第23号 令和3年5月12日(水曜日)
令和三年五月十二日(水曜日)午前九時一分開議
出席委員
委員長 木原 誠二君
理事 平 将明君 理事 冨岡 勉君
理事 中山 展宏君 理事 藤原 崇君
理事 松本 剛明君 理事 今井 雅人君
理事 後藤 祐一君 理事 濱村 進君
穴見 陽一君 安藤 裕君
岡下 昌平君 加藤 鮎子君
金子 俊平君 神田 憲次君
小寺 裕雄君 杉田 水脈君
高木 啓君 永岡 桂子君
長尾 敬君 西田 昭二君
本田 太郎君 牧島かれん君
牧原 秀樹君 松本 洋平君
宮崎 政久君 宮澤 博行君
吉川 赳君 和田 義明君
阿部 知子君 大西 健介君
奥野総一郎君 玄葉光一郎君
西村智奈美君 森田 俊和君
森山 浩行君 柚木 道義君
吉田 統彦君 江田 康幸君
古屋 範子君 塩川 鉄也君
足立 康史君 串田 誠一君
岸本 周平君
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国務大臣
(国家公安委員会委員長) 小此木八郎君
内閣府大臣政務官 岡下 昌平君
内閣府大臣政務官 和田 義明君
内閣府大臣政務官 吉川 赳君
厚生労働大臣政務官 大隈 和英君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 伊藤 信君
政府参考人
(内閣府男女共同参画局長) 林 伴子君
政府参考人
(警察庁生活安全局長) 小田部耕治君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 佐伯 紀男君
政府参考人
(文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官) 寺門 成真君
政府参考人
(厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長) 岸本 武史君
内閣委員会専門員 近藤 博人君
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委員の異動
五月十二日
辞任 補欠選任
池田 佳隆君 宮澤 博行君
牧原 秀樹君 加藤 鮎子君
大河原雅子君 奥野総一郎君
玄葉光一郎君 西村智奈美君
足立 康史君 串田 誠一君
同日
辞任 補欠選任
加藤 鮎子君 牧原 秀樹君
宮澤 博行君 穴見 陽一君
奥野総一郎君 大河原雅子君
西村智奈美君 玄葉光一郎君
串田 誠一君 足立 康史君
同日
辞任 補欠選任
穴見 陽一君 池田 佳隆君
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五月十一日
重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出第六二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)(参議院送付)
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○木原委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、参議院送付、ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官伊藤信君、内閣府男女共同参画局長林伴子君、警察庁生活安全局長小田部耕治君、法務省大臣官房審議官佐伯紀男君、文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官寺門成真君及び厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長岸本武史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○木原委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧島かれん君。
○牧島委員 自民党の牧島かれんです。
本日は、ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について質問いたします。
これまでの経緯を初めに整理をしておきたいと思います。
ストーカー規制法は、平成十一年に発生した痛ましい事件、女子大生が元交際相手とその兄が雇った男によって殺害されるという事件を受けて、平成十二年五月に議員立法によって成立しました。ストーカー行為が社会問題化し、被害の発生を防止する観点から立案されたものと理解しています。
しかし、残念ながらも、その後、ストーカー被害を訴えていた女性の被害届の受理が先送りされ、その家族が殺害されたといった事件や、千四百通以上ものメールを送っていた男の行動がつきまといに当たらないとして立件が見送られ、殺害された事件などが発生しました。
こうした状況を踏まえて、メール送信が規制の対象となるなど、平成二十五年に改正案が提出され、成立しています。
しかし、その後もストーカー行為から傷害に発展した事案が発生しています。
SNSへの書き込みを規制の対象に加えること、禁止命令については警告を経なくてもできるようにすること、緊急の必要がある場合の手続を整備することなどの改正案が平成二十八年に成立しました。
このように、つきまといや嫌がらせ行為の手段が多様化しているという社会的背景を受けて、これまでも法律改正が行われてきたと考えておりますが、国民の生活の安全と平穏にとって、今回のこの法律改正がどのような意義を持つのか、国家公安委員長からの御答弁をお願いいたします。
○小此木国務大臣 おはようございます。
ストーカー規制法は、桶川事件等を踏まえて平成十二年に制定され、その後、その時々におけるストーカー事案をめぐる情勢を踏まえて、平成二十五年に電子メールの連続送信行為の規制等、平成二十八年にSNSの連続送信行為の規制等を内容とする改正がなされています。
本改正は、令和二年七月の最高裁判決において、元交際相手等の自動車にGPS機器をひそかに取り付けて位置情報を探索、取得する事案について、ストーカー規制法で規制する住居等の付近において見張りをする行為には該当しない旨判断が示されて、当該行為の規制が困難となったこと等から、GPS機器等を用いて位置情報を承諾なく取得する行為等を規制対象行為として追加するなどの改正を行うものであります。
これにより、個々の事案に即して、ストーカー被害者に対する各種危害の発生をより効果的に防止できるものと認識しておりますが、国会における御審議により今回法案が可決され成立していただければ、改正内容を国民に広く周知するとともに、改正ストーカー規制法を適切に運用して、被害者等の安全確保を最優先として今後とも各種対策をしっかり推進するよう、警察を指導してまいりたいと存じます。
○牧島委員 安全対策をしっかりと行うための法律改正が提出されているというふうに理解しております。
法案の中身に入らせていただきます。
今、小此木国家公安委員長から御説明がございましたとおり、今回の改正案の柱の一つは、位置情報無承諾取得、これはGPSについて、を規制の対象にするということです。今御説明いただいた令和二年七月の最高裁判決を受けてのものというふうに理解しておりますが、車のバンパーの内側にGPSを取り付けて、GPS機器の位置情報を探索して、被害者の秘匿避難先、隠している避難先の場所を把握していたという大変恐ろしい事件であります。
今般の改正を踏まえてGPSが規制の対象になるという御説明だったのですが、ここには、相手方の承諾を得ないで位置情報を取得してはいけないという趣旨が含まれています。
例えば、家族であれば、お互いのスマートフォンでGPS機能をつけているということも当初あるかもしれませんし、最初は同意や承諾が存在していたというケースも考え得るかと思います。ただ、その後関係が悪化して、もう共有は望まない、承諾はしないという状況に変化していた場合でも、この相手方の承諾を得ないで、GPS、取得してはいけないという趣旨、規制の対象になるのかどうか、確認をさせてください。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
位置情報の共有当初は双方の同意があったとしても、その後双方の関係が悪化するなどして位置情報の共有を望まず、今後は位置情報の共有について承諾できない旨を行為者に伝えた場合には、承諾を得ないでの要件に該当することとなると考えております。
いずれにしても、個別具体的な事案に応じて判断をされるものと考えております。
○牧島委員 仮に当初承諾していても、もう承諾していませんという意思をしっかりと示して、その後の状況変化に伴った承諾の取消しがあるということを明確にしておく必要があるというふうに理解をいたしました。
また、つきまとい行為は、家の近く、学校の近く、職場の近くで発生するとは限りません。警察では、平成二十七年度から、緊急一時的に被害者などを避難させる必要がある場合には、ホテルなどの宿泊施設を利用するための費用を公費で負担するといったことがありますとおり、避難先というものも、万が一特定されれば本当に大きな恐怖心を生む場所になります。
見張りをしたり、押しかけたり、みだりにうろついたりする行為がつきまといになるわけですが、このつきまとい行為を、現に今所在している場所の付近という言葉に定義をされた、その背景についての御説明をお願いいたします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
現に所在する場所の付近とは、行為者が相手方に対して見張り等をする時点におきまして、相手方が実際に所在している場所の付近を意味するところでございます。
今回、これが規制対象になるわけでございますけれども、例えば、これまでのストーカー事案に係る相談について見ますと、子供のスポーツの試合を観戦するために訪れていた学校のグラウンドでありますとか、相手方が客として訪れていた店舗、相手方が出演した演奏会場等が挙げられているところでございますけれども、委員御指摘のような相手方の一時的な避難先も、相手方が実際に当該場所に所在していれば、現に所在する場所に該当するものと考えております。
○牧島委員 そして、もう一点、この法律では、拒まれたにもかかわらず連続して文書を送付する行為をつきまとい等に追加しています。
これにより、電話、ファクス、メール、手紙が対象になったというふうに思っておりますけれども、「拒まれたにもかかわらず、」という文言がここには入っています。拒んでいますということをどのように意思表示するのかということも判断が難しい場面があるのではないかという気がいたしますので、「拒まれたにもかかわらず、」という文言がある理由と、仮に、今後、技術の発展とともに新たな手法を規制の対象にしなければならないような場合には法律改正をするお考えがあるか、お聞かせください。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
連続して電話をかけるなどの行為自体は、日常生活におきまして一般的に行われ得る行為であることから、行為者の権利を保護する必要性もなく、相手方が行為者からの電話等を受忍しなければならない理由もないものに規制対象を限定するために、「拒まれたにもかかわらず、」と要件を設けたものと考えられるところでございます。
そして、この「拒まれたにもかかわらず、」という要件を満たすためには、行為者において、相手方が拒絶している旨を認識していることが必要となると解されておりまして、相手方が拒絶している旨を直接に行為者に告げた場合だけでなく、警察官や第三者を介して行為者に対して告げた場合も該当することになると考えております。
ただ、いずれにいたしましても、個別具体の事案に応じて判断されることとなると考えてございます。
また、委員御指摘のとおり、今後の技術の発展とともに、ストーカー事案におきまして新たな手法が用いられることも想定されることから、ストーカー事案の実情等を踏まえて適切な対応を取ることができるよう、今後とも状況を注視してまいりたいと考えております。
○牧島委員 今後も適切な対応を進めていただくという御答弁をいただきました。
また、拒んでいるということを直接伝えるのはもう難しい状況にある、むしろその方が怖いという場面もあると思いますので、今お話あったとおり、警察官や又は第三者でも、こんなにたくさんメールが来ていて、それを私は拒んでいるんだ、手紙が届くことももう恐ろしい気持ちで拒みたいんだということをしっかり伝えておくということが重要だと思います。
さて、ストーカー事案の被害者と加害者の関係についてですが、警察庁の資料を見ますと、交際相手及び配偶者、これは元も含みますけれども、が約半数なんですが、一方で、面識なしと、行為者、その行為をしている人が不明が一六・九%となっています。全く知らない人、又はアルバイト先の客のように知っているかどうかも分からない人、恋人のかつての恋人といったような人からストーカー行為をされるケースもあります。
さらに、事例として、DV夫が子供の学校の周辺をうろついたり待ち伏せしたり見張りをしたりすることで、子供や妻又は元妻が大変大きな恐怖心を抱くというケースもあり得ます。執着や支配欲によるつきまといも起きています。
民間の「ストップ!つきまといプロジェクト」調査チームの実態調査からも、恋愛感情ではない、あるいは恋愛感情かどうか分からないつきまとい行為も多いという実態が示されています。
しかし、この法律では、つきまとい行為は恋愛感情の充足目的が対象になっています。イギリスやドイツでは、恋愛感情はストーカー行為の必須要件とはされていません。恋愛感情の充足目的が対象となれば規制の対象が狭められてしまう、そのことを懸念する声が大変大きく上がっているわけです。
なぜ恋愛感情以外の目的によるつきまといは対象になっていないのか、御答弁をお願いします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
ストーカー規制法の制定当時、つきまとい等の事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合には、その相手方に対する暴力、脅迫、ひいては殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が認められたところでございます。また、国民に対する規制の範囲を最小限にすべきであるという点を考慮する必要もあったところでございます。
そこで、規制対象を、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しております。
○牧島委員 なぜ限定するのかという声も上がっています。
過去のケースとして、復縁を迫るというケースがあっただろうということは理解していますけれども、怨恨という意味であれば、恨み、好きではない気持ちによる行為がストーカー行為になるということも十分あります。
ストーカー規制の対象にならないことで警告や禁止命令が行われず、本当に不安な日常生活を過ごしている方が今もなおおられるということ。また、悪質な例では、対象にならないことを分かっている上で、あえてつきまといを繰り返すといったような事例もあると聞いています。よって、しっかりと今後の検討課題にしていきたいと思います。
また、相手が特定されない場合は禁止命令の送り先も分からないということがあり得ますので、公示送達ができるように今回の改正は目指されていると理解していますが、この公示送達の効果について御答弁をお願いします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
禁止命令等を行った行為者が所在不明となり、禁止命令等の延長を断念した事案が発生しているところでございます。行為者が所在不明の場合におきましては、禁止等命令書を交付することができず、禁止命令等の効力を発生することができないこととなります。
しかしながら、ストーカー事案におきましては、行為者が相手方のところに突如現れて、押しかけ等のつきまとい等の行為に及ぼうとすることがしばしば見られるところでございまして、事態が急展開して重大事件に発展するおそれがあると考えております。
そこで、このような場合におきまして、相手方の保護を図るため、禁止命令等を円滑に行い、禁止命令等の効力を発生させることでつきまとい等の行為が更に行われることを防止すべく、禁止等命令書の公示送達について規定することとしたものでございます。
○牧島委員 期待された効果が発生されることを願っております。
さて、この法律の施行日についてですが、相手方が現に所在する場所の付近において見張りをし、当該場所に押しかけ、及び当該場所の付近をみだりにうろつく行為、並びに、拒まれたにもかかわらず連続して文書を送付する行為をつきまとい等に追加する規定については、公布の日から起算して二十日を経過した日としているのですが、位置情報無承諾取得、GPSについて、は規制の対象にすることにつき三か月を経過した日というふうにした理由を聞かせてください。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
現に所在する場所の付近における見張り等の行為の規制及び文書の連続送付の規制に係る改正規定につきましては、近年、これらの行為に係る相談等が相当数見られるため、被害者保護の観点から、できる限り速やかに施行する必要があると考えているところでございます。
この点、平成二十五年及び平成二十八年のストーカー規制法の改正におきましては、これらの改正規定と同様に、下位法令の整備を必要としないつきまとい行為等の追加を行っているところでございますけれども、その際は、当該改正規定につきまして、いずれも公布の日から起算して二十日を経過した日から施行しているところでございます。
こうしたことを参考にして、今回の改正規定につきまして、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行することとしたものでございます。
位置情報無承諾取得等の規制につきましても、近年、GPS技術の一般への広まりに伴いまして、当該行為に係る相談等が相当数見られるところでございまして、被害者保護の観点から、できる限り速やかに施行する必要があると考えておりますが、その内容につきまして、一部政令で定めることとしておりますため、その整備に当たっては行政手続法の規定に基づく意見公募手続を経る必要がございます。このため、施行までに相当の期間を置く必要があるところでございます。
このため、これらの改正規定につきましては、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することとしているものでございます。
○牧島委員 これまでの被害者の皆様の声を伺いますと、施行日があと少し早ければSNSが規制の対象になって裁かれたのにといったような悔しい思いも届けられております。一日も早い成立が望まれていると考えています。
それでは、残りの時間で関連する項目について質疑をさせていただきます。
内閣府男女共同参画局にも来ていただいております。
四月は若年層の性暴力被害予防月間でありました。SNSを利用した被害又は痴漢といった行為、根絶させなければなりませんし、被害に遭ってしまった方の相談、支援の体制も強化していく必要があります。
内閣府が実施する性犯罪、性暴力対策の強化、現状を御説明いただきたいと思います。
○林政府参考人 お答え申し上げます。
性犯罪や性暴力は、被害者にとって、身体面のみならず、多くの場合、精神面にも長期にわたる傷痕を残す、人権を踏みにじる、決して許すことのできないものと認識しております。
政府におきましては、性犯罪・性暴力対策の強化の方針に基づきまして、令和四年度までの三年間を性犯罪・性暴力対策の集中強化期間として取組を進めております。
性犯罪や性暴力の被害者に対しましては、全国四十七都道府県に性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを設けております。これは、被害直後から相談を受け、緊急避妊薬の処方や証拠採取などの医療的な支援、心理的な支援などを可能な限り一か所で提供するものでありまして、地域における被害者支援の中核的な役割を担っております。
内閣府におきましては、このワンストップ支援センターについて、性犯罪、性暴力被害者支援のための交付金を活用することによりまして、その安定的な運営や、速やかに的確な支援が提供できるような体制の整備を支援しているところでございます。
また、令和二年十月からは、ワンストップ支援センターの全国共通短縮番号を設けました。シャープ八八九一、「はやくワンストップ」というふうに周知、広報しております。あわせて、若い方々が相談しやすいよう、SNS相談、キュアタイムを実施しているところでございます。
ワンストップ支援センターの強化につきましては、先月、関係府省から成る会議において更なる強化策を決定したところでございまして、引き続き、相談体制の整備により、性犯罪、性暴力被害者の支援の充実にしっかり取り組んでまいりたいと存じます。
○牧島委員 今御紹介ございましたシャープ八八九一、「はやくワンストップ」の支援の窓口があるということ、そして、性犯罪被害相談、警察の方の電話番号は、シャープ八一〇三、「ハートさん」というものもワンストップで対応できるように対応していただいております。性暴力に関する情報を社会全体で認識することが重要だと考えます。
昨今では、JKビジネスといったような言葉に象徴されるように、十代、二十代に対する性暴力の手口が大変巧妙になっていることも懸念しています。
そこで、今日は文科省さんにも来ていただいておりますが、生命の安全教育教材というものが作成されました。中学生や高校生には、自分と相手を守る距離感について事例なども紹介していただいています。小学生には、水着で隠れる部分は自分だけの大切なところ、水着で隠れるところだけではないのですけれども、一つの事例として、そのような表現で、そこはいろいろな人に見せるところじゃないということを伝えています。
せっかく教材ができましたので、各学校でも使っていただきたいというふうに思っていますが、この教材の狙いについて教えてください。
○寺門政府参考人 お答えをいたします。
お尋ねの生命の安全教育の教材につきましては、内閣府と連携し作成をし、先月公表したところでございますけれども、目的につきましては、性暴力の根絶に向けて、命の貴さを学び、命を大切にする教育、相手や自分、一人一人を尊重する教育を更に推進することに加えまして、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための教育を行うことを目的としてございます。
文部科学省におきましては、今後、本教材を広く周知しますとともに、今年度実施するモデル事業を通じて、本教材を活用した指導の好事例を収集、展開することによりまして、生命の安全教育を推進し、性暴力の防止につなげてまいりたい、このように存じております。
○牧島委員 ありがとうございます。是非、御活用いただけるよう働きかけをお願い申し上げたいと存じます。
ストーカー法の改正をしっかりと一日も早く成立をさせるということ、そして、命を守る、魂を守る、尊厳を守るというための施策を進めていきたいと私自身の思いをお伝えし、質問を終わります。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、古屋範子君。
○古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。
今日は、ストーカー規制法改正案について質問してまいります。小此木大臣、よろしくお願い申し上げます。
私も、ただいまも質疑にありましたけれども、もう一度ストーカー規制法、施行から昨年十一月に二十年ということで、経緯を振り返ってみたいと思います。
このストーカー規制法、二〇〇〇年、桶川のストーカー殺人事件を機に制定をされました。この事件は、一九九九年、女子大生の猪野詩織さん、当時二十一歳が刺殺をされた事件であります。メディアでもかなり取り上げられました。これは、警察、司法行政に深い自省と大きな転換を迫った事件でもありました。このとき、警察は無気力捜査と隠蔽体質ということで厳しく問われました。三人の警官が懲戒免職、書類送検をされ、有罪判決も受けております。ほかに、埼玉県警本部長以下十二人が大量処分をされました。
この詩織さん、元交際相手の男からストーカー被害を警察に訴えていました。具体的な対策は取られず、事件の犠牲となったわけです。事件直前に自宅周辺に中傷ビラをまかれるなどのストーカー被害を受けまして、埼玉県警上尾署に名誉毀損の容疑で告訴して捜査を求めていました。しかし、同署は対応を取らなかった。さらに、事件後に、署員が告訴の調書を改ざんして放置していたことが明らかとなりました。
これを機にストーカー規制法という新しい法律が生まれました。ストーカー事案に司法行政が向き合う体制がやっと整い、動き始めたというふうに言えるのではないかと思います。
その後もこうした事案は続きました。大臣、神奈川にいらっしゃるわけなんですけれども、私も神奈川なんですけれども、一二年十一月に逗子市で女性が元交際相手に刺殺をされるという事件がありました。また、一三年には、三鷹市で女子高生が元交際相手の男に殺害をされた。
また、この後、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNSを使ったストーカー事案も増えていまして、一六年五月には、東京の小金井市のライブハウスで女性が刺されて瀕死の重傷を負うということがあり、SNSのつきまといも規制対象に加えられたところであります。
二度にわたる法改正が行われまして、私もこれには関わらせていただきましたけれども、メールの大量送信、SNSへの執拗な投稿、自宅周辺をうろつくということが規制対象に追加され、厳罰化が進みました。警察の体制も強化をされてきたと承知をしています。
また、相談件数につきましては、二〇二〇年、全国の警察に寄せられた相談件数二万百八十九件ということで、二万件を突破しています。八七・六%が被害者が女性であります。加害者八〇・七%が男性ということで、四十代の加害者が一番多いんですけれども、六十代、また七十代も、七十代九百六十人も加害者がいるということであります。
被害というものも多様化していまして、今回、衛星利用測位システム、GPSを悪用することを禁じることが本改正案の重要な改正点になっておりまして、成立が急務であるというふうに思っております。
初めに、警察におけるストーカー事案への対応、また、ストーカー被害者保護の視点に立った対策の強化、これに取り組む大臣の御決意を伺いたいと思います。
○小此木国務大臣 今委員から様々な事案の例示をしていただきましたけれども、ストーカー事案については、警察が認知した段階では比較的軽微だと判断することがとても危ない状況になる場合がある、事態が急展開して重大事件に発展するということがございました。事案の危険性、切迫性を的確に判断し、個別具体の事案に応じて、検挙措置等と保護対策の両面から、被害者等の安全確保を最優先とした措置を講ずる必要があると思っています。
このため、警察では、認知の段階から対処に至るまで、一元的に対処を行う生活安全部門と刑事部門を総合した対処体制を構築して、事案に応じ、検挙措置等による加害行為の防止、防犯指導やパトロール等の警戒活動や一時避難等の措置を講じているところであります。
国会の御審議によりこの法案が成立すれば、相手方の承諾なくGPS機器等を利用して位置情報を取得する行為等が規制をされ、警告、禁止命令等を発出することが可能となります。こうした規定の活用も視野に入れ、被害者等の安全確保を最優先にした対策をしっかり推進するよう、改めて警察を指導してまいりたいと存じます。
○古屋(範)委員 御決意を伺いました。
やはり、兆候があったその時点で早い対応を取るということが必要なんだと思います。おっしゃったように、一元的な体制整備をつくっていくということが重要だと思います。しかしながら、要員の問題もあって、なかなか難しい点もあるのではないかというふうに思いますけれども、是非、被害者を守るのはやはり警察しかないというふうに思います。積極的な捜査、また、保護、相談体制の強化を要望しておきたいと思います。
今回の改正案の柱である、GPS機能を悪用した手口に対する対応について伺ってまいります。
GPS機能をストーカー被害者の車に取り付けて居場所を特定する、この行為の違法性を否定した昨年七月の最高裁判決。ストーカー規制法では、住居、勤務先の近くでの見張りは禁じているけれども、GPSを使って離れた場所から所在を把握する、この行為については明確には規定をしておりませんでした。司法判断を受けて、見張りに当たるとの立場を取ってきた警察は、取締りの方法の見直しを迫られました。
GPSを無断で使用してどこにいるかを知られるということは、まず、プライバシーの侵害、不安も大きいと思います。自分がそうされたときのことを考えてみなければいけないというふうに思います。
判決が出ました二件の事案では、いずれも被害者の車にそっくり機器を取り付けていた。うち一人は、約十か月にわたって元交際相手から六百回以上、位置情報を調べられていました。
こうした、GPSの性能が向上して、入手もしやすくなっている、悪用する例が相次いでいます。場所を突き止めて、殺害をするという事件も発生しております。
GPSの機器等の定義、位置情報の取得方法については政令で定めることとしていますが、どのように規定をされていくのか。また、多様化するストーカーの手口に迅速に対応して、被害者を守り、重大な事態を招かないために、体制の充実とともに、新たな手口に即応できるような仕組みの対応が必要であると考えます。政府は、常に被害の実態を把握して、どんどん進化していきますので、分析を行い、新たな手法に対し、速やかな、法律に反映できる仕組みを整えるべきではないかと思います。
これについての見解を求めたいと思います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
改正法で規制対象となります位置情報記録・送信装置等や位置情報の取得方法につきましては、今後の技術の進展や、それに伴う手口の変化等を踏まえ、機動的に規制措置を講ずる必要があると考えられることから、相手方の承諾なく、相手方が所持する位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を取得する行為を規制するという根幹の部分は法律で規定した上で、具体的な位置情報記録・送信装置等や位置情報の取得方法について政令で定めることとしているものでございます。
具体的には、位置情報記録・送信装置等につきましては、現在、GPSシステムが広く普及し、最近のストーカー事案において、同システムを利用した機器等が悪用され、相手方の位置情報が把握されているという実態を踏まえまして、政令でGPS機器等を定めることを検討しております。
また、位置情報の取得方法につきましては、ストーカー事案におけるGPS機器等に係る位置情報の取得の実態を踏まえまして、位置情報記録・送信装置の位置情報を受信する方法や位置情報記録・送信装置を回収する方法等を政令で定めることを検討しているところでございます。
また、新たな手法への対応といった点でございますけれども、警察庁におきましては、通常業務を通じまして都道府県警察において対応したストーカー事案を把握しているほか、これまでも必要に応じて有識者検討会等を開催して法改正の検討に資することとしてきたところでございます。
警察庁といたしましては、引き続きストーカー事案の実態を的確に把握し、現行法で対応が困難な事案が認められれば、こうした事案への効果的な規制の在り方について適切に判断し、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 次に、加害者対策についてお伺いしてまいります。
被害者を守るということは、加害者へのアプローチも大切になってくると思います。
警察では、近年、加害者に対しまして医療機関で治療を受けるよう積極的に勧めていて、相手への執着心、支配欲を弱めていく、行為を繰り返さないために医学的な措置が有効とされております。マスコミによりますと、ストーカーに対して警察が医療機関での治療を働きかけるケースが近年増加をしていて、二〇一九年では全国八百二十四人と過去最多になっていると思います。この医学的アプローチの有効性というものが指摘をされています。医療機関と連携して加害者にカウンセリングを受けさせる、受診費用を一部負担するという県警もございます。拒まれれば強制することはできないような現状なんですけれども、こうした再発防止に力を入れていくべきと考えます。
また、ストーカー予防のための教育も重要だと思っております。もちろん、被害者にもならない、加害者にもなってはいけない教育、啓発が必要だと思います。関係省庁が連携をして、教育、啓発を推進していくことが重要ではないかと思っております。加害者の治療等の義務化などを視野に、治療、更生の支援を充実する、また、被害者にも加害者にもならない教育、啓発、知識の普及が必要と考えます。
これについてどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
ストーカー事案の加害者の多くは、注意や警告等の措置で行為をやめる一方、被害者への強い執着心等から警告や検挙等をされた後もつきまとい等を続ける者が存在するところでございます。
このため、ストーカー対策に当たっては、こうした加害者の特性を踏まえた対応が必要であると考えております。
そこで、平成二十八年度から、警察が、加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性につきまして、地域の精神科医等の助言を受けて加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しているところでございまして、今後ともこういった取組を推進してまいりたいと考えております。
また、ストーカー被害を未然に防止するためには、ストーカーの被害者にも加害者にもならないことの重要性を踏まえつつ、教育活動を通じた知識の普及及び啓発の推進が重要であると考えております。
警察におきましては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議におきまして策定されたストーカー総合対策等を踏まえまして、非行防止教室や大学における防犯教室等の様々な機会を捉えまして、ストーカー事案をめぐる情勢、具体的事例、対処方法等を伝えることにより、被害者にも加害者にもならないための教育、啓発活動を推進しているところでございます。
引き続き、関係機関等と連携しながら、ストーカー被害の未然防止及び再犯防止に向けた取組を推進してまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 もう時間がないんですけれども、最後に一問、済みません。ストーカーの規制法の要件についてお伺いいたします。
ストーカー規制法では、恋愛感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的をストーカーの要件としております。規制法の立法当時、それ以外の目的によるストーカー行為というものは対象外となっておりました。当時、恋愛感情に起因するものがほとんどだったわけなんですけれども、現実には、恨みであるとか憎悪、ライバルへの嫉妬など、ほかの感情を動機とするストーカー事例も起きております。
ですので、被害者に大きな恐怖を与える大事件に発展する可能性があるということを考えると、恋愛感情だけではない、それ以外の目的で行われる行為についてもストーカー規制法の対象とすべきではないか、この検討をすべきではないかと思います。検討をよろしくお願いいたします。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
委員からもお話ございましたとおり、ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等の事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合に、暴力であるとか脅迫、殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が認められたこと等から、規制対象を、恋愛感情その他の好意感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しております。
恋愛感情等の充足目的以外の目的で行われる行為を規制対象とするかどうかにつきましては、ストーカー規制法の在り方そのものに関することから、慎重な検討を要するものと認識しておりますが、ストーカー事案の実情等に応じて、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
○古屋(範)委員 ありがとうございました。
質問を終わります。
○木原委員長 次に、西村智奈美君。
○西村(智)委員 立憲民主党の西村智奈美です。
今日は、質問の機会をいただいて、ありがとうございます。
質問時間が限られている中で、たくさんの質問を用意してまいりましたので、是非答弁は簡潔にお願いしたいと思っております。
この間、ストーカー相談事案が非常に高止まり傾向で、年間二万件ということでございます。私の地元新潟市でも、一昨年、繁華街の中で殺人事件が起きました。加害者の御家族が警察に相談をしていたんだけれども、事件が起きる数日前には、今落ち着いているので来ないでくださいというようなこともあったと報道をされております。現に殺人容疑ということで逮捕されているんですけれども、このストーカー事案については、やはりこういったふうに非常に深刻化しかねないということがあると思っております。
また、この間、著述家の内沢旬子さんという方が「ストーカーとの七〇〇日戦争」という本を出版されました。私も、斜め読みですけれども、見させていただきました。彼女は、自分自身の経験から、今回の法改正、一定のものとして評価をしつつも、やはり、恋愛のもつれからというこの対象範囲の縛りですね、これを拡大すべきであるというふうに訴えておられますし、また、加害者への治療を義務化すべきであるというふうにもおっしゃっておられます。
これは荻上チキさんが、「ストップ!つきまといプロジェクト」というところで調査を大規模にやられたんですけれども、この調査結果と併せて、二月二十四日に記者会見をされておられます。この「ストップ!つきまといプロジェクト」の中においてもいろいろな提言をされている。後で御紹介したいと思っておりますけれども、やはり、対象範囲を広げるということであるとか、治療的司法の拡大であるとか、それからいろいろな自治体の取組を加速化することとか、いろいろあるんですけれども、順次質問をさせていただきたいと思っております。
まず、ストーカーの実態なんですけれども、私も驚きました。相談件数が年間大体二万件であるんですけれども、令和元年、令和二年、見てみますと、加害者への指導警告件数は大体一万件程度、そしてストーカー規制法による警告実施件数は二千件程度、そして禁止命令等の実施件数は大体千五百件程度ということなんですね。
それで、先ほど小此木委員長は、声をかければその先に行為がやむこともある、だけれども他方で重大犯罪へとつながっていく危険性もある、こんなふうにも政府参考人を含めて答弁されていたかと思うんですけれども、実際のところ、繰り返していたり重大犯罪につながることが起こり得るというような数字が、その後の経過からも分かります。ストーカー規制法上の警告を実施したり禁止命令を発出した中で、その後行為が継続せず効果があったと認められたものが指導警告で約八八%、文書警告で八四%、禁止命令で六三%ということです。繰り返したり重大犯罪になっていく危険性はやはりあるということなんです。
私はやはり、ストーカー事案に関する実態を正確に把握するところから今回の法改正は議論されるべきではないかというふうに考えております。
まず一点伺いたいのは、ストーカーが被害者を傷つけた場合には傷害罪、精神的に追い詰めた場合には脅迫罪、あるいは名誉毀損罪というふうに、別の法律で検挙して服役しているという方もいらっしゃる。そうなると、実数よりも少なくなっている可能性があると思うんですね、ストーカー規制法で検挙された数の中で。ですので、お伺いは、逮捕及び服役しているストーカーの実数を把握しているかどうか。やはり、今後適切な更生に確実に導いていくために、傷害とストーカー規制法違反、両方を適用することができないのかどうか、ここを伺いたいと思います。
○小此木国務大臣 ストーカー事案についてですが、検挙罪名がストーカー規制法違反であるかを問わず、刑法犯等に該当するものについても検挙件数を把握しており、都道府県警からの報告によりますと、ストーカー事案に関連する刑法犯及びストーカー規制法以外の特別法犯の検挙件数は、令和二年において千五百十八件であります。
また、恋愛感情その他好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われた行為があった、御指摘の、傷害罪等のストーカー規制法以外の刑罰法規に該当するものであれば、当該刑罰法規の適用を受けることとなるほか、ストーカー規制法のつきまとい等に該当し当該行為が反復して行われた場合には、同法に規定するストーカー行為罪の適用を受けることとなります。
○西村(智)委員 私が先ほど申し上げたのは、つまり加害者の更生、先ほども与党の議員からも質問がありました。加害者の治療とか更生をしていくためにやはり、ほかの傷害の罪とかで服役したりしている方々は、言ってみれば、ストーカー規制法による治療とか更生の対象になっていかないと思うんです。ひとしく対象にしていくために、私は両方を適用することが必要だと思っております。
大臣、ちょっとこの後また更生のことについても伺いますので、今の答弁ですと、今の時点ではしていないということですね。これはやはり治療というか、再犯防止という点からも、ちょっと問題だというふうに思います。
それと、被害者の皆さん、やはり非常に再犯におびえておられます。そうした方々のために、限定した方法であっても加害者には一定期間近況報告義務などを設けて、情報は多少マスクしても構わないと思いますけれども、それを被害者に開示していくということはできないでしょうか。
○小此木国務大臣 加害者の中には被害者への強い執着心等から警告や検挙等をされた後もつきまとい等を続ける者がいるという実情に鑑みますと、委員御指摘の近況報告義務を行為者に課すことについては、その有効性の観点から、これは慎重な検討を要するものと認識しています。
ストーカー事案の行為者から再被害を受けるおそれが大きい被害者については、警察本部長等が再被害防止対象者として指定し、加害者の動向把握を行うほか、必要に応じ行為者に対する指導警告等の措置を実施するとともに、再被害防止対象者への連絡体制を確立して、検察庁、刑事施設等の関係機関、団体と緊密に連携して、再被害の防止に資する情報の提供や防犯指導を行うなどし、再被害を受けるおそれが大きい被害者の安全を図っているところであります。
今後とも、被害者の心情にも配慮しつつ、被害者の安全の確保を最優先にして、その不安を払拭するための適切な対応がなされるよう、警察を指導してまいりたいと思います。
○西村(智)委員 警察の方にちゃんと情報が行けばそれは私も一定程度効果はあるかと思うんですけれども、他方で、やはり仮出所する場合の問題があると思っております。
加害者が仮出所する際に、保護観察の特別遵守事項をつける際には警察に知らせるようになっているということなんですけれども、一般遵守事項のみの仮出所であったり執行猶予による釈放、こういった場合は警察に知らせるようになってはいないんじゃないかと思うんです。
こういった場合であっても、ストーカー犯罪であれば、被害者の元に加害者が行くという可能性があるため、こういったものも警察に通知する対象としていただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 委員御指摘のとおり、現在、特別遵守事項が定められた保護観察に付されているストーカー加害者については、これは現在、被害者等との接触等の禁止に関するものでありますけれども、この保護観察に付されているストーカー加害者については、被害者及びその親族等への接触等を試みているなどの問題行動等を保護観察所が把握した場合には、警察において、当該問題行動等の内容について保護観察所から連絡を受けているところであります。
御指摘の一般遵守事項の点を含め、保護観察所と警察の間のこうした連携の在り方については、今後のストーカー事案の実情等を踏まえながら適切に判断してまいりたいと存じます。
○西村(智)委員 前向きに答弁いただいたと思います。是非よろしくお願いいたします。
続いて、更生プログラム等について伺ってまいります。
ストーカー加害者への精神医学的、心理学的アプローチ、有効であるということでしょう。この間、平成二十八年度から働きかけが順次行われ、令和二年では、先ほどもありましたとおり、八百八十二人、こういった方々への働きかけが行われたと。資料の二枚目でございます。
ただし、まず、この八百八十二人という人数が、先ほどの、警告が行われたり指導が行われたり禁止命令が出たりというような方の人数に比べると極めて少ないということははっきりと言えると思います。また、八百八十二人の中でも、治療を実施した方は百二十四人。これはなかなか難しいのは私も分かりますけれども、やはり人数が少ないというふうに思うんですね。
そして、次の資料三枚目で、加害者への地域精神科医等への受診の働きかけの状況ということで、これは、令和二年の八百八十二人を地域別に出していただきました。そうしましたら、結構ばらつきがあるんですね。全く声をかけていない県もあります。もしかしたら加害者がいないということなのかもしれませんが、まさかそんなことはないでしょう。というふうに考えますと、これはやはりもっと警察庁、国家公安委員長として注力していただかないと、加害者への治療というものが行われないのではないか、進んでいかないのではないかというふうに懸念をいたします。
予算事業といたしまして、ストーカー加害者に対する地域精神科医療との連携ということで予算が計上されていると思います。何を行っているか、これは分かります。働きかけをやって、そして地域の精神科医療機関を受診していただく、その費用を助成するということだと思うんですけれども、令和元年度の予算額、それから都道府県警察での予算額、それから執行額、実際に幾ら予算に対して執行されたのか、実際これがどのくらい使われているのか、それをまずはお願いいたします。
○小此木国務大臣 平成二十八年度から、警察が加害者への対応方法やカウンセリング治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進することとしており、これに必要な謝金を予算措置していると承知しております。
ストーカー加害者に対する地域の精神科医療機関等との連携に係る経費は、令和元年度においては、警察庁で約一千百五十一万円を予算措置していたところ、都道府県警では約七百五十四万円が予算措置されており、その執行額ですが、約百六十万円となっているものと承知しています。
○西村(智)委員 お聞きいただいたように、非常に執行が少ないですね。恐らく、まずは働きかけが行われていないんだろうというふうに思います。また、実際に働きかけを行う現場の方が、なかなかこの重要性であったり重大性であったりということを認識していらっしゃらない。恐らくそういう研修を受けていらっしゃらないのではないかというふうにも思うんです。
そこでお伺いしますが、重大かつ深刻な事件を起こすストーカーは、傷害事件などで刑事課の警察官が逮捕、勾留に当たることになります。他方、このいろいろなアプローチの働きかけを行う警察の方は大体が生活安全部局の方でいらっしゃるので、そこのところで情報が共有されていない可能性があります。そして、同時に、刑事課の刑事たちがストーカーの病理に対する知識を持っていないということなんですよ。
ですので、働きかけ、まずは、刑事課の人は行っていないというふうに私も聞いてはいるんですけれども、やはりそういったことも含めて、現場の警察官全員をストーカーに関する研修の対象者にするべきではないか。特に、精神科の研修なども行われているんですけれども、生活安全課の警察官だけではなくて、刑事課の方も受講対象にすべきではないか。そして、刑事課の方からも医療的なアプローチがあるんだということを認識していただく必要があるんじゃないか。こういうふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 これは、前の前の委員の御指摘の中で、年間約二万件以上あるこの事案について、ストーカー加害者、令和二年中には、八百八十二人に対して受診の働きかけを行ったところ、百二十四という、やはり聞いただけでも少ない。
いろいろな数字に対して、本当に事案そのものが重大な、人の不幸になる話である割には、大変に対応が少ないんじゃないかという感想であろうかと思いますけれども、各都道府県警察では、ストーカー事案等の恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案については生活安全部門と刑事部門が共同して対応を行うこととしており、これは本当だろうかという御懸念だと思います。
ストーカー事案として加害者が検挙された場合には、刑事部門において検挙した場合であっても、生活安全部門が状況を把握した上で、必要に応じて医療機関等への受診の働きかけを行っているものと承知しています。
また、県警によっては、規模に違いはあるものの、精神医学的、心理学的アプローチに関する技能や知識の向上に係る研修は生活安全部門の警察官に限ることなく実施しているほか、ストーカー事案に対する基本的考え方や対応については全ての警察職員に教養を実施するよう、警察庁が各都道府県警察に指示しているところと承知しております。
委員御懸念のところについては、今後も、更にいい方向に向かうように警察庁を指導してまいりたいと存じます。
○西村(智)委員 であるとすれば、私からお願いは、やはり、傷害などのほかの犯罪と、それからストーカー規制法の違反、両方が適用になっているケース、少なくともこの実数だけは調べていただきたい。
冒頭の質問で、傷害罪あるいは脅迫罪、名誉毀損罪等々はストーカー規制法違反というカテゴリーの外に出ちゃっているんだと思うんですけれども、本来であれば、ストーカー規制法違反であるそうした傷害罪、脅迫罪、名誉毀損罪、そこの重なる部分の実数、これを是非データとして取るということはやっていただきたいと思うんですけれども、これは通告はありませんが、どうぞお願いできませんでしょうか。
○小此木国務大臣 今のお話は、私としてしっかりまず受け止めまして、警察庁共に認識を深めたいと思います。
○西村(智)委員 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
それで、ストーカー加害者に対する声かけというか、警察官からの加害者への声かけというか働きかけ、これは、タイミングがどうも各県警で違うということなんです。
内沢旬子さんからの様々な情報にもよりますと、例えば、京都府警などは、一旦逮捕されて、釈放時に声をかけるというようなところもあるし、警告するときに声をかける県警もあるというふうに聞いています。
声をかけるタイミング、やはりこれは大事だと思うんですよね。被害者の方からすると、やはりなるべく早いタイミングで声かけをしてもらいたいというふうに思います。警告時などの早期働きかけが可能になるように、通達レベルであっても何か定めていただきたいと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 年間二万件以上のこの事案について、それぞれの状況、場合、加害者の意識の違い等あることが想像されます。
平成二十八年度から、地域の精神科医療機関等との連携を推進し、加害者に受診を勧奨などしているが、どのようなタイミングでどのようなアプローチを行うことが効果的であるのか、十分な科学的知見が得られているとは言い難い状況でございます。現時点で警察庁において、加害者に対して声をかけるタイミングや対象について一律の基準を示すことは困難であると承知します。
今後とも、ストーカー加害者に対するカウンセリングや治療の効果についてしっかりと把握し、加害者のストーカー行為の再発防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行うよう、これは常に行わなきゃいけませんが、警察を指導してまいりたいと存じます。
○西村(智)委員 今、大変驚くべき答弁をいただきました。重大な科学的知見が得られているとは言い難いということなんですけれども、重大な科学的知見が得られているとは言い難いのに、予算事業として一千百万円を超える予算を措置しているということは、私はちょっと問題だと思います。
私は、百歩譲ってそうであるとすれば、カウンセリングや治療について、既にもう警察庁がやるべきことは、情報収集というレベルではなく、どういったやり方が効果的なのかということについて、実効の上がる方策を検討していただかないといけないんじゃないかというふうに考えております。これは後で厚労省にも質問いたしますけれども、法務省の方は、例えばDV防止法の更生プログラムを、検討会を設けて、それなりにつくりました。徐々に進んでいっているというふうに思います。
やはり、このストーカー規制法についての更生プログラムないしはその治療の方策、こういったことについて、どういうやり方で有効な方法を講じていくのか、あるいはそれを検討するための場を設けるとか、もう本当にそのくらいのことをやらないといけないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 先ほど私、科学的知見が得られているとは言い難くというのを、重大と言いましたか。(西村(智)委員「十分な。失礼しました。十分な」と呼ぶ)十分なですよね。十分なと言いましたということで。(西村(智)委員「それで、質問」と呼ぶ)申し訳ない。もう一回お願いします。
○木原委員長 西村さん、簡潔にもう一度お願いいたします。
○西村(智)委員 済みません、時間がちょっと限られているので、委員長、お願いします。
私が申し上げたのは、今警察庁としてやるべきことは、十分な科学的知見が得られているとは言い難いというレベルでの科学的な、医療学的なアプローチを漫然とやるのではなく、それこそ検討会を設けるなり、厚労省と一緒になって新たなプログラムなりを構築していくとか、そういった行動、動きに着手するべきではないかということなんです。情報収集している段階ではないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 平成二十六年度及び二十七年度に、ストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的アプローチに係る調査研究を行い、警察官等に対する専門家からのアドバイス、研修等の実施や、ストーカー加害者の更生に向けた関係機関による連携の枠組みづくりを行うことが望ましいという結論が得られたことから、警察庁においては、平成二十八年度から、地域の精神科医療機関等との連携を推進しております。
また、警察庁においては、令和二年度は現下の状況で開催しなかったんですが、平成二十八年度より、警察庁、都道府県警、医療機関関係者による連絡会議を開催し、より効果的な精神医学的、心理学的アプローチについて情報共有等を行っております。
関係省庁との連携については、ストーカー総合対策を踏まえ、ストーカー加害者が抱える問題に着目し、関係省庁が連携しつつ、その更生に向けた取組を推進しているところであります。
今後とも、医療機関等関係者との連絡会議を活用するほか、地域の精神科医療機関等とも連携して、そのカウンセリングや治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再発防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行うよう指導してまいります。
○西村(智)委員 厚労省に来ていただいているので、政務官かな、お願いしたいんですけれども、ストーカーに特化した治療方法、今、警察庁の方も、総合対策の結論を受けて始めましたというようなお話なんですけれども、やはり十分な科学的な知見が得られているとは言い難いと、まさに現状を吐露されたわけです。
やはり、厚労省として、実際に加害者が治っているという、そういった治療者は多くいらっしゃるので、どういった治療が有効なのか、これは全体を把握して、しっかりとここは国家公安委員会と一緒に、プログラムなり、まさに法務省がDV加害者に対する更生プログラムをつくったときのように、きちんと体系立ったものをつくっていっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○大隈大臣政務官 御質問ありがとうございます。お答えいたします。
御指摘のストーカーの加害者についての精神医学的アプローチというのは大変重要な認識だというふうに、敬意を表したいと思います。
ただ、加害者のうち、必ずしも精神疾患があるということも断言できませんで、例えば警察庁が発表していただいている資料によりますと、その動機として、被害妄想などの精神障害があるとされている方の割合が約〇・四%、また、精神疾患の入院、通院歴、また精神疾患があるというふうな疑いを持っておられる方が一八・一%ということでございまして、精神疾患が必ずしも関連づけられるというわけではございません。
いずれにしても、効果が上がっている事例もありますので、委員御指摘のように、しっかりとした成功事例、成功事例といいますか、うまくいっている事例を横展開して、警察庁始め関連省庁と関連団体としっかりと情報共有しながら連携をしていきたいというふうに考えております。
○西村(智)委員 やはり、この点の省庁の縦割りをつないでいくのは、私は内閣府の役割だというふうに思っております。
平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議が開催されて、そこで、出ております、ストーカー総合対策は策定されました。だけれども、この会議が、平成二十七年、平成二十八年、平成二十九年、これを最後にもう開催されていないようなんですね。やはりこれをちゃんと開催していただいて、今挙がっているような様々な課題を一個一個検討して潰していく、そういう作業を是非内閣府から主導してやっていただきたいと思っています。それが質問の一点目。
ついでに、ちょっと時間がないので、内閣府にもう一個。自治体の対応がやはりばらばらなんですよ。
資料におつけしています、これは、男女局が、平成二十七年三月、調査研究事業をやった報告書。相談窓口を周知していない自治体が六二%、相談窓口がないというところが五九%、それから、相談対応マニュアルがないというところが八七%、相談対応の質を向上する取組が実施していないというのが七六%、惨たんたる状況です。
自治体の機能強化、これはやはり必要だと思いますけれども、ちょっと併せて答弁いただきたいと思います。
○吉川大臣政務官 まず、前段のストーカー総合対策関係省庁会議でございますが、これは先生も御認識かと思いますが、これは定例開催の会議ではないものでありまして、主な内容といたしましてはストーカー総合対策の内容に関することが多いわけでございまして、この最後の平成二十九年、そこで必要であったから開催したわけであります。
ただ一方で、先生が御指摘いただくように、警察庁などとの連携を深めていくための会議、こういった会議に限らず、様々な形で、今後、適切な会議の開催の在り方について警察庁と検討していきたいと思っておりますので、御認識いただければと思います。
そして、二問目でございますが、この自治体の対応ということに関していただきました。
まず、内閣府といたしまして、平成二十九年十二月、ストーカー被害者支援マニュアルを作成し、地方公共団体に配付をしているところでございますが、一方で、窓口の在り方であるとか、活用方法、こういったところは決して十分ではない、このように認識をしているところでございますので、今後、あらゆる手段を使いまして、地方自治体に関して様々な対応の在り方ということに関して適切な対応をしてまいりたいと思います。
○西村(智)委員 小此木委員長、やはり内閣府の方から私ももっと頑張ってもらいたいと思うけれども、定例化している会議じゃないとさっき言い切られましたので、やはり、警察庁の方から、こういった課題がある、これもやらなきゃいけないというふうに、ちゃんとメッセージを出していっていただいて、そしてこの内閣府の会議が開催されるようにしていっていただきたいと思うんです。
それは、いろいろな課題がある中で、やはり、相談対応ですとか、それから私がさっき申し上げた加害者への治療的プログラムの内容ですとか、そういったものも含めてなんですけれども、ちょっともう一回、この法改正、今回のストーカー規制法の改正を機に現状を捉え直していただいて、もう一回、参議院の附帯決議にもありますが、この国会での質疑も踏まえて進めていっていただきたいと思いますけれども、その点、答えていただけませんか。
○小此木国務大臣 改めて、ストーカー総合対策関係省庁会議については、その会議の構成員を内閣府、警察庁等の関係省庁の職員としているほか、必要に応じ、構成員以外の関係行政機関の職員その他の関係者が出席できるとされていると承知しています。
警察においては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議において策定されたストーカー総合対策等を踏まえ、配偶者からの暴力に関する関係機関協議会の活用のほか、関連する被害者支援連絡協議会、被害者支援地域ネットワーク等、既存の地域における関係機関の協議会の活用を考慮しつつ、関係機関との連携協力を推進していると承知しています。
委員お尋ねの会議は開催されておりませんけれども、ストーカー総合対策に基づく施策の取組状況については毎年関係省庁においてフォローアップしており、その情報共有を行っているところでありますが、今後、適切な会議の開催の在り方について、内閣府と検討を行うよう警察を指導してまいります。
○西村(智)委員 是非よろしくお願いいたします。
それでは、今度は、先ほど私、冒頭申し上げた内沢旬子さんの経験からちょっと伺いたいと思っているんです。
やはり、恋愛感情のもつれからというストーカーの行為の類型の限定、これがあるということの問題点は、先ほど与党の委員の方からも質問がありました。内沢旬子さんの場合は、こういうふうに言われたんだそうです。交際しているときは恋愛感情だが別れた後は憎悪感情なのでストーカー規制法は適用できないという警察本部の見解が出たというふうに言われたそうなんです。
この発言について、この判断はケース・バイ・ケースであるというふうに警察庁は言っているそうなんですけれども、こういった説明をして対処しなかった事案はどのくらいありますかということが一つ。それから、別れた後は憎悪感情となるというのは、警察庁で統一された見解なんでしょうか。
○小此木国務大臣 今の話ですけれども、交際しているときは恋愛感情だが別れた後は憎悪感情なのでストーカー規制法は適用できないとの見解については、警察庁の見解ではないと承知しています。
このような説明をしてストーカー事案として対処しなかった事案についても、警察庁として把握していないと承知しています。
○西村(智)委員 資料として私もおつけしています。お尋ねの事案数については警察庁では把握していませんということなんですけれども、結局、恋愛感情目的以外の目的で行われたものがストーカー規制法の適用に今なっていないので、済みません、この資料お手元にありますかね、真ん中ぐらいにピンクのマーカーが引っ張っているものなんですが、8なんですけれども、結局、対象になっていないから、それは把握できなくて当然なんだと思うんですよ。なんだけれども、先ほども与党の委員からも質問ありましたように、やはりこういう事例が結構あるんじゃないかなというふうに私も思うんです。
ですので、これはやはり範囲を拡大するということが必要なのではないかと。これは、荻上チキさんが「ストップ!つきまといプロジェクト」で行った調査でも明らかになっております。調査概要、次のページで資料で出しておりますけれども、多くのつきまといは恋愛感情にない(なかった)相手から受けているということなんですよね。
ですので、ここはやはり拡大していくことが必要だと思います。もう一回、大臣、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 内沢さんの、別れた後は憎悪感情なのでという、この憎悪感情もいろいろなものがあると思っていて、恋愛感情から、それが満たされなくて、破綻して憎悪感情につながる場合はこの対象になると思うんですけれども、だけれども、憎悪感情だって一つだけじゃない。完全にそれが、別れてしまって、恋愛感情が破綻した後の憎悪感情につながらない場合もある。ここが難しいところであるとは思いますけれども。
ちょっと私の私見を今述べましたけれども、難しいね、国家公安委員長としての思いですね、私見というか。
ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等の事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合には、その相手方に対する暴力、脅迫、ひいては殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が見られ、また、国民に対する規制の範囲を最小限にすべきであるという点を考慮する必要もあった、これは今まで述べたとおりでありますけれども。そこで、規制対象を、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しています。
もう一つ、恋愛感情等の充足目的以外の目的で行われる行為を規制対象とするかどうかについては、ストーカー規制法の在り方そのものに関わることから、慎重な検討を要するものと認識しているが、ストーカー事案の実情等に応じた対応を適切に行っていくよう、今後も警察を指導してまいりたいと存じます。
○西村(智)委員 表現の自由との関係は私もよく承知をしているところです。
ただ、内沢さんには、これはやはり警察としておわびすべきことだと思いますよ。警察本部の見解だと言って、そういうふうに言われちゃっているんですから。是非そこは対応してください。
そして、もう時間がなくなりました。男性の被害者の相談、これは、荻上チキさんの調査チームでも、やはり男性の被害者が実は警察庁の統計よりももっと多いのではないかということが推測されております。男性被害者やトランスジェンダーの被害者が相談しやすい体制になっているのかどうか、相談しやすい窓口づくり、どういうふうに取り組んでいくのか、お願いいたします。
○小此木国務大臣 ストーカー事案について、早期の段階で被害者が関係機関の相談窓口につながることが重要であるところ、その性別等を理由に、被害者が警察への相談をちゅうちょすることがあってはなりません。
このため、警察においては、被害者から相談を受理する際に、被害者の安全の確保やプライバシーに配慮した相談室等で事情を聞くなどの対応を行っております。
また、被害者の多くを占める十代及び二十代の若年層を対象とした防犯教室等で活用するDVDやリーフレットでは、男性被害に係る事例も紹介するとともに、警察以外の相談窓口についても紹介するなどの取組を行っております。
引き続き、被害者が相談しやすい環境の整備に向けて、これら取組を推進するよう警察を指導してまいります。
○西村(智)委員 是非よろしくお願いします。
最後の質問になると思います。加害者や加害者家族の相談について伺いたいと思います。
私が冒頭申し上げた私の地元でのケース、加害者の御家族が警察に相談をしておりました。ただ、そこがうまくつながらなかったというか、かみ合わなかった可能性があると思っております。ストーカーの加害者やその家族についての相談機関を設けられないかという提案でございます。
薬物依存の場合は、まだ不十分とはいえ、保健センターで相談を受けられます。ストーカーも行為依存の一病態であるということから、相談機関を設けることが必要と考えますけれども、この点、厚労省はどういう見解でしょうか。
また、警察庁の委託調査、これは資料につけておりますけれども、平成三十一年三月、警察庁生活安全局というところの、この第二章の四のところに、ストーカー事案の加害者対応に関する連携事例ということで、いろいろな取組をやっているということが紹介されています。ほんの一部だけ抜粋しましたけれども、例えば、県の障害福祉担当課と市の保健所が連携したケースであるとか、保健所と社会福祉協議会が連携したケースであるとか、障害者就業支援福祉サービスセンターと連携したケースであるとか、いろいろなことが先進事例として載っております。
こういったことを横展開するということについて、厚労省から是非声をかけていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○木原委員長 大隈厚生労働大臣政務官、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。
○大隈大臣政務官 お答えいたします。
厚生労働省といたしましては、ストーカー加害者やその家族について精神科領域に係る悩み等がある場合には、全国の精神保健福祉センター等において必要な助言や適切な機関につなぐなどの対応を行っておりまして、関係省庁と連携しながら引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
また、大切な、被害者の方に関しましても、一時避難等の支援、生活支援や心理的支援、就労支援を通じた、自立に向けまして中長期的な支援などの取組を行っているところでございます。
いずれにしても、うまくいっている事例をしっかりと横展開しながら、全国でしっかりと厚労省挙げて取り組んでいくということで努めていきたいというふうに考えております。
○西村(智)委員 具体的にどうするか、また後で伺いたいと思います。
最後に、委員長、この最後の資料を見てください。これは、ストーカー規制法改正、前回のSNSが適用になったときに各都道府県の条例がどういうふうに対応したかという一覧、これは内沢旬子さんが全国の都道府県警に調査をしたものです。
結構タイムラグがあります。すごい遅れているものもあるし、SNSをストーカー規制法が法改正されるもっと前にやっているところもあります。こういったところが満遍なく、ちゃんと今回の法改正もフォローができるように、是非国家公安委員長としてのお力を発揮していただきたい、お願いして、終わります。
○木原委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。
引き続いて、皆さん、参議院での先議、そして何人かの委員の御質疑、大分煮詰まって論点も浮き上がっていることとは思います。
私は、冒頭、小此木国家公安委員長に、今回、平成十二年に作られましたストーカー規制法、これまでは二回の改正、平成二十五年そして二十八年、いずれも議員立法という形で参議院が御尽力いただいて、改正、出されております。今回初めて閣法という形で提出がありましたが、その主な理由は、最高裁判決でのGPSの取扱いなどもあって緊急に行わねばならなかったという背景があることは存じておりますが、逆に言うと、閣法になったということを一つの大きな機会に、政府を挙げて取り組んでいただくということで、大臣の決意を伺いたいと思います。
お手元にございます、遡ること平成二十六年のいわゆる有識者の検討会議、警察庁が設けられた有識者の検討会議では、既に、多面的にこのストーカー規制法の在り方に関して論点が挙がってございます。これを踏まえて、今回も有識者会議がございましたけれども、私の拝見するところ、残念ながら、GPS規制あるいは手紙などの取扱いの、ツール、どんな手段でやっているかというところに論点が絞られておりましたが、ストーカー規制そのものの在り方の、今、私は大きな飛躍点だと思いますので、大臣の御決意と、その方向性や課題意識についてお伺いいたします。
○小此木国務大臣 冒頭にも申し上げましたけれども、二〇〇〇年、平成十二年の桶川事件等から議員提案として国会に提出されてこのストーカー規制法が成ったものというのは申すまでもないことであります。
平成二十五年から二十六年にかけて開催されたストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会においては、ストーカー規制法によるストーカー行為等の規制を更に有効なものとするためにはどうすればよいかという方向性、及び、ストーカー行為等の規制に限らず、どのような効果的な対策を行うことができるかという方向性から議論を行い、ストーカー行為等の規制の在り方や加害者対策の在り方、被害者等を支援するための取組について、幅広く提言が行われたものと承知しています。
昨年十月から本年一月にかけて開催されたストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会においては、令和二年七月にされた最高裁判決を受けて、GPS機器等を利用した動静観察行為に対する規制の在り方を中心に、早急に検討すべき論点に絞って検討がなされたものであるが、ストーカー事案の被害者の安全確保を図るため、ストーカー行為等の規制を更に有効なものとするという点では、前回の有識者検討会と問題意識は共通していると考えられます。
今回改めて政府として提出をさせていただきましたこの改正案、皆様に議論をいただいて成立をさせていただいて、被害者の、あるいはその関連する方々の不安をしっかりと取り除くために、委員長としても力を尽くしてまいりたいと存じます。
○阿部委員 小此木大臣は大変誠実な、正直な方ですから、逆に言うと、もう少し御自分の言葉で、今ここまでいろいろ論議にあったことを、踏み込んでお話しいただいてもいいのかなと、私は、あえて言えば思います。
規制の在り方、あるいは加害者の問題、被害者支援、今回のGPSと課題はありますが、大きな流れといたしましては、やはり加害者のある意味の支援ということがクローズアップされてきていると思います。
もちろん被害者は保護し、その被害者の被害が繰り返されないために、そして被害者の持つ恐怖感を本当に終わらせるためには、加害者が執着というその内在するものを捨てていただかないと、このストーカー行為というのは止まりません。そこで、被害者のためにも加害者支援が必要となってくるという構造をこれは取っていると思います。
また、加害者も、その行為を繰り返すということは実はストーカー依存ですから、大変苦しいことでもあります。執着が取れないということは、行動も制約されますし、本来の人生そのものの構築が難しくなるということでもあるので。
私は、実は、今回の質疑の中で、こうしたストーカーの加害者五百人余りに面接、面談を行ってこられたNPOヒューマニティの理事長の小早川さんという方を是非この場に呼んでいただきたいとお願いを申し上げました。しかし、この委員会で、参考人質疑ではありませんので、そうした方だけをお呼びするという前例がないということで了承をいたしましたが、この五百人余りの加害者と会うという、本当にきつい、精神的に私は非常にきつい行為、きつかったろうことをやってくださった小早川さんの経験というのは、これからのストーカー規制に大変重要だと思います。
今日ここで聞くことができませんでしたので、小此木大臣にはお願いがありますが、是非、発表もされていますし、また、加害者を調査するといっても、内閣府が調査して、あるいは警察が調査して到底得られないような情報もそこにはたくさんございますので、何らかの手段でお目通し、おめもじをいただけたらと、これはお願いですので、お伝えをしておきます。
さて、次の質問に入らせていただきますが、被害者の側から見ますと何が一番望んでいることかということで、お手元の資料の二枚目を開けていただきますと、これはつきまとい被害に関する実態調査、先ほど来御紹介のあるプロジェクトの「ストップ!つきまといプロジェクト」調査チームの結果でありますが、被害者の皆さんの希望する取組の一位は警察の相談体制の拡充、これが三八・八%。もちろん警察以外の相談体制も実は重要なのですが、まず今一番直近である警察の相談体制の拡充というところが三八・八%に上っております。
では、現在でも二十万件発生しているストーカー事案でございますが、警察での相談体制の拡充ということについては、例えばストーカー事案に特化した警察の相談窓口はあるのだろうか、あるいは、関係する警察官の増員、特に女性警察官の増員はどうか、さらには、先ほど西村委員もお尋ねですが、加害者が相談できる体制はあるのかどうか。この二十年を俯瞰して、今、国家公安委員長として警察を預かられる大臣のこの拡充の方向あるいは拡充の経緯などについて御答弁をお願いします。
○小此木国務大臣 これは例えば京都府警においてなんですが、ストーカー事案に特化した相談窓口としてストーカー相談支援センターを設置しておりますが、これは都道府県警察の実情に応じて設置しているものと承知しています。
ストーカー被害者からの相談については、特定の窓口に限らず、警察本部や警察署の担当課、警察署の当直、交番、駐在所等の様々な部署に寄せられることから、いかなる部署に相談が寄せられた場合であっても適切に対応できる体制を整備することが重要であると認識しています。
このため、警察では、ストーカー被害者等からの相談に対応する者については専門的能力の向上を図るべく研修を行っているほか、被害者等からの相談に適切に対応できるよう、被害者の意思決定支援手続及び危険性判断チェック票を導入しているところであります。
さらに、被害者等のプライバシー保護の必要性が高い事案の特性等に鑑み、被害者等の負担を軽減し、二次被害を与えないよう、女性警察官による相談を配慮しているところと承知しています。
また、ストーカー事案等の人身安全関連事案対策の体制強化を図るため、平成二十七年度から平成二十九年度にかけて全国で千七百人の地方警察官の増員を行っているところであります。
一方、加害者や加害者家族からの相談に関する周知についてですが、例えば岐阜県警察及び神奈川県警察において、ストーカー行為をしてしまった方またその家族の方へと題して、最寄りの警察署に相談するよう周知していると承知しております。
引き続き、加害者や加害者家族の悩みに対しても適切に対応するため、積極的な周知が行われるよう、警察を指導してまいりますが、よい事例はやはり横に展開していくことも必要であると考えます。
○阿部委員 三点にわたる御答弁、ありがとうございます。
窓口は恐らく、京都府警、私も調べましたが、ちょっとこれ以外には見つかりません。もっともっと、やはりストーカー事案が相談できるということが明示されたような窓口というのは私は必要だと思います。
大臣は同時にDV防止法等々も国家公安委員長としては関与なさると思うんですけれども、DV防止法については様々なポスターがあったり、普及啓発のボリュームが違います。ストーカー事案は一体どこに相談するのか。男女共同参画局が扱ういわゆる女性センターのようなところなのか、それから婦人相談所なのか、警察なのか。いろいろあるんですけれども、でも、ストーカー事案ということで本当に安心して相談できる体制というのはまだまだ私は警察においても明示されていないと思います。
これは是非、もちろん併任されても構いません、ただ、ストーカー事案はここに行けばいいんだと分かるような形でお願いしたいですし、千七百人の増員、とても前向きなことと思います。もし分かればですが、このうち何人、女性警官であるのか。私は、実はストーカーとかDVもそうですが、ここはあくまでもジェンダーの問題があると思います。相談しやすい体制。後ろから答えが来たようなので、千七百人中、女性警察官はどのくらいでしょう。
もう一つだけ、併せて申し上げます。加害者の相談窓口が、掲示というかそういうアナウンス、加害者も相談できますよというのは、おっしゃったように岐阜と神奈川。これもほかにないと思います。是非、全国津々浦々、普及をしていただきたい。
では、二番目のお答えだけいただきます。
○小此木国務大臣 余りこれは私見ばかり述べちゃいけないかもしれませんけれども、まず、その数はまだ把握していません、正確なものは。
ストーカー行為あるいは性的嫌がらせとかDV、様々な例示が挙げられましたけれども、どのような相談を受けるかというのは、果たして女性がいいのか男性がいいのかというのは事案によっても異なるかなと思います。性的嫌がらせなんというのは、特に今、女性の駆け込みが多いなというような事案があって、女性の警察官に相談体制の環境を整えるようになってきたと思いますが、それはまだまだ足らないという問題を指摘される方も多い。ストーカー行為の相談というのが、果たして、例えば女性の警察官がいいんだろうかという問題意識は私自身は持っていますし、もうちょっと研究をしていかなければいけないとも思っています。
よろしいでしょうか。
○阿部委員 余りにも男女比が違い過ぎるんです。男性ばかりなの、相談に行っても、申し訳ありませんが。だから、女性を増やして。おっしゃるように、男性の警察官が大変頼りになるときもあります。同時に、相談しづらいというところもありますから。日本はジェンダーギャップが余りにも大き過ぎるんです。そこをせめて、こうした事案に関わる窓口では意識を持って対応していただければと思います。よろしくお願いします。
さて、今申し上げました警察以外にも、例えばストーカー事案の相談体制については、これも資料の二枚目を見ていただきますと、いわゆる加害者との関係のところの区分で、学校や大学の関係者とか職場やバイト先の関係者が加害者である場合も、ここの調査で見る限り、もう四〇%くらいございます。そうなってくると、実は、身近な学校でのカウンセリングとか職場でのカウンセリング体制も強化して、もちろん、一方で、警察のストーカー窓口があって、そこが絶えず連携してくださるということが非常に重要と思いますが。
これは内閣府の方の政務官にお伺いいたしますが、こうした他の、例えば職場、学校、自治体窓口、これは西村委員も聞かれました、そういうものとのトータルな連携、そして一方での、学校だって、例えばパワハラ、セクハラの相談というのは比較的学生にも伝わっています。でも、オープンしてみたらストーカー事案が多かったと矢田さんが参議院で言っておられましたが、こういう実際の生活の場での、職場、学校等々での窓口の充実や、自治体、警察との連携の進め方についてお願いいたします。
○吉川大臣政務官 まず、内閣府といたしましては、ストーカー総合対策及び第四次男女共同計画基本計画を踏まえまして、被害者ニーズに対応し、切れ目なく適切に効果的な支援を行うことができるよう、ストーカー被害者支援マニュアルを作成しております。これは平成二十九年の十二月ということでございますが、この配付先といたしまして、委員御指摘のとおり、大学、短大、さらには、もちろん地方公共団体等に配付をさせていただいているところでございます。
先ほどもお答えさせていただいたとおりでございますが、地方公共団体に関しては、内閣府として、様々、このマニュアルを配付してその後どうなのかというアプローチが今後必要かと思っておりますが、大学ですとかそういった一般のちょっと大きいところの職場等、こういったところは本当に内閣府だけでこれができるのかどうか、今ちょっと即答しかねますので、様々な形で連携をしながら検討していきたいと思います。
○阿部委員 そのために各省庁の連絡協議会も必要なわけで、これをちゃんとワークさせるのが内閣府の役割です。文科省にも厚労省にもお願いをして、身近なところでとにかく早期に相談していただくことによって加害行為も早期に止められる場合も多くありますから、是非そのためのヘッドクオーターの内閣府の役割を果たしていただきたいと思います。
引き続いて、ここで希望する取り組み、再び戻らせていただきますが、多く挙げられているのが、一時避難が可能なシェルターの充実、あるいは、被害者の居場所がなくなってしまうので、引っ越しなどの生活再建のための資金援助というのも一八・七。すなわち、この二つを合わせれば、居場所をどこかに確保しなければ身の安全が保たれないという、もうぎりぎりの意識だと思います。
被害者保護にこれまで準備されておるものというのは、いわゆる婦人保護施設等々ですね。これは、昔は売春防止法の範疇の中で、婦人の更生のための保護施設であったり、あるいは警察が確保しているというか借り上げたりしているウィークリーマンションなどの入所もあるようですが、しかし、圧倒的にこういうシェルターの充実というのが追いついていない。
そして、民間シェルターの活用をということも言われておりますが、開けて資料の三枚目、民間シェルター先進的取組事例調査結果を見ていただくと、どこも、財政面も人的にもその他も大変厳しいということが出てまいります。
これは厚生労働省政務官にお尋ねいたします。
こういう実態を踏まえて、とにかく女性たちを緊急にも安心できる体制に置くということ、他の場面でも必要と思いますが、ここへの取組についてお願いいたします。
○大隈大臣政務官 お答えいたします。
婦人保護事業は、御承知のとおり、昭和三十一年に制定されました売春防止法に基づく事業として発足しております。その後に、支援ニーズの多様化を踏まえまして、DV被害者あるいはストーカーの被害者も事業の対象として運用するなど、現に様々な困難に直面している女性の保護、支援に大きな役割を果たしております。
現在、婦人保護事業に関しまして調査研究を実施しておりまして、婦人相談員が女性が抱える問題に対し専門性を発揮した上で相談対応できるよう、自治体に婦人相談員対象の研修の実施方法を示すとともに、平成二十九年度の調査では、女性が抱える問題が複雑化、多様化している中で、婦人保護事業における運用面の改善が十分に図られていない、また、売春防止法が根拠法であることが起因する制度的な課題が存在するということが分かってきております。
このため、平成三十年度には、困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会というものを立ち上げまして、事業の在り方につきまして議論を行いまして、婦人保護事業の運用面における見直し方針を取りまとめまして、婦人相談所、一時保護所等における携帯電話等の通信機器、これは使用制限が多くあったりするものですから、そういう点での見直し、また、DV対応と児童虐待対応の児童相談所等の連携強化などの運用改善を図ってきたところでございます。
令和元年十月には中間取りまとめが取りまとめられまして、女性が抱える困難な問題は、売春防止法を根拠とした従来の枠組み、いわゆるこれは更生ということですよね、そういう点での対応が限界であり、法制度上も新たな枠組みの構築が必要であることが指摘されたところでございます。
厚生労働省といたしましては、民間事業者による若年被害女性等支援事業や、困難な問題を抱える女性支援連携強化モデル事業を新たに開始するなど、この考えに沿った取組が進んでまいりますように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○阿部委員 今、大隈政務官からるる御紹介がありましたが、婦人の保護、あるいは更生という言葉で言われているところの概念も、それから支援方法も変わってきているのだと思います。
例えば、ストーカーで被害に遭って職場も辞めた、学校に行けない、住居を移る、もうこれは生活再建全体が必要となります。ソーシャルワーク機能も必要となりますし、本当に今そこの見直しの時期で、婦人保護事業と言われてきたものの現代における役割をしっかりと厚生労働省と内閣府、さらには、警察庁とも連携しながら、警察庁が、例えば、今の婦人保護施設に御相談というか回している件数というか、実際に紹介しているのは年に数件、婦人保護施設はあれど使われてはおらないということで、双方に問題があろうかと思いますから、引き続いてお願いをいたします。
さて、もうあと一問、できれば二問、お願いしたいですが、先ほど来問題になっております加害者のいわゆる治療や更生に関してでございます。
お開きいただきまして四ページの資料、これは、警察庁の調査、ストーカー加害者に対する精神医学的・心理的アプローチに関する調査研究報告書の中で、いろいろ調査されたときの三つの協力機関のパターンですね。どんなところで加害者の治療あるいは更生の協力をお願いしているか。ほっとステーションというのは、精神科のデイケア等々の病院、精神保健福祉士さんもおられる。あるいは、男女問題解決支援センター、これは主には、心理士さん、弁護士さん等々。ヒューマニティ、これは先ほど御紹介した小早川さんがやっておられるNPO法人。
各々、その特性と、また支援の在り方もあるわけですが、私が拝見すると、このいずれもが充実していただきたいし、特に、ここで問題になっている医療との連携というところはまだまだ現状では予算も執行されておらないし、そのことは先ほど小此木大臣が御答弁であります。
その結果かどうか分かりませんが、実はこのほっとステーションというのは北海道にございます。もう一枚開けていただきますと、加害者アプローチ実施状況一覧というのを各県警ごとに区分していただいたもの、これは先ほど西村委員もお示しであったかと思いますけれども、これを見ると、非常に地域差があって、小此木大臣も言われたように、働きかけのアプローチが多いのは、北海道、静岡、福岡などでありますが、他は一桁のところもございます。
これが、何によってこの差が生まれているのか、私が想像したのは、例えば、北海道では、ほっとステーションとかがあって、より緊密に加害者の方を治療に誘導というか、しやすい体制が、働きかけやすいことがあるのではないかと思いますが、この地域差は、大臣はどう御覧になっていますか。
○小此木国務大臣 委員の言われることも理解できますけれども、都道府県警察によって働きかけ件数に差が生じている要因は必ずしも明らかではないものの、例えば、北海道警察では、警察が受診を働きかけたストーカー加害者を受け入れる地域の精神科医療機関等が増加したことで、働きかけを行った者の受入先が増加したことが働きかけ件数の多さの一つの要因と考えます。
また、福岡県警においては、平成三十年に、一般社団法人福岡県精神保健福祉士協会と協定を締結したことで、地域の精神科医療機関等において働きかけを行った者の受入れが円滑に行われるようになったことが働きかけ件数の多さの一つの要因と考えられます。
こうした取組について、各都道府県警と情報共有を図り、受診の働きかけや地域の精神科医療機関との連携が一層推進されるよう、警察を指導してまいりたいと存じます。
○阿部委員 最後は質問になりませんで、お伝えをさせていただきます。
精神科を受診していただくのに際して、今、警察官で働きかけをするだけでは、なかなか、取り締まる側の方に言われてもというところは加害者にもあろうかと思います。この働きかけについて、どの段階で行うかで、最後の資料六枚目で、いわゆる禁止命令や警告を出す段階において、現行法五条一項の二「反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項」のところに、加害者に対する精神医学的、心理学的手法によるカウンセリングや治療を勧めるということを組み込んでやっていただきたい。これは別に法律ではありませんから、再発防止のためにやらねばいけないところに治療的働きかけということを組み込んで、各種機関と連携していただきたいと思います。
以上です。終わらせていただきます。
○木原委員長 次に、吉田統彦君。
○吉田(統)委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。
大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
早速始めさせていただきます。
ストーカーは、もう皆様御承知のとおり、古くは、つきまとい行為を既存の法律が対象としていなかったために、一九九〇年代頃までは警察の民事不介入により取締りがされていなかったという歴史的な経緯があると思います。そのために、今まで法律的にストーカー対策が不十分であった、ないしは警察の初動遅れや対応が不十分であったために人命が失われた不幸な事件が多々あります。
ストーカー規制法制定の契機となった事件であり、また、写真週刊誌フォーカスや報道番組「ザ・スクープ」による調査報道によって、所轄の埼玉県警の上尾署が被害者と家族からの被害相談を極めてずさんに扱っていたことが明らかとなって、警察不祥事として警察から三人の懲戒免職者を含む十五人の処分者を出して、加えて、被害者と遺族への報道被害も起こった、報道の在り方についての参考例としてもしばしば取り上げられる埼玉の桶川ストーカー殺人事件、ストーカー被害が把握されていたにもかかわらず事件を防止できなかったこと、及び行政や警察からの個人情報漏えいが問題視されて、またストーカー規制法の不備が指摘された、同法の改正につながった逗子ストーカー殺人事件、リベンジポルノの関連法案成立の誘因となった三鷹ストーカー殺人事件など、こういった様々な問題提起の契機となった不幸な事件が数多く存在します。
こういった事件を振り返ると、警察は当初の民事不介入という側面が残っていたようにも感じるわけであります。私は、法改正そのものには賛成できると考えておりますが、警察がきちんとした対応をしてこなかったことが問題であって、このような歴史的な経緯に対して、国家公安委員長並びに警察庁は、そのことに対する真摯な反省がまず必要であります。その反省の上に立って、今後の対策に関してどのように考えるのか、その延長線上に今回の法改正がないといけないとも感じております。
国家公安委員長にお聞きしますが、警察として、ストーカー犯罪が根絶できず、現在でも多数の被害者がいることに対する反省と、現在の取組ではなくて、今後どのような対策をしていくのかを具体的にお答えください。
〔委員長退席、平委員長代理着席〕
○小此木国務大臣 改めて、警察においては、ストーカー被害等の安全確保を最優先として各種対策を推進しているところでありますけれども、委員御指摘のとおりです。これまでに、ストーカー行為者による、被害者が殺害されるという痛ましい事件が発生してまいりました。
言われましたように、三鷹市において発生した事件については、事件発生当時の午前に警視庁三鷹警察署が被害者女性から男からのつきまといに、これは家族の方も含めてですね、男からのつきまとい等に関する相談を受理していたが、同日中に男が被害女性の自宅に侵入し、帰宅した女性を殺害した事件であると承知しております。
当該事件について、警察が相談を受理した段階では被害女性の命を脅かすほどの危険が切迫しているとの判断に至らなかった、被害の発生を防止するための組織的対応が十分になされなかったというふうに私は承知しております。警察として真摯に反省しなくてはならないものである、こう認識しております。
この反省によって、現在、警察では、ストーカー事案の危険性、切迫性を的確に判断し、組織的かつ迅速な対応を行うため、認知の段階から対処に至るまで一元的に対応を行う生活安全部門と刑事部門を統合した体制の構築、事案認知時において危険性等を見極めるために、相談対応に当たって生活安全部門と刑事部門との共同での聴取の実施、婦人相談所等と連携した被害者等の一時避難等安全確保のための措置を行うなど、組織的な対応の徹底を図っていると承知しております。
このような事件が二度と起こることがないように、被害者等の安全確保を最優先として、各種対策をしっかりと推進するよう引き続き指導してまいりたいと存じます。
○吉田(統)委員 大臣、しっかり答弁していただいてあれなんですけれども、現在進行形ということでよろしいですかね、大臣の今お話しされたことは。私は、今やっていることは十分承知しておりますものですから、今後のことということで御開陳いただきたいと。レクのときも、今までの、過去のことはもちろん反省の上に立って、今後のことと重々申し上げて、また今日もそう申し上げたんです。だから、今おっしゃっていることはもう既にやってあることがほとんどだったと私聞いていて思ったんですが、現在進行形でよりしっかりとした対応をしていく、体制整備をするという理解で聞いておりましたが、それでよければそれで結構です。
次にちょっと行きますが、東京新聞の二〇一九年十月二十七日のウェブ版の記事で、身の危険を感じた当時二十一歳だった猪野詩織さんの訴えに上尾の署員は誠実に耳を傾けず、告訴のもみ消しに手を染めた、民事不介入を建前に業務負担を避けてきた悪習が浮き彫りとなったと。
嫁入り前だし、裁判になると恥ずかしいことも言わなければいけませんよ、事件の三か月前、元交際相手からのストーカー被害を相談しに同署を訪れた詩織さんと母の京子さんは耳を疑った。担当課長が要は告訴受理を渋ったわけでありますね。後日、課長は受理したが、捜査の意思はなかった。未処理事件が増えれば、現場の重荷になる上、署の成績が悪くなる。上司の意向を受けた課長の指示で、係員は捜査業務が生じない被害届を取り直し、さらに、詩織さんの調書の告訴を届出と改ざんした。
身内のトラブルは民事不介入を盾に断るのが腕のよい刑事とされた、幹部はそう振り返る。懲戒免職となった当時の課長は今年九月、今年の九月というのは二〇一九年ですね、二〇一九年の九月の取材に対して、もう忘れたと沈黙し、係員も取材には応じないと口を閉ざした。詩織さんの父、憲一さんは、警察官が被害者の味方にならないと事件は防げないと言い切ります。
純粋に、事件からかなりたって、二〇一九年の配信された報道でありますが、この報道を改めて聞いて、国家公安委員長、どのようにお感じになられますか。
○小此木国務大臣 そのような残念なといいますか、認知段階で、それと、事が起こってしまった段階での意識が全く違ってしまったという案件だと思います。
その反省に立って先ほどの答弁をいたしましたし、今回、昨年の最高裁の判決で、GPSという、二十年前にはない、あるいは予想もしなかったようなものがこの行為に使われたということの中で、国民感情からすると違う判決が出たという中で、今議論が行われ、成立に向けて皆さんに努力をしていただいていると思いますので、今後もそのようなことについての想像も働かせながらこれは当たってまいらなきゃならないという意識は私にはございます。
〔平委員長代理退席、委員長着席〕
○吉田(統)委員 国家公安委員長、私は、やはり大変、今の報道を見て、これは御家族の無念はいかばかりかと思いますよ。
最も重要なことは、最後このお父様が言われた、警察官が被害者の味方にならないと事件は防げない、ここなんだと思います。結局、身内の、さっきるるお話ししたように、成果の問題や署の成績で、民事不介入を盾に断るのが腕のいい警察官なんて、これは実際にその当事者が言っているわけですよね。
こういったことを受けて、本当に警察官が被害者の味方にならないと事件は防げないということを、しっかりとやはり、国家公安委員長、指導していただきたいことと、もう一度、この話を聞いて、これは割と最近、まだ二年たっていない配信なんですよね。事件はもっと大分古い事件じゃないですか。大臣、どう思われますかね、これ。当時の警察の、当然、組織としての在り方にもやはり問題があったと、大臣、お考えになりますか。
○小此木国務大臣 反省というのは、問題があったからゆえに振り返って、達することのできなかったところをしっかりと、国民の感情、あるいは被害者、遺族の意識に立つことも必要でありますし、そういった中での証拠と法に基づいた捜査が行われ、適切な判断をし、検挙あるいは捜査、そういったことにつながるものであると思います。
私も人間でありますので、遺族等の感情等についてはしっかりと認識をしなければならないと思います。
○吉田(統)委員 ありがとうございます。
国家公安委員長というのは大変厳正なお立場でありますから、そういう御答弁になると思いますけれども、国家公安委員長自身が、やはりこういった被害者の味方となっていただくおつもりをお持ちになってしっかり進めていただきたい。お願いであります。
それでは次に、先ほども申し上げたとおり、今回の法改正も、個々の事実、現在の法規制がそのままでは対処できなくなるという意味での改正ということは理解しています。しかし、本質的には、先ほども申し上げたような、過去の不幸な経緯をたどった事件に思いを致して、これまでのストーカー犯罪が起きてしまったことに対する真摯な反省、というよりも猛省していただきたいですけれども、今後、ストーカー被害により貴重な人命が失われる例が二度と起きないようにするという決意の下に法改正がなされなければ、新たな手法によるストーカー犯罪は後を絶たないと思います。
そこでお聞きいたしますが、本法改正案が成立すると、よい結果が予想されるから提出されているんでしょうけれども、実際、そのようなことがしっかりと具体的に明示されるのかということであります。
例えば、五年前の二〇一六年の小金井市の、当時芸能活動を行っていた二十歳の大学生の女性に対するストーカー犯罪では、ファンを自称する男により、ツイッターなどのSNS上でストーカー行為を繰り返した後、小金井市内のライブハウスにてナイフで刺殺しようとし、重体に陥らせた事件がありました。
これは、二〇一三年法改正時に連続した電子メールが追加されたものの、SNSの書き込みは電子メールと解釈されずに事実上野放しになっていたことが原因の一つとされて、事件後すぐに法改正がされたと承知しています。
しかし、問題の本質は、法の不備というより、警察の不手際というか、被害者の相談を受けて加害者異常行動を把握していながら、緊迫性が高くない、ここは本当に警察はしばしばおっしゃるところでありますが、緊迫性が高くないと判断したこととされ、それが大きな要因であったとやはり考えられると思います。
とすると、今回の法改正で最高裁が除外した行為などを追加することは、確かに意義がありますよね。しかし、より重要なのは、本法案の成立によって、ストーカー犯罪により貴重な人命が二度と失われないような結果をつくり上げていくことだと思います。つまり改善されていくことだと考えますが、この点、国家公安委員長の、今の私の話を聞いた上での決意、見解をお聞きしたいと思います。
○小此木国務大臣 今回の法改正によってどう変わるかについては、もう御認識いただいていると思います。GPS等、そういう機器についてもしっかりと取締りができるようにしなきゃならないということ。
繰り返しになりますけれども、やはり、この二〇〇〇年に起きた桶川事件、そして、今言われた、遺族の、その事件についての、我々からすれば想像を超えるような思い等もありました。厳正に対処しなきゃならないという公正な思いと、憎しみの思いは、これはこらえなきゃならないかもしれませんが、人間ですから、そこはこの国会の場で申し上げることが適切かどうか分かりませんけれども、そういった過去の様々な例、特に、ストーカー行為というものが同じ気持ち、同じ人間でやられているとは限らないことについて、知見を広めて対処していくことが重要であると私は考えて、そういった意味からも、いろいろな経験を踏まえて、他省庁との連携も踏まえ、他機関との連携も踏まえて、かかるように警察を指導してまいりたいと存じます。
○吉田(統)委員 ありがとうございます。本当に、並々ならぬ決意は、大臣の御表情や御答弁の内容からよく分かりました。
今の質問で、国家公安委員長の、そして警察庁のストーカー犯罪への基本的な姿勢、これからベースになっていく姿勢をお聞きしました。その上で、現実にどのように対応が変わっていくかということが大きな現実的な問題です。
ストーカー犯罪の歴史をひもとくと、前述したように、警察による初動の遅れや対応のずさんさが致命的となった事件があります。私のところにも、実際、ストーカー被害を警察に訴えたが被害届を受理してくれなかった、ないしは、担当した警察官が、被害が起こってからでないと警察は動けない、確たる証拠がないと警察は動けないと、これは本当によくおっしゃいますよね、しばしば発言して、対応しないケースがまだまだ現場では見られます。
犯罪全般にも言えることですが、特にストーカーに関しては、その被害を被害者自身が証明しにくいケースが多々あるんだと思います。今までに警察に相談や告訴したいと持ちかけても門前払いされた例もありますし、何よりも問題なのは、被害者は大変な恐怖を感じたり様々な不愉快な思いをしているという実害が生じているにもかかわらず、それが警察の基準である実害には当たらず、取り上げられなかった。
先ほどの小金井の事件の場合は、緊迫性があると認識されなかったわけですよね。そして、これが、所管の警察署の怠慢であったり、また初動のミスにつながってしまった。
結局、実害である具体的な刑法犯罪の被害、暴行罪や傷害罪、名誉毀損、最悪の場合には殺人という法益侵害が生じないと警察が動けないとしてきたのがストーカー犯罪の歴史であります。
そこで、改めて、本法案を成立する前提として、警察庁として、また一つ一つの所轄警察署において、被害が起こってからでないと警察は動けない、確たる証拠がないと警察は動けないといった担当官の発言は今後一切なくなるものと考えてよろしいでしょうか。
○小此木国務大臣 改めて、そう思っておりますけれども、指導してまいりたいと存じます。
○吉田(統)委員 しっかりとした御答弁、ありがとうございます。この言葉、やはりかなり心が折れますよね、被害者。我々が被害者の立場に立ったとき、本当に心が折れますので、是非御指導いただいて。期待しております。
先ほどから何度も申し上げておりますが、被害者からの相談、被害届の提出等は、このストーカー犯罪の端緒をつかむ上で大変に重要なものであります。
あえて厳しいことを申し上げますと、百件の相談を受けて、その結果、警察が初動で注意や警戒を行うことで一件もストーカー犯罪が発生しないようにしなければ理想的にはならないわけですね、大臣。警察に訴えても取り合ってくれなかったとか、被害がないと動けないなどということが、二度と被害を受けている方から言われないようにする必要があると思います。
そして、このような早めの対応が、犯罪を抑止して被害者を出さないという意味でも、また、警察という貴重な、極めて国民の信頼が大きな行政組織に過度の負担を逆にかけないという意味でも重要だと思います。病気と一緒で、やはり初期に、端緒のうちに摘み取っていくということが重要だと思いますので、国家公安委員長を中心にしっかりとお願いしたいと思います。これはお願いであります。
それでは、法律の内容についてお聞きしたいと思います。
ストーカー規制法において、第二条で、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされないことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その後の各号に掲げる行為をした者をつきまとい等として定義していますね。もうほかの委員からも、最も重要な点として指摘されているところだと思います。
しかし、この恋愛感情等を必要とするというストーカー規制法のたてつけでは、必ずしも世間で行われているストーカー的な行為を全て取り締まることはできないのではないでしょうか。実際に海外でも、このような要件を定めず、恋愛感情等の目的を必要としていない例もあるとお聞きしています。
そして、この目的が必要とされることで、逆にデリケートな問題も含みますし、対象に当たらないではないかということで被害者が被害届の提出などをちゅうちょしたり、こちらが逆にちゅうちょしてしまう、また、加害者サイドの抗弁により警察が取締りを控えるといったおそれもあるようにも思えます。
今回、冒頭でも申し上げましたとおり、私はこの犯罪がなくなるような法改正であってほしいと望んでおります。しかし、この目的が必要とされることで、ストーカー犯罪の被害者や警察がちゅうちょしたことによってストーカー犯罪を惹起してしまう結果となってはならないと考えます。
この点、これまでの審議会などで、目的について、内容の変更や、目的を必要としないようにしようといった検討が行われているでしょうか。審議会での内容について教えていただきたいと思います。また、国家公安委員長として、このような目的を必要としていることについてどのような認識でいるのか、審議会への諮問などを必要と考えているのか、委員長のお考えを教えてください。
○小此木国務大臣 今回の法改正に当たってですが、昨年十月から本年一月にかけてストーカー行為等の規制等の在り方に関する有識者検討会を開催したところ、検討会においては、令和二年七月の最高裁判決を受け、GPS機器等を利用して動静を観察する行為に対する規制の在り方を中心に、早急に検討すべき論点について絞って検討いただいたところであります。このため、つきまとい等の構成要件である恋愛感情等の充足目的の要件についての検討は行っていないと承知しています。
なお、つきまとい等に係る恋愛感情等の充足目的の要件については、ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合には、その相手方に対する暴力、脅迫、ひいては殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が見られてきた、また、国民に対する規制の範囲を最小限にすべきであるという点を考慮する必要もあったと承知しています。
るる述べてきたところでありますけれども、このため、規制対象を、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しています。
ストーカー規制法において恋愛感情等の充足以外の目的で行われる行為を規制対象とするかどうかについては、ストーカー規制法の在り方そのものに関わることであるから慎重な検討を要するものと認識しておりますけれども、ストーカー事案の実情等に応じて必要な対応を検討するよう警察に指導してまいりたいと存じます。
○吉田(統)委員 十分にお答えいただいたんですが、そうすると、大臣、さっきのSNSの話じゃないんですけれども、メールじゃない、グレーなところだった結果というのが、さっきお話ししましたが、この非常にグレーなゾーンに対する対応ということがやはりかなり問題になってくる可能性があるんですよね。分かるんですよ。逆に言うと、ほかの、国民の様々なものを規制してしまうことになると大臣おっしゃいましたよね。ただ、微妙なライン、グレーゾーンに対する対応というところが非常にやはり、今の大臣の御答弁だと、大きな問題になると思います。
そこを、さっきの初動の遅れの話、るる申し上げましたが、そうならないようにやはりしなければいけないですよね。まず、そこはそう思っていらっしゃるかどうかを聞きたいのと、ではどういった対応をするのかということを教えていただけますか。
○小此木国務大臣 非常にこれは複雑なところであると思いますが、私の答弁と今回の委員の皆様の質疑以外のリアクション等々ございます。
私の中でもいろいろな思いがある中で、今、実情に応じて進めていくべきだというようなお答えをいたしましたが、これは、専門家の検討会もあります、過去の事例もあります、そういったものの実情を更に検討して、警察庁内部での検討も更に進め、当たってまいることが肝要であると思います。
○吉田(統)委員 ちょっとなかなかはっきり答えづらいですかね。ただ、思いとしては、グレーなゾーンに対する対応もしていかれるおつもりがあるということでいいですか。そこだけちょっとはっきりお答えいただけませんか。グレーな部分の対応は国民が一番気になるところであり、やはり国民は警察を信頼していますので、そのグレーゾーンに対する対応をどのようにするかということは、もうちょっとはっきり答えていただきたいんですよね。
疑わしき者は罰するのかということも含めて、ちょっとそこをもう一度お願いします。
○小此木国務大臣 被害者の安全、こういったことが起こらないこと、これが一番大事でありますから、委員のおっしゃった今のグレーの点については、検討なしではいけないと思いますが、そういったところ、命を大事にするという、その第一義的なものがございますので、そこをまず優先的に考えたいと思います。
○吉田(統)委員 ありがとうございます。
ただ、ちょっと今気になったのが、検討は必要ということは、検討しないと対応しないということですか。
○小此木国務大臣 先ほど委員もおっしゃいましたように、私権の制限といいますか、プライバシー、こういったことについての検討というのは国としては必要なところであると思います。これは罪を憎むのと同じ思いとはちょっと異なるかもしれませんけれども、その検討は進めながらも対処することが重要であるとお答え申し上げました。
○吉田(統)委員 では、国家公安委員長を信頼します、頑張ってやっていただきたいと思って。
次、もう時間がないので、過ぎないようにやります。
簡単に申し上げますが、位置情報無承諾取得等についてお聞きします。
今回、最高裁の判決によって、住居等の付近において見張りをする行為に該当するために、GPS機器等を用いる場合であっても、上記特定の者等の住所等の付近という一定の場所において同所における上記特定の者等の動静を観察する行為が行われることを要するものと解することが相当であるとして、単なるGPSを用いた位置情報の取得行為等を見張り等と解することができなくなったことから法改正を行うに至ったものと承知しています。
しかし、この行為を取り締まるためには、この行為を警察で感知しなければなりませんが、これは非常に困難を伴うのではないかと想像いたします。
もちろん、いわゆる見張り等が行われているのであればそれで取り締まることも可能ですが、さきの最高裁判決のような場合をしっかりと取り締まるためには、警察としてはどのようにこの類型の行為を感知、発見していくつもりか、法改正後の警察の対応について最後にお伺いしたいと思います。
○小此木国務大臣 改正法では、位置情報無承諾取得等として、被害者の承諾を得ないでGPS機器等を用いて位置情報を取得する行為や被害者の所持するものにGPS機器等を取り付ける行為等を規制の対象とすることとしたものであります。
GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為等を認知する方法については、被害者自身がGPS機器等を発見したり、警察が被害者等から被害状況等を聴取する中で、位置情報を把握されているおそれが認められる場合に、被害者の所持するもの等を確認して認知するほか、加害者から聴取したり、加害者の所持するものを確認する際に認知しているものと承知しております。
国会における御審議により、法案が可決され、成立すれば、改正ストーカー規制法を適切に運用し、こうした位置情報無承諾取得等にしっかり対応するよう警察を指導してまいります。
○吉田(統)委員 もう少し聞きたかったんですが、時間ですので、終わります。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
ストーカー規制法改正案について質問いたします。
小此木国家公安委員長にお尋ねいたします。
今回の法改正では、禁止命令等を書類を送達して行うこととすると明記をし、さらに、住所や居場所が明らかでない場合は公示送達を可能とするとしております。送達や公示送達の規定を設けることにより、禁止命令等の交付ができない事態を回避することができます。
このことについて、一点確認したいんですが、ストーカー規制法は、つきまとい等行為に対し、警告、禁止命令の行政措置、禁止命令違反に対しての罰則、つきまとい等を反復して行うストーカー行為に刑事的な処罰が下される仕組みとなっています。このような段階的な対応を講じることによって、行為者の自覚を促し、問題の解決を図ろうというものであります。
送達、公示送達の規定を設けても、直接手渡しするという原則は変わらないと承知をしていますが、この点についてお答えください。
○小此木国務大臣 現在、禁止命令等は、国家公安委員会規制において定めるところにより、禁止命令等の対象者に対する処分の感銘力、抑止効果を踏まえ、禁止等命令書を交付して行っていると承知しています。
今回の改正は、禁止命令を書類を送達して行う旨を明文で規定するとともに、禁止命令等の対象者の住所及び居所が明らかでない場合には公示送達を可能とするものであるところ、禁止命令等の対象者に対する感銘力や抑止効果を踏まえ、引き続き原則として当該命令書を交付して行うよう、警察を指導してまいります。
○塩川委員 直接手渡しが原則だということでは変わりがないという話であります。
その点で、過去の調査を見ても、例えば、二〇一三年に警察庁が行いました、警察による口頭での指導警告後に八割から九割のストーカー行為が止まったという実績を見ても、抑止効果があると思われます。
こういった二〇一三年の調査など、実績に関する直近の資料というのはあるんでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
警察庁におきましては、委員御指摘のとおり、平成二十五年に、ストーカー事案で、口頭警告を実施したもの、ストーカー規制法による警告を実施したもの、また禁止命令等を行ったものに対して調査を実施しているところでございますが、その後は同種の調査は実施していないところでございます。
なお、警察庁におきましては、ストーカー事案に係る実態をより的確に把握するため、本年以降におきまして、ストーカー事案において検挙された者のうち、以前にストーカー事案により検挙された者の人数を把握していく方向で検討しているところでございます。
○塩川委員 そういう意味でも、しっかりとした今後の対応について、検挙事案の話が今答弁でありましたけれども、小此木国家公安委員長として、過去のこういった実績なども念頭に、この間の取組の状況についてが分かる実態の調査、実態把握、是非やっていただきたいと思いますが、その点。
○小此木国務大臣 実態把握等につきましては、先ほどからも答弁しておりますけれども、しっかりと把握することが重要であるという考えの下、そういうふうに前に進めてまいりたいと存じます。
○塩川委員 次に、ストーカー総合対策についてお尋ねをいたします。
二〇一七年の四月に決定をしましたストーカー総合対策においては、被害者等からの相談対応の充実についてというのがあります。内閣府、警察庁にお尋ねしますが、「幅広い窓口において被害者等からの相談を受理し、また、そのニーズに応じ、切れ目なく適切な支援を行うことができるよう、被害者等からの相談窓口を充実させる」とありますが、この間の相談窓口設置の実績またその点での課題についてそれぞれお答えください。
○伊藤政府参考人 まず内閣府からお答え申し上げます。
ストーカーに関する相談窓口としまして内閣府で把握しておりますのは、配偶者暴力相談支援センター及び性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターでございます。
これらの設置状況といたしましては、配偶者暴力相談支援センターが令和三年二月時点で全国に二百九十六か所、そのうち市町村設置主体のものが百二十三か所でございます。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつきましては、令和三年四月時点で全国に四十七か所、各都道府県に一か所設置をされているところでございます。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
警察庁におきましては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議におきまして策定されたストーカー総合対策におきまして、被害者等からの相談対応の充実等が挙げられていることを踏まえまして、平成三十一年に多機関連携によるストーカー対策のための取組に関する調査研究を行ったところでございます。
本調査研究におきましては、未然防止、被害者対策等の各段階における関係機関の支援内容を調査したところ、例えばある都道府県警察におきましては、県内の大学と連携してネットワークを設立し、県内の大学では女性被害者相談窓口を設置してストーカー被害に関しても相談を受け、警察への相談についても学生にアドバイスしている事例や、ストーカー被害の相談を受けた警察におきまして、相談者に対して併せて保護対策について自治体の担当課に連絡することを勧めて、警察と自治体が連携して相談者のシェルターへの入所支援を行った事例などが見られるところでございます。
このような取組が全国的に推進されるよう、把握した好事例を各都道府県警察に紹介すること等を通じまして、引き続き、被害者等からの相談窓口の充実のための取組を推進してまいりたいと考えております。
○塩川委員 窓口設置のお話がありましたけれども、実際の相談実績がどうなっているのか、その相談の実績の状況についての把握というのはそれぞれどうですか。
○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。
私ども所管しております二つのセンターでございますけれども、事案ごとの把握、細かい事案ごとの把握はしてございませんけれども、まず配偶者暴力相談支援センター、それから昨年四月に内閣府が開設した新たなDVに関する相談窓口、DV相談プラスに寄せられた相談件数、これを合わせますと、令和二年四月から本年二月までで約十七・六万件、ワンストップ支援センター、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにつきましては、令和二年度全体の数字で約五・一万件の相談ということになってございます。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
警察におきましては、令和二年中、ストーカー事案の相談等の件数につきましては、二万百八十九件、こういった相談を受理してございまして、こういった相談の内容に対しまして、措置といたしましては、例えばストーカー規制法に基づく行政措置として警告を二千百四十六件、また禁止命令等を千五百四十三件発出しているところでございます。このほか、検挙につきましても実施しているほか、それ以外にも、例えば被害防止の措置の教示でありますとか、被害防止に必要な例えば用品の貸出しでありますとかいったような対策を講じているところでございます。
○塩川委員 内閣府の場合は事案ごとの相談件数は把握していないということであります。ストーカー総合対策に基づいて相談窓口の設置ということを決めているわけですから、実際の相談件数がどうなっているかをしっかり把握する必要があると思うんですが、少し分けてそういう数を把握するということは是非やってもらいたいと思うんですが、その点、どうですか。
○伊藤政府参考人 御案内のとおり、それぞれ、DVですとかあるいは性犯罪、性暴力に関する相談というふうなことをするためのセンターでございます。その中でストーカー事案と重なる部分があるというふうなことでございます。どう区分するかというふうなことについてはちょっと検討課題とさせていただきたいと思います。
○塩川委員 是非、実情をつかむという点での対応をお願いしたいと思います。
それから、ストーカー総合対策には自治体との関係の取組も書かれております。「地方公共団体における被害者支援の充実を図るため、内閣府作成「ストーカー被害者支援マニュアル」を活用するなど、地方公共団体における被害者等に対する相談対応・カウンセリング等を推進する。」とあります。
内閣府にお尋ねしますが、このマニュアルの活用状況、自治体の相談窓口の設置状況、相談実績はどうなっていますか。
○伊藤政府参考人 お答えいたします。
このマニュアルにつきましては、平成二十九年度に作成しましたが、この年に、各都道府県・政令指定都市の男女共同参画の主管課、あるいは都道府県、市町村の配暴センターの取りまとめ部局、男女共同参画センター、教育委員会等々に配付をいたしまして、活用いただいているところでございます。
それぞれにおきます相談窓口の実際の設置件数とか相談件数については把握をしてございません。
○塩川委員 マニュアルを活用してもらうということで説明会などをやったということですが、実際に自治体の相談窓口の状況はどうなっているのか、いや、自治体の規模もあります、対応の状況もいろいろだと思いますけれども、そういう実情がどうかということはしっかりと把握することは必要なんじゃないですか。その把握の必要性についてはどうですか。
○伊藤政府参考人 この件につきましても持ち帰らせていただきたいと思います。
○塩川委員 小此木国家公安委員長にお尋ねしますけれども、今答えてもらいましたように、国の関係する機関、そういう支援センターなどでの相談件数についても、ストーカー被害について何件か、そういう形で実態をリアルにつかむ必要があるんじゃないのか。また、自治体の取組状況がどうなっているのか、相談窓口や相談の実績がどうか、こういうことについてしっかり把握をする必要があると思うんですが、その点で、国家公安委員長としても是非、取組方、応援してほしいと思うんですが、いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 被害者を生まないということ、犯罪の防止の観点から、そういった把握について努めるよう指導してまいります。
○塩川委員 ストーカー総合対策においては、加害者対策の推進も盛り込まれております。警察官が地域精神科医等に加害者への対応方法や治療、カウンセリングの必要性について助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域精神科医との連携を推進するとあります。
警察庁として、このような取組についてどのように把握をしておりますか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
ストーカー加害者への対策につきましては、ストーカー事案の加害者の多くが注意や警告等の措置で行為をやめる一方、被害者への強い執着心等から、検挙や警告をされた後もつきまといを続ける者が存在することから、ストーカー対策に当たって、こうした加害者の特性を踏まえた対応が必要であると考えております。
警察におきましては、平成二十八年度から、警察がストーカー事案の加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受けまして、加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しているところでございます。
また、警察庁におきましては、平成二十八年度より、警察庁、都道府県警察、医療機関等関係者による連絡会議を開催いたしまして、ストーカー加害者に対するより効果的な精神医学的、心理学的アプローチについて情報共有等を行っているところでございます。
今後とも、ストーカー加害者に対して受診の働きかけを行うなど、地域の精神科医療機関等との連携を図りつつ、そのカウンセリングや治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再発防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行ってまいりたいと考えております。
○塩川委員 この法改正に当たって、ストーカー行為等の規制等の在り方に関する検討会が開かれてまいりました。そのメンバーでもあります小早川明子さん、NPOヒューマニティ理事長、先ほどの質疑の中でも挙げられた方ですけれども、加害者の方の話も含めて、本当に被害をなくすという立場での取組をずっとされてきた方ですけれども、そういった都道府県警の取組などについても、ストーカーが望めば精神保健福祉士が警察署で面談をするという取組をやっている福岡県の例ですとか、ストーカーの治療費に補助を出すような京都府の事例なども紹介しているところであります。
そこで、小此木国家公安委員長にお尋ねします。
この小早川さんは、規制法の下で警察が警告を出すのはもちろんありがたいです、ただ、警察の介入が逆効果になる場合もあり得る、だから、警告するときは精神保健福祉士などの医療関係者やカウンセラーなどが加害者と会うようにする連携が必要だと思っています、あなたは警告を受けたけれども、苦しんでいるのではないですかとケアする人が必要です、本当は警察を出す前にカウンセラーなどが加害者と面談するのが理想的です、被害者が警察に相談する前に、ストーカー心理に詳しいカウンセラーと出会えれば一番いいのですがと述べておられます。
こういった指摘についてどう受け止めておられるか、どのように取り組んでいくのかをお聞きします。
○小此木国務大臣 委員長、済みません、答弁の前に、先ほど、最初の質問のときに、公示送達の質問を受けたときに、国家公安委員会の規則と申し上げるところを規制と間違えました。改めて訂正させていただければと思います。
お答えですが、警察においてストーカー加害者への警告等の対応を行う際には、加害者への接触の時期や方法について、警察の介入が逆効果とならないよう、加害者の性格、加害者と被害者等とのこれまでのやり取り等を踏まえ、加害者が警察の関与に対し反発するおそれを十分に考慮した上で決定することとし、警告等を行った後は、加害者の報復のおそれの有無等を考慮し、被害者等の所要の保護対策を講ずることとしておると承知しています。
一方、ストーカー加害者の中には、被害者に対する執着心や支配意識から、検挙されてもストーカー行為を繰り返す者がいるところ、警察においては平成二十八年度から、ストーカー事案の加害者への対応方法やカウンセリング、治療の必要性について地域の精神科医等の助言を受け、加害者に受診を勧めるなど、地域の精神科医療機関等との連携を推進しております。
今後とも、ストーカー加害者に対する精神医学的、心理学的アプローチについて、地域の精神科医療機関等との連携を図りつつ、そのカウンセリング、治療の効果について把握し、加害者のストーカー行為の再犯防止のために効果的な方策について情報収集、検討を行うよう警察を指導してまいりたいと存じます。
○塩川委員 このような被害者の相談体制の充実、また加害者の対策等々、ストーカー総合対策を踏まえての取組、十分、不十分ありますけれども、改善もしてもらいたいと思いますが、ただ、このストーカー総合対策そのものが二〇一七年の四月ということで、もう四年前なんですよ。この間、法改正も施行されたりもありますし、今回行われるわけです。
是非とも、このストーカー総合対策そのものを、今の知見も踏まえて改定する必要があると思うんですが、是非やっていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
○小此木国務大臣 ストーカー総合対策について、平成二十六年にすべての女性が輝く社会づくり本部が決定したすべての女性が輝く政策パッケージを受けて平成二十七年に策定され、その後、平成二十八年にストーカー規制法が改正されたこと等を受けて平成二十九年四月に改定されたものと承知しております。
今回のストーカー規制法の改正や最近のストーカー事案の実情等を踏まえて、ストーカー総合対策の改定の必要性について、内閣府等関係省庁と検討するよう警察を指導してまいりたいと思います。
○塩川委員 是非、今の状況を踏まえたものとして改定を進めていただきたい。
その点で、内閣府と警察庁の連携の話がありましたが、このストーカー総合対策を作成したストーカー総合対策関係省庁会議の事務局は内閣府と警察庁でありますが、定期的な会議などは行われていないということであります。是非、ストーカー規制法の運用状況をしっかりと把握をするという場が必要だと思います。そういった会議を定期的に行って、現場をよく知る関係者の方などもお招きして一緒に協議もする中で今後の素早い法改正などに対応していく、こういった定期的な会議の場をしっかりと設ける必要があるのではないか、この点についてお尋ねします。
○小此木国務大臣 ストーカー総合対策関係省庁会議について、その会議の構成員を内閣府、警察庁等の関係省庁の職員としているほか、必要に応じ、構成員以外の関係行政機関の職員その他の関係者が出席できるとされているものと承知しています。
警察においては、平成二十七年三月にストーカー総合対策関係省庁会議において策定されたストーカー総合対策等を踏まえ、配偶者からの暴力に関する関係機関協議会の活用のほか、関連する被害者支援連絡協議会、被害者支援地域ネットワークなど、既存の地域における関係機関の協議会の活用を考慮しつつ、関係機関との連携協力を推進していると承知しています。
委員お尋ねの会議は開催されておりませんけれども、ストーカー総合対策に基づく施策の取組状況については毎年関係省庁においてフォローアップしており、その情報共有を行っているところでありますが、今後、適切な会議の開催の在り方について、内閣府と検討を行うよう警察を指導してまいります。
○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。
ありがとうございました。
○木原委員長 次に、串田誠一君。
○串田委員 日本維新の会の串田誠一です。
この法律の立法趣旨といいますか保護法益は、第一条に記載されております「個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。」ということであります。そういう意味では、その行為者がどういう目的であるのかとか、そういったようなことも意味があるのかもしれませんが、主たる保護法益というのは、つきまといとかストーカーを受けることによって大変危険な気がする、非常に不安に感じる、そういったようなものを阻止しなければならないし、それに対して、進展したことによって非常に悲惨な事件が報道されているというのも事実だと思うんですが、そういう意味では、限定するということがなぜ必要なのかということをちょっとお聞きをしたいと思うんです。
この定義の中で、先ほどほかの委員からも質問がありました恋愛感情等、そういったようなものが必要なのかということなんですけれども、今日は主に対象に対してちょっとお聞きをしたいと思うんです。
この第二条には、つきまとい等とは、特定の者に対してというふうに書いてあるんですけれども、この限定をしなければならない理由というのはどのようなものでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
特定の者とは、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を抱かれている者でございますけれども、ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等は、交際を求めたり離婚後の復縁を迫ったりするために行われる例が実態として多く、これらの場合には、その者に対する暴力、脅迫、ひいては殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が見られたところでございます。そこで、こうした状況を踏まえて、不特定の者に対してではなく、特定の者に向けられた特別な感情に基づいて行われる行為を規制の対象としたものと考えられるところでございます。
○串田委員 こういう質問をさせていただきましたのは、例えば、学校の帰宅に対して待ち伏せをして、誰でもいいんだということでつきまとうというような人もいるんじゃないかと思うんですね。そういったものが繰り返されていけば、やはり学校に通っている生徒というのは大変不安になるんじゃないか。
しかし、行為自体は、特定の誰かではなくて、とにかく誰か帰宅をするときにはつきまとっていくということになると、これは特定の者というふうに該当はしないんですが、この立法趣旨、「国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする。」という意味では、このようなつきまといが行われたとしても大変不安に思うと思いますし、場合によっては非常に悲惨な事件が発生する可能性もあると思うわけでございます。
人をつきまとうということは、つきまとわれた人間からすれば大変不安に思うわけで、それが行為者にとっては特定な者だったということに限定する必要が果たしてあるんだろうかということなんですが、この学校の帰宅のときにつきまとうということは、当該法律においては対象にならないのかどうか、お聞きをしたいと思います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
個別の対象の方がストーカー規制法のこの対象に当てはまるかどうかということにつきましては、個別具体の事実関係に即して判断する必要がございますので、一概にお答えすることは困難でございますけれども、このストーカー規制法におきましては、特定の者に加えまして、その配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者、これに対する行為につきましても規制の対象としているところでございます。
こういった者が対象とされているものの考え方でございますけれども、こちらにつきましては、一般論として申しますと、こういった配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者である密接関係者に対して嫌がらせ等を行うことによって、その人的関係を背景として特定の者を心理的に圧迫して、特定の者の意思決定を左右し得るものであると考えられているところでございます。
ストーカー事案におきましては、特定の者を心理的に圧迫して、特定の者の意思決定を左右するために、その特定の者の密接関係者に対するつきまとい等も行われる状況が認められたことから、こうした行為についても規制の対象にしているものと考えられるところでございますが、個別の事案に関しては、具体の事案に即して、この規定の当てはめが対応可能かどうかということをまた判断されることになると考えております。
○串田委員 今、私の質問に対する回答とはちょっと違うんですけれども、特定の者に対する配偶者とかそういうことではなくて、学校の例えば帰宅をするときに、Aという生徒で昨日はあった、今日はBだった、あしたはCだったというような状況でも、学校の帰宅のときにつきまとうような人物がいたら大変不安ではないだろうか、だから、それを特定の者というふうに限定してしまうと、とにかく、帰宅する学生に対して跡をつきまとうというような行為は非常に生活に不安を感じるのではないかという質問なんですね。
次に、これはちょっと御検討いただきたい。適用としては、私は、そういうのも適用していかないと非常に不安は出てくるんじゃないかと。ある一定のAという人間だけに特定していくというようなことではなくて、BでもCでもDでも、帰宅をするときにいつも学校で跡をつきまとう人がいたということであるなら、大変私は生徒に対する不安というのは出てくるんだろうなというふうに思うんですね。
ところで、「定義」の第四項のストーカー行為のこの文言もちょっと分かりづらいのがありまして、「この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等」云々で新設の電子メールとかが入りまして、「反復してすることをいう。」と。ストーカー行為とは、同一の者に対してつきまとい等を反復して行う。
この「つきまとい等」のところに、既に「特定の者」となっているんですね。「つきまとい等」というものに対して「特定の者」となっているその前に、今度は「同一の者に対し、」という修飾が加わっているんですね。
これはどういう意味なのか。特定の者と同一の者は違うのか。これが非常に文言的に分かりづらいので、説明していただけますか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
委員お尋ねの特定の者と同一の者は同じことでございまして、改正後のストーカー規制法におけますストーカー行為とは、同一の者に対し、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等を反復して行うことをいうところでございます。
つきまとい等や位置情報無承諾取得等の行為自体も相手方に不安を覚えさせるおそれがある行為であり、ストーカー規制法におきましては、当該行為が更に反復して行われるおそれがある場合においては、行為者に対する警告や禁止命令等を発出することができることとしているわけでございますが、これらの行為が同一の者に対して反復して行われた場合には、ストーカー事案がエスカレートして、凶悪犯罪に発展するおそれや相手方に身体の安全等が害される不安を覚えさせるおそれが一層高まることとなるところでございます。
そこで、このような危害の発生を防止することを目的として、ストーカー規制法におきましては、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等を反復して行うストーカー行為を罰則の対象としているものと承知しております。
○串田委員 今の答弁を聞く限りでは、つきまとい等の特定の者は同一の者と同じことをいったということなんですか。何で言葉を言い換えたのか、ちょっとよく分からないんですけれども。
そこで、同一の者に対して反復継続をするということを先ほどの事例で当てはめてみますと、例えば、学校の帰宅のときに、誰でもよいけれども毎回跡をついていく人がいる、AでもBでもCでもDでも。これは反復するわけですよね。だけれども、同一の者ではないんですよ。
こういうような者に対して、やはり警告なりなんなりしていく必要があると思うんですけれども、同一の者には該当しないということになってしまうんですか。運用の点において御回答いただきたいと思います。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
ストーカー規制法におきましては、恋愛感情その他の好意の感情等を充足する目的でつきまといを行う、その対象者に関しては、先ほど申しましたように、そういった目的で行われる対象の事案において、先ほど申しましたような特定の者等に対して行われるときに凶悪犯罪に発展するおそれが強い、こういったことを踏まえまして、対象者をこのストーカー規制法においてはそういった者に特定をしているものだと認識しております。
他方、先ほどお話ございました、学校の児童の方などが通学途中で声をかけられてつきまとわれたりといったような事案につきましては、私ども警察といたしましても、子供や女性に対するそういったみだりに声かけ、つきまといを行う者については、それがひいては重大事案に発展するおそれがありますので、そういった兆候、声かけ、つきまといの兆しの段階で行為者を特定して指導警告を行う、さらに、そういった者については、犯罪行為が認められる場合には刑罰法令の適用も視野に入れて厳正に対処する、こういった取組をやっているところでございまして、様々な手法を駆使して地域の安全を確保してまいりたいと考えております。
○串田委員 今、答弁の中では、行為者を特定してということなんですが、私は、対象を特定とか、同一というものの概念は余り限定しない方がいいのではないかというふうな提案をさせていただいておりますので、運用では、ここの部分、余り厳格に捉えないような運用をお願いをしたいと思うんです。
次に、第四条の「警告」というところも大変分かりづらい規定になっております。これは、前三条、つきまといがなされて「不安を覚えさせてはならない。」という規定があって、この第四条は、前条の規定に違反する行為があって、申出があったときに警告をすることになっているんですが、この第四条には、第三条だけではなくて、「かつ、当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、」というふうになっているんです。
第三条の著しく害される不安を覚えさせている行為を違反しているのであって、それが申出がなされたときには、この「かつ、」以下の部分、「当該行為をした者が更に反復して当該行為をするおそれがあると認めるときは、」という、こういう要件は、私、必要ではないと思うんですけれども、どうしてこの要件が加わっているんでしょうか。
○小田部政府参考人 お答えいたします。
ストーカー規制法第三条におきましては、つきまとい等をして、相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為を禁止しているところでございます。
これは、ストーカー規制法の立法当時、つきまとい等の事案の実態として、交際を求めたり復縁を迫ったりするなど、恋愛感情等に起因して行われる状況が多く認められ、これらの場合には、その相手方に対する暴力、脅迫、ひいては殺人等の重大な犯罪に発展するおそれが強い状況が見られたところでございます。
また、国民に対する規制の範囲を最小限にするべきであるという点も考慮する必要があったところであります。
このため、規制対象を、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われるつきまとい等に限定しているものと承知しております。
恋愛感情その他の好意の感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情としての恨みや憎しみを充足する目的で行われるつきまとい等についてはストーカー規制法の規制対象となるわけでございますが、これら以外の恨みや復讐の目的で行われる行為を規制対象とするかどうかについては、ストーカー規制法の在り方そのものに関わることから、慎重な検討を要するものと認識しておりますが、ストーカー事案の実情に応じて適切な対応を検討してまいりたいと考えております。
○串田委員 最後に、大臣、今、規制は最小限度にというようなお言葉もあったと思うんですが、現在のこういう悲惨な事件とかがある中で、条文の文言だけ見るとかなり厳格に適用対象というのを運用として行われる可能性もある中で、実態に即して、やはり、ここは不安を生じさせないような運用というものを私は進めていただきたいと思いますので、大臣のお考えをお聞かせください。
○小此木国務大臣 やはり、国民の不安を解消するということについて、被害者をこれ以上出さないということについて、ストーカー行為というものがどういう意味で加害をしてしまうかということについてもしっかりと検討をしながら、今委員のおっしゃったことについては、慎重ということはやはり入るかもしれませんけれども、前に進めていきたいと思います。
○串田委員 実情に合わせて運用していただきたいと思います。
ありがとうございます。
○木原委員長 次に、岸本周平君。
○岸本委員 国民民主党の岸本周平でございます。
質問の機会を与えていただいて、ありがとうございます。
これまで、与党、野党、質疑がありました。それで、二〇〇〇年にこの法律ができて、それ以降、相談件数を見ますと、急激に増えてきて、近年は二万件を超えた状態でずっと推移してきております。二〇一三年以降はずっと二万件を超えているわけであります。
ストーカー行為というものは、悲惨な事件も生んでいるわけですけれども、じゃ、これは四十年前になかったのか。大臣、お若い頃は余り聞きませんでしたよね。私も若い頃はストーカー行為なんて知らない。だけれども、つきまとったり追いかけたりした人はいたはずですし、それが傷害事件になり、殺人事件になり、脅迫事件になったことはたくさんあったと思うんですね。それが、二〇〇〇年頃、非常に悲惨で、あるいは若い女子大生であったりとか、そういうややマスコミ的ないろいろな報道の中で、こういうことがあるのか、大変だねということになって、まさにこういうのは通常の刑法で裁くよりも、新しい法律の枠の中で効率よく、効率よくと言うと言葉はなんですけれども、適正に犯罪防止をしたりするようにということで、二十年前にこういう法律ができてきたんだろうと思うんです。
よく戦後教育がよくないので残忍な犯罪が増えているとか言う人もいるんですけれども、戦前だってすごい凶悪犯罪はたくさんあったりするわけなんですけれども、大臣、このストーカー行為という犯罪類型なんですけれども、これは昔もあって、それがたまたま、今こういう法律ができた結果として増えてきているのか、昔もあったのか。
というのは、模倣犯というものがありますよね。つまり、こういうストーカー的なものを報道されることによって、まねをする人たちだって出てくるのかもしれない。もちろん、病的な問題があるので一概には言えませんけれども。
つまり、このストーカー行為の犯罪が仮に事実として増えているのであれば、その原因も、社会全体として、警察としては検討していただいて、つまり、なぜストーカー行為的な犯罪が増えているのか、四十年前に比べて本当に増えているのか、じゃ、その原因は何なのかということをある程度やはり警察としても検討していただいた上で、それが、じゃ、病的な方が多いのであるならば、病的にストーカー行為をする人が増えてきた理由は何なのか、それはまさに戦後の教育のせいなのか、あるいは社会環境の変化のせいなのか、そういうことをやはりある程度考えていただかないと。
単にストーカー行為の構成要件に該当するから捕まえるんだということをしていても、これは減らないという意味で、ここは大臣の国家公安委員長としての御見識をお伺いしたいんですけれども、このストーカー事案というのは本当に今どういう理由で増えているのだろうか、その辺について御見識を伺えればと思います。
○小此木国務大臣 冒頭、四十年前と言われましたが、自分のことばかり述べちゃいけないんだけれども、私、十五歳でしたね。少年野球から学生野球までやりましたけれども、恋愛をする暇がなかったといえばそれまでですけれども、野球に打ち込んでいましたから。だけれども、好きな女の子がいなかったかといえば、そうじゃなくて、だけれども、成就しなかったようなことがあって。そのときの話題とすれば、先輩から、押して押して押しまくれみたいな。恋愛なんか、恋愛感情を持ったとしても、そういうものに至らなかった。だけれども、そんな話が男同士で出ました。
その頃の話、ついでに言えば、ユーミンの「まちぶせ」なんていう歌もありましたでしょう。あれもどうなのかなと、今、質問を受けながら考えていたんですが。
決して笑わせるために言っているんじゃないんですけれども、委員おっしゃるように、約四十年前と今の状況というか認識。人間についてのつき合い方とか、それこそ恋愛についても、今、スマホですか、SNS、こういったものも用いられるようになった中で、この国会でも、牧島かれんさん、そういうようなものを使って、私はこうやって紙を読んでいますけれども、時代が変わったということが、そういうことが言いたいわけですけれども、それにしっかりと認識を深めていくということが大事だと思うということは今日の議論でもあったと思います。
つきまとう、あるいは恋愛感情その他の感情はどうなのかということについては、不断の前向きな思いと、実際、被害に遭った方あるいはその御家族についての思い、こういったことも深く認識しなきゃいけないということを申し上げてまいりました。そういう認識に立って、国家公安委員長として、警察としっかりと話し合い、指導してまいりたいと存じます。
○岸本委員 大変ありがとうございます。感動しました。想定問答を読むんじゃなくて、大臣の政治家としてのお言葉を聞けまして。こういうのを皆さん、国会で審議しましょうよ。もう、官僚の書いた答弁を読み上げて、やって。本当にありがとうございます。次、読まないでくださいよ。
それで、大臣、今私が申し上げたのは、まさにほぼ全員の質問者が質問したと思うんです、今日。つまり、もう二十年たって、随分と変わってきました。そして、やはり、大臣がおっしゃるように、社会環境も変わり、多分本当に増えているんだろうと思います、このストーカー行為的なものが。それは二十年前とはまさにかなりまた変わってきているだろうと思います。
そのときに、まさに今、法律のたてつけが、恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的という非常に厳しい縛りがある。これはもう大臣も何度も読み上げたので暗記されていると思いますけれども、これが本当に今、二十年たって、累次の改正もあって、今回の改正も、GPSの新しい機能に対する対応であったり、あるいはまたちょっと違う観点から文章についての改善であったり、改正されてきています。二十年たっている中で、恋愛感情に縛る意味というのは全くなくなっているのではないかというのが今日の僅か三時間の審議の中で明らかになったのではないかと、私は聞いていて思いました。(発言する者あり)そうですよね。
それで、官僚の方が書いた想定問答が何と立法当時のことしか言っていないんですね。答弁が。立法当時、二十年前に恋愛感情に基づく事件があったからそうなんですって、待ってくださいと。その想定問答を書いた課長補佐はちょっと知的に怠慢です。だって、説得力ないんだもの。説得力ないじゃないですか。二十年前に立法したときにこういうことだったからということを今大臣に答弁させるなんて、これはひどいと思いますよ。また、それを決裁した局長の顔を見てみたいですよ、私。ああ、いましたか。これは、皆さん、官僚出身の方がいるでしょうけれども、こんな想定問答を書いたら絶対決裁は通りませんよ。そういうことなんです。
それで、これは大臣、もちろん今回はもう間に合いませんでしたし、大臣も前向きに検討するということは最後に答弁でおっしゃっていらっしゃいますけれども、これはいろいろな意味で、今維新の方もおっしゃっていたが、いろいろな類型が出てくるけれども、つきまとわれる恐怖とかそういうものはいろいろな類型があって、恋愛感情だけじゃないものはたくさんある。アンケート調査でも三割、四割あるということでしょう。
あるいは、官僚の方に聞くと、いやいや、例えば調査とか取材とかでやる場合とか、規制を広げない方がいいということを言うんですけれども、取材とか調査というのは、もし我々公人であれば、それは甘受すべきですよね、ある程度は、公の人ですから。しかし、そうでない一般の人に調査とか取材のことがあるからやはり恋愛感情に絞った方がいいんだというのは、これもまた理屈になりません。
どうでしょう、大臣。早急にこれは次の改正を目指して、本当に被害者の法益を守るという観点から、二十年前の特殊な事件が幾つかあったから、それが恋愛感情に基づいていたからということを二十年後に言うのはやめませんか。どうでしょうか。ここの縛りを取るというふうに御検討をお願いできませんでしょうか。
○小此木国務大臣 私もいろいろ考えているんですけれども、前向きという言葉だとか、慎重にとこの委員会でも言ってきました。これはそれぞれ違う意味かもしれないけれども、私は同じ意味として使ってまいりました。
四十年前、二十年前で、いろいろな話をしましたけれども、例えば、一つの変わったこととして、冒頭に申し上げたことは変わってきたなということでありますけれども、加害者についてのカウンセリングという話も今日ありました。加害者の支援もしなきゃいけない。ただ、私、考えるに、被害者そしてその遺族から、加害者を支援するという言葉をどう遺族は思うんだろうかということも、例えば別の事件等にして、これまでもメディアから伝えられてきた。私たちが、多分国会でも議論されてきたところかもしれない。言葉遣いは重要だけれども、加害者についてのカウンセリング、更生というものは必要だと思います。ですから、言葉の表現だとかは非常に大事だと思います。
もう一つは、昨日もちょっと、これとは、所管外でありますけれども、私権の制限、こういうプライバシーに関わる意味合いというものがとても、二十年前、四十年前とは、比べてみると、感覚的にも随分変わってきたように、重く捉えるようになってきたと思います。
そういうところから、私は、政府として慎重な言葉遣いをしているものと思われますけれども、私たちは政治家でありますから、その実情にしっかりと鑑みて、そこに思いを致して前へ進めることが大事だということを先ほど来申し上げているところであります。
○岸本委員 本当にすばらしい肉声の答弁を聞かせていただいて、ありがとうございます。
最後になりますけれども、今大臣もおっしゃいましたまさにカウンセリング、あるいは、本当にこれは病気であれば刑務所に入れたって被害は減らないわけですから、まさに病気の治療をしていく、これも先ほど来の質疑で、非常に件数が少ないということもありました。
そこで、大臣にお願いしたいのは、NPOがたくさん今できています、民間の力。もちろん警察には頑張っていただかなきゃいけません。警察自身にいろいろなことがあって事件が大きくなったこともあるわけですから、警察の中の業務改善はもちろんのことですけれども、まさに地方公共団体の窓口、政府の窓口、さらには是非NPOを使っていただきたい。NPOの皆さんと協働して、もちろん犯罪の防止もそうですし、あるいは、犯罪が起こった後の加害者の治療あるいはカウンセリング、あるいは更生に向けても含めて。
まさにこれからは官も民もない時代、いろいろな分野で。これは我々、民主党政権のときには新しい公共という言葉を使ってやっていました。今、与党の皆さんもまさに同じことをやっていらっしゃいます。NPOやNGOの活動を随分と、もう与野党関係なく支援をすることになっておりますので、是非この問題についても、非常に微妙な問題です、微妙な問題ですから、まさに官がどこまで口を出せるのかという問題もあるわけですけれども、これがNPOであれば相当突っ込んだこともできますし、今やっています。
是非、犯罪の防止あるいは犯罪後のカウンセリング、治療等についても、NPOとの協働、地方公共団体との協力、この辺についての御所見をお伺いしたいと思います。
○小此木国務大臣 今日の委員会でも答えてまいりましたように、警察内部でも、生活安全そして刑事部門のところとか、偏ってはいないかという問題意識が過去ありましたから、これも、同じく、一緒にした思いで、被害者であれ、加害者へのカウンセリングも、警察官そのものが学んで対応していくこと。先ほど申し上げたんですけれども、関係省庁との連絡、あるいは他機関、今おっしゃいましたNPOとのいろいろな事例の情報交換も含めて、こういうことは大切に思っておりますので、まず私の認識も更に深めて、前に進めてまいりたいと存じます。
○岸本委員 ありがとうございます。
今日は本当に、官僚答弁を読まない、すばらしい、政治家としての御答弁をいただきましたことに心より感謝申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○木原委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○木原委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○木原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○木原委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、平将明君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党、日本共産党、日本維新の会・無所属の会、国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。吉田統彦君。
○吉田(統)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 近年、ストーカー事案が多様化していることに鑑み、本法第二条第三項に基づく政令を、多様化したストーカー事案に適切に対応することができるように定めるなど、ストーカー事案による被害を防止するために万全の措置を講ずること。また、本法による規制では十分に対応できない事案が生じた場合には、当該事案の分析及び検証を行った上で、必要な法制上の措置を講ずること。
二 ストーカー事案の被害者が適切な支援を受けることができるよう、警察において被害者のための相談窓口を整備すること。また、被害者が躊躇なく相談できるよう、犯罪に該当することが必ずしも明らかとはいえない事案についても、相談に応ずるとともに、適切に対応する旨周知すること。
三 ストーカー事案の被害者が、早期の段階で関係機関につながるように、国及び地方公共団体の相談窓口を充実させるとともに、民間の自主的な活動を含めた連携協力を推進すること。
四 本法第二条第三項に基づく政令を定めるに当たっては、規制事項を具体的かつ明確なものとし、不当に対象を広げないよう留意すること。
五 ストーカー事案の加害者による再犯を防止するため、関係機関と連携して加害者の治療及び更生を支援すること。また、加害者及びその家族からの相談窓口を拡充すること。
六 学校教育を含め、ストーカー事案を未然に防止するための知識の普及啓発等を推進すること。
七 怨恨の感情等によるストーカー事案のうち、恋愛感情等によらないものについては、ストーカー行為等の規制等に関する法律の規制対象ではないが、被害者に恐怖の念を抱かせるおそれがあることに鑑み、同法の規制対象とすることを含め、必要な対策を検討すること。その際、過度に広範な規制とならないよう留意すること。
八 監視カメラを利用したストーカー事案については、ストーカー行為等の規制等に関する法律の規制対象とすることを含め、必要な対策を検討すること。
九 禁止命令等の方法については、犯罪抑止効果を高めるため、従来どおり原則として直接交付によって行うこと。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○木原委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○木原委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小此木国家公安委員会委員長。
○小此木国務大臣 ただいま御決議がありました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいります。
ありがとうございました。
―――――――――――――
○木原委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
〔報告書は附録に掲載〕
―――――――――――――
○木原委員長 次回は、来る十四日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時十一分散会