第16号 令和4年4月6日(水曜日)
令和四年四月六日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 上野賢一郎君
理事 井上 信治君 理事 工藤 彰三君
理事 平 将明君 理事 藤井比早之君
理事 中谷 一馬君 理事 森山 浩行君
理事 足立 康史君 理事 國重 徹君
赤澤 亮正君 井出 庸生君
伊東 良孝君 石井 拓君
石原 宏高君 石原 正敬君
金子 俊平君 小寺 裕雄君
杉田 水脈君 鈴木 英敬君
高木 啓君 永岡 桂子君
平井 卓也君 平沼正二郎君
古川 直季君 松本 尚君
宮路 拓馬君 宗清 皇一君
山田 賢司君 吉川 赳君
和田 義明君 大串 博志君
岡田 克也君 神津たけし君
堤 かなめ君 本庄 知史君
山岸 一生君 阿部 司君
青柳 仁士君 浅川 義治君
堀場 幸子君 河西 宏一君
平林 晃君 浅野 哲君
塩川 鉄也君 緒方林太郎君
大石あきこ君
…………………………………
議員 阿部 司君
議員 堀場 幸子君
内閣総理大臣 岸田 文雄君
国務大臣
(経済安全保障担当) 小林 鷹之君
内閣府副大臣 大野敬太郎君
外務副大臣 小田原 潔君
文部科学副大臣 田中 英之君
経済産業副大臣 細田 健一君
内閣府大臣政務官 小寺 裕雄君
内閣府大臣政務官 宮路 拓馬君
内閣府大臣政務官 宗清 皇一君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 泉 恒有君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 三貝 哲君
政府参考人
(内閣官房内閣審議官) 木村 聡君
政府参考人
(内閣官房内閣人事局内閣審議官) 岡本 誠司君
政府参考人
(内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官) 阿蘇 隆之君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 石月 英雄君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 坂本 修一君
政府参考人
(経済産業省大臣官房総括審議官) 片岡宏一郎君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 龍崎 孝嗣君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 福永 哲郎君
政府参考人
(経済産業省経済産業政策局地域経済産業グループ長) 濱野 幸一君
政府参考人
(資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長) 茂木 正君
内閣委員会専門員 近藤 博人君
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委員の異動
四月六日
辞任 補欠選任
金子 俊平君 石原 正敬君
高木 啓君 石井 拓君
永岡 桂子君 井出 庸生君
松本 尚君 古川 直季君
堤 かなめ君 岡田 克也君
森田 俊和君 神津たけし君
浅川 義治君 青柳 仁士君
同日
辞任 補欠選任
井出 庸生君 永岡 桂子君
石井 拓君 高木 啓君
石原 正敬君 金子 俊平君
古川 直季君 松本 尚君
岡田 克也君 堤 かなめ君
神津たけし君 森田 俊和君
青柳 仁士君 浅川 義治君
同日
理事森田俊和君同日理事辞任につき、その補欠として中谷一馬君が理事に当選した。
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本日の会議に付した案件
理事の辞任及び補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案(内閣提出第三七号)
経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案(足立康史君外二名提出、衆法第一〇号)
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○上野委員長 これより会議を開きます。
理事の辞任についてお諮りいたします。
理事森田俊和君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、理事の補欠選任についてお諮りいたします。
ただいまの理事の辞任に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
それでは、理事に中谷一馬君を指名いたします。
――――◇―――――
○上野委員長 内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及び足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案に対し、森山浩行君外一名から、立憲民主党・無所属提案による修正案が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。森山浩行君。
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経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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○森山(浩)委員 ただいま議題となりました経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
立憲民主党は、国際情勢や社会経済構造が急激に変化する中、経済安全保障の確立を衆議院議員総選挙の公約に掲げるなど、経済安全保障の重要性と必要性については十分に認識しております。しかし、政府原案は、自由で開かれた経済活動、民間活力と経済成長、経済安全保障の実効性といった観点から、経済団体等現場の懸念事項に十分に応えるものとなっていないと言わざるを得ません。
政府原案は、そもそも経済安全保障の定義や基本理念がありません。また、規制や支援の対象範囲は、法案成立後に基本指針や政省令で定めることとされており、現時点では明らかではありません。さらに、政府に広範な裁量権が認められているため、経済活動への規制の強化につながりかねません。
加えて、政府原案では、特定重要物資の指定に係る政令や特定社会基盤事業者の指定の基準に係る省令等を制定するに当たり、事業者等の意見を聴取する規定が設けられておらず、事業者等との間でどの程度対話が確保されるかが明確ではありません。
こうした政府原案の問題点を踏まえ、我が党は、国家及び国民の安全の確保と自由かつ公正な経済活動の促進との両立を図り、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保を推進するため、政府原案の修正が必要であると考え、本修正案を提出した次第であります。
以下、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の基本理念を新たに設けるとともに、政府は、基本理念にのっとり、基本方針を定めなければならないものとしております。
第二に、政府は、特定重要物資の指定に係る政令を定め、又は変更しようとするときには、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、産業構造その他特定重要物資の安定供給確保に関し知見を有する者の意見を聞かなければならないものとするとともに、第四十八条に基づく報告又は資料提出を求めることができるのは、第二章の規定の施行に特に必要な限度としております。
第三に、主務大臣は、特定社会基盤事業者の指定の基準に係る主務省令を定め、又は変更しようとするときには、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、情報通信技術その他特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関し知見を有する者の意見を聞かなければならないとするとともに、特定重要設備の導入等後等の勧告及び命令をすることができる要件のうち、特定妨害行為の手段として使用されるおそれについて、著しく大きいと認めるに至ったときとしております。また、主務大臣は、特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供が確保されるようにするために必要な情報の提供、相談、助言その他の援助を行うよう努めるものとしております。
第四に、特定重要技術の開発支援に当たっては、先端的技術の例示として、宇宙科学技術、海洋科学技術、量子科学技術、人工知能関連技術を規定するとともに、政府は、特定技術分野に係る政令を定め、又は変更しようとするときには、あらかじめ、安全保障の確保に関する経済施策、産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を聞かなければならないものとしております。
第五に、政府は、毎年一回、この法律の施行状況について国会に報告しなければならないとするとともに、政府は、この法律の施行後速やかに、特許出願人、指定特許出願人又は発明共有事業者が、特許出願の非公開に関し、内閣総理大臣に対して報告、提出その他の手続を行う場合においても、その手続を円滑に行うことができるよう検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとしております。
以上が、本修正案の趣旨でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○上野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○上野委員長 この際、お諮りいたします。
両案及び修正案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官泉恒有君外十一名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○上野委員長 これより両案及び修正案を一括して質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。足立康史君。
○足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。
実は、この内閣委員会での経済安全保障法制についても、日本維新の会は、独自案、対案を出して審議をいただいてまいりましたが、別途、国土交通委員会で熱海の盛土に関する審議が今日から始まりますが、これも対案を提出をしておりまして答弁に入らないといけないので、今日は、実は、この場所しかなかったものですから、トップバッターを御調整をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。
今日は、今理事会でも決まりましたが、本日の大臣に対する質疑、それから対総理質疑を経て、質疑を終局して、採決の段取りになっていると承知をしています。
私は、この内閣委員会、委員長始め皆様の差配の下、十分な議論ができてきたと感謝をしております。ただ、ずっと私どもが申し上げてきた条文修正が、国会で、国会というのは国権の最高機関ですから、国会での議論が条文に反映されるものが、合理的なものがあればされるべきであり、そうでなければそのままでいいと思うんですね。
ところが、これをちょっと見ていただけますか。過去五年、赤枠が隔年で入っていますけれども、二〇一七年から、過去五年の国会で修正可決された閣法一覧です。御覧いただいたら分かるように、安倍内閣、菅内閣ではこれだけの数が、最低でも四本、多いときは十本程度修正されているわけですね。
例えば、昨年の通常国会の一丁目一番地はデジタル改革関連法案でした。これは、私がまさにこの内閣委員会で、平理事にも御指導いただきながら、大きな本文修正、まあ大きいというのは私の主観でありますが、デジタル社会がどうあるべきかということについて大きな修正をいただきました。私、これが当たり前の国会だと思っているんですね。
ところが、岸田内閣になって、この国会、もう一月から始まっていますが、一本も国会修正がなされていません。この一丁目一番地の経済安全保障法制についても、後ほど申し上げますが、相当合理性の高い修正案を御提示できたと思っていますが、井上筆頭には御尽力いただいたと承知していますが、相ならないということであります。
小林大臣、本当は自民党にも聞きたいんですが、自由討議ではないので、内閣にしか、閣僚にしか質問できないので小林大臣に代表して伺うわけですが、やはり、一つは事前審査がちょっとうまくいっていないんじゃないか。そしてもう一つは、岸田内閣は特に聞く耳があると標榜していらっしゃいますが、これを見てください。これは別に維新だけじゃないですよ。これを見ると、何か維新の会は菅さんと安倍さんと仲がいいからだろうと勘違いされる方がいるんですけれども、確かにデジタル改革は私たち維新の会と調整しました、でも、ほかは、年金とかいろいろありますが、超党派で修正してきたんですね。だから、安倍さん、菅さんは聞く耳があったわけです。ところが岸田さんは、就任以来、就任以来ですよ、御就任以来一本も国会での修正に応じていないんです。これ、聞く耳ありますか。
こういう観点から、事前審査そして岸田内閣の姿勢について、私は大変残念な思いをしていますが、大臣のお立場から見るとどう見えているか、是非お願いしたいと思います。
○小林国務大臣 お答えいたします。
政府としては、この法律案の策定に当たりまして、与党と意見調整を行った上で法案の閣議決定を行って国会に法案を提出させていただいている、そういう経緯がございます。あわせて、野党の部会などへの説明や意見交換も踏まえまして国会審議に臨ませていただいています。
政府の立場として、国会審議の在り方につきまして、そういうことをお答えする立場にはないと考えておりますが、私の立場としては、国会において、少しでも充実した審議をいただけるように、本委員会での質疑を中心に政府の考え方について説明をし、できる限り御理解をいただけるように、その姿勢を貫いてきたところでございます。
与党の事前審査というお言葉ですけれども、事前審査の在り方につきまして、これについてもちょっと私の立場でコメントすることは控えたいと思いますけれども、我が国は議院内閣制を取っておりますので、政府と与党がしっかりと議論を行って、それでその内容を反映させた法案を策定して国会に提出していくということは、意思決定の一つの在り方ではなかろうかというふうには捉えております。
○足立委員 議院内閣制にもいろいろな国があって、イギリスも議院内閣制ですが、国会修正は頻繁に行われています。
だから、やはり日本は、いわゆる私たちが五五年体制として批判してきた、今、新五五年体制として批判してきた、それが今壊れつつあると思っていますが、実は、国会全体は、選挙で、民意で、その新五五年体制が壊れてきていると私は確信をしているわけですが、実は、岸田内閣はそれへの抵抗勢力として、改革派であった安倍、菅内閣と違って、岸田内閣は、さっきのを見てください、まだ一本も応じていないんですよ。岸田内閣、この後一体どの法案でやろうと思っているのか分かりませんが、一丁目一番地のこの経済安保で修正しない。
決して議論がなかったわけではないんですよ。これを御覧いただいて。
先ほど立憲の森山さんは、今日、修正案を出されました。今日、修正案を出されました。我が党は審査できませんでした。だから、水面下でいろいろやられていたと思うんですけれども、最終日に修正案を出してくるというのは、まさに五五年体制なんです。裏でいろいろやって、それで、最後、一応、仕事していたもんねということを何となく見せるという。余り意味ないです。だって、森山さんたちの修正案は、私たち日本維新の会は、役員会、討議で、それぞれの賛否を決めるところに入っていませんから。だって、今日出たんだから。
私たちは、年明け、一月二十七日に小林大臣のところに提言をお持ちして、そして、閣法の提出を待って、それを分析した上で、私たちの赤い提言に、赤いってそういう赤いじゃないですよ、単に赤いだけなんですけれどもね、議員立法を国会に提出する。それで、一応、与党の皆さんも、修正協議には応じるということを言ってくださったんですが、結論は、さっき申し上げたように、岸田内閣は一切応じていないんです。聞く耳ないんです。
だから、この黄色で示したところは何かいろいろやっている。私は、日本維新の会としては、十分なよい議論ができたと思っているんですよ、今日に至るまで。しかし、一切の条文修正がなかったことについては大変遺憾に思っています。
その内容については、ほぼ附帯決議に入れていただきました。それは感謝申し上げますが、同じ内容ですよ、自民党も公明党も賛成だと言っている附帯決議。後でやりますけれども、自民党も公明党も賛成だと言っている内容がなぜ条文に入れられないんですか。
私たちが条文に入れてほしいと申し上げたのは、いろいろな紆余曲折がありますが、最後、ここだけはと申し上げたのは見直し規定です。見直し規定が三年をめどと書いてあるんだけれども、体制整備は、法案成立後、すぐにやった方がいいでしょう。だから、速やかに体制整備を検討する、そして、公明党さんが事前審査で落とさせた罰則を始めとする実効性の確保については、この法律の施行後、適当な時期においてというふうな提案をしました。
結局、見直し議論については、三年を待たずにすぐにやらないといけないもの、適切な時期にやらないといけないもの、そして最後に、時期が来たら、要は三年後という、三段階での見直し規定を入れておくことに何の不合理もない。むしろ、だって、自民党も公明党も賛成なんだから。それが駄目なんだったら、附帯決議、反対してほしいんですよ。でも、いずれ忘れ去られる附帯決議ぐらいなら入れておいてあげよう、条文修正したら何か維新が目立つから、参院選も近いからやらないと。
岸田内閣は、参院選が近いから、とにかく野党、特に維新の会は潰しておかなければならないということで、維新の会の修正提案、これだけやってきたにもかかわらず、今申し上げた合理性のある修正提案に対してゼロ回答でありました。
与党からの返事は、いやいや、三年後の修正、検討という検討条項があるだろう、だから、三年後というところに全部含まれているからいいんだと言うんだけれども、違うでしょう。速やかに、適切な時期に、三年後と、三段階で書けばいいんですよ。
極めて合理性の高い我が党の修正案が取り入れられなかったことについては、特に、公明党さんが事前審査でやったところに我々がいれば、要は、公明党さんが罰則はない方がいいんだとおっしゃった、それはいいですよ、御意見としては。でも、それは国会で議論したかったんですよ、公明党と。公明党と自由討議して、政府だけじゃない、政府・与党を挙げて私たちと国会で議論したら、私たち、絶対負けなかったと思いますよ。まさに、先ほど大臣は、事前審査については議院内閣制だからとか、なかなかそれは自分の立場からはと申し上げても、事前審査というのは政府が与党にさせているわけです、してもらっているわけです。だから、政府も当事者なんです。
私は、透明性が欠如していると。だって、伊佐さんが本会議で自白したから事前審査で落としたと分かったんだけれども、普通は党本部の中でやっているから分かりません、不透明です。それから、国会軽視です。国権の最高機関が形骸化する、こういうデメリットが事前審査にはあると断じざるを得ないんですが、それが典型的に表れたのが今回の経済安全保障法制の審査であった。
私は、大臣及び事務方には感謝しているんですよ。問題意識は一緒ですから。これは絶対やらなあかん。しかし、統治機構の中で国会をこれだけ軽視する内閣を私は見たことがない。これを見てくださいよ。岸田内閣は聞く耳がないんです。
大臣、少し、閣内でよく議論する、デメリットを解消することは必要だと思いませんか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
私はこの法案の担当でございますので、この法案について申し上げますと、確かに、与党との綿密な調整というか様々な議論というのはさせていただきましたが、そこに別に閉じていたわけではなくて、有識者会議というものも何度も申し上げましたけれども、有識者会議以外でも、産業界ですとかアカデミアの方、様々な御意見をいただいてまいりました。
その結果として、国民の命あるいは暮らしを経済面からどんなときであっても守り抜くために本当に何が必要なのかということを、これは、閣議決定が二月の下旬だったんですけれども、その日に至るその前日まで、条文をどうすればいいかということで、いろいろな中で議論しまして、最後は私の責任でこれがベストだというものを出させていただいておりますので、与党との議論というのは当然重要なものではありますけれども、そこに閉じたものではなかったということだけは委員には御理解いただければと思います。
○足立委員 時間が来ましたので終わります。対総理質疑は青柳仁士議員から申し上げますので、また御注目をよろしくお願いします。
ありがとうございます。
○上野委員長 次に、山岸一生君。
○山岸委員 立憲民主党の山岸一生です。おはようございます。よろしくお願いいたします。
今日は、我が党が提出をいたしました修正案につきまして、提出者であります本庄知史委員とともに議論をさせていただきたいと思います。
この修正案、先ほど森山浩行委員から説明をさせていただきましたけれども、今日は多くの国民の皆さんもインターネット中継で御覧だというふうに思いますけれども、読み上げただけではなかなか御理解いただくのは簡単ではないのかなと。しっかりと提案者とその意図、狙いということを議論させていただく中で、政府案の問題点、さらには修正案の意義ということについてお示しをしていきたいと思います。
少し比喩的に申し上げますと、我々は政府案の問題点をこういうふうに考えています。経済安保という網をかけるんだけれども、その網が必要以上に大き過ぎる、そして網の目が粗過ぎるという、二つの問題があるというふうに考えています。我々はこれを、網を適正な規模に、より小さくして、さらに、網の目を細かくしていく、こういうことを考えているわけであります。
網がでか過ぎますと、経済活動に対して、やはり必要以上の萎縮ということにもつながりかねない。さらに、網が粗過ぎますと、多くの部分を政省令、つまり政府の裁量に任せるという形になってしまいます。
この間、私自身はひたすら経済安保ビジネスということを議論してまいりましたけれども、まさに、政府の裁量が大き過ぎることによって、癒着あるいは様々な利権ということにもつながりかねない。こうしたことをしっかりと抑えていくという意味でも、網を小さくし、網の目を細かくしていく、これが基本的な考え方でございます。
と私が申し上げてもあれですので、しっかり提出者の本庄委員からお話をお聞きしていきたいと思うんですけれども、るるお話をしてきたように、今議論してきた政府案に、我々としてはどういうふうな問題があるというふうに認識をして今回のこの修正案を提出をされたのか、まず基本的な考えを教えてもらえますか。
○本庄委員 山岸委員の御質問にお答えする前に、我が党の修正案の提出が本日になりましたのは、五五年体制でも何でもなく、十分な国会審議を踏まえた上での提出が必要だ、こういう判断で本日になったということを申し上げておきたいというふうに思います。
その上で、一連の法案審議を通じて、政府案には例えば次のような問題があることが明らかになりました。
まず、政府案には、留意事項が規定をされていますが、法律全体を通じた基本理念、思想的なものがありません。また、留意事項において、規制の措置は、合理的に必要と認められる限度、このように規定をされていますが、合理的に必要という文言は、政府の裁量の範囲が極めて広く、自由かつ公正な経済活動の促進が脅かされるおそれがある。さらには、個別の事項を数多くの政省令に委任をしており、政府によって恣意的な運用が行われる懸念がある。そして、こういった政府の運用を事後的に検証する仕組みが十分に入っていません。
これらの問題点を踏まえまして、立憲民主党提出の修正案では、法案全体に通じる基本理念を定めて、そして基本方針はこの理念にのっとって策定をするものというふうにしています。また、政府の運用を国会がコントロールするために、重要な政令、省令を制定、変更する場合に外部専門家の意見を聴取する、このことを法律に明記をする、あるいは、事業者への影響が大きい措置に当たっての要件を厳格化しています。さらには、政府の運用を事後的に検証するために、政府による国会への報告を義務づけています。
これらの修正は、政府案を補完、補強するものであるというふうに考えております。
以上です。
○山岸委員 今、冒頭、本庄委員からも、タイミングの問題について発言がございました。
この間、国会で議論をしていく中で、政府案の問題点、足らざるところ、あるいは行き過ぎじゃないかというところが数々明らかになってきた。実際、ここ数日でも、市民の皆さんあるいは各種団体の皆さんからも、こういったことは変えた方がいいんじゃないか、これは何とかならないかというふうな切実なお声も寄せられております。
我々としては、まさに、こういった法案審議を通じて明らかになってきた問題をカバーをしていく、補っていくという視点で提案をしておりますので、まさにこれは、タイミング、時宜を得た提案だということは改めて強調させてほしいというふうに思います。
今、その上で、基本理念ということでございました。基本方針という言葉は、この間、何度も何度も議論してきましたけれども、これは政府が作る基本方針です。今回、法案に基本理念ということを入れていこうということで、今、本庄委員から答弁がありました。基本理念があって個別の規定がその後に続く、こういう仕立てを明確にしようということでございます。例えば日本国憲法も、前文があって、その後、各条文がある、こういうふうになっていますけれども、この構成をはっきりしようという修正なわけです。
本庄委員にお伺いいたします。なぜ基本理念が必要なんでしょうか。
○本庄委員 今回のような大きな法案、しかも、自由と規制、あるいは経済と安全保障、場合によっては相反するかもしれない、こういったことが多く含まれる法案については、私は、基本的な考え方、思想というものが大事だというふうに考えております。
今回の法案審議を通じて、我が党は、規制が経済活動を不当に阻害することがないようにすること、事業者等の自主性の尊重、政府の説明責任等の必要性を主張し続けてきました。政府の方も、それらの事項を基本方針あるいは基本指針の中で書いていくということ、あるいは、法案成立後、閣議決定していくということが答弁ではなされております。
しかし、これらの事項は、安全保障の確保に関する経済施策においては普遍的な理念だというふうにも言えるものです。本来は法律にしっかりと書くべきものだというふうに考えております。したがって、これらの事項を基本方針の中で規定をし、政府の運用に任せることは、国民にとって安全保障の確保に関する経済施策の理念をかえって見えにくくしてしまうというふうに考えております。
そこで、私どもの修正案では、法案審議を通じて明らかになったこの普遍的な事項、基本的な事項、これを基本理念の中に位置づけまして、安全保障の確保に関する経済施策の方向性を国民に対して明確に示すものだというふうに考えております。
以上です。
○山岸委員 今、本庄委員からは、基本方針というものに全て入れてしまうと国民から見えにくくなるよという指摘がありました。
これは実際、私がこの間、質疑の中で何度もやらせてもらった話なんですけれども、多くの制度の内容が政府の裁量に委任をされる、そうなりますと、ルールをいち早く察知をした人間、詳しい企業というものが有利になる、こういう仕掛けになってしまいます。
経済安全保障という非常に巨大な新しいルールの体系が導入される、そのことによって、いわば先にそういう情報をつかんだ者が利益を得るような構図があってはならないということが、私の、この間、根本的な問題意識で、お伺いしてまいりました。
そうした観点からも、政府に全ての裁量を委ねるんじゃなくて、基本理念ということで、明確に、何のための法律か、どこまで規制するのかということを、枠をはめていく、そういうふうなものであるというふうに理解をいたしました。
これから、この基本理念の内容に関してお聞きしていきたいと思うんですが、ちょっと個別の話になりますけれども、基本理念、第四項になりますけれども、政府の行政改革の基本方針との整合性を確保するという記述がありますけれども、この規定の意図、狙いを教えてもらえますか。
○本庄委員 今回の法案審議の中で必ずしも十分に議論がなかったのかなと思う論点の一つ、これは行革との関係です。
この法律には、例えば、安定供給確保支援法人基金の設置、特定重要技術の研究開発の促進等を目的とする指定基金の指定、こういった国による資金の拠出が想定される施策がいろいろと規定をされています。あるいは、主務大臣を始めとする政府の権限あるいは技術や特許の秘密、こういったものが大きく広がり得る内容となっていて、行政の肥大化のリスクというものも懸念がされるというふうに考えます。
そこで、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進という名の下で、いたずらに国費が投入されることや政府が過度に介入をすることを防ぐために、政府の行政改革の基本方針との整合性を確保するようにしなければならない、こういう基本理念を入れさせていただいた次第です。
以上です。
○山岸委員 今、本庄委員から、第四項については、これまでどうも行革についての議論が十分ではなかったのではないかということで説明がありました。
同じく、私、少し議論が足りていないかなというところが、やはりWTO、様々な国際約束との整合性というところについて、これも今回修正案の中で、四項に続く第五項で書き込まれております。
実は、このテーマは、私、有権者の方からもこの間指摘をいただきました。政府案の第九十条とほぼ同じ内容を基本理念に書き込んでいて、それが第五項なわけですけれども、条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないようにするというふうに規定をされています。
この理由、九十条から移したということも含めて、この記述の必要性、意義を教えてください。
○本庄委員 今委員御指摘のとおり、政府案では第九十条、国際約束の誠実な履行について規定があります。
他方で、我が方の修正案ですが、これは、新たに基本理念を設けましたが、その中に書くこととした、これはより上位概念に位置づけたという趣旨であります。
なお、文言で言いますと、政府案の方は、「履行を妨げることがないよう留意しなければならない。」、こういう記載です。私どもの修正案では、「履行を妨げることがないようにしなければならない。」ということで、より強い義務規定というふうにしております。
以上です。
○山岸委員 今、本庄委員から上位概念という言葉での説明がありました。まさにこれが今回の我々の修正案の最大のポイントと申し上げていいんだろうというふうに思います。個別の規則、規制に対して、それは何のためにあるんだ、何のためにやるんだ、誰のためにあるんだということを明確に位置づける、こういう整理をしているわけでございます。
この法案、様々審議をしていく中でも、とかく政省令への委任が多い、つまり政府の裁量に委ねることが多い法案ですから、政府がこれから具体的な施策を進めていく上に当たっても、これをコントロールしていくという点で、私は、上位概念という意味での基本理念が必要であるということを改めて申し上げたいと思います。
今お話をした政省令、政令、省令ですけれども、ここの部分についても修正案に記述があります。七条などの部分になるかと思うんですけれども、とりわけ、特定重要物資を指定するための政省令を定める場合に、外部の有識者の意見を聴取をするというふうに定めております。
この規定を設けた意義と理由を教えてください。
○本庄委員 今回の政府の提出法案ですけれども、多くの重要事項が政令あるいは主務省令に委任をされている、結果的に政府の運用に委ねられている部分が多いというのが一つの問題点だというふうに思います。
例えば、今お話のありました特定重要物資を指定するための政令、これについては、今後閣議決定をする安定供給確保基本指針において定めるということで、具体化が政府に委ねられています。この間の審議の中で、そういった中で、有識者や関係者のヒアリングあるいはパブリックコメントもやるよという答弁もありましたが、しかし、法律的に必ずしも担保をされているというわけではないというふうに思います。
そこで、我が方の修正案では、特に、経済団体を含め関心の高い重要事項である特定重要物資を指定するための政令、それから特定社会基盤事業者の指定の基準に係る省令、さらには特定技術分野を定める政令について、それぞれの制定あるいは変更の際に、更に、外部有識者の意見を聴取することを法律に明記をする、これによって政府による恣意的な運用を防ぐ、こういうふうな措置を取っております。
以上です。
○山岸委員 非常に広範になってくる政省令の体系において、特に重要な部分について有識者の意見を聞くという枠をはめる、こういう提案でございました。
やはりこの間の議論、なかなか、伺っても、それは全部政省令ですという話になってしまうので、議論が煮詰まらなかったなというのは正直我々もあるわけなんですけれども、その中で、特出しをして、どうしてもこれはきちんと外部有識者の意見を聞いてやってもらいたいという内容だ、そういう説明でございました。
続けて、サプライチェーンの問題に関してもお伺いしていきたいというふうに思います。
サプライチェーンの調査、この間の議論でも様々ありましたけれども、修正案でも、サプライチェーンの調査について修正を加えていらっしゃいます。
まず、現状、政府案における調査の在り方だとどういうふうな問題が生じるというふうに懸念をしているのか、まず、その前提となる認識を教えてもらえますか。
○本庄委員 問題というか、政府の法案が考えているたてつけですが、主務大臣が、サプライチェーンを担う事業者に対して、所管する事業に係る物資又はその生産に必要な原材料等の生産、輸入、販売、調達又は保管の状況に関して必要な報告又は資料の提出を求めることができる、こういう規定になっております。これは、場合によっては、企業の秘密あるいは営業の秘密、こういった核心に触れる可能性があって、あるいは、小さい企業なんかからすれば、そういった報告をすることそのものがかなりの負担になるということも考えられるわけです。そして、法案審議の中でも、大企業だけではなくて、孫請会社あるいは中小、個人も対象になる旨、これは答弁がありました。
そういう中で、このサプライチェーン調査は非常に広範な範囲にわたるというたてつけになっていますので、過度な負担が生じないように、本修正案、私どもの修正案では、報告や資料の提出を求めることができる場面を、第二章の規定に、特に必要な限度と、特に必要なということで要件を絞る、条件を絞る、こういうことを規定をさせていただいております。
○山岸委員 今、本庄委員から、孫請会社あるいは中小企業や個人もという部分について説明がありました。これは政府答弁からそういうことがあったわけなんですけれども、私も、まさにそこのところを非常に心配をしております。
日本の物づくりを支えていらっしゃるのは中小、下請、孫請の事業者の皆さんであったり、あるいは個人のすご腕の職人さんだったりするわけです。この経済安保法制が導入されますと、様々な、体力のある大企業はともかくとして、下請、孫請、小規模事業者の現場に過重な負担を押しつけることがあってはならない。そのことによって、例えばイノベーションが阻害されるですとか投資が抑制されるということになってしまってはこれは本末転倒なわけですから、サプライチェーンの調査というものは、しっかりとこれは、特に必要な限度、やはりこれも枠をはめていく必要があるんだろうというふうに私も考えています。
このサプライチェーンに関しては、もう一個論点がございます。罰則についての議論であります。
他党からの提案ですと、罰則をより強めるべきだというふうな議論もこの間ございましたけれども、罰則を設けるかどうか、その副作用、作用というものに関してもしっかり議論していかなければいけないと思います。
調査の求めに応じなかった事業者に対する罰則、修正案でのお考えもあるかと思いますけれども、罰則は必要と考えているか考えていないか、提案者のお考えを教えてください。
○本庄委員 本修正案では、基本理念として、経済活動に対する規制を必要最小限のものにするというふうに記載をしております。そして、事業者及び国民に対し十分な説明を行い、その理解を得る、これも規定をしております。
こういった基本理念の下では、サプライチェーンの調査は非常に広範にわたりますので、必要最小限という意味で、罰則等々は必要がないというふうに考えております。
○山岸委員 罰則は必要ない、明快な御答弁をいただきました。
今、本庄委員からも話があったように、基本理念でこういうふうに書いているから罰則は必要ない、そういう説明でしたけれども、私はやはりこういう考え方が必要なんだろうというふうに思います。どうしても、基本理念がないと、今後制度を運用していくに際して、それが、際限なくとまでは申しませんけれども、非常に広範にわたっていく可能性がある。そういったことをしっかり、枠をはめて、国民、経済、企業活動への過度な抑制ということがないようにしていく、その意味でも、やはり基本理念を立てて、その中で具体的な基準を考えていく。
だから、今、本庄委員からは、基本理念がこうなので、うちは罰則は必要ないと考えています、こういう明快な答弁があったわけですので、こういうふうなやはり考え方の整理というものが必要になってくるのではないのかなと改めて考えるところでございます。
続けて、この法案、今日この後どういうふうな展開になるのかなと、予断を許さないところでありますけれども、国会が、この法案が仮に成立をした後どういうふうに関わっていくべきなのか。これはもちろん我々議員一人一人が自問し行動していくべきテーマでありますけれども、法律の中で明確に国会の関与というものを位置づけていくということも一つの方法なんだろうというふうに思います。
この修正案においては、第八十六条になりますけれども、政府による国会への報告というものを義務づけております。
本庄委員にお伺いいたします。この国会報告の義務づけ、この趣旨は何でしょうか。さらに、具体的にどういう内容を報告するということを想定しているんでしょうか。
○本庄委員 この法案では、政省令の制定以外にも、サプライチェーン調査における報告又は資料の提出、あるいは協議会の設置や指定基金の指定、こういった政府の運用に任されているという事項が数多くあります。あるいは、これまでもるる議論になってきました、政省令事項、基本方針、基本指針等々、これから決まる内容が非常に多い。さらには、自由と規制、経済と安全保障という非常に難しいバランスも取っていかなければいけない、そういう法案です。
したがいまして、何回か大臣からも答弁がありましたけれども、全てではない、未完だということを前提に、やはりこれは国会への報告ということが必要ではないかというふうに考えています。政府によるこの法律の運用状況の報告、それから検証、そして施行状況ということです。
法律の中に、基金については報告義務があります。これは予算と関わるからということだと理解をしておりますが、それ以外の施行状況についても定期的な報告そして検証が必要だというふうに考えております。
以上です。
○山岸委員 ありがとうございます。
続けて、個別のテーマになりますけれども、特定重要設備に関してお聞きしたいというふうに思います。
特定重要設備を導入した後、勧告及び命令という制度がございますけれども、ここの点にどういった問題があると認識をしておられるのか、また、特定社会基盤事業者に対して、やはりこれは国としてもできる限りの援助をすべきではないかと考えますけれども、提案者のお考えを教えてください。
○本庄委員 特定社会基盤事業者にとって、特定重要設備の導入等、これは大きな負担になります。一旦導入等を行うことができることとなった後に、国際情勢の変化等々によって事後的に導入に関わる計画の変更を求められる、こういう場合があり得るわけですが、非常に不測のコストを強いられる可能性があるということです。
そこで、我が党の修正案においては、この勧告、命令は、一旦導入等を行うことができることになった後、特定重要設備が特定妨害行為の手段として使用されるおそれが著しく大きいという場合に限定をしようというふうに修正をさせていただいております。
また、法案審議の中で、特定社会基盤事業者については、その事業を規律している各業法で役務の安定的な提供を行う責任を負っており、そのため、特定社会基盤事業者への補償を規定しない、そういう説明もありましたが、この特定社会基盤事業者には中小企業も含まれていて、少なくとも、相談窓口の設置など、そういった支援は必要ではないかというふうに考えています。
そこで、修正案においては、主務大臣の責務として、情報提供にとどまらずに、相談や助言その他の援助を行うというふうに規定をさせていただいております。
以上です。
○山岸委員 著しく大きいというふうな表現を書き込んでいくんだ、こういう話がありました。先ほども、特に必要なとか、そういうふうな表現がございまして、ひょっとしたら、お聞きの国民の皆さんは、細かい言葉の修正だなというふうに見られるかも分かりません。しかし、特にとか著しく、これは法律用語でございますから、法律にしっかり書いていくということが政府に対して一つの大きな制約になっていくんだということを強調したいと思います。
最後の質問になります。
特許出願の非公開に係る手続に関して、これは我が党櫻井周議員からも質疑がありましたけれども、この修正案にも盛り込まれております。どういった問題があるとお考えでしょうか。
○本庄委員 特許出願の非公開、これにつきましては、特許出願に関する手続とともに保全審査に関する手続が行われますけれども、特許出願人等の手続が煩雑になるおそれがあるということです。
そこで、特許出願人等がこの出願の非公開に関して内閣総理大臣に対して報告、提出その他の手続を行う場合に、その手続を円滑に行うことができるよう検討を加えて、必要な法制上の措置を講ずるべきだというふうに考えておりまして、その旨規定をさせていただいております。
○山岸委員 本庄委員、ありがとうございました。
この間、議論をしてまいりましたように、基本理念という大枠を定めて、個別のテーマについての疑問点に応えていく、この法案審議を通じて明らかになった問題点を補っていく修正案だということを是非多くの皆さんに御理解いただきまして、御賛同をお願いしたいと思います。
ありがとうございました。
○上野委員長 次に、大串博志君。
○大串(博)委員 おはようございます。立憲民主党の大串博志です。
早速質疑に入らせていただきます。
経済安保法案の質疑でございますけれども、ここまで質疑を重ねてまいりましたが、先ほど来山岸委員も言われたように、私たちのこの法案に対する考え方、姿勢、本庄委員からも今答弁もいただきましたけれども、基本的に経済安保を強化するという考え方は私たちも非常に重要なものと考えています。私自身もさきの衆議院選の公約作りに携わりましたけれども、あえてそこで経済安保という文字を入れて、重要視する姿勢を公約の中にも示しました。
一方で、民間ビジネスに対する大きな規制となり得ることから、規制と自由な経済活動のバランスを取る、これは非常に重要なことだというふうに思っています。それが、今回の法案においては、かなり広範な行政の裁量があり得るという内容になっている、ここは非常に懸念なんですね。
そういった中で、私は、この委員会の中でも累次において、経済安保ビジネスという言葉を使って、政府の規制といわゆる民間活動との間で不適切な関係があってはいけないということを申し述べてまいりました。行政裁量が大きくある土壌の中では、どうしても政府と民間業者との間での不適切な癒着というようなものがあり得るんじゃないか、そういう懸念だったわけですね。
これに関して、繰り返し、例えば、藤井元審議官の非違行為が法案をゆがめていないか、影響を及ぼしていないかということに関して調査報告を非違行為と同じように紙で出してくれ、こういうことを申し上げてきましたけれども、政府から返ってきた答えは、答弁を見てくれという答えでしたよ。答弁も、まともな答弁が返ってきていないので、ちょっとどういったことかと私は正直言って思いました。
政府と民間ビジネスのせめぎ合い、これは非常に大きな問題だと思うんです。これに関して、このように非常に感度の薄い対応だと、私、先が思いやられるなと正直言って思っています。是非、この審議、残りまだありますけれども、しっかり通じて、政府と民間ビジネスの在り方、癒着とか妙な関係がないようなものにするということでしっかり臨んでいただきたいと思います。
そこで、私が今日取り上げたいのは、まさに政府と民間業者の癒着という観点から懸念される点を幾つか挙げたいんですけれども、一つは、サプライチェーンに関する条項のところに関しては、規制の部分と支援の部分とが両立しているところですね、規制を受け入れるのであれば支援もしていきます、こういった形になっています。
特定重要物資のイメージとか、どのくらいあるのかということの質疑は大分ありましたけれども、これはこれから決めていきますということで幾つかの例がありましたけれども、それに対する支援をする安定供給確保支援法人ですね、これは法文上も書かれていますけれども、例えば特定物資のイメージは、ざくっと聞きますけれども、一体幾つぐらいを考えているんですか。
○小林国務大臣 これまでもお答え申し上げていますとおり、特定重要物資の指定に当たりましては、国民の生存に必要不可欠若しくは広く国民生活、経済活動が依拠している重要な物資であることに加えて、外部に過度に依存しているか、そのおそれがあるか否か等々、四つの要件ということを既に申し上げていますが、それで絞り込んでいこうとしています。
この物資の指定に関する考え方や要件につきましては、有識者の意見も聞いた上で安定供給確保基本指針において定めることとしておりますため、現時点で指定の数の規模感を含めて予断を持って言及することはできませんが、いわゆる四つの要件によって、実際に対象となる物資は相当程度絞り込まれるものと認識をしております。
○大串(博)委員 相当程度絞り込まれるということでしたね。
そうすると、そこに対する支援を行う法人、独法で三つ今挙げられています。それ以外に、法文上では、三十一条に安定供給確保支援法人というのがあって、一般社団法人もここで認定され得ると。ここに私、非常に懸念する芽を見て取っているんです。この一般社団法人による安定供給確保支援法人というのは、今度は、先ほど言われた特定重要物資が相当絞り込まれるということであるとすると、この安定供給確保支援法人というものの数も相当絞り込まれるんですか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
この法案では、政策目的である特定重要物資の安定供給の確保に向けた取組を物資の特性を踏まえて効果的に支援するため、特定重要物資ごとに独法若しくは一般社団法人などのいずれかを安定供給確保支援業務を行う法人として指定するたてつけとなっております。
この一般社団法人などを安定供給確保支援法人として指定するに当たりましては、支援業務を適正かつ確実に実施できる経理的基礎及び技術的能力を有しているかどうか、また、支援業務の実施体制が安定供給確保基本指針に照らし適切であるかどうか、こうした点などを客観的に審査の上、指定することとしております。
委員御質問のこの支援法人を指定する数についてでございますけれども、これも特定重要物質の指定の数に依拠していくことになりますので、予断を持って言及することはできませんが、まず、独立行政法人、独法が指定されない場合において安定供給確保支援法人を指定する考えであることと、特定重要物資の指定自体が、委員御推察のとおり、相当程度絞り込まれることに鑑みれば、この支援法人の指定の数につきましても相当程度絞り込まれるものと認識をしております。
○大串(博)委員 相当程度、一般社団法人による支援法人に関しても絞り込まれるということでした。少々安心しました。
なぜかといいますと、資料をお配りしておりますけれども、この供給確保支援法人を通じて、基金を通じて支援されるという仕組みになっておりますけれども、この数年間、コロナ禍において特に、基金を使って補正予算でいろいろな支援を行っているという事例がかなり多発しています。これが本当に補正予算として適切なのかという論議すら終わっていません。
資料の一枚目、二枚目を見ていただくと、一枚目が、令和三年度補正予算における基金造成の上での補助金、二枚目が、二年度の三次補正予算における基金事業ですね。見ていただくと、一般社団法人、幾つかあります。幾つかありますけれども、見ていて、特に経済産業省さんなんかがやられている事業者支援系の内容を見ると、結構苦労されている姿が目に浮かぶんですね。基金もうまく運用して、かつ、事業を実施するという基金はなかなかないんじゃないかという感じが私はするんです。
例えば、経済産業省さんでやっていらっしゃるやつで、国内投資促進基金というのが令和二年度にも令和三年度にもあります。これは、令和二年度のコロナ対策、第一次補正のときから入った非常に主力の基金事業だったわけですけれども、三枚目にその資料がありますので見てください。これは、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金ということで、令和二年度の第一次補正、予備費、第三次補正と累次予算が追加されて、五千億円を超える補助金になっていました。
これをどういう事業体制で実行していたかというと、この資料の左側の下を見ていただきますように、国が定額補助を一般社団法人環境パートナーシップ会議というところに出して、ここに行ってもらっているんですね。ところが、この環境パートナーシップ会議という会議は、まあ、これはしっかりした会議体でいらっしゃる、事業体でいらっしゃると思います。そこは私もそうだなというふうに思いますが、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業と何か関係あるのかなというところに疑念が一つあるんです。
御案内のように、このときの補助金は、まさにコロナ禍の中で、マスクもありましたけれども、いろいろなサプライチェーンが途絶する可能性があるということで、これはいかぬということで、国内回帰も含めて補助金を出していた。まさに、この経済安保法案が考えているのと射程としては同じなんですよ。その補助金を執行するのに、基金としては環境パートナーシップ会議。
この環境パートナーシップ会議の資料を見てみますと、私たちのミッションということで、持続可能な社会を目指し、多様な社会をつなぐ役を果たすことで、参加による課題解決に貢献する。環境パートナーシップ会議というお名前からも分かるように、環境面に関して非常に重要な仕事をしていただいておりますけれども、サプライチェーンとどう関係があるのか。
四枚目の資料を見ていただきましょう。四枚目の資料を見ていただきますと、この補助金がどのように執行されたかもまた分かります。経済産業省から環境パートナーシップ会議に対して基金が造成されて、ここは基金設置法人ということで基金がつくられるんですね。基金がつくられた上で、実際の事務は、下の方を見ていただくと、みずほリサーチ&テクノロジーズということで、受託されています。
この仕事の内容を見てみると、みずほさんは、補助事業の公募、審査、採択、交付決定等の事業執行に係る業務等を実施と。これはほとんどの、すなわち、補助金を執行する、渡すという意味においては、公募、審査、採択、交付決定ですから、ほぼ全てやってもらっているのがみずほさんなんですね。
その下に、サーベイリサーチさんという方がまた再委託を受けていらっしゃいますけれども、ここは、公募期間中の窓口、電話対応、書類チェック業務等の事務局支援業務、これも非常に重要な業務です、人手も要ります、ここは。
こういうふうに、どういうことが起こっていたかというと、環境パートナーシップ会議さんにおいては基金が置かれただけなんです、基金設置法人。実際の事務は委託だったんですよ。これで、環境パートナーシップ会議さんはしっかりした仕事をされていると思います、そう期待したいし。まあ、これはチェックしたいと思います。
これはなぜかというと、持続化給付金のときに、事務の大宗が一般社団法人に、こういう何となく内容がよく分からない一般社団法人に投じられて、そこから全て、ほとんどの事務が委託をされていたということがありましたものですから、そういう形の中で、妙な業務運営になってはいけないというところが非常にやはり懸念されるところなんですね。
これは経産省にお尋ねしますけれども、何でこのような形の、ちょっと不思議な、業務運営はこれで本当に適切に確保されるのかなと懸念を生むような業務フローをもってよしとしたんですか。
○濱野政府参考人 お答え申し上げます。
サプライチェーン補助金の執行におきましては、基金の造成、管理、運用、補助事業者への支払い等を基金設置法人が担当することとなってございまして、公募の結果選定をされた一般社団法人環境パートナーシップ会議が基金設置法人として五千百六十八億円の全額を基金化しまして、このうち約一・八億円を用いて管理、運用等をしてございます。
また、補助事業者の公募、審査、採択、採択後の事業進捗管理等は、基金設置法人からの委託を受けた事務局が実施をすることとなってございまして、公募の結果選定をされたみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が約二十九・一億円で実施をしてございます。このみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社の業務のうち公募に係るコールセンター業務などにつきまして、株式会社サーベイリサーチセンターに約一・七億円で再委託をしているところでございまして、再委託比率は約六%というふうになってございます。
こうした執行スキームでございますけれども、業務を適切に実施するために必要な専門性がそれぞれ異なることを踏まえたものでございまして、具体的には、基金設置法人は、複数年にわたって基金を安全かつ適切に管理、運用するといった事務遂行能力、事務局は、補助事業者の公募、審査、採択、採択後の事業進捗管理等、短期間に大量の事務を効率的かつ正確に処理する能力を、それぞれ有する法人が担ってございます。
いずれにしましても、事務費が必要最小限となるようしっかり指揮監督してまいる所存でございます。
○大串(博)委員 今るる言われましたけれども、なぜこういう仕組みでなければならなかったかということって、なかなかないんですよ。というのは、今言われましたね、この環境パートナーシップ会議さんにおいて管理、運用費用として使っているのは一・八億だ、一方、みずほさんで公募の受付、審査、交付決定等、これがほぼメインの事務ですね、二十九・一億円使っていると。ここでほぼ事務費の大宗を使っているんですね。事務はほぼここで行われている、こういう形式になっているわけですよ。これが本当にアカウンタビリティーという観点からいい仕組みかというと、私は再考の余地があると思うんです。
という中で、今回のこのサプライチェーンに関する、経済安保法に基づく安定供給確保支援法人において、大臣、このように、基金はこの法人に設置するけれども、実際の事務はほとんどがほかのところに委託されている、こういった形というのは認められるんですか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
安定供給確保支援法人が行う業務というのは、特定重要物資ごとにその支援対象が異なることや、助成金交付業務以外にも情報収集業務などを行うことなども想定されるため、どの程度なら支援法人の業務を外部に委託してよいかというのは一概に言えない状況となっています。
しかしながら、安定供給確保支援法人の指定の審査におきましては、この法案の第三十一条第一項の各号に掲げる基準というものがございまして、その基準に基づいて、主務大臣が、必要な事務の基本的な部分を行う技術的能力や実施体制などを客観的に審査することとしておりまして、委員が御懸念するような、事務の大半を外部に委託するような場合に指定することは基本的には想定していないところでございます。
○大串(博)委員 確認ですけれども、三十一条に安定供給確保支援法人の指定及び業務という条項があって、第一項の一号、二号、三号、四号と、それぞれ、例えば、安定供給確保支援業務を適切かつ確実に実施することができる経理的基盤及び技術的能力を有するものであることとか、様々な要件が書かれている。この要件を適正に満たしていくと考えれば、今言われたように、この条文を適正に適用すれば、事務の大宗を委託をするような法人に、安定供給確保支援法人となるということはないという確認でいいですね。
○小林国務大臣 今申し上げたとおり、基準にのっとってやることを想定していますので、申し上げたとおり、そうした事務の大半を外部に委託するようなケースというのは基本的には想定しておりません。
それに加えまして、今委員から御指摘いただいた基準に加えまして、実際に業務を行うに当たっては業務規程を主務大臣の認可事項としておりまして、また、毎年度の事業報告書なども法律事項として事業年度終了後の報告、公表を定めております。また、その他、区分経理規定ですとか帳簿の保存のほか、必要な場合の主務大臣の監督命令規定や指定の取消し規定なども整備しているところでございますので、これらの規定を通じまして業務の適正かつ確実な実施を確保してまいりたいと考えております。
○大串(博)委員 是非しっかりやってほしいと思いますが、そうすると、本当にこの安定供給確保支援法人、一般社団法人というのは現れるんだろうかと私は思うんですよ。
だって、これまでコロナ禍で二年間、サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金、令和二年度予算、補正予算から始めて五千億を投じてやってきて、それをやるのにこの環境パートナーシップ会議というものを用いてやってきたわけですよ。
これは資料にもありますけれども、まさにコロナ禍の中でサプライチェーンが途絶した、脆弱性が表れた、よって、これを回避するために補助金を出してサプライチェーンがしっかりするように民間企業を支援しよう、こういう、まさに私たちが今議論しているそのものの支援策じゃないですか。において出てこなかったものが、本当にこれから、この法律を作ったからといって、そういったものが出てくるのかという気すら私はします。恐らく、独立行政法人で三つ指定されているので、そこが大宗の事務を負われるんであろうと私は想像しますけれども。
そういう意味でも、私は、法文の作り方が、ある意味、今言ったような民間企業との関係で適正事務運用がされるのかなというような点を含んでいるものですから、是非、運用においては留意をしていただきたいというふうに思います。
それで、基本的に、支援をするときの形態が基金ということになっています。これで本当にいいのかということなんです。本当に必要なものであれば安定的に財政需要を確保する必要がある。とすると、基金というと、どうしても、補正予算で確保しようとしているのではないか、こういうふうに見えます。本来であれば、そうではなくて、本予算できちんと基金の予算も確保していくべきだと私は思います。
大臣にお尋ねしますけれども、今回、この法律が成った暁に、この支援のための基金を造成する予算は各省本予算で確保すべし、そういう指示を私は大臣から出すべきじゃないかと思うんですよ。いかがでしょうか。
○小林国務大臣 まず、この法案で支援の対象には、国内生産基盤の整備あるいは生産技術の開発、改良等々、長期かつ大規模な投資が必要となり得る取組というものが含まれております。
有識者会議の皆様からも、サプライチェーンの再構築に要する期間は複数年度にわたることも想定されるので、予見可能性の観点からも政府として施策の方向性を示した上で、特性に応じて民間事業者が中長期にわたる財政支援を受けられる枠組みが必要との提言をいただいたところでございます。
これを踏まえまして、中長期にわたる財政支援を可能とする仕組みの一つとして、この法案では、法律で基金の規定を整備しておりますが、基金の設置に際しましては、当然、特定重要物資の安定供給確保のために緊要なものであること、また、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であること等々特段の事情があって、あらかじめ複数年度の財源を確保しておくことが安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるものであるといった場合に限定しているところでございます。
こうした基金の在り方については様々な議論があろうかと思いますが、この法案において基金に関する業務報告書の国会報告を規定しているほか、行政事業レビューの枠組みの下で基金の執行状況などを公表することとなると考えておりますので、いずれにしても、基金の執行に当たっては、適切な形で努めていきたいと考えております。
○大串(博)委員 時間が来たので終わりますけれども、基金の執行をちゃんとしてくださいという趣旨ではないんです。基金の予算を確保するとしたら、補正予算で確保して終わりということであるとすると、重要広範事案にまでして岸田内閣一丁目一番地の経済安保法制を作った、けれども、その予算は補正予算で毎回毎回取っている、こんなことでは私は姿勢を疑われるんじゃないかと思うものですから、是非、本予算できちんと基金の予算を確保していただきたい、このことを申し上げて、私の質疑を終わります。
終わります。
○上野委員長 次に、阿部司君。
○阿部(司)委員 日本維新の会、阿部司です。
経済安保法案の審議では、これまで、私たち日本維新の会でも対案を提出し、様々議論させていただきました。本日は、この後、岸田内閣総理大臣を迎えての質疑は青柳議員が立ちますけれども、私からは、我が国の経済安保にとって非常に重要な官民連携や研究開発について質問をしてまいりたいと思います。
先日、理化学研究所について、二〇二二年度末におよそ三百人の研究者が研究所を辞めざるを得なくなりそうだという趣旨の報道がありました。我が国を代表する理化学系の研究機関として非常に有名ですけれども、量子コンピューターやゲノム、バイオ等の先端的研究等も行われていると聞いております。
そこで、何点か事実確認をさせていただきたいんですけれども、理化学研究所では、現在、職員の八割が非正規職員であり、また、二〇一六年からは、研究系職員に対する十年の雇用上限が定められたと報道されております。理化学研究所の研究職の採用と任用の現状をお伺いいたします。
○坂本政府参考人 お答えいたします。
理化学研究所では、今御指摘いただきましたAIあるいは量子コンピューターのような新しい研究領域を開拓し、国家的、社会的ニーズの高い研究を機動的に進めるため、プロジェクトの廃止も含めた見直しを適時適切に行っております。
このプロジェクトの見直しに当たっては、研究者の入れ替わりを含む人材の高い流動性の確保が不可欠であり、研究者には、原則七年、最大十年の雇用上限を設けているものと承知しております。
本年、二〇二二年一月一日現在で、理化学研究所における常勤の研究系職員は二千七十七名であり、このうち任期つきの研究系職員は千五百六十九名、約七六%となっております。
○阿部(司)委員 御答弁ありがとうございます。
報道ベースでは、理化学研究所において、二〇二二年度末に雇用上限を迎える三百人の研究者の中には研究室主宰者が六十名おり、その結果、五百以上ある研究チームの一二%が解散に至るとされておりますけれども、こうしたことは事実なのか、お伺いをいたします。
○坂本政府参考人 お答えいたします。
本年一月一日現在で、本年度末に雇用上限を迎える任期つきの研究系職員は二百九十六名であり、このうち研究室主宰者に相当するチームリーダー等は約五十名いることを確認しております。また、理化学研究所全体では、本年一月一日現在で五百五十二の研究チームが存在しております。
こうしたプロジェクトの見直しについて、理化学研究所では、先ほど申し上げましたように、新しい研究領域の開拓、国家的、社会的ニーズの高い研究を機動的に進めるため、適時適切に行っているものと承知をしております。
○阿部(司)委員 ありがとうございます。五十名程度がチームリーダーの方で、イコール、この方が辞めると研究室がなくなると理解をいたしました。
私どもも、プロジェクト制の活用で、研究人材が流動的に活躍の場を変えることの重要性は認識しております。しかしながら、流出した人材の受皿が十分でなく、他国の草刈り場になるようなことは避けなければならないと考えています。
日本は技術立国であり、先端技術も含めて、いかに高い技術水準を維持し続けることができるかというのは国の存立に関わる重要な問題であり、そのための人材こそが命であると私は考えております。
こうした思いから、先日の質疑でも、中国の千人計画に対抗するような取組をやるべきなんじゃないのかという御提案もしてまいりました。各委員からも、これまでの委員会でそれぞれ、先端技術研究開発に関する人材確保に関する指摘、質問がありまして、それに対する答弁として、経済安全保障面からの研究開発の重要性の認識が示されるとともに、政府の先端研究開発に関する取組が説明されてまいりました。
こうしたことを考えますと、今回の理化学研究所の状況は、これまでの答弁とちょっと真逆の動きにも見えるんですけれども、小林大臣の御見解をお伺いします。
○小林国務大臣 これまでも何度か答弁申し上げましたけれども、AIや量子といった先端技術など、進歩が目まぐるしくて、かつ、国家的、社会的なニーズの極めて高い研究を推進していくためには、プロジェクト期間の都度、最適な人材を集めて知見を結集することが求められておりますことから、人材の流動性を一定程度確保することは重要なことだと考えています。このような人材の流動性の確保も含めて、研究者を雇用する個々の機関において適切な人事の運用を行うことが必要なんだろうと考えます。
一方で、国際競争の激しい科学技術分野におきましては、優秀な研究者がそれにふさわしい処遇を得て、我が国で研究したいと思うような研究環境を整備することが大切だと考えておりますので、政府としては、昨年の三月に策定した第六期の科学技術・イノベーション基本計画に基づきまして、研究の魅力向上を図りつつも、研究者が良好な環境で研究に専念できるように努力をし、我が国の研究力向上に努めてまいりたいと考えます。
○阿部(司)委員 御答弁ありがとうございます。
小林大臣からもコメントをいただきましたけれども、人材流出を防ぐという観点からも、今の取組にも加えて、理化学研究所において今年度末に任期を迎える研究者で、流動性は大事だと思うんですけれども、今後も当該研究所での研究意欲を有する方については、研究を続けることができるよう、しかるべき対応をすべきではないかと思うんですけれども、政治家としての文科副大臣の御見解をお伺いいたします。
○田中副大臣 お答えいたします。
理化学研究所では、何でも先取りしてやるということもありますので、新しい研究領域を開拓して国家的、社会的ニーズの高い研究を機動的に進めるため、プロジェクトの廃止も含め、見直しを適時適切に行っております。
ですから、令和四年度末にも一定規模のプロジェクトの見直しを行い、時宜にかなった最先端のプロジェクトを立ち上げ、そこに優れた若手研究者などの人材を結集し、研究所の国際競争力を維持向上させることとしております。
例えば、生物のライフサイクルの本質に迫る生命機能科学研究センター、神戸のポートアイランドや横浜の鶴見にある研究施設でありますけれども、令和四年度末に、見直しによって、次世代の生体分子の構造解析に向けた研究や、挑戦的かつ革新的な冬眠の研究などの新たなプロジェクトを立ち上げる予定と承知しております。
いずれにいたしましても、独立行政法人である理化学研究所においては、法人の自主性、自律性の下に業務の運営が行われることが基本であり、労働関係法令に基づき適切な人事の運用を行っていただくとともに、労働者との丁寧な対話を継続していただきたいと考えております。
また、小林大臣も今おっしゃいましたけれども、研究力の向上のためには、一定の人材の流動性を確保した上で、研究者が将来の見通しを持って研究に専念できる、そんな環境を整備することが重要であると思っています。
このため、文部科学省として、若手の研究者を有期雇用する際の研究環境やキャリア支援の在り方などを定めたガイドラインの策定、また、若手研究者等を中心に最長十年間にわたり研究支援を行う創発的研究支援事業の推進などの取組を実施しているところであります。こうした取組を総合的に進めることで、我が国全体として優れた研究者が活躍できる環境を確保してまいります。
○阿部(司)委員 ありがとうございます。もっと人材流出に危機感を持って対処していただきたいと思っております。
また、今御答弁ありました若手人材の研究開発環境の整備、こちらについて、もっともっと投資をしていく必要があると思っています。
今回、先端的な特定技術、重要技術に関しては官民で集中投資することを想定しているかと思いますけれども、その選択と集中の前提として、リソースが大量投入される必要があると思っています。
まず、この選択と集中の戦略を取るフェーズの技術に関しては、最低でも米中欧と伍する資金投入を決断できるかが鍵になってくると思います。この委員会でも、参考人質疑においても、先端的な重要技術開発に投じる投資額が米中と比べ明らかに規模が小さいと言わざるを得ない、もっと増やした方がいいという御指摘もあったかと思います。
一方で、将来の先端技術を見出していくためには、何が当たるか分からないため、薄く広く長くリソースを張っていく必要があるというふうにアカデミアの方に私も聞きました。
すなわち、選択と集中の前提条件として、薄く広く長く投資をしていく必要がある。これは、つまり、研究の裾野を広げ、その研究に携わる人材をもっともっと育てていく必要がある。若手研究人材の育成が非常に重要でありまして、そのための支援に力を入れていく必要があると思っています。
例えば、海外と比較しますと、博士号の取得人数、これは二〇二〇年の科学技術指標というものですけれども、アメリカが八・七万人、中国が六・一万人、日本が一・五万人と、人口の差もあると思いますけれども、二〇〇〇年度から米中韓は二倍以上の伸びがあるのに比較して、日本は二〇〇六年をピークに減少傾向にあると言われております。
この若手研究者の実情については、先般委員会でも御指摘がいろいろとありましたけれども、過去十数年間、研究環境がここまで悪くなっているのは強調してもし過ぎることはない。ちゃんと家が買える、子供もつくれる、家庭を持てる、パートナーがつくれるという状態にしてほしい、ポストが欲しい、希望を持てる、そうした研究環境を用意していってほしいという悲痛な叫び声があると受け止めております。
小林大臣にお伺いしたいんですけれども、先端科学技術を含めた研究水準の底上げのためには、今申し上げてきたとおり、長期的な視野に立って大胆な予算増を進めて、博士課程の学生、若手研究者への金銭的な支援を大幅に拡充するなど、裾野を広げる取組をもっともっと力を入れて取り組んでいくべきと思いますけれども、御見解をお願い申し上げます。
○小林国務大臣 今回の法案に、重要技術、先端技術を官民協力して育成していく枠組みというものを設けておりますけれども、それに加えまして、委員御指摘のとおり、これらのこうした枠組みを、取組を支えるものとして、研究者が多様な分野で裾野広く研究を実施できる環境を構築すること、これは非常に重要なことだと考えます。
政府としては、先ほど言及させていただいた、昨年三月に作った基本計画というものがあって、そこで、研究開発への投資、これは国として五年間で三十兆円という目標を定めておりまして、必要な予算を確保して、特に若手の方を含めて研究者が研究に打ち込める環境整備に努めていきたいと考えています。
具体的に申し上げますと、幾つかあって、いわゆる大学ファンド、十兆円ファンドと呼ばれるもの、これで大学改革を含めた研究環境を強化していきます。また、博士課程の学生への経済的支援の抜本的な拡充も行っていきますし、また、特に若手の研究者の方が自由な発想で挑戦的な研究を行っていく創発的研究支援事業というものがありまして、既に取り組んでいるところでございます。
こうした取組を行っていくことで、更なる研究の魅力の向上、また研究の環境の改善に努めて、博士課程の学生、また若手研究者を始めとする研究者を手厚く支援をしていくことで、この裾野を広げる取組を進めていきたいと考えます。
○阿部(司)委員 御答弁ありがとうございました。
もっと大胆にやっていく必要があると思っています。例えば、特定分野の博士課程の学生には、学費全額免除、あとは生活費を五百万程度負担していくですとか、教員の給与を二倍にするですとか、いろいろと力を入れていっていただきたいと思います。
時間が終わりましたので、これにて終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
○上野委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。よろしくお願いいたします。
これまで経済安全保障の法案の質疑をさせていただきまして、今日は、時間も限られていますが、三点ほど、これまで議論が余りできなかった観点から質問させていただきたいと思っております。
まず一問目なんですけれども、特定重要物資の選定プロセスについて、今日は大野副大臣にお越しをいただいておりますので、ちょっと伺いたいと思います。
やはり、この特定重要物資の選定、どういう事態を想定して選定をしていくかということが非常に大事なのではないかというふうに思っております。例えば、先ほども少し出ておりましたが、コロナが発生した当初、マスク不足になったり医療用のガウンが足りなくなったりと様々な混乱が発生いたしましたが、今回、特定重要物資の指定を政令で定めるというふうにされているんですけれども、例えば自然災害などのような事態も当然想定していくと思うんですけれども、どのような範囲を想定していくのかということについて伺いたいと思います。
また、当然、想定し切れなかった部分については、迅速に追加指定をしていくようなプロセスも必要になっていくかと思います。今回、法令で規定されている選定プロセスの迅速性というものはどのように担保されているのか、御説明をいただきたいと思います。
○大野副大臣 ありがとうございます。
特定重要物資の指定におきましては、委員御存じのとおり、外部から行われる行為がこの指定の要件の起点になっているわけでありますので、御指摘の自然災害におきましては、直ちに、直接的に、法案上、外部から行われる行為ということにはならないわけでありますが、ただ、例えば大規模な災害があって、それを契機として外部の主体が何らかの行動を起こす、それによって国家国民の安全を損なう事態が生じる、それを事前に未然に防止をするという必要性というのは生じ得るというふうに考えておりまして、そういうふうに読み取れるのではないかと。これまでも大臣から答弁をさせていただいているとおりでございます。
後段の迅速性につきましては、本法案は、御存じのとおり、有事に備える上での平時の備えということが基本になっておりますけれども、緊急にこの法案の要件に合致するような物資を指定する必要というのが生じましたら、これは政府内部で検討等を含めて最大限迅速に対応していきたい、そのように考えております。
○浅野委員 ありがとうございます。
是非、この迅速性の担保というところ、なかなか仕組み化というのが難しい部分なのかもしれませんが、やはり、緊急性がある場合、有識者の関与も当然ながら望まれるわけですけれども、そういう事態においては、政府のリーダーシップを発揮していただけるような仕組みをあらかじめしっかり御説明いただく必要があろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。
続いて、二問目、小林大臣に伺いたいと思います。サプライチェーンの強靱化における輸送手段の確保についてであります。
今回、安定供給の確保が困難な場合は、政府が先頭に立って物資の国際的な調達、備蓄などに取り組むこととされているんですけれども、支援対象はあくまでも物資の確保であって、物資の運搬とかいう部分に対しては適用の範囲ではないというふうに私は事前に伺っております。
ただ、今、国際物流の現場では、例えば、コンテナが足りないとか、船がもう埋まってしまっているとか、様々な課題がございますので、特定重要物資は、確保、入手を約束するだけじゃなくて、ちゃんと運んでくるところまでが大事なものですから、物資の確保のみならず、輸送手段の確保に対する、例えば輸送事業者に対する支援等も是非検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○小林国務大臣 浅野委員御指摘のとおり、重要物資の安定供給の観点からは、国際輸送網の確保というのは重要な課題だと認識しています。事実、有識者会議におきましても、この物流の重要性について指摘をいただいたところです。
その上で、この法案は、国民の生存あるいは国民生活、経済活動にとって重要な物資の安定供給の確保を図る、いわば物資に焦点を当てた制度でございますので、輸送事業者が自らあるいはメーカーなどと連携をして、例えば、在庫の積み増しを図るための倉庫整備といった、重要な物資の安定供給確保に向けた取組を行う場合には支援の対象となり得ると思いますが、国際輸送網の確保そのものにつきましては、今回の特定重要物資の安定供給確保の範疇には含まれず、この法案の射程の対象外となっております。
ただし、国際輸送網の確保につきましては、これまでも関係省庁が連携して検討ですとか措置を進めてきたものと認識をしておりまして、私どもとしても、引き続き、よく連携を図りながら必要な取組を進めていきたいと考えております。
○浅野委員 是非よろしくお願いします。
今、今回のこの法案の射程外ということでしたけれども、大臣も当初からおっしゃっているように、まずはこの四分野、まずはこの範囲ということでこの法律を策定されたというふうに思いますし、今後、発展の余地は十分にあろうかと思います。この輸送手段の確保という部分については、法的措置を今はされていなかったとしても、やはり何らかの支援ということは是非御検討いただきたいということを申し添えさせていただきます。
最後の質問ですけれども、政省令策定時、どのような方々が関与していくのかということについて伺いたいと思います。
今回の法案は我が国の経済安全保障制度の概括を定めるものであって、個々の基本指針や強化の対象、保護の対象などを定める政省令は後ほど定められることになるというふうにしておりますが、やはり、施策の内容によっては、その対象となる物資やインフラを支える現場に追加の負担もお願いすることになりますので、しっかり事前に十分な意見聴取、意見反映をする機会というものが望まれます。
今回、本当に幅広い範囲をカバーしておりますので、一概にお答えいただけるかどうか分かりませんが、どのような形式で、どのような方から意見を聞くのかというところについて改めて御説明いただきたい。特に私が気にしているのは、やはり、インフラを支える事業者あるいは特定重要物資に関わる事業者、現場の方々の意見をどのように反映していくのか、その点について教えていただきたいと思います。
○小林国務大臣 この法案のたてつけとしては、制度ごとに有識者の意見を聞いた上で、それぞれの基本指針を作っていくというたてつけになっております。
この指針の策定に際しましては、例えば、今回の法制の有識者会議に参画してくださったメンバーのような方々から広く意見をいただきたいと思っておりまして、それは、今委員がおっしゃった事業者を含めた産業界やアカデミアの方から、ここは本当に広く、様々な分野の知見を有している方に意見を聞いていきたいと思っておりますし、また、今回、委員の様々な御質問を含めて、国会での審議も踏まえてそこは対応していきたいというふうに思っています。
また、広くという意味では、行政手続法にものっとりましてパブリックコメントも実施していきたいというふうに考えておりますので、そうした事業者の方々を含めて、どういう方であってもそうした機会をつくらせていただいて、いただいた意見を踏まえながら丁寧に運用していきたいと考えております。
○浅野委員 新たな課題である経済安全保障だからこそ、現場も意見を聞いてほしいという思いを今持っていますので、そういった期待に応えていただくことをお願い申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○上野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
経済安全保障推進法案について質問いたします。
この間、大手企業において経済安全保障に対応する部署を設けるということが続いていると、毎日新聞の報道等によって紹介がされておりました。三菱電機は経済安全保障統括室を設置するとか、デンソーや富士通、NECも経済安全保障室を設置するとか、パナソニックは経済安保やカーボンニュートラルの政策などに対応するパナソニック総研を設立するとか、続いております。
これらの企業に経産省のOBが再就職をしたということですけれども、その再就職先と最終官職を明らかにしていただきたい。また、ほかにも経済安保担当という名目で再就職した事例があれば紹介していただけますか。
○片岡政府参考人 お答え申し上げます。
毎日新聞の御指摘の記事につきましては承知をしてございます。
この記事で触れられております五名の経産省OBの再就職先と最終官職でございますけれども、法律上、離職後二年間は再就職の届出を出すことになってございまして、それらを確認いたしましたところ、まず、日下部氏でございますけれども、最終官職は資源エネルギー庁長官、再就職先は、令和元年七月に三菱電機株式会社に再就職されております。二人目、高橋氏でございますけれども、最終官職は資源エネルギー庁長官、令和二年十一月に富士通株式会社に再就職されております。三人目、横尾氏でございますけれども、最終官職は経産省大臣官房付、平成二十九年十月に株式会社デンソーに再就職されております。四人目、石黒氏でございますけれども、最終官職は経済産業審議官、平成二十八年八月に日本電気株式会社に再就職されております。最後、三又氏でございますけれども、最終官職は経済産業省大臣官房付、令和三年四月に株式会社パナソニック総研に再就職されております。
また、お尋ねの、経済安全保障担当という名目で経済産業省の本省庁課長相当職以上の離職職員が民間企業等に再就職した事例でございますけれども、保存されている届出等を確認しましたところ、該当する者は見当たらないということでございます。
○塩川委員 大臣にお尋ねしますけれども、このように、経済安全保障の担当室などを企業が設ける、そういったところに経産省OBなどがいわば天下りをするといったことについて、何で企業側はこういった経済安全保障担当部署にこういったOBを採用するのか、どのようにお考えでしょうか。
○小林国務大臣 それは、それぞれの企業が考えてやられていることだと考えますので、私の方から何かコメントをすることは控えたいと思います。
○塩川委員 政府は、この間、サプライチェーン関連の基金を造成してきました。サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金五千百六十八億円、ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業二千二百七十四億円などがあります。これらの基金の基金設置法人である環境パートナーシップ会議及び受託事業者でありますみずほリサーチ&テクノロジーズへの国家公務員の再就職の状況について、分かれば教えてもらえますか。
○岡本政府参考人 お答えいたします。
国家公務員法に基づきまして、職員のうち管理職職員であった者が離職後二年間に再就職した場合は、速やかに内閣総理大臣に再就職情報の届出を行うとともに、公表することとされているところでございます。
これに基づきまして、平成三十一年一月から令和三年十二月までの三年間にあった届出につきまして確認いたしましたところ、御質問いただいた一般社団法人環境パートナーシップ会議への再就職の届出はゼロ件、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社への再就職の届出は一件であり、離職時の官職は総務事務次官となっております。
○塩川委員 こういった受託事業者への総務事務次官の天下りの例などもあります。
今後、基金の造成が行われて支援法人の在り方なども問われてくるときに、大臣、この経済安保政策の下、このように、今回の法案でも議論してきていますように、政府の規制が拡大をし、また、巨額補助金など支援策が拡充をすることで企業側と政府の接点が拡大する契機となる、これが天下りなども通じて癒着が拡大することにつながりはしないのか、こういう懸念についてはどう受け止めておられますか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
一般論としてまず申し上げれば、施策の実施に当たって、関係業界の意見などに耳を傾けるということは、私は必要なんだろうと思います。
一方で、これは経済安保政策に限った話ではございませんが、当然、官民の癒着などの疑念を抱かれるようなことがあってはいけないわけでございまして、職員の職務の遂行に関しましては、国家公務員法の服務に関する規律を遵守することは当然だと考えます。その上で、こうした規律に違反した場合には、国家公務員法に基づく懲戒処分を受けるということによって公務の公正性を確保することになっているものと考えます。
なお、この法案について申し上げますと、まず、措置の対象となる物資、事業、あるいは技術分野などにつきましては、有識者の意見を聞いて制度ごとに策定する基本指針において考え方を明らかにします。これらを定める下位法令の要件は、法律上、可能な限り明確化していきます。そして、政省令の策定に当たりましては、先ほどもありましたが、パブリックコメントの実施など、広く意見を聞く手続を設けていくなど、客観性、公平性の担保に配慮しておりまして、癒着につながるような判断が行われることはないと考えます。
○塩川委員 百三十八の政省令、当然、それを立案する過程があるわけであります。案を作ってパブリックコメント、その前の、まさに立案するその過程においてどういう関わりがあるのかということが問われてくるわけで、そういった際に、担当官庁のOBが当該企業にいるということが癒着の懸念ということにつながりかねないという疑念は拭えないわけですし、やはり、藤井敏彦元経済安保法制準備室長の特定企業との特別な関係を見ても、癒着の疑念が拭えないということを申し上げておきます。
次に、基幹インフラの関係で何点かお尋ねをいたします。
この法案におきまして、導入等計画の策定の件がありますけれども、この導入等計画には取引先の情報がどのように書き込まれることになるんでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
この基幹インフラに関する導入等計画書には、導入しようとする設備の概要に加えまして、設備の供給者や委託の相手先に関する事項などを記載をいたしまして、主務大臣に届けていただくこととしております。
具体的な届出事項につきましては、今後、関係者からの意見も承った上で、各事業の実態に即しつつ、事業者負担なども考慮をいたしまして主務省令において定めることとなりますが、取引先の情報に関するものとしては、例えば、設備又は構成部品の供給者の名称、主な事務所の所在地ですとか、委託先や再委託先の名称、また主な事務所の所在地などを想定しているところでございます。
○塩川委員 特定重要設備の導入では、特定重要設備の供給者それから委託の相手方という答弁がありましたけれども、この特定重要設備の供給者及び特定重要設備の一部を構成する設備、機器、装置、プログラムの供給者、委託の方では委託の相手方及び再委託の相手方ということもあると思うんですが、この再委託の相手方というのはどこまで遡るというふうになるんでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
設備の部品などのサプライチェーンあるいは維持管理などの再委託先につきまして、どの範囲まで記載を求めることとするかという委員の御質問につきましては、事業ごとに実態が異なります。
あらかじめ一律に定めることは適切でないことから、関係者から意見を聴取した上で、あくまで、事業者負担なども考慮をして、主務省令において対象を定めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 デジタル関連なんかは本当に重層下請構造になっておりますので、そういった際にどこまで及ぶのかといったのは、事業者、当事者としては非常に懸念するところがあるということがあります。多くの取引先企業の情報を政府に提供することになるといった点での懸念というのもあるだろうと思います。
そうしますと、やはり、基幹インフラ事業者や設備の供給者、維持管理委託業者等の経済活動が萎縮することにならないのか、このような懸念がありますが、この点はいかがでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
今回の法案におきましては、基本指針におきまして、特定社会基盤事業者の指定に関する基本的事項、また勧告及び命令に関する基本的事項について明示することに加えまして、特定社会基盤事業者その他の関係者との連携に関する事項として事業所管省庁におきまして事業者と密接な意思疎通を図っていくことを定めることとしておりまして、こうした取組を通じて事業者の予見可能性の確保に努めることとしております。
また、勧告、命令の内容につきましても、調達先の変更に限らず、重要設備の検査や点検の実施など、事業ごとの実態を踏まえた適当な措置を求める予定でございます。
こうした形で、規制の対象の検討、また制度の適用などの各場面におきまして、事業者の実態や負担に配慮しつつ、経済活動の萎縮につながるような無用の不安を生ずることのないよう政府として努めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 事業所管省庁が事業者と密接な意見交換を行う、予見可能性を高める、これは裏返して言うと、かなり裁量的に対応されるんじゃないかという問題という点では、癒着の懸念のことにもつながってくるわけであります。
その上で、基幹インフラの取組と、この間、サイバーセキュリティーにおける重要インフラへの対処があります。サイバーセキュリティーに係るという点では重なり合うところが当然あると思うんですけれども、基幹インフラへの対応とサイバーセキュリティーにおける重要インフラへの対応は、どのように違い、どのように重なっているのか、この点について御説明ください。
○小林国務大臣 委員御指摘のサイバーセキュリティー上の基幹インフラと今回の重要インフラとの関係についてでございますけれども、サイバーセキュリティーにおける重要インフラというのは、国民生活及び経済活動の基盤であって、その機能が停止し、又は低下した場合に国民生活又は経済活動に多大な影響を及ぼすおそれが生ずるものとされておりまして、サイバーセキュリティ基本法に基づいて、官民が一丸となって重点的に防護する必要があるとの認識の下で指定をされているものでございます。
一方で、今回、この政府提出法案の基幹インフラに関する制度につきましては、国民生活及び経済活動の基盤となる役務の中でも、まず、国民の生存に必要不可欠で代替困難なもの、又は、国民生活、経済活動が依存する役務で、その利用を欠くことによって広範囲若しくは大規模な混乱などが生じるものを提供する事業を対象とすることを基本としておりますが、事業規模などの基準に該当する事業者が導入する重要設備を事前審査することから、規制対象となる事業者や設備が具体的に想定されない事業などは対象としていないところでございます。
したがって、サイバーセキュリティーにおける重要インフラとこの法案における基幹インフラというものは、一部対象事業が異なるという関係になっております。
○塩川委員 一部異なるというと、大宗は重なり合っているということでしょうかね。
○小林国務大臣 大宗は重なっております。結構たくさんありますので一つ一つ申し上げることはいたしませんが、サイバーセキュリティーの重要インフラ、これは第四次行動計画にあるんですけれども、例えば電力、ガス、石油、水道等々、いろいろありまして、この法案で規定する事業としてもそれに相当する事業というものが規定されているところであります。
○塩川委員 そうしますと、経済安保に係る基幹インフラとサイバーセキュリティーに係る重要インフラと、重なる事業者というのは当然及ぶわけであります。そういった事業者にとっては負担が大きなものにならないのかという懸念というのがあるんですが、その点はどうでしょうか。
○小林国務大臣 今答弁申し上げたとおり、サイバーセキュリティーに関係する重要インフラと、十四分野ございますけれども、今回の法案における基幹インフラ事業とには、当然重なるところがあります。
一方で、この法制の有識者会議からは、基幹インフラの役務の安定的な提供を確保するためには、「多層防御の考え方に立ち、引き続きサイバーセキュリティ対策を推進するとともに、設備の導入が行われる前にリスクを把握・排除する必要がある。」との提言をいただいたところであります。
その上で、今回の基幹インフラに関する制度では、まず、規制対象を真に必要なものに限定します。二つ目として、事業実態などを十分踏まえた制度の整備、運用とする。三つ目として、政省令の策定に当たってはパブコメを実施するなど広く意見を聞く。四つ目として、事業所管省庁に相談窓口を設置をしてきめ細かい情報提供に努めるといった内容を基本指針において定めることとしておりまして、規制措置が事業者の方々にとって過度な負担とならないように政府として努めてまいりたいと考えます。
○塩川委員 そうはいっても、重なり合うような、様々な規制が積み重なっていくということですので、基幹インフラに係る規制と重要インフラに係る規制と重なる事業者にとっての大きな負担になる。
一方で、こういった審査を通じて、政府が妨害行為のおそれがあると判断すれば審査が通らないといった点では、非常に、下請、取引先企業に対して選別、監視するような対応につながらないのかという点についてはいかがでしょうか。
○小林国務大臣 選別、監視することにはならないというのは先日答弁申し上げたとおりですけれども、この制度というのは、そもそも各業法ですとかあるいはサイバーセキュリティ基本法などに基づく各種の取組というのを前提にしつつ、それに上乗せする形で、外部からの妨害行為に対して、役務の安定的な提供の確保の観点から新たな制度を設けるものでございます。
今申し上げましたとおり、基本指針で定める内容などによって、この規制の措置が事業者の皆様にとって過度な負担とならないように努めていきたいと考えます。
○塩川委員 最後に、経済安全保障に係る冤罪事件について取り上げます。
スプレードライヤー、噴霧乾燥機を中国にある企業に不正に輸出したとして、警視庁は大川原化工機の社長ら三名を逮捕しました。無実の人を十一か月も長期勾留をした。しかし、起訴したものの、輸出が規制されている製品に当たることを立証できず、起訴取り消しとなりました。昨年十二月においては、東京地裁は、刑事補償計一千百三十万円を支払うことを決定しました。
刑事補償というのは、身体拘束された人が無罪となったときの補償制度であります。裁判長も、関係記録によれば、仮に起訴内容について審理が続いた場合、無罪判決を受けるべきと認められる十分な理由があると述べたということであります。まさに冤罪事件であります。
大臣、経済安保の名の下にこういった冤罪事件があっては決してならないと思いますが、その点はいかがですか。
○小林国務大臣 御指摘の事案については、この委員会でも紹介されたところで、承知をしておりますが、刑事事件の捜査、公判の在り方については所管外でございまして、お答えは控えたいと考えます。
その上で、経済安保の取組を進める上では、企業の経済活動は原則自由であるとの大前提に立った上で、これを大きく阻害することがないようにすることが重要だと考えております。この法案の制度設計の際にも、安全保障の確保と自由な経済活動の両立を図ることが重要だと考えておりまして、それは累次答弁申し上げているとおりです。
経済安保の推進の名の下に不当に企業活動に対する規制あるいは監視を広げるようなことがあってはならないと考えておりまして、この法案による制度を含め、適切に運用してまいります。
○塩川委員 百三十八項目の政省令、政府への白紙委任、様々な規制がある。経済安保の名の下で恣意的な規制が拡大をし、こういった冤罪事件が引き起こされる懸念が拭えないということを申し上げて、質問を終わります。
○上野委員長 次に、緒方林太郎君。
○緒方委員 十分、質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
今日は、これまで多分ほとんど取り上げられていない、経済安全保障と通商法との関係について議論をさせていただきたいと思います。
まず、昨年の半導体誘致への補助金とか、今回の経済安全保障推進法案、これについて、補助政策がたくさん書いてあるわけですが、ケースとしては、いちゃもん的なものも含めてなんですけれども、WTO補助金協定に基づいてWTOに提訴される可能性が法理論上あり得るというような、そういう理解でよろしいでしょうか。
これは、じゃ、外務省にお伺いしたいと思います。
○小田原副大臣 緒方委員にお答え申し上げます。
我が国として、WTO協定を始めとする我が国が締結した国際条約を誠実に履行するべきことは当然であります。個別の規制や振興措置の制度設計やその際の運用の際には、我が国が締結した国際条約と整合的なものとする必要があります。こうした論点を踏まえて、外務省としては、引き続き、関係省庁と緊密に連携をいたしまして適切に対応していく考えであります。
○緒方委員 いや、私、そんなこと一言も聞いていないです。法理論上は、こういう補助政策というのは、今、WTOの補助金協定に、提訴されないというグリーン補助金というのがなくなっているので、理論上は提訴されるということがあり得ますよねと、法理論上の話を聞いております。副大臣。
○小田原副大臣 恐らく、安全保障の例外ですとか輸出補助金と銘打つと委員が考えていらっしゃることを指しているのではないかと思いますけれども、当然のことながら、国際約束と整合的なものにする必要がありますから、引き続き、関係省庁と緊密に連携をして適切に対応していく考えでございます。
○緒方委員 全然質問と答弁とがかみ合わないんですけれども。あくまでも、いちゃもん的なものを含めてということなんですが、こういうものはWTOに提訴され得るという、可能性だけでいうと、そういうことなんですね。
ここからはもう議論を進めたいと思いますが、通商法の観点から、今打たれている政策というのは、この経済安全保障推進法によって打たれる政策というのも、あくまでも、例えばガット二十条の一般的な例外とかガット二十一条の安全保障例外とか、そういうものによって正当化されているものではないというふうに理解をいたしておりますが、これは、大臣、よろしいですかね、どなたですかね、答弁いただければと思います。
○細田副大臣 ありがとうございます。
先ほど小田原副大臣から御説明したとおりでございますけれども、一般的に、経済安全保障に関連して、補助金等を含めた政策措置を取る際には、WTO協定等に整合的な形で制度設計をするということ、これは当然のことである、こういうふうに考えております。
○緒方委員 いや、整合的であるというものの、その整合的であるものはどこで正当化されていますかというときに、今回のものであるとか半導体の補助金とかは、ガット二十条に一般的例外が書いてあるわけですね、そしてガット二十一条に安全保障例外が書いてある、けれども、こういうものによって正当化しているものではないですよねということを聞いているんです。
じゃ、小田原副大臣。どうもブリーフを受けたようなので、副大臣。
○小田原副大臣 お答え申し上げます。
政府として、諸外国等の行動について予断する立場にはありませんけれども、様々な可能性に対応するために備えていくことは当然であると考えます。仮にWTO協定等の紛争解決手続への申立てを諸外国等から受ける事態となった場合には、個別のケースに応じて適切に対応していくことになります。
○緒方委員 私、さっきから、質問通告をしっかりやったにもかかわらず、全くと言っていいほど答弁が返ってこないんですけれども。
じゃ、これは小林大臣にお伺いしたいと思います。
通商法上の観点から見たときに、今回経済安全保障推進法で講じられている様々な補助政策というのは、何らかの形で正当化しなきゃいけないわけですよね。それは、ガット二十条の一般的例外とかガット二十一条の安全保障例外とか、そういうものではないですよねというふうにさっきから聞いているんですが、答弁がないので、大臣。
○小林国務大臣 緒方委員はこの制度についてはかなりお詳しいというふうに存じていますけれども、この法案との関係で申し上げますと、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や原則を重視する我が国でございますから、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行すべきことは当然であると考えていまして、この法案におきましても、委員もう御覧いただいているかと思いますけれども、第九十条にてその旨を規定しているところでございます。
その上で、この法案に基づく措置につきましても、委員御指摘のように、WTO補助金協定などと整合的な形で制度設計する考えでございます。
○緒方委員 最後のところ、結構重要でありまして、結局、例外に持っていかないでほしいということなんです、私の政府へのお願いは。いろいろな政策をこれから講じるときも、自由貿易の例外に当たるんだというような論の立て方をしないでほしいということなんです。
そうではなくて、補助金政策を講じるときは、例えば輸出補助金にしない、これはWTO補助金協定に書いてあるんですね。輸出補助金じゃなくても、通常の補助金であっても、特定性があって、著しい害を与えるものであれば対抗措置の対象になり得るということで、そういうところに十分に留意して、補助金協定の規定をしっかり守った上で、安易に例外に飛びつかないでほしいということの、そのお願いをしたかったんです。大臣。
○小林国務大臣 この詳細な制度設計に当たりましては、委員御指摘のように、例外規定の援用を前提とするのではなく、WTO補助金協定などと整合的な形で行っていく考えでございます。
ちょっと具体的に申し上げますと、例えば、輸出補助、輸入代替、国産部素材などの利用要求等とみなされる措置は行わないとか、あるいは、緊急時等の生産、供給は求めても輸出禁止は求めないといったような点に留意していきたいと考えます。
○緒方委員 最初から、私、その答弁が欲しかったんです。
通常、これは条約とかそういうものだけじゃなくて、一般的な法理論で、例外というのは限定解釈をするというのが法律を解釈するときの基本であると、これは私、大学時代、大学の教授にそう学んだんですが。なので、例外というのはそんなに軽々に認められないんですね、例えばWTOの紛争解決とかいったときに。
なので、最大限、ガット、WTO体制で体現をされている多角的な自由貿易体制の原則に基づいた形で政策を講じてほしいと思うわけでありますが、大臣、いかがですか。
○小林国務大臣 冒頭申し上げたとおり、第九十条の規定がございますし、私が今、国会答弁で申し上げたとおりです。
詳細な制度設計に当たっては、例外規定の援用を前提とするのではなくて、WTO協定などと整合的な形でしっかりと行っていきたいと考えます。
○緒方委員 最後に、もう一問だけ。
今回のは補助金協定との関係でいろいろ問題になるんですが、これは質問通告していないんですけれども、今後、例えば輸出入の制限とか投資の制限とか、そういうものにまで踏み込むような政策を経済安全保障推進の中で検討される可能性というのはおありになりますでしょうか。大臣。
○小林国務大臣 これまでも、例えば投資については、経済産業省で、対内直投の外為法上の規制、これは経産省だけじゃなくて財務省も含めてやっていますけれども、当然、その状況は、これからも様々な事象が生じ得ると考えますので、当然、経済安全保障という観点からも、必要であれば、そうした投資などに関する規制というものは必要であれば行っていくということだと考えます。
○緒方委員 終わります。
○上野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組の大石あきこです。
経済安全保障法案に関して御質問したいと思います。
この法案のことで質疑してきましたし、質疑も聞いてきました。改めて、この法案は、経済安全保障という名で国民の期待を錯覚でだますものだと確信しております。
まず、今、日本政府がやるべきことは、日本政府自身の失策によって他国の輸入に依存する経済をつくり上げてしまった、この大きな国民の危機を見据えることです。
そのような観点から見たときに、この法案は、国民にとって使えないものですし、使えないことはおろか、アメリカの中国封じ込め戦略に乗るものであり、対外的に懸念国、同志国に世界を分けて、無駄に国際的な緊張を高めることにつながります。
そうではなくて、今既に他国への輸入に依存しているこの国において、その状況を見据え、まず、全方位的平和外交によって東アジアの緊張緩和を追求し、また、底辺への競争と言われる激しいグローバル競争、これはやめようと働きかける立場に立ち、そして、今この国に生きる人々、国民に必要なものは何なのか、その供給と生産体制をどう回復していくのかを真面目に議論して、シフトしていく、このことこそが、国家及び国民の安全というこの法案の概要の言葉、これに資すると私は考えます。
さらに、この法案が、対外的にも緊張を高めてマイナスだと申し上げましたけれども、国内的にも非常に問題があって、経済戦争を大義名分に、国民や労働者の自由や権利を侵害するものだと見ております。
この法案では、前回の連合審査で萩生田大臣が言ったような、コロナの経験を繰り返さないためにマスクを自国で生産できるようにするということは少なくともできない、外部から行われる行為のおそれが加わらないとできない。そのことは先ほど国民民主の方も改めて御質問されましたし、先日からもそのことは私も含め何度か議論になっていました。
そういう、国民民主党の方も先ほど質問されていて、しっかりやっていくみたいな、で、しっかりお願いしたいみたいなやり取りになっているけれども、三週間このやり取りをしていて、しっかりやらないんだから、やりそうにないじゃないですか。だからやはり、しっかりお願いしたい。今回は入口で、次、やるんだよねじゃなくて、これはやらないわけですから、やはり反対するべきではないかなと思います。
小林大臣は、こういった問いに対して、この法案だけで全てフォローできるわけではないとおっしゃったと思うんですね。質問なんですけれども、そうであれば、この法案だけではなく、今この国民の危機を見据えれば、自国でマスクを生産できないといけない、萩生田大臣もおっしゃいました、そういった別の法案もすぐさま必要だと思うんですけれども、小林大臣はいかがですか。
○小林国務大臣 お答えいたします。
そもそもこの法案は、以前にもお答えしましたけれども、特定国を念頭に置いたものではありません。米国の戦略に我が国を組み込むようなものでもありません。諸外国を同志国と懸念国に分けるものでもありません。実際に条文を読んでいただければ分かりますが、御指摘は全く当たらないと思います。
ほかの法整備という点につきましては、前から申し上げているとおり、法整備をしなくても対応しなければならないという項目というのはたくさんあるわけでございます。この四項目は、分野横断的に喫緊の法整備が必要だということでやっていますけれども、その他の点についても、いかなる状況になっても、委員御指摘のとおり、国民の皆様の命と暮らしを守り切れる体制をつくれるように努力していきたいと考えます。
○大石委員 いや、守れていないから、マスクだって足りなかったから、そういう国民の、今既にあって、もう既に遅れている危機に対応する気がないんじゃないんですかって、そういう質問だったんです。でも、ちょっと答えが違うところだったり、長くなるので。
立憲の修正案に関して御質問したいと思います。
立憲の修正案に関して、特許出願の非公開に対する経済的補償の問題に関して、委員からかなり鋭く追及されてきましたが、それに対して修正ができているのでしょうか。
○本庄委員 大石委員、御質問ありがとうございます。
特許出願の非公開についてですけれども、特許に対する経済的補償の問題も含めまして様々な論点がまだ残っているということは、よく承知をしております。
法案に規定されている事項が必ずしも十分ではないということもありまして、法案成立後に閣議決定される基本指針の内容あるいは具体的な予算措置、こういったことも今後の重要課題の一つだというふうに認識をしております。
その上で、私どもの修正案ですけれども、まずは、特許出願の非公開の手続において、特許出願人等の便宜を図る、そのために、出願人等が内閣総理大臣に対して報告、提出その他の手続を行う場合において、手続を円滑に行うことができるよう検討を加えて、必要な法制上の措置を講ずる、こういう条項を設けさせていただいております。
以上です。
○大石委員 立憲の方々は、いろいろな委員の方々に鋭い指摘があったりですとか、経済安保ビジネスによってもう癒着が生まれているじゃないかというところまで追及されて、非常にいい御質問だったんですけれども、そういった根本的に乗り越えられていないことが明らかなのに、修正案を出して法案にも賛成してしまうというのは、私は非常に残念だと思います。
質問の時間が終わりましたので、以上です。ありがとうございました。
○上野委員長 これより内閣総理大臣出席の下、質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
○岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。
まず、総理に基本的なことをお聞きしたいと思います。
最近の様々な新たなリスクの登場、例えば、経済的手段によって自国の意向を他国に押しつける。尖閣が緊張したときに、レアアースが突然止まるという経験を私自身いたしました。それから、自国に有利な形でルールを変えようとする。トランプ大統領の時代のアメリカがその傾向があったということは、私は否めないというふうに思います。そういう経済の分野における新たなリスクに対して、経済政策を安全保障の観点から捉え直す必要があるということは、私も恐らく政府と同じ考え方であります。
ただ、気をつけないといけないのは、そのことによって、例えば、経済のブロック化を招くとか、あるいは民間の自由で公正な経済活動が妨げられるとか、もっと行き過ぎると保護主義に陥るとか、そういうことが懸念されるわけです。
そこで、総理にお聞きしたいんですが、先ほどの緒方委員の話にも通じるんですが、我が国は基本的に自由貿易というものを推進してきたはずであります。そして、国際分業によってより効率的な生産というものも、目指してきた。RCEPとかTPP11というのもそういう考え方に基づいて制定されてきたというふうに思います。この自由で公正な経済活動あるいは自由貿易というものと経済安全保障というものの関係を、分かりやすく、どう考えておられるか御説明いただきたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 まず、結論から申し上げるならば、委員御指摘の自由で開かれた経済活動と、そして、経済等を通じて自国の国益あるいはルール等を考えていく、ルールそして国益を経済面からも大事にしていく、こうした考え方、このバランス、これが現実の対応において重要であるということであると認識をしております。
そういった認識に基づいて、今御審議いただいている法案についても、この法律を構成させていただいていると考えております。基本的な考え方は、以上申し上げたとおりであります。
○岡田委員 総理は今バランスと言われたんですが、確かにバランスは大事です、ただ、基本はやはり、我が国としては自由貿易というものを軸に据えて新たなリスクに対して対応していく、そのための例えば今回の法案であったりするわけですが、やはり基本は自由貿易だ、そこの軸が揺らいではいけないと思うんですが、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 経済の観点から考えた場合に、自由で開かれた経済活動が基本であるということ、これは委員御指摘のとおりだと思います。
ただ、今の法案においても、経済と安全保障を通じて様々な国益、ルールを考えていくというようなことを考えますときに、やはり、自由や民主主義、法の支配、人権といった国際的に普遍的な価値観、こういったものも考えながら国益を考える、こうした考え方とのバランス等も考えていかなければいけない。経済において、基本は委員御指摘のとおりだと思いますが、現実の経済、国際社会においては、そうした今指摘をしたようなことも含めてバランスを考えていく、こういった考え方も大事ではないかと考えます。
○岡田委員 もう一つお聞きしたいと思いますが、中国との関係であります。
先ほど総理も言われたように、バイデン大統領は、民主主義と専制主義の競争の時代だ、そういうふうに言っておられると思います。経済面においても米中の対立が深まっている。そういう中で、日本にとって最大の貿易相手国である、あるいは十三億人の巨大市場である、日本の企業も多額の投資をしているこの中国との経済関係というものを、今後どういう考え方に基づいてやっていくべきなのか、そこの基本的なお考えを聞きたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 まず、中国は、御指摘のように、我が国にとりまして最大の貿易相手国であり、そして国際社会においても大国であります。中国に対しては、隣国である我が国としても、主張すべきことはしっかり主張し、そして責任ある行動を求めていかなければならないと思います。同時に、共通の諸課題については、対話を重ね、また協力することも考えていかなければいけないと思いますし、いずれにせよ、建設的、安定的な日中関係を考えていかなければならないと思います。
その中で、中国との経済関係ということで申し上げるならば、冒頭申し上げたように、最大の貿易国、そして日本企業の中国における拠点は三万三千を超えていると承知をしていますし、在留邦人も十万七千を超えるということであり、深い関係があります。経済については、日本全体の国益に資する形で、対話と実務協力を適切な形で進めていく必要がある、このように認識をしています。
そして、経済大国となった中国には、国際社会のルールにのっとり、大国にふさわしい責任をしっかり果たしてもらうこと、これが日本経済あるいは世界経済の更なる発展にも重要だという観点から日中関係を考えていくことも重要であると認識をいたします。
○岡田委員 私は、観点を変えれば、やはり中国との関係は、機微な技術や情報をしっかり守る、そして重要な原材料、部品の過度の依存を避けるということは、これは国としてやっていかなければいけないことだというふうに思います。ただ、そうはいっても、これだけの相互依存関係ができていますから、今言ったようなことをやりつつ、民間企業が自らのリスクを取りながら経済活動をする、そこの部分も必要なことだ、しかし、最終的にはリスクは民間企業で取ってもらわなきゃいけない部分も私はあるんだと思います。
そういう日本と中国の経済関係というふうに私は思っておりますが、いかがですか、総理のお考えは。
○岸田内閣総理大臣 自由な活力ある経済ということを考えた場合に、やはり民間企業が主役にならなければならない、これは大切な考え方であると思います。
ただ、あわせて、複雑化する、そして拡大する国際社会において、国として国益を考え、役割を果たしていく、官民協力する形で日本の経済について考えていく、こうした官民の協力という点も重要であると思います。民間の企業にしっかり活躍してもらう、こうした場をしっかり用意しながらも、複雑化する国際経済社会の中で、国として、官として果たす役割、これもあるんだということもしっかり認識していかなければならないと考えます。
○岡田委員 日本にとって中国が必要であるように、中国にとっても日本がなくてはならない存在であるということは、私は、これからの日中関係を考えたときに非常に重要なことではないかというふうに思っております。
そこで、法案について入っていきたいと思いますが、先ほど来議論に出ているんですが、この法案は、政省令に多くを委ねたり、あるいは閣議決定、そういうところが非常に多いわけですね。そのことに対して、我々は、立憲民主党の考え方、案では、政省令制定に当たり関係事業者の意見を聞くこと、それから法律の施行状況について国会への報告を義務づけること、こういった法改正を提案をいたしました。なかなかそれは受け入れられるところになっていないんですが、考え方としてはそんなに離れていないと思うんですね。どうして法律で書くことは駄目なんですか。
○岸田内閣総理大臣 本法案におきましては、措置の対象となる物資、事業、あるいは技術分野等は、御指摘のように、政令あるいは省令で定める仕組みとなっております。
ただ、その際の要件については、法律上、可能な限り明確化していると認識をしておりますし、これらの対象物資等は、政令や省令の制定に先立ち、まずは事業者を含む産業界あるいはアカデミアなど様々な分野の知見を有する方々から意見を聴取した上で基本指針を策定するとしております。こうした形で考え方を明らかにし、そして基本指針を策定する、このようになっておりますので、本法案、事業者の予見可能性ということについては配慮した形になっていると認識をしております。
また、今申し上げました基本指針あるいは下位法令を定めるに当たっては、こうした国会の審議をしっかり踏まえるということ、これは当然のことであると思いますし、国会を含めて、国民、事業者に必要な説明を尽くすこと、これは当然であると考えております。
こういった考え方に基づいて法律のたてつけを考えているというのが政府の考え方であります。
○岡田委員 どうしてそれを法律に書かないのかということをお尋ねしているわけですね。民間事業者の意見を聞く、当然だと思います。政府もそうされるだろうと思いますけれども、どこまできちんと聞くかどうかは分かりません。ですから、それを法律できちんと規定しておく。
それから、一番問題なのは、やはり政省令とか閣議決定とか言われますが、それは国会とは無縁のところで決まるわけです。政府の中で決められる。もちろんいろいろな人の意見を聞くにしても、でも、国会の意見を聞くということにはなっていないわけですね。
だから、その施行状況について国会に定期的に報告するということは私は非常に大事だと思うんですね。普通の法律ならまだしも、これだけ抽象的なことがいろいろと残っている、まあ大急ぎで作られた法律なのかもしれませんが、こういうものについて、大事ですから、是非、国会に対する報告ということを私はお約束いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 こうした法律と、そして政令、省令、下位法令との関係については、委員御指摘のような様々な考え方があるとは承知していますが、やはり現実の社会の中で、複雑化する、そして激しく変化する社会の中で機動的に法律を稼働させていく、こうした観点からこのバランスは考えられていかなければならないと思います。
ただ、最も大切な、そして委員も御指摘になられました様々な関係者の意見等については、基本指針の策定等を通じてしっかりと反映させていただくなど、この法律のたてつけとして様々な工夫もさせていただいている。実質的な点については、多くの方々の意見もしっかりと反映させていただいているということだと思いますし、国会につきましては、法令の運用について、絶えず様々な観点から御議論をいただき続けていく、法律を運営する上で、絶えずそうした国会の審議には堪えていかなければならない、これは法律の運命であると思っております。
○岡田委員 そうはいっても、例えば国会閉会中だと何か月も議論ができない状態だってあるわけですね。もちろん、閉会中審査をすればいいと言われればそのとおりですが、そういう場合に、野党から求めがあったら、きちんとこの法律の施行状況について報告していただいて議論するという場は是非確保していただきたい。これは政府の問題じゃないと言われるかもしれませんが、そのことを改めて申し上げておきたいと思います。
法律の第五条で留意事項というのがあります。規制措置について、合理的に必要と認められる限度で行わなければならないというふうに書かれています。私は、これはざる法だと思うんですね。合理的に必要と認められる限度、誰が合理的に必要と認めるんですか。基本的にはそれは政府だ、政府の裁量ですよね。余りにも非合理なものがあればそれは排除されるかもしれませんが、合理的かどうかというのは一義的には政府が判断するということになると、しかも、留意事項、単なる留意事項なんですね、そうすると、これはほとんど規定を置いた意味がないと私は思うんですね。
例えば、外為法では、第一条「目的」のところで、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、自由が基本とし、対外取引上必要最小限の管理、調整を行うというふうに規定されております。本来、こういうふうな規定にすべきだったんじゃないですか。いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 まず、経済安全保障の取組を進める上では、企業の経済活動、またアカデミアの研究活動、こうしたものは原則自由であるとの大前提に立った上で、これらを大きく阻害することがないようにすること、これは重要な考え方であると思います。そして、そのため、この法律によって講ずる規制措置の実施に当たっては、委員御指摘のように、法案の第五条において、「経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならない。」と規定をしております。
委員の方から、必要最小限度にするべきではないか、こういった御指摘でありますが、自由な経済活動との両立を図る観点から、規制については絶えず必要最小限度のものにするよう努めるということ、これは当然のことであると思っています。
しかしながら、国際情勢の変化等に伴う安全保障のリスク、これは絶えず変化しておりますし、予測し難い部分があります。こういった点から、こんな点を考えましたときに、あらかじめ一律に必要最小限と規定するのではなくして、合理的に必要と認められる限度と規定する方が現実的に適切であるという考え方に基づいて、こうした規定が設けられているものであると認識をしております。
○岡田委員 それは、政府から見れば、こういった非常に裁量の余地の多い規定は適切だということかもしれませんが、逆に、民間の事業者からすれば、どこまで規制されるのか非常に不安が残るということになると思います。外為法では、基本は自由だよ、しかし対外取引上必要最小限の管理、調整を行うというふうに書いてあるわけですね。それと比べると余りにも私は広過ぎると思います。安全保障の定義すら法律上なされていない中で、合理的に必要なと言われても、これはほとんど規定の意味がないと私は思うんです。
もう一回、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 法律において基本的な考え方、事項を明らかにしていくこと、これは大変重要なことだと思いますが、一方で、この法律を適用する現実の国際情勢、国際経済の状況は絶えず変化をし、流動化し、複雑化している、こういった現実があります。この現実に適切に法律を当てはめていく際にどうあるべきなのか、あらかじめ一律に厳格に定めることによって現実への対応が十分可能なのかどうか、こういった観点を突き詰めていくことも大事であると思います。
こういった観点から、先ほど申し上げましたような形で法律の中には規定をしていると認識をしております。これは、この法律を現実に運用する際に様々な工夫をしなければいけない、そうした観点からの工夫であると認識をしております。
○岡田委員 私は、政府の活動というのは余り信頼していないものですから。
例えば、二〇一九年七月の韓国への半導体原材料の輸出規制措置というのが安倍内閣の下で行われました。ちょっと通告していないんですけれども。当時、総理は閣僚ではなかったんですけれども、これは、徴用をめぐる問題で、決められたというか日本が設定した時間内に答えがなかったということで、関連三品目の輸出を規制強化をした、安全保障だということでしたわけで、それは対抗措置ではないという説明を政府はしましたが、事実上は対抗措置と言われても仕方のないようなやり方だったと思うんですね。
こういうものを適切だったと思いますか、総理。
○岸田内閣総理大臣 今の挙げられた例が適切なのかどうかということでありますが、今の例に関しては、決して政府として対抗措置として講じたという説明ではなくして、あくまでも法律を厳格に適用するという形でこうした対応を行った、こういった説明を行ったと承知をしております。法律に基づいて対応した例であると認識をし、その点においては適切であったと考えております。
○岡田委員 総理の立場からは不適切だったとは言えないと思いますが。
結局、一定期間内に徴用をめぐる問題の解決策が示されなかった、そういう韓国政府は信頼できない、信頼できないから、信頼関係の下で輸出管理に取り組むことが不可能になった。だから、信頼関係という一つのクッションは入っているんですが、実は、徴用工の問題で答えがなかったからやったんだと。私は、これは非常に悪い先例をつくってしまったと思うんですね。政府として、そういうことも時にはやってしまうんだ、あり得るんだと。
これで民間事業者なんかはすごく困ったわけですよ。輸出ができなくなってしまった、韓国に。そういうこともあるので、やはり規制というものはもっとしっかりと縛っておかなければいけないと私は思います。
参議院における審議もありますから、この辺にさせていただいて、あと、具体例ですが、まずサプライチェーンの強靱化について。
ここで、特定重要物資について、事業計画を出していろいろな政府からの支援を受けるという事業者以外の事業者、一般の事業者に対して生産、輸入、販売、調達に関し必要な報告、資料提供を求めることができる、四十八条でそういうふうになっております。これには罰則がついておりません。ただ、維新の案では罰則をつけるということになっております。
私は、やはり基本的に、計画を出して一定の恩恵を受けている事業者じゃない一般の特定重要物資を扱っている事業者に対して罰則をつけるというのは、基本的な考え方として誤っているというふうに思うんですね。サプライチェーン、どこの事業者から、どういうところから、どういう契約で幾らで買っているかとか、そういうことは企業にとって一番コアな企業秘密、それを、何か恩恵を受けている事業者じゃない一般の事業者に対しても調査をかけて、そして従わなければ罰則をかけるというのは、私はかなり異常な考え方だというふうに思うんですね。
だから、政府の案は罰則は入っていないんですが、そこのところ、どういうふうにお考えですか。
○岸田内閣総理大臣 本法案では、安定供給確保を図るべき物資の選定あるいは問題の把握を図るために、当該物資のサプライチェーンについて調査が可能な旨規定を置いているわけですが、その際に、一般的な事業者に対するサプライチェーン調査、これは本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者も広く調査対象としております。
そうした本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者に罰則つきの応答義務を課すということ、これは、調査を受ける側からすれば強権的であり、自発的かつ率直な情報提供を妨げる懸念があることなども踏まえれば、罰則の対象としないことが適当だと考えた次第です。
これは、別の見方をするならば、こうしたサプライチェーンの実態、物資や問題の把握をするためのサプライチェーンの実態を調査する際に、これはできるだけ幅広い事業者に参加してもらってこそ全体をしっかり把握できるわけでありますから、幅広い事業者にこの調査に加わってもらうためにも、こうした罰則については、法案にあるように、規定していないという対応を取っていると認識をしております。
○岡田委員 今までのこの委員会での答弁でも、有識者会議の指摘を踏まえて総合的に勘案した結果であるという答弁をしていますが、私はそうじゃないと思うんです。考え方として間違っているというふうに思いますので、そういうふうに申し上げておきたいと思います。
次に、特許出願の非公開化についてです。
ここで私が問題にしておりますのは、その対象であります。
核兵器の開発につながる技術それからシングルユース技術のうち我が国の安全保障上極めて機微な発明を基本とするというふうに、この委員会でも答弁がなされております。では、デュアルユース、つまり軍民共用技術についてはどうかということですが、イノベーション促進の観点から、支障の少ないケースに限定すべきという有識者提言を踏まえて定めたいというのが答弁です。非常に、有識者提言というものを間に挟んで、かなりこれは幅のある答弁だと思うんですね。
私は、日本の特許制度からいうと、諸外国にあったとしても、日本にとってはこれは初めての制度なんですね。特許というのは、基本的には、発明を開示するということの見返りに独占的な権利を与える。これは、そもそも開示しないというわけですから、特許制度にとってはいわば革命的な、そういう制度だというふうに思うんですね。
そうであれば、やはり最初は、核兵器の開発につながる技術、シングルユース技術、この範囲でスタートすべきじゃないか。制度が成熟してきた中でその範囲をどうするかということを議論すればいいのであって、最初からデュアルユース技術、軍民共用技術まで広げてしまうと、その範囲はかなり私は曖昧で、逆に言うと発明意欲というものをそいでしまうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○小林国務大臣 お答え申し上げます。
近年、防衛技術と民生技術の間でボーダーレス化、いわゆるデュアルユース化が進展しています。このデュアルユース技術が、各国における最先端の武器や防衛システムの開発の決め手となることも十分にあり得るところだと考えます。したがって、国家及び国民の安全を損なうおそれという観点で見れば、デュアルユース技術を一律に制度の対象外と位置づけるのは、そうしたおそれのある技術の拡散を防ぐという本制度の趣旨に照らして適当ではないと考えます。
ただし、デュアルユース技術を対象に取り込むに当たりましては、安全保障と産業の発達の両立を考えることが重要だとも考えています。そこで、この法案では、保全指定を決める第二次審査、すなわち保全審査におきまして、産業の発達への影響を考慮すべき旨を条文上明記しております。
また、技術分野で絞りをかける第一次審査の段階では、一律に保全審査の対象とした場合、経済活動やイノベーションに及ぼす支障が大きい技術分野につきましては、別の角度から更に絞りをかけるため、政令で付加的な要件を定める構造としています。
この付加要件というのは、特定技術分野の指定と一体を成すものとして、有識者の意見を聞いた上で閣議決定する基本指針に基づき定めることとなりますが、規定の趣旨に照らせば、当然、発明者自身が機微性を認識し秘匿の必要性を感じるようなケースなど、保全審査や第一国出願義務の対象に取り込まれても産業の発達への支障が少ないものに限定する要件でなければならないと思います。例えば、防衛、軍事用途で開発された技術といった限定をかけることなども考えているところであります。
○岡田委員 既にこの委員会で答弁されたことを繰り返していただく必要はありません。総理にお聞きしているわけです。
私は、今の説明を聞いても、やはり、国の手のひらでその基準というものがどうにでもなるような、そういう印象を受けるんですね。だから、よほど慎重な運用をお願いしたいと思います。
時間も限られていますが、ここで言う通常生ずべき損失を補償するという、そのときの中身なんですが、これは何も書かれていないんですが、発明に要した費用は当然ですけれども、発明が商品化されたときの得べかりし利益、海外も含めて、という理解でいいですか。簡単にお願いします。
○小林国務大臣 通常生ずべき損失というのは、損失補償制度を規定する多くの法律で用いられている表現であって、一般に相当因果関係の範囲内にある損失を表すものと承知をしております。
具体例を申し上げますと、例えば、発明の実施を不許可とされたため、製品の製造、販売が国内外でできなくなったことによる損失ですとか、第三者が同じ発明をして実施したけれども、特許権が留保されているため、実施許諾料相当額を請求できないことによる損失などが考え得るところであります。
○岡田委員 海外で先に特許を取られちゃったというようなことも当然起こり得ますよね。かなり大きな損失を被ることもあると思います。
重要特定技術についてお聞きします。
私、この制度、一番分かりにくいんですね。何のためにこれをやるのかなというのが、いま一歩分からない。今までの様々な技術開発の制度がありますよね。宇宙や海洋なども、バイオとか、国もいろいろな技術開発制度を持っている。
具体的に聞きますと、例えば、宇宙について、JAXAという組織があります。JAXAは、大学との共同研究とか宇宙科学技術の基礎研究、あるいは人工衛星の開発、利用、そういうものを総合的、計画的に行うということが規定されています。そのJAXAの行う技術開発、研究開発と、今度の制度というのはどういう関係にあるんでしょうか。そこをきちっと整理されるべきなんじゃないですか。
○小林国務大臣 この法案は、政府機関が多様な主体に対して円滑な情報共有を行う新たな法的枠組みを設けて、これまでの取組を補完するものです。
委員御指摘のJAXAにおける宇宙科学の基礎的研究につきましては、例えば、宇宙や生命の起源を探る宇宙科学、探査における直接的な応用を考慮しない研究などは、基礎研究段階のものとして位置づけられますので、この法案に基づく協議会を設置する必要性は想定しづらいと考えます。
他方で、宇宙分野におきましても、例えば、衛星コンステレーションの技術といったような、各府省のニーズ情報を共有しつつ研究開発を進める場合、あるいは、JAXAが有するノウハウの管理を要する情報をアカデミア、スタートアップなどが多様な主体で共有して、一体となって研究開発を進める場合などには、協議会を設置することで、産学官で円滑な情報共有をすることによって、より効果的に研究開発を進めることが考えられるところであります。
○岡田委員 普通は、新しい制度をつくるときには、既存の制度との整合性というか、新しいものをつくるなら古いもののここはもうスクラップするとか、そういう議論があって制度ができてくるというのが普通だと思うんですね。行革の議論などはそういう議論をよくいたします。
これは、新しいものだけがぽんと来るので、非常に私は不思議に思っているんですね。ひょっとすると、宇宙の平和的利用という規定がJAXAにはかかってきますから、それをクリアするための新しい制度なのかなというふうにも思ってしまいます。
いずれにしても、そういう多くの論点がまだ残っております。参議院での審議もございます。制度の必要性というものは私どもは認めておりますが、かなりまだ論点があると思いますので、しっかり審議していきたいと思います。
終わります。
○上野委員長 次に、青柳仁士君。
○青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。
経済安全保障法案に関しまして、我が党は、一月二十七日の大臣提言に始まり、三月十七日の審議入り以降、国会に対案を提出しつつ、本会議と内閣委員会で質疑を重ねてまいりました。
この中では、主に五点の今回の法案に対する問題点を指摘してきました。
一つ目は、定義がないということです。
これは、定義が必要なのかというような答弁をいただいていましたけれども、我々は絶対に必要だと思っております。
なぜかといいますと、今回、ウクライナの危機を見ても分かりますように、世界は、ハイブリッド戦争、あるいは、中国の超限戦と言われるような考え方にあるように、軍事、非軍事の垣根なく、経済、情報、外交、様々なことが平時、有事のこれもまた垣根なく進められているのが現代での戦争であるということを、我々は今まさに目の当たりにしている状況にあります。
そういった中において、経済安全保障というものが安全保障全体の中でどのような位置づけになるのか、また、軍事を含む、我が国の国民の生命と財産を守るというその枠組みの中でどういった役割を果たすべきであるのかというのは、定義なしには議論ができないと思っております。ですので、この点については指摘をさせていただいております。
また、今最も適切な経済安全保障が何かということは、これは普遍的なものがあるとは考えておりません。これは、現在のこの状況に、例えばロシアがこれから恐らく世界経済から一定程度切り離されていくだろうというような、今この瞬間に最適な経済安全保障の姿ということがあるわけであって、そういった定義なしにこれからの議論は進めていけないと思っております。
また、今年度には、防衛戦略三文書の改定もこの国会閉会後に予定されております。そういった中で、この経済安全保障をどう扱っていくのか、また今回の四つの施策というのが経済安全保障全体の中でどういった位置づけを占めるのか、これからどんな施策が必要であるのか、これらは定義なしには議論ができないと思っておりますので、この点を指摘してまいりました。
また、二点目は、経済成長とのトレードオフの関係ということです。
経済学的に見れば、経済安全保障というのは、これは市場に対する政府の介入ということを意味しますから、一定程度、市場の競争性、効率性というものを阻害するものである、こういう認識でおります。ですから、それを最小限に抑えるべく、対象の選定に当たっては、これは戦略性を持って、戦略的に、また限定的に必要最小限のことを行っていくということをきちんと厳に行っていくべきだというふうに申し上げてまいりました。
三つ目は恣意性の排除ということでして、この今回の法制度は、決め方、どのような技術あるいは物資が経済安全保障上重要であるかということを最終的に政府が定めるときの決め方を決めているようなものですね。ほかの委員の方々からも指摘がありましたが、政令によってほとんどのことが決まっていく、詳細が決まっていくということですので、そういった中で、政治家による、あるいは官僚による恣意的な判断が行われないようにすべきであるということを申し上げてまいりました。
これについては、先日の本会議での総理からいただいた御答弁の中では、有識者の意見を聞いて基本指針を策定した上で決めるので、恣意的な判断が可能な構造とはなっていないというようなことをおっしゃっていましたが、この答弁は全く不十分で、納得できるようなものではないというふうに理解しております。
また、四点目にインテリジェンスということで、今回、我々は、この経済安全保障というものを十分に行っていくための体制と、またそのインテリジェンスというものが今の政府にはないと考えております。
そういったインテリジェンスをいかにつくり上げていくのか。政府の方からの回答は、二百五十人の定員増をしましたと、人数を増やしましたという話しかないわけですが、これでは全く不十分で、誰がどのような役割を負って、どういったことができるような組織をつくっていくのか、そのためにはどのような専門性が必要なのかといったことを、これをきちっと考えていく、詳細に詰めていくことが不可欠であると考えております。
また、最後に、罰則を含む実効性の担保ということについて申し上げております。
これは、罰則をつけろということをしきりに叫んでいるというわけではないんです。我々は、罰則なしで実効性が担保できるなら、その方法を示していただきたいと言っているんです。しかし、それが非常に難しい。これまでの様々な答弁を聞いていても全く実効性があるように感じられないので、では仕方がないので罰則をつけるしかありませんねということを申し上げているということなんです。
以上五点の点について、一月の段階から、我が党としては様々な形で、法案提出も行いましたし、大臣提言も行って、委員会での討議、また本会議での議論も行ってまいりました。結果として、新たな国際秩序の形成を踏まえた経済安全保障の必要性、あるいは経済成長への配慮といった、一定の共通理解を得た部分もあったと認識しております。
一方で、ほとんどの重要な部分について実質的な回答はいただけていない、こういう認識でおります。法制度としての重大な欠陥を指摘しているにもかかわらず、数の力を背景に、条文の修正協議には一切応じないというこの政府・与党の姿勢に関しては率直に失望しております。
今日は、限られた時間の中で、残る論点のうち、実効性の担保についてのみ取り上げさせていただきたい、このように考えております。
我が党として、実効性の担保、これについては、経済安全保障の対象となる技術、製品、サプライチェーン等は、経済成長や民間企業によるイノベーション創出への影響を最小限とするために戦略的かつ限定的に選定されるべきであるとする一方で、一たび選定されたものに関しては、経済安全保障の実効性を高めるべく、刑事罰を含む厳しい罰則を適用するべきだと提言してまいりました。
本法案では、施策に様々な罰則が適用されております。しかし、最も肝腎なサプライチェーンに関する事業者等の報告、資料提出義務については罰則が除外をされています。これは、実際に経済安全保障上問題のある活動を行っている事業者が、本法案に基づき政府から調達先などの情報提供を求められた際、断っても罰則が適用されないことを意味しております。
これは、繰り返しますが、罰則を科せと言っているのではなく、実効性を担保せよということを申し上げております。罰則以外に実効性を担保する手段が全く感じられないということを申し上げております。戦略的、限定的に、最小限に対象を絞った上での調査であるということは、これはこれまでの議論を踏まえた共通認識であると考えておりますので、経済界の懸念を理由に罰則を科さないというのはおかしいのではないかと考えております。
こうした前提の上で、今日お伺いしたいのは、三月十七日の本会議で、公明党の伊佐議員からこのような発言がありました。当初、政府の作成の条文では、事業者のこの報告義務に対して罰則が設けられておりました、公明党からは、基幹インフラに関する規定ならともかく、サプライチェーンの調査に対する事業者の報告については、政府は安易に罰則規定に頼るのではなく、あくまで努力義務とすべきだと主張しました、こういう話がありました。
また、その後の内閣委員会で、小林大臣の方から、公明党の議員の方々に対しまして罰則が入った案をお示ししたことがあるのは事実ですという御答弁がございました。また、別の委員会で、罰則を入れてもいいんじゃないかという意見も政府の中にはありました、こういう御答弁をいただいております。
これは条文第四十八条のことを言っていると理解しておりますが、総理にお伺いします。公明党の申入れを踏まえて、この罰則規定に関して落とした、こういう理解でよろしいでしょうか。
○小林国務大臣 これまでのプロセスのことは私が最も把握しておりますので、申し上げたいと思います。
政府では、この法案の策定過程において様々な案の検討を行ってきたんです。これは、先ほど申し上げましたとおり、二月の下旬に閣議決定するまで、部内でいろいろな議論をして、日ごとにその条文が変わっている状況でございました。その調整を行う過程において、公明党の議員に対しましても罰則が入った案をお示ししたことがあるのは事実、これはもう既に申し上げたとおりです。与党とも、その時点において検討中だった様々な条文構成、また条文などを念頭に置きながら、意見交換の都度、法律案について議論を行ってきたものでございます。
また、産業界を含め、様々な有識者の方たちの意見も含めて政府部内で検討し、最終的には法案の責任者である私が、これがベストな案だということで今回提出させていただいた、そういうプロセスになっております。
○青柳(仁)委員 総理にお伺いした質問ですので、総理からの御答弁をお願いします。
○岸田内閣総理大臣 政府と与党のやり取りについては、今、小林大臣から答弁させていただいたとおりであります。
この議論については、罰則をつける、つけない、これについて様々な議論があったというのは事実だと思います。最終的には、このサプライチェーンの調査に関して、本法の規制や支援の枠組みに入っていない事業者も幅広く調査対象にするためにはどうあるべきなのかという観点から、罰則をつけなかったということであると思っています。
委員の方から、今、調査の実効性ということを再三強調されました。実効性を担保する際に、罰則をつけて、故意で、あるいは悪意でこの調査を拒否するような事業者に対してしっかり対応するという考え方もあるのかもしれませんが、一方で、調査、サプライチェーンの実態を把握するということを考えますと、一者のみどうであったかというよりも、より多くの関係者にこの調査に参加してもらって全体を把握することこそ実効性を確保する上で重要ではないか、こういった観点から、より多くの事業者にこの調査に理解をしていただき協力をしていただくためにはどうあるべきなのか、こういった観点から議論が行われ、法案のように、本法の規制やあるいは支援の枠組みに入っていない事業者にもこの調査の対象として協力してもらうためには、この法律で用意したような罰則を設けない形の方が適切である、こういった結論に至ったと認識をしております。
○青柳(仁)委員 まず、一点目の私の質問に関しては、公明党の伊佐議員がはっきりと本会議でおっしゃっているわけですから、これは公明党の意見を受けて落としたということはお認めになってもいいのではないかと思いますけれども、その点に関しては本題ではありませんので、一旦、そのような形で理解をしております。
また、今総理から御答弁ありましたけれども、三月十七日の本会議でも同様の答弁がありました。サプライチェーンの調査については、本法の規制や支援スキームの枠組みに入っていない業者も対象とするため、調査を拒否した場合の罰則は置かず、事業者からの回答を担保できるよう努力義務規定を措置することとしておりますとあったんですが、先ほど来から申し上げているとおり、我々が問題視しているのは実効性の話であります。
また、罰則に関しても、あまねくあらゆる事業者にかけるべきだとは考えておりません。実効性を担保するためにどうしても必要な、それは悪意のある事業者も当然いると思います、様々な国のフロント企業が日本にいるということは、これは警察庁も把握していることですから事実です。そういった、聞いても答えないような事業者に関してのみ罰則をつけ、また、あまねく広いサプライチェーンを調査するなんていうことは、これはコンサルタントの調査なんかでもできるわけですから、あるいは、そういった調査機関のもので広く網をかけ、また、中程度の網のかけ方に関しては罰則をかけないようなヒアリングのかけ方をしながら、しかし、どうしてもこの部分に関しては罰則をかけないと答えが返ってこないだろうと思うところに限定して罰則をかけたらよろしいんじゃないでしょうか。
○小林国務大臣 そういうことも含めて、調査を受ける側からすれば強権的であって、そういう制度を導入することで自発的かつ率直な情報提供を妨げる懸念がある、そう考えて、今回は罰則を入れないという結論に至った次第であります。
○青柳(仁)委員 今、もう一度申し上げますけれども、強権的であるというのは、私は全く理解ができないです。ですから、それは対象を絞ればいいわけですね。強権的でないと情報が出てこないところに対して強権的になるのは当たり前だと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○小林国務大臣 これは、対象が本当にピンポイントで絞れるのであれば、そんなにうまく絞れるのであれば、そういう考え方もあり得るのかもしれませんが、かなり広くそこは、サプライチェーン調査というものはやっていかなきゃならない、そういう前提の中で、今回は、先ほど総理からも御答弁ありましたけれども、経済界の自発的な協力を得なければ、なかなか有効な、効果的なサプライチェーン調査というのは進まない。そういう中で、今回は、経済界の声なども踏まえて、こうした結論に至ったわけであります。
○青柳(仁)委員 何度も申し上げているとおりなんですが、別に、広くあまねく罰則をつけろとは申し上げていないわけです。幅広いサプライチェーンを調査して、限定的に、ここにだけは強権的な措置を取らなければならないということを指定すればいいだけなのではないですか。ですから、そういった調査のやり方をすればいいだけで、最終の、最後の段階まで罰則をかけないということの理由には私はならないと思っております。
この件に関して、幾ら聞いても同じような答弁しか返ってこないと思いますので、これまでにしますけれども、ただ、やはり非常に納得感がないと思うんです。
また、強権的であるという話に関しまして、三月の二十五日の内閣委員会で、小林大臣からの答弁として、こんなお話がありました。今回、罰則をつけなかったことに関しては比例原則であると。比例原則というのは、すなわち、規制対象の違反行為と罰則には均衡が保たれなければならないという一般法理がありまして、この比例原則の観点から、調査忌避に罰則を科すことは重過ぎるのではないかといった趣旨の指摘を有識者会議にて受けたと。これが理由だとおっしゃっていたんですけれども、その後、この有識者会議の第三回議事要旨というのを読ませていただきました。書いてあったのは、ただ、ある委員が、調査権限と応諾義務を入れると事業者に対する負担が大きくなることが想定され、比例原則からすると違和感があると言っていただけなんです。これは、違和感があると言っているだけで、絶対にやめるべきであるとか、おかしいとか言っているわけではまずないということなんです。
それから、比例原則というものが規制対象の違反行為と罰則に対する均衡という話であれば、住民税の虚偽申告というのは一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金なわけですけれども、経済安全保障上極めて重要な、我が国の国民の生命と財産を守るための安全保障の一環としての、経済安全保障上極めて重要なサプライチェーンを調査するということに対する罰則が、元々の案は五十万円以下の罰金だったというふうに伺っておりますが、住民税の虚偽申告よりも軽いということが、果たして本当に比例原則上正しいと言えるんでしょうか。
○小林国務大臣 これは様々な法律上の定めがあります。例えば、統計法を含めて、様々な法令の目的に応じて罰則の程度が変わってまいりますから、単にほかの法律と比べて、その罰則の軽重、多寡というものを単純に比較することは困難だと考えます。
○青柳(仁)委員 今、ほかの法案と比較して考えるのは困難だとおっしゃいましたけれども、全く逆の答弁を三月二十五日の内閣委員会で小林大臣はされているわけですけれども。
このときは、様々な、国内の法体系における同様のほかの法令の規定ぶりを踏まえて今回の罰則を落としましたという説明だったんですが、そのときに挙げられた例が、産業振興を目的とする法律として、例えば、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律において罰則がないということをもって今回の法案に罰則をつけないということをおっしゃっていたんですけれども、産業振興と経済安保を同列に並べるというのは正直言って驚きです。これは全く例になっていないと思っておりまして、ほかの法案というのであれば、やはり安全保障上の極めて重要な法案について語るべきではないか、このように考えております。
いずれにしましても、今の、実効性を担保する、何度も申し上げますが、我が党は罰則をつけろつけろと言っているわけではないんです。実効性を担保するその他の方法があるならそれでも構いませんが、今回のこの法案の内容では実効性が担保されないのではないかということを申し上げているんです。
それを担保する方法というのは、申し訳ありませんが、我々としては罰則をつける以外に考えられませんし、また、それも、あまねく全ての事業者につけろと言っているわけではないんです。広くサプライチェーンを捉える部分は、罰則なしの、協力を仰ぐような調査でもいいと思います。ただ、最後の最後に、本当に自らのサプライチェーンを明らかにしたくない事業者というのが必ずいると思います。それに対して、これも総理の本会議での三月十七日の答弁の中に、事業者や関係団体等に本調査の重要性や趣旨、目的を丁寧に説明することで調査の実効性を確保するという答弁がありましたが、私はこれで確保はできないと思います。経済安全保障上懸念される活動を意図的に行っている事業者が、今回の法案の定めている努力義務のみで政府に対する情報提供を自発的に行うとは……
○上野委員長 青柳君におかれましては、時間が過ぎておりますので。
○青柳(仁)委員 これは考えられないわけです。
ですから、これは様々な疑義が残ったままとなっておりますので、是非最後まで我が党としても議論を続けてまいりたいと思いますが、是非御検討をいただければと思います。
時間がなくなりましたので、私からの質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○上野委員長 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野でございます。よろしくお願いいたします。
総理に伺わせていただきたいと思いますが、今、青柳委員がこの法律の実効性をどう確保するかということで、私も関連の質問を最初にさせていただきたいと思います。
法律には、その法律の効力と効果と効能というものがあると思うんです。これらを全て高めていくことが、ある種実効性を確保することだと思っております。そういった意味で、我々国民民主党内でもこの罰則について議論してきましたところ、やはり、法律の効力は確保するのかもしれませんが、効果、効能という点では疑問が残るというのが我々の整理でありました。
じゃ、これを全て高めるための方策があるのかということを議論してきまして、これまでこの委員会でも何度か提案をさせていただいたことがございます。実際にアメリカが行ったことなんですが、特定の分野を決めて、百日間という期限を決めて、集中的にサプライチェーンの脆弱性評価を行うという方法であります。実際、アメリカでは、半導体、そして蓄電池、レアアース、医薬品、こういう分野に絞って調査をしたんですけれども、こういうやり方は非常に合理的だというふうに思うんですが、総理の御見解をまず伺いたいというふうに思います。一問目の通告です。
○岸田内閣総理大臣 まず、国民生活あるいは経済活動を支える産業が直面するリスクを総点検、評価した上で、脆弱性を解消するとともに優位性、不可欠性を獲得する、こうした取組は経済安全保障の観点から大変重要だと考えております。
そして、こうした認識の下に、関係閣僚から成る経済安全保障推進会議において、私の方から、小林大臣あるいは関係大臣に対しまして、各省が連携する体制を新たに整備した上で、重要な産業が直面するリスクの総点検と評価、そして脆弱性を克服する対応を進めるよう指示をしたところです。
委員御指摘の米国の取組ですが、各国とも様々な取組を進めている、これは大いに参考にしなければならないと思います。
我が国においても、今申し上げた大臣への指示に加えて、小林大臣の下で、関係省庁の局長級の会議、こうしたものも開催し、リスク点検の作業を進めているところですが、是非、米国の取組も参考にしながら、我が国としてどのようなリスクに対する考え方、総点検、評価を行っていくか、これを絶えず追求し続けていかなければならないと思います。
御指摘も踏まえて、今申し上げた政府の体制の中で議論を深めていく、議論を続けていく、こういった姿勢は大事にしていきたいと考えます。
○浅野委員 先ほど総理も述べられました、総理から各大臣への指示の内容として、産業が直面するリスクの総点検と評価をするように言われました。これを受けて、三月十一日の経済安全保障重点課題検討会議で、リスク点検の取組を定式化し、定期的に実施するということが確認されたというふうに承知をしております。
私、この定式化、定期的というのは少し懸念をしております。一定の方法で、一定のタイミングでやるということは、つまり形骸化をするおそれがあります。
ですから、短期集中的に調査をする方法も有効なのではないかというふうに考えておりますし、何より、調査を受ける事業者の立場に立ってみれば、この期間内に調査をするということが分かっていれば、実際、事業者側での、調査に対して対応する準備を整えることができます。いつ来るか分からない、いつまで続くか分からない調査ではなかなか受ける方も大変ですから、是非その点は配慮いただきたいと思います。
二問目、最後の質問になるかと思いますが、総理に伺いたいと思います。
総理は以前、今回、特定重要技術の開発のための指定基金として五千億という規模の予算規模を挙げられました。ただ、実際には、今回、指定基金、二千五百億円というものにとどまっており、小林大臣の以前の答弁によれば、財政面の事情もあり、ただ、これからも必要な予算は要求していきたいという大臣の答弁がありました。
ただ、五千億という言葉を発した総理御自身に改めて確認したいのは、これは私、やはり続けることに意味があると思います、重要技術の開発行為というのは。ですから、この五千億という数字が独り歩きをして、これがキャップになってはいけないと思いますし、ちゃんと続けていくんだという意思を改めて総理に確認させていただきたいですが、いかがでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 経済とそして安全保障を横断する領域で国家間の競争が激化する中、人工知能や量子といった、世界の未来にとって不可欠な分野における研究開発投資を後押ししていくこと、これは大変重要であると考えます。
そういった観点から、委員御指摘のように、前国会の所信表明演説の中で、私から、五千億円規模に向けた基金を設ける、このように申し上げた次第であります。
そして、これも委員御指摘ありましたが、まずは、令和三年度の補正予算において、経済安全保障重要技術育成プログラムとして二千五百億円の予算を措置したところであり、本基金については本法案の指定基金とすることを想定しているということであります。
そして、続けることが大事だという御指摘がありました。本基金については、継続的に、我が国の安全保障や経済社会をめぐる環境などの状況変化を注視しつつ、必要な予算をしっかりと確保し続けていきたいと考えております。
○浅野委員 終わります。ありがとうございました。
○上野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
経済安全保障推進法案について岸田総理に質問をいたします。
今回の法案の中に、内閣法の改正で、国家安全保障の事務を担う国家安全保障局が、外交政策、防衛政策に加え、経済政策の基本方針の策定等を行うとあります。
年末改定を予定していると言われる国家安全保障戦略にこの経済安全保障を位置づけるのか、この点についてお答えください。
○岸田内閣総理大臣 結論から言いますと、位置づけることを考えております。
平成二十五年に我が国初の国家安全保障戦略が策定されて約八年が経過をいたしました。その間、世界のパワーバランスは変化しました。我が国をめぐる安全保障環境もより厳しさを増しています。その中で、この国家安全保障戦略、国民の命や暮らしを守るために必要なものは何なのか、これをしっかり議論してまいります。
現行の国家安全保障戦略の中には、政府として取組を進めている経済安全保障の政策とも関連する記載、これはありましたが、その後の、経済安全保障の問題の重要性、これが広く認識された、この変化を踏まえて、新たな国家安全保障戦略の策定に当たっては、経済安全保障を重要な課題として位置づけ、そしてしっかり議論していきたいと考えています。
○塩川委員 国家安全保障戦略に経済安全保障を位置づける、外交政策、防衛、軍事政策と一体的に経済政策を運用するということであります。
科学技術との関係で、官民技術協力についてお尋ねをいたします。
経済安全保障法制に関する有識者会議では、先端技術の実装を進める意味では、警察、海保、防衛といった政府部門の具体的なニーズを研究者と結びつけていくことが非常に重要との議論がありました。
官民協議会は、防衛、軍事といった政府側のニーズを研究者と結びつける場になるということでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 まず、有識者会議において一部の委員から御指摘の発言があったこと、これは事実でありますが、会議での議論を取りまとめた提言の中には、そうした、警察、防衛のニーズを研究者と結びつけるといった記載はないものと承知しております。
そもそも、この法案に基づく協議会は、科学技術・イノベーション活性化法などと同様に、防衛省も含めて全ての府省庁に例外なく適用される枠組みであります。ですから、防衛とか軍事だけを殊更取り上げて、これを研究者と結びつけるといった指摘は当たらないのではないかと考えております。
○塩川委員 防衛、軍事が除かれているわけではないということであります。
この間、成長戦略実行計画におきましても、デュアルユースと言われる科学技術の軍事転用の観点で研究を進めていく、こういうことも指摘をされているところで、こういった科学技術の軍事転用の観点での研究者を組み込むという体制が問われているところであります。
そこで、従来の研究開発では、秘密保護法を除き、政府が提供する機密性の高い情報に対して保全措置を求める法的枠組みはなく、守秘義務契約を締結する場合でも罰則による担保はなかった。今回の法案において、研究者らに国家公務員並びの守秘義務を課し、罰則による担保を新たに行うということになるのではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 協議会に参加する方に対する罰則を伴う守秘義務、これは研究開発に有用な機微な情報を官民の間で円滑に共有や交換ができるようにするためのものであります。機微な情報としては、例えば、政府のこれまでの研究成果、またサイバーセキュリティーの脆弱性情報などを想定しており、こうした情報の提供や共有が可能となることで、むしろ、社会実装に向けた研究開発を更に強力に推進できるというふうに考えております。
その際、この守秘義務の対象範囲については、あらかじめ研究者を含む全ての協議会参加者が納得する形で決めることとしております。そして、その上で、論文などの成果発表については、守秘義務の対象となる情報を除いて制約は課されず、公開されるべきであると考えております。
したがって、本法案の協議会の枠組みにおいて罰則つきの守秘義務を求めることによって研究開発に大きな制約を持ち込むことになる、こうしたことになるとは考えてはおりません。
○塩川委員 いや、やはり、研究活動に罰則を設けるというこれまでやったことがないことを行う、このことが研究活動を萎縮をさせ、学問研究の自由に大きな制約を持ち込むことになるのは明らかではありませんか。
○小林国務大臣 それは、研究者の方にもいろいろな方がいらっしゃいます。
これまで、既存のそうした研究開発の枠組みの中では、法的に位置づけられた協議会のようなものがなかったんです。そうした中で、今回新たにそうした枠組みを設けることによって、国が持っている様々な情報、それはこれまで国がやってきた研究開発のデータやサイバーのインシデント情報を含めて、そういうものをより深く共有させていただく中で、円滑な情報交換が可能となり、更に深い研究開発ができるということにもなりますので、そういう意味では選択肢が増えたということになろうかと思います。
○塩川委員 資金支援だけではなくて、守秘義務や罰則などにより研究活動への国の直接の関与が大幅に強まる、そのことが、学問研究の自由が損なわれる、そういう危惧が出るのは当然であります。公開でこそ学問研究は発展するということを申し上げたい。
その上で、政府が今後の検討課題の一つとしているセキュリティークリアランス、適性評価制度について、秘密保護法の適性評価制度などを踏まえて検討するとしています。この秘密保護法の適性評価制度における調査事項というのは何か、この点、例示をしてください。
○岸田内閣総理大臣 特定秘密の保護に関する法律において、適性評価のために調査する事項は第十二条第二項に規定されており、具体的には、特定有害活動及びテロリズムとの関係に関する事項、犯罪及び懲戒の経歴に関する事項、そして情報の取扱いに係る非違の経歴に関する事項など、七つの項目について調査を行うこととされております。
○塩川委員 非常に機微な情報、センシティブな情報ですし、評価対象者の家族や同居人についても氏名や生年月日等を含めて明らかにする、こういったことも含めているという点であります。
こういったセキュリティークリアランス、適性評価制度、秘密保護法の議論のときにも大きな問題になりましたけれども、このセキュリティークリアランスは、やはりプライバシーの侵害や学問の自由の侵害をするものになる、また、労働者の不利益取扱いなど深刻な人権侵害が生じる問題がある。
こういったセキュリティークリアランスを新たに導入するということは行うべきではないと考えますが、総理、お答えください。
○岸田内閣総理大臣 お尋ねのセキュリティークリアランスですが、諸外国との共同研究等を進めていく上で、クリアランスを我が国でも取得できないかといった声があることは承知をしています。今後検討していくべき課題の一つであると認識しておりますが、現時点、具体的な制度の検討段階には入っていないということであります。
その上で、諸外国のクリアランス制度の例や、先ほど答弁申し上げた特定秘密保護法に基づく適性評価においては、本人の同意の下ではありますが、個人情報に対する調査が含まれています。新たな制度を今後検討するに当たりましては、こういったプライバシーに関わる制度についての国民の理解の醸成の度合いをまず十分検証する必要があると認識をしております。
○塩川委員 秘密保護法の適性評価制度を踏まえてセキュリティークリアランスを考えるということで、この秘密保護法は、秘密の範囲は政府が勝手に決めて、国民には何が秘密かも秘密だ、国民の知る権利や報道の自由を奪う、こういったことが厳しく批判をされました。
経済安全保障推進法案の官民技術協力は、このような秘密保護法制を拡大することにつながるものだということを指摘をして、質問を終わります。
○上野委員長 次に、緒方林太郎君。
○緒方委員 緒方林太郎です。
今日、五分、岸田総理、よろしくお願い申し上げます。
経済安全保障の前提となり得る日本外交、安全保障について岸田総理にお伺いをしたいと思います。
ウクライナのキーウ州での民間人殺害というのは絶対に許されてはならないことだ、これは岸田総理も既に表明されていることだと思いますが、ロシアはあれをウクライナのでっち上げだというふうに、そういう趣旨のことを言っております。
独立の調査の必要性については、国連の事務総長がこれに言及をしておられます。軍事的貢献が難しい日本が旗を振る形で国際的な独立調査団を牽引すべきではないか、こう思いますけれども、現時点での岸田総理のお考えをお聞かせいただければと思います。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の、無辜の市民の方々が大勢犠牲となった今回の事件、事案につきましては、非人道的な事例であり、国際法違反であり、絶対に許すことができない、これは強く感じております。
そして、委員御指摘のように、国連事務総長、さらには、たしかEUの委員長も調査について触れておられると思います。
我が国としては、こうした非人道的な行為を厳しく指摘をしなければならないと思っております。そういった観点から、既にICCに対して提訴するなど様々な対応を行っております。国際社会がどのようにこの問題に対して向き合うのか、こうしたこともしっかり把握しながら、我が国としてどのように対応していくか、引き続き考えていきたいと思っています。
○緒方委員 しかし、現場に行かないとこれは確認できないわけでありまして、もう一回だけ聞かせてください、現場で何が起こったかというのを中立的な第三者が調査をする、その必要性はあるというふうに総理は認識されますか。
○岸田内閣総理大臣 できるだけ公平な立場の人間が実態を把握するということから、我が国としてはICCの捜査を重視したわけでありますが、いずれにせよ、様々な形で実態を把握するということは重要であると認識をしております。
○緒方委員 ありがとうございました。
今回の事例を見たときに、これまでの対ロ外交の検証というのが私は必要だというふうに思います。
政治は結果が全てであると言われた元総理大臣がおられました。安倍政権以降の北方四島を返還する交渉について、現在までどのような結果が得られたというふうに総理は認識しておられますでしょうか、岸田総理大臣。
○岸田内閣総理大臣 北方四島への取組ということについては、二〇一四年のクリミア併合後、世界がウクライナそしてロシアとどう向き合うのか、様々な取組が行われました。
まずは厳しく制裁を科す一方で、国際社会は両国に対して働きかけを続ける。ミンスク1、ミンスク2の交渉ですとか、あるいは、ヨーロッパ諸国も、パイプラインの設置など、協力を絡めながら両国に働きかけたということであります。
我が国も、ロシアとの関係を全体として底上げする中で、北方領土問題についても議論を行ったということであります。残念ながら、今現在、この取組の目的は、四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結するということでありますので、その結論には至っていないという状況にあります。
○緒方委員 最後に、一問だけ、岸田総理にお伺いをしたいと思います。
岸田総理は、ウラジミールと同じ未来を見ていたことがありますか。
○岸田内閣総理大臣 プーチン大統領がどういった未来を見ておられたのか、私は十分承知しておりませんので、同じ未来を見たことがあるかという問いに対しては、お答えする材料がありません。
○緒方委員 終わります。
○上野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組の大石あきこです。
経済安全保障法案に関して、岸田総理に御質問します。
この法案、今国会で最重要視された、最重要の法案とされたんですけれども、私は、これは何でやねんと。何でやねんと思うんですよ。
先ほど岸田総理が、国家安全保障戦略ともリンクしていてと、国民に何が必要なのか考えていくとおっしゃっているんですけれども、まだ分からないんですか。
今国民がどういうところで危機になっているのか。多くの人が、衣食住という時点でもう生活の危機に瀕しているじゃないですか。そして、国内の産業がすかすかになって、非正規雇用がいっぱい増えて、みんなが夢を持てないでいる。そして、マスクとか食料も自国で生産しないようになってきている。この法案では、これが解消できないんです。自国でマスクも作れない、この法案はこれさえ解決できないんですね。
それで、今何をするべきかというふうに考えたときに、まず反省するべきではないか。他国の行為で供給途絶とか言うてる場合じゃない。自国で、自国の失策で需要が失われて、それで、今供給途絶さえ起ころうとしている。そういうところに、反省して、今何が必要かと考えれば、消費税廃止であり、インボイス制度の廃止であり、ガソリン税の廃止であり、安定した雇用をたくさん供給していく、一律の給付金を早急に議論していく、そういうことが今この国会で一番大事だと思っているんです。
この法案が最重要だというのはおかしいと思っているんです。優先順位として、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 今、国際社会を考える際に、国際社会自体が複雑化し、そして変化する中で、経済と安全保障、これを横断的に考えるという観点は、国民の暮らし、そして日本の経済、日本の社会を守るためにも重要であるという認識を持っています。
そして、こうした経済安全保障の考え方に基づいて政策を進めていくこと、サプライチェーンの強靱化を始め様々な取組を進めていくことは、日本の経済の強靱化にもつながる課題であると思います。
そういった観点から、こうした経済安全保障に取り組む、またこの法律を成立させる、これは、国民の暮らし、これを充実させる、安定させる、こういった観点からも重要な課題であると認識をしております。
委員の御指摘の点についても、経済安全保障の切り口からも、政府として、そして国として、そして国民として、努力をしていくことが結果につながると考えております。
○大石委員 でも、この法案ではマスクを作るということすら範疇外なんです。だから、それがだましになっていると思っているんですよ。
そして、自国での供給をちゃんと確保していくという上でも、この法案によって国際的な緊張が高まって、かえって悪化するものだと考えております。
時間が終わりましたので、以上です。ありがとうございました。
○上野委員長 これにて内閣総理大臣出席の下の質疑は終了いたしました。
内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。
これにて両案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○上野委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申出がありますので、順次これを許します。本庄知史君。
○本庄委員 立憲民主党・無所属の本庄知史です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案について、我が会派提出の修正案に賛成、政府原案に、その問題点を指摘しつつ、賛成の立場から討論をいたします。
私たち立憲民主党は、経済安全保障の重要性と必要性を十分に認識をした上で、今回の法案審議に当たっては、自由で開かれた経済活動、民間活力と経済成長、経済安全保障の実効性について、いかにそのバランスを図るかという観点から、経済界や有識者の意見も聞きながら、丁寧に論点を整理し、問題点を指摘をし、そして政府答弁で確認をしてまいりました。
確かに、経済安全保障という新しい多岐にわたる概念を法制化することは容易な作業ではなく、政府原案には幾つもの課題も残っています。
例えば、経済安全保障の定義が法文上明示されていないこと、基本理念といった法律に通底するいわば思想がないこと、規制措置が必要最小限ではなく合理的に必要と認められる限度とされているなど政府の権限や裁量が過大になるおそれがあること、制度の重要事項が基本方針や基本指針の中で今後閣議決定されるとされている上、具体的な内容は更に政令、主務省令に委ねられていること、国会報告など事後的な検証の仕組みが不十分であることなどです。
立憲民主党が提出した修正案は、こうした政府案の問題点を補完し、補強するものです。国益、とりわけ国家及び国民の安全を経済面から確保する経済安全保障の確立に大きく資するとともに、自由で開かれた経済活動をしっかりと守るものであると確信をしています。是非、委員各位の御賛同をお願い申し上げたいというふうに思います。
その上で、国際情勢や社会経済構造が急激に変化する中、経済安全保障の確保は我が国にとって待ったなしの課題です。
るる申し述べたとおり、政府原案には懸念点、足らざる点がありますが、これまでの本委員会審議の中で、私たち立憲民主党の指摘や提案を含め、質疑と答弁を丁寧に積み上げてまいりました。これらの議論あるいは附帯決議を踏まえ、今後の参議院審議、法案成立後の運用において、政府が適切に対応することを期待し、私たち立憲民主党は政府原案に賛成することといたしました。
なお、日本維新の会提出法案、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案につきましては、罰則の強化など経済活動の自由を過度に阻害するおそれがあるなど、私たちの基本理念とは相反することから、反対をいたします。
以上で私の討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○上野委員長 次に、足立康史君。
○足立委員 日本維新の会の足立康史です。
日本維新の会提出の法律案に賛成、政府提出の原案に対する立憲民主党の修正案に反対、修正部分を除く原案に賛成の立場から討論します。
私たち日本維新の会は、政府・与党と全く同様の問題意識、危機感を共有してきました。ウクライナ危機とそれに伴う国際経済秩序の混乱は、決して対岸の火事ではありません。また、東アジアにおける中国の軍事、経済面での急拡大を背景とした覇権主義的な動向は、我が国の安全保障上、喫緊かつ深刻な問題となっています。
そうした中で、本年一月二十七日、私たち日本維新の会は、政府の有識者会議による提言公表に先立ち、党の経済安全保障に関する提言を小林大臣に手交、三月十四日には、閣法を補完する党の議員立法、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案を国会に提出し、先月十七日からの国会審議に臨んでまいりました。
本日に至るまで、この衆院内閣委では参考人質疑を含む十分な審査が行われたものと認識しており、本日、こうして質疑を終局し採決することには賛成ですが、残念なのは、国会での条文修正に係る与党の態度です。
我が党は、党提言の公表、議員立法の国会提出を始め、政府提出法案を含め国会審議に真摯に取り組んできましたが、一貫して訴えてきたインテリジェンス等体制の整備や、中国、ロシア、北朝鮮のフロント企業等の存在を念頭に置いた実効性の確保に向けた条文修正提案には、与党から、合理的な反対理由が示されないまま、退けられてしまいました。
本日の質疑で明らかにしたように、安倍内閣、菅内閣の時代には、日本維新の会始め野党の求める条文修正が多く可決されてきましたが、岸田内閣になってから、今回の経済安保を含めて、国会での条文修正がゼロ、一度も実現をしていません。
聞く耳を持っていると胸を張る岸田内閣が最も聞く耳を持っていないという事実は、国権の最高機関である国会を軽視するものであると厳しく指摘しておきたいと存じます。
最終的に、私たちの求めた内容を附帯決議に盛り込むことができましたので政府提出法案にも賛成いたしますが、決して、現下の日本を取り巻く安全保障環境の中で政府案が十分な内容であると考えているのではありません。
具体的には、附帯決議に盛り込んだように、新たな国際経済秩序の形成を促進すべきこと、経済成長に及ぼす影響に配慮すべきこと、法律の施行後、速やかにインテリジェンス等体制の整備に取り組むべきこと、ウクライナ情勢始め世界の安全保障環境が激変している状況を勘案し、法律の実効性の確保に向けて不断の見直しに取り組むべきこと等を改めてお訴えし、討論といたします。
ありがとうございます。(拍手)
○上野委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党を代表し、経済安全保障推進法案に反対の討論を行います。
本案の問題の一つ目は、科学技術の軍事研究化を推進し、学問の自由などの人権を侵害するという点です。
特定重要技術研究開発のための指定基金は、二千五百億円が計上された育成プログラムが想定されており、巨額の研究費で軍事転用可能なデュアルユース技術を推進するものです。
また、政府から機微情報の共有など伴走支援が行われる協議会の参加者に、罰則つきでの守秘義務を課しています。研究開発において初めて設けられるこの規定は、研究活動に大きな制約を持ち込むものです。
また、特定技術分野に導入される特許出願非公開制度は、民生技術が軍事技術に吸収され戦争遂行に動員された戦前の秘密特許制度の復活にほかなりません。
さらに、本案の先に、セキュリティークリアランス、適性評価制度が検討されていることは重大です。政府の秘密保全だけでなく、研究者、民間企業も対象とした秘密保護法制の拡大につながり、プライバシー、学問の自由の侵害、労働者の不利益取扱いを含め、深刻な人権侵害が生じかねない問題であり、認められません。
二つ目に、政府による企業への介入を強化する問題です。
基幹インフラの事業者に対し、設備導入などの際、納品業者、委託業者などを事前に届出させ、政府が審査し、勧告、命令まで行うとしています。また、特定重要物資の供給事業者に対しても、取引先などを記載した安定供給のための計画を提出させます。このようなやり方に、経済界からも懸念の声が上がっています。
三つ目に、政官業の癒着の問題です。
民間企業に安定供給確保支援法人基金助成などの支援策を行うとしています。半導体大手TSMCのように、特定企業への巨額支援が横行しかねません。また、政府とのパイプを得ようと天下りが横行することにつながり、政官業の癒着が避けられません。
本案は、経済政策を国家安全保障の一つの柱として、外交、防衛、軍事政策と並びで掲げ、軍事、経済の両面で日本がアメリカの世界戦略に組み込まれようとしていることは明らかであり、反対です。
立憲の修正案はこうした問題点を解消するものになっておらず、また、維新案は罰則を強化するものであり、反対であることを申し述べ、討論を終わります。
○上野委員長 次に、緒方林太郎君。
○緒方委員 採決に際し、討論いたします。
まず、今回の法案には賛成をいたします。きっとこの法案は我が国にとって重要だろうとの判断からです。
きっとと述べたのは、絶対の確信が持てないからです。絶対の確信が持てないのは、法案成立後何が起こるのかについて具体的なイメージをつかめなかったところが多かったからです。
その上で申し上げたいのは、今回の審議は非常に消化不良でありました。法案に対する評価ではなくて、これまでの審議に対する評価として、関心を維持することが難しかったということがあります。
その理由の大半は、答弁内容の不明確さにあります。審議の最中、私は四つの不明確さと指摘をいたしました。私が指摘した定義の不明確さ、所掌の不明確さ、意思決定の不明確さ、そして内容の不明確さの幾つかは、私の中ではついぞ解消をされませんでした。
政府がこの不明確さを維持する限りは、どんなに精査して質問しても期待する答弁は得られず、必ず壁に頭をぶつけます。そして、もしこの程度の答弁しか返ってこないとあらかじめ分かっていたのであれば、私は法案へのアプローチを変えていたと思います。
質疑の結果、情熱を持って法案に賛成するところまで至らなかったというのはとても残念なことです。
ただ、この法律が成立した後にはきちんと経済安全保障政策を進めていかれることを強く願います。その成功に期待をして、法案には賛成といたします。
以上です。(拍手)
○上野委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
私は、この経済安全保障法案に関し、内閣提出法、立民修正案、維新提出法案のいずれに対しても反対の立場から討論を行います。
まず、この法案原案である内閣提出法案についてです。
改めて、この法案は、経済安全保障という名の下で、国民の期待を錯覚でだますものだと考えております。国内生産が脆弱化し、供給の面でも雇用の面でも不安定に置かれている国民の、変えてくれるという期待を錯覚でだますものです。これは国民にとっての経済安全保障ではないことがはっきりしました。
さらには、この法案を作ってアメリカの中国封じ込め戦略に乗ることは、無駄に国際的な緊張を高めることでもあります。まず、日本政府自身の失策によって他国の輸入に依存する経済をつくり上げてしまったこの大きな危機を見据え、まずは全方位的平和外交によって東アジアの緊張緩和を追求し、また、激しいグローバル競争を見直し、国民に必要な供給と生産体制を真面目に議論し、シフトしていくことこそが、国家及び国民の安全というこの法案概要の言葉に資すると考えられます。
さらに、この法案は、通った場合に国内的にも問題があって、経済戦争を大義名分に、国民や労働者の自由や権利を侵害するものだと考えられます。
第一には、本法案原案が、民間企業の経済活動を国家が無理やり軍事に従属させるという経済版戦争法そのものであるからです。このことにより、自由闊達な技術革新によって民生の安定と向上を図るという人類の英知が、一転して戦争遂行手段へと悪用されてしまいます。
第二に、このような戦時経済体制の下、民間人に対して、事務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならないなどとして、罰則付守秘義務を課すものとなっている点です。この秘密は、二〇一三年に強行採決された秘密保護法上の特定秘密にすら該当しない事項です。国家秘密の無原則な拡大であり、大問題です。
立民修正案に関しては、必要最小限の規制や政府による国会への報告を盛り込んだ点などについてはよいところですが、原案が持つ根本的問題を払拭する修正に至っておらず、同じく反対します。
維新提出法案に至っては論外です。新たな国際経済秩序の形成の促進として、世界を二つのブロックに分断し、軍事的、経済的緊張を更に高めるものですし、国内的には、事業者にサプライチェーン情報を有事なんだから協力しろと罰則で脅すという、強権的で勘違い甚だしいものです。
以上のことから、内閣提出法案、立民修正案、維新提出法案の三案全てに反対いたします。
以上です。(拍手)
○上野委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○上野委員長 これより採決に入ります。
まず、足立康史君外二名提出、経済安全保障に関する諸施策の実効的かつ総合的な推進に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○上野委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。
次に、内閣提出、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、森山浩行君外一名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○上野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
次に、原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○上野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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○上野委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、工藤彰三君外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山岸一生君。
○山岸委員 立憲民主党、山岸一生です。
ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。
案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。
経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 基本方針の策定に当たっては、以下の事項に配慮すること。
1 安全保障に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するに当たっては、自由かつ公正な経済活動の促進との両立が図られるようにするとともに、新たな国際経済秩序の形成の促進の重要性に留意すること。
2 「経済活動に与える影響」(本法第五条)を考慮するに当たっては、経済成長に及ぼす影響に配慮するとともに、事業者の事業活動における自主性を尊重し、事業者間の適正な競争関係を不当に阻害することのないようにすること。
3 安全保障に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するに当たっては、事業者及び国民に対し十分な説明を行い、その理解を得るようにすること。
4 本法第九十条の規定に基づき、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないようにすること。
二 特定重要物資を指定する政令及び安定供給確保支援法人の指定に関する主務省令並びに特定社会基盤事業者の指定基準を定める主務省令は、関係事業者、関係事業者の団体その他の関係者の意見を考慮して制定するとともに、特定技術分野を定める政令は、安全保障の確保に関する経済施策、産業技術その他特許出願の非公開に関し知見を有する者の意見を考慮して制定すること。
三 特定重要物資、特定社会基盤事業者及び指定基金の指定並びに特定技術分野の選定は、客観的かつ公平に行うこと。
四 物資の生産、輸入又は販売の事業を行う個人又は法人その他の団体に対する報告徴収(本法第四十八条第一項)及び特定重要設備の導入等後等の勧告(本法第五十五条第一項)においては、経済活動に与える影響を考慮し、安全保障を確保するため合理的に必要と認められる限度において行わなければならないことについて一層配慮すること。
五 特定重要物資又はその生産に必要な原材料等について、備蓄その他の安定供給確保のために必要な措置を講ずる(本法第四十四条第六項)際においては、輸送手段の確保について十分配慮すること。
六 「特定妨害行為の防止による特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関し必要な特定社会基盤事業者その他の関係者との連携に関する事項」(本法第四十九条第二項第五号)は、特定社会基盤事業者に対する相談、助言その他の援助の必要性を考慮して定めること。
七 特定重要技術の開発支援については、我が国の技術的優位性ひいては不可欠性を確保することにつながるか否かを十分に検証した上で、対象となる技術をしっかりと見定めていくとともに、真に必要なものに対し、集中的に行うこと。
八 特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用を図るに当たっては、宇宙科学技術、海洋科学技術、量子科学技術及び人工知能関連技術の重要性に留意すること。
九 特定重要技術の開発を支援するため、十分な財政措置を講ずること。
十 保全対象発明の選定に当たっては、産業への影響を考慮して対象をできる限り限定的なものとすること。その際、デュアルユース技術については、国費による委託事業の成果である技術や、防衛等の用途で開発された技術、あるいは出願人自身が了解している場合などを念頭に、支障が少ないケースに限定すること。
十一 特許出願の非公開制度の運用に当たっては、特許出願人が手続を円滑に行うことができるよう配慮すること。
十二 本法第八十条に基づく損失の補償に当たっては、特許出願人が過度な不利益を被ることのないよう十分配慮すること。
十三 本法の施行状況については、遅滞なく国会を含め、国民に公表すること。
十四 国際共同研究の円滑な推進も念頭に、我が国の技術的優位性を確保、維持するため、情報を取り扱う者の適性について、民間人も含め認証を行う制度の構築を検討した上で、法制上の措置を含めて、必要な措置を講ずること。
十五 安全保障の確保に関する経済施策に関する情報の収集、整理及び分析を推進する観点から必要があると認めるときには、その体制の整備について、速やかに検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
十六 本法第四十八条第一項の規定による報告又は資料の提出の状況を勘案し、必要があると認めるときは、同項の規定による報告又は資料の提出の実効性を確保するための方策について、本法の施行後適当な時期において検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
十七 ウクライナ情勢はじめ世界の安全保障環境が激変している状況を勘案し、経済安全保障に関する諸施策の実効性を伴う総合的な推進を図るための方策について、本法の施行後適当な時期において検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
○上野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○上野委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小林国務大臣。
○小林国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、御趣旨を十分に尊重してまいります。
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○上野委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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○上野委員長 次回は、来る八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時五十九分散会