衆議院

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第10号 令和5年4月5日(水曜日)

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令和五年四月五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    石原 宏高君

      尾崎 正直君    大野敬太郎君

      工藤 彰三君    小寺 裕雄君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      田野瀬太道君    平  将明君

      中野 英幸君    中山 展宏君

      平井 卓也君    平沼正二郎君

      細田 健一君    牧島かれん君

      松本  尚君    井坂 信彦君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    山岸 一生君

      岩谷 良平君    浦野 靖人君

      金村 龍那君    堀場 幸子君

      河西 宏一君    福重 隆浩君

      浅野  哲君    塩川 鉄也君

      緒方林太郎君    大石あきこ君

    …………………………………

   国務大臣

   (新しい資本主義担当)  後藤 茂之君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室長)            岩成 博夫君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室長代理)          三浦 章豪君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室次長)

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室次長)           品川  武君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室次長)

   (中小企業庁事業環境部長)            小林 浩史君

   政府参考人

   (内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局審議官)

   (厚生労働省大臣官房審議官)           朝川 知昭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           青山 桂子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           梶原 輝昭君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安全衛生部長)       美濃 芳郎君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月五日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     細田 健一君

  馬淵 澄夫君     井坂 信彦君

  堀場 幸子君     金村 龍那君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     池田 佳隆君

  井坂 信彦君     馬淵 澄夫君

  金村 龍那君     堀場 幸子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房新しい資本主義実現本部事務局フリーランス取引適正化法制準備室長岩成博夫君外九名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。

 今日は、マスコミなどではいわゆるフリーランス法案と言われている法案の質疑ということであります。十五分でありますので早速質問に入りますが、これは私も含め同僚議員の皆様が何年かかけて作り上げてきた法案でありますので、冒頭、少しだけ経緯に触れさせていただきます。

 国民の皆様の働き方が多様化する中で、フリーランスと言われる働き方がかなり増えてきているということで、私の認識するところでは、一番本格的に議論が始まったのは、全世代型社会保障検討会議の中間報告、これは令和元年ということですね、この時点ではまだ法律というようなことは触れられていませんで、「内閣官房において、関係省庁と連携し、一元的に実態を把握・整理した上で、最終報告に向けて検討」というのが、本格的な検討の発端であったと理解をしております。

 翌年の令和二年になると、内閣官房において、関係省庁と連携し、一元的に実態を把握するための調査を実施するということでした。その結果を踏まえて、全世代型社会保障検討会議において政策の方向性について検討した結果、ガイドラインを策定する、あるいは立法的対応の検討を行うことという結論を得たということになります。

 同じ令和二年の十一月には、少しでも早く対策を打っていく観点で、法整備を待たずに、厚生労働省を中心に、取引に関するトラブルについてワンストップで相談できる窓口を設置し、丁寧な相談対応を行うということも取組が始まっておりました。

 そして、令和三年になると、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法や労働関係法令の適用関係等を明確化するガイドラインが策定をされました。

 そして、令和四年になって、本格的に法整備に向けて動きが出てくる。四年六月の閣議決定、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画では、「取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出する。」とされたものであります。

 ただ、その後も多少の紆余曲折がありますし、法案の策定に当たっては、申し上げた令和二年の実態調査に加えて、フリーランス・トラブル一一〇番に寄せられた一万件を超える相談内容について個別概要を聴取をしたり、フリーランス協会や中小企業三団体など、当事者、発注者を始め、経済団体、労働団体といった様々な関係者との意見交換、また、パブリックコメントによる広く一般の皆様の意見募集なども行って、これらよりいただいた国民の皆様からの御意見を踏まえた法案となっているというふうに認識をしてございます。

 その上で、更にちょっと紆余曲折があったのは、昨年の臨時国会では、与党の法案審査で更に検討を要するというようなこともあったということで、非常に精力的に、かつ慎重にやってきた、ある意味ではちょっと難産な面があった法案かということも言えるかと思います。

 その辺りも踏まえて、一問目は後藤大臣にお伺いをしたいと思います。

 本法案は、いわゆるフリーランスに係る取引適正化を図るための法制度として検討されてきたものと認識をしておりますけれども、法案において、フリーランスという用語を用いずに、その保護対象を特定受託事業者としている理由、それから、いわゆるフリーランスと特定受託事業者とはその範囲が異なるのかという点について、まず確認をしたいと思います。

 また、下請代金法の改正によらずに新たに本法案を提出することとした理由を含めて、本法案の意義についてどのようにお考えか、見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 いろいろ御質問いただきまして、ありがとうございます。

 従業員を使用せず一人の個人としての業務委託を受けるフリーランスにつきましては、従業員を使用して組織として事業を行う発注事業者との間で、交渉力やその前提となる情報収集力の格差が生じやすいと考えられます。

 内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査では、発注事業者から個人として業務委託を受けるフリーランスのうち約四割が報酬の不払いや支払い遅延を始めとしたトラブルに遭っていること、約四割が、記載が不十分な発注書しか受け取っていない、又はそもそも発注書自体を受領していないことなどの事情が確認できておりまして、不当な不利益を受けやすい立場にあると考えられます。

 また、フリーランス・トラブル一一〇番において、ハラスメントなど、交渉力等の格差に起因して個人の就業環境が害される相談も寄せられているなどの実態があります。

 このため、本法案においては、業務委託の相手方である事業者で従業員を使用しないものを特定受託事業者と定義し、この法律において保護対象となるフリーランスの範囲を明確化した上で、取引の適正化を図るとともに、ハラスメントの防止など、フリーランスの就業環境の整備を図ることといたしております。

 なお、フリーランスという働き方は様々な形が想定されまして、明確な範囲が定まっているわけではないことから、法律上の保護対象の呼称をフリーランスとするのではなく、特定受託事業者といたしております。

 また一方、下請代金法は、親事業者と下請事業者との下請取引において、取引構造上、交渉力等の格差が生じていることから、下請取引の適正化を図るものであります。具体的には、資本金一千万円超の親事業者と一千万円以下の下請事業者といった事業者間の下請取引を規制対象としております。

 このため、下請代金法では、資本金一千万円以下の事業者とフリーランスとの間の取引が規制対象とならないこと、ハラスメント防止など、個人の就業環境整備に関する規制になじまないことから、下請代金法を改正するのではなく、新法として法案を提出することといたしました。

赤澤委員 ありがとうございます。

 近年、働き方の多様化が進展している中で、今御説明あったように、本法案は、いわゆるフリーランスに係る取引を適正化し、個人が事業者として安定的に従事することのできる環境を整備するということを目的とするものであります。

 それ自体、大変重要な目的でありますし、しっかりこの法案の成立を図ってまいりたいと思いますが、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現に向けて、目下、賃上げが最重要課題ということになっておりまして、生産性向上、あるいは下請取引の適正化、価格転嫁の促進といったこれまでも十分に議論されてきた問題に加えて、まさにこのフリーランスの取引適正化のための対策の一層の強化が必要であるということを痛感をいたします。

 また、従業員を雇わない創業形態であるフリーランスの取引適正化法制の整備は、実はスタートアップの起業加速にも資するものであると考えておりまして、本法律案は、岸田政権が一丁目一番地に掲げている新しい資本主義を加速するものと考えております。その点からも、しっかり成立を図ってまいりたいというふうに思っております。

 二つ目、二問目は政府参考人の方にお伺いしようかと思いますが、フリーランス・トラブル一一〇番ですね。

 先ほど御紹介をしましたいろいろな取組をやる中で、一一〇番ということをやってきているんですけれども、具体的にどのような相談が寄せられているのか。また、今回の法案は、フリーランス・トラブル一一〇番に寄せられた相談事例も踏まえて立案されたという経緯については、先ほど、冒頭説明したとおりですけれども、本法案の成立後、施行までの間に、フリーランス・トラブル一一〇番の体制をより一層拡充をするとともに、国において、フリーランス・トラブル一一〇番やフリーランス関係団体から問題事例を吸い上げる仕組みを更に更に充実していくなど、本法を適切に執行していく体制を構築していくべきだというふうに考えますが、お考えを伺います。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 フリーランス・トラブル一一〇番でございますけれども、フリーランスと発注者等との取引上のトラブルにつきましてフリーランスの方が弁護士にワンストップで相談できる窓口でありまして、これまで一万件を超える相談が寄せられているところでございます。

 相談内容としては、報酬の不払い、支払い遅延といった報酬の支払いに関するものが約三割と最も多く、次いで、契約条件が不明確、契約書不作成といった契約内容に関するものが約二割となっております。

 本法案が成立した場合には、本法案の施行体制の中での相談対応の中核が、まさにフリーランス・トラブル一一〇番になるというふうに考えております。

 違反行為を受けた特定受託事業者が行政機関の対応を希望する場合に、フリーランス・トラブル一一〇番での相談から、公正取引委員会、中小企業庁、あるいは厚生労働省の窓口への申告に円滑につなげられるよう、フリーランス・トラブル一一〇番の体制整備を図っていきたいと考えております。

 また、本法案の施行、運用に当たりましては、フリーランス関係団体に対しまして、悪質な問題事例の把握と行政への情報共有を依頼する、また、フリーランス関係団体やフリーランス・トラブル一一〇番で相談対応する弁護士からのヒアリングを通じて、問題行為の多そうな業種等を拾い出した上で、特定業種等に対して調査を行うといった取組を実施するなど、フリーランス関係団体やフリーランス・トラブル一一〇番から問題事例を吸い上げる仕組みを充実させてまいりたいと考えております。

赤澤委員 この法案自体の成立も非常に重要なことでありますけれども、それだけで目的が達成できるというわけではないということで、フリーランスの皆様に係る取引適正化を図っていくという意味で、フリーランス・トラブル一一〇番の体制強化、あるいは取組の強化を更にお願いをしておきたいというふうに思います。

 本法案はフリーランス保護に重要なものである一方、当然ながら、地方でも様々なトラブルが起こり得るということで、私の地元、鳥取県なども含めて、実際に法違反の疑いがある行為について、担当する行政機関がしっかりと調査をする、あるいは法違反行為があれば是正のための措置を取っていくということも、全国各地でフリーランスの皆様が安心して安定的に働くことができる、そういう環境をつくるために不可欠なものと考えております。

 本法律案の法執行に当たっては、地方部局も含めた担当行政機関における法執行体制の整備や人員確保が極めて重要となってくると考えますが、どのように取り組んでいくのか。

 また、フリーランスに係る取引環境の整備のためには、業界ごとの取引慣行の適正化を図っていくことも必要です。先ほど政府参考人の方から、問題が多い業界はどこかもしっかり把握していくというようなお話もありました。後藤大臣のリーダーシップの下で、発注者側の団体に対して取引慣行の改善を積極的に働きかけていくべきということも考えるところでありますけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 本法案の法執行体制につきましては、所管省庁である公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省において、今後、必要な人員及び体制の確保に努めていくとともに、指導や勧告などを適切に行えるように、施行までに準備をしっかりと行っていきたいというふうに考えております。

 執行する所管省庁の地方組織においても十分な体制を整備するほか、地方組織同士の連携を高めるとともに、電話、メールなどでフリーランスからの相談を受け付ける仕組みであるフリーランス・トラブル一一〇番の更なる拡充を始め、全国どこからでも相談できる相談、申告方法も充実させるなどの取組を通じまして、地方においても本法案が適切に施行されるように対応してまいりたいと思っております。

 また、今委員から御指摘がありましたように、フリーランスの業種は多種多様であることから、フリーランス取引に係る問題行為の未然防止のためには、各業種における取引慣行の改善を図ることが重要です。

 このため、業所管官庁とも連携しまして、各業界団体を通じて、フリーランス取引の適正化に向けた働きかけを幅広く行っていく所存でございます。

赤澤委員 まだちょっと時間があるようなので、もう一問、政府参考人にお伺いをしたいと思います。

 本法案は、特定業務委託事業者に対し、育児、介護などに関する配慮義務を課していますけれども、配慮の内容については特に条文に明記はされていないところであります。特定業務委託事業者は、具体的にどのような対応を取ればよいのか。また、特定業務委託事業者が適切に配慮を行うことができるよう、分かりやすく周知等を行っていくべきと考えますが、いかがですか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 育児、介護等と業務の両立について、本法案に基づく特定業務委託事業者の配慮の内容としては、例えば、妊婦の母性保護や健康管理のため、妊婦健診の受診のための時間を確保したり、就業時間を短縮したりすることや、育児、介護等を行う時間の確保のため、育児、介護等と両立可能な就業日、時間とするといったことが考えられます。

 こうした配慮の具体的な内容につきましては、関係者の意見を聞きつつ、取引の実態を踏まえながら、厚生労働大臣の定める指針等において明示することとしております。指針について丁寧な周知を図ることで、個々の特定受託事業者の希望や、業務の内容、特定業務委託事業者の状況に応じ、当事者間で柔軟な配慮が講じられるよう取り組んでまいりたいと考えております。

赤澤委員 関係者の思いが詰まった重要な法案でありますので、しっかり成立を図ってまいりたいと思います。

 終わります。

大西委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

 本法案の対象となる特定受託事業者、これは従業員を使用しないものとされております。ただ、フリーランスであったとしても、一時的に短期間のアルバイトを雇うことは考えられます。このような場合は、常に特定受託事業者に当たらないのか。二条一項二号の、従業員の射程、内容について答弁を求めます。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 本法案の保護対象となる特定受託事業者の定義におきましては、従業員を使用しないものと規定しておりますけれども、仮に受注事業者が他者を雇用した場合であっても、短時間、短期間のような一時的な雇用であるなど、組織としての実体があると言えない場合には従業員に含まれないものと整理をしております。具体的には、雇用保険対象者の範囲を参考に、週労働二十時間以上かつ三十一日以上の雇用が見込まれる者を雇用した場合には、本法案の従業員とすることを想定しております。

 したがって、業務委託の受注事業者が、例えば、週労働二十時間未満の者のみを雇用していたり、三十日以下の雇用しか見込まれていない者のみを雇用していたりしても、特定受託事業者として本法案の保護対象となると考えております。

 本法案が成立した場合には、施行日までの間に、このような本法案の従業員の考え方について、ガイドラインなどの形で対外的にもお示しすることとしたいと考えております。

國重委員 従業員の内容について確認をさせていただきました。

 その上で、従業員の有無によって特定受託事業者かどうかが決まるということでありますが、従業員がいるかどうかについてはどの時点で判断するのか。業務委託がなされた時点、発注時点で判断をするのか、それとも問題行為のあった時点で判断をするのか。従業員の有無の判断時期について伺います。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点でございますけれども、時点として、まず発注事業者が業務委託をする時点のみならず、問題行為のあった時点の二つの時点で、受注者たるフリーランスが従業員を雇用していない場合にのみ、先ほど申しました、従業員を使用しないものというふうにされると考えております。

 他方で、取引の安定に配慮しつつ、フリーランス及び発注事業者の双方にとって明確な時点を考えていくという必要がありますので、発注事業者につきましては、まずは、フリーランスに対して業務委託を行う時点で従業員の有無を確認するということが考えられるというふうに思料しております。

國重委員 発注者側としては、従業員がいるかどうかというのを逐一確認するというのは煩雑ですし、負担になりますので、従業員の有無について、発注時点で判断すればいいということだったと思います。

 その上で、発注者側に適正な取引を行っていただくことが重要になります。この点、本法案では、五条で、特定業務委託事業者の遵守事項が定められております。ここで言う遵守事項、これにつきましては、例えば、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒む、報酬の額を減ずる、こういった、ある意味、当たり前にやってはいけないことが定められています。にもかかわらず、その対象となる事業者は、一項で、政令で定める期間以上の期間、業務委託を行う、つまり、継続性のある特定業務委託事業者に限定をされております。

 この継続性の要件を求めた趣旨は何なのか、お伺いします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、従業員を雇わず一人の個人として業務を行う特定事業者については、組織たる発注事業者との関係で、情報収集力や交渉力、こういった観点で構造的に格差が生じやすい、こういうことに鑑みまして、広く保護を及ぼしているものでございまして、下請代金法の規制対象となっていない資本金一千万以下の小規模な発注事業者であっても、従業員を使用していれば規制が及ぶということでございます。

 他方で、事業者取引における契約自由の原則の観点から、事業者取引に関する規制に基づく行政の介入というものは最小限にとどめるべきであることにも留意が必要でございます。発注事業者に対し、重過ぎる負担が生じることのないよう、また、これにより特定受託事業者への発注控えが生じる、こういったことがないよう、規制は必要最小限とする必要があると考えてございます。

 この点、一般に、契約期間が長くなるほど、発注事業者と受注事業者との間で経済的な依存関係が生じ、それを利用されて不利益を受けやすい傾向にあると存じております。現に、内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査におきましても、主な取引先との契約期間が長くなるほど、取引先から不利益な行為を受けやすいという実態がございます。

 このため、本法案においては、一定の期間にわたって継続する業務委託のみを対象として、受領拒否等の禁止義務を課すこととしたところでございます。

國重委員 今答弁で述べていただいたような趣旨からしますと、保護対象は不当に狭くならないように、この継続性の要件は、ある程度短期間に設定すべきと考えます。

 この五条一項の、政令で定める期間以上の期間について、どのくらいの期間を想定しているのか、答弁を求めます。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 政令で定める期間については、先ほど申し上げましたアンケート調査も踏まえますと、主な取引先との契約期間が三か月を超えて六か月といった長期となるほど、取引先から不利益行為というものを受けやすいという傾向が見られますので、これも一つの参考として検討することとしてございます。

 この具体的な期間につきましては、先ほども御答弁させていただきましたけれども、規制対象となる小規模な発注者の負担の程度や規制の実効性、こういったもののバランスを踏まえまして、今後、関係者の意見をよく確認しながら、フリーランス取引の実態に即した期間というのを設定してまいりたいと考えてございます。

國重委員 次に、本法案では、育児、介護等との両立に配慮するよう定めた十三条一項にも、先ほどの五条一項と同様の継続性の要件が設けられています。

 組織体であれば、個人の家庭の事情をカバーし合うこともできます。でも、本法案で言う特定受託事業者は一人であるがゆえに、育児、介護等の家庭事情がもろに仕事に影響を及ぼすことになります。

 こういったことからしますと、安定的に仕事を続けていくためにはやはり一定の配慮が必要で、とりわけ、実質的に依存度、従属度が高くなる一定長期の業務委託をしている事業者には適切な配慮をしてもらうことが必要になります。他方で、長期ではなくて、単発、短期間の取引を行っている事業者にも様々な配慮を求めるというのは、これはバランスが悪いようにも思えます。

 こういったことを踏まえますと、この十三条一項が想定する期間、これについては先ほどの五条一項とは差が出てくるものと考えますが、これらの期間は同じなのか違うのか。違うのであれば、十三条一項ではどの程度の期間を想定しているのか、答弁を求めます。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 育児、介護等への配慮義務に係る継続性の要件については、第五条に規定する受領拒否等の禁止行為に係るものと比べて長い期間を想定してございます。これは、育児、介護等への配慮は、当事者間に一定期間以上の取引関係があることで、育児、介護等と両立した働き方を両当事者間で調整できる関係性が生まれると考えられることから、受領拒否等との禁止と比べて比較的長い期間を設けることが適当であるためでございます。

 また、政令で定める期間につきましては、内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査におきまして、契約期間が一年以上の場合には仕事のかけ持ち数が減るという結果となっており、これも一つの参考として検討することとしてございます。

 具体的な期間につきましては、関係者の意見をよく確認しながら、フリーランス取引の実態に即した期間を設定してまいりたいと考えてございます。

國重委員 このほかにも、本法案には継続性の要件を定める条文があります。今日、時間の関係で逐一確認することはできませんけれども、それらを政令で定める場合には、それぞれの趣旨、また、現場の実態、エビデンスを踏まえた検討を是非よろしくお願いいたします。

 次の質問に入ります。

 法律ができたとしても、それが現場に広く知られなければ効果は十分に発揮できません。施行までの一年半、いかに分かりやすい内容で現場に届く形で周知をしていくか、これがこれからの肝になります。その前提として、今後、政令や規則などで具体的に内容を詰めることになっている事項、こういったものをなるべく早く固めて示していくことが重要であります。

 その上で、内容が固まれば、発注者側、委託事業者側に対しては、関係省庁や事業者団体、商工会などを通じた様々な周知というのが考えられますので、まずはこれをしっかりとやっていく。

 フリーランスについては、事業者団体に入っていない方も多いので、様々なやり方を考える必要があります。社労士や税理士などを通じたアプローチも必要になるでしょうし、また、フリーランスの特性として、ネット上で仕事をしている人も多いことから、オンライン上でのアプローチも有効と考えます。

 この点、例えば、これだけを見れば法案の内容は全部理解できるというような分かりやすい動画を、広報の専門家など外部の力もかりながら作成をする、それを役所のホームページのトップに載せたり、検索したらすぐに出てくるようにする、こういうことも大事になるかと思います。

 内容、手段、いずれも工夫をして、本法案の周知に力を入れていただきたいと思いますけれども、今後の具体的な取組について、後藤大臣にお伺いします。

後藤国務大臣 本法案は、いわゆるフリーランスの方々に業務委託を行う発注事業者に対して書面交付の義務を課すこと等によりまして、フリーランスに係る取引の適正化等を図るものでございます。これらの義務を実効的なものとし、フリーランスの方々を適正に保護するためには、施行までの間に、この法律の趣旨、内容について十分な、必要があるというふうに考えております。

 このため、議員御指摘の、事業者団体等を通じた周知や動画配信による周知に加えて、関係者への説明会、パンフレットの配布、関係省庁のウェブサイトやSNSへの掲載など、様々な方法で、広く国民にとって分かりやすいものとなるようにしっかりと周知活動を行ってまいりたいと存じます。

國重委員 是非よろしくお願いします。

 最後の質問になります。相談体制の整備、とりわけ、フリーランス・トラブル一一〇番の強化について伺います。

 今、フリーランス・トラブル一一〇番の運営は第二東京弁護士会が担っておりまして、対面、オンラインでの個別相談対応のほか、フリーランスと相手方との間に弁護士が入る和解あっせん、これも行っております。

 しかし、今後、本法案が成立、施行されれば、今まで以上に全国から多数の相談が寄せられるということが見込まれます。現在の対応はオンラインが多いと伺っておりますが、対面を希望する場合はどうするのか、オンライン対応を主軸にしていくのか、担い手は第二東京弁護士会だけが担っていくのか、様々考えていかねばなりません。

 フリーランス・トラブル一一〇番を全国からの相談や和解あっせんの要望に対応できるような体制へと強化する必要があると考えますが、後藤大臣の見解をお伺いします。

後藤国務大臣 今、フリーランス・トラブル一一〇番について先生の方からも的確な御説明がありましたけれども、フリーランス・トラブル一一〇番は、フリーランスの方が発注者等との取引上のトラブルについて弁護士にワンストップで相談できる窓口として令和二年十一月に設置したものでありまして、これまでに一万件を超える相談に丁寧に対応してきております。

 フリーランス・トラブル一一〇番では、フリーランスの方の働く地域にかかわらず相談に対応できるように、電話やメールでも相談を受け付けているほか、オンラインを活用した和解あっせんを行ってきたところでございます。

 令和五年度予算では、相談件数の増加を踏まえまして、相談対応弁護士の増員や弁護士の事務サポートを行う職員の増員等、相談体制の拡充を行っております。

 本法案が成立した場合には、フリーランス・トラブル一一〇番において本法案に関する相談にも十分対応できるように相談体制の整備を図るとともに、様々な機会をつかまえて周知啓発を行うことで、働く地域にかかわらず多くの方に御利用いただけるように取り組んでまいりたいと存じます。

國重委員 しっかりとした取組を是非よろしくお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。どうぞよろしくお願いします。

 先ほど、赤澤先生から、今回のフリーランス法に至る経緯などの御説明がありました。

 まず、一問目です。昨年の臨時国会の冒頭で、総理が所信の演説の中で、フリーランス法整備に取り組むとの発言がありましたけれども、実際には、本法案、今国会に提出ということになりました。恐らく、様々な論点があったのだろうと思います。私は、必要な法律であろうと思うんです。どの点が問題だったのか、なぜ去年提出に至らなかったのかということをまずお伺いしたいと思います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の臨時国会においては、与党での法案審査におきまして、本法案の性格でありますとか、本法案において保護の対象とするフリーランスについての考え方について議論がございまして、更に検討を継続すべく、法案の提出を見送ることとしたということでございます。

 その後、政府において与党とも議論をしながら検討を進め、まず、本法案については、従業員を使用せず一人の個人として業務委託を受ける受託事業者と、従業員を使用して組織として事業を行う発注事業者との間の取引について、交渉力などに格差が生じるということを踏まえ、下請代金支払遅延等防止法と同様の規制を行い、最低限の取引環境を整備するものであるというような法案の性格について整理を行う。若しくは、フリーランスは一般に特定の組織に属さず個人で業務を行う方のことをいうわけでございますけれども、今回の法案において保護対象となるフリーランスについては、フリーランス全体ということではなくて、このうち事業者から業務委託を受けるフリーランスであるということを明確にするために、フリーランスの名称についても特定受託事業者とするといったような点につきまして整理を行い、与党の了承も得て、本法案を国会に提出させていただいたというところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 いわゆるフリーランスという方のお話を、地元で私も伺ってまいりました。例えばこういう方です。グラフィックデザイナーの方でございまして、ポスターのデザインとか、企業のロゴを作ったり、ウェブサイトのデザインをされる方、フリーランスで仕事をされているということなんですけれども、フリーランスからフリーランスへの発注がある仕事という形態もあります。その方は、例えば進行管理をされるフリーランスの方からデザインを作成するという受託を自分がする場合もあるし、自身がフリーランスとしてウェブのデザインをして、ウェブ作成を別のフリーランスの方にお願いをするということもあります。

 そういうことを考えると、第五条のところ、先ほども御指摘がありましたけれども、代金の減額、買いたたきが行われたとしても、第五条の特定業務委託事業者の遵守事項に関する規定が適用されないこともあり得る。

 どのような場合に措置があるのか、なぜ業務委託事業者ではなく特定業務委託事業者としているのか、御答弁をお願いします。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 本法案は、従業員を使用せず一人の個人として業務委託を受ける受注事業者と、従業員を使用して組織として事業を行う発注事業者との間において、交渉力などに格差が生じることを踏まえて、取引の適正化等を図るものでございます。

 個人である発注事業者と特定受託事業者との取引につきましては、両者の間で組織対個人の取引と同視し得るような、構造的に取引上の立場の優劣があるとまでは言えないというふうに考えております。

 また、事業者間における契約自由の原則の観点から、事業者間取引に対する規制、すなわち行政の介入は最小限にとどめるべきというふうに考えております。

 したがって、本法案の規制対象を御指摘のあったような取引にまで拡大することは、本法案の立法趣旨に照らすと困難というふうに考えております。

 なお、本法案におきましては、書面等の交付による取引条件の明示義務につきましては、トラブルを予防し特定受託事業者に係る取引を適正化する点において、発注事業者が個人であるか組織であるかでは違いはなく、発注事業者の利益にもかなうということから、個人である発注事業者と特定受託事業者との取引であっても規律の対象としております。

 こうした取引条件の明示の義務づけ等を通じて、個人である発注事業者と特定受託事業者との取引も含めた取引全般の適正化の機運醸成を図るとともに、その状況を見定めてまいりたいというふうに考えております。

稲富委員 もし、支払い遅延があったり、代金の減額を請求されたり、買いたたきが行われた場合、フリーランスからフリーランスへの場合にはどういう救済措置があるかということも併せて質問したんですけれども。

岩成政府参考人 御指摘のありました、フリーランスからフリーランスに対して五条に列記したような行為が行われた場合というところでありますけれども、この法案自体に直接、そういった行為について行政が取り得る措置というのが規定されているわけではございません。

 ただ、先ほど申しましたように、まず、三条に規定をされておりますような取引条件の明示というところからいろいろな問題行為の未然防止を図っていくことが大事というふうに考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、大臣、ちょっと飛ばして六番に行きます。

 労働者性が認められるフリーランスについて伺いたいと思います。

 令和三年三月二十六日に、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省で、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインが作成されました。ここでは労働政策審議会への諮問はなかったものと思います。

 他方で、フリーランスという働き方に対して、このコロナ禍でいろいろな支援策がありました。例えば、フリーランス向けということで、委託を受けて個人で仕事をされる方向けとして、小学校休業等対応支援金というものがありました。一斉休業のときから始まった支援金の制度は三月末で終了しましたけれども、終了の際には、労使の参画する労働政策審議会の議論を経て決めたと聞いております。

 したがって、労働者性が認められるフリーランスについて、フリーランスをめぐる諸課題を労働政策審議会に諮るべきではないか、あるいは諮ることもあり得るのではないかというふうに思いますが、見解を伺います。

後藤国務大臣 フリーランスの問題については、例えば法案につきましても、労政審に対しては、建議をするということではなくて、報告をするという形で取り扱っております。それは、フリーランスという働き方については、労働者性を認めるものについては、元々これは労働者性を認めて基準法を適用する労働者なわけですけれども、そうでないフリーランスについては、労働者性を認めるということではないので、労政審等についても報告をするという形での対応をいたしております。

稲富委員 それでは、例えば、第五条の特定業務委託事業者の遵守事項の中で、通常相場に比べて著しく低い報酬の額をしてはいけないと、禁止事項の一つにあります。

 そのことについて、政府の「「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」に関する意見募集に寄せられた御意見について」という中で、施行までの間に、ガイドライン等で、通常相場に比べて著しく低い報酬の額についてはガイドライン等で明らかにしてまいりますというふうに表現があります。その他、この政府の考え方の中でもガイドラインで明らかにするというふうにありますけれども、例えば、このガイドラインというのは誰がいつ決めるのかということはいかがでしょうか。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねのありましたガイドラインでございますけれども、これは、今、下請代金法と同じような規定が幾つかございますので、そういった考え方も参照にするとは考えておりますけれども、いずれにせよ、ガイドラインにつきましては、本法案が成立した場合には、各方面から意見を聞いた上で可及的速やかに制定をしたいと考えております。

 本法案の施行は公布から一年半ということになっておりますけれども、これは周知にかなりの時間を要すると考えておりますので、そういう意味では、かなり早い段階でガイドライン等を作成する必要があると考えてございます。

稲富委員 時期については、今、できるだけ早い段階でと。

 誰がというのは、どうですかね。各方面からということで、誰が決めるんですか。

品川政府参考人 失礼いたしました。

 ガイドラインでございますけれども、これは公正取引委員会、中小企業庁、あるいは厚生労働省で決めるということになろうかと思います。各章によって、第二章であれば執行を担うのは公正取引委員会、中小企業庁でございますし、第三章であれば厚生労働省ということになります。

 実際に決めていく上では、フリーランスの立場の方あるいは発注をする事業者の双方から、実態を踏まえて意見を聴取する必要があると考えてございます。

稲富委員 その中で、先ほど大臣からも御答弁ありましたけれども、労働者性のあるフリーランスという方もいらっしゃるわけですよね。そうなれば、先ほどのように、さっきのガイドラインのように労政審への報告という形を取るのか、今回は諮問するのか、あるいは相談をするのか、その辺りはいかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、就業環境の整備に関する措置を設けることとしており、特定業務委託事業者が適切に対処するため必要な指針の策定等に当たっては、本法案の対象となるフリーランス関係団体や労使団体等に参画していただき検討を行った上で、労政審にも報告することとしたいと考えてございます。

 また、これまで、労災保険の特別加入制度へのフリーランスの一部業種の追加や、一人親方等の安全衛生対策について、労政審において御議論いただいてきたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今後とも、必要に応じて労政審で御議論いただき、フリーランスの方が安心して働くことができる環境の整備に努めてまいりたいと考えてございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、第三条のところを伺います。質問七番です。

 第三条には、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払い期日等を書面又は電磁的方法により明示しなければならないとあります。

 フードデリバリーの場合を当てはめると、飲食店が委託事業者、配達人が特定受託事業者、プラットフォーム事業者が仲介者となる場合があります。この場合は、誰が、どのような明示の仕方を想定しているのか、お伺いをします。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 本案におきまして取引条件の明示を義務づける趣旨は、業務委託当初から取引条件を明確にさせて後々のトラブルを未然に防止すること、それから、取引上のトラブルが生じた場合には、取引条件に係る証拠としてその明示した内容を活用し得ることということでございます。これによって、特定受託事業者が安心して取引できる環境の整備が期待できると考えてございます。

 明示すべき事項について、現時点では、法案の第三条第一項に明記されている給付の内容、報酬の額、支払い期日のほか、受託、委託者の名称、業務委託をした日、給付の提供の場所、給付の期日等を想定しているところでございます。

 例えば、今御指摘のようなケースにおきましては、飲食店が飲食物の配達を配達人に業務委託をしたというような場合には、当事者の名称、料理を受け取る場所、料理の配達先、配達する日時、報酬の額などを明示することになると考えておりまして、仲介事業者を利用する場合には、飲食店が仲介事業者を介して配達人にこれらの事項を明示するということも認められると考えてございます。

 なお、明示すべき事項の具体的内容につきましては、本法案が成立した場合に、法施行までの間に関係者の意見をよく聞きながら定めていくことにしたいと考えてございます。

稲富委員 つまり、飲食店が直接明示を必ずしもしなければいけないというわけではなく、仲介事業者がそういうことを明示することによっても、この明示するということに含まれるというか、それでもいい、そういう説明かなと思います。ですよね。はい、ありがとうございます。

 それで、仲介事業者について伺います。

 仲介事業者の利用状況は、フリーランスの実態調査によれば、フリーランスの方の約二割ということでございます。今回は仲介事業者に係る規制というのは置いておりません。ただ、二割というのがそれなりの規模感だなというふうにも思います。

 プラットフォーム事業を通じて請負契約で働く者に対するプラットフォーム事業者の責任を一定程度確立をするための取組を踏まえ、我が国でも関係法令の改正に向けた一定の検討が必要となってくるのではないかというふうに思うわけですけれども、この点、見解を伺います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきまして、先ほど例として委員が挙げられましたフードデリバリーのプラットフォーム事業者を少し例に取りつつ、御説明をさせていただきます。

 例えば、フードデリバリープラットフォーム事業者、これは元々、おっしゃられているのは仲介ですね、飲食店と配達人というのを結びつけるという形態で始まりながら、一部の事業者は、直接自分が委託者になるという形に契約を変更してきております。要すれば、事業者に応じて契約の関係が結構様々な、多様な形になってきているということでございます。

 例えば、今申し上げたように、飲食店から一旦自分が配達の委託を受けた上で、自分が直接の委託者となって配達人に対して配達を委託するというような再委託型でやっている方がいらっしゃいます。こういった方々については、その事業者とフリーランスとの間に直接の業務委託関係がある、こういうことになりますので、本法案の規制の対象でございます特定業務委託事業者にプラットフォーム事業者が該当するということになって、規制対象になるということでございます。

 また、単に発注事業者とフリーランスとの間の業務委託契約をあっせんしている、仲介しているという場合には、契約形態上は本法案の規制対象に該当しないわけでございますけれども、契約形態だけではなくて取引実態も見て、総合的に判断をして、実質的にその事業者が業務委託を行っていると評価できるような場合には、本法案における規制対象に該当してくる、こういうことになります。

 さらに、取引実態を踏まえてもなかなか規制対象になってこない、フードデリバリープラットフォーム事業者が直接の規制対象に該当しないような場合についてでございますが、その事業者を利用して業務委託を行う発注事業者すなわち飲食店とフリーランスとの取引関係は、先ほど御説明申し上げたとおり、本法案の規制対象でございます。当該取引に問題があるような場合には、フードデリバリープラットフォーム事業者に対する調査の実施を含めて適切な対応を行っていくということになります。

 そうした対応を図りつつ、実態も見て、本法案附則にいわゆる見直し規定を置いてございます。三年後の見直し規定を置いてございますので、そうしたプロセスの中で、今申し上げたような対応で十分かどうかということについてはしっかり検証を行っていくということかなというふうに考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 そのフードデリバリー産業なんですけれども、当初は、コロナ禍において、随分と活用された、利用されている方も多かった。そして、コロナがだんだん落ち着いてきている中で、利用者の方が減ってきているのかなと思ったところ、フードデリバリー産業の方に伺うと、それなりの、一定の利用者、規模、そして利益も出ているということなんですよね。なので、当初、フードデリバリー産業として、特にコロナ禍において、随分と町中でもそういう姿を見ました。そして、プラットフォーム事業者も、継続している者、そして事業を畳んでいる方もいらっしゃいます。しかし、一定の需要、そして産業になっているというふうにも見られるわけです。

 先ほど来御説明があったように、配達員と飲食店、プラットフォーム事業者の方々の契約体系というのは、一律ではないということであります。ただ、一方で、先ほど申し上げたように、一つの産業としてほぼ成り立っているということでありますので、業としての在り方をどうするのかということを考えるべきではないかというふうに思います。

 実際に、フードデリバリーサービス協会さん自身がガイドラインを作っているということなんですけれども、いずれにしても、業界の方も、そこで働く方も、政府はどの程度こういう規制をつくるのか、あるいはどういう体制でやるのかということに大変関心を持っておりますので、業としてどういう在り方をしていくのかということを考えるべきというふうに思いますけれども、その点の見解を伺います。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、いわゆるフードデリバリープラットフォーム事業者は、近年、その市場規模というのが大きく拡大をしてきているものというふうに承知をしてございます。

 我々、今回の法案の策定に当たりましても、今言及のありましたフードデリバリー協会とも意見交換を行っておりますし、今後、いろいろなガイドライン等を定める中でも、関係者の一つとしてしっかりと会話をしていきたいというふうに思っております。

 また、そういった点を超えまして、フードデリバリープラットフォーム事業者に関する政策対応の必要性ですね、取引の適正化に限らないものという部分も含めてということでございますが、恐らく様々な論点があるというふうに考えておりまして、例えば食品産業を所管する農林水産省でありますとか、運輸事業を所管する国土交通省など、多様な関係省庁がございますので、本日の国会での御議論、問題意識も伝えて、適切に対応してまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 それでは、次に、三章の特定受託業務従事者の就業環境整備について伺います。

 ここでは、出産、育児、介護に対する配慮、ハラスメントに講ずべき措置が定められております。一方で、安全衛生の確保に関する記載がありません。

 そこで、例えば長い時間働き受ける健康被害の予防に関する規制というのがない。しかし、そういったことがあってはならないのは当然のことであります。そういったことからすれば、就業環境の整備の中で安全衛生という概念もしっかりと加えるべきではないかと思うわけですけれども、この点をお伺いします。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、特定受託事業者に係る就業環境の整備を図るため、育児、介護等と業務の両立への配慮義務、それからハラスメント対策に係る体制整備義務などの措置が盛り込まれております。これらは特定業務委託事業者と特定受託事業者との取引上の力関係から生じる就業上の課題であり、個々の取引関係の中で改善、解決を図っていくべき事項であるとして、本法案において規律を設けたものでございます。

 他方で、今御指摘ございました安全衛生の確保につきましては、取引当事者の関係だけではなく、実際の就業場所におけます物理的な危険有害要因も大きく影響を受けるものであることや、重層請負構造におきまして、その下で働く多様な関係者全体を統括し得る上位の注文者による対応が必要となる場合もあることなどから、個々の取引当事者間における対応のみでは必ずしも災害を効果的に防止できないため、本法案には盛り込まなかったとしているところでございます。

 他方、フリーランスが安全に、健康を確保しつつ働ける環境の整備は大変重要でございます。現在、厚生労働省におきまして、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催し、幅広く御議論をいただいているところでございますので、その議論を踏まえて必要な対応を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

稲富委員 例えばなんですけれども、フードデリバリー事業の場合の安全確保とか、事故に巻き込まれた場合の救済などというのは、現在の法体系で何か対応できるんでしょうか。

美濃政府参考人 お答え申し上げます。

 労働者性が認められないフードデリバリー事業等の配達員の方につきましては、労働法制における安全確保を目的とした規制は適用されないところでございます。

 一方で、厚生労働省を始めとする関係省庁では、そのような配達員と契約して飲食物を消費者に提供する飲食業者やプラットフォーマーの関係団体等に対して、配達員の方の安全確保につきまして、リーフレット等も活用しつつ、要請を行っているところでございます。

 具体的には、配達員の方に対し、交通ルールの遵守等の教育の実施、交通事故等の発生状況の把握、分析と同種事故防止のための情報提供、疲労の蓄積、睡眠不足等による交通事故防止のための長時間にわたる就業の防止等に取り組んでいただくよう、注意喚起を行っております。

 また、フードデリバリー事業等の配達員の方につきましては、令和三年九月に労災保険特別加入制度の対象に追加されており、同制度に任意で加入している配達員の方につきましては、業務中の負傷等に対しまして労災給付を受けることができるところでございます。

 引き続き、フードデリバリー事業の配達員の方に関するこれらの取組をしっかりと進めてまいりたい、このように考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 そこで、今の安全確保の問題ですけれども、例えば、確かに安全衛生法、安衛法は個人事業主というのは保護対象にしているわけではないということでございます。

 一方で、建設アスベスト訴訟、最高裁判決では、事業者が健康障害防止のために必要な措置を講ずるとしている安衛法二十二条に対して、労働者だけでなく、個人事業主、労働者でない者も同様に保護すべき旨が示されました。したがって、労働者以外の者であっても、労働者と同じ場所で就労する者は安衛法上の保護を受けるべきということも言えます。

 そういったことで、先ほど来少し説明がありましたけれども、特別加入の制度を進めているということなんですけれども、このことについては、建設業に従事している一人親方、あるいは、芸能従事者の方も、二〇二〇年の四月から、労災保険の特別加入ができるようになったというふうに伺っております。この制度を全般の取引に拡大をするということも一つではないかと思うわけですが、見解を伺います。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 労災、直接という観点ではありませんけれども、本法案に関しましては、報酬額の交渉時に、特定業務委託事業者が、特定受託事業者であるフリーランスから必要とされる経費を勘案した上で報酬額を定めるよう求められたにもかかわらず、十分な協議をすることなく、特定受託事業者が提供する物品や役務と同種あるいは類似のものに係る対価に比べて著しく低い額の報酬を一方的に定めたような場合には、第五条第一項第四号の不当な買いたたきに該当する可能性があるというふうに考えております。

 そういった経費を報酬額に含めないこと自体が何か直接に第五条の規定に違反するわけではありませんけれども、報酬額の決定に当たっては、特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で十分な協議が行われることが重要であるというふうに考えております。

稲富委員 先ほど来申し上げているように、安全確保というのはやはり大事でありまして、しっかりと政府においても御検討いただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。厚生労働大臣として様々な議論をさせていただいた後藤大臣に再び質疑ができて、大変うれしく思います。

 まず、法案第三条の条件明示の項目について伺います。

 フリーランスに業務委託をした場合は、直ちに委託業務の内容、報酬、支払い期日その他の事項を書面で明示することが委託側、委託事業者に義務づけられます。そして、その他の事項というのは、下請法の項目を縮小して、互いの名称、取引開始日、役務の提供場所、納期、継続的な役務取引の契約期間など、加えて七項目ぐらいを公取委規則に定めるというふうに伺っています。

 一方、我々がフリーランス当事者や弁護士さんなど四団体からヒアリングをしたところ、契約時に条件を決めて明示してほしい項目はほかにも多数あるということであります。例えば諸経費、あるいは納品方法、支払い条件、そして変更、解除の条件、それから著作権及び著作隣接権の帰属、二次利用料の分配、それから損害賠償ややり直し範囲等の契約不適合責任などであります。

 大臣に伺いますが、今回の法案では第三条の条件明示の項目が少な過ぎるのではないでしょうか。

    〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

後藤国務大臣 今、先生の方からある程度政府の方針も御説明いただいたわけですけれども、第三条第一項では、発注事業者がフリーランスに業務委託した場合に書面等により明示しなければならない項目が出ておりまして、そのほかに、受託、委託者の名称、業務委託をした日、給付の提供場所、給付の期日等の業種横断的な事項を定めることを予定しておりまして、法定三つに加えて、四つ加えるということで検討をいたしております。

 ただ、様々な業種の取引実態を踏まえつつ、引き続き、発注事業者の負担と取引適正化の両面でバランスを取りながら、関係者の意見をよく確認しながら、具体的な事項を定めることとしたいというふうに思っております。

井坂委員 本法案では、報酬額とか納期のトラブルぐらいしかこの条件明示では防げないというふうに思います。業界によっては、著作権のトラブルであったり、あるいは経費がもらえないといった問題が頻発をしております。是非、全業界共通の項目だけじゃなくて、大まかな業界別、あるいは著作権の有無などパターン別に、選択必須の条件明示項目などを追加していただきたいと思いますが、そういったことも検討していただけるかどうか、伺います。

後藤国務大臣 いずれにしても……(発言する者あり)失礼しました。

 最終的にいろいろなことを検討をさせていただきたいという答弁をさせていただこうと思ったので、そのように答弁をさせていただきます。

井坂委員 ありがとうございます。

 いずれにしてもというのは、その前の説明を全てキャンセルする言葉なので、むしろ、いずれにしても以降から本当の答弁をいただける方が私はありがたいというふうに思いますので、是非、いずれにしても前は省略でお願いをいたします。

 次に、二つ目、条件明示のタイミングについて伺います。

 法案三条では、業務委託をした場合、直ちにと書いてありますが、これは、口頭で契約した後でその内容を書面で確認をするという意味であります。これでは、契約した内容と後で書面で確認のために明示された内容が違うというケースもあり得ます。

 大臣に伺いますが、発注後の条件明示だけでなく、やはり契約前の条件明示も義務づけるのが当たり前ではないでしょうか。伺います。

後藤国務大臣 本法案においては発注時の条件明示を義務づけておりますが、契約締結前段階での条件明示につきましては、特定業務委託事業者の負担となったり、当事者間の柔軟な取引交渉を阻害するおそれがあること、交付する書面等に記載すべき条件を契約締結前の段階で当事者間で確認し、トラブルの防止を図る行動につながることも一定程度期待できること、それから三番目に、昨年九月に行ったパブリックコメントにおいても、中小・小規模事業者が現実的に対応可能な内容とすべきといった意見が提出されたこと等を踏まえまして、本法案には盛り込まなかったものであります。

 一方、広い範囲に影響がある広告等を通じた募集につきましては、本法案において的確表示義務を設けることとしておりまして、契約締結前段階でのトラブルを防止するとともに、特定受託事業者がその能力を適切に発揮できる契約先を選択できる環境の整備に取り組んでいきたいというふうに考えています。

井坂委員 書面で事後に明示された内容が契約時とは違った場合に、もう既に業務に着手をしてしまっていたり、あるいはほかの業務を断ってしまっていたりということがあり得るわけです。そういう場合、どう救済されるのか。あるいは、そういうことがないように必ず着手前に書面を届けるように義務づけるのか。このタイムラグの問題についてはどうお考えでしょうか。参考人でも結構です。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 発注書面の交付、条件内容の明示につきましては、発注後直ちにということになっておりますので、決まった段階で早急に明示をする必要がございます。

 もちろん、委員おっしゃるとおり、実際に発注をした後もう作り出して、その後取り消すというようなことがあってはいけないわけでございますので、そういう意味では、実際に発注がなされて、実際に着手をする前の段階で行われることが望ましいというふうに考えてございます。

 ですので、実際に周知を行う際には、そういったリスクがあることも踏まえて、直ちにというのはかなり早い段階で行うべきものだということを周知してまいりたいと考えております。

井坂委員 やはりくれぐれも、契約時に書面がないというのはなかなか問題があると思いますので、口約束で契約した、後で確認の書面が来たら違ったというトラブルがまた法施行後頻発をするようであれば、契約時の書面もしっかりと追加をしていただきたいというふうに、これは強く要望しておきます。

 次に、三番目ですけれども、法案第五条の禁止事項、まあ遵守事項と書いてありますけれども、禁止事項に追加してほしい項目について伺います。

 委託事業者による一方的な発注取消しを禁止すべきではないでしょうか。伺います。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 発注後の一方的な発注取消しということでございますけれども、この法案の第五条の中に、受領拒否あるいは不当な給付内容の変更という規定がございます。

 一方的な発注取消しについて、取引適正化の観点からは、発注事業者が業務委託に係る契約を解除することによって特定受託事業者の給付の全部又は一部を委託時に定めた納期に受け取らないということは、受領拒否の禁止を定める本法案第五条第一項第一号に該当し得るものでございます。

 また、受領を観念できない役務提供委託というのもあるわけでございますけれども、これにつきましては、発注事業者が特定受託事業者の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず特定受託事業者が要した費用を支払うことなく業務委託に係る発注を取り消すこと、これは不当な給付内容の変更の禁止を定める本法案第五条第二項第二号に該当し得るというふうに考えてございます。

 本法案の禁止行為に該当する一方的な発注取消しについては、本法案の規定に基づきまして、不利益行為の是正に取り組んでまいりたいと考えております。

井坂委員 是非、受領拒否の禁止、あるいは不当な給付内容の変更、やり直し禁止、さらには十六条の中途解約等の事前通知義務、その三つを駆使して、その三つで相当幅広く禁止できるはずですので、政府には、一方的なキャンセルは、事実上、もう本法案施行後は簡単にはできませんよということはしっかり周知徹底をしていただきたいというふうに思います。

 次に、四つ目、委託事業者による一方的な契約条件の設定、これも禁止をすべきではないでしょうか。大臣に伺います。

後藤国務大臣 本法案においては、御指摘の一方的な契約条件の設定について、これを包括的に禁止する規定は置いておりません。

 一方で、契約条件のうち報酬については、発注事業者が一方的に通常支払われる対価と比較して著しく低い報酬の額を不当に定める場合には、本法案第五条第一項第四号で禁止する買いたたきに該当し、勧告等の対象となり得ます。

 また、発注事業者が特定受託事業者に対し正当な理由なく自己の指定する物を強制して購入させる場合には、本法案第五条第一項第五号で禁止する購入、利用強制に該当し、勧告の対象となり得ます。

 さらに、発注事業者が契約内容に含まれていないにもかかわらず特定受託事業者に対し追加的な役務を無償で提供させることは、本法案第五条第二項第一号で禁止する不当な経済上の利益の提供要請に該当し、勧告の対象となり得ます。

 なお、下請代金法においても、御指摘の一方的な契約条件の設定を包括的に禁止する規定はなく、本案と同様に、買いたたき、購入、利用強制、不当な経済上の利益の提供要請などを禁止することによりまして、下請取引の適正化を図っているものと承知をいたしております。

 本法案を適切に執行し、一方的な契約条件の設定による不利益行為の是正に取り組んでまいりたいと存じます。

井坂委員 大臣が今答弁いただいた、幾つかの、今の法案の中のことで規制ができる部分もあると思います。しかし一方で、買いたたきとか一方的な経済利益提供強要以外にも、例えば、今、運送業などでは、受託側が勝手にやめたら罰金などの一方的な条件設定などもされているというふうに聞きます。

 フリーランス一一〇番の相談内容の第一位は報酬の遅れ、第二位は報酬の減額でしたけれども、第三位は、まさにこの取引条件の一方的な設定というのが実際に一一〇番に寄せられている相談の第三位であります。

 是非、大臣、この一方的な契約条件の設定というのは、元々、フリーランスのガイドラインには明記されていた項目でありますから、これも正面から禁止事項に入れるということを、今後検討ぐらいはしていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 今御説明したように、まずは、買いたたき等による不利益行為の是正を図ることとして、本法案を適切に執行するということで努力してまいりたいというふうに思っておりますけれども、その上で、本法案附則の検討規定に基づきまして、買いたたきの禁止等の措置によって特定受託事業者に係る取引の適正化が十分に図られているかどうか、禁止行為の拡充の要否も含めて、施行後三年をめどに検討を行ってまいりたいというふうに考えます。

井坂委員 確認の要否も含めて検討ということで、やや弱い御答弁でありますけれども、しかし、要の可能性もあるということで、是非御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、これも同じ禁止事項に入れていただきたいことですが、委託事業者による知財など成果物に係る権利の一方的な取扱いも禁止をすべきではないかと思いますが、大臣に伺います。

後藤国務大臣 特定受託事業者の業務によっては、業務委託の成果物に関して著作権等の権利が生ずる場合があると考えられます。

 著作権のような成果物に係る権利について、特定受託事業者が権利を有するにもかかわらず、例えば、二次利用について発注事業者が対価を配分しなかったり、その配分割合を一方的に定めたり、利用を制限することは、本法案の第五条第二項第一号で禁止する不当な経済上の利益の提供要請に該当し、勧告等の対象になり得ます。

 本法案を適切に執行し、成果物に係る権利の一方的な取扱いなどの不利益行為の是正に取り組んでまいりたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 大臣の今の御答弁で、そういう運用をちゃんとしていただきたいというふうに期待をいたします。

 ただ、もう一歩突っ込んで議論したいのは、元々これもフリーランスのガイドラインでは、不当な経済上の利益提供といった、今大臣がおっしゃった項目とはあえて分けて、別項目で明確に、問題のある行為として書かれていたわけです。しかし、本法案では抜け落ちてしまいました。

 この不当な経済上の利益提供というのは、いわばオプション的な禁止事項でありますが、一方で、納品するのが映像やデザインなどの情報成果物の場合は、著作権がどちらに帰属するのかとか二次利用の問題などは、これは業務委託の成果物のまさに中心的なテーマになってまいります。

 大臣に重ねて伺いますが、現時点での御答弁は先ほど賜りましたが、不当な利益提供と分けて、やはり知財など成果物に係る権利の一方的な取扱いを正面から禁止をしたり、あるいは、冒頭議論した第三条の条件明示の項目にきちんとこの成果物の権利の取扱いも入れるなどといったことも、今後議論、検討していただけないでしょうか。

後藤国務大臣 先ほども答弁したように、まずは、本法案を適切に執行することによりまして、成果物に係る権利の一方的な取扱い等の不利益行為の是正を図ることとしたいというふうに考えます。

 その上で、委員からお尋ねでありますので、本法案附則の検討規定に基づきまして、本法案の措置によって特定受託事業者に係る取引の適正化が十分に図られているかどうか、第三条の書面で明示すべき事項の拡充の要否、第五条の禁止行為の拡充の要否も含めて、施行後三年をめどに検討を行ってまいりたいと存じます。

井坂委員 ありがとうございます。

 続きまして、同様に追加していただきたい禁止事項で、長時間労働とか過重労働につながる発注、つまりは、非常に短い納期を無理やり強いたり、非常に少人数に、例えばたった一人に大量な仕事を課したりとか、こういう無理な発注を禁止をすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。六番目です。

後藤国務大臣 第五条第一項第四号に規定する買いたたき行為に該当し得るケースもあるというふうには存じております。ただ、事業者間における取引の内容、条件は、私的自治、契約自由の原則の下で事業者間の合意で決まるものであると考えております。

 本法案は、特定受託事業者に係る取引について、業界、業種横断的に最低限の義務を課すことによりましてその適正化等を図るものでありまして、特定受託事業者の就業時間を行政が直接制限することは、法制上の課題や発注控えのおそれなどの課題があるというふうに考えています。

 しかし、議員御指摘のとおり、フリーランスの方についても、働き過ぎにより健康を害することのないように配慮するということは重要な課題であると考えます。

 現在、厚生労働省では、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催しまして、その中で、フリーランスの方々の作業時間が長時間に及び健康を害することのないようにすることも議論しているというふうに聞いております。この有識者検討会における検討結果も踏まえまして、厚生労働省において適切な対応が取られるものと考えております。

井坂委員 今、フリーランスの方の過重労働、長時間労働について議論をしていただいている、その結果も踏まえて適切な対応ということでありますけれども、一方で、やはり今日は内閣委員会ですので、大臣に是非検討していただきたいのは、買いたたきというパターンで規制できるケースというのは非常に少ないと思います。

 これはどういうケースかというと、納期に間に合わせるためにもう一人、人に手伝ってもらった、でもその人の分の人件費はもらえない、これは買いたたきに当たるので本法案でも規制ができます。しかし、実際はそんなことはできなくて、とにかく一人で納期に間に合わせてくれ、もう一人雇って、そんなコストなんか出せないということになるのは決まっていますので、買いたたきでは、事実上、この長時間労働や過重労働につながるむちゃな発注というのは規制ができないと考えます。

 大臣、是非、こういう現状も踏まえて、厚労省側の保護だけじゃなくて、やはりこのフリーランス、本法でこういったむちゃな発注は禁止をする、規制をするということ、これも今後検討していただけますでしょうか。

後藤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、本法案は、特定事業者に係る取引について、業種、業界横断的に最低限の取引義務を課すことによりましてその取引の適正化等を図るものでありまして、特定受託事業者の就業時間を行政が直接制限するということは、法制上の問題、それはすなわち、就業時間の制限が必要な当事者間における力関係の差や、就業時間を制限する必要が認められるかどうかといった点、それから発注控えのおそれなどの課題があるものと考えておりまして、その辺のところの検討はなかなか難しい、この法律の枠組みの中で難しいものだというふうには感じております。

井坂委員 元厚生労働大臣としてはやや残念な御答弁だというふうに思います。

 続きまして、七番目、契約解除や更新停止の歯止めについて伺います。

 昨年六月のセブンイレブン店舗明渡し事件、また、その前のほっかほっか亭事件や相撲協会事件など、継続的な契約の解除にはそれ相応の理由が必要という判決が幾つか出てきております。

 契約解除を規制し過ぎると、これは受注するフリーランス側もお試し発注を受けることができずに営業がしにくくなるという声もあります。しかし、継続的また断続的な取引の場合は、発注者側が理由もなく簡単に契約解除や更新停止ができないような一定の歯止めが必要ではないでしょうか。大臣に伺います。

後藤国務大臣 契約関係の解消は、取引自由の原則の中で契約当事者間において判断されるべきものでありまして、行政が直接制限することは、法制上の課題や発注控えのおそれなど課題が多いと考えております。

 一方で、今委員御指摘のような一定期間継続する取引においては、発注事業者への依存度が高まっている中で契約を突然解除された等の場合、特定受託事業者は次の契約先を探すまでの時間的、経済的損失を被ることから、本法案においては中途解約時等の事前予告の規制を盛り込んでいるところでありまして、まずは、本規制の適切な運用、定着を図ってまいりたいというふうに思います。

井坂委員 今回の法律を作るに当たっての法制度の方向性という文書の中には、契約締結時に終了事由を明記をして、契約終了時にはその理由を提示する必要がある、そういう法律を作りましょうというふうに方向性にははっきり書かれていたわけであります。ところが、本法案ではそれが条件明示の項目から消えています。

 少なくとも、法制度、法律を作る直前の段階までは、これは重要な項目だと政府も認識をしていたことは間違いがありません。

 大臣に重ねて伺いますが、継続的、断続的な取引に限定をして、せめて契約締結時に終了事由を明記をする、これぐらいは義務づけられないでしょうか。

後藤国務大臣 委員おっしゃったように、パブリックコメントの段階では、契約の終了事由ということについては継続的業務委託を行う場合の記載事項として検討をしているような形でパブリックコメントに供したということは事実でありますけれども、まずは今の枠組みの中で考えさせていただいたその後の取扱いということにさせていただきたいと思います。

井坂委員 ありがとうございます。

 政府も重要事項として一旦は法律に書こうと思っていたことでありますから、是非これは、要否を含めて検討というよりは、重要度の高い検討事項としてそちらで認識をしておいていただきたいというふうに思います。

 次に、フリーランスの社会保障について伺います。

 本法案は、フリーランスの契約リスクを解消するものであります。一方、今後は、育児・介護休暇であったり、健康保険や年金、雇用保険、労災保険など、フリーランスのライフリスク対策についても検討すべきだと考えます。非常に大きな議論なので、これは議論し出すともう時間が足りませんが、本日は特に労災について伺います。

 特別加入労災保険の保険料を発注者負担にすることを政府として推奨したり、あるいは保険料分担を契約時に明示することをガイドラインで推進できないでしょうか。参考人に伺います。

梶原政府参考人 お答えをいたします。

 労災保険制度は、労働基準法に定められた、事業主が労働者に対して負う災害補償責任を実質的に担保するための強制保険であり、労働者を一人でも雇用する事業主には、労働者災害補償保険法により、保険料を納付する義務が課せられております。

 一方で、労働者ではない一人親方その他の自営業者等を対象とした労災保険の特別加入につきましては、任意で加入ができる制度となっており、業務の発注者には、特別加入の保険料を納付することが法令上義務づけられておりません。したがいまして、保険料を発注者負担にするということを推奨するということは困難であるというふうに考えております。

 発注者と受託者のいずれかが保険料の分担をするかということはおきまして、分担をどちらがするかということを契約時に明示するということにつきまして、こちらにつきましては、特別加入の保険料といいますのは、一千分の三ですとか一千分の五十二といった低率な料率を年間の報酬総額に掛けるということで、額としてはそういった額にとどまっております。様々な受発注者間のいろいろなコストがある中での一つとなっておりますので、明示事項として、全体としてどのような議論がなされるか、そういった流れの中で、労災保険としてもどのような対応が可能かということを、労災保険の担当としても検討してまいりたいと考えます。

井坂委員 ありがとうございます。

 続きまして、本法案の適用対象について伺います。

 第二条第一項の、従業員を使用しないという特定受託事業者の定義から、青色事業専従者、要は家族として手伝ってくれている人を使用する場合、あるいは受託事業以外の全く別事業で人を誰か使用する場合というのは除外をするべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 同居の親族が働いている場合には、青色事業専従者の場合も含めまして、基本的には従業員を使用しているとは言えないと整理をする方向で考えてございます。

井坂委員 もう一つの、受託事業以外の、要は、フリーランスといっても、いろいろな、全然違う事業を同時にやっているフリーランスもいるわけであります。受託事業以外、例えば、デザイナーとプログラマー両方やっているようなフリーランスで、デザイナーの方では一人アシスタントを雇っているけれどもプログラミングの方は完全に一人で全部やっている、こういうケースもあるわけであります。そういう場合、こっちで人を一人雇っているから、その人はもう何をやっても特定受託事業者にはなれないということは、これはちょっと行き過ぎだというふうに思うんですけれども、受託事業以外での従業員の使用というのは除外をすべきではないでしょうか。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案の保護対象となります特定受託事業者の定義は、従業員を使用しないものというふうに規定しているわけでございますけれども、仮に受注事業者が他者を雇用した場合であっても、短時間、短期間のような一時的な雇用であるなど、組織としての実体があると言えない場合には従業員には含まれないという整理をいたしております。

 また、従業員を使用というのは、組織としての実体があるかどうかを判断をする基準となるものでございまして、そのような実体は、個別の業務委託ごとではなく、事業全体を通して備わるものであるというふうに考えてございます。このため、特定受託事業者が行う個別の業務委託単位ではなく、特定受託事業者の事業を単位として、従業員を使用しているか否かを判断することとしてございます。

 したがいまして、異なる事業ごとに従業員を分けて使用しているフリーランスについては、従業員を使用しているものというふうに該当をするということになると考えております。

井坂委員 ちょっと伺いたいんですけれども、逆に、法人の場合、社員百名いる会社の社長でも、新たに会社をつくって、役員自分だけ、社員ゼロの別会社をつくれば、その会社で受けた仕事は、フリーランスとして保護される、特定受託事業者として保護されるんでしょうか。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 法人の場合に、そのような全く別の法人をつくって一人社長という形で事業をするという場合には、外形的にそれはもう明らかでございますので、本法律に該当するということになると考えておりますけれども、個人の方が従業員を使い分けているという場合に、それを発注事業者の側から外形的に判断するのはかなり難しいことであるというふうに考えてございます。

井坂委員 法人の場合はどんな大会社でも一人会社をつくればフリーランスになれるというのは、これはさすがにちょっとバランスを失していると思いますから、時間はないですけれども、大臣、是非この問題も頭に留めておいていただきたいというふうに思います。

 次に、プラットフォーマーについて伺います。

 プラットフォーマーであっても、実態に照らして実質的に発注者であるという場合は、特定業務委託事業者として本法の適用対象、規制対象となるということで間違いないでしょうか。時間がないので、周知方法の答弁はもうなしで、間違いないとだけ御答弁をいただければと思います。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 プラットフォーマーについての御指摘でございますけれども、契約形態だけでなく取引実態も踏まえて総合的に判断した結果として、実質的に仲介事業者が業務委託を行っているというふうに評価できる場合には、仲介事業者は、本法案における特定業務委託事業者に該当することとなるというふうに考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 ちょっと一つ飛ばしまして、最後に、私は、そうはいっても、いろいろ問題点や足らずは指摘をいたしましたが、今回、新しい法律という形でフリーランスを保護する、特に契約面でトラブルをなくすという本法案ができて、議論できていることは大変よいことだというふうに考えています。

 問題は、法律ができても、それが現場できちんとそのとおり執行されるか、あるいは問題があるところがきちんと積極的に調査がなされるかというところであります。

 伺いますが、フリーランス一一〇番、それから公正取引委員会、それから労働基準監督署、そして中小企業庁、これらの相談、それから執行、あるいは調査の体制を強化をして、積極的な調査で適正な法執行をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 本法案の施行体制の中での相談対応の中核は、フリーランス・トラブル一一〇番になると考えております。

 違反行為を受けた特定受託事業者が行政機関の対応を希望する場合に、フリーランス・トラブル一一〇番での相談から、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の窓口への申告に円滑につなげられるよう、フリーランス・トラブル一一〇番の体制整備を図っていきたいと考えております。

 また、本法案の施行、運用に当たっては、フリーランス関係団体に対して、悪質な問題事例の把握と行政への情報共有を依頼する、また、フリーランス関係団体やフリーランス・トラブル一一〇番で相談対応する弁護士からのヒアリングを通じて、問題行為の多そうな業種等を拾い出した上で、特定業種等に対して調査を行うといった取組を実施するなど、フリーランス関係団体やフリーランス・トラブル一一〇番から問題事例を吸い上げる仕組みを充実させてまいりたいというふうに考えております。

 また、本法案の法執行体制でございますが、所管省庁である公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省において、今後、必要な人員及び体制の確保に努めていくとともに、指導や勧告などを適切に行えるように施行までに準備を行っていきたいというふうに考えております。

井坂委員 ありがとうございます。

 本日は、大臣にもいろいろ更問いをいたしまして、検討していただきたいことというものを幾つも確認をさせていただきました。是非、やはり法律は生き物ですし、実社会にこの法律を適用したときに本当にフリーランスが契約上のトラブルから守られるのかというところをしっかりと注視また調査をしていただいて、問題があれば更なる踏み込んだ法改正をお願いをいたします。

 どうもありがとうございました。

神田(憲)委員長代理 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いいたします。

 今回、フリーランスに関する法案ということで、私自身、地方議員とか会社経営とかを経験してまいりましたけれども、実は、一番最初のキャリアのスタートは行政書士という仕事でして、行政書士の世界は、弁護士とかと違って、大体、一人親方なんですね。就職するという形もないものですから、大体、資格を取ってすぐ独立する、そして一人親方でやっていくということで、私も実際そのような経験をいたしました。

 最初は、やはり食べられなくて、大変苦労しまして、友人の家に居候しながら食いつないだり、そんなことをしながら事務所をやっていましたけれども、そんな中で、継続的に取引をしていただけるようなクライアントさんも出てくるわけなんですね。しかし、やはりその中で、例えば、正座をして話を聞けとか土下座をしろとか、そういったことを言われたことも実際ありまして、いろいろな意味で、よくも悪くも経験をさせていただいたわけであります。

 一方で、このフリーランスという働き方は、自分の裁量で時間とか資源をマネジメントしながら働ける、あるいは、働き方次第では会社に勤めるよりも多く稼ぐことができるとか、また、私のように仕事が趣味というような人間にとっては、労働時間を気にせずに働きたいだけ働けるというようなこともあって、さらに、やはり自分の収入に直結するので、いかに効率的に働くかとか、考えながら働くようになりますので、生産性も上がっていくということで、私は、このフリーランスという働き方が選択肢としてもっともっと広がっていけばいいなというふうに考えております。

 今回、政府でも、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画において、フリーランスに言及されておられます。

 そこで、改めて政府として、日本の社会におけるフリーランスの位置づけ、及び、その位置づけを踏まえた本法律案の必要性についてお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 政府としては、個人が多様な働き方の中からそれぞれのニーズに応じた働き方を柔軟に選択できる環境を整備することが重要であると考えます。フリーランスという働き方は、その選択肢の一つであると考えています。現に、自分の仕事のスタイルで働きたい、働く場所や時間を自由にしたいといった理由から、フリーランスとして働くことを積極的に選択する個人が多数いるものと承知をいたしております。

 一方で、事業者間取引、BトゥーBにおいて、業務委託を受けるフリーランスの方々が不当な不利益を受けるといった取引上のトラブルが生じているという実態があることから、フリーランスの方々が安定的に働くことができる環境を整備することも重要であると考えます。

 このため、今回の法律案では、取引の適正化を図るために、特定受託事業者に業務を委託する事業者に対して給付の内容の明示等を義務づけるとともに、就業環境の整備を図るために、特定受託事業者に業務委託をする事業者に対して、育児、介護等に対する配慮、ハラスメント行為に係る相談体制の整備等を義務づけること等を盛り込んだところであります。

 本法律案によりまして、フリーランスの方々が不当な不利益を受けることなく安定的に働くことができる環境を整えてまいりたいと存じます。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今回の法案で、フリーランスの方が不当な不利益を受けることなく安定して働けるようにということで、私も、先ほど申し上げたとおり、今回の立法で、フリーランスを含む多様な働き方が可能となる、そんな社会を目指していくということには賛成でございます。

 その上で、問題になるのは、特に、副業系ではなく、いわゆる独立系のフリーランスと言われる皆さんが、どういったセーフティーネット、社会保障を受けていけるのかということだというふうに思っております。

 一般に、御案内のとおり、フリーランスの皆さんが加入する国民健康保険は、会社員が入る健康保険に比べて各種の給付が手薄でございますし、当然退職金などもない中で、多くのフリーランスが加入する国民年金も、会社員らが入る厚生年金と比べて、もらえる年金の金額に開きが大きいといったことがあります。また、雇用保険にも加入できないため、失業保険、介護休業給付、育児休業給付なども受けられない。

 これらの点について大臣はどのように考えるかということと、それから、全世代型社会保障構築会議の報告書で、フリーランスにも被用者保険の適用を図ることについて検討を深めるべきだというふうに書かれているわけなんですけれども、この点についても政府としてどう考えているか、大臣にお伺いしたいと思います。

後藤国務大臣 昨年十二月に取りまとめた全世代型社会保障構築会議の報告書では、フリーランス、ギグワーカーについて、その被用者性の捉え方などの検討を深め、必要な整理を行うとともに、より幅広い社会保険の在り方を検討する観点からの議論を着実に進めるべきとされております。

 具体的には、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインに照らしまして、現行の労働基準法上の労働者に該当する方々については、被用者性も認められ、被用者保険が適用される旨を明確化した上で、その適用が確実なものとなるよう、必要な対応を早急に講ずるべきだと思います。

 その上で、それ以外の、労働者性が認められないフリーランス、ギグワーカーに関しては、新しい類型の検討も含めて、被用者保険の適用を図ることについて、フリーランス、ギグワーカーとして働く方々の実態や諸外国の例なども参考としつつ、引き続き、検討を深めるべきものとされています。

 報告書で述べられているように、勤労者がその働き方や勤め先の企業規模、業種にかかわらず、ふさわしい社会保障を享受できるようにするとともに、雇用の在り方に対して中立的な社会保険制度としていく観点から、こうした課題への対応を着実に進めることが重要だと考えております。

 同報告書に基づきまして、今後は制度の所管の厚生労働省において検討が進められるものと承知しておりますけれども、私としても検討状況をしっかりフォローアップしてまいりたいと思います。

岩谷委員 労働者性が認められるフリーランス等の方に関しては、被用者保険が認められるというのは当然のことだと思うんですが、労働者性が認められない方々に被用者保険の適用拡大を図っていくという方向性については、私は、先ほど申し上げたとおり、行政書士をやって、一人親方をやって、それから地方議員をやって、その後、中小企業も経営しておりました。やはり、社会保険の負担は企業にとって非常に重たいと考えております。

 雇用する側は、人件費としては、給与だけではなくて、当然、社会保険料の負担も含めて人件費と考えているわけであります。福利厚生費は、経団連の調査では、従業員一人当たり平均月十万円程度となっている。これはもちろん、中小企業ではもう少し下がると思われるんですけれども、やはり、委託先のフリーランスの方の社会保険等まで企業の負担となったら非常に厳しいなというふうに思っております。

 そして、そんな中で政府は賃上げを求めてこられるわけで、経営者からすれば、何でもかんでも企業に求められるのは無理だというふうになりますし、またこれは政府が求める賃上げにも逆行するんじゃないかというふうに考えております。

 私は、今回、立法により、フリーランスを含む多様な働き方が可能となる社会にしていくためにも、企業の負担の下でセーフティーネットを広げていく発想ではなくて、社会保障は、正規とか非正規とか、あるいはパートとかアルバイト、さらには今回のフリーランス等、どんな働き方であれ、ひとしく受けられるようにすべきでありますし、もっと言うと、主婦の方とか、仕事はしていないけれども子育て中の方とか、仕事はしていないけれどもボランティア活動などの形で社会に貢献している方とか、そういった方々も含めて、ひとしく、社会保障、そしてセーフティーネットが同じように受けられるべきだと考えております。

 そこで、我々維新の会は、企業中心のセーフティーネットの発想から脱して、いわゆるベーシックインカムなどの個人を基本に据えた発想でのセーフティーネットに転換していくべきだと考えているわけなんですけれども、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。

朝川政府参考人 お答えいたします。

 我が国の社会保障制度は、病気等の人生における様々なリスクに対しまして、本人と事業主が保険料を拠出することで備える社会保険方式を基本としております。

 政府としては、こういう社会保険方式というこれまでの基本の姿を維持した上で、被用者保険の適用拡大などにより、どのような働き方をしてもセーフティーネットが確保され、誰もが安心して希望どおりに働くことを可能とする、働き方に中立的な社会保障制度にしていくことが重要だと考えております。

 なお、御提案のベーシックインカムについてでございますが、年金や生活保護などの既存の制度との関係をどう整理するか。例えば、給付の重複、追加の必要財源の確保、既に払った保険料積立金の扱いなど、現実的に乗り越えなければならない大きな課題がありますので、現実的にその方式を採用することが可能かどうかという点も含めまして、慎重な検討を要するものと考えてございます。

岩谷委員 中立な社会保障ということで、我々は、このベーシックインカム、やはり非常に有用だと思っています。もちろん課題はありますけれども、乗り越えられる課題だというふうに思っております。

 労働者性を認められないからこそ、今回、フリーランスの方々に様々な形で保護をしていこうというふうになっているのに、社会保障のところだけ労働者と捉えて同じようにやっていく、企業の負担でやっていくということは明らかに私は矛盾するというふうに思うんですね。

 この点、厚労委員会ではないので、また別のところで議論していきたいと思いますが、この法律案の中身に立ち入る前に、労働者性の議論をさせていただきたいと思います。

 フリーランスとして働く方々の中には、実態は雇用された労働者に近いものであるんだけれども、会社側が保険料の事務の負担とか金銭的負担から逃れるため等によって、フリーランスという形で契約している場合があるという指摘がなされております。例えば宅配便とか通販の配達員の方とか、そういった方は、実態に基づいて労働者と判断されれば、先ほど大臣からもあったとおり、委託などの契約の形式や名称にかかわらず、労働関係法令が当然適用されるわけであります。

 こういう場合、実態というのは労働基準監督署が調査して、例えば残業代が支払われていないとなれば、そういった違反があれば、企業に対して是正勧告等ができるわけですけれども、労働基準監督署は慢性的に人手不足だというふうに伺っております。過労死とかそういった調査に比べて、その方が労働者に当たるかどうかを調べるということについては、どうしても優先順位が下がって、なかなか手が回っていないというのが実情だ、そんな指摘もなされております。

 例えば労基署に、実態は労働者だからちゃんと調査してくださいと相談しても、いや、委託契約書が作成されているんだから無理ですよというように追い返されてしまう、全然調査してくれないといったケースが多いといった、そういう報道もなされております。このような実情に関してどう考えるか、また、どういった改善策を考えているか、お伺いします。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準監督官につきましては、厳しい定員事情の中にありましても一定の人員を確保するとともに、効果的かつ効率的な監督指導を通じて労働者が安心して働ける環境整備に努めてきたところでございます。

 さらに、フリーランスを含め働く方々が安心して働けるよう、これまでも人員確保に努めてまいりましたが、引き続き必要な体制を確保するなどの対応を図ってまいりたいと思います。

 なお、現状におきましても、フリーランスを含め労働者性に疑義がある方から労働基準監督署に相談、申告があった場合には、労働者性はやはり実態で判断いたしますので、その実態を労使双方から丁寧に確認するなど、適切に対応しているところでございます。

岩谷委員 人員確保等に努めていただいて、適切にやっているという御答弁ですけれども、人員、増えているとしても、毎年たしか十数名とかだったと思うんですね。そういう状況で労基署で申告を受理した件数、これは賃金不払いとかを含めて全ての申告ですけれども、例えば令和三年で一万八千八百十四件、前年からの繰越数を合わせると二万一千六百六十七件、監督実施事業所数が一万六千百一件など、今の人員体制では明らかに厳しい状況が続いているというふうに思うんですね。幾ら年十人とか二十人とか人員を増やして、微増させていっても、なかなか抜本的な改善にはならないというふうに思います。

 この点、参考になる一つの例が、アメリカのカリフォルニア州の法律なんですけれども、この法律では、労働者性を判断するにおいて、会社による支配とか指揮命令から自由であるといったことを会社側が証明できなければ、原則、従業員、労働者とみなすというふうな法律だそうです。

 このように、労働関係法令の労働者でないことを示す立証責任を会社側、使用者側に負わせる、あるいは委託者側に負わせるということが対策として有効ではないかと思うんですが、こういった御提案に対してはいかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国では、労働契約の存否について争いがある場合には、民事訴訟のルールに基づきまして、当事者双方が主張、立証して、事実認定が行われた上で裁判所が判断することとされております。

 一方、先生御指摘のように、労働者でないことの立証責任を発注事業者側に転換する措置を講ずるには、その前提といたしまして、特定受託事業者として働く者を労働者とみなすといった措置を講ずることとなると考えられますけれども、このように労働契約によらず働く者につきまして、労働者であると機械的に推定することの是非やその要件につきましては、各国においても議論があるというふうに承知してございます。

 また、御指摘のように、労働者でないことの立証責任の転換の措置を講ずることは、特定業務委託事業者にとって負担となり、特定受託事業者への発注控えを招き、就業機会の減少を招くおそれがあるなど、課題が多いというふうに考えてございます。

岩谷委員 実際、労働者性があるのに労働者と認定されないという実態があるならば、課題があっても、こういった制度についても是非検討を進めていただきたいなというふうに思います。

 次に、この法律案について入っていきますけれども、私は、基本的には、本来、民対民の取引は契約自由の原則の下行われるのが通常だと考えていますし、過度な法規制というのはやはり経済活動に萎縮効果をもたらすと。先ほどの御答弁でもありましたけれども、余り規制をかけ過ぎると、逆に、委託者側がフリーランスを使用することをちゅうちょして取引数が減っていく、そうなると、回り回ってフリーランスの皆さんが不利益を被るというようなこともやはり考えられると思います。

 同時に、受託者、いわゆるフリーランスの側も多種多様な方がいらっしゃるわけで、今回の法案作成に当たって全ての声を拾い切れているかといったら、やはりそうじゃない可能性もあると思いますし、それから、今言ったようなフリーランス側の利益を逆に損ねてしまうというような可能性も今回の法案の成立によって出てくる可能性があるわけですから、やはり、そういったことが出てきた場合に、機動的に、状況に合わせて柔軟に規制を改めていくという必要があると思いますが、いかがでしょうか。

 また、法では三年後見直しが入っていますけれども、ガイドラインとか指針についてはその見直しを待たずに、状況によって、迅速に、柔軟に適時見直していくというような必要があると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 本法案の規制でございますが、報酬の支払い時期の遵守でありますとか発注内容の明示など、現在でも企業間取引において当然行われるべき内容であるという点、それから、例えば発注内容の明示方法も、書面だけではなくメールなども活用できるほか、明示すべき点も必要最小限に絞ることとしておりまして、発注事業者に対して新たに大きな負担を迫るものではないというふうに考えております。

 また、本法案の施行に当たっては、どのような行為が違反となるのかなどについて明確にするために、運用基準等を策定し、発注事業者の予見可能性を確保していくことを予定しております。そのため、本法案の規制は特定受託事業者との取引を避ける原因となるものではないと考えておりますけれども、本法案が成立した場合には、特定受託事業者の取引に与える影響も含めて、本法案の施行状況について注視をしていきたいと思います。

 また、施行までの間に、本法案に基づく指針あるいは解釈明確化のためのガイドラインなどを定めることとしておりますけれども、本法案の施行の状況なども勘案し、これらについても適切に見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。

岩谷委員 法案を作るに当たって、当然、そういうところはしっかり気をつけて作りましたよということだと思いますが。

 今おっしゃっていただいたとおり、今後も柔軟に見直しというのは考えていただきたいと思うんですけれども、その際に、やはりフリーランスの方は、先ほど申し上げたとおり多種多様でありますから、あるいは発注者側も多種多様でありますから、このような見直しとか、あるいは実施状況を、今後検討していくに際しては、やはり当事者、当事者団体の意見を幅広く十分に聞くべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 本法案に基づく規制の見直しや、本法案に基づく指針、解釈明確化のためのガイドライン等の策定に当たっては、今委員御指摘のように、幅広く関係者の意見をよく確認して、しっかりと検討してまいりたいと思います。

岩谷委員 大臣、是非その点、しっかりとお願いしたいと思います。

 そして、今回のこの質疑に際して、今回、コロナ禍もあって非常に一般化してきたフードデリバリーのプラットフォーマーの皆さんから意見を伺う機会がありました。

 フードデリバリーの業務については、プラットフォーマーと言われる事業者への、仲介業者への会員登録、それと、その後の個別の飲食店等からの配達の発注という二つの契約があるわけですが、会員登録、すなわち基本契約を今回の規制の対象とされてしまうと、報酬というのは配達ごとに異なってきますので、会員登録時、いわゆる基本契約時には報酬というのを、金額を明示できない。あるいは、減額が禁止という規制が入っていますから、基本契約を規制対象とされてしまうと、およそ報酬体系の変更というのが今後できなくなってしまうというような懸念の声を伺いました。

 そこで、こういった会員登録、いわゆる基本契約、あるいは個別の飲食店からの発注、どちらが業務委託として本法で規定する報酬額の明示とか報酬の減額の禁止の対象となるかというのをはっきりしていただきたいという御要望だったんですけれども、いかがでしょうか。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案第三条でございますが、特定受託事業者に対し業務委託をした場合に、給付の内容や報酬の額等を明示しなければならないというふうにしておりまして、第五条では、特定受託事業者に対し業務委託をした場合に減額等をしてはならない旨を規定しております。

 業務委託契約の中には、委員御指摘のように、個別契約に共通して適用される条件を基本契約で定めまして、発注者が具体的な仕事を委託する際に、当該基本契約に基づき個別契約を締結して仕事を依頼するという契約形態がございます。そのような場合に、基本契約で給付の内容や報酬の額などの主要な取引条件を定めているのであれば、基本契約も業務委託契約の一部をなしているものというふうには考えてございます。

 このため、これはフードデリバリーに限った話ではございませんけれども、基本契約も業務委託契約の一部をなしていると判断される場合には、会員登録と個別の発注、それぞれの契約の内容、条件を勘案して三条や五条の規律を適用するということを想定しております。

 先ほど具体的に御指摘のありました報酬の額みたいなものについては、例えば配送の距離でありますとか時間でありますとか、そういったときによって違うというふうに考えてございますので、それらを一律に何か、例えばフォーミュラのような形で定めているということであればそこで判断ができるのかもしれませんけれども、個別にどこに行くかによって決まるというふうなことであれば、そこで決まる発注額というのはその個別の委託のときに決まるということだと考えておりますし、減額の議論の対象になるのは、一旦決まった額の減額でございますので、今申し上げた個別の発注のときに距離や条件に応じて決まった額からの減額であるというふうに考えてございます。

    〔神田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

岩谷委員 ありがとうございます。

 是非、その辺りもガイドライン等で具体的に示していっていただければというふうに思います。

 それから、同じくフードデリバリーのプラットフォーマーの皆さんからの御意見ですけれども、五条とか十三条とか十六条の継続的という要件なんですけれども、例えば、Aというフードデリバリーのプラットフォーマー事業者と、Bというプラットフォーマー事業者、両方に登録をしているというような受託者も多いらしいんですね。そのときに、AはメインでBはサブだと。だから、メインのAのプラットフォーマーに関しては毎日フードデリバリーを受注する、だけれども、Bの方は、その受注がないときの空いているとき、例えば週一回とかしか受注しない、そういった働き方の方もいると聞いております。

 このような場合、今申し上げた例でいうと、たまにしか受けないBについて、継続的というふうにされるのかどうか、どういった基準で判断されるのか、お伺いしたいと思います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 業務委託契約の中には、個別契約に共通して適用される条件を基本契約として定め、発注者が具体的な仕事を委託する際に、当該基本契約に基づき個別契約を締結して仕事を依頼するという契約形態がございます。

 こうした契約形態につきましては、基本契約で給付の内容や報酬など主要の取引条件を定めているのであれば、業務委託契約の一部をなしているものとして、基本契約の契約期間が政令で定める期間以上であるかどうかを判断して、育児、介護との両立への配慮、十三条、それから、十六条の中途解除等の事前予告の規律を適用することを想定してございます。

 このため、フードデリバリーサービス業におきまして、仮にプラットフォーマー事業者の利用規約が基本契約として業務委託契約の一部をなしていると判断される場合には、その契約期間が政令で定める期間以上であれば、配達の受託状況にかかわらず、継続的業務委託に該当することがあると考えております。

 具体的にどのような契約が継続的業務委託に該当するかにつきましては、法案成立後、契約の実態を把握して、関係者の御意見を伺いながら検討してまいりたいというふうに考えてございます。

岩谷委員 今申し上げた例のとおり、二つのプラットフォーマーと契約していて、一つについては週一回と申し上げましたけれども、これが例えば月一回あるいは二か月に一回とかいう場合でも、その基本契約の内容によっては継続的とみなされる可能性があるという御答弁というふうに認識しましたが、これはやはり相当、事業者にとっては、プラットフォーマーにとっては大きな負担となる可能性がありますから、ここは恐らくそれを避けるような基本契約の内容に変えていただく必要があるんだろうと実態は思うんですね。そういうような相談とか助言というのはしっかりとしていただきたいなというふうに思います。混乱が起きないようにしていただきたいと思います。

 続きまして、同じくフードデリバリーのプラットフォーマーに関することですけれども、今回の法案の十六条では、解約の事前予告の義務等がありますけれども、例えば、配達員、受託者の側が危険な交通違反をした例とかがある。あるいは、海外だと、フードデリバリーの配達者、受託者の方が運んでいる料理を途中で食べてしまう、そんなことも実際あるらしいんですね。そういった場合に、事前予告の義務があるから即時解除できないということになったら、これはおかしな話になると思うんですね。

 ですから、こういった公序良俗に反することとか、法令、契約違反等に該当する場合があった、あるいは、委託者側も上流の発注者に突然契約を解除されたのでもうこれ以上払えないんですというような、急遽解除せざるを得ない場合というのも想定されるわけですね。このような場合、事前告知の義務が免除されて即時解約することが当然認められると思うんですけれども、確認させていただきたいと思います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 特定業務委託事業者が契約を中途解除等する事由は様々であることから、本法案におきましては、事前に予告をすることが困難な場合等において予告を不要とする例外事由を厚生労働省令で定めることとしております。

 具体的には、天災等により業務委託の実施が困難になったため契約を解除する場合や、特定業務委託事業者の上流の発注事業者によるプロジェクトの突然のキャンセルにより特定受託事業者との契約を解除せざるを得ない場合、また、契約を解除することについて特定受託事業者の責めに帰すべき事由がある場合等が想定されます。

 こうした前提に立った場合、議員御指摘のような、特定受託事業者の行為が公序良俗に反したり、法令違反や重大な契約違反等に当たるとされるケースは、契約を解除することについて特定受託事業者の責めに帰すべき事由がある場合に該当する可能性があるというふうに考えてございます。

岩谷委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、幾つか飛ばしながら行きますけれども、十三番に行きたいんですけれども。

 今回、今おっしゃったような、責めに帰すべき事由がないとか、そういった判断を、受託者側から申出があったら、公取とか中小企業庁、あるいは厚労省は判断していかなきゃいけないということになるわけなんですね。ところが、例えば動画制作とかの場合、発注者側が、格好いい感じで斬新な感じの動画を作ってくださいと言ったと。できてきたものが、発注した側からすると、いや、全然斬新でも格好よくもないじゃないか、だからこれは減額させてくださいとか、そういったときに、受託者側が、こういう減額をさせられましたということで申出があったと。これを公取とか中小企業庁が一個一個具体的に判断していかなきゃいけないんですが、これは非常に難しい判断だと思うんですね、調査して判断するというのは。

 そうすると、こういう申出が今回の法案成立によって急激に増えていくという事態も想定されるわけですけれども、そうすると業務がパンクするんじゃないかというようなことも思うんです。これは体制整備をしっかりしていただきたいと思うんですけれども、大丈夫ですかね。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 施行体制についてのお尋ねでありますけれども、所管省庁である公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省において、地方組織を含め十分な体制を整備するなど、今後、必要な人員及び体制の確保に努めていくとともに、所管省庁同士の連携を高めて、指導や勧告などを適切に行えるように施行までに準備を進めたいというふうに思っております。

 また、違反行為の未然防止のための取組を推進することも重要であると考えております。まず、施行までの間に本法案の内容を周知することと、それから、関係者の意見を広く聞いた上でガイドライン等を作成するとともに、発注事業者において取引慣行の改善を図ることも重要でありますので、必要に応じて、業所管省庁とも連携して、各業界団体を通じたフリーランス取引の適正化に向けて働きかけるなど、違反行為の未然防止にもしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

岩谷委員 先ほど労基署の件でも申し上げましたけれども、中小企業庁とか公取が、申出が殺到して対応できない、ろくろく調査もしないとか、あるいは数か月、一年、二年待たされるとか、そういう事態にならないように、本当にしっかりと体制整備をお願いしたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、フリーランス法の法案の審議ということで、どうぞよろしくお願いいたします。

 十九分という限られた時間ですので、早速質問に入りたいと思いますが、今日もこれまで、各委員の皆様が本当に様々な論点で指摘をされてきました。私も同様な論点の質問も準備させていただいておりましたので、既に答弁いただいた部分については確認のための質疑と、さらに、通告時にはしていなかったんですが、今日の質疑を聞きながら気になった点も併せてお伺いしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず一問目なんですけれども、本法案は、フリーランスの方々、いわゆる特定受託事業者を保護するための法案ということになります。

 仕事を出す側である特定業務委託事業者あるいは業務委託事業者は、取引相手が特定受託事業者、いわゆるフリーランスである場合に、給付の内容の明示等の取引の適正化や就業環境の整備に係る義務を負うこととされております。

 また、国も、相談体制を整備してフリーランスからの相談に対応する責務を有しておりますが、ちょっと気になっておりますのは、保護の対象となるフリーランス、特定受託事業者の方が、自らが保護の対象ですよと、自らが特定受託事業者であるということを証明する必要がある場合も想定されます。これを自分で幾ら言っても、認めてもらえるかどうかというところが懸念点でありまして、誰がそれを判断するのかというのを伺いたいと思います。答弁よろしくお願いします。

岩成政府参考人 お答えいたします。

 特定受託事業者であることにつきましては、まずは、特定受託事業者に業務委託を行うこととなる特定業務委託事業者又は業務委託事業者が判断することとなりますけれども、本法案の運用に当たって最終的な判断を行うということになりますと、法案の所管省庁である公正取引委員会等が判断をするということになります。

 行政庁としては、特定業務委託事業者又は業務委託事業者が、取引の相手方が特定受託事業者かどうかというのを適切に判断できるよう、判断基準等については、ガイドライン等の形で、対外的にもお示しすることとしたいというふうに考えております。

浅野委員 ガイドラインで対外的にしっかり示していくということですので、是非、明示的に、具体的に示していただけるように御配慮をお願いいたします。

 次の質問に移りたいと思います。

 先ほどの質疑でもありましたが、本法案の中では、正当な理由という言葉だとか、責めに帰すべき理由という言葉が幾つか使用されておりまして、これがこれから具体化されていくということなんだと思うんですけれども、例えば、この法案の第三条第一項には、業務委託事業者の明示義務に関して、正当な理由があるものについては、その明示を要しないというふうにされております。また、第五条の第一号から三号にも、責めに帰すべき理由がないのにという表現がありまして、責めに帰すべき理由がないのに受領を拒むことや報酬を減額することなどが禁止されております。

 この正当な理由や責めに帰すべき理由というのが一体どういった内容なのか、これが今後どう決まるかによって、特定受託事業者、フリーランスの方々の不利益につながりかねないのではないか、こういった懸念がございます。

 そこで、お伺いしたいのは、どのような事由が正当な理由あるいは責めに帰すべき事由に該当するのか、具体的な例示とともに御答弁をいただきたいと思います。

品川政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法案におきまして、取引条件の明示義務でありますとか禁止行為を定めておりますところ、これらの規定と同様の規定は現行の下請代金法にもございまして、本法案の運用に関しましては、下請代金法と同様の解釈を取ることが適当だというふうに考えているところでございます。

 具体的には、第三条でございますけれども、その内容を定められないことにつき正当な理由があるという規定があるわけでございますけれども、これに関しましては、取引の性質上、業務委託に係る発注をした時点ではその内容を決定することができないと客観的に認められる理由がある場合のことをいうと考えてございます。

 例えば、ソフトウェア開発委託におきまして、委託をした時点では最終ユーザーが求める仕様が確定しておらず、特定受託事業者に対して正確な委託内容を決定できない場合などが、特定受託事業者の給付の内容を定められないことにつき正当な理由がある場合であるというふうに考えてございます。

 ただ、このような場合であっても、定められていない事項について、特定受託事業者と十分に協議をした上で速やかに定めなくてはならないということでございまして、その内容が確定した後は直ちに当該事項を明示しなければならないというふうにいたしております。

 それから、第五条の、責めに帰すべき事由の関係でございますが、第五条について、本法案の趣旨が、取引上の構造的格差が存在しまして、弱い立場に置かれやすい特定受託事業者と、発注事業者との間の取引適正化を図るという点にあることに鑑みますと、特定受託事業者の責めに帰すべき事由というのは限定的に解釈すべきであるというふうに考えてございます。

 第五条第一項第一号の責めに帰すべき事由につきましては、特定受託事業者の給付が業務委託時に定められた内容と異なる場合又は適合しない場合、あるいは、特定の期日までに給付をすることが必要な業務であるにもかかわらず、当該給付が行われず、これにより当該給付自体が不要となった場合に限り、責めに帰すべき事由に該当し得るというふうに考えてございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 特に、第三条で、明示義務があるのに、正当な理由があれば明示を要しないという部分についてなんですが、私も事前に何人かのフリーランスの方にお話を伺ってきましたけれども、フリーランスの方々は、これまで日常的には、例えば口頭での確認であったり、あるいは、書面での契約を交わしたとしても、それが非常に簡素な内容であったり、要するに、フリーランスの方々が、どういった内容を明示すればよいのかという部分で、まだまだ認識が十分ではないという実態が理解できました。

 特に、契約時点では見通すことのできない問題の一つとして、仮に、依頼された内容を履行することができず、何らかの損害が発生した場合の賠償責任、ここを、例えば委託されたときの金額を条件とするとか、そういった形でしっかり後々のリスクを想定しつつ契約をしないと、最終的に特定受託事業者、フリーランスの方が不利益を被る可能性があるということですので、是非、こうしたところは、附帯の中にも含めさせていただきましたけれども、明示内容については十分に具体的な指針を示し、そしてそれを周知していただくことを望みたいと思います。

 次の質問に移りたいと思いますが、次は、本法案の第六条の内容になります。

 第六条では、法の履行確保を図るため、特定業務委託事業者又は業務委託事業者が違反する事実がある場合、特定受託事業者、フリーランス側の方は、公正取引委員会又は中小企業庁長官に申し出て、適当な措置を取るべきことを求めることができるとされております。公取や中企庁の長官は、必要な調査を行った上で、事実であると認めるときは法律に基づいた措置を取らなければいけないとされているんですが、その事実認定に異議がある場合、異議を申し立てるような仕組みも併せて整備すべきではないかと思うんですが、是非、大臣の見解を伺いたいと思います。

後藤国務大臣 行政庁に対する申出に関係する一般的な規定としては、行政手続法三十六条の三の第三項の規定が存在いたします。行政手続法では、行政庁に対する申出は職権発動の端緒としての情報提供にとどまり、調査、処分を行うか否かについては行政庁に裁量があるとされていると解釈されています。

 本法案における申出制度も、行政手続法の申出制度と同様に、所管省庁の職権発動の端緒としての情報提供にとどまり、調査、処分を行うか否かについては所管官庁に裁量があり、特定受託事業者に対して所管省庁に対する具体的な措置請求権を付与したものではないというふうに考えられます。

 また、職権発動の端緒としての情報提供については、不服申立てを行うことができるのは、その処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害された者という考え方を基本にして判断すれば、特定受託事業者の権利利益には該当せず、行政庁が調査、処分を行わないことは、不服申立ての対象となる申請に対する処分の不作為に該当しないと考えられることから、異議申立ての手続を設けることにはなじまないというふうに考えています。

浅野委員 今の部分、少し確認をさせていただきたいんですけれども、参考人の方でも結構なんですが、申立人の利益あるいは法律で保護された内容が履行されない、保護されない場合には異議申立てができるということであれば、そもそも、第六条で規定された、特定業務委託事業者あるいは業務委託事業者が違反することによってフリーランスが不利益を被る、まさに被ろうとしているからこそ申立てをし、その事実認定に異議があるからこそ異議申立てをしたいと思っている状況だと思うんですね。

 この異議申立てができないとなると、事実認定を認めざるを得ず、それによってフリーランスが不利益を被る可能性が出てくるのであれば、ちょっと今の説明だと納得しかねるわけですけれども、行政の裁量だから異議申立ての仕組みは入れていないんだということについて、もう少し詳しく説明をいただけますでしょうか。

品川政府参考人 ただいま、異議申立てについて御質問をいただいているわけでございますけれども、今の下請法にも同じような申告、申立てができる状態になっておりますけれども、申告、申立てがあった場合に私どもはまず何をやるかというと、その申告、申立てを行ってきた人に話を聞くということでございます。事実について、どういう取引をしていて、どういう行為を行われていて、そのことについて客観的に示すようなものはあるのかないのか、向こうの担当はどういう人で、どういう組織になっているのかというような、事情があるのかというようなことも含めて、つまびらかにお伺いをするということになります。

 ですので、何か申立てをすると、いきなり結果の通知が来て、何も言う機会がなかったということには元々ならないというふうに考えておりますので、そういう意味では、異議申立てというよりは、まず、申告をいただいたときにしっかり話を聞き、言い分を聞き、事実としてどういうものがあったのかということをしっかり認定していくということではないかというふうに考えてございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 是非、調査に入る前の本人からのヒアリングですね、そういった事実確認あるいは論点整理、ここをしっかりやっていただくことは確かに一つの解決策になり得るのではないかと思うんですが、異議申立てを認めない以上は、やはり、当事者の声を十分に聞き取り、その内容に基づいて事実確認をし、関係者が納得できる結論を出していただく、そういった努力は行っていただきたいということを申し上げさせていただきます。

 次の質問に移ります。

 特定受託事業者と特定業務委託事業者には、受発注における力関係の非対称性、いわゆる仕事を出す側が有利になるという関係性がどうしても生まれてしまいます。たとえ何らかの取引適正化や業務環境整備に係る事項に違反する事実があったとしても、今後の取引関係に悪影響を及ぼさないように、事実を申し出ることを控える事業者も、フリーランスも増えるのではないかと懸念しています。

 この申告制度がしっかりと機能しているかどうかを常に検証していく必要があると思いますけれども、附則の中には見直し規定もございますが、是非とも、フリーランス保護の観点から、労働政策審議会など、当事者を含む公開の場でも検討を進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 本法案の規制を実効的なものとし、フリーランスの方々を適正に保護するためには、ただいま議員御指摘されたとおりでありまして、申告制度がしっかりと機能することが重要だというふうに考えています。

 このため、本法案第六条第三項及び第十七条第三項において、特定受託事業者が公正取引委員会等に申告したことを理由として、取引停止などの不利益な取扱い、報復措置をすることを禁止するほか、今後、フリーランス・トラブル一一〇番へ相談を行った方々がよりスムーズに各省庁委の窓口に申告を行うことができるように、フリーランス・トラブル一一〇番の体制整備を図ることによりまして、特定受託事業者が申告しやすい環境を整えていく予定であります。

 また、本法案附則の検討規定に基づきまして、関係者からよく意見をお聞きしながら、申告制度がしっかりと機能しているかどうか、施行後三年をめどに検討を行ってまいりたいというふうに思います。

 今委員もおっしゃいましたけれども、フリーランスの方々、フリーランスに委託を行う方々など、多様な当事者の意見を十分にお聞きして、踏まえて進めていくことが必要だと思います。

浅野委員 是非よろしくお願いいたします。

 ちょっとこれは政府参考人にも併せて伺いたいんですが、そうなりますと、やはり日常的な取引実態の監視というものも一定程度必要性が認められますが、今、下請Gメンを増員して、下請の、価格転嫁が主な対象というふうに聞いておりますが、取引の監視を強化するという話が出ておりますが、フリーランスの契約についても監視対象には含まれるんでしょうか。端的にお答えいただければと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業庁におきましては、全国に下請Gメンを配置いたしまして、中小企業の皆様から取引の実態についてヒアリングを実施しておりまして、その収集した情報について業界別あるいは企業別に整理をして、情報提供の方がその親事業者等に特定されないよう細心の注意を払った上で、業界団体や個別の事業者に対する取引関係の改善への働きかけに活用することで、取引適正化につなげているところでございます。

 この下請Gメンは、今年一月から三百名まで体制を増強し、年間一万件超を目標にヒアリングを実施しておりますけれども、このヒアリング対象には、個人事業主や、それから今回の法案の対象となる特定受託事業者、こういったものも含まれるということでございます。

 下請Gメンがヒアリングにおいて今回の法案の法令違反が疑われるような事案を把握できた場合には、この法案の執行を行う担当部署とも共有するなど、適切に対応してまいりたいと考えてございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 時間が参りました。本当に最後、ちょっと、政務官に来ていただいていますので、端的に質問させていただきます。

 労働者性の議論で、労働基準研究会報告からもう四十年近くたちまして、二〇二〇年十二月で厚労省内での検討も止まっておりますが、雇用類似の働き方に係る論点整理等検討会を再開し、労働者性に関する検討、就業者保護の在り方について検討を再開していただきたいと思うんですが、最後、政務官にお伺いしたいと思います。

畦元大臣政務官 お答えいたします。

 雇用類似の働き方に係る論点整理等検討会については、令和二年十二月にこれまでの御意見の整理を行ったことから、一区切りとするものとして、検討会の御意見等を踏まえ、フリーランス・トラブル一一〇番の設置、運営など、フリーランスの方が安心して働くことができる環境の整備に取り組んできたところであり、現時点では同検討会を開催することは考えておりません。

 また、フリーランスを労働基準法上の労働者とし、発注事業者に使用者と同様の義務を課すことは、発注業者に過大な義務を課すこととなりかねないといった法制的な課題のほか、フリーランスへの発注控えにつながり、就業の機会の減少を招く可能性があるなどの課題も多いと思われます。

 雇用類似検討会で課題とされた就業条件の明示やハラスメント対策等の措置についても本法案に盛り込まれたところであり、厚生労働省としては、まずは本法案の就業環境の整備に関する措置の施行に着実に取り組んでいきたいと考えております。

 また、特定事業者の就業環境の整備については、本法案が成立した場合、その施行状況等を踏まえつつ、施行後三年の見直しに向けて必要な検討を行っていきたいと思います。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 フリーランス法案について質問をいたします。

 今回の法案の策定過程におきまして、そもそもフリーランスに対しての保護をどういうふうに行っていくのかといった制度の検討が行われてきたわけですけれども、この法案については、労政審には報告だけで、議論が行われておりませんでした。

 昨年九月の労政審雇用環境・均等分科会において、労働者代表委員が、労働側として唐突感、違和感があるとして、世界的には、新たな就業形態に対応した法的保護に関しては、労働者性を認める方向で保護を図っていこうという取組が進んでおり、日本でも労働者性の早急な見直しは必須であり、労政審で検討すべきだと述べておりました。

 大臣、お尋ねしますけれども、このフリーランスの対応につきまして、労働者性の拡張についての見直しを行うことは必須ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 使用者に対し立場が弱い労働者が劣悪な環境で働くことがないように、労働基準法は、事業又は事務所で使用される者で、賃金を支払われる者を保護すべき労働者と定義した上で、使用者が遵守しなければならない労働条件の最低基準を定め、罰則をもって担保をいたしております。

 その上で、労働者の具体的な判断基準を明確にする観点から、それまでの裁判例等を基にしました判断基準を定めまして、労働者として保護されるべき者か否かを実態を勘案して総合的に判断しております。

 いわゆるフリーランスと呼ばれる方でありましても、実態を勘案して総合的に判断した結果、労働者性があると判断されれば、労働基準法等に基づいて労働者として必要な保護を図っていく。また、フリーランスの労働者性の判断基準については、令和三年三月に策定したガイドラインにより周知を図ってきております。

 一方で、労働基準法による労働者の範囲を拡大することによりまして、フリーランスを労働基準法上の労働者として、発注事業者に使用者と同様の義務を課すことにつきましては、発注事業者に過大な義務を課すことになりかねないといった法制的な課題、フリーランスへの発注控えにつながり、就業機会の縮小を招く可能性があるなど、課題が多いと考えております。

 一方で、我が国でフリーランスが直面しているトラブルについて見ますと、事業者間取引において見られるものが多く、また、ハラスメントなどのトラブルについても取引上の力関係に由来しているものと考えることができることから、本法案は、取引適正化等を図る法制として立案し、対策を講じたものでございます。

塩川委員 フリーランス・トラブル一一〇番の相談で、この間、社員からフリーランスに変更される事例が増えているという話もされております。事務とか営業とかマッサージとかスポーツインストラクターとかなどが多いということですが、雇用契約を業務委託契約に変更する、雇用契約にしたらもうからないからとうそぶくような企業もあったということであります。

 このようなトラブルに対しては、契約の形式にとらわれず、実態判断をして労働者保護をかけると言っておりますが、実際には、労基署にかけ合っても、契約の形式が委託であれば門前払いされてしまうケースが少なくない。

 こういった現状、実態を踏まえた場合に、このような今起こっている問題に対処できるように、労働者性の拡張の議論を行うべきではありませんか。

後藤国務大臣 労働基準法等の適用については、業務委託や請負等の契約の名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断することになっておりますし、いわゆるフリーランスと呼ばれる方であっても、こうした判断の結果、労働者と認められる場合には、今回の新法とは関係なく、労働基準法等の適用をしてまいります。

 引き続き、労働基準監督署においてもこうした取扱いの徹底を図るとともに、フリーランスの労働者性の判断基準に関するガイドラインの周知徹底を図りまして、労働基準法等による保護が適切に行われるように努めてまいりたいと思います。

塩川委員 実態を勘案してといっても、そうなっていない実態というのも現にあるわけですから、そういった点におきましても、この一九八五年の労基法上の労働者性の判断基準がいわば古くて狭いといった点が今問われているわけで、その見直しが必要であります。

 ILOにおいては、労働者性が曖昧な就業者は、本来は労働者でありながら、企業が故意に自営業者に偽装する場合、いわゆる偽装雇用と、従属性のある自営業者、従属的自営業者に分かれ、偽装雇用については誤分類の修正、従属的自営業者には一定の保護を提供する必要があるとしています。

 ですから、この両面での法的措置が必要なんじゃないのか。つまり、従属的自営業者についての一定の保護、今回のフリーランス法案としてそういう対処というのは必要なものと考えています。同時に、やはり偽装雇用になるような今の現状というのが率直に言ってあったときに、労働者性の拡張、こういった議論が法的措置も含めて必要ではないのか。改めてお尋ねします。

後藤国務大臣 偽装雇用と考えられるようなケースについては、実態判断として、法律的な形式は別として、そこはしっかりと労働基準法等の適用をしていくということで、そういった意味での対応は今後ともしっかりと進めてまいりたいと思います。

塩川委員 JILPTのフリーランスの労働基準法上の労働者性に関する調査を見ましても、労働者性が高いとか中程度というのを合わせると七一・九%、七割以上が労働者に近い働き方をしているという傾向が示されております。まさにそういう労働者に近い働き方をしているという実態があるといった点でも、フリーランスの保護は労働者性の適用を広げる方向を検討、具体化をすべきだということを重ねて求めたいと思いますが、改めて、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 重ねて同じ答弁では恐縮なんでありますけれども、基本的には、労働者性の認められる方について言えば、それは、どんな法律形態であろうとも、労働者として必要な保護をしていくわけでありますけれども、労働者の範囲を拡大することによって、フリーランスを労働基準法上の労働者として、発注事業者に使用者と同様の義務を課すことについては、法制的な課題、例えば、雇用関係において見られるような使用従属関係があるとは言えないために、発注事業者に対して使用者と同様の義務を課すことができるのかどうかといったような課題をしっかりと整理する必要がありますし、また、フリーランスへの発注控えにつながり、就業機会の減少を招く可能性があることなども課題としてあるというふうに思っております。

 そうした観点から、今回の取引法に基づく対応という形で検討をいたしております。

塩川委員 この間、政府として、多様な働き方といった形で、偽装雇用を背中を押すようなやり方になっては決してならないわけで、そういった点での政府の対応がこの点でも極めて不十分だということを言わざるを得ません。改めて、労働者性の拡張、これはしっかりと宿題として行うべきだということを強く求めておきます。

 その上で、実態として、労働基準法や労働契約法、労働組合法が定める労働者に当たるフリーランスについては、この法律の制定をもって、こういった労働関係諸法令による救済が否定されるようなことがあってはならないと思いますが、改めて確認をいたします。

後藤国務大臣 これはもう先生がおっしゃるとおりであります。

 今回の法律を作ることによって、フリーランスの取引法による規定で十分だというようなことにならないように、実際に、労働基準法等の適用については、業務委託とか請負とかの契約の名称にかかわらず、総合的に判断をして、しっかりと適用を図っていく。引き続き、労働基準監督署においてもこうした取扱いの徹底を図るとともに、フリーランスの労働者性の判断基準に関するガイドラインの周知徹底を図って、労働基準法等による保護が適切に行われるように努めてまいりたいと思います。

塩川委員 法案に関わって何点かお尋ねをいたします。

 やはりフリーランスで働く方々の報酬が余りにも低いといった点も問われてまいります。その点で、最低報酬規制、こういった仕組みを設ける必要があるのではないのかという点であります。

 この間、政府として具体化している取組の中で、自営型テレワークのガイドラインなどもあります。そこにおきましては、例えば、最低賃金を一つの参考として自営型テレワーカーの報酬を決定することも考えられるとあります。

 従事者の報酬の最低規制を図る、こういった工夫というのが行われる必要があるのではないのかと思いますが、お答えください。

後藤国務大臣 本法案では、いわゆるフリーランスを保護する観点から、下請代金法では規制対象にならない資本金一千万円以下の小規模な発注事業者であっても、フリーランスに委託を行う場合には発注書面の交付等の義務を課すことといたしております。

 他方、事業者間取引における契約自由の観点からは、原則として、事業者取引に対する行政の介入は最小限にとどまるべきであるということに加えまして、小規模な発注事業者に対して過剰な義務を課した場合には、発注事業者が義務履行に係る負担を避けようとして特定受託事業者と取引することを避ける、いわば発注控えが生じること、財政基盤が脆弱な発注事業者も多く、義務が負担となり経営に支障を来すことも懸念されることから、規制内容はできるだけ限定することが適当であるというふうに考えております。

 さらに、特定受託事業者の役務や成果物は多種多様であることから、一律の最低報酬を定めることは困難であるとも考えられます。

 したがって、本法案において、特定受託事業者の最低報酬に係る規制を盛り込んでおりません。

塩川委員 業種、業態は多種多様で、一律の最低報酬を定めるのは困難という話もありました。

 そういう際にも、やはり業種、業態においてはいろいろな工夫もできることだろうと思ってはいます。お話を伺っている中では、例えば音楽家の方々の組合などにおきましては、演奏における時間、そこに最低時給というのを設けて、テレビ局の各局と交渉して協定を結んでいるといった格好での最低報酬のルール作りなどが行われているわけであります。

 そういった現場で行っている取組も含めて、しっかりとやはり、労働者でいえば最低賃金に相当するような、こういったことを担保できるようなフリーランスにおける最低報酬規制というのは考えられるべきだと思っております。

 もう一つ、長時間の作業時間を強いる納期や締切りの規制の問題であります。

 この点も、自営型テレワークのガイドラインなどでは、成果物の納期については、作業時間が長時間に及び健康を害することがないように設定をすること、その際、通常の労働者の一日の所定労働時間の上限八時間を作業時間の目安にする、こういうことなんかも示されているところであります。

 こういった長時間の作業時間を強いるような働かされ方を一定規制をする、そういう仕組みづくりというのが必要ではないでしょうか。

後藤国務大臣 フリーランスの方についても、今先生御指摘のように、働き過ぎにより健康を害することのないように配慮をすることは非常に重要なことだと思います。

 この点、現在、厚生労働省では、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催しまして、その中で、フリーランスの方々の作業時間が長時間に及び健康を害することのないようにすることも議論していると聞いております。この有識者検討会における検討結果も踏まえて、厚生労働省において適切な対応が取られていくものと考えております。

塩川委員 やはり長時間労働を強いる、健康にも支障を来すような、そういった働かされ方がなくなるような仕組みづくりというのは必須ということを改めて強調しておきます。

 今回のフリーランス法案、審議をしていて、当然、広く適用する、そういった多様な業種、業態の中において、業種横断的な規制という点では一定の制約というのは出てくるわけですけれども、やはり業種、業態に対応したような様々な工夫をする必要があるんじゃないのか。

 そういう点では、下請取引の適正化におきましては、業界、業種ごとにガイドラインを策定をして、遵守状況のフォローアップですとか、ガイドラインの改定なども行われてきております。今回のフリーランス保護においても、業種、業態ごとにこういったガイドラインを設ける、それで運用していく、そういったことは必要なことではないかと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。

後藤国務大臣 下請取引適正化の取組においては、今御指摘もあったように、業種別の取引実績等を踏まえた対応が有効でありますことから、各業所管省庁において、下請法や独禁法の違反事例やベストプラクティス等についてまとめたガイドラインを作成して、業界に遵守を呼びかけているわけであります。

 他方で、フリーランスについては多種多様な業態が想定されることから、今回の法案が成立すれば、その施行後の状況等を分析し、まずは業種別の課題、例えば映画産業だとか食品産業だとか、そうした課題の把握にまず努めることとしたいと考えています。

塩川委員 結構、所管省庁と、それから関連する業界団体などが協議をされて、今、映画の話ですとか食品の話がありましたけれども、芸能関係者、あるいはウーバーのようなデリバリーの話、あるいは一人親方ですとか放送コンテンツ、それぞれの所管省庁が、関連する業界、フリーランスの方と協議をして、そういった点でのふさわしいルール作りを行っていく。こういうところは更に踏み込んできちっと行っていく。だから、関係の所管省庁がしっかりと対応するといったことを促す働きかけを是非やっていただきたいと思うんですが、改めて、いかがでしょうか。

後藤国務大臣 いわゆるフリーランスについて言えば、大変に、取引、その実施される状況については多種多様で、実態についても今後把握していく必要があるというふうに思いますけれども、今御指摘されたような問題意識を持ってしっかりと分析をしていきたいと思います。

塩川委員 業種ごとの標準契約書を作る、こういったことなんかも含めて、実際に有効に運用される、そういう取組につなげることを改めて求めて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 最後十分、よろしくお願いいたします。こんなに委員がそろっているところで質問をするのは久しぶりでありまして、よろしくお願いいたします。

 まず、政府参考人にお伺いしたい。

 この法律で、フリーランスの契約を交わすときに、契約書を交わすことは要件になっていないですね、政府参考人。

品川政府参考人 お答え申し上げます。

 この法律は、先ほど来話が出ておりますように、契約というか、業務委託をした場合に、発注の書面あるいは電磁的なものを交付をするということを義務づけておりますけれども、契約書という形のものの締結を義務づけているわけではございません。

緒方委員 そうなんです。しかしながら、十二条で募集のときの条件明示の義務がかかるのと、三条において発注のときの義務がかかる。

 なぜ、契約のときの義務を課さないんですか、参考人。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、特定業務委託事業者が広告等により不特定多数の特定受託事業者に対して募集に関する情報を提供するときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないこととしてございます。

 契約時の条件明示を義務づけることにつきましては、本法案について発注時の条件明示を義務づけていることから、特定業務委託事業者の負担となったり、当事者間の柔軟な取引交渉を阻害するおそれがあること、また、交付する書面等に記載すべき条件を契約締結前の段階で当事者間で確認し、トラブルの防止を図る行動につながることも一定程度期待できることから、本法案には盛り込まなかったということでございます。

緒方委員 そんな期待なんか何の役にも立たないですよ。発注時と契約時というのは違うので、時系列的に並んだら、募集があって契約をして発注をするわけであって、発注時だと遅くなるでしょう。そのタイミングでもう取り組んでいる、もう仕事を始めている人がいるかもしれない。今あなたは期待すると言ったけれども、そんな期待なんか、どこにも法律に書いていないんですよ。

 契約時にしっかりと明示させるべきだったんじゃないですか。もう一回。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の九月に行いましたパブリックコメントにおきましては、中小、小規模の事業者が現実的に対応可能な内容とすべきといった意見が提出されたことから、本法案には盛り込まなかったということでございます。

緒方委員 じゃ、聞きましょう。負担、負担と言いますけれども、契約時に明示する負担と発注時に明示する負担、何が違うんですか。もう一回。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃったとおり、募集時点の話、それから実際に合意があって契約がなされる話、それからさらには、その後、条件明示をその後してくださいという話、三時点ございます。

 先ほども政府委員の方から別の場面で御答弁申し上げたとおり、第三条において、業務委託事業者は、業務委託をした場合に直ちにその内容を明示しなきゃいけないということでございまして、発注を実際にして契約を結ぶという事実上の合意があったところからなるべく短期でやっていただきたいということで考えているということでございます。

緒方委員 今、時系列、はっきりしなかったですね。発注して契約したと言いましたけれども、順序でいうと、募集があって契約があって発注があるわけであって、発注の前の契約のタイミングで条件を明示しなきゃいけないんじゃないですかと聞いているのが一つと、負担が重い、負担が重いと言っていますけれども、発注時で負担するのですから、契約時に契約書をしっかり交わしてその条件を明示する負担を求めること、別に何の負担も変わらないじゃないですか。それを聞いているんです。もう一回。

三浦政府参考人 済みません、ちょっと言葉が紛れておりましたけれども、発注と申し上げたのは、まさに契約の時点ということでございまして、契約をしてから直ちにその中身を知らせるということで考えているということでございます。

緒方委員 ただ、発注と契約、同じだとして、ここの条文の中に、業務委託をした場合にはということなので、明示の義務がですね、この法律には発注とは出てこないんですね。業務委託をした場合ということなので、これは時系列的に少し後になるんじゃないですかね。もう一回。

三浦政府参考人 失礼いたしました。言葉が紛れておって申し訳ございません。

 法律上の業務委託をした場合というのが、先ほど申し上げた、イコール発注をした場合、イコール契約をした場合、こういう理解でございます。

緒方委員 そうなんですかね。

 この場合、じゃ、もう一回お伺いしたいと思いますが、少し視点を変えてお伺いしたいと思いますが、十二条の募集の表示をして、そして、その募集の表示と三条の表示、これは一緒である必要はないですねと聞いたら、一緒であることを義務づけるものはないです、そういうことを事前のレクでお伺いしました。ということは、募集の段階ですごい気前のいいことを言われて、その募集を受け、そして、三条の表示、実際に業務委託をしたときに受けた表示が異なったときに、その人を救済するための仕組みというのはどこにあるんですか、政府参考人。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、第十二条で募集をする、その後、第三条に行きまして、業務委託をして、中身を明示していただく。この十二条で募集した内容と第三条の中身が違うというときに、それを禁ずるというようなことは法律では規定をしていないわけでございます。

 他方、第十二条を御覧いただくと、特定受託事業者の募集に関する情報を提供するときには、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示はしてはならない、さらに、二項で、正確かつ最新の内容に保たなければならないという義務を課しているところでございまして、十二条の方の義務を果たしていただければ、そこと大きく異なる内容で実際に契約を結んで発注をするということにはならないというふうに理解しております。

緒方委員 事情が変わることだってあるじゃないですか。様々事情が変わることが、そのときそのときで、このときはうそじゃなかった、誤解じゃなかった、そして、そのとき正確であり最新であった、しかし、実際に発注するときには全然違うことが書かれてくるということを、これは排除しないと思うんですよ、この法律の規定だと。

 だから、もう少し早い段階で、明示する義務がもう少し早い段階に倒れていた方がいいんじゃないかというふうに聞いているんです。もう一回。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、フリーランスが契約するときには、募集のときから契約に至るまで何度も交渉がございまして、その間、様々な取引交渉がされるというふうに聞いてございます。

 契約それから発注に至るまで、条件につきまして変わることから、そのたびごとに条件明示をするということにつきましては、当事者双方について負担になるというふうに考えてございます。

緒方委員 しかし、あなた、そういうふうに言いますけれども、いろいろな形態があり得る、そしていろいろな態様があり得ると言われたわけであって、別に毎回毎回じゃなくてもいいけれども、もう少し前に倒した方が誤解も生じないし、労働者保護のためにもいいんじゃないかということを聞いているんです。

大西委員長 既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただいたことにつきましては、施行の状況を踏まえながら、三年後の見直しのときに検討してまいりたいと考えてございます。

緒方委員 終わります。

大西委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより討論に入るのでありますが、理事会の協議により、討論は御遠慮願うことになりましたので、御了承願います。

 これより採決に入ります。

 内閣提出、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、神田憲次君外六名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ、有志の会、れいわ新選組の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。浅野哲君。

浅野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

 一 特定受託事業者であるか否かを問わず、業務委託の相手方である者からの相談を受ける体制を整備し、その相談窓口を周知すること。

 二 報酬の決定に際し、特定受託業務従事者の安全及び衛生に係る必要な経費が確保されるよう、本法に基づき必要な対応を検討すること。

 三 業務委託契約を締結するに当たっては、特定受託業務従事者の安全と衛生に配慮し、心身の健康を害する就業時間数等にならない期日を設定するよう、必要な措置を講ずること。

 四 仲介事業者を通じて業務を受託する特定受託事業者もいることを踏まえ、業務委託を仲介する事業者の実態を把握するとともに、質の確保の観点から、本法の適用対象とならない仲介事業者に対する規制の必要性について検討すること。

 五 雇用によらない働き方をする者の就業者保護の在り方について、本法の施行状況や就業の実態等を踏まえて検討し、必要な措置を講ずること。

 六 本法の実効性を確保するため、本法に基づく省令・指針等を定めるに際しては、業界・業種によって契約内容が大きく異なるため、それぞれの業界及び当事者の意見を踏まえた省令・指針等を定めること。

 七 本法の趣旨、本法に違反する事案等について、業務委託事業者、特定受託事業者及び業務委託を仲介する事業者に対し、十分に周知・広報を行うこと。

 八 本法施行後の実態把握に努めるとともに、施行後三年を目途とした見直しを行うに当たっては、当事者を含む関係者からの意見を聴取して検討を行うこと。

 九 業務委託で給付や報酬その他の条件を明示する方法は、契約書や発注書の形式だけではなく、ダウンロード機能を持ったサービスを用いるなどしてメールのみならずその他の電磁的手法を用いて箇条書きする等、受発注者の双方に過剰な負担とならない方法も認めることを検討すること。

 十 明示する内容は、業務内容、成果物、報酬額に加え、納期、納品場所、支払方法、変更解除条件等も含めることを検討すること。

 十一 委託事業者の禁止事項については、本法の運用状況を検証しつつ、拡充も視野に検討すること。

 十二 長期に継続的に契約している場合の契約の保護として、本法の施行状況等を踏まえつつ、中途解除時等の事前予告の在り方について検討すること。

 十三 ハラスメント再発防止対策を特定業務委託事業者の義務とすることを指針等において明確化するとともに、事案に係る事実関係の調査やハラスメント防止対策に係る研修等の在り方を検討すること。また、特定受託事業者を対象とし、和解あっせん機能を有するフリーランス・トラブル一一〇番において適切な相談対応を図ること。

 十四 特定受託事業者の疾病、障害、死亡、廃業などのライフリスク対策について検討すること。

 十五 偽装フリーランスや準従属労働者の保護については、労働基準監督署等が積極的に聴取し確認すること。

 十六 労働基準法上の労働者に当たる者に対し、労働関係法令が適切に適用されるような方策を検討すること。

 十七 業務委託をする場合に作成する書面等で明示すべき項目については、あらかじめ具体的な指針を示し、十分に周知を図ること。また、主な違反事例等についての情報を整理し、公表すること。

 十八 業務委託事業者が、報酬減額等の不利益取扱いを示唆して、消費税免税事業者である特定受託事業者に対し、課税事業者となるよう一方的に通告しないよう、業務委託事業者に周知徹底すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。後藤国務大臣。

後藤国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

大西委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

大西委員長 次回は、来る七日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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