第8号 令和5年3月22日(水曜日)
令和五年三月二十二日(水曜日)午後一時開議
出席委員
委員長 大西 英男君
理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君
理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君
理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君
理事 阿部 司君 理事 國重 徹君
赤澤 亮正君 池田 佳隆君
石原 宏高君 小田原 潔君
尾崎 正直君 大野敬太郎君
工藤 彰三君 小寺 裕雄君
杉田 水脈君 鈴木 英敬君
田野瀬太道君 中野 英幸君
中山 展宏君 平井 卓也君
平沼正二郎君 堀内 詔子君
牧島かれん君 松本 尚君
山口 晋君 中谷 一馬君
太 栄志君 本庄 知史君
馬淵 澄夫君 山岸 一生君
岩谷 良平君 浦野 靖人君
堀場 幸子君 河西 宏一君
福重 隆浩君 浅野 哲君
塩川 鉄也君 緒方林太郎君
大石あきこ君
…………………………………
国務大臣
(新型コロナ対策・健康危機管理担当) 後藤 茂之君
内閣府副大臣 藤丸 敏君
厚生労働副大臣 羽生田 俊君
内閣府大臣政務官 鈴木 英敬君
内閣府大臣政務官 中野 英幸君
内閣府大臣政務官 尾崎 正直君
厚生労働大臣政務官 本田 顕子君
政府参考人
(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室次長) 柳樂 晃洋君
政府参考人
(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室内閣審議官) 菊池 善信君
政府参考人
(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室内閣審議官) 小池 信之君
政府参考人
(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室内閣審議官) 實國 慎一君
政府参考人
(総務省大臣官房審議官) 的井 宏樹君
政府参考人
(出入国在留管理庁出入国管理部長) 丸山 秀治君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官) 浅沼 一成君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官) 佐々木昌弘君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 大坪 寛子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 鳥井 陽一君
政府参考人
(国土交通省大臣官房審議官) 大沼 俊之君
政府参考人
(観光庁審議官) 池光 崇君
内閣委員会専門員 近藤 博人君
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委員の異動
三月二十二日
辞任 補欠選任
大野敬太郎君 山口 晋君
田野瀬太道君 堀内 詔子君
平 将明君 小田原 潔君
同日
辞任 補欠選任
小田原 潔君 平 将明君
堀内 詔子君 田野瀬太道君
山口 晋君 大野敬太郎君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)
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○大西委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室次長柳樂晃洋君外十一名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堀内詔子君。
○堀内委員 本日は、内閣委員会で質問させていただく機会を頂戴いたしまして、大西委員長を始め理事の皆様方、委員の皆様方に心から御礼申し上げます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
振り返りますと、日本国内で新型コロナウイルス感染症の患者が確認されたのが令和二年一月十五日のことでした。それから間もなく、二月初旬には、ダイヤモンド・プリンセス号において、新型コロナウイルスに感染した方が横浜から香港まで乗船したということが発覚しました。横浜港で長期検疫体制に入り、その後も感染者数が増え続ける事態となりました。翌月の三月十一日、WHOは、新型コロナウイルス感染症をパンデミックとみなせると表明いたしました。
それからもう三年、政府と国民の皆様方一体となって新型コロナウイルス感染症対策に取り組んできました。私も、ワクチン接種推進担当大臣を拝命している間、国民の皆様方、自治体の皆様方、皆様方にワクチンの接種を推進していただくために精いっぱい努力してまいりました。ようやくこの三月十三日にはマスクを任意で着用してよい、そういったことと相なりました。
この三年間の政府の取組を振り返って、その成果や課題についてどのように考えていらっしゃるか、藤丸副大臣に伺いたいと思います。
○藤丸副大臣 堀内先生も大臣を担当されておりましたけれども、今政府としては、国民の命と暮らしを最優先で守る観点から、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、科学的知見やエビデンスを重視し、新型コロナ対策に最大限取り組んでまいってきております。
具体的には、緊急事態措置等により感染拡大防止を図る一方で、国民、事業者への支援やコロナ禍からの回復を図るための各種経済対策を講じてきております。同時に、国民の命と健康を守るため、病床確保を始めとする医療提供体制の整備強化、ワクチン接種の推進、治療薬の確保等に取り組んできております。さらに、その後のウイルスの特性の変化等に応じ、取組内容を柔軟かつ機動的に直しながら対策を進めてきております。
こうした取組により、新型コロナの人口当たりの感染者数は他のG7諸国と比べて低い水準に抑えられ、GDPや企業業績は既に新型コロナ前の水準を回復しつつ、有効求人倍率もコロナ前の水準を回復しつつあると承知しております。
一方、昨年の有識者会議で、今般の新型コロナ対応についての検証を行い、感染症危機の初期段階からしっかり機能する保健医療提供体制を早急に立ち上げ、ウイルスの特性等に応じて機動的に対応できる体制とすること、一元的に感染症対策を指揮する司令塔組織を整備すること、科学的知見と根拠に基づく政策判断に資するため、政府における専門家組織を強化することなどが必要であるとの指摘がありました。
これを踏まえ、まず昨年十二月には感染症法等の改正を行い、次いで、今国会において、感染症対策の司令塔組織として、現在審議をいただいている法案により内閣感染症危機管理統括庁を設置することとしているほか、新たな専門家組織として国立健康危機管理研究機構を設置するための法案を提出しています。
政府としては、まず新型コロナ対策の終息に向けた取組を着実に進めると同時に、統括庁の設置を含めた次の感染症危機への対応を具体化していくことが重要と考えております。
○堀内委員 ありがとうございます。
諸外国と比べましても、我が国においては、感染者の方々、亡くなられた方々の数が比較的低い水準に抑えることができたというふうに感じております。この件に関しましては、医療従事者の皆様方、そして国民の皆様方の御協力のたまものだと心から感謝申し上げております。
政府の対応についても一定の評価はされていいのではないかと思っております。しかしながら、ただいま副大臣から御答弁ございましたとおり、今後改善すべき点があったということも事実であります。
今回、内閣感染症危機管理統括庁を設置するための内閣法改正案とともに、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が提出されています。インフル特措法は、平成二十四年度に制定されてから今般のコロナ禍で初めて活用されましたが、国民の生命及び健康を保護しつつ、国民生活や国民経済に及ぼす影響を最小限にするといった重要な役割を果たしたものと考えております。
他方、実際に法律を使うことによって明らかになった課題、そういったものとしてはどのようなものがあるでしょうか。今回提出された法案では、次の感染症危機に備え、いかなる点を改正していくのか。その点についてお答えください。
○柳樂政府参考人 課題と改正点についてのお尋ねがございました。
まず課題でございますが、昨年六月の有識者会議におきまして、一つは、初動期等において、政府と都道府県が一体となって危機対応できる仕組みづくりが必要であるということ、それから、感染が著しく拡大した場合も、行政機関の機能を維持できる仕組みづくりが必要などの指摘がなされたところでございます。
今回の法改正は、このような新型コロナウイルス感染症への対応の課題を踏まえまして、一つは、政府対策本部長の指示権につきまして、政府対策本部が設置されたときから行うことができるよう発動可能時期を前倒しするとともに、地方公共団体の事務の代行等につきまして、感染症法に基づく事務も対象にするとともに、政府対策本部が設置されたときから行うことができるよう、対象事務及び要請可能時期を拡大するなど、感染症の発生及び蔓延の初期段階から国と地方が一体となって迅速かつ的確な措置を講ずるための仕組みなどを整備するものでございまして、次の感染症危機への備えに万全を期すことを目指すものでございます。
○堀内委員 ありがとうございます。
国民の命そして健康を守るために、感染症の発生及び蔓延の初期の段階から効果的に対策を講じる仕組みの整備など、私自身が感じていた点についても措置されております。この法律改正によって、より機動的な対応が取れるようになることを期待しております。
さて、ワクチン接種推進担当大臣のときに掲げた課題の一つに予防接種事務のデジタル化というものがあります。
ワクチン接種のスピードは自治体によって差がありました。もちろん、自治体の規模や地理的要件、様々なことによって差が生じることはやむを得ないことだと思っております。けれども、接種体制を速やかに整えて、接種を比較的早期に実現できた、そういった自治体の皆様方においては、接種券を早期に住民の皆様方に配付をしていた、そういったことがありました。
この接種券を含む接種事務全体をデジタル化をしていけば、例えば、自治体も接種券配付などの負担が少なくなり、そして接種がよりスムースに推進できると、在任中当時からしっかりと取り組んでいました。
予防接種事務を始め、医療現場における医療DXの推進は、平時のみならず、感染症の拡大下においても、国民や医療機関、自治体の負担軽減や業務の効率化につながると考えています。そして、集積したデータは、感染症対応を含め、研究で大いに活用できるのではないかと思います。
私の地元の医療現場の方々からは、例えば、その初期の段階、コロナウイルス感染症がはやり始めた初期の段階では、未知なる感染症を前に、そのワクチンが手に入ったけれども、打ってもいいのか悪いのか、又は、禁忌薬、そういったものがあるのか、持病の方についてはどうすればいいのか、また、新型コロナに実際かかってしまった方においては、どのぐらいの接種間隔で次を打っていいのかなど、様々なことに悩んだり、対応に苦慮したりなさったというふうに聞いております。データが欲しかった、そういった声をよく聞いております。
正確なデータや情報を現場に伝達するということは、医療現場の皆様方にとっても、逆に、ワクチンを打つ側の国民の皆様方にとっても大切なことです。予防接種事務のデジタル化を始め、医療DXが進むことによって改善されることはたくさんあると思いますが、取り組んでいくといった御決意をお聞かせください。
○本田大臣政務官 堀内詔子先生にお答え申し上げます。
先生が今御指摘くださった予防接種事務のデジタル化や医療DX化、またデータの利活用につきましては、厚生労働省としても大変重要であると考えております。
こうしたことから、厚生労働省といたしましては、昨年の予防接種法改正を含む関係法令を整備し、令和八年頃までに施行することとしております。具体的には、オンラインでの接種勧奨により、紙の接種券がなくとも接種を受けられるようにする、マイナンバーカードを活用し、オンラインで接種対象者を確認する仕組み等を導入する、自治体や医療機関の事務効率化を図るとともに、予防接種の実施状況等に係る匿名データベースを整備し、予防接種の有効性や安全性の向上に関する研究等を進めるものでございます。
また、御指摘いただきました医療DXにつきましては、今般の新型コロナウイルス感染症への取組を踏まえた喫緊の課題として、平時からのデータ収集、例えば、全国、いつ、どの医療機関にかかっても必要な医療情報が共有され、より質の高い医療の効率的な提供が可能となる、データの二次利用や創薬研究等が可能となること、こうしたことを含めて、次の感染症への対応に資するものとして、医療における様々なメリットがあると考えております。
こうした予防接種事務を始めとして、次の感染症危機に備えるために、デジタル化を着実に進め、医療DXの推進によってもたらされるよりよい医療、このメリットを、利用する方、また医療を提供する皆様にも実感していただけるように取組を進めていきたいと考えております。
○堀内委員 本田政務官、ありがとうございました。
医療DXの推進については、乗り越えなくてはいけない、そういった課題もたくさんあるとは思いますが、実現していけば、予防接種の業務のみならず、いわゆる診療、健診、さらにはデータを活用した国民の皆様方の健康増進に資する仕組みとなってまいります。医療現場の効率化も図れるはずです。
進めていく上では、医療を受ける国民の皆様方、また医療を提供する医療関係者の方々などの理解が必要だとは思います。丁寧な取組をお願いするとともに、実現に向けて力を合わせていっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
また、今般の新型コロナ対応は、まさに国難というべき事態でありました。大臣を拝命しているときにも、国が司令塔となり、そして迅速的確な指示を出すことの重要性を日々認識しておりました。その際、一番汗を流したことの一つが自治体との調整でありました。地元の医師会の方々などと連携しながらワクチン接種の体制を整え、そして、進めてくださっているのは主に基礎自治体である市町村でしたが、国の方針や決定事項が自治体に届くまでにはタイムラグもありました。
感染拡大下においては目まぐるしく状況が変わっていき、そして、現場に情報が届く頃には既にまた新しい事象が起きてしまう、また新しい情報が更新されているといったことがありました。そして、例えば豪雪地帯ではワクチン接種会場に出向くことが困難になってしまっているなど、地域によって様々な事情がありました。そういった中で自治体と綿密なコミュニケーションを取ることの重要性ということを痛感し、国と地方の一体性を何とか確保、改善できればと思っておりました。
この点、今回の法改正では、都道府県知事の皆さんに対して、政府の対策本部が設置されたときから、一定の要件を満たせば、新型インフルエンザ等対策本部長、これは内閣総理大臣でありますが、内閣総理大臣から指示を出せるようになりますが、この指示権の前倒しによってどのような対応が可能になり、これまでの課題がどのように改善されるのか、伺いたいと思います。
○柳樂政府参考人 昨年六月の有識者会議報告書におきましても、緊急事態宣言また蔓延防止等重点措置の公示がされていない感染初期段階においても、政府と都道府県との間で調整が難航した事例があった旨、指摘がされております。
こうしたことを踏まえまして、感染症対策の初動期から政府と都道府県が一体となって危機対応ができる仕組みを整備するために、政府対策本部長が都道府県知事等に対して行う指示権について、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合には、政府対策本部が設置されたときから、蔓延防止等重点措置あるいは緊急事態宣言時でなくても行うことを可能とするものでございます。
これによりまして、政府対策本部長が感染対策の初動期から素早く対策を行うことができるようになり、早期に感染拡大を抑える効果的な措置を取ることができるようになる、これを通じて、国、地方が一体となって感染症危機に迅速的確に対応できるものと考えてございます。
○堀内委員 ありがとうございます。
感染症対応は初動が大切です。いかに国と地方がよく連携を取って、より効率的そして迅速的確な感染症対応が取れるようになるか、適切な運用をお願いいたします。
今回のコロナ禍においては、行政機関においてクラスターが発生し庁舎が閉鎖されたところや、出勤可能な職員が減少してしまったため、通常の行政事務に支障を来しかねない事態がいろいろなところで発生いたしました。私の地元の山梨県においても、市役所、町村役場において感染者や濃厚接触者が複数出ました。これを考えると、次の感染症危機においても、行政、特に国民の皆様方と最も近い立場である市町村における業務が止まるといった事態は何としても避けなければなりません。
今の法律では、インフル特措法に根拠のある事務で緊急事態のときのみ代行が可能となっています。市町村の職員の仕事を都道府県庁の職員の方々がいざというときによりスムースに代わっていただけるような仕組みを強化していく、こういった必要があるのではないでしょうか。
この点、今回のインフル特措法の改正では、都道府県知事による市町村の事務の代行などについて、要請可能時期を前倒すとともに、対象事務を感染症法に基づく事務に拡大するとのことですが、改めて、その改正の必要性とともに、具体的な事務として想定しているものについて説明してください。
○柳樂政府参考人 代行等に係る改正の必要性でございますが、昨年六月の有識者会議報告書におきまして、行政機関内でクラスターが発生し庁舎を閉鎖する事態が生じたことがあったことから、対策を実施すべき行政機関を都道府県がサポートするなど、その機能を維持できる仕組みづくりが必要であるとの指摘を受けたところでございます。
こういった指摘を踏まえまして、今回の法改正案では、都道府県知事による市町村長の事務の代行につきまして、感染症法に基づく事務も可能となるよう対象事務を拡大するとともに、政府対策本部設置時から行うことができるよう要請可能時期を前倒しすることといたしております。
代行等の対象となる事務の範囲につきましては、新型インフルエンザ等対策のうち、地方公共団体がインフル特措法及び感染症法の規定により実施する措置であって、新型インフルエンザ等の蔓延を防止するため特に必要があるものを、特定新型インフルエンザ等対策として政令で定めることといたしております。
具体的な事務につきましては、今後、施行までの間に検討することになりますが、例えば、感染症法第十二条に基づく医師からの発生届の受理、HER―SYSへの入力に関する事務などを想定いたしております。
○堀内委員 ありがとうございます。
関連で質問したいのですが、少し規模は大きくなるとは思うんですけれども、今度、市町村の事務の代行を請け負った都道府県の方が、都道府県の方が規模が大きいからそういうケースは少ないと思いますが、そちらの方の事務も逼迫することもあり得ると思います。そのときのサポート体制はどうなっているんでしょうか。
○柳樂政府参考人 御指摘のような場合は、都道府県知事は、他の都道府県知事に対して応援の求めを行うことが可能である、こういうふうな特措法の規定になってございます。
今回の法改正案におきましては、この応援の求めにつきましても、要請可能時期及び対象事務を拡大することとしておりまして、都道府県の庁舎において感染が拡大した場合などにも、必要な業務を継続することができるような仕組みといたしているところでございます。
○堀内委員 ありがとうございます。
行政機関で感染拡大や濃厚接触者の大量発生が起きますと、国民に適切な行政サービスが届かなくなります。今回の法改正では、次の感染症危機において、より強靱な体制で対応できるように、そういったことになっていきますように、是非よろしくお願いいたします。
さて、本法案の最大の目玉は、内閣感染症危機管理統括庁の設置であります。しかしながら、この統括庁がしっかりと機能していくためには、専門的な知見が迅速に提供される必要があると考えます。
今般のコロナ禍に限らず、感染症対応においては、病原体の動き、いわゆる病原体の振る舞いというんでしょうか、それを踏まえた対応策とその間には常に時相のずれというのが生じてきている、そのように思っています。つまり、対策を立てて実行しようと思っているときに、現場では既に次のフェーズに入ってしまう、そして事態が変わってしまっているということが多くあります。
一定のずれが発生することはやむを得ないことだと思いますが、感染拡大の兆候をリアルタイムで把握し、ウイルスの特徴を的確に分析し、感染拡大防止のための企画立案に迅速につなげていく、それが大切だと考えます。地元のお医者様からも同様の御意見を聞いております。まずは、感染症の発生状況がどうなのか、ウイルスの性状はどのようなものなのか、そういった基本的な情報を司令塔に集約させるのは感染症対策の基本ではないでしょうか。
この点、厚生労働省においては、いわゆる日本版CDCである国立健康危機管理研究機構の設立のための法案を提出しておりますが、この同機構と統括庁とどのように連携を図っていくのか、また、連携を図ることでどのような成果が期待できると考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
○柳樂政府参考人 内閣感染症危機管理統括庁と国立健康危機管理研究機構の連携につきましては、統括庁の幹部である内閣感染症危機管理対策官に充てられる厚生労働省の医務技監を結節点とするとともに、新たに設置される国立健康危機管理研究機構の設置に係る法律案におきまして、統括庁に科学的知見を報告する規定などを設けることによりまして、統括庁が、政府全体の見地から、各省から一段高い立場で感染症危機管理を行うに当たり、機構に対して必要な科学的知見の提供を求め、機構はそれを受けて平時から迅速に質の高い科学的知見を提供し、これに基づいて統括庁において政策決定を行うという枠組みを構築することといたしております。
具体的には、平時においては、統括庁などが示す方針に沿って、機構において感染対策に必要な調査研究等を進め、統括庁等が、その成果を踏まえつつ科学的根拠に基づき有事への備えを充実させることとした上で、感染症危機発生時におきましては、機構が内外の感染症の発生状況等の情報を収集し、感染リスクの分析、取りまとめを行って統括庁に直接提供し、統括庁において、ウイルスの性状を踏まえた適切な水際対策や感染拡大防止対策を迅速に決定することなど、機構の科学的知見を活用した対応が可能になるものと考えてございます。
このように、統括庁が司令塔機能を発揮し、機構と密接に連携をして、これまでのコロナ対策の結果、成果や科学的エビデンスを踏まえた感染症危機管理を推進することができるものと考えております。
○堀内委員 ありがとうございました。
機構と統括庁の役割、連携の仕方、在り方についてよく分かりました。
今回のコロナ禍においては、流行する株が頻繁に変わり、対応のスピード感、そういったものが大切でありました。機構の科学的知見と統括庁の司令塔機能が組み合わさることで、今回のコロナ対応以上のスピード感で感染症対応が行えるように期待しているところでもあります。
次の感染症対応においても厚生労働省が重要な役割を果たしていくのは言うまでもありません。今般、厚生労働省に感染症対策部というものを設置し、平時からの感染症危機への対応準備などを強化するために、感染症法、予防接種法、検疫法などに係る業務を一体的に行うこととすると承知しておりますが、内閣感染症危機管理統括庁は厚生労働省とどのように一体性を確保して連携していくのか、その点についてもお伺いしたいと思います。
○柳樂政府参考人 内閣感染症危機管理統括庁と厚生労働省の役割分担につきましては、まず、統括庁は、政府全体を俯瞰した総合的な視点で、各省庁から一段高い立場で感染症危機管理に係る対応を統括するものでございます。一方、厚生労働省は、新たに感染症対策能力を強化するために設置される感染症対策部を中心として、感染症対応の実務の中核を担うものでございます。
その上で、感染症危機管理におきましては、統括庁と厚生労働省の一体的対応の確保を図るために、統括庁は、総理及び官房長官を直接支える組織として、感染症危機管理に係る対策を企画立案し、厚生労働省等の各省庁を強力に統括をし、その際、統括庁の幹部に充てられる医務技監を結節点として、統括庁の指示を迅速に厚生労働省内に徹底するとともに、医務技監の総括整理の対象である感染症対策部などの知見、リソースを統括庁の企画立案に活用することとしているところでございまして、統括庁と厚生労働省がしっかり連携をして、次なる感染症危機に対応してまいりたいと考えてございます。
○堀内委員 ありがとうございます。
司令塔としての統括庁と実務の中核を担う厚生労働省の感染症対策部が日本版CDCの科学的知見を基に一体的に動く、この三者の連携がスムースにいくよう、今後、運用面においてもしっかりとした御検討をお願いします。
さて、先ほどまで御答弁いただいたとおり、この法案の目玉は、感染症危機対応の司令塔機能の強化のための内閣感染症危機管理統括庁の設置です。
この点、意思決定の一元化、迅速化は、有事において非常に重要な要素だと私も思っておりますが、今回の新型コロナウイルス感染症対応を振り返ってみると、平時からの備えも同様に重要であると痛感いたしました。つまり、平時より、各省や都道府県又は市町村において有事を見据えた計画策定がきちんとできているか、そしてその計画が有事に有効にしっかりと働いてくれるか、そういったチェックが必要だと思います。備えあれば憂いなしです。
この点について、先ほども少し触れていただきましたが、統括庁が将来にわたって司令塔としての役割を果たし続けるためには、平時からしっかり取り組み、準備していくことが重要と考えておりますが、お考えをお聞かせください。
○柳樂政府参考人 御指摘のとおり、感染症危機対応におきまして司令塔機能を十分に発揮するためには、平時からしっかりと有事への備えに取り組んでいくことが重要であると考えてございます。
そのため、統括庁におきましては、平時の業務として、計画や訓練等の内容を充実させ、それらが有事に機能するよう点検、改善を行うPDCAサイクルを強化することとしておりまして、これらの業務に必要な定員として三十八人を確保いたしております。
具体的には、平時の備えの計画である政府行動計画の内容の充実、また、その計画に基づく充実した訓練の実施、計画の内容が有事に有効に機能するかをチェックし、改善点等を計画内容に反映するような取組を行います。
また、地方自治体や指定公共機関を含めまして、有事への備えを底上げするための都道府県の取組に対する助言などの実施、また、様々な団体が行う訓練についての技術的な支援や、優良事例の横展開の実施。それから、感染症危機管理に係る対策の重要性について、国民の理解と関心を深めるための普及啓発。それから、厚生労働省に新たに設置される感染症対策部及び国立健康危機管理研究機構と連携をして、感染症危機管理に係る科学的知見の収集、これを踏まえた政策立案。これらに平時から取り組むことといたしております。
○堀内委員 最後に、藤丸副大臣に今回の司令塔機能についての意気込みを聞かせていただきたいと思いますが、時間になってしまいましたので、くれぐれも副大臣と政務官によろしく申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○大西委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後一時三十一分休憩
――――◇―――――
午後二時二十七分開議
○大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。稲富修二君。
○稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、水際対策について、ちょっと順番を変えて、大臣に伺います。
この委員会でも、各委員から、初動体制が大事だという御指摘が随分ありました。もし次のパンデミックということを想像すると、日本の公衆衛生のレベルを考えると、例えば今回のコロナのような、海外からの感染症の流入ということを考えるのが大きなシナリオだろうと思います。この意味からすると、まさに初動というのは、感染症が海外で発生をし、それを日本国内に入れるか入れないか、また、海外からの入国を制限するかどうか、あるいは拒否をするのか、入国する人を隔離するのか、その最初の判断をすることがまさに初動の意味だと思います。
先日この委員会でも指摘があったように、仮にそういう場合を想定すると、専門家ですら病原体の正体が全く分からない段階で、政治的な重い判断を下さなければならないという事態が想定をされます。したがって、そのときに大切なのは、判断の理由を明確に国民に知らせることであろうかと思います。
そこで、伺います。国内でコロナ感染確認後、二〇二〇年三月から四月にかけて、国際線の旅客便の就航に制限がかけられました。国交省が航空会社に航空便の制限の要請をしたのは、いずれの主体によって、またどのような理由でそれが判断をされたのか、御答弁をお願いします。
○大沼政府参考人 お答え申し上げます。
政府の新型コロナウイルス感染症対策本部におきまして、検疫の適切な実施を確保するために、今委員御指摘のとおり、令和二年三月に、日本に到着する航空機の到着空港を限定することが決定され、また、同年四月に、搭乗者数を抑制することが決定されました。
この決定に基づく措置といたしまして、検疫の確実な実施を図るため、国土交通省航空局より航空会社に対して、到着空港の限定や搭乗者数の抑制の要請を行ったということでございます。
○稲富委員 誰が決定をしたのかという質問です。
○大沼政府参考人 繰り返しになります。政府の新型コロナウイルス感染症対策本部、これは総理が本部長だったと思いますが、こちらで決定をされ、これを受けて、私ども国土交通省航空局から、検疫の確実な実施を図るため、到着空港の限定や搭乗者数の抑制の要請を行った、こういう事実関係でございます。
○稲富委員 つまり、総理が決めたということかと思います、今の御答弁は。
それで、その後、二〇二一年三月五日には、検疫体制を確保するため、航空機の搭乗者数を抑制して、入国者数を管理する仕組みを導入いたしました。最初は、一日当たり例えば二千人とする入国者の総数管理を開始いたしました。そして、感染状況や、オリパラの開催など経済と感染状況によって、入国者の総数をその時々に応じて変えてまいりました。最初は二千から始まり、途中から例えばそれが五千人になることもあり、七千人になることもありました。
毎回これは、要するに総理が決めたということでよろしいんでしょうか。
○大沼政府参考人 各航空会社に対して、具体的な搭乗者数の抑制の人数を状況に応じて変更させているという経緯があったのは御指摘のとおりでございまして、これは全て、繰り返しになりますけれども、感染症対策本部での決定を経て、私どもが検疫の確実な実施を図るため航空会社に要請をする、こういう段取りで実施したものでございます。
○稲富委員 ありがとうございます。
少し振り返ってみます。
二〇二〇年一月十五日に、国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認をされました。同二十八日、検疫法上の検疫感染症に指定をされ、検疫法に基づく質問、検査、消毒が可能になり、しかし、隔離、停留はできませんでした。二月十四日、新型コロナを検疫法第三十四条の感染症の種類として指定したことで、入国者による検疫法上の隔離、停留が可能となりました。そして、三月九日、入国拒否対象国からの入国者に入国後十四日間の自宅待機と公共交通機関不使用を要請し、その後、四月に全ての国からの入国者に拡大をしました。
他方で、我が国は、訪日外国人旅行者数の国家目標が当時ありまして、二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人というのを掲げておりました。実際にウナギ登りに訪日外国人の観光客が増えていたということがありました。
そういったことを全て振り返ってみて、大臣に伺いたいんですけれども、最初の、初動の判断ですね、まず入国をする入国者数の制限、そういったことについてうまくいったと考えているのか、反省点は何かという基本的な認識をお伺いしたいと思います。
○後藤国務大臣 まず、海外において感染が広がっている感染症が国内に入ってこない、特に、それがどういう感染症であるのか、対象が不明確なときに、まずは水際対策において前向きに、前向きというのはあらかじめですね、しっかりと水際対策を行うということの意味は重要だろうというふうに判断をして、これはもちろん対策本部で決定したわけでありますけれども、これは、検疫法を所管している厚生労働省、また、人の出入りを所管している担当者、関係者が集まって、対策本部においてそういう決定を行っている。
今、振り返って評価はどうかということからいえば、やはり、えたいがまだ明確に分かっていない、そういう感染症を水際で止めて、そして、どういう対応が可能であるのか、海外でどういうものがはやっているのか、そうしたものをしっかりと分析できる時間を稼いでいくということは合理的な対応だというふうに考えたと思います。
○稲富委員 ありがとうございます。
今考えればということはいろいろなことを言えますけれども、おっしゃるとおり、えたいが知れない段階でどうするかというのは非常に重く難しい判断であるということは、そう思います。
そこで、統括庁ができたらこの意思決定がどう変わるのかということを伺いたいんです。
要するに、この水際の入国の管理ということに関しては、さっきちょっと大臣も触れられましたけれども、厚生労働省であったり、国交省であったり、法務省であったり、各省庁の、誰がこれを決めるんだという、極めて高度な恐らく判断の場面だろうと思います。
そこで伺いたいんですけれども、統括庁ができたらこの意思決定はどう変わるのか、お伺いいたします。
○後藤国務大臣 統括庁ができれば、初動対応のときから、関係者が司令塔機能によって掌握された新しい統括庁において、危機管理をしっかりするということになります。
それに加えて、常日頃から恒常的に、平時から、有事になった場合の体制を整えておくということをやる、そして訓練もしていく、PDCAサイクルも回していくということでありますから、そういう意味でいえば、統括庁ができることによって、そうした平時の体制、そうしたものが恒常的な組織によって行われ、権限のある関係省庁との間の一体的な対応が可能になるという、そういうメリットがあると思います。
○稲富委員 ありがとうございます。
次に、損失補償について伺います。
先ほど少し触れましたように、一日当たりの入国者総数の管理が、例えば一日二千人であるとか五千人であるとかということが行われました。コロナ禍の前は一日平均十四万人が入国していたわけでありますので、これは航空会社あるいは関係の事業者については直接の強い影響があるわけでございます。
先日、当委員会で、國重先生と大臣とのやり取りで、様々な、インフル特措法における損失補償いかん、あるいは給付についてどうするのかというやり取りがございました。
そして、そこの中で、インフル特措法の規定による緊急事態措置等に伴う営業制限については、受忍の限度を超える制約とは言えず、事業活動に内在する制約であり、損失補償の対象とならないという整理がございました。また、時短要請や休業要請など事業者の経営への影響を緩和するために、インフル特措法六十三条の二によって事業者に対する支援を対応するということが説明がありました。そして同時に、損失補償が必要となるのは、特定の者が社会生活において一般的に要求される受忍の限度を超えるほどの特別の犠牲を受けた場合に限られるという大臣からの御説明がありました。
そこで伺いたいんですけれども、最初は事務方です。政策と損失の因果関係が明確である場合には、特別の犠牲を受けた場合として、まさにこの損失補償の場合に当たり得るのではないかと思いますが、見解を伺います。
○後藤国務大臣 今、委員の方から前回の私の答弁をもう紹介していただいたので、同じ答弁になってしまって恐縮かもしれないんですけれども、損失補償というのは、これは財産権に対する制約について憲法上必要になるとされているものでありますから、特定の者が社会生活において一般的に要求されている受忍限度を超えるほどの特別の犠牲を受けた場合に限られるというふうに考えられているわけであります。
水際措置について言えば、今御紹介していただいたとおりでありますけれども、特定の者に当たるのか、特別な犠牲に該当して受忍限度を超えているのか、そういうことからいうと、そうしたことにならないというふうに考えておりますけれども、先生の御趣旨が具体的個々の事案に即して判断をすべき事項であるという御指摘であるとすれば、それはそういう特定の事項、あるいは受忍限度を超えるほどの特別の犠牲であるかということは、事態によって考えるべきことだと思いますが、申し上げていることは、一般的な水際措置、あるいは一般的な経営の自粛要請、こうしたものが感染症法下においてそういったものに当たるものではないだろうということを考えているわけであります。
支援については、御紹介いただいたとおりであります。
○稲富委員 そうしたら、具体的に航空会社のことをお伺いしたいと思います。
今回、先ほど来言っているように、入国者を制限して経営が悪化をしているということでございます。それは極めて直接的な因果関係がはっきりしている。そして、そのことによって、業界全体で離職者が大幅に増加した、あるいは、国際線だけではなく、国内の人流抑制もあって、航空会社の経営の自由度が失われ、収入を大きく逸失したということは事実だろうと思います。現在、需要回復局面における人手不足につながっており、空港での荷物検査で長蛇の列ができているのはその結果であります。
事業者からすれば、航空会社が今回であれば特定のということで、航空会社からすれば、いわば天の声のように入国者数の制限がかけられ、直接的な損失につながるのでありますから、その政策決定の説明は欠かせないわけでございます。
そこで、もう一度伺います。政策決定の合理的な説明と政策の結果としての補償が、今回はということだったんですけれども、今後も個別にやはり考え得るということだろうと思いますけれども、改めてその点を伺いたいと思います。
○大沼政府参考人 先生御指摘の前回の話の手前で、まず航空当局として、事実関係、それから今どういう状況であるのかということを御説明させていただきます。
先生御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症に対する水際措置として、航空会社に対して、私ども、到着空港の限定ですとか搭乗者数の制限の要請を行ったところでございますけれども、航空会社で発生した損失について、個別の減収補償は、先生御指摘のとおり、行っておりません。
一方で、コロナ禍による航空会社への影響は甚大でございます。極めて厳しい経営状況に置かれているということで、いまだ回復途上でございますが、これまでも危機対応融資等の活用による資金繰り支援や雇用調整助成金などの支援をしてきたほか、着陸料、航空機燃料税等、いわゆる公租公課に当たる部分につきましても、令和三年度に千二百億円規模、令和四年度七百億円規模の減免を行い、令和五年度予算案においても五百億円規模の軽減を計上するなど、相当踏み込んだ支援を実施しているところでございます。
今後とも、航空業界の声をよく伺って、どういった対応をしていくのかという点に関して、私どもとしては適時適切に対応してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○稲富委員 今後どうするかということについて、更にこういった感染症あるいはパンデミックが起こったときどうするのかということについては、やはり損失補償ということも含めて、是非議論を深めて考えていくべきことかと思います。そのことを申し上げて、この質問を終わります。
続いて、統括庁と専門家の関係についてお伺いします。
これは、この法案審議において、専門家はどれほどその意見が反映されるのかということについて、随分と多くの委員から質疑がございました。
まず、大臣、順番を変えて、十二番目の質問をさせていただきます。
有識者会議の提言の中で、専門家の役割は科学的助言にあり、判断は政治と行政が行うことが適切であるというふうにありますけれども、この点、大臣は賛同されていらっしゃいますでしょうか。お伺いします。
○後藤国務大臣 新型コロナウイルスは、その性状を急激に変化させることなどから、状況に応じて、感染拡大防止と社会経済活動のバランスが取れた効果的な対策を講じることが重要であります。このためには、幅広い分野の専門家の科学的知見やエビデンスに基づく検討が極めて重要である、これはもう委員御指摘のとおりであります。
このため、これまでも、コロナ対策分科会を始め様々な場面において、感染症や経済などそれぞれの専門的立場からの知見を伺った上で、それらを踏まえて政府として必要な判断をし、責任を持って対策を講じてきた、講じてこようとしてきたわけでございます。
専門家と政治の役割分担については、有識者会議報告書においては、専門家の役割は科学的助言にあり、判断は政治と行政が行うことが適切であると指摘がなされているところであり、私としても、政策判断は専門家の科学的知見を踏まえた上で政府において行うべきものと考えています。
○稲富委員 政府としては、当然、専門家の知見を活用して、あるいはそれに応じて、それに基づいて政策判断をするというのはそうなんですよね。
私の質問は、専門家の役割とは何かといったときに、科学的助言にあるのかという、このことを大臣にお伺いをしております。
○後藤国務大臣 それは委員の御指摘のとおりでありまして、専門家の役割というのは、科学的知見に基づいて、エビデンスに基づいた、そうした判断の材料を提供していくことが専門家の役割だというふうに思います。
○稲富委員 ありがとうございます。
先ほど大臣から御答弁があったように、これまで、政府としては、幅広い専門家の知見に基づいて政策判断をしてきたという御答弁がありましたし、先日、同僚の青柳議員の質問に対しても同じ御答弁をされました。
しかし、実際には、塩川議員とのやり取りの中で、例えばアベノマスクだとか、全校の一斉休校であるとか、GoToトラベルのことであるとか、濃厚接触の待機期間の短縮であるとかということについては、専門家会議あるいはコロナ分科会の意見が届いていないという事例が御紹介がありました。
もう一度申し上げますと、では、専門家の提言、政府の判断の間にどのような課題があったのかということを、どういう認識をしているのかということを伺います。
○菊池政府参考人 この三年間の新型コロナ対応につきましては、先ほど大臣から申し上げましたとおり、基本的には、コロナ分科会を始めとする専門家の助言や提言を基に、政府として講ずるべき政策を判断し、実行してまいりました。
ただ一方で、昨年六月の有識者会議報告書において、専門家との関係を含めた意思決定プロセスが明確だったか、科学的な知見に基づく評価、分析は十分だったかなどの点において問題がなかったとは言えないと指摘を受けております。
また、有識者会議の場では、専門家の方からも、専門家助言組織からの提案に対して、政府からその採否や判断の理由、実行状況などの説明が十分でなかったとの指摘があったところでございまして、私ども、こういうことは課題であると認識しております。
○稲富委員 専門家の知見がどう活用されたのかについての質問は、ここで一旦終わります。
そこで、少し具体的に申し上げたいんですけれども、今回のコロナで、やはり、専門家の中で最もいわば世の中で活躍をし、世に出て、あるいは我々がよく目にした専門家というのは尾身茂先生だったと私は思います。恐らく衆目の一致するところだと思います。八面六臂のすさまじい働きというのはこのようなことでありまして、大臣も厚生労働委員会の筆頭もされていたとき、私も委員だったんですけれども、委員会での質疑、政府での発言、専門家会議の取りまとめなど、私は、あの危機的状況の中で、尾身先生の役割というのは非常に大きかったなということを思っております。
その点、大臣、尾身茂分科会会長の果たしてきた役割について、大臣の評価を伺いたいと思います。
○後藤国務大臣 今御指摘をいただいたように、分科会の会長でもありましたし、実際に分科会の活動に、活動自身は会則によりまして権限移譲されておりますけれども、その上にある全体会の方の会長もされておられますし、厚生労働省のアドバイザリーボードの主力メンバーとして、本当に今回の感染症対策において多くの知見をいただいて、御協力をいただき、御貢献をいただいた方だというふうに評価をいたしております。
○稲富委員 改めてちょっと、これは事務方で結構です。
尾身会長はどのような立場あるいは権限を有して、この間コロナ対策に取り組んできたのかということをお伺いします。
○菊池政府参考人 尾身会長のお立場でございますけれども、先ほど大臣から申し上げました、新型インフルエンザ等対策推進会議の議長であり、かつ、その下に設置されました新型コロナウイルス感染症対策分科会の分科会長、そして基本的対処方針分科会の分科会長という立場でいらっしゃいました。
政府におきましては、こうした基本的対処方針の作成の変更、それから新型インフルエンザ等対策に関する調査審議につきまして、議論の取りまとめを行っていただくというふうな権能をお願いしているところでございます。
○稲富委員 あわせて、厚生労働委員会でも、何度も質疑の場に参考人として来られておりました。どういう立場で来られたか、御説明できますか。
○後藤国務大臣 今は退任されましたけれども、当時の尾身会長は、私の記憶するところでは、JCHOの理事長として、これは自動的に政府参考人として国会に出席される立場にありましたし、参考人として、委員会での答弁を、答弁というか御発言を度々お願いしたと思います。
○稲富委員 決して言葉尻をつかまえるつもりじゃないんですけれども、大臣、そうなんですよ。まさに答弁をしているというか、お立場が、いわば一参考人という立場にとどまらないものがあったと私は思います。
私が調べた範囲だけでも、いわば三十回近く厚生労働委員会だけで出席をされて、ある意味、参考人としてなんですけれども、いわば答弁をされていたように思います。
したがって、私が何が言いたいかというと、そのいわば身分とか権能があやふやなままといいますか、あの事態ですので、全部整理をされた中で、ある意味そこに出て答弁ができるという状況ではなかったということは理解しつつも、では、今後どうするのかといったときに、私は、やはりあれだけ危機のときに専門家として発言をする、それは、国会で発言するということはいわば国民への説明でもありますし、国会議員から質問をするということは、国民の声を聞くという場でもあります。そういう意味でいうと、やはり何らかの役職、権能があって初めてやるべきじゃないかと私は思うんです。
そこで、次、伺います。
国民への情報発信、ここもリスクコミュニケーションということで、随分とこの委員会でも取り上げられました。
国民への情報発信についても、随分と大きな役割を果たされました。最大の場面は、やはり総理会見だと思います。総理と尾身会長が並んで会見をされている場面、随分ありました。総理と尾身会長が並んでいるこの会見、何回あったのかということをお伺いします。
○菊池政府参考人 尾身会長が総理会見に同席した回数でございますが、コロナ室で調べた限り、安倍総理との会見で五回、菅総理との会見で十七回、合計二十二回と承知してございます。
○稲富委員 どのような立場で同席されたんでしょうか。
○菊池政府参考人 尾身会長は、先ほど申し上げましたが、新型インフルエンザ等対策推進会議の議長、そしてコロナ分科会、基本的対処方針分科会の分科会長、様々な立場を併せ持った方であり、総理との同席は緊急事態宣言に絡むものが多かったので、その直前に基本的対処方針分科会を開催されておりますので、その会長としての側面が強いかと思いますが、ほかの機会での御同席もございましたので、どの立場というのを一つに絞るのはなかなか難しいかと考えております。
○稲富委員 ありがとうございます。
総理会見というのは、当然、いわば最も重い会見ですよね。今ちょっと御紹介がありましたけれども、こういう身分の方が大きいけれどもとか、そういうことではなく、やはり、あれだけの存在と発言をされる方がどういう身分か確定しないまま総理と並んで会見するということに、私は次に関しては整理が要るんじゃないかと思うんです。
再度伺いたいんですね、大臣に。更に言えば、専門家の役割は科学的助言にとどまるべきなのかということなんです。今回我々が経験した中でいえば、科学者は政策決定のための知見を提出すればいいんだでとどまらずに、いわば科学的助言にとどまらないんじゃないかと。それは今回我々が経験したことではないかと思うわけですけれども、大臣の見解を伺いたいと思います。
○後藤国務大臣 助言という言葉の範囲をどのぐらいの広さで考えることかとも思いますけれども、基本的には科学的助言だというふうに思いますし、それから、例えば役所におきましても、事務職の職員もいれば、科学的な専門分野について言えば、技官と呼ばれるような、あるいは専門職で公務員の資格を取っている者もいれば、医療に精通した人たちが働いたり、あるいはいろいろな形で専門的に知見のある方たちが職務に就いて仕事をするということはあるだろうというふうに思います。
そういう意味では、先生がおっしゃるような、そういう意味でのいろいろな知見を持った人たちをしかるべきに利用しながらしっかりと決断をしていくという趣旨においては、おっしゃることについて私も同じ意見だというふうに思いますけれども、しかし、科学的知見を提供していく、そして客観的な科学的な根拠に基づく、そういうデータを供給しながら、最後は政策内容について決断をしていくところとの間に、当初申し上げたような政策決定の責任を伴う決断と、それから科学的知見を提供して、その決断が間違わなくならないようにしっかりとサポートするということとの間には、やはり大きな一つの区切りがあるべきではないのか。
そして、我々、今思いますのは、そうした意味で、専門家の科学的妥当性を、きっちりと科学的助言を担保していく、そういう透明な仕組みと、それからもう一つ言えば、専門家組織そのものを強化して、そういう専門家の判断がきっちりと決定の中に埋め込まれていけるような、そういうことが必要なんだろうというふうに思います。
○稲富委員 それは、政策決定において、先ほど来申し上げていますように、専門家の立場で、今回我々が経験して、私が学ぶべきことは、専門家の知見を活用するのは当然、それが一つ、だけではなく、やはり国民に対する説明をするという場面がどうしても出てくるのではないかということなんですよ。それは、本来は政治家が全部やればいいですよ。だけれども、そうはならなかったから、総理とわざわざ並んで会見をしたわけじゃないですか。それは、説明をし、大臣も何度もおっしゃっているように、国民に対して理解を求め、国民に対して更に行動変容を促したりする必要がある上には、専門家の言葉が必要だったわけですよね、あの場合には。だからこそ尾身会長が出てきていた、私はそう理解しています。
そういう意味でいえば、では、今回、統括庁ができた後、一体誰が尾身会長の役割、いわば科学者として国民に対する説明をしたり発信をしたり、これはどういうふうに、誰がやるんでしょうか。お伺いしたいと思います。
○後藤国務大臣 一言つけ加えて説明をするならば、岸田総理になってからも、科学的知見をお示ししながら国民に説明する局面はあったと思いますけれども、その場合、岸田総理ないしは大臣が責任を持って、そして必要であれば各役所の専門的な事務方も含めて、しっかりと国民に対する知見を申し上げていたというふうに思ってはいます。
統括庁においては、司令塔機能をしっかり発揮しながらも、新たな専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構、日本版CDCから提供された科学的知見を踏まえて決定した政策について丁寧に説明を行っていく、また、政府の方針に基づいて、関係省庁も含めて一体的な情報発信についても、これをしっかりと統括庁において取り組んでいくというふうに考えています。
○稲富委員 今おっしゃったように、一体的な情報発信の主体がどうしたって専門家に頼らざるを得なかったというのが今回の事態であって、それが今回の法案に埋め込まれていないことが私は問題だと思っているんです。それが根本的な今回の法案の欠陥であるということを申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○大西委員長 次に、岩谷良平君。
○岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いいたします。
今回の法改正で、都道府県知事が正当な理由なく要請に応じない者に対して命令を行うに当たって勘案する事項を法令上明確にするということなんですけれども、要請に当たって、一番大きな制約を受けるのは飲食店の皆さんであります。
外食産業に大きなダメージがありまして、私も以前、飲食店を経営しておりましたが、経営者の仲間に聞きますと、お客さんの戻り、まだコロナ前の七割、八割という声をいまだにやはり聞きます。また、時短や休業要請に対する協力金として、例えば大阪では一日最大二十万円が支払われたんですけれども、個人店、個人経営の小さな飲食店なんかは、営業しているよりも、むしろ休業している方が協力金でもうかるなんという状況がある一方で、一等地にある大型店などは焼け石に水にしかならない、余りに不公平じゃないか、もっと当事者の意見を聞いてほしいという声もよくいただきました。
そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、これまで、外食産業などの団体とかあるいは飲食店事業者さんなどからどのように意見を伺ってきたのか、また、この勘案する事項の明確化に当たって、今後、外食産業などから意見を聞く機会を設ける予定はあるかどうか、お伺いしたいと思います。
〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕
○後藤国務大臣 外食産業などの業界団体、事業者において非常に厳しい状況がコロナ感染下であったということについては、私も十分にその状況は伺っております。
そういう中で、大変に厳しい判断をしていかなければならないわけでありますので、経済活動と感染のバランスをしっかり取っていく、そのためには、例えば、訴訟事案だとか、個々の事例についての判断がより迅速的確に行えないと現場においても困るというようなことから、今回、命令発出の要件である、特に必要があると認めるときについて明確にしていこうということであるということをまず最初に一言申し上げた上で、その上で、報告書の取りまとめに当たって意見を聞いているのかということでありますけれども、有識者会議において経済団体等からの意見聴取も行っておりますし、当該経済団体には外食産業を含む事業者も加盟しておりまして、実際に、有識者会議の中では、飲食店や宿泊業のコロナの影響等による経営の厳しい状況に関する説明が行われておりまして、そういった課題も踏まえて議論が行われたところであります。
また、今後、政令の制定に際しての業界団体等からの意見聴取については、現時点において未定ではありますけれども、いずれにせよ、行政手続法の規定に基づく意見公募手続を実施することにはなるというふうに考えておりまして、今後とも広く一般の意見の把握にしっかりと努めていきたいというふうに考えています。
○岩谷委員 今、有識者会議で経済団体等から意見を伺った、その中に飲食や宿泊の事業者も含まれていたというようなお話だったと思うんですが、有識者会議の座長は大臣ではありませんし、委員でもないと思います。営業の自由が制限されるというのは非常にやはり大きな、重大なことでありますから、私は、一度有識者会議で有識者の皆さんが意見を聞いたからそれで済むという話ではないと思うんですね。
やはり大臣自ら、本当に納得いくまで徹底的に話を聞いていただいて、また意見交換をしていただくということは非常に重要だというふうに私は思っております。ですから、今後においても、是非、積極的に意見交換、また意見をお伺いする場面というのをつくっていただくことを要望しておきたいというふうに思います。
次に、引き続きこのことをお伺いしますけれども、この間、多くの飲食店の皆さんが時短要請に応じていただいている中で、一部の飲食店が要請に応じず営業を続けていたという状況もありました。また、そういう飲食店は逆ににぎわっているというような状況を私も実際目にしてまいりました。
こういう、正直者がばかを見るといったような状況は絶対にあってはならないと思うんですが、しかしながら、一方で、要請に応じなかった飲食店の皆さんの中には、そうしなければお店が潰れてしまう、食べていくためには、駄目だと分かっていてもやるしかないんだ、そういう切実な声があったのも事実だと思います。
これは繰り返し我々維新の会が言い続けていることですし、我が党共同代表の吉村大阪府知事も常々言っておりますけれども、休業と補償はセットだ、国が責任を持って補償を明示した上で要請を行うべきと言ってまいりました。
そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、今回、命令について、勘案事項を明確化するということなんですけれども、そうであるならば、要請を行う場合の補償ということについても法令上明確化すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
○後藤国務大臣 いろいろな要請に対しまして、事業者の経営や国民生活への影響を緩和するために事業者に対する支援は大切だということで、六十三条の二になりますけれども、これを令和三年のインフル特措法の改正において手当てをしておりまして、当該規定も踏まえて、事業者に対する支援について適切に対応していく、そのことは必要であるというふうに考えております。
そこで、補償という言葉なんでありますけれども、これが、例えば一般的に言われる、憲法上、損失補償が必要であるのかという意味での、法的にある意味明確な補償という言葉であるとすると、これは、特定の者が社会生活において一般的に要求されている受忍の限度を超えるほどの特別の犠牲を受けた場合に限られている、これは確定判例としてあるわけでありますし、インフル特措法の規定による緊急事態措置等が、ある程度幅広い、一定の広がりのある地域に対して幅広く実施される一般的な制限であって、特定の者のみを対象にしたものではないこと、それから、社会生活において一般的に要求されている受忍の限度を超えるのかどうかという意味において、特別の犠牲と言えるのか、言えないのか。
そういうことから、事業活動に内在する制約であって、憲法上の損失補償の対象とはならないことと整理されておりまして、補償という考え方は取らないということでありますけれども、実際上の事業者の経営、それから国民生活への影響等を考えて的確に、事業者等に対する支援については対応していくことが必要だという御指摘ということであらば、そのとおりだというふうに思います。
○岩谷委員 この委員会でも、補償に当たるかどうかという議論はいろいろと、先ほどもありましたけれども、確かに、私も、法的な補償に当たるのかどうかよりも、大切なことは、しっかり経済支援が行われるかどうかだというふうに思っております。
ただ、やはり場当たり的な形での支援ではなくて、しっかりとあらかじめ明示されて、事業者の皆さんが予測ができるような状況をつくっていくことというのが非常に大事なことだと思います。そういったことがなければ、やはり信頼とか納得が得られなくて、結局要請に従ってもらえない、応じてもらえないというような状況にもなろうと思いますので、その辺りも含めて、今後これは議論を深めていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。
続いて、テーマを変えまして、今回、法改正で、総理、本部長ですね、総理の都道府県知事への指示権を出せる時期を前倒しするという、いわば、コロナ対応において国の権限を強める方向の改正が入っております。
この法改正をめぐる当委員会の質疑でも、危機管理統括庁の設置について、国の府省間に横串を刺して、司令塔として縦の指揮命令系統をはっきりさせるといった御趣旨の御答弁、大臣、何度もされているかと思いますが、一方で、私は、現場で実際に感染症と戦っているのはやはり都道府県や市町村ですので、地方自治体との関係というのは非常に重要な点だと考えております。これは、都道府県と保健所設置市、また市区町村、そういった地方自治体間の権限分配や役割分担、あるいは、それらの自治体と国との権限分配等、これをどう考えていくかという議論です。
今回の新型コロナもそうですけれども、やはり平時、有事において感染症対策の最前線を担っている自治体、この重要性をしっかりと認識した上で、いかにこの関係の調整について手当てがなされているかということを順次ちょっと確認をさせていただきたいと思うんです。
最初にちょっと確認させていただきたいことは、例えば大阪では、第七波とか八波において、いわゆる二類相当としての対応が難しくなって、入院調整など一部の運用について実質五類相当に近い取扱いをして乗り切ったと聞いています。また、蔓防を要請したけれども、政府の発出までにタイムラグが生じたとか、そういうこともあったと聞いています。また、先日の参考人質疑におきまして、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長の草場先生から、北海道で、知事の独自の緊急事態宣言を国が追認するような形を取ったことがあった等もおっしゃっておられました。これは、二〇二〇年二月の、北海道の鈴木知事が道独自の緊急事態宣言を発表した事例のことかと思うんですけれども。
こうやって、国と自治体で考え方とか方針に少しずれがあったり食い違いがあったりして調整が難航したりとか、そういった事例、国としてはどういったものを把握されていますか。
○小池政府参考人 昨年五月から六月にかけて開催されました新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議でも指摘がなされましたように、感染初期等に、政府と都道府県との間において、特措法に基づく施設の使用制限の対象施設ですとか、飲食店に対する時短要請の在り方等について調整が難航した事例がございました。
○岩谷委員 具体的に申し上げますと、二〇二〇年四月には、東京都の小池知事が緊急事態宣言に合わせて幅広く事業者に休業要請を行おうとしたところ、政府が待ったをかけた。結局、予定より四日遅れで小池知事が休業要請を発表して、そのとき、知事は、社長かなと思っていたら、天の声がいろいろ聞こえてきて、中間管理職になったような感じだったという言葉を残されていまして、これは皆さん記憶されているんじゃないかと思います。
また、二〇二一年一月の第四波のときは、関西圏でコロナが急速に拡大していく局面で、大阪、兵庫、京都の三知事が政府に対して緊急事態宣言の発令を要請しましたけれども、政府は慎重姿勢を示したため、大阪の吉村知事は政府判断を待たずに独自の対策強化策を始めたといった事例もありました。あと、ほかにも、同じ時期に、熊本とか三重とか宮崎なども次々と独自の宣言を出すなどをされました。
それから、同じ第四波で、北海道で、先ほどの例だけじゃなくて、蔓防の適用をめぐって、二〇二一年四月二十三日に、道が目安とした感染者数を超えていたんですが、政府は財政負担の懸念などから適用に慎重だったために、北海道の判断が遅れ、実際に要請したのは二週間後の五月五日になった、そういった事例もありました。
こうやって地方自治体と国の考えのずれが多数やはり生じていたことから、国の司令塔機能を強化していくところと、逆に、地方に権限とか財源を移していく、移譲していくという、この二つのバランスというのが非常に重要だと思います。
先ほども飲食店のことで聞きましたけれども、やはり重要なのは当事者の意見を聞くことだと思いますので、今回の法改正案の作成に当たって、都道府県とか市区町村といった地方自治体から大臣はどのように意見を聞かれたのか、そして、主な意見としてどのようなものがあって、それに対してどのような検討とか対応をされたのかをお伺いします。
○後藤国務大臣 昨年五月から六月にかけて開催された新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議においては、全国知事会等の地方団体とも意見交換を行った上で、報告書の形で課題を整理していただいて、それを踏まえて今回の法改正は作成したものであります。
加えて、全国知事会とは日頃から定期的に、大臣が出席する形で新型コロナウイルス感染症に関する意見交換会というのをやっております。特に、本法改正に関して言えば、昨年の十二月六日と十二月二十七日に実施した意見交換会におきまして、対策本部長である平井鳥取県知事や同本部長代行である福島県知事内堀さん等と直接意見を交わしたところです。
全国知事会からは、政府対策本部長による指示権が発動される場面及び要件を明確化してほしい、感染症対策や医療提供体制の確保に支障が生じないように地方負担の極小化を図ることをお願いしたいというような意見、要望をいただいたところでありますけれども、今回の法改正では、そうしたことも踏まえて、政府対策本部長の指示権の発動可能時期の前倒しに係る規定については、要件等を法律上明確に規定するとともに、地方公共団体の財源確保に係る国庫補助負担率のかさ上げ等の規定を設けることといたしておりまして、知事会からいただいた意見、要望に応えている改正であるというふうに考えております。
引き続き、都道府県、それぞれの自治体は現場において本当に感染症対策に臨んでいただくわけでありますから、連携を密にし、丁寧に説明も行いながら、国、地方一体となって感染症危機に対応していけるようにしっかりと対応していくとともに、新しい司令塔機能においても、こうした機能を大切にしていきたいというふうに考えています。
○岩谷委員 ちょっと確認させていただきますけれども、今、知事会からの要望で、総理、本部長ですね、の指示権の前倒しの場面において、その適用場面とか要件を設定、明示が今回の法改正でなされているという御答弁だったと思うんですが、それはそういうことで間違いないか、ちょっと確認をさせてもらいます。
○柳樂政府参考人 お答えします。
今回の政府で予定しています法改正の内容、昨年九月の政府対策本部でその概要を定めているものでございまして、そういった内容も含めて知事会等に十分御説明した上で、今大臣が御説明いたしましたように、直接大臣と知事等で協議をしていただいているという経緯がございます。
○岩谷委員 協議をして、要は、その適用場面、要件というのが具体的にもう示されているという認識でよろしいですか。
○柳樂政府参考人 お答えいたします。
政府対策本部が設置されている間において指示を行うことができるようにするに当たりましては、今回の法案の中身において、まず、新型インフルエンザ等の蔓延により、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるにもかかわらずという要件、それから二つ目に、総合調整に基づく所要の措置が実施されない場合であるということ、三つ目に、新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するために特に必要があると認めるとき、さらに四つ目として、その必要な限度において指示を行うことができるというふうに規定をしておりまして、法律上、場面や要件について明確化しているものでございます。
○岩谷委員 理解いたしました。ありがとうございます。
国と地方の関係についてなんですけれども、これも、令和三年十一月に指定都市市長会とか中核市長会が、共同提言ということで、国と地方自治体の関係や、都道府県、保健所設置市との関係等において、その役割分担や事務権限、費用負担等について、指定都市や中核市等の意見を十分に踏まえて検証し、最適化を行うことと提言されているんですが、これはいろいろと、東京都と新宿区の保健所と厚労省の間でいろいろなうまくいかないそごがあったような事例も具体的に聞いているんですけれども、この提言を受けて、どんな対応を行ったかもお伺いしたいと思います。これは、新型インフル特措法に係る部分だけで結構です。
○柳樂政府参考人 御指摘のインフル特措法につきましては、国と地方との役割分担ということに関しましては、国が新型インフルエンザ等について今後講ずべき対策を実施するに当たっての統一的指針として基本的対処方針を定めて、地方公共団体などに示す、その上で、事業者に対する要請等の地域の感染状況等に応じて講ずべき具体的措置につきましては、当該方針を踏まえまして、市区町村のような基礎自治体ではなく、広域自治体である都道府県の長である都道府県知事が実施する、こういうことを基本といたしております。
これは、特措法は、全国的かつ急速に蔓延するおそれがある感染症を対象としているということに加えまして、通勤通学など現代の社会において人の移動性が著しく高いというようなことに鑑みまして、ある程度広域的な対応が必要であるという考え方に基づくものでございます。
特措法におけるこうした枠組みを通じまして、それぞれの地域において、都道府県や政令指定都市、中核市等との緊密な連携の下で、今後とも新型インフルエンザ等対策の着実な推進を図ってまいりたいと考えてございます。
○岩谷委員 この提言の中で、指定都市や中核市等の意見を十分に踏まえて検証し、最適化を行うことというところが書かれていまして、何度もこの委員会で議論になりましたとおり、やはり検証としては、今回の有識者会議のこの一か月程度、五回というのはまだまだ不十分であるというふうに指摘をさせていただきたいと思います。
ちょっと時間がなくなりましたので、質問を飛ばしまして、最後、もう意見だけ述べさせていただきます。
例えば神奈川で、症状がある人に抗原検査キットで自ら検査してもらって、医師の判断を通さず自主療養届を出すという仕組みを先行してつくって、これは最初、厚労省は難色を示したそうですけれども、最終的に全国に取り入れられた、あるいは、大阪で、若年軽症者のオンライン診療スキームというのも、これも最初、大阪独自にやって、結果的に全国に広がったというようなことがありまして、やはり現場の最前線にいる地方自治体が何とか現実的な対応をしていこうということでいろいろな知恵を絞って、アイデアを出して、それが施策として全国に広がっていくという状況があったのも事実でありますから、やはりこの指揮命令系統、司令塔というところと同時に、しっかりと地方自治体に、ある部分は権限、財源を移譲していくという視点は絶対忘れるべきではないというふうに思います。
例えば和歌山の仁坂前知事、非常に今回コロナ対策で評価が高かったわけですけれども、国は大枠や最低限の範囲を示して、知事が実情に応じて対策を上乗せできるような運用が求められるというようなことをやはりおっしゃっておられます。
そうしたことを含めて、改めて、この間のコロナ対策の検証がまだまだやはり不十分であるので更なる検証が必要だということと、地方への権限、財源移譲、これをしっかりとやっていただくことを強く要望させていただきまして、時間になりましたので、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○神田(憲)委員長代理 次に、浅野哲君。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
本日は、時間が十分しかございませんので、早速質問に入りたいと思います。
前回の質疑でも取り上げさせていただきました、都道府県知事の事業者等に対する命令権の発出の際に配慮をしなければいけない内容は政令で定めるということで今回法改正がなされるんですけれども、まず早速、非常に人の人権にも関わることで重要だということで、今政府内でも検討が進んでいるというふうに承知をしてございます。特措法第三十一条の六第三項、そして第四十五条第三項の規定に基づく新たに設けられる政令の中身について、現時点で具体的にどのような内容を想定しているのかをまず伺いたいと思います。
○後藤国務大臣 御指摘の規定は、有識者会議におきまして、都道府県の特措法に基づく措置について、訴訟事案も踏まえれば、個々の事例についての判断がより迅速的確に行えるように、国が適切な運用の在り方について基準や指針を示すことが重要であるとの指摘を受けたことを踏まえて改正しようとするものであります。
これまで都道府県等に対して事務連絡でお示ししてきた内容や関連する訴訟の地裁判決等も踏まえまして、御指摘の政令に規定する具体的な勘案事項については、現時点では、特措法三十一条の六第三項の規定に基づく政令は、一つ、同種の業態における新型インフルエンザ等の患者の発生状況、第二に、対象となる店舗等における新型インフルエンザ等の患者が多数発生する危険の程度、第三に、蔓延防止等重点措置の継続の見込み、第四に、対象となる事業者による感染防止対策の実施状況というようなことを現時点で考えております。
また、特措法四十五条第三項の規定に基づく緊急事態措置の政令は、同種の措置における新型インフルエンザ等の患者の発生状況、第二に、対象となる店舗等における新型インフルエンザ等の患者が多数発生する危険の程度、第三に、緊急事態宣言の継続の見込み、第四に、対象となる事業者による感染防止対策の実施状況を規定することを想定をいたしています。
○浅野委員 ありがとうございます。
本当に時間がないので、ちょっと簡潔に質問したいと思うんですが、今それぞれお答えいただきました中に、それぞれ三つ目の配慮事項になるかと思いますが、蔓延防止等重点措置あるいは緊急事態宣言、それぞれの継続の見込みを配慮して命令を出すか出さないかを判断をするという項目がございました。継続の見込み、つまりは、あと何日ぐらい、あとどのくらい蔓防や緊急事態が続くのかというのを見ながら判断をするということなんですけれども、私は、これは非常に都道府県知事による迅速な判断を阻害するのではないかと思います。
なぜなら、感染発生状況や、大量に感染者が発生する危険の程度が大きければ、残り一日でも二日であっても、命令はしなきゃいけないと思うんですね。逆に、その程度が低ければ、残り期間が長かったとしても、むやみに命令は出すべきではないし、この継続の見込み、残りの期間というものを私は配慮事項に含めない方がいいのではないかと思うんですが、ここに関して大臣の御見解はいかがでしょうか。
○後藤国務大臣 これまで都道府県知事等に対してお示ししてきた事務連絡においては、特に必要があると認めるときに該当する状況の例示の一つとして、対象となる区域において、引き続き感染が継続しており、当該都道府県において感染が拡大するおそれが高まっていることというのを従来から事務連絡でお示ししていたということもあります。
また、関連する訴訟については、もし必要であれば参考人に詳しく聞いていただきたいと思いますけれども、地裁判決ではありますけれども、効力が生じる期間が発出日当日を含めて四日間しかないことが確定した中で発出された命令について、被告が命令をあえて発出した必要性について合理的な説明がなされていない等が判断され、他の事情、これは三密対策等がしっかりやられていたということですが、と併せて当該命令の発出は特に必要があったと認められず、違法というべきと判示されたような事例もございます。
以上を踏まえて、事務連絡で示していた内容について、こうしたことを書いているわけでありますけれども、一つ一つの項目そのもので決まるということではなくて、これは総合的に判断されて決まるものではあるというふうに思っております。
○浅野委員 今の挙げていただいた事例も、私も説明を受けましたが、残り四日間しかなかった中で命令発出の妥当性がないのではないか、こういう内容だったわけですけれども、それ以前に、感染症の患者の発生状況であったり、多数の患者が発生するような危険性、これもまた認められない状況だった、その上で、残り四日間しかなかったからどうなんだ、こういう内容だったというふうに承知していますので、やはり、発生状況や危険性の程度で判断するのはいいと思うんですが、残り四日とか、残り何日だから命令を出すのはやめておこうかとか、こういうことを知事が考え始めたら、迅速な判断、先ほど大臣がおっしゃっていましたけれども、迅速な判断に資するような政令でなければいけないんですが、むしろ迷いを生じさせるのではないか。
ここは是非、まだこれは決まっているわけではないというふうに聞いていますから、よく今後御検討いただきたいというふうに思います。
次の質問ですが、もう最後の質問になるかと思いますので、一問に絞りたいと思います。
本法律の第七十条の二では、地方公共団体は、新型インフルエンザ等の発生時において実施する措置について、特例的に地方債を起債できるとされております。これが改正案の内容になりますが、これは、どういう理由で地方債を起債できるのか、借りられるのかということは総務省の政令で定めるというふうになっておりますが、具体的にちょっと伺いたいです。
例えば、事業者が事業を営む現場における消毒や換気設備の導入や、あるいは感染症対策を現場において更に充実させるための費用、それに対する地方自治体の支援、こういったことを事由として起債することは可能なんでしょうか。伺いたいと思います。
○的井政府参考人 お答えいたします。
新型インフルエンザ等対策特別法におきまして今般新設をいたします地方債の特例につきましては、基本的に、感染症法に基づく病床確保等の措置について、今般新設いたします第六十九条の二の規定によります国費のかさ上げをしてもなお残る地方負担を中心に活用いただくことを想定しているものでございます。
その他、事業者の感染予防に係る事業等につきましては、次の感染症危機の発生時に、国の予算における対応も含め、当該感染症の特性等に応じまして検討がなされるものと認識をいたしておりますが、地方公共団体が財政面の心配なく積極的に必要な取組を行っていただけるよう対応していくことが重要と認識しているところでございます。
以上でございます。
○浅野委員 ありがとうございました。あくまでも、六十九条で規定された使途を賄うことができない場合に起債することができるということを想定しているということなんですが、これは、七十条の二の条文を見ますと、もっと広く捉えられるような構成になっているんですね。ですから、未知の感染症に備えるという意味でも、やはり次なる危機が生じたときに地方自治体がちゅうちょなくしっかり現地で対応できるような、そういう起債の特例内容としていただくことを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。
○神田(憲)委員長代理 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
前回の質疑で、過去の感染の波、第六、第七、第八波と、死亡者数が大幅に増えていることを指摘をいたしました。コロナ感染による死亡者に占める七十歳以上の高齢者の割合が非常に高いということで、第六波以降は九割以上となっているということであります。オミクロン流行の第六波以降、高齢者の死亡者数が極めて増加をしているということは重大であります。そこで、高齢者施設の感染状況がどうなっているのかについて確認をしたいと思います。
厚労省にお尋ねしますが、高齢者施設におけるクラスターの発生件数は波ごとで見た場合にはどういう状況になっているのかを教えてください。
○鳥井政府参考人 お答え申し上げます。
厚生労働省では、地方自治体のプレスリリース等を基に、同一の場で二名以上の感染者が出たと報道等がされている事案の件数を集計いたしております。
お尋ねにつきましては、政府として、第何波という定義又はその期間を定義はしておりませんけれども、基本的に、一日当たりの陽性者数が最大になった月の前後一か月を含む三か月を一つの波と仮定した場合における、それぞれの波における高齢者施設におけるいわゆるクラスターの件数につきましては、二〇二一年三月からのいわゆる第四波は五百四十八件、いわゆる第五波は二百七十六件、いわゆる第六波、二〇二二年の一月からでございますけれども、三千二百四十四件、いわゆる第七波、二〇二二年七月からの第七波は六千六百六十二件、それから、二〇二二年十月からの第八波は八千九百二十三件と集計してございます。
○塩川委員 クラスターの発生件数、第六波で三千件以上、第七波で六千六百、第八波では約九千件ということで、非常に増加をしているわけであります。
そういったクラスターの発生によって施設内での感染者が非常に増えているという懸念があるわけですが、高齢者施設内の感染者が病院逼迫に伴い入院できずに施設内療養となる留め置き、これに伴う高齢者施設での療養者数というのは波ごとにはどのぐらいになっているのかについてお答えください。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
高齢者施設における療養者数のお尋ねでありますが、入院治療が必要な方はもちろん入院をしていただくわけでありますが、高齢者施設等で療養していただく場合もあることから、高齢者施設についての充実、補助も行ってきたわけであります。
先生お尋ねの数字につきましては、厚生労働省では、週に一度、調査日時点の入院者数と療養者数について各都道府県から報告をいただいております。その調査の中では、高齢者施設ということで取っている数字ではないんですけれども、社会福祉施設等というところで、その他の障害施設等も含まれた療養者数として把握をしております。
こういった社会福祉施設における療養者数については、先ほど参考人から申し上げたとおり、一日当たりの陽性者数が最大になった月の前後一か月を含む三か月を一つの波というふうに仮定をした場合の数字で申し上げますと、第二波のときには三十三名、第三波で六百三名、第四波で三百六十九名、第五波、百九十七、第六波で六千百十名、第七波で一万五千七百二十五名、第八波のときのピークが一万六千五百九名という状態でございます。
○塩川委員 高齢者施設を含む社会福祉施設、大半が高齢者施設ではあるわけですけれども、このように大変療養者数が増えております。これは単に、軽度だから療養者として施設にとどまっているということではなくて、病院の逼迫状況の影響も反映をしているということも見なければなりません。社会福祉施設の大半を占める高齢者施設で留め置きが大きく増加をしているということに強い懸念を覚えるわけです。
ちなみに、このような高齢者施設、社会福祉施設でのコロナ感染の死亡者数というのが波ごとにどうなっているのかというのは、これは厚労省としては把握をしているんでしょうか。
〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○鳥井政府参考人 お答え申し上げます。
コロナ感染症の死亡者の施設ごとの数字については把握してございません。
○塩川委員 是非把握をしていただきたいと思っています。
例えば、京都府では、第六波から第八波のコロナ死者のうち高齢者施設内で亡くなっていた人が一六・五%に上っていたということがあります。ですから、本当に、重篤なのに入院加療ができずに施設内で亡くなられる方というのがかなりの割合いらっしゃるということでした。
東京都高齢者福祉施設協議会の調査では、入院が必要として入院調整した感染者のうち、入院できたのは三四%、入院できなかったのは六六%に上ったとのことであります。施設内療養により施設内での感染者数が増加する傾向にあると指摘をしております。死亡者数で見ると、入院先で死亡した人が二十五人で、施設内での死亡が三十六人と、施設内が多くなっているということであります。
このように、感染者の施設内療養、留め置きというのが感染拡大、そして死亡者数の増加につながっているのではないのかと思うんですが、厚労省はいかがですか。
○鳥井政府参考人 お答え申し上げます。
最近の感染拡大や死亡者数増の要因というお尋ねでございますけれども、専門家による分析によりますと、いわゆる第八波の感染拡大につきましては、やはり感染者のうち八十代以上の高齢者の占める割合がそもそも高いことや、新型コロナやウイルス感染をきっかけとする併発疾患や合併症の増悪により死亡する高齢者が増加しているということ、それから、冬場は併発疾患や合併症が悪化する時期であるといったことなどが死亡者数の増加につながっていると分析をいただいているところでございます。
ただ、いずれにいたしましても、最近の高齢者の感染者数や死亡者数が増加しているということは、先ほど申し上げましたとおりでございますので、あるいは、クラスターが多く発生しているというのも事実でございますので、このために、引き続き、高齢者を始めとするハイリスク者に重点を置いた対策というものが必要でありまして、これに引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
○塩川委員 入院が必要な人にちゃんと入院できるような体制こそ求められているのに、それが伴っていないということが施設内での死亡者の増加につながっているという点が極めて重大で、この感染拡大期において、重症化リスクのある高齢者に入院加療ができる体制が伴っていなかったんじゃないのかというのが問われていると思うんですが、そこはどうですか。
○大坪政府参考人 お答え申し上げます。
先生御指摘の、高齢者においての療養でありますけれども、入院が必要な方に関しては、高齢者に限らず入院がされるということが当然であろうかと、適切な入院体制を確保するということは重要であると思っております。
その一方で、高齢者の方に限らずではありますけれども、療養の場所として、自宅であったりですとか、宿泊施設であったり高齢者施設であったりといったところで療養していただく場合も今般あったということであります。
今後、五類に見直しをされた後におきましても、先生御指摘のとおり、感染される方が増えるということによる影響は極めて大きいわけでありますので、高齢者施設におきましては、まず陽性者が発生した場合の周囲の者への検査ですとか集中的な検査、これは五類以降も続けることとしておりまして、そういった感染対策のほか、往診やオンラインによる診療や相談、こういった協力医療機関の事前の確保、また、高齢者施設へ職員を派遣する派遣元医療機関への補助、加えて、必要な体制を確保した上で施設内療養を行う高齢者施設への補助、こういったことを手厚くサポートする中で、様々な場を活用して療養を提供するといった体制を確保したいと考えております。
○塩川委員 大臣に質問する時間がなくて残念ですけれども、今話があったんですけれども、五類見直し以降について、財政支援は、医療機関に対しても高齢者施設に対しても、現行の財政措置を減らした上で若干の加算をするだけで、これまでより拡充されるものではありません。これまでの公的支援を後退させず、拡充してこそ、医療提供体制を確保できる、公的支援の縮小、削減方針は撤回をすべきだということを申し上げて、質問を終わります。
○大西委員長 次に、緒方林太郎君。
○緒方委員 よろしくお願いいたします。
今回の新型インフル特措法改正で、政令について先日質問させていただきました。考え方が出たことはよかったと思います。ありがとうございました。
これを読んでいて、これは事務方に是非お伺いをさせていただきたいと思いますが、かつて命令が出たときに、こういう勘案事項ではなくて、不要不急のサービスだからというので、休業要請、命令が出た業界がございました。具体的にはパチンコとかなんですけれども、不要不急のサービスだからこういった命令が出やすくなるというようなことは、今後あり得るということでしょうか。内閣官房。
○柳樂政府参考人 御指摘のパチンコ店に関係したことでございますが、これは令和二年四月の緊急事態宣言時においてのことを御指摘されていると思います。その際は、接触機会の低減に徹底的に取り組むという考え方の下で、特措法に定める、多数の者が利用する施設について幅広く休業の要請を行うということでしたものでございまして、先生の御地元の福岡県におきましては、休業等の協力要請を行う施設として、パチンコ店を含む遊技施設のほかに、運動施設、劇場、集会施設、展示施設、商業施設等を対象にしたものというふうに承知をいたしております。
その後、各業界の業種別ガイドラインの策定によりまして、業種、業態に応じたふさわしい感染対策の徹底が進んだことなどを踏まえまして、令和三年一月以降の基本的対処方針におきましては、パチンコ店を含む遊技施設については休業要請の対象としておらず、感染リスク等を勘案した実効性のある措置内容としているところでございます。
いずれにいたしましても、科学的エビデンスや専門家等の意見に基づいて適切に対応してまいりたいと考えてございます。
○緒方委員 ありがとうございました。
決して、私、パチンコ業界から応援をもらっているとかそういうことでは全然ありませんので。単に地元で見ていて、そういうことがあったということでありまして。
それで、うちの地元で起こった出来事として、とある、パチンコ業界にわっとそういう休業が出ると、それに従わないところにパチンコの好きな方がむちゃむちゃ集まったということがあったんです。こういうことについても今後対応が必要だと思いますが、内閣官房、いかがですか。
○柳樂政府参考人 今般の特措法に基づく要請又は命令をしたときに、公表規定というのがございまして、その趣旨は、主として、当該施設の利用者らに対しまして事前に広く周知することにより、利用者の合理的な行動を確保するということを目的としているものでございます。
令和三年法改正の前は、事業者に対して要請等をしたときは、都道府県知事はその旨を公表しなければならないというふうに規定されておりましたところ、中には、公表することで、その事業者が要請に従っていないということが周知されてしまって、集客目的の宣伝に利用されるなどによって逆に多くの利用者が集まるケースなど、その制度の目的に沿わないような場合も見受けられたものでございます。
このため、令和三年の法改正におきまして、公表することができるという規定に改正をいたしまして、都道府県知事が施設の類型やあるいは特性等の事情を考慮した上で、利用者の合理的な行動を確保することにつながる場合に公表するということを可能にしたものでございます。
こういった法律改正の経緯ですとか公表規定の趣旨を踏まえた上で、次の感染症危機においても都道府県が適切に対処できるようにしてまいりたいと考えております。
○緒方委員 それでは、続いて医療提供体制についてお伺いします。
前回、本田政務官に医療提供体制のことについて質問したとき、真面目に通告したんですけれども、答弁が全く要を得なかったので、今日は、医師であります羽生田副大臣にあえてお越しをいただきました。
前回、コロナ禍というのは、かかりつけ医機能が発揮されるべき事案であったと思いますかという話をしたときに、ちょっと政務官、要領を得ませんでした。
もう一度お伺いしたいと思います。
今回のコロナ禍は、かかりつけ医機能が発揮されるべき事案だったというふうに思いますか、副大臣。
○羽生田副大臣 かかりつけ医につきましては、今議論中ということでございますので、どういったものがかかりつけ医になるかということが決まっておりませんものですから、まだ、どうだということはなかなか言えるものではないというふうに考えております。
まずは医療提供体制の確保というのが非常に大切でございますので、その点は、地域全体として通常医療の提供を継続する、そして感染症医療のニーズに対応するという、この両方が大切であるということでございますので、各医療機関の機能、役割を踏まえた医療提供体制を構築していくということは非常に大切だと思っております。
○緒方委員 政務官の答弁とえらい違いますね。
続きまして、日本医師会のある幹部の方が、コロナは第一義的には補助金で支えられる公的病院が対応すべきものであり、民間病院は退院後の患者のケアとか通常医療を支える役割を担う、そういう役割分担があるんだといったような趣旨のことを言っておられました。
そういう役割分担なんでしょうか、副大臣。
○羽生田副大臣 先ほど答弁をいたしましたけれども、やはり地域全体での医療提供体制というものが非常に大切であって、今回、改正医療法が通ったわけでございますけれども、そういった中でも、それぞれの連携が非常に大切であるということで、そういう中にはかかりつけ医等々も入ってくるということでございますので、かかりつけ医機能がどうのこうのということではなくて、全体としての医療提供体制ということが重要であるというふうに思っております。
○緒方委員 そういうことを聞いているのではなくて、コロナは基本的に公的病院が対応するものであり、民間病院は通常医療を支えたり退院後の患者のケアをする、そういう役割分担があるというふうに副大臣はお思いになられますかと聞いております。副大臣。
○羽生田副大臣 ですから、公的、民間等々は問わず、地域全体で医療提供体制を構築していくということが大事でありますので、これがかかりつけ医だろうが国立病院であろうが民間病院であろうが、そういったことは県知事を中心に、しっかりとした医療提供体制をつくるということに向かって進むべきものであるというふうに考えております。
○緒方委員 終わります。
○大西委員長 次に、大石あきこ君。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
この法案に関しては、もう二週間ぐらい審議をしていて、もうこれは駄目だと、いろいろな問題が出ていますので、これはもう駄目だと考えているんですけれども、幾つか問題点が出てきたと思います。
政府から、元々、この法案が出てくる背景として、何度も言及されている有識者会議というのが、政府は元々議論の範囲を制限した検証に基づくものであって、その有識者会議のメンバーからも、もっと当事者の声を聞いた方がいいと。そのような報告書に基づいて行われているという問題。それから、現場のコロナ対応をされてきた医療従事者ですとか、保健所ですとか、また研究所、又は全ての働く人や住民さん、この方々の涙と汗というものが全く反映されていない、検証がなされていないという大きな問題。そして、これは岸田総理の総裁選公約の帳尻合わせであろう、そういった指摘もありました。
こういった限界のある法案という矛盾の中から、内閣官房の権限を不用意に広げる条文まで入っている。非常に大きな問題があると考えています。
その中でも、私のこれまでの質疑でもお伝えしてきましたけれども、現場のコロナ対応の汗と涙が全く反映されていないということについては、これはこのまま推し進めてはならない。
それで、後藤大臣が何度もPDCAサイクルを回すんだとおっしゃっているので、これは回してもらわなきゃいけなくて、これは長きにわたるこの国の課題があって、もう二十年単位で人材育成に関する無計画というものがあり、それを見詰めないと感染症対策もままなりませんし、これは感染症対策に限ったものではなくて、物づくりやあらゆる現場で言えることかと思いますが、そこがおかしいですよねと言っても、一向にそのような答えが出てこないので、今日こそそのような答えをしてほしいので、後藤大臣にお聞きしたいと思うんです。というのも、先週、厚労省の方にお聞きしたんですけれども、申し訳ない、まともな回答が得られなかったので、後藤大臣に改めて聞きたいんですよ。
まず、厚労省のPDCAというものはぶっ壊れていますねということで、おさらいしていきたいと思います。
先週も出したパネルなんですけれども、地方衛生研究所というコロナ対策に欠かせない研究所。充実さすと厚労省もおっしゃっていますけれども、充実さすためには、過去自分たちが何をやってきたのか、不十分だったか、PDCAというものが必要ですよね。それで、職員数、二十年どうなっていますか。財政措置しました、また、地衛研当たり二名増やしますとおっしゃったので、ちょっと待ってくださいと。元々物すごい減らしていますよねと聞いたのに、厚労省はまずお答えにならなかったんですね、二週間前に。分からないと言いました。
それで、データを取り寄せて、総務省と厚労省に取り寄せて、二十年の推移を表したんですね。左が財政措置、お金の方、プランですよね。これで足りるんやと。横ばいやと。でも、実数を見てくださいよ。実数が減っているんです。六百人減った中で百五十人増やすと言われても、これは足らないでしょうと言っても、根拠なく足りるんだと言っていて、話にならないんですよ。
パネル二に行きます。
もう少しクローズアップして、現にもっと減らしている自治体もありますよねということで、全国で二十年、実数が減ってきました、地方衛生研究所の職員が減ってきました、大阪では更に減っていますよ、これを許すんですか、独法化を認めたのは国ですよねという話も厚労省に言ったんですけれども、次、改善をするようなお答えでは全くなかったんですよね。
それで、先週、参考人質疑もありまして、国立感染研究所の方、また地衛研も所属された方が、この二〇〇九年前後以来、研究所の職員を減らすなという闘いでしたと、そこまでおっしゃっているんです、現場の方が。
だから、厚労省がこれで足りますというプランで、実際行われたのが、減ったんです、実際行われた実数、ドゥーのところで減っていると。そうしたら、そこをチェックしたんですかというところでチェックしていなくて、それで数字を出してくださいと言ったら出してきて、出してきたら何か知っていたみたいな回答をされていて、そういうのはおかしいんですよね。かつ、そういう態度をしているから、次はもっと増やさなきゃと言っても、二名で、地衛研ごとに二名で足りるとおっしゃっていて、こういった、PDCAなんかぶっ壊れているじゃないかということを、私、何回かの質疑で皆さんに訴えてきたかと思います。
そこで、後藤大臣は、これを見て、もうさすがに、もう分かった、PDCAは回っていなかった、これから自分が回すとおっしゃっていただけませんか。
○後藤国務大臣 今おっしゃった、厚生労働省も職員の増員が必要であるという認識は持っているので、二人ともかく定員を増やしていくという対応を、今これは現実に行っているわけです。
問題は、現在の例えば衛生研あるいは保健所の体制も含めて、先生が御指摘になったような体制が本当に有事のものとして十分であるのかどうか、そうしたことの検証は、これで十分であるということを政府として申し上げているのではなくて、まさに統括庁のことについて、もし引っ張り込んでお話しするとすれば、平時の備えが有事においてどういうふうに機能するものなのか、それを平時に恒常的な組織をきちんとつくって、各省がそれぞれの予算で、統治下に入ることなく、感染危機管理対策をもう少し一般的な観点で計画というものを作って、そして訓練もしつつ、本当にPDCAサイクルを回しつつ、それが十分であるのかということを検証していく、そういう役割を統括庁は機能として図っていくということだと思います。
ですから、御指摘の地方衛生研究所及び保健所の体制確保についても、PDCAサイクルを推進する中で、厚生労働省とも連携を図りつつ、しっかりと感染症対策に必要なそういう体制整備をしていく必要があるということだと思います。
○大石委員 やらぬでもないというお答えだったと思います。いつやるんですか。何月ですか。
○後藤国務大臣 まず、統括庁ができるのかどうかということについては、これはお願いをしているわけでありますけれども、統括庁ができれば、平時の備えがどうなのか、有事にどれだけ備えておくべきなのかという作業は、統括庁ができれば早速取り組むということでありますけれども、今の先生のお尋ねが、いや何月だったら幾つ増やせるんですかという具体的な数字をお求めになっている期限だということになれば、ちょっとここは責任のある答弁ということで、はっきり明確には申し上げられませんけれども、しかし、その検討については、もう早速、できれば、計画を作るところから取り組んでいくということだと考えています。
○大石委員 四月ですか。最短四月……
○大西委員長 申合せの時間が経過しています。御協力ください。
○大石委員 時間が終わるような答えしかなかったからじゃないですか。
やるとは思えませんでした。
終わります。
○大西委員長 次回は、来る二十九日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三分散会