衆議院

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第26号 令和4年5月25日(水曜日)

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令和四年五月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 上野賢一郎君

   理事 井上 信治君 理事 工藤 彰三君

   理事 平  将明君 理事 藤井比早之君

   理事 森田 俊和君 理事 森山 浩行君

   理事 足立 康史君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    伊東 良孝君

      上川 陽子君    国定 勇人君

      小寺 裕雄君    小森 卓郎君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      高木  啓君    永岡 桂子君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      松本  尚君    宮崎 政久君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      吉川  赳君    大串 博志君

      堤 かなめ君    本庄 知史君

      山岸 一生君    山井 和則君

      阿部  司君    浅川 義治君

      一谷勇一郎君    堀場 幸子君

      河西 宏一君    平林  晃君

      浅野  哲君    塩川 鉄也君

      本村 伸子君    緒方林太郎君

      大石あきこ君    櫛渕 万里君

    …………………………………

   国務大臣

   (男女共同参画担当)   野田 聖子君

   内閣府大臣政務官     小寺 裕雄君

   内閣府大臣政務官     宮路 拓馬君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            林  伴子君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 堂薗幹一郎君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同月二十五日

 辞任         補欠選任

  伊東 良孝君     国定 勇人君

  石原 宏高君     上川 陽子君

  金子 俊平君     宮崎 政久君

  山田 賢司君     小森 卓郎君

  和田 義明君     山下 貴司君

  中谷 一馬君     山井 和則君

  浅川 義治君     一谷勇一郎君

  塩川 鉄也君     本村 伸子君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     石原 宏高君

  国定 勇人君     伊東 良孝君

  小森 卓郎君     山田 賢司君

  宮崎 政久君     金子 俊平君

  山下 貴司君     和田 義明君

  山井 和則君     中谷 一馬君

  一谷勇一郎君     浅川 義治君

  本村 伸子君     塩川 鉄也君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

    ―――――――――――――

五月十六日

 児童福祉としての保育制度の拡充に関する請願(加藤勝信君紹介)(第一〇二七号)

同月二十五日

 レッド・パージ被害者の名誉回復と国家賠償に関する請願(志位和夫君紹介)(第一二二一号)

 日本軍慰安婦問題の解決に関する請願(新垣邦男君紹介)(第一三二七号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第一三二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 内閣の重要政策に関する件

 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案起草の件

 性行為映像制作物への出演に係る被害の防止及び出演者の救済に関する件


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     ――――◇―――――

上野委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府男女共同参画局長林伴子君及び法務省大臣官房審議官堂薗幹一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上野委員長 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、上川陽子君外八名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会の共同提案により、お手元に配付いたしておりますとおりの性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案の起草案を成案とし、本委員会提出の法律案として決定すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。上川陽子君。

上川委員 おはようございます。

 提案者を代表して、本起草案の趣旨及び内容について御説明申し上げます。

 まず、本起草案の趣旨について御説明申し上げます。

 AV出演被害は、出演者の心身と私生活に将来にわたって取り返しのつかない重大な被害をもたらすことから、その被害の発生と拡大の防止を図り、被害を受けた出演者の救済のために徹底した対策を講ずることが、出演者の個人としての人格を尊重し、その心身の健康と私生活の平穏等を保護するために不可欠であります。

 そこで、年齢、性別を問わず、こうしたAV出演被害の防止、救済を図るため、AV出演契約等に関する特則、プロバイダー責任制限法の特例、相談体制の整備、罰則等について定め、もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とし、ここに本起草案を提案した次第であります。

 次に、本起草案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、性行為映像制作物との定義を設けております。これは、性行為に係る人の姿態を撮影した映像並びにこれに関連する映像及び音声によって構成され、社会通念上一体の内容を有するものとして制作された電磁的記録又はこれに係る記録媒体であって、全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するものとしており、AVを対象としております。

 第二に、性行為映像制作物の撮影に当たっては、性行為を強制してはならないこと、民法その他の法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈してはならないこと、刑法、売春防止法その他の法令において禁止又は制限されている性行為等ができるようになるものではないといった、解釈の基本原則を定めております。

 第三に、契約締結時の説明義務等を定める契約締結に関する特則、一定期間が経過した後でなければ撮影を行うことができないといった契約履行等に関する特則、契約の無効、取消し、解除等に関する特則、公表の停止や予防を求める差止め請求権を設けるなど、出演契約等に関する特則を定めております。

 第四に、プロバイダー等が出演者からの削除申出に基づき映像を削除した場合に生じる情報発信者への損害に係る賠償免責の要件について、情報発信者に対する削除照会に係る申出期限を七日から二日に短縮するプロバイダー責任制限法の特例を設けております。

 第五に、国は、出演者その他の者からの相談に応じ、その心身の状態と生活の状況その他の事情を勘案して適切に対応するために必要な体制を整備することとし、都道府県は、地域の実情を踏まえつつ、これに準じた体制の整備をするよう努めることとしております。

 第六に、出演契約の任意解除等を妨げるため、不実の告知を行い、又は威迫して困惑させた場合や、契約時の説明義務や出演契約書等の交付等の義務に違反した場合の罰則を設けております。

 第七に、この法律は、罰則に関する部分を除き、公布の日の翌日から施行することとしております。

 また、この法律の施行後二年以内に、検討を行い、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

    ―――――――――――――

 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

上野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。

 本日は、通称AV出演被害防止・救済法案について質問の機会をいただき、ありがとうございます。本法案の取りまとめに御尽力をいただいた与野党全ての関係者に心から敬意を払い、そして感謝したいと思います。本当にありがとうございます。

 私は、本法案の取りまとめに当たった与党のAV出演被害防止に関するプロジェクトチームのメンバーであり、ちなみに座長は上川陽子代議士でありますが、かつ、二〇一七年十二月に発足した、自民党の性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟、通称ワンツー議連の創設者で、チャーターメンバーであります。初代会長も務めました。現在は、会長を上川陽子PT座長にお譲りをし、同議連の会長代行を務めております。

 ワンツー議連の正式名称には、性犯罪と認定されない性暴力も許さないというメンバーの強い思いが込められています。また、ワンツー議連という通称は、性暴力は一件でも多過ぎる、ワン・イズ・トゥー・メニーという思いで私が名づけたものであります。ちなみに、二〇一四年四月に米国政府が制作した性暴力撲滅を訴える動画のタイトルがワン・イズ・トゥー・メニーでありまして、当時のオバマ大統領も、昨日まで日本におられたバイデン大統領も当時の副大統領として出演をされています。その米国政府のキャンペーンから約三年半たってワンツー議連が立ち上がったということになります。

 過去五年間にわたるワンツー議連の活動を最もよく知る一人として、自民党には、AV出演被害防止、救済のための取組の大いなる蓄積があるということをまず申し上げておきたいと思います。

 この問題について、ワンツー議連の下に設置されたAV出演強要問題プロジェクトチームの座長としてこれまで最も熱心に取り組んでくれたのは渡嘉敷奈緒美前衆議院議員でありまして、同PTが積み重ねたヒアリングの資料がこの御覧のファイル三冊ということになっております。ヒアリングを重ねて、もろもろの、いろいろな団体から寄せられた声、資料を集めてまずこれだけになっているわけで、こういった資料をベースに、この五年間ずっと自民党において議論を積み重ねてきたということは、皆様に御紹介をしておきたいと思います。本日の自民党の質疑者は、本来であれば、私ではなく渡嘉敷前議員が最適任者だと思います。

 その自民党の取組の最重要ポイントの一つが、AV出演被害は、性別を問わず、年齢を問わず防止しなければならないということです。

 このため、今般、民法の成年年齢の引下げをきっかけに、十八歳、十九歳のAV出演契約の未成年者取消権がなくなる問題がクローズアップをされまして、国民の皆様の関心が高まっている現状を踏まえながらも、我が自民党は、性別、年齢を問わずにAV出演被害を防止、救済する方向でこの度の法案を取りまとめることを強く志向したものと理解をしております。要するに、AV出演被害を防止、救済しなければならない必要性は、十八歳、十九歳と二十歳以上で何ら変わりがないということであります。

 この点も含めまして、ワンツー議連の会長として、そして与党PTの座長として、本法案の取りまとめに本当に奔走された責任者であります上川衆議院議員に、本法案取りまとめの基本的考え方についてお尋ねをいたします。

上川委員 赤澤先生、御質問ありがとうございます。

 性暴力のない社会を目指す議員連盟、ワンツー議連を発足をしていただきまして、それから五年がたちまして、今回の法律案に至ったところでございます。

 自民党は、御紹介いただきましたとおり、二〇一八年に、このワンツー議連の下にAV出演強要問題PTを設置いたしまして、このAV出演被害の問題につきましては、被害者にしっかりと寄り添うということ、また、支援の現場の切実な声、こうしたことに耳を傾けること、そして、何といっても、問題の本質は何かということを捉えた解決策を見出すべく議論を積み重ねてまいりました。

 そうした議論の蓄積の上で、今般、与党のAV出演被害防止に関するPTにおきまして、立法措置の基本的考え方を取りまとめた上で具体の法案の検討に着手し、さらに、党派を超えて実務者会合を開催をいたしまして、連日にわたりまして議論を積み重ねてまいりました。

 AV出演被害は、出演者の心身と私生活に将来にわたって取り返しのつかない重大な被害をもたらす、そして、被害の発生そして拡大防止、被害を受けた出演者の救済のための徹底した対策を講じることが、出演者の個人の人格の尊重と、また心身の健康と私生活の平穏等を保護するために不可欠である、これが実務者会合において達した共通した認識でございます。何としてもAV出演被害を防止する、そして被害者を必ず救済するとの強い思いで取りまとめたものが、この度のAV出演被害防止・救済法案でございます。

 この法案につきましては、年齢、性別を問わないということが何といっても重要であるということでございまして、様々な論点を踏まえた上での特則等を設けているところでございますが、それによりまして、出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することが目的でございます。

 以上、基本的考え方について御説明させていただきました。

赤澤委員 ありがとうございました。

 ただいまの御説明のとおり、この度のAV出演被害防止・救済法案は、全ての年齢を対象にしているということも大きなポイントだと思っています。その意味で、AV出演被害防止、救済を全年齢にわたって大幅に強化するものになっていると確信をいたします。

 そこで、全ての年齢を対象に、どのようにAV出演被害防止、救済が大幅に強化されるのか、特に、AV制作者に非がある場合、すなわち、今日、委員室内に配られているこのポンチ絵でいうと、この右向きの矢印の上の二つ、この二つの場合です。お手元にポンチ絵がない衆議院TVなどを御覧の皆様のために繰り返しますが、特に、AV制作者に非がある場合には出演者の保護がどのように大幅に強化されたのかをお尋ねをいたします。

山下委員 赤澤委員にお答えいたします。

 本法案は、いわゆるAV出演強要被害、この実態に着目いたしまして、具体的には、AV出演、勧誘され、そして、十分な説明を受けないまま、あるいは書面すら交付されないままに署名をさせられる、そして、それに基づいてAVの出演を強要されて、撮影されて、そしてそれが流布されてデジタルタトゥーになる、こういった深刻な被害を防止するために、それぞれの段階におきまして、例えば、契約締結上の義務、あるいは履行上の義務、こういったものをいわゆるAV制作公表者に課しまして、それに反する場合に様々な契約の拘束力から解くというふうに考えております。

 先生が配付されましたポンチ絵において、上の段は、これはまず、契約締結段階の瑕疵がある場合、すなわち、まず、契約は個別になされなければならない、包括的にどんと権利を与えるということは認められないということでありますし、書面によらないもの、これも効力を認められないということにしております。加えて、契約締結段階については、契約の内容をしっかりと、出演をしようとする者に理解できるように、契約書面に所定の、法定の事項を記載させる、そしてさらに、その説明をさせるということ、こうしたものを、契約書あるいは説明書面を交付するということになっております。

 こうした書面交付義務や説明義務を果たしていない場合については、契約締結過程に瑕疵があるということで、これは取消しが可能ということになっております。具体的には十一条ということであります。

 そしてまた、これは、AV出演への強要被害を防ぐために、例えば、七条から九条までの規定において、AV制作公表者に対して、契約から撮影まで一か月間を空ける義務であるとか、公表される映像を確認する機会を与える、あるいは公表までに期間を置くということを履行上の義務として課しておりまして、これらの義務に違反した場合、あるいは債務不履行があった場合には、十二条において、出演者は出演契約を解除することができるという形で拘束力を解くことにしております。

 こうした十一条の取消権、十二条の解除権、これは消滅時効は五年であります。これまでの多くの被害の実態に照らせば、これらの規定でこの契約の拘束力を解くことによって、多くの出演被害を防止し、被害者を救済することができるということを考えております。

赤澤委員 ただいまの御説明を要すれば、これまで、典型的なAV出演被害者は、モデルにしてあげるとだまされたり、あるいは高額の違約金を払えと脅されたり、その結果、言われたことは何でもしろ的なプロダクション契約状況に追い込まれていたということでありますけれども、本法案により、AV制作者には、AV一本ごとに出演者と詳細な契約を結び、その内容を記載した書面を交付する義務、あるいは、契約、撮影、公表の間に一定の期間を置く義務、AVの撮影、公表、出演契約の解消に関するルールの内容を出演者に詳細に説明する義務などが課されることとなり、もし制作者がこれらの義務を守らない場合や制作者に契約上の債務不履行がある場合、要するに制作者に非がある場合には、AV出演者に消滅時効期間五年の取消権や解除権が与えられるということです。

 更に言えば、本法案以外の法令により契約が違法、無効である場合も含めて、そういった方たちは、出演者は、AVが公表されている間はずっと、本法案第十五条の差止め請求権による被害防止、救済を受けられます。

 ざっくり言ってしまえば、AV制作者に非がある場合には、十八歳以上の全ての年齢を対象に、未成年者取消権と同じ保護が与えられるということになります。

 このように、本法案により、全ての年齢を対象にAV出演被害防止、救済が大幅に強化されることは間違いありませんが、それでは、もしAV制作者が本法案の課す全ての義務を守り、かつ出演者との契約に基づく債務も完全に履行した場合、ざっくり言ってしまえば、AV制作者に非がない場合、すなわち、このポンチ絵でいうと、右向きの矢印のこの三番目のところに当たる状態である場合です。お手元にポンチ絵がない衆議院テレビを御覧の皆さんのために繰り返しますが、特にAV制作者に非がない場合には出演者はどのような保護を受けられるのか、例えば出演者の気が変わったような場合にどのような保護が受けられるのかをお尋ねしたいと思います。

山下委員 お答え申し上げます。

 AV出演被害におきましては、契約締結上はそういった瑕疵がなくても、公表になった段階で、例えば私生活上の著しい困難であるとか、そういったことが顕在化するということがございます。そうした場合、この公表前に契約者、出演者が想定しなかった私生活上の困難や非常に私生活に支障を来すような反響があった場合、そうしたこともございます、そうしたことで、契約上の瑕疵がある、あるいは債務不履行、法定義務違反があるという場合ではないのでございますけれども、こういった場合に、契約の拘束力を解くために十三条の任意解除権を創設しているものでございます。

 この任意解除権は、撮影されたAVについて、出演者が、事情のいかんを問わず、公表後一年、無条件に解除可能というふうにしておりますけれども、本法の施行後二年間、これについては、経過措置として、公表後二年間、こうした無条件の任意解除ができるということで、契約の拘束力から解放することを考えております。

赤澤委員 本法案は、第三条の規定からも明らかなとおり、違法な契約を合法化するものではありません。

 その上で、ただいまの御説明によれば、AV制作者が合法な契約を完全に履行し、かつ本法案の課す全ての義務を守っている場合であっても出演者は任意解除権という強力な武器により保護されるということですが、任意解除権の行使可能期間は一年と理解をしております。

 任意解除権の行使可能期間を一年とした理由と、未成年者取消権の行使可能期間並みの五年としなくても被害者の救済が十分と言える理由をお尋ねをいたします。

山下委員 本法案でございますけれども、まず、未成年者取消権というのは、いわゆる制限行為能力者ということで、これは未成年者が十分な判断能力ができないのではないかということから類型的に定められているものでございます。

 そして、AV被害の実態を見るに、これは未成年者に限ったわけではなくて、例えば、悪質な制作業者が勧誘して、署名だけさせて、それを盾に強要する、そして、それをすぐに撮影して流布するといったようなことがございます。

 そうした判断の熟慮の機会を与えないまま流布させるということがAV被害の実態なんだろうということに着目いたしまして、先ほど申し上げたような、契約締結過程において、しっかりとした説明義務、そして書面を交付する、そして書面の交付を受けた後一か月間の熟慮期間を置くということで、様々な相談機関あるいは身近な人に相談して冷静な判断を求めることができるということにしております。そしてまた、様々な法定義務、先ほど申し上げた公表までの期間であるとか、それまでに確認をするであるとか、そういった義務を設けることによって、これまでの実態、知らない間に流布される、そして取り返しがつかないということを防ぐというものにしております。

 そうしたことから、先ほど申し上げた契約締結上の瑕疵がある場合の取消権は消滅時効五年ということでございますし、法定義務違反や債務不履行による解除権は五年ということになっています。この二つで相当程度、AV被害あるいは未成年者取消権の対象となっているものはカバーできるのであろうというふうに考えております。

 他方で、それでもなお、公表後、様々な反響があった、あるいは、公表に至る前でも、やはり思い直したというときに、拘束力から解くために、先ほど言った五年間の時効である取消権や解除権に加えて、任意解除権を設けたということでございます。

 これは、未成年取消権が、親の同意があれば取り消せないとか、未成年者が詐術行為をすれば取り消せないであるとか、様々な制約も実はございます。そうしたことから総合的に考えると、未成年者取消権と同等以上の保護が与えられているというふうに考えまして、こうした法律の構成にしたということでございます。

赤澤委員 ただいまの御説明に加えて、本法案が求める相談体制の整備に要する時間なども考慮をして、施行後二年間は任意解除権の行使可能期間を二年とするという暫定措置が設けられています。本法案の附則第四条が規定する施行後二年以内の本法案の見直し、検討により、必要に応じ救済措置を講じることができるということも、私はそのように理解をしておりまして、記録のために申し上げておきたいと思います。

 まだ時間が残っているようですので、更にお尋ねをしたいと思いますが、先ほど私自身が質問の中で簡潔に説明した点ですけれども、本法案については、性行為を伴うAVを合法化するものであるとか、対価を伴う性行為に係る契約を容認するものであるとか、AVを禁止していないといった懸念の声が一部にありますが、この法案はAVを合法化するものなのか、その点についてお尋ねをいたします。

宮崎委員 赤澤先生にお答えをさせていただきます。

 この度の法案を作成するに当たりましては、被害者支援に大変尽力をされている皆様からのヒアリングを複数回重ねさせていただいた、そしてまた、赤澤先生先ほど御指摘ありましたが、我が自民党もそうですが、各党においてもこの法案の作成に入る前から様々な取組をしていただいていることは、各党承知しているところでございます。

 こうしたことで、六党で集まりまして、各党実務者、協議をしていく中でこの素案を取りまとめていったわけでありますが、この取りまとめをする最終の段階におきましても、この法律を作ることによって公序良俗に反する契約や違法な行為を容認するものでも、合法化するものでもないということを文章の中で明示をさせていただいたところでございます。

 特に、この法案におきましては、第三条で、この点について四項立てにいたしまして、きちっと定めをさせていただいたところでございます。

 第三条の第一項においては、この法律の理念はアダルトビデオの制作公表者等にも妥当して、出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにしなければならないとし、第二項において、出演者に対して性行為を強制することができないということを明記しております。その上で、三項では、この法律のいかなる規定も、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効とする民法第九十条の規定その他の法令の規定により無効とされる契約を有効とするものと解釈してはならない、四項においては、この法律により刑法、売春防止法その他の法令において禁止され又は制限されている性行為その他の行為を行うことができることになるものではないことに留意しなければならないということで明定をいたしました。

 繰り返しになりますけれども、この法律案が性交を伴うAVを合法化するなどというような懸念は当たらないということを改めて付言させていただきたいと思っております。

赤澤委員 本法案はAVを合法化するものではないと明言する答弁をいただきました。

 さらに、本法案と、AVではない一般の映画作品やテレビドラマなどによる表現の自由との関係についてもお尋ねをしておきたいと思います。

山下委員 まず、本法案は、二条において性行為を定義し、その後、二条二項において、性行為映像制作物という形でAVを定義しております。まあ、いわゆるAVという言葉を使わせていただきますが。

 これは、AVと一般の映画作品やテレビドラマ等とを峻別するとの観点から、まず一項において性行為を限定して、一般の映画作品やテレビドラマ等に含まれる例えば胸部を露出するような映像、それは対象としないということにしております。その上で、二項において、これは、映倫の審査基準として、上映不適切、審査区分対象外ということにおいて、例えば、専ら著しく刺激的な性行為などの描写に終始する映像というものが映倫で認められない、上映が認められないということを参考にいたしまして、先ほど言ったような、性行為を限定的にし、かつ、「全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するものをいう。」ということで規定しております。

 これは、映画であるとかテレビドラマで一般に放送されるものとは異なるということを考えて明記したということでございますので、この定義によって、一般の、世上許されております映画作品やテレビドラマ等とは区別できるというふうに考えております。

赤澤委員 AV以外の一般の映画作品等は本法案の対象外であると明言する御答弁でありました。

 以上の質疑からも明らかなとおり、本法案は、党派を問わない与野党の真摯な協議の結果として、性別を問わず、全年齢を対象として、AV出演被害防止、救済を大幅に強化するものとなっており、民法の成年年齢の引下げに伴う効果を補って余りあるものとなっていると理解をいたします。

 御臨席の委員各位並びに全ての政党及び所属議員の皆様の御理解を得て、可及的速やかに今国会における成立を図るべき法案であるということを強調させていただいて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西宏一でございます。

 まず、今般のAV出演被害防止・救済法案の取りまとめに御尽力をくださいました國重徹議員始め与野党実務者の先生方、また、衆議院法制局、法務省など関係省庁の皆様、そして御意見を寄せてくださった皆様に心から敬意と感謝を申し上げまして、質問をさせていただきたいと思っております。

 現在、国内のAV制作業者は百を超えるというふうに伺っております。しかしながら、その実態は捕捉し切れていないのが現状でございます。そして、このAV出演被害という性の搾取が横行している背景には、複雑化、また重層化している、困難を抱える女性、また若者が増えていることなどがこの背景として挙げられるわけでございます。

 また、今般のコロナ禍、こうした問題が深刻化をしているというふうに認識をしておりまして、今般の立法、極めて重要であるというふうに認識をいたしております。

 まず初めに、我が党公明党は、AVへの出演強要被害は著しい人権侵害である、こうした認識の下に、遡ること五年半前の二〇一六年の十二月に、佐々木さやか参議院議員を座長にしましてPTを発足をいたしまして、支援団体などに実態と課題をお聞きをいたしまして、また、関係省庁とも議論を重ねてまいりました。翌二〇一七年の三月には政府に緊急提言を申し入れまして、対策を強く求めてきたところであります。

 そこで、提案者の國重徹議員にお伺いをいたします。

 我が党のPTでの議論が本法案にどのように反映をされているのか、お伺いをいたしたいと思います。

國重委員 河西委員御指摘のとおり、公明党は、二〇一六年に佐々木さやか参議院議員を座長とするAV出演強要問題対策PTを立ち上げまして、支援団体の皆様などからのヒアリング等を重ね、AV出演被害の問題の所在を洗い出し、いかなる対策を講じることが重要であるか、このことについて丁寧に検討をしてまいりました。

 この度の法案は、法案全体において公明党PTにおける議論が反映されていると言えますけれども、一例を申し上げれば、公表後のAVへの差止め請求の実効性が重要であることから、差止め請求を、AV制作公表者に限らず、出演者と契約関係になく、ただ公表をしているだけの者など、幅広い者を対象とできるように工夫している点が挙げられます。

 もとより、この度の法案は、その後の与党PTでの議論を経て、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、共産党の六党の実務者で素案を取りまとめたものでありまして、各党の実務者が党派を超えて、出演被害の防止と被害者の救済を必ず実現するんだ、この熱意を持って取り組んだ結果であることも併せて答弁をさせていただきます。

河西委員 ありがとうございます。あまねく反映をされているということでございます。

 続きまして、性行為の定義について、本法案の内容についてお伺いをいたします。

 本法案を適用するAV、法律案では性行為映像制作物となっておりますけれども、これを定義するに当たりまして、対象となる性行為を定義をしております。この性行為の中から性交を除くべきとの御意見があったと承知をしておりますけれども、この性交を除くことができない理由、これを同じく國重議員にお伺いをいたしたいと思います。

國重委員 AV出演被害防止・救済法案は、第二条におきまして法案の適用対象となるAVを定義しておりますが、第二条第一項において性行為をまず定義をしております。この性行為の中から性交を除くことになりますと、性交を伴うAVへの出演契約につきましてはこの法律の適用の対象外となってしまうために、かえって被害防止、被害者救済ができないことになってしまいます。

 なお、こうした意見は、性交を伴うAVを禁止すべきとの考え方が背景にあると思われますけれども、この度の法案については、現に生じているAV出演被害について、現にある不適正な出演契約を無力化するための特則、そして流布したAVの差止め請求等を規定することで必要な対策を講じることを目的とするものであります。

 その上で、この度の法案が、公序良俗違反で無効となるものを有効とするものでもなければ違法な行為を合法化するものでもなく、このことを第三条第三項及び第四項において明らかにしている点を併せて強調させていただきます。

河西委員 ありがとうございます。非常に大切なポイントであるというふうに思っております。

 そこで、こうした被害を事前に防いでいく相談体制の整備拡充について、これは非常に大事だと思っておりますので、お伺いをいたします。

 今回の法案の重要なポイントの一つ、被害者に寄り添う、また、被害を発生させないための相談体制の整備充実が挙げられるわけでございますけれども、これはどのような観点から法案に盛り込まれることとなったのか、その狙いをお伺いをいたしたいと思います。

國重委員 相談体制の整備充実が必要であるということは、与党PTや各党実務者会合の席でも、私ども公明党からも強く申し上げてまいりましたが、自民党を始め各党の実務者の皆様からも同様の御指摘がなされてまいりました。

 これは、AV出演被害の実態を考えたときに、声かけや勧誘、契約締結、撮影、公表といった時間軸を意識した規制をかけることのみならず、出演を考える方がいかなる理由から出演を考えるに至ったか、また、出演者がいかなる理由から実際の出演に至ったのか、理由は様々であり、また複雑でありますけれども、その理由への理解がなくして問題は解決しないという認識も共有をされております。

 そもそも、単に相談機関があるからというだけで、そうした方々が相談に行くことになるわけではありません。この点は重要でありまして、AV出演被害問題の実態を理解している、被害者に寄り添える相談機関が必要になってまいります。

 単純にAV出演を諦めさせるということではなくて、AV出演を考えるに至った理由や背景を考えたときに、それは、経済的な問題であったり、家庭環境の問題であったり、学校や地域社会から疎遠になって居場所がないという問題であったり、様々な問題が考えられることから、そうした問題と、それぞれの方々の気持ちに寄り添える相談機関の整備充実は、この法案の中核を成すものと考えられました。

 そこで、法案におきましては、第十七条から第十九条の三条にわたって、相談体制の整備充実や教育啓発の重要性に関する規定を設けることとしたものであります。

 最後に、相談機関の整備充実は、この法案を所管することになる内閣府が担い手となります。内閣府も法案の立案の段階から積極的に参画をしてくれておりますので、相談機関の整備充実にしっかりと当たってくれるものと思っております。

河西委員 ありがとうございます。この相談体制、本法案の中核であるというような御答弁をいただきました。

 そこで、私の方からは、一点、ちょっと政府の方にもお伺いをいたしたいと思います。

 今、相談機関の整備充実は内閣府が所管をするというような御答弁がございました。やはり、先ほども申し上げましたとおり、このAV出演被害は、未然に防ぐ対策が何より重要であります。しっかりと考えていただく、相談をしていただくということであります。

 したがいまして、注意喚起のみならず、この法案、成立しましたら法律になりますが、その内容や相談窓口があること自体を、例えば繁華街でチラシを配るですとか、あるいはSNSも有効だろうと思いますけれども、こうした普及啓発について、これまで政府、内閣府はどのように取り組んでこられたのか、また、今後どう充実をさせていくお考えなのか、その見解をお伺いいたしたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府では、AV出演被害に関し、ポスター、リーフレットなどを作成し、大学などに配布するとともに、啓発動画やSNS、トレインチャンネルなどで周知を行ってきております。

 一般論になりますが、法律が施行された場合には、必要とする方に必要な情報が届くよう、しっかり広報を進めることが重要であると考えております。

 私ども男女共同参画局といたしましては、いただきました普及啓発の重要性と御提案をしっかりと受け止めさせていただきます。

河西委員 ありがとうございます。本法案の実効性の担保のためにも、この点、非常に大事だと思いますので、全力を挙げていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、規制の具体的な内容についてお伺いをいたしたいと思います。

 本法案のもう一つの重要なポイント、中核ともいうべきものでありますけれども、被害実態を踏まえまして、本日お配りの、先ほども赤澤先生が御紹介をされておりました、このポンチ絵の一番上のところにもありますけれども、契約、撮影、そして公表といった、時間軸に照らした必要な規制が設けられていることが挙げられます。

 この時間軸に沿った規制、具体的にどのような規制が設けられているのか、確認をしたいというふうに思います。

國重委員 お尋ねの時間軸を意識した規制について、順次具体的に説明をいたします。

 第七条第一項では、契約締結から撮影までの間に一か月を空けることを義務づけました。

 次に、第七条第二項では、出演者は、出演契約において定められている性行為であったとしても、その全部又は一部を拒絶することができ、かつ、その場合に賠償責任を負わない旨を規定をしております。

 そして、第八条では、出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像を公表前に出演者に確認させる機会を与えることを義務づけました。

 さらに、第九条では、撮影から公表までの間に四か月を空けることを義務づけております。

 こうした規制に加えて、契約解消を妨げる行為等に対する罰則も併せて規定することによりまして、こうした規制の実効性を担保することとしております。

河西委員 ありがとうございます。

 先ほどお伺いしました相談体制の中にも、また周知啓発ということの中でも、やはり、時間軸に沿ってどのような規制が設けられているのか、どのタイミングで相談できるのかというところが非常に大事だと思っておりますので、この点も併せて確認をさせていただきました。

 続きまして、本法案により、AV出演被害に関しましてどのような被害の回復が実現をできることになるのか、これは、できますれば具体的な例を挙げて御説明をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

國重委員 御質問にお答えいたします。

 この度の法案は、手厚い契約解消のルールが規定をされております。

 契約解消の効果といたしまして、AV制作公表者は、例えば、配信中のインターネット動画の配信を止めるであるとか、手元にあるDVDを問屋や小売店に卸すのを止めるといったことが義務づけられることになります。この点、そうした被害回復の実効性を確保する観点から、契約解消ルールに加えまして、差止め請求権やプロバイダー責任制限法の特例が規定をされております。

 第十五条に規定しております差止め請求権については、公表が予定されていたもの、現に公表されているものの公表を止める権利であります。AVが性行為に係る人の姿態が映された映像であることを踏まえ、この差止め請求権は人格権に基づくものと整理をしております。

 したがいまして、公表が予定されていたもの、現に公表されているものの公表を止める対象は制作者に限りません。例えば、小売店においてDVDが販売されている場合には、当該小売店に対しても販売停止を求めることができます。

 もとより、AVの公表形態は様々あり得るところ、そうした形態に広く対応できるように工夫がなされております。

 第十六条に規定をするプロバイダー責任制限法の特例につきましては、いわゆるリベンジポルノ法と同様に、契約が解消された後のAVを侵害情報と位置づけて、プロバイダーによる削除を容易にするものになります。プロバイダーによる削除により、被害の拡散防止に有効であります。

 これら二つの規定を併存させることで、現行法体系の中で、いわゆるデジタルタトゥーについても防いでいくことができると考えております。

河西委員 御答弁ありがとうございます。このインターネット社会に鑑みて、様々な具体的な仕組みを盛り込んでいただいたということでございます。

 最後に、一点お伺いをいたしたいと思います。

 本法案では、AV出演契約をめぐりまして、非常に手厚い契約の解消のルールが設けられております。この点に関しましては、画期的であるというふうに高く評価する声も多いというふうに伺っております。そこで、最後に、具体的にどういった点で手厚い保護が図られているのか、提案者、國重議員にお伺いをいたします。

國重委員 河西委員の御質問にお答えをいたします。

 この度の法案におきましては、第十一条において、契約締結過程に瑕疵がある、具体的には、AV制作公表者が説明義務を尽くしていないなどの場合における取消権を規定をいたしました。

 また、第十二条におきまして、例えば、契約締結から撮影までに一か月の間を空けなかったなどの法定義務違反等の場面における解除権を明記いたしました。これは被害実態に即したものでありまして、第十二条の解除権により、公表までの被害がおよそ防げるものと承知をしております。

 さらに、これら第十一条の取消権、第十二条の法定解除権に加えまして、第十三条に任意解除権を創設したわけでありますが、この任意解除権は、契約締結過程に何ら瑕疵のない場合であったとしても、AVの公表後一年間行使することができる、非常に大きな武器になります。

 他方で、この任意解除権は、契約締結過程に何ら瑕疵のない、いわば適正に契約をされ撮影されたAVについて事後的に解除を可能とする絶大な権限であるところ、当事者間の公平を期する、またバランスにも配慮する必要があるため、行使可能期間を一年としております。

 この第十三条の任意解除権の創設を画期的と評することもできるわけでありますが、法案立案に携わった者といたしましては、契約解消ルール全体が巧妙に制度設計されており、かつ、法案全体として被害の防止と被害者の救済に資するものであるところ、全体として画期的と評することができるものと考えております。

河西委員 御答弁ありがとうございました。任意解除権ということで、かなり手厚い保護を図っている、やはり、AV出演被害の性質に鑑みて、しっかり寄り添った法案になっているということを理解をさせていただきました。

 私も、PTをつくってきました公明党の一員としまして、本制度が速やかに成立をいたしまして、そして、先ほど政府にお伺いいたしました周知徹底、これを知っていただく、先ほどの任意解除権もやはり知っていただくということが非常に大事だと思っておりますので、その取組に全力を挙げていくことをお誓いをいたしまして、以上、質疑とさせていただきます。

 大変にありがとうございました。

上野委員長 次に、堤かなめ君。

堤委員 立憲民主党の堤かなめでございます。

 AV出演被害防止・救済法案について質問いたします。

 初めに、立憲民主党によるこれまでのAV出演被害問題への取組は、今回取りまとめられた法案にどのように反映されているのか、お聞きいたします。

森山(浩)委員 堤委員にお答えをいたします。

 本年四月に成年年齢が引き下げられたことにより十八歳、十九歳の者が未成年取消権を行使することができなくなる、この影響について、現役の高校生のアダルトビデオの被害が増える可能性、これが危惧されると指摘されている問題につきまして、今国会におきまして、まず、立憲民主党所属の塩村あやか議員が参議院の内閣委員会において質疑を行い、この問題を提起をいたしました。江崎孝議員が参議院の内閣委員会の質疑で、また塩村議員が決算委員会の質疑におきまして、超党派で議員立法を成立させる必要性を訴えてまいりました。また、衆議院におきましても、我が党からは、私が本会議で、また本委員会におきましては山井和則議員、堤かなめ議員が重ねて訴えてまいりました。

 その後始まった超党派での議員立法各党実務者会合におきまして、立憲民主党からは、与党から示されていた骨子案に対して、被害者の支援団体など関係団体の方からの意見を尊重しつつ、任意解除権を行使できる期間について、激変緩和措置として、本法案の施行からしばらくの間は一年から五年に延ばすこと、その期間の起算点を映像の撮影終了時から性行為映像制作物の公開時に修正すること、公表期間についての制限また無効とする出演契約等の条項の範囲等について検討事項として明記すること等を主に主張をいたしました。

 これを受けて、今回取りまとめられたAV出演被害防止・救済法案におきましては、一つ目としては、附則三条に規定のとおり、任意解除権については、経過措置により、本法案の施行後二年が経過するまでは二年間行使することができ、二つ目として、十三条一項に規定のとおり、任意解除権の行使期間は性行為映像制作物の公表時から起算され、三つ目として、公表期間についての制限、四つ目として、無効とする出演契約等の条項の範囲等についても検討事項として附則四条二項において明記されるということになりました。

 大方、我々の要望事項が盛り込まれ、被害の防止及び救済に資する法案とすることができました。まさに、党派を超えて実現をした法案であるというふうに考えております。

堤委員 第十三条第六項では、「出演者を威迫して困惑させてはならない。」とされています。この威迫して困惑させるとはどのような行為なのでしょうか、また、どのように証明するのか、お聞かせください。

森山(浩)委員 他人に対して言語や動作で気勢を示し、その他人を戸惑わせ、どうしてよいか分からなくなるような状況に置くことを威迫といいます。例えば、出演者の自宅や実家に大人数で押しかけたり、出演したことが親に知られることを恐れている出演者に対して、親に電話をして経緯を話すぞと伝えたりすることにより出演者を戸惑わせる行為などがこれに該当することとなります。

 威迫行為があったことは、それがSNS上などでされればこの記録によって証明することなどが考えられますが、いずれにせよ、公表後一年、当面は二年ですけれども、以内であれば、出演者は書面等で通知をすることで一方的に任意解除を行うことが可能であり、出演者側で証明の負担を負うということはありません。御指摘の本法案第十三条第六項の違反に対しては罰則が設けられており、この適用については出演者が証明の負担を負うものではございません。

堤委員 出演者が証明の負担を負うことはないという点は重要だと思います。

 次に、任意解除によって原状回復義務が発生し、出演者は出演料を返さなくてはならなくなります。これを返すことができない場合、出演者は解除権を行使できない事態になるのでしょうか、それとも、ならないのでしょうか、教えてください。

山井委員 重要な御質問をありがとうございます。

 答弁の前に一言、この間の経緯と御礼を申し上げたいと思います。

 この議員立法、短期で超党派で作り上げる段に当たりましては、法制局の齋藤部長さん、そして中谷課長さん、そして内閣府の林局長さんを始めとする、本当にこれは議員と役所と法制局が必死になって作らせていただきましたし、また、きっかけは、二月以降、ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子先生を始めとする方々や、この被害者支援に取り組むNPO法人のぱっぷすさんの金尻カズナ理事長さんを始めとする方々が、これは本当に深刻な被害が広がるということで、党派を超えて訴えられまして、そのことを踏まえて今日に至りました。

 今いただきました質問についてでありますが、結論から言いますと、出演料の返還は契約解除の条件ではありません。

 十三条に規定される任意解除は、二項に規定されるとおり、その旨の通知を発したときに効力を生じ、十四条に規定されるとおり、その効果として、各当事者はその相手方を原状に復させる義務を負うものであります。解除権を行使するために原状回復義務を履行せねばならないものではないため、出演者は、出演料の返還が直ちにできない状況であっても契約を解除することができます。つまり、出演料の返還は契約解除の条件ではございません。

堤委員 今、山井議員からございましたように、たくさんの方々の御尽力によったということ、また、御批判もありましたが、それも含めて、皆さんの意向がこの法案に反映されているのではないかと思っております。

 それでは次に、出演契約が解除されたときは、例えば制作公表者は制作したDVDの販売を停止したり動画の配信を停止したりすることになりますけれども、これはいつまでに行われるのでしょうか。よろしくお願いします。

森山(浩)委員 すぐです。

 本法案では、制作公表者が法定の義務に違反した場合の解除権や任意解除権などの解除権が定められており、この解除権が行使されれば契約関係は解消されることになります。この解除権が行使されれば、その効果として、すぐにDVDの販売を停止したり動画の配信を停止するべきものとなります。

堤委員 すぐにということでございますね。

 それでは、附則三条では、法施行から二年間は任意解除権の行使可能期間を一年から二年に延ばす特例が設けられていますが、その趣旨は何か、教えてください。

山井委員 任意解除権は強力な権利でありまして、被害者を守ることができる最強の武器であります。

 この解除権の行使も含めて、出演者の相談に応じる体制を整備し、出演者が相談できることが広く知られるようになるには一定の時間が必要であります。そのため、制度が広く周知され、相談体制の整備が図られるまでの暫定的な措置として、施行後二年間は解除期間を一年から二年間に延長しております。

堤委員 先ほどもございましたが、十分な周知、是非よろしくお願いします。

 また、任意解除権は、性行為映像制作物の公表が行われた日から一年が経過したら行使できなくなります。悪質な事業者であれば、巧妙な手口で出演者に解除権を行使させないようにして一年が経過してしまうような懸念があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

森山(浩)委員 御指摘のとおり、悪質な事業者が巧妙な手口で出演者に任意解除権を行使させないようにして、性行為映像制作物の公表が行われた日から一年が経過してしまうといった事態も想定をされ得ます。

 そこで、本法案では、出演者が、制作公表者等による不実告知により誤認をし、又は制作公表者等による威迫により困惑し、先ほど申し上げました、これらによって性行為映像制作物の公表が行われた日から一年を経過するまでに任意解除をしなかった場合には、当該出演者が当該制作公表者等から任意解除をすることができる旨を記載した書面を受領した日から一年を経過するまでは、なお任意解除をすることができるとしております。

 すなわち、悪質な事業者が不実告知や威迫、困惑行為によって出演者に任意解除権を行使させないようにしても出演者の任意解除権は消滅しないこととして、出演者の保護を図っているところでございます。

 また、本法案は、そもそも十三条五項、六項におきまして、そのような制作公表者等による任意解除妨害目的の不実告知及び威迫、困惑行為を明確に禁止をし、その違反に対しては二十条において三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金という重い刑を科すことにしており、当該行為に対しては強い抑止効果が働くものと考えております。

堤委員 今お答えありましたように、任意解除権は強力な武器でございますけれども、AV出演被害を受けた人が実際に行使することができなければ、絵に描いた餅となってしまいます。

 法律、契約といったことに詳しくない人でも容易に解除権を行使できるような工夫、支援が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

山井委員 おっしゃるとおりであります。容易に解除権が行使できるような工夫、支援、さらに、この問題についての周知、広報が、法案について必要だと考えております。

 そこで、この法案が成立した場合における法律の所管官庁には、AV出演契約をした人が容易に解除権を行使することができるよう、法律についてQアンドAの形で解説したものを役所のホームページを含め公表したり、解除権を行使するための書面のひな形を作成して、これも公表するなどの具体的な工夫、支援の措置を求めたいと考えております。

 例えば、私も先週、こちらにございますけれども、ぱっぷすさんが編集された「ポルノ被害の声を聞く」という本がございますけれども、こういう本を読ませていただき、被害の実態、問題点、そういうものについて私も学ばせていただきました。

堤委員 法律についてQアンドAの形で解説したものを公表したり、解除権を行使するための書面のひな形、これは大変大事だと思います。そういったものを公表していただくということで、是非よろしくお願いいたします。

 法案附則第四条は、法施行後二年以内の検討を規定し、同条第二項では、検討事項として性行為映像制作物の公表期間の制限が特に例示されています。この趣旨を御説明ください。

山井委員 これは非常に重要な検討事項であります。いわゆる忘れられる権利というものでございます。一度販売されたアダルトビデオが永遠に公開、拡散され、デジタルタトゥーとなるということは何としても防ぐべきであるとの考えから、この検討規定に入れさせていただきました。

 この項目は私たちの修正要望により追加されたものでありますが、その内容は、出演契約の締結時に定めることとしている性行為映像制作物の公表の期間について、○○年以内としなければならない旨の規定を設けることで、いわゆる忘れられる権利を保護する措置について規定を設けることの可否について検討を行う規定をしたものであります。

堤委員 忘れられる権利、これも大変重要だと思っております。是非、検討をお願いいたします。

 それでは、性行為を伴うAVの禁止については、立憲民主党として、この法律とは別途検討を続けることが可能であると考えますが、いかがでしょうか。

森山(浩)委員 本法案は、現に生じているAV出演被害について、現にある不適正な出演契約を無力化するための特則、そして流布したAVの差止め請求等を規定することによりまして必要な対策を講ずることを目的とするものでありますので、性行為を伴うAVに関する契約をもその規律の対象に含めているところでございます。

 その一方で、性行為を行うAV自体の禁止を同じ法案に盛り込むということは、今申し上げたことと論理的に整合しないため本法案には盛り込まれなかったところでありますけれども、このことは、本法案と別に、性行為を伴うAV自体の禁止について検討を続けることを何ら妨げるものではございません。

 このため、立憲民主党として、本法が成立した後も、性行為を伴うAV自体の禁止について、支援団体の方々とともに議論をしながら検討を続けることはもちろん可能であります。

堤委員 性行為を伴うAV自体の禁止について検討を続けることを、この法案は何ら妨げるものではないというふうにお答えいただきました。

 山井議員も森山議員も、この間、本当に、被害をなくしたい、被害そのものをなくしたい、また被害者を何とか救済したい、そういう強い思いでずっとこれまで議論されてこられましたし、また、関係者の皆様も、今日もお越しになっていらっしゃる方もたくさんおられます、本当に、この間の御尽力に私からも感謝申し上げたいと思います。

 映画やテレビで殺人のシーンがあったとしても、それはあくまでも演技であって、実際に撮影の際に人を殺すことはありません。しかしながら、性交については、演技ではなく、実際に撮影現場で行われることもあると聞いております。この場合、妊娠や性感染症、うつやPTSDなどの危険性がございます。また、撮影現場で暴行、凌辱行為など、個人の尊厳や人権、とりわけ若者や女性の尊厳や人権を踏みにじる行為が行われた場合、心身の安全や健康に影響を及ぼすことになりかねません。

 人間の尊厳と人権の尊重という観点から、立憲民主党として、AVなどにおけるあらゆる性的搾取を根絶するため、今後も全力で取り組むことをお誓い申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

上野委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。どうぞよろしくお願いをいたします。

 成人年齢の引下げにより十八歳、十九歳の方の取消権がなくなるという問題に対して、私は厚労委員会に所属しておりますが、梅村聡議員をリーダーにして、この問題の議論を進めてまいりました。厚労委員会でも、厚労のメンバーがこの問題について質疑を深めてまいりました。しっかりと、被害に遭った方に寄り添う、そして支援団体の方々の声を聞くという強い意思を持って、この質問に入らせていただきます。

 足立康史議員に御質問させていただきます。

 女性の貧困とAVの出演の関係性、これについて質問をさせてください。

足立委員 一谷勇一郎議員にお答えをします。

 一谷議員におかれては、我が党でこの問題を議論していくに当たって、本当に、実務者のお一人としていろいろ御指導いただきまして、感謝を申し上げたいと思います。

 御指摘のとおり、女性の貧困、これはAV出演被害発生の一つの大きな要因になっていると考えておりますが、例えば、家庭環境とか、学校や地域社会から疎遠となり居場所がないなどの、そういう貧困以外の要因によってAV出演被害が発生していることも十分に考えられると思っております。

 こうした観点から、そうしたAV出演被害が発生している背景、この背景についてしっかりと捉え、それを踏まえ、貧困だけではなくて幅広い視野で支援をしていくことが重要である、こう考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 内閣府の調査を見させていただきましても、やはり貧困との関連は書かれていましたが、それだけではないことも書いてありました。また、年齢層も意外と幅広いんだなということを、資料を見て感じた次第であります。

 私が厚労委員会でも、今回の児童福祉法の一部改定でも、やはり貧困の問題であったりDVの問題であったりとか、家庭環境の問題、PTSDの問題等々ありますので、検討事項として、二年以内の見直しというふうになっております、この見直しについて、やはり実態をしっかり調査していくということは重要だと思いますので、しっかりとやっていただけたらと思います。

 それでは、次の質問に入らせていただきます。この質問も足立康史議員にさせていただきます。

 非常に重要な法案を、各党、本当に力を合わせてまとめていただいたと思うんですが、よくこの短期間でこの法案がまとまったなというふうに考えております。この経緯を教えていただけたらと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 御指摘のとおり、この法案、本当に、大変大事な、そして包括的な法案になっております。出演契約等に関する特則から始まって、プロバイダー責任制限法の特例、相談体制の整備、さらには罰則に至るまで、AV出演被害の防止、救済を図るための様々な内容が盛り込まれている総合的な法案であります。にもかかわらず、御指摘のとおり、大変異例の短期間で取りまとめることができました。

 こうした短期間でこれだけの法案を仕上げること、ここに提出をすることができたのは、ひとえに、各党各会派の議員の皆様が、一刻も早く法案を成立させて、現に生ずるおそれがあって、また実際に生じているAV出演被害の防止、救済を図る緊急の必要がある、こういう認識を共有する、共通認識とすることができたことが非常に大きかったと思っています。

 与党、野党、様々な、国会では、ほかの委員会では足を引っ張ったり、けんかをしたり、いろいろしている各党派でありますが、そうした中で、私も、一丸となって、幅広い議論、論点をテーブルにのせた上で、それでまとめていくという、そうした作業を短期間でやる上では、私自身も一役果たさせていただいたと自負していますが、議論の中で、例えば、他党でありますが、立憲民主党の塩村あやか議員などは、本当に、塩村議員が果たされた役割は非常に大きかったなという印象を持っております。

一谷委員 ありがとうございます。

 私も実務者として常に会議に参加をさせていただきました。本当に、足立議員の発言もはらはらとしながら聞いておった次第なんですが、やはり、期間が決まっている、そして、一日一日、被害に遭っておられる方が出てくるという意識は常に我々すごく持って、だからこそ、なし得てきたのではないかというふうに思っております。

 また、私は、各省庁の皆さん、本当に、日々、徹夜に近いのではないかというふうな思いで見ておったんですが、よく倒れずにここまで来てくださったなと思いまして、本当にお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 続きましての質問に移らせていただきます。

 スタートは、十八歳、十九歳の取消権の話からスタートしましたが、この法案は全年齢対象となっております。その経緯について、足立議員にお伺いをさせていただきます。

足立委員 御指摘ありがとうございます。

 おっしゃったとおり、この法案の当初の議論は、きっかけというか、これは、成年年齢の引下げによって十八歳、十九歳の方々が未成年者取消権を行使することができなくなる、この点に着目した議論がもちろんありました。しかしながら、各党の実務者間で協議を重ねる中で、AVの制作公表によってその心身及び私生活に将来にわたって取り返しのつかない重大な被害を受けるおそれがあるのは、何も十八歳、十九歳などの若年者に限られないという認識が共有されるに至りました。

 そこで、本法案では、出演者の年齢を問うことなく広く保護の対象とし、AV出演被害防止、救済を図ることとしているところでございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 我々、厚労の梅村聡議員をリーダーに議論を進めてきたんですが、その梅村議員がまず最初に話したのが、これは全ての年齢のことを考えなければならないという話でした。そこで、我々、党内で議論を進めながら、実務者会議に出たときに、やはりこれは全ての年齢の方々に対して救済そして防止策を打たなければならない、これは各党、意識が統一されていたので、この結果になったと思っております。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 次の質問は、少し視点が違った質問をさせていただきたいと思います。この質問をさせていただく目的は、真に被害者の方の救済、そして支援団体の方々の声を聞くということは基礎にあって、あえて質問をさせていただきます。

 まず、既存メーカーですが、取締りが厳しくなっております、取締りを厳しくすれば、アンダーグラウンド化してしまって、更なる違う被害が出るのではないかというふうな考えが少し私にはあるんですが、その点について足立議員に御意見を伺います。

足立委員 御質問ありがとうございます。

 今、一谷委員が指摘されたこと、まさに、実務者の中でも議論し、党内でも、特に一谷委員から指摘をいただきました。これは本当に重要な議論で、一谷委員の御指摘があったればこそ深まった議論だと思います。

 御指摘の点は、まさに、意図として、要は規制、今回は大変厳しい取締りの法案になっているわけでありますが、取り締まれば本当に被害者が救済されるのであれば、世の中、まあ簡単というか、そんないいことはないわけでありますが、実は、今御指摘にあったように、取締りを強化すると、アンダーグラウンド化して、かえって取締りが困難になるというようなことは、一般論として、一般論としてはあり得ます。

 私たちは、この法案は、基本的には、AVの制作公表によって出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しのつかない重大な被害を生ずるおそれがあり、また、現に生じているという認識の下で厳格な規制を定めていますが、それが、その厳格な規制を定めることによっていわゆるアンダーグラウンド化が起こって、かえって法の実効的な規制を及ぼしにくくなるのではないかという一谷議員の御指摘は、本当に重要な御指摘であると認識をしております。

 動議提出者の一人として、また動議提出者の仲間と一緒に、これからも、法が成立した暁には、法施行後、委員御懸念のアンダーグラウンド化のようなことが決して起こらないように、施行の状況等を注視しながら、状況把握をしっかりと行ってまいりたいと思います。

一谷委員 ありがとうございます。

 検討事項の中に、二年以内の見直しとあります。また、経過措置として、二年間は無条件に解除できます。どういった、この法案が通った後に、実情が変わっていくのかというところをしっかり見定めていただきたいと思いますし、違法行為があれば徹底的に取り締まるという気持ちは皆さん同じだと思っております。

 やはり、一人も被害者の方をつくらない、そして支援団体の方々の声を聞くということを徹底してまいりたいと思いますので、どうか、今日傍聴席で聞いていただいている皆さんも御理解をいただけたらと思っております。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 日本国内ではなく海外メーカーが契約の対象になってしまった場合、また、日本メーカーが海外に進出してしまった場合に、どのようにこの法案が適用されるかというところの考えを足立議員にお聞かせいただきたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 御指摘の点も、大変、国民の皆様からよく聞かれる点でございます。

 出演契約の成立及び効力に、今回の法案、本法案が適用されるか否かという御質問は、当該出演契約にいかなる国の法が適用されるのかといういわゆる準拠法の問題になります。これは、法の適用に関する通則法という法律の規定によるものとなります。

 最終的には個別事案、個別事情によって判断されることになるため一概にお答えすることはできませんが、当事者が日本の法律、日本法を選択した場合などは本法を含む日本法が適用される、選択がない場合でも、日本と密接な関係がある場合は本法が適用されることもある。

 結論としては、海外メーカーであるからといって直ちに本法案の適用が排除されるものではないと申し上げることができると思います。

一谷委員 ありがとうございます。

 今のお話をお聞かせいただきますと、日本で放送というか使われるものに対しては法律が施行されていくんだと思うんですが、この点もしっかりと見ていかなければならないのではないかなというふうに思っております。

 それでは、次の質問をさせていただきます。

 今まで明確に規定されていなかった書面交付義務、説明義務が義務づけられました。細かく、書面の、必ず合意を得なければならない項目が決まったんですが、この義務、今後どんな効果を出していくのか、どんな効果を期待しているのかという点について、足立議員にお伺いをいたします。

足立委員 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、この法案では、五条一項、二項でございますが、制作公表者に、あらかじめ契約に関する一定の重要事項について説明する義務を課するとともに、契約締結後、速やかに所定の事項を記載した契約書を交付する義務を六条で規定しております。

 まず、説明義務については、出演契約に適用される法規範の内容など、契約内容そのものではないものの、契約を締結するかどうかを判断するに当たって多大な影響を及ぼす事項について説明書面等に記載することを求め、また、実際に出演者に対して説明を義務づけるものでございます。これによって、出演者は契約を締結するかどうかを適切に判断できるようになる効果が期待されるところでございます。

 もう一つ、契約書面の交付義務については、契約内容として当事者間で合意がなされた内容についてきちんと書面に記載させ出演者に交付することを義務づけることによって、出演者が契約の内容を落ち着いて確認できるとともに、契約書面等を見せながら周囲の人や説明書面等に記載されている相談機関に相談することができるようになる、こうした効果が期待できるものと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられた、やはり落ち着いて契約内容が見られるというところが非常に重要だと思っております。また、この法案では、一回一回必ず契約書を交わさなければならない。今まででしたら、たくさんの作品の中の契約書、一通で何本もというのがありましたが、今回から一回一回やらなければならないということで、毎回、契約から撮影までの一か月間、そして撮影がされたとしても公表までの四か月間、十分に考える時間があるということが大事であり、この法案のみそではないかなというふうに思っております。

 また、違反があった場合、プロバイダー責任制限法の中で、今まででしたら、プロバイダーから情報発信業者に、取り消してくださいという話を、七日間返事を待っていたんですが、これが二日に短縮されたというところで、違法があった場合の取消しというところの素早い対応もできるということも重要で大切な決まり事だと思います。

 ですから、こういったことをやはり周知徹底していくことが重要だと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、次の質問に入らせていただきます。

 よく考える、契約してしまったけれども、撮影してしまったけれども、やはり、考える期間、これが合計五か月ありますが、この中で、相談窓口として具体的にどういったところを想定しているかというところを足立議員にお伺いさせていただきます。

足立委員 お答え申し上げます。

 本法の十七条において、国に対して、出演者その他の者からの相談に応じ、その心身の状態及び生活の状況その他の事情を勘案して適切に対応するために必要な体制を整備することを義務づけております。具体的には、全都道府県に設置された性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターを活用することを想定しております。

 都道府県においても、その地域の実情を踏まえつつ、国の体制の整備に準じた体制を整備するよう努めるものと規定しております。

 こうした相談窓口を御活用いただけるものと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 恥ずかしながら、私は実は、このワンストップ支援センターというものを初めて知りました。ですから、やはり周知徹底、これが重要ではないかなというふうに思っております。

 それでは、次の質問は、もう質疑があったんですが、党内議論がありましたので、あえて質問をさせていただきます。

 商業映画などでも性交のシーンがありますが、この規制の対象になるかどうかということを改めて足立議員にお伺いいたします。

足立委員 先ほど同旨の議論がありまして、山下貴司委員からも御答弁申し上げたとおりでありますが、本法案においては、アダルトビデオを定義するに当たり、単に性行為に係る人の姿態を撮影した映像などであるだけではなくて、「その全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるとしています。

 この専ら要件は、性行為映像制作物全体から判断するものとし、映倫審査基準で審査対象外の、いわゆるAVとされる専ら著しく刺激的な性行為の描写に終始する映像と同様のものであって、御指摘の映画館での上映に適した映画であると判断されているような商業映画は、性交シーンを含むようなものであっても、全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するものではないため、アダルトビデオの定義からは除かれるものと考えています。

一谷委員 ありがとうございます。

 それでは、最後の質問を足立議員にさせていただきたいと思います。

 本法案は罰則規定がついておりますが、これについて、足立議員の御意見、よろしくお願いいたします。

足立委員 御指摘ありがとうございます。

 まさに、罰則規定、本法案では、出演者の任意解除を妨げるための不実告知や威迫、困惑させる行為については三年以下の懲役や三百万円以下の罰金、説明書面や出演契約書の交付義務違反があった場合には六月以下の懲役や百万円以下の罰金として罰則を設けております。

 本法案は、AV出演契約に関して厳格な規制を定める特則を多数設けていますが、それに加えて、今御紹介したような罰則規定も設けることによって本法案の実効性を高める工夫をしているところでございます。

 ありがとうございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 やはり、罰則規定が設けられたということで、この法案がしっかりと、守らなければならないということにつながると思いますし、また、抑制にもつながっていくと思っております。

 この法案をしっかり通していただいて、これから、被害が出ない、また被害の調査も進めていく、そして、貧困の問題であったりDVの問題であったり、いろいろある問題にこれは関連づけられていきますので、そういったところも含めて、日本の社会の問題の縮図だという思いで我々も取り組んでいきたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 私からの質問を終わらせていただきます。どうも、皆さん、誠にありがとうございました。

上野委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 法案について質問をさせていただきます。

 当事者団体の方々や支援者の団体の皆様、そして個人の皆様が、この法案を作るに当たって最後の最後まで主張をされたのは、AVにおける性交等の禁止でございました。AVにおける性交で深刻な被害が起き、そして性売買が個人の尊厳、女性の尊厳を傷つけるからです。私ども日本共産党も繰り返し求めてまいりました。

 日本共産党は、AVにおける性交を禁止した上で、そして救済する法のたてつけにすることを求めましたけれども、そうは合意が得られなかったということだというふうに思うんですけれども、性交を含む契約を合法化するかのように読めるという声にどう答えていくのか、お答えをいただきたいと思います。

山下委員 本村委員に申し上げます。

 本村委員におかれましては、実務者会合で本当に真摯な意見、関連団体の皆様の御意見も踏まえた意見を賜りまして、そしてまた、素案を取りまとめたその経緯に関して心から感謝と敬意を申し上げます。

 その上でお答えいたしますと、まず、本法律というのが、深刻なAV出演被害というものは何であるのかという実態に即した場合に、AV契約というものが現に存在して、それに対して、やはり、出演契約の締結や履行に当たって判断能力を失わせるような、あるいは、直ちに撮影してそれが流布されてデジタルタトゥーになるような、そういった被害がある、そうした実態に照らして、この契約の締結及び履行等に当たっての制作公表者の義務、あるいは出演契約の効力の制限など、そういったものを厳格な規制を定めることを最優先に考えさせていただきました。

 そうしたことからすると、どのような契約というものが規制の対象となるのか、これはやはりしっかり定めないとならない。そしてまた、この法律については、先ほどもお話がありましたように、罰則を付しております。罰則を付すということになると、その罰則の対象については、構成要件の明確化、これがやはり憲法上も求められてくるということにおいて、性行為というものの中に現にやはり性交を含む契約が存在しているということを重視いたしまして、それを含ませていただいたということでございます。

本村委員 法案の第三条第三項、四項の部分ですけれども、AVにおいて性交させる契約が無効となる場合があると考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

山下委員 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げたように、本法案はAVで既に本来無効なものを合法化するものでもありませんし、既に禁じられたものを解禁するものではないと考えております。その意味で、AV合法化法案とか、あるいは解禁とか言われるものは、これはミスリードであろうと私は考えております。そのことを明確化するために、法案の三条、これを、先生御指摘のように明確化させていただきました。

 この三条については、いわゆる公序良俗違反その他によって無効とされるものについていささかも有効とするものではないということを明記しておりますし、また、刑法や売春防止法、これによって既に禁じられているもの、こうした強行法規違反のものについては、そういった契約は無効であるということを明示しているわけでございます。

 具体的な公序良俗あるいは強行法規違反というものについては、その具体的な事例の適用において判断されるということでございますけれども、本法はそれに加えて、そうした個別事案の判断というものが、様々、挙証責任の問題とか、そういったもので出演者において負担をもたらすものであるということに着目いたしまして、契約の締結時あるいはその契約履行上に様々な義務を制作公表者に課しまして、それに反すれば、例えば取消しであるとか法定義務違反による解除、これは五年ということになりますけれども、それに加えて、公表後一年の任意解除、施行後二年は経過措置ということで二年間ということでございますけれども、そうした手厚い、こういった契約からの、拘束力からの解放ということをしっかりと明記させていただいたということでございます。

本村委員 より具体的にお伺いしたいんですけれども、この第三条第三項、第四項は、どういう行為が公序良俗に反するというふうにするのか、あるいは、刑法違反、売防法違反とはそれぞれどういう行為なのか、それぞれ具体的にお示しをいただきたいと思います。

山下委員 まず、公序良俗違反ということで判例上ございますのは、例えば暴利行為、他人の窮迫、軽率、無経験などにつけ込んで著しく不相当な財産的給付を約束させる行為というもの、例えば過大な賠償額の予定であるとか、これはもう既に本法では担保しておりますけれども。あるいは、従来の判例でございましたのは、人身拘束的な、人身売買的な酌婦として契約させること、そういったものは公序良俗に反するということは判例上指摘されているところでございます。

 また、強行法規違反というものは、例えば売春をさせる契約、これは売春防止法に反しますので、当然強行法規違反ということでそもそも無効ということになりますし、例えば刑法に反する罪、例えば撮影の際に暴行を加えてけがをさせる、そういったものは、これは傷害罪でございますので、傷害罪は、同意があっても認められないという部分がございます。こうした強行法規に反するものについては、これは無効であろうというふうに考えております。

本村委員 ありがとうございます。

 この第三条第三項、第四項についてですけれども、公序良俗に反するケース、刑法違反、売春防止法違反などで無効となる行為の救済、被害者の救済はこの法案ではどのようになされるのか、お示しをいただきたいと思います。

山下委員 まず、もちろん、これらは無効ということで解消されるわけでございますけれども、例えば、三条の二項で、「性行為を強制してはならない。」というところで、こうした強制を、撮影に当たって強制した場合においては、これは法定義務違反ということで、五年間の解除ができるということで拘束力から解放されますし、その解除に伴って、例えば差止め請求権ということが使えるということになります。そうなると、そうした流布をするような公表行為、これを差し止められるということになります。

 また、無効なものに関しましては、これは契約に基づかない公表ということになりまして、これも差止め等ができるということになります。

 また、こうした強制をするような行為が例えば刑法上の刑罰、刑法に触れるような場合には、当然それは刑法犯として摘発、処罰されるということになります。

 そうしたことで三条四項ということを担保していくということになりますが、こうした無効ということについての立証の負担、これを軽減するために、先ほど申し上げたように、法定義務を課したり、あるいは契約締結上の義務を課して、それに反する場合は取消しあるいは解除、そしてさらには任意解除というのを設けているということでございます。

本村委員 対価を伴い性交させるAV出演ですけれども、これは売春防止法違反の潜脱となる可能性がございます。やはりAV性交の契約は禁止するべきだというふうに考えますけれども、二年以内の検討の内容には、AV性交契約禁止も検討されるべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

山下委員 本村委員御指摘のとおり、本法律案附則第四条二項においては、本法律案の規定についての検討事項として、「無効とする出演契約等の条項の範囲」というのを明記させていただいております。

 そうしたことから、これに関して、AV出演において有償で性交を実際に行うといった行為の条項の有効性についても検討事項に含まれるというふうに考えております。

本村委員 ありがとうございます。

 ちょっと通告をしていないので、一問聞きたいんですけれども、この二年以内の見直しなんですけれども、当事者団体、出演をされてきた当事者団体の方々やあるいは支援団体の方々など、関係者からのヒアリングもしっかりと行って、御意見を聞きながら二年以内の見直しということは行われるべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

山下委員 御指摘ありがとうございます。

 もとより、この検討条項につきましては、これは、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられるということで、その検討においては、やはり実際の被害者であるとか救済に当たっている方々、そういったものの実態に照らして行われる必要があろうかと思います。

 この法律ができますれば、これは行政府もしっかりと、執行責任を負うものでございますので、行政においても、こういったことをしっかり把握していただいた上で、また御指摘のような聞き取り、あるいは実態把握を行った上でしっかりと対応するということが求められていると私も思います。

本村委員 ありがとうございます。

 売春防止法の定義の第二条なんですけれども、「この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。」というふうにありますけれども、最高裁判決では、「不特定の男子のうちから任意に相手方を選定し性交の対価に主眼をおいて、相手方の特定性を重視しないということ」とありますけれども、AV契約、撮影でもこの判決は重視されるべきだというふうに思いますけれども、見解を伺います。

山下委員 本村委員御指摘の最高裁判例、これは、昭和三十二年九月二十七日の最高裁判決で、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令第二条、これは現在の売春防止法に該当しますが、これにおいて、いわゆるめかけのあっせんは、それが特定の男女間に関する限り同条の対象とならないことを判示したという事例判例であろうかと考えます。

 その上で、委員御指摘のとおり、「ここに「不特定」ということは、もとより性交するときにおいて不特定であるという意味ではなく、不特定の男子のうちから任意に相手方を選定し性交の対価に主眼をおいて、相手方の特定性を重視しないということを意味する」ということを指摘した上で、この勅令二条にいわゆる売淫とは、婦女が対価を得て不特定な男子と性交する行為をいうのであって、すなわち、対価さえ受ければ、不特定な男子の中から誰とでも性交する行為を指すものと解すべきであるということも指摘しているところでございます。

 もちろん、こういった売春防止法、あるいは強行法規の判断に当たっては、こういった最高裁判例の指摘も踏まえて適切に判断しなければならないというふうに考えております。

本村委員 ですから、AVに関しましても、実際には相手方が替わる、次々替わるというケースがあるわけで、やはりそれは不特定だと解し、そして売春防止法違反に関してもしっかりと摘発をするべきだというふうに考えております。うなずいていただいたので、そういうことだというふうに認識をしております。

 契約書面の記載なんですけれども、第四条三項六号に係る部分なんですけれども、FANZAですとかカリビアンコムですとかFC2などの配信プラットフォームやアマゾンやTSUTAYAオンラインなどを通じてネット販売する場合は、利用する全てのオンラインマーケットプレース運営事業者や小売店など流通先も全て含むべきだというふうに考えます。また、名称だけではなく、所在地も明確にするべきだというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

山下委員 御指摘のプラットフォーム等が公表、すなわち頒布、公衆送信、上映を行う者である場合には、第四条三項六号の「公表を行う者」に該当いたします。そして、この六号が、公表を行う者を特定するために必要な事項を契約書等に明記すべき事項と定めておりますのは、出演者が出演契約を解除した場合の差止め請求の実効性を確保するためでございます。

 そうした趣旨に鑑みれば、名称だけではなくて、こうした特定に資する情報、御指摘の所在地についても、公表を行う者を特定するために必要な事項であるというふうに考えております。

本村委員 ちょっと時間がないので、いろいろ飛ばしたいと思うんですけれども、第十条の二項四号の「出演者の利益を一方的に害するものと認められるもの」についてなんですけれども、無効にできるところですけれども、無修正ですとか本番行為、虐待行為、屈辱的行為などを含むもの、あるいは海外での拡散、永久的な権利放棄などを含む条項、また著しく販売期間が長期など、この点をしっかりと明記するべきだというふうに思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

山下委員 御指摘の十条四項というのは、出演者の権利を制限し又はその義務を加重する条項であって、民法一条二項、これはいわゆる信義則違反ということでございまして、出演者の利益を一方的に害するものと認められるということでございます。これに関しては、これは一般条項でございまして、具体的な事例の適用に基づいて判断されるものであろうというふうに考えております。

 他方で、委員御指摘のような、例えば無修正であれば、これは刑法のわいせつ物頒布に該当する可能性は当然あるわけでございまして、その場合には、当然刑法に基づいて摘発、処罰されることになるのであろう、又は、実際に虐待行為が行われた場合には、これは暴行罪や傷害罪が当然成立することにもなるんだろうということを考えております。

 本法においては、十条二項四号のみならず三条においても、公序良俗違反あるいは強行法規違反、これについては合法化するものではいささかもないということは明記してありますので、そうした解釈に基づいてそういった抑止をしていくということになるのであろうと思います。

本村委員 この法案を読んで、様々な皆さんに御意見をいただいているんですけれども、困窮してお金を得るためにAV契約をするしかないというふうに思ってしまったケースでは、取消権やあるいは解除権を使うとなると、やはり被写体になった方がその出演料やギャラを返さなければいけない、結局この取消しや解除が使えないのではないかというお声がございます。そうした方々の救済をどのように考えているのか、お示しをいただきたいと思います。

山下委員 ありがとうございます。

 まず、出演契約の取消しあるいは解除の要件として、お金を返さなければならないということではないということでございます。

 お金を返す、出演料を返すというのは原状回復義務の一環でありまして、解除があった後に原状回復義務が発生するという関係がありますので、解除の際にお金を用意していなければ駄目だということではない。ですから、まず、AV出演被害に遭われたと考える方においては、それをまず解除あるいは取消しをしていただく。その後、例えば返す、そういった金銭の原状回復ということになった場合に経済的に困窮してしまうということにおいては、これはやはり、本法十七条でも、その被害の背景にある貧困も含めた問題の解決に資するよう、相談の場、機構、これを設けるということになっておりますので、そうした相談機構にしっかりと御相談いただくということにおいて、解除した後のそうした原状回復についても相談に乗っていただけるものと期待しているところでございます。

 そして、解除した場合には、繰り返しでございますけれども、もちろん原状回復義務もありますけれども、解除した場合には、これは差止め請求権が使えるということでございますので、更なる被害の回復を解除後に使える、こういった効力もあります。

 繰り返しですけれども、お金がないと解除できない、あるいは取消しできないというのは、これは虚偽でございますので、そうした畏怖、困惑をさせたような場合には、制作公表者あるいは従事者がやった場合には、これは刑罰の対象にもなるということは指摘しておきたいと思っております。

本村委員 アウトリーチも含めて、性搾取されない取組を、国が財源や体制をしっかりと示した上で一層進めるべきだというふうに考えますけれども、その点、お答えをいただきたいと思います。

宮崎委員 この点、まず相談体制の整備をしっかりしなければいけないと考えております。十七条において、ただ単に相談に応じるだけではなくて、その被害の背景にある貧困、性犯罪、性暴力の問題の根本的な解決に資するように、きちんとした必要な体制の整備ということを規定しております。

 また、第十八条では、その他の支援措置というところで、性行為映像制作物への出演に係る被害の背景にある貧困、性犯罪、性暴力などの問題の根本的な解決に資するように、社会福祉に関する施策、性犯罪及び性暴力の被害者への支援に関する施策その他関連する施策との連携を図りつつ、必要な支援の措置を講ずるということにしているところでございます。

 先生今御指摘のような形で、アウトリーチも含めてしっかりやらなければいけないということになりますし、この法案は、被害者の救済を必ず実現するということで、党派を超えて取りまとめたものであります。政府にはその重みを十分に受け止めて必要な予算の確保、体制の整備に万全を期していただきたいと考えておりますし、私たち発議者の方も、立法府の一員でございますので、政府の方に対して十分に働きかけをして、フォローアップをしっかりとやってまいりたいと考えているところでございます。

本村委員 このAVに関する被害というのは、AVでの性交そのものに原因があるという切実なお声も次々に寄せられております。その被害の原因を取り除かなければ、やはり本当の意味での救済にならないということも重く受け止めて、二年以内の見直しに力を尽くしていきたいということを表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

上野委員長 次に、大石あきこ君。

大石委員 ありがとうございます。れいわ新選組の大石あきこと申します。

 AV出演被害防止・救済法案についてお伺いしたいと思います。

 本日、この委員会で、例えば公明党の方とか維新の方とかが、超党派で画期的な法律がとか言ってはるんですけれども、そんなこと、美談にするなという話じゃないんでしょうか。

 そもそもなんですけれども、この四月から、十八歳、十九歳に大きな問題が起きているということなんですね。そもそも、四月から十八歳、十九歳が成年取消権の保護から外れる、そういう事態を前にして、何とかAV出演契約の取消し規定を作れないかみたいな、そういう話になっているというわけなんですけれども、これは数年前から分かっていたことで、今まで与党は何をやっていたのか、そこを追及するべきではないんでしょうか。

 そして、この法案が成立しても、少なくとも、十八歳、十九歳、これが合法的に性交するAV、いわゆる本番を含むAVというものを、出演するのがあり得るということは変わらないわけですよね。それをなぜそんなふうに、美談だ、超党派だと言っているのかというお話ですし、今日も傍聴にたくさん来られていますけれども、私の事務所にも、昨日の遅くまで、反対されている団体や個人、賛成されている団体や個人、非常に入り交じるような、議論が分かれているような状況です。

 この法案全体としては、年齢十八歳、十九歳を問わず全体として救済する武器になる、そのような可能性というのは大いに評価できると思います。しかし、まだまだ救われていない、経済的事情を背景にした部分ですとか、そういった十八歳、十九歳が、三月末まではAV出演しなかったものを、合法的に本番も含めて出演できるという事実は変わらないわけですし、性交そのものを禁止すべきだということを先ほども共産党の委員の方もおっしゃっていましたけれども、そういった議論が終わらない中で、ここの中で、美談のように、超党派ですごいことをやったと言うのは非常におかしな話だと思います。

 質問をしていきたいんですけれども、そもそも、十八歳、十九歳という問題です。

 法務省の方にお伺いしたいんですが、十八歳、十九歳の救済について、民法改正の際に、お酒とかたばこ、ギャンブルというのは、十八歳、十九歳も成年になるよという際にも、二十歳以上にならないとお酒、たばこ、ギャンブルはあかんで、そういう民法改正を行ったんですけれども、そこで二十歳以上を堅持した際に、なぜAV契約も同様に二十歳以上を規定しなかったんでしょうか。

堂薗政府参考人 お答えいたします。

 民法の成年年齢の引下げに当たっては、民法以外の様々な法律が定める年齢要件を引き下げるか否かが問題となりまして、検討が行われたところでございます。

 飲酒、喫煙、公営競技につきましては、その年齢要件を二十歳以上と定める法律が存在し、この年齢要件を維持するかどうかについて、それぞれの法律の所管省庁において、それぞれの法律の趣旨に基づいて検討が行われた結果、二十歳以上という年齢要件が維持されたものでございます。

 これに対しまして、AVへの出演契約につきましては、そもそも、このような契約を締結することができる年齢要件を定めた法律がなかったため、民法の成年年齢の引下げ前においても、このような契約を締結することができる年齢に制限は設けられておらず、様々な契約類型とともに、民法の規律に従うものとされていたところでございます。このため、年齢要件の見直しが問題にならなかったものと認識しているところでございます。

大石委員 このように、AVに関しては年齢制限に特化した個別法がなかったから立法化に至らなかったというようなことをおっしゃっていると思うんですけれども、数年あったということで、これは非常に大きな問題で、みんなでばたばたして超党派で作ったということですから、なぜ自民党や公明党、与党の方々がこれを数年かけて放置していたのか、個別法がなかったからというのが問題になるのかというのは非常におかしな話で、まずそこを追及するべきではないのかなというふうに思うんですね。

 次に、山井議員にお伺いしたいと思います。

 そういった話なんですけれども、十八歳、十九歳の取消権を維持するという意味では、先ほどから聞きました飲酒や喫煙を禁じる立法経緯に倣って、取消権を従来どおり保障する救済立法を優先するべきではないですか。今回の法案作りは、その意味でも拙速ではないでしょうか。

山井委員 大石議員の御質問にお答えを申し上げます。

 私たちも、十八歳、十九歳の未成年者取消権がなくなるということで、その懸念の声を受けて動き出したということは事実であります。

 ただ、是非御理解いただきたいのは、超党派で議論した結果、二十歳以上も二年間無条件で撮影そしてAV販売を停止できる、回収できる、解除できるということで、結果的にはよくなったんですね。十八、十九だけ取消権存続と言っていたのが、二十歳以上も含めて全年齢になってよくなったということは、是非御理解をいただきたいと思います。

 そして、あるAV等のこういう被害者の方からも今回の法案について御意見をいただきました。短いですが、ちょっと読み上げさせていただきます。私は被害者であり、支援の場にいます、周りの子は、法律がないから、被害と言えず、命を絶った子もいます、そもそも、裸にならなきゃ生きていけない日本はおかしいと思います、私たちの最後のとりでは法律なんです。ということで、被害を受けて無念のうちに自死された方も残念ながらおられるわけです。

 そういう中で、超党派で、現時点でまとめられる形で一刻も早く、武器である取消しをできるための法律を作りたいというのが今回の趣旨でありますので、十八歳、十九歳の議論から始まりましたけれども、結果的には全年齢に広がって非常によかったということを御理解いただければと思います。

大石委員 全体としてはよくなったと。だけれども、個別には、救済できなかった部分、又は被害がもしかしたら拡大する部分、又は本質的に解決していない部分、そういったものが様々残されていると思うんですね。

 山井議員にもう少しお伺いしたいんですけれども、一つ問題になっているのが、性交禁止、そもそも、性交を含むAV、いわゆる本番と言われるものですけれども、そういった性交自体を禁止する規定というものも少なくとも今後考えていかなければならないと思うんですけれども、山井議員が今後の見直しとか改定というところで盛り込みたいなというところに性交禁止規定は入っていますか。シンプルにお答えください。

山井委員 まず、答弁の前提で申し上げますが、今日は超党派の実務者、発議者で答弁をいたしますので、私個人はという見解はここでは申し述べることはできないということを前置きをさせていただいております。

 それで、性交禁止の規定は入っているかということでありますけれども、御存じのように、私がこの場で答弁をすることが適当であるのは、検討規定として、今後どういうことがこの法案では検討すべきということになっているかということであると思いますが、附則第四条二項においては、性行為映像制作物の公表の期間の制限及び無効とする出演契約等の条項の範囲その他の出演契約等に関する特則の在り方について検討するということになっております。これは私の個人的な見解ではなく、ここの発議者全員の統一見解であります。

 これらについては、第一項において、この法律の施行状況等を勘案して、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講じられるものとされており、まさに、本法案を御審議いただいている現段階においては、本法案の規定に基づいて検討事項の内容を先取りするということはできませんが、本法施行後において、施行状況等を的確に把握し、必要な検討が行われることについて、政府とともに、私たち立法府もこれをフォローしてまいりたいと思います。

大石委員 ありがとうございます。

 性交禁止についても検討するよということが附則に入っているというふうにお答えになったんでしょうか。

 この法案に付随する決議というものが、ここで質疑の対象にできるか分からないんですけれども、昨夜に、共産党の、その決議案の修正の過程で、性交禁止も検討を行い必要な措置を講じることというふうに修正案を共産党が入れておられたと聞いているんですけれども、その、性交禁止も含め検討の、性交禁止も含めが消されているんですけれども、これは、性交禁止の検討を行わないということかなというふうに思ったんですけれども、それについて経緯は御説明いただけますか。与党の方がそのようにされたんでしょうか。

 どなたに聞いていいか分からないんですけれども、決議案に関して、共産党の、性交禁止も含めをあえて消して完成させたという経緯について説明を知りたいんですけれども。

宮崎委員 お答えいたします。

 今の御質問は、この後出てくるであろう決議案についての検討の状況について御発言になっているかと思いますけれども、私ども発議者では、その経緯については承知をしていないということでございます。

大石委員 じゃ、いつ、これ、なぜ消えたのかということを議論できるのかなということを不思議に思うんですね。

 ここの委員会でそういったルールを御存じの方は、何を言っているんだという話かもしれませんけれども、こういう、性交禁止も含めて検討と言われていたのがわざわざ消されているのは、これはどういう経緯なんですかというのは結構重大だと思うんですよね。それが聞けないというのは、この運営自体がおかしいんじゃないかと思うんですよ。

 そのことについてもっと言いたいんですけれども、本日、この質疑を行うに当たり、法案に賛成するならこの質疑ができるという機会が私に与えられたんですね、れいわ新選組に与えられたんですよ。だから、当初反対を検討していたんですけれども、反対なら質疑の機会がないですよと言われたんですね。

 これはどういうことなんでしょうか。だって、先ほどから、議員も含めて、この法案は決して完璧ではない、賛否両論もありますし、救済できる部分、できない部分、あるいは拡大させてしまうおそれというものも広く議論しなければいけない。むしろ、反対という内容について積極的に質疑がなされないと、この法案がよりよくならないはずなんですけれども、反対なら質疑の機会ないでって言われているのは、これはどういうことなんですか。

 どういうことなのかというのは、何か、前例だとか、委員会の、委員長提案法だからそうだよとか、世の中の人にはよく分からないルールで、あなた、反対するなら質疑の機会ありません、最後に反対で座っておくだけだ、反対の立場なら、この二十分がもらえるというので、今、実際、賛成の立場で、ここに、質疑に立っているわけなんですよね。

 かつ、この賛成の質疑の機会も、前例がないから画期的なことやぞみたいに言われているわけなんですよ。多くの方は分からないでしょうけれども、委員会の理事会というのがあって、陪席出席という、本来出席権のない者ですね、私たちれいわ新選組です。陪席出席を許されているだけの少数会派は、元々発言の機会がない、この質疑も本来は別に与えなくてもいいんだよ、与えないのだが、全会派一致の賛成ならば前例の枠を超えて発言機会を認めていいという話だったので、究極の選択で、政治判断して、賛成の立場で今ここに立って二十分の質疑をしているわけです。

 でも、これって、国民の方にとっては、何のこっちゃという話だと思うんですね。少数会派であっても一人の議員であり、委員ですから、そして、この法案、様々、賛成、反対入り交じる法案ですから、積極的に、前例がなかろうとも、反対でも質疑させるべきじゃないかと、なぜならなかったんですか。

 それって、賛成なら質疑させてやるだったら、れいわの態度を縛っているじゃないですか、実際にこれは賛成の立場で立っていますから。だけれども、質疑で納得いかなかったら、それでも反対しますけれどもね。それは質疑の意味がないじゃないですか、あらかじめ賛成の立場で、絶対賛成しろよということだったら。それがずっと当たり前になっちゃっているという、そういうおかしな国会だと思うんですよ。

 前例がないからということで、今回やむなく賛成の立場でここに立っていますし、法案全体としては、年齢を問わず全体として救済の武器になる、その可能性は大きく評価できると考えました。

 しかしながら、まだ質疑や様々意見を聞いていない段階で、賛成でも反対でも同じように質疑の機会を与えられるというのは当然のことだと考えますので、このような、質疑に、賛成でないと縛りが、なかった、縛りというか、それは権利なんだみたいなやり方というのは是非見直すべきだと思いますし、皆さんにも共に考えていただきたいと思います。(発言する者あり)

上野委員長 御静粛にお願いします。

大石委員 静粛にお願いします。

 質問を続けたいと思うんですけれども、本法案の採決後に、附帯決議の採決が行われると思います。その取りまとめの過程で、第三項に、AV出演被害者に対する適切な支援を行うため、被害の実態調査を実施することという文言があると承知しております。

 この附帯決議のことは聞けないと先ほどおっしゃられたので、つまり、この附帯決議があるということは、この法案は実態調査をしていないですよねということを言いたいんですけれども、この法案は実態把握をしないまま作られたということが、附帯決議の結果として、決議案の結果として露呈していると思うんですけれども、実際、実態把握をされたんでしょうか。山井議員にお伺いしたいと思います。

山井委員 附帯決議のことは今ここでは議論できないという前提ですけれども、先日も私、厚生労働委員会で、実態調査を早急にやってくれと言いました。

 それは、二年後の見直しに向けて、また、この法案ができたことによって被害者が、まあ減るとは期待していますけれども、万が一違った形で増えるとか、そういう二年後の見直しに向けて、私たちがこの法案の足らざる点、そしてよかった点を早急に検証するという意味で、この実態調査をすべきということを先日も私は厚労委員会でも質問いたしましたし、さらに、令和二年の三月実施でAV強要についての調査が行われておりまして、その中で、内閣府によって、非常に深刻な被害が出ているという実態は既に把握をされております。

 加えますと、最初は三年後の見直しとなっておりましたけれども、二年後の見直しになって、最終的には二年以内の見直しと私たちさせていただきました。

 その理由は、今、大石議員も指摘されましたように、様々な問題点が出てきたときに、実態を把握して早急に早急に被害を食い止められるようにということで、二年以内の見直しとさせていただきましたので、実態を今把握していない、分かっていないということじゃなくて、今後、実態を把握して早急に見直しにつなげるという、前向きに御理解いただければと思います。

大石委員 そうですね、時間がない中というのはあると思います。しかしながら、キャンセルできる期間というところで、一か月だとか四か月というのが画期的なんだということを、実態把握をしていなかったり、又は当事者でない方々が我が物顔で画期的なんだと言う光景というのは、私は非常に違和感を感じました。

 そういった当事者の意見というものが反映されていない、反映し切っていない法案だという限界を真摯に受け止めるべきですし、ましてや、この附帯決議案、ここでの議論の対象外としつこく言われるんですけれども、こういうところから明らかになるわけじゃないですか。共産党が性交禁止も含め検討を行えという願いを込めて入れたところを削除したりしているわけですから。

 だから、この超党派で行われていることというのが本当に当事者の救済になるのかということには非常に疑問がありますが、これは、年齢を問わず全体として救済しなければいけないという、世の中の、国会の外の声というものが一定反映された法律なのであろうというふうに私は受け止めますし、山井議員に結構言いましたけれども、すごく救済したいという思いというものは、様々個別にも伺っていて、うそではないというふうには感じました。

 しかしながら、もっともっと謙虚になるべきだというところからは、今回、質疑を限定的な形で与えられたという事実ですとか、この附帯決議に見られるような、性交そのものを合法化して商品化しているという、この余りにもおかしくなっている社会そのものにメスを入れるというところには非常に遠いと思います。

 そして、これを質疑に入れるということに、またいろいろありそうですけれども、わざわざ性交禁止規定を検討しようと入れたものを削除するという附帯決議には私は反対します。

 私の質問は以上です。ありがとうございました。

上野委員長 これにて発言は終わりました。

 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上野委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

上野委員長 この際、工藤彰三君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会の共同提案による性行為映像制作物への出演に係る被害の防止及び出演者の救済に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。堤かなめ君。

堤委員 ただいま議題となりました性行為映像制作物への出演に係る被害の防止及び出演者の救済に関する件につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    性行為映像制作物への出演に係る被害の防止及び出演者の救済に関する件(案)

  政府は、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

 一 性行為映像制作物(以下「AV」という。)への出演により甚大な被害が発生していることを踏まえ、性暴力被害者、いわゆる虐待サバイバー・発達特性のある人も含め、全てのAV出演被害者の尊厳と人格を尊重し、被害の予防や救済の実現に万全を期すこと。また、本法が公序良俗に反する契約や違法な行為を容認又は合法化するものではないことを周知徹底すること。

 二 本法の適切な運用を図るため、本法の趣旨及び内容について関係機関等に周知徹底するとともに、成立に至る経緯について周知すること。また、若年層に対するAV出演被害に関する啓発を行うなど、本法の被害防止・救済に関する広報・普及啓発をより具体的かつ積極的に行うこと。

 三 AV出演被害者に対する適切な支援を行うため、被害の実態調査を実施すること。また、内閣府におけるAV出演被害対策のための体制を整えること。関係機関・団体と連携し、実効性のある相談体制を構築するとともに、被害者の支援に必要な財政上の措置を講ずること。また、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、法テラス、インターネットを通じた被害防止・救済に取り組む関係機関、地方公共団体の男女共同参画窓口等の関係構築を促進し、支援環境の整備に努めること。警察における相談支援体制を強化し、女性警察官の配置の強化など、AV出演被害者が相談しやすい環境の確保、傷ついた心理に寄り添う対応の強化を図ること。

 四 被害者が制作公表者の氏名・住所を知らないまま海外のウェブサイトやサーバーを経由した被害が拡散していることに鑑み、被害者が本法の定める解除、取消、差止請求を実施できるよう必要な支援を行うこと。また、AV出演被害者が拡散防止措置を迅速に、困難なく申請できるよう、時機にかなった必要な支援を行うこと。AV出演被害者救済のためのサイト運営事業者の役割などを明らかにし、対策を強化すること。また、サイト運営事業者自身による契約約款や利用規約等に基づく主体的な削除等の取組を支援するとともに、迅速・的確な拡散防止の対応ができるよう環境整備を行うこと。

 五 本法施行後において、差止請求、拡散防止及び被害の相談件数等について実態を把握するとともに、その結果に基づいて検討を行い必要な措置を講ずること。

 六 AV出演被害については、本法の罰則規定とともに、刑法の強要罪、強制性交等罪等、職業安定法、労働者派遣法、売春防止法、著作権法、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ対策法)、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)による厳正な取締りを強化すること。また、本法の趣旨及び罰則規定の意義、本法制定の背景であるAV出演被害の特徴と重大性について、必要な研修を職員に行い、法曹関係者に周知すること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

上野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

上野委員長 起立多数。よって、本件は委員会の決議とすることに決しました。

 この際、本決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。野田国務大臣。

野田国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、努力してまいりたいと存じます。

上野委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係政府当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

上野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十三分散会


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