衆議院

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第27号 令和3年5月26日(水曜日)

会議録本文へ
令和三年五月二十六日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 木原 誠二君

   理事 平  将明君 理事 冨岡  勉君

   理事 中山 展宏君 理事 藤原  崇君

   理事 松本 剛明君 理事 今井 雅人君

   理事 後藤 祐一君 理事 濱村  進君

      安藤  裕君    池田 佳隆君

      上杉謙太郎君    小田原 潔君

      岡下 昌平君    金子 俊平君

      神田 憲次君    菅家 一郎君

      小寺 裕雄君    繁本  護君

      杉田 水脈君    高木  啓君

      永岡 桂子君    長尾  敬君

      西田 昭二君    本田 太郎君

      牧島かれん君    牧原 秀樹君

      松本 洋平君    宮崎 政久君

      吉川  赳君    和田 義明君

      阿部 知子君    大西 健介君

      玄葉光一郎君    篠原  豪君

      森田 俊和君    森山 浩行君

      柚木 道義君    吉田 統彦君

      江田 康幸君    古屋 範子君

      赤嶺 政賢君    塩川 鉄也君

      足立 康史君    岸本 周平君

      高井 崇志君

    …………………………………

   国務大臣

   (領土問題担当)     小此木八郎君

   防衛副大臣        中山 泰秀君

   内閣府大臣政務官     岡下 昌平君

   内閣府大臣政務官     和田 義明君

   内閣府大臣政務官     吉川  赳君

   防衛大臣政務官      大西 宏幸君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  川辺英一郎君

   政府参考人

   (内閣官房領土・主権対策企画調整室土地調査検討室長)           中尾  睦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  木村  聡君

   政府参考人

   (内閣官房領土・主権対策企画調整室土地調査検討室次長)          天河 宏文君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        一見 勝之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席エネルギー・地域政策統括調整官)         小澤 典明君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         江口 秀二君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房政策立案総括審議官)       川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 岩元 達弘君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 青木 健至君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十六日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     小田原 潔君

  高木  啓君     上杉謙太郎君

  永岡 桂子君     菅家 一郎君

  吉川  赳君     繁本  護君

  大河原雅子君     篠原  豪君

  塩川 鉄也君     赤嶺 政賢君

  岸本 周平君     高井 崇志君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     高木  啓君

  小田原 潔君     池田 佳隆君

  菅家 一郎君     永岡 桂子君

  繁本  護君     吉川  赳君

  篠原  豪君     大河原雅子君

  赤嶺 政賢君     塩川 鉄也君

  高井 崇志君     岸本 周平君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(内閣提出第六二号)


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     ――――◇―――――

木原委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官川辺英一郎君、内閣官房領土・主権対策企画調整室土地調査検討室長中尾睦君、内閣官房内閣審議官木村聡君、内閣官房領土・主権対策企画調整室土地調査検討室次長天河宏文君、内閣府総合海洋政策推進事務局長一見勝之君、経済産業省大臣官房首席エネルギー・地域政策統括調整官小澤典明君、国土交通省大臣官房技術審議官江口秀二君、防衛省大臣官房政策立案総括審議官川嶋貴樹君、防衛省大臣官房審議官岩元達弘君及び防衛省地方協力局次長青木健至君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木原委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎委員 おはようございます。自由民主党の宮崎政久です。

 本日は、重要土地等調査規制法案についての質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 私の地元沖縄は、米軍基地、自衛隊の施設、海上保安庁の施設など、本法案で言うところの重要施設を多数抱えております。そうしたこともあり、多くの県民の皆さんが本法案について高い関心を持っている、その一方で、本法案について疑問をお持ちの方も少なからずいらっしゃるというのが、地元を歩いた私の印象であります。本日は、この疑問を解消するという観点から質問をしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、立法事実論をちょっとやりたいと思います。

 先日の委員会では、平和安全法制の立案を例に挙げた質疑がありました。東ティモールの日本人の経営するレストランが暴徒に囲まれた際に、自衛隊が当時の法体系では対応が困難だったことや、ゴラン高原のPKOで、日本部隊と一緒の宿営地で活動していたカナダの部隊が襲撃を受けても十分な対応ができなかった、こういった事実があったことを挙げて、こういった事実が駆けつけ警護や宿営地の共同防衛の立法事実になっているんだ、その一方で、本法案ではこうした立法事実に当たるような具体的な事実がないのではないかという指摘がありました。

 しかしながら、事実が発生してから法律を作るというのは、言ってみれば泥縄式の対応でありまして、本来であれば、事前に駆けつけ警護や宿営地の共同防衛のリスクを見積もって、適切に対応できるような条項を加えておくべきであったわけであります。もちろん、その当時の状況に鑑みて、こういう条項を加えることが立法政策上困難であったということは承知をしておりますけれども、安全保障関連の法案を審議するに当たって、具体的な事実が発生するに先立って、想定されるリスク、これを適切に見積もって、少なくとも、発生する蓋然性が高いものについては手当てをしておくということは重要なことだと思います。

 この法案も同様の観点から考えるべきだと私は思います。

 先日のこの委員会の質疑で、我が党の杉田水脈議員から、北海道の陸上自衛隊滝川駐屯地が一望できる山林を中国企業が買収し、倶知安町の陸上自衛隊倶知安駐屯地の隣接地百ヘクタールの土地も中国系の企業に買収をされている、こういう指摘がありました。また、二〇一三年には、対馬の市議会で、韓国人が対馬警備隊の駐屯地の隣接地を購入しているということが報告をされています。外国資本が自衛隊施設の周辺の不動産を購入している、こういう現実があるわけであります。

 もちろん、こうした土地の購入者が具体的に何をすると言うつもりはありませんし、購入者の国籍がどうだということを言うつもりもありません。しかし、本法案が言う重要施設の機能が阻害される潜在的なリスクというのは、今もまさに存在しているわけであります。これに対して、我が国の現行法令では重要施設周辺の不動産の利用状況を十分に調査をするすべがない、これもまた一つの現実なんです。つまり、このような現状にあること自体が、本法案の立法事実になると私は考えています。

 そもそも、立法事実というのは、今日は大学の講義じゃありませんから詳しくはやりませんけれども、私は大学の講師もやっていましたので。そもそも、立法事実というのは、その法律制定の基礎又は背景となる一般的な社会的、経済的、科学的事実をいいます。ここで一般的な事実と言っているのは、一回発生した具体的な事象をいうのではなくて、幅を持った時間軸においてそのような現実になっているという抽象化された状態を指しておりまして、よく、立法事実とは具体的な事件そのものを指すのではないと例えば裁判例であったり講学上の概念などで語られているのは、こういう意味においてでございます。

 そうしますと、考えてみると、現在の厳しい安全保障環境がある、取り返しのつかない事態にすることはできない、具体的にリスクを感じる不動産取引事象の報告がされている、にもかかわらず、我が国では不動産利用状況を調査するすべを持っていない、こういう状態にあるということが社会的な事実と言えるわけであります。これこそが、安全保障上の目的を達成するために一定の範囲の土地について利用調査ができる法律を作る必要を支えている一般的な社会的事実、つまり、これこそが立法事実であると私は考えています。

 我が国をめぐる安全保障上のリスクが高まっている、こういう現状も踏まえまして、本法案の立法事実につきまして、改めて小此木大臣の御見解を伺いたいと思います。

小此木国務大臣 おはようございます。

 本法案ですが、土地の利用、取得により安全保障上重要な施設の機能阻害行為が行われるというリスクに対応することを目的として取りまとめたものであります。

 政府としては、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることに鑑みれば、こうしたリスクが現実のものとなる蓋然性は相当程度あると認識しております。現状、土地の利用実態を十分に把握できる法的枠組みはなく、事後的な対応では安全保障上取り返しがつかない事態となるおそれがある、それを未然に防止し、国民の生命、身体及び財産を守ることは国の重大な責務であると考えていると申してまいりました。

 立法事実があるのかとお尋ねでありますけれども、政府としては、立法事実はあるものと考えています。

 立法事実について、過去にどのような事例が生じたのかと問われることも度々ございました。

 安全保障をめぐる環境は刻々と変化しており、近年、諸外国では、土地取得の事前審査や取引中止命令など、本法案よりも踏み込んだ措置を講じております。安全保障の確保は国の最大の責務であり、政府は、将来の安全保障上のリスクを回避するための対応を行う必要があると考えます。

 その上で、法案で想定している機能阻害行為が過去にあったのかとのお尋ねについては、その有無も含め、いつ、どこで、どのような態様で行われたかをお示しすることは、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似性を誘発しかねないことから、適切ではないと考えております。

 なお、これまで、我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地の買収を行っていることは、安全保障の観点から長年問題視されてきた課題であり、国会や地方議会でも議論がされてまいりました。この旨を繰り返し申し上げてまいりました。これは、安全保障の観点から、土地等の利用について問題意識が持たれ、対応の必要性が広く議論されてきたことを示したものであります。こうした社会的な要請があることも本法案の必要性の一つであると考えています。

宮崎委員 大臣、ありがとうございます。

 平和安全法制のときもそうだったんですけれども、よく反対する皆さんの方から、立法事実がない、具体的な事実がどうだという話があるわけですけれども、立法事実というのは、先ほども御説明をしたとおり、社会的事実としてどういったものが考えられているか、今、必要性という言葉が大臣の御答弁の中にありましたけれども、それに類する部分がございます。これは、講学上の概念でもそういうふうに言われている、憲法学の中でもそういう議論はされている。私は、こういった現下の情勢をしっかり踏まえた上でこの法案の審議に入っていく必要があると思っています。

 安全保障待ったなしということもよく言います。こういったことを国民の皆様にも御理解いただいているものでありますので、この国会の審議でもしっかり皆さんと共有してやっていきたいと思っております。

 次に、生活関連施設について質問をさせていただきます。

 重要施設のうち自衛隊施設、海上保安庁の施設などは、言ってみますと、そのものずばりとも言える施設であります。これに対して生活関連施設は、国民生活に関連を有する施設であって、その機能を阻害する行為が行われた場合に国民の生命、身体、財産に重大な被害を生ずるおそれがあると認められるもので政令で定めるものと定められているわけであります。

 国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じるおそれがあるかどうかというのは、技術の進歩であるとか、国際情勢を含めた内外の情勢の変動に影響を受けることも想定されますので、どういう施設がこれに当たるか、必ずしも明らかではないとも言えます。

 そこで、本法案の生活関連施設とはどういう施設が該当すると考えているか、国民保護法施行令の二十七条に生活関連等施設の規定がありますけれども、国民保護法に関連する生活関連等施設と本法案の生活関連施設を対比するなどして、この対象の範囲などについて分かりやすい御説明をいただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に規定いたします生活関連施設、いわゆる重要インフラ施設として政令で指定する類型についてお答え申し上げたいと存じます。

 本法案は、有事を想定いたします武器攻撃事態等における措置を定める国民保護法とは異なりまして、平時を想定してございます。その前提で、防衛関係施設、重要インフラ施設等の周辺の土地等の利用につきまして、必要な措置を講じ、あらかじめそれらの機能を阻害する行為を防止しようとするものでございます。

 平時を想定いたします本法案では、生活関連施設の定義につきまして、国民保護法の生活関連等施設よりも限定的に規定をしているところでございます。具体的には、国民保護法には置かれておりません、その機能を阻害される行為が行われた場合に国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生ずるおそれがあると認められるものといった規定を置いているところでございます。そうした法律の規定の制約の下で、どのような生活関連施設の類型を対象とするかにつきましては、安全保障をめぐる内外情勢などを踏まえまして、迅速かつ適切に対応できるよう、政令で指定することとさせていただいているところでございます。

 現時点では、昨年開催いたしました国土利用の実態把握等に関する有識者会議から提言のございました、原子力関係施設及び自衛隊が共用する空港について政令指定の対象とすることを検討しているところでございます。

 実際にいかなる施設類型を政令で指定するか、また、それらに該当する施設の周辺について、いかなる区域を対象区域として指定するかは、国会での御審議も踏まえ、新設いたします土地等利用状況審議会にお諮りするなど、法定する手続に沿って適切に判断してまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

宮崎委員 ありがとうございます。

 平時想定という言葉が冒頭あったわけでありますけれども、これ自体は否定しませんけれども、安全保障上の観点からこの法律が制定されるということについては十分御留意をいただいて、是非審議会での審議をしていただきたいと思います。私の地元も、冒頭申し上げたとおり、重要施設が多数ございますので様々な思いがございます。是非しっかりとした対応をしていただきたいと思っています。

 次に、機能阻害行為について質問をしたいと思います。

 これも、前回の委員会で多くの議員の先生方から質問が出ておりました。

 この機能阻害行為ですけれども、安全保障をめぐる国内外の情勢であるとか施設の特性などに応じて、本当に様々な態様が想定されます。私も、条文でこれを網羅的に示すということはやはり困難だと思います。科学技術の進歩に伴って想定し得ないことも起こり得るし、条文に示したら示したで、条文に示していない方法で潜脱的に機能阻害行為に及ぶということも考えられる。その一方で、条文に類型化をしなくても、基本方針には例示することになっております。基本方針はこの法案が成立してから定めるものですから、まず、現時点ではどのような行為が機能阻害行為に当たるのか、その基本的な考え方をお答えいただきたいと思います。

 また、この法案は安全保障の確保のための措置を講ずるものでありますので、一般の人の日常生活や通常の経済活動、こういったものが機能阻害行為に当たることは基本的にはないと考えておりますが、このような理解で妥当するのか、この点もお答えいただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、想定しております機能阻害行為についてお答え申し上げたいと存じます。

 中止の勧告、命令の対象となり得ます機能阻害行為といたしましては、例えば重要施設の機能に支障を来す構造物の設置でありますとか、あるいは、領海基線の根拠となります低潮線に影響を及ぼすおそれがあるその近傍の土地の形質変更などが該当し得るものと考えているところでございます。

 こうした機能阻害行為につきましては、安全保障をめぐる内外情勢や技術の動向の変化、対象となります様々な防衛関係施設、国境離島等の特性などに応じまして様々な態様が想定されるものと考えてございます。このため、法律の規定といたしまして、特定の行為を代表的あるいは普遍的な機能阻害行為ということで規定をさせていただく、あるいは例示をさせていただくということは必ずしも適切ではないと考えているところでございます。

 その一方で、対象区域の住民や事業者の方々にとって、どのような行為を行えば中止の勧告、命令の対象となり得るのかということにつきまして、できるだけ予見可能性を確保させていただくという観点から、閣議決定させていただきます基本方針では可能な限り具体的に機能阻害行為を例示させていただきたいと考えているところでございます。

 その上で、対象区域の住民や事業者の方々への影響という点で申し上げますと、平穏な日常生活を送っておられる方や一般的な経済活動として事業を営んでおられる方が機能阻害行為に対する中止の勧告、命令の対象となることは想定されないものと考えているところでございます。

 以上でございます。

宮崎委員 安全保障上の配慮が必要であるということが前提になりますと、要するに、私権制限なども伴うものですから、市民生活への配慮との関係でせめぎ合いが生じるわけですね。これはもう、言ってみれば個人と個人の人権の衝突のときと同じであります。そうしますと、やはり公共の福祉をどう考えていくのかという観点が非常に重要になるわけであります。

 再三言うようであれですけれども、私たちの国において、重要施設の周辺の土地について利用するすべを持っていないという安全保障上のリスクがあるんだというこの現実に対処していくための法律であるということについても十分御理解いただいて、今御答弁のような形で、予見可能性に配慮することは大切でありますので、しっかりとした定めをまたしていただきたいと思っております。

 次に、第八条、その他関係者のところに質問をさせていただきたいと思います。

 第八条の報告徴収の対象が広範に及んで、普通に生活をしている人が土地に関して政府から質問を受けると理解しているような議論もされていると承知しています。前回の委員会でも、横須賀のマンションの居住者という例をお出しになった質疑がありました。軍艦好きで毎日写真を撮っているような場合に、御近所の人にあの人は何なんですかと聞いたところ、そんなこと言えませんよと対応したら処罰の対象になるんじゃないかという趣旨の御指摘がありました。

 しかし、私としては、御近所の人が第八条の「その他の関係者」に当たるとは到底思えません。条文上も、報告徴収の対象は「注視区域内にある土地等の利用者その他の関係者」となっています。そのため、利用者と何らかの具体的な関係がある関係者、例えば、土地の利用者が法人の場合、法人の役員であれば法人と委任関係がある、社員であれば法人と雇用関係があると言えますけれども、単に近所に住んでいるというだけでは関係性があるとは言えないと考えます。

 そこで、八条のその他関係者の範囲にはどこまでが含まれるのかということについての基本的な考えを御説明いただきたいと思いますし、また、例外的に友人とか知人が含まれるような場合があるのか、あるとすればどういう場合なのかということを示していただきたいと思います。

 前回の委員会での質疑を聞いておりまして、大臣がこの法案を提出をされている思いと随分違う方向感での質疑が、やり取りがされていたというふうに感じましたので、是非ここは小此木大臣に御答弁いただきたいと思います。

小此木国務大臣 第八条に規定する報告徴収等の対象となる「その他の関係者」については、土地等の利用者のほか、土地等の利用状況を知り得る者としての、例えば、土地等の利用者が法人である場合、その役員、土地等の利用者との契約等により当該土地等における作業、工事等に従事している者、下請業者等を想定しています。

 一方、報告徴収等は、土地等の利用状況を把握するための調査の一環であることから、単に土地等の利用者の家族や知人であることを理由として報告徴収等の対象とすることは考えておりません。

 なお、家族や知人で、例えば、土地等の利用者と共同で対象となる土地等を利用して重要施設の機能阻害行為を行っている場合には報告徴収等の対象となり得るものと考えております。

宮崎委員 ありがとうございます。

 今、最後に触れられた点というのは、まさに、実際、機能阻害行為をやっている人に当たったり、共犯的な立場に立っているというふうにも言えますので、基本的には、その他関係者というところであれば、具体的な関係がある者というようなことになることは当然であるということは、お答えの中からも読み取れるかと思っておりますので、是非、こういったところで、趣旨をちょっと逸脱するような形で、いたずらに不安だけを広げるようなやり取りというのは私は慎むべきじゃないかなと思っております。

 次に、調査内容について伺いたいと思います。

 調査内容としては、思想、信条が調査されることがあるのではないかという誤解があることも承知をしています。さきの本会議でも、不動産登記簿などの公簿情報にとどまらず、職歴、海外渡航歴、思想、信条、家族、交友関係まで調査することになるのではないかという御質問もあったところであります。

 土地利用状況調査の趣旨、目的からすれば、そういうことはない、とても考え難いと思いますけれども、政府の方から、こういう考えで間違いないかどうか、御説明いただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づく調査は、注視区域内にあります土地等の利用状況を把握するために行うものでございます。

 第七条におきまして、内閣総理大臣が、調査の一環として、関係行政機関の長等に提供を求めることができる情報は、氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られているところでございます。

 また、第八条において、内閣総理大臣は、注視区域内にあります土地等の利用者等に対しまして、報告徴収等を行うことができることとなってございますが、報告等を求めることができる事項は、条文上、当該土地等の利用に関するものに限定されているところでございます。

 このため、本法案に基づきます調査は、注視区域内にあります土地等の利用者等につきまして、その土地等の利用に関連しない、例えば、特定の政治思想を持っているか否かを調査するものではなく、御指摘のございました思想、信条等に係る情報を収集することは想定していないということでございます。

 以上でございます。

宮崎委員 ありがとうございました。

 次に、収用の件について伺いたいと思います。

 これは、前回の委員会で足立委員からも質疑がされて、かなり充実した、がっちりしたやり取りがされたと記憶しておりますけれども、ちょっともう一回質問したいと思います。

 有識者会議では、土地収用制度を設けることについては、私権制限の程度が大きくて、今般の制度的枠組みの実施状況などを見極めた上で、慎重に検討していくべき、そういう結論であったと承知をしております。

 その一方で、安全保障の問題というのは、あらゆるリスクを見積もった上で、短期的ではなくて、長期的なビジョンを持って取り組んでいくということが絶対に不可欠であります。ただ単に将来の検討課題とするだけでは私は不十分だなと思っています。

 また、収用制度は、公共事業の実施などの具体化された公共の利益の実現のために行われるものでありますけれども、安全保障環境によっては、公共の利益という観点から考えると、より収用の必要性が高い事案というのも発生する可能性は否定できない、そう思います。

 こういった現実もしっかり踏まえた上で考えてみる、そういった場合に、将来どういった検討をするべきなのか、現状、今どういった検討がされているのか、政府の見解をお聞きしたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、改めての答弁になりますけれども、重要施設等の機能を阻害する行為を防止するために、土地等の利用状況を調査し、必要に応じて利用規制を行わせていただくというものでございます。

 一方、そうした機能阻害行為としての土地等の利用を防止するために、土地等の収用といった私権制限の程度が大きい措置を設けることにつきましては、有識者会議の提言におきまして、「今般の制度的枠組みの実施状況、有効性等を見極めた上で、安全保障を巡る国際情勢、諸外国の取組等も踏まえ、慎重に検討していくべき」ということとされたところでございます。

 このため、まずは、本法案に基づきます調査及び利用規制によって対応させていただくということとし、運用の実態をしっかり確認をさせていただきたいと考えてございます。その上で、附則第二条に基づく五年後の見直しの中で、御指摘のございました措置の要否も含めて、更なる政策対応の在り方についてしっかり検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

宮崎委員 ありがとうございます。

 なかなか現時点で、政府答弁としてどこまでいけるかといったところだと思いますけれども。やはり安全保障の問題というのは非常に、先ほども触れましたけれども、機微に触れるところもある、また、ある程度きちっとした将来の我が国の在り方というところもしっかり見据えないといけないと思いますので、五年後見直し、重要だと思っております。きっちり取り組んでいただきたいと思っています。

 次に、公表の件についてお聞きしたいと思います。

 本法案について、やはり国民の皆様の関心、非常に高いと思います。我が国に限りませんけれども、例えば、個人にとって不動産というのは非常に価値の高いものですから、自分が住んでいる場所が注視区域、特別注視区域に含まれるのか否か、含まれるとした場合に勧告、命令などがどのように実施されるのかについては、重要施設周辺にお住まいの方々が関心を持つのは当然のことであります。

 私の地元も、宜野湾市の普天間飛行場、嘉手納町を始めとする三市町村にある嘉手納エアベース、また、補給のキャンプ・キンザーが浦添市にもございます。また、様々な施設もございますので、当然、地元でも関心の高いところです。

 また、国民の皆さんの多くにとっては、この法案は、安全保障の確保をより確実なものにしてもらいたいという期待が高いということも事実であります。経済活動への影響や個人情報の保護などに対する心配の声と安全保障の確保の両立を図るためには、法律の施行状況についてしっかりと取りまとめること、そして、国会を含めて、広く国民の皆様に対して公表をしていくことは不可欠であり、大変重要な点だと思います。民主主義国家である我が国で機微にわたる安全保障に関する法制をつくるわけでありますから、こういった取組をしっかりこれからもやっていく必要があると思っております。

 この点についてはどう取り組むのか、やはり大臣の御見解を聞かせていただきたいと思います。

小此木国務大臣 本法案に基づく調査ですが、個人情報の収集を含むものであり、また、勧告や命令といった規制を行うものであることから、適正手続に基づく執行と国民への情報開示が重要であると考えています。

 このため、本法案に基づく勧告、命令を行うに当たっては、政府として、対象となる個々の行為について法律の要件や基本方針の内容に照らして適切に評価するとともに、勧告に先立ち、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、それらの要否、内容等について慎重に判断をしてまいります。また、本法案に基づく措置の実施状況については、毎年、国会を含め、広く国民に対して公表することを想定しております。

宮崎委員 ありがとうございました。

 私、今日質疑の中で、安全保障上の必要性の方に大分、何度も触れて発問をいたしました。しかし、これは野党の先生方からの御指摘もあったりする、やはり国民の権利利益をしっかり保護をする、こういったことはもちろん大切であります。これをないがしろにしていいなんということは全くありません。

 こういったことをしっかりバランスを取りながら法整備をしていく、そして、国民の安全、そして不安が生じないようにしていく、こういった取組をこの法制はしようとしている、こういったところにも、是非、この審議に関わっていただいている与党、野党の先生方にも共有したいと思っているところでございます。

 今日は気持ちを入れ過ぎて早口でしゃべったものですから、そろそろ終わりそうになっておりますので、濱村さん、よろしくお願いいたします。

 この法案の中心は、気づいたときには手遅れだったということにできないので、安全保障上の観点から、適切な情報収集ができるようにしよう、そういうことだと私は思います。

 私権制限との関係で、沖縄の米軍基地が市街地にあることを指摘する御質疑もありました。私の地元のことですから言いますけれども、まず誤解しちゃいけないのは、通常の生活を送る地域の住民や、地元の企業が行う経済活動、通常の土地の利用、これは制約を受けないということです。

 私の事務所は、沖縄県の宜野湾市にあります。普天間飛行場のすぐ近くにあります。窓からは、オスプレイ始め航空機が離発着をするのが窓から見て取れる、そんな場所にあります。そこで生活をしている者からすると、基地周辺の土地について不安が生じることがないようにしてもらいたいという思いは正直あります。

 例えば、冒頭に紹介したように、基地周辺の土地を広大な面積で外国企業が買いあさっているとしたら、しかもそれが自分が生活する場所の近くでとなったらどうでしょうか。わざわざうちの近所の基地の近くの土地を外国の企業が大規模に購入するというのはどういう趣旨なんだろうか、この先何か不穏なことが起きないだろうか、やはり心配になります。こうなったら政府にはちゃんと調べてほしい、そう思います。

 御審議をいただいている与野党の先生方にも、御自分が生活する場所の近くでこういった指摘をされている事象が起きたと置き換えて考えていただければ、こういった思いも御理解いただけるのではないかなと私は思って、この法案の審議に関わらせていただいております。

 つまり、国家国民の安全保障を脅かしかねない不透明な土地の利用に一定のルールをかけるということは、米軍基地を含めた重要施設周辺の住民の不安を適切に解消するということにもなるわけです。こういったことをしっかり理解をしていただいて、私は、あたら不安だけを広げるというのではなくて、きちんと審議をした上で皆さんの理解をいただきたいと思っています。

 今日、小此木大臣、また政府から丁寧に御説明いただいたと思っております。今日のように今後も是非丁寧な御説明を続けていただきまして、広く国民の皆様の理解を得るように努めていただきたい、これを切にお願いを申し上げまして、私の本日の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

木原委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 今の宮崎先生の質疑、非常にすばらしい質疑だなと思いました。沖縄選出の先生でいらっしゃいますし、沖縄に住まわれる方々の気持ちをしっかり代弁されておられたんじゃないかということを強く感じたものでございます。私も、そのような熱意をしっかり帯びた上で、今日質疑をさせていただきたいと思っております。

 前回の質疑、五月二十一日の質疑で、ちょっと誤解が生じる発言がございましたので、少し確認的にお話をしたいと思います。

 土地収用の規定ぶりについてでございますが、足立先生から質問があった中で、足立先生からは、「ちょっとどこかに気を遣い過ぎじゃないかと。どこかというのはどこかですけれども。与党でいえば公明党」と名指しをいただいたものでございますので、まず、ここは事実確認をしたいと思います。

 私からすれば、これは事実誤認だろうと思っておりまして、というのは、有識者会議における提言で既に、土地は、買取りを申し出る措置を設けることを検討すべきとされているんですね。これが事実だと思っております。逆に言うと、土地収用については慎重に検討していくべきと明確に記載されておるということでございますので、この点だけちょっと、政府の認識を伺いたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、御指摘ございましたように、土地等の収用を行う制度を設けていないところでございます。これは、昨年開催いたしました国土利用の実態把握等に関する有識者会議、この提言におきまして、土地等の収用につきまして、「今般の制度的枠組みの実施状況、有効性等を見極めた上で、安全保障を巡る国際情勢、諸外国の取組等も踏まえ、慎重に検討していくべき」とされたことを踏まえたことによるものでございます。

 一方で、有識者会議の提言におきましては、これに先立って、「安全保障の観点から、政府として、リスク顕在化への備えとして前広に対応することが求められる」として、土地の買取りを申し出る措置を設けておくべきとされたことは濱村先生も御案内のとおりかと存じます。

 こうした経緯を踏まえまして、強制性のない措置として、第二十三条におきまして、国による土地の買取り等の措置を盛り込んだところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 まず、土地収用について気を遣ったという事実はございません。

 ただし、政府の皆様におかれては、公明党の議論の中で非常に時間がかかって議論を重ねてまいったので、その点において、議論を深めるための御努力として非常にしっかりおつき合いをいただいたという意味では十分な気を遣っていただいておると思いますし、また、自民党さんにも様々、こういう規定ぶりは内容としてどう思っているかということについて確認をさせていただいた点についても感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 公明党の中での議論として少しだけ土地収用に関連する点でつけ加えれば、実は、党の会議の中で、国境離島については収用ができる規定があってもいいんじゃないかというような意見が出ました。実は、この意見について、賛同者はその場においては見受けられなかったというのがございます。その場ということでございますので、党全体の話というわけでは決してございませんが、一応、そういう意見も出たりはしましたけれども、賛同者はいなかった。

 ちなみに、そういう意見を言ったのが私だったんですが、誰一人賛同がいなくて寂しかったということを、個人的感想を述べておきたいと思います。

 その上で言うと、この法案、非常に、極めて常識的といいますかバランスが絶妙だなと思っているんですが、機能阻害行為の防止の点についてもちょっと確認したいんですけれども、不適切な土地の利用について取引中止の命令ができる等の取得規制については措置されておりません。これは既に、あらかじめ規制の基準や要件を明確に定めることが困難であり、慎重に検討すべきという有識者会議の提言に沿ったところなんです。ここも、有識者会議の皆様の提言が非常に、慎重に検討すべきということが要請されているという点です。

 一方で、機能阻害行為について中止の勧告、命令を行うことにはなっておりますが、さらに、必要に応じて国が土地の買取りの申出を行うことができるようになっております。これは機能阻害行為を防止する目的を達成するための措置なんですけれども、取引規制ができるようになっていることと比較して、この実効性についてはどのように評価したらよろしいか、伺いたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたとおり、取引規制につきましては、有識者会議の提言では、あらかじめ規制の基準や要件を明確に定めることが困難であり、慎重に検討すべきとされたことを踏まえまして、本法案では、私権制限の程度が強い取引規制は導入しないということにさせていただいたところでございます。

 本法は、重要施設等の機能阻害行為を防止することを目的といたしまして、その拠点となり得る土地等の利用実態を調査した上で、必要に応じて利用規制を行うものでございます。

 本法案に基づきます調査では、不動産登記簿や住民基本台帳等の公簿収集だけではなくて、土地等の利用者等から報告徴収を行うということも考えているところでございます。

 また、防衛施設等の重要施設を所管する関係省庁でありますとか、あるいは当該施設を管理する事業者などから、機能阻害行為の兆候等に係ります情報提供を受けることも想定しているところでございます。

 申し上げましたような多様な方法を通じまして具体的な実態把握を行い、適時適切に必要な利用規制を発動することによりまして、機能阻害行為を防止するという観点から、取引規制と比較しても遜色のない実効性の確保に努めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 この法案が極めて絶妙なバランスを持っていてぎりぎりの規定ぶりだというふうに私は思っているんですが、今おっしゃっていただいたとおり取引規制がないということで、法案全体でいえば、狭い意味での私権制限というのは機能阻害行為の中止について命令できるということだと私は思っております。これは十分許容できるレベルなんじゃないかと思っておりますし、法案全体を通して見ても、悪質な者に対して縛りをかけるということは極めて重要なので、そのために必要な規定は、機能阻害行為に対して様々縛りをかけていくことであろうと思っておりますが、このことについては、条文上で類型化してしまっては潜脱的になる、だから基本方針で示すということ、私はこれでいいと思っています。

 その上で、一方の、経済活動としての土地取引というのは大半が善意による経済活動でございますから、違反すると罰則のかかる事前届出や調査については予見可能性を高める努力が必要だと思っております。こういうバランスを持っているかどうかということは非常に重要だと思っております。

 予見可能性を高める努力という意味でいうと、区域指定される防衛施設が類型化されていたり、また、経済的社会的観点から留意することとしております。特別注視区域で事前届出の対象となるのは、所有権や取得を目的とする権利、買戻し権とかですね、こういうもののみであって、賃借権は対象外となっております。非常に私はバランスの取れた法案だと思っております。

 その上で、前回ちょっと聞き切れなかったことで、事前届出について伺いたいと思います。

 これは、大半が善意による経済活動と言える土地取引について関連するものでございますけれども、事前届出しなければ罰則が適用されることになります。

 この罰則が適用されることについていろいろな意見があったりするんですが、例えば国土利用計画法第四十七条では同様の規定があって、六か月以下の懲役又は百万円以下の罰金が適用されます。ほかの法律においても、公拡法ですね、公有地の拡大の推進に関する法律においても規定があったりするわけですけれども、そうしたほかの法案と比較した上での本法案の事前届出についての罰則適用は妥当性があるのかどうか、どのように評価するべきと考えますか、伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 国土利用計画法に基づきます取引の事前届出は、土地の投機的取引及び地価の高騰が国民生活に及ぼす弊害を除去し、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るために設けられた措置であるというふうに承知をしてございます。対象区域内の一定面積以上の土地について、取引を随時把握いたしますために都道府県知事への事前届出を義務づけるものとなっているところでございます。

 本法案では、我が国を取り巻きます安全保障環境が厳しさを増しているということを踏まえまして、土地等の利用者を正確かつ適時に把握し、重要施設そして国境離島等の機能を阻害する行為の防止に資する措置として、事前届出を導入しようと考えているところでございます。

 この事前届出につきましては、国土利用計画法のそれとは趣旨、目的は異なるわけでございますけれども、土地に関する取引を随時把握し、機能阻害行為の用に供されることを防止するための手段として、同法の仕組みを参考とすることとさせていただきました。

 事前届出に関する罰則は、事前届出の実効性を担保し、必要な情報を確実に収集するために必要なものと考えているところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 事前届出は、対象となる権利は所有権又はその取得を目的とする買戻し権とかの権利に限定されて、賃借権については除外になりました。理由について伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました、事前届出の対象となる権利の種類を所有権又はその取得を目的とする権利に限定し、賃借権を対象としなかった理由でございますけれども、所有権の保障の程度と比較いたしますと、賃借権は、通常はその期限が限定されている時限的なものであること、契約の解除等により消滅し得るものであることなどを勘案したことによるところでございます。

 一方で、重要施設等の機能を阻害する行為を防止するために、所有権のみならず賃借権を含むその他の権利に基づいて土地等を利用している者につきましても、利用状況の調査や勧告や命令等を行うこととさせていただいているところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 今審議官からお答えいただいたとおりで、国土利用計画法とかあるいは公拡法と比較しても妥当なものかなと私は評価しております。

 ちなみに、公拡法について言えば、公共施設の整備が予定されている区域内等に所在します一定規模、二百平米以上の土地等が対象になりますが、この有償譲渡について都道府県知事又は市長への事前届出を義務づけております。それで、地方公共団体等による先買い協議の措置が講じられております。

 ちなみに、平成三十年度の届出件数は四千八百三十一件あったということで、こういう事前届出する行為について、世の中でしっかり運用されているということも含めて、ちゃんと今回のこの法案による事前届出もしっかり運用されていきたいというふうに願うものでございます。

 続いて、不動産取引への影響について伺いたいと思いますが、注視区域や特別注視区域に対して報告徴収あるいは事前届出等の適用を受けることによって、土地等の取引や地価への影響が出るのではないかという意見が出ました。これについてはどのように考えるのか、伺います。

天河政府参考人 お答えいたします。

 本法案に基づきまして注視区域、特別注視区域が指定されますと、報告徴収、勧告、命令が発出される場合がございます。

 報告徴収につきましては、関係行政機関の長等に情報提供を求めた結果、土地等利用状況調査のためになお必要がある場合、その場合に取れる限定的な措置とされておりますし、勧告、命令につきましては、重要施設等の機能を阻害する行為等を対象とする旨が規定されております。

 また、特別注視区域内の土地等の所有権等の移転等の届出義務につきましては、お話のありました国土利用計画法、公有地拡大の推進に関する法律に設けられております届出制度と異なりまして、届出後の譲渡制限期間が設定されておりません。そういった意味で、この二つの法律の届出制度と比べまして、より権利制限が少ない制度となっております。

 こうしたことに鑑みますと、本法案に基づく報告徴収や事前届出等の措置は、不動産の通常の使用収益あるいは処分を制約する可能性は低く、不動産取引、地価に影響を及ぼす可能性は小さいものと考えております。

 以上でございます。

濱村委員 権利制限は少ないし、不動産取引に与える影響というのは少ないものと考えているというお話でございます。

 報告徴収について伺いますが、報告徴収も罰則が適用される場合があります。

 基本的には、七条一項によりまして、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に必要な情報提供を求めた上で、それでもなお、土地等利用状況調査のためなお必要があると認めるときには報告徴収を行うこととなっているということなんですね。

 つまり、一応公簿を集めた上で調査をしたんだけれども、それでも状況についてなかなか把握できないねという場合について報告徴収を求めると私は理解しているんですが、これはどういう場合を想定をしておられるのか、伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 報告徴収は、土地等の利用者等にとって負担となり得ます。このため、本法案に基づく調査では、まず公簿等による調査を行いました上で、更に具体的な調査を行う必要がある場合に限定して報告徴収を行うこととさせていただいているところでございます。

 公簿等の収集に加えまして報告徴収を行います場合といたしましては、例えばでございますけれども、最新の所有者が登記されていないなど、公簿の情報だけでは土地等の所有者や利用者が判然としないような場合、あるいは、土地等の所有者や利用者が活動実態のない法人であってその法人以外の第三者による利用が推認される場合など、土地等の利用実態を正確に把握するために追加的な調査が必要な場合というものを想定しているところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 基本的には公簿を取得すれば把握できるものと想定はしているんだけれども、これも、まだ今は調査できておりませんので、やってみないと分からないというのは事実でしょう。その上で、公簿を収集して突き合わせて、不明だ、それでもなお分からないという場合は報告徴収を求める、あるいは活動実態について不明点があるという場合について報告徴収を行うということでございます。極めて妥当だと私は思います。

 その上で、これは党内の議論においても多少議論があったんですが、地方公共団体の事前の関与について伺いたいと思います。

 注視区域の指定については、内閣総理大臣は、注視区域の指定の公示をしたときは、速やかにその指定された区域等を関係地方公共団体の長に通知しなければならないと五条五項にあります。

 また、特別注視区域の指定、十二条五項においては、内閣総理大臣は、特別注視区域の指定の公示をしたときは、速やかにその指定に係る注視区域等を関係地方公共団体の長に通知しなければならないとありまして、地方公共団体に区域指定の後に通知することが規定されております。

 事前の手続ではないんですね。ですので、事前の手続ではなくて区域指定の後に通知するという規定にしたこと、事前の手続として法制化しなかったこと、これについて理由を伺います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の安全保障のための措置は、国が責任を持って判断し、実施することが必要であると考えてございます。このため、本法案に基づく区域指定につきましても、法律上は、御指摘ございましたような地方公共団体に意見を聞くという手続は設けていないところでございます。

 その一方で、本法案に基づく措置を実施するに当たりましては、地方公共団体の理解、協力を得ていくことは重要でございます。このため、注視区域等の指定を行う前には、関係する地方公共団体としっかりと意見交換を行っていくことを検討させていただきたいと考えてございます。

 その上で、このことについて閣議決定をさせていただきます基本方針にも明記する方向で考えているところでございます。

 以上でございます。

濱村委員 基本方針に、区域指定する前に意見交換をしっかりしますよということで、御答弁がございました。確かに、それがちょうどいいのかなと思っております。

 というのも、区域指定を事前の手続として法制化してしまいますと、この制度自体がなかなかうまく機能しないんじゃないかなということも考えられるわけでございます。

 というのも、例えばですけれども、地方自治体、行政手続としての行為となってしまいますと、市民の皆さんに対して住民説明会等を実施して、いろいろなお話を聞いて、その上で行政文書として報告するというようなことになります。

 そうなりますと、行政上の負担についても非常に高まって、これは地方がそれをやらなければいけないんですか、地方自治体がと。安全保障のためという目的にもかかわらず、地方の負担がちょっと大き過ぎやしませんかということからしても、少しバランスが悪い。本来の目的を損なう可能性もあるんじゃないかと私は考えます。

 そういう意味においても、基本方針に明記されるわけでございますが、区域指定する前に意見交換をするということで私はよかろうかと思っております。

 また、一つのやり方のアイデアとしては、例えば、地域の意見を聞くために、土地等利用状況審議会において、地域の行政や経済に対してよく知見を有する方、有識者の方を入れて検討いただくというのも手段としてはあり得るのかもしれないなというふうに思っております。

 最後にお伺いをしたいと思いますが、国会の事前関与について伺いたいと思います。

 地方公共団体だけではなくて、国会についても関与を義務づけるべきだという意見もございました。国会の関与については、これは事前に報告するということは条文としては規定されていないという状況でございますが、どのように考えればよろしいか。想定する、その場合もどういう運用をされるのかという点も含めて、確認させていただければと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づきます様々な措置の実施状況につきましては、その透明性を確保する観点から、毎年その概要を取りまとめた上で、国会を含め、広く国民の皆様に対しまして公表させていただくということを検討しているところでございます。

 そしてまた、そのことにつきましては、閣議決定をさせていただきます基本方針に明記する方向で考えているところでもございます。

 なお、法律の施行状況について定期的に国会へ報告するということが法定されておりますのは、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律といった、高い強度の規制が置かれ、基本的人権その他の個人の権利利益に関わるものであるというふうに認識しているところでございます。御理解を賜れればと存じます。

 以上でございます。

濱村委員 今、通信傍受の話も出ましたが、ほかに特定秘密とかそういう形の類いの情報については定期的な国会報告が求められているので、それに比較すると、やはりそこまでの必要性は感じないということでございました。

 いろいろ確認ができたと思っております。速やかにこの法案が成立することを願っております。

 終わります。ありがとうございました。

木原委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 質問の機会を与えていただきました、篠原豪でございます。

 十一日の本会議で、この重要土地調査法案について質問させていただきまして、それに対して小此木大臣から御答弁をいただきました。中には正確にお答えをいただいていない部分というのがあると思っておりますので、その点も含めて再質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、立法事実の問題についてです。

 私が、二〇一〇年以降、安全保障上重要な施設の周辺や国境離島などで、安全保障上のリスクとなるような土地取引が行われたことがあったのかといった問いに対して、大臣は、御指摘のような事例が過去にあったか否かについては、安全保障上のリスクを回避する観点から、お答えすることは適当でないというふうにお答えになりました。

 これは全く納得できるものではありませんで、その後、二十一日の内閣委員会における質疑を聞いていて、このときの大臣の御答弁の意図が分かりました。

 二〇一三年に閣議決定をした国家安全保障戦略を受けて、防衛省は防衛施設隣接地について累次調査を重ねてきたが、不動産登記簿等の一般に入手可能な資料による調査であったので地目以上の利用実態までは把握できないなどの限界があった、したがって、その限りにおいては自衛隊や米軍の運用上の支障を確認できていないが、一方、この結果のみからは、本法律案が対象とする防衛関係施設や離島等の隣接地以外も含む周辺において、本法案が想定している機能阻害行為が全くなかったと予断できるものではありませんということを大臣が述べたかったということが分かりました。よろしいですね。

 しかし、そう言いながら、大臣は、政府としては、土地等の利用に関する安全保障上のリスクに対応するため、本法案を取りまとめたと述べられておりまして、これは、何の根拠も示さないまま、顕在化はしていないけれども、安全保障上のリスクというものは常にあろうと私は認識していますというふうにお話しになっているというふうに聞こえます。

 そして、私の、安全保障上のリスクとなるような土地取引の事例が過去にあったのでしょうかという質問にお答えしたのは、今後の政府の事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、安全保障上のリスクを引き起こしかねないことから、お答えを差し控えさせていただいたと主張されました。

 先ほどの委員からも、そして先週もそうですけれども、立法事実の話があります。法案の内容が妥当なものであるか否かを判断することができるというときに、やはり立法事実がないといけない。それがないとそもそも法案審議が成り立たないので、安全保障上のリスクは常にあると言いながら、法案が問題とする、そうした土地の取引の事例があったか否かを答えることがなぜ安全保障上のリスクになるのか、お答えを願います。

小此木国務大臣 改めまして。

 本法案ですが、土地の利用、取得により安全保障上重要な施設の機能阻害行為が行われるというリスクに対応することを目的として取りまとめました。

 立法事実があるのかとのお尋ねでありますけれども、政府としては、立法事実はあるものと考えています。

 立法事実について、過去にどのような事例が生じたのかという問いもこれまでございましたが、安全保障をめぐる環境は刻々と変化しています。近年、諸外国では、土地取得の事前審査や取引中止命令など、本法案よりも踏み込んだ措置を講じております。安全保障の確保は国の最大の責務であり、政府は将来の安全保障上のリスクを回避するための対応を行う必要があります。

 その上で、議員からは本会議において、安全保障上のリスクとなるような土地取引が行われたと認識しているかと御質問いただきましたが、その有無も含め、いつ、どこで、どのような態様で行われたかをお示しすることは、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねないことから、適切でないと考え、お答えすることは適当でない、こう申し上げました。

 例えば電波妨害の事例で申し上げますと、電波妨害を行おうとする者は、通常、実際に電波妨害が成功したか否かは知り得ませんが、仮にこの事実を公表すれば、その手法が機能阻害に有効であることを伝えるに等しく、さらに、電波妨害行為を助長するとともに、類似行為を誘発するおそれがあるということでございます。

篠原(豪)委員 先ほどの委員の質疑への御答弁を聞いていても今と同様のことをお話をされていまして、安全保障上、脆弱性だとかリスクがあるので国会への情報提供は控えるという旨のことがまかり通るようになってしまえば、これは民主主義の根本を否定することになるんじゃないかというふうに思います。

 なぜかというと、統帥権が独立しているから国会は軍とかそういったところのやることに関与できないという戦前の理論とどこが違うのかといったような議論もされているので、これは、そうした理論を求めると、今後、安全保障関係の法律は全て国会の関与を最小限にするということが当たり前にどんどんなっていく。そういうことになると、これは、大臣の答弁はそこまで考えて、やはりできるところはきちっと説明していただくことが大事だと思っていますので、これは引き続き徹底的に追及したいと思います。

 次に、法的予見性の問題について伺います。

 本会議で、私から重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為とした定義では法的予見性が乏しいと指摘されたことに対して、大臣は、機能阻害行為については、予見可能性の確保の観点から、閣議決定する基本方針において、想定される行為をできるだけ具体的に例示したいと考えておりますと答弁されました。

 しかし、その一方で、法律や政令において機能阻害行為の類型を限定列挙することとした場合、その類型を潜脱する行為や明示された類型以外の機能阻害行為を助長するおそれがあると考えております、このため、法律等の規定において機能阻害行為の類型を限定列挙することは適当でないと考えていますとも述べています。

 そこでお伺いしますが、基本方針に例示することと法律に列挙することの違いを政府はどのように考えているのか。少なくとも、法律に列挙されなければ、列挙された内容が妥当なものか否かが審議できないじゃないですかということを申し上げました。その意味でも、基本方針でなく法律に列挙すべきだと考えますが、法律を避けて基本方針に例示するとした理由を改めて分かりやすく御説明願います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 機能阻害行為として具体的に想定している行為につきましては、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されるものと考えてございます。このため、特定の行為を普遍的あるいは代表的な機能阻害行為として法律に例示することは必ずしも適切ではないものと考えているところでございます。

 閣議決定される基本方針におきまして、可能な限り具体的に機能阻害行為の例示をお示ししたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

篠原(豪)委員 基本方針において想定される行為をできるだけ具体的に例示しても、法律が成立した後の話ですから、果たしてどこまで納得いくものが例示されるのかというのは何の保証もないわけですよ。だから、それはそうじゃないんじゃないですかという話を聞いているんです。

 そして、その後に、もうやってしまって、何も今回話ができずに、後の祭りということになったら困るので、この点について、これでいいと本当にお思いか、大臣、お願いします。大臣にしか質問通告していないですから。

小此木国務大臣 機能阻害行為について、例えば、重要施設の機能に支障を来す構造物の設置、領海基線の根拠となる低潮線に影響を及ぼすおそれがあるその近傍の土地の形質変更などが該当し得るものと考えています。

 ただ、繰り返しになりますが、機能阻害行為として具体的に想定している行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されるところであり、どのような行為類型を代表的なものとして例示するか決め難いということでございます。

 また、仮に特定の行為を機能阻害行為として法案に例示すれば、例えば機能阻害行為は例示したもの及びそれに類似したものに限定されるのではないか等の誤解を生じさせかねません。安全保障環境や施設の特性の変化等を適時に反映することが困難になるといった問題があるものと考えております。

 いずれにせよ、閣議決定される基本方針において、可能な限り具体的に機能阻害行為の例示をお示ししたいと考えております。

篠原(豪)委員 法律が成立した後の話ですから、果たしてどこまで納得いくものが例示されるかというのは保証がないわけですから、そのことについては改めて申し上げておきます。

 次に、注視区域、特別注視区域の指定について伺います。

 大臣は、安全保障の観点から、施設の性格やその区域の地理的な特性を総合的に勘案して、ケース・バイ・ケースで柔軟に設定し得る仕組みとしておくことが適当としつつ、制度運用の適正さを確保する観点から、土地等利用状況審議会の意見を伺った上で、指定の要否や範囲等の判断を行うと答弁してきました。

 今日、注視区域そして特別注視区域の指定について、候補が内閣官房土地調査検討室から理事会に提出をされておりますけれども、この土地利用状況調査等の審議内容にこれが今度関わっていくわけですよね、この内容が政府の案として。

 今日配られたものについてお話をしますと、防衛関係施設は、注視区域は約四百数十か所、そして特別注視区域は、法定要件を満たすものとして合計約百数十か所ということになっています。特別注視区域について言えば、指揮中枢機能又は司令部機能を有する施設として市ケ谷、朝霞、横須賀、横田等、警戒監視・情報機能を有する施設には与那国、対馬、稚内等、そして、三、防空機能を有する施設、八雲、霞ケ浦等、四、離島に所在する施設、奄美、宮古島、硫黄島等というふうになっております。

 先ほどの質疑も聞いていますと、やはり大事だと思うのは、今後、この今ある候補が、ようやくここまで出されましたけれども、本来、ここまで考えていらっしゃるんだったら、あの本会議の答弁のときにこのぐらい言っていただいてもよかったと思いますよ、せいぜい一週間ぐらいですから。

 ですが、出していただいた中で、やはり大事なのは、この審議内容、これだけでも、海上保安庁の施設が百七十四か所ありまして、国境離島が合計四百八十四島、そして有人国境離島地域離島が合計百四十八か所というふうになりますから、これは千か所とか、そういうところに想定されるんだと思いますけれども、この場合に、この土地利用状況審議会の審議内容が、これはしっかり、さっきも国会報告をどうするんだみたいな話がありましたけれども、ブラックボックスにされてしまっては、これは国民が政府判断を公正なものであるか否か評価することは不可能だと考えます。先ほどの質疑を聞いていても、審議会だというふうに、委ねるのだというふうに政府は御答弁で言っていましたから。

 そこで、お伺いします。

 土地利用状況調査審議会での審議の内容は公開されるのでしょうか。さらには、要約しか公開しないのでは不十分と考えますので、その点についてもお伺いいたします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法第十四条に基づき設置させていただきます土地等利用状況審議会の審議内容の公開に関しましては、特段の事情がある場合を除き、可能な限り議事内容を公開したいと考えているところでございます。

 例えば、生活関連施設を定めます政令の制定でありますとかあるいは区域指定につきましては、安全保障上の問題がない限り審議内容を公開することが想定されます一方で、勧告等についての議論には、対象となります者の個人情報が含まれますことから、非公開とすることも考えたいと考えております。

 なお、審議内容を公開する場合におきましては、要約のみならず、議事録を公開することも検討してまいります。

 いずれにいたしましても、審議会の審議内容の公開につきましては、その透明性を確保する観点から適切に判断をさせていただきたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

篠原(豪)委員 議事録をやはりしっかり公開していただくということが大事だと思います。そういうことも検討をされているということでございましたので、是非それは実現していただきたいと思います。それは強く要望しておきますので、大臣、よろしくお願いします。一言いただければと思います。

小此木国務大臣 この議論を踏まえながら、こちらはこちらとして、また検討してまいりたいと存じます。

篠原(豪)委員 検討してということですので、是非しっかりと検討していただいて公開していただけるように、民主主義を守っていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございます。

 もう一つお伺いします。

 大臣は、特別注視区域として、いかなる区域を指定するかについては、法施行後に、法定する手続に従って決定することとしております、したがって、現時点において、御指摘のあった市谷の、これは前回の本会議のときですけれども、防衛省や海上保安庁の施設、原発、インフラの周辺について、特別注視区域の対象から除外したことを決定した事実はありませんと述べています。

 ここにも、今日、候補地として挙がってきていますけれども、私が引用したあのときの報道は政党間の政治的合意を明らかにしたものですから、これは正式決定でないのは当たり前のことで、これは質問の答えになっていなかったというふうに思っています。

 今日、候補を出したということで、改めて、この政治的な合意が実質的に維持されるのか否か、また、こうした法案を骨抜きにする事態を回避する意味でも国会の関与が必要だと思いますけれども、このことについてお伺いをさせていただきます。

小此木国務大臣 そのときも含めて、本法律案ですが、与党プロセスにおいて、公明党を含め、様々な御意見を取りまとめたものであると承知しておりますけれども、政府として、本法律案の内容を超えて何ら約束している事項はございません。

 特別注視区域として、いかなる区域を指定するかについては、法施行後に、法定する手続に沿って決定することとしております。したがって、現時点において、報道にあるような市谷の防衛省や海上保安庁の施設、原発などの重要インフラの周辺について、特別注視区域の対象から除外することを決定した事実はないということでございます。

 本法案に基づく注視区域又は特別注視区域の指定に当たっては、指定に伴う社会経済活動への影響も勘案しつつ、個々の区域ごとに指定の要否、区分等を慎重に判断してまいりたいと存じます。

 本法案に基づく措置の実施状況については、その透明性を確保する観点から、毎年、その概要を取りまとめた上で、国会を含め、広く国民に対して公表することを検討してまいります。このことについて基本方針に明記する方向で考えています。

篠原(豪)委員 そうおっしゃいましても、十一日の本会議において、公明党の濱村委員が、防衛関係施設であれば全ての施設が指定を受けるというわけではなく、注視区域、特別注視区域に指定する基準は、それぞれどのような要件を想定しておられますか、また、四条二項二号にある経済的社会的観点から留意することで、どのような影響が生じると想定されておられますかと、区域指定の基本的な考え方について小此木大臣に伺っています。

 そのことに対して大臣は、この特別注視区域の指定については、基本方針に定める経済的社会的観点から留意すべき事項を踏まえて評価した結果として、例えば、施設周辺の密集市街地の形成状況等に応じ、特別注視区域の要件に当たる区域であっても、当初は注視区域として指定することがあり得るものと考えますというふうに答えているんですね。

 これはまさに、報道にある政権与党間の政治的合意が四条二項二号にある経済的社会的観点から留意するとの文言に凝集されていることを示しているんじゃないか、その文言を政府として遵守するとの誓約を述べられたものでもありますので、まるで経済的社会的観点から留意するとの文言が政府案に初めから入っていたような誤解を与えるというのは、国民の皆さんにとって、これは真実が伝わっていかないと思いますので、この点については指摘をしておきます。そこにとどめます。

 次に、情報調査の管理の問題について伺います。

 個人情報の取扱方法について本法律案に何の規定も設けていないと指摘しましたが、何の規定も設けていないですね。

 大臣は、本法律案に基づく調査により収集された個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、個人情報の漏えい防止のために必要な措置を講じるので、本法案については、個人情報の取扱方法に関する規定を設けていないところでありますと述べています。

 しかし、私が特に指摘したいのは、必要な措置として、提言では土地取引の実態を一元管理する組織を新設するとしているのに、法律案には何の言及もないということなんです。

 本法案の第三条に組織の新設と所掌事務を書き込んで、個人情報管理の責任主体を明確にすべきであると考えます。なお、それなくして、個人情報の保護に関する法律が定める個人情報の漏えいの防止もおぼつかないと考えますので、改めて大臣の見解を求めます。

小此木国務大臣 本法に係る事務は内閣府に新設する予定の担当部局において実施することとしておりまして、その関連の規定が本法の附則第四条に置かれているところであります。

 本法案に基づく調査によって収集された個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき適切に管理されることになります。同法においては、「法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」ということとなっています。

篠原(豪)委員 今回のこの法律案は、必要最小限の規定をするにとどめていて、肝腎の内容は全て政令等に委任していることに特徴があるんですね。国会軽視がこれはちょっと甚だしいんじゃないかという法案で、これは法案の内容よりももっと重大な問題もあるということを指摘しておきます。

 大臣の答弁では、第七条による収集情報は、氏名、住所など、土地等の利用者やその利用目的等を特定するために必要な情報に限られ、また、第八条によって報告等を求めることができる事項は、条文上、土地等の利用に関するものに限定されるとしています。しかし、こうした調査情報だけでは、特定の土地や建物の利用実態が我が国の安全保障に問題となるような不適切な利用行為だと断定できるとは考えられないわけですね。

 この点に関してちょっとお伺いしていきたいんですけれども、大臣は、実は中谷真一議員の本会議のときの質問に、こうやっておっしゃっています。加えて、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や、地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みも今後検討いたしますとおっしゃっているんです。それで、このように、関係省庁の協力を得ながら、きめ細かい情報収集を行うことによって、できる限り具体的な実態把握に努め、調査の実効性を高めてまいりますとお答えされております。

 ここで述べている、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や、地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みとは、これは一体何を意味しているんでしょうかということです。この情報提供の仕組みは、法案のどの条文に根拠があるんでしょうか。これは、本法案の第六条、第七条、第八条の調査とどのような関係があるのでしょうか。

 機能阻害行為に関する情報は、第六条、第七条、第八条による土地等の利用に関する個人情報とは別物と考えられます。いわゆる公安情報に、場合によっては該当するんじゃないかというふうにこれは想起されるわけです。しかし、事前の法案説明では、そうした重大情報の収集について一切説明がないんです。これではまともな審議ができない。なので、ここについて、今のそういう指摘に対して大臣の御答弁をいただければと思います。

小此木国務大臣 本法案に基づく調査では、不動産登記簿等の公簿の収集による氏名、住所、国籍など、土地等の利用者等の把握だけでなく、現地・現況調査や報告徴収を通じた土地等の利用実態の把握、特別注視区域における事前届出制度を通じた土地等の買手の利用目的の把握などを行うこととしております。

 これらに加え、先日の答弁において、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や、地域住民の方々から機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みも今後検討すると申し上げました。

 これは、重要施設にどのような施設機能の障害が生じているのか、妨害行為が行われているのか等の情報を収集するものでありますが、第六条に規定する土地利用状況調査の一環として行われるものであります。

 本法案に基づく調査によって収集された個人情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、適切に管理されることになります。

篠原(豪)委員 六条の範囲を超えているんじゃないかということなんですよね。

 法律に基づく土地等利用状況調査とは別に、例えば警察庁とか公安調査庁などがそれぞれの権限に基づいて問題となるような案件を調べたりするということもあるのかもしれませんが、それらの情報と突合して分析するということになると、当然、本法案には、それに関わる根拠が必要となっていくんだと思います。その意味で、意図的に、もし法案に、そういったことが想定されているにもかかわらず書いていないとすれば、これは問題だと思います。私、そう思うんですけれども、大臣、どう思われますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 対象区域におきます土地等の利用につきまして機能阻害行為が実際に行われているかどうかということを適切に把握させていただきますためには、例えばでございますけれども、防衛関係施設を所管しております防衛省等からこの機能阻害行為の実態等に係ります情報をお寄せいただくということは大変重要なことである、このように考えているところでございます。

 そうした趣旨から、大臣の方からも今御答弁申し上げましたけれども、重要施設を所管又は運営する関係省庁や事業者の方でありますとか、あるいは地域住民の方々からも機能阻害行為に関する情報を提供いただく仕組みを検討させていただくという答弁をさせていただいておりまして、この取組につきましては、第六条に規定しております土地等の利用状況の調査の一環として行われるものでございます。

 以上でございます。

篠原(豪)委員 法案が取締り対象とする機能阻害行為は、安全保障上の問題となるような行為ですから、それが例えば外国勢力によるものだったら極めて深刻な事態になります。その意味で、この機能阻害行為が見つかった場合、それを端緒として、背後の指揮系統とかあるいは協力者とか、いわゆる組織犯罪を摘発することは、これは必要なわけですけれども、法案でそれが言及されていないわけですよ。

 なので、そうした事態に対処するということについてきちっと書くということが大事じゃないかというふうに思っていますけれども、大臣、いかがでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づきます調査の結果、他法に基づく規制に違反する形で機能阻害行為が行われていることが判明しました場合には、当該規制を所管いたします関係行政機関に対しまして必要な情報を提供すること、そして、関係行政機関の大臣に対し、必要な是正措置を講ずることを要請し、その実施状況について報告を求めることを規定させていただいているところでございます。

 他方、一般に、本法案に基づく調査におきまして御指摘ございましたような犯罪に当たる行為が行われていることを確知した場合には、刑事訴訟法に基づき告発することによりまして捜査機関における対応を求めることになるものと考えているところでございます。

 以上でございます。

篠原(豪)委員 時間ですので、今日は防衛副大臣にもいらしていただいているので、最後の質問をさせていただきたいと思うんです。

 土地利用状況調査が外部委託される、そういったことが想定される場合、この現地・現況調査に係る情報の秘密管理はどのように手当てをしていくのかということ、例えば調査員の守秘義務に違反すると刑事罰を科すのか否か、お答えを願いたいと思います。これは小此木大臣に伺います。そして、防衛省として、現地・現況調査に係る基地の隊員を限定するなど、特別な態勢を組む用意があるのかについてお伺いいたします。

小此木国務大臣 本法案に基づく土地等利用状況調査について、まずは、不動産登記簿、住民基本台帳等の公簿情報の収集により土地等の所有者や利用目的に係る情報を把握し、その上で、利用の実態を現に確認する必要がある場合には現地・現況調査を行い、さらに、利用の実態について不明な点がある場合には、土地等の利用者等から報告徴収を行うこととしております。

 このうち、現地・現況調査、報告徴収については、内閣府の担当部局、関係省庁などの行政職員が実施することが想定されます。この場合、国家公務員法に基づく守秘義務が課されます。

 なお、例えば不動産登記簿の収集などに際しては、効率性の観点から外部委託を活用することも考えられますが、この際、委託先の事業者が刑事罰を科せられることはないものの、委託契約において秘密の保持に関する条項を設けるなどして、情報の管理をしっかりと行ってまいりたいと存じます。

中山副大臣 本法案に基づく調査といたしましては、不動産登記簿等の公簿の収集、土地等の利用者等からの報告を徴収、それから現地・現況調査がございますが、このうち、公簿の収集及び報告徴収につきましては、内閣府に新設する部局が一元的に実施し、情報管理を行うものと承知いたしております。

 その上で、現地・現況調査に際しましては、必要に応じて重要施設等の所管省庁及びその地方支分部局が協力することも想定されますが、具体的な協力の在り方につきましては内閣官房において検討中というふうに承知をいたしております。

 防衛省といたしましては、従来からの業務におきましても情報管理に取り組んでおりまして、本法案に基づく調査につきましても、内閣官房としっかりと連携して適切に対応してまいりたい、かように考えてございます。

篠原(豪)委員 時間ですから終わりますけれども、二〇一三年に閣議決定した、冒頭の質問のときに申し上げました国家安全保障戦略を受けて防衛省は調査をやってきていますので、その辺の話も含めて、また、これとどういうふうになっていくかということも含めて、しっかりとした議論をしていかないといけないと思いますので、そのことを最後に申し述べて、今日の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

木原委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 先週の金曜日の質疑並びに今日これまでの質疑を伺っておりまして、私自身が質問をさせていただくに当たっての幾つかのちょっと整理点というか論点というか、大臣に明確にしていただきたいことがございますので、これは質問予告してございませんけれども、これまでの論議の中から出てくるものとしてお願いを申し上げます。

 この法律、そもそも、本当に多くの皆さんが、立法背景や立法事実について、ほとんどの方が質疑をなさいます。立法事実があるんだと言う方もあるし、ないと思う。珍しい質疑だと思うんですよね。法律を出したときに、それが何を目指して何を背景にしたものであるかと。

 小此木大臣に伺いますが、金曜日の足立委員の質疑の中で、木村政府参考人が、この法案の立法背景といたしまして、外国資本が土地の買収をされている、こういったものについて安全保障上のリスクにつながるのではないか、こういった懸念があるということを一つの背景としてと。外国の方が基地周辺なりの土地を取得する、それが外交、安全保障上のリスクだ、こういった懸念があるということを背景としているのでしょうか。大臣に伺います。

小此木国務大臣 それは一つの背景でありますけれども、それと同時に、これも重ねて述べてまいりましたけれども、例えば、十年前と日本を囲むその他の安全保障上の環境が、ともに、不安、懸念、リスク、こういったものが、環境が高まってきたといいますけれども、そういったことも併せて存在するということでございます。

阿部委員 一つの背景であり、外交、安全保障上の環境が変わってきているという要因も加わっておるという御答弁でした。

 更に重ねて伺いますが、では、そうした事実はあるのか。これももう繰り返し皆さんが聞かれています。大臣の御答弁は、あるけれども、安全保障上の観点から言えない。あるけれども言えない。これでよろしいですか。大臣に伺います。

小此木国務大臣 簡単に言えばそういうことに聞こえるかもしれませんけれども、そんな乱暴な話ではございませんで、これは明確に事実としてあるというふうに思っていますが、安全保障上の観点から申し上げない方がいいだろうというこの乱暴な話ですけれども、先ほど申し上げたのが、例えばですよ、電波妨害の事例で申し上げれば、電波妨害を行おうとする者は、通常、実際に電波妨害が成功したか否かは知り得ません。しかし、仮にこの事実を公表すれば、その手法が機能阻害に有効であることを伝えるに等しく、更なる電波妨害行為を助長したり、類似行為を誘発するおそれがあるというのが、安全保障上に非常に、心配されている多くの皆さんがそこにリスクを感じる事柄だと私は感じております。

阿部委員 そこでこのおそれが出てくるわけですが、今大臣のおっしゃった電波妨害等々は、他の法律で律することもできますね、妨害行為に至れば、実際に行為として成った場合は。これは、この法律の二十一条にも他法に委ねると出ておりますので。

 じゃ、今私たちが作ろうとする法律の肝は何か。いわゆるおそれ、そういう可能性、それなりの蓋然性という言葉も使われておりますが、それを律しようと、おそれを律しようとするものなのか。これはいかがでしょう。

小此木国務大臣 今の繰り返しになりますが、この法案で想定している防衛関係施設に係る機能阻害行為が過去にあったのかというお尋ねについては、その有無を含め、いつ、どこで、どのような態様で行われたかをお示しすることは、安全保障上の脆弱性を自ら明らかにし、類似行為を誘発しかねないことから、適切ではないというのが先ほどの説明であります。

 例えば、電波法においてですが、電波妨害行為を行うような無線局を総務大臣の免許を受けずに開設した場合に、これは無線局の不法開設として電波法違反になり得ますが、この無線局の設置の準備行為は同法の違反とはなりません。

 この点、例えば、不法無線局の開設の準備行為を行っている場合で、電波法違反の状態に至らなくても、その者が防衛関係施設に対する電波妨害行為を行う明らかなおそれがあると認められれば、本法案に基づく勧告、命令の対象とすることができると考えております。

阿部委員 私が繰り返しておそれでいいのかとお尋ねいたしましたのは、おそれは大変前広というか、おそれがあるというふうに感じるかどうかというところ、片一方は、当事者は、いや、そうではないと思うかもしれませんし、非常にこれは、そごの、違いの生じやすい事態なわけです。そういうことを規制するときに、私権の侵害を起こさないどのような担保があるかとか、そういうことこそ、もっと私はこの法案については論じられるべきだと思うんです。後ほど具体例で質疑をさせていただきます。

 もう一つあります。

 大臣が考えられるこの法の及ぶ範囲ですね、一つは予防的なおそれもあるかもしれない、もう一つは安全保障ということの考え方ですね。委員の中には何人か、水源地の問題を含めて、これも安全保障といえば安全保障です。それから、コロナも安全保障といえば安全保障です、人間の安全保障とも言えますし。

 大臣がこの法律に期待する安全保障の範囲は、イメージはどんなものでしょう。

小此木国務大臣 安全保障という意味が、今委員がおっしゃいましたように、国防上の観点ですとか、あるいは、所管では私はございませんけれども、感染症あるいは食べ物等々で、この国会でも様々なところで議論がされていると思います。

 もうこれは冒頭申し上げましたけれども、土地の買収が行われているという不安が、これは昨日、今日の話じゃございませんで、数年前から、地方からの声として上がっている。先日も申し上げましたが、私たちが政治家として地域を歩いている中でも、そのようなリスク、不安、懸念が有権者からも発信されてくるということについて、やはり、国防上、安全保障上の観点から考えていかなきゃいけないなというのが私の考えであり、今回、この法案の提出に至ったということでございます。

    〔委員長退席、平委員長代理着席〕

阿部委員 それでも余り明確でないんだと思いますね。私は、そこをきちんと共通認識に立たないと、何をどこまで律するかが決まってこないと思います。

 大臣のお手元に、いわゆる国土利用の実態把握に関する有識者会議が令和二年十一月九日に出された報告書の中で、いわゆる国防上と言った方がいいと思います、狭い意味の安全保障上のいろいろな土地の利用や、場合によっては収用の制限、収用まで含むものもありますけれども、それがどんなものかという諸外国の例が出ております。

 冒頭の一枚目、イギリス、フランス等々で、このまとめられたものによりますと、安全保障上の土地規制や外国人による土地取得等に規制は、英国の場合は存在しない。近年動きはあるようですが、土地所有についての動きではないと思います。フランスも同様に、安全保障上の土地規制は存在しない。近年、投資についての農地買収の動きについての制約が論じられておる。

 開いていただいて、次にアメリカの例ですが、これは州レベルで土地利用を規制しておりまして、最近、FIRRMA、外国投資リスク審査現代化法というところにおいては不動産投資を追加しておりますが、ここにおいても、軍事・安全保障関連施設近隣、周辺というところですが、これは土地利用の規制であって、この私どもの法案のように、様々な土地の所有者に勧告、命令、最終的には買取りあるいは買入れが行われるようなものではないと私はここのまとめで思いました。

 韓国等々には軍事施設に限定したものが存在するようであります。また、外国人に限定したものも存在しておりますが、我が国は、WTOとの関係でそういう法体系にはできなかったというところで、極めてモザイクのような、混ぜこぜの、そして、それによって何を規制したいのかが分からなくなる、悪く言うと前広になっているのがこの法案だと思います。

 大臣、何か一言ありますか。

小此木国務大臣 様々な外国の例を挙げられました。

 そういった観点、外国と比較するということは大切なことであるというふうに思いますが、度々のお答えになりますけれども、やはり土地が買収されたという懸念から、それが、私、千歳や対馬の例を挙げてまいりましたけれども、防衛施設の近くであったということもこれは事実であって、それぞれの市議会から懸念が議論されて、そして県議会あるいは知事会から国に向けられてきたということについての不安がある中で、政府の有識者会議でも検討されて今日に至っているということでございます。

阿部委員 大臣、恐縮ですが、私が先回の議事録を拝見いたしますと、大臣と赤嶺委員の質疑の中で、大臣がおっしゃった対馬と千歳からは意見書が上がっていないという御指摘やに読み取りましたが、そうですよね。済みません、お願いします。

小此木国務大臣 いま一度正確に申し上げますが、千歳市議会でそのような議論がございました。そして、それを北海道、東北の知事会によって取り上げられ、国に送付されてきたということでございます。対馬の市議会での議論にもそのような観点からの懸念の議論がございました。そして、それを熊本県そして福岡県の県議会から取り上げられ、国に送られてきたと承知しております。

阿部委員 私は、その間の事情はつまびらかではございませんが、先ほどの大臣の答弁だとやはりちょっと誤解になると思います。対馬やあるいは千歳から上がったとおっしゃいましたので、ここは厳密にしていただきたい。それは赤嶺委員の御質疑でありましたので、確認をさせていただきました。

 さて、私があらかじめ質問を投げさせていただいた、問わせていただいたものについてお伺いをいたします。

 まず、今般の重要土地等調査法案の立法事実について私なりにお尋ねをしたいと思いますが、防衛省が行った二〇一三年から二〇一七年の調査で、この結果、機能阻害行為が明らかになったものがありましょうか。これは防衛省に伺います。

川嶋政府参考人 御答弁申し上げます。

 防衛省が実施してきております隣接地調査は、対象が防衛施設の隣接地に限られるとともに、調査の手法も、現地調査や利用状況の調査は行っておらず、不動産登記簿等の一般の方でも入手可能な資料のみによりましてやっておるものでございます。

 それを踏まえた上で御答弁申し上げますと、これまでの隣接地調査の結果として、防衛施設周辺における土地の所有等により自衛隊や米軍の運用等に具体的に支障が生じるような事態は確認できておりませんが、本法案が想定している機能阻害行為が全くなかったと予断するものではございません。

 以上でございます。

阿部委員 恐縮ですが、答弁が余分です。聞いたことだけ答えてください。調査の結果で、あったかと聞いているのに、ないことを予断することはできない。本当に余分な答弁です。そういうのは意図的だと思うんですよね。

 小此木大臣に伺いますが、今防衛省が行ったような検査だと不十分だから、これからは、いわゆる住民基本台帳とかもろもろの情報を集約して、土地台帳だけじゃなくて、防衛施設周辺の調査を進めていくというのがこの法案の趣旨ですよね。今までの調査が不十分だから進めていくということでよろしいですか。

小此木国務大臣 これまで、不安、リスク、懸念という言葉を使ってまいりましたけれども、安全保障上、そのような気持ちになるリスクが、懸念が、今までの調査では払拭し切れないという思いから提出をいたしました。

阿部委員 ですから、立法事実を探すための法案ですよね。だって、立法事実は言えないんだもの。今のところの調査では、ないんだもの。だから、これから、いろいろな手を替え品を替えやって、立法事実を探していこうと。私は、そう言っていただければ、その方が素直だと思うんですよね。

 それは、国民にこれからそういうことがあっては困るから調べていくのであって、あくまでもさっき言ったおそれとか、今あるからじゃなくて、それは調べていく、その必要性を合意してもらうという法案であれば、おのずと国民の私権や財産権を侵害しないのりができてくると思うんです。

 大臣、お伺いいたします。立法事実を探していく法案ですか、今回の法案は。

小此木国務大臣 探していかなければならないという意味も含めて、何があるか分からないことについて調査をしっかりと進めていかなきゃならないということであります。

 ただ、繰り返しになります、立法事実がないから、それを探そうということではありませんで、先ほど申し上げたように、立法事実が、しっかりと言うことが適切でないという意味も先ほど申し上げたと思いますけれども、そこのところも御理解いただきたいと存じます。

    〔平委員長代理退席、委員長着席〕

阿部委員 大臣はすごく正直でいらっしゃいますから、何があるか分からないから調べてみようと。それならそれでいいんです、何度も申しますが。そういう合意の下に、その範囲で国民に納得してもらったら、おのずとやっていいこと悪いことが出てくるんだと思います。

 立法事実はあるけれども言えないんだ、そして、今までのところはないんだ、でも、これから調べていくんだ。本当にこの法案を、短い審議ですし、なかなか今、コロナの中で国民が関心を持つことはできないけれども、私は、重大な私権の侵害が生じ得る重要な法案と思っておりますので、大臣がとても正直な方ですから、正直なままおっしゃっていただきたいと思います。

 次に、離島機能についてお伺いをいたしますが、離島機能も、防衛施設等々の機能同様に、内閣府の総合海洋推進事務局でお調べになりまして、国境離島四百八十四、そのうち私有地が九十八、ここにおいて外国人の所有は確認されなかったということですが、離島機能と言われるものへの阻害行為が明らかになったものはあるでしょうか。内閣府にお願いいたします。

一見政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年から私どもで行いました調査は、私有地のある国境離島について、領海基線近傍の土地の所有状況の調査を行ったものでございまして、機能阻害行為の有無について調査をしたものではございません。

 なお、その結果でございますが、不動産登記簿上、外国人と推察されるものは確認していないというものでございます。

阿部委員 内閣府にはちょっとお尋ねがありますが、前回、後藤委員の御質疑で、四百八十四の国境離島、このリストはお出しいただけますか。委員長も協議するとおっしゃったかもしれません。リストを出してください。いかがですか、内閣府。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本日の理事会の方にも御提出させていただきましたけれども、国境離島といたしまして法定する要件を満たすものにつきましては、領海基線を有する離島のうち、我が国が現に保全管理を行っている国境離島、これが合計四百八十四でございまして、提出資料につきましては、その中で例示をさせていただいたところでございます。

阿部委員 ちゃんと質問を聞いてください。例示をしろと求めているんじゃないんです、リストを出せと言っているんです。四百八十四、数が分かるんだからリストはあるでしょう。なぜそれが出せないんですか。法律で四百八十四と対象にしているんだから、出してください。

 大臣、内閣府だから大臣ではかわいそうですね。じゃ委員長。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 重ねての答弁になって恐縮でございますけれども、リストの取扱いについては理事会の方で御協議いただきまして、本日、四百八十四の島についての例示を御提出申し上げたところでございます。

 以上でございます。

阿部委員 それは審議に対して不誠実だと思うんですよ。リストはあるんですか、ないんですか。この前の質疑ではないと言っていましたよ、リストは。だから問題だって後藤委員が言ったんですよ。リストはあるんですか、ないんですか。こういう事実の一つごまかして事を進めたら、本当に不誠実な結果になります。どこの島ですか。どの島ですか。お願いします。リストはありますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 対象となります区域の候補のリストにつきましては、先般、防衛関係施設について概数でお答え申し上げました。その際には、様々な防衛関係施設の持っております機能を精査する中で、どういったものをリストアップさせていただくのかということを作業させていただいていたということでございます。

 以上でございます。

木原委員長 少々お待ちください。

 木村審議官に申し上げますが、阿部さんから先ほど来お話のあります国境離島等についてのリストがあるかないかということだけお答えをいただいていいですか。もう一度。どうぞ。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 四百八十四のリストはございます。

 以上でございます。

阿部委員 では、今、後藤委員言われましたが、この前の答弁は修正なさるんですね。虚偽なんですね。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 リストにつきましては、国境離島以外にも、重ねての答弁になりますけれども、防衛関係施設のリストもございます。そちらにつきましては先般の答弁におきまして概数でお答え申し上げましたが、それについては作業中である、こういうことでございます。

 以上でございます。

阿部委員 大臣、これ以上質問できません。この前はリストはない、今日はある、どっちであるのか、理事会ではっきりさせてください。事実が確認されません。お分かりになってごまかしているんだと思います。理事会の開催で確認してください。重要な事項です。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 リストでございますけれども、重ねての答弁になって恐縮でございますが、防衛関係施設につきましては、先般、御答弁させていただきましたときは作業中ということでございましたので、概数でお答えをさせていただいたということでございます。

 以上でございます。

阿部委員 委員長、申し訳ありませんが、私、この前の後藤委員との質疑を、ここに議事録もありますが、国境離島四百八十四という数は既に公表させていただいておりますけれども、この島のリスト自体、既存のものがないというふうに承知しております。

 彼は、今の質問の前は、あるとおっしゃいました。あるとないとは大違い、全く違うんですから。精査してくださるのはいいですよ。でも、離島機能とは何か、阻害行為も分からない、リストも分からない、そんなもの審議できない。

 大臣、大臣に振ったらまた悪いわね。これは委員会の問題ですので、筆頭理事同士、理事会をやってくださいな。前提なんですから、こういうことは。私はややこしいことを言っているわけではないです。

 委員長、お願いします。

木原委員長 どうぞ、木村審議官、お答えください。先ほど来申し上げております。リストがあるのかないのかだけお答えをくださいと申し上げております。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 先般、審議におきましては、私どもの政府参考人の方から、国境離島四百八十四という数は既に公表させていただいておりますけれども、この島のリスト自体、既存のものがないというふうに承知しておりますというふうに御答弁申し上げました。四百八十四というふうにカウントできておりますので、その固有名詞は把握させていただいているということでございます。

 以上でございます。

阿部委員 くるくる変わりますが。じゃ、審議が終わるまでに、四百八十四のこれまでの、でも、既存って言うんでしょう、既存ってこれまでのじゃない。リスト、出してくださいね。

 委員長、お願いします。この質疑が終わるまでに、あるんだかないんだか分からない上では審議できませんから、お出しいただきたいと思います。

木原委員長 それは、私に対するあれですか。

阿部委員 はい。

木原委員長 理事会にて協議をいたします。

阿部委員 私は、今のことにこんなにたくさん時間を使いたいための質疑ではないのです。本来の質疑に戻らせていただきますが、質疑に際しての行政側の誠意が問われるような対応だと思います。

 今回、有識者会議では、いわゆる生活関連施設の中で、原発施設を対象にすることも検討がされるやに書いてございます。

 内閣官房に伺いますが、諸外国のこういう安全保障関連の法制で、原発施設を対象にしたところはあるでしょうか。私が調べた限り、防衛施設等々の安全保障、国境離島の安全保障等々でないのですが、諸外国でこういう例がありますでしょうか。お願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の件は承知しておりません。

阿部委員 大臣、承知しなくて、どうしてこんな立法ができるんですか。原発施設をここに入れるか入れないかはとても重要です。ある程度調べて、どういうものが原発の機能を阻害する行為になるんですか。私は大臣に聞いています。あるかないかも言えない人に聞けないでしょう、調べてもないし。

 原発の機能を阻害する行為とは何でしょうか。私が原子力規制庁に聞いたところ、規制庁では、関知しておりませんと、本法案を検討する立場にはないので内閣官房に聞いてくれと言うんですね。じゃ、原発の機能を阻害する行為とは、大臣、何でしょう。お願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力関係施設に対する機能阻害行為といたしましては、例えば、施設の通信機能に支障を来すための機材や重機を用いることによります施設に対する物理的な攻撃等が該当し得るものと考えているところでございます。

 以上でございます。

阿部委員 攻撃が起きた場合が機能は阻害される、それはそうですわ。でも、いかに有識者会議だって、前提があるんですよ。原発の機能を阻害するときの、原発について、核物質の適切な防護を行う原子力発電所において、その核物質の適切な防護というところが守るべき機能なんだと思います、書かれたものを見ると。

 では、原発の予定地、これから造ろうとする所、今建設途上のもの、そして安全審査中のもの、廃炉が決まっているもの、原発といってももろもろあります。こういうものについて、検討というか何か、これから指定するんだから、これから政令でやるんだからじゃなくて、皆さんはもう説明にも挙げておられますから、今私が四つの類型を言いましたが、どんな論議がなされているのか、全く更地なのかについて一問。それから、今後、諸外国においてこういう安全保障規制において原発をその法律に入れ込んだものがあるかどうか、調べてお答えください、この質疑が終わるまでに。いかがですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 生活関連施設でございますが、この生活関連施設として実際に原子力関係施設を政令で指定するかどうかということにつきましては、審議会の意見を伺いますなど法定する手続にのっとって判断をさせていただくということでございます。

 その上で、原子力関係施設を政令で指定することとなりました場合には、個々の施設の周辺を対象区域として指定するかどうかということにつきまして、御指摘のございました、例えば核燃料が所内に存在しないというようなケースにつきましては、そのリスクを勘案した上で、審議会の意見を伺った上で、指定の要否を個別に判断させていただくということでございます。

 以上でございます。

木原委員長 阿部さん、時間が来ておりますのでおまとめください。

阿部委員 はい。

 前段のお答えしかありませんね。

 大臣、宿題があります。諸外国で原発施設をこういう形で安全保障上の対象に入れていることがあるかないか。私は調べたけれども、なかったんです。次回までにお願いします。

 終わらせていただきます。

木原委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 立憲民主党、森山浩行でございます。

 先日の産経新聞の報道、「基地周辺の土地買収、中国系など外資が七百件 政府が確認」というのは事実ではないという答弁がありました。

 事実ではないということでありますけれども、これに対して、訴えたりあるいは抗議したりというような形で対応されていますか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の五月十四日付の産経新聞の報道につきましては、関係省庁に確認したところ、報道にあるような調査は行っておらず、外国資本による七百件の土地買収を確認したという事実はないとの回答を受け取り、政府としてはそのように認識しております。

 なお、御党の今井先生から、午後の御質問の関係で、更に問い合わせるようにという御指摘を頂戴しておりまして、問合せはしておるところでございます。

森山(浩)委員 問合せをしているというのは、産経新聞にということですか、書いたのは事実だよね。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 マスコミ報道について、本法案に関し、これまでは政府としてその都度確認を行うことはしておりませんけれども、御指摘の件につきましては、今井筆頭理事からの御質問の関係で、昨日、産経新聞に対して事実関係の確認を行いました。

 同社からは、正確性や信憑性について十分な取材と検討を重ねた結果記事化しています、取材過程や取材源に関しては回答を差し控えさせていただきますとのことでございました。

森山(浩)委員 いや、事実でないということならば、ちゃんと抗議しないといけませんね。これは政府のガバナンスの問題だと思います。

 先日も、高橋洋一さんが参与だということで勝手なことを言っている、ここでうそつきだとまで言っているのに、これに対して、結局、首にすることができずに、自分から辞表を書くというような形で結末を迎えています。やはり政権のガバナンスという問題にしっかり対応していただきたいというふうに思います。

 今回、この記事の内容、やっていないということでありますけれども、じゃ、このような調査というのは、現行法でできるのか、できないのか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 これまでに、防衛省や内閣府海洋事務局が、防衛施設の隣接地や国境離島の境界基線の近傍の土地について所有者の調査を行っておりましたが、これらの調査は、特別の法的根拠に基づいたものではなかったと承知しております。そのため、不動産登記簿等の一般に入手可能な資料により確認するにとどまっておったというふうに承知をしております。

 こうしたことも踏まえ、本法案におきましては、内閣総理大臣が、各省庁や地方公共団体が所有している公簿等の収集、土地等の利用者等からの報告徴収を行うための規定を整備しており、より正確かつ具体的な土地等の利用状況を把握することを可能とするものでございます。

 さらに、土地等利用状況調査の結果、重要施設等の機能を阻害するような土地等の利用が明らかとなった場合は、内閣総理大臣が、中止等の勧告、命令を出すことができるとしております。

森山(浩)委員 この法律でできることというところまで言っていただきましたが、今回の国会で、個人情報保護の法制、改正していますけれども、その改正を踏まえてもできないことがあったということですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 御質問いただきました法改正によって、この法律施行後の個人情報の収集に特に変更があるというふうには認識しておらないところでございます。

森山(浩)委員 ということで、これまでの部分、法的根拠がない調査だったものを、法的根拠をつくるということであります。

 じゃ、私権制限の問題に行きます。

 是非、いろいろな私権制限についての懸念が表明をされておりますので、国民の自由と権利、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由、あるいは勤労者の団結権、そういったものも含めて、日本国憲法に当然保障されているわけですけれども、国民の自由と権利を不当に制限するようなことがないようにというようなことをきちんと確認をする、例えば留意事項として記載をするとかいうような形で対応していただきたいと思いますが、いかがですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 本法案は、いわゆる私権の制限と安全保障、それから経済活動の自由の両立といったことに配慮をしながら制度設計をいたしておるところでございます。

 例えばでございますけれども、法第三条には、「内閣総理大臣は、この法律の規定による措置を実施するに当たっては、個人情報の保護に十分配慮しつつ、注視区域内にある土地等が重要施設の施設機能又は国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供されることを防止するために必要な最小限度のものとなるようにしなければならない。」という規定も置いておるところでございます。

 従前来、大臣から御答弁申し上げておりますとおり、一般の方々が、ごく平穏な生活、事業活動を行っておられる方々に対しては影響を与えないような、そういう形での制度設計としておるつもりでございます。

森山(浩)委員 じゃ、確認をしていきます。

 機能を阻害する行為の類型については、先ほどの答弁もいただきましたので、土地の形質変更あるいは構造物の設置や電波妨害など、ほかの法律でいけるものについてはもうそれでいいんじゃないかということも含めて、どのような形で列挙していただけるかということ、閣議決定になっていますけれども、しっかりしていただきたい、明確にしていただきたいと思います。

 生活関連施設の対象、これは理事会で報告にありました資料、先ほどの議論にもありましたが、原子力関連施設と自衛隊が共用する空港というようなことになっていますが、原発以外の、研究所などを含めて、関連の施設、これは何ですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 生活関連施設の具体的類例は、土地等利用状況審議会の意見を聞いた上で政令で定めるものでございますが、現時点で生活関連施設として政令で定めることを検討しておりますのは、委員お触れになりました原子力関係施設、それ以外には自衛隊が共用する空港の二類型でございます。(森山(浩)委員「いや、関連施設って何」と呼ぶ)

木原委員長 森山君、もう一度御質問をお願いします。

森山(浩)委員 もう一度言いますね。

 原子力関連施設というのは、原子力発電所以外には何がありますか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。失礼いたしました。

 対象として検討しておりますのは、原子力発電所、それから核燃料サイクル関係施設でございます。

森山(浩)委員 罰則について、二十六条、罰則がありますけれども、わざとではなくて、忘れちゃいました、失念をしたというようなときにも罰則がかかるということになるんですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 法第二十六条につきまして、御指摘の、故意ではなく事前届出を忘れてしまったまま取引をした場合であっても、罰則の対象にはなり得ます。

 もっとも、運用上、そのようなケースについては、事後であってもできるだけ速やかに届出を提出していただくよう丁寧にお願いをする予定でございます。

 加えて、実際の提出に当たっては、関係行政機関の手続に不慣れな方であっても円滑に届出手続を行えるよう、届出書類の簡素化、記載マニュアルの作成、内閣府における相談体制の整備等を行うことを検討してまいりたいと考えております。

森山(浩)委員 忘れちゃったというときにはちゃんと言いますよということなんですが、そもそも、じゃ、事前届出でないと駄目なんでしょうか。事後でもいいんじゃないですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 特別注視区域にある土地等については、機能阻害行為の兆候を可能な限り早い段階で発見し適切に対応する必要性が特に高いと考えられます。そのため、所有状況を逐次把握する手段として、特別注視区域内における土地取引については事前届出の制度が必要であると考えております。

 事前届出の制度につきましては、本制度の趣旨、内容等につきまして、広く国民に対して啓発広報活動を行い周知を図っていくとともに、先ほど申し上げました丁寧な対応を考えているところでございます。

森山(浩)委員 どのぐらいの形で見るかというのはあると思うんですが、よくあるのは、保健所なんかで、一般のホテルで届出をしました、事前に届出をして、それでホテルを造って見てもらいました。オープンする直前にラブホテルに改造をして、これは法律が変わっちゃうんですけれども、営業していると。一年、二年、見に行ったときには、もうその間ずっとそれで営業していたので、チェックできていなかったというようなことが、自治体の中、実務でもあるんですね。だから、事前にやったから早くつかめるというようなものでは、むしろ、悪意のある人だったらもっと事前の届出の仕方もあるでしょうから、これは事前に余りこだわる必要はないかと思いますけれども、いかがですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 特別注視区域内における土地取引に対して、所有状況を逐次把握していくことは特に重要と考えてございますので、事前届出の制度が必要であると考えており、さらに、刑事罰も付した上でこの実効性を担保することは必要であろうと思っておるところでございます。

 また、うっかり忘れてしまったという言い訳が、個々の、ケース・バイ・ケースではございますけれども、悪意のある方からなされたときに実効性が担保されないということも問題だと考えておりますので、先ほど申し上げたとおり、忘れてしまったまま取引をした場合も罰則の対象になり得るという形としておるところでございます。

 他方で、先生おっしゃっていただいていますように、通常の取引は、まさに善良な当事者間の取引でございますので、その方々からの届出の事務負担がなるだけ少なくなるように工夫してまいりたいということでございます。

森山(浩)委員 大臣、この法律がきちんとチェックしようとしているのは悪意のある人だと思うんですね。悪意のある人をきちんとやるというときに、事前届出したから大丈夫だなんて、これはもうお花畑でしかない。だから、悪意のある人をちゃんとチェックをするには、調査しなきゃいけませんけれども、事前届出をやって罰則をつけるとかというようなやり方というのは、みんなが善意のときはいいですけれども、そうじゃないんだということを前提にした場合はちょっとずれるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

小此木国務大臣 後半、この法案は、要するに、先ほどちょっと申し上げたと思いますけれども、それが何が何だか分からないという不安がやはり広がっている中で調査をやっていこうということが第一義でございます。

森山(浩)委員 ですので、マンパワーがむちゃくちゃあるわけではないと思うんです。だから、調査を薄く広くきちんとやり切るという中で、怪しいところをチェックをするというような形にしないと、何回も何回も濃い調査ができるわけではないと思いますので、運用も含めてよく考えてやっていただきたいというふうに思います。

 では、諸外国の制度の中で、安全保障上のことであればGATSの違反にならないんだ、あるいは、WTOとも議論をして、日本は、内外無差別は基本であるけれども、この部分についてはという交渉ができるんじゃないのかというようなことについて、内外無差別を優先する余りに法律がゆがんでしまっているんじゃないかという懸念があるんですが、そこはどう御認識ですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、このような制度設計を考えるに当たって、国際法規との整合性は重要な論点、課題の一つであったというふうなことは承知をいたしておるつもりでございます。

 その上で、昨年、小此木大臣の下で開催いたしました有識者会議の提言においては、我が国の法律に基づいて設立された法人であっても、実質的な所有者や支配者が日本人ではないケースもあり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適当でないとされたところでございます。

 当該提言を踏まえ、本法律案は、内外無差別の枠組みとし、安全保障の観点からリスクのある土地建物については、それらの利用者が外国人、外国法人である場合に限定せず、利用の実態を調査して、必要に応じて利用規制を行う仕組みとしておるところでございます。

森山(浩)委員 悪意がある、リスクがあるという話になってくると、九条の勧告それから命令、こういったものに従わない場合、あるいは相手が分からない場合、これについての対応はどうなりますか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 本法案では、調査の結果、防衛関係施設等の機能を阻害する土地等の利用が判明した場合に、その利用の中止を勧告、命令する等の措置を講ずることとしております。

 重要施設等の機能を阻害する行為が行われるおそれがあるかどうかは、不動産登記簿、住民基本台帳等の公簿収集の情報、現地・現況調査、利用者からの報告徴収を通じて収集する情報によって、土地等の利用者やその利用状況を総合的に勘案して判断していくこととしております。

 その判断に当たっては、防衛関係施設等の重要施設を所管する関係省庁や、当該施設を運営する事業者等から機能阻害行為の兆候等に係る情報を受け、その内容も参考にする予定でございます。

森山(浩)委員 質問を聞いてくださいね。命令に従わない場合はどうするのか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 本法案においては、勧告を受けた者が正当な理由なく勧告に係る措置を取らなかったときには、その措置を取るべきことを命令することができるほか、この命令に違反した者には罰則が科せられることとしております。

 また、御指摘の、命令に従わない場合には、例えば、施設機能を阻害する構造物の撤去等を命令した場合においてその命令が履行されないときは、行政代執行法に基づき、内閣総理大臣自ら構築物を撤去する形で代執行を行うことができるものと考えております。

 なお、議員御質問ございました、所有者や利用者が確知できない場合という場合は、この先、対応が困難なわけでございますけれども、本法律案は、そもそも土地の真の所有者でございますとか利用実態について従来以上に把握をしていくということをまず目的とした制度でございますので、まずはそのような確知ができないということをなるだけ生じさせないように調査を行っていくということかと存じます。

森山(浩)委員 済みません、それも国が言ったらみんな聞いてくれるだろうということが前提になっていると思うのですが、所有者不明の土地とか建物というのは世の中たくさんあるんですね。今、自治体も、相続のときでも、分からなくなる、あるいは、二代、三代続いている中で、この長屋全体、誰のものか分からないというようなことがあって、これは自治体も困っています。課税する基準にならないというようなことで困っているようなこともありますので、頑張れば何とか分かるというものではないと思うんですけれども、これはマンパワーをかけますか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員お触れになりました、いわゆる所有者不明の土地の課題につきましては、今国会でも所要の法改正が成立したと承知をしておりますので、そのような他の制度の動きも十分に把握しながら対応してまいる必要があろうかと思っております。

 また、内閣府に新設する組織におきまして、当該法律に基づきます調査等を行うこととしております。御指摘のとおり、厳しい行財政事情の下で人員には限りがあろうかと思いますけれども、例えばでございますけれども、個人情報の取扱いに問題がないような事務については外部委託するなどの工夫をしながら、所要の体制を整備してまいりたいというふうに考えております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 各自治体から出ている要望の中には、やはり水源、農地等を含めた国土保全ということも随分入っています。これは十年以上前からお話があった中で、私も水循環基本法、この法案をまとめるときの事務局をやらせていただいておりますので、その頃からも各自治体のお話も聞いていますが、条例で何とか押さえよう、登録制ぐらいはつくろうといってやっているような自治体も、これは体を張ってやっているんですね。法案の根拠がないという状況の中で、最高裁へ行ったら負けるかもしれないと思いながら条例を作ったりしているというようなことも含めて、これは問題になってきたことですけれども、今回、残念ながらこの水源あるいは農地が入っていない。森林法でやるんだという話がありましたけれども、平地から水が湧いているところもありますから、水源といっても全然カバーされない部分というのはたくさんあるという状況です。これについてはしっかりと今後対応していただくようにお願いをしたいと思います。

 五条一、千メートルというのがあります。おおよそ千メートルで区切っていくわけですけれども、千メートルよりも広くなったり、あるいは狭くなったりするということがあるんでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 先ほどお触れしました有識者会議の提言では、調査等の対象となる防衛関係施設等の周辺の範囲について、予見可能性の確保や過度な負担防止の観点から、施設からの一定の距離で範囲を設定していくことが適当であるとされたところでございます。

 これを踏まえ、重要施設の周辺区域の範囲については、その機能を阻害する妨害行為等が相当に懸念される範囲の目安として、その敷地からおおむね一千メートルを上限として設定することといたしているところでございます。

 この注視区域及び特別注視区域の指定の考え方や手続等については、閣議決定する基本方針において明らかにする予定でございます。

 なお、例えば、対象施設の周囲に国有地が広がっている、あるいは大きな河川等がある等のケースでは、一千メートルよりも短い距離の範囲で区域指定を行うこともあり得ると考えております。

森山(浩)委員 今、千メートルを上限としてとおっしゃいましたけれども、じゃ、大きな道まであと一軒残して千メートルというようなときでも、千五メートルにはならないということですね。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 条文上、その敷地からおおむね一千メートルを上限として設定するという規定になってございますので、委員お触れになった事例が一千メートルちょうどではなくておおむね一千メートルと言えるかどうかということになってまいりまして、そこはまさに、個別事例に基づいて、ケース・バイ・ケースで法律に基づいて判断していくということかと思います。

森山(浩)委員 じゃ、一千メートルを超えることもあるという答弁ですか。

中尾政府参考人 法律第五条におきまして、「重要施設の敷地の周囲おおむね千メートルの区域内」という条文の規定になっておりますので、おおむね一千メートルということでございます。

森山(浩)委員 さっき上限という答弁をされたのでおかしくなったんですよ、いいですか。そこは訂正しておいてくださいね。

 その上で、経済的社会的観点から留意すべき事項、四条二の二というところですけれども、これで東京二十三区の分がなくなるんだとか、こういう約束はしていないという答弁をされています、自公の間でやったという報道もされていますけれども、それはそれだということでありますけれども。

 これは、中央幹事会長、公明党さんですけれども、東京・市谷の「防衛省周辺が事前届け出が必要な区域に指定された場合を挙げ、「なかなかの規制だ」と指摘。」ということで、防衛の施設という中で市ケ谷みたいなところが入らないとなると、よろいは着るけれどもかぶとはかぶらない、一番中心の施設ですから、こういうことになり得るかと思いますけれども、この留意すべき事項というのはどのぐらい重視されるものでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 まずその前に、恐縮でございますが、私、一千メートルにつきまして、私はおおむね一千メートルというふうに一貫して使用してきたつもりでございますが、仮におおむねを言い忘れたのであれば、訂正させていただきたいと思います。

 経済的社会的観点から留意すべき事項の趣旨の御質問でございます。

 これにつきましては、閣議決定する基本方針でより明らかにしていきたいと考えておりますけれども、現時点では、例えば重要施設の周辺に密集市街地が形成されている場合、当該区域における経済社会活動への影響、施設機能の阻害行為の兆候等の把握の困難性など、重要施設の周辺の実情、重要施設自体の形状や周辺区域における地形、国有地の所在状況などを考慮し、区域指定の要否、区分、範囲を判断することを想定しております。

森山(浩)委員 大臣、「この特別注視区域の指定については、基本方針に定める経済的社会的観点から留意すべき事項を踏まえて評価した結果として、例えば、施設周辺の密集市街地の形成状況等に応じ、特別注視区域の要件に当たる区域であっても、当初は注視区域として指定することがあり得るものと考えています。」とおっしゃっていますけれども、これでいいですか。

小此木国務大臣 これについては、土地等利用審議会等で最終的に意見を伺った上で、最終的というのは私たち内閣府でありますけれども、そこで決定をするということでありますので、今決定していないということでありますので、あり得るという話はそれで、そういうことだということでございます。

森山(浩)委員 特別注視区域、今日いただいた、理事会で出された資料ですけれども、特別注視区域、指揮中枢機能又は司令部機能を有する施設、市ケ谷、朝霞、横須賀、横田等というような形で例示もされています。

 安全保障の面を考えてこのバランスを取るというときに、東京の経済は大変だけれども、沖縄はいいんだというようなメッセージにならないように、この部分で東京・市谷などが抜けることがないように、しっかり検討していただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 以上で終わります。

木原委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 私は、法案自体の中身の議論をする前に、背景にある問題について、ちょっと大臣と議論させていただきたいなというふうに思っています。

 外国人の土地買収の問題というのは長い間議論されてきた問題でありまして、いろいろなきっかけがありましたけれども、平成十九年に海上自衛隊の対馬防衛隊本部の隣接地が韓国資本に買われたということが非常に世間の注目を集めて、それが一つのきっかけになったというふうに私は思っております。

 そこで、今日は対馬についても聞いていきたいと思うんですが、その前に、皆さんのお手元に資料をお配りしていますが、これは富山県が作成したものですけれども、今回、使用許可をいただいて配らせていただきました。環日本海・東アジア諸国図、通称逆さ地図というものですけれども、まず、領土担当の大臣として、この逆さ地図を御覧になっていただいて、大臣の率直な感想をいただきたいというふうに思います。

小此木国務大臣 率直にと言われましたので。

 これは、よくは見ませんけれども、たまに見かける地図でありまして、御通告もいただいていましたので、調べてみましたら、お尋ねの地図は、富山県が、見慣れた世界地図を回転させたユニークな発想の地図として作成したものと承知をいたしました。

 正面から見れば、ちょっと変わった地図だなと思いますけれども、ちょっと回せば、ふだん見慣れた日本の地図、大陸の地図なわけであります。

大西(健)委員 先日来、内閣委員会で、大臣、割と答弁書を読まないで自分の言葉で答えていただいているので、私は本当に率直な感想が聞きたいんです。

 私、これを見せていただいて、別にこれがいいとか悪いとかじゃなくて、こういうふうに見ると、ユーラシア大陸から朝鮮半島、それから日本列島を囲む輪のようになっている。ですから、これは環日本海という名称の地図になっているんですけれども、これを見ると、見方によっては、日本海が大きな湖のように見えるというような地図です。

 逆に言うと、大陸側の国から見ると、日本列島が太平洋側に出ていく障害になっているようにも見えます。そういう意味で、こういう見方というのは、私は、日本の領土というのを考える上で非常に示唆的じゃないかなというふうに思います。

 これで見ると、例えば対馬。対馬のある位置というのは極めて重要だなということが改めて、私、分かるというふうに思います。同時に、先ほど言ったように、こういうふうに大陸側から見ると、太平洋側に出ていくために、日本列島がその前にあるわけですから、海峡というのが非常に私は重要なんじゃないかなというふうに思っているんです。

 それで、海峡について聞きたいんですが、二ページ目を御覧いただきたいと思います。

 特定海域というのがあります。この特定海域というのは何かというと、我が国も一九九六年に批准をした国連海洋法条約では、領海は十二海里まで認められています。ただ、ここにある例えば対馬海峡東水道、西水道もその一つでありますけれども、この特定海域というのは、領海法の附則において、当分の間、領海の主張を三海里にとどめる、こういう特定海域になっています。十二海里領海主張をしないで、あえて三海里にとどめているんです。

 でも、それも当分の間ということになっているんですけれども、そうすると、これはちょっとカラー刷りじゃないので分かりにくいんですけれども、例えば津軽海峡の真ん中のところは、一番色の薄いところ、これは公海なんです。公海ということになると、結局、外国の軍艦が示威的な活動を行ったりしても、日本政府は抗議すらできないということになります。ですから、私は、領海を三海里でなくて十二海里にした上で、通航管理体制を構築すべきじゃないかと。

 当分の間と言ってからもう何十年もたっているわけですから、領土担当と同時に海洋政策を担当している小此木大臣に、このことについてお伺いしたいと思います。

小此木国務大臣 今お示しになった、基線から十二海里までの海域とすると規定されているというのは、我が国の領海及び接続水域に関する法律第一条をお述べになったと思います。ただし、この中で、津軽海峡、対馬海峡東水道、同西水道等の五海域については、同法附則第二項により、基線から三海里までの海域を領海としているものであるということを話していただきました。

 これは、いろいろな考え方があると思いますけれども、海洋国家として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカー等の自由な航行を保障することが総合的国益の観点から不可欠であることを踏まえたものであり、この考え方は政府として現在も変わっていないものであります。

大西(健)委員 私は、それは観点としては重要だけれども、別に困らないと思うんですね。例えば国連海洋法条約では、国際海峡には通過通航権というのが保障されています。通過通航権の中では、例えば潜水艦の潜航を含む外国の軍艦の通過も認められるんです。ですから、別に十二海里を主張してもそこは問題ないし、あるいは大隅海峡とか対馬海峡は、別に、そこが領海になっても、近隣に代替航路があるので、そもそも国際海峡にする必要もないということなんですね。

 もっと言えば、インドネシアとかマレーシア、シンガポールに挟まれたマラッカ海峡、今のこの特定海域以上に非常にすごく世界中の船が通るところですけれども、このマラッカ海峡の沿岸三か国はいずれも領海を主張しているので、マラッカ海峡は三か国の領海になっているんです。

 また、宗谷海峡では、ロシアは領海の幅を我が国との間の中間線までにしていて、領海の主張を、日本は三海里にとどめているけれども、でも、ロシアは領海を中間線まで主張しているんです。ですから、日本とロシアで非対称的な扱いになっている。

 ですから、当分の間と言っておきながら二十年以上たっているんですから、これは、私、先ほどの日本が海洋国家として云々というのは理由に全くならないと。マラッカ海峡でさえ領海に入っているんですから。

 いかがですか。見直すおつもりはありませんか。

小此木国務大臣 様々な議論が、委員のお考えもありましょうし、その議論を封じるつもりは全くございませんけれども、現在、考え方の結果として、広げる思いはございませんで、先ほど申し上げた答弁のとおり、構えてまいりたいと存じます。

 ただ、海洋そのものについては、やはり無限の可能性を秘めておりますので、我々、国会として、議論することが全く不利益なことでないということもつけ加えたいと思います。

大西(健)委員 ここで、今のところ見直すつもりはないとおっしゃったので、これ以上議論しても進まないのかもしれませんが、例えば、二〇〇〇年ですけれども、中国の海軍の艦船が我が国を挑発するように津軽海峡を一往復半して通り過ぎた、こういう事例がありました。でも、これは公海になっているために、我が国はこうした行動に対して、なすすべもなく黙って見ているしかない。やはりこれは私はおかしいと思いますよ。

 そもそも、当分の間とついているわけですから、これは見直す前提なんですから、今日はこれ以上言いませんけれども、是非ちょっと考え直していただきたいというふうに思います。

 それで、対馬の話に戻るんですけれども、麻生さんが首相のときに、韓国資本による対馬の不動産買占めについて、土地は合法的に買っている、悪いとは言えないと問題視をしない発言をされていますけれども、政府としてこの見解というのは今も維持されているのか、大臣にお伺いしたいと思います。

小此木国務大臣 麻生内閣元総理大臣、今の副総理ですが、御指摘の発言に至った背景、その事情、全体の文脈が必ずしも明らかでありません。たまにやはりよく分からないときがあるんですけれども、あの人はね。一般に、関係法令に従って適正に行われた不動産の購入については、これを見る限りでは特段問題はないと考えます。

 その上で、我が国の防衛関係施設等の周辺や国境離島等で外国資本が土地の買収を行っていることは、安全保障の観点から長年問題視されてきた課題であり、国会や地方議会でも議論をされてまいりました。

 政府において、こうした社会的な要請等も踏まえ、土地の利用、取得により安全保障上重要な施設や離島の機能阻害行為が行われるというリスクに対応することを目的として、本法案を取りまとめました。

大西(健)委員 これは非常に根本的な、この法案に関わる問題だと思うんです。

 土地を買うだけだったら合法的にやっていれば問題がないということについて、ただ土地を買うだけであれば問題ないということであれば、例えば、島のほとんどとか、離島のほとんどとか、極端な話、島丸ごと外国人に買われても今回の離島機能を阻害する行為には当たらないということで間違いないか、政府参考人にお尋ねします。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 機能阻害行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、どのような行為が機能阻害行為に当たるかを一概に申し上げることは困難でございます。

 その上で、単に土地等を購入すること自体は、当該土地等の離島機能を阻害する行為の用に供する行為とは言えないため、勧告や命令の対象とはならないと考えております。

大西(健)委員 そうなんですよね。だから、先ほど来挙がっているように、低潮線近傍の土地等の形質変更とか、そんなことをしないで、ただ買うだけだったら、これは阻害行為にならないんです。

 次の資料を見ていただきたいんですけれども、新聞記事です、対馬の韓国化なおという記事ですけれども、対馬は人口が三万人ですけれども、平成三十年の韓国人観光客は年間四十一万人を超えた。当然、お店は韓国人相手になりますし、看板の表記もハングルになってしまう。一方で、コロナで今、観光客はもちろん激減しています、激減していますが、この記事に書かれているとおり、韓国資本による土地買収は続いています。地元の人たちが何を心配しているかというと、高齢化や過疎化の進展によって日本人がいなくなり、このままでは対馬は韓国になっちゃうんじゃないかということを心配されているんです。でも、このことはまさに止められないんですね、この法案では。

 そこで、改めてちょっと大臣にお聞きしますけれども、国の三要素、これは何ですか。国家の三要素、大臣。クイズをするつもりじゃないので、別に、あれでしたら。

小此木国務大臣 領土、領海、領空と心得ます。

大西(健)委員 正確には、領土、国民、主権なんですけれども。

 そこで、次のページを見ていただきたいんですけれども、次のページ、憲法研究という学会誌に載った日本大学の東裕先生の論文です。線を引いた部分ですけれども、「国土の一部に外国人の居住区が形成され、その外国人に対して属人主義に基づき所属国の法律が適用されるような場合、その地域ではその国の主権の作用が阻害(部分的に排除)されることになる。」というふうに書かれているんですね。

 つまり、先ほど来言っているように、島のほとんどの土地が外国人所有になっても、別にそれ自体が阻害行為ではないんですが、でも、そこにまた、住民の多数が外国人になった場合に我が国の主権の一部が制限される可能性があるということが、私、ここに書かれているんじゃないかというふうに思います。

 つまり、さっき言った国の三要素は領土、国民、主権ですけれども、土地の大部分が買われて、そこにいる人たちの大部分が外国人になって、そして一部にそういう居住区ができた場合には、主権の一部が奪われるということが起こり得るんじゃないか、日本の中の一部が外国人になるということになってしまうんじゃないかと私は思いますが、小此木大臣、いかがでしょうか。

小此木国務大臣 失礼しました。改めて、領土、国民、主権と直させていただきます。

 御質問の趣旨がどういうことですか、間違っていたら申し訳ありませんけれども、一般に、国家は、その領域内で主権を有しており、属地的に、その領域内にある者には、外国人を含め、その国の法令が適用されます。したがって、我が国の領土内においては、どのような地域であっても、外国人を含むあらゆる者に我が国の法令を遵守していただくことになります。

 いずれにせよ、政府としては、我が国の主権を守ることが最大の責務と考えております。一般に、当該他国の同意なくして公権力の行使と言われるような行為が行われれば、主権の侵害になると考えます。

 いずれにせよ、政府としては、我が国の主権を守ることが最大の責務と考えます。

大西(健)委員 先ほどの東先生の論文の文章の最後のところですけれども、中華人民共和国国防動員法の制定により現実的なおそれとして存在する、同法は、在外中国公民に対しても適用が予定されているからである、その場合、日本に在住する中国人は日本法よりも中国法に従うことになるからであると。ですから、属人的に法が適用されて、そこに居住区ができれば一部の主権が侵害される可能性があるというふうに私は思っています。

 かつ、それは仮定の話だろうと言うのかもしれませんが、何でこんなことを心配するかといえば、平成二十年の七月に、少し前ですけれども、大韓民国国会で五十人の国会議員が対馬は韓国の領土であるとする決議を出している、こういう事実があります。しかし、今私が指摘しているような対馬の韓国化に対して、今回の法案は調査とか利用を規制する内容ですから、残念ながら、この法案は私は無力だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小此木国務大臣 無力か無力じゃないかというのもこれまで答えてまいりましたが、他国の立法府の動向の一々については政府としてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、対馬が我が国固有の領土であり、韓国政府も対馬を同国の領土として認識していないことは明らかであります。

 その上で申し上げれば、本法は、重要施設等の機能阻害行為を防止することを目的として、その拠点となり得る土地等の利用実態を調査した上で、重要施設等の機能を阻害する行為が認められた場合に勧告、命令等の措置を講ずるものであります。

 規制の在り方については、有識者会議の提言を踏まえ、あらかじめ規制の基準や要件を明確に定めることは困難であることから、本法案では私権制限の程度が強い取引規制は導入しないとしたところでございます。

大西(健)委員 もちろん、外国人の所有を規制するのが難しいからこういう法案に至っていることを私は重々理解した上で、でも、結局、それができないと、一番心配していることは解決されないんじゃないか。あるいは、例えば極端な例、尖閣は私有地だったけれども国が買ったわけですよね。じゃ、丸々外国人が買った場合、どうなるんだろうかということだというふうに思います。

 私は、繰り返して言いますけれども、本法案の最大の問題というのは、この法案では、今私が言ってきたような国民の不安とか懸念の解消にはつながらないというか、応えられないというところにあると思います。

 それを最も鋭く指摘しているのは、実は公明党の前衆議院議員の漆原先生です。

 漆原先生は「うるさん奮闘記」というブログを書かれているんですけれども、その中にこういうことを書かれています。調査の結果、X国の工作員による土地買取り事案が判明したという例を挙げて、事前届出を行わず土地を売却しても、罰則の適用はあっても、所有権は有効に移転するので、工作員の土地買収は妨げることができない、また、国による買入れ要求も、所有者の応諾義務がないために、やはり工作員の土地取得は妨げることができない、こういうふうに指摘されています。

 そこで確認ですけれども、届出違反でも民法上の所有権移転の効力は有効であるということで間違いないか、また、国による買入れ要求に対する応諾義務がないということも間違いないか、この点について政府参考人から明確に御答弁いただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 法第十三条に基づく事前届出は、特別注視区域内の土地等の権利移転の実態を随時把握するための措置でありますことから、仮に事前届出義務に違反した場合であっても、私人間で締結された契約の効力に影響を与えるものではないというのは御指摘のとおりでございます。

 また、法第二十三条の規定は、国に対して、国が適切な管理を行う必要があると認められるものについての買取り等についての努力義務を定めるものであることから、土地等の所有者に対し買取りの応諾義務を課すものでないという点も委員御指摘のとおりでございます。

大西(健)委員 今明確な答弁がありましたけれども、是非ここにいらっしゃる委員の皆さんに御確認いただきたいと思います。まさに、所有権は、罰則が適用されたって、有効に移転してしまうんです、残念ながら。かつ、買取りをするといっているけれども、国が買取りをしようとしても、相手が応諾しなければ、いや、売らないと言えば、これは買い取ることもできない。つまり、この法案は、その部分においては、少なくとも、残念ながら無力なんです。

 もう一つ申し上げますけれども、今日も、理事会で配られて、先ほど来話に出ていますけれども、注視区域が四百数十、特別注視区域が百数十、国境離島が四百八十四、有人国境離島地域離島が百四十八という数字が出ていましたけれども、調査の対象になる区域というのは膨大な数になるというふうに思われます。

 内閣府では、新たに今回、定員・機構要求をされると聞いていますけれども、ただ、北海道から沖縄まで、離島を含めて、これだけの数を調査するというのは、内閣府の職員だけで現地・現況調査をするのは不可能だと思います。

 そこで、先ほど篠原委員の質問の中でもちょっと中山副大臣の答弁は曖昧だったんですけれども、私が確認したいのは、自衛隊員が現況調査の協力を依頼を受けてやるということが可能性としてあるのかないのか、これははっきり答えていただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 本法案に基づく調査としては、不動産登記簿等の公簿の収集、土地等の利用者等からの報告徴収、現地・現況調査がございます。これらのうち、公簿の収集及び報告徴収については、内閣府に新設する予定の部局が一元的に実施し、情報の管理も行うことを想定しております。

 一方、現地・現況調査については、必要に応じて、重要施設等の所管省庁及びその地方支分部局に協力を依頼することも想定しておりまして、詳細は検討中でございます。

 具体的な協力の在り方については現在検討中でございますけれども、必要に応じて、防衛関係施設を所管する防衛省の職員の方に協力を依頼することはあり得るものと考えております。

大西(健)委員 それは当然あり得るんですよ、指定されるのは自衛隊の施設とかが多いわけですから。そうすると、善良な市民が、一定の区域に住んでいるだけで、自衛隊の制服だとか隊服を着た人がピンポンといってやってくるというのを、皆さん、ちょっと想像してみてください。それでも、それは別にやましいところがなかったら、悪いことをしているわけじゃないんだから、調査を受けても別に問題ないじゃないかと言われるかもしれませんけれども、何にもしていない善良な市民がそういう調査を受けること自体が私は負担になるというふうに思います。

 漆原先生は、この点についてもこういうふうに言っています。怪しい土地をすぐに調べられるから公安調査庁も喜んでいると報じています、いずれにしても、調査を名目とした一大組織ができ上がり、私は、こちらの独走の方が心配でなりません、こういうふうにブログで書かれているんですね。あるいは、漆原先生は、こんなきつい表現も使われています。まるで戦時下を思わせる民有地等の規制であるというふうに言われているんです。

 この調査について、何にもやましいところがなければいいじゃないかと言われるかもしれませんが、繰り返しになりますが、何にもしていない善良な市民がいきなり訪問を受けて調査をされるということ、あるいは、公安調査庁とか関係機関も含めて、それがどんどん暴走していくんじゃないか、こういう懸念に関して、大臣、どのようにお答えになりますか。

小此木国務大臣 この調査ですが、安全保障上のリスクのある注視区域内にある土地等の利用状況を把握するため、必要最小限で、不動産登記簿等の公簿の収集、土地等の利用者等からの報告徴収、現地・現況調査を行うものであります。

 このうち、公簿の収集及び現地・現況調査は、内閣府が主体的に行うものであり、市民に具体的な負担を課すものではございません。また、報告徴収についても、土地等の利用者の負担に配慮するという観点から、公簿の調査の結果、なお必要があると認めるときに限り行うこととしております。

 このため、本法案の対象区域で通常の生活を送る住民の方々や事業活動を行う企業にとっては、この調査によって負担が生ずる可能性は小さく、御指摘の過度の負担は生じない、こう考えております。

大西(健)委員 それはどうなのかは、ちょっと今の時点では判断しようがないんですけれども。

 繰り返しになりますけれども、私も、党内でも、慎重論から賛成論、いろいろな意見があって、いろいろな人の意見を聞かせていただいたり、いろいろなものを読ませていただきましたけれども、一番すとんときたのがこの漆原先生のブログなんです。それは、つまり、この法律では、先ほど来言っているように、対馬の住民の皆さんが持っておられるような不安とか国民の皆さんが心配しているようなことを防ぐことはできない、一方で、目的達成のための調査は、善良な市民が対象となり、国家から理由なき調査を強いられる点で弊害の方が大きい。つまり、目的と、この法案が釣り合っていなくて、この法案によって新たに起こる調査の弊害の方が大きいというんです。これは一番分かりやすいお話じゃないかなというふうに私は思っています。

 繰り返しになりますけれども、いろいろな立場の方がいらっしゃいますが、私は、外国に日本の領土が静かに侵食されるのを止めるべきだという立場です。でも、この法案ではそれが防げない。防げないのに、国民はデメリットだけ受けることになると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

小此木国務大臣 最初から申し上げているのは、今、この法律では防げないということをおっしゃいましたけれども、そもそもといいますか、安全保障上のリスク、そして調査をするということについての、いわば私権を制限するという意味での意見をそれぞれお持ちの方々が、この委員会を通じて様々な議論を述べられました。でも、それは、今日の議論の場でも申し上げましたけれども、昨日や今日始まったことじゃないんです。その不安、懸念、リスク、こういったものが、安全保障上の観点からやはり取り除かれなければならないということが私たちに与えられた使命だとも感じ、この法律案を提出させていただきました。

 何とぞ慎重審議、あるいは速やかに御審議をいただいて、結論を出して、その調査に取りかかりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 私は、実態をちゃんと把握するということが重要だと思うんです。そもそも実態さえ把握されていなかったときがあるし、そして、実態は把握したけれども、先ほど来の議論だと、立法事実に当たるような防衛上の問題があったようなところはなかったみたいなことも一方であるので、まずそこはしっかりやるべきだと思いますが、繰り返し言いますけれども、この法案で、一番国民が不安に思っているようなことは残念ながら防げない、でも、調査という新たな国民への負担が今回この法律によって出てくるということで、目的と手段が釣り合っていないというのがこの法案の私は最大の問題だというふうに思うんです。

 最後に、少しだけ時間があるので、対馬の問題に戻ります。

 有人国境離島地域特別保全措置法という法律がありますけれども、この法律の目玉は離島住民の航空運賃とか航路運賃を引き下げるということなんです。ところが、高速船の料金が安くなったことで、対馬の人たちが日帰りで福岡に行って、福岡で買物をしたり美容院に行って戻ってくるということになってしまって、逆に島の商店街の売上げが下がっちゃったみたいな話があるそうです。

 本土の人が対馬に気軽に来れるような制度にしないと、島の繁栄にはつながらない。高齢化や過疎化や経済疲弊が進めば、対馬の人たちも、別に本当は本意じゃないんだけれども、生きていくために仕方なく韓国資本に土地を売ることになってしまう。ですから、やはり島がどんどん経済的に疲弊していくことを何とか防がなきゃいけない。そこで、島を訪れる日本人観光客も交通費補助の対象にすべきじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。

一見政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の有人国境離島法に基づいて創設されております地域社会維持推進交付金でございますけれども、この補助対象でございますが、島民に限らず、島を訪問する観光客も対象となってございます。

 離島の経済にとって、やはり観光客を含む人の往来は非常に重要でございますので、具体的には、ダイビングなどの体験活動を含みます旅行商品、これを割引をすることによりまして、島民に対する運賃割引相当額を割り引くということで、実質的に島民と同等の交通費で島を訪れることが可能でございまして、対馬もこれは使っていただいております。

大西(健)委員 そこは、済みません、私の認識が不足していましたが、繰り返しになりますけれども、島がどんどん疲弊して過疎化、高齢化が進めば、本意じゃないけれども、進んでではないけれども、でも、生きていくために土地を売ってしまうということになってしまいますので、そこは、規制の話ではなくて、しっかり離島地域を応援していくということが必要ではないかということを申し上げて、私の質問を終わります。

木原委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

木原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高井崇志君。

高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井でございます。

 今日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 今日は岸本委員に差し替えで代わらせていただいて質問させてもらっていますが、今日も厚生労働委員会と並行してやっていまして、本来そちらの委員なものですから、ちょっとこの議論を全て聞けていませんので、もし重複した質問をしていたら申し訳ございません、お許しください。

 私は、この法案、大変重要な法案だと思っています。とりわけ、やはり経済安全保障、今日の骨太の方針にも入るということで、国民民主党も人権外交とこの経済安全保障というのはセットで非常に大事な取組だということで力を入れております。そういう意味では、この法案を作ることは賛成なわけですけれども、しかし、まだまだちょっと不十分な点が幾つかあります。

 大きく二つなんですけれども、一つは、外国資本、ここをやはりもうちょっと、もうちょっとというか、はっきりと明示した形で規制を私はすべきだと思います。そこを曖昧にした結果、今野党の皆さんから非常に厳しい批判を受ける事態になっているんじゃないかなと。私の周りの、私を応援してくださる方、人権派の弁護士さんとか、そういう方からも本当に厳しく言われます。天下の悪法だぐらい言われまして、そこは本当にちょっと法律のたてつけを私は間違ったんじゃないかなと、本来の目的と違うところでいろいろ指摘をされなければならなくなったと感じています。

 それからもう一つは、これはやはり対象に、森林、水源地あるいは農地、ここが入らない。これは、私、法務委員でもあるんですけれども、法務委員会で何度も、法務委員会で不明所有土地の法律があったものですから、そこで農水省、林野庁にも来てもらってやりましたけれども、結局、農水省には限界があるんですね。農水省の観点から、今、事後届出制にはしていますけれども、しかし、事前届出制にするには、その法目的がこの経済安全保障という観点では、農水省は、森林法はできませんから、やはりこの法律に私はきっちりと明記すべきだったと思います。

 ちょっとその二点を踏まえて、あと、国民民主党は修正案を出しておりますので、その点も含めて質問したいと思いますが、まず大臣にお聞きしたいと思いますけれども、いわゆる外国資本をなぜ入れなかったのかという点ですが、私が調べた限り、諸外国は、中国、インドネシア、フィリピンなんかは、外国人の土地の所有がそもそも禁止されている。あるいは、アメリカ、スイス、インド、シンガポール、マレーシア、韓国、ニュージーランド、こういった国々は、いずれも外国資本に対する、土地の所有に対して規制があるんですね。しかし、日本ではそこを、この法律の中では外国資本、外国人ということに対してできていない。それの理由はなぜですか。

小此木国務大臣 我が国が締結しているWTOのサービス貿易一般協定において、サービスの貿易に影響を及ぼす措置について、外国人や外国企業に対して日本人と同等の待遇を与える内国民待遇義務が規定されておりまして、土地取引についても留意する必要があると思っています。そういうふうにしてまいりました。

 各国による規制内容について我が国として答える立場にはありませんが、本法案の設計に当たっては、安全保障の観点からリスクのある防衛関係施設等の重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為については、その主体が外国人、外国法人であるか又は日本人、日本法人であるかにかかわらず適切に対処することが必要であるとの考えに基づき、内外無差別の枠組みとしております。

高井委員 何度もその答弁はされているんですけれども、やはり、まずは、先ほどGATSの話をされましたけれども、今私が挙げた国だってGATSの協定は当然入っているわけであります。

 これは、農水の元官僚の中部森林管理局長も務めた平野秀樹さんという方が、この問題、いろいろ寄稿などして、雑誌とか、いろいろ論文なんかも書かれていますけれども、この平野さんいわく、GATSにより三十近い条約を改正する必要があり、その作業が難しいからではないかという指摘をされております。

 あと、これは昨日、質問通告のときに事務方といろいろ話しましたけれども、これも、百五十か国ですかね、GATS、この国との再調整が必要になるということ。つまりは、要は、この作業が、何というか、面倒くさい、大変だ、そういうことですか。そういうふうに、答えから聞くと、取れるんですけれども、そうなんでしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 安全保障の観点から、土地の利用をどのように管理すべきかとの問題は、御指摘のGATSとの整合性も重要な論点の一つであったというふうに承知をいたしております。

 政府といたしましては、昨年七月の骨太方針二〇二〇において、必要な措置を講じる方針をお示しし、これを踏まえ、昨年、小此木大臣の下に、国土利用の実態把握等に関する有識者会議を開催いたしまして、この論点も取り上げさせていただいたところでございます。

 この有識者会議の提言においては、我が国の法律に基づいて設立された会社であっても、実質的な所有者や支配者が日本人ではないケースもあり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることではないとされたところでございます。

 今般の法案は、この提言も参考としつつ、安全保障上のリスクとなり得る土地の利用等に関し、土地の所有者や利用者の国籍を問わず、内外無差別の形で適切に対応していく必要があるとの考え方の下、取りまとめたものでございます。

高井委員 その答弁も何度も聞いているんですけれども。

 ただ、確かに、分かりますよ、その法人などがダミー法人というのか、実質的な所有者が外国人、外国法人であっても、日本法人を装うことは可能ですし、しかし、それをやはりどう排除するかとか、それはまた別なやり方で法の手当てをすべきなんじゃないですかね。

 必ず皆さんが言うこの有識者会議、去年の十二月二十四日、これを私も読ませていただきましたけれども、しかし、この有識者会議では、「はじめに」の「背景・経緯」というところで、はっきりこう書いていますね。

 国境離島や防衛施設周辺等における土地の所有、利用をめぐっては、かねてから安全保障上の懸念が示されてきた、経済合理性を見出し難い、外国資本による広大な土地の取得が発生する中、地域住民を始め、国民の間に不安や懸念が広まっていると。例えば、長崎県の対馬とか、北海道の千歳の例が書かれていますけれども、はっきり「経済合理性を見出し難い、外国資本による広大な土地の取得」、これが、特に森林なんかで多いわけですけれども、やはりそこが一番の国民の不安であって、そこが、まさに「背景・経緯」のイの一番に書いているにもかかわらず、だんだん検討が進んでいくと、今おっしゃった内外無差別原則なるものが出てきて、急に何か、余り、六行ぐらいしか書いてないんですね。安全保障の観点から土地の不適切な利用の是正又は未然防止が目的であり、土地の所有者の国籍のみをもって差別的な取扱いをすることは適切ではないと。何で適切じゃないかが分からないですよ、これだけでは。

 また、専ら外国資本等のみを対象とする制度を設ければ、GATSのルールにも抵触すると。

 やはり、これが本音、GATSを調整するのが難しい、できないという。できないことはないと思うんですね、これはほかの国もやっているわけですから。やはり、そこをやらずに、内外無差別の原則を前提とすべきだという、この有識者会議、どういう理屈で内外無差別がいいのかということをほとんど書いてなくて、いきなり唐突に出てくるわけです。

 私、実は、三月二十四日の法務委員会で、上川法務大臣に聞きました。

 外国人の土地所有、取得というのは、日本の法制上、そういう規制ができるんですかと聞いたら、大臣はこう答えました。「特定の行政目的に基づく、その達成に必要な範囲で、外国人の土地取得について規制を設けることはあり得る」と。できるということですね。

 じゃ、その特定の行政目的に基づく、特定の行政目的の中に安全保障上の目的というのは入りますかと言ったら、それはもう当然入るという答弁でした。

 つまり、民法を所管する法務省、あるいは民事法制を所管する法務大臣としては、外国人が、外国資本が土地を所有する、取得する、利用する、その規制というのは、別に日本の法制上もできるんですよ。ということは、やはりGATSの問題があるからなんじゃないですか。なぜ、法制上できるのに、外国資本、外国人の土地取得を規制しないんですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 今、高井委員お触れになりました、三月二十四日の法務委員会での高井委員の御質問に法務大臣が御答弁されたものだと承知をしております。

 御指摘の答弁におきまして、上川法務大臣は、委員おっしゃいましたとおり、「特定の行政目的に基づく、その達成に必要な範囲で、外国人の土地取得について規制を設けることはあり得るものと考えております。」と述べられ、さらに、もっとも、その場合には、土地を所有する外国人は、土地を所有する日本国民と同様に国内外に広く存在しているところ、御指摘のように、所有者不明土地の発生予防の観点から外国人のみを対象として土地の取得を規制することに関しては、制限目的の正当性や、また、制限手段の必要性、合理性の観点から、より慎重な検討が必要になるものと考えられますとも述べられたと承知をしております。

 また、上川法務大臣は、この法律案に関しまして、「外国人のみに対象を限定せず、防衛関係施設や、また、国境離島等の機能を阻害する土地等の利用を防止することにより安全保障の確保等に寄与することを目的とする法案の検討、これが今内閣官房においてされていると承知をしておりますが、法務省といたしましても、民事基本法制を所管するという立場から、引き続きその検討に協力してまいりたいと考えております。」というふうに言及されたと承知をしております。

 繰り返しになりますけれども、安全保障の観点からリスクのある防衛関係施設等の重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為については、その主体が外国人、外国法人であるか又は日本人、日本法人であるかにかかわらず適切に対処する必要があり、本法案は内外無差別の枠組みとしたところでございます。

高井委員 それは、上川大臣だって閣議に参加してサインもしているわけですから、閣議決定している法律に真っ向反対することを言うわけがありません。

 しかし、大事なのは、だから、この法律にも協力するなんて当たり前の答弁じゃなくて、その前段で言った、やはり、特定の行政目的に基づく、達成に必要な範囲でという限定をかけていますけれども、でも、これは非常に重要な答弁だと思いますよ。

 やはり、必要な範囲であれば、しかも、特定の行政目的がちゃんとあれば、外国人の土地所有規制もできるんだということをはっきり法務大臣は答弁しておりますので、是非、この法律で今からそこを変えるというのは難しいですけれども、今後の検討で、私はやはり、国民の皆さんが心配しているのはそこですから。

 経済安全保障というのは、そこで何も、確かに日本人だって基地の周辺で何か悪巧みをしようとする、でも、それはこの法律ですかねという気がするんですよ。それは別に、日本国民のことを取り締まるのは警察の別な法律でやるべきで、これはやはり、経済安全保障という観点でいえば、出発点は外国資本、外国人に対する、よく分からない理由で土地がどんどん買われている、経済合理性が見出せない形で土地が買われているというのはやはり気持ち悪いし、国民としてはそれは不安だし、安全保障の観点から問題だというところが出発点ですから、やはりそこにしっかり着目をした法律を改めて是非検討していただきたいと思います。

 その上で、今回の修正ということでいえば、私は、国民民主党が出しておりますけれども、例えば、土地等利用状況調査の対象に実質的な利用者に関する情報を追加する。このことによって、実質的に誰が利用しているかというのは、さっき言ったダミー法人みたいなものをちゃんと調べて、その背後には外国資本があるということも把握することができる。

 あるいは、第十三条の事前届出事項に前の所有者の氏名等を追加する。これも前の所有者、例えば外国資本が持っていて、ちょっと届出の前になって届出で名前を出すのがまずいから別の日本法人にちょっと売却なりして、ダミーな形で間に入れて出すなんということを防げるわけです。

 そういうことを考えると、国民民主党が出している修正案というのは、大変、今からできる簡易な修正の中でこの問題を解決する非常にいい手法だと思いますけれども、採用していただけませんか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 本法律案は、現在、現にどんな方が所有したり利用したりしているかという実態を把握することすら必ずしも容易ではないという状況の中で、公簿の収集等を通じて、真の所有者がどなたで、それから、どのような利用目的、利用実態にあるかというのを調査することを主眼としておるところでございます。

 委員御指摘ございました、前の、前所有者あるいはその前の所有者といった氏名は、必要があれば不動産登記簿を収集することで把握することが可能ではないかと考えております。

 また、土地等の利用の実態を把握する上で真に必要がある場合には、それらに関し、現所有者に報告を求めることもあり得るかというふうに考えております。

高井委員 この法律を元々作る背景となった、この有識者会議でも、さっき言ったように、それが一番最初に出てきますから、是非そこの観点をもう一度よく思い返して、是非次の改正に向けて準備していただきたいと思います。

 もう一つは、やはり森林、水源地、農地、これをなぜ対象にしないのかということですが、これは是非大臣にお聞きしたいと思いますが、今、各自治体が、十八の道府県が、北海道が一番深刻なわけですけれども、水源地を守るための条例というのを定めて、いろいろ、法律ではない、今、日本の森林法でやっていること以上のことを条例で定めているんですね。

 とりわけ大事なのは事前届出制です。事後届出で、私は、これは何度も農水省にも、森林法で事前届出できないのかと言っても、やはり目的が違うと言うんですね。森林法は事後的に届けてもらって、その森林がどういうふうに管理されているかというのを把握するから、事前に別に要らないんですと。それはそうなんですよ。やはり事前に把握するためには、この経済安全保障という観点、だから、農水省の役人の方も、暗にこの法律でやってくださいというような、はっきりそうは言いませんけれども、そういう答弁なんですよ。

 であれば、私は、やはり、この十八の道府県が頑張って条例を作っていますけれども、本来、これは地方自治体がやるべき仕事じゃなくて、まさに経済安全保障の観点ですから国がしっかり法律で位置づける。そして、ちょうどこういう法律を作るんですから、この法律を作るときに、なぜ、水源地、森林が入っていないのかというのは、大変私は不思議でなりませんけれども、是非、これを法律で定めるべきだと考えますけれども、大臣の御見解をお聞かせください。

小此木国務大臣 おっしゃるように、現在、十八道府県において、水源地域の保全の重要性の周知等を目的として、水源地域における森林等の土地取引について事前届出の義務を課すことを内容とした条例が定められております。これらの条例は、地域の特性に応じて、水源となる森林等の保全を図る取組と考えています。

 一方、森林法については、現行の森林法において、国土の保全等を目的として、土地取得の際の事後届出、大規模な開発行為に係る許可制度等の措置が講じられています。

 有識者会議の提言においても、既存の措置があることを踏まえ、これらの土地を対象とすることについて、慎重に検討していくべきとされ、また、防衛関係施設の周辺や国境離島の土地は、まず最優先で制度的枠組みの対象とすべきとされたところであります。

 このため、本法案は、防衛関係施設等の重要施設の周辺や国境離島等を対象とし、森林であることをもって対象とはしないこととしておりますが、仮に重要施設の周辺や国境離島等において指定された区域内に森林がある場合には、本法案に基づく調査や勧告、命令等の対象となります。

 今般の法案では、安全保障に直接関係する防衛関係施設等の周辺や国境離島等を対象として、必要な調査、利用規制を行うものであり、まずは、これらの土地等について本制度をしっかりと執行していくことが国の果たすべき役割であると考えています。

高井委員 この答弁も何度も聞いているんですけれども、慎重に検討をしていくべきであるという答弁を何度も大臣もされているし、あと、答弁によっては、この有識者会議でそういう提言がなされていますと。私も、この有識者会議、読んでみますけれども、今、大臣が答弁したこととほぼ一緒ですよ。まあ、それはいいです、別に、有識者会議が言ったことを。だけれども、有識者会議で集まってやったらなぜ慎重に検討していくべきかということの説明が何にも書いてないんです。二行だけ唐突に、「これらの土地を対象とすることについては、安全保障の観点から、現行制度の運用状況、効果等を見極めた上で、慎重に検討していくべきである。」と。

 なぜ慎重に検討するかが全然この有識者会議の報告書を読んでも分からないんですけれども、これはなぜ慎重に検討する必要があるんですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の有識者会議の提言でございますけれども、提言にも書いてございますとおり、「土地の所有・利用に係る心配や懸念に関しては、森林(水源地)や農地を対象とした事例も指摘されている。」という形で、有識者の方々に明示的に御議論をいただいたという経緯がまずございます。

 その上で、先ほどの大臣の答弁と重なるところもありますけれども、有識者会議においても、これらの土地については、現行の森林法や農地法等によって、土地取得等の届出や売買に係る許可等の枠組みが整備されており、また、地域によっては、条例による管理が行われているところもあることから、後述する一元的な情報管理の取組と組み合わせることによって、不適切な利用を防止する効果が期待できる面もあると。

 こういう議論を経て、今委員お触れになった、慎重に検討していくべきというふうな提言となっているということでございます。

高井委員 ちょっと、今のはこの報告書を読んだだけですよね。これは報告書を読んでも全く分からないんですけれども。もうちょっとあるんじゃないですか、慎重に検討するとなった理由というか。もう一回お願いします。報告書を読んだだけではちょっと納得できません。

中尾政府参考人 恐縮でございます、重ねての答弁になってしまいますけれども、森林につきましては、現行の森林法において、国土の保全等を目的として、土地取得の際の届出等といった措置が講じられているということで、現行に何らかの制度があるということでございます。

 一方で、安全保障上の観点からの土地の管理については特段の制度がございませんで、有識者会議におきましては、まずは、防衛関係施設等の重要施設それから国境離島についてまず優先的に検討すべきというふうな形で整理されたということでございます。

高井委員 おかしいですよね。ほかに森林法とかがまずあります、それから更に重要なものが、基地とかそういう重要施設があるから、そっちを優先する、そこまでは分かりますよ。何でそれで慎重に検討になるのか。

 ちょっと、これは本当におかしいですよね。実際、政府の内部ではもうちょっとあると聞いていますけれども、何か、国会では答弁できないということのようですが、やはりここはおかしいですよ。

 この慎重に検討という言葉は是非しっかり説明していただきたいと改めてお願いをしておきます。

 それでは、そろそろ時間がなくなってきましたので、今回、この機能阻害行為が、国民民主党も、法律に明記すべきだと。例示をすべきだということは、これはいろいろな委員からも出てきていますが、なかなか、国会では幾つか答弁をいただいていますけれども、法文に例示できないならせめてこの場できちんと例示を、今まで国会で答弁したもの以外に、そんな、二つか三つぐらいしかしていないと思いますので、それ以外に、きちんと今明らかにできる範囲で、法律に書けなくてもいいですよ、今この国会の場で、機能阻害行為というのは具体的に何があるのか、しっかり例示を挙げてください。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 機能阻害行為として具体的に想定している行為については、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されるため、特定の行為を普遍的、代表的な機能阻害行為として例示することは必ずしも適当でないものと考えております。

 その上で、これまでの御答弁においては、重要施設の機能に支障を来す構造物の設置や、国境離島における低潮線近傍地の形質変更等の類型をお示ししたところでございますけれども、より具体的には、自衛隊のレーダーなどといった防衛関係施設に対する電波妨害、原子力関係施設に対する電波妨害、離島に関しまして港湾の施設の利用を阻害し得る土砂の集積等を想定しているところでございます。

高井委員 ちょっと十分じゃないですけれども、時間がありませんので、最後に大臣、一言。

 これは、私、さっき言ったように、天下の悪法とか現代の治安維持法だとか、いろいろ言われるんですよ、支援者の方から。そうじゃない、これは経済安全保障が目的であって、市民活動とか何か反対運動とか、そういうことを規制したり監視したりするものじゃないんだということをはっきりと大臣から明言してください。

木原委員長 小此木大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

小此木国務大臣 これまで述べてまいりましたが、単に外部から防衛関係施設を見ている場合ですとか、平穏に集会やその準備等を行っている場合について、機能阻害行為の対象として、本法案に基づく勧告、命令の対象となることは想定していないと答えてまいりましたけれども、その姿勢は崩さないでまいりたいと存じます。

高井委員 そのことを是非もっとどんどん言っていただかないと、本当に多くの方が心配していますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございます。

木原委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 立憲民主党の今井雅人でございます。

 法案の質疑に入ります前に、ちょっと一点だけ。

 ここの委員会でも何度も議論になっています、内閣参与、今辞められているので元内閣参与ですね、高橋洋一さん。最初に、さざ波ですとか笑笑という発言をしていて大変問題であるので、この委員会でしっかりと説明してもらいたいということでしたが、かないませんで、代わりに、官房副長官が聞き取りをしていただいて、答えていただきました。

 私たちは、私も、高橋さん、知らない仲じゃありませんけれども、またやるんじゃないかなと思って、ここでしっかりピン留めした方がいいなと思っていたんですが、やはり懸念のとおりの行動をされまして、今度は、日本の緊急事態宣言はへみたいなものだというふうにおっしゃられて、それで内閣参与を辞任されるということになりまして。本当に残念でなりません。これは、任命したのは菅総理ですから、菅総理の任命責任は非常に重いと思うんですけれども。

 ちょっと、本人がいらっしゃらないので、大臣に政府の一員として感想だけお伺いしたいんですが、まず、一つ間違っていると思うのは、総理に謝っているんですけれども、謝っている相手を間違えていますよね。こういう発言を受けて、自粛で困っている事業者の皆さんとか罹患された皆さんが怒っているわけで、その人たちに謝らなきゃいけないのに、迷惑かけたといって総理に謝っているって、これはおかしいですよ。

 その点は申し上げた上で、多分、日本はほかの国よりも感染が大したことないということを言いたかったんでしょうけれども、こういう言葉を使うというのは、当時は政府の参与という立場でおられたわけですから、そういう発言というのは、政府としてもやはりこれは問題だというふうに思うべきだと思いますが、大臣、政府の一員として、内閣の参与がこういう発言をされているということについて、御自分としてどう思われるか、そこだけ教えていただきたいと思います。

小此木国務大臣 政府の関係者を去られた方の話ではありますけれども、一般に、やはり、いろいろな状況の中で、客観的な状態を見るということはあったとしても、政治に携わる人間として、私もそうですけれども、やはりいろいろな、コロナ禍でなくても、様々な、人の命が瀕している状況というのはいろいろなところで、災害現場にも参ります、そういったところも、たくさんのところがありますので、そういったところでは私は言葉を選ぶということが必要だと。まあ、選ぶというか、探すというか。実際、出ちゃうこともあるんです、私なんかも。避難場所なんかを回っていても、言っちゃいけないようなことを。ただ、そういうことはしっかりと気に留めるということは大事なことであると思います。

今井委員 大臣がそういう御認識であることで安心しましたけれども、やはり言葉というのは、ある意味武器にもなるし、凶器にもなります。特に今、コロナ禍で本当に皆さんがぴりぴりしていらっしゃるときですから、特に言葉にはやはり気をつけていただきたい。政府の皆さんにもそのことをお願い申し上げておきたいと思います。

 法案の中身に入りたいと思います。

 産経新聞の報道について、ちょっと先ほどもう中尾さんが、午前中、僕の答弁を読まれていましたので、時間があったら後でやります。ちょっと飛ばします。

 それから、立法事実のところもいろいろと、金曜日の答弁で参考人と大臣の言っていることがちょっとそごがあったりしたので、きちっと整理が本当はしたいんですけれども、法案の中身でいろいろとお伺いしたいこともございますので、そちらを先にやらせていただいて、お時間があればまたそちらの方も一回きちっと整理をしたいというふうに思います。

 まず、質疑をする前に、私たちの考え方、既に同僚議員が何度もお伝えしていると思いますが、我々の考え方を申し上げたいと思います。

 私たちは、やはり安全保障に対しては、しっかり国を守るということで、妨害行為とかそういうものに対しては毅然とした態度を取っていくべきであるということはベースにありますが、その一方で、やはり私権の制限というか、特に一般の皆さんにいろいろな迷惑がかかったりいろいろな心配をかけるということは極めて抑制的じゃなくてはいけないと。

 ですから、本法案、本当は私たちの対案をきちっと作って出すべきなんじゃないかなとも思うんですが、時間の制約もありましたので、政府の原案をベースに修正という考え方で今臨ませていただいておりますけれども、入口のところはできるだけ緩くして一般の方に網目がかからないようにし、そして、出口のところはきちっと対応できるようにしていく、出口というか、いわゆる事案が発生したときですね、ということにしていきたいということで、政府の原案の中身を見ていると、やはりこのバランスが悪いなという印象を私は持っておりますので、その観点からいろいろと質問をさせていただきたいと思います。

 まず、第二条に関してですが、その機能を阻害する行為が行われた場合に、国民のいわゆる生命、身体、財産に重大な被害が、おそれがあると認められるもので政令が定めるいわゆる生活関連施設、これについて、今日、理事会でペーパーが出てまいりました。政令で定めることを検討しているのは、原子力関係施設と自衛隊が共有する空港の二類型であるということでございました。

 午前中の質疑で、原子力関連施設とは、発電とそれから核燃料、これに関わるものだということが分かりましたので、これはある程度はっきりいたしました。研究施設とかは入らないということです。

 まず、これは先週の後藤委員が指摘されましたが、ちょっと御答弁がないので確認したいんですけれども、有識者会議の提言の第十ページのところに、原子力発電所と軍民両用機能を有し得る空港等に加えて、国際海底ケーブルの陸揚げ局というのが例示として出されていますが、今回はこの三つ目のものがこの類型の中に入っておりませんが、これは含まれないということでよろしいんでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 海底ケーブルの陸揚げ局につきましては、有識者会議の方でそういったものも検討してはどうかという提言をいただいたのは事実でございますけれども、現時点において考えておりますのは御指摘ございました二類型でございます。

 海底ケーブルの陸揚げ局につきましては、この先、施行までに向けて、懸念の実態なども勘案しながらきちんと検討してまいりたい、このように考えてございます。

今井委員 その上で、こちらの方が実はとても重要だと思っているんですけれども、二番目に、政府としては、現時点において、生活関連等施設として国民保護法施行令第二十七条各号に掲げる施設のうち、一の一及び二、つまり先ほど御説明したものに該当する以外のものを定めることは予定していないと書いてあります。金曜日の質疑でも、鉄道ですとか放送局というのは、現時点では該当するということは想定していないという御答弁でしたが、この現時点ではという言葉に私はひっかかっております。

 今の質疑の段階ではそれは入らないということをこれは示しているんでしょうか。つまり、今後検討するときにこういうものも対象になり得るという余地を残した答弁だということですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたように、現時点では、鉄道施設でございますとかあるいは放送局などのインフラ施設につきましては、生活関連施設として政令で定めることは想定してございません。

 ただし、どのような施設を生活関連施設として本案の対象とするかにつきましては、この先の国際情勢の変化あるいは技術の進歩等に応じ、柔軟かつ迅速に検討を続けていく必要があるものと考えてございます。その結果として、将来的にそれらの施設を生活関連施設として政令で定めることはあり得るものと考えているところでございます。

 なお、政令の制定、改廃や個別の指定に当たりましては、審議会に諮問を行うことを法律で定めておりますので、政府のみの判断で行うということではなくて、適切に判断してまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

今井委員 今の答弁は非常に私は重要だと思うんです。先週の後藤委員の質疑のところで、現時点では鉄道施設、放送局などのインフラ施設については生活関連施設として政令で定める想定はしていないということでしたが、こういう鉄道や放送局も含めて、将来的にはこういうものも含む可能性はあるということを今御答弁されました。ですから、政令に全部委ねるということが非常に私たちは問題であるという問題意識を持っているんですが、まさにそういうことなんですよ。

 今、そういう時点で考えていなくたって、将来は状況によってはそこも対象になり得るということでしょう。それを白紙委任するのはちょっと私たちはやはりできないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、第三条。第三条に個人情報に十分配慮しつつということがありますけれども、確認のためですが、これは、個人情報の保護に、具体的にどういう点に配慮する、こういうことを想定された記述でございますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づく調査では、不動産登記簿や住民基本台帳等の公簿の収集などを通じまして個人情報を取り扱うこととしてございます。

 第三条の規定でございますが、これは行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の関係法令にのっとりまして、保護、管理に万全を期すことを確認的に規定させていただいているものでございます。

 本法案に基づく調査等につきましては、内閣府に新設する予定の部局が一元的に対応させていただくということを予定してございます。その調査で収集した情報につきましては、関係法令に基づき内閣府において適切に管理することとさせていただいています。

 なお、具体的な管理についてでございますが、例えばということで申し上げますと、集めた情報に対するアクセス権を限定するとか、あるいは紙媒体の資料につきましては施錠の上厳重に管理する等の措置を適切に講じてまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

今井委員 今の点なんですけれども、情報を集めるのは内閣府でできるチームということですが、それ以外の方たちに協力をお願いしたり委託をすることはあり得ますか。午前中でも自衛隊ですとか外部委託という話が出ていましたが、それはあり得るんでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、内閣総理大臣が、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときには、関係行政機関の長などに対しまして必要な協力を求めることができる旨を規定させていただいているところでございます。その上で、内閣総理大臣は、目的を達成するために必要があると判断させていただきました場合には、本法案に基づき収集した土地等の利用者等に関する情報について、関係行政機関等の協力を得つつ、所要の分析を行うこともあり得るものと考えているところでございます。

今井委員 やはり、ほかの人間が調査に関わる可能性もあるということですから、この個人情報を知り得る人たちの範囲がもっと広がるということなので、非常にここも懸念をされるんですけれども。

 そこで、その内閣のチームが収集した情報の扱いで、今ちょっと説明されましたが、例えばこの集めた情報を政府の中で、例えば内調ですとか公安ですとか、こういうところに対して情報を共有するということは、これはないですね。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 重ねての答弁になって恐縮でございますけれども、内閣総理大臣は、本法案の目的を達成するために必要があると判断させていただきました場合には、収集した土地等の利用者等に関する情報につきまして、関係行政機関等の協力を得つつ、必要な分析を行うということはあり得るものと考えてございます。

 個別の情報の分析に際しまして、いかなる機関にいかなる協力を求める可能性があるかということにつきましては、いわば調査の手のうちといいますか、調査の内部的な手法、方法に関する事項であると考えてございます。これらを明らかにすることによりまして、重要施設等の機能を阻害する行為を企図する者により対抗措置を講じられるおそれがあると認められますことから、この点につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思っております。

今井委員 大臣、ちょっと今の点をお伺いしたい。大臣は公安の担当でもありますので。

 私が申し上げたいのは、この法律の目的で集めた個人情報を、内調ですとか公安に対して別の目的で情報を共有するということは、僕はあってはいけないと思うんですよ。それはないですねという確認です。これは、公安の方も担当しておられるので、ちょっと大臣、お答えいただけますか、ここの部分は。(発言する者あり)いや、細かい話じゃないから、ちょっと参考人、ここは大臣に答えてもらってください。僕は余り細かいことは大臣に聞きませんけれども、これはやはり、ここはやらないとちゃんと言っていただかないと、怖くてやっていられないですよ。

小此木国務大臣 一般論として、内閣総理大臣は、本法案の目的を達成するため必要があると判断した場合には、本法案に基づき収集した土地等の利用者等に関する情報について、関係行政機関等の協力を得つつ、所要の分析を行うことはあり得るということでございます。

今井委員 ちょっと驚くべき答弁がいろいろ続いているんですけれども。あり得るということでありまして、ちょっとそれは大変僕は問題だというふうに、これは答弁が残りますから、非常に危ないと思います。

 続けてまいります。

 この三条のところで、先週、後藤委員の方から、破防法の規定を一つの参考にして、住民運動のようなものを排除するような、そういうものは入れませんよというような記述を入れたらどうかということを提案をさせていただきました。

 これに対して中尾参考人がお答えになった答弁が、まるでとんちんかんだと僕は思うんですけれども、御指摘のいわゆる破防法と本法律案とは趣旨、目的も違いますので、一概に比較することもいかがかとは存じますけれども、まず、第八条の報告の徴収につきましては、関係行政機関に情報の提供を求めた結果、土地等利用状況調査のためなお必要があると認めるときはという形での一種の制約もかかっているところでございますし、また、土地等の利用者に関し、土地の利用に関してというふうな限定もつけているところでございますと。

 つまり、土地の利用ということに限定しているので御心配には及びませんということを述べられているわけですけれども、私たちが心配しているのは、例えば、住民運動とか反対運動でその土地を利用しているときにそういう対象にならないんですかという質問をしているわけです。それに対して、土地の利用に関してという限定をつけているから大丈夫だというのは、まるで説明になっていないですよね、土地の利用に関して話しているんですから。

 ですから、そういうものを入れたらいかがですかということを申し上げているんですけれども、この答弁は全く説明になっていません。ですから、ここはまた別の説明をしていただきたい。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました、例えば、反対運動などで想定されます、単に外部から防衛関係施設等を見ている場合でありますとか、あるいは平穏な形で集会等を行っている場合などにつきましては、いずれも施設機能を阻害するものではないと考えられますことから、本法案に基づく措置の対象とならないことは明らかであろうと考えてございます。

 一方で、予見可能性の確保をするという観点から、想定される機能阻害行為につきましては、閣議決定させていただきます基本方針において可能な限り具体的に例示するということにさせていただいております。この点について、機能阻害行為に該当しないと考えられる行為につきましても、この基本方針において例示するということを検討させていただきたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

今井委員 今の御説明ですと、機能阻害行為に当たらなければそうだということなんですけれども、先週からの質疑の中で、機能阻害行為というのはどういうものですかという質問に対して、はっきりと説明されていませんよね。まあ、はっきりというか、詳細には説明しておられませんよね。ですから、そういうものに入らないというふうに今おっしゃられますけれども、しかし、機能阻害行為がどういうものだということを詳細にここで説明をされていない以上、そういうものに入らないということが私には理解できないんです。

 皆さん、今、入らないとおっしゃっているだけで、それはどういう根拠なんですか、どうして阻害行為に入らないんですかというのが分からないんです。ですから、阻害行為というのはどういうものかというのをしっかりとここで詳細に説明をして、全く政令と同じである必要はないですけれども、そこは住民が入らないということがしっかり分かるような答弁をしていただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 機能阻害行為につきましては、法律上、条文として定義をさせていただいているところでございます。そうした条文の定義と比較いたしまして、御指摘のございました、反対運動等で想定されております、外部から防衛関係施設を見ている行為でありますとか平穏な形で集会を行っているようなケースにつきましては、施設機能を阻害するというものとは考えられないというふうに考えてございます。

 しかしながら、重ねての答弁になりますけれども、予見可能性を確保させていただくという観点から、閣議決定させていただきます基本方針におきまして、この機能阻害行為に値し得る行為とともに、該当しないと考えられる行為につきましてもできるだけ分かりやすい形で例示をさせていただく、こういう方向で検討させていただきたいということでございます。

今井委員 今後提示しますという御答弁なんです。だから、今は答えられませんということですよね。ですから、私たちは政令に委ねるのは大変問題があるということを申し上げているわけです。そうじゃないと、じゃ、どういうものが外れるのかというのが今分からないわけです。それは国会の議論にかからないんです。役所の方で勝手に決められ、勝手にと言っちゃいけないけれども、独自に決められて、国会には諮られないんですね。そういうものを私たちは、はい、そうですかというわけにはちょっといかないということをここで申し上げておきたいと思います。

 二条、三条が終わりまして、今度は四条へ行きます。

 四条に、注視地域、特別注視区域の指定に関して、経済的社会的観点から留意する事項を含むということがありますが、この文章が私はどうもよく分からない。経済的社会的観点って何ですか、具体的に言うと。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 注視区域でありますとか特別注視区域の指定に際しましては、我が国の安全保障と自由な経済活動の両立を図りますために、指定に伴います区域の社会経済活動への影響を安全保障上の要請に基づく合理的かつやむを得ない範囲に限定する必要があると考えてございます。

 御指摘ございました経済的社会的観点から留意すべき事項ということに関しましては、今後閣議決定させていただきます基本方針の中で明らかにさせていただきたいと考えてございますが、現時点では、例えば、重要施設の周辺に密集市街地が形成されている場合、当該区域における社会経済活動への影響でありますとか、あるいは、施設機能の阻害行為の兆候等の把握の困難性など、重要施設の周辺の実情でございますとか、あるいは、重要施設自体の形状でありますとか周辺区域における地形、国有地の所在状況などを考慮した上で、区域指定の要否、あるいは区分、範囲を適切に判断するということを想定させていただいているところでございます。

 以上でございます。

今井委員 この中身を入れたのは実は問題だと私が思っている理由は、私たちは、入口は緩くしよう、ただし、事が起きたときはしっかり対応しようということなんですけれども、これは、入口のところで指定されていないと、実際事案が起きても何もできなくなっちゃうんですよ。だるまさん状態です。

 先日、杉田さんかな、が質疑されていましたけれども、経済的観点と安全保障の観点、どっちが大事なんですか。本当に安全保障上大事なところであれば、経済的観点や社会的観点より、まずそこは指定しておかなきゃいけないんじゃないんですか、いざというときのために。それは事後でちゃんと対応するために必要な措置なんだと私は思っているんです。でも、それは何となく、密集地で地価にも影響があるし、ちょっとここは本当は危ないんだけれどもやめておこうかというような判断が働いたら、これは大変問題だと思います。

 特に、例えば、例を出して悪いですけれども、市ケ谷なんて本当に自衛隊の、防衛省ですから、一番の拠点ですよね。そこの周りのところを経済的観点で外したら、本当に大丈夫ですか。

 だから、私たちは、入口は緩くしておくけれども、本当に危ないときは、いざというときにはやれるように、ちゃんと指定をしておいた方がいいんじゃないかということを申し上げているんですけれども、いかがですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました安全保障と経済との関係についてでございますけれども、私どもといたしましては、我が国の安全保障と自由な経済活動の両立を図っていくということが重要である、こういう基本認識に立ちまして本法案を取りまとめさせていただいたところでございます。

 続きまして、経済的社会的観点から留意する事項として、市街地の取扱いについても御指摘を賜りました。

 市街地につきましては、経済的社会的観点からの留意事項の一つとして検討させていただいているところでございますけれども、その点のみを理由といたしまして、例えば特別注視区域の指定から除外するということは考えてございません。

 なお、密集市街地の形成や分布、経済活動への影響に関しましては、例えば当該区域におけます人口密度でございますとか事業者数等を総合的に勘案することを考えさせていただいているところでございます。

 以上でございます。

今井委員 ここは本当はよく詰めたいんですけれども、まだ聞きたいことがいっぱいあるので指摘だけしておきますが、やはり本当に危ないところは外しちゃいけませんよ。何があっても外しちゃいけないと僕は思います。

 それで、第三、四と来て、今度は第五条に行きたいと思います。

 第五条なんですが、これも今日ペーパーができて、さっき、阿部知子さんのところの質疑で、ちょっと私はやはり納得がいかないことがございまして。

 まず、国境離島のところで合計四百八十四島、それから有人国境離島法で合計百四十八島ということですが、先日の中尾参考人の答弁は、国境離島四百八十四という数は既に公表させていただいていますけれども、この島のリスト自体、既存のものがない、存在していない、有人の方は既存のリストがあるということでしたよね。

 先ほどは、今作成中だとか、元々名前の並んだものはあるとか、何か説明になっていないですよ。

 この答弁を変えられるか、先ほどのやつを修正されるか、ちょっと正しい形に直してください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 私、午前中この委員会で答弁させていただきましたが、四百八十四という実数をカウントさせていただきました、作業のベースとなります資料としてのリストは存在するということでございます。

 先般の答弁では、私どもの政府参考人の方から、島のリスト自体、既存のものがないということを答弁させていただきました。これは、公表を前提として一覧性のある形で整理させた既存のリストはその時点では存在しないということを答弁させていただいたものでございます。

 いずれにいたしましても、ちょっと不明確な答弁ということで、御迷惑をおかけしたことにつきましては、おわび申し上げたいというふうに存じます。

 以上でございます。

今井委員 ちょっと詭弁ぽいですけれども、修正されましたから、その答弁を今上書きということにしましょう。

 このリストに関しては理事会の協議事項になっておりますけれども、リストが存在するかしないかということは理事会協議事項じゃないので、これは政府の答える話ですから答えていただきたいんですけれども。

 あわせて、防衛関連施設のところで、注視区域に合計約四百数十か所、それから特別注視区域に約百数十か所あるというようなペーパーをいただいておりますが、あと、海上保安庁の施設が合計百七十四か所、これはもうピンポイントで百七十四となっていますけれども、このリストはあるんですか。

川嶋政府参考人 答弁いたします。

 リストがあるかないかということでいえば、リストは今、作成の途上にありまして、完成したものはないということでございます。

 ちょっと説明させていただきますと、防衛省はおおむね千三百を超える施設がございます。それぞれの施設につきまして、特別注視区域、注視区域、あるいはどれにも指定されないもの、こういうふうに当てはめていくわけですが、それぞれ施設には機能がございますもので、また、時間の経過とともに機能も若干変わってきているということもあり、現在の機能をよく知る者を一々呼びまして、一つ一つ間違いがないようにチェックしているところでございます。

 また同時に、例えば市ケ谷を見ていただきますと分かりますように、一つの施設なんですけれども、いろいろな役割を兼ねている。例えば、市ケ谷でいえば、指揮中枢でもあり、司令部機能もあり、情報関係の機能もあり、あるいはPAC3もございますので防空の機能もありと。じゃ、そうした場合、この駐屯地を、基地を、どれをもって整理をするのが一番いいのか。常識的に考えれば、指揮中枢で整理するのがいいということに市ケ谷の場合はなるんだと思いますけれども。

 そういうことを一つ一つ検討しておりますので、どうしても、済みません、時間がかかって申し訳ございません。途中でございます。

今井委員 それは閣法で法案を出す前に作るべきじゃないんですか。今作業しているようなことじゃないですよ。そういうものをそろえてから法案審議に臨まなきゃいけないじゃないですか。何で今作っているという話ですか。いつまでにできますか。

川嶋政府参考人 御答弁させていただきます。

 可及的速やかに努力をさせていただきたいと考えてございます。速やかに作ります。

今井委員 じゃ、委員長、済みません、リストができたら、この委員会に提出をしていただくことをお願い申し上げます。

木原委員長 理事会にて協議をいたします。

今井委員 続いて、今日の森山委員だったと思いますが、おおむね千メートルというところがまた答弁が迷走しております。千メートルが上限と言ってみたり、おおむねだからそうじゃないと言ってみたり、どっちか分かりません。はっきりしてください。おおむね千メートルというのはどういう意味ですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 午前中もお答えしたところでございますけれども、本法案第五条でございますけれども、「重要施設の敷地の周囲おおむね千メートルの区域内」というふうな法律の規定にしております。おおむね千メートルの区域の範囲内ということでございますので、千メートルを大きく超えるようなことは想定しておらない、一方で、午前中も御答弁申し上げましたけれども、一千メートルを下回る距離の区域になることはあり得るということを御説明したものでございます。

今井委員 そうすると、午前中に千メートルを上限としてと言ったのは、正確に千じゃなくて、千ぐらいを上限としてという意味ですか。(発言する者あり)いやいや、それは確認です。そういう意味ですか。それは言葉の意味をちゃんと正しくしておかないと実際に指定するときにもめますので、ここで言葉の意味を確認しておきたいんです。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 上限と言いましたのは、条文で言いますところのおおむね一千メートルの区域内ということを解説させていただいたものでございます。

 それから、午前中も答弁いたしましたが、私は、おおむね一千メートル、おおむねというのを必ずつけたつもりでございますけれども、万一おおむねをつけ忘れていたのであれば訂正させていただきたいというふうに、午前中も申し上げたところでございます。

今井委員 分かりました。じゃ、千一メートルとか千二メートルというのも場合によってはあり得るということですね。そういうことを確認させていただきました。

 その上で、これは私もちょっと事実確認が自分でできていないので申し上げるんですけれども、政府の皆さんは対馬や千歳で自衛隊関連施設の周辺の買収案件を例に出されていますが、ちょっと私、千歳の方の方から言われたんですけれども、その買収された案件は自衛隊の施設から千メートル以上離れているところだというふうにおっしゃっているんですけれども、これはどうですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました航空自衛隊千歳基地の近接地につきましては、千歳基地の敷地の周囲一千メートルの範囲内には含まれていないという御指摘があることは、私ども、承知しているところでございますけれども、隣接地調査の対象とはなっておりませんし、また、森林が広がり、当該土地の外縁が判別し難いところでもございますので、本法案の対象区域の検討に際しましては、政府として、直近の実態をしっかり把握する必要があるものと考えてございます。

 以上でございます。

今井委員 大臣、お聞きになられましたか。皆さんが、どうしてこの法律を作らなきゃいけないかというときに説明されるのは、例えば対馬や千歳で自衛隊の周辺が買収されたこういう案件がありましたと再三説明されておられるんです。しかし、今回の法律でそこは含まれないんですよ。だったら、こんなものを例示に出しちゃ駄目じゃないですか。

 別に、ここをどうしても入れろと私は言っているんじゃないけれども、これを例として説明されているのなら、この法律で外れているというのは、それは説明にならないじゃないですか。おかしいですよ。(発言する者あり)何でですか。平さん、何で違うんですか。だって、この法律を作る目的で説明している例ですよ。だから、例としてこれは適切じゃないと私は思いますが、いかがですか、大臣。(発言する者あり)

木原委員長 御静粛にお願いします。

小此木国務大臣 このことについては、度々申し上げてまいりましたけれども、不安、懸念、リスクと言葉を換えてきましたけれども、地方議会によって、先ほど阿部委員のところでお答えしましたけれども、議論がされたのは事実なんです。そして、千歳の場合は、北海道、東北の知事会がそれを拾い上げて、そして、それが地方の不安、リスク、懸念として国に届けられたということでありますから、失礼な言い方ですが、そこまで突き詰めた物言いとはちょっと感覚が違うかなと。

 重要なことではありますけれども、地方からの声ということについては間違いございません。

今井委員 千歳の方から、自衛隊の周辺で買収がされたということを端緒として懸念が表されたんだとすれば、本法案でこの買収案件も対象とするような法整備をしなければ整合性が取れませんね。違いますか。

小此木国務大臣 千歳基地の事例は、あくまで、外国資本による防衛関係施設周辺の土地の取得について国民の懸念が広がっている事例として説明をいたしました。このため、御指摘の土地について、機能阻害行為を防止する必要があるものとして当然に本法案の対象とすべきものとは考えておりませんけれども、具体的な区域の指定については法定する手続に沿って適切に進めていくこととしており、その要否、範囲等を慎重に判断してまいりたいと存じます。

今井委員 二十何条まで一つずつ質問を用意しているんですが、まだ五条で止まっているんですけれども。

 やはり、どう考えてもおかしいです。今ずっと、るる説明されたのは、千歳から、議会でもこういう案件について懸念が出て、そういうことも一つの立法事実だというような説明をされていて、じゃ、その立法事実、千歳が懸念されていた案件は今回対象になるんですかと言ったら、ならないんですと言って。どういうことですか、それは。全く立法事実になっていないじゃないですか、これでは。だから、せめて、やはりここを説明の理由にしない方がいいですよ。だって、入らないんだもの、今度、この法律で。そんなあほな話は僕はないと思いますね。

 ほかにもいろいろあるんですが、もう時間がないので、一点だけ。

 じゃ、最後に第二十一条。

 二十一条って、結局、いろいろな措置が、何か問題があったときに、内閣総理大臣が今ある法律でこれをやってくださいねということを担当大臣に指示できるというふうに書いてあるんですけれども、こんな条文要りますか。これがなくても内閣総理大臣は命令することができませんか。この二十一条がなくても、現行でもこういう指示はできるかできないか、それだけ最後答えてください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、様々な機能阻害への対応があるかと思いますけれども、この二十一条は、本法案に基づきます調査の結果、他法に基づく規制に違反する形で機能阻害行為が行われていることが判明した場合には、当該規制を所管する……(今井委員「今の質問に答えていない、これがなくてもできるかできないか聞いている」と呼ぶ)

木原委員長 まず最後まで御答弁をお聞きください。

木村政府参考人 行われていることが判明した場合に、当該規制を所管する関係行政機関に対しまして必要な情報を提供することや、関係大臣に対し必要な是正措置を講ずることを要請し、その実施状況について報告を求めるということを規定させていただいているところでございます。

 機能阻害行為につきましては、施設の特性等に応じまして様々な態様が想定され、安全保障の観点からは、遅滞なく効果的な措置を行う必要があるものと考えているところでございます。

 本法案におきましては、重要施設等の機能を阻害する行為が認められた場合に、これを是正するための勧告、命令措置を新たに導入することとさせていただいていますが、仮に、他法令の措置によってより迅速かつ有効に機能阻害行為を防止できるのであれば、そうした他法令に基づく是正を追求すべきものと考えているところでございます。

 御指摘の第二十一条でございますけれども、他法令を所管する大臣に対しまして是正措置の実施を要請することができること、その実施状況に関する報告を求めることができることを法令に位置づけさせていただいているところでございまして、他法令による是正措置の実効性を確保するというものでございます。

 以上でございます。

今井委員 ちょっと答えていらっしゃらないんですけれども、時間がないのでもうやめますが、できるんですよ。だって、今、要は、確実にするとおっしゃっているだけじゃないですか。今まさに、最後おっしゃったんです。こんなのはなくたってできるんです。こんな二十一条は要りません。

 だから、この法案の中身、本当に詰まっていないし、今の答弁でも危なっかしいところがたくさんありますから、ちょっとこのままでは私たちはとても十分な審議が尽くされたとは言えないということを申し上げて、質問を終わります。

木原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今日は、民間の経済活動に与える影響について質問をいたします。

 特別注視区域では、一定規模以上の土地等の売買に、氏名や住所、面積、利用目的などの事前の届出が義務づけられています。

 まず確認ですが、この届出は、土地だけでなく、建物も対象で、そして売主と買主の双方に義務づけられるという理解でよろしいでしょうか。

小此木国務大臣 御指摘のとおりです。

 特別注視区域における事前届出は、特別注視区域内にある土地建物のうちで、政令で定める面積以上のものについて売買等を行う場合に、譲渡し人と譲受人の双方に対し事前届出を義務づけるものでございます。

赤嶺委員 前回の質疑の中で、買主は宅建業法に基づく重要事項説明として事前届出義務がある旨の説明を受けることになるという答弁がありました。売主への説明はどうなるんですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 特別注視区域における事前届出につきましては、区域内の土地所有者等に制度の内容を十分に理解いただくことが重要であると考えております。

 このため、地方公共団体、不動産業関連団体等を通じまして、制度の趣旨、求められる対応等の周知徹底を図るとともに、内閣府の担当部局に相談窓口を設置いたしまして、制度の円滑な運用に支障が生ずることがないよう取り組んでまいりたい、このように考えております。

 以上でございます。

赤嶺委員 売主には周知を図っていくような御説明でありましたが、これは、周知漏れとか、きちんとした説明が行われる保証がないということになると、自分の土地建物が制度の対象であることを知らずに、宅建士からも明確な説明がないまま、気づけば届出義務違反を犯していたというケースが出てくる、そういう懸念はありませんか。

天河政府参考人 そういうことがないようにしっかり周知徹底に努めていきたい、いろいろな手段を使いまして周知徹底に努めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。(発言する者あり)

赤嶺委員 かみ合っていないというより、答弁になっていないです。そういうことがあるんじゃないかという懸念がないかと言ったら、そういうことがないようにと言って。

 もし宅建士が重要事項説明を怠ったとき、これはどうなるんですか。

天河政府参考人 御指摘は、宅建士に何か罰則がかかるか、そういう御趣旨でございますでしょうか。

 特別注視区域につきましては、事前届出の義務を課すことから、重要事項説明の対象とすることを想定をしております。

 重要事項説明の対象とした場合、売買契約が成立するまでの間に説明することが必要になりますが、宅地建物取引士が説明を怠った場合には、宅地建物取引士及び宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に基づく指導、助言、勧告のほか、指示、業務停止命令等の行政処分の対象となり、業務停止命令に違反して業務を営んだ場合には、宅地建物取引業者は罰則の対象となることもございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 そうなりますと、宅建業者は個々の取引について政府から説明を求められることもありますか。取引の記録を残しておくことは求められるんですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 本法に関しまして、宅地建物取引業者に説明を求めることは想定をしておりません。

 なお、宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法第四十九条におきまして、事務所ごとに、取り扱った取引に関する事項、これは取引年月日でありますとか所在地でありますとか面積等でございますが、こうした事項を記載した帳簿を備え、これを、各事業年度終了後、原則として五年間保存する義務が課せられているところでございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 今度は注視区域の場合ですが、その場合は、重要事項説明の対象になりますか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 宅地建物取引業法におきましては、宅地建物取引業者に対しまして、契約締結の判断に大きな影響を与える重要事項につきまして、売買契約の成立までの間に買主に説明することを義務づけております。

 特別注視区域につきましては、区域内の土地等の買主等に対しまして事前届出義務を課すことから、重要事項説明の対象とすることを想定しております。

 一方、注視区域につきましては、買主等に対しまして義務を課すものではありませんけれども、重要施設の施設機能等を阻害する行為の用に供すると認められるとき等には、内閣総理大臣による報告徴収、勧告、命令の対象となります。

 このため、今後の詳細な制度設計の中で、国土交通省におきまして、業界団体等と連携しながら、買主等の契約締結の判断に及ぼす影響等につきまして慎重に見極めた上で、重要事項の説明の対象とすべきか、今検討中であるというふうに聞いております。

赤嶺委員 今の答弁は、重要事項の説明の対象にすることも検討しているということですか。

天河政府参考人 今後検討するということでございます。まだ決めていないということでございます。

赤嶺委員 特別注視区域はもちろん、注視区域についても、不動産の取引については、特別重要事項、ここは基地のそばだよ、それを覚悟の上で買いなさいよという買主への負担、売主も負担、宅建士もまたそれに伴ういろいろな負担が伴うと思うんです。

 さっき、善人ならば何か調べられても大丈夫じゃないかと。だけれども、こんな悔しいことないですよ。基地のそばに住んでいて、何で調べられるんですか。何で調べられるかと言ったら、あんた何かよくないことをやっているんじゃないかと疑われる。こんな風潮ができ上がるのが非常に悔しい、基地のそばに住んでいる人間としては。

 政府による個人情報の取扱いについて懸念を持っておられる方もたくさんいらっしゃいます。今回のような制度に違和感を持たれる方もいらっしゃいます。そうした方々が、購入後に政府による個人情報の収集や現況調査の対象とされ、報告徴収や場合によっては勧告、命令まであることを知り、なぜそういうことを事前に説明してくれなかったのかと宅建士が責任を問われることはない、こういうことが言い切れるんでしょうかね。この地域での土地取引についていろいろなトラブルが起こると思いますが、宅建士が責任を問われるということがないかどうか、いかがですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 重要事項説明の義務を果たさなかった場合は、先ほど申し上げましたように、指導、助言、勧告のほか、指示、業務停止命令等の行政処分の対象になる、場合によっては宅地建物取引業者は罰則の対象になるということはございます。

 以上でございます。

赤嶺委員 基地の周辺に住んでいる善良な住民が土地の取引をやろうとする場合にはそういう問題になってくる。仲介に立つ宅建士も同じでありますが。

 ちょっと具体的に聞きますが、例えば同じような物件が二つあって、一方は区域の中、もう一方は区域の外という場合に、区域の中にある物件が敬遠されるということはないのでしょうか。ないとは言い切れないと思いますが、いかがですか。

天河政府参考人 済みません、お答えになるかどうか分かりませんが、その区域の内外で差が出るかということだと思いますけれども、それはやはり個別具体のケースに応じて見ないと何とも言えないということだと思っております。

 以上でございます。

赤嶺委員 個別具体的なケースにぶつからないと分からないんじゃなくて、こういう場合にはやはりいろいろな障害が生まれてくる。

 絶対にないんですか。だって、新たな条件を加えているわけでしょう。やはり、買主にも売主にも影響が出てくる。場合によっては地価に与える影響も出てくるんじゃないですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 本法案に基づきます報告徴収あるいは事前届出等の措置につきましては、不動産の通常の使用収益あるいは処分を制約する可能性は低い。したがって、不動産取引、地価に影響を及ぼす可能性は小さいのではないかと考えております。

 以上でございます。(発言する者あり)

赤嶺委員 そうそう、大きい声で。委員長、お願いしますね。

 私、影響が出てくるんじゃないかと言ったら、影響は小さいと言いました。あるということじゃないですか、影響は。そういうような状況であります。

 そうすると、買手に敬遠された場合に、売主は売却の機会を奪われることになりますが、その売主が被った不利益について、これは誰が責任を取りますか。

天河政府参考人 宅地建物取引業者等が取るということはないと考えます。

赤嶺委員 これは政府の制度によって出てくる結果じゃないですか。宅建士が責任を取ることはあり得ないですよ。

 政府はどうなんですか。

天河政府参考人 お答えいたします。

 注視区域、特別注視区域の指定、及びこれらに伴う措置につきましては、法の目的を実現するための必要最小限度のものと考えておりまして、政府として補償するという予定はございません。

 以上でございます。

赤嶺委員 政府として補償もしない。結局は、売主が不利益を被る可能性があるのに損失の補償はしない、そのことだけは非常にはっきりしているわけですね。

 機能阻害行為とは全く無縁な人たちですよ。善良な市民がただ基地のそばに土地を持っている、建物を持っているというところで、土地取引、建物の売買にこんな不利益を被る、こういうことは許されないと思いますよ。本当にこの点でも重大問題だ。

 次に、基地周辺住民との関係について伺います。

 今回の法案は、日常的に基地に苦しめられている住民を政府による監視の対象として、土地建物の利用を規制するものであります。住民からすれば、米軍機の事故や基地からの環境汚染を調査もできない、日米合意に反する深夜早朝の飛行も野放しにされたまま。こうした理不尽な現状を放置しながら、住民の側を調査の対象にするというのは一体どういうことなんだと。

 この間の内閣委員会で、多分あれは辺野古の話だと思いますが、弁当殻が基地に飛んでいくという話が出ておりましたが、地元からは、早速、弁当殻が基地に飛んでいくことはないと。大体、弁当は持参ですから。問題は、基地の中から流れ出てくる有害物質だ、PFOSだ、そこを心配しろ、議論が逆立ちしている、そういう新聞投書もありましたけれども。

 しかも、沖縄の住民は、米軍占領下で一方的に土地を奪われ、基地周辺に住むほかなかった歴史的な経緯があります。

 今回の法案提出に当たって政府が設置した有識者会議で、こうした基地をめぐる歴史や被害の実情を知る専門家は入っていません。基地周辺住民に関わる問題であるにもかかわらず、有識者を選定する際に、なぜ基地問題の専門家を入れなかったんですか。

小此木国務大臣 昨年開催した有識者会議ですが、骨太方針二〇二〇に示された安全保障等の観点からの土地利用、管理等の在り方について検討を深め、政府の政策対応の方向性について提言をいただくために開催したものであります。

 そのような有識者会議の趣旨を踏まえ、有識者には、国際関係者、行政学、民法、土地制度といった分野の専門家の方々に御参加いただいたところであります。

赤嶺委員 ですから、基地のそばに住んでいて、基地の被害を実感していることをよく知っている、そういう人が有識者会議に入っていないということは、基地から受ける被害を全く念頭に置いていない、視野に置いていないということに、そういう批判を受けると思うんですが、大臣、いかがですか。

小此木国務大臣 沖縄には、戦後七十五年以上経た今もなお、大きな基地負担を負っていただいているという現状については重々認識しておりますし、有識者の方々もそのとおりだと存じます。

 政府としては、引き続き沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしているということに変わりはございません。

赤嶺委員 有識者の人たちもそのことはよく知っているとおっしゃっていたんですが、有識者会議の中でそういう議論もあったんですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 先般も御質問いただき、お答えいたしたと思いますが、明確なそういった切り口からの議論はなかったところでございます。

赤嶺委員 何でそういう切り口というか、基地からの被害を受けている人たちが、何で我々が監視されなければいけないのかと。被害者が加害者から監視されているような気持ちだ、そういうことについて何で議論しなかったんですか。大臣。

小此木国務大臣 本法に基づく調査や規制措置は、我が国の安全保障と自由な経済活動の両立を図るべく、取得規制といった私権制限の程度が大きい措置は導入しておりません。

 そのため、通常の国民生活や経済活動を妨げることはないものと考えております。

赤嶺委員 今、何について答弁されたか、私、よく聞き取れなかったんですが。

 私が聞いているのは、とにかく基地からの被害を受けている人たちは、基地機能の阻害の加害者の対象になる前に基地からの被害者だ、そういう被害者が現に存在するのに、そのことについて有識者会議で、法案を準備する過程で議論しなかったのはなぜですかと聞いているんですよ。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、本法案の制度設計に先立って有識者会議において、自由な経済活動と安全保障の確保の両立を図る観点から、私権制限を必要最小限にするという観点からの制度設計を行ったという趣旨を大臣から御説明したところでございます。

 それから、従前来、繰り返し御答弁申し上げておりますけれども、御指摘の反対運動で想定される、例えば単に外部から防衛関係施設を見ている場合や平穏に集会等を行っている場合などについては、いずれも施設機能を阻害するものではないと考えられることから、本法案に基づく措置の対象とならないことが明らかであり、これらを除外するため、明らかでないということも繰り返し御説明させているところでございます。

赤嶺委員 かみ合いませんけれども。今の法律には、基地からの被害者が加害者として監視される、そういう性格を持った法律になっている。基地周辺自治体や住民の声を聞いていないということですが、要するに、沖縄を始め基地で苦しむ自治体や住民の声をまともに聞かずに法案を提出したということであります。

 今、普天間基地周辺の住民は第三次爆音訴訟の提訴に向けた準備を進めています。五月二十二日に採択した定期総会の決議案では、この法案について、市民監視と権利制限を日常化させる人権侵害法である、基地や原発等によって日常的に被害を受ける住民の取組を分断、弾圧するもので、私たちは知らないうちにその監視対象とされる。非常に強い懸念と怒りの声を上げています。

 私は、法案の内容からすれば、沖縄で地方公聴会をやるべきだと思います。大臣、ちゃんと沖縄県民の声も聞くべきですよ、あれだけ基地が集中している地域の声を。最低でも、参考人の質疑はこの委員会でやるべきだ。

 こういう基地に苦しめられている県民の声を切り捨てて、安全保障のためだと言って監視の対象にする。安全保障というのは、国民の支持が、何よりも基地周辺の住民が、基地からの加害に対して反対の感情を増していく、こんなことで安全保障なんて存立できませんよ。

 よく、沖縄の保守の政治家の方が言います。そういう被害を放置しておけば安保体制にひび割れが起こるということを、これは沖縄の保守の人が言っているんですよ、保守の政治家が。大臣も何度も、そういう沖縄の政治家とのおつき合いもありますから、聞いたことがあると思いますけれども、やはり沖縄の声を切り捨てたままこういう法案を作ることは許されないということを申し上げておきたいと思います。

 次に、機能阻害行為について伺います。

 前回の質疑で、注視区域内において、重要施設への機材等の搬入や搬出を阻止する行為を恒常的に行っている場合には勧告、命令を行うことがあり得るとの見解を示しておられました。しかし、法案第九条は、あくまで利用者に対して勧告、命令を出す仕組みです。利用者というのは一体どういう人たちのことですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 御質問は、法案第四条第二項第四号に規定する利用者の内容についての御質問かと存じます。

 これにつきましては、土地等の所有者、及び、その土地等について賃借権、地上権といった土地等の利用、管理等を行うための権原を有し、その権原に基づき土地等の利用又は収益を行う者を指すものでございます。

赤嶺委員 そうしますと、キャンプ・シュワブゲート前では、政府による新基地建設の強行に抗議して座込みが続けられています。しかし、抗議している人たちは、ゲート前に土地を持っている人たちではありません。所有権や賃借権も持っておりません。そういう人々がなぜ勧告、命令の適用対象になるんですか。利用者が対象なんですから、そもそも勧告、命令の対象にはならないんじゃないですか。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 利用者の意味につきましては、先ほどお答えしたとおりでございます。

 御指摘のような、例えば道路などのような自らが所有も賃借もしていない土地において座込みを行っているような場合には、それらの方々は土地等の利用者には当たらないことから、そもそも勧告、命令の対象とはならないものでございます。

赤嶺委員 もっと詰めたいところなんですが。

 ただ、さっき、道交法違反だとかなんとか、いろいろな声が聞こえましたけれども、この問題の根本は、沖縄県民が選挙や県民投票で何度も民意を示しているのに、それを無視してきた政府の民主主義、地方自治否定の姿勢にこそあります。だから、やむにやまれずゲート前で抗議の座込みを続けているわけです。(発言する者あり)

木原委員長 御静粛にお願いいたします。

赤嶺委員 こうした政府の姿勢の問題には頬かむりして、住民の側を弾圧の対象にするということは、本末転倒であり、断じて認められません。

 調査の内容について伺います。

 大臣は、十一日の本会議で、思想、信条等に係る情報を収集することは考えていないと答弁をいたしました。しかし、機能阻害行為やその明らかなおそれがあるかどうかを、氏名や住所、国籍などの公簿情報や利用者からの報告徴収だけで判断できるとは思えません。

 政府が安全保障上問題のある土地利用かどうかを判断するためには、例えば、その人が外国政府と何か関係を持っていることはないのか、職歴や海外渡航歴、交友関係に怪しいところはないのか、基地や原発などに対してどういう考え方を持っているか、こういうことは当然調べるということになるんじゃないですか。

小此木国務大臣 本法案に基づく調査では、不動産登記簿等の公簿の収集による氏名、住所、国籍など、土地等の利用者の把握、現地・現況調査や報告徴収を通じた土地等の利用実態の把握、特別注視区域における事前届出制度を通じた土地等の買手の利用目的の把握などを行うこととしています。

 また、防衛関係施設等の重要施設を所管する関係省庁や当該施設を管理する事業者等から機能阻害行為の兆候等に係る情報提供を受けることも想定しております。

 このように、多様な方法を通じて具体的な土地等の利用実態の把握を徹底し、適時適切に必要な利用規制を発動することによって、機能阻害行為を防止するための実効性の確保に努めていきます。

赤嶺委員 提供や報告を求める情報は土地利用に関するものに限定だということを繰り返しておりますけれども、その土地利用が安全保障上問題かどうかを判断するには、その人の考え方や行動を調べないと分からないと思いますよ。公簿情報だけでどうやってそれを判断できるんですか。

小此木国務大臣 その公簿を使って調査をするということでございます。

赤嶺委員 それだけでは、皆さんの法案の目的で言う安全保障上の問題、基地機能を阻害するということは、やはり、法案ができ上がってそれが実行されていくと、またどんどんどんどんつけ加えられていって、結局は、思想、信条、そういうところまで調べられていく大変危険な方向を持った法案だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

木原委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 前回も申し上げましたが、この重要土地調査法案については、私たちは、とにかく推進という立場です。我が党は、平成二十八年から五たび、この分野の立法を急ぐべきであるという観点から、議員立法を党として提出をしてきております。

 今回の閣法と私たちの議員立法とは、大きくたてつけも違います。例えば、閣法は土地等の利用に着目していますが、私たちは土地等の取引に着目をして規制をする、そうした根本的な枠組みが違いますが、問題意識は同じでございます。

 したがって、今日、濱村先生から、足立さん、ちょっと事実誤認があるよということをおっしゃられました。そこは訂正しておわびをしたいと思いますが、ただ、与党でいろいろ議論があって、私たちからすると、これはむしろもっと強化すべき部分が多いにもかかわらず、どちらかというと、まあ骨抜きとは言わないまでも、やはり課題が残る法律のたてつけになったという観点から、ちょっとそういう、与党にも野党にも言及をさせていただいたところでありますので、御理解を賜りたいと思います。

 申し上げたいことは、まず第一歩として今回の法律は評価するが、これからまた五年後を見据えて、常に見直しの議論は続けていく必要がある、こう思っております。

 そのときに、今日も宮崎先生等からも言及いただいた、前回の質疑で、私は、とにかく収用も視野に入れるべきと申し上げました。公明党の濱村委員からも、公明党の中でも、公明党の中でさえ、でも、無視されたんだよね、済みません。でも、濱村委員は、離島とか、やはりそれは収用も視野に入れた議論をちゃんとすべきではないかということを与党の中でも議論を提起していただいたことは、この委員会で既におっしゃっていただいているわけであります。

 大臣、通告でいうと最後になっていますが、最初にちょっと大臣に御答弁いただきたいのは、そういう、今回はともかくとして、今後に向けて、安全保障上重要な土地の規制に係る実効性を高めるためには、収用も視野に入れたような検討が今後必要になるというふうに思いますので、改めて、大臣から御答弁いただきたいと思います。

小此木国務大臣 足立委員はもう頭でも口でも分かっておられます。この法案は、まさにおっしゃいましたように、土地等の利用状況を調査し、必要に応じ利用を規制するものでありまして、今言われました収用については盛り込んでいません。

 先般もお答えいたしましたけれども、本法案の附則第二条、五年後の見直しに係る規定を置いております。その見直しでは、現在御審議いただいている本法案に基づく措置の状況、結果を検証をするという大きな意味がございます。そして、その過程の中では、現行の措置が十分であったかどうか、御指摘のあった収用の要否を含め、更なる政策対応の在り方について検討していきたいと考えております。

足立委員 ありがとうございます。

 是非、引き続きお願いをしたいと思います。御答弁ありがとうございます。

 私たち維新の会が今こうして申し上げているのは、維新の会というと、何か、どちらかというと、そういうことに厳しく、国の安全保障については言いたいことを言っていて、権利とか自由とかいうことについて十分な配慮がないのではないかという誤解が一部ございます。ただ、これは本当に間違いでして、私たちは、国の役割と地方の役割は、やはりそれはちゃんと立て分けて頭をつくっていく必要があるという立場から、一貫して結党のときからそう言っています。

 前回も申し上げたけれども、私たちは、地域は自立していく、地域の分権は進めていった方がいいと思っていますが、今回のコロナのように、有事にあっては、例えば、予防接種なんか、もう全部国が権限を引き揚げて、今回、自衛隊にやっていただいていますが、有事モードというのは平時モードの国と地方の関係と全く違う、ギアチェンジをして、新しい有事モードの国と地方の関係がある、そういうふうに考えているわけであります。

 今回のように、別に有事と関わりなく今回の法律は運用されるわけでありますが、ほかにも私たちが問題意識を持っているのは、例えば、先ほど赤嶺委員がおっしゃった米軍基地ですよ。何でもめているのか。もちろん、沖縄の歴史、私たちも沖縄の歴史を十分に踏まえというか勉強し、また、沖縄の皆様に寄り添い政治を進めていくべきとの立場でありますが、何が違和感があるというと、結局、政府と知事が訴訟合戦をやっているわけです。

 今日、大西政務官においでをいただいています。この米軍基地をめぐる一連の訴訟合戦、現状どうなっているかということと、私は、やはり、そこは何らかの制度的な手当てが足りないと思っているんですが、御見解がありましたら、お願いします。

大西大臣政務官 足立委員にお答えをさせていただきます。

 防衛省といたしましては、在日米軍施設・区域の提供に際して、関係する地方公共団体に対し安全保障上の必要性や施設設置の影響について丁寧に説明を行うとともに、運用開始後も様々な措置を総合的に実施し、理解と協力を得られるように努めてまいります。

 その上で、防衛省として、これらの在日米軍施設・区域の提供に関する事務については、防衛省設置法第四条に規定する所掌事務を根拠として実施しております。また、個別の手続等については必要な根拠が個別の法律に定められており、例えば、土地の使用権原の取得等についてはいわゆる駐留軍用地特措法がございます。

 防衛省としましては、これらの現行法令の下、引き続き、地域住民の方の御負担を可能な限り軽減しつつ、在日米軍の安定的な運用の確保に対する御理解と御協力を得るべく、全力を尽くしてまいります。

 以上でございます。

足立委員 事務方で結構ですから、地元サイドと言っていいか分かりませんが、訴訟がずっと提起をされて、決着を見たものも多いと思いますが、例えば、沖縄県が国を訴える等のときに、使っている法律、何法、何法、何法、それだけ簡単に御紹介いただけますか。

岩元政府参考人 お答えいたします。

 普天間飛行場代替施設建設事業における埋立承認に関する訴訟といたしましては、平成二十五年十二月に当時の仲井真知事が行った埋立承認について、平成二十七年十月と平成三十年八月の二度にわたって沖縄県が承認を取り消したことをめぐって提起されており、平成二十七年十月のものについては最高裁で国が勝訴し、平成三十年八月のものについては、二件の訴訟のうち、一件は最高裁で国が勝訴し、もう一件は高裁で係争中となっております。

 委員御質問の、何法に基づく訴訟になっているかという点につきましては、例えば、地方行政法でありますとか、あるいは行政事件訴訟法に基づいて訴訟となっていると承知しております。

足立委員 今あった埋立てとか、いろいろな形でされるわけですが、私は、もし米軍基地が国の安全保障の観点から必要だというのであれば、国が責任を持って必要な法律を、要は、様々な法律を援用しながら訴訟合戦になるというのは、国の統治の在り方として私はやはりおかしいと。

 むしろ、もし国と地域で争いがあるのであれば、その争いを処理するしっかりとした米軍基地に関する手続法、例えば、都市計画法がありますね、都市計画法というのは、まさに手続法でありまして、縦覧とかいろいろな形で、利害関係がある住民の皆様にちゃんと意見を聞いたり情報を提供したりすることを手続として詳細に定めた上で、最後は収用するわけですよ。これが公共の利益を確保していくための当たり前のことなんだけれども。

 実は、この米軍基地については、そういう枠組みがないために、結局、様々な法律を援用しながら訴訟合戦になっている。結果的には、国が勝訴する形が続いておりますから、国の安全保障には大きくそこにブレーキがかかっているわけではないかもしれませんが、私はやはり、沖縄のためにも、また国のためにも、米軍基地に係る合意形成手続、外形的公正性と私たちは言っていますが、手続法の不備が現在のような混乱を招いている、こういう立場でございます。

 同じように行き詰まっている、私たちが問題意識を持っているのは、明日も原子力問題調査特別委員会が開かれますので議論しますが、最終処分場ですね。高レベル放射性廃棄物の最終処分場に係る合意形成も、極めて困難を極めるけれども、私は絶対に必要だと思います。手挙げ方式には限界があって、私たちは、ちゃんとした手続法を既に国会に提出をしております。

 手挙げ方式には限界があると私たちは考えますが、政府の見解はいかがでしょうか。

小澤政府参考人 お答えいたします。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分、これは我が国として解決しなければならない重要な課題と認識してございます。

 最終処分場の選定プロセスにつきましては、調査がございまして、これは文献調査、概要調査、精密調査といった形で、段階的に調査ステップを踏んで取り組んでいくこととしてございます。

 この中で、文献調査につきましては、かつては、先生御指摘の自治体からの応募という手挙げ方式のみでございましたが、二〇一五年に、最終処分に関する基本方針、閣議決定でございますけれども、これを改定いたしまして、手挙げ方式に加えまして、地域の理解の状況を踏まえて国が主体的に申し入れる仕組み、これを明確に位置づけました。

 こうした中で、昨年、文献調査の実施につきまして、北海道の寿都町からは応募でいただき、神恵内村に対しましては国から申入れを行って、それを受諾いただいたところでございます。現在、NUMOにおきまして調査を進めているところでございます。

 今後とも、最終処分場の選定に向けましては、この閣議決定した最終処分に関する基本方針等に沿いまして、国が前面に立って取り組んでまいりたいと考えてございます。

足立委員 今あったように、少しずつ改善というか、このままでは出口がないということで、国も少し前に出ているわけですけれども、私たちは、どうせ造らないといけないんだから、私たちの議員立法では、原発改革推進法案というのを出させていただいていますが、その中で、最終処分場についても、しっかりと国で、その整備計画を国が作り、それについては、地域との関係でいうと、様々な手続、意見を聴取したり協議したり同意を求めたり、様々な協議の手続を踏んだ上で、最後は国の責任で整備をしていく法律を作っております。

 ちなみに、立憲民主党を始め維新以外の野党が出しておられる原発ゼロ法案には、日本の原子力政策の肝である最終処分場についてはほとんど規定がありません。書いてあるのは、適切に処分するという一行だけです。今日はもうそれ以上言いませんが。

 やはり、小澤さんがおっしゃった今の政府・与党の取扱いに対して、私たち野党は、いや、こういう取扱いをしたらどうかというプランBをこれからも示していきたいと思いますが、改めて、手続を踏んだ上で最後は国が責任を持ってやるという形を提起をしています。

 もう一つ気になる分野がリニアですね。今、国交省で大変御苦労されておられますが、なぜリニア中央新幹線の工事が止まっているのか。止まっているというより、進んでいるんですけれども、見通しがなかなかつきにくくなっている。

 私は、必要なんだったら、国益の、要は国の重要プロジェクトなんだから、それはしっかりと手続法を作って、手続を踏んだ上で、最終的にはこれは断行していくというぐらいの国家の重要プロジェクトであると考えておりますが、国交省、いかがでしょうか。

江口政府参考人 お答えいたします。

 リニア中央新幹線静岡工区につきましては、少しちょっと経緯を御説明させていただきますが、平成二十五年九月にJR東海から公告された環境影響評価準備書の中で、南アルプストンネルの掘削に伴いまして、止水対策を実施していない条件下で大井川の流量が最大で毎秒約二トン減少する旨が示されました。

 また、その後、平成二十九年一月にJR東海から静岡県に送付された事後調査報告書におきまして、導水路トンネル及びポンプアップによるトンネル湧水を大井川に戻す措置を講じる旨が示されました。

 これに対しまして、静岡県知事は、平成二十九年四月にJR東海に対して全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことを早期に表明すること等の意見を提出したところです。

 その後、JR東海は、平成三十年十月に原則としてトンネル湧水の全量を大井川に戻すことを表明し、これを受けて同年十一月から県が設置した専門部会におきましてトンネル湧水の戻し方やリスク管理方法などについて議論が行われてきました。

 しかしながら、静岡県とJR東海との間での議論が進まない状態が続いたことから、国土交通省では、リニア中央新幹線の早期実現とその建設工事に伴う水資源と自然環境への影響の回避、軽減を同時に進めるために、昨年四月に有識者会議を立ち上げまして、これまで計十一回開催し、議論を重ねているところでございます。有識者会議では、大井川流域市町の地域住民の方々が水資源利用等に関して懸念されていることを踏まえまして、水資源につきまして科学的、工学的な見地から活発な議論がなされております。

 リニア中央新幹線につきましては、環境影響評価の手続の中で、国土交通大臣意見として地域住民等への丁寧な説明等を求めるとともに、工事実施計画の認可の際には、当時の太田国土交通大臣から、地域の理解と協力の獲得、環境保全の措置、安全かつ確実な施工を指示したところでございまして、これらが大原則だと考えております。

 国土交通省としましては、静岡工区において、有識者会議における科学的、工学的な議論を引き続きしっかり進めていくとともに、JR東海に対しては、今後、地元の理解を得るために、利水者など地元の関係者に分かりやすく丁寧に説明していくよう指導してまいります。

足立委員 江口技術審議官、丁寧にありがとうございます。

 国は造りたいと、国というかJR東海はですね、知事が最終的に折り合えないというとき、最後はどうなるんですか。

江口政府参考人 お答えいたします。

 静岡県知事の権限ということでいきますと、南アルプストンネルの静岡工区は大井川の下を通過することになりますので、トンネル掘削に当たりましては、河川法に基づく河川管理者である静岡県の許可、これが必要となるものと承知しています。このため、事業主体であるJR東海は、今後、トンネル掘削を行うに際しましては静岡県に許可申請を行うことになるものと承知しております。

 一方で、現在は、JR東海が行った環境影響評価を受けまして、トンネル掘削に伴う水資源や自然環境への影響の回避、軽減について、国土交通省が設けた有識者会議におきまして科学的、工学的な観点から議論が行われているところでございます。

 この議論を受けて、JR東海は、今後、利水者等の地元の関係者に分かりやすく丁寧に説明していく必要がありまして、静岡工区を含めましてリニア中央新幹線の工事を進めるに当たりましては、このような地元への丁寧な説明等を通じまして地元の理解を得ることが必要であると考えておりまして、河川法に基づく手続を進めるに当たりましてもこのような地元の理解が必要と考えております。

足立委員 ちょっと聞き逃したかな。

 いや、最後、どうしても知事が判こを押してくれないというときは、リニアはもうできないということですね。

江口政府参考人 若干繰り返しになりますけれども、現在、工事が進んでいない、なかなか今静岡工区に進んでいないのは、地元の方で、水資源の利用につきまして非常に地元の方々が懸念しているという状況がございます。これに対して、やはり知事も地元の代表でございますので、そういった懸念をいろいろな場で伝えていると。

 したがいまして、この問題につきましては、まずは水資源利用に関しまして地元の理解を得るということが重要でございまして、今そのための様々な検討を行っているというところでございます。

足立委員 いや、ごめんなさいね。ありがとうございます。

 私も、関係者が国交省で頑張っているので、余り下手な答弁をいただきたいと思っているわけじゃないんですよ。ただ、法律論として、法律の整理として、知事はリニアを止める権限があるように聞こえるんですけれども、いや、実態的にですよ。それは答弁しにくいね。やめましょうか。

 でも、大臣、委員の皆様にも是非御理解をいただきたい。私が今日提起したかった問題は、国家の、要は、公共の福祉と一言に言っても、あるいは国の行政、地域の行政、あるいは住民の、あるいは個人の、国民の権利、自由と言っても、それをやはり調整するメカニズムは、私はちゃんと国の責任で、国会の責任でつくっていくべきだと思っているわけです。

 だから、原子力についてはそういう法律を我々は出しています。でも、そういうことをやるのはうちだけです。維新の会だけ。与党は、そう言ってもバランスがあるからなと。野党は、とにかく原発ゼロと。そういうふうになっているし、それから、沖縄の基地の問題も今日あったような状況。リニアはそういう状況。

 結局、日本という国は、今これだけ激動する環境の中で、国内的、内政も外政も大変難しい時代を迎える中で、あれも止まる、これも止まる、全部止まっているわけです。だから、やはり法制度としてあるべき形をつくっていく、その一つのきっかけとして、私は、今回の、小此木大臣が進めてくださった、この安全保障の観点からの重要土地法案は重要であると。

 だから、私たちは、修正意見として、ちゃんと地元の意見は聞きましょうねと。それは法定してほしかった、本当は。まあ、もういいんですけれども。

 なぜそれを、地元の意見を聞くべきと言っているかというと、止めるべきだと思っているからじゃないんですよ。意見を聞いた上で、最後は強い権限で、国の安全を、国民の生命と財産を守るために強い権限を国家は持つべきである、こういう政策思想に基づいて、意見聴取はした上で、収用は当たり前でしょうということでやってきたわけです。

 今日、離島、ちょっといないけれども、我が尊敬する大西健介議員が対馬の話をされました。大変重要で、委員長もうなずいていらっしゃいますけれどもね。さっき、コーヒーを飲みながら、大事だよねという話をしていたんですけれども、これは大事です。大事ですよ。憲法の何かあれを持ってこられて、ほっておいたら全部持っていかれちゃうぞという議論は、私は、合理的というか非常に大事な議論だと思いました。

 だからこそ、例えば、公明党さんでさえ、離島については収用規定を検討した方がいいんじゃないかという濱村委員の意見があり、無視をされたわけでありますが、是非これから立法府でそういう議論をしていきたい。

 大臣、もういいですね、何か。あと一分ぐらいあるんですけれども。

 そういう議論をやはり、今回の法律は、私はすばらしいと思うんです。一歩前進です。そうだけれども、小此木大臣には、これから、今の職責にとどまらず、今日申し上げた、沖縄も混乱している、原発はどうなるか分からない、リニアは静岡県知事に握られちゃっている。私は、水資源がどうでもいいというわけではないが、国家として当たり前の統治の仕組みが要る、こう思いますので、大臣、是非、個人的に、今日私がお訴えした国の役割、国と地方の関係について、一言御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。

小此木国務大臣 当てはまるかどうか分かりませんけれども、多様性という言葉がどこでも聞こえるようになりました。これは権利として認められるべきものであると思いますが、そこの中に、やはり私たちみたいな選ばれた人間がルールをつくっていく、あるいはつくり直していくということが必要かなと、今お話を聞いて、私は大切なことだと思いました。

足立委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

木原委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会


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