第16号 令和3年4月8日(木曜日)
令和三年四月八日(木曜日)午前九時三十分開議
出席委員
委員長 木原 誠二君
理事 平 将明君 理事 冨岡 勉君
理事 中山 展宏君 理事 藤原 崇君
理事 松本 剛明君 理事 今井 雅人君
理事 後藤 祐一君 理事 濱村 進君
安藤 裕君 池田 佳隆君
岡下 昌平君 金子 俊平君
神田 憲次君 小寺 裕雄君
杉田 水脈君 高木 啓君
中曽根康隆君 永岡 桂子君
長尾 敬君 西田 昭二君
本田 太郎君 牧島かれん君
牧原 秀樹君 松本 洋平君
宮崎 政久君 吉川 赳君
和田 義明君 阿部 知子君
大西 健介君 玄葉光一郎君
森田 俊和君 森山 浩行君
柚木 道義君 吉田 統彦君
江田 康幸君 古屋 範子君
塩川 鉄也君 藤田 文武君
岸本 周平君
…………………………………
内閣府大臣政務官 岡下 昌平君
内閣府大臣政務官 和田 義明君
内閣府大臣政務官 吉川 赳君
参考人
(学習院大学文学部教授)
(東京大学大学院教育学研究科客員教授) 秋田喜代美君
参考人
(東京都立大学人文社会学部教授)
(子ども・若者貧困研究センターセンター長) 阿部 彩君
参考人
(株式会社保育システム研究所代表取締役)
(保育専門誌「遊育」発行人) 吉田 正幸君
参考人
(鹿児島大学法文学部教授) 伊藤 周平君
内閣委員会専門員 近藤 博人君
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委員の異動
四月八日
辞任 補欠選任
岡下 昌平君 中曽根康隆君
足立 康史君 藤田 文武君
同日
辞任 補欠選任
中曽根康隆君 岡下 昌平君
藤田 文武君 足立 康史君
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四月八日
特定秘密保護法の撤廃に関する請願(藤野保史君紹介)(第七九一号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)
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○木原委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、学習院大学文学部教授・東京大学大学院教育学研究科客員教授秋田喜代美さん、東京都立大学人文社会学部教授、子ども・若者貧困研究センターセンター長阿部彩さん、株式会社保育システム研究所代表取締役・保育専門誌「遊育」発行人吉田正幸さん、鹿児島大学法文学部教授伊藤周平さん、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、秋田参考人、阿部参考人、吉田参考人、伊藤参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、秋田参考人にお願いいたします。
○秋田参考人 おはようございます。秋田でございます。
この度は、発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。お手元に配付資料はございませんので、口頭で説明をさせていただきたいと思います。
私は、今回の子ども・子育て支援法並びに児童手当の一部を改正する法律案に賛成をいたしております。そこで、その理由をこれから順に御説明をさせていただきたいと思います。
まず一つ目は、子ども・子育て支援法の一部改正に関する三点でございます。
一つは、関係機関の相互の連携の推進に関する事項を追加する件でございますが、この記載によって、専門家が連帯、連携し、妊娠期からの切れ目ない支援を行うことによって、子供と子育て家族を支援するネットワークの網、ネットワーク網、セーフティーネットがより細やかになります。子育てする家族にとっては安心感が高まり、専門家の協働によって子育て支援の質の向上が見込めると判断されます。
そして、第二点目の事業主の拠出金の上限割合の引上げに関してでございますが、皆様御存じのように、ゼロ歳から二歳児の保育所運営費に関しましては一千億円が追加拠出されることとなったことから、保育所等運営費に充てる拠出金の額が現行の充当上限割合である六分の一を超えることがもう今既に見込まれるという実態を踏まえますと、また、特にゼロから二歳児の保育ニーズが極めて高いことからも、この法案の変更というものが妥当であるというふうに考えられます。
なお、保育の質が、運営費が増えると保育の質が高まるということは、反対に、海外では、オランダやカナダでは、運営費が削減されると質の低下を招くということがエビデンスでも既に出されている点からも、極めて重要であると考えられます。
そして、第三点には、積極的に取り組む事業主に対する助成及び援助を行う事業ですけれども、仕事と子育ての両立を更に推進していく優れた方策の一つでございます。実態としては中小企業の割合が低いというような事実がございますので、この推進へのインセンティブになることが望まれますし、広くイメージアップのための広報をしていくというようなことによって、両立支援の機運を更に高めることが重要であると判断しております。
そして、次に、恐らく今回の最も大きな論点であります児童手当法の一部改正に関して意見を述べさせていただきます。
まず、この点に関して意見を述べるに当たり、私の前提を申し上げます。
私は、子ども・子育て支援新システム検討会議の発足以来今日まで、子ども・子育て支援新制度の検討会議の委員として、ずっと継続して参画してまいりました。この期間、国の子育て支援政策は、待機児童対策、幼児教育、保育の無償化など、全体として充実が図られてきていると認識しております。
しかし、それでも実際には、待機児童対策等の量的拡充は図られてきてもまだ十分ではなく、さらに、質の充実も必要とされていますが、財源は十分とは言えません。保育の量的な拡大を更に進めると同時に、質の充実も今後、乳幼児期の子供にとって生涯にわたる人格の形成を培う上で重要であるというふうに判断されます。
子ども・子育て支援の量的拡大と質の向上を実現するためには一兆円超の予算が必要ということが言われてきておりますが、令和三年度の予算は現在七千億で、当初想定された額より三千億円不足しております。まだまだ予算は十分ではなく、子育て支援のための予算も今後更に充実していく必要があるという認識に立っているのが、まず私の前提であり立場であるということを述べさせていただきます。
その上で、限られた財源をどのように配分していくのか、その配分の優先順位は何か、それが国全体の子供たちや子育て家族のウェルビーイングにとって重要かという判断が、今回の児童手当法案の議論の主要論点であるというふうに理解しております。
限られた財源をどうするかということでございますが、第一に、国際的な政策動向から考えてみますと、児童手当や児童扶養手当のような保護者に現金給付を直接行う現金給付と、保育や幼児教育等、子供自身の生活をする場の保育、幼児教育の充実を図る現物給付で、どちらをより厚く配分する政策を取ってきているかというような比率を見ますと、先進諸国、スウェーデン、ドイツ、フランス、イギリス等の先進諸国においては、どの国でも、現金給付よりも現物給付をより充実するよう増やしてきているということが内閣府の資料等で指摘されております。
そして、スウェーデン、ドイツ、フランスでは、実際に現物給付の比率が現金給付よりも多くなっています。これは、保護者に配付される手当が専ら子供のために真に使われるかということの保証が十分にはなく、保護者自らが使用する懸念もないわけではないからです。
また、多くの子供たちが乳児期から保育所に登園しているという現在の我が国の状況を考えますと、現物給付によって子育て家族を支えるということが極めて重要になってきていると考えられます。
また、児童手当のような現金給付に関しても、イギリスやフランスでは所得による違いをつけております。それは、世界的に経済的な格差が増大する中で、より困難な層に手厚く、困窮の層に手厚く子ども・子育てに関する資金の充実が図られるべきだと考えられているからです。
税金ですので、真に貧困世帯、困窮世帯の子供たちが質の高い保育を受け、子供をより多く産んでも安心して子育てが家庭でできることに優先的に配分されるべきではないかというふうに考えられます。
英国、米国等の保育の質の効果研究でも、経済的困難層の乳幼児の保育の質が子供の発達に及ぼす影響が大きいということが示されております。家庭の経済状況が児童虐待の生起の直接原因となっているという因果関係は同定できませんけれども、経済状況が媒介要因の一つとして影響することは指摘されているところです。
厚労省の二〇一九年の世帯調査によりましても、全世帯が五百五十二万三千円、児童のいる世帯が七百四十五万九千円でありまして、特に子育て世代では六百十四万円が世帯年収でありますので、今回の千二百万円は、およそその二倍になります。しかも、今回は、世帯の合算額ではなく、世帯主のみで千二百万円の所得制限になっております。つまり、共働き世帯が増えていることから、世帯合算で見ればより高くなる可能性も考慮に入れる必要があります。
また、年収が千二百万を超える世帯では金融資産が大きいということも示されていますし、児童手当が実際の生活費や養育費よりも将来の貯蓄や保険料として使用されているというようなことも内閣府のデータで示されています。世帯年収が高くなるほど金融資産も多く、さらに、児童手当が貯蓄等に使用されることも容易に予想されます。
この所得制限で児童手当受給対象となる児童数は約四%でございます。この今回の見直しの三百七十億の財源効果が見込めるわけですが、それを子育て安心プランそして待機児童対策の方に割り当てていくということが困っている家庭をより厚く支援することにつながりますし、今後は、多子世帯への給付の拡充や、経済格差拡大の中で生活困窮世帯への給付支援等、現在において喫緊に必要とする保育の問題の解決に使用されるべきではないかと判断をいたします。
少子化対策という観点から見たときにも、今回、新たに不妊治療それから全ての子供の幼児教育の無償化に大きな予算配分が充てられております。ですので、児童手当で、特に所得の高い層での少子化対策として児童手当がどこまで有効であるのかというようなところも疑問があります。
このようなことから、新型コロナで経済格差が一層拡大している中で、限られた予算では、所得制限をかけて、その資金を保育の充実に充てていくための第一歩にするということが妥当なものであるというふうに判断がなされます。
終わりですけれども、最も重要なことは、社会保障の中でも子ども・子育て支援のための予算は国の未来を開いていくために今後も一層充実していく必要があるということ、そして、それを子供たち、特に困窮世帯の子供たちへの喫緊の課題に対して手厚く対応し、人生の始まりにおいて目の前の子供たちが豊かな人生のスタートを切れるようにしてほしいと願っておりますことをつけ加えまして、私の意見陳述とさせていただきます。
以上になります。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。
次に、阿部参考人にお願いいたします。
○阿部参考人 おはようございます。東京都立大学人文社会学部、また子ども・若者貧困研究センターの阿部彩と申します。
今日は、このような機会をいただき、ありがとうございます。
私は、貧困の専門家ということですので、子供の貧困の立場から、必ずしも今日の法案の範疇にとどまることだけではないんですけれども、今の子供の貧困の現状からの意見を述べさせていただきたいというふうに思います。お手元に資料を配っておりますので、そのグラフを見ながら聞いていただければ幸いです。
三ページ目になります。日本の相対的貧困率、これは御承知のとおり、二〇一八年値で子供の貧困率は一三・五%となっております。
残念なことに、この調査は三年ごとに行われておりまして、二〇一八年の数値というのは、もちろん今のコロナ禍の子育て世帯の状況に比べると、大分状況がよかった頃のことです。ですけれども、そのような時点でもどのような子供が貧困なのかということでお聞きいただければと思います。
ちなみに、もし経済状況が二〇〇九年、一〇年ぐらいの経済状況まで戻るんだとすれば、子供の貧困率がやはり一六、一七%過ぎになっていくというのは十分に考えられることかなというふうに思っております。
一ページおめくりください。これは厚労省の今の二〇一八年のデータを年齢別に、性別に推計し直したものになります。
御覧になりますように、今、日本の貧困率は二つの山があり、一つが若年期、一つが高齢期になります。高齢期は男女差が非常に大きいんですけれども、子供の方に着目していただきますと、まず、子供の方の貧困率が高齢者とほぼ同じぐらいになっている、特に男性ではということがあります。それと、一つやはり注目していただきたいのが、子供の中でも年齢によって非常に大きな差があるということです。これが、年齢の低い層の方が子供の貧困率が高いと思っていらっしゃる方が多いんですが、実は年齢の高い層の方が子供の貧困率は高くなっております。
一ページおめくりください。これはちょっと長期的に、八五年から二〇一八年に何が起こってきたかという、これは男性の方の年齢別貧困率ですが、赤が二〇一八年、青が一九八五年ですので、約三十年前です。
見ますと、まず、子供期の山が非常に顕著になってきたというのが非常に顕著に分かるかなと思います。それと同時に、先ほども申し上げましたように、やはりこの時期は山なんですね。一ページめくっていただくと、女性も同じように十五歳―十九歳又は二十―二十四歳をピークとする山が子供期に起きています。
もう一ページおめくりください。ここは二〇〇〇年代からの状況ですけれども、見ていただきますと、赤で囲っていますように、ゼロ歳から二歳、三歳から五歳の貧困率は二〇一二年から大きく下がっておりますけれども、年齢の高い層ではそれほど下がっておりません。
では、なぜこのようなことが起こっているのかということですが、二ページおめくりください。
次は、二〇一八年の再分配前と再分配後ですが、見ていただきますと、まず、再分配前の貧困率、男性ですけれども、年齢層によって大きく違うということです。
その次のページも女性で同じようなことをしておりますけれども、再分配がどれぐらい貧困率を削減したかということを見ますと、確かに年齢の小さい層というのはそれほど削減されてはいないんですけれども、ですけれども、元々の再分配前の所得の貧困率が子供の年齢が高い層で高いんですね。
もう一ページめくっていただきますと、二〇一八年の再分配前と再分配後を三歳刻みに出してみましたけれども、これで見ても分かりますように、やはり再分配前の差が非常に大きいということで、それの差を縮めることは再分配後に起きていません。
もう一ページ、済みません、どんどん行きますが、めくっていただきますと、これが八五年から二〇一八年の違いを見せています。八五年が薄いブルーで、二〇一八年、一番直近のものが濃いピンクになりますけれども、やはり全体的にどの年齢層も再分配前の所得の貧困率が非常に大きく伸びているんですね。中でも、やはり、どこが伸びているかというと、子供の年齢層の中でいえば、年齢層の高い層の方が伸びています。
その次のページは女性で同じようなことを言っています。
ポイントですけれども、長期的に見ると、子供のいる世帯においては再分配前の貧困率が悪化した。つまり、子育て世帯の雇用状況が悪化しているということなんですね。それがまず第一の、一番の大きな貧困の元凶です。
再分配の逆機能ということで、再分配前の方が再分配の後よりも貧困率が低くなっている、貧困率が悪化してしまうという逆機能というのは、実は、二〇一五年まではずっと見られておりました、子育て世帯の中では。ですが、それは解消されています、二〇一八年では。ですが、それでも、やはり、特に中学生以上の子供においての貧困率の長期的な悪化と、その改善の恩恵が行き渡っていないという状況があります。
次に申し上げたいことが、平時における生活困窮があるということ。ポイントとしては、生活困難というのはコロナで初めて現れた問題ではないということで、一例だけ持ってきました。それが債務の滞納です。公共料金と債務の滞納。
今回、コロナの中で、家賃が払えない、公共料金が払えないといったことで、様々な措置がなされました。ですけれども、このデータは二〇一七年のものです、二〇一七年の時点で、過去一年間で金銭的な理由で電気料金が払えなかった率、一人親では一割を超え、二人親でも二から四%となっておりますので、三十人に一人、各学年に数名はいるといった状況です。
これは全国調査のものなんですけれども、各自治体が行っている子供の貧困調査を見てみますと、もっと赤裸々な状況が見て取れます。ここは、済みません、愛知県、沖縄県、北海道、香川だけを持ってきましたけれども、どこの自治体でも、ほとんどの都道府県がこの実態調査をやっておりますけれども、見ても同じような数値になります。ですので、沖縄であれば、一割以上の子供たちの世帯においてこれらの料金を滞納したことが一年間であるといった状況です。
一ページめくっていただきますと、大阪と沖縄では、実際に電気やガス、水道が止められたことがありますかということも聞いておりますけれども、大阪では、半年の間で一%以上の子供において電気、ガス、水道が止められています。一%というのは百人に一人ですので、一学年に一人の子供が電気が止められている家に住んでいるということになります。実際を申し上げますと、子供のある世帯の生活保護率は約一%ぐらいですので、それと同じぐらいの割合の子供でそういった状況が起こっているということです。
一ページめくっていただくと、これが私の意見となります。
まず、今回、コロナによって様々な政策が施されており、それはすばらしいことなんですけれども、所得補填、つまり、所得が下がったという人たちに対する所得補填と、それと、憲法が保障する最低限の生活ができていないという人たちに対する所得保障、この二つは違うのではないかということです。特に、やはり、私は、赤の所得保障の方を今強く強化するべきだというふうに思っております。それは、憲法で、二十五条で定めるもの、また、子供の貧困、推進に関わる法に定めてある子供の機会の保障といったことになります。
このような生活困難はふだんでも起こっているんですね。コロナで初めて起こったわけではないです。コロナに対して、緊急時として、特別措置として対処することには、もちろんやらなければいけないのでやっているんですけれども、弊害もございます。
一つが、リアクショナリーな対応、つまり、声を上げたところに対しての給付はすぐなされるけれども、声を上げられないところには出せない。一時的なものにとどまる。貸付事業というのがまたありますし、一回だけの給付金といったようなことになります。
切れ味が悪く、非効率な対応になるというのは、必ずしも必要でない人にも全て配ってしまうというような方法を取るしかないということです。確かに、所得が下がっている子育て世帯は多いですけれども、全然所得が下がっていない子育て世帯もたくさんあるし、その方が大部分だというふうに私は思います。
それから、平時の生活困難に対しては何らかの便益がなく、逆に財政圧迫により悪化する可能性がこの数年間はあるというふうに思っております。
ですので、子育て世帯への生活保障を考えたときには、まずコロナ禍の目前の生活困難に対処するというのを優先すべきで、特に今の時点では優先すべきでないかというふうに思っています。
これから、次の貧困率が、物すごく、一八%となってもおかしくないといったような状況のときには、やはりここが一番今手を打っていくべきところかなというふうに思っております。これは、今回の法案の中では対処されるところではないと思いますし、児童手当か保育か、どちらに配給するのかといった二項選択ではないと私は思います。
そういった中では、やはり、生活保護というのは、一番これが最後のセーフティーネットであり、これを受けやすくし、そして恥でないというような状況をつくっていかなければいけない。ですので、私は、首相が生活保護があるというふうにおっしゃってくださったことは、非常にうれしいというふうに思いました。ですけれども、お言葉に合うように、生活保護を必要な人は全部受けられるようにしていただきたいということで、そこの条件の緩和というのは是非御検討いただきたい。
今、生活保護の保護率、二〇一七年のものしかなかったんですけれども、これを見ますと、やはりゼロから十九歳のところは一%といった程度になっております。ですので、高齢者に比べて大分少なくなっているといったようなことがあります。
そこで、最後に、政府の信頼の回復といったところで、まず今の国民に必要なのは、どんなに困っても、どんなに仕事がなくても、ここまでの生活は絶対に政府が守ってくれるという安心感を持てないということだと思うんです。それはやはり、ボトムラインが何なのか、どんなに困っても、日本にいたら、医療が受けられないことはないんだよ、子供が食に困ることがないんだよ、そういった状況、お母さんやお父さんが失職しても心中しなくてもいいんだよ、生活保護があるんだよ、そういう安心感がないというのが一番の問題かなというふうに思っていますので、私はそこを強化するというのを一番に考えていただきたいなというふうに思います。
そのほかに、子供に関しては、食の支援、これは子供食堂などのNPOに対する支援が今なされていますけれども、公立の中学校であっても給食というのが一〇〇%給付されておりません。ですので、そういった食の支援。また、定時制高校や高校生年代、子供の施策というのが全て中学生以下の子供に対するものに今収まっているというようなことがあります。医療の保障もそうです。これも自治体が行っていますけれども、ほとんどが中学生までです。それと、住まいの保障。この三つをまず考えていただきたいなというふうに思います。
済みません、今回の法案に直接関係、それを超えてしまうところもございますけれども、是非子供の貧困という観点から御検討の材料にしていただければなというふうに思いました。
御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。
次に、吉田参考人にお願いいたします。
○吉田参考人 三人の大学の研究者に挟まれまして、一体私は何者だろうと自分でもちょっと思ったのでございますが、保育専門誌を四半世紀出し続け、現場、行政、いろいろな方々とやり取りをしているその経験、あるいは、国、地方自治体の様々な子供関係の会議にも関わらせていただいていますので、そういう立場を踏まえてお話し申し上げたいと思います。
本日の案件については、秋田先生の方からかなり詳細に正確なお話をいただきましたので、少し視点を変えて、この児童手当あるいは子ども・子育て支援の問題を少しマクロな視点で整理をした上で、今日の案件に対する意見を二つほど申し上げたいと思います。
釈迦に説法でございますが、そもそもこの子ども・子育て支援新制度というのは、税と社会保障一体改革の中で誕生しまして、いわゆる全世代対応型の社会保障ということで、消費税財源から七千億円を入れる、それから、社会全体が支援するということで、企業等の事業主拠出金というところから七千百億円ぐらいが今入っている。その中から、今般の問題の児童手当、あるいは三歳未満児の保育、あるいは企業主導型保育というものに使われております。
先ほどもお話ございましたように、そもそもこの新制度、スタートのときには、一兆円を超えるような新たな財源を追加をして、質、量共にしっかり進めるという大前提でございましたが、七千億円については消費税から入りましたが、残り三千億がいまだ実現をしていない。この三千億円で本当は、量だけでなく、より質の改善につなげるということであったわけですが、まだこれが実現をしていないということでございます。
その意味では、OECD加盟諸国、先進国の中で、相当ここ数年、日本の子供財源は膨らんできたとは思いますが、是非とも世界に胸を張れるような一層の子供財源の拡充をしていただきたい、まずこれが大前提だということでございます。
さはさりながら、コロナ禍の下で、歳出がかなり膨らみ、歳入も厳しくなるだろうという厳しい財政事情の中で、今般の児童手当等の改正という話になったわけでございます。したがって、本来であれば、恐らく誰一人特例給付等を廃止はしたくない、与野党の先生方問わずに、むしろ増やしたいということだと思いますが、しかし、残念ながら限られた財源の中で、これをどう有効に、あるいは効果的に使うのかというところで是非意見の調整をいただきたいと考えております。
そのためには、児童手当ということだけで特化して議論をしたのでは恐らく答えは出ないのではないか。つまり、子ども・子育ての関係施策というのは、いわば総合的に、あるいは包括的に、あるいはパッケージのような形で成果を出すことを考えるのが私は筋だと思っておりますので、その意味で二つの視点で申し上げたいと思います。
今日の資料は、いろいろごちゃごちゃ書いてございますが、御参考にしていただきたい。
その中でも大きく取り上げていますが、一つは、部分最適の発想ではなく、全体最適の発想が子ども・子育て支援政策においても重要であろう。もちろん児童手当そのものも非常に重要ですけれども、そのことだけで恐らく答えは出ないのではないか、様々な多様な施策の総合化、包括化が必要だ。あるいは、言い換えれば、児童手当を始めとした、育児休業給付もそうでしょうが、現金給付と、それから幼児教育、保育あるいは子育て支援のような現物給付の組合せ、バランス、これをどう考えるかということだと思います。
その点でいえば、今回の特例給付の廃止ということは、残念なことではございますが、一方で、二年前に行われた幼児教育、保育の無償化によって全ての世帯収入の家庭が無償化をされましたが、結果的には、保育料を考えれば比較的高所得層の方が無償化の、金額的には大きかった。それを、合わせ技ということは適当じゃないかもしれませんが、児童手当と無償化を重ねて考えると、特例給付のやむない縮減というのは、組合せで考えればあり得るのかなというふうに考えております。
そして、今日の資料で唯一使う資料は、最後から二枚目でございますね。二つのデータを出してございます。七ページ目と八ページ目。これは、今年一月中旬ぐらいでしたか、日本保育協会の石川県支部の方で国際的なことをやりたいという依頼がありまして、先ほどの秋田先生にも大変御協力いただきましたが、オックスフォード大学のエドワード・メルウィッシュという、大変、政府、政策にも関わっている先生にオンラインでつないでいろいろな話等、やり取りをさせていただきました。その中の資料の一部ということになります。
八ページ目の資料を御覧いただくと、もうこれは一目瞭然、もちろん日本とイギリスでは状況が違いますからイコールにはなりませんが、御覧いただいたとおり、子供のいる家庭の収入状況によって子供の発達状況がどうか。このグラフが、低い方がいいわけですね、発達遅延率ですから、これは低い方がいいということなんですが、やはり貧困層あるいは平均より以下の世帯の方が残念ながら子供の育ちにいろいろ問題を生じている。言い換えれば、所得が高い家庭ほど、やはりそこはいいんだということが如実にうかがえます。言い換えれば、児童手当等の現金給付がより効果を発揮するのは、中間以下若しくは貧困層でより効果が出ると言っていいかと思います。
しかし一方、ここからもう一つ読み取れるのは、幼児教育、保育を受けている場合と受けていない場合で、これは、家庭の収入にかかわらず、全ての家庭において、幼児教育、保育を受けている方が子供の育ちにやはりメリットが出てきている。ということは、より高所得層は、現金給付以上に幼児教育、保育という現物給付の質で貢献できる要素はかなり高い。
今回、千二百万円というモデル世帯の、どちらかの親の収入ということでございますが、夫婦合算すると恐らくもっと多い、千五百万、二千万の家庭もあるでしょう、その家庭が月五千円もらうということと、いや、五千円はなくなりますが、あなたのお子さんの幼児教育、保育、あるいは小中学校の教育環境が非常によくなって、あなたのお子さんの育ちにいろいろ整備されるんですよ、そっちにも回るんですよということの方が恐らく理解していただける家庭は多いのではないか。極論ですけれども、私は、実はそのように考えております。
それからもう一つは、これも、所得にかかわらず、子育て家庭の家庭状況が子供の育ちにかなり影響する。それは、その前の七ページのところを御覧いただければお分かりのように、真ん中から左の方が主に家庭の状況ですね、世帯の収入であったり、親の学歴であったり、社会経済的地位であったり、家庭学習環境であったり、これはかなり子供の、十一歳時点ですけれども、読み書き算に大きく影響しているということ。じゃ、ここの家庭がどんな家庭でも豊かな家庭環境になるように、多様な手厚い子育て支援という現物給付を提供することが恐らく相当有効だろう。
そしてもう一つは、右二つが質の高いプレスクール、プライマリースクールでございますが、これは十一歳時点ですから、もうプライマリースクールの教育もほぼほぼ受けている。そして、随分前にプレスクール、いわゆる幼児教育を受けている。しかし、プライマリースクールよりもプレスクール、幼児教育の影響の方が若干まだ高い、十一歳時点でも。いかに幼児教育、保育の質というものが、その年代だけじゃなく、後々にまで大きな影響を及ぼしているのか。
こういったことを総合的に勘案をいただいて、児童手当等のような現金給付と、それから幼児教育、保育あるいは子育て支援のような現物給付と、そのバランスを、残念ながら限られた財源の中でいかにうまく組合せをして、いかに高い効果、成果を出すか、そこに政策の知恵を、是非とも、与野党を超えて、子供党という視点で結集していただきたい、そのことを切にお願いしたいと思います。
以上でございます。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。
次に、伊藤参考人にお願いいたします。
○伊藤参考人 おはようございます。鹿児島大学の伊藤と申します。よろしくお願いします。
本当に、このような機会をつくっていただいて、非常にありがたく思っております。
私の方は、レジュメみたいな感じなんですけれども、これを全部読むと十分じゃ終わらないので、要点だけお話ししたいと思います。
端的に言いますと、まず、今回の子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案は廃案にしていただきたい。
そこに、後で書いているように、私の対案みたいなのがあるんですけれども、是非、子ども・子育て支援新制度については抜本的な見直しを行って、議員立法でも何でもいいですから出していただきたいと思っております。
このままでは待機児童は解消できないだろうし、実際問題として、先ほどの支援事業の計画のお話がありましたが、計画に連携を盛り込むというのがありますけれども、これもほとんど理念的なもので、実態として、子ども・子育て支援法自体が待機児童解消なり子育て支援の拡充になっていないというのが一番大きな論点。
それから、先ほどからお話が出ています児童手当法の特例給付の廃止。これを廃止した上で待機児童解消の財源にするというのは、これは社会保障・税一体改革の一つの流れだろうと思うんですね。つまり、社会保障の財源は消費税でやるか、別の社会保障の給付を削って、そっちに、財源にするか。
でも、このやり方って、本当に保育が充実するんですか、これは。消費税を上げなかったら保育士の給料は上がらないんですかということになりますよね、結局、リンクさせれば。あるいは、今回みたいに、待機児童の解消をやるためには児童手当を削るんですか。これはおかしいと思いませんか。
そういう観点から私は意見を述べさせていただきます。
コロナ禍の法案提出ということで、そこに書いてありますように、非常に状況が悪い中、子供の貧困だけじゃなくて学生の貧困も、私のゼミ生は学費が払えなくて除籍になりました。バイトもなくなった。親にも私は電話をかけたんですけれども、でもそういう状況です。本当に若い人たちの貧困は深刻な状況で、学ぶ権利すらも十分保障されない。
それから、待機児童の問題もそこに書いてありますが、二ページから三ページにずっと書いているんですけれども、結局、本来であれば認可保育所をもっと増やして、保育士の給料をよくして、配置基準をもうちょっと手厚くすればいいんですが、それをやらない。むしろ、小規模保育事業とかそういうのを作って、保育士でなくてもいい、保育士の資格は要らないと。こんなのあり得ますか。学校で、済みません、私の学校は半分しか教員免許を持っていない教師しかいないんですというのは通用しないでしょう。何で保育所はそれができるんですか、保育施設は。本来、保育士資格のある人に、その人たちをちゃんと給料をよくして配置すべきですが、そういう規制緩和をずっとやってきました。
そして、子ども・子育て支援制度、新制度のときに、四ページのところですが、結局、これは御承知のとおり、二〇一二年の六月に、もう九年前ですけれども、当時与党だった民主党と自民党、公明党の三党合意で、従来は幼保一体化ということだったんですが、それをなくした上で、子ども・子育て支援法と認定こども園法の一部改正、児童福祉法の改正ですが、児童福祉法の、先ほどもお話がありましたが、消費税一〇%への引上げによる増収分ですね、七千億でしたっけ。あと三千億で一兆円。なかなか三千億が確保できないということですが。そういう形で子育て支援を充実するということだったんですが、私はそういう狙いじゃなかったと思うんです。
子ども・子育て支援新制度は、あくまでも介護保険のようにしたかったわけです。あるいは障害者福祉のように。市町村が持っている保育の実施義務を外したかった。だけれども、それはいろいろな保育団体も含めていろいろなところの批判があって、結局、児童福祉法の二十四条一項は残りました。なので、新制度というのはすごい複雑な制度になっています。訳が分かりません。給付制度なのか、それともそういった市町村が委託できる制度なのかよく分かりません。法的に整合性が取れない制度なんです。これについてはもう時間がないのでとてもしゃべれないんですが。
やはり、そういう意味では、ちゃんと公的に責任を持って、自治体やあるいは国の責任で財政的な面も含めて保育所を増設していくということが大切なんですが、事業計画というものが、見てもらったら分かるんですけれども、事業計画については五ページの下の方ですね、子ども・子育て支援事業計画というのは、私も関わっていたことがあるんですけれども、市町村レベルで、鹿児島県の阿久根市というところの子ども・子育て会議でそういう計画を策定したんですが、全部コンサルタント会社に丸投げです。だって、分からないんですよ。そういう中で議論して、でもほとんど事務局が出したのを丸のみです。恐らく、こういう自治体が多いんだろうと思うんですよね。計画は作って終わりです。検証も何もしていない。それで本当に需要が足りていたのか。
恐らく、このままいくと、六ページのところに書いてあるんですけれども、子ども・子育て支援事業計画に定めるよう努めるべき事項として、その事業を行う市町村その他の当該市町村において、先ほどお話があった関係機関等の連携の推進に関する事項が追加されています。これ、実は医療計画とか介護保険支援事業計画でも連携というのはよく言われるんですが、全然進んでいません。
だから、やはり理念的なものじゃなくて、本当に計画をちゃんと検証できるような仕組みをつくること、そしてさらに、市町村とかそういったところで保育所を整備する義務があるというのを、そこまで書き込むべきです。ドイツとかはそういうところまでやっていますものね。
だから、ドイツなんかは、後ろの方に判例がありますが、保育所に入れなかったと裁判を起こしたら、自治体が負けるんですよ。損害賠償責任。ちゃんとつくらなかったということ。そういう義務を明記すること、それが必要じゃないかな。
保育の実施については、私は、市町村が責任を持つべきだと思うんです。これは、今、コロナの中で本当に明らかになっているんですけれども、やはり公的なものでやるべきなんですよ。公助じゃなくて、公的責任でやるべきなんです。そういったことが、全然、今回の法案にも出てこないし。
さらに、児童手当については、先ほどもお話ししたとおりです。
これは、よく言われるんですよ、一番困っている人に行き渡る現金給付。これをやると、必ず、一番困っている人には行きません。一番困っている人は声が上げられない、申請できない。
そして、所得制限をつけると、ボーダーの人が困ります。児童手当もそうですが、児童扶養手当もそうですが、まあ、児童扶養手当が特にそうなんですが、前年度の所得で変わってくるんですよ。だから、前年度の所得がすごくあって、ところが、コロナで全然所得がなくなったら、前年度の所得が高過ぎたから、三百何十万を超していたらもらえないわけですよ。所得制限は本来なくすべきです。
それと、皆さん方も、お金がある人に、そんな、五千円も渡す必要はないじゃないかと言うけれども、多くの国はそうしていますよ。日本は割と選別主義的で。結局、お金持ちからは、税金や保険料を高くして取ればいいんですよ。給付は平等なんですよ。それは事務手続もかからないし。もし、それでどうしても嫌と言うんだったら、十万円みたいに、私は受け取りませんに丸をしてもらえればいいです、あの十万円の給付みたいに。そういう普遍的な制度設計をすべきで、普遍的な制度設計、みんなに配るというのが、一番困っている人に行き渡りやすいんです。
これを私は強調したいし、もう一つは、消費税に依存しない、最後のところですが、十二ページのところですが、消費税と保育の財源をリンクするのはやめるべきです。
これだと、消費税を上げられないと保育は充実しないということになります。そういう目的でリンクさせたんだろうと思うんですが、やはり必要な予算は一般財源で、それが政治の力だろうと思うんですね。政治にやる気があれば、限られた財源じゃなくて、必要なところは、朝日訴訟の一審判決が言っていますが、予算の配分、つまり、そういったものは、予算が足りないから最低限度の生活を削るということはやっちゃいけないと。予算が足りなかったらどこかから持ってこい、必要な給付は。それが政治の役割だろうと。まあ、そこまでは言っていませんが。と私は思いますし、やはり、今回の、児童手当の特例給付を外して三百七十億ですか。これ、三百七十億、何で出せぬのですか、特例給付を外さなくても。なぜその財源が確保できないんですか。オリンピック予算で一兆円ぐらい。だから、これは本当に政治の配分の問題じゃないかと思うんです。
特例給付の廃止は是非やめていただいて、更に児童手当なり児童扶養手当を上積みするような政策を求めて、審議を尽くして、今回の子ども・子育て支援の、拡充というか、むしろ逆行ですね、この法案は是非廃案にしていただいて、そういった、もうちょっと一般財源でやって、子供の、更にもう一回言えば、学生たち、若い人たちの貧困に対処できるような財政出動を行ってほしいと思って、私の陳述を終わります。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。
以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○木原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。
○藤原委員 自由民主党の藤原崇でございます。
本日は、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案につきまして、参考人ということで、先生方、大変ありがとうございました。
私の方から、何点か質問をさせていただきたいと思います。
まず、事前に委員部からお配りをいただいている資料を見ながらなんですが、まず、秋田参考人と吉田参考人に簡潔にお聞きをしたいのは、この法案とはちょっと違うんですが、幼児教育の無償化が導入されてまだ一年ちょっとしかたっておりませんので、評価をするにはちょっと早計だとは思うんですけれども、今の時点で、導入して効果的なものであるとか、例えば吉田参考人ですと、保育に預ける時間が延びてしまうというような懸念もあるのではないかというようないろいろなお話をなさっていたりするんですが、今一年ちょっとたって、ちょっとそれについての感想というか、評価とまでは言わないんですが、感想をちょっと順次お聞かせをいただければと思います。
○秋田参考人 質問ありがとうございます。
まず、教育ですけれども、全ての施設類型に対して無償化がなされたことによって、公教育を担っているということで、保育所も幼稚園も認定こども園も教育のカリキュラムということに対する意識というのが大変高くなってきているというところが評価できる点ではないかというふうに考えております。
それによって、この無償化がなされたことによって、専門性、保育者や幼稚園教諭、保育教諭がより一層の研修に励もうと、その動機づけはなされている。すぐに子供に成果が出ているというようなことは断言できませんけれども、非常に無償化によって私たちは教育をしているんだということの意識が高くなり、それが小学校へどうつながるのかというようなところの意識にも関わってきているのではないか。
これは実証のエビデンスがあるわけではありませんが、関わっている園や、全国の園長や、そういう人たちからの話として御報告申し上げたいと思います。
以上です。
○吉田参考人 実は、残念ながら、コロナ禍によって登園自粛あるいは臨時休園等が特に去年の今頃から相当続きましたので、ちょうど無償化が本当に新年度から効力を発揮する時期にコロナによって非常にその部分が見えにくくなったことはあろうかと思います。
ただ、全てではありませんが、日本中いろいろなところに呼ばれてお話をしている中で、やはり若干保育時間が延びるということはあったやに聞いております。ただ、これも正確な調査をしているわけではありませんので、私の聞いている範囲の感覚として、しかしやはり、四時間利用しようと、八時間利用しようと、十一時間利用しようと無償ですから、同じ無償ならちょっと長い方が助かるなという家庭があるということは想像に難くないだろうと思います。
しかし、一方では、今秋田先生がおっしゃったように、提供する側にとっては、やはり無償ということで相当な国民の税金をいただいているということに対して、じゃ、我々はどうするんだということで、相当質を上げなきゃいけない。
幼児教育の無償化の非常に大きい価値は、ただ子育て家庭の経済的負担の軽減のみならず、所得にかかわらず全ての幼児が質の高い幼児教育を受けられて、まさにヘックマン博士がおっしゃるように、また今日のデータでも示されているように、より質の高い幼児教育によって子供に大きな恩恵がある。ただ子育て家庭の親の負担軽減だけではなく、一番主役である子供に幼児教育無償化の質という面で効果を及ぼすということが重要だと思っていまして、その質に関しては、残念ながら、私はまだ十分ではないと正直思っています。
今回の無償化は子育て家庭の無償ということであって、無償の中身を、プラス、質の方にもう少し政策として目を向けて財源も考えていただければ、より無償化の成果が上がるのでないかというふうに考えております。
○藤原委員 ありがとうございました。
始まったばかりですが、大きな転換で、私も、今、今月から長男は小学生ということで恩恵を受けさせていただいたと同時に、特例給付の関係も利害関係がある世代ではあるんですが、大変ありがとうございました。
この特例給付の削減について賛否いろいろあると思うんですが、特に秋田参考人、吉田参考人、伊藤参考人、共通なのは、もっと子育て予算を増やせばそれが一番いいんだということだろうと思っています。
そういう中で、伊藤参考人、本法案については反対ということなんですが、本法において事業主拠出金の割合を増やすということをやっております。ある意味、子育て予算を増やすような取組なんですが、ただ、これ、その一方で、一般財源と言えるかどうかというのと、そもそも租税法律主義の観点でちょっといろいろな評価があると思うんですけれども、こういうような取組で保育料というか子育て財源を増やしていくという取組についてどうお考えかというのを、ちょっと御所見をいただければと思います。
○伊藤参考人 ありがとうございます。
事業主の拠出金、非常に児童手当に割と特異なことで、それが入っているということはある意味では意味があることではないかなと思うんですが、ただ、後でもお話ししようと思うんですけれども、事業主拠出金を増やしていくということになると、それは企業が連帯的に子育て支援について責任を負う、企業も一緒に。ただ、それで一方で国庫負担が減っていくわけですね、国の負担。その図を見られるとまさにそうなので。
だとすると、やはり国庫負担の部分も増やしていくべきじゃないかということで、むしろ、どっちかというと、今回のやり方というのは、やはり公的な負担の部分を減らして事業主負担に置き換えよう、そういう魂胆が見え見えなので。
むしろ、そうじゃなくて、パイを増やすのであれば、やはり国庫負担の部分も増やしていくというような形で、割合としては減ってもその額を増やすとか、それで全体のパイを増やすというようなやり方がいいんじゃないかなと思うし、もう一つは、これは後でも言おうと思ったんですけれども、結局、拠出金の負担を増大していくと、恐らく、これは実は財務省の財政制度等審議会の、資料にもあったんですけれども、令和三年度の建議というのがありまして、毎年出しているんですけれども、かなりシビアなことを言っていますよね、いつも。
これについて、私の資料の九ページのところですが、少子化対策の安定財源として保険料財源を求める動きが出ているんですね。これは資料に出ていました。
保険料財源というのは一体何を意味しているのか。つまり、拠出金という形でやりつつ、企業の負担ばかりじゃなくて、じゃ、やはり被保険者本人も負担して、被保険者じゃないですね、企業従業員にも負担させようということで、子供保険のような構想が出てくるんじゃないかなというのを私は非常に心配していまして。
こういった少子化対策というのは、やはり保険でやるべきではないです。ちゃんと税をつぎ込んでやるべきなので、その一つとして、拠出金というのは一つの方法だろうとは思うんですが、これがやはりそういった社会保険料負担、社会保険料拠出というように行かないような監視は必要だなと思いますし、それと、保険料の事業主負担については、事業主の間で、やはり中小企業と大企業で全然違うし、事業主負担を嫌がって非正規にするということが多いので、私自身の意見としては、フランスがやっているような社会保障税という形でそういった事業主負担分を取るという方法もあるんじゃないかなと思っています。
今回の法案に出ているのは、やはり国の負担の割合が減っていくというところがちょっと疑問があるし、全体としてはもちろん廃案を求めますが、制度自体は、拠出金を入れること自体については特に異論はないということです。
済みません、長引いて。
○藤原委員 ありがとうございました。よく分かりました。
阿部参考人に、またちょっと本法とは違う観点の、今日、御示唆をいただいたんですが、私もまさしくそのとおりだと思っているんです。
私も弁護士をやっていて、特に、独り身で、非常にビジネスに失敗して借金を負ってしまったとなると、弁護士は、自己破産をして、しばらく立ち直れない間は生活保護を受ければいいのではないでしょうかということを結構簡単に言うこともあるんですよね。
我々としては、立ち行かないのであれば保護を受けられる、それは権利ですから、受ける。窓口で何か言われるのであれば、それは、しっかりついていって、ちゃんと受給をしてというのは、そんなに違和感がないんですけれども、その一方で、やはり生活保護を受けるということについてネガティブな感じを持っている方もいらっしゃるというのも事実で、今日お話あったと思うんですけれども、もちろん行政の対応を変えていくということも一つ大事なことだと思うんですが、受ければいいのではないでしょうかと言ったときに、ちょっとやはり、ううんという方もいらっしゃるんですね、私も相談を受けていたりしたときには。
やはり、そういうのをどうやってマインドを変えていくかというので、変えていくのは必要だ。
どういう取組が大事かなというのを先生から御示唆をいただければと思います。
○阿部参考人 御質問ありがとうございます。
生活保護というのが国民の権利であるということ自体が、非常にやはり国民の方に浸透していないというふうに思います。また、生活保護に一旦かかったら抜けられないというのは、今は、本当に高齢者の方ですとかそういった方々しか受けることができないという事実があるからであって、それこそがより今後変えていくべきところだと思うんですね。若い方も困ったら受けて、そして元気になったらそこから出ていくという、そのうまいサイクルをやっていけばいいんじゃないかなと思います。
また、今、生活保護については、もうオール・オア・ナッシングという形になってしまっていますので、例えば、じゃ、住居費だけ何とかなれば生活していけるとかそういった方々も、医療費だけ何とかなれば生活、今は医療単給をやっていますけれども、特殊なケースしかないというふうに思います、ホームレスの方ですとか。なので、そのように、やはり、より柔軟にセーフティーネットとして機能させていくということが重要なのではないかなというふうに思います。
子供に関して言えば、生活保護は子供に関してはかなり手厚くなってきました、ここ数年で。そういったことも含めて、やはり子育て世帯にも生活保護、本当に困ったら生活保護というのを、もっとポジティブなメッセージとして政治家の方々から発信していただければなというふうに思います。
○藤原委員 ありがとうございます。
どういうふうにしてポジティブなメッセージを発するのが浸透するのかというのはなかなか難しいなというのは私も思っているんですが、今、部分的なセーフティーネットというのはまさしくおっしゃるとおりだなということで、非常に勉強になりました。
吉田参考人にちょっと一点。
資料の方で、十一歳時の効果、リテラシーと計算力というのと、所得層別の発達遅延率という資料を添付をいただいているんですが、今の日本というのは、大分変わってきたところもあるんだと思うんですが、学歴社会だと思うんですよね。高い学歴の方が職業選択もある程度自由が広がりますし、もちろん、別に学歴が高くていい仕事に就くのがいいという世の中ではないんですが、人生の中で、一般的な今の世の中が見る、成功したと言われるためには、学歴を得る方が大事だというふうに言われています。ある意味、学歴で差別をしていると私は言えるんだろうと思います。学歴を差別の根拠にできるのは、学歴は本人の努力で何とかなるからだ、そういうことが大前提にあると思うんですよ。
ですが、この資料を見ると、これは十一歳時ということなんですが、生まれによって、ある意味、そういう基礎的な能力のところで差異が出ているというのは、これは非常に大きな示唆を与えている。学歴というのは本人の努力で手に入れているんだ、だから、それで区別をすることは問題がない。だけれども、そうではないんじゃないかというようなことだと思うんですが。
これは十一歳時の効果ということなんですが、やはり、そういうふうになったときに、今の世の中、学歴というものが非常にまだまだ大きな指標になっているんですが、この研究結果なんかを見ると、必ずしも学歴というのは本人の努力だけではないところがある。それを埋めるためには幼児教育、保育教育の重要性がということなんですが、今後、どういう点で質の向上といったときに取組をしていくのがよいのかというのを吉田参考人に少しお聞きをさせていただければと思います。
○吉田参考人 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。
手元にデータがございませんが、巷間よく言われているのは、例えば、東京大学に入る学生は、やはり調べてみると、相当、高所得、高学歴の親御さんが多い。これは以前から言われていました。恐らくそういう傾向が強いんだろうと思います。
そうすると、学歴というのが本人だけの努力で決まるのかというと、恐らく、生まれ育ってくる幼少期から、家庭環境で学びの環境があったり、塾とか家庭教師とか予備校とか、あるいはいろいろな教材とかおもちゃとか絵本とか、やはりお金のかかる世界もありますので、そういうものが潤沢に用意できる家庭に生まれ育つ子供の方が、スタートラインで、その子自身の能力より、やはり有利であるという問題はあろうかと思います。
であればこそ、そういうものを超えてもう少し普遍的な形で、子供が生まれてから、幼少期、乳幼児期から小中高校の時期にかけて、そういう違いを超えて、やはり、日本に生まれ育って、今後の日本を支える重要な人材として健やかに育っていけるような環境づくりは極めて重要だと思います。
それが、先ほどヘックマンの話もしましたが、このメルウィッシュ教授も含めて、OECD加盟のいろいろな保育政策を考える世界の中で、まあ、秋田先生もそうでございますが、乳幼児期の教育、保育の質はとても重要である、特に非認知能力においても有効である、そういう環境から整備をしていくということで、先ほど申し上げたとおりですが、やはり、より質に着目をする。ただし、コストのかかる部分は、低所得家庭が決してそれによって不利益を被らないような現金給付は有効である。
でも、現金給付プラス質の高いそういう環境、あるいは現物、サービスを抱き合わせで、合わせ技で提供することが極めて重要だし、それはやはり未来を支える人材への投資として、未来への投資として決して高くはない。そういう意味で、本当に財源をしっかり確保していただきたいというふうに思っております。
○藤原委員 終わります。今日は大変ありがとうございました。
○木原委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川です。
今日は、四人の参考人の皆様に貴重な御意見を賜り、本当にありがとうございます。
最初に、四人の皆様に同じ質問をさせていただきます。
新子育て安心プランの中で、短時間勤務の保育士の活躍促進ということが書かれております。保育士の確保の問題のところですけれども、待機児童が存在する市町村において各クラスで常勤保育士一名必須との規制をなくし、それに代えて二名の短時間保育士で可とするというものです。
厚生労働省も、常勤保育士の確保が原則だということをはっきりと述べているわけですが、こうなると、やはり保育の質の低下が懸念をされます。背景にあるのが、常勤保育士の確保が困難となっていることであります。この常勤保育士の確保が困難となっている要因は何なのかについて、皆様からお考えをお聞かせください。
○秋田参考人 御質問ありがとうございます。
常勤保育士が困難な理由のまず一つは、離職率が高いということにあります。つまり、保育士になっても定着しないということです。
それはなぜかということを考えますと、一つは、処遇が一般の通常の年齢層よりも数万低いというような、今かなりキャリアアップ等で改善が図られていてもまだ低いことや、社会的な評価というものが、先ほど学校の先生の話がありましたけれども、そういう専門家であるにもかかわらず社会的な評価がまだまだ低く、託児的な発想に、社会の方たちがそういう仕事として見ているというようなことによって離職率が高い。
それから、一旦辞めたとしても、戻ってくるかといえば、非常に厳しい労働環境であったために、もう一度、一回離職した人が再就職をするというような割合も低い。つまり、M字カーブで、自分の子供の子育ての間、一旦例えば退職したとしても、その後また復帰するというようなことが、支援はされていますけれども、現実には上がってこない。それはやはり、労働環境が悪いという、その悪循環が生じている。結局、離職すれば人手が足りなくなるので、誰かがそれをカバーするというような形が喫緊で起こります。それが厳しい職場というものをつくってきているというようなところが大きな要因ではないかと思います。
今、キャリアアップを始めていますけれども、やはり保育士の資格というものが、続けていくとそれによって、展望というんでしょうか、専門家として成長していく、そういうキャリアラダーという階梯が十二分にまだ保障されていないというようなところも大きな要因ではないかというふうに思います。キャリアアップはその一歩ではありますけれども、まだまだやはり、ほかの看護婦、看護師とか、そういう人たちの職に比べて、そうしたキャリアラダーも見えにくい。
そして、やりがいというよりも、常に命と向き合ってやっている職業でありますので、その辺りの仕事の大変さとの関係があるのではないかというふうに思っております。
以上です。
○阿部参考人 私は保育の専門家ではないので、ここはあくまでも一般論かというふうに思いますけれども、保育の質が貧困の子供に対して非常に重要だというのは、ほかの参考人と全く同感です。ですけれども、やはり保育の質というのは人が大事。そのときに、実は、アメリカの子供の貧困対策の中で一番費用対効果が高かったものの一つが、教員の給与の賃上げでした。
ですので、やはり、先ほどの秋田先生もおっしゃったように、待遇を改善するということがまず一番大事なのではないかなというふうに思います。
○吉田参考人 実は、昨年、私、厚労省の、保育の現場・職業の魅力向上検討会の副座長をしてございまして、今お尋ねをいただいた件のど真ん中に関わる検討をしてございました。
今、秋田先生からもおっしゃったように、人材確保は大変困難である、これは事実でございますが、一つは、やはり処遇が必ずしもよくなかった、あるいは職場環境、労働環境が厳しかった、あるいは職場の人間関係等、いろいろ問題があったというふうに言われてございますが、では、どうすればいいのかということで、私自身は二つの視点があると思っていまして、一つは離職率を下げる、もう一つは定着率を上げる、これは似て非なるものだと思っています。
離職率、離職するというのは、もうこんな大変な仕事で安い給料でやっていられるかという話ですから、離職率を下げるためにはマイナス面を減らす、つまり、今まで十分でなかった処遇を上げる、あるいは残業をさせない、持ち帰りの仕事はさせない、福利厚生を充実させる等々で、今までのマイナスをなくしていくことによって離職率を下げることは可能だろう。
しかし、では、それで定着するかというと、そうではなくて、よりいい仕事を長くやり続けるためには、仕事を通して、この保育の世界で私はいろいろな研修の機会に恵まれて専門家として成長できたという、成長できる職場であること、あるいは、その職場の先輩、後輩を含めて、お互いに専門家同士で支え合って学び合っていけるんだという職場であること、そしてもう一つは、そういうふうに学び、成長したことが子供の育ちに非常に役に立って、私は貢献できているんだと実感できる職場であること、そして最後に、そういったことが職場の同僚や園長や保護者や、もっと言えば地域社会の方から認められ、評価されるという職場になれば、当然これは辞めない、定着をすると思っていますので、離職を食い止めるということと定着を促すという両面で、私は、職員の質、量の確保を図るべきだと思っております。
ちなみに、常勤保育士に対して短時間勤務保育士の問題がございましたが、これもいろいろな多様な側面がございますので、私が現場で聞いている中では、非常にいい職場で職員が辞めない、そうすると、かなり高齢化をしていく、高齢化をして体力的に自信はないけれども、保育の仕事は好きだし続けたい、給料も、私はもう年も取って息子も成長したから高い給料は要らない、では、むしろ私は短時間勤務にしてください、朝から一日中働き続けてシフトに入ることは大変ですという方が少なからずいらっしゃることも事実ですので、その短時間保育についても、いろいろな側面があるということも御理解いただけると、プラスの面もあるんだというふうに考えております。
以上です。
○伊藤参考人 御質問の、パート化につながる規制緩和は絶対私は反対です、今回のやつも。短時間保育士を入れればいいという問題ではないです。ちゃんと常勤保育士で専門性を持って対処すべきだと思います。
なぜ保育士の処遇が改善できないかというのは、私の資料の七ページのところにも書いてありますが、一言で言えば、国が公定価格に算定している保育士の給与基準額が低過ぎるからです。だから、そこを増やすしかないと思います。
そして、八時間労働なんですけれども、保育所の開設時間は、十一時間というような長いところもありますし、八時間労働でやると、もうほとんど子供にかかりっ切りで、記録とか計画の策定とかはできません。つまり、国のそういう算定基準が、だから、あと、記録とか保育計画の作成というのはサービス残業になっちゃいますね。労働基準法上もこれは違法じゃないかと私は思うんですが。だから、国の基準が低過ぎる、国がちゃんと財源を投入して公定価格を引き上げるしかないんじゃないかなと思っています。
だけれども、先ほど言いましたように、それをやるためには消費税を上げなきゃいけないとか、別の社会保障給付を削るとか、そういうことをやっているから上がらないので、まず基準、それとあと配置基準ですね。人をやはり増やさないと駄目だと思うんです。
御承知かもしれませんが、そこに書いてありますが、四歳児、五歳児の国の配置基準は三十対一です。三十人の四歳児を一人で見るんですか、保育士。めちゃくちゃですよね。これもちゃんと改善して、だから、ほとんど自治体は、これではとてもできないというので、七ページのそこにも書いてありますが、全国の平均では国基準の一・九倍の保育士を配置しています。そうしないとできない。
だから、まず基準を上げること、そして保育士の給与基準の公定価格を引き上げること、これがまず最大の解決の道だと思います。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
続けて伊藤参考人にお尋ねいたします。
伊藤参考人は、公的保育の大切さ、自治体の保育実施義務の重要性を指摘をされました。
今、企業主導型保育事業が広がり、いろいろな課題も出されているところであります。自治体の保育実施義務のいわば外にあるこの企業主導型保育事業について、どのように評価をされておられますか、お聞かせください。
○伊藤参考人 企業主導型については、非常に、市町村の責任というか、市町村から離れたところであって、不正受給も多いし、なかなか、開設しても、開設できないとかいうことも多いので、私は廃止すべきだと思っています。
本来は、やはりこういった小規模、まあ、小規模保育事業自体は、今、認定こども園も含めて、そういったもの自体は市町村に実施責任がないので、それも含めて、企業主導型をまず廃止した上で、認定こども園や小規模保育、更に保育所、そこに市町村が保育実施責任を持つ形にして、児童福祉法の二十四条二項ですが、そこを改正した上で市町村の実施責任というのを明記した上で、こういった規制緩和はやるべきじゃないです、やはりこれは子供の命が懸かっていますから。
今回の無償化でも認可外保育施設なんかが対象になりましたけれども、やはり認可外保育施設だとどうしても、保育士の資格がなくてもいいわけですから、別にあってもということだけれども、やはり、子供の体の状態とか発達を知らない人が保育していく中で、事故が多発しています。
企業主導型もそうなんですけれども、一部、できないことはないんです。私の大学の組合でつくっていた認可外保育施設が企業主導型になったんですけれども、そういう使い道はないことはないんだけれども、やはり保育については自治体が保育実施責任を持つような形にして、どんな施設であれ、それがやはりベストだろうというふうに考えております。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
続けて伊藤参考人にお尋ねいたします。
今回の児童手当法改正で、特例給付の対象から一定の所得以上の者を外すとしております。日本の家族関係予算は主要国の対GDP比の家族関係支出と比較をしても少ない下で、児童手当の削減は行うべきではない、子育て世帯間のやりくりでこういう対象というのはおかしいと思っております。
そこで、こういった子育て関連の予算の財源をどのように確保すべきなのか、この点についてのお考えをお聞かせください。
○伊藤参考人 ありがとうございます。
財源の確保については、私の最後の方で述べていますが、基本的に、逆進性が強い消費税はやるべきではないと思います。
つまり、消費税でやると、先ほども言いましたように、保育士の待遇を改善するためには消費税を上げなきゃいけない、消費税が上がるのは嫌だから保育士の待遇改善はなされないという悪循環に陥ってしまうので、やはり所得税や法人税の累進性を強化して、消費税も、現段階では、私はもう消費税を廃止すべきだと思っているんですけれども、五%に下げるなりした上で、やはり所得税や法人税の累進性を強化すればいいんだろうと思います。
特に、先ほどもお話がありましたが、高額所得者については金融所得が非常に多くて、その部分は分離課税で非常に安い税率なんですね。それを総合課税にするとか、あるいは法人税の租税特別措置とかを順次廃止していくとか、そういう形でちゃんと、お金がある人やもうかっているところ、そこから取れば、先ほど言いましたように、社会手当は、手当という給付は平等に、お金がある人からはそういった税金や保険料をたくさん取るという、それを財源を確保していくことで私は十分できると思うんですね。それがやはり所得再分配に当たると思うんです。消費税でやれば所得再分配じゃないです、それは。逆分配ですから。
社会保障の本来の制度の在り方は所得再分配なので、やはりこれは、法人税や所得税の累進性を強化していく、あるいはそういった優遇措置を廃止していくことで私は十分確保できると思いますし、不公平税制を考える会なんかですと、四十何兆円ぐらい、そういう不公平税制をなくすことで、累進性を強化することで新たな財源が確保できるということなので、それを子育て支援に回していくということは十分可能ではないかなと思います。
以上です。
○塩川委員 時間が参りました。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、古屋範子さん。
○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。
今日は、四人の参考人の皆様、国会においでいただき貴重な御意見を述べていただきましたこと、心から感謝を申し上げます。
順次、多少重なる部分もございますけれども、確認の意味も込めまして質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
まず、秋田参考人、吉田参考人、お二人にお伺いをしてまいります。
幼児教育の無償化が始まりまして約一年半が経過をいたします。この四月からは、さらに、幼児教育類似施設に対しましても一人当たり二万円の給付という制度がスタートいたします。この幼児教育無償化とともに重要なのが、お二人触れていらっしゃいました、質の向上だと思っております。
この幼児教育無償化につきましては、我が党、全国約三千人の議員で、利用者の方約一万九千人に聞き取り調査を行ったことがございます。その中では八七・七%の方々がこの幼児教育無償化については評価をするというお答えをしていらっしゃいました。
今後、二〇二四年度末までに、更に十四万人の保育の受皿を拡充をしていこう、待機児童を解消していこうということで、新たなプランがスタートをしてまいります。
しかし、その中で、当然、その受皿の拡大ということも重要なんですけれども、その中身、幼児教育の質の向上ということが大変重要かと思っております。この質の向上に向けた今後の課題について、お二人にお伺いをしたいと思います。
○秋田参考人 ありがとうございます。大変重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございます。
幼児教育の質の向上に関しましては、まず一つは、最も子供に対して効果があるということがOECDの調査で明確になっているのが、現職の保育者の研修でございます。それ以外の様々な条件に関しましては、効果がありそうだということは分かっていますけれども、例えば構造の質と言われるような、クラスサイズであったり、一人当たりの子供の担当を減らしていくというようなことも有効であろうということは分かっていますが、じゃ、何人だったら有効かというのは分からない。
それに対して、まず直近で最も有効なのは、現在ある体制の中では、研修を行っていく、しかも、その研修においても、現在何が一番課題であるかというところの焦点や重要な概念について、実際に自分たちの実践を基にした事例などの共有による研修というものが有効であるということが、今オーストラリア等の海外の研修の事例からは明確にエビデンスも出されてきているというようなところになります。
また、その中で、やはり個々人で保育者が保育に当たるわけではなく、チームで、園として行っておりますので、園長や主任、またミドルリーダーのリーダーシップというような形で、園全体の運営マネジメントが順調にうまく進むというようなことが保育の質の向上において重要であるということが言われております。
その辺りについて、また、もう一方では、当然のことながら、今回の児童手当とも関係しますけれども、家庭とのやはり園の連携であったり、それから、幼児教育はその後、児童期以降にやはり大きな影響を及ぼしますので、小学校以降との連携、接続というような形で、家庭や地域との連携、コミュニティーをつくって、地域で子育てをやっていくというような形を実現していくということが、保育の質を、内側で子供と直接接触するやり取りと、それからその子供たち、家族を取り巻く全体としてのウェルビーイングのためには重要であろうというふうに考えております。
以上です。
○吉田参考人 幾つか重なりますので、そこは手短にお話をしたいと思います。
幼児教育、保育の質の向上については、もちろん保育者の養成それから研修等々が重要であることは言うまでもありません。
と同時に、やはり、特に幼児教育、保育は私立、民間がかなり比重が多うございますので、そうすると、やはりいわゆる園長と言われる方々のトップリーダーのマネジメント力がかなり重要だろうと思います。つまり、職員にどれだけ研修機会を保障するんだとか、どれだけみんなの気分を盛り上げるんだとか、これはやはりトップによって相当左右されますので、トップリーダーのマネジメント力を高めるという工夫、努力は避けられないと思います。
それから、もちろん、構造の質と先ほどございましたけれども、やはりちゃんと屋外遊びができるような園庭環境であったり、余り詰め込みにならない保育室であったり、これは決して無視はできません。先ほどおっしゃったように、認可外施設の中には、かなりその部分で問題を抱えている施設がないわけではございませんので、子供の立場に立って、やはり許せないレベルのものは、それは制限しなきゃいけないということはあろうかと思います。
もう一つ、私の方で申し上げたいのは、やはり質というのは評価を避けられません。なかなか保育の質というのは目に見えない、数値化できないものではありますが、しかしながら、評価についてもっとシステムを考えていくべきではないか。
例えば、イギリスにおいては、OFSTEDという政府自身が第三者評価機関を持って、全ての施設を評価し、その評価を受けていないと幼児教育の無償化は適用されないという話でございますし、ニュージーランドにおいても、EROという、エデュケーション・レビュー・オフィスという第三者評価機関を政府が持っておりまして、そこが現場の保育実践について、丁寧な観点から、ナショナルカリキュラムとひもづけた形でやはり質の評価をし、評価をすれば、その評価を受けたということを例えば園の玄関に貼っておけば、保護者がより評価の高い園を選ぶというインセンティブになりますので、そういう意味で、評価システムの検討は今後の大きな課題だろうというふうに考えています。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。保育士の研修、あるいは園長のマネジメント力、環境、そして第三者評価、このような観点が今後重要になるということを伺うことができました。
続けて、秋田参考人にもう一問伺います。
今回、児童手当法の改正で、財源の確保についての改正が盛り込まれました。昨年十二月に閣議決定をされた全世代型社会保障改革の方針では、世帯合算については見送るということになりまして、しかし、引き続き検討されるということになっております。
こうした少子化対策又は子育て支援に必要な安定財源の確保について、先生も、まだ三千億が足りないのだという先ほど意見陳述もございましたけれども、社会全体で子育てを支援していくというこの大きな方向性の中で、政府全体の予算の中で幅広く検討していくべきじゃないかなというふうに思うんですけれども、先生の御意見を伺いたいと思います。
○秋田参考人 ありがとうございます。
当然のことながら、まずはその財源をいかに増やすかということが極めて重要でありまして、先ほど伊藤参考人の話もあれば、阿部参考人の意見もあれば、いろいろな形で子供にとっての財源をどうやって増やすかというところがやはり最も大きな問題でありまして、それで、全世代型においても、やはり高齢者に比べて子供、子供といっても、ゼロから十五だけじゃなくて、先ほど阿部さんが言われましたけれども、もっと、高校生、大学生まで含んだ、そうしたところへのやはり予算投入ということが非常に重要に今後なってくるというふうに思っております。
それのためのごく一部として、今回、特例給付の問題は出ていますが、そこだけで子供の予算が十分なわけではなく、今後更にどういうようにして拡大していくのかということについて、是非先生方に御議論をしていただきたいというふうに思います。企業の拠出というのも限界がございます。その中で、国全体としてやはり子供についての税財源をどう充てていくのかということの議論がもっとなされるべきだというふうに考えております。
以上になります。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
阿部参考人にお伺いをしてまいります。
先生とは、かつて子供の貧困について対談をさせていただいたことがございます。今日も、所得再配分機能についての言及がございました。かなり前の時点においても、先生、若い世代における我が国の所得の再配分機能、ここが弱い、あるいは逆転をしていたということを指摘されていました。ここでも、再配分の機能の逆機能、より可処分所得が減ってしまうというような逆機能は解消されたものの、子育て世帯の貧困率の減少という意味で、その効果は小さいというふうにおっしゃっています。なぜその逆転機能が解消されたかというと、そのとき、先生は、やはり児童手当が拡充されたということが一つの大きな要因だというふうにおっしゃっていました。中学まで、額も拡充をいたしました。
子供の貧困問題と、それから児童手当の意義、これについてのお考えがあればお伺いしたいと思います。
○阿部参考人 御質問ありがとうございます。
私自身は、理想としては、児童手当というのは、やはり、子育てする世帯を全て国として応援していくんだといったもので、普遍的な手当になるべきだというふうに思っています。それが理想だというふうにも思います。ですので、そこの意見は全く伊藤先生と同じです。
ただ、これまでの何十年間の状況を見ていくと、児童手当の増額と負担の議論というのが必ずしも一緒になってはいないというふうに思います。なので、やはり誰がそれを負担するのかといった議論をしっかり踏まえた上で、日本の場合は非常に税金を上げることに対してのアレルギーが大きいかなと思いまして、ですので、そういった増税の話はなく普遍的なものを上げていくというのはやはりやや無理があるのであろう。
特に、やはり、私自身も、生活保護ですとかそのほかのところで、ずっと長い間、予算カット、保護基準の引下げというのを見てきたという立場にある中で、それによってほかのものがスクイーズアウトされてしまうということに対しては非常に懸念を持っています。
おっしゃるとおり、逆機能しなくなったのは、児童手当が大きいかなと思います。でも、そもそも、じゃ、何で逆機能しているのかということを考えるべきで、なぜ逆機能しているのかというと、これは社会保険料です、はっきり言って。社会保険料をどうするのかということについてきちんとやはり議論をしないことには、どうしても再分配機能が子育て期、現役世代において少ないといったところを見ることができない。
今回の法案に関して言えば、実は貧困率というのは中間層以上に幾ら給付をしても全然変わりません、元々貧困でないので。貧困線よりちょっと上の世帯に対してどのような給付をしているかということだけが影響してくるんですね。そういった面においては、やはり貧困線よりちょっと上の世帯に対して児童手当を引き上げる、額として引き上げる又は社会保険料を減らすというどちらかをしなければ、これ以上の再分配による機能の改善というのは難しいかなというふうに思います。
○古屋(範)委員 もう時間がなくなってまいりました。
済みません、最後、吉田参考人に。
保育士が不足をしております。この問題は本当に深刻で、我々も全力で取り組まなければいけないと思っております。この点に関して御意見があればお伺いをしたいと思います。
○吉田参考人 一つは、繰り返しになりますが、まず、基本的な部分で、処遇あるいは労働環境を更に改善するということが基本だと思います。
加えて、先ほど定着率のお話を申し上げたように、これは現場も相当工夫しなければいけません。お金だけつければいいというのではなく、本当に魅力ある、働きやすい、そしてやりがいのある職場だというふうに変えていきながら、また、社会に対して、保育の仕事はすばらしいね、お医者さん、弁護士に劣らず、立派な仕事だねという、何かモーメントを起こすことが重要だろうと思います。
最後に、もう一つだけ申し上げますが、足りないのは事実ですけれども、いずれ待機児童は私は解消すると思っています。東京の特殊な地域を除くと、ほぼほぼ、あと数年で待機児童はかなり解消していく。既に、地方では、もう認可保育所の定員割れが出ている地域が相当出てきていると聞いています。
そうすると、逆に、今度は人が余っちゃう。しかし、余るのか。先ほど伊藤先生がおっしゃったように、だからこそ、配置基準を改善をして、むしろ人的体制を充実するということをもうそろそろ視野に入れる時期かなと思いますので、それも併せてお考えいただければ大変幸いだと思います。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
処遇改善、勤務環境の改善を図りつつも、やはりその先に、質の向上につなげていくべき、このような御意見だったと思います。
今日は本当にありがとうございました。今後の法案審議に生かさせていただきます。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、阿部知子さん。
○阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。
本日は、四人の参考人の先生方のお話、それぞれに大変勉強になりました。
順次お尋ねをしたいと思います。
まず、阿部彩参考人にお願いいたします。
先ほどのお話、他の委員も触れられましたが、新型コロナ問題が社会全般に影響を及ぼしておりますが、とりわけ、これまでの子ども・子育て支援全体の問題にも大きく影響を与えているという御指摘だと思いました。
その中で、最も今私どもが、今回は児童手当云々のことでの審議でございますが、より掘り下げて、子ども・子育て支援とはどうあるべきかということを、コロナを経験して、まず、何から、どこに着目すべきかという点について、阿部参考人にお伺いいたします。
○阿部参考人 ありがとうございます。
多少、私の最初のものに重なりますけれども、ふだんのときであっても、コロナの前であっても、まず、生活というものが破綻している子育て世帯がかなり多い。これは三十年前と全然違う状況がある。それはまず、子育て世帯が稼ぐ能力といいますか、稼ぐことができなくなってきたといったことがあるかなというふうに思います。再分配前であれほど貧困率が上がっているということなので、ここはまずは雇用問題なんですね。
雇用問題というのはちょっと横に置いておいて、じゃ、子供の貧困対策に何が必要かというと、ここ数十年間でかなり子供の貧困対策は拡充されてきました。ですが、それが教育面にかなり偏っているところがあります。保育もそうですし、無償化もありますし、高校の無償化、それから、去年からは大学の一部無償化というのも始まりました。これらはすばらしいんですけれども、どんなに教育費が減っても、家で電気がつけられない状況であるような子供がいるような状態では、子供の貧困対策としてはやはり片手落ちだというふうに思います。
子供の生活自身を支える、これを児童手当というような一律の手当でやるというのは非常に大変だと思うんですね。かなり金額を上げないと無理だと思います。理想としてはそうかもしれませんけれども、でも、それが無理だ、財政上無理だとすれば、やはりそれが払えないような、家賃を滞納している家ですとか、公共料金が払えないような御家庭に対してどのように手当てをしていくかといったことを考えなければいけない。
その生活の面、子供食堂ということで食の問題もあっていますけれども、なぜ親が子供に食べさせられないようになってしまうのかといったときに、少なくとも子供がちゃんと食べられるようにするということを考えていく必要がある。そのための部分的な、これは普遍的な理念から離れてしまうんですけれども、今は、私は、とにかくセーフティーネットを強化するということが一番重要かなというふうには思っています。
ですので、生活面、衣食住ですね、をきちんと手当てするように、衣食住の住の中には、電気ですとか公共料金というのも入っているということになります。
○阿部委員 まず、セーフティーネットの保障、子ども・子育て世代というか、子供自身に対するセーフティーネットの問題を提起をしていただきました。
医療も住まいも食事もそうですが、私は、やはり今、子供というと中学生以下をイメージいたしますが、この間、コロナで更に明らかになったのは、思春期というか十代後半の子供たちの貧困問題、これも際立った問題で、なかなかここが施策の隙間になって手当てがされていないということを日頃から大変問題意識に持っておりますので、今日の阿部先生のいろいろな資料も、その意味で大変参考になりました、貧困の年代がそこに強く表れているということで。
そして、その上でお伺いをいたしますが、今度はお三方にお願いをしたいと思います。
阿部彩先生は、同時に、問題の本質は例えば現金給付か現物給付かの二項対立ではない、そのようにおっしゃられて、ほかの参考人の皆さんも、きっとそう思っておられると思います。少ないパイを、いや、現物だ、現金だと争っていくことではないとみんなここで思っていると思うのですが、私は、わけても子供の保育の質ということは、先ほどの阿部彩さんのおっしゃった、医療、住まい、食事に並ぶ、本当に生命に関わる問題にまで現在なっていると思います。
まず、長年保育の質のことを研究してこられた秋田参考人、そして吉田参考人には、その質に対しての三千億というものが手当てされないところの現状の問題、さらに、伊藤参考人には、職員の配置基準の問題にお触れいただきました。
私自身が一番今願っておりますのは、ゼロから二歳、特に一、二歳児の保育士の配置基準、これが非常に、やはり子供たちの命の保証にも関わるようなレベルであると。ゼロ歳児はお一人の保育士が三人、一、二歳児はお一人が六人を見るわけであります。そして、現実に、保育事故はこの一、二歳、ゼロ歳もありますけれども、ここにもう集中的に表れております。
保育士さんの待遇の金額的な改善だけではなくて、そもそも配置基準をこの年齢層は見直さないと、本当に危険と隣り合わせの中で仕事をすれば当然事故が不可避になるし、そうした場合の緊張と、それから、仕事を続けられない。これは、私は、医療現場ですので、人手の不足が何につながっていくか。事故と、そして働く皆さんを、本当に、そこを続けられない、去るしかないという思いにさせますので、お三方には、この現状の配置基準、特に一、二歳、これを、六人を一人で見ることが本当に可能であるのか。
実は、自治体では、伊藤先生が御指摘のように、少しずつ加算というか、増やさざるを得ないから増やしています。私は、こういうところこそ国が、子供の命の保証ですから、まず手をつけるべきだ、何に優先させてもつけるべきだと思いますが、各々、三方の御意見を伺います。
○秋田参考人 ありがとうございます。
御指摘の点につきましては、例えば震災等のときもそうです、六人の子供を二階とか三階から抱いて、おぶって下りられるのかというような本当に議論が、緊急のときに下りられるのかというような問題もありまして、配置基準ということは、当然それは引き下げるということが望まれるわけです。
ただし、それには、現実として今保育士が足りない。今の現状でも保育士が足りなくてなり手がいない、そういうところで、今、基準というものを、理想は本当に下げていくべきだ、それによってより質がよくなり、もっと安心して保育士が働きやすくなるということは望まれるわけですけれども、それには物すごく保育士の数、それから保育士の給与、金額というものが大幅に増えていくというふうに考えております。それが現実になれば望ましいとは思いますけれども、非常に難しい。
それからもう一方で、これがゼロから、今、育児休暇、産育休の休暇が要するに一年しかないわけです。これを一年延ばしてもう少し御家庭でゆっくり見るというようなことがあって、その部分を逆に、二歳とか、そこを手厚くしていくとか、そういう発想というのも、今後、人の数が、保育士が急に増えないのであれば必要になるのではないだろうかと。
今のままでは、理想は、それは三、四、五もそうです。三歳や四歳でも三十人とか、それが妥当なのかというようなことが、今、小学校以上は少人数学級の議論もなされてきておりますので、その中で乳幼児の部分の引下げの議論というのは非常に重要だと思いますが、そこと人員の問題を今後どう考えていくのか。基準だけの問題ではないので、その辺りを考えていく必要があろうかというふうには思います。
短期的な問題と、中長期的にやはりいずれここへ下げていくのだというような展望を持った御審議はいただきたいというふうに思っております。
以上です。
○吉田参考人 幾つか重なるお答えになろうかと思いますが、一つは、確かにゼロ、一、二歳、三対一、六対一、必ずしも十分ではない。ただし、現場は身銭を切る形で、実際にはかなり、基準どおりではなく、むしろ基準以上に配置をしてやっているというところにどう温かい手を差し伸べるかという視点を是非お考えいただきたい、これが一点でございます。
そして、そのためにもう一つは、今秋田先生もおっしゃったように、育児休業の、期間だけじゃなくて、育児休業取得率を上げることによって、ゼロ歳児、場合によっては一歳児の保育需要を抑えることができればかなり人手を回すこともできますし、私の資料にもございますが、四、五年前のデータで、東京二十三区の公立保育所でゼロ歳児に六十万円以上一か月にかかっているということでございますから、そのお金を育児休業給付であったり、あるいは中小企業のなかなか大変なところに、育児休業を出した企業にインセンティブでお金を出すというふうに回せば、恐らく本当に育児休業を必要な方は取れて、かつ、そこで子供と親との愛着形成という、とてもこれはお金に換えられない世界を保証できますので、そのことも一つのインセンティブとしてお考えいただきたい。
そして、もう一つだけ申し上げますが、これは先ほど申し上げた保育の現場・職業の魅力向上検討会の最終回のときに申し上げたことなんですが、実は昔、厚生省と言われていた時代に、昭和三十年代だったと思いますが、今の保育所の職員配置基準を意見具申をしています。基本的には三対一、六対一、二十対、三十対一を昭和三十年代にもう既に目指すべき配置と打ち出していた。それが完成したのが平成十年でございます。平成九年に児童福祉法改正で乳児保育が一般化されて、指定保育所でないどの保育所でもゼロ歳は三対一で預かれると。十分ではありませんが、それを打ち出した。ところが、その後、平成十年以降はそこでとどまっていて、これからの質の時代は三対一、六対一、二十対、三十対一の次のビジョンが要るだろうと。ところが、まだこれは誰も示していない。
先生おっしゃるように、そろそろ、これからの、特にポスト待機児童時代が来ればチャンスですから、そこをにらんだ、本当に質を上げるための新しい職員配置のビジョンをむしろ政治、政策の世界で積極的に御議論いただき、お示しいただくことが大変重要かなというふうに思っています。
○伊藤参考人 御質問ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、私もそういう基準の引下げといいますか、引上げといいますか、一応提言はしているんですが、現在のはやはり余りにも、特に、七ページのところにありますが、ゼロ歳児三人に対して保育士一人、三対一、これはせめて二対一にすべきです。だから、例えば家庭的保育事業で三人のゼロ歳児を皆さん八時間見られますか、一人で。トイレに行けません。だから、そういう状況は、保育園だと割とみんなでやっているんですけれども、先ほどもおっしゃいましたけれども、これってやはり命の問題だと思うんです。だから、秋田参考人はまだ将来のことだと言うんだけれども、保育士の確保にしても、この基準の改善にしても、子供の命が懸かっていれば最優先でやるべきです。将来じゃなくて、今でも、そういうふうに虐待で亡くなったり、あるいは事故で亡くなったりする子供が大体一週間に一人ぐらいいるわけですから。
それと、もう一つ、コロナでやはり登園する子供たちが少なくなって、それで自主的に来ないという子供たちがいて、それで、保育士が、すごい、こんないい保育ができるんだと言っています。やはり、僅かの人数で多くの子供たちを保育するより、もう本当にマンツーマンぐらいでやるという、もうこれはコロナで明らかになっているわけで、今までの基準がいかに詰め込みであったかと。
しかも、保育士はすごい気を遣っていますから、今、感染させないように。子供なんて、マスクなんて取っちゃいますし。これは認知症の高齢者なんかも非常に大変な状況なんです、聞いていますけれども。保育士もそうなのかと思うんですけれども、私の妹がケアマネジャーをやっていまして、正月に帰っても会えませんでした。他県から来た人に会っちゃいけないんです。そんな厳しい、まあ、医療従事者はもっとすごいですよね、家に帰れないとか。
だから、そういう状況にあるいわゆるエッセンシャルワーカーと言われている保育士さんとか、今給料を上げなくて、一体いつ上げるんですか。今待遇をよくして人を増やしてこの基準を変えなかったら、一体いつやるんだと私は思っていますし、これは最優先で、まさに政治の責任でやってもらいたいと思っています。
以上です。
○阿部委員 いただきました時間が終わりますので、参考人各位には感謝申し上げます。特に、私は、子供の、十五までではなく十代後半までを見通した支援策が何よりこのコロナの時期、必要、また、命に関わる問題、御指摘いただきましたので、重ねて国会として取り組んでいきたいと思います。
ありがとうございます。
○木原委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。
今日は、四名の参考人の皆様、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。
時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。
まず、総論として四名の皆様全員にお願いしたい質問でございますけれども、今回の法改正の一番の争点となっているのは所得制限のところ。この所得制限について、所得制限をやる合理性みたいなものを最初の三名の皆様からいただき、その後、伊藤先生は、所得制限に反対の立場でいただきました。
私は、どちらかというと伊藤先生に近い立場で、給付は一律であるべきで、適切な捕捉によって税で回収する、税をしっかりと取っていくという方がシンプルでいいんじゃないかというふうに思う立場ではありますけれども、この枠組みの中の子育て支援だけを見た場合に、再分配政策という視点から見ればおっしゃっていることは非常に合理性があるなとも思えるわけです、効率的に給付しようという意味において。実際に、貧困対策という、子供の貧困の問題は解決しなければいけない問題ですし、我が党も再分配政策というものにかなり力を入れております。
一方で、もう少し視点を広げると、この問題は、人口動態の問題をやはり考えないといけないと思います。人口動態、人口減少、少子高齢化、つまり、出生数や特殊出生率をどう改善していくか。どう改善していくかというより、大幅に改善していかなければならないというもう少し大きな視点で見た場合に、私は、全ての子供たちを一律にしっかりとみんなで、社会全体で支えていくという強いメッセージが必要だと思うわけです。
ですから、三百億程度の予算のつけ替えのような形で所得制限を設けるというのは、確かに、その分野における政策効果を上げるという意味では、ある種合理性があるかもしれませんが、もっと大きな目線でいくと、少し逆行しているんじゃないかなというメッセージに受け取られかねないというふうにも思うわけであります。
そういう人口動態の面、特殊出生率をいかに上げていくかという面において、再分配政策と併せて非常に重要な視点かと思いますが、そこに対しての御見解をそれぞれ総論としてお聞かせいただけたらと思います。
○秋田参考人 ありがとうございます。
人口動態の考え方ですけれども、私個人は、出生数を増やせばいいというふうには思っていません。
出生数は、子育てが楽しいとか、子供や目の前の家族がウェルビーイング、豊かであるということで、もっと子供を育てたいと思えるような環境があることによって数が自然に増えていくことが重要でありまして、どうやったら、数だけ増やせばいいのか、それへの政策効果はあるのか、そういう議論というのは、実は現実には、産めよ増やせよ的でありまして、そうそう簡単にできることではないと私自身は思っているというところになります。
今回の法案は、やはり限られた中で、まずはこの法案はどうかということでここに招致されていますので、そこでいえば、この案は最も効率的、効果的な案として評価できるのではないかと思っています。
もっと大局的に言うならば、一番広いのは、それは全ての子供に対して、より財源がたくさん、何度も繰り返されますが、できるような政策を、ありとあらゆる知恵を使って子供にもっと財源を増やしていく、それによって子育てがもっと楽しくなるというような循環をつくり出していくということが大事なことであろう。ただし、それがそう簡単に数年でできるのか、それがうまくいっている国があるのかと考えたときに、フランスなどもそうですけれども、北欧もそうですけれども、やはり長期的な展望を持って大きな改革に取り組んでいかなければならないのではないかと思っているところです。
以上です。
○阿部参考人 ありがとうございます。
まず再分配の観点から申し上げますと、先ほど申しましたが、私自身は、もちろん一律給付で、その分きちんと所得税や社会保険料といったところで累進的に取っていくというのは一番美しい形だというふうに思います。ただ、そこまでたどり着けるかといった中で、途中段階というのはあるかなと思っており、今の日本ではやはりその途中段階で妥協するしかないかなというところがありまして、特に負担の面での議論がまだ尽くされていないといったところがあるので、そういった意味では、今回の児童手当の高額所得者のみに廃止するというのは、私は別に反対はしておりません。
その一つとしては、やはりカットオフの値が非常に高いということがあるんですね。そういった面では、非常に限られた人という、普通の子育て世帯で千二百万の所得がある家というのは、かなり感覚的にも高いところだというふうに思います。ですので、そういった意味では、一律でないことによるメッセージ性といいますか、そういったものはそれほどないのではないかなと思います。
少子高齢化という観点に関して言えば、はっきり言って、児童手当があるかないかによって子供を産むか産まないかを決められるような状況では今は全然なくて、それよりも、やはり教育費についての心配といったようなことの方がメッセージ性も高いですし、子供があって、子供が高校、大学に、高校に行くのはもうこの頃当たり前ですけれども、大学に行くのに、もし行かせられなかったらどうしようという心配がない、でも、そうじゃないんだよ、所得が低い御家庭に関しては今非課税なので、それに関してはどこでも行けるんだというようなメッセージが発せられたということ、その方が私はやはり少子高齢化に対しての効果は大きいのではないかなと思います。
児童手当の一月五千円というのでは、特例ですね、ちょっとメッセージ性というのも少ないですし、それが五万円なら違うと思いますよ、でも、五千円という段階ですので、それよりもやはり教育費ですとかの方が大きいかなというふうに思います。
○吉田参考人 私も、一つの前提を申し上げてお答えしたいと思います。
出生率、出生数の問題でございますが、広い意味の少子化対策ということでいえば、世代間扶養の社会保障でございますので、現役世代が将来的に減らない、増えていくということで、やはり少子化対策で数を増やすという視点は当然重要だろうと思います。しかし、問題は、じゃ、頭数だけ増えれば将来の支え手になるのかというとそうではなく、今生まれ育ってきている子供たちがいかに健やかにたくましく育って、将来有為な人間として社会で支える側に立てるかという質の問題が当然必要でございます。
保育の無償化というのは、いろいろなデータはございますが、確かに子育て家庭でネックになっているのは経済的負担である、この負担が下がればもう一人、もう二人考えていいよ、こういうデータがありますので、保育を無償化することによって、子育てしている保護者が、じゃ、もうちょっとということはあるかもしれません。
しかし同時に、幼児教育の無償化というのは、ただ親の負担を無償にするだけではなく、全ての幼児に無償によって幼児教育を保障する、しかも、先ほどお話ししたように、質の高い幼児教育を保障することによって子供の力をつける、つまり、将来支えるに足る力をつける子供の健全育成という面がありますので、そこは見落とすべきではなかろうと思っています。
そういうことを踏まえた上で、児童手当、これは私も実はよく分かりませんが、児童手当の哲学は一体どこにあるんだろうと。児童という言葉は使ってありますが、じゃ、児童に直結しているか。もちろんつながってはいますが、例えば子育て応援券であれば、その子供のミルクとかベビーマッサージとか、まさにその子供にしか使えないものですが、児童手当というのはベーシックインカム的にもう少し広く使える。これは貧困対策としてとても有効だと思いますが、児童手当という哲学をむしろ今改めて整理すべきだろうと思っていますし、最初に申し上げたように、いろいろな組合せ、合わせ技、使途制限のある現金給付、使途制限のない現金給付、そして多様な現物給付、この様々な組合せで総合的によりいい成果を生み出すようなことを是非お考えをいただきたいと思います。
そして最後に、今回はこういう一部改正法案の御議論でございますが、また、子育て安心プランの方で待機児童に回す云々ということはございますが、確かに、待機児童がおりますので、優先順位がどうかという議論が必要だと思います。
しかし、今はこの議論ですけれども、いずれ数年先には、待機児童がほぼほぼいなくなったときには、例えば今回でいう三百何十億のお金は、待機児童がいなくなれば多分要らなくなる。そのときに改めて、児童手当、特例給付をあのときカットしたけれども、じゃ、数年たって待機児童問題が相当程度解消したときに一体どうするんだという、少し時間のスパンを見て、附帯決議等の対応も含めて、今現時点と、五年、十年先を見据えた中での児童手当の在り方ということも併せて御議論いただくと大変ありがたいと思っております。
○伊藤参考人 御質問ありがとうございます。
所得制限なしにも賛同していただいて、私もそのとおりだと思うんですが、先ほど阿部参考人からは、所得制限、割と高いからいいんじゃないかというのがあるんですが、私、これはやはり、次は恐らく世帯合算で来ると思うんですよ、千二百万と言いつつ。
それは、所得制限というのを一回入れちゃうと、だんだん厳しくする方向になる、それを撤廃する方向にはなかなか行かないんじゃないかと私は思うし、何よりも、特に今、無償化で、御承知だと思うんですけれども、幼児教育、保育の無償化で、ゼロ、一、二歳児については住民税非課税の人だけですよね、無償は。ゼロ、一、二歳児というのは一番お金がかかるんですけれども、住民税非課税で、ボーダーの人が一番苦しいんですよ。住民税非課税じゃないけれども、保育料、もちろん保育料については所得段階別なんだからいいんだけれども、ただ、それでも苦しいですよね。
それを言うならば、やはりボーダーの人、まあ、千二百万だったらボーダーといってもそんなに苦しくはないんですけれども、特に住民税非課税なんかで引いちゃうとすごく苦しい人が出てくるというのが一つで、私は、その意味でも、やはり所得制限というのは、どこかで線を引かなきゃいけないので非常に問題があると思っています。事務的にも大変だろうし。児童扶養手当なんて十円刻みですものね。私、びっくりしましたけれども。まあ、それはともかく。
あと、少子化対策というと、やはり私は、もちろん幼児教育、保育の無償化もそうなんですけれども、高等教育の無償化、全面的な無償化、それから、せめて給付型奨学金をもうちょっと拡充するということが必要だろうと思います。
私、ロースクールで教えていて、学生が言ってくれと言ったんですけれども、奨学金、利子がつくんですね、今。利子がつくのを奨学金というんですか。これはローンじゃないですか。
私がロースクールで教えていた学生は、一千万円の借金です。先生、私、このままだと先生みたいに生活保護裁判とか年金裁判はできません、悪徳弁護士になるしかないですと言っていました。そうですよね、一千万返さなきゃいけないんだから。それは本当に大変じゃないですか。だって、四百万、五百万抱えている学生もいます。だから、まずそこで給付型奨学金。
それから、雇用の問題です。やはり非正規労働だと本当に結婚できない。日本の場合、結婚できないと子供も余り生まれないですから。だから、そういった雇用、特に今本当にコロナで悲惨な状況にある人たちに対する休業補償も含めて、それを恒久化していく。
それから、家賃の問題については、生活困窮者自立支援法の中にあったいわゆる住居確保給付金、これを普遍化して家賃手当にしていくというようなやり方を取りながら、それで社会保障全般、雇用保障全般の底上げをしていくことで、私は出生率が増えるんじゃないかなと思います。
やはりお金がかかるんですね。子供を育てるのにお金がかかり過ぎです。私もようやく二人の子供が就職したから、前は東京と京都にいたんですけれども、右から左に給料が動いていました。だから、そういう状況で子供を本当に高等教育まで行かせるというのはなかなか難しい状況にあるので、まずはそこの負担の軽減。
あと、やはり若い人も、本当に、借金を抱えていたら、もう自分のことしか考えなくなるんです。
私事で恐縮ですが、私は、教員だったら奨学金が免除されるのがあったんですけれども、もう今はないみたいですけれども、やはりみんなのために働こうと思いますよね、奨学金が免除されると。だけれども、奨学金で一千万も抱えたら、もう自分のことしか考えないですよ。そんな社会でいいのかなと思って。それでは子供も生まれないだろうし、増えないだろうし。
やはり本当にみんながそういう何も借金を抱えないで学べるような状況というのをつくり出していかないと、問題は解決しないんじゃないかなと思っています。
以上です。済みません、長くなりました。
○藤田委員 ありがとうございます。
委員長、まだ時間、ないですよね。
○木原委員長 ちょうど時間です。
○藤田委員 熱心にお答えいただいたのでちょっと時間がなくなってしまいましたので、まだたくさん聞きたいことがあったんですが、残余の質問は内閣委員会の足立先輩にお任せして、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、岸本周平君。
○岸本委員 国民民主党の岸本周平でございます。
今日は、四人の参考人の先生方、お時間をいただいて本当にありがとうございます。
まず最初に、阿部参考人にお聞きをしたいと思います。生活保護に絞ってお聞きしたいんですけれども。
結局、私たち政治家は、地元でミニ集会というのをやって、五人、十人の方々とお話をするのが選挙運動なんです。その中で一番出るのが、生活保護に対する不満なんです。それは、もらっていない方が来られているので、ずるしてもらっている人に対する御意見が、ミニ集会で絶対、必ず一件か二件は出るんですね。そこで、私たち日本人が持っている自己責任という言葉、自己責任というのが、どうもそういう、先生がおっしゃるように、生活保護を受けることが恥みたいになっているのではないかと思うんです。
そこでお聞きしたいのは、二〇一三年の安倍内閣の生活保護基準のカット、最大一〇%でした。二〇一八年にも、安倍内閣が三年かけて最大五%の生活保護基準をカットされました。このことが子供の貧困等に与えた影響、あるいはその生活保護基準のカットの評価についてお伺いしたいと思います。
○阿部参考人 生活保護基準の削減によってどのような世帯が受けられなくなったのかですとか給付額が下がったのかというのは、厚労省の社会保障審議会の中の生活保護基準部会でも何度も取り上げられており、これからまた調査もなされる。カットの時期と増税の時期が重なったというのもあって、金額的にはそれほど変わらなかった時期も実は数年間ありましたので、またちょっと、余り影響が見えにくいところかなというふうに思います。
ただ、子供の部分に関しては、生活扶助の部分は、地域ですとか子供の人数ですとかによって下がる世帯と下がらない世帯が非常に入り交じっているので、一括して子供のある世帯と言えないところはあるんですけれども、そのほかには、学習費に関するものですとか、そういった子供の実質的にかかる生活費の部分には、ここ数年間のところは拡充されてきているという側面もあるんですね。なので、必ずしもマイナスにはならないかなというふうに思ってはいます。
ただ、多人数の世帯というのはかなりカットになったというのが、私としても実感としてあります。そういった意味では、多人数の世帯については影響が出ている可能性はあるかなと思います。
ただ、私自身は、自分自身、生活保護基準部会の委員を長年やらせていただいていますので、申し上げにくいところもあるんですけれども、やはり、より重要なのは、生活保護を受けられない子育て世帯かなというふうに思っております。
いろいろな指標で見てみても、やはり生活保護を受けた世帯の方が、まだ状況が、いろいろな生活の物質的な、発達状況ですとかがよいというものがあり、でも、それはそうあるべきなんです。生活保護でセーフティーネットにかかったわけですからそうなんですけれども、でも、逆に言えば、それだけ生活保護にかかっていない方々、そこが自己責任というような、かなり妬み感情みたいなところにもなってくるところもあると思うので。
それが、やはり、生活保護というのは必要な人であれば誰でも受けられるんだよ、あなただって本当に苦しいんだったら受けられるんだよというメッセージがきちっと浸透していない。それは、この五十年間の生活保護行政の中で、生活保護というのは、何か、もらったらもう最後みたいな、そういったものをつくってきてしまったこの社会の責任かというふうに思います。そこをやはり変えていく必要があるかなと思います。
○岸本委員 ありがとうございます。
引き続いて、関連して、生活保護は固定化するという話なんですが、実は、いわゆる給付つき税額控除という制度がありますけれども、英米でやっているような勤労型給付つき税額控除、負の所得税ですけれども、これは、もちろん住宅とか医療の保障はありませんけれども、いわゆる生活保護的なものなんだけれども、勤労型の給付つき税額控除について、もし何か御評価があれば、生活保護の関連で一言お願いできますか。
○阿部参考人 諸外国の給付つき税額控除は、かなり子育て世帯に手厚いもので、子育て世帯じゃない単身世帯とかは、あったとしてもかなり手薄なものになっているかなというふうに思います。
そういった意味で、ある特定の世帯に集中的に所得保障をしたいというものであれば、私は、給付つき税額控除というのも、ありの制度かなというふうに思います。
ただし、日本では、確定申告を全ての人がやるというような文化がまだまだないですし、マイナンバーも浸透しておらず、こういった状況を考えますと、もし、例えば子育て世帯に対する給付ということを考えるのであれば、児童手当を増額した方がよっぽど手っ取り早いなというふうに思います。
○岸本委員 ありがとうございます。大変参考になりました。
それで、あと、お三方の参考人の方にお聞きしたいと思います。
実は私、エンゼルプランというのが昔ありましたときに、大蔵省主計局の主査で担当しておりまして、当時は要求額を上回る増査定ができるダイナミックな予算編成ができましてエンゼルプランはスタートしたんですけれども、大失敗、今から考えると失敗しました。
私自身、共稼ぎで、二人の子供を保育園に預けて育てた、育てたというか、私がやったわけじゃないですけれども、余り手伝っていませんでしたけれども、親の立場でつくっちゃったんですね。厚生省の担当者の方と一生懸命考えて、親の立場、預ける側の立場でエンゼルプランをつくっちゃいました、予算はつけましたけれども。その後気がついたんですけれども、預けられる子供のことをもっと考えておけばよかったなというのが大反省だったんです。
その意味で、さっきからも議論が出ていますけれども、いわゆる現物給付がいいのか、現金給付がいいのかということについてお三方の先生方に聞きたいんですけれども、元々、子育てのところは現物給付も現金給付も少ないんです、日本は。これは両方要るんだと思うんですけれども、その上で、先ほど吉田先生が少しおっしゃってくださいました現物給付と現金給付の組合せなり、あるいはこの在り方なり、両方増やすというのが本来の在り方だと思いますが、お三方の先生方に御意見を伺えればと思います。
○秋田参考人 ありがとうございます。
現物も現金も、今言われたように、全体のパイを増やすのが最もふさわしいんですけれども、最初にも申しましたように、現物と現金の割合ということを考えたときに、現物というものの特に保育や幼児教育の施設というようなところに渡っていく部分というのが、子供たちにとって、やはりそこの質を上げていく、あるいは、そこにまず入所できない子供たちを受け入れるということが非常に有効である。それは子供にとっても有効であると同時に、セーフティーネットとしても、今いろいろなところで、例えば虐待の問題とか、先ほど衣食住の話がありましたが、実際に、例えば御家庭でお風呂に入れないお子さんなどもそっと保育園で入れてあげたり、実は家庭の支援をかなり保育園の先生方がいろいろな形で現実にやっているというような状況もございます。
そして、現物というところによって、子供が逆に地域とつながったり、それからその後の小学校以上とも連続して発達の連続性を保障するという意味からも、私は、どちらを増やすのかといえば、やはり最低限の所得の世帯にとっての現金給付はとても有効でありますけれども、現物を厚くしていくという発想が重要であろうというふうに思います。
ただ、皆さんも言われるように、現物か現金かという話じゃなくて、トータルということのパイをいかに増やし、それをどういうふうに、どの年代層に手厚くするのかというような議論が最も重要かなというふうに考えております。
以上です。
○吉田参考人 平成六年からの随分懐かしいお話をいただきました。当時、エンゼルプランということで、厚生、労働、文部、建設四大臣合意ということでございましたが、しかし、現実に動いたのは、緊急保育対策等五か年事業ということで、基本的には当時の大蔵省と厚生省が中心になって進めました。
まさに、保育対策ということで、仕事と子育ての両立に苦しんでいる、あるいは今日の待機児童につながる状況の家庭に、保護者に保育を提供するということだったろうと確かに思います。それが今日の子ども・子育て支援新制度によって子供の方にも大分シフトしていったと思いますが、実は、私自身はまだ不十分だと正直思っています。
特に、今回のコロナの拡大によって、昨年の今頃、臨時休園あるいは登園自粛ということで、特にこの首都圏においては、長いお子さんの場合、三、四か月保育を受けられなかったという現実がございました。乳幼児期にそれだけの期間受けられないというのはかなり致命的な影響がありまして、いろいろな調査がございます、子供の心身に異変が起きた、もちろん、親も大変なストレスを抱えた。
しかし、エッセンシャルワーカーは当然仕事につかなきゃいけないから、なるべく受け入れてくださいねということで、医療従事者等のお子さんは保育を受けられる可能性がかなり高かった。しかし、言い換えると、エッセンシャルワーカーでなければ子供は保育を受けられないのか。つまり、親に着目をして、エッセンシャルであるかないかによって子供の保育保障が程度が違っていた。
しかし、本来、もっと子供に着目するのであれば、親がエッセンシャルであろうがなかろうが、大事な育ちの時期に、分散登園だろうとオンライン保育だろうと、いろいろなやり方はあろうかと思います、いろいろな工夫によって全ての子供に質の高い保育を保障し、育ちを保障すべきだったろう。その意味では、まだこの新制度も、理念、哲学をもう一回しっかりする大変重要な時期だろうと思います。
そして、今御質問の中にあったように、現物、現金給付も、特に現金給付は、使途制限のあるもの、ないものによってかなり性格が違います。そして、現物給付は、かなりの確率で子供に直接行き渡る。しかし、一方で、家庭環境が子供の育ちに影響しているという先ほどのデータがありましたので、家庭の環境充実、生活扶助という視点での現金給付の重要性は当然ありますので、やはり、何がベストかは私も分かりませんが、それをどううまくマッチングをさせてよりよい成果を生むか、そこに是非知恵を絞っていただければ大変ありがたいと思っております。
○伊藤参考人 御質問ありがとうございます。
現金給付、現物給付、組合せがどの程度かというのは、いろいろな回答があるわけで、必ずしも一律には言えないと思うんですが。
ただ、ちょっと新制度との関連でいいますと、子ども・子育て支援法のいわゆる教育、保育施設に対する子ども・子育て支援給付というのは現金給付なんです、介護保険と一緒で、いわゆる代理受領という仕組みを取っているので。保育所だけは現物給付、つまり、自治体が責任を持って提供する。医療の療養の給付は御承知のように現物給付なんですが、介護保険はサービス費の支給、障害者の総合支援法も結局現金給付なんです。だから企業を入れやすいということもあるので。
だから、現物給付、現金給付の組合せといいつつも、制度として現金給付方式が取られていて、それはいろいろな言い方があって、私は個人給付方式と言っているんですけれども、このやり方だと確実に労働条件が悪くなるんです。
これはもう調査が出ていて、スターティングストロング2というのが出ていて、質の面で、いわゆる施設の補助、個人給付方式でない方が統計的に質が優位だというのが出ていまして、だとするならば、やはり現物給付という形にして、それは公的責任で、市町村の責任で提供する。その場合の保育士、あるいは、もちろん全員公務員というわけじゃないですけれども、委託という形で。そのやり方を取ると、コロナにも対応できるんです。
結局、利用者が減ったから、介護事業者なんてすごい赤字になっちゃうんです。それは、いわゆる個人給付方式なので、利用しないと給付が発生しないので。だけれども、そういう方式ではない、つまり自治体が責任を持って現物を支給するという方式であれば、別に利用しなくても一か月分の運営費は入るわけですね。
だから、そういう仕組みに直していって現物給付を充実していくというのが、何よりも、やはり責任を持って、公的な責任で保育を実施するというような仕組みに再構築していくべきじゃないかなと私は思っています。もちろん、現金給付も、ある程度の充実というか額を引き上げていくというのは私は必要だろうと思いますし、全体的なパイの底上げというのが重要だろうと思っています。
以上です。
○岸本委員 今日は、四人の先生方、大変参考になりました。
時間が参りましたので、これで終了します。ありがとうございました。
○木原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、一言御挨拶を申し上げます。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、明九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時四十六分散会