衆議院

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第16号 令和5年4月26日(水曜日)

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令和五年四月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 大西 英男君

   理事 井上 信治君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 宮路 拓馬君

   理事 青柳陽一郎君 理事 稲富 修二君

   理事 阿部  司君 理事 國重  徹君

      赤澤 亮正君    池田 佳隆君

      石原 宏高君    尾崎 正直君

      大野敬太郎君    工藤 彰三君

      熊田 裕通君    小寺 裕雄君

      杉田 水脈君    鈴木 英敬君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      平  将明君    中野 英幸君

      中山 展宏君    平井 卓也君

      平沼正二郎君    牧島かれん君

      松本  尚君   おおつき紅葉君

      中谷 一馬君    太  栄志君

      本庄 知史君    馬淵 澄夫君

      山岸 一生君    山田 勝彦君

      岩谷 良平君    浦野 靖人君

      堀場 幸子君    河西 宏一君

      福重 隆浩君    浅野  哲君

      塩川 鉄也君    緒方林太郎君

      櫛渕 万里君

    …………………………………

   国務大臣

   (孤独・孤立対策担当)  小倉 將信君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   内閣府大臣政務官     中野 英幸君

   内閣府大臣政務官     尾崎 正直君

   政府参考人

   (内閣官房孤独・孤立対策担当室長)        山本 麻里君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   原  宏彰君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 小川 康則君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    原  和也君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   参考人

   (早稲田大学文学学術院教授)           石田 光規君

   参考人

   (認定特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長)  栗林知絵子君

   参考人

   (NPO法人あなたのいばしょ理事長)       大空 幸星君

   参考人

   (枚方市副市長)     長沢 秀光君

   内閣委員会専門員     近藤 博人君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     熊田 裕通君

  牧島かれん君     瀬戸 隆一君

  太  栄志君     山田 勝彦君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     池田 佳隆君

  瀬戸 隆一君     牧島かれん君

  山田 勝彦君     おおつき紅葉君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  おおつき紅葉君    太  栄志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 孤独・孤立対策推進法案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

大西委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、孤独・孤立対策推進法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、早稲田大学文学学術院教授石田光規君、認定特定非営利活動法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長栗林知絵子君、NPO法人あなたのいばしょ理事長大空幸星君、枚方市副市長長沢秀光君、以上四名の方々から御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、石田参考人、栗林参考人、大空参考人、長沢参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、石田参考人にお願いいたします。

石田参考人 おはようございます。早稲田大学の石田と申します。本日は、よろしくお願い申し上げます。

 私は、孤独、孤立に関して二〇〇五年ぐらいからずっと研究をしておりまして、今日は、このA4一枚の資料の紙に沿って、孤独、孤立に関して、何で今注目していく必要があるのかというふうな社会的な背景と、あともう一つは、法案を立ち上げる意義について簡単にお話をさせていただきます。

 まず最初に、一つ目の丸の、じゃ、孤独、孤立になぜ注目する必要があるのかというふうなところでございます。

 基本的に、私たちの社会というのは、一九九〇年代の終わりぐらいから、かなり一人になりやすい、いわゆる集団が優先の、家族であればこういうことをしなければいけないですとか、会社に入ったらこういうことをするのが当たり前だというよりも、どちらかというと個人を優先するような、そんな社会になっていった、そんなところがございます。

 個人を優先する社会になりますと、基本的には、それは人間関係、人づき合いにもそういったことが及んでまいりまして、その会に入るかどうか、あるいは懇親会に参加するかどうかはその人の自由だというふうな感じになっていく。そうしますと、こちらの資料にも書いてありますように、基本的には一人になりやすい、ですから、今までだったらやはり集団の力学があってなかなか一人になれなかったんだけれども、でも、簡単に一人になれるようになった。

 ただ、そうなってしまうと、ある程度自分から積極的に動いていかないと、つながりの中に入れない、人間関係をつくれないというふうな事態が生じてくる。ですから、二〇〇五年ぐらいから徐々に徐々に孤立死のお話とかというのも出始めていたわけです。

 そのような感じになりますと、つながりに関しての二つの不安というものが生じてまいります。

 まず一つ目は、私自身にはもうつながりができないのではないか、私ってずっと独りぼっちではないのかというふうな形で、関係ができないかもしれないという不安が一つ目に生じる。もう一つは、じゃ、仮につながりができたとして、そうしたらどうなるのかというと、できたとしても、やはりそのつながりを維持していかないといけないというふうになりますので、今あるつながりも壊れてしまうんじゃないか。

 若い人には結構典型的に見られておりまして、友達がいるように見えるんだけれども、でも、その友達というのは一生懸命維持しているようなつながりなので、少し油断すると私はつながりからはじかれてしまうというふうな、そんな二つの不安というものを抱えている。

 そういうふうになってきますと、基本的には、これまで孤独、孤立というのは、それこそ一九七〇年代ぐらいは高齢者の方々の問題であった、ですとか、一九九五年の震災が起きたときには被災者の問題であるというふうな認識があったわけなんですが、二〇〇〇年代ぐらいから、誰もが孤立に陥ってしまうかもしれない、あるいは誰もが孤独感を抱えて精神的に厳しい状態になってしまうというふうなことでありまして、基本的には社会全体の問題として孤独、孤立というものが立ち現れてきたというふうなところがございます。

 さらに、コロナ禍がありまして、コロナ禍というのは、じゃ、誰とつき合えばいいのかということを基本的には日本国民が一斉に考えてしまったというところがございますので、そうなってしまうと、じゃ、その相手に選ばれなかった人はどうなるのかというと、つき合いから、あるいは、つながりからあぶれてしまうというふうなことが出てまいりまして、だからこそ、二〇二一年に孤独・孤立対策担当室が立ち上げられたといった背景がございます。

 二番目の大きい丸の、じゃ、孤独、孤立について問題であるというふうな形で議論を立てますと、一人でいることの何が悪いんだ、孤独、孤立というのも基本的には人間の成長のためには大事なことなんだですとか、あるいは、もっと踏み込んで言えば、人権の侵害なんだというふうな言葉もございます。

 こちらも、もちろんそれはそのとおりでございまして、幾ら孤独、孤立に関して悪い影響があるといっても、無理やり、じゃ、誰かを引っ張り出してきてつながりの中に入れるということがよいのかどうかというと、やはりそういうことではない。

 ただ、その一方で、やはり孤独、孤立の研究、私自身研究をしておりますと、研究の結果を見ると、孤独感を抱いている人ですとか、あるいは社会的なつながりの中にいない人というのは基本的には非常に厳しい状況に置かれている。心身の状況が非常に悪いですとか、健康が悪化してしまうですとか、精神的にも病んでしまうですとかというふうなことがよく言われている。

 そういった個人の心身の健康のみならず、社会に関しても結構いろいろなことが言われておりまして、例えば、みんなが個人になってしまって孤立してしまうと、なかなかほかの人と連絡が取れなくなってしまうというふうになると、社会として何かを動かすですとか、社会として何かをやっていくというときには、やはりなかなか、困難に立ち会ってしまうというふうなところがございます。

 そういったようなところから、確かに個人の権利というのを守ることは大事だというふうには考えつつ、やはり、研究の結果を見ていくと、基本的には孤独、孤立というのは非常に大きな社会問題でありますし、それこそイギリスで孤独、孤立の対策担当というものがつくられましたのは、それによって社会保障費というものが物すごく上がってしまうからこそ、今まさに対策をしていく必要があるというふうな形で言われていたわけです。

 今後、恐らく日本社会というのは単身化が進んでまいりますので、そうなってくると孤独、孤立というのはまさに大きな問題関心としてこれからも、それこそ十年、二十年、三十年単位で日本社会に大きな問題として立ちはだかる可能性があるということでありまして、だからこそ、今、法案を立ち上げて、そういったものに対してしっかり対策をするというふうな必要がございます。

 では、三つ目の丸の、法律が今できることの意義というのはどういうことなのかと申しますと、まず一つ目として、持続的な対応、あるいは包括的な対応ができるということがございます。

 やはり、孤独、孤立というのは社会構造までも含んだ非常に大きな問題ではございますので、単年度で何かをしました、それが解消しました、じゃ、それをやめましょうというふうなところにはなかなかならないわけです。そうなってきますと、法案として立ち上げて、しっかり継続的な対応をするというふうなことが求められる。

 あともう一つは、包括的な対応と申しますのは、やはり孤独、孤立というのは非常に多様な問題が絡んでまいります。例えば、個別の事例を挙げてみても、ケアがあって貧困があってとかいうふうな形で、いろいろな複合的な問題が絡んでまいりますので、そうなってくると、既存の個別のメニューでは、個別の問題には対応できるんですけれども、当事者全体の問題に対応できるかどうかというと、なかなかそれが難しい。そういったような事情もありますので、法案を作って連携体制を強化していくというふうなことが重要になっているというわけでございます。

 二番目の、社会に対する意識の涵養というふうなところなんですが、基本的には、誰とつき合う、つき合わないも個人の自由というふうになってしまいますと、別に一人でいるのはその人がそれでいたいんだからいいじゃないか、その人は一人になりたいんだから何が悪いのなんというふうな話になってしまうわけです。

 ただ、先ほどもお話ししましたように、孤独、孤立というのは実は個人の心身に対してかなりの悪い影響を及ぼすということが明らかではありますし、それこそ、脳の中の痛みを感じるような部分というものが、孤独感の高い人というのは同じように作用しているなんというふうな、そんな研究もございます。

 そのような形で、孤独、孤立というものがやはり社会の一つの問題なんだというふうなことを認識していただくことも必要だと思いますし、もう一つは、じゃ、困っている当事者がどうなっているのかというと、現状、やはり我慢をしてしまうという人が非常に多いわけなんですね。

 そうなってくると、やはり、我慢をするのではなくて、もう少し声を上げやすい、そういった状況をつくっていくということも、なかなかこれも個人だけで頑張るというふうになると難しいので、そういった側面的な支援をする、あるいは、それこそ法律ができるということは非常に大きいことでございますので、社会の意識としてそういうものを高めていくというふうな、そういった意義がございます。

 最後に、各組織への円滑な支援というところなんですが、現在もNPOですとかたくさんの組織があるんですが、やはり、なかなか運営が厳しいですとか持続するのが厳しいというふうなことがございますので、各組織を連携しつつ、そういった組織を支援するシステムというのをより強化することができるというところで意義があるというふうに考えております。

 ちょっと短い時間ではございますが、私の報告は以上とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、栗林参考人にお願いいたします。

栗林参考人 よろしくお願いします。

 私は、東京の豊島区で子供の居場所づくりをやっております。そこから、様々なおせっかいな活動に展開していきました。その活動例を通じて、孤独、孤立についての思いをお話しさせていただきます。

 豊島区は、人口が二十九万人の都市です。コンパクトな町で、人口密度がとても高い、独居の高齢者がとても多い、さらに、二〇一四年には、唯一、東京で消滅可能性都市に選定されてしまったという、そんな町です。

 そのときすぐにやったのが、F1会議という会議です。消滅してはならないということで、行政が私たち女性の声を聞いて、それをすぐに施策に反映するということがありました。その後、民としても、官民連携で、一緒に町が豊かになることを考えていきましょうということで、今も円卓会議というものを実施しております。この人と人との関係づくりが、その後、様々な豊島区の施策の展開に広がっていったという背景があります。

 さらに、二〇二〇年、SDGs未来都市、自治体SDGsモデル事業に選定されました。今や、様々な、高齢者から子供までみんな、SDGsのために何ができるか、そういう価値観の共有ができたことも、豊島区の土壌としてとても大きいなと思います。

 さらに、二〇二一年、コロナで様々な方が孤立していく中、行政の部課長の女性たちが連携して、庁内で、すずらんスマイルプロジェクトというのを立ち上げました。庁内の中でも、そういう孤立を何とかしたいという思いのある人たちがいる、その職員さんたちが孤立しています。その方たちがつながることで、自分たちがプロジェクトを立ち上げ、そして、十代、二十代の女性の孤立を予防する、そんなことが生まれております。

 さらに、昨年までは、豊島区九十周年ということで、あらゆる人たちが、SDGsの活動をとにかくコロナ禍でもやっていこう、そういう地域の対話の場、様々な場ができております。

 こういう土壌ができることによって、孤独、孤立というのは、多くの人たちが自分事にできるんじゃないかなと思っています。

 私たちの団体は、おせっかいの輪を広げるということをビジョンに掲げ、活動しております。

 しかし、子供の貧困というのは、実は、貧困は孤立、そして孤立と虐待というのは、とても近しい関係だと思っております。そういう中で、一番社会の中で弱い子供たち、この子供たちにおせっかいすることによって、親ではない大人が関わることによって、社会をよくしていこうという活動をしております。

 私は、孤独、孤立に関して自分の実体験があります。

 私自身は、豊かな環境で、人も自然も豊かなところで成長して、上京して、独り暮らしを八年しました。そのときに、本当に何だか独りぼっちでつらい、もう帰りたいと思うことがあったんですね。そんなとき、なぜかいつも、小さいときに楽しかった遊んだ経験、お正月、みんなで集まって御飯を食べた経験、こういう実体験を思い出すと、もう少し頑張ろう、そんな体験がありました。

 つらいときに乗り越える、そういう力は、実は小さいときの実体験、原体験なのではないかなと思います。ですから、全ての子供たちが豊かな人の環境の中で育つ、この体験がとても必要なのではないかなと思っております。

 そして、豊島区で子供を産み、自分の子供が豊かな環境で成長してほしいという思いから、プレーパークや子供食堂、無料学習支援、地域の子供の居場所をつくってきました。そうすると、そこにやはり同じような思いの人たちが、地域では孤立している、孤立、何かしたいんだけれどもできない人たちが居場所に集まってきます。そうやって、社会の課題を自分たちの力で何とか変えていこうという人たちがつながる、これがある意味、居場所の役割ではないかなと思っています。

 さらに、このコロナ禍、子供たちの不登校は大変増えております。この不登校の子供たちは、まさに孤独、孤立の体験を小さいうちからしたり、そのまま社会とつながりがないまま、もしかしたら成長してしまうかもしれない子です。

 今年から、行政、教育委員会、地域が連携して、今、高校のカフェというのは施策の中にあるんですけれども、中学校の中で居場所をつくり、そこから地域の居場所に不登校ぎみの子供たちをつなぐ、不登校ぎみの子供たちの声を地域で受け止める、こんな活動が始まっております。全国に中学校はあるわけです、小学校はあるわけです。そこでやはり早期の予防対策というのが必要なのではないかと思っております。

 私たちは、今言ったように、子供たちの豊かな環境、暮らし環境、学び環境、遊び環境、これをきっかけに、地域の方たちのボランティアが募るという活動になって、そして、そういう場が豊島区には今、三ページを御覧ください、無料学習支援も、四ページ、子供食堂も、とても多くございます。それを行政が事務局を担い、官民連携で、常に対等な関係の中でこの活動を推し進めております。

 こうやって居場所ができても、居場所につながらない、特に、孤独、孤立の状況にある子供たちはつながりません。その子供たちをどうつなげていくかということで、これまで、最初に話しました様々なSDGsの活動、官民連携の土壌の中で、今、地域の人たちがこういうことをやりたいと言うと、庁内の中でまずは関係調整をしてくださいます。そういう調整をする方がいる中で、私たちのこういう活動を行政みんなが応援してくれるというような関係ができています。これこそが官民連携だと思っています。

 官ができることというのは限られているんですね。しかし、公平に情報を届けることは官でできることではないでしょうか。

 例えば、四ページ、入学準備にはとてもお金がかかるんですね。そのお金を地域の子供たちに手渡ししたい、こういうことを行政に相談しますと、じゃ、中学校全員に学校でチラシを配りましょうということで、そこからつながりをつくることができました。

 さらに、フードサポート、食料支援です。コロナの前は、多分、ホームレス支援でしか食料支援はなかったんじゃないかと思います。今や、行政と連携して広く、豊島区、行政が、一人親家庭、児童扶養手当を受給している困窮家庭にチラシを郵送して、そして地域とつながる、そういう伴走をしてくださっております。

 さらに、豊島区は小学校が二十二校ございます。そこに公民館のような場所があるんですけれども、そういう開かれた場所に食材を取りに来てもらって、そこで地域の方たちが食材を手渡す、そうやって有機的なつながりをつくるという取組を毎月実施しております。

 六ページを御覧ください。コロナ禍は、官民連携での地域がつながるプロジェクト、孤立しがちな家庭の子供に、私たち、個人情報を得て、地域のおせっかいさんと呼ばれる方たちが、食料支援やいろいろな取組に協力してくださっている方が家庭訪問して、そして幼少期のうちからつながり、子供と親のサポートをするという、これはかなり有効な取組でした。こういうことがコロナがきっかけにできました。

 そうやって直接つながって、私たちを頼っていいんだよという関係ができると、仕事のサポート、住まいのサポート、そこに困っていることが分かり、さらに、私たちは住まいのサポート、就労サポートも今展開しています。

 地域の方たち、こうやって子供に関わっている方たちは、決して子供だけではありません、高齢者も含めて、若者も含めて、困っていたんだったら是非できることを何かしたい、こんなふうに思いがつながっていけるのが地域です。どんなに孤立している方たちも、住まいがある限り地域を持っています。この地域の力を有効に使ってうまく連携して、官民連携での孤独・孤立対策、これが行き届くと法案の大きな成果を生むのではないかなと思っております。

 私たち、おせっかいされて、今、おせっかいをしているこの世代はもう本当に少ないです。四十代、五十代ぐらいではないでしょうか。この方たちがしっかりおせっかいできるような環境を官民連携でつくりたいと思っています。

 最後に、九ページを御覧ください。

 これが私が思う官民連携の孤独、孤立予防の図なんですけれども、孤独、孤立を抱えている親御さん、子供たち、これまでは、子育ては親の責任だということで、なかなか地域にSOSを親が出せない、だから、いろいろな虐待、様々な問題が起こるわけです。その親子に地域が、例えば食料を届けたり、時にはお金を持っていったり、時には住まいを探したり、そうやって直接信頼関係をつくる、これをすることによって受援力、求援力というものが地域で育ちます。

 その方たちがいる限り、行政は担当が毎年替わってしまいますが、地域の誰かが見守りをする過程ができると、ずっと継続的にサポートができるんです。何か異変に気づいたら、すぐに行政に一緒に窓口に行く、子供たちを子供食堂に連れていく。私たち、地域で子供食堂を最初に始めたのは、いつも独りぼっちで、親がダブルワークで、毎日コンビニの御飯を一人で食べている、こんな子供に出会ったからです。子供たちの独りぼっちを決してそのままにしてはいけません。

 是非、この法案で、官民連携で、まずは子供から、そして、その親、家族が孤立しているときにすぐにサポートができる、そんな体制をつくっていただけたらと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、大空参考人にお願いいたします。

大空参考人 よろしくお願いいたします。NPO法人あなたのいばしょ理事長の大空です。

 本日は、このように意見を述べさせていただく機会を賜りましたこと、委員長を始め皆様に心から感謝申し上げます。

 早速、まず私たちが何をやっているかということですけれども、この青いスライド、ここの内容に沿って簡単にお話をさせていただきたいと思います。順番は若干前後するかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。

 まず、私たちは、二十四時間いつでも、誰でも、無料で、そして匿名で利用できるチャット相談の窓口を運営しています。いわゆるいのちの電話のようなもののチャット、SNS版というふうに思っていただけると分かりやすいかなと思います。様々な悩みを抱えている、特に若年層からの相談が寄せられています。

 相談窓口を開設したのは、二〇二〇年の三月、まさにコロナの一番最初の時期でした。自殺、いじめ、虐待、貧困、本当にありとあらゆる問題を抱えている人が、声も出さなくていい、顔も明かさなくていい、名前も出さなくていい、完全に匿名の形で運営をしています。

 今、全国規模で相談に応じている窓口の中で、二十四時間やっているというところは大変少ないんですね。それは、人材が不足しているとか、様々な理由があるんですが。

 私たち、世界約三十か国に七百名のボランティアの相談員を抱えています。一番相談が増えるのは、日本時間の夜の十時から朝方にかけて。この時間帯、まさに時差を使って、海外に住んでいる日本人の方若しくは日本語話者の方、そうした方々が相談員として活動をしてくださっている。これによって私たちは二十四時間の対応ができている。そういう窓口になります。

 私たちは、ある程度自動化していく、すなわちAIを使っていくということについて、積極的に取り組んでいます。

 電話相談であれば、応答までの待ち時間、これはもうプルルルとずっと待っているだけしかその時間がないわけですけれども、チャットは、まさに、まず書き込んでもらうんですね。その方が何に悩んでいるかというのを、AIのチャットボットと会話をしてもらうことによって書き込んでもらう。そして、その書き込んだ内容を、自然言語処理なんかをやっていますので、自動的にどんどんどんどん読み込ませて、リスクの判定というのをやっているわけです。すなわち、リスクの高い人から優先的に対応をしていく。このリスクの高いというのは、例えば橋の上に立っているとか、若しくはいじめ、虐待やDVを受けていて命の危険があるような相談、こうしたものを優先的に対応していくという仕組みを取っています。

 東京と大阪に二つの拠点がありまして、有給の職員がこれらのリスクの高い相談に対応をしている。また、支援者支援ということが極めて重要になるわけですけれども、先ほど申し上げたような約七百名の相談員に対しての支援というのも、オンラインでこの有給の職員が対応をしている。そういう構造になっています。

 私たちが何をやっているかというと、これを一言で申し上げると、マイナスからゼロへということなんですね。孤独や孤立といったときに、それを広く捉えるのではなくて、まずは、重症化をしている人、そうしたところから手を差し伸べていくというような考え方です。死にたい、つらい、しんどい、苦しい、様々な悩みがあるわけですけれども、まず、そうしたいわゆるマイナスの状態にある方をゼロの状態まで持っていくのが私たちの役割です。

 孤独というと非常に幅広い概念があるわけですけれども、これは極めて主観的なものだというふうに言われています。

 我々は望まない孤独という言葉を使ってきましたけれども、まさに望まない孤独の重症化は何で測るかというと、持続期間で測っているわけです。ずっと孤独を感じて苦しい方、こうした方にまず手を差し伸べて、完全に孤独が消え去って人生ハッピーな状態まで持っていくということではなくて、その前の段階のゼロ、すなわち、ちょっと今日は死ぬのはやめておきますとか、あなたが話を聞いてくれたから明日もまた生きてみますよ、このゼロの状態まで持っていくというのが、私たちのような広域的なセーフティーネットの役割です。

 問題を抱えているマイナスの状態の方に、いきなり、市役所に行ってください、こういう制度がありますと言っても、それを使う気力がないわけですね。まずは、ゼロ、スタートラインに立っていただく、そこから先は地域での支援というふうに、グラデーションで分けて孤独、孤立は見ていかなくてはいけないということになります。

 さらに申し上げたいのは、スティグマの問題なんですね。

 これまでこの国は、非常に莫大な予算をかけて、自殺対策みたいなことには取り組んできたわけです。年間三万人を超えていた自殺者数が今は二万人台、若干コロナ禍で増えましたけれども、二万人台まで減少した、これは極めて大きな成果だったと思いますけれども、この全ての年代で自殺者数が減少している中にあって、若年層の自殺だけは減らなかった、増えてしまったわけですね。昨年は過去最多を記録したんです。これは、出生数が大幅に減少している中での総数が過去最多ということですから、極めて異常事態なわけですけれども、なぜこれが起きるのか。

 当然、国も何もやっていないわけではないと思うんですね。例えば、スクールカウンセラー、この二十数年で二百倍に数が増えました。平成七年は百五十四か所しかなかったわけです。もう今は三万か所以上に配置をされているんです。

 ただ、全国で百五十四か所しかスクールカウンセラーが設置されていなかったときの子供の自殺は百三十九人です。去年は五百人を超えました。スクールカウンセラーの数を二百倍に増やしたのに、自殺というのは約四倍に増えている、子供の自殺が増えている。これをどう捉えるかということなんですけれども、もちろん、スクールカウンセラーをつくったから食い止められているという考え方もあると思いますけれども、ただ、一方で、受皿を増やすだけでは駄目だということも言えるんだと思うんですね。

 このスティグマ、すなわち、頼ることが恥ずかしいとか、相談することは負けだといったことは、子供たちに限らず、ありとあらゆる世代に言えることですね。特に中高年の男性、これは自殺者数のメインの層になりますけれども、この層というのは、会社の中では中間管理職的な役割にあって、なかなか部下にも悩みを吐露できない、相談するということをやると自分が弱い人間だとみなされる、こういうスティグマが根強くあるわけです。ですから、幾ら新しい施策を打ったとしても、なかなかそれが届かない、それが利用されていないという側面があります。ですから、量的な支援だけではなくて、いわゆる質的な支援ということを増やす必要があります。

 この法律でも、孤独・孤立対策そのものに対する国民の理解増進を図っていくということについてはうたわれているわけでありますけれども、より一歩踏み込んで、相談をすることに対してそもそも忌避感を感じている人がいる、そこに対して国としてどうアプローチしていくか、こういう考え方も必要なんだろうと思います。

 さらに、この孤独・孤立対策、私たちの相談窓口が大変逼迫をしている中で、ただ単に、まさに相談員を増やすだけとか、数を増やすだけでは駄目だ、源流にアプローチしなければいけないということで、二〇二〇年から、孤独対策というものを始めてくれということで、まさにこの国会の中の同志の皆さんと一緒に活動をさせていただいたところです。

 そして、今、担当大臣もありますし、こうして法案の審議をしていただいているわけですけれども、とにかく重要なのは予防的な考え方です。

 問題を抱えて重症化して、そして、まさにそういう問題を抱えた人を支援する、そういう受皿というのは、ほかの国に比べても手厚い部分は日本はあると思うんですね。それが利用されているかは別として、玉としては持っているわけです。ただ、それが利用されていない。

 そして、孤独の場合は、今でも、何で国が孤独を感じている人を救わなきゃいけないんだ、ほっといてくれという人がたくさんいるわけです。これは、望まない孤独や孤立が問題なわけです。自ら望まない孤独、すなわち、頼りたくても頼れないとか、話したくても話せない、そういう状況にある方というのをいかに救っていく、手を差し伸べていくのか。

 そして、孤独というのが消え去ることはありません。孤独というのは、非常に、人間の自然の感情ですから、誰もが人生のどこかのタイミングで孤独を感じます。ですから、孤独を感じさせないとかということではなくて、重症化させない、すなわち長く孤独を感じさせないような取り組み方、ちょっと孤独だな、誰ともつながりがないなと思ったときに緩くつながりにアクセスできるような状況をつくる、これが孤独・孤立対策の恐らく本質なんだろうと思うんですね。

 ですから、孤独や孤立を感じている人を今どう救おうかということだけではなくて、予防の考え方、源流の考え方ということをしっかり議論をしていかなくてはいけないんだろうと思います。

 ただ一方で、これから問題になってくるのは、いかにオンラインからオフラインをつないでいくかというような考え方なんです。

 例えば、今回のこの法案でも、孤独・孤立対策の協議会の設置というのがうたわれていると思いますけれども、非常に懸念をしているのは、この協議会というのが単体で支援を行うことにならないかということなんです。

 私たちのようないわゆる広域的な相談窓口というのが、特にスティグマを抱えている層、また若年層にとっては、最も相談しやすい場所の一つなわけです。どこかの市がやっている、若しくは学校がやっている相談窓口、スクールカウンセラーには、当然、その自分たちが生きているコミュニティーの中で問題を抱えていますから、相談できない。全く見ず知らずの人に相談をする、これが最初のステップであるべきなんですね。

 それを置いたときに、例えばこの協議会で私たちのような広域的な相談窓口が入ることができるのか、そして連携ができるのか。いわゆる広域とか地域を行ったり来たりするという支援の在り方が求められているわけですから、そうした構造というのをまずしっかりつくっていくということが必要なんだろうと思います。

 そして、今、オンラインからオフラインへと申し上げましたが、私たちのところに毎日千から千五百人の子供たち、若者たちから死にたいですと相談が来るわけですけれども、私たちが地域にその人たちを紹介する場所がないわけです。

 学校の問題で悩みを抱えているのにスクールカウンセラーさんに相談することはできませんし、スクールカウンセラーさんにつなごうとしても、週に一回しか学校に来ていないようでは、とてもじゃないけれども私たちは学校にはつなげない。家庭にももちろんつなげない。今、地域の中で、家庭でもない、学校でもない、第三者的に、若年層の孤独や孤立にまさに緩いつながりの中で手を差し伸べていける存在がいないんですね。

 ただ、ポテンシャルはあると思います。一つは、やはり民生委員です。百年続いている日本型のすばらしい仕組みなわけですけれども、今、非常に高齢化しています。ほとんど九割近くが六十歳以上。なかなか、若い人たち、子供たちに手を差し伸べるということができていないという現状があるわけです。子供、若者民生委員のような、サポーターのような仕組みをまずはつくって、まずは私たちのような広域的な相談窓口がチャットで相談に応じ、今度はその子供、若者サポーターが地域に住んでいる同じ若年層世代にまずはチャットで応じて、そしてその次に実際の既存のリアルな支援につなげていくというような、まさにこれもグラデーションをつくっていかなくてはいけないと思います。

 子供には信頼できる大人が必要だというふうに言われますけれども、例えば、今回の孤独、孤立の政府の実態調査、他者にサポートをしようと思うと答えた、六割を超えたのは十代、二十代だけなんですね。十代、二十代だけが他者にサポートをしたいと思うというふうに答えたわけです。七割近い数字なんですね。若年層同士が支え合う仕組みということも検討していく必要があるんだろうと思います。

 最後に、イギリスでは、ジョー・コックスという下院議員が、残念ながら暗殺をされましたけれども、この孤独対策を始めたんです。ちょうど三月に私はイギリスを訪れまして、その妹さんのキム・レッドビーターという、これも今まさにその選挙区を継いで下院議員をやっているんですけれども、彼女と話をしました。

 このジョー・コックスの遺志を継いで私たちも日本の中で孤独対策を提言させていただいたわけですけれども、そのキム・レッドビーター下院議員も、日本がこうして孤独対策のような法律を作っているということを大変すばらしいと。イギリスは、実は法律はもちろんないわけですね。今、大臣が少し復活しましたけれども、政府のイニシアチブとしては、日本が恐らく世界で最もこの孤独や孤立の問題で進んでいると思います。

 さらに、グローバル・イニシアチブ・オン・ロンリネス・アンド・コネクションという国際団体にも我々加盟していますけれども、非常に高い期待感がこの日本の孤独・孤立対策に寄せられているところです。

 WHOは今年、社会的つながりに関する委員会を設立する予定なんですけれども、これもまさに、日本がこうして孤独・孤立対策を議論していることを踏まえて、それをいかに各国にも同じようにイニシアチブを取ってもらうかということで議論がされていく予定です。

 まさに世界が今注目している孤独・孤立対策ですので、この本質的な議論というのを是非皆さんでしていただけると大変ありがたいかなと思います。

 以上になります。ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 次に、長沢参考人にお願いいたします。

長沢参考人 おはようございます。大阪の枚方市の副市長の長沢でございます。

 本日は、お招きいただきまして誠にありがとうございます。

 まず、資料がお手元の方にあるかと思いますので、基本、これに沿って御説明をさせていただきたいと思っております。

 まず、一ページ目でございます。これは枚方市の概要を掲載させていただいております。

 基本、四十万都市という形の中で、小学校が四十四校、中学校が十九校あります。まさしく高齢化社会を迎える中で、高齢化の人口もかなり多い、また、小中学校の子供さんらもたくさんいる、こういった中で枚方の行政が進んできている、こういった状況でございます。

 一つちょっとPRさせてもらいますと、東海道五十三次がよく言われておりますけれども、本来、五十七次ございまして、枚方市はそのうち五十六番目の宿場町としてこれまで発展してきた。今はベッドタウンとしても発展している、こういった状況でございます。

 二ページ目の方になりまして、本日、孤独、孤立という形の中で、昨年、プラットフォームを国の方で立ち上げをさせてもらいまして、枚方市におきましても、第二次の募集の中で手を挙げさせていただきまして、採択をしていただいた。特に、中学校卒業後、高校にも行かない、又は高校の中でも中退をされる、その後どこにも所属されない、こういった方をターゲットに、何か、議論、また、出口が見えないかなといった形をテーマで取り上げさせていただきました。

 そういった中で、高等学校以降の子ども・若者の支援について語らう会、こういったものを、定時制の学校とか、こういったところとも連携をしながら、行政が真ん中に立って、いろいろな形での情報交換等々をさせていただいたというような状況でございます。

 また、これは昨年度で一度終わりましたけれども、本市において、若者の計画を作っております。その中においても、今後とも、こういった語らう会を基にいろいろな世代について議論をしていきたい、こういったこともその計画の中にうたわさせてもらっている、こういった状況でございます。

 また、その中におきましても、昨年度、取組を始めるに当たりまして、相談対応の職員のスキルアップ、これはSNSを活用しようといったところでございますが、その中でも、ヤングケアラー、この問題にも突き当たりました。枚方市におきましても、昨年度、一斉調査をさせてもらって、小学校、中学校をピックアップして調査をさせてもらい、そこにヤングケアラーさんのどのような形の実態が枚方市においてもあるのか、そういった方がどういった形で、自分の状況を認識していない、また、認識をしていながらも出口が見えない、こういったことを調査させてもらったということでございます。

 そういった中で、本市の小中学校におきましては、一人一台のタブレットを活用させてもらっております。それを使って、試験的ではございますけれども、SNS相談をさせてもらって、かなりの案件として声が聞こえてくる、そういった中を実際一つ一つ対処しながら潰しにかかっているというような形でございます。

 また、正直言いまして、当然、匿名のことですので、個々具体のところになかなか行き着かないところはありますけれども、その中には、やはり、命に関わる問題がありました。そういったときには、いろいろな御協力も得ながら、特定も一定させていただいた上で、何とか命を留めることもできた、こういったことが実例としてあります。

 四ページ目になりますけれども、まず、孤独、孤立は、ここにありますように、先ほど来ありますように、全ての年代においていろいろな事象が起こってくる。生まれる前から、当然、最後、高齢期を迎えるまでの間、それぞれの時代、年代において孤独、孤立といった問題は出ている。これは法案の中でも指摘をされているところかというふうに思っております。まさしく全世代の対応をするのが行政の仕事である、このように考えております。

 そういった中で、一つ事例を挙げさせてもらいますと、枚方市では、ハイリスクアプローチ、こういった形で、特に高齢者の方をターゲットに、例えば、過去一年間、医療レセプトなり介護データ、健診データのない方をKDBシステムから抽出をいたしまして、まず千人ほどピックアップをさせてもらいました。そのうちほぼ九百五十名ぐらいの方に対処することができ、結果としましては、ほとんどの方は当然元気な高齢者の方であったんですけれども、この中で、介護保険の新たな申請につながった方が二十名、家族や本人が地域包括の方に出向いていかれた方が十一名、それと病院受診につながった方が三名、千人の中でこういった数ではございますけれども、個々具体的な方策につながったことを我々行政としても自負しているところでございます。

 スライドの五ページを御覧ください。

 それと、先ほど来ありますように、個々、単一の問題については、これまで、枚方市を始め各地方自治体ではそれぞれの分野において具体的な施策を講じてきておりますが、今回、重層的支援、こういった言葉に表現されるように、問題は複合化している、重なり合っている。一つのことだけに着目して捉えても、行政的な解決は、仮に一つの面ではできたとしても、その方の人生まで救えることまではできていない。

 こういったことに立ち戻って、我々としましては、重層的支援の体制を充実させることに着目をさせてもらって、昨年度、しっかりと会議体も立てさせていただいております。

 そういった中で、市民の方が、まずどこに行ったらいいのか分からない、自分が重層的な支援を求めているのかそれすらも分からない、こういった方がおられるのが現実かというふうに思っております。

 そういった中で、福祉部門ではございますけれども、複合的な相談をまずワンストップで受ける窓口として、枚方においては、健康福祉部の福祉事務所の中に健康福祉総合相談課を設けまして、何かお困りのことがあれば一度こちらの方に来ていただいて、まず相談をさせていただく、そこから我々の方でいろいろなトリアージをさせてもらう。こういったシステムを使いながら、庁内の重層的な機関との連携もさせていただいている。こういったことで今現在取り組んでおるところでございます。

 六ページのスライドのところには、重層的支援体制の整備、これを支援のフローといった形で書かせていただいております。

 次に、今回、枚方市の方で特に説明をさせていただきたいのが、七ページにあります、生活保護受給者等就労支援事業、それと生活困窮者就労準備支援事業についてでございます。

 これまで当然それぞれの根拠法令に基づいて各事業は実施してきたわけなんですけれども、今回、八ページにもありますように、成果連動型の民間委託契約方式、いわゆるPFS、これをこの事業に充てることができないかといった形で取組を今現在進めているところでございます。

 このPFSにつきましては、御承知のとおり内閣府の方の主導でさせていただきまして、枚方市におきましては、まずは介護予防の件で一旦導入をさせていただいております。その成果について、我々行政の中ではなかなか取組又は発想がなかった点を、民間の方の柔らかい発想の中で、介護予防につながることを今もやっていただいているといったことも御紹介させていただいております。

 本来、生活保護なり生活困窮者の方を次のステップにつなげていくのに、本当にこういう民間の知恵という形を使って逆にいいものかどうか、こういったことに正直悩んでおりました。しかし、我々のやっている行政だけのことであれば、やはりなかなか道を開くことができないというのが現実であります。そういった中で、これはある意味試行的かもしれませんけれども、PFSを使いながら民間の力をおかりするといったことを、今回取組をさせていただいております。

 九ページの方にありますように、当然、社会参加できていない方が社会参加、就労という側面から自立までつながっていくには、いろいろなステップがある。左側の青いところが準備支援というところで、就労とまでは行かないけれども、まずはそういった生活状況を改善していく、また社会参加につながっていく。ここの中には引きこもりの方もおられるかというふうに思っております。そこから生活保護の方も含めて実際には就労までつなげることができるかといったところを、二つの事業を分けた形、また連携した形で取組をしようという形にしております。

 一つ特徴的なことを言いますと、就労準備支援、この中には引きこもりと言われる方もたくさん入っておられます。これは現在まだできてはおりませんけれども、今年度、また来年度中に、いわゆるメタバース、仮想空間を用いながら、なかなか外には出歩くことができないけれども、まずそのメタバースの中で、自分をそこに存在として位置づけて、そこでまず模擬的な社会的な経験を培ってもらう、こういったところも一つのやり方ではないか。今の時代ですので、何も無理やり世間に出ていただくことが全てではなくて、いろいろな形での体験ができるのではないか、こういったことも今現在考えているところでございます。

 まず、そこになぜPFSを、少し今お話もさせていただきましたけれども、もう少しだけ御説明をさせていただきます。

 長年引きこもりの状態にあられる方、また社会参加ができていない方が日常生活を送れるようになる、こういったことになるには数年単位かかってくるというふうに考えております。当然、そういった数年単位の支援があって、歩みはすごく緩やかなものになるかというふうに思っております。

 これまでの事業、これはいろいろな形に委託もしておりましたけれども、当然、事業を進める中で、現地に向かいますと、相手方からの拒絶なり、行政の支援は要らないよとか、こういった無視といったこともある中で、その中でもやはり我々としたら、何とか社会的な関係性があるのがいいんだろう、こういう前提に立って、こういったことをさせていただいていた。

 ただ、このPFSでないと、当然委託料というものは決まっております。その中で、先ほど言いましたように、単年で事が済むようなものではないので、これを単年事業での委託事業にしてしまうと、事業者さんとしてもなかなか前に進むことができない。

 やはりこれは、複数年で歩みは少ないけれども、そこの歩みの少ないところをいかに評価できるか、このシステムをつくることによって、そこに携わる方のいわゆる社会的な資源、こういったことも充実していくのではないか、このようなことを考えたもので、取組を進めさせていただいてと思っております。

 当然、PFSですので、成果指標というものを作らなければなりません。ただ、この成果指標が、先ほど来言っておりますように、これは正直難しいところでございます。何か形に見えるものがなかなか見えてこない、見えないものを見ることの本当のしんどさ、ここをいかに成果指標としてしていくか、ここが一番重要な点である。このように考えており、あした、我々の方では、家族会というものが、引きこもりの方の家族会という組織もあります。こういった方の、当事者の御意見も実際に聞きながら、どういったことが成果指標としてなじむのか、正しいものなのか、こういったことを作ろう、このようにしているところでございます。

 スライドの十二番のところでございます。

 ここは最後になるわけなんですけれども、先ほど来、各参考人の方からありましたように、核家族化の進行なり単身世帯の増加、人との関わりが薄くなっている、こういった中で、自分では声が出せない方を把握することが本当は困難な状態になっているのかというふうに思っております。

 当然、民生委員さんや民間のNPOさんを始め、いろいろな支援機関からの御支援、御指導も頂戴するところでございます。国におかれましても、昨年、一斉調査をされました。その中で大きな傾向は見ることは十分できたわけなんですけれども、やはり行政の立場でいきますと、もちろんそういう大きな流れというものは十分理解する必要はあるかと思いますけれども、行政の人間としては、目の前におられる市民の方にどのような形を提供することができるのか、また一緒に考えることができるのか、ここにつなげられなければ、正直言って、幾ら調査をしても現実の解決にはつながっていけないのかな、このような思いで、ある意味じくじたる思いを持っているのが正直なところでございます。

 枚方は中核市ですので、それなりの大きな都市になっております。そういった中で、ばあっと大きな網をかけるのは簡単かもしれないですけれども、いかに小さな目をいろいろな分野においてかけられていくのか、ここが一番難しいことかと思っております。法案の中でも、一人一人、それぞれに応じた形というところの表記もあります。まさしくそれが一番難しいところでございます。

 やはり、それぞれの個人では、自分の孤独が孤独ではないというふうに思われている方もおりますし、ほっといてくださいというような方もおられます。孤独に気づいていない方もおられる。そういった方をどうしていくのか。

 また、複合的な、重層的な事象を抱えて、いろいろな行政的なことに相談をかけられている方もおられます。ある意味この方は、逆に、心の中は別としまして、孤立していないのではないか、もう既に行政の手が届いているではないか、こういった考え方もできるのかなというふうに思っております。

 我々としまして、今日、参考人として、いろいろまた改めて勉強もさせていただく中で、孤独、孤立って結局何だろうかというふうに自問自答するところでございます。先ほど来ありますように、孤独、孤立、社会的関係をつなぐことが本当に本当にいいのか、それを今は拒絶されている方が現実にいてるのではないか、それを無理やり、それが大前提なんですよといった形で行政が入っていって本当にいいものかどうか、そういったこともいろいろ悩み苦しむ、正直なところでございます。

 これが、地方自治体、全国にありますけれども、現場を知っている、市民としてのいろいろな複合的な課題を抱えている方に実際に対処している自治体職員としての一番の課題ではないかというふうに思っております。

 福祉の関係で、市民にとったら、オールマイティーの職員にたまたま当たったらすごくいいことなんですね。でも、その人を育成することの本当に難しさ、人件費を何とか少なくしようとか、いろいろなジョブローテーションをしていかなければならないよねとか、こういった制約の中で、専門職の育成というものはすごく大事なところになってくるかと思います。

 これが本当に地方自治体だけでできるものなのか。例えば、都道府県レベルの中で育成をしていただいて、それを各自治体の方に派遣をしていただくとか、そういった広域的な問題にもなるのかというふうに思っておりますし、また、国におかれましても、そういった面での、人的な育成をするための研修の機関なり財政的な支援につきましても、今後、この法案を作られるに当たりましては、そのようなことにつきましても是非頭に入れていただきますことを願って、私の説明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 ありがとうございました。

 以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤井比早之君。

藤井委員 参考人の皆様におかれましては、本日は貴重な意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速、孤独・孤立対策推進法案につきまして、参考人質疑をさせていただきたいと思います。

 令和三年二月、菅内閣で孤独・孤立担当大臣が設置され、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が立ち上げられました。岸田内閣で、この度、孤独・孤立対策推進法案が閣議決定され、国会に提出され、今まさに質疑が、審議が行われているというところです。

 各参考人の皆様に、この度の孤独・孤立対策推進法案の歴史的とも言える意義、成立に向けた期待をお伺いさせていただくとともに、この法案はいわば理念法案でございますので、実際に現場で機能するためには、具体的な施策が何よりも大事でございます。

 先ほどの意見陳述でお話はいただいておるんですけれども、具体的にどのような施策を重点的に実施する必要があるのか、各参考人にお伺いいたします。

石田参考人 まず、歴史的意義についてなんですが、これは先ほどもお話ししましたように、孤独、孤立というものが、まず、そもそも社会問題として取り上げられていくということがほとんどなかった。何となくいろいろなことの原因にはなってはいるんだろうけれども、それでもそのまま放置されていたというふうなところがあった。

 ただ、この時期にやるということが私自身はすごく重要だと思っておりまして、今後、日本社会というのは、今、少子化対策というものもかなり力を入れてやっているわけなんですが、本当に順調に婚姻件数が上がっていくのか、あるいは少子化というものが解消されていくのかというのが分からない。むしろ、どちらかというと、見通しとしてかなりはっきりしているのは、単身化が今後更に進んでいく。単身化が更に進んでいきますと、やはり孤独、孤立というものがより大きな問題として広がっていく可能性というのはあるわけです。

 実際のところ、まだ孤立死、孤独死については数値は把握していないわけなんですが、かなり増えている、推計をしてみると増えているようだというふうな傾向が出ている。やはり、自治体が最終的に遺骨を処理するなんというふうなことがリアルに出てきているわけなんですね。

 そうなってまいりますと、やはり、もうこの時点である程度、どういうふうに対応をしていくのか、先ほど枚方市の方もおっしゃっていましたけれども、つながりをつくるということ自体も議論の俎上に上げて考えていく必要がありますし、そういったことを、どういうふうに私たちがそれこそつながりの在り方をデザインしていくかということを、国で考えていくということが非常に重要ではないか。

 そういうふうな問題意識があるからこそ、やはりこの時期にやっておかないと、もうちょっと進んでいくと本当に後に戻ることができない、それこそITを使って機械的に管理していきましょうみたいなことしかできない可能性がありますので、今ここでやっておくということが非常に重要だというふうに考えております。

 重点的な施策に関して、これは、何が重点的かというのを定めるのがなかなか難しいところがございます。

 政策が立ち上がってまだ二年しかたっていない、その中で法案成立まで行ったというのは、大変速いスピードで行っているのではないのかなというふうに私自身は考えております。

 その中で、地方自治体の方もおっしゃっておりましたように、どこから手をつければいいのか分からないというふうになっている。あるいは、現場の方々のお話を聞くと、問題がたくさんあるんだけれども、でも、その問題に対応し切れる人員と資金がないというふうなことが出ておりますので、基本的には、やはり、国と地方自治体あるいは都道府県がどういうふうに連携をしていくのか。

 さらに、主体がたくさんあるわけです。それこそNPOですとか、あるいは社会福祉協議会ですとか、企業がある程度役割を果たすことができる。例えば、戸別配達を行っているようなところというのと連携していきながら、問題を把握する。それこそ、どういうふうに問題を把握するのが一番最適なのか分からないというふうなところが出ておりましたので、そういったようなところと連携体制をつくっていって、どういうふうに問題を把握していけばいいのか、どういうふうに体制をつくっていけばいいのかというモデルケースをつくっていきつつ、そういったことを広げていって、とにかく網の目を細かくしていくことが重要ではないのかなというふうに私自身は考えております。

 以上です。

栗林参考人 私も、孤立というのは、子供にとって本当に、自分で状況を変えられないわけですので、こうやって法律ができて、子育ての孤立を含めて、あと、今、育休のパパたちが何の準備もなく仕事をお休みして子供と過ごしているんですけれども、彼らもかなり孤立しているなというのを感じています。

 そういうところも含めて、子供たちの孤立とか、私たちは特に貧困という問題で地域で活動していると、貧困に対するアレルギーはとても多いです。子供食堂は貧困対策のためにやっているんじゃないと言っている方もたくさんいらっしゃいます。そのとおりなんですけれども、孤立、これに関して何とかしなくてはいけないと、みんなの共通項として広げることができると思っています。この法律がうまく展開することで、ほかの様々な問題も解決すること、そういう力を持っているなと思っております。

 先ほど民生委員の話もありましたが、そういう地域の方たちの力を是非うまく活用できるようにしていただきたいなと思います。

 民生委員は、私も民生委員なんですけれども、やはりやっていることが毎年決まっていて、そこから発展することがなかなか難しいんです。皆さん本当に御高齢になっていて、独居の高齢者の訪問でいっぱいいっぱいです。新しい風を民生委員の中に入れることも、この法案の成果につながっていくと思っております。

 ありがとうございます。

大空参考人 まず、意義についてですけれども、我々が二〇二〇年の秋から冬にかけて、孤独対策というものをつくるべきだというふうに提言をさせていただいたときに、どういう温度感だったかというと、二〇二〇年の十二月四日、午前中の官房長官の定例会見で、当時の加藤官房長官が、孤独対策という言葉を使われたんです。その前日に我々は官房長官に提言を出させていただいたわけですけれども、官房長官がオフィシャルな場で孤独という言葉に言及したぞと、それだけでも非常に驚いたわけです。

 まさにそれぐらいの温度感だった中で、個人の問題というふうにされて、まだその風潮はありますけれども、完全にそうされていた中で、孤独・孤立対策というふうに、対策という言葉も入っている法案ができるということは、そのときから考えますと、本当に物すごくある種飛躍をしているような、違う次元の議論をしているような、そういう感覚を主観的に持っているわけです。それほど孤独というのは個人の問題であるという考え方が根強い。

 今でも、孤独というのは愛するものだとか、孤独が人を強くするといったような、これは皆さん、本屋さんとかに行かれると、そういうのが表紙に書いてある、帯に書いてあるのがいっぱい見つかります。これは余り科学的な根拠がないわけですね。

 今回、法律ができるということは、ある種、孤独や孤立というものがどういうものなのかということを定義をするに等しいんだと思うんです。

 我々は孤独・孤立対策の官民連携プラットフォームの幹事会をやっておりますけれども、孤独、孤立状態にある方に手を差し伸べている支援団体も、孤独や孤立の違いを分かっているかというと、余りそれは分からずにやっているところも多いんだと思うんですね。例えば、孤独死と孤立死はどう違うのかといったときに、これはなかなかぱっと答えられるところは少ないんです。やはり、孤独は主観的であり、孤立は客観的であると。

 孤立をしていないんだけれども、すなわち周りには人がいっぱいいるように見えても、実は孤独を感じているんだ、特に子供たちはそれに当てはまると思いますけれども、そうしたところが曖昧なままで支援が展開をされてきたんです。ですから、孤立はしていないんだけれども孤独であるとかといった人に対して、なかなか日が当たらない。

 これを考えていくと、まず法律を作って、我々支援者、そして行政も、孤独・孤立対策というのはどういうものなのか、孤独と孤立はどう違うのかというのを理解した上で支援を展開できる、こういうメリットはあると思います。

 また同時に、実質的には孤独・孤立対策に資する活動をやっているんだけれども、我々は孤独・孤立対策をやっていますというふうに言っている団体は少ないんですね。既存の、生活困窮であるとか虐待であるとか一人親家庭支援、こういうような文脈の中でやっている団体さんがほとんどで、無理やり今、孤独・孤立対策の枠をつくって、そこに当てはめている感じですよね。

 ですから、本質的な議論というのは、孤独・孤立対策というのはそもそもこういう政策目標があって、例えばアウトカムとして孤独感を減少させるとか、そういうことを置いた上で、今度は既存の支援団体の活動がどのようなアウトカムの達成に資するのかみたいなことを追っていくのが本来の筋だろうと思いますから、その第一段階として、法律ができているというのは非常に重要なことである。

 と同時に、その具体的な施策として、例えば、先ほども申し上げさせていただいたんですが、協議会ができます。協議会というのは地域のそれぞれの中で自治体が設置するものですからできるわけですけれども、もはや、それぞれの、一つの地域がその地域に住む人を支援するというような形ではなくて、我々のような非常に広域的な相談窓口みたいなところにも人がどんどん来る、相談がどんどん来る。いかに違う自治体とか若しくは広域圏で今度は連携をするかということが大切ですので、推進本部ができて、協議会がそれぞれの地方にできるときに、その協議会を束ねるのが推進本部だけということは、なかなか現実的に難しいんだろうと思うんです。

 一つ、中央協議会のようなもの、協議会を束ねるような組織があって、そしてそこが、我々のような恐らくそれぞれの協議会にも属せないような広域的な窓口と連携を担うような役割を果たしてもらうというような、それぞれの地域と広域の、このつなぎというのをやるということ。

 その根底にあるのは、何よりもスティグマ対策です。このスティグマは、教育とプロモーションと制度、三つで解決できると思います。教育の分野でいうと、SOSの出し方教育、これは名称についていろいろ議論がありますけれども、やっている。プロモーションについては、孤独というのは、ほかの問題と違ってあらゆる人が感じるものであるわけですから、これは全ての人の問題なんですというようなことを発信していく。そして、私も孤独なんですというふうに言えるような、そういう環境をつくっていくということ。そして、制度でいえば、まさに地域の中で緩やかに、いつでもつながれるような存在をつくる。

 要は、スティグマをなくすんじゃなくて、スティグマがある中でも相談できるような場所をつくっていくというような、そういう逆転の発想の考え方の支援というものも恐らく必要なのではないかなと思います。

 以上です。

長沢参考人 お答えいたします。

 まず、法案への期待ということですけれども、基本的に我々としましては、行政に携わる人間としまして、これまで、今もありましたように、それぞれの各分野におきましては、各事業、それを全てやってきている自負がございます。

 そういった中で、こども家庭庁ができましたときに、やはり子供施策というものを、子供を施策の真ん中に置くということがすごく国民の中にも意識されたもの、このようにも考えております。

 今回、孤立、孤独という言葉を出される、また、ここに本部組織ができる、こういったことが、孤独、孤立をちゃんと真ん中に置いて国の施策としてやるよ、こういったメッセージ、これは国民にとってもすごく伝わるものではないか、このようにも思っておりますし、行政に携わる人間といたしましても、こういった国の大きな方針の下にやはり地方自治体は動きますので、こういった方針を出していただくことがすごく有意義なことになるかというふうに考えております。

 あと、重点策でございますが、個々個別の問題はまた個々個別の中で、しっかり行政運営の中では考えていきたい、このようには考えておりますけれども、やはり今一番求められているのは、それぞれがやってきた中を、いかに行政内部の中でも少なくとも一つのものに置き換えていく、また連携させていく、それをすることによって、これは言葉を換えれば重層的な支援につながるのかというふうに思います。

 また、こういう施策だけではなくて、先ほど説明しましたように、これは時間のかかる問題である、こういったものを国におかれましても地方自治体においてもしっかり認識をして、慌てることなく、しっかりと当事者の心、気持ちに立ち添ったような形での事業を進めることができる。単年ですごく急いでやるべき問題ではない、こういったことをしっかり頭に入れながら施策を進めるべきだ、このように考えております。

 以上でございます。

藤井委員 各参考人の皆様、本当にありがとうございました。

 大空参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、若年層の対策、またAI活用とかチャットとかSNSを活用したというのを伺ったんですけれども、これに対する例えば課題とか問題点とか、そういうのがないのかどうか。また、スティグマ対策、予防対策が非常に大切だという形でございますけれども、ここにおける課題。そしてまた、資料に在外邦人の関係もありますので、そこら辺について一言、簡潔にお願いできればと思います。

大空参考人 ありがとうございます。

 若年層ということでいえば、若年層の孤独というのがほかの世代と比べても高いというような研究結果はあらゆるところにあるわけでありますし、政府の実態把握においても、特に二十代の孤独感というのはほかの年代に比べて高かった、高い傾向が見られたということが言えるんだろうと思います。

 その中で、今、少子化対策などやっていただいていますけれども、単純に人口が減っているわけですから、頼れる人というか支援できる人を増やそうというのはやはり限界があるわけですね。要は、人をある程度補完するような機能というのを我々はAIに求めているわけです。

 例えば、我々の中でいえば、先ほど申し上げたように、待ち時間はAIを使って会話をしてもらう、実際に相談につながったら、今度は人とつながる。実は、相談につながる最中に、AIと話すことによって気持ちがすっきりして、そして、生身の人間と話さなくて大丈夫ですという人も一定数いるんですね。

 ですから、孤独、孤立の分野も社会福祉の分野も、人がいかに支援するかということが重要だというふうにされていて、そこは異論はありませんけれども、それだけだと、この人口減の社会に対応できない。人だけではなくて、プラスアルファとしてAIのようなものの活用というのも、この分野においては特にやっていかなきゃいけないんだろうと思います。

 その中において、やはり一番は情報なんですね。情報をいかに共有していくかということで、例えば、私たちであれば、虐待やDVの相談は児童相談所や警察と連携をして実際に危機管理を行うわけですけれども、匿名相談なんです。匿名相談で実名を取得するというのは相談員の技術に懸かっているわけで、非常に信頼関係を築いた後に、どこにお住まいですか、お名前は、住所、電話番号、こういうことを聞いていくんですね。

 ただ、それを聞いて、果たして、今度は実際の警察や児童相談所に電話で通報をするに当たって、特に法的な根拠があるわけでもありませんし、例えば、実名は明かしてくれない、連絡先は明かしてくれないんだけれども、今すぐ飛び降りようとしているとかで警察に連絡しなきゃいけないケースがあると、我々はIPアドレスを取得して、そしてそれを警察に伝えて、警察から通信事業者、そして通信事業者がまた警察に戻して対応と、十数時間かかるわけです。

 これは、例えば、IPアドレスを取得してそうした危機管理をやっていいのかというガイドラインが、実は余りないんですね。総務省のガイドラインが一部あるんですけれども、二〇〇〇年代初頭の、SNSもないような時代のガイドラインをいまだに使っている状況でして、ここを早急に新しくしていく。厚労省、総務省そして警察庁さんとの間で、匿名の相談窓口がどうやって情報を取得して、実際に危機管理に迅速につなげていくのか、この制度をまずつくっていく必要があるんだろうと思います。

 在外邦人については、死因の二番目が自殺ということもあって、非常に熱心に在外邦人の自殺対策をやっていただいている方がいらっしゃいますので、その先生方も含めてこの自殺対策、特に在外邦人の場合は、日本国内の電話相談窓口も使えませんし、現地の言葉が分からない場合は現地の支援機関も使えませんので、日本における支援機関、相談窓口といかに円滑に連携をしていくのかということと、我々、例えば中国とかから相談がほとんどないんですね。非常に多くの在外邦人が住んでいるにもかかわらず、そもそも我々のような窓口にすらアクセスできない在外邦人がいるということで、早急に実態把握をして対策をしなきゃいけないのではないかなというふうに思います。

藤井委員 時間となりました。終わります。ありがとうございます。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲と申します。

 本日は、参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございました。

 十五分しかございませんので、今日、私、大きく三問聞きたいと思っているんですが、答弁の方も御協力いただければというふうに思います。

 まず、この孤独・孤立対策を議論する中で、我々も、スティグマ対策、そして予防といった観点で何ができるのか、何をすべきなのかという部分、議論を深めてまいりました。

 まず、大空参考人に伺いたいんですけれども、本日の資料の中でも、あるいはお話の中でも、スティグマ対策というのが非常に大事だということ、そして、この資料にもありますが、予防的施策も同様に大事だということを示していただきました。

 私も、いろいろな方のお話を聞いておりまして、スティグマがなぜ生じるのか、そして予防がなぜ難しいのかという部分を考えたときに、今日、石田参考人の資料にもありますが、今あるつながりが壊れてしまうかもしれないという不安を払拭するために、表面上のつき合い、あるいは当たり障りのないおつき合いというものを取りがちになってしまいますし、また、つながりがなかなかつくれない人については、周りはみんな友達がいるのに、あるいは御近所づき合いをしている方がいるのに自分はつくれないということで劣等感を感じて、それがスティグマにつながっているんじゃないか、そういうふうに考えておるわけです。

 これらの方々に何が必要なのかというと、最近の教育現場を視察をさせていただいても思うんですが、子供も大人も高齢者も、自分のことを話す機会というのが昔と比べて減っているのではないかというふうに感じるんですね。例えば自分の悩みを話すこともそうですし、友達同士、日常会話をするのもそうです。自分の考えを述べるということ、そういった機会が昔と比べて随分減っているのではないか、そういう印象を受けております。

 スティグマ対策、予防的観点に立つと、私の今申し上げたような観点から、やはり学校現場や、あるいは職場、企業の職場、あるいは地域の中で、自分のことを話す機会、お互いのことを知る機会というのをいかに確保するかというのが非常に大事だと思うんですが、つまりは、社会のあらゆる分野でこういった行動を取ることが大事だというふうに思うんですけれども、大空参考人が言うスティグマ対策、予防的施策というもののイメージについて、ちょっと、申し訳ありません、簡潔に御答弁いただければと思います。

    〔委員長退席、宮路委員長代理着席〕

大空参考人 ありがとうございます。

 基本的には三つの層に分かれるんだと思うんですね。制度を全く知らない層、制度を知っているけれども相談できない層、そして、相談者に、相談する担い手になり得る層、この三層に分かれているというふうに思います。

 その三層それぞれに対してアプローチをしていくということですけれども、制度を知らない層については、これは当然まず制度を伝えていくということが何よりも必要で、その際に、例えば、相談してくださいと言うだけでは相談できないんですね。相談をした結果こうなりましたということが必要なんですね。

 今年の厚労省の自殺対策の強化月間のポスターでは、相談をしてみてほっとしたというような、相談した結果を見せています。民間企業のCMでも、単純に洗剤を買ってくださいとかは言わなくて、この洗剤を買うとこれぐらい汚れが落ちます、だから買ってくださいというようなCMの打ち方をするわけですね。制度を使ってどうなったかということを見せていくような、これまでとは違ったいわゆる制度紹介の広報の在り方が一つ。

 そして、学校現場の話でいうと、これはなかなか教育によって、もちろん根気強く、声を上げようね、恥ずかしくないよと言うことは大事なんですが、それだけやっていても物すごい、何十年とかかる話ですので、まずは、GIGAスクールの一人一台タブレット端末、これは世界的に見ても全ての子供たちが端末を持っている国なんというのは珍しいわけですね。この端末で、毎日じゃなくてもいいですから、一週間に一回とか二回とか、今の気持ちをずっと聞いていく。そして、その聞いていく中で、曇りが続く子とか、雨が続く子とか、ちょっとしんどそうな子というのを自動的に見つけていく、そして自動的にアプローチをしていく。要は、SOSの出し方じゃなくて、SOSを出さなくてもキャッチできるような仕組みというのを、このGIGAスクールのタブレット端末を使ったら簡単にできます。グーグルフォームのアンケートでもいいわけですから、簡単にできるわけですね。まずは既存の仕組みを活用しながらやっていくということが何よりも必要じゃないかなと思います。

 以上です。

浅野委員 ありがとうございました。

 続いて、栗林参考人に伺いたいんですが、栗林参考人の資料の中に、最近の取組事例として中学校内での居場所づくりというのがあります。やはりこれも同じ観点、スティグマの観点なんですが、孤独を感じていたり、何かやりづらさ、生きづらさを感じている子供たちの居場所としてこの中学校の場所を準備されたというふうに先ほどの説明を聞いて思ったんですが、我々も、そういう施設を、居場所をつくることはとても大事なんですけれども、それ以上に大事なのが、そこに来やすい雰囲気づくり、環境づくりだと思うんですね。そういった、いわゆるスティグマ対策とも言えると思うんですが、それを、参考人の活動されている中でどのような配慮、意識をされているのか、できれば具体的な部分を教えていただきたいなと思っております。

栗林参考人 ありがとうございます。

 中学校カフェの方は、豊島区の中に若者の居場所づくりをやっている団体がたくさんあります。そういうスタッフ、若者と話をキャッチして、そして外の第三の居場所につなぐような形で支援を、逆に言うと、第三の居場所につながった子は、ここで学校ではない自分らしい自分でいられるというような声を聞きます。

 そういう場所にまずつなぐのに、なかなか情報を自分でキャッチしてとか、豊島区もタブレットを一台持っていて、そこでも、子供がいじめのことを伝えるような仕組みはつくっているんですけれども、なかなかそこに自分からアクセスしなかったり。して解決していると不登校は増えないはずなんですけれども、かなり増えています。具体的に言うと、四百七十人の中学校で約七十五人が不登校という状況です。

 ここを予防するためにも、今一年生で入ってきた子たちが学校でもリラックスできる場所、自分の気持ちが吐露できる場所をつくって、そこから第三の居場所につなぐというようなことに今取り組んでおります。そこは、最初は、図書館を使ってやろうかとか、私たちも試行錯誤したんですけれども、そうではない、テーブルを置いて、クッションを置いて、本当にリラックスできるような場所をつくっています。

 今、不登校の子たちがそこに行くということは難しいです。そこは今後、スクールソーシャルワーカーとか様々な訪問員さんと連携することによって、この対策がうまくいくか分からないんですけれども、一人でもその子の人生が学校カフェによって変わっていけばいいかなと思っています。

 スティグマというところなんですけれども、私たち、物を持って家庭に皆さん訪問するんですね。当然、一回目は、お母さんはこのくらいしかドアを開けない。何ですかという感じですけれども、行政と連携しての訪問というのを八か月ぐらい、毎回、毎月訪問するんですね。そうすると、その開けるドアがだんだん広くなってきて、今月で終わりですよという頃には、実はと、本当にいろいろなことを吐露されます。こうやって自分のことを話したのは初めてです、今までどこにも相談できなかったという声が本当に多くございます。

 もちろん、直接というのは難しい方もいると思いますけれども、やはり直接話すことによって、その支援が終わったとしても、ずっと地域に誰かが見守っているという安心感というのはかなりその後の影響は大きいのかなと思います。

 以上です。ありがとうございました。

浅野委員 ありがとうございました。

 続いては、長沢参考人に伺いたいと思っておるんですが、重層的支援体制整備事業については、私も当委員会のこれまでの議論の中でこれを是非活用するべきだというふうに、全国の自治体で、この取組を通じて地域住民と行政とNPOとしっかり対話をして考え方を一致させるべきだ、そういうふうに思ってまいりました。

 今日の資料の中で支援フローというイメージ図がございまして、特に伺いたいと思ったのがアウトリーチの視点なんですね。例えば、子供たちとか社会人というのはある種の社会的組織の中で日常生活を送っています。不登校とか、療養されてそこから外に出てしまう方もいますけれども、その部分ではやはり孤独というものが多く感じられているのかなと。一方で、高齢者の方々というのは、例えば配偶者と死別して一人で自宅で暮らしている方、この方たちというのはどちらかというと孤立状態だと思うんですね。

 私が今日伺いたいのは、この孤立した方々に対していかにアウトリーチをしていけるのか、されているのか。今回の法案の中身でもアウトリーチの視点というのはあるんですけれども、具体策というもののイメージがやはり非常に大事になってくると思います。

 そこで、参考人の自治体で、アウトリーチ、どのような部分に配慮し、どのような課題があるのか、少し答弁いただければと思います。

長沢参考人 お答えいたします。

 今、アウトリーチの件でございますけれども、現実的にはなかなか難しいところがあるかと思います。ただ、行政的にはやはり社会福祉協議会を通じてやっているというのが一番大きなケースかというふうに思っております。

 先ほど少し説明させてもらいましたけれども、いろいろなデータを用いながら、地域包括ケアシステム、この中での地域包括を利用しながら、それは当然、枚方の場合は十三圏域がございまして、その十三圏域ごとに、いろいろなデータを用いながら、この方についてはどうなのかという形で実際に足を運んでいく、こういった形を取らせていただいているというのが一つの形でございます。

 あと、当然、孤立という形になれば、今、消防本部の中では、いわゆる安全灯というんですか、そういったものの取替え、こういったことを、実際には、協力の中でこちらから行っていただいて、取替えをしましょうかとか、こういったところにつけた方がいいですよとか、こういったことを消防の方として自主的に動いていただいているといった形が一つの例でございます。

 あと、これは今現在検討中でございますけれども、枚方市においても、やはり高齢者の方の独居対策、こういったものが一番大事なところだというふうに思っておりますし、そこでいろいろな危機事象があったときに、こちらからの放送がちゃんと届いているのかどうか、こういったことを実際に確認するためには、独居老人の会というのがございますので、そういった会を通じながら現場のところに行く、こういったところを今現在もやっているところですし、それも更に広めていきたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

浅野委員 ありがとうございました。

 行政が持っている客観的な様々なデータを活用して、できるだけプッシュ型で会いに行く、訪問するというのが非常に大事だということが分かりましたし、先ほど、冒頭発言の最後の方に、やはりそれを担う人材の確保、自治体における民生委員さんですとか、あるいは行政の職員さんが地域を日頃からそうやって歩いて、問題がありそうな方々を早期に発見していくという仕組みづくりが大事だなというのも、先ほどの話の中で理解をさせていただきました。

 最後の質問になるかと思いますが、石田参考人に伺いたいと思います。

 今回、孤独、孤立というものが日本に広まって、社会保障費に与える影響も決して少なくない、イギリスでは実際にそのような分析もされてきたというふうに伺いましたが、日本国内で、そのような孤独、孤立問題が社会保障費に対してどのような影響を与えるのかということについて、石田参考人が分かる範囲で教えていただければと思います。

石田参考人 実際のところ、社会保障費に対してどれぐらいの影響を与えるのかという確実な数字、試算というのは出てはおりません。

 ただ、孤独、孤立に関してまず出てまいりますのは、高齢者に関する医療というものがかなりの額に上っていくであろう。これから単身高齢者というのが増えてまいりますので、そうなってくると、そういった方々に対するケアというものがまず出てまいりますし、あと、もう一つは、仮にケアが必要になったときに誰がそういった手当てをやるのか。あと、そういったことに対して、心身の不調になった場合にもやはり医療費の負担が増してしまう。

 さらに、もう一つ、高齢者に関してだけではなくて、日本社会というのはやはり一九八〇年代あるいは九〇年代まではかなり婚姻というものに人間関係を依存していた、担保されていたという部分があったわけなんですね。そういったものが急速に失われていったというのが実は二〇〇〇年代であったというふうになると、単身の方々をどうすればよいのかというふうな話が出てまいります。

 単身の方々というのは、健康であれば基本的には何も問題はない。それこそ、自分の権利で、自分の考え方で一人の生活を送っているということが考えられるわけなんですが、これが、体調が悪くなってしまった、あるいは経済的に厳しくなったというときになると、立ち所にかなり厳しい状況になってしまうというのは、私自身が携わった社会調査の中でも明らかになっております。

 そうなってしまうと、それこそ、つながりに何かを委ねるということは難しくなってしまうので、そういったことは基本的には行政で補填をするということになっていく。それこそ、単身型の社会に全部変えていって、単身型の社会にしていって、じゃ、何かが起きたときのものを全て行政が賄おうというふうになっていくと、やはりかなりの財源が必要ですし、増税を覚悟しなければならないというふうな状況にはなってしまうわけです。

 だからといって、つながりがない人を放っておくというふうなことはできない。ただ、つながりに全てを任せてしまうというのもよくはないと私自身は考えてはおりますけれども、ある程度の部分はつながりの部分でやっていって、そういったところから漏れ出ていくのはというふうな体制にしていかないと、相当厳しくなるのではないのかなというふうには感じております。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

宮路委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 四人の参考人の皆様、お忙しいところをおいでいただき、貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 孤独・孤立対策の推進法案についてお尋ねをいたします。

 最初に、四人の参考人の皆様にお聞きしたいと思っています。

 孤独、孤立を生み出す要因、背景についてですけれども、政府の重点計画においては、冒頭で、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者が増加するなど、雇用環境が大きく変化をし、所得格差の拡大で人々の支えが減少する、生きづらさや孤独、孤立を生んできたと分析をしております。このことへの評価についてお聞きしたいのと、そうであれば、やはりその背景、大本にあります労働法制の規制緩和の問題、このような労働法制の規制緩和の見直しが必要ではないかと考えますが、皆様のお考えをお聞かせください。

石田参考人 やはり雇用環境の悪化というものは、孤独、孤立に陥ってしまうというふうな原因としまして経済的な貧困であるというのは、今回やりました実態把握調査でも出ているわけでございます。そういったところがありますので、経済的なものを立て直していくことによって、かなり孤独、孤立の問題というものが解消されるということはあります。

 まず、一つの社会参加という点で考えますと、仕事をする、あるいはどこかの組織に所属するというふうなこと自体が非常に重要なことでございますので、そうなってくると、労働として、きちんと労働ができる、働くことができるということが非常に重要である。

 先ほど御指摘がありましたように、一九九〇年代の終わり頃から、派遣に関して、派遣業法が変わりまして、派遣社員の業態の範囲が広がって、派遣の雇用の人が増えてきたというふうな、そんな背景もございます。そういったようなところがあって格差が拡大してきた、そういったことが孤独、孤立に影響を与えているというのは、私自身は側面としてはあるのかなとは考えております。

栗林参考人 私たちが地域でつながっている一人親家庭の方、子供が成長していくとやはりお金が大変かかってくる、そういう中で、子供が小さいときはパートとか地域で働いている方たちも、だんだん派遣で時給のいい仕事に就いている方が多いなと感じております。そういう方たちが派遣でいつまで働けるんだろう、一人親の方はその後最終的に独居高齢者になるんじゃないかなと思っております。そこのやはり経済サポートというか収入をどう担保していくかということは今後考えていく必要があるかなと思っております。

 以上です。

大空参考人 もちろん、労働問題と孤独、孤立の問題というのは非常に密接に関わっているんだと思います。先ほど石田先生もおっしゃいましたけれども、雇用環境の悪化によって孤独、孤立状態に陥っておられる方というのはやはり数多くいらっしゃるというのがあらゆる調査からも分かりますし、例えば、我々の相談窓口の現状を分析をしてみますと、やはり生活困窮に関する相談で来られる方の孤独感が最も高いんですね。ですから、それは非常に明らかだと思います。

 ただ、同時に、職場の人間環境であるとか、いわゆる急激な職場の環境の変化みたいなところが孤独感を高めているというような現状もあると思うんですね。また、特に、当然、非正規の雇用の問題というのは非常に重要なわけですけれども、同時に、例えば、自殺者数の約七割は男性で、その多くは正規雇用の人だというふうに見られるわけですね。

 それを考えたときに、当然、雇用環境による孤独、孤立の悪化を防ぐのと同時に、特に、正規雇用の中でもやはり孤独を抱えていて、なかなかスティグマがあって声を上げられない人にどうアプローチをしていくのかということと、働いた後、いわゆる会社の中でしか人間関係を築いてこなかった方がリタイアされた後で完全に社会的つながりを絶ってしまうというような状況も同時にありますので、非常に雇用が流動化していることに対して、なかなかそこの分野はアプローチできていないところもあるので、そこをちょっと両立するような形で、会社が替わったとしても、例えば同じようなカウンセラーさん、産業医さんに相談できるようにするとか、何かしらの対策を早急に打たなきゃいけないところではあるんだろうと思います。

長沢参考人 お答えいたします。

 労働問題ということでございますけれども、我々自治体にとりましても、先ほど言いましたように、やはり今、正職員の方から、民間委託若しくは非正規労働の方に頼っていく、こういった傾向にあることは間違いないかというふうに思っております。

 これまでは、官にできることは官で、民でできることは民でといった大きな流れの中で、枚方市においても施策を講じてきたところでございますけれども、やはりこの間、国におかれましても、非正規労働者の勤務労働条件の改善、こういったことをしっかり取り上げていただいておりますし、当然、期末・勤勉手当の創設、こういったことも論じられているところでございますので、そういった意味で、逆に裏返しとなるのが、そういった孤立、孤独の根底にあるところにやはり経済的な問題が潜んでいる、このことはしっかり認識している中で、逆に、国の方でもそういったところに着目して環境を変えていこう、こういった動きがなされているんだろう、このようには理解をしているところでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、やはり皆さんにお尋ねしたいんですが、地域協議会のことであります。今回、法律の中で、地域協議会の設置について自治体への努力義務となりました。これがどういう役割を果たすか、その有効性ということをお聞きしたいんですけれども、その際に、既に法定された幾つもの地域協議会や支援会議があるわけですね。そういった、これまでの既存の法定されている地域協議会やまた支援会議と、今回の孤独、孤立の地域協議会の関係、これがどういうふうに機能していくのかどうなのか。その点について少し、研究や現場での経験を通じてお感じのところをお聞かせいただけないでしょうか。

石田参考人 孤独・孤立対策地域協議会については、まだやはり、どういうふうなものになるんだろうというふうに思っている方も多いのかなというふうに感じております。

 まず、この協議会ができることの意義に関してなんですが、やはり、先ほどから再三出ておりますように、孤独、孤立に関しては、本当に問題が多岐にわたっているところがございます。先ほど御質問がありましたように、労働の問題であったりですとか、あるいはケアの問題であったりですとか、あと、大空参考人がおっしゃっておりましたように職場の人間関係ですとか各種人間関係というふうな形で、非常に多岐にわたっておりますので、既存の組織だけでは対応し切れない部分というのが出てくる。そうなってくると、孤独、孤立の地域協議会というものを立ち上げて、ピンポイントで問題にアプローチをしていって、さらに、個別のケースを扱ってまいりますので、その個別のケースに連携をしていきながら対応するということが非常に重要だと考えております。

 その際、今、連携というお話をしましたように、各種団体を連携させていくということも、これも、いろいろなところで出てはいるんですが、なかなか難しかったりもするので、そういったことを、それこそ民間企業なども含めていきながら連携体制を構築していって、何とか、手が届かないような人にアプローチをしていくというふうなことをやっていくということが非常に重要なのかなというふうに考えております。

 あと、既存の組織とのすみ分けというのが当然出てまいりまして、こちらも、自治体ではやはりどういうふうに運用していけばいいのかというふうな混乱の声もあるというふうなことも耳にはしております。

 こちらについて、有識者会議の中でも、そういったものというのは、無理に新しいものをつくって、いろいろな対策会議みたいなのが乱立してしまうというふうな事態というのは、またそれはそれで混乱を招いてしまうと思いますので、既存の会議の中で生かせるものがあったらそういったものも使っていきながらというふうなこともあると思いますので、そういったことというのは、もう少し有識者会議でも検討しつつ、モデルケースをつくっていきながら対応していくことができればというふうには考えております。

栗林参考人 豊島区でも、子供は子供、高齢者は高齢者の協議会の中でいろいろな個人情報の共有とかをされておりますが、やはりこういう包括するような協議会ができることによって、家族は子供もいれば高齢者もいたり、私たちは子供から入るんですけれども、親戚の方が精神疾患で孤立しているとか、結構つながっているなという実感がありますので、そういうのがトータルで共有できるという会議体ができるのは有効ではないかなと思っております。

 以上です。

大空参考人 協議会については、先ほどから出ていますように、様々な問題にわたりますので、そこを調整する機関というのが自治体にあるということは、デメリットはそんなにないんだろうと思うんですけれども、一方で、おっしゃったとおり、既に様々な協議会や推進会議があるわけですね。そうしたところと単純に会議をするだけにならないかというような懸念はあると思うんです。

 これは、例えば、調整機関が置かれるということになりますけれども、既存の施策の中で、要は既存の協議会の中で、孤独・孤立対策の中に、ある程度包括的な形で支援できるんだろうというようなことがあれば、孤独・孤立対策協議会を設置をした自治体については、そこに既存の協議会とか推進会議を分科会のような形でまとめていくとか、何らかの組織の再編を行わなければ、本当に協議会が乱立をしてしまうということだけになりかねませんので、その辺りを工夫していくことと、さらに、何度も申し上げておりますように、我々のような広域的な相談窓口、すなわちスティグマみたいなものをなるべく軽減できるような匿名の相談窓口は、これらの地域の協議会に入れないんですね。

 ですから、こうしたことを考えていくと、やはりそうした協議会を更に調整するような機関というか機能というものをしっかり設けていかないと、これはなかなか難しい、うまく機能していかない可能性が非常に高いんだろうと思います。

長沢参考人 お答えいたします。

 正直、行政の人間として、こういった対策協議会を、施策を講じていくにおいてつくるといったことについては、ある意味、すごくすっと入っていけるような感覚は持っております。

 こういったことで協議会をしっかり立ち上げていって、その中でしっかり議論をしていく、これは一般的なこととしては十分理解をされるところでございますが、先ほど来言っていますように、孤立、孤独というのは、基本的には各個別施策、各懸念事項があった中で進んできていることかというふうに思っておりますし、そこの中に、孤独、孤立といったいわゆる文言、言葉を真ん中に置いた形での取組を進めていこうということでありますので、既存の協議会だけではなくて、こういったことを真ん中に置くことの違いを、逆に、国におかれましてももう少し明確にしていただくことが必要ではないか、このように考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、今回の法律の中では、第七条に、国が行う法制上、財政上の措置の点、あるいは、十三条におきまして、国における様々な支援措置についての規定もあるところであります。

 その点で、NPO団体など、支援をするその方たちへの財政支援について、どういう形が一番望ましいのかということについて、石田参考人、栗林参考人、大空参考人に一言ずついただけないでしょうか。

石田参考人 今回の法案の設立において、NPOの支援というのは非常に重要なものとして取り上げられておりまして、やはり、NPOさんのお話を伺っていると、なかなか継続的な支援が得られないというのが非常に声が大きいんですね。

 単年度で終わってしまうと、せっかく事業が立ち上がったのに、その単年度で終わってしまうので次の年にはない。これはやはり孤独、孤立を感じている人にとっては非常に困ることであって、それまでは行く場所があったんだけれども、あるときになったら行けなくなってしまうというふうなところがございますので、孤独、孤立というものを支援というふうな枠組みで考えていくのであれば、ある程度長期的な体制があるというのが非常に大事だというふうに私は考えておりますので、そういった既存の、いわゆる一年で区切るようなものではなくて、なるべく長期という視点をにらんだ支援があるといいのかなというふうに私は考えております。

栗林参考人 私たちも、実はこの孤独、孤立に取り組むNPOの財政支援をかなり活用させていただいております。

 この取組の中の八ページですね、子供の居場所づくり、フードバンク、住まいの支援、こういうものをいろいろ継ぎはぎでサポートしていて、これはあと何年までしかないよねという中で、じゃ、これがなくなったときに、それをどう持続可能にしていくかということも、もちろんずっと予算があればいいんですけれども、逆に、それを地域の中で、みんなでその課題を共有して持続可能にしていくということもある意味必要なんじゃないかなと思っております。

 フードバンク支援は特に、やはり余剰の物が、物があることによって、孤立している方たちとつながる、すごい大切なものなんですね。こういうものって、ある意味、地域の中でもっともっと開拓していくと掘り起こされるものだと思っていて、そういうところの自立も視野に入れながらも、やはり一定期間しっかり、あと何年間はこの補助が受けられるという安心感も必要ではないかなと思っています。

 本当に、空き家とかそういうのもたくさんありますので、そこが、うまく活用する、それで住まいのことをみんなが考えるというようなきっかけにもなるんじゃないかなと思っております。

大空参考人 これは、一言で申し上げると、単年助成からの脱却に尽きるんだと思います。複数年助成によって人を雇っていく。私も経営者ですけれども、単年助成で人を雇えと言われても、これはなかなか難しいところがあります。最低でも三年ぐらいの複数年助成にするということと、プラス、NPO自身が、やはりまだ、稼いじゃいけないとか、営利事業を、当然、非営利事業しかできないわけですけれども、利益を出しちゃいけないと思っている方々がたくさんいらっしゃる。これはNPO自身も思っているところがあると思います。利益を分配したらいけないのであって、事業活動を行うことは何ら問題がないわけですね。

 ですから、我々のような自殺相談のような受益者負担が成り立たないところは厳しいですけれども、そうじゃないところは、NPO自身が稼げるようにしていくというような、そういう税制上の措置を含めて、アメリカでは株式会社とNPOの中間の組織というのを設けている州も一部あるんですね。こういうふうな第三の公共の道みたいなことも同時に模索をしていく。国だけに依存しないようなNPOの公共の在り方というのは必要じゃないかなと思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

宮路委員長代理 次に、青柳陽一郎君。

青柳(陽)委員 おはようございます。立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 今日は、参考人の皆さん、朝からありがとうございました。大変御示唆に富んだお話をいただきまして、ありがとうございます。

 私も、お伺いしたかった点は、これまでほかの質疑者から聞いていただいたので、なるべくダブらないようにお伺いしたいと思いますが、この法律の施行後、地域協議会ができるというお話、そして、どういう支援策が必要かというお話。

 特に、私は、今日、大空参考人のお話にもあったんですが、伝統的な地縁団体、民生委員の皆さんとか保護司の皆さん、社協、児童委員、こうした方々は、地域でこれまで見守りをすごく地道に行ってきてくれたわけですし、引きこもっている人を一軒一軒訪ねてくれてきたわけです。こうした地域の地縁団体、伝統的な地縁団体とNPOとの関係で、私、横浜なんですが、幾つかのNPOがありますけれども、私は一緒にやったらいいんじゃないかなと思うところでも、同じ目的であっても必ずしも連携がうまくいっていないケースがあるんです。

 ここを、今度、孤独、孤立ということでより広い対策が必要になって、しかも多くの分野に影響があるということですから、これをどう組んでいくかということについて、これは、一つ、行政が仲介するということになると思いますが、このときのポイントについて、石田先生には研究者の立場から、そして大空参考人、栗林参考人には実践している立場から、そして長沢参考人にはまさに行政の立場から、一言ずつちょっといただければありがたいと思います。

石田参考人 地域の組織をどういうふうに連携させていくかということが大きな趣旨なのかなというふうに感じております。

 まず最初に、地域の組織なんですが、これは本当に地域地域によって相当違うというふうなことが現状でございまして、ですから、都市部と、例えば地方山間部の調査なんかも私もしておりますと、地方山間部では、そもそも民生委員さんと自治会長がほぼ同じみたいなような、そんな状況もありますので、かなり地域の状況を考慮していきながら検討していく必要がある。ですから、必ずしもこういったことをやらなければいけないというわけではなくて、まず最初に地域の実態把握というのが非常に重要になってまいります。ですから、それこそ地域にどういったような団体があるのかというふうなことをまず把握すること。

 そういった中で、先ほども御質問にありましたように、やはり、同じような団体があるのだけれども、理念がすれ違っちゃうみたいなことが結構あったりするわけなんですね。ですから、同じように孤独、孤立を脱却したいというふうに思っているんだけれども、その仕方が違うから何かうまくかみ合わないなんというふうなことが結構ありますので。

 そういったときに、実態把握というふうなお話を先ほどしましたけれども、実態把握自体を、それこそ、それぞれの団体が集まって実際に懇談をするような形で進めていくと、実際に、実態も把握できるし、行政との顔見せ、行政もそこでそういった関係の方々とつながることもできるしというような形で、意外と、実態把握調査をしていきながら相互の連携を深めていくなんというふうなことも自治体によってはできたりとかもしておりますので、そういったことを活用していきながら連携をするというのがいいのではないのかなと思います。

大空参考人 ありがとうございます。

 民生委員さん、児童委員さん、大変、本当に、地域の中で、少ない活動費の中で頑張っておられるわけですけれども、やはり我々のようなNPOがなかなか連携しづらいといった地域があることも事実だと思うんですね。

 一つは、いわゆる公的な正統性というものだと思いますけれども、要は、民生委員法が一九四八年にあって、厚生労働大臣の任命で、そしてある程度やれば勲章がもらえるということで、非常に公的な正統性というのがあるわけですね。そこに対しての、ある程度、ある種のプライドのようなものを皆さんお持ちでやっておられると思いますけれども、一方で、NPOの歴史はまだまだ浅いわけです。そして、どうしてNPOがその分野をやるのかということに対しての理解がなかなか深まっていない側面もあると思うんですね。

 ですから、NPOと、そして既存のいわゆる地縁団体みたいなところがお互いに同じ立場であるんだということをまず示していくということが必要だと思うんです。お互いが協力をし合うような機関であるという位置づけ。今、どちらかというと、どこかにお伺いを立てて何かを進めるとか、そういういわゆるプロトコルがあるわけですけれども、それを平らに、フラットにしていく。その意味では、法律を作って、協議会をつくってやっていくというのは一定の意義があるんだろうと思います。

 なので、やはり、なるべく同じ立場でやっていくということをどうやって広めていくかということが、議論が進めばいいかなとは思います。

栗林参考人 私は、地域で活動しているだけに、その課題はとても実感しております。

 そもそも、私が民生委員になったのは、地域で、前の民生委員さんに、おまえ、子供のことばかりやっていないで高齢者のこともやれと言われて、もちろんやりますと受けました。先ほども言ったように、子供の孤立とか貧困を何とかしたいと思っている方たちは、高齢者のことも何とかしたいと思っている人たちです。そこがうまく融合することによって大きい力になると感じていました。

 そこで、冒頭説明しました、二〇一九年から豊島区では、民の呼びかけによって、行政の部長、課長や大企業さん、あとは、そういう歴史がある民生委員さんとか、そういう会長さんたちと平場で、この町の独りぼっちをなくすためにはどうしたらいいかというような話合いをしています。そこは、記録は取らないんです。肩書抜きで、人と人として関わってその話を議論していこう、そういう小地域の中でのしっかりしたつながりづくりができると、様々な次の課題が出てきても、みんなで何とかしようという土壌ができているなというのは感じております。

 やはりそこからつくり変えることによって、そこから関係をつくることによって、どこの地域でも、NPOと行政、様々な組織が一緒に孤独、孤立をなくしていこうということは十分可能かなと思っています。

長沢参考人 お答えいたします。

 NPOとの共存というのですか、そういったことですけれども、当然、今、既存の地縁団体、民生委員さんを始めかなりの欠員状態になっているのが実情でございます。

 こういった中で、各民生委員さんが、普通ならば一地区、二地区を持つのが、多くの地区を持たなければならない現状の中で、やはりなかなか地域の実情を把握するのが難しい状態が今浮かんできているのかなというふうに思っております。

 枚方市におきましては、校区コミュニティ協議会というのがあります。各小学校校区に、消防団の関係とか自治会組織とか校区福祉委員会とか、こういったことを束ねている校区コミュニティ協議会というものが各校区ごとにありまして、そことしっかり連携をしながら、それぞれの団体だけではなくて、総合的な取組をしていただいている協議会、こことの連携をしっかり図って、できるだけ住民さんの意見なり御希望を吸い上げている、こういった活動をさせていただいているところでございます。

 ただ、一方で、今回の参考人からもあったように、NPOさんの存在というものをしっかり行政としても認識を改めて、なかなか対人だけではいかないところを例えばAIを使うとか、いろいろないわゆるNPOさんの発想でもって新たな取組をされる、こういったことに関して、しっかり行政としては共感を覚えて手を携えていかなければならない、このようには考えております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 地域事情にしっかり合わせていくこと、そのためには、しっかり行政として、政府としても実態を把握しなきゃいけない。一方で、もう一つは、似たような政策があればなるべく一緒にやってもらって、重点化していくということが必要なんじゃないかなというふうに思いました。

 栗林参考人に伺いますが、今、民生委員もそもそもやってくださっていて、その上で、思いがあって子供食堂、子供の支援をやっていると。何で子供のことばかりやるんだ、そういうことを言われるというお話がありました。

 私の地域でも、当初、子供食堂といって始めるんですけれども、やはりそういうふうに言われることがあって、名前を親子食堂に変えましたとか、居場所食堂に変えましたとか、地域食堂に変えましたという事例が多くあるんですが、栗林さんは子供食堂にこだわってやっておられるように資料でもお見受けするんですが、そこのこだわりについて教えてもらえますか。

    〔宮路委員長代理退席、委員長着席〕

栗林参考人 地域の中で一番弱い、一人で生きていけない子供が来れる食堂ということで、ユニバーサルな食堂になっていくんじゃないかなと思っています。

 地域食堂として、独居の高齢者の方にお声かけしても、なかなか来ません。しかし、子供のために手伝ってほしいとお願いをすることによって、手伝いに来るんですけれども、その方たちの見守りの場になったり、そういうつながりができるきっかけとして、一番弱い立場の子供の食堂ですということと、やはり子供というのは社会みんなで大切にされる存在ですよねということをアピールし続けたいという思いがあって、子供食堂にこだわっております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 次に、若い世代、二十代から三十代の自殺が減らない、増加しているという問題について、石田参考人と大空参考人にお伺いしたいと思います。

 石田参考人は、私が事前にいただいた資料では、最近の若い世代の人間関係がコスパで判断するようになっているとか、人間関係が必需品から嗜好品になっているという論考を拝読させていただきましたけれども、これはどういう意味なのか、少し説明をいただきたいというのが一点と、そして、これがコロナ前、コロナ、コロナ後でどう変わり、どう変わっていくと思われるか、その点も踏まえて御説明いただきたいと思います。

 大空参考人には、まさにその世代ど真ん中ですから、まさに自らの世代として、人間関係が今どうなっているか、それがコロナでどう影響があったかについてお伺いしたいと思います。

石田参考人 若い世代の孤独、孤立に関しては、やはり重要なテーマになってきているのかなというふうに感じます。

 本当に、高校を出てしまうとクラスというものがなくなってしまって、大学に入ると、基本的には自分で動いていかないとなかなかつながりの中には入れない。そうなってしまうと、それをうまく使って、それこそ自分にとって望ましい人間関係をどんどん築いていける人というのと、なかなかそういったものを築けない人というのが結構はっきりしてしまう。ですから、基本的にはそれこそつき合う必要のない人とはつき合わないというふうなことが徹底されてしまうと、そうするとやはり選ばれない人が出てきてしまうわけなんですね。

 選ばれない人の行き場がどうなるのかというと、基本的には行き場所がない。居場所というものがあるんですけれども、じゃ、その居場所に行ってしまうと何が起きるのかというと、先ほどから再三スティグマという言葉が出ておりますように、何となく残念な感じの人が行く場所みたいになってしまうと、ますますそういったところには行けなくなってしまう。となってくると、どんどんどんどん孤独感、孤立感みたいなものを持ってしまうというような形でありまして、そうすると、人間関係がない人というのは、それはそれで困ったことに陥る。

 じゃ、人間関係がある人に関してはどうなっていくのかというと、やはりそちら側の人も、例えば、いわゆる友達というふうな人とどういうふうなつき合いをしているのかというと、友達であろうとするために一生懸命頑張って、それこそ自分のキャラをつくり上げて、自分がいかにすごい人だというふうに見せていって、友達関係を維持する。何でそういうふうになってしまうのかというと、自分がその中に受け入れられないキャラになってしまったら、そこからはじかれてしまうというふうな、そんな感じになってしまうわけなんですね。だから、そういうふうな形ですと、それこそ匿名の相談みたいなのがあると非常によいというふうになってしまう。

 ただ、そういうふうな形で逃げ道があればまだいいんですけれども、逃げ道がない場合には、人の中に入っているんだけれども、でも、ずっと孤独感を抱いている。そういったものというのがだんだんだんだん心にたまってきて、例えば精神的に病んでしまうというふうなことが出たりですとか、より深刻な自殺に関してになりますと、やはりそういったところから、だんだんだんだん関係から外れてしまう。

 それこそ、自分の中に悪いことがあったら、助け合うのではなくて、悪いことがあったらそれを見せないように人間関係から退くというのがどちらかというと若い人の間に見られてしまうので、そうなってしまったら、退いた人は、つながる場所がなくなってしまったら、それこそ非常に悪い状況になると死を選ぶというふうな形になってしまうので、若い方々の人間関係というのは、我々が抱いているような友達関係ですとか友達づき合いとかなり違うという認識が必要なのかなと思います。

大空参考人 ありがとうございます。

 私自身も、昨年まで大学生で、ちょうどコロナ禍での大学生活を経験をしました。一つ言えることは、先ほど石田先生がおっしゃったところ、完全に同意するところでありますけれども、人間関係というものを一度構築をするということと、壊れてから構築をする、これは全く別の話なんだろうと思うんです。要は、一度壊れた人間関係というのを再修復するのは非常に難しいということが明らかになったんだと思います。そして、そこに対してなかなか制度が追いついていないという側面があります。

 例えば、コロナ禍で行動制限がありました。これによって、例えば大学生だった、まあ私も大学生でしたけれども、完全に対面授業が切り替わったわけですね。完全に切り替わって、ゼミ活動も駄目だった、いわゆるサークル活動も駄目だった。本当に、いわゆる社会的な関係を築く機会そのものが奪われたわけです。そして、そこに対して、今、急激にコロナ禍から回復をしようとしていますけれども、いきなり対面授業に切り替えたところも非常に多かったんですね。

 急に対面授業に切り替えた。要は、オンライン授業というのは学生にとって苦しいだろうというのは何となく広がってきた、その処方箋として、じゃ、対面を再開しましょうとなったんですけれども、まず、友達のつくり方が分からない、どうやって人間関係を築いて、コミュニケーションしていいかが分からない。だから、いきなり対面授業になったとしても、それで友達をつくりましょうとは余りならなかったんだろうと思うんですね。

 これは非常に重要なのは、本来、いわゆるハイブリッド型、例えば、オンライン授業もやる、ただし、キャンパスは全て開放して、そのキャンパスの中でいつでも授業を取っていいよと、要は自分で選べるようにするというのが、恐らく大学の中でいえば理想だったんだろうと思いますけれども、急激な変化が起きてしまったということは非常にあると思います。

 さらに、いわゆるSNS空間というものを行政も含めて周りの我々大人たちがどう捉えているかということについて言うと、やはりある種の非日常的な空間として捉えている側面があると思うんですね。例えば、SNSの使用時間も減らさなければいけないなんという議論が起きるのはまさにその典型で、SNSというのは、もう今の子供たち、若者たち、生まれたときからあるわけですね。要は、日常生活のツールの延長にすぎないわけです。それを、ある種、非日常的なものだというふうに扱って、ともすれば、悪いものだ、悪影響を及ぼすものだというふうに扱って隔離をしようとしていくと、まさにいろいろな問題が起きてくる。

 例えば、電話相談窓口の広報というのは今でも名刺サイズのカードを配るわけですね、いろいろな自治体で。SNS相談のQRコードを載せたところを配る自治体は非常に少ないんですね。SNS相談よりかは対面の相談、実際のリアルな相談こそが一番いいだろうみたいな考え方がやはり根強くありますから、SNSみたいなものもある種の日常生活のツールの一つなんだという前提の上で、じゃ、ほかの人と比較するようなそういう状況をどういうふうに改善をしていこうかとか、違う価値観をどう広めていこうか、ちょっとそういう議論の組立て方が必要だと思います。

青柳(陽)委員 ありがとうございました。終わります。

 親としても参考になりました。ありがとうございました。

大西委員長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 参考人の皆様、本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 まず、石田参考人にお伺いしたいんですけれども、昨年十二月の政府の孤独、孤立に関する全国実態調査では、現役世代の孤独感が目立ったと。この点について、石田参考人は、未婚率の上昇とか経済的な苦しさが現役世代の孤独感につながっていると考えられるというふうに述べていらっしゃいますが、先生の分析のように未婚率の上昇とかあるいは経済的な苦しさが孤独につながっているということであれば、結局、こういった問題を改善しなければ根本的な解決にならないというふうにも思われる中で、今回の法案の意義というのを改めてお伺いできればと思います。

石田参考人 御指摘のように、本当に、未婚率が上昇したというのは結構大きなところであるというのと、あともう一つ、経済的なものというのがある。

 ただ、孤独、孤立の法案ができたことの意義というのは、先ほどからもお話をしておりますように、誰もがやはり孤独、孤立の問題に直面しやすい、なおかつ、孤独、孤立の問題というのが、実は深刻な、それこそ更なる問題につながっていく可能性があるんだというのは非常に重要なことでありまして、現役世代、じゃ、なぜ孤独、孤立に陥る人が多いのかと申しますと、先ほど挙げたような要因プラス、現役世代というのはやはり自分たちで何とかしなければいけないというふうな規範が非常に強いわけなんですね。

 ですから、基本的な社会保障というのもやはりそこまで手厚いわけではないですし、そういった人たちというのは、何とかやってそれが当然なんだ、周りの人たちも、そういったことができない人というのはむしろ努力不足なんだですとか、やる気がないからだみたいな感じになってしまうので、そうなってしまうと、基本的には、やはり現役世代で何とかしなきゃいけないと思われている人というのは弱音を吐けないですとか弱みを見せられないというのが出てきてしまう。

 そうなっちゃうと、もうどこにも行く場所がなくて、外に行ったとしてもむしろ気を張ってしまうわけなんですね。私はこんなにすごいんだ、私はこんなにできるんだと言っているんだけれども、でも、家に帰ったら、それで疲れ切ってしまってごみ屋敷になってしまう人とかというのも実際にいるわけなんです。

 そういうような形で、孤独、孤立というものが改めて法案として注目されるようになりましたら、むしろそういった弱みというものをもう少し吐露しやすくなるような、そんな社会になるのではないかなというふうには考えております。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今、社会保障がそれほど厚くはないという話もありましたが、我々は、この点、やはり同じように社会保障の機能不全というのもあるんじゃないかと思っていまして、いわゆるベーシックインカムの導入というのも主張させていただいておりまして、これも孤独・孤立対策という意味でも非常に有意義なのかなというふうに考えているところであります。

 続きまして、栗林参考人にお伺いしたいんですけれども、子供の貧困が孤独、孤立につながっているというお話、おっしゃっていたと思いますが、現場での実態、子供の貧困が孤独とかにつながっているんだという実態を教えていただきたいのと、それから、やはり子供の貧困においては御家庭における教育費の負担というのが非常に大きいんじゃないかなと思っているんですが、この点、例えば、我々は大阪でゼロ歳から大学院までの八つの無償化というのをこれからやっていくんですけれども、授業料の無償化とかもあるんですけれども、例えば、小中学校の給食費を無償化するとか、それから、小学校五年生から中学校三年生まで、子供一人当たり毎月月一万円、塾代とか習い事に使えるクーポン券を発行していくということも始める予定になっています。これは既に中学生に関してはやっているんですけれども。

 あるいは、山口県の防府市ではランドセルを無償配付したり、あるいは幾つかの自治体では中学生に制服の助成金を出したりしているというような取組が行われているんですけれども、こういった取組が、子育て世代の孤立、孤独の問題についてどういった効果があると思われるか。

 この二点をお伺いできればと思います。

栗林参考人 孤立している家庭の中ではやはり経済的に困窮されている方が多いですので、そういう意味で、教育費が軽減されるというのは、負担が軽減されるのは有効な仕組みかなと思っております。

 一方で、子供が小さいうちは、やはり、経済的なところも大変ですけれども、子供に関わってくれる人が足りないと思っています。経済的な部分と人的支援というかそういうものの両輪がうまく回ると、すごく効果的な孤立対策になるのではないかなと思っております。

岩谷委員 ありがとうございます。その両輪が大切だということを教えていただきました。

 続きまして、大空参考人にお伺いしたいと思います。

 今日のお話の中で、子供、若者サポーターの創設という、大変興味深いお話だなというふうにお伺いしましたけれども、一方で、民生委員等もなり手不足の中で、この担い手をいかに集めていくかというのはなかなかハードルが高いんだろうなというふうにも思われるわけなんです。一方で、大空参考人のNPOでは、世界二十八か国に約七百名の相談員をボランティアで抱えているということで、そういった担い手をいかに集めていくかというところについて、見解をお伺いできればと思います。

大空参考人 ありがとうございます。

 担い手不足というのは、あらゆる問題において非常に重要な、深刻な問題だと思いますけれども、同時に、担い手不足と言っているさなかで、果たしてどれだけ本当に担い手になれる層にアプローチできているのかという、また別の問題があると思うんですね。

 例えば、いわゆる民生委員、児童委員、これは本当にすばらしい制度で、持続させなければいけない制度だと思っておりますけれども、現役世代は働けないわけです、民生委員として活動できないわけですね。民生委員法上はできますけれども、現実的にはできないわけです。もちろん推薦もされないでしょうし、実際に活動するのが難しいわけです。

 私たち、コロナ禍で、本当に多くの方からボランティアをやりたいというような声をいただいています。今、年に四回相談員の採用をやりますけれども、それぞれ、いわゆるウェーティングリストみたいに登録している方というのは五百から七百人なんですね。一年間で二千人近い方が相談員をやりたいと言ってくださっているんです。何でかというと、リモートでできるからというのが一つ、そして隙間時間にできるからというのが二つなんです。要は、働きながらでも自分の隙間時間に、いわゆるギグエコノミー的にボランティア活動ができる、だから相談員として活動できるんですね。

 要は、担い手不足というのは、単純に人口が減っているとかという問題ではなくて、受け入れる側の体制の問題だと思います。一番重要なのは、いわゆる会社員の方、働いておられる方が、いかにその隙間時間でボランティア活動みたいなことを、民生委員さんを含めてやっていけるかということなんです。

 これは、必然的に、そういう現役世代を入れたら、じゃ、どうやったら両立できるんだろうという議論が始まりますから、まずは入れてみるということが大切なんですね。PTAの会長さんとか校長先生だけじゃなくて、普通の会社員の方もちょっと推薦してみようかみたいなところが増えてくると、必然的に現役世代も活動できるようになってくると思います。

 同時に、私が申し上げたのは子供、若者サポーターですけれども、今回の政府の実態把握でも、他者に対してサポートしたいと答えた者の割合が六割を超えたのは十代、二十代だけなわけですね。今、AO入試なんかもありますし、民間企業に入るときも、いかに社会的な活動をやってきたかということが、ある種の最低条件になっているんですね。

 ですから、民生委員さんのインセンティブは、ある種の勲章みたいなものがあると思いますけれども、子供、若者サポーターの場合は、そういうボランティア活動をするということが、例えば、企業に入る際に有利になるとか、大阪では公務員試験の一次試験の加点もされていると思いますけれども、こういうような取組をどんどんどんどん進めていって、社会としてそれを認めていくということも同時にやっていくと、日本は、他者に対してサポートしたいという人はやはり一定数、特に若年層はいるということが今回の調査で分かりましたから、そこをうまく生かしていくということに尽きるのかなと思います。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今教えていただいたようなアプローチをやっていけば、子供、若者サポーターの制度というのも本当にリアルに可能性として出てくるんじゃないかなというふうに分かりました。ありがとうございます。

 続きまして、長沢参考人にお伺いしたいと思います。

 今回、この法案で様々、地方公共団体に責務とか努力義務が課されているわけであります。国はどんどん法律を作っていくわけですけれども、実際、やるのは現場で、市区町村がやっていただくわけですから、そして、かつ、何をするにも当然お金がかかるということであります。この費用の負担について、国による財政支援、この在り方について、御意見をお伺いできればと思います。

長沢参考人 お答えいたします。

 これまでから、福祉行政に、多岐にわたって国の方からいろいろな支援を頂戴しております。それを、昔は補助金という形でしたけれども、最近は交付金といった形で、割と自治体の中で融通が利くような制度、仕組みにしていただいている、この辺につきましては感謝をするところでございます。

 ただ、今回、孤独、孤立といったところを重点的にやろうと。当然、既存の事業を束ねていく部分もありますし、また、これまでではなかなか、それぞれの制度、施策の中のいわゆるはざまにあるところについて新たな事業展開をしていかなければならない、こういったことが自治体の中にも求められているところでございますし、やはり、制度をつくっても実際に効果が生まれなければ、また一人一人の市民の方を救うことができなければ、何のための施策なのかといったことも問われることでございます。

 そのためには、やはり、人材も含めて、財政的な支援、これをしっかりと裏打ちしていただけることが、これが本当の形になっていけるもの、このようには理解しております。

岩谷委員 ありがとうございます。

 今、財政に加えて、人材の側面での支援ということもおっしゃいましたが、先ほども、自治体にとっては、人材の確保とか養成というのはなかなかハードルが高いというお話もありました。その中で、人材の育成とか確保について、どういった支援を国に求めていかれるか。

 また、大阪府の方では、障害者虐待防止法について、スーパーバイザーを設置して、各市町村をサポートしているという話も聞いております。こういったアイデアについては、今回の孤独・孤立対策でも有効ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

長沢参考人 お答えいたします。

 今回、いろいろな支援策、行政にとりましては、妊娠してから高齢に至るまで、いろいろな施策の中で事業をやる、その中で、やはり孤立、孤独というものが浮かび上がってきている、こういったことも先ほど御説明をさせていただきました。

 ただ、そういったそれぞれのステージにおいて、それぞれにおいて専門家を配置するのは、いわゆる基礎自治体においてはなかなか困難なところがございます。先ほども言いましたように、こういったところはやはり広域的な行政を担うところがその一翼を担っていただくことが必要、肝腎ではないか、このようにも考えておりますし、先ほどあった、NPOさんのいろいろな力添えをおかりする、こういったことも人材活用といった側面では有効なものだ、このような理解をしております。

岩谷委員 ありがとうございます。

 引き続き、長沢参考人にお伺いできればと思うんですが、重層的支援体制の中でも、協議会が既にあるかと思うんですが、今回の法案では、調整機関については一つというふうに定められております。この点、お伺いしたところ、枚方市の方では、重層の方では、市と社協が一緒に調整機関を担っているという話もお伺いしたんですけれども、その理由といいますか、そういったところをお伺いできればと思います。

長沢参考人 調整機関につきましては、まだ詳細が明らかにはされておりませんので、それについては国からの通知等々を期待しているところでございますが、現状といたしましては、今委員の方からありましたように、枚方市は、行政と、やはり実際の現場に出向いていただいているのが社会福祉協議会、また、地域の方のニーズを把握しているのも、多くは社会福祉協議会といった側面がございます。

 先ほど言いました健康福祉相談窓口、こういったことも行政の窓口にも置いておりますけれども、その中に社協からも一人派遣をしていただいて、実際に現場の声も聞いていただきながらというのが実情でございますので、そういった意味で、調整機関を、ここにしか駄目ですよとかそういったことではなくて、その辺は、やはり各自治体の状況に応じた形で柔軟な対応をしていただけるようなことを望みたい、このように考えております。

岩谷委員 柔軟な運用を求めるということで、また午後の質疑でもその辺りをお伺いしていきたいと思います。

 もう時間になりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

大西委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 おはようございます。公明党の河西宏一と申します。

 本日は、大変にありがとうございます。四人の参考人の先生方、本日はわざわざ、平日、国会に足をお運びいただきまして、また、先ほどは大変示唆に富む御意見を頂戴いたしました。本日は、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今回、孤独・孤立対策推進法案ということでございまして、孤独、孤立ということ、私、伺いましたときに最初に思い出しましたのが、これは二〇一五年と八年近く前のことになりますけれども、御存じだと思うんですが、ハーバード大学の成人発達研究所の研究であります。ちょっとこの点に関連して、まず石田参考人とあと大空参考人にお伺いしたいと思います。

 当時、TEDという番組で、四代目の研究者であるロバート・ウォールディンガー教授が、七十五年間で七百二十四人のアメリカ人男性を追跡調査して、この中には米国の大統領になった方もいらっしゃるということでありますけれども、その結論は、私たちを、人間を健康にして幸福にするのは、富でも名声でもないんだ、忙しく働くことでもない、人間関係であり、加えて、人間関係は人数よりも質が大事であるという、私、当時、非常に強い示唆、影響を受けました。

 人間関係に反して、孤独というのは、先ほど来、皆様からも様々御示唆がありましたけれども、健康にも害を与えるし、寿命、ひいては脳機能にも影響を与えるということでございまして、このウォールディンガー教授のプレゼンテーションは、よい人生はよい人間関係で築かれるということで締めくくられるわけでございます。

 公明党といたしましても、二一年に対策本部を孤独、孤立に関して立ち上げまして、千三十九件、NPOの皆様あるいは当事者の方々に聞き取りを行いまして、政策提言なども行ってまいりました。

 こうしたことを踏まえた上、今回の基本理念の中で特に公明党として重視いたしましたのが、ここの基本理念、孤独、孤立の問題は個々人の問題ではなく社会全体の課題であるということを明記をさせていただいたわけでありますけれども、まず、この基本理念に対する御評価をいただきたいと思います。

 また、先ほどのハーバード大学の研究、少し御紹介もさせていただきましたけれども、先ほど、大空参考人も、予防ということが大事だというお話もありましたが、孤独、孤立の問題、いろいろ私も勉強いたしますと、また現場でお話を伺いますと、そもそも、我が国の在り方を今後どうしていくべきなのかと。大空参考人も、若い世代としていろいろ感じていらっしゃることはあると思うんですが。家族とか住まいとか仕事の在り方、こうあるべき論には余り行かない方がいいと思うんですが、選択肢の幅というものももっと柔軟に示されていいのではないか。都市部への人口集中の副作用というものもいろいろあるんだろうというふうに思っているわけでありますけれども。

 まとめて申し上げますが、基本理念に対する、社会全体の課題であるという、ここへの御評価と、今の日本の社会の選択肢の幅、家族とか住まいとか仕事の在り方ですね、この点について何か御所見、また御示唆をいただければというふうに思っておりますが、石田参考人と大空参考人にお伺いをいたします。

石田参考人 御質問ありがとうございます。

 社会全体の課題であるからこそ、国が法律を制定して対策に取り組まなければならないというふうな側面があるとは思うんですけれども、まさに、本当に誰もが孤立、孤独というものに陥るような、そんな時代になってしまったというのが今の日本社会でありまして、それこそ、普通の生活をしていても、もしかしたら何かの拍子に、健康を害した拍子にですとか、あるいは会社が、仕事がうまくいかなかったですとか、そういった拍子に孤独、孤立に陥る可能性が出てきてしまった。

 ですから、先ほどの、最初のお話でも申し上げたんですけれども、元々、孤独感の研究というのは高齢者の研究であったわけなんですね。高齢者の研究というのはどういうふうな研究だったのかと申しますと、例えば、配偶者が亡くなってしまって、高齢になって一人になってしまって、そういった方々がどういうふうにすればいいのかというのが一九七〇年代にかなり問題になりました。ですが、もう今や本当に高齢者の問題ではない。実際に実態調査をしてみると、孤独感が高いのは若年層であるというふうな結果も出ておりますし、私たち自身が、いつ一人になるか分からない、そんな不安の中にいるわけです。

 実際にそういうふうになってしまう人もたくさんいるわけでありまして、そういったことが結果として心身の疾患につながったりですとか、あるいはもっと悲劇的な自殺につながったりですとかというふうなことがありますので、そういったことはやはり防いでいかなければいけないというふうに私自身は考えている。

 あともう一つ、やはり社会に対しての影響も結構大きい。それこそ、民主的な、民主主義というふうな形で私たちの社会は成り立っているわけなんですが、そういった孤立する人が増えると、基本的に、孤立する人というのは、社会調査の結果を見ていても、余り社会に対する意見を持たない、あるいは社会に対する関心というのを余り持たないというふうな傾向が出ております。やはり、社会に対する関心がなくなるというふうな形になってしまうと、民主的に考えを持って何かを表明すること、あるいは議論することによって成り立つというふうなことが非常に難しくなっておりますので、そういった観点からも非常に重要であるというふうなことです。

 今後の国の在り方について、選択しやすいようにというのは、まさにおっしゃるとおりでありまして、本当に今風の選択のしやすさというものがやはり必要なのかなと思うんですね。孤独・孤立対策を始めました、じゃ、強制的につながりの中に入れましたというふうになってしまうと、つながりの中が苦しいからこそ外に出ていってしまったのに、そういった人を無理やりつながりに戻してしまうと、かえって心身が苦しい状況になってしまうということはあり得ると思いますので、だからこそ、私なんかも緩やかなつながりというふうなお話をしておりまして、押しつけではないんだけれども、でも潜在的にはつながっていて、何かが起きた拍子にぱっとオンになるような、そういうふうなつながる仕組みというものが必要なのではないのかなと思います。

 ですから、そういったつながりの仕組みをつくるためには、やはり日常生活の中で身近にそういった場所があるというふうなこと、なおかつ選択肢がある程度あるということが大事だというふうに考えております。やはり、一つの選択肢しかないというふうになってしまいますと、一つのところで駄目になっちゃうと、もう駄目だみたいになってしまいますので、ここでうまくいかない、でも、こっちの方があるからみたいなものがあった方が非常にいいと思いますし、また、そういったものというのがある程度持続的に存在していないと、本当に、今日あったものというのが、あしたなくなってしまうというのでは困ってしまうというのもあります。

 あと、実際そこにある、それはオンラインでも物理的な存在でも、私自身は、差があるのかどうかというのはまだ結果が出ていないので分からないですけれども、やはりそこにあるというふうな安心感というのは非常に大きいと思いますので、そういったようなものを仕組みとしてつくっていく必要はあると考えております。

大空参考人 ありがとうございます。

 基本理念に社会全体の問題であるというふうに入れていただいたことによって、まさにこの問題、孤独の問題は、特に、やはり個人の問題というふうにまだ多くの方が認識をしておられますから、いや、そうではないんだ、望まない孤独や孤立というのは社会全体で解決する問題なんだというふうに認識をいただく上で非常に重要なんだと思います。

 また、ここで重要なのは、例えば、法律ができますと、社会福祉も含めてあらゆる問題がそうですけれども、行政、NPO、そして、既存のいわゆる地縁団体を含めたこれまで支援に関わっている人たち、そういう人たちはこの対策は届くんですね。ただ、例えば民間企業、これはゲートキーパーの制度にしたって、あらゆる、民生委員の制度にしたって、民間企業というような概念がすぽっと抜け落ちているわけです。多くの人は企業で過ごす時間が一日の中で最も長いにもかかわらず、じゃ、その企業とどうやって連携をしていこうか、若しくは会社の中でどういうふうなアプローチをしていこうかという観点が非常に薄いわけですね。

 こうしたところで、例えば孤独、孤立の場合は、官民連携プラットフォームには、経団連も含めて、いろいろな企業さんが協力をしていただいているわけですけれども、自分たちの問題でもあるんだということで、特に民間企業のそれぞれに対してアプローチを促していくという意味でも、社会全体の問題である、要は、社会福祉のいわゆる専門家だけの問題ではないんだということを示す上では重要だったかと思います。

 人間関係についてですけれども、まさに質的な人間関係を増やしていくということの重要性は認識をしておりますし、同時に、例えば今、若い人たちの中では陰キャ、陽キャという言葉がよく使われるわけですね、陰キャラ、陽キャラの略称で、余りきれいな言葉ではないわけですけれども。

 じゃ、いわゆる学校現場で陽キャと言われる人はどういう人かというと、周りにいつも何となく友達がいて、休み時間、自然とその子の机には人が集まっていって楽しそうにしている。一方で、学校では余り友達がいないように見える、ただ、実は、現実的には余り友達がいない子、すなわち陰キャと学校で呼ばれる子も、家に帰ってオンラインゲームとかでつながると、めちゃくちゃ友達がいるみたいな、こういうこともよくあるわけですね。

 人間関係といったときに、必ずしも量とか、若しくは対面の人間関係の量だけがその尺度を測るわけではないということは、考え方として持っておかなければいけないと思います。友達百人できるかなという歌があるわけですけれども、友達が百人できる必要はなくて、一人か二人、本当に信頼できる人がいれば、それは百人分に匹敵するんだろうと思うんですね。

 ですから、小さな依存先をたくさん増やすという言い方もしますけれども、質を担保するにはまず量を増やすということはもちろん重要なわけですけれども、その考え方で、これまで量はただ単に増やしてきたわけですから、これからは、これまで増やしてきた量の中でいかに質的な部分をアプローチをしていくのか。

 要は、インターネットでたくさん友達がいる人も、ある種、それは陰キャ、陽キャとかというような区別ではなくて、人間関係のスキルであるとか、コミュニケーションのスキルというのが非常に高い人たちなんだということを、まずは学校現場の先生方もそれを認識をしていただく、そこから変わってくる部分はあるんじゃないのかな、それが何か少し新しい形の人間関係の捉え方のような気がしています。

河西委員 大変にありがとうございます。

 それぞれのお立場、また今の感覚から、大変御示唆に富む御意見、御所見をいただきました。ありがとうございます。

 続きまして、栗林参考人とあと長沢参考人にも、それぞれのお立場でお伺いをいたします。

 栗林参考人、豊島の池袋ですね、これまで多くのお子さんたちの成長を見守ってこられたということで、改めて敬意を表させていただきます。

 そうした中で、池袋本町のプレーパーク、ここが学校建設で、あれは二〇一四年、廃止の危機を迎えたということで、行政に様々かけ合って代替地での継続が決まったということを伺っております。

 今回も、行政との連携、先ほど、官民連携がやはりこの法案の効果を生んでいく鍵なんだというような御示唆もあったわけでありますけれども、その上で今日伺いたいのは、先日、まさに統一地方選挙を終えました。地域の代表、最も身近な政治家の選出が今回終わったわけであります。私は、地域に根差した地方議員の関わりも、また働きも重要なんだろうというふうに思っておりますので、栗林参考人には、御自身の経験、また実際活動されているお立場から、地方議員の担うべき役割ですとか期待すべき働きがあれば、これから四年間、大事な任期を迎えますので、是非、御所見をいただきたい。

 あわせて、長沢参考人には、先ほど、市民がどこに相談すればいいか分からないというお話を何度かされておりました。枚方市でも先駆的な取組をされておりますけれども、行政の立場から、NPOとの連携、その中間に地方議員なんかは位置づけられるんだろうと思いますけれども、同様の問題意識であるとか、御意見があれば、それぞれいただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

栗林参考人 私たちの地域には、それこそ子供食堂に子供が来ていて、そこから、もう家賃が払えないということで、空き家をマッチングして住まいをサポートし、そこで暮らしが、やはり家賃が安定して低くなるとすごく経済的に安定します。そこから議員になった方もいらっしゃいます。自分が困っていた実感がある方たちがそうやって議員になったり、地域の課題を身近に感じて、それをしっかり行政に反映してくださる、こういう議員さんが同じ町にいるというのは本当に心強いなと思っています。

 あと、豊島区が、そういうふうにいろいろな意味で官民連携、企業も含めて連携ができたのは、やはり区長が、そこをすごく、オール豊島で、みんなでやっていくんだということで、一つ一つの声を聞きながらつながりをしっかりつくってきたということに尽きるかなというところもあります。

 やはり、行政と民と、議員さんも含めての、孤立、孤独とかだと本当にもう全ての議員さんが大事にする課題だと思いますので、そういう意味では、この法律、すごく有効に地域をつなぐのではないかなと思っております。

 以上になります。

長沢参考人 お答えいたします。

 今御指摘ありましたように、我々、地方自治体につきましては、各地方議会の議員さんと接する機会が多々ございます。やはり、貧困なり孤立、孤独、こういったことの情報提供につきましては、もちろん、NPOさんを始めいろいろな各種団体からのお問合せ等々もありますけれども、結構多いのが、地方議員さんからいろいろな市民さんの悩み事をお伝えしていただけている、こういった実情が正直言ってございます。

 先ほど、枚方市においても総合相談窓口ということで、できるだけ一本化した相談窓口をつくろうとして今現在やっておりますけれども、そういったことプラス、やはり議会の議員さんの方からのいろいろな御指摘なり、こういったことが起こっているよといったことも示唆していただくことが多々ございますので、そういった意味では、市民の声を直接、なかなか、本当は市民から声を上げていただくのが一番ありがたいところなんですけれども、市民にとっても、いろいろな行政というものは大きな壁になっている、存在になっているかというふうに思っております。

 そういった意味で、議員さんが日々の議員活動の中で吸い上げてこられる、こういったことの一件一件のことをお伝えしていただけることがすごく重要な案件になっている、このように理解しております。

河西委員 ありがとうございました。

 まだまだお聞きしたいことはたくさんあるんですが、時間が来てしまいました。今日いただきました御意見、御指導を踏まえまして、しっかりこの対策を前に進めてまいりたいというふうに思います。

 本日は、大変にありがとうございました。

 以上でございます。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 十五分、よろしくお願いを申し上げます。

 最初に、今回、孤独、孤立ということで、二つの言葉が並べられているんですが、孤立していて孤独な方には対応しなきゃいけない、これは当たり前のことであって、孤立していないんだけれども孤独な方、これにも対応しなくてはならないと思うんですが、最後に残る、孤立しているんだけれども孤独を全く感じていない方に対して、どれぐらい外部から、そして行政が対応しなくてはいけないのかなということについて、私自身、非常に悩ましい思いを持っています。

 それぞれの参考人の方々に、この孤独を全く感じていないんだけれども孤立している方、あえて言うと、もっと言うと、自主的に孤立の状態を選んでいる方に対して、どこまで外から、行政から対応すべきだというふうにお考えでしょうか。それぞれお願い申し上げます。

石田参考人 これはやはり、孤独・孤立対策というものを考えていく上で大変悩ましい問題でして、本当に一人がいいんだからほっといてくれというふうな方に関して、どういうふうに対応していくのかというふうなことに近いのかなというふうに感じております。

 これは本当に、じゃ、自己決定というものをどこまで尊重すればいいのかというところになってまいりまして、まず、背景を相当考えなければいけないなというふうなところがあるわけでございます。

 どういうことかといいますと、例えば、友達に裏切られてしまって、会社も解雇されてしまった、それによって、もう人と関わることが嫌になってしまったから、だから、もう私のことはほっといてくれというふうに言う人に関してどう思うかというふうなところは結構大きいと思うんですね。個人の意向というものを尊重するのであれば、そういった人たちであっても、基本的には見守るというような形になる。ただ、やはり、それ以外の背景の事情というのを考慮するのであれば、もう少し介入をしてもいいのではないかというふうな立場になる。

 ですから、日本では、どちらかというと、セルフネグレクトの場合というのは、いわゆる自分自身に対するネグレクトですね、そういったものに対しては、やはり死につながるようなおそれがあるので介入した方がよいというふうな意見の方が多い。ただ、アメリカになりますと、やはり、個人が意見を述べているんだからそれは尊重すべきだなんというふうな、そんな流れもあります。

 私個人の意見としましては、やはり、そういったものというものも、単なる個人が言っていることなんだから、じゃ、放置していいのかどうかというと、そういうわけではないというふうな考えでございます。

 じゃ、そういった方々に対してどういうふうにすればいいのか、ここは大変難しいところだと思うんですけれども、やはり、どちらかというと、本当に緩やかに見守っておく。ですから、そういった方々でも、本当に大変時間がかかるわけなんですけれども、アプローチだけはしておく。そういうふうになると、もし何かがあったときに、あるいは何か事態が変わったときに、連絡が来るですとか気づくとかというふうなことができることがあるわけなので。

 そういった方々というのは、やはり無理に入れるというのはなかなか難しい。それこそ、何か友達を派遣するみたいなような制度をつくって、友達を派遣されても困っちゃうというところがあると思いますので、そうではなくて、どちらかというと、緩やかにつながっておいて、何かがあったときにすぐにオンになる、そういった仕組みをつくっておくというのが非常に重要ではないのかなと思います。

栗林参考人 孤独、孤立、その言葉の定義とか余り考えたことがなくて、分かりません。

 しかし、地域で、やはり、そういう独居の方とかがいたら、みんなでちょっとおせっかいしていくということは、すごく大切かなと思います。実際に、関わらないでほしいとか言う方も、定期的に関わったり、ちょっとしたお裾分けだったり、そういうところからだんだん関係ができてきて、そして、実は、今度お手伝いに行こうかなとか、今度、町の何かに関わってくださるということも実際にございます。高齢の男性でもございます。

 ですので、最初はほっといてほしいと言っても、やはり、そこからの何かで人は変わっていく、気持ちも変わっていくということも念頭に置いていく必要があるかなと思っております。

大空参考人 まさにここが孤独・孤立対策の非常に本質的なところで、非常に重要なところだと思っています。

 私、個人的には、これが孤立・孤独ではなくて孤独・孤立対策であるという事実は非常に重いと思っているんですね。それはどういうことかというと、これまでの社会福祉は、やはり客観的に把握可能な孤立を中心に置いてきた、孤立をしていないけれども孤独であるという人はなかなか対象に入ってこなかったという事実があるわけです。

 そういったときに、どうすればいいかというと、やはりまずは、孤独を感じているというふうに答えている人、これを優先的に対処していく。もちろん、全ての人を平等にという考え方もあるでしょうけれども、コストというのは限られている、人的にも予算的にも限られている中で、どこを優先的にやるかというのを考えると、やはりそれは主観的に孤独であると答えている人。

 一方で、御指摘の、いわゆる、孤立をしているんだけれども別に支援は必要じゃない、孤独じゃないと言っている人、これは、ある種のハイリスク者というか、予備群という言い方が正しいのか分かりませんけれども、リスクを抱える可能性のある人として位置づけるということで、孤立を完全にしていないけれども、要は、たくさん人がいて全然へっちゃらですよという人よりかは、やはりリスクは高いというふうに位置づけて対応していく必要があると思うんですね。

 これは、孤独にしても孤立にしても、客観的に把握可能な指標があるわけです、政府統計を二回やりましたから。こうした統計というのを、なるべく地方自治体とか若しくは我々のような支援団体も自由に使えるようにして、自分たちのコミュニティーの中で客観的に測っていく。測っていったときに、本当は孤独なんだけれども、聞いたときに、いや、自分は孤独じゃないですというふうに答える人も、やはり一定数、恐らくいます。これは、直接的な孤独感じゃない、いわゆる間接的な孤独感、あなたは孤独ですかというふうに聞かないような指標の取り方でも、これは恐らく孤独について聞いているんだろうというので、いや、孤独じゃないと答えている人も恐らくたくさんいると思うんですね。

 ですから、そういうことを念頭に置きながら、主観的な孤独感を抱えている人よりかは少し優先順位は後になるが、ただ、いわゆる普通の人よりかはリスクが高い層であるというふうに位置づけるというような支援の在り方が適切ではないかなと思います。

長沢参考人 お答えいたします。

 今回の法案の中で私が肝と思っているのは、当事者の意向の尊重、この言葉だというふうに考えております。この当事者の中には、しっかり理解をされた上で孤独ではないというような判断をされているのか、情報が届いていないからそういうふうに思い込んでいるのか、こういったところの、これはヤングケアラーの問題と軌を一にするところがあるかと思います、やはり、自分自身が感じていない、そういった状況に置かれているのか、ここまでをしっかり踏み込んでいかなければ駄目だというふうに考えております。

 それと、行政の責任といたしましては、これまでは、やはり受け身的なところが行政としては多々あったと思います。今現在、できるだけプッシュ型にしていこう、アウトリーチも含めてやっていこう、こういったことにはしておりますが、現時点では孤独、孤立を感じていない、ちゃんと分かっているよ、分かっているけれどもやらなくていいんですよ、こういった方にとって、いつ何どき、どういった変化で、きっかけをもって変わっていくか、こういったことも分かりません。

 そこをしっかりと受皿として受け止める機能、これを持っているのが行政だ、このようにも考えておりますので、確かに費用面では多々かかることもあるかと思いますけれども、そこはやはりオール市民を大事にする立場で行政としては立ち向かっていかなければならない、このようには考えております。

緒方委員 ありがとうございました。非常に示唆的でありました。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 栗林参考人とそして大空参考人にお伺いをしたいんですけれども、大体、こういう孤立対策とかいうメニューをお役所であったりいろいろなところが用意して、それで来ていただける方というのはまだいいんですけれども、一番難しいのが、何をやっても出てこない方、メニューを用意してもそれに自主的に来ていただけない方というのが、私、地域で見ていて一番大変だなというふうに思うんですね。そういう方が一番悪化しやすいというのもきっとあるんだろうと思います。

 何か、そういう自分からは表にも出てこようとしない方に対するアプローチとして、どういうコツというか示唆がおありになりますでしょうか。教えていただければと思います。

栗林参考人 高齢者と子供に関しては、やはり自分でSNSでつながるとかいうのは難しいというのもありまして、民生委員ですと、個人情報をいただいて訪問します。子供も、要対協の方から住所をいただいて訪問しています。やはりそこは官民の連携がどうしても必要かなと思っております。

 やはり、そこに独居の方が住んでいるということが分かることによって、一回、二回の訪問でも、そこから何か少しずつ関係をつくっていくということしか、高齢、子供に関しては難しいなと思っています。

大空参考人 御指摘の、なかなか出てこない方というのは、やはり二パターンあると思います。そもそも制度を知らない場合、もう一つは、制度を知っているんだけれども相談できない場合。どちらの比率の方が重いかというと、主観的になり大変恐縮ですけれども、やはり前者なんですね。そもそも、行政が制度を用意したところで、なかなかそれが届いていないということだと思います。

 民間企業の例になって恐縮ですけれども、やはり、例えば、まさに洗剤とか歯磨き粉を作っている会社も、作りましたと言うだけじゃなくて、ちゃんとCMを打っているわけですよね。的確にターゲティングをして、打つんです。

 行政の場合は、先ほどオール市民というふうなお言葉もありましたけれども、やはり、ある種の平等主義のような、全ての人に届けるんだというような、そういう考え方が前面に非常に立つわけです。それは必ずしも悪いことではありませんけれども、やはり、マーケティングも含めて、いかにターゲットを絞っていくのか、ペルソナをちゃんと設定するのか、こういうことがもう大大大前提になるわけですけれども、行政広報ではそれがなかなかしづらい、若しくはできていないという側面があります。思い切ってそれをやってみるということが必要です。

 それをやるためには、実態把握が必要なんですね。何で来ていないのか、どの層が一番来ていないのかということをやらなくてはいけません。今回、政府統計を二回やって、孤独、孤立の客観的な指標も作ったわけです。そうしたものを自治体さんを含めて使っていって、その地域の中に住んでいる人が今どういう状況なのか、どうしてそこに来れないのかということを明確に出していく必要があると思います。

 その上で、いろいろなギャップが生じていると思うんですね。例えば、SNS相談ということで、今いろいろな自治体さんが自殺相談で予算をつけておられますけれども、その自治体が配っているGIGAスクールの一人一台タブレット端末では、LINEが使えないところがほとんどなんですね。皆さん、LINE相談をやるんですね、SNS相談を導入する際に。でも、実は子供たちはそのGIGAの端末ではLINEを使えないみたいな、もう本末転倒のような状況が至る所で今起きてしまっています。

 ですから、単純に玉を用意しているということだけではなくて、それが実際に届いているのかという、その現状とのギャップをまずは調べてみるというところから始まるんじゃないのかなとは思います。

緒方委員 それでは、石田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 事前の資料を読ませていただいて、なぜ日本でこんなに孤独、孤立という問題がクローズアップされてきたのかということについて御研究を非常にされておられるということだったと理解したんですが、かつての家社会があり、そして戦後ずっと流れてくる中で、個人主義が非常に強まってきて、その中のどこかに孤独、孤立というものが位置づけられるのではないかというふうに思うわけですが、先生の御所見をお伺いできればと思います。

石田参考人 本当に、孤独、孤立自体は世界的にも話題にはなっておりますし、対応しなければというふうにはなっているんですが、いろいろな調査を見ていっても、やはり、例えば相談相手がいない人というのを国際調査で見ると、日本人が一番多い、これは中高年も若者もそうなんですね。あと、古いところでいえば、ユニセフの調査なんかですと、日本の若い人は圧倒的に孤独感が高いなんというふうな結果も出ております。

 じゃ、何で日本社会で、なかなか、そうやって孤独感が高い人が多いんだろう、孤立してしまう人が多いんだろうというふうなところを考えますと、これはもう私自身の考えですが、基本的には、まず、声を上げるのが非常に苦手であるというのが挙げられます。ですから、もう本当に、今の社会のように、基本的には、自分で働いて、自分の身をきちんと保つようにして、そうではない人は社会保障に頼るというふうなことが出てきてしまいますと、人に頼るということ自体が非常にしづらくなる。

 人に頼っちゃうことというのは、何か自分が努力をしていない人であるだとか、何となく自分が何とかしていないというふうになってしまうので、それが典型的な言葉として表れるのが、迷惑をかけてはいけない、迷惑をかけちゃいけないから、だから人には頼れない、迷惑をかけちゃいけないから、だから自分が困ったことがあってもなかなかそれは表に出さない。

 ですから、生活保護を本来なら申請したい方々なんかでも、基本的には、個人の権利とは考えないで、生活保護というのは皆さんの税金でお世話になっちゃうんだから、それは皆さんに迷惑をかけることなんだから、そういったことというのはできないというような形で、結果として、日本社会というのは、基本的には孤独、孤立状態に陥った人ほど余り声を発しない、そんな社会になってしまっているというようなところがあります。

 じゃ、そういったところにどういうふうな対策が考えられるのかなというところなんですけれども、例えば、何かがあるのなら相談する機関を設ければいいんじゃないのかなというふうな考えがあると思うんですね。ただ、相談というのはやはりなかなか重いところがありまして、孤独、孤立に陥っていて迷惑もかけたくない、なるべくそういうのを表に出したくないという人に、相談コーナーがありますというふうに設けてそこに来るのかどうかというと、なかなか来ないわけなんですね。

 ですから、相談というのは本当に重みのある言葉なので、そうではなくて、やはり、ちょっとずつちょっとずつ交流をしたりですとか、ちょっとずつちょっとずつその人に触れたりというふうな形で、なるべくでしたら、それこそ日常生活に関連するようなことというものをやっていきながらその人と触れ合うですとか。あるいは、どうしても出てこない人でしたら、私の知っている事例ですと、例えば、あるNPO団体がキッチンカーを買って、それで、来てくれないのなら出張で駄菓子屋さんをやろう、それで何回も何回も出張しているうちに、だんだんだんだんその人となりだとか町の中というのが分かってきたりということがあったりだとか、そういうふうなことがありますので、いかに出てくれるような工夫ですとか、いかにつながる工夫。

 ですから、例えば、経済的に厳しい人であれば、食べ物を届ける、子供食堂にも来るのも大変だったら食べ物を届けるということをやっているうちに、相談というものより、むしろ、ほかのことをやっているうちに自然に話すというふうなことが大事になってきますので、そういう仕組みをいかにつくっていくかが大事だというふうに考えております。

緒方委員 終わります。

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里と申します。

 ラストバッターとなります。よろしくお願いいたします。

 まず、石田参考人にお伺いいたします。

 こちらの関係資料の方から、次のような文言を拝見いたしました。未婚率の上昇や経済的な苦しさが現役世代の孤独感につながっていると考えられる、また、孤立というのは社会からの排除の側面が色濃く出た現象として、例えば、色濃い側面として、経済力がない、最終学歴が低い、結婚していない、健康状態が悪い、いわゆる恵まれていない状態にいる人の孤立リスクの高さを指摘されていると思います。

 そこでなんですが、社会からの排除は、経済的な苦しさ、ここと関係があると思われるというふうに拝見しました。その点についてお伺いしたいのと、あと、さらに、経済的な苦しさを克服するには、今回の法案で国の役割としてどのようなことを求められるでしょうか。

石田参考人 経済的な苦しさというものも非常に重要な要因なんですけれども、社会的な排除であるというのが更に重要なところでありまして、結局のところ、連動してしまうというふうなところがあるわけなんですね。経済的に苦しいから、だからこそ人との集まりにも参加できないですとか、経済的に苦しいからこそ結婚にも踏み切れないという形になったりですとかというふうな形で、基本的には連動していって、最終的には社会への参加をやめてしまうということが出てまいりますので、そうなってしまうと、いかにそういうものを連動させない仕組みをつくるか。

 それこそ、かつてであれば、それこそ戦後すぐの日本社会であれば、経済的に苦しい層は経済的に苦しい層の中の人間関係というのがあったわけなんですね。そういった中で、苦しい人が助け合っていこうというものがあったんですけれども、今の社会の場合、どちらかというと、一人で生きていける、単身者がかなり多くなってしまいましたので、一人になって自分で何とかしてというふうになると、その一人の人がつながる仕組みというのがそもそもなくなってしまっている。

 さらに、未婚率も高まっておりますので、そうなってしまうと、私たちって一人のままなのか、あるいはつながりができるのかというふうな形で、若い人は一生懸命、婚活などをしたりですとか、あるいは、最近は友活なんというふうに言われていて、友達をつくる活動をしましょうということをやったりしているわけなんですね。

 というふうになっていますので、連動しているというのと、あと、昔のように、経済的に厳しい状況の人が互助でつながる時代ではもうない、それこそ、地域のつながりがしっかりしていて、その中で何とかやっていけるような時代ではないということが非常に多いのではないのかなというふうに思います。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 緩やかにつながるというのは必要なことだと思うんですけれども、一方で、御指摘にあるように、例えば介護の苦労話をやっと初対面の人と話すことができたというときに、つながるのはいいんですが、やはり問題の根本は介護の問題という側面があると思いますし、孤立した家庭に育児あるいは就労といった複数の問題があるわけですから、ここの根本的な問題とつながることの関係性というのがもう一つちょっとぴんとこないんですが、もう一言お願いできませんか。

石田参考人 本当に、つながることの問題と、根本的な問題、経済的な問題は、じゃ、経済的な給付だけでいいのかですとか、介護問題に関しては介護的なサポートを入れればいいのかというふうなことになってしまいますけれども、本当に究極的なお話を言ってしまうと、全てサービスで賄えるのかどうか。

 だから、究極的な世界を考えると、一人の自由というものを重視して、もう特に人とつながらなくても全員に何とかやっていけるようなメニューを用意しましょう、そのためにはというふうになると、やはりかなりのお金ですとか人員ですとかというものが必要になってくる。それであれば、かなりの増税というものを覚悟しなければいけないですし、やはりある程度の部分は互助で賄わざるを得ないというところが出てまいりますので、つながりがあることによって防げることもまずたくさんあるということ。

 あともう一つは、そもそも、じゃ、サービスがあったとしても、つながりが、それでつながりがある人とない人というのを分けるとどうなのかというと、やはりつながりがない人の方が心身の健康を害しやすいというところがありますので、基本的には、そういった結果が出ているのを見ると、やはりつながりの効果というのは無視はできないのではないのかなと考えております。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 続けて、大空参考人にお伺いいたします。

 助けてと言えない、頼ることが恥、このような意識はなぜつくられたかと思われますでしょうか。御自身も、かつて誰にも頼れなかった自分だったということが、資料で拝見させていただいたんですけれども、ここに、自助あるいは自己責任、こうした社会の風潮が助けてと言えない理由なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

大空参考人 自己責任というのは、やはり一つの背景としてあるんだろうと思いますが、ここで言っている自己責任というのはいわゆる懲罰的な自己責任であって、自己責任そのものが悪ではないという、そういう整理の仕方を個人的にしています。

 いわゆる自らの決断の連続によって人生が続いていくということが本来の自己責任なはずで、自己責任というのは、ともすれば責任否定論につながりかねなくて、そうなると、個人は何のために生きているんだ、自分が決断することの意義がどうなのか、要は運だけによって人生というのは続いていくのかみたいな、そういう議論になってしまいますから、責任というのはある程度自己に完結するものであって、それが必ずしも悪ではない。

 ただ、懲罰的なものが問題である。懲罰的なものというのは、いわゆる自業自得に近いと思うんですね。要は、自分がこれは悪いんだ、自分が負けなんだというようなもの、いわゆる自己否定のループみたいなものがどんどんどんどん家庭にまで蔓延をしてしまったというのが一つだと思います。

 自己責任の考え方について、元々アメリカから来ていると思いますけれども、要は、グランドキャニオンには柵がないみたいな話というのは九〇年代の後半からずっとされていると思うんですね。ただ、それが日本の中で、その考え方が輸入されてきたときに、何か自己責任というのが間違って懲罰的に捉えられてしまった。アメリカの政治学者にヤシャ・モンクという人がいるんですが、彼が、自己責任というのは、本来、他者に対して何か自ら決断によって貢献をするということを指していたんだというふうに指摘をしているわけですけれども、それが今や、ベクトルが自分の方に向いて、自己否定ということになってしまった。

 少し責任の捉え方ということを変えていく必要があって、これはある種の、言葉によって紡いでいく、例えば、生まれたばかりの赤ん坊はいわゆるスティグマはないわけですから、赤ちゃんとか教育の段階において、なるべく言葉を紡いでいくということだと思います。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 続いて、栗林参考人と大空参考人に改めてお伺いいたします。

 資金の面についてなんです。

 前半の委員の質問に対して、予算、持続可能な方がいい、もちろんそうだと思います。また、単年度助成からの脱却という言葉も出ました。そのとおりだと私も思いますし、官民連携というのも大変結構だと思うんですけれども、一方で、行政と対等なパートナーという立ち位置がNPOとしても大事だと思います。

 私も、実は十七年間、国際協力のNGOで人道支援等をやってきまして、ここの活動の独立性というのはとても大事に意識をしてきたところなんですね。なので、例えば、補助金とか委託事業費を助成されることで行政の顔色をうかがわなきゃいけなかったりとか、こうした時の政権からの独立性を担保するといったようなことをどのように今お考えかという点をお伺いしたいと思います。

 二つの方向性があると思います。一つは、国の予算を、いわゆる公助の額を増やしていくという方向性、もう一つは、寄附文化、これをもっと広げていこうという方向性で、寄附税制などを広げていくという考え方もあると思いますが、お考えをお聞きしたいと思います。

栗林参考人 私たちも行政からの委託事業がございます。しかし、委託というのは任せられているわけですので、行政はそこには口を出さないというスタンスで、信頼関係の中でずっと運営しているという形です。

 一方で、やはり寄附文化、自分たちでも寄附を集めるということは必要だと思いますが、この孤独、孤立の機能がうまくいくためにも、小さいNPOでも、とにかく地域のいろいろな身近な場ができていく必要があると思います。そのために、やはり、地域に中間支援団体が、大きいのが一つあるのではなく、いろいろな中間支援団体が充実することによって、寄附の部分も含めて、寄附だけではなく、人、物も自分たちで調達できるような、そして自分たちで育てられるような形が理想なのかなと思っております。

大空参考人 個人的には、行政とNPOというのが対等な関係であるということをNPOの側から言うのは非常に難しいんだと思っています。行政の側から言うには問題ないと思いますけれども。というのは、やはり、委託を受けている、若しくは助成、補助を受けている場合においては、これは行政の機能の一部を委託をしているというような考え方に立つと思いますから、やはり、我々としては、当然、委託を受けているということで、相手があるわけですね。

 ただ、同時に、今の行政の皆さんと日々接している中で、NPOの皆さんに私たちができないことをお任せをしている、担っていただいているんだという感覚をお持ちの方が非常に強いんだと思います。ですから、我々も厚生労働省から助成金をいただいて相談窓口をやっていますけれども、我々は厚生労働省のこのポスターは絶対駄目だみたいなことを言える関係をつくっていただいているわけですね。

 ですから、これは、なるべく行政の側の発想として、対等な関係というよりも、何でも言い合えるような関係というのをつくっていくということが一番重要なんじゃないかなと思います。

櫛渕委員 栗林参考人に、続けて、その点の関連でお伺いしたいんですけれども、栗林参考人の団体がNPO法人から認定NPO法人に更に拡大されていると思うんですけれども、そこで、寄附の増額幅というんですか、変化というのはどれぐらいあったでしょうか。

栗林参考人 認定NPOになってまだ一年しかたっておりませんので、その成果がどのくらいというのはまだまだはっきりはしておりませんが、やはり、企業さんとかそういうところからの御寄附が増えてきているなというのはございます。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 では、次にお伺いします。

 大空参考人にお伺いしたいんですけれども、こちらの資料の方で、このような文言、とても、夢というか日本の在り方として、若い世代からお聞きしたいんですが、三十年後、五十年後、百年後、日本にセーフティーネットがしっかり根づくような仕組みをつくっていく、ここが孤独・孤立対策の本質だとおっしゃっていますが、その点についてお伺いしたいと思います。目指すべき社会像も併せてお伺いできればと思います。端的にお願いします。

大空参考人 私は慶応義塾大学の総合政策学部、SFCというところの出身で、これまで、NPOの経営者をたくさん輩出をしてきたんですね。今どうなっているかというと、NPOへ行く人なんてほとんどいません。学生起業はたくさんいるんです。要は、株式会社、学生起業でも資金調達がしやすい環境ができました。政府も、スタートアップということで非常に力を入れて育成していただいている。その結果何が起きたかというと、非常に、優秀かどうかはおいておいて、これまで社会問題に関心を持っていた人たちが株式会社で起業しているんです。NPOに行かなくなったわけです。

 ただ、我々のような自殺相談、受益者負担が絶対成り立たないような相談というのは、株式会社ではできない分野があるわけです。NPOでなければ担えないセーフティーネットがある中で、どのようにそこに対して若い人材を入れていくのか。これは本当に危機的な課題であって、もう本当に十年、二十年、それぐらい先の問題だと思いますし、電話相談の業界を見ていくと、本当に超高齢化しているわけですから、非常に早急に対策を打っていく。NPOに行くことに対してのある種のインセンティブであるとか、NPO自身も稼げるようにしていくとか、そういう制度設計の再構築というのが今求められていると思います。

櫛渕委員 大変貴重な現場の声、ありがとうございました。

 恐らく大分世代が違いますが、私がNGOを始めた頃は、まだNPO、NGOという言葉がなかったんですね。一九九〇年の最初で、NPO法ができる前でした。ですから、任意団体が社会的貢献をする事業体をつくるということで、市民社会をどう厚くしていくかということにとても奔走したんですけれども、その中で、寄附税制とかをつくりつつも、今、大空参考人がおっしゃったように、だんだんそこが縮小していって起業文化の方が大きくなってきているというこの社会の在り方の変化ということは、本当に行政とNPOが官民連携でどこを目指していくのかというのは大変重要なテーマだというふうにお聞きいたしました。ありがとうございました。

 以上です。

大西委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 この際、休憩することとし、午後一時から委員会を再開します。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

大西委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、孤独・孤立対策推進法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房孤独・孤立対策担当室長山本麻里君外四名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。青柳陽一郎君。

青柳(陽)委員 立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 この新法の孤独・孤立対策推進法の最後の一時間の質疑です。

 冒頭、ちょっと苦言を申し上げますが、定刻になって、定足数もそろっていない、筆頭理事も来ていないということに対してはしっかり苦言を申し上げたいと思います。

 その上で、これまで十一時間四十分、多くの論点を与野党それぞれの視点で議論してきました。孤独・孤立対策のこの法の趣旨や背景にあるものは何か、あるいは言葉の定義、自殺対策、引きこもりの問題、特に、コロナ後の子供、若者の自殺の減少が、止まっていない、増加してしまっている、そして貧困や経済、NPO等の組織の支援、外国人や在外公館、自治体の取組など、どれも重要な指摘だったというふうに思います。いい質疑だったのではないかなというふうに思っております。

 孤独、孤立の問題というのは、社会のあらゆる層、あらゆる分野、そして多くの事象に関わる、そして多くのことに影響を及ぼす重大な課題でありながら、一方では、なかなか政治課題として取り上げにくいという問題、そういう側面もあるというふうに思っています。しかし、この問題を放置せずにしっかり正面から提起して、孤独、孤立の問題を社会に周知していく、このことの大切さ、これがこの国会の議論を通じて私自身も勉強になったところでございます。そうした意味では、内閣府、内閣官房、そして小倉大臣にも敬意を表したいというふうに思います。

 さはさりながら、この法案が今日採決されて参議院に回って施行されるわけですけれども、仏作って魂入れずということになってはいけません。今後の運用と取組、これをしっかりやっていただきたいというふうに思っております。

 私も、先週末、地元で、NPOの皆さん、保育の関係者、民生委員、児童委員、社協、自治会、町内会など、いわゆる地域で孤独・孤立対策に取り組んでこられた皆さんに意見を聞きましたが、皆さん異口同音、こういう法律は必要だよね、大切です、是非早期制定をして取り組んでもらいたいという声しかありませんでした。そのぐらい地域でも問題意識がある孤独、孤立だと思いますけれども、ただ、一方で、この法律が審議されていてこういう法律ができるんですよということは誰一人知らなかったわけでございまして、今後の広報、情報発信、そして地域協議会の運用についてはしっかり取り組んでいただきたいと思います。これは指摘にとどめたいと思います。

 私が多くの地元の皆さんの意見を聞く中で、その中の一人に、津久井やまゆり園事件の植松聖死刑囚と面会して手紙を交換してきたということで知られていて、朝日新聞や神奈川新聞にも連載を持っておられる和光大学名誉教授の最首悟先生とお会いしてお話を聞いてまいりました。

 最首先生は社会学者であり思想家でもあるんですけれども、私が印象に残ったのは、日本語以外に世界に存在しない言葉として、居るという言葉、あるいは甘えるという言葉、日本語にはありますけれども、世界にはこの言葉はないそうでございまして、そして、この視点が孤独、孤立問題を考える上で必要だというふうに説かれております。

 つまり、自分の居場所がない、あるいは甘えることができる存在がない、頼り頼られる、そういう関係がないというのが孤独であり、そして、それは、今日の参考人質疑でもありましたけれども、自己責任とか自立、こういうものを促し過ぎるとそういう状態に追いやってしまう、居場所をなくすことになっちゃう。自立しなさい、あなたの自己責任だということを言えば言うほど居場所がなくなっちゃうんだと。そして、それがひいては今の少子化対策、少子化につながっているのはこういうことが根本原因にあるんだというのが最首先生のお話でございました。人間関係の土台は、頼り頼られるのが一つの存在、この法案を通して、共に支え合う社会、居場所のある社会をつくってほしいというのが最首先生の言葉でございました。

 小倉大臣には、今の最首先生の言葉を聞いて、感想をまずお聞かせいただきたいと思います。

小倉国務大臣 青柳委員に御紹介をいただきました最首先生の御意見は大変示唆に富むものであり、政府における孤独・孤立対策の考え方とも相通ずるものがあると受け止めております。

 例えば、孤独・孤立対策の基本理念を重点計画に記載しておりますが、孤独、孤立は当事者個人の問題ではなく、社会環境の変化により孤独、孤立を感じざるを得ない状況に至ったものである、また、孤独、孤立は当事者の自助努力に委ねられるべき問題ではなく、つまり自己責任に帰するのではなく、社会全体で対応しなければならない問題であると考えております。

 また、自立するということは、本来は少しずつ誰かに頼る、依存することによって達成されるものだと考えておりますが、孤独・孤立対策の基本施策におきましても、孤独、孤立の当事者などが支援を求める声を上げることや人に頼る、つまり甘えることはよいことであるとの考え方に立って、声を上げやすい環境整備の取組を進めてまいります。

 さらに、居るという表現を御紹介をいただきました。孤独、孤立の当事者等にとって、人とのつながりを築けるような居る場所、すなわち居場所があることが重要であると考えております。

 こうした御紹介をいただいた最首先生の考え方もしっかり大切にしながら、相互に支え合い、人と人とのつながりが生まれる社会を目指して、孤独・孤立対策に取り組んでいきたいと決意をいたしました。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 こうした自立と自己責任ばかりが叫ばれる社会から、共に支え合う社会、居場所のある社会、新しい柔軟な社会をつくっていく必要があるということでございますが、これは行政と政治だけではなし得ないということで、官民の連携が必要だというふうに思います。

 この発想や理念は、二〇〇九年当時注目された言葉で、新しい公共、こういう理念や概念が当時の民主党の鳩山政権では取り上げられていました。新しい公共というのは、民主党政権が終わってしまってほとんど聞かれなくなりましたけれども、実はこれは、今、岸田政権が掲げている新しい資本主義の概念と親和性が高いのではないかというふうに私は考えておりますけれども、小倉大臣に、この新しい公共の評価と、新しい資本主義の関係について御所見を伺いたいと思います。

小倉国務大臣 昨年の六月に閣議決定いたしました新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画においては、多くの社会的課題を国だけが主体となって解決していくことは困難であり、NPOを始めとする民間が主体的に課題解決に取り組める社会を目指す必要があるとされているところであります。こうした方針は、青柳委員御指摘の新しい公共の考え方にもつながるものと考えております。

青柳(陽)委員 私は民主党政権にはいませんでしたけれども、こうした新しい公共の概念というのは、今まさに再評価されてもいいんだろうというふうに考えております。

 次の質問に移りますけれども、孤独・孤立対策地域協議会と、NPO、地縁団体、地縁団体というのは例えば社協とか自治会、町内会とか民生委員、児童委員、保護司とか、そういう方々との連携と関係、そして課題について伺ってまいります。

 まず最初に、ちょっと資料を配付させていただきました。私、地元が横浜市でございますが、横浜市における、孤独・孤立対策にもなると思われる取組事例を明示させていただきました。

 既にこれだけあるわけです。こうした既存の会議があるわけですね。高齢者の問題、児童、子供たちの問題、障害者、生活困窮者、こうした会議がもう既に幾つもあって、もう既に対策を協議しているわけでございますが、こうした団体と、それから今度新しく努力規定で設けられる孤独・孤立対策地域協議会との関係はどうなるのか、これを分かりやすくちょっと説明していただきたいと思います。

 午前中の参考人質疑でもあったんですけれども、既にある会議を潰して地域協議会をつくるのではなくて、地域で行われている会議をしっかり実態把握をした上で、その地域の実情に合ったそれぞれの地域協議会というものがあってもいいでしょうというお話がありましたし、また一方で、似たような会議ばかりつくってもしようがないので、この機会に似たような会議体は少し束ねて重点化するということも必要だろうと。両方必要なんじゃないかと思います。

 そのためには、まず、地域でどういう会議があるのか、どういうことを議論しているのかという実態把握も必要じゃないかというのが今日の午前中の参考人質疑でありましたけれども、私、これは当然のことだというふうに思っておりまして、そういうふうにやっていくんだということをちょっと小倉大臣の方からも改めて御説明をお願いしたいと思います。

 それから、加えて、ちょっと横浜市の特徴だけ一つ言うと、この資料の、「ごみ屋敷」区対策連絡会議、ごみ屋敷、ごみにまみれて生活しちゃっている人の対策、これまで大体環境の部門とかごみの部門が対策をやっていたんですよ、ごみ屋敷問題は。

 でも、実はごみ屋敷になっちゃう理由が孤独、孤立に起因しているんじゃないかということで、これは、政府の有識者会議のメンバーで、今日、朝、参考人にも来ていただいた石田先生も、ごみの問題は孤独、孤立からくるということで、横浜市は、ごみ屋敷は福祉部門も担当するようになっています。

 何が言いたいかというと、繰り返しですけれども、地域の実情に合わせて地域協議会のたてつけを決めていってほしいと思いますが、御答弁をお願いします。

小倉国務大臣 まず、前半の御質問の、既存の組織と地域協議会、何が違うか、分かりやすい説明をということでしたが、孤独・孤立対策地域協議会では、地域ケア会議、要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協といった既存の組織で対応ができないような複合的な課題を抱えているケースを対象に、幅広い関係者が連携した支援を行うことを想定をいたしております。

 後半の方のお尋ねでございますが、他方で、やはり関係者からは、こういった新たな協議会の設置が各自治体や現場の関係者の更なる負担につながらないか、そういった懸念の声もいただいているのも事実であります。

 そういった中で、各自治体や関係者の過剰な負担にならないようにする必要があると強く感じておりますので、協議会の運用におきましては、こうした既存の組織を活用して、各自治体や地域の実情に応じた形で設置をすることも可能とすることを想定をいたしております。

 さきの委員会で、私、広島県の三原市で様々な協議会を一つにまとめて非常に効果的に運用されている事例を御紹介をいただきました。自治体のそれぞれの御意見もあろうかと思いますので、協議会の運営等の考え方につきましては、地方自治体を始めとする関係者の意見も聞きながら整理をして、法案成立をしていただいた暁には、法の施行までの間に通知等でしっかりしたものをお示しをしたいと考えております。

青柳(陽)委員 是非お願いしたいと思います。まさに、束ねることと実態に合わせることと両方の視点でお願いしたいと思います。

 もう一つは、午前中も質疑でお伺いしたんですが、地縁団体とNPOの関係ですね。地域の見守りは、従来、伝統的には自治会、町内会、社協、民生委員、児童委員が担ってきたわけですけれども、最近ではNPOが登場しているわけです。このNPOと伝統的な地縁団体との関係がうまくいくように、行政が仲立ちすべきだろうというふうに思っております。

 一方で、民生委員さんとか児童委員、担い手が不足しているのはどこも同じような状況だろうと思っていますけれども、そうした中で、民生委員さんに引継ぎをやっていこうとか、新しい民生委員さんに、民生委員になっていただこうと思う方にその仕事を見てもらおうと思うと、個人情報の壁にぶち当たるんですよ。訪問していくのを、一緒にその場面を見せよう、あるいはやり方を教えようと思っても、まだ民生委員になっていない段階では、個人情報の関係で、インターン的な活動が本当にいいのかどうかというのを常に気にしながらやらなきゃいけないということが実態としてあります。

 一方で、これから設置される孤独・孤立対策地域協議会は個人情報の取扱いが可能になる規定が盛り込まれていまして、伝統的に地域で見守り活動を行ってきてくれた自治会、町内会、民生委員さんの規定はこれまでどおりですけれども、地域協議会に入れば個人情報の扱いが一定認められるというのは、この整合性をどう取っていくかということについてもちょっと御説明をいただきたいと思います。

小倉国務大臣 孤独、孤立の当事者等や家族等が置かれている具体的な状況は多岐にわたっておりまして、また、複合的な課題を抱えておられる方も、先ほど申し上げたように想定されます。こうした個々の当事者等への支援に当たりましては、当事者等への支援を行う者それぞれ単独で対応するのではなく、関係者が相互に連携を図りながらチームで対応していくことが求められると考えております。

 こうしたことから、本法案では、孤独・孤立対策地域協議会の設置に係る規定を設けると同時に、地域協議会を構成する関係機関等が共通の情報と認識の下で効果的な支援を実施することができるように、所要の規定の整備も併せて行っております。

 この地域協議会を構成する関係機関等には、青柳委員御指摘のような、長年地域で見守りや相談支援を担っていただいている民生委員や社会福祉協議会も含まれ得ると考えております。こうした地域の関係者に協議会へ参加いただくことが、社協なりあるいは民生委員の方々の活動の更なる充実にも資するものと考えております。

 各地域におきまして、先ほど、既にある活動と地域協議会、どう整理をつけるのかというお尋ねがありましたが、それぞれの実情に応じた実効性ある地域協議会を運用いただけるように、先ほど申し上げたように、法施行までの間に、関係者の意見も丁寧に聞きながら、この地域協議会に係る規定の趣旨や運用の考え方について整理をいたしまして、それを地方自治体や幅広い関係機関等への丁寧な説明に努めてまいりたいと考えております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、あと二問行ければいいなと思っていますが、孤独・孤立対策と医療の視点、かかりつけ医の関係について伺いたいと思いますが、コロナで浮き彫りになった我が国の課題の一つは、医療提供体制、医療へのアクセスの問題です。

 この間、残念ながら、自宅放置死とか医療難民という言葉まで生まれてしまいました。必要なときに必要な医療にアクセスできること、今後、医療のオンライン化が進めば進むほど、医師と患者、日頃の関係が大切になってくるというふうに思います。困ったときに相談できる医師がいるというのが安心感につながる。そして、それは予防にもつながります。かかりつけ医の存在というのはこれから更に大きくなってくると思いますが、これ自体はちょっと小倉大臣の所管じゃないんですけれども、コロナの有識者会議でも提案されている内容でございます。

 体の予防もかかりつけ医ですけれども、心の予防もかかりつけ医が担うとよりいいんじゃないかということでございまして、この孤独・孤立対策も心の予防ですから、これは心のケアとして医療へアクセスが可能になる体制をつくるべきじゃないかという指摘があります。

 望まない孤独というのは心身に影響を及ぼして、これは実は医療費の増加にもつながるし、生産性の低下につながっているというデータもあります。英国は、かかりつけ医が孤独を感じる患者に地域活動を紹介するという取組もあるということですから、我が国でも、こうした心の不安を抱えている人と医療、医療と支援団体、かかりつけ医と予防、こうした取組を検討すべきだと思いますが、これは小倉大臣か、厚労省さんかな。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 先生冒頭おっしゃいました、感染症、コロナ禍においてのかかりつけ、これに関しましては、昨年十二月に改正感染症法を成立させていただきました中で、都道府県が医療機関と平時から協議を行って医療機関をあらかじめ定めておく、確保しておくという取組が成立をいただいたところであります。

 また、先生御指摘いただいた、かかりつけの方のお話でありますが、現在参議院で御審議をいただいております医療法の一部改正法案、この中で、かかりつけ医機能といたしましては、身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能というふうに規定をしておりまして、まさに先生が御指摘になった予防、こういったところもかかりつけ医機能の定義の中には含まれているところであります。

 その上で、こうしたかかりつけ医機能の中で、必要な機能を確保する具体的方策について都道府県と地域の関係者の間で協議をすること、それから、かかりつけ医機能を有する医療機関を適切に国民の皆様が選択できるように医療機能情報提供制度による情報提供の強化、こういったことを法案の中に盛り込んでいるところでございまして、法案成立後にはこうした取組を進めてまいりたいと考えております。

青柳(陽)委員 もう一問あったんですけれども、時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

大西委員長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いいたします。

 まず、今月十五日に和歌山で岸田総理に爆発物が投げつけられるという事件がありました。安倍元総理への襲撃事件の被告もそうですし、今回の被疑者も、現時点では、テロなどと関わりがなかった個人がインターネットなどを通じて過激化してテロや犯罪を引き起こす、いわゆるローンオフェンダーではないかとも言われております。

 このように自分で計画して準備をして犯行を実行するようなローンオフェンダー型の犯罪というのは、事前に探知することが難しいと言われています。

 一三年の法務総合研究所の報告によりますと、無差別殺傷事件五十二人を調べたところ、被疑者ですね、犯行時に三十九歳以下が三十七人いた、月収が二十万円以上あったのはそのうち三人のみで、さらに、親密な友人がいたのも三人のみだったという報告があります。

 すなわち、十分な収入を得ることができていない中で、交遊関係も少なく孤立、孤独化した若者が社会への不満を募らせてローンオフェンダーのような犯行に至る姿が、厳密な因果関係というのは分からないわけですけれども、そんな姿が浮かび上がっているとも指摘がされております。

 こういったローンオフェンダー型の犯罪を防止していくためには、警護や取締りを強化することも必要ではありますけれども、やはり抜本的対策としては、今回の法案のテーマでもあります孤独、孤立を含む社会的課題を社会全体で解決していくことが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えさせていただきます。

 議員の御紹介いただきました事件、これにつきましては、具体的な背景について今不明な部分がございまして、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきますが、その上で、様々な形で困難を抱え、孤独、孤立で悩み苦しんでいる方には、一人で抱え込まず、身近な人や相談窓口に相談していただきたいというふうに考えております。

 内閣官房では、孤独・孤立対策ウェブサイトで相談窓口や支援制度を御案内するなどの取組を行っております。これらも含めまして、政府としても、孤独、孤立に悩む人を誰一人として取り残さない社会を目指して、孤独、孤立で悩んでいる方々へ必要な支援が行き届くようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

岩谷委員 ありがとうございます。

 午前中、参考人に質疑をさせていただきましたけれども、大空参考人とか石田参考人等が、日本社会には、悩みをさらけ出すことは恥ずかしい、負けだといった、そういうスティグマがある、こういったスティグマを含めて社会全体で孤独、孤立問題に対する意識や雰囲気を変えていかなければならないということを強調していらっしゃいました。

 この法案によって、孤独、孤立のための相談体制の充実とか、つながりの場づくりというのが行われても、やはり誰かに頼ることはよくないんだというようなスティグマを根絶しなければ利用につながらないわけです。そのためには大臣はどうすべきとお考えでしょうか。

小倉国務大臣 孤独・孤立対策におきましては、岩谷委員御指摘のように、他人や制度に頼ることについて、よくないことであるという認識を持ったり、恥ずかしさや他者への迷惑を過度に意識するいわゆるスティグマを解消して、当事者等が相談等の支援を受けることができるようにすることが極めて重要と考えております。

 御指摘されましたように、孤独、孤立に悩む方が必要な支援につながれるよう、支援を求める声を上げやすく、周囲の方が気づきや対処ができるようにするための普及啓発活動、こういったものも、これまでも続けてまいりましたが、更に強化をして、こうした活動を通じて環境整備を推進をしていきたいと考えております。

岩谷委員 続きまして、政府の全国調査では、これも午前中も触れたんですが、現役世代での孤立感の高さが目立つ結果となっております。

 石田参考人は、未婚率の上昇とか経済的な苦しさが現役世代の孤独感につながっていると述べておられますし、また、栗林参考人は、貧困対策はできても生活が楽になったと実感を持つ人は少ないようだ、子育てには多額の費用が必要で、政治には、高校を卒業するまでに必要な制服や教科書などを含む全ての教育の無償化を期待しますと述べておられます。

 この点、我々は、やはり社会保障に問題があるんじゃないかということで、ベーシックインカムを主張させていただいておりますし、また、大阪の方では、月一万円の塾代助成クーポン、習い事助成クーポンを配ったり、小中学校の給食費の無償化なんかもやっています。

 孤独・孤立対策として、相談体制の充実とか、つながりの場づくりというのはもちろん重要なんですが、やはりこういった経済的な苦しさとか教育費の負担等を改善しなければ、幾らそういった相談体制の充実等をしても根本的解決にならないんじゃないかと思うんですが、この点、大臣のお考えはいかがでしょうか。

小倉国務大臣 先日公表しました令和四年の孤独・孤立の実態把握に関する全国調査結果によりますれば、孤独感に強い影響を与えたと考えられる出来事として、例えば、いじめやハラスメント等を含む人間関係による重大なトラブルや、病気やけが等の心身の重大なトラブル、また、独り暮らしのほか、岩谷委員御指摘の経済的な苦しさに相当する生活困窮、貧困などが上位に挙げられております。

 こうした調査結果も踏まえて、孤独・孤立対策では、孤独、孤立の当事者等が支援を求める声を上げやすく、周りの方が当事者への気づきや対処をできるための環境整備、また、日常の様々な分野における緩やかなつながりを築けるような多様な各種の居場所づくりといった取組を進めようとしているところであります。

 こうした孤独、孤立の予防の観点からの取組は、孤独、孤立の状態をそもそも生じさせないという意味で、根本的な対処であるとも言えます。

 他方で、孤独、孤立の要因の根本的解決に関する委員の御指摘につきましては、未婚率の上昇に関しましては少子化対策や子育て支援施策により、教育費負担や経済的な苦しさについては経済的困窮に対応する各種支援施策により対処されるべきものだと思っておりますが、こうした既存の制度、施策の推進と相まって、孤独、孤立の問題に私どもとしても取り組んでいきたいと考えています。

岩谷委員 おっしゃるとおり、この法案だけで全てがうまくいくわけではありませんから、そういった根本的なところの解決策を是非進めていただきたいというふうに思っております。

 また、本日、枚方市の副市長の長沢参考人にもお話を伺いました。その前に枚方市にもいろいろヒアリングをさせていただいたんですけれども、やはり国による財政支援の要望が多く聞かれました。例えば、重層的支援体制整備事業を実施している自治体が孤独・孤立対策を重ねて担う事例というのはやはり想定される。重層を本格実施すると国から交付金が一定下ろされているわけですけれども、孤独・孤立対策に資する事業を重ねて実施した場合に交付金は増額されるのかといったお話とか、この法案の第四条の、地方公共団体の責務として、その区域内における当事者の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有するとあるが、これに対して国からの財政支援の裏づけはあるのかとか、様々、財政的なところについての不安の声というのを事前に伺ったんです。

 やはり法律を作って地方に、自治体にお願いする以上、財政的な裏づけというのもしっかりやってほしいというのは当然の意見だと思うんですが、大臣、この点はいかがでしょうか。

小倉国務大臣 委員御指摘の地方自治体に対する財政措置につきましては、内閣官房で現在行っております地方版孤独・孤立対策プラットフォームに係る調査研究事業の実施状況を踏まえ、地方公共団体の具体的な事務と併せて、財政当局等とも協議しつつ検討したいと考えております。

岩谷委員 これは是非、大臣、頑張っていただいて、予算を獲得していただきたいと思っております。

 次に、ちょっと順番を入れ替えてお話しします。

 さらに、財政的支援だけじゃなくて、午前中の参考人の意見でもあったんですが、人材の確保とか養成についてもなかなか厳しいものがあるというお話がありました。これは十二条で努力義務として地方にも国にも課されているわけですけれども、やはり子供から高齢者まで、あるいはLGBTの方とか外国人の方など多様な対象がいる中で、ライフステージの全ての場面で専門人材を確保、養成を行わなきゃいけない、なかなかこれは大変だと。

 現時点で、この養成とか確保に関して何か具体的な案というのはお持ちなのかどうかお伺いしたいのと、それから、これも午前中に述べさせてもらったんですけれども、大阪府では、障害者虐待防止法への対応で、スーパーバイザーを設置して市町村を支援しているという例がありますけれども、こういったアイデアというのもよいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 人材の育成、確保に向けた取組について、具体的には、当事者等の支援に当たる方が孤独、孤立に関する理解や知識を習得できるような工夫を行うことや、家族や友人など当事者の周りや身近にいる人が理解を深めて当事者の状況に気づき、手助けできるようにするなど、声を上げやすい、声をかけやすい環境整備に向けた取組等を想定しております。

 議員に御紹介をいただきました大阪府の事例につきましては、障害を理由とする差別に係る相談事案に的確に対応し、解決を図るため、大阪府に配置された四名の広域支援相談員が、市町村に配置された相談窓口等において相談事案の解決を図るための助言や調整等を行っているとお聞きをしております。

 この事例のように、当事者等への支援を行う人材の資質の向上のために、都道府県が市区町村を支援することも大変重要であると考えております。

 政府としては、都道府県による市区町村支援の好事例を把握して他へ紹介するなどして、全国各地の地方自治体で孤独・孤立対策が円滑に推進されるように努めてまいります。

岩谷委員 そのように是非進めていただきたいと思います。

 最後、ちょっと質問を飛ばしまして、十七条の関係なんですけれども、一つの機関、団体に限って調整機関を指定できるとなっているんですけれども、これも、枚方市の例では、重層に関してですけれども、市と市の社協が協働で調整機能を担っているというのが実際らしいんですね。ですから、一つに限定せずに、実際は二つの調整機関が併存できるような運用というのも工夫していただきたいと思うんですが、いかがでしょう。

山本政府参考人 お答えいたします。

 孤独・孤立対策地域協議会には、自治体の関係部署、NPOなどの民間団体、社会福祉協議会、社会福祉法人など、孤独、孤立の当事者等への支援に関係する機関や団体が幅広く参画することが想定されます。

 このような協議会を効果的に機能させる観点から、協議会を設置した地方公共団体の長は、協議会の事務の総括、構成機関等が行う当事者等への支援の状況把握及び構成機関相互の連絡調整を行う機関として、構成機関等のうちから一つの機関又は団体に限り調整機関として指定することができることとしています。

 この調整機関については、構成機関相互の連絡調整等に係る責任体制の明確化が重要であることを踏まえて、その指定を一つの機関又は団体に限定しているものです。なお、この調整機関の指定は任意でございまして、地方自治体においてその地域の実情に応じて指定の必要性を判断いただくこととしております。

 なお、議員の方から御紹介がございました、また午前中の参考人のお話にもありました枚方市の事例につきましては、重層的支援体制整備事業の支援会議の事務というふうに心得ております。社会福祉法に基づく事業でございまして、こちらでは調整機関という法律上の規定はございません。したがいまして、市と社会福祉協議会が地域の実情に応じて、最もよい形での連携を取る形で事業が実施されているというふうに承知しております。

 私どもとしては、先ほど来御質問が出ておりますように、この度の地域協議会につきましては、類似の既存の協議会が多々ございますので、各自治体や関係者の過剰な負担にならないようにしていきたい。協議会の運用におきましては、既存の組織も活用して、各自治体や地域の実情に応じた形で設置することも可能とすることを承知をしております。

 この点につきまして、施行までに、関係者の御意見も伺いながら考え方を整理しまして、通知等でお示しをしたいと考えております。

岩谷委員 ありがとうございます。是非、通知等、今後の運用で、調整機関と準調整機関みたいな形になるのか分からないですけれども、そういった併置ができるような運用というのも是非御検討いただきたいというふうにお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 孤独・孤立対策推進法案について、最後、質疑をさせていただきたいと思います。

 時間が限られておりますので、早速質疑に入ります。

 孤独、孤立に関する国民の理解の増進等に関する施策を行う際には、社会のあらゆる分野において必要な啓発活動を積極的に行うことが必要だと、本日の参考人質疑でも改めて確認をさせていただきました。

 本法律案の第九条では、社会を構成する多様な主体の参加による自主的な活動に資するよう、必要な啓発活動を積極的に行うよう努めるというふうに記載があるんですけれども、この条文の解釈として、少なくとも学校や企業、地域など社会のあらゆる分野、あらゆる世代に対して積極的に啓発活動を行うよう努めることを含意しているということを大臣に是非明言していただきたいと思います。よろしくお願いします。

小倉国務大臣 法案の基本理念におきましては、孤独、孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであること等に鑑み、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図っていくことが重要である旨を定めております。

 この理念の下で、法案の第九条においては、広く国民一般の関心を高め、その理解と協力を得るよう必要な啓発活動を積極的に行うこととしておりまして、この中には、私どもも浅野委員のお考えと同様に、学校や企業、地域など社会のあらゆる分野、あらゆる世代に対して積極的に啓発活動を行う趣旨が含まれているものと理解をいたしております。

浅野委員 ありがとうございました。

 次の質問です。

 今申し上げましたように、学校や企業、地域などでの取組の必要性というのがやはり大変重要だと私も認識しております。そこで、本法案の第十一条で規定されている文言の中に、協議の促進その他の関係者相互間の連携と協働を推進するために必要な施策という文言があるんですけれども、この言葉の解釈についても改めて確認をさせていただきたいと思います。

 今申し上げましたように、学校や企業、自治会等での孤独、孤立に関する啓発活動の在り方、これについても、地域内での協議において検討をされるということを含んでいるという条文である旨を大臣に確認させていただきたいと思います。

小倉国務大臣 孤独、孤立の問題は、法案の基本理念でも定めておりますように、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図っていくことが重要と考えております。

 こうした理念の下で、法案の第十一条におきまして、地方において様々な関係者が相互に連携し協働して、孤独・孤立対策に関する施策の効果的な推進を図ることとしておりまして、この中には、これも浅野委員御指摘の、地域の学校や企業、そして自治会などを含むあらゆる分野での啓発活動の推進も含まれていると考えております。

 地方における様々な関係者の連携、協働の取組として、現在、地方における孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム、これのモデル事業を実施しておりますが、当事業では、プラットフォームを設置した上で、住民への情報発信、普及啓発活動などに取り組んでいただいているところであります。

 政府としては、こうした事業の成果を全国の地方自治体に共有するとともに、本法案成立の際には、法の施行までの通知において、浅野委員が御指摘の趣旨も含めてお示しをしたいと思っておりますので、こうした啓発活動の在り方、この検討も含めて、官民が連携した啓発活動の推進を図っていくつもりでございます。

浅野委員 明快な御答弁、ありがとうございました。

 地域の中で、地域の様々な方々が、住民の孤独・孤立対策、啓発活動の在り方について、是非私も議論が活発になってほしいと思っているんですけれども、是非御検討いただきたいのは、今、悩みを持たれている方同士で自己開示、話す機会を設けてお互いの悩みをシェアしたり、あるいは様々な共感に基づいて支え合いの環境をつくるという、ピアサポートという手法があるそうです。これは諸外国でも、アメリカなどでは普及している手法なんだそうですが、このピアサポートは、非常に、悩みを持つ人々にとって多様なメリットをもたらすというふうに評価されております。

 是非、今後、小中高等学校や企業、地域の中で、このピアサポート、いわゆる悩みを持っている方々のみならず、一般の方々も含めて、お互いに意見交換、自己開示を通じて、今日の午前中もあったんですが、自分のことを話す機会というのをしっかりと地域レベルで確保することによって、孤独、孤立の未然防止が自然にできる環境を広げていただきたいと思っております。

 このピアサポートを認知、普及させていただきたいと思うんですが、大臣の御見解を伺えればと思います。

小倉国務大臣 浅野委員御指摘のとおり、学校や職場、地域において、身近な人が悩みに気づき、声をかけて相談に応じたり、悩みを持つ人同士で支え合うピアサポートは、孤独、孤立の予防の観点からも重要であると認識しております。

 孤独、孤立の問題というのは複合的な要因で生じるケースが多く、また、置かれている状況とかその背景もまちまちなので、なかなかみんなで集まって悩みを共有して共感をし合うというところが、非常に難しさがあるというのも一面事実でありますが、孤独・孤立対策におきましては、孤独、孤立の問題を抱える人が支援を求める声を上げやすく、周囲の人が声をかけやすい社会となるよう、先ほど来申し上げているような普及啓発等に努めるとともに、日常の様々な分野において、人と人とが交流し、気軽に相談ができるような居場所づくりを推進することとしておりますので、こうした取組の中で、委員御指摘のように、学校、企業、地域等の様々な場で、孤独、孤立の悩みを抱える人同士、あるいはそれ以外の人が加わって支える環境づくりを進めていきたいと考えております。

浅野委員 やはり、日常生活の中で、日頃からそういった悩みを話しやすい関係づくりにも資すると思いますので、是非進めていただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 孤独、孤立の予防や早期発見のためには、当事者などが相談しやすい環境を整備することが大変重要です。

 本法案第十条には、支援を行うことを推進するために必要な施策という文言がありますが、この文言の中には、当事者等が相談しやすい環境整備というものも含意しているということを最後に確認させていただきたいと思います。

小倉国務大臣 御指摘の法案第十条につきましては、当事者等が相談支援を受けるだけではなく、浅野委員御指摘のように、当事者等が相談しやすい環境の整備に努めることも含まれている、こう理解をいたしております。

 具体的な取組としては、まず、支援を求める声を上げるのはよいこと等の理解、機運を醸成すると同時に、恥ずかしさや他者への迷惑を過度に意識する、先ほども議論がありましたように、いわゆるスティグマを解消して、当事者等が相談等の支援を受けることができるよう、支援を求める声を上げやすく、周囲の方が気づきや対処をできるようにするための普及啓発等の環境整備の推進だと考えておりまして、そういった取組を法案成立の暁には更に前進をさせたいと考えております。

浅野委員 この法案が今後の孤独・孤立対策に有効に作用することを期待して、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 孤独・孤立対策推進法案について質問いたします。

 今日は、NPO等への財政的な支援に関連して質問いたします。

 第七条に、政府は、孤独・孤立対策に関する施策を実施するために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならないとあります。ここで言っている財政上の措置というのは、どのようなことを行うんでしょうか。

小倉国務大臣 委員が御紹介いただきました第七条は、政府が孤独・孤立対策に関する本法案の施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じることに関する規定でありますが、具体的にいかなる措置を講じるかは、個々に必要性を検討していくことになろうかと考えております。

塩川委員 そうしますと、NPO等への財政的な支援というのは、この第七条で読むということでよろしいんでしょうか。

小倉国務大臣 はい。NPO等への支援も含めて、この第七条の財政上の措置で検討していくことになろうかと考えております。

塩川委員 ただ、この前の質疑の際に、大臣は、NPO等への財政的な支援は第十三条の規定に基づき行うという答弁をしているんですけれども、これはどういう関係なんですか。

小倉国務大臣 失礼いたしました。

 先ほどは七条ということを申し上げましたけれども、具体的には、委員の御指摘のとおり、今回の法案の第十三条、ここに、地方自治体や当事者等を支援する団体への支援につきまして、中身はちょっと省略をいたしますが、国は、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとすると規定しておりまして、この、その他の必要な措置の中に、NPO等に対する財政的な支援が含まれるということでございます。失礼いたしました。

塩川委員 七条ではなくて十三条ということですけれども、でも、今大臣もお話しになりましたけれども、第十三条には財政的支援という文言はないわけです。必要な措置の中で財政支援も読むということです。

 また、第七条は措置を講じなければならないという義務規定でありますけれども、十三条については努力義務でしかありません。そうなりますと、十三条で読むということで、こういったNPOへの継続的な財政支援を担保できるのかと思うんですが、そこはどうですか。

小倉国務大臣 NPOに対する支援につきましては、たしか重点計画の中に、継続的に支援をしていくということが明記されてあったかと思います。実際に、今年度そして昨年度の補正予算を合わせて、前回並みの六十億円を超える、そういったNPOに対する財政支援を確保すべきということで、私も担当大臣になりましてから財政当局と調整をし、実際に前回並みのNPOに対する財政支援を予算として確保させていただいたところであります。

 したがいまして、法案成立後も、担当大臣として、今後も孤独・孤立対策に関する必要な予算の確保ができるように全力を尽くしてまいりたいと考えております。

塩川委員 重点計画のレベルではなくて、法律上で担保する必要があるんじゃないのかといった際に、この第七条で、財政的な措置といった義務規定の中で、NPO等への支援、継続的な支援、これを読むような、そういう対応こそ必要なんじゃないかと思うんですが、改めて、いかがですか。

小倉国務大臣 先ほど申し上げたように、重点計画の中に盛り込んだ上で、今後、NPOに対する支援の在り方も、今も内閣官房の下で取組モデルの実態調査を行っておりますが、これから、法案成立の暁には、内閣官房から内閣府に移ることになります。まさに内閣府において、これからそういったNPOへの支援の本格的なあるいは継続的な実施をすることになろうかというふうに思っておりますので、この法案ができた後に、NPOに対する継続的な財政支援をこうした形で強化をさせていただきたいと考えています。

塩川委員 重点計画、あるいは大臣の決意として継続的な支援とありますけれども、それを、そういう大臣の決意やあるいは閣議決定のレベルではなくて、法律で担保するといったことを措置すべきじゃないのか。そうは考えませんか。

小倉国務大臣 私どもといたしましては、塩川委員御指摘のように、NPOに対する安定的かつ継続的な財政支援、この重要性については論をまたないと考えております。だからこそ、この法案の中で、第十三条の中に、その他必要な支援ということで盛り込んだ上に、先ほど申し上げたように、内閣官房から組織として内閣府に移りますことによって安定的に国としても支援ができるような体制を築くと同時に、これも法律の中にありますが、推進本部も、これは総理を本部長とする形で格上げをして、孤独・孤立対策の問題に継続的にこれから政府で重要政策として取り組んでいくという体制をつくりますので、そういった様々な施策を講じることによってNPO等に対する継続的な実施をしていきたいというのが私どもの考え方でございます。

塩川委員 NPOへの継続的な財政支援を法律上も担保できるような、そういった対応が必要ではないのかということを繰り返し申し上げておきます。

 午前中の参考人質疑でも、このようなNPOへの財政支援についてお聞きしましたところ、NPOが長期的な体制が取れるように継続的な支援が必要だ、自立を視野に入れながらも、事業を持続可能にしていくために当面安定した運営ができるような支援を、単年度助成からの脱却をといった御意見もいただいたところであります。

 重点計画などでも、各年度継続的に支援というのもありますけれども、この支援に必要な予算規模の継続的な確保というのはきちっと行われるのか。つまり、補正予算で担保するような形では継続的な支援にならないと思うんですが、そこはいかがですか。

小倉国務大臣 私ども以外にも、政府の様々な機関で、当初予算、補正予算合わせて毎年度しっかりと所要額を確保しているような、そのような重要政策はたくさんあろうかと思います。

 それと同様に、私どもとしては孤独・孤立対策は政府の重要政策だと考えておりますので、当初予算、補正予算、それも含めて必要な額を確保できるように努めてまいりたいと考えています。

塩川委員 六十億円を超える予算を確保と言いますけれども、その大半は補正の部分ですよね。ですから、補正頼みというわけにいかないだろうといったところを、安定的な財政支援を行う際には少なくとも当初予算で確保するとか、そういったことは担保できるんでしょうか。

小倉国務大臣 まさに、予算の確保につきましては、その時々の予算におきまして、財政当局と協議をして、その上で予算が成立をするものでありますから、今の段階で将来にわたる予算の状況について私から申し上げることはできませんが、繰り返し申し上げているように、担当大臣として、孤独、孤立の対策というのは政府の重要政策として位置づけられておりますので、NPOの皆様方にしっかりとした必要な予算を確保していけるように努めてまいりたいと思っております。

塩川委員 NPO等への継続的な財政支援が行えるように、そういう意味でも、安定した財源、財政の確保、それに見合ったしっかりとした法的な担保が必要ではないのかということを改めて申し上げて、質問を終わります。

大西委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 五分、よろしくお願いします。

 前回、孤独が一切存在しない孤立について、これによって心身に有害な影響を受けている状態というのは何ですかというふうに聞いたら、山本室長の方から、一つの例として、孤立していることに伴う認知症の進行であるというような御答弁がありました。これ自体は課題だというふうに私も思いますけれども、では、それを防ぐための具体的な施策として何があるのかなということを考えてみると、結構難しいのではないかなというふうに思います。

 午前中の参考人質疑でも、私、同じような質問をしまして、それをすごくつづめてお話しさせていただくと、恐らく、予防的に遠巻きに見守るのか、そうでなければ、おせっかい的に世話を焼くのか、このどちらかだと思います。

 こういった、孤独がない孤立によって生じる、心身に有害な影響を受けている状態に対する具体的な施策として、どのようなものがあり得るでしょうか。室長。

山本政府参考人 お答えさせていただきます。

 午前中の参考人のお話は、私も大変興味を持って聞かせていただいた次第でございます。多分、二つのことを別の方がおっしゃっていたと思います。一人の方は、見守りをしていって、いざというときにすぐに乗り出していけるようにするというやり方。もう一つの方は、おせっかい的に関わっていく。これは多分、ケース・バイ・ケースで両方あるんだろうというふうに思います。

 私どもとして考えておりますのは、社会的孤立の方は、典型的には、例えばごみ屋敷にいらっしゃる方というのは、これは生活衛生だけの問題では決してなくて、背景に様々な孤立の問題、過去に人間関係でうまくいかなかったことによる結果としてそのようなことになっているということになりますので、やはり困っておられることは間違いありませんので、何らかの形で支援が必要。ただし、この問題は、一人一人の、生活をどうしていきたいかという意思もありますので、そことのバランスを取りながら、うまく関わりをつくっていく。

 これは長い時間かかることだろうと思うんですね。関わりをつくりながら、その中で、接触をすることによって、つながりを少しずつつくることによって、相手の方が抱えている課題も分かってくるし、あるいは、そこで一筋の信頼関係ができてくれば、長い時間かかりますけれども、これは支援につながっていくものだというふうに考えております。

緒方委員 参考人からは、限られたリソースの中で優先順位が高いのは、やはり孤独を感じているケース、こちらの方の対応の方が優先順位が高いのであるというような御発言もありました。

 この件についていかがお考えでしょうか。室長。

山本政府参考人 お答えさせていただきます。

 参考人四人の方のうち、お一人がそのような御発言をされたというふうに承知をしております。

 一方で、別の参考人は、社会的孤立で孤独感を全く自覚していない方もリスクの高い人である、したがって、そこは支援の対象にしていかなくてはいけないとおっしゃいましたし、また、特に行政の方から参考人として御意見を述べられた方は、行政の役割としては、そういう方々は決して放置してはいけないんだということもおっしゃいました。

 私は、これは両方の考えがあって、この部分は大変悩ましいというのはどなたも皆さんおっしゃっていることでございますけれども、ケース・バイ・ケースで対応していくべきことだろうというふうに思っております。

緒方委員 和田副大臣が来られておりますので、最後、質問させていただきたいと思います。

 この法律の第二十四条で、特命担当大臣を政府対策本部の副本部長に置くということで規定がしてあります。これ自体が何か悪いと言うつもりは余りないんですけれども、ただ、本来、特命担当相というのは機動的であるべきであります。

 こういう形で、法律の中に、本来機動的であるはずの特命担当相を副本部長として置くとか、そういうものが余りに増えていくと、本来の内閣特命担当大臣の機能が損なわれていくのではないか、内閣府そして内閣全体の機能としてそういうことはできるだけ抑制的であるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 本法案第二十四条は、孤独・孤立対策推進副本部長について定めるものでありまして、同副本部長として、内閣官房長官及び内閣府特命担当大臣を充てることとしております。

 もっとも、条文の解釈といたしましては、当該規定をもって必ず当該担当大臣を置かなければならないことを意味するものではないというふうに整理をしております。

 ちなみに、内閣府設置法上、特命担当大臣を必置するとされているものは、防災担当大臣、沖縄及び北方対策担当大臣、金融担当大臣、消費者及び食品安全担当大臣、こども政策担当大臣の五分野に限定されております。

 いずれにしても、機動性の確保は委員御指摘のとおり重要であり、内閣が担うその時々の重要課題に鑑みて、内閣総理大臣が適切に特命担当大臣の担務を設定するものと認識をしております。

緒方委員 興味深い答弁でした。

 ありがとうございました。

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 大臣、居場所やプラットフォームをつくるとかは、聞こえはいいのですが、要は、孤独、孤立に陥っている人への対策をNPOや中間団体に丸投げし、国は手を出さないということではありませんか。前回の質疑でそのように質問をさせていただきました。

 人々が生きづらさを感じたり、助けてと言えない、いわば自己責任社会をつくってきたのが、まさに自民党政権です。官から民へと言い、緊縮財政と小さな政府を目指す政策が約三十年間も続いてきました。しかし、その政策の根本を見直さず、国の役割すなわち公助を増やすどころか、これをできるだけ少なくして共助に対応を任せる、これが今回の法案の核心部分ではありませんか。

 それが透けて見えたのが、二十一日の質疑です。NPOへの財政支援に対する大臣の答弁は、法案の第十三条を根拠とした上で、予算の確保に努めてまいりたいとするものでした。あくまで努力するでしかないんですね。

 いや、第七条にきちんと書いてある、そう反論されるかもしれませんが、パネル一を御覧ください。こちらですけれども、第七条には「必要な法制上又は財政上の措置」と、確かに義務規定となっています。しかし、本当に実効性があるのかと疑問なんですよ。パネルの真ん中、第二十五条には、政府の孤独・孤立対策本部の構成員には、肝腎の財務大臣が入っていないんですね。

 小倉大臣、財政上の措置を講じなければならないという第七条を考えれば、少なくとも財務大臣は法案を修正して入れるべきではありませんか。また、ここに税制上の措置が含まれるかどうか、いかがですか。二点、お答えください。

小倉国務大臣 本法案により内閣府の特別の機関として置くこととなる孤独・孤立対策推進本部は、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を盛り込んだ孤独・孤立対策重点計画を作成し、その実施を推進する等の役割を有する機関であります。

 孤独・孤立対策推進本部については、法案の第二十五条の第一項において「本部に、孤独・孤立対策推進本部員を置く。」と規定しております。その上で、第二項において本部の構成員について規定しており、具体的には、「本部員は、次に掲げる者をもって充てる。」として、委員がパネルに紹介をしていただいたような各大臣を規定し、さらに、「前各号に掲げるもののほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者」を規定することといたしております。

 本法案では、同様の本部を定めていた他の法律の規定の例に倣い、本部員について、これまでも孤独・孤立対策に特に関係の深かった省の大臣を明記し、その他の本部員は内閣総理大臣が国務大臣のうちから指定をする旨を規定しております。

 政府一体となって孤独・孤立対策を強力に推進するため、その本部員は、各省庁の政策責任者である閣僚級で構成することとしております。前々回の委員会の答弁で鈴木委員にも御答弁申し上げましたが、そういった中で財務大臣もその本部員となることを想定しております。

 後半はよろしいですね。(櫛渕委員「簡単にお願いします。時間がないので」と呼ぶ)はい。

 では、簡単にということでしたので。

 法七条の方の税制上の措置についてお尋ねがございました。

 この規定には、税制上の措置も概念上は含まれ得るものと考えております。

櫛渕委員 いろいろ大臣おっしゃるんですけれども、ここは法律に、それほど大事な法律でしたら、財務大臣を私は明記すべきだと思いますよ。それの明言がないというのは、本当に実効性が問われると思います。

 また、税制上の措置、入るというお答えでしたので、そこは是非ともお願いをしたいと思うんですね。

 結局、NPOや中間団体に支援を丸投げしておきながら、継続的な財政上の措置は何もない。やるべきは持続的な予算の措置、義務づけと、そして寄附税制の拡充であると私は考えます。

 特に、寄附税制は、行政主導で補助金を上げるからとか委託事業費を上げるから支援をやってというものではなくて、国民が自ら選んだ団体にお金が渡り、そして、寄附した人が控除が受けられ、NPOや中間団体も継続的な支援ができて、当事者が救われる、公共を取り戻す仕組みなんです。生活困窮支援や環境保護であったり、子供支援や障害福祉であったり、国民一人一人が寄附控除を通じて税金の使い道を決めることができる、ここがポイントなんですね。

 こうした提言はもとより、持続的な予算上の措置については、午前中の参考人からも強く要望がありました。

 どう考えても、孤独・孤立対策本部に財務大臣は欠かせません。しかし、大臣は明言されませんでした。そのような実効性の期待できない孤独・孤立対策法案には、れいわ新選組は賛成することができない、そのことを申し上げ、質問を終わります。

大西委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 有志の会の緒方林太郎です。

 採決に際し、一言申し上げます。

 賛成、反対では相当に悩みました。孤独が社会全体で減っていくことは望ましいことであり、そのために、公共セクター、民間セクターがやれることは全てやるべきだというのは、そう思います。

 一方、対策を講ずること、法律を作ること、そして組織をつくること、これは全く別物です。過去に今回の法律と似たような総合調整関連の法律をどんどん作ったがゆえに、今、内閣府は異形の官庁となっています。今回、また所掌事項の追加が行われ、肥大化の種がまかれます。本来であれば、この種の法律を通すときには、内閣府内での調整、他省との権限調整まで踏み込んで、スクラップ・アンド・ビルドをセットにすべきです。しかし、今回はそうなっていません。

 また、地方にも負担増とならないようにしなくてはなりません。地方自治体は国の法律で決まってくる業務増への対応に苦慮しています。国会議員や官僚は法律を作ることで成果だと思うのでしょうが、それを受けることになる自治体の気持ちに立たないのであれば、それは国の独りよがりです。国の作るルールが地方にとっても屋上屋にならないようにする仕掛けは必要でしょう。

 行政学で有名な法則として、パーキンソンの法則というものがあります。大英帝国が縮小していたにもかかわらず植民地省の職員数が増加していたこと等への分析を踏まえ、官僚制は内在的に肥大化していくことを指摘したものです。今の内閣府を見ていると、このパーキンソンの法則どおりの動きをしています。与党そして政権に再度提案をしたい。二〇一五年の内閣官房・内閣府スリム化法をバージョンアップすべきです。

 このような警句を鳴らす観点から、反対を投じるべきかどうか悩みましたが、孤独対策という本法案の趣旨に鑑み、賛成することといたしました。ただし、将来、新設の組織が年中恒例行事のように重点計画を作って、屋上屋の役割を果たすだけのタコつぼ組織となるのであれば、私が先頭を切って廃止を訴える側に回ります。

 孤独は社会の隅々にあります。実は一番深刻なのは、私は東京砂漠ではないかと思います。このタイトルの曲がヒットしたのは一九七六年。このことからも分かりますが、孤独自体は古くて新しいテーマです。ただ、東京砂漠の歌詞の情景は現代とは乖離があります。

 つまり、我々が取り組まなくてはならない孤独の在り方には現代性があります。この現代性を透徹した目で見て、しっかりとした対策を講じてほしいと願います。

 以上、討論といたします。ありがとうございました。(拍手)

大西委員長 次に、櫛渕万里君。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 会派を代表して、本法案に反対の立場から討論いたします。

 政府は、本法案で、居場所づくりやプラットフォームを充実させて孤独や孤立の予防を図るとしています。しかし、この法案の達成目標は何なのでしょうか。今、孤独や孤立を深める人を一人でもなくす、そのことではないのでしょうか。

 官から民へとか、行政の無駄を省くというスローガンの下、公共、それが削られ、自助や自己責任が過剰に重視されて、人は人とのつながりに助けを求めることができず、生きづらい、助けてと言えない、そんな孤独や孤立に人々を追いやる社会がつくられてきました。まさに自民党政治の失敗であります。孤独、孤立を予防するというならば、まずは政策の間違いを率直に認め、反省し、減らしてきた公共、これを取り戻すための公助で人々を経済的孤立や貧困から救うことから始めなければなりません。

 また、孤独、孤立は、密接に差別ともつながっています。LGBTの方々について生産性がないと酷評し、性暴力被害には女性は幾らでもうそをつけると吐き捨てる人物を、岸田総理は総務省政務官という要職に就けていました。また、性的少数者や同性婚をめぐって、見るのも嫌だ、隣に住んでいるのもちょっと嫌だと差別意識丸出しの発言をする人が、つい先日まで首相秘書官を務めていました。どれほどの当事者が孤独と孤立に追い込まれたことでしょうか。

 自助や自己責任を過剰に強いてきた、あるいは、差別によって孤独や孤立を生み出しておきながら、その当事者への支援を行う活動を支援する対策法案を提出するなど、マッチポンプそのものです。

 さらに、単身世帯、つまり独り暮らしが今や国勢調査を見ても最多の世帯となっており、中でも、非正規労働者の六割近くは女性で収入が少ない、そうすると年金も低いんです。とても生きていけない。そうした中高年単身女性が増えています。その究極の悲劇的なケースが、渋谷区でホームレス女性がバス停で殺された事件であることは、質疑で指摘したとおりです。孤独、孤立した男性が置かれた厳しい状況も同様です。

 こうした悲劇をなくすには、経済的孤立から救うため、消費税廃止や社会保険料の引下げなどの積極財政に加え、公営住宅の年齢要件を撤廃し、就労支援と教育訓練を拡大すること、また、持続的な予算上の措置を義務化し、寄附税制を拡充して、個人はもちろん、企業によるNPOや社会団体への支援を拡充することで寄附文化を醸成させる、それが本来の実効性のある孤独・孤立対策法案であると考えます。

 しかし、その肝腎な財政上の措置が担保されていないのが今回の法案です。そのことが質疑で明らかになりました。

 したがって、れいわ新選組は、政府提出の孤独・孤立対策法案には反対と申し上げ、私の討論といたします。

 ありがとうございます。

大西委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

大西委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、孤独・孤立対策推進法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

大西委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、神田憲次君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。浅野哲君。

浅野委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    孤独・孤立対策推進法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。

 一 孤独・孤立対策においては、当事者等への支援を行う者の活動が果たす役割の重要性を踏まえつつ、当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われるようにすること。

 二 国民の理解の増進等に関する施策を行う際には、社会のあらゆる分野において必要な啓発活動を積極的に行うこと。

 三 相談支援体制の整備については、当事者等が相談しやすい環境を整備することの重要性を踏まえて行うこと。

 四 地方公共団体等の孤独・孤立対策に係る施策を行うための支援の在り方について、政府は地方公共団体の意見を十分に踏まえた上で検討を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

大西委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

大西委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小倉国務大臣。

小倉国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、努力してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

大西委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

大西委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

大西委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十六分散会


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