衆議院

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第11号 令和4年3月23日(水曜日)

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令和四年三月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 上野賢一郎君

   理事 井上 信治君 理事 工藤 彰三君

   理事 平  将明君 理事 藤井比早之君

   理事 森田 俊和君 理事 森山 浩行君

   理事 足立 康史君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    井原  巧君

      伊東 良孝君    石原 宏高君

      金子 俊平君    小寺 裕雄君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      高木  啓君    土田  慎君

      永岡 桂子君    長谷川淳二君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      松本  尚君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      吉川  赳君    和田 義明君

      大串 博志君    櫻井  周君

      堤 かなめ君    中谷 一馬君

      本庄 知史君    山岸 一生君

      阿部  司君    青柳 仁士君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      平林  晃君    鈴木  敦君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      大石あきこ君

    …………………………………

   議員           堀場 幸子君

   国務大臣

   (経済安全保障担当)   小林 鷹之君

   内閣府副大臣       大野敬太郎君

   経済産業副大臣      細田 健一君

   内閣府大臣政務官     小寺 裕雄君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高村 泰夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  室田 幸靖君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三貝  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  木村  聡君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  泉  恒有君

   政府参考人

   (内閣官房重要土地等調査法施行準備室次長)    川辺英一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室次長)          柳   淳君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局長)        田中 茂明君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            阿蘇 隆之君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            井上 俊剛君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    横尾 洋一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石月 英雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 緒方健太郎君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           里見 朋香君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            前島 明成君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         片岡宏一郎君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       黒田淳一郎君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     風木  淳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (特許庁長官)      森   清君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    小見山康二君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局次長) 鶴田 浩久君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          市村 知也君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            萬浪  学君

   政府参考人

   (防衛装備庁調達管理部長)            内藤 正雄君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     長谷川淳二君

  山田 賢司君     井原  巧君

  中谷 一馬君     櫻井  周君

  浅川 義治君     青柳 仁士君

  浅野  哲君     鈴木  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  井原  巧君     山田 賢司君

  長谷川淳二君     土田  慎君

  櫻井  周君     中谷 一馬君

  青柳 仁士君     浅川 義治君

  鈴木  敦君     浅野  哲君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     鈴木 英敬君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出第三七号)

 経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

上野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る三十一日木曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官高村泰夫君外二十七名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、小林大臣それから大野副大臣におかれましては、自由民主党の新国際秩序創造戦略本部において、まだこの経済安全保障という言葉が世の中に広まっていなかった頃から、この課題に共に取り組ませていただきました。とりわけ、小林大臣におかれましては、事務局長として精力的に議論を主導していただきまして、また提言を取りまとめられました。そして、今度は、政府に入られてからは、大臣として法案の作成、そして提出にこぎ着けられたこと、敬意を申し上げたいと思います。

 さて、経済安全保障という言葉、新しい言葉でして、これまで国民の間でもなじみが薄かったので、どういうものなんだ、なかなか分かりにくいというお声も聞いております。

 ところが、昨今のロシアによるウクライナ侵略に伴う経済制裁、あるいはその対抗措置としてのガスパイプラインの供給停止といったニュースが流れると、経済が国家の存立を脅かす手段として用いられることが、こういうことについて注目が集まるようになってまいりました。

 また、この経済安全保障という言葉、言葉自体は新しいのですが、その重要性は今に始まったことではございません。昔からありまして、日本も、例えば、さきの大戦前、石油を止められ追い込まれた。あるいは、食料、エネルギー、こういったものは、まさに国家存立の要であり、国民生活に直結する問題として、従来から様々な施策が講じられてきたところだと思っております。

 この経済安全保障推進法案提出に当たって、食料安保の視点がないではないかとか、あるいはエネルギーの問題がないではないかというお声も聞くんですが、この法律でカバーできること、あるいはそれぞれの業法でカバーできること、様々なことがあると思います。

 そこで、まず小林大臣にお伺いをいたします。今回、四つの柱を特に手当てをする必要性、この点について御説明をいただけますでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 近年、世界各国が戦略的物資の確保あるいは重要技術の獲得にしのぎを削る中で、我が国として経済安全保障を確保することが重要となっております。その中で、我が国の経済構造の自律性を向上させる、また、我が国の技術などの他国に対する優位性や、ひいては国際社会にとっての不可欠性をしっかりと獲得していく、こうした取組を推進しながら同志国との協力を拡大あるいは深めていく、そうしたことが必要だと認識しています。

 その際に、複雑化し、変化のスピードが速い国際情勢にしっかりと対応していくには、単に他国に追随するのではなくて、我が国としての立ち位置を明確化しながら、必要な取組を総合的そして効果的に、また時間軸をしっかりと意識をしながら進めていく必要があると思っています。

 こうした観点から、これまでも、外為法に基づく対応の強化を始めとして、既存の法制の中で経済安全保障の推進に資する多岐にわたる取組は推進してきたところでございます。その中で、政府の内部におきましても、様々な事態に対応できるように、特に、我が国の基幹産業が抱えている脆弱性あるいは強みを点検をし、そして見直しを検討してきたところでございます。

 こうした中で、閣僚から成る経済安全保障推進会議や有識者会議での議論も踏まえまして、委員御指摘のように、革新的技術が出現してきている、経済もグローバル化してきている、あるいは社会のDX化が進んでいる、また、それに伴う産業構造の変化を受けまして、その洗い出しつつある様々な課題の中でも、特に法制上の手当てが、また、分野横断的な課題であって喫緊の政策課題に対応しなければならない、それをこの四項目として洗い出した上で、この安全保障の確保に関する経済施策の制度整備を行う法案として国会に提出させていただいたところでございます。

 これが経済安全保障の全てだと申し上げるつもりはありません。ただし、この法律を策定することによって、経済安全保障の抜本的な強化を図っていきたいと考えます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 今、小林大臣の御説明の中でも、日本の強みと弱み、そういったお言葉がありました。

 その中で、有識者会議の資料なんかにもあります自律性の向上という言葉、これは例えば、重要な物資を外国に依存している、こういったことではいけないので日本で自前でやるとなり、そういったことでいうと、この自律性という言葉が、ニュースとかで見ていると、自分で立つ、独立独歩の立つという言葉で使われることが多いんですが、政府の資料等を見ていますと、自ら律するという方の自律性の向上という言葉が使われるんですが、これは政府のお考えを是非こういった国会の場で明らかにしたいと思いますので、小林大臣から、この自律性の向上というとき、なぜ自ら立つではなくて自ら律するの律を使われるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、自律性なのか自立性なのか、これは用語がたまにメディアとかでも混在しているように感じます。

 ここはしっかりとした意味がありまして、それは、今申し上げたとおり、経済安保の確保に向けては、自律性の確保と、優位性、不可欠性の獲得が重要であるということを申し上げました。そういう意識を持って、先ほど申し上げたように、我が国の基幹産業が抱えるリスクの、あるいはその強みの点検や見直しを行ってきています。その中で、脆弱性を解消する、また、強みを把握をして磨いて獲得することによって、我が国の国際社会の中での立ち位置をしっかりとしたものにしていく。

 重要なことは、他国が、アメリカがこう動いた、中国がこう動いた、ヨーロッパがこう動いた、だから日本もこうすると他国に追随するというのではなくて、あくまで自らの基軸というものをしっかり持って主体的に政策を判断する、そういう国になっていく、そういう意味での自律性という言葉を使っているところであります。

 当然、サプライチェーンの話などを例えば例に取ると、他国に過度に依存しないということを目指しておりますから、中には、場合によっては、自国でできることはやっていこう、そういう考え方もある。それは自ら立つの方ですけれども、その自立性というものも当然重要な考え方の一つではございますが、自律性の方がより上位の概念にあるという意味で、この言葉を経済安保のコンテクストの中で使わせていただいているところであります。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 では、法案の各論に入っていきたいと思います、若干順番が変わると思いますけれども。

 例えば、特定重要物資の安定供給確保の具体的な支援策でございますが、法案の中では、助成とか利子の補給、あるいは金融支援といったものがあります。

 例えば、法第三十一条第三項の安定供給確保法人による支援策のうち助成金交付というものがありますが、この具体的な制度のイメージ、あるいは現時点で考えられている予算規模などがありましたら、これは政府参考人の方で結構ですので、お聞かせください。

高村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、民間事業者にある生産基盤の整備、供給源の多様化、生産技術の開発等の物資の特性に応じた多様な取組の支援を行うことができる仕組みとしております。このうち、複数年度にわたる支援が必要となるもので一定の要件を満たした場合には、予算を確保した上で安定供給の確保支援法人等に基金を造成し、基金から助成金等の交付を行うことができる仕組みとしております。

 予算規模でございますが、これは、本法案が成立、施行した後、サプライチェーン調査を実施し、物資を指定していくことになるため、現時点では予断を持って申し上げることはできないと考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。これは、重要物資の安定供給に関わる事業者さんからは大変関心の高いところでございますので、是非、その辺も含め、早めに対応していただければと思っております。

 次に、基幹インフラの強靱化についてお聞かせをいただきたいと思います。

 特定社会基盤役務を提供する事業者間の負担の公平性についてでございます。

 例えば、電力やガス等、同じように公共インフラ役務を提供する事業者にもかかわらず、規模等によって指定されたり指定されなかったり、それによって重要設備の審査を受ける義務が生じたり生じなかったりというような差が出てくると思うんですが、この事業者間の公平性について、どのように考えるでしょうか。

高村政府参考人 お答えいたします。

 本法案の基幹インフラに関する制度でございますが、基幹インフラの安定的な提供を確保するため、業法に上乗せする形で、事業者による重要な設備の導入等について、その設備が外部からの妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいか否かを事前に審査するなどの制度を設けるものでございます。

 我が国の安全保障と事業者の経済活動の自由の両立を図ることは重要と考えております。そのため、規制対象となる事業者は、事業規模や代替可能性等に鑑み、国家及び国民の安全を確保する上で真に必要なものに限定する予定でございます。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、事業者によって、課される法的義務に差異は生じることになりますけれども、指定を受けた事業者の負担の軽減という観点から、今後、事業者等と密接にコミュニケーションを取ることで、事業者の経済活動を過度に制約しない制度の整備と運用に努めてまいりたいと思います。

山田(賢)委員 公共インフラですから、安定供給義務をそれぞれの事業者が担っているということも分かりますし、一方で、経済自由の原則があるので、過度な規制になってはいけないということは分かるんですが、例えば電力なんかでも自由化で参入してくるところもありますので、なるべく不公平感がないようにというか、義務が課される方々の納得感の得られるような施策にしていただきたいというふうに考えます。

 続きまして、重要技術の開発支援に関してでございます。

 よく、この法案の中で、人材育成が足りないのではないかというような指摘もあるんですが、科学技術の振興あるいは重要技術の開発支援ということは、これまでも政府において様々な施策が行われてきて、人材養成にも取り組んでこられたことと思料いたします。

 今般、この法律においても、第六十一条で人材の養成及び資質の向上というものが定められておりますが、この規定を含めて、本法に基づいて新たにどのような人材養成施策を行うのか、これは大野副大臣からお答えいただけますでしょうか。

大野副大臣 ありがとうございます。

 人材の育成、確保というのは極めて重要なテーマであると認識しておりまして、六十一条でも、御指摘のように、人材の養成及び資質の向上というのは規定しているということでございますが、ここには二つの要素がございまして、一つは、まさに先端的な技術、これを研究開発していく、それの担い手としての人材、それからもう一つは、調査研究の担い手としての人材ということでございます。

 前者につきましては、やはり極めて重要でございますし、これまでも様々な取組があるという中で、この制度に適した形で人材をしっかりと育成していくという意味においては、次世代の社会変革を導く若手の研究者やスタートアップの育成というのはやはり急務ということでありますので、本法案の協議会についても、こうした方々が参画しやすい間口を備えた制度とするということとともに、この枠組みに参画することで、キャリアパスの一環として学界等で高い評価を得られるような環境を醸成していきたい。すなわち、社会が、あるいはコミュニティーが、ここに参画するとすばらしいよねということを評価として結果的にいただくような、そういう仕組みにしていきたいというのが基本的な軸でございます。

 後段の方につきましては、やはりここは、先ほども大臣がお触れになられましたように、かなり、国際的な情勢の認識とか、あるいは研究開発の国際的な動向とか、ある種、俯瞰的なことをマッシュアップして総合的に分析できる、こういう人材が求められるわけでございますので、あとは、ほかの研究機関とか、そういった方々がしっかりと交流いただけるような、そういった交流を通じて社会、コミュニティーとして評価いただける、こういった方向の仕組みにしていきたいと思っておりまして、いずれにせよ、そういった方向で今後しっかりと検討していきたいと思っております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 続きまして、特許の公開制度について質問させていただきたいと思います。

 機微技術の移転ということに関して、これを海外に移転しないようにということで外為法による制限などが設けられておりますけれども、現在の特許制度においては公開が原則です。機微技術であっても特許の申請は自由ですし、特許が申請されてしまうと公開され、特許が公開されると、公知の情報ということで、外為法の規制対象外となってしまいます。

 例えば、核技術に係るものであるウランの濃縮技術であったり、重要な軍事産業に係るような、そんな技術であっても、特許申請することで公開をされてしまう、そうすると、外為法で移転を制限をしていても、特許制度によって公開をされてしまうことになっている。これは問題ではないかなと思うんですが、政府参考人からお聞かせいただけますか。

高村政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の特許制度は、委員御指摘のとおり、一たび特許出願がされれば、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明についても、一年六か月経過後には国が出願の内容を公開する制度となっております。

 また、公の技術、公知の技術を提供する取引は、外国為替令十七条五項に規定する経済産業大臣が指定する取引として、許可を受けないで取引をすることができることとされております。

 このような状況を踏まえまして、御審議いただいている法案では、特許出願の非公開制度を設けることとしております。これは、公にすることによって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明の特許出願については、出願公開等の手続を留保するとともに、その間、必要な情報保全措置を講じる制度であり、これにより、特許手続を通じた機微な技術の公開を防止することを可能とするものでございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 そういう意味で、今回、特許の非公開制度というのを設けることになりましたが、なかった方がおかしかった。外為法で技術を移転するなといいながら、政府の制度によって堂々と、機微技術というもの、機微というのか、軍事技術に転用できるような技術が公開されていて、誰でも見放題になっていた、このことの方が問題ではないかと思いますので、今回の法案の意義もそこにあるんだろうというふうに理解します。

 そこで、特許の非公開、これは、非公開にする代わりに補償をするという制度になっておるということで、非公開にした分、ビジネス化できないので、補償してあげなければならない、これは当然のことだと思うんですが、それだけ価値のある技術であれば、他者にその技術を使わせないようにしてその分損失を補償するということではなくて、むしろ政府が使用料を払って、製品化して購入するなり、国内でその技術を活用することに注力すべきではないかと考えますが、どのようにお考えでしょうか。

高村政府参考人 お答えいたします。

 御審議いただいている法案では、保全指定をした場合であっても、技術情報が拡散するおそれがないと認められる場合には発明の実施を許可することとしております。このため、製品を納める先が、防衛省など厳格なセキュリティーが確保されている特定の機関に限定され、そこからの情報拡散のおそれがない場合など、発明の実施をした場合であっても開示と同様の効果を生じることがないときにつきましては、発明の実施の許可をすることとなります。

 発明を実施するか否か、また、どのように実施するかについては特許出願人の意思によるものではございますが、仮に、国が必要と認める技術であって、使用料を払うなり製品化して購入するなりする場合については、基本的には発明内容が拡散するおそれがないと認められることから、発明の実施を許可することとなると考えております。

 以上です。

山田(賢)委員 基本的には発明の実施をしてはいけなくて、内閣総理大臣の許可を得ればその発明の実施ができるというような構造になっているとは聞くんですけれども、そこは、なるべく使わないように、実施させないようにということではなくて、他国に隠さないといけないような、そんな重要な立派な技術であればどんどん国内で使っていく、こういう考え方で実施していただきたいというふうに考えます。

 続きまして、同じような話になるんですけれども、経済安全保障の確立のために必要なことというのは、補助金で支援し続けるということではなくて、ビジネスとしてしっかり回っていく、持続可能なビジネスにしてあげるということが大事で、そういった仕組みをつくることが何より重要だというふうに考えております。国産品の安定調達、安定供給に必要なことは、国内製品の安定消費、これが重要だと考えております。

 例えば、食料もそうなんですが、食料自給率の向上というふうによく指摘はされるんですが、大事なのは、国産の米を食べるとか、そういうことによって安定的な生産につながっていく。例えば国産ワクチンについても、なぜこれだけ国産ワクチンの開発が遅いんだと言われるんですが、実は国内でワクチンの消費がほとんどなかった。国内で使わないのであれば、国内で作って途上国に支援するなり、国内のものを生産し続けるという、このエコシステムというか持続可能なシステムをつくることが重要だと考えております。機微技術についても、防衛産業、ここでしっかりと作っていく、生産をしていく、このことが技術を守ることであり、育てることにつながるんだと思います。

 政府としても国産品の消費拡大に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣の御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

小林国務大臣 委員御指摘のとおり、法案の中には、例えば重要物資の安定供給の確保のための制度を設けております。これは、民間事業者による多様な取組を支援することとしておりまして、ある意味、民間事業者の経営判断を後押しする、そういう枠組みにしています。民間事業者は、当然、経済合理性や効率性を考慮した上で供給確保計画を作成をし、安定供給確保に取り組むことになりまして、当然、ビジネスとしての持続可能性の観点も重要になるものと考えています。

 委員が御指摘いただいた、国家の安全保障に関わる重要物資の安定調達のためには国産品の消費を向上させるという観点が不可欠ではないかという御指摘につきましては、需要を喚起し獲得するためには、当然、重要な物資や技術につきまして、我が国が他国に対する優位性を高めて、国際社会にとっての不可欠性をしっかり獲得していくことが重要であると考えておりまして、その結果として、我が国の重要な物資や技術の安定供給が図られるものと考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。是非そういった消費拡大にも取り組んでいただきたいと思っています。

 続きまして、今、経済安全保障の有識者会議等の資料でも指摘されております、経済安全保障の推進に向けた目標、アプローチの中で、我が国の方向性として、先ほど大臣御説明があった、自律性の向上、それから不可欠性の確保、こういったことに加えて、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化といったことが挙げられております。

 私も、このルール形成というのは非常に重要なことだというふうに考えております。日本というのは、努力によって、先進的な技術、血のにじむような技術によってすばらしい技術をつくるんだけれども、それがあるとき買われてしまったり、あるいはルールが変えられてしまう、こんなことによって、戦略的な優位性というか、競争優位性を失ってしまうことがあるというふうに考えております。

 技術のための努力、これも大事ですが、資本力でばっと買ってしまう、特に欧米の企業なんかは、自分たちで開発しなくても、スタートアップのベンチャー企業、これを買収したり、技術があるなというところにお金を出して支援をしていく、ここの部分が日本は弱いと考えております。

 これに加えて、せっかくつくった技術、日本の自前の技術が、ルールを変えられてしまう。むしろ、外国というのは、自分たちが不利だな、競争優位性がないなと思ったら、そのルールを使えなくしてしまう。ルールを変えて、自分たちの持っているルールで自分たちの持っている技術を標準にする、こういったことを精力的にやっているように考えます。

 日本はまだまだその意識が低くて、国際機関に政府としても人を派遣していただくなりはしているんですが、民間企業の中にその意識が低いのではないかというふうに考えております。

 欧米も、政府主導でルール形成をやっているというよりも、企業が、自分たちの技術が競争で勝てるように、ロビー活動をするなりして国際標準に持っていく。こういったことについて、政府だけではなく民間からも、自分たちの技術をもっと国際標準にして、競争優位性を確保するようにという取組があってもいいのではないかなと思います。

 こういったことを民間にも呼びかけていただいて、是非、国際ルールの形成に主導的に日本が関わっていただきたいと思いますが、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

小林国務大臣 委員御指摘のとおり、基本的価値やルールに基づく国際秩序を維持し、また強化していくということは、経済安全保障の取組を推進していく上で重要なポイントだと考えています。

 その意味では、昨年十一月に経済安全保障の推進会議第一回会合を開きまして、そこで、今申し上げた国際秩序の維持強化を目指すことを、総理を含む閣僚間で、我が国が目指す経済安全保障の政策の大きな方向性の一つとして共有をしたところであります。こうした目標を達成するためのアプローチとして、政府一体の対応、戦略的な国際連携に加えて、産学官の連携が必要であることも確認しました。

 これまでも、我が国は国際ルールの形成に取り組んできたところでございます。これはいろいろなアプローチがあって、デファクトでつくっていくアプローチもあれば、デジュールのアプローチもあると思っています。

 その中で、今委員御指摘のように、政府だけが頑張ってやってもそういうルールができるものではなくて、やはり今、民間企業が、自ら国内に閉じずに、海外のマーケットをどう取りに行くかとか、それを民間だけでやるのもよし、あるいは政府と連携してやるのもよし、そうした動きを見せていかなければ、今委員御指摘のように、ルールをどうつくるかというところで各国はしのぎを削っている状況でございますので、そういう意識を民間にも更に持っていただきたいと思うし、民間に言うからには政府としてもやはりそこは戦略的に考えていかなければいけない、そういう思いであります。

 委員が、今おっしゃった国際機関にどうやって日本の人材を送り込んでいくのかということで、これまでもいろいろ御尽力いただいてきたことは承知をしております。そうした視点を含めて、政府として、国際ルールあるいはその先の秩序の形成に向けて尽力していきたいと考えます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 基幹インフラのところでも、安全性の確保というところでも、やはり日本の自前技術を使うにこしたことはないんだけれども、日本の自前技術にこだわっていると、今度はガラパゴス化してしまって世界で通用しないということがこれまでありました。だから、大事なことは、それは、自前の技術を日本国内でしか使っていなかったことが反省点ではないかと考えております。

 日本の独自の技術を世界に持っていく、まだまだ未開拓の市場、途上国、例えばアフリカなどとか、アジア、アフリカの諸国に、ODAという開発支援を通じて様々な優れた日本の安全で安心できる技術を輸出して、それがスタンダードになっていく、こういったアプローチを是非政府を挙げて取り組んでいただきたいし、民間にもその意識を持っていただきたいというふうに思っております。

 私の質問は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

上野委員長 次に、杉田水脈君。

杉田委員 おはようございます。自由民主党の杉田水脈です。

 本日は、経済安全保障について質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 初めに申し上げますが、私は、この法案、非常に歓迎をしております。私自身が経済安全保障に関心を持ったきっかけの一つは、オーストラリアのターンブル政権の親中からの方向転換でした。ヘデンハンド、「見えない手」や、サイレントインベーション、「目に見えぬ侵略」は邦訳され、日本でも中国共産党の浸透工作について知られるようになり、多くの日本国民が危機感を持ちました。

 二〇一六年、二〇一七年にオーストラリアを訪問しましたが、ちょうど、ノーザンテリトリーにあるダーウィン港を嵐橋集団という中国の企業が九十九年間リースすることが決まった時期でした。この会社は、人民解放軍とつながりが深く、人民武装民兵部隊という独自の私兵まで所有していると言われています。

 ダーウィン港は、米海兵隊が駐留しているだけではなく、中国が海上権益支配を目指す第二列島線の南端に位置する要衝であるにもかかわらず、同盟国に相談もなく中国企業にリースすることを決定したことに対し、当時のオバマ米大統領も懸念を示しました。お会いした在豪邦人の方々も非常に危機感をあらわにして、オーストラリアはそれまで割と親日だったんですけれども、どんどん親中に傾いていっていましたので、非常にそれを肌で感じて危機感をあらわにしておられました。

 そのオーストラリアが、百八十度転換して、自国の国益を守るために、その中国の浸透工作にノーを突きつけました。中国は、毎年、資源大国であるオーストラリアの鉄鉱石、石炭、液化天然ガスなどの輸出の三分の一以上を買い上げる最大のお得意様です。そのオーストラリアが経済を大幅に依存する中国との本格的対立を決意しなければならなくなった理由は、中国の経済制裁による損失や様々な報復措置を考えても、なお優先的に守らなければならない国益があるからです。その国益とは、中国による浸透工作から自国を守ることであり、まさに国家存亡を懸けた重大な決断であります。

 私は、日本の独立と生存と繁栄を守る基盤を担うのがこの経済安全保障だと考えています。日本も、オーストラリアの気概に倣い、相手国からの経済制裁などの返り血を浴びても国益を守り抜く覚悟で、この法案を進めていただきたいと思っております。

 まず、ダーウィン港のお話を紹介いたしましたので、初めに港湾についてお尋ねしたいと思います。

 港湾は、国際的な物流の要であり、安全保障の観点からも極めて重要であります。オーストラリアのように海外企業にリースする、又は海外企業を誘致するといったようなことになれば経済安全保障上も大きなリスクが生じますが、本法案の基幹インフラの対象に港湾が含まれていないのはどのような理由からなのでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の対象事業といたしましては、国民生活及び経済活動の基盤となります役務の中でも、国民の生存に必要不可欠で代替困難なもの、又は国民生活若しくは経済活動が依存する役務でその利用を欠くことにより広範囲若しくは大規模な混乱などが生じ得るものを提供する事業のうち、規制対象とすべき事業者や規制対象とすべき設備が具体的に想定されるものを、規制対象となり得る事業としているところでございます。

 御指摘ございました港湾につきましては、輸出入貨物の九九・六%が港湾を経由してございますので、物流の確保の観点から重要なインフラである、このように認識をしてございます。

 一方で、港湾等で使用されます設備でありまして、その機能に支障が出た際に船舶による物流に影響が生じ得るものとして、航路標識、荷役機械、海運事業者などが港湾施設使用の許可をオンラインで申請するためのシステムといったものが想定されるところでございます。

 そのうち、航路標識につきましては、原則として、海上保安庁が設置、管理をしておりますところ、国等の機関による調達につきましては、IT調達に関する政府申合せ、これに基づき必要な措置を講ずることとしていることなどから、本法案の対象とはしていないところでございます。

 次に、荷役機械につきましては、それぞれが独立して動作するものでございますので、仮に一部の荷役機械の運用に支障が生じたといたしましても、他の荷役機械による代替が可能でございまして、港湾の機能に大きな影響は生じないものと考えているところでございます。

 次に、施設使用許可のシステムについてでございますが、こちらにつきましては、港湾施設使用の許可申請は、現状、約六〇%が書面の持参、郵送、ファクスなど紙ベースで処理されておりますことなどから、仮に当該システムに支障が生じた場合であっても申請処理の大幅な遅延は見込まれない、このように認識してございます。

 したがいまして、港湾は、規制対象とすべき設備が具体的に想定されませんので、今般、基幹インフラの対象事業には含めておらないということでございますが、いずれにいたしましても、港湾は我が国の物流、経済を支える重要なインフラでございますので、国としてその機能が確保できるようしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

杉田委員 紙ベースであるから影響が少ないからというのはちょっとどうかなとは思いましたが、港湾は、先ほどの答弁にもございましたように、国境と直接つながっている非常に重要なインフラであります。特に、島国である日本にとって、インフラとしてではなくて、安全保障上も重要な施設であると認識しておりますので、今後の検討課題にしていただきたいというふうに思います。

 次の質問に参ります。

 基幹インフラの役務の安定的な供給の確保は、安全保障上非常に重要であることは疑う余地もありません。その中で、経済活動の根幹であるエネルギーの安定供給を守ることは経済安全保障の肝であると言えますが、この分野について、当然、発電所等も含まれるという認識でよろしいでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘ございましたとおり、エネルギーにつきましては、国民の生存及び経済活動に不可欠である上、産業用途など経済活動全体の基盤となっております。その供給が途絶すれば、国民生活、経済活動に大きな影響が及ぶものでございまして、こうした観点から、電気事業を本法案の対象範囲に含めているところでございます。

 御指摘ございました発電事業でございますが、こちらにつきましても、電気事業として規制対象とする方向で検討を進めているところでございますけれども、実際に規制の対象といたします具体的な事業者や設備につきましては、国家及び国民の安全を確保するために真に必要なものという形で規定をさせていただきたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 電力に限らず、主務大臣が指定する対象事業者というのは国内資本の事業者に限るということでよろしいでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案における基幹インフラの制度におきましては、規制の対象となります事業者を真に必要なものに限定する観点から、役務の安定的な提供に支障が生じ、これによって国家及び国民の安全を損なう事態が生ずるおそれが大きいものを対象事業者として指定することといたしまして、そのための基準を事業分野ごとに主務省令で定めることとさせていただいているところでございます。

 主務大臣は、この主務省令で定める基準を満たす事業者を対象事業者として指定することとなりますが、本制度の目的は、基幹インフラ役務の安定的な提供を確保することでございます。このための措置は内外無差別に講じられるべきものでございますので、外国資本の事業者であっても基準を満たす場合には対象となり得るものと考えているところでございます。

 以上でございます。

杉田委員 なぜこの質問をしたかというと、現在、山口県の岩国市では、建設が進んでいる大規模太陽光発電所が中国系企業に買収されたことが非常に波紋を広げておりまして、岩国には基地もあり、私も安全保障の観点からも非常に懸念をしております。事業者の指定におかれましては、こういった国民の懸念を十分に留意してくださいますよう、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 さて、昨日、東京電力そして東北電力の管内で電力が足りなくなるおそれがあるとして、初の電力需給逼迫警報が出されました。昨今の状況に鑑みますと、これまでの日本はロシアを始めとする海外にエネルギーを依存し過ぎていなかったか省みる必要があると思います。

 再生可能エネルギーも重要ですが、ヨーロッパでは、電力不足が深刻化した背景には、再エネの発電量が不十分となり、電力需要の急増に伴いエネルギー価格が高騰したことがあります。また、日本も含め、世界で流通する太陽光パネルの大半は中国産ですし、後ほど改めて触れますが、新疆ウイグル自治区における人権問題の観点からも強い懸念がございます。

 ヨーロッパでは原発の積極利用を求める声が拡大し、フランスを中心に、チェコ、フィンランドなどの十か国は原発をグリーンの投資先に加えるよう共同声明で欧州委員会に訴え、昨年、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議後の記者会見で欧州委員会の委員長は、我々は安定的なエネルギー源である原発が必要だと述べました。

 化石燃料を持たない日本にとってエネルギー自給率の向上に寄与できる貴重なエネルギーであり、代替安定電源として可能性を持つ原子力は、国内でも再稼働を求める声が高まっております。また、万が一、安全性を脅かすような例えば他国から攻撃があったような場合でも、稼働の有無によってそのリスクは変わらないと思うのですけれども、経済安全保障の観点から、原発の再稼働について政府の御認識をお尋ねいたします。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、エネルギーの安定供給は国の経済社会活動の根幹でございます。

 経済産業大臣も参画する経済安全保障推進会議においても、エネルギーも含めた総合的な観点から議論を行っているところでございます。

 その上で、安定供給の確保の観点からも、準国産エネルギーとしての原子力発電は重要でございます。安全性の確保を大前提といたした上で、原子力発電所の再稼働を着実に進めていくことが重要であると考えております。

 このため、国も前面に立ちまして、立地自治体など関係者の理解が得られるよう、しっかりと粘り強く取り組んでいくことにしておりますし、また、産業界に対しましても、事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけていき、原子力発電所の再稼働の着実な推進に努めてまいりたいと考えてございます。

杉田委員 非常に力強い御答弁だったんですけれども、安全性を確保して再稼働します再稼働しますというのは、今まで、もう何度もそういう答弁を聞いてきたところでございます。昨日も、電力が逼迫しているというような政府からの発表であるとか萩生田大臣からの発表のコメント欄とかを見ておりますと、もうほとんどの方が、早く原発を再稼働してほしい、それを進めてほしいというコメントで埋め尽くされておりました。

 また、私自身も、看護師である支援者の方から御意見をいただいたんですけれども、停電ということになると、医療機器をずっと使っていらっしゃる方は本当に命に関わります。そういう方は、病院にだけいるわけではなくて、自宅で使っている方もいらっしゃる。その方々、自宅にそういった自力で賄える電力がない場合は本当に命に関わります。国民の命を守るためにも、国民の声に応えて早期に原発を稼働させていただいて、電力の安定供給をよろしくお願いをいたします。

 先ほども触れました新疆ウイグル自治区等での人権問題についてお尋ねをいたします。

 近年、企業にとって人権問題への対応は重要な課題となっております。特に、アメリカでは、人権侵害を理由とする制裁措置が増加しており、エンティティーリストに指定された企業に輸出入の制限を行っております。なお、このエンティティーリストには、中国の太陽光発電パネル部材メーカーも含まれておることを申し添えておきます。また、カナダやEUにおいて人権デューデリジェンス関連法制が次々に整備されており、禁錮刑などの刑事罰を規定している国もあります。

 日本企業も、取引のある国の法律の適用を受ける、また、直接適用を受けなくても、適用される各国の取引先企業から、サプライヤーという立場で実質的に同様の対応を求められることが想定されます。国際社会が産業基盤の強化とデューデリ法整備を同時に進めていく中で、日本も、企業に奨励するだけではなく、政府としての対応を急がなければ、ESG投資家による投資の引揚げや、消費者からの製品のボイコットといった国際社会での不利益を被るだけでなく、ビジネス関係を解消されるおそれもあります。

 日本経済を守るという意味において、国際社会に日本も人権問題に真摯に取り組んでいることを示すという意味においても、今後、人権デューデリの規定は必要になるだろうと認識しております。

 先日の本会議における趣旨説明、質疑でも、萩生田大臣から、今後の方針について、法整備も含めた前向きな御答弁がありました。

 地政学的、歴史的、文化的に欧米とは背景が大きく異なる日本において、どのようなことに力点を置いて検討を進めていくのか、お尋ねいたします。

黒田政府参考人 お答えを申し上げます。

 近年、国際社会において人権問題への関心が高まる中、ただいま委員から御指摘ありましたとおり、企業がサプライチェーンを含めた人権尊重の取組をしっかりと行わない場合、不買運動、投資の引揚げ、既存顧客との取引停止など、多くのリスクに直面することがあるというふうに承知してございます。

 このため、経済産業省では、セミナー開催などによる産業界の意識向上等に取り組んできたところでございますけれども、昨年十一月に公表した企業調査におきまして、日本企業の人権尊重の取組が不十分であることが明らかになるとともに、具体的な取組方法が分からないとの声や、政府にガイドラインを整備してほしいといった要望が多く寄せられたところでございます。

 このような状況を踏まえまして、今般、経済産業省として、サプライチェーンにおける人権尊重のための業種横断的なガイドライン作りに取り組んでいるところでございます。日本企業にとって、予見可能性が高く、国際競争力強化につながるものにしていきたいというふうに考えてございます。

 また、国内のガイドラインの整備と併せまして、企業が公平な競争条件の下で積極的に人権尊重に取り組める環境を整備していくという観点から、国際協調により各国の措置の予見可能性を高める取組も進めていきたいというふうに考えてございます。

 今後、国際協調に関する議論など国内外の動向を踏まえながら、将来的な法律の策定可能性も含めまして、関係府省庁とともに更なる政策対応についても検討していきたいというふうに考えてございます。

 同時に、様々な先端技術を有する我が国として、人権侵害に対するツールとして輸出管理の枠組みが活用可能かどうか議論、検討するとともに、基本的価値観を共有する欧米諸国等の同志国とも緊密に連携をしていきたいというふうに考えてございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 今、新疆ウイグル自治区などで行われております人権弾圧のことを考えれば、日本も欧米と歩調を合わせて、そういったところのものは使わないというような決定を私は早期にするべきであるというふうに思っておるところなんですけれども、となってくると、先ほども申し上げましたとおり、今使われております太陽光パネルというのはほとんど中国産ということになりますから、そういったものが今後入ってこないという規制をかけるということになります。そうなったときに、カーボンニュートラルの達成目標とかと、どのような形で、例えば計画変更しなければいけないのか、若しくはそれと違ったエネルギーにしていかなければいけないのかといったことに関しましても、非常に大変な調整を行わなければいけない状態になるかと思います。これからではもう遅いぐらいだと思いますので、是非、スピードをアップしていただいて、この人権問題についてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に参ります。

 経済安全保障の要であると同時に大きな課題の一つは、インテリジェンス分野ではないかと考えております。例えば、イギリスやドイツは、ファーウェイなど特定の企業製品に関する規制を強めるに当たり、政府機関が独自に検証、評価し対応を決めましたが、現在、日本政府にそれだけの体制は整っているのでしょうか。我が国のインテリジェンス機関の体制の現状について、政府の認識を課題も含めてお尋ねいたしたいと思います。

柳政府参考人 お答えいたします。

 杉田先生御指摘のとおり、経済安全保障分野での情報の収集、分析、集約は重要であると認識しております。現在も、内閣直属の情報機関として内閣情報調査室が設置され、また、情報コミュニティー省庁が内閣の下に相互に緊密な連携を保ちつつ、経済安全保障分野を含む情報の収集、分析活動に当たっているところでございます。

 また、経済安全保障分野における情報の収集、分析が極めて重要であるとの認識の下、令和四年度予算では、経済インテリジェンスに係る人員について約百三十人の定員増を計上させていただくなど、体制や能力の強化に努めてきたところでございます。

 政府といたしましては、今後とも、情報機能の更なる強化を図ってまいりたいと考えております。

杉田委員 どうもありがとうございます。

 私は、AIや量子の最先端技術に触れる機会がめったにありませんので、仮にこれらに関する重要な情報を見たとしても、それが重要なものであるかすら分からないと思います。皆さんはどうでしょうか。日本の官僚の皆さんは非常に優秀でありますが、特定分野を研究し続けている専門家でない限り、日進月歩で開発される特定重要技術の見定めは困難でないかと思いますが、幅広い人材をどのように確保していくのか、お尋ねいたします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございましたAIあるいは量子といった先端的な技術は、開発動向の進展が速く、多様な主体が様々な形で社会実装に向けた取組を行っている、そのように承知してございます。

 そうした中にあって、我が国として、守り、育成すべき特定重要技術を見定めていく必要がございますが、この見定めを政府が単独で行うことにはおのずと限界があるものと認識しているところでございます。

 このため、本法案では、特定重要技術の研究開発の促進などのために必要な情報収集、分析などを、一定の基準を満たすシンクタンクに委託することができる枠組みを設けることとさせていただきました。

 このシンクタンクの機能も活用しつつ、国内外の関係機関、専門家と緊密に連携した上で、幅広い有識者の高度な御知見もおかりしながら、先端的な技術をめぐる研究開発の動向でありますとか、あるいは国内外の情勢等に関する調査分析を行いまして、政府として特定重要技術の見定めに継続に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 そういった特定の最先端技術に携わっている人の人数というのは非常に少ないと思います。開発もどんどん進めていっていただかないといけないし、評価するところにも人を割かないといけないという状態だと思うんですね。

 先ほど、そういったシンクタンクなどに委託をするというようなことだったんですけれども、じゃ、そのシンクタンクがそういったことに堪え得る団体なのかどうかというようなことに関しても、これもまた評価をしていかなければいけないという難しい側面があるかと思います。

 関連いたしまして、特許出願の非公開に関する第一次審査の段階で、特許庁の担当者は、どのような基準をもって、これは公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きいなと判断するのでしょうか。また、送付を受けた内閣府の担当者についても同様にお尋ねをしたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案で導入いたします特許出願の非公開の制度では、非公開とする発明の選定につきましては、まず、特許庁長官が国際特許分類等を用いた定型的な第一次審査を行います。具体的には、対象となる出願を絞り込んだ上で、そこで抽出された出願につきまして、内閣総理大臣が第二次審査、すなわち保全審査を行う流れとしているところでございます。

 まず、特許庁において行います第一次審査は、あらかじめ政令において、核技術や先進武器技術など、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野を国際特許分類等の形で挙げるなどして、定型的に判断可能な要件を定めまして、これに該当するものを抽出するものでございます。

 次に、内閣府において行います第二次審査、保全審査では、特許庁から送付されました出願につきまして機微性の程度を精査をするということにいたしておるところでございます。

 これにつきましては、発明の内容に応じまして、防衛省を始め、安全保障や対象技術等について専門知識を有する他の行政機関でありますとか、あるいは外部の専門家の方の意見もお聞きしながら検討いたしまして、最終的には、産業の発達に及ぼす影響なども踏まえた総合的な考慮をいたしました上で、保全指定をすることが適当か否かの判断をさせていただく、こういうことでございます。

 以上でございます。

杉田委員 どうもありがとうございました。

 インテリジェンスの強化につきましては、単なる人の増員や予算の増額にとどまらず、先ほど山田先生の質問の中にもございましたが、人材育成の観点でしっかりと取り組んでいただきたいとお願い申し上げます。

 あわせまして、これまで申し上げてまいりましたが、私は、日本の行政の最たるウィークポイントは縦割り行政にあると思っています。

 これまで、安全保障という分野においては主に防衛省と外務省が、経済という分野においては経済産業省が取り組んでいたところ、経済安全保障においては、単にこの三省が連携するということでなく、科学技術分野においては文科省、対象となる基幹インフラにおいては国交省や総務省、厚労省などが、多岐にわたって省庁横断型の対応が求められることが想定されますので、本法案においても、これまでのウィークポイントが露呈しないよう柔軟かつ強固な連携をお願い申し上げます。

 次に、セキュリティークリアランスについてお尋ねいたします。

 今回、セキュリティークリアランスの規定は導入されないものと認識しておりますが、産業の研究において国際社会に取り残されないためには必要不可欠なものであると存じております。日本にはセキュリティークリアランス制度がないがゆえに、その重要性が十分に理解されていない側面があると感じております。

 二〇一〇年、オバマ大統領は、米国の産業競争力に資する情報をCUI、つまり機密情報ではないが管理が必要な情報として各省が指定するよう大統領令を発令し、適用範囲を広げました。

 日本にはセキュリティークリアランス保有者がいないため、日本企業の製品開発者が知らないうちに製品の脆弱性を米国立標準技術研究所が運営するNVDに登録され、競合となる他国のセキュリティークリアランス保有者は逐一情報を入手できるのに対して、日本企業は開発者ですらアクセスができないといった事態に陥っています。

 米国だけでなく、ファイブアイズを構成する国々はもちろん、ドイツやフランス、韓国などにもセキュリティークリアランス制度が存在しており、国家間でセキュリティークリアランスの相互認証をしています。

 また、製品の脆弱性情報に限らず、米国の政策決定においても重要な役割を果たしており、例えば、米政府は、国防権限法において、新たにバイオテクノロジーや人工知能、測位技術などの日本も重要視している十四のデュアルユース技術を米国輸出管理規則で管理する対象としましたが、民間企業からの意見聴取にはセキュリティークリアランスが求められたために、日本企業は参加することができませんでした。

 セキュリティークリアランスを持たないがゆえに生ずるリスクや現に日本経済がこれまでに失っているものの大きさを考えれば、なぜ制度導入できないのか、理解に苦しみます。

 日本政府として、制度導入できない背景をどのように認識しているのか、また今後どのように是正していく予定であるのか、お尋ねをいたします。

小林国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のいわゆるセキュリティークリアランス制度についてですけれども、各国との共同研究などを民間部門も含めて進めていく上で、我が国でもクリアランスを取得できないのか、そうした声があることは承知をしています。

 他方、このクリアランス制度というのは、個人の情報に対する調査を含むものでございまして、こうした制度に対する国民の理解の醸成の度合い、また海外において実際にクリアランスの取得を要請される具体的事例の検証、こうしたことをまずは踏まえた上で、今後の検討課題の一つになり得ると認識しています。

 いずれにしても、情報流出対策を更に進めていく必要がありますし、国際共同研究開発を推進することは重要でございますので、政府としては、必要な取組の強化に引き続き努めていきたいと考えています。

 この法案においてなんですけれども、有識者会議の提言を踏まえまして、我が国の技術的な優位性を確保する観点から、技術流出対策についても措置を講じることとしております。例えば、官民の技術協力を推進する上で、官民で情報の交換などを行う協議会を設けて、その構成員に安全管理措置を求めるとともに、国家公務員並びの守秘義務を課すなどの措置を講じたところでございます。

 まずは、法案の成立に全力を尽くし、この制度における技術流出対策をしっかりと講じていきたいと考えます。

杉田委員 大臣、ありがとうございました。

 日本は長年、平和で安全な国であったがゆえに、日本を取り巻く安全保障上の危険性が共有されにくいという側面がございます。近年、日本でいわゆるスパイが活動していることをうかがわせる事件が、報じられているだけでも相次いでおり、一部では、日本はスパイ天国だとやゆされております。

 例えば、ソフトバンクの元社員が不正に機密データを取得した事件は、在日ロシア通商代表部元代表代理の要求に応じたものですし、積水化学工業の元社員が導電性微粒子に関する機密情報を不正に入手し、中国の通信機器部品メーカーに漏えいしていた事件は、SNSを通じて接触したことが報じられました。JAXAへの相次ぐサイバー攻撃に関与した日本在住の中国共産党員には中国人民解放軍の指示があったとの報道もございました。

 国際情勢の複雑化によって、経済安全保障をめぐる情勢は今後はますます厳しさを増すことが予想されます。折しも、現在はロシアのウクライナ侵略が世界の安全と経済に及ぼす影響力が懸念されております。また、世界情勢に緊張が高まる中、世界各国において、国家の関与が疑われるサイバー攻撃も次々に起きています。さらには、コロナ禍において、サプライチェーンの脆弱性が国民の生命、生活を脅かすリスクであるということが顕在化したことは、国民の皆様にも記憶に新しいところではないかと思います。

 こうした状況の中、欧米等の諸外国では産業基盤の強化、最先端技術の研究開発や流出防止等を推進しており、日本も後れを取ることは決して許されません。

 そのためにも、まず、国民に対する啓発、一体どのような背景でこの法案が必要なのかを十分に周知していただきたいと思っております。日本が長年享受できている平和は、強い経済という強力なカードが担う部分が大きかったのではないでしょうか。しかし、世界情勢は刻々と……

上野委員長 杉田君、持ち時間が経過をしております。

杉田委員 はい、済みません。ありがとうございます。

 それでは、私は、最後に、この法案は日本の経済と国民の生命財産を守るに当たって大きな一歩になることを期待しておるとともに、あくまでも一歩であって、個人的には、強固な防衛、将来的にはスパイを防止する法整備を目指していきたいことを申し上げて、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、和田義明君。

和田(義)委員 自由民主党の和田義明でございます。

 本日も、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 冒頭でございますけれども、まずは、ロシアのウクライナ侵略についてでございます。

 日々ニュースで流れている映像を見て、肉親を失って泣き崩れるウクライナ国民の皆様方の様子を見て、本当に胸が張り裂ける思いでございます。ましてや、もしこのようなことが日本で起こったらというふうに考えますと、いても立ってもいられない、そのように感じる次第でございます。

 ロシアのウクライナに対する侵略を最大級で非難いたします。そして、特に、民間人に対する攻撃、これは決して許されるものではありません。ウクライナの国民の皆様方にも心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 G7を中心とした国際社会が、力による現状変更を絶対に許さない、そして、一致団結して侵略国に経済制裁を科し、そして被侵略国を支援することで侵略をやめさせること、そしてこのような事例が将来も起こらないようにすること、これが何よりも大事でありますし、これそのものが日本の将来の安全保障に直結すると考えております。

 日本は、中国やロシアなど、力による現状変更をいとわない専制主義国家に隣接しております。何をすれば専制主義国家の狂気を抑止できるか。日本の安全保障は、きれいごとではなく、前例踏襲でもなく、そして真に国家国民を守れるものでなければいけない。あらゆる側面からの日本の安全保障体制を、根本から再構築する必要があると考えております。私も、一国会議員としてしっかりとこの使命を果たしていきたいと思っております。

 さて、本日は、経済安全保障の法案審査ということで、機会をいただきまして、改めて感謝を申し上げます。

 日本の経済活動と国民生活が安定、継続できるように、第三国によってこれが阻害されないように、サプライチェーンを万全の体制にしなければなりません。第三国が経済活動を通じて日本の社会生活インフラに脅威を与えることがないよう、万全の備えをしなければなりません。

 日本の発展と日本人の幸せと豊かさを実現するために創出された先端技術、またいろいろなデータ、こういったものが流出して他国の利益に置き換えられることが決してあってはなりません。

 まさに本法案は極めて重要な法案であり、日本の将来を占う大事なものであると思いまして、この法案をこのタイミングで提出していただきました政府に心から敬意を表したいと思いますし、一二〇%応援をさせていただきたいと思っております。

 最初の質問でございます。

 果敢に経済制裁を科すためにはあらゆる備えが必要だと、今回のロシアのウクライナへの侵略で痛感させられた次第でございます。

 しかし、その一方で、日本はロシアに天然ガスや小麦等々で依存をしているわけでございます。第三国への依存が必要以上に高いと、外交上、妥協を迫られたり、また、思うように毅然と対処できなかったりするリスクがございます。自由貿易一辺倒、融和政策一辺倒では、もはや国益は守れません。中国、ロシアなどの専制主義国家に囲まれた日本にとって、戦略的自律性が極めて重要であります。

 日本の戦略的自律性の確立に向けた覚悟と、それから、特に注力するべき分野、項目について、具体例をもって大臣にお示しをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 近年、経済がグローバル化をして、社会のデジタル化が、DXが進んでいく、そしてそれに伴って産業構造も変化していく。こうしたことを背景に、今委員から言及いただいた、サプライチェーンをどう強靱化していくのか、また基幹インフラ事業の安全性や信頼性をどう確保していくのか。このことを通じて我が国の経済構造の自律性を向上させて、国民の皆様の生活と社会経済活動をしっかりと維持向上させていくことが、我が国の国益の観点から極めて重要だと考えています。

 この経済構造の自律性の向上の観点からは、まずは、我が国の基幹産業が抱えている弱み、そして強みをしっかりと把握するところから始まるんだと思っていまして、これを不断に点検、見直しをしていく。様々なリスクシナリオというものを考え抜いた上で、それを洗い出していく。私自身も、今、経済安保の担当大臣として、先頭に立って、政府横断的な取組、体制づくりというものを議論しているところでございます。

 具体例ということで、個別分野では、例えばサプライチェーンの分野でございますけれども、世界各国で、重要な物資の他国依存に伴う供給リスクの高まりが顕在化している。実際に過去には、自動車部品などの一部の物資については、国民生活や経済活動を脅かす事態に発展した事例もありました。

 この法案は、そうした事態を未然に防いで、国民の生存や国民生活を損なうことがないように、平時から我が国にとって重要な物資の安定供給を図るための枠組みを整備しようとするものであります。

 また、基幹インフラの分野につきましても、二〇一五年に、ウクライナにおきまして変電所に対するサイバー攻撃があって、大規模かつ長期にわたる停電が発生した事案がございました。こうした事案を始めとして、世界各国においてサイバー攻撃の対象となる事案が増加しています。

 また、基幹インフラ事業者が利用しているICT機器が高度化しています。それに伴って、サプライチェーンの過程で、その設備に不正な機能が埋め込まれる可能性が高まってきています。そうした意味で、リスクが高まっていると捉えています。

 この法案におきましては、基幹インフラ事業者による役務の安定的な提供が妨害されることを未然に防止するために、設備の導入などを行う前に政府が事前にリスクを審査する制度を設けることとしております。

 こうした取組を通じて、我が国の自律性の向上、優位性、不可欠性の獲得、こうした取組を通じて経済安全保障の抜本的な強化を図っていきたいと考えています。

和田(義)委員 小林大臣、ありがとうございました。

 まさに我が国の弱みをしっかりと直視する、リスクを直視する、そして、場合によっては一時的に関係が悪化したとしても、やはりサプライチェーンというのをきっちりと変えていくことによって日本の国益を守るということは極めて重要だと思います。是非果敢な政策を進めていただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、昨日、本日と、関東そして東北の方で電力が逼迫をしております。一部の火力発電所が停止しているというようなことが背景であります。

 それに先立ちまして、今、原油価格が高騰しております。そして、ロシアから輸入しております天然ガス、これも今後どうなるか不透明な状況がございます。そして、さらには、政府としても、カーボンニュートラル、これを推進している状況下、原子力発電所の存在というのが今まで以上にハイライトされていると考えております。

 この原子力発電所でございますけれども、当然、安全性の確認、これが何よりも大事でございます。これを抜きにして再稼働することはあり得ないというふうに私も考えております。しかし、その一方で、今の安全性確認のプロセス、これがこのままでいいのか、今と同じ時間軸でいいのか、ここのところはいささか疑問を感じる次第でございます。

 欧米の原子力規制委員会、これは、何か懸案事項がある場合、課題がある場合、原子力発電所を動かしたまま、その確認作業を進めるのが一般的でございます。また、規制委員会と発電事業者の対話でございますけれども、これは自由闊達に、どのようなときでも、オフィシャルな場でもアンオフィシャルな場でも、しっかりと対話ができている。

 その一方で、日本では、決められた時間に決められたタイミングで一定時間しか話ができない。それ以上は話が打ち切られる。そういう、かなりしゃくし定規な状況が続いております。

 今、エネルギーが逼迫しつつあり、そして原料が高騰している状況下、この原子力政策でもっていいのか、規制委員会の在り方はこのままでいいのかということについて、政府の答弁を求めたいと思います。

細田副大臣 ありがとうございます。

 まず、先生からも御指摘ございました、昨日、東京電力及び東北電力の管内において電力需給が危機的な状況にありました。これは、皆様方お一人お一人の節電への御協力によって、何とか最悪の状況を回避することができました。改めまして、皆様方の御協力に対して心から御礼を申し上げます。

 その上で、エネルギーの安定供給は、国民生活、日本経済にとって欠かすことのできない基盤でございまして、経済産業省といたしましては、引き続き、エネルギーの安定供給の確保に向けて全力をもって取り組む所存でございます。

 今お話がございました原子力発電所の安全審査でございますけれども、これは独立した規制委員会によって責任を持って行われるべきものというふうに考えておりますけれども、私ども経済産業省といたしましても、再稼働が円滑に進むように、産業界に対し、事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立って、立地自治体など関係者の御理解と御協力が得られるように、粘り強く取り組んでまいる所存でございます。

 是非、この点について御理解をいただくよう、よろしくお願いをいたします。

和田(義)委員 御答弁ありがとうございました。

 スピード感、これが何よりも重要だと思っております。今の日本のエネルギー関係の環境というのは大きく変化をしており、また、厳しい方向に変化をしております。国民に協力を求めること、これも大事でございますけれども、根本的な課題を解決する、これこそがやはり政府がやらなければいけないことだと思っておりますので、スピード感を持つというこの一点に関しまして、是非ともお力をいただきたいと思っております。

 ちょっと時間の関係上、一つ、問題をスキップいたします。

 日本の安全保障をより確固たるものにするために、第三国から必要不可欠とされる戦略的不可欠性が挙げられます。政府は何をもって日本の戦略的不可欠性を確立しようとお考えか。どのように取り組んでいくお考えか。

 とりわけ、今回、セキュリティークリアランスの法制化が法案に含まれておりませんけれども、今後の導入に関するお考えについて、小林大臣の方からお聞かせいただければと思います。

小林国務大臣 近年、科学技術そしてイノベーションが、激化する国家間の覇権争いの中核を占めている中で、先端的な重要技術の研究開発、そしてその成果の活用というのは、中長期的に我が国が国際社会で確固たる地位を確保するとともに、国際社会における不可欠性を獲得するために非常に重要だと考えております。

 したがって、我が国におきましても、諸外国と伍する形で研究開発を進めるための制度を整備しなければならない。近年重要性が増している宇宙、海洋、あるいは量子、人工知能、こうした分野における先端的な技術の研究開発を推進していく考えでございまして、今回、この法案の中にも、一つの柱立てとして、それを入れているところでございます。

 また、御指摘のいわゆるセキュリティークリアランスにつきましては、各国との共同研究などを民間部門を含めて進めていく上で、我が国でもクリアランスを取得できないかという声があることは承知をしております。ただ、クリアランス制度というのは、個人の情報に対する調査を含むものでございまして、こうした制度に対する国民の理解の醸成の度合い、そして海外において実際にクリアランスの取得を要請される具体的な事例の検証などを踏まえた上で、今後の検討課題の一つになり得るものと認識しています。

和田(義)委員 御答弁ありがとうございました。

 是非とも、この次のステージとして、セキュリティークリアランスの検討、そして法制化も進めていただきたいと思います。そして、何よりも、この戦略的不可欠性のところでございますけれども、日本がやはり他国から必要とされる、他国の核心的利益になる、そうすることで日本の安全を担保する、そういったことの観点からも極めて重要でありますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、昨年六月に成立しました重要土地等調査法案でございますけれども、防衛関係施設や重要インフラ周辺おおむね千メートルの範囲や国境離島が対象となった経済安保法案でございます。私も、この法案の可決に際しましては、担当政務官として作業をしておりました。

 この法案でございますけれども、巧妙にこの法案を回避して土地が取得されている事例がございます。

 例えば、ある民間企業が国境離島を所有しているところですね、この企業の一事業部門が中国系企業に買収されました。その民間企業全体が買収されれば、この国境離島の所有権、これも中国系企業に移転するというようなことになり得るわけでございます。まだそうはなってはおりませんけれども、そういう懸念があるという一事例でございます。

 また、もう一つ、これは北海道の神居町というところですけれども、北海道の水資源保全条例を回避する形で九万平米の山林が買われております。これは水源地でございます。

 またさらには、宮崎県南部では、中国系企業による七百万平米、東京ドーム百五十個分という膨大な土地ですけれども、山林が買収されている。

 しかし、買収されているという事実が国によって把握されていない。林野庁による、外国資本による森林買収に関する調査の結果に反映されていないということがございます。

 重要土地等調査法案は大きな前進であり、敬意を表しますが、土地を買う者も抜け道をついてきている、これが現状でございまして、年々巧妙になってきております。今後、どのようにして国益に直結する土地を守っていくのかというところについて、政府の答弁を求めたいと思います。

川辺政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年六月に成立した重要土地調査法は、防衛関係施設等の安全保障上重要な施設の周辺や国境離島などについて、その土地等の利用状況を調査し、それらの機能を阻害する行為が認められた場合に規制を行うものです。

 まずは、本法に基づき、指定区域内の土地等の所有、利用状況の実態把握を着実に進めてまいりたいと考えております。

和田(義)委員 状況を把握していただいた上で、是非とも、果敢な追加措置、法案に新たないろいろな対応を加えるというような形で、重要土地等調査法案、これを進化させていただきたい、そして危険を未然に防いでいただきたいというふうに思う次第でございます。

 次の質問に移ります。

 今回の経済安保法案の法案趣旨のところに、「安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、」という一文がございます。

 この「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為」が具体的にどういうことを指しているのか。この点について、大臣にお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。

小林国務大臣 委員御指摘の「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為」といたしましては、これまで、例えば、企業の買収を通じて、我が国の企業が保有する機微技術あるいは重要なデータ、こうした流出が懸念される事案がございました。こうした事案に対しては、外為法に基づく取組を強化するなどいたしまして、既存の法制度の枠組みで、私が大臣に就任して以降も、様々な取組を行っているところでございます。

 今回の法案で新たに安全性、信頼性確保のための制度を整備する基幹インフラに関しましては、事案としては、先ほど答弁の中で触れさせていただいた二〇一五年のウクライナの事案、また、例えば、欧米を中心とする物流企業がサイバー攻撃の被害に遭って大手海運企業に甚大な被害が生じた事案、こうした事案が発生しております。

 国家の関与が疑われるものも含めて、基幹インフラの役務の提供に対するサイバー攻撃の脅威が増大してきているところでございまして、そういう背景の下で、今回、この法案の中で一項を立てて、一つパートを立てて、柱を立てて、対応させていただいているところであります。

和田(義)委員 ありがとうございました。

 サイバー攻撃は、守るのは極めて困難というふうなことでありますので、今後、アクティブディフェンスも含めてやはり考えていかなければいけないのかなということと、やはりサイバー人材の育成、日本は圧倒的に不足をしているというふうなことでありますので、この点も今後の重要な課題になってくるんだと思います。

 技術、データの流出に関して、チェック項目として、ちょっと何点か申し述べさせていただきたいと思います。

 どういったところで技術やデータが流出しやすいか。これまでの事例を踏まえたところなんですけれども、投資や買収、合併を通じた影響力行使、企業を買収することによって第三者が思いどおりにその企業を動かし、そして必要な情報を持っていってしまう、そういったことが事例として挙げられております。また、技術開発に携わる人材、その人をリクルートしたり引き抜きをしたりして技術を獲得する、こういった事例もございます。また、学校、大学、大学院等々での共同研究又は事業を通じた技術、データの取得。又は、大学等々の研究機関に経歴を偽装して入ってきて、そして情報を持っていく。又は、サイバー攻撃で情報を窃取する、そういったことも挙げられております。

 また、軍事転用されかねない製品等の流出についての注意点というようなことでありますけれども、同一製品について同時期に複数の引き合いが来る、しかし、実はその物の行き先というのは一緒であったというような事例があります。また、用途と製品のスペックが不釣合い等々のケースがあります。また、受注先と支払い元が不一致といったこともあります。

 こういったことの啓発、こういったことをしっかりと経済界の方にも政府としても是非ともしていただき、そして、日本の国民を豊かにするべきである技術そしてデータ、こういったものが海外の利益に置き換えられることのないよう、引き続きこの法案の成立に向けて御尽力いただきたいと思います。

 質問の機会、どうもありがとうございました。

上野委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

 自由で開かれた経済活動の促進、それと安全保障の観点からの規制、このバランスが経済安全保障の重要なテーマになっております。安全保障の観点からの新たな規制の必要性は理解をします。その上で、日本の原動力である自由経済が阻害をされて日本経済がかえって弱体化することのないよう、この規制は抑制的であるべきです。

 本法案では、四つの分野ごとに、これに関する規定が設けられておりますけれども、安全保障の観点から経済活動の自由を規制するに当たって、本法案の全体を貫く基本的な考え方について小林大臣にお伺いします。

小林国務大臣 この法案は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的として、これを達成するために所要の制度を創設するものでございます。

 この法案に限ったことではないと思いますが、経済安保の取組を進める上で、企業の経済活動とアカデミアの方々の研究活動というのは原則自由である、その大前提に立った上で、これらを大きく阻害することのないようにすることが肝要だと考えています。法案による制度創設の際にも、安全保障の確保と自由な経済活動との両立を図ることが重要であると考えております。

 そこで、まず、法案の中身なんですけれども、第二条に規定する基本方針というものがございまして、ここではそうした基本的な考え方を明記してまいります。具体的には、法案に基づく制度やその運用について、まず、事業者の予見可能性を確保していくこと、二つ目として、事業者に過度な負担を生じさせないこと、そして、国際ルールとの整合性を確保すること、こうした考え方や配慮事項を明らかにしていきたいと考えております。

 御指摘のあった、この法案によって講ずる規制措置についてでございますけれども、これは自由な経済活動の制約要因になり得るものでございますから、法案の第五条におきまして、「経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。」という旨規定をさせていただいております。

 この規定に関しましては、先ほど申し述べた基本方針におきましても、例えば、基幹インフラにおける審査の対象、あるいは特許出願の非公開の対象となり得る技術の範囲を真に必要な分野に限定するなど、事業者の自由な経済活動に対して十分に配慮する旨を分かりやすくお示ししてまいりたいと考えております。

國重委員 今大臣に御答弁いただきました。

 第五条の「安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において」というこの文言、当初の政府案にありませんでしたけれども、我が党の主張で盛り込ませていただきました。

 本法案の構造として、今、小林大臣がおっしゃった、まず、経済活動の自由との両立なども含めて、閣議決定で定める基本方針において、四分野の施策を実施するに当たっての基本的な考え方を示す、その上で、その基本方針に基づいて四分野ごとの基本指針を閣議決定でしっかりと定めて、その指針に基づいて政省令を定めることとしております。

 本法案は大きくこのような構造になっておりますけれども、それぞれの分野の施策で、事業者の予見可能性がきちんと確保されているのか、規制措置が合理的に必要と認められる限度になっているのか、法案の射程、適用範囲などについて、これは議事録に確実に残すという観点で、これから具体的に確認をさせていただきたいと思います。

 まず、基幹インフラの安全性、信頼性に関してお伺いをします。

 アメリカのバイデン大統領は、二十一日、ロシアがサイバー攻撃をしかける可能性があるとして、基幹インフラの民間企業に対して警戒態勢を引き上げるよう求める声明を出しました。近年、世界規模で基幹インフラ事業を対象とした様々なサイバー攻撃が多発し、その中には国家の関与が疑われる事案もあります。

 このような実情を踏まえ、国家国民の安全を守る観点から、基幹インフラ役務の安定的な提供を確保することが重要であること、そのために、各業法の規制に上乗せをする形で、基幹インフラ事業者による設備導入などについて新たに事前規制を課すことの必要性については理解をします。

 一方で、この規制が事業者に過度な負担を課すものとならないよう、十分な配慮も必要です。

 本法案では、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する基本指針において基本的な方向性に関する事項を定めることとしております。これは具体的にどのようなことを定めるのか、基本方針で定める事業者との連携に関する事項の内容と併せてお伺いします。

小林国務大臣 法案の第四十九条に規定する特定社会基盤役務基本指針というのは、関係省庁が、整合性を確保しつつ、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に取り組むために必要な事項を定めるものでございます。

 具体的には、法案の第四十九条第二項第一号の基本的な方向に関する事項といたしまして、制度の必要性、基本理念、特定妨害行為の具体的な内容などについて示す予定でございまして、その中で、例えば、国家及び国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスの取れた制度とする観点から、規制対象を真に必要なものに限定すること、また、規制措置が対象事業者にとって過大な負担とならないように、事業の実態などを十分踏まえた制度整備、運用となるよう努めること、こうした点を基本的な方向性として示すことを想定しております。

 また、委員御指摘のあった、第二項の第五号の話だと思いますけれども、事業者その他の関係者との連携に関する事項といたしましては、例えば、規制対象を定める政省令の策定に当たりましては、パブリックコメントを実施するなど広く意見を聞いていくこと、そして、事業所管省庁に相談窓口を設置をしてきめ細かい情報提供に努めること、こうした点につきまして、関係事業者と常日頃から密接なコミュニケーションや連携を図ることを定めていくことを想定しているところでございます。

國重委員 ありがとうございます。

 大臣も法文を引いて言っていただいていますので、私も具体的に条文を引きながらやっていきたいと思います。

 では、次に、どのような基幹インフラ事業者が規制の対象になるのか、特定社会基盤事業者の指定について確認をしていきたいと思います。

 本法案では、まず、四十九条二項二号で、特定社会基盤事業者の指定に関する基本的事項を基本指針で定める、その次に、この基本指針に基づいて、事業分野ごとに事業所管大臣が省令で指定の基準を定めることとしております。これは五十条一項。とすると、この基本指針には省令で基準を定める際の共通の基盤となる考え方などが示されると思いますけれども、具体的にどのようなことを定めるのか、お伺いします。

小林国務大臣 法案の第四十九条第二項第二号に定めるとおり、特定社会基盤役務の基本指針におきましては、対象とする事業者の指定の考え方を示すこととしております。

 現時点においてですけれども、例えば、事業規模あるいは代替可能性、こうした点を指定の考慮要素とすることですとか、また、具体的な指定基準の策定、すなわち、省令の制定に当たりましては事業者を含む関係者の意見を幅広く聴取すること、そして、実際の事業者の指定に当たりましては規制措置に係る事業者の負担に配慮することといった、事業者の指定に関する基本的な考え方や留意事項などを示すことを想定しているところでございます。

國重委員 基本指針には、事業規模とか代替可能性、こういったものを始め、るる定めるということでありましたけれども、では、このような基本指針を踏まえて、省令で定める指定基準には具体的にどのようなことを定めるのか。一般論とともに、これは、余りにも抽象的な議論だとちょっとイメージがつきにくいので、貨物自動車運送、電気通信を例に、具体的なイメージが持てるように説明をしていただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 省令で定める、事業者を指定するための基準につきましては、主務大臣が法施行後に、基本指針の内容を踏まえまして、広く意見募集を行った上で、個別事業分野の特性等に応じて具体的な指定基準を定めることを想定しているところでございます。

 したがいまして、現時点におきまして確たるお答えをすることは困難でございますけれども、仮にその指定の考え方として基本指針で事業規模や代替可能性などを定めました場合におきましては、例えば、御指摘ございました貨物自動車運送につきましては、自動車が実際に貨物を載せて走った距離を表す実車キロ、あるいは輸送した貨物の重量の合計を表す輸送トンや全国に営業所を設置しているということ、もう一方、電気通信につきましては、業務区域、これはサービスエリアでございますけれども、そういった点、あるいは利用契約数、代替困難性といった指標を定めることが考えられるというふうに認識をいたしてございます。

 以上でございます。

國重委員 このようなことを省令で指定基準として定めることになりますと、中小・小規模事業者というのはこの特定社会基盤事業者には指定されない、このように理解していいのかどうか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法案の制度設計について御議論いただきました有識者会議の提言におきましては、中小規模の事業者につきまして規制の対象とするべきかについて、慎重な検討が必要とされたことも踏まえまして、中小規模の事業者を本法案の規制対象とすることは基本的には想定しておらないところでございます。

 ただし、提供する役務に特殊性がございまして、それに支障が生じることによりまして国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい場合には、例外的に中小規模の事業者が対象となることがあり得るものと考えてございます。

 指定基準の詳細及び対象事業者につきましては、今後、法施行までに、各事業の実態を踏まえながら個別に検討させていただきたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

國重委員 それでは、事業者が、これはずっと現状維持ではなくて、成長していくと思います、事業者が成長すれば、後々、特定社会基盤事業者に指定される場合もある、また逆に、事業が縮小すればこの対象から外れることもある、こういった理解でいいのかどうか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました事業規模だけに着目いたしますれば、特定社会基盤事業を行う事業者の事業規模が拡大し、事業ごとに定めた基準に該当する場合には、第五十条の規定に基づきまして、対象事業者として指定されることになります。その一方で、事業規模が縮小し、基準に該当しなくなった場合には、第五十一条の規定に基づきまして、指定が解除されることとなります。

 ただし、対象事業者の指定は、提供される役務の代替可能性なども含めまして総合的に判断をさせていただくということにしておりますので、事業規模の拡大又は縮小に伴いまして指定の有無が機械的に決定されるわけではない、この点については御理解を賜れればと存じます。

 以上でございます。

國重委員 よく分かりました。

 では、次に、特定社会基盤事業者が有するインフラ設備のうち、この規制の対象となる特定重要設備は省令で定められることになっています。具体的にこれはどのようなものを想定しているのか、空港また貨物自動車運送を例に分かりやすく説明していただきたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、対象となる設備につきまして、その機能が停止又は低下した場合に基幹インフラの役務の安定的提供に大きな影響を及ぼし得るものであって、我が国の外部から行われる妨害行為の手段として使用され得るものに限定することとさせていただいているところでございます。

 具体的な特定重要設備の指定は、法施行後に主務大臣が所定の手続を経て省令で定めることといたしておりますので、現時点において確たるお答えは困難でございますけれども、例えば、航空事業におきましては飛行計画作成システム、貨物自動車運送事業におきましては集配管理システムなどがそれぞれ特定重要設備に該当し得るものと考えているところでございます。

 実際に主務省令を制定するに当たりましては、産業界とも丁寧に調整を行いまして、各事業の実態もよく踏まえながら規制対象設備の範囲を検討してまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 規制の対象となる基幹インフラ事業者は、重要設備の導入等に関する計画書を提出して事前審査を受けることになっております。この事前審査の結果、事業者に必要な措置を勧告するのは具体的にどのような場合なのか、四十九条二項三号で勧告及び命令に関する基本的な事項について基本指針を定めることにしておりますけれども、この基本指針には具体的にどのようなことを定めるのか、事業者の予見可能性を確保する必要はあるものの、アメリカのように懸念国や懸念企業を名指しすることまでここで想定しているのか、お伺いします。

小林国務大臣 法案の第五十二条におきましては、事前審査をした結果、届け出られた導入等計画書に係る特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが大きいと認めるときに勧告を行うことができることとしております。

 この勧告などの基準に関しましては、有識者会議から、妨害の態様や事業の形態、設備の種類等は多様であることから、リスクのある設備等の類型をあらかじめ網羅的かつ詳細に明らかにしておくことには一定の限界があるとする一方で、事業者の予見可能性の観点からは、国が審査を行う際の考え方はできる限り明確に定めておくべきとの提言をいただいております。

 この有識者会議の会合の中では、我が国の外部にある主体の意図や我が国の外部にある主体と特定重要設備の供給者等との関係性などを考慮することが考えられるとの御意見もございまして、その旨を提言に記載いただいているところでございます。

 これらの点を踏まえまして、閣議で決定する基幹インフラに関する基本指針などにおきましては、勧告そして命令の審査に当たっての考え方を可能な限り明確に定めていくことを予定しているところでございます。

 今、國重委員から御指摘のあった、アメリカのように、政府が特定の国や企業を名指しする、いわゆるブラックリストの策定についてでございますけれども、これは、重要設備を供給し得るベンダーなどの数が膨大に上る中で、リスクのあるベンダーなどをあらかじめ網羅的かつ詳細に明らかにしておくことは困難でありますし、また、仮にそうしたブラックリストというものを作れたとして、対外的に示すことによって、かえって抜け穴として利用されるおそれもございますので、そういう制度は設けないことを考えております。

國重委員 それでは、本法の施行前に導入した設備についてまで勧告によって設備の入替えをしなければいけないということになりますと、事業者は、不測のコスト、損害を被ることになります。法施行前に導入済みの設備については本法案の規定を遡及適用しない、この理解でいいかどうか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、先生御指摘ございましたように、本制度の施行時点で既に済んでいる設備の導入につきましては、本制度を遡及適用し、届出を求める仕組みとはしていないところでございます。

 以上でございます。

國重委員 遡及適用しないということでした。ただ、遡及適用しないとしても、基幹インフラ事業者が既に不正機能が埋め込まれた設備を気づかないまま導入してしまっている、こういったケースも否定はし切れないと思います。

 このような場合、サイバー攻撃を受けるリスクは高くなりますけれども、これにはどのように対応するのか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 重ねての答弁になりますけれども、この制度の施行前に既に済んでおります特定重要設備の導入につきましては、事業者の負担に鑑みまして、本法案の規定の遡及適用は行わないということにしているわけでございます。

 その一方で、それらの設備につきましても、特定妨害行為を防止することは重要でございます。このため、各業法でありますとか、あるいは本法案第五十七条の規定に基づきまして、特定社会基盤事業者に対しまして特定妨害行為の防止に資する情報を提供させていただきますなど、事業者が必要なサイバー攻撃等への対策を講ずることができますようきめ細かく後押ししてまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

國重委員 次に、本法施行前ではなくて、本法施行後の話として、事前審査の上、設備を導入したケースであったとしても、その後、設備の入替えを勧告されることになりますと、基幹インフラ事業者のコスト負担というのは、時に非常に大きなものとなりかねません。

 導入後に設備の入替えまで勧告されることはあり得るのか、あり得るのであれば費用の補償も必要なんじゃないかというふうにも思われますけれども、これについてはどのように対応するのか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案に基づく審査を経て導入されました重要設備につきましては、その後の国際情勢の変化などによりまして、特定妨害行為が行われるリスクが高まったときには、法案第五十五条の規定に基づきまして、事後的に勧告が行われる場合もございます。

 しかしながら、その内容は、事業者の負担に鑑みまして、同条において、設備自体の入替えにはつながらない、検査又は点検の実施などを例示しているところでございまして、この点も踏まえ、勧告の内容を検討することとなります。

 なお、本法案における特定社会基盤事業者は、本来、自ら特定妨害行為を防止し、役務の安定的な提供を行う責任を負っておりますことから、本法案に基づく勧告等に関し、補償に係る規定は設けていないということでございます。

 以上でございます。

國重委員 できるだけ抑制的な措置を求めていく、また、元々、本来、自ら責務を負っているんだ、業法によっても負っている業者に対して行うものなんだというような観点で、補償等は特に行わないというようなことで理解をいたしました。

 では、次に、サプライチェーンの強靱化の支援に関してお伺いします。

 国民の生存や国民生活、経済に甚大な影響のある重要な物資である特定重要物資、六条二項一号、三号で、この物資の安定的な供給の確保に関する基本指針において、基本的な方向に関する事項、また特定重要物資の指定に関する事項を定めることとしております。具体的にどのようなことを定めるのか、お伺いします。

小林国務大臣 法案の第六条に規定する基本指針におきましては、政府全体として特定重要物資の安定供給確保のための施策が適切かつ統一的なものとなるように、安定供給確保に関する考え方や指定の基準などにつきまして定めることとしております。

 具体的には、同条の第二項第一号で定める基本的な方向に関する事項といたしましては、我が国のサプライチェーンの現状、その安定供給確保に向けた取組の必要性、事業者の取組を支援する施策の考え方など、基本的な方向性を示すことを想定しております。

 また、第三号で定める特定重要物資の指定に関する事項につきましては、指定の要件として、例えば外部に過度に依存という状態の外部とは一か国だけなのか、あるいは複数国なのか、また過度というのはどの程度なのかといった点につきまして、予見可能性に配慮しつつ示すことを想定しております。

 このように、基本指針におきましては、有識者の意見も聞いた上で、特定重要物資の指定についての具体的な考え方やより詳細な要件などについて定めることとなると考えております。

國重委員 では、七条の関連として、その基本指針に基づいて、具体的にどのような物資を特定重要物資として政令で指定することを想定しているのか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 対象となります物資の指定につきましては、有識者会議の提言におきまして、安定供給確保に向けた対応を図っていく物資を選定するに当たっては、国民の生存に不可欠な物資、あるいは広く国民生活、経済活動が依拠している物資を対象にすべき、その際、特定の国への依存の程度のほか、将来的に他国に依存する可能性を念頭に置く必要があるとされているところでございます。

 特定重要物資を指定するに当たっての具体的な考え方、要件などは、安定供給確保基本指針において、有識者の方々の意見も聞いた上で定めることとしてございまして、その上で、個別物資ごとに特定重要物資としての指定の必要性を判断していくこととなります。

 したがいまして、現時点において個別の物資について確たるお答えをするということは困難でございますけれども、いわゆる骨太方針二〇二一、この中では、サプライチェーン強靱化における先行的な重点項目として掲げられている物資がございます。例として申し上げますと、半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品が特定物資として該当し得るものと考えているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 本法案では、特定重要物資の安定供給確保に向けまして、金融支援や助成金等による支援などの措置を予定しています。この必要性については理解をします。ただし、過剰に網を広げて行き過ぎた国内調達、国内誘致になれば、国際分業の利益を損なうほか、自然災害等の国内ショックの影響を大きくしてしまって、供給網はむしろ脆弱化する、こういった懸念が有識者から指摘をされております。このような指摘に対する見解、対応についてお伺いします。

小林国務大臣 お答えいたします。

 グローバル化が進展をしてテクノロジーも発展していく、それに伴う産業構造を背景としましてサプライチェーンの多様化が進んでいます。委員御指摘のとおり、我が国のみで安定供給の確保を図るのではなくて、当然、国際的な連携も視野に入れる必要があると考えています。

 このため、この法案では、安定供給確保を図ることが特に必要と認められる物資に関しまして、国内の生産基盤の整備だけではなくて、現在、物資を依存している国以外からの調達先を確保するといった供給源の多様化ですとか、こうした様々な民間事業者による自発的な取組を必要に応じて支援することを想定しているところでございます。

 重要なことは、物資の特性に応じて取組を進めることでございまして、その形で安定供給を確保していくことだと考えています。過度な政策介入による弊害というものにもしっかりと留意をしながら、国内生産基盤の強化だけではなくて、複数の国からの調達、代替物資の研究開発など、民間事業者が合理的に選択する取組をきめ細かく支援していきたいと考えております。

國重委員 是非よろしくお願いします。

 サプライチェーンの調査の対象範囲について伺います。

 生産している部品が重要な物資に使用されていることを認識していないような孫請企業もサプライチェーンの調査の対象になるのか、また、現時点では重要な物資の原材料を製造していないけれども、飛躍的な技術の進展によって新たに登場するであろう重要物資に当たりをつけて、その原材料として使用される可能性を見越して原材料を製造するような中小企業も調査対象になるのか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 サプライチェーン調査につきましては、本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者も対象としてございます。

 本法の施行に必要な限度において、調査の必要が認められれば、例えば、生産している部品が特定重要物資に使用されているいわゆる孫請企業でございますとか、あるいは、将来的に特定重要物資又はその原材料になり得る物資を生産する中小企業であっても、調査対象にはなり得るものと考えているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 調査対象として、重要な物資の孫請企業、また、将来を見越して重要物資となり得る物資の原材料を製造している事業者も対象に入り得るということでした。

 そして、この調査というのは、大企業だけではなくて中小企業やそして個人も対象で、また、重要物資やその原材料の生産だけではなく、輸入、販売を行う者にも調査をすることができるようになっております。本法案の調査対象は非常に広範にわたります。

 このような広い範囲で調査をする制度で罰則を設けている法律はほかにあるのかどうか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 幅広い関係者に情報提供等の必要な協力を求めることができる、そういう規定が置かれている事例は多くの法律で見られるところでございます。こうした規定には罰則が置かれていないものが多いと承知をしてございます。

 なお、広い範囲で調査をする制度で罰則を設けている法律といたしましては、例えば統計法におきまして、基幹統計作成のために必要な事項につきまして個人又は法人その他の団体を対象に調査権限を規定している事例など、限られているものと承知をしているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 調査対象の範囲について、先ほど述べましたとおり、中小企業や個人を含めて広範な対象者を想定している本法案の調査においては、事業者の応答義務に罰則を設けないことが法制上妥当ではないかというふうに考えますが、政府の考えをお伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 サプライチェーン調査につきましては、本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者も対象としているところでございます。このため、調査を拒否した場合等の罰則は置かず、事業者からの回答を担保できるように努力義務規定を措置することとさせていただきました。これは、国内法体系における同様の他の法令の規定ぶりを踏まえたものでございます。

 なお、サプライチェーン調査の回答忌避に対しまして罰則を科すということにつきましては、経済安全保障法制に関する有識者会議の議論におきましても、比例原則、これは規制対象の違反行為と罰則には均衡が保たれていなければならないという一般法理でございますけれども、この比例原則の観点から、調査忌避に罰則を科すことは重過ぎるのではないかといった趣旨の指摘を受けてございまして、総合的に勘案すれば、罰則の対象としないということが妥当であろう、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 では、次の質問に入ります。

 不測のときの供給途絶に対応するために、平時から、サプライチェーンの強靱化、これをしっかりと進めていく、このことが重要であります。

 他方で、いざ不測の事態が発生したときの緊急対応も重要です。不測時の重要物資の供給についてどのような手当てを図っているのか、お伺いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、需給逼迫時にも特定重要物資の安定供給の確保が図られますように、事業者が供給確保計画につきまして主務大臣の認定を受けるに当たりましては、例えば、必要に応じた生産の拡大など、需要逼迫時の取組について記載することを要件としております。

 そして、安定供給確保支援法人などからの助成に際しましても、認定を受けた供給確保計画に記載された需給逼迫時の取組を行うことを要件とするということにさせていただいているところでございます。

 以上でございます。

國重委員 次に、特許非公開に関してお伺いしていきます。

 特許技術の公開は、これはイノベーションを促進します。武器に用いられる技術には、素材や電子機器、通信技術、センサーなど、民生分野でも広く用いられるデュアルユース技術が多く含まれています。そうした民生技術を非公開にしてしまうと、経済活動やイノベーションを阻害してしまいます。

 安全保障と自由な経済活動、イノベーションとのバランスをどう図っていくのか、また、対象となる発明として具体的にどのようなものを想定しているのか、お伺いします。

小林国務大臣 民生分野で幅広く活用されて発展していくことが期待される技術を本制度の対象とすれば、我が国の経済活動やイノベーションを抑制して、保全すべき先端技術の誕生や発展を逆に阻害することになりかねないと考えます。

 そこで、この法律案では、保全指定の対象となる発明を公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの程度及び発明を非公開とした場合に産業の発達に及ぼす影響などの事情の総合考慮によって行うことをこの法案の第七十条第一項の条文上明らかにするなど、我が国の経済活動やイノベーションを阻害することのないよう配慮した制度としているところであります。

 この政令の具体的な規定内容についてでございますが、法案成立後に有識者の意見も聞いて基本指針を定めた上で決めていくこととなりますが、核兵器の開発につながる技術及び武器のみに用いられるシングルユース技術のうち我が国の安全保障上極めて機微な発明を基本とし、デュアルユース技術を対象とする場合には、イノベーションの促進の観点から、支障の少ないケースに限定すべきという有識者会議の提言を踏まえて定めていきたいと考えております。

國重委員 私、今日、非常に多くの質問を用意しておりまして、小林大臣、また大野副大臣のところも予定しております。ちょっと順番を変えまして、大野副大臣にもきちんと質問できるように変えたいと思います。特許非公開、また次回以降、どこかでさせていただきたいと思います。

 官民技術交流に関してお伺いします。

 本法案で開発支援を行おうとしている特定重要技術とは具体的にどのようなものを想定しているのか、大野副大臣にお伺いします。

大野副大臣 ありがとうございます。

 本法律案の特定重要技術は、第六十一条に定義規定を置いておりますが、これはすなわち、一言で言えば、中長期的に我が国が国際社会において確固たる地位を確保し続ける上で不可欠な要素となる先端的な重要技術と言い得るものであると認識をしております。

 この中で、一概に、あらかじめ対象となる技術を網羅的に特定するというのは非常に困難なわけであります。それはなぜかというと、デジタル化等の技術の開発や加速、あるいは突如として新しい技術というものが誕生する可能性があるわけでございますので、困難ということになるんですが。

 その上であえて申し上げますと、先ほど来から話題に出ている有識者会議の中で、宇宙、海洋、量子、AI、バイオ等の分野が示されておりまして、その中で、議論の過程の中では、衛星コンステレーション技術であるとか、あるいは海洋分野でのセンシング技術などが例示をされております。また、このほかに、例えば、サイバーセキュリティー上の脆弱性の検知技術やAI処理等の可能なコンピューティング技術なども含まれ得るというふうに考えております。

 このため、特定重要技術の研究開発基本指針において一定の具体化をしっかり図ってまいるとともに、皆さんから一般公募するという、公募による競争も活用しつつ、真に可能性のある技術を見定めてまいりたいと思っております。

國重委員 残り一分になりましたので、時間をオーバーすることはちょっともうやめたいというふうに思います。私、今後、ちょっと質問のチャンスが来るかどうか分かりませんけれども、もしあれば、また今後、この議論の続きをしっかりとさせていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

上野委員長 次に、本庄知史君。

本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。

 ようやく委員会審議がスタートいたしました。これから何度か質疑をさせていただきたいと思っております。是非どうぞよろしくお願いをいたします。同じ千葉の先輩として、大変敬意を表しておりますので、よろしくどうぞお願いします。

 最初に、まず、経済安全保障に関しましての我が党の基本的なスタンスについて御説明をしたいと思います。

 我が党は、さきの衆議院選挙の公約において、経済安全保障を確立するため、我が国の先端技術の優位性を確保し、経済活動などにおけるルール形成戦略を強化します、こういった記載もさせていただいております。したがって、経済安全保障の重要性、必要性については十分に認識をしている、そういう前提で議論をさせていただきたいと思います。

 今回の法案が出てくるという段になりまして、党にプロジェクトチームを設けました。そこでは、様々、有識者、経済団体などからヒアリング、意見交換を重ねてまいりました。自由で開かれた経済活動、民間活力と経済成長、そして経済安全保障の実効性の確保、こういった観点から今回の政府の提出法案の内容、そして経済界などから寄せられている懸念について精査をさせていただき、今回の法案の課題の整理をさせていただいております。

 今日は、委員会の初日ということですので、基本的な事項についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 本法案の中身に入る前に、大変残念なんですけれども、政府の基本姿勢ということでお尋ねをしなければならないというふうに思っております。

 藤井前経済安保法制準備室長の非違行為、そして政府の調査結果について、端的に一つお伺いをしておきたいと思います。

 この調査結果では、情報漏えいについて確認はされなかった、こういう記載になっております。岸田総理も、先週の本会議で、この法案に関する情報の流出を含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されていない、こういう言い方です。

 私、確認していないということと、なかったということは、別なんじゃないかというふうに思うんですが、この点について確認をいたします。情報漏えいはなかった、こういう認識でよろしいでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、今日、最初ですから申し上げますと、藤井氏の一連の非違行為というのは、行政の公正性、中立性について国民の皆様の疑念を生じさせるなど、極めて不適切であったと考えております。国民の皆様の関心が今高いこの法案の審議を控える時期にこうした事案が生じたことについては、この法案の担当大臣として大変重く受け止めております。

 既に、私から法制準備室の今の室長に対しまして、引き続き、室員の綱紀粛正、そして適正な業務の遂行を徹底すべく指導するよう改めて伝えたところでございまして、その上で、現在御審議いただいているこの法案は、我が国にとって喫緊の課題である経済安保の確保に不可欠なものであると考えておりますので、担当大臣として全力で取り組んでいきたいと考えております。

 その上で、まず、法案への影響という観点から申し上げますと、予算委員会などにおきましてもう何度も出ている話でございますが、十六回に及ぶ有識者会議などを経たものであって、与野党、経済団体あるいは労働組合、様々な方々との意見交換を重ねて策定したものである。繰り返しになるんですけれども、特定個人の一存で法案の内容がゆがめられる余地は構造上ない、この点は累次申し上げているとおりでございます。

 その中で、今回、藤井氏に対して行った調査、これは非違行為に対する人事上の調査でございますが、その上で、今回、法案に関する情報の流出を含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されなかったと承知をしております。

 更に申し上げますと、この法案の責任者は担当大臣である私です。

 今御審議いただいておりますこの法案、本文だけで百条近くに上りますけれども、附則を含めて逐条で、これは一条一条、私、あと、先ほどまでいた大野副大臣、そして今の室長の泉さん始め今日陪席している審議官、またその後ろに座っている参事官、そして若手の職員、文字どおり膝詰めで一つ一つ確かめました。二月の下旬に閣議決定に至るまで、本当にその瞬間に至るまで、連日、ああでもない、こうでもない、ここを変えた方がいい、元に戻した方がいい、連日、法案が変わっていったんですね。

 それで、最後は、私が担当大臣として、全て見た上で、責任を持って今回この法案でいこうというふうに決定をさせていただいたので、そういう法案だということで御理解いただければと思います。

本庄委員 私がお伺いしたのは、確認をできなかったではなくて、なかった、そういう断定でよろしいのか、私はその一点しか聞いておりませんが、いかがでしょうか。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、調査報告書等においては、確認できなかったという言葉を使わせていただいております。これは、私どもの判断といたしまして、調査を全力で最大限行った結果として、現時点では、ないという判断をしているというふうに御理解をいただければと思います。

本庄委員 今回の事案、単なる公務員の非違行為とは違って、こういった安全保障の問題に関わる事案だということ。そして、今回の法案でも議論になっておりますが、政府と事業者との様々な規制や支援の関係というものが生じていく、そういう法案の作成の過程で起きた事案だということ。通常の事案よりもはるかに重要度が高い、こういう御認識、大臣はお持ちだと思いますが、そういう観点で、我々、予算委員会そして内閣委員会でも藤井さんの参考人招致を求めておりますが、引き続きこの件を要求してまいりたいというふうに考えておりますので、委員長、よろしくお願いをいたします。

 それから、二点目、お伺いしたいと思います。基本姿勢のところで。

 今、大臣、様々な関係者から意見を聞いて法案を作成したというお話がございました。有識者の会議、十六回開催されております。非常に精力的にやられたと思うんですが、ここで、例えば、どなたかヒアリングに呼ばれたりされたんでしょうか。

小林国務大臣 この十六回に及ぶ有識者会議におきましては、基本的には、外部から更なる方を呼ぶというのではなくて、十八名の方にそもそも参加していただいたんですけれども、そのメンバーを選ぶ際に、経済界やアカデミアを含めたかなり幅広い立場の方から、お声をかけさせていただいて集まっていただいたということでございます。

本庄委員 関連する審議会というのも各省にあったと思うんですけれども、しかし、そういうのを動かしてもいないと思うんですね。例えば特許に関しての産構審。この十六回の中に、弁理士さん、日本弁理士会なんかも、話を一度も聞かれていない、こういうふうにおっしゃっています。

 本当にどこまで話を聞かれたのか。もちろん内々にはいろいろなところからお話を聞かれていたんだと思いますが、やはりこういう法案の作成プロセスにおいては、ある程度オフィシャルに、そして見える形でいろいろなところからの意見聴取をしていただいて、そしてそれをオープンにしていただくということも必要だったのではないかなというふうに思いますが、その点、いかがでしょうか。

小林国務大臣 委員御指摘の点も分かります。ただ、その意見を聞くときに、じゃ、どこまで本当に聞けばいいのかという議論もあろうかと思っています。

 当然、今御指摘いただいたように、有識者会議だけではなくて、この法制準備室、様々スタッフがおりますけれども、この法案を策定する過程におきまして、経済団体、そして専門家の方との間で、一般的な情報交換の一環として、平素より様々な形で意思疎通ややり取りを行ってきているところでございますので、そうした様々ないただいた御意見をこちらの方でそしゃくをしながら法案の策定に臨んだということでございます。

本庄委員 準備室の方が訪問してヒアリングをされた、とある団体の方からは、突然来られて、そして中身もよく分からないまま、お話をして帰られた、こういう話をしている人もいらっしゃいました。

 是非、これから具体的な中身を、基本指針あるいは政省令を定めていく過程にあっては、オープンな形でしっかりと議論、意見を聞いていく、そういうことをやっていただきたいというふうに思いますので、この場をかりてお願いしておきたいというふうに思います。

 それでは、法案の中身について。

 まず、総論なんですけれども、今回の法案、非常に分かりづらいと思います。そう思っている方は多いんじゃないかと思うんですね。もちろん、難しいということは別にして、なぜ分かりづらいか。

 一つは、法形式の問題。これは、基本法的な部分と実施法的な部分がない交ぜになっている。それぞれの、例えば特許なんかがそうですね、特許法というのがあるにもかかわらず、今回はこの推進法の中に組み込まれる形で制度が変わる、こういった点が第一。

 そして第二は、今日、國重委員が大変いい議論をされているなと思って聞いておりましたけれども、具体的な、しかも重要なことが法律に書かれていない、基本方針、基本指針、政省令に落とし込まれている。したがって、骨組みは見えているんだけれども中身がよく見えない、この点があろうかと思います。

 私、一点目について答弁は求めませんが、この二点目の、重要な問題について法案ではなくて基本方針、基本指針、政省令という、要は政府が決めるというところに落とし込まれているところは、問題点はるる指摘もあったと思いますが、大臣の御見解をお願いします。

小林国務大臣 お答えいたします。

 あらゆる事項を全て法律に規定することは、やはり困難であると考えます。行政の複雑性と行政に求められる機動性に対応するためには、必ずしも適切とは言い難いとも考えられます。このため、場合によって、法律が明示した一定の事項については下位法令等に委任することが必要と考えられると捉えています。

 この法案においてですけれども、法案全体の基本的な考え方を定める基本方針、そして制度ごとに策定する基本指針については、委員御案内のとおり閣議決定することとしておりまして、また、様々な、各柱の措置の対象となる物資ですとかあるいは事業、そして技術分野などをこうした下位法令に委任しているところでございます。

 それぞれの委任事項につきましては、例えば、基本方針や基本指針につきましては閣議決定をする事項を法律で規定しております。物資につきましては要件を法律上明確に示す、そして、事業については、法律上の要件の下で、法律上に限定的に列挙する十四事業の中から定めることとする、そして、技術分野については、法律上の要件の下、国際特許分類などをもって定めることとするというような形で、法律上、可能な限り明確化するよう努めているところでございます。

本庄委員 その法律に書かれていることがどこまで明確かということだと思います。もちろん全てを書くことはできないということはよく分かりますが、今書かれているものが、果たして、じゃ、十分なのか、法律として十分なのかという観点もあると思いますので、その点はちょっと後でまた取り上げて質問させていただきたいと思います。

 分かりづらい点、第三。これは、やはり定義の話なんですが、これまでも議論が出ておりますけれども、経済安全保障の定義、これが法案の中には明記をされていないということです。

 経済界からも、例えば同友会は、経済安全保障の定義とともに、規制及び支援の対象範囲を明確にしてもらいたい、こういった要望、意見も出ておりましたけれども、小林大臣が事務局長を務めておられた自民党の提言、あそこの中には、我が国の生存、独立及び繁栄を経済面から確保すること、こういう定義づけがなされていて、ある意味分かりやすいと思います。

 今回、こういった定義を採用されなかったのはどういった理由でしょうか。

小林国務大臣 経済安全保障は多岐にわたる新しい課題であって、我が国を含めて、その定義という意味では、主要国において確立したものがあるわけではありません。この法案においても特段定義づけというのは行っておりませんが、あえて分かりやすく申し上げれば、国家そして国民の安全を経済面から確保することと言えるのではないかと思います、それを定義と言うかどうかは別として。

 アメリカにおいても、今のバイデン政権でも、たしか昨年だったと思いますが、ナショナル・セキュリティー・ストラテジー・ガイダンスの暫定版というものが出ていて、エコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーと書いているんですね。トランプ政権のときの国家安保戦略にもエコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーと書いてあって、これを定義と言うかどうかは別として、経済安全保障は国家安全保障なのである、そういう基本的な考え方というか理念が示されています。同じようなものだと捉えていますけれども。

 その上で、この法案におきましては、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とし、委員御案内の四項目について制度整備を行うとしておりまして、経済安保の定義を、この法案として定義を要するものではないと考えております。

 もう一点申し上げれば、経済安全保障というのは、冒頭申し上げたとおり、多岐にわたる概念だと捉えています。この法案は、非常に重要な法案として、喫緊の課題のうち分野横断的で法整備が必要なものとして今回四項目取り上げさせていただいていますけれども、当然これが全てを網羅しているわけではないということは付言させていただきたいと思います。

本庄委員 今大臣がおっしゃいました、最初は、定義かどうか分かりませんがと前置きをした上でお話をいただきましたけれども、例えば、岸田総理は本会議でこういうことをおっしゃっています。経済構造の自律性の確保、我が国の優位性、不可欠性の獲得、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化を目標として、そのための経済施策を総合的、効果的に推進していくこと。

 これが定義なのかどうかは分かりません。ただ、この法案を議論するに当たって、経済安全保障という言葉もなければ、安全保障の定義も出てこないということでは、私は議論として不十分だというふうに考えております。

 答弁でもちろんお答えいただくということを期待をしておりますけれども、文書の形でしっかりと、この委員会に、政府が今考えている経済安全保障の定義について、考え方を示していただきたいというふうに思いますので、委員長、よろしくお願いいたします。

上野委員長 理事会で協議いたします。

本庄委員 次に、もう一点、重要だと私ども考えています経済活動と自由とのバランスに関してです。特に、第五条関係ですね。

 先ほど國重委員からもありました、公明党さんの御主張でこういった留意事項が入ったということなんですが、本来であれば、基本原則、基本理念としてしっかりとたがをはめるべき内容じゃないかな、留意なんというものではなくてですね。そう思いながらお伺いをしているんですが、しかし、それでもなお気になる部分があります。

 この法案には、規制措置は、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度、こういうふうな記述になっておりますが、そもそも合理的でない政策なんというのはないと思うんですね。何が言いたいか。合理的な限度というのが、果たして、たがになっているのかということです。

 例えば外為法を見ますと、必要最小限の管理、調整、必要最小限、こういうたがのはめ方です。あるいは先般成立した重要土地利用規制法、これも、必要最小限度の措置ということで、合理的というような表現は使っておりません。

 武器の使用なんかで合理的という言葉が出てくる法律は確かにありますけれども、私は、この経済規制あるいは支援の今回の法案については、必要最小限という表記が適切ではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

小林国務大臣 我が国の法体系において、様々、あまた法案があります。それぞれの法律に趣旨、目的がありますので、何か決まった言い方をしなければいけないというものではないと思っております。

 先ほど、國重委員の質問にも答えさせていただきましたが、経済安保の取組を進める上でやはり重要なのは、企業の経済活動やアカデミアの研究活動が原則自由である大前提に立つこと、そしてこれらを大きく阻害することのないようにすることが重要だというふうに思っています。この法案による制度創設の際にも、この安全保障の確保と自由な経済活動の両立を図るということが重要だと思っています。

 その上で、委員が今言及されたこの法案によって講ずる規制措置は、自由な経済活動の制約要因となり得るものですから、第五条におきまして、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならないということを規定しております。

 この自由な経済活動との両立を図る観点から、規制を必要最小限度のものとするように努めることは当然であると考えておりますが、国際情勢の変化などに伴う安全保障上のリスクというのは当然変動しますので、予測し難い側面もございますことから、あらかじめ一律に必要最小限度とは規定せずに、あえて、合理的に必要と認められる限度と規定したところでございます。

本庄委員 質問の冒頭でも少し申し上げたとおり、この自由な経済活動と、そして政府による規制あるいは関与ということのバランスが重要だと申し上げました。そのバランスがきちっと維持されているときはもちろん問題はないわけですが、往々にして過度な関与になりがちだというのがこれまでの我々の経験則じゃないかと思います。そのための歯止めがどのぐらいかかっているかという観点から、今、その条文の文言についてあえて細かい話をさせていただいているんですが。

 そうしますと、合理的な措置かどうかというのを、例えば、制度上、事後的に検証したりあるいは評価をするという仕組みはどこかにありますか、この法案。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 この法案は、法律上、附則に見直し条項というのが書いてございます。これは三年をめどにという条文が書いてございますが、もちろん、その三年をめどに云々ということではなくて、随時、不断に見直しを検討していくということでございまして、その過程の中では、それぞれの、この法律に基づいて実施した措置がどういう効果があるのか、そういったことは政府としては十分に検討していく、こういうことでございます。

本庄委員 私の趣旨は、もうちょっとその実態面、運用面での検証という意味だったんですが。附則の見直しの規定というのももちろん大事なことだと思いますけれども、この合理的な範囲の中できちっと政策が行われるのかどうか、ここが非常に重要なところだというふうなことを一言申し上げておきたいと思います。

 次に、基本方針についてお伺いしたいと思います。

 この法案第二条、経済安全保障は、四分野、基本的な事項を定める、こういうことです。岸田総理は、先週、本会議で、政府が閣議決定する基本方針においては、この法案における規制措置の実施についての基本的な考え方を明示的に定めるという御答弁をされています。

 私は、本来は、この基本方針ぐらいまでは、その柱ぐらいまでは法律にやはり書き込むべきだったんじゃないのかなと思いながら、しかし、政府がどういうことを書こうとしているのかということが、法律には要素は書かれておりますが、イメージがよく分からないというふうに思ってまいりましたので、大臣から、どういったことを考えていらっしゃるのか、お聞かせください。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 その前に、前の質問で少し付言させていただきますと、やはり、しっかりと関係者と丁寧にコミュニケーションを取りながら、一つ一つその仕組みをつくっていくということ、そういうたてつけに法案がなっているということは委員に御理解いただければと思います。

 その上で、二条の基本方針の骨格についてでございますけれども、この第二条におきまして、安全保障を確保するための経済施策について、国際情勢、社会経済構造などを踏まえて、統一的に、また整合性を確保しつつ実施するためにこの基本的な方針を定めることとしているというたてつけです。

 ここでは、まず、第一号において、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な事項を定めることになります。具体的に申し上げると、政策の必要性と考え方、規制が経済活動の自由を不当に阻害することがないようにすること、また、国際法の遵守、事業者等の自主性の尊重、また企業の責任ある行動の促進などについて定めることを想定しているところであります。

 次いで、二条の第二号についてでございますけれども、本法案に基づく経済施策の一体的な実施に関する基本的な事項を定めることになります。具体的には、各施策の対象の指定に当たって施策相互の連携を考慮すべきこと、さらに、各施策において基本指針、府省令などを定める際には、有識者の意見を十分に聴取すべきことなどを規定することが想定されるところであります。

 さらに、第三号についてでございますけれども、これは、安全保障の確保に関して、総合的かつ効果的に推進すべきその他、その他というのは四つの施策以外のことですけれども、この経済施策に関する基本的な事項を定めることになります。これについても具体的に申し上げますと、国民の生活を支える重要な産業が抱える脆弱性、そして強みの点検、見直しを進めるべきこと、またさらに、安全保障の確保のためには、本法案に基づく措置が効果的に施行されるよう、他の施策も統一的、整合的に講じるべきことなどを定めることが想定されます。

 最後に、二条の第四号についてでございますけれども、その他、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関し必要な事項を定めることになりますが、具体的には、必要に応じ、基本方針の見直しに関する事項、また関係省庁との連絡調整に関する事項、さらに、指針や府省令など、政策内容について周知、広報を図るべきことなどについて規定することを想定しているところでございます。

 なお、具体的な内容につきましては、法施行後に、国際情勢、社会環境、また関係行政機関との調整などを踏まえて策定することになると考えております。

本庄委員 大変御丁寧な御説明、ありがとうございます。

 今お聞きしていても、今ぐらいのことまでは法律に書けなかったのかな、もうちょっとダイエットさせてスリムにはしなきゃいけないかもしれないけれども、今御説明になったぐらいのことは法律に書いた方がよかったんじゃないかと思いますが、基本方針の骨格ですね、大臣、いかが思いますか。

小林国務大臣 最後に申し上げましたけれども、今後の国際情勢や社会環境などを含めて、そういうことを踏まえた上で書いていかなければ、作っていかなければならないものですので、そこにはおのずと限界があるということは御理解いただきたいと思います。

 済みません、先ほどのちょっと訂正なんですけれども、本庄委員への、基本方針に関する御質問への答弁の中で、法案の条項、二条の二号、三号、四号と申し上げましたが、正確には二条第二項の二号、三号、四号でございましたので、訂正をいたしたいと思います。

本庄委員 ありがとうございます。

 それでは、時間の許す限り、ちょっと各論の方に入っていきたいと思いますが、各論の中の総論というような、基本的なことを幾つかお伺いしたいと思います。

 まず、サプライチェーンの強靱化と言われているところですけれども、基本認識、改めてお伺いをしておきたいと思います。もちろん、国内生産あるいは国産ということは望ましいかもしれないし、やれるのならやった方がいいのかもしれません。

 でも、一方で、それはそれでリスクがあって、例えば災害に見舞われた場合、あるいは特定の企業がシェアをしているときに、その企業が海外に買収をされてしまったり、あるいは倒産をしてしまったり、いろいろなリスクがあるので、やはり分散していく、あるいは多角化していくということが、リスクの回避という観点から見れば重要なんだろうというふうに思います。

 一方で、根本問題として、この日本という国がどうやって生きているかといえば、これは自由貿易体制、そして国際分業の中で経済的な価値を高めて利益を得ている、そして国益を増大させているという国ですから、決して、保護主義あるいは国内、国産、そういう路線でのサプライチェーンの強靱化というふうにならないということを、大臣の基本的な考えとして確認をさせていただきたいと思います。

小林国務大臣 サプライチェーンのグローバル化の中で、各民間事業者が経済合理性を追求した結果、個別事業者にとっては経済合理性があったとしても、我が国全体としては供給途絶リスクを内包するケースが実際には発生してしまったということでございます。実際に、重要な物資の供給不足や供給の途絶に陥った事例がございました。

 そうしたこともしっかりと念頭に置いて、この法案によって、安定供給確保を図ることが特に必要と認められる物資につきましては、平時からサプライチェーンの強靱化を図る枠組みをつくっていこうとしているものであります。当然、その強靱化を図るに当たっては、今回のこの法案のたてつけというのは、民間事業者による自発的な取組に対する支援を通じてこの強靱化を図ることを基本としています。

 また、民間事業者にとって負担を伴い得る取組でございますから、当該取組を支援することとした上で、国内生産基盤の整備に限らず、委員御指摘のように、供給源の多様化や生産技術の開発など、物資の特性に応じた多様な取組を支援可能なスキームとすることで、民間事業者の企業努力や国際分業の考え方も踏まえてサプライチェーンの強靱化が図られるようにしなければならないというふうに思っておりまして、決して保護主義に陥ってはならないというふうに考えております。

本庄委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、第七条で特定重要物資というのが定義をされております。私、ここの定義もちょっと広いんじゃないかなと思いながら実は読んでおりまして、今おっしゃったように、経済活動の自由とか企業の拘束をしないとか、あるいは民間活力ということを考えれば、なるべく対象は広くならない方が恐らく望ましいんだろうと思います。

 計画に参加しない企業も例えば調査の対象にはなってしまったりするわけですね。そういう意味では、この七条ですけれども、例えばですけれども、「外部に過度に依存し、」、これは分かりますが、「依存するおそれがある」なんですね。これは果たしてどのぐらい予見可能なことなんだろうというふうに思うんです。

 例えば、今、私、ちょっと手元に太陽光パネルの輸入割合というのがあるんですけれども、平成二十三年、二二%でした。令和二年度、八四%になっております。これは果たして予見可能だったのかどうか。あるいは、今、スマホなんかもほとんど国産ができていない、メーカーもアップルやサムスンになっている。これは果たして、かつて予見できたんでしょうか。

 私、今回のこの規定の依存するおそれという要件は、相当広く取り得るし、あるいは、分からないままある程度判断をしていかなきゃいけない漠然とした記述だというふうに思っておりまして、適切ではないというふうに考えておりますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

小林国務大臣 将来のことをどれだけ予見できるのかというのを定量的に語るということは極めて困難だと思います。

 その上で、今委員が、今回のたてつけというのが広いではないかという話だったんですけれども、そのおそれというところも含めて、ちょっと法案のたてつけを申し上げさせていただくと、特定重要物資の指定に当たりましては、第七条に規定しているとおり、幾つかの段階を踏んで絞っていっています。

 まず一つが、国民の生活に必要不可欠若しくは広く国民生活、経済活動が依拠している重要な物資であること。その次に、外部に過度に依存しているのか、又は、今御指摘のあった、又は依存するおそれがあるのかというところ。そして、三つ目として、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止する必要があるということ。四つ目のハードルとして、当該物資等の安定供給確保を図る必要が特に認められること。この四つの要件で絞り込むこととしております。

 なので、こうした形で、できる限り絞っていこうとしておりますので、そこは御理解いただきたいと思いますし、この考え方、要件などにつきましては、あくまで有識者の方々の意見を聞いた上で、安定供給確保の基本方針によって具体的に定めることとしておりまして、民間事業者の予見可能性を確保し、また指定の対象は真に必要な物資に絞り込んでいく、そういう考え方で進めていきたいと考えます。

本庄委員 先ほど、特定重要物資の例示という話がありましたね。イメージを持ちながらいろいろ議論をした方が本当はいいんだろうと思いますが、これは難しいんでしょうか。何か例示をしていただいてということが可能であれば、これは委員会での審議に資すると思うんですけれども、政府の方からそういったものを提出いただけないでしょうか。

小林国務大臣 今申し上げたとおり、まだこれは法案審議が始まったばかりですし、この法案が仮に成立した後、様々な、そういう政省令を含めて、基本指針も含めてやっていくものですから、予断を持ってこの場で特定の物資を挙げるということは控えたいというふうに思っています。

 その上であえて申し上げますと、昨年のいわゆる骨太方針二〇二一におきましては、半導体、あるいは電池、レアアースを含めた重要鉱物、あるいは医薬品、こうしたものの強靱化に取り組んでいくというふうにされておりますので、そうした点も踏まえて考えていきたいというふうに考えております。

本庄委員 この条文に書かれた定義だけを見れば、マスクとかスマホとかいろいろなものが当てはまるようにも読める、そういう広い規定になっておりますので、是非、本会議でも答弁された、真に必要な物資に絞り込むということをみんなに見える形でこの後進めていっていただきたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、基幹インフラの方の話に議論を移したいと思いますけれども、安定供給確保支援法人、それから安定供給確保独立行政法人ということが規定をされております。第三十一条一項、主務大臣は、一般社団法人や一般財団法人等を特定重要物資ごとに安定供給確保支援法人として指定できるということですが、どういった法人を想定されているのか、あるいはその選定の基準といったものがあれば御説明をお願いします。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 一点、ちょっと申し上げますと、今委員から、次、インフラの話というふうにありましたが、これ自体はまだサプライチェーンパートですので、御理解いただければと思います。

 この法案では、政策目的である特定重要物資の安定供給の確保に向けた取組を物資の特性などを踏まえまして効果的に支援していくために、まず、特定重要物資ごとに独立行政法人若しくは一般社団法人などのいずれかを安定供給確保支援業務を行う法人として指定をした上で、指定された独法あるいは一般社団法人などが、事業者が行う認定供給確保計画に沿った特定重要物資の安定供給確保のための取組を支援すること、そういうたてつけになっております。

 この法案の中で、支援を行うことができる、可能な独法には、独立行政法人の個別法で定める目的上、生産基盤の整備、そして生産技術開発などを支援することができる独立行政法人として、いわゆるNEDO、JOGMEC、そして医療基盤・健康・栄養研究所、基盤研、これを規定しておりまして、所管大臣がこれらの独法による支援が効果的だと判断する場合には安定供給確保支援独立行政法人として指定をし、活用することとなると考えております。

 他方で、一般社団法人などにつきましては、これを支援法人として指定するに当たっては、支援業務を適正かつ確実に実施できる経理的基礎そして技術的能力を有しているか、また、支援業務の実施体制が安定供給確保基本指針に照らし適切であるかといった、客観的に審査の上、指定することにしております。

 この安定供給確保支援法人は、一般社団法人などの申請により指定することとなるため、現時点ではいかなる法人が指定されるかは決まっておりませんが、指定する際には、今申し上げた、支援業務を適正に実施できるか否かといった観点などを踏まえて判断をしてまいりたいと考えております。

本庄委員 ありがとうございます。ちょっと言い間違えました。失礼しました。

 インフラの方に、次、行きたいと思います。

 また、対象範囲の明確化についてお尋ねをしたいんですが、国会での答弁でも、大臣も、真に必要なものに限定するということはおっしゃっていますが、経済界なんかからは、例えば同友会は、規制対象となる事業、事業者、設備について、どのような基準で分類するか法律に明記してほしい、こういう意見も出ておりました。

 そういう中で、今回、特定社会基盤事業というのは、主務省令で定める基準云々ということで、外縁しか示されないということになっております。この点について、大臣の今の御見解、法律に明記しなかったということについてのお考えをお聞きしたいと思います。

小林国務大臣 基幹インフラに関する制度につきましては、委員御指摘のとおり、我が国の安全保障と経済活動の自由を両立する形で、予見可能性に配慮した制度設計を行っていくことが重要だと考えているのは同じです。

 この点、有識者会議の提言におきましても、規制によって事業者の経済活動を過度に制約しないよう配慮することが重要であって、規制によって達成しようとする国家国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスが取れた制度とすることが必要といった御意見をいただいており、これは大変重く受け止めているところでございます。

 このため、インフラに関する制度につきましては、事業の外縁を条文上明確化して、その上で、事業、事業者、設備それぞれについて、対象とする基本的な考え方は法文上で示した上で、各事業の実態に応じて、国家及び国民の安全に与える影響に鑑み真に必要なものに絞っていく制度としているところでございます。

 具体的には、閣議決定する基本指針において、例えば、国家及び国民の安全と事業者の経済活動の自由とのバランスを取る観点から、今申し上げた、対象を真に必要なものに限定すること、そして、規制対象事業者の指定基準について、事業規模あるいは代替可能性などを考慮要素とすること、そして、規制対象を定める政省令の制定に当たりましては、産業界とよく調整するとともに、パブコメなどによって広く事業者や国民の意見を聞くことなどを定めることを想定しておりまして、こうした規定を通じて、この対象を真に必要な範囲に絞っていきたいという考えであります。

本庄委員 先ほどのサプライチェーンの基本指針もそうですし、今回の重要インフラの方もそうなんですが、この指針、非常に重要だと思います。これから法律が成立した後は肝になってくるところだと思うんですが、大臣に非常に丁寧に御答弁いただいたと思うんですね。法律に書けとまでは言いませんが、書面で、文書で、是非委員会にお示しいただけるとありがたいなと思いますので、御検討ください。よろしくお願いいたします。

上野委員長 後刻、理事会で協議いたします。

本庄委員 その上で、勧告、命令の中で、導入後、事後的な変更についてお尋ねをしたいと思うんですが、法案の中に、五十五条、国際情勢の変化その他の事情の変化により、必要な措置を取るよう勧告、命令ができるとなっています。

 これもかなり広い規定に読めるんですね。国際情勢の変化というのもいろいろなものがあり得ますし、その他の事情の変化に至っては、何のことを指しているのかも分かりません。さらには、必要な措置が取れるということで、かなり広く、そして漠然的な規定だというふうに思うんですけれども、政府の裁量、権限が大きい規定だというふうに私は読みますが、この点について大臣のお考えをお聞かせください。

小林国務大臣 お尋ねいただいた事後的な勧告、命令についてですけれども、これも有識者会議の提言におきまして、事後的にも発動可能な仕組みとすべきとされつつも、事業者への影響が大きい事後的な措置の発動は極めて限定的な場面に限られるべきであって、また、勧告などを事後的に行う場合は、事業者の負担に留意した内容とすべきとされたところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、経済団体からも、事後的な勧告、命令というのは極めて限定的な場面にしてほしいということと、負担に配慮すべきというような意見も示されているところでございます。

 こうした意見をしっかりと踏まえまして、既に導入等計画書についての事前審査を受けた場合の事後的な勧告につきましては、委員御指摘のような、政府の裁量に委ねるということではなくて、法文上、国際情勢の変化等の事情の変更によりと限定的な場合に適用することを明記した上で、勧告の内容につきましても、事業者の負担軽減や特定社会基盤事業の継続性確保の観点から、特定重要設備の検査又は点検の実施ということで例示をしているところでございます。

 この事後的な勧告の具体的な運用を含めた基本的な事項につきましては、閣議決定する基本指針において定める予定でございますが、その際には、今御紹介させていただいた有識者会議の提言ですとか、あるいは経済団体、また労働組合の皆様からの御意見を踏まえるとともに、パブコメなどを通じて、幅広い関係者の意見をしっかりと聞いてやっていきたいと考えています。

本庄委員 時間が来ましたので終わりますが、小林大臣が大臣である限りは、恐らくこの法律は非常に適正に施行されて運営されていくんだろうというふうに思いながら聞いていますけれども、やはり制度なので、どういう状況になってもきちっと経済活動の自由と過度な規制をしないということが担保される、そういう法律にしていきたい、そのための議論をしていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 立憲民主党の大串博志です。

 早速質疑に入らせていただきます。

 経済安全保障法案の審議、重要広範議案、大変重要な審議です。先ほど来話がありましたように、我が党も経済安全保障政策の充実強化、この重要性は認めます。その方向には賛同しつつ、その上で、先ほど来議論がありましたように、経済安全保障政策を強めるということのニーズと、一方で、自由で開かれた経済活動ということの日本経済における重要性とのバランスをどう取っていくか、非常に重要な局面にあると思います。

 そういった意味で、今日私は藤井前内閣審議官の問題をもう少し掘り下げさせていただきたいと思います。

 なぜこの問題を掘り下げさせていただきたいかというと、まさにこの法案の性格によるんですね。すなわち、経済、ビジネス界の行為、行動に大きく影響を及ぼし、かつ国益に影響を及ぼす、すなわち、バランス的に国益という観点からちょうどいいストライクを打ち抜いていかなければならない法案だと思うんですね。そのときに、間違っても、一部の利益あるいは利得を狙う人たちによる影響力が行使されて法案に影響が及んでしまっているとすると、それはよくないという思いなんです。そうであってはならないので、そうなっていないということをきちんと確認すべきではないかという思いから質疑をさせていただきたいと思います。

 総理の三月十七日の本会議答弁、先ほども引用されましたけれども、藤井氏の非違行為に関する調査に関して総理が言ったのは、その上で、今般の藤井氏の非違行為に関する調査を通じても、法案に関する情報の流出も含め、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されてはおりませんと、総理自身がはっきり言っています。はっきり言ったなと私思っていたんですけれども、先ほど室田審議官の答弁の中では、自分たちは一生懸命調べたけれども、情報漏えい、現時点ではなかったというふうに言われました。

 室田審議官、現時点ではなかった、現段階ではなかったという留保条件がついたのはなぜですか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 私、先ほど申し上げましたのは、確認されなかったの意味については、なかったと違う意味なのかという本庄先生の御質問に対してお答えをさせていただいた、こういう次第でございます。

 私が申し上げましたのは、確認できなかったという表記になっておりますのは、現時点で最大限調査した結果といたしまして、今、我々としての現時点の判断としては、ないという判断になっているということでございまして、留保条件をつけたという趣旨で申し上げたわけではございません。もしそのような誤解を生じましたら大変申し訳なく思います。

大串(博)委員 では、あえて現時点ではという言葉をつけたのはなぜですか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども、人間としての最大限の調査を行ったものでございますので、全ての可能性について、全て私どもが、ないということを申し上げるのはむしろ不遜であるというふうに考えます。

 私どもとしては、最大限の調査を行った結果といたしまして、現時点までの結論として、ないということを申し上げたということでございます。

大串(博)委員 平さん、いろいろおっしゃっているけれども、本当にしっかりとした調査が行われているかということをこの委員会で確認したいと思っているんですね。

 それで……(発言する者あり)

上野委員長 静粛にお願いします。

大串(博)委員 委員長、ちょっと質疑に関係ないやじもあるようなので、御注意いただいていいですか。

上野委員長 静粛にお願いします。

大串(博)委員 資料をお配りしています。これは、非違行為の調査によって明らかになった文書ですね。

 一ページを見ていただきますと、藤井さんが國分さんとやり取りした紙です。それで、これは、最初出てきたときには、一番下の英語のところ、私、丸で囲んでいます、EYという文字が黒塗りになっていました。

 私、審議の中で、このディスクレーマーの英語の文章はどうも企業の文書だなと思って、これは企業ではないですか、かつ、國分氏がEYストラテジー・アンド・コンサルティングのパートナーという職であられるということを私は聞いておりましたものですから、EYという会社ではないですかということを聞いておりました。確認していただきまして、先般出てきた資料の中には、EYという企業の立場で國分氏がこのメールを送っていたということがよく分かったということでございます。

 この資料の中に、よい仕込みということが書かれている。よい仕込みということで、國分氏が藤井氏に送っている。

 よい仕込みというのは、非常に私は重い言葉だと思います。すなわち、ビジネスマンたる、コンサルティングファームの一員たる國分氏が、よい仕込みということで、法案責任者たる藤井氏に対してこのようなメールを送っていた。よい仕込みということに関して、これ以外にもいろいろなやり取りが藤井氏と國分氏の間であったのではないかということをきちんと確認しない限りは、こんな言葉に普通はならないと思うんですよ。

 よい仕込みということに関して、藤井氏と國分氏の間でどのようなやり取りがあったのか、なかったのか、これに関する調査結果をお知らせください。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず結論から申し上げますと、ここにある國分氏の仕込みは失敗しているということでございます。

 私どもが調査をした結果をこれから申し上げますが、昨年の三月、國分氏が藤井氏に対しまして、ある大使館の職員を紹介しようとしたという事実がございました。この職員が、クリアランスに関心がある人であったようでございますが、この方がランクの低い、キャリアの低い方であったということで、藤井氏がその面会希望を断ったということでございます。

 これが調査結果でございます。

大串(博)委員 室田さん、私の質問をよく聞いてくださいね。

 この件じゃなくて、この件以外に、よい仕込みということをここで言葉として挙げるような、これ以外の様々な藤井さんと國分さんのやり取り、これ以外にどのようなものがあったのか、なかったのか、この点に関して、これ以外ですよ、調査がどうなされたのか教えてほしい、そういうことです。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 非違行為の調査の過程におきまして、藤井氏の公用のメール、私どものサーバーといいますか、私どもの方に残っているメールは全て確認をいたしましたが、藤井氏と國分氏の間で、これ以外で、仕込みということがなされていた、仕込みという言葉が使われていて、そういうことがあったというようなことについては確認ができておりません。

大串(博)委員 メール以外の調査はどうですか。かつ、メールに関しても、藤井氏は、業務用のメールだけじゃなくて、多摩大学ルール形成研の客員教授としてのメールアドレスも持っていたのではないかと推察され、当然、個人のメールアドレスも持っていたと承知されますけれども、これら業務用以外のメール、あるいは、メール以外を通じても、このよい仕込み、これ以外で、どのようなやり取りが藤井氏と國分氏の間であったか、調べられていますか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 幾つかの御質問ありましたけれども、一つずつ申し上げますと、まず、藤井氏と國分氏が親しい間柄であったということは両者とも認めているところでございます。

 その上で、國分氏に対しまして、國分氏からの一種の利益供応みたいなものはあったのか、あるいは、その見返りとして藤井氏から職務に関する情報の漏えい等々、便宜の供与等はあったのかということについては確認をさせていただきました。國分氏からは、親しいのでよく食事に行っていたけれども、基本的には割り勘でやっていた、さらには、私の方から尋ねた、利益の供応あるいは職務上の便宜の供与等はなかったという確認をいたしております。

 一方、多摩大学のメールという御指摘がございましたが、私どもの懲戒調査というのはあくまで任意の調査でございますので、他の機関のメールサーバーに入るとか、そういうような強制的なことはできません。かつ、藤井氏と國分氏のメールのやり取りは全てEYのアドレスをもってやられていたということで、多摩大学のアドレスを使ってのやり取りはございませんでした。

 そのような意味において、私ども、任意の調査で國分氏と藤井氏の関係について調べられるところは最大限調べて、御指摘のようなことはなかったということを確認させていただいております。

大串(博)委員 國分氏、藤井氏に聞いて、藤井氏から、便宜の供与をしたことはないという言葉を得たということだけをもって、本当に調査を尽くしたと言えるのか、なおかつ、業務用のメール以外に関しては任意だから調べられないということで、本当に十分な調べになったのかということは、私、疑問だと思うんですね。

 この國分氏、どういう方なのかなと私は思いながらいろいろ見ていたんです、EYという会社も含めてですね。それで、政府の中のいわゆる調達を担当しているところをちょっと調べてみようと思いまして、防衛装備庁のことを調べてみました。資料でいうと七ページ目以降です。特に八ページ目以降を見てください。

 防衛省とEYとの契約実績、八ページ、二〇一六年度から二〇一八年度に新たに契約した事業は、該当なしと。二〇一九年に至ると、防衛省と、デロイトトーマツというのもありますけれども、及びEYとの契約実績ということで見てもらうと、一番上にデロイトトーマツが出てきますけれども、それ以外、二〇一九年の十月十日以降はずらりとEYですね。

 これを見ると、その中に、経済安全保障と関連し得るのかなと思えるような内容もあります。例えば、上から四番目、新情報セキュリティ基準等への対応に係る適合支援役務、情報システムのサプライチェーンリスク対策の調査研究、ネットワーク機器等のサイバーセキュリティに関する調査研究、サプライチェーンリスクの回避に向けた企業支援策の検討等々、ずらりと経済安保に関係するのかなと思われるのが並んで、ずらりとEYの方々がこれを受けられているということが分かりました。

 二枚戻っていただくと、ちょっと前を調べてみたら、前というのは二〇一八年からなんですけれども、見てみたら、ずらりとデロイトが並んでいるんですね。八ページには、さっき言ったように、二〇一六年から一八年に向けてEYとはなかった、二〇一九年十月以降はずらりとEYになられている、こういうことでありました。

 防衛省、防衛装備庁、どちらでも結構ですけれども、二〇一九年の秋以降はずらりとEYの方々がこういうふうな受注をされていますけれども、こういうふうになった背景はどういうものがありますか。

内藤政府参考人 お答えします。

 デロイトトーマツとEYとの契約実績は総合評価落札方式を含む競争性を確保した契約手続により契約相手方を決定した結果であり、防衛省として特定の企業の落札を何ら意図したものではありません。

 それで、令和元年度に、企業との契約に際し、契約相手方に信頼性の高い情報管理体制を要求、確認するための基準、手続を定めています。これは、近年、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることや、また、平成三十年に策定された現行の防衛計画の大綱においても情報保全の強化を進めることとされているなどの状況を受け、我が防衛省として取り組んでいる情報保全のための様々な施策の一環として整備したものになります。

 防衛省としては、御指摘の契約実績に限らず、従来から公正性とか透明性に十分配慮しており、引き続き、会計法令にのっとり適正な契約手続を実施してまいる所存です。

大串(博)委員 この入札に関しては競争性を確保した上での入札の結果だというふうに言われていますけれども、ごろりと、あるときを隔てて入札の落札者が替わっているんですね。

 今、後段で言われた防衛調達に関して仕組みを、令和元年ですか、変えましたというふうに言われているのは、資料でいうと十番、防衛調達で機密保護ということで、応札企業の資本や国籍等々を、国際環境に鑑み、きちんと報告するように義務づけた、こういうふうな報道があったわけですけれども、これのことをおっしゃっているんですかね。

内藤政府参考人 お答えします。

 規則については、今先生おっしゃられた令和元年五月に制定したものになります。おっしゃったとおりです。

大串(博)委員 藤井氏は二〇一七年七月から二〇一九年七月、つまり、この新聞記事、この政策がこういうふうになる、変わったときまで防衛装備庁に経産省から出向していましたね。

 ちなみに、國分氏はデロイトを二〇一八年の末に退社して、その後、二〇一八年末にEYに移っている。ちょうどその頃は藤井氏が防衛装備庁に在籍していた頃ですね。その後、数か月して、二〇一九年の七月まで藤井氏は防衛装備庁にいたわけです。

 それで、先ほど申し上げた十番の報道がなされた、それは今、そのとおりですというふうに言われました。まさにこの報道であるようなポリシーの変更を受けて、先ほど話があったように、デロイトからEYにがらっと替わっているということを今示唆されたわけですけれども、この報道が出て、このような防衛省における政策変更が行われたのは、ちょうど藤井氏が防衛装備庁に審議官でいた頃ですね。この政策変更に藤井氏は関わっていますか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、藤井氏は当時、防衛装備庁の長官官房審議官に在籍してございました。そのときの職務内容につきましては、防衛装備庁の所掌事務に関する重要事項についての企画立案への参画等でございますけれども、そのうち、総務、人事、会計、監察、監査等の業務を行ってございました。

 そこで申しますと、御指摘の令和元年五月でございますけれども、情報管理体制の強化に関する規則の改正がございましたけれども、これは、先ほども答弁ございましたように、平成三十年の大綱等を踏まえて、防衛産業の情報保全の強化のための施策の一環としてやったものでございますが、これは、装備庁の中ですと、長官官房以外に、装備政策部、私が属しているところと、調達管理部、先ほど答弁いたしました内藤が属しているところでございますけれども、これらが中心になって整備したものでございます。

 他方で、形式的なところで申しますと、藤井氏でございますけれども、長官官房審議官として総務を所掌しておりますので、本制度の整備の過程において文書審査等に関わっていたということはございますが、その限りにおいて所掌に応じた役割を果たしていたと承知してございます。

大串(博)委員 EYという会社が、先ほど申しましたように、調達官庁である防衛省や防衛装備庁において極めてある意味重い役割を果たしていた、たくさんの調達を行っていて、経済安保に絡むような内容に関しても、大きく、近年、調達していたというのがよく分かります。

 そのEYに勤めていた國分氏、その國分氏との間で仕込みと言われている。それで、藤井氏が防衛装備庁にいるときに、まさに先ほどの、EYにごろっと全体的な内容が替わるような政策の変更が行われている。

 いろいろな仕込みが行われていたのではないかというふうな推測を呼んでも仕方ないようなこともあると思うんです。だから言っているんです。だから、単にNSSの中の、事務局の中だけの業務的な、業務上のメールだけを調べるのでいいのかということなんです。

 こういう疑念も含めてきちんと明らかにしていかないと、本当に、一部の、一部のですよ、例えば経済安全保障ビジネスといったものが今私は生まれようとしているんじゃないかと思うんですけれども、そういった方々の、一部の利得や利害によってゆがめられてしまっているのではないかということを私は懸念しているわけですよ。

 今日は非常に重要なことが明らかになりました。EYが大きく防衛装備庁で入札を受けるようになったということに関して、この資料の十番にある、防衛装備庁の政策変更が大いに関与している。そのときに審議官でいたのは藤井氏であって、総務という立場からこれには関与していたということ。

 大臣、またちょっと大臣には感想を問いますけれども、こういうのをきちんと明らかにしていかないと、やはり、この法案が本当に適正なレベル、適正なバランスになっているかというのは分からないと思いますよ。

 これを見ていただきますと、一番の資料を見ていただくと、上に架電の件とあるんですね、架電の件。この架電の件、どういう電話があったのか。

 これは元々、内閣官房の説明によると、下の文章とは全く関係ない文脈で、ぽんと藤井氏が國分氏に対して、「これで明日金融庁が甘利先生のところにいくはずです」ということで送ったメールだというふうに言われていました。これは、この間、国会で聞きました。そこで質問になったのは、その架電の件とは一体何だったのか、架電があったからこそこのメールになっているんだろうと。

 架電の件、どのようなやり取りが藤井さんと國分氏の間であったのか、なかったのか。まあ、あったんでしょうね。

 これに関しては、この間、室田氏は、私、予算委員会に属していますので、予算委員会の理事懇では、この架電の件に関しては分かりませんでしたということだったんですけれども、架電の件とは何だったか分からなかったということでいいですか。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 衆議院予算委員会の理事懇で、大串先生より、まさに、この架電とは何であるかという御指摘をいただきました。その上で、私、その場で、國分先生に確認をさせていただきますということを申し上げました。その後、國分先生に電話をさせていただきましたけれども、國分先生のお答えは、藤井氏から電話があったということを覚えているけれども、内容についてはよく覚えていない、こういうことでございました。

 また、藤井氏の記憶は非常に曖昧なものがございましたので、その意味におきまして、架電の件、電話があったということの事実は確認できましたけれども、どういう会話がなされたのかということにつきましては、現時点では確認ができていないということでございます。

大串(博)委員 架電の件、どういうやり取りをこの二人がしていたのか。仕込みをしていたのではないかということもやはり気になるわけですよ。

 なぜなら、先般、この架電の件ということのメールに添付されていた、これは何だったかというと、資料の二枚目、三枚目にあります、金融庁が作ろうとしていた投資家と企業の対話ガイドラインというものだったということですね。このパブコメをしていた内容に関して甘利さんのところに説明に行った、こういうことですね。

 それで、三ページ目にありますような文書が添付されたということなんですけれども、この内容に関して、先般、私どもの山岸委員の質疑の中で明らかになったのが、結果として、パブコメを受けて、この黒塗りされた、矢印のところがありますけれども、一番最後のところに、経済安全保障の重要性等々というようなことが挿入されたという結果になっているということが分かった。

 このときにパブリックコメントに提出されたものが、資料でいうと十一ページと十二ページ、十三ページですね。十一ページを見ていただきますと、六百十一番、これが金融庁に提出されていた、六百十一番は多摩大学ルール形成研からのパブリックコメントです。これは、國分さんがいわゆる所長さんですね。藤井氏はそこの客員教授、甘利さんはシニアフェローという立場で連なっていらっしゃいます。この六百十一番のパブリックコメントを見てみると、資料の十二番、経済安全保障を踏まえた経営意思決定の責任を担う担当役員を設置せよというようなコメントを出されているわけです、多摩大学のルール形成研が。

 金融庁にお尋ねしますけれども、結局、このパブコメは採用せず、担当役員を設置するというようなガイドラインの内容にはしなかったという理解でいいですね。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 大串先生御指摘のとおり、パブリックコメントにおいては、コーポレートガバナンス・コードで経済安全保障担当の役員の設置を求めるべきとの御意見が寄せられたところでございます。

 この御意見につきましては、コーポレートガバナンス・コードはいわゆるプリンシプルベースアプローチを採用しており、特定分野の役員設置を推奨するような規定はなじまないこと、また、主要な海外のコーポレートガバナンス・コードにおいても経済安全保障やその役員の設置に言及するものが見当たらないこと等を踏まえまして、コーポレートガバナンス・コードで経済安全保障担当の役員の設置を求めることは適当でないと判断させていただきました。

 一方で、総論として、企業の事業環境を見ますと、経済安全保障への対応については重要性が増していると考えられました。そのため、具体的な企業の対応の在り方は、役員設置に限られず、各上場企業の実情に合わせて判断すべきものとの考えの下、コーポレートガバナンス・コードの附属文書でございます投資家と企業の対話のガイドラインにおいて、経営戦略、経営計画等に反映させるべき事業を取り巻く環境の変化の一つとして、御指摘いただきました国際的な経済安全保障をめぐる環境変化への対応を掲げることとしたものでございます。

大串(博)委員 今話がありましたように、金融庁の判断としては、こういうパブリックコメントもあったけれども、最終的に盛り込んだのは、経済安全保障というのは重要ですよ、経営上において重要ですよという一文、一項目はガイドラインの方に盛り込んだけれども、多摩大学ルール形成研が具体的に言ったような、担当役員まで経済安全保障担当で置くというところまではガイドラインには盛り込まなかったと。

 すなわち、多摩大学ルール形成研の皆様、非常に熱心に議論されていると思います、それは非常にありがたいことなんですけれども、これに関しては採用されなかった。ある意味、政府が考えていること以上の規制というか制度を要望されているんですよね。こういうふうな、いいアドバイスもあると思います。ただ、これがよくない形で伝わっていると、仕込みと言われるようなことになってしまうんじゃないか、だから、その点をきちんと調べる必要があるんじゃないかというのが私の主張です。

 続きに関しては午後やらせていただきます。

上野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

上野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串(博)委員 防衛省、防衛装備庁に一つ確認です。

 経済安全保障関連を含むいろいろな調達案件が、二〇一九年からEYが増えている、デロイトは減っている、こういった変化が見て取れる。それの背景に、資料の十ページにあるような政策変更、防衛調達で機密保護、応札企業、資本や国籍を報告、義務づける、こういったことがあったということが、先ほど来質疑で分かりました。

 一つ確認なんですけれども、この十ページの記事の中の一段目の真ん中からちょっと左側です、最近では防衛省の将来戦闘機の開発計画に中国政府の影響が強いと見られる企業が関わったことが発覚した、防衛省は同社との調査研究の契約を結んでいたが停止した、こうあります。

 将来戦闘機の開発計画、調査研究、まあ解約されたわけですけれども、これは、ちなみに、私が資料につけた例えば七ページの一番上、文字でいうと、似ているところを探すと、将来戦闘機、開発、調査、デロイトトーマツとありますけれども、このことでしょうか、これが停止されたということなんでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の日経新聞の記事でございますけれども、この御指摘いただいた一行目のところで、契約を結んでいたが停止したというふうに記事には書いてございますけれども、そのような事実はございません。

 なお、御指摘いただいた将来戦闘機の開発体制の構築に係る調査役務、二〇一八年四月二日のものでございます、これはきちんと執行して納入していただいているものでございます。

大串(博)委員 分かりました。確認まででした。

 この國分氏ですけれども、多摩大学のプロフィールを見ると、公安調査庁経済安全保障関連調査アドバイザーとしての肩書を載せていらっしゃいます。

 公安調査庁にお尋ねしますが、この公安調査庁経済安全保障関連調査アドバイザーという役職は存在するんでしょうか。存在するとすると、一体どのようなものなんでしょうか。

横尾政府参考人 お答えいたします。

 経済安全保障関連アドバイザーということでございますけれども、経済安全保障に関しましていろいろアドバイスをいただいているというようなお立場でございます。

 根拠といたしましては、特に法令等による根拠に基づいて設置されているものではございません。事実上、経済安全保障に関する様々なアドバイスをいただいているというものでございます。

大串(博)委員 そうすると、公安調査庁として、こういうアドバイザー職があって、それを委託しているというものではないということでいいんでしょうか。

横尾政府参考人 お答え申し上げます。

 法令等に基づいてこうした名称の役職があるということではございません。事実上、経済安全保障に関して様々な知見をいただきたいというような委託をしているというものでございます。

大串(博)委員 今、委託と言われましたけれども、委託を通常政府がするときには一般競争入札などしてやるわけですけれども、そのようなことはちゃんとやられていますか。

横尾政府参考人 事柄の性格上、やはり専門的な知識をこの國分氏からいただくということでございますので、入札をかけてということではなく、國分氏の知識なり知見なりというものに注目して、いろいろアドバイスをいただきたいということをお願いしているものでございます。

大串(博)委員 事柄の性質上ということで、そう言われました。

 そうすると、随意契約ということで、財務省との了解を取った上でやられているんですか。

横尾政府参考人 随意契約云々というか、ちょっと言葉があれなんですけれども、事実上いろいろな有識者の方からお話は伺っておりまして、その中の、そのうちの一つだということでございます。

大串(博)委員 そのうちの一つというふうに言われました。そのうちの一人という理解でよろしいんですか。

横尾政府参考人 申し訳ございません、そのうちの一人ということでございます。

大串(博)委員 そのほかの方々は経済安全保障関連調査アドバイザーということを名のられているんですか。

横尾政府参考人 基本的に、経済安全保障に関しまして、やはり複数の、有識者と言われております先生方からお話は伺っておるところでございます。

 名のっているかどうかというのは、ちょっと私どもの方ではよく把握はしておりませんが、事実関係と申しましては、こういう分野に関して専門的な知見を有されているいろいろな方々から御意見を頂戴しているということでございます。

大串(博)委員 そうすると、事実上いろいろな話を聞かせてもらっているという立場の人ということですね。

 そうすると、複数のそのほかの方々が経済安全保障関連調査アドバイザーと名のられているかどうか知りませんがと言われていましたけれども、この國分さんに関しては、経済安全保障関連調査アドバイザーと名のることを公安調査庁として許されたんですか。

横尾政府参考人 これは、國分氏の方から公安調査庁に対して、こういうアドバイスをしているということを肩書として明記してよろしいですかというふうに言われましたので、特段これを我々の方から断る理由もございませんので、それは御自由にどうぞというふうに話しております。

大串(博)委員 分かりました。特段断る理由もないので御自由にどうぞということで。

 この経済安全保障関連調査アドバイザーという言葉自体は、そうすると、國分氏の方から提案された名前なんですか、それとも、公安調査庁がこのようなアドバイザー職の名前をつけたんですか。

横尾政府参考人 我々の方から特段こういうような肩書を付したということではなくて、事実、経済安全保障に関してやはり我々はアドバイスを受けている立場でございますので、それを端的に表記するとこういう名前になるということで理解しておるところでございます。

大串(博)委員 確認ですけれども、この経済安全保障関連調査アドバイザーという名前自体は、じゃ、國分氏がつけられた名前ということでよろしいですね。

横尾政府参考人 そこは、そういうふうに名のりたいということですので、我々の方としても、事実、経済安全保障に関するアドバイスを受けておりますので、そういった実態を端的に表しているものというふうに理解はしております。

大串(博)委員 國分氏がこういう名のりをしたいということで、プロフィールにも載せていらっしゃるということです。

 それで、今日明らかになった事実を少し整理しますと、資料にもありますように、藤井氏と國分氏の間では、金融庁のメールにもあったように、よい仕込みにはなるということをメールでやり取りするような間柄にあったということが分かる。國分氏は、EYという会社の役員としてそのメールを送っていた。このEYという会社はコンサルティング会社ですね、そこの役員さんでいらっしゃる、パートナーでいらっしゃるということですね。

 このEYという会社はどういう会社かというと、いわゆる調達行為を行う防衛省、防衛装備庁を見てみると、二〇一九年以降、経済安全保障に関連するようなことも含めたいろいろな調達を、契約を、政府との関係、防衛省、防衛装備庁との間で受けている。ある意味、経済安保に関するプレーヤーですね。経済安全保障に関するビジネスの一翼の人です。

 そういう人と、藤井氏は、このような、よい仕込みというようなやり取りをしていたということになるわけです。

 しかも、先ほど話があったように、このEYが契約実績を重ねた二〇一九年の半ば、その前に、先ほど申したような、資料十のような政策変更が二〇一九年の半ばに防衛省において行われておって、これが一つの起源となって、EYが防衛装備庁との間での契約を重ねることになった。ちょうど、時期的にいうと、その数か月前に、國分氏はデロイトからEYに移り、藤井氏はその間、防衛装備庁の審議官としており、この資料十ページにもある政策変更に官房審議官の総務を預かる立場から審査に関与していたということが分かる。

 その中での、そういう関係のある中で、まさに経済安保ビジネスに絡むビジネスマンとしての國分氏からのよい仕込みなんです。

 このよい仕込みというものが、一体、これ以外にどのようなものがあったかを全く分かりませんという中で、本当にバランスの取れた、さっき言った、バランスの取れた、過剰な規制にならないような、バランスの取れた政策、法律になっているかどうかというのは私は分からないと思うんですよ。

 実際、パブリックコメントにもありますように、多摩大学ルール形成研は、いわゆる経済安全保障に関する担当役員を設置するという提案をパブリックコメントでやられているんですね。これはいいことですよ。こうやって表できちんとパブリックコメントをやられるということはいいことだと私は思います。しかし、それがよい仕込みというような言葉の中で、裏で行われていたとすると、これは私は非常によくないことだというふうに思うんです。

 経済安保ビジネスに関わる方々が、経済安保は大事ですよ、経済安保は大事だから、経済安保は大事だということを言って、過剰な対応を政府に求めるようなことがなかったかという懸念がやはりあるわけです。バランスを崩してしまう。そういう観点から、このよい仕込みというところを十分調査しなくていいのかということなんです。

 小林大臣、先ほど、自分も条文をきちんと見られましたと言われました。それは見られたでしょう。しかしながら、大臣もあずかり知らぬところで、よい仕込み、國分氏と法案の責任者であった藤井氏との間でよい仕込み、あってはならないようなよい仕込みが絶対なかったというふうに、大臣、法文を読むだけじゃ私は分からないと思いますよ。本当によい仕込みと、悪いよい仕込みがある。悪いよい仕込みがなかったのかということに関しては、大臣、どうやってこれを国民の皆さんに大臣は説明するんですか。

小林国務大臣 今、一連の議論を伺っておりまして、やり取りを伺っておりまして、藤井氏と國分氏の個人的な関係について、私の方からコメントすることは控えたいと思います。

 先ほどから申し上げているとおり、今回藤井氏に行った調査というのは、あくまで非違行為に関する人事上の調査ですけれども、この調査を通じても、法案に関する情報の流出を含めて、この法案に対する不当な関与は、藤井氏の法案に対する不当な関与は確認されなかったと承知をします。

 法案を担当する大臣の立場として申し上げられることは、今回の事案というのは極めて残念なことであって、改めて、法制準備室の綱紀粛正を図るとともに業務遂行をしっかりと徹底していくことだと考えております。

 いずれにしましても、この経済安全保障の法案というのは、我が国の現在そして未来にとって、国民の皆様にとって極めて重要なものだというふうに認識をしておりますので、私の立場でできる限りの中身の説明というものをしていきたいと考えております。

大串(博)委員 大臣、今、法律を自分の目でも見たから絶対に大丈夫ですと言われますけれども、大臣にすら目に見えないところのいろいろなことがあったかもしれないから、私は調べ尽くすべきじゃないかなというふうに思うわけですよ。

 例えばこの調査内容、不識庵のことが取り上げられていますけれども、これ以外の論点も私はあると思うんです。例えば講演です。講演に関して、贈与等報告書の保存期間内においてと限定をつけた上でも、少なくとも六十一件の講演や執筆、それによって総額九百八十万円を受け取っているわけです。講演を受けるというのは、大変な便宜供与を受けているわけです。一回の報酬が極めて高額な講演を繰り返し行っていたというふうに調査報告書にも書かれている。

 しかしながら、この調査報告書の中で、この講演を依頼した会社との関係で情報漏えいがなかったかとか、不適切な便宜供与はなかったかというような調査をした記述が一片もないんですけれども、室田審議官、講演を行った会社、講演を依頼した会社との関係で何がしか不適切なことがなかったか、調査したんでしょうか。調査したとすると、ここのどこに書かれているんでしょうか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 調査報告書におきまして藤井氏が講演を行ったということが確認できております六十一件の講演あるいは執筆の相手方というのを、相手方の数で数えますと二十三社となります。二十三社に対しましては、財産上の利益の供与、あるいは供応接待を藤井氏に対して行ったのか、また、その見返りとしての職務上の情報提供、便宜の供与があったのかということについては、全て確認をいたしております。その結果として、全て、二十三社より、そのようなことに該当する事実はないということを確認しております。

 これにつきましては、書かれていないという御指摘、そのとおりでございます。懲戒の報告書については、あくまで非違行為に関するものでございますので、そこには法案への影響等についての記載はございません。

 他方で、A社、日立製作所というふうに名前を明かしましたけれども、そのA社の報告書、それから、不識庵で直近三年、藤井氏と関わった二十社に関する報告書としては出させていただいております。

 今、加えて申し上げたところについても、並行して調査を行った結果として、私どもとしては確認をさせていただいている、こういう次第でございます。

大串(博)委員 今のようなことがきちんと調査されているのであれば、政府として身の潔白をはっきりさせるために紙に書くべきだと思いますよ。紙に書いていただきたい。

 非違行為に関すること以外の、いわゆる不適切なゆがみ等を生んでいなかったかということに関する調査に関しても、どのような調査をして、どのような結果であったか、きちんとペーパーにしてまとめてこの委員会に出してもらうように、委員長、お取り計らいをお願いします。

上野委員長 後刻、理事会で協議いたします。

大串(博)委員 口頭で説明するだけの理由は全くないですよね。きちんと紙にして出していただきたいと思います。

 さらに、先ほど来話があったように、よい仕込みのこと、あるいはこの資料の架電の件、どういうふうな架電、話が藤井氏と國分氏の間であったのか、全く分かりません。やはり、このお二人、藤井氏と國分氏にこの委員会に来てもらって、きちんとどういう経緯であったのかを話してもらった上で、私は、本当に法案にゆがみがなかったのか、影響はなかったのか、明らかにさせていただきたいと思います。

 國分氏と藤井氏、この二人にこの委員会に参考人として来てもらうこと、お取り計らいをお願いします。

上野委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 是非よろしくお願いします。

 それで、法案の中身についてですけれども、私、提案があります。

 先ほど来議論を聞いていて、この法案を私も全部逐条で読みましたけれども、やはり法案の中に書かれていることは少ないと私は思います。それに対して、大臣、今、法案に全部決めるのはなかなか難しいという答弁がたくさんありました。その上で、この法文に書かれていることに関してはこういう趣旨ですというふうに補足して説明されることが多々ありました。先ほど、質疑者を見ていても、それを一生懸命メモしようというふうにしています。

 ただ、それだと私は生産的な法案審議にならないと思う。非常に特殊な法律で、すなわち内容が非常にある意味薄くて政令、省令、基本指針等々に落とされていることからすると、大臣がこの法律に書かれていることはこういう趣旨ですと言ったことを、その日その日に一覧表にして、この条文の横に、二段表みたいな形式でいいですから全部書き出していただいて、それをベースにみんなで共有して毎回の審議を行うようにする方がよほど私は生産的な審議になると思います。ちょっと今回は特殊な審議ですからね。そういうふうな特殊な法案ですから、そのような進め方を是非していただきたい。そうじゃないと、あれ、どこで何言っていたっけみたいな話が追えません。

 生産的な審議になるために、そのような、二段表的に、法案の横に、大臣が口頭で言った、この条文はこういうことですと言ったことをペーパーに落として、二段表みたいに落として、それをタイムリーに、毎回毎回審議のたびに、その後に共有できるようにした上で審議を進めていただきたいと思いますが、どうですか。

上野委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 生産的な審議となるように、是非よろしくお願いします。

 終わります。

上野委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党、櫻井周でございます。

 本日は、この内閣委員会におきまして貴重な質問の機会をいただきましたこと、誠にありがとうございます。

 本日、この経済安全保障法案の審議におきまして、総論的な部分は既に午前中から先ほどの大串博志委員の質疑の中でいろいろ取り上げられておりますので、私の方からは、第五章の特許出願非公開の制度に絞って、条文に即して質問をさせていただきます。

 この第五章の特許出願の非公開については、これは実務上、非常に手続に影響してくるところが多々ございます。しかし、先ほど大串委員からも指摘がありましたとおり、大事なことが政令などに委任されていて、必ずしも明確でないところも多々ございます。ですから、実務上スムーズに今後進めていけるように、一つ一つ丁寧に確認していきたいと思いますが、ただ、一方で、今日、三十四問も質問を用意させていただいたので、ちょっと端的に御答弁をよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速入らせていただきます。

 まず、第五章全般に関わること、特に六十五条一項に書かれていることでございますが、大臣にお尋ねをいたします。特許出願を非公開にする、この目的について、まず端的にお願いいたします。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 一応、三十四問、用意してあるんですけれども、できるだけ趣旨は分かりやすく説明させていただきます。

 弁理士資格をお持ちである櫻井委員にはもう釈迦に説法でございますけれども、我が国の特許制度は、諸外国の制度と異なって、一たび特許出願がされれば、安全保障上極めて機微な発明であって公開すべきでないものについても、一年六か月経過すると国が出願の内容を公開する制度となっています。また、安全保障上の機微性を自覚する発明者にとっては、公開の弊害に目をつぶって特許出願をするか、それとも特許出願を断念するかの二者択一の選択を迫られる状況にございます。

 こうした現状に鑑みまして、特許出願の非公開制度は、特許法の特例を設けるものでもございます。すなわち、これを導入することによって、公にすることによって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載された特許出願について、出願公開などの手続を留保するとともに、その間、必要な情報保全措置を講じることで、特許手続を通じた機微な技術の公開や手続留保中の情報流出を防止することが可能になります。それとともに、これまで安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった発明者に特許法上の権利を受ける道を開くことができるものでございます。

櫻井委員 まず六十五条一項について確認させていただいたのは、まさに、機微技術の情報、これを流出を防止するということ、これは私も必要だというふうに思っておりますし、実は四年前、これは科学技術・イノベーション推進特別委員会でございますが、秘密特許ないしは特許出願の非公開についての制度、我が国も必要じゃないかということを提案申し上げて、四年前に言ったことがようやく進んできたということについては、このことは歓迎したいというふうに思っているんですが、先ほど申し上げたように、いろいろ不明確なところはあるし、また、漏れがあるんじゃないのか、穴が空いているんじゃないのかという心配もあるものですから確認をさせていただきました。

 六十五条四項についてもお伺いをいたします。

 大臣にお尋ねします。

 特許出願非公開の基本指針、これを内閣総理大臣が作るということになっておりますが、「特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を聴く」と条文上なっております。安全保障に係る経済施策の専門家だけでなく、特許制度の専門家、実務家である産業構造審議会の委員、それから審査官経験者、弁理士の意見も聞いていただくべきだというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

小林国務大臣 この制度は、非公開の状態で特許権を付与するのではなくて、出願公開などの手続を留保するものであって、公開の代償として独占的な権利を付与するという我が国の特許制度の根幹を変えるものではございません。保全指定の対象も極めて限定されると考えておりまして、年間約三十万件前後に及ぶ特許出願の大半には影響を及ぼすものではないと考えております。

 今回の特許出願の非公開制度の導入は、経産省が所管する特許法自体を改正するものではなくて、あくまで安全保障に関する経済施策という観点から内閣官房がその立案を担当しておりまして、経済と産業の発展という観点だけではなくて、安全保障や国際関係の観点も深く関係することから、こうした幅広い観点からの意見を反映させるべく、知財分野の専門家も含む経済界やアカデミアなど、様々な分野の専門家から成るいわゆる有識者会議を開催して御議論をいただいたところでございます。そこでの提言を踏まえて策定したものでございます。

 そこでの議論の内容も、現在の特許実務を踏まえた具体的なものとなっていると認識しておりまして、本法案の内容に照らせば、いわゆる産構審で審議していなくても、有識者会議で十分な検討が行われたものと考えております。

櫻井委員 ちょっとごめんなさい、通告したものの質問のうち、三十四問、全部あるので、ちょっと順番を入れ替えて質問しているので。

 さっき聞いたのは、特許出願非公開基本指針の案を作るところについて、これはどなたに意見を聞くのかということで、実務経験者、専門家にも意見を聞いていただけるんですかという質問をしたので、ちょっと二つ、三つ飛ばして質問しちゃっているので、もう一度御答弁をお願いできますか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 法案第六十五条第四項におきまして、内閣総理大臣は、特許出願非公開の基本指針の案を作成するときは、安全保障の確保に関する経済施策、産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を聞くものとしております。

 実際にどのような方の意見を聞くことになるかにつきましては、具体的な選考は法案成立後に行うこととなりますが、有識者会議と同様に、特許制度に詳しい方の意見も当然参考にしてまいりたいと考えております。

櫻井委員 済みません、通告したときには条文の順番で通告をしていたんですけれども、ちょっと、重要な順番で、時々行ったり来たりするかもしれませんので。ただ、条文の番号は申し上げますので、それでちょっと御答弁の方よろしくお願いします。

 今質問したのは、この法案を作るときには、有識者会議ということでいろいろ意見は聞かれているんですけれども、特許実務をやっている方には余り聞いていないと。当然この人には聞いているだろうなと思う方からも、何にも聞かされていないんです、意見も求められていないんですという話もあったものですから、それは法案を作るときに是非聞いてほしかったんですけれども、今、法案ができちゃったので、今更言ってもしようがないので、せめて基本指針を作るときには聞いてくださいねというお願いでございます。是非よろしくお願いいたします。

 次の質問に移らせていただきます。六十六条一項についてです。

 大臣は先ほど、年間三十万件ある特許出願のうち相当に絞り込むという話でしたけれども、じゃ、どうやって絞り込むかということについては六十六条一項に書いてあるわけです。

 この中で、国際特許分類でどれが送付対象になるかということを指定するということにはなっているんですが、でも、国際特許分類で指定するといっても、結構分類の仕方もざっくりしていますし、必ずしもここの分類にのみ機微技術が集中しているというわけでもないと思うんですね。

 これはどういうふうにして指定されるのかということについて、大臣、お願いします。

小林国務大臣 実際に、どのような国際特許分類が付与された発明を内閣総理大臣に送付することになるかを含めて、特定技術分野などを定める政令の内容については今後検討していくこととなるため、現時点で件数などをお示しすることはできないんですけれども、技術の機微性のみならず、産業の発達に及ぼす影響を考慮して、対象を極力絞り込んでいく考えでございます。

 この点、有識者会議からも、制度開始当初は第二次審査の対象となる技術分野を限定したスモールスタートとして、その後の運用状況などを見極めながら対象技術分野の在り方を検討することが適当だ、そういう旨の提言がなされておりまして、これを踏まえて政令の内容を考えていきたいと考えています。

 また、特定技術分野に属していたとしても保全審査の対象外となる発明があるかとお尋ねでございますけれども、特定技術分野のうち保全指定された場合に産業の発達に及ぼす影響が大きいものにつきましては、政令で定める要件に該当するものに限定して保全審査の対象とすることとしておりまして、当該要件に該当しないものが保全審査の対象外となります。

櫻井委員 今、御答弁をいろいろいただきましたけれども、スモールスタートとおっしゃいますけれども、まさにスモールスタートになるかどうかがこの六十六条一項なわけですよね。

 一方で、次の質問に移らせていただきますけれども、六十六条一項では、特許庁長官は、保全審査の要否を三か月以内に判断しなければいけない、どれを内閣総理大臣の方に送るのか送らないのか判断しなきゃいけないわけですが、これはどのような体制、人員で実施するのか。また、この体制、人員をつくるために財源が必要だと思うんですが、これは一般会計で手当てするのか、それとも特許特別会計で手当てするのか、どちらなんでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 特許庁が行う第一次審査ですけれども、これは、先ほど答弁させていただいたとおり、年間約三十万件前後に及ぶ特許出願の中から政令で定めた国際特許分類等に該当するものを抽出するという定型的なものでございます。

 国際特許分類は、現在の特許実務におきましても、出願されるとまずはこれを付与する運用となっており、現実にやっているんですね。それを活用できる部分も大きいと考えているんです。

 いずれにしても、その体制と人員につきましては、今回新たに導入される措置によって通常の特許業務に停滞が生じることがないように、特許庁と財政当局などともよく相談しながら検討を進めていきたいと思います。

 また、特会なのか一般会計なのかというお財布の話でございますけれども、この点につきましては、通常の特許業務と明確に切り分けられない面もございますが、いずれにしても、実務上、特許庁にどの程度の負担が新たに生じるのかも踏まえつつ、財政当局と相談していきたいと考えております。

櫻井委員 財源をどこから手当てするかも決まっていないというのは、ちょっとびっくりといいますか、本当に生煮えな感じがするんですが。

 ただ、おっしゃられたように、従来から特許庁は分類をつけていたじゃないかとおっしゃるんですが、今まではある意味整理のための目安にすぎなかったのが、今度は内閣総理大臣に送るか送らないかの判断の材料になるわけですから、分類の精度という意味ではやはり相当レベルが違ってくるんじゃなかろうかというふうにも思います。

 また、今、実はここに持ってきているんですけれども、国際特許分類というのはこんなに分厚いものなんですよね。これは紙の無駄だと思いながら印刷してしまったんですけれども、やはりこれだけあって、これを一つ一つ分類していくのは結構大変なんですよ。しかも、一つの技術が複数の分類に該当するということもあるので、これはやはり相当手間がかかるし、しかも、三か月という要件も加わって、三十万件、三か月ですからね。

 ですから、やはりこれは、この財源も含めて、体制もいま一度考え直していただく。これは特許法ではないので、特許特別会計から充てるというのは筋としてはおかしい、これは別の法律なんですから、やはりちゃんと、安全保障の目的ということですから、一般会計から手当てするべきだということも御提案申し上げたいというふうに思います。

 といいますのは、特許特別会計というのは、これはそもそも、受益と負担の関係を明確にするために財源としての手数料等の適切な改定を行う観点から設置された特別会計です。収支相償の下で運営されてきて、これまで一般会計から繰入れを受けたということはございません。しかも、最近はちょっと財源が枯渇してきた、会計のお金が足りないということで、特許関係の料金、来週、四月一日から値上げになります。

 ですから、値上げしておいてそこの財源に手を突っ込むというのは、これは幾ら何でもというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、六十六条一項について重ねて質問させていただきます。

 これは、三十万件のうち何件ぐらいが総理大臣のところに送られるのか。先ほど大臣、スモールスタートというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、本当に何件ぐらいになるのかというのが分からないですし、総理大臣は、今度、おおむね十か月以内にこれを全部審査しなきゃいけないわけですよね。そのための体制、人員、これをどうするのか。また、保全審査のためのコンピューターシステム、これも有識者が提言をしています。これはどういうものになるのか、そのための費用はどこから出てくるのか、それらについて教えていただけますでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 保全審査の件数につきましては、実際の特許出願の傾向に加えまして、この法案の第六十六条第一項の特定技術分野などの政令の具体的内容によって異なってきます。また、新しい制度の導入を受けて、先ほど少し趣旨のところで申し上げましたけれども、これまで自重していた機微な発明の特許出願がどれだけ逆に増えるのか、こうしたことによることから、現時点で具体的な件数見込みをお答えすることは困難でございます。

 ただ、保安審査や第一国出願義務の対象とした場合の産業への影響も考慮をして、適切に絞り込んでいく考えでございます。

 また、保全審査のための人員、体制にしても、あるいはシステムにしても、保全審査の件数などによって必要なものが大きく変わり得るものでございますので、政令の内容の検討と並行して、財政当局など関係省庁とも相談をしながら検討を進めていきたいと考えております。

櫻井委員 これは、内閣総理大臣の方でやるところ、内閣官房で実際はされるんでしょうけれども、これは特許庁の外側ですからね。さすがに、ここの部分について特許特別会計に手を突っ込むというのはないと思いますので、是非これは一般会計の方でよろしくお願いします。

 それから、結局、これは政令で定めるから何件ぐらいになるか分かりませんというふうにおっしゃられるんですけれども、それだと、この先の体制、どういう整備が必要なのか、どれぐらい人を集めなきゃいけないのか、それから、それにどれぐらい予算がかかるのか、これもさっぱり分からないわけですよね。

 だって、特許出願は毎年あるわけですから。去年だって三十万件あったわけですよ。それを見たら、大体これぐらいがこの対象になりそうだなとか分かるものだと思うんですけれども、それすら出てこないというのは、それこそ、ざっくり、百件なのか千件なのか一万件なのか、それぐらいはお答えいただきたかったなというふうに思うんですが、多分幾ら聞いてもお答えは出てこなさそうなので、次の質問に移らせていただきます。

 それから、シングルユース、デュアルユースの技術、こういう話もございますが、このことについて、有識者の提言によれば、シングルユース技術のうち我が国の安全保障上極めて機微な発明を基本として選定すべきと言っている一方で、有識者の提言で例示されたレーザーウラン濃縮技術、これは原子力発電に関する技術ですから、デュアルユースの技術だというふうに思います。こういうふうに、やはりどうしても混在しちゃうんですよね。ですから、なかなか、絞り込むというのもそんなに簡単ではないということも、これは質問として用意していたんですが、ちょっと次に行かせていただいて、次、六十六条七項についてお尋ねをいたします。

 特許出願が内閣総理大臣に係属している間又は保全指定の期間において、特許法の四十八条の二、四十八条の三、五十条、これは適用除外にはなっていません。さらに、有識者提言五十一ページには、保全期間中に審査請求をして審査の手前まで手続を進めるという選択肢も残すべき、こういうふうに書いてございます。

 つまり、保全審査に付されていても、審査請求、特許法四十八条の三はできるのかどうなのか、それから、審査請求があれば審査は行われるのか、それから、拒絶理由通知、特許法五十条、これは行われるのかどうか。これは、条文上、読めば、できるというふうに見えるんですけれども、念のための確認です。お願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 特許出願人が、保全審査中に特許査定の直前まで手続を進めまして、特許査定の見通しを立てますとともに、指定解除後直ちに特許を受けられる状態にしておきたいと考える場合もございます。このため、有識者会議の提言でもその点に言及されているもの、このように理解してございます。

 そこで、出願人が実体審査を求めまして出願審査の請求をした場合には、これに応じて出願書類の補正のやり取りを行いますなど、最終的な査定の手前まで審査を進めることが出願人の保護に資するという観点から、出願公開及び最終的な特許査定又は拒絶査定の手続のみを留保し、それ以外の御指摘ございましたような手続は行える、このような制度とさせていただいているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 御答弁いただいて、よく分かりました。

 もう一点確認なんですが、そうなったときに、特許査定できそうだ、手前まで行っているということは、これは出願人にも分かるものなんでしょうか。つまり、いきなり特許査定とかという場合は、拒絶理由通知も何にも来ないから、普通、分からないんだと思うんですけれども、何か、これは特許査定になりそうですよとかという内示みたいなものをしてもらえるのかどうなのか、その点もちょっと併せて確認をお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのケースにつきましては、様々なケースがあると思いますので、一概にお答えすることは困難でございますけれども、重ねての答弁になりますけれども、出願書類の補正のやり取りなどを行わせていただきますので、そういった過程で出願人の方がいろいろな見通しを立てられるということはあり得るもの、このように考えてございます。

 以上でございます。

櫻井委員 大臣、これは、出願人にしてみたら、いろいろ手続をして待つわけですから、楽しみに待てるような環境、つまり、特許査定になりそうだったら、手前まで進んでいるんだから、何か新たな、まあ法律に書くことではないかもしれませんけれども、特許査定になりそうですよとかという内示みたいなものを出せると出願人にとって優しいかなと思いますので、その点、御配慮をお願いしたいということで、御要望申し上げます。

 あと、次に、六十七条、七十条に関連して、これもお尋ねしたいんですが、保全審査に関して、これは内閣総理大臣に対して出願人が手続することになっていますが、出願代理人、普通、特許出願は弁理士が代理をしておりますけれども、この内閣総理大臣への手続、弁理士が代理できるのかどうか、これについて教えてください。

小林国務大臣 これも櫻井委員にあえて申し上げるまでもないことですけれども、弁理士法四条一項に何が規定されているかといえば、弁理士の業務を、特許、実用新案などに関する特許庁における手続などについての代理事務と規定しております。

 この法案における保全審査の手続を担うのは、特許庁長官や経済産業大臣ではなくて内閣総理大臣でございますので、そういう意味で、この弁理士法四条第一項に定めるいわゆる専権業務には該当しませんが、弁護士法あるいは行政書士法など、他の法令に抵触しない範囲内であれば、弁理士がこの制度の保全審査等の手続に関与することが禁止されるものではございません。

櫻井委員 いや、ちょっとそこはすごい曖昧ですね。普通に特許出願をやっているわけですよ。最初は弁理士が代理人をやっていて、ずっと手続をやって、気がついたら特許庁から総理大臣の方に送られちゃっていたと。それで、何かいろいろ来たから、あっ、じゃ、これもよろしくねということで、普通、出願人は代理人たる弁理士にお願いしますけれども、その手続をやったら弁護士法違反とか行政書士法違反になるかもしれないといったら、これは手続できなくなっちゃいますよね。そこはちょっとさすがに明らかにしてくださいよ。

 多分、これは法案作業をやっているときに弁理士法の改正までは頭がいかなかったんじゃないかと思いますけれども、今日、特許庁長官、来ていただいていますよね。特許庁長官、ちょっと弁理士法四条を変えて、独占業務ではなくてもいいですけれども、標榜業務でも、この経済安保法の六十七条、七十条の内閣総理大臣の手続、これは弁理士ができるというふうに法改正した方がいいんじゃないですか。よろしくお願いしますよ。

森政府参考人 小林大臣がお答えになった御答弁のとおりでございますが、現行の弁理士法の規定では、他の法令に抵触しない範囲で弁理士が関与することは可能であり、例えば保全審査や保全指定後の手続に関する書類作成業務は行えないわけですが、相談業務に関与することは可能だと考えております。

 いずれにせよ、保全審査や保全指定後の手続の詳細は内閣官房国家安全保障局において今後検討すると伺っているところですので、よく相談してまいりたいと思っております。

櫻井委員 いやいや、できない業務があるというんだったら、やはりこれは困りますよ。

 ですから、じゃ、行政書士の方にこれは内閣総理大臣へ送られてからまたお願いし直すというふうになったら、お金もかかりますけれども、発明の内容を全部また一から説明しなきゃいけないというようなことにもなりますから、これは出願人にとっては相当不都合といいますか、不便ですよ。是非ここは弁理士が引き続き代理できるように、これはまだ法の施行まで時間があるわけですから、弁理士法改正、今からでも是非進めていただきたいということをお願い申し上げます。

 続きまして、六十七条の九項について質問させていただきます。

 「保全対象発明となり得る発明の内容を通知する」というふうになっているんですが、ということは、これは、特許出願の明細書に書いてある発明のうち、どの部分がこの保全対象発明なのかということをちゃんと教えてもらえるということなのかどうなのか。すなわち、これは七十三条一項で実施の制限がかかってくるわけなんですが、この部分はやっちゃ駄目ですよ、それ以外はやっても大丈夫ですよということを教えてもらえるのかどうなのか。

 更に言うと、有識者提言の五十一ページには、「分割出願することにより、その限度で通常どおり特許を受けられる道を残すべき」というふうにあるんですけれども、分割出願、特許法四十四条ですけれども、はでき得るのかどうなのか。これは条文上できないと書いていないから多分できるんだと思うんですけれども、したとして、分割出願して、その分割した新しい方の出願の中から保全対象発明を明細書から削除すれば、特許査定を受ける、そういう道を開くことができるのかどうなのか、ちょっとお答えをお願いいたします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、第六十七条の第九項で通知いたします保全対象発明となり得る発明の内容の具体的な示し方についてでございますが、こちらにつきましては今後詰めて検討していくことになりますけれども、特許出願人から見てどの発明の内容を指すのか分かるような形で通知をさせていただくという方向で検討させていただきたいと考えてございます。

 次に、実施の制限の範囲についてでございますが、保全指定された後の話でございますので、これは六十七条九項の通知の対象とはなりません。

 さらに、分割出願についても御指摘ございましたが、分割出願につきましては、特段、禁止する旨の規定を設けておりませんので、分割後の出願に保全指定がされた部分が含まれていなければ通常の出願と同等の取扱いになるもの、このように整理させていただいているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 今の答弁からすると、七十三条一項で実施を制限されている範囲は、じゃ、分からないということですか。

 何を実施しちゃ駄目で何は実施していいかは、この六十七条九項の通知では分からないということなんですか。これは出願人にとっては非常に困る話だと思うんですが、ちょっともう一回、そこの説明をお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 重ねての答弁になりますけれども、第六十七条第九項で通知させていただきます保全対象発明となり得る発明の内容の具体的な示し方、この点につきましては、特許出願人の方から見てどの発明の内容がその保全の対象となるのかということについて分かりやすい形で通知する、こういう方向で検討をさせていただきたいということでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 じゃ、分かりやすく通知してもらえるから実施しちゃいけない範囲も分かるはずだし、逆に言えば実施していい範囲も分かるはずだということで、これはそういう運用にしていただけるということでよろしいですね。はい、確認させていただきました。ありがとうございます。

 続きまして、保全対象発明の内容通知、六十七条九項で通知した後、六十八条に関連することなんですが、これは七十条で保全指定されるわけですが、その前であれば特許出願を放棄したり取り下げたりすることはできるのかどうなのか、特許出願を取下げなどすれば発明を公開したり実施したり譲渡したりすることはできるのか。また一方で、六十七条十項で求められている書類を提出しなければ六十九条四項で特許出願は却下されるということになっていますが、却下された特許出願に記載された発明は公開したり実施したり譲渡したりすることはできるのかどうなのか。

 つまり、八十三条とか八十四条で技術情報の保護を厳しく規定して、これも秘密にしますよといって、がちっと固めているわけなんですけれども、一方で、特許出願を取り下げちゃったらその後は特に縛りがないという状況になってしまいますから、ある意味、すり抜けというか、漏れてしまうことになりはしないかというふうに心配をするんですが、この点、ちょっとまず条文解釈を教えていただいて、穴が空いているのではないのかという問題提起についてのお答えをお願いいたします。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、保全対象発明となり得る発明の内容の通知の後であっても、保全指定の前であれば、委員御指摘のとおり、特許出願の放棄、取下げというのは可能となっている、そういうたてつけになっているんです。また、保全指定の前に特許出願を取下げなどした場合あるいは却下された場合に、発明の公開や実施あるいは譲渡については制限しておりません。

 それで、穴があるかどうかという御指摘だったんですけれども、この法案で創設する特許出願の非公開に関する制度というのは、あくまで、安全保障上機微な発明であっても特許出願されてしまうと国の手で一律に公開せざるを得ないという問題に対処する制度でございます。特許出願がない場合や却下された場合、あるいは取り下げられた場合の情報管理というものは本制度の射程外でございます。

 さはさりながら、技術流出の問題というのは、当然、経済安全保障上重要な話であって、これは今回のこの特許出願の非公開制度一つでもって達し得るものではございません。多様な技術流出の実態に応じて、例えば、既に今措置を講じつつありますけれども、外為法に基づく投資管理の強化ですとか、この五月から実際に発効しますけれども、いわゆるみなし輸出というものの管理による技術情報の管理、また、大学、研究機関における研究インテグリティーの自律的な確保、また、留学生や研究者などの受入れの審査の強化など、複合的な施策によって包括的に行っていくべきものと考えております。

櫻井委員 大臣おっしゃられるとおり、今回の法律の射程外、つまり塞いでいないということの答弁だというふうに思います。ただ、これは、じゃ、どうやって塞ぐのかと言われると、なかなか難しいところがあろうかと思います。

 ただ、これは、ある種ちょっと悩ましいのは、六十七条九項で、ないしはこうやって保全指定の通知が来て、しかしその後、取下げなり特許出願が却下されたということになると、指定を受けたというのがある種、箔づけになっちゃうかもしれないんですよね。そんなすごい技術ですよと箔づけを受けたということをもって高く売れるかもしれないというふうに考える人がいてもおかしくないというふうに思いますので、ここはここで何か別な方策を考えなきゃいけないというふうに思います。

 これはちょっと七十三条一項、二項に関する質問なんですが、保全対象発明、これは国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれの大きい、そういう発明でございますが、これぐらいインパクトのある重要な発明をしても、単に実施を制限されるとかということだと、がっかりしてしまうかもしれないと思うんですね。ですから、そういった制限の部分ももちろん必要なんですが、それと併せて、そういうすごい発明をした人をもっと応援するような、元気が出るような、そういうものも必要だと思うんです。

 ただ、それはこの第五章の射程外だとおっしゃるかもしれません。そのとおりだと思います。でも、射程外ですけれども、何かそういうすごい発明をした人を応援する、研究の助成金を出すとか国の共同研究をやるとか、いろいろなことをできるような仕組み、また、そういうことを相談していくための政府の窓口、担当部署をつくっていくということも必要だと思うんですが、この点、大臣、いかがお考えでしょうか。

小林国務大臣 先生のそのお気持ち自体は承りました。

 その上で、保全指定の対象となる発明なんですけれども、これは産業への影響も考慮して選定することとしておりまして、通常であれば、発明者自身が機微性を認識して、秘匿の必要性を感じるような発明に絞り込んでいくことが想定されるところでございます。

 したがいまして、この制度は、研究開発支援のようなインセンティブを伴わなくても発明者のモチベーションを損なうものではなくて、むしろ、先ほど御説明させていただきましたが、これまで安全保障上の観点から特許出願を自ら自重していた発明者に安全保障上の不安を抱かせずに特許出願をする道を開くことになりまして、そうした方にとってはモチベーションの向上につながるものと認識をしております。

櫻井委員 あと、ほかにもちょっといろいろな、これは現時点で塞ぎようのない穴かもしれませんけれども、例えば特許出願の中では、新規性の喪失の例外ということで、既に公開したものを特許出願することもできる。しかし、それがもし保全指定を受けるような内容のものだったらどうなるんだろうとか、そういうものを後で非公開にしても意味がないよなとか、ちょっといろいろな課題があるのではなかろうかというふうには思います。

 ただ、そうした事例は、まあ、そんなにたくさんあるわけじゃないよということかもしれませんので、ちょっと次に行かせていただいて、七十八条一項、それから八十条に関連する質問をさせていただきます。

 七十条の保全指定を受けると外国出願が事実上できなくなる、そうしますと、外国で特許を取得できれば得られたであろう利益について補償していただけるのかどうか、この点、端的にお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 特許出願の非公開制度の損失補償につきましては、第八十条の規定によりまして、保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償することとさせていただいているところでございます。

 このため、国内での損失に限らず、外国で特許権を取得できれば得られたであろう利益につきましても、損失の発生及び保全指定により外国出願が禁止されたことと損失の相当因果関係が仮に認められるのであれば、補償の対象になり得るものと考えているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 対象になり得るということなんですが、相当関係があるとかといういろいろな限定がついちゃって、立証するのが大変で結果的に補償を受けられないとかになっちゃうと、これはまた出願人にとって相当不利益になってしまいますし、外国で特許ということになると幅が随分出てきそうなので、なかなかこれはまた難しい課題が残っているということを指摘をさせていただきます。

 それから、もう一つ七十八条一項関連で質問ささせていただきます。

 有識者の提言の五十三ページには、外国で出願をするには国内出願後おおむね六か月程度で明細書の翻訳等を発注しなければならないことから、その時点で二次審査、保全審査のことですけれども、の結論が出ていない場合、最終的に保全措置の対象となれば、外国出願が実現せず費用のロスを生じることとなる、こういう指摘があります。

 この費用のロスは、そんな十か月も待っていられないよということで外国出願の準備をして翻訳代とかいろいろかかったこの費用のロスは、補償対象になるんでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました費用のロスについてでございます。

 ケース・バイ・ケースになりますので、確たる御答弁を差し上げるというのは困難でございますけれども、仮に通常生ずべき損失として認められる場合には補償の対象となり得ますが、有識者会議でも御提言いただいておりますとおり、こうしたロスを少なくするためにも手続の迅速化に努めていくということが必要であると考えてございます。

 以上でございます。

櫻井委員 いや、これはやはりちゃんと補償してもらいたいなと。

 領収書等、この部分についてははっきりロスの金額は分かるわけですから、是非お願いしたいなというふうに思いますとともに、今おっしゃられたとおり、迅速に保全審査をやりますということなんですが、ただ、特許出願、今は大分解消されておりますが、渋滞していて、審査請求してから二年間ずっとほったらかしみたいなことも過去にはあったわけですよね。今回は、何件対象になるか分からない、またここで渋滞しちゃったら十か月ぎりぎりになっちゃうかもしれない、そういう心配もあるものですから、確認をさせていただきました。

 それから次に、七十九条一項で事前確認というのがございます。

 外国出願をしようとする場合にこの事前確認ができるということなんですが、これは必ず外国出願をしなければいけないのか、また、出願済みの国内出願について事前確認することができるのかどうなのか、これも教えてください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法案第七十九条の事前確認は、外国出願をしようとする者が確認を求めることができるということを規定させていただいております。

 一方で、事前確認制度におきましては、外国出願の禁止に該当しない場合であっても外国出願をすることを義務づけるということまでは規定しておりません。

 以上でございます。

櫻井委員 それから、この七十九条一項で、弁理士は外国出願をしようとする者の代理をすることはできるんでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 第七十九条の事前確認制度における確認の求めは、特許に関する特許庁における手続でございます。弁理士は当該手続の代理をすることが可能であると考えているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 それから、八十条三項で、損失補償の金額の算定なんですが、特許権の侵害訴訟でも損害額の算出をするのは結構難しいわけなんですけれども、今回の場合は、特許になるかどうかも分からない発明について損失を算出するということになりますから、更に難しいということになります。

 これはどうやって計算するのか、また、申請の時期、いつまでに申請してくださいとかいうこともあるのかどうなのか、この点についても教えてください。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 補償が生じる典型的なケースといたしましては、発明の実施許可を与えず、製品の製造あるいは販売などができなくなるケースが想定されるところであります。

 この場合、特許出願人は、まず、保全対象発明の実施を行うため、実施に関する事業計画などを提示をし、保全対象発明の実施の許可申請をすることとなります。

 また、許可申請を受けた総理大臣は、特許出願人から計画の詳細を聞いて、実施によって保全対象発明の漏えいリスクが高まる場合には不許可とすることとなります。

 ここで保全対象発明の実施が不許可とされれば、その後、特許出願人は、許可申請時の計画を基に補償金額を算出をして、自己の受けた損失の補償を請求することが想定されます。

 このとき、請求を受けた側の内閣総理大臣は、特許出願人から説明を聞くほか、専門家の意見も聞きながら妥当な補償金額を決定する、そういうプロセスとなっております。

櫻井委員 これは多分、今聞いても、もうそれ以上お答えしようがないと思うんですけれども、ただ、出願人からすると、どれだけ補償されるのかさっぱり分からないということですので、是非、今後、政令等で指定するにしても、手続を明確化していただきたいということを要望させていただきます。

 それから、今度は、損失補償のお金はどこから出てくるのかということで、財源の話です。

 これは一般会計から当然出すものだと思いますが、まさかまさか、特許特別会計から出すなんていうことにはならないですよね。

小林国務大臣 特許特別会計は、特許特会は、産業財産権制度の利用者による負担を明確にして、当然、歳入と歳出が均衡して運営されることを確保するために創設された特会です。

 これに対して、特許出願の非公開制度における損失補償制度は、安全保障の観点から保全指定を受けた特定の特許出願人が受けた損失を補償するものでございます。

 いずれにしても、損失補償の財源はどの会計から捻出すべきか、その点につきましては、特許特会として産業財産権制度の利用者一般に転嫁すべき性質のものか否かという点も踏まえまして、財政当局と相談していきたいと考えます。

櫻井委員 それはまだ特許特別会計から出す可能性があるということですか。ちょっと、特許庁長官、これはいいんですかね、こんなことで。

 特許庁長官、ちゃんと特許特別会計を守ってもらいたいと思うんですが、いかがですか。

森政府参考人 小林大臣の御答弁のとおりでございますが、まずは、NSS、国家安全保障局とよく相談いたしまして、そして、財政当局等と議論してまいりたいと考えております。

櫻井委員 これは、出願人が負担するような性質じゃなくて、やはり我が国の、国民の安全保障のためですから、国全体で負担するべきだということを申し上げて、次、ちょっとこれは多分時間がないので、最後の質問になろうかと思います。

 先ほど、事前確認のところで、七十九条のところで質問させていただきましたが、外国出願をするときには事前確認するとか、そういうことができるということになっていますけれども、これは、出願段階で相談する、そういうニーズももちろんありますけれども、研究者、出願人からすると、そもそも、研究開発をする段階で相談して、こういう相手と共同研究をこういう内容でやっちゃって大丈夫なのかどうなのか、そういうことも含めて相談したいというニーズがあろうかと思います。

 これはもしかすると第五章の射程外ということかもしれませんけれども、やはり、この法案全体で考えたときに、研究する前段階からきめ細かく相談できる、そういう窓口が必要だと思うんですが、大臣、これは是非設けていただけませんか。

上野委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法全般の運用につきましては、様々な疑問も産業界にもおありかと思います。そういった御質問、相談には丁寧に対応するということで心がけてまいりたいと考えてございます。

 以上でございます。

櫻井委員 この経済安全保障法案というのは非常に重要な法案だと思いますので、是非、中身を詰めて、そして本当にスムーズに実施できるものにしていただきたいということをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

上野委員長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 先日、本会議において総理の方に、我が党の問題意識、この経済安全保障に関する質疑をさせていただきましたが、今日は、担当大臣ということで、改めて小林大臣の御所見をいただきたいということと、それから、答弁内容について不十分だった点について改めてお伺いさせていただきたい、このように考えております。

 我が党は、この法案審議に先立ちまして、大臣提言という形で六項目の提言を政府の方に出させていただいております。

 その大前提となる問題意識という中に、今、今日ちょうどゼレンスキー大統領が我々に向かって演説をするということになっておりますが、ロシアのウクライナ侵攻に当たって、ロシアがハイブリッド戦争ということを行ってきていると。このハイブリッド戦というのは、二〇一四年のクリミア危機から世界に広まった新しい戦争の概念ということで、戦争行為を、軍事だけではなく、経済制裁のよりどころともなる貿易、金融、資源、経済援助といった経済分野に加えて、外交、サイバー、情報といった、非軍事、超軍事領域まで拡大して捉える考え方ということだと承知しております。

 この中で、特に経済戦争という言葉が最近言われておりまして、例えば、今回、ロシアの経済制裁に関しても、SWIFTからの排除ということで、今ロシアはデフォルト寸前の状況になりました。かつては経済制裁というのは極めて時間がかかるものだという認識を持っている方もいたと思うんですが、これだけ即効性のある経済制裁を行うことができる。

 また、もっと直接的な方法を、今回は取りませんでしたが、アメリカのFRBが持っている、日銀も含む各国の銀行口座を凍結すれば、これは両替ができなくなるわけですから、SWIFT以上の効果ができる。

 ハイブリッド戦という定義の中での経済戦争ということに焦点を当てると、そういったSWIFTの排除あるいはFRBの資産凍結というのは、これは経済戦争における核兵器である、こういう表現をする方もいます。

 また、中国は、このハイブリッド戦、超限戦という形で、軍事、非軍事、超軍事という中で、いつから戦争が開戦したのかというこの定義が極めて曖昧になっている。相手国を経済的に依存させるという行為を少しずつ進めている段階からもう戦争は始まっている。こういう定義で考えている中におりますと、例えばユーラシア・グループのような地政学を専門に研究するグループなんかの中では、将来の、未来の人々が学ぶ教科書の中には、二〇二二年の現在がもう既に第三次世界大戦が始まっていたと記されるだろう、こういうふうに言う方もいるというような状況になっております。

 そういった中において、このウクライナの状況も受けて、経済安全保障というのは、経済制裁にも直結します。またあるいは、それを防ぐための手段としても極めて重要なものです。我が国の安全保障として捉えるべき問題であり、また、これからの世界がどうなっていくのかというビジョンなしにはとても語れるものではない、このように我が党としては考えているわけですが、これは総理にも伺った内容ですけれども、そういった経済安全保障、これからしっかりと我が国の国民の生命と財産を守っていく、そのための安全保障の一環として行っていくためのビジョンについて、小林大臣の御所見をお伺いできればと思います。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 絶えず変化する国際情勢や厳しさを増す安全保障環境の下で、政府としては、まず法案の成立に全力を挙げるとともに、今後の情勢の変化を見据えて、更なる課題についても不断に検討を進めつつ、引き続き経済安全保障の強化に励んでいきたいと思います。

 今委員からは経済制裁という話ですが、それを受ける側の視点とかいろいろありましたけれども、これまでも委員と議論させていただく中で、私が経済安全保障の確保で極めて重要だと思うのは、やはり他国の動向に右往左往しない。それは、アメリカ、中国、ヨーロッパ、ほかの国というのは一つの変数であって、まあ大きな変数であったりもしますけれども、そうではなくて、まず我が国としての基軸となる考え方をどうするのか、そこをしっかりと打ち出していくということが私は経済安全保障上極めて重要であって、これは、総理がおおむね一年をかけて国家安保戦略を含めて三文書を改定していくというふうに言っておりますから、そうした中でしっかりと検討していく課題だと思います。

 その中で、その自分の基軸をやはりしっかり持つ観点から、経済構造の自律性を確保し、技術などの他国に対する優位性、あるいはそれを磨いて国際社会における不可欠性へと変えていく。弱みを解消し強みを磨くこと、獲得することによって、国際社会の中での立ち位置をしっかりと強化をし、我が国の国益にかなう形での国際秩序や国際ルールの形成に、より主体的に参画をしていく、これが重要だと思っています。

 ビジョンというお尋ねがございましたけれども、我が国としては、これまでも、自由で公正な経済圏の拡大、あるいはルールに基づく多角的貿易体制の維持強化を推進してきたところでございますけれども、我が国自身の取組や同志国との連携強化などを通じまして、グローバルなサプライチェーンの脆弱性や、国家や地域間の相互依存リスクの顕在化、国家及び国民の主権や利益を害する経済的な威圧などの課題に対処をし、国際経済秩序の強化を図っていかなければならないと考えております。

青柳(仁)委員 ありがとうございます。

 是非、そういった大きなビジョンの下でどういった施策が必要であるかということを考えていっていただくことが必要だ、このように考えております。

 また、今大臣の答弁の中にありましたけれども、我が国として、どこをどのように守ることによって、どの国がどんな状況にあるということに右往左往しない、そういう盤石の体制をつくり上げていくということがやはり大事だと思いますので、是非その点についてはこれからも政府の一層の努力を求めたい、このように考えております。

 そういった中で、経済安全保障の定義についてお伺いしたいと思うんですけれども。

 我が党としましては、政府に提出した緊急提言の中で、これからの世界は、我々が望むと望まざるとにかかわらず、これは緩やかなブロック経済になっていかざるを得ないだろう、このように考えております。中国やロシアといった懸念されるような国から、半導体であるとかあるいは基幹物資、基幹インフラというものを、これからも経由させて手に入れるということは難しいだろうと。ですから、どういった地域、国からどういったものを我が国の安定と繁栄のために輸入し、あるいはそこを通して生産を行っていくことが正しいのか、こういうことを考えることが経済安全保障であろう、こういう定義の中でどんな施策が今必要かということを考えるべきだ、こういうことを申し上げてきました。

 今回の施策は、四分野あるわけですが、やはり、四つのそれぞれの違った施策をただ持ってきたというような印象が拭えないわけなんですけれども、その中で、総理の方にどういった定義を考えているのかということを伺ったところ、いろいろな、絶えず変化する国際情勢や厳しさを増す安全保障環境を踏まえどうのこうのという話がありまして、最終的に経済安全保障の中心にある考え方については御答弁をいただきました。また、今回の法案は、そうした中心にある考え方を踏まえて、新しい課題への取組のうち、法制上の手当てが必要な喫緊の課題に対応するものである、こういう答弁だったんですが、やはり、先ほど小林大臣がおっしゃったような、大きなビジョンの中でしっかりとした安全保障体制をつくっていくという中でこの四つの施策はどうあるべきか、これを、こういった大きな絵姿を政府として持つ必要があると思うんです。

 現状、定義がないのは分かりました。ただ、小林大臣の考えている経済安全保障の定義、これは個人的な御所感で構いませんので、そちらについて教えていただければと思います。

小林国務大臣 経済安保について、これは多岐にわたる新しい課題でございますから、我が国を含めて、主要国において何か決まった画一的な定義というものがあるわけではない。これは、特段定義づけするかどうかというのは別として、多くの国民の皆様に分かりやすく伝えようとすると、私は、一般に、国家国民の安全を経済面から確保していくことだと思っています。

 今、現行の国家安全保障戦略があります。そこに幾つか国益というのが並べられていて、一つは、国家の主権、独立、あるいは国民の生命、身体、財産を守っていくこと、これが一つの国益。二つ目は、経済的な繁栄を実現していくこと、これが二つ目。三つ目が、基本的な価値観やルールに基づく国際秩序やルールの形成、これをしっかりと擁護をし強化をしていく、これが三つ目の国益なんです。私は、本当に分かりやすく言うと、そういう国益を経済的手段や経済面から確保していくことだと思っています。

 ただ、具体的に本当に定義をどうするかというのは、これは、国家安保戦略も改定していく中で、そういう検討の中でも、経済安保の視点をどう位置づけていくかというところは議論しなきゃいけないというふうに思っています。

 ただ、今日の委員会の冒頭でも申し上げましたけれども、午前中にも申し上げましたけれども、例えばアメリカの国家安保戦略、今のバイデン政権であれ、あるいはその前のトランプ政権であれ、その関連の文書にはエコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーというふうに書いてあって、それを特段何か定義づけるとか、そうではなくて、そういう基本的な考え方や理念というものを打ち出している。そういう意味では、他国とも共有できる部分はあるんだろうというふうに思っています。

 そういう中で、国家間のパワーバランスは変化していくし、経済はグローバル化していく、サプライチェーンも多様化する、デジタル化が進んでサイバーの脅威も増えていく、革新的な技術も出てくる。そうした世の中の様々な変化の中で、これまで外交、防衛というものがどちらかというと中心に、そういう手段にフォーカスが当たっていましたけれども、それに加えて経済上の措置も講ずることによって幅広い課題に対処する必要性というのが出てきているんだろうと思っております。

 したがって、総理からも基本的な考え方ということで、いつも、自律性と優位性、不可欠性、秩序、ルールということを申し上げているんですけれども、この基本的な考え方というのは私は極めて重要だというふうに思っておりまして、これについてはしっかりと政府全体で共有をしながら、この経済安保の強化に努めていきたいと考えています。

青柳(仁)委員 今御答弁いただいたとおり、ビジョンであるとか定義であるとか、そういった大きな視野でもって、どのような経済安全保障政策を行うことによって国民の生命と財産が守られるのかということを、最終的な目的ですよね、ここをしっかりと持った上で、施策について是非考えていただきたいと思うんです。

 今回の法制度が四つの施策にフォーカスしたものであるということは理解しておりますけれども、我々はこれで十分だと余り思っていないわけでして、たくさんの穴がきっと生じるであろう、また、様々な、今、揺れ動く国際環境の中で、一旦その穴を塞いだつもりでいても、また新しいところに隙が生まれるということが、これは往々にして当然ありますので。

 先ほど大臣の御答弁がありましたとおりですが、これから防衛三文書も、今年度中に改定されていくことになると思いますので、そういった我が国の安全保障の全体の議論の中で、今回のこの法制あるいは経済安全保障というものをどう位置づけ、また有機的に統合していくかということについて、是非、政府の方で総体となって、全体としてお考えいただければ、このように考えております。

 次に、ちょっと各論に入らせていただきたいんですけれども、これも本会議で総理にお伺いした点ですが、今回の経済安全保障の法制の中で、対象となる物資、役務、技術等の選定の際に、我々はやはり、恣意性を持った判断ということが働くのではないか、行われるのではないかということを非常に心配しております。

 やはり、どういった技術、あるいはどういった企業や製品、サービスというものが経済安全保障の対象になるのかということを選定するプロセスは、今回の法案の中にはそれほど細かくは指定されていないわけです。さらに、その詳細に関しては政令で定めるということになっておりますので、最終的には政府の判断、その場で行う人たちの判断ということになるわけなんですが。

 総理の御答弁、同じ質問を聞いてみたところ、この法案においては、措置の対象となる物資、事業、技術分野等は政令などの下位法令で定める仕組みとしていますが、その要件は法律上可能な限り明確化していますと。確かに、法案を読むと、一生懸命明確化しているところは非常に分かります。

 その上で、対象物資は、有識者の意見を聞いて制度ごとに策定する基本指針において、考え方を明らかにした上で定めることとしていると。これも、法案上の、法案作成時にこちらからも様々な提言をさせていただきましたけれども、様々な工夫が見えるところではあるんですが、その後の答弁が問題だと思っていまして、恣意的な判断が可能な構造とはなっておらずと。いや、これは可能だと思うんですよね、どこまでいっても。また、恣意的な判断が行われることはありませんと言うんですが、これは、恣意的な判断が行われることがないということはあり得ないというふうに思っております。

 ただ、これはどこまで追いかけても、法律上これを細かく制定したから恣意的な判断がされなくなるということはないと思うんです。ですから、最後は、やはり、政府の意思決定者、責任者である小林大臣や、あるいは総理といった最終政策責任者が、こういった恣意的な判断は絶対に起こさせない、こういう決意を持ってこの経済安保法案が成立した際には運用をしていく、こういう決意が聞きたいわけなんですけれども、この点について大臣の御所見をいただけますでしょうか。

小林国務大臣 委員の問題意識というのは私も共有させていただきます。

 その上で、各制度の措置の対象となる物資、事業、技術分野などにつきましては、御指摘のとおり、政令などの下位法令で定めていきますが、今、政府が一生懸命作ったというふうにおっしゃっていただきましたけれども、できるだけ明確化しようということで、この法案の中には書き込みまして、例えば物資につきましては、要件を法律上明確に示しております。事業につきましては、法律上の要件の下で、法律上に限定的に列挙する十四事業の中から定めていくという、外縁を定めている。また、技術分野につきましても、法律上の要件の下で、国際特許分類などをもって定めることとしておりまして、可能な限り、下位法令で定める事項の要件を法律で明確化しております。

 本来であれば、それは法律にがちっと書けるのがいいんでしょうけれども、委員御指摘のとおり、やはりこれだけ世の中の国際情勢の変化が速い中で、行政の機動性、柔軟性というものも一定程度やはり確保していく必要があるということで、こうなっています。この下位法令につきましては、有識者の意見を聞いて制度ごとに策定する基本指針において、考え方を明らかにした上で定めることとしておりまして、その意味で、恣意的な判断が行われない仕組みということになっております。

 この法案は、経済界、アカデミアなどの様々な分野の有識者から成る会議でいただいた提言も踏まえて、自由な経済活動の両立、また予見可能性への配慮、こうした制度設計を行うこととしておりまして、物資、事業、あるいは技術分野を決めるに当たっては、この法案の仕組みの下で、客観性や公平性の確保に留意して実効的な取組を進めていきたいと思いますし、委員が恐らく恣意性ということで御懸念されるのは、本来支援すべきでない対象に対して、何らかの形で不必要な支援が行ってしまうのではないかというような御懸念だと拝察しますけれども、そういうことが決して起こらないように、あくまで国益の視点に立って国民の命と暮らしをしっかりと守っていくという観点から、担当大臣として制度設計をやっていきたいと考えています。

    〔委員長退席、平委員長代理着席〕

青柳(仁)委員 是非、今おっしゃったとおり、法律、政令は万能ではありませんから、最終的にそのルールに従って選定を行う、あるいは経済安全保障上の施策を行っていく際に、その担当の方々が高い自律性、それからしっかりとしたプライドを持って、恣意的なことを行わないということを是非大臣としてもしっかりと監督をしていただきたい、このように考えております。

 次に、一般的なサプライチェーン事業者への罰則について。

 この点は、我が党として極めてこだわっている点でもありまして、これは、罰則なしで経済安全保障のこの各施策に協力する事業者というのは我々はいないと思っているんですけれども、今回、様々な施策の中には罰則というのはあるんですが、この一般的なサプライチェーンですね、政府との協力関係にある事業者ではなくて、政府が経済安全保障上問題がある、ありそうだというような事業者に対する情報提供をお願いした場合の罰則というのがないということになっています。

 これについては本会議でも指摘をさせていただいたんですけれども、そのときにいただいた御答弁が極めて納得感のないものになっておりまして、ちょっと今読み上げさせていただきますと、サプライチェーンの調査については、本法の規制や支援スキームの枠組みに入っていない業者も対象とするため、調査を拒否した場合の罰則は置かず、事業者からの回答を担保できるよう努力義務規定を措置することとしておりますというお答えだったんですけれども、これは別に、前後の文章がつながっていないんですね。

 本法の規制や支援スキームの枠組みに入っていない業者を対象とするために、別に努力義務である必要はないと思うんです、別に罰則であったとしてもこれは対象にできると思うんですが、まず、この点について教えていただけないでしょうか。

小林国務大臣 今委員から紹介いただいた答弁のとおりで私も答えようとさせていただいているんですけれども、これは、今回の法案のこの規制あるいは支援の枠組みに入っていない事業者も対象として努力義務規定を措置することにしております。逆に言うと、その支援のスキームに入ってこられた方には、一定の規制をかけさせていただいて、違反したら罰則というものもかけさせていただく、その実効性を担保しているところでございます。

 関係者の方々、これは無数にいらっしゃるわけです、比較的規模の大きな企業もあれば、本当に個人でやられている方たちもいらっしゃる。そういう関係者に情報提供の必要な協力を求めることができる旨の規定を置いているんですけれども、国内法体系における同様の他の法令の規定ぶりも踏まえて、こうした規定にさせていただいています。例示をさせていただくと、産業振興を目的とする法律であれば、例えば、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律におきまして、罰則を設けない調査規定が行われているところでございます。

 その上で、サプライチェーン調査を行う場合には、例えば、事業者や関係団体などに本調査の重要性や趣旨、目的、あるいは調査の趣旨と目的に合わせた適切な調査対象の絞り込み、また、国家公務員がサプライチェーン調査を通じて知った民間事業者の機微情報を漏らした場合には通常の秘密漏えいよりも重い罰則を設けるなどして情報管理体制を整備していること、こうした点をとにかく丁寧に説明をして、より多くの事業者の方に回答いただくよう働きかけていくことで理解を求め、調査の実効性を確保していきたいと考えております。

青柳(仁)委員 今いただいた御答弁が納得がいかないので聞かせていただいているということなんですが。

 要は、様々な罰則がこの四分野に入っているんです。その中でサプライチェーンに関して今申し上げているわけなんですが、サプライチェーンの一般的な調査、ここに罰則がないというのはどういうことを意味するかというと、これは、実際に経済安全保障上問題のある活動を行っている事業者がこの法案に基づいて政府から調達先などの情報提供を求められたときに、断っても罰則が適用されないということを意味しているわけなんですね。ですから、そうした悪意を持つ事業者が、この法案の定める努力義務のみで政府に対する情報提供を自発的に行うとは我々はとても思えないわけなんです。

 今の御答弁もありましたけれども、ちょっと再び同じことを申し上げますが、今、大臣の答弁も総理のときと同じだったので、もう一回言わせていただきますが、その御答弁の中では、サプライチェーンの調査、これに関して、本法の規制や支援スキームの枠組みに入っていない業者を対象とするために努力義務にしたと。これはやはり理解できないんですけれども。これは別に罰則があっても対象にできると思うんですけれども、ちょっともう一度お伺いできますか。

    〔平委員長代理退席、委員長着席〕

小林国務大臣 委員がおっしゃる悪意を持ったという方がどういう方かというのはちょっとつまびらかに分からないんですけれども、こちらからすると、悪意を持っているかどうかというのはなかなか分からないわけであって、先ほど申し上げたとおり、この法案の枠組みに入ってこない方、すなわち、この重要物資を安定供給しますよということで、そういう手を挙げる方じゃない方たちですよね、例えば個人の方とかもいらっしゃる。そういう方たちに調査をさせていただいて、ちゃんと答えなさいよ、答えなかったら罰則ですということが本当にこの日本の社会に合うかどうかというところは、私はしっかり考えるべきだというふうに思いました。これは中でもいろいろ議論したんですけれども。

 それで、例えば、今委員がおっしゃるように、サプライチェーンの調査をして、回答を忌避された方に対して罰則を科すことにつきましては、先ほどから申し上げている有識者会議の議論におきましてもこれは議論になりまして、そこでは、比例原則、すなわち、規制対象の違反行為と罰則には均衡が保たれなければならないという一般法理がありまして、この比例原則の観点から、調査忌避に罰則を科すことは重過ぎるのではないかといった趣旨の指摘も受けておりまして、総合的に勘案した結果、罰則の対象としないことが適当だと考えたわけであります。

青柳(仁)委員 研究会の調査報告、検討というのは分かるんですけれども、やはり冒頭申し上げたとおり、これは安全保障ですので、最終的にこの実効性が担保されなかったら、我々の、国民の生命と財産が脅かされるということになります。

 先ほど大臣が、関係ない方々に聞くときに罰則を科するのはどうかということをおっしゃったんですけれども、まずこれは、関係ない人に聞くことはないですね。これは限定的に、やはり対象を絞ってやるわけですから、ある程度怪しい人たちに聞くわけです。

 それから、なぜ聞くのかということについて、ちょっとその目的を教えていただけますか。一般サプライチェーンの調査について、そういった、今政府との協力関係にない方々に対する、情報提供を行う目的は何ですか。

小林国務大臣 それは、先ほど来申し上げているとおり、我が国の国民の命と暮らしを守るに当たって、特に重要な物資、これを平時から、常にいかなるときであっても安定供給し得る体制をつくらなければいけないということで調査をするわけであります。なので、決して怪しいから調査をするというものでもないんです。そこは御理解いただければと思っていまして、また、サプライチェーンの調査をするに当たって、努力義務ということで、法的にはそういう担保をさせていただいています。

 その調査、ある事業者の方に答えてもらうだけではなくて、その前に、ほかにも例えば様々な公的な統計ですとか調査結果、データがありますから、そういったものも駆使をしながら、できる限りその全体像を把握していくということであります。

青柳(仁)委員 今、調査を行う目的は悪意のある事業者を見つけ出すわけではないとおっしゃったんですけれども、それはそう、それはそうというか、そういう目的も私はあると思うんですが。

 ただ、そういう目的じゃなかったとしても、今大臣がおっしゃったとおり、こういうサプライチェーンが我が国にとって極めて重要なのかどうか、脆弱なのかどうかということを判断するに当たっては、正確な情報が手に入らなければならないと思うんですね。そういう正確な情報が、その辺で買えるような、あるいは調査レポートだとか、コンサルタントが調べてくるようなものでできるんだったら、こんな法律は要らないわけですよね。

 政府がわざわざ聞かなきゃいけないというのは、こういう手段でないと手に入れられない情報であるからであって、その情報であるにもかかわらず罰則がなかったら、じゃ、ごまかしがあるかもしれない、あるいは拒否されるかもしれない。その場合は、今大臣がおっしゃった目的である我が国の国民の生命と財産を守るための措置としてのサプライチェーンというものの実相の姿が見えてこないということになるんですけれども、この点についてはどう思われますか。

小林国務大臣 それは、先ほど来の繰り返しになるんですけれども、先ほど比例原則というものに言及させていただきましたけれども、この比例原則の観点から、今回、調査忌避の方々に罰則を科すことは重過ぎるのではないか、そういう有識者会議からの指摘も踏まえまして、そこはそのとおりなんだろうということで、総合的に勘案した結果、今回は努力義務、法律に全く何も書いていないわけではなくて、ただ努力義務ということで法律は明記をさせていただいた。

 当然、それは一から百まで全て知ることができればそれにこしたことはないんでしょうけれども、事業者に対する調査だけではなくて、先ほど申し上げた公的な統計ですとか政府の中にあるデータとか、様々な情報を駆使をしながら、できる限り、本当に重要な物資のサプライチェーンというものを可能な限り把握していく努力はするということは御理解いただければと思います。

青柳(仁)委員 私の方で繰り返し申し上げさせていただいているのは、比例原則よりも国民の生命と財産の方が大事だということを申し上げているんです。

 法律を作るに当たっての一般論であるとか、あるいはその中での軸よりも、今回、経済安全保障、我々はこの四分野を行っただけで十分だとは全く思っておりません。ほとんど丸裸であるような日本の経済安保に、ある程度薄着を着せる程度のものだと思っておりますが、それですらこんな罰則もつけられないようでは、とてもちょっと、経済安全保障として十分な仕組みがつくれるとは思えないということを申し上げているんです。

 もう一つ、同じことなんですけれども、この答弁の中に、先ほどお話がありましたが、国内法体系における同様のほかの法令の規定ぶりをも踏まえているということで、先ほど例として産業とか流通とかという話があったんですけれども、流通の話と経済安全保障の話というのは全然違うもので、それを事例に挙げること自体が、私は安全保障として本当に考えているのかなという気がするんですが、その点についてはいかがでしょうか。

小林国務大臣 まず、今回、四項目について、ただ薄着を着た程度というふうにおっしゃられて、まあ、そうなのかもしれないです。ただ、逆に言えば、これまでそれだけ日本の取組が進んでいなかったということです。

 あと、本日の審議でも何度か繰り返し申し上げさせていただきましたけれども、この法案というのは、非常に重い位置づけを持って私たち政府としても覚悟を決めて出させていただいていますが、これが経済安保全てだとは申し上げておりません。法整備しなくてもできることというのはあるし、現実に、技術流出防止対策というのはこの数か月間の間にもいろいろな手を打ってきていますし、そういう意味でこの法案というものを見ていただければというふうに思います。

 また、国民の皆様の生命財産というのを守っていくということは当然重要だと思っております。単に物の流通と比較するのが正しいのかと言われれば、そういう御意見もあろうかと思いますけれども、まずは、まず一歩今回踏み出したというところで、先ほど別の方の審議のときに政府参考人からも話がありましたけれども、まずはしっかりと運用をしていく。この比例原則は私は大切だと思っているので、これにのっとって運用していく。

 また、その中で、附則に見直し規定というのもあります。そうしたことも踏まえて、ゼロからまず一歩を踏み出した中で、じゃ、この法案をしっかり成立させた上で、どうやったら運用を確たるものにしていけるのかというのを考えて、その上で、見直すべき点があれば、そこは不断に見直していくということだと考えています。

青柳(仁)委員 今まさに大臣がおっしゃったように、外為法とかその他の施策も含めて、日本の経済安全保障の全体像というのはつくり上げていかなきゃいけないと思いますので、そういった視点でもって是非詳細も詰めていっていただければと思うんですが。

 今日は時間がなくなってしまったので以上で終了させていただきますが、罰則に関しては、やはり我が党としては、これなしで一般サプライチェーンの調査がうまくいくとはとても思えないということで、今日指摘しなかった点も含めて、また次回、質疑に立たせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、私からの質疑は以上で終了させていただきます。ありがとうございました。

上野委員長 次に、阿部司君。

阿部(司)委員 日本維新の会、阿部司です。

 本日は、小林大臣、そして関係省庁の皆様、よろしくお願いいたします。

 本委員会に付託されております経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案、いわゆる経済安保法案について質問させていただきます。

 米中の激化する覇権争い、そしてコロナ禍で明らかとなったサプライチェーン上のリスク、ロシアのウクライナ侵略の影響による物価の高騰や電力の逼迫、そしてサイバー攻撃の脅威など、経済安全保障への取組は待ったなし、我が国も、あらゆる力を結集して挑戦をしていかなければならない状況下にあります。

 こうした中で、今国会に経済安保法案が提出されましたが、私としても、本法案の審議を通じて、我が国の経済安保に関する議論が深まり、経済安保の取組が進展することを期待しております。

 さて、中国では、中国製造二〇二五に基づき技術覇権国を目指すとともに、一方、米国においては、関税引上げや国防権限法などによる対抗策を次々と打ち出すことで、双方の対立は激化、両国の緊張は高まり、米中経済のデカップリングが進展しております。こうした状況を踏まえて、米中双方と経済的なつながりが強い我が国は、どのような対応をしていくべきなのか、難しいかじ取りが求められていると思います。

 そこで、今後一層進んでいくと考えられる米中の分断、そして、これに対して、国益を守っていくために、先ほども青柳議員からビジョンに関する質問がありましたけれども、具体的にどのような形で、米中含め、他国との関係構築をしていくべきなのか、小林大臣の率直なお考えをまずはお聞かせいただきたいと思います。

小林国務大臣 米中の、デカップリングと言うのがいいのかどうか分かりませんが、様々な、米中の動きを含めて国際情勢が流動化している中で、アメリカ、中国、あるいはほかの国がこう動いたから、じゃ、日本もそれに合わせようというのではなくて、だからこそ、自らが、自らの基軸となる経済安全保障に関する考え方をしっかりと打ち立てていく必要があるんだろうと思っています。

 その観点から、この経済安保の審議の中でやはり強調させていただきたい目標が三つあって、一つは経済構造の自律性の向上、二つ目が、技術を含めた他国に対する優位性あるいは国際社会における不可欠性の獲得、そして、基本的価値、ルールに基づいた秩序の形成に向けて同志国としっかりと協力関係を深化させていくこと、こうした目標を持って経済安保の施策を進めていくことが必要だと思っています。

 その際に、総合的に進めていくというのは当然なんですけれども、喫緊の課題ですから、全て一気にできればそれにこしたことはないんですけれども、それは本当に難しいです。だからこそ優先順位をつけざるを得ないし、それは、言ってみれば時間軸をしっかり持った上で進めていくことが重要だと思っています。

 そういう問題意識を持って、既存の法制度の中でできることは今やってきています。それだけではやはり対応できない、特に分野横断的な喫緊の課題については、今回、四項目ということで、これは確かにまだまだ不十分だと思われるかもしれませんが、ただ、早くやらなきゃいけないということで今回出させていただいたわけであります。

 あとは、今後の課題というのもあるでしょうから、既に、私がこの担当大臣に就任して以来、横串を刺さなきゃいけないので、基幹産業、我が国が持っている主要な産業のリスク点検、これは弱みと、あと強みも含めてですけれども、どういうところに課題があるのか、あるいは可能性があるのかというのを、これは関係省庁と連携しながらやっていく作業を進めていくところであります。

 そうした取組を進めていく中で新たな課題も見つかってくるでしょうし、目指すべきところ、国際情勢のその姿というのは、やはり同志国との連携強化を通じて、グローバルなサプライチェーンの脆弱性ですとか国家、地域間の相互依存リスクの顕在化、あるいは国家国民の主権や利益を害する経済的な威圧、こうした様々な事象に対応できるように、国際経済秩序の強化を、同志国などと連携しながら取組を進めていきたいと考えています。

阿部(司)委員 御答弁ありがとうございます。

 我が党から提出した経済安保法案、対案でも、新たな国際秩序の形成が促進されることとなるようにすると記載をしておりますけれども、今後一年以内に国家安保戦略が策定されるということで、協力国との連携といった話も出ましたけれども、ヨーロッパなのか、この北東アジアのエリアでどういった連携協力関係を各国と築いていくのかですとか、その辺、是非、具体的な形を今後示していただければと思っております。

 次に、各論について順次伺わせていただきます。

 まず、サプライチェーン強化についてお伺いいたします。

 本法案は、安定供給の確保を図ることが特に必要と認められる特定重要物資を政令で指定し、特定重要物資の安定供給を図ろうとする者が供給基本計画の認定を主務大臣から受けることで、金融支援、助成金等の後押しを得て、サプライチェーン強化を図るというものだと理解しております。

 コロナ禍での医療品確保を見るまでもなく、重要物資を他国に依存することによるリスクが高まっており、サプライチェーン強靱化は経済安全保障上の重要なテーマであると思いますけれども、そのためにはサプライチェーンの現状とリスクを適切に把握することが不可欠だと思います。

 こうした状況把握、これまで、現段階でどのようになされてきたのか、お伺いをいたします。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、グローバリゼーションの進展や、それからテクノロジーの発展、それに伴う産業構造を背景といたしましてサプライチェーンの多様化が進んでおります。世界各国で重要な物資の他国依存に伴う供給リスクの高まりが顕在化しており、実際に、一部の物資については、国民の生存、国民生活や経済活動を脅かす事態に発展した例があったと承知しております。

 こうした状況を踏まえまして、世界各国におきましてサプライチェーンを強靱化する取組が進められており、我が国においても、特定の国に供給を依存していることで供給途絶又は不足が発生しやすい状況が生じている、こういった一部の物資について、関係省庁においてサプライチェーンの分析を行っておるところでございます。

 例えで申し上げますと、厚生労働省では、医療上必要不可欠であって安定確保に配慮が必要とされている安定確保医薬品を選定し、それから、最も安定確保の優先度の高いものから順次サプライチェーンのマッピングを実施しておるところでございます。また、経済産業省におきましては、産業界を所管する立場から、重要な技術、物資等の特定に向けた取組を実施しておるところでございます。

 その上で、必要に応じてサプライチェーンの強靱化のための施策を講じさせていただいておるところでございます。

 本法案におきましては、国民の生存や国民生活、それから経済活動を損なう事態、これを未然に防ぐため、安定供給確保を図ることが特に必要と認められる物資について、平時からサプライチェーンの強靱化を図るための取組を措置することとしております。

 以上でございます。

阿部(司)委員 ありがとうございました。

 分析、取組等々進めておられるとのことなんですけれども、この法律はかなり重要なものですから、重要な構成部分であるサプライチェーンに関して、規定をするのであれば、しっかり立法事実の把握を別途すべきではないかなと申し上げておきます。

 ところで、今回の法案は、サプライチェーンへの実質的な政府による介入になるかと思います。この介入によりサプライチェーンが強化され、重要物資の安定供給につなげていくものと思っておりますけれども、一方で、こうした取組は、民間企業にとってはコスト増になりかねないとも思いますけれども、そのコスト増とコストの転嫁に関する考え方をお伺いいたします。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、サプライチェーンのグローバル化の中で、各民間事業者が経済合理性を追求した結果、個別事業者にとっては経済合理的であっても我が国全体としては供給途絶リスクを内包する、こういったケースが発生しております。実際に、重要な物資について供給不足、供給途絶に陥った例もあると認識しております。

 民間事業者におかれましては、サプライチェーンの強靱化を図ることに伴い発生するコストと、そうした強靱化の取組により供給途絶リスクが低減し安定供給確保が図られることのメリットを勘案した上で、サプライチェーンの強靱化の取組を行うものと考えております。この場合、発生するコストは、最終ユーザーまで含めてサプライチェーン全体の中で吸収されることになると認識をしております。

 しかしながら、コストが吸収されないと見込まれるときは、結果としてサプライチェーン強靱化のための取組が行われないこともあることから、本法案におきましては、安定供給確保を図る必要が、特に必要と認められる物資について、平時からサプライチェーンの強靱化を図るための枠組みを措置することとしたものでございます。

 なお、民間事業者の取組を支援するに当たりましては、当該物資の安定供給確保とコスト面から最も効率的な取組を支援することに努めてまいりたいと考えております。

阿部(司)委員 御答弁ありがとうございました。

 供給元の分散化ですとか特別な材料の確保などは、結果としてコスト増にもつながり得るかなと思います。最終的には消費者か事業者か政府が負担するような形になるのではないかなと思いますけれども、サプライチェーン強靱化の対価としてこの問題が現実に起こり得るものと考えられるということで、一つ問題提起をさせていただきました。

 一つ質問を飛ばして、次に参りたいと思います。

 基幹インフラについてお伺いをいたします。

 法律案では、対象となる十四の分野、事業を列挙しており、この中から政令で特定社会基盤事業を定めるとしています。

 ところで、現在の高度情報社会において膨大なデータを処理するデータセンターやクラウドサービス、こちらはデジタル社会の情報のハブであり心臓であるとも言える重要な施設、サービスかと思います。このため、一たびデータセンターやクラウドにサイバー攻撃がしかけられることにより、社会サービスや企業活動が大きな混乱に見舞われる可能性が高いと言えます。

 もちろん、今、重要事業ということで十四指定されているかと思うんですけれども、ここに入らないようなものも、データセンターとか、出てくるかと思うんですけれども、当然、データセンター、クラウドサービス、対象とすべきと思うんですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

小林国務大臣 今回、この法案の基幹インフラの安全性、信頼性確保のパーツのたてつけなんですけれども、対象となる事業というものの外縁を十四この法律で規定している、政令でまた更にそれを絞るということのほかに、各事業の中で、事業者というものを最終的には絞っていくんですけれども、その事業者が用いている特定重要設備という概念があって、この事前審査の対象となる特定重要設備につきましては、基幹インフラ事業者がその事業のために使用する設備、機器、装置、そしてプログラムのうち重要なものを対象としておりまして、その中には、委員御指摘のデータセンターですとかクラウドも含まれ得るものと考えております。

 データセンター、またクラウドにつきましては、これも、有識者会議におきまして、データセンターやクラウドサービス上にシステムを構築して基幹インフラ役務の提供に利用する場合についても、重要な設備の導入として、その導入等の計画について審査の対象に含めるべきとの提言をいただいているところでございます。

 今後、この特定重要設備の対象につきましては、各事業の実態を踏まえた上で主務省令で定めていくことになりますけれども、こうした有識者会議などからいただいた御意見を踏まえまして、検討を進めていきたいと考えております。

阿部(司)委員 小林大臣、御答弁ありがとうございました。

 データセンター、クラウドも対象になると理解をいたしました。こうした施設への攻撃が及ぼす大きさも踏まえて、しっかり御対応いただけるようにお願いを申し上げます。

 続きまして、金融についてお伺いをいたします。

 法案では基幹インフラとして金融が対象とされておりますけれども、デジタル通貨は対象となるのかどうか、お伺いをいたします。

三貝政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、デジタル通貨は、電子マネーや法定通貨として発行されるものなど、様々な形態のものがこれに該当するものと承知しております。

 御指摘のデジタル通貨の扱いが、本法案の制度の対象となる銀行等が行う事業、これに該当するとされた場合には、本制度の対象になり得るものと考えております。

 なお、いわゆるCBDC、中央銀行が発行するデジタル通貨でございますけれども、これにつきましては、現状、我が国において発行されておらず、その制度設計等の詳細も決まっていないため、本法案の対象になるか否か、現時点で予断を持ってお答えすることは困難であることを申し上げたいと存じます。

阿部(司)委員 ありがとうございます。デジタル通貨は、一般には、銀行が発行しているものは対象になると言えるけれども、中央デジタル通貨についてはまだ国に導入をされていないので対象外だと理解をいたしました。

 ところで、本日、ゼレンスキー大統領が日本のこちらの国会で演説を行う予定ですけれども、今、世界の耳目はウクライナに集まり、西側諸国を中心に、ロシアの無法な振る舞いへの怒りが世界へと広がっております。

 制裁の一環として、SWIFTからロシアは排除されました。SWIFTは、二百か国、一万千以上の金融機関が参加する国際決済網であり、金融の核兵器などと呼ばれ、フルに発動した場合には影響力がすさまじいと言われております。

 そこで、今回のロシアに対する金融制裁の効果について財務省の御見解をお伺いいたします。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 ロシアに対する一連の金融制裁は、G7各国等と緊密に連絡することにより、力による一方的な現状変更は認めないとの力強いメッセージを国際社会に与え、ロシア経済に甚大な効果を与えるものと考えております。

 御指摘のありましたロシアの七銀行のSWIFTからの排除についても、ロシアを金融システムや世界経済から隔離させるための措置を講じたもので、これらの銀行はグローバルに活動する能力が損なわれることになります。

 実際、ロシア・ルーブルが急速に下落したほか、ロシア株式市場の休場、それからロシア国債の大幅な格下げといった状況が見られ、こうしたロシアにおける金融市場の動きは、SWIFTからの特定銀行の排除を含めた一連の経済制裁を各国で協調して実施をした結果というふうに受け止めてございます。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 今回の金融制裁がロシアのウクライナ侵略の歯止めになってくれることを切に願っておりますけれども、相互依存が極度に進んだグローバル経済の下では、特に、金融システムのような世界にまたがるネットワークの節目を押さえる国は、他国の動きを監視したり、ネットワークの利用を制限したりして、極めて大きな圧力の行使が可能です。

 世界の貿易や金融取引に欠かせない基軸通貨であるドルを持つ米国は、その意味で大きな力を有するわけですけれども、一方で、別にドル決済網に代わる決裁網が存在すれば、SWIFT排除による制裁効果も低下することとなります。いずれにしても、新たな通貨圏が世界で大きな影響力を持てば、我が国も無関係というわけにはいかないのではないかと思います。

 そこで、現在中国が進めているデジタル人民元についてお伺いをいたしますけれども、デジタル人民元が拡大していった場合に危惧される事態をどのようにお考えか、教えていただければと思います。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 中央銀行デジタル通貨、CBDCについて、中国による開発が先進国と比較して進んでいるという御指摘は承知してございます。

 一般的に申し上げまして、通貨が広く利用されていくためには、流動性、それから安全性の観点から、通貨としての高い利便性、これを有する必要があると理解してございます。

 議員御指摘の米ドル基軸通貨体制への影響等、デジタル人民元がもたらす影響については、中国の資本規制等が人民元のこういった利便性に及ぼす影響も踏まえて考える必要がございますけれども、いずれにいたしましても、引き続きデジタル人民元の動向を注視してまいりたいと考えてございます。

阿部(司)委員 御答弁ありがとうございました。

 ドル基軸体制、こちらは脅かされることはない、こちらのデジタル人民元の方も直ちには脅威にはならないだろうという理解なんですけれども。

 ところで、国際決済銀行、こちらが二〇二〇年一月に発表した年次調査報告では、調査対象の中央銀行のうち、八〇%は何らかの形でCBDCに取り組んでおり、四〇%近くは実験や概念実証の段階に進んでおり、何らかの形でCBDCに取り組んでいる中央銀行の数は二〇一八年の同調査から一〇%増加したと言われております。また、中央銀行の約七〇%はCBDCを近い将来発行する可能性は低いと述べておりますけれども、残りの三〇%は何らかの形でデジタル通貨を発行する積極的なプランがあると述べたとしています。

 このように各国が中央銀行デジタル通貨の研究を進める中で、我が国も経済安保の観点からCBDCに対する方向性を定めていくべきかなと思いますけれども、日本のCBDCの取組、現状及び考え方をお伺いいたします。

藤原大臣政務官 日本においては、現時点でCBDCの発行について正式な意思決定は行っておりませんが、通貨が重要なインフラであることを踏まえれば、利便性の確保や通貨主権の維持などの観点は検討に当たっての大きな論点であると認識しております。

 CBDCについては、現在、日本銀行において、昨年四月より基礎的な実証実験を通じた技術的な実現可能性の検証を実施しているところであります。

 その上で、CBDCに関する政策判断には、技術的実現可能性のほか、安全性、信頼性、御指摘の経済安全保障に係る観点も含め多岐にわたる検討が必要であり、財務省といたしましては、国際的な動向にも十分留意しつつ、日銀、金融庁などと緊密に連携をしながら検討を行ってまいりたいと思っております。

阿部(司)委員 御答弁ありがとうございました。是非、国際的な金融環境の変化にも対応できるよう、そして経済安保の観点からも更に研究を進めていっていただきたいと思っております。

 続いて、先端重要技術の開発支援についてお伺いをいたします。

 日本の先端技術の研究、そして技術の底上げを図るためには、我が国における自由で魅力的な研究環境の創設や国際協力の取組が必要かと思います。

 ところで、中国では、優秀な研究者を好待遇で招聘する千人計画が有名ですけれども、十年間で七千人以上の人々を呼び寄せたと言われております。日本においても、東京大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学、東工大、筑波大学など有名大学の博士号を対象に募集が行われていると聞きます。卓越した能力を持つ外国人には中国の入国ビザも発行され、百万人民元の一度限りの賞金と、研究や学術交流のための多額の資金、住宅費や交通費の援助が提供されているとも聞きます。

 中国は、この計画で優秀な人材を中国に招致し、軍事転用可能なデュアルユース技術を含む最先端技術を獲得しておりまして、これが、人材を吸い取られている国から脅威と受け取られています。

 日本でも、この千人計画に対抗するようなプログラムをつくって、先端技術における海外の頭脳をしっかりと誘致していく、その知見を活用していくようなことも視野に入れていかなければならないのではないかなと思うんですけれども、こちらの御見解をお伺いできればと思います。

小林国務大臣 今、あらゆる研究活動がグローバルになり、またダイナミックに展開されている中で、国際的な人材の獲得競争というのは激しさを増していると感じています。

 その中で、科学技術・イノベーションの担い手である優秀な、優れた人材を育成して確保していくこと、それとともに海外からの優秀な人材を呼び込んでくること、この取組は重要だと考えておりまして、特に、若手の研究者が腰を据えて、独創的な研究を、また長い期間にわたって行えるための十分な研究費の確保ですとか、若手研究者のポストの確保、これが問題になっています、また、挑戦的研究への支援の強化、こうした様々な取組を通じて、優秀な研究者が我が国で研究したいと思うような研究環境を整備していくことが重要だと思っています。

 また、我が国としての強みを有する研究機関を世界トップレベルの拠点として拠点化して、外国から優秀な人材を引きつけるという取組も重要だと思っています。既に、WPIという世界トップレベル研究拠点プログラムというのをやっていますが、これを更に充実していかなきゃいけないと思っていますし、また、この通常国会で法案審議が別途なされると聞いていますけれども、十兆円ファンド、大学ファンド、こうしたものもしっかりと活用して、世界の優秀な人材の獲得に向けて努力していきたいというふうに思っていますし、そのことが我が国の持続的かつ長期的な成長には不可欠だと考えております。

阿部(司)委員 御答弁ありがとうございます。

 我が国においても、今おっしゃられたWPIを通じ、多くの外国人研究者も招聘しているということでした。ただ、やはり規模感が中国の千人計画なんかと比べて全然違うと思いますので、今後ますます充実をさせていっていただければと思います。

 時間がそろそろ来ておりますけれども、次の質問に参りたいと思います。

 今後、先端科学技術の研究、社会実装に関しての国際標準化へのコミットメントはますます重要になってくると考えますけれども、今回の法案には具体的な記載がなかったかなと思います。この理由をお伺いするとともに、経済安全保障上、戦略的に我が国の不可欠性、自律性を高めていくための国際標準化、そしてルールメイキングに力を入れるための具体的な取組についてお伺いをいたします。

田中政府参考人 国際標準化の政策について、お答えをさせていただきたいと思います。

 近年、標準戦略が企業や産業の発展を左右するものとして重視されて、その主導権をめぐって、グローバル企業や諸外国の政策的な動き、非常に活発化しているというふうに認識してございます。

 標準は、先進的な技術の社会実装を加速化する、そのために必要なということだけに限らず、国際競争力を高めるために非常に重要な手段であるというふうに認識してございます。

 経済安全保障との観点から申し上げますと、科学技術・イノベーションが、激化する国家間の覇権争いの中で中核になってきている、この中で、我が国の産業の優位性、それから不可欠性、これを確保する上でも、先端的な重要技術に関して、研究開発を促進するとともに、国際標準化を強力に進めていくということが経済安全保障の観点からも重要と認識してございます。

 政府としては、二〇二〇年十二月に、省庁横断的に標準の戦略的な活用を推進するための政府内の司令塔として標準活用推進タスクフォースを設けて、取組を進めてございます。

 具体的には、標準戦略を科学技術・イノベーション政策、デジタル政策、クリーンエネルギー戦略、関連する個別の産業政策と一体的に推進する、これを基本に据えて、予算など政策資源の整備、それから民間の標準戦略の支援強化、省庁横断的な連携が必要な重要分野の特定と推進方策について方針を共有いたしまして、実行に当たっているところでございます。

 また、関係省庁の重要な標準戦略の関連施策に対しまして、国際競争の環境が劇的に変化する、これに対応して機動的に取組の加速化を図れるように、総合科学技術・イノベーション会議の下で運用されております官民共同研究開発投資拡大プログラム、PRISMの下に標準活用加速化支援事業を創設いたしまして、予算を追加的に配分するなどの対策を行ってございます。

 今後とも、経済安全保障の観点も含めて、我が国に重要な分野における標準の戦略的な活用について、科学技術・イノベーション施策、経済安全保障関連施策との連携を更に深めるなど、政府全体で取組を強化し、官民を挙げてしっかりと取り組んでまいりたいと思ってございます。

阿部(司)委員 ありがとうございます。

 既に取組を進めておられるということで、今後ますます各省連携をして、ルールメイキングをリードをしていっていただきたいと思います。

 時間がやってまいりましたので、今回はこれで終わりたいと思います。また質疑をする機会がいただけましたら、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 この経済安全保障、本当に、小林大臣始め関係の皆様のこれまでの御努力に、まず敬意を表したいと思います。

 我が党も、一月の二十七に大臣のところに提言を持って伺いました。そして、三月の十七日か、法律を提出をさせていただいて、同時審議入りをさせていただいています。

 堀場幸子提出者には、今日はちょっと質問しませんが、また後日みっちり質問させていただきますので、よろしくお願いします。

 さて、通告している質問の前に、今、我が党の青柳委員から罰則の話がありました。これは、やはりちょっと、先ほどの質疑、分かりにくかったので、ちょっと幾つか確認したいんです。

 ささっといきますが、まず、審議入りをした日の本会議で、公明党の伊佐さんが、最初の政府の案には入っていたんだ、公明党が努力義務にすべきだと主張して云々と。

 大臣、そういう経緯でしょうか。要は、政府の案には罰則が入っていた、それが、公明党、伊佐委員の主張によると、公明党が、安易に罰則規定に頼るのではなくて、あくまでも努力義務とすべきものだと主張した云々と。これは事実ですか。

小林国務大臣 まず、罰則の規定のみならず、この法案の条文案を作成するに当たりまして、日本維新の会も含めまして、また公明党も含めて、多くの与野党の皆様から様々な貴重な御提言をいただきました。また、有識者会議、また有識者会議以外にも様々な団体から御意見をいただいたところでございます。

 本日午前中の審議で申し上げたとおり、この政府の案につきましては、閣議決定が二月の下旬だったと思いますけれども、そこに至るまで連日変わっておりました。そういう中での話として受け止めていただければと思います。

足立委員 法律家の世界ではよく、必要性、許容性という整理がされます。私たちは、やはりこの罰則は必要なんだと今でも思っている。大臣も恐らく、何らかのプロセスの中で、政府案に罰則が入っていたことは伊佐さんが、与党審査の中で与党がそれを認めているわけですから、入っていたわけです。だから、私たちは、やはり政府もこれは必要だと思っていたんだと。別に報道はいいですよ、報道はどうでもいいけれども、伊佐さんが本会議で言っているんだから。政府もそれは必要だと思っていた、しかし、何らかの課題があるからやめたんだということで、それは公明党のプレッシャーか何か分からないけれども、そういうことです。罰則については、またゆっくりじっくりやります。

 まず、その必要性。要は、必要だけれどもやらないことはありますね。政府の、プロセスの中で、一旦どこかのプロセスで罰則というものが入っていた時期があることはお認めになりますか。

小林国務大臣 罰則も含めまして、これは日々変わっておりましたので、そういう形で御理解いただければと思います。

足立委員 いやいや、入っていたことはあるということでいいですね。

小林国務大臣 罰則の在り方につきましては、サプライチェーンのところだけではなくて、これは入れていたこともあるし、それを外したこともあるし、また戻ったこともあるので、これは日々、私自身も含めて法制準備室の職員と議論をする中で流動的に変化していったということは事実でございます。

足立委員 いや、伊佐さんが、与党の、要は事務局長か何かの責任者ですよ、公明党の。政府の作成の条文では、事業者の報告義務、今議論しているパーツに対して罰則が設けられておりました、与党がそう言っているわけです。それは大臣も、別にこれを認めてもニュースにならないですよ。伊佐さんが言っていることは事実ですね。

小林国務大臣 これは繰り返しになりますけれども、サプライチェーン調査のところも含めて、様々な罰則規定があります、今、ないところもありますけれども、そこについては、日々、与野党の皆様、また、先ほど青柳先生のところで答弁申し上げましたけれども、有識者会議でのコメント等々、様々含めまして、最終的には私自身が、職員とも協議をさせていただく、また与党とも当然協議をさせていただく中で、比例原則の観点から総合的に勘案して、これが妥当なんだろうということで、今回、その形で法案として出させていただいたところでございます。

足立委員 またこれは続きます。大臣、もうこの後はないので、御自由にしてください。

 今、なぜ小林大臣にこういう御質問をしたかというと、私はかねがね、やはりこういうプロセスは明らかにした方がいいと思っているんです。

 政府は何を考え、与党が何を考え、どういうプロセスでこうなったのか。日本の政治では、国政では、それは全て、自民党や公明党の、自民党本部の中で、クローズドでよく分からないんです。維新の会は今、政務調査会、全部フルオープンでユーチューブに公開をしています。これからの時代は、それはもう言った方がいい、せっかく伊佐さんが自白しちゃったんだから。それはこの審議の中で政府にも認めていただいたらと思っていますが、ちょっと時間がないので。

 必要だけれどもやらない、なぜやらない、この議論をすべきなんですね。

 今日、内調から柳次長にお越しをいただいています。いつも済みません。

 スパイ防止法、また足立はスパイ防止法かと言われるかもしれませんが、なぜ私がスパイ防止法にこだわっているかというと、この問題なんです。必要であることはみんな分かっているんです。昨年の二月五日、衆議院の予算委員会で菅総理に質問しました。菅総理は、スパイ防止法を整備していく必要はあると思うと日本の首相として答弁されました。だから、必要なんです。

 柳次長、二問通告していますけれども、ちょっと、時間がないので、まとめて御答弁いただきたいんですが。それでも、やはり必要だけれどもできていないんです。何らかの許容性がない、誰かが反対している。自民党の中かもしれないし。まあ、共産党が反対しても、やるときはやるからね。

 次長、ちょっとスパイ防止法、私は必要だと思いますが、いかがですか。

柳政府参考人 お答えさせていただきます。

 事柄の性質上、詳細を申し上げることはできませんが、政府としては、我が国の国内において、外国情報機関による情報収集活動が行われているとの認識に立って、必要な対策を講じてきているところであります。

 その上で、いわゆるスパイ防止法の必要性については、様々な御指摘や御意見、御議論があると承知しております。また、この種の立法に当たっては、多角的な観点から慎重に検討されるべきものであり、また国民の十分な理解が得られることが望ましいと考えております。

 いずれにせよ、国の重要な情報などの保護を図ることは極めて重要であり、引き続き必要な取組の充実強化に努めてまいりたいと考えています。

足立委員 ありがとうございました。

 多分もう一つあるんですが、本当は余り答弁したくないのでしなかったと思うんですけれども、是非そこも言っちゃってください。

 自民党がかつて、これは作ったことがあるんですね。しかし、やはり成立していない。これは何ででしょうね。国民が受け入れないということでしょうか。その辺、ちょっとお願いします。

柳政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、この種の立法に当たっては、多角的な観点から慎重な検討がなされるべきで、国民の十分な理解が得られることが望ましいと考えております。

 なお、先ほど御指摘のありました総理の答弁については、外国情報機関の情報収集活動に対抗して、政府の重要な情報を保護するための体制を整えていく必要がある旨をお答えしたものと理解しております。

 いずれにしても、国の重要な情報の保護を図ることは極めて重要で、引き続きカウンターインテリジェンスに係る必要な取組の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

足立委員 次長、ありがとうございます。またこれは一時間ぐらいかけてゆっくりやりたいと思います。

 あともう二、三分しかないので、市村部長、ありがとうございます、ちょっとまだ経済産業委員会が立ち上がっていないので、三分だけこの内閣委員会をおかりして原発再稼働をやりたいと思います。

 市村部長、特重、だって、特重というのは経過措置を今まで変えたことがありますよね。経過措置を変えたことがあるんですよ。ルールを変えたことがあるんですよ。変えたらいいじゃないですか、もう一回。ちょっとお願いします。

市村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、特定重大事故等対処施設、今委員御指摘のとおり、一度、経過措置について変更したことがございます。

 これは、当時の適合審査の状況であるとかということを踏まえまして、新規制基準が施行されてから一律五年という考え方が不合理になったものですから、これを変えたものでございます。

 ただ、このときも、五年という期間を変えたものではなくて、その起点となる考え方、起点日の考え方を変えたというものでございます。

 それも踏まえて、特定重大事故の役割、これは、この施設が安全性の向上に資するものであるということで基準を定めてございます。

 この考え方を踏まえると、現在の状況で五年の経過措置を見直すということは考えていないものでございます。

足立委員 部長、自民党の議連からも要望が出ていると思いますが、特重というのは、要は水と電気、水源と電源ですよ。これは、いろいろ運べる電源車とかポンプ車の拡充でも代替が、これまでもできてきたし、できるはずなんです。

 今はウクライナ危機で戦時です。非常事態です。この中で国民の生命を、国民の生活をお守りするという高次の目的があるわけだから、何か小さなところでやるんじゃなくて、やはり規制委員会として、国民の生活を守るという、より高次な目的に沿って、安全規制、これをどうやって両立させたらいいかということを、規制委員会としてももう一回、人に言われるんじゃなくて、自ら、代替措置、特重はまあそうなんだけれども、もう一回、経過措置を、省令を改正して、こういう緊急事態に原発を再稼働できるようにする、その知恵を規制委員会でしっかりと、規制庁でしっかりその知恵を出す努力をしてくれませんか。努力しているように見えないんです。

 検討する、お願いします。検討ですよ、検討。勉強する。

市村政府参考人 委員御案内のとおり、規制委員会の役割というものを踏まえますと、原子力発電所の稼働というものに向けた作業を議論することは難しいところでございます。

 とりわけ、再稼働というものが規制緩和というふうに映ってしまうと、規制委員会の立ち上がった趣旨でございます推進と規制の分離というものに反してしまうということになりますので、規制委員会は引き続き厳格に審査、検査を進めていくという立場でございます。

足立委員 時間が来ましたので、終わります。

 市村部長は私、経産省の同期でして、また外でつかまえて説得したいと思います。まあ、それは冗談ですが。

 しかし、本当にしっかり、このテーマもまた経産委あるいは原子力特委で五時間ぐらいかけてやりますので、是非、準備をお願いします。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 国民民主党の鈴木でございます。

 今ほど足立委員からもお話がありましたが、今は戦時です。この戦時というのは、我が国に直接攻撃を受けたわけではありませんが、我が国と国境を接している国家が反対側で起こした戦争です。なので、今まで私たちが想定をしていた戦時とは全く違う次元の戦争が我が国にも降りかかっている、このような状況だと思います。それを申し上げた上で、今、この経済安全保障という法案をお作りいただいて、担当の大臣も置いていただいて、極めて進んでいると私は思います。

 今まで、この議論がなされなかった、安全保障といえば軍事だという考えがあったものから一歩前進をして、我が国をいろいろな面から守っていく、こういうもののためには是非整備をされた方がいいものではあるものの、では、これで、この法律を作ったからといって玉虫色になるのか、我が国を完全に守ることができるのかと言われたら、それは疑問点が多いと思います。なので、ここでは、ちょっと時間もあれですので幾つかしか御指摘できませんが、ちょっとその内容について順次お話をさせていただきたいと思います。

 まず、特定重要物資についてお伺いをいたします。

 特定重要物資というのが、例えばアメリカですと、半導体とかレアアース、あるいは電池、バッテリーですね、あるいは医薬品といったものが指定をされていて、安定確保のための計画を立てておりますが、我が国ではどこまでを想定していらっしゃるのか。条文によりますと原材料までと書いてありますが、具体的に一体何を想定されているのかをお教えいただけますか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、委員、この質問に入られる前にこの法案について言及されましたけれども、私としても、今回の法案で、これが成立すれば全て国民の皆様の命と暮らしを何があっても守れるかというと、当然それは完全なものではないと思っております。ただ、重要な一歩だというふうには受け止めております。

 その上で、今、サプライチェーンの話を御質問いただきました。

 分かりやすく申し上げますと、この法案では、国民の生存に必要不可欠又は広く国民生活あるいは経済活動が依拠しているかといった物資の重要性や、海外への依存度、将来的な依存の可能性を踏まえまして、国家と国民の安全を損なう事態を未然に防止するために、安定供給確保を図ることが特に必要な物資を特定重要物資として政令で指定することとしております。

 これも、委員、法文、条文案を御覧になられていると思いますけれども、どういう物資を特定重要物資として指定するかにつきましては、指定の具体的な考え方、要件など基本的な考え方については、有識者の意見を聞いた上で、今後定めていく安定供給確保の基本指針において定めて、個別物資ごとに特定重要物資としての指定の必要性を判断していくことになりますので、現時点で予断を持って言及することは控えたいと思います。

 その上で、イメージを持って御審議いただくために申し上げますと、いわゆる昨年の骨太方針二〇二一におきましては、サプライチェーンの強靱化という項目があって、それを先行的に実施していくということで四つ挙げられています。半導体と電池、またレアアースを含む重要鉱物、医薬品等ということで、そうしたものが該当し得るものと考えているところであります。

鈴木(敦)委員 なぜこれをお伺いしたかといいますと、例えば、これは条文の中に書いてあることですが、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を云々と書いてありますけれども、今私が冒頭申し上げたように、我が国が巻き込まれた戦争ではないですが、例えば、ウクライナから我が国は大量の鉄鉱石を輸入しています。鉄が作れないと、この国の基幹産業である自動車の製造にも大きく関わってくるものですよね。私の選挙区にも鉄工所がありますから、雇用を守るという意味でも、材料が入ってこないというのは非常に重要なことになってきます。ですので、何を想定されているのかというのが非常に重要だと私は思うんです。

 加えて申し上げれば、大臣もおっしゃいましたけれども、未然に防ぐという意味であれば、この条文で書かれているように、基本指針を定めて、取組方針を定めて、そして民間事業者に計画を立ててもらって、それでも駄目な場合に国が備蓄その他の措置を取るというのでは、これは話が逆なんじゃないかなと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

小林国務大臣 話が逆だとは思いません。

 有事になってから対応するのではなくて、平時から様々なリスクシナリオというものを考えた上で、全てサプライチェーンを強靱化することは無理ですけれども、ただ、その中で、本当に、リスクが顕在化したときに国民の命あるいは生活を守り切るために何が必要なのかというのを考えた上で、事前に手当てをしておくということが私は重要だというふうに考えております。

鈴木(敦)委員 ですから、つまり、生活に必要だということであれば、今顕在的になっているのは、LNGですとか、ガスですとか、そういったものですね。

 では、備蓄の義務がなかったりするものについても、今後検討される計画がある、その方針でいかれるということでしょうか。

小林国務大臣 それは、様々、例えば石油であれば石油備蓄法というような、それぞれ法律があったりするんですよね。そういうところでいろいろ手当てされていますけれども。

 今回のこのサプライチェーンの強靱化というのは、あくまで未然にそうした状況を防ぐというものに主眼を置いたものでございます。ただ、じゃ、何も有事について触れていないかというと、そういうわけではなくて、しっかりと安定供給を確保していくという事業者を認定するというプロセスがあります。そのときに、計画を出して、認定させていただくんですけれども、そこに需給が逼迫したときの対応というものもしっかり盛り込んでもらって、それを実際に実行していただく必要があるというふうに思っておりますので、そういう意味では、いわゆる有事への対応という要素も含まれているというふうに考えてよろしいかと思います。

鈴木(敦)委員 あらゆる面で事前に計画を立てていただいているということであれば、それで結構だと思うんですが。

 次に移りますけれども、インフラ、特定社会基盤事業者について質問させていただきます。

 条文の中では十四業態について指定をされていますが、私が見るところによりますと、鉄道事業者の中には、第一種鉄道事業者のみが含まれておりまして、二種、三種については適用外になっておりますが、まず、そもそも第一種に限った理由をお聞かせ願えますか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 この法案の基幹インフラに関する制度における対象事業につきましては、国民生活そして経済活動の基盤となる役務の中でも、国民の生存に必要不可欠であって代替困難なもの、又はその利用を欠くことによって国民生活若しくは経済活動に広範囲又は大規模な混乱等が生じ得るものを提供する事業に限定することとしております。

 委員御指摘のとおり、鉄道事業につきましては第一種から第三種まで分類されます。このうち、今私が申し上げた要件に該当するものとしては主要な都市間で旅客を大量輸送するものなどが想定されておりまして、現状、これらは第一種鉄道事業として行われるものですから、同事業のみを対象事業としているところでございます。

 なお、委員から御指摘いただきました、今回の制度の対象とはならない第二種あるいは第三種の鉄道事業者におきましても、今後、事業所管省庁に設置する窓口におきまして、必要に応じ、事業者からの相談を受け付けて情報提供に努めるなど、鉄道事業者による経済安全保障に関する対応を促していきたいと考えております。

鈴木(敦)委員 なぜこれを申し上げたかといいますと、成田空港線というのは第二種事業者なんですね。並走してつくっているものの中には第三種事業者も含まれていたり。

 あれだけ苦労してつくった空港と東京を結んでいる路線が適用外になってしまうということに対して私は危機を感じておりまして、更に申し上げれば、鉄道事業ですから、そこで事故が発生したりとか運行できなくなれば、それなりにやはり経済効果も、経済に影響も出てくると思いますので、窓口を設置されるという説明は私も聞きましたが、何かしらの手当てはしていかなければならないと思いますけれども、どうでしょう、大臣は、窓口の設置だけでも取りあえず十分だというお考えなんでしょうか。

小林国務大臣 これは、この法案のたてつけとして、鉄道事業に限ったものではないんですけれども、ほかの、例えば金融とか、あるいはエネルギーとか、いろいろ事業の外縁を定めさせていただいております。これについては、そもそも既存の業法というものが存在していて、その中で全て安定供給が規定されている事業をここに書いているんです。

 したがって、今回のこの法案の基幹インフラの安全性、信頼性確保というのは、その通常の業法に上乗せして規制を課させていただくものでございますので、今回のこの法案の対象にならなかったからといって、全くそういう義務がかからないというわけではないということは御理解いただければと思います。

鈴木(敦)委員 本案で規定はされないということであれば、第三種、第二種に関してもほかの法律で規定はされていると思いますが、ただ、一方で、機械を入れ替えるときに、どの事業者から、あるいは末端の企業にどう発注して、ちゃんと安全が守られているのかどうかということを、この法律であれば確認できますが、そうじゃない業種についてはこれは確認ができないので、じゃ、事業者から、私たち、実はこういう企業に発注しているんですが大丈夫でしょうかという説明を待つのかというと、私は余りそういう相談は来ないんじゃないかなというふうに思います。

 では、次に移らせていただきますが、これも条文に関連するものです。

 六十二条に関連するものでございますが、六十二条七項には、協議会を設置して、中で協議をするという内容の条文なんですが、この条文の中で、協議会の事務に従事する者又は従事していた者は、正当な理由がなく知り得た情報を漏らしてはならないと書いてありますが、罰則の規定はありますが、事務に従事する方だけにこの規定がありまして、協議会を構成されている協議員の方々については規定が及んでおりませんが、これでよろしいんでしょうか。

小林国務大臣 この条文の説明をさせていただきますと、従来の研究開発においては、特定秘密保護法に基づく場合を除きまして、政府が提供する機密性の高い情報に対して保全措置等を求める法的枠組みは存在しておりません。また、守秘義務契約を締結する場合でも罰則による担保はなされていなくて、政府機関と民間の企業や研究者との間で、情報共有には一定の制約があったところであります。

 このため、この法案では、協議会の構成員に法律上の守秘義務を新たに課す枠組みを設けることによって、機微な情報を含む有用な情報の交換や協議が官と民との間で安心して円滑に行われるようにしたものでございます。

 その上で、主な情報提供者となることが想定される政府職員とのバランスを確保するとともに、企業や研究者が萎縮して本法案の協議会の枠組みへの参画をちゅうちょすることがないようにする観点を踏まえまして、国家公務員と同等の罰則を伴う守秘義務を課すこととしたものであります。

鈴木(敦)委員 ここの条文に事務の従事者と書いてあるんです。協議会の構成員というふうに書けばこれは分かりやすい話なんですが、なぜこれは、事務の従事者、従事していた者というふうに規定を限定をされたのか、御説明をお願いします。

小林国務大臣 これはいろいろ法制局との兼ね合いで、法文の書き方というのはいろいろ形式はありますけれども、この読み方としては、「協議会の事務に従事する者」とあるんですけれども、この従事する者としては、協議会に参加する者が該当することとなりますので、この協議会に参加している、いわゆる研究者の方も含まれることになると御理解いただければと思います。

鈴木(敦)委員 他の条文ではそういう書き方になっていないですが、今回は、なぜ、構成員という書き方ではなく、「事務に従事する者」という書き方になったのかが非常に私は疑問点なんですね。

 もし「事務に従事する者」というもので、その協議会全ての方々が含まれるのであれば、我々全員、事務の従事者になってしまいますので、どうしてこういうふうになったのか、法制局とどういうやり取りをされたのか、詳しく教えていただけますか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 この条文、六十二条でございますけれども、「協議会の事務に従事する者又は従事していた者」ということで、この協議会で様々な情報の交換というのがなされます。これに携わる者という表現をどういうふうにするのか、こういうことでございました。

 それで、例えばこの六十二条で申し上げますと、これを御覧になられますと、例えばこういう表現がございます。当該特定重要技術の研究開発等に従事する者のうち当該研究開発等を代表する者云々とか、この研究開発等に従事する者、こういう表現もございます。

 したがいまして、この協議会をつくった場合に、ここで様々交換される情報、そしてやり取り、これに関して携わった者ということでどういう表現が適切か、こういう議論をしたということでございます。

鈴木(敦)委員 非常に分かりづらい条文になっているのだなと私は思います。ほかの法案を見てもこういうような書き方をしているところは余りないので、詳しくこれは説明をしていただかないと、どういう部分がどういうふうになっているのか誰も分からなくなってしまいますので、是非とも細かい説明をしていただきたいと思います。

 ちょっと、時間の都合上、最後の方になってしまいますけれども、特許についてちょっとお伺いしたいと思います。

 まず、これはベースとしての質問ですが、今現在、特許の申請の状況、どのようなフローでどれぐらいの件数を処理されているかを御紹介お願いします。

小見山政府参考人 お答えします。

 昨今の新型コロナのウイルスの影響で多少の変動があるんですが、現在の特許出願の状況ということでございます。

 まず、特許の出願件数でございますが、二〇一九年は三十万七千九百六十九件、二〇二一年は二十八万九千二百件ということでございます。審査請求の件数でございますが、二〇一九年は二十三万五千百八十二件、二〇二一年は二十三万八千五百五十七件ということでございます。特許の登録件数でございますが、二〇一九年は十七万九千九百十件、二〇二一年は十八万四千三百七十二件という状況でございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。これだけの数を毎年毎年処理しなければならないということなんですね。

 そして、今回、この中からいろいろなスクリーニングをして、核技術あるいは先進武器技術に関するものを保護して非公開にしようということなんですけれども、こういった特許の技術の中には、例えばこういうものに使えますよというシールが貼られているわけではなくて、例えば極めて熱に強いケーブルですとか、あるいは大電力を流しても壊れない電源プラグ、あるいは電磁波を防衛するフィルム、こういったものは実はこのマイクにだって使える技術です。ただ、政府が今検討している先進武器技術の中のレールガンにも当然使われる技術ですね。

 これは俗に言うデュアルユースというものですけれども、こういうものをさらい取ってさらい取ってスクリーニングしていくと、必ずこぼれて何か細かいものが出てきてしまうと思いますが、その懸念はどの程度お持ちでしょうか。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 年間約三十万件に及ぶ特許出願の全てについて安全保障上の機微性や産業への影響を個別に検討することは、経済界に負担をかけることにもなりかねず、現実的ではないと考えています。したがって、本制度では、非公開とする発明の選定につきましては、まず特許庁長官が国際特許分類などを用いた定型的な第一次審査を行って対象を絞り込んだ上で、そこで抽出された出願について内閣総理大臣が、第二次審査、すなわち、いわゆる保全審査を行うこととしています。

 この第一次審査で絞り込む対象なんですけれども、これは政令において、世界共通の分類であるIPC、国際特許分類、これを用いて、国家及び国民の安全を損なうおそれが大きい発明が含まれ得る技術分野に限定するなどして定めることとしておりまして、特許庁においては、出願された発明がこの技術分野などに該当するか否かという定型的なスクリーニングを行うこととしております。

 このIPC、国際特許分類は、現在の特許実務でも常に付与されておりまして、通常、一つの発明であっても複数の技術的な観点から複数付与され得るものでございまして、第一次審査においてこれまでやっているこの分類を活用することによって、迅速に、かつ効果的にスクリーニングを行うことができるのではないかと考えております。

鈴木(敦)委員 では、時間の都合上、これが最後の質問になりますけれども、非公開の一次審査の段階で、例えば防衛省ですとか防衛装備の専門家ですとかそういう方々を取り入れて、軍事的知見をそもそも第一次の段階から入れていただければスクリーニングの効果をより高めることができると思いますけれども、ここは二次審査から入るというふうにはお伺いをしていますが、まず一次の段階でこれを入れていただくということはどうお考えでしょうか。

小林国務大臣 お答えいたします。

 第一次審査は、今申し上げたとおり、政令によって、国際特許分類などを用いて、国家国民の安全を損なうおそれが大きい発明が含まれ得る技術分野を定めまして、特許庁がこれに該当する発明か否かを定型的に判断する手続なんです。

 この政令を定めるに当たりましては、公にすることにより、外部から行われることによって国家国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野などを定めるものでございますので、委員御指摘のとおり、当然のことながら、防衛省にも協力を求めることになろうかと考えております。

鈴木(敦)委員 時間になりましたので終わりますが、この議論はまだ始まったばかりですので、引き続きよろしくお願いいたします。

 終わります。

上野委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 経済安保推進法案について質問をいたします。

 今日は、まず、フレームの点についてお尋ねいたします。

 本法案では、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を害する行為という文言が何か所も使われております。ここで言う外部とは何なのかについて御説明ください。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 外部から行われる国家及び国民の安全を害する行為とは、例えば、外国政府等の主体により行われる我が国の国家及び国民の安全を害する行為をいいます。

 例えば、基幹インフラにつきましては、二〇一五年に、ウクライナの変電所に対するサイバー攻撃によって大規模かつ長期にわたる停電が発生した事案などが発生いたしました。

 国家の関与の下、我が国に対してそのような攻撃が行われるとすれば、それは、外部から行われる国家及び国民の安全を害する行為に該当し得ると考えられるものでございます。

塩川委員 外国政府によるという話でありました。

 そうしますと、外部から行われる行為、国家及び国民の安全を害する行為という点について言うと、例えば、自然災害ですとか感染症ですとか気候危機というのは、そういう形では含まれるというものではないということでしょうか。

小林国務大臣 原則、外部というのは先ほど申し上げたとおりなんですけれども、一般論として申し上げますと、今委員から御指摘のございました災害あるいは感染症、気候危機といったような事象というのは、我が国の外部から行われる行為によって引き起こされたものとは考えにくいので、単にそうした事象のみでは、直ちにこの法案に言う外部から行われる国家国民の安全を害する行為には含まれないと考えられるというものでございます。

塩川委員 それだけでは当てはまらないというお話であります。国民的な受け止めというのはいろいろ幅がありますので、そういった点での、法案が何を位置づけているのかというのを明らかにすることは重要だと考えます。

 それから、本法案で、政令、省令委任という箇所というのはかなり出てくるんですけれども、本法案における政省令への委任箇所数というのは全部で幾つなのか、この点、お答えください。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 委任箇所の数は、作成される政令数で数えるか否かといった論点がありますが、確定的にお答えすることは困難でございまして、ただ、この法案において、政令という言葉は五十一回、省令を示す言葉、これは主務省令とか内閣府令という言葉がありますけれども、それは八十七回使用されております。

塩川委員 政令で五十一回、省令、内閣府令や主務省令ということで八十七回ということですから、単純に足せば百三十八か所という点で、かなりの数に上るということであります。

 それ自身が、重要事項のほとんどが政省令事項になっているという点でも、こういった中身について、やはり、例えば政令の考え方などを示すということというのは是非やっていただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 あらゆる事項を全て法律に規定いたしますということになりますれば、それ自身は大変困難であると考えてございます。加えまして、行政の複雑性でありますとか、あるいは行政に求められる機動性に対応するためには、必ずしも適切とは言い難い、このように考えてございます。

 下位法令への委任につきましては、委任事項の多寡ではなくて、委任事項の内容が重要でありますところ、一般的には、手続的な事項でありますとか、あるいは技術的な事項、事態の推移に応じ臨機に措置しなければならないことが予想される事項につきまして委任をすることがあるものと承知してございまして、本法におきましても同様の考え方で規定をさせていただいているところでございます。

 その上で、本法案の委任事項につきましては、例えば、物資につきましては要件を法律上明確に示す、事業につきましては、法律上の要件の下で、法律上に限定的に列挙する十四事業の中から定めることとする、技術分野につきましては、法律上の要件の下で、国際特許分類等をもって定めることといたしますなど、法律上、可能な限り明確化するように努めているところでございます。

 以上でございます。

塩川委員 でも、そういう程度しか説明がないわけですから、大事なところが政令や省令に委任をされているという点についても考え方を示すということはあっていいわけで、今後、具体的な法案の中身というものの関係では、そういった政令についての考え方なども是非示していただきたいと思っております。

 このように政省令に委任される項目が非常に多い一方で、国会の関与の在り方、そういった点で、この法案において国会という言葉というのはほとんど出てこないんですけれども、本法案における国会関与の仕組みというのはどうなっているのか、この点について御説明ください。

小林国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘の国会報告につきましては、サプライチェーンの強靱化に関する制度として、この法案の第三十四条第九項、そして第四十三条第二項におきまして、主務大臣が安定供給確保支援法人基金及び安定供給確保支援独立行政法人基金に係る業務に関する報告書の提出を受けたときは、基金における予算の執行状況を対外的に明らかにすることで執行の透明性を確保する観点から、これに意見を付して国会に報告しなければならない旨を規定しているところでございます。

塩川委員 安定供給確保支援法人基金、また安定供給確保支援独立行政法人基金の業務報告書についての国会報告の義務という点だけであります。これは予算措置との関係がありますから、これについて国会への報告義務を課すということだろうと思います。法律で基金を設けるときに係る国会報告として行われるものであって、ある意味、最低限の規定でしかありません。

 重要事項が、多く政省令で、政府の一存で決まり、国会関与がほとんどないような、こういう仕組みというのは、率直に言って、政府にお任せ、白紙委任と言われても仕方ないんじゃないでしょうか。

小林国務大臣 この法律の施行に当たりましては、安全保障を確保するための経済施策の全体に関わる事項を規定する基本方針を策定した上で、この基本方針に基づいて、四つの施策ごとに、有識者の意見を聞いた上で、各施策に固有の事項を規定する基本指針を策定することとしております。

 こうした基本方針や基本指針の策定に当たりましては、国会での御審議も十分に踏まえたものとしていかなければならないと考えております。また、この法律案の施行に必要な予算につきましては、予算審議の際に当然国会に御審議いただくこととなります。

 こうした形で、国会での御審議の内容も踏まえつつ、この法律案、成立しましたら適切に執行していきたいと考えているところであります。

塩川委員 是非、審議を通じて明らかにしていただきたいと重ねて要望するものです。

 こういった法律が作られる場合、その執行体制の点ですけれども、現行の国家安全保障局経済班の役割はどういうものなのかについてまず御説明をいただけますか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 国家安全保障局は、国家安全保障に関する司令塔である国家安全保障会議の事務局として同会議を恒常的にサポートするとともに、国家安全保障に関する企画立案、総合調整等を行ってございます。そして、その中で経済班は、経済安全保障の確保が我が国の外交、安全保障上の喫緊の課題となっている中、経済分野における国家安全保障上の課題について俯瞰的、戦略的な対応を迅速かつ適切に行うべく、令和二年四月に設置され、安全保障と経済を横断する領域で生ずる様々な課題に対し、関係省庁と連携しながら、法制度の検討作業を進め、関連施策を推進しております。

塩川委員 経済分野における国家安全保障上の課題について俯瞰的、戦略的な対応を迅速かつ適切に行うということで、外交・防衛政策と経済の一体的な推進、その点については、そういうことでよろしいですか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のあった点、今回の法案でも関連はしております。今回の法案の附則において、内閣法そして国家安全保障会議設置法等の改正を行ってございます。

 具体的に申し上げますと、今回の法案の附則第九条でございまして、今回の法整備に合わせまして内閣法第十六条を改正いたしております。これは国家安全保障局の所掌を追加するものでございます。具体的には、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策に加えまして、国家安全保障に関する経済政策についても、その基本方針及び重要事項に関する企画立案及び総合調整を国家安全保障局の所掌の一つとして明示する、こういうものでございます。

 そして、附則の十条でございますけれども、国家安全保障会議設置法第二条を改正いたしまして、国家安全保障局の所掌と同様に、国家安全保障会議の審議事項を追加するものでございます。具体的には、国家安全保障に関する外交政策及び防衛政策に加えまして、国家安全保障に関する経済政策についても、同条第一項第十一号に定める審議事項の一つとして明示するというものでございます。

 そして、最後に附則の第十一条でございますが、内閣府設置法第四条を改正いたしまして、本法案の施行に必要な事務を内閣府の所掌に追加することとしております。行政各部の施策の統一に必要な総合調整等を行うこととするとともに、個別施策の実施及び推進に関する事務を行うこととする、こういうこととしてございます。

塩川委員 附則の九条から十一条の説明がありました。本法案による内閣法の改正で、国家安全保障局の事務として、これまでの国家安全保障に関する外交政策、防衛政策に加えて、経済政策の基本方針に関する事務をつかさどることになるということですが、これは現行とこの法改正で何がどのように変わるということでしょうか。

小林国務大臣 従来からNSS、国家安全保障局では、我が国の安全保障に関する外交政策及び防衛政策の基本方針並びにこれらの政策に関する重要事項として経済分野に関する事項についても企画立案、総合調整を行ってきたところでございます。

 今回の法改正によりまして経済政策が国家安全保障局の所掌の一つとして明示されることを踏まえまして、この法律案に基づいて実施する安全保障の確保に関する経済施策を含め、経済安全保障を強化するための取組を更に加速していくということでございます。

塩川委員 国家安全保障政策として、外交政策、防衛政策、こういう政策と並んで経済政策が掲げられるようになる、国家安全保障政策として外交・防衛政策と一体に経済政策が運用されることになるということであります。

 そこで、附則の第九条と第十一条についての説明で、経済安全保障における国家安全保障局と経済安全保障を所掌する内閣府の関係、経済安全保障における国家安全保障局と内閣府の関係について説明をしてもらえますか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律の施行を担う組織として、今般新たに内閣府に所掌事務を追加するということでございます。その上で、内閣官房においては、先ほど先生もおっしゃられたとおり、元々の総合調整機能を担っておりますので、国家安全保障に関する外交、防衛に加えて経済というものを明示する、こういう形になります。

 以上でございます。

塩川委員 国家安全保障局は、今回の法律によって、経済安全保障全般の企画立案、総合調整の事務を担う。内閣府の方は、経済安保推進法の範囲内で、企画立案、総合調整の事務、内閣補助事務を行うとともに、経済安保推進法に基づく個別の事務、分担管理事務を行う。そういう整理ということでいいですか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的に内閣府設置法をどういうふうに改正するかと申し上げますと、内閣府設置法の四条の第一項、そして第三項、両方の項を改正いたします。第三項については、おっしゃられましたとおり、分担管理事務として、今回の法案の施行に関する事務並びに安全保障の確保に関する経済施策の総合的かつ効果的な推進に関する事務、これを担わせるということでございますし、四条の第一項に関しましては、内閣補助事務として、行政各部の施策の統一に関する総合調整に関する事務、こういったものを担わせる。こういう所掌事務を二つ追加してございます。

塩川委員 ですから、私の説明でいいということでよろしいですか。

泉政府参考人 正確に申し上げますと、内閣府設置法四条の一項には、柱書きのところで、行政各部の施策の統一を図るために必要となる次に掲げる事項の企画立案……(塩川委員「国家安全保障局と内閣府の関係」と呼ぶ)

上野委員長 済みません、指名してからお話をお願いします。

泉政府参考人 それで、済みません、四条一項に書いてありまして、その中で、括弧書きがございまして、内閣官房が行う内閣法第十二条二項第二号に掲げる事務を除くという規定もございます。そこで入れ子のような形になっている、こういうことでございます。

塩川委員 国家安全保障局は当然司令塔ということで位置づけられていて、その下で内閣府に必要な所掌の事務を担うところがあって、そこで内閣補助事務、分担管理事務を法律の範囲で行うという体制ということです。

 それで、実際に内閣府に置かれる組織というのは、今の経済安全法制の準備室が衣替えをして事に当たるということを元国家安全保障局長の北村滋さんがおっしゃっていたんですが、そういうことですかね。

小林国務大臣 今回の法施行を行う組織につきましては、今般新たに内閣府に担わせることとしておりますが、具体的な体制についてはこれからということになろうかと思います。

塩川委員 国家安全保障局は、重要土地等調査法、土地利用規制法に基づく政策の企画立案、総合調整を所掌してきました。この点、今回の法改正ではどうなるんでしょうか。

泉政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありましたとおり、NSSにおいては、重要土地調査法の基本方針に関する企画立案というものを所掌してございました。その規定については内閣法に規定があったわけでございますけれども、今般、先ほど申し上げましたとおり、国家安全保障局の所掌事務として、国家安全保障に関する外交、防衛、経済というふうに書き改めたものでございますから、そこで読めるということで、引き続き、規定ぶりは直しますけれども、国家安全保障局において所掌する、こういうことでございます。変わりはない、こういうことでございます。

塩川委員 これは、現行の条文が削除されて、当然、改正の方に外交政策、防衛政策と経済政策が入った、この国家安全保障局の事務として新たに位置づけられる経済政策の中で、重要土地等調査法の事務を読み込むということですか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございます。

塩川委員 そうすると、重要土地等調査法というのは、経済安全保障の側面もあるということですね。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 経済政策の面もございますが、外交、防衛に関する部分も含まれているもの、このように整理しているところでございます。

塩川委員 重要土地等調査法、土地利用規制法が経済安全保障の一環として位置づけられているということであります。

 昨年、土地利用規制法の議論も行いまして、自衛隊や米軍基地、原発周辺及び国境離島の住民に対してプライバシー権や財産権等を侵害する違憲立法であり、重要事項が皆、政省令事項という政府への白紙委任立法だということで厳しく批判をされた法律であります。このような土地利用規制法が経済安全保障の一環として位置づけられているというのは、極めて重大だと言わざるを得ません。

 その上で、経済安全保障法制準備室長であった藤井敏彦氏の件についてお尋ねをいたします。

 国会に提出をされました、国家安全保障局への立入り申請許可証についてお尋ねをいたします。

 この立入り申請許可証について、五枚提出をされましたが、その訪問客というのはそれぞれどなたでしょうか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 この立入り申請許可証につきましては、審議における要請を受けまして、藤井氏が直近三年で関わりのあった、不識庵で関わりのあった二十社のうち、私どもが今手元に残っております、令和二年、令和三年度の出入りの記録に残っている会社についての立入り許可証の写しでございます。

 具体的に申し上げますと、二十社のうち、二社、そして五件の立入りがあったということでございます。

塩川委員 この二社というのはどの企業でしょうか。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 大変申し訳ございませんけれども、不識庵と藤井氏の直近の関わり、二十社いずれも、現時点において社名を公表してほしくないということを申しておりますので、この二社が具体的にどの会社であるかということについては、現時点では差し控えさせていただく必要がございます。

塩川委員 それはおかしいんじゃないでしょうか。

 この間、電機メーカーA社社員の国家安全保障局への出入りに関する調査結果というのがあって、この電機メーカーA社については日立製作所という形での答弁もあったところであります。ですから、この二社、五件のうちの二社に日立製作所は入っているということでいいんですよね。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 A社、電機メーカーA社が日立製作所であるということにつきましては、塩川先生からの度々の御要請がありまして、委員長の御指示に基づきまして、A社たる日立製作所と相談をした結果、A社が日立製作所であるということについては公表してもよいということの同意を得ましたので、公表させていただいた次第でございます。

 他方で、現時点で、二十社のいずれも、自分たちの名前を出してほしくないというふうに申しておりますので、先生御指摘の日立が二十社に含まれるのかという御質問にお答えするということは、二十社の一つのお名前を出すということになりますので、大変申し訳ないんですけれども、現時点では二十社のお名前を出すということはできないということで御理解いただければと思います。

塩川委員 委員長、是非、この点をはっきり答えるように言ってもらえませんか。

上野委員長 後刻、理事会で協議いたします。

塩川委員 政府は、電機メーカーA社について、日立製作所と認めております。

 この立入り申請許可証、五枚出してもらったわけですけれども、そのうちの四枚は、この立場でいっても、A社関係者の来訪日、つまり、このA社は日立製作所となっているわけですから、日立製作所が来訪した日が令和三年の二月四日、三月十日、四月五日、四月八日となっています、その日付に対応するように、出された五枚のそれぞれの立入り申請許可証、うち四枚がこれに対応していますので、立入り申請許可証五枚のうち四枚は日立製作所社員の国家安全保障局への立入りということでいいですよね。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の四つの期日が一致しているという点につきましては、これは客観的事実としてそのとおりでございますけれども、繰り返しになって大変恐縮でございますが、日立製作所はA社が自分たちであるということは対外的に公表していいと言っていますけれども、二十社いずれも、まだ、二十社に自分たちが当たりますということについて同意をしてくださっておりませんので、その段階におきましては、私どもとして勝手にお名前を公表するということは難しいという点につきましては、改めて御理解ちょうだいできればと思います。

塩川委員 こんな答弁をずっとやっている以上、まともな議論はできないじゃないですか。委員長もおかしいと思いませんか。

上野委員長 室田審議官、的確な御答弁をお願いいたします。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 二十社の中で、名前を出していいという会社が出てきたら、それはきちんと御報告させていただきたいと思いますが、今この瞬間で申し上げれば、二十社全て、名前を出してほしくないという状況でございますので、今ここで、私の一存で会社のお名前をお伝えするということはできないということについて、お願いをいたします。

塩川委員 私、二十社全部を出せという話はそもそもしていないんですよ。電機メーカーA社が日立製作所でした、日立製作所が国家安全保障局に出入りをしていた、その際の立入り申請許可証の四枚について、ちょうどこの政府が出されているペーパーにある日付と合うようにこの申請証が出ているものだから、それは日立製作所ですよねという当たり前の確認をしているだけなので、日立製作所に関する話なんですけれども、その点、何で答えられないのか不思議でならない。委員長も不思議と思いませんか。

上野委員長 相手方があることでございますので、そのような判断かと思います。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 日付が四つ全て同じであるということは、私も、そのとおりというふうなところでございますけれども、いずれにしましても、二十社の中で一社につきましてでも、その会社の御了承を得ないとやはり我々としてはお名前を出せないということでございますので、まさに、今、度々の御要請ございましたので、二十社全てとの関係で、相談をさせていただきたいというふうに思います。

塩川委員 元々、二十社と関係ない話で私は聞いていたんですよ。元々、この電機メーカーA社の国家安全保障局への出入りについてのペーパーの話をしているわけで、これは直接、二十社の話と関係ないですから。A社が日立製作所と認めたということだから、この四回は日立製作所が来ているよね、単純にそういうことですよね。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 A社が日立製作所であるということと、二十社の中に日立製作所が含まれているか否かという問題は、私どもとしては別の問題としてやってまいりました。

 日立製作所との関係においては、A社は日立製作所かという点については同意を得られております。他方で、二十社いずれも、大変、繰り返しになって恐縮でございますけれども、自分たちの名前が二十社の一つとして出るということに今のところ同意をしていないという状況、これも客観的事実としてございます。

 しかし、今、再三の御要請がありましたので、特定の一社ではなくて、我々としては二十社平等に扱う必要があると考えていますので、二十社全体につきまして、お名前を出していいかどうかについて事後に確認をさせていただきたいというふうに思います。

塩川委員 それはそれで出してください。でも、二十社と関係ない話を聞いているんですよ、これ。

 皆さんが出した三月九日付の国家安全保障局のペーパーの中で、この電機メーカーA社の国家安全保障局の出入りの調査結果があります。この電機メーカーA社が日立製作所と認めました。だとしたら、日立製作所の来訪日に、令和三年の二月四日、三月十日、四月五日、四月八日、来ていますよね、日立製作所がこの日に来訪していますよねということは言えるでしょう。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 私、今申し上げられますのは、三月九日に発表させていただきました、電機メーカーA社、すなわち日立製作所の国家安全保障局への出入りに関する調査結果といったことで、日立製作所は、令和三年二月四日、同年三月十日、同年四月五日、同年四月八日に国家安全保障局を来訪している、これは申し上げることができます。

塩川委員 こういった短期間、二か月の間で四回も日立製作所の社員が藤井氏を訪ねて、国家安全保障局を来訪している。国家安全保障局というのは、こんなに頻繁に特定の民間企業が来訪するところなんでしょうか。

室田政府参考人 お答え申し上げます。

 国家安全保障局におきましては、内規に基づきましての、外部の人間の出入りをきちんと規制をしておりますけれども、今の御質問、こんなに短い間に一つの会社が来るものなのかどうかということについて申し上げれば、必要があるときにはそういうこともあろうかと思いますし、必要がなければそんなに頻繁に来ないということは申し上げられるかと思います。

塩川委員 どんな必要があったんでしょうか。

室田政府参考人 お答えを申し上げます。

 A社、すなわち日立製作所との関係につきましては、日立製作所から聴取をした結果としては、話題は最近の経済状況等であったということで、より具体的に申しますと、藤井氏が専門にしておりますCSR、企業の社会的責任、あるいはESG、環境、社会、ガバナンスといった問題についての議論を行っていたということでございます。

 では、これは国家安全保障局として必要なことだったのかと言われれば、率直なところ、国家安全保障局としての本来業務ではないと思います。他方で、そのような本来業務でないお客さんが来てはならないというほど、我々としても厳しく規制をしているということでも必ずしもございませんし、私どもにとって重要なことは、そのような四回の会談において、法案の内容の漏えいであるとか不適切な職務上の便宜供与があったかどうかということでございますけれども、それについてはなかったということを先方からも確認しておりますし、その点について、結果として四回の訪問というものがあったということ自体が特段の問題であったというふうには考えておりません。

塩川委員 この問題、しっかり明らかにしていただいた上でまたお尋ねしますけれども、基幹インフラ役務に係るような安定的な提供の確保の制度をつくる、そういったときに、この日立製作所の社員の人が上下水道分野や治水、利水分野などを領域とする水事業部の担当部長だったという点でも、経済安全保障との関わりがどうだったのかというのは明らかにする必要がある、これでは疑念を拭うことができないということを申し上げ、納得いく答弁ではないということを重ねて申し上げて、次の機会に譲ります。

 それから、サプライチェーンの関係ですけれども、特定重要物資ですが、この特定重要物資というのは何か。国民の生存に必要不可欠で、外部に過度に依存している食料や衣服やエネルギーというのは含まれるものでしょうか。

小林国務大臣 この法案では、特定重要物資の指定に当たりましては、国民の生存に必要不可欠若しくは広く国民生活又は経済活動が依拠している重要な物資であることに加えまして、外部に過度に依存しているか又は依存するおそれがあること、それに加えまして、外部から行われる行為によりまして国家及び国民の安全を損なう行為を未然に防止する必要があること、そして、当該物資等の安定供給確保を図る必要が特に認められること、この四つの要件で絞り込むこととしております。

 この法案において、どのような物資を特定重要物資として指定するかということにつきましては、この指定の具体的な考え方、要件など基本的な考え方については、有識者の意見を聞いた上で、安定供給確保基本指針において定め、また、個別物資ごとに特定重要物資としての指定の必要性を判断していくため、現時点で予断を持って言及することは控えたいと思いますが、その際、特に、委員御指摘の食料やエネルギーに関しましては、既存の法的枠組みや政策体系で既に備蓄を始めとする安定供給確保のための措置が講じられているケースがあることも踏まえまして、本法案に基づき更なる安定供給確保のための措置を講ずる必要性があるか否かという点については、しっかりと検討していく必要があると考えております。

塩川委員 食料、エネルギーもこの法案の対象となり得る、そういうこともあり得るということですか。

小林国務大臣 先ほど、冒頭、四つ要件を申し上げたと思うんですけれども、そのうち最後の、当該物資等の安定供給確保を図る必要が特に認められるか否かという基準に照らして判断しなければなりません。今の時点で、この食料、エネルギーが必ず入るのかということについては申し上げることができません。

 今、先ほど言った、既存の法体系がある中で、四つ目の要件である安定供給確保を図る必要が特に認められるか否かという点について、しっかり検討していく必要があると考えております。

塩川委員 なかなか一言でこうだということがお答えいただけない。政府への白紙委任と言われても仕方がないということを重ねて申し上げます。

 それから、供給確保計画の記載事項はどういうものなのか。その中身で、供給確保計画において取引先企業の情報も記載することになるんでしょうか。

小林国務大臣 供給確保計画は、特定重要物資の安定供給確保に取り組もうとする事業者が、主務大臣、これは物資所管大臣ですけれども、この大臣の認定を受けるために作成するものです。

 この計画におきましては、例えば、安定供給確保を図ろうとする特定重要物資又は原材料の種類ですとか、供給能力、技術獲得などの目標、あるいは取組の具体的な実施内容、実施期間、また申請者が取組を行う際の組織や人員等の実施体制、また、例えば緊急時における供給体制の強化など需給逼迫時の対応、そして特定重要物資などの生産、輸入、販売の現状に関する情報などの事項を記載していただくことを想定しているところでございます。

 今委員から御指摘のあった取引先の件につきましては、生産、輸入、販売の現状として、この法案の第九条第三項第八号に掲げる事項として、供給確保計画に記載いただくことを想定しているところでございます。

塩川委員 これは、第八号の方で、現状どうなっているという際に取引先の情報も書くことになりますねということと、今後の計画として出す第四号の方の取組の実施体制、そちらの方でも取引先の情報を出すというふうになるんでしょうかね。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 取引先の情報につきましては、先ほど大臣から答弁させていただきましたように、法案の第九条第三項第八号に掲げます供給確保計画の作成者における当該特定重要物資等の調達及び供給又は使用の状況ということとして記載いただくということを想定してございます。

 以上でございます。

塩川委員 第四号の取組の実施体制のところで取引先の情報を書くというようにはならない。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のございました第四号ではなく、第八号に掲げる事項として記載いただくということを想定してございます。

塩川委員 いや、第八号は現状ですので、計画として、今後の話として、第四号に、取組の実施体制を書くとなっているから、これからの計画において、こういう取引先とやりますよ、そういった情報を提供するのかどうかということなんですけれども。

泉政府参考人 重ねての説明になりますけれども、供給確保計画というのは、民間事業者の方がこういった取組をしたいといって主務大臣に提出する計画でございます。したがいまして、この四号というのは、申請者、こういう取組をするんですという申請者の方の組織、人員の体制、これを念頭に置いてございます。

 したがいまして、実際、物資についての取引先の情報云々というのは、何度も申し上げておりますとおり、八号、こちらに記載する、こういうことを念頭に置いております。

塩川委員 企業秘密だったサプライチェーンを政府に報告することに今懸念の声が上がっているわけですけれども、その点については、大臣、どういうふうに受け止めておられますか。

小林国務大臣 この法案に基づくサプライチェーンの調査は、当然、本法の施行に必要な限度で実施することとしているほか、国家公務員がサプライチェーン調査を通じて知った民間事業者の機微情報を漏らした場合には、通常の秘密漏えいよりも重い罰則を設けております。

 こうした中で情報管理体制を整備しておりまして、企業秘密が外部に漏えいすることがないように特に配慮しているところでございます。

塩川委員 今までやっていないところまで踏み込むような対応ですので、懸念は拭えないということを申し上げて、また次の機会にしたいと思います。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 緒方林太郎です。

 今日、最後三十分、よろしくお願いを申し上げます。そして、まずもって、質疑時間、御配慮いただきましたこと、立憲民主党の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。

 経済安全保障、今日、質疑の中でも何回か出てきましたけれども、まず大臣にお伺いをしたいのは、小林大臣は経済安全保障を担当する大臣であり、そして、この法案は経済安全保障を推進するための法案である、そういう理解でよろしいですか、大臣。

小林国務大臣 私は経済安全保障を担当する大臣でありまして、今回、この法制の担当でございますので、今日の審議でも何度か申し上げたんですけれども、今回の法案自体が経済安全保障全てだと申し上げるつもりはございませんけれども、この法案の成立、また適切な執行を通じて、我が国の経済安全保障を確保していく、前に進めていく、そういう責任を負っていると感じております。

緒方委員 と答えられると、経済安全保障の定義は何ですかという質問が出てくるのは当然でありまして、経済安全保障というのが何なのかというのを聞かないと、そもそも経済安全保障担当大臣が何をする人なのか、そして、この政府が目指している経済安全保障というのはどこに向かおうとしているのかということが、はっきりと分からないわけですよね。

 今日、何度も、私、質疑を聞きながら、定義について質問があって、いろいろなことを言っておられましたが、ここは避けちゃいけないところですよ。何をする大臣なのか、そして、政府として経済安全保障を推進するというからには、それはどこを目指し、その外延が何なのかということははっきりと言うべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

小林国務大臣 繰り返しになって恐縮なんですけれども、経済安全保障というのは多岐にわたる新しい課題だと考えています。我が国を含めて、各主要国において何か固まった一律の定義があるわけではないという中で、今日の審議で何度か申し上げましたけれども、今回の法案におきましても特段定義づけというものは行っておりませんが、国民の皆様に対してあえて分かりやすく申し上げれば、国家そして国民の安全を経済面から確保していくことだと言えるのではないかというふうに思っております。

 今日も例示をさせていただきましたが、例えば、アメリカにおいては、今のバイデン政権、ちょうど一年ぐらい前だったと思いますけれども、インテリムガイドラインという形で、国家安全保障戦略指針の暫定版として、経済安全保障は安全保障であると。前のトランプ政権の国家安全保障戦略にもそう書かれていた。それが定義かどうかは別として、例えばアメリカにおいては、経済安全保障、エコノミックセキュリティーについてはそういう基本的な考え方、理念というものもあるんだと思います。そういうところは共有していると思いますけれども、私としては、そういう受け止め方をしています。

 重要なのは、どういう目標に向かって進んでいくかということでございまして、これは、我が国の経済構造の自律性を高めていくこと、また、これは技術だけではないですが、技術を含めて、我が国の他国に対する優位性、その強みを磨くことによって国際社会に対する不可欠性をしっかりと獲得していくこと、そして、それとともに、弱みを解消し強みを獲得することによって我が国の国際社会における立ち位置というものをしっかりと強化をすることによって、我が国の国益にかなう基本的価値やルールに基づく国際秩序というものをしっかりと擁護し強化をしていくこと、これが我が国が目指す経済安保の方向性だというふうに思っております。そういう基本的な考え方に基づいて、経済安全保障の確保に努めていきたいと考えます。

緒方委員 アメリカで言っているエコノミック・セキュリティー・イズ・ナショナル・セキュリティーというのは、定義どころか、それは当たり前のことを当たり前に言っているだけでありまして、むしろ、それが定義の一つの説明だというのであれば、どんどんどんどん論理がループしていくだけであって、ほとんど意味がないと思うんですよね。

 なぜ私がこんなに定義の話をしているかというと、人によって想像するものが違うわけですよ。これが問題なんです。

 定義がないから、関係する団体が懸念を持つわけですよ。そして、それを避けるのが政府の役割じゃないですか。エコノミックセキュリティーと言われて、それが何を指すのかが分からない、だからみんな不安だ。それは、中身もそうかもしれないけれども、元々のお題目のところで、それが何を指しているか分からない。その不安を解消していくのが政治の役割だと私は思うんですけれども、大臣、違いますかね。

小林国務大臣 いろいろなアプローチがあっていいと私は思います。

 先ほど、国家そして国民の安全を経済面から確保していくことというふうに、それが分かりやすいかなというふうに申し上げているんですけれども、例えば、別の言い方をすれば、今、現行の国家安全保障戦略に国益というものが定義をされております。それは、国家の主権、独立、国民の生命、身体、財産を守り抜くこと、これが一つ。二つ目は、経済的な繁栄をしっかりと実現していくこと、これが二つ目。三つ目の国益としては、基本的な価値やルールに基づいた国際秩序を擁護し、そして強化していくこと。こうした国益を経済面から、経済的手段を通じて守って確保していくこと、そういうことが私はイメージに合うというふうに思っております。

 そして、今回の経済安全保障のこの法案につきましては、冒頭申し上げたとおり、広い分野を全てカバーしているとは思いません。

 なぜ今回四項目にしたかというと、これは、これまでも政府の内部において、また、私が閣僚になる前、自民党においてもやってきたことなんですけれども、まず重要なのは、ほかの国の動向に一々右往左往しない国家をつくっていくことだと思っています。我が国として、しっかりと基軸となる考え方、座標軸を持たなきゃいけない。それは政策の軸であり、価値の軸であり、時間の軸であると思っていますけれども、それが今まだこの国には私は十分にできていないと思っています。

 だからこそ、まずは我が国自身を分析して把握をしなきゃいけない。それは、弱みを分析し把握をし、強みを把握していかなきゃいけないと思うんですけれども、そのために、まずは基幹インフラ、基幹産業を中心に様々なリスクシナリオを想定した上で、弱みや強みというものを把握していく作業を続けているわけです。その中で出てくる、これからも続けていかなきゃいけない、課題というのは出てくると思います。その中で、全て一気にやり切れれば、それにこしたことはないですけれども、残念ながら、そうはうまくはいかないと考えています。

 その中で今回の四項目を選んだのは、喫緊に法整備が必要なことであって、かつ分野横断的なことということで四項目を選んで、この経済安全保障を推進していくということでございまして、例えば、じゃ、エネルギーは入るのか、食料は入るのか、今日も質疑でありましたけれども、広い意味でいえば、それは経済安全保障と関連する部分というのはあろうかと思います。

 ただ、エネルギーや食料というのは、これまでも、いわゆる伝統的な経済安全保障であって、農林水産省あるいは資源エネルギー庁がこれまで積み重ねがある分野ですから、できる限り、今、新しくいろいろな技術が出てきて、DXが進んで、その中で喫緊に取り組まなければいけない課題というものに向き合わなきゃいけないということで今回の法案を出しているということで御理解いただければと思います。

緒方委員 最初に、いろいろ考え方があると思いますけれどもと。で、最後にいろいろな説明をされましたけれども、まさに、今日の質疑でも何回か出てきた不祥事事案ですね。そうやって、外延が分からない、何が経済安全保障か分からないというときに、そこにビジネスチャンスを見出す人たちが出るわけですよ。これまでも、今日も大串議員からも質問がありましたし、ブローカー的な動きをする人が出る。

 それはいろいろな理由があると思うけれども、結局みんな不安に思っていて、そして経済安全保障、結局盛り込まれませんでしたけれども、そういうのを担当する役員を企業に置くべきだとか、まあ、それは結局結実しませんでしたけれども。

 けれども、結局いろいろなところに、あなたも経済安全保障に関わっています、あなたも関わっています、あなたも関わっています、なぜなら経済安全保障というのは定義がない、そういう概念だからということで、結局、小林大臣が、定義がない、定義がない、いや、それは人それぞれだというその答弁一つ一つが、怪しげなとまでは言わないけれども、こういった不祥事を起こすようなコンサルタント業務を物すごく……(発言する者あり)増やす。いい御指摘ですね。増やす、ビジネスチャンスを生み出す、そのきっかけになるんじゃないかと、私はそれを懸念するから言っているんです。

 そういう、今回起きたようなことというのは、まさに経済安全保障というのがよく分からなくて、それに慌てる人々をあおるツールになるのがよくないでしょうと。これは正当な問題意識だと思いますよ。

 大臣、いかがですか。

小林国務大臣 経済安全保障について一律の画一的な定義をするということと、法制を担当する大臣としては、今回の事案というのは極めて重く受け止めているところではあるんですけれども、そうした事案とがダイレクトに結びついてくるかというと、そこについては、私は必ずしもそうは思っておりません。

 ただ、今委員から幾つか御指摘がございました。

 まず、外延という話についてですけれども、国家国民の安全を確保していくには、いろいろな手段があろうかと思います。これまでの伝統的な安全保障というのは、外交政策であり、防衛政策でした。今回、経済面からもそれを確保していこうということです。

 これは時代によって、先ほど申し上げたように、技術というのも変わってくるし、社会の在り方も変わってくるので、例えば外交や防衛の外延というのもどこなのかというふうにいうと、それは時代によって変わると思います。そういう意味で、必ずしも外延を明確に決めなければいけないということが、本当にそこが唯一のアプローチなのかというと、私はそうではないんじゃないかというふうに思っています。

 一方で、じゃ、経済安全保障を今後国の政策にどう位置づけていくのかというところは非常に重要なポイントだと思っておりまして、だからこそ、岸田総理が、今後おおむね一年をかけて、いわゆる三文書、国家安全保障戦略を含めて策定していくというプロセスの中で、この経済安全保障に関する視点を、今の現行のNSS、国家安保戦略には明確にやはり位置づけられていないというふうに思いますので、それをどう位置づけていくかということをしっかりと政府全体として検討していくことは極めて重要な課題だと考えています。

緒方委員 私、本当に、別にこれは野党根性を出してとか、そういうことじゃないんですよね。変な経済安全保障ビジネスをやるやつが絶対出てくると私は思うんですよ。そういうものを防ぐということは是非留意していただきたい。

 少し質問を移しますけれども、経済安全保障といって、先ほどから言われているとおりですけれども、別にこれでコンプリートじゃないんだという話はしておられる。私もそう思うんです。もっと言うと、経済安全保障として取り組まなきゃいけない喫緊の課題は何ですかと考えたときに、この法案のような中身に必ずなるのかと言われると、必ずしもそうではないと思うんですね。

 なぜこの四つだけを特出ししたのか。昨年十一月の第一回の経済安全保障推進会議、閣僚級のですね、会議で配られた資料の中では、もう既にこの四項目は出ていたわけですよね。多分検討されるべき内容ってこれだと思いますよということをぼんと言った上で、その上で、有識者会議に検討してくださいという話をしているわけですね。

 したがって、一応有識者会議で検討して、有意義な議論もあったと思いますけれども、けれども、この四項目になるということは、もう既に表向きでも昨年の十一月の段階では確立をしていたわけであり、もっと言うと、それよりも前にもう既に分かっていたわけですよね。

 何でこの四項目なんですか、大臣。

小林国務大臣 済みません、できるだけ丁寧に答えたいので、先ほどの、委員が、経済安全保障ビジネスというようなお話がありました。それに一点だけ付言させていただきますと、やはり今回の事案については法制担当大臣としては極めて重く受け止めておりますので、こうした点につきましては、綱紀粛正をやはり徹底していかなければいけない、そういう思いでこの法案も策定していますし、これからも、運用において国民の皆様に疑念を抱かれることがないように、しっかりやっていきたいと思っています。

 その上で申し上げますと、なぜこの四項目なのかというところです。

 これは、先ほども申し上げましたが、この法整備だけが全てではないです。昨年、私が十月の上旬にこの担当大臣という職を拝命したんですが、今、ちょうど半年弱たちましたけれども、例えば技術流出の防止につきましては、法改正は行っておりませんけれども、外為法のコア業種というものを拡大したり、みなし輸出というものをこの五月から実行していきます。あるいは、研究機関、大学の、いろいろ言われていますので、そのインテグリティーを高めていくための施策を、既に昨年の年末、ガイドラインを改正しました。あるいは、外からいらっしゃる研究者あるいは留学生、これの水際対策というものを強化している。様々やらせていただいておりますので、法整備だけが全てではないということです。

 その上で、なぜ四項目なのか、元々決まっていたのかというと、別に前から何か決まっていたわけではなくて、骨太の方針にいろいろ書いてあるんですよ。

 そういう意味では、そこに項目が盛り込まれているということではあるんですけれども、様々な項目があって、その中で、早くやっていかなきゃいけないというものをできるだけピックアップして、結局、法制化が本格化したのは、本格化というか、まず加速したのが、やはり担当大臣が置かれてからだと私は認識しています。だから、去年の十月ぐらいだと思いますが、それで、推進会議や有識者会議、これを設置したのが十一月ですけれども、そこでこの法案の検討が加速したという認識で、この閣議決定に向けて走ってきたということであります。

緒方委員 余り、なぜ四分野が選ばれたのかということについて説明がなかったんですよね。

 もう既に、先ほども言ったように、経済安全保障推進会議の中では、中が、詳細がどうであるかということを抜きにして、昨年の十一月の段階ではもうこの四項目というのはざくっとは決まっていたわけであって、それが何でこの四つなんですかというのは多分誰も分からないんですよ。有識者会議の報告書を見ても、別になぜこの四項目でなきゃいけないかという報告はどこにも書いていなくて、初めがあって、いきなりもう中身に入っているわけですよね。

 だから、多分国民からしても、なぜこの四項目が選ばれているかということについて分からないまま、政府の側から、この四つですというのを、別に押しつけられているとまでは言うわけではありませんけれども、四項目を当然のように見せられて、これなんですと言われているんですけれども、それは説明する義務があると思いますよ。大臣。

小林国務大臣 これは今日の審議でも何度か申し上げたんですけれども、これまでも様々な主要産業の分析、我が国自身が置かれている立場というのを分析してきまして、そういう中で様々な課題が浮かび上がっているもののうちの一部であります。

 それで、この四項目に共通していることは何かというと、やはり外部脅威に対してどう対応していくかということと、あとは分野横断の喫緊の課題ということです。

 先ほど、脆弱性を解消して強みを磨いて獲得していくということを申し上げましたけれども、やはり、今、国際情勢が極めて流動化していると思います。

 今回、国民の皆様がコロナを通じて分かったことは、やはりサプライチェーンがグローバル経済の中で多様化していて、いざというときにマスク、医療用ガウンがなくて、医療の現場が機能しなかった部分もあった。あるいは、半導体についても、今、国民の多くの方が認識されていますけれども、こういうサプライチェーンの脆弱性というものが浮き彫りになりました。

 最近もサイバー攻撃の事案が増えていますけれども、社会のDX化、これは当然進めていかなければならないですけれども、その中でやはりリスクが出てくる、あるいは量子、AI、宇宙、海洋、革新的な分野におきまして、先進主要国がこれは官民一体となって国家戦略でかなりの資金も投じて、将来の私たちの暮らしを一変させるような技術に投資をしているわけです。そうした環境の中で、急がなければならないということでこの四つをピックアップしたということであります。

緒方委員 諸外国で経済安全保障と言われるときに思い浮かぶのが、そういった、この法律をずっと見ていると、いろいろなものに金を出しますという話がすごく多いわけですけれども、それとは別の分野として、制裁法制の重要性というのが、経済制裁の法制の充実というのを、これをエコノミックセキュリティーの中に入れてくる国、これは多いと思いますね。

 例えば、日本が輸出したり融資したりした先が人権侵害をしているとか、又は、日本に投資したり日本に輸入する元が人権侵害の温床であることについて、外為法改正による対応は私は結構必要なんじゃないかと思うんですね。そういうことを国会の中で考えておられる方も多いです。

 経済安全保障の中で今やっている話というのは、どちらかというとディフェンドの話であって、公のお金をそういった分野に投入していくという仕組みがこの法律の中にざっと書いてあるんですけれども、外為法の発動要件として人権侵害を織り込むこと、これは結構優先順位が私は高いというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

小林国務大臣 これは、今、経済産業省において様々な検討を加えているというふうに承知をしています。

 私の立場でコメントすることは控えますけれども、経済産業省における、人権をデューデリジェンスあるいは輸出管理にどう位置づけるかという話は、検討がこれから加速していくというふうに認識していますし、また、政府としては、中谷補佐官の下で会議体をしっかりと設置をして、人権との向き合い方について検討をされるというふうに伺っておりますので、そことしっかりと連携をしながら議論に参画していきたいと考えます。

緒方委員 つまり、現時点で、その件は優先順位が高くないと判断したということですか。大臣。

小林国務大臣 私が、経済安全保障というのは多岐にわたる分野で、エネルギーも、食料も、金融も、新しい技術も、いろいろなことに、多岐にわたる中で、全て私が一つ一つの頭で何かやるわけではないと理解しています。

 既に、今の先生御指摘の外為法の話につきましては、当然、その制度の所管官庁である経済産業省が今真剣に議論しているというふうに認識していますので、別に重要性が低いというふうには思っておりません。しっかりと連携をしていくということだと思います。

緒方委員 まさに、そういうのを調整するのが、総合調整担当の国務大臣だと思うんですよね。

 だから、経済安全保障って何なんですかというのを最初に聞いたんです。今のようになっちゃうと、いや、それは実は他省庁でやっていますから私の所掌じゃないですという議論というのが出てくると、はっきり言って、ここで何を議論すればいいのかという。何というんですかね、胸先三寸で選ばれちゃうわけですよね。それってよくないなと思いますが、まあ、質問を移したいと思います。

 特定重要物資の件についてお伺いをしたいと思います。

 この法律も、見ておりますと、特定重要物資の件は、最初の第六条と第七条のところに、内閣府の大臣としての内閣総理大臣の権限が出てきており、第七条で指定だったと思います。この政令自体は、恐らく小林大臣のポストの方が政令を出すんだと思いますが、そこから先、全部主務大臣なんですね。

 基本的には、それから先の話は全部主務大臣に投げてあって、あとは内閣総理大臣、その権限を小林大臣が担当されるんだと思いますが、あとは協議にあずかるだけということで、大臣がメインアクターではないんですね。

 一方で、各主務大臣というのは、これまで安定供給確保なんてやったことないわけですよ。手法とて、それぞれの所管物資、違うわけですよ。それを、各主務大臣に、第六条と第七条で方針を決めて、そして指定して、ぼんと任せたら、うまくいくというふうには私には到底思えないんですけれども。大臣、もう少し内閣官房や内閣府の方でグリップをして、やらないと、この仕組み、うまくいかないと思うんですけれども、いかがですか。

小林国務大臣 重要なことは、誰かが全て権限を持って全てやるということではなくて、政府全体として、しっかりと全体として整合性を取れた形でやはり物事を進めていくことが重要だと思っています。

 したがって、このサプライチェーンの話だけではありませんけれども、重要なのは、各施策ごとに基本指針を作りますけれども、この中身だと思っております。

 それで、そこは私自身が当然かなり関与していくことになりますけれども、そこの中身をどれだけしっかりと作り込めるかというところは、有識者の方たちにも意見を聞きますけれども、そこは重要だと思っております。

 また、委員御指摘のように、今、僭越ながら、重要だなと思ったポイントは、経済官庁ってたくさんあると思うんですよね。官庁によって、このサプライチェーンの話だけじゃなくて、いわゆる経済安全保障に関する経験とかノウハウはかなり差がまだあると思っています。

 だからこそ、この法案の中にも、四条か五条か、済みません、ちょっと今手元に条文がないのであれなんですけれども、各関係行政機関がしっかりと連携していくということはもちろん明示的に書いておりますし。

 このサプライチェーンの話だけではなくて、例えば、ちょっと話が変わりますけれども、外為法の投資審査体制の強化につきましても、これまでは、制度の所管官庁、共管、先生御案内のとおり財務と経産ですけれども、投資は財務省がメインでやっていますが、そことインフラ官庁とかがバイでやっていましたけれども、アメリカのCFIUS型のように合議体をしっかりとつくっていく、その中で、経験を豊かに持っている官庁、ノウハウを持っている官庁が、ほかの官庁にも、省庁にも知見を共有することによって全体の底上げを図っていくという意味で、こうした、ある意味横串を刺し、また、みんなでその知見を共有していくということは、経済安全保障において非常に重要な視点だと感じました。

緒方委員 先般、牧島大臣とキャッシュレスの話をしたときも同じ話をしたんですが、多分、小林さんが大臣をやっている限りにおいては問題ないんですよ。回るんですよ。けれども、将来、本当にこの仕組みできちっと回るかというと、各主務大臣に任せられているものが多過ぎて、ちょっと、本当にこの仕組みで回るとは、私、とてもじゃないけれども思えないんですね。けれども、それは水かけ論になると思うので。もう質問時間、限られてきていますので。

 先ほどから、この特定重要物資に何が入りますかというときに、これが入ります、あれが入りますということについては今お答えできないということでありましたが、ちょっと別の視点からお伺いをしたいと思います。

 ここに出てくる主務大臣からアプリオリに排除される大臣というのは、国務大臣というのは、いないですね。例えば農林水産大臣は入りませんとか、何々大臣は入りませんとかいうことではなくて、全ての国務大臣がこの主務大臣に入り得るという理解でよろしいですね、大臣。

小林国務大臣 これは委員御案内のとおり、法案のたてつけとしては、最終的に特定重要物資として何を選んでいくかというのは、これからもしっかりと詳細な制度設計を含めてやっていくので、今、これが入ってこれが入らないというのは申し上げられませんが、委員御指摘のとおり、これは、どちらかというと、いわゆるキャッチオール的な制度、たてつけというふうになっておりますので、アプリオリに誰かが排除されるというものではありません。

緒方委員 つまり、農林水産大臣である、厚生労働大臣であると、全ての方が入り得るということですね。分かりました。

 もう少し質問しようと思ったんですが、私に与えられた時間がそろそろ終わりそうでありますので、優等生として、少しだけ早めに終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

上野委員長 次回は、来る二十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会


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