援策が設けられているというふうに考えます。そうであるとするならば、ギャンブル依存症の患者に対する何らかの支援策というものはあり得るのではないか。これを否定するということになると、やはりギャンブル依存症は自己責任なんじゃないかという考えが根本にあるのではないかということを指摘せざるを得ないのではないかというふうに思います。

 これは社会保障費全般に言えることでありますけれども、今このお金をかけることによって、金額が多かったとしても、それが全体的に波及したときに実は社会的なコストを大きく削減することにもつながるんじゃないか、そういう視点を持つことも非常に重要だと思うんですね。

 今回のこのギャンブル依存症対策の法案、皆様方、与党の側の皆さんが出している修正案の目的の中でも、例えば多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせるということを目的の中に明示しておりますよね。

 例えば、貧困や虐待が起こったときにどういうことになるかといえば、貧困の状態になったら生活保護が必要になるかもしれない、虐待になれば子供に対する何らかの支援を行うことが必要になってきます。多重債務ということになれば同じような問題も出てくるし、犯罪ということになればそれを捜査したり、そして捕まえた後、刑務所で経費もかかってくる。

 そういう総合的な費用が出てくるということを考えたときに、その社会的なコストを少しでも軽減させていくという観点で考えれば、患者の負担ということをしっかりと行うことによってその負担が軽減できる、そういう観点に立てば国民の皆様への理解も得られるのではないかというふうに私どもは考えておりますので、その点をぜひ皆様方も検討していただければというふうに思います。

岩屋議員 ギャンブル等依存症で苦しんでおられる方々の回復のための努力をサポートすべきことは、当然のことだと思います。私どももまさにそこに着目してこの法案を提出させていただいているわけですが、しかし、それがためには、相談窓口を充実させたり、そのための専門家の育成もしっかり行ったり、私どもの法案の十六条にありますように医療提供体制を整備したり、あるいは十八条にありますように家族を支援する民間団体の活動に対する支援を行うということが大切であって、直接に経済的な支援を依存症患者やその家族を対象にして行うという方法は国民の理解を得られにくいというふうに考えております。

岡下委員 ありがとうございます。ぜひ、納税者の方々の御理解をいただけるような法案にしていただけたらと思います。

 時間も非常に迫ってまいりましたので、二点聞かせていただきます。

 まず、ギャンブル依存症でお困りの皆様へという、さまざまな相談窓口が記載されたものが内閣官房より発出されました。こういった相談窓口を頼ってギャンブル依存症の方々が御相談に行かれる。

 ただ、その団体の数が余りに多過ぎて、どこに行ったらいいかわからない、そういうような問題も起きてくると思います。それと同時に、その相談に来られた方々に対して、あわよくば、しっかりとしたカウンセリングをするんじゃなくて、また悪の道に誘い込むというような、そういった団体が出てきかねない。

 したがって、やはりこういったカウンセリング等々相談に来られる窓口、この厳格化というものを行っていただきたい。そのためには、やはり政府あるいは国から認証を与えるとかそういったことも検討課題に入れていただけたら、そのように思いますので、ひとつ、その点をどのようにお考えか、与党側の皆様方にお答えいただきたい。

 最後に、昨日の質疑において共産党の議員の方が、この法案はカジノをふやすことを容認するための法案であるということを主張されておられました。間違ったことが国民の方々の耳に入れば、大変な混乱を来します。

 私は、この法案の条文を読んで、そうではない、これは、今現在……

山際委員長 質疑時間が終了しておりますから、まとめてください。

岡下委員 ギャンブル依存症で苦しんでおられる方々に対する救済法案だと思いますので、その点はどうか、最後にお聞きして、終わらせていただきます。

山際委員長 桝屋敬悟君、短くお願いします。

桝屋議員 まず、民間団体に対する認証など、厳格化の御指摘でありますが、本法の第十九条におきましては民間団体の活動に対する支援について規定しておりますけれども、この支援を行うに当たっては、ギャンブル等依存症者である方への相談支援等を行う民間団体の活動内容を精査いたしまして、適切な活動を行う民間団体に対して支援を行うべきである、このように思っております。

 きょうの参考人質疑でもいろいろ御意見が出ました。田中参考人から、精神保健福祉センターとの連携は簡単ではないというような話もあったわけでありまして、民間団体への支援のあり方につきましては、本日の参考人のように改めて先駆的に取り組まれてきた民間団体のノウハウもしっかり教えていただきながら、そのために推進本部や、さらには関係者会議をつくるわけでありますから、しっかりと中身を精査していきたいと思っております。

 それから、カジノとの関係……

山際委員長 短くまとめてください。

桝屋議員 はい。

 カジノとの関係は、我が党は、これをスタートしたときは全く別物として取組をさせていただいたと申し上げておきたいと思います。

岡下委員 済みません。以上で終わります。

山際委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地です。

 私も、最後七分、この自公維案、これで質疑終局でございますので、聞き残したことを聞き、また、自分の思いも含めて総括的に述べたいと思っております。

 やはり、競馬や競輪、オートレースを始めとします公営競技、またパチンコ等の遊技にのめり込んで生活に破綻を来し、そしてひいては多重債務、貧困、自殺、虐待、犯罪行為に及ぶ、こういったギャンブル依存症の問題は以前から社会問題化されていたわけでございますが、ここに来まして、今回、いわゆる自公維案、また、立憲民主党さん、また他の野党さんも含めまして、両案を国会に提出して、本格的に、我々国会が主導的にこの方向性をつくろうということに対して、非常に重要な局面に私も立ち会わせていただいているなというふうに思っております。早期に成立を図るべきものと思っております。

 我々公明党も、平成二十八年の十二月、今からもう一年半前に、党内におきましてギャンブル等依存症対策検討プロジェクトチームを立ち上げました。当事者の団体、また専門のお医者さんなど、ヒアリングを複数回重ねまして、その意見を自公の、与党でございます、ギャンブル依存症対策の法制化に関するワーキングチームの議論に反映をさせたわけでございます。

 その後、維新の皆さんから関係者会議の設置などの提案を受けまして、このたびの自公維案が提出をされた運びとなっております。

 公明党のこのPTの議論の中では、我が党が非常に大事にしたポイントがございます。

 これまでも我々公明党は、アルコールまた薬物依存症対策の充実に取り組んでまいりました。そこで、この党のPTでは、アルコールや薬物依存症対策との有機的な連携が大事であるという意見が相次ぎまして、実際に、この自公維案の第四条におきまして、アルコールや薬物依存対策とギャンブル依存症との有機的連携を果たすような条文を盛り込ませていただいたわけでございます。具体的には、アルコールや薬物とギャンブルの両依存症は、話合いを通じて本人の考え方を変えていくという認知行動療法を用いる点で共通点があるという意見も相次ぎました。

 そこで、自公維案の提出者の特に桝屋提出者に聞きたいと思っております。公明党のギャンブル等依存症対策検討PTの座長でございましたので、アルコールまた薬物とギャンブルとの有機的連携を具体的にはどのように図るべきというふうにお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。

桝屋議員 ありがとうございます。

 今お話がありましたように、我が党では、カジノIR推進法以来、国民の中のいわゆるギャンブル依存症問題に対する大きな不安あるいは懸念の声がたくさん届けられました。この声に対応するために、今言われたように、二十八年十二月にギャンブル等依存症対策検討PTを立ち上げて、検討してまいりました。

 その結果、二つ感じました。一つは、今御指摘がありました、依存症としてアルコール依存あるいは薬物依存、既に動き出しているわけであります。アルコール依存は、中谷先生が議員立法でリードされました。

 こうした動きがある中で今回のギャンブル依存ということでありまして、これはいろいろ議論してみると、対策として共通項が随分あるのではないかということで、有機的な連携によりまして、アルコール、薬物、そしてギャンブル、依存症対策を一体的に深化させるということがどうしても必要ではないか。

 今委員から言われた治療もそうでありますし、医療提供体制、あるいは実態把握とか研究の事業、こうしたものはいずれも共通するものが多うございまして、自助グループの活動への支援もまた共通する項目も多いということで、私は、一体的に深化させるということが何よりも大事だというふうに感じた次第でございます。

浜地委員 ありがとうございます。

 時間がありませんので、最後の質問にしたいと思っております。

 先ほども御紹介しましたが、この自公の案に、維新さんの方から関係者会議を設置すべきだという提案がありまして、この自公維案は修正をいたしました。

 そこで、この関係者会議を設置する意義、そして、特に立憲、無所属、自由、社民の皆様方の関係者会議には関係事業者は盛り込まれていないというふうに認識をしております。ここがこの関係者会議の最大の違いだと思いますが、改めて、いわゆるこの関係者会議の意義と、関係事業者を盛り込ませた意義について、自公維案の法案提出者に聞きたいと思います。

佐藤(茂)議員 まず、我々のもともとの案も、意見を聞くということは法案にあったんですけれども、しっかりとしたそういう会議体という場をしっかりと設けて、それで、ギャンブル等依存症の実体験を有する当事者及びその家族、関係事業者並びにギャンブル等依存症対策問題に関し専門的知識を有する者の意見を基本計画や計画に基づく施策に適正に反映させることによって依存症対策を真に実効性あるものとするために、こういう関係者会議を本部に置くということが大事である、そういう認識に至ったということでございます。

 もう一点、二つ目でございますが、自公維案の法案第三十三条と、そして立憲さんを始め野党四党案の法案第三十条の条文を比較いたしますと、委員御指摘のとおり、関係事業者が参加するかどうかということが大きな違いでございます。

 私どもは、関係事業者というのは、ギャンブル等依存症の発症等に影響を及ぼす事業を行うことから、事業者としてできること、できないことをしっかりと意見として述べてもらうということがギャンブル等依存症対策を真に実効性あるものとするためには非常に大事である、そういう観点から、関係者会議に関係事業者を参加させることが不可欠と考えております。

浜地委員 終わります。ありがとうございました。

山際委員長 次に、山崎誠君。

山崎委員 こんにちは。立憲民主党の山崎誠でございます。

 きょうは、今議題となっておりますギャンブル等依存症あるいはギャンブル依存症についての基本法案について、短い時間ですが、御質問をしたいと思います。

 まず、政府が今取り組んでおります強化策、平成二十九年の八月二十九日に基本方針が出、それに対していろいろと強化策を今展開しているということでございます。いろいろな取組をしているんですが、今、現状はどうなっているのかを幾つかのポイントでお聞きしたいと思います。

 時間がないので限っていきたいと思いますが、まず一つは、医療・回復支援のための専門医療機関あるいは治療拠点、相談拠点、こういったものをモデル事業として政令指定都市・都道府県に今展開をしている、全国六十七で今展開中ということですが、この進捗状況、あるいは全体の整備が終わるのがどのぐらいのタイミングになるかというのをまず一点。

 それからもう一点は、やはりこれは対策をするための人材が極めて大事だということを先ほどの参考人などのお話を聞いても感じました。相談からその後の回復、医療、全ての部分でいろいろな方々、やはり人材を育てていかなければいけない。保健師さんとか看護師さん、医療もそうだと思います。そういった人材の育成に、どのぐらい今取組が進んでいるのか、あるいはどのぐらい時間がかかるのか、そのあたりの見通しをお知らせください。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省では、ギャンブル等依存症につきまして、地域での必要な医療や支援等を受けられるよう医療体制や相談体制の整備に取り組んでおりまして、具体的には、委員からもお話がありましたが、都道府県等において、専門医療機関や治療拠点機関の選定、相談専門員を配置した相談拠点機関の設置を働きかけるなどしているところでございます。

 現在、専門医療機関につきましては、十の自治体で選定済みとされており、年度内に十一の自治体で選定予定となっております。また、七つの自治体では治療拠点機関も選定されています。さらに、相談拠点機関につきましては、十八自治体で設置されております。

 厚生労働省としては、一日でも早い体制の整備が必要であると考えておりますが、整備が進んでいない自治体に対してその理由を聞いたところ、専門医療機関につきましては、その要件である依存症に係る研修を修了した医師の確保などが進んでいないなどの理由が挙げられております。

 このことから、昨年度からですが、全国の拠点でございます国立病院機構久里浜医療センターにおきまして地域で専門的な研修を行うための指導者を養成するとともに、都道府県におきましても地域の医療機関を対象とした依存症医療研修を実施しているところでございます。加えて、距離的、時間的に……(山崎委員「見通しを教えていただければいいです」と呼ぶ)はい。

 そういう状況でございますので、いつというのはなかなか申し上げにくいんですけれども、厚労省としては、地方自治体や関係機関とも協力して、一日でも早く整備できるように努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

山崎委員 済みません。時間が短いので、ごめんなさい。

 私は、対策は非常に大事でありまして、まだまだ始まったばかりで、その効果を検証するまでには至っていない、特に、今お話があった、大事なのはやはり人材の育成です、これはまさに本当に時間をかけて、恐らく五年、十年かけて整備していかなければいけないと思っています。ギャンブル依存症あるいはギャンブル等依存症に対しての対応が必要なことはもうよくわかって、この基本法は大事だということでございますので、一刻も早くこういった対策をスタートさせるべきと思います。

 私が問いたいのは、タイミングとしては今これをすぐスタートさせて、実際に今、日本はギャンブル依存症が多いと言われているこの状況が緩和をされ、さらに、そういう環境、例えば新たなギャンブルをスタートさせる環境が整うまでには、私は時間がかかると思うんです。なので、例えばIR法案の中にカジノが入って、この整備がこれと同時に進んでいくというのは、私はやはり時期としても拙速ではないかと思っております。

 やはり、この対策がきちっときき始めてどんどんギャンブル依存症が落ちていく、周知が図られる、そのタイミングをはかった上でIRのカジノのお話とかを議論するのであれば、私は順番としてはそちらの方が正しいと思います。それは、私の感覚であれば五年先かもしれない、あるいは十年先かもしれない。でも、そのタイミングで、じっくりとまたそういう新しいタイミングを見てやっていくべきと思います。

 自公維案の提案者の皆様、このあたりのタイミングについて、この基本法と次のカジノのお話も含めて、お考えをお聞きしたいと思います。

岩屋議員 先生がおっしゃるように、ギャンブル依存症の問題は、これまであった問題、今そこにある問題ですから、私どもはそれに対応するためにこの法案を提出しているわけです。したがって、IRの議論とは切り離して議論されるべき問題だと思っております。

 一方、IR整備法は、先生御案内のとおり、一昨年の暮れに成立をしたIR推進法の第五条において、一年以内を目途に国会に法律を提出しなさいと政府が命じられているものでございますから、それに沿って出してきている。

 しかし、そのIR整備法の中には依存症対策というものがかなりしっかりとビルトインされているものと思いますが、その是非についてはぜひ整備法の審議を通じてただしていただければと思いますし、もし予定どおりに進んだとしても、恐らく最初の開業はここから四、五年先になるだろうと思います。その間、ギャンブル依存症対策は絶対に必要なものだというふうに私どもは考えております。

山崎委員 時間が来ましたので終わりにしますが、最後に一言。我々は、IRの基本法自体を……

山際委員長 時間が過ぎていますから、終わってください。

山崎委員 廃止ということで提案させていただいているところでございます。またじっくり議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

山際委員長 次に、森田俊和君。

森田委員 国民民主党の森田俊和でございます。

 最後になりますので、二点、それぞれの提案者の方から御答弁いただきたいと思います。

 一つが、予防の点でございます。

 ギャンブル依存の予防について、こちらの問題点の認識と、今後、具体的な取組、そして想定される内容、このことについて簡潔に御答弁をいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

浦野議員 第十四条において、ギャンブル等依存症である者等やその家族が十分に相談や受診につながっていないという課題を解決するために、国民に対し、ギャンブル等依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、ギャンブル等依存症問題に関する知識を普及することを想定しております。具体的には、現在既に行われているシンポジウムの開催やリーフレットの配布等に加えて、大規模な広告や市民ボランティアが参加するイベントの開催等が想定されています。また、ギャンブル等依存症から回復した者やその家族の実情をわかりやすく示すことも考えられております。

 十五条においても、関係事業者が行う事業の実施方法について、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるように、各関係事業者による取組の強化を促進し、ギャンブル等依存症の予防等に資する仕組みの導入、拡充、普及等を推進する施策を想定しています。具体的な内容については、広告及び宣伝、入場管理のほか、相談窓口の設置、インターネット投票における対応等を想定しております。

 本法に基づく基本計画の策定に当たっては、本法の趣旨を十分に反映した施策を講じるよう、政府において適切に検討してもらいたいと考えております。

初鹿議員 まず、現状の認識についてお話をさせていただきますが、現状、国民の間でギャンブル依存症に対する理解や関心の程度が高いとは考えておりません。むしろ、先ほども答弁させていただきましたが、本人の意思が弱いからということで自己責任のように考えている方も多く、疾病だという認識がまだ十分に浸透していないというふうに思います。

 また、これはしばしば指摘をされることですけれども、ギャンブル依存症という疾病は、本人がそれを認めない否認の病ということが言われておりまして、周りが、あなたはギャンブル依存症だという指摘をしても、なかなか本人がそれを認めず、医療機関などへつながらずに、結果として十分な支援に至っていない、そういう問題が存在をしているということを認識しております。

 その上で、我々も、第十四条において、国民に対して、ギャンブル依存症の予防等に必要な注意を払うことができるよう、問題に関する知識の普及ということを想定しております。先ほど答弁があったとおり、我々も、シンポジウムの開催やリーフレットの配布、またさまざまなイベントの開催などを考えているところであります。

 また、第十五条において、国や地方公共団体に対して、事業者に対する関連問題の発生の防止まで含めた取組がなされるように施策を講ずるとともに、こうした施策を講ずるに当たって、特定原因行為をその客に行わせる事業について、ギャンブル依存症の患者等による利用が制限されることとなるよう特に配慮することを規定しております。

 また、我が党の案としては附則第二項において検討事項を設けておりまして、その中で、ギャンブル依存症の発生の防止に配慮された広告宣伝の方法や、射幸性の抑制、施設への未成年者の入場制限や、本人、家族申告によるアクセス制限の仕組みの導入、またインターネット投票についてのシステムの整備だとか、また券売機のATMのキャッシング機能の廃止だとか、貸金業、銀行業における貸付自粛制度の整備など、そういったことを想定して対策を進めるように考えているところでございます。

森田委員 もう一問でございます。

 ギャンブル依存症、依存の御本人、御家族の自助グループ、こちらの重要性あるいは取組について、どのように御認識をされ、取組を想定されていらっしゃるか、御答弁をお願いします。

山際委員長 時間が限られておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

中谷(元)議員 団体としては、リカバリーサポート・ネットワーク、またギャンブル依存症を考える会等がありまして、みずからの体験を語ったり、仲間で支え合ったり、家族が交流をするということは非常に大事なところで、アルコール依存症でも大変大きな効果が出ております。

 法案では十九条にこういった民間団体との連携、機能活用、支援ということが書かれていまして、こういったものを利用しまして、更に民間団体が活動できる、そのようなことをやっていきたいと考えております。

初鹿議員 民間団体の支援については、両案、それほど大きな違いがないと考えております。

 我々も、現在あるGAやギャマノンといったような自助グループに対する支援なども含めて、しっかりと対策をとっていくことが必要だと思います。

 一点違うところといえば、そういう民間団体の支援を受けるに当たって、我々は第十九条で、その患者又は家族についての経済的な支援ということも法案に盛り込ませていただいているところでございます。

森田委員 ありがとうございました。

 ぜひ、先ほど参考人の方からもありましたが、省庁を超えた取組ができるようなことであったり、あとは、教育の、小さいころから、あるいは大人に至ってまでも、いろいろなかかわる方が意識を共有できるような形、こういった取組もこれから実施のときには考えていきたいと思っておりますので、その辺も踏まえていただければと思います。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、中川正春君。

中川委員 続いて質疑をしていきたいと思います。

 この法案について、前にも出ていたように、アルコール対策の基本法をベースにしているということなんですが、一つ大きな違いが私はあるように思うんですね。

 アルコール対策の場合は、障害そのものを対症療法的に社会全体でどう対応していくかということで、これで完結をしているんだと思うんです。

 ところが、もう一方で、ギャンブルの場合は、事業者、施行者がどれだけ射幸性をコントロールできるか。あるいは、パチンコでよく議論が出ましたが、余りにも頻繁に日常性の中でギャンブルが行われるということが、日本の高い、いわゆる病的な現象というか、そういうものにつながってきているということが指摘される。

 そこの部分をどうコントロールするかということが、この法案の中に包括的に、さっき参考人の話がありましたけれども、一つ一つ別々に事業法でやるんじゃなくて、包括的にコントロールされて、いわば根本対応というか、そういうものができるんじゃないかということでありました。

 そういう意味から、この今の法律というのが包括的な対応ができる一つの大きなチャンスなんだと思うんです。新たにそれをつくるというのは非常に政治的にも難しい部分がある、だから、ここでそれをつくっていくということだと思うんです。

 実は、我々、立憲、無所属、自由、社民案として出ている検討案のところ、これを見ていただくとわかるように、射幸性の抑制だとか、あるいは入場制限だとか、投票等の制限、広告のあり方、あるいは費用も含めて、そこの部分を実はここへ向いて反映させようとしている趣旨があるんですよ。

 そういうことを考えていったときに、何らかの工夫がここはされるべきなんじゃないか、その方向性だけでもコンセンサスをつくって、将来の課題としてでもいい、あるいは今この中に組み込むということでもいい、もう一回考えてみませんかというのが私のこれまでの問いかけなんですけれども、どうですか、与党の方は。

中谷(元)議員 アルコールの法案の方も、酒造メーカーや販売者、飲酒提供者、家族、患者、学者、こういうのが一体的に機能したわけでありますが、同様に、ギャンブルにおきましても、法案で事業者とか国、地方の責務を定めておりますので、関係者会議等でしっかり議論をすることによって、こういった、広告、宣伝、入場管理その他事業者が行う事業の実施方法について、法律で、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、依存症の予防が図られるものになるようにするために必要な施策を講じるということでございますので、野党案の附則二の中の五まではそれぞれの事業について明記をされております。これらは全て、こういった十五条に関連するものでございますので、関係者会議等でより具体的に議論して計画を立てることが可能だと思います。

 費用の問題等につきましては、先ほど与党の方から説明をいたしましたけれども、さすがに、国民の理解を得るためにこういった費用をお支払いするということについては、まだそこまで段階が来ていないんじゃないかなというふうに思います。

中川委員 十五条のことを言われましたが、これが、先ほど中谷さんの言われるように、担保されるもの、それがもう一つ要るんだと思うんですよ。これだけでは恐らく役所の中を流されてしまうし、これは難しい問題で、それぞれ利害得失がある団体が話し合って、ここまでのことをということ、そんな作業、いわゆる政治的な作業が要るものでありますから、この言葉だけでそれができるということの保証というのは私は出てこない、これでは読めないというふうに思うんですね。それだけに、ひとつ前向きな考察と、それから話合いというのに乗っていただきたいというふうに思います。

 私は、ぜひこんな言葉で表現すべきだと思いますが、ギャンブル等の過度な射幸性の抑制、行き過ぎた日常性から遠ざける適度な環境を整えるために、施行者、事業者の主体的な対応を求めるとともに、それに加えて、国は、包括的な対策を進めるための独立した司令塔としての機関の設置を検討すること、さっきの参考人の話から受け取ったことなんですが、そんな問題意識をぜひ共有していただきたいというふうに思います。

 以上です。

山際委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、きょうは、立憲民主党、無所属の会、自由党、社会民主党提出のギャンブル依存症対策基本法案について、提出者にお尋ねをいたします。

 最初に、自公維の案と野党の案、この一番の違いは何なのか、この点についてお尋ねをいたします。

初鹿議員 御質問ありがとうございます。

 昨日から何度も答弁させていただいておりますが、やはり大きな違いとして、我々野党案の方は、民間から支援を受けるギャンブル依存症の患者等及びその家族の経済的な負担を軽減するための施策が盛り込まれているところでございます。この点は、先ほどから御答弁があるように、自公維案には盛り込まれていないところであります。

 それと、加えて、我々野党案では、附則第二項において検討規定を設けており、そこには、政府が、射幸性の抑制、未成年者等の入場制限の方策等の事項について検討し、遅くとも法律の施行後三年以内に必要な措置を講ずるものとしております。

 この中でもとりわけ、附則第二項第六号に規定をします、ギャンブル関連事業者のギャンブル依存症対策に係る費用負担の検討が我々は重要であると考えております。ここは昨日からかなり議論になっておりますが、自公維案の提出者の皆様方は否定的であるところですけれども、我々はこの点が非常に重要であると考えております。

 やはり、ギャンブル関連事業者の方は、ギャンブル依存症の発生等の原因になり得る事業を行っていて、そして収益を得ているわけですから、その収益の中から資金を拠出することは妥当であるというふうに考えております。

塩川委員 今御説明がありました中で、経済的負担の軽減についてお尋ねします。

 第十九条に、国及び地方公共団体は、民間による支援を受けるギャンブル依存症の患者等及びその家族の経済的負担を軽減するために必要な施策を講ずるものとありますが、具体的にどのような措置を考えておられるのか、お尋ねします。

初鹿議員 どうもありがとうございます。

 まず、現状において、ギャンブル依存症の患者等や家族が民間団体等による支援を受けるためには、費用は基本的には自己負担になっております。そのため、その費用が患者等の生活を圧迫し、それによって患者等が支援を受けることをちゅうちょするおそれが生じています。

 そこで、この条項を設けているわけですけれども、具体的には、民間団体への助成等により、間接的に患者等の経済的負担を軽減するだけではなくて、患者等やその家族への直接的な経済的支援を行うことを想定しております。例えば、障害福祉の施策の中に組み込むとか、直接本当に現金を渡すというやり方ではない形の直接的な支援ということもあり得るのではないかというふうに考えておりますので、その点は今後の検討だというふうに思います。

塩川委員 続けて、附則の検討項目にありますギャンブル関連事業者の広告宣伝のあり方に関して、現状認識及び規制のあり方についてお考えをお聞かせください。

初鹿議員 この点は非常に私も重要だというふうに思っております。

 アルコール健康障害基本法でも広告規制というのは非常に議論になっておりまして、中谷先生もいらっしゃいますが、なかなか、事業者側からすると、広告に規制をするということには抵抗があるわけであります。

 ただ、現状を申し上げますと、パチンコ事業者の方々は、例えば新聞に折り込む広告や、駅等でティッシュを配ることがありますよね。そういうティッシュや、最近だと、駅に出ているでっかい看板の中にも、のめり込みには注意しましょうという注意喚起文を添えていることが多くなっているわけです。

 ただ、これは業界での自主規制のために、頑張ってそうやって前向きにやっている事業者もいれば、そうじゃないところもいるわけであって、やはりここは統一して対応するようなことが必要だというふうに思います。

 また、今度の日曜日が日本ダービーの開催なわけですね。きのうも、私は東京の議員なので電車で帰宅をするんですが、電車のドアの上に今モニターがありますよね。そこで日本ダービーの広告が流されるわけです。場合によっては、駅全体がJRAの広告になるときがありますよね。年末の有馬記念のときなんかは、渋谷の駅に行くと、ここは一体どうなったんだみたいなことになるわけです。

 むしろ民間のパチンコ事業者がそれだけ意識をしているのに、公営競技の方は全く意識もなく、ちゅうちょもなく広告を打ち出しているということは、私は非常に問題が多いのではないかというふうに考えております。

 ですので、我々は、検討事項の中にギャンブル関連事業者の広告宣伝のあり方というものを掲げておりまして、ポスターやウエブサイトにおいて普及啓発や注意喚起を促進するということと、やはり時間帯や広告の量や場所などについてきちんと規制をしていくことは必要ではないかというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 やはり、ギャンブル依存症の発生を抑制するためには、ギャンブル事業者の事業そのものへの規制強化が必要だと考えます。

 ギャンブル依存症対策として必要なことは、ギャンブル事業者に対して、射幸性の抑制や広告の規制、立地規制など、依存症の発生を防止する、ギャンブル事業そのものへの規制強化であります。特に、依存症の大半を占めるパチンコに対する規制強化を進めるべきだと考えます。

 ましてや、新たにギャンブルを広げることになるカジノ解禁は断じて認められないということを申し添えて、質問を終わります。

山際委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田誠一でございます。

 先ほど参考人質疑をさせていただきまして、大変有意義なお話を伺うことができました。

 精神科医の西村参考人からは、定義が非常に大事だということでありまして、自公維の定義は、依存症だけではなくて、日常的、社会的支障を生じるというような部分でありますので、西村参考人の話では、依存ということだけでは治療をする必要はないという精神科医からのお話がありました。

 また、田中参考人からは、御自身の体験をもとにした解決の仕方というもののお話がありまして、説得とかそういったようなものが非常に重要であるというような話がありましたので、ぜひそこの部分を進めたいと思った次第でございます。

 また、最後に三上参考人からは、時間と場所というものが非常にギャンブル依存には重要であるという観点で、パチンコなどは全国で一万店舗以上あるわけでございます。今回のIR法案は、上限三カ所という非常に限られた数で、なおかつ場所も限られているということから、そういう意味では、MICE市場を推進する意味でも、依存症に関しての影響というのは極めて少ないのかなという印象を私は受けました。

 それでは、質問をさせていただきたいと思うんですけれども、まず、この法律の施行期日をお伺いしたいと思うんですが、よろしくお願いいたします。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 自民党、公明党、日本維新の会による法案の附則第一項におきましては、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとされております。

 したがいまして、この法案が成立しました暁には、政府といたしましては、公布から三カ月以内に、法第三十二条のギャンブル等依存症対策推進関係者会議の組織構成などを定める政令を作成し、また法の施行日を定める政令とともに閣議決定することになるというふうに想定しております。

串田委員 期日がわかったんですけれども、そうしますと、本部と関係者会議のメンバーが今度選任されなければいけないと思うんですが、そういう段取りについてはどのようにお考えでしょうか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の点は、今後、法律に基づいて基本計画を策定するに当たってどういう段取りで進んでいくのかという御趣旨と受けとめますけれども、法律が施行されました後、関係者会議の委員を任命することになります。そして、関係者会議が組成されましたらば、法律に基づきまして本部が計画を策定していくわけですけれども、その際には関係者会議の意見を聞かなければならないという法にのっとって、そして、政府といたしましては、この計画が真に実効性のあるものになるよう適切に検討を進めさせていただきたいというふうに考えております。

串田委員 先ほど参考人質疑の中で、精神科医の西村参考人のお話ですと、治療という部分にコストをかけてもなかなか費用対効果が発生しないんだ、そういうようなお話もありました。

 そういう意味では、対策というのは、田中参考人の話ですと、依存症が発症した場合には、大声を出すとか自殺のふりをするとか、あるいは包丁を振り回すとか、非常にそういう意味で近々の課題ではあるんですけれども、それに対する対策というものは、非常に人員の養成なども含めまして難しいでしょうし、また、これの検証というものをどうやってやるのかというのも非常に大変だと思うんですが、ギャンブル依存症対策推進関係者会議の委員の人選はどのように考えていますでしょうか。

浦野議員 ギャンブル等依存症対策推進関係者会議の委員は、ギャンブル等依存症である者等及びその家族を代表する者、関係事業者並びにギャンブル等依存症問題に関し専門的知識を有する者のうちから、ギャンブル等依存症対策を真に実効性のあるものとすることの観点から、適切な方が任命されると考えております。

串田委員 今回答いただきましたが、三十三条には、ギャンブル等依存症問題に関し専門的知識を有するということでございますので、その具体的な者の想定というものをちょっと御説明いただきたいと思います。

浦野議員 この法律において、ギャンブル等依存症問題とは、ギャンブル等依存症及びこれに関連して生ずる多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の問題とされているところであり、これらの問題の解決に知見を有している人たちを広く集めることになると考えております。

串田委員 大変わかりやすい回答をいただきました。

 ありがとうございました。

山際委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 ギャンブル依存症等対策基本法案の質疑、七分間ですが、質疑をさせていただきたいと思います。

 法案提出者に伺います。

 パチンコ店への立入りが認められている十八歳以上の年齢制限を軸として、十九歳のサッカーくじの購入制限年齢、二十の競馬、競輪、オートレース、競艇などの公営競技投票券の購入制限などが、将来、成人年齢が十八歳に引き下げられることを理由として、全ての公営等ギャンブルの制限年齢がパチンコ店への立入りが認められている十八歳以上に統一されることが考えられます。

 しかし、この制限年齢の引下げについては、依存症のリスクや多重債務、非行、窃盗、万引きなどの犯罪といった社会問題リスクを高める危険性があると考えられておりまして、臨床研究のデータからは、若年層における脳の神経系の成長過程では、意思決定や判断力において脆弱であり、依存行動に溺れやすい傾向があるとも示されています。

 さらに、若年層は、先ほど参考人にも質問させていただきましたが、刺激的な音響や照明などの効果に引かれやすく、日常の生活で興じているゲームの感覚から、安易にギャンブルへ移っていくなどの懸念も多くあるのではと考えております。

 いわゆるのめり込みの防止なども含めてお伺いしたいんですが、この十八歳以上という、成長過程における若年層の依存症予防対策、のめり込み防止などの対策も含めて、基本法ではどのような位置づけがなされているのか、お伺いしたいと思います。

佐藤(茂)議員 自公維案では、法案第十四条の教育の振興というところにおきまして、家庭、学校、職場、地域、そのほかのさまざまな場におけるギャンブル等依存症問題に関する教育の重要性を規定しているところでございますが、特にその部分において、若年層への、子供の発達段階に応じて、ギャンブル等依存症関連問題の防止に関する教育や周知を図ること等を想定しております。

 昨日、きょうと、昨日は参考人、樋口先生、きょうの西村参考人、また田中参考人からも、まさに予防で一番大事なのは教育である、そういうことも言われておりましたので、私どもはそういうことをしっかりとやってまいりたいと思っております。

 もう一つは、法案第十五条に規定する、関係事業者が行う事業の実施方法についてというところでも、私どもは、公営競技における未成年者に関するアクセス制限や、十八歳未満の者のパチンコ営業所への立入禁止の徹底といった施策を想定しているところでございます。

玉城委員 提出されている法案の第十五条、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとされております。

 この十五条、非常に重要な部分があると思います。なぜなら、国、地方公共団体と事業者をあわせて、同じように責任を持つということが書かれています。ですから、ここでどのような実施策を基本法から導いていくかというのは非常に大事な部分だと思います。

 伺います。

 さきの教育の十四条、そして事業の実施等の十五条ですが、依存症の予防策の一環として、遊興機器等に関する音響効果、照明効果などが強く、射幸心をあおるなど、のめり込み要素が強過ぎないものであることなどの具体的な制限を設ける、あるいは製造業者及び事業者へ、それらののめり込み要素が強過ぎないようなことを挙げて、遵守させる、そういうことがこの基本的な規定、十四条、十五条で、そういうことも含めて置かれているものと解釈できますでしょうか。

中谷(元)議員 はい、そのとおりでございます。

 十五条で、事業者の実施の方法について、必要な施策を講じるものとするということで、国、地方、こういったものが実施するということになっております。

 また、どのようにやっていくかということにつきましては、関係者会議が設けられていますので、先ほど、玉城デニー議員の実例、のめり込み、非常に難しい問題でありますので、心理学の学会の御意見とか、また事業者、そして患者、そういったものが相まちまして、関係者会議を経て基本計画をつくりますので、その際、こういったことについても議論して、検討して対策ができるということは可能であるというふうに思います。

玉城委員 では、最後の質問です。

 今、対策をとることは十分可能であるという答弁をいただきました。では、今回制定されようとするこの基本法案以外で、どの法律によって、今ほどお答えいただいた答弁を補完するということがつなげて考えられますでしょうか。あわせてお願いいたします。

岩屋議員 例えば、パチンコは、先生、風適法で監督されているわけですが、その二十条に、国家公安委員会規則で定める基準に照らして、著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものを設置して営業してはならないという規定がありますので、これに基づいて監督されているわけで、最近では、出玉率を三分の二にしたという措置がとられました。

 先生御懸念の、音響効果、照明効果などが射幸心とどういう関係があるのかということについては、さらなる調査研究の上に、もしその因果関係がはっきりしてくればその基準の対象になっていくものというふうに考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 そのためにも、常に関係者間の協議の場で丹念な取組を行っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

山際委員長 これにて、両案中、中谷元君外七名提出、ギャンブル等依存症対策基本法案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、明二十五日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


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