衆議院

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第7号 令和4年11月11日(金曜日)

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令和四年十一月十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    工藤 彰三君

      小寺 裕雄君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      土田  慎君    中野 英幸君

      中山 展宏君    平井 卓也君

      平沼正二郎君    本田 太郎君

      牧島かれん君    松本  尚君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    岩谷 良平君

      浦野 靖人君    堀場 幸子君

      岬  麻紀君    岡本 三成君

      河西 宏一君    福重 隆浩君

      浅野  哲君    塩川 鉄也君

      田村 貴昭君    緒方林太郎君

      櫛渕 万里君

    …………………………………

   国務大臣         谷  公一君

   内閣府副大臣       星野 剛士君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   デジタル大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    尾崎 正直君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大矢 俊雄君

   政府参考人

   (内閣府知的財産戦略推進事務局次長)       澤川 和宏君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局官房審議官)       大胡  勝君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         猪原 誠司君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            屋敷 利紀君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            三好 敏之君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            川崎  暁君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            柳瀬  護君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   二宮 清治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 山崎  翼君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 内野洋次郎君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    堀内  斉君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十一日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     土田  慎君

  岩谷 良平君     岬  麻紀君

  福重 隆浩君     岡本 三成君

  塩川 鉄也君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     牧島かれん君

  岬  麻紀君     岩谷 良平君

  岡本 三成君     福重 隆浩君

  田村 貴昭君     塩川 鉄也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房内閣審議官大矢俊雄君外十三名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。馬淵澄夫君。

馬淵委員 このFATFの勧告対応の法案につきまして、本来であれば今年の通常国会、ここでの提出が想定されていた法案であります。今回、この臨時国会での審議となりましたが、もう既に、この法案の審議、勧告より一年以上が経過をしているわけであります。

 報道では、今年の一月の十六日、常会での法案提出を見送る方針ということが流れました。事実、政府の中では、いわゆる文書課長会議が行われて六十一本の法案が確認をされた中で落としていかれるわけですけれども、その後も三本減らされて、岸田内閣では参院選を前にして法案を絞るということであったかもしれませんが、そもそも、この勧告を受けて、マネーロンダリングの対策というのはまさに焦眉の急であるはずです。

 したがって、これは常会で法案提出すべきだったと私は思っておりますが、開会前に早々と法案成立を諦めて先送りした理由について、谷大臣はそのとき大臣ではおられませんでしたが、今は所管されています。なぜこのように遅れたのか、端的にお答えください。

谷国務大臣 FATFの勧告対応法案につきましては、御指摘のとおり、昨年八月の審査報告書の公表を受けて、迅速に対応するべく、内閣官房にFATF勧告関係法整備検討室を設け、同室を中心に必要な法制度の整備に向けて精力的に作業を進めてきたところであります。

 検討項目が多岐にわたることから一定の時間を要したところでございまして、今般、法案作成作業が終了したことから、この臨時国会に提出させていただいたところであります。

馬淵委員 法案の作成に時間がかかったというお話でありますが、果たして本当にそうなのかというのは私は大変疑問に思っております。少なくとも準備は整っていたはずです。

 そして、今年の二月、ロシアによるウクライナへの侵略がありました。日本政府もこれを受けて、新たに外為法や関税法の改正を四月に行って、経済制裁の強化を行っています。

 常会にこの法案が提出をされていれば、例えば、暗号資産の交換業者に対する規制強化やあるいは罰則強化、こうしたことを施行期日を前倒しにして修正などをすれば、ロシアに対する金融制裁の効力をより高めることができたはずです。大臣、それについてはどうお考えですか。

谷国務大臣 馬淵委員は、昨年、立憲民主の国対委員長として、与野党の様々な交渉も、私よりもはるかに御存じかと思います。

 ただ、私としては、先ほど申し上げたとおり、政府としても精力的に広範な作業を進めてきたものの、検討すべき項目が多岐にわたったということから一定の時間を要し、今臨時国会への提出の運びとなったということで御理解いただければと思います。

馬淵委員 閣法の提出に関しては、これは一義的に官邸での判断だということは私も承知をしておりますが、あえて大臣に申し上げたいのは、昨年の八月の三十日ですよ、四次勧告が出たのが。そして、それに向けてすぐにでも対応しなければならないということで、この法案の作成に努められた、それぞれ各役所の皆さん方のその御努力を多とする思いをお持ちいただくならば、私は、これはやはり遅過ぎたと言わざるを得ないんです。

 ある意味、政治家が政局の中で法案の提出を様々判断することは、これはあるかもしれませんが、こうした状況で霞が関が疲弊をしてしまうということ、このような状況が続けば、残念ながら、若い優秀な官僚がそれこそ職を去ってしまうことだって起こりかねないということで、改めて、この法案が先送りされたことの問題点というのを大臣にはよく御承知をいただきたいというふうに思います。

 その上で、内容についての質問に入りますが、まず密輸入に関してです。

 金地金あるいは現金の密輸入、これについては公正な市場確保のためにしっかりとした対応が必要だということで、特に金地金の対応につきましては、今日までの様々な取組があって、一昨日の委員会でもそれぞれ委員の皆さん方が取り上げておられました。

 金地金の密輸入の仕組み、これはもう皆さんよく御存じのとおり、密輸ということで、消費税を申告、納付せずに国内に持ち込んだ金地金を国内の金地金買取り事業者に売却することによって、消費税相当額分を利益として獲得することを目的として行われているということであります。

 この金地金の密輸入に対して、平成三十年の関税法の改正によって罰則強化が図られました。摘発件数は、罰則強化後、確かに減少傾向にあるとの数値が出ておりますし、そのように説明を受けております。

 平成三十年四月の罰則強化以降、摘発件数は急降下、平成三十年の一千八十六件が令和元年には六十一件、そして令和二年五十一件、令和三年五件ということでありまして、この罰則強化によって、いきなり九四%減、そして、この令和三年でも五件ということであります。

 確かに一定の効果はあると私も思います。しかし、この令和三年、前年より九割減ということでありますが、これはコロナ禍による入国制限、密輸入そのものより以前に入国者が激減しているわけですから、当然、減って当たり前です。

 逆に言えば、現状において、水際対策の緩和、そして、インバウンドのいわゆる来日される方々が増えていくというのは当然想定されるわけでありますから、再びこれは増加に転じる可能性があるということですね。ここは、そのことが十分に予想されるのではないでしょうか。これは、財務省、お答えいただけますでしょうか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、近年、金の密輸、摘発件数、数量とも大幅に減少してございます。それは、先ほど委員もお話ございましたように、私どもの取組が功を奏している一面もあると思いますけれども、やはり航空旅客の大幅減に伴いまして密輸が企図しづらくなっている、そういう面もあろうかと思います。

 したがいまして、今後、旅客数の増加に伴いまして、さらに、金密輸を企てる者が増加する可能性は否定できないところでございます。

馬淵委員 危機意識を持って対応していただきたいと思います。

 つまり、入国者数が回復をしていく、これは喜ばしいことですが、一方で、金価格の高騰、さらには、消費税が八%から一〇%に上がっているわけですから、その部分の差益を取ろうとする密輸入者が増える可能性は十分にある。楽観視はできません。また、この金地金について、これは国際的に循環してしまうということで、次々と犯罪が起きてしまわないかという懸念があります。

 この金地金、いわゆるこれは密輸入されれば、まあ密輸入されなくても、どういう形でも、いずれにせよ金買取り業者で買い取られる可能性もあるわけですが、特に密輸入者の場合は、消費税分をもうけようとしていますから、これを現金化するということで金買取り業者に売る。この金は、国内需要を上回る部分に関しては、商社などを通じて輸出されていく。そして、輸出者は消費税の還付を受ける。これは個人のみならず、組織的に繰り返し行われていることが確認されています。

 つまり、多額の資金が犯罪組織に流れ込んでいる、こういったことが指摘をされている。この犯罪に利用されるループを断ち切らなければならない、このように考えられるわけです。こうした指摘も数々されています。

 例えば、確かに罰金の大幅な強化によって抑止効果はあったかもしれませんが、組織的な犯罪という意味では、国内でも、これは東京の渋谷区の高級住宅街のマンションの一室ですけれども、密輸した金塊の精錬工場となっているということが、これもかつて摘発をされています。

 こうした組織的な犯罪、そして金地金がそれこそループ構造として海外にまた戻っていくというような形で、犯罪の温床になっていく可能性があるわけです。

 そもそも、この金地金の没収ということをどのように取り組んでいくべきかということについてお尋ねをします。

 まず、密輸入が発覚した金地金は、その再利用を防ぐために、これは法的には必要的没収というそうですが、強制的に、まあ必要的没収という言葉を使いましょう、必要的に没収されるのでしょうか。財務省、お答えください。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、金につきましては、まず、刑法におきましては没収規定がございます。これに基づきまして、現行法令下におきまして没収することは可能でございます。税関といたしましては、積極的な検察当局への告発によりまして、刑事裁判における金の没収の適用を図っているところでございます。

 他方で、関税法上の扱いにつきましては、関税法上の没収の対象は覚醒剤あるいは銃器といった社会悪物品等に限定されてございます。このため、現状、特段の輸入、流通規制のない金につきまして同法の没収の対象とすることは直ちに難しいものと考えてございます。

馬淵委員 正確にお答えいただいているからですか、分かりにくいんですね。要は、これは、必要的没収、つまり強制没収はないということなんです。つまり、罰金を支払えば金地金は没収されません。そして、もちろん、悪質だという形で告発、いわゆる検察への告発がなされれば、この場合、裁判所、司法の判断で没収ということも起こり得るということなんですが、つまり、多くの場合は、罰金を払えば済んでしまうということなんですね。その金地金はまた手元に戻ってくる。犯罪とは言わないそうです。行政処分ですから、犯則。犯則者の手元に、密輸入で摘発された金地金が戻ってしまう。

 じゃ、この戻る率というのはどれぐらいでしょうか。財務省、端的にお答えください。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 統計で取っておりますのは、事務年度ベースのものでございます。令和三年七月から令和四年六月まででございますけれども、密輸事案の件数は、金地金に関します密輸は全体で十三件となってございます。このうち通告処分が十一件となってございます。

 通告処分に関します罰金相当額に加えて、納付すべき税額を納付した場合には、金は返還を受けるべき者に還付することになりますので、約八割が被押収者に返却され得るものとなってございます。

馬淵委員 要は、今、令和三年、先ほど申し上げたように非常に少ないわけですから、令和三年度の事務的な年度でのお話がありましたが、これは、十三件のうち十一件が罰金で済んでいると。残り二件が告発です。だから八割という数字でしたが、これはもっと高いはずなんですね。九割近いとも言われています。

 大体、他の、二〇一五年の事務年度で見ますと、全体の九七%が密輸した犯則者に返却されているということが報じられています。つまりは、ほぼ九割以上手元に戻ってしまう。それで、この戻ってしまった金地金は再び犯罪の原資になる可能性があるわけであります。

 このような金地金の密輸入に関して効果的な対策として、罰金を強化したのは評価しますが、没収というところに踏み込むべきではないんでしょうか。この金地金、もちろん財産権もあってなかなか難しいということもよくは理解しているんですが、大臣、没収に対しての踏み込みというのを必要とお考えいただけないですか。どうでしょうか。

    〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

谷国務大臣 昨年八月のFATFの対日審査報告書においては、現金の密輸への対応を強化するよう勧告されているところであります。

 こうした勧告に対しては、不正に現金を輸入しようとする者を水際で的確に検知するため、税関と警察などの関係機関の間の情報交換等の連携を強化するなど、検知、没収の実効性を高める措置を講じており、このことは法改正を要するものではないことから、FATF勧告対応法案には盛り込んでいないところであります。

 いずれにいたしましても、金地金及び現金の密輸について、その対策を、関係省庁間で連携を深めながらしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

馬淵委員 大臣、多分、私の次の質問にお答えいただいているようなんですが。私、金地金の没収の話をしているんです。

 確かに、FATFの四次対日審査報告書には現金の話がありますが、実は、この報告書の中では、日本の場合は、差し押さえられた大量の金地金に関するもの、これはない、ただ一方で、犯罪に用いられた道具の没収についてはおおむね成功的なアプローチを追求しているという評価です。逆に言えば、金地金は全くそれにかかっていないという指摘がなされているんですね。

 財産権の問題もあるからということで金地金の没収が難しいという理解は私も一定程度できますが、じゃ、諸外国はどうなんでしょうか。大臣、ちゃんと私の質問をよく聞いてからお答えいただきたいんですが、諸外国はどうなのかということで、財務省、これは端的に、諸外国の実態だけお答えください。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 金の没収に関します諸外国の制度でございますけれども、当方として把握している限りでございますが、例えば、韓国につきましては、日本と同様に金の密輸が問題となっておりましたが、金の行政没収は可能になってございます。他方で、米国につきましては、連邦レベルでは付加価値税はございませんで、国境で連邦による税の徴収等は行われておりません。また、EUにつきましては、付加価値税を有しておりますけれども、そもそも金については非課税となってございますので、金の密輸が大きな問題にはなっていない状況である。このように承知してございます。

馬淵委員 韓国には没収制度があるというお話であり、アメリカ、これは、没収を取っているという報道もありますので、明らかではありません。連邦によって違うのかもしれませんが。

 いずれにしても、いわゆる財産権の侵害ではないのかということによって、罰金を払ったんだから犯則者に戻すべきだという議論がある一方で、論理必然として、必要的没収、すなわち強制的に没収することが財産権を侵害するから許されないということだけでいいのか、いや、むしろ、諸外国、先ほど申し上げたように、様々あるわけです。これは政策判断として可能ではないかということなんですね。

 私は、密輸入の、いかに抑止するかということでの罰則の強化は構わない。これは確かに効果はあったかもしれませんが、先ほど財務省から話がありましたように、今後どんどんどんどん増えていく可能性があるわけです。やはりこれは、罰則だけではない、没収というところに踏み込むべきではないか、このように私は申し上げておきたいと思います。

 これはもう大臣に答弁を求めませんが、仮に法改正に至らなくても、財務省から検察への告発、これは内規として恐らく要件があるはずですから、この緩和によって告発をより積極的に行えるようにするなど、行政的な措置が可能なはずです。これは是非行うべきではないかということを申し上げておきたいと思います。

 何か御所見はいただけますか。大臣、どうですか。

谷国務大臣 馬淵委員から、提案といいますか、新たな政策について具体的な提案がございました。

 先ほど財務省の方から答弁がございましたように、諸外国でも様々でございます。ただ、こういう今後の事態の状況の変化もしっかり見ながら、また必要に応じて関係省庁間で連携を図りながら、この問題については対処する必要があろうかと思います。

 直接的には財務省になろうかと思いますが、FATFの所管大臣として、また私も必要に応じて意見を述べさせていただきたいと思います。

馬淵委員 四次勧告に、求めるまでいかなくとも、少なくとも金地金が範囲外だということについて指摘されているわけですから、ここはやはり取り組んでいく必要があるのではないかというふうに申し上げたいと思います。

 もう一方、現金のお話を先ほどされました。現金の無許可による持込み、これについて、大臣の御答弁も先ほどもうありましたので、FATFの勧告の中に、これは明確に示されています。つまり、日本における虚偽又は無申告の国境をまたいだ現金又は持参人払い式の譲渡可能支払い手段の移動に対して没収が効果的に行われていることを示していない、つまり、没収されないということが勧告として示されています。

 これは没収されないわけでありますが、じゃ、このような無許可の持込みというのはどのような件数があるのか、国税庁、お答えください。ああ、財務省ね。

    〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 関税法上、旅客が百万円を超える現金等を携帯して入国する場合でございますが、その現金等について、税関に輸入申告を行う必要がございます。

 税関におきましては、輸入申告なしに百万円を超える現金を持ち込もうとする旅客を把握した場合には、不審な点がなければ、まずは輸入申告を慫慂することで適正に現金を輸入していただくこととしてございます。

 こうした手続は、税関の現場で、一連の検査の手続の中で行われるものですから、そうした件数を特に把握はしてございません。

馬淵委員 これは重要な答弁なんですよ。

 FATFで勧告されている、現金の持込みに対して没収などは行われていないと。没収どころか、これは推移すら、件数すら把握していないんです。現場で処理しているというお話ですよ。これは全くもってFATF勧告に対応できていないのと同じですよ、大臣。そもそも現場で確認、件数を把握せず、かつ公表もしていないわけですから。これは、FATF勧告に対応できないじゃないですか。

 大臣、どうお考えですか。これは今回の法改正に含まれていませんよ。どういう御対応をお考えですか。これは財務省のお話じゃないですよ。大臣の所管されている法案の中に入っていないけれども、勧告に対して、その措置がなされていませんよ。どうですか。

谷国務大臣 今のお話でございますが、FATFの対日審査報告書においては、現金の密輸への強化については勧告されているところであります。

 こうした勧告に対しては、先ほどお話しさせていただきましたように、税関と警察等との関係機関の間の情報交換の連携を強化するなど、検知、没収の実効性を高める措置を講じており、法改正は要してはございませんけれども、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っているところであります。

馬淵委員 大臣、確認ですけれども、これは連携の話じゃないんですよ。しっかりと実態を把握して、公表して、そしてその対処を取らなきゃいけないんです。

 法改正について、取り組むとおっしゃいましたか、今。大臣、これは今回の法改正の範囲外ですよ。これは、やられるということですか、検討されるということですか、どっちですか。ちゃんと。後ろから何か言おうとしているけれども大丈夫ですか。

谷国務大臣 法改正を要するものではないことから、FATF勧告の今回の対応法案には盛り込んでいないということでございます。

 ただ、御指摘のように、実態をしっかり把握するということは大事なことでございますので、そういった、実態を把握して、より効果的な、実効性を高める措置については、引き続き頑張っていかなければならないというふうに考えております。

馬淵委員 それならば、先ほど申し上げたように、全く、現場で、任せっ切りで、実態を把握していないわけですよ。これは、関係大臣として、財務省にちゃんと、大臣の方から必要だということを明確に指摘して、そして実行させるべきです。いかがですか。財務省に説明を求めて、そして大臣の方から財務大臣に指示をお願いする、やっていただけますか。

山崎政府参考人 先ほど、一般的な百万円を超える現金の持込みについて、現場対応だということは申し上げさせていただいたわけでございますけれども、やはり不正に犯罪収益などの疑いのある現金を輸入すること、これはあってはならないことでございます。

 こうした者を把握するため、税関といたしましては、職員の適正な配置、あるいは旅客の携帯品の厳格な検査、こうしたことも行いながら、また警察等の関係機関とも連携しながら、効果的、効率的な取締りに取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

馬淵委員 財務省はやるという姿勢を示していますが、現実には、今、ここでは集計も取られていません。FATFを所管する大臣として、ここは重く受け止めて、注視していただかなければならないということを申し上げておきたいと思います。

 何か御所見はありますか。

谷国務大臣 今の馬淵委員の御指摘を踏まえて、事実関係、直接私の所管する業務ではございませんけれども、FATF関連の様々な中の一つの課題として、必要に応じて現状を聞いて、また、財務省と調整を、よりいい方向に行くように調整は進めていきたいと思います。

馬淵委員 ありがとうございます。

 もう時間がありませんので、あと一点だけ。今、密輸入のお話を終始しましたが、輸出の件について少しだけ触れたいと思います。

 消費税の不正還付、この問題につきましてはやはり大きな課題だということで、これは、高額仕入れを行ったように仮装して安い商品を輸出、あるいは免税の仕組みを利用してなどで、不正還付というのが行われています。

 これに対して、国税庁では不正還付の調査というのを行っているわけですが、対策本部を設けたり等、大変な意気込みで取り組んでおられるわけですけれども、十八万件に及ぶ法人の還付申告に対して、令和二年度で見れば、三千六十六件、一・七%の実地調査、そして、そこでやっと認められたのが二千七十三件、一・一%です。つまり、膨大な、莫大な手間暇をかけて見つけ出して行っている、不正還付をただそうとしている。FATFには直接関係ありませんが、輸出の部分でも、こうした手間暇がかかっているわけですね。

 これについて、国税庁、端的にお願いします。こうした状況の中でこの取組について行われておられますが、今後、更なる人員強化を含めて何か対策がありますか、国税庁。

堀内政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、従来から、消費税の適正課税の確保を重点課題と位置づけて取り組んでおります。とりわけ、不正還付事案につきましては、委員から御指摘ございましたように、東京国税局におきまして消費税不正還付対策本部を設置するなど、厳正な対処に努めております。

 具体的には、消費税に係る還付申告書の提出があった場合、申告書の添付書類や保有する資料情報等に基づきまして厳格な審査を行い、申告内容に疑義があれば還付を保留し、書面照会や実地調査を行うなど、還付原因等の解明、確認を実施しておるところでございます。

 近年、国税庁におきましても、国税局の人員体制の強化を行っているところでございます。今後とも、不正還付事案の態様や手口も見極めながら、厳格な審査と的確な税務調査を通じて不正還付の防止に努めてまいりたいと考えております。

馬淵委員 ありがとうございました。

 もう終わりますけれども、一言だけ。

 つまりは、国税庁の人員強化、これは必要です。そして、不正還付によって、金額が明らかになっているだけで見れば、直近では三十四億円の不正還付というのが出ていましたが、これは今後も増えていく可能性があるわけです。何を申し上げたいかというと、結局は、消費税に関わることでの構造的問題が密輸入あるいは不正輸出に関わってくるんですね。

 そもそも、消費税の話は、増税推進派の方々からは、徴税コストが安い、簡素な徴税の仕組みだと言われているが、実態として見れば、とてつもないコストと労力がかかっているんです。こういった事実を隠して、消費増税ばかりが議論されることに対して、私は大変問題だと思う。事実を明らかにすることをしっかりと政府には求めていきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。

 本日は、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産凍結等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に関して質疑をさせていただきます。

 ちょっと長いタイトルだなと思いながら、このタイトルだと、国連に言われたからこの法律を変えますと言っているようなので、私としては、ちょっとどうなのかなという思いを持っておりますけれども。

 昨今、厳しさを増す国際情勢の中で、技術の進歩により、決済手段の多様化や取引のグローバル化が進行しているところでございます。金本位制から国の信用でお金の価値が決まる管理通貨制度になり、そして今、私たちは、紙幣や硬貨を使っているところですが、それもだんだん見なくなり、オンラインで決済をして、通帳が減った増えた、数字の印刷を見て、私たちは一喜一憂するようになってまいりました。

 実際の現金を見なくてもいい、まあ、日本は比較的遅れていると言われておりますけれども、カード決済や様々な決済方法によって、私たちは現金を見る機会が少し減ってきたのかなというふうに感じているところでございます。今後新しい技術がどんどん出てくるときに、やはりリアルタイムで対応していかなければならない時代がやってきたと思っております。

 そもそも、それとはいえども、現金、非常に多いですので、今、馬淵委員が非常におっしゃっておりましたところですが、どんな制度、仕組みを使ったとしても、直接現金でやられてしまうと変わらないんだなということを思っていたところでございます。昔のように、おまんじゅうの下に現金を敷いてお渡しして、おぬしもワルよのうとやっている時代はまだ続くのかなと思っています。

 こういうやり方は残っている一方で、やはり、マネーロンダリングやテロ資金供与のリスクというのは、金融取引が非常に複雑化することによって高まっているというふうに理解しております。

 現在、日本維新の会では、国家安全保障戦略に関する党内の議論が非常に活発に行われているところでございます。国際情勢、そして現状の変化に即して様々な方策を議論しているところでございますけれども、その中で、情報戦力の拡充というものも挙げられております。至極当然なのですが、情報というものが、時に人の生命を左右するという大きな意味を持っていると認識しております。

 この観点から、まずは金融のインテリジェンスについて質問をさせていただきたいと思っています。

 そもそもインテリジェンスというものは、断片的なデータを集めて、それらを集約し分析したものであり、これらの情報は政策決定者の様々な判断に寄与するものであると理解しております。日本のインテリジェンスというのは他国に比べると小さい、この指摘は経済安全保障の際もさせていただいてきたかと思います。今、このインテリジェンスの議論というのは、現状の日本でも非常に盛んにされているところだと認識しております。

 こういった観点から考えた場合、金融のインテリジェンスというものの強化についてはどのようになっているのかなというところで御質問をさせていただきます。

 今、警察庁の刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課に金融インテリジェンスの部門であるFIUが置かれていると理解しています。日々膨大な情報を処理されている皆様には深い敬意を表したいと思います。一方で、FIUが警察庁に置かれているというのは組織犯罪捜査のためだと理解しますが、ここで知り得る情報は日本の安全保障においても非常に重要だと考えられます。

 国家安全保障局とこのFIUの関係性がどうなっているか、教えてください。

谷国務大臣 お答えさせていただきます。

 犯罪収益移転防止法第十三条の規定に基づき、国家公安委員会は、疑わしい取引に関する情報や、これを整理、分析した結果については、特定の刑事事件の捜査や犯則事件の調査に資すると認められるときに、当該捜査や犯則調査を行う機関に限りこれを提供することが認められているところです。このため、国家安全保障局に対して、疑わしい取引に関する情報やその分析結果を提供することはありません。

堀場委員 ありませんと言い切っていただいたんですけれども、でも、そのときに、例えば、この国に、こういったところに送金が増えている、それは、裏には実は、例えば武器が非常にそこのエリアで買われている、よって、そこにテロリストの皆さんがいらっしゃる可能性があるといった情報を組み立てる一つのピースになるというのがこの金融の動きの情報ではないかというふうに認識しております。

 私ども日本維新の会としては、こういったインテリジェンスの部門が分かれて存在しているというのは非常に問題があるのではないかというふうに思っているところでございます。やはりインテリジェンスの強化という観点から考えると、この金融の情報というものも一つ大きなパーツになり得ると考えております。

 ところで、さっきおっしゃっておりました疑わしい取引というところなんですが、所管行政庁から通知を受け、疑わしい取引の精査を行っているのがFIUのお仕事だと認識しております。

 所管の行政庁、様々行政庁があると思うんですけれども、そこによって、この疑わしい取引に関する取扱い若しくはそれに対して報告、通知、こういったものに対する温度差があるかないか、教えてください。

猪原政府参考人 犯罪収益移転防止法上、疑わしい取引の届出等を受けた主務大臣は、速やかにこれを国家公安委員会に通知することとしており、特定事業者の方から提出された情報は、取捨選択されることなく、全件、国家公安委員会に通知がなされているところであります。

 現時点において、特定の所管行政庁のみ取組が遅れているといった状況にあるとは考えておりません。しかし、引き続き、我が国全体において適切なマネロン対策が講じられるよう、関係省庁とよく連携してまいりたいと考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 今回の法改正によって、行政書士等、公認会計士等、税理士等が行う疑わしい取引の届出に関する規定の部分が整備されまして、この三士業において義務化されたと認識しておりますけれども、ちょっとこれは前の方で水曜日にも質疑にあったかと思うんですが、この三士業のみが義務化された理由を改めて教えていただきたいと思います。

猪原政府参考人 弁護士等のいわゆる士業者における疑わしい取引の届出につきましては、犯罪収益移転防止法の制定時に、日本弁護士連合会等から依頼者との関係に与える影響について懸念が示されたことなどを踏まえ、引き続き検討を行うこととし、法制定時には届出義務を課さないこととしていたところでございます。

 今回の法改正におきましては、令和三年八月に公表されたFATF第四次対日相互審査報告書においても、士業者が疑わしい取引の届出義務の対象になっていないことは、日本のマネロン、テロ資金対策の有効性を著しく損なう旨、勧告されているなどの状況にあることを踏まえ、法制定時の附帯決議や、士業者に対する疑わしい取引の届出義務に係る懸念にも配慮した上で、疑わしい取引の届出等について、士業者に対して義務を課す規定を整備するものであります。

 一方で、弁護士等及び司法書士等につきましては、行政書士等、公認会計士等又は税理士等とは異なり、対立する当事者間の民事紛争解決業務を取り扱うことから、依頼者との信頼関係の構築が重要であるため、疑わしい取引の届出義務の規定を法律で設けることは弊害が大きく、相当でないと考えているところでございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 様々、お聞きしたいことはいっぱいあるんですけれども、まず、疑わしい取引というものが、今までそれについて、それをどこかに報告する、届け出るということをされてこなかったこの三士業の皆さんが義務化されるというわけですから、これは何かしらの、こうやるんですよというような、教えていくというようなシステムというものが必要かと思うんですけれども、そもそも、この疑わしい取引というものをどのように見極めているか、教えてください。

猪原政府参考人 疑わしい取引につきましては、どのようなものがそれに該当するかを判断するためのガイドライン、これを参考事例といった形で所管行政庁が各業界に対して示しているということをやっております。

堀場委員 ありがとうございます。

 FIUさんの中で、全件上がってくるわけですから、玉石混交、つまり、いいものも、本当に大切な情報もあれば、全然ちょっとこれは違うよねという情報も上がってくると思うんですね。なので、ここでもうちょっと業務を効率化するためには、その前の、所管の行政庁の皆さんがガイドラインとして作っていただいて、QアンドAを作っていただいて、そもそもの情報提供がしっかりとなされる、そこでの見極めが、現場での見極めが非常に重要なんだろうなというふうに推察しているところなんですけれども。

 FIUさんの方から所管の行政庁の皆様に何かアクションを起こされることはありますか。

猪原政府参考人 FIUにおきましては、所管行政庁と常に連絡を取り合いまして、様々な事例を踏まえた改善点などについて意見交換をしております。それらが所管行政庁において反映されまして、事業者の方々にもしっかりと伝わっていくというふうに考えております。

堀場委員 ありがとうございます。

 こうやって現場からFIUの皆さんに情報が上がってくる、こうやって上がってきた様々な情報を分析され、集約され、出てきた情報で捜査がされているということが、本当に大変な作業だというふうに認識しています。

 だからこそ、この情報が非常に重要だというふうに認識しているところでございますけれども、金融インテリジェンスの今後についてお尋ねします。

 マネーロンダリングやテロ資金供与の情報というのは、不安定で危険が高まりつつある現在の国際情勢の中で非常に重要な情報であると思います。この金融インテリジェンスについて、今後の方針はどうなっていらっしゃるでしょうか。今のままでも問題ないという認識かどうか、教えてください。

谷国務大臣 お答えします。

 御指摘の金融インテリジェンスということは、疑わしい取引に関する情報の収集、整理、分析と、他の機関におけるものも含めた分析結果の活用というふうに理解しているところでございます。

 まず、疑わしい取引に関する情報の収集、整理、分析の面について申し上げますと、現在、警察庁に置かれている日本のFIUは約百人の職員により構成されており、これらの職員によって疑わしい取引に関する情報の分析を的確に行っているところです。この疑わしい取引の通知は令和三年中で約五十三万件となっていますが、AIを活用した情報分析等、業務を合理化するなど、効率的な対応を行うよう努めており、引き続きしっかりと対応してまいりたいと思います。

 次に、分析した情報の他の機関への提供について申し上げますと、先ほどお話しさせていただいたとおり、犯収法上、疑わしい取引に関する情報やその分析結果等については、特定の犯罪捜査やあるいは犯則調査に資すると認めるときにのみ限定して、犯罪捜査機関や犯則調査機関に提供することが認められているところでありまして、ここで言う特定の犯罪の中には、例えば、テロ資金提供処罰法に規定するテロ資金等提供罪のような国の公安に係る犯罪も含まれているところであり、このような犯罪捜査機関や犯則調査機関における犯罪捜査等が的確に行われ、マネロンやテロ資金供与にしっかりと対処できるよう、引き続き、これらの機関と連携をよくしてまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、御指摘の金融インテリジェンスについては、昨今の国際情勢等に鑑み、大変重要な取組であると思っております。

堀場委員 ありがとうございます。谷大臣と同じ思いであるということが分かりまして、大変うれしく思っています。

 金融のインテリジェンスというもの、それが、ひいては国のインテリジェンスの全体の問題にかかってくるというふうに思っています。だからこそ、このインテリジェンスについては、我が党若しくはこの内閣委員会、様々なところで議論をしてまいりたいと思っております。

 今、こういう様々な取引について、それを報告していく、若しくはシェアをしていく、送り主、そして着金するところについてもしっかりとやっていくというようなことがこの法律では議論されているかと認識しています。

 個人情報とのバランスについてお尋ねしたいと思います。

 こういう様々な変化があるときというのは、やはり個人情報をしっかりと守られているのかなというのが国民として不安なところだと思います。

 その中で一つ、一個一個聞くと全部の省庁の皆さんにお聞きしなければならないので、本日は、銀行等が、今、共同機関というところで取引のフィルタリングや取引のモニタリングをしているかと思っております。そこでの実効性を確保していく、より高いところで情報を共有できるようにするというところと、個人情報の保護というこの二つのバランスが非常に重要だと考えているんですが、その方策について、金融庁さん、教えてください。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的にもより高い水準でのマネロン対策等の実施が求められる中、中小規模の金融機関においては、システムの整備や人材確保等の面で単独での対応が難しいとの声がございます。

 こうした中、御指摘のとおり、銀行業界において、マネロンシステムを共同化し、高度化を図ろうとする動きがあることを踏まえ、前の通常国会での資金決済法改正により、複数の金融機関等の委託を受けて為替取引に関し取引のモニタリング等を共同で行う為替取引分析業について許可制を導入し、監督当局の直接の検査監督等を通じ、その業務運営の質を確保することとしたところでございます。

 ただいま委員から御指摘ございました共同機関を活用したマネロン対策等の実効性向上と個人情報保護の両立につきましては、この為替取引分析業者は、個人情報保護法令にのっとり個人情報を適切に取り扱う必要があることに加え、今般の業規制において、我々金融庁といたしましては、為替取引分析業の許可の申請があった場合には、情報の適切な管理を含め、業務を適正かつ確実に遂行できる体制が確保できているかを審査し、許可を行った後においても業務の実施状況についてモニタリングを行うこととしています。

 金融庁といたしましては、各金融機関がマネロン対策等を共同化し、その知見やノウハウ等を集約する形で業界全体として取り組むことは、対策の実効性や効率性の向上に資するものと考えておりまして、このような枠組みの下で、御指摘ございました個人情報の保護と共同化によるマネロン対策等の実効性向上の両立を確保してまいりたいと考えてございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 つまり、新しく共同機関によって取引のモニタリングであったりフィルタリングということをやる、それは、作業の効率上いい、情報の共有もできる、様々な観点からすごくメリットのある作業だと思います。でも、これに対して個人情報というものがありますよねと。私たちは個人で、銀行と、個人情報保護に関しては銀行さんが守ってくれていると信じて口座をつくっている、個人情報を提供しているという状況にある。ここのバランスはしっかり取れるように、個人情報保護に関するモニタリングも継続してずっとやっていただけるという理解ですね。よかったです。

 やはり私たちは、今、しっかりと個人情報を守るという非常に重要なことを忘れてはいけない反面、この厳しい国際情勢の中でいかに効率的に、悪い人たちと言うと語弊はありますけれども、私たちと価値を共有できない人たちが、フロント企業であったり、様々なところに根を張られている、これに対してどうやって対応していくのかと考えたときには、一致協力をして情報を提供しなければならないところがあるのではないかというふうに考えています。

 この議論は、私は、個人情報ということについて安全保障上いろいろ考えなければならないという議論は、先日、セキュリティークリアランスの際もさせていただきました。やはり今、私たちの個人情報というものと信用というものを両立するためには非常に難しいバランスが必要なのではないかというふうに考えているところでございます。だから、この安全保障、金融もそう、ほかの安全保障もそうなんですけれども、個人情報というものを非常に守りながら両立していっていただきたいなというところでございます。

 今後についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 冒頭お話をさせていただきました。国際的な不正資金等にほにゃほにゃほにゃといって、国連安全保障理事会の決議を踏まえてこの法律の改正があるというふうな前提に立っております。私どもは、国際社会における国際金融センター、つまり金融のハブになろうという目標を持っているんですが、FATFに言われたから変えますよというような状態ではなくて、そもそも日本が自主的に、積極的に、高いレベルでの金融に関する様々な措置をする必要性があった、若しくは、あるのではないかというふうに理解しております。

 今後について、この法改正で十分なのかも含めて、谷大臣、お願いしてもよろしいでしょうか。

谷国務大臣 今御審議をいただいておりますFATF勧告対応法案は、昨年八月三十日に公表されたFATFの第四次対日審査報告書で指摘された事項に対応するものでありますが、同時に、この法改正を通じて、日本の国際的な金融センターとしての信頼性を向上させる、そういうことも目的としているところであります。

 我が国の国際金融センターとしての地位向上に向けては、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画等を踏まえ、税制や行政の英語対応、在留資格等の幅広い分野に横串を刺す総合的なパッケージとして、官民一体となった取組が求められているところであります。

 我が国が世界における国際金融センターとしての地位を確立させることによって、厚みを増した金融人材による高度な金融サービスが提供されるとともに、それにより、金融にとどまらない産業に適切に資金が供給されることで、雇用、産業の創出や経済の活性化につながることが期待されるところであります。

 マネロン対策等のみでは日本の国際金融センターとしての地位向上を図ることはできません。が、しかし、その地位向上のためにマネロン対策等の強化は必要不可欠なものであると考えており、今回の法改正や、関係省庁において、マネロン対策等のために設置した政策会議を中心としたマネロン対策等向上の取組を今後とも着実に進めてまいりたいと思います。

堀場委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたところで、今のこの法改正が不可欠だというのは非常によく分かりまして、プラスアルファで、何か改正していかなければならないというところがもしあるという認識でいらっしゃるのであれば、そこも少し教えていただけるとありがたいなと思います。

谷国務大臣 我々は、FATF勧告を受けて、現在の時点で法改正が必要なものは網羅されていると思っております。

 ただ、委員御指摘のように、こういう国際経済情勢あるいは国際情勢は大きく劇的に変わることもあり得ます。ですから、そういう変化に常に注意しながら、必要に応じて、また適時、法改正は、直ちにはともかくとして、今後もしっかり対応できるように、柔軟に対応できるように頑張っていかなければならないと思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 国際金融都市構想、そこの部分から派生している国際金融センターという考え方だと思っております。

 海外から金融機関や高度な金融人材というものを呼び込む、そして金融取引とか投資活動の拠点になっていく、世界の拠点、少なくともアジアの拠点にはなっていけるようなポテンシャルが日本は絶対にあると思っています。それになるのに必要な法整備というふうに理解しておりますし、今、私たちは、経済安全保障のときに、様々な物資について議論をさせていただきました。そのときに、やはり唯一性を持っていくということの重要性について、私たちはこの内閣委員会で前回議論をさせていただきました。

 私自身は、国際金融センターになる、そしてこれがアジアのハブになっていくというような考え方は、これはまた一つ大きな唯一性を持つものになるのではないかというふうに思っております。だからこそ私たちはこれを急いでいかなければならなかったなと思っておりますし、これは先ほど馬淵委員も言っておりましたが、遅かったのかなというところも否めないのかなというふうに思っているところです。

 日本維新の会としても、こういった海外の勧告にあったから、国連が言ったから、FATF勧告ですよといって変えていくというのではなく、これから起こるかもしれない、まだ私たちの分からない技術が発達していく可能性というのは、大臣もおっしゃるとおり、たくさんあると思います。ウェブ3の世界があったり、メタバースがあったり、そういったところで、じゃ、どういう金融が新たに生まれ、どういった取引が出てくるのか。これについては、まだ想像ができていないものもあるかもしれません。なので、また法改正ということになっていくということもあるかもしれませんが、そのときにはあくまでも迅速に対応していく必要性があると思っているところでございます。

 是非大臣に、こういった観点から、唯一性の確保、つまりハブになるというところで、もう一つ何かお言葉を頂戴できればなと思うんですけれども。

谷国務大臣 我が国の国際的な地位が残念ながら低下しつつある、それは金融面についてもそうでございます。ですから、なかなか情勢は厳しいものがあります。香港、シンガポールとの厳しい戦い、これもこれから予想されているところであります。

 ただ、そういう中にあって、我が国のこれからを考えると、そういう金融面での優位性を確保して、何とか、我が国全体の経済の活性化に努められるよう頑張っていかなければならないと思っているところでございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、私たちの経済状況は、本当に、三十年間経済成長しなかった。私たち日本維新の会は、だからこそ改革が必要だと訴えてまいりました。そして、これからもその改革に向けて邁進していくところでございますけれども、こういった国際情勢が劇的に変化している中でも、金融の状況というのは、ハブになっている例えばアメリカであったりイギリスであったり様々なところで、金融機関というものは非常に重要な地位を占めている。ということは、日本もここを目指していかなければならない。

 昔は、東京もやはり非常に、世界の中でも、もちろん円も強いですし、頑張ってやっていたんだろうと。ただただ、今は、大臣のおっしゃるとおり、現状が非常に厳しいものになってきているという認識は、恐らくここにいる人たちは全員思っていることだと思います。だからこそ、どうやればいいのかということは、私たちは、実は、方法論が違うだけで問題意識は同じなんだろうなというふうに考えています。

 金融インテリジェンスもそうです。これから国際状況が変わっていく中で、戦争ではなくて、こういった新たなハイブリッド戦が日本を含む世界で行われていくと考えますと、やはり、更なる、まあ、武装とまでは言わないですけれども、そういった新たな局面に来ているということを感じている次第でございます。

 私ども日本維新の会の様々な御提案にも是非耳を傾けていただきまして、私たちが目指している国の在り方、防衛の在り方、そして、そのときに重要な、情報の円滑な共有、そういったもの、こういったものに関しても是非御理解を示していただければなというふうに思っております。

 最後に一つだけ大臣に、余りない機会なので、お伺いさせていただきます。

 今すごく国際社会が、価値を共有している、共有していないということが非常に重要な局面になっていると理解しています。金融のハブになる、国際金融センターになっていくという目標のときというのは、そういった価値の判断というのは、何か意味が、例えば、維新は結構言っているのであれですが、中国がお金をどんどん送ったりするというような局面、日本との貿易が盛んになっていって多くなっていくかと思うんですけれども、そういったところで何か価値の共有というものが一つ大きな局面になるということを念頭に置かれていますか。それとも、逆に、こういうテロ資金供与であったりマネロンの法整備をしっかりすることで、どんな国であっても日本で金融取引をやっていく方向に進んでいくというふうにお考えか。大臣の個人的な見解でいいので、もしあったら教えてください。

谷国務大臣 ちょっと話が抽象的になるかも分かりませんけれども、ただ、やはり、自由と民主主義と法の支配ということは、どういう時代になっても、日本に住む我々が守っていかなければいけない価値だと思います。そういう前提に立って、先ほど来お話のある国際金融センターとか、それを目指すべきだと思っております。

 大事な価値をしっかり持ち続けないと、なかなか、今後の多くの社会の方から共鳴を得ることができないのではないかと思っております。

堀場委員 ありがとうございます。

 私ども、特に私が今いろいろ様々な課題意識を持っているところが、こういった今の不安定な時代の価値の共有ということであったり、日本を、我が国をどうやって守っていくかというところだったというふうに思っています。だからこそ、今こういった議論をさせていただきまして、また一つ勉強になりましたし、そして、この法整備によって、様々な、おぬしはワルよのうがなくなっていくことをお祈りしておりますので、是非皆さん、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

大西委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 引き続きまして、日本維新の会、岬麻紀でございます。

 本日は、主に金融の分野について質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、本法律案では、昨年八月に公表されましたFATFの第四次対日審査報告書を踏まえまして、マネーロンダリング等への対策を強化することとしています。

 しかし、現実問題としましては、マネーロンダリング等規制の網は、法律上定義可能な取引や当該取引を仲介等する業者に対してのみかかることとなります。

 例えば、本法律案に新たに規制が導入されました電子決済手段に係る規制は、我が国の法制度上、限定的な取引行為に対する規制となります。マネーロンダリング等という大きな概念で考えますと、例えば、電子的なピア・ツー・ピア取引など、国境を越える電子的価値の移転全てを法の網にかけることは不可能に近いと考えられます。

 これまでの実績では、暗号資産を通じたマネーロンダリングの割合が小さく、リスクベースの視点で考えると、必ずしも高くないようには見えています。しかし、そもそもマネーロンダリングの全数把握自体が困難であることを考えますと、実績ベースにとらわれたリスクベースの観点には実際との乖離があると考え、危険であるのではないでしょうか。

 マネーロンダリングを行う側では、法の抜け穴をかいくぐり、ついてくることは前提となります。マネーロンダリングへの対策として、法的な整備を完璧にすることは永遠のテーマであると考えるわけです。

 そこで、一つ目の質問です。

 FATFの第四次審査の指摘を踏まえまして今回の法改正が行われるわけですが、法的な整備、万全な対策を打つことが実際できるのでしょうか。大変難しいことと考えますが、どのようにしていくのでしょうか。マネーロンダリング対策に対する基本的な認識、考え方、政府の姿勢を谷大臣に伺います。

    〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕

谷国務大臣 お答えをさせていただきます。

 マネロン対策は、国民生活の安全と平穏や経済活動の健全な発展の観点から、これを国際的な協調の下で推進していくことが重要であると認識しているところであります。

 FATFの第四次対日審査報告書においては、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げること、法律、会計等専門家の取引時の確認義務や疑わしい取引の届出義務の規定を整備することなど、様々な指摘を受けたところであります。御審議いただいているFATF勧告対応法案は、これら指摘のうち法改正が必要とされた事項を盛り込んでいるところでございます。

 そのほか、法改正を必要としない事項についても、マネロン対策等の関係省庁で構成されるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を活用するなどして、関係省庁が一体となってこの取組を幅広く進めてまいりたいと思っております。

岬委員 ありがとうございます。

 とはいっても、FATFの審査対応の施策の進捗状況もここから見ていきたいと思いますけれども、マネーロンダリング等対策におきましては、法令レベルの規定する内容だけではなく、現場の行動規律等を定めるガイドラインなどによる、その下のレベルでの整理した考え方に従うことも重要であると考えるわけです。

 そこで、本法案の提出と並行して作業が進められていることも承知をしておりますが、項目について、進捗の状況をここから確認をしていきたいと思います。

 金融庁は、金融機関に対しまして、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインを掲げ、対応が求められる事項につきまして、二〇二四年三月までの期間を区切り、対応の完了、そして体制の整備を求めています。二〇二二年四月には、リスクの状況や課題等をまとめましたマネー・ローンダリング・テロ資金供与・拡散金融対策の現状と課題を公表し、広く金融機関への還元を行っています。

 そこで、二つ目の質問です。

 二〇二四年三月という期限における現在の進捗状況、さらに、これまでのモニタリングによって把握ができた課題、そして、今後のフォローアップについて教えてください。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁では、委員御指摘のとおり、二〇一八年にマネロンガイドラインを策定、公表し、その後、各金融機関においてマネロン対策等への意識も浸透してきたことを踏まえ、二〇二四年三月末までのマネロン対策等に係る体制整備を完了するよう要請してございます。

 また、FATF第四次対日相互審査の結果も踏まえ、この二〇二四年三月末までの体制整備完了に資するよう、預金取扱金融機関などの高リスク業態を中心に、マネロン等管理体制に焦点を当てた検査を集中的に実施しております。

 こうした検査の結果、一部の金融機関においては取組に遅れが見られるものの、全体の傾向としては、二〇二四年三月末を目標にリスク管理の体制の整備が順次進められており、全体的な水準は高度化していると評価しております。

 金融庁では、検査を通じて明らかになった課題について、検査の結果を踏まえ、金融機関のモニタリングを行い、金融機関の体制整備状況の進捗を確認しているほか、業界団体等を通じて、二〇二一事務年度はマネロン対策等に係る説明会等を百回以上開催し、地域金融機関のマネロン対策等の理解促進に努めております。

 金融庁としては、これらの施策を通じて、引き続き、我が国の金融機関のマネロン対策等の強化に努めてまいります。

岬委員 ありがとうございます。

 それでは、一問飛ばしまして、続きましては、銀行等におけるマネロン対策について伺っていきたいと思います。

 本法案のうち、貴金属等の現物資産ではなく、いわゆる電子的な資産である暗号資産ですとか、電子決済手段への対応の強化も行われていますが、どのような形であれ、電子的な価値の移転を行って、最終的には法定通貨への交換がマネロンの最終目的であると考えています。

 そこで、そのとりでとなるのが銀行です。銀行等における取引モニタリングのマネロン対策、また今後も変わりなく非常に重要なポイントとなります。実際には、警察庁の資料によりますと、令和三年度の疑わしい取引の届出受理件数は全体で約五十三万件のうち、銀行等の預金取扱金融機関からの届出は約四十一万件に上っています。つまり、四分の三を占めているということです。

 そこで、重要な役割を担っている銀行等におけるマネロン対策について質問いたします。

 マネロンでは、対策の不十分なところが抜け穴となり、狙われる高い可能性がございます。FATFの報告書では、メガバンク等の一定の銀行等についてはマネロンのリスクを適切に理解していると評価をしています。しかしながら、そのほかの銀行等、例えば、一部の地方銀行であるとか信用金庫、信用組合等が該当すると考えられます、それらについて理解はまだまだ限定的であると指摘がされているわけです。

 この点、メガバンクではない中小金融機関におけるマネロン対策の強化の必要性、対策について政府の認識を伺います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、金融庁では、現在、地域金融機関等も含め、マネロン等管理体制に焦点を当てた検査を集中的に実施しておるところでございます。

 こうした検査の結果、一部の地方金融機関においては、リスクの特定、評価、継続的顧客管理や取引モニタリング等において取組に遅れが認められておることは事実でございます。ただ、二〇二四年三月末の期限に向け、先ほど申し上げましたけれども、全体的な体制の水準は高度化していると評価しておるところでございます。

 金融庁は、地方金融機関に対してでございますが、先ほど申し上げた検査の結果も踏まえまして、金融機関のモニタリングを行い、金融機関の体制整備状況の進捗を確認しておるほか、地域金融機関を対象としたマネロン対策等に係る説明会等を開催し、地域金融機関のマネロン対策等の理解促進に努めておるところでございます。

 金融庁としては、これらの施策を通じて、引き続き、中小規模の金融機関を含め、我が国の金融機関のマネロン対策等の強化に努めてまいる所存でございます。

岬委員 心配しているのは、メガバンク以外の規模の小さいところということで、丁寧な対策をしていただきたいということを申し上げております。

 さて、FATFは、マネロン等の対策、向上させるために優先して取り組むべき行動としまして、銀行等における取引のモニタリングを挙げています。マネロン等対策の中核的な業務である取引モニタリングの高度化、効率化、特に規模の小さい金融機関において喫緊の課題だということです。

 また、対策として、報道では、全国銀行協会、全銀協と言われておりますが、システム整備の予算ですとか人材確保等の面で制約のある地方銀行のマネロン対策の底上げを狙い、複数の銀行等のマネロン対策、共同して実施していく子会社を設立し、AIを使った取引モニタリングを行うとされています。

 こうした業界団体の動きを受けまして、第二百八回国会では、複数の銀行等の委託を受けて取引モニタリングを行う為替取引分析業を導入する資金決済法の改正がなされました。法律の施行は来年でありまして、業務運営の質を確保するために、当局が直接検査また監督を行うことも承知をしております。

 全銀協の取引における取引モニタリングでは、AIを活用するとされています。これは、法案審議においても想定されていたことであります。

 ただ、忘れてはならないのは、AIのアルゴリズムの作成をするのも、また、修正作業を行い、システムの評価を行うのも、結局は人間であるということを忘れてはいけないのです。海外では、金融機関のシステムアラートの九五%もが偽陽性であったと報告がありました。誤検知率を下げるためにも、また、その精度向上にはまだまだ課題が残されていると言えます。

 他方では、AIの性質上、マネロン等の検知率にとらわれ過ぎますと、本来検知すべき取引を見逃してしまうという傾向があるようです。一方、広く網をかけてしまうと、その他大勢の合法的な取引まで検知をしてしまう。これは相反するものですが、完全なアルゴリズムの構築には、相当のテスト期間、また検証期間を要するものと考えられます。過去の実績データからの予測では新たなスキームの取引の検知には至らないという様々な課題もあり、悩ましい問題が残されております。

 そこで質問です。

 AIを使うことは、法案の審議の時点でも政府も想定をしていたところでありますが、取引モニタリングの実効性の確認、また、結果の適正性、そして適切性、正確性、どのように担保をされるのでしょうか。大変不安が残ります。政府の認識、現状の作業、進捗状況を伺います。

    〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の全国銀行協会によるマネロン対策のための共同機関の設立についてでございますが、これは同協会のタスクフォースにおいて検討が進められて、先月、サービス内容等が公表されたものと承知しております。

 委員御指摘のとおり、このようなAIを使った仕組みについては様々な課題がございますところ、全国銀行協会においては、これまでかなりの期間をかけて検討してきたところでございますし、我々金融庁といたしましても、このタスクフォースにオブザーバーとして参加してきており、こうした全国銀行協会の取組を支援してまいったところでございます。

 この共同機関においては、取引モニタリング等にAIを活用したサービスを提供することで、参加行の業務効率化や実効性向上を目指すところでございますが、我々金融庁といたしましては、こういった共同化の取組につきましては、各金融機関がその知見やノウハウ等を集約する形で業界全体として取り組むことであり、対策の実効性や効率性の向上に資するものと考えております。

 このような共同化が実際に効率的、効果的なものとなりますよう、先ほど委員からも御指摘もございました為替取引分析業の枠組みも活用いたしまして、今後のFATF第五次審査を見据え、官民一体となって金融機関のマネロン等管理体制の高度化、かつ、このような共同化の取組の有効性の向上について、金融庁としても適切に対応し、取り組んでまいりたいと考えてございます。

岬委員 ありがとうございます。

 それでは次に、暗号資産のトラベルルールの導入についてもお聞きしたいと思います。

 本法案では、FATFによる指摘を踏まえまして、暗号資産交換業者による、その移転に係る通知義務であるトラベルルールを課すこととしています。移転に係る通知義務は、これまでも銀行などの金融機関には要請されているもので、我が国では、犯罪収益移転防止法において外国為替取引に係る通知義務を課しております。

 一方、暗号資産の取引は、二〇一九年六月にFATF基準の改定がありました。暗号資産交換業者に対して、暗号資産の移転に際し、その移転元、移転先に関する情報を取得し、移転先が利用する暗号資産交換業者に通知をすることを求める規制、これがトラベルルール、各国において導入、履行することが求められているところでございます。

 そこで確認をしていきますが、暗号資産交換業の自主規制団体である日本暗号資産取引業協会はトラベルルールの導入について検討を進めていたところ、金融庁は、二〇二一年三月、同協会に対しまして、暗号資産交換業の根拠法である資金決済法に明記されている暗号資産交換業の適正かつ確実な遂行を確保する視点から、トラベルルールの実施をするために必要な体制を整備するよう要請をしています。

 そこで質問です。

 日本暗号資産取引業協会では、本年四月以降、自主規制としてこのトラベルルールを導入しています。導入から半年ほど経過をしたところではございますが、この間の運用状況及び明らかになった課題、体制整備についてお聞かせください。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本暗号資産取引業協会におきましては、今回の法改正に先立ち、トラベルルールの一部取組を試行的に開始するため、本年四月より自主規制規則の一部を改正したところでございまして、この改正を踏まえ、暗号資産交換業者においては様々な対応に取り組んできたところでございます。

 今般の改正法案が施行された後は、例えば、対象となる暗号資産の限定がなくなるほか、外国暗号資産交換業者を利用する者への移転も対象となるなど、通知対象となる取引の範囲が拡大します。これまでの自主ルールベースの対応の経験も踏まえますと、外国暗号資産交換業者とのシステムの互換性の確保などが今後の課題かなというふうに認識してございます。

 我々金融庁といたしましては、このトラベルルールの適切な実施が暗号資産交換業者のマネロン対策等の強化に資するよう、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 本法案の導入されますトラベルルールについて、各事業者がしっかりと遵守しているのか、今後確認をしていく必要が当然あるわけですけれども、金融庁はどのように遵守の状況を把握していくのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今回の法改正により暗号資産交換業者に課されるトラベルルールは、暗号資産の移転の透明性を高める上で重要なルールと考えてございます。

 金融庁といたしましては、国際的に協調して実効性のあるマネロン対策等を実施する観点から、今後の暗号資産交換業者に対する検査監督におきまして、トラベルルールについて、暗号資産の送付人である自らの顧客から必要な情報を取得するシステムを構築できているか、こうした取組に対応するシステム管理体制が十分か、あるいは、暗号資産の受取人となる顧客を管理する他の暗号資産交換業者のマネロンリスク管理体制の十分性を的確に評価しているかといった点を確認する等としてしっかり検証していく所存でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 もちろんしっかりと検証していくということですけれども、それがどのように実行できるのか、実際にそれが可能なのかというところに課題や不安が残っているわけです。その辺りはどうなのかなという不安を残しつつ、次の質問に参ります。

 次に、金融機関のサイバーセキュリティー対策について聞いていきます。

 サイバーリスクは金融機関にとって重要な課題の一つと言えます。しかしながら、マネロン対策に関する課題です。日本の銀行は様々なところにありますが、FISC、金融情報システムセンターの基準、また各金融機関の努力によりまして、これまで、堅牢なサイバーセキュリティー管理体制は何とか確保しつつ、技術の進歩に対応するため、金融庁の調査、また日銀考査等のチェックが実施されているところだと認知をしております。

 金融庁の検査ですとか日銀の考査について、かねてから連携の強化が検討されていることも承知をしております。しかしながら、近年のサイバー攻撃は更なる巧妙化、加えて、最近は特にサイバー攻撃事案が増加していると感じています。国民生活にも影響を及ぼしています。

 金融庁においては、十月十四日に、ラザルスと呼称されますサイバー攻撃グループによる暗号資産関連事業者等を標的としたサイバー攻撃について注意喚起を行ったり、また、今年だけでも七回目となる、金融機関を対象としたサイバー攻撃に備えた演習を行っていることも承知をしております。

 そこで、金融機関における実効性のあるサイバーセキュリティーの構築に向けまして、どのような対応をしているのか、また、今後どのような対策をしていくのか、金融庁に伺います。

屋敷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、昨今、サイバー攻撃は一層巧妙化し、国内外で社会インフラに重大な影響を及ぼす攻撃が発生しております。このため、サイバーセキュリティーは、決済システムなど重要な社会インフラを担う金融分野において重要な課題の一つであると認識しております。

 我が国の金融分野におきましては、これまで、決済システムに大きく影響が及ぶようなサイバーインシデントは発生しておりません。しかし、他方で、DDoS攻撃によるウェブサイトの閲覧停止やフィッシング攻撃による不正送金など、利用者に影響が及ぶサイバーインシデントは相応に発生しているところでございます。

 金融庁では、これまで、検査等を通じて金融機関のサイバーセキュリティーの強化を促すとともに、業界団体や金融情報システムセンター等と連携し、脅威情報の共有や安全対策基準の整備に取り組んでまいったところでございます。

 金融庁といたしましては、引き続き、金融分野のサイバーセキュリティーの強化に取り組んでまいりたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 未然に防いでいくということが大変重要になってくると考えます。

 しかしながら、ここから、規模による格差についても着目をしていきたいと思います。

 金融機関のサイバーセキュリティー対策につきましては、資本的な余力ですとか規模の経済の観点から、金融機関の規模によりまして明らかに差が生じるものと考えられます。

 この点につきまして、日本銀行や、また考察していただき、日常的なモニタリングを通じて継続的な助言、指導を日銀でも行っていることは理解をしております。もちろん、金融庁でも、監督当局として、検査監督を通じてその水準のチェックを行っていらっしゃり、また、いずれも金融機関において最低ランクはクリアしているものと考えております。

 しかしながら、攻撃者からの視点となってみますと、可能な限り、対策が劣る金融機関、弱いところを狙ってマネロンを行っていくことが合理的であり、相対的に対策が劣る金融機関のリスクは高いと考えます。

 そこで、サイバーセキュリティー対策における、このような金融機関の規模による格差、この現状はどのように認識をして、対策はどのようにしていくのでしょうか。また、サイバーセキュリティー分野の人材確保、これも大変大きな課題だと思われます。今後、この重要な人材確保、人材育成をどのように行っていくのか、併せて教えてください。

屋敷政府参考人 お答えいたします。

 金融庁は、金融機関の規模、特性に応じて、検査等を通じてサイバーセキュリティー管理体制を検証しております。

 例えば、三メガバンクに対しましては、海外大手金融機関の先進事例を参考に、サイバーセキュリティーの高度化を促しております。また、地域金融機関に対しましては、内部規定の整備にとどまらず、それが有効に運用されているかなど、対策の実効性の向上を促しているところでございます。

 加えて、サイバーインシデントの未然防止にとどまらず、インシデント発生時においても、顧客への影響を最小化し、業務を早期に復旧させるため、毎年、委員御指摘のとおり、サイバーセキュリティー演習を実施し、金融業界のインシデント対応能力の向上に取り組んでいるところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、金融機関のサイバーセキュリティーの強化には人材の育成が不可欠であると考えております。金融庁といたしましても、金融機関に対しまして、経営陣のリーダーシップの下、内部人材の計画的な育成、外部知見を活用するため、情報共有機関である金融ISACが主催する研修への参加を図るなど、人材育成の取組を促しているところでございます。

 サイバー攻撃の脅威の増大に加えまして、デジタル化が推進する中、金融機関のサイバーセキュリティー管理体制の強化はますます重要な課題となっていくものと考えております。

 金融庁といたしましては、今後も力を入れて、金融機関に対して、サイバーセキュリティー向上及びセキュリティー人材の育成を促してまいりたいと考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 やはり、メガバンクは恐らく余力もあるでしょうけれども、それ以外のところ。さらには、人材育成、計画的に進めるといっても、なかなか、専門分野でありますし、時間がかかる育成だと思います。是非とも、もっと具体的なところで育成を、今後教えていただければと思います。

 それでは、時間も残り少なくなってまいりましたので、続きましては、ブロックチェーン技術等を活用したデジタル資産について伺っていきたいと思います。新しいデジタル資産へのマネロン対策という視点です。

 ブロックチェーン技術を用いましたNFT、非代替性トークンや、DeFi、これは分散型金融、これらを利用しましたデジタル資産について、その法律上の位置づけは明示されておりません。法令上曖昧な資産であるものも存在をしています。

 現在、金融庁で、これらのデジタル資産に対する規制の在り方について、多くの研究会を開催されていたり、また検討しているところであると理解はしております。

 更に言えば、このようなデジタル資産は、技術の進歩とともに日進月歩であり、法律が現実には追いついていない、若しくは追いついてはいけないものなのではないかと危惧をしております。避けられない事実に直面をしております。

 これらのデジタル資産は、金銭的な価値を有することから、マネロン等に利用される懸念があるということは言うまでもありません。他方で、本法案の既存する規制で措置することは難しいのではないかというふうに感じられるわけですね。

 そこで、最後の質問です。これは大臣にお聞きしたいと思います。

 今回のFATFの勧告対応法案ですが、マネーロンダリング対策のために、暗号資産やステーブルコインに関する対策ももちろん盛り込まれております。今後のブロックチェーン技術等を活用した新しいデジタル資産については、どのように対応していくおつもりなのでしょうか。是非ここは、谷大臣の意気込みも含めてお聞きしていきたいと思います。

谷国務大臣 お答えいたします。

 マネロン対策を進めていく上で新しいデジタル資産に的確に対応していくことは、御指摘のように大変重要であると認識しております。新しいデジタル資産に対しては、国際協調の下、各国が足並みをそろえて対応していくことが何よりも求められていることかと思います。

 今回のFATFの勧告対応法案においては、暗号資産やステーブルコインといった新しいデジタル資産に適切に対応するための改正内容を盛り込んだところでありますけれども、今後も、FATFにおける議論等、それから、そういう情勢の動き、変化、そういったこともしっかり注視しながら、政府一丸となって取り組んでまいりたいと思います。

岬委員 ありがとうございます。

 今後も引き続きまして、利用者の保護をすることはもちろんでございますし、日本国を守っていくためにも大変重要な分野になると思います。また、簡単には、正しい、間違っている、また、こうすれば解決できるという答えも見つけることが大変難しい分野でございますので、是非とも、技術だけではなく、各外国とのやり取りも含めて、私たちの金融、そしてシステム、資産を守っていくためには重要な分野だと認識をして進んでいっていただきたいと思います。

 是非とも、利用者の保護とともに、成長戦略という観点からも、これからの時代、なくてはならない分野となっていきます。新しい時代の金融サービス、これを実現していくことを期待しまして、お時間となりますので、質問を終了させていただきます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 私も、本日は、FATF法に対する質疑をさせていただきたいと思います。

 今日は、大きく二つのテーマで質疑をさせていただきたいと思いますが、最初に大臣の方にお伺いしたいと思います。

 まずは、やはり、本日の質疑の中でもマネロン対策の実効性に着目をする質問が多数寄せられておりますけれども、私も同様な問題意識を持っております。

 今回のFATF法案にはマネロン対策というのが重点的に盛り込まれているわけですが、マネロン対策については、とにかく穴をつくってはいけない、どこか一か所でも穴ができると、そこを通過して不正な資金がどんどん流出してしまうおそれがありますので、やはり、幅広く、そして確実に穴を塞いでいく、穴をつくらない、こういった意識が必要かと思います。

 そういった点では、今、岬委員も質疑の中で取り上げられておりましたが、大手金融機関にとどまらず、地方銀行や信用金庫、あるいは暗号資産取引業者も含めて、日本の金融界として実効性を高める取組が求められているというふうに感じております。そのために、どのような課題認識を大臣がお持ちなのか、まずはその御見解を伺いたいと思います。

谷国務大臣 お答えします。

 マネロン対策をしっかりと進めるためには、浅野哲委員御指摘のように、幅広く、確実な対策を講じる必要があろうかと思います。

 そのためには、金融機関などが果たすべき役割が重要であり、御審議いただいているFATF勧告対応法案においても、例えば、金融機関等に対し、資産凍結措置を適切に実施するための体制の整備を求めることとしているところであります。

 また、金融機関等に対しましては、政府一体となったマネロン対策等を強化するため、関係省庁で策定した行動計画に基づき、金融機関及び暗号資産交換業者が実施するマネロン対策等の監督強化や、金融機関等のリスク理解の向上等の取組を推進しているところであります。

 引き続き、関係省庁において、マネロン対策等のために設置した政策会議の枠組みを適切に活用し、御指摘のように、地方銀行、信用金庫などを含めた地域金融機関も含め、金融機関等におけるマネロン対策の実効性向上のための取組を着実に進めてまいりたいと思います。

浅野委員 ありがとうございます。

 続いて金融庁の方に伺いたいと思いますが、今大臣の方で答弁をされた、この行動計画に基づいて、金融機関に対しても対策強化あるいは情報提供を行っていくということですけれども、政府として、どのような体制で、どのような行動を取っていくのか、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁では、委員から御指摘ございました、地域銀行、信用金庫、あるいは暗号資産取扱業者も含めた所管金融機関のマネロン対策等の実効を向上させるため、様々な方策を取ってございます。

 まず、我々としましては、検査あるいはモニタリングのための人員を増強してございます。

 その上で、先ほど来御説明しておりますけれども、こういった業者、こういった金融機関さんに対して、マネロン対策等に焦点を当てた検査を集中的に実施しておりまして、この検査の中では、例えば、具体的にどういった問題があるのか、あるいはそれに対してどういった改善策を取ればいいのかといった点について、具体的に議論させていただいているところでございます。

 また、これも先ほど御説明しましたけれども、地域金融機関あるいは信用金庫といった業界団体等に対し多数の説明会をやってございまして、この説明会においては、先ほど申しました検査での結果のフィードバックなども含め、テーマごとですとか、あるいは地域ごとですとか、そういうような様々な切り口から、いろいろな御議論あるいは御指摘をさせていただいているところでございます。

 こういった形で、我々としては、マネロン対策等の理解促進や体制強化のための施策を実施しているところでございます。

 我々としては、所管する全ての金融機関に対して、二〇二四年三月末までのマネロン対策に係る体制整備を要請してございまして、各金融機関では、継続的顧客管理の完全実施も含めたマネロン対策等に係る体制整備が進められているところでございます。

 このような中で、我々としましては、所管金融機関、地域金融機関、あるいは暗号資産交換業者も含めて、適切な対応が図られていくよう、今まで申し上げたような施策をより一層推進してまいりたいというふうに考えてございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 やはり、テーマごとですとか地域ごとで、しっかりサポート体制あるいはフィードバックをしていくということですけれども。

 ちょっともう少し踏み込んで伺いたいんですが、直近で金融機関には体制整備を求めているわけですけれども、このマネロン対策というのはこれからずっと取り組んでいかなければいけない長期的なテーマでありますし、また、後ほど取り上げますが、様々な最新技術が投入されて、より複雑化、高度化されておりますので、やはり、テーマあるいは地域単位でしっかりとこういった金融機関を支える体制もつくらなければいけないのではないかと思いますが、例えば地域ごとにそういった窓口あるいは相談体制をつくったり、それに類するような支援事業というのを今後金融庁が行う考えがあるのか、確認させてください。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、我々金融庁としまして、金融機関に対する検査等を行っていると申し上げましたけれども、このような検査については、我々金融庁と、あとは各地方における財務省財務局と共同で行っておるところでございます。また、こういう地域金融機関のモニタリングにつきましては、継続的なモニタリングは財務局の方で行うことになっておりまして、財務局の方で、このような金融機関さんたち、マネロン担当者と様々な対話を常日頃からやっているところでございます。

 そのような枠組み、あるいはそのような交流を通じて、委員御指摘のありましたようなマネロンについての窓口といいますか、マネロンについての地域ごとの意見交換、あるいはマネロン人材のコミュニティー、そのようなものを育成していきたいというふうに考えてございます。

浅野委員 このテーマはこれで最後にいたしますが、やはり、FATFの評価結果を見ても、金融機関とか資金移動業者は、マネロン、どういったことをやってはいけないのか、あるいはどういった行為がリスクにつながるのか、こういったことについて、一部の、例えばメガバンクなんかは、担当者なんかは理解をしているという評価をしているんですが、それ以外の職員や、あるいは地方の金融機関の職員については、そこまでの理解がまだ不十分である、そういった評価をしておりますので、今言ったような、財務当局と金融庁がまさに地域の現場でいかにサポート体制を継続的に維持できるのか、提供できるのか、ここは非常に重要な点だと思いますので、今後の取組の中で力を入れて取り組んでいただきたいということを申し上げます。

 続いての質問に移りたいと思いますが、マネロン対策が高度化しているという話を先ほどいたしましたが、やはり、メガバンクがやればいいというわけではなくて、第二地銀のような地方の金融機関もしっかりとこれは行わなければなりません。

 したがって、本日の参考資料にも掲載をさせていただきましたが、疑わしい取引を検知するシステムの導入や分析作業、そして継続的に顧客情報を管理していくような取組が今進められておりますが、これには経費がかかる、負担が発生する、そういう問題もあります。特に、経営力が盤石とは言えない地方銀行からは、この負担を抱えられるのかという懸念の声が上がっております。

 そうした新たなシステムの導入に向けて、金融機関の負担を軽減するような支援を政府は行うべきではないかと思うんですが、その点について伺いたいと思います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、国際的にもより高い水準でのマネロン対策等の実施が求められている中、中小規模の金融機関においては、システムの整備や人材確保等の面で単独での対応が難しいとの声があることは承知してございます。

 こうした中、銀行業界におきまして、マネロンシステムを共同化し、効率化及び高度化を図るための検討が進んでおりまして、こちらも委員御指摘のとおり、十月十三日に全国銀行協会が、取引モニタリング等のAIスコアリングサービス等を提供するため、本年度中に準備会社を設立し、二〇二四年度以降の段階的なサービス提供に向けた準備を進めると公表されたと承知しております。

 なお、当公表に当たっては、全国銀行協会から、この共同機関の枠組みを通じて、都銀、地銀、第二地銀等の各業態が、まさに互助的に力を合わせることで、我が国全体のAML/CFT体制の底上げを加速してまいりたいとの発言があったものと聞いております。

 金融庁といたしましても、このような共同化の取組を後押しすべく、本年十一月八日に閣議決定されました令和四年度一般会計補正予算(第2号)等についてにおいて、AIを活用した共同化によるマネロン対策の取組への補助事業といたしまして六・二億円を盛り込み、今国会で御審議をいただく予定でございます。

 金融庁としては、引き続き、FATF第五次審査を見据え、官民一体となって金融機関のマネロン等管理体制の高度化に取り組んでまいります。

浅野委員 今御答弁の中にもありましたが、今回、これから審議される予定の第二次補正予算の中には六・二億という予算が提案されているということでありますが、事前に聞きましたところ、この六・二億というのは、システム開発のための補助であって、運用段階に入ったときに金融機関の負担を軽減するための補助ではないんじゃないかというふうに私は今感じております。

 是非、運用段階で金融機関の負担ができるだけ軽くなるような支援を政府には求めたいと思うんですが、ここにも一言いただければと思います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁申し上げたとおり、現在の補正予算の方において御提案させていただいているものは、補正予算の性格上、本年度において執行が予定されるということでございまして、原則としてはシステムを立ち上げるための経費ということと考えてございます。

 一方、先ほど申し上げましたように、この共同化のシステムは、幅広い、中小金融機関も含めて使っていくことが肝要と考えておりまして、そのために具体的にどのようなことができるかにつきましては、全国銀行協会におかれても様々な御検討を進められているものと承知しておりまして、我々もそのような検討にあずかってまいりたいと思っております。

浅野委員 どうもありがとうございます。是非、引き続き御検討をよろしくお願いいたします。

 続いて、今回、トラベルルールというのが強化されるということで、送金側そして受け取る側、それぞれの情報を的確に把握することというのが業者に求められていくわけですけれども、そのこと自体を難しくさせるような新たな技術が次々生まれているという話をしたいと思います。

 本日の資料二の方になりますが、こちらには、取引の匿名性を高めるツールや手法の例ということで、幾つか紹介をさせていただいております。

 例えば、一番上にあるコインミキサーというものは、他者の取引と混同し、移転元とのつながりを不明瞭にするような技術だそうでありますし、また、三つ目のプライバシーウォレットというものは、個人間で取引が完了できるような、要は業者を挟まずに取引をしてしまえるようなものだそうであります。

 また、それ以外にも、見ていただくと、とにかく、取引の匿名性を高めるような技術がこれだけ既に確認がされているということで、暗号資産交換業者が、トラベルルールを強化したとはいえ、しっかりと取引内容を把握できるのか、言い方を変えれば、課せられた義務を果たすことができるのか、こういった疑問が今残っているわけであります。

 そこで、政府にお伺いをいたしますが、匿名性を高めるツールや手法の悪用というものが十分に想定される今環境になっている中で、どう対策をしていくのか、その点のお考えを聞きたいと思います。

柳瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 暗号資産につきましては匿名性が高いという特徴がございますし、委員御指摘のように、その匿名性を更に高めるツールや手法も存在していると承知してございます。

 こうしたツール等につきましては、主として個人間の暗号資産の移転において用いられているものと承知していますが、現時点では、暗号資産は直接の支払い手段としての普及が限定されていることから、暗号資産での多額の支払い等は、最終的には業者を経由して法定通貨に換金されることが一般的かと考えられます。

 このため、従来から暗号資産交換業者に対して顧客の本人確認義務等を課しているわけですが、今般の法案においては、暗号資産の移転について透明性を高めるため、トラベルルールを導入することとしてございます。

 これによりまして、我が国の暗号資産交換業者が、送付人である顧客の依頼に応じて業者間で暗号資産を移転する際に、その送付人と受取人に関する情報を送付先の他の暗号資産交換業者に通知することが求められることとなりまして、この結果、業者は、取引相手先が業者か個人かを識別する必要が出てまいります。これを通じて、個人との間の暗号資産の移転についても透明性が高まることになるのではないかと考えてございます。

浅野委員 業者間の取引情報の共有によって、ある一定程度のトレーサビリティーというのは確保できる可能性は否定いたしませんが、問題は、今答弁の冒頭におっしゃっていた、仮想通貨、暗号資産というものが、今のところ決済手段としては普及していない、それはそのとおりでありますが、では、それがこれからもずっとそうなのかといえば、そうとは限らないと思いますし、また、最後の出口、換金するところを押さえているから大丈夫だというのは、やはりテロ対策あるいは不正防止の観点からいえば、かなり楽観的だなというふうに言わざるを得ないかなというふうに思います。

 したがいまして、ここは、後ほど大臣にも伺いたいと思うんですが、まだまだ改善の余地があるというふうに思いますので、引き続き政府内でも、より実効性の高い効果的な対策は研究調査を進めていただきたいということを申し上げたいと思います。

 次の質問ですが、こちらは先日の本会議で我が会派の鈴木敦議員も質問したものでありますが、本法律案では、没収を可能とする前提犯罪を拡充する規定はなく、国際的にマネロン対策をリードしていくべき我が国の姿勢を示す必要がある中で、犯罪によって得た利益を没収する規定を拡充しなかったというのは、いささか理解に苦しむ点がございます。

 当日の法務大臣からの答弁では、今の実態あるいは国際動向を踏まえて検討されるべき問題だというような答弁があったんですけれども、それはそれで言い分としては分かるものの、では、なぜ今、その拡充をしないという判断に至ったのか、その理由について確認をさせていただきたいと思います。

保坂政府参考人 没収の対象になります犯罪収益を生み出す前提犯罪について、前提を申し上げますと、前提犯罪のたてつけとしましては、いわば二階建てになっておりまして、法定刑が、死刑、無期若しくは長期四年以上の懲役、禁錮が定められている罪、これは全て対象になります。これに加えまして、その法定刑に満たないものでありましても、例えば暴力団の資金源になっているような犯罪、これについては個別に列挙する形で前提犯罪としている、こういう形を取っております。

 したがいまして、これを拡大するかどうかにつきましては、まずもって暴力団の資金源犯罪になっているかどうかという実態があるかどうかという点ですとか、あるいは法定刑の部分に関しましては、条約や国際動向、これを踏まえて検討するということを、せんだっても大臣から答弁させていただいたところです。

 これにつきまして、組織犯罪の実態というところについては注視を続けていかなければなりませんが、今この時点でということで申し上げますと、前提犯罪とすべきものは適切に列挙されていると考えておりますが、これはこの先もずっと注視を続けていって、絶えずアップデートしていく必要があると考えております。

 また、国際動向につきましては、FATFの相互審査やあるいは国際組織犯罪防止条約の締約国会議などで動向を我々としても把握をしているところですが、今回のFATFの勧告の中では、その拡大ということは指摘をされておりません。これにつきましても、国際的な犯罪収益規制というのは変わってまいりますので、これも絶えずフォローアップしていく必要があると思っております。

 そして、こういった点を踏まえまして、更なる法整備が必要だということになった場合には、それには適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

浅野委員 ありがとうございました。

 マネロンとかテロ対策とかについて知識が余り多くない者から見ますと非常に難しい答弁だったわけですけれども、今の答弁内容を少し分かりやすく言えば、今の前提犯罪の中に含まれるものに該当すれば、没収する手段が既にある、新たに前提犯罪を規定しなければいけないような新たな手法であったり新たな犯罪主体のようなものが出てくれば、そのときはその都度アップデートをする、そういう理解でよろしいですね。はい、ありがとうございました。

 では、FATFに関して、これまでの議論を総括いたしまして、大臣に伺いたいと思います。

 今日、幾つか議論させていただいた中でも、大手金融機関と中小の金融機関の高位平準化の問題であったり、あるいは新たな技術を使った匿名性の強化というものが今起きる中で、今のトラベルルールで十分なのかといった点、私としては、まだまだ懸念が多いなというふうに感じるんですけれども、今回のFATFの勧告に対する法整備が成立をしたとして、それで我が国のマネロン対策は十分なんでしょうか。その基本認識を大臣に伺いたいと思います。

谷国務大臣 お答えさせていただきます。

 マネロン対策は、国民生活の安全と平穏や経済活動の健全な発展の観点から、これを国際的な協調の下で推進していくことが重要であると基本的に認識しているところであります。

 FATFの第四次対日審査報告書においては、マネロン罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提条件と同水準に引き上げること、法律、会計等専門家の取引時の確認義務や疑わしい取引の届出義務の規定を整備することなど、様々な指摘を受けたところであり、御審議いただいているこのFATF勧告対応法案は、これら指摘のうち法改正が必要とされた事項を盛り込んでいるところであります。

 そのほか、法改正を必要としない事項についても、マネロン対策等の関係省庁で構成されるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議を活用するなどして、関係省庁が一体となって取組を進めていく考えでございまして、浅野委員御指摘のように、これから、事態の変化、あるいは情勢が大幅に、周りの環境が変わってしまう、そういったことにもしっかり目配りをしながら、この対策を進めていかなければならないと思います。

 今回の法案、また、今回の法案以外の様々な対策で、これでずっと大丈夫という認識は持っておりません。たゆまざる見直し、そして取組が必要だと思っております。

浅野委員 ありがとうございました。

 では、残り五分程度ですので、残りの時間は、少しサイバーセキュリティーの問題も取り上げさせていただきたいと思います。

 これはデジタル庁の方になると思うんですが、今日は、ガバメントクラウドのセキュリティーというものにテーマを絞って質疑をさせていただきたいと思います。

 デジタル庁は、十月三日、デジタル庁が整備し、各府省庁などが共同利用するガバメントクラウドで、今年度利用する対象クラウドサービスを発表いたしました。クラウドサービス提供事業者として採択されたのは、いずれも米国の企業ですが、アマゾンウェブサービス、グーグル、そしてマイクロソフト、そしてオラクルの四社だということであります。

 まず、基本的な事実関係を確認したいんですが、デジタル庁とガバメントクラウドに認定された四社が契約しているのは、日本法人なのか、それとも米国の本社なのか、事実関係を教えてください。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 ガバメントクラウドは、公募にて提示をいたしましたクラウドサービスに求める要件を満たす全てのクラウドサービス事業者と契約をすることとしておりまして、現在、米国が本社の四事業者が該当しておりますが、その契約は、二社は米国法人、二社は日本法人となってございます。

浅野委員 もし御答弁いただけるのであれば、米国本社と契約している社名は答弁いただけますでしょうか。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 アマゾンウェブサービスとマイクロソフトコーポレーションの二社でございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 続いての質問なんですが、米国本社と契約している場合、このクラウドサービス事業者がベンダーロックインに該当する対応をした場合、言い方を変えれば、公正取引に合わない対応をした場合、日本の公正取引委員会は米国の会社に対して指導や勧告を行う権限があるのか、そしてまた、その事業者はそれに応える義務を持っているのか、その辺りを御答弁いただきたいと思います。

大胡政府参考人 お答え申し上げます。

 個別事業者の事案に関わる問題については、直接的にはお答えを差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、外国の事業者に独禁法が適用できるかどうかという点につきましては、いろいろと論点はございますけれども、これまでも違反行為が認められた場合には措置を取ったというケースもございます。

 また、これはカルテルの事案となりますが、国外で合意がされたカルテルにつきまして、それが我が国の自由競争経済秩序を侵害する場合には、独禁法上の排除措置命令等を出せるとの最高裁判決が過去に出ておりますので、当委員会としましては、外国で行われた行為であっても、独禁法違反行為が認められる事案については、このような判決などを踏まえて法運用を行いたいと思っているところでございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 そろそろ時間ですので、これが最後の質問になるかと思います。

 二〇一八年に米国で施行された米国CLOUD法においては、アメリカ政府は、米国内の本拠地を持つ企業に対して、米国外に保存されているデータを合法的に閲覧、差押請求を行える可能性があるとされております。仮に、米国の捜査当局からガバメントクラウド上の日本国民に関するデータの開示が求められた場合、開示しなければいけないのか、それとも、そこはしっかりと日本の主権を主張できるのか、その辺りを確認させてください。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の米国のCLOUD法は、米国政府に無制限のアクセスを認めるものではなく、犯罪捜査という極めて限定された場合において、裁判所の令状等に基づく手続により、米国の管轄にあるクラウドサービス事業者に対して開示要請が行われるものでございます。

 そのため、一般の行政事務の遂行に係るシステムを利用対象としているガバメントクラウドについては、そもそも、当該データ提供の要請が行われることは想定し難いというふうに考えております。

 その上で、万が一、米国のCLOUD法に基づく要請があった場合には、クラウドサービス事業者からデータの所有者である日本国政府に通知が行われ、外国主権免除法に基づく主権免除の適用を米国に求めることで、開示が行われないものと考えてございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

大西委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 FATF勧告対応法案について質問します。

 まず最初に、マネロン罪の法定刑の引上げについて確認したいと思います。

 組織的犯罪処罰法では事業経営支配罪、犯罪収益等隠匿罪、犯罪収益等収受罪が、麻薬特例法では薬物犯罪収益等隠匿罪、薬物犯罪収益等収受罪の法定刑を引き上げるという提案となっています。FATF第四次対日相互審査報告書は、なぜ法定刑の引上げを求めているのでしょうか。その書かれている部分を紹介していただきたいと思います。

保坂政府参考人 FATFの第四次対日審査報告書におきまして、マネーロンダリング罪の法定刑について、日本で最も頻繁に犯罪収益を生み出している前提犯罪に適用される法定刑よりも低い水準である、詐欺、窃盗などの前提犯罪が十年以下の懲役刑とされていることに比べても低い、マネーロンダリングに適用可能な制裁は、罪の程度に見合ったものではなく、マネーロンダリング罪が利益を生み出す性質を考慮すると、十分な実効性や抑止力もないなどと指摘された上で、優先して取り組むべき行動の一つとして、マネーロンダリング罪の法定刑の上限を、少なくとも日本で犯罪収益を最も頻繁に生み出す重大な前提犯罪と同水準に引き上げるべきであると勧告をされたところでございます。

田村(貴)委員 そのFATF第四次対日相互審査報告書に、共謀罪の対象を拡大すべきとの記述はありません。組織的犯罪処罰法の犯罪収益等収受罪と、麻薬特例法の薬物犯罪収益等収受罪は、懲役三年以下から懲役七年以下に引き上げられます。それだけの改正もできたはずであります。なのに、わざわざ犯罪収益処罰法の別表第四表から削除したことで、新たに共謀罪の対象、罪としたわけであります。

 お尋ねします。なぜ別表第四から削除したんですか。

谷国務大臣 お答えします。

 テロ等準備罪については、国際組織犯罪防止条約が定める犯罪化の義務を実施するため、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものが対象犯罪とされているものと承知しているところであります。

 今回、犯罪収益等収益罪及び薬物犯罪収益等収受罪の懲役刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴い、これらの罪がテロ等準備罪の対象犯罪に加わることとなるため、組織的犯罪処罰法別表第四を改正することとしております。

 これらの罪は、例えば、暴力団組織が様々な犯罪によって獲得した収益を上納させて収受する場合など、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪であることから、法定刑の引上げに伴いこれがテロ等準備罪の対象犯罪に加わることは、国際組織犯罪防止条約の定める犯罪化義務を実施する上で不可欠であると承知しているところでございます。

田村(貴)委員 FATF第四次対日相互審査報告書には、日本の法定刑の引上げしか書いていないんです。日本の共謀罪について適用範囲を拡大しろという勧告はないんです。

 法務省、これは、法務省の判断で共謀罪の対象を拡大したということなんでしょうか。

保坂政府参考人 委員御指摘のとおり、FATFの勧告の中にテロ等準備罪の対象犯罪について触れる部分はないとは承知しておりますが、先ほど大臣からも御答弁させていただいたとおり、既に日本が締結している国際組織犯罪防止条約というのがございます。この条約上の義務といたしまして、死刑、無期若しくは長期四年以上の懲役、禁錮の刑が定められている罪であって、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものにつきましては、これはテロ等準備罪の対象にするということが、既に加入している条約上の義務でございます。

 したがいまして、この義務を履行するためには、今回、犯罪収益等収受罪の法定刑がこのカテゴリーに入った場合に、それが組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものである以上は、それは対象にする義務を、国際法上の義務を負っているという理解でございます。

田村(貴)委員 それは、日本国政府、法務省の判断だと言わざるを得ません。

 だったら、この共謀罪の適用範囲の拡大という重大なことが秘められているならば、やはり徹底して議論すべきであると思いますよ。

 共謀罪の導入については、当時、国民や人権団体から強い反対の意見が沸き起こっていた中で、強行して成立したという経緯があります。

 法制審議会に諮問して、この共謀罪の対象拡大について議論はされてきたんでしょうか。

保坂政府参考人 関係している法制審議会の諮問、答申というのが二つございまして、まず一つ目ですが、組織的犯罪処罰法のテロ等準備罪につきましては、これは元々、平成十四年に諮問して平成十五年に答申をいただいた、組織的な犯罪の共謀の罪、この創設の答申を踏まえて立案されているものでございます。

 この際は、その対象とする罪について議論されて、その結果、答申の内容といいますのは、個別に列挙するのではなく、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪の全てを対象とするという答申内容でございました。

 そして、マネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきましては、今年一月に諮問させていただいたところですが、これにつきましては、マネーロンダリング罪の法定刑を引き上げるということで、今回の法案と同じ内容のものを諮問いたしまして、答申をいただいたということでございます。

 この際は、お尋ねの犯罪収益等収受罪の法定刑の引上げ自体については議論されておりますが、これとは別に、これに伴ってテロ等準備罪の対象に加わるということについては諮問されておりませんし、特に議論もされておりません。

田村(貴)委員 大事なところの議論が欠落しているんですよ。法制審に諮問されたのは法定刑の引上げだけだったんですね、今お認めになったように。

 そして、現行では、上限四年を超える罪であっても、共謀罪から削除されている罪もあるわけなんです。

 結局のところ、FATF勧告を盾にして、このどさくさの中で共謀罪を拡大したということになるんじゃないですか。大臣、いかがですか。

保坂政府参考人 今、テロ等準備罪の対象となる罪についての法制審議会の議論が欠けているという御指摘をいただきましたが、先ほど申し上げましたとおり、平成十五年に答申をいただいた内容というのは、死刑、無期若しくは長期四年以上の懲役、禁錮が定められている罪については全てこれを対象とする、そういう答申を既に法制審からいただいております。

 この答申のとおりの法整備を行った場合には、仮に、新設あるいは法改正によってそういう法定刑の罪が新たにできたという場合には、特段の手当てをしなくてもその罪に当たることが前提となりますので、それにつきまして改めて法制審に諮問をする必要はないというふうに考えられるところでございます。

 したがいまして、犯罪収益収受罪の法定刑が引き上げられて長期四年以上の懲役、禁錮となることによってテロ等準備罪の対象犯罪となること自体について法制審議会に諮問を行っておりませんが、これは先ほど申し上げた答申に即した内容であるというふうに考えております。

田村(貴)委員 別表四の削除とか、これはなかなか難しいですよ。今度の法定刑の引上げについて、共謀罪の適用範囲が拡大するということをちゃんと諮問しないと駄目ですよ。ここがやはり論議の中心の一つになるわけですから。

 そもそも共謀罪というのは、市民にとって、何が犯罪となり、どんなことをしたら処罰の対象にされるのか全く不明確のままだったんです。人の命や身体、財産などの法益を侵害する危険が客観的にない計画、例えば話合いとかによって、準備行為を処罰するものになっているんです、この法律は。日本国憲法で保障された内心の自由、これを侵害し、刑事手続に関する人権保障規定を侵害するものであります。こうした共謀罪を拡大することについては認められません。

 続いて、統一協会から北朝鮮への資金移動問題について伺います。

 八日の本会議質問で、私、具体的に質問しましたけれども、谷大臣からはまともな答弁がありませんでした。統一協会が日本の信者から集めたお金を北朝鮮に渡していたのではないかという重大問題であります。

 再度伺います。

 統一協会の文鮮明は一九九一年に四千五百億円を、一九九三年に三百万ドルを北朝鮮に寄附したと米国の国防情報局、DIAの文書に記載されている、このことを予算委員会で立憲民主党の長妻議員が取り上げました。私も、これは非常に重大だと思い、先日、本会議で伺ったところです。谷大臣は、現時点では御指摘の情報の真偽を確認することは困難であると述べられました。

 では、これまでに、アメリカに対して事実確認を行ったのですか、文書の提示を求めたりしたことはあったんですか。お答えください。

谷国務大臣 先日、本会議で御質問をいただきました。そのときにお答えしたとおり、御指摘の報道の真偽を確認することは現時点では困難であると承知しているところでございます。

田村(貴)委員 委員長、答えになっていません。

 私が聞いたのは、アメリカに事実確認をしたのか、文書の提示を求めたりしたことはありますかと聞いているんです。大臣が分からなかったら、事務方でもいいですよ。

岩本政府参考人 今委員御指摘の報道につきましては、先ほど谷大臣からもお話ございましたが、この報道自体、承知しております。ただ、この報道の真偽を現在確認することは実態上困難であると思っております。

 その上で申し上げますと、旧統一教会に限らず、いかなる出元の資金であったとしても、北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであるので、断じて容認できないという具合に考えております。

田村(貴)委員 だったら何で、こんな重大な認識があるんだったら、アメリカに事実確認、文書の提示を求めたりしていないんですかと聞いているんです。しかとお答えください。

岩本政府参考人 繰り返しになりまして恐縮でございますが、この報道の真偽を確認することは困難であるという具合に考えております。

 北朝鮮の核、ミサイルの開発の問題、これについては、従来から、国連安保理決議、また我が国自身も独自の措置を取って、北朝鮮向けの支払いを原則禁止するなど必要な措置を講じているところでございますので、こういった取組を、引き続き、アメリカ含めて各国と連携しながら高めていきたいと思っております。

田村(貴)委員 ないんですね。何もしていないんでしょう。

 北朝鮮が九〇年代中盤から旧ソ連製のゴルフ級の潜水艦を導入してSLBM技術を獲得したと、韓国国防部国防政策室長が韓国の国会で答弁をしています。ロシアからの潜水艦の購入には統一協会関係者である日本の商社の関与が疑われています。

 このことについて、じゃ、伺いますが、報道は知っているけれども、韓国に対して事実確認した経緯はあるんですか。

岩本政府参考人 先ほど委員御指摘の韓国の関係の情報でございますが、これについても、そういった情報がこれまでるるあることはもちろん承知はしております。また、韓国含め、またアメリカ、そして様々な同志国との間で、北朝鮮の核、ミサイルの問題については、これまでも、従来からいろいろなやり取りをしてきておるところでございますが、そこの詳細については、外交上のいろいろなやり取りでございますので、この場でお答えすることは差し控えさせていただきます。

田村(貴)委員 結局、何をしてきたかについてもお答えにならないんですよね。

 谷大臣は、本会議質問の答弁で、二〇一六年以降、北朝鮮向け支払いを原則として禁止するなど、北朝鮮への金の流れを厳しく規制する我が国独自の措置を累次にわたって実施してきたと。今も、同様の答弁があったんです。

 だったら、二〇一六年以前はどうだったんですか。統一協会が霊感商法等を通じて金を信者から集めて、その資金の一部が北朝鮮に流れていないと政府は断言できますか。二〇一六年以前のことを伺います。どうですか。

谷国務大臣 本会議で二〇一六年と申しましたのは、たしか、国連決議に基づく制裁が二〇一七年で、それ以前から日本独自の制裁を講じているという文脈で述べたものだと思います。

 それ以前の、様々な御指摘、アメリカあるいは韓国での報道の件につきましては、現時点では報道の真偽を確認することは困難であると承知しておりますし、また、具体的には、今外務省の担当が述べたとおりであろうかと思います。

田村(貴)委員 これだけたくさんの証言があって、そして、公の場で、資金が移動したということを認める外国からの証言もある。これについて、その行為が行われていたのは日本国内であるのに、北朝鮮に対する資金の移動は厳しくしなければいけないと言いながら、何もしてこなかったということが明らかになりました。

 疑いのあるものについては、政府として徹底的に検証すべきじゃありませんか。旧統一協会に限らず、いかなる資金によるものであれ、北朝鮮による核・ミサイル開発は、我が国及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できませんと、そこまでおっしゃるのであれば、調査ぐらいしたらどうですか。マネロン対策は徹底してやるわけでしょう、共謀罪まで広げて。何でこういう、日本から北朝鮮に渡る、統一協会関連の疑惑、そして数々の証言について検証しないのか。これは徹底して調査を、そして究明を求めたいと思います。

 報道によれば、二〇一八年に埼玉県信用金庫が行政処分を受けました。また、同年、三菱UFJ銀行のニューヨーク支店がアメリカの監察局から行政処分を受けています。どちらも北朝鮮への送金の疑いだと報じられていますが、これはどうなんですか。行政処分の理由について、金融庁、述べてください。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の件に関します報道は承知しておりますけれども、個別金融機関に対する監督上の対応に関するコメントは差し控えたいと存じます。

 その上で、一般論として申し上げますと、各金融機関は、犯罪収益移転防止法その他の関係法令に基づき、厳格な取引時確認や疑わしい取引の届出などにおいて適切に対応することが求められております。そのほか、マネーロンダリング対策等の観点から、リスクに応じた顧客管理を実施しているところでございます。

 金融庁といたしましても、こうした各金融機関の対応について適切にモニタリングしておるところでございます。また、今後もモニタリングしてまいります。

 以上でございます。

田村(貴)委員 マネロン対策が本法案、改正案のテーマなんですよね。ところが、このマネロンで、政府も絶対に許されないと言う北朝鮮に対する資金の移動について、統一協会関連のことについては何も調べない、何も明らかにならない。これはなぜですか。

 谷大臣、自民党と統一協会との本当にたくさんの関わりが明らかになっています、日々明らかになっていますけれども、こうした関係があるから調べようともしないと私は言わざるを得ないんですけれども、どうなんですか。なぜ調べないんですか。

谷国務大臣 自民党と統一教会との関係について、私がどうのこうの言う立場ではないと思います。かねてより、総理の方からも、本人が政治家として説明責任を果たすべきものだという考えを述べており、私も全くそのとおりだと思います。

田村(貴)委員 こうした送金が北朝鮮の軍事兵器、そしてミサイル開発、その発射等々に使われてきたという疑いは濃厚なんですよ。こうした問題を放置して、ちゃんと外交で対峙できるんですか。徹底究明そして調査を重ねて要求したいというふうに思います。

 続いて、クールジャパンとインボイスの問題について質問します。

 政府のクールジャパン戦略では、アニメ、漫画、ゲームはどのように位置づけられているのでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 アニメ、漫画、ゲームは、広く海外の人に親しまれており、特に近年はデジタルによる海外展開も積極的に行われるなど、日本を代表するコンテンツとして、クールジャパンにおいて果たしている役割は極めて大きいと考えております。

 二〇二〇年の海外市場での売上げの推計ですけれども、アニメで一兆二千三百九十四億円、漫画等の出版で二千五百三十八億円、ゲームで五千二百七十七億円、合わせて約二兆円となるわけでございますけれども、大変期待される成長産業だと考えております。また、作品をきっかけとして日本の文化に興味を持ったり、またインバウンドにつながるなどの波及効果も大変大きいことから、アニメ等と他分野との連携を図りながら、クールジャパン全体の盛り上げにつなげてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 そういうことですよね。まさに日本の文化ですよね。海外でも広く親しまれ、そして、これを実感したいということで、インバウンド、訪日される外国人の方も多いと私も承知しております。

 そこで、成長産業と和田副大臣が言われたこの業界なんですけれども、裾野は、多くの個人事業主、フリーランスの方がたくさん働いておられます。そして、下請の関係で成り立っている業界でもあります。下請の立場が弱いこと、これはもう多くの人が知るところであります。

 経済産業省の、アニメーション制作業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン、これによりますと、こう書かれています。アニメーション業界では、作品数の増加や就労環境の問題から、人材不足が顕在しているものの、人材の確保、育成は個社やアニメーターの個人の努力に委ねられているのが現状であるとの指摘ですね。

 和田副大臣もこの現状を認識されておられますか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 御指摘の点、認識していると考えております。

 あと、フリーランスの方々に関しましては、一般的に、事業者とフリーランスの方々との間には情報量や交渉力等の格差がありまして、フリーランスの方が一方的に不利になりやすいと言われていることもございます。

 これを踏まえまして、フリーランス等に対する取引の適正化等を図るために、経済産業省ではアニメーション制作業界について、また、総務省では放送コンテンツの業界について、文化庁では文化芸術分野につきまして、それぞれガイドラインを策定して、普及啓発を図っております。

 加えまして、昨年三月でありますけれども、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインを、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省、四者連名で取りまとめたところでありまして、雇用環境、取引環境の適正化、これに努めてまいっている所存でございます。

 これらの取組について、本年六月の知財推進計画に盛り込んだところであり、内閣府としてもしっかりとフォローアップしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 フリーランスの法改正、出てもいませんよね。そして、政権与党の方でもまだまとまっていないというふうにも伺いましたけれども、どうなるんですか、これ。

 まさに、成長産業と言われているところを下支えしている、全体的に支えられておられる方はフリーランスの方、圧倒的に免税業者、収入が低い人たちであります。このアニメそして漫画を支えている方々が新たに消費税の負担を強いられようとしている、これがインボイスなんです。ですから、もう名前も出して顔も出して、これだけはやめてくださいと、副大臣のところにも陳情が行かれたんじゃないでしょうか。たくさんの方が、今、国会に来て、インボイスの延期、中止を求めておられます。エンタメ産業の方々もその先頭に立っておられます。

 インボイスが導入されますと、二割、三割の、下請をしているフリーランスの方が廃業の危機になるというふうに訴えています。大臣は、この実態、こうした方々の意見を直接聞かれたことがありますか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 直接要望をいただいたことはございませんけれども、ただ、しんぶん赤旗さん等の報道によりまして、アニメ業界のフリーランスのうち四人に一人がインボイス制度の導入により廃業の危機にあるというウェブアンケートの結果を承知しておりまして、大変重く受け止めているところでございます。

 現在、インボイス制度を所管する財務省を中心に、アニメ業界を始めとする小規模事業者の方々全ての御心配に対応するために、取引環境の整備、また事務手続の簡素化等、支援策の充実などに取り組んでいるところでございます。

 あわせまして、先ほどのガイドラインを策定した各業界を所管する省庁におきましても必要な対応がなされるものと考えておりまして、内閣府としてもしっかりとフォローアップをしてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 内閣府知的クールジャパン戦略というのがあるんだったら、副大臣、是非、直接お会いしてお話を聞いていただきたいと思います。このままだったら若い人たちの希望の芽が摘まれるという大事な問題なんです。クールジャパン戦略そのものが成り立っていかない、危機に瀕しているという重大問題なんですね。クールジャパン戦略もフリーランス新法も、インボイスでアニメ、漫画などの裾野を潰していく。これは大変な状況になってまいります。影響調査は少なくともしてほしい。

 そして、いろいろ対策をすると言うんだけれども、消費税の負担を回避するということはないんです、インボイス制度の導入で。そして、免税事業者のままであり続けると取引が停止されるという、この可能性は絶対残るわけです。この二つですね、増税と取引停止、これを避ける支援対策というのはないんです、政府の中にも。

 それを踏まえると、今、これだけの物価高騰ですよ。そして、賃金が上がらない、フリーランス新法もどうなるか分からない。だったら、インボイスは今やるべきではない、そういう立場に立つべきだと私は思いますけれども、副大臣、いかがですか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 御要望がありましたら、私自身で差し支えなければ喜んで御要望等々の声は直接聞かせていただきたいと思います。何なりとお申しつけいただけたらと思います。

 また、インボイス制度につきましては所管外となりますので、お答えすることは差し控えさせていただきます。

 その一方で、多くの方々が影響を受けることでもございますので、内閣府は各所管省庁の総合調整を行うこととされておりますので、関係省庁としっかりと連携して、適切に対応するように、しっかりとフォローアップをさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 お会いしていただけるということでした。大臣も一緒にお会いしていただければというふうに思います。

 時間が来たので、今日の質問はこれで終わります。

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 本日はFATF法案についてお聞きしますが、一般的にはとても分かりにくい法案ですので、パネルを用意いたしました。

 これは、FATF勧告対応法案によってまとめて六つの法律が改正されるというものです。一言で言えば金融面におけるテロ対策ですが、大量破壊兵器の拡散やテロ防止、マネーロンダリング対策などの必要性は私ももちろん理解できるところです。しかし一方、様々な問題点もある中で、本日は、FATF勧告のNPO資金規制に絞って質問をいたします。

 特に、私自身、NGOで十七年間、人道支援や国際協力、環境保護の活動を世界各国でしてきた立場から、本法案には直接的な項目はありませんが、しかし、FATF勧告そのものに大きな疑念があると考えるからです。

 まず、第四次対日審査報告書概要には、五か所にわたってNPO関連の記述があります。中でも、日本の当局によるNPOセクターのアウトリーチやガイダンスの早急な強化が必要と書かれています。それに伴い、今年五月には基本方針が出されており、その中に次のような項目があるんですね。非営利団体、NPOの悪用防止と題して、「日本においても、非営利団体がテロ資金供与に悪用されないよう、そのリスクについて適切に評価を行い、リスクベースでモニタリングを実施する。」と書かれています。一見もっともらしいんですが、実は、ここには肝腎の主語がありません。

 大臣に伺います。

 リスクの評価やリスクベースでのモニタリングの実施は誰が行うのですか。そもそも、日本において非営利団体がテロ資金供与に悪用された事例はどれぐらいあるか。お伺いいたします。

谷国務大臣 まず、順序が逆でありますけれども、我が国において、NPOなどの非営利団体がテロ資金供与に悪用されたとして摘発された事例は確認されていないものと承知しております。

 また、誰が行うかということでございますが、それは当然、行政が行うというふうに認識しております。

櫛渕委員 そうなんですよ。国家公安委員会の犯罪収益移転危険度調査書には、我が国においては非営利団体がテロ資金供与に悪用されたとして摘発された事例は認められないと書かれているんですね。実際にまだ起きてもいない事態に過度に備えるのはいかがなものかと私は思います。

 この点、さらに、六月に内閣府からNPO法人のテロ資金供与対策のためのガイダンスが出されています。この中に、行うべきことは何かという項目があるんですけれども、びっくりするのは、海外パートナーやボランティアがテロリストやテロ活動につながりを持っていないか確認してくださいとか、現金の利用は最小限にして金融機関を利用してくださいとか書かれており、余りに国際協力や途上国での支援の現場を知らない、非現実的な指示であると言わざるを得ません。

 大臣、このガイダンスとはどのような位置づけですか。従わなかった場合、何か制裁のようなものがあるんでしょうか。

谷国務大臣 お答えさせていただきます。

 今、御質問で、櫛渕委員の方は過度な干渉という言葉を使われましたが、これは、来たるべきそういうテロにどう備えるか、やはり、起こるべきことをあらかじめ想定しながら、適度に、国民の命と暮らしを守りながら、しっかり対応するのが私は政治の役割だというふうに思っております。

 したがって、そういう基本的な考え方に基づいて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

櫛渕委員 過度かどうか、この後、お話をしていきたいと思いますが。

 そもそも、国際社会から、二〇一二年に採択されたFATF勧告で、項目の八、パネル二です、この項目八にテロ対策の文脈でNPOの資金規制が含まれることに関し、この勧告を取り入れた国の政府がNPOなどへの国家監視を強めてきたことが問題視されているんですね。市民社会への弾圧に使われているということへの懸念の声が強いんです。

 アメリカの団体、ザ・チャリティー・アンド・セキュリティー・ネットワークのレポートによれば、各国政府が反政府活動の規制、市民社会への弾圧にFATFが推奨する金融規制を活用している、そのことを指摘する人権団体の声を紹介しています。

 例えば、国際調査機関TNIは、次のように指摘があります。調査結果が示すのは、FATF勧告項目八が作り出した複雑なルールと規制によってNPOは国家による過剰な規制や監視にさらされる大変な危険性があり、それが市民社会の組織にとっての運営上、政治活動上の可能性を制限してしまうことである。指定されたテロリスト及びテロ組織のブラックリスト化等のカウンターテロリズム措置に加えて、勧告、この項目八は、政府に対して市民活動の余地を更に狭める手段を与え、この場合、市民社会が発展し、紛争解決を行い、人権擁護活動を行うための資金源にアクセスし、配分する自由を規制するのであるというふうに指摘があります。

 また、国連特別報告者からも、このFATF勧告に対して、国際法違反につながる措置を正当化するとして、厳しい批判がなされているんです。

 すなわち、FATFは、国家により結社の自由を不当に規制されることから市民社会部門を守るための特別な措置を提供しておらず、国家による規制行為がFATF勧告の項目八に沿ったものであるとお墨つきを与えているというものなんですね。

 実際に、私はNGOの友人たちにヒアリングをしてみました。そうしますと、例えば、ミャンマーがFATFの対象となったために、国内で民主派支援をしている人権団体がリストアップをされて資金調達が難しくなったという事例があったり、あるいは、ソマリアで支援をしている現地のパートナー団体へ送金するときに、FATFが影響して困難が生じ、送金が滞ってしまった、このような事例もあるんです。

 銀行が、個別案件のリスクだけではなくて、FATF勧告はその国全体に高いリスクがあるとみなすわけですから、例えば、毎年ソマリアは約十三億ドル受け入れていますけれども、これは国の経済の二五%から四五%も占められるものなんです。人道支援や海外直接投資を合わせた額も大きいという分析を世界的なNGOであるオックスファムがレポートしていますし、その中では、国民の四割以上がこうした海外送金を受け取っているわけであり、つまり、食費や学費など日々の生活をこうした送金に依存しているので本当に影響が大きいと声を上げています。

 大臣、このように、FATF勧告で、各国で人権侵害の正当化に用いられていること、それに対して国際社会や国連から非難の声があることを認識されていますか。

谷国務大臣 委員御指摘のFATF勧告自体への批判ということが一部にあることは承知しているところであります。

 しかし、我が国としては、朝からの議論でも繰り返しておりますように、テロ資金供与対策のために、やはりFATFの対日審査勧告は尊重して取り組むことが我が国にとって大きなメリットになる。ましてや、このNPOにつきましては、悪用防止についての項目が四十の勧告のうち唯一不履行、これは大分この委員会でも指摘されたことでございますが、唯一不履行がこのNPOの悪用防止についての取組なんです。ですから、そういうことを踏まえて、今回、対応をさせていただいているところです。

櫛渕委員 こうした国際的な批判の声があるという認識や事例があると実際に報告があるわけですから、こうした認識を持たずにFATF勧告を受け入れることは、私は日本の民主主義にとっても大変危険であると考えます。このように、もし大臣がそれを認識されるのであれば、むしろ法案にNPOや市民社会に対する権利侵害を防ぐためのセーフガードとなる条文を盛り込むといった努力を是非お願いをしたいと思います。

 パネル三に移ります。

 これは、二〇一九年に岐阜県大垣市のホームページに掲載されたものであり、「財務省国際局からのお知らせ」ということで、FATF勧告に沿った適切な対応を取るようにお願いをしている内容なんです。

 ちょっと文面の文字が小さいので見にくいかもしれませんが、ピンクのマーキングをしてあるところを見てください。ここには、「テロ関係者がNPOを設立し、」、次には「テロ関係者がNPOに関与し、」、そしてさらには「国外NPOにテロ関係者が関与し」というふうに、ずらずらと書かれています。この内容だけをすっと見れば、完全にNPOをテロ関連組織扱いにしているかのように見えてしまいます。民間企業や政府系機関でも、あらゆる機関で関与の可能性があるのに、なぜNPOだけを標的にするかのような通知を出すんでしょうか。

 グローバル社会で貧富の差が拡大して、更にコロナ禍、各国で苦しむ人を支え、紛争地域で人道支援に取り組むNPOに日本企業が支援を行う、取引先としてサポートするというような活動が暗黙のうちに規制されかねないと懸念をいたします。

 そこで、質問いたします。

 これまで財務省は、FATF勧告項目八に基づく通知や協力依頼をどのような形で行ってきましたか。財務省が自治体に対して出す際の法的根拠は何ですか。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、法的根拠でございますが、財務省組織規則三十二条の二第二項におきまして、FATFを日本語に訳します金融活動作業部会、これに関する事務をつかさどると規定されておりまして、これに基づきまして、財務省としましては、FATFに対する日本政府側の窓口としまして、随時、FATFが策定する国際基準に関する周知や実施の協力依頼を行ってございます。

 NPO所管省庁に対しても、そのような法的根拠に基づき協力依頼を行ったものでございまして、御指摘の要請につきましても、財務省国際局より、内閣府、それから文部科学省、厚生労働省に対して要請をしたというものでございます。

櫛渕委員 もう一度確認します。

 法的根拠で御説明された部分ですが、財務省設置法案によるものではありませんか。FATF勧告八を法制化した条文はないはずですが。もう一度お願いします。

内野政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省設置法の第四条五十一号におきまして、「国際通貨制度及びその安定に関すること。」という規定がございます。これを受けまして、財務省組織令の五十九条におきまして、国際機構課という課でございますが、こちらが、「国際通貨制度及びその安定に関する協定の企画及び立案に関すること。」、これをやっておるわけでございまして、この国際通貨制度という言葉でございますが、これに基づいた議論ということでございます。

櫛渕委員 財務省の設置法の中の規定であって、FATF勧告八を、このパネル二の項目八を法制化した条文ではないんですね。それでよろしいですよね。

 今回、このFATF報告書を受けた形で、今後、NPOの活動や財務内容を規制するような法律が出てくる可能性は私は否定できないと思いますし、こうしたものが今後法制化されるのかどうか、是非国民の皆様には注視して見ていただきたいというふうに思います。

 新たな立法措置は、行うことは考えていますか。大臣、お答えください。

大西委員長 櫛渕君、申合せの時間が経過しました。

櫛渕委員 分かりました。じゃ、最後、まとめます。

 法的根拠もなく、NPOを標的にするような協力依頼や周知依頼を財務省には出さないでいただきたいと思います。国内全てのNGOの名誉を代表して、このような不適切な通知を出すことは二度としないと約束をしていただきたい、このように強く申し上げ、私の質問を終わります。

大西委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。田村貴昭君。

田村(貴)委員 私は、日本共産党を代表して、FATF勧告対応法案について、反対の立場から討論を行います。

 テロは、人の命と人権を踏みにじる憎むべき犯罪行為であり、国際社会と協力して実効ある対策を取っていくことは当然です。

 その点で、FATF勧告の第四次対日相互審査報告書が指摘した資産凍結措置の強化や暗号資産等への対応の強化は、革新的に進展する金融技術により拡大する資金移動や決済手段に対応するもので、マネロンを始めとする違法な金融取引を取り締まる上で必要な対応と考えます。

 しかしながら、マネロン罪の法定刑を大幅に引き上げた上で、犯罪収益等収受罪などの犯罪を新たに共謀罪の適用対象に加え共謀罪の拡大を図っていることは、到底認められません。

 共謀罪は、市民にとっては、何が犯罪となるのか、どんなことをしたら処罰の対象にされるのか全く不明確なまま、人の生命や身体、財産などの法益を侵害する危険が客観的にはない計画、共謀や話合いや、準備行為を処罰するものであり、憲法の保障する内心の自由を侵害し、刑事手続に関する人権保障規定を侵害するものであります。そうした憲法違反が明白な共謀罪の拡大は、断じて認められません。

 しかも、FATF勧告の第四次対日相互審査報告書は、そもそも共謀罪の適用拡大には言及していません。マネロン罪の法定刑の引上げを機に、法制審議会でも一切議論せず、共謀罪の適用対象となる乱暴なやり方も看過できません。

 今回のマネロン罪の重罰化についても、処罰範囲の明確化なしに法定刑だけ引き上げると、不相当に重い刑罰が科せられることへの危険が懸念されています。また、現状における日本での処罰状況からは、マネロン罪の重罰化の立法事実は認められないとの指摘は重要です。

 また、行政書士、公認会計士、税理士などに疑わしい取引の届出を義務づけることは、個人情報保護の観点から容認できません。

 以上、本法案には、暗号資産対策など必要な措置もありますが、基本的人権を侵害する共謀罪の拡大が盛り込まれており、反対いたします。

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 私は、会派を代表して、FATF関連法案について、反対の立場から討論いたします。

 法案の目的であるマネーロンダリング対策やテロ資金供与の防止、拡散金融への対応については理解できるところです。しかし、マネロンやテロ防止という美名の下に、国家による行き過ぎた規制が行われないかという懸念がどうしても払拭できません。

 まず、NPOの活動など、市民社会へ与える影響について考慮されていないということです。元々、FATF勧告については、国際社会で強い批判が数多くなされてきました。結社の自由を不当に規制するお墨つきとなるのではないか、資金調達規制が強まり、人道支援、人権保護の分野のサポートが制限されるのではないかといった点です。にもかかわらず、こうした観点からの批判的検討がなされた形跡は見当たりません。

 例えば、海外の人権団体や環境NPOで、国際的には活動が広く評価されながら、当該国の政府から問題視されている団体もあるんです。これらNPO、NGOとの関係が疑わしい取引となり、依頼者密告制度のような届出義務によって人道的な活動などに支障が出る可能性があります。

 さらに、テロ組織とNPOとを結びつけるような通知を地方自治体に流すなど、行き過ぎた行動が散見されました。政府自らが、非営利組織がテロ資金供与に悪用された事実はないとしているにもかかわらずです。

 次に、共謀罪との関係です。

 本法案によって、犯罪収益等収受罪や薬物犯罪収益等収受罪の懲役刑の上限が三年から七年へ大幅に引き上げられます。こうして、いわばなし崩し的に共謀罪が広がっていくのを、断じて見逃すわけにはまいりません。

 また、刑の引上げ以前に、刑事裁判そのものが厳格になっているのも重要です。FATF報告書を受けて、最高検は昨年十一月九日、関係法令を積極的に活用し、マネーロンダリングの徹底した捜査、厳格な処理及び適切な公判活動を通じた一層厳正な科刑の実現を求める通達を出しています。

 公判の在り方に関する議論があるのは確かです。一方で、これは刑事法体系全体で議論すべき論点です。FATFが指摘したからといって、厳格な処理及び適切な公判活動を現場の裁量で決めてしまうことに空恐ろしさすら感じます。

 冒頭にも申し述べましたが、本法案の目的そのものは認められるところです。しかし、FATFへの国際的な批判を顧みることなく、NPOや市民社会の自由な活動を損なう可能性も見逃し、さらには、いつの間にか裁判の厳格化が進む。そのように将来に禍根を残しかねないため、れいわ新選組は反対である、そのように申し上げ、討論を終わります。

大西委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

大西委員長 次回は、来る十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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