衆議院

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第3号 令和4年2月9日(水曜日)

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令和四年二月九日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 上野賢一郎君

   理事 井上 信治君 理事 工藤 彰三君

   理事 平  将明君 理事 藤井比早之君

   理事 森田 俊和君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      石原 宏高君    金子 俊平君

      小寺 裕雄君    杉田 水脈君

      鈴木 英敬君    高木  啓君

      永岡 桂子君    長谷川淳二君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      松本  尚君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      吉川  赳君    和田 義明君

      おおつき紅葉君    大串 博志君

      堤 かなめ君    中谷 一馬君

      本庄 知史君    山岸 一生君

      阿部  司君    浅川 義治君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      平林  晃君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      山本 太郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (デジタル大臣)

   (行政改革担当)     牧島かれん君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 二之湯 智君

   国務大臣

   (少子化対策担当)

   (男女共同参画担当)

   (こども政策担当)    野田 聖子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (新しい資本主義担当)

   (新型コロナ対策・健康危機管理担当)

   (全世代型社会保障改革担当)

   (経済財政政策担当)   山際大志郎君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)   小林 鷹之君

   国務大臣

   (国際博覧会担当)

   (消費者及び食品安全担当)            若宮 健嗣君

   内閣府大臣政務官     小寺 裕雄君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三貝  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  柳樂 晃洋君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局次長)      小森 敏也君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部審議官)      田村 暁彦君

   政府参考人

   (内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長)     高科  淳君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房公益法人行政担当室長)      北原  久君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   笹川  武君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部統括官)        藤原 朋子君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  緒方 禎己君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   坂本  基君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局児童虐待防止等総合対策室長)           岸本 武史君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月九日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     長谷川淳二君

  本庄 知史君     おおつき紅葉君

同日

 辞任         補欠選任

  長谷川淳二君     平沼正二郎君

  おおつき紅葉君    本庄 知史君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

上野委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、公務員の制度及び給与並びに行政機構に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官三貝哲君外十六名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上野委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。

 本日は、内閣委員会、初めての質問をさせていただきます。所信質疑を始めます。よろしくお願いいたします。

 男女共同参画基本計画についてお尋ねいたします。

 私は女子校育ちでございまして、文化祭から学校行事は、リーダーも女性、力仕事も女性という環境で育ちました。ですから、社会に出ると女性という枠にはめられている感覚が生まれ、結婚してからは、より強く感じるようになりました。女だから家事をする、女だから育児をする、女はスリムで、化粧をして、きれいでいるといったプレッシャーがありました。また、男性は、男は泣くな、男は弱音を吐くな、男は稼げといった言説に苦しんでいることも知りました。女性だから、男性だから夢を諦める、そんな子供たちをなくしたい、ジェンダーの価値観は政治の世界から変わっていかなければならないと思っております。

 昨年の九月に出された「令和三年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」の結果を見ておりましても、私が感じたものが一般的であるという結論に至ります。そして、地方では、より強く感じている女性が多いという事実も分かっております。

 野田大臣にお尋ねいたします。誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指すとのことですが、日本社会に根強く残る固定的な性別役割分担意識を変えていくには、どのような取組が必要だとお考えですか。

野田国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、これまでのアンコンシャスバイアス、男女共同参画を推進するため、いろいろ取組をしていますけれども、残念ながら、まだ男女共同参画の道半ばであります。その背景には、今御指摘があったような、長年にわたり人々の中に形成されている固定的な性別役割分担意識とか、性差、偏見、固定観念、無意識の思い込み、アンコンシャスバイアスがあると挙げられています。

 今取り組んでいることは、第五次男女共同参画基本計画の中で、固定的な性別役割分担意識の解消等に取り組むこと、具体的には、性別による無意識の思い込みに関する調査を実施し、また、調査結果を踏まえたチェックシート、事例集の作成を作り、そして、固定的役割分担にとらわれないフリーイラストの作成等を行っています。

 調査では、家庭・コミュニティー、職場、その他の領域として聞いたところ、今お話もございましたけれども、例えば「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」とか「デートや食事のお金は男性が負担すべきだ」等の項目で、回答者の多くに性別による無意識の思い込みがあることが分かってまいりました。

 今後、内閣府で作成したチェックシート、事例集、フリーイラストというのは、例えば、パイロットというと男性というふうに、今様々なシーンで、背景とか、本だったり雑誌だったり、出てくるわけですけれども、それを、両方、女性も当然パイロットがいる、そういうような、フリーイラストを活用した取組を強化していくとともに、更なる啓発をしっかり行ってまいりたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 やはり私も、この問題というか、ずっと根強く残っているものだと思っています。これらの問題が今本当に顕著に表れていると思っていることがあります。

 新型コロナウイルスのオミクロンの株が猛威を振るう中、学校や保育園の休校、休園を受け、仕事を休まざるを得ない保護者が増えております。休業助成金をめぐる課題が多く報道されております。私の周りにも、休業助成金がもらえなかったことによる離職を経験した方や、派遣切りに遭われた方、こういった方々がいらっしゃいます。コロナによる学級閉鎖、学校閉鎖の基準も曖昧な中で、学年が違う子供を持つ保護者は長い間休業せざるを得ない日々でございます。また、オンラインの授業ができていても、小学校の低学年はまだローマ字も習っておりませんので、何かあってもチャット機能を使ったアクセスができない中で、保護者がつきっきりになることも多いです。

 野田大臣にお尋ねいたします。このコロナ禍で、仕事を休むのは多くが女性だと聞いております。また、非正規雇用の場合、退職を選択した人もまた女性が多いです。これは先ほどの性別役割意識の表れだと認識しております。このコロナ禍で、女性のキャリアにも影響するこの事態に対して、より具体的な方策がおありですか。厚生労働省では女性の困難さを解決できていない現状を鑑みて、女性活躍担当大臣として御見解をお願いいたします。

野田国務大臣 御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症の拡大が続いている今日ですが、コロナ禍における女性への経済的影響については、そのとおりで、引き続きしっかり注視していく必要があると認識しています。

 今おっしゃった休校等の影響については、内閣府で開催しましたコロナ下の女性への影響と課題に関する研究会、ここにおいて、子供のいる女性の就業率を低下させ非労働率を上昇させる等、女性の就労に影響を及ぼすことが明らかということが分かっています。

 コロナ禍の女性への経済的影響の根底には、実は、コロナ禍だからではなくて、平時、平時のジェンダー平等が進んでいなかったことがあることから、女性の経済的自立に向けて、男女間の賃金格差の是正、そして、女性デジタル人材の育成、女性の視点を踏まえた税制や社会保障制度の検討など、様々な角度から取り組んでまいりたいと思います。

堀場委員 確かに、この労働という観点だけでは本当に解決ができない問題だと思っています。

 こういった観点から、次は、女性や家庭を取り巻く暴力について取り上げたいと思っております。

 第五次男女共同参画基本計画の実行のための女性版骨太方針である重点方針二〇二二の四本柱の一つ、女性に対する暴力の根絶など、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現についてお尋ねいたします。

 ここで言われる暴力の定義について教えてください。野田大臣、お願いいたします。

野田国務大臣 広辞苑の第五版から引用したところは、暴力の定義は「乱暴な力。無法な力。」というふうに示されています。

 今私たちが取り組んでいる暴力について申し上げるならば、具体的には、例えば、性犯罪や、性暴力や、配偶者からの暴力、ストーカー行為、職場等におけるハラスメントなど、女性に対する深刻な暴力が多くあるということでございます。

堀場委員 暴力というのは本当にたくさんな定義があります。今ここでわざわざこういう定義についてお尋ねいたしましたのは、これから私たちは、配偶者暴力防止法、DV法の改正で保護命令の対象となる精神的暴力であったり、懲罰権に関する規定、民法第八百二十二条の見直しが検討されているかと思うんですけれども、こういった暴力といったものにしっかりと向き合っていかなければならない時期に来ていると思っています。この議論がもう少し広い場で行われるのが望ましいと考えております。

 そして、インターネットにおける誹謗中傷の問題、こういったものも含めて全て暴力と捉えた場合、私たちはどのような対策が取れるのか、これについて、こういった場で議論していく必要性を感じております。

 家庭内の暴力は被害者に甚大な悪影響をもたらすものと承知しております。その一方で、家庭の中で行われてきた日常的な行為が暴力に相当するという認識がないままでは、混乱が起こることも想定されるかと考えております。直接的で身体的な暴力ではなく精神的な暴力というのは、非常にその定義が難しいものでございます。

 国家公安委員長、二之湯大臣にお尋ねいたします。配偶者からの暴力、児童虐待といった家庭内の暴力に対し、被害の未然防止に向けた取組等、強力に推進するとのことでございますけれども、具体的にはどのようなことでしょうか。また、家庭内の暴力に対する警察の介入は被害者の生死に関わる場合もございます。その介入に関して、DV法や民法第八百二十二条の改正でどのような変化がございますでしょうか。よろしくお願いいたします。

二之湯国務大臣 配偶者からの暴力事案や児童虐待事案は、警察が認知した段階ではなかなか、被害者等に危害が加えられるいわゆる危険性とか切迫性を正確に把握することができないわけでございます。しかし、一方、重大な事態に転換するということもよくあるわけでございます。

 そのため、警察といたしましては、配偶者からの暴力の訴えを受けたときの対応や家出少年を保護したときの対応等について、全警察職員に教育あるいは研修を行うなどをして、早期発見等に役立つ取組を推進しております。

 また、被害者等の安全確保を最優先に、刑法あるいは配偶者暴力防止法等を適用した加害者の検挙、あるいは被害者等の保護等を迅速的確に講じているほか、被害児童の児童相談所への通告を徹底しているところでございます。

 引き続き、地方自治体等の関係機関と緊密に連携し、被害者等の安全確保を最優先として取組を進めるよう警察を指導してまいりたいと思っております。

堀場委員 精神的な暴力の関係でいうと、怒りという感情が関連しております。モラルハラスメントやパワーハラスメントというものは非常に重大な精神的な暴力ですが、加害者の多くは怒りという感情の表現方法の一部だと認識していることがございます。

 いわゆるパワハラ防止法に基づく指針においては、精神的な攻撃として、人格を否定するような言動、必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返すなどと例示されております。

 国家公安委員長、二之湯大臣にお尋ねいたします。モラルハラスメントやパワーハラスメントといった精神的な暴力に対して、どのようにお考えでしょうか。ごめんなさい、ちょっとこれは通告になかったんですけれども、もしよろしければお答えいただければと思います。というのは、精神的な暴力というのが、やはり今回かなりいろいろなところで出てくると思っております。ここのところをどのように警察としてお考えなのか、もし分かれば教えていただければと思っております。

野田国務大臣 先に、先ほどからお話しいただいている第五次男女共同参画基本法ではどういう取組をしているか、どういう考え方をしているかというのを聞いていただければと思います。

 基本計画においては、女性に対するあらゆる暴力の根絶、これを重要分野として位置づけて取り組んでいます。これは、女性に対すると申し上げたけれども、実は暴力というのは男性に対しても駄目なことなんですね。根絶しなきゃいけない。だけれども、配偶者間とかは圧倒的に被害者が女性だということで、男女共同参画の中では、女性に対する、被害者が大変多いですから、そこはしっかり根絶するということで位置づけています。

 このうち、配偶者からの暴力については、今、有識者の意見を聞きながら、配偶者暴力防止法の見直しを進めているんです。特に、通報や接近禁止命令等の対象になる暴力の範囲を、現行は身体的暴力から、一定の精神的、性的暴力に拡大することなどについて検討を進めています。

 精神的、性的暴力を接近禁止命令等の対象とする場合には、やはり、対象となる精神的、性的暴力に該当する行為など、要件が明確になるようにすることとしています。これについては、更に検討を進めて、対応をしっかり取りまとめてまいりたいと思っています。

堀場委員 申し訳ございません。ありがとうございます。

 保護命令が出る規定が、精神的暴力が加わるというところが本当に、非常に重要な点だと私は思っています。

 保護命令が基本的に非常に出にくい中で、精神的な暴力を立証するということも難しいですし、その日常性及び頻度、そしてその強さ、これらを分かってもらうことというのはなかなか難しいと思うんですね。例えば、録音していた、いろいろな証拠を積み上げた、それでも保護命令がなかなか出にくいというのが状況でございます。

 こういったDVに関する援助というか、支援というか、させていただいたりもしていたことがあるんですけれども、やはり非常に保護命令は出にくいというのが印象としてあります。その中で、精神的な暴力、そして立証が難しい性的暴力が加わるということが一体どういう意味を持つのかなということも含めて、こういう暴力について検討させていただきたいなと思いました。

 一方で、社会的な問題ともなっているモラルハラスメント、パワーハラスメント、これに関して警察が介入するというのは非常に難しいというふうに認識しています。これに対して、何か、もしDV法が改正されたり、若しくは児童虐待の中で厳しい精神的な苦痛を感じている子供がいた場合、どのように御対応いただけるか、お願いいたします。

二之湯国務大臣 今、委員御心配になっておりますことは、現在、内閣府において開催されている女性に対する暴力に関する専門調査会において、配偶者暴力防止法の見直しに係る検討がなされていると聞いております。

 当該検討の推移を見守りつつ、配偶者間の暴力事案に関しましては、被害者の保護を最優先に、警察の責務が果たせるよう引き続き指導してまいりたい、このように思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 精神的な暴力、こういったものもたくさん日本には残っていると思っております。

 次の議題に行きたいと思っております。

 障害者の施策についてお話をさせていただきたいと思います。

 共生社会を実現するためには、多様性を認めていく、違いを認めていくということが必要だと考えております。障害や特性をお持ちの方々が、自分の得意を生かして社会で活躍していただくことが非常に重要だと認識しております。

 昨年成立いたしました改正障害者差別解消法の施行の前の準備に取り組むというお言葉に対して、御質問させていただきます。

 共生社会担当、若宮大臣にお尋ねいたします。

 改正障害者差別解消法では、合理的配慮の提供が努力義務から義務になります。合理的配慮の提供というのは、現場では非常に難しいものです。個々人で、一律ではない、目に見えにくい障害をお持ちの、特に精神障害、発達障害及びその傾向を持っている方々に対する合理的配慮というのは、実際にとても難しいものです。私も、現場にいまして、本当にこれは多種多様で難しいというふうに認識しております。具体的には、特性を理解した言葉のセレクトや、表現の方法の工夫、見通しを示す、パニックになったときの対応など、本当に様々です。

 そんな中でも、理解促進が一つ大きな配慮だと言われております。時間がかかる作業をゆっくり見守る、表出している行動だけでは判断しない、こういったことを挙げれば切りがございません。精神障害や発達障害の方々に対するこのような合理的配慮も義務化されます。

 一方で、過重な負担のない範囲でという文言があり、一見矛盾するようにも見えますが、いかがお考えでしょうか。理解促進という合理的配慮に対しての事業者の義務というのはどのようなものだとお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。

若宮国務大臣 堀場先生の御自身の体験に基づくいろいろな御見識に、改めて敬意を表したいと思っております。

 今御指摘になりました障害者の方々への合理的配慮の必要性、この意義、こういったものというのがなかなか一般的に分かりにくいのが現状かと思っております。

 まず、合理的配慮と申しますのは、障害者の方々が日常生活又は社会生活において受ける様々な制限をもたらす原因となる社会的な障壁を取り除くために、その実施に伴う負担が過重でない場合に、特定の障害者の方々に対して、個別の状況に応じて講じられるべき措置であるというふうに認識をしているところでございます。まさに、先生おっしゃるとおり、合理的配慮の推進、これは共生社会の実現に向けました重要な取組だというふうに思っております。

 こうした今般の障害者差別解消法の改正によります事業者の合理的配慮の提供の義務化等によって、社会全体の取組が一層進むように、私ども内閣府といたしましても、関係省庁や関係団体と連携しつつ、準備をしっかりと進めているところでもございます。

 なかなか、今先生が御指摘になりました、外見から特に分かりにくい障害、こういった形の方々の障害を理由とする差別の解消のために、どういった形が望ましいのか。まさに、多分、先生御自身も、そういった御経験を踏まえての御質問だろうと思いますけれども、障害の種別あるいは特性、こういったものについて、広く国民の皆様方にも御理解をいただくことが重要であるというふうにも考えております。

 私ども内閣府といたしましては、従前より、合理的配慮の事例の共有など、周知啓発には努めておるところでございまして、今年度におきましても、合理的配慮、障害の種別の特性、取組事例などにつきまして分かりやすく紹介するポータルサイトの設置等にも取り組んでいるところでもございます。

 今後も、これらの取組を通じまして、先生御指摘のような、外見から分かりにくい障害の方への一層の、一般の国民の皆様方を含めた理解の促進が図られるよう、関係省庁、関係団体と連携しつつ、しっかりとした形での周知啓発に努めてまいりたい、このように思っているところございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 ちょっと同じような質問になってしまうんですけれども、教育分野における個別指導計画がある子供たちの保護者に対するペアレントトレーニングがもちろん必要だというのは、皆さん御認知されているかと思います。それでも、クラスメートの保護者や地域の支援者などへの理解促進という合理的な配慮が学校現場では必要とされております。

 学校には、子供の教育を行うところで、大人の理解促進まで手が回らないのが現状です。それでも、理解促進、これがなければ、子供たちは非常に苦しい状況に変わりはございません。

 周りの大人にできることはまだまだございますけれども、この理解促進が進まないといったことに関する、どういったことができるのかなと調べさせていただきますと、地域において障害者差別解消に係る地域協議会の設置というふうになっております。しかし、ふだん仕事をしている世代にとって、こういった活動になかなか参加できない現状がございます。

 こういった現状を鑑みて、より具体的な方策はございますか。よろしくお願いいたします。

若宮国務大臣 今委員が御指摘になりました件は、学校の中での保護者の皆様方ということに対してですが、基本的には、これは文科省の方の管轄になってまいります。

 ただ、今、実際の施行に向けまして、関係省庁を含めて、全て連携しながら、どういった形が一番望ましいのか、私ども、全体として取り組んでいるところでもございます。

 特に、基本的なところから申しますと、まず、様々な障害のある方が、どういった形で、多分一見は分からないけれども、具体的にはやはりお困りのところがあるという場合もありますので、私どもといたしましては、障害者基本法で十二月の三日から九日まで障害者週間と定めておりまして、また、障害者の週間を決めた上で、この特性を知っていただくために、疑似的な体験をしていただくようなワークショップ、こういったものも開催するなど、これは保護者も含めた形での、一人でも多くの国民の皆様方へ、障害及び障害者に対する皆様の理解の促進を図るような努力をしているところでもございます。

 現在、この改正障害者差別解消法の施行に向けまして、冒頭申し上げましたように、これは、文科省であろうと、様々な省庁がどうしてもまたがることになってまいりますので、この基本方針の改定に向けた取組を進めているところでございます。

 特に、先生おっしゃるように、外見から分かりにくい障害者を含めた障害や障害者に対する国民の皆様方全体への周知啓発にまず徹底的に努めていくことと同時に、具体的な中身につきましても、今後、関係省庁と連携しながらしっかりと進めてまいりたい、このように思っているところでございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 共生社会とは、女性や障害者を含む多様な人材が自分の得意を生かして活躍していく社会であり、そのためには、価値観の変容、つまり理解の促進が何よりも必要だと考えております。

 今回、御質問させていただきました女性に対すること、障害者に対すること、この二つに関しての理解の促進、これが私は今何よりも必要だと感じております。

 ただ、理解するだけでは変わらない、それも分かっております。けれども、なかなか理解が進まないから変われない、これもあると思っています。そして、それに対する政治の役割というものも、また多くあるのではないかというふうに考えております。

 日本維新の会では、ダイバーシティ推進局を設置して、党内の議論を行っております。そして、これから障害者就労や支援といった事柄に関しても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

 この共生社会をつくるということに関しましては、恐らく、皆さん、同じ問題意識で取り組んでいることだと思っています。暴力を根絶すること、差別をなくすこと、こういった一つ一つの事案が私たちに今のしかかっていると思っておりますし、これを解決することが、次の子供たちに明るい未来を渡していくために必要不可欠だと思っております。

 ちょっと通告にないんですけれども、野田大臣にお尋ねしてもよろしいでしょうか。

 男女共同参画、女性の問題、こういった、政治の世界の女性の数が非常に少ないということもございます。私は、野田大臣のように、モデルがあると思っているんですけれども、なかなか子育てをしながら女性が政治に参画するのは非常に難しいなと感じている今日この頃でございます。

 先輩の女性議員として、何か、女性の政治活躍、そして、女性が政治に参加しやすい、選挙に出たいと思えるような、そういったメッセージをいただければなと思っております。どうぞよろしくお願いします。

野田国務大臣 まずは、やはり、先ほど障害児者のお話をしていただきまして、息子が重度の障害児なので、非常にありがたく拝聴していました。

 どんどん言葉だけでないインクルーシブ教育が進んでいって、小さな子供のうちから、障害を持っている仲間がいる、友達がいるということで、大人になってできてしまう偏見を子供のうちからつくらないような社会環境とか学校教育があれば、そうそうそんなに親の指導とかいろいろやらなくても、子供たちの中で理解が生まれてくれば変わってくるのかなと。

 息子は、今、普通の小学校に通学させてもらっていて、日々、いわゆる健常と言われる子供から、何であなた、こんな変なの、こんななのと聞かれて、その都度、親は心を痛めるけれども、子供たちの間では、それに慣れてきたことで、そういう子がいるんだという認知をしてもらえることが障害者施策にとっては大事なのかなという学びをさせています。

 女性としてどうかというと、私は本当に、ある意味、この仕事を選んだがゆえに女性としてのいわゆる平均的な人生を送れてこれず、子供を産んだのも五十歳ですから、大変回り道をしましたし苦労しましたので、私のように生きてほしいと思いません。

 やはり、二十代、三十代のうちにしっかりと家庭を持ちたい人が家庭を持てるようなことをするために、私たちは、むしろ、生物学的に女性ということであるわけですけれども、であれば、数少ない女性議員が女性のために生きていくことが、やはりこの政治の中で一番大切なのかなと。非常に遅いスタートなんですけれども、今改めて、長年やってきて、そこをしっかりやり遂げていくことが次の女性につながっていくのかなというふうに思い、いたしているところでございます。頑張ってください。

堀場委員 通告にない質問ですのに、申し訳なかったです。ありがとうございます。

 私は、今回、結構暗めの話題でございました。でも、やはり明るい気持ちになりたいなと思っております。

 最後に、万博についてお尋ねいたします。

 次の一万円札の顔になる渋沢栄一、彼にとってパリの万博は非常に大きな人生の転機だったと言われています。価値観ががらりと変わる、歴史が変わる、それが万国博覧会でございます。

 一九七〇年の大阪万博、太陽の塔に象徴されるあの万博もまた、多くの人々の人生を変える、夢を感じることができる、そんな存在でございました。

 コロナ禍を経験した私たち現代人にとって、次の大阪・関西万博が大きなチェンジとなるような、歴史に残る貴重な体験になるようにと希望を抱いております。

 万博担当の若宮大臣にお尋ねいたします。この万博に向けての政府の取組について教えてください。

若宮国務大臣 政府の取組、まず、時系列的に申し上げさせていただきたいと思いますが、二〇二〇年十二月に閣議決定をいたしました基本方針に沿いまして、各国への参加の招請活動、そしてまた、大阪・関西万博のコンセプトといたしております未来社会の実験場の具体化、また、近隣、周辺を含めました、先生、京都の方の選挙区だと思いますけれども、インフラの整備、あるいは全国的な機運の醸成など、この万博開催に向けました準備をオール・ジャパンで今進めているところでございます。

 参加の招請につきましてなんですが、まず、新型コロナウイルスの影響で大変いろいろな活動が厳しい状況下にはございますけれども、あらゆるチャネルを駆使をいたしまして、今、オール・ジャパンで積極的に取り組んでいるところでもございます。

 現在までのところ、今、七十八か国、そして六機関の方々から参加の表明を公表していただいております。また、それ以外にも、今まだちょっと公表する段階ではないという国も、あるいは機関も、積極的な参加に向けての関心の御表明をいただいておりますので、随時私の方からも、あるいは関連部署の方からも、あらゆる機会を逃さず、積極的に招請活動を引き続き続けてまいりたいというふうにも思っております。

 昨年の十二月になりますけれども、国際博覧会推進本部におきましては、未来社会の実験場の具体化に向けました、二〇二五年大阪・関西万博のアクションプランのバージョン1というものを決定をさせていただきました。今後、事業の進捗、あるいは関係団体の御提案等々を踏まえまして、大体半年に一回ぐらい改定をしていきたいなというふうに考えているところでございますけれども、更に内容を充実させてまいる予定でございます。

 また、周辺を含めたインフラ整備につきまして、これは昨年の八月になりますが、国際博覧会推進本部におきましてインフラ整備計画を決定をいたしました。会場へのアクセスの向上に加えまして、にぎわいや魅力の向上、さらには、開催後の大阪、関西の成長基盤ともなる広域的な交通インフラの整備など、着実に進めてまいるつもりでございます。

 この大阪・関西万博を成功させるためには、やはり、大阪、関西のみならず、日本全国、開催に向けた機運の醸成、これが最も私は重要じゃないかなというふうにも思っております。現在のところ、ロゴマーク、あるいは今後決めていきます公式キャラクターなどを活用いたしまして、この機運の醸成、全国的に広げていきたいなというふうに、取り組んでいきたいと思っております。

 また、全国の様々な企業にも御参加をいただくことも非常に重要なポイントだと思っておりまして、パビリオンの出展はもちろんのことでありますけれども、いろいろなイベント、催事への参加、あるいは、会場等を活用しました実証や実装事業、それからテーマ事業への協賛など積極的な参加、様々な形で、これは、大きい、小さい、大中小いろいろな様々な企業、団体の方々に御参加いただけるように促進をしてまいりたいなというふうにも思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、国民の皆様方に、この大阪・関西万博のテーマでありますのが「いのち輝く未来社会のデザイン」であります。こうした具体的な姿をお示ししていきたいと思っておりますし、先ほど先生もお話しになりましたけれども、実は私、小学校三年生のときに、前回の一九七〇年の、関西の、大阪の万博は参りました。そのときにびっくりしましたのが、携帯電話、そしてリニアモーターカー、それからロボット。様々なものがありましたけれども、そうしたものが今全部具体化されて、世の中の一部になって、社会の一部になっているかと思います。

 そうした意味で、やはりこの大阪・関西万博もそうなんですが、今ドバイでもやっていますけれども、半年間の開催期間だけが一番のメインではなくて、その半年間の間に何を新しい時代に向けて発表するのか、あるいは具体化するものを提案できるのかということで、向こう先、二十年なり三十年なり五十年なりが、在り方が変わってくるかと思っております。

 新しい技術進歩、本当に技術革新が、どんどんどんどん、日に日に進んでいますので、そういったものを先取りしながら、日本社会として、そしてまた国際社会へ向けて、どういったものが発信できるか、これはいい機会だと思っておりますので、世界各国とも連携しながら、手を携えながら、皆様方とともに成功させていただきたいなと。

 委員におかれましても、是非ともまた御尽力いただければと思っております。よろしくお願い申し上げます。

堀場委員 ありがとうございます。

 私も、私は当然生まれていなかったんですけれども、父や母がこの万博に非常に興味があって、そして、本当に夢を与えられた、そういった話を聞くことも多々ありました。私が小さい頃は、太陽の塔、エキスポランドという遊園地でございましたので、そういったところに訪れる、こういった後世に残る公園として行かせていただいていた、そういった世代ではございますけれども、私たちにとって、こういった万博というものが、本当に次の未来を見せてくれるような、そんな明るいものになるようにと思っております。

 そして、もう一度、若宮大臣にお尋ねいたします。この万博における国家予算の規模について教えてください。

若宮国務大臣 この大阪・関西万博は、まさに今委員もおっしゃいましたけれども、昨年終わりました東京オリンピック・パラリンピックに続きます国家的な大イベントだというふうに認識をいたしております。まさに、関係の自治体、あるいは経済界、あるいは博覧会協会など、様々な御関係の方々から理解と御協力をいただきながら、日本全体で取り組むことが重要だと思っております。

 こういった点では、必要な経費、今予算というお話が出てまいりましたけれども、これは非常に重要なポイントになってまいります。

 具体的には、やはり未来社会の実験場の具体化に向けて、今、先ほどもちょっと申し上げましたように、進めてございますけれども、公表されました数字で、会場の整備ということでは千八百五十億を今見込んでいるところでございますが、それ以外の部分につきましては、これはいろいろな形での部分が、どこまでが入るかというのがなかなか難しい、計りにくいところもございますので、一概に数字的なものはちょっと申し上げる状況にはないんですが、いずれにいたしましても、まず会場経費の千八百五十億円はしっかりと皆様方で分け合って、頑張って造っていきたい。

 あと、もちろん、具体的なパビリオンなんかの中のそれぞれ各国が出展をされるものにつきましては、それぞれのところがまた費用の方は捻出をされるかと思っておりますので、どういった形で、最終的な金額というのはまだまだちょっと不確定要素が多いものですから、一概には金額としては申し上げられないということを御理解いただければというふうに思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 万博の予算規模という御質問をさせていただいたのは、国として一体どのぐらいの心意気があるのかなというのをお聞きしたいなと思ったところでございます。

 やはり、国家的な大きなイベントと認識しておりますので、是非是非、ここにいらっしゃる皆さんももちろんそうですけれども、皆さんで盛り上がっていきたいと思っております。

 私の地元の京都、二之湯大臣もそうなんですけれども、京都は、世界で日本という国を知っている人がいれば、誰もが一度は訪れたい憧れの町でございます。だからこそ、今ちょっと京都市の問題がございまして、疲れ果てている京都市民でございますが、京都を元気にするために、この万博を是非盛り上げていきたいと思っております。

 日本維新の会では、この万博についても全身全霊で取り組んでまいりたいと思っております。

 本日はありがとうございました。

上野委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 最初に、松野官房長官に確認したいことがあるんですが、今日の午前中の予算委員会での質疑もあり、また記者会見でも説明もされました藤井敏彦経済安保法制準備室室長、国家安全保障局担当内閣審議官の件についてであります。

 松野官房長官、処分につながる可能性のある行為を把握したとして、その職が解かれて、出向元の経産省に戻ったということなんですけれども、これは、どのような行為を行ったのかについて御説明いただけないでしょうか。

松野国務大臣 塩川先生にお答えをさせていただきます。

 御指摘の案件に関しましては、現在、事実関係の確認、調査中でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 週刊文春の報道によりますと、兼業届を出さずに私企業で働き報酬を得ていた疑いがあるということですけれども、こういった事実関係についても把握をされるということでしょうか。

松野国務大臣 先ほどお答えをしたとおりでございますけれども、国家安全保障局の内規手続に対して届出を怠った等が確認をされておりますが、これ以上の詳細は、確認、調査中でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

塩川委員 内規手続の届出を怠ったということであります。

 この藤井氏が出席をした私企業の集まりには、所属省庁の利害関係者がいたとの報道もあります。こういった点については、経済安保の推進法というのが、企業に対して様々な規制策や、また支援措置を行うという法案という点で、その法案作成に当たっての実務の責任者だったのは藤井氏ということでもありますので、こういった、企業に対する規制や支援措置を伴うような法案との関係で、利害関係者の対応がどうだったのか、こういったことは極めて重要、重大な点でありますので、国会にその旨報告をいただけますか。

松野国務大臣 先ほどお話を申し上げましたとおり、事実関係の確認、調査を実施していくこととしておりまして、今後判明した事実に基づき適切に対処していきたいと考えております。

塩川委員 是非、国会にも報告いただくのは当然のことだと思いますけれども、この点について、国会としてのしっかりとした行政監視機能の発揮を果たしていきたいと思っております。

 次に、予算書、各目明細書の間違いについて松野官房長官にお尋ねをいたします。

 各目明細書は、予算書の説明資料として、予算が国会に提出されたら直ちに財務大臣に送付しなければならないものであります。国会提出義務づけの文書に準ずる予算関連文書として国会に提出をされてきました。

 その各目明細書が、総務省、法務省、文科省、国交省の四省で間違いがありました。こんな、四省も各目明細書に間違いがあったのは過去最多であります。極めて重大な問題だと思いますが、その点についての官房長官の認識を伺います。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 今般、各省庁所管予算の各目明細書について、総務省、法務省、文部科学省、国土交通省の四省の所管予算の各目明細書の記載に誤りがあったところであり、大変遺憾であり、おわびを申し上げます。

 今般の誤りの背景等を分析をし、同じような誤りが発生しないよう、財務省と各省庁とが連携をし、再発防止策を検討してまいりたいと考えております。

塩川委員 その中では、例えば総務省における各目明細書では、統計委員会委員の手当の部分が欠落をするといった、予算審議にも影響を及ぼす中身だったという点でも重大であります。

 財務省の方に事実関係の確認をいたしますが、過去も各目明細書の間違いが数件あります。平成以降、各目明細書に誤りがあった事例というのは何件でしょうか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 平成以降、各目明細書の誤りが報告されたのは五件ございます。

塩川委員 この五件のうち、補正予算が一つあって、当初予算は四件ということになります。

 当初予算のうち二件は、国会への提出日が二月の二十八日と、通常一月中に提出される当初予算が大変遅れていたというときでありました。

 このように、二月二十八日という、提出日が遅れた理由というのは何だったんでしょうか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、平成二年度予算、それから二十五年度予算、この二回の予算に関わる各目明細書に誤りがあったわけでございますが、こちらの予算の提出日が例年より遅うございました。これは、年末ないし年始に衆議院の解散・総選挙が行われたことによるものと承知してございます。

塩川委員 一九九〇年度の当初予算は、海部内閣のときで、二月の十八日に総選挙がありました。ですから、総選挙前に暫定予算を組んで、総選挙が行われ、当初予算がその後、二月二十八日に提出をされたという経緯があった。非常にイレギュラーな事態だったわけであります。

 それから、二〇一三年度の当初予算は、十二月十六日の総選挙で第二次安倍政権が発足をして、予算編成が遅れて二月の二十八日に提出となった。

 過去、当初予算で各目明細書に誤りがあった事例の二つというのが、こういう非常にイレギュラーな事態の中で、役所の対応も大変だったということが背景にあると思います。

 いずれもイレギュラーな事態が背景にあっての誤りだったという点でいうと、今回はどういう事情があったんでしょうか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の各目明細書の記載誤りの原因につきましては、関係省庁から、入力のミス、あるいは確認作業を怠っていたということとの報告を受けてございますが、いずれにしましても、今後、今般の誤りの背景等をよく分析いたしまして、同じような誤りが発生しないよう、再発防止策をしっかり検討してまいりたいと考えてございます。

塩川委員 四省で誤りがあるという過去最多のミスだったわけですけれども、今回の場合というのは、当初予算の閣議決定から国会への提出までの期間が過去最短だったんじゃないですか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、当初予算の概算閣議から提出までの日数でございますけれども、二十四日間でございます。これは、例えば平成六年度の場合には、平成六年二月十五日から三月四日までの十七日間ということで、今回よりも短かった例はございます。

塩川委員 それもイレギュラーなときですけれども、この二十四日間というのが、そういう点でいえば、通常のサイクルでいったときに、非常に、一番短期間だったということは明らかですよね。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、二十四日間ということでございます。同様の例で申しますと、例えば、平成二十年度の予算編成、二十五日間、平成十年度予算編成、二十五日間、平成十一年度予算編成、二十五日間といったような、類似の期間のものもございます。

塩川委員 いずれも最短という、日数が二十四日間という点でありますと、やはり、政権の都合で政治日程を決めた、こういうことが多くの間違いを発生する大本にあったんじゃないのか、その点は、官房長官としての認識はいかがですか。

松野国務大臣 お答えをいたします。

 これまで、各目明細書の誤りが報告された事例においては、例年と比較をして、概算決定から予算を提出するまでの期間が長かった事例もあり、予算の国会提出日程と何らかの関係があるとは言えないのではないかと考えていますが、いずれにしても、今後、誤りの背景等を分析をして、同じような誤りが発生しないよう再発防止策を検討してまいりたいと考えております。

塩川委員 政権の政治日程で無理な作業を押しつけないようにというのが基本であります。

 昨年の通常国会では、法案の誤りが問題になりました。閣法において合計百八十一件もの誤りがあった。そのうち案文が十四か所もあったという点でも、極めて重大でありました。

 こういった昨年の通常国会での法案の誤り、間違いの教訓が生かされなかったのか、この点はどうでしょうか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の通常国会におきまして、各府省庁提出の法律案及び参考資料に多数の誤りが発生したことを受けまして、同年三月に、内閣官房副長官を長とします法案誤り等再発防止プロジェクトチームを発足させ、同年六月、誤りの内容や原因等を踏まえまして、複層的なチェック体制の充実、ノウハウの蓄積、周知徹底などの再発防止策が取りまとめられたものと承知してございます。

 各目明細書につきましては、法案とは作成過程の業務フローなどが異なりますが、いずれにせよ、国会に提出する資料の誤りが本年においても発生したということは大変遺憾であると考えてございます。

 今後、今般の事案を受けまして、誤りが発生した経緯、原因など、背景をよく確認、分析いたしますとともに、それを踏まえまして再発防止策を検討してまいりたいと考えてございますが、検討に当たりましては、昨年取りまとめた法案誤りについての再発防止策についても、参考とすべき点はしっかりと参考にしてまいりたいと考えてございます。

塩川委員 今回、文科省で各目明細書の間違いがあったという点でも、私も拝見しましたけれども、非常に分かりにくいといいますか、よく見つけたと思うような誤りもあったわけですけれども、これも、ベテランの職員の人が自分の担当以外のところをチェックをした中でその誤りを発見したということがありまして、去年の法案間違いというのも、ベテランの職員の人からすれば考えられないような誤りもあったという点で、率直に言って、霞が関において、実務を担ってきたベテランの公務員が減っている、この間の公務員削減のマイナスの影響が出ている、このことを指摘せざるを得ません。必要な人員の配置など、再発防止策をしっかり取っていただきたい、このことを改めて求めておくものであります。

 ここまでで、官房長官と関係の政府参考人の方は御退席いただいて結構です。

上野委員長 松野長官、御退席ください。また、御関係の政府参考人の皆さんも御退席をお願いいたします。

塩川委員 それでは、続いて、岸田政権におきまして、賃上げの取組の一つとして、公的価格に基づく賃上げの話、ケア労働者の処遇改善事業に取り組んでいる、昨年の補正予算で措置されたものですけれども、この点についてお尋ねをしたいと思います。

 昨年十一月十九日のコロナ克服・新時代開拓のための経済対策の公的部門における分配機能の強化等において、「看護、介護、保育、幼児教育など、新型コロナウイルス感染症への対応と少子高齢化への対応が重なる最前線において働く方々の収入の引上げを含め、全ての職員を対象に公的価格の在り方を抜本的に見直す。民間部門における春闘に向けた賃上げの議論に先んじて、保育士等・幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を三%程度(月額九千円)引き上げるための措置を、来年二月から前倒しで実施する。」とあります。

 山際大臣でよろしいんでしょうか。この収入三%程度引上げという、この三%というのは、どういう意味、なぜ三%なのか、この点について御説明ください。

山際国務大臣 これは今委員が御発言の中で御説明いただきましたように、新しい経済対策の中において、春闘、まさに今やっているところですけれども、これに先んじて賃上げを、社会全体の雰囲気として、していこう、そういう中において、その賃上げのペースが、どうしてもここのところ民間も含めて下がってきているということに鑑みて、まずは隗より始めよということで、政府ができる部分として、公的部門にいらっしゃる方々の賃金を上げていこうというところで決まってきたものというふうに承知しております。

塩川委員 賃上げペースが下がってきている、まず隗より始めよということで、公務において、この分野で引上げをしようと。その三%という意味というのは、どうなんですかね。

山際国務大臣 これは、社会情勢等々もしっかり見ながら、総合的に判断して三%ということになりました。

塩川委員 いや、分からないんですけれども。もうちょっと言葉を足して説明していただけませんか。

山際国務大臣 先生の意図しているところは酌み取っているつもりではいるんですけれども、社会情勢を鑑みてということは、先ほども申し上げたように、民間全体も含めて賃上げのペースがここのところで、コロナ感染症ということもあり、下がってきているということを見て、これを賃上げをするという回復基調に乗せていくというようなことを考えていかないといけない、そういうコンセプトに基づいて、その中において、いろいろ総合的に判断をした中で三%ということが決まったということでございます。

塩川委員 これは、あれですかね、そうすると、まず隗より始めよという言い方であれば、民間でも三%以上やってほしい、そういう趣旨が込められているということでしょうかね。

山際国務大臣 春闘を、我々の方で、民間の話ですから、私たちの方でいわゆる官製春闘のような形で何か物事をしていただきたいということではなくて、今までの流れを一気に反転させたい、こういう思いで、その中で、現実的にできる部分というのも当然探らなきゃいけませんし、他の業種等々も含めて全体の流れというものを見る中で、我々として、できるところからまずやろうということで決めたことでございますので。

 総理からは、民間の皆様方にも、業績を回復されているそういう企業の皆様方は、三%を超える、三%程度のと言いましたか、賃上げを期待するということでございますので、それを要請するというわけではなくて、全体の雰囲気を一気に反転させるということを、まずは私たちがやれるところからやりたいという趣旨でございます。

塩川委員 そういった賃上げの好循環につながるような方向での取組ということが極めて重要だと思います。

 その際に、同時に、ケア労働者の方々の賃金というのが全産業平均に比べても低いと言われるような中で、率直に言って、その現場の方からは、三%、九千円というのでは一桁違うという声というのは出るわけですね。そういった声については、どうお答えになりますか。

山際国務大臣 それは謙虚に受け止めなくてはいけないと思っております。これまでも、公的部門にお勤めの皆様方の賃金というものに関して累次、少しずつですけれども、上げさせていただいてきたという経緯は委員も御案内のとおりでございます。今回でそれが十分かと言われれば、そうではないという現場の意見があるということも我々承知しております。

 その中で、現実的にやれることをしっかりやっていこう、こんなことで、今回はこの三%、まずはやらせていただきたいということで決定したわけでございます。

塩川委員 まあ、まずは一歩という話で、次の取組につながるようなものにしていくということは当然必要なんですが、今回のスキームで賃上げの対象となる労働者は何人なのか、そのうち公立施設の職員というのは含むのかどうか、その辺の大枠について御説明ください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども内閣府の方からは、内閣府所管の令和三年度補正予算において、今般の処遇改善に係る保育所や幼稚園等の予算積算上の職員数でございますけれども、常勤換算で約七十一万人分、このうち公立分が約二十万人分となってございます。

 また、放課後児童クラブの職員数でございますけれども、基となる厚労省の調査で公立、私立を分けて集計していないために、全体の人数というふうになりますけれども、常勤換算で約十二万人分というふうになってございます。

森政府参考人 文部科学省が実施いたします補助事業におきましては、国立大学附属幼稚園について約五百名、それから私立幼稚園のうち私学助成の交付を受ける幼稚園について約五万二千名の教員を対象としているところでございます。

岸本政府参考人 厚生労働省からお答えいたします。

 賃上げの対象者数でございますが、まず、保育分野のうち、厚生労働省が予算の執行を行う社会的養護関係施設の職員は、予算上、常勤換算で約三万人、このうち公営施設の職員は約二千人となってございます。

 また、その他の分野の対象者数でございますが、予算上、常勤換算の人数としまして、介護職員が約百三十八万人、障害福祉職員が約五十七万人、看護職員が約五十七万人となっております。

 なお、これらの職員につきましては、公務労働者の数を把握してございません。

塩川委員 ありがとうございます。

 これを積み上げると、単純な積み上げで三百四十三万人程度になると思います。その中には公務の労働者も含まれているということで、当然、常勤換算で計算していますから、実際に支給の対象となる方は、その他の調理に当たっているような方なども含めてもう少し広がるので、実際の賃上げに関わる労働者数は更に大きくなると思います。しっかりと賃上げにつながれば、少なくない影響を及ぼすということは言えると思います。

 そこで、実際に、この申請の手続なんですけれども、動き始めていて、自治体から国への申請期限というのが二月の二十一日となっていますけれども、いろいろ現場の声を聞きますと、民間施設や高齢者施設の申請手続が進んでいないというふうに聞くわけです。

 これは、二月二十一日は一つの節目で、二月二十一日以降も実際には申請の受付が可能、実際に支援の対象をしっかり広げるということがポイントだと思いますから、二月二十一日で、後はもう全部駄目という対応はしないでほしいんですが、その点、どうでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度補正予算で措置をされました処遇改善に係る補助金でございますけれども、今年度中に保育所等に対しまして資金を交付できるように、令和三年度における国への交付申請の期限につきましては、先ほど委員から御紹介ありましたとおり、一月の二十八日も第一回の交付の期限がございますけれども、もう一回、二月の二十一日というふうに設定をしているところでございます。

 今回の処遇改善では、各保育所等におきまして三月までに実際に賃金改善を行っていただくということを補助要件としているわけですが、市町村から国への申請について言いますと、管内の保育所等における処遇改善の実施見込みに基づいて、概算による申請ということを行うことも可能としております。

 このため、市町村が定めた期限までに施設から申請がないということを理由にして、三月までに処遇改善の取組を行うにもかかわらず、一律に補助の対象外とすることは適当ではないというふうに考えております。

 こういったことから、市町村に対して、ただいま申し上げましたような趣旨をきちんと周知をし、柔軟に適切に対応いただくように働きかけを行っていきたいと考えております。

塩川委員 ですから、施設から市町村へという点で、なかなか作業そのものも大変で間に合いませんと、一週間ぐらい前にそういうのを設定しているような場合も多いでしょうから、そういう場合については概算で市町村から国へということはあると思うんですが、その際でも、二月の二十一日で、全部それ以降は受け付けませんという対応でいいのかという点はどうでしょうか。

藤原政府参考人 内閣府における、ただいま申し上げました二月二十一日という期限につきましても、もちろん、無制限にというわけにはいきませんけれども、いろいろな自治体の御事情もおありでしょうから、状況を見て、少し遅れて提出があった場合でも対応できるように、国としても柔軟に対応していきたいと思っております。

塩川委員 とにかく、賃上げにつながるような作業ということで、いろいろな現場の遅れも見越しながら、しかるべき手続を対応いただきたいということです。

 それで、埼玉県にお聞きしますと、市町村に対して、民間施設で事業者が申請しない場合に、その理由を把握をすることを求めています。やはり賃上げにつながるような取組を行ってもらいたいという趣旨でいったときに、手を挙げないような場合について、なぜなんですかといったことを確認するという作業を埼玉県としては行うということにしているんですけれども、こういった点について、国としても、やはり現場の実態を把握する必要があるんじゃないのか。

 申請者が申請しない理由があれば、それも把握をして、それに対しての改善策を取るといったことも国として考える必要があるんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。

藤原政府参考人 今回の処遇改善の補助金、非常に重要な、大切な補助金であるというふうに考えております。これをできるだけ全国の保育所等において御活用いただけるように、我々、しっかり周知なり手続の弾力化なりしているところでございます。

 委員がおっしゃったような、個々の施設について国が直接意向を把握するというところまではなかなか難しいかと思いますが、先ほど申し上げましたように、そもそも、自治体から国に対しては、まず概算で請求をしていいですよというふうにしておりますので、こういったことをしっかり周知をして、適切に自治体において対処いただくように、周知なり取組、働きかけなりをしていきたいというふうに考えてございます。

塩川委員 その点、周知方、しっかり求めたいと思います。

 それから、公立の施設の関係なんですが、特に保育園でお尋ねしていますけれども、公立保育園等の職員について賃上げを行う自治体というのはどのぐらいになりそうか、そういう見込みというのは国としてはお持ちですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の処遇改善に係る交付金でございますけれども、まだ申請が、まず一回目の一月の申請しかございませんので、第一回交付申請の状況ということで、あくまで経過的な状況ではございますけれども、その段階で保育所等について申請がありました自治体が百八十三自治体ありまして、そのうち、公立の保育所も対象にしますよというふうな内容になっておった自治体については三十四自治体でございました。

 まだ第一回目の状況ですので、今後の状況をよく見ていきたいと思います。

塩川委員 第一回目について、公立保育園の職員の賃上げを行う自治体というのは百八十三分の三十四。これはかなり少ないんじゃないかと思うんですが、その点についての認識はいかがですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まずもって、第一回目に、一番最初の段階で出してこられた自治体ですので、またこの先よく周知なりしていきたいと思いますが、今回、公立施設についても補助金の対象にしているという趣旨についてはしっかり御説明をし、各自治体で適切に御判断いただきたいというふうに考えております。

 一方、やはり、地方公務員である公立施設の職員の給与を上げるということになりますと、御承知のとおり、条例ですとか規則の改正、それを地方議会の議決を伴うというふうに、一定の手続に時間を要するというふうな特殊性があるということも事実でございます。

 このため、内閣府では、二月分からの賃金改善を行うという条例改正案などを年度内に議会に提出いただいている場合には、実際の支給が四月以降となる場合であっても、今般の処遇改善の補助対象にすることとしております。

 また、国に対する交付申請に当たっても、公立施設も含めまして、処遇改善の各保育所の実施見込みに基づき、先ほど申し上げました、概算で申請していいですよというふうなことですとか、こういった柔軟な取扱いもしております。

 また、一方、総務省の方からも、公立施設の職員の賃金改善の取組の例を通知をいただきまして、働きかけをしていただいているところでございます。

 このように、内閣府では、総務省の御協力もいただきながら、公立施設の職員についても賃金改善を実施いただけるように取り組んでいるところであり、引き続き、周知についてしっかりと行っていきたいというふうに考えております。

塩川委員 一応、条例が年度内にということで、ぎりぎりまで対応するということは認めますよと。そういうスキームの話は分かります。ただ、この百八十三分の三十四しか公立保育園の賃上げをしないという、この賃上げしないという自治体がどういう理由なのかというのは、つかんでおられますか。

藤原政府参考人 私ども、まだあくまでも経過的な状況でございましたので、個別に幾つかの自治体に、どういうふうな意向を持っておられるかとか、どういうふうな条例改正を考えていらっしゃるのかということを個別に自治体からお聞きしているような事例はございますけれども、包括的、網羅的に状況を把握しているということではございません。

塩川委員 二月の二十一日で、また当然、一つの締切りで来るわけですから、実際それがどの程度なのかというのもあります。ですから、公立保育園での保育士の賃上げについて消極的だという傾向というのが大きくあるようであれば、それを解消するような手だてというのは必要だと思います。

 私がお尋ねしたある政令市においては、公立保育園職員の三%引上げについて、二月からの実施になっているわけですけれども、二月からは考えていない、その後どうするかは検討中だ、病院職員の引上げも考えていないというお話でした。もちろん、非常勤の会計年度任用職員も同様だということですが。

 こういった実態をしっかり把握する必要があるんじゃないかと思うんですが、改めて、いかがですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 地方公務員である公立施設の職員の賃金につきましては、自治体によって、職種ごとですとか、それから会計年度任用職員の給与体系ですとか、様々だろうというふうに承知をしておりますので、基本的には、内閣府としては、先ほど申し上げましたような、柔軟な対応をしているよということをしっかりお伝えをし、その自治体、自治体で適切に御判断をいただくということをお願いをしたいというふうに考えております。

 第二回目の交付期限を見極めて、どのぐらい出るかということもよく見たいと思いますし、実際にそうやって上がってきた自治体の中で、どのような対応をして処遇改善に取り組まれるのかということは、幾つかの自治体の取組などを把握をするとか、少し工夫はしてみたいと思いますけれども、いずれにしても、自治体においてしっかり適切に御判断いただけるような周知について取り組んでいきたいというふうに考えております。

塩川委員 ある政令市にお聞きしたときに、何で引上げを検討しないのかという理由として、三つぐらい言っていたんですけれども、一つは、公立保育所職員の年収は民間よりも高いので、直ちに処遇改善は必要ないということとか、二つ目は、ほかの政令市に確認したところ、前向きなところが少なかった、他市との均衡を考えた、こんなことを言っていましたし、三点目は、どうしても人事院の勧告制度がありますので、人事委員会の勧告を受けて、この間、賃金については対応してきたけれども、今のところ人事委員会から意見はないということもあり、こういったことを考慮して、引上げを検討しないというふうにしたという話なんですが。

 しかし、公立保育所の保育士も全産業平均と比べたら賃金が低いことには変わりありませんし、仕事内容に比して報酬が十分でないという、岸田政権でのケア労働者の賃上げのこういう立場に立っても、こういったケア労働者の賃上げに後ろ向きというのは極めて残念なことであります。

 また、今回の三%の引上げは人勧制度そのものと関係ないので、何か人事委員会を持ち出して話をするようなことでもないわけです。

 結局、賃上げをしない理由を探しているような話になっちゃうんじゃないかなと思っていて、ここのところをやはりよく工夫もして、公立保育所における保育士の賃上げを図るといったことを一歩進めるような取組が必要じゃないかと。

 この点で、どうでしょう、野田大臣、山際大臣、どちらが担当なのかよく分からないんですが。

山際国務大臣 モメンタムは先生のおっしゃるとおりで、賃上げをみんなでしよう、そういう社会の雰囲気をつくらなくてはいけないというのが我々岸田政権における、岸田内閣における方向性ですから、できればそれにそぐう形で、様々部署部署ありますが、いろいろな理由もありましょうけれども、その中で、その方向で、みんなで賃金を上げられる方向で進んでいただければと思っております。

 何ができるかというのは、担当の部署とも相談をしたいと思います。

塩川委員 野田大臣にも一言いただきたいんですが、保育士の賃金が低いというのは、やはり女性が多い職場という、男女の賃金格差のその側面もあります。

 そういった男女差別の解消の取組の一環としても、こういった女性が従事することの多いケア労働者の賃上げをしっかりと図るということが極めて重要であると思いますので、この点でやはり、特に、今言った公立保育所の保育士の賃上げについて消極的な自治体が多いという現状を踏まえて、もう一歩踏み込んだ対応をしっかり取る必要があるんじゃないのか。

 野田大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 私の担当は専ら、保育士等ということなんですけれども、今、山際大臣がおっしゃったように、この取組は何かというと、全ての皆さんの賃金を上げることで、人への投資、どの仕事に就いていても、やはり賃金を上げて、生活又は子供への手当て等を豊かにしていくことで厳しいこの経済情勢を乗り越えていこうという趣旨とするならば、それが公であろうと私であろうと、職種関係なく、とりわけ、今このコロナ禍の中で重要視されているエッセンシャルワーカーも実は大多数が女性なんですね、看護師さんを始めとして。さらに、保育士とか介護士さんもほとんど女性が担っているケースが多いわけで、そこがやはり実はずっと見落とされてきたのかな、この長い歴史の中では。

 でも、ようやく平成二十五年あたりから、やはり子供に関してしっかり取り組まなきゃいけないということで保育士さんたちの処遇改善が始まっていて、少しずつ、この厳しい賃金、低賃金、賃金が伸びない中ですけれども、今般、累次、月額最大八万四千円までは乗せ上げてきましたので、引き続き、保育士さんそのものの生活だけではなくて、保育士さんあってやはり子供たちの健やかな育ちがあるという、今の新しい子供政策の下でも、公的だとか私的だとかそういう話ではなく取り組んでいただければと願っています。

塩川委員 この点、ですから、本当に現場の実情に即して何ができるのかというのをしっかり対応することが必要だと思っています。

 自治体が消極的な気持ちになるのも分かるというか、背景としてあるのが、やはり三位一体も含めて、地方行革あるいは自治体リストラ、こういった動きの中で、地方財政措置がしっかり対応してくれるのかといったのがやはり大きくあると思います。

 二月から九月は少なくとも十分の十の補助でやりますけれども、十月以降については地方交付税措置ですねといった場合に、しかるべき措置は総務省として取っているという話ではあるんだけれども、本当かみたいな話というのが自治体側にあるわけで、この点も含めて、公立の保育所の保育士の賃上げにつながるような地方財政措置をしっかり行うということを、自治体にも納得いくような形で示すということは必要なんじゃないのか。この点、野田大臣、どうですか。

野田国務大臣 繰り返しになりますけれども、国の方では、新しい資本主義を起動するために、まずは保育などの現場で働く方々の給与の引上げを行うわけで、これは国ができる範囲の中で先駆けて取り組むと。それで、引き続きいろいろな、公定価格の問題点が、これまで、人事院勧告があると下がるとか、そういういろいろなことがあったけれども、そもそもやはりこういう介護、障害、保育、幼稚園というのは低かったので、それをやはりきちっと、増加するであろうということで処遇改善をしていこうということが、公的価格評価検討委員会、この中間整理において、特に二〇二〇年代にこうした取組に注力すべきとされていることを踏まえて、国はもとより、全てのそういう関係の人たちが適正な水準まで賃金が引き上がるよう、関係の大臣たちと連携して取り組んでいくべきだと私は思います。

塩川委員 その点で、公的価格評価検討委員会を設置をして、具体化をしたアウトプットも行われてきているわけですけれども、岸田総理が自民党の総裁選の施策として、看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士など、賃金が公的に決まるにもかかわらず、仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やすために、公的価格評価検討委員会を設置をし、公的価格を抜本的に見直すと訴えていたわけであります。

 仕事内容に比して報酬が十分でない皆様の収入を思い切って増やす、エッセンシャルワーカーの方。そうであれば、保育士の方、保育労働者の方でいえば、全産業労働者平均が年収四百八十七万円、一方、保育の労働者は年収が三百七十四万円です。厚労省の二〇二〇年の賃金構造基本統計調査に基づくと、月額九万円の格差になります。この九万円の格差を解消することこそ目指すべき目標であって、この格差をいつまでに解消するのか。この点、野田大臣、どうでしょうか。

野田国務大臣 繰り返しになりますけれども、今委員がおっしゃっているとおり、保育士始めこういう職種の方たちが他の職種に比べて非常に賃金が低い状況にある、そしてまた、人材確保に向けて処遇改善をしていくということはもう明らかで、これは、先ほど申し上げたように、平成二十五年ぐらいから累次の処遇改善というのをしっかり行ってきて、現在のところ、今日までで月額最大八万四千円までは二十五年から上げることができてきたわけですね。

 しかし、まだまだ足りないということで、これから、岸田政権の新しい資本主義を起動するための分配戦略として、更にまた保育などの現場で働く方々の給与の引上げを行います。そして、引き上げるけれども、これが継続的なものになるように、補正予算ではまず前倒しを実施していますし、本年十月以降については、公定価格の見直し等によりきちっと措置をすることにしています。

 先ほどの話のとおり、公的価格評価検討委員会においては、やはりきちっと注力していくということが明らかになっていますので、しっかりやっていくということを決めているところであります。

塩川委員 資料をお配りいたしました。先ほど野田大臣も御説明いただきました保育士の処遇改善のことが分かるグラフですけれども、これを見ていただいて、一番右側のグラフが令和二年度と令和三年度に当たります。これは、下側のオレンジ部分のところが人事院勧告に準拠した改善部分なんですよね。全体に占める人勧に準拠した改善部分が非常に大きいというのもこれで見て取れるんですが。

 人勧に準拠した、改善になっていればプラスなんだけれども、マイナスの場合があるわけですよ。令和二年度はマイナス〇・三%なんですよね。そうすると、保育士については、処遇改善しましょうと言っているんだけれども、実際には、人勧に準拠したマイナスが反映されて、逆に減っているという状況になっているわけです。処遇改善どころか、保育士に賃下げを強いることになっています。

 このマイナス人勧による賃下げを押しつけるということは、そもそも岸田政権が言っている、こういった保育士を始めとしたエッセンシャルワーカーの方の収入を思い切って増やす取組に逆行するんじゃないでしょうか。

山際国務大臣 これは、ほかの分野で、特に公的な分野で働いていらっしゃる方々にも人勧は利いてくるわけですから、全てに言えることです。しかも、それはタイムラグがあるわけですね、先生御案内のように。ですから、悩ましい部分であるというのは、そうかもしれません。

 一方で、それだけで物事を見ていくわけではないので、先ほどから何度も申し上げているように、政権としてどういう意識でいるのかということをきちんとお示しし続けることが大事だと思っているんです。

 我々としては、まずは三%というので賃上げを実施させていただいて、それはマイナス要因として人勧というのがあるというのは承知しておりますけれども、ですから、先ほども、まずは三%からやらせていただいてという言葉を使ったのであって、これからも持続してこの賃上げのモメンタムが維持できるようなそういう状況をつくっていきたい、それが岸田政権としての方向性なんだということを先ほどから申し上げているわけでございます。

塩川委員 いや、ですから、格差解消しましょう、保育士の賃上げを図りましょうと言っているときに、人勧のマイナスを反映して引き下げることはないでしょうということなんですよね。

 でも、今回、このケア労働者の処遇改善事業におきましては、保育士等、新制度に基づく労働者の方については、人勧に基づく給与法に従うマイナス分については、これは補助制度で穴埋めをするわけです。マイナスをゼロにして、その上に九千円乗せるという仕組みになっているんですよ。

 ある意味、やればできるんじゃないかという話だと思うんですけれども、こういった穴埋め措置を継続的に行えばいいんじゃないですか。

野田国務大臣 先ほど来お話があるように、人事院勧告に依拠した改善部分というのが多いわけで、御承知のように、公定価格というのは積み上げ方式、人件費、事業費、管理費についてそれぞれ対象となる費目を積み上げて算定する積み上げ方式を採用していて、人件費については国家公務員の給与に準じて算定しています。

 ですから、おっしゃるとおり、従来から人事院勧告に伴う国家公務員の給与の改定内容について、プラス改定の場合もマイナス改定の場合も保育士等の人件費に反映してきている。今回は、令和三年人事院勧告では、ボーナスを〇・一五月分引き下げる内容ということで、国家公務員の対応を踏まえて、令和四年度から公定価格の人件費については〇・九%の減額改定を行う予定です。

 一方で、今お話があったように、今般、三%程度、月額九千円の処遇改善を実施するに当たり、令和四年四月以降も三%の処遇改善となるよう、令和三年度補正予算において、令和四年四月から九月までの間の公定価格の人事院勧告影響分の減額相当分、今お話があったマイナス九%相当を含めて補助を行うことにしています。

 いずれにしても、処遇改善の取組が保育等の現場に行き渡るように取り組んでまいりますし、今後、十月以降の対応についても、本年の夏の人事院勧告の状況を見つつ、三%程度の引上げがきちっと維持されるよう対応を検討していくつもりです。

塩川委員 ですから、人勧に伴うマイナス分を今回は補助して埋めているわけですよ。

 ですから、今後、公定価格で人勧の反映を入れるというんだけれども、プラスは反映するのは分かりますよ。格差を広げるようなマイナスの部分は、もうやめたらどうですか。そういう仕組みにこそしておく方がいいんじゃないですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所に支払われる公定価格、これは御承知のとおり、子ども・子育て支援制度において告示で示している公定価格でございますが、この単価につきましては、保育、幼稚園等の子ども・子育て支援法による公定価格については積み上げ方式を採用しているわけでございます。

 このうちの人件費を国家公務員の給与に準じて算定をしているということですので、人勧がプラスのときはそのとおりプラスにしますし、マイナス改定のときはマイナス改定というふうにさせていただいていると。

 トータルで見れば、この十年間で、プラス改定六回、マイナス改定二回、改定なし二回となっておりまして、単純に合計しますとプラス七・八%の改善が実現できている。そういった積み上げ方式による効果ということもあることも事実でございます。

 今後、先々のことをお答えすることは非常に難しいことでございますし、年度年度の予算編成での予算確保という点もあるので、先々のことをお答えすることは難しいですが、今申し上げましたような積み上げ方式によって効果がある、改善に対して効果が今あるということも事実でございますし、私ども、子ども・子育て会議の報告書、対応方針においても、公定価格の設定方法について積み上げ方式を維持すべきであるというふうな方針も示されておりますので、まずはこの三%の引上げ、今回の三%の引上げを、しっかり率を上げていくということで取り組みたいと思います。

 その後のことについては、ちょっと今私どもの方からお答えすることは困難ではありますが、処遇改善、非常に重要な政策課題だということは重々承知をしておりますので、適切に対応していきたいというふうに考えております。

塩川委員 人勧を値切るということは、過去、政権が何度もやってきているんですよ。それを我々は反対してきたけれども、プラスはちゃんと反映するけれどもマイナスは反映しないということだって、やる気になればできる話なので、こういったマイナス人勧部分については公定価格に反映するなといった原則を作って、それに基づいて対応するということを求めて、質問を終わります。

上野委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 緒方林太郎です。

 今日は実はダブルヘッダーでありまして、よろしくお願いいたします。予算とダブルヘッダーであります。

 冒頭、先ほどもありましたけれども、前安全保障法制担当準備室長についてお伺いをいたしたいと思います。私、週刊誌に基づいて質問したりすることはしませんので。

 一つやはりどうしても気になるのが、特定秘密とか特別防衛秘密とか、そういうものの漏えいはなかったですよね。いかがですか、官房長官。

松野国務大臣 緒方先生にお答えをいたします。

 今般の事案については、現在、国家安全保障局において事実関係の確認、調査を行っており、現時点においては、お尋ねの点も含め、具体的な状況についてお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

 他方で、本事案が国家安全保障局の業務に影響を及ぼすことがあってはならないと考えております。自分としても、確認、調査の作業をしっかりと行うとともに、経済安全保障を推進するための新たな法案の策定を含め、通常の業務に支障を来すことがないよう、国家安全保障局をしっかりと指導していく考えであります。

緒方委員 先ほど、分かった事実から報告をしていくということがありましたが、大体、こういうのはいつも、予算が成立するとぼろぼろぼろっと出てくるというのがパターンなんですが、予算成立を待たずに報告していただけますでしょうか、官房長官。

松野国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、調査結果が判明し次第、適切に対処をしていきたいと考えております。

緒方委員 それでは、質問を移していきたいと思います。

 今日は、官房長官にお越しいただいたのは、内閣官房とか内閣府とか、そういうものの在り方について少し御質問させていただきたいと思いまして、お越しいただきました。

 内閣官房の担当大臣とか内閣府特命担当相の中には総合調整を担っておられる方というのが非常に多いということなんですが、ただ、日本の内閣法というか法制度は、各それぞれの省庁に設置法があるので、設置法を持っている各省庁の権限に手を突っ込んでいかないと、総合調整というのはほとんど役割を果たせないわけですよね。ある意味、強烈なキャラでばく進する人でないと総合調整というのは本当の意味でなし得ないんじゃないかな、それぞれの各省の設置法を前提とするとですね、そういうふうに思うんですね。

 しかしながら、総合調整だ、総合調整だということで、内閣府や内閣官房の方に物すごく業務がどんどんどんどんやってくる。二〇一七年に、内閣官房と内閣府をスリム化をしましょうということで、スリム化法というのを作りました。あれから五年たちますけれども、見ていると、むしろでかくなっているんじゃないかなという気がするんですね。

 やはり、何でもかんでも総合調整、総合調整とやるというのは、私は違うんじゃないかと思うし、内閣官房と内閣府の業務については不断のスリム化の努力をすべきだというふうに思いますが、官房長官、いかがですか。

松野国務大臣 先生御指摘のとおり、内閣官房の業務といたしましては、重要政策の企画立案、総合調整等でございますけれども、そうした中でありましても、内閣官房が、内閣が取り組もうとする政策課題により機動的に対応し、重要政策に関する司令塔機能など本来の役割を十分発揮できるようにする観点から、その事務の不断の見直しを行い、できるだけ組織を効率的なものにしていくことは重要であると考えております。

緒方委員 本当に、その一番典型がこの所信質疑ですよ。人によって聞いていることが全然違うわけですよ。

 この内閣委員会での一般質疑とかを聞いていると、それを聞いて、何を所管する委員会ですかと。分かる人、多分一人もいないと思うんですよね。なので、不断の、スリム化は二〇一七年にあるわけでありまして、ああいった努力を続けてくださいということのお願いであります。

 その上で、コロナ担当、山際大臣にお伺いしたいと思います。

 内閣官房で非常に頑張っておられて、国会答弁を聞いておりましても、そつがないな、優秀な方だなというふうに思いますが、ただ、例えば、厚生労働省所掌の事項というのは大臣に権限はないんですよね。総務省の権限とかも、これも大臣に権限がない。これは堀内大臣もそうだと思いますけれども。それぞれ設置法があるわけでして、あくまでも大臣に与えられているのは総合調整ということの役割だと思います。

 私、思うんですけれども、正直なところ、多分、山際大臣、自分の所掌と厚生労働大臣の所掌がどこで切り分けられているかということについて、多分はっきり答えられないと思うんですよ。

 ちょっとお伺いしたいのが、設置法を持たないことに伴う、設置法に伴う権限を持たないことによる御苦労とか、所掌区分が不明であることとかそういうことに対して御苦労を感じることはございませんか、大臣。

山際国務大臣 残念ながら、私は強烈なキャラで強引に引っ張っていくというタイプではないものですから、まさに総理を本部長にして総合調整をするというのは私自身やらせていただいていて、今のところですが、岸田内閣においてはきちんと機能しているというふうに感じております。

 その中で感じているのは、むしろ、これを仮に一人の大臣でやろうとしたらとても回らないなという仕事量があるということです。ですから、私が主にやっているのは、特措法の事務をやっておりますから、当然、地方自治体の皆さんと密に連絡調整をするということを日々私のチームでやらせてもらっていますけれども、これを、今の厚生労働省の、感染症そのものを見ていかなきゃいけない方々にこの仕事までやってくれというふうに話をしたら、本当にパンクしてしまうという気がいたします。

 ですから、岸田内閣においては、きちんとデマケが行われていて、三人とも強烈なキャラではありませんので、三人ともちゃんと調整が利くような状況で機能しておりますけれども、中には、もしかすると調整をしなくてはいけない部分が出てくる可能性はあります。そのときに、まさに調整が可能であれば調整をすればいいわけであって、それに対して、何か、権限が及ばないから苦労しているというようなことは今のところはございません。

緒方委員 調整するのはそれは当たり前でありまして、ただ、調整する対象となる大臣の数が増えれば増える分だけ役所の手間というのは物すごくかかって、同じ情報を複数の大臣に上げていかなきゃいけないというようなことがあって、調整をするから大臣の数が増えても構わないのであるということにはならないと思うんですね。

 しかも、医療のどこまで、例えば山際大臣が口を出せるのかとかいうことについていうと、結構な、まあ大臣が直接感じておられるかどうか分からないけれども、恐らく、内閣官房にいるコロナ室の方々と厚生労働省の間には、それなりの権限争いとか、消極的なもの、積極的なもの、あるはずですよ、絶対あると思います。

 諸外国のケースを見ていると、このCOVID―19の対応に対して、医療面において、保健大臣とか厚生大臣とかそういう名前のついている方が担当していないケースはほとんどないわけですよね。こういう総合調整のポストをもう一個つくって、それでやっていますというところはないわけであって。

 私、やはり何でもかんでも総合調整というよりも、これは私の私案なんですけれども、コロナの医療面の担当、これは決して今大臣がやっているパフォーマンスがどうだとかそういうことではなくて、純粋に機構論なんですけれども、コロナ担当の医療部分のところは厚生労働大臣が担う、そして、経済対策とか経済のところはまさに大臣のポストにおられる方が担う。

 ただ、そういうふうに言ってしまうと、いや、ただでさえ厚生労働省はもうぱんぱんよ、パンクしそうよというようなことは、これは私も分かっているので、そのときに、私、これは官房長官にお伺いしたいんですけれども、内閣府特命担当大臣というのは、内閣府の大臣である内閣総理大臣の権限をそれぞれ担当している大臣ということになっているわけですが、各省の大臣の下に特命担当相を置けるような内閣法の改正をしてやってみるというのは、私は一つの見識なんじゃないかなと。

 まさに設置法で権限をしっかり持って、やる。例えば厚生労働省でいうと、コロナと直接関係が余り高くなさそうなところを特命担当相の方に移して、純粋に厚生労働大臣は今の重要な課題に専念する。こちらの方が、権限が、足場がしっかりしているわけですね。そういう考え方、いかが思われますでしょうか、官房長官。

松野国務大臣 先生のお話をしていただいた中にあったとおり、行政の制度、運用に関しては、不断に見直し、改革が必要であると認識をしておりますが、現行制度の中におきまして、御指摘のような、各省大臣の下に例えば特命担当大臣を置くというような形につきましては、内閣の長たる総理の下、各国務大臣が対等とされ、各省大臣が各省の長として主任の大臣とされていることとの整合性の問題等、検討すべき課題が多いと認識をしているところであります。

緒方委員 もちろん、その論点はよく分かっている上で聞いているわけでありまして、もうこの話はこれで終えさせていただきたいと思いますけれども、やはり日本の法制度、行政機構は、設置法が存在しているので、それぞれの権限ががちっとあるわけですよね。よく堀内ワクチン担当大臣のことをいろいろ言う方がいるんですが、一つ同情するところがあるとすると、全く設置法に基づく権限を持たない中、調整しろと言われて途方に暮れているというところがあると思うし、今の、日本のように設置法がある仕組みじゃないのであれば、いろいろな、内閣全体をフレキシブルに役割を振るということがあるのかもしれないけれども。

 是非、決してこれは何か政府をやり込めるネタとかそういうことではなくて、純粋に行政機構上うまく回すためにはこちらの方がいいんじゃないかなと思った、そういう私案ということで是非聞いていただければと思います。

 それでは、官房長官、ありがとうございました。

上野委員長 松野長官、御退席をお願いいたします。

緒方委員 そして、今日二つ目のテーマ、これも実は山際大臣の担当ということでありまして、TPPについてお伺いをしたいと思います。TPPの台湾の加盟のことについてお伺いをしたいと思います。

 TPPという協定に誰が入ることができますかと。これは、第一章のところに、締約国というものについて定義があるんですね。締約国というのは、国と書いてあるから国だけかと思いきや、国及び独立の関税地域だと。英語でセパレート・カスタムズ・テリトリーと言いますが、独立の関税地域というカテゴリーがTPPの中に入ることができますと書いてあるんですね。

 これは何だというと、実は、通商法における、WTOで、例えばチャイニーズタイペイとかが入っているのは、国として入っているのではなく、台湾ではなく、中華民国ではなく、セパレート・カスタムズ・テリトリーとして台湾が入っているわけですね。それと同じ規定がTPPの締約国の規定の中にある。

 しかし、アジア大洋州地域を見ていて、今後TPPに入りそうな独立の関税地域というのは台湾だけ、台湾というかチャイニーズタイペイだけだと思うんですよね。この規定は、チャイニーズタイペイを受け入れることを可能とするためにこういう締約国の規定になっている、そういう理解でよろしいですか、大臣。

山際国務大臣 これは、先生、逆じゃないですか。まさに、TPPを議論するときの枠組みで、全くゼロから作ったわけではなくて、それぞれ今までにある経済協定というものをひな形にしながら、その中で、最もハイレベルのものにするにはどうすればいいのかという議論を重ねてTPPができ上がっているわけですよね。なので、そのときに、おっしゃるように、WTOの規定というものも引っ張ってきたんだというふうに私は思います。

 ですから、そのときから、TPP12のときから台湾を念頭に置いてこれを持ってきたというよりは、今もう既にあるWTO等々の規定の中から使えるものを持ってきたというふうに考える方が自然であって、それで、委員が御指摘のように、今現在どうなっているかというと、確かに台湾はそれに該当する存在になっているということではあるんだと思います。

緒方委員 最後のところは結構重要でありまして、チャイニーズタイペイはTPPに入ることができる、セパレート・カスタムズ・テリトリーとして入ることができるというその解釈を取っておられるということですか、大臣。

山際国務大臣 予断を持って申し上げるわけにいきませんけれども、条件として言えば、これは入り得る条件を持っているというふうに認識しております。

緒方委員 結構ここはテクニカルに難しいところなんですけれども、ただ、中国はこれに対して、一つの中国に反するじゃないかとか、いろいろなことを言ってきているわけですね。

 これは外務省かなと思いますけれども、独立の関税地域としてのチャイニーズタイペイがTPPに入ってくるとき、これは、日本と中国が過去に交わした、一番早いものは一九七二年、日中共同宣言ですけれども、そこから四つの重要な文書があるわけですけれども、この四つの重要な文書との関係で特に問題が生じることはないというふうにお考えでしょうか、外務省。

上杉大臣政務官 緒方先生、御質問ありがとうございます。

 まず、台湾が加入した場合という仮定の御質問でありますけれども、仮定の御質問にお答えすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、TPP11協定は、新規加入の対象を、おっしゃるとおり、国又は独立の関税地域と規定しておりまして、台湾によるTPP11への独立の関税地域としての加入は協定上可能と認識しております。

 そして、御指摘の、我が国の台湾に関する基本的立場でありますけれども、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、日台関係を非政府間の実務関係として維持していくということで一貫しているというところでございます。

緒方委員 今のは、特に問題ないですということを言いたかったのかなというふうに思うんですけれども、いろいろ言葉が出てくるわけですよね、日中共同宣言、田中角栄総理大臣と周恩来首相の間で交わした重要な文書ですけれども。

 今、ちょっと、済みません、私の理解能力が追いつかなかったせいかもしれませんけれども、一般論として、英語でセパレート・カスタムズ・テリトリーと言われている、台湾共和国ではない、中華民国ではない、チャイニーズタイペイと略称されている、そこが、日本も加わっている通商の協定に入ってくるということについて、そうすると、条約関係に立つわけですよね、関税を下げたりとか何だとか。

 それは、いろいろ、一つの中国と書いてあるものであったり、中華人民共和国を正統な中国、正確に忘れましたけれども、いろいろ書いてある日中共同宣言との関係で、一般論として、そういう、台湾共和国でもなく、中華民国でもなく、チャイニーズタイペイが入ってきて日本と条約関係に立つということについては、これは特に問題が生じないということでいいんですかね。

 私の理解がちょっと追いついていないだけかもしれませんけれども、これは政府参考人でも結構であります。外務省。

中村政府参考人 先生、御質問にお答えさせていただきます。

 日中共同声明等の基本的なところは、上杉政務官から御答弁申し上げたとおりでございます。また、TPP11協定との関係、まだ仮定ということでございますけれども、その独立の関税地域としての加入との関係についても、お答えしたとおりでございます。

 その上で、もう先生よく御案内のとおりでございますが、WTO協定につきましては、御案内のとおり、台湾は、まさに先生おっしゃったような形で、略称チャイニーズタイペイという形で加入しており、その結果、WTO協定の枠内でその一定の実務的な関係というのは存在しておるわけでございますが、そういう関係に入って、そういう関係にあるということも含めて、政務官から御答弁したとおり、日中共同声明を踏まえた基本的立場、つまり、日台関係を非政府間の実務関係として維持していくという一貫した立場に基づいて、そういう関係にある。これが政府の認識でございます。

緒方委員 先ほど、御案内のとおりという中村参事官の答弁がありましたが、私、二〇〇五年に外務省を退職したんですが、そのとき、私の立場が外務省条約課の課長補佐だった。それで、条約課の首席事務官が中村参事官で、直属の上司でありまして、退職届を出したのは中村参事官でありまして、本当にありがとうございました。

 そして、最後、一問お伺いさせていただきたいと思います。全くこれはタイプの違うことをまた聞くんですけれども、全て山際大臣でありまして、私、公益財団法人日本相撲協会についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 二〇一一年に、公益財団法人日本相撲協会、いわゆる大相撲ですね、大相撲で、無気力相撲、いわゆる八百長と言われているものが明らかになり、大問題になりました。ただ、当時は、当時財団法人でしたけれども、今の新しい公益認定法ではなくて、民法に基づく旧制度の下でこれが起きたわけですね。その後、二〇〇八年から二〇一三年まで公益認定していただいた上で、新しい制度に移っていったわけですけれども。

 ここで、私、疑問なのが、ああいう二〇一一年に起こったような無気力相撲が、仮に、仮に今あるとしたら、新しい制度に基づく公益認定の要件、例えばですけれども、公益法人法第五条二項に、「公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること。」ということが書いてあるんですが、簡単に言うと、大相撲で無気力相撲が起きることというのは公益認定の要件に反するんじゃないかというふうに思うわけですが、山際大臣、いかがですか。

山際国務大臣 私も、あのとき、まさにこの立場の政務官として、公益法人制度を改革した人間として、ずっと追っかけておりました。

 結論を申し上げれば、様々なことをやって改善が認められない場合には、認定を取り消すことはできるものというふうに認識しておりますが、ちょっとだけ説明させてください。一般論として、まず一般論としてお答えしなくてはいけませんので、これは相撲協会の話ではないと思って聞いてください。

 法人が、問題の是正、再発の防止の徹底を図ることができない場合には、公益認定法に定める認定基準の技術的能力などに疑義があるものとして、同法に基づく監督措置の対象となり得ます。

 そして、具体的には、公益認定等委員会において事実関係を把握し、必要に応じて、公益認定法に基づく勧告、命令を通じて、法人に改善を求めることとなります。しかしながら、これらによっても改善が見込めない場合には、公益認定の取消しを行うこともあり得るものと考えております。

緒方委員 そういうことがあり得るということだったと思います。

 別に私は、何かたたきたいとか何かしたいとかいうことじゃないんですけれども、よく、そういうことがあるんじゃないかと言われたりすると、それって何か公益法人の在り方に反するんじゃないかなと思ったりすることがあるので、あえて、若干場違いかもしれませんけれども、こういう質問をさせていただきました。

 今日は全然タイプの違う質問をしましたが、全て山際大臣が担当だということで、これも私は、内閣府、内閣官房のスリム化をするべき課題の一つなんじゃないかなと。コロナ担当でお忙しい中、今話した全くタイプの違うことを一人の大臣で受けるというのはちょっと無理があるような気がしておりますので、議場の皆様方も是非御認識いただければと思います。

 それでは、少し早めになりましたけれども、質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

上野委員長 次に、山本太郎君。

山本(太)委員 れいわ新選組代表、山本太郎と申します。

 今回の大臣所信に対する質疑、何と平成二十九年以来十時間コースということで、非常に長丁場でございますけれども、一方で、私たち、れいわ新選組の質疑時間、何とたった十五分なんですね。少数会派にもしっかりと質疑時間を与えるという民主主義の観点に立って、この先、どうか御配慮をいただきたいというお願いをして、質疑に入っていきたいと思います。

 二〇二〇年、一律の十万円給付が行われましたよね。もう一回給付してください、そういった声も多く聞かれます。前任の財務大臣麻生太郎さん、一律給付をしても多くが貯蓄に回るので消費喚起効果が薄いと、一律で再給付することに関しては否定的、消極的でした。

 財務省、政務官にお聞きしたいと思います。政務官御自身も麻生さんの考え方に賛同されますか。イエスかノーかで端的にお答えいただけると助かります。時間がないので、申し訳ない。

藤原大臣政務官 お答えいたします。

 財務大臣が答弁したとおりだと思っております。

山本(太)委員 ありがとうございます。

 給付されてすぐ消費に回らないとしても、それぞれのペースで緩やかにお金を使ってもらえれば消費喚起につながることは、もうはっきりしているんですね。

 アメリカでは、コロナ禍、三度にわたる現金給付、日本と同様に、その多くが貯蓄に回った。過剰貯蓄と呼ばれて批判がされたことは皆さん御存じのとおりです。一方で、その過剰貯蓄が消費を緩やかに刺激し、失業率の回復、時間当たりの賃金上昇に結びつき、コロナ前の景気を上回るような状態を後押しした。これは報道にもあるとおりです。

 ただし、政府からの給付金、これが何度か行われるという安心感がなければ、このような状態にはなりません。つまり、日本のようにたった一度だけの一律給付では大きな効果が得られない。

 現在は通常時ではございません。二十五年間の経済政策の失敗、そしてコロナ災害のダブルパンチの真っただ中、一律に現金給付を複数回行う必要があると考えております。

 もう一度、財務政務官、お願いいたします。給付金を出すのであるならば、真に必要とされる人々に絞った方がよいとお考えになられますか。イエスかノーかでお願いします。

藤原大臣政務官 お答えいたします。

 それぞれ、制度に適合する方にしっかりと御支援をしていく、それが必要だと思います。

山本(太)委員 ありがとうございます。

 真に必要な方にという言葉が結構躍っているんですけれども、一律十万円給付の目的は何でしょう。二つあります。私はそう考えます。需要の底上げ、そして人道的支援です。真に必要とする人々に給付を絞るべきという声がありますが、大間違い、私はそう言いたいと思います。

 資料三を御覧ください。

 厚生労働省にお聞きします。平成二十八年、国民生活基礎調査に基づいた、生活保護を受けられる所得水準の世帯のうち実際に生活保護を受給している世帯の割合について、所得が生活保護の基準を下回る世帯のうち保護を利用している世帯について教えてください。その割合のみ、割合のみを教えてください。説明は結構です。

本多政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、平成二十八年国民生活基礎調査の結果に基づいて、資産の保有状況等は考慮せずに推計した所得が生活保護基準以下の世帯数に対する被保護世帯数の割合は、二二・六%でございます。

山本(太)委員 二二・六%、この数字が意味することは、生活保護を受けるべき状態の人が二割程度しか保護を受けられていない、所得で見たところ、ということですね。

 残念ながら、誰が困っているのか、いないのか、誰に支援を届けるべきかをしっかりと線引きをして手当てをする能力は、事実上、今の日本政府にはない、そういうことがこの数字からも明らかだと私は言えると思います。だからこそ、現在のような緊急事態時には、対象を線引きしない、一律給付をコンスタントに行うということが必要である。

 コロナ陽性者、最新の自宅療養者、二月二日時点で四十三万四千八百九十人、前の週よりも十七万人増えた。

 厚労省にお聞きします。コロナ陽性者で自宅療養です、手元にお金がありません、貯金ゼロです、こういった状態で受けられる可能性がある支援はありますか。

本多政府参考人 お答えいたします。

 生活に困窮される方々が利用し得る生活支援として、例えば、緊急小口資金等の特例貸付け、生活困窮者自立支援制度による相談支援、住宅確保給付金、生活保護制度などが考えられます。

山本(太)委員 ありがとうございます。

 今御紹介いただいた支援策なんですけれども、ネットのみで申請手続などを完了できるものは一つもありません。当事者が窓口に出向いたり郵送するなども必要になる、そんなものばかりです。コロナ患者が役所の窓口にわざわざ行って申請するって、これ、あり得ますか。むちゃくちゃな話ですよね。

 つまり、何かというと、コロナ陽性です、手元にお金がありません、貯金ゼロです、こういう状態であったとしても、今の日本には受けられる支援がほぼないといった状況が現実である。

 緊急小口資金、これは申込み、貸付けまで平常時では十日ほどかかる。ただし、今は申込み殺到中です。生活困窮者自立支援制度、不備のない状態で申請書類を受理してから支援金の振り込みまでおおむね一か月程度。住居確保給付金、申請受付からおおむね二週間から一か月かかる。生活保護は申請からおおむね二週間。実情、どの支援策も、コロナ陽性でお金がなくて、治るまで家にいろ、治ってから申請すればというスタンスなんですね。

 例えば、自宅療養者四十三万四千八百九十人にコロナ前の令和元年の日本の貧困率一五・四%を単純に当てはめたとすると、現在六万人以上の人々が相対的貧困ライン以下で自宅療養している計算になる。コロナ前、単身世帯で貯蓄ゼロ、三八%、二十代で四五・二%。若者を中心に陽性者が増えていると言われていましたよね。収入も減っているんじゃないですか、コロナ禍で。

 コロナ陽性者及び濃厚接触者の中で、相当数の人々が孤立をし、孤独の中で困り果てていることを政治が想像しなければならない。けれども、現実は、事実上の放置、行政の責任放棄です。そのしわ寄せ、どこに行きますか。困窮者を支援する団体に悲痛なSOSとして届くということになります。

 コロナ陽性で自宅療養中だが食べ物を買うお金もない、冷蔵庫は空、このままでは餓死する、自宅に食料は全くない、残金二百円。ほかにも、役所に相談しても、陽性なら保健所から食料が届くからそれを食べておいて、そう言われて何日たっても食料が届かない、やっとつながった役所の電話、食料支援をお願いします、そう言うと、手が回らない、ウーバーイーツで注文したらどうだろうか、そういうような回答をされることもあるそうです。所持金数百円、数十円、これはウーバーは無理ですよ。保健所から電話がかかってきた、自宅療養を終える最後の日に。牛乳一パックと僅かばかりの米で飢えをしのいだ、そんなサバイバーもいます。

 生活保護の申請をしたくても陽性で家から出られない、そう訴えても、体調がよくなってから役所に来てくださいねという対応。これは、このまま放置していたら陽性者から餓死者が出てもおかしくないような状況になっていませんか。

 それに加えて、濃厚接触者も見捨てられていますよね。

 濃厚接触者や、その中で自宅待機となっているのが何人ぐらいいるんでしょうか。事前に厚生労働省に確認したところ、国内の一般的な濃厚接触者や濃厚接触者となり自宅待機となっている数については各自治体において特定を行っており、その数について国として集計は行っておりません、分かりませんとのことです。

 資料の四を御覧ください。

 国から出されたガイドライン、自宅療養の実施に関する留意事項を見ても、食料配達に関する記述は、「自宅療養者が対象であって、同居家族等については対象外である」と。つまりは、濃厚接触者に食料は届かないというはなからのシステムだと。このガイドラインでは、陽性者の同居家族は濃厚接触者として扱うよう示しているのに、食料配付の対象外にしてしまっている。濃厚接触者は完全に自己責任、勝手にどうぞなんですよね。安心して自宅療養、自宅待機が行えません。

 自己責任でよろしく、こういった体質、体制、これこそが爆発的な感染の原因の一つになっているんじゃないですか。兵たんはない、戦いは続けろ。令和の時代のインパール作戦、すぐに終了していただきたい。

 今必要なのは兵たんです。食料支援とお金。細かいことは語っていただかなくて結構です。山際大臣、今の話を聞いて、食料支援という部分、是非強化していただきたいんですけれども、食料支援、これ、必要だと思われますか。必要だと思うか思わないかだけでお答えいただけると助かります。

山際国務大臣 これは以前もお話ししましたけれども、このコロナウイルス感染症との戦いは、これは与野党問わずやらなきゃいけないことなので、現場の声を今お寄せいただきましたから、やれる工夫がないかしっかり検討させて、やれることはやりたいと思っております。

山本(太)委員 やれることはやりたい、前向きに聞こえる答弁だったと思います。ありがとうございます。

 資料五。神奈川県、重症化リスクの低い人に自主療養を認め、食料、日用品の配付を中止、県幹部は、自主療養者の食料について、家族、知人、近所での助け合いを検討してほしいと強調と記事にはあります。行政の崩壊ですよね。

 神奈川県下の自治体幾つかに問合せを行いました。ある市の職員は、お金があれば食料支援は民間に委託して更に広げられるが、先立つものがない、職員を使って何とか配付しようとしている、そうおっしゃっていました。ただし、本業にしわ寄せが行っており、いつまでやれるかは難しい。食料支援を強化するには、国からのコロナ支援交付金を増額、若しくは食料支援に特化したお金を大至急出していただく必要があります。弾が尽きているんですよ。弾が尽きています。

 資料の六を御覧ください。

 令和三年度予備費、まだ一・八兆円以上残っている。これを至急、自宅療養者及び濃厚接触者への食料支援の財源として各自治体に配っていただけないですか。あした開かれる閣議で話し合っていただけないですか。いただけるか、いただけないか。山際大臣、やれることはやるとおっしゃいました。いかがでしょうか。

山際国務大臣 予備費は、予備費として使い道があるところには使うべきだと思っておりますが、間に合わないですよね、スピード感として、今おっしゃったようなことは。ですから、現場でやれることを工夫してやってもらうということをどうサポートできるかということは、私はやるべきことだと思いますので、その点についてやらせていただいた上で、予備費をそれに充てるべきかということは、ちょっと、後になるかもしれませんけれども、それも検討はさせていただきたいと思います。

山本(太)委員 予備費を手当てしていれば間に合わない、だから現場で違う方法でやってもらうということですけれども、その財源については国が持つという理解でいいんですか。

 兵たん、尽きているんですよ。もう止まっちゃっているんです、ほかのことにいっぱい使っちゃって。それで、もう弾が尽きて、食料が届かないという状況になっていて、そこに対して手当てしてくれませんかというお願いなんですね。

山際国務大臣 少なくても、地方自治体において兵たんが尽きているという感覚は私たちは持っていませんよ。

 ですから、そこの部分のお金が足りなくなっているということであれば、そこに予備費を入れますといっても、予備費を入れるまでにはある一定の時間がかかるじゃないですか。だから、そのタイムラグの部分を地方自治体の方で手当てをしてくださったときに、その工夫に対して、後でそれを、予備費を使うべきなのか、違った形で予算を見るべきなのか、あるいは地方の独自財源でやっていただくのかというのはちゃんと議論をした上でやらせていただくということを申し上げているわけです。

山本(太)委員 済みません。だったら、食料に関して支援を最大限やれ、そこに対しては国が持つということを宣言しないことには広げられないですよね。

 肌感覚として、聞いてきた話として、弾が尽きている感覚がないと言うんだけれども、実際に弾が尽きているから、みんなやめているんでしょう。だって、これは民間にお願いできるじゃないですか、やろうと思えば。実際に、弾が尽きて、そこにお金が回りませんという自治体があるわけだから。弾は出す、金は出す、先にやっておいてくれ、後で補填するからということが言われれば、これは自治体だってそれぞれに広げられるんじゃないですか。

 そういう意味で、お願いできませんか。あしたの閣議でそういうようなお話をしていただけませんか。いかがでしょう。していただけるか、いただけないかでお答えください。

山際国務大臣 閣議で話をするような内容だというふうには、今のところ私は思いませんが、しかし、現場からのそういう話があるということに関して、お困りの方は何とかお助けできるようにしてまいるということを先ほどから申し上げているわけです。

山本(太)委員 山際大臣、ずっと想定内だと言っているんですよ、このコロナの感染爆発。想定内と言っておきながら、それに対しての備えができていなかったから保健所がパンクしているんでしょう、病院が破綻しているんでしょう、食料が届いていないんでしょう。そういうときに、想定内だった、危機管理に基づいてやっていたなんて言葉を使っちゃ駄目ですよ。想定外でしたと言わなきゃ駄目なんですよ。もちろん、この食料支援に対してのお金をつけるということに対しても大至急やっていただかなきゃいけない。

 国が言えば自治体は動きますよ。お金をどうやって賄うかということに関しては、当然、それはいろいろあるでしょうけれども、先に国が、心配するな、やれ、責任は持つという言葉を言っていただかないことにはなかなか難しい。それを大臣だけの権限でできるのかと思うと、どうなんだろうなと思うんですよ。だから、閣議という場で総理にも相談していただくというのが一番いいのかなと思うんです。

 十万円の給付、これは、孤立しています、孤独です、しかもコロナという状況で。ここに対して、もう一度十万円給付。それぞれが、何があろうと、どんな状態でも乗り切れるというような予備弾、コロナにもしもなったとしても、国からもらった十万円で、一部で、それを使ってしのげるというような予備弾を与える必要があると思うんです。

 野田大臣、孤立している人たちに対して、これからするかもしれない人たち、第七波、第八波に対して、一律の十万円給付、どうか、あしたの閣議で投げかけていただけませんか。お願いします。

野田国務大臣 ちょっと、事前通告がなかったので、にわかにきちっとお答えできませんけれども、いずれにしても、総意で、何ができるかをしっかり取り組んでいきたいと思います。

山本(太)委員 ありがとうございます。

 あした話す場があるんだったら、是非お願いします。七波、八波と広がっていくという心の不安、そこに対してしっかりと兵たん、国から入れていっていただきたい。インパールを終わりにしてください。十万円給付、お願いいたします。

 ありがとうございます。

上野委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日最後の質疑者でございますので、よろしくお願いいたします。

 本日、私が質疑をさせていただきたいテーマは大きく三つございます。一つ目は男女共同参画の視点から見た全世代型社会保障制度の在り方について、二つ目はコロナ対策を例に挙げた今後のデータ政策についてお伺いをし、最後に経済安全保障について質疑をさせていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、これまで各質疑者の皆様にも御対応いただいてきた山際大臣そして野田大臣にお聞きしていきたいと思いますけれども、先日の所信演説、お二方のものを聞いておりまして、社会保障制度に関して、あるいは男女共同参画の視点で触れられた発言がそれぞれございました。少しそれを振り返ってみたいと思うんですが、まず、野田大臣の発言の中に、新型コロナウイルス感染症は特に女性に深刻な影響を与えました、これは平時の男女共同参画の遅れの表れと捉えています、こういう一節がございまして、非常に、穏やかな口調ながら、かなり強い問題意識を示されたのではないかなというふうに思いました。

 まず、最初の質問なんですけれども、この男女共同参画の遅れの表れというふうに表現されたものは、具体的にどういった制度やどういった政府の施策に表れているのか、どういう問題意識をお持ちなのかということを具体的に教えていただきたいと思っております。お願いいたします。

野田国務大臣 ちょっと今、手元に統計の資料がないんですけれども、やはり、コロナ禍で、私たち女性政策に取り組んでいる者にとって非常に心を痛めたのが、女性の自殺者の増加でございました。ここ近年、自殺対策の取組は進んでいて、日本も自殺者を減らしてくるといういい兆しではあったんですけれども、コロナ禍になっては、それでも、少なかった女性の自殺者がこのコロナ禍の状況で急増している、これは非常に痛ましいことでございます。

 いろいろ突き詰めていくと、様々な理由があるんですが、やはり経済的な理由、つまり、コロナ禍によって職を失ったり、元々非正規が女性は多いわけですから、そういう中で、とりわけ飲食とかサービス業が閉ざされることによって職を失って、結果としてそこで死を選んでしまう方がいるということを聞きました。

 なぜそこを平時かというと、先ほどの方も御質問ありましたけれども、新型コロナが拡大する以前からの問題として、平時の問題として、女性は男性に比べて非正規雇用労働者の割合が高い、そして、男女間の賃金格差も、正社員同士、非正規雇用労働者同士で比較しても存在して、同じ職業、勤続年数においても差がある、固定的な性別役割意識を背景に、家事、育児、介護を女性が多く担い、働く場合には家計の補助と位置づけられていたなど、様々な課題が認識されていたんですが、結果として、そういうコロナ禍で緊急事態になったときには、飲食、宿泊業の非正規雇用者を中心として女性の就業者数が減少したこと。

 また、実は、エッセンシャルワーカーとおっしゃるんですけれども、割合としては女性が多いんですね、六割、七割、八割と。こういう看護師、介護士、保育士といった方々、女性の多くは、厳しい処遇の中で、かつコロナ対応の最前線に当たることになりました。不当な差別もあったと思います。看護師さんは病院に行っているから、コロナがうつるかもしれないから、看護師さんの子供は保育園に来ないでくれとか、実際にそういう事例が幾つも当時はございました。

 また、今でもですけれども、全国一斉休校というのは、先ほども話がありましたけれども、子供たちを持つ親からすると、母親と父親がいても、やはり母親が仕事を休んで子供に付き添わなきゃならないというのが平時からの日本の現実なんですね。

 そういうことがより明らかになってきたんだと思います。

 女性の収入というのは家計の補助といった昭和の考え方を前提とすることではなくて、家計の担い手であり、かつ、女性の経済的自立というのが必要である、取り組む必要があるということを、やはりこの平時の不十分なところが今出てきたということでお示しさせていただいています。

浅野委員 どうもありがとうございました。非常に、具体的な問題意識を理解することができました。

 大臣おっしゃるように、経済的な困窮であったり、じゃ、なぜその経済的な困窮に陥りやすいのかというと、その背景にあるのは、家庭における、昭和的なというのが適切か分かりませんが、昔から続いている家庭内における役割分担であったり、それに派生して、選べる働き方に制約があったり、こういった状況、事情があるということ、ここについては大臣と全く見解を一にするものであります。

 では、次に、山際大臣にも同様な質問をさせていただきたいと思うんですけれども、山際大臣は全世代型社会保障の担当ということで、先日の所信演説の中でも、この全世代型社会保障の構築に向けた発言で、女性の就労の制約となっている制度の見直しという言葉をお使いになられました。

 これは、聞いていまして、私も、この女性の就労の制約となっている制度というのは、じゃ、具体的に何なんだというところが気になっておりまして、本日、大臣のお考えにおいてどういう制度がそれに当たるのかというところを是非教えていただきたいというふうに思います。

山際国務大臣 これから全世代型社会保障構築会議で議論をしていくに当たって、その内容に当たる部分というものをこれで御紹介申し上げたということなんですけれども、具体的には、委員が先ほどおっしゃったように、労働時間あるいは収入によって社会保険の適用が変わる問題など、こういうものを念頭に置いております。

浅野委員 ありがとうございました。

 私自身もその部分の問題意識をこれまでも持ってきましたし、大臣もそういったところに問題意識を向けていただいているということは、非常に前向きな受け止めをしております。

 今、お二方にお聞きしましたけれども、そうしたお二方の問題意識は、やはりこれは余り与野党かかわらず、大きな違いがないのではないかと私は思っております。

 今日私が次に取り上げたいのは、今日お配りした資料の方に、「配偶者の収入における「四つの壁」について」というタイトルをつけさせていただいておりますけれども、百三万円の壁とか百三十万円の壁とか、そういうことを言われることが多いわけですが、住民税、所得税、社会保険料、そして配偶者控除、配偶者特別控除といったそれぞれの制度について、御覧のような、年収に応じた取扱いがされております。

 特に、今コロナで、先ほど野田大臣がおっしゃったような、有期契約労働者の方々が、このコロナによって本当に職場を、仕事を失っている方が多いということもありますし、今まだ仕事に就かれている方々の中でも、例えば、先日私が聞いたのは、小売業、いわゆるスーパーマーケットだとか、そういう販売を主とした職場で働かれている女性のパート、アルバイトの方々は、ここ数年、労使の協議の成果あるいは政府の働きかけの影響もあり、賃金が少しずつ上がっているんだ、ただ、この百三万円の壁とか百三十万円の壁があるせいで働ける時間がどんどん短くなっているということなんですね。

 何でなのかというと、やはり、この百三万円の壁を越えてしまうと例えば社会保険料を払わなきゃいけなくなるとか、これは百三十万円もそうなんですが、あるいは、いわゆるこれは先般の法改正によって配偶者控除が百三万円から百五十万円に見直されはしたものの、これが余り周知されていなくて、いまだに百三万円を超えないようなマネジメントが現場で行われているというような実態もあるそうなんですね。ですから、やはりこういったところを変えていかなければいけないのではないかというふうに私は考えているわけであります。

 そこで、次の質問は、今お伺いしたお二方にそれぞれ御意見を伺いたいと思うんですが、この配偶者控除や配偶者特別控除、そして社会保険料が発生するような年収の基準値、こういったことは、やはり男女共同参画の推進ですとかあるいは全世代型社会保障の実現に向けて、私は積極的に見直していくべきだと思っております。お二方、両大臣のそれぞれの立場から見た課題感あるいはお考えがあれば、それぞれ伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

野田国務大臣 人生百年時代を迎えていますし、離婚件数というのが結婚件数の三分の一になりまして、女性の半数が九十歳以上まで生きます。そういう女性の人生と家族の在り方が、先ほど比較するのはどうかと言われましたけれども、統計上、昭和の時代とは大きく変化しているということが大切だと思います。

 そしてまた、多様化もしています。かつては、世帯といえば、両親プラス子供二人みたいなイメージ、昭和のイメージ。今はやはり断トツで多いのは一人世帯なんですね。

 そういうことを踏まえて、女性が長い人生を通じて、経済的困窮に陥らないように、自立できるようにということで、この各種制度の望ましい在り方を取り組む必要というのは必ずあります。

 女性の就業に関する現状というのを見ると、賃金格差の存在はもとより、既婚女性の約六割が年間所得二百万円未満となっているんです。平成二十九年時点のデータですけれども、有配偶の非正規雇用者の女性については、所得が五十万以上百五十万円未満の方の約半数が、先ほどおっしゃったように就業調整をしており、これはもう年齢、階級にかかわらず同様の状況が見られています。

 例えば冬場になると、今コロナ禍で大変医療関係者の方に御尽力いただいているんですけれども、平時のとき、例えば冬場は風邪、インフルエンザがはやるわけですけれども、非正規の看護師さんを雇用されていると、その調整のために一番患者さんが増える時期に看護師さんが休まなければならない、医療現場は毎年毎年それで苦労しているという話は絶えず聞かせていただいていましたし、直近では、経済団体の方から、女性の就労を阻害する税、社会保障制度の見直しについて要望が出されております。

 こういうことをも踏まえながら、やはり女性の視点をしっかり踏まえた税制や社会保障制度について、山際大臣としっかり連携しつつ検討を進めていきたいと思っています。

山際国務大臣 委員におまとめいただきましたこの資料一、本当に分かりやすいですね。これを見ていただいても分かるように、非常に複雑なんですよね。社会保険の問題だけではなくて、税の問題も絡んでいる。これを見たら、左の二つが税で、一番右側もこれは税に関わってくる話ですね。それに対して社会保険料も発生するということですから、相当複雑に入れ込んでいるものについて、一か所だけいじると百三万円が百六万円になったりというようなことがある。やはりこれは整理しなくてはいけないという意識がございます。

 そして、今、野田大臣からお答えしましたとおり、やはりこれから、社会保障の在り方というのを本当に家族単位で見ていくのか、それとも一人一人の単位で見ていくのかということも含めて相当議論をしなくてはいけないものですから、ですから、岸田政権においては、全世代型社会保障構築会議というものをつくって、そこでしっかりと議論をした上で、皆様方に納得していただけるようなものをお示ししようということでございます。問題意識は完全に共有しています。

浅野委員 どうもありがとうございました。

 問題意識はかなり共通する部分がございますし、やはり今の社会情勢を考えても、女性の方々に限る話ではないんですけれども、これまで有期契約で働かざるを得ないような立場の方々がこれから更に幅広い選択肢の中から働き方を選べるような環境をつくるためにも、ここは是非早急に着手をして変化をさせていただきたいということを思っておりますので、引き続きこの委員会でも議論を深めていきたいと思っております。

 本日は、この関連の質疑は以上になりますので、お二方はここまでで結構でございます。ありがとうございました。

上野委員長 山際大臣と野田大臣におかれましては、御退席をお願いいたします。

浅野委員 続きまして、新型コロナの感染症を例に挙げながら、この国のデータの利活用についてちょっと議論をさせていただきたいと思っております。

 まず、これは厚労省に確認をさせていただきたいんですけれども、今、これまでアルファ株、デルタ株、オミクロン株といろいろな変異株が出てきまして、その変異株ごとの特性も違うのではないかというようなことが、大体の方がここは認識を持っているものなんですが、じゃ、それを客観的に把握できているのかというところであります。

 具体的な質問なんですが、現在、政府は、新型コロナワクチンの接種歴と重症度との関係性を把握しているかどうかというのが一つ、もう一つは、新型コロナの変異株ごとの重症化率そして死亡率というのを定量的に把握しているか。これは決してオミクロンだけのことを聞いているわけではなくて、デルタやアルファも含めて把握をしているのかということをお伺いしたいと思います。

宮崎政府参考人 二点御質問がございました。お答え申し上げます。

 まず一点目の、新型コロナワクチンの接種歴と重症度との関係等についてでございます。

 御指摘ございましたように、この新型コロナ感染症対策を講じていく上で、重症度あるいは接種の関係などについては大変重要な手がかりになりますので、我々としても分析をかけているところではございますが、具体的に何かシステム的に網羅的に把握するという仕組みがあるわけではございません、特に重症度に関して申し上げますと。

 直近で申しますと、二月二日のアドバイザリーボードにおいて報告されているものがございますが、自治体のデータに基づきまして、その分析を、我々厚生労働省、あるいは国立感染症研究所の方で分析をしていくという形になっております。

 例えば、この二月二日に出された自治体データによりますと、いわゆるデルタ株が中心だったと思いますが、令和三年七月一日から十月三十一日の期間に報告された陽性例の分析では、六十歳未満について、一回以上のワクチン接種で〇・三%、接種歴なしで〇・六%、六十歳以上について、一回以上の接種で三%、接種歴なしで六・九%というデータの報告をいただいております。

 また、直近のオミクロン株の分析に関して言うと、令和四年の一月一日から十四日の期間に報告された陽性例の、これは、重症度ということは少し期間を長く見ないといけないので、現時点では暫定的な分析という位置づけになりますが、六十歳未満については、一回以上の接種で〇・〇二%、接種歴なしで〇・一%、六十歳以上については、一回以上の接種で一%、接種歴なしで五・一%という重症者の発生率というふうな報告をいただいているところでございます。

 引き続き、これは、自治体との協力の下で、ワクチンの重症化予防効果、感染者の重症化率の科学的な知見の収集に努めてまいりたいと考えております。

 また、二点目の、新型コロナの変異株ごとの重症化率及び死亡率ということにつきましては、今申し上げましたように、各自治体において分析しているデータを基に分析をしているところでございます。それぞれ重症者数あるいは死亡者数等につきましては各自治体にて公表されておりまして、それを厚生労働省として全体を集計をして公表しておりますが、例えばオミクロン株については、デルタ株に比べて相対的に入院、重症化のリスクが低い可能性が示されているものの、国立感染症研究所のリスク評価では、まだ国内のオミクロン株の重症度や重症化リスク因子について定量的に評価することは難しい等とされている、現時点ではそのような段階でございます。

 引き続き、こうした重症化率などの把握を行うことは重要でございますので、自治体の協力も得ながら把握に努めてまいりたいと考えているところでございます。

浅野委員 今の話を聞いておりますと、自治体との連携とか、自治体の持っている情報から引用すればこうなりますというような答弁だったように受け止めたんですけれども、やはり、自治体の自主的な取組だったり自治体の持っているデータに頼っているというところが、どうしても我々から見ると少し不安材料になっております。

 先ほど答弁の中で網羅的に把握することが難しいということをおっしゃっていましたけれども、これはちょっと専門的な、テクニカルな話も入るのかもしれませんが、例えば、ワクチン接種履歴を記録しているVRS、ここには、誰々がいつワクチンを打ったのか、どういう種類のワクチンを打ったのかというのが記録されていますよね、個々人単位で。さらに、あとは、HER―SYSという厚生労働省のシステムには、感染した方の日々の症状、体温ですとか症状ですとか、そういった具体的なデータが蓄積されております。どちらもこれは厚生労働省が所管をしているシステムだというふうに聞いていますけれども、これらを個々人でひもづけることができれば、じゃ、ワクチンを打った人が今どういう症状なのか、どういう症状まで発展したのかというところを統計的に処理できるのではないかなというふうに思うんですけれども、これはそもそも技術的に可能なのか、できないのであれば、どういうことが障害でできないのかというところについてちょっと教えていただきたいと思いますが。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今御議論ございました重症化という点に関して言いますと、HER―SYSという仕組みにつきましては、感染症法上の発生段階での届出を基にしたデータが基本的なベースになっております。したがって、重症化に関する記載もございますけれども、それはその発生時点の、届出を出した時点での重症化についての記載をいただくので、実際に、我々、あるいは委員が御指摘のところというのは、重症度がその後転帰をしていって、最初無症状あるいは軽症で届けられた後に、その後更に重症化していったというようなところまで追いかけていったデータというものが本来必要なんだろうと思います。

 そういう意味で、重症度というものをしっかり把握するためには、かなり一人の方を長く取ったデータを取る必要がありまして、その点で、自治体が陽性者に協力依頼をして、一定の、ファクトシートといいますか、そういうものを出していただいて、重症化というものを把握、事後の、届け出た後の重症化の転帰まで含めた重症化を把握した上で、それを、例えばワクチン接種歴との分析をしているというのが状況でございます。逆に申し上げますと、HER―SYSのデータのみでは、そこまでが把握できないという限界があるというところでございます。

 その上で、御指摘のございました、VRSやHER―SYSのデータをもう少し連結するような取組ですとかはできないのかという御指摘の点でございます。

 これは、確かに我々としても一つの課題だというふうに認識をしておりますけれども、現時点では、連結をするキーをどうするのか、そのキーを、例えばマイナンバーということになれば、それをマイナンバー法上の位置づけをする必要があるのではないかとか、そうした技術的な課題あるいは法的な課題というものが現時点ではございますので、VRSとHER―SYSの連結とかそういった点については、今後の課題ということで我々は認識をしているところでございます。

 このような限界の下で、重症度等の分析につきましては、自治体のデータを活用しながら必要な提供を行っているという状況でございます。

浅野委員 かなり苦しい、苦しみながら答弁をされていたので、本当に御苦労されているんだろうなというのは思うんですが、例えばHER―SYSに登録するデータも、登録時点での症状だけを記録するというものではなくて、私がHER―SYSの資料を見ると、逐次、日々の推移も含めて記録できるような機能は持っているような印象を受けておりますし、じゃ、運用上やっていないだけなのであれば、それをやるというふうに決めるのは、これは国の役割だと思うんですね。国がリーダーシップを取らないと、自治体に任せているだけではやはりそういうデータはいつまでたっても集まってきませんし、そういったところで国が計画的にそのシステムを活用しなければいけないんだろうと私は思います。

 HER―SYS自体は、当初、かなりの急ピッチで開発された情報システムだと聞きました。三週間ぐらいで立ち上げたんだ、使いながら機能修正をしているようなシステムなんだというふうに伺いました。もはや、情報システム産業界ではそういった開発の仕方というのはスタンダードになっていますけれども。

 このHER―SYSについては、今後、そういう逐一データを登録するような運用にしたりだとか、あるいは、マイナンバーなどを活用してVRSとデータ連携できるようにするとか、そういった機能拡張をするような考えというのは今厚労省は持っておりますか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、私、ちょっと答弁が不十分だったかと思います。

 御指摘のように、HER―SYSのシステムの中で転帰を記載する部分もあるんですけれども、そうしますと、そこは、保健所、医療機関などの入力の後、更に続けて入力を、負担をお願いするということがあるものですから、どこまで徹底できているかという点で、特に現在のような感染が非常に拡大しているときには、なかなかそこまで徹底を求めることが難しいという部分があって、基本的には、発症時点の重症度というものがまずそこは確実に入っているわけですけれども、追いかけ切れていないという部分が、あるいは徹底できていないという部分がございます。

 そして、入力項目につきまして、現場からの、かなり、できるだけ必要最小限にしてほしいというようなことでいろいろ簡素化もしてきましたので、その中で、感染対策上必要な項目と現場の負担との兼ね合いで、どこまでをどれだけの徹底を求めるかというところで悩んでいるところがございます。

 その上で、委員御指摘のように、このHER―SYS自身、非常に感染の、コロナ対策の初期におきましてかなり急ピッチにつくったということで、様々な課題を走りながら修正してきたという面もございます。

 御指摘のような今後のデータ対応につきましては、これは、御指摘の点にとどまらず、いろいろ御指摘をいただいているところでございますので、他のシステムとの連結の問題、あるいは、今ございましたような入力項目をどのように整理していくのかという問題も含めまして、これまでに出てきた課題を整理して修正をかけていくという考えで随時やっているところでございます。

 御指摘の点も、今後の検討課題だというふうに受け止めているところでございます。

浅野委員 もう釈迦に説法だとは思いますが、こういう医療とかのデータは、記録することが目的ではなくて、記録したデータを活用することが目的ですから、現場に負担がかかるからこれ以上記録させないというのは、それはちょっと本末転倒な話ではないかな。

 もし記録のための負担が大きいのであれば、それはシステムの欠陥ですから、負担を少なく記録が継続できるようなシステムに修正をするというのが政府が考えるべき話だと思いますし、是非、そこは継続的改善をしていただきたいと思います。

 私もいろいろ現場からヒアリングをして、そういった問題点はできるだけ共有をしてまいりたいと思いますので、是非、ここは国民の皆様のためにちょっと頑張っていっていただきたいというふうに思います。

 ちょっと一点だけ確認なんですが、先ほど答弁でマイナンバーの話も触れていましたけれども、今、HER―SYSとVRSを取り上げましたが、これらはどちらもマイナンバーを登録した上でデータを記録する、そういう運用になっているんでしょうか。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 HER―SYSにつきましては、現在はマイナンバーを活用する位置づけにはなっておりません。住所、氏名、生年月日、電話番号等の入力を義務づけておりまして、これが基になっております。マイナンバー法の別表に明記する形での取扱いをした上でマイナンバーを活用するとすれば、そのような改正が必要になりますけれども、現時点ではマイナンバーを活用する仕組みにはなっていないということでございます。

 一方、VRSにつきましては、予防接種の取組ということで、各市区町村がマイナンバー法に基づきマイナンバーを登録しているという形になっております。

浅野委員 ありがとうございました。

 これまでかなり細かいところまで少し確認をさせていただきましたけれども、ちょっと今日、牧島大臣にもお越しいただいておりますが、やはり、今のやり取りを聞いていただくと分かるように、システムはつくるんだけれども、そこに記録したデータをどう使うか、どう記録しなければいけないかまでを想定してシステムがつくられているかというと、今、実際のシステム設計上も、システム運用上も、なかなかこのHER―SYS、VRSの本領を発揮をするようなものになっていないんじゃないかと私は思うんですね。

 一問質問通告しておりますが、その前に、ちょっと今の話を、やり取りを聞いていただいた大臣の所感を少しいただければありがたいんですけれども。

牧島国務大臣 委員御指摘のとおり、データを登録するに当たって現場の皆さんの御負担がないようにしなければならないというその制度設計については、それぞれのシステムについてはそれぞれの所管省庁で考えることとはいえ、やはりデジタル庁としてもしっかり検討しなければならない課題だなと、やり取りを拝見して感じているところでございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 では、予定されていた質問をちょっと一問したいと思うんですが、今やり取りを聞いていただいたように、まず、HER―SYSとかVRSに限る話ではないんですが、今政府が進めている情報システムの導入というものは、既存の、紙に記載していた、紙に保存していたようなデータを同じ項目でタイピングで打ち込むというような、打ち込み方が変わったようなものにとどまっていて、余り本当の意味でのDXというものがされていないんじゃないかというふうに感じるところが多々あります。

 これはすぐにできる問題ではないので、息の長い取組が必要だとは思うんですけれども、やはりそういった部分、真のDXを進めるのがデジタル庁の役割だとは思いますが、大臣として、蓄積されたデータをちゃんと分析、活用できるように、そしてEBPMを推進するようにするために、デジタル庁としてどういう役割をこれから政府の中で担い、そして具体的に何を変えていくべきだというふうに現時点で認識をしているのか、大臣の大まかな課題感を教えていただきたいと思います。

牧島国務大臣 御指摘のとおりだと思っております。紙で行っている作業をただ何となくデジタルというものにしようとしたいわゆるデジタイゼーションではなくて、デジタライゼーションにしてDXにしていかなければならない、そのところは常に意識をして改革をしなければならないという問題意識、同様のものを私としても持っております。

 EBPMについても、やはりデータ標準の整備等も行っていかなければならないというふうに考えておりまして、デジタル社会の実現に向けた重点計画の中でもその点は記載をさせていただきました。

 この整備方針、情報システム及び管理の基本的な方針を昨年十二月に策定したときには、各府省庁に対しても、情報システムの設計に当たって、データの活用や共有、外部連携を可能とする設計にすること、そして、後で使いやすいデータを整備することというのを方針として示させていただいております。

 今後も、こうした理念に基づいて、関係府省庁とも連携し、EBPMの確立を進めてみたいと思っております。

浅野委員 その部分は全くおっしゃるとおりだと思います。難しいのは、デジタル庁だけがそれを考えていてもしようがないので、やはり各省庁にそこをできるだけ早く広めていただいて、それがスムーズに行えるような法整備なり仕組みづくりなりといったものについては今後またいろいろ議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、牧島大臣はここまでで結構でございます。ありがとうございました。

上野委員長 牧島大臣、御退席をお願いいたします。

浅野委員 最後のテーマになりますが、小林大臣に対して、これから経済安全保障について質問させていただきたいと思います。

 まず、経済安全保障の必要性というのはもう今社会的には誰もが認めるところで、産業界も含めて、この政府の動きに対しては協力姿勢を見せておりますが、やはり、過度な制約を避けたいというようなものが代表的かと思うんですが、幾つかの問題提起も私は受けておりますので、今日は、所信に対する質疑ですから余り具体的なところには入りませんが、大枠についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。

 まず、経済安全保障という言葉を使ったときに、政府の中でこの経済安全保障という言葉が何を示しているのか、その定義というのが何なのかというところをまず確認させていただきたいと思います。

 私もいろいろ資料を読ませていただきましたが、経済安全保障とはという定義づけが余り見受けられませんでしたので、改めて、そこを大臣の方から御説明をいただきたいと思います。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 経済安全保障という概念自体が、多岐にわたる、ある意味新しい課題、概念でありまして、あるいは切り口と言った方がいいかもしれませんが、我が国を含めた主要国におきまして、経済安全保障はこういうものだという定義が何らかの形で確立している、そうしたものがあるとは現時点において承知はしておりません。

 その上で、一般論として申し上げますと、絶えず変化する国際情勢、あるいは厳しさを増す安全保障環境を踏まえまして、私が重要だと思うのは、国益をしっかり守っていくということだと思っているんです。

 その国益というのは、例えば、今の、現行の国家安全保障戦略に幾つか書いてあります。それをはしょって申し上げますと、例えば、我が国自身の主権や独立の維持、そして経済発展を通じた更なる繁栄、そして普遍的価値やルールに基づく国際秩序の維持、擁護。こうした大切な国益を守っていくということがますます重要になってきていると私は考えております。

 こうした中で、国際情勢の複雑化、あるいは経済社会構造の変化、こうしたことを踏まえて、外交、防衛はもとより、経済上の措置を講じることによって幅広い課題に対処する必要性が増してきていると考えているんです。

 その上で、スピードが速く広がりのある変化にしっかりと対応していくためには、経済構造の自律性をしっかりと確保していくこと、また、技術などの他国に対する優位性、そして、それを更に磨いて国際社会にとっての不可欠性にしていくこと、そして、ある意味脆弱性を解消して強みを磨いていくことによって、国際社会における立ち位置を強化し、普遍的な価値やルールに基づく国際秩序の維持強化、この三つの目標をしっかりと推進していくことが重要であると考えておりまして、そのための経済的な施策を総合的かつ効果的、また時間軸を意識しながら推進していくことが、現在取り組んでいる経済安全保障の中心にある考え方だと考えております。

浅野委員 ありがとうございました。

 まず政府の中で、今回提出、議論する予定の経済安保法案に限った話ではないんですが、やはり日本の国として、経済安全保障を達成した状態というところを明文的に定義をした方がよろしいのではないか。今大臣がおっしゃっていただいたような考え方は私もそのとおりだとは思うんですが、一人一人が別々のイメージを持っているよりも、目標地点、ゴール地点をしっかり明示をした方が、今後の、これは経済界も巻き込んで進めていく話なので、まずは、目標設定といいましょうか、あるいは価値観の共有でもいいかもしれません、そういったことをしっかりと進めていただきたいというふうに思っております。

 その上で、今いろいろおっしゃっていただきましたけれども、私たち国民民主党も、この経済安全保障は非常に大事な政策分野だと捉えておりまして、今党内でも議論をしております。

 私たちは、経済安全保障については、サプライチェーンの保全やエネルギー供給や研究開発、そして優秀な人材の確保、育成など、幅広い観点から議論をしているんですが、今回、この法案が対象としているのは、四つの分野といいましょうか、項目があると思いますね。サプライチェーンであったり、あるいは基幹インフラの保全であったり、あるいは官民の連携、そして特許の非公開化ということなんですが、少し、それで十分なのかというふうに我々は感じております。

 何でこの四つの分野にしたのかという経緯について、その四つに限定した理由について、大臣のお考えを伺いたいというふうに思っております。

小林国務大臣 世界各国が、今委員の御指摘にもありましたけれども、戦略的物資の獲得ですとか、あるいは重要技術の確保、こういうところにしのぎを削っていく中で、我が国として経済安全保障というものをしっかり確保していくためには、先ほど申し上げた自律性を向上させるということと、優位性、不可欠性を獲得していくこと、この二つが重要であって、それによって同志国との協力を拡大し、深化させていくことが重要だと考えているんです。

 でも、そのときに私が重要だと思うのは、日本としての基軸がないと、ほかの国と連携するといっても、単なる追随になりかねない。そこは考えておりまして、したがって、まずは我が国としてどうするかという基軸を決めていくことが重要であって、そのためには、最初にやるべきことは、我が国としての脆弱性、弱みと強みをしっかりと把握をしていくことだと思っております。

 そうした考え方に基づいて、国際情勢が複雑化し、変化のスピードにも富む中で、我が国としての立ち位置を明確化しつつ、必要な取組を総合的、効果的に進めていく必要がある。このことが基本的なアプローチの仕方です。

 そうした視点に立った上で、これまでも、法律だけじゃなくて、例えば外為法に基づく対応の強化ですとか、新しい法律だけじゃなくて、既存の法制度の中で多岐にわたる取組というものを既にやってきております。その中で、我が国の脆弱性や強みを把握していく作業を今も続けておりますけれども、そうした中で、経済安全保障推進会議ですとか有識者会議での議論も踏まえた上で、更なる喫緊の政策課題をやっていかなきゃいけないという観点から、サプライチェーンの強靱化を含めた、いつも言っています四つの項目についてまずは取り組んでいかなければいけない、法制上の手当てをしなければいけないと考えたところです。

 委員御指摘のとおり、経済安全保障というのは非常に幅広い概念であって、今回この四つの項目をやれば全て終わりというわけでは私はないと思っていて、また、有識者会議でも、この間、提言をいただいたんですけれども、いろいろその中にも書かれていて、例えば、一つだけ読み上げさせていただきますけれども、「経済安全保障は多岐にわたる新しい課題であり、情勢の変化に応じた迅速な対応が不可欠であることから、今後も、さらなる立法措置を含む必要な取組を検討・実施していくべきである。」というようなことも提言されていて、私たちとしては、その提言というのを非常に重く受け止めているところでございます。

 情勢は非常に急速に変化をしていく中で、したがって、法制化するもの以外でもやらなければいけないことというのは多岐にわたっていると思いますし、一気に全てできればそれが理想ですけれども、やはりそういうわけにはいかないということで、先ほどの問いのところでお答えさせていただいたんですが、時間軸を意識しながらということで、優先順位もつけつつ、できるところからスピード感を持ってやっていくというのが今の方向性でございます。

浅野委員 これからも追加のテーマ、分野というものが議論し得るんだということなんですけれども、ちょっと二つだけ具体例を挙げさせていただくと、私どもが今ちょっと課題として思っているのは、やはりセキュリティークリアランスですね。あとは人権デューデリジェンスなんですけれども、特にセキュリティークリアランスについては、もう既に、日本人の技術者が海外の学会だとかいろいろな会合に出ていこうとしたときに、それが、例えば量子コンピューティングのような分野だったり、あるいはAIの分野だったり、先進的な分野が多いんですが、このセキュリティークリアランスがないということをもってそこに入っていけないという事象が既に起き始めているんですね。

 これはやはりグローバルなネットワークの中から日本人技術者が孤立し始めていることの表れだとも思いますし、人権デューデリの話をすると、こちらはまた別の事由によって国際的な流通網から孤立してしまうようなリスクもあるわけで、経済安全保障というのであれば、やはりこの二つの議論というのは絶対に避けて通れないというふうに思っております。

 今回、そういった要素がこの法案の中には含まれていないように思われるんですけれども、ちょっと通告にはないんですが、大臣の、この二つのテーマに対する問題意識であったり、あるいは、今回含まれていないのかどうかも、ちょっと今、法案の詳細がまだ出てきていませんから分かりませんので、その辺りについて大臣の見解を伺えればと思っております。

小林国務大臣 ありがとうございます。

 今の委員の御指摘というのは、僭越ながら、傾聴に値するというふうに受け止めております。

 セキュリティークリアランスにつきましては、今、結構いろいろなところで言葉は出てくるんですが、必ずしも、多くの方のイメージというか定義というか、そういうものが統一されて語られていないのかなというふうにも感じているところです。

 その意味で、まず、そもそも論として、先端的な重要技術の研究開発というのは、我が国の技術の優位性や不可欠性を獲得していくに当たって極めて重要な課題だと認識しておりまして、だからこそ、今、法案自体は検討中ではあるんですけれども、四つの柱の一つとして、官民の研究開発に関する技術協力という、そこを一つの柱として位置づけているところであります。

 これにつきまして、今後、法案提出に向けた準備を加速しながら、先端的な重要技術の研究開発とともに技術流出対策というものに万全を期していきたいというふうに思っているんです。

 その上で、セキュリティークリアランスについてですけれども、主要国を中心に諸外国では、機微技術に関するものも含めて、主として政府の保有する秘密情報の保全などの観点から導入をされていて、例えば、今委員が御指摘されたように、各国との共同研究などを民間部門も含めて進めていく上で、こうしたクリアランスを我が国でも取得できないのかといった声もあるということは承知をしております。

 これは、いろいろ、国民の理解も含めて、今後検討をしていくべき課題の一つであるというふうには個人的には考えておりますけれども、まず今やらなければいけないことは、機微技術に関するものを含めて、情報流出対策というものを更に進めていくこと、そしてそのための必要な取組を強化していくこと、これは喫緊の課題であるというふうに考えておりますので、今、法案自体は検討中でございますけれども、しっかりと法案の中身を詰めて、委員の皆様にこの技術流出対策も含めて御審議いただけるように努めていきたいと考えております。

浅野委員 是非、引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 今、やはり情報流出の防止が非常に重要なんだという御発言がありましたけれども、それはもう間違いないと思いますが、今、法案に関する情報や、あるいは政府関係者の御発言を聞いておりますと、この情報流出、いわゆる保護の部分のところに余りにも重きが行っていて、新しい技術をつくったり、あるいは、先ほど大臣がおっしゃっていた、日本の優位性だったり不可欠性を創造する部分の施策というところが、そういう姿勢が弱いのではないかというふうに感じるところがあります。

 是非、罰則を設けたり、あるいは守秘義務を課したり、そして特許を非公開にしたりという、それはそれでそれぞれ必要な措置、施策なのかもしれませんが、その一方で、やはり技術が生まれるときというのは、いろいろな情報の交差があって、そこから新しい発見や新しい技術が生まれるわけですから、そういったところを抑圧しないような運用にしていかなければいけないと思っております。

 こうした部分、つくり出す部分と守る部分のバランスといったもの、ちょっと今偏っているんじゃないかなと思うんですが、大臣の御見解を最後に伺って、終わりたいと思います。

小林国務大臣 おっしゃるとおりだと思っていまして、守ってばかりいたら結局守るべきものがなくなっちゃう、そんな日本にしたら意味がないというふうに思っています。

 重要なことは、先端的な重要技術を官民で連携して育てて、そして同時に守っていくこと、バランスだというふうに思っています。

 先ほどの有識者会議の提言において幾つか指摘されたことは、産学官がその枠を超えて継続的かつ緊密に支援、連携して先端技術を育てる、そして、安心して機微なものを含む情報の交換や協議を行える枠組みをつくっていく、そして、研究成果の取扱いは、公開を基本としつつ、当事者で協議をして決定する、こうした御指摘をいただいていて、自由な研究活動と情報の保護のバランスを確保する制度をつくっていくことが重要だと考えています。

 もう時間が来ているので特許の話とかはちょっとはしょりますけれども、こうした有識者からの提言を踏まえて、具体的な制度設計の検討を今進めているところであって、議員の御指摘、御懸念に及ばないような形の制度をつくっていきたいと思っています。

 私としては、議員の問題意識というのは極めて重要だと思っていて、イノベーションというのは閉じていたら起こらないと思うんです。やはりオープンイノベーションであって、企業の枠や国の枠を超えて、異なる価値がぶつかって融合して、そこで新しい付加価値を生み出していく、これがイノベーションの在り方だというふうに思っていますので、当然、そこをしっかりと、根底にそうした考えを持って具体的な制度設計を進めていきたいと考えます。

浅野委員 終わります。どうもありがとうございました。

上野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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