衆議院

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第6号 令和4年11月9日(水曜日)

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令和四年十一月九日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    工藤 彰三君

      小寺 裕雄君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      中野 英幸君    中山 展宏君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      本田 太郎君    牧島かれん君

      松本  尚君    渡辺 孝一君

      櫻井  周君    中谷 一馬君

      太  栄志君    本庄 知史君

      馬淵 澄夫君    山岸 一生君

      岩谷 良平君    浦野 靖人君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      福重 隆浩君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      櫛渕 万里君

    …………………………………

   国務大臣         谷  公一君

   内閣府副大臣       星野 剛士君

   文部科学副大臣      簗  和生君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     自見はなこ君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   デジタル大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    尾崎 正直君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大矢 俊雄君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小川 康則君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         猪原 誠司君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            柳瀬  護君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            尾崎  有君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 日下部英紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 今福 孝男君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 坂本  基君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山崎  翼君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 石田  清君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 内野洋次郎君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     小林万里子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           橋本 真吾君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   参考人

   (日本銀行決済機構局長) 神山 一成君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月九日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     渡辺 孝一君

  太  栄志君     櫻井  周君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺 孝一君     池田 佳隆君

  櫻井  周君     太  栄志君

    ―――――――――――――

十一月八日

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。谷国務大臣。

    ―――――――――――――

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

谷国務大臣 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 令和三年八月、マネーロンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策に関する政府間の枠組みであるFATF、金融活動作業部会から、対策の一層の強化に向け、我が国が優先的に取り組むべき事項が示されました。こうした状況を踏まえ、国際的協調の下に防止及び抑止が図られるべき不正な資金等の移動等をより一層効果的に防止し、及び抑止するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法を改正して、国家公安委員会による公告の対象となった大量破壊兵器関連計画等関係者について、特定の財産を処分しその対価の支払いを受けること等の特定の行為を都道府県公安委員会の許可に係らしめるなど財産の凍結等の措置の対象とするほか、金銭以外のその財産的価値の移転が容易な財産に係る債務の履行を受けること等を、財産の凍結等の措置の対象となる者が許可を受けるべき行為に追加することとしております。

 第二に、外国為替及び外国貿易法を改正して、電子決済手段に関する取引を資本取引規制の対象とするとともに、電子決済手段等取引業者等に顧客の本人確認義務及び資産凍結措置に係る確認義務を課すなど、電子決済手段等取引業者等及び電子決済手段取引に係る規定の整備をするほか、外国為替取引等取扱業者が外国為替取引等を行うに当たり遵守すべき基準に関する規定の整備を行うこととしております。

 第三に、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律を改正して、犯罪収益等隠匿罪、薬物犯罪収益等隠匿罪等の法定刑を引き上げるとともに、犯罪収益等として没収することができる財産を拡大することとしております。

 第四に、公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律を改正して、国際的に保護される者を殺害する行為その他の一定の犯罪行為を特定犯罪行為と定義した上で、各処罰規定について、特定犯罪行為のための資金等の提供等を処罰対象に加えるとともに、法定刑を引き上げることとしております。

 第五に、犯罪による収益の移転防止に関する法律を改正して、司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が顧客等との間で、特定取引を行うに際して行う取引時の確認事項に、取引を行う目的等の事項を追加するほか、行政書士等、公認会計士等及び税理士等が行う疑わしい取引の届出に関する規定を整備することとしております。また、外国為替取引及び電子決済手段の移転に係る通知事項に、支払い又は移転の相手方の本人特定事項等を加えるほか、暗号資産の移転についても通知義務の対象とすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行決済機構局長神山一成君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官大矢俊雄君外十八名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)委員 おはようございます。自由民主党、神田憲次でございます。

 FATF法案の質疑ということでございまして、今日は、谷大臣始め関係各位、本当にありがとうございます。

 早速ですが、質疑の方に入らせていただきます。

 このFATF法案ですが、一九八九年七月のアルシュ・サミットで、主要先進国間で設立された組織であります。これまで我が国に対しても数次にわたって審査の指摘がなされておるわけですが、昨年の八月三十日に、第四回目ということで、審査の結果が公表されました。

 そこで、大臣にまずお伺いしたいと存じます。

 FATF勧告の対応法案の重要性、それから早期成立の必要性をどのようにお考えでございましょうか。

谷国務大臣 神田委員にお答えいたします。

 御指摘のように、本法案は、昨年八月三十日に公表されたFATF、金融活動作業部会第四次対日審査報告書を踏まえ、国連安保理決議に基づく資産凍結措置、暗号資産への対応、マネロン対策等のそれぞれについて強化を図るものであります。

 日本との金融取引に対する信頼性を確保し、国際金融センターとしての地位を向上させるとともに、マネロン等対策で日本が抜け穴となることによって不正な資金の流れに関与することを防ぐ観点から、本法案は重要かつ早急な対応が必要でございます。

 早期成立の必要性でございますが、本法案につきましては、二〇二四年四月のFATFへの最終フォローアップ報告書提出時点で施行していることが必要でございます。本法案は、事業者の体制整備等の事項も要する取組を含み、こうした取組は、成立後、施行までに一年半程度の周知、準備等の期間を必要とすることを踏まえれば、今臨時国会での法案成立が必要であると思っているところでございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 今お答えいただいた第四次対日審査において、我が国はどこまで対応する必要があるとお考えでしょうか。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は世界に開かれた国際金融センターの実現を掲げており、そのためには、マネロン等対策を強化し、金融システムを取り巻くマネロン等のリスクに適切に対応することが必要と考えております。

 例えば、通常フォローアップ国でございます英国や香港などは、マネロン等のリスクに応じ、高度なマネロン等対策を講じていると評価されているところであります。これらの国、地域に伍して国際金融センターとしての地位向上を目指すためには、通常フォローアップ国か否かという観点のみならず、我が国がリードして国際社会における安全保障や健全な経済活動を確保していくという気概の下、我が国のマネロン等対策の強化に向けた取組を進め、結果として、可能な限り全てのFATFの指摘事項の改善につながっていく、このような形とすることが重要と考えてございます。

神田(憲)委員 今おっしゃったフォローアップ国、こういう点から見ると三分類に類型されるわけですが、なかなかFATFが求めるような形で履行できないというような難しさもございます。さらに、国内外の別を問わずシームレスな資金移転とか、それから多様化する決済方法がございますので、十分に対応ができなくなっているように思います。

 そういった意味で、我が国日本がなぜ重点フォローアップ国なのか、また、先ほど申し上げました三分類の通常フォローアップ国の中には、逆に、日本よりもマネロン対策においては脆弱な国もあるのではないかと考えますが、この分類における御意見をお願いしたく存じます。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、なぜ重点フォローアップ国となったかという点でございますが、こちらはFATFの相互審査の基準上、法制度の有効性や法令等の整備状況の満たしたものの数字で形式的に決まっておるものでございます。

 他方、御指摘の、通常フォローアップ国とされました加盟国は、スペイン、イタリア、ポルトガル、イスラエル、英国、ギリシャ、香港、ロシア、フランス、オランダの十か国でございます。これら通常フォローアップ国の中には、マネロン、テロ資金供与発生のリスクが相対的に高いとされる国も含まれておりますが、これらの国は、そうした脅威と隣り合わせであるからこそ、従来より積極的に対策を講じてきた面があるのではないかと受け止めております。

 これまでのところ、我が国は、テロのリスクが相対的に低いとはいえ、大量破壊兵器の拡散につきましては、これを金融面から徹底的に抑制するという緊要性は極めて高い国であるというふうに認識してございまして、一層の緊張感を持って、我が国のマネロン等対策の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 今答弁にありました大量破壊兵器の関連計画等関係者ということについて御質問をしたいと思います。

 現在、我が国において活動する大量破壊兵器関連計画等関係者というのがまず存在するのか否か。存在しないのであれば法改正の必要はないと考えるんですが、お考えをお聞かせください。

大矢政府参考人 お答えを申し上げます。

 現在、安保理決議により設置された制裁委員会の作成する大量破壊兵器関連計画等関係者の名簿の中に、我が国居住者は確認されておりません。先生御指摘のとおりであります。

 しかし、他方で、将来、我が国居住者が大量破壊兵器関連計画等関係者名簿に記載をされた場合等におきましては、当該者が行う取引について、速やかに財産の凍結等の措置の対象とする必要がございます。

 こうした観点から、今次法改正の対象となる措置がFATF第四次対日審査報告書において明示的に指摘をされたところでございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 今、財産の話が出たわけですが、その中に没収可能な財産ということが書かれておるわけですが、この財産について一般に拡大する理由、これについて教えていただきたく存じます。

保坂政府参考人 お答えいたします。

 犯罪収益として没収できる財産につきまして、今、不動産、動産、金銭債権という形で限定されておりますが、この限定を取りまして、財産一般について没収可能としております。

 これは、近年の情報通信技術等の進展は目覚ましく、予期しない形の財産が犯罪収益の取得、保有、移転に用いられる事態になることが容易に想定されますことから、近時の情勢に対応しつつ、犯罪収益の剥奪を徹底する観点からは、財産の種類を限定して列挙することは望ましくないと考えられるところでございます。

 この点につきましては、この立案に先立ってやりました法務省の法制審議会の部会においても、有識者の方々から同様の御意見がございまして、それに対する異論はなかったということでございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 そういった意味で、近年、暗号資産、新しい決済方式とは申しますものの、この悪用についても、メディア等でいろいろ報道されるところを見ておりますと、暗号資産の悪用については世界中あちこちで見聞するわけですが、まず、この暗号資産及びステーブルコインが制裁の抜け穴として悪用されないように、規制の実効性というところを強化すべきというふうに考えるわけですが、今回の法改正でどのように対応するか、お聞かせください。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、制裁対象国の不法な資金調達を阻止し、制裁の実効性を確保していくことは、我が国にとって喫緊の課題でございます。

 暗号資産を利用した資産凍結措置の回避のリスクに対しましては、既に、本年四月に外為法を改正していただき、暗号資産交換業者を介した取引を規制の対象とし、制裁の実効性を強化してきておるところでございますが、御審議いただいている今般のFATF勧告対応法案におきましては、同様の規制をステーブルコインに関しても導入するというものでございます。

 以上に加えまして、今回の法案におきましては、制裁の実効性をより一層確保するため、暗号資産交換業者やステーブルコインの取引業者である電子決済手段等取引業者を含む外国為替取引等取扱業者に対しまして、資産凍結措置に係る体制整備義務を課すということとしておりまして、当局としても、これら手段に基づきまして、引き続き、制裁の実効性確保に万全を期してまいる所存でございます。

神田(憲)委員 続いて、その暗号資産ですが、暗号資産交換業者に課せられる通知義務の概要について教えていただきたく存じます。

尾崎政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の通知義務、トラベルルールとは、暗号資産の取引経路を追跡することを可能にするため、暗号資産交換業者に対し、顧客の依頼に応じて業者間で暗号資産の移転をする際に、その送付人、受取人に関する情報を送付先の暗号資産交換業者に通知する義務を課すものでございます。

神田(憲)委員 デジタル技術の進捗が著しいわけで、そうした意味でやはり我が国においても、その技術の向上、ないしは、それに関わる什器、備品の更なる更新等が必要かと考えております。そうした意味で、そういう分野に十分な予算がないと、やはり犯罪収益の没収という観点においては、追跡し切れないとか、それから、ここまでは追跡したんだけれども結果として不明になっちゃうとか、こういうケースもあると思うので、当局におかれましては、その辺の対策を十分に講じていただきたいと思います。

 それで、暗号資産の移転に際してですが、移転元と移転先情報の通知、つまりトラベルルールについては、金融庁におかれましてはどのように検査監督していくという方法を講じるおつもりでしょうか。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 今回の法改正によりまして暗号資産交換業者に課せられるトラベルルールは、暗号資産の移転の透明性を高める上で重要なルールであると考えております。

 御質問の金融庁の検査監督につきましては、国際的に協調をして実効性のあるマネロン対策等を実施する観点から、今後の暗号資産交換業者に対する検査監督において、トラベルルールに関しては、一つは、暗号資産の送付人である自らの顧客から必要な情報を取得するためのシステムなどの体制が十分か、また、暗号資産の受取人となる顧客を管理する他の暗号資産交換業者のマネロンリスク管理体制の十分性を的確に評価しているかといった点をしっかりと検証してまいりたいと考えております。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 先ほども申しましたように、なかなか、そういった犯罪行為、実行行為を行う側も、それから取り締まる側も、そういった意味ではお互いがだまし合うような関係にありますから、どうしてもやはり国際的な規範の中で取締りを行っていかなければならない現状にある。だからこそ、我が国は、その有効性を高めるために、人材の配置それから予算の十分な措置、こういったもの、是非とも、先ほど申し上げたフォローアップ国の序列がなるべく高位になるように取り組んでいただけたらと思います。

 そこで、日本でのマネロン罪ですが、この受理件数や没収及び追徴金額というのは、それぞれどの程度の推移があるのでしょうか。

保坂政府参考人 まず受理件数でございますが、令和三年までの三年間におきまして、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法のマネーロンダリング罪で検察当局が受理した人員数は合計で千三百七十五名でございます。

 また、没収、追徴の金額についてもお尋ねですが、これは、マネーロンダリング罪には限りませんが、同じく令和三年までの三年間において、通常第一審の判決で組織犯罪処罰法による犯罪収益等の没収、追徴、あるいは麻薬特例法による薬物犯罪収益の没収、追徴が言い渡されたのは、合計人員が一千二百七十三人、合計金額は約六十七億円でございます。

神田(憲)委員 もう一点、ちょっと教えていただきたいんですが、この間、コロナ禍がありました。昨日のレクでは、その資料につき、コロナ禍の状況下において若干減る傾向が見えたわけですが、これはやはり経済の動きが弱くなったということ、それに伴う犯罪の件数が微減であったこと、こういうふうに捉えてよろしいでしょうか。

保坂政府参考人 犯罪の件数といいますのは、時の情勢によりまして、いろいろな原因で増えたり減ったりするのと、あと、それをどれだけ認知して検挙できるかということにもよりますので、一概にその原因が何であったかということを確定的に申し上げることは困難でございます。申し訳ありません。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 マネロン罪については、その捜査であるとか訴追であるとかを強化して、運用によって対応すべきでありまして、その効果がない場合に初めて法定刑を引き上げるべきとの指摘があるわけですが、この度のマネロン罪の法定刑の必要性について伺いたいと存じます。

保坂政府参考人 お尋ねのマネーロンダリングを防止し抑止するためには、様々な取組を行う必要があると考えられます。FATFの審査報告書におきましても、我が国のマネーロンダリングの捜査、訴追につきまして、マネーロンダリング罪の法定刑の引上げとともに、捜査、訴追の運用面の強化の両方が勧告されまして、運用面の強化だけで対応すれば足りるとはされておらないところでございます。

 この度のマネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきましては、グローバル化、デジタル化に伴う資金移転手段等の多様化によりまして、マネーロンダリングの誘因や発覚の困難性が高まっていること、我が国の組織犯罪の実態として、いわゆる特殊詐欺事案を典型として多くの事案でマネーロンダリングが行われていることといった近年の動向を踏まえますと、マネーロンダリングに対して、国際社会と協調しながら、より強力に抑止を図るべき重要性がますます高まっており、このFATFからの勧告を契機として、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、強力に抑止、防止することが必要であると考えたところでございます。

 そこで、マネーロンダリング罪の法定刑を引き上げる必要があるということで、今回の法案にさせていただいたところでございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 質問通告していないんですが、ちょっと一つだけ、分かる範囲で教えていただきたいんですが、そういう法定刑の引上げも伴う中で、今般、公認会計士が行う一定の取引という条件の下で、その確認事項に取引目的や法人の実質的支配者を追加し、報告義務を求めています。疑わしい取引の届出義務が課せられる主体として公認会計士さんを追加した理由について、お答えを願えたらと存じます。

大矢政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる士業と言われる先生方、公認会計士先生、税理士先生、それから行政書士の先生、これらの業種の方々に対しては、今まで、本人確認の義務、それに加えて、疑わしい取引の報告義務はございませんでした。これにつきまして、ほかの特定事業者と言われる銀行等と扱いが違うという明示的な指摘がFATFからございまして、そのFATFの第四次審査報告書の御指摘を受けまして、そうした業種の皆さんについて、今回、法改正をさせていただいて、疑わしき取引の報告義務等の義務を課させていただいたものでございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 更にもう一つ。

 この疑わしい取引というのは、士業の公の責任として、やはりその仕事を行う者が、士業の側が、つまり、自ら疑わしいということを気づいて報告という形になるかと思われるんですが、通常の業務の中でそれを明確に判断するということが、やはり仕事の中身、忙殺されるような仕事ですから、なかなか難しい、こんなふうに考えるわけです。

 今回の追加、それから、やはり士業ですから、その罰則、過失によって気づかなかった場合、一定程度の士業としての業務ができなくなるなんということもあるかと思います。そういった点については、これから具体的にどういうふうにその疑わしい取引の届出義務というところを課していくお考えか、最後にお聞かせ願えたらと存じます。

大矢政府参考人 ありがとうございます。

 全く仰せのとおりでございまして、それぞれの士業の皆様方、それぞれ守秘義務がかかっております。それとのバランスを考えていくのはこれから重要だと思います。

 まず、守秘義務に反してまで報告をせよというのは今回の法律で求めておりませんで、守秘義務の範囲内で、守秘義務に反しない程度で、範囲内で報告をしていただくということにしております。

 さらに、実は、行政書士は総務省、公認会計士は金融庁、税理士は国税庁と、それぞれ所管官庁が異なりますが、その所管官庁ごとに、実際にどのような運用を行うべきか、これからガイドライン等々を作成の上、それぞれの業種の方々に御助言申し上げていく、こういうふうに承知をしております。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 先ほど質問の中ほどで、我が国がこの分類の中で比較的下位にあるというふうに私は感じたわけですが、これから五次審査ということが行われるわけで、第四次の審査結果というのはあくまでも通過点でしょうから、今後、また更なる審査が行われ、これを早期に実行に移すことが重要と考えておりますので、関係各省の取組をお願いを申し上げて、私からの質疑を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

大西委員長 次に、石原宏高君。

石原(宏)委員 自民党の石原宏高です。

 早速質疑に入りたいと思います。

 まず初めに、谷大臣にお伺いいたします。

 金融活動作業部会、FATFといっても、なかなか、ほとんどの国民は御存じないだろうと思います。内容が高度に専門的なだけに、一般の国民の理解を得ることが難しいのは当然ではないかというふうに感じております。しかし、麻薬やテロといった国際犯罪に対処するために資金面からの対策を進めると言えば、多くの方が納得されると思います。分かりやすい説明を心がけて国民の協力を得ていくことが、国際犯罪の抑止には不可欠ではないかというふうに思います。

 本法案の目的は、大きく言って、まず第一に資産凍結措置の強化、二番目に暗号資産等への対応強化、三番目にマネロン対策等の強化のための法改正といったことだと思うんですが、改めまして、本法案の意義と内容について、谷大臣にお伺いいたします。

谷国務大臣 お答えいたします。

 石原委員おっしゃられるとおり、この法案の内容が高度に専門的なだけに、国民に分かりやすい、理解醸成に努めることが大切だと思っております。

 御審議いただいているFATF勧告対応法案は、昨年八月三十日に公表されたFATF第四次対日審査報告書を踏まえ、一つは安保理決議に基づく資産凍結措置、二つは暗号資産への対応、三つはマネロン対策等のそれぞれについて、強化を図ろうとするものです。

 具体的には、資産凍結措置の強化として、安保理決議で指定された大量破壊兵器拡散に関わる者が行う国内取引に係る資産凍結を措置し、暗号資産対応の強化として、取引の追跡可能性を高める観点から、暗号資産交換業者に対し暗号資産の移転に係る顧客情報の通知義務を課すこととし、また、マネロン対策等の強化として、マネロン罪の法定刑を引き上げ、犯罪収益として没収可能な財産の範囲を拡大することとしております。

 これらの様々な措置を通じて、日本との金融取引に対する信頼性を確保し、国際金融センターとしての地位を向上させるとともに、マネロン等対策で日本が抜け穴になることによって不正な資金の流れに関与することを防ぐことになると考えております。極めて重要な法案であると認識しているところであります。

石原(宏)委員 次に、FATFの役割と業務範囲というか、ちょっとお伺いしたいと思います。

 FATFの役割は、薬物犯罪に関するマネーロンダリング対策から始まり、二〇〇一年の九・一一以降、テロ資金供与対策、さらに、二〇一二年には、北朝鮮、イラン等における大量破壊兵器の拡散金融対策へと拡大しております。

 では、例えば環境犯罪等はFATFの管理の業務範囲に含まれるのか、また、その他のどのような業務があるのか、お教えください。

内野政府参考人 FATF勧告が対象といたします不正な資金移動につきまして、お答え申し上げます。

 FATFが一九八九年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設置されて以降、経済、金融のグローバル化や犯罪等の動向などにより、段階的にその対象犯罪を拡大してきております。

 具体的には、御指摘のとおり、当初は薬物犯罪に関するマネロンが主眼でございましたが、一九九六年からは、その他の様々な重大犯罪、すなわち殺人や窃盗などから得られた収益等も対象に、また、御指摘にありましたように、テロ資金供与や大量破壊兵器拡散の資金供与も順次含まれてきております。

 御指摘の環境犯罪によるマネロンにつきましても、二〇〇三年からFATFの業務範囲に含まれておりまして、保護種の野生動植物の違法な収穫、取引、天然資源の違法な採掘、取引、廃棄物の違法取引などがその対象となったものでございます。

 また、その他どのようなものが含まれるかという御指摘でございますが、先ほど申し上げました殺人等のほかにも、例えば人身売買とか移民の密輸、あるいは性的搾取であるとか、それから海賊行為、こういったようなものも含まれておるところでございます。

石原(宏)委員 犯罪収益を没収できることに、範囲が広がるわけですけれども、その点についてちょっとお伺いしたいと思います。

 先週、ある報道がありました。川上穂野香さんという若い女性が暗号資産投資トラブルで自殺をされたという痛ましい事件を受けて、彼女のお母さんが投資グループのメンバーに対して千二百万円の損害賠償を求めたという報道がありました。穂野香さんの投資額は百五十万円だったということでありますけれども、民事事件で判決が下った場合、暗号資産の強制執行は可能か、まず法務省の民事局にお伺いしたいと思います。

 そして、あわせて、刑事事件の場合、昨日の本会議でも、四年以上の法定刑に対して犯罪収益の没収が可能ということでありましたけれども、具体的に、例えば詐欺罪、窃盗罪などが考え得ると思いますけれども、他の犯罪の名称みたいなものをちょっと教えていただければと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 金銭債権の債務名義を有する債権者は、債務者の財産について強制執行の申立てをすることができ、債務者の暗号資産についても強制執行の申立てをすることができます。

 具体的な強制執行の方法は暗号資産の内容によっても変わり得ますが、例えば、債務者が暗号資産交換業者に対し暗号資産移転請求権を有しており、指定する口座等へ暗号資産を移転するよう求めることができるケースでは、債権者は、当該暗号資産移転請求権を差押えの対象として強制執行の申立てが可能でございます。

 以上です。

保坂政府参考人 刑事における没収の対象となります犯罪収益の前提犯罪といいますのは、平成十一年の制定当時は個別に犯罪を列挙する形でございましたが、平成二十九年の改正によりまして、先ほど御質問のあった死刑、無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪という、その全てが前提犯罪ということになったわけでございます。

 この後者の長期四年以上の懲役、禁錮の刑が定められている罪の例といたしまして、御指摘の詐欺罪や窃盗罪のほかに、投資という関連でいいますと、高金利で金銭の貸付けを行ったという出資法違反ですとか、あるいは無登録で金融商品取引を営んだという金融商品取引法違反などがございます。

 これらの前提犯罪により得た財産などの犯罪収益は没収の対象になりますし、その犯罪収益を隠匿するなどした場合にはマネーロンダリング罪の処罰対象となるわけでございます。

石原(宏)委員 今回の法改正で没収資産として暗号資産も認められることになるわけでありますけれども、今まで、実は、東京高裁において、被告らが交換所に預けていた暗号資産について、現行法では没収できないという判決があったというふうに聞いております。

 この裁判所の判断、なぜ没収できなかったということか、教えていただけますでしょうか。

保坂政府参考人 御指摘の事案といいますのは、犯罪収益等を収受したという事件で、被告人が暗号資産交換業者に対して有する暗号資産に係る債権が没収可能な金銭債権かどうかが問題になった事案でございます。

 第一審におきましては没収を認めましたが、高裁におきましては、次のように判示して、これを否定したわけでございます。すなわち、暗号資産は、法定通貨とは異なり、日本国内での強制通用力がなく、その移転を目的とする債権は、この組織的犯罪処罰法十三条一項による没収可能な金銭債権には当たらないということでございます。

石原(宏)委員 今後、暗号資産も没収の対象に、法律の変更によってできるようになるわけでありますけれども、じゃ、その暗号資産に係る債権を没収するとの判決が下った場合、その債権をどのように処分をするのか。すぐに現金化するのか、若しくは暗号資産のままで持っているのか等々、没収した暗号資産の処分の方法について教えてください。

保坂政府参考人 暗号資産に係る債権の没収の裁判が確定した後の処分の具体的な手続といいますのは、実務的な観点から更に検討し、協議する必要があると考えておりますが、差し当たり、次のように考えております。

 例えば、被告人が暗号資産の運用管理のために暗号資産交換業者を利用している場合には、被告人がその業者に対して有する債権を没収することが想定されます。この場合、没収の裁判が確定することによりまして、その債権は国に帰属するということになりますので、検察官は組織的犯罪処罰法に基づいてこれを処分しなければならないとなります。

 その処分方法といたしましては、例えば、国が債権者として当該交換業者に対して当該暗号資産の売却を求めるなどした上で、その換価代金を受領するといった方法によりまして処分することが想定されるところでございます。

石原(宏)委員 今回の改正により、暗号資産交換会社に対して、暗号資産の移転時に送付人、受取人の情報を相手方業者に通知する義務、いわゆるトラベルルールを課すことになります。

 だとすると、今後、日本にある暗号資産交換会社は、トラベルルールを承認していない暗号資産交換業者との取引ができなくなるのかどうか、それをちょっとお伺いしたいのと、また、その通知義務の中身ですけれども、本人の特定事項ではないかと思いますが、自然人の場合は氏名、住所、生年月日、また、法人の場合は名称、本店又は主たる事務所の所在地を確認することでよいかどうか。

 また、私も昔、もう三十年前ぐらいに外為の送金をやっていたんですけれども、大体、企業だと法人の名前と住所ということで載せるんですが、個人だと名前、例えば、日本に訪問している、旅行に来ているような人が送金をする場合は名前だけで、生年月日等はパスポートで控えているだけで、送金を送るときの情報としては送らないんですけれども。

 何を聞きたいかというと、生年月日とかというのは、送付人若しくは受取人の方の暗号資産会社から問合せがあったときだけこれを報告するということかどうか、その点、お聞かせをいただければと思います。

尾崎政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、トラベルルールでございますけれども、現時点では、世界各国、地域で整備されている状況にはございません。こうした中で、仮にトラベルルールを定めていない国、地域に存在する暗号資産交換業者との取引を禁止するということになりますと、暗号資産交換業者の業務の執行が困難になり、事業者に多大な負担を課すということになります。このため、トラベルルールを定めていない国、地域に存在する暗号資産交換業者との取引の禁止を求めることまでは予定しておりません。

 この場合、トラベルルールに基づく通知を受けずに暗号資産の移転を受けるときには、移転元の暗号資産交換業者から必要な本人特定事項が送られてこないということとなります。そのような状況は望ましくないということから、疑わしい取引の該当性について適切な判断を行わせるため、我が国の暗号資産交換業者に対し、暗号資産の移転元が誰なのかということについて、自らの顧客から情報を収集する等の方法で確認することを求めるということを検討しております。

 なお、各国、地域はFATF勧告にのっとりましてトラベルルールの整備を進めているものと承知しておりまして、トラベルルールに基づく暗号資産交換業者間の取引は着実に増加していくというふうに考えております。

 それから、FATF勧告におきましては、トラベルルールに基づく通知事項といたしまして、送付人情報については、自然人の場合は氏名、住所、口座番号等、法人の場合は名称、本店又は主たる事務所の所在地、口座番号等、それから受取人情報につきましては、自然人の場合は氏名、口座番号、法人の場合は名称、口座番号を定めております。

 暗号資産の移転に係るトラベルルールについても、犯罪収益移転防止法施行規則において、これに倣った形で定めるということを検討しております。

石原(宏)委員 全国にトラベルルールが広がっていくためには時間が必要なので、受取人の方に暗号資産交換業者が送金人が誰かというふうに確認するというのは、受け取る方は誰が送ったか知らないということはないでしょうから、それで確認ができると思いますので、しっかりと徹底をお願いできればというふうに思います。

 次に、特定犯罪行為の具体例についてお伺いをしたいと思います。

 国際的に保護される者を殺害する行為、すなわち特定犯罪行為等のための資金等の提供を処罰対象に加えるとともに、法定刑を引き上げるというふうに法案の内容はなっておりますけれども、特定犯罪行為は法定化されるのか、また、資料にも載っておりますが、その具体的な例は何か、お伺いいたします。

保坂政府参考人 お尋ねの特定犯罪行為につきましては、テロ資金提供処罰法におきまして具体的に規定することといたしております。これを追加して規定いたしますのは、FATFの勧告に対応するために、現行法の公衆等脅迫目的で行われる犯罪行為のための資金提供等と同等の当罰性がある犯罪行為、これをテロ資金供与防止条約の文言に即した形で具体的に列挙して規定するということでございます。

 具体的な例といたしましては、政府の長、外務大臣又は外交官などの国際的に保護される者を殺害する行為、あるいは航行中の民間航空機内の人に対する殺傷行為であって、その民間航空機の安全を損なうおそれがあるもの、あるいは公共施設等において爆発物を爆発させる方法等の方法によって人を殺傷する行為などがございます。

 改正後は、こういった行為の実行を企図する者に対してそのための資金を提供する行為等が処罰の対象となるということでございます。

石原(宏)委員 ちょっとお恥ずかしいんですけれども、私も、昔、銀行マンで、十六年ぐらい金融の世界にいたんですけれども、もうこの政治の世界に入って二十年近くがたつものですから、時代の変化に取り残されているところもありまして。簡単な質問でありますけれども、我が国においてステーブルコインというのはどのように法定化されているか、また暗号資産との違いは何か、ちょっと素人的な質問ですが、質問させていただきます。

尾崎政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるステーブルコインにつきましては、明確な定義は存在しないものの、一般的には、特定の資産と関連して価値の安定を目的とするデジタル資産で分散台帳技術を用いるものをいうというふうにされております。

 このように、いわゆるステーブルコインは幅広いものを含み得るわけですけれども、本年六月に成立した改正資金決済法においては、いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格、例えば一コイン一円で発行されて、発行価格と同額で償還を約するもの等を電子決済手段等として規制対象としております。

 一方、暗号資産は、電子決済手段と同様、分散台帳技術を用いたデジタル資産でございますけれども、発行価格と同額での償還が約されていない等の点で電子決済手段とは異なっております。

石原(宏)委員 先ほども神田委員の御質問にもあったんですが、ちょっと違った角度から。特定非金融業者及び職業専門家がマネロン、テロの資金対策に関わった具体的な事例について御説明をいただけますでしょうか。また、疑わしい取引の報告義務の対象から弁護士と司法書士が外れた理由についてお聞かせ願えますでしょうか。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 まず一点目、士業者がマネロンに関わった事例はあるかというお尋ねでございます。

 近年、マネロン事案において士業者の地位が悪用されている実態があり、例えば詐欺や賭博によって得られた収益を正当な事業収益であるかのように装うため、事情を知らない税理士、税理士法人を利用して経理処理をさせた事案等が発生しております。

 二点目のお尋ね、疑わしい取引の届出義務を課す対象から弁護士等と司法書士等を外した理由についてでございます。

 弁護士等や司法書士等については、疑わしい取引の届出義務を課すことは依頼者との信頼関係の構築を困難にする弊害が大きいため、疑わしい取引の届出義務の規定を法律で設けることは相当ではないと考えております。この点は、対立する当事者間の民事紛争解決業務を直接の対象として取り扱わない行政書士等、公認会計士等又は税理士等とは異なっていると考えております。

石原(宏)委員 ちょっと済みません、資料を見ていて、通告はしていないんですけれども、今の関連で、弁護士の場合は、疑わしい取引に該当するような取引があったときに弁護士会に報告するというようなことが調査室の資料に書いてあったんですが、そういう形になるのか。また、司法書士の場合も、司法書士会の方に報告するみたいな形はあるのかどうか。ちょっとお伺いしたいと思います。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 弁護士等につきましては、取引時確認につきまして、現在、会則等で対応するという法律の仕組みになっております。また、マネーロンダリングの防止について、弁護士会独自に様々な取組をしていただいているというふうに承知しております。

石原(宏)委員 次に、前の質問の方に戻ってしまいますけれども、暗号資産以外の没収対象とは何かということでちょっとお伺いしたいと思います。

 今回の改正で、不動産、動産、金銭債権ではなくても、犯罪収益等が没収可能となります。暗号資産以外に具体的に何があるのかお伺いさせていただきたいと思いますとともに、先ほどの神田先生の質疑の中で、法律上は要するに特定をしなくて、全ての犯罪収益について没収ができるというような法律改正になったという解釈を先ほどの答弁で思ったんですけれども、その解釈でいいのかどうか。二点併せてお聞かせください。

保坂政府参考人 組織的犯罪処罰法におきまして、犯罪収益あるいは犯罪収益に由来する財産などの財産について、現行法では、御指摘のとおり、不動産若しくは動産又は金銭債権という限定がついておるわけですが、それを削りまして、財産であれば没収することができるというふうに改正するものでございます。

 この改正によりまして、新たに没収可能になることが現時点で想定される財産の形態といたしましては、暗号資産でいいますと、例えば振替株式ですとか、あるいは電子マネーといったところが考えられるところでございます。

石原(宏)委員 昨日のレクで、電子マネーも回収できるといって、それはすごいなと思ったんですけれども、ただ、Suicaとか、カードを持っていっちゃうんだったらいいんですけれども、携帯に入っていたらどうするのかななんて、ちょっと思ったりなんかしまして。ただ、余り金額が多くないので、そういう電子マネーみたいなものもこの没収の対象にできるということで、実際にやるとなると結構大変そうだなというような印象を受けました。

 だんだん時間も迫っておりますけれども、次に、外国に所在する暗号資産交換業者に対し、取引時確認等に相当する措置を的確に行うための体制整備をしなければいけないというふうにこの法案はなっておりますけれども、その体制整備というのは、どのように金融庁として確認をするのかどうか、質問をさせていただきたいと思います。

尾崎政府参考人 お答えいたします。

 犯罪収益移転防止法におきましては、今回の改正において、暗号資産交換業者に対して、外国に所在する暗号資産交換業者と暗号資産の移転に関する提携契約を締結する際に、当該相手方業者のマネーロンダリング対策に係る体制整備等の確認をすることを義務づけることとしております。

 具体的な確認の方法としては、提携契約を締結するためのデューデリジェンスにおきまして、暗号資産交換業者が相手方業者から体制整備等の状況について報告を求めるというようなことを想定しているところでございます。

石原(宏)委員 ありがとうございました。

 本当にどんどんどんどん技術が発展して、そのたびに新しい金融商品みたいなものができてきて、それを犯罪に悪用されないように、イタチごっこ的に制度を見直していかなければいけないということで、また、実際にこれを運用していくのはかなり私は現場の方々は大変なんじゃないかなというふうに、すごく実感をしています。

 ただ、そうはいっても、ボーダーレスな社会の中で国際的な犯罪が行われているわけでありますから、それをしっかり取り締まること、そのことによって安定的な世の中というのがつくられていくんじゃないかと思いますので、非常に重要な法案ではないかというふうに思います。

 最後に、谷大臣にお伺いをしたいと思います。

 繰り返しになってしまうところはありますけれども、国際社会は、近年、更にボーダーレス化が強まっております。そして、犯罪も、それに付随し、国際化、高度化をしています。金融、経済の分野において、いち早く高度化、電子化を図られてきただけに、金融犯罪は最新のテクノロジーによって更に巧妙に、悪質になっています。今回の改正により、我々はそのような犯罪に対処するための多くの手段を手にすることとなります。ただ、技術は日進月歩であり、今日有効な対策も、明日は陳腐化する危険をはらんでいるわけであります。

 谷大臣に、最後に、今後の意気込みについてお伺いをいたします。

谷国務大臣 お答えいたします。

 今回御審議をお願いしている法改正は、暗号資産に関するトラベルルールの整備等の最新の技術に対応した制度を設けようとするものであり、このような制度を積極的に活用して、関係省庁が一体となって、悪質な金融犯罪に対処してまいりたいと思います。

 御指摘のとおり、技術の進歩は日進月歩しております。これらのそういう事犯がより悪質、巧妙化することは十分考えられるところであり、最新の技術動向や、それが及ぼす影響等を踏まえ、政府全体として適切に対応してまいりたいと思います。

石原(宏)委員 谷大臣、是非よろしくお願いいたします。実際に実施していくということが非常に重要だと思いますので、是非、各関係省庁とも連携をしながら、しっかりとこの法案に沿って実施をしていただければと思います。

 まだ二分ぐらい時間が余っておりますけれども、青柳理事も許してくださると思いますので、これで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

大西委員長 次に、本田太郎君。

本田委員 自民党の本田太郎でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 早速質問に入らせていただきたいと存じます。

 まず、今回のFATF法、これは非常に重要な法案だと考えております。先ほど来議論に出ておりましたけれども、お金の行き来がボーダーレスになっている、国境を越えてお金が行き来する中で、マネーロンダリング等への対策が極めて重要であります。

 そうした中で、マネーロンダリング等と申しておりますけれども、じゃ、マネーロンダリングって何なんだということでありますけれども、一般的に言われておりますのは、国際的なよくないお金の流れ、簡単に言うとこんなような言い方なのかもしれませんけれども、じゃ、何が悪いんだ、どんなことが起こるんだといいますと、一般的には、犯罪とか汚職が増加するだとか、犯罪収益を隠蔽するために、その結果、犯罪収益が質の低い投資先へ流入して経済成長がゆがめられたりとか、あと、税収が減ったりだとか、こういったことが言われているわけであります。

 同時に、このマネーロンダリング等のほかに、テロ資金の供与という問題もございます。このテロ資金供与というのは、テロ行為の実行資金、また、テロ組織の活動資金等を提供したり収集したり、一般に、資金収集を助けたりする行為全般をいうというふうに言われているようでありますけれども、実際には、テロ組織は、テロの実行行為だけじゃなくて、プロパガンダを広めたり、メンバーを募集したり、多様な活動をしておりまして、その資金が必要になってくるわけでありまして、そのために、その資金源を断つという意味も含めまして、テロ資金供与を取り締まらなければならないということだと理解をしております。

 国連安全保障理事会におきましても、タリバーンですとか、ISIL、またアルカイーダなど、関連する五百以上の個人や団体が資産凍結措置の対象になっているわけでございます。こうした方々というか者たちは、外為法や国際テロリスト財産凍結法によって資産凍結措置の対象になっているわけでございます。

 そして、このテロ資金は必ずしも違法な手段で得られているとは限らないということが、また一つ大きな問題です。テロ資金は、薬物の密売、詐欺、身の代金誘拐など、こういった犯罪手段によって得られることが多いわけですけれども、同時に、いわゆる普通に働いた仕送りの資金などがテロ資金として使われるということもあるわけであります。しかも、その資金が、送金をする先等が注意を要する国や地域であっても、直接そこに送金せずに、いわゆる中継国を経て送金されるという問題があって、つかみにくいという問題があるわけでございます。

 さらに、拡散金融というのも問題点とされております。これは私も余り詳しくなかったんですけれども、拡散金融というのは、大量破壊兵器の開発、保有、輸出等に関与する者に資金又は金融サービスを提供する行為をいうというふうに言われております。国連の安保理決議によりまして、北朝鮮やイランの核開発等に関係する二百以上の個人や団体がその対象として指定されており、これらの者は全て、日本においては外為法によって資産凍結措置の対象とされているということでございます。

 こういったマネーロンダリング等につきまして、我が国は様々な法制度で対策をつくっているわけでありますけれども、柱としましては四点あると言われておりまして、様々な事業者の方に顧客管理をしっかりしてもらうということ、そして二点目としては、マネーロンダリングを刑罰の対象とするということ、三点目は、犯罪で得られた収益を剥奪し得るものにするということ、そして四点目は、テロや大量破壊兵器の拡散に寄与する者に対する資金供与を防止するということで、犯罪収益移転防止法、また、外為法、組織的犯罪処罰法、麻薬特例法、テロ資金提供処罰法など、様々な法律によって規制をしているわけでございます。

 そうしたマネーロンダリングでございますが、じゃ、実際にどれほどお金がクロスボーダー、インターナショナルに動いているのかということがなかなか分からないわけでありますけれども、まず冒頭、世界におけるいわゆるマネーロンダリングと言われているものの移動している金額等について、どれぐらいの金額なのか、お尋ねをいたします。

    〔委員長退席、宮路委員長代理着席〕

今福政府参考人 お答え申し上げます。

 世界におけるマネーロンダリングの総額を把握するということは、マネロンという事柄の性質上困難ではございますが、例えば、国連薬物犯罪事務所、UNODCは、そういった前提の上で、年間で世界全体のGDPの約二%から五%、金額にいたしますとおよそ八千億米ドルから二兆米ドル、一ドル百四十六円で計算いたしますと、日本円にいたしますとおよそ百十七兆円から二百九十二兆円との推定を示しております。

本田委員 ありがとうございます。

 日本円にすると百十七から二百九十二兆円という膨大なお金が、いわゆるマネーロンダリングとして世界を駆け巡っている、駆け巡るという言葉がいいかどうか分かりませんが、動いているという実態でございます。

 では、逆に、逆にといいますか、我が国、日本が関わって、日本国内でマネーロンダリングの金額がどの程度あるのかということも知っておかなければならないと思いますが、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。

保坂政府参考人 マネーロンダリングの金額という形で統計上把握しておりませんが、没収、追徴の金額という形でお答えさせていただきますと、令和三年までの三年間におきまして、組織的犯罪処罰法による犯罪収益の没収、追徴、あるいは麻薬特例法による薬物犯罪収益の没収、追徴がされた合計金額というのは、三年間で約六十七億円でございます。これはマネーロンダリングに限りませんが、いわゆる犯罪収益等として没収、追徴された金額の合計でございます。

本田委員 ありがとうございます。

 日本では、今の額でいいますと、世界の百十七兆円から二百九十二兆というところからの比較でいいますと、比較的少ないように見えます。

 では、金額はそういうことでございますけれども、同時に、その検挙者数、これについてもお尋ねをしたいと思います。よろしくお願いします。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 令和元年から令和三年までの三年間の組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法のいわゆるマネーロンダリング事犯での検挙件数は、令和元年は五百三十七件、令和二年は六百件、令和三年は六百三十二件で、三年間で合計千七百六十九件となっております。

本田委員 ありがとうございます。

 千七百六十九件ということであります、三年でですね。大体一年間で六百件前後ということだと思いますが、これを多いと見るか少ないと見るか、人によって評価は変わってくるかと思いますけれども、決して少なくない検挙件数だと思います。

 そんな中で、今回提案されておりますいわゆるFATF法ですけれども、FATFというのは、マネロン、マネーロンダリングですとかテロ資金供与とか拡散金融対策のための国際基準の策定とか履行を担う多国間の枠組みだということでありますけれども、そのFATFによる第四次相互審査が、二〇一二年に改定された法令等の整備状況に関する四十の勧告というものに加えまして、各国の法制度が有効に機能しているかどうかということに関する評価項目に基づいて順次行われているわけでございます。

 この勧告、評価によって、我が国は、法制度の有効性という点につきましては中程度だという評価が八個、法令の整備状況については不履行だというのが一つ、そして、一部履行しているというのが十個という評価だったわけでありまして、いわゆる重点フォローアップ国、地域というものに置かれたわけでございます。それに呼応する形で、我が国は様々な法整備をより高度なものにしていこうということで、今回法案の提出がされたと理解をしております。

 我が国が重点フォローアップ国というものに指定されたということでありますが、このことによって、我が国の、経済的また政治的な影響を受けるかと思いますが、どういった影響が考えられるか、お答えをいただきたいと思います。

内野政府参考人 重点フォローアップ国と評価された場合、審査後三年間、毎年、FATFに対しまして法令等の整備状況に係る改善状況の報告が求められておりまして、国際場裏におきましては、そういう義務づけがされたということが、一つの、政治的と申しますか、国際社会的な情勢、それが影響ということでございます。

 また、経済的な影響につきましては、重点フォローアップ国になるということ自体は、特段、我が国の金融取引に制約を課すものではございませんものですから、直ちに影響が生じるものではないというふうに認識してございます。

本田委員 ありがとうございます。

 経済的、政治的な、直ちに大きな影響があるというわけではないということではありますけれども、しかし、勧告を受けているわけでありますから、できるだけ、可及的速やかに対応していかなければならないわけであります。

 万が一ですけれども、我が国の対応が遅れてしまったような場合、そのような場合、例えばペナルティーだとか、そういったものがあるのかないのか、その辺のルールといいますか仕組みを教えていただきたいと思います。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFは、審査で勧告された事項の改善状況を先ほどのフォローアップでウォッチしていくわけでございますが、この改善状況が芳しくないという場合には、まず、FATFの議長から勧告の対応を求めるレターの送付がその当該国に行われる、また、状況によっては、ハイレベルの使節団、オンサイトで、その国に出かけていって、それが派遣されて、それをもって当該国に速やかな対応を求める、このようなことになっております。

 それでもなお改善が見られないという場合には、マネロン等のリスクの高い国として名指しをされるということであったり、当該国に対する対抗措置を各国に要請するといった対応に最終的にはつながっていくというようなことでございまして、仮にこうした措置が講じられてしまった場合には、海外の金融機関が、日本の金融機関との取引のリスク管理を強化したり、取引を回避したりするなどのおそれがあるものと考えられております。

本田委員 承知いたしました。そういうことであります。

 要するに、最終的に、悪くすると、国際金融の場で日本の金融機関が自由に取引等がしにくくなるという大きな影響が出るわけでありますから、このFATFの勧告に対しましては速やかに対策を取っていかなければならない。そういう文脈におきましては、この法案は非常に重要になってくるというふうに理解をしております。

 そして、じゃ、具体的にどういったことが求められているのかということを見ていきますと、金融機関だとか暗号資産交換業者、そういった方々の義務をしっかりつくっていく、つくっていくというか義務化していくということですとか、事業者ごとのリスク評価の導入とか実施、また、リスクベースでの継続的な顧客管理、さらには、取引のモニタリング、資産凍結措置の実施とか、また、さらには、実質的支配者情報の収集と保持をしなきゃいけないというようなことでございます。

 特に、重大な前提犯罪へのマネロン罪の適用というものが具体的に求められておりますけれども、前提犯罪の捜査の早い段階でマネロンについて検討し、より広範な犯罪や高額な犯罪収益の入手につながる高リスクの犯罪に対して捜査を優先するということを含めて、より重大な前提犯罪を対象としたマネロン罪の適用を増やすということが求められているわけでございます。

 また、資産の調査や追跡、保全措置、没収などにつきましては、優先リスク分野につきまして、資産の追跡捜査、保全措置をやらなきゃならないということでありますが、同時に、犯罪に用いられた道具、また、輸入された現金又は持参人払い式の譲渡可能な支払い手段の没収といったものを強化するといったことも求められております。

 また、テロ資金提供を処罰する法律等の見直しに関しましては、日本のテロ資金供与の技術的欠陥を是正するために、拘束力があって強制力のある方法を採用するか、若しくは、テロ資金提供処罰法を改正するというようなことも求められている。

 更に申し上げますと、金融制裁を遅滞なく実施するとともに、制裁を履行するための義務を明確化しなさいということが求められているわけでございます。

 そんな中で、このFATF勧告への対応として本法案が提出されたわけでありますけれども、政府は、それ以外に、本法案の提出以外に、別途、必要な措置、対応というものが必要だと考えているかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

内野政府参考人 御指摘のとおり、現在御審議いただいているFATF勧告対応法案、FATFから法改正すべきとの勧告があった事項を盛り込んでおるのでございますが、他方で、政府といたしましては、昨年八月の第四次対日審査報告書の公表と同日付で、関係省庁局長級で構成いたします政策会議を設置いたしまして、そこにおいて行動計画を策定し公表いたしました。この行動計画と申しますのは、まさに政府サイドでどのようなことをやっていかなきゃいけないかということを、スケジュール、日程を明示するものでございまして、これを関係省庁と緊密に連携して精力的に取り組んでおるものでございます。

 その中身をかいつまんで申し上げますと、例えば、国のリスク評価を刷新するであるとか、政策会議を設置するであるとか、あるいは、非金融業者における対策を強化する、金融機関等におけるリスクベースでの検査監督の強化を行う、実質的支配者情報の一元的管理の仕組みの構築等々、そういうものが入っておるわけでございます。

 こうした取組によりまして、本年九月に公表された第一回の対日審査のフォローアップ報告書におきましては、法令等遵守状況に関して改善すべき十一の勧告のうち、国内当局間の連携という勧告が一つ評価が引き上げられたというところでございまして、引き続き、関係省庁一丸となって、実効性のある対策を講じていきたいと考えております。

本田委員 ありがとうございます。

 対策が効果を出しているということが分かりました。引き続き、しっかりと対応をしていっていただきたいというふうに思います。

 今ほどは、政府がなすべき対応についてお尋ねをいたしましたけれども、本法案が成立した場合、政府ではなくて、民間の皆さん、民間の事業者の皆さんにはどういった影響が及んでくるのか、また、民間の事業者の方はどういった対応が必要になってくるのかということを御教示いただきたいと思います。たくさんあるでしょうから、例示でも結構ですので、民間の方にどういった影響があり、どういった対応が必要かということをお尋ねいたします。

    〔宮路委員長代理退席、委員長着席〕

谷国務大臣 お答えいたします。

 FATF勧告対応法案には、例えば、暗号資産交換業者が暗号資産の移転時に送付人、受取人の情報を通知する義務や、法律、会計等専門家が特定の行為を受任、代理する場合の確認義務等が盛り込まれており、これらの対象取引に関わる事業者等に対して、取引に必要な情報の確認等をお願いすることとなります。

 こうした新たな業務に適切に対応していただくため、関係省庁と連携して、その業務の周知の徹底を図ってまいりたいと考えております。

本田委員 どうもありがとうございました。

 事業者の方にも、取引時の確認など、一定の義務というか、やるべきことが求められるということだと理解をいたしました。

 その中でも、今回の法案の中で、犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部改正が入っておるわけでございますけれども、その中で、特定事業者が行う取引時の確認事項というものが追加されたわけであります。

 現行法におきましては、第四条一項では、司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等のいわゆる士業者は、本人特定事項についてのみ確認を行うとされておりまして、取引の目的だとか事業の内容だとか、実質的支配者についての確認は義務づけられていないということであります。

 これに対して、FATFから指摘がございまして、一部の職業専門家等に疑わしい取引の届出義務が課されていないことを含めて、職業専門家等が講じる特定の予防的措置には不備がある、また、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士は顧客の本人確認しか義務づけられておらず、それ以外の顧客管理義務の対象になっていない、さらに、全ての職業専門家等に顧客管理措置義務が課されていることを確保して、法人に関連する隠れた疑わしい活動が検知されることを確実なものとすべきといった旨の指摘がなされました。

 これに対して、本法律案は、司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等のいわゆる士業者に係る取引時の確認事項を追加をして、本人の特定事項、取引を行う目的、事業の内容、実質的支配者まで全てについて確認を行わなければならない、そういうふうにしております。

 ただ、その中で、弁護士が除外されて、除かれているわけでありますけれども、取引時確認において弁護士に関しては法律では除かれているけれども、日弁連会則に委ねることにしているということになっておりますが、なぜ弁護士に関してはそのような対応をしたのか、その趣旨についてお尋ねをしたいと存じます。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 弁護士法では、弁護士自治の観点から、弁護士に対する懲戒権を含む全ての監督権が弁護士会又は日本弁護士連合会に付与されていることからいたしますと、法律上の義務として規定すべきではないというふうに考えているところでございます。

 弁護士等のいわゆる士業者による疑わしい取引の届出につきましては、犯罪収益移転防止法の制定時に、日本弁護士連合会等から依頼者との関係に与える影響について懸念が示されたことなどを踏まえ、引き続き検討を行うこととし、法制定時には届出義務を課さないこととしたところでございます。

 今回の法改正においては、令和三年八月に公表されたFATF第四次対日相互審査報告書においても、士業者が疑わしい取引の届出義務の対象となっていないことは、日本のマネロン、テロ資金対策の有効性を著しく損なう旨、勧告されているなどの状況にあることを踏まえ、法制定時の附帯決議や、士業者に対する疑わしい取引の届出義務に係る懸念にも配慮した上で、疑わしい取引の届出等について、士業者に対しても義務を課す規定を整備するものであります。

 一方で、弁護士等及び司法書士等につきましては、行政書士等、公認会計士等又は税理士等とは異なり、対立する当事者間の民事紛争解決業務を取り扱うことから、依頼者との信頼関係の構築が重要であるため、疑わしい取引の届出義務の規定を法律で設けることは弊害が大きく、相当でないと考えております。

 以上です。

本田委員 ありがとうございます。

 弁護士が除外されていることの趣旨を今答弁いただきました。

 私も弁護士でもありますので実感として分かるわけでありますけれども、依頼者から実際に事件の依頼を受けますと、その結果、実際に悪いことをしたかどうかということは、実態は現場を見ていないので弁護士にも分からないわけでありまして、全てはその依頼者の口から聞くわけであります。その中で、悪いことをしたということを弁護士に話したら、その弁護士が法律上の義務でもってそれを報告しなきゃならないという立場にある場合、依頼者は本当のことを言えないわけであります。

 その意味におきまして、依頼者から聞いた内容につきましては、弁護士の守秘義務として、それを必ずしも当局に報告をせず、場合によっては、裁判でもそこを、うそはつかないけれども、悪いことをしたということは理解しつつも、依頼者の権利保護を最大限実現するために、信頼関係の下、実際には弁護活動を行っていくということでありますので、非常にこの趣旨を尊重して法律案が作られているということは評価していいんじゃないかなというふうに感じます。

 ただ、実際、だからといって、疑わしい取引が許容されるということとは違いまして、職業専門家として、相談の中で出てきた行為について、届出の、報告の義務がないということと、そういった取引が許容されるということは別の話だということは注意しなければならないわけであります。

 同じ法律の、犯罪収益移転防止法の中の疑わしい取引においては、司法書士についても、同じく民事紛争に入っていく者として、届出義務の名宛て人からは除外されているということも、併せて今答弁をいただきました。基本的な趣旨は同じものだと理解をしております。

 犯罪収益移転防止法以外も、法案の中身、個別の論点、様々あると思いますけれども、それぞれにつきまして、この論点をクリアをして、委員会でしっかり議論して、いわゆるFATF法が成立をして、我が国が、国際金融、また我が国の金融機関が信用できるものだということをしっかりと国際社会にも示していくことが大事であるというふうに思います。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大西委員長 次に、平沼正二郎君。

平沼委員 おはようございます。自由民主党の平沼正二郎でございます。

 本日は、質問の機会をいただいたこと、委員各位に感謝をいたします。

 早速質問に入らさせていただきます。

 今回、いわゆるFATF法案に関してとなりますけれども、私、今回の質問が決まったことを地元の皆様にお伝えしたところ、それは一体何の法案なんなら、よう分からぬと何名かに伺いまして、先ほど石原委員もおっしゃっておりましたけれども、なかなかなじみのない、名称だけ見るとという形でございますけれども、今回の質問は、なるべくなじみのない方にも改めて理解が深まるような質問を心がけたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 近年、マネーロンダリング、いわゆる資金洗浄でございますが、これが急速に拡大をしておりまして、過去、IMFは、世界のGDPの二から五%に相当する金額が毎年マネーロンダリングされていると発表もしております。その割合がまだ現在も乖離していないということであれば、先ほどもちょっとありましたけれども、約百九十兆円以上もの資金洗浄が毎年必ず行われているということになります。こちらは、金融活動作業部会、これがいわゆるFATFと呼ばれるものでございますけれども、こちらにて対策を強化し、日本も参加国として取り組んでいるわけでございます。

 我が国においても、世界の潮流を見ると、マネーロンダリングは急速に拡大していると予想され、対策強化をしなければ、国際金融市場における日本の更なる地位低下も懸念されることでございます。ちなみにですけれども、日本の金融市場の国際ランキングは、現在第十六位でございまして、かつて世界三大金融市場の一つとして東京が数えられていた時代からはかなり大幅に下落をしているという状況でございますし、そして、今回の法律の改正でございますけれども、本法律の改正趣旨は主にFATFからの勧告に対応するものと理解しておりますが、改めて、今回、第四次対日審査報告書により指摘された主な内容に関して教えていただけますでしょうか。

内野政府参考人 政府は、国民の安全と安心を確保し、健全な経済を維持発展させるため、マネロン、テロ資金供与、拡散金融対策のため様々な施策をこれまでも講じてきております。

 こうした中、昨年八月に公表されました御指摘の対日審査報告書におきましては、日本の対策につきまして、国際協力やリスク評価等の点で成果が上がっているという肯定的な評価をまず受けてございます。

 他方で、一層の強化に向けて取り組むべき事項として、例えば、マネロン罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準とするべきであるということであるとか、テロ資金提供処罰法の技術的欠陥を是正するべきであるとか、あるいは、金融制裁を遅滞なく実施するために必要な更なる改善を行うことなどが勧告されたものでございます。

 御審議いただいているこの法案はそういったものに対応するものと認識してございますが、取組を政府としても着実に進めることによりまして、我が国の安全保障、健全な経済活動の実現、国際金融センターとしての地位向上に貢献してまいりたいと考えております。

平沼委員 ありがとうございます。

 一部肯定的な評価もされているということでございまして、ちょっと、ややもすると、FATFの勧告を受けて対応が非常に遅れている、日本は非常によくないようなイメージもありますけれども、よくやっている部分もあるという評価があるということは一つここで認識させていただいたのと、とはいえ、やはりしっかりと対応しないといけないということでございまして、この度、資産凍結の強化、マネロンの対策強化、暗号資産対応強化というものはしなければならない主なものと理解をいたしております。

 今回、審査の結果、重点フォローアップ国となり、今後三年間において指摘内容の改善状況に関しての報告義務というものが生じたわけでございますけれども、なお、このFATFの指摘事項に関して遵守がされなかった場合において起こり得る状況、リスク等を教えていただけますでしょうか。

内野政府参考人 FATFにおきましては、審査で勧告された事項の改善状況が芳しくないという場合には、まず、FATFの議長から勧告の対応を求めるレターの送付が行われます。また、ハイレベル使節団の派遣により、当該国に速やかな対応を求めるということになってございます。

 それでも万一なお改善が見られないというようなケースには、マネロン等のリスクの高い国として名指しをされるであるとか、あるいは、当該国への対抗措置を各国に要請するといった対応につながる可能性も、これはFATFの仕切りとしてはございます。

 万が一、仮に日本にこうした措置が講じられてしまった場合は、日本の金融機関との取引においてリスク管理を強化したり、日本の金融機関との取引を他国の金融機関が回避するといったことが生じてしまうおそれがあると考えられます。

平沼委員 ありがとうございます。

 しっかりやはり遵守をしなければ、国際的な金融市場において日本が省かれてしまう、非常にリスクが高い国と認定されてしまうということがあるということでございますので、しっかりと対応していかなければならないわけでございます。

 先ほどもありましたけれども、日本だけが対応遅れとなった場合においては、国際金融センターとしての地位の低下というのはもちろんでございますけれども、例えば、今後ますます取引が増えるであろう暗号資産取引、こういった取引から日本を回避するような動きがあってはならないことでございますし、やはり早急な対応が必要であります。

 また、二〇二三年は、日本はG7の議長国でもあります。国際的にもやはりリードする立場として、対策の強化にもより一層素早く取り組む必要があるのではないかと考えております。

 さて、FATFの勧告の審査は、加盟国間において審査員を相互に派遣をする、行われる相互審査と理解をしております。そして、この相互審査の結果により、今回は、先ほども言いましたけれども、重点フォローアップ国となったわけでございますけれども、今回、その入った重点フォローアップ国の中に、アメリカやシンガポール、中国等、日本を含む二十か国が入ったわけでございますけれども、具体的に、では、諸外国、例えばアメリカ、シンガポール、中国における指摘事項と、各国の対応状況も分かれば教えていただけますでしょうか。

内野政府参考人 これまでに審査を受けた国で重点フォローアップ国との評価結果になりましたのは、日本を含めて、また御指摘の国々を含めて二十か国ございます。

 審査の指摘事項、多岐にわたるわけでございますが、例示いただきました米国、シンガポール、中国について申し述べます。

 まず、米国につきましては、不動産業者や法律専門家といった非金融事業者の義務と監督が不十分であること、あるいは、実質的支配者情報へのアクセスを可能にする枠組みに不備があるといったことが指摘されてございます。

 シンガポールにつきましては、テロ資金供与や外国で行われた犯罪に関するマネロン事案の捜査等が不十分であるといった指摘を受けております。

 中国につきましては、非金融事業者の一部にマネロン等を防止する措置を講じる義務が課されていない、あるいは資産凍結措置が不十分であるといった指摘がなされておると承知しております。

 これらの国々、日本同様、審査後三年間、毎年FATFへの改善状況の報告を求められておりまして、各国はこの審査の指摘を踏まえ改善に取り組んでいるものと承知しております。

平沼委員 ありがとうございます。日本周辺含めて、また各国の状況がよく分かりました。

 アメリカはニューヨークが国際金融センターとしてナンバーワンであるのは従来からでございますけれども、今や中国の上海、北京、シンセンとシンガポールというのは、国際金融センターのランキングでは日本の上位に今は位置しております。国際金融市場における日本の影響力の低下を防ぐためにも、やはり各国にも先んじて対応する必要性が非常にあるかなと思っております。今回の法改正により、遅れることなくしっかりと対処していただきたいと思います。

 さて、今回の対応強化の大きな柱の一つがマネーロンダリングの対応強化となりますけれども、改めて、マネーロンダリングの代表的な手法に関して教えていただけますでしょうか。できれば、国内における実際の摘発案件も踏まえて教えていただけると幸いでございます。

猪原政府参考人 マネーロンダリングの手口につきましては、他人名義の口座への振り込み入金の手口を用いるものが多くを占めており、他人名義の口座が、マネーロンダリングの主要な、いわば犯罪のインフラとなっております。

 具体的な検挙事例を御紹介しますと、だまし取った持続化給付金を他人名義の口座に入金していた事例などがあるほか、それ以外の手口としましては、他人名義の健康保険被保険者証を提示し、他人に成り済まして、盗んだ携帯電話機を売却していた事例などがございます。

 以上です。

平沼委員 ありがとうございます。

 個々の例をいただきました。まだまだ金額ベースでは小さいものを例示していただいたかなと思っておりますけれども、実際にもやはり日本でもマネーロンダリングの実態があるということでございまして、今回の対応により、より発生を抑制するという効果を是非とも期待したいところでございますし、先ほどは、結構、国内の事例ということで紹介いただきましたけれども、国際間取引が非常に活発になっておる中において、やはりリスクの高いマネーロンダリングの手口というのも非常に巧妙化してきて、非常に多くなってくるんじゃないかなと思いますので、今回のFATF法案、しっかりとこれにも対応していただきたいと思っております。

 さて、ロンダリングというのは、何もこれは、マネーロンダリングという名前が多いですけれども、お金に限ったものでもございません。事実、今、ロシアによるウクライナ侵略において、各国はロシアへの経済制裁を強め石油の禁輸措置等を取っておりますが、例えば、調達手段がなくなって代替国から石油を輸入した場合に、結局はこれが第三国を経由したロシアの石油であったというケースも考え得るわけでございます。

 先ほど具体例を挙げました石油に関しては、日本は現状は禁輸措置を取ってはおりませんけれども、第三国を経由して、禁輸措置を取っている国に対しての、物の、物品やエネルギー原料などが入ってくるということも今後考えられるわけでございますが、これら、非常に防ぐことがある種困難とも思えるロンダリングに関して、今、対応策等、何かあれば教えていただけますでしょうか。

猪狩政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省におきましては、外国為替及び外国貿易法に基づき、我が国が締結した国際約束の誠実な履行、国際平和のための国際的な努力への我が国としての寄与などを目的として、特定の貨物を輸入しようとする者に対し輸入承認義務を課しております。

 一例としまして、ロシアに対する経済制裁として、本年四月十九日より、ロシアを原産地又は船積み地域とする機械類、電気機械などの輸入禁止措置を実施しております。

 このような輸入禁止措置の実施に当たりましては、税関とも連携しつつ、輸入される貨物の品名や原産地の確認を行い、貨物の違法な輸入が行われることがないよう厳格に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、関係省庁とも連携しつつ、外為法の厳格な執行に取り組んでまいります。

平沼委員 ありがとうございます。

 外為法により強化、対策をしていただいているということでございます。しかしながら、非常に手口も巧妙化してきているというのもありますので、しっかりと監視対応、また強化をしていただきたいなと思っております。

 今、非常に国際情勢不安定の中で、今回のロシアのウクライナ侵略のようなものもありまして、いろいろなものが多岐にわたって影響が出ております。そんな中で、こういったロンダリングの手口というのも本当に巧妙化しているのも事実でございますので、いろいろと今までにない形で物品が入ってくるような形も想定されるわけでございますので、今回のFATFの対応もそうですけれども、強化をしていただきたいなと思っております。

 次に、マネーロンダリングなどの疑わしい取引に関しては、所轄行政庁に対して報告する義務というのがございます。これも先ほど来から質問も出ておりましたけれども、いわゆる職業専門家、弁護士、司法書士を除いております。

 今般の法改正により、士業のうち、行政書士、公認会計士、税理士については、いわゆる疑わしい取引についての報告義務が今回課されることとなりますが、先ほど来からあるとおり、弁護士と司法書士はその義務の対象から除かれております。弁護士や司法書士の業務の特性から、疑わしい取引の報告義務が課されないことはやはりやむを得ないかなと思いますけれども、弁護士や司法書士も、マネーロンダリングへの対策に取り組む必要性はやはりあるのではないかなと思っております。

 こちらに関して、日本弁護士連合会や日本司法書士連合会はそれぞれ、現在どのような取組を行っており、今後どのような対応を予定をしているのか、法務当局にお伺いをしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 弁護士、司法書士につきましては、その業務の特質から、疑わしい取引の届出義務の対象からは除外をされておりますが、日本弁護士連合会及び日本司法書士会連合会において、実効的なマネーロンダリング対策を図るための取組を行っておりまして、今後、対策を一層充実させるという観点から対応していくものと承知をしております。

 すなわち、弁護士等につきましては、現状、日本弁護士連合会の会則におきまして、法律事務に関連して、依頼者の口座を管理したり、依頼者から一定額以上の現金を預かったりする場合などに、原則として本人特定事項の確認義務を課すことなどの内容が定められております。

 その上で、今般の法改正の趣旨を踏まえて、取引時の確認義務をより拡大させることなどを含む会則の改正等について検討を行っているものと承知をしております。

 また、司法書士等につきましては、現状、犯罪による収益の移転防止に関する法律によりまして、例えば、宅地等の売買に関する手続の代理を行うことを内容とする契約の締結等のいわゆる特定取引に当たりまして、本人特定事項の確認義務を負っているところでございます。

 その上で、今般の法改正の趣旨を踏まえまして、日本司法書士会連合会とそれから各司法書士会におきまして、法定の疑わしい取引の届出に代わる自主規制の在り方について、会則の改正等の検討を行っているものと承知をしております。

平沼委員 ありがとうございます。

 今般の改正に基づいて、それぞれ弁護士会また司法書士会においても更なる取組が検討されている、会則の変更も含めてということで、引き続き各会において御協力、御尽力もいただければ幸いでございます。

 次の質問に参ります。

 マネーロンダリングにおいては、昨今、ブロックチェーンの技術の進展により、暗号資産での取引が非常に活発化をしているわけでございます。このブロックチェーンに基づく暗号資産ですけれども、非常に匿名性も高く、国際間取引が非常に容易な特性上、こういった暗号資産において取引が増えるというのも、マネーロンダリングが増えるというのもある種当然の結果であるかなと思っております。

 今回のFATFの勧告においても、非常にこれは取組として重要な項目となっておりますけれども、今現在の対応状況というのを教えていただけますでしょうか。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、暗号資産は、匿名性が高く、国境を越えた取引が容易であるため、マネロンリスクに対して適切に対策を講じることが極めて重要であります。

 今般の法案におきましては、令和元年のFATF勧告の改定や昨年の第四次対日審査を踏まえ、暗号資産の取引経路を追跡することを可能にするため、我が国の暗号資産交換業者が、送付人である顧客の依頼に応じて業者間で暗号資産を移転する際に、その送付人と受取人に関する情報を送付先の他の暗号資産交換業者に通知することを求める規制、今日もずっと議論がありましたが、トラベルルールを導入することとしております。

 暗号資産に関するマネロン対策の強化は、政府全体で取り組むべき重要な課題でありますので、個別事業者への検査監督体制の強化、人員増加なども含めまして、関係省庁間で連携してしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

平沼委員 ありがとうございます。

 先ほどありましたけれども、トラベルルールの適用ということで、ちょっと追加でお伺いをしたいんですけれども、先ほど来説明もありました、交換業者に対して、暗号資産の移転時に送付人、受取人の情報を相手に通知する、これがトラベルルールでございますけれども、これは非常に膨大な量のトランザクション、やり取りが発生するなと思っておるんですけれども、この通知というのを現実に把握したり運用する方法に関しては今現在どのようにお考えか、あればお聞かせをいただけますでしょうか。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の犯罪収益移転防止法改正では、御指摘のとおり、暗号資産の移転に係る通知義務が導入されることになります。

 この暗号資産の通知義務につきましては、これに適切に対応するため、暗号資産交換業者においては、顧客の個人情報の安全が確保され、かつ通知対象の交換業者に適切に通知を行う専用システム、いわゆるソリューションというものを導入することを想定をしております。

 このシステムの導入につきましても、我々としては、暗号資産交換業者が適切に対応できるように、暗号資産の自主規制機関であります日本暗号資産取引業協会というものがございまして、こちらと連携して取組状況をフォローしておりまして、引き続き、こうした取組を進め、このシステムの導入が適切に行われていくよう対応してまいりたいと考えております。

平沼委員 ありがとうございます。

 ソリューションを使って、しっかりとシステム導入をしていただいて、これを正確に把握をしていく、またトラベルルールをしっかりと適用していくということでございますが、なかなか、各業者間でも取組の差というのはやはり出てくるかなと思っておりますので、この辺り、しっかりと牽引していただいて、交換業者においてしっかりと、どういうシステムになるかどうかちょっと分かりませんけれども、このソリューションをしっかりと導入していただいたところが適正な交換業者であるという形で運用されるということを期待をしております。

 更にちょっと追加でお伺いをいたしますけれども、今まで話していたのは、いわゆる一般的な取引所の対応ということになると思います。これは確かに、先ほどのソリューション等を入れて把握していくのは可能かなと思っておるんですけれども、技術的な特性上、やはりブロックチェーンというのは、プライベートウォレットとか、いわゆるアンダーグラウンドな交換所や、アンダーグラウンドなチェーンにおいてマネーロンダリングが横行するような可能性もなきにしもあらずなのかなと思っておりますけれども、その辺りの見解をお聞かせ願えますでしょうか。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、暗号資産交換業者を介さない取引がございます。これにつきましては、現在、本人確認等の義務は課されておりませんが、現時点では、暗号資産は直接の支払い手段としての普及は限定されているため、暗号資産での多額の支払い等は、最終的には暗号資産交換業者を経由して法定通貨に換金されることが一般的と考えられます。このため、現在、FATFとしては、顧客と接点を持つ事業者に対して現在のFATF基準を早期に実施することにより、業者間及び業者と個人の間の取引のリスクを低減し、現在においても、取引の決済の軸となる法定通貨の扱いを適正なものとすることができると考えております。

 いずれにせよ、暗号資産に係るマネロン対策等の強化に向けて、FATF等における国際的な議論の動向も踏まえつつ、しっかりと取り組んでまいる所存です。

平沼委員 ありがとうございます。

 今のところ、FATFとしても、その辺りはまだまだ対応という形であると思いますけれども、やはりこの辺りは先んじて対応していくというのが非常に必要なことかなと思っておりますので、是非とも、なかなか技術的側面で対応が難しい部分も出てくるかと思いますけれども、引き続きの強化をお願いいたしたいと思います。

 さらに、新たな仮想通貨や金融取引として、ステーブルコイン、NFT、DeFi、分散型金融などが今後非常に発展することが予測されております。このようなデジタル通貨や金融取引に関しての対応についても、FATF勧告として更なる対応強化が必要になるのではないかと思っておりますけれども、その辺りの見解と取組状況を教えていただけますでしょうか。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、いわゆるステーブルコインやNFT、DeFiなど、ブロックチェーンを基盤とした新たなサービスが登場しておりまして、FATFにおきましても、これらのサービスに係るリスクについてモニタリングを継続していく方針が示されております。

 こうした中、金融庁としましては、国際的な規制、監督の一貫性確保を図るべく、FATFにおける議論などに積極的に参加をしております。例えば、業態ごとの規制だけじゃなくて、市場全体を包括的にルールを作っていくべきだというようなことを日本から提案をしたりとか、そのような形で積極的に参加をしたり、そのほか、国内におきましては、例えば、ステーブルコインの取引に関し、さきの通常国会で成立しました改正資金決済法の施行準備を進めているなど、利用者保護やマネロン対策等の確保と金融イノベーション促進の両立に向けた取組を進めております。

 政府全体として、ウェブ3の推進に向けた環境整備の検討を進めているところでもありますので、金融庁としましても、世界に先駆けて暗号資産等に係る制度整備やモニタリング等に取り組んできた経験を生かしまして、関係省庁と連携し、今後とも、環境変化に対し、世界をリードしていく気概を持ち、必要な対応を講じていくことができるよう努めてまいりたいと思います。

平沼委員 ありがとうございます。

 同期の鈴木政務官の非常に力強い答弁、ありがとうございました。

 ある調査によると、二〇二一年に不正なアドレスから中央集権型取引所に送られた資金は全体の四七%でして、この割合は、二〇一八年以来、実は最も低い水準となっております。その代わりに、DeFiプロトコルへの送金が非常に増加しておりまして、これを金額ベースで換算すると、前年比で約二〇〇〇%増加の総額約九億ドル、約一千億円に達しているということでございます。やはりこうした新たな分野での不正送金が非常に増えているという事実がございます。

 是非、先ほどおっしゃっていただいた先んじた対応の強化を図っていただいて、FATFの勧告に追従するような形ではなくて、今後のウェブ3の対応と同様に、日本がルールメイキングをしていくような形で世界をリードしていく必要があると思っております。そして、金融市場における日本の信頼性を高め、地位の向上につなげるよう取組を引き続き強化していただきたく思います。

 さらには、やはり安全保障の観点からも、より取組の強化をお願いいたします。

 暗号資産を利用した新たな手法によりマネーロンダリングを行い、不正な資金を北朝鮮等が得ているのではないかという情報もございます。どうもこれはNFTによるマネーロンダリングのようでございますけれども、北朝鮮は、今までにない規模と回数で我が国に対してミサイルの発射を繰り返しております。全くもって許し難い行為であり、断固対応していかなければなりません。

 ミサイル開発や核開発に対して不正資金が使われているという可能性は非常に高く、国防の観点からも対策の強化を引き続き強化していただいて、御尽力いただくようお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、福重隆浩君。

福重委員 公明党の福重隆浩でございます。

 FATF関連法案について質問をさせていただきます。

 昨年八月に、マネーロンダリングについて、テロ資金供与及び拡散金融対策に関する政府間の枠組みであるFATFから、第四次対日審査報告書により勧告、公表がありました。FATF勧告対応法案は四省庁六法案の改正と承知しております。これまで、自民党さんの四人の委員さんから法律案に関して質問が出されました。問題意識が重なる部分もございますが、私からも、通告に従い順次質問をさせていただきますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、第四次対日審査報告書においてマネロン対策強化が求められております。昨日の本会議や先ほどの質疑でも議論となりましたが、改めてお聞きいたします。

 マネロン対策強化が遅れた場合、日本との金融取引に対する懸念が強まり、国際金融センターの地位が低下することが考えられます。政府として、我が国における経済社会にどのような影響が生じると考えておられるのでしょうか。先ほどの質疑につけ加えることがございましたら、御答弁をお願いいたします。

    〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 重点フォローアップ国自体は直ちに悪影響が生じるものではありませんというのは先ほど申し上げたとおりでございまして、また、議長レター等についても、どのような対応が行われるかも申し上げたとおりでございます。

 仮に、先ほど申し上げましたとおり、マネロンリスクの高い国として名指しされたり、あるいは対抗措置が要請されたということが生じた場合は、海外の金融機関が日本の金融機関との取引のリスク管理を強化する、つまり、日本に送金するときには、送金目的等を徹底的に精査して、安全確実なものでないと送ってはいけないとか、そういった事態が起こるわけでございまして、いわば取引の時間的ロス、あるいはそれに伴う様々なコストというものが多く課されてまいります。

 やはり、日本というのは海外と国際的な交易で大変密接につながった国でございますので、そういった部分でのコストが増加するということは、大変経済社会に悪影響を及ぼすものと認識しております。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、ミャンマーがFATFよりブラックリストに指定をされました。報道等で承知をしております。FATFは、日本を含むFATF加盟国などに対し、ミャンマーとの商取引や金融取引を厳格に審査するよう求めました。

 FATFのブラックリストに指定されている国は、ミャンマー以外では北朝鮮とイランしかありません。日系商社の現地駐在員からは、ブラックリスト指定で、先進国からの投資停滞が更に長期化する可能性があるとの危惧する声も上がっております。

 この点について、政府としてどのような御見解をお持ちなのか、また対応についてお伺いをいたします。

内野政府参考人 御指摘のとおり、FATFは、十月二十一日に、高リスク国、地域、いわゆるブラックリストに関する声明を公表しまして、新たにミャンマーを指定いたしたところでございます。同声明におきまして、FATFは、ミャンマーのマネロン等対策の不備から生じるリスクを考慮しまして、同国に関連する取引を行うに際して厳格な顧客管理を行うよう各国、地域に要請しております。

 ただ、我が国の金融機関におきましては、金融庁のマネロンガイドラインも踏まえまして、これまでもミャンマーに係るリスクを踏まえた対応が行われていると承知しておりまして、ミャンマー関連の金融取引について直ちに過度な影響が生じるというものではない、そのように受け止めてございます。

 ミャンマーは、御案内のとおり、軍政クーデターというのが起こって、大変憂慮される事態が生じておるというふうに報道されてございますが、今回のFATF声明を踏まえまして、私どもとしましては、関係している日本企業等々に対して、関係省庁と連携しまして、本要請を関係団体に周知する、その他、情報提供を徹底して、適切に対応してまいりたいと考えております。

福重委員 やはり、現地の実情に基づいてしっかり情報を入手してバランスよく対応をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、財務省の資料によりますと、平成二十六年度以降急増した金地金の密輸に対応するため、平成三十年四月の罰金上限額の引上げ後、摘発件数、押収量共に大幅に減少しております。金地金の密輸入の事件について、令和二年の摘発件数は五十一件、押収量は百五十キログラム、令和三年は摘発件数五件、押収量は約二十七キログラムと、摘発件数及び押収量共に大幅に減少いたしました。

 金地金については、現金取引が中心であること等から、マネロン及びテロ資金供与等の有効な手段となっております。そのため、更なる取締り強化が必要と考えますが、御所見をお伺いいたします。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成二十六年以降、金の密輸入が急増いたしました。これに対応いたしますため、財務省におきましては、平成二十九年に、検査の強化、処罰の強化、情報収集、分析の充実を柱といたしますストップ金密輸緊急対策を策定いたしました。

 さらに、平成三十年四月には、密輸者へ経済的不利益を与える、また密輸に対する抑止効果を高める、こうした観点から、関税法上の罰金上限額を金の価格の五倍に引き上げるなど、金密輸に対します罰則を大幅に引き上げたところでございます。

 罰則強化前は年間の摘発件数が一千件を超えてございましたが、罰則強化後は摘発件数、押収量とも大幅に減少いたしましたのは、委員御指摘のとおりでございます。特に、近年は、コロナ禍によりまして航空旅客等が大幅に減少いたしまして、恐らく密輸を企図しづらくなった面もあろうかと思いますが、これまでの取組が一定の効果を発揮しているものと考えてございます。

 他方で、最近では隠匿手口が巧妙な事案も散見されているところでございます。こうした状況に対応いたしますため、税関では、旅客数に応じて職員を適正に配置しつつ、旅客の携帯品等の検査を強化するとともに、門型の金属探知機、これはゲート型の金属探知機でございますが、あるいはエックス線検査装置等の取締り検査機器などを活用いたしまして、効果的、効率的な取締りに取り組んでいるところでございます。

 こうした取組を通じまして、引き続き、金密輸に対しまして厳格に対応してまいりたいと考えてございます。

福重委員 どうもありがとうございました。

 次に、犯罪による収益の移転防止に関する法律等の関係法令において、宝石・貴金属等取扱事業者においては、取引確認等の基本的な事項が規定されています。

 宝石・貴金属等取扱事業者が取り扱う商品は財産的価値が高く、運搬が容易で、世界中で換金が容易であるとともに、取引後に流通経路、所在が追跡されにくく匿名性が高いとされております。宝石・貴金属等取扱事業者においては、こうしたマネロン及びテロ資金供与対策が実際の顧客との接点である事業部門において有効に機能するよう、経営陣が主導的に関与していくガバナンスが必要であります。

 そこで、宝石・貴金属等取扱事業者へ国がどのように関与していくのか、お伺いをいたします。

橋本政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省といたしましても、委員の御指摘のとおり、マネーロンダリング対策の実効性を確保するためには、経営陣がマネーロンダリング対策を経営上の課題としてしっかり捉えるとともに、主導的に関与して取組を推進することで、全ての役職員の意識に浸透させていくことが必要と考えております。

 このため、本年二月には、宝石・貴金属等取扱事業者向けのガイドラインを策定、公表し、経営陣の関与、理解につきましても、事業者に対応が求められる事項や対応が期待される事項を明確化したところでございます。

 今後、業界団体とも連携し、宝石・貴金属等取扱事業者の経営陣に対し、本ガイドラインに基づく適切な対応を促してまいります。

    〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

福重委員 ありがとうございました。

 次に、昨日の本会議でも議論となりましたが、改めてお伺いをいたします。

 第四次対日審査報告書対応では、四十の勧告の中で唯一不履行とされたのは、NPOのテロ資金供与への悪用防止であります。内閣府では、NPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンスでNPOに広報されておりますが、これは、NPO法人がテロリストへの資金供与に悪用されないために注意喚起を促していると理解をしております。

 日本では、これまでNPO法人がテロ資金供与に悪用され摘発された事例は確認されていませんが、FATFの調査によると、主に五つの手口があるとされております。それは、資金流用、テロリストとの連携、テロリストへの勧誘の支援、虚偽の表示、偽装非営利団体活動、事業の悪用であります。

 政府は、この五つの手口にNPOが関わらないための具体的な施策などを検討しておられるでしょうか。御答弁をお願いいたします。

小川政府参考人 お答えをいたします。

 今委員からお示しをいただいたような手口によって、NPO法人がテロ資金供与に悪用されることがないように、昨年八月に策定された政府の行動計画に基づきまして現在対応を進めておるところでございます。

 内閣府において発出したNPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンスでは、NPO法人がテロ資金供与に巻き込まれやすい活動といたしまして、一つに、テロの脅威にさらされた地域やその周辺等、高リスクの国、地域などにおける活動、二つに、海外におけるパートナーとの連携、ボランティアの活用、三つに、海外への送金や現金の持ち出し、これらを挙げまして、全国の所轄庁から、こうした活動を行うNPO法人に対しまして、関係者の身元の確認あるいは安全な送金手段の利用など、こうした取組を行うように慫慂しておるところでございます。

 今後とも、財務省を始めとする関係省庁と連携をいたしまして、NPO法人のテロ資金供与リスクの低減に努めてまいりたいと考えております。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、今回のFATF勧告対応法案のうち、犯罪収益移転防止法についてお伺いをいたします。

 先ほどからも議論がございましたけれども、いわゆる士業に対し、本人特定事項の確認のほかに、取引目的等の確認、疑わしい取引の届出の義務が新たに課されることとなっています。これは、FATFが職業専門家に対して顧客管理の実施を求めていることや、第四次対日審査報告書において、職業専門家に対する不備を指摘していることに対応したものと承知しております。

 この士業に関わる犯罪収益移転防止法の具体的な改正内容についてお伺いをいたします。

猪原政府参考人 今回の改正によって、まず、行政書士等、公認会計士等又は税理士等の三士業者については、特定取引を行うに際して行う取引時確認の確認事項に、従前の本人特定事項に加え、取引を行う目的等の事項を追加するほか、疑わしい取引の届出義務を新設するものであります。ただし、疑わしい取引の届出義務については、これら士業者の義務の性質上、守秘義務との調整規定を設けております。

 司法書士等につきましては、行政書士等の三士業者と異なり、疑わしい取引の届出義務を課すことは依頼者との信頼関係の構築を困難にする弊害が大きいことから、疑わしい取引の届出義務を課さないこととしております。また、取引時確認の確認事項の追加につきましては、ほぼ行政書士等の三士業者と同様としておりますが、疑わしい取引の届出義務の存在が前提となるハイリスク取引時における資産及び収入の状況については、確認義務の対象としておりません。

 弁護士等につきましては、司法書士等と同様の内容でございますが、従前どおり、日本弁護士連合会の会則で定めるところによることとしております。

 以上です。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、特定事業者は、犯罪収益移転防止法の下、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがある場合又は顧客が特定業務に関しマネロンを行っている疑いがあると認められる場合は、所管官庁に届出を行わなければなりません。さらに、所管官庁は国家公安委員会に通知もしなければなりません。

 平成四年の麻薬特例法の施行から、現在の犯罪収益移転防止法の施行により届出対象の事業者が拡大されたことに伴い、受理件数は急増しています。金融機関は、銀行から両替業者まで幅が広いため、届出件数も多くあると思います。ほかのファイナンス事業者、クレジットカード事業者、それぞれどのぐらいの届出件数があるのでしょうか。また、受理された内容について分析し、どのような活用をされているのか、お伺いをいたします。

猪原政府参考人 令和三年中の疑わしい取引の届出件数は五十三万百五十件であるところ、そのうち金融機関等からの届出件数は四十九万五千二十九件であり、全体の約九三・四%を占めております。また、それ以外の特定事業者からの届出件数は三万五千百二十一件であり、全体の約六・六%を占めております。

 なお、令和三年中に国家公安委員会、警察庁に対して行われた疑わしい取引の届出のうち五十二万四千四百六十二件が、都道府県警察等の捜査機関等に提供されているところであります。

 提供を受けた都道府県警察におきましては、疑わしい取引に関する情報を、犯罪による収益の発見、犯罪組織の実態解明及びマネーロンダリング犯罪等の捜査に活用しているところであります。

 以上です。

福重委員 大変だとは思いますが、是非よろしくお願い申し上げます。

 次に、我が国における金融機関等のマネロン及びテロ資金供与、拡散金融対策の高度化に向けた施策を確実に実行していることが肝要であります。具体的には、検査要員の確保等により検査監督体制を強化し、リスクが高いとされる業態を優先的に、リスクベースでの検査監督を実施すること、金融機関自らの体制強化は当然でありますが、金融庁として金融機関等にどのような監督強化及び体制で臨んでおられるのか、お伺いをいたします。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 FATF第四次対日相互審査の結果も踏まえ、金融庁では、金融機関のマネロン対策等の強化に向けた施策を実施しているところです。

 具体的には、ただいま委員から御指摘いただきましたとおり、検査要員の確保等による検査監督体制の強化、リスクが高いとされる預金取扱金融機関等に対して優先的かつリスクベースでの検査、モニタリングの実施等を行っています。

 また、マネロン対策等の強化に当たっては、金融機関や国民の理解が重要であると考えておりまして、監督ガイドラインの拡充や金融機関向けの説明会の累次の開催、丁寧な顧客対応の促進や利用者の理解向上のための広報活動の実施などの対応も進めております。

 金融庁としては、これらの施策を通じて、引き続き、我が国の金融機関のマネロン対策等の強化に努めてまいる所存です。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、マネロン対策の有効性向上や効率化の観点から、AI等を活用したマネロンシステムの共同化に向けた取組が銀行業界を中心に進んでいると伺っております。具体的には、金融庁及び銀行業界においてどのような取組が行われているのでしょうか。また、共同化の実現により、どのようなことが期待されるのか、御答弁を併せてお願いいたします。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的にもより高い水準でのマネロン対策等の実施が求められてくる中で、中小規模の金融機関においては、システムの整備や人材確保等の面で単独での対応が難しいとの声があると承知しています。このような中、委員御指摘のとおり、銀行業界において、AI等を活用し、マネロンシステムを共同化し、効率化及び高度化を図ろうとする動きがございます。

 こうした動きを踏まえ、政府は、前の通常国会に資金決済法等改正案を提出し、本年六月に成立いたしました。本改正により、複数の金融機関等の委託を受けて為替取引に関し取引のモニタリング等を共同で行う為替取引分析業について許可制が導入され、監督当局の直接の検査監督等を通じ、その業務運営の質を確保することとされたところです。

 また、足下、全国銀行協会においては、十月十三日に、取引モニタリング等のAIスコアリングサービス等を提供するため、本年度中に準備会社を設立し、二〇二四年度以降の段階的なサービス提供に向けた準備を進める旨を公表したと承知しています。

 金融庁といたしましては、各金融機関がマネロン対策等を共同化し、その知見やノウハウ等を集約する形で業務全体として取り組むことは、対策の実効性や効率性の向上に資するものと考え、評価しておるところでございます。

福重委員 ありがとうございました。

 次に、前の質問にも関連いたしますが、全銀協の半沢会長は記者会見で、今後のFATFの第五次審査も見据えまして、この共同機関の枠組みを通じて、都銀、地銀、第二地銀等の各業態が、まさに互助的に力を合わせ、我が国全体のAML/CFTの体制の底上げを加速してまいりたいと思いますと述べられました。

 第五次審査も見据えたAML/CFTの共同のシステムについて、金融庁としてどのように関与をしていくのか、御見解をお伺いいたします。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘いただきました全国銀行協会によるマネロン対策のための共同機関の設立につきましては、先ほど申し上げましたとおり、同協会のタスクフォースにおいて検討が進められ、先月、サービス内容等が公表されたものと承知しております。当庁は、同タスクフォースにオブザーバーとして参加しており、こうした全銀協の取組を支援してきたところです。

 金融庁といたしましては、各金融機関がこのようなマネロン対策等を共同化することにつきましては、先ほども申し上げましたが、その知見やノウハウ等を集約する形で業界全体として取り組むことで、対策の実効性や効率性の向上に資するものと考えておりまして、引き続き、FATF第五次審査も見据え、官民一体となって金融機関のマネロン等管理体制の高度化、効率化に取り組んでまいる所存です。

福重委員 済みません、先ほど銀行協会の会長の話からもありましたけれども、地銀や第二地銀等というようなところですけれども、財政的な支援というのはお考えなんでしょうか。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘のありました点につきましては、ただいま国会の方に提出しております経済対策、補正予算案におきまして、このようなAI事業を使った共同の仕組みについての補助事業について提案させていただいております。そのような枠組みを通じまして、政府としてもできる限り支援していきたいというふうに考えてございます。

福重委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 次に、第四次対日相互審査報告書の有効性評価において、大規模銀行等はそのリスクについて適切な理解を有しているが、その他の金融機関のリスク理解は限定的であることや、一定程度の金融機関は継続的顧客管理等の最近導入された義務についていまだ明確かつ一律の理解を有していないと評価されております。また、暗号資産交換業者に対しても、義務の理解と、実施に欠かせない指導やサポートを提供するよう勧告されていると承知しております。

 これらの指摘を踏まえて、金融庁としては金融機関に対してどのように施策を取っていくのか、お伺いをいたします。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどの私の答弁におきまして、補正予算案につきましてでございますが、申し訳ございません、まだ国会には提出させていただいていないというふうに承知しておりまして、閣議制定させていただいたということでございます。申し訳ございませんが、訂正させていただきます。

 それで、今御指摘いただいた点についてでございますが、金融庁では、暗号資産交換業者を含めた所管する金融機関に対し、先ほども申し上げましたけれども、預金取扱金融機関や暗号資産交換業者等の高リスク業態を中心に、マネロン対策等に焦点を当てた検査を集中的に実施しているほか、業界団体等に対し、二〇二一事務年度はマネロン対策等に係る説明会等を百回以上開催し、マネロン対策等の理解促進に努めております。

 また、当庁では、所管金融機関に対し、二〇二四年三月末までのマネロン対策等に係る体制整備を要請しており、各金融機関では、継続的顧客管理の完全実施も含めたマネロン対策に係る体制整備が進められているところです。

 金融庁としては、FATF第四次対日相互審査時と比べ、金融機関等の対策の強化は相当程度進んでいると考えておりますが、将来のFATF第五次相互審査に向けて、引き続き、官民一体となってマネロン対策等の強化に努めてまいります。

福重委員 済みません、時間が残り少なくなってきましたので、ちょっと質問を飛ばさせていただきますけれども、暗号資産の個人取引への対応について伺います。

 暗号資産交換業者を介さない個人の取引、いわゆるピア・ツー・ピア取引の場合、本法律案により導入されるトラベルルールの規制の対象外であり、仮にマネロンが疑われる取引が行われたとしても、政府による追跡、捕捉が困難であると承知しております。FATFもピア・ツー・ピア取引のリスクに関して注目しておりますが、この点についての現状と認識、今後の課題についてお伺いをいたします。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘ございましたピア・ツー・ピア取引につきまして、先ほども御答弁いたしましたけれども、現時点では、本人確認あるいはトラベルルール等の義務の対象とはなってございません。

 これにつきましては、現時点では、暗号資産は直接の支払い手段としての普及は限定されているため、暗号資産での多額の支払い等は、最終的に業者を経由して法定通貨に換金されることが一般的であることから、FATFとして、顧客と接点を持つ事業者に対して現在のFATF基準を早期に実施することにより、業者間及び業者と個人の間の取引のリスクを低減するという考えでおると承知しております。

 いずれにせよ、暗号資産に係るマネロン対策等の強化に向けて、FATF等においても様々な国際的な議論が進められておりますところ、このような動向も踏まえつつ、しっかり対応してまいりたいと考えております。

福重委員 ありがとうございました。

 ちょっと幾つか質問が残りましたけれども、時間でございますので、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

大西委員長 次に、中谷一馬君。

中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬でございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 先日の本会議に続きまして、谷大臣に、答弁を踏まえまして、るる冒頭伺ってまいりたいと思いますので、是非明快に御答弁をいただければということを思っております。

 相互審査報告書の重点フォローアップ国とされたことの影響、先ほど来各委員からも話がございましたが、対策の強化というものを行っていかなければならないという中で、やはり、マネロン等の悪影響として、経済政策のコントロールの喪失であったり、経済のゆがみ、経済成長の阻害、こうしたことが挙げられますので、日本としてもしっかりと、マネロンに甘くない国だということを世界に示していく必要があるということを思っております。

 その中で、先日、本会議にて、重点フォローアップ国に置かれて、この結果を踏まえて、対策の強化に向け、本法案が提出をされました、我が国は第五次審査では通常フォローアップ国を目指すという考えを持っていますかと谷大臣に尋ねましたところ、第四次審査のフォローアップにおいて相応の評価が得られるものと期待するとともに、今後とも、政府一丸となって、将来の第五次審査に向けてマネロン等対策に取り組んでまいりますという答弁をいただいたんですが、谷大臣、これは、我が国は第五次審査では通常フォローアップ国を目指すということでよろしいですか。

谷国務大臣 昨日に続いて、質問ありがとうございます。

 御審議いただいているFATF勧告対応法案は、FATFから勧告された事項のうち、法改正を要する事項を盛り込んだものでございますが、これ以外の事項についても、政府は、マネロン等対策のための政策会議を設置するとともに、今後の対策を取りまとめた行動計画を公表するなど、関係省庁で緊密に連携し、精力的に取り組んでいるところであります。

 これらの取組を着実に進め、日本のマネロン対策を政府一丸となって抜本的に強化する考えであり、こうした努力により、将来の第五次審査において相応の高い評価を目指して努力してまいりたいと思います。

中谷(一)委員 相応の高い評価を目指すというのは、通常フォローアップ国を目指すということでよろしいですか。否かよろしいか、お答えください。

谷国務大臣 今お答えしたとおりでございますが、相応の高い評価を目指す、今よりも高い評価を目指すということですから、中谷委員の思いをしっかり受け止めているつもりでございます。

中谷(一)委員 そこまで言っていただいたのであれば、通常フォローアップ国を目指すでよろしいのかと思うんですけれども、逆に、目指さない可能性が何かあられるということですか。なければ、是非、目指すと言っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

谷国務大臣 思いは、高い評価を、今よりも更に高い評価を目指すという思いは一緒でございますので、その表現の問題ではないかと思います。

 高い評価を目指して、汗をかいて努力してまいります。

中谷(一)委員 済みません、聞いていることに答えていただけていなくて、高い評価を目指すことは分かりました。これは、じゃ、通常フォローアップ国を目指すということでよろしいですか。再度確認させてください。

谷国務大臣 そういうふうに受け止めていただいて結構でございます。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 大臣、是非、初めから明快に言っていただければ更問いが必要なくなると思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、次に、対応が遅れた場合の話なんですけれども、我が国との金融取引に対する懸念、これが高まりまして、国際金融センターとしての地位が低下することや、マネロン対策等で我が国が抜け穴となれば、国際的に対応に支障が生じるなどと指摘をされている現状があります。

 今、重点フォローアップ国なんですけれども、審査後三年間、毎年、FATFへの改善状況の報告が求められ、三年が経過しても改善が不十分である場合は、FATFが当該国の国名であったりとかこういったものの公表、あとは、当該国への対抗措置を各国に要請するような対応につながる可能性があるという説明がありました。仮にこうした措置が講じられた場合、海外の金融機関が日本の金融機関との取引のリスク管理を強化したり取引を回避するなど、そういったおそれがあるということでした。

 そこで、谷大臣に伺いますけれども、改正法の施行によって、今、通常フォローアップ国を目指していくということなんですけれども、法令の整備状況は国際基準に向けて改善をされている現状にあると思います。ただ、法制度の有効性の観点など、様々な審査が行われることが想定される中でも、評価が改善される見通しを持っていて、悪影響を与えることがないと考えているという理解でいいか、谷大臣、教えてください。

谷国務大臣 御指摘のように、重点フォローアップ国は、審査後三年間、毎年、FATFへの改善状況の報告を求められています。でも、そのことが直ちに、我が国の金融取引に制約を課すものではなく、悪影響が生じるものではないと思います。

 ただ、一方で、三年が経過しても改善状況が芳しくない場合、マネロン等のリスクの高い国として名指しされることや、日本への対抗措置を各国に要請するといったFATFの対応につながる可能性があります。仮にこうした措置が講じられた場合、海外の金融機関が日本の金融機関との取引のリスク管理を強化したり取引を回避したりするなどのおそれがあると考えられます。

 こうした観点から、政府としては、一丸となってマネロン等対策の強化に取り組むことで、我が国の国際金融センターとしての地位向上に努めてまいりたいと考えております。

中谷(一)委員 済みません、やはりお答えをいただけていなくて、私の先ほどお伝えしたことを答弁としても今頂戴をしている状態なんですけれども。

 法改正の施行によって、法令の整備状況は国際基準に向けて改善される、これはよく理解できました。その上で、法制度の有効性の観点など、様々な審査が行われることが想定をされる中でも、評価が改善される見通しを持っていて、悪影響を与えることがないと考えていますか。教えてください。

谷国務大臣 今後の取組の話でございますので。制度的に今回の法改正で状況は整ったと思っています。その運用面で、中谷委員言われるように、様々な課題がこれから出てくるかも分かりません。ただ、そういう一つ一つを乗り越えていくのが我々の仕事だと思っております。

中谷(一)委員 ということは、悪影響を与えることがないと現時点では考えていて、改善される見通しだということでよろしいですか。

谷国務大臣 そういう様々な困難、これから、社会経済ですから、どういうふうに動くか分かりません。そういう困難があったとしても、乗り越えて、当初の目的をやり遂げるという強い意思でもって頑張ってまいりたいと思います。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 予想外に時間をたくさん使ってしまいましたので、この辺りにとどめたいと思いますが、悪影響を与えることがないように、しっかり改善をしていただけるように施策を講じていっていただきたいということを思っております。

 その上で、さらに、昨日の答弁についてのところで確認をしたいところがございます。

 先日の本会議で、現在は内閣官房のFATF勧告関係法整備検討室で対応を行っていますが、本法案の成立後に同室に相当する組織を引き続き存置する想定はありますかということを谷大臣にお尋ねをしましたところ、政策会議の枠組みを活用し、政府一丸となってマネロン対策等を推進しますという答弁をいただきました。

 これに対して谷大臣に伺いますが、政策会議があれば、FATF勧告関係法整備検討室に相当するような組織を引き続き存置する必要はないと政府としては考えているという理解でよろしいでしょうか。教えてください。

谷国務大臣 本会議で答弁させていただきました。

 政策会議は、マネロン等対策について我が国政府全体としての方針を決定し、統一的な施策を進めるための枠組みです。本会議で申し上げましたのは、マネロン等対策については、技術の進歩や社会情勢等の変化に応じて、実施体制も含め、不断の見直しを行っていく必要はありますけれども、まずは、関係省庁において本法案に基づく措置も含めたマネロン等対策を適切に運用していくとともに、政策会議等の枠組みにおいて、関連施策の実施状況を注視しつつ、諸状況の変化等についても情報をよく収集し、適切な対応を不断に検討していくことが重要だと思っております。

 現時点で、こうだというふうに、はっきり方針を決めたわけではございません。

中谷(一)委員 では、情勢によっては、引き続き存置をしたりとか、一体化したマネロン対策を行うような部局を設置する可能性があるという理解でよろしいですか。

谷国務大臣 社会経済がどういうふうに動くのか、場合によっては大きく動くということも考えられないわけではございませんが、こういうマネロン対策などについては、常に周りの状況、諸状況の変化ということに注意しながら、柔軟に対応することも必要かと思っております。

中谷(一)委員 分かりました。柔軟に対応していただけるということで、評価がしっかりと改善されるように、そしてマネロンが撲滅できるように、政府一丸となって取り組んでいただきたいと思います。

 その中で、次に、NPOの評価の改善の見通しについても、先日質問をさせていただきました。先ほども公明党の委員から質問がありましたが、NPOのテロ資金供与への悪用防止を求める事項が不履行とされました。この状況を改善すべく、政府は、政策会議等で、拡散金融だったりマネロン資金、こういったものの基本方針において、NPOのテロ資金供与リスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングの実施とリスク及び対策の好事例を周知するとしています。

 これらの取組がNPOの悪用防止に対して効果的に作用し、勧告の評価がCの履行若しくはLCのおおむね履行に改善される見通しがあると考えていますかと谷大臣に尋ねたところ、取組を着実に進めていることについて、FATFから相応の評価が得られるよう、各省庁が一体となって、FATFに対する適切な説明を尽くしてまいりますという答弁をいただいたんですけれども、これは、谷大臣、勧告の評価がCの履行若しくはLCのおおむね履行に改善される見通しがあると政府は考えているという理解でよろしいですか。教えてください。

谷国務大臣 昨日も申し上げたとおり、NPOの悪用防止について、FATFの勧告を踏まえた取組を関係省庁において鋭意進めているところでございます。

 こうした取組を着実に進めることを通じて、評価するのはFATFでございますので、FATFから相応の評価が得られることを期待して、それを目指して、我々としては頑張ってまいりたいと思います。

中谷(一)委員 分かりました。是非目指して頑張っていただければと思うんですけれども。

 それに関連してなんですが、NPOの悪用防止のため、リスク評価やモニタリング等の取組を法律上義務づけるなど、関係法令を改正するといった考えはありますかと、私、先日伺わせていただきました。これに対して、関係府省等において、引き続き、モニタリング等を行うとともに、必要に応じて各関係法令等に定める権限を適切に行使することにより、NPOに係る対応を進めてまいりますという御答弁をいただきました。

 そこで、谷大臣にまた伺わせていただきたいんですけれども、FATFがNPOと表している言葉の対象を、政策会議では、特定非営利法人、公益法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、宗教法人と定めていますが、これらに関連する法律など関係法令に関しては改正するといった考えはなく、本改正法案で事足りていると政府としては考えているという理解でよろしいでしょうか。教えてください。

谷国務大臣 昨日も本会議場で申し上げましたとおり、NPOの悪用防止について、引き続き、モニタリングを行うとともに、必要に応じて、関係省庁において、現在、各関係法令に定められている権限を適切に行使していく考えでございます。

 FATFの指摘において、NPOの悪用防止の観点から、リスク評価の実施や適切なモニタリングが求められておりますが、こうした指摘については、法改正せずとも適切に対応することが可能であるということで、現在審議をいただいている法案には盛り込んでいないところであります。

 ただ、今後の関係法令の改正に関する具体的な考え方については、NPOを所管している省庁も幅広いわけでございますので、そういう省庁とまた話し合っていくことになるのかなと思います。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 少し踏み込んだ答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 今後、本当に幅広なものですから、検討されていくということだと思います。現時点では、関係法令の改正ということで提出をいただいて、今後もし事足りないことがあれば適宜対応されていくということだと思いますので、また国会でそういった審議も行わせていただきたいということを思っております。

 続きまして、我が国のテロ資金供与対策に関する行政当局職員のマネジメントについて伺わせていただきたいということを思っております。

 我が国は、テロ資金供与リスクは相対的に低いと言われているんですけれども、我が国のテロ対策の専門家はよく理解ができているという評価をもらっているんですけれども、テロ資金供与対策を担う他の行政当局職員はそれには及んでいないという趣旨の指摘をいただいているところでありますが、これに対してどのように取組を進めていくのかということを伺いたいと思うんです。

 政府は、先日の本会議で、国家公安委員会が公表する犯罪収益移転危険度調査書においては、テロ資金供与のリスクに関する理解を促進するため、最新の国際テロ情報等を記載したほか、令和三年八月に設置した警察庁と財務省を共同議長とするマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を活用して必要な情報交換を行うなどしているところであり、引き続き、関係省庁間でのテロ資金供与リスクに関する共通認識を醸成するという答弁がありましたが、これに対して伺いたいんですけれども、この施策でテロ資金供与対策を担う他の行政当局の職員に十分に理解が浸透させられ、第五次審査では評価を改善することができるとお考えでしょうか。また、更なる対策などについて想定があれば見解を伺います。

猪原政府参考人 ただいま御質問のありました専門家以外の行政当局の職員にテロ資金供与のリスクの理解が及んでいないということについての対策は、ただいまの御質問で御指摘をいただいたとおりでございます。

 私どもといたしましては、この施策をしっかりと遂行していくことによって、何とか理解を深めていきたいというふうに考えているところでございます。

 以上です。

中谷(一)委員 今、猪原部長から御説明をいただいたんですけれども、大臣、今の政策で本当に事足りるとお考えですか。

谷国務大臣 今答弁させていただきましたように、これで十分かどうかということは、常にチャレンジして、また、その状況を把握しながら、場合によっては更に新たなやり方でそういう意識を持つように努めていきたいと思います。

中谷(一)委員 多分、不十分じゃないかなと私は思っています。

 やはり、周知だけではなかなか改善を図られていかないんじゃないかなということを思っておりまして、相互審査でありますから、どういった審査をされるのか、それで何をどのようにしてしっかり研修を行っていくのかとか、こういった新たな施策を行っていくことが第五次審査での評価を改善することにつながるんじゃないかなということを思っておりますので、大臣におかれましては、まさにこの法案を提出をされて、全体のマネロンであったりとかテロ資金供与対策を担っていかれる立場でありますから、行政職員のマネジメントという観点で施策を講じていただきたいと思っているんですが、何か所感はございますでしょうか。

谷国務大臣 国の各省庁もそれぞれ様々でございます。ふだんから、大変、危機意識といいますか、危機管理の意識の強い自衛隊、警察、そういうところと一般的な住民サービスの省庁と全く同じかというと、それは中谷委員のおっしゃられるように、やはり温度差はあるかと思うんです。

 しかし、我々の社会に大きな脅威をもたらすテロは何とかしなくてはならない、そういう意識は、各省庁の役人だけではなくて国民の多くにそういう共通意識が広がっているかと思いますので、引き続き、テロ資金供与のリスク、これは我々の社会に、我々の日本に大変なことをもたらすのだ、そういう意識を醸成するように努力して努めてまいりたいと思います。

中谷(一)委員 更なる改善を図っていけるように、評価を改善していただけるように、政府として取り組んでいただければと思います。

 ここからは細かいことについて政府参考人の方を中心に伺ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。

 まず、犯罪収益移転防止法、いわゆる犯収法の関連について伺わせていただきます。

 法務省は、本年の一月に実質的支配者リスト制度を創設をしましたが、これにより実質的支配者の登録はどれほど進むと考えておられますか。また、金融機関等が実質的支配者を把握できるようにするため、どのような取組が必要だと考えておられますか。端的にお答えいただければと思います。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、各法務局においては、今年の一月三十一日から、実質的支配者情報の登録に関する新しい取組として、実質的支配者リスト制度の運用を開始しております。

 この制度は、商業登記所が、株式会社からの申出に基づき、その会社の実質的支配者が記載された書面を保管し、その写しを交付する制度でございます。

 商業登記所により発行される実質的支配者リストの写しは、犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認の際の資料等として活用されるということを想定しており、これにより、金融機関等の特定事業者は、顧客の実質的支配者をより円滑かつ正確に確認することができるようになると考えております。

 そのため、この制度により、実質的支配者情報の登録が相当程度進むものと期待しておりまして、法務省としては、この登録を促進する観点から、制度がより広く利用されるよう、関係省庁と連携しつつ、本制度の周知、広報に努めてまいりたいと考えております。

中谷(一)委員 分かりました。取組をしっかりと前に進めていただければと思います。

 続けて警察の方に伺いたいと思いますが、本改正法の施行によりまして、疑わしい取引の届出件数の増加が見込まれます。トラベルルールの整備等で、FIUとしての事務の増加、これが見込まれるんじゃないかなということを思っているんですけれども、現時点においても、疑わしい取引の届出件数が年間五十万件を超えていますが、届出件数が更に増加した場合、警察庁の現在の組織体制で対応が可能でしょうか。人員等を充実させる必要性についてどのように考えているか、教えてください。

猪原政府参考人 令和三年中、国家公安委員会は、御指摘のとおり、五十万件以上、約五十三万件の疑わしい取引の通知を受けているところであります。

 現在、警察庁に置かれている日本のFIUは約百人の職員により構成されており、これらの要員によって疑わしい取引に関する情報の分析を的確に行っております。また、疑わしい取引に関する情報の分析にAIを活用し、業務を合理化するなど、効率的な対応に努めており、引き続きしっかりと対応してまいります。

中谷(一)委員 ありがとうございます。御対応いただければと思います。

 次に、組織的犯罪処罰法関係について伺ってまいります。

 前提犯罪を拡大する必要性について、こちらは法務省に伺わせていただきたいと思うんですが、先日の本会議の答弁を踏まえて、やはり、重大犯罪への資金洗浄罪の適用を求めるFATF勧告の趣旨を鑑みて、前提犯罪を拡大する必要性、これについて御議論をいただきましたが、暴力団等の犯罪組織が多額の収益を獲得している実態について、現状どのような認識を持っているのか。そして、関連する条約や他の国際的な犯罪収益規制の動向について、どのような認識を持っているのか。そして、それらを踏まえて、現時点では拡充の必要性をどのように考えているのか。教えてください。

保坂政府参考人 組織的犯罪処罰法におきます犯罪収益の元になる前提犯罪につきましては、死刑、無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮という法定刑が定められている罪以外にも、個別に、例えば暴力団の資金源となるような犯罪というのが列挙する形で別表に規定されているところでございます。

 その組織犯罪の実態、資金源になっているかどうかなどにつきましては、今後とも犯罪情勢を注視していく必要があると考えておりますが、現時点におきましては、この個別犯罪を列挙する形での別表を拡充するということは必要がないものと考えておりますが、この点につきましては、やはり犯罪情勢を見ながら今後ともフォローアップしていきたいというふうに考えています。

 それから、国際的な動向という点でいいますと、現在の、長期四年以上の罪ということでいいますと、これは国際組織犯罪防止条約の要請に従って定めておるものでございまして、この度のFATFからの指摘におきましても、この前提犯罪自体に特に指摘は受けておらないところですが、この国際動向につきましても、やはり犯罪収益規制というのは変わってまいりますので、その点については、引き続き、我々としてもフォローしていきたいと思っています。

 したがいまして、現時点におきましては、国際的な対応として必要なのは、マネーロンダリング罪の法定刑の引上げと没収対象財産の拡大ということで、今回の法案にはそれを盛り込ませていただいているということでございます。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 国際情勢の流れを踏まえながら、柔軟にこういった対応を行っていただければと思います。

 続きまして、新しい金融についてということで、私からは、オリガルヒによる暗号資産での資産隠避について伺わせていただきたいと思います。

 本年の二月のロシアによるウクライナへの侵攻、これを受けまして、日本は、アメリカやEUとの国際協調に基づいて、外為法に基づく累次の資産凍結措置を講じていますが、とりわけ、オリガルヒと言われるロシアの大富豪層が暗号資産を用いて資産を隠蔽したり物を売買したりする行為を止めるために、四月に外為法を改正されたと承知しています。

 その中で、外為法の改正から半年が経過をしましたが、これらの措置は十分に機能をしてきたんでしょうか。オリガルヒへの経済措置の効果についてどのように考えているか、教えてください。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の本年四月の外為法改正におきまして、暗号資産を利用した資産凍結措置の回避のリスクに対しまして、各国間で抜け穴が生じないようにするとのG7でのコミットメントがございました。これを背景としまして、我が国としても、この抜け穴となることを防ぐべく、資産凍結措置の強化を行わせていただいたところでございます。

 そのような国会での極めて迅速な御議論をいただきまして法的措置を講じさせていただいた結果、現時点において、我が国において、そういった抜け穴として使われるというような弊害は生じていないものと理解しております。

 仮にこうした措置を取らなかった場合、我が国が制裁対象者の暗号資産を利用した資産逃避先となってしまった、そういう可能性もあるわけでございまして、そのような状況を未然に防いでいる、こういう評価ができるのではないかと考えてございます。

 引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、制裁の実効性確保に万全を期してまいります。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 我が国としては抜け穴にならずに効果的に対応できているということで、御答弁をいただきました。

 続けて、CBDCに関して、本日は、日銀の方々にお越しをいただいております。

 先日の本会議にて、CBDCの在り方について、プライバシーの保護、マネーロンダリングへの対応は、今後の制度設計における課題として、両立に向けた検討を行うことが重要という財務大臣の見解をいただいたところであるんですが、日本銀行においては、現在、プライバシーの保護とマネロン対策、テロ資金供与対策を両立させたCBDCの制度設計について、どのような研究、検討を進めているのか、教えてください。

神山参考人 お答え申し上げます。

 CBDCにつきましては、プライバシー保護の面で利用者が安心して利用できるような設計、運営が期待されていると我々も認識しているところでございます。世界的に、マネーロンダリング、テロ資金供与対策など対応を求められる中、こうした規制上の要請を満たすこと、これもCBDCにとってはとても必要なことだと考えております。

 プライバシー保護とマネーロンダリング対策、テロ資金供与対策をどのようにバランスさせていくか、これは多くの主要国で意識しているところでありまして、我々先進国の間でしっかりと検討しているところでございます。

 日本銀行といたしましては、関係当局、それから民間事業者、幅広い関係者と協力しながら、しっかりと、制度面それから技術面、双方から検討を進めてまいりたいと考えております。

中谷(一)委員 具体策のところを深掘りさせていただきたいということを思っているんですが、CBDCに関する実証実験、概念実証フェーズ2がスタートをすると二〇二二年三月二十五日に公表されましたが、こちらは、決済の利便性向上、経済的な設計、仲介機関間の、外部システムとの連携など、こういったことを検証されているということなんですけれども、公表から七か月以上の月日が経過をいたしましたので、現時点における検証の進捗について教えていただきたいのと、その後、パイロット実験を行うか否かはいつ頃判断される想定か、教えてください。

神山参考人 お答え申し上げます。

 日本銀行では、昨年四月に実証実験を開始いたしまして、本年三月までに第一段階、CBDCの基本機能に関する検証を終了いたしました。そして、委員御指摘のとおり、四月からは実験の第二段階として、より複雑な周辺機能を付加した上で、その実現可能性や課題解決について検証を行っているところであります。

 具体的にはということでございますけれども、金融システムの安定などの観点から、CBDCの保有額や取引額に制限を設ける方法、それから、決済の利便性向上の観点から、送金予約や一括送金を処理性能を確保しつつ的確に処理する方法などを検討しているところでございます。

 そして、パイロット実験のお話でございますけれども、これは、我々が公表しております取組方針の中で、概念実証を経て、更に必要とされれば実施を検討していくとしているところでございまして、現在は概念実証を進めている最中ということでございます。その中で、パイロット実験の要否、その内容、実施期間、今の実験の第二段階における検証を進める中で、しっかりと検討していきたいと思います。

 いずれにせよ、日本銀行としては、今後の環境変化に的確に対応できるよう、しっかりと準備していくことが重要だというふうに認識しております。

中谷(一)委員 しっかり対応いただければと思います。

 続けて、ステーブルコインの規制とイノベーションのバランスについて伺います。

 先日、鈴木大臣から、事業者において適切な利用者保護が図られながら、健全な競争により金融イノベーションが生み出されていくことが重要であると考えており、ステーブルコインの取引の規制に当たっては、その両立が図られるように配意してまいりますという答弁をいただきましたが、この配意という意味は具体的にどのようなことを想定をしているのか、端的に教えてください。

尾崎政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるステーブルコインですけれども、幅広い分野で一般に利用される送金・決済手段となる潜在的な可能性が指摘される一方で、マネロン、テロ資金供与対策を始め、利用者保護上の課題が指摘されるものも存在すると承知しております。

 こうした点を踏まえまして、本年六月に成立した改正資金決済法において、ステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還することを約するもの等を電子決済手段等として規制対象としております。

 ステーブルコイン等を取り巻く環境は、グローバルに、かつ急速に変化しているところでありますので、こうした変化を踏まえつつ、適切な利用者保護の確保と健全な競争による金融イノベーションの促進を両立させていくことが重要と認識しております。

 こうした観点に立ちまして、金融庁としては、規制、監督に関する国際的な議論の動向や民間事業者によるビジネスの実態などを丁寧にフォローすること等により、適切に対応してまいりたいと考えております。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 それでは、最後にデジタル庁に伺います。

 Web3・0研究会で議論をしているDAO、これはどのようなものを組成しようと想定をしているのか。そして、エンジニア育成の観点から、タイムリーで正確な情報提供をする場の設置、これはどのようなものを想定しているのか。そして、ウェブ3エコシステムの健全な発展のために必要な対応の全体像について、現時点でどのように考えておられるのか。楠さんの見解を伺いたいと思います。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 Web3・0研究会におきまして、構成員の方より、ウェブ3の主要なツールであるDAOを研究会で組成してはどうかという提言がなされたところでございます。これを受けて、構成員が実際にDAOを使ってみることを通じて課題や可能性を認識し、研究会の議論をより深めてまいるという趣旨の下で、構成員及び事務局の自発的意思に基づいてDAOを組成するということについて合意を得られたところでございます。

 今後、具体的にどのようなDAOを組成していくかにつきましては、構成員等の議論を経て決定してまいりますけれども、是非、行政がDAOに関わる上でロールモデルとなるようなものを目指して議論を進めてまいるというふうに承知をしております。

 続きまして、エンジニアの育成の件でございますけれども、ウェブ3がもたらし得る社会的、経済的便益に主軸を置いた情報提供によって、ウェブ3のような新しいデジタル技術を扱うエンジニアの裾野を広げていくということが重要というふうに考えております。

 具体的な情報提供の在り方につきましては、例えば、Web3・0研究会において、関連イベントの開催等について御意見をいただいているところでございますけれども、各国の状況等を参考としながら、Web3・0研究会の議論等を踏まえて、スピード感を持って取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 最後に、エコシステムについてですけれども、ウェブ3エコシステムの下、経済社会の中核的な要素である金融、資産・取引、組織等において新しいツールが出始めているということを踏まえまして、また、これが既存のサービス、ツールの役割を技術的に補完、代替する可能性があるというふうに考えております。

 ウェブ3エコシステムの健全な発展のために様々な試行錯誤が繰り返されることによって、技術やその使い方に飛躍的な進歩が起きるとともに、既存の産業や組織にも様々な刺激や示唆を受けて、これを変容していくということが重要であるというふうに考えております。

 こうした動きの主体となり得るエンジニアの方々の育成、サポートを始めとして、ウェブ3エコシステムに関わる人々が様々な情報を共有して課題解決を図っていく場を提供していくということが必要と考えておりまして、研究会における議論を経て、年末までに必要な対応を取ってまいりたいというふうに考えております。

中谷(一)委員 よく分かりました。ありがとうございました。

 それでは、時間となりましたので、質問はこれにて終了させていただきたいと思います。

 質問ができなかった当局の皆さん、御準備をいただきましたのに申し訳ございませんでした。

 ありがとうございました。

大西委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も、この内閣委員会におきまして質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日、早速、FATFの勧告に対応するための法案ということで質疑を進めさせていただきます。

 昨日、谷大臣から、衆議院本会議におきまして法案の趣旨説明をいただきました。私もモニター越しに拝聴いたしまして、なかなか難しいな、すっと理解するのは難しいなというふうにも思いました。

 特に、今回のFATFの勧告、全般を見渡しまして、大手の金融機関などではマネーロンダリング対策など十分に理解をされ、そして実施もできている、しかしながら、金融以外の事業者、特にNPOで理解が不十分なのではないのか、そのため実施も不十分ということで、なかなか高い評価に至らなかったというふうにも受け止めております。

 大臣に、そこでお尋ねをいたします。

 今回のFATFの勧告と法改正の趣旨、これは、大手事業者の担当者だけでなく関係する国民の方々に広く理解いただくことが、マネーロンダリング、テロリズム資金供与などの対策を進めていく上で必要不可欠というふうに考えますし、また、そうした対策を進めていくことが、重点フォローアップ国、今回の評価でございますが、それが通常フォローアップ国への評価に上がっていくということにもなるのではなかろうかというふうに考えますところ、大臣におかれましては、この国民理解促進に向けてどのように取組を進めておられるか、お尋ねをさせていただきます。

谷国務大臣 お答えをいたします。

 櫻井周委員おっしゃるとおり、なかなか、大手の金融機関の関係者はともかく、一般の方にどこまでこれが周知されているのか。午前中の質問にもあったかと思いますが、その辺が我々の一つの課題であろうかと思います。

 マネロン、テロ資金供与、拡散金融対策の強化を図るといっても、やや抽象的ではあります。しかし一方で、国際的な協調の下、不正な資金等の移動を効果的に防止及び抑止することで結果的に我々の安全と安心の確保を実現するという意味では大変重要なことであろうかと思います。

 本法案のみならず、マネロン等の個別の対策につきましては、政府広報や関係省庁のホームページ等での広報を行ってきたところでありますが、より国民の理解を得るよう、いろいろな方の知恵もかりながら工夫をして、関係省庁間の連携や、広報内容、ツールの多様化を進めていきたいと思っております。

 引き続き、積極的な広報活動により国民の理解を得ながら、官民一体となってマネロン等対策を取り組んでいきたいと思っております。

櫻井委員 今回の法案、なかなか、ちょっと、ぱっと聞いて難しいなというふうに感じた理由、幾つかあろうかと思いますが、一つは、今回、主に六つの法案の束ね法案ということもあろうかと思います。これまでの、FATFの勧告を受けて法改正するときには個別法の改正を順次やっていたかと思いますけれども、今回、全部交ざっちゃっているので、どこに誰が関係するのかというのも、これをぱっと見ただけでは分かりにくくなってしまっているのではなかろうかなというふうにも思います。

 また、FATFの勧告自体、私も読ませていただきましたけれども、長文ということもあり、ボリュームも三百ページ近くあるということで、なかなか大変です。

 その上で、普通、法律を作るというのは、立法事実があって、それに対して、そういうお困り事を解決するために法律を作るという流れになろうかと思いますけれども、今回の場合は、FATFの勧告という報告書に基づいてやるものですから、一体何が問題なのかというのも若干分かりにくいということがあろうかと思います。

 あと、もう一つ。今回の法案審査に当たって、私、役所の方に、日本語訳はありませんか、下さいというふうにお願いしたんですが、ないですと言われたんですね。概要のところはあるんですけれども、全文の翻訳はないということなんです。

 やはり、日本国内で、関係する人、思わぬ人がマネロンとかテロ資金供与対策に関係してくるというふうに思いますので、やはり日本語訳というのをちゃんと作って公表した方がいいと思うんですけれども、大臣、どうですか。是非、日本語訳を作って、ちゃんとホームページで公表するというのをお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

谷国務大臣 全文を日本語訳でして公表してはどうかというお尋ねであろうかと思いますが、ちょっと私も、事務的にどれぐらいかかるのかということも確かめなければなりませんので、事務方に検討させていただきたいと思います。

櫻井委員 是非、検討して、公表いただくようにお願いします。

 では、この報告書に基づいて法案を作っているわけですから、役所の担当の方々はみんなこれを読んでいるはずなんですよね。役所の方々は、日本語だけじゃなくて英語も堪能な方がたくさんいらっしゃって、英語で読んでそのまま作業されているんでしょうけれども。

 ですから、役所の担当の方はそれでいいかもしれませんが、やはりこれを国民の皆さんに理解してもらう。条文を見ただけで、法律を見ただけでは、何でこういう法律になったのかということを考えたときに、やはり、勧告でこういうことが書いてあったからこういう法律になったのかと、そういう流れがあって初めて理解も進むと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、先ほど中谷議員からは条文に即した質問をしておりましたので、私からは、ちょっと角度を変えて、立法事実に即したような質問にさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっと順番が前後いたしますが、まず、北朝鮮のミサイル発射の資金源についてということで質問させていただきます。

 やはり、我が国から見て、テロ資金とかマネーロンダリングとかいろいろ思ったときに、北朝鮮、あれだけ何回もミサイルを発射すると、一体そのお金はどこから出てきているのか、国自体、映像等で見る限り、そんなに豊かな国ではないはずなのにというふうに思うわけです。やはり、いろいろな形でいろいろな不正な資金が北朝鮮に流れ込んでいるのではないのか、こんなふうにも思うわけでございます。

 今回のFATFのメカニズム、また今回の法律制定が、この北朝鮮のミサイル開発、発射などの資金源を断つというところにつながっていくのかどうなのか。こういった観点から、いかがでしょうか、大臣。よろしくお願いいたします。

谷国務大臣 北朝鮮によるミサイルなどの大量破壊兵器の発射等の抑止は、我が国にとって喫緊の課題であると認識しております。櫻井委員と同様の問題意識でございます。

 そのためには、北朝鮮による不法な資金調達を阻止する必要があり、我が国はこれまでにも、累次の国連安保決議に基づく措置や、北朝鮮向けの支払いの原則禁止といった我が国独自の措置を講じてきたところです。

 それらに加えて、本法案においては、ステーブルコインに対する資産凍結を強化するとともに、暗号資産交換業者等に対し、資産凍結の実効性確保のため必要な体制を確保する義務を課すこととしております。また、暗号資産取引の追跡可能性を高める観点から、暗号資産交換業者に対し暗号資産の移転に係る通知義務を課すこととしております。

 こうした取組により、北朝鮮による不法な資金調達を阻止し、ミサイルなどの大量破壊兵器の発射等の抑止等にも資するものと考えているところであります。

櫻井委員 あと、今テレビをつければ、やはり旧統一教会の問題も連日報道されております。この三か月間ずっと報道が続けられております。旧統一教会については、宗教法人法の解散命令が請求されるかもしれない、そんな状況もございます。

 そうすると、そうした団体からすると、その前に資金を日本国外に逃避させようというふうに考えるかもしれません。また、そうした不法行為で集めたお金が海外に移されてしまうと、被害者救済の原資が失われてしまう、こうした懸念もございます。

 大臣に、そこでお尋ねをいたしますが、FATFのメカニズム、また今般の法律改正で、例えば統一教会など、不法行為によって集められたお金が、資金が海外に逃避してしまう、そういうことを防ぎ、被害者救済の原資確保、こうしたことにつながるのかどうなのか、この点についても御説明をお願いいたします。

谷国務大臣 今回のFATF勧告対応法案は、FATF勧告を踏まえて、日本のマネロン、テロ資金供与対策等を強化するものであり、特段、旧統一教会の活動を念頭に置いた改正事項は盛り込まれておりません。

 何とか送金を止める方法はないのかという御指摘でございますが、御指摘の問題については、関係省庁間において、現行外為法等々でまた適切に対応されるべきものと考えております。

櫻井委員 今大臣から外為法という言及がございましたけれども、多分、外為法では、北朝鮮に直接持っていくとかというのだと、いろいろ規制をかけることはできると思いますが、例えば韓国に持っていくですとかアメリカに持っていくだと、なかなか難しいのではなかろうかなというふうにも思います。

 ですから、しかし、これは別に統一教会に限ったことではなくて、今までいろいろな形の組織犯罪とかがあって、それこそ何百億円、場合によっては一千億円を超えるような被害という事件もほかにもあったわけですから、こういったときに、そのお金が海外に逃避されて被害者救済ができないというようなこと、これまでもそうしたことがあったわけなので、やはり、今回を機に、こうしたことについても是非関係省庁で検討いただきたいというふうに思います。

 これは別に、FATFから言われてやるということではなく、日本国民の財産を守るためということですから、是非、内閣の中で検討いただいて、しっかりと、手遅れになる前に手を打っていただきたいというふうに思います。

 あと、それから、統一教会は後でまたちょっとやらせていただきますけれども、宗教法人はNPOの一つとしてこのFATFの勧告の中でも取り扱われております。そういった意味で、一般論としても、やはりしっかり取組を進めるべきタイミングではなかろうかというふうにも思いますので、是非その点も併せてよろしくお願いいたします。

 あともう一点、振り込め詐欺などの特殊詐欺についても同様に、やはりしっかり見ていかなければいけないのではないのかというふうにも思うわけです。

 令和三年で、認知、分かった、発見された、確認されたというだけで一万五千件ぐらいの件数の特殊詐欺があり、被害総額は三百億円弱もあったということでございます。これだけ、犯罪として明らかになっているだけでも相当な被害でありまして、高い水準で推移をしております。

 特殊詐欺が減らない理由として、特殊詐欺で得た資金がマネーロンダリングされて、犯罪を犯した側がちゃんと使えるような資金になってしまっているということがあるのではなかろうかというふうにも思うわけです。

 ですから、今般のFATFのメカニズム、また法改正によって、こうした特殊詐欺で得た資金のマネーロンダリングの防止、さらには特殊詐欺の撲滅につなげていくべきだというふうにも思うんですが、そういったことに今回の法改正はつながるんでしょうか。

保坂政府参考人 今回の法案におきましては、FATFからの勧告内容や、特殊詐欺を始めとする多くの事案でマネーロンダリングが行われているという国内の犯罪情勢を踏まえまして、マネーロンダリング罪の法定刑を引き上げるということにしております。

 委員御指摘のとおり、特殊詐欺の事案におきましては、例えば、詐取金を偽名の口座に入金して帰属を偽るといったマネーロンダリングが併せて行われる場合が多いものと認識をしております。

 マネーロンダリング罪の法定刑が引き上げられれば、一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価が明らかにされることによりまして、詐欺罪による処罰と併せて、マネーロンダリングに対しても一層強力な防止、抑止に資することになると考えております。

 さらに、今回の法案によりまして犯罪収益等として没収可能な財産が拡大されますので、仮に特殊詐欺の犯罪収益が例えば電子マネーですとか暗号資産という形で取得、保有、移転されていた場合には、これを確実に剥奪することができることになりますので、そういった犯罪収益の剥奪の徹底にも資するというふうに考えておるところでございます。

櫻井委員 特殊詐欺についても、今回のFATF勧告を見ますと、例えば四十三ページにそうしたことに関連するようなことが記載されておりますので、是非ともこの点についても取組を進めていただきたいというふうに思います。

 るる、立法事実といいますか、世間で話題になっていることと、それから今回のFATFに対応する法改正、つながっているものもあれば、つながっていないものもありますが、ただ、マネーロンダリング、テロ資金供与、こうしたものを防止していく、対策をしっかり講じていくという観点とそれから法律がつながっているんだということになりますと、国民の皆さんの理解も進んでいく、また、面倒くさいけれどもちゃんとやらないといけないなという意識醸成にもつながっていくのではなかろうかというふうに考えるものですから、是非ともこうした、具体的に分かりやすい広報といいますか、伝え方というのを是非お願いしたいというふうに思います。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。NPO関連についてでございます。

 今回、対日相互審査報告書の勧告の項目、四十ある中で、唯一、ノンプロフィットオーガナイゼーションの項目がノンコンプライアント、NC、不履行ということでしょうか、こういう判定を受けております。

 NPOについての記載は百六ページから百七ページにいろいろ書いてあるわけなんですけれども、ただ、改めてちょっと大臣にお尋ねしたいのは、このNPOについて、ほかは一応、何かマルとか、三角かもしれないけれども、今回バッテンがついたのはNPOのところだけなんですよね。これは何でNPOの項目だけNC、ノンコンプライアントの判定となったのか、その理由についてお聞かせいただけますでしょうか。

谷国務大臣 御指摘のNPOの悪用防止に関する項目については、昨年八月のFATFの対日審査報告書において、一つは、テロ資金供与に悪用されるというリスクを前提に監督しているわけではない、それから二つに、テロ資金供与に関するNPOに対するガイダンスも行われていないという日本の現状について指摘を受けており、その結果、不履行、NCとの評価になったものと承知しております。

櫻井委員 特に今回のこのNPOに関連して書いてあることとしまして、やはり海外で活動している、特に紛争地域、日本語訳をいただけなかったので英語で書いてあるのをそのまま申し上げますと、バイオレント・コンフリクト、テロリスト・オーガナイゼーションズ・アクティブリー・オペレーティングとか、ウィーク・ルール・オブ・ロー、アンド・オア・シビア・ポリティカル・インスタビリティー、こういった地域において活動している日本のNPOについて、必ずしも十分な対応ができていないというような報告が書いてあります。

 こうしたNPOについては、やはり外務省の国際協力局と御縁が結構あるのではなかろうかというふうにも思うわけです。過去には、関連して、ODAに関する有識者懇談会が提言を出しておりまして、二〇一八年十一月です。当時、河野太郎外務大臣でしたけれども、提出をされております。

 その六ページには「ODAに関する国民・市民の理解・認知度の向上とそのための媒介としてのNGOの価値の向上を図る」という一項目がありまして、さらに、その次の項目、七ページには「NGOの財政基盤強化」というようなことが記載されておりまして、国際協力の分野で活動するNPOの育成、強化がうたわれております。

 一方で、今回のこのFATF対応の法案の中では、NPOに関する法改正というのは特に予定されていないようでございます。この点について、昨日も本会議の中で谷大臣から御答弁いただいて、NPOについては、テロ資金供与に悪用されるリスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングを実施するというようなこと、それから、対策の好事例に関する周知を行うというようなことを述べられておりますけれども、もう少し具体的にやっていかないと、これは三角じゃなくてペケがついている項目ですから、やはり相当力を入れてやらないといけないと思うんです。

 こうしたことについて、今日は外務省から大臣政務官にも来ていただいておりますので、お尋ねします。

 これは二〇一八年十一月に外務大臣へ提言されておりますが、そこでNPOの育成と強化というふうにうたわれているわけなんですが、それは三年前の提言です。その後どのような取組がなされてきたのか、そして、その結果どういった成果が上がっているのか、御説明をお願いいたします。

吉川大臣政務官 お答え申し上げます。

 二〇一八年のODAに関する有識者懇談会、この提言を踏まえまして、外務省では、二〇一九年より、日本NGO連携無償資金協力、いわゆるN連事業、及びジャパン・プラットフォーム、JPF事業におきまして、NGOが事業を行う上で前提となる、団体の維持、運用に必要な経費でございます一般管理費の拡充、これを行ったところでございます。

 また、二〇二一年より、同提言にもうたわれております、NGOによる事業を他のODA事業と同様に成果ベースで適切に評価を行い、その成果を可視化する、第三者によるN連事業の評価、こちらを実施をいたしておりまして、その結果を外務省のホームページでしっかりと外部に公表をしているというところでございます。

 第三者評価を通じまして、NGO固有の価値が明らかにされ、日本社会におけるNGOの信頼性の向上につながるというふうに期待をしているところでございます。

 また、NGOを通じました支援といたしましては、現地のニーズに細かく対応することができるほか、日本の顔が見える支援ということで、この観点からも大変重要であるというふうに考えておりまして、政府といたしましても、引き続きNGOの活動をしっかりと支援してまいりたいというふうに思っております。

櫻井委員 今、政務官からいろいろ取組について御説明いただきました。ありがとうございます。

 いろいろ取り組んでいただいている、ただ、結果はまだNCだったというのが、これは一年前の、調査の時点での日本の評価ですが、一応まだNCだったということで、更なる取組が必要だというふうに思いますので、その点、よろしくお願いいたします。

 それから、NPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンスということで、内閣府でも取組を進められていると承知をしております。内閣府政策統括官の経済社会システム担当付参事官、共助社会づくり推進担当のところのページにおきまして、このガイダンスが作成されて公表されております。

 これを拝読したところ、八ページに「テロ資金供与に悪用されないために行うべきことは何か」という説明がございます。ただ、この説明書きは一般的な説明にとどまっていて、これではなかなか実効性を高めていくというのは難しいんじゃないのかなというふうにも思いました。

 具体的には、途上国で活動しているパートナーから提案された事業内容が漠然としているとか、パートナーの主要活動場所とされる住所に連絡が取れないなど、そんなことが書いてあるわけですが、それはそのとおりなんですけれども、そんなことは分かっているし、ちゃんと連絡は取れて、何かそれらしい事業を書いて送ってくるのが、多分、だまそうとする側だったら、普通それぐらいのことはすると思うんですね。ですから、そういったときにも、それでもだまされないようにするにはどうしたらいいのかということが重要だと思います。

 あと、書いてある中身によっては、例えば、パートナーが異常なレベルでの守秘義務を求めてくる、これも、これで即バツだというふうに言ってしまうと、またこれは別な問題が出てくるのではなかろうかというふうに思います。

 例えば、人権が抑圧されているようなそういう国では、人権擁護の活動をしている団体ならば、やはり相当のレベルでの守秘義務といいますか、秘密を守ってください、ばれちゃったら自分たちの命が危ないんですというようなことを言ってくる場合もあるかもしれませんから、それはそれで、ある種合理的であるようにも思います。

 ですから、このガイダンス、もう少し詳しく、丁寧な内容にしておくべきではなかろうかというふうに思うわけなので、だまされた事例ですとか、だましの手口などをもっともっと詳しく紹介するなど、ガイダンスの各項目について十分理解されるように充実していくべきだというふうにも思うわけですが、内閣府、これはどのようにお考えでしょうか。

自見大臣政務官 御質問ありがとうございます。お答えいたします。

 内閣府から六月に発出をいたしましたNPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンスにおきましては、NPO法人がテロ資金供与に巻き込まれやすい活動といたしまして、委員も御紹介していただきましたが、三点を挙げております。

 テロの脅威にさらされた地域やその周辺等の高リスクの国、地域などにおける活動、二番目といたしましては、海外におけるパートナーとの連携やボランティアの活用、三番目といたしましては、海外への送金や現金の持ち出し、こういったところを挙げさせていただきまして、所轄庁において、こうした活動を行うNPO法人に対しましては、関係者の身元の確認や安全な送金手段の利用などの取組を行うよう強く勧めているところでもあります。

 全国の所轄庁等に対しましては、NPO法人のモニタリング等を実施するよう求めているところでもありますが、委員から、具体的な事例等々を踏まえてということもございました。そういった問題意識も十分に受けまして、今後とも、モニタリングで得られた事案や関係省庁からの情報等を当該ガイダンスに反映させ、そして、NPO法人にとっても実践的で分かりやすいガイダンスとしてまいりたいと存じます。

櫻井委員 FATFの報告書の中にも、ちょっと抽象的ではありますが、いろいろなケース、こんな手口があるよみたいなことも書いてあったように読ませていただきましたので、是非、そういったものも参考にしながら、しかし、それだけじゃなくて、更にもっと詳しいものを作っていただければというふうに思います。

 それから、一方で、NPOに自助努力を促していくということであったとしても、それにはやはりいろいろな限界があろうかと思います。

 もう一回ちょっと外務省にお尋ねをしますけれども、やはり在外公館、特に紛争地で人道支援を行っているNPOに対して情報提供をすることができると思うんですけれども、ホームページ等でもいろいろ公表はされているでしょうけれども、ただ、ホームページに載せていいほど、確信を持って、確たる情報でなくても、どうもあそこは危ないから気をつけた方がいいよとかいうような話、これはなかなか外務省のホームページに載せたりはできないと思うんですけれども、しかし、そういう生の情報をしっかりと提供していくというようなことでNPOの活動を支援していくこともできるのではなかろうかと思うんですが、こういった取組、在外公館での取組について、外務省、いかがお考えでしょうか。

吉川大臣政務官 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、NGO・外務省定期協議会を定期的に開催をいたしておりまして、海外で支援活動を行うNGOまたNPO法人関係者に対する各種情報提供また意見交換を行っており、連携強化を図っているところでございます。

 例えば、本年七月十一日に開催いたしましたNGO・外務省定期協議会におきましては、内閣府作成のNPO法人テロ資金供与対策のためのガイダンスに関し、参加したNGO及びNPO法人の関係者に対しまして、内閣府の担当者より、非営利団体がテロリストに悪用される事例でございますとか、あるいは手口、そして、知らぬ間にテロ資金供与に関与させられていた、あるいは関与させられる危険性、また、テロ資金供与に悪用されないための取組、こういったものについて具体的に説明を行ったところでございます。

 また、委員御質問の在外公館におきましては、現地にて活動するNGOまたNPO法人の関係者等から現地情勢等に対して照会がある場合には、従来より適切に情報提供を行ってきているところでございます。

 引き続き、委員の御質問も踏まえまして、情報提供にしっかりと尽力をしてまいりたいというふうに思っております。

櫻井委員 是非よろしくお願いいたします。

 これまで、在外公館等で、外務省が資金の出し手になって活動するようなNPOの活動というところではいろいろな連携はしてこられたんだと思いますけれども、そうじゃない、外務省とは全然関係のないところからの資金でもって活動しているNPOとどこまでおつき合いがあるのかどうなのか、おつき合いが薄いところに対しても、しっかり情報提供なり支援をしていただければというふうに思います。

 続きまして、宗教法人についてもお尋ねをいたします。

 FATF勧告の三十七ページには、タイプス・アンド・ナンバーズ・オブ・NPO・エンティティーズということが書かれていて、ここでは、いわゆる日本で言うところのNPO法人だけじゃなくて、公益法人、学校法人、宗教法人も含まれているということで、FATFの言うところのNPOには宗教法人も含まれております。

 そして、百七ページのところにはオウム真理教の事件についても言及がされております。NPOのガバナンス強化はテロ資金供与リスクの低減に効果はある、事件を起こしたオウム真理教に対して、そのときには幾つか管理は行われてきたけれども、しかし、リスクベースの管理監督は十分行われてこなかったというような記載もございます。

 やはり、宗教法人という看板を出していれば何をやってもよい、治外法権になってしまうということではいけないと思います。宗教法人も非営利法人の一つとして真っ当なガバナンスを行う、そのための管理監督はしっかり行うように提案をさせていただきますが、これは、文部科学省、今まさに宗教法人関連でいろいろ取組をされていると思いますが、政府の見解をお願いいたします。

簗副大臣 お答えいたします。

 御指摘のFATF第四次対日相互審査報告書では、宗教法人を含む非営利団体、NPO等ですね、の悪用防止の内容でノンコンプライアントの評価を受けたことは承知をしております。

 文化庁においては、例年、研修会を通じて、宗教法人や都道府県に対し、マネーロンダリング、テロ資金供与対策に関するFATF勧告の内容や、NPO等が悪用される危険性などについて周知を行うとともに、特に不活動宗教法人が悪用されることを防止する観点から、都道府県に対して、不活動法人対策の事例の共有やモデル事業の推進などを行っているところでございます。

 今後とも、他の関係省庁とも連携をして、必要な対策に取り組んでまいります。

櫻井委員 NPOに関連していろいろ提案もさせていただきましたけれども、ただ、NPOのガバナンス改善をしていくということは、今回、第四次のFATF勧告ではNCがついていたわけでございます。第五次に向けて、先ほど中谷議員からの質問に対して、重点フォローアップの国ではなくて通常フォローアップの国を目指すというふうに宣言をしていただきましたので、是非、この観点からも、やはりNPOの項目を改善していかなきゃいけないということだと思います。

 是非、NPOのガバナンス改善にしっかり努めていただきたいと思いますが、一方で、NPOのガバナンス改善ということになると、やれいろいろな報告書を出せとかいうことになると、これまたNPOの活動にとっては重荷になってしまう、活動が十分できなくなってしまう、足を引っ張ってしまうことにもなってしまいます。

 これはなかなかさじ加減が難しいところではございますが、NPOの活動をしっかりと支援しつつガバナンス改善も促していくことが大変重要だというふうに思いますが、この点、しっかりと進めていく、今回、法改正の対象にはなっていないけれども、NPOの項目についてもしっかりと改善を図っていくということで、大臣の御決意、取組を是非お願いいたします。

谷国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の法改正の対象にはなっておりませんけれども、しっかりと、NPOのよさを生かしながら、FATFの要望に応えるように、両方をにらみながら頑張ってまいりたいと思います。

櫻井委員 そして、NPOには宗教法人も含まれているということで、昨今大変問題になっておりますけれども、この点についても含めてよろしくお願いいたします。

 続きまして、マネーロンダリングについての質問をさせていただきます。

 FATFの勧告の中でギャンブルがどのように取り扱われているかということですが、当時、IRでのカジノについてはまだ日本では行われていないということで勧告の対象外になっていたかと思いますが、この点について、どういうふうに扱われているのか、御説明をお願いいたします。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 FATFの勧告におきましては、オンラインカジノを含むカジノの事業者に対しまして、取引時確認など、マネロン対策の措置を講じさせるよう各国に求めている、つまり、カジノが合法な国に一定の対応を求めているところでございます。日本においては、御案内のとおり、刑法により賭博行為は禁止されておりますことから審査の対象外となったものであります。

 なお、IR整備法につきましては、二〇二一年七月に全面施行されましたところ、FATFの審査のルール上、審査団によるオンサイト審査の最終日までに施行されている法令のみが審査対象となると定められておりますことから、FATF対日審査のオンサイト審査が二〇一九年秋であった、そういう時間差がございまして、第四次審査におきましてはFATF審査の対象外となったという経緯でございます。

櫻井委員 あと、カジノ関連については、ほかにも、「Boryokudan」とローマ字で書いてあって、そういった形で、ギャンブリングということも記載がございますが、ただ、ちょっと今回のこのFATFの勧告を見ていてふと疑問に思ったのは、例えばオンラインカジノ、日本でも違法だと言われながら幅広く行われてしまっているものがございます。こうしたものを通じてマネーロンダリングとかテロ資金供与、こうしたことにつながっているリスクがあるんじゃないのかというふうにも考えるんですが、この第四次FATF勧告を見た範囲では記載がちょっと私見つけられなかったものですから。

 こういったことについて、FATFのメカニズムないしは今回の法改正、ないしはそれ以外で、このオンラインカジノに対する取締りといいますか、こういったことからお金が海外に流れてしまうというようなことに対する対策というのはどういうふうになっているのか、お答えいただけますでしょうか。

内野政府参考人 オンラインカジノにつきましても、先ほどの御説明と同様のことになってしまって恐縮なんですが、FATFの勧告上は、カジノの事業者に対する取引時の確認等、いわば合法であることを前提にしてこういうことをやってくださいという作為義務をいろいろ国が課さなきゃいけないということになっておりますことから、少なくともFATFの勧告上は、これは射程の外で、まさに違法な行為として、もう既に違法行為とされているものについては、それをどう取締りをしていくかということが課題になっている、そういうものと認識しております。

櫻井委員 持ち時間が終了いたしましたので、これで質問を終わりますけれども、ちょっとこれは、例えばオンラインカジノについては重要な点が抜けてしまっているんじゃないのかと思いますし、そのほか、いろいろな課題が残っているのではなかろうかとも思いますので、その点を指摘をさせていただき、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後、二十分、よろしくお願いいたします。

 FATFの第四次審査報告書を読んだんですけれども、どう言い繕っても、今回はぎりぎりセーフというのが現状だろうと思います。

 ただ、私が思うのが、日本より成績がいい国の中に、例えばロシアとかイタリアとか、そういう国が入っている。もっと言うと、日本は、例えばサウジアラビアとかマレーシアとか、そういう国よりも実は状況が悪いというふうに認定されているわけですが、別に日本が超マネロン大国だと私は思わないんですね。

 FATFの指摘を細かく読んでみると、どう見ても、日本側が自国の対応を正しくきちんと説明し切れていないことをうかがわせる表現が散見されます。何々が明らかでなかったとか、よく分からなかったとか。つまり、英語対応とかプレゼン能力とか、そういうところに問題があるのではないかと思いますが、いかがですか。

内野政府参考人 FATFの相互審査におきましては、審査団に対しまして、国際基準に沿った形で、自国の制度や対応につきまして、英語又はフランス語で的確に説明するということが重要となってございます。

 FATF自体は第四次対日審査の具体的な内容を開示しておりませんので、詳細は差し控えますが、昨年八月に公表された報告書は、関係省庁のほか、金融機関や業界団体など、幅広い対象者にヒアリングをした上で取りまとめられてございます。

 その過程におきまして、これは日本に限った課題ではないと思いますが、すべからく完璧に審査員に応答できたかという点は、母国語でない言語での説明を要したということで、一つのハードルが存在したということは認識をしてございます。

緒方委員 私、見ていて、本当に、報告書の最後の一文ですよね、明らかでなかったとか、よく分からなかったとか書いてあるのを見て、多分説明できていないんだろうなと思うので、第五次審査に向けては、本当によろしくお願いを申し上げます。

 その過程で、実は、先ほど言ったような国々というのは、恐らく、外形的には体制が整っているんだと思います。例えばイタリアという国なんというのは、マフィア対応で非常に法制度が整っていて、それをきちっと説明できているので点数が高いということになっているんだと思いますが、こういう外形的に体制が整っているかどうかということが非常に重要であると思うときに、非常に気になるのが、もう今日出たかもしれませんけれども、犯収法における司法書士の扱いが非常に気になります。

 取引の確認については、犯収法の第四条一項ですけれども、弁護士が落ちています。ただし、弁護士は取引確認の義務から落ちているんですが、その後、第十二条で、弁護士については会則で対応するということが書いてあります。

 一方、資産、収入の確認、第四条第二項において、司法書士が落ちているんですね。あともう一つ、第八条、疑わしい取引が、これも司法書士は義務から落ちています。

 しかし、それを補うために、例えば、会則で対応しますとか何だとか、そういう規定がないと、これは法の欠陥ではないかと思いますが、いかがですか。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 まず、法律の立て方といたしましては、司法書士等は、行政書士等、公認会計士等又は税理士等とは異なり、対立する当事者間の民事紛争解決業務を取り扱うことから、依頼者との信頼関係の構築が重要であるため、疑わしい取引の届出義務の規定を法律で設けることは弊害が大きく、相当ではないと考えているところでございます。

 また、その法制度でございますが、一方で、司法書士の業界におきましては、独自にマネーロンダリング対策を進めていただいているというふうに承知をしております。

緒方委員 しかし、弁護士は大丈夫なんですよね。弁護士は規定の中に義務がかかっていて、司法書士だけ落ちているんですね。しかも、弁護士については会則で対応すると、きちっと法律で、その後補うことがある。

 まさに、第五次でFATFで審査するときに、落ちているじゃないですか、法律上、こういう指摘が来るじゃないですか。別に、法律で義務を課せと言っているんじゃない。司法書士についても、弁護士会と同じように、第十二条の二みたいなものを設けて、司法書士会においても会則できちっと対応するんだというふうに入れておかないと、また第五次審査のときに、これは落ちていますよという指摘を受けるじゃないですか。いかがですか。

猪原政府参考人 お答えいたします。

 二つの面に分かれると思うんですけれども、取引時確認につきましては、弁護士あるいは司法書士におきましても、それぞれやっていただくという法律の仕組みになっておりまして、疑わしい取引の届出につきましては、弁護士、司法書士共に法律では措置されていないというふうに整理をいたしております。

緒方委員 別に、司法書士会を何か疑ったりとかしていないんですね。単に法律上、義務で落ちているので、読んでいけば、次、第五次のときに説明するときに、これは落ちているじゃないですかという指摘が来たときに、またこの分野で指摘をされるというのはよくないでしょう、そう言っているんです。いかがですか。

猪原政府参考人 法律の仕組みといたしましては、弁護士につきましては、取引時確認そのものを法律の規定ではなく弁護士会の会則で行っているという仕組みであるというふうに承知をしております。

 一方で、疑わしい取引の届出につきましては、弁護士、司法書士共に法律上は義務づけられていないというふうに整理しております。

緒方委員 答弁になっていないんですけれども。もうちょっとしっかり答弁してください。参考人が参考になっていないというのがありますが。本当にこれ、止めてもいいぐらいなんですけれども、そういうことをするとよくないのでやりませんけれども、今の答弁、全然、誰も納得していないですよ。よく考えた方がいいと思いますよ。

 質問を移したいと思います。

 次に、NPO法人、先ほどから議論がありますけれども、何度も言われるように、法令整備で唯一のノンコンプライアントであると。これは何かというと、収益事業以外は非課税であるということが、これが狙われているんだと思います。

 つまり、反社会勢力のフロントにならないように、例えばNPO法人とか宗教法人とかそういうものをそういうフロントにならないようにしていくということが大事なんだ、私はそう思っているんですが。

 宗教法人についても、NPO法人についても、宗教法人は所轄庁の大半が都道府県知事です、NPO法人については都道府県知事。NPO法人については、政令指定都市は、活動が政令指定都市の中で収まるのであれば、政令指定都市市長が所轄庁です。金融、警察当局の対応は言うまでもないんですが、自治体側にしっかりと意識づけをして、宗教法人、NPO法人、それ以外にもいろいろな、このFATFで言われるところのNPO法人に当たるものはあると思いますが、そういう所轄庁に対する対応が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

大矢政府参考人 お答えいたします。

 NPOが反社会勢力のフロントになってはならないというのは、全く仰せのとおりだと思います。

 NPO法人を始めとする非営利団体に関しましては、昨年八月、FATFの対日審査報告書、第四次審査報告書におきまして、御指摘のとおり、これだけノンコンプライアントになりまして、NCということでございまして、FATFからは、リスク評価を実施して、リスクベースアプローチによって、リスクに応じてモニタリングを実施すべきだという指摘を受けたところでございます。

 これを受けまして、内閣府におきましては、NPO法人のテロ資金供与リスクに関する文書を取りまとめ、本年六月に、全国の所轄庁、都道府県、政令指定都市に対して説明会を開催する等によってモニタリングなどの実施を求めたと承知をしております。

 加えまして、内閣府においては、テロ資金供与への悪用を防止するためのガイダンスを作成し、所轄庁に対して、全国のNPO法人へ当該ガイダンスを説明、さらに周知する、これを求めたと承知をしております。

 また、文化庁におきましては、研修会等を通じまして、宗教法人や都道府県に対しまして、マネーロンダリング、テロ資金供与対策に関するFATF勧告の内容、それから、NPO等が悪用される危険性などについて周知を行うとともに、特に不活動宗教法人が悪用されることを防止する観点から、都道府県に対しまして、不活動法人対策の事例の共有、モデル事業の推進などを行っているところと承知をしております。

 今後、関係省庁の間でよく連携しながらこうした取組を進めることで、FATFによる対日審査の評価改善につながるものではないかと期待をしております。

緒方委員 頑張ってください。

 続きます。

 地銀とか信用金庫についても指摘があるんですね。その観点で、私、個人的な経験で、かつて外務省にいたときにタリバン制裁を担当していたことがあります。これは結構難しゅうございまして、例えばよく聞くモハンマドという名前なんですけれども、Mの後に次のつづりがOが来るかUが来るかというのは書く人によって違うんです。モハンマドというのは、ムハンマド、モハンマド、違うんです。一文字違うだけでコンピューターシステムからぱあんとはじかれるんですね。

 今、レクのとき聞いてみたら、そういうのをフォローする体制はだんだん整ってきているということでありましたが、こういった細かいところを、地銀とか信用金庫にそれも対応してくれというのは無理があると思います。

 なので、共通のプラットフォームをつくって、そういうテクニカルなところというのはきちっとした形で対応できるようにして、地銀、信用金庫で何か怪しげな取引があるときの対応を全て、地銀、信用金庫、それ以外の金融機関もあると思いますが、そういうところに投げないということが大事だと思うんですけれども、いかがですか。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、制裁対象者への対応につきましては、例えば同一人であっても名前の表記のアルファベットのスペリングに違いが出てくるといった問題がございます。こうした観点から、こちらも委員から御紹介ございましたけれども、現在、多くの金融機関で、制裁リストの照合のために、スペリングの違いを幅広に検知する曖昧検索という機能を備えたシステムを活用しているところでございます。

 他方で、中小金融機関においては、こうした制裁対応について、高度化や効率化等を図るには負担が大きいとの声があることは承知しております。このため、例えば、現在、銀行界では、全銀協を中心に、マネロンシステムを共同化し、高度化及び効率化する検討が進められており、金融庁としてもこの取組を支援しているところです。

 我々といたしましては、各金融機関がマネロン対策等を共同化して、その知見やノウハウ等を集約する形で業界全体として取り組むことは、対策の実効性や効率性の向上に資するものと考えており、引き続き、業界団体等ともよく連携しつつ、共同システムの活用等による中小規模の金融機関の負担軽減と全体の底上げに取り組んでまいります。

緒方委員 銀行の仕組みを見てみると分かるんですけれども、日本人だと名字があって名前があるということなんですが、例えばアラブの人って、自分の名前、ビン、父の名前、ビン、おじいさんの名前、一族の名前というので、完全に名前の形態が違うので、コンピューターの仕組みに入れるとどれが何に当てはまるのかというのも、これですら外してしまうことがあるわけですよね。これですらコンピューターシステムからぽこっと落ちてしまうことがあるわけでありまして、こういう難しさがこれからたくさん出てくると思います、既にあると思いますけれども。これを、負担を地方の金融機関に丸投げしないように、先ほど共通のシステムと言いましたが、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、貴金属店についてお伺いをしたいと思います。

 貴金属店についても、こういうマネロンについてよく分かっていないのではないかという指摘があります。金の地金の対応というのは非常に、警察、財務省、そして経済産業省、苦労していると思います。こういった貴金属を通じたマネーロンダリングについては、業界法の業法がないので非常に対応が難しいのではないかというふうに思いますけれども、経済産業省がガイドラインを作られたということです。

 このガイドラインで五次審査に堪えられるようなものになっているというふうに思われますか、経済産業省。

定光政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省におきましては、これまでも、宝石・貴金属等取扱事業者の業界団体と連携しまして、犯収法に規定された義務の遵守など、マネロン対策の徹底などの周知を行っております。また、今年の二月には、先ほど御質問ありました、宝石・貴金属等取扱事業者におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインを策定、公表いたしまして、様々なリスクの特定、評価、低減などを事業者自らが行えるよう普及啓発を行っております。

 今後も、こうした事業者における健全な取引環境が維持されますよう、関係省庁、団体と連携して、犯収法やガイドラインに基づく指導監督をきめ細かく行ってまいりたいというふうに考えてございます。

緒方委員 金については消費税を狙った脱税が結構頻発して、これで関税関係の法律を改正して重罰化しているんですけれども、ただ、これが余り、今までそこまで効果を示していないということがあったりして、この件、結構難しいところがあると思います。頑張ってください。

 それでは、犯罪収益の没収についてお伺いします。

 これも厳しい指摘がなされておりますが、いろいろと物の書物を読んでおりますと、結構いろいろな課題があるんじゃないかというふうに思ったんですね。

 幾つかまとめて質問させていただきたいと思いますが、送金先の口座を差し押さえたりとか、さらに凍結したりすることが非常に難しいのではないかという指摘がある、それについてどう思うか、一点目。マネロンの中で収納代行業者が入ってくるときに、収納代行業者というのは、別に自分でお金を持っているわけではなくて、すぐに誰かに渡しちゃうので、こういう人が取締りができていないんじゃないかというのが二点目。三点目、犯罪に使われるホームページのドメインを没収するようにしてはどうか。悪いことをやっているホームページ、大体ウェブでやっているわけですから、犯罪に使われるホームページのドメインそのものを没収できるようにしてはどうか。

 この三点、お伺いしたいと思いますが、いかがですか。

保坂政府参考人 一点目の、犯罪収益が送金されるなどした口座につきましては、現行の組織犯罪処罰法によりまして、没収すべき犯罪収益があるという場合には、それを保全するという形で没収保全の手続が定められておりますが、もとより、そういう口座をどうやって捜査の過程で発見するかというところは、それはなかなか容易ではない面もあるので、そういった形での指摘かも分かりませんが、いずれにしても、法制度としてはそれは可能でございます。

 それから、収納代行業者が入った場合ということでございます。ちょっと具体的な事案を前提にすることは難しいのですが、没収ということでいいますと、組織的犯罪処罰法の没収というのは、犯罪収益として、犯罪により得た財産が、それが転換していった場合でも、それが追跡可能な限りは法的には没収が可能ということになっています。ただ、間に関与者が多くなりますと、それはトレースしていくのが捜査として難しい面があるのかもしれません。ですから、その指摘かもしれません。

 それから、ドメインについて没収するというお話ですが、申し訳ございません、私、ドメインということについて詳しくないのですが、今回、没収可能な財産を、財産の性質にとらわれず対象にするということにしております。したがいまして、財産に該当するものであれば、それは没収可能でございます。

 例えば、何とか利用権みたいなもの、例えば電話利用権とかゴルフ会員権とか、そういった金銭債権でないものについても財産である限りには没収可能というふうに理解されますので、例えば何とか利用権みたいなものがドメインについてもあるのだとすれば、それはその権利を没収することが可能になるのかなというふうに差し当たり考えたところでございます。

緒方委員 先ほど言われたように、間に幾つかエージェントが入ると対応するのがだんだん難しくなる、もっと言うと、国境をまたいで管轄権が別のところに行っちゃうと更に対応できなくなるということなんですが、ここはまさに国際協力の事案でありまして、国際協力、是非しっかりとやっていただきたいと思います。

 網をかけて追っかけていくというのが大事でありまして、この点についていかがですか。

保坂政府参考人 御指摘のとおり、没収の対象になるような犯罪収益が外国に所在するという場合には、日本で直接それを没収を執行するということができませんので、日本で裁判をして没収判決を得たという場合には、その没収判決の執行を外国の当局に対して共助をお願いする、外国の方でその日本の判決を執行してもらって没収の目的を遂げるという形の、執行の共助という仕組みがございます。

 これについても、おっしゃるとおり、外国に資産が流出しますと、それをトレースするというのが実際上なかなか難しいところがありますが、もし発見できた場合には、そういった形で没収ができるようにするという仕組みになっております。

緒方委員 終わります。

大西委員長 次回は、来る十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時散会


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